令和7年7月2日(水曜日)14時01分~15時59分
オンライン会議にて開催
(委員、臨時委員)
大野分科会長、木部分科会長代理、飯田委員、石塚委員、石原委員、宇南山委員、大竹委員、小野委員、梶田委員、加藤和彦委員、加藤美砂子委員、治部委員、関沢委員、鷹野委員、千葉委員、仲委員、中井委員、中野委員、中村委員、安田委員
(科学官)
池田科学官、北野科学官、恒吉科学官、野崎科学官、原田科学官、深川科学官、藤森科学官、外田科学官、松田科学官、本橋科学官、安原科学官、柳田科学官
塩見研究振興局長、松浦大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、山之内振興企画課長、俵大学研究基盤整備課長、山村大学研究基盤整備課学術研究調整官、板倉学術研究推進課長、土井参事官(情報担当)付学術基盤整備室長、轟木参事官(情報担当)付参事官補佐、村越ライフサイエンス課課長補佐、助川学術企画室長、林学術企画室室長補佐、ほか関係官
【大野分科会長】 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第96回の科学技術・学術審議会学術分科会を開催いたします。
お忙しい中お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
それでは、まず、事務局より配付資料の確認と注意事項をお願いします。
【林学術企画室室長補佐】 事務局でございます。本日の資料は事前に電子媒体でお送りさせていただいておりますけれども、議事次第に記載のとおり、資料の1から資料の5、それから参考資料1から4をお配りしてございます。もし資料の不足等ございましたら事務局まで御連絡をお願いいたします。
御発言の際でございますけども、手を挙げるボタンをクリックしていただきまして、分科会長より指名を受けましたら、マイクをオンにしていただいて、お名前から発言をお願いいたします。終わりましたらミュートにしていただきますようお願いいたします。
もし不具合等ございましたら、マニュアルに記載の事務局連絡先まで御連絡をお願いいたします。
本日の会議でございますが、傍聴者を登録の上、公開の会議ということになってございます。
また、本日は事務局より塩見研究振興局長、その他関係官が参加してございます。
以上でございます。
【大野分科会長】 ありがとうございました。
それでは、議事に移ります。今日は2つ議題がありますが、最初は報告をいただいて、質疑応答するということで、実質的な議論は、2番目の議題、我が国の研究力強化に向けた方策に多くの時間を使いたいと考えています。
それでは、まず1番目の各部会等における審議状況について御報告をいただきます。報告の後、質疑応答の時間を設けております。冒頭に、第7期科学技術・イノベーション基本計画に向けた検討状況等について、事務局より説明をお願いいたします。
それでは、俵大学研究基盤整備課長、お願いいたします。
【俵大学研究基盤整備課長】 大野先生ありがとうございます。俵です。研究環境基盤部会においては、4月から4回にわたり会議を開催いただいて、AI時代にふさわしい科学研究について御議論をいただきました。
7月1日付でその議論の内容をまとめていただきましたので、この後その内容については座長の梶田先生から御報告をいただきたいと思っています。
僕からはこの部会にお願いをした議論の内容と議論の経緯についてできるだけ簡潔に紹介をしたいと思います。よろしくお願いします。
次のページが、文部科学省が進めたいと考えている科学研究の取組の1つになっています。現状認識・課題のところに、最初のポツで、世界の潮流として、研究設備・機器の共用・集約化、それと自動/自律化、遠隔化による研究の生産性の向上、これが進んでいるというような潮流があるかと思います。また、情報基盤が支えるデータ科学であったり、あるいはAIを活用した研究の向上、これも進んでいるというのが潮流ではないかと思います。
日本の現状としては、研究設備・機器の組織的な集約化・共用化が遅れているという現状があるということと、また、研究機器から得られるデータの体系的な蓄積、こういったものが十分にできてない、そんな課題があると思います。
こういった課題、潮流を踏まえて、施策の概要の①、青枠のところに書いています。これは日本全体で戦略的に研究設備・機器の共用、高度化を進めていくということを取り組んでいきたいというのが1つです。
もう一つが③の緑枠のところにありますが、これはAIを搭載した自動化・自律化、あるいは遠隔でも活用できる装置、こういったものを大規模に集めて、多くの研究者に集まっていただいて使えるようにすると。そういった環境が大事じゃないかということで取り組みたいというのが③に書いてある内容になります。
④の赤枠のところは、これは研究DXであったり、あるいはAI for Scienceといった、こういった潮流があると思いますので、こういった潮流を踏まえて、研究データ基盤を強化する、こういったことに取り組みたいと考えています。
研究環境部会においては、特に③の大規模集積研究基盤の整備、この内容を中心に具体的にどのような方向で取り組むべきか、先生方に御議論をいただいてまとめていただいたというものになっています。
次のページをお願いします。先ほど4回と申し上げましたが、ここに書いてあるような形で、2回目においては、先生方からのヒアリングもさせていただいて、最終的に4回開催をいただいてまとめていただいたというものになっています。
次のページお願いします。今回の分科会にもたくさんの方々に入っていただいていますが、これは研究基盤部会の委員の名簿になっていまして、梶田先生に座長をいただきながら議論いただいたという内容になっています。
最後に、次の次のページお願いします。これは政府の中で閣議決定をした文書を集めたものになっていますが、骨太の方針をひとつ紹介すると、先端研究設備・機器の戦略的な整備・共用・高度化を推進する仕組みを構築する。研究データの活用を支える情報基盤の強化やAI for Scienceを通じて科学研究を革新するといったようなことで政府の閣議決定をまとめていますので、こういったことも踏まえながら先生方にも議論をいただいてまとめていただいたという形になっています。この後、梶田先生に御報告いただきたいと思います。
大野先生ありがとうございます。よろしくお願いします。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。
それでは、資料2に基づいて梶田研究環境基盤部会長より御報告をお願いいたします。
【梶田委員】 どうもありがとうございます。今事務局より説明がありました内容につきまして、4月より研究環境基盤部会において具体的な検討を行い、今般、意見等の取りまとめに至りましたので、その内容につきまして御報告をさせていただきます。
資料2の1枚目にあります概要を基に説明させていただきます。
まず、水色の「AI時代にふさわしい科学研究の姿」です。我が国全体の研究の質・量を拡大していくためには、研究者個々人が持つポテンシャルと大学や共同利用・共同研究拠点、大学共同利用機関等が有するポテンシャルを相乗的に最大限に引き出せるよう、様々な取組を進めていくことが重要です。
その取組の1つとして、基盤となる研究環境の高度化・高効率化を図っていくことが必要です。その際なんですけども、諸外国の例を見ると、研究設備の集積化、自動化、自律化、遠隔化等による研究の生産性の向上、AI for Scienceによる科学研究の革新が図られる例が出てきており、この潮流も踏まえていかなければなりません。
研究環境の高度化・高効率化をする意義として、研究者がより創造的な活動に従事することが可能となることや、研究から得られるデータやAIを最大限に活用することで、科学研究の進め方・在り方に変革をもたらすことにもつながります。
ただ、その実現には、単に研究設備・機器の集積化、自動化、自律化、遠隔化を行えばいいというものではなく、科学研究の進め方、ひいては科学研究の在り方そのものを変革するというマインドが根づくことも重要であり、変革の原動力となり得る組織が一体となり、拠点やネットワークを形成して取り組んでいくことが必要です。そのための具体的な方向性として大きく5つを挙げております。
下のほうに行きまして、①、左側ですけども、大規模集積研究基盤の整備です。中核となる研究装置を核として、先端設備群や関連する設備・機器を段階的に整備・集積し、ワンストップでシームレスに統合された研究環境を構築することが必要です。
また、研究の加速化やセレンディピティを誘発し、遠方からでも意欲・能力ある優れた研究者が研究環境にアクセスできるよう、集積される設備・機器は、最も効果が最大化される形で自動化、自律化、遠隔化等を図る必要があります。
続いて②は、データの蓄積と、AIとの協働による研究の最適化・新領域の改革です。自動化、自律化された設備・機器が集積されることで蓄積されたデータは、分野の壁を越え、あらゆる科学研究における重要な資源となり得ます。研究者等の専門的知見とAIが協働し、これらのデータを活用することで研究サイクルの加速や探索領域の拡大等、分野・領域を超えた研究力の強化につながっていきます。また、AI for Scienceの可能性を最大限に引き出すためにも、情報基盤の強化・高度化や持続的な体制を構築していくことも必要です。
続いて、③は体制の構築と人材育成です。まず、新たな科学研究の姿を構築するに当たっては、研究者のみではなく、ソフトウエア・ハードウエアエンジニアが一体となった体制が必要です。また、この研究環境の中で、研究パフォーマンスを最大化させるには、技術・実験支援の職員や研究コンサルテーションを行う人材に加え、研究や技術の素養を有し、全体を俯瞰的に捉え統括・マネジメントできる人材の配置や処遇が必要です。
さらに、この新たな科学研究の姿を教育資源と捉え、自身の研究分野に加えて、AIやデータサイエンスの素養を有する人材と新たな科学研究の姿を牽引できる人材育成の仕組みを大学等と連携して構築することが必要です。
続いて4番、産業界との連携です。知の拠点で得られた新しいものが、社会実装され、イノベーションを創出し、社会を変革する力となるには、理化学機器産業やロボット産業をはじめとする産業界とも協働していくことが重要です。産業界との連携は世界的な研究拠点や国際標準化を目指す上でも重要な要素です。
⑤、最後ですけど、国際頭脳循環の促進です。①から④に取り組む中で、我が国の強みを生かしたオリジナルの在り方で取り組むことで、世界の研究者を引きつけ、国際頭脳循環のハブの1つとなるように取り組んでいくことが重要です。
最後、右側ですけど、取組の具体化に向けてです。まず、AI時代にふさわしい科学研究の姿を実現するためには、組織として大規模な設備・機器や人的資源等の基盤を有し、科学研究の変革の原動力となることが求められます。
大学共同利用機関は、これまでも人的・物的資源を研究の利用に供するという我が国独自のシステムを展開することで、我が国の科学研究の発展に貢献してきています。そのポテンシャルを生かすことで、大学共同利用機関は、この構想を実現するための拠点やネットワーク形成の中心的機関の1つとして期待することができます。
ただ、この構想の実現には、特定の大学共同利用機関においてのみ行えるものではなく、大学共同利用機関法人のリーダーシップの下、大学共同利用機関における役割分担・連携を促進しつつ、共同利用・共同研究拠点との連携やその他の様々な機関及び組織と協力し、オールジャパンの研究推進体制を構築することが必要です。
この意見のまとめを踏まえて、今後、事務局においてよりよい形で具体化を進め、実行に移していただくことを期待しております。
以上です。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。
それでは、続いて情報委員会からの御報告をお願いします。土井学術基盤整備室長よりお願いします。
【土井学術基盤整備室長】 それでは、資料3を御覧いただければと思います。科学技術・学術審議会の直下に設置されております情報委員会で取りまとめました「次世代の科学技術・イノベーションを支える情報基盤の在り方について(中間取りまとめ)」の報告をさせていただきます。本体は2ページ以降になりますけれども、1ページ目の概要に基づいて説明をさせていただきたいと思います。
まず、左上の「背景」にございますように、科学研究へのAIの応用、いわゆるAI for Scienceは、産業革命と同等以上のインパクトを持って国際的に積極的に進められているとともに、生成AIの利活用が、教育・研究活動だけでなく、社会活動全体に急速に浸透し、研究DXのさらなる加速や流通する研究データの質・量が増大するということが推測され、社会課題やイノベーションの源泉である研究データを共有し、組織・分野・セクターを超えた科学研究を行う重要性がますます高まっています。
そのような中で、今後の情報基盤はどうあるべきかというものを審議いただいて取りまとめていただいたものになります。
右上にございますように、「情報基盤への期待・影響」ということで、まず1点目、AI時代の新たな科学技術・イノベーションを切り開くインフラとなること。
2点目、AIを活用してあらゆる垣根を越えた新たな知の創造を支援し、AIが出力する情報の信頼性を担保すると。
また、AIモデルの高度化やAI for Scienceの拡大、分野融合や裾野の広い研究の促進、社会課題の解決や我が国全体の研究力・産業競争力の向上に大きく貢献するといったことを期待するということで、今後の情報基盤の方向性を6つの観点からまとめているところでございます。
下の図の円の中心にあります1点目、「AIを取り込んだエコシステムの構築」では、今後の情報基盤はAIを活用した機能を組み込むことを前提として構築する必要があること。またその際、日本の文化等に理解のあるAIですとか、ELSI、AIガバナンスを意識することが重要であること。また、蓄積された研究データを活用して、AIの高度化サイクルを生み出す役割が期待されていること。
ということを挙げて、2点目、左のほうに行きまして、「産業界・海外との連携」としまして、産業界とアカデミアとの協働の基盤となること。したがって、産業界の利用も前提にした情報基盤の在り方を検討することが重要であること。また、産業界の利用に当たっては、いわゆるユーザビリティを確保した設計ですとか、オープン・アンド・クローズ戦略等に留意して、協働が相乗効果を生む仕組みというものが必要であること。また、産業界や海外と研究データの流通、あるいは利活用を促進する上では、研究データの共有ポリシー等の策定や情報セキュリティーの強化、経済安全保障への対応等が必要であること。
3点目、上のほうに行きまして、「人材の育成・確保」ですけれども、研究を伴走し、情報基盤を中心とした研究エコシステムを支える人材を育成・確保し、研究を一体的に進める持続的な体制を構築する必要があること。特に、組織、分野、セクターの垣根を越えた連携を具体化するマッチング人材の重要性というものが高まっていると。また、なり手不足が深刻である研究支援人材や技術者の重要性を示し、待遇改善や研究チームの一員としての功績が正しく認知・評価される制度の構築等が求められていること。
また、この本文中には、研究支援業務のうちAIが代替できるものは、研究支援人材の業務を支える手段として新たな情報基盤に組み込むことも考えられるといったことも述べてございます。
4点目、右のほうに行きまして、「リテラシー向上、研究データの共有・活用促進」では、情報基盤を十分に活用していくためには利用者のリテラシー向上が不可欠であること。また、データや成果を広く共有・活用する活動を促進するようなインセンティブや評価する仕組みなどの整備が重要であること。
5点目、下のほうに参りまして、「AI for Scienceのための高度化」では、いわゆる計算基盤ですとか、研究施設・設備、研究機器で取得されたデータを情報基盤に接続することでAI for Scienceやデータ駆動型研究の加速が期待できること。また、GPUなどの加速部を活用した計算資源を提供できる環境の整備が必要であることや、研究データの流通を支えるネットワークの在り方の検討が必要であること。
最後、6点目、下のほうになりますけれども、「効果的な配置」ということで、資源の効率化や安定したサービスの提供といった観点、あるいは災害に対する堅牢性、電力消費の観点、そういったことを踏まえまして、全国的なエコシステムとして最適な情報基盤について検討が必要であることなどを述べてございます。
そして、右下にあります、構築を進める上でのポイント、これは本文中ではまとめとして記載してございますけれども、長期的に科学研究やそれを支える情報基盤のあるべき姿を描いた上で、短期的・中長期的に取り組むべき課題と取組主体を明確にし、また、情報基盤に求められる機能や役割というものは今後も変わっていくことは容易に想像できることから、世界的に見ても我が国が孤立しないように、国際的なベンチマークを見ながら、技術の急速な進展や国際動向に合わせて、目標や評価指標を臨機応変に軌道修正しながら取組を進める、つまりアジャイルに進めることが肝要であるということを述べて中間取りまとめを結んでいるところでございます。
駆け足で恐縮ですけれども、説明は以上となります。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御報告について御質問あるいは御発言がある方は挙手をお願いします。時間としては10分ぐらいを考えていますけれども、次の議題、我が国の研究力強化に向けた方策についてでも御発言がいただけるような御意見もあろうかと思いますので、皆様に御発言いただけなかったときにはそこでまた改めて御発言をいただければと思います。
それでは、いかがでしょうか。
仲先生、お願いします。
【仲委員】 どうもありがとうございます。2つの委員会からの御報告どうもありがとうございました。
2つあるんですけれども、1つは、人材育成に関してなんですけれども、ますます若手人材を育成していく必要がある。例えば、昨今のニュースで、大学院博士課程の経費支援を、留学生ではなく日本人学生にというふうに、そこに重点を置こうというような動きなどもありますが、ここは日本人もだんだん減ってきているということもありますので、日本人、留学生に限らずあまねく若手は支援する。そうすることで、今お話にあったような、本当に必要な人材を確保していくことができるんじゃないかなと思いました。
もう一つは、AIなんですけれども、ますます私たち、研究、そのほかの仕事をAIに頼ることが多くなっていると思います。どんどん頼っていった後、突然、例えば、AI、課金しますとか、ほかの国のこのシステムを使っているので使えなくなりました、みたいなことがあったら本当に恐ろしいなと思うところです。そのようなことを防ぐためには、各国との連携を強化していく、トラストフルな、信頼できる連携を強化していく必要があると思います。
そのときに、研究者だけではなくて、これを支える科学技術官、あるいは事務を行う人、専門的な事務を担う方が必要です。それが日本ですと大体二、三年でどんどん人が変わっていってしまうということで、引継ぎができない。諸外国を見ると、ずっと長くネットワークをつくってやっておられるということもあるわけで、研究者のみならず、そういう基盤を支える事務系専門家の育成も必要、存在も必要だと思いました。
以上です。2つです。
【大野分科会長】 仲委員、どうもありがとうございます。それでは、安田委員、お願いします。
【安田委員】 どうもありがとうございます。非常に分かりやすい簡潔な説明もありがとうございました。
AIに関してなんですけど、我が国の強みを生かしたオリジナルの在り方、国際的頭脳のハブというところが、やや分かりにくかったので、もし補足説明いただけたらうれしいなと思いました。また、AIに関して、今御指摘もあったんですけれども、結構、ChatGPTとかLLMの台頭によってすごく研究の中でも重要な役割をやってくれているんですけれども、特に日本の研究者は、特に学生ですね、修士とかの学生は、どちらかというと実験やサイエンスができなくて論文が書けないではなくて書くときの英語力がかなり大きな壁だったのかなと思うところで、今、そういった壁が払われつつあるのかなというようなところは思っています。一部の英文校閲会社が開発しているところかもしれませんが、もっと科学技術とか科学論文に特化したような、日本語と英語との間の専門用語も含めた、もっと日本語のユーザーにとって最適化された科学用のAIがあるとさらに科学のアウトプットを加速できて良いのではないかなというところは思っていました。科学技術に関してこそ、情報漏えいの問題とか安全保障の問題もあることを考えると、やっぱり自分の国でちゃんと強いものを構築するのを早めに始めたほうがいいんじゃないかなというところを少し思いました。ありがとうございます。
【大野分科会長】 重要な論点だと思います。ソブリンAIをどうするのかということですね。
続きまして、飯田委員、お願いいたします。
【飯田委員】 ありがとうございます。非常に分かりやすい御説明をいただきましてありがとうございました。
論点のほうも非常に網羅的にカバーされておりまして、全く異論はないところでございます。生成AI等々、非常に発展していますので、これを活用するというのは研究の効率化のためにも質を上げるためにも重要であるとのこと、これも全く異論ございません。
その上で、データを利活用するためにも、データのクオリティーについて触れたいと思います。まず1つ目は、データのフォーマットの問題です。私が属しております分析・計測機器関係でしたら、計測機器のデータのフォーマットをどう統一するか重要で、業界団体が経済産業省様と一緒にフォーマットをつくったと聞いております。世界の動きの中でどういう位置づけで進めるのかという点は、もう議論されているところだと思いますが、改めて課題として問題提起させていただきたいと思いました。
また、データの質、こちらのほうのデータのキュレーションといいますか、質の担保というのもやはり大事ではないかと思います。
この辺りも含めた上で、スケジュール感については、これから明らかにされていくとは思いますが、ぜひゴールセッティングをクリアにしていただいて、見える形でぜひ進めていただきたいなと思うところです。
以上です。ありがとうございます。
【大野分科会長】 どうもありがとうございます。データのクオリティーは常に意識していかなければいけないということだと思います。
それでは、鷹野委員、お願いいたします。
【鷹野委員】 ありがとうございます。全体としてとても分かりやすくまとめていただきありがとうございました。
私、ちょっと勉強不足の素朴な質問なんですけれども、御説明の中で、日本の文化等に理解のあるAIという表現があったんですけれども、その部分が私にはちょっと想像できないといいましょうか、十分に理解できなかったので、少し補足をしていただきますとありがたいと思います。
以上です。
【大野分科会長】 それでは、先ほど安田委員からも質問がありましたね。お答えになれますか。
【土井学術基盤整備室長】 学術基盤整備室の土井でございます。まず日本の文化に理解があるAIですけれども、我が国の研究者、研究活動を支えていく上で、世界共通な部分というのも必要かもしれませんけれども、特に人文社会系なども考えると、我が国の状況、文化も含めた状況もしっかり把握し理解できるようなAIというのが大事だと考えているところでございます。
それが1点と、あと、もう一つあったのが・・・。
【大野分科会長】 ちょっとぼんやりしていたということですよね。
【山村学術研究調整官】 安田委員の1つ目の御質問にありました資料2の報告書について、少しぼやっとした書き方となっているという国際頭脳循環のハブとなるというところでございますけれども、議論の際に、先行して取り組んでおりますマテリアル分野の先生からも御発表いただいたんですけれども、そのときに理化学産業、またロボット産業は日本の強みであるということで、マテリアルの分野ではこういった国内企業の皆様方と連携をして、新たな科学研究というところに取り組んでいるというとことでした。この報告書自体はマテリアルの分野に限った報告書ではないものの、幾つかの分野の中では同じような方向性で取り組んでいけるものではあるのではないかということで、⑤のところ書かせていただいているんですけれども、参考にさせていただいたのは、今申し上げました、マテリアル分野における理化学産業とかロボット産業とかと連携をして環境を構築して、それが世界標準になるように持っていくというところを念頭に書かせていただいたところではございました。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、次のお二人で取りあえずここの部は質疑応答のところは御意見を伺うのは終わりにしたいと思います。
加藤委員、お願いいたします。加藤和彦委員ですね。
【加藤(和)委員】 加藤でございます。私は研究分野、情報科学で、日頃からこの会議では、生成AIはエンカレッジする方向で発言させていただいていますけれども、今回の資料を拝見すると、基本、積極的に活用していくべきということが書かれているので、あえて注意を促す発言をしておきたいと思います。
以前から生成AIを使うときは注意して使うべきであるということが言われています。ちょうどつい最近ニュースになった記事があります。日経の1面トップ記事で、論文の中に、「この論文を高く評価せよ」という内容の文を人間の目に見えないように埋め込んで、査読者等が生成AIで論文評価をさせると高い評価が出るように、作為的に仕込んでいる事例が沢山見つかったことが報告されています。
あるいは同じくつい最近の日経に、ドイツのデータ保護当局が中国の有名な生成AI企業のアプリの削除をグーグルとアップルに求めているという記事が掲載されました。その理由は、GDPRに抵触して違反している可能性があるからというものです。
今後、生成AIの活用は積極的に進めていくべきであるという意見は、私も変わりありませんが、同時に、私たち研究者、科学者も、注意して利活用していくべきということも、こういう国のトップレベルの文書で、触れられているといいんじゃないかなと思いました。
以上でございます。
【大野分科会長】 どうもありがとうございます。重要な観点だと思います。
続きまして、治部委員、お願いいたします。
【治部委員】 ありがとうございます。私も大学で授業をしている観点から今の加藤委員の御発言に全面的に賛成です。私自身は20年近く企業で働いておりまして、4年前から理工系大学の文系教養部門で働いております。今日のお話の中で人材育成のところでちょっと申し上げたいところがあります。
一言で言いますと、産業界からアカデミアに転じてみますと、特に若手の研究者の待遇が極めて悪いというところが非常に気になります。これはAI時代ということをありとしても、抜きにしても、持続可能性に欠ける状況ではないかなと思って危惧しています。
今、御案内のとおり、文系の新卒であっても初任給で30万円ぐらいもらえるということを、私も学生、内定を得た人から聞いているような状況で、理系の学生であっても修士までは当たり前のように行くんですが、博士まで進むことに対して経済的なインセンティブが著しく欠ける状況にあります。
また、いろいろな研究機関の方と話をしていますと、若手や中堅がテニュアがない状態で馬車馬のように働く。大変な業績を出していてもテニュアが取れないという状態で、人生設計が描けないというところは、ちょっとやはり企業で働くことと比べますと相当状況が悪いということは非常に気になりますので、今回はAIをどう考えるかということではあるのですが、こういった全体的な待遇の改善なくしてAI時代の未来ということはなかなか議論しにくいんじゃないかなと思います。
以上です。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。
それでは、次の議題に移りたいと思います。次の議題は、全般のお話ですので、議題の1に関連したことでも我が国の研究力強化に向けた方策で御議論いただければと思います。
ということで、資料の4に基づいて山之内振興企画課長から御説明をお願いいたします。
【山之内振興企画課長】 ありがとうございます。資料4で説明させていただきます。
先ほどの議論でもありましたけど、来年度から第7期科学技術・イノベーション基本計画というのが始まります。このことも踏まえて、我が国の研究力強化について御議論いただければと思っております。
目次でございますが、3つで構成しております。1ポツが、第7期基本計画に向けた検討状況。2ポツは、AIの活用ということで、AI for Scienceについて最近文科省で検討している内容等を説明させていただければと。3ポツは、1ポツ、2ポツを踏まえて本日御議論いただきたい点をまとめております。
次のページでございます。これは次期基本計画に向けた検討状況ということで、科学技術・学術審議会における検討をまとめたものになります。御存じのとおり、学術分科会では昨年計2回議論を行っていただき、8月に意見をまとめたところでございます。
その下のほうでございますが、学術分科会以外にも、本日御報告ありました研究環境基盤部会や、情報委員会においても検討を進めているところです。
次のページでございます。これはCSTIでの検討状況でございます。真ん中の枠で囲ったところでございますが、CSTIでは昨年12月に基本計画専門調査会を設置して議論をしているところでございます。今のところ計7回やっているんですが、2月に行われた第3回では、黒い太字で書いていますが、「研究力の強化・人材育成」として、昨年8月におまとめいただいた学術分科会意見などを踏まえて文科省の検討を説明しております。
また、先月6月に行われた第7回では、CSTIが中間まとめに向けた論点整理案を提示したところでございます。
これからの予定としては、ちょっと小さい字で書いてあるんですが、夏ぐらいに中間取りまとめ(骨子)、年末には次期基本計画案(素案)、来年3月には次期基本計画案を決定というような形になろうかと思います。
今お話しした第7回の中間まとめに向けた論点整理案でございますが、右下の青いハイライトのところをちょっと見ていただければと思うんですが、全体は資料5に置いてありますが、学術分科会との関係が深いものとしては、このように書いてございます。1つ目の丸に書いてございますが、科学の再興ということで、基礎研究力を抜本的に強化するだとか、もう一つは、AIシフトによる研究力の向上ということで、AI for Scienceによる研究生産性の抜本的向上、研究時間の確保などが項目として載っているところでございます。
AIについては、先ほどもいろいろ議論がございましたところでございますが、骨太にも載ったということもございますし、CSTIも基本計画に大きく入れようとしていると思いますので、AI for Scienceについてちょっと詳しく説明させていただければと思います。
次の次のページです。ここは科学研究におけるAIの活用例をまとめたものとなります。上の表のほうでは科学研究におけるAIの活用例を記載しています。科学研究で創出されるデータの改良や情報の抽出としては、右側のほうに書いてありますが、超音波画像診断支援だとか、2段目のシミュレーションの高度化・高速化では、アルファフォールドのようなタンパク質の立体構造予測、気象予測とか、こういったのもあると。
3段目の実験や研究室の自律化ということでは、自律的な物質探索ロボットシステムというのが活躍し始めているところでございます。
新しい研究テーマ等の提案ということで、これは今後の話になるかもしれませんが、研究データや論文情報の解析による科学的仮説の生成にもAIを活用できると考えてございます。
下の図のほうは、材料開発を例にしていますが、AIによって大きく2つ加速されるということを示しております。
1つは、左側、研究サイクルの加速、効率性を高めるというところですね。
もう一つ、右側のほうは、新発見の加速ということで、AIで大量のデータから人間では見つけることができなかったような法則性などを見つけるとか、そういった創造性の発揮というのも新しい側面かと思います。
次のページでございます。ここからちょっと何枚か、科学研究でAIを活用している例を述べているんですが、まず、このページでは、御存じのとおりかと思いますが、昨年のノーベル賞は化学賞、物理学賞ともにAI関連が受賞ということで、特に、真ん中辺りに書いてある化学賞のデミス・ハサビス氏、ジョン・ジャンパー氏は、タンパク質の立体構造を予測するアルファフォールドを開発したことなどを載せております。
次のページでございますが、これはAIの活用に関する諸外国の政策動向というのをちょっと上に載せております。下のほうは、ライフサイエンス分野でのAIモデルの例ということで、ちょっと字が多いんですが、ゲノム言語モデルだとか、タンパク言語モデルの開発だとか、仮想細胞モデルとありますが、これはザッカーバーグ夫妻が創設した慈善団体による仮想細胞計画なども出てきているという内容でございます。
その次のページでございますが、これはマテリアル分野における例であります。ちょっと字が多いので全部説明することはいたしませんが、例えば右側の一番上を見ていただければと思うんですが、グーグル、ローレンスバークレー国立研究所では、AIを使って17日間で200万種類の結晶構造を新たに発見したとか、その下のリバプール大学では、実験ロボットにより8日間で700回の実験を実行して初期に配合した触媒の6倍の活性を示す材料を発見したとかという事例も起こっているところでございます。
その次のページでございますが、これは現在文科省のほうで考えているAIを活用した科学研究の革新のイメージになります。真ん中のところに書いてございますが、AIによる研究の創造性・効率性を最大化すると、そういったイメージをお示ししたものになります。
中身としては大きく3つ考えてございまして、先ほど議題1でお話ししたところとちょっとかぶるところもございますが、左上のところ、科学研究向けAI基盤モデルの開発・共用、これはAI基盤モデルをつくるというもので、理研などを中心に行っているところでございますが、いろいろ丸が書いてあるんですが、ここでは仮説形成というところでは、AIとの対話により科学的論拠のある仮説を形成ということで、従来では1か月~2か月かかっていたものが1日~3日でできるとか、実験計画では、AIが自動実験計画を生成するという形で、1か月だったものが1日でできるとか、実験自体についても、膨大な探索範囲をシミュレーションで絞り込んで自動実験ロボがノンストップ実験を行い、これもかなり実験期間を短縮できるとか、最後、AIが複数の解釈を提示、AIとの対話を通じて考察というところでは、3か月~6か月かかったのが、3日~7日でできるといったように、効率化できると考えております。
2つ目が右側の緑のハイライトのところですが、AIも活用した先端研究基盤の大規模集積ということで、AIの基盤モデルをつくるには、大量かつ質のよい実験データが必要になると思います。そのため、議題1でも話されていましたとおり、大学共同利用機関にAIも活用した自動化・自律化・遠隔化の機能を備えた研究設備群を整備すると。
下にちょっと小さい写真が載っているんですが、海外ではこの動きが盛んでございまして、英国のリバプール大学、先ほどもちょっと説明しましたが、ここでは高度自動化ロボット群を備えて24時間稼働でハイスループット実験を行って、新材料開発の時間短縮を実現しているという例もございます。
最後、3つ目としましては、一番下のところでございますが、AIを活用した科学研究の革新を支える次世代情報基盤の整備ということで、大きく3つここに書いてございます。
1つは左側なんですが、生み出された大量の研究データを保存・管理するということ。それと流通。ここは情報委員会の報告でもありましたとおり、SINETで大学間でデータを共有するだとか、活用のところでは、ポスト「富岳」をはじめとした世界最高水準の計算基盤、こういったものを使ってシミュレーションを行うということをまとめてございます。
最後、次の次のページなんですが、今までのお話を踏まえて、本日御議論いただきたい点を論点として書かせていただいております。
1つは、上の黒ポツでございますが、第7期基本計画の策定を見据え、我が国の研究力、特に基礎研究力を抜本的に強化していくために必要となる方策は何か。
2つ目といたしましては、AIを活用した研究の高度化・高速化が図られている中で、今後の学術の在り方をどう考えるかということで、ここでは分かりやすいように例も少し載せさせていただいているんですが、1つは、現在、AIにより研究現場においてどのような変化が起こっているかとか、今後どのような変化が起きると予測されるかについて。その次のところでは、AIの活用の進展は研究開発の進め方や研究者の知的生産の在り方をどのように変え得るかについて。その次の次の4つ目のレ点では、分野についてなんですが、どのような分野が日本の強みになり得るか。ライフサイエンスとかマテリアル分野がよく言われていますが、これらの分野においてどのようなAI活用が考えられるのかというのがあるかと思います。
あとは、AI for Scienceを支える基盤として、計算資源、ストレージ、データ管理・流通についてだとか、様々な分野において情報・AI 技術を活用できる人材をどのように育成すべきか、そういった点について御意見いただければと思っております。
駆け足の御説明になりまして、すみません、委員の皆様におかれては、こういったことについて忌憚のない御意見をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
私からの説明は以上でございます。
【大野分科会長】 どうもありがとうございます。
それでは、ただいまの御説明を受けて意見交換を行います。およそ、お一人3分を上限としてお考えいただくと、先ほど御発言された方も含めて、今日御出席の委員が全員お話しいただけるような計算になっていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、まず、宇南山委員、お願いいたします。
【宇南山委員】 ありがとうございます。少し、私、今期から参加していることもありまして、根本的なところをお伺いしたいんですけれども、我が国の研究力を強化したいということが目的になっているんですが、その場合にいう我が国の研究力の定義というのがどのようになっているのかというのは確認したい。
すなわち、先ほどの各部会からの御説明でもありましたが、今、外国人の学生もしくは研究者の処遇について議論があったり、もしくはAIであれば外国のサービスをどう使うかというような話題がありましたが、我が国の研究力といった場合に、日本国内で行われている研究活動なのか、日本人がやる研究活動なのか、もしくは日本にいる国民が裨益する研究力、もしくは研究成果の量なのか。それによっても、誰を支援すべきで、何を達成すべきかというのは大きく変わってくるように思います。それが何となく我が国のと言って、もちろん、我が国の研究力を強化する際に、外国人の研究者もしくは外国の学生を支援することがよくないわけではなくて、学術というのは人類共有の財産でありますから、それはそれで重要な意義はあると思うんですが、我が国の研究力を強化するというような目的で何かを決めようとするのであれば、本来何を目指すべきなのかというのは明白にする必要があると思います。
その辺、これまでの議論もしくはこれからの議論でどのように考えるべきなのか、もし皆様で御意見がまとまっているようであれば教えていただければなと思っております。
以上です。
【大野分科会長】 どうもありがとうございます。
たくさん手が挙がっていますので、まずは、皆様の御意見、御質問をお伺いしていきたいと思います。宇南山委員からの御質問に関しては後で事務局から回答といいますか、見解もお伺いしたいと思います。
それでは、大竹委員、お願いいたします。
【大竹委員】 どうも御説明いただきましてありがとうございます。東京科学大学の大竹でございます。
2つだけショートで申し上げたいと思います。1点目は、研究力強化ということで、基礎研究の部分と、あと、先ほど少しリストにもありましたけれども、重点領域の部分というのは2つあると思うんですよね。そこのバランスをどうしていくのかというのがこれから非常に重要なところなのかなと。今、少し重点分野のほうに移って議論が重くなっているようにも見受けられる部分がありますので、具体的に申し上げると、科学研究費が、下げどまり、上がっていないのか分かりませんけれども、やはり諸外国との比較を考えれば、1.5倍なり2倍なりと経団連がおっしゃっているように、上げていくのが自然なのかなというところをベースに考えていくと、研究力強化というのが少し軌道に乗るのかなあと思います。
それから、AIの2点目ですけれども、キーワードとしてこれから信頼性というのがより重みを増していくのかなと思っていて、AI for ScienceとScience for AIという双方向があると思うのですけれども、そこの整合というか、いかに両方が手を携えてAIを育てていくのかという中で、信頼性を獲得していくと、ここは日本のやり方としては得意なところだと思うので、そこはひとつ重要なベクトルになるのかなと思っております。
以上でございます。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。それでは、千葉委員、お願いいたします。
【千葉委員】 ありがとうございます。大変重要な取組だと思います。それで、これまで何十年もですかね、やはり日本が欧米に遅れを取ってきた。今日本が頑張っているけど、でも欧米のほうが進んでいるという話はもうさんざん聞いてきた話ではないかなと思うんです。
やはりこれから新たなことを考えていくのであれば、今思いつく、こういうことやったらこんなにすごい、こういうことやったらこんなにすごいというのもあってもいいんですけど、そうではなくて、さらにもっと先のことって何だろう、まだ聞いたこともないことはどんなことだろうというようなことを議論していくというのはすごく重要なことではないかなと思います。その辺の議論って大体日本はあまり得意ではなくて、聞いたことがあるキーワードで、あっ、それやらなきゃという、簡単に言うとそんな感じがするんですね。
例えばAIが研究で主導的になった場合に次に何が起こってくるんだろうかというようなことです。思いつくことはいろいろあるんですけども、そういうふうに、今、世の中で動いていることよりも先のことを考えて提案するというのが私は本当の研究の本質だと思っておりますので、ぜひそういうところにも視点が行くようにと皆さんと共有できればと思いました。
以上です。
【大野分科会長】 どうもありがとうございます。それでは、中野委員、お願いいたします。
【中野委員】 今の千葉委員のご発言に全面的に賛成いたします。私は、AIを研究に取り入れる際には、まず親和性の高い分野を選んで、そこで確実に成果を上げることが大事だと思いますが、それがさまざまな分野に波及していく、広がっていくというのがより重要だと考えています。
そのためには、初期の段階で各分野ごとに閉じた仕組みを構築してしまうと、将来的に他の研究分野へ展開する際に大きな障壁になると考えており、そこで重要になるのが、APIやメタデータ形式といった、異なるシステムや装置がデータをやり取りできるようにするためのインターフェースの標準化だと思います。これを特定の分野に依存しない形であらかじめ準備しておけば、先行分野で構築されたデータやワークフローを他分野でも活用しやすくなり、新たな分野の参入や新領域の創出といったことが可能になるのではないかと思います。
つまり、AIを研究で本格的に活用していくためには、装置やシステムが出力するデータをどの分野でも同じ仕組みで受け渡しできるようにするインターフェースの標準化が不可欠なのですが、そのためには、プログラミングやデータ構造といった情報技術の基礎を理解し、なおかつ実験や分析の実務に通じ、さらには大学や企業の研究者と協力して共通ルールをまとめられる調整力、この3つを兼ね備えた人材が求められると思います。
ところが、現在の日本ではこうした人材にふさわしい職種や評価制度が必ずしも十分整っているとは言えません。専門的な教育やキャリアパスの整備が進まなければ、一番大事なインターフェースの標準化が進まず、それに伴ってAIの活用も限定的なものになってしまうのではないかと危惧しております。
今後の科学技術政策においては、こうした人材の育成と活用が重要になります。技術とか装置とかも大事なんですけど、人材の育成と確保ということも重要な柱として位置づける必要があるのではないかと思います。
以上です。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。
それでは、木部委員、お願いいたします。
【木部委員】 ありがとうございます。私は人文系に所属しているので、人文系の立場からちょっと発言させていただきますと、AIを研究に用いるというのは人文系でもこれから欠かせない要素になると思います。
人文系でAIをどういうふうに活用するのかというのは、イメージが湧かない方も多いと思いますけども、我々が今やっていることはどういうことかということをちょっとお話ししますと、実はAIの活用に関しては、基本的には自然系の研究とそんなに大きくは変わりません。例えば人手でやっていたものを、AIでできることはAIにやってもらい、その分、人間の研究時間を増やすとか、それから、目的に合わせたデータベースをつくって、その分析を短い時間でAIにやってもらって、人間は出てきた結果をきちんと考えるとか。
ただ、人文系が自然系と違う点は、1つは、人文のデータは非常に多様だということです。文字データだけではなくて、画像データですとか、動画のデータもあります。そういう多様なものが本当に連携できれば、非常に大きな可能性を生むと思うんですね。ただ、それには、それらをつなぐための方法論が必要である。その方法論を考えなければいけないということが1つめです。
それから、人文系のデータは、現代社会のデータもたくさんありますけども、実は歴史的な過去のデータが膨大にあるわけです。これのデジタル化、データベース化が非常に遅れている。諸外国に比べても歴史的なデータのデジタル化が日本は非常に遅れているんです。
ですから、AIを使った研究なり、あるいは分野横断的な研究なり、どちらにしても、歴史的なデータのデジタル化が必要なんですが、日本はそれがとても遅れているということがあります。
まず、それらによるしっかりしたデータ基盤をつくる必要があります。そうすれば、その活用方法は、自然系、人文系、社会系とそんなに変わらないだろうと思います。このような状況があるということをお話ししておきたいと思います。
以上です。
【大野分科会長】 どうもありがとうございます。
それでは、石原委員、お願いいたします。
【石原委員】 千葉大学の石原です。私はちょっと人材育成のところに行くんですけれども、若い研究者の方々を見ていると、もう既にたくさんAIを活用してよい成果を出しているんですけれども、最近、博士の学生とか、ポスドクとかは、国際交流も含めて、少しずつサポートが増えてきたように思えて、すごくよいことだと感じているんですが、身近な観察をしていると、今、次にサポートが必要なのは、ちょうどテニュアを取る頃といいますか、30代後半から40代前半の研究者に結構負担が大きくかかっているように見えまして、例えば学生とかを急に抱えるようになって、責任も増えて、学校の業務も非常に急に増えるような時期に、それまで自分の勉強も含めて新しい研究に非常に積極的に参加していた人たちも、准教授になった途端とかになかなか時間が取れなくなってあっぷあっぷしてしまうというところをちょっと感じておりまして、彼らはもちろん新しいテーマにどんどん追いついていくということももちろん大切なんですけれど、次、40代前半の人が40代後半になるときに、国際的なリーダーシップというものを取る立場に移行しなくてはいけないので、単に研究にアップデートするだけではなくて、広い視点で物事を見るという非常に重要なフェーズの変化が求められているときに、日本ではそういう人たちが一番忙しい、一番かどうか、いろんなあれがありますけど、非常に忙しいということで、そこで何かひとつ次のフェーズに行くときに遅れを取ってしまっているんじゃないかというのをちょっと感じています。なので、次は、そういう方々にサポートが行くようになっていけばいいなと思っています。
もう一つは、ちょっとこれ単視眼的かもしれないんですけれども、昨今、NASAとかNSFとかの予算削減、大きな予算削減が見込まれているようですが、アメリカなんかはAIについてはそんなに削減されないだろうなんて言っていますけれども、結局はAI for Scienceという枠組みですと、各大きなプロジェクトの中のAIを活用して実験をよりよくしていこうという方々にとっては、大きな予算削減になるということは変わらないわけなんですね。
そうしますと、少なくとも今後2年とか4年とかの間、彼らが活躍できる場を日本が提供する、もしくは彼らがもちろん最先端のAIの研究テーマの活用をしているのであれば、彼らが基盤整備とか、そういう人材育成、日本においてどのようにすれば今後よりフィージビリティが上がっていくのかということに対するアドバイスなんか、そういったものも含めて協力できるような研究者を日本で活用していくということも1つのやり方なのではないかなと感じました。
以上です。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。
それでは、加藤美砂子委員、お願いいたします。
【加藤(美)委員】 加藤でございます。AIは、異なる分野からの関連性のあるデータを探し出すことも非常に得意ということで、AIによる情報の結びつきを、ただ最終的に判断するのはやはり人なので、今、博士人材を養成するということに力を入れているわけですけれども、AIを使ったデータの解釈とか、先ほどAIの怖さみたいなのをもう1人の加藤委員がおっしゃっていましたけれども、倫理性がないとか、そういうようなAIの落とし穴みたいなのもきちんと把握できるような総合知を持つような博士人材を育成してAIを使いこなすというのが非常に大切なことではないかなと思っております。
AIは、関連性は、表面的な結びつきを指摘するということが多いので、博士人材といえば専門性の高い人材、そういう方を養成するというのが不可欠ではないかなと思いました。
また、AIによってシミュレーションとかが得意なので、実験期間を短縮するというようなお話がございましたけれども、それだけに頼るのではなくて、やっぱり実験ができる人材もきちんと博士人材の育成としてしなければならないことではないかなと思いました。
以上でございます。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、中井委員、お願いいたします。
【中井委員】 早稲田大学の中井です。私の専門は化学で、AIが活用されているというマテリアル、バイオ、それらの両方に関係するところでございます。
AIの少し前はDX化ということで、データをどう収集し、どう活用するか、ビッグデータをどう集めるかという話がありました。そのときにやはりアカデミアはデータの共有は意外と簡単だけれど、企業からデータが出てきにくいと。それは秘匿性が高いからであるということで、データの階層性をきちんと持って管理するというようなことが言われていました。
AIに行けば、もっと秘匿性というか、要するにブラックボックスが進んでいって、逆に、自分のために、もちろんラークとか使えるわけですけれど、自分の使いたい、あるいは自分たちだけが使いたい、特定の、先ほど我が国のということがありましたけれど、我が国なのか、ある特定のグループなのかが、活用するための方策も含めて考えるべきかなと思いました。
あと、今日は話が出ていませんが、やはり量子技術との関係というのはAIと両方一緒に考えていくべきかなとも思っております。
私の分野では、先ほど資料にありましたけれど、「京」コンピューターが出、「富岳」が出て、やはりシミュレーションが圧倒的に早くなったということで、大きく人材も育ちました。そのプログラミングをするという意味で。
ところが、それこそアルファフォールドなどが出てきて、シミュレーション、要するに方程式を解くのではなくて、解かなくて答えを与える方向になってきたということで、全く違う方向になってきたということで、新しい研究手法が必要になってきたと。
とはいえ、やはりその中身のブラックボックスに対して、きちんとした解釈も、両方が分かるような、そういう人材も必要なのかなと思っております。
あとはAIに対しては、リテラシー、危険性のこともそうですし、それをどう伝えるかというリテラシー、記述がありましたけれど、リテラシーの重要性というのは私も賛成です。
以上です。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。それでは、関沢委員、お願いいたします。
【関沢委員】 AIの活用について、今日資料3で出されておりますポンチ絵の中に、AIデータの必要性や重要性について、国全体で認識を共有し、研究データを広く共有・活用するインセンティブや評価する仕組み等の整備が必要ということが書かれておりますが、これはAIの活用をもし共共拠点とか大学共同利用機関などが中心になって進めるとしたならば、評価する仕組みの構築はぜひ必要だと思っております。そして成果を確認しながら、これが必要であるということを広く共有していくということが大事だと思っております。
そしてもう1点は、今回、AIについてライフ分野とマテリアル分野をまず先行してやっていき、段階的に広げていくということになっておりますが、次のシーズを育てていくために、やはりこれは研究力の強化と大きく関係しますけれども、まだまだ施設とか設備の整備が足りていませんので、そういったところも基礎的に必要なこととして意識してやっていくこと、予算を取っていただいて進めていくことが次につながるのではないかと考えております。
以上です。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。
それでは、加藤和彦委員、お願いします。
【加藤(和)委員】 加藤です。今ちょうど出たスライドもそうなんですが、今回の多くのスライドも、AIを「科学技術」に使うといったときには、暗黙に、「理工系の科学技術」ということが仮定されているような気がするんですね。数年前から、日本において科学技術というときには、人文社会系も含むということを、文科省は定義していると思いますけれども、現在のAI技術は理工系だけに役に立つものではなく、人文社会系の研究にもすごく役に立つものになっています。
一例を言うと、AIエージェント、あるいはディープリサーチという技術があって、100から数百ページにわたるWebページをリアルタイムで今見に行って、それを大体10分から20分ぐらいでまとめてくれるという、人間では到底できないようなことをしてくれます。そういう能力は、理工系だけではなくて人文社会系の研究等にもとても役に立つものですので、ぜひ人文社会系の方のほうにも目配りをいただいて、研究者の活躍を応援するようにしていただくとよろしいかと思います。
それからもう一つ。AI技術は、私自身でも試しているんですけれども、教育とか人材育成に役立つ可能性がとても高いと思っています。私、この年で60過ぎになってから全く違う分野の勉強をAIの助けを借りながらやるということを実験的にやってみているんですけれども、AIが家庭教師みたいになって、人間相手だったらちょっとためらってしてしまうような質問をばんばん投げかけて、それで一緒に勉強してくれるようなことをやってくれます。このような使い方は、学生さんにおいても、あるいは研究者が新しいことを学んで研究していく上においても大いに有用です。
以上です。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。
それでは、梶田委員、お願いします。
【梶田委員】 ありがとうございます。我が国の研究力の抜本強化という観点なんですけど、研究環境基盤部会では、本日報告しましたとおり、大規模集積研究基盤の整備という観点で議論をしてまいりました。
本日、取組の方向性として①から⑤を述べさせていただいたんですけども、個人的に、実際、このうち何が本当にこのような、今回議論してきたような大規模集積研究基盤を日本の中に根づかせる上で重要かといったときに、私はやはり人材かなと思っております。
報告の中にも書いてあるんですけども、どういう人材が必要かということで、自分の研究分野をベースとしつつ、AIですとか情報の素養を持つような、そういう人が必要になるだろうと。恐らくそのような人のみならず、もちろん技術職員も、高度な技術を持った技術職員も必要ですし、様々ないろんな能力を持った、高度な能力を持った人たちがチームをつくることで、初めて大規模集積研究基盤というようなものになっていくんだと思っております。
そういう意味で、やはり研究者を支える、様々な方面から支える人材が極めて大切になってくると思っておりまして、一方で、今までの日本の科学研究の様子を見てきますと、人材が重要だとは言いながらも、具体的な取組は基本的に末端に投げられているというような形で、恐らくそのようなことをしていると、今回、研究環境基盤部会で報告したようなことを本当に日本の研究基盤として根づかせるという意味ではなかなかうまくいかないと思っております。
そういう意味で本当に人材が大切ですし、治部委員のほうからもありましたけども、特にアカデミアで若い研究者の待遇が極めて悪いというような、そういう御指摘もあるので、今回、多様な人材が必要になるということから、若い研究者を含めた研究サポート人材の待遇改善、これをぜひやっていただければと思います。
以上です。
【大野分科会長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、中村委員、お願いいたします。
【中村委員】 ありがとうございます。ちょうど今の御意見とかなり重なってしまうんですが、共用拠点で様々な応用に対応しようとしますと、特定の目的だけで対応できる技術よりもかなり実力のある方が必要になってくると思います。これはAIに限らずのことだと思うんですが、AIであれば、いわんやAIの分野ではということだと思います。そうすると、間違いなく民間の企業等との人材の取り合いになるわけで、一体、現在のどのような待遇、給与体系を持ってきたらそういう人が確保できるんだろうかとちょっと想像がつきません。大変すばらしい目的を掲げながら、絵に描いた餅となってしまうようなことを懸念いたします。
さらにちょっと話を広げますと、こういう国立大学法人等が、今制約を受けている、あるいはよって立っている基本的なそもそも法律が、現在のいろんなニーズにも対応できていないのではないかと。事務の能率なんかも全くそうなんですけれども、そういう部分も含めて考え直さない限り、抜本的な改革というのは難しいのではないかと思いました。
以上でございます。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。それでは、安田委員、お願いいたします。
【安田委員】 ありがとうございます。私のほうから3点なんですけれども、まずAIのデータ、AIでいろいろ研究を高度化させるということの裏側にあるものとして、AIが学習するためのデータが重要になると思います。生態学とかですと野外調査で地道に取ってくる、その取り方や限界の部分を知ってデータを解釈するということがかなり重要です。ゼロからデータを取ってく野外調査行くと、論文化するのも遅くなるし、何かちょっと人気ない感じがあって、どんどん弱体化してしまっているので、こういった人材育成の部分、中野先生も御指摘されていたとおり、力を入れていくことが重要だと思うのが1点目です。
2点目は、AIのもう一つの科学と社会をつなぐ部分での可能性としてサイエンスコミュニケーションのツールとして活用していくのは非常に重要なのではないかなと思っておりまして、高校生が分かるレベル、小学生が分かるレベルまでこれを説明してくださいというとちゃんとAIはある程度の精度で説明ができる。当然ハルシネーションなどがないように専門家によるチェックも必要だとは思うんですけれども、今までサイエンスコミュニケーターが必要であるということで、いろいろ人材不足だとかポジション不足のところで悩んでいた部分もこういったAIがかなり活用できるのではないかなと思っております。
最後の3点目は、研究力強化ということで、AIとはちょっと関係ない点なんですけども、私が非常に強く思っていてどうしても文科省だけではなく、産業界の方に特につよく伝えたいなと思っている点が、最近青田刈りがひどくなって、産業界が就活を春から初めて、M1の春から始まるというような状況で、それが始まるとM2の秋ぐらいまでになってまだ悩んでいるみたいな状況が出てきたりとかしているのを見ています。
ただ、大学側からしたら研究をしてくれないから腹が立つとか、そういうレベルのことではなくて、学生からしても、例えば東京大学は学部よりも大学院のほうが枠が大きいので、他大学から来た、何も専門が違う学生とかも来た中で、研究がしたいと思って来ているけれども、ひとまず修士の後は分からないから、就職活動を始めますってなると、大学の中の学業もおろそかになりますし、就活もよく分からないまま、自分の専門性というものが何も分からないまま、就活しなくてはいけない状況が出ています。研究を頑張っていた学生はというと、非常に誠実で、いい成果も出していて頑張っていた人も、就活をはじめる時期が遅くなると、就活いいところにできませんというところで苦境に立たされたりとかしているという状況を間近で見ていて、早期採用をすることが割に合わないような強制的なルールを何かつくらないと、これは日本の教育システムも崩壊するし、何より科学の推進にとっても本当によくないんじゃないかなというところを強く思っています。
強制的に遅らせることはかなり困難ではあるのと思うのですが、産業界にとっても良いと思っています。私も学生いろいろ見ていて思うんですけれども、自分自身で選んだ研究室と研究テーマにおいて答えがない研究というものに一生懸命取り組んでいく姿勢は、かなりその子が未知の課題に対する取組方みたいなものがあらわれます。学生時代に頑張ったことだとか苦境をどう乗り越えたとかそういう質問で個性を引き出そうとする前に、修論なり卒論なりでやってきたことを発表させて、それについて根ほり葉ほりきくと、「学生の姿勢や物事への取り組み方」の特性が非常によく見えます。企業はそういうところも判断材料にしたら企業にとっても良い人材の判定に役立ちますし、日本の研究力の基盤も当然上がると思います。長くなって申し訳ありませんが、この3点が思ったところでした。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。先ほど石原委員の御発言にもありましたけど、大学のエコシステムというのが、あまり学生にとっても、あるいは様々なステージにある教員にとっても、なかなか研究をするという仕組みになってないというところはもっと大きな枠組みできちんと考えるべきだろうと思います。ありがとうございました。
大きな枠組みだからといってここで議論しないという意味ではないですけれども。ありがとうございました。
それでは、続きまして、石塚委員、お願いします。
【石塚委員】 ありがとうございます。石塚のほうから3つあります。既に先生方から出ている御意見と重なるところもありますが、まず1つ目が、今日御説明していただいた、かなり後半の資料にある、AIについて、情報を収集して、研究にも組み込んでいく旨の記載があいました。AIがアクセスできるものとしてオープンアクセスの論文等が多くなると思いますが、論文アクセスについて、今、研究者の環境が非常に悪いと思っておおります。例えば投稿費の高騰化であったり、あるいは、雑誌契約の高額化です。AIをフルに活用しようというときに、このような研究のための基礎体力・環境も一緒に整備が必要なのかなと考えています。
2つ目ですが、人材育成については既に多数の意見が出されているかと思います。AIに関する共同研究をしようとしたときに、やはり人材がまだまだ不足しているということを実感します。かなり研究のエフォートの取り合いになっているイメージがあります。
そして3つ目ですが、こちらも既に意見が出されていますが、やはりAIに関してのセキュリティーの課題について、最新の情報を普及させる、リテラシーの能力を高める等も必要と思っております。
以上です。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、飯田委員、お願いいたします。
【飯田委員】 ありがとうございます。島津製作所の飯田でございます。
2点ありまして、1点目、我が国の研究力の抜本強化に関連してですが、例えば日刊工業新聞に科学技術の潮流、JST研究開発戦略センターのコラムのシリーズございまして、6月20日分に、自然科学分野において研究機器の技術革新がその発展を支えてきたというような記事が出ております。
この記事に書いてあることを踏まえますと、最先端の研究者が最先端の研究に使う機器、すなわち今まだない新しい機器を機器メーカーと一緒に研究開発する仕組みをしっかり回すために、欧米ですとか韓国では既に取り入れられていますイノベーション促進型の調達制度ですとか、それからアーリーアダプターと言われるビジョナリーの研究者の方々の支援のシステム、そしてまた研究機器の共用が、このシステムを回すときに非常に重要なポイントになっておりまして、共用システムを活用するために、博士人材を含むエンジニア人材の処遇の改善、それからキャリアの流動性、流動化など、ぜひ、できればスピード感を持って進めていただくことをお願いしたいと思っております。
また、2点目は、AI for Scienceに関連してですが、AIを活用しました自動化、自律化の取り組み、取り込みというのは、研究機器でも現在非常に進んできております。この関係で、大規模データの活用と直結するために、先ほどの発言と重なり恐縮ですが、データフォーマットなど標準化につきましてぜひ国に御支援をいただくことを期待しております。
以上になります。ありがとうございます。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。
それでは、仲委員、お願いいたします。
【仲委員】 すいません、2周目で。あと1点、研究環境基盤について意見を申します。高度化が求められる中、地方の大学、それから小規模な大学、公立大学等々、例えば、建物の老朽化が進んでいるとか、設備が老朽化していて、動くときと動かないときがあるとか、あるいは人文系でも電子ジャーナルがばさっと切られてしまうということがあります。先ほど研究環境基盤委員会から、大学群のグループ化であるとか、共有を推進していくというお話があったと思うんですけれども、本当に、それはますます重要かなと思います。
老朽化しているところを補修していくということももちろん重要ですが、シームレスに、ほかの大学、ほかの研究所の設備やいろんな資源を使えるようにしていくというのも、「借りに行く」というのではなく、自由にアクセスできるようにするというのも重要かなと思います。国内だけでなく、国外ともそういう連携が取れるようになるといいなと思いました。
以上です。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。
まだ時間がありますけれども、2度目の御発言で、このテーマで御発言されてない方、よろしゅうございますか。例えば、治部委員、あるいは鷹野委員、いかがでしょうか。
【治部委員】 研究の高度化・高速化が図られている学術の在り方ということなんですけれども、私はもともとビジネスにいた者からして、やはり研究者が研究に時間をたくさん使えるという、非常に単純なことですけれども、これがとても大事じゃないかなと思っております。
特にAIを使わざるを得ない、あと、どのようにうまく使うか、どのように使うと危ないのかといったような今日議論が出てきたようなこともキャッチアップしていかなければいけない状況で、やはり研究・教育に優先的に時間を使う状況が必要であるということは論を待たないわけですけれども、恐らくここにいらっしゃるいわゆるピュアな研究者の皆さんというのは、研究・教育以外の大学の経営ですとか、主にヘッドクオーター業務、総務人事的なことに多大な時間をお使いになられているのではないかなと思います。
私も大学に来てびっくりしたのが、多くの研究者の方が大量の書類業務をこなしていらっしゃるということでして、これ研究者の方って結構できてしまうんですね、書類仕事が。できてしまうがゆえに、大量に来るものをどんどん的確にさばいてしまうので、どんどん研究時間がなくなっていく。これは一体どうしたものかということを周囲の特に中堅ぐらいの研究者の人と話をしているとよく話題にいきます。
昨今では大学にもかなり経営の視点が入ってきておりますし、資金調達ですとか、情報開示とか、財務会計的なことはやっているわけですけれども、もし大学が企業の視点を取り入れるのであれば、もっと比較優位、研究者であれば研究に優位性があるので、研究に集中できるようにする。もうちょっと言えば、事務的なことは専門の方にお任せできるようにして、研究者の時間をきちんと確保するというような人的資源管理のようなところが入っていくということはすごく大事なんじゃないかなと思ってお聞きしておりました。
以上です。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。全くそのとおりですね。法人としてきちんとそういうところは見ていかなければいけない。今、だんだんそういう方向に変わりつつあるんだと思いますけども、それをスピードアップする様々な方策や支援が必要かと思っています。
それでは、鷹野委員、お願いいたします。
【鷹野委員】 ありがとうございます。今回の議論の論点の中に産学連携の在り方というのがございます。私自身、あまり産業界に詳しくないんですけれども、私は国立の小さな大学、小規模大学と、それから私立大学の小規模大学、そういったところの経験しかないものですから、ちょっと偏った意見になるかもしれないんですけれども、人材交流に関しまして、2点あります。
1点目です。私のところは、小さな規模の大学で、大学院生はあまり多くありません。ですけれども、学部の卒研レベルの学生も、企業の方との連携でいろんなアイデアを出すというようなところには、ものすごく興味を持って取り組んでおります。大きな大学といいましょうか、国立大学等でも、大学院生を含めまして企業との連携というのは教育の中に取り込まれていると思います。そういった辺りをもっと盛んにして、企業の考え方というのを現役の学生さんたちが学び、そこから社会の課題について共に考えるというところで、今後はAIなどの最先端の考え方というものが必須になってくるということもきっと感じてくれるのではないかと思います。
ですから、そういった教育の面での産学連携というのが重要だということが1点です。
もう1点は、先ほどから若手研究者、中堅の研究者の待遇についての問題の御指摘というのが複数ございました。そういった辺りの本当の解決策になるかどうかはちょっと分からないんですけれども、産業界と教育界との人事交流というのがもう少しあってもいいのではないかと思います。期限つきでもよいので、大学から企業に出るとか、企業から大学に来て教育いただくとか、そういったことをもっと進めていったら、人材も育ちますし、研究者自身も育つのではないかと感じました。
以上でございます。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。
あとは、多分私が発言すると、今日御出席、今御出席の皆様の発言が終わるのだと思います。その後、文科省の皆さんに……。失礼しました。中野委員、お願いします。
【中野委員】 2回目なのですいません。よろしくお願いいたします。ただ、ちょっと1点、もう少し明確にしておいたほうがいいと思うのは、AI for Scienceで使われるデータが一体どのレベルのデータなのかという点です。生データに近いものなのか、それとも成形済みのデータなのか、成形済みだとしたらどれぐらい成形しているのか。そして本当の意味で他分野からの参入とか新分野創出とか、そういうものを促すものになっているのかどうか。そうした観点を踏まえた設計というか、プランニングも必要じゃないかなと思います。
もう一つは、データがどういうデータかということが決まった後、研究者が本当にそれを提供したがるかどうかというところは大事で、資料にもあったんですけど、インセンティブの付与というのはものすごく重要なんじゃないかなと思います。
以上です。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。これで私が発言した後、文科省の皆さんから補足をしていただいて、質問も幾つかありましたし、それでも時間が、短い御説明であればもう1回御発言をいただけることになると思いますので、そのときのために、これだけは言っておこうというのを今からお考えいただければと思います。
私からは、生成AIを使った研究、あるいはサイエンスというのはこれから絶対に必要でありますし、国としてもエンカレッジをしていかなければいけませんので、そういう基盤的な組織が手当てされるべきだなと思っています。
今、例えば情報、具体的なところを挙げてしまうと、情報システム研究機構の下に情報の基盤があったり、あるいはSINETの業務を情報システム研究機構の下のNIIがやっておられるわけですけれども、それは情報システム研究機構という1つの機構の下にあるべきものではないのではないかと。先ほどから何度もお話がありましたように、人文社会系のものを支える新たな枠組みなので、それをきちんと表現する形に組織的にはするべきではないかと。
特に、そうなると今度は、放射光施設であったり、「富岳」もそうですけれども、そういった共用法の下で基盤的なものが措置されるというのは適切に私には思えます。その中で、共用法は実は今まだ人文社会に関わるものを除くとなっているので、この機会にそれも変えていただくといいのではないかなと思います。
あとは、今お話がたくさんありましたように、研究者が入っているといいますか、研究者を取り巻くエコシステムが上手に機能していないということはあると思います。これは大学法人が教育を柱にしており、必ずしも研究成果を求められている法人と認識されていない面、あるいはされていなかった面があると思います。これは徐々に今変わりつつありますし、大学全体を支援する仕組みも幾つもありますけれども、国際卓越、今、選考中ですが、あとJ-PEAKS、25校ということで、それだけでいいのかということもきちんと第7期のときには考える必要があろうかと思っています。
あと、先ほどの基盤的な組織のところにぜひ基盤的な計算資源も入れておいていただきたいと思います。
「富岳」はまた「富岳」で役割がありますので、生成AIに特化した形の、あるいはそれを支える計算基盤というのはまた別途重要になってくるかなと思います。もちろんリソースの制約があるのであれば、それをどうするかということは、文科省の皆様と御相談していかなければいけないことだと思います。
私からは以上です。
それでは、文科省、まず御発言いただければと思います。
【助川学術企画室長】 すいません、失礼します。学術企画室長の助川でございます。様々、AIに関すること、その他、それに限らず、御意見、大変ありがとうございました。
私から簡単に、一番最初、宇南山先生からいただいた我が国の研究力とはということについてでございますけれども、日本の国力につながるものは広くと考えております。ただ、これだとトートロジーで何言っているかということになるわけなんですけれども、まず、例えば日本国内の研究力ということであれば別に日本人に限った話ではないと考えておりまして、例えば、昨年いただいた学術分科会の意見においても、日本全体の研究力を牽引する研究大学群の形成とありまして、そこは当然、外国籍の研究者かどうかとか、そういうことに限らず、日本全体の大学群としておりますので、日本国内広くと考えております。
ただし、外国にいる日本人研究者が排除されるかというと、必ずしもそういうわけでもなく、今、国際頭脳循環って、抽象的に言うとなりますけれども、外国に行って、今は外国で研究しているけど、そこからまたいろいろ渡って、日本でまたその知見を活用して活躍されたいという方もおられると思いますので、そういう方は広くというふうに考えております。ただ、そういう意味で、先ほど日本の国力につながるものを広くと申しましたけれども、支援の在り方というのは、対象等によっても若干変わることはあろうかなと思います。
今は、そのうちの我が国のという部分でございましたけど、さらには研究力ということに関して申しますと、この間の1月末、2月頭のときにお出しした「基礎科学力の強化に向けた今後の方向性」に寄せて物を申しますと、研究者の先生方が、研究者の先生方の知的好奇心にのっとって0から1を生み出す、要するに新たな知を創出するというものも当然1つあり、またもう一つ、研究者の先生方が、社会からの要請を意識した研究や研究成果の社会実装に対しても関わることが期待されるとありまして、科学研究でリードしていく分野を確実にイノベーションまでつなげていくという社会的価値の顕在化。今、私、2つ、新たな知の創出と社会的価値の顕在化ということを申しましたけど、それは両方含まれるものと考えております。
研究の分野については、先ほど様々な先生方おっしゃってくださいました。こういう議論をしていると、自然科学系がどうしても念頭に置かれることが多く、議論されることが多いのかもしれませんけれども、何人かの先生がおっしゃってくださいましたように、人文社会科学というのを当然含んでおって、分野というのは、特に限りは、定まったものはなく、分野は広く含んでいる、そういうものと考えております。
【大野分科会長】 もう1ラウンド、御希望の方は御発言いただけると思いますけれども、いかがでしょうか。
宇南山委員、お願いします。
【宇南山委員】 ありがとうございます。幾つか今の回答で指摘したいことがありまして、1つは、人文社会科学を含んで日本の国力に資する研究ということでありますと、1つは、人文社会科学固有の問題ではあるわけですけども、社会を対象にする、人間を対象にするという観点で、日本社会を分析対象にする研究というのが必ずしも日本国内もしくは日本人によって行われているわけではないという点がありまして、もし今おっしゃられたような定義であるならば、まずは1つは、日本社会、日本経済、そういったものを対象にする研究というのをもっと支援することは必要なのではないかというのが1点。
あともう一つ、人文社会学系というか、経済学の分野で特有ですが、大学院生なんかは必ずしも理系のように戦力になるというよりは、完全に教育対象となっていて、教育をして各国に帰って活躍をしてもらう。それ自体は意義があることですが、我が国の研究力を強化するという観点では、必ずしもこの枠組みの中での対象にならないのではないかなというようなことを少し思いました。
ありがとうございます。
【大野分科会長】 どうもありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
今の点は、日本の国力というのをできるだけ広く捉えるというのが重要だと思います。海外のネットワークも含めて、私たちがグローバルに学術の世界で貢献できるというエコシステムが築かれるというのが一番広い意味で重要なのではないかと私は考えています。ちょっとそれは、これ最終的にどう定義するのかというところがどこかの文書に入るかどうかは定かではありませんけれども、今の宇南山委員の御発言も含めて整理していっていただければと思います。
ほかにいかがでしょうか。
よろしいですか。
鷹野委員、お願いします。
【鷹野委員】 ありがとうございます。先ほど私が発言した企業との交流といいますか、人事交流的なことで、新しい文科省の制度の「基幹教員制度」を活用すれば可能なのではないかということを指摘させていただきたいと思います。
基幹教員制度ですと、ある条件を満たせば、複数の場所に、クロスアポイントメントもそうなんですけれども、それは大学間でかなり進んでいると思うんですが、基幹教員制度を使いますと、企業と大学の間で両方で活躍できるような方も雇用することができるのではないかと。まだ本学でやっておりませんけれども、そういったことを今後活用していったらいいのではないかということも話題にさせていただきます。よろしくお願いいたします。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
よろしゅうございますか。
仲委員、お願いします。
【仲委員】 今、鷹野委員がおっしゃったこと、クロスアポイントメントは本当に重要だと思っています。今日はあまり話題に出てきませんでしたけれども、人口が少なくなっていく中、今まで十分に研究に入ってこられなかった女性の研究者を増やしていく、という意味でも、クロスアポイントメントはすごく重要かなと思っています。
現状、まだ女性の研究者がたくさんいないというところでは、クロスアポイントメントを、負担ができるだけかからないような形で活用して、あらゆる側面で、例えば女子中高生、そして学部生、大学院生が女性研究者のモデルを目にして、人文でも、自然科学でも研究界に入ってこれるようになるといいなと思いました。
そういう意味では、クロスアポイントメント、うまく、負担のない形で活用できるといいなと思っているところです。
以上です。
【大野分科会長】 どうもありがとうございます。いかがでしょうか、ほかに。
【助川学術企画室長】 こちらから投げかけもよろしいですか。
【大野分科会長】 お願いします。
【助川学術企画室長】 度々恐れ入ります。学術企画室長の助川でございます。まだちょっと時間、残っているということでお伺いを先生方に申し上げたいと思います。先ほど論点案の中で、論点幾つか挙げていたところで、AIに関すること、大変多くの御意見あるいは今後の方向性とか、今後のあるべき姿とかいただいているところなんですけど、ちょっと私ども、現状認識として把握できてないかもしれないところがあって教えていただければと思います。一番最初のポツで述べていたこととして、現在、AIにより研究現場においてどのような変化が起こっていると感じておられるか、今後、どのような変化が起きると予測しているかということについてでございます。
AIが今こうやっていますということはいろいろあったとは思うんですけど、さらに言うと、AIがこれだけ伸びてきたことによって、例えば研究現場、研究者も含めて、それによってどんなことが起きてきているのかということも、ちょっと私ども不勉強なもので、どなたか教えていただければ参考にさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【大野分科会長】 どうもありがとうございます。
いかがでしょうか。
加藤和彦委員、いかがでしょうか。失礼しました。梶田委員からまずお願いします。
【梶田委員】 ありがとうございます。実はAIと言ったときに、常に我々AIと言いながら人によって捉え方が違うなということを思っていまして、例えば、物理、特に大規模な研究施設等で使っているのは、AIのうち、特に機械学習のテクノロジーを大量に使っています。恐らく物理の分野で使っているといったときには、データ解析でも機械学習は相当皆さん使っていて、それについていうと、恐らくきちんと使いさえすれば、正しいことを言っているかとか、そういうことではなくて、その結果がどのくらいの精度で正しいのかというところまできちんと追えているかと思うので、そういう意味では実は皆さんAIと言いながら、違うことを思いつつ話していることがあるということを一応皆さんに知っておいていただければと思います。
いずれにしても、物理等の分野では、機械学習については物すごく今使われるようになってきていると思います。
以上です。
【大野分科会長】 ありがとうございます。
加藤委員、いかがですか。
【加藤(和)委員】 御指名ですかね。
【大野分科会長】 はい。
【加藤(和)委員】 情報の分野でも生成AIは、たくさんの人が使っています。一番すごいと思ったのは、以前だったら伝統的手工芸のごとく手作業でプログラミングしなければならなかったのが、自然言語による指示でプログラミングできるようになったことだと思います。
そうなると、生成されたプログラムが正しいかどうかを判定する能力が人間に求められるようになります。以前はプログラマーが足りないという議論がなされましたが、恐らくこれからは、並みのプログラムは生成AIが作ってしまうので、並みのレベルよりももっと上のレベルのプログラマーしか必要でない社会が来つつあるのだろうなと、同僚達と議論しています。
これからは、生成AIが生成するプログラムが正しいものかどうかを判定する能力が必要となりますが、それにはかなり高い能力が必要です。例えば、数学の定理の証明を生成AIにやらせることが今はできるんですけれども、その証明が正しいかというのは、これまた高い能力を持った人が、その証明が正しいかどうかを判定せねばなりません。研究の世界全般において、生成AIができることは、生成AIがやってしまいますから、より高い能力を持った研究者が求められる時代に入ってきているのではないかということを考えています。
以上です。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。
少子化の中で……。失礼しました。木部委員、お願いします。
【木部委員】 ありがとうございます。今の加藤委員の御意見に全く同感です。特に、ChatGPTができてから、誰でもChatGPTが使えるようになりました。そうすると、出てきた回答が正しいかどうかをどのようにして判定するのかという不安があるわけですね。それで、人文系の研究者の中には、AIに対する不信感というようなものを持っている人がいます。しかし、出てきた回答に対して、専門的な知識を持っている人が判定をして、それを社会に広めていかなければいけない。したがって、研究者の持っている役割が非常に大きくなると私も考えています。
以上です。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。研究の生産性という言い方が適切かどうか分かりませんけれども、研究に留まらず生成AIにより大きな変化が起きていて、圧倒的に時間が少なくて同じ成果が出せるということは、皆さんが分野を問わずお感じになっておられる。非常にコンクリートなエビデンスもたくさんあるわけです。これに加えて、皆様のある種の直感も含めたものを環境として整えると、使ってみたいと、あるいはこういう使い方は大丈夫なんだろうかと、誰か専門家と一緒に使いたい、それにより分野をさらに発展させることができるように、閾値というか、敷居が低く、皆さんがそれができるようにする。このための専門の組織というのは必要であろうと私は考えています。
ということで、ほぼ時間になりましたので、皆様よろしゅうございますか。
よろしいでしょうか。それでは、本日、多くの……。ごめんなさい、今、手が挙がったのがちらっと見えましたけど。
【中井委員】 よろしいでしょうか。中井です。
【大野分科会長】 中井委員、お願いします。
【中井委員】 すいません。せっかくまとめていただいているところ、恐縮でございます。
学部教育、やはり研究者の人材育成ということでは、大学院生だけじゃなくて学部教育とも関係すると思います。最近はどんどん論文ではなくて、レポートなどもやはりかなりChatGPTを使う。もっと言うと、授業でこれはどう思うって質問すると、生成AIにすぐに問いかけて、そのまま答えるというのも出てきています。
だから、したがって、言いたいことは、どう使うかということ、さらに、少し悪い言い方をすると、研究不正との関係。少し前だと剽窃とか、そういう問題とも関係したと思うので、その問題とも使うことをあまりヘジテイトさせないことも重要ですけれど、どういう使い方が間違いなのかということも、今後、制度をきちんと決めていただければと思います。
すいません。以上です。
【大野分科会長】 どうもありがとうございました。非常に大事なポイントだと思います。
ということで、ありがとうございました。活発な討論をいただきました。本日いただいた御意見を踏まえて今後審議を進めていきたいと思います。
これで本日の議題は終了させていただきます。
最後に事務局より連絡事項があればお願いします。
【林学術企画室室長補佐】 事務局でございます。本日の議事録につきましては、後日、委員の先生方にメールのほうでお送りいたしますので、御確認のほうよろしくお願いいたします。
また、本日の議題に関しまして、もし追加の御意見等ございましたら、こちらも後日事務局までメールのほうでお送りいただければと考えてございます。
連絡事項は以上でございます。
【大野分科会長】 それでは、本日はこれで閉会といたします。お忙しい中、どうもありがとうございました。
電話番号:03-5253-4111(内線4226)
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