学術分科会(第84回) 議事録

1.日時

令和3年9月2日(木曜日)14時00分~16時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 令和4年度概算要求について
  2. 大学ファンド創設に関する状況と大学研究力強化室の発足について
  3. 地域の中核となる大学の振興について
  4. 人文学・社会科学特別委員会 「「総合知」の創出・活用に向けた人文学・社会科学振興の取組方針」について
  5. 「科学技術指標 2021 」及び「科学研究のベンチマーキング 2021 」に関して
  6. 第 11 期学術分科会の調査審議の現状について意見交換

4.出席者

委員

(委員、臨時委員)
大野分科会長、須藤分科会長代理、勝委員、梶原委員、小長谷委員、五神委員、白波瀬委員、長谷山委員、福田委員、井関委員、尾辻委員、加藤委員、神谷委員、岸村委員、小林委員、城山委員、武内委員、戸田山委員、中野委員、中山委員、長谷部委員、原田委員、松岡委員、山本佳世子委員
(科学官)
平野科学官、森口科学官、苅部科学官、磯科学官、渡慶次科学官、林科学官、長壁科学官、渡部科学官

文部科学省

杉野研究振興局長、坂本大臣官房審議官(研究振興局担当)、奥野振興企画課長、永田学術研究助成課長、植木学術機関課長、井上産業連携・地域支援課長、菱山科学技術・学術政策研究所長、伊神科学技術予測・政策基盤調査研究センター長、高見沢学術研究助成課企画室長、河村学術企画室長、二瓶学術企画室室長補佐

5.議事録

【大野分科会長】 ただいまより、第84回科学技術・学術審議会学術分科会を開催いたします。どうぞよろしくお願いいたします。 まず、本日のオンライン開催に当たりまして、事務局から注意事項と本日の出席状況について報告がありますので、お願いします。

【二瓶学術企画室室長補佐】 事務局でございます。本日もオンラインでの開催となりますので、事前にお送りしておりますマニュアルに記載のとおり、御発言の際には「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、指名を受けましたら、マイクをオンにし、お名前を言っていただいた上で、ゆっくり御発言いただければと思います。なお、分科会長以外の委員の皆様は、御発言されるとき以外は、マイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
機材の不具合等ございましたら、マニュアルに記載の事務局連絡先に御連絡ください。
また、本日は、仲委員、井野瀬委員、尾上委員、新福委員、山本智委員は御欠席でございます。また、白波瀬委員、加藤委員、城山委員は、後ほど遅れて御参加の予定でございます。また、何名か御出席の予定でまだ接続されていない委員がいらっしゃいますが、本日、30名中25名の委員が御出席の予定でございます。
あと、本日の会議は、傍聴者を登録の上、公開とさせていただいております。
以上でございます。

【大野分科会長】 ありがとうございます。
続けて、事務局の異動に関して、御紹介をお願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】 前回3月の分科会以降、事務局に異動がございましたので紹介いたします。
振興企画課長、奥野でございます。

【奥野振興企画課長】 奥野でございます。よろしくお願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】 次に、振興企画課学術企画室長、河村でございます。

【河村学術企画室長】 河村と申します。よろしくお願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】 なお、大臣官房審議官にも異動がございまして、7月に新たに坂本が着任しておりますが、本日は所用のため遅れての参加となりますので、後ほど紹介をさせていただきます。
以上でございます。

【大野分科会長】 新任の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、続けて、事務局より、配付資料の確認をお願いします。

【二瓶学術企画室室長補佐】 本日の資料は、委員の皆様へ事前に電子媒体にてお送りさせていただいております。
本日の主な議題に係る資料に関しましては、資料1から資料6としてお配りしておりますが、議事の中で取り扱いますので、ここでの説明は割愛させていただきます。
参考資料につきましては、参考資料1から3をお配りしております。
資料の説明は以上でございます。

【大野分科会長】 ありがとうございました。
本日、議事がたくさんございますので、御質問等も含めて、できるだけ簡潔にお願いしたいと思います。
それでは、議事に入ります。本日の議題は次第のとおりですので、まず1番目、学術研究を取り巻く最近の状況ということで、議題(1)、(2)、(3)、それぞれ令和4年度の文部科学省の概算要求の状況、大学ファンド創設に関する状況と大学研究力強化室の発足、そして、地域の中核となる大学の振興について、御報告をまず頂きたいと思います。御質問は、まず3つの御報告を受けてから、まとめて時間を取りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、まず議題(1)について、説明を奥野振興企画課長からお願いします。

【奥野振興企画課長】 それでは、御説明申し上げます。お手元の資料1を御覧ください。資料1の中の令和4年度概算要求のポイントにつきまして、主な事項等に関して簡潔に御説明申し上げます。ページ番号1にお進みください。
まず左上に記載のとおり、当省の科学技術予算の来年度概算要求は、今年度予算の9,768億円から約2,000億円増の1兆1,744億円を要求しております。また、このほかに、国土強じん化関連として、施設整備費の履行要求が含まれます。
それでは、左上、我が国の抜本的な研究力向上と優秀な人材の育成に掲げる事項につきましては、後ほどページ番号2を用いて御説明申し上げます。
その下、Society 5.0を実現し未来を切り拓くイノベーション創出とそれを支える基盤の強化といたしまして、ここに掲げられてございますとおり、まず科学技術イノベーションシステムの構築に向けて、地域の中核となる大学の振興、大学発ベンチャー創出、産学連携に係る予算を、研究のデジタルトランスフォーメーションの推進に向けまして、まず他分野に先駆けたマテリアル分野の研究DXの事業の進展に伴い、対前年度100億円増の138億円を、分野・機関を超えた研究データの管理・利活用を進めるための基盤整備・高度化について、新たに17億円をそれぞれ要求してございます。さらに、大型研究施設の整備・利活用のため、東北の次世代放射光施設、スーパーコンピュータ「富岳」等の整備・共用に係る予算、更にポスト「富岳」に向けた調査研究に要する経費等を要求してございます。
右上に記載のされているところにつきまして、まず右上の欄、重点分野の研究開発を戦略的に推進するための予算といたしましては、こちらに掲げてございますとおり、AI、量子技術戦略等に基づく重点分野、並びにワクチン戦略等に基づく健康・医療分野に係る重点分野別の予算を記載のとおり計上してございます。
さらに、その下の欄につきましては、宇宙・航空分野、海洋・極域分野等の分野別予算につきまして、それぞれ記載のとおり要求しておるところでございます。
では、ページ番号の2にお進みください。まず左側の列につきまして、ファンディング事業に関して予算の説明がございます。科研費につきましては、新種目として、新たに国際共同研究を創設すること、さらに、若手研究者の重点支援の強化等を含み、対前年度134億円増の2,510億円を要求してございます。以下、このほかに、戦略的創造研究推進事業など、JSPのファンディング事業につきましても、それぞれ以下に記載のとおり要求しておるところでございます。
次に、右の列を御覧ください。まず大学ファンドに関しましては、事業の詳細は次の議題(2)で御説明申し上げますが、来年度概算要求におきましては、当省から内閣府と同額の10億円を要求した上で、10兆円規模の拡充につきましては、残り5.5兆円の確保に向けて、4.9兆円を要求しておりますところの財政融資資金の活用等も含め、予算の編成過程において検討を進めてまいることとしておるところでございます。
WPIにつきましては、新規4拠点の採択も含め、対前年度12億円増の73億円を要求してございます。
また、本日の議題(4)に関連いたしますが、人文学・社会科学特別委員会で頂いております御議論の内容等も踏まえまして、データ駆動型人文学研究先導事業といたしまして、4.9兆円を新規に要求しております。
世界の学術フロンティアを先導する大規模プロジェクトの推進につきましては、「ハイパーカミオカンデ計画」、「SINET」の高度化に要する経費などを含みまして、対前年度107億円増の483億円を要求してございます。
最後に、ページ番号の13にお進みください。科学技術・イノベーション人材の育成・確保に関しましては、この表中に掲げられておりますところの予算を要求してございます。博士後期課程学生の経済支援の充実・強化を図るために、特に令和2年度3次補正予算及び今年度の予算によりまして新たに措置しておりますところの科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創出事業と、JSTが実施主体になります次世代研究者挑戦的研究プログラムにつきましても、事業の進行に伴い来年度分の予算を要求するなど、記載の各事業につきまして、ここに掲げるとおりの予算を要求しておるところでございます。
私どもからは以上です。

【大野分科会長】 どうもありがとうございました。
それでは、続いて、議題(2)大学ファンド創設に関する状況と大学研究力強化室の発足について、植木学術機関課長より御説明をお願いいたします。事務局から補足説明もあると聞いています。よろしくお願いします。

【植木学術機関課長】 ありがとうございます。学術機関課長の植木でございます。それでは、私から、大学ファンド創設に関する状況と大学研究力強化室の発足につきまして、お時間の関係でかいつまんで御説明を申し上げます。
ページをおめくりいただきまして、こちらは次第ですので。
1つ目でございますけれども、まず10兆円規模の大学ファンドの創設の全体像でございます。このファンドの創設の狙いにつきましては、上の枠内にありますように、現状、研究力が相対的に低下しておりますとか、あるいは博士課程学生が減少しているという状況、あるいは、資金力につきまして、世界トップ大学との差が拡大の一途にあるということでございまして、それを踏まえまして、右側、赤字にありますように、世界トップ研究大学の実現に向けた、財政・制度両面から異次元の強化を図る。そのために、例えば、大学の将来の研究基盤への長期・安定的投資の抜本的強化でありますとか、世界トップ研究大学にふさわしい制度改革の実行を行う必要があるという問題を前提といたしまして、左下、制度の概要でございますけれども、JSTに大学ファンドを設置し、そこでの運用益を活用して、研究大学における将来の研究基盤への長期・安定投資を実行する。参画する大学につきましては、世界トップ研究大学にふさわしい制度改革、あるいは大学改革、資金拠出にコミットいただくということを前提としております。
ファンドの運用につきましては、額としては、4.5兆円からスタートいたしまして、可能な限り早期に10兆円規模の運用元本を形成したいと考えております。
スキームは、今申し上げましたとおり、右側のとおりでございます。
その上で、具体的に今後ファンドの運用、あるいは研究大学としての在り方については、専門調査会が内閣府のCSTIの下に設けられ、これまでも鋭意検討がなされているところでございます。図にありますように、CSTIの下に、1つは世界と伍する研究大学の専門調査会、その下に大学ファンド資金運用ワーキンググループということで、それぞれ右側に記載のとおり、世界と伍する研究大学の定義、あるいは規制緩和事項等の検討、これが専門調査会として検討されてきた事項。ワーキンググループにつきましては、運用の基本的な考え方、リスク管理の在り方を含む検討がなされてきたところでございます。
次のページでございますが、4ページは、これまでの進捗と今後のスケジュールについて整理をさせていただいたものでございます。上段、資金運用、下が大学改革/ファンドの使途・配分ということで分けさせていただいておりますが、上段の方、資金運用につきましては、まずは内閣府と文科省が合同で大学ファンド資金運用ワーキンググループということで検討させていただきまして、これが先般、8月26日でございますけれども、CSTIの本会議において、その基本的な考え方が決定されております。
一方、文科省・JSTにおきましては、ファンドを設置する上での体制の整備を鋭意これまでも進めさせていただいておりまして、これが今年度末を運用開始、これを目標に、今、鋭意準備を進めさせていただいておるところでございます。
下段、大学改革/ファンドの使途・配分については、上の方、内閣府・文科省で合同で、世界と伍する研究大学専門調査会ということで検討いただきまして、これも同じ8月26日にCSTIの本会議におきまして、その中間まとめが報告されたところでございます。
これらの中間まとめを踏まえまして、下、文科省とありますけれども、この世界と伍する研究大学の実現に向けた制度改正等のための検討会議、これを間もなく立ち上げますけれども、この中で、新たな制度としての特定研究大学の制度の設計、あるいはガバメント、特例措置等について検討を深めまして、一方で、上の専門調査会につきましても、中間まとめ以降、更に後半、議論を深化させていただきまして、最終的には、下の検討会議の考え方も上の専門調査会の方に盛り込まれた上で、今年の末、12月までの間には、専門調査会としての最終まとめが取りまとめられる予定でございます。その上で、関連する法案、新法でありますとか改正法につきましては、この次の通常国会に提出させていただきまして、その後、施行準備を踏まえまして、一番右側、今のところですが、令和6年度の実際の大学への支援をスタートさせていただきと考えております。
次のページでございますが、専門調査会のメンバー、あるいは、主な議論の状況につきまして整理をさせていただいております。右側にありますように、CSTIの上山先生を座長とし、これまで何度も検討が重ねられてきております。
その上で、次のページでございますけれども、このCSTIの専門調査会の中間まとめの概要でございます。上の枠内にありますように、「世界と伍する研究大学」に求められるコミットメントということで、3つ掲げさせていただいております。1つは、ミッションの見直しということで、人類経済社会への貢献、これが研究力の飛躍的伸長に結びつく。2つ目が、潤沢な外部資金の確保と毎年3%以上の事業成長。これは米印にありますように、英米の主要大学の平均成長率が3.8%であることを踏まえた事業成長を念頭に置いております。3つ目、成長を可能にするガバナンスシステムの導入ということで、例えば、最高意思決定機関としての合議体の設置でありますとか、学長の経営資質の重視、あるいは、学長を支える経営幹部の充実といったようなことが、この中間まとめの中で盛り込まれておるところでございまして、それらを図示すると下の図のようになろうかと考えております。
次のページでございますけれども、一方、大学ファンドの資金運用WGの方も、右側にありますように、伊藤先生を座長とし、鋭意検討が進められてきました。
その上で、次のページにありますように、基本的な考え方が8月26日に取りまとめられましたけれども、この中でも、一番上にありますように、運用目的とその目標につきましては、研究基盤の構築への支援を長期的・安定的に行うための財源の確保、その上で、大学基金の指針となる運用モデルを示す、これが運用目的でございます。具体的な目標でございますけれども、長期支出目標として3%、加えて長期物価上昇率1.38%以上でございますので、合わせて4.38%以上を目標としておるところでございます。
基本的な事項でございますけれども、この運用手法につきましては、1つ目が、投資理論に基づく世界標準の長期投資・分散投資、あるいはグローバルな投資を推進すること。2つ目が、市場環境の悪化時も含めて、投資規律を重視することが記載されております。
時間軸といたしましては、運用開始5年以内の可能な限り早い段階で3,000億円の運用益を達成したいということでございます。
ガバナンスにつきましては、執行部から独立した運用・監視委員会が運用を適切に監視するとともに、運用の「プロ」による実践、このため、専門的知識を有する優秀な人材の確保のための雇用形態、あるいは給与体系の構築が記載されておるところでございます。
右側のように、その大学ファンドのスキームといたしましては、先ほどの図と重複になりますが、このような体制で今準備が進められているところでございます。
以上が、大学ファンドの概要でございますが、2つ目の御説明でございますけれども、大学研究力強化室の発足についてということで、文科省、特に科学技術・学術分野の組織体制の検討につきましては、3つの観点、記載のとおりでございますが、1つ目が、Society 5.0やポストコロナなど社会の構造的変化を先導するために、分野の縦割りを超えた価値創造が生じる組織へと変える必要。2つ目が、安全・安心の実現ということで、技術流出防止の強化、あるいは研究成果の創出・育成のバランスという観点。3つ目が、大学における研究振興を強化するという観点で、下にありますように、左側の政策課題に対応した形で、右側のような組織改革が進められているところでございます。
特に青枠で囲ったところ、大学(研究大学)の研究力強化のための組織体制の構築ということで、高等教育局と連携して大学の研究力強化を図る使命を明確化するために、組織の改革の方向性といたしましては、右側にありますように、研究振興局(学術・基礎研究/先端技術開発)が、今後、大学の研究力強化の戦略、あるいは技術シーズの積極的な開拓が必要だということで、小さい字で恐縮なんですけれども、学術・基礎研究振興、あるいは研究大学の抜本強化の一環として大学研究力強化室を新設するとともに、戦略的に取り組むべき基盤技術の研究開発の強化ということで、そういった方向性で組織改革が進められているところでございます。
大変急ぎ足でございまして大変恐縮でございますが、私からの説明は以上でございます。よろしくお願い申し上げます。

【河村学術企画室長】 続きまして、学術企画室から補足を申し上げます。
これまで学術分科会におきましては、所掌である学術の振興の観点から活発な御議論を頂いたところでございます。本日、御報告しております大学ファンドの創設などは、学術の中心たる大学の研究力強化に関するものであることから、学術振興の観点から、大学ファンドの創設などにつきましては、従前にも増して学術分科会委員の皆様には御意見を頂ければありがたいと考えております。
なお、大学ファンド創設に関する審議会体制につきましては、科学技術・学術審議会全体としてどうするか検討中でありまして、今後御報告をする予定でございます。
以上でございます。

【大野分科会長】 どうもありがとうございました。
それでは、次に、議題(3)地域の中核となる大学の振興について、井上産業連携・地域支援課長より御説明をお願いします。

【井上産業連携・地域支援課長】 ありがとうございます。それでは、資料の方、右下にございます1ページ目を御覧ください。
まず初めに、地域の中核となる大学の振興につきまして、現状様々に政策の議論がされているところでございまして、その報告でございますが、一番基になるところとして、本年3月に閣議決定されました第6期の科学技術・イノベーション基本計画での関連部分を掲載させていただいております。
大学全体としましては、初めの方の赤い字の部分にございますように、大学それぞれ個々の強みを伸ばして、大学それぞれにふさわしいミッションを明確化していきましょうということで、多様な大学群の形成ということが記載してございます。
中でも、一番下の赤いところでございますが、地域の中核という文脈におきましては、特に、やはり地域の産業、今あるもの、そして、これから生み出されるものとの連携の強化、その観点としましては、人材、当然に大学から出てくる最新の研究成果といったもの、そして、ここがうまく回っていくような資金循環といった観点が重要だという点が掲載されております。
そして、一番最後の部分ですけれども、やはり今後人口減少等々、社会の変化の中で、複数の大学や研究所が有機的に連携するような活動ということも、大事な観点として記載しております。
次のページを御覧ください。こういった閣議決定を踏まえまして、ちょうど骨太の閣議決定の前のタイミングにおきまして、右上にございますけれども、6月の統合イノベーション戦略推進会議、こちらは官房長官をヘッドとしまして、各府省の大臣が参画している会議でございますけれども、そこにおきましても、地域の中核となる大学の機能を強化する必要があるという議論がなされたところでございます。
御覧いただいております資料は、内閣府の方から提出された資料でございますけれども、先ほどの基本計画と基本的に同じスタンスを取りつつ、上の四角のマル1、マル2を御覧ください。それぞれの大学の特徴をやはり一層強くする、伸ばしていくということ、そして、特定分野に高い研究力を有される大学、そこは更に一層伸ばしていきましょうということ。また、地域におけます人材育成、産学連携の活動を通じて地域の経済社会、ひいては日本全体、また世界の課題解決に貢献していこうと、こういった方向で施策を組んでいきましょうという発言がなされたところでございます。
今後の方向性としましては、今申し上げたようなことを伸ばしていくということを応援していくということでございますけれども、特に内閣府としましては、この赤字の上の方の2行目にございますように、政府が全体でそういった大学をサポートしていきましょうというメッセージが出されているところでございます。
次のページを御覧ください。同じ会議で萩生田文部科学大臣から問題意識を説明した資料でございます。同じ観点での資料になりますけれども、特に具体的にこういった対応をしていきたいということで、右にございますマル1からマル4といったものを発表させていただいております。
地域の方で、なかなかやりたいことがあっても人材がいないですとか、ほかの自分の大学だけではできないといったこと。
また、いろいろな情報も限られているといったような声も踏まえまして、特に経営層ですとかURA等のそういった人材の育成の確保ですとか、先ほど内閣府からの資料にもございましたが、大学の強みを伸ばしていく、戦略的に運営に伴走支援する政府全体の体制が必要だということ。
また、今、様々な大学支援させていただくメニューはございますけれども、これがばらばらでなかなか有機的に連携していないのではないかという我々の問題意識と反省もございます。なるべく使っていただきやすいような形でのメニューという立て方も考えなくてはいけないと思っております。
また、1つの大学だけではなかなか難しい取組も、複数大学で有機的に連携してやっていただくような取組も支援していく形にしていきたいと考えております。
次のページを御覧ください。こういった6月の議論を踏まえまして、真ん中のものが骨太でございますけれども、同じタイミングのイノベーション戦略でも、今年度末に向けまして、地域の大学の強化というパッケージを策定しましょうということで閣議決定がされたところでございます。
次のページを御覧ください。こちら、8月末に開催されました総合科学技術・イノベーション会議の本会議で内閣府から示された資料でございますけれども、こちらの方が最新のものとなってございます。一番上に赤い字がありますように、文科省・内閣府のみならず、政府が総力を挙げてサポートするような仕組み、具体的には、真ん中のイメージというところにありますけれども、様々な府省が持っておる事業間の連携というものを一体的に大学にすることによって、地域の大学の支援の強化を図りたいということで、今後議論も具体化していきたいと考えております。
そのほか、先進地域の産学官トップの連携協議の場ですとか、また、大学から出てくるいろいろな最新の研究成果、これを社会実装する上での制度上の隘路を取るといったようなことも考えていきたいと思っております。
6ページでございますけれども、この会議の後に、最後、総理から今年度中にパッケージを取りまとめるということと、速やかな実現ということを踏まえまして、最後のページでございますけれども、令和4年度の概算要求においても、地域の中核となる大学の振興というところで、まず一歩を始めたいと考えてございます。
様々な予算が関係いたしますので、ここだけというものではございませんけれども、令和4年度、特に大きく増やしたいというところが、右のオレンジの四角のところで囲ってある部分でございます。特に共創の場ということで、産学連携活動、共同研究の形成をやっていただくような場、また、大学発のスタートアップとエコシステムの強化といったこと、また、そういったものと人材育成を組み合わせていくようなものということで考えております。
そのほか、下の矢印に書いてございますような様々な予算との有機的な連携というものも、我々、省内でできるように今後議論を進めていきたいと考えております。
説明は以上でございます。

【大野分科会長】 どうもありがとうございました。
これで、議題(1)、(2)、(3)の御説明を頂き、御報告を頂きました。それでは、これからこの3つに関して御質問や御意見がありましたら、御発言をお願いしたいと思います。先ほどもありましたように、「手を挙げる」のボタンで挙手をお願いしたいと思います。手の挙がっている順番で指名させていただきたいと思います。
岸村委員、お願いいたします。

【岸村委員】 ありがとうございます。
幾つかあるんですが、まず大学ファンドに関連してなんですけれども、最終的に運用益3,000億円というのが試算で出ておりますが、具体的に幾つぐらいの大学を支援していくというようなことで考えられているのかということが1点目。
もう一つは、将来的に自立が求められるような表現はどこかにあったと思うんですが、そういうことになった場合に、もともとその大学に措置されていた運営費交付金というのはなくなったりするのか、あるいは、それがどこか、この世界と伍する大学に選ばれなかったところに回るようなことなのか、単純に予算カットされるようなことになるのかというようなところを教えていただければと思います。

【大野分科会長】 よろしくお願いします。

【植木学術機関課長】 学術機関課長、植木でございます。ありがとうございます。
御指摘のまず1つ目、ファンド対象支援大学の数につきましては、今後、内閣府の専門調査会の方で、後半の議論の中でその具体的な支援対象の数につきましても議論されるやに伺っております。ただ、それほど多数の大学ではない、いわゆる世界と伍する研究大学としてふさわしい大学ということでファンドの支援の対象になると聞いておりますので、多くの大学ということを想定されているわけではないと伺っておるところでございます。
それから、2点目でございますけれども、将来的なお話につきましては、資料の2ページ目の左側の中間、基本的な枠組みの4つ目の項目で挙げられておりますけれども、財政融資資金、大もとになる財源、資金の拠出につきましては、50年の時限ということで、将来的には大学がそれぞれ自らの資金で基金運用するための仕組みを導入するということ。
それから、大学ファンドの運用の下の方でございますけれども、コメ3のところで、財政融資資金については、20年後を目途に今後の対応を検討することとし、融通条件、40年償還で、うち据置期間20年ということで、元金均等償還に沿って、順次約定償還をするということが盛り込まれております。
従いまして、基本的には、将来的には大学が自立して、自らの資金で運用するということになりますけれども、その後について、例えば、急激に極端に運営費交付金が減らされるというようなことは、今のところは想定されておりませんが、そのあたりの対応をどうするかにつきましても、今後引き続き検討が必要であろうと考えております。
以上でございます。

【大野分科会長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、小林委員、お願いします。

【小林委員】 小林です。大学ファンドについてお尋ねしたいと思います。
韓国でも、かつて学部譲渡を含む大きな大学改革ということを条件に配分をしたという経緯がございます。今回、日本の場合は、大学改革というのが要件になるのか。なるとしたら、どのような大学改革というのを想定されているのかというのがお尋ねしたい1点目です。
2点目は、3%プラス長期物価の1.38で、4.38%以上の利益を生むということを想定されていらっしゃいますが、これは委託運用機関の手数料はどれくらいで見込まれているのかです。つまり、それを上乗せした分の利回りを出さなければいけないということなので、もし1%であれば5.38ということになってきますが、それはどの程度を見込まれているのかをお尋ねしたいと思います。
お尋ねしたい3番目は、株式と債券の比率を65対35というようなところがありましたけれども、今の世界の状況は、多分非常に厳しい状況です。新興国は厳しくて、アメリカが回復しつつある中で、新興国の株式市場がものすごく悪くなってきます。一方で、欧米の債券市場は、多分経済の方が御存じのとおり、もう今ほとんどひどい状態にあります。そうすると、なかなか投資、運用する先というのが一番今難しい状況にある中で、この辺をどのようにお考えなのか。あるいは、為替の問題です。これが非常に大きいと思いますが、最終的には円に戻さなければいけないので、これはどういうふうな見込みでいらっしゃるのかということです。
最後にお尋ねしたいのは、結局、運用益はかなり年によって変動が出てきます。そうしますと、このお金の使うところというのは、何か固定的・継続的なプロジェクトなのか、それとも一過性、例えば老朽化施設の改善とか、そういうことになるのか。運用益に変動がある中で、どのような使い道というのを想定されていらっしゃるのか。以上、お尋ねできればと思います。

【植木学術機関課長】 ありがとうございます。学術機関課長でございます。
先生お尋ねのまず1点目でございますけれども、支援の対象となる大学、これは当然、特に国立大学法人を含めて、先ほどちらっと出てきましたけれども、合議体のガバナンスということを前提にしている等々の条件が求められておりまして、いわゆる大学改革、あるいは、大学のいわゆるガバナンス面での見直しというのが当然の前提になっております。従いまして、これは文科省に設けられます検討会議におきましても集中的に議論がされますけれども、今までの大学制度とどんな違いがあって、それが制度的にどんな変更が必要なのか、法改正も視野に入れながら、その大学改革の内容については検討してまいりますが、いずれにいたしましても、大学改革を抜本的に進めるところ、そういった大学が対象となるということを想定しておるものでございます。
それから、次の手数料と、それから、3%あるいは4.38%の関係につきましては、申し訳ございません、今手元に資料がない状態でございますので、改めて、どういう計算、根拠に基づくかについて資料を整理いたしまして、委員の先生方に御案内をしたいと考えております。
それから、3点目、世界的に株式市場は非常に悪い状況だ。これはおっしゃるとおりでございます。それから、4点目とも関連いたしますけれども、こういった世界市場という観点で、3,000億円の運用益を確保するための方策につきましては、更に中身の運用について、今JST内部、あるいは私ども、あるいは内閣府との間で、どういった株式のやり取りをすればいいのか。あるいは、使途について、これらについても、今まさに検討途上でございます。特に、いわゆる運用益、大学支援をされた大学における使途につきまして、これにつきましても、これは内閣府の専門調査会、引き続き後半の方で議論の対象の一つとして挙げられておりますので、その中で議論が深化されるのではないかと考えておるところでございます。
すみません、簡単ではございますが、以上のとおりでございます。

【小林委員】 ありがとうございました。

【奥野振興企画課長】 よろしいでしょうか。振興企画課長でございます。若干補足をさせていただきたく存じますが、発言させていただいてよろしゅうございますでしょうか。

【大野分科会長】 どうぞ御発言ください。

【奥野振興企画課長】 まず、御質問にございました手数料等の取扱いでございます。大学ファンドにつきましては、基本的には運用益を助成財源といたしますので、手数料等につきましては、この運用益の前に経費という形で計上されてございますので、控除して出る形になります。
なお、具体的な手数料が幾らになるのかにつきましては、さきのCSTI本会議において、内閣府の側で一応運用の大きな方向性が示されました。これを受けて、今後、文部科学省において運用の指針を示し、それを受けてJSTが方針を示し、その中で恐らくそういった調達関係の規定等が出てまいりますので、現時点においては、まだ確定的な数値というのが御説明できる状況とはなっていないところでございます。

【小林委員】 お尋ねしているのは、大体確定した数字をお尋ねしているのではなくて、どの程度を見込まれた上でということをお尋ねしたかったんです。

【奥野振興企画課長】 そちらにつきましては、恐らく現在の市況等の経費率等を御参照として、後ほど御説明するような形に現時点ではなろうかと存じます。
その上で、運用全体の方針につきましても、さきの方向性の中において、一応株式及び債券の比率というのが出ておりますが、あれはあくまでもあの比率で算出されますリスクの範囲内でということになってございます。したがって、この点につきましても、今後、文科省の指針及びJSTがつくる方針の中におきまして、そのリスク幅の中でJSTが市況を踏まえて債券の比率及び株式の比率等を設定していくこととしておるところでございます。
若干補足させていただきました。失礼しました。

【大野分科会長】 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、松岡委員、お願いいたします。

【松岡委員】 松岡です。ありがとうございます。
私も、この大学ファンドのことについてお伺いしたいと思います。私が知りたいと思っているのは、企業から資金・人材を出すという御説明だったんですけれども、企業が大学のこのファンドに資金を出す、人材を出す、そのモチベーションとしてどういうことを想定、期待しているのかということを伺いたいと思います。
実際に今大学と民間で産学連携のようなことを行っているわけですけれども、それのもうちょっと拡張したようなものと考えてよいのかということを知りたいと思います。
7ページ目に、企業の方には成果、人材が大学からフィードバックというか、あるというふうにありますので、この資金を使って行った研究が企業にとってメリットがあると、そういうことをモチベーションとして資金を出してもらうということを期待しているのかということを知りたいんですが。
なぜそういうことを伺うかというと、そういうことであると、研究分野によって、そういうことになじむ分野となじまない分野があるかと思います。最初のこういうファンドをつくるに至った問題意識というのは、分野によらない人材の問題、資金の問題あると思うので、その分野間のなじむ・なじまないの差みたいなものはどのように考えていらっしゃるのか。その辺をお聞かせいただければと思います。

【植木学術機関課長】 よろしゅうございますでしょうか。学術機関課長でございます。
先生御指摘のとおり、資料の6ページにありますように、企業の方々からは、この大学に対して資金の循環ということで、資金・人材を出していただく。その効果といたしまして、成果や人材が企業の方に効果としてお渡しできるものとして想定をしている。こういう循環を想定しておりますので、結果的に成果や人材という形で還元されるのではないかというのは、それはおっしゃるとおりでございます。
その上で、例えば、なじむ分野、あるいは、なじまない分野、おっしゃるとおり出てくる可能性はあると思っております。ただ、現時点でそれがどういった分野で、あるいは、特定研究大学としての要件として分野を特定するかどうかというところについては、今のところは特に特定をすることは考えておりません。
いずれにいたしましても、その時その時、状況に応じて、その分野がなじむのかなじまないのかも含めて、適宜資金・人材に結びつくところ、あるいは、特定研究大学として活動する分野の分、そこの部分にはしっかりと支援が行くような形にしていきたいと考えております。
以上でございます。

【松岡委員】 どうも、御説明ありがとうございました。

【大野分科会長】 それでは、続きまして、長谷山委員、お願いします。

【長谷山委員】 長谷山でございます。ありがとうございます。2点質問をさせていただきたいのですが、いずれも大学ファンドに関することです。
1つは、資産運用機関に委託するということになっていますが、どこに委託するか、どの資産運用機関に委託するかということは、どこで決定されるのか、どういうプロセスで決定されるのかという、具体的な会議体といいましょうか、それが1つです。
それから、もう一つは、今、大体10兆円で、支出が3,000億円ぐらいを見込んでいるというふうになっています。それと別に、この資料を拝見しますと、大学に対して3%程度の事業成長を促していくということが書かれています。これは欧米の大学のことが参考資料に出ていますので、多分、大学自身が自助努力で運用等でということでしょうけれども、これは、この10兆円ファンドの最初のスタートアップが終わった後、移行していく、自律的に運用する段階のことを言っているのか、それとも、この10兆円ファンドで出てきて配分されるものとは別に、いずれはそれぞれの大学が研究力強化のために年3%以上の運用等による事業成長するという二本立ての話なのか、これを教えていただきたいという2点でございます。

【植木学術機関課長】 ありがとうございます。学術機関課長でございます。
まず資産運用機関、委託先につきましては、基本的には、JST内に設置あるいは設けられております運用業務担当理事、あるいは、運用監視委員会の方で検討いたしますとともに、内閣府あるいは私どもの方でも、その資産の運用先機関が適切かどうかについてもチェックをしていきたいと考えております。そういった中で決定あるいは修正等をされていくものと考えております。
それから、3%の事業成長についてでございますけれども、これはいわゆる運用益ということは、最終的には大学が自立することを前提にしておりますので、将来的な形としてはこれを加味しない成長を想定しておりますが、現時点ではまだ検討中でございます。基本的に、今ある形の大学が将来的にガバナンスの改革等々をすることによって、併せて3%程度の事業成長が見込めるかどうかという観点から判断されるものと考えております。
以上でございます。

【長谷山委員】 分かりました。ありがとうございました。

【大野分科会長】 ありがとうございます。
それでは、続きまして、中野委員、お願いします。

【中野委員】 私も大学ファンドに対する質問ですけれど。
松岡委員の質問に似ているんですが、民間等からの資金拠出というのは、これは最終的に非常に大事になってくると思うんですが、大学については、先ほどの御説明で分かります。
2ページの図を見ると、民間から直接大学ファンドにも資金拠出を見込まれている。そういう計画になっているんですけれども、その際の民間側のインセンティブ、なぜそこ大学ファンドに拠出するのかという、その動機となるリターンですよね。それと、どういうところがどれくらい出しそうかという見込みがもし立っているのでしたら、それについてもお答えいただきたいと思います。

【植木学術機関課長】 ありがとうございます。学術機関課長でございます。
先生のおっしゃるとおり、2ページでは、民間からの資金拠出と一方的に書いておりまして、そちらの方へのベクトル、矢印のフィードバックが全くない状態でございますけれども、これは、それを含めて、先ほども御案内いたしました6ページの方でございますが、企業を含めた民間でございますけれども、資金の循環の一環として、この場合のいわゆる資金拠出というのを想定しておりますので、結果的にインセンティブといたしましては、その拠出された資金を大学ファンドの方で運用して、その結果が研究大学を通じて成果や人材として企業を含めた民間の方々に対して還元されるということを想定しているところでございます。
以上でございます。

【大野分科会長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、勝委員、お願いいたします。

【勝委員】 ありがとうございます。私も質問が2点ほどございます。
今のお話とも関わるのですけれども、この大学ファンドの使途なんですが、8ページに図がありますが、例えば、今、フェローシップ創設事業であるとか、あるいは次世代研究者挑戦的プログラム、これは今年度補正予算から出てきていますが、将来的には大学ファンドの運用益から出るというふうに聞いているんですが。例えば、フェローシップ等についても、5年間で終わってしまうと。博士人材への支援というのは非常に重要なものであるわけですけれども、継続性が重要であるなかでできれば大学ファンドから出すことも考えるべきと思うのですが、使途に関する基本方針は政府が決めるということになっているのですが、実態的にはどういった主体が決めるのかというのが1点目の質問です。
それから、2点目の質問としては、特定研究大学というものを設置するという話がスライドの4にありますけれども、この対象大学の指定が2022年から2023年にかけてあるわけですが、これは現在文科省が設置している指定国立大学制度とどういう違いがあって、それはどのように今後なっていくのか。あるいは、国立大学だけではなくて、私立大学も含まれるのか。そのところをちょっとお聞きしたいというのが2点目です。
加えて要望としては、資産運用については、例えば、アメリカのトップスクールのファンドの運用については、今、ESG投資が非常に重要になっていて、ダイベストメントみたいなものも、例えば化石燃料への投資をしないとか、持続可能な社会を目指す投資を行うといった形も出てきているので、是非そういったものも考えていただきたいなというのが1点と、それから、先ほどの民間の企業の話とも絡んで、公共財でもある国立大学のミッションとしては、やはり基礎研究というところは非常に重要なので、この辺についても、イノベーションあるいは社会実装のみならず、そういったものにも配慮を是非お願いしたいなと思います。
質問とコメントをさせていただきました。以上です。

【植木学術機関課長】 ありがとうございます。学術機関課長でございます。
使途についてでございます。言葉足らずで大変恐縮でございます。まずは、このファンドの運用益に基づく運用先、使途につきましては、先ほどもちらっと申し上げましたとおり、内閣府に設けられております、世界と伍する研究大学専門調査会の後半の議論の重要な要素の一つでございます。これは使途だけではなくて、その支援の規模でありますとか、先ほどもちらっと申し上げましたけれども、支援対象となる大学の数と併せまして、このあたりのことが今後議論として対象となってくるところでございます。
それから、2つ目でございます。特定大学制度、新しい制度と現在の国立大学法人における指定国立大学法人の関係についてでございます。これは、今後の国立大学法人法等々の法改正とも関係してきますものですから、先ほども図示させていただきましたけれども、文部科学省の方に設けられます検討会議において、現行の指定国と新しい特定研究大学の関係も含めて、これがもう制度改正に直結いたしますので、更に議論が深化されるものと考えております。またその際には、改めて御報告申し上げたいと考えております。
それから、先生御指摘、御要望の1つ目、資産運用につきましては、アメリカの運用のやり方であるとかを踏まえた形にするべきであるということでありますとか、それから、民間企業の関係でおっしゃった、いわゆるミッションとして基礎研究の方も重視したようなやり方、これは先生おっしゃるとおり、私どもも従来から基礎研究の重要性、大切さというのは重々承知しておりますので、これを踏まえた形での運用というのを当然想定して、あるいは、注意しながら運用させていただきたいと考えております。
以上でございます。

【大野分科会長】 本日審議しなければいけない事項がほかにもございますので、この質疑応答は3時までで一旦打ち切らせていただいて、その後、最後に時間がありましたら続けさせていただきたいと思います。
それでは、尾辻委員、お願いします。

【尾辻委員】 ありがとうございます。尾辻でございます。
私の方からは、今、質疑が集中しております大学ファンドから離れまして、最初の資料1で御説明いただきました概算要求について、1点質問させていただきたいと思います。
我が国の抜本的な研究力向上と優秀な人材の育成ということで、科研費事業につきましては、今回140億円規模の大型な予算増の概算要求を上げていただいております。この骨格となりますのが、仮称・国際先導研究、これの創設ということでございます。規模としては一課題5億円ですから、科研費種目で言えば、特別推進研究クラスの国際共同研究強化を新たな種目として科研費事業の中に創設するということで、非常に大きな取組として注目できる提案だと思います。
一方で、1億円を超える程度の国際共同研究事業というのは、例えば、御承知のとおりだと思いますが、学振の中では国際共同研究事業、研究拠点形成事業、それから、JSTの中ではSICORP(戦略的国際共同研究推進事業)、こういったものがございますが、その規模を更に超えるものを、しかも科研費事業の中で創設するという、この位置づけについてお考えをお聞きしたいんですね。
つまり、他の今私から紹介した事業は、基本的にバイラテラルで、相手国のファンディングエージェンシーが相手国に対して研究予算を並行して投じるというシステムなんですが、科研費事業の場合は、そういった部分が制度的にできないという制約があるように私は認識しているんですね。ここの問題について何か新しいお考え、取組を考えておられれば、是非それをお聞きしたいとも思います。
以上でございます。

【大野分科会長】 お願いします。

【奥野振興企画課長】 振興企画課長の奥野でございます。
まず御指摘のとおり、国際共同研究に関する様々な事業等が行われている中で、今回の国際新種目をJSPSの科研費の中に盛り込んだ理由についてでございます。やはり我が国の研究力の強化という観点で、国際共同研究というのは非常に重要となっているところを、特にコロナの影響等で、学術が対象とする研究者発意による研究活動といいますものは低調になってございます。今後は政府の施策として、コロナの状況を見据えて、今後、国際関係等に新たに再接続していくという過程においては、御指摘のSICORPのようなトップレベルで大きな枠組みをつくって進む施策、さらに、これまで科研費の中でやっていた規模での施策だけではなく、やはりボトムアップ、個々の研究者主体でやっていく中においても、これまでとは違って、PIの下に新しい若手研究者等で一定の研究チームをつくって、PIが先導していくような形から、JSTがやっているように政府の中での枠組みを調整した上でという形ではなくて、研究者発意という観点の学術的アプローチでも、この規模の施策というのは、特にこの局面においては必要であろうということで、あえてSICORPのようなGGベースの枠組みをベースとせず、また、若手研究者含めて研究チームという形で、PIを中心としてリコネクトできるような形として、事業の規模としては、かなり大きな規模も可能とするという形で、あえて科研費の中でこの規模で新たに要求させていただいておるというのが私どもの現在の考え方でございます。

【尾辻委員】 ありがとうございます。是非良い制度につくり上げていただきたいと思います。ありがとうございました。

【奥野振興企画課長】 よろしくお願いいたします。

【大野分科会長】 それでは、須藤委員、お願いいたします。

【須藤委員】 ありがとうございます。
最後の地域の中核となる大学のところなんですけれども、前に聞いたような気もするんですけれども、3つの施策のうちの地域活性化人材育成事業というのが、特にこれを新しく出している理由をお伺いしたいんですけれども。
もともと共創の場とか、STARTの中で、当然人材育成というのは入っていたと思うんですけれども、あえてここに人材育成という事業をつくった意図を説明していただければと思います。

【井上産業連携・地域支援課長】 ありがとうございます。
従来の産学連携のものにつきましては、おっしゃるとおり、2つの共創の場、またベンチャーといったところでございました。3点目の人材育成につきましては、これ、実は高等教育局の方で要求をしている事業でございまして、いわゆる産学共同研究、またベンチャーといったようなものから、大分もう少し幅広い観点も含めて、ただ一方で、共同研究や大学発ベンチャーというものを見据えながらといった、かなり幅の広いプログラム、幾つか考え方を分けて整理して要求されているというものでございます。
説明でも申し上げたように、これまで結構省内の各施策がばらばらと、それぞれの局課でそれぞれの目的に応じて実施されるということが多うございましたけれども、この中核となる大学という施策を打つに当たっては、大学目線で、我々もその各施策が有機的に連携するようにということで、この社会実装・人材育成研究というコンセプトの絵を描かせていただいたところでございまして、特に4年の要求では、人材育成というものを打ち出したいということがございましたので、ここに一緒に書かせていただいて、具体に連携を取りながら事業を進めていくという具体の在り方を今後検討していきたいと、そういう考え方でございます。

【須藤委員】 ありがとうございました。

【大野分科会長】 それでは、時間になりましたので、中山委員の質疑で、議題(1)、(2)、(3)はひとまず終了とさせていただきたいと思います。
中山委員、お願いいたします。

【中山委員】 千葉大学の中山でございます。私も、最後の地域の中核となる大学の振興についてということで、1つ御質問させていただきたいと思います。
こういうことの立案をしていただいて、非常に日本全国の大学等の活性化にもつながると考えます。この資料3の例えば3ページとか4ページ目では、今年度中に新しいパッケージの対応策を考えるということがしきりに出ておりますけれども、それが、先ほどの7ページの概算要求のどこにどういうふうに新しいものが加わってくるのかという点について、これまでの共創の場とSTARTの拡充は分かるんですが、どういう形でこのパッケージが今後考えられて4年度から実現するのかというのを教えていただきたいのが私の質問です。よろしくお願いいたします。

【井上産業連携・地域支援課長】 ありがとうございます。
パッケージの全体像のイメージにつきましては、お手元の資料、スライドナンバー5のところを御覧いただければと思います。
まずは、4年度要求で盛り込ませていただいたところについては、5ページの真ん中の左の部分、地域の中核大学の機能を強化する(大学が変わる)、ここをまず我々、文部科学省を中心にしまして、しっかり強化を図りたいということで、4年の要求、ここを実現するためのものを取っていきたいというところでございます。なので、パッケージの一部に、この4年の要求の実現というものも入ってくるということでございます。
そのほかに、各ほかの、例えば、まち・ひと・しごとですとか、あと、個別に、それこそ脱炭素ですとか健康・医療、様々な分野で大学に力を発揮いただいているところの予算を各省は持っておりますので、そういった各省の政策や予算とも、この府省間の事業の連携を通じて、どう一体的に支援できるか。これ、全く新しい取組で、我々、チャレンジでありますけれども、これを今後、この年の後半に議論していきたいということでございます。
ほかに、パッケージのイメージとしては、その下の枠にあります協議会の設置とか、規制緩和といったものも考えていきたいと。こういったもので全体のパッケージのイメージを今考えているところでございます。

【中山委員】 ありがとうございます。非常にチャレンジングなので、よろしくお願いいたします。
以上です。

【大野分科会長】 どうもありがとうございます。
時間となりましたので、3名の委員の先生には誠に申し訳ありません。議題(4)に進ませていただきます。
議題(4)は、先日人文学・社会科学特別委員会において取りまとまった「「総合知」の創出・活用に向けた人文学・社会科学振興の取組方針」について御報告いただきたいと思います。主査の城山委員から御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

【城山委員】 それでは、説明させていただきたいと思います。資料4を御参照いただければと思います。関連する場所を適宜映していただく形でお話をさせていただければと思います。
人文学・社会科学特別委員会におきましては、「総合知」の創出・活用に向けた人文学・社会科学の振興の取組方針をまとめましたので、御報告させていただきたいと思います。
まず議論の前提でありますけれども、人文学・社会科学の振興に当たりましては、人文学・社会科学特別委員会の前身であります「人文学・社会科学振興の在り方に関するワーキンググループ」というのがございまして、そちらで第6期の基本計画を見据えて、人文学・社会科学がより良い未来社会の共創に真価を発揮するための振興方針というものを検討したわけでございます。その結果、平成30年12月に、「人文学・社会科学が先導する未来社会の共創に向けて(審議まとめ)」というものを取りまとめておりまして、それが今回の検討のベースになったということでございます。
このワーキンググループの審議まとめにおきましては、今後の人文学・社会科学における研究支援の在り方として、3つ、未来社会を見据えた共創型のプロジェクト、これが1つ目。2つ目が、研究データの共同利用のための基盤整備。そして、3つ目が、データサイエンスの応用・促進というものを挙げております。
この3つのうち、最初の2つ、これまでに未来社会を見据えた共創型のプロジェクトについては、「人文学・社会科学を軸とした学術知共創プロジェクト」として、また、2つ目の研究データの共同利用のための基盤整備につきましては、「人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進事業」として取組を進めてきているところでございます。
今回は、今後の取組方針を議論するに当たりまして、これらの2つの動いている事業についての実施者から取組状況等をヒアリングするとともに、残された課題でありますデータサイエンスの応用・促進につきまして有識者からのヒアリング等を行い、今後に向けた課題整理、それから、取組方針の検討ということを行った次第でございます。
本取組方針は、1、検討の背景、2、人文学・社会科学振興に関する現在の取組について、それから、3、総合知の創出・活用に向けた人文学・社会科学の新興における今後の取組方針の3つで構成されているわけでございます。
それで、具体的な中身に移りますけれども、まず検討の背景につきましては、1ページ以下にございますとおり、現代社会においては、科学技術の実装に向けた倫理的・法制度的・社会的課題、いわゆるELSIの解決や、気候変動等の環境問題といった地球規模の課題など、様々な課題に直面しており、我が国を含む世界各国の政治や生活・経済活動等は重大な影響を受け、社会の在り方に大きな変容・変革が迫られていますけれども、これらの場面において、人文学・社会科学の学術知が高い意義を持つことになるということを確認しております。
また、このような状況において、科学技術基本法の本格的な改正が2020年に、25年ぶりになりますけれども、行われ、今後は、人文・社会科学の厚みのある「知」の蓄積を図るとともに、自然科学の「知」との融合による、人間や社会の総合的理解と課題解決に資する、いわゆる「総合知」の創出・活用がますます重要になっているという認識を示したところでございます。
その上で、2ページからは、人文学・社会科学振興に関する現在の取組についてということで、既に動いておりますが、2つの既存事業と実施の背景、それから、現状の取組内容、成果・課題について整理を行ったところでございます。
1つ目の事業、人文学・社会科学を軸とした学術知共創プロジェクトは、今日の社会課題を見据え、未来社会の構想のために我が国の人文学・社会科学の知がどのように貢献でき何をなし得るのかということを考察するプロセスを体系化することを目指しまして、人文学・社会科学固有の本質的・根源的な問いから生じる「大きなテーマ」、具体的には、将来人口の動態を見据えた社会・人間の在り方、分断社会の超克、それから、新たな人類社会を形成する価値の創造と、この3つの大きなテーマのもとに、分野を超えた研究者等が知見を寄せ合って問いに対する探究を深め、研究課題と研究チームを創り上げていくための場(共創の場)を整備する事業というものでございます。
この3つの大きなテーマごとに、若手研究者、女性研究者等、様々な参加者の多様性を重視しつつ、ワークショップなどを開催しておりまして、本来、このような場がなければ出会わなかったような異分野の研究者だとか専門家、あるいは民間企業やNGO・NPOといった多様なステークホルダーが出会うようになってきているといった、期待された成果が現れていると。
こういうプラスが確認されている一方で、やはりより主体的に多くの方に参加してもらうためには、どうやってこの事業の趣旨を周知していくのがいいのか、理解してもらうのがいいのかといった点、あるいは、参加する研究者のモチベーションやメリットをどう高めていくのか、こういった点についての課題ということも認識されているわけでございます。
次に、3ページに記載の2番目の事業、人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進事業におきましては、中核機関である日本学術振興会において、分野横断的な総合的なデータカタログの整備等を行っております。また、日本学術振興会が選定しました5つの拠点機関が取り扱うデータに関する、データ・アーカイブの機能の強化等を行っておりまして、各拠点のデータのメタデータと日本学術振興会が整備している総合データカタログとを連携させることで、横断的な一括検索が可能となっているところでございます。
これにつきましては、今後の課題としては、例えば、データの保存・共有・利活用に必要な専門性を有する人材、ある種のブリッジするような役割が求められるわけですが、こういう人材の育成だとか、専門家を支える組織基盤の形成が必要なことだとか、あるいは、更により多くのデータ保有者が、多様なデータを保存・共有・利活用することを促すための取組の検討といったことが必要だと、こういうことが課題として認識されているところであります。
4ページからは、「総合知」の創出・活用に向けた人文学・社会科学振興における今後の取組方針といたしまして、まず取るべき当面の対応について記載をしているところでございます。
1の検討の背景でも申し上げたとおり、人文学・社会科学が社会的課題に向き合い「総合知」の創出・活用に貢献していくためには、人文学・社会科学において厚みのある「知」の蓄積を図るとともに、社会課題やデータを様々な研究分野と共有し、学際的に協働する取組を促進することが必要なことでありまして、アクション事業を着実に実施するとともに、課題を踏まえた今後の在り方についての検討が必要だと考えております。
まず、そのために、先ほど御説明した、既に行っている2つの事業につきましては、これは令和4年度までの事業であるため、今後の在り方、事業終了後の在り方について、今後引き続き本人文学・社会科学特別委員会で議論していくということにいたしました。また、この既存の取組のレビューとともに、当面の新たな方策といたしまして、データサイエンスの手法を、人文学・社会科学の研究の新たな展開を開くために有効な手段として利用していくことで、いわゆる人文学・社会科学のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するということをここで提案しているところでございます。
特に最近の人文学の分野におきましては、「デジタルヒューマニティーズ」(人文情報学)と呼ばれる分野が欧米で拡大しており、デジタル化した大規模な学術データから、人間の手作業による従来の人文学研究では実現し得なかったデータ駆動型の分析によって、新たな知見が発見されるといったようなことがあるようでございます。
さらに、欧州では、これらを文化産業だとか観光、教育などに役立てるといったような構想も推進されるなど、社会の変革ともつなげられつつあるということのようであります。
一方、我が国におきましては、固有の歴史、文学、思想の研究資源・研究成果が潜在的に豊かであるにもかかわらず、デジタルデータ、特に解析に使えるような形での資料のデジタル化というものは、一部の機関や分野では進められておりますけれども、人文学全体に対する広がりというのは十分ではなく、また人文学と情報学の分野間の橋渡し人材もいないといったような課題があるところでございます。
そのため、人文学研究において「データ駆動型研究」を推進するに当たって、AI等による分析が可能なデータの作成や国際規格の導入、分析技術、人材育成など、情報学的なサポート体制の整備が必要であるということを指摘させていただきました。
加えて、人文学のみならず「総合知」の創出・活用につなげていくという観点から、例えば、古文書の記録を構造化データにして、そのデータと自然科学などの他分野のデータや現在のデータとを比較・統合するといったようなことを通して、例えば、地球温暖化だとか防災・減災、地方創生といった社会課題についても対応できるような異分野融合的なアプローチというのが望まれるのではないかということも記載させていただきました。
人文学分野におけるデータ駆動型研究の推進は、データや分析手法を媒介にして多様な分野の研究者との連携を促進するという性格を持っております。より開かれた人文学研究への転換を促すという観点から、人文学・社会科学における総合的なデータカタログの整備等と併せまして、「人文学・社会科学を軸とした学術知共創プロジェクト」とも通じる共通の方向性というものを持っていると考えられます。連携を促すという側面で、その意味で、積極的に推進すべきものであると考えております。
最後でございますけれども、人工知能技術の開発だとか社会実装、あるいは、脳科学の社会実装に伴うELSIなどの課題がある中で、Society 5.0の実現に向けては、人文学・社会科学に基づく価値の構想、あるいは、倫理的・道徳的配慮、「理念」の創出等が不可欠であります。また、第6期の基本計画において指摘されています「総合知」の重要性という観点からも、人文学・社会科学への期待は大きいと考えております。このような「総合知」の創出・活用に向けまして、「意味」や「価値」を探究する人文学・社会科学の真価がより一層主体的に発揮される方策につきましては、令和4年度までの2つのプロジェクトの今後の在り方の検討も含めて、引き続き検討していきたいと思っております。
以上でございます。よろしくお願いいたします。

【大野分科会長】 城山委員、どうもありがとうございました。
それでは、御質問を受けたいと思います。まずは、山本委員からお願いいたします。

【山本佳世子委員】 山本です。
この取組方針に基づいて、今回は概算の方で新しくデータ駆動型研究の人文学・社会科学研究が出されていると思うんですけれども、そこがどのような形でしたかしら。関係を含めて、よろしくお願いします。

【城山委員】 では、城山の方からお話しさせていただいて、補足があれば事務局からお願いできればと思います。
今、取組方針の中で御説明したことで言いますと、この中で、3ポツのところ、4ページ以降のところで、今後の取組方針というのを書いておりまして、ここで新しい方策というものを提案しているということになります。
若干この全体が分かりづらい構造になっていて、もともとワーキンググループの段階で3つ提案されたもののうち、2つは既に動いていますと。3つ目のものがまだ検討途中だったものなので、その3つ目のものについては、今回、この3ポツのところで具体的に検討させていただいて、それを当面の概算要求の中に入れていただいたということになっております。
これは前回御議論いただいた点ですけれども、総合知という大きな課題の前で、人文学・社会科学が何をやるべきかという、これは大きな課題としてあり、この全てをここで拾えるわけではありませんけれども、デジタルヒューマニティーズについてきちっと施策を整えてやるということは、まずは第一歩として必要ではないかということで書かせていただいて、これを受けて、具体的な概算要求項目として出されているという、全体の構造はそういうふうな形かと思います。

【河村学術企画室長】 続きまして、学術企画室、河村より御説明いたします。
令和4年度の概算要求に関しましては、資料1の10ページになりますが、データ駆動型人文学研究先導事業という名称で、令和4年度の要求として4億9,200万円(新規)ということで要求をしている状況でございます。
お手元の10ページに、細かい字で恐縮ですが、書いております、「総合知」創出に向けて、また、デジタルヒューマニティーズを日本でも強化するためにということが背景・課題とありまして、右下の方に行っていただくと、具体的にどう進めていくかということですが、1か所のデータ駆動型の推進拠点というものをまず1つ選ぶということ、ここが取りまとめ、指導、監督の立場として、データの規格、どういったテキストデータがいいのかを指導しながら、実際には14件ぐらいのプロジェクトを実施機関で進めていただいて、その進捗を推進拠点で測りつつ、また、実施機関の方でデジタル化及びDX、それから、分野融合・異分野融合の研究をしつつ、人材育成も重要ですので、大学院生等を活用した人材育成というものも進めながら、それを推進拠点の方で横展開、周知啓発等もしていきながら、データ駆動型の、特に人文学というものに関して進めていきたいという事業を要求しているところでございます。
以上です。

【大野分科会長】 ありがとうございました。

【山本佳世子委員】 ありがとうございます。

【大野分科会長】 それでは、続きまして、武内委員、お願いいたします。

【武内委員】 ありがとうございます。
この報告書については、このとおりだと思いますし、自然科学の知との融合による総合知の創出・活用が極めて地球的課題の解決に重要であるということは当然のことだと思いますが、私がやや気にしているのは、自然科学の知との融合に際して、対等な形で融合がより図られるような、そういう配慮というものが必要なのではないかという観点です。
例えば、私の最近の経験では、ICSUの自然科学系の国際学術組織と、それから、ISSCという社会科学系の国際学術組織が統合されたわけですけれども、その結果として、ISCというのが生まれて、今、新しい体制に向けて、人事の改正に向けて様々な議論が進んでいるわけですが、私たちが当初期待していたほど、自然科学と社会科学が融合されているというよりも、むしろ自然科学の圧倒的な数に今押されぎみで、本題としていたことがなかなかそのとおりになっていないということです。私自身もICSUの外部評価委員として関わったものですから、内心忸怩たるものがあるのですけれども。
例えば、インパクトファクターみたいな、今、自然科学で使われているような、そういう価値尺度で評価をしてみると、やはり人文・社会科学というのは、そうした評価では必ずしも十分評価されない。特にエシックスとかバリューとかノルムという、こういう非常に大事な社会科学・人文科学の役割を、もう少しこれを対等な形での評価基準の下に評価していくというような枠組みがないと、かなり先々、このようにして融合すると、もう一つ、副作用のようなものが出てくる可能性があるのではないかということを危惧しておりますので、その点についてどのようにお考えか、お聞かせいただけると大変ありがたいと思います。ありがとうございました。

【城山委員】 武内先生、どうもありがとうございました。まさに極めて重要なポイントだと思います。
恐らく、現段階では、まさにICSUの方は統合ということで踏み出したわけですが、マクロで見れば、これは少しずつインクリメンタリーに動いているということなんだろうと思います。つまり、総合知の話というのは大きい話としてあるわけですが、人社振興の枠組みで幾つかこれまでにもやってきたことがあって、その次のステップとして、人社振興の枠の中で新しいことを提案するというのが今回の提案なので、そこから枠から出て本当に正面から組むというところまでどこまでできているのかというのは、良くも悪くも限界があるところはあるだろうと思います。
ただし、次のステップとしては、そういうことをある程度きちっと考えることが恐らく必要で、そのときには、まさにその辺の評価基準の問題とか物理的な数の違いみたいなことを踏まえて、一体どういう形でうまく協力できる形をつくっていくのかというのは、まさに大きな課題ではないかなと思います。
もう一つは、その評価基準の話というのは、少しこれは具体的に途中でも議論されたことなんですが、大事なのは、人文・社会科学の中でも、それこそディシプリナリーな研究と、それから、今回理系との関係で言っているような分野横断的な研究があるわけですが、それの評価基準をどうするかですね。特に分野横断的な評価基準をどうするかというのは、1つの大きなポイントであります。
恐らく、単にインパクトファクターの高い論文が出るということではないよねということは確認をされているわけで、特に学術知共創プロジェクトにおいては、根源的な問いに対して答えるということを言っているので、じゃ、根源的な問いに対して答えるというのは一体どういうことなのかとか、それに対してどう評価するのかということをきちっとやらないと、人文・社会の中でも恐らくディシプリナリーな方に引っ張られていってしまうというところがあって、その理系との関係でのまさに評価基準という話と同時に、人社の中にもディシプリナリーな研究、それはそれで極めて重要なわけですが、それとこういう融合型の研究というのがあって、その中でどういう評価基準をつくることによってエンカレッジしていくのかということは、これはまた短期的にもすごく大きな課題だなと認識しておりまして、そのあたりのところを恐らく今後詰めていく必要があるのかなと思っております。
私からは以上です。

【武内委員】 ありがとうございました。

【大野分科会長】 恐縮ですが、大変時間が押してまいりましたので、最初の御質問ということで、梶原委員の御質問をお受けして、ここは終わりにさせていただきます。誠に申し訳ありません。
梶原委員、お願いいたします。御質問とお答えを是非短くしていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【梶原委員】 ありがとうございます。私からは質問というよりもコメントとなります。
学術知共創プロジェクトに一部参加させていただいておりますが、人文・社会科学の皆様から、こういう機会がないと出会えなかったとか、新たな気づきや仲間ができたという話を伺っています。人社系の中でさえも場がなくて、これまで割と単一的なことをやっていたということで、こうした場によって新しいつながり、新しい知見が出てくるということが見えてきておりますので、是非もっと増やしていっていただきたいと思います。また、そこからのアウトプットを社会に発信していくことで、認識を高めていくということが重要だと思っています。
人社系と自然科学系の橋渡し人材がいないということは、まさにそうかもしれないのですが、人社系の人から自然科学系の人たちを呼ぶ形で一緒になる場ができることで、誰が橋渡しをしなければならないか、あるいは、どういう人が必要かということが見えてきます。是非そういう機会も増やしていただきたい。産業界の立場からは、大学や研究員の方には橋渡し人材がいないからできないということではなく、自分たちがリスキルをして変わっていくのだという方向で考えていただきたいと考えております。

【大野分科会長】 ありがとうございます。
城山委員、よろしゅうございますね。先に進めさせていただきます。申し訳ありません。
それでは、続いて、議題(5)でございますが、「科学技術指標2021」及び「科学研究のベンチマーキング2021」に関して、科学技術・学術政策研究所より御説明をお願いいたします。

【菱山科学技術・学術政策研究所長】 よろしくお願いいたします。科学技術・学術政策研究所長の菱山でございます。資料5を使って御説明申し上げます。
まずページを開いていただきまして、科学技術指標とベンチマーキング、2つでございまして、まず指標の方は、毎年出しているものでございますけれども、科学技術活動について、客観的・定量的データに基づいて把握するための基礎資料ということでございまして、お金、人、イノベーション、そうしたカテゴリーに分類しております。ベンチマーキングの方は、論文数に関して深掘りをしたというものでございます。これらは8月11日に公表して、かなり報道でもされたというので、先生方も御覧になった方も多いかと思います。
4ページ目でありますが、主要国の研究開発費と研究者数ということで、どの国も伸びてきておりますが、日本の研究開発費の総額は3位ということでございます。それから、研究者数については、68万人強ということで、これは中国が今一番でありますが、日本は中米の次ぐ第3位の規模ということでございます。
それから、論文についてです。これは5ページですけれども、この10年間で日本の論文数は横ばいで、かつ順位は下がってきているというのは見えます。特に、注目度の高い論文数、Top10%の論文でございますが、これは質というよりは注目度が高いというものであります。幾つかのプレスで質という言葉を使っていますけれども、我々としては、注目度が高い論文という理解です。これについて、中国は1位になったということでございます。
それから、我々は論文数だけではなく、特許も見ていまして、これはパテントファミリーと言われる国際特許でございますが、日本は引き続き1位というものでございます。
それから、これは7ページ目ですけれども、科学と技術のつながりということで、パテントファミリー(国際特許)にどんな論文が引用されているのかというのを調べたものであります。各国のパテントファミリーで最も引用しているのはアメリカの論文だということでありまして、中国は論文の数が多いと御説明しましたけれども、パテントファミリーで引用されているものは少ない、自国の中国でも少ないということでございます。こういう傾向が見られるということであります。
次が、これは日本と米国がどこに技術を輸出し、どの国から輸入しているかというのを調べたものであります。これは額でありますが、ここに見られますように、日本の場合は相手がアメリカだということでございます。それから、アメリカ以外で、技術輸出は中国、技術輸入は英国が一番の相手先国というのが見られていますし、アメリカの場合は、技術輸入の相手先国の上位には中国は出ていないということでございます。
それから、商標も我々は調べていまして、こういったところが見られるということであります。
それから、主要国から米国への商標出願の特徴ということで、これは国ごとに特徴が見られるというものでありまして、日本は「化学薬品」や「輸送とロジスティクス」、中国は「家庭用機器」とか「テキスタイル-衣類とアクセサリー」が多いというのが見られているということでございます。
11ページは、商標と特許出願、この両方の相関を取ったものでありますが、日本だけが、ここに見られますように、特許が多くて商標が少ないというのが見られています。ほかの国は、商標と特許、両方とも多いというか、商標を多くしているというようなことが分かるということでございます。ここからのインプリケーションとしては、日本の方は新製品や新たなサービスへの導入という形での国際展開が少ないのではないか。これは去年も話題になったものであります。
それから、ベンチマーキングを申し上げますと、これは注目度の高い論文数における世界ランクの変動ということでございます。幾つかの新聞で出ていましたけれども、日本が9位から10位になったというものがあります。
それから、国際共著論文でありますけれども、10年前と比べると、10年前も共著論文が少ないのではないかという御指摘があったんですが、この10年間で10ポイントほど上がっているというものでございますが、ほかの欧米諸国はもっと上がっているというのが見られます。日本もかなり頑張って共著論文が増えたというものであります。
それから、中国との関係を分析したものでありまして、これは日中でありますが、年平均4%ぐらいでリニアに増加しているというのが見られます。現在、中国との共著は大体4分の1ぐらいになっていますが、これは米中を見ますと、こういう状況で、2000年に入ってからは直線的でありますが、それ以後、更に指数関数的に増えているというのが見てとれるということでございまして、2018年度段階で27.4%が中国との共著ということでございます。
それから、感染症だけ、2020年度も、まだ全部統計が出そろったわけではありませんけれども、新興・再興感染症についての論文を分析したところ、COVID-19関係については論文数の増加が顕著だということで、ここで見てとれるということでございます。ちなみに、こういう新興・再興感染症については、ある感染症のアウトブレークが起きた後に論文が増えるという傾向にあるということでございます。
それから、新型コロナウイルス感染症関係の論文の順位というのは、こういうものであるということでございます。科学技術の主要国以外についても、感染症数が多いとか、地域が上位に上がっているということが見てとれるということでございます。
簡単ではございますが、以上であります。

【大野分科会長】 どうもありがとうございます。
それでは、今の報告について御質問がありましたら、挙手をお願いいたします。一度目の御発言の方を優先させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
よろしゅうございますか。それでは、大変議論したい部分でもありますけれども、時間が押してございますので、次に移らせていただきます。ありがとうございました。
それでは、議題(6)でございます。第11期学術分科会の調査の現状について、御議論いただきたいと思います。資料6を御覧ください。
今期の最初の学術分科会において、資料にございます「第11期学術分科会の調査審議事項」をお示しし、これを中心に議論を進めるとされたところでございます。
まずは、この半年間の進捗状況について、事務局から説明をお願いしたいと思います。お願いします。

【河村学術企画室長】 学術企画室の河村でございます。本日までの会議の開催などの実績があったものについて、黒いポツで記載をしている状況でございます。では、上から順番に簡単に御説明いたします。
1つ目です。「学術政策全体について」につきましては、中期的な調査事項であることから、今後も引き続き検討を行うところでございます。ただ、総合知に関しましては、先ほど城山主査から取組方針の御説明があった進捗状況でございます。
2つ目の「大学共同利用機関の在り方」につきましては、今後、年度後半にも検討を行う予定となっているところでございます。
3つ目です。「共同利用・共同研究拠点及び国際共同利用・共同研究拠点」につきましては、黒いポツで記載されております、研究環境基盤部会共同利用・共同研究拠点及び国際共同利用・共同研究に関する作業部会において審議を継続中ということで、審議結果につきましては、本年10月公表予定という状況でございます。
4つ目でございますが、「研究費制度の改善・充実」につきましては、下の2つ目の白丸のところに黒いポツで記載しております、これまで2回会議を検討ということで行っておりまして、本年の3月においては、研究費部会における検討事項、また科研費の公募スケジュールの前倒し等についての議論がなされ、本年の6月には、国際共同研究支援の改善・充実、また若手研究者支援の改善・充実、そして、今後の基盤研究の在り方を議題とした検討がなされたところでございます。
最後の「人文学・社会科学の振興」につきましては、先ほど城山主査からも御報告ございました取組方針の取りまとめがあったところでございます。これまで6月に2回、人社の特別委員会においてヒアリングを開催して、取りまとめました。また引き続き人社関係、総合知に関しまして検討を続けていくところでございます。
簡単ではございますが、資料6の説明は以上となります。

【大野分科会長】 ありがとうございました。資料6を御説明いただきました。
半年間の進捗状況などを今御説明いただいたわけですけれども、今後の学術分科会における調査審議の具体的な論点や方向性などについて、最後に御議論いただきたいと思います。
今の資料6に関わることは何でも結構でございますので、御発言のある方は、「手を挙げる」ボタンで挙手をいただきますようお願いいたします。
神谷委員、お願いいたします。

【神谷委員】 共同利用・共同研究拠点についてですが、昨年伺ったところですと、連携拠点を重視するということでございました。ところが、一方で、連携拠点をやっても、場合によっては総額が下がる、あるいは総額は変わらないということでした。つまり、最良の場合でも、別々にやったときと同じということになります。これではインセンティブがない。連携拠点が非常に重要であるということに関しましては、私もそのとおりだと思っておりますけれども、連携拠点を形成するインセンティブがないと思います。この点を検討すべきだと思うのですが、この方向について、今、何か言えることがあればおっしゃっていただきたいと思います。

【大野分科会長】 いかがでしょうか。

【植木学術機関課長】 学術機関課長でございます。
先生、ありがとうございます。先生御指摘の部分については、私ども、問題意識として強く持っておりまして、今後、そういったいわゆるインセンティブの関係で問題が生じないように、中身を見直していきたいと考えております。また途中経過については御報告申し上げますので、取り急ぎ今申し上げられるのは、もう見直す方向で今検討しておるということでございます。よろしくお願いいたします。

【神谷委員】 どうもありがとうございました。

【大野分科会長】 それでは、続きまして、原田委員、お願いいたします。

【原田委員】 ありがとうございます。
今の資料6の2ページ目の上の方にも書かれておりますけれども、第2回の研究費部会で若手研究者支援の改善・充実について検討されているところでありますのと、それから、今日会議の資料全体を通じても、いろんな事業に人材育成というキーワードがちりばめられておりまして、いずれの事業においても人材育成の重要性というのがもう非常に明らかになっているところではあります。
一方、例えば、30年後、50年後といった長期的視点でこの人材育成というものを見たときに、今回御説明いただけた事業の中にちりばめられている人材育成が、果たして30年後、50年後、そういった長期的視点の人材育成につながるものがどれだけあるかなというところが、やや疑問に思えたというところであります。
CSTIの若手研究者支援パッケージの中にも、例えば、博士課程後期課程の学生の5割が生活費の支給が受給できるようにするという目標値が掲げられているところでありますが、5割というのは、やはりいかにも少ない。やっぱり30年後、50年後といった長期的視点の日本の研究力・開発力の維持のためには、欧米諸国並みに、全員に10割の生活費に該当する金額の支給ですとか、そういった大胆な、非常に若い時代からの人材育成というものに抜本的に取り組んでいくということも必要ではないかなと思います。
そういったことが、例えば、今まで就職に流れていた優秀な人材をよりこの研究分野に引き込むといったことにもつながりますでしょうし、研究の論文の右肩下がりといったことを食い止めたり、新しいイノベーションということにもつながっていくのかなと思うところです。
以上です。

【大野分科会長】 事務局からはいかがでしょうか。

【永田学術研究助成課長】 学術研究助成課長の永田でございます。
今、原田先生の御発言ありましたように、研究費部会の方では、今まで科研費を中心に、若手研究者支援・育成ということで、科研費での支援に携わってございましたけれども、今後、研究推進課ということで組織再編になりますので、そのほかも含めて、また科学技術・学術政策局の方が若手人材の育成の担当の窓口でございますけれども、そちらの方と連携して、また今後取り組んでまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【大野分科会長】 それでは、井関委員、お願いいたします。

【井関委員】 ありがとうございます。井関です。
今の原田委員のことにもちょっと関係しているんですけれども。若手研究者支援というのは、もちろん授業料の免除ですとか、生活費の援助ですとか、そういう金銭的、経済的な面でのサポートも必要だとは思いますけれども、よほど優秀でない限り、通常はやはりメンターというものが非常に必要な状況だと思います。ですので、若手への経済支援ということだけではなく、やはりメンターが、いわゆるメンターとして若手の育成に関われるような状況、研究環境を整備していただきたいなとは思います。いかがでしょうか。

【永田学術研究助成課長】 学術研究助成課長の永田でございます。
井関先生の方からの、メンターに対する支援も含めて、トータルでの支援の考え方という御指摘もございましたので、また引き続き研究費部会の方でも、そういった観点も含めて検討してまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【井関委員】 ありがとうございました。研究費というお金の部分ではないんですけれども、是非そういった研究環境整備をよろしくお願いいたしたいと思います。

【大野分科会長】 ありがとうございます。
それでは、小林委員、お待たせしました。

【小林委員】 ありがとうございます。
先ほどの科学技術・学術政策研究所の非常に丁寧な、また優れた報告書を拝見させていただきました。例年どおり、日本の論文数は増えていませんが、シェアは減ってきています。やはりその原因は根本的に考えていかなければいけないと思います。
1点は、アメリカも含めて、ほかの多くの国は、物価上昇率とは別に、サイエンス物価上昇率という指標を持っています。つまり、いろいろな機器は高度化していきます。当然、優れた人材を採るにも高度化する。ただ、なかなか日本は物価上昇率ベースなので、研究費についても、運営費交付金についても非常に厳しい状況にあります。大学共同利用機関の4機構17機関で言えば、やはり設備が高度化していくのにつれて、でも運営費交付金は増えないので、結局人を減らしているのです。相当数、この5年ぐらいで減ってきています。当然ながら、その論文というのは厳しい状態になっていくというのが、まずあります。
それから、科研は最近バイアウトが一部でできるようになりましたけれども、私、中国ではない外国の2つの大学の研究員もやっておりますが、そこは論文1本書くと幾らという、インパクトファクターに合わせて金額が決まってくるのですけれども、非常に強いインセンティブがあります。ただ中国はもっとすごいらしいのですけれども。そういう競争の仕組みというのも入ってこないと、なかなか難しいのではないのかなと思うのが1点です。
もう1点は、先ほどの共共拠点の連携のことで御指摘がありましたが、私も全く同意見で、具体的に言いますと、現在の仕組みは、50人の共共拠点と100人の共共拠点では、助成額は倍ではないのです。スケールメリットがあるからということで、減らされています。ところが、50というAと50という別のBが連携を組むと、100だからといって減らされるのです。連携を組むことが、コミュニケーションのコストがかかるだけでなくて、逆に減るのです。だから連携を組まない方がいいということになるわけです。その一方で、共共拠点の総数は増やさないというふうに決まっています。少なくともスケールメリットで削減するというのは、私はそろそろ見直すことが具体的な方法ではないかと思います。
以上です。

【大野分科会長】 どなたかお答えになりますか。

【植木学術機関課長】 学術機関課長でございます。
先生、ありがとうございます。共共拠点について御指摘、おっしゃるとおりでございまして。今おっしゃったように、いわゆる人数の関係で、スケールメリットで割り引くというような考え方、これについては御批判も多々頂いておりますので、そのあたりの考え方について問題点を洗い出して、今後適宜見直していきたいと考えておりまして、引き続き検討させていただければと存じます。
以上でございます。

【大野分科会長】 ありがとうございます。
以上で御発言されたい方は、手をお挙げになっていない方はいらっしゃいますけど、終わったのかなと思います。よろしゅうございますでしょうか。
私からも1点だけ。先ほど科学技術・学術政策研究所から、例年の指標、そしてベンチマーキングを御説明いただきました。このデータがどう資源配分に反映されるのか、ある種の仮説に基づいて資源配分に反映され、アウトカムを評価し次の資源配分につなげる、この全体のループというのが必ずしも明確ではありません。あるのかどうかもよく分からない状況なので、是非本分科会の審議の中で取り上げていくといいのではないかと感じています。これは御返答は要りませんので、是非意見交換をさせていただければと思います。
よろしければ、先ほど大変失礼いたしました。途中で打ち切ってしまいましたけれども、まだ御質問があったかと思います。
神谷委員は、今手は挙がったんでしょうか。

【神谷委員】 今、挙げました。すみません、さっき下げるのを忘れていまして。
ファンドについて質問したいのですが、よろしいでしょうか。

【大野分科会長】 はい。

【神谷委員】 ファンドについてですが、将来的には各大学で運用するということでございます。総額10兆円を前提としておりまして、例えば10大学とすれば、10分の1ですと1兆円、20大学とすれば、20分の1ですと5,000億円ですか。そうすると、将来的には5,000億円とか1兆円という額を、各大学というか、主要な大学は運用しなくてはいけないということになるわけです。これは一体何を元手と考えているのかお伺いしたい。財政融資を使うことができればもちろんあり得るとは思いますが、そうではなくて自前で用意するとなると、ものすごく大変な額です。1兆円などというのは、しばらく先のことであるとしても、相当大変だと思います。どういうことを想定されているかをお伺いしたいと思います。

【植木学術機関課長】 恐縮です。学術機関課長でございます。
先生、御指摘ありがとうございます。実は、私どももそのあたりのことを非常に課題が多々あるものと考えております。と申しますのは、やはり額的にも非常に大きいものが、途中までで、その後は大学が自主的によろしくねといったところで、すぐにどういう財源で、どういう形で運用していくのかというのが全く見えていない状況ではございます。
ただ一方で、やはり今回の大学ファンドというのが、将来的には大学の自律的な運営というのを目指しているという部分については、これはそのとおりであろうと考えております。
従いまして、1つは、その大学の自立の部分にシフトする際に、それまでファンドの運用益で支援してきた部分のその支援額というものがどういうふうに精算されるのかというのを検討していかなければいけないのと、それから、もう一つは、大学が自律的にやっていくに当たっての財源、あるいは、その使途といったようなものについて、改めて整理し直す必要が出てくるだろうと考えております。それも実は並行して検討課題として検討させていただいておりますので、またその際、改めて御相談、御検討いただくことがあろうかと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
以上でございます。

【神谷委員】 どうもありがとうございました。

【大野分科会長】 それでは、山本委員、お願いします。

【山本佳世子委員】 山本です。ファンドの件なんですけれども、3%の事業成長という、対象となる大学に求めるところなんですけれども、この3%というのは、どういう収入を増やすかというところです。
当然、資金運用や土地運用というのは入るでしょうし、寄附も入ると思うんですけれども。企業からの資金と言いますと、研究費というものと寄附みたいなものでは大分性質が違いますし、恐らく国からの研究費というのは事業成長には入っていないのではないかとか勝手に判断しているんですが、そこをお願いいたします。

【大野分科会長】 学術機関課長、お願いします。

【植木学術機関課長】 学術機関課長でございます。
ありがとうございます。基本的に、この3%というのは事業成長ということで、全体の額としてでございますので、いわゆる収入については、全て加味して計算をさせていただいております。どういう形の収入であるのかというものを問わない形で、全体の収入枠としての設定でございますので、そのあたりを踏まえて検討をさせていただければと考えております。
以上でございます。

【山本佳世子委員】 ありがとうございました。

【大野分科会長】 それでは、五神委員、お願いいたします。

【五神委員】 東京大学の五神です。
今の点に関係して、基金で支援する大学に求めることとして、3%の成長という事が紹介されましたが、この成長の前提にしている世の中全体の経済システムとその中での大学の経営モデルそのものについて良く考える必要があると思います。今、コロナ禍の中で、欧米の強い大学、特に市場化が進んでいる大学では、経営モデルの転換を迫られています。私が総長任期の終盤に2年間議長を務めた、国際研究大学連合IARUという、世界の研究大学の学長の集まりがあります。そこで、例えばバークレーの学長から、コロナの中で年300億円規模の赤字が出たという話を聞きました。つまり、学生を客として考える市場化のモデルが行き詰まっているということです。アメリカであっても、大学における人材育成は公共的な性質が強く、市場化モデルによる経営化が行きすぎたとの認識が広まっています。大学以外の公共を支える活動を行う分野でも、NPO的なセクターについて、もう少し積極的に経済活動に関わる主体として機能できるようにするにはどうしたらいいかということが議論されています。
つまり、公共を支える役割を担う組織を積極的に取り込めるような経済システムをどう新たに創っていくかを同時に考えないといけないのです。基金だけを切り出して議論したのでは、40年スパンでこの基金をどう活かして社会を変革するのかという本来の目的とは違ってしまい、モデルが狂ってしまいます。
国立大学法人法というのは、法人化の際に、自律的な経営体になることを前提にした法律の立てつけにはなっていないので、そこにもやはり大きな齟齬があるわけです。基金について、投資運用をする場合には、そのお金がどういうものに使われるか、どのくらいのスパンでどの程度のキャッシュアウトを目指すかということと連動して基金の運用の効率も変わってきます。つまり、趣旨にそった上で、効率の良いリターンを求めるためには、投資運用に際しても、その事業が何を目指すのかを明確化した上でお金の性質を説明しないといけないので、そこができていないと本末転倒になってしまいます。
ですから、返すのはまだ先だから後で考えればいいという話ではありません。やはり立てつけのところから、自律的な経営体が、社会の公共的なものを、経済合理性を持って支えるにはどうしたらいいかということをしっかり議論する必要があって、そういう議論がまだできていないのではないかということが大変心配です。
ただ、社会全体が知識集約型に大きく転換する最中ですので、私は、ソリューションはあると考えています。つまり、拡張主義的な経済成長モデルが破綻する中で、経済がしぼむのではなく、新たな成長の機会をみんなでどう作るかを考えることで、このプログラムが合理的な形に収まっていくだろうと思っています。これは、産業界も含めて渇望していることなので、その知恵を一緒に出す機会にするというような前向きな取組が是非このタイミングで必要ではないかと思います。
以上です。

【大野分科会長】 学術機関課長、お願いします。

【植木学術機関課長】 学術機関課長でございます。
御指摘ありがとうございます。先生おっしゃるとおりでございまして、コロナの関係でありますとか、それから3%の成長、あるいは、新たな成長の機会をどうつくっていくのかという観点、これは、要は、大学が自立する際のことについては後で考えよというような本末転倒のところ、これは誤解が生ずるような御説明を申し上げまして大変恐縮でございます。
それらを含めて、私どもの方で並行して、内閣府と私どもとJSTの方で相談をしながら、いろんな課題について今検討を進めているところでございます。その中でも、引き続き先生方からもいろんな御指摘、御示唆を賜りまして、いろいろとまた御相談を申し上げていきたいと考えておりますので、また引き続きよろしくお願い申し上げます。
以上でございます。

【大野分科会長】 それでは、岸村委員が手を挙げておられますので、岸村委員、そして、その次に手を挙げているのは林科学官ですね。林科学官、そこで時間切れにもうなりつつありますので、今回の分科会は終わらせていただきたいと思います。
それでは、岸村委員。

【岸村委員】 ありがとうございます。私の方からは、議題(4)、人社系の話で、城山先生に伺いたいんですが。
資料4の1ページ目に、3つ目の丸の下から3行目のあたりにもあるんですが、「総合知」に関して、基本的な考え方やその創出・活用を戦略的に推進する方策を取りまとめるというのが書かれていて、今回、人社系の振興ということで、それは非常に大事な課題で、取組を進めるのは非常に大事だと思うんですが。先ほどから総合知というのが大きな課題であるという話はある中で、その基本的な考え方というのを一体どこでどのように取りまとめていくのかというのは、先生自身どのように思われているのかというのを伺いたいと思います。
この点、若手アカデミーでもちょっと話したんですが、やはり人社系、あるいは理工系でちょっと考え方も変わるでしょうし、ある程度すり合わせがないと、融合していくというときにもあまりお互い幸福になるような状況にならない。そういう意味で、先ほどの武内先生の質問とも関係するのかなと思っています。
また、今後も政策がいろいろ打たれる中で、いろんな局面で総合知の解釈がぶれてきたりしますと問題も生じるでしょうし、そもそも総合知って何だったんだっけというような話にもなってきてしまうのかなと思うのですが、その点について、今どのような見解をお持ちであるかを教えていただければと思います。

【城山委員】 城山です。この点、必ずしもまだ十分議論できていないので、私の私見的な側面がかなりあろうかと思いますけれども。
総合知について、恐らく最終的には、この学術分科会全体というのも当然考えるべき大きなアクターだと思います。ただ、そのときも、そこに委ねるということはできなくて、やはり人社の特別委員会としてきちっと考えるということは必要であろうというのが私の思いです。
今回はとりあえず新しく概算要求を出すということもあり、デジタルヒューマニティーズをベースに、できることがまず書かれているわけですけれども。恐らくもうちょっとそもそも論の話も含めて人社の中でやって、その上で、既存のプログラムを改定するときどうやって生かしていくのかとか、あるいは、理系の方々とどうやって対話するのかということを、まさにおっしゃっていただいたように、やる基礎作業というのは必要だなという感じは私個人としては持っています。
そういうことも踏まえて、今後、人社の特別委員会の方で、どういうふうにアジェンダの設定と運用していくかというあたりは、事務局等とも、あるいは委員の方々とも御相談しながら進めていきたいと思っております。
以上です。

【岸村委員】 ありがとうございます。
今回の内容、とても良いとは思うんですけれども、手段に偏っているのかなと思いますので、是非その議論を進めていただければと思います。ありがとうございました。

【城山委員】 はい。同じ思いでございます。

【大野分科会長】 本分科会のテーマとしても極めて重要な御示唆に富んだ御意見だったと思います。
それでは、林科学官、お願いいたします。

【林科学官】 京都大学の林でございます。よろしくお願いいたします。
先ほどのNISTEPの方からの御報告ですと、4ページにありますとおり、日本の科学技術の研究開発費というのは、実はアメリカ、中国に次いで3番目であると。それは意外と多いというのに気がついたんですけれども。ドイツ、それから、そのほかの国が続きますけれども。一方で、5ページ目に行きますと、トップジャーナルのパブリケーションへ行くと10位になってしまうと。要するに、お金が有効に利用されていないということになるんですね。実は、財務省もそういうふうに言っていると。日本の大学はお金をやっているのに、プロダクティビティが高くないと。それは個々の研究者は一所懸命やっているけれども上がらないのか、それとも、何か構造的なものがあるのか。その辺の何か分析をしていただければと思います。私からは以上です。

【大野分科会長】 それも今後の学術分科会で議論することになろうかと思います。どうもありがとうございます。
時間が過ぎてしまいました。どうも議長の不手際で、誠に申し訳ありません。
最後の議題に関しましては、次回の科学技術・学術審議会の総会で、本分科会の調査審議事項について、分科会長として御報告させていただきます。
最後に、事務局で連絡事項があればと思いますが、あと、審議官がいらっしゃっていれば、御挨拶いただくという予定になっていたかと思いますので、よろしくお願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】 事務局より申し上げます。
まず冒頭に申し上げました事務局の異動に関しまして、審議官を紹介させていただきます。大臣官房審議官、坂本でございます。

【坂本審議官】 坂本です。本日も貴重な御議論、御意見いただきまして、誠にありがとうございます。引き続き、是非御指導をよろしくお願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】 続きまして、連絡事項でございます。
次回の学術分科会の日程につきましては、日程調整の上、改めて連絡させていただきます。また、本日の議事録につきまして、後日メールにてお送りいたしますので、御確認をお願いいたします。
御退席の際は、画面下の赤色バッテンのボタンから御退席願います。
以上でございます。ありがとうございました。

【大野分科会長】 それでは、これで閉会いたします。どうもありがとうございました。

お問合せ先

研究振興局振興企画課学術企画室

(研究振興局振興企画課学術企画室)