学術分科会(第80回) 議事録

1.日時

令和2年9月4日(金曜日)16時00分~18時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 最近の科学技術・学術の動向について
  2. 新型コロナウイルス感染症対策に係る対応等について
  3. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員)
西尾分科会長、須藤分科会長代理、甲斐委員、栗原委員、小長谷委員、白波瀬委員、辻委員、観山委員、家委員、井関委員、岸村委員、喜連川委員、小林傳司委員、小林良彰委員、小安委員、城山委員、新福委員、武内委員、永原委員、鍋倉委員、松岡委員、山本佳世子委員
(科学官)
平野科学官、木津科学官、森口科学官、三原科学官、鹿野田科学官、吉江科学官、渡慶次科学官、黒橋科学官、大久保科学官、長谷部科学官、寺﨑科学官、林科学官、東科学官、加藤科学官、長壁科学官、渡部科学官

文部科学省

杉野研究振興局長、橋爪参事官(情報担当)、西村文教施設企画・防災部計画課整備計画室長、楠目人材政策課人材政策室長、錦学術企画室長、小久保学術機関課学術研究調整官、岡本学術研究助成課企画室長、根津人材政策課課長補佐、二瓶学術企画室室長補佐、田村国際戦略室室長補佐

オブザーバー

原田科学技術振興機構研究開発戦略センター科学技術イノベーション政策ユニットリーダー、澤田科学技術振興機構研究開発戦略センター海外動向ユニットリーダー

5.議事録

【西尾分科会長】  皆さん、こんにちは。それでは、定刻となりましたので、ただいまより第80回科学技術・学術審議会学術分科会を開催いたします。
 まず、本日の分科会のオンライン開催に当たりまして、事務局から注意事項がありますので、お願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  事務局でございます。本日は、オンラインでの開催となりますので、事前にお送りしておりますマニュアルに記載のとおり、御発言の際には、「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、指名を受けましたら、マイクをオンにし、お名前を言っていただいた上で御発言いただければと思います。なお、分科会長以外の皆様は、御発言されるとき以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 機材に不具合等ございましたら、マニュアルに記載の事務局連絡先まで御連絡ください。
 また、本日の会議は、傍聴者を登録の上、公開としております。
 以上でございます。
 
【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 初めに、本日の出席状況について、事務局から御報告をお願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  本日は、委員30名中、現時点で定足数である15名以上御出席を頂いております。
 また、本日は、議事に関する御説明を頂くに当たり、科学技術振興機構研究開発戦略センターから原田科学技術イノベーション政策ユニットリーダーをお呼びしております。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 事務局の異動につきまして、御報告等をお願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  7月28日付で研究振興局長に杉野が着任しております。前回分科会は公務のため欠席でございましたので、本日一言御挨拶させていただきます。よろしくお願いします。

【杉野研究振興局長】  杉野でございます。7月の末に研究振興局長に着任をさせていただきました。先生方には大変お世話になりますけれども、どうぞよろしくお願いをいたします。
 新型コロナの中で、各大学・研究の現場は大変な状況だと思っております。私ども、様々な形で研究活動が滞ることのないようにバックアップに努めていきたいと思っておりますし、また、こういう社会的な危機が起こるたびにやはり学術の大切さを痛感しております。先生方にはどうぞ学術の発展のために御審議を深めていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【西尾分科会長】  杉野局長、丁寧なる御挨拶、どうもありがとうございました。心よりお礼申し上げます。今後ともどうかよろしくお願いいたします。

【杉野研究振興局長】  こちらこそよろしくお願いします。

【西尾分科会長】  それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  本日、オンラインでの開催となりますので、資料は事前に送付させていただいております。本日の主な議題に係る資料に関しましては、お手元の議事次第にございますとおり、資料1から資料3としてお配りさせていただいておりますが、議事の中で取り扱いますので、ここでの説明は割愛をさせていただきます。なお、資料2-5につきましては、委員の皆様から事前に頂いた御意見となります。勝委員、家委員、五神委員より御意見を頂いておりますので、適宜御参照いただきたく存じます。なお、このうち、今回御欠席の勝委員、五神委員の御意見につきましては、後ほど議事の中でも御説明をいたします。
 次に、参考資料につきまして、参考資料1から参考資料4-2までお配りしております。参考資料2-1、2-2、2-3、2-4につきましては、前回、前々回の分科会にて資料としてお配りしているものでございます。議題(2)における議論の御参考として改めてお配りさせていただきました。
 参考資料2-5につきましては、科学技術・学術審議会人材委員会の委員の皆様から、学術分科会の提言骨子案について意見を提出したいとの御提案がございましたので、御意見をまとめた資料となります。今回御議論いただく提言案は、人材委員会委員の皆様の御意見も踏まえたものとさせていただいております。
 参考資料3は、8月7日に公表された「科学技術指標2020」についての資料でございます。日本及び主要国の研究活動状況を調査した結果となり、今回は新型コロナウイルス感染症に関連したコラムも含まれておりますので、参考までに配付させていただきました。
 参考資料4-1及び4-2は、次期基本計画となる第6期科学技術・イノベーション基本計画に向けて、総合科学技術・イノベーション会議基本計画専門調査会において取りまとめられている資料でございます。
 資料の説明は以上となります。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、議事に入ります。本日の議題は議事次第に書いてあるとおりでございますが、最初の議題としまして、最近の科学技術・学術の動向ということで、後の議題(2)とも関連しますが、海外の科学技術イノベーション政策に見るCOVID-19への対応状況について、JST研究開発戦略センターの原田ユニットリーダーより御説明を頂きます。これは前回のこの委員会で、国際的な動向がどうなっているのかということをまず知る必要があるのではないかという御意見を頂きましたので、その御意見に従いまして、今回原田ユニットリーダーにお願いした次第でございます。それでは、よろしくお願いいたします。

【原田JST/CRDS科学技術イノベーション政策ユニットリーダー】  御紹介にあずかりました、JST研究開発戦略センターの原田でございます。ちょっと資料を共有させていただきます。では、この資料の画面に沿って説明させていただきたいと思います。
 今回の説明は、幾つかの角度から資料をまとめたものです。1つはファンディング、それから、2番目が情報発信/科学コミュニケーション、それから、国際協力、デジタル化、最後に、まとめという意味で全体的な考察という順番で資料をまとめさせていただきました。今回配付いたしました資料の後半には、COVID-19対応の科学技術動向ということで、主要国――日米、EU、イギリス、ドイツ、フランス、中国、各国の動向を各一、二枚ずつまとめたものがございます。今日は時間が制約されておりますので、後半の資料の部分については説明を割愛させていただきます。
 それから、今回の説明に用いました情報源でございますが、我々CRDSが常日頃参照しております主要国の政策官庁のホームページの公開情報、こういうところを中心としておりますが、今回COVID-19の特別なサイトということで、OECDにこういう科学技術政策をウオッチするアンケート回答調査のサイトがございますので、そこの公開情報も参照させていただいております。このOECDのサイトには、現在のところ38か国の協力を得て、各国の科学技術政策の状況がアンケートの回答として寄せられております。それを参照させていただいております。
 最初にお断りなのですけれども、COVID-19につきましては、各国ともすごく激しく動いておりますので、私たちもそれに追随して調べてはおりますけれども、大体今年の6月から7月にかけての情報をこの資料の中でまとめております。ですから、8月などごく最近の情報は必ずしも反映できておりませんので、あらかじめ御了承ください。
 最初に、ファンディングにつきまして御説明いたします。ファンディングは、どういう分野で今回のCOVID-19について強化した分野があるかという説明です。まず緊急度の高い順番ということで、当該危機対応に直接関わるような分野です。まず検査診断・治療・予防・ワクチン等の研究開発、こういった分野への公募がまず第1優先で出ております。その他、医療用品に関する製造・調達、それから、検査・治療・予防の運用を迅速化するための技術、こういったテーマについての公募が真っ先にまず出ております。
 それから、やや周辺の領域も含めて公募が出ておりまして、危機対応全般に関わる分野ということで、情報収集・解析の迅速化――例えば個人とか集団の行動情報、それから、バイオデータを収集する、こういう技術開発に関わるテーマ。それから、全体の計画・意思決定を支援する方法、それから、フェイクニュース等を含めた誤った情報をSNSの中から迅速に検出するような技術、こういうものについて、周辺分野のテーマということで募集がかけられております。
 それから、そういう直近のテーマではないですが、やや中長期的な対応、ポストコロナ、ウィズコロナの時代に合わせて危機対応を準備しておくようなテーマということで、社会経済的影響の把握とか、市民生活・経済の復興、こういうものに関わるようなテーマ。それから、国際的な連携を深めるためのコンソーシアムあるいはそれに必要なプラットフォームの作成、それから、デジタル・ソリューションに関わるようなテーマ、こういうものについても、中長期対応に関わる分野ということで公募のテーマが挙がっております。
 ざっと見ていただいて分かるように、各国では比較的早い時期、3月とか4月の時点からこのような周辺分野まで目配りしたような投資が行われているということです。特にデジタル・ソリューション、それから、社会技術等の活用が重視されているという傾向が見てとれました。
 翻って、日本の科学技術予算ですけれども、これは4月と6月の2回の補正予算でこのような規模の科学技術投資が行われております。第1次の補正予算では特に目立つのが、学校のGIGAスクール構想、ここに2,290億が計上されているというのが非常に目立つ金額でございます。2次補正ではやっぱりワクチンの早期実用化、学校の段階的再開への対策費用、こういうものが計上されている。これが日本の予算の傾向でございます。
 それから、どのような方法でファンディングを行うかということで見てみますと、全く新しくCOVID-19対応のために公募をかけるというようなものが今、比率としては一番多く見られました。各国いろいろやり方がありますけれども、例えばCOVID-19に対応する公募のポータルを1つのところにまとめてしまうという例がたくさん見られました。
 それから、運用を柔軟化するという動きも見られまして、既にもう獲得している研究資金を振り替えるとか、あるいは危機対応に向けて振り向ける、こういうことを許す、こういう柔軟化の動きが見られました。それから、既存ファンディングの転用。それから、応募状況に応じて、規模とか採択内容をその都度変更するというような柔軟な対応も行っているようです。それから、いつでも応募していいよというようなファンディングもございます。
 それから、国際機関とかを通じたファンディングも幾つか見られます。例えばドイツとかEUの、皆さん御存じのCEPIを支援するようなファンディングとか、あとは、これは産業界も交えた話ですけれども、アストラゼネカの共同研究にアメリカのBARDAが金銭的な支援を行う、こういうような国際間のつながりもかなり強く見られております。
 ですので、目前の危機の長期的な影響や将来の類似脅威に備えるファンディングというのが目立つ動きでございます。全体としては、国家戦略を各国ともかなり強く意識しているということです。国際社会の科学技術政策に貢献・先導できるような情報発信や行動の仕組みも必要だろうという考察を出すことができます。
 ファンディング全体については、先ほどのOECDの調査で暫定的な数字は出ております。ただ、これは調査中で、各国から報告ベースで上がってきた金額を積み上げておりますので、実際よりもかなり少なめに出ているグラフだと解釈してください。このグラフでは、6月23日時点で8ビリオンダラーぐらいの投資が行われているという状況が見てとれます。
 次に、情報発信/科学コミュニケーションにつきましては、各国の文化的・社会的な背景にはそれぞれ特色がありますので、アプローチがそれぞれ違っていると言えます。
 まず正しい知識を伝達するということを優先している国、それから、多民族国家なのでたくさんの言語でアピールするというような国もございます。それから、状況に応じてアドバイスを的確に行うということで、例えば真ん中に書きましたように、カナダの、薬物使用者がCOVID-19にかかったときにどうするかと、こういうものがお国柄が出るところでございます。また、先ほども出ましたように、偽情報や誤った情報を迅速に検出するということに各国かなり気を遣っているようでございます。
 考察としましては、政府自らが複数のメディア手段を使って公式見解を常に発信し続けており、特にSNSをうまく使っているという傾向が見られます。また、少数民族等に対応した多言語対応、あとは情報弱者への対応、こういうところもかなり各国は気を遣っているようでございます。
 それから、国際協力につきましては、これは以前からの取組も含めて列記しておりますけれども、皆さん御存じのSOLIDARITY、それからGloPID-R、こういう国際協力の連携の中に各国が参加をしております。ここで言うのは、日本の場合を見てみますと、ネットワークへの参加だけではなくて、率先して組織づくりの中心になるようなことも必要ではないかというようなことが見てとれます。例えばアジア圏とか大洋州のネットワークづくりにも日本であれば貢献できそうな、そういった状況ではないかと思います。人、情報、それから、ファンドのネットワークもそれぞれ動いている状況です。
 デジタル化につきましては、主なものだけ挙げさせていただきました。これは後半の資料類、資料集の中から抜いたものでございます。EUですと、ロボティクスのヘルスへの応用とか、あとは、サイバー防御強化、こういうところに相当のお金をつぎ込んでいる。イギリスですと、全体としてデジタル化、それから、経済データを使うというところがお国ぶりが出ているというふうなところが見てとれます。ドイツの場合は、「未来パッケージ」という施策に全部詰め込んでいるような状況でございます。エネルギーの転換のリアルラボとか、AI研究、こういうところにドイツはお金を投入しております。フランスもやはりAIを重視しております。アメリカは、施策としては特に目立ったものは見えないですけれども、先ほど言いましたように、研究コミュニティとかIT企業に対してデマの拡散対策への協力を呼びかけるというような施策を出しております。日本は先ほどの補正予算でGIGAスクール構想等を実現するという方向が見えております。
 デジタル化そのものは、COVID-19に直接対応するものではないですけれども、ポストコロナ、ウィズコロナの社会とか産業にとってデジタル化というのは非常に重要なキーであると言えます。こういうところで各国が各様の特徴を出した施策を打っているという印象でございます。
 全体的に眺めてみますと、COVID-19に直接対応することも非常に緊急を要しているのですけれども、各国はそれぞれやっぱり自分の産業とか社会構造をこのチャンスに変革しよう、特にデジタル化を加速させようという動きがかなり強く見えるようでございます。これは主要国に限らず、コロンビアとかカナダとかベルギー等もかなり力を入れてデジタル化等にお金を投入しております。
 それから、もう一つは、COVID-19対応は、そのまま途上国の支援の強化につながるということです。特にヨーロッパは、旧植民地系とのつながりもありますので、そういうところの強化を深めております。それから、域内――欧州の内部、それから、南北アメリカの内部での情報共有もそれぞれ進めておるようです。
 それから、中国との協力関係も気になるところですけれども、二国間協定でかなり国ごとに中国とつながりを持っているところが見えました。日本ですと、産業界のサプライチェーンの見直しが進んでおりまして、経済産業省の補助金2,500億円等がこの春に投入されております。
 皆様よく御存じの日本が今置かれている状況ですけれども、国際的な動きがこのCOVID-19によってかなり大きく変化を受けております。それから、COVID-19によって、我々の社会のインフラのぜい弱性というのが改めて露呈してしまったのではないかと言えます。その間に挟まって、産業界は売れていたものが売れなくなる、サプライチェーンの再編成等、大きな変動を受けている状況でございます。
 まだこれは途中ですので、これから各国の状況を見ていく必要があると思いますけれども、国際社会における役割をきちんと果たすということと、それから、自分の国を支える基幹技術をいかに守っていくかというところがこれからの大きな課題ではないかと考えております。
 私からの説明は以上でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。各国の動きを御紹介いただきまして、最後の11ページで日本が置かれている状況、さらには全体的な考察に関する貴重な御意見を頂きまして、どうもありがとうございました。
 それでは、原田ユニットリーダーへの御質問とかございませんでしょうか、何なりと。
 辻委員、どうぞ。
 
【辻委員】  辻(つじ)でございます。どうもありがとうございました。大変参考になるお話でした。
 ファンディングの話がございましたけれども、その中で気になりましたのは、3.11の大震災がありましたときに、学術会議のほうからいろいろな事象、あるいはどんな対応をしたかといったようなアーカイブ、記録をしっかり取っておこうというような提言をしたことがございます。例えば今回のこのCOVID-19の際にファンディングをいろいろな方面でなされているというお話がございましたけれども、そういった各国の対応状況、どんな準備をして、どんな初動をして、どんな対応をしたからその影響がどうであったかといったような全体の歴史の記録を取っておくというようなことに対するファンディングがあったかどうかといった辺りについて、もし情報をお持ちでしたらお教えいただけませんでしょうか。

【原田JST/CRDS科学技術イノベーション政策ユニットリーダー】  記録を残す、アーカイブに関する投資というのは当然含まれているというふうに私は予想します。個々にどの国のどのファンディングのプログラムの中にそれが埋め込まれているかというところまではまだ追跡しておりません。今回私のほうから皆様に御説明したものは、こういう枠組みの中でお金を幾らぐらい投資しますよという、まだ計画の段階のものがかなりありまして、それがどういう公募を経て、どんなプログラムが採択されたかまではまだ答えが出ていない状況でございます。多分公募の幾つかの中には、そのアーカイブ、特に人文系の方々が気にされているアーカイブ作りについての採択も含まれてくるのではないかと私は予想しております。ただ、実態としてどんなプログラムが採択されたかまではまだ捕捉はできておりません。

【西尾分科会長】  辻委員、よろしいですか。

【辻委員】  どうもありがとうございました。非常に大きな変革のときを正に迎えているときだと思いまして、そういったところにもしファンディングがあるとしたらすばらしいことだなということで質問をさせていただきました。どうもありがとうございました。

【原田JST/CRDS科学技術イノベーション政策ユニットリーダー】  少し補足でございますけれども、公募でファンディングがついたかどうかはまだ分かりませんけれども、例えば科学助言の国際的なコミュニティが、積極的にアーカイブを残すべしと言っています。具体的にはどんな活動をするのがいいのかというような議論もコミュニティの中ではされているようでございます。参考までに。

【西尾分科会長】  ほかにございませんでしょうか。

【小林傳司委員】  小林でございます。

【西尾分科会長】  小林傳司先生、どうぞ。

【小林傳司委員】  今日は原田先生、どうもありがとうございました。全体非常によく分かったのですが、理工系科学技術、医工系に少し偏っているような感じがするのですが、やはり学術全体ということを考えると、スコープをもう少し広げてもいいような話が最近出始めているような気がいたします。
 資料の中では、社会技術が大事だというようなこともお書きになっていましたが、日本でも社会技術開発センターのほうでCOVID-19に関する臨時のファンディングはもう既に行って採択もいたしました。それから、AMEDのほうでもそういうものをやっておりました。
 それから、最近ですと、OECDなどを中心として、多分ヨーロッパ型の発想だろうとは思うのですが、デジタル・トランスフォーメーションを同時にグリーン、つまり、環境の問題と結びつける、グリーン・リカバリーというふうな形の議論が進んできています。こういうふうな考え方の場合には、持続可能な社会への移行のチャンスとしての一種の移行マネジメントみたいなものも議論していくべきであるというので国際的な議論が始まっているようです。日本もそういう問題群も視野に入れていくということがこれから大事ではないかと思いますので、少しコメントさせていただきました。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  どうも貴重なコメントありがとうございました。原田さん、どうでしょうか。

【原田JST/CRDS科学技術イノベーション政策ユニットリーダー】  小林先生のおっしゃるとおり、もう科学技術イノベーションというものの、理系だけではなくて、人文・社会系の人方が一緒にやっぱり社会課題の解決に取り組まないといけないような時代で、特にCOVID-19の対応においては、技術先行というよりは、本当に社会課題が何であるかということをはっきりとつかめる人たちを一緒にグループにしないとうまく進まないだろうというのはいろいろなところから声が上がっておりますので、そういう面からでも調査をこれから継続して行っていきたいと思っております。

【西尾分科会長】  どうも貴重な御回答を頂きまして、ありがとうございました。
 武内委員、どうぞ。

【武内委員】  武内です。今の御質問と重なるのですが、この間、特に国連の関係の様々な会合に出ておりますと、コロナと気候変動を今、人類社会が抱える大きな2つの危機だと捉え、そして、その2つを組み合わせることによって、ポストコロナを気候変動対策をはじめとする地球環境問題への大きな社会変革の機会だというふうに捉えるというような考え方が非常に強くなっております。昨日も小泉環境大臣が主催した国際会議でグテーレス事務総長がそのような話をされておりました。
 そのような中で、今日の資料の中で私が一番注目しているのは、グリーン・ディールというEUの考え方で、EUの考え方というのは、正にそれを、実際にお金を付けて進めていこうということです。私はそこから先はまだよく承知していないのですが、多分グリーン・ディールを推進するためのやはり科学技術に関わる研究費がかなり確保されているのではないかと思うのですが、その辺りがどうなっているかもしお分かりになれば教えていただきたいということです。
 他方、それに比べると、日本におけるコロナの後の様々な科学技術の議論の中で、そのようなつながり方が非常に弱いというか、実際に気候変動対策の費用はほとんどポストコロナでは入っていないというのが日本の状況で、これは科学技術の研究予算ではないのですが、どのぐらい予算を使っているという統計がありまして、それを見ると、日本は環境省が出しているのがごく一部であるということで、世界的にいうとポストコロナと今の地球環境政策とのつながりが非常に弱いというのがむしろ日本の特徴だというふうに私は考えざるを得ないなと思っております。
 昨日も実は韓国での会議に出たのですが、韓国はむしろ今のような考え方で、彼らはグリーン・ニューディールというふうに言っておりますが、ポストコロナをつなげるということでやっておりますけれども、その辺り、国際動向を踏まえて日本のあるべき姿というものについてどのようにお考えかということも併せてお伺いできればと思います。
 以上です。

【西尾分科会長】  ありがとうございました。原田さん、できましたら簡潔にお答えいただけますとありがたく思います。

【原田JST/CRDS科学技術イノベーション政策ユニットリーダー】  あまり詳しくプログラムの名前までは存じないのですけれども、グリーン・ディールにつきましては、欧州はHorizon2020もやっておりますし、それから、次期のHorizon Europe辺りでのプログラムでは、グリーン・ディールをかなり大きな柱として取り上げておりますので、先ほどファンディングの状況の中で、ど真ん中のコロナ対応だけではなくてその周辺、あるいはポストコロナ・ウィズコロナの時代を見据えた社会変革につながるようなテーマ、こういうものも公募しているという説明を私はさせていただきましたけれども、恐らくそういうところにグリーン・ディールのテーマも入ってくるのではないかと予想いたします。お答えになっているでしょうか。

【西尾分科会長】  武内委員からは、日本としてポストコロナの諸課題を考える際に、地球環境とかグリーン・ディールのことをきっちりと踏まえて今後対応していかないとならないという貴重な御示唆を頂きました。また、そのことを文部科学省において今後きっちり考えるべきであるということを、事務局にお伝えします。武内委員、そういうことでよろしいでしょうか。

【武内委員】  はい。是非そのようにお願いできればと思います。ありがとうございました。

【西尾分科会長】  それでは、まだ御意見、コメントなどおありかもしれませんが、時間の関係で次の議題に進ませていただきます。原田ユニットリーダー、本当にどうもありがとうございました。心よりお礼申し上げます。

【原田JST/CRDS科学技術イノベーション政策ユニットリーダー】  ありがとうございました。失礼いたします。

【西尾分科会長】  それでは、2つ目の議題で、新型コロナウイルス感染症を踏まえた今後の学術研究の振興方策に関し、7月から2回にわたり御議論いただいてきた学術分科会及び情報委員会の合同提言案についてこれから審議をしてまいります。
 まず事務局から、直近の学術分科会及び情報委員会での主な意見、情報委員会で示された提言素案、本日御審議いただく学術分科会としての提言案、そして、本日御欠席の委員より事前に頂いた御意見について、説明をお願いしたいと思います。錦室長、よろしくお願いいたします。

【錦学術企画室長】  よろしくお願いします。資料2-1でございます。こちらは、前回8月4日の学術分科会における皆様の御意見をまとめたものでございます。時間の関係で本日割愛させていただきますけれども、適宜御参照いただければと考えておるところでございます。
 次、資料2-2でございます。こちらは、8月21日に開催されました情報委員会、こちらで議論された、情報委員会としての取りまとめの素案でございます。この素案につきましては、次に2-3で御説明いたしますけれども、その際の主な意見を御紹介したいということでございます。
 1点目、コロナ新時代における学術研究振興の必要性ということで、1つ目のポツの2行目ですけれども、大学の事務機構等に対する財政的な支援も視野に入れた目配りが必要といった御意見。
 次に、2つ目の柱、大学等における研究体制についての1つ目のポツですけれども、例えば国文学研究資料館が所蔵する資料のデジタルアーカイブ化は、国文学を海外にも開かれたものにする取組であり、評価できるという御意見。次のポツでありますけれども、情報科学技術を用いる研究等を推進していく議論の中において、リアルとバーチャルの適切な組み合わせ方について論点として押さえておくことが必要である。その次のポツ、在宅勤務の普及などの社会の変化に伴い、研究者のライフスタイルやキャリアパスの転換についても議論すべき。
 次の柱で3ポツでございます。情報委員会が取り扱う議論には、情報科学自体の振興という視点、「of IT」と、全ての学問分野等を支える基盤としての情報科学の活用という視点、「by IT」の2つがあり、後者を強化するためには前者について世界に伍(ご)する取組が不可欠であるということを提言の中で位置づけるべきである、こういった意見を頂いたところでございます。
 次、資料2-3でございます。これは情報委員会で示されました議論の取りまとめの素案でございます。こちらについて簡単に御説明申し上げます。
 まず1行目からですけれども、今般のコロナの世界規模での流行によりまして、4行目辺りですが、情報科学技術を活用したリモートでの活動など時間や地理的制約を超えた、これまでにない新たな活動スタイルが生まれてきている。これはSociety 5.0の社会像につながるものである。その次のパラグラフ、「一方で」というところですが、セキュリティ確保の問題や個人データの活用に係るプライバシー保護の問題、こういった課題も浮き彫りになってきた。また、情報システムについては、高度化に向けた取組を恒常的に進める必要があるほか、認証基盤については安定性・継続性を重視して取り組む必要がある。次のパラグラフ2行目、それぞれの研究分野の特性も踏まえつつ、研究のDXを進めていくことが急務。文部科学省としても、必要な財源の確保に取り組むとともに、以下の施策を強力に推進すべきであるということでございます。
 1つ目の柱、教育・研究を支える情報システム基盤の整備・高度化というところですが、2行目からでございます。これまで対面で行われることを前提とした活動は、大きな支障をきたすこととなった。そのような状況におきまして、SINETや「富岳」などが研究を支えたということが書かれてございます。
 次、2ページ目からですけれども、4行目、世界に先駆けて、情報科学技術を活用して、新たな活動のスタイルを研究面から先導していくことで、コロナ新時代における人間活動の新たなスタイルを提案していくことが、情報科学技術分野のコミュニティの社会的役割である。このため、分散している様々な分野の研究データ基盤をはじめ、大学等の有する計算資源、リモート操作が可能な実験設備等をSINETで相互に接続することが極めて重要である。飛ばしまして、最後のパラグラフ、このようにSINET等の情報システム基盤が全ての研究分野や教育を支える全国的な共通基盤となっていくことに適切に対応するため、国立情報学研究所をはじめ、これら情報システム基盤の研究開発を担う体制の充実・強化についても併せて検討すべきという御意見でございます。
 次に(2)の大学等における情報システム基盤の整備・高度化というところの4行目から、自宅端末から機関内の情報システム基盤や事務システム等へ円滑にアクセスできる環境整備や遠隔会議システム等の整備が重要である。この点、大学や国研等の規模等によって整備状況や運用体制に差があるのが現状であり、その解決のためには、主要な大学等が最新の設備等を周囲や関係する大学・国研等に対して提供するなどブロック化を進めることも一案であるということ。また、これらの環境整備に当たっては、適切なセキュリティ対策を十分に講ずることが必要であるということであります。
 次に3ページ目、2.研究環境のデジタル化というところの2つ目のパラグラフの2行目から、大学図書館においては、今後研究のDXを進めるため、一層のデジタル化の取組が必要。2行下に行きまして、図書館の活動の継続性の確保に必要な方策についても、引き続き中長期的な視点で検討を行っていくべき。その次のパラグラフ、一方、コロナ禍において、プレプリントの活用等、新たな研究成果発信の仕組みが活用され始めている。このような新たな動きも含め、我が国における学術情報の集積とデジタル化、そのオンラインでの活用促進に向けたシステム整備等について、オープンサイエンスを進める観点からも推進していくことが必要であるということでございます。
 次に(2)の研究活動のリモート化・スマート化の2つ目のパラグラフからでございます。研究のDXを進めるため、AI・ロボット技術等によるラボ・オートメーション化などの研究のリモート化・スマート化のための基盤技術の研究、分野によらず研究を支える基盤の整備、研究支援のデジタル化などを進めていく必要がある。その際、研究のDXに取り組む研究者やグループ等にとってインセンティブが働くような工夫が重要であるということでございます。
 次、4ページ、3本目の柱、コロナ新時代に向けた情報科学技術の展開の(1)のところ、2行目からです。今回のコロナ禍への対応において、治療薬等の開発、感染状況の把握や影響の予測などをはじめとする課題解決に向けた技術の活用への期待は非常に大きいものがある。1つパラグラフを飛ばしまして、今後、AI技術やビッグデータ等を用いた感染動向や行動履歴等の把握による感染リスクの可視化や行動変容の促進、高度な論文解析等、様々な課題について情報科学技術分野の研究者と各分野の研究者とが連携しつつ取り組んでいくことが望まれているということでございます。
 次、(2)の教育の発展への情報科学技術の貢献というところです。3行目から、遠隔・オンライン教育の質を更に高めるための要素技術やそれを支える基盤的技術の開発など新たな教育手法の発展の可能性を示す技術の研究に取り組んでいくことが重要。この4ページの最後の行からですけれども、コロナ新時代において、あらゆる段階において、より質の高い教育が実現されるよう、教育・学習データ等の分析・活用、情報システム等の環境整備、デジタル教育コンテンツのリポジトリー化と共用促進等に関して、できる限りの支援を行うことが重要と。
 最後の4本目の柱、研究データの共有を可能とする統合的なデータ基盤の重要性というところで4行目からです。研究のDXを進めるためには、高品質な研究データの取得・収集と戦略性を持ったデータの共有・活用を可能とするセキュアなプラットフォームの構築が急務である。その4行後ろから、「また」以下ですけれども、研究データの活用を円滑に行うに当たっては、様々な個人データについても安心・安全に収集・管理・活用するためのシステムを構築する必要がある。必要な技術の高度化に取り組むとともに、個人情報に関連するデータの取扱いや研究データの保有権について検討を行い、必要な措置等を明確化しておくことが望ましく、今後の検討課題と考えられる。
 以上のような形になってございます。こちらが情報委員会の素案の概要でございます。
 次に、資料2-4でございます。こちらは、これまで2回行っていただいた御議論を踏まえてまとめました学術分科会における提言の案でございます。表題については、仮称でこのように置かせていただいております。
 1、はじめにとしまして、検討の経緯を、情報委員会の状況も踏まえて今後執筆するという形で考えてございます。
 次に、2の検討の方向性というところでございます。まず1つ目の丸の3行目からですけれども、第5期基本計画においては、我が国が目指すべき未来社会像としてSociety 5.0というコンセプトが打ち出された。その次のパラグラフ、我が国はこれまでその実現に向けて努力を重ねてきたというもの。
 次の丸の3行目から、コロナ禍は、我が国を含む世界各国の政治や生活・経済活動等に影響を及ぼし、社会の在り方に大きな変容・変革を迫っている。今後、世界が激変することは間違いなく、コロナ新時代とも呼ぶべき新たな時代が既に始まりつつあると考えられる。次の丸、コロナ新時代では、デジタル革新により、世界全体が知識集約型社会へと急速に転換すると考えられる。我が国においても、情報科学技術を活用したサービスの利用が一気に進んだものと思われる。
 次の丸、一方で、コロナ禍により、我が国はSociety 5.0の実現にはいまだ遠い状態であったことが露呈した。更にその次の丸、我が国としては、このような現実を謙虚に受け止めつつ、受け身ではなく、能動的に変化を仕掛けていくことが重要。すなわち、コロナ禍による被害を回復させるだけではなく、コロナ禍が浮き彫りにした課題を分析し、その克服を通じてSociety 5.0の実現に向けた変革につなげていくという視点が重要だと。危機の渦中にある今だからこそ、未来を描き前向きに進むべきあるということ。
 その次の丸の3行目から、今般の感染症のほか、将来、どのような危機や困難が我々を襲うことになるかを予測することは難しい。このため、多様な研究成果を重層的に蓄積しておくことで、予測困難な危機的状況にも耐え得る強じんな社会を創り上げていくことが必要である。
 その次の丸の4行目から、上記のような予測困難な事態に対応するには、学術研究を振興し、多様な広がりを持つ学術知を確保しておくことが最善の策と考えられる。このため、国は、デュアルサポートシステムの再生はもとより、最先端の基礎研究の推進、施設・設備の整備、インフラの整備、若手研究者の育成等に必要な公的投資を行い、学術研究の振興を図ることが必要。その際、コロナ禍がもたらした環境の変化のうち、ポジティブに捉えるべきものについては、改革を加速する契機とすることにより、学術研究の現代的要請である挑戦性、総合性、融合性、国際性を担保するよう努めることが重要。この4つのキーワードにつきましては、平成27年1月に学術分科会におまとめいただいた最終報告から頂いているところでございます。
 次のページ、1つ目の丸、公的投資によって学術研究を振興する以上、学術界は、社会に対してどのように貢献するのかを明らかにした上で、教育研究に従事することが求められる。コロナ新時代において、学術研究が社会から期待される役割としては、例えば以下のことが考えられるとして2点書いてございます。
 1点目として、今般のコロナ禍のような国家的危機の克服など、我が国が直面している社会的課題の解決に向けて、学術知を創出・蓄積し、提供することである。この中には、学術研究により生み出される知見を政策立案に結びつけていくことも含まれる。「ただし」としまして、科学と社会的な意思決定のそれぞれの時間軸が合わないことに留意することが必要であるということでございます。2点目は、地球規模の課題の解決に向けて、国際社会と連携して貢献することというふうにしてございます。
 最後の丸、なお、学術研究が社会の負託に応えていくためには、個々の専門分野を超え、連携を図り、新たな学問領域を創出することが重要であるということでございます。
 5ページ、検討の視点としまして、上記のような認識の下、次の視点から振興方策を検討したということで書いてございます。次の丸、今般の検討に当たりましては、学術分科会と情報委員会が連携しながら進めてきたところである。このため、本提言は、学術分科会と情報委員会の合同提言とするとしてございます。
 なお、このことにつきまして、前回の学術分科会ではこの方針について御了解いただきましたけれども、8月21日の情報委員会においても、同様にこの方針について御了解いただいたことをこの場で御報告させていただきます。
 次の6ページ、こちらから各論でございます。3、コロナ新時代における学術研究の振興方策としまして、競争的研究費制度について書いてございます。1つ目の丸、各競争的研究費制度においては、各種手続の期限延長について柔軟に対応しており、その内容について周知がなされている。引き続き丁寧に周知を図ることが必要である。移りまして、次の丸の5行目から、各競争的研究費制度においては、年度をまたいだ研究費の繰越しや予算細目の変更を認めるなど、研究者の立場に立って柔軟に対応することが必要。次の丸、科研費においては、引き続き繰越し手続のさらなる簡素化を進め、研究者の負担軽減を図ることが求められる。
 次に、科研費の基金化について書いてございます。ページをわたりまして、7ページでは、4行目、コロナウイルス感染の再拡大や今後の災害等に備える観点、また、研究費のより有効な使用を可能にする観点から、科研費の全研究種目の基金化を進めるべきということでございます。
 次に、各種評価に当たっての配慮としまして、国内外における移動制限や人との接触制限により、フィールドワークや臨床・実験を伴う研究等は、縮小・中断を余儀なくされている。研究者は、研究の進展に格差が生じることで不利になるのではないかと懸念を抱いていると思われる。こういった懸念を解消しなければ、顕在化している博士後期課程進学者の減少や若手研究者のキャリアパスの問題の悪化につながりかねない。このため、資金配分機関等においては、評価への影響を抑えるための工夫をすることが望まれるという点。
 次に、マル2、研究人材のサポートについてでございます。不安定な立場に置かれている若手研究者、特に博士後期課程学生について、安心して研究に取り組める環境の整備が求められる。博士後期課程学生が研究の道を諦めることのないように、処遇の向上を図るとともに、キャリアパスを確保することが必要。従いまして、各大学は、研究者として適正な対価の支払をすることや、学内フェローシップ等の充実により、処遇の向上を図ることが必要であり、また、キャリアパス確保の取組を併せて行うことが必要。国は、こうした大学の取組を後押ししていくことが必要であるということでございます。また、研究期間に限りのある若手研究者については、各大学において研究期間の延長を柔軟に認めるなどの対応を行うことが求められる。特別研究員事業(DC)についても、採用期間の延長を柔軟に認めることが必要。
 次に、URAの活用としまして、URAは、コロナ禍に対応するための取組を実施しまして、大学等及び研究者を支えている。各大学等は今後新しい研究様式に移行することが求められるわけですけれども、その際、URAの役割は重要であるため、国は各大学等がURAを安定的に配置できるよう支援することが必要。
 次、9ページでございます。大学等における研究体制についてというところでございます。コロナ禍への対応のため、大学等に対しても施設の使用制限等の要請が行われた。この間、研究面で様々な支障が生じた。今回の経験を踏まえまして、大学等においては、活動制限下であっても、研究の特性や重要度等に応じた例外的取扱いを可能とする業務継続計画の策定・運用の準備を進め、そのノウハウを大学等の間で共有することが求められる。
 次に、研究設備の遠隔化・自動化、4行目です。感染拡大の防止に努めつつ研究活動を継続できる環境の早期整備が必要。具体的には、各大学等において、ニーズの高い研究設備・機器について、セキュリティに十分留意しつつ、遠隔利用や実験の自動化を可能とするための取組を進めることが必要であり、国はその取組を支援することが必要。これらの取組は、コロナの影響が収束した後も有効と考えられる。
 次に、諸手続の電子化の推進。感染の再拡大に備えるとともに、研究時間を確保するためにも、各大学等は、諸手続の電子化を推進すべきという点。
 次に、10ページ、コロナ禍を踏まえた大学等の施設整備。各大学においては、オンライン化が進んだ一方で、対面でこそ可能な日常的な知的交流や、対話から生まれる新しい研究創出の機会が喪失しているなどの課題がある。次期国立大学法人等施設整備計画策定に向けた中間まとめにおいて示されたイノベーション・コモンズ、こういった考え方は、対面とICTによるコミュニケーションとを使い分けることができ、その両方のコミュニケーションが融合するハブとして機能することを兼ね備えたものであり、こうした場が更に重要になる。オンラインと対面のハイブリッドな教育研究の充実に向けて、三密を回避するため、フレキシブルなスペースに加え、空調機能や情報通信環境の強化を図る必要がある。
 次に、マル2の学術情報基盤の在り方の、絶版等資料へのアクセスの容易化等のところでございます。この内容につきましては前回御説明しましたので詳細は割愛しますけれども、絶版資料のアクセスを容易にするための制度改正の検討が現在進められておりまして、これについては学術の観点からも重要ですので、ここに記載しているものでございます。
 次、11ページ、(3)マル1でございます。情報科学技術を活用したサービスの利用が進みまして、共同研究等が効率的に行われる素地が整いつつある。オンラインのメリットを生かして会議等を積極的に開催し、継続していくことで研究の活性化につなげることが重要。各大学等は、これらの活動を支援するため、情報セキュリティ対策等とともに、RA、TAなど研究者を支援する人材の配置が求められる。次の丸、また、研究者以外の市民等の参加への敷居が下がることにより、科学技術政策について幅広い層との間で対話する機会の増加に資すると考えられる。
  「一方で」としまして、学会等への参加の意義というのは、他の研究者との交流や議論により刺激を得たり、信頼関係を築いたりすることにもあり、これらの点については、対面のほうがオンラインよりも優れていると考えられる。各研究者は、このことを踏まえて、オンラインサービスの効果的な活用方法を模索し、研究していくことが求められるとしております。
 次に、国際連携について。今回の感染拡大を受け、国際交流活動が停滞するとともに、国際共同研究の進捗に大きな影響が生じている。コロナ禍以前においても、国際研究ネットワークの強化が課題とされてきた。コロナ禍により当面は対面での国際交流活動は縮小せざるを得ないけれども、オンライン会議を活用するなど国際研究ネットワークを維持・強化することが必要である。また、国においては、収束した後にネットワークを更に強化することに資するよう、今のうちから関係施策の強化等に努めることが必要。「なお」としまして、海外特別研究員事業、これについては、滞在期間の延長を認めるなど研究活動の機会を確保することが重要ということです。
 マル3の共同利用・共同研究体制について、13ページの1つ目の丸からです。共同利用・共同研究に供する施設・設備は貴重な研究資源であるため、利用を停止するのではなくて、オンラインによる計測や依頼測定など、研究者が遠隔で実験等に関与できるシステムの早期構築が必要。また、研究者ができるだけ研究を継続できるよう、稼働状況の見える化を促進する。また、拠点の研究支援機能を点から面へと転換していくとともに、コロナ新時代においても、分野融合等を進めていく観点から、拠点のネットワーク化を促進して、体制強化が重要である。
 大学共同利用機関及び共同利用・共同研究拠点が中心となって実施している大規模学術フロンティア促進事業、これにつきましては世界の学術研究を先導しているものでありまして、我が国がコロナ新時代においても、信頼と尊敬を得られる地位を維持できるよう、今後とも国が責任を持って着実に支援すべき。
 次、人文学・社会科学の知見の活用でございます。人文学・社会科学は、価値を変革するとともに、価値を創造することが期待される学問分野である。人文学・社会科学はこれまで、幾つか書いておりますけれども、研究成果を通じて、大局的な思考の基盤となる知見を提供してきた。
 次のページにわたりまして、人文学・社会科学は、現在のような文明の転換期にこそその真価を発揮して、新たな価値を創り出すことが求められる。そのためには、歴史や文明を俯瞰(ふかん)することが求められるとともに、自然科学の知見とも融合して新たな知を生み出すことが必要。
 しかしながら、我が国の人文学・社会科学は、細分化と固定化が進み、分野間での交流や協働が十分には行われておらず、また、自然科学との連携についてもいまだ深化していない旨が指摘されている。これを克服するためには、人文学・社会科学振興の在り方に関するワーキンググループで御提言いただいたとおり、人文学・社会科学の諸学が分野を超えて、自然科学も含む分野を超えた研究者が議論を通じて研究テーマを設定しまして共同研究を行うことを通じて、問いに対する考究を深める共創型のプロジェクトを推進することが重要。
 また、2020年6月に基本法が改正されまして、人文科学のみに係る科学技術も振興の対象とされた。政府においては、この改正の趣旨や、コロナ新時代という時代の変革期における人社の重要性に鑑み、人文学・社会科学の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、その持続的発展に尽力することが必要である。
 次に、マル2でございます。プレプリントの話ですけれども、プレプリントにつきましては、その公開により研究成果を迅速に共有することができ、発展に寄与することが期待される一方で、品質の問題が指摘されている。プレプリントにより誤った情報が公表され、報道を通じて社会的な影響が生じるといったことが起きないよう、学術界は、プレプリントの学術研究における位置づけについて社会に発信し、理解を得ることが求められる。
 次、多様性の確保というところです。感染症関連の研究を推進することは重要。他方、予期せぬ困難に対応するためには、研究の多様性を維持することが必要。このため、感染症以外の研究分野に対しても十分な投資がなされることが重要。
 次に、政策間の連携というところで、学術研究が社会からの負託に応えるためには、学術政策、科学技術政策及び大学政策が連携して施策を推進することが必要であって、政府には、そのための体制構築が求められると、そういったことを言及してございます。
 資料2-4は長くなりましたけれども以上でございまして、最後の資料2-5でございます。こちらは、今回御欠席の委員から頂いた部分について、簡単に御説明申し上げます。
 まず勝委員からでございます。1つ目の丸、研究のDXは今後の発展の根幹にも関わることであり、今回情報委員会の提言が出たことは非常に有益である。次の丸、産学連携教育を加速し、博士課程学生の獲得、キャリアパスの構築が必要不可欠である。研究科横断的な研究の促進と、それに伴うURA人材の育成等を積極的に行うことが必要。次の丸、学生の雇用機会が失われないよう、学位取得の柔軟化、経済的支援を考えていくべき。次の丸、研究者や博士課程在籍者の経済的支援については、その財源確保として様々な取組が必要。次の丸、コロナ後の社会システムの変革を見据え、研究テーマについては、より広がりを持たせ、発想の転換が必要。次の丸、知見交換の停滞については、オンライン会議などを通じて国際ネットワークの維持は相当程度できる。既存の交流サイトを通じて、将来的なオンサイトの交流の足がかりにすべきであるということでございます。
 最後でございますけれども、五神委員からの御意見でございます。6ページのところ、2点頂いております。1点目が、SINETの社会基盤インフラとしての活用というところでございます。先ほど御説明した資料2-3には、SINETの整備・高度化、NIIの体制の充実強化など重要な内容が含まれているけれども、これを更に発展させ、SINETを日本全体のインフラとして拡充・活用することを提言すべき。学術研究としての積極活用はもとより、各種データのリアルタイムでの利活用を先進的に行える環境を整備することを検討すべき。また、SINETの構築・運用を現在担っているNIIの体制強化についての検討が必要。
 2点目、国の責任で守り発展させるべき学術研究。学術分科会としては、学術研究を国が責任を持って推進することについての検討は必要。学術研究は、知識集約型社会への転換に際して不可欠の基盤をなすものである。飛ばしまして、例えば日本固有に発展した文化や言語や歴史やアジア研究の知を体系的に探究する人材の育成は、世界から日本に強く求められている。学術の維持発展のために国が何を守り、何をなすべきかの検討は極めて重要ということでございます。こういった意見を頂いてございます。
 私からは、長くなりましたけれども、以上でございます。

【西尾分科会長】  どうも錦室長、ありがとうございました。
 それでは、これから、もう1時間を切ってしまってはいるのですけれども、資料2-4を基に学術分科会における提言案を今後更に固めてまいりたいと思っております。
 今後の予定でございますけれども、学術分科会としてこの提言案を更に強化していく直接の議論というのは、今日が最後になるかと思います。
 その後に、情報委員会の提言案と組み合わせた形の合同の提言については、後日、書面審議にて御確認を頂くということで進めさせていただきたいと思います。といいますのは、今月中に来年度の概算要求等を踏まえてこの提言案を中間まとめとしては確定しておきたいということがございまして、その点は御了解いただければと思います。
それでは、御意見等ございましたら、よろしくお願いいたします。城山委員、どうぞ。

【城山委員】  城山でございます。若干大きな構成の話についてのコメントなんですけれども、先ほどの原田さんのプレゼンに対する小林先生だとか武内先生のコメントを踏まえて見たときに、コロナを踏まえて実質として研究としてどういうことをやるべきかとか、あるいはグリーン・リカバリーも含めて、対コロナと気候変動のような話をどういうふうにつなげていくかとか、サブスタンスの話ということに関するコメントがあったと思うのですけれども、そういうようなことをこの報告書の中でもう少し触れるか、触れないかというようなことが1つの論点としてあるのかなという感じがいたしました。
 現在の構成でいうと、正に2-4になるわけですけれども、実は今触れたようなことに関わる話は、4ページ目にある程度書かれているというような気もします。コロナ新時代における学術研究の役割ということで書かれていて、その中でコロナ禍のようなものに対する対応と同時に、2点目として、地球規模の課題への国際社会と連携としての貢献と、かつ、社会の負託に応えるために人社等も含めてやっていくという話は書いているんですけれども、これは今の書き方はかなりまえがき的な書き方になっていています。5ページ以降が、具体的な振興方策というところですが、5ページのところを見ていただければ分かりますように、システムだとか新しい研究様式ということで、これはこれで極めて重要なのですが、サブスタンスというよりは、共通のインフラの話についてこういうことが必要ですよと淡々と書かれているというようなことになっています。
 恐らくそれはそれで極めて大事であることは間違いないのですけれども、もう少し新しいこういう事態に直面したときに、サブスタンスとしてこういうことをやるべきだというのをたくさん書いたほうがいいかもしれないなという感じがいたします。そうしないと、若干これは前回も議論があったと思うのですけれども、イメージとして、実は今回明らかになったことは、既に今まで議論してきたことであって、これらが重要だということが分かったでしょう、だから、やりましょうという感じにちょっと読めてしまうところがあります。
 やはり研究としても新しい課題に対応しなければいけないと。かつそれをサポートするためのインフラとしてシステムだとか研究様式についての共通課題のようなことを、正にこの機に基金化も含めてやっていかなければいけないという、そういう形でそのサブスタンスの要素も少し加えて考えてもいいのではないかと。4ページのところの書き方にも関わるのかなと思うのですけれども、それを少しお考えいただければというのが1つです。
 あとは、これからおまとめいただくときに、情報委員会のとこの分科会のものをどう統合するかというときに、情報委員会のほうのお話のかなり前半のところは、かなり学術全体のインフラ、情報インフラの話になっていて、後半は、情報科学技術に対する期待という形でそこは正に情報固有の話だと思うのですが、学術全体の情報基盤の話を情報科学という形で切り出して入れるのか、1つ何か共通の提言の項目のようなところに入れるのか、そこは今、5ページでまだこれから書きますという話になっていると思うのですが、そこも少しお考えいただくといいかなという、2点でございます。よろしくお願いいたします。

【西尾分科会長】  それでは、最初のほうで言っていただいたことに関しましては、先ほどの小林先生、武内先生の御意見も踏まえまして、サブスタンスに関することを、4ページのところではある程度記述したほうがいいのではないかと思いますので、その方向で今後事務局と調整してまいります。城山先生には、その記述の仕方についてお伺いするかもしれませんが、どうかよろしくお願いいたします。

【城山委員】  よろしくお願いします。

【西尾分科会長】  それで、2つ目のことにつきましては、重要な視点で、最終的に情報委員会で書かれていることを本委員会での記述とどういう形で組み合わせていくのかということについては、今、城山先生おっしゃったところを私も問題意識としては持っております。今後、その対応を考えてまいります。貴重なコメントありがとうございました。
 では、小長谷先生、どうぞ。

【小長谷委員】  ありがとうございます。人文学・社会科学のことについてたくさん書いてくださってありがとうございます。8つも丸が並んでいるのですけれども、行きつ戻りつしているようですので整理する上でクレームが1つと、提案が1つです。
 まず、家委員も御指摘になっている箇所ですけれども、ペストの問題をこのように取り上げますと、犠牲者の存在を大局的に肯定しているとも言えます。たくさん死んで世の中変わったといういう理解の相似形で今を見られますと、今正に苦しんでいる方とか、社会的な弱者とかを肯定して、だから、世の中変わるんですよということになりかねないので、大局的な価値創造という大事を被害と連動させないほうがいいんじゃないかというのが1つです。
 そうすると、何が人文学・社会科学はできるかというと、大局的価値の創造だということと、もう一つは、研究者がつねづね細かく見ている、分断とか、パニックとか、阻害とか、格差とか、そういう問題に対応してどうやって克服するかという面も負託に応えなければいけないことだと思います。
 更にもう一つは、情報委員会とセットだからこそ書いていただきたいことがあります。情報技術が進展するに伴ってリアルな人間関係が損なわれるというネガティブな問題も出てきますから、そういう人間形成上の問題点もこちらでフォローアップできます、人文・社会科学はやりますという、そういう形で技術の進展と補完関係にあるというような形で価値を書いていただければありがたいと思いました。
 以上です。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。13ページで、現在のところ、丸印で8つの項目があるかと思います。この部分の書き方を、今、小長谷先生から御指摘いただいたように今後さらなる工夫をして、ミスリードしないようにしていくことをもう一度考えてみたいと思います。
 それと、情報技術に関することでは、情報委員会の提言案の最後の方で、ELSIの問題等については非常に重要だということは書いておりますけれども、今先生のおっしゃった観点で、この提言だからこそ記述できる部分があると思いますので、そこのことについては配慮してまいります。どうも貴重な御意見ありがとうございました。
 そうしましたら、山本委員、どうぞ。

【山本佳世子委員】  山本佳世子です。全体的に確かに学術研究全般において、コロナを受けてのその後のどう変わっていくかという全ての項目になっていると。これは学術分科会のまとめとして適切だと思いますし、目配りを感じました。でも、やっぱりそうなると当然ながら、ちょっと総花的な印象が否めないなと思っていて、もう少しポイントとなるところははっきり詳しく書いてもいいのではないかなと感じました。
 例えば私たち、つまり、社会に対して、社会が、ああ、そうか、こういうことは確かに重要だなと感じ取ってもらうというような意味でいうと、現場の研究者もみんなそうなのですが、7ページの科研費の基金化を全種目でできるとか、設備の遠隔化・自動化というのも、私自身ちょっと分かっていない面があって、研究者の方にしかイメージできていない案件ですので、そういったところももう少しあってもいいのかなと思いました。
 以上です。
 
【西尾分科会長】  今、山本委員のおっしゃっているところは、より具体的に強力に書くべき部分を明確にし、メリハリをつけた記述にしてほしいという御意見と考えてよろしいですか。

【山本佳世子委員】  はい、そういうことです。どれも大事だけれども、やっぱり非常に大きな変化を促そうと思っている幾つかのところについては、もう少しはっきり詳しく書くほうがアピール力があると。

【西尾分科会長】  分かりました。コロナ新時代を考慮して、大きな変革を促すような部分は、はっきり詳しく書いていくことを心がけます。ありがとうございました。
 観山委員、どうぞ。

【観山委員】  すみません、2点あります。まず1つは、ちょっと細かいところなのですけれども、2-4の9ページから10ページにかけてのところです。特に10ページなのですが、全体的に非常によく各方面書かれておってよいと思うんですが、大学側で今本当に感じているところは、いろいろネットワークだとか授業だとかいろいろなことはできる状況なのですが、例えば私ども物理系とか天文で見ますと、教育のための実験だとか、演習だとか、それから、フィールドワークとかそういうものもあると思います。つまり、情報インフラを使ってもなかなかできない部分というのがやっぱりあります。例えば物理実験とか化学実験の各学生との間の遮蔽とかそういうものについてほとんどできていないので、実験などが現状では全然動かせないですよね。ここら辺をひとつひとつ対応しないと、情報インフラでできる部分とできない部分というのが残っていますので、そこの部分はやはりしっかりと訴えるべきところがあるのではないかと感じました。
 それからもう一つは、先ほどの山本委員のめり張りをというお話のとおりなのですが、4ページ、コロナ新時代における学術研究の役割ということで1点目、2点目というふうに書かれていましたけれども、これも非常に重要だと思いますが、ただ、3点目として、私、やはり、後で書かれているので結構かとは思うのですけれども、学術研究の役割という中に、コロナ時代においても人材育成の観点というのは非常に重要だと思います。論理的な思考を基礎として、学術研究、特に大学院博士課程の研究は大いに社会に出ても役立つ形なので、後で書いてありますのでいいようなものなのですけれども、学術研究の役割に人材育成の観点を入れ込む必要があると思います。本当に学術研究でなかなか若い人たちをどうやって教育するのだといったこと、これは是非考えなければいけないし、頑張らなければいけないことでありますので、これはやっぱり是非強調していただいて書くほうがよいのではないかと思いました。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。観山先生、2つ目の方は対応をしてまいります。最初の方の実験とか演習に関しては、コロナ禍に対応した環境を整えるように、と捉えてよろしいですか。

【観山委員】  そうですね。だから、今後、第2波、第3波だとか、別のパンデミックが起こる可能性があるので、こういう観点を入れてやっぱり設備というのは三密を回避するようにしっかり造っておかないといけないと思います。すぐさまできる話かどうか分かりませんけれども、しっかり整備しておかないと今後の研究や教育に大きな支障をもたらすということでございます。

【西尾分科会長】  分かりました。実験、演習などに用いる部屋に関しては、三密を避ける観点からは、従来よりも広いスペースを整えることなどの重要性と捉えてよろしいですか。

【観山委員】  そうですね。

【西尾分科会長】  分かりました。どうもありがとうございました。貴重な意見、感謝します。
 そうしましたら、岸村先生、どうぞ。その後に栗原先生、お願いいたします。

【岸村委員】  今、最後のところ、スペースの話があり、そこに関してですけれども、今、やっぱり大学、もともとのスペースが狭いというようなこともあって、三密を避けながらアクティビティーを確保するのは結構難しいと思います。そういう中でどうアレンジしていくかというと、いろいろな研究室がやっているかもしれませんが、シフト制とかでやっていくというような形になってくると、活動時間を長くしていくような工夫が本当は大事なんじゃないかと思います。そういう場合に教員だけで安全管理するのは難しいと思いますので、そういう緊急事態において、何か安全管理もできるような人を適切に措置、補充できるような仕組みとかがあると、例えば夜であっても実験を継続するなどがやりやすくなると、1つ、スペースがないときの代替案として何かいいことがあるのではないかと思いました。
 もう一つは、またもう一つも現場に近い話になるんですけれども、今、私たちが直面している喫緊の課題としては、特に留学生をどう受け入れるかというのがあります。10月に入学する留学生からもこれ、毎日のように問合せがあるわけですけれども、一体いつ入国できるのかとか、一体いつ入学すべきなのかというのをよく聞かれるわけですけれども、なかなか私たちのレベルで答えようがない状況です。こういう問題について何か全体で取りまとめてクリアな措置が、どうやってできるのかというと私も分かりませんけれども、恐らくビザ発給のところの問題とか、もう少しクリア、見えるようになってくるとありがたいかなと思います。
 また、今の状況ですと、入国した後2週間隔離されるというような状況になると思うのですけれども、その経費を一体誰が持つべきなのかというような問題もあります。国費留学生とかですと何か柔軟な対応があるというようなうわさも聞いたりしますけれども。昨今、研究現場では、特に博士課程であれば、留学生に頼って研究している面もありますので、スムーズに入国ができないというのは、それだけでも研究力をそいでしまう面もあります。ちょっと遅れるだけで重要な実験等の引継ぎとかそういうこともできなくなると、それだけでも損失になったりもします。
 是非この点は、この提言が出るタイミングでは遅すぎるのかもしれませんけれども、今すぐまず入国がすぐできるようなスムーズな対応ができるか、できないのかというのも議論していただきたいということと、あとは、またコロナのようなことが起きたときに、また同じような感じでただ単に先延ばししてぐだぐだの状態になってしまうというよりは、次に起きたときにはスムーズな対応をとって、経済的にも負担を留学生たちにかけないようにうまく受け入れたりとかということができるような仕組みを何か考えておくのも大事なんじゃないかと思っております。
 もう一つは、受入れじゃなくて、送り出すほうですね。例えば博士を取った若い人が、海外でポストを得て、ポジションを得ていくというようなのも、この4月以降ほとんど無理な状態になっています。それも多くはビザが取れないとかそういう話になるのですが、やっぱりそういうところも、アカデミックの議論を優先してくれと言うわけではないですけれども、何か国際的な協調というのでしょうか、議論の下でそういうところのビザ発給が優先されるとか、ともかく若手研究者のキャリアそのものに関わっていますので、現状ではほとんど無職というような人もいるのではないかと思います。そういう空白期間を置いてしまうようなことになってしまうのは、我々の業界としてもまた評判を落とすことになると思いますし、是非今後同じようなことが起きたときもスムーズに対応できるような内容も入っているといいと思いました。
 以上です。ありがとうございました。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。後半の方は、研究の振興という観点から留学生のことが非常に重要ですが、そのことが現段階の案文ではあまり書いてありません。文部科学省全体として、現段階でもいろいろな施策を講じておられますけれども、この提言の中にそれをどのように盛り込むかというようなことも含めて検討してまいります。どうもありがとうございました。

【岸村委員】  ありがとうございます。

【西尾分科会長】  では、栗原先生、どうぞ。

【栗原委員】  ありがとうございます。2点申し上げたいと思います。1つは、前回も申し上げたのですが、科研費の基金化について、今回競争的研究費の柔軟な運用をされたという例が幾つもあり、柔軟な運用に御苦労されたところであるため、説明がある意味では大変しやすい状況だと思いますので、これは制度で、資金が必要なわけではないので、是非説明いただいて、実現すると幸いではないかと思っております。
 それから、二点目は、検討の方向性とその後の具体的な提案についてです。大学における研究体制のところには、諸手続の電子化とか研究設備の遠隔化とか自動化ということがあり、具体的にどれも必要なことをお書きいただいているのですが、それぞれの大学によって必要なことが非常に違うのではないかと思います。
 それに関して、検討の方向性については、デュアルサポートを充実するというようなところを書いていただいているわけですけれども、やはりこれは大学改革の精神にも通ずると思うのですが、それぞれの大学がやはり工夫していい制度、いい仕組みをつくっていくことが非常に大事だと思いますので、もう少し大括りな提言をしていただけると、それぞれの大学にとって必要な、この際、制度の充実や仕組みの充実ができると思います。もう少しデュアルサポートの精神をお考えいただいて、少し大きな形で考えていただけないかということが2点目でございます。よろしくお願いいたします。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。2点目の件、非常に重要なことと思いますので、何とかもう少し大括りな記述ができないかを考えてみます。どうもありがとうございます。
 永原先生、どうぞ。

【永原委員】  ありがとうございます。何人かの委員の方から既に御指摘ありましたが、若手研究者、この問題はやはり一番本質的に重要。現在、研究者が大学で困っているいろいろな問題がありますが、もう少し長期的に考えたときに、若手の人が学問の世界から離れていってしまう非常に危機的な状況にあります。
 7ページから8ページにかけて研究人材サポートのことが書かれてはいますが、読んでいきますと、結局各大学は若い人をサポートしろという雰囲気が非常に強くなっています。しかし、どこの大学も、現状ではやれと言われてもやりようがない状況です。将来を考えたときに最も重要な部分ですので、概算要求絡みで、強力なサポートを各大学に与えるようにする必要があります。科研費の基金化みたいなことでは対応できません。国としてやっていただかないと駄目なことなので、このことをもう少し具体的に書き込んでいただければと思います。
 以上です。

【西尾分科会長】  永原先生、ありがとうございます。個別的にはいろいろ書いてあるのだけれども、結局、今おっしゃったように、各大学で書かれていることの対応をせよというような記述ではなくて、国として書かれていることをどう考えるのかについて、我々が迫っていく必要があると思います。そのことについて、強く書くようにいたします。ありがとうございました。
 森口先生、どうぞ。その後、須藤委員の順でお願いいたします。

【森口科学官】  私は社会科学の立場から述べたいと思います。まず3ページの「コロナ新時代における学術研究振興の必要性」というところで書いてあることがすばらしくて、わくわくしながら読みました。特に、予想不可能な危機が起こったときに「多様な研究成果を重層的に蓄積」しておくことが重要であり、「多様な広がりを持つ学術知を確保しておくこと」が最善であるというところは、自然科学だけではなく、人文・社会科学がいかに重要かということを正におっしゃってくださっていて、非常にいいと思いました。その関連で、それを以下の記述で具体的に展開していくところで、4点ほど述べたいことがあります。
 まず、9ページ目の「コロナ新時代にふさわしい研究様式への転換」というところで、デジタル・トランスフォーメーションの加速というのが大きく打ち出されていますが、私自身も国内や海外の学会がオンラインになることで、育児や介護のために参加できない、長期の出張ができない、といったこれまでの制約が大きく緩和されたことを感じています。家族のケアは女性が担うことが多いとすれば、オンライン化は男女格差を縮小する方向に働くといえます。
 それを更に推し進めて、このデジタル・トランスフォーメーションによって、男女の格差だけではなく、障害の有無による格差も解消できるのではないかと思います。いろいろな障害を持つ人々にも内容が理解しやすいような情報伝達の設計をユニバーサル・デザインといいますが、デジタル・トランスフォーメーションによって情報の伝え方が画像・音声・文字・多言語など、多次元的になることで、よりユニバーサルなデザインが可能になります。今回のコロナをきっかけにデジタル・トランスフォーメーションを押し進め、それは多様な研究者が活躍できる基盤作りにもなるということを書いていただくと、もっとパワフルなステートメントになるのでは、と思いました。それが1点目です。
 2点目は、10ページの「学術情報基盤の在り方について」です。ここでは、論点として絶版等資料へのアクセスの容易化のみが挙げられていますが、これは狭すぎるのではと思いました。絶版資料だけではなく、例えば政府統計でも、「電子政府」とはいいながら、1980年代以前の公的統計は全く電子化されていません。現状では、研究者が各自で科研費を取ってきて必要な部分を電子化しているのですが、それがすぐには公開されないので、また違う研究者が科研費を取ってきて同じ統計を電子化する、ということが繰り返されています。公的統計のような基礎的資料は学術研究のインフラストラクチャーとして一挙にデジタル化されるべきだと思います。ここでは、学術情報基盤を絶版等資料に限定せず、もっと広く書いていただけるとうれしいです。
 次は、14ページの3段落目の人文学・社会科学に関する記述についてです。「我が国の人文学・社会科学は、研究分野や研究課題の細分化と固定化が進み、分野間での交流や協働が十分に行われておらず」うんぬんと書いてあるのでがっかりしました。20年前はそうだったのかもしれませんが、私の知っている限りでは、もうこのような記述はあてはまりません。例えば、私が専門とする経済学では、社会学や政治学や歴史学とのコラボが進んでいて、非常に面白い研究がたくさんあります。ここでは、人文学・社会科学においても分野横断型の革新的な研究が生まれているが、これを今後更に進めたい、というふうに書いていただきたいなと思いました。
 最後に、どのページというよりも、全体的なコメントがあります。今、来年度の人事の採用について考えているのですけれども、アメリカのジョブマーケットが軒並み、全てのトップの大学が一切人事採用を凍結している状態です。非常に優秀な人材、特に今、PhDを取りたての人について、ジョブマーケットが大変なことになっているのが北米の状態です。
 日本の国立大学に今いると、人事凍結などは起こっていないので、やはりこれが少ないながらも交付金をちゃんと年々得ているということでしょうか。アメリカはトップが私立だったりするので、恐らくエンダウメントの効果とか留学生による歳入源が直撃して人事凍結になってしまうと思うのですけれども、そういう意味で少しだけ日本は人事の優秀な人材を採用し続けるということでは有利なことに今あるのかなと思っているのですけれども、その理由がやっぱり安定的な恒久的な財政基盤があるということなのかなと思ったので、その重要性を1つの例として示せるのではないかと思いました。
 以上です。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。最後のところは、先ほど永原先生も言っていただいたところともつながるかと思います。具体的に述べていただきまして、今後の改訂の際に大変助かります。
 須藤委員、よろしくお願いいたします。

【須藤委員】  ありがとうございます。最初に、先ほどちょっと話題に出ていました、大学あるいは共同利用機関のリモート化、実験設備のリモート化という話について、もう既に大学あるいは国立の研究機関に対するリモート化、遠隔・自動化というのは、今回のコロナ禍の問題で結構国のほうも動いていると思います。予算措置もかなりされてきていると思いますし、具体的にどういうところに出そうというのも決まっているというふうに聞いています。
 それに対して今回更に言うのであれば、これで足りないのか、どういう分野にもっときちんと対応するべきなのか、それから、遠隔化と自動化を分けて考えないといけないと思うのですけれども、遠隔化すべきものについて具体的に書かないと、国のほうにはもう予算化したじゃないかと言われて終わってしまうような気がするので、もう少し強調したほうがいいかなと思います。

【西尾分科会長】  ありがとうございます。

【須藤委員】  それから、もう一点だけ。SINETの話があって、五神先生からももっとこれをちゃんとやるべきだという御意見があり、私もそのとおりだと思いますが、今回DXがどんどん進んできて、大学の研究だけではなくて、産学連携のデータとか、あるいはもっと大きく取ると、府省連携で大きなプロジェクトでいろいろなデータが出てきていて、そのデータベースができた。そのデータベースのプラットフォームをつくってあると。これを、どうやって維持するのかというのがこれから問題になると思います。
 もしかしたら、今回の提言とは別のところかなという気もするのですけれども、やっぱりこれからのいろいろなデータをどうやって活用して使うか、どうやって維持していくのかということを考えると、どうもSINETの限界のような気がしますので、もう一つ、もっと踏み込んだデータの在り方、国としてそのデータをどう守っていくのか、どう使っていくのか、どうサステイナブルにするのかということを考えることも必要ではないかと思いました。
 以上です。

【西尾分科会長】  最初のほうは、もう少しブレークダウンして書かないと、なかなか概算要求には対応できない可能性があるので、その辺は記述の再検討を行っていく。後半の問題は、情報委員会の方に持ち帰りまして、御指摘いただきました点について議論してまいりたいと思っております。どうもありがとうございました。

【須藤委員】  はい、お願いします。

【西尾分科会長】  SINETは、更に強化していくという方向性に加えて、今、須藤委員のおっしゃったような新たな方向性を考えていくことも必須であり、問題提起としてきっちり受け止めさせていただきました。

【須藤委員】  ありがとうございます。

【西尾分科会長】  井関先生、どうぞ。その後、鍋倉先生、お願いいたします。

【井関委員】  ありがとうございます。井関です。1点、短いですけれども、先ほどの観山先生、永原先生がおっしゃったことに関連して、当然学術研究の世界に入った若手を育成するというのは大事なことなんですけれども、コロナをきっかけに学術研究というのがいかに魅力的であるかということを示した上で、修士課程とか博士課程とか、いわゆる大学生がもっと大学院課程に進んでくれるように、学術研究の魅力を上げていくというようなところを何か入れていただくといいのかなという気がいたしました。よろしくお願いします。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございます。そうしますと、提言の最初の学術研究の役割等のところで、今、井関先生がおっしゃったことを盛り込めないか考えてみます。どうもありがとうございました。

【井関委員】  よろしくお願いいたします。

【西尾分科会長】  鍋倉先生、どうぞ。

【鍋倉委員】  先ほどの森口先生と今の井関先生と同じ意見です。コロナ時代における学術の役割と重要性を強調するべきだと思っています。人文・社会も含めて社会問題に対峙するという姿勢が強く各国で出ていると思います。例えばアメリカのNSFを、テクノロジーという単語を入れてNSTFに、など社会実装に向けた研究が重視される風潮がみられます。
 コロナ禍というのは1つの例であって、その他研究をストップさせるような大きな要因が今後も出る可能性があります。現在のコロナ禍の対策という短期的な議論だけではなく、中長期的には予測できない事態に対処するためにも幅広い領域を支えるボトムアップ研究が大切であるということを強調することが必要と思います。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。この提言そのものは、まずは「中間まとめ」で概算要求に向かっていきます。ただし、鍋倉先生がおっしゃったように、中長期的なことも含めて、特に最初の書き出しのところでの学術研究の役割等については、今後、コロナ禍と同様の不測の事態が起こる場合に備えて、いかに学術研究が重要かということを記述することを考えてまいりたいと思います。どうもありがとうございました。
 新福先生、どうぞ。

【新福委員】  ありがとうございます。皆様も若手研究者に関するところを重要に考えていただいて、評価に関しても様々に今まで言ってまいりました意見を反映していただいたと思いまして、非常にありがたいと思っております。全体的にすごくまとまってきたと思います。
 1点申し上げるとすると、4ページ、先ほどもいろいろな方がおっしゃっているのですけれども、2点目のその下の最後の丸のところ、ここを私は非常に大事に思っております。様々な学問分野が融合していることや、新たな学問領域を創出していく、コロナ対策とか今後も起こり得るこういった世界的な危機に対応できるような仕組みを生み出していくという辺りは非常に重要だと思っているのですけれども、先ほども最初のほうにありましたが、この辺りの1点目の具体的な提言といいますか、サブスタンスをもうちょっと書いていくというような話がありましたが、この4つ目の丸についても、どういったことをもうちょっと促進していくのか。
 例えば最近私が参加しておりますS20、G20の科学コミュニティの会議でありますと、すごく大きく打ち出しているのが、フォーサイト・サイエンスという未来予測をしていくようなサイエンスを分野として立ち上げていって、今後具体的なこういったカタストロフィーに対応していくというようなことを言っています。そういった世界的な動向を読みつつ、丸4のポチの内容も具体化できるといいなというところが1つありました。
 以上です。ありがとうございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。この丸印のところを、再度、検討してまいりたいと思います。もう少しブレークダウンをして書くということの重要さを認識しました。ありがとうございました。
 それでは、武内先生、その後に白波瀬先生、お願いいたします。

【武内委員】  4ページでございます。この中で私が学術会議で担当しておりますIAP、インター・アカデミー・パートナーシップが書かれております。これは世界140か国のアカデミーが加盟しているというので非常に特徴的なのですが、これがGlobal Solidarityに向けた要請を行っているという記述がありまして、これ自身は大変ありがたいのですが、その後、スーパーコンピュータ「富岳」につながっていくわけですが、これはちょっと話が違います。
 IAPの意義は、開発途上国のアカデミーが参加しているということが大きな特徴です。そして、今のコロナ禍の状況の中で、学術の分野での格差というのがますます広がっていくのではないかという、危惧する声があります。そういうことを踏まえてGlobal Solidarityを言っているのであって、これはこの文脈でいうと、日本はもうちょっと開発途上国との学術連携をそういう是正をするために強化していく必要があるというふうな文脈につながっていくと私は思うのですが、そういうふうに変えていただけると大変ありがたいと。
 それで、具体的な施策としては、例えばSATREPSなどはこういう観点から評価して位置づけをより強固なものとしていくという話につながればよいのではないかというふうに具体的には考えております。
 以上です。

【西尾分科会長】  地球規模の結束ということの後に、「富岳」のことがつながってくると、ミスリーディングする可能性があることは私も感ずるところございますので、改訂してまいります。その部分の今後の改訂については、武内先生にサポートしていただければありがたく、よろしくお願いいたします。

【武内委員】  ありがとうございます。

【西尾分科会長】  白波瀬先生、お願いします。

【白波瀬委員】  よろしくお願いします。少しそもそも論の話で、コロナ新時代という言葉が枕言葉にずっとありますが、タイムスパンが分かりにくいです。今は、コロナ下ということで、日本語的にウィズコロナという状況です。それから、ポストコロナというのですけれども、大々的に全てのものが変わるということよりも、今回やはり非常に重要なのは、広い意味の科学あるいは科学者がいかに重要であるかということで、もちろん大学院とか進学のという話も出たのですけれども、足元はやはり社会にとって科学の意味、科学者の役割がいかに重要で、そういう人材を育成するための投資がいかに重要かというところが一番重要だと思います。
 また、めり張り感という点では、予想しなかった事態なので、やはり集中的に投資してもらわなければいけなくて、それはまさしく公の位置づけ、国の投資の重要さというのが分かってきたというところがあり、そもそも論で大変恐縮ですが、中身はすごく重要なのにそこが何か少し分かりにくく、その辺りは慎重に書いていただけると説得力が増すのではないかと思います。
 最後に1点だけですが、情報科学技術の振興ということと、今後の学術研究って少しレベルが違っていて、逆に言えば、情報科学技術というのは、コロナ新時代におけるということでもフィットするような気もするのですけれども、ここに「と」で結んで学術研究というのが来ているので、ここの区別もうまくしていただけると、せっかく2つのところが一緒になっているのでよりいいかなと思いました。
 すみません、以上です。

【西尾分科会長】  白波瀬先生、後半におっしゃったことで、二つの委員会からの提言案を一緒にまとめるということについては、問題ないということでよいですね。

【白波瀬委員】  いいと思います。

【西尾分科会長】  最初におっしゃった点は、最初の書き出しのところで、タイムスパン的なものも含めて、どの時点に焦点を当てた提言なのかということを明確にしてまいりたいと思います。ありがとうございました。

【白波瀬委員】  すみません、ありがとうございます。

【西尾分科会長】  ほかに、手を挙げておられる方はおられますか。
 家先生、意見書を頂いておりますけれども、何か直接お言葉はございませんか。

【家委員】  多分こういう感じで時間が押すだろうと思いましたので、あらかじめ文書で出させていただきました。読んでいただければ結構だと思いますが。若手の特別研究員の話とか、リモート実験の話とか、いろいろな政策の各論で、趣旨そのものは大変結構でも、それに見合う予算がちゃんと手当てされないと、思わぬところに副作用でしわ寄せが行くという可能性があり、その辺のところがちょっと気になったものでコメントさせていただきました。
 以上です。
 
【西尾分科会長】  事前に頂きました貴重な御意見書については、既に読ませていただきました。どうもありがとうございました。
 小安先生、どうぞ。

【小安委員】  ありがとうございます。今回のコロナ禍の中、これを読ませていただいて、東日本大震災のときのことを少し思い出しました。こういう場合、やはり一般社会が学術に本当に期待しているのかどうかというところが気になるところです。期待していただかなければいけないし、我々はそれに応えなければいけないと思うのですが、そういう観点が今ここを見るとあまりないので、やや気になりました。そういうのはとても大事な観点ではないかなと思っていますので、そこを少しお考えいただければと思いました。
 以上です。

【西尾分科会長】  本当に貴重な御意見を頂き、誠にありがとうございました。
 喜連川先生、どうぞ。

【喜連川委員】  喜連川です。今の科学、これは人文も含めてですけれども、その非常に大きな変化というのは、原則、サイエンスがデータ駆動になると。つまり、今までの第3の科学、いわゆるコンピュテーショナルサイエンスというのは、支配方程式があればスパコンで解けるというものでしたが、今の科学は、そもそも支配方程式すらないような領域をいっぱい扱っていかなければいけなくなっているということだと思います。
 そういう中で、先日文部科学省のロードマップの委員会で、小林先生が主査をされておりますけれども、NIIのインフラ、ITインフラについて、もはやSINETというのはその部分でしかないと。むしろこの学術分科会でも御指摘いただきましたような、データのインフラこそが重要になるということを御指摘いただいておりますので、そこはもう非常に大きな変革観を持って、つまり、2022年度からの新しい期におきましては、SINETといいますよりも、データ基盤が主体になると、そんなふうにお考えをいただければありがたいと思います。単にデータを入れておけばいいというような簡単なものではございませんので、保有権も含めたデータのガバナンスがそこに投入されるというふうに御理解いただければと思います。
 このとき一番重要なことは、何か御発言があったかと思いますけれども、人文・社会の分野等では、やはりシステムの維持というのは著しく大変ですし、ストレージを買うにしても相対的には非常に高額になってしまいますので、ここをユニバーサルにつくると。JSTさんの最初の御講演に、ヨーロピアン・オープンサイエンス・クラウドというのがございましたけれども、あれはもうヨーロッパにいる研究者一人一人がもう全部そういうデータクラウドに簡単にアクセスできるようになるということをうたって研究を進めて、それは全然実現できていないわけで、そこに遅れないように今一生懸命頑張っているというふうに御理解いただければありがたいと思い、少し気になりましたから御発言させていただきました。
 以上です。

【西尾分科会長】  どうも、サイエンスのパラダイムシフトとも関連して、貴重な御意見ありがとうございました。先ほど須藤委員からもおっしゃったことと関連しているかと思います。
 時間はそろそろは来ているのですが、ほかにございますでしょうか。小林良彰先生、どうぞ。

【小林良彰委員】  10ページのところの技術情報基盤について、先ほども御意見ありましたけれども、絶版の話から始まって、あとはオンライン会議とかいろいろメリットが書いてあるのですが、やはり基本になるのはSINETの話です。SINETの重要性はいろいろな方から御意見がありましたけれども、もう少しここは具体的にお書きいただけないかと。
 私、常々思っていることですが、SINETは大規模フロンティア促進事業で行っています。これは競争的資金になります。何年かに1度応募をされて、採択されるかされないか分からないという形で進めています。採択されなかったら、一体本当にどうなるのかということです。これはやはり基本的には学術・科学技術の動脈です。ですから、これが詰まれば、心筋梗塞がいろいろなところで起きてきます。ですから、これはもう少し、ただ重要というだけではなくて、ちょうど今、コロナであることもあり、ここでやはりこれは競争的資金でほかの大規模計画と競争して採択されるものではなくて、国策として是非やるべきものであるということを具体的にお書きいただくいい機会ではないかというのが1点です。
 2点目ですが、13ページ以降の人文・社会については、先ほど森口科学官から御意見ありましたので重ねては申し上げませんが、ここは文系の方から読むと、いつの時代の話なのだろうというのは率直な感想としては思います。少なくとも社会科学は全然こういう状況ではないということは御理解いただきたいと思います。
 以上です。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。SINETは、既に国家の基幹の情報インフラであり、安定的な経費で整備していくことの重要性については、学術分科会、情報委員会の総意として明記させていただきたいと思います。
 2つ目のコメントも非常にありがとうございました。そのことについても、今後、提言に反映してまいりたいと思います。
 ほかにございますでしょうか。よろしいですか。
 そうしましたら、本当に貴重な御意見、コメント、御示唆の数々ありがとうございました。本日の御意見等を踏まえた上で、9月9日、来週の水曜日にございます情報委員会において議論される情報委員会の提言案と組み合わせた形で最終的な合同提案の形を整え、9月の中旬頃に書面審議によって皆様に御確認いただき、最終的に中間まとめとしていきたいと考えております。
 時間となりましたので、本日の審議は終了といたしまして、事務局のほうにバトンタッチいたします。ありがとうございました。

【二瓶学術企画室室長補佐】  ありがとうございました。最後、事務局から連絡事項がございます。次回でございますが、資料3に記載のとおり、次回第81回の学術分科会は、9月中旬を目途に、情報委員会と合同の書面開催にて行う予定でございます。後日メールにて御案内いたしますので、よろしくお願いいたします。
 なお、第82回の学術分科会の日程につきましては、改めて御連絡させていただきます。
 また、本日の議事録について、後日メールにてお送りいたしますので、御確認をお願いいたします。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  それでは、これにて閉会いたします。改めまして、貴重な御意見等を頂きまして誠にありがとうございました。心よりお礼申し上げます。

―― 了 ――
 

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