学術分科会(第79回) 議事録

1.日時

令和2年8月4日(火曜日)13時30分~15時30分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 各部会等の審議状況について
  2. 新型コロナウイルス感染症対策に係る対応等について
  3. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員)
西尾分科会長、甲斐委員、栗原委員、小長谷委員、白波瀬委員、辻委員、長谷山委員、観山委員、家委員、井関委員、井野瀬委員、岡部委員、川添委員、喜連川委員、小林傳司委員、小林良彰委員、小安委員、城山委員、新福委員、武内委員、鍋倉委員、山本佳世子委員、山本智委員
(科学官)
平野科学官、木津科学官、森口科学官、苅部科学官、三原科学官、吉江科学官、渡慶次科学官、黒橋科学官、大久保科学官、長谷部科学官、寺﨑科学官、林科学官、加藤科学官、長壁科学官、渡部科学官

文部科学省

坂口振興企画課長、塩原学術機関課長、橋爪参事官(情報担当)、錦学術企画室長、岡本学術研究助成課企画室長、楠目人材政策推進室長、新地科学技術・学術政策局政策課課長補佐、二瓶学術企画室室長補佐、磯谷科学技術・学術政策研究所長

5.議事録

【西尾分科会長】  皆さん、こんにちは。それでは、定刻となりましたので、ただいまより第79回科学技術・学術審議会学術分科会を開催いたします。
 まず、本日の分科会のオンライン開催に当たり、事務局から注意事項がありますので、お願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  事務局より確認をさせていただきます。本日はオンラインでの開催となりますので、事前にお送りしておりますマニュアルに記載のとおり、御発言の際には、「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、指名を受けましたら、マイクをオンにし、お名前を言っていただいた上で、ゆっくり御発言いただければと思います。
 なお、分科会長以外の皆様におかれましては、御発言されるとき以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 機材の不具合等ございましたら、マニュアルに記載の事務局連絡先に御連絡ください。
 また、本日の会議は、傍聴者を登録の上、公開としております。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、初めに、本日の出席状況について、事務局から御報告をお願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  本日、委員30名中、23名の委員の方々の御出席を頂く予定としております。定足数を満たしていることを御報告させていただきます。
 また、本日は、議事に関する御説明に当たりまして、科学技術・学術政策研究所から、磯谷所長をお呼びしております。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 事務局の異動がありましたようですので、御紹介いただけますでしょうか。

【二瓶学術企画室室長補佐】  前回7月の分科会以降、事務局に異動がございました。ここで御紹介をさせていただきます。
 まず、研究振興局長に、杉野が着任しております。
 次に、大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)に、塩崎が着任しております。
誠に申し訳ございませんが、両名とも本日急きょ公務のため欠席となってしまっております。御容赦いただければと思います。
 以上となります。

【西尾分科会長】  御紹介ありがとうございました。
 それでは、事務局より、配付資料の確認をお願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  では、続きまして、資料の確認をさせていただきます。
 本日、オンラインでの開催でございますので、資料は事前にお送りさせていただいております。本日の主な議題に係る資料に関しましては、お手元の議事次第にございますとおり、資料1、資料2-1から資料2-4まで、それに資料3をお配りしております。
 参考資料につきましては、参考資料1から参考資料7までお配りしております。参考資料2につきましては、議題(1)の中で御紹介いたします。参考資料3-1、3-2、3-3は、議題(2)に関する資料となり、このうち参考資料3-1は前回の分科会において追加で頂いた御意見となります。参考資料3-2、3-3は、前回の分科会でも資料としてお配りしているアンケート結果でございます。参考資料4、5、6につきましては、いずれも令和2年7月17日に閣議決定された文書でございますが、学術研究の振興方策にも係るものでございますので、学術に関係する部分を抜粋してお配りをしております。参考資料7は、次期基本計画となる第6期科学技術・イノベーション基本計画に向けて、総合科学技術・イノベーション会議基本計画専門調査会で示された資料となります。
 資料の御説明は以上でございます。

【西尾分科会長】  資料に関する説明、ありがとうございました。
 それでは、議事に入らせていただきます。最初は、各部会などの審議状況についてです。
 私が部会長を務めております研究費部会より報告をいたします。
 第10期研究費部会においては、前期の研究費部会において今後の検討課題の一つとされた「科研費を中心とした学術研究を支える研究費制度の総合的な観点からの検討」を行うため、昨年11月から3回にわたり、関連事業などの有識者との意見交換を行いました。具体的には、戦略的創造研究推進事業、国際交流事業、若手育成関連事業及び大学における基盤的経費の事業等の有識者に御出席いただきました。学術研究をめぐる環境が変化する中で、科研費が研究費全体の中で果たすべき役割やそれを踏まえた制度の改善点について、他の事業の状況を踏まえて幅広い議論を行ったもので、研究費部会としてはこのようなことは初めての試みでした。その後、意見交換を踏まえ、総合的な観点から議論を行い、令和2年3月に「第10期研究費部会における関連事業などの有識者との意見交換のまとめ」を取りまとめました。
 今年度に入ってからは、意見交換のまとめの中で、「科研費事業における今後の検討事項」とされていた内容を中心に議論を進め、このたび、「第6期科学技術基本計画に向けた科研費改革の改善・充実について(中間まとめ)」を取りまとめましたので、御報告したいと思います。
 なお、中間まとめの検討に当たっては、研究費部会と科学研究費補助金審査部会の下に設置した「科研費改革に関する作業部会」において改善事項などに関わる詳細な検討を頂きましたことから、今回の中間まとめのポイントについて、この作業部会の主査をお務めいただきました小安委員に御説明をお願いしたいと思います。
 小安先生、よろしくお願いいたします。

【小安委員】  ありがとうございます。小安です。私のほうから報告させていただきますのは、資料1です。中間まとめの内容についてはポイントのみを報告させていただきます。
 これは大きく3つの項目に分けて整理させていただいておりまして、1つ目は、第9期研究費部会において今後の検討課題とされたことへの対応、そして各課題へのこれまでの対応状況を記載させていただいております。2点目は、短期的に取組が求められることとして、特に令和3年度概算要求を目途に制度改善等を行う事項について、その方向性をお示しさせていただいております。そして3点目は、中長期的に検討すべきこととして、次期の研究費部会において検討すべき事項を挙げており、最終まとめまでにさらなる留意点等を記載する予定でおります。本日は当面の制度改善に関わる点を中心に御説明をさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 1ポツの(1)から順番にかいつまんで御説明させていただきます。
 最初に、新学術領域研究については、これを見直して、令和2年度に学術変革領域研究を創設したことを記載させていただいております。この学術変革領域研究につきましては、当初、文科省で2回ほど審査を行った後に学術振興会へ移管する予定でありました。ところが、今般の新型コロナウイルス感染の拡大によって、現在、振興会において大型種目の審査が遅れておることは皆さん御存じのとおりです。従いまして、移管時期については改めて検討する必要があるということを付記させていただきました。
 その次に、(2)応募件数の増加への対応です。これに関しましては、審査委員の負担を軽減するとともに次世代の審査委員を育成するなどの観点から、これまで振興会においては49歳以下の審査委員未経験者の審査委員への積極的な登用をしており、これは継続したいと思っております。そして、大事なことは、審査委員を引き受けることは研究者の責務であり、学術研究を支えるためにも重要であるということを研究者に強く求めるべきだという意見が非常にたくさん出されました。従いまして、この点は引き続き、皆様、周知徹底をお願いしたいと思っております。
 次に、(3)新たな審査方式の検証及び検証結果を踏まえた見直しという点です。これに関しましては、平成30年度公募から始まった新たな審査方式に関してはおおむね好意的な意見をたくさん頂いているところです。しかしながら、引き続き文部科学省と振興会が連携を取りながら検証をし、継続して適切な見直しを行う必要があるということを記載させていただきました。
 その次の、短期的に取組が求められることというところに関して述べたいと思います。
 (1)の科研費における種目のバランスと将来的に目指す予算規模、これは大変重たい課題でありまして、なかなかこれという意見を出すことは非常に難しい状況ではございましたが、いろいろと議論をさせていただきました。やはりここで出てきた問題というのは、科研費と運営費交付金等のいわゆる基盤的経費の目的、それから性格の違いを踏まえて、デュアルサポートシステムの適正化を求めることが極めて重要であるということで、これをまず第一に書かせていただきました。この背景といたしましては、基盤的経費が担うべき大学の研究活動に係る役割を科研費がもし担うということになれば、我が国の学術研究、科学技術のレベルにさらなる悪影響を及ぼしかねないとの危機感が委員の中に広く共有されたということがあり、このことを補足しておきたいと思います。
 そして、将来的に目指す予算規模ですが、科研費は、第5期科学技術基本計画におきまして新規採択率30%を目指しつつも、令和2年度の主要科目の新規採択率が28.4%と、30%に届かなかったことから、第6期におきましては、種目の性格等を考慮しつつ、全体として新規採択率30%の達成を目指す必要があると記載させていただきました。その際、若手研究種目群の採択率は、現在の水準、大体40%でございますが、これは維持しつつも、実力のある研究者が継続的・安定的に研究を継続できるように、基盤研究種目群や大型種目の充実に取り組む必要があると、このように考えております。
 その次ですが、(2)の若手研究者支援の改善・充実についてというところで、ここから1ページから2ページのほうに順番に移ってまいりますが、最初に、若手研究における応募資格の経過措置というところです。これは平成30年度公募から若手研究の応募要件を39歳以下という年齢制限から博士号取得後8年未満に変更した後、経過措置として、39歳以下の博士号未取得者の応募を認めてまいりました。しかしながら、本経過措置は令和2年度公募をもって終了するとさせていただきました。
 その次の、若手研究の改善です。これは令和3年度公募、令和2年、今年9月の公募からの対応予定です。若手研究者がより継続的・安定的に研究を遂行できるように、若手研究の研究期間を、現在は2年から4年ですが、2年から5年に延伸したいということを書かせていただきました。また、若手研究種目群から基盤研究種目群へのスムーズな移行を励行する。これはずっとこれまで目指してきたことですが、このために、基盤研究種目群を受給したことのある者の若手研究への応募を認めない方向で応募制限を見直すということを書かせていただいております。
 その次が、基盤研究(B)における若手研究者の応募課題を優先的に採択できる仕組みに関してですが、この仕組みは若手研究(A)の見直しに伴う経過措置ということで始めました。39歳以下の研究者の応募・採択の傾向を分析し、本来の目的がある程度達成されたと考えられたことから、この経過措置は令和2年度公募をもって終了するとさせていただきました。
 この項目の最後、マル4の若手研究における独立基盤形成支援(試行)の改善ということでございます。この制度は、若手研究者が研究室を主宰する者として研究活動を行おうとする際に、必要な研究基盤の整備を支援するものです。従前はその支援対象を、若手研究に新規採択された者で准教授以上の職に就いて2年以内の者、かつ、研究室を主宰している者としておりましたが、なかなか応募者の数が増えないということもありまして、この対象種目を基盤研究(C)にも拡大するということを記載させていただきました。これは令和2年度公募から対応済みです。また、従前は、若手研究の採択決定後、年度が改まってから公募を開始していたのですが、大学があらかじめ翌年度の予算にこのことを組み込めるように、公募開始時期を前年度に前倒しするということにいたしました。これは令和3年度公募から対応する予定です。
 なお、本来は若手研究者の独立支援というのは大学が基盤的経費で行うものであるということに鑑みまして、この事業の在り方については、取りあえずは試行という形にして継続したいと、そのように考えております。
 以上が若手研究者支援の改善・充実についてです。
 その次に、(3)国際共同研究の改善・充実というところに進ませていただきます。ここも3項目に分けて記載をさせていただいておりますが、まず、国際共同研究強化(A)の改善ということで、これは本年度の公募、7月の公募から対応済みです。国際共同研究強化(A)といいますのは、一定期間、海外の研究機関で国際共同研究を実施することで、既に採択されている研究課題を格段に発展させ、優れた成果を上げることを目的としております。そのことから、従前は応募資格を、基盤研究、若手研究の採択者で36歳以上45歳以下の者としておりましたが、結果的に国際的に活躍できる独立した研究者の養成にも資するという本種目の趣旨を踏まえて、年齢制限の下限を撤廃し、年齢制限の下限をなしとさせていただきました。
 その次の、帰国発展研究の改善です。この種目におきましては、海外で優れた研究実績を有する独立した研究者が帰国直後から研究を速やかに開始できるように支援するという趣旨で作られた種目です。従前は対象を、教授、准教授相当のポストに海外で就いている者としておりました。ところが、一方で、海外で活躍した研究者は帰国後も外国人研究者の連携等により日本の研究活動の活性化に資すると考えられること、それから、帰国直後の研究費支援があることで若手研究者の海外挑戦の後押しにもつながるのではないかということから、海外で活躍する若手研究者の応募機会を拡大したい、そのように考えまして、これまで教授あるいは准教授相当としていたところを、ポストドクターでもよいということにいたしました。ただし、ポストドクターといっても、自らの責任で自由に使用できる研究費を自ら獲得している、したがって、ポストドクターの身分であっても独立した研究者として活動しているということがきちんと認められる者については、本種目の趣旨に合致している者として応募を認めることにしたいと思います。これに関しましては、今後、審査方針などでいろいろと議論が必要かとは思います。
 最後に、マル3の国際共同研究を推進するための改善という点ですが、これに関しましても、国際共同研究を行った相手国や相手研究機関等の情報をより確実に把握して、科研費採択者以外の者にも参照できるように研究実績報告書や研究成果報告書の様式を工夫したいと、このように書かせていただきました。
 最後の(4)の大型種目の公募スケジュールの前倒しという点ですが、特別推進研究と基盤研究(S)の公募時期に関しましては、これを他の種目と同様に4月初旬に交付内定を行えるようにしたいということはいろいろ議論をしてまいりました。令和4年度公募、これは令和3年9月の公募予定ですが、ここから公募スケジュールを前倒しにすることを想定いたしておりましたが、これもまた今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大による今年度の大型種目の審査スケジュールの大幅な遅れというものを踏まえまして、この時期の見直しについては1年程度先送りしてはどうかと、書かせていただきました。
 私からは以上です。西尾部会長から補足があれば、是非お願いをいたします。どうもありがとうございました。

【西尾分科会長】  小安先生、本当に的確な御説明を頂きまして、どうもありがとうございました。私からは特段ございませんが、3ページのところで、中長期的に検討すべきことが3番目の項目として挙げてございますので、この部分も御参照いただければと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、今の小安先生の御報告につきまして御質問等がございましたら、お願いいたします。家委員、どうぞ。

【家委員】  小安先生、どうもありがとうございます。科研費に関して大変詳細に検討していただきました。大筋は私も大賛成ですけれども、多少細かいことになりますけれども、どういう議論があったのか、お伺いしたい点がありまして、2ページの④の若手研究の独立基盤形成に関する議論ですね。その2つ目のポツに、公募時期を前年度に前倒すということが書かれております。もしそういうことにすると、基になる若手研究ないし基盤研究(C)がまだ採否が決まっていない段階で大学から応募があるということになるので、空振りも多く生じることになると思いますが、どういう議論があったのでしょうか。

【小安委員】  お答えします。これに関しまして、やり方に関してはいろいろとまだ議論する必要があるとは思っているのですが、今、4月1日に採択通知が参りますね。そこから交付申請をして実際に研究がスタートするわけですが、その時点でその年度の予算で大学がその研究者をサポートしようとすると、予算というのはいろいろと使い道が決まっているので、なかなか資金を出すのが難しいのではないかということがこの議論の中で出てまいりました。したがって、それを何とかずらせないか、あらかじめ大学が次年度に対してどのぐらいの新規独立した研究者のスタートアップのための予算を用意するかということをしたほうがいいのではないかという意見がかなり出てきました。それに対してどう対応するかというようなことから、こういう議論が出てまいりました。
 したがって、この公募を、やり方はいろいろ考えなければいけないと思っているのですが、例えば、4月1日ではなくてもう少し早い時期に採択の通知が行くようにすれば、それをもって大学当局はその採択された独立を支援する者の予算を組み込んで次の予算を立てられるのではないかというようなことが議論の中で出てきました。

【家委員】  御議論の内容は分かりました。それが理由であれば、大学のほうでこの制度を利用する意思があれば、該当者と採択率を見込んである程度の予算を組んでおけばよい話のように思えました。当然ながら、若手研究、基盤研究(C)は、独立基盤形成制度に該当し得る人もそうでない人も応募するわけなので、本来の科研費の審査に影響を及ぼす可能性はないかということが気になりました。つまり、前年度に応募という場合にどういうタイミングを想定するのか。仮に若手研究ないし基盤研究(C)への応募と同時に応募する、とすると、この基盤形成支援に応募しているかどうかという情報が審査委員に伝わると審査に変な影響が出る可能性もある。そういうこともいろいろ頭をよぎったもので質問させていただきたいと思いました。趣旨は分かりましたので、振興会の学術システム研究センターのほうでいろいろ意見を聞きまして、制度設計につなげたいというふうに思います。ありがとうございました。
 すみません、もう1点、よろしいでしょうか。

【西尾分科会長】  どうぞ。
 
【家委員】  この報告概要を振興会の科研費関係の委員会でも御議論いただいたところ、ある委員の方から、最後の3ページの3ポツの(2)の「若手研究者が失敗しても再チャレンジできる機会の充実」、これは一体何を意味しているのかという質問も出まして、私もこの言葉にちょっと違和感を覚えたんですけれども、どういう御議論があったんでしょうか。つまり、科研費においては、再チャレンジはとにかくいつでもできるわけですので。

【小安委員】  はい。いつでもできる。おっしゃるとおりだと思います。ちょっと待ってください。どういう議論があったか、ちゃんと今覚えておりませんで。

【西尾分科会長】  これは文部科学省の科研費担当の方、おられませんか。

【家委員】  そもそも、ここで言う「失敗」とは何を指しているのでしょうか。

【岡本学術研究助成課企画室長】  学術研究助成課の岡本です。

【西尾分科会長】  岡本さん、よろしくお願いいたします。

【岡本学術研究助成課企画室長】  御説明させていただきます。この中長期的に検討すべき事項につきましては、昨年度研究費部会で、関連事業との意見交換を何度か行っていただきまして、その中で出てきたコメント等を踏まえて項目として立てさせていただいたものでございます。ここでいう失敗というのは、科研費においては、若手の方でも採択率は4割ぐらいでございますので、再チャレンジできる機会を充実させてほしいということで、現在このような項目としております。

【西尾分科会長】  岡本さんにお聞きしたいのですが、例えば、何か例示的なものはございますか。

【小安委員】  小安です。思い出しました。若手から見たときに、科研費におけるチャレンジというのは、例えば、若手研究を終わった後に基盤(A)に挑戦するとか、そういうことは若手にとって非常に大きなチャレンジです。実力があっても、採択されないことを恐れてなかなかチャレンジしてくれないということが議論になりました。ですから、科研費に採択されないことを失敗というのであれば、失敗を恐れて(A)にチャレンジしないということになります。そうであれば、チャレンジ精神を発揮していただけるように重複制限を緩和することが考えられるのではないかという、そういう議論の流れだったと思い出しました。

【家委員】  家です。ありがとうございます。そういうことでしたら、ある程度、既に重複応募の緩和措置で対応できているかと思います。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。ほかにございますか。

【家委員】  「失敗」が「不採択」を意味しているということでしたら一応分かりました。ありがとうございました。

【西尾分科会長】  林委員、どうぞ。

【林科学官】  科学官の京都大学の林です。帰国発展研究について、教授、准教授とありますが、これはアシスタントプロフェッサーも入れるべきではないかと考えます。助教、あるいは英語でアシスタントプロフェッサーとも入れていただければと思います。

【西尾分科会長】  小安先生、いかがでしょうか。

【小安委員】  これはもともとアシスタントプロフェッサー以上の職にある者という意味で使っていたと思いますので、ここの語が最初に使っていた語と合っていないかもしれませんので、確認させていただきます。御指摘、どうもありがとうございました。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、新福委員、どうぞ。

【新福委員】  ありがとうございます。先ほど質問のありました2ページの4、若手研究における独立基盤形成支援(試行)の改善の部分なんですけれども、私自身、近年まだ若手というところから発言をさせていただきますと、私が准教授になったとき、この若手研究2年目で、3年間取っていたので、2年以内に、これに該当することができなかったんですけれども、今年たまたま教授に上がって基盤研究(C)も取れたということで、該当して出すことができたという恩恵を受けている者です。
 ただ、准教授に上がれるかですとか教授に上がれるかの人事が決まる時期と、この科研の応募の時期というのが非常に難しい可能性がありまして、准教授に上がれることが決まっていないけれども、今年は駆け出しで、まず基盤(C)に出しますという方もいらっしゃるので、私はたまたま今年度にそれが来たからよかったのですけれど、前年度に応募が締め切られていたら、私も気づかず、出せなかった可能性もあるということを思いましたので、発言させていただきました。たまたま今の制度だったら私は通ったということがございました。
 以上です。

【西尾分科会長】  小安先生、何かございますか。

【小安委員】  いろいろなパターンがあるのではないかと想像しております。先ほど家先生のお話がありましたが、どういう形にしたら一番、若手で独立された方をサポートできるのかという観点から、少しケーススタディーみたいなことをして具体に持っていくようなことをしてはどうかと、お話を伺って感じましたので、もう少し検討させていただければと思います。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、この件に関して最後の質問ということで、喜連川先生、どうぞ。

【喜連川委員】  大変丁寧な説明、どうもありがとうございました。個別の質問は皆さんなされておられると思うのですけれど、全体感から見ますと、これはいわゆるEBPMのフレームワークになるんじゃないかなと。要するに、どっちかをどうひねると何かサイドエフェクトが出てくる、こういう問題のときに、整理の仕方として、やはりエビデンスベースというのをもうちょっと定量的に入れていくと理解がしやすくて、どうして制度を変えたのか、あるいは変更した制度を元に戻したかというような話が、より明確になるのではないかなと。
 例えば、先ほどの、若手の方が最初に研究室を持つための支援といったときに、ニーズがあんまりありませんでしたのでと、そもそもニーズがないのにそれをつくるということがどうして起こるのかというと、やっぱりそこら辺が、きっちりとしたエビデンスを確立していくという、そういう今の流れからちょっとずれているのかもしれない。
 御努力はすごくなされていると思うんですよね、こういう場合もある、ああいう場合もあると。これは要するに税制がどんどんプリサイスになって、細かくやっているのと似たような構図だと思うんですけれども、この方法というか、ポリシーのつくり方そのものを、もうちょっと何か、せっかく我々、文科省にいるので、もう少し細やかな方法論を考えてもいいのかなと勝手なことを感じた次第です。
 以上です。

【小安委員】  喜連川さん、ありがとうございます。エビデンスに関しては、報告書の参考資料にはかなりいろいろな数字を挙げて、これまでの経緯、それから移り変わり、それから実際にそれぞれの年代別の採択率等々、そういうものを挙げてあり、それらに基づいていろいろと決めていますので、報告書の中にはそういうものを引用させていただいています。ポリシーですが、大きなポリシーは、なるべくシンプルにしたいということが1つあります。基盤研究という1つの流れ、それから更にチャレンジするということで学術変革種目群という、この2つの流れということにして、一番トップに特別推進研究があるという形にして、なるべくシンプルにしようということをやっています。
 それから、新しい種目、例えば独立支援のようなものをつくるときには、ある程度やはり、どのぐらいの応募があるかということを予想はしますが、どうしても、応募者数が予想をはるかに超えたときの審査の負担というのがとても大きな状況になります。従いまして、そこら辺のところを最初はかなり保守的に見積もって始めているというのは否めないところがあります。それで、その様子を見た上で広げていくというのが現在行っていることです。例えば重複制限にしても、これは私見が入りますが、本来、重複制限というのは要らないと私は思っていますが、それをやると現実問題として審査が全く回らなくなります。したがって、審査ができるかどうかということと、それから本来のあるべき姿みたいなところをいつもてんびんにかけながら、皆さんと議論をさせていただいているということです。その辺りを御理解いただければと思います。
 以上です。

【西尾分科会長】  喜連川先生、貴重な御意見ありがとうございました。また、小安先生、御回答いただきましてありがとうございました。
 先ほどの、中長期的に検討すべきところで、若手研究者が失敗しても再チャレンジできる機会の充実ということについて補足します。この委員会では初めての試みで、様々なファンディングエージェンシーの方とも議論を行いましたし、大学の学長の方々にも大学経営における研究力強化のための研究費の確保の観点から様々な試みを紹介いただきました。その中で、先ほど小安先生がおっしゃったことと関係して、優れた研究者が、より大規模な研究費が設定されている科研等の研究種目にチャレンジした場合に、もしそれがうまくいかなかった場合でも、その研究者に対して、1年間、何とか研究を続けられるような支援をしているというような報告が、ある学長からありました。
 今まで貴重な御質問、御意見等、どうもありがとうございました。また、小安先生、お答えいただきまして誠にありがとうございました。
 それでは、次の議題に移ります。新型コロナウイルス感染症を踏まえた今後の学術研究の振興方策についてですけれども、まず新型コロナウイルス感染症が学術界に与えた影響に関し、前回の分科会以降、新たな調査の速報が取りまとめられたということで、科学技術・学術政策研究所の磯谷所長より御説明を頂きます。どうかお願いいたします。

【磯谷科学技術・学術政策研究所長】  NISTEPの磯谷でございます。西尾先生を始め委員の先生方、日頃からお世話になっております。御紹介いただきましたように、少しタイミングがずれてしまいましたが、7月10日付で公表しましたアンケート調査結果がございます。資料2-1になります。「新型コロナウイルス感染症による日本の科学技術への影響と科学者・技術者の貢献に関するアンケート調査について」という資料を御覧いただきたいと思います。

【磯谷科学技術・学術政策研究所長】  それでは、背景、目的は少し飛ばしていきますが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックがもたらす科学技術への影響を把握して、政策立案についてのエビデンスを得ることを目的として本アンケート調査を行いました。
 少しビジーな資料で申し訳ないですが、調査内容としましては、私どもが持っています約2,000人の専門家ネットワークの方たちに、以下御説明する感染症のパンデミックがもたらす科学技術への影響と、その感染症等への対策に関する科学技術についてお尋ねしたものです。専門家ネットワークの属性ですが、産学官の、特にアカデミアの方の割合が多く、年代としましては30代から40代の方が大半を占めておりまして、分野としてはライフサイエンスとかナノテクノロジー・材料といった、御覧のような構成になっているわけでございます。例えば、昨年7月にも速報版を出しましたが、NISTEPで5年に1回出しております、いわゆるデルファイ調査の科学技術予測調査などにも参画いただいております。このほか、JSTの戦略目標をつくるときに御意見を頂いたりもしています。今回のアンケート調査は、6月3日から6月15日に行ったのですが、実に回答率73.7%ということで、多くの御協力を得ましたことを改めて御礼申し上げたいと思います。
 調査項目は7つあります。1番から3番までは、後で御説明しますけれども、いわゆる選択式の回答ということで、パンデミックによる科学技術全体への影響とか、御覧のようなことをお聞きして、4番は選択式回答と自由記述回答を組み合わせて、これまでの感染症対策について聞いております。それから、5番、6番、7番が自由記述回答でありまして、5番のところで自然災害への対策についても併せて聞いておりますが、これについては今回の速報における分析からは外しておりまして、自由記述につきましても、アンケートが始まって1週間分で寄せられたものの中から今回は分析をさせていただいています。全体の確報については、一応年内の目途ですが、できるだけ早く報告書としてまとめたいと思っております。そういった意味で今回は速報ということでございます。
 結果概要がざっと書いてありますけれども、今日は10分から15分ぐらいお時間頂いておりますので、少しずつ御覧いただきたいと思っております。
項目ごとの結果概要です。
 まず、日本の科学技術への影響でございます。コロナウイルス感染症のパンデミックそれ自体、あるいはそれによる社会経済の変化による科学技術への影響ということで、「日本の科学技術全体が直接的・間接的に影響を受ける」といった方が半数以上の54%ということで、次いで「研究開発活動の在り方が変化する」、それから、「新しい科学的な発見や発明、イノベーションが起こるきっかけとなる」といった順で多くなっております。これは複数回答で、2つまで選択可としております。
 次に、調査項目2ですが、日本の科学者・技術者のなすべきことということで、一番多かったのは、「科学技術の専門家として、科学的に正しいメッセージを出していくべき」ということが50%以上でありました。次に、「個々の研究開発や教育等に一層励むことを通じて、国民に希望を与え、日本を基礎から支えていくべき」といった方が多かったということでございます。
 それから、調査項目3でありますが、今後の科学技術政策の方向性に関しての問いでありまして、パンデミックからの教訓とか反省を踏まえて今後重視すべき点ということで、まず多かったのが、「国家的危機の克服と社会経済回復への貢献」ということで35%、それから次に、「基礎科学研究を長期的視点で着実に推進していくために、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって影響を受けると予想される研究活動に関して一刻も早い対応方策を図るべき」といったことや、「日本全体の研究活動の停滞を避けるため、共通基盤の充実や産学官等の連携を進める」というようなことが3番目に多かった回答でございます。
 それから、調査項目4-1でありますが、日本での新型コロナウイルス感染症対策において適確に機能した、あるいは非常に役立った科学技術という問いについて、これは先ほど申し上げたように、アンケートを始めて1週間ぐらいで寄せられた400人弱の自由記述の回答に対して、担当研究官が目視で分類をさせていただいたということであります。特にその中で、感染症専門家による分析や情報発信、政策への的確な提言を評価する意見が多く、数理モデルによる感染拡大シミュレーションの効果に対する評価は高かったですし、医療関係ではECMOやX線CTなどの医療機器関係の技術、あるいは人との接触低減のインフラということで、ICT、データ活用といったことが挙げられています。
 次に、対策において十分機能していない、あるいは想定が十分でなかった科学技術ということで、特に研究や専門家の観点としましては、分野を超えた連携の必要性の指摘が複数あったということ、それから実験や教育のリモート化推進の必要性が指摘されました。また、PCR検査能力の拡大に関する意見が多く寄せられています。さらに、日本におけるワクチン開発の一層の推進や感染症対策用品の国内増産の必要性なども指摘をされているといったところでございます。もちろん自由記述ですので賛否が分かれているところもあり、先ほど調査項目4-1で御覧いただいたことと違う、逆のことを書いていらっしゃる方ももちろんいらっしゃるところであります。
 調査項目4-3で、特に今後、新興感染症の対策に向けて重視すべき科学技術・イノベーション政策ということで、一番多かったのが、幅広い分野で研究者や技術者の育成・確保、次いで研究開発事業の拡充・多様化といったところです。これは先ほど御議論がありました、研究費の拡充とか、事業の対象や期間の拡張といったようなことが具体例となります。それから、3番目に多かったのは国内の連携・協力で、4番目に国際連携・標準化といったところが挙げられておりました。
 調査項目5でありますが、感染症等への対策に向けた科学技術で、専門家として貢献できる科学技術ということで自由記述を、またこれも250人ぐらいの回答について目視で分類、分析したものです。基礎研究、治療薬・ワクチン開発などが多く挙げられていて、次いで検査・診断、感染予防対策について、御覧のような様々なアイデアが多く挙げられております。こうした自由記述については文部科学省内の担当課とも適宜情報共有して、アイデアを政策に生かしてもらうような努力もしております。
 調査項目6-1ですが、日本の研究開発現場への影響ということで、これもアンケート調査の実施1週間後までに頂いた約850人の自由記述の回答について、担当研究官が目視で分類、分析をしたものです。多く寄せられた回答内容について、記載のような順番で並んでおりますが、専門家会合の中止、延期、オンライン化による研究者間コミュニケーションへの影響ということで、学会における対面での交流や学びの場が激減したことによって、情報交換量が減少したというのがありますが、オンライン化というのは場所や移動の制約がないという利点もあって、今後更に進めるべきというような御意見もありました。2番目の項目としましては、研究機関や施設への立入り制限による研究の遅れといったこと、それから地域間移動の制限による研究活動への影響です。また、学生の入構制限による教育研究活動への影響等といったことが寄せられております。
 調査項目6-2では、国のレベルで整理すべき点や国に求める支援というようなことに関連するものについて例示を挙げておりますが、これも先ほどと同じ850人ぐらいの自由記述を担当研究官が目視で分類したものです。現場の環境整備に関する内容ということで、先ほどのオンライン化の話や、研究費の執行や研究事業の制度に関する内容、これは先ほど多少議論があったと思いますが、研究費執行の繰越しの話とか期間の延長等々でございます。それから人材に関する内容としましては、学生の学位取得、就職への影響が大きいということで、柔軟な対応が必要だということや、今後の研究開発の方向性に関する内容ということで、遠隔制御による実験手法など、新たな実験プロセスを支える技術開発への支援が挙げられております。こういったことについては補正予算等でも国のほうで措置をし、これからしっかりと対応していく方向性と認識をしています。
 調査項目7-1では、国際連携への影響で、9割以上が影響ありと回答しております。具体的な影響の例については、学会等の会合や研究活動等々、負の影響があったということで、国外の学会中止、あるいはそれに参加できなくなったということで、最先端の研究成果に関する情報収集やトップレベル研究者との交流の場がなくなったということです。それから、試料採取とか現地調査といったところへの影響、共同研究の延期等がございます。それから、特に若い方ですかね、大学院生とか博士研究員の教育研究が滞ったことで、彼らのキャリア形成の機会が減少しているのではということが挙げられております。それから、オンライン化による研究活動の変化ということで、これはプラスの効果ということになるのですが、セミナーの聴講とか学会の参加へのハードルが下がったというようなことです。ウェブ会議システムを日常的に利用することで、限られた時間で集中して議論をまとめるなど、より密な議論ができるようになったという評価もあります。
 調査項目7-2は、同じく、国際連携に関して国のレベルで整理すべき点等についてです。研究活動全般に関する内容ということで、研究者の渡航や移動に関する国際的なルールの策定ということとか、海外渡航費等の年度繰越し措置といったようなこと、あるいは国際学会等の開催に関する内容ということで、各国のタイムラインに対応した各種会合への新たな参加形態の検討や、時差が少ないアジアの中での国際シンポジウム開催に対する、より積極的な支援といったことも挙げられておりますし、新型コロナウイルス感染症等への対策に関する内容ということで、もっとリスクの高い感染症が今後まん延することを想定した研究開発の実施等々が挙げられているといったところでございます。
 繰り返しになりますが、このアンケート調査結果は速報として7月10日に出しましたけれども、年内、できるだけ早く、全体の報告書という形で公表する予定にしています。
 以上です。

【西尾分科会長】  磯谷所長には、この事態が起こってからの状況を即座にいろいろアンケート等でお調べいただき、今の調査報告にありますような、非常に興味ある御報告を頂きましてありがとうございました。
 それでは、何か御質問等ございませんでしょうか。これはまた後の議論に有効に生かせる内容かと思っております。非常に貴重なデータの御紹介に、再度お礼を申し上げます。
 それでは、今後の議論の進め方につきまして皆さん方と協議したいのですけれども、分科会長としまして提案をさせていただきたいことがございます。
 今後の議論の進め方について、改めて事務局とも相談しまして、ポストコロナ社会に向けた学術研究の振興と、それと密接不可分なポストコロナ社会に向けた情報科学技術の振興についての学術分科会と情報委員会それぞれの審議結果を一体的に示すことで、より総合的で実行性の高い取組へとつなげ、両委員会連名の合同提案という形を取れないかということを考えております。
 その場合に、具体的な審議の進め方としては、前回も本分科会で幾つか頂いております情報分野関連の意見は、情報委員会にフィードバックしまして、専門的な検討は情報委員会へ委ねることとし、学術分科会、情報委員会それぞれの審議を重ね、最後、合同会議のような形で、両委員会の審議結果をうまく統合しまして、最終提言案を策定できればと考えております。
 ついては、8月21日に予定されている情報委員会においてもこの方針を了承いただける場合という条件付ではありますが、今、説明をさせていただいたような今後の学術分科会の審議の進め方について、委員の皆様に了承賜りたく思っております。そのような進め方について何か御異議のある委員の方は、いらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。
 前回、情報分野関係の議論を深掘りする委員会等についてご質問いただきました観山先生、そういう形でよろしいでしょうか。

【観山委員】  結構だと思います。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、事務局から、前回の7月2日の学術分科会、及び7月8日の情報委員会での主な意見と、それを踏まえた提言骨子案について説明をお願いしたいと思います。
 それでは、錦室長、お願いいたします。

【錦学術企画室長】  では、よろしくお願いします。資料2-2でございます。前回7月2日の学術分科会における主な意見を御紹介いたします。
 まず総論というところですけれども、1つ目のポツのところ、学術研究がどのように貢献できるかという視点と、必要な研究振興策は何かという、2つの角度から問題を捉える必要があるのではないかということ。2つ目のポツ、コロナの影響によるプラスの面も抽出して、今後の社会変革に生かしていく視点が必要ではないかということ。
 1つ飛ばしまして、4つ目のポツ、以前から日本の学術界の課題であった点について、コロナをきっかけに対応の方向性をしっかりと示していくことが必要といった御意見。下から2つ目のポツのところですけれども、新しい生活様式の下での新しい価値の創造に関する研究が必須ではないかという御意見。最後のポツですけれども、学術界が社会に対してどのような貢献ができるのかを整理することが極めて重要といった御意見でございます。
 次、2ページ、各論でございますけれども、競争的資金制度について、1つ目のポツの3行目からですが、競争的資金の一層の基金化、繰越手続の簡略化、予算執行枠の弾力化が必要であるといった御意見等々、頂いてございます。
 少々割愛しまして、次に「研究人材のサポートについて」というところの1つ目のポツのところでございます。不安定な立場に置かれている若手研究者、特に博士後期課程の学生について、安心して研究できる環境の整備が必要であるといった御意見でございます。
 次に、3ページの「職員の配置」のところの1つ目のポツ、URAの配置により、現場での危機対応もでき、ふだんも余裕を持って業務を行えるようになるのではないかと。3つ目のポツのところ、オンライン会議等を支援する職員を配置するための助成が急務であるということ。
 その次の「その他属性による配慮事項」というところの2つ目のポツのところですけれども、女性研究者への継続的・積極的な支援の観点も念頭に置くことが必要といったことでございます。
 次に、大きな丸の「大学等における研究体制」というところの2つ目の括弧、「研究室内の環境」というところですけれども、研究室の狭隘(きょうあい)の問題について、この際、解決策を検討するべきであるといった御意見でございます。
 次の「ノウハウの構築」の2つ目のポツのところですけれども、部局ごとの事情を勘案して、研究活動を再開しているなどの現在の対応を参考にして、今後の感染拡大時には、全面休業ではなくて縮小継続できる研究体制など、もう少し幅のある対応ができるとよいといった御意見を頂いてございます。
 次の丸、1つ飛ばしまして、「遠隔も前提とした研究現場におけるコミュニケーションについて」というところの1つ目のポツのところでございます。国際会議や国内学会についてオンライン開催が行われるようになったわけですけれども、コロナ終息後もこのメリットを生かす方向を検討すべきであるという御意見。3つ目のポツのところ、リモートでの共同研究等を効率的に実施するための調査・研究を立ち上げることが必要であるという御意見。
 次の丸、「共同利用・共同研究体制について」の1つ目のポツのところ、リモートでのフィールド活動や観測、実験のシステムを早急に共同利用・共同研究体制においても構築すべきであるといった御意見。同じところの下から2つ目のポツでございます。共同利用・共同研究拠点も含めた研究機関の稼働状況等についての情報の見える化を促進することが必要であるという御意見。最後のポツのところ、大規模学術フロンティア促進事業等を着実に支援するべきであるといった御意見でございます。
 次のページでございます。「人文学・社会科学の知見の活用」の1つ目のポツ、今回の経験を踏まえた将来社会の在り方を考える上では、まさに人文学部・社会科学の役割が重要になる等といった御意見を頂いてございます。
 次の丸の「積極的な社会との対話による学術界のコミットメント」というところでは、2つ目のポツのところ、プレプリントの品質管理の 問題について社会の理解を促進して、研究成果の適切な活用を行うべきであるという御意見。3つ目のポツのところ、科学が回答にたどり着くまでに必要とする時間と、社会的な政策決定に必要とする時間とは合わないことがありまして、そのことを社会に伝えなければ無用の科学不信を生む可能性があるといった御意見を頂いております。
 次の丸の「学術の多様性の確保・学術政策の総合的推進に当たって留意すべき事項」というところの1つ目のポツ、国際社会が連帯して対応に当たる必要があるといったこと、次の6ページのところの多様性の確保というところですけれども、1つ目のポツ、新しい社会の知はどこから出てくるかは予想できず、今後、予期せぬことが起きたときに備えるためにも、研究の多様性は重要であるといったことでございます。
 次の括弧の「学術振興の体制」のポツのところ、学術研究の振興に当たっては、学術政策を科学技術政策と大学教育政策を一体として進める体制に移行させることが必要であるといった御意見を頂いております。
 次、7ページ以降、ここは情報科学技術分野に関連した御意見でございます。1つ目の丸、「全国規模・大学等の学術情報基盤について」の2つ目のポツのところ、SINETそのものの強化に加えて、SINET周辺のネットワーク強化が必要であるということ。1つ飛ばしまして、4つ目のポツのところ、SINETの運用を担う国立情報学研究所を独立した研究所とするなど体制強化が急務であるといった御意見でございます。
 次の3つ目の丸のところ、「オンライン・コミュニケーションについて」の2つ目のポツのところ、若手研究者についてはリアルワールドでのコミュニケーションが安心して行えるような機会を積極的に設けることが不可欠であるといった御意見を頂いております。
 次の丸の「研究フローのDXについて」、1つ目のポツのところ、大学におけるオンライン活用によって研究時間が増加して、研究の質が高められるといった御意見でございます。
 次の丸、「大学図書館・ジャーナル等について」でございます。ページをまたぎますけれども、上から3つ目のポツ、様々な分野のデータをオープンにして、自由に利用できる体制の整備を更に進めるべきであるといったこと。次の括弧の「データの利活用に際し考慮すべき事項」の1つ目のポツ、データを適切に活用するためには、データの取得状況を考慮しなければならないということが、もう少し社会一般に共有されるべきであるという御意見。飛ばしまして、括弧の「ジャーナル問題」のところでございます。海外出版社の電子ジャーナルについて、政府機関が契約して各研究機関が利用料を政府機関に支払って利用できる体制が望まれるといった御意見を頂いてございます。こちらが、前回の学術分科会における主な御意見でございます。
 次に、資料2-3でございます。こちらの資料では、7月8日に行われました情報委員会第10回における主な意見を御紹介させていただきます。
 1つ目の「リモート環境・ネットワーク基盤の整備・高度化について」というところの4つ目のポツで、データ活用のための取りまとめや発信の役割の担い手について、恒常的な体制の整備が必要であるといった御意見。2点目「研究のデジタルトランスフォーメーションについて」。学術資料のデジタル化とともに、図書館のあるべき姿の方向性を提言の中で明確にすべきであるということ。3つ目の「ポストコロナ時代に向けた情報科学技術の展開について」というところの1つ目のポツ、Society5.0の在り方について、ポストコロナの文脈の中で位置づけて、それを受けて情報科学技術分野のあるべき姿を示すべきであるという御意見。次のポツ、教育分野において情報科学技術の活用を推進していくべきであるという御意見。4点目の「データの利活用について」、学術情報について公開するだけでなく、一般市民等に広く発信していく取組が重要であるという御意見。2つ目のポツ、データの利活用を進めるに当たり、著作権に関する問題や個人情報管理の問題等を考慮した制度設計が求められるといった御意見でございます。
 こういった御意見を踏まえまして、資料2-4でございます。提言の骨子案をお示しさせていただければと思います。表題は、仮にでありますけれども、「ポスト・コロナ社会に向けた今後の学術研究及び情報科学技術の振興方策について」とさせていただいております。
 章立てとしては3章ございまして、まず第1章におきまして、「はじめに」として総論を書いてございます。2章として、学術分科会として検討すべき各論を整理してございます。
 次に3章として、情報委員会として検討いただく各論を整理したいと考えてございまして、まず、第1章の「はじめに」と、総論の部分でありますけれども、(1)新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた検討の背景を整理してございます。コロナウイルス感染症の影響は、イノベーションの源泉であり、国力の源である学術研究の現場にも厳しい形で及んでいると。下から2行目のコロナ禍においてICTを活用したリモート化・デジタル化とデータ活用の遅れが顕在化することになったということ。次の丸のところ、これは当室にて行いました科学官、学術調査官へのアンケートの結果を整理した部分ですけれども、下から2行目のところに、研究人材の育成、研究費運用の柔軟化、知のデータベース化、学術の社会への貢献等に係る課題が見られたと整理してございます。次の3つ目の丸のところ、これは今回と前回、NISTEPから御報告いただきましたアンケート結果を整理したものでございます。博士課程在籍者の多くが、感染症の流行が既に研究活動に影響を及ぼしていると認識しているということ。また、先ほど御紹介いただいたように、専門家全体を見ましても、半数以上が直接的・間接的な影響を受けると認識、約4割が研究開発活動の在り方が変化すると捉えておられるということでございます。最後のところ、こういったことを踏まえまして、中長期的な課題も視野に入れた大局的な視点も踏まえて、今後、政府、研究機関、研究者、その他関係者に求められる取組についての集中的検討が必要であるとしてございます。
 次のページ、(2)の「検討の方向性」、2つ目の丸から御説明しますけれども、コロナ禍のもたらした課題へ対応するとともに、学術研究を取り巻く情勢・環境の変化を契機に、ポジティブに捉えられる変化は積極的に受け入れながら、これまで進められなかった改革を推進する。そのことによりまして、国力の源としての学術研究自体の振興を果たしていくことが必要としてございます。次の丸のところですけれども、今般のコロナ禍のような人類社会の危機にこそ、人文学・社会科学を含む学術研究は重要であると。学術研究がより一層、社会の負託に応えるためにも、ポストコロナ社会に向けて学術研究がどのように貢献していくのかそういった方向性を示すことが求められるとしてございます。1つ丸を飛ばしまして次の丸、これらを踏まえまして、次の視点か ら求められる学術研究と情報科学技術の振興方策を検討したとしまして、その柱立てを書かせていただいております。
 まず、「ポスト・コロナ社会に向けた学術研究振興方策」、ここは学術分科会で御検討いただく各論として柱立てを4本立てたものでございます。1つ目が、不測の事態に対してもレジリエントな学術研究を支えるシステムへの移行、2つ目がポスト・コロナ社会にふさわしい新しい研究様式への転換、3つ目が研究者の交流と連携を担保するための方策、4つ目が学術研究が社会の負託に応えるための方策としてございます。次の括弧で「ポスト・コロナ社会に向けた情報科学技術分野の取組の方向性」という部分につきましては、情報委員会において御検討いただく部分と考えてございます。
 このページの最後の丸のところに、先ほど分科会長から御説明いただいた内容を書いてございまして、学術分科会と情報委員会の合同提言とするということを書かせていただいております。
 次に3ページ、第2章「ポスト・コロナ社会に向けた学術研究振興方策」、ここから各論ですけれども、(1)のマル1、競争的研究費制度の1つ目のポツのところ、研究者の立場に立った競争的研究費の柔軟な運用が必要であるということ。3つ目のポツですけれども、科研費の完全基金化の早期実現が必要であるといったことを柱立てしております。2つ目の丸、「研究人材のサポートについて」、若手研究者等が安心して研究に専念できる環境整備するための支援が必要であるということを書いてございます。次のポツ、新しい研究様式の実現に向けて必要な人的リソースの支援を実施することが必要という柱立てでございます。
 次の(2)マル1、「大学等における研究体制」というところの1つ目のポツ、研究の特性や重要性に応じて、研究活動をできる限り停止させないように、研究活動に係る業務継続計画の策定・運用の準備やインシデントの対応段階、復旧段階でのノウハウの共有を推進するということ。次のポツ、研究設備の遠隔化・自動化に向けた取組の一層の強化・充実を図ることが必要であるということ。1つ飛ばしまして4つ目のポツ、研究施設の老朽・狭隘(きょうあい)の問題解決に向けた施設整備を行うことが必要であるということでございます。
 次のマル2の「学術情報基盤の在り方」という部分でございます。こちらについては基本的に、先ほど分科会長からお話ありましたように、情報委員会において専門的検討を行った結果を、3章において表示すると整理してございます。
 なお書き以下、こちら、御説明が必要になってくるわけですけれども、これ、前回お示しした科学官のアンケートの中でも実は要望があった事項でございまして、御説明申し上げますと、今、絶版資料につきましては国立の国会図書館から他の図書館、この図書館には大学図書館も含まれますけれども、そこにデジタル化されたものをインターネット送信できることとなっておりますが、これは図書館内での閲覧に限定されているということで、家庭から研究者等がインターネットを通してその電子データを見ることができないという状況になってございます。このため、今回のコロナ禍におきまして図書館の多くが休館になったわけですけれども、こういった場合ですと、その絶版資料が閲覧できず、それによって研究が進まないといった問題点があったわけでございます。この点につきまして、現在、文化審議会のほうで見直しを検討しておりますが、学術研究振興の観点でも重要な点であるので、骨子の段階で記載をさせていただいているということでございます。
 次に、(3)のマル1のところ「国際連携について」というところでございます。海外渡航の制限等も踏まえた国際ネットワークの構築・維持・強化に対応する支援が必要であるということ。マル2のコミュニケーションについてという部分ですけれども、1つ目のポツ、研究活動におけるオンライン活用の利点とデメリットを踏まえた交流・連携や、研究分野の特性等を踏まえた優良事例の収集・横展開が必要であるといったことを書かせていただいております。マル3の共同利用・共同研究体制のところの2つ目のポツのところ、大学共同利用機関・共同利用・共同研究拠点における稼働状況の見える化など、情報発信のさらなる促進が必要であるということ。4つ目のポツ、大規模学術フロンティア促進事業等の着実な支援が必要であるということでございます。
 (4)「学術研究が社会の負託に応えるための方策」のマル1ですけれども、「人文学・社会科学の知見の活用」、時代の変革期における人文学・社会科学の重要性に鑑みて、今後より一層、人文学・社会科学の振興を図ることが必要であるということ。2つ目の「積極的な社会との対話による学術界のコミットメント」というところ、1つ目のポツが、科学が回答にたどり着くまでに必要とする時間軸と社会的な政策決定に必要な時間軸とは合わないといったことや、データを適切に活用するためには、その取得状況を考慮しなければならないということを、学術界が社会に発信することが必要であるということを書いてございます。2つ目のポツ、プレプリント等が社会においてより適切に活用されるために、学術界としてその在り方について検討して、社会に発信することが必要であるということ。
 3点目の学術の多様性の確保の部分ですけれども、未来の社会の変革に柔軟に対応するためにも、我が国の研究力を支えるあらゆる分野の研究支援を充実する必要があるということ。次のポツ、学術政策を科学技術政策と大学政策と一体として進める体制の下で各種施策を実施していくことが重要であるといったことを書いてございます。
 次の3章の「ポスト・コロナ社会に向けた情報科学技術分野の取組の方向性」につきましては、先ほど資料2-3で7月8日の情報委員会の議論の様子を御紹介しましたけれども、そこで議論されたような論点について、整理した上で書かせていただくということを考えてございます。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  錦さん、どうもありがとうございました。それでは、今の提言骨子案につきまして、次回の委員会において、これを文章化していくことを前提としまして、皆様から意見をいただければと思います。ただし、時間が相当押しておりますので、各委員の皆さん方におかれましては、できるだけ簡潔に、こういうことを盛り込むべきだというような観点で意見を言っていただきますと非常に助かります。
 それでは、まず、小林良彰先生、どうぞ。

【小林良彰委員】  小林です。資料2-4の骨子案について2点意見を申し上げたいと思うのですが、その前に資料2-2の前回の学術分科会の意見ですが、7ページ目の全国規模の大学の学術情報基盤の最後のポツのところで、NIIを情報システム研究機構から独立せよと、そういう議論はあったのでしょうか。私、前回出席していましたが、私の記憶ではそういう意見があったとは記憶していないのですが。

【西尾分科会長】  どうぞお答えください。

【錦学術企画室長】  事務局でございます。実は前回御欠席されていた五神委員から紙の資料として提出されている御意見の中にこの点が入っていたということでございます。

【小林良彰委員】  大学共同利用機関、今、4機構ですけど、これを5機構にするというかなり大きな話になりますが、そういう形で書いて問題はないのでしょうか。

【錦学術企画室長】  具体的な今後の姿等についてはまだ提案されておりませんけれども、いずれにしましても、国立情報学研究所を強化するために、何らか対応する必要があるのではないかという問題意識から御意見を頂いたと思っています。

【小林良彰委員】  何とかすることと独立させるというのはかなり大きな違いですから、この辺の記述について私は慎重にしたほうがいいと思います。
 それでは、骨子案の方で2点意見を申し上げたいと思います。第1点は、4ページ目のところの共同利用・共同研究体制について、各大学の施設の利用がかなり制限を受けている中で、共共拠点・国際共共拠点、あるいは大学共同利用機関法人の役割が今非常に重要になっていますが、問題なのは、その施設がやはり密にならざるを得ない状況がたくさんあります。例えば、飛騨の地下深くにある施設もそうですし、あるいは核融合系のヘリカルではチューブの中に入って若手の助教が掃除したりしています。あるいはKEKのJ-PARCやBファクトリーというもので本当に安心して利用できるような体制をつくらなければ、ここで万が一、コロナのクラスターが発生したら、日本の科学技術の進歩にとってかなり致命的な打撃を受けると思います。ですから、共共拠点に対する財政的な支援だけではなくて、ここを稼働させるために、そこで実際に働いている人たちが、いつでも何度でも検査を受けられるような体制を是非つくっていただきたい、これを是非書き加えていただきたいと思います。
 2番目に申し上げたいのは、同じ7ページになりますが、人文学・社会科学の振興を図ると書いてありますけれども、確かに基本法は改正されましたが、基本法というのは、いわゆる精神論であって、私は今回、コロナではっきりしているのは、法学が現実から2周ぐらい遅れているということでと思います。特措法の問題もそうです。あるいは、先ほどの国会図書館の問題にもありましたが、著作権法にしても、いろいろな面で現実に追いついていない問題があります。やはりここは、ただ精神論で書くだけではなくて、現実の問題として何をするのかということを書いていただきたいということです。
 例えば、基本法は改正されました。しかし、昨年の税制改正で特別試験研究費の額から税額控除制度、これで特別研究機関とか大学と共同で行う試験研究委託について、企業が負担した30%を法人税から控除することが認められています。しかし、この試験研究も、工学的・自然科学的な基礎研究、応用研究、開発、工業等を意図するものに限ると書いてあります。人文・社会科学の研究は対象とならないと書いてあります。ですから、例えば、経済が遅れる、企業の経営がどうなるか、そういうことは一切抜きになっています。基本法は改正をしたけれども、それ以外の問題は置いていかれています。それに合わせていろいろと変えなくてはいけないことがあります。これは、人文・社会科学者の責任でもあります。やはり自分たちがいつも現実を見ていかなくてはいけない。そこでネックになっている法令がたくさんあるのです。それを変えていく努力をしなくてはいけない。だから、これもただ精神論ではなくて、より具体化するような内容にしていただきたいと思います。
 以上です。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。今の御意見につきまして、事務局で考えていただきたくお願いいたします。今日は、できるだけ多くの方に御意見を頂きたいと思いますので、時間の関係で御意見に対しての事務局からの返答等につきましては十分にできないと思いますので、よろしくお願いいたします。
 武内委員、どうぞ。

【武内委員】  武内です。頂いた提言骨子案の構成について意見を申し上げたいと思います。ここに書かれている内容そのものに異議があるわけではございません。しかし、全体を通して見ますと、やや短期的な課題とその解決策に焦点が当たり過ぎている。したがって、ポスト・コロナ後の学術の在り方を中長期的に考えるという視点で、別途議論をする必要があるのではないかと思います。
 例えば、これからの学術交流の在り方みたいなことや、リアルとバーチャルをどう組み合わせると最適解になるのかとか、いろいろな意味で、実験系、非実験系、いろいろな立場によって、どういうことを長期的に変えていく必要があるかという問題。私の分野では今、ポストコロナ後のサステイナビリティをどう実現していくかということで、コロナの問題解決と気候変動と災害などを併せてやっていくような考え方が今出てきているのですが、そういうものに該当するような学術分野での展開の仕方は、当然のことながら、あるべきだと思います。それが1点目です。
 それから2点目ですが、この表題を見ると、情報科学技術の振興方策ということに限定されています。私は、もちろん情報科学技術が今回のポスト・コロナ後の社会づくりにとって非常に重要であることは全く否定しませんが、情報科学技術というものに特化して議論をするだけではなくて、それを含めた新たな学術交流の在り方というものに情報がどう使われるのかというところをもっと幅広に議論をしておいたほうがいいのではないかと思います。したがって、これは情報委員会で御議論されることではあるのでしょうが、学術交流という領域まで少し枝を広げて議論をして、それを提言にまとめていただけるといいのではないか。この2点申し上げたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。

【西尾分科会長】  武内委員、どうもありがとうございました。今、武内委員から御提言いただいたことは非常に重要なことだと私も理解しております。ただ、1点だけ考えなければならないのは、9月の末に概算要求の締切りでして、それに向けての学術振興に関わる何らかの提言は出しておきたいと思います。今おっしゃったことをより深掘りするフェーズと、それまでに概算要求の関係で何かの提言として出していく部分を別途のものとして扱いたいと思いますので、その点、御理解いただけるとありがたく思っています。

【武内委員】  それでもちろん結構でございます。当面は短期的で、そして概算要求にもつながる、しかし、もっと先の将来を見越して議論を更に展開していくという方向で対応いただけると大変ありがたいと思います。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございます。それでは、日刊工業新聞の山本委員、どうぞ。

【山本佳世子委員】  山本です。提案骨子について意見をお伝えします。提案の報告書が、まだ骨子ですけれども、思ったよりさらっとしているなという印象を持ちました。このコロナ禍で学術研究現場の非常に大きな転換期になると、そういう調査結果などの現場の声が聞こえています。ですけれども、これをぱっと見た感じですと、この報告書だけ見ますと、学術研究は大事だという例年と同じような感じが少しあって、非常にもったいないと。今回、概算要求もありますので、もう少しアピール力がある形にした方が良いのではないでしょうか。もちろん添付資料にアンケートの結果など出るとは思いますけれども、本文の中でもそれなりに具体的に、こういう問題にこういう大きな声が出ているので、やはりこれが必要だといったような表現がよいと思います。
 以上です。

【西尾分科会長】  おっしゃるように、もう少し深掘りしたインパクトのある記述を考えていきたいと思います。貴重な意見、どうもありがとうございました。
 甲斐先生、どうぞ。

【甲斐委員】  ありがとうございます。今のお二人と同じ意見を持っておりましたが、これは短期的と長期的の2枚推しで進めるという委員長のお話で理解いたしました。
 情報分野でリモートとリアルのいい点を生かしていくという意見には大変賛成なんですけど、1点だけ、せっかく情報委員会であれば、セキュリティーの問題をもう少し書き込んでいただいたらいかがかと思います。今回のコロナでweb会議が増えた際に、漏えいとかハッキングに関する情報は全て外国からの指摘を受けてからの対応となったりしましたし、web側の会社も国際的に上げられた問題点に対して迅速な改良を行ったりとかいろいろな動きがあったのですけれど、日本からはそういう情報は聞こえませんでした。その検討は学術界として是非お願いいたします。それだけです。

【西尾分科会長】  甲斐先生、どうもありがとうございました。そのことについては、今後、情報委員会にフィードバックをしてまいります。
 観山先生、どうぞ。

【観山委員】  観山でございます。1つは、最初に小林委員が言われたNIIに関する記述で、私もちょうど研究環境部会で今、大学共同利用機関の検証ということを始めておりますので、この記述がそのまま出てしまうと、今後の展開にちょっと問題があるかなという印象を持ちました。
 もう一つは、先ほどからあります、やっぱりこういうコロナ渦の状態、それから将来の状態を考えても、研究の自動化とかリモート化というのはどうしても重要なことだと思います。ただ、これは分野によって随分バラエティーがあります。ですから、短期的にこういう問題は強調していただくことは非常にありがたいことでございますが、並行して、やっぱり綿密な調査をして、どういう形態が最適なのかということに関して、そのエビデンスを示しつつ、近々の概算要求とか次回の概算要求等に対応すべきではないでしょうか。こういうパンデミックというか、第2波、第3波、新たなパンデミックが起こることはもうほとんど確実な状況になってきましたので、エビデンスに基づいた必要性を示しつつ概算要求の形に持っていければと思っております。
 以上です。

【西尾分科会長】  もう少しエビデンス的なものがないと、なかなか力強い提言にはならないということかと思っております。事務局の方、何とぞよろしくお願いいたします。観山先生にお伺いしたいことがあるのですけれども、よろしいですか。

【観山委員】  はい。

【西尾分科会長】  先ほどのNIIの件なのですけれども、五神先生からの意見を読ませていただきまして、非常に重要なことが書かれていると思いました。今、NIIで推進されていることが単に情報分野のことではなくて、全学術分野を支えている本当に礎(いしずえ)的な役割をしていただいている。さらに、コロナ禍で小中高がオンライン授業になったときも、先導的に全国の小中高をもサポートするような形での貴重な教育活動についても様々な御貢献をなさっている。先にも申しましたが、NIIが、情報分野だけではなく、全学術分野に大学共同利用機関として深く関わっているときに、それを4研究所からなる1つの機構の中に置くのではなくて、日本の全学術分野をきっちり支えていく1つの研究所にすべきであるということが、五神先生の御意見に書かれていました。私は情報分野の研究をしておりますので、もしかしたら立場上は問題があるかもしれないのですけれど、私も、NIIが我が国において、学術振興とか教育に関して果たしている非常に重要な役割を考えるとき、やはり、ある機構の中の1研究所ではなくて、1つの独立した研究所として活動していただくほうが、より大きな活動の広がりが実現できるのではないか、と思うのですけれども、そこらあたりはいかがでしょうか。

【観山委員】  前回の五神さんからの御意見も読みまして、非常にしっかりした御意見で、なおかつ、今のSINETを学術分野全体に進めていっているということは重要なことだと思います。ただ、私が思うのは、NIIには学術や初等・中等・高等教育の基盤であるネットワークを維持していくという部分と、もう一つは、ほかの大学共同利用機関と同じように、情報学の研究の拠点であり、世界との窓口であるという重要な部分があります。今、両方を兼ね備えていて、最初の基盤の部分というのは今確かに、大学共同利用機関の役割よりずっと広いことをやっておられるのだけれども、もう一つの研究という分野では、他の大学共同利用機関と同じように、情報学のコミュニティーに対する共同研究、共同利用だとか国際的な窓口となっている部分があります。前者の部分は確かに、今のような状態よりもっとすっきりした状態がいいのかもしれませんが、研究という部分は、大学共同利用機関と同じような仕組みを持っておられるということで、そこの部分をどういうふうに切り分けていくのかなというのが今後の検討の課題ではないかと思っております。

【西尾分科会長】  コメント、どうもありがとうございました。
 それでは、小長谷先生、どうぞ。

【小長谷委員】  ありがとうございます。小長谷です。2点あります。学術情報基盤の在り方についてです。新しい研究様式を進めていくためにこれがとても大事で、情報委員会のほうで取り組んでくださるわけですけど、その際にお願いしたい2点になります。
 1つは、今日お配りいただいた資料2-2の7ページでは、まず、「大学図書館・ジャーナル等について」というのが大見出しになっていまして、その下にカッコ付きで「(研究資源のデジタル化、オープンアクセス化)」となっています。さらに、絶版云々という話もありますから、専ら本とか論文とか、テキストこそが資源と思われがちですけれども、研究資源としては、例えば、諸大学が持っている標本資料とかいろいろな物質資料もあります。古い写真とか。そういう研究資源のデジタル化のほうがより広くて、その一部が本ですので、立てつけとして、図書館とか本だけを学術情報として打ち出すのでは物足りないのではないかというのが1点です。
 もう一つは、セキュリティーとも関係しますけれども、データを掲げるほうにも、それをダウンロードして使うほうにも必要な倫理、エシックスが、キーワードとして入っていたほうが、議論の焦点がはっきりするのではないかなと思いました。
 以上です。

【西尾分科会長】  貴重な御意見、どうもありがとうございました。今のコメントにつきましても、今後、文章化する上で反映してまいります。
 それでは、栗原先生、どうぞ。

【栗原委員】  ありがとうございます。2点申し上げたいと思います。その前に、もちろんここに書かれたことはどれも大事なことで、私どもも、情報分野の基盤には大変助けられましたので、お礼を申し上げます。まず、1つ目ですが、科研費の基金化はこの機会に是非実現できると良いと思っております。JSPSの皆さんには、繰越し等で今回、大変な事務量の増大だと拝察します。もちろん基金化は資金の有効活用ということで、以前から是非という声は上がっていたわけで、この機会に是非実現すればと思っております。これが1点です。
 それから、もう1点ですが、先ほど西尾先生が、ここは概算要求に関してということでしたが、その後の議論に是非何かできたら良いと思いますのは、デュアルサポートシステムの中の運営費交付金の部分の拡充の議論を何かできないかということでございます。今回、大学等の運営や体制が充実していることが、いかに大事かということがよく分かったと理解しています。それから、多様な科学技術の振興にも、やはり運営費交付金による基盤的な大学の活動は非常に重要なものだと思いますので、先ほど科研費のところで申し上げようかとも思いましたが、広範な基盤活動としての運営費交付金の拡充に関して、デュアルサポートシステムの真の充実は長期的に諦めずに、何とか意見を申し上げたいところではないかと考えております。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。後半部分につきましては、大学及び研究機関が、このコロナ禍の下で、社会に対してその問題解決にきっちりと応えていく、ある意味で社会に対してのある種の契約をするような形にし、そのためにはそれなりの基盤的経費が重要であるというようなシナリオにすることによって、今先生がおっしゃったことを何とか考えていければと思っています。どうもありがとうございます。
 山本先生、どうぞ。

【山本智委員】  山本でございます。提言骨子の全体のトーンに関してですけれども、この提言骨子は2つの部分から成っています。1つが、コロナ禍において学術振興をどういうふうに進めていくかという点と、もう一つは、(4)のところですけれども、「学術研究が社会の負託に応えるための方策」というものがあります。どうしても議論が前者に偏りがちだと思いますが、我々は当然のことながら、自分たちがやっていることですから、学術振興に興味があります。この2つのバランスが極めて大事だと思います。特にいろんな意味での財政当局との交渉だとか、あるいは社会に対して発信する上では、このバランスは極めて重要だと思います。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  山本先生がおっしゃったことは非常に重要だと思っています。我々、大学及び研究機関が、社会の様々なステークホルダーに対して、このコロナ禍においてどのように負託に応えていくのかというところをきっちりと論じないと、概算要求をしていく上では力強いものにならないと思っております。そこは先生のおっしゃったところを十分理解して、今後、書き方等を工夫してまいります。どうもありがとうございました。

【山本智委員】  よろしくお願いします。

【西尾分科会長】  鍋倉先生、どうぞ。

【鍋倉委員】  鍋倉です。2点あります。最初は、山本先生と全く同じ意見で、コロナ禍における学術の取組について、社会における位置づけを明確にすることが重要です。
 2点目は、コロナ禍において、世界の各国、同じように研究がストップ又はスローダウンしています。特に日本と同じような研究体制であるヨーロッパでも、これまで経験したことのない局面に直面しています。海外におけるコロナ禍における学術的な取り組みについての情報も入手していただいき、うまくリスタートできる体制を協力して構築するための情報共有を行い、この骨子の運用の参考にしていただければと思います。
 以上です。

【西尾分科会長】  分かりました。海外の動向等もきっちり踏まえた上での記述にすべきではないかという御意見。これによって、この提言をより強化できる部分があるとしたら、それは非常に重要な観点になります。そのことも今後考えてまいりたいと思います。どうもありがとうございました。
 小安先生、どうぞ。

【小安委員】  ありがとうございます。私は、(4)のところに意見を申し上げたいのですが、ここだけを抜き出してみますと、これはポスト・コロナというのではなくて、常に我々が言っていることと同じことが書かれていると感じます。したがって、これまでこの分科会で、あるいは研究費部会等から発出してきた様々な報告、まとめがあると思いますが、そういうものをもう少し引用するなりしてはいかがでしょうか。今後、ポスト・コロナの時代にもこれまで提言してきたことを実現していくために、もう少し情報を、技術を活用するとか、何かそういう言い方をしないと、これだけ抜き出すと何も変わってないような気がするので、気になりました。
 以上です。

【西尾分科会長】  おっしゃるとおりですね。今まで議論を積み重ねてきた資産があるわけなので、それを引用しつつ、その上で、ここでどういう新しいことを書くかということを心がけてまいります。どうもありがとうございました。
 まだほかの委員の方で御発言なさってない方、どうでしょうか。

【白波瀬委員】  では、一言。

【西尾分科会長】  どうぞ。

【白波瀬委員】  ありがとうございます。1点だけ。今、小安先生の御意見に近いのですけれども、概算要求ということで緊急性を強調するという、その方向性は分かるのですが、やはり中に書かれていることは、ポスト・コロナだからなぜ緊急か、という点のみならず、ベースのところは極めて脈々と同じ課題に取り組んでいるということです。ただ、何人かの先生もおっしゃいましたけれど、今回のコロナ禍で見えてきたことはたくさんあるので、そこの中でやはり国が研究、教育にいかに投資しているかということは、いろんな意味で大きな違いとなって出てきます。ですから、そういう意味で、全体のパイということになりますと、多元化とかパイを膨らますという議論にもなるとは思うのですけれども、デュアルサポートということになると、分野的にちょっと小さい感じがするのですけれども、先生方はより広く学術全般という意味でのデュアルサポートということをおっしゃっていると思いますので、やはり実質的な足腰をより強くするという点で、いかに国としての支出、支援が重要であるのか、という点を強調したいと思います。それとともに、基本でありますけれども、学術の自立、自由、研究の自由がいかに重要かということも、倫理という話がありますので、これ、本当は人権とも結びついていると思いますから、そこもうまく前書きのところで少し言及するくらいでもよいので盛り込んででいただくと深みが増すかなと考えた次第です。
 以上です。

【西尾分科会長】  白波瀬先生、貴重な御意見、どうもありがとうございました。その点も書き方としては相当工夫が要ると思いますが、事務局と考えてみたいと思います。ありがとうございました。

【白波瀬委員】  ありがとうございます。

【西尾分科会長】  ほかに御意見ございませんでしょうか。

【城山委員】  城山ですけれども、よろしいでしょうか。

【西尾分科会長】  城山先生、どうぞ。まだ御発言いただいていませんので。

【城山委員】  1つ、先ほど来、小林先生と観山先生のやり取りがあったNIIの話なのですけれども、観山先生のおっしゃったようなことを念頭に置くと、研究所としての強化なり独立みたいなことを言うとなかなか難しいのかなという気はしますが、他方、NIIが担っているSINETというある種のインフラをサポートする機能も強化するとかはありうると思います。形式としては実は予算枠の話は恐らく大きい話かなと。ほかでも触れているフロンティアの話とも絡んでくると思うのですけれども、ある種、インフラとして予算的にはサポートするということも1つオプションとして考えられると思うので、そういう意味で言うと、研究所としての独立というよりかは、SINETというインフラ機能をきちっと支援するようなことを考えるべきだ、くらいの形で、少しぼかしたほうが実際のオプションを考える上ではいいのかなという感じがしましたというのが1点です。
 もう1点は、すごく一般的な話なのですが、今回、最初に西尾先生におっしゃっていただいたように、学術全般の話と情報技術振興の話をセットでやることによって少しインパクトを出すという趣旨かと思うのですけれども、今日はここの部分は情報委員会に任せますという形で若干切り貼りの形になってしまって、全体像が見えないように思います。多分、次回の議論あたりが大事だと思うのですが、ある意味では、この2つを一緒にすることで、いい意味のシナジー効果が出るような形の文章の工夫をしていただくといいのかなと思います。恐らく学術全体のために必要な情報基盤技術という載せ方もあるでしょうし、逆に、それを生かしていこうと思うと、情報の話ではないのだけれども、学術の仕組みとして、ここは選択的に極めて重要なのだということをうまくハイライトできるような形で構成していただけるといいのかなという、そういう印象を持ちました。
 以上です。

【西尾分科会長】  ありがとうございました。2つ目におっしゃったところが非常に難しいところでして、今、第2章と第3章という形で分かれてしまっているのですけれども、これだとお互いで議論したことを後でホチキス留めしたような感じになってしまいます。これは、読む側にとってもあまり印象に残らないと思いますので、両方の委員会で議論されていることをどううまく交差させていくのかというところは非常に重要かと思っております。ただし、もう少し情報委員会で議論を行い、その内容が煮詰まってくると、両方の委員会の内容をどうブレンドしていくかという術が得られると思っておりまして、今日の段階ではこういう構成案になっております。今、先生のおっしゃったところが今後の知恵の絞りどころになると思っております。どうもありがとうございました。
 長谷山先生、どうぞ。

【長谷山委員】  ありがとうございます。提言の表題に「ポスト・コロナ」という表現がありますが、骨子の内容を見ると、まだ収束にはほど遠く、その影響でいろいろな制約を受けている、この危機をどう克服していくかという観点と、完全終息はしないまでも、ウィズコロナという状況を想定して、中期的に考えようというのと、それから、仮に新型コロナウイルス感染症をほぼ克服できたとしても、社会の在り方が大きく変わるだろうから、そのことを長期的に考えましょうという3つの段階のことが全部含まれているので、少し理解の難しいところがあるのではないかと思いました。
 もう一つは、人文・社会科学の重要性というものを指摘するのは大変いいことで、ありがたいことなのですが、科学技術があって、でも、社会科学・人文科学も大事だよねというのではなくて、科学と人文学が一体になってやっていかないと、もう乗り越えられないのだという、そういうニュアンスを文章に出すとよいのではないかと思いました。例えば、報道等で知った生半可な知識ですが、ヨーロッパで、感染防止と経済活動維持の両立を図るためにはロックダウンの程度をどこまですればいいかという検討をしたときに経済学者が協力してデータ解析をしたら、医療系の研究者だけで考えていたときとは違う結論が出たそうです。両者が協力して、お互いがもつデータをマッチしたことで適切な結論が出せた。医学と経済学と、場合によってはどういう規制が必要か考える法学とか、あるいは、人々の不安を静めるには哲学、文学だとか。科学と人文学が一体的・融合的になって課題に取り組むという書きぶりが必要じゃないかと思いました。
 もう一つは、骨子案の出だしの総論的なところ、(1)の最後のほうで、コロナ禍においてICTを活用したリモート化・デジタル化とデータ活用の遅れが顕在化したことが指摘されています。まさに、この遅れを取り戻すことは大きな課題ですが、後の具体案の方で出てくるのは、これからはリモートを活用した研究体制が必要ですよねとか、教育現場でオンラインが必要ですねということがさらっと書かれているだけで、それを教育現場や研究現場がやるには巨額の資金が必要になるということが記されていないので、サイバー空間、フィジカル空間を融合した研究を展開するには、システム構築、インフラ整備に政府が相当大規模な投資をする必要があるということをもう少し具体的に文章の中で強調したほうがいいのではないか。概算要求と関わってきますので、その必要性を感じました。
 最後に、これはもう他の提言で出ているのかもしれませんが、資金のことと関連して、「産学官連携」という言葉がこの骨子にはないのですね。運営費交付金とか科研費のことは書かれていますが、申し訳ないのですが、これだとどうしても国立大学とか国の研究機関という発想になって、そもそも私立大学は運営費交付金はありませんので。ですから、先ほどほかの委員が言ってくださった教育研究の基盤的な経費を全体で膨らませていくという表現に加えて、もう一つ、やっぱりこれから必要になるのは産学官連携で、産業界の資金をどう活用するかという視点を盛り込むべきだと思います。
 産学官連携というときに大事なのは、基礎研究と社会実装とを加えて抑制的にであれ推進的にであれ、規制や法令を整備していく、これを同時進行でやらないといけないという認識です。うまい例がないのですが、あえて言えば、企業が一生懸命技術を開発したら公害問題が出てきた。それで学が研究したら欠点が分かったと。そこで、慌てて規制をかける。そうじゃなくて、何か新しいテクノロジーを生み出していく際に、産官学が、最初から横一線で協力してやっていかなきゃいけないのだということです。資金の問題だけではなくて、そういう理念を含めた産官学連携のことを書き込めたらいいのかなと思いますがこれは感想です。分科会長にお任せします。

【西尾分科会長】  ありがとうございます。長谷山先生、お伺いしたいことがあります。今、「ポスト・コロナ」という表題になっているのですけれど、先般、感染拡大が大分収束したので、多分そのまま収束していくだろうということでこの表現になっています。しかし、今、感染拡大がどんどん進んでいますので、「ポスト」だけではなくて、「ウィズコロナ」的に、今後、コロナ感染症とはずっと付き合っていかなければならないようにも思われます。そのような状況における学術振興というような書き方をしていったほうがよいのかと思っているのですが、先生はどうお考えになりますか。

【長谷山委員】  同感です。今の表現でも解釈でいろんな段階を含み込むことはできるのですけれども、やっぱり今の危機的状況を乗り越えるための方策と、感染症はある程度抑え込めてもこれまでとは違う社会状況になることを見越した対策とを区分けして、それぞれについてどういう支援や制度、体制の変更が必要かを示したほうがいいのかなという気がいたしました。

【西尾分科会長】  貴重な御意見を頂きまして、どうもありがとうございました。それでは、まだ御意見いただいてない方では、辻委員、三原委員、井野瀬先生、ひょっとしたら、この御三名からの御意見を頂くことで時間が来てしまうかもしれません。そうしましたら、まず、辻委員からどうぞ。

【辻委員】  辻でございます。先ほど山本先生から、社会への貢献という話がございましたけれども、この骨子案の中で、検討の方向性の中では、ポジティブに変化を捉えながらやっていこうというコメントがございます。その一方で、全体としては、少し暗めな印象が否めなくて、その辺りをできるだけポジティブ側面を出していくことが必要かなと。そのためにも、社会全体がこの局面において打開策を求めているのだと、その社会の期待感をもう少し前面に出したような面が必要かと思いました。
 以上です。

【西尾分科会長】  貴重な御意見、ありがとうございました。社会からの期待感、それに対してどうポジティブに応えていくのかというところをうまく書いていくということだと思います。ありがとうございました。
 それでは、次に、井野瀬先生、どうぞ。

【井野瀬委員】  井野瀬です。私も、どこか違和感があったものの正体が、皆さんの話を聞いていて分かってきました。「社会の負託」とか、「ポスト・コロナ」という言葉については、ほかの幾つかの仕事でも、通常の内容に今回のコロナ禍をくっつけたような、つまり、「コロナ禍」という言葉だけを取ってつけたものが往々にして見受けられます。今問題になっているひとつは、「社会の負託」という以前に、「専門家とは一体何か」ということであり、「ポスト3・11」で問題視された科学者に対するある種の疑問、不信であるわけです。それと関わって、人文学・社会科学を含めた学術の連携というものが、専門性、学術の重要性と結びつくような形で、つまり通常の用法とは少し違う形で使われないといけないのではないかと思いました。ありがとうございます。

【西尾分科会長】  貴重な御意見、どうもありがとうございました。
 三原委員、どうぞ。

【三原科学官】  科学官の三原でございます。時間がないので手短に申し上げます。1つだけ、研究人材のサポートについてというところで意見を言わせていただきたいと思います。ここに書いてあることは、いかに若手の研究者が今続けている研究を続けるかという視点でのサポートだと思います。これは非常に重要で、常に今までも議論があって、やっていかないといけないことではありますが、例えば、将来、本当に不測の事態が起こって、研究を一切続けられないような環境になったときに、将来、研究者を目指す人たちが研究から離れずにやっていくといったような保険のような制度を考えられないかなと常に思っています。きっかけになったのは、3月まで学術振興会の特別研究員をやられていて、4月から海外の研究機関に移ることが決まっていた研究者が身近にいるのですが、いきなり海外に行けなくなったので、4月の時点で無職になったころです。そのときに、例えば、失業保険のようなものがあれば、そのまま研究の生活を何とか続けつつも次の職を待つということができたのですが、そういうことができないまま時間が過ぎていっているという状況があって、本当に不測の事態ということを考えるのであれば、そういう保険制度のようなものも考えてみるのはいいのかなと考えています。
 以上です。

【西尾分科会長】  貴重な御提案、どうもありがとうございました。
 それでは、以上頂きました意見を基に、次回に向かいたいと思いますけれども、ここで事務局に連絡事項等のことでバトンを渡させていただきます。よろしくお願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  長時間、御審議ありがとうございました。資料3に記載させていただいておりますとおり、次回、第80回の学術分科会は9月4日の金曜日の16時からオンラインで開催をさせていただきたいと考えております。また、本日、分科会長より御提案がございました、提言を合同で出すということにつきまして、8月21日に開催予定の情報委員会で了承された場合の日程ということでございますが、同じく資料3にその後の合同の会議等の日程についても案として示させていただいておりますので、御確認いただければと思います。
 また、本日の議事録につきましては、後日、メールにてお送りいたしますので、御確認をお願いいたします。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  返す返すも、本日は貴重な御意見、コメントをたくさん頂きまして心よりお礼申し上げます。それでは、今御説明がありましたとおり、今後、提言をまとめていくということで進めさせていただきます。また、委員の皆様には個別に御意見を伺うということもさせていただくかもしれませんが、何とぞよろしくお願いいたします。それでは、本日はこれにて閉会をいたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――


 

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