学術分科会(第78回) 議事録

1.日時

令和2年7月2日(木曜日)13時30分~15時30分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 各部会等の審議状況について
  2. 最近の科学技術・学術の動向について
  3. 新型コロナウイルス感染症対策に係る対応等について
  4. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員)
西尾分科会長、須藤分科会長代理、甲斐委員、勝委員、栗原委員、小長谷委員、辻委員、観山委員、家委員、井関委員、井野瀬委員、岡部委員、川添委員、岸村委員、喜連川委員、小林傳司委員、小林良彰委員、城山委員、新福委員、武内委員、永原委員、鍋倉委員、松岡委員、山本佳世子委員、山本智委員
(科学官)
平野科学官、森口科学官、三原科学官、鹿野田科学館、渡慶次科学官、黒橋科学官、長谷部科学官、林科学官、東科学官、加藤科学官、長壁科学官、渡部科学官

文部科学省

村田研究振興局長、増子大臣官房審議官、坂口振興企画課長、先﨑学術研究助成課長、小林科学技術・学術政策局企画官、橋爪参事官(情報担当)、錦学術企画室長、堀江競争的資金調整室長、岡本学術研究助成課企画室長、三宅学術基盤整備室長、楠目人材政策推進室長、小林学術機関課課長補佐、二瓶学術企画室室長補佐、磯谷科学技術・学術政策研究所長

5.議事録

【西尾分科会長】  定刻となりましたので、ただいまより第78回科学技術・学術審議会学術分科会を開催いたします。
 まず、本日の分科会のオンライン開催に当たり、事務局から注意事項がありますので、お願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  本日は、オンラインでの開催となりますので、事前にお送りしておりますマニュアルに記載のとおり、御発言の際には、「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、指名を受けましたら、マイクをオンにし、必ず名前をおっしゃっていただいた上で、はっきり、ゆっくり御発言を頂ければと思います。
 なお、分科会長以外の委員の皆様は、御発言されるとき以外は、マイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 機材の不具合等ございましたら、マニュアルに記載の事務局連絡先に御連絡ください。
 なお、本日の会議は、傍聴者の登録の上、公開となりますので、御留意願います。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、資料の確認を事務局よりお願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  
 本日、オンラインでの開催となります。資料につきましては事前にお送りさせていただいております。本日の主な議題に係る資料につきましては、資料1から資料4のとおり、お配りしております。こちらの資料につきましては、議事の中で取り扱いますので、説明は割愛させていただきます。
 参考資料につきまして、本日は参考資料1から7までお配りしております。参考資料2につきましては、5月20日から25日の期間で、書面審議にて行いました第77回学術分科会で、オンライン開催を可能とするための学術分科会運営規則の改正案につきまして、賛成多数で可決され、資料のとおり運営規則の改正がされておりますので、御報告するものでございます。
 次に、参考資料3、こちらは科学技術基本法等の一部を改正する法律が6月17日に成立いたしましたので、その概要及び附帯決議について資料としてお配りさせていただいているものでございます。
 参考資料4-1、4-2、こちらは次期基本計画となる第6期科学技術・イノベーション基本計画に向けた、総合政策特別委員会の最終取りまとめに関する資料でございます。昨年、委員の皆様に御議論いただきました学術分科会としての意見も踏まえた学術研究に関する記載の抜粋が参考資料4-1、最終取りまとめ全体の概要が参考資料4-2となります。
 また、次期基本計画に向けて、総合科学技術・イノベーション会議基本計画専門調査会で示された資料を参考資料5としてお配りしております。
 なお、参考資料6及び7につきましては、議題(3)の中で御紹介させていただきます。
 資料の説明は以上でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、議事に入ります。本日の議題は、議事次第のとおりでございますが、本日の審議案件である(3)の議題にできる限り時間を確保したいと思いますので、1及び2の報告案件の御説明は、できるだけポイントを絞っていただき、委員の皆様からの御質問もできるだけ、簡潔に収めていただければありがたく思います。御配慮いただければ幸いでございます。
 なお、本日、途中で御退席される予定の方がいらっしゃいますが、意見交換の際は優先的に御発言いただきたく思いますので、「手を挙げる」というボタンでの早めの挙手をお願いできればと思います。
 それでは、1番目、各部会などの審議状況についてですが、学術基盤整備室の三宅室長より、情報委員会ジャーナル問題検討部会における検討状況について御説明を頂きます。
 それでは、三宅室長、お願いいたします。

【三宅学術基盤整備室長】  ただいま御紹介いただきました学術基盤整備室長の三宅です。このような時間を頂きまして、ありがとうございます。
 私からは資料1に基づき、ジャーナル問題検討部会における検討状況について御説明させていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 では、表紙をおめくりいただきまして、1ページ目でございます。こちらはジャーナル検討部会の設置目的・審議事項等でございます。
 ジャーナルにつきましては、これまでの講読価格上昇の問題に加えて、特に近年、オープンアクセス・ジャーナルの急速な普及に伴いまして、論文投稿時の出版社に支払う論文投稿料、いわゆるAPCですね、こちらの負担増大の問題が顕在化しています。そんな中、学術誌を取り巻く問題が非常に複雑化している状況を踏まえ、費用負担やオープンアクセス・ジャーナルの総合的な対策を検討するために、科学技術・学術審議会の情報委員会の下にジャーナル問題検討部会を設置して、集中的に議論することにしております。
 おめくりいただきまして、2ページ目でございます。こちらは部会の構成メンバー等でございます。こちらの部会につきましては、京都大学の引原隆士先生に主査をまた、千葉大学副学長の竹内比呂也先生に副主査をお願いしております。
 また、大学、国研、ファンディング・エージェンシーであるJSPS、JST、さらに、関係の有識者で構成をさせていただいております。
 また、オブザーバーとしまして、関係の団体ということで、国公私立大学図書館協力委員会、また、国立国会図書館、さらに、大学図書館コンソーシアム連合事務局、こちらはJUSTICEという組織でございますが、この皆様にもオブザーバーとして参画いただきまして、議論を進めているところでございます。
 議論の経過につきましては、最後の3ページ目を御覧ください。これまでの開催状況でございます。
 第1回は、本年令和2年1月27日に実施しました。ここでは、事務局から「科学技術・学術審議会等における電子ジャーナル問題に関する審議経過」ということで、過去、ジャーナル問題に関する議論は、平成26年8月に検討会を設置して議論が行われており、そちらをまず御紹介させていただきました。
 また、慶應義塾大学の倉田敬子先生より、「学術コミュニケーションにおける学術雑誌」というタイトルで、学術雑誌の歴史的経緯を踏まえて、学術コミュニケーションにおける学術雑誌の位置づけを御説明いただきまして、改めて委員間の情報共有を行って、議論のスタートをしたというところでございます。
 第2回につきまして、実は第2回は3月中に開催予定だったんですけれども、コロナの問題もございまして、当初は諸外国の状況ということで、有識者の方から御発表いただく予定だったんですが、それもかなわないということがございまして、改めてセットし直しまして、4月20日に実施しております。
 こちらにつきましては、事務局のほうから、「ジャーナル問題検討部会における今後の検討について」ということで、改めて論点整理の会とさせていただいております。今後の検討の進め方について、我が国の持つ方向性を見据えつつ、例えば研究成果発表・公開に係る経費そのものの支援であったり、オープンアクセス化への動きの対応であったり、研究成果の発信力強化の在り方であったり、論文数に依存しない研究者評価の在り方、様々な論点がございますので、それを短期的課題、中期的課題、長期的課題と議題分けをすることについて、議論させていただいたところでございます。
 第3回につきましては、令和2年6月15日に実施しております。こちらにつきましては、大学図書館コンソーシアム連合事務局、JUSTICEの平田事務局長から、「ジャーナル購読料の価格交渉の状況」について御説明いただきました。
 また、事務局が整理した資料といたしまして、「電子ジャーナルに係る実態調査結果」、また、「バックファイルの整備状況」等につきまして、御説明したところでございます。
 こちらにつきまして、検討部会における短期的な検討課題としまして、特に価格高騰への対応の在り方について、価格交渉力であったり、バックファイルの整備状況等について議論してございます。
 その中で、意見として出ましたのは、バックファイル整備等、いわゆる過去の論文が見られなくなる、そのようなことが起こらないような、セーフティーネットを確保する必要があるということ。また、大学内部で、ジャーナル等の経費確保の交渉する際に、やはり図書館だけの声ではなくて、研究者の声を吸い上げて、それをバックに交渉していく必要があるということ。また、大学図書館コンソーシアム連合、JUSTICEでは、すぐに経営層を混ぜて議論というのはなかなか難しいということもありますので、やはり価格交渉力を強化するためには、各大学等で、経営層の一部を巻き込んだ組織を作るなど、JUSTICE、大学等の両方向から改革を進めていく必要があるとの方向性が議論されたものでございます。
 今後のスケジュールでございますが、次回、4回目につきましては、7月20日を予定しておりまして、この回はAPC負担増に関する支援策等について議論する予定です。
 今後、また長期的課題として、オープンアクセス化の問題であったり、研究成果の公開、公表の在り方、また、評価の在り方等も含めて、総合的に議論を進めていきたいと考えているところでございます。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 この報告につきまして、御質問等ございませんでしょうか。よろしいですか。
 それでは、ジャーナル問題は非常に重要な課題でございますので、引き続き御検討いただき、また機会がありますときに、その審議状況を御報告いただきたく、よろしくお願いいたします。

【三宅学術基盤整備室長】  ありがとうございます。また御報告させていただければと思います。

【西尾分科会長】  それでは、2番目ですけれども、最近の科学芸術・学術の動向についてということで、「科学技術の状況に係る総合的意識調査」と、それから、次は3番目の議題とも関係しますが、「博士課程在籍者・修了者に対する新型コロナウイルス流行の研究活動への影響等に関する調査」につきまして、科学技術・学術政策研究所の磯谷所長より御説明を頂きます。磯谷所長、お願いいたします。

【磯谷科学技術・学術政策研究所長】  西尾先生、どうもありがとうございます。NISTEPの磯谷です。委員の先生方、いつも大変お世話になっております。
 10分、お時間を頂戴して説明と承っております。正確に言うと、3つ、話題がございます。では、資料2-1を御覧いただきたいと思います。そちらが、題名は、「科学技術の状況に係る総合的意識調査(NISTEP定点調査2019)」と、それから、「長期のインプット・アウトプットデータを用いた日本の大学の論文生産の分析」となっております。
 皆さん、もう御案内だと思いますが、NISTEP定点調査につきましては、産学官の一線級の研究者、有識者への継続的な意識調査ということで、科学技術基本計画の期間中に毎年1回、同じ方たちにアンケート調査を継続実施することによって、科学技術の、あるいはイノベーション創出の状況変化を定性的に把握しております。我々は、日銀短観の科学技術版と言っております。
 今回、2019年度定点調査を4月に発表いたしまして、第5期科学技術基本計画期間中の4回目になります。2ページに、2,700人のアンケートの対象者の方たちと、質問総数63問とあります。そのほか、毎年、深掘調査ということで、特定のテーマについての調査や自由記述も実施しております。
 3ページ目ですが、プラスの評価から御紹介しますと、評価の高い項目は、左に書いてございますが、「科学研究費助成事業の寄与」ですとか、「大学におけるリーダーシップの状況」といったところが上位です。総体的に評価が上がってきている項目は、指数の変化は少ないのですが、例えば女性研究者の関連とか、あるいは、下のほうになりますけど、6番目に、若手研究者の自立機会といったことが挙げられます。
 その後、4ページで少しこまめに見ていただきますと、女性研究者のところは、①と②でございますが、これは御覧いただいたとおり、学長、機関長といった幹部の方と、現場で実際研究されている女性の方たちとの意識のギャップがあります。それは③の若手研究者も同じですが、特に若手研究者は、2018年から2019年にかけて、いずれも上昇する傾向があります。これは政策の効果が反映されているのではないかと思っております。特に若手研究者は、御案内のように、科研費の採択率も上がっておりますので、そういったことが現場にも響いているのかなと思います。
 5ページは、評価を上げた変更理由の例ということで、一番下のところを御覧いただくと、先ほど申し上げた、科研費における採択率の話とか、新規採用で若手重視、若手研究者の採用が大幅に増えたという自由記述もございます。
 それから、次の6ページですが、組織的な産学官連携についての深掘調査をしまして、これについてはプラス評価を頂いており、5年前と比べた産学官連携の重要性について、大学・公的機関や民間企業の回答者のいずれも、上昇しているという回答が、88%、68%ということでございます。その理由についても、産学官で認識が共有しているというのが下の選択肢のとおりです。
 それから、7ページですが、博士課程修了者の採用についての深掘調査もしました。博士課程修了者採用の必要性について、民間企業の方たちに聞いておりますが、5年前と比べて必要性は高まっているというところが多くなってきているというのが御覧いただいているとおりでありまして、その理由といたしましては、「製品やサービスの開発に高度な科学的知識が必要」となることとか、「自ら課題設定、問題解決できる人材が必要」というところが多くなっています。
 8ページから、評価の低い項目ということで、これも例年言われていることでありますが、「科学技術における政府予算の状況」や「研究時間の確保の問題」、「基盤的経費の問題」があります。特に心配と思われる項目として、評価が下がっている項目の中で、1番上から見ていただくと、「基礎研究から、国際的に突出した成果が生み出されていないのではないか」とか、「イノベーションの多様性の確保が心配である」とか、それから、「我が国の研究開発の成果というのは、イノベーションに十分つながっていないのではないか」というところは心配な項目でございます。
 それから、9ページですが、評価を下げた変更理由の自由記述につきましては、後で御覧いただきたいと思います。
 10ページは、研究時間の確保の方策ということで、深掘調査を今回いたしております。研究時間を確保するための方策としては、特に、マネジメント補助・人材雇用・充実、あるいは研究と教育の役割分担を教員の中でしてはどうかとか、あるいは、技能者の雇用・充実といったことが必要だという認識があります。11ページに分類分けがありますが、特に、大学グループ別で、第1グループから第4グループまで、毎年こういう形で分類もできるようにいたしておりますので、そういった大学の特色に応じても、回答の傾向が若干違うということが見て取れると思います。
 それから、もう一つの話題で、12ページですが、「長期のインプット・アウトプットデータの論文生産分析」というのも行いました。これは1980年代から、インプットとしての研究者数、研究開発費、博士課程の大学院生の数を、それから、アウトプットとしての自然科学系の論文数の相関を見て、それを更に重回帰分析によって、フィッティングの高いモデルを選択して、要因を分析しました。結果のポイントということで、日本は1980年代後半から90年代に論文が毎年増加していたわけですが、これについては、研究専従換算のFTE教員数とかFTE博士在籍者数、あるいは原材料費のような、直接研究の実施に関わる予算の増加といったものが、寄与が大きかったということが見えてきました。
 それから、2000年代半ばから論文の停滞があったわけですけども、この要因として一番効きましたのは、2000年代半ばから、ヘッドカウントの教員数はあまり変わっていなかったのですが、やはり研究時間割合が低下したということとか、博士課程在籍者数の停滞とか、あるいは予算の伸び悩み等といったことがあります。
 それは13ページの図を御覧いただければと思います。縦軸が前年度からの論文数の変化で、薄い茶色は実測値で、薄い黄色が推計値であります。2004年、2005年ぐらいから論文数自体が減ってきたわけですが、図中のそれまで毎年伸びていたところを見ていただくと、今、私が御説明したようなFTE教員数の寄与とか、博士課程在籍者数の寄与とか、原材料費の寄与があります。2005年ぐらいから、論文数の毎年の変化がマイナスになってきておりますけども、それは教員数が伸び悩んだ上での研究時間割合が低下したとか、2011年以降は、特に原材料費とか博士課程在籍者数が停滞しているというのが見て取れます。
 14ページは、以上の重回帰分析により、単純な一次方程式が得られているものですから、将来の論文数の試行的シミュレーションというのをやってみました。これはシナリオ1から3まであるのですが、シナリオ1は、現状の変化率を継続させた場合ということで、結論だけ申し上げますと、論文数の数は、5年間で1,280件ぐらいは減ってしまうことになります。 シナリオ2は、その中で特にFTE教員数について改善するシナリオです。研究時間割合を現在から9.7%ポイント増加という数値目標はコメ印で書いてありますが、文科省が提案して、最終的には内閣府で「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」という形になっておりますけども、その中で、研究時間の確保ということを言っておりますので、この通知に沿ってこれを上げていくと、研究時間割合が9.7%ポイント増加となります。それを当てはめた場合は、論文数が5年間で5,000件ぐらい増加の効果が出てきます。シナリオ3は、それにプラスして、博士課程在籍者数や原材料費についても、2011年の数値にそれぞれ回復させるという政策手段を取った場合にどうなのかということです。それであれば、論文数は5年間で8,000件近く増加するだろうということです。ただし、これはあくまで試行的なシミュレーションでありますし、それぞれのインプット変数が独立しているという仮定や、過去に起こったことが未来に起こるという保障もないので、あくまで傾向としてこういうことが見て取れるのではないかというものです。しかし、この結果は皆さんの現場の実感とも合っているのかなという気はいたしております。
 もう一つが資料2-2でありますが、これが「新型コロナウイルス流行の研究活動への影響等に関する調査」ということで、2ページを見ていただきますと、JGRADという博士人材データベースを我々は持っております。これは御覧のように、博士課程の在籍者と、それから、修了・退学した方たちが登録されています。現在、トータルで2万件ぐらいのデータベースになっており、49大学から参加していただいております。
 これに対して、メールによる依頼でのアンケートということで、今回は回答率が5%しかなくて、非常に回答率が小さかったわけでありますが、1,100人ぐらいの中でどのような結果になったかというと、3ページを御覧いただきますと、結果概要(1)があります。
 結果を簡単に申し上げると、回答の(1)のところで、「新型コロナウイルスの流行が既に研究活動に影響を及ぼしている」と回答された方は、博士課程在籍数で85%、修了・退学者の方たちでは79%という状況になって、あとは御覧のとおりであります。
 次が4ページであります。4ページは、新型コロナウイルスの流行による研究活動の影響を9つの活動の項目別に尋ねた結果、回答割合としまして、特に問5に掲げた、「研究活動に利用している建物・研究室・設備等の利用停止」が最も多くて、次に、「学会、シンポジウム、ワークショップ等の中止・延期」が多くなってきたというのが結果でございます。それから、4ページの下の部分は、それが細かく書いてございます。
 次は5ページでして、調査時点において、博士課程の在籍者の方にお聞きした中で、「博士の取得がすでに遅れる予定だ」とか、あるいは「博士の取得が遅れる可能性がある」、それから、「博士の取得が遅れる可能性がいくらかある」ということで、それぞれ6%、30%、37%ということで、報道では、7割が博士取得について懸念を感じていると報道がされておりますが、実際、細かい内訳としては、今、御説明した内容でございます。
 私の説明は以上です。すみません。雑駁(ざっぱく)な説明になりました。

【西尾分科会長】  磯谷所長から簡潔に、また、ポイントを押さえて御説明いただきまして、本当にありがとうございました。最初の2-1では、例えば14ページで、シナリオ3というのがもし実現されたとすると、どのぐらいの論文が増加するかということがシミュレートしてあったり、また、コロナ関係ももう迅速にこういう調査をしていただいて、どういう影響が起こっているのかということを調べていただきましたこと、本当に貴重な情報かと思っております。本当にありがとうございました。

【磯谷科学技術・学術政策研究所長】  西尾先生、すみません。一つだけよろしいでしょうか。つけ加えますと、今、博士人材データベースでのアンケートについて御紹介しましたが、私どもは専門家ネットワークという、2,000人ぐらいの産学官の有識者の方たちのネットワークもあり、その人たちに「新型コロナウイルス感染症の研究活動への影響」というアンケートもしております。これについては、まとまり次第、公表させていただきたいと思っております。すみません。

【西尾分科会長】  ぜひともそれもお願いいたします。
 それでは、今の御紹介いただいた内容につきまして、御質問等ございましたらお願いをいたします。ございませんか。
 山本委員、どうぞ。

【山本佳世子委員】  日刊工業の山本です。磯谷所長に質問します。博士の調査についてお伺いします。
 博士の在籍者について調査したのは、実際に博士課程の学生への影響を考えてだと分かるんですが、もう片方の修了者と退学者について調べたのは、どういうふうな意味と考えたらよろしいですか。学術の若手研究者としての状況だという理解でよろしいでしょうか。

【磯谷科学技術・学術政策研究所長】  博士課程を修了し、あるいは一旦は単位取得で退学というような方たちを含めての話なのですが、大学などのアカデミックポストを得られている方もいますし、厳密に言うと、産業界に就職された方の回答も混じっているとは思いますが、大多数はアカデミアのポストを得られた方と理解をしております。すみません。詳細なデータはここには出てきておりませんけども。

【山本佳世子委員】  そうしますと、在籍している、まだ学位を取っていない学生としての危機感、実際のコロナで大変な状況と、若手研究者として動き出している方たちが捉えている危機感と、そういう比較でよろしいですか。

【磯谷科学技術・学術政策研究所長】  はい。実は数が少ないので、厳密に比較できるかどうか分かりませんが、対象となった方たちはそういう属性だと思っております。

【山本佳世子委員】  ありがとうございます。

【西尾分科会長】  そうしましたら、小林先生、どうぞ。

【小林良彰委員】  小林良彰です。磯谷所長の非常に丁寧な分析はとても参考になります。日本の論文が相対的に低下している原因について、極めて丁寧に分析をしていただいていると思います。
 なお、絶対数として論文が落ちているわけではなくて、相対的に落ちていますので、磯谷所長にお尋ねしたいのは、諸外国でなぜ急速に伸びているのか。日本が落ちている要因は、御指摘のとおりなのですが、ほかの国が伸びている要因は何なのか。やはりこれも両方を見ていかないと、日本が相対的に戻っていくということは難しいのではないかと思います。
 具体的には、今日の資料の10ページに御指摘いただいた、教育専任教員と研究専任教員による分業です。例えばアメリカであれば、当然研究費を取って、自分の授業を買うことができるわけです。そうすると、研究に専念できます。研究専任と教員専任という分類は固定化しないで、その方は、研究費を取っているときはそれで自分の授業を買う。ですから、オーバーヘッドチャージは50%ぐらい取るところもありますけども、それを、逆になかなか競争的資金を取れないけども教育を頑張る教員の学内研究費に渡すというようなことをしています。
 あるいは、中国では教員の給料は必ずしも高くありませんが、論文を書くと、報酬がもらえますものすごく。私みたいな文系のところでも、一番いいジャーナルですと、掲載されると16万元。つまり、1本で160万円、報酬が、ついてきます。
 ですから、皆さん、とにかく論文を出すわけです。それが必ずしもいいということではないのですが、それぞれの国がそれぞれの事情で伸びている。その辺をどういうふうに把握していらっしゃるか、教えていただければと思います。
 以上です。

【磯谷科学技術・学術政策研究所長】  では、お答えします。小林先生、ありがとうございます。いつも御指導ありがとうございます。
 小林先生がおっしゃるようなぐらいのレベルの高い、密度の濃い調査というのは、実はまだ我々は追いついておりません。結局、今回はデータに基づいた重回帰分析ということでやったわけであります。諸外国に関しましては、毎年出しております科学技術指標の中で大学の研究開発費の比較などはしておりますが、当然、ドイツ、イギリス辺りは、大学の研究開発費も伸びておりまして、それと大体、論文数が同期しています。論文数の増加というのはあるのですが、それ以外の、先生がおっしゃったような意味での調査分析まで回っておりませんので、ぜひその辺もこれからやっていきたいと思っています。それから、先生、御指摘のバイアウトみたいなことについては、御案内のように、文部科学省が提案して、「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」の中に入っておりまして、先ほどの研究時間というものの絡みとか、あるいは、定点調査で言われている教育専任教員と研究専任教員といった、役割分担の教員の運用とかそういったことを組み合わせながら、日本としてもしっかり対応しつつあるとは思っています。ありがとうございました。

【西尾分科会長】  甲斐先生、どうぞ。

【甲斐委員】  いつもながら、磯谷先生の大変詳細な分析、ありがとうございました。大変貴重なデータを見せていただきました。
 それで、2-1の14ページですが、インプット・アウトプットのシミュレーションは大変貴重なデータだと思います。最近日本の論文数が伸びない大きな要因は、教員の研究時間が少なくなっているのと、博士課程がいないのと、研究費が上がらないのと、この3つがどれも大きくのしかかっていると考えていたんですけど、今回の分析結果でちょっと驚きましたのは、博士学生がこのまま全然増えなくても、研究費が伸びなくても、教員の研究時間を確保できれば、今まで1,200報ぐらい減少していたのが5,000報ぐらい上がると、そういう試算ですよね。これはすごい分析結果だと思いました。ほかのことがこのままでいいというわけではもちろんありませんけれども、一番重要なのは、研究時間の確保だというのは、これで明らかになったのかなと思います。
 そこで、質問なんですけど、研究時間割合、9.7%アップさせるという、この9.7%というのがどこから来たのかと、それから多分、確保するためには、学内事務の割合を減らすとか、いわゆる私たちが言う雑用をなくせばいいんだということで、そのためには、これはかけて経費を、事務官とかURAを増やせば何とかなるのかというような試算じゃないかなと思ったんですけど、まず9.7%がどこから来たのかというのと、もし9.7%を増やすためには試算としてどのぐらいの予算が必要なのか。これは運営費交付金が下げられたことと関係あるのか、ということについてのお考えを頂きたいと思います。お願いします。

【磯谷科学技術・学術政策研究所長】  9.7%ポイントは、今、手元に正確な数字がないので申し訳ないのですが、「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」の中で、学内事務負担というのを半減するという目標があります。学内事務負担を半減するということは逆に、計算すると研究時間の割合が、この場合は9.7%ポイント増えるということになります。今回は、それを仮に当てはめてみたということであります。
 それから、9.7%ポイント増えるために予算がどのぐらい必要かということですが、これはすみませんが、我々は全くまだそこまで踏み込んだ分析はしておりませんが、アプローチとしてはいろいろあると思います。だから、先ほど申し上げたように、バイアウトみたいなものでの寄与ももちろんあるのでしょうし、それから、そもそも学内事務みたいなものを合理化していくという問題もあるのでしょうし、いろいろな仮定を置けば、それを全部、運営費交付金で負担するというやり方もあるでしょうし、そうでないやり方もあるし、もう0から100まで、様々な組合せがあるわけなのですが、分析まではしておりません。すみません。

【甲斐委員】  ありがとうございました。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。まだまだ議論したいところなんですが、次の大きな議題がございますので、磯谷所長の御報告に対する質疑はここでやめますけども、まだいろいろ磯谷所長にお聞きになりたい点等ございましたら、遠慮なく、事務局にメール等でお知らせいただければと思っております。
 磯谷所長、どうもありがとうございました。

【磯谷科学技術・学術政策研究所長】  ありがとうございました。

【西尾分科会長】  それでは、新型コロナウイルス感染症対策に係る対応等についてということで、3番目の議題に行かせていただきます。
 この件に関しましては、詳しくは事務局から後で説明をしていただきますが、私の方からも、この議題を設けた経緯等について、若干の説明をさせていただきます。
 委員の皆様方も既に実感されていると思いますけれども、今般の新型コロナウイルス感染症の全国的かつ急速な蔓延(まんえん)による影響は、学術研究の現場にも厳しい形で及んでいるというところです。
 様々な場で既に議論は進められて、対策がいろんな形で講じられたり、議論されたりしておりますけれども、こうした我が国の学術研究の現状と直面する課題を整理して、学術研究がより発展し、社会における役割を十分発揮するための基本的な考え方と具体的な取組の方向性について、早急な検討が必要と考えております。
 そのため、今後の学術分科会では、学術の振興に関する重要事項を取り扱う分科会として、今般の新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて、今後の学術研究について、その在り方をどのように考え、どのような振興方策を講じていくべきかということを検討していきたいと考えております。
 今年は、来年度の概算要求期限が9月末ということですので、そうしたスケジュールも踏まえ、今年9月の上旬をめどに学術分科会として提言を何とかまとめることとしてはどうかと考えております。概算要求の後押しにもなろうかと思いますので、ぜひ委員の皆様のかっ達な御議論を頂ければと考えております。
 それでは、まず事務局から、新型コロナウイルス感染症による研究現場への影響に対する文部科学省の取組状況、学術研究の現場への影響の実態、これからの審議の論点等について、説明をお願いしたいと思います。
 それでは、錦室長、お願いいたします。

【錦学術企画室長】  それでは、御説明させていただきます。分科会長から、ただいまお話がありましたけれども、今後、新型コロナウイルス感染症を踏まえた学術研究の在り方を検討いただくに当たりまして、資料3-1、3-2、3-3を用いまして、関連事項を御説明申し上げます。
 まず資料3-1で、これまでの文部科学省の取組を簡単に御説明申し上げます。
 2ページですけれども、これは1次補正予算におきまして、国立大学におけるコロナ研究の設備整備の支援を計上したところでございます。
 次に、3ページでありますけれども、これは創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業のインシリコユニットというところに対して、計算機用サーバー1億円、構造展開ユニットに対して、質量分析機器等20億円を整備するものでございます。
 次、下へ行っていただきまして、4ページでございます。こちらはアジアの感染症研究拠点の研究基盤を強化・充実しまして、これらの拠点において、資料の下に書いてございますけれども、ここに記載している3つの研究を実施するものでございます。
 一つ飛ばしていただいて、6ページでありますけれども、こちらは2次補正予算でございます。内容は2つございまして、1つは、大学等における研究設備の遠隔化・自動化の推進に向けた基盤構築。2点目が、大学等におけるバイオリソースの安定的な維持・提供に向けた基盤構築。これへの支援として30億円計上しているものでございます。
 次に、7ページをお願いいたします。こちらは競争的研究費制度の各種の手続につきまして、状況に応じた柔軟な対応を実施しておりまして、その内容を文部科学省のホームページで公表しているということでございます。
 次に、8ページですけれども、こちらは文部科学省におきまして、感染拡大の予防と研究活動の両立に当たっての留意点、工夫等を示したガイドラインを作成しまして、5月14日に大学等に発出させていただいたところでございます。
 次に、9ページにございます。こちらは令和3年度からの全面的な運用開始を予定しているスパコン、「富岳」につきまして、その一部の利用を前倒しして、新型コロナウイルスに関する研究を実施しているというものでございます。
 次に、10ページ、こちらは、人文・社会科学の知見を公衆衛生行政における政策立案等につなげるために、JST等におきまして公募型研究を実施しているというところでございます。
 最後、12ページでありますけれども、こちらは既存の取組ではありますけれども、教育研究の継続にSINETは重要な役割を果たしているというお知らせでございます。
 これは資料3-1でございます。
 次、資料3-2をお願いいたします。こちらの資料は、コロナによる学術研究への影響及び支援のニーズについて、文部科学省の科学官と学術調査官に対しまして、5月時点の現状認識ですとか御意見を調査したものの概要でございます。詳細版は、参考資料6としておつけしてございます。
 左側に、コロナによって生じた影響について、右側に、中期的な課題を大きく整理させていただいたところでございます。
 また、左側の「研究体制の縮小」という部分ですけれども、共同利用施設停止等による研究活動全般の停滞が見られる。図書館資料の閲覧制限によって参考文献の参照が困難になったということ。また、学外から電子ジャーナルの閲覧ができないと、こういった問題が生じたという報告を頂いております。
 その下のところの「経済社会活動のあおり」というところですけれども、企業からの新規の共同研究の提案が減少するなど、産学連携が停滞する恐れがあると言われております。さらに、その下の地域・領域等における研究格差という部分ですけれども、研究分野、性別、家族構成によりまして、コロナの影響の度合いが異なっているという御報告を頂いております。
 右側に移っていただきまして、「知見交換の停滞」という部分でございます。これはオンライン会議が行われるようになったわけですけれども、これによりまして、共同研究が効率的に行われる素地ができたと、そういったプラスの面があった一方で、オンラインではフランクな情報共有が困難であるですとか国際研究グループの場合は時差があって、効率が悪いというようなこと。また、学会などでも、対面でこそ可能な人的交流というものが難しくなるといった御意見があったところでございます。
 下に行っていただきまして、「研究活動の圧迫」の1つ目のポツですけれども、オンライン講義等の準備。これによって、時間がかなり割かれて、研究活動が停滞したというような御報告が出ています。
 下のところで、「研究環境基盤整備」のニーズという部分ですが、研究活動の遠隔化・自動化のための設備整備や、ネットワーク環境整備が必要と、そういった御意見を頂いたところでございます。
 次に、右側に移っていただきまして、「研究評価の公平性」という部分でございます。こちらは研究費の審査ですとか、各種の実績評価等において、コロナ禍の影響を考慮することが必要といった御意見です。
 下に行っていただきまして、「研究費運用の柔軟化ニーズ」という部分ですけれども、研究費執行の年度繰越しの一層の柔軟化などを求める声が多く寄せられたほか、これを機に科研費の基金化を一層促進できないかと、そういった御意見もございました。
 右側へ行っていただきまして、「研究人材の育成」というところですが、学生の学位取得、就職への影響が大きい。留学生の受入れが難しく、グローバルな人材交流が停滞すると、そういった御意見でございます。
 その下の「学術界の人間社会における価値」という部分ですけれども、このような危機的な状況であるからこそ、人文科学の重要性への再認識が必要といった御意見ですとか、あと、これは非常に多かった意見ですけれども、今後、コロナの関係に予算が大きく配分されるだろうと。その結果、他の分野の予算が削減されることが懸念されるというものでございます。
 その下の「知のデータベース化」においては、学問的資料のデジタル化推進への支援が必要と、そういった御意見があったところでございます。繰り返しになりますけれども、この詳細版は参考資料6として添付してございます。
 資料3-3でございます。1枚目に、先ほど分科会長から御説明いただきました今回の検討の趣旨を整理してございます。
 今後のスケジュールといたしましては、本日が1回目の議論でありまして、2回目を8月4日に予定してございます。
 議論の進捗次第では、9月4日も開催させていただければと考えておりまして、いずれにしましても、9月上旬を目途に、分科会としての御提言をおまとめいただければと考えております。
 本資料の2ページ目以降は、議論いただく上での論点を、先ほどのアンケートを基に事務局で例示的に整理したものでございます。
 1つ目の四角囲みの部分ですけれども、現に発生している影響を踏まえ、また、今後に備えてどのような対策に取り組んでいくべきかというところですけれども、1つ目の論点、競争的研究費についてということでございます。先ほど申し上げましたけれども、コロナによって研究内容の変更を余儀なくされたり、また、研究が遅れたりしている中で、研究費の運用の柔軟化をどのように図っていくべきかといった論点でございます。
 その下の大学等における研究体制につきましては、コロナ禍の影響を踏まえて、大学等における研究体制はどうあるべきか、また、その体制整備に向けてどのような支援が必要かと、そういった論点でございます。
 次、3ページでありますけれども、国際連携・国際共同研究についてというところ。海外研究者や留学生の来日中止などによりまして、国際的な頭脳循環の機会の減少が懸念される中で、今後、学術研究における国際連携の在り方はどうあるべきかと、そういった論点でございます。
 その下の学術研究に係る人材についてという部分ですけれども、先ほどNISTEPからの御報告にもありましたように、博士課程の学生などは、研究が予定どおり進められず、研究活動に支障が出ていると。そういったことで、モチベーションの低下など、人材育成の面での支障が見られると。こういった中で、研究人材をどのように支えていくべきかと、そういった論点でございます。
その下の学術研究におけるオンラインの活用。これも先ほど申し上げましたけれども、オンラインの活用によりまして、意見交換や学会活動が効率的に、そして、活発に行われるようになったと、そういった面はあるわけですけれども、一方で、信頼関係の醸成など、対面でしか得られない部分もあると。そういった中で、学術研究におけるオンラインの活用をどのように捉えるべきか。また、学会活動がどうあるべきかと、そういった論点でございます。
 次に、4ページでございますが、学術研究を支える学術情報基盤という部分でございます。今回、図書館サービスの停止ですとか、学外から電子資料にアクセスできない。そういったことによりまして、研究に影響が出たという御報告いただきましたけれども、こういったことを踏まえて、非常事態時における対応も含めて、学術情報基盤の在り方をどのように考えるかと、そういった論点でございます。
 その下、共同利用・共同研究体制につきましては、非常事態時における共共体制の在り方についての論点。その下、その他という部分ですけれども、幾つか御意見いただいておりますが、中でも、先ほど申し上げましたが、今後の予算配分の在り方についての論点、こういったところが挙げられるかと思います。
 最後、5ページでありますけれども、四角囲みの部分。学術研究は、今後、社会の諸課題にどのように取り組んでいくべきかという部分でありますけれども、世界的な危機における人文科学の重要性、人文科学の貢献の在り方についての論点ですとか、あとは、下のところに書いてございますが、他分野の研究者が必ずしも質の高くない発表をするケースが見られたということを踏まえて、他分野への接し方を含めた新しい形の研究倫理が必要ではないかと、そういった論点でございます。
 なお、最後に御報告ですけれども、本日御欠席の五神委員を含む一部の委員から、既に御意見を紙で提出いただいているところでございます。そちらについては、参考資料7として添付しておりますので、適宜御確認いただければと考えております。
 私からは以上でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。文部科学省における取組状況及び現場の状況に関するアンケート、考えられる論点については以上のようになります。
 これらに関して、御意見、御提案などがございましたら、「手を挙げる」ボタンで挙手を頂きますよう、お願いいたします。ただし、事前にお伝えしていますとおり、本日は時間が限られております。それと、もう既に時間が大分押してしまっておりまして、できるだけ多くの方の意見を頂きたく思っておりますので、お一人の発言時間は最大3分までとして頂きたく思います。
 それと、現状、課題を挙げるというよりも、今後どのような学術振興方策が求められるのかという観点から、できるだけ簡潔にお話を頂ければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 武内委員、どうぞ。

【武内委員】  武内です。どうもありがとうございました。特に、新型コロナウイルス感染症に関する大学間の取組を促進するというのは、これは極めて重要なことで、私はぜひこれを推進していただきたいと思います。
 その上で、私は日本学術会議の国際担当の副会長をやっておりますけれども、やはり国際連携というのがアジアだけではなくて、もう少し広く捉えてやっていくことが必要だということで、今、Gサイエンス学術会議、これは全米科学アカデミーがリードしましたけれども、そこでも意見書を取りまとめ、また、今現在は、G20、これはサウジアラビアですけれども、新型コロナウイルス感染症についての議論を取りまとめております。
 一つのキーポイントは、要するに、国際社会がソリダリティを持って、一緒になって対応していかなきゃいけないというポイントが一つ。それからもう一つは、開発途上国、それから先進国でも貧しい人に、よりネガティブなインパクトがかかっていると。むしろ格差を是正するどころか、格差を拡大すると。このことについて、やはり皆が注目していかなければいけないということでございます。
 今現在、インターアカデミーパートナーシップという、140ぐらいのアカデミーの入った組織がございまして、そこでも共同声明をまとめております。これは日本学術会議のホームページに出ておりますので、ぜひ御覧いただければと思います。
 それからもう一点ですが、新型コロナウイルスがもたらした社会をどうやって、むしろよりよいものにしていくかという観点が非常に重要でございまして、私自身は、気候変動対策とか生物多様性の保全。本来ならば、今年、両方とも非常に大きな国際合意が得られるはずだったのですが、残念ながら来年に延びてしまいました。しかし、これは一つの社会が大きく変化するトランスフォーマティブチェンジの契機となり得るような、そういう大きなショックですので、これをぜひ人類社会がここまで大きな被害を受けたわけですから、それが被害を回復させるということだけで終わらせるのでは救われないと。むしろこれをどうやって社会変革につなげるのかということをぜひ考える視点も、長期的には持っていただけるとありがたいと思っております。
 以上です。

【西尾分科会長】  貴重な御意見、どうもありがとうございました。今頂きました御意見は、提言書を書く上では多分、まくらの非常に重要な観点として記述していくべきことかと思います。どうもありがとうございました。
 小林先生、どうぞ。

【小林良彰委員】  小林良彰ですが、文科省の事務局から御説明いただいた資料3-1、拝見しますと、非常に隅々まで気配りした配慮をうかがえるのですが、今回の感染で、国民が一番、薄々感じていることは、感染研だけでは、もう手が回らないのではないのかということです。一般の国民は、感染研と各国立大学の医学系の研究所とあまり区別していないので、日本の学術は大丈夫かという心配や誤解もある中で、やはり私は、感染研の施設自体が、量もそうですが、質的にも、設計が古いです。
 そうなると、いろんな国で今、変異して、更に毒性が強くなったとき、どこまで対応できるのかと考えると、やはり日本の国立大学のどこかで同じような施設、もっと新しい設計に基づくものが必要なのではないのか。つまり、いろんなところに目配りして、予算をつけていただくことはいいのですが、さらにもう少し大きな話というのが文科省の中で検討されているのか、いないのか。
 それからもう一点は、せっかく作っても、稼働権限が厚労大臣にあったら、これは感染研とのまた微妙な関係で、それは認めないというと困るので、例えば国立大学に作った施設の稼働権限は文科大臣にある。そういうようなことも議論されていらっしゃるのかどうか、伺えればと思います。
 以上です。

【西尾分科会長】  今のことは後でお答え、今日は難しいですか。そうしたら、今頂きました点、ここで、事務局のほうで即答ができない状況なので、必ず先生のほうに、きっちりとした形で御返答申し上げます。どうも貴重な御意見ありがとうございました。
 2時半までということで、喜連川先生あるいは松岡先生、御意見等ございませんか。挙げておられる方いらっしゃいますけれど、まず優先させていただきます。

【喜連川委員】  喜連川ですけど、発言させていただいてよろしいでしょうか。

【西尾分科会長】  はい、どうぞ。

【喜連川委員】  今の小林先生のお話と少しかぶるところはあるかもしれませんけれども、現在、日本が海外からどう見られているのかというと、ミューテーションのデータというのは、日本からのコントリビューションというのは著しく少ないんですね。だから、これだけそこそこやりこなせている日本が一体どうやっているのかということに対して、海外発信が十分できていないというところがあろうかと思います。
 加えまして、じゃあ、これも小林先生と似ていますけれども、今の感染者全体の全貌が、誰が分かっているのかということで、データがばらばらで、つまり、第2波に向かっての方策すら打ち込めていないんじゃないかなと。つまり、先ほどの文部科学省から、丁寧にコロナに対して、こういう策みたいな、このインクリメンタルな策というのがあるんですけれども、もっと全体俯瞰(ふかん)をしていただく必要がありまして、まだ医療機関のデータのシェアリング、そういうものがほとんどなされていない。
 こういうアティチュードそのものをどういうふうにするのかというところのもっと、せっかくコロナで根元から考えるオポチュニティを我々は持っているわけですので、その部分についての議論というのをどこでなされるのか分からないんですけれども、抜本的にやるべきじゃないかなという気がいたします。
 以上です。

【西尾分科会長】  貴重な御意見ありがとうございました。小林先生の御意見、喜連川先生の御意見を今後、我々は重く受け止めて、提言に結びつけたいと思っております。
 松岡先生はもうよろしいですか。はい。そうしましたら、須藤委員、どうぞ。

【須藤分科会長代理】  須藤ですけども、今までいろんな先生方から、やるべきことの御意見がありまして、基本的には全くそのとおりだと思いますし、先ほどの文科省の説明でも必要なことだと思います。
 ただ、少し私の立場からして欠けているなと思うのが、資料3-3のページ5、一番最後にちょろっとだけ出てきたんですけども、やっぱり今回の問題で、いろいろと課題が顕在化してきたと思っています。もちろん大学の運営とか研究費とか研究の在り方、設備、そういうことはもちろん重要なのはよく分かるんですけど、もうちょっと大きな目で見て、やっぱり今までやってきたことが実際には使えなかったんじゃないかということが大きな問題じゃないかなと思っています。
 具体的によく言われているのが、デジタル化、デジタライゼ-ションといって、いろんな研究をもう10年近くやってきたんですけど、結局、データ同士の連携がうまくいかないとか、医療データひとつにとっても全然連携していないと、こういう問題が前から言われたんですけども、顕在化してきている。
 それから、社会全体のレジリエンシーという意味でも、どちらかというと、大規模な気候的な災害ばかり注目していて、こういった感染症と防災との関係とか、その辺も欠けていると。全ていろんなデータが連携できていないという大きな問題が出てきていると思うんです。これにはやっぱり研究として、大至急、何をやるべきかということをぜひ文科省のほうから強く言うべきだと思います。
 Howについてはいろいろ意見が出てくると思うんですけど、Whatについて、これを機会に、この分野とこの分野は重点的に急いでやらなきゃいけないというのが当然出てきていますので、そこのところを大至急詰めて、ある程度、優先的にこの分野にお金をかけるべきだと。文科省としては言いづらいのかもしれませんけども、そういったことを言ういい機会になったんじゃないかなと思っています。
 以上です。

【西尾分科会長】  今までの何が問題で、今後それを解決するために何をすべきかということを重点的に我々は掘り起こして、それを訴えていくということだと思います。非常に貴重な意見、ありがとうございました。
 川添先生、どうぞ。

【川添委員】  京大の川添です。今回の御提言、提案は、今後の学術研究の振興についてということなんですけど、先ほどからの話もありますが、大きく分けて2つ、考え方というか、やるべきことの方向が2つあって、1つはコロナという個別事象ですね。グローバルに広がっていますけど、これはあくまで個別事象で、個別事象に対して、学術研究がどういう形で貢献できるか。それこそ、普遍性を持つ、どういう分野に、言わばお金を使って、国際的なコントリビューションを日本がやるかという、そういうコロナ対策という個別事象に対する学術研究がどうあるべきか。その点が1つですね。
 これは差し当たり、外部で分かることですけど、しかし、資料3-2に挙げられているようなことは、コロナという個別事象だけど、それがもたらした生活全般、それから、研究者の生活としての研究活動に対して、コロナが持った影響の中で、どういう必要な対策があるかという、それでの研究振興策ですね。その問題と大きく2つ、違う角度からの問題があると思います。
 それで、1番目もそうですけど、2番目の論点については、資料3-2でずっと、幾つかいろんな御意見をまとめ上げて、これはどれもそうなんですけれども、つまり、学術研究というものが基本的にはユニバーサルなものだとすると、つまり、あるいはグローバルと言ってもいいですけど、世界全体のアリーナの中で日本の研究がどうあるかという、そういう中で考えるべき課題。つまり、コロナがもたらした問題をどう克服していけばいいのかという問題は、これだけでは。何というかな。つまり、日本の学術研究が持っている世界的なスタンダードから見て、どこが足らないのかという分析がどこにも書いていないんですね。
 つまり、現に実感的にこれが問題があるということはずっと指摘されているわけですけど、ほかの諸外国の学術研究の場と日本の学術研究の場がどう違って、どこが劣っていて、どこに手を入れなければならないのか。そういう分析を同時にやらないと、ユニバーサルな活動としてのグローバルなアリーナで、言わば闘うべき学術研究というものの、コロナによる影響に対する対策としては、何かアドホックなものになるというか、もう少しそういう世界的な文脈ならば、日本はどこが欠けているのかということの分析が必要だろうというように思います。
 以上です。

【西尾分科会長】  先ほど須藤委員から言っていただいたこととも割と関連するのかと思うんですけど、それを日本と日本以外と更に比較した上での分析も非常に重要じゃないかということだと思います。非常に貴重な意見ありがとうございました。

【川添委員】  同じような困り方はどこでもしているはずで、それこそ、どう対応しているかということを今はやっぱり知っておかないと話にならないという気がします。

【西尾分科会長】  分かりました。
 観山先生、どうぞ。

【観山委員】  観山です。私は、あらかじめ書面で送っておりますけれども、簡単に4点だけお話ししたいと思います。
 一つは具体的な話になりますけども、今回のコロナの状況を踏まえて、ネットワーク、つまり、研究者、大学院生、それから、学生をつなぐネットワークがやっぱり非常に脆弱(ぜいじゃく)だったということですね。特に思うのは、パソコンとかiPadなどは結構持っていますけども、最終的な高速ネットの環境にないところに住んでいる人が結構多かったということです。だんだん立ち上がりましたけども、コロナ渦に、やはり全般的に、つまり、教室に来られない場合には、教室に代わるような状況を作ってあげないといけないと思います。入学を認めて、授業料も頂いているわけなので、これはやっぱり国がしっかりとサポートするべきじゃないかと思います。
 2点目は、私は国立天文台におりましたので、共同利用・共同研究ということで考えますと、非常に停滞しておるということですね。やっぱり拠点に研究者が集まって一緒にやるという状況が実現できないということです。説明された補正予算を見ますと、リモート観測や実験のための予算の積み上げがなされておりまして、非常にありがたいと思います。けれども、まだまだと思います。また、結構大きな装置になると、短時間で装填することができませんので、将来の第2波、第3波とか、違うパンデミックを考えますと、これはこういう事態が起こり得るんだということを考えつつ、リモートの観測や実験ということを頭に入れないといけないと思います。
 もう一つは、拠点に行けないために、拠点の方々に、国内からも、海外からも、委託して、実験や観測をしてくれないかという依頼が結構あります。ですから、これに対しては、やっぱり人的なサポートをするような形の援助が必要です。非常に貴重な装置を休めておくというのは物すごくもったいないことでありまして、日本の学術を進展するためには非常にもったいないわけで、そこら辺のため人的確保のサポートも必要だと思います。
 それから、3番目には、こういう事態になって、やっぱりネットワークだとか、それから、ネットを使った授業、共同研究というものを、本当に急場しのぎでやっていますけれども、この効率的なネットワークを使った授業、研究、議論とか授業いうものに対する研究をエンカレッジしないといけないかと思います。これはどういう方法があるのか知りませんけれども、教育関係でこういうネットを通した、いろんな共同作業についての研究も盛んにしていただけるような方策を取っていただければと思います。
 最後に、これは書いていませんけれども、先ほど須藤先生の発言から思いましたけれども、私も自宅にいて、いろいろな作業することが必要でした。その際、やっぱり困ったことは、研究データを集めることが非常に問題になりました。論文はリモートで見られることなのですが。NIIで進められているようなオープンサイエンスだとか、そういう形をもっと進めていただいて、論文に書かれているようなものがデータとして簡単に入手できるようなシステムを今後は作っていく必要があるのではないかと思いました。
 以上です。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。先生の、特に研究現場からのいろいろな貴重な実態をベースにしたお話、ありがとうございました。
 なお、先生からいろいろおっしゃっていただいております情報基盤とかそちらに関しては、研究振興局の中に情報委員会というのがありまして、そちらでそのような問題に関しては特化して議論を進めてまいりたいと思っておりますので、そこで議論を深めてまいります。
 次に、小林傳司先生、どうぞ。

【小林傳司委員】  今日も東京での感染者が100人を超えたという報道がございましたけれども、このデータの扱いに関しては、やはり注意喚起したほうがいいのではないかと思っております。
 例えば3月、4月の段階の人数と、それから、現在の人数を単純に数字で比較するというのは科学的にはいかがなものか。つまり、検査力とか検査対象がそろっていないところで、結果的に数字だけを比較すると、そういうやり方は非常に問題がある。つまり、データの大事さというのは、データの取得状況というものを視野に入れた上でなければ、うまく使えないんだという、そういう議論はもう少し表に出てもよいのではないかというのが一つでございます。
 もう一つは、これはオープンアクセスの問題と品質管理のトレードオフのような問題なんです。本当に必要な研究結果を本当に必要な方々に伝えるという、そういう要請は国際的に必要になるわけですが、それと、その品質管理のための、いわゆるレビューですね。これの時間軸が合わない。それから、論文の公表形態としてのプレプリントの品質管理の問題についても、少し資料3-3でもお書きになっていますが、じゃあ、プレプリントは全部駄目かというと、そういうわけにもいかない場面があるので、ここの部分のバランスをどう考えるかというのはこれから非常に大事になっていくんだろうと。
 それからもう一点は、科学というのは、我々が手にしている最強の知的ツールであることは間違いないわけですが、科学が解答にたどり着くまでに必要とされる時間軸、つまり、研究の量とかデータの収集とかそういうことに要する時間軸と、意思決定、社会的な政策決定に必要な時間軸とは合わないことが結構あります。
 ですので、そういった合わなさというものを社会に対してちゃんと伝えておかなければ、かえって無用の科学不信を生む可能性があるわけです。今回、欧米で既にそういうことが起こっていますが、日本でも西浦さんのシミュレーションが当たらなかったことをもって、それを批判するような言説が出てきたりするわけですが、これは後知恵と言うべきであり、それなら何とでも言えるのです。そういう部分で科学ができる事柄の時間軸というものが、社会が求めているものと合わないことがあるんだということは、きちっと伝えておくというのは、科学者の世界というか、科学にとって大事なことではないかと思います。
 以上です。

【西尾分科会長】  先生から頂きました点、今、得られているデータそのものを、その背景にあることをベースにして、きっちりと評価、把握する必要があるということも含めて、データということに関して、やはり研究振興局はそのことに関して、ある意味で責任を持っていく局ですので、そのことをきっちり提言の中でもうたっておく必要があると思いますし、先生が最後のほうでおっしゃられたことは、やっぱり人文・社会科学系と自然科学系の双方からの議論をきっちりしていくことによって、おっしゃっておられるようなことに関して、明確にメッセージを出しておくということの重要さをおっしゃっていると思いますので、そういうことも含めた提言にぜひしていきたいと思っております。貴重な御意見、ありがとうございました。
 永原先生、どうぞ。

【永原委員】  永原です。2点、今までの御意見と少し違う観点から発言させていただきたいと思います。
 一つは学術に対する影響という点で、若手研究者ですね。特に博士後期課程の学生、それから、PDの人たち。この人たちがやはり非常に不安定な状態に置かれています。ちらちら耳にするのは、もう研究を離れようかというような声もやはり出てくるわけで、何らかの特別な対策を考える必要があるのではないかと思います。
 もちろん学振では、可能な限り現状の枠の中でできることは対応しており、既に配っていただいた家先生の資料などにも書かれていますが、その次元の問題ではないと思われます。恐らく長期化することはもう目に見えていますので、若手の研究の場を保障していくような、あるいは安心して研究できる環境の整備を議論する必要があるということが一点です。
 それからもう一点は、競争的資金の問題ですが、これも現状では科研費が割と自由に繰越しができますので、それを皆さんにお勧めし、研究者たちは事実そうされていますが、これも長期化してくると、実験ができない、あるいは調査に行けない、海外の研究者と一緒に研究ができないということはもう目に見えていますので、恐らく研究計画を抜本から見直す、研究計画の当初案を見直すというような次元も含めて、競争的資金の在り方を考えねばならなくなると思われます。多くの方が取られる科研費は、とりあえず3年あるいはもう少し長期計画ですが、それが今年を含む3年のようなものは非常に厳しい状況となってしまいました。
 ですから、新しい競争的資金の在り方、仕組みみたいなものも考えていかないと恐らく対応できないのではないかということが心配されます。以上の2点を述べさせていただきます。
 以上です。ありがとうございました。

【西尾分科会長】  永原先生、本当に重い課題といいますか、ここでコロナのことがあって、また我々きっちり考えていかなきゃならない2つの課題を御提供いただきました。これはぜひとも提言の中できっちりと何らかの形で訴えていきたいと思っています。ありがとうございました。
 次、山本先生、どうぞ。

【山本智委員】  山本智でございます。どうぞよろしくお願いします。
 2つあるのですけど、1つは、細かい話になるかもしれないんですが、実験系の研究が特に深刻な打撃を受けている一つの原因として、狭隘(きょうあい)の問題があります。要するに、一つの部屋に物すごくたくさんの機材を詰め込んで、みんながギュウギュウになって実験しているという、そういうことが、今までは平気で許されてきています。安全面でもまずいとは言われていたんだけど、本格的に取り組まれてこなかった、そういう事情がございます。今回を機会に、ぜひこれは、そういう広い意味での安全のために、ぜひ解決する方向を踏み出していただければというのが一点です。
 それからもう一つは、研究支援の件です。私が言うのも大変恐縮ですけれども、やはりコロナというのを我々は十分理解していないと思います。どういうふうにすればいいのか。その解決策が全く、非常に不確実性が高い、あるいは、よく十分に理解されていないということでしょう。専門家の先生方でもかなり試行錯誤。いろんなことがマスコミを通じて流れております。
 今こそ、そういう意味では、学術の出番だと思います。基本的にボトムアップで、様々な試行錯誤を踏み出していくということがやはり必要になるのではないかと思っています。そういうことを踏まえて、何かやはりここで、学術として、そういうコロナの、広い意味での自然科学から人文科学まで含めた、大きな研究をやるぞという旗を揚げないと、学術の価値が問われるような、そんな気が私はしています。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  2つ目の点は本当にすばらしい御提言と思っております。それと1つ目も研究環境ということで、これは振興局としても非常に、本来扱うべき観点ですので、それも提言の中に必ず盛り込んでいきたいと思っております。貴重な意見、どうもありがとうございました。
 栗原先生、どうぞ。

【栗原委員】  もうほかの先生方のおっしゃっていることと私もほぼ共通の意見です。まず今回は非常に丁寧にまとめていただいたことにお礼申し上げたいと思います。
 私の所属する大学では、事務手続と、図書館の電子ジャーナルへのアクセスは、従来は学内のみから可能だったんですが、今回は学外からも、学内と同じようにアクセスできるような対応をしていただいたので、非常に助かりました。
 そういう意味で、以前から業務の見直しということで、いろいろな活動がされているわけですけれども、そういう活動にきちっと対応して進めていくことが非常にこういう場合に有効だと思いますので、これは新しいことではないのですが、大事なことではないかと考えております。
 それから、実験系の研究者としましては、在宅勤務でネットワークを使って、データの見直しとか解析とかそういう部分は十分にできるんですが、無限にはできなくて、やはり実験ができないということは非常に厳しいところがあります。
それで、実験機器に対しても、リモートでのアクセスも非常に重要だと思います。またフロンティアの研究はすぐにリモートにはできにくいものが多いです。ですから、そういうものもあるということを、全体活動を全てリモートでやるのかということになると、そのためのステップのようなものへの配慮も必要だと考えます。
 観山先生のおっしゃったことにも共通するんですが、共同研究において、今、移動制限で、人が来れない。それで止まっているものもたくさんありますので、研究の運営ということを支援者も含めて、従来より幅広く今後考える必要があるのではないかと考えております。
 もう一点は、最近、産学共同研究ということで、大学の価値を産業界の方に更に見直していただくという活動が非常に盛んになってきたところで、共同研究費等も少しずつ額が上がってきているところですが、今回の経済的な打撃で、いろいろな共同研究が契約が少し遅れたり、あるいは額の縮小を依頼されたりということになっている場合がかなりあると、経験もしておりますし、聞いてもおりますので、そのような振興の流れが停滞しないようにということも今後見守っていくのが大事かなと考えています。
 以上です。

【西尾分科会長】  3点言っていただきました。例えば3つ目のことは、我々の提言でも、産業界への一つの大きな提言と言いますかね。要請ということも含めて書いていきたいと思っております。本当に貴重な御意見ありがとうございました。
 鍋倉先生、どうぞ。

【鍋倉委員】  生理学研究所の鍋倉です。まずは、コロナ対策に対するアンケート等をまとめていただきまして、お礼申し上げます。このアンケートに関しては、マイナス点をいろいろと挙げていただいていますが、このような制限された中でどのようなプラスの面があったかということについて、ピックアップしていただいて、それを今後継続的に続けるというような視点でのアンケートも必要と思います。
 例えば、今まで時間をかけてやっていたことをいかに効率化したかという取り組みをいれることにより、先ほどNISTEPの磯谷所長から説明がありました9.7%の研究時間の延長をさらに有効利用できるのではと思います。今回の研究活動の制限に対する様々な取り組みの中でこれまでの研究にプラスになるものを抽出することは必要と思います。
 2点目ですけれども、観山先生が言われたことでたのですが、共同利用機関にいる立場としては、研究者の方に来ていただいて、一緒に共同研究することができなくなりました。そのような状況において、研究を継続するために遠隔で共同研究ができないのかというという依頼が多くありました。
 特に生物実験系の場合、個々の共同研究に受入れ側もかなりのエフォートを割くので、研究所に来ていただけない場合の対応は大変ですけれど、共同利用機関等を利用して大学等の研究者の研究を、ストップしないような体制を構築することが必要です。さらに、そのためには共共拠点も含めて、どこで何をやっているかという情報が必要です。
 そういう意味では、共共拠点、共同利用機関の情報の見える化をさらに進めるのが必要と思っています。
 以上です。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。最初の点は、プラスの面ということですが、2つ目の点は、観山先生からおっしゃっていただいた点も非常に重要でして、ぜひこれは学術機関課とよく、こういう意見をいろいろ頂いていることを共有していただいて、その上で、この提言にいろいろまた反映していただく。それと先ほどの情報基盤の件は、情報委員会との連携が必要なので、これはここの学術分科会から更に議論を広めていただいて。お願いいたします。
 そうしましたら、新福先生。

【新福委員】  どうもありがとうございます。先生方、様々に若手支援も含めてお話しいただいていて、大変感謝申し上げます。
 私が若手研究者として申し上げたいところがございます。特に、私は医療系の研究者でもございますので、社会において、コロナのために医療者がどういうふうな扱いを受けているのかということも非常に気にしているところです。
 医療者が命をかけて患者さんたちを守らなければならないというところで、医療者である研究者、また、医療者を配偶者に持つ若手研究者。医療者が配偶者であるが故に、お子さんが保育園に行けない研究者などもたくさんいらっしゃいます。そうした中で、若手研究者、特に医療系の若手研究者が男女限らず非常に重たい負担を得ているということは御理解いただいた上で、若手研究者支援というときに、どこによく注力して、例えばICTの支援員を送るですとか、そういった対策が考えられると思うんですが、どういったところが一番ニーズが高いのかというところは重々に提言にも入れていきたいと考えております。
 また、私自身は国際保健をしていて、海外との国際共同研究ですとか国際学会というところの機会も大変多いんですけれども、国際学会、オンライン会議になってよかったという部分もたくさんあるんですが、やはりそれを世界中で同時につなぐとなると、日本は大体、夜の開催になります。そうすると、出張扱いにならないまま、日常の業務をフルタイムでこなしながら、夜は国際会議がずっと続くというようなことがございますので、若手研究者はこうした負担が増えていって、さらに、国際的なことをやろうとすると、夜にも負担があって、どうやって労働管理をしていきながら、研究の時間を確保するということが非常に大事だということを、先ほども御発表いただいたと思うのですけれども、時間の確保が非常に難しくなってきてしまっていますので、若手研究者支援をこれまでしていただいて、少しずつよくなってきた。それが逆戻りしないように、コロナにおける状況というのをきちんと踏まえた提言を出す必要があると思っております。
 もう一点、先ほど武内先生がお話になったS20の政策提言に私も関わらせていただいているんですけれども、そこのトピックがフォーサイトサイエンスということで、未来を予測するような科学の在り方というものが議論されています。これはヨーロッパのほうで先進的に行われておりまして、具体的に行政間とのワークショップですとか、能力構築というのを若手研究者が得られる機会があったりですとか、そういった具体的な政策がヨーロッパのほうでは進んでいるということを知り、大変うらやましく思っております。
 このフォーサイトサイエンスには恐らくいろんな議論が必要ですし、そんなに簡単に進むものでもないとは思うんですけれども、そういったことがもう少し日本でも進んでいくようにすると、政策提言の御苦労というところにもう少し科学的な根拠を持って貢献できるんじゃないかというのも考えているところです。
 以上です。

【西尾分科会長】  特に医療分野の研究者として、非常に貴重な御意見ありがとうございました。特に若手の研究者のことも、その中でどう考えていくかということで、その点も提言書の中で、きっちり捉えていきたいと思っています。
 先生がおっしゃいますように、私も経験で、日本とヨーロッパとが、日本と北米というのは、大きな2つの領域での国際間の会議というのは、何とか共通の時間が見つけられるんですけれど、例えば、アメリカと日本とヨーロッパになると、もう共通的に議論できる時間ということになると、その時間帯を見つけるのはほぼ困難であるというのが実感しておりまして、そういうことがまた若手研究者等においても結構な負担になっているということもあるんじゃないかと思いますが、そこら辺をどう考えていくかということだと思います。どうかよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 城山先生、どうぞ。

【城山委員】  城山でございます。皆さん、先生方がおっしゃった点ですね。それからあと、最初に文科省に整理していただいた、個別のどういう課題があって、どういう対策があり得るのかという。極めてそれぞれ大変重要な問題提起をしていただいたのではないかなと思います。
 その上で、ちょっと違う角度なんですけども、恐らくこういったものをどういうふうな形でプレゼンテーションしていくのか、どういう形で整理して提示していくのかということがすごく大事なのかなという気がいたします。
 最初、文科省のほうから御紹介がありましたけれども、直接的には9月に向けて概算要求のタイミングもあるので、いろんな課題、あるいは要望事項を整理するということだったかと思うんですけれども、単にボトムアップにやるのではなくて、ある程度全体の構造を整理して示すということが大事じゃないかと思います。少し大上段な言い方をすると、恐らく、こういう社会的危機があったときに、アカデミックコミュニティーといいます学術の世界と社会との関係のリコントラクトというか、ある種の契約をし直すみたいな、多分、そういう宣言的な意味を持つのではないかなと思います。
 そういう意味で言うと、既に何人かの方からお話がありましたけれども、やはりこういう状況の中で学術のコミュニティーというのは結局何ができるのか、社会に対してどういうものが提示できるのかということをまず出すことがすごく大事なのかなという気がします。つまり、研究開発の話というのはまさに本道でしょうし、それから、あるいは須藤委員から話がありましたけれども、今回の社会的災害というのは、ある種のいろんな要素が複合的につながってくるようなもので、例えば感染症と防災とか、そういう連担が見られる、そういう事例なんだというお話がありましたけれども、そういうものにどう対処していくのかだとか、あるいは、今回が将来の社会をどうつくるかということに関して言うと、まさに人社のような役割も重要だと。何が社会に対して貢献できるのかという観点で整理してみるということがまず一つ、極めて重要なのかなと思います。
 もちろん、そのときに注意事項は必要で、小林傳司委員が言われたように、世の中の期待するスピードと我々の現実の速度は違うので、過度な期待を与えると逆効果だということもあるので、そこはもちろん注意しなければいけないんですが、やはり何を社会に提示するかということが必要なのかなというのが1つです。
 もう一つ、今回の議論の中で先生方から出てきたことの中で、必ずしもコロナだからということではなくて、コロナで顕在化した課題ですね。つまり、デジタル化の話にしろ、例えば電子ジャーナルが外から見られないとかいう学内事務の問題にしろ、あるいは先ほど議論になった学内、いわゆる雑用的なものが増えるのでなかなか研究できないという、多分、コロナが起きようが起きまいが大きな課題があって、多分、こういうものをこの機会にきちっと我々として対応していく。ある部分は、お金の必要のあるものでしょうが、ある部分は、むしろ我々自身がこういうふうにやっていくんだという方向性を見せることが大事だというものもあると思うので、必ずしもコロナではないんだけれども、ある意味では、海外に比べたときにシステマティックに課題としてあった日本の学術システムの課題を、この機会にきちんと対応する。悪く言えば、滞貨一掃セールじゃないですけれども、きちんとやるんだということを示すという、そういう大きな2つの柱みたいなものがあって、その上で整理していただいた個々のものも埋め込んでいくという、何かそういう形で、全体の整理の仕方を工夫していただくといいのではないかなと思いました。
 以上です。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。提言のまとめ方につきまして、非常に貴重な趣旨を頂きました。心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
 次、岸村先生、どうぞ。

【岸村委員】  はい、ありがとうございます。私は若手アカデミーの代表もしておりますが、今回、若手アカデミーのほうからも意見を出させてもらいまして、まとめていただいた資料にもかなり多くの意見を拾っていただきまして、こうして位置づけていただいて本当にありがとうございます。
 ほかの委員の先生のお話の繰り返しになってしまうところもあるんですが、今回の経験を基に、中長期的なところもしっかりフォローしていかなければいけないと思っています。特に、先ほどのNISTEPの報告からにもございましたように研究時間を増やせばいいという話がある一方で、今回のコロナ禍の中で失った時間というのはかなりあったはずで、第2波、第3波が来たときに同じことをやっているようでは、研究を進めていくという点では非常にロスになってしまう。実際、授業であったり学会だったり、オンライン化はされています。かなりいろいろな場所で取組が行われて、いいものもあると思うんですが、良いものを共有していくというのがまだ効果的に行われてないと思いますので、そこをうまくやっていくことで次に備えることできますし、逆に、今まで時間が無駄だったところは効率化できるということもできると思います。時間を無駄にしない観点で、ぜひ必要なことはこれを機会に進めていくべきであろうと思います。
 また、こういう危機があったときに、なかなか現場が脆弱(ぜいじゃく)であるということも露呈していますので、たとえば教育等の観点では、教育に関するURAのようなものがいて、例えば学科に1人ぐらい、実際に教員研究者ではないんだけれども、ちゃんと回せるような人というのがいるようであれば、こういう危機にも対応できますし、ふだんも余裕を持っていろんな業務を回していけるようになるんじゃないかと思います。
 もう一つは社会との関わりなんですけれども、例えば私のように、大学にいれば学生の就職というのが問題になるんですが、やはり新卒一括採用というのが1つのネックになっている面もあると思いますので、今回をきっかけに社会とうまく対話を進めることによって、社会全体として危機に強い体制をつくっていく必要もあると思います。
 もう一つ、社会の関わりという意味では、先ほど小林傳司先生からも科学不信を招きかねない状況というのもありましたが、それとはちょっと違った観点で不信を招きかねないという話として、この審議会ではもちろん科学研究の振興というのを考えていく必要はあるんですが、今、そればかり追いかけてしまうと、後になって、あのコロナ危機のときに科学者は科学者のためのことしかやっていなかったんじゃないかみたいなこと言われてしまうと、結局、信頼を失うということになります。こういう難しい状況であるからこそ、社会との対話ですとか連携、共創といったものもしっかり受け止めてやっていかなきゃいけないんじゃないかと思います。
 そういう意味では、中長期的には社会デザインができるような立場にも我々科学者ですとか学位を持った者を送り込んでいくというのを積極的に行わなきゃいけない。具体的には、行政官だったり政治家だったり、そういうところにも人材を送り出したり、派遣するようなことも考えていかなければいけないと思います。これは博士人材の社会的認知の拡大や、キャリアパスの拡大にも効果があると思います。ありがとうございました。

【西尾分科会長】  岸村さん、若手研究者の代表として非常に本質的な課題についてお話を頂きましてありがとうございました。

【岸村委員】  ありがとうございました。

【西尾分科会長】  それでは、井野瀬先生、どうぞ。

【井野瀬委員】  では、私も一言だけ。皆さんが総合して異口同音におっしゃっていることというのは、学術における、それだけじゃなくて市民社会との関係を見据えながら、取り結びながら、ポストコロナ社会を学術全体で展望していくということのように思います。時期として、科学技術基本計画第6期で、「人文学を除く」というのが外れるという、ちょうどその時期は、人文学をやっている私にとって、あるいは社会学関係、科学の先生にとって、ある意味、マイナスをプラスに変えていく、そういう提言こそを出さなきゃいけないのかなというふうに思いました。
 オンライン講義を本格的に経験し、あるいは、オンラインでの対面授業も経験して、何がオンラインにできるのか、何ができないのかということを、人文学、社会科学系の人間も、それまで、いや、教育というのは対面でやるものだと思っていた多くの人間が別の可能性にも気がついたということは、私はプラスに取りたいと思います。
 それに伴う技術的ないろんな問題というのは常にあるんですけれども、可能性に具体的に気がつけたということは、科学技術基本計画を次の段階に進める上で、あるいはイノベーションというのは本当は何を意味するのかということを考える上でも重要なこの機会になるのかなと。
 しかも、政府系のいろんな新型コロナ対策系のところに、人文学って恐らくまだ入っていない。いや、これからも入るかどうか分からないんですが、そろそろ出番かなという。このオンライン経験が生かせるかなというふうに思っていらっしゃる先生も、たくさんいらっしゃって、そういうところにうまくこの機会をつかまえてアピールしていく必要もあると思いました。
 先ほどの御報告でもありました、信頼関係をネット上でどう構築するのかということは、これは恐らく、人文学、社会科学の出番の大きなこと。この信頼関係がないと先に進め進めないという部分もあります。その意味では、鍋倉先生もおっしゃったと思います。コロナ禍という今の状況のマイナス面をプラスに転じていくという発想で読み替えるということは、人文学をやっている私には、何となく少し先を考えられる。そんなようなことかなというふうに思いました。
 今後もハイブリッドで、大学では、対面だけではなくてオンラインを利用した形が様々に取り入れられていくと思います。これをNISTEPの磯谷所長が言われた、研究時間を増やすことをすれば論文等と研究の質を高められるということと組み合わせていけば、少し面白いというか、通常、人文学は関係ないよねと思っている先生にも、いやいや、これは自分たちの未来を開く提案だというふうに思ってもらえるような、そんな好機に今を捉えたいなというのを先生方の話を思いながら、私自身の意見とさせていただきます。
 発言の機会を与えていただいてありがとうございます。

【西尾分科会長】  井野瀬先生、人文学、社会科学の観点で、このピンチをむしろチャンスと捉えたいということでの、前向き、ポジティブな御意見を頂きましてありがとうございました。そういう点も提言にはぜひ入れていきたいと思っております。
 辻委員、どうぞ。

【辻委員】  はい、辻ゆかりでございます。先ほど来から何名かの先生方からネットワークに関する御発言がございましたので、私自身、情報委員会及びその配下にございます。研究情報ネットワーク整備部会のほうで、SINETの在り方について議論をしているところでございますので、その観点から少しだけ意見を述べさせていただければと思います。
 既にそちらの部会のほうでも、コロナ禍において、トラフィックがどうなっているかというところは見ておりまして、実際のところは、SINETそのものに流れるトラフィックはもちろん増えてきていますけれども、それ以外の部分で、その周辺でのトラフィック増というところが、多分に見えてきているところでございます。
 と申しますのも、研究者や学生の所在地が広がった状況でネットワークのトラフィックが発生しておりますので、これまでとは随分違った使い方をされているというところが、今回のコロナで分かったところでございます。なので、それも踏まえまして従来のSINETへのいろいろな強化といったところに加えて、SINETの周辺に対する補強というか、ネットワークのパワーアップといったところも必要になってくるのかなというところでございます。
 それに加えまして、先ほど来からありましたように大学のDXですとか省庁自体のDX、デジタルトランスフォーメーションといったところの推進というのが、実際のところは研究時間を増やすことの強化といったところになるのではないかなと考えております。
 以上です。

【西尾分科会長】  情報通信環境におけるエキスパートのお立場から、非常に貴重な御示唆、最近の現象等の分析も含めてありがとうございました。心よりお礼申し上げます。
 森口さん、どうぞ。

【森口科学官】  はじめまして。4月から参加する一橋大学の森口です。専門が経済学なので、社会科学の立場から言わせていただきます。
 今回のコロナのことでわかったことの一つは、純粋に生物学的な感染症のもたらす健康上の問題と、感染の拡大を防止することがもたらす社会経済的な問題の間にはトレードオフがある、ということだと思います。つまり、感染症から命を守るのも大事だけれども、経済的な理由でも人は死ぬということです。実際、幾つかの国では経済を優先して、感染がまだ収まらないうちに経済活動を再開しています。このような状況にあって、経済学者が取り組みたい一番の課題は政策のインパクト評価です。経済学は社会科学の中でもとりわけ、相関関係と因果関係の識別に命をかけているところがあるので、データを使って、緊急事態宣言による外出制限や一斉休業が実際にどれくらい感染の拡大を抑える効果があるのか、さらに人びとの消費や収入にはどんな影響があるのか、を検証したいわけです。
 そのために必要なデータは政府統計の個票、集計する前の個人レベルや事業所レベルのデータです。政府統計の個票を使うには、まずプロポーザルを書いて科研費を取り、それから省庁に個票の利用申請をして、数か月待って利用許可が下りるとデータにアクセスできる、というシステムになっています。同僚の経済学者の話を聞くと、厚労省や総務省は今、コロナ対応で忙しすぎて、個票利用の審査はほぼ止まってしまっているようです。でも、本当は今こそ早く利用したいわけです。例えば、人口動態調査や毎月勤労統計調査など、月次で取られている統計は、いま個票を出していただくと去年の同月と比較してどうなっているかをリアルタイムで分析できます。でも実際には、個票の利用が早くなるどころか、むしろ遅れているというのが現状です。
 個票だけではなく、日本では全体的にデータの公開が遅く、しかも一箇所に集約されていないという問題があります。例えば、コロナの新規感染者数という基礎的なデータでさえ、市町村区レベルのデータがまとめて公開されているわけではなく、研究者がいろいろなところから集めてくる必要があり、しかもさっきおっしゃっていたようにそのデータの背景がよくわからないことも多い。研究者は常にデータのバイアスとかを気にしているので、データの性質がわからないと厳密な分析ができません。これに対して例えばアメリカでは、市町村区よりも細かい郵便番号のレベルのデータを使った所得や人種別のコロナによる死亡率の論文がリアルタイムで出てきています。今の日本は、そういう研究ができるような状態にありません。もちろん、個票の利用はプライバシーの問題もあるので慎重になるのはよく分かるのですが、今回のような緊急性の高い状況で、エビデンスに基づいた政策を作るためにも、すぐにデータを利用できるようなインフラストラクチャーを作る必要があります。これが今回、社会科学の分野で見えてきた課題です。
 以上です。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございます。今、森口先生、4月から科学官をお務めでいらっしゃいますけれど、頂いた意見は非常に大事だと思っていまして、日本の今回のコロナに関する研究を進める上で、省庁間の壁を超えたデータ、集まっているデータを研究者にどう提供していただくかというようなことの、ある種のオープンサイエンスにも関わることを国としてきっちりと進めていかないと、日本から研究が進まないし、その情報発信をきっちりしていくということに関して大きな障害になっているのではないかということの実態をお話しいただいたんだと思っています。どうもありがとうございました。
 それでは、委員の方で、小長谷先生、家先生、井関先生、岡部先生、御意見等ございませんでしょうか。
 井関先生、どうぞ。

【井関委員】  井関でございます。意見というよりは、もう既にほかの先生方がいろいろ言ってくださったんですけれども、私自身は、鍋倉先生がおっしゃった、今の危機をとにかくプラスに持っていくというような、もうちょっとポジティブな形で学術研究を進めていくことがいいのかなというふうに思っています。
 たまたま共同研究をしておりますロンドンの友人に連絡したところ、ロンドンですから完全にロックダウンしていますが、何か月もラボに行ってないんですが、非常にポジティブなんです。いや、私たちも研究の仕方を変えなきゃいけないと思うと。そこで、できなくなっちゃった、ではなく、何ができるかというふうに研究者全体がもう少し、非常にポジティブになれるような――具体的に私が今、策を立てられるわけではないんですけれども、そういう雰囲気を持っていくというのも大事ではないかなと。非常に影響を受けている研究者の方もいらっしゃるし、それは本当に、ポジティブにはなれない、素直にはなれないというのは分かるんですけれども、もう少しポジティブに考えて、さらには、このコロナ禍で、やはり研究の多様性を維持していかないと、また次の何か問題が起きたときに、この研究をしている人はどこにいるんだろうということになってしまうと思うんです。ですので、全体的に本当にポジティブに何ができるかということを考えていくのがいいのかなというふうに考えております。
 以上です。

【西尾分科会長】  本当に大変な状況ですけども、これだけの世界的なパンデミックの状況、我々がその渦中にいるということは、逆にある意味で、なかなか、こう言ったら非常に問題かもしれないですけど、経験できないことの中で、そこで我々、何を発見し、何をやっていくのかということをもう少しポジティブに捉えてもいいんじゃないかということだと思います。ありがとうございました。
 小長谷先生、どうぞ。

【小長谷委員】  はい、ありがとうございます。既に指摘された諸点を総合しつつ一点言及させていただきます。研究の姿をポジティブに変えていこうと思ったときにコロナ禍によって分かった従来の弱さが明らかになり、それが国際的に比べたときの日本の弱さでもあるので、やはり研究資源のデジタル化、グローバルコモンズにしていくというところはぜひ推し進めていただきたいと思います。
 今まで具体的例として、専ら数値に置き換えられるようなデータでしたけれども、研究資源のデジタル化というのは数字だけに限られず、日本語の論文ですとか、物質文化に関するものとか、あらゆる質的データが研究資源になりますので、そういう広い目で研究資源のデジタル化、オープンアクセス化ということを推進していただければ、それは研究者のためというよりもむしろ教育のリソースにもなりますので、そのように進めていただきたいと思います。ありがとうございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、岡部先生、どうぞ。

【岡部委員】  はい、東京大学医学系研究科の岡部です。
 私自身、医学部におりますので、やはり今回のウイルス感染症の問題は医学としての観点からが一番気になっています。日本は、幾つかの幸運が重なって現在の市中感染が抑えられておりますけれども、多分、今後、長期的にこの状態でいられるというのはかなり楽観的な予測なので、今後の感染症対策が非常に重要だと思っています。
 そういう意味で、感染症対策が生物学的な研究だけでは成り立たないということが今回非常によく分かったと思うんですね。そういう意味で、医学、社会科学、人文学も含めたような分野横断的な研究、あるいはその研究のためにした政策提言というものがないと、ウイルス感染をちゃんと抑えていくということは難しいだろうと思いますので、ある意味では、新しい学問を創るということになるかもしれない。
 もう一つは医学的なところで非常にショックを受けたことがありまして、『Lancet』と『The New England Journal of Medicine』という医学系では非常に有名な雑誌にコロナウイルス関係の治療薬の研究が掲載されて、それが2つリトラクションされたんですね。それは、サージスフィア社という民間の企業が主体になったデータを集めたものだったんですけれども、全くそのデータの根拠がない形で、フェイクの論文を書いて、それが非常に有名な雑誌にアクセプトされて公表された。
 感じたことは、査読のシステムがまず、現在、本当に機能しているのかということと、それから、こういうウイルス感染のような社会的な価値の高い論文については、プレプリント、あるいはそのオープンサイエンスみたいな形でデータをどんどん公表していくわけです。ただ、公表していくデータのクオリティーコントロールというのが、現在、ほとんどうまくいっていない状態で、いろいろな雑多な情報が社会に流れていって、それが必ずしも正しくない結果に結びついてしまうという可能性があります。
 ですから、ウイルス感染のことは一番、社会的にも非常に重要な問題ですけれども、それプラス、いろいろな学術研究の中での、こういったオープンサイエンス、それからデータシェアリング、クオリティーコントロール、それからその研究の再現性の確保、そういったことをもう一遍考えていければいいんじゃないかというふうに思っています。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。サイエンスにおける根幹的なプリンシプルといいますか、そういうことをもう一度、我々、立ち戻って考える必要があるんじゃないかということだと思います。
 家先生、どうぞ。

【家委員】  はい、ありがとうございます。あらかじめ書面で意見を出しておりましたので、繰り返すことは控えておりましたけれども、機会を頂きましたので、科研費に関わる状況を少しお話しさせていただければと思います。
 今年の2月、3月あたりから新型コロナウイルス感染症の状況が深刻になっていました。幸いなことに、科研費の審査に関しては、基盤A、B、C、それから若手研究あたりは既に審査が終わっていましたので、予定どおり4月1日に内定を出すことができました。
 ただ、一部の研究種目については、審査を中断せざるを得ない状況になりました。この状況では、通常であればヒアリング等も含めた対面の審査を行うような種目についても、とてもそれは難しいということで、ここ2か月ほど、学振の中でウェブ審査というものが技術的にどのようにできるか、公正性を保ちながらできるか、テストを繰り返して、先月半ばぐらいから、それを始めているところです。
 一方、あまり審査が遅れますと、内定時期が当然遅れることとなり、交付時期が遅れることになりますし、来年度の応募時期にかかることは許されませんので、そのようなことがないようなタイムスケールで進めることにしています。今回の経験は生かしたいと思いますけども、実際に例えば次の審査の時期に第2波が来たとしたらどうなるのだろうかと非常に心配しているところではあります。
 私からの意見にも書きましたし、科学官、調査官の方からの御意見もありましたように、科研費の繰越しの問題があります。実際、昨年度末はコロナの影響で、例年よりもはるかに多くの繰越し申請がありました。究極の解決方法はやはり全種目の基金化を進めることだと思っております。これはコロナ対応ということに限らず、長期的に見て、限られた国の研究予算をより有効に使うという意味で、必ず効果がある施策だと思いますので、9月の概算要求にそういうものを盛り込むことを検討していただければと思います。
 私から以上です。

【西尾分科会長】  今回のコロナのことを機会に、逆に今先生がおっしゃったように全種目を基金化するというようなこと、また、ぜひとも、御尽力を頂けますとありがたく思っています。どうもありがとうございました。
 まだまだ意見はあると思いますし、また、科学官の方にも御出席いただいていて、御意見もいろいろお聞きしたいところなんですけれども、もう時間が来てしまっております。委員の方々からは、少なくとも会議全体を通じて1回は御発言を頂けたということで、今日はそれらのことを踏まえて、もし、今日御発言し切れなかった御意見等ございましたら、事務局のほうへ追加意見として提出いただければと思います。その追加意見につきましては、事務局のほうからまた照会があると思いますので、その折りに提出していただければと思います。
 今日頂きました御意見をベースに、提言内容をより深いものにすべく、今後また事務局のほうで、大変だと思いますけれども、さらに整理していただきながら、骨組みから肉づけへといろいろしていただければと思いますので、何とぞよろしくお願いいたします。
 皆様方からは、今日は本当に貴重な意見の数々を頂きましたこと、心よりお礼申し上げます。
 時間となっておりますので、あとは事務局よりの連絡を残しまして、本日の議題は終了といたします。ありがとうございました。

【二瓶学術企画室室長補佐】  最後に事務局から御連絡いたします。
 次回の分科会の予定は、資料4のとおり、8月4日、1時半から、オンラインでの開催を予定しております。9月4日は、予備日ということで確保させていただいております。
 また、本日の議事録につきましては後日メールでお送りいたしますので、御確認をお願いします。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  それでは、これにて閉会いたします。本当にありがとうございました。貴重な意見を頂きましたことを心よりお礼申し上げます。

―― 了 ――

 

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