学術分科会(第76回) 議事録

1.日時

令和2年2月12日(水曜日)13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省旧庁舎6階 第二講堂
(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 各部会等の審議状況について
  2. 最近の科学技術・学術の動向について
  3. 今後の議論の進め方について
  4. 令和2年度予算案について
  5. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員)
西尾分科会長、須藤分科会長代理、甲斐委員、栗原委員、小長谷委員、辻委員、観山委員、家委員、井関委員、岡部委員、岸村委員、喜連川委員、小林良彰委員、城山委員、永原委員、鍋倉委員、山本佳世子委員
(科学官)
三原科学官、吉江科学官、森科学官、相澤科学官、長谷部科学官、林科学官、東科学官、渡部科学官

文部科学省

村田研究振興局長、増子大臣官房審議官、原振興企画課長、梶山学術研究助成課長、橋爪参事官(情報担当)、錦学術企画室長、岡本学術研究助成課企画室長、楠目人材政策推進室長、平野大学改革推進室長、藤川学術企画室長補佐、降籏学術機関課学術研究調整官、磯谷科学技術・学術政策研究所長

オブザーバー

塩田内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付参事官(法制度改革担当)、渡辺内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付参事官(イノベーション創出環境担当)

5.議事録

【西尾分科会長】  皆さん,こんにちは。時間になりましたので,ただいまより第76回科学技術・学術審議会学術分科会を開催いたします。
 冒頭のみカメラ撮影を行いますので,御了承いただきたくお願いいたします。
 最初に,事務局の異動がありましたので,紹介をお願いいたします。

【藤川学術企画室室長補佐】  昨年10月の前回分科会以降,事務局に異動がございましたので,御紹介いたします。
 振興企画課学術企画室長の錦でございます。

【錦学術企画室長】  錦でございます。よろしくお願いいたします。

【西尾分科会長】  どうかよろしくお願いをいたします。
 次に,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【藤川学術企画室室長補佐】  本日もタブレットPCを御用意しており,ペーパーレス会議を実施します。
 本日の配付資料は,配付資料一覧のとおり,参考資料及び机上配付資料も含めてタブレットに入れております。操作など御不明な点がございましたら,近くの職員にお声掛けください。また,本日は,議事に関係する御説明を頂戴するために,内閣府から塩田参事官,渡辺参事官,大学振興課から平野大学改革推進室長,人材政策課から楠目人材政策推進室長をお呼びしております。また,報告ですがジャーナルによる研究成果の受発信に関する事項を調査・審議するために,科学技術・学術審議会の下に検討部会が設置され,議論が始まっております。
 参考資料2と3でございます。さらに,若手研究者育成関連事業の有識者との意見交換会が学術分科会の下の研究費部会で行われておりまして,その主な意見を机上配付資料にまとめております。本日の議事の御参考にご参照ください。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは,議事に入ります。本日の議題につきましては,議事次第に記しておりますけれども,本日,途中で御退席される予定の方がいらっしゃいましたら,意見交換の際は優先的に御発言いただきたく思っておりますので,早めに挙手をいただければと思います。せっかく来ていただいておりますので,御意見を承ることができればと思っております。
 1番目の議題が,各部会などの審議状況でございます。各部会等の審議状況に関しましては,研究環境基盤部会部会長の観山委員より,大学共同利用機関の備えるべき要件及び検証ガイドラインについて御報告を頂きます。それでは,観山先生,お願いいたします。

【観山委員】  研究環境基盤部会部会長の観山でございます。研究環境基盤部会における審議状況について説明させていただきます。
 第10期の研究環境基盤部会において,大学共同利用機関改革,共同利用・共同研究拠点及び国際共同利用・共同研究拠点,学術研究の大型プロジェクト等に関する作業部会を設置して,審議を進めてきたところでございます。昨年1月18日の学術分科会において,平成30年12月に取りまとめました「第4期中期目標期間における大学共同利用機関の在り方について(審議のまとめ)」について御説明いたしましたが,今回は,第10期研究環境基盤部会の下に設置された各作業部会のこれまでの審議状況について,簡単に御紹介させていただきます。
 資料1-1をごらんください。大学共同利用機関改革に関する作業部会においては,審議のまとめに基づきまして,大学共同利用機関として備えるべき要件について審議し,決定いたしました。現在,備えるべき要件を踏まえた大学共同利用機関の検証ガイドラインについて審議をしているところであり,今年度中に策定を予定しております。こちらについては,この後,別資料にて詳しく説明させていただきます。
 次に,共同利用・共同研究拠点及び国際共同利用・共同研究に関する作業部会において,第4期中期目標期間に向けた拠点制度の改善方策及び第3期中期目標期間における期末評価の実施方針について審議しているところでございます。また,本作業部会の下に設置されております特色ある共同利用・共同研究拠点に関する専門委員会において,公私立大学の国際共同利用・共同研究拠点について審査を実施し,昨年10月23日に立命館大学アートリサーチセンターが文部科学大臣より国際共同利用・共同研究拠点として認定されました。
 次に,三つ目の丸,学術研究の大型プロジェクトに関する作業部会においては,各プロジェクトの進捗評価を厳格に実施するとともに,日本学術会議が策定するマスタープランを参考に策定することとしているロードマップ2020について,その策定方針について審議し,昨年12月10日に決定したところでございます。今後,ロードマップ2020の策定に向けて審議を進める予定でございます。
 四つ目の丸として,国立大学法人運営費交付金等(学術研究関係)に関する作業部会において,議事は非公開となっておりますが,令和2年度概算要求について,7月に概算要求に係る評価方針を決定し,8月に調整方針を決定いたしました。また,大学共同利用機関法人については,8月に重点支援の取組の進捗状況の評価方針を決定し,12月に評価結果を決定いたしました。
 続いて,大学共同利用機関改革に関する作業部会における審議事項である大学共同利用機関の備えるべき要件及び大学共同利用機関の検証ガイドラインについて,資料に沿って報告させていただきます。
 まず,大学共同利用機関が備えるべき要件については,平成30年12月の審議のまとめを受けて,大学共同利用機関改革に関する作業部会における審議を経て,資料1-2のとおり取りまとめたところでございます。
 資料1-2をごらんください。
 備えるべき要件の内容としましては,法令等に規定される研究分野及び目的等について,大学における学術研究の発展に資するための大学の共同利用の研究所であることを基本とした上で,具体的な項目として,運営面,中核拠点性,国際性,研究資源,新分野の創出,人材育成,社会との関わりの,七つの項目を定めております。なお,この大学共同利用機関が備えるべき要件については,審議のまとめで,法令等において具体的に定めることが必要であると提言されたことを受けて,省令で文部科学大臣が定める旨を規定した上で,その内容を告示する予定でございます。現在,今年度内の制定に向けて手続を進めているところで,省令改正案と告示案に対するパブリックコメントを2月23日まで行っております。
 昨年9月以降は,この備えるべき要件を基にして大学共同利用機関が検証を行うためのガイドラインの策定に向けて検討してきたところでございます。資料1-3をごらんください。こちらがガイドラインの骨子でございます。
 まず,1ポツにあります検証の趣旨については,審議のまとめに基づき,各大学共同利用機関が,学術研究の動向に対応し,大学における学術研究の発展に資するものになっているかなどを定期的に検証し,その結果に基づき,再編・統合を含め,大学共同利用機関の今後の研究体制強化の在り方を検討することとしております。また,2ポツですが,ガイドラインの位置付けとしては,このガイドラインは,検証に当たって,備えるべき要件を踏まえて,検証の観点や参照すべき指標等を示すものとしているところでございます。3ポツについて,検証は,大学共同利用機関が行う自己検証と,これに基づき科学技術・学術審議会が行う外部検証から構成されております。
 2ページ目をごらんください。4ポツ,検証の基準としては,備えるべき要件の各項目に対応する形で策定する主な観点と指標例を基本とすることとしております。非常に詳細になりますので,本日はお付けしておりませんが,主な観点に関しては,各大学共同利用機関において,各研究分野の動向などを踏まえながら,観点ごとの重み付けや優先順位などは機関ごとに判断することや,指標に関しては,あくまでも指標例として,各機関の判断で独自の指標やベンチマークを設定することを可能とするようにして,それぞれの特色が生かされるように配慮しているところでございます。
 そして,5ポツにありますように,この検証の時期については,大学共同利用機関法人の中期目標期間に合わせて6年ごとに実施することを考えております。また,今回の検証の結果が確実に実施されるよう,直後の中期目標期間の開始に向けて,国立大学法人法に基づき文部科学大臣が行う組織及び業務の全般にわたる検討等とのスケジュールを調整することとしております。具体的なスケジュールとしては,本年4月から8月までの間に自己検証を,9月から12月の間に外部検証を実施する予定としております。
 3ページ目をごらんください。6ポツの検証結果報告書等のところでございますが,各大学共同利用機関が自己検証を行うに当たっては,各大学共同利用機関が検証結果報告書を作成して,文部科学省に提出いただくこととしております。報告書作成の際には,既存のデータを可能な限り活用していただくなど,各機関の負担の軽減に配慮することを明記しております。
 7ポツ,検証の実施については,本検証は,各大学共同利用機関が,今後も大学共同利用機関として求められる役割を担うことができるか,また大学における学術研究の発展や我が国の研究力向上に貢献していけるかどうかなどについて,再編・統合等も含めた今後の体制強化の在り方を明らかにするものであり,各大学共同利用機関の間の相互の優劣を相対的に比較するものではないことを明示しているところでございます。そして,本検証は,備えるべき要件の各項目ごとに,過去及び将来の観点や取組の結果のみならず,プロセスの観点から分析した上で,当該大学共同利用機関の今後に期待する事項,解決すべき課題等を提示し,その上で必要があれば,再編・統合等を含む今後の体制強化の在り方等についても総括することとしております。
 なお,審議のまとめにおいて指摘されておりました,大学共同利用機関から大学の共同利用・共同研究拠点への移行,また,その反対の移行に関する要望が示された際の対応については,8ポツに記載したところでございます。
 最後になりますが,この大学共同利用機関の検証ガイドラインの策定に関する今後のスケジュールについては,先ほど御説明申したとおりであります。今年度内の策定に向けて検討を進めているところでございます。
 私からの説明は以上でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。今の御説明につきまして,何か御意見とか御質問とかがございましたら,是非ともいただければと思います。観山先生,御説明ありがとうございました。
 私から,1点よろしいでしょうか。先生からの御説明の中で何回か,組織に関して再編・統合等を含む今後の体制強化の在り方等について総括をする,ということをおっしゃっていただきました。現在4機構で構成されている大学共同利用機関について,組織的な再編がこの議論の中から行われる可能性があると考えてもよろしいのでしょうか。

【観山委員】  ありがとうございます。いつも「再編・統合を含めて」というのがあって,ちょっとぎらぎらしているのですけれども,基本的には大学共同利用機関の今後の研究体制強化の在り方を検討するということで,その中で,例えば可能性として,そういう統合とか再編の必要性がありますが,基本的にはこれは大学共同利用機関それぞれをまず検証していくということでございますので,すぐさまそれが法人の再編とか何とかにつながるかどうかというのは今後の推移でございますが,あくまでも今後の研究体制強化の在り方を検討するという中に,例えば,もしもこの研究所とこの研究所が別の形になった方がいいということが割とはっきりすれば,そういう可能性も含めてという形でございます。統合に関して強調があるというわけでは,議論の中ではありません。

【西尾分科会長】  今おっしゃったことからすると,学術分野等においてもいろいろな変遷が起きていて,現代的な学術の動向の下では,機構組織を全体的な視点の中で見直しをした方がよく,その方が日本の学術研究により大きく寄与できるというようなことが評価のプロセスの中において明確になってきた場合は,機構組織の再編もあり得ると考えてよろしいですか。

【観山委員】  そう思います。

【西尾分科会長】  ほかに皆様方から御意見はありますか。
 どうぞ。

【栗原委員】  今の評価の指標例について,今おっしゃったように,指標を固定したものでなくて,各機関が独自に設定できることは大変結構なことだと思います。特にそれぞれの機関の多様性とか,今,西尾先生の言われたような学術の変革のスピードとかいうようなことを考えますと,今,省令に定められる備えるべき要件という大きな枠組みの中で,それぞれの項目に対して各機関が指標を考えて,それぞれの活動の役割を踏まえて設定いただくのが非常に大事だと思います。特に独自性のある指標を設定いただいた場合には,どうしてそういう指標を設定されたのかということをきちんと説明いただくことが,それぞれの役割をまた明確にしていただくことにも通じるのではないかと思いますので,そういう点をよろしくお願いできればと思います。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。ほかに御意見等ございますか。よろしいですか。
 まずは検証のガイドライン,および評価等をどうするかということが今年度内に決定される。その後にガイドラインの下での評価を各機関がみずからなさるということでよろしいですか。
 それでは,本件はよろしいですか。
 観山先生をはじめ,研究環境基盤部会の委員の皆様方におかれましては,非常に重要な問題かと思っておりますので,今後とも引き続き御議論いただきますようお願いいたします。
 次に,最近の科学技術・学術の動向についてということで,科学技術基本法の改正に向けた動向と,1月に総合科学技術・イノベーション会議において策定された「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」について御報告をいただきます。なお,質問などは,2件の報告の後でまとめて時間を確保しておりますので,そのような進め方で御了解いただければと思います。
 まずは科学技術基本法の改正について,内閣府の塩田参事官より御説明をお願いいたします。

【塩田内閣府参事官(法制度改革担当)】  内閣府の塩田でございます。本日は,貴重なお時間を頂きましてどうもありがとうございます。
 資料は2-1でございます。科学技術基本法等の改正に向けた検討状況というものでございます。
 1ページおめくりいただきまして,科学技術基本法の概要でございますけれども,科学技術基本法自体は,平成7年に議員立法によりできたものでございまして,その規定内容といたしましては,科学技術振興のための方針ということで,科学技術振興に当たりましての基本理念を定めておりましたり,科学技術基本計画,5年ごとの基本計画の根拠規定になっているというものでございます。一方で,青枠のところにございますように,現行の科学技術基本法におきましては,科学技術の後に括弧を開きまして「人文科学のみに係るものを除く」とされているものでございます。これにつきましては,当時の議員立法でございますので,議員の先生の解説本を見ますと,ここを除いた理由といたしましては,人間や社会の本質を取り扱うものであり,自然科学と同列において計画的・総合的な推進策を講ずることが必ずしも適当ではないと,このような記載がされているところでございます。なお,ちなみにここでいう人文科学でございますが,これは自然科学に係るものと人文科学に係るものに大別するというようなことが書かれておりまして,この人文科学は社会科学を含む概念だというふうに御理解いただければと思います。
 こういった現状を踏まえまして,次のページでございます。科学技術基本法の見直しに向けた動きということで,平成30年に議員立法により改正された科学技術・イノベーション活性化法におきまして,人文科学のみに係る科学技術を含む科学技術の活性化の在り方,イノベーションの創出の活性化の在り方,これにつきまして政府の方で検討するということが課題として挙げられたということでございます。条文自体は青枠の49条になってございます。こういったことがあります一方で,次期科学技術基本計画が令和3年4月からということになってございますので,次の科学技術基本計画にこういった内容を反映すべく,現在,法律の見直し作業を進めているという状況でございます。
 次のページをめくっていただきまして,そのために,内閣府におきましては,総合科学技術・イノベーション会議の下に制度課題ワーキンググループを設置いたしました。座長が上山CSTI議員でございますけれども,本分科会の委員でいらっしゃる小安先生にも入っていただいたり,オブザーバーといたしましては日本学術会議担当の当時の第一部長の佐藤先生にも入っていただいて,議論を進めたということでございます。
 議論の審議経過といたしましては,第1回目に,先ほど申し上げた佐藤第一部長とか,本学術分科会の委員でいらっしゃる小林阪大理事,当時の理事・副学長の先生などからプレゼンしていただきましたり,学術企画室長の当時の前田室長から「人文科学・社会科学が先導する未来社会の共創に向けて」という,審議のまとめについて御報告を頂いたりというようなことをしてまいりました。
 ページ飛ばしていただきまして,6ページでございますが,これが制度課題ワーキンググループでまとめた報告書の概要になります。1に「はじめに・総論」とありますが,基本認識といたしましては,AIとか生命科学の急速な進展によりまして,人間や社会の在り方に科学技術が大きな影響を与えていると。科学技術・イノベーションの進展と人間や社会の在り方は密接不可分であり,人間や社会の在り方に対する深い洞察に基づいた科学技術・イノベーション創出の総合的な振興が不可欠と,このような基本認識に立って検討を進められたということでございます。2に「科学技術基本法の見直し」とございますが,これはもう少し詳しいポンチ絵を8ページ以降に付けてございますので,そちらの方で御説明させていただければと思います。
 8ページでございますが,まず,イノベーションの創出の概念を導入するということでございます。科学技術基本法にはイノベーション創出の概念は入ってございませんので,それを入れていきたいと。必要性といたしましては,科学技術政策とイノベーション政策の一体的展開が必要であろうということでございます。また,「定義の見直し」と書いてございますが,参考のところに,科技イノベ活性化法には,イノベーションの創出の定義が,現在,シュンペーターの定義等を基にして,新商品の開発,生産,新役務の開発・提供等々が書かれていて,そういった主に企業活動の例示が挙げられておりますが,そういったものを通じまして新たな価値を生み出し云々と続くわけでございますが,上に書いてございますように,この例示が企業活動に偏っており,経済的価値に重きを置いているかのような誤解を与えるおそれがございますので,社会課題解決に向けた活動も含めて,多様な主体による創造的活動を通じて経済や社会の大きな変化を創出すると,こういったことが明確な定義となるように,現在,見直しを進めております。
 また,イノベーション創出の概念を導入するに当たりまして,法律上の位置付けですけれども,従来ございます「科学技術の水準の向上」と並列する概念として追加するということでございます。イノベーション創出のために科学技術振興するのではなく,科学技術の水準向上と並列する概念として導入を考えているということでございます。よって,法律名につきましても「科学技術・イノベーション基本法」というような改正を検討しているところでございます。
 続きまして,9ページでございます。人文科学のみに係る科学技術を法の振興対象に追加するという点でございます。二つの観点から,積極的に法に位置付けていきたいと考えてございます。
 まずは科学技術政策における観点でございます。現代の諸課題に対峙し,豊かで持続可能な社会を実現するためには,人間や社会を総合的に理解することが必要であり,人文科学自体の持続的な振興が必要であると。つまりは融合領域に関わる振興のみならず,人文科学自体の持続的な振興が必要であろうということでございます。また,推進策を講じる上では,自然科学と人文科学の扱いを異にする妥当性がなくなっている。これは先ほど,なぜ人文科学が除かれていたかということを御紹介いたしましたけれども,当時と変わりまして,推進策を講じる上で特に両者を分ける妥当性はないであろうということでございます。また,ここには書いてございませんけれども,本文には,人文科学の特質であるリフレクティブ・キャパシティが果たす役割も重要であると,こういったことも本文には記載しているところでございます。
 また,イノベーション政策における観点ということでございますけれども,イノベーション創出のためには,プロセス全体,特にどのような社会課題にチャレンジしていくかという課題設定段階において人文科学の積極的役割が重要であろうということでございます。また,※でございますが,ここでいう科学ですけれども,科学はおよそあらゆる学問領域を含む広義の意味というふうに解してございます。これは法令上の解釈でございまして,参考のところに日本学術会議法も書いてございますが,日本学術会議法におきましても,例えば,科学というのは,このような意味で解されているところでございます。
 続きまして,10ページでございます。その他の見直しの方向性ということで,科学技術・イノベーションの振興方針という理念規定でございます。これに以下の内容を新たに追加していきたいと。1は,全ての国民が科学技術・イノベーションの恩恵を受けられるように,2は社会課題への的確な対応をしていきたいと。3が,研究成果をイノベーションに結び付ける政策の重要性。また,4でございますけれども,分野特性への配慮,人文科学を含めました分野特性への配慮が科学技術振興していく上では必要であるというふうにも明記したいと。また,5でございますけれども,ボトムアップ・トップダウンと書いてございますが,学術研究とそれ以外の研究の均衡のとれた推進,これをしっかりと法律に書いていきたい。6でございますが,研究開発における公正性の確保と書いてございます。
 (2)でございますけれども,何より人材育成ということが重要でございますので,最初の丸にございますように,科学技術基本計画の規定事項にしっかりと人材面も位置付けていきたいというふうに考えてございます。また,すみません,ちょっとここには書き切れていないんですけれども,さらに研究開発法人及び大学の責務規定,また民間事業者の責務規定というものを設ける予定としてございまして,大学・研究開発法人の責務規定の内容といたしましては,人材育成,研究開発,成果の普及に自主的かつ計画的に努めることと,このような内容を予定してございます。また,民間事業者の方でございますけれども,研究開発法人,大学等と連携して科学技術・イノベーション創出の振興に努めることと,こういったような努力義務規定。これは努力義務規定でございますが,こういうのを規定することを考えているところでございます。
 次は法案の概要でございますが,今回,基本法のみならず,いろいろな法律を束ね法で改正する予定としておりますので,その概要を付けてございます。
 説明は以上でございます。

【西尾分科会長】  では,続けてお願いいたします。

【渡辺内閣府参事官(イノベーション創出環境担当)】  それでは,資料2-2,研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ,それから資料2-3の,このパッケージの参考資料集を用意してございます。資料2-2を中心に説明させていただきます。
 まず,こちらの経緯を簡単に説明させていただきますと,昨年6月に閣議決定されました統合イノベーション戦略2019におきまして,文部科学省が策定いたしました研究力向上改革2019を発展させて,人材,資金,環境の三位一体改革によって我が国の研究力を総合的・抜本的に強化するということで,この研究力強化・若手研究者支援総合パッケージを取りまとめるということが昨年6月に提言されてございます。これを受けまして,内閣府,文部科学省,経済産業省の関係者によりまして検討チームを立ち上げて,ほかの省庁とも協力を行いつつ,CSTIの有識者会合におきまして検討をして,1月23日,総合科学技術・イノベーション会議において決定したところでございます。
 この後,中身について説明いたしますけれども,見ていただきますと,7ページ以降に具体的な施策を記載してございます。今後,関係省庁と協力しながら,この施策をしっかりと進めていくとともに,現在,内閣府において検討を進めてございます第6期の科学技術基本計画の検討において,この研究力強化・若手研究者支援に関しまして,最新のデータを踏まえて,重要な目標についてより具体的に検討していくとともに,必要な施策や充実をさらに検討していくという流れとなってございます。
 それでは,内容に入ってまいります。1ページをおめくりいただけますでしょうか。
 まず,我が国における研究力でございます。これも様々なところで,もう既に言い古されていることでございますけれども,現状といたしまして,ほかの先進国が論文数を増やす中,国際的なシェアが我が国は減っているということや,注目度の高い論文数におきましてもその傾向が顕著であるということ。さらに,そういった論文数だけではなくて,国際的に注目される研究領域への我が国の参画領域数などが停滞しているということ。他方,中ほどにございますが,研究拠点や分野によりましては,世界のトップ大学に伍して質の高い論文を輩出するなど,高いポテンシャルがなおあるということ。さらに,この研究力というものについては,セクター,役割,規模等の異なる多様な研究機関の層が支えているということを,下の図にもあるようなところで分析してございます。
 今後の課題といたしましては,我が国の研究力を多角的に分析・評価していくには,従来の論文数や被引用度といった指標に加えて,イノベーションの創発や新領域開拓など,新たな評価手法の開発が必要ではないかということ,それからセクター,役割,規模等の分析・評価も重要とされてございます。こちらにつきましては第6期の検討の際,より具体的に検討していくことになるかと思ってございます。
 2ページ目をごらんいただけますでしょうか。特に今回,人材を中心に分析を行ってございますが,その中の課題といたしまして,やはり,左上にございますように,修士課程から博士後期課程への進学率が減少し続けてきているということ,右上にございますように,博士後期課程修了者の就職率というのが,修士課程の修了者約87%に比べますと,72%というので,停滞が続いているということ。さらに,左下でございますが,40歳未満の国立大学教員のうち,任期付きの割合が増加しているということ,さらに右下に,よく言われていますが,大学等教員が非常に様々な業務に忙殺されて,なかなか研究の時間がとれないというようなことがデータとして出てございます。
 3ページをごらんいただけますでしょうか。こういった課題を踏まえまして,大きな目標といたしましては,イエローのところがアカデミアにおけるものでございます。まずはアカデミアにおける魅力ある研究環境を実現していこうということでございます。左から博士後期課程で,枠のところに目標の方向性が出てございますが,博士人材の多様なキャリアパスを構築していくということや,優秀な人材が学びやすい環境を構築していくということ。それに関連しまして,我が国全体としての達成目標,後ほど説明いたしますけれども,そちらの進捗を見ていくという観点から,測定指標というものを記載してございます。博士後期課程修了者の就職率についての指標,これも後ほど説明いたします。それから,博士後期課程学生の生活費相当額受給割合。
 それから,若手研究者。博士後期課程を修了した者が若手研究者になっていく過程におきまして,やはり優秀な若手研究者の研究環境の充実やポストの確保が重要であろうということで,測定指標としましては,これも後ほど説明いたしますが,40歳未満の本務教員数についての測定指標。さらに,若手研究者の方が独立した中堅・シニア研究者として育っていくに際しまして,やはり,若手も含めて研究に専念できる環境をしっかり確保していくということ,研究フェーズに応じた競争的資金の一体的見直し,最適な研究設備・機器の整備とアクセスの確保を図っていくということ。測定指標に関しましては,大学等教員の学内事務等の割合を記載させていただきました。
 さらに,博士後期課程を出た学生,優秀な人材が産業界においてもしっかり活躍できるということを目指して,大学院教育の抜本的改革を行うとともに,右上にございますように,産業界による博士人材の積極採用と処遇改善に結び付くようにしていこうということでございまして,産業界による理工系博士号取得者の採用者数の指標なども記載しました。これも後ほど説明します。さらに,そういった研究を支えていく人材としまして,マネジメント人材,URAなども重要になってきてございます。そういった方々のキャリアパスを明確化していくということで,博士人材がこういったそのほかのキャリアパスも目指せるということも視野に入れてございます。
 こういった多様なキャリアパス・流動を実現していくということ,それから魅力ある研究環境を実現していくことによって,博士後期課程,さらに研究者への道が魅力あるものとすることによって,左下にございますように,博士課程を目指す学生が,将来の多様なキャリアパスを見通すことによって進学意欲が向上するという好循環をもたらし,その結果,減少した博士後期課程への進学率を,なるべく早期に,V字回復につなげていこうというのが大きな目標でございます。
 4ページをごらんいただけますでしょうか。このような3ページに掲げられた大きな目標を踏まえまして,後ほど説明いたしますが,施策の方向性といたしまして,人材,資金,環境のそれぞれにおいて関係する施策を取り上げてございます。そして,このパッケージというのは,パッケージを出して終わりではないと考えてございます。4ページの右にございますように,2021年度から第6期の科学技術基本計画期間が始まります。さらにその翌年,2022年度から第4期の国立大学中期目標期間が始まるといったことも見据えまして,今回パッケージで示させていただいた施策というものを,しっかり関係省庁と協力して進めていく。その施策の状況や,この課題というものを,第6期の基本計画や第4期の国立大学中期目標期間における改革などにつなげていこうということが,このパッケージの大きな構想でございます。
 5ページをごらんいただきますでしょうか。3ページの目標の達成に向けて,関係府省における具体的な取組を7ページから11ページに記載してございます。それから,政府のみならず,アカデミア,産業界への期待に関しまして12ページに記載してございます。この5ページ,6ページにおきましては,関係府省において取り組む具体的な施策のうち,主な取組を整理させていただいてございます。
 まず,5ページの左をごらんいただけますでしょうか。若手研究者のポスト拡大と挑戦的研究費の提供に関する目標でございます。達成目標といたしましては,研究力の持続可能な発展のためには,若手の研究者の方々に,本務として研究と教育の機会を提供することが重要であるという理念の下に,将来的に我が国の大学本務教員に占める40歳未満の教員が3割以上となることを目指していく。そして当面,2025年度まで,40歳未満の大学本務教員の約1割増を目指すということでございます。これは,下のところに※が付いてございます。その1割増という考え方でございますが,直近の2016年度のデータを踏まえまして,第5期計画と同様に試算した場合,40歳未満の大学本務教員が約4万3,000人ございますので,それに対しまして,2025年度で5,500人の増に相当する数を目指すという考え方でございます。
 さらに,その上のところに※が付いてございます。第6期科学技術基本計画の検討に際しまして,最新のデータを踏まえて検討を行うと記載してございます。こちらは,3ページに戻っていただきまして,下の小さい字のところです。40歳未満の本務教員数の下のところに書いてございます。この大学本務教員というのは,統計上,任期付きと,いわゆる任期なしの両方が入った数字でございます。当然,まずは常勤の教員となるということを確保,提供しつつ,さらにそれがより安定的な処遇を得られるようにしていくということが重要課題として認識してございます。ですから,下の※にございますように,40歳時点の任期なし教員割合,これはテニュアトラック教員を含む数が,R11に関しまして約49%というデータが出ています。これは,文部科学省さんと協力いたしまして,2019年度より,この調査につきまして少し範囲を拡大することとなってございます。ですから今後こういったデータも見ながら,第6期基本計画の検討に際しては,より具体的な若手教員のポスト拡大や,それに関連することを検討していこうというふうに考えているところでございます。
 5ページにお戻りいただけますでしょうか。こういった達成目標を達成するために,主な施策といたしましては,各国立大学の中長期的な人事計画策定,若手研究者を中心とした研究に専念できる環境ということで,いわゆる創発的研究事業による最長10年間の支援の仕組みなど,それから競争的研究費の一体的な見直しなどを用意してございます。
 さらに,右でございますが,優秀な研究者に世界水準の待遇の実現をということで,これは諸外国に比して,優秀な人材がアカデミアにも入ってこれるように,運営費交付金と外部資金というものを活用して世界基準の給与待遇と,その外部資金を生かして若手ポストの増設などに使っていくということを記載してございます。その具体的な施策といたしましては,クロスアポイントメント制度のガイドラインでございますとか国立大学の人事給与マネジメントガイドライン,それから,今少し説明ございました今回の法改正によります外部組織における職務や能力に合った独自の給与体系を適用するということなどの記載をしてございます。
 6ページでございます。博士後期課程学生の処遇の向上に関しまして,多様な財源を活用して,将来的に希望する博士後期課程学生が生活費相当額を受給できるように,当面,修士課程からの進学者数の約5割に相当する学生が受給できることを目指すと記載してございます。これも※にございますように,現在,全博士後期課程学生の約10%が,生活費相当額,年間180万円以上受給しているというデータがございます。修士課程からの進学者数の約5割が受給できるという形に持ってきた場合は,この全博士後期課程学生の2割程度,約1万5,000人に相当するというデータになってございます。こちらにつきましても,※にございますように,第6期の基本計画の検討に際しまして,最新のデータを踏まえて検討を行うと,今回パッケージの議論の中でも,なかなかその実際の状況について,博士後期課程の状況についてもう少し細かなデータが必要ではないかという議論がございましたので,今後,文部科学省と協力しながら検討を進めてまいりたいと思ってございます。
 主な施策といたしましては,下の方に書いてあるものでございます。ちょっと時間が迫ってございますので,省略させていただきます。
 それから,右の方でございます。産業界へのキャリアパス・流動の拡大につきましても,産業界との対話を踏まえて大学院教育の構築を行っていくということを前提としつつ,産業界による理工系博士号取得者の採用者数を約1,000名増加しようという目標でございます。こちらは先ほど3ページのところで,就職率を修士課程並みにするということを達成していくために,約2,000人程度,就職される方の数を増やさなければいけないと,おおむねその半分程度は産業界でも就職できるようにということで,この約1,000名増加と記載してございます。当然,これは理工系博士号というふうに書いてございますが,施策としては理工系以外の方に対するものも図っていこうということで考えてございます。
 主な施策としては,下にございますように,博士後期課程の有給インターンシップの単位化・選択必修化や,国内外の博士人材の状況などを調査した上で,国家公務員における博士人材の待遇改善などを検討するといったことなども盛り込んでございます。
 それから,一番下でございます。研究環境の充実に関しましては,左にございますが,学内事務等の割合,これが現在約18%,約2割というものを半減して,約1割にして,研究時間を確保できるようにしようということで,資金配分機関の連携による申請手続きの簡素化や,URAの質保証制度の創設などを検討していくということでございます。それから,大学・研究機関等における研究施設の共用体制を確立していくということで,共用化のためのガイドライン・ガイドブック,それから研究施設の組織内外の共用方針を策定するということを盛り込んでございます。
 具体的な施策につきましては,人材につきましては7ページ,8ページ,資金に関連いたしまして9ページ,それから環境に関しまして10ページ,その他として11ページに記載がございます。
 その他の11ページのところのポツに,繰り返しになりますけれども,第6期基本計画の検討において,研究力強化・若手研究者支援に関し,必要な施策の追加や充実をさらに検討するということで,これからしっかり,この検討の中で検討を進めてまいりたいと思います。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。塩田参事官,それから渡辺参事官,本当に簡潔に要点を説明いただきまして,ありがとうございました。
 それでは,今の二つの御報告につきまして,御意見とか御質問ありましたらお願いいたします。
 私,塩田参事官にちょっとお伺いしたいんですけれども,御説明いただいた資料の10ページで,基本法の改正の方向性がございます。ここでお伺いしたいことがあります。研究のタイプには,基礎研究,応用研究,開発研究があります。それらについては現行の振興方針の内容というところに,現在でもいろいろ振興していると書いてあります。もう一つの軸で学術研究,戦略研究,要請研究というのがあり。ボトムアップとおっしゃっているのが多分,学術研究で,戦略研究というのは,戦略目標が定められますのでトップダウンと捉えてよろしいですか。ただし,要請研究というのは,例えば大災害等が起こったときに,それに対応するために国家が要請して行う研究ということなので,基本計画には多分記述されないと思っています。
 私としてのお願いがあります。第4期の基本計画までは,この学術研究という言葉が全く基本計画の中に記載されていませんでした。それで第5期の基本計画に関して,文部科学省で学術の振興に関する特別な委員会を立ち上げて,第5期の基本計画には何とか学術研究という言葉を入れたいということで,いろいろな議論や活動を重ねて,第5期の基本計画には学術研究という言葉が初めて入りました。それがもう基本法の中に,学術研究という言葉を入れていただければ,第何期のときにその言葉が入ってくるとか,そういうことをこちらが憂慮しなくてよく,非常に大きな前進となります。学術研究という言葉について,その方向で改定が進んでいるかどうか,私としては定かではないもので,是非,御配慮いただければと思います。

【塩田内閣府参事官(法制度改革担当)】  御質問ありがとうございます。分科会長御指摘がありましたボトムアップでございますが,法律に書き込む上では多分,ボトムアップとそのまま書くのではなくて,学術研究とそれ以外の研究の均衡のとれた推進,そのような形で今検討しているところでございます。

【西尾分科会長】  そういう情報も今までいただいていたので,確認の意味で質問させていただきました。どうもありがとうございました。
 それでは,皆さん方から御意見とか,御質問とかございませんか。どうぞ。

【林科学官】  科学官の林です。非常に心強い思いでありますが,いくつか明らかにしていただきたいことがあります。まず,現在,大学が疲弊している理由としまして,運営交付金が毎年1%減りつつあることです。1%とは何でもないように聞こえますが,何年も積み重なって,かつインフレ,あるいは税金の上昇も伴っています。本当に私のところでも,後任人事を行わないとか定員削減をするとかを聞いております。その1%削減をこれからまだ続けていくのかをお伺いしたいと思います。
 それから第2点は,まずこういう若手のサポートの予算をどこから出してくるおつもりなのか。それから,第3点として,現在の雇用制度で,5年を任期,5年を超えますと,あるいは研究者の場合は10年ですが,それを超えるとパーマネントの雇用にしなくてはいけません。それで,いろいろなところで,私の大学のところを含めて,いわゆる雇用止めが広がっていると。そういう雇用政策との整合性をどういうふうにとっていくか。
 以上の3点,お伺いしたいと思います。

【西尾分科会長】  渡辺参事官,お答えいただけますか。

【渡辺内閣府参事官(イノベーション創出環境担当)】  まず1点目の運営費交付金の関係につきましては,これは多分,具体的には文部科学省において,今後,今のような御意見を踏まえて検討していくということになるかと思ってございます。もちろんこのパッケージに掲げた研究力強化,それから若手研究者支援を達成していくために必要な国費というのをしっかりと,財政当局と関係省庁と連携して求めていくことを進めていきたいとは思ってございます。
 2点目でございます。財源をどうするか。特に,恐らく5ページの関係の若手研究者のポストの話だと思います。これは本当に,これからどういった形で考えていくか,しかもそれは先ほど申し上げた,これから文部科学省の方で出していただくような40歳時点のテニュア教員の割合とか,そういったところを見ながら,具体的にどんな形で,どのぐらいを目指していくかということを検討していくのと併せて検討していくべきかと思ってございます。さらに,今回のパッケージにおきましては,もちろん国として行っていく施策,例えば5ページの,二つ目のポツのところで,今年度の補正予算のいわゆる創発的研究事業というようなものもございます,もう一つは競争的研究費の在り方を見直していくということの中で,そこの財源というものを大学の中でプールして各大学が使っていくということ,いわゆる人事給与マネジメント改革を進めていくという中で取り組んでいくということ。さらには外部資金といたしまして,民間企業との共同研究等を増やしていくと,それは5ページの右の方にございますが,今回の法改正の中でもいろいろ,外部化と申し上げていますが,そういったことを通じていく中で増やしていくことに取り組んでいく。
 そしてさらに,ポイントといたしまして,これは国だけではないというメッセージを込めて,ちょっと時間がなくて説明は省略しましたが,12ページの方にございます。これは,アカデミアとしてもこの問題をしっかりと捉えていただきたいということで,この問題に対してのアカデミアとしての取組を促すということ,さらに産業界に対しましても,この問題に対して様々な形の協力をお願いしたいということです。
 いずれにしましても,今後具体的に第6期の検討の中でこの目標を決めていく,さらに詳細を決めていく中で,財源,施策についても関係省庁と協議してまいりたいと思います。
 以上です。

【西尾分科会長】  よろしいですか。

【林科学官】  三つ目の雇用制度についての整合性はいかがでしょうか。

【渡辺内閣府参事官(イノベーション創出環境担当)】  今回も,この5ページの,特に若手研究者のポストのところで方向性を示してございます。ただ具体的に,5年間の任期等の扱いをどうするかと,そういったところまで踏み込んで今回整理はしてございませんので,6期の中で,先ほどの繰り返しになりますけれども,文部科学省が出していきます具体的なデータなどを見ながら,より精緻に議論してまいりたいと思います。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 どうぞ。そうしたら,観山先生,それから城山先生の順でどうぞ。

【観山委員】  ありがとうございます。研究力強化,若手支援,随分いろいろ考えていただきまして,ありがたいことだと思います。特に博士課程の学生が減っているということは非常に重要な問題だと思っておりまして,大学においては,博士課程の学生というのは研究力の一つの基本でございますので,これが減っているという現状はいろいろなところに顕著に出てきていると思います,研究力の面でです。
 一つは,博士課程の学生が少なくなるというのは,キャリアパスというか,要するに博士課程に進んで自分の将来像が描けるかどうかというビジョンがあるかどうかということが一番重要でして,もちろんアカデミアで職を増やすとか,博士課程の待遇というか支援をするというか,奨学金の拡充とかというのも非常に重要なことだと思うんですが,以前も申しましたように,やはり企業がたくさん博士課程の修了者を採っていただくという方向を是非進めていただきたいと思います。5年間で1,000人増やすというのは一つの目標だとは思います。先ほどのは大学の研究力の面からいった観点でございますが,一方,企業も含めた日本の競争力という面から言うと,やはり博士課程を取った,非常に独創的な研究をした人たちをいかにうまく取り込んで企業の活力にするということは重要なことです。GAFAとかそういうところではたくさんの博士課程の修了者をとっておりますので,是非これは須藤副会長にもお願いしたいところでございますけれども,この令和になって,やっぱり新しい時代,この点から日本の競争力は一つの転換を迎えたんだというぐらい,博士課程の研究者を企業の中に取り込んでいって,活力というか,新しい競争力を強めていくということで,是非頑張っていただければと思う次第でございます。
 以上です。

【渡辺内閣府参事官(イノベーション創出環境担当)】  まさに思いは同じでございまして,3ページを見ていただきまして,先ほど申し上げた産業界の博士人材の積極採用と書いている,これが今回の非常に大きなテーマの一つでございました。実際CSTIの中でも,議論をリードいたしました橋本先生も,これは本当に,優秀な人材こそが企業でしっかりと働ける,輝ける道を作っていくことが重要だという問題意識の下に,これがしっかりと記載されています。
 ただ,その議論の中で,では今の大学院教育がそういった産業界のニーズに応えているものになっているかどうかという議論もございました。これは第6期の基本計画の中でさらに議論を進めるとともに,文部科学省におかれましても,これから産業界との対話などもしっかりと踏まえながら教育改革を行っていくというふうに聞いてございますので,しっかりと連携して対応してまいりたいと思います。

【西尾分科会長】  どうぞ。まずは城山先生,次に喜連川先生どうぞ。

【城山委員】  資料2-1の人文科学の扱いをめぐる点について,一つ確認と,一つ質問をさせていただければと思います。
 一つの確認は,この人文科学の扱いというのが具体的に何を意味するのかということでの確認なんですけれども,この資料で言うと2-1の9ページのところに,科学技術政策における観点というのとイノベーション政策における観点というのを並べていて,前者は人文科学というのも人間や社会の総合的理解のために必要ですと,そういうレベルで,一般的に,同じように扱うべきだという話だと思うんですが,2番目のイノベーション政策における観点というところで,特に課題設定段階で重要だというお話をされていて,例えば実際のイノベーションの実施段階になると,恐らく今までのいわゆる融合研究という中でも,例えば新しいビジネスモデルだとか産学連携の制度だとか知財の話がどうかとか,そういう話というのは,これは恐らく経営学とか法学の話になると思いますけれども,扱われていたんだけれども,そうではなくて,どういう社会課題を扱うかとか,むしろどういう社会像を目指すべきかみたいな,そもそも価値だとかあるべき社会,それ自体を扱うような話というのが重要になってきているように思います。それが特に今回,実質的にプラスになる部分だというのが,この課題設定段階ということのインプリケーションということでいいのかどうかです。従来も融合型で支援されてきた部分はあるんだけれども,そうではなくて,人文科学を独立で支援することによって,多分,実質的に変わってくるのは,ここで強調されている課題設定段階,ある意味では思想とか哲学なんかに関わってくるような話だと思いますが,そういうところがまさに重要なんだよという,そういうインプリケーションでいいのかというのが一つ目の,確認させていただければと思う点です。
 それからもう一つは,では具体的にどういう形でその制度なりをいじるかというところで,例えば11ページの一番最後のところなどの活性化法に即して,例えば人文科学を対象とするような試験研究機関,研究開発法人なんかをリストに入れていきますよみたいな話が書かれているんだと思いますけれども,さらにもう少し踏み込んで,ある種,役割分担のような話がありうるかどうかです。先ほど分科会長の方からありましたけれども,例えば学術研究と戦略研究ではありませんが,多分,人文社会,人文科学の分野であっても,いろいろなタイプの研究振興方策があり得るので,そういうことも含めて研究開発機関の役割分担なり所掌なりをどう考えるかという,そういうことも潜在的にあり得るかなと思います。その点どういうことをお考えになられているのかということについて,お話を伺えればと思います。

【西尾分科会長】  塩田参事官,いかがですか。

【塩田内閣府参事官(法制度改革担当)】  御質問ありがとうございます。1点目のインプリケーションという御指摘でございますけれども,この法律自体の改正は,人文科学を除くとしていたのを取るというだけでございますので,それ以上,この法律で何かを特別に書き込んでいくというわけでは,人文科学の役割を書き込んでいくというわけではないんですけれども,実際に,制度課題ワーキングでの議論におきましては,先ほど述べましたように,課題設定段階における人文科学の役割の重要性というのはすごく御意見として出されましたので,実際,具体的な方策に落とし込む段階という意味では,第6期科学技術基本計画の検討の中で恐らく人文科学の在り方というのは議論されることになると思いますので,そういった中で御議論がされるのではないかというふうに考えてございます。
 それと,2点目の役割分担という意味で言いますと,法律におきましては,国内外を含めた関係機関が有機的な連携をしていくべきだというような,そういった理念規定は設けているんですけれども,それ以上に踏み込んで基本法に書くようなスキームにはなってございませんので,これも,すみません,恐縮でございますけれども,こういったことにつきましては次期基本計画の在り方の中で検討されるということが適切かと思っております。

【西尾分科会長】  よろしいですか。
 では,お隣の喜連川先生,どうぞ。

【喜連川委員】  すみません。隣ということだけで,ありがとうございます。
 城山先生も二つでしたので,手短に二つ,お伺いしたいんですけれども,もう既に非常に精緻に御計画を立てられておられますので,それはすばらしいことだと思うんですけれど,ちょっと私どもから見ますと,やはりかなりマクロな感じがするんですね。何%上げるとか1,000人上げるとかというのは結構だと思うんですけれども,今,技術の変化感から見ますと,物事はもっともっとプリサイスにしましょうという,あるいはマス・カスタマイズしましょうというのが全体の流れになっていると思うんですね。西尾先生もおっしゃられましたように,要請という,社会の変容の中で,ダイナミズムが前に比べるとはるかにすごい勢いで起こっている。そういうところに対して,今はもう飽和の時代ですから,原則資源一定で考える必要があるわけで,そのときのその方策がちょっと十分に感じ取れなかったかもという気がしています。
 文科省は弘前のコホートをやっているわけですけれども,あれは確か200パラメーターもとっていると聞き及びます。それをすることによって,もうあなたは90%以上の確率で糖尿病になるというプレディクトが出る。そういう意味では,研究のコホート,教育のコホートというようなものをとるということの方が,先ほどの測定指標がちょこちょこ書いてありますが,こんな数ではない世界に我々は来ているのではないのかなというのが1点目の印象でありますが,これは次の施策ではなくて,次の次の施策のためになるかもしれません。
 それから,もう一つ申し上げたいのは,やはり日本が歴史上,どういう過程に来ているのかというのを見た方がよくて,この100年ぐらいなんですね,GDPが上がり,寿命が上がりと。それ以前というのは,ほとんど人間の寿命なんていうのは30歳か40歳ぐらいしかなかったわけです。この100年プラスアルファの中で起こっている変化感というのが,世界全体のアベレージでも寿命が72歳,日本は85歳まで来ている。
 そういう中で,この3ページ目の中で一番右端のダイダイ色のところにシニア研究者というのが書いてあったと思うんですけれども,やはりこのシニア層をどう活用するかというのが我が国の喫緊の課題であり,この現象というのはもうグローバルに全部伝播していくことが目に見えているんですね。直近の課題の対症療法というのも必要かもしれないですが,もうちょっと長いスパンでの見方というのもどこかで。多分御検討されていると思って,きょうは時間がなかったので短くなられたと思うんですけれども,何か機会があったらお伺いしたいなと思いました。
 以上です。

【西尾分科会長】  貴重な意見ありがとうございました。
 どうぞ。

【渡辺内閣府参事官(イノベーション創出環境担当)】  本当に貴重な御意見ありがとうございます。まさに今御指摘いただいたような,特に日本の歴史の流れでありますとか,日本の社会がどう変わっていくかという流れをしっかり捉える中で,これは検討していく課題と認識しています。そういった意味では,今回は若手研究者と研究力強化パッケージに絞った説明でございましたが,第6期の基本計画におきましては,まさに先生がおっしゃったように,これまで日本の歴史を鑑みるという作業,それから2050年の将来像というのを見て,それを考えていきながらバックキャストしていこうという試みの中で今検討してございます。その中で,本当に今まさにおっしゃった,高齢化が進む中でのリアルな日本というものをどう考えていくかということを考えながら,科学技術・イノベーションをどうするかという議論が始まってございます。ですから,今後,6期の基本計画の検討状況をもう少し説明できるときに,全体像をお示しできるかと思ってございます。
 ただ他方,やはりこのパッケージに関しましても,我々としても認識しているのが,なかなか時間がちょっと十分でなかったという反省,それから文部科学省,それから経済産業省にもかなり御協力いただきましたが,まだこの研究力を分析していくに際して,もっとしっかりとしたエビデンスベースというのを構築した上で分析しないといけなかったなということは反省しています。そういった意味で,先ほど※に書いてあったようなところを,文部科学省や経済産業省などとしっかりと連携して,しっかりとしたデータ,エビデンスを集めて,さらに精緻な,単なる絵に描いた餅にならないようなしっかりしたプランを考えていきたいと思います。ありがとうございます。

【西尾分科会長】  今,喜連川先生からシニアの年齢層のことをおっしゃっていただきましたけれども,これは課題ではなくて逆に日本の強みだというぐらいに思って,本当に有能なシニア層の方々に活躍いただく。また,ほかの国では得られないような高齢者からのデータが得られたことを,オンリーワンのものだと考えていくことも必要ではないかと思います。どうかよろしくお願いいたします。
 では,甲斐先生,栗原先生。

【甲斐委員】  もう皆様,大分出てしまったんですけど,一つ目は,先ほど西尾先生がおっしゃったように学術の言葉を入れることの重要性です。2-1のご説明では,ここにはボトムアップと書いてあるけど学術の言葉は後で入るとおっしゃられましたけど,大きなイノベーションのシーズは全て学術研究から生まれます。しかしそこに言及する事がいつも欠けていると思います。ですからこんな簡単なまとめであっても,学術という言葉を是非入れていただきたいと思います。元々科学技術もサイエンス・アンド・テクノロジーで,間にポチがあったんですけど,いつしか消されてしまって,技術や応用研究に重きが置かれた政策に常に聞こえるんですね。そういうことをしていると,本当の大もとが枯れてしまうので,30年後以降はノーベル賞が出ないんじゃないかと皆さんが言われるぐらいなので,是非こういうところに学術という言葉を強調して書いていただければと思います。
 二つ目は2-2の方なんですけれども,これも,シニアのことを含めて大事なことを言っていただいたんですが,若手育成で一番困っているのは,先ほどどなたか委員がおっしゃっていただいたように,博士課程の学生が,実感として減っているんです,ものすごい勢いです。これはもう日本の将来にとってとても大きくて,これを解決するのには入り口と出口をちゃんとしてあげるしかなくて,入り口というのはやっぱり,まず給与制です。博士課程学生の生活が安定しないと,大学院に進学しない,これは大きいです。
 それから,出口,すなわち博士取得後のキャリアが見えないと若手は入ってこないんです。出口については,もう随分きめ細やかにいろいろなことを考えていただいてきたと思います。現実の社会で,産業界が雇用してくれないから理工系の会社とのお話し合いを始めていらっしゃるとのことも,いい取組だと思います。ただ,私は生物医学系なんですが,生物医学系でも,世界の製薬会社とか国際共同研究をやってみますと,世界の企業の上層部はほとんどPh.Dを持っています。国際製薬企業の社長さんはもちろんPh.Dを持っています。また,現在行っている大型橋渡し研究プロジェクトでは,人社系が関わる仕事もたくさんあります。国際機関の規制対応や法律遵守に関すること,各国間の調整,それらを所掌するメンバーは,理系の大学院卒業者が半分,文系の上がりの人たちもたくさんいて一緒に働いているのですが,ほとんどPh.Dを持っているんですよ。しかし,日本は実際の研究そのものを行う研究者以外はPh.Dを持っている人が極めて少ない。国際化と言いながら,共同研究活動をしていく際にも,そういう方々と日本が伍していくのに,すごく不備があると思います。それは日本の大学の教育体制にも関わってくると思います。
 現実問題として,日本の製薬会社が強いといっても世界の製薬企業トップ10に入らないで,外国からの製薬会社に吸収合併されたりしているのが現状です。そういうことも考えると,日本の産業界の戦略としても,様々な分野で活躍できるPh.D人材を育てるのが大事だと思いますし,そういう方々の多方面での活躍が見えてくると,大学院に入ってくる学生にも希望が開けると思うんですよ。Ph.D取って,将来的な製薬企業のトップも担えるし,もっと様々な活躍場所もあるって。日本で,理系でPh.D取って社長になってトップというのは,すごく少ないんですよ。やっぱり日本は文系の方が上層部の管理部門に昇進して理系の人を使う構造が多いので,理系の博士取った子たちを考えると,ちょっと夢がないんですね。
 なので,そういうことまで深く考えて,産業界とも,それから専門家集団とも議論して,教育体制から考えていっていただけるといいなと思います。

【西尾分科会長】  貴重な意見を二つおっしゃっていただきましたので,どうかよろしくお願いします。
 栗原先生,どうぞ。

【栗原委員】  私は2点申し上げたいと思うんですが,まず今回これを拝見しまして,今やれること,やらなければいけないことを非常に具体的にまとめていただいて,大変ありがたいと思います。そういう意味で非常に実効的な方向性だと拝見しました。
 一つは,日本の大学,今,企業の必要としている人材を育成しているかという点に関してですが,もう随分長くこの点が言われて,努力してきたと思います。最近のNISTEPの調査で,雇用された博士人材が思ったより非常に活躍できるというような企業への調査結果も出ているので,できればそういうポジティブなデータも,できるだけそういう議論の場に出していただいて,足りない足りないと言われ続けるよりは,少しはよくやったねと言っていただいた方が企業の方々も採用しやすいと思いますので,この振興に関しては,是非そういうポジティブなデータも活用いただきたいと思います。
 それから,もう一つですが,大学院の後期課程の課題は,他の先生もおっしゃっていますが,私もやはり非常に大事だと思います。それで,いろいろな課題を書いていただいたと同時に,魅力ある研究環境の実現という言葉でまとめていただいた点は,これは非常に大事なことではないかと思っています。今,例えば卓越大学院プログラムなど,多様なキャリアパスにつなぐとか研究の企画とマネジメントができる人材育成など,非常に多くの課題をこなすためのプログラムが動いています。
 その中で本当に研究を楽しめる人たちをどう育成するのかというのは,やはり大学人にとって非常に重要なことだと思いますので,こういうことを書いていただくことで,できれば,プログラム推進に当たっては,そういうキーワードで活動を時々見直していただくようなことがあると,より生きた活動になるのかなと思います。このようなあるべき姿というのも,こういうところに書いていただくのは,工夫しなければいけない部分を意識させる点でありがたいと思いました。ありがとうございます。

【西尾分科会長】  家先生,どうぞ。

【家委員】  今既に出ている論点を繰り返すことになりますが,やはり今,研究者を志す若い人たちが減っているというのは,本当に一番深刻な問題だと思っていまして,それに対していろいろなことを考えていただいていますけれども,事の本質は,先ほどからも出ているようにキャリアパス,つまり人生設計ができないということだと思うんですね。
 そういう意味で,産業界がもっと採ってくださいというのはいいんですけれども,それを書くなら,私としては,是非お役所でももっと採ってくれるということを書き込んでいただければというふうに思うのが一つと,それから6ページのところに,現実の大学院生に対して経済的支援ということでいろいろな方策があって,外部資金とか競争的研究費からというふうに書かれているんですけれども,多くの大学の研究者にとっては,競争的資金というのは科研費のことを意味するんですね。今,科研費について言えば,採択率,充足率ともに,あるべき姿にははるかに足りないと私は思っています。その苦労してとった科研費の中から大学院生の経済的支援をしろというのは,やはり本来研究に使うものとして,そこが何かもう少し別のことを考えていただけるとありがたいなというふうにも思います。
 以上です。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。渡辺参事官,今の件について,是非,短くコメントいただけますか。

【渡辺内閣府参事官(イノベーション創出環境担当)】  1点だけ。先ほど,国でももっと雇うべきだという御意見がありました。これはもう実際,施策を盛り込ませていただきました。7ページの産業界へのキャリアパスのところで,博士号取得者の国家公務員や産業界等における国内外の採用などの状況について,ニーズ調査,好事例の収集を行って,国家公務員における博士号取得者の専門知識などを踏まえた待遇改善の検討を行うということで,これは内閣官房の人事局,CSTI,人事院を含めて,文部科学省,経済産業省でしっかり取り組んでまいりたいと思います。今,文部科学省にて,その調査をこれからしようというところでございますので,どうぞ御了承いただければと思います。

【西尾分科会長】  まだいろいろ議論したいのですけれども,時間が来ております。今までの討論の最後に,須藤委員から企業の立場からご発言をよろしくお願いいたします。

【須藤分科会長代理】  ありがとうございます。少し述べさせていただきたいのですけれども,まず,先ほど栗原先生がおっしゃった,大学の方がいろいろと努力されていて変わってきているというのは,これは産業界も,私もいろいろなところに入っていますけど,皆さんが言っていることですので,産業界の方も,この第5期の間の大学の改革が進んでいるというのは高く評価しています。これは,恐らくどこかに入っているんだと思うんですけど,ちゃんと目に見える形で書いた方がいいと思うんです。明らかに,我々から見ても,大学の方がいろいろと努力されて変わってきているというのは間違いないと思います。
 本論の,観山先生から言われた件ですけれども,実はきょうの朝も,朝7時半ぐらいから,ある,各社の幹部に来てもらって議論をしてきたのですけれども,一番話題になったのが,今,企業が必要としているような博士を大学の中でちゃんと育てているんだろうかと。もちろん大学の中では学術研究とかいろいろあるので,いろいろなタイプの博士が必要だと思うのですけど,企業が必要な博士というのは,やっぱり時代時代によって相当変わってきていますので,今の時代に必要な博士というのを,我々としては大学の中で育成していただきたいという考えが皆さんあります。
 ただそれだけ言っていてはしようがないので,そのためにはどうしたらいいかというと,やっぱり行き着くところは産学連携の共同研究とか,よく言う大型の組織対組織の研究がまだまだ足りないのではないか,それをしっかりやることによって,企業のニーズ,大学のシーズが一致できて,企業側が欲しいようなドクターがどんどん出てくると。だからそこのところをうまく作らないと,ただドクターコース出たから採りましょう,採ってくださいだと,企業の方はやはり,もう本当に二,三年で大きく技術動向,事業形態が変化していますので,そのときに今すぐ必要なドクターとなると,やっぱりそのタイミングは必要になってくると思います。あくまで企業に行くようなドクターについてですけど,少しそういった時代の流れを直に肌で感じるためには,もっともっと産学連携を今以上に強化しなければいけない。これをやらない限り,いつまでたってもミスマッチが解決しないのではないかと思います。ということで,もっと産学連携をやるということをどこかに明文化していただきたい。
 産業連携はそれなりに進んでいるんですけど,今のやり方では全然足りないと。ドクターの問題一つにしても,やっぱり相当足りないんじゃないかなと思いますので,そこをしっかりやらないと,この問題は解決しないのではないかなと。我々もそういう危機感を持ってやっています。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。最初,須藤委員が,大学が今どんどん変わっていっているということは実感しています,ということをおっしゃっていただきました。私が,文部科学省の別の委員会に出席していたときに,ある企業のトップの方が,大学は最近いろいろな意味で大きく変わっている。変わらなければならないのは企業ではないのか,とおっしゃいました。それを聞いて私は非常に力強く励まされました。大学が全然危機感を持っていないという状況ではありません。さまざまなことを今どんどん進めているのは事実です。その点を須藤委員がちゃんと御認識いただいていることは大変心強く思いました。
 それでは,いろいろ御議論いただきましてありがとうございました。
 今後の議論の進め方ということで,学術分科会の今後の議論の進め方について,御意見を伺いたいと思います。
 それでは,まず事務局から,委員の皆さんからいただいた意見の概要などについて,錦室長から報告をお願いしたいと思います。

【錦学術企画室長】  資料3-1をお願いいたします。委員の皆様から,今後,学術分科会において議論すべきテーマとして,主に5点,御提案を頂いたところでございます。それが資料3-1でございます。
 一つ目の丸ですけれども,例えば科研費において,学際的研究をさらに進めるための方策等を検討してはどうかということでございます。これに関しましては,科研費における新興・融合領域の促進に関しては,令和2年度の予算案におきまして,従来の新学術領域研究を発展的に見直して,次代の学術の担い手となる研究者の参画を得つつ,これまでの学術の体系や方向を大きく変革・転換させることを先導する新しい種目,学術変革領域研究(A・B)というものを創設したところでございます。また,その大くくり化した審査区分の下で,斬新な発想に基づく研究を行う挑戦的研究(開拓)を基金化するとともに,基盤研究Bとの重複応募・受給を認めることで,研究者の挑戦を促しているところでございます。この点に関しましては引き続き,必要に応じて検討してまいりたいというふうに考えております。
 2点目の丸のところですけれども,大学共同利用機関法人等の研究施設の経年劣化への対応方策を検討したらどうかということでございます。この大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点の施設設備の老朽化に関しては,例えば国立天文台が保有するすばる望遠鏡の修復を行うなど,適宜対応をしてきているところでありますけれども,この点に関しましては研究環境基盤部会において引き続き検討を行って,必要に応じてこの分科会本体としても,その部会が行う検討に協力するというふうに整理しておりますので,研究環境基盤部会での検討が進んだ段階で学術分科会に報告いただくということにしたいというふうに考えております。
 3点目の丸,社会科学系データ・アーカイブの整備について検討してはどうかという御意見を頂いたところでございます。この点につきましては,今後,この学術分科会の下に設けております人文学・社会科学特別委員会,これにおきまして,現在,JSPSで実施している人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進事業の実施状況も踏まえつつ議論していくことを考えておるということでございます。
 四つ目,研究力を定義した上での研究成果の評価の在り方について検討してはどうかという御意見を頂いております。これは先ほど参事官の方から御説明いただいたパッケージにおきまして,評価につきましては,日本の研究力を多角的に分析・評価するための評価指標の検討を20年度から開始するというふうにされておりまして,まずはそちらの動きを注視することとしたいと考えてございます。
 五つ目の丸でございます。博士人材減少への対応方策について検討してはどうかという部分でございます。これに関しては,先ほど来御議論されておりますけれども,まさに多くの委員から御提案を頂いたところでございます。この研究人材の課題は,科学技術・学術政策と高等教育政策の双方に関わることから,これまで科学技術・学術審議会人材委員会と中央教育審議会大学分科会大学院部会においてそれぞれ検討がなされるとともに,関連施策が進められているところでございます。本日は,担当室に施策の現状等それぞれ御説明いただいた上で,主にこの点に関して意見交換いただければというふうに考えてございます。
 それでは,楠目室長,よろしくお願いいたします。

【楠目人材政策推進室長】  失礼します。人材政策課の楠目でございます。本日はこのようなお時間を頂きまして,ありがとうございます。
 それでは私の方から,資料3-2に基づきまして,主に人材委員会での議論の状況等について御説明させていただきたいと思います。
 1ページ進んでいただきまして,1ページ目以降をごらんいただければと思いますけれども,研究人材の育成・確保をめぐる状況についてのデータ等を次ページ以降でまとめているところでございます。右下のページ番号でごらんいただければと思います。
 次の2ページ目をごらんいただければと思います。若手研究者の活躍促進の重要性に関するデータなどをまとめさせていただいているものでございます。ポストドクター等の若手研究者の研究生産性は高く,先端研究の現場を支えていること,また若いときの研究活動がすぐれた成果につながっていること,ポストドクター等の現状等を鑑みますと,さらなる活躍の可能性があること等について,データ等を記載させていただいているところでございます。こうしたことからも,若手研究者の中で,ポストドクターをはじめとした博士人材の活躍促進が重要な課題となっているところが見られるところでございます。
 一方で,博士人材等の若手研究者の育成・確保の状況を見ますと厳しい状況も見られるところでございまして,3ページ以降をごらんいただければと思います。3ページ以降,データについては重複する部分もあると思いますので,少し駆け足で御説明させていただきたいと思いますけれども,まず3ページ目の博士課程学生をめぐる状況といたしましては,右側のグラフにございますように,博士課程に進学する修士課程の修了者については減少傾向にあるところでございます。
 次の4ページ目をごらんいただければと思います。こちらにつきましても,先ほど甲斐先生からもこの趣旨の御意見いただいたところでございますけれども,博士課程進学ではなく就職を選ぶ理由の背景といたしましては,博士課程修了後の就職でありますとか,生活の経済的見通しが立たないことに対する不安等が示されているところでございます。
 5ページ目をお願いいたします。若手研究者の状況でございますけれども,左上のグラフにございますように,大学本務教員に占める若手教員の割合は低下傾向にあるところでございます。
 6ページ目をごらんいただければと思います。若手研究者,若手教員のポストの状況を見ましても,若手教員の任期なしのポストについては減少しておりまして,任期付きのポストの増加が顕著に見られるという状況もあるところでございます。
 続きまして,7ページ目をごらんいただければと思います。大学院から研究者に進んでいくときのキャリアパスにつきまして,10年前の状況との変化を少し整理させていただいているものでございます。大ざっぱに傾向を申し上げますと,修士課程,下から上に博士課程に進学する者については減少しており,また博士課程の修了者も減少しておりまして,右側と左側に分かれておりますけれども,大学や民間企業,公的研究機関において研究者になる者についても全体としては減少しているということが,この10年間の変化として見られるところでございます。
 次に,8ページをごらんいただければと思います。以上のような状況を踏まえまして,対応方策等について人材委員会で御検討いただいているところでございます。
 9ページ目をごらんいただければと思います。人材委員会の名簿等についてお示ししておりますけれども,第10期の人材委員会についてはこちらの名簿に記載のとおりでございまして,本分科会の委員でいらっしゃいます勝先生にも御参加いただいているところでございます。人材委員会,親会議の方におきましては,主に次期の科学技術基本計画に向けた議論を行っていただいておりまして,さらに,下の段にございますように小委員会を設置いたしまして,ポストドクター等の雇用や研究環境,キャリア開発等に関する事項を盛り込んだ機関向けのガイドラインの策定の検討を行っているところでございます。
 次のページをごらんいただければと思います。時間的には少しさかのぼりますけれども,一つ前の9期の人材委員会におきましては,こちらの10ページにございますように,中央教育審議会大学分科会大学院部会との合同部会を設けまして,研究人材の育成・確保に関する論点整理を行っているところでございます。この中では,今後の取組の方向性といたしまして,下の段の左側にございますが,研究者コミュニティーの持続可能性の確保の観点から,国立大学における人事給与マネジメント改革等を通じた優秀な若手人材の確保と活躍の推進でありますとか,女性研究者の活躍の促進,優秀な人材の博士課程進学の促進等の提言を頂いているところでございます。また,下段の右側にございますけれども,若手研究者の研究環境の整備に関しましては,任期付きポストの任期を一定期間,具体的には5年以上程度確保する取組の促進といったことを盛り込んでいただいているところでございます。
 次の11ページ目をお願いいたします。こちらは今期の人材委員会の状況でございますけれども,昨年6月に,第6期科学技術基本計画の検討に向けました重点論点について中間まとめを頂いたところでございます。こちらにつきましても,赤枠で囲んでございますが,優秀な博士人材の確保でありますとか,若手研究者の自立的・安定的な研究環境の確保についても御提言を頂いているところでございます。これらの事項の多くについては,先ほど渡辺参事官から御説明を頂きましたCSTIにおいてまとめられたパッケージの方にも反映されているところでございます。
御参考まででございますけれども,11ページの右下にございます6ポツの記載につきましては,先ほども喜連川先生から御意見を頂きましたような,中堅期以降の,シニアの研究者の方が雑務等から解放されて,より活躍できるような環境を整備するという観点から,バイアウトや研究専任教員等の可能性についての検討,こういったことも盛り込んでいただいているところでございます。
 最後に,直近の検討状況でございますけれども,博士課程の学生や博士課程への進学者の不安を解消する上で,ポスドク期の雇用の安定や計画的な育成ということが重要な課題になってございますので,ポストドクター等の雇用・育成に関するガイドラインの検討を現在,小委員会の方で実施しているところでございます。12ページ,13ページはその基本的な考え方を整理したものでございますので,御参照いただければと思います。
続きまして14ページをごらんいただければと思いますが,14ページはそのガイドラインについての具体的な章立てのイメージでございます。こちらにございますように,雇用契約に関する事項,研究環境に関する事項,キャリア開発の支援に関する事項等の章立てで構成することを現在検討しております。先ほど林先生から雇用制度との整合性をというお話もございましたけれども,各大学において雇用制度との整合性を図りながら取組を推進していただく上でも,こちらの第1章の部分などに関係法令等の整理もさせていただこうと思っておりますので,そうしたことにも資するようなガイドラインとなるように我々としても検討していきたいと考えているところでございます。
 15ページ以降は関係の予算事業でございますので,御参照いただければと思います。
 私の方からは以上でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。次に平野室長お願いします。

【平野大学改革推進室長】  大学振興課でございます。資料で申し上げますと3-3でございます。大学院教育の体質改善でございます。平成31年1月に審議まとめということでまとめさせていただいている内容と,その後の対応について御説明をさせていただきます。
 資料の2ページをごらんください。こちらが審議まとめの内容ということでございます。内容を細かく説明している時間がございませんので,次のページへ行っていただきまして,3ページでございます。
 スタートとして,大学院教育でどのような人材を育成するのかということで,知のプロフェッショナルの育成ということを掲げているところでございます。従来でありますと,この3番の各セクターを先導する高度な専門的知識という部分を非常に打ち出してきた大学院教育というのが多いわけでありますけれども,その前段階として,1番の,学部段階で身に付けるような普遍的なスキル,リテラシーというものも学部生を凌駕する水準で備えているということ,また2番目という部分は,主に研究指導という部分で培われる力でありますけれども,仮説を構築・検証する力,このような様々な場面で通用する力,こういったものを身に付けていく必要があるということを考えているところでございます。
 4ページについては,基本的にはデータの部分はよく御案内のとおりかと思いますので,御説明は省略させていただきますけれども,やはり一番下の部分,大学の強み・特色を踏まえた人材養成ができているとは言い難いということであるとか,大学院のカリキュラムと社会等の期待との間のギャップという課題が学生の不安を招き,進学をちゅうちょしていると,このような分析でございます。一番下の※にありますように,博士課程教育リーディングプログラム,このようなところに取り組んでいただいた大学というのは,かなり実践的な教育プログラムの構築,産業界との連携した教育研究が進んでいるわけでございますけれども,その取組が全体に広がっているとはなかなか評価し難いということでございます。
 5ページは,1ページ目に掲げさせていただいたものを拡大したものでございます。1番から8番まで,それぞれかなりの話題というのを盛り込んでいるわけでございますけれども,一番大事な部分は1番の部分でございまして,学位プログラムとしての大学院教育の確立という部分でございます。これは平成の中頃からずっと言われ続けていることでございますけれども,やはり我が国の大学院教育が実質化しているのかということについては,従来から指摘されているわけでございます。各大学が既存の教員の研究活動や教員組織というところを出発点にして,現状では何を教えられるかとか,こういうところから,主に後継者養成という観点で教育活動を出発するというよりは,みずからの強み・特色や社会のニーズというものを踏まえまして,大学院生がどのような能力を身に付けるのかということを意識しながら,まずどのような人材を育成するのかという目的を定め,その目的を達成するためにどのように教育・研究指導を行っていくのかということを考え,その活動に必要なところに資源を投入していくと,こういったような意図的なプロセスを踏むということが大学院教育の実質化でありますけれども,こういった部分というものをしっかりと各大学院教育,大学院において確立をしていただくことが必要であるというふうに考えております。
 そのようなこと以外にもいろいろと施策を盛り込んでいるわけですが,時間の都合上,きょうは制度改正の部分を少し御紹介させていただきます。
 7ページでございます。分野横断的な教育というものを進める観点から,研究科を横断したような学位プログラムというものをつくることができるような改正を行ったところでございます。簡単に申し上げると,専攻に所属する研究指導教員,研究指導補助教員というもののダブルカウントを特定の場合においては認めて,文理融合,分野融合的な教育というものが行われた学位を出せる仕組みを考えているものでございます。
 8ページをごらんください。昨今行った制度改正うちの一つでございますけれども,こちらにつきましては大きく四つございます。一番上の部分,三つの方針の策定・公表義務化ということで,先ほど申し上げた,まず明確に教育目的というものを定めていただいて,そこからスタートするマネジメントサイクルの構築というものを制度的にも位置付けていくということでございます。2番目は学位論文に係る評価の基準の公表でございます。3番目は,博士後期課程におけるプレFDということは,教員になる場合だけではなく,将来,実務家教員として,産業界で活躍の上に戻っていらっしゃるというケースも含めて教育能力を身に付けるということが必要でございますので,プレFDの提供,情報提供の努力義務化というものを位置付けております。4番目は経済的支援に関してでございますけれども,あらかじめ学生ないしその候補者に,ファイナンシャルプランという形で制度をしっかり整備して,示していくということでございます。
 9ページの方はリカレント教育関係の,今現在審議している省令改正の内容でございますので,御参考でございます。
 10ページ以降は教育リーディングプログラム,また現在行っている卓越大学院プログラムというものの内容について書かせていただいてございます。文部科学省としては,こういった取組,また,これを各大学内において,学長先生の責任の下で,各研究科を超えて広げていっていただくということで,大学院教育全体,大学院システム全体の改革につなげていっていただくということでございます。
 続きまして,パッケージの資料が18ページ以降に入ってございます。
 19ページ,20ページは,先ほど渡辺参事官の説明にあった内容を少しブレークダウンして書いた内容になってございます。説明をしていると時間が足りなくなりますので,博士課程修了者のキャリアパスの拡大についてと,経済的支援についてどのようなことを進めていくのかということでございます。
 最初に申し上げたとおりでございますけれども,大学院教育というものについては,ひとえにこれは大学院で行っていただくものでございます。例えばコースワークの充実であるとか,若しくは修了者の動向というものを踏まえた教育改善活動が行われているか,こういった数字というものは調べさせていただいているんですが,必ずしも芳しいものとは言えないような状況が続いてございます。私どもとしては,こういった国費のプログラムの成果を広げる,また各種制度改正というものを通じて,こういったマネジメントサイクルが各大学院において定着することというものをしっかり支援して,各大学院の教育の内容の実質化,また,そのような中で社会のニーズに応える大学院教育の実現というものをサポートしてまいりたいと考えております。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  錦室長,楠目室長,平野室長,どうもありがとうございました。心より御礼申し上げます。
 今の御説明を伺ったところでは,例えば人材育成に関する委員会,人材政策に関する委員会等においても,研究人材の育成とか確保をめぐる状況を踏まえたいろいろな議論がもうなされております。この分科会が,他の委員会で人材に関して議論されていることをもう少し情報共有しておくべきだったと思っています。そこで例えば人材委員会で議論されていないような別の視点としてこの分科会で議論していくことがあるのか,を検討することが重要です。
 そこで,今後の議論の在り方として,今御報告いただいたこと以外に,こういう新たな視点で議論していく必要があるのではないか,というような御意見がもしあれば是非ともいただきたいのですが。
 どうぞ,永原先生。

【永原委員】  ありがとうございます。若手人材,人材育成,それから大学院問題もそうなのですが,待遇をよくしなくてはいけないとかポストを用意しなくてはいけないという話になるわけですが,現状に対する問題認識はほとんど全てのところで共有されていると思われます。しかし,ではそれをどう解決すべきかという議論になると,これは前の議題にも関係しているのですが,外部資金でパッチを当てるようにしましょうという流れになってしまいます。ですが,外部資金の今こちらの研究に使っているお金を院生に使ったら,研究のお金が減るだけのことで,根本的な問題は全体のパイをどう増やすか,ということです。中国があれほど発展しているのに日本がこんなに発展できないというのは,詰まるところお金を使っていないからということは自明のはずなのに,そのことは脇に置かれて,パイは一定のまま,このお金を使いやすくしましょうというような議論ばかりが積み重なっています。
 さらに,外部資金に依存する結果,研究者たち,PIの人たちは,目先の成果を出すことに追われ続け,若手や雇用するポスドクに対しても,目先の,短時間のうちに研究成果が出るテーマ,論文を書ける研究をさせることになります。そうすると,若手の人は本当の実力を身に付けることができないことになります。さらに,大学院も全く同じで,大学院の博士の間に,3年間で,とにかく何でもいいから論文が書けるような研究が求められる,あるいはラボの計画の一部を担って成果を出してゆくということになります。
 このような循環が続くかぎり,先ほど指摘があったように,大学院が民間の期待に応えられない,大学院教育が応えられないということになるわけです。大学院で本来やるべきこと,すなわち,自分で企画・立案して,それを実践してまとめ上げていくというようなトータルな能力の獲得が不十分な研究者が養成されてしまうことになります。大学は企業ではありませんから,実践力ではなくて,トータルな力を持った人材育成が求められるはずなのに,テーマを与えられて,働いて成果を出すだけのことしかできなくなってしまっています。
 問題の本質は,外部資金に余りに全てが依存し過ぎていることです。逆に言えば,運営費である程度確実な部分をどこまで保証できるのか,それもコンスタントに,ということになります。外部資金は流動的ですから,今年獲得できても,来年とれないかもしれないので,人材を落ち着いて雇うこともできません。運営費交付金をある程度きちんと手当てできるようにすることが必要です。
 それが税金で十分できないならば,民間,内部留保金が非常に多くなっているとのことですので,民間の資金をどうやって導入するのかということが求められることになります。本日提案いただいたことの多くはかなりテクニカルであって,それも,外部資金の使い勝手の問題になっていますが,この議論を繰り返していては,真の意味で日本の研究力につながらないと思います。もう少し立ち入って,民間の力をどのように学術への投資に向けるのかということにフォーカスしていただきたいと思います。

【西尾分科会長】  すばらしい御意見ありがとうございます。
 いろいろ御意見いただいたいところですが,だんだん時間がなくなってきています。では,鍋倉先生までですね。
 まずは,山本委員どうぞ。

【山本佳世子委員】  すみません。永原委員とまた逆に,私は産業界の方のお金が入るというのもいいんじゃないかという方の意見なんですけれども,博士学生,博士教育については,今,社会理解を高める上で,すごい絶好のチャンスだと感じています。それは,西尾会長がおっしゃったように,卓越大学院みたいな仕組みで,博士学生が産業界にこんなに活躍してくれるんだという実感するチャンスがすごく出てきていること,情報系を中心に博士のニーズは物すごく高いこと,あと分野融合の高度な人材ということに対する産業界のニーズも上がってきていると,しかも基本法が変わるというので,大変,すごいチャンスではないかと感じています。
 一方で,私がそれで思ったのは,情報系などを中心に,社会における博士人材を育てるという機運が上がるだろうと私は思ったんですけれども,一方で,逆に就職の方ですごく引かれるために,情報だと,もう修士の段階で人がみんな就職してしまって,かえって博士課程へ行くという雰囲気ではないということを聞いたので,そういう意味で,私が思うような脳天気な喜び方をしていてはいけないのかなということをちょっと思いまして,特にある分野がリードしながら,人文社会科学も含めた全分野の博士人材を応援したいと思うんですけれども,どんな感じなのかなと,ちょっとどなたかお分かりになる方いれば伺いたいんですが。

【西尾分科会長】  今のことについてどうですか,コメントをいただけますか。
 どうぞ,喜連川先生,お願いいたします。

【喜連川委員】  人気が高くなっている情報分野を代表して一言申し上げたいと思いますが,御指摘のように,ありとあらゆるところで今,いわゆるデジタルトランスフォーメーション,政府方針で言いますとソサエティ5.0というところで,情報分野の研究者が引く手あまたで,どんどんとられているというところです。ドクターに行っている暇がないぐらいの高い給与で,先生より高いサラリーの学生さんの方がいっぱいいますから,もうこれはしようがないのかなと思っています。
 それで,ちょっとだけ,先ほど永原先生の御意見に対してなんですけれども,先生おっしゃるとおりだと思うんですね。ですけれども,どっち側かに振り切れるという話ではないと思うんです。つまり,産学連携が重要だからって,産学連携ばっかりするのであれば,大学というのが企業の研究所になっているようなものになってしまいますから,そんなことではないわけですね,やはり基礎研究をやらないと。そうすると,ポートフォリオは増やすべきなんです。問題は,そこの調整弁をどこにするかということが全てなんです。
 ですから,この委員会でも前の前ぐらいから何度も何度も申し上げているんですけど,原則,可観測にすることが重要なんです。つまり,この施策をしてどうだったか,あの施策をして学生がどう育ったか,それをもっともっとプリサイスに測定すべきなんです。そうすることによって,どういう研究,どういう研究の環境があったから,こんなすごい人間になった,ノーベル賞が全てだと思いませんけれども,こんなイノベーションを動かす人材ができたという,そのエビデンスなしに,どれだけしましょう,あれだけしましょうというのをずっと繰り返しているというのが現状ではないかなと思う。
 でも,文部科学省さんはすばらしい英知を持っておられますので,決して悪いことをしようとしておられるわけでなくて,局所的には非常に最適解を出されておられるんです。ところがロングタームで見たときに,果たしてそれがいい効果を生んでいるのかどうかというのは誰一人コンファームできない。そこが一番大きな問題で,私は,先ほど言いましたように可観測にすると,つまり研究,教育のコホートを作ると。グローバルに見てこんなことをやっているところはないと思いますので,これがもしやれたら大したものではないかなと思います。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 鍋倉先生,お願いいたします。

【鍋倉委員】  現在,若手とシニアの活用が議論されていますが,若手研究者のテニュアポジションを増やすと,現在の若手研究者は10年後には中堅になります。全体の安定ポジションが増えない限り若手をどうするかという議論が常に繰り返されることになる。米国などでは中堅研究者も企業や行政に移動している。
 大学院卒業後や若手研究者に対して,大学・研究機関,企業や行政へのキャリアパスを示すだけではなく,中堅研究者への多様なキャリアパスを確保することが重要だと思います。中堅研究者になっても将来にフレキシビリティーがあることは,学生や若手研究者がアカデミアで思い切って挑戦してみる動機になるのではないでしょうか。中堅研究者も含めて,将来に向けて研究者のキャリアパスについて考えていただいているとありがたいことでございます。
 以上です。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 私自身としては,人材委員会等でもう議論は尽きてしまっているのかということを確認したく,皆様に御意見をいただければと思いました。それに対して,貴重なコメントを多々いただきました。今いただきました御意見を踏まえまして,新たな観点からの議論を,今後,第10期の残りの期間で行っていくべく原課長の方で検討いただきたく思いますが,そういうことでよろしいですか。
 そうしましたら,今いただきました貴重な意見を踏まえて,改めて事務局と相談した上で,今後の議論展開をどうしていくかということを考えていきたいと思います。ただし,今後の博士人材のことについての議論をどうしていくかについて,時間の関係上,皆様から意見を全部言い切っていただいていないのではないかと思いますので,何か御意見等ありましたら事務局へ寄せていただければと思います。どうかよろしくお願いいたします。
 それでは,来年度の予算案についてなんですけれども,原課長にお願いしたいのは,特に人文社会科学系の振興に関する予算のところを中心にしながら,どうなっているかということを御報告いただけるとありがたいのですけれど。

【原振興企画課長】  資料の4をごらんください。令和2年度文部科学省予算(案)のポイントということで,まさに今,国会で審議している最中でございますけれども,来年度の文科省予算案の概要,特に学術関係を中心にエッセンスを取りまとめさせていただきました。
 2ページ目が目次的なところ,それから3ページ目が,先ほどありましたけれども,文科省の方で去年の春にまとめた研究力向上改革2019ということで,人材,資金,環境というものを打ち出して,令和2年度の概算要求に臨んだということでございます。それ以降の何ページかが人材,資金,それから環境について,個別の制度ごとに幾ら予算が付いているかといったようなことを分類した資料でございます。
 それから,ちょっと駆け足で恐縮です。全体の7ページ目,19分の7のところで,研究費についての目次的な資料を付けてございます。この中では,科研費,それから戦略創造といったような事業が載っているところでございまして,各個別の事業については,8ページから科研費,9ページでJSTの戦略創造,これはそれぞれ既存の事業で,制度改革を進めていくということでございます。それから,新規といたしましては,10ページ目で創発的研究の場の形成ということで,これも夏の段階で御紹介させていただきましたけれども,内閣府と共同で要求してございましたが,政府内での検討を踏まえて,補正予算で500億円,基金を積んだ上で,最長10年間,独創的な研究を支援する制度として新たに発足するということを予定してございます。
 それから,西尾先生から御指摘あった人社につきましては,その次の11ページ目で,人文学・社会科学を軸とした学術知共創プロジェクトというものがございます。これは城山先生に主査になっていただきまして,この学術分科会の下に特別委員会を設置して,議論を進めてきていただいたものでございます。これは人文学・社会科学の方をむしろ軸として,新たに学術知を作っていくような,まずはテーマ設定をしていこうということで,金額的にはさほど多くはございませんけれども,3,200万円,新規で予算を頂いて,これをこれから動かしていくということでございます。
 事業の概要のところに書いてございますけれども,幾つか大きなテーマとして,真ん中の四角の左の方に丸で書いてございますが,人口動態を踏まえた社会・人間の在り方ですとか,あるいは分断社会の超克,あるいは新たな人類社会を形成する価値の創造といった,比較的,現代社会を見据えた中で大きなテーマを設定して,そういう課題に対して人文学,社会科学の知見を軸とした議論を行っていくということを考えております。事業のスキームとしては3,000万円を3年間ということで,これから実際実施していただく機関の選定等を始めたいというふうに思ってございます。
 それ以降は,WPI,既存の事業でございますけれども,令和2年度は新規の募集はしないということ。それから,次の学術フロンティアでございますけれども,ハイパーカミオカンデに新規に着手するといったようなことを予定しているところでございます。
 14ページ目以降が,人材の関係の各種制度でございます。先ほど人材政策課の方の資料に付いてございましたけれども,卓越研究員事業等々をはじめとした人材育成関係の施策の資料を付けさせていただいてございます。
 時間の関係もありますので,この辺で終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

【西尾分科会長】  原課長,どうもありがとうございました。この分科会で鋭意議論いただきました人文社会科学系の大型プロジェクト関係は,今お話ありましたように,3,000万円規模で3年間ということになっております。それに関しての財政当局としての考えは,その3,000万円でプラットフォームをきっちりと構築して,そのプラットフォームをベースにして国の中でいろいろありますプロジェクトの経費を獲得してくるというようなスキームが一応は想定されています。私としましては,やはりそのプロジェクトそのものを推進する経費も何とか再来年度に向けて予算の中に組み込んでいただきたく思います。いわゆる1弾目のロケットは,何とか文部科学省の御尽力で構築していただいたわけなんですが,2弾目のロケットとして,そのプラットフォームをベースに,委員の皆さん方が構想しておられる大型の人文社会科学系のプロジェクトができるような予算の獲得を再来年度に向けて,是非とも御尽力を賜りたく,事務局の方にお願いをしているところです。
 もう時間を過ぎてしまっていて申し訳ないのですけれど。何か御意見はございますか。
 どうぞ,城山先生。

【城山委員】  一言だけ。今,西尾先生からお話しいただいたとおり,今回の人社のプロジェクトは,まさに提案,プロジェクトを作るという第1フェーズのところは,いろいろな関係の方々の御努力で認めていただいたということで,次の第2弾ロケットのどういう枠組みを作っていくかというのはまさに宿題として残っているので,そこを何らかの形で是非お願いしたいなということと,あと,ちょっと先ほど申し上げたこととも絡むんですが,科学技術基本法なんかも変わり,枠組み自体が変わっていくときに,既存の枠組みが他方でどういう形で対応して,こういうものの受け皿になるかという話も多分考えられると思います。これはどっちが大事だとかではなしで,他方に投げてしまうとまずいので,ある意味では両にらみだと思いますけれども,こういう機会を使って,今後1年間ぐらい,そのあたりを是非探っていっていただければというふうに思います。
 以上です。

【西尾分科会長】  城山先生にも御尽力をいただきまして誠にありがとうございました。
 時間が来ておりますが,村田局長,何かお言葉等ございませんか。

【村田研究振興局長】  最後でございますので,手短に。
 きょうは大変貴重な御意見伺いまして,ありがとうございました。若手支援パッケージ,それから科学技術基本法の改正ですとか,あるいは関係法令の改正等,大きな動きがございます。その中でお示しを頂いた幾つか大事な点がございまして,これは何よりも,特に若手支援プロジェクト等でございますけれども,やはり必要な,財政的な面も確保しながらと。ただ,これもお話がございましたが,単純に外部資金にだけ頼ればいいとか,あるいはもう公的資金だけでということではないと思います。政府全体としてこの予算を確保していくというのは,これは政府全体として,あるいは科学技術基本計画の次期計画の中で,内閣府を中心に,文科省もしっかり考えていくと。併せて,先ほどの若手支援ということで言えば,キャリアパスということで言えば,これは大学の戦略として,そういった人材をどう育成していくのか,あるいはどういう層の人を雇用していくのかと,これは大学の人事戦略という部分もございます。さらには,それから飛び出て,産学連携ということで企業と協働しながら,そういう枠組みの中で作っていくのか,あるいはその中で必要なお金を確保していくのかということで,そういう意味では,それぞれやはり責任を持って考えていかなければいけないし,実行していかなければいけないということだろうと思います。
 私ども文部科学省としても,そういう意味では,一つは大学の中での枠組みをどう考えるのか,あるいはそれと同時に,基盤的経費と同時に,競争的な研究資金という意味では研究費をしっかり確保していくということも大事だろうと思いますので,そういった点も含めて,御指摘,よく私どもとしても考えながらしっかり受け止めて,今後検討させていただきたいと思っております。ありがとうございました。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは,事務局から連絡等をお願いいたします。

【藤川学術企画室室長補佐】  資料5のとおり,次回の学術分科会は4月下旬を予定しております。詳細につきましては改めて御連絡させていただきます。
 また,本日の議事録につきまして,後日メールにてお送りさせていただきますので,御確認の方をよろしくお願いいたします。
 以上です。

【西尾分科会長】  それでは,これで閉会します。貴重な御意見等を多々いただきまして,まことにありがとうございました。また,文部科学省の方からいろいろと回答いただきましてありがとうございました。心より御礼申し上げます。

―― 了――
 

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