学術分科会(第74回) 議事録

1.日時

令和元年5月29日(水曜日)13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省旧庁舎6階 第二講堂

(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 学術研究の最近の状況について
  2. 学術の振興に係る論点について
  3. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員)
西尾分科会長、須藤分科会長代理、小長谷委員、辻委員、長谷山委員、観山委員、家委員、井関委員、岸村委員、喜連川委員、小林傳司委員、小林良彰委員、小安委員、城山委員、新福委員、武内委員、永原委員、鍋倉委員、松岡委員、山本佳世子委員、山本智委員
(科学官)
頼住科学官、三原科学官、鹿野田科学官、吉江科学官、長谷部科学官、渡部科学官

文部科学省

磯谷研究振興局長、増子大臣官房審議官、角田科学技術・学術総括官、原振興企画課長、梶山学術研究助成課長、西井学術機関課長、春山学術企画室長、岡本学術研究助成課企画室長、丸山学術基盤整備室長、藤川学術企画室長補佐、坪井科学技術・学術政策研究所長、伊神科学技術・学術基盤調査研究室長

5.議事録

【西尾分科会長】  皆さん、こんにちは。それでは、時間が来ております。ただいまより第74回科学技術・学術審議会学術分科会を開催いたします。
 初めに、前回御欠席の委員で本日御出席いただいている委員について、これは事務局から御紹介をお願いいたします。

【藤川学術企画室長補佐】  それでは、御紹介させていただきます。
 辻委員でございます。

【辻委員】  辻でございます。よろしくお願いいたします。

【藤川学術企画室長補佐】  長谷山委員でございます。

【長谷山委員】  長谷山でございます。

【藤川学術企画室長補佐】  小林傳司委員でございます。

【小林傳司委員】  小林でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【藤川学術企画室長補佐】  小安委員でございます。

【小安委員】  小安です。よろしくお願いいたします。

【藤川学術企画室長補佐】  城山委員でございます。

【城山委員】  城山です。よろしくお願いいたします。

【藤川学術企画室長補佐】  あと、遅れておりますが、永原委員でございます。あと、同様に遅れておりますが、松岡委員でございます。あと、山本智委員でございます。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  どうぞよろしくお願いいたします。
 また、事務局の異動がありましたので、御紹介をお願いいたします。

【藤川学術企画室長補佐】  紹介させていただきます。
 4月1日付けで大臣官房審議官研究振興局担当、増子でございます。

【増子研究振興局審議官】  増子でございます。よろしくお願いいたします。

【藤川学術企画室長補佐】  振興企画課長、原でございます。

【原振興企画課長】  原でございます。よろしくお願いいたします。

【藤川学術企画室長補佐】  以上でございます。

【西尾分科会長】  次に、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【藤川学術企画室長補佐】  本日もタブレットPCを御用意させていただいており、ペーパーレス会議を実施させていただきます。本日の配付資料につきましては、議事次第の配付資料一覧のとおり、資料につきましては、タブレットPCの中に全て入っております。事前に確認しておりますが、抜け等ございましたら、事務局まで申し付けください。また、あわせて、操作など不明な点等ございましたら、お近くの職員にお声掛けください。
 また、机上配付資料といたしまして、二つ配布させていただいております。A3の大きい方の資料につきましては、タブレットPCの1-3の別紙という形で、PCの中には入っておりますが、見えにくいということで、机上に配付させていただいております。もう一つ、研究費等キーワードを含む自由記載という形の机上配布資料も配布させていただいております。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  資料につきましては、御不明の点、また、タブレットPCの操作のこと等も含めまして、何かございましたら、お近くの文部科学省の方にお声掛けいただければと思います。
 それでは、議事に入ります。
 本日の議題は議事次第のとおり準備をいたしておりますが、最初の議題であります学術研究等の最近の動向について、事務局より報告いただきます。質問は、報告の後でまとめてお時間を確保いたしております。
 まずは、先日、文部科学省において作成・公表されました「研究力向上改革2019」について、原課長より御説明をお願いいたします。

【原振興企画課長】  それではまず資料1-2をごらんいただきたいと思います。「研究力向上改革2019」と書いた資料でございます。
 これは、今、西尾先生からも御紹介いただきましたが、文部科学省、文部科学大臣が4月の末に取りまとめて公表したものでございます。その概要を、短い時間ではございますが、御紹介させていただきたいと思います。
 1ページめくっていただきまして、2ページ目でございます。8分の2というページでございます。これは先生方も問題意識を共有していただいていると思いますが、研究力が諸外国に比べて低迷している状況です。これを文部科学省の施策を通じて何とか打破していこうということで、大臣をヘッドにして、実務的には副大臣の下に、高等教育局、科学技術・学術政策局、研究振興局、研究開発局が集まって対策を取りまとめ、4月の末に公表させていただいたところでございます。
 研究力を向上させていくということで、必要な要素を三つに分けてございます。研究人材を育てていくための改革、それから、研究資金の改革、それから、研究環境の改革ということで、この8分の2というページが全体像を取りまとめたものでございます。それぞれ一番左側に日本の研究者を取り巻く主な課題が書いてございまして、人材につきましては、例えば博士課程への進学者が減少しているとか、社会のニーズに応えられるような人材育成ができているかといった問題意識を基に、真ん中の緑色で書いております人材面の改革として、まずは若手研究者が「安定」して「自立」した環境の中で研究に打ち込めるようにするとしております。そのためには、「多様なキャリアパス」ですとか、「流動性」、「国際性」というのを確保する必要があるのではないかということで対策を取りまとめたところでございます。
 それから、資金面につきましては、同じく左側に、特に若手が自立的な研究をするためには資金の確保が必要であるということ、それから、様々な分野に挑戦できるということが必要ではないかということで、真ん中の欄にございますが、資金の改革としては、裾野が広い富士山型の資金体制を構築しながら、「多様性」、「挑戦的」、あるいは、「卓越」といったものをキーワードに対策を取りまとめてございます。
 それから、研究環境の面につきましては、研究に充てる時間が減っているのではないかと。それから、様々な施設・設備が必ずしも使いやすいような仕組みになってないという問題意識を基に、研究環境の改革としては、例えば「ラボ改革」といったものを通じて、研究に打ち込める時間を増やしていこうということをまとめているものでございます。
 詳細は、その次のページ以降にございますが、こういった三つの改革を、大学改革、右側の黄色のところで書いてございますが、これと併せて実施することによって、我が国の研究力の国際的地位をV字回復させていくんだということをまとめているものでございます。
 このほか、政府においては、例えばSociety 5.0や、第6期の科学技術基本計画の策定に向けた検討、それから、学術会議など、様々なほかの組織における議論が進んでおります。こういったものとうまく平仄(ひょうそく)を取って、これらの取組を実施することで、世界トップレベルの研究力を日本に根付かせると、それから、イノベーションを生み続ける社会を目指していくということを打ち出しているものでございます。
 これは今回取りまとめてもう終わりということではなくて、様々な情勢や状況の変化を踏まえながら、不断の見直しをしていくということで、今の段階での対策というものをまとめたものでございます。
 詳細については、その次の8分の3、スライド番号でいいますと、2ページ以降に書いておりますが、三つの要素に分けまして、研究人材について、8分の3ページが論点、これはグラフのような形になってございますが、左側の若手研究者から右側のシニアな研究者に至る各階層の課題ですとか、あるいは、国際的な人材の流動、それから、国内における企業等との人の行き来といったことの課題を掲げさせていただいております。
 その次のページが、この人材、研究人材の改革ということで、文部科学省としてこれから取っていく対策をまとめたものでございます。詳細については余り説明している時間がございませんので、主なポイントだけ次の資料で御説明したいと思います。
 構造だけ先に御紹介させていただきますと、その次の8分の5ページが、資金についての論点、それから、その次の8分の6ページに、その論点を踏まえてどんな対策を採っていくかといったことをまとめております。三つ目の柱でございますが、研究環境につきましては、8分の7ページに論点を書かせていただいておりまして、その次の8分の8ページで、実際にどんな対策を打っていくかといったことを掲げさせていただいてございます。
 これらの対策のうち、特に主だったものとしてまとめたものが、戻っていただきますと、資料1-1、文部科学省説明資料「研究力向上改革2019」というものでございます。これは右下に日付が書いてございますが、5月13日の総合科学技術・イノベーション会議において、柴山文部科学大臣から発表させていただいた資料になっております。
 1ページめくっていただきまして、2ページ目が、今申し上げましたような全体の概要、それから、12分の3と書いてありますページ、研究人材改革というページが、これから文部科学省としてこの人材面で取り組んでいこうということの主なものを書かせていただいております。
 論点としては、一番左側にございますが、ドクターコースに進む学生が減っているとか、あるいは、研究者ポストの流動性が低くなっていて不安定性が増しているのではないかということになります。そして、それを改革していくために、主な取組の欄でございますが、例えば、プロジェクト雇用における若手研究者の任期を長期化して、できるだけ腰を据えて研究に取り組んでいただくような環境を作ってはどうかということ、それから、プロジェクト研究の専従義務を緩和して、そのプロジェクト経費で雇われている研究者であっても、一定時間を自分がやりたい研究に従事できるように、専従義務を緩和していくといったことを考えております。
 それから、すぐれた若手研究者にポストを重点化していこうということで、卓越研究員事業等の活用、それから、博士課程学生に経済的支援を拡充していきたいということも打ち出しております。ファイナンシャルプランの提示や、多様な財源を活用するといったことを考えているところでございますが、今、科学技術基本計画では、2割に生活費相当額を支給するということが目標になっている中で、現状約1割にとどまっておりますので、これも何とか改善していくということを検討しております。
 それから、研究時間の確保ということですが、競争的資金の直接経費から、その方の研究以外に充てる部分をどなたかほかの人に代行してもらうための経費を支出することで、研究に充てる時間をできるだけ増やしていただくというようなことも検討しております。
 それから、国際化の促進ということで、日本人教員の採用に当たって、海外経験を有する方を拡大していくこととか、国際的な共同研究の強化、それから、Web応募の拡大等を通じて、海外からポストに応募していただく方の負担の軽減といったことにも取り組んでいきたいということでございます。
 それから、次は12分の4ページでございます。三つの柱のうちの二つ目、研究資金の改革ということですが、主な論点としましては、先ほど申し上げましたが、特に若手が自立的な研究を実施するための、研究資金の確保が課題になっております。
 それから、若手に限らないことだと思いますが、新しい研究分野に挑戦していくようなことがまだ十分ではないのではないかということで、主な取組としまして、若手への重点化ということで、若手への重点支援、それから、新興・融合領域への挑戦、海外挑戦促進がございます。これは今年の予算から、研究力向上プランということで実施しておりますが、その取組を継続していくことを予定しております。
 それから、研究資源の多様化についてです。例えば、地方大学が特色のある取組を実施するというようなことに使っていただけるような、大学が自由な裁量で活用できる経費を拡大する。そのための取組として、外部資金の呼び込みを更に強化していくということ、それから、もう一つ下の欄でございますが、競争的資金、これは科研費以外の競争的資金等を念頭に置いているところでございますが、その科研費以外の競争的資金等の直接経費から、PIの人件費の支出を可能にするといったことを、今、検討させていただいております。
 それから、3番目の柱、研究環境改革というところで、論点としては、研究に充てる時間が減っている、あるいは、設備・機器の共用がなかなか十分にいっていないのではないかということで、主な取組といたしましては、共用をできるだけ徹底していくと、例えばコアファシリティとして全学、あるいは、広くは日本全体で特定の研究施設については共用していくための仕組みをより充実していこうということでございます。
 それから、チーム型研究体制の促進ということで、研究者だけではなくて、技術職員や、あるいは、URAといった方が育成されて活躍できるような仕組みを検討していくということを考えているところでございます。
 このような取組を通じまして、以下は参考資料でございますが、例えば、研究資金の改革で特色のある取組を各大学ができるようにしようといったことで、今やっていただいている例として、弘前大学等々の例を取り上げさせていただいたところでございます。
 その次のページ以降は、今申し上げましたような対策を打つための背景となった各種のデータを掲載させていただいておりますが、説明は省略させていただきます。
 私からの説明は以上でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 次に、科学技術・学術政策研究所より、「科学技術の状況に関わる総合的意識調査」について報告を頂きます。坪井所長から御説明いただきますよう、お願いいたします。

【坪井科学技術・学術政策研究所長】  科学技術・学術政策研究所の坪井です。資料1-3のまず、2ページです。当研究所では、科学技術指標等の定量的データの分析も行っておりますが、この定点調査は、産学官の一線級の研究者や有識者への継続的な意識調査を通じて、科学技術の状況変化を定性的に把握するという調査です。
 毎年1回、同じ方々に同じ質問のアンケート調査を継続的に実施することで、最新の状況変化を把握するものですが、今回は第5期科学技術基本計画中に実施するものとしては3回目のいわば基本計画の中間地点の調査に当たります。六つの質問パートのうち、例えば学術分科会に関連の深い質問は、三つ目の丸の学術研究・基礎研究と研究費マネジメント辺りですが、質問は全体で63問ございます。
 3ページです。回答者グループの詳細です。質問の相手先は、大学・公的機関のグループの約2,100名と、産業界を中心としたイノベーション俯瞰(ふかん)グループの約700名、計2,800名ということで、それぞれの回答者グループに対して、関連する質問をしております。
 4ページです。また、毎年の同じ質問項目に加えて、毎年変更する深掘り調査も行っておりまして、今年度は、研究活動の基盤的経費を充実させるために行うことなどについての深掘り調査を行いました。調査の実施時期は昨年の9月から12月で、回答率は91.1%でした。また、個別の質問の回答には自由記述や評価の変更理由の自由な記述を頂いており、これらは約9,400件、文字数で59万字ほどあります。
 5ページです。これは全回答者の、2018時点の評価指数の絶対値について、上位、下位それぞれ15位までの一覧を掲げております。ちなみに、左側ですけれども、最も指数が高かったのは、「新たな課題の探索・挑戦的な研究に対する科学研究費助成事業」ということでした。
 6ページです。ここは第5期基本計画開始時点である2016年の調査時点と比べて状況が悪化しているとの回答者割合が大きいもの、すなわち、評価を下げた回答者割合から評価を上げた回答者割合を引いた差の大きいもの10項目を載せております。基礎研究や研究費マネジメントの状況が悪化したとの認識が見てとれます。
 7ページには、評価を下げた理由を幾つかピックアップをしております。
 8ページ、ここでは、逆に、顕著に評価が上昇しているわけではないものの、一部の属性で好転の兆しが見られるもの8項目を載せています。ベンチャー企業の設立、大学の学部教育、女性研究者、外国人研究者に関する事項などが上がってきています。特に右に示した回答者の属性において、2016年と比べて評価の上昇が見られております。
 9ページには、評価を上げた理由の方だけをピックアップしております。
 10ページ、ここでは評価を下げた回答者と上げた回答者の絶対値の和が大きい、すなわち、意識の変化割合が大きい10項目を載せております。第5期基本計画中に取組が進められていると考えられる「若手研究者に自立と活躍の機会を与える環境整備」、「大学改革と機能強化」、「産学官の組織的連携を行うための取組」などの事項が上がってきています。
 11ページには、評価を下げた理由と上げた理由の両方をピックアップしております。
 12ページ、これまでは回答の動きに着目しましたが、ここからは個別の質問について御紹介します。ここでは、大学や公的機関の研究環境の状況ということで、基盤的経費・研究時間・研究支援人材に対する危機感が継続するとともに、評価が低下しているということが見てとれます。白抜きの逆三角形が2016年のもの、青色の逆三角形が今回の2018年を示しておりまして、また、指数に対しては、回答者の属性によりばらつきはあるものの、2018年はいずれも最も低い、著しく不十分というところになっております。
 13ページは、大学や公的研究機関の若手研究者の状況です。一番下に示した実績を積んだ若手研究者のための任期を付さないポスト拡充に向けた取組については不十分との強い認識が継続をしております。
 14ページは、学術研究・基礎研究と研究費マネジメントの全体の状況です。
 15ページは、学術研究の状況です。先ほども申しましたが、2番目の科研費の質問については、2018年の63問の中では一番評価の指数は高くなってはいるんですが、ただ、2019年と比べると、低下はしているという状況ではあります。
 17ページですが、この質問について、右下に評価を下げた理由の例を示していますけれども、採択率や充足率についての指摘、任期付き雇用であり、新たな課題には挑戦しにくいとの指摘、科研費は取得しないと立ち行かなくなるものといった辺りの指摘が見られました。
 18ページは基礎研究の状況です。これらの質問では、大学・公的研究機関グループ、オレンジ色で示したイノベーション俯瞰(ふかん)グループの両方で質の低下が見られております。
 19ページですが、研究費マネジメントの状況です。これらの質問でも、質の低下が挙げられております。
 20ページは、公募型研究費の申請等における研究者への負担低減についての質問を示しました。評価を上げた理由として、科研費の申請書のフォーマット変更などが上げられております。
 21ページからは深掘り調査の関係です。過去のNISTEP定点調査において、基盤的経費の減少が学生の教育にも影響を及ぼしているとの指摘が見られましたので、研究を通じた教育指導の状況について質問を行いました。ここでは、まず、研究室・研究グループの人員構成と最低限の研究経費に関するものの回答です。また、ここでは、国公私立大学でバランスの違いがありますけれども、研究室・研究グループでは学生が多くを占めていることが分かります。NISTEP定点調査の回答者は、部局長から推薦された一線級の研究、教員や研究者であるので、ここでの数字の規模は皆さんの印象より少し人数が多いというようなことが見られるかもしれません。
 22ページでは、基盤的経費の減少や研究活動の低下が研究を通じた教育・指導に与える影響について質問した結果です。一番左に着目しますと、現状の基盤的経費のみでは、学生が学位論文を書くための研究の実施が困難であるとの認識が国立大学等において顕著です。また、一番右に注目しますと、大学等の研究室・研究グループの研究活動の低下は、学生の教育・指導に影響を与えるとの認識が示されておりまして、こちらもその度合いが国立大学等で顕著です。
 23ページです。こちらも深掘り調査です。大学の研究活動の基盤的経費を充実させるために進めるべき取組としては、回答のグループいずれについても、「企業との組織的な連携」、「寄附金・資産運用・出資事業」、「外部から獲得する資金の間接経費」に賛成するという共通認識が産学から示されています。なお、ここでは運営費交付金以外ということで質問しておりまして、大学の研究活動の基盤的経費を充実させるために進めるべき取組については、自由記述を見ると、やはり運営費交付金の充実を求める意見が多数見られている状況です。
 24ページは、これまでのことについて、改めてまとめたものです。
 25ページですが、実際の判断には、この意識調査だけではなくて、やはり定量的データを含めた総合的な分析や、それを踏まえた議論が必要であると認識しております。ただ、定点調査の自由記述には、科学技術イノベーションの現状に対する切実な意見や、次々と繰り出される施策や事業に振り回されている様子も見られております。研究や研究を通じた教育に携わっているのは現場の研究者ですので、基本計画の各種取組の成果を現場の研究者が感じ取り、研究や教育に集中できる環境の構築が急務と考えております。
 あと、この資料の最後にも載っておりますが、お手元に別紙ということでA3の紙をお配りしています。こちらは、回答者グループを、一番上の段にありますように、より詳細に分類して、指数をまとめたものです。最初のページは、2018年の指数の絶対値、2ページ目は2016から2018年にかけての指数の変化ということで、それぞれ色分けもして示しているものです。総じて見ますと、学長・機関長クラスより現場の研究者の方の評価が厳しい、あるいは、男性より女性の評価が厳しいといったような傾向が見てとれるかと思っております。
 あと、もう一つの机上資料として、科研費をキーワードとして検索して抽出した自由記述125件の資料を配付しております。この資料は、5月22日に開催された研究費部会への御説明時にも配付させていただきましたが、このように自由記述がデータベース化している形の中で、ウエブサイト上からキーワード検索で、政策立案の検討に必要な特定の自由記述を抽出することが可能だということで、例示ということでお配りさせていただいております。
 この調査につきまして、今年は第5期基本計画期間の4回目の調査を実施する予定です。
 説明は以上です。

【西尾分科会長】  原課長、それから、坪井所長、どうもありがとうございました。
 それでは、今までに2点の御報告を頂きましたけれども、御質問及び御意見ございましたら、お願いいたします。何かございますか。

【家委員】  原課長から御説明いただいた資料1-1の研究人材改革のページに幾つかの項目があって、今年度中に検討して、2020年度より導入というふうに書かれています。
 例えば、プロジェクト雇用における若手研究者の任期長期化とありますがこうすると、そのプロジェクトのタームと任期が整合しない場合はどのように考えるのかという点が一つ。
 それから、下から二つ目の項目に、バイアウト制の導入とありますが、これは従来は間接経費で賄うことを基本としていたところと若干重複するような気がしますが、その辺りはどのようにお考えかをお聞かせいただければと思います。

【西尾分科会長】  それでは、原課長、よろしくお願いいたします。

【原振興企画課長】  まず、御質問の1点目でございます、任期の5年程度への長期化についてお答えします。これはプロジェクトごとに延ばせるものはできるだけ延ばして、5年程度以上にしていただくというものです。
 ただ、プロジェクトの性格や実行上、必ずしも5年にならないようなものもございます。そういったものにつきましては、例えば複数のプロジェクトを組み合わせて、一つのプロジェクトで雇用されている方が、できるだけ落ち着いた環境で仕事をしていただけるようにですとか、あるいは、一部について大学での取組をお願いするという形も考えておりまして、大学の運営費交付金や間接経費等で、できるだけ長く雇用していただくことを考えていただけないかと、我々としては考えているところでございます。
 それから、バイアウトでございますが、これも様々な競争的資金の担当や、あるいは、研究の現場といろいろ御相談をさせていただく途中の状況でございまして、まだ必ずしも詳細な制度設計が詰まっているところではございませんが、今の競争的資金の仕組み内で、直接経費の中から出せるようにするという方向で考えております。間接経費ではなくて、直接経費の中から出せるようにすることで、例えば、研究時間の確保ということでは、その費目をどちらから出すかということに余り依存しないと思いますが、競争的資金の直接経費から出せることによって、その間接経費からは負担しなくて済むようなことができないかということで、今、検討させていただいております。

【西尾分科会長】  家先生、よろしいですか。

【家委員】  ありがとうございます。これから検討されるということですが、柔軟にするのは結構ではありますけれども、本来の目的とは違うような事態が現場で起こるということも想定されるので、その辺りは慎重に検討していただきたいと思います。

【原振興企画課長】  ありがとうございました。我々だけでルールを決めて、こうやってくださいということではなくて、今、個別に各大学ですとか、あるいは、研究者のいろんな組織と御相談をさせていただいている途中でございます。制度の趣旨がきちんと反映されるような仕組みとして実施していきたいと考えております。

【西尾分科会長】  どうぞ。

【山本智委員】  山本です。今のことと関係するのですけれども、やはりこういう形で直接経費の使途を広げるということは、ある意味、御希望が多いということも一方である半面、直接研究に使えるお金が減るという側面をどうしても考えざるを得なくて、適切な規模感と制度設計にしないと、先ほど家委員からも御指摘のあったように、想像もしない使われ方をすることによって、かえってネガティブな効果を招き得る。
 だから、ここのところは是非慎重にしていただきたく思います。それから、この点に関しては、後で出てくるPIの人件費を自分で出せるようにするという点についても同じです。そちらについてもやはりかなり慎重に制度設計をしていただくことを望みます。

【原振興企画課長】  ありがとうございます。PI人件費も含めて、今、具体的な制度を検討させていただいておりまして、それぞれの先生方とか、あるいは、大学の方々とよく相談をしながら進めていきたいと思います。
 一方で、これはバイアウト制もPI人件費も、必ずこうしなければならないといった形にはしないで、希望制にしようと思っておりますが、その実際の詳細なルールの検討に当たっては、関係者とよく相談しながら進めていきたいと思っております。

【西尾分科会長】  家先生、それから、山本先生、大変貴重なコメント、ありがとうございました。
 どうぞ、山本先生。

【山本佳世子委員】  NISTEPの方の調査で所長にお伺いします。全体に回答が女性の方が男性より厳しめという傾向があると。これはどこの調査でもそういうものなのか、理由としてはどんなふうに感じていらっしゃるのか。あと、一覧の表の方で色分けしていらっしゃるのなどを使って説明いただくと、少し具体的に分かるかなと思いました。お願いします。

【西尾分科会長】  どうぞよろしくお願いします。皆さんがお聞きしたいところかと思います。

【坪井科学技術・学術政策研究所長】  別紙の方を見ていただいて、中央からやや左寄りのところに性別ということで、男性と女性のそれぞれの絶対値指数がありますけれども、ここは青色は、その質問の中で高い評価、赤色は低い評価ということであり、見ていただくと、男性のところより女性のところに赤い色が多いということで、全体的に女性の評価が低いということがあることから先ほど発言させていただきました。
 あと、特に女性研究者に関係する問いのところの自由記述などから見た傾向では、割と男性の方は、女性の関係の制度が何かできれば、もうこれで良くなったという評価をするような傾向があるのですが、女性の方は、逆に、その女性の研究者のための制度ができたけれども、その制度が運用されてみて、運用されてみるとやっぱりまだ全然不十分だというようなことで、女性研究者のところの関係の評価は更に厳しく女性の方から見られているという傾向が、自由記述から少し見て取れるという気はいたしました。
 取りあえずその程度の分析です。

【山本佳世子委員】  ありがとうございます。

【西尾分科会長】  どうぞ。

【小林傳司委員】  よろしいですか。ラボ改革のところなんですが、技術職員の育成活躍促進というのは大変結構なことで、日本の場合に、技術を支援する、研究を支援する人材が国際的に少ないというのは指摘されているところなので、それは大変結構なことだと思うんですが、ほとんど多くの研究者は大学の教員でもあるわけですね。そういたしますと、大学の教員としては研究以外に様々な職務を担当することになります。それで今、忙殺されているという部分があります。たしか文部科学省さんの資料にもあったと思いますが、アメリカの有力大学などに比べると、教員当たりの事務職員の数が圧倒的に少ないという、そういうデータもございます。
 ですから、大学の現場に身を置きますと、研究の部分だけの支援者を増やすという議論は、何といいますかね、縦割りにしか見えなくて、大学全体の職務の環境という中に研究の支援というのも含まれているという、そういう視点で包括的にアプローチができないものか。そうしなければ、せっかく若手の方の雇用を増やしていっても、その若手が忙殺されるだけで終わるという非常にもったいないことが起こるのではないかと、そういう問題意識を持っておりますので、どこかで御検討いただければと思います。

【西尾分科会長】  貴重な御意見、ありがとうございました。
 原課長、どうぞ。

【原振興企画課長】  資料1-1はダイジェスト版ですので、余り詳細は記述してございませんが、資料1-2の最後のページをごらんいただきますと、技術職員だけではなくて、一部事務を行うようなURAの育成ですとか、あるいは、会議や事務手続を簡素化するということ、それから、大学改革とも当然一体的に進めていくということはスコープに入っておりますので、検討していきたいと思ってございます。

【小林傳司委員】  是非お願いします。

【西尾分科会長】  どうぞ、観山先生。

【観山委員】  大学というか、研究者のレベルが下がっているという、いろんな理由があると思うんですけれども、一つは、大学におりまして思うのは、やはり博士課程に進む学生が少なくなっていることです。博士課程の学生に対してケアをするということが資料の中に書かれていて、非常に喜ばしいと思うんです。根本的には、ドクターを取ってからの職業的選択肢が物すごく狭いということが、基本的に大学院、博士課程に行ってドクターを取っても、その後どうなるんだろうという心配があるために行かないという事情が随分あると思うんですね。
 もちろんいろんなケアをしていただくことは非常に重要なんだけど、根本的な問題がやっぱり残されていると思います。その博士課程の学生というのは、人にもよりますけれども、一番研究に時間を使える人なわけですよね。そこがすごく少なくなっているということは日本全体の研究人材の研究時間が少なくなっているということです。例えば東大のIPMUの、以前の村山所長なんかとも話をしたときに、西海岸でドクターを取っている人は何か心配ないのかと聞くと、彼の発言では、全然心配してないと。それはなぜかというと、いろんな選択肢があるから。つまり、大学に残るという可能性もあるけれども、企業に行ったりする可能性も随分あると言う答えです。
 日本の企業はなかなかドクターまで進んだ人を採っていただけないというか、随分一つの分野に染まり過ぎて企業には合わないというイメージをお持ちのようですけれども、やっぱりそのマインドを変えていただければと思います。例えば極端に言えば、もう各メーカー、各企業に、努力目標を作ってもらってはいかがでしょうか。例えば、ヤフーは毎年20人ドクターコースを採ると決めてると聞きますが、同じような試みを他社も始めてほしいです。
 ちょっと誤解があって、ドクターまで行くと、何かその専門の分野でないと働かないのではないかと。そんなことはなくて、データを取って収集して、それを分析して、それをまとめて書くという能力をトレーニングされているわけです。反対に言うと、今、マスターは、大学で見ていると、就活の時間が物すごく長いので、実験・データ収集・分析・まとめというサイクルをしっかりと教育される時間が足りなくなっています。 だから、そういう意味で、企業に、だって、今、企業で世界のランキング50の中で、1社しかいないんですよね、日本、トヨタしかないんですよね。随分前は、10位の中に7社もあったと聞きます。だから、同じことをしていたら、日本の企業はやっぱり衰微していくわけなので、やっぱり優秀な人間を採っていただくということをお願いしたいです。是非、文部科学省からも発して、各社目標を掲げてもらうぐらいのことをしないと、ちょっと大学の現場は大きく変わらないんじゃないかなと。
 すみません、暴言を吐きましたけれども。

【西尾分科会長】  観山先生のおっしゃったことに私も全く同感です。今、日本の博士後期課程に行く学生たちに、あなた方はこれで選択肢がより増えるんですよ、広がるんですよというメッセージを明確に発信できるかどうかに日本の学術研究の発展がかかっているのではないかと思います。先般、内閣府で行われました産学連携フォーラムでも、私はそのことを強く申し上げました。
 博士の後期課程の間に書かれる論文が、その後、引用される率が大変高いのですね。それは、日本の研究力は博士課程にどれだけ人材がいるかということにかかっていると言ってもよいくらいの大きなファクターだと思っています。その点、どうぞよろしくお願い申し上げますと同時に、須藤委員より産業界からの一言をお願いいたします。

【須藤分科会長代理】  なかなかこの話題、発言しづらいんですけれども、現状、今、いろんな先生から出たんですけど、ちょっといろんな産業界の団体で、企業の業種別にいろんな調査を何度かやっていまして、今の意見と全然違う企業、電子、電機、あるいは、通信、創薬、ここはもう積極的にドクターを採っています。もう御存じだと思いますけれども、データで見ると、研究所なんかは、うちの会社でも、半分以上がドクターで、マスターが来ると、一番多いのはドクターになっています。だから、採用はしています。
 ただ、海外と違うのは、給与が3年分上乗せされているだけなんですね。だから、ドクターを取っても、それに対するプラスアルファはないと。ある意味で学歴や何かは関係ないんだという片方の意見が出てくるんで、実力本位とかっこいいことを言うと、そうだよねと言って、学部だろうが、マスターだろうが、ドクターだろうが、あとは実力だよと言われてしまうと、そこに給与差を付けるのはどうかなという意見も片方では出ているんですけれども、とにかくかなりの業種で積極的に採っているという事実はもうちょっとエビデンスベースで議論した方がいいかな。
 ただ、建築とか、余り個別な企業を言っちゃまずいんですが、ある一定の業種はほとんど採ってないです。ですから、今、いろんな先生方が言われたようなことも半分では当たっています。ただ、半分ではちょっと違っているかなと。
 給与の面では全く海外には太刀打ちできないというようなのが現状だと思いますので、企業も今、経団連の方で盛んに採用を自由にフレキシブルにしようと。あれは大もとには、給与が高い人をどんどん雇うようにしようということがありますので、産業界の方も変えようとしているのは事実ですので、いろんなところで議論を戦わせたらいいかなと思っています。

【西尾分科会長】  第5期の基本計画で、知識集約社会に向かうということを宣言しています。要は、知識をより重要視する施策をとっている訳です。そうであるならば、知識が格段に豊富な博士後期課程の修了生を、単に修士修了生の3年上乗せの給与設定にするということは、あり得ないことと考えます。
 給与体系も今後大きく変えていかないと、なかなか博士の後期課程の人材は増加していかないということを私も実感しています。
 最後に、岸村先生、どうぞ。

【岸村委員】  お時間、ありがとうございます。
 またNISTEPの机上資料の方に関係してなんですけど、先ほど、この男女の比較というのがありましたけど、クエスチョンの上の方は若手の話が多い中で、要は、社長とか経営者クラスと現場の若い人で、赤と青が完全に分かれているという状況になっているんですが、これについて何かありますか。若手がわがまま言い過ぎということもあるかもしれませんけど、ちょっと何か分析なりあれば。

【伊神科学技術・学術基盤調査研究室長】  こちらも意見の変更理由を見ますと、マネジメントクラスの方は、いろいろな制度を作った点を指摘される方が多いです。例えばスタートアップのための資金を導入したとか。
 一方で、現場の方は、実際人事凍結が起きているとか、若い人が安定した職で雇用されないということをリアルに感じて、こういう意見を出されているんだと思います。

【岸村委員】  なるほど。それも直接関係するのかもしれませんけれども、私も若手の一人として思うのは、改革しなきゃいけないからいろいろあるのは分かるんですけど、一方的に振ってきて、時間だけ取られるような内容も多いので、是非、若手も含めて、大学を運営されている方がコミュニケーションをもっと取っていただくとよいのかなと思いました。
 海外の大学などの例(※)を見ると、若手の組織と執行部クラスが対話をするような機会をちゃんと確保しているところもありますし、そういうのがあると、一方的に若手が不満をため続けるということもなくなるかもしれませんので、やはりコミュニケーションは大事かなと思いました。
 ありがとうございます。
(※)オランダTwente大学のYoung Academy of the University of Twenteなど
【西尾分科会長】  まだまだ多々御意見があるかと思いますけれども、本委員会の最後にもし時間があれば、また振り返りたいと思います。
 次は、第6期科学技術基本計画の策定に向けた科学技術・学術審議会の意見取りまとめに当たっての学術分科会からの意見について御審議いただきたいと思います。委員の先生方には、事前に事務局及び私自身も加わって策定しました素案をお送りしまして、意見を頂きましたが、この場で改めて御議論をいただければと思います。
 それでは、現在の意見案について、事務局より簡潔に御説明いただければと思います。

【春山学術企画室長】  失礼いたします。まずは、参考資料1をお開きいただければと思います。
 去る4月18日に、次期の科学技術基本計画について、CSTIに諮問がなされております。これを受けまして、CSTIにおきましては、基本計画専門調査会を設置して、今後2年にわたって検討していくということになっておりますが、今ごらんいただいております参考資料1の3枚目、4枚目をごらんいただきますと、その際の視点ということで、CSTIの有識者委員からの現状認識や、その検討の方向性ということが幾つか触れられているところでございます。
 現状認識としましては、「デジタル革命」による社会変化の中で、戦略的技術分野に集中投資するということ、地球規模で持続可能な政策モデルを提示すること、また、我が国が提唱しましたSociety 5.0の実現、それから、日本の基礎研究に対する世界の期待、また、次期計画が2021年から5年間という期間を対象とすることになるわけですが、この5年間というのが我が国の国家的な分かれ目になるという認識が示されております。そしてそうした現状認識の下で、3枚目から4枚目にかけては、検討の方向性ということですが、Society 5.0を引き継ぎ、STIによるSDGsの達成ということをビジョンとして明確に示すということや、4枚目の方に行きますと、あらゆる知的資源を可能な限り把握・共有化した上で、生産性の画期的向上を図ること、また、一人一人の幸福追求と地球規模の平和と繁栄を両立し、インクルーシブな人間中心の科学技術政策を志向すべきであるということ、人文学・社会科学の知見も併せた俯瞰(ふかん)的視野を持った人材の育成などがここで示されているところでございます。
 他方、科学技術・学術審議会におきましては、総合政策特別委員会において、次期の第6期科学技術基本計画の検討を行うということになっておりますが、参考資料2の方をお開きいただければと思います。
 1枚目に、スケジュールに関する資料があります。右側がCSTIでの検討ということで、来年の6月頃に中間取りまとめをするということで動いているということですが、左側の青い矢印が総合政策特別委員会での検討ということになっております。
最終的には、来年3月、今年度末の最終取りまとめを目指しておりますが、この真ん中の四角に書いております「研究力向上に向けたシステム改革」について関係部会における検討結果というのがこの6月上旬ということで、この学術分科会のように、分野横断的な事柄を扱う分科会や部会の議論は、この6月上旬というタイミングで総政特に報告するという検討スケジュールになっております。
 同じ資料の2枚目は、先週5月23日に総合政策特別委員会が開催された際の配付資料になっております。「検討論点」という形ですが、現状認識としまして、知識集約型社会への展開によって、社会全体にパラダイムシフトが起こっているという中で、従来の政策モデルでは、変化への対応、また、変化を主体的に先導していくことが困難だとされております。
 また、社会を変革するテクノロジーの源泉である基礎研究を強化して、その成果をイノベーション創出に持続的につなげていくとともに、人間中心のインクルーシブな社会を実現していくということ、また、我が国固有の課題やSDGsなど人類共通の課題を科学技術の力で解決し、世界に発信するということで、この現状認識のところの下の方に二つポイントとしてまとめられておりますのは、一つは、不確実性が加速する中で、多様性の確保をすることが重要だということと、もう一つは、スピード感を持って変化に柔軟に対応し、持続的にイノベーションの創出が可能となるシステムを構築することが必要だということです。
 こうした現状認識の下、基礎研究力の戦略的な維持・強化が必要ということ、また、新たな科学技術イノベーションシステムの構築が必要ということで、目指すべき方向性として、1、2、3、4、5とそれぞれございますが、これらの方向性が示されており、これは4月の総合政策特別委員会も含めて、議論が行われているところです。
 先週の総合政策特別委員会では、具体的な対策ということでポイントが幾つか示されております。1の挑戦的・長期的・分野融合的な研究の奨励では、長期的で多様な学術研究を着実に支援するということ、2の若手研究者の自立促進・キャリアパスの安定は今、正にお話があったところです。それから、3の研究環境の実現というところで、今回の学術分科会の議論としてまとめてようとしているものとも関連するところが議論されております。
 資料2-1の方をお開きいただきまして、学術分科会におきましては、昨年9月の第70回の分科会におきまして、第6期科学技術基本計画に係る検討を進めていくということで、各委員への個別ヒアリングを昨年の11月にさせていただき、71回、72回、そして、3月の73回でも御議論を頂いております。今ごらんいただいているファイルは、分科会長からも御紹介いただきましたように、先週の月曜日に各委員の皆様にお送りをさせていただいたもので、若干の字句を直している部分はございますが、内容的な変更はございません。
 事前にお送りをしているという前提で、簡単に御説明をさせていただきます。
 まず、1ページ目の1-1ですが、学術研究というものがそもそもこの基本計画に位置付けられたのは第5期、現行の科学技術基本計画が初めてで、その前提には、この分科会で御議論いただき、まとめられた平成27年の学術分科会報告がございます。そこでは、「学術研究はイノベーションの源泉そのもの」であると、イノベーションとの関係という文脈において位置付けていただいているところです。こうした認識というのは、現時点においても変わるものではないとしています。
 そして、1ページの下の方からでございますが、一言で申し上げれば、いわゆるボトムアップでの支援と、トップダウンでの支援の方策、二つの方策があると思いますが、両方あって初めて科学技術イノベーションが成り立つということを、1ページから2ページ、それから、3ページのところまで書いているところです。
 3ページの1-2-1で、未来社会における学術研究の意義というところでは、近現代の中で、科学技術が人間社会に与える影響が増大してきたということ、それから、4ページに書いてありますのは、人間社会の近未来ということで、テクノロジーの未来から予想されるような人間社会の変化というものがある中で、5ページでは、そうした既存の概念なり既存の社会といったものが当然の前提とはならない世の中においては、新たな事実の発見や既存事実の認識の転換に基づいて、既存の概念を解体して、新しい体系を構築する、そういう知性というのが重要になると書いております。
 こうしたものを支えているのがやはり学術研究であって、こうした思考様式の教授、すなわち高等教育において、こうした論理的思考や新たな知の教授が求められているということです。
 そして、5ページ目の下半分、将来の不確実性に対する備えとしての知的多様性の確保というところでは、先ほど申し上げた未来社会の方向性があるとはいえ、なお将来には不確実性があり、未来の予測が完全にはできない中では、やはり多様な知を確保していくということこそが重要であるとしております。そのためには、幅広い研究者の多様な問題意識を支援するという学術振興のアプローチというのがより一層、こういうときであるからこそ重要になるということを書いております。
 6ページ目に参りまして、1-2-2として、人文学・社会科学のことでございます。SDGsは “No one will be left behind.”、誰一人取り残さないということを理念に掲げ、また、Society 5.0では、人間中心の社会を掲げています。
 こうした科学技術を通じて達成しようとしている社会の姿、社会像といったものが、人間の幸福や社会的公正の実現に影響を与えることが見込まれている中で、人文学・社会科学における蓄積を活用することは非常に意義があるし、人文学・社会科学自身にとっても意義が大きいということでございます。
 それから1-3、研究者の志を原動力とする学術振興というところですが、先ほど申し上げたボトムアップのアプローチということでいうと、各々の研究者が自分自身の課題として向き合うことが避けられない疑問や、未知の領域を自らの力で明らかにするといった研究者の志がやはり研究の動機になっているということで、それが知的好奇心である場合もあれば、現代的な社会課題の解決である場合もあるし、人類社会に存在する矛盾の克服である場合もある。
 そうしたような志があって、その研究の動機となり、イノベーションのシーズが誕生するということですが、その出発点には必ずしも具体的な応用の目的があるわけではないということで、そうした研究課題の具体的な課題の設定において、様々な研究者一人一人に内在する多様性に富む問題意識を尊重するという学術振興のアプローチを通じて、人材を育成することや、イノベーションのシーズの土壌を形成するといったことが、今、2030年の世界に向けて、我が国が直ちに取り組まなければならない挑戦であるということを確信するという記述としているところです。

【西尾分科会長】  春山室長、少々お待ちください。
 喜連川先生が御退室のお時間なので、事前に資料を送ってありますので、喜連川先生から何か御意見ございましたら、どうぞ。

【喜連川委員】  すみません、この場は、先ほども手を挙げていたんですが、委員長からは極めて死角の場所で、何かこの席配置は御配慮いただけるといいなと。
 一言だけ申し上げさせていただきたいと思いますのは、先ほどの御発表にもあり、今のものにも関連することで申し上げますと、やはり日本が置かれているコンテクスト、世界に比べて日本がどう違うのかというのを考えながら、メッセージを書くということが重要だと思います。
 そういう意味で言いますと、世界になくて日本だけにあるものというのは多分ほとんどないのですが、これだけたくさんの老人を抱える国は日本以外にはないということなんですね。
 そうしますと、先ほどの施策の中で、若手、若手、若手、若手と、ここにおられる方はもう遠慮深い先生方ばかりですので、シニアのことはおっしゃらない方がいいと思っておられて、御発言なされてないのかもしれませんが、この国家を強くするためには、生産年齢人口はどんどん下がっていっていますから、シニア層をどう活用するかということは極めて大切かと存じます。
 先ほどの図では、シニアというのが60からもうちょっと先ぐらい、どこまでがシニア層かというのははっきりしない図柄がありましたが、これまで議論されてきた、例えば、バイアウトするという話がございましたが、じゃあ、誰が代わりに講義をするかということを同時に考える必要があり、そこを支えている層は多分シニア層にしかならないんじゃないかと感じます。
 バイアウト制度そのものはアメリカの中で長らく動いておりますので、御心配のところもあるやもしれませんが、私も実際心配なんですけれども、米国事例などをいろいろ丁寧に勉強することによって解決できると思われますが、ヒューマンリソースをどこから持っていくのかということを考える必要があると思います。
 小林先生が先ほど、研究をサポートする、あるいは、大学そのもののファシリテーションみたいなものもというお話をされたと思うんですけれども、有名な国立大学でERATOを取った研究者がNIIに来られています。取った瞬間に来られています。これは外見から見ると、NIIがその人をピックアップしたように見える。そうではなくて、某大学では研究ができないから、我が方に来ているとおっしゃるんです。それは正に小林先生がおっしゃったことが起こっているということです。
 そうしますと、それをサポートする人材をどこに求めるかがポイントになります。若い人材は引く手あまたで、コンビニエンスストアも、クロネコヤマトも人材採用で困っており、もうシニア層しかない。一方学術という世界は、一番シニアなヒューマンリソースをうまく活用しやすい分野だと感じます。
 このようなことも、何らかのところで御検討を賜れると有り難いと思います。是非、この西尾先生の委員会の、学術分科会としてCSTIにメッセージを出すときにちょっと、非常によくまとまっていると思うんですけれども、そのまとめの中で、何かスパイシーな部分があるといいのではないかと感じまして、やんちゃな発言をさせていただきます。
 大変勝手な発言で恐縮でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 日本がナンバーワンを追求するということは大切ですけれども、今おっしゃったように、オンリーワン、日本ならではの卓越したことを見定めて、それをどのように積極的に生かしていくかというところにイノベーションを起こしていける源泉があるんだということも含めておっしゃったのだと思います。
 喜連川先生、どうもありがとうございました。

【喜連川委員】  失礼いたします。

【西尾分科会長】  それでは、次の2から続けてお願いいたします。

【春山学術企画室長】  2以降は、今、1で申し上げましたような基本的な学術研究の意義の位置付けをベースといたしまして、人材、資金、環境という三つについて、現状と具体的な検討の方策の方向性をまとめたものになっております。
 2-1は、主に研究者に関することですが、これはもうここで改めて御説明申し上げるまでもない状況で、今、実際、各大学においても色々な取組が行われておりますし、また、政府においても関連の施策や事業の取り組みを進めているところです。しかし、その改善というのが目に見える形までには至っていない中で、やはり、先ほどの御議論にもございましたが、博士後期課程に進学するリスクを低減するという視点を持っていくということが重要であり、博士後期課程に進学をするときに、研究者としての人生に挑戦するということが信じられるような研究環境ですとか、大学の研究職以外の多様なキャリアパスも確保していくことが重要ということで、取組の方向性といたしましては、10ページのところでございますが、それぞれ、大学での取組や政府での取組、これは今、既に取り組まれているものもございますし、大学院教育の改善ということでは、中教審の大学院部会の方で昨年まとめられたものもございます。先ほど、原課長から御報告させていただきました「研究力向上改革2019」でも掲げられていたことも含めまして、そうした環境を整備していくことが重要であろうということです。
 次に10ページの下からですが、研究の評価をするときの手法として、インパクトファクターや論文数といった数値的な指標が参考指標として用いられておりますが、こうしたことが過度になることによって、研究の中身の卓越性というよりも、その数値を高めようとすること自体が自己目的化してしまっているということも無きにしもあらずという話がございます。やはり数値的な客観指標というものには本質的な限界があって、その限界を了解した上で、本来はそれとは別のこういう見方もしないといけない、ということがあるかと思うのですが、実際には数値指標が限界を超えて用いられている場面が少なくないのではないか、そうした観点で、では具体的にどうすれば良いのかというのはなかなか難しいところでございますが、それぞれ、その評価をする主体において、その研究成果の、研究システム全体への影響といったものを俯瞰(ふかん)した視点からの評価手法の開発を期待したいということでございます。
 2-2は、財政基盤の確立です。これにつきましては、公的投資の適切な確保ということと、もう一つはその財源の多角化ということです。11ページの下の方では、今既に大学で取り組まれておりますが、寄附やクラウドファンディングといった幅広い層からの資金調達や、民間企業との共同研究をするときにも、間接経費の取扱いをどれだけ適切に取るかということとか、さらに、そうした資源獲得を基にした、学内全体でのリソースの再配分ということです。経済的な需要は少ないけれども、学術として後世に継承することが重要な分野というのをどのように維持していくべきかということにつきましては、これは今、国立大学が法人化されたということもありますが、大学が経営という領域に携わる中で、いかにそれを確実に継承していくかということが期待されているところでございます。そうした大学の取組がございますが、政府としては、それを支えるために、間接経費の確実な取扱いや規制緩和など、環境の整備に努めていかなければならないとしております。
 12ページの途中からになりますが、それでもなお、基盤的な施設整備とか機器の維持更新・整備や、それから、人件費という部分については、寄附や産学連携というところだけではどうしても賄えない部分、性格的にも賄えない部分がやはりあろうかと思います。こうした中で、そこに公的投資を行う必要はなお引き続きあるということで、例えば基盤的経費は、ここ数年前までは、御案内のとおり、政府予算の規模としては減少していたわけですが、第5期の基本計画が決定されて以降は横ばいに転じるようになっているということで、これによって、デュアルサポートシステムが改善されたと言えるような状況になったとは考えておりませんが、政府においては、この傾向の維持・確保に全力を注(そそ)ぐなど、大学が使途自由に使える経費をどういうふうに確保するかという観点での取組が必要であるということです。
 それから、科研費をはじめとする競争的資金の改善、充実についてですが、これは規模を一層充実するということに加え、研究現場の手続等のコストを最小限に抑えるということを一層進めていくとともに、特に科研費につきましては科研費改革を実行しているところですが、その検証・不断の見直しも行いつつ、新規採択で30%を目指すということです。
 また、先ほどの「研究力向上改革2019」の中で出てきました競争的資金に関すること、例えば、プロジェクト雇用のポスドク研究員について、エフォートの一定割合について専従義務を緩和するということも、研究者自身の課題意識に基づく研究を増やしていくという、学術振興に通ずるところがございますので、こうしたものも含め、全体として多様性を確保していくための一つの取組として行っていくことも重要だということです。
 それから、14ページに参りますと、基盤的インフラの充実ということです。主に共同利用・共同研究についての記述となっていますが、御案内のとおり、大学共同利用機関や大学の共同利用・共同研究拠点は、学術界で限られた人材・資源の効果的・効率的な活用や、大学全体の研究機能を底上げする等々の役割を担うことが大いに期待されています。
 しかし、現状として、施設の老朽化や運転費用の不足によって機能が十分に発揮できないという状況が現に起こっており、これが国際的な研究力低下の要因の一因にもなっているということで、今後の公財政投資に大きな変化が得られない場合には、非常に困難なケースになることが予想されるということです。
 また、研究者個人に基盤的経費の中から配分される基盤的研究費が減額傾向にある中では、大学や大学共同利用機関といった組織としての研究環境の整備が重要であるということで、その研究者の活動を支える基盤としての性格を強化するために、そうした研究者コミュニティによる共同研究の場としての機能とか、各大学では単独では賄えない研究リソースを提供する機能というものについて更に強化に努める必要があるとしております。
 また、前期の学術分科会の部会でまとめていただいておりますが、やはり大学共同利用機関については、時代の要請に応じて、新たな学問分野の創出に戦略的に取り組むという視点から、その構成の在り方についても検証を行うことも必要であるとともに、それも含め、公的投資で賄うことについて、政府はその機能の充実のための処置に努めなければならないということです。
 それから最後に、学術情報基盤の更なる重要性ということで、今、デジタル革命、オープンサイエンス、データ駆動型の研究というようなことが言われていますが、そうした基盤の整備をする必要があるとしております。とりわけ、SINETといった情報システム環境、基盤インフラの学術的な基盤の質的な充実を図っていくということですが、これについては、今期から情報委員会というものが学術分科会とは別に設けられて、そこで議論されるということになっておりますので、そうした議論とも連携しながら進めていくということでございます。
 資料2-2がございまして、もう少しだけすみません。本日欠席の五神委員と、それから、川添委員から、事前の御議論を頂いております。
 五神委員の一つ目といたしましては、学術振興の目的なりその意義というところで、人類の知的好奇心を満たし、わくわくさせることが更なる人類の発展を生み出すというような意義についても書き足してはどうかということ、また、若手という用語の定義、これは今、40歳以下ということで捉えてしまうと、四十七、八歳の団塊ジュニア世代という部分が抜け落ちてしまう危険性があるのではないかということ、2ページの方に参りますと、先ほどの財源の多角化というところに関連しますが、大学の知の価値を正当に値付けするという文化を定着させる必要があるといった御意見でございます。なお、それは国内外の民間資金の投資先として、大学がきちんと選ばれる前提としてということです。
 それから、次のページに行っていただきまして、川添委員からは、端的に申し上げますと、「人間中心の社会」という概念が不明確ではないかという御意見を頂いております。その概念をこの文章の中で言うのであれば、その定義をもう少し具体的にしないと、なかなか成り立たないのではないかということです。
 あと、最後のところでが、先ほど評価手法のことで申し上げたところで、各政府やファンディングエージェンシーなりのこの評価の指標のところで、例えば、下から3行目ですが、「短期的な成果を直ちに評価できる場合と中期的に研究成果を評価すべき場合とを研究領域・手法の相違に配慮しつつ区別して」というようなことを入れるなど、少し具体的な方向性をこの中に入れてはどうかという御意見を頂いております。
 説明は以上でございます。

【西尾分科会長】  どうも御説明、ありがとうございました。
 第6期の基本計画に関しまして、特に学術研究という観点から強く提案をしていくことがこの分科会のミッションでもあります。そういう観点から、様々な御意見、御提案をいただければと思います。
 小安先生、どうぞ。

【小安委員】  すみません、2点ほどあります。1点は、先ほど2-1の一番初めに、第5期の基本計画で初めて学術研究が位置付けられたとおっしゃったのですが、それで何が変わったのかという辺りを総括していただくことは非常に大事だと思います。
 この分科会、私もずっと関わっていますので、学術研究の総合的な推進方策というのを出したあとが気になっています。そのときの見出しだけ言いますと、具体的な取組の方向性として「デュアルサポートシステムの再生」、「若手研究者の育成・活躍促進」、「女性研究者の活躍促進」、「研究推進に係る人材の充実・育成」、「国際的な学術研究ネットワーク活動の促進」、「共同利用・共同研究体制の改革・強化」、「学術研究が支える学術情報基盤の充実」、「人文学・社会科学の振興、学術界のコミットメント」、これだけ書いてあります。既に、もう何年か前に。
 今回出していただいた文書も書いてあることはすばらしく、多分誰も内容に文句はないと思いますが、これはどうやって政策に結び付くかというところが分からないから、皆さんフラストレーションを感じているというのが現実だと思います。
 ですから、第5期の前にやったことで、何が達成されていて、何が全然駄目だったのかというのを、少し役所で分析していただいて、それで、やはりここが足りないから、今回はここをどうしても入れておかないと何も進まないよ、というようにしていただかないといけないと思います。そうでないと、毎回同じ議論を繰り返しているという、何かそういうデジャブ感があるので、その辺のところを、磯谷さんがせっかくおられるので、何か言っていただけると、有り難いのですが。

【西尾分科会長】  どうぞ、磯谷局長、お願いいたします。

【磯谷研究振興局長】  ありがとうございます。
 小安先生の御指摘、ごもっともでありまして、まず、そういったデータや内容については早めに用意をして、また次回御説明できるようにしたいと思います。
 それから、須藤先生がおっしゃったエビデンスベーストではない言い方をしていて申し訳ないんですが、やはり我々行政の反省としては、こうやって答申とか報告書をまとめていただいて、それは先生御指摘のように、立派なものをまとめていただくんですけど、実際に政策を進める段階で、文部科学省としての方向性だとか施策の連携とか、それから、さっきおっしゃった検証みたいなものが結局弱くて、例えば、研究三局なり高等教育局がそれぞれ一生懸命やっているんですけど、それは予算を取って、あとはそれぞれのプロジェクトを運用するというところまでです。それが結局、全体として我々の目指している方向にどれだけの貢献をしているかというところの検証とか、あるいは、実際の反省とか、それを踏まえた改善みたいなことをやっていなかったんじゃないかなと思います。
 今回は、その研究力向上で今までと違うのは、研究三局、プラス、高等局で、補佐クラスとか、あるいは、局長クラスとか、様々なレベルでかなり議論しましたし、若手の先生方、きょうも委員になっておられますけど、日本学術会議の若手の先生方との議論や、学術調査官の方々の意見も伺って、現場の視点も入れて問題点を洗い出して、そのフォーメーションでその施策を進めていこうということをしましたので、そういう意味で、少し中身の話とずれましたが、我々は前の失敗を繰り返さないということで、今、覚悟を持って進めていきたいというふうに思っております。

【小安委員】  実は、きょう、午前中に学術会議でも第6期の計画に向けて、どういうことを学術会議で発信していくべきなのかということの議論をしたのですが、やはり同じような感覚を皆さん持っていました。そこでも、例えば内閣府に対していろいろと発言することはできるけれど、それをどうやって政策に持っていくかということになると、やはり学術界の人たちは慣れていないわけです。
 ですから、その辺のところをかなり連携していかないと、何も実現はしないのではないかという思いがあります。先ほど、喜連川さんが最後に言い残していったシニアの話というのは学術会議でも出ていました。どこに人材がいるのかといったら、シニアだけど、シニアもずっと働かないともう生活できないから、何とか活用しなければいけないのではないか、という話が出たのですが、でも、これ書いていいのだろうかみたいな話になるわけです。
 学術会議とももう少し連携ができるといいなということを感じましたので、余計なことですけど、申し上げました。

【磯谷研究振興局長】  それについても、私も同感です。
 それで、先ほどいろいろと足りなかったんですが、これは文部科学省だけでできる話ではないので、正に内閣府やほかの省庁を含めて、例えばの話ですけど、日本の博士人材にどうやって社会で活躍していただくとか考え、キャリアパスを作っていくというのは、これは正に企業の方もそうですし、ベンチャーもそうですし、それから、我々の世界というか公務員の世界もそうです。そういったことをやはり変えていかないといけないと思っております。
 それから、先ほど喜連川委員がおっしゃったシニアの話も、日本がやっぱり持てるリソースをきちっと活用しながら、そして、できるだけモチベーションを皆さんに持っていただいて進んでいかなければいけないということで、その話についても、どんどん書き込んでいいのではないかと思っております。

【西尾分科会長】  小安先生、二つあるとおっしゃいませんでしたか?

【小安委員】  二つと言ったのは、その第5期に入ったときに、入れたことで何が変わったかということが知りたいということ、もう一つは、書いたことがどうやって施策につながるかということ、その2点というつもりでした。

【西尾分科会長】  分かりました。どうもありがとうございました。
 永原先生、どうぞ。

【永原委員】  ありがとうございます。
 ただいま小安委員もおっしゃったように、ここに書かれていることは極めてまっとうなことばかりで、これに反対する人はいないわけですが、何でもかんでも書いてあると、何を一番強く主張したいのかが分かりにくくなってしまいます。この国の現状を考えると、あれもこれも実現したいという要求を実現させることは難しいと言わざるをえません。その点の議論がまだ我々は十分にできていないのではないかと思います。
 私の個人の考えですと、論点は基盤的研究経費というものの考え方ではないかと思っております。我々は科研費を基盤的経費ではなく、競争的資金という考え方でいます。しかし、恐らくCSTIは、科研費は基盤的経費であるという考え方でおられます。
 科研費は毎年約10万件の応募がありますが、そのうちの4万件は「基盤研究(C)」、2万件が「若手研究」です。これらはどちらも2年から3年で500万円、7掛けで配分されますので、1年間100万円程度の研究費です。したがって、基盤的研究経費ということに使われているのが実情なわけです。
 ところが、科研費は大変な労力を掛けて審査を行っており、このことがまた研究者の負担にもなっているわけです。何千人の研究者が膨大な労力を使って極めて基盤的な研究費の配分審査を行っていることは日本の学術にとって適切なのか、ということをもう少し考えないといけないのではないでしょうか。
 これ一つだけは次の6期のときに何が何でも強く主張すべき点を考えるに当たって、科研費の特に少額のものの在り方が適切なのかということをもう少しディスカッションする必要があると思う次第です。これは大学の今の在り方の根底に関わってきますので、非常に難しいのですけれども、これをやらずに、何もかも大切である、これも増やすべき、あれも増やすべきという意見を述べてしまうと、逆に無視されてしまうのではないかという印象、危惧を非常に強く持っております。

【西尾分科会長】  私も皆様方に意見をお伺いするときに、今、永原先生がおっしゃった観点で議論する必要があると思っていました。ここに書かれていることをベースにして、我々はどれを重点的に考えて、第6期の基本計画に打ち込むかということを詳細に考える必要があります。
 今、永原先生のおっしゃったことは、以前の学術の基本問題特別委員会のときも大学関係のほぼ全ての委員から強く出されていた意見なのですけれども、大型の研究プロジェクトはもう結構です。その経費を運営費交付金、私学助成金のような基盤経費に回して、それを増やしていただければ、大学として研究力強化に関わる様々な施策を実行できるのに、という声が上がりました。
 さらに、ノーベル賞の受賞者も基盤経費の重要性を異口同音におっしゃっておられます。加えて、昨今、科研費が基盤経費とみなされつつあることへの危機感も募っています。ですから、もう第6期は基盤経費の問題をとにかく何とかしていただきたい、ということを強く言っていくことが必要であり、そのための我々としての戦略が必要ではないかということを思いました。それも永原先生のおっしゃった焦点を絞る選択の一つだと思います。
 武内委員どうぞ。

【武内委員】  この全体の意見案の中で、追加すべきではないかと思っていることがございますので、発言させていただきました。
 CSTIからの文書の中に、日本らしいイノベーション、ジャパンモデルの創出、それらにおける国際的な共同の可能性に多くの国が注目しているという、この文面がございます。これを前提にしますと、先ほど西尾先生がおっしゃったナンバーワンではなくてオンリーワンになるという道がどのようにあり得るのかということを、特に海外から日本の科学技術がいわば尊敬の念を持って見られるような、そういう状況を生み出すにはどうしたらいいかということを考えるときに、ここに書いてある議論というのは、そういうことについての戦略が十分ではないような気がします。
 例えば、私は今、ベトナムの日越大学の理事をしております。ほかにも、仏越大学や独越大学など、この各国がいろいろ競い合って、このベトナムの中での特に高等教育、とりわけ大学院教育について、どういう貢献ができるかと議論しているのですが、大変幸いにも、日本が支援するということに対して、大変な感謝の念と、それから、それが非常にこのベトナムに合っているというふうな、そういった理解がされ、そして、最初の修士の修了生を見ますと、かなり日本の企業に就職したり、それから、日本の大学に引き続き進学したりということが具体的に出ていまして、非常に大きな成果が上げられています。
 やはり何か駄目になったというようなことを100回繰り返しても、これは事態は好転しないので、むしろ、日本の科学技術の持っているよいところを自らが積極的に評価して、それを世界に展開していくということが必要で、しかも、世界といったときによくこの議論があるのは、アメリカとの比較というのはもう頻繁にやっております。たまにヨーロッパと比較するのですが、そうではなくて、アジアとかアフリカとか南米とか、そういうこれから成長する科学技術の巨大なマーケットというものに対して、日本がどのようにして貢献できるのかということを念頭に置きながら、この科学技術の在り方、イノベーションの在り方について、世界共通の課題であるSDGsもありますし、各国の個別の多様性をやはり尊重するということの重要性というのも他方でありますけれども、そういう相対化した目でもって、日本の科学技術のあるべき姿をもう少し記述していくという視点がないと、恐らくこれは終わったら、英語にしないのではないかと思います。
 私は自分の経験ですが、中央環境審議会の会長として第5次環境基本計画を取りまとめまして、これはSDGsを環境基本計画に入れたのですが、私が最初に大臣に答申してすぐ実施したことは、とにかく事務局に全部英語にしてくださいとお願いしたこと、また、私がニューヨークに行き、ハイレベル政治会合でその結果を世界に公表したということです。
 ですから、そのような視点がやや欠けているという面があるのではないかと思います。どうしても内向きに、今どういう問題があって、どうすれば解決するかという話なのですが、もう少し世界に広く目を向けると、やはり尊敬される日本という文脈の中で、科学技術の位置付けというのはもっとポジィティブに出していけるのではないかなと思いましたので、発言させていただきました。
 どうもありがとうございました。

【西尾分科会長】  どうも貴重な御意見、ありがとうございました。
 今の御意見、重要な観点かと思っておりますが、文部科学省から何かございますか。

【磯谷研究振興局長】  ありがとうございます。
 ポジティブな点をもっと強調すべきという話は別のところでもされていて、ここにストレートに今おっしゃったことを全部書けるかどうかは別として、やはり日本が今まで本当に、何といいますか、問題なデータばっかりが出ていて、モチベーションが落ちちゃうんですけど、頑張っているところももちろんあって、最近、日経新聞なんかでもよく取り上げられるようになりましたけど、例の弘前大学の話とか、滋賀大学の話とか、先ほど少しCSTIの会議の報告書でも出しましたけど、かなり地方の大学も、お金がない中で頑張っておられるので、そういったところをもっと盛り上げていくということは非常に大事なことだと思っております。

【西尾分科会長】  今の点、どうぞよろしくお願いいたします。
 そうしましたら、城山先生、どうぞ。

【城山委員】  ちょっと2点申し上げたいんですが、第1に、今議論されたことを踏まえて、恐らく、今の1-1のところの文章で基本的なメッセージで何を出すのかということについて、多分少し考えていただいた方がいいのかなと思いました。
 要するに、1-1のところで、小安先生が最初におっしゃったように、科学技術と学術というのがあって、その二つがつながっていて学術が基礎なんだよということをまず言っていて、そこは当然のベースなわけですが、その上で何をこの今回の意見書で主張するかというところのポイントは、多分この1-1の最後のところやそのあとに来ている、来る話なんだろうと思います。
 今は、文章でいうと、3ページのところに戦略的研究支援の意義ということを書いているんですが、要するに、何が戦略的研究支援かということを多分こことしてある程度焦点を持って多分メッセージとして出すということが重要なんだろうと思います。ある意味では、基盤的研究経費支出をきちっとやるということが、実は一見基礎的なんだけど、実はこれが戦略的に大事なんだよと、いろんなところに裨益(ひえき)するんだよというストーリーも立つかと思いますし、あるいは、今、武内先生が言われたように、日本として比較優位のあるところに投資をするということもあり得るかもしれないなと思います。
 あるいは、私が見る限り、ここでの構造は若干分かりにくいんですけど、今の1-1のところの下で、1-2というのは未来社会における学術研究の意義で、1-3のところがある種、研究者の志を原動力とする学術振興で、1-3のところは今までの要するにボトムアップの学術研究は現代に即してどういう課題があるか、それをどうするかということを書いてあるわけなんですね。
 そういう意味で言うと、1-2がある意味では若干新しい要素になっていて、これはある意味では未来社会を踏まえて学術研究をやっていきますよと、そのときに人社とも協力をしてやっていきますよという話で、恐らくそのCSTIの方の文書でいえば、2030から50の国家像なり、あるいは、バックキャストをしろみたいなことを書いているのに対応するところで、そういうところに、ボトムアップではあるけれども、学術研究からもう寄与しますよということをもう言われているんですよね。
 そうすると、今の構造だと、そこの1-2の部分が恐らく一つの特出ししたい話として言われているのかなと思いますが、それでいいのか、今議論があったようなところも踏まえて、ちょっとそこをどういうふうに全体をスコーピングするのかというのが多分大きな課題だろうというふうに思いますというのが一つです。その現在の文書は、先ほど申し上げたように、ちょっとそこがあやふやになっているなと思います。
 それから、第2に、人文社会の位置付けに関するところで、川添先生がいろいろコメントされているところで、興味深く読ませていただいたんですけれども、一つは、川添先生もコメントされていますけど、Society 5.0にしろ、人間中心の社会にしろ、こことして定義をした話ではなくて、ある種、ポリシーディスコースとして議論されているものに我々としても寄与しますよという話なので、そういう意味でいうと、それ自体が極(きわ)めて、何ていうんでしょうか、よくも悪くもあやふやなものであるわけですね。
 だから、そういう意味で言うと、それを実現しますというよりかは、多分それを具体化していく際に、我々の学術というのは寄与しますという、それからワンクッション置いた多分ストーリーにする必要があるかなと思います。例えば5ページ目の5行目とかに「実現」という言葉が入っているんですけど、実現に寄与するというよりかは、むしろ「具体化」に寄与するというストーリーかなというのが一つと。
 それから、これも川添先生のコメントにあった点ですが、6ページ、7ページ辺りだと、人文学・社会科学は補完的な役割だったんだけど、これからは先導しなければいけないということが極めて力強く書かれているんですが、余りこういうふうに書かれると、何か丸投げされて後が怖いなというところもあります。つまり、特に学術でボトムアップでやっていくときに、その人文社会だけが別に社会を考えるわけではなくて、人文社会も主導的な役割を果たしますけれども、多分、科学技術に携わっている方々がやっぱり内在的にそれを考えないことには話は進まないわけですね。トップダウンでこういう社会を作るために寄与しろと言われるのに協力するだけじゃ、駄目なわけです。やっぱり内在的に科学技術系の人も社会の在り方に関心を持って、ボトムアップで人文社会科学と連携してやっていきますという、もうちょっとそういうメッセージを強く出していただきたいと思います。
 だとすると、恐らく、そういうことが可能になるために、科学技術系の教育の在り方というところにも多分関わってきます。今のドラフトだと、10ページのところに横断的、分野横断的教育というのだけ、そのことが入っていますけれども、多分ボトムアップにこういう社会課題にも科学技術が取り組んでいくためには、多分科学技術系の専門家が社会のことも横断的に考えるある種、教育的なインフラも含めて必要だという、そういうニュアンスも、10ページなのか、どこかに若干入れていただけるといいなと思いました。
 以上です。

【西尾分科会長】  今頂きましたコメントを再度検討いただければと思います。
 それで、先ほども永原先生の御発言をもとに、当方から申しましたけれども、この意見案をより完成度の高いものにするということと同時に、この意見案をベースにして、第6期の基本計画に対して何をこの委員会から強く出していくのかということに関しての御意見も是非いただけたらと思いますので、よろしくお願いいたします。

【小林傳司委員】  それでは、今、城山さんとやっぱり頭の使い方がよく似ているので似たようなことを考えていたので、重なっているところもありますから、コンパクトに申し上げます。
 いろいろ政策的な文章の流れがあるので、言葉遣いにいろいろ食い違いがあるんですけれども、あえて整理をすると、「科学研究」という言葉で実現すべき目標が公益という一番上位のもの。その科学研究の中に、「科学技術の総合的振興」という言葉遣いと「学術の振興」と、この2種類がぶら下がるんですね。「科学技術の総合的振興」については今回余り書かれていなくて、ややミッションオリエンテッドな研究で、社会の課題解決に割と直結するような、そういうタイプの研究のことだという説明になっている。
 だけれども、それだけじゃ駄目で、「学術の振興」が大事なんだと。しかし、「学術の振興」というときの「学術」は、ボトムアップで、好奇心型で、真理追求型の分野なんだというふうに一旦は書きながら、でも、税金で支えられているから、自己満足の研究になっては困るというところでやや腰が砕け始めます。そして、最終的に、このペーパーは、恐らくこの「学術の振興」が全体としては大変大事だというメッセージを伝えたいんだろうというふうに私は読みました。
 だとすると、それをどういうふうに正当化するかという論点になるわけですね。そこが、真理の追究がいずれどこかで役に立つかもしれないという、そういうロジックが昔からあるんですが、それだけでは弱いわけですよね。それで、もう少しポジィティブなものを書かないといけないというので随分苦心されて、そのポジィティブに書こうとすると、今度はイノベーションという言葉に足を取られるわけです。
 「科学技術イノベーション」という言葉と「イノベーション」という言葉を使い分けておられるのか、使い分けておられないのかがよく分からない。「科学技術イノベーション」は、基本計画のところで一応定義があります。ここはイノベーションというのは、私は科学研究という一番上位の概念が公益を実現するというそのプロセスそのものをイノベーションと考えて、一番広義に置けばいいだろうと思います。それがあって、そして、科学技術のミッションオリエンテッドなやつは科学技術イノベーションとかなり深い関わりがあるという説明をするということになろうかと思います。
 そうすると、学術の振興は何をするのかという問題になる。そこで、この資料でいうと、8ページぐらいのところなんですかね。1-3とか、その辺りのところがなかなかに苦心された書き方をされているなと思います。公的投資をしているけれども、ある意味で最初から研究成果が目的指向的に設定されているわけではないのだ、つまり、単なるイノベーションにつながるものだけではないようなことを書こうということはよく分かります。
 ただ、イノベーションという言葉と、科学技術イノベーションの問題にはなるんですけれども、こういう学術の振興によって社会全体がどういうふうなプラスを手に入れることになるのかということをもっとはっきり書いた方がいいんじゃないかと思います。それに近いことを少し書いておられるのは、論理的思考とか、社会の文化的価値とか、そういうものが上がるというふうなことを書いておられるところでして、これは何ページかといいますと、すみません、資料が出てこないな。5ページですね。
 ここで、「課題解決力や知的水準の向上の意義」というふうな言い方をされているわけですが、これは未来の予測というのはそう簡単ではないということも含めますと、例えばSociety 5.0とかそういうビジョンに対して、これは不明確であるという指摘をするだけじゃなくて、オールジャパン体制でこれに突進すること自体が本当に健全なことなのかどうかという検討なども含めて、Bプランも考えることができるような社会の知的体力を備える。こういうところに学術の振興というものは積極的な価値があるんだというふうな言い方、これは例えば批判的思考力とか社会の反省的能力が高まることによって、Society 5.0を尊重しながらも、それに対するBプランとか課題を常に考え続けていくような社会にするとか、そういうふうな論点を入れておかないと、どうしても、どっかで役に立ちますの方に引っ張り込まれるというところをちょっと申し上げておきたいと思います。
 長くなりました。すみません。

【西尾分科会長】  この記述で事務局が一番苦労なさってきたところを、今の小林先生の御意見の中で分析をしていただいたと考えております。その分析結果を反映して、この意見案を説得性あるものに改訂し、世に出していくことを考えていきたいと思います。
 キュリオシティ・ドリブンという言葉が、どちらかというと自己満足の自分勝手なというふうに捉えられて、その日本語訳が学術研究になっているので、その辺りの誤解を解こうと、事務局では頑張っていただいているところです。小林先生の御意見をベースに、小林先生の更なるサポートも頂いて、もう一押し、より説得性のあるものにしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 次に小林先生、それから、観山先生。

【小林良彰委員】  文書全体としては、皆さんのおっしゃるとおり、すばらしい内容だと思うのですが、どうしても抽象的に見えてしまうのです。具体的に何を今期は言いたいのかということがもう少し具体的にあった方がいいのかなという気がします。
 それから、ほかの文科省から出している、例えば資料1-1で大きなポイントの改革が出ているのですけれども、ここともっと連動した方がいいのかなという気がします。例えば資料1-1では、研究環境改革で、研究施設の共用の徹底、コアファシリティの共用と具体的に書いてあるわけです。それを受ける形で、では、こっちではそこはどこに当たるのかということになると思います。
 世界になくて日本にあるものは、ないという意見もあるのですけど、私はあると思っています。それは大学共同利用機関とか研究拠点というのがあるわけです。そう意味で言うと、資料2-1で言えば、14ページの辺りに出てきますけれども、その共同利用・共同研究体制は有効な取組であるという、何か非常に控えめな表現をされているのですけど、もっとこれは強く打ち出していいと思うのです。
 具体的にはBファクトリーにしても、スーパーカミオカンデにしても、実際そういう分野の世界を引っ張ってきているわけです。それらは、ノーベル賞を幾つも取っていますけど、そうではなくても、例えば「すばる」や「アルマ」にしても、実際にはそこのトップ10%論文の比率というのは日本全体をはるかに上回っているわけです。
 そういう成果を出しているということはもっと強く訴えなくてはいけない一方で、一番の問題は老朽化なのです。それを今やらなかったら、次の期ではもう間に合わないです。建設して40年、50年たっているものばかりで、今手を打たなかったら、もう喫緊の問題です。そこをもっと強く言っていいのではないかなという気がします。
 それから、最後の方でSINETのことが出てきていますけれども、これも情報という言葉の意味をどこに置くかなんですけど、単なるもちろん情報学の問題ではないのは明らかなわけで、これをやらなかったら、KEKの活動にしても、理研の活動にしても、止まります。だから、これは正に日本の学術、科学技術の動脈です。
 国際競争をしているわけですから、ここをもっと強調するとか、コアファシリティの徹底ということが資料1-1でうたっているのであればば、例えばそこにウエートを置いて、ここはもっと強く書くというのが必要だと思います。
 それから、あとは、永原先生がおっしゃった基盤的経費って私は非常に重要で、例えば大型の方の科研費でも、本来の研究に全部使えない部分が多分出てきていると思うのです。多分、何か汎用的な機材を買ったり、人を雇ったり、文系だったら、何か大量に書籍を買ったりと、本来それは科研でやることではないのかもしれないんですけど、もうそっちに回さないと研究室が回っていかないというところがあるので、単に何かみんながばらまきのお金を欲しいという話とは違うのです。それは科研費の有効的活用という意味でも、私はもう一つのポイントとして今期は絶対に入れていくべきだというふうに思います。
 以上です。

【西尾分科会長】  特に重要な点はどこなのかという観点で御発言を頂きまして、ありがとうございます。
 観山先生、どうぞ。

【観山委員】  2回目なので簡単にしますけど、一つは、今、小林先生も言われた基盤的経費と、永原さんも言われた競争的経費というか外部経費の問題です。学術会議で2年前に調査をしまして、国立大学の例なんですけれども、2008年には、運営費交付金というか基盤的経費は1.18兆円で、それ以外の外部の経費が0.48兆円で、全体で1.66兆円です。2015年だと1%ずつ減りましたので、基盤的経費が1.09兆円で、それ以外の経費は0.61兆円になる。全体では1.66兆円から1.70兆円に増えているんですが、基盤的経費と競争的経費の比は、2008年は70対30だったのが、2015年は64対36になっているわけです。
 つまり、重要なことは、どちらもどんどん全部増やしてほしいということは無理でしょうから、その割合はどれぐらいがいいのかということを、エビデンスベースで示していかないと、訴える力はなかなかないと思います。ただ、感覚的に思うのは、今の基盤的経費はもう限界を超えているぐらい少なくなって、非常に厳しい状態であると思います。そのためには、うまくエビデンスも示しながら、どういう実態があるのかということを示しながらやらないと、なかなか分かっていただけないというところがあると思います。これは学術会議の提言の中に2年前にもありますので、詳しい資料があると思います。
 もう一つは、11ページに、評価が非常に外形的な、数字的な、評価にとらわれるべきではない、それは実に重要なんですが、その先が何も書いてないんですね。要するに、大学や研究機関はそれぞれの立場でしっかりおやりくださいと、期待しますと書いてあるんですが、これでは問題が進まないと思います。
 私が思うのは、評価者の育成ということが非常に重要で、日本は、学振もそうですけど、すごいピアレビューをやって、すごい労力を掛けて非常に立派な経費配分をしているんですが、いよいよこれも限界を超えていると思いますので、つまり、研究時間をやっぱり減らすことにもなっているので、例えば、アメリカのことばっかり言って申し訳ないですが、ある程度、評価者を教育して、評価する人材というのを、結構少数でやっているんですよね。この点も含めて具体的に提言していかないと不十分と思います。
 それから、喜連川さんが言われたシニアのスタッフをという点では、シニアの人に評価に参加していただくことも重要かと思います。その際、評価のシステムを、評価者を育てるということを同時に備えないと、良くならないかもしれません。
 すみません、以上です。

【西尾分科会長】  おっしゃいました御意見、全てその通りだと思います。基盤的経費に関しましても、第6期はもうある意味で本当にどのようにしていくのかということの方向性を出さないと、取り返しがつかないことになってしまいます。そういう観点からも非常に重要な時期になると思いますし、後の方の評価のことも、現在、科研費の評価等において直面している課題そのものだと思っております。
 あと2件ぐらい御意見を伺いする時間しかもうありませんので、できるだけ今まで御発言なさってない方で、どうしてもという方いらっしゃいましたら、どうぞ。

【新福委員】  発言の機会をありがとうございます。
 若手というところで意見を出させていただきたいのですが、やはり先ほどシニアのことが余り書かれてないという御指摘もあり、若手、若手と書いてあるというのはそのとおりなのですが、やはり若手の現状、特に准教授ぐらいまでになっていれば安定はしてくるのですが、私より年下の、私より下の世代が不安定な雇用状況で、まだまだ苦しい現状にあるというのを日々見ております。
 先日、京都大学におりまして、本庶先生のノーベル賞のレクチャーを聞きに行きました。先生の時代には、若手であっても500万円ぐらい基盤的な経費があって、それで、自由に研究をさせていただいたと。30代でそういう経験をさせてもらったのがノーベル賞につながったんだよというようなお話がありまして、今の私より下の若手の世代が使える基盤的経費は、10万、20万円という金額なんです。ですので、やはり若手の現状を考えますと、文書に若手をしっかり入れていただきたいというところはどうしても外せないと思います。
 ただ、ずっと若手が何かかわいそうな被害者だ、みたいな形で載せられ続けているというのも進歩がないと思いますので、若手が主体となって、こうやって私も今回発言させていただいておりますが、政策を作っていく上で若手研究者をどんどん活用していく、そういった仕組みを作っていくというようなことが盛り込まれて、政策決定者と我々若手研究者が交流していくことが促進されるというようなことが進むと発展的で良いのではないかと思っています。
 また、新しいところで少し御報告にもなりますが、私はグローバルヤングアカデミーの執行役員に2年連続で選定いただいております。そういった世界の科学者の集まりに行きますと、日本というのは全然下に見られているわけではなく、尊敬されていることもまだまだたくさんありまして、特に最近、日本学術会議の若手アカデミーとして、G7のサイエンスの会合に出させていただいたり、G20の会合のトピックでのイベントをワールドサイエンスフォーラムでさせていただく企画があったり、そういった政策に関わるような若手の取組というものが始まってきています。
 そういったものは世界にアピールができてきており、若手研究者が世界にアピールできる部分というものも現在ありますので、日本の科学が落ち込んでいるというネガティブな発信ではなく、こうした動きをポジィティブに世界に発信できないかと思っております。

【西尾分科会長】  どうも貴重な御意見、ありがとうございました。それも含めて、また考えていきたいと思っております。
 あとお一人、誰かございませんか。

【辻委員】  じゃあ。

【西尾分科会長】  辻委員、どうぞ。

【辻委員】  私の方から1点だけ。
 皆さんから頂いたコメントの中で、特に永原先生から、1点突破する何か強いメッセージが必要なんじゃないかという御意見があったわけなんですけれども、私、先ほどからずっとNISTEPのこの大きな表ですね、こちらの方をながめていると非常に面白いなと思っておりまして、つまり、それぞれのセグメントの御意見というのが非常に色濃く出ているなと。
 つまり、これ、平均して見てしまっては駄目で、縦串ごとに注目して見ていくと、例えば、学長クラスですと大体ブルーが占めているんですけれども、赤く出ているポイントが政府予算の状況であったり、あるいは、間接経費の確保であったりと、非常に強いメッセージが実はこの調査の中に表れているなと。うまくこの中から、そうしたポイントの御意見というものを拾っていけるといいのではないかと思いました。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  非常に興味深い観点からの御意見、ありがとうございました。
 きょうは様々な御意見を頂きました。NISTEPからの御報告も、大学・公的研究機関の研究環境の状況ということで、12ページからお話しいただいたんですけど、横ばいか右肩下がりしかないんですね。これは日本が現在抱えている大きな問題の縮図かと思っております。
 また、小安先生から、今回まとめておりますこの意見案が、第5期に向かうときもほぼ同様の内容のことが言われていたんではないかという御意見がありました。そういう中で、今回は前回と異なるところとして、人文学・社会科学系に関してのことを強く打ち出しています。
 第5期の基本計画において意見案に記載の様々な課題の解決に向けて文部科学省を始め御尽力を頂いております。しかし、それらの課題が依然として解決に向かわなければならないという状況とも言えます。そうなりますと、どういう攻め方で課題の解決を実現していくかという攻略法を、これまでとは別の観点から丁寧に考えていかないと、また同じことの繰り返しになってしまう恐れがあります。
 永原先生は、先ほど、そのような危機感に基づいた大変重要な御発言をしてくださいました。
 そのような観点で、きょう多々頂きました意見を踏まえて、もう一度、この意見案を改訂させていただきます。ただし、スケジュール的にはもう差し迫っている状態になっておりますので、これを改訂させていただくプロセスに関しては、委員長に一任していただき、皆様にどういう形で、再度、御意見を頂くかというようなことは考えさせていただきたいと思います。
 場合によっては、皆様の御意見を再度頂くというような時間もないかもしれませんが、その際は、きょう頂いた御意見を可能な限り反映させていただくということで、御了解いただければと思います。
 それでは、次に、前回の学術分科会において設置することとした人文学・社会科学特別委員会について、現在の状況を事務局より説明いただきます。

【春山学術企画室長】  資料3でございます。
 前回3月の学術分科会におきまして、今期10期の学術分科会においては、人文学・社会科学特別委員会を設け、調査事項として、共創型プロジェクト、前期の人文学・社会科学ワーキングでまとめていたプロジェクト等々をやっていくということで、その設置についてお認めいただいたところですが、資料3にございますとおり、その委員の方々に御了承いただいているところです。
 委員、臨時委員につきましては、この分科会に参加されている先生方でございますが、専門委員として、人間文化研究機構理事の窪田先生、それから、東京大学名誉教授の盛山先生に御参加いただき、こうしたメンバーで、来月以降、当面は、先ほど申し上げました共創プロジェクトの具体化というようなことから議論を進めていきたいと思っております。
 以上、報告でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 この人文学・社会科学特別委員会におかれましては、前の期のこの委員会で様々な意見を頂きながら、今後の人文学・社会科学の進め方、特にそういう中で、国レベルの大きなプロジェクトの必要性も含めて「まとめ」を行いました。
 それらをどのように実現していくのか、また、第6期の基本計画策定に向けて、それらの内容をどのように反映していくのかということも含めて、是非とも活発な御議論を頂ければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 最後に、事務局より連絡事項などございましたら、お願いいたします。

【藤川学術企画室長補佐】  次回の学術分科会の日程につきましては、日程調整の上、改めて御連絡させていただきます。
 また、本日の議事録につきましては、後日、メールにてお送りいたしますので、御確認をお願いいたします。
 以上です。

【西尾分科会長】  本日も貴重な意見の数々、誠にありがとうございました。活発な議論ができまして、大変感謝いたしております。
 本日は、これにて閉会といたします。
 
―― 了 ――

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