学術分科会(第73回) 議事録

1.日時

平成31年3月14日(木曜日)10時00分~11時30分

2.場所

東海大学校友会館「望星の間」

(東京都千代田区霞が関3-2-5霞が関ビル35階)

3.議題

  1. 分科会長及び分科会長代理の選出について(非公開)
  2. 議事運営等について(非公開)
  3. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員)
西尾分科会長、須藤分科会長代理、勝委員、栗原委員、小長谷委員、白波瀬委員、観山委員、家委員、井関委員、井野瀬委員、大竹委員、岡部委員、岸村委員、喜連川委員、小林良彰委員、新福委員、武内委員、鍋倉委員、山本佳世子委員
(科学官)
鹿野田科学官、吉江科学官、相澤科学官、長谷部科学官、林科学官、三浦科学官、上田科学官、渡部科学官

文部科学省

磯谷研究振興局長、坪井科学技術・学術政策研究所長、千原大臣官房審議官、井上科学技術・学術政策局企画評価課長、渡辺振興企画課長、梶山学術研究助成課長、西井学術機関課長、春山学術企画室長

5.議事録

・議事のはじめに委員の互選により、西尾委員が分科会長に選任された。
・続いて西尾分科会長により、須藤委員が分科会長代理に指名された。
 (以上の議事録は、人事に係る案件のため非公開。)

【西尾分科会長】  それでは、三つ目の議題で、第10期における調査審議事項について審議を進めたいと思います。本日は、総合政策特別委員会からの御説明、それから第10期における調査審議事項、この分科会における調査審議事項、それから先ほどもお話がありましたが、柴山イニシアティブについて御説明いただきまして、その後、皆様方と意見交換をしたいと思っております。今日は第1回ですので、後で様々な観点から自由に御意見を伺わせていただければと思います。したがいまして、そのときの時間はお一人2分ぐらいしかございませんので、これからの説明をお聞きいただきながら、御意見の準備をしておいていただければと思います。どうかよろしくお願いいたします。
 まず、総合政策特別委員会における検討状況について、井上企画評価課長から御説明願います。

【井上企画評価課長】  ありがとうございます。総合政策特別委員会の事務を担当しております、企画評価課長の井上でございます。本日は、総合政策特別委員会、総政特と呼んでおりますが、総政特での審議状況の御報告と分科会へのお願いの時間を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。
 それでは、説明をさせていただきます。まず順序が逆になりますが、参考資料の1-2をお開きいただきたいと存じます。第9期の総合政策特別委員会では、第5期科学技術基本計画の後半時期と第6期、次期ですね、第6期に向けた検討の論点と方向性について、夏以降4回にわたり議論を重ねていただきまして、1月末に論点取りまとめを作成いただいたところでございます。それが参考資料1-2でございます。1月の総会において、取りまとめ中の論点を提示いたしまして、御議論いただき、その後、第9期最終の総政特において取りまとめたというものでございます。本日は、その内容のポイントについて、まずは簡潔に御報告をさせていただければと思います。
 1ページ目でございますが、この論点取りまとめ、大きく1ポツ、2ポツ、3ポツ、1ページ、2ページ、3ページがメーンの資料でございます。その後、補足資料等を付けているという構成になってございますが、1ページ目のところ、我が国の立ち位置及び今後の方向性と、科学技術が担う役割という観点をまとめた部分でございます。一つ目、二つ目のポツでございますが、昨今の社会は将来像や価値観が多様化するなど、大きく時代が変わってきているという点、そしてIoT、AI、遺伝子改変技術等の革新的技術の登場により、これまで以上に科学技術が経済、社会、政治に影響を及ぼすようになり、その役割は拡大しているという点を記述しております。
 三つ目のポツでございますが、一方で、我が国では急激な少子高齢化が進み、女性の活躍も求められている状況、また地方と都市の格差、企業の伸び悩み、研究力低下が懸念されるなど、我が国の活力の源泉は枯渇の危機にさらされているのではないだろうかという観点です。
 四つ目のポツでございますが、このような状況であるからこそ、我が国が前向きに多様な個性・能力が調和、共創する社会の実現に向けて、科学技術の力による先導的な調整を続ける必要があるのではないかという視点でございます。
 そして1ページ目の、下二つのポツの部分でございますが、大きな時代背景の変化を踏まえつつ、我が国として競争するところと協調するところ、そして守るべきところと全く新しい価値を創造するところなどを戦略的に見極め、資金の循環を作り出して、よりよい新たな社会を形成していくという方向に向かっていくべきではないかという観点でございます。
 おめくりいただきまして2ポツの部分が、今後の研究の在り方とそれを支える科学技術システムへの転機という観点でまとめた部分でございます。一つ目のまとまりが、研究における卓越性の追求という部分でございます。「真理の探究」、「基本原理の解明」、「新たな知の発見、創出や蓄積」など、研究者が卓越した新しい発想を追求し、創造する活動が重要であるということ。特に、研究者の内在的動機に基づく独創的で質の高い多様な成果を生み出す学術研究をはじめとした活動の、多様性と厚みが新しい価値をもたらす力の源泉なのであるという点をまとめてございます。
 二つ目のまとまりでございますが、研究者が挑戦(失敗)できる環境ということで、科学の探究には挑戦が必要であり、挑戦した内容が適切に評価され、それを基に次の研究に再挑戦できる環境へ転換していくことが重要ではないかという点でございます。
 三つ目のまとまりでございます。柔軟性と適応性を兼ね備えた競争システムということで、発明、発見といった研究を、その後の開発、イノベーションに展開していくには、社会の変化に対し柔軟性と適応性、フレキシビリティとアジャイル性というものを持って提供する、対応していくことが求められているのではないかという点です。
 最後のまとまりでございますが、未来社会デザインとシナリオへの取組、アプローチということでございます。将来の不確実性や多様性が高まる中、将来の未来社会ビジョンを科学技術によって前向き、主体的にデザインをし、その可能性や選択肢を広げていくことが、より新しい社会の突破口、糸口となり得るのではないかということ。そして多様な知や技術を最大限活用し、社会実装していくためには、様々なイノベーションの類型に応じた検討や支援を行っていくことが必要ではないかということ。更に先進的な研究を適切に促進し、社会で円滑に適用するために、人文学・社会科学の視点、倫理的・法的・社会的問題(ElSI)に係る議論を活性化する必要があるという点でございます。
 3ページ目でございますが、この部分はまだ、十分に個別の検討には至っていない項目について議論いただいたところでございますが、今後の検討項目及びその方向性ということで、これらのことを実現するため、研究力向上に向けたシステム改革、未来社会デザインとシナリオへのアプローチ、デザインを実現する先端・基盤研究、技術開発という観点から、今後具体的な検討を進めていくという観点でございます。
 以上がこの論点取りまとめのポイントになりますが、続きまして、この論点の取りまとめを踏まえた、総政特の今後の進め方について、参考資料1-1に基づきまして御報告をしたいと思います。
 2ポツのところに具体的にスケジュールを、どれだけ委員会を開いていくのかというところを書いておりますが、節目のところを御報告したいと思います。第3回、これは6月下旬に予定したいと思っておりますが、骨子案の取りまとめをしていただこうかと思ってございます。次の節目といたしまして、第5回のところを御覧いただければと思いますが、8月下旬、夏の終わりに中間取りまとめを行っていただこうかと思ってございます。そして最終的には、2020年の3月に、最終取りまとめということを考えてございます。
 今このスケジュールを考えましたのが、御案内のように科学技術基本計画は、政府を代表して総合科学技術イノベーション会議で最終的な議論をし、決定されていくということでございますが、その内閣府の対応を中心に、私ども文部科学省、経産省、厚労省等関係省庁が協力しながら作っていくという形になろうかと思います。内閣府での審議・検討というのが、来年度早々には、そのための調査委員会を設けて議論をしていく予定であるというふうにも伺っておりますので、随時、文部科学省として盛り込むべき事項をそれぞれの時期に応じて柔軟に提示していけるようにしたいという思いがございまして、骨子案、中間取りまとめ、最終取りまとめという段階を作らせていただいております。そして先ほど申しました第3回の前に括弧で書かせていただいておりますが、科学技術・学術審議会各部会・分科会へのお願いといたしまして、昨日行われました総会で濵口会長からも依頼いただいた形になりますが、6月の骨子の取りまとめまでに、関連部会・分科会におきまして、研究力向上に向けたシステム改革の点について、これだけは次期計画に盛り込むべきという重要な点を抽出していただき、6月上旬を目途として総政特に御提示いただければと考えているところでございます。また最後の、最終取りまとめの上に括弧書きで書かせていただいておりますが、各分野の事項につきまして、これは研究計画・評価分科会、計評の下に置かれております各関係委員会、部会、分野別の委員会で、10月中を目途に各分野での重要事項を提示いただければと、今のところ考えているところでございます。
 以上、私からの御説明でございます。ありがとうございます。

【西尾分科会長】  御説明ありがとうございました。
 今、御説明いただきましたことも踏まえまして、第10期における調査審議事項について、春山学術企画室長から御説明願います。今、井上課長から御説明いただいたことについては、後でまたいろいろ質問等を伺えればと思います。

【春山学術企画室長】  失礼いたします。それでは資料の3-1を御用意いただければと思います。第10期学術分科会の調査審議事項についてという資料でございます。タイトルのとおり、第10期、この2年間になりますが、この学術分科会でどのようなことを調査審議していくかということを事務局としてまとめた資料になってございます。
 まず第1に、第6期科学技術基本計画の策定に向けた検討ということで、ただいま井上課長から御説明いただきました、その背景が書いてございますが、先ほど御説明にありましたとおり、6月の上旬までに、とりあえず総合政策特別委員会に、これだけは次期基本計画に盛り込むべきという重要な点について意見を提示することが求められているという状況でございます。このため、第10期の学術分科会においては、現行の第5期科学技術基本計画における学術研究の位置付けと書いてございますが、ちょっと下の米印のところを御覧いただくと、第5期の科学技術基本計画において、初めてこの科学技術基本計画に、学術研究は科学技術イノベーションの基盤的な力の一つであり、「イノベーションの源泉」として推進すべきものという位置付けが与えられています。
 同じ資料の12ページを御覧いただきますと、実際の基本計画における記述の内容が御確認いただけます。下線部のところでございます。これが第5期、現行の科学技術基本計画における学術研究に関する記述ということです。
 もう少しおめくりいただきまして、19ページ以降が、これが平成27年に総合政策特別委員会で、第5期基本計画に向けて取りまとめたものになっています。その学術研究に関する部分を抜き出したものが19ページ以降のものになってございます。19ページ以降のこうした科学技術・学術審議会の取りまとめを踏まえて、先ほど御覧いただきました12ページの基本計画につながっているということでございます。これは5期の話でございますので、6期に向けた流れというものがどうなっていくかというのは、これによるものではございませんが、5期のときの参考としてお示しいたしました。
 資料初めの方の御説明をさせていただきますと、検討の行程ということで言うと、本日の第73回学術分科会において、これに関する検討の範囲や方向性について、自由な御審議をしていただければと思っております。6月上旬にその意見を出すということでございますので、なかなか日程がございませんで、5月下旬に次回の学術分科会を開催させていただきまして、そこで意見の取りまとめということを考えておりますが、その間、我々事務局において、その素案を作成いたしまして、それについての御意見をいろいろな手法を通じまして、分科会委員の各先生から頂きたいと思っているところでございます。
 そして意見の内容ということで、2ページの方にまたがってまいりますが、現時点として事務局で考えている、非常にざっくりとしたものではございますが、この意見の内容に係る項目を2ページにお示しをさせていただいています。これについて不足や特に強調すべき、又はその内容のあるべき方向性について御審議いただければと思っております。
 基本理念に関する内容ということで、諸状況についての認識、これは認識でございますが、先ほど井上課長から御説明いただきましたとおり、未来社会を見据えた次の時代の科学技術政策ということになりますので、こうした中で学術研究が有している意義や必要性についての再確認というか、再認識ということ。
 それから各施策に関する内容で言いますと、学術研究を振興する上で重要となる施策の強化ということでございますが、特に学術分科会以外では、当分科会の中にある部会で研究費部会と、それから研究環境基盤部会がございますが、こうしたことについては、当分科会以外のところでは意見を申すということはたてつけになってございませんので、特にこの二つについては必要であるかなと思っています。そして三つ目といたしましては、人文学・社会科学の先導的役割の促進ということでございますが、これは基本計画の文脈、コンテクストで扱われる話ですので、その中でも、特に未来社会のデザインですとか、科学技術研究成果の社会実装の場面におけるその先導的役割の促進といった観点での意見をまとめるべきかと思っています。またその他、学術研究振興に関する施策などについての御審議を、本日していただけたらと思っています。
 二つ目といたしまして、これは基本計画とまた別の話でございますが、人文社会科学分野の学術研究に関する検討ということでございます。これについては、第9期の学術分科会においても精力的にインテンシブな御議論をしていただいたところでございます。改めて説明申し上げるまでもありませんが、人文学・社会科学の学術知に対する期待が、これまでになく高まっているというような状況であると考えております。そうした中で、その分野の振興や自然科学との連携、その意義の確認、共有、阻害要因の明確化、具体的方策の実行が求められているところでございます。こうしたことについて、前期、審議のまとめをワーキンググループでしていただきましたが、こうしたことを引き続き審議するということで、第10期の学術分科会におきましても、人文学・社会科学特別委員会というものを設置して、以下の事項について検討を進めてはどうかということでございます。
 資料3ページの方に行きまして、検討事項といたしまして四つ掲げさせていただいております。学術研究としての人文学・社会学の振興、それから自然科学と連携・協働に関する検討、三つ目でございますが、前回のワーキングの取りまとめで示されました「共創型プロジェクト」でございます。これについては、今、具体化を我々事務局でも行っているところでございますが、これについては2020年度、つまり再来年度の事業化を目指して考えておりますので、特に審議をこの場でしていただく必要があるかと考えているところでございます。また四つ目のデータプラットフォームの話もございます。こうした検討事項について、特別の委員会を設けて検討していただければと思っております。
 そして3ポツのその他の論点というところでございます。西尾先生の御挨拶にもありましたとおり、この研究人材、研究資金、研究環境というところで、様々な課題があり、科学技術・学術審議会、あるいはほかの審議会におきましても、それぞれの検討が行われているところであるかと思っております。課題の例ということで書かせていただいておりますが、一つ目のところは、いわゆる研究人材に関することで、研究に専念して活躍できる環境や、博士人材の多様なキャリアパスの確立ということについて、前期におきましても、人材委員会や、それから中央教育審議会大学分科会大学院部会において報告取りまとめをしています。こうした検討を引き続き、その組織でするということになりますが、学術振興という観点から、分科会としてその必要な協力、連携を行っていくということでございます。
 二つ目のところでございます。現代における情報通信技術の高度な発展ということを踏まえて、デジタルデータを活用した研究手法やそれを可能とするデータインフラ整備など、情報通信技術を利活用した学術研究の研究手法や進め方、そのための研究環境や基盤インフラの在り方等について、先ほど御説明申し上げました情報委員会の直接的な所掌になるかと思いますが、これも学術分科会と引き続き連携をとり、必要に応じて、いろいろな形の連携があるかと思いますが、議論を行っていくということでございます。
 ページをおめくりいただきまして、前回第9期最後の学術分科会で御意見を頂きました、大学共同利用機関の施設の老朽化ということでございます。これは前期の部会で、研究環境基盤部会の方で審議のまとめをされておりますが、この中でも指摘をされているところでございます。共同利用機関の在り方について、引き続きこの部会で検討していくことになりますが、分科会本体としましても、その検討に必要な協力を行っていくということでございます。
 それから4ポツとして、最後に書いてございますのは、若干心構え的、我々の事務局の心構え的な話になってしまいますが、第10期のもろもろの審議に当たっては、特に以下の観点に留意するということでございます。
 一つ目は、部分最適というものが、必ずしも全体最適にならないということを意識しまして、システム全体を俯瞰(ふかん)的に捉えることを忘れないようにするということですとか、そうした施策の効果が、大学の研究現場に集約されることになりますので、その研究現場の実態に対する注目を欠かさないということでございます。
 そして二つ目といたしましては、デジタル技術の高度化等の、科学技術の進展やそれについての社会課題、少子高齢化等の社会課題の進行や、人類共通の世界課題ということでやっておりますSDGsの達成等、いろいろな社会の変化が急速に起きているということで、将来の社会が必ず今の社会とは違ったものになっているということを十分に留意して検討を行うようにしたいということでございます。
 説明は以上でございます。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、最後に渡辺振興企画課長から柴山イニシアティブについて、できましたら5分程度で御説明いただきたく、よろしくお願いいたします。

【渡辺振興企画課長】  それでは、参考資料2を御覧ください。今、御紹介がありました高等教育・研究改革イニシアティブ、通称柴山イニシアティブというふうに称しておりますが、今年の2月1日に公表いたしました。サブタイトルにありますように、高等教育機関における教育と研究改革の一体的推進を目指したものでございます。
 基本的考え方をお示ししておりますように、現在の様々な諸問題、少子高齢化、グローバル化、Society 5.0、こうしたことを支える上での基盤となる大学改革が急務であるという大もとの問題意識の下で、国の責任において、意欲ある若者の高等教育機関への進学機会確保、そのための高等教育・研究機関の取組・成果に応じた手厚い支援と厳格な評価をセットで徹底することによって、「教育」「研究」「ガバナンス」改革を加速するということが目的であります。こうしたことを受けて、世界を引っ張るトップ大学群と、地域や専門分野をリードする大学群を形成するとともに、最前線で活躍する研究者、次代を担う学生の活躍の促進、こうしたことについて、文科省で申し上げますと、高等教育局、それから科学技術・学術政策局、研究振興局、研究開発局、全て総動員しながら取り組んでいこうというものでございます。
 改革の方向性、4点お示ししておりますが、四つの改革の方向性それぞれに対して手厚い支援と厳格な評価、それをセットにして行おうとするものでございます。例えば高等教育機関へのアクセスの確保で申し上げますと、授業料や入学金の減免、給付型奨学金の支給ということを、特に支援が必要な低所得世帯の方に対して行うことにセットとしまして、学問追究と実践的教育のバランスがとれている高等教育機関に対してこういった支援は限定するでありますとか、あるいは進学後の学習状況について厳しい要件を課して、これに満たない学生は支援を打ち切るということなどが評価として検討されております。
 大学教育の質保証・向上につきましては、質保証・情報公表のための仕組みの構築でありますとか、実務家教員の登用促進、教育体制の多様化・柔軟化を行うとともに、一方では厳格な評価としまして、大学評価における学生の伸びの確認を徹底する、教育の質を保証できない大学は撤退をしていただく、こうしたこともセットで行います。
 研究力向上に関しましては、先ほど春山室長から紹介がありましたように、研究人材、資金、環境、これらについての改革を行うとともに、業績評価の実施、競争的研究費の審査の透明性向上、制度の評価・検証の徹底、こうしたことを併せて行います。
 教育研究基盤やガバナンスの強化に関しましては、改革に意欲のある大学等への重点的な支援、ガバナンス改革でありますとか、連携・統合を進める仕組みを構築すること、産学連携、特に外部資金獲得を推進することに対する支援、こうしたことを行うとともに、改革の進捗や成果に応じた評価・資源配分のめり張り付け・徹底、単独では改革が行えない大学に対する再編・統合・撤退ということに対するオプションの提示、こうしたことを併せて行うということを想定しております。
 この内、特に研究力の向上に関しましては、後ろの方に資料が付いておりまして、5ページを御覧いただけますでしょうか。この中で特に大きく3点書いておりますが、現状と課題について、もう様々なところで指摘されておりますが、こうした中で、特に我々としても、もちろん結果としての論文数が伸び悩んでいるとか、国際順位が低下しているということがあるのですが、特に研究人材に関連して、日本の博士課程の入学者数というのが平成15年度をピークに減少している。在籍者数についても横ばいではあるものの、これは社会人の入学者が増えていますとか、あるいは分野に応じてかなり偏在が生じている。こうしたことがかなり大きな問題だという認識を持っております。
 こうした中で、今後の方向性にありますように、大きく3点、世界をリードする質の高い研究人材と流動性の確保、研究者の継続的な挑戦を支援する研究資金の改革、研究生産性を向上させる研究環境の実現、これらについて具体的な方策を現在検討しているところでございます。
 現状では文科省内に副大臣をヘッドにしたタスクフォースを設定して、主に事務方を中心に議論しておりますが、これは本当に具体的に、例えば今年夏、来年度の夏の概算要求につなげられる短期的な政策もありますし、中長期的には、第6期の科学技術基本計画などで具体化していくことについても検討を進めているところでございますので、例示は幾つか示しておりますが、より具体的な案というのを我々がこれから作成していって、その内にまた、当学術分科会の委員の方々、あるいは科学官の方々含めて、様々な御意見等を賜りたいと考えます。
 説明は以上です。

【西尾分科会長】  渡辺課長、簡潔に、また分かりやすく説明いただきまして、どうもありがとうございました。
 それでは、今三つの説明をしていただきましたが、一つは、総合政策特別委員会の説明がございました。それに対して、もしこの場でも、お伝えすべき意見等ありましたら是非言っていただければと思いますし、また、10期のこの委員会での審議の進め方全般についても、皆さん方から何か御意見があれば是非言っていただければと思います。それと、渡辺課長からの柴山イニシアティブに関しての御説明等についても、是非、御発言をいただければと思います。今日は、先ほど申しましたように、第10期学術分科会の最初の会合ですので、出席の皆さん方に自由に様々な観点から御意見をいただければと思いますが、時間の制約がございますので、2分程度を目安に、お願いいたします。
 喜連川委員は重要な所用のため、退席をされる時間が迫っております。喜連川委員、何か御意見がございましたらよろしくお願いいたします。

【喜連川委員】  御配慮ありがとうございます。余り最初に発言する勇気を持っていなくて、いつも後の方なので誠に恐縮です。
 だんだん還暦を過ぎて年をとってきますと、こういう資料を見ても余り感動を覚えなくなってまいりまして、例えばこの参考資料1-2というのを御説明いただいたんですが、変革と多様な新たな時代へと。例えば我が国が戦後、敗戦の当時を見ると、そのときの変革感の方が圧倒的に大きいわけですね。科学技術の影響量、役割は拡大と。これも我が国の大きな発展の時代を見ると、特段そんなに大きくこれが、今出てきているかというと、そういうことでもない。ただ、日本の高齢化ということは非常に大きいのかもしれません。結局この資料が悪いとかいいとかということではなくて、我々IT屋は、今いわゆるOTの時代になったと言われています。OTというのはオペレーショナルテクノロジーといいまして、物をどうやって作るかという時代から、そういうものをどういうふうに維持していくのか、社会に浸透させていくのかということの方がはるかに重要な時代になってきています。そういう意味で言いますと、私どもが感じるのは、毎回こういう施策をお考えになっていること、すなわち、すごく立派な方向感をお出しになられているんですが、我が国におけます進展度合いが緩くなってきているのが実情で、それを施策として実際にどうエグゼキュートしていくのかという、実施の仕方そのものに光が余り当たっていないような気が致します。つまり第4期も5期もあったとき、施策が一体どういうふうに実施され、それがどういうふうに進展していっているのかという、そのプロセスの把握というものが本当にうまく今までやれていたのだろうかというふり返りが、余りしっかりとこういうところで議論されたことがないんじゃないかなという気がします。この間、日本学術会議のスポーツの課題別委員会で非常に面白いなと思いましたのは、来年オリンピックがある中で、スポーツというのは一体、国民に何を与えているのかをはっきりさせたい。スポーツするから健康にいいというようなことのエビデンスは何か?これからエビデンスを作るとして、どうすればいいか。日本学術会議、考えてくださいと。そういう時代になっているんですね。結局、政策のエビデンスをしっかりと把握するというようなことが、要するに一段メタなレイヤーを我々考えなきゃいけない時代になってきたんじゃないかなという気がします。64年のオリンピックで活躍された全ての選手の健康診断を今もやっておられるわけです。じゃあそういう努力というのを、学術に対して我々はやっているんだろうかというところをちょっと今後考えていただければいいと思いますし、例えば、政府は出資事業というのをやりました。これに対して東京大学はファンズ・オブ・ファンズをしました。自分ところの研究者、大学なんだから、あなたの持っておられる研究者の一番すぐれた研究は分かるでしょう、だからそこに出資しなさいという考えが当初の政府のお考えだったと思うのですけれども、東大はファンズ・オブ・ファンズといって出資会社にしか、COIの問題からと耳にしましたが、出資しなかった。こういう事態を見たとき、一体次、政府は何を考えるべきかというのをもっと振り返るべきというか頭をひねらなきゃいけないんですね。こういう話っていっぱいあると思われます。すなわち、結果を見ながら次の施策を考えるということが重要な時代になったんじゃないかと思って、2分以上になり失礼いたしました。ありがとうございました。

【西尾分科会長】  井上課長、今のことは重要だと思うのですけれども、コメントをいただけますか。

【井上企画評価課長】  貴重な御意見ありがとうございました。第5期も半ばまでもう来ていますので、3年たっているということですが、総政特でも見直しを行うということで、夏以降、この6期の議論に入ったんですが、それまでに第5期の状況につきましては御議論を頂いているという状況ではございます。しかし、大きな意味で基本計画を今後どうしていくのかというところで、さらなるやっぱり議論は必要かなと思っておりますし、内閣府の方でも昨日の総会で、総会の委員をされている橋本委員ですね、CSTI議員もされておりますので御発言されておりましたが、第4期、第5期とは違って、また別な意味でちょっと在り方自体を基本計画、考え直さないといけないんじゃないかという御意見を出されましたが、同じような問題意識を持たれているのかなと思いまして拝聴した次第です。貴重な御意見ありがとうございました。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございます。基本計画がどれだけ施策として浸透しているかを評価して、その上で次期の基本計画が作られていくことが重要です。喜連川委員、貴重な御意見ありがとうございました。
 鍋倉委員も途中で退席されるということですので、御意見をどうぞ。

【鍋倉委員】  ありがとうございます。
 二つのポイントがあると思います。一つは、いろいろな機会で既に議論されていますが、サイエンスや学術は面白いという観点、それがやっぱり若い人たちが学術研究に入ってくる一番のモチベーションだと思います。まず、それをどうしたら若い人に持ってもらえるのか。研究費や研究環境などいろいろな議論がありますが、まずそこを一番根本に据えて、議論する必要がある。
 もう一つは、これも多く議論されていることですが、日本の経済が右肩上がりだった時代の、学術政策の枠での議論が、若手研究者の減少や大学からの基盤研究経費の減少という研究環境が異なる現在でも行われている場合がある。すべての分野を国内だけで、国際的な高いレベルを目指すことは困難である。そのため、一つとしては、日本国内だけでいろいろな議論を進めるのではなく、もう少しグローバルな視点にたって、日本はどういう位置付けで研究を進めていくのか。国内の若手研究者の減少という現状のもとでは、海外の各国と協力して、研究者交流の活性化とともに、学術においても重点分野のすみ分けなどを考える必要があるのかもしれない。国内だけの議論を越える必要でしょう。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。二つの観点を言っていただきました。学術の面白さをきっちりと伝える。だからこそ学術研究が大事だということを明確に述べていくということ。もう一つは、グローバルな観点からの施策立案が必要ではないか、という御意見でした。どうもありがとうございました。
 それでは、勝委員、ございませんか。以降は、順番にお願いします。

【勝委員】  ありがとうございます。なぜか「あ行」の方がいらっしゃらなくて一番上に名前が出てしまっておりお先に失礼いたします。
 1点ほどちょっとコメントを簡単に申し上げたいと思うんですが、昨日の総会でも非常に活発な議論がなされていて、特にこの参考資料1-2のところの3ページ、今後の検討項目のところで、やはり研究力向上に向けたシステム改革というのが非常に重要であると。その中で「つなぐ」ことが重要だという意見が多く出て、領域と領域であるとか、あるいは機関で言えば大学、企業あるいは国際的なモビリティ、様々な重要な課題が示されたわけですが、このシステム改革を推進していく場合には、この学術分科会の役割というのは非常に大きいのではないかなと思っております。特に研究環境基盤部会では、今まで共共拠点であるとか、あるいは昨年、平成30年の終わりには大学共同利用機関法人の在り方について取りまとめがあったかと思うんですが、更にこれを基盤とした政策への落とし込み、先ほども御提言がありましたが、そういったものを目指す中で、どう実行すべきかということは更に考えていく必要があるだろうと思います。特に大学共同利用機関に関しては、四大学共同利用機関からなる「連合体」の創設がうたわれましたが、スケールメリット、例えば費用の削減といったスケールメリットだけが強調されていた部分があると思うのですけれども、もっとスコープ、特に新たな価値、新たな創造性、新たな発想というものをバックアップするような形で議論できればいいなと思います。
 以上でございます。

【西尾分科会長】  貴重なコメントをありがとうございました。今おっしゃったことも、今後審議に生かしてまいりたいと思います。
 栗原委員、お願いいたします。

【栗原委員】  皆さん、いろいろなことをおっしゃっているので、余り付け加えることはないのですけれども、一つは、多様な価値観ということだと思います。そのためには、やはり流動性を高めるということが非常に大事ではないかと思います。例えば、今、若手が大学に残らないというようなことであれば、社会人ドクターもあるでしょうし、逆に産業界から大学に人材を、やはりもう少し交流を高めるというようなところも大きいかと思います。
 それから、今、停滞しているということで、日本人は反省するのは得意ですけれども、やはり新しいところも含め、良いプラクティスをなるたけ拾って、皆さんで明るい気分を作るということも同時に大事ではないかと思いますので、なるべく良いプラクティスは伸ばしていくということを少しずつ心掛けるということも大事ではないかと思います。
 以上です。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 次は、小長谷委員、お願いします。

【小長谷委員】  資料の紹介ありがとうございました。聞きながら思い出したのは、我が家にエコバッグが30個ぐらいあって、ちっともエコではないことです。資料にたくさんの「改革」があり、「改革」のインフレーションになっています。一つ一つの問題に対して解決するという方向で進めると、余りにもオペレーションがたくさんあり過ぎて、結局、どれにとっても不十分な対策となりかねません。恐らく、本当に良い解決方法というのは、一つの入り口でたくさんの問題が同時に解決できるような、ワンストップマルチソリューションのような形で、解決の方法自身をあらかじめつないでおくというような考え方にした方が良いと思われました。問題点は既によく整理されていますので、あとは具体的に進めるときに、あらかじめつないでおく方法が好ましいのだろうと思われました。
 以上です。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。解決の方法ということで、そういう観点からも、人文学・社会科学系からの知見がより重要になってくると思います。
 それでは、白波瀬委員。

【白波瀬委員】  ありがとうございます。2点述べたいと思います。1点目については、皆さんもおっしゃっているんですけれども、計画というのは何のための計画かということで、やはりこの手の議論というのが、どちらかというと議論のための議論になっていて、具体的な政策との距離感というのがすごくある。そのためには選択というか、どこに優先をとるのかといったところは、ちょっと捨てるものも必要になってくるんですが、やはり具体的に物事を進めるためには、そこのあたりの選択はしていかなくてはいけないのではないかなというのが1点目です。そういう意味では積極的に、こちらから打って出るという方向で基本計画を展開していただけるとすごく有り難いなというのが1点目。
 2点目につきましては、人文社会系科学の視点が、実は前期から、委員長はじめとても進めていただいているんですが、気になるのが、科学技術を推進するためにという目的をもう既に最初に置かれていますが、どちらかというと、技術だけではなくて学術っていう観点から社会を動かしていくということになりますと、そこでの人文社会、その中でのいろいろあるんですが、位置付けというのをもう少し積極的に打ち出せるような議論ができればとてもいいなと思います。
 以上です。

【西尾分科会長】  重要な観点を御指摘いただきありがとうございました。人文学・社会科学に関しては、今後、特別委員会を設けて、そこで今おっしゃったことを含めて、議論を深めてまいりたいと思います。それと議論のための議論にならないようにということで、このことも、この分科会の議論が政策にきちんと反映することを念頭に置きながらの議論をしてまいりたいと思います。どうもありがとうございました。
 須藤委員、よろしく。

【須藤分科会長代理】  先ほどの喜連川委員の御発言について、その場で言おうかなと思ったのですが、まさに一番大事なところで、プロセスを把握するというのはすごく大事かなと私は思っています。実は私は産業界から出ており、きのうも総会で発言したのですが、産学連携というのはここ一、二年で急激に進んでいると思っています。ですが、こういう場に出てくる資料というのはやっぱり何となく2017年ぐらいの資料が出てきていて、第5期の始まって1年、2年、3年、たってきて、順次データは変わってきていると思うのですが、その辺りのデータが余り出てこないので、同じような議論で終わってしまうという場合が結構あると思います。
 例えば産学連携で、組織対組織でやって、お金を産業界から大学に入れて、それで余ったといったらおかしいんですが、余裕のできたお金を基礎研究に回すというのも、我々が考えている一つのお金の流れなのですが、じゃあ今現在、基礎研究はここ一年でどれぐらい大学の中にお金が回ったのかというのが、データを全く我々が持っていないので、産業界としてもこれぐらいの支援でいいのかなとか、いや、もっともっとやらなきゃいけないのかな、その辺が全然分からないので、やっぱり第5期が今動いていますので、少なくとも第5期をやったことによって変わってきている数値というのは、なるべく早く出す必要があるのではないかなと思っています。
 少し似ているのですが、先ほど言った人文科学との融合というのがよく出ますが、これも第5期のSociety 5.0というときから盛んに言っているのですが、じゃあどれぐらい今、人文系の先生と理工系の先生が融合しながら進めているのかというのも余りデータが見えていないので、やはり第6期を議論するときには、第5期のそういったエビデンスをしっかりと捉える必要があるのではないかと思っています。

【西尾分科会長】  ただ今、須藤委員がおっしゃった点は、今後の施策を考える上で非常に重要な点だと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
 観山委員、お願いします。

【観山委員】  資料の3-1、第10期学術分科会の調査審議事項についてということをちょっと読ませていただきまして、非常に重要なことが書かれていると思います。特にこの分科会としては12ページに下線が引かれている部分、四つのパラグラフがありますが、非常に重要な項目ではないかと思っております。その中で、最後のパラグラフですが、学術の振興のためには、やっぱり大学が中心になって活躍していただくことが基本です。それは国立、公立、私立すべてですけれども、それぞれほとんど法人化されて、競争という形で、その法人のために学術の振興に向けて、個々の研究者が励んでいくということが期待されています。それはそれで重要だと思いますが、もう一つ、学術の振興のためには、競争し合うということと研究者が協力し合うということも重要です。大学とか法人というのが縦糸だとすると、そのコミュニティーを結び付けて全体として我が国の学術を振興するという面では、横糸としての大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点というものが重要です。法人化されて非常にいい面がたくさんあったと思いますが、それぞれの法人はやっぱり競争して、自分たちの法人がいかに活躍するかということが鮮明になってきたと思うんですが、横糸の方がなかなかそういう中で、どういいますかね、埋没するというか、ほかの法人のためにやることがどうなんだというようなことを考え始めると、学術の研究というのは不十分な点があると思いますので、特にそういう面を私はしっかりと議論していきたいと思います。共同利用・共同研究の体制は、日本の特色ある非常に良いシステムでありますので、それを更に進展するためには、今後どうするかということをよくよくこの分科会でも議論していただければと思います。もう一つは国際性、グローバリズムというのは非常に重要です。国際的な協力や競争の中で、今まで共同利用・共同研究の体制が、個々のコミュニティーだけのためにとなると、国際的な環境の中で埋没してしまいます。従来の体制の中でいかに学際的な研究にコミュニティーが乗り出していくかという部分も非常に重要な観点だと思いますので、そこら辺もしっかりと議論できればと思っております。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。法人化が進み、それぞれの法人が切磋琢磨(せっさたくま)するという競争関係に置かれていますが、国際的な観点で、日本が科学技術で優位性を示すには、法人間の連携がどれだけ取れているかが非常に重要だという御指摘だと思います。私も全く同感です。この点もしっかり考えていきたいと思います。ありがとうございます。
 家委員、どうぞ。

【家委員】  審査部会にはずっと長く携わらせていただきましたが、学術分科会に出させていただくのは10年ぶりぐらいかと思います。この十数年を見ますと、やはり大学はじめ、皆様感じておられるかもしれませんが、研究現場の基礎体力が弱っているというのではないかということを感じます。きょうも参考資料でいろいろな研究力強化、大学改革等のプランが出されています。もちろん役所の方も何とかよくしようと思って一生懸命考えていただいていると思いますが、現場とのマッチングがどうかということがとても気になっています。先ほどスポーツの例が出ましたが、スポーツとアナロジーで考えますと、競技力強化のためには、トレーニングと栄養補給と、それから適切な休養、リカバリーが必要なんですね。トレーニングは、研究で言えば研究活動そのものだと思いますが、栄養補給というのは、研究資金でしょうか。もう一つの休息回復というのは、私は考える時間だと思うんですね。それが圧倒的に最近不足しているのではないかと思います。休息というのは決して怠けるという意味ではなく、やはり静かに考える時間が、今、研究者にとっては一番貴重な資源だと思うのですが、それが枯渇している。いろいろな改革案についても、医療でも患者の体力を考えずに手術をやったら結果はよくないわけですが、そういうことも視野に入れながら、この学術分科会の御議論に参加させていただきたいと思います。
 もう一つ、研究力強化等については、やはり分野によって何がベストかは違うと思うので、その辺りは非常にきめ細かい議論をしないと、一律に従うよう求めてもなかなか思ったようにはいかないのではないかと思います。

【西尾分科会長】  二つの観点から貴重な御指摘を頂きまして、ありがとうございました。
 井関委員、どうぞ。

【井関委員】  東京医科歯科大学、井関です。今期も務めさせていただきます。頑張りたいと思います。
 私は今、家委員がおっしゃった現場というものを考えますと、私も今現場の真っただ中におりまして、大学院大学ですので、学生と向き合うことが多くなければいけないにもかかわらず、学生と向き合う時間がない。それを工面する方法について、私は現在考えることはできていません。ただ、このことは、先ほどの柴山イニシアティブの5ページに書いてありました。また、日本の研究者が参画する研究領域の数が他国と比べて少ない。すなわちこれは何を意味するかと考えると、研究の多様性が失われつつあるのかもしれないと考えております。研究の多様性を維持するかというのは、これまたすぐに具体的な方策やアイデアがあるわけではないんですが、やはり何かを考えて進めるときに、ある程度無駄や失敗はあり得るという前提で行う必要があるかと思います。行き過ぎてからですともう取り返しがつかないので、きちんと1年ごと、2年ごとに成果を追っていくというような考えを入れていく必要があると思います、なかなか無駄のないことをするというのは、特に学術研究においては無理ではないかと考えております。そういったところを議論していければいいかなと思っております。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。学術研究を進める上で本質的な御意見だと思っています。その点も今後踏まえて議論してまいりたいと思います。ありがとうございます。
 井野瀬委員、どうぞ。

【井野瀬委員】  ありがとうございます。皆さんの意見にうなずきながら同じようなことを考えておりました。私も2点ぐらいになりますでしょうか。先ほどもありましたが、博士課程の量と質を上げるために一番大事なことは、わくわく感というか、研究することの面白さなのですが、それを、先ほどから出ている余裕のなさを含めて、我々が伝え切れていないのではないでしょうか。このわくわく感と出口でのサポートが博士課程では重要だと思うのですが、出口でのサポートは「手厚い支援」といった表現ができるのですが、では研究にわくわくする、研究が楽しい、面白いということは、どう評価、あるいはどう表現すればいいのでしょう。うまく文字化、言語化されていないように思います。以前にこの分科会でも、同じ内容でもそれをどう表現するのかが今は重要になってきている、ということをお話しいたしました。報告書の内容が変わっていないとか、読んでもわくわくとはいかないというのは、今求められていること、今必要なものを端的に言語化する点に問題があるのではないかと思います。ではわくわく感をどう表現し、評価するかですが、学生に「わくわくしますか」と書いても駄目で、それをどうするかというような議論が、次に必要になってくる。それが先ほどから出ているプロセスの問題とも関わると思います。
 それに合わせて考えると、「失敗できる環境」という表現は悪くない、いいと思うんです。失敗できるって大事なこと。だけどそのあとの括弧内の「何々等」という事例を見ますと、参考資料の1-2、総政特からの報告書2枚目のところですが、「研究者が挑戦(失敗)できる」の部分、例示の仕方や表現を考えた方がいいのではないかと思いました。最近の日本で使われている言葉について、少し冷たいのではと思うことが度々ありますが、柴山イニシアティブのところも、「支援と評価」というのはいいのですが、評価のところにある「撤退」という言葉が気になりました。なぜかと申しますと、ここに大学改革に意欲のある大学という表現がありますが、大学の現場は、意欲ある人間ももちろんたくさんいらっしゃるでしょうが、疲弊したり諦めたりする人間もたくさんいるのです。これをどうやって救い上げていくのかということが、現場としては大きな問題なんです。先ほどから出ている現場とのかい離が、こうした文字にも出てしまう。そこを何とかフォローできないかと考える次第です。
 それから、特に人文社会科学の場合に当てはまるかもしれませんし、あるいは自然科学でもそうでしょうが、個人がする研究の個人性の問題と共同性の問題です。この共同性のところを、もっともっと議論していかないとならないと考えます。人文社会科学だけではなく、今日本の学術が世界にキャッチアップできていない部分が、例えば研究倫理の問題を含めて、幾つかあります。研究の共同性と個人性を考える上でも、全体として、第6期を意識した表現力を我々自身が持たねばならないのではないでしょうか。
 以上です。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。井上課長から御説明いただいた際の、研究者が挑戦(失敗)できる環境という部分は、基本計画の記述としては非常に斬新ですね。井野瀬委員がおっしゃったような観点で、もう少しこの部分を表現的にブラッシュアップしていただくとよいと思います。
 それでは、大竹委員。

【大竹委員】  私は、資料1-2の学術研究の定義、つまり、要請研究、戦略研究、学術研究の定義についてコメントを二つさせていただきたいと思います。学術研究の定義として、「個々の研究者の内在的動機に基づき、自己責任の下で進められ、真理の探究や科学知識の応用展開、更に課題の発見・解決などに向けた研究」と書かれています。これについて、私は二つのことを申し上げたいと思います。一つは、先ほどから議論になっている若手人材の不足という問題と関わることです。それは、若手研究者を増やす手段として、研究が楽しいということを伝える努力をしたとしても、人口そのものが減っていき、人手不足になっていくと、他分野との人材の取り合いになるので、研究者の数を維持したり増やしたりすることはなかなか難しいということを前提に議論する必要があります。他の仕事ではなく、研究者になってくださいと若者を説得するのは無理なわけです。研究者人材を増やすための説得の方法として、次のようなことを考えてはどうでしょうか。Society 5.0で、必要とされる人材は、AIが苦手なことができる人材です。AIが苦手なことは何かというと、課題を発見するということです。したがって、学術研究の人材というのは、Society 5.0の時代に、実務界に生きていく上でも大事な人材という位置付けをすることが一つの方向かなと思います。そこをもう少し打ち出したいというのが一つ目のコメントです。
 もう一つコメントは、ここで内在的動機を強く打ち出し過ぎて、学術研究を狭くし過ぎることは問題ではないかということです。この定義を一般の人が読むと、学術研究とは研究者が自由に自分の好きなことを勝手にやっていることだと理解されてしまう可能生がある。そうなってしまうと、学術研究に資金提供したいという人がいなくなってしまう。私は、最後のところの課題の発見・解決というのが大事で、自由といっても、研究者は社会とのつながりをもう少し関係付けて学術研究をするという点をうまく表現していただきたい。必ずしも全研究者が社会との関わりを明確に意識した研究をする必要はないと思いますが、ここに税金を使ってほしいということであれば、社会的な課題解決ということに私たちは貢献しますということをもう少し発信していってもいいのではないかと思います。ここでの学術研究の定義は、JSTかJSPSかというお金の出所の問題ですごく狭くしてあると思います。社会的な課題発見・課題解決というところをもう少し強調して、研究が課題発見・課題解決につながることを目指した上で、私たちは自由な発想で考えるという表現にしていった方が国民からの支持も得られやすいのではないかと思います。特に人文社会系は資金が学術研究に集中していて、要請研究や戦略研究がありません。理系は、それらの研究費が潤沢にあるので、自由な研究が学術研究に集中しているという位置付けです。しかし、人文社会系は学術研究しか研究費がないわけです。そのため、学術研究の定義をもう少し広げて、例えば社会課題研究、社会課題がこういうものの解決というのに貢献するという枠組みでやっていくというスタイルというのは必要かなと思います。
 もう1点だけ申し上げると、社会課題の解決というのは意外に人文社会系の研究が役に立つことが結構あるにも関わらず、人文社会系の研究者が気付いていないところはあります。私自身も行動経済学の研究をやっていて、最近、医療とか防災とか環境とかいろいろな分野の人から、そのアイデアを使いたいというふうに言われるようになったのですが、研究しているときはそんなことを全く考えていませんでした。したがって、他の分野の人たちが課題と思っているということを人文社会系の人が知れば、非常に役立つ分野がたくさんあると思います。その意味でも共通の課題というのをやっぱりアジェンダ設定していくということは大事かなと思います。
 以上です。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございます。白波瀬委員、今の御意見、どう思われましたか。

【白波瀬委員】  すごくもっともだと。

【西尾分科会長】 そうですか。

【白波瀬委員】  どうしてですか。

【西尾分科会長】  先ほどの白波瀬委員の御意見との関係で、是非御意見を伺いたかったもので…。

【白波瀬委員】  同意見です。

【西尾分科会長】  大竹委員、どうもありがとうございました。この御意見をいろいろな面で生かしていきたいと思います。
 岡部委員、いかがでしょうか。

【岡部委員】  東京大学の岡部です。私は脳科学委員会からということで、この委員会には参加させていただいていて、先ほどの御説明で何か余り関係がなくなったという話もあったんですけれども、委員として是非務めさせていただきたいと思っています。
 もう既にいろいろな観点からお話があったので、ちょっと私自身の脳科学に関連したことだけ言うと、この資料で、やはり日本は超高齢社会になっていくというのは一番問題なわけですよね。超高齢社会になって一番困るのは認知症の問題で、認知症をいかに克服するかというのは脳科学委員会の方で結構重要な議論になっています。いろいろな製薬会社が治験をしていますけれども、治験をすると数百億円のお金が掛かって、ほとんど失敗しているわけですね。ですから何千億というお金がほとんどうまく生かされずに使われているという状況です。じゃあどうしたらいいのかということで、そういう認知症の創薬関係企業の方とお話しするんですが、彼らは大学に応用研究をやってほしいって全然言わないんですね。何をしてほしいかというと、認知症の基になる本当に根本的な病因の理解がないんですね。理解がないために、創薬をしたくてもシーズになるものをまず見付けてこられないんですね。今やられているほとんどの治験というのは、老人斑というアミロイドβが蓄積するという、それを除去するという治療法しか試みられていなくて、ほとんど。その病態のシーズがそれ1個しかないので、みんなそれをやって失敗しているという状態になります。彼らと話していると、大学では是非シーズになる研究を100個か数百個、このタンパクをやったら認知症になるんじゃないかという提案をしてくださいと言われるんですね。そのためには、逆に考えると、数百個のシーズの内、ほぼ全部が失敗して、1個残ったものが本当に治療につながるということになると思います。ですから数百回失敗しないと出口なんかないと私は思いますので、ここに書かれている失敗できる環境というのを、むしろ積極的に失敗しろと我々が言わなければいけないと思っています。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。第6期に関しての新機軸の言葉として、是非とも生かしていきたく思います。
 日本学術会議若手アカデミーの代表の方が学術分科会の委員として参加されております。その立場から御意見を頂くということで、次に岸村委員、どうぞ。

【岸村委員】  九州大学の岸村です。日本学術会議若手アカデミーという組織で代表を務めておりまして、その関係で今回参加させていただいていますが、この中で恐らく一番若い方にはなると思いますし、そういう中で、先ほど現場という話が出ていますが、一番学生に向き合っているはずですので、ちょっときょうはその点に関してのコメントになります。やはり我々の研究力という意味では、学生さんに活発に研究してもらう必要があるわけですが、当然、博士の数というのが大事になりますが、実際話していて、幾らスカウトしようとしても、そもそもキャリアデザインの中の選択肢に入っていないというのが現実的なところでありまして、何でそんなことが起きてしまうのかというのがあるわけですね。それは一つは、博士に進んだ後にはアカデミアに残るみたいなそういう固定観念もあるかもしれませんし、そこに進んでもポストはないかもしれないというのもあります。あるいは、ノーベル賞クラスの優秀な研究をやる人がそういう道に進むものなんだよねみたいな感覚もあるのかもしれません。なので、一つは、我々がやって研究活動の成果として出てきた研究成果は割と国民一般の皆さんから支持されたり評価されたりすると思うんですが、科学者そのものですね、科学者、研究者そのものが、どういう人材でどういう価値を持っているかということに対して余り理解されていない可能性があると思っていると。その中でどういうことをしたらいいかというと、もちろんトップダウン的にいろいろな施策をやるというのもあると思うんですが、私自身としては、我々も市民の1人ですので、そのレベルでいろいろな方とコミュニケーションして、こういう能力がある人材は、町の中でも、例えば町内会をリードして何かいい成果が出たというのでもいいのかもしれませんが、そういう形で一人一人にちゃんと見える職業として、何か存在感をアピールしていくようにしないと、なかなかこの道を選んでもらえない。先ほど大竹先生の方からもありましたけれども、他分野との人材の取り合いにどうしてもなってしまいますので、その点、何かしていく必要を感じます。その中でも人社系の話が先ほどから出ていますが、要は一般の市民の方をつなぐインターフェースとして人社系ですとか、あるいは実務系の研究を交えて一般の市民の方と、そういう人を介して大学がつながって、その中で自然科学とか理工系の研究があって、地域において頼れる存在として機能して、ある意味、市民活動を支える民主主義の拠点みたいな形で大学がちゃんと位置付けられて、国民の皆さんにも見えるようなふうになってくれば、もっとこの道に進みたいという人が、草の根で少し増やせるようになるかなと思っているということで、きょうは発言させていただきました。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。

【岸村委員】  ありがとうございます。

【西尾分科会長】  それでは、小林委員。

【小林良彰委員】  きょう配付の資料でわくわくしないという方が多いですが、私はわくわくしているのです。何でも都合のいいように解釈するようにしていますので。
 2点申し上げたいことがあります。1点は、昨年申し上げたことになりますけれども、やはり国際的な競争力を持った共同利用の拠点施設をどのように維持あるいはバージョンアップしていくかということが、日本の科学技術・学術の競争力を維持、あるいは上げていくために必要だと思います。たまたま先月、四つの国のJSPSのような機関に呼ばれて、評価をしに、いろいろなところに行ってきましたが、アメリカはもちろんですが、中国にしても、想像以上の速度でレベルアップしているものを作っています。そういう意味で考えると、残念ながら日本の場合は、高度成長の中で作ったものが多くて、40年から60年ぐらい、既に経年劣化して、維持も問題があるところがあると思います。そういう中で、昨年の環境基盤で議論していく中で、一番感じたことは、法人の壁がすごく強いということです。今、高度経済成長中で一度にわっとみんな設備投資できればいいのですが、そうでない中でお互いに譲り合わなくてはいけないのですが、これだけ法人の壁が強くて本当にできるのかなという気がしています。そういう意味では、連合体を作るというところまでは何とか来たと思うので、その連合体の中をどうするのかということが、一つ大きな議論として言わなくてはいけないと思っています。
 それから資料3-1の、12ページの下線の下から5行目ですが、新たな学際領域の開拓というのが書いてある。ここはわくわくしているところなのですが、ただ、こういうことをしたり、先ほどの設備をやったりしていく上で大事なことは、何かを始めるためには何かをやめる勇気を持たなければいけないということです。何でも八方美人的に維持していくということは多分できないと思います。それを嫌われるのは嫌だから、長く維持すると何も始まらないし、新たな学際領域の開拓もやはりできないと思います。そういう意味では、井野瀬先生と意見が違って申し訳ないのですが、参考資料2の柴山イニシアティブの厳格な評価の撤退も含めて、私は、これは必要だと思っています。
 それからもう1点申し上げたいことは、人文社会のことはいろいろと出てはいるのですが、事務局のおかげで、随分昔に比べると、かなり人文社会の役割も認識していただいていると思いますが、私は入り口と出口だと思います。入り口については、人文社会が何かをくださいというのではなくて、自分から社会的課題を発見して、今、日本にこういう課題があるということをもっと提示していかないといけない。それを具体的に解決するところは、理系の方の力が中心になるかもしれませんが、出てきた結論をどうやって社会に実装するための法制度改革をするのか、この出口はまた人文社会が役に立つことがあると思います。この辺をもう少し、次の6期あるいは学術分科会でも議論していくことができればと思っています。
 以上です。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。
 次に、新福委員、どうぞ。

【新福委員】  ありがとうございます。私も日本学術会議の若手アカデミーの方から副代表ということでこちらの会議に呼んでいただいたと思っておりますので、先生方のような大所高所からの意見というのはなかなか言えないですけれども、若手ならではの現場からの意見というものを届ける役割と思って発言をさせていただきます。
 やはり我々が学生さんと接している中で、女性の学生さん、特によく言われることは、研究者になると結婚を諦めた方がいいんじゃないか、また出産は無理なんじゃないかというような相談を受けることがあります。若い世代、大分「悟り世代」と呼ばれていまして、学術や研究にまい進するということだけではなくて、やはり自分のライフも充実させたいというようなニーズがありますので、我々世代が幸せに見えないと、次の世代が入りづらいというところをすごく感じております。その部分は現状として問題だと思っているのですが、やはり一番は、日本学術会議若手アカデミーは、若手のスター選手がそろっておりまして、外部資金も多く取って活躍しているのですが、彼らはすごく忙し過ぎる、潰れないかなというぐらいに仕事をしているのをすごく感じます。どうにか何かの仕事を減らせないかなと思ったときに、大学内の雑務ですとか、入試監督とか、何かほかの外部資金を取られていない、研究活動が活発でない先生方と比べて、そういった仕事の振り分けというのを少し考えてもいいのではないかなと思うことがあります。
 それに加えまして、人文社会のお話も先ほどございましたが、若手アカデミーと文部科学省の方とも会議を持ちまして、人文社会の先生方がおっしゃっていたのは、そういった学際だとかグローバルだとかの研究というのはすごく大事だというのは分かるんだけれども、社会学・人文学の研究者としては、自分の持っているこの文献だとか研究材料をすごく自分一人で深めていく、その時間が欲しいから、大事なのは分かるけれども、正直なところ自分がそこを率先してやろうとは思えないというのをおっしゃっていました。そういった中で、どちらかというと社会実装のことをやっている研究、医学ですとか防災ですとか、そのあたりの研究者というのはすごく積極的に学際だとかグローバルをやりたいと思っている者もおりますので、そちらの人たちが人文の人たちを巻き込んで、うまくあなたの研究はこういうところに役立つんだから是非来てくださいというような形で進めていくと、うまく進んでいくのではないかと思っております。
 そういった点で、若手アカデミーですとか、世界版のグローバルヤングアカデミーというものもございまして、そちらに私も含めた数名が入っております。そういった若手の集まりが学際的な活動をしておりますので、先生方には是非御活用いただきたいなと思っております。
 以上です。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。最初のダイバーシティ&インクルージョンの問題、これは日本としては非常に深刻な状況で、World Economic Forumが公表しているGlobal Gender GAP Report 2018でも、日本は110位という状況です。学術研究を進める、あるいはイノベーションを起こすという観点で、ダイバーシティ&インクルージョンは本質的に重要なことですので、そういう観点からの御意見等を今後いただければと思います。
 次に、武内委員、よろしくお願いします。

【武内委員】  きょうの議論の中で一番印象に残ったのは、これはどこでもそうなんですが、日本の科学技術を含めて国力が低下しているという問題提起をして、そしてそれを克服するためにはこういうことをしなきゃいけないんだという議論をするんですが、本当に過去のような状態にまで戻すことが良いことなのか。あるいはもう現在の状況を考えたら、新しい将来像を定めて、そこに到達するにはどうしたらいいのかということを考えるのかという、私はその後者の在り方についてもっと考えるべきだと思うんですね。ここで未来社会ビジョンって書いていますけれども、個別にはそれぞれどうあったらいいかということを言っているのですが、トータルとしてどの程度のサイズ感の未来像をこれから描いていくのかという、そのトータルが、全体像が書かれていないんですね。これは、私はSDGsもそうだと思いますし、それからSociety 5.0もかなり手法になっている面があると思います。
 一例を申し上げますと、私、ずっとアフリカのことをやっているんですが、ODA、昔は日本がトップだったんですね。アフリカ、そして今、中国に抜かれてしまっているわけです。現実に、じゃあアフリカに行って、日本は駄目なのかというと、そんなことはなくて、日本はちゃんと質の高い援助をしている。そして今やアフリカはビジネスチャンスにもなっていて、そしてODAを行う民間の力というのが活用できると。そして何よりもアフリカの人たちは日本人のことをすごく仲の良いパートナーだというふうに認識してくれているんですね。そのことのトラストというのは非常に大事で、そういうものの科学技術版みたいなものが本来あるべきなんじゃないか。中国に負けて、それで順位が下がった、イタリアにも負けそうだという危機をあおって、そしてそれを予算獲得につなげるような、こういう論法だけでやっていくというのは、そろそろ脱却した方が良いのではないか。
 もう少しちゃんと未来社会のビジョンを描いて、そして例えば適正規模の社会像をもし提示できるんだとすれば、そこにどうやって向かっていくか。例えばで言うとジェンダーみたいなものはきちっとバランスをとっていくけれども、何も論文数で勝たなくてもよくて、むしろ質でインパクトの高いやつをどうやって公表していくのかというような、そういう一個一個の中身に入り込んで、どうあるべきかということを議論しないで、全部負けています、負けています、だから負けないためにはこうだという論理でやるのは、少し単純過ぎるという印象を私は持ちました。
 以上です。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。今おっしゃった新たな日本の強みを発揮する指標というのは非常に重要かと思います。貴重な御意見、誠にありがとうございました。
 それでは、山本委員から御意見をいただけますでしょうか。

【山本佳世子委員】  日刊工業新聞で、私は大学と社会の関わりを専門記者みたいな形で動いております。
 この半年ほど、共同利用の共同研究拠点ですとか、大学共同利用機関の取材や記事を多くしていたんですが、それの感想をちょっとお話ししたいと思います。先にほかの委員からありましたが、こういった共同利用の仕組みが研究力向上のシステム改革に重要だというお話があって、私もそれはすごく感じました。柴山イニシアティブの方でも、大学の改革と研究力向上と言っているわけですが、それは国の予算が限られる中で、どうすれば各大学が力を発揮できるかというところにポイントがあると思います。そのときに、難しいところをやるのに支えるポテンシャルがあるのが、この共同利用の形、仕組みじゃないかなと感じています。ですが、共同利用の仕組みなり力なりというものを、やはり知っているところがすごく限られていると。学術の研究型大学の先生方はもちろん知っていらっしゃるけれども、社会ではなかなか知られていない。私が書いた記事に対しての反響がちょっと薄かったことも含めて、科学技術系の広いステークホルダーとしても知られていない面が多いんじゃないか。企業の方も知らない、科学記者も余り知らない。それでいいのかということをすごく感じております。対するもので言いますと、科研費は、そういう意味ではもう科学技術のコミュニティーに相当、一般の方といってもいいくらいよく知られるようになって、それに対する理解は広がっている。その理解が広がっていることで国の支援になっているということを感じています。なので、共同利用についても、もっと変えていかなきゃいけない、理解していただいて、社会とつながるものなのだということをアピールといいますか、していく必要があるのかなと思います。利用する方も研究型大学の方が中心で、もっと地方の大学や私立大学などの方に利用してもらうことが大事なのかなと思いました。
 それからもう一つ、私も記事を書くときに迷うのが、ほかの委員の方からもありましたが、学術研究とはというのがちょっとやっぱり表現しにくいと、今も悩んでおります。先ほどありましたように、自由な発想とか内在的な動機というのは、非常に分かるんですが、その言い方をストレートにしてしまうというのは、やはり納税者にとって理解できるかというと悩ましいところ。広い意味で社会とつながっていく。今はすぐ何かに応用できるか分からないんだけれども、将来的に社会と必ずつながっていく研究なんだというような、何が出てくるかは分からないけれども、そういうのが学術研究だというところを伝えたいなと思います。私もまだ、どう伝えたら一番響くのかと迷っておりますし、それこそ現場の皆様とも一緒に考えていきたいと思っております。

【西尾分科会長】  どうもありがとうございました。様々な観点からの情報発信をしていただければと考えております。よろしくお願いいたします。
 今までに頂きました御意見を踏まえて、今後の審議を進めていきたいと思います。本来ならば科学官の方にも、御意見を伺いたかったのですが、今日は時間的に無理な状況ですので、お許しをいただければと思います。誠に申し訳ありません。
 ここで、了承を得なければならないことがあります。事務局から説明があったとおりで、今期は三つの部会に加え、人文学・社会科学特別委員会を設けるということで進めさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。御異議はありませんか。

 (「異議なし」の声あり)

【西尾分科会長】  どうもありがとうございます。
 なお、委員会の委員及び主査は、分科会長が指名することになっておりますので、委員会に御出席をお願いする委員各位には、それぞれ後日、相談をさせていただきます。大変お忙しいと思いますが、その委員会につきましても御協力を頂きますよう、よろしくお願いいたします。
 本日は、初回ですので、皆様から一言ずつ意見をお伺いできればと思いまして、その結果、時間が超過していまい誠に申し訳ありませんでした。
 それでは、事務局から連絡事項等あればお願いをいたします。

【春山学術企画室長】  失礼いたします。次回の学術分科会の日程については、5月の下旬を予定しております。具体的にはまた御連絡をしたいと思います。
 また第6期の科学技術基本計画に向けた検討については、会議の中でございましたとおり、まず事務局で素案を、きょうの議論を踏まえて作成いたしまして、御意見を伺いたいと思いますので、その際にまた御協力いただければと思います。
 また議事録ですが、会議の中でも御説明しましたとおり公開ということになっています。本日の議事録についても、後ほどメールで御確認いただきまして、その後、公開という形になりますので、どうぞよろしくお願いします。
 以上になります。

【西尾分科会長】  今、お話がありましたように第6期の科学技術基本計画の策定に向けて、この分科会からいろいろな意見を言っていただくということは非常に重要であり、しかもタイミングのことがございまして、その締切りが結構迫っております。皆様から積極的に御意見をいただければと思いますので、何とぞよろしくお願いいたします。
 それでは、これで閉会をさせていただきます。どうもありがとうございました。


 ―― 了 ――

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