学術分科会(第67回) 議事録

1.日時

平成29年8月23日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省東館3階第一講堂

(〒100-8959 東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.出席者

委員

(委員、臨時委員)
西尾分科会長、安西委員、稲永委員、甲斐委員、勝委員、鎌田委員、栗原委員、小長谷委員、五神委員、白波瀬委員、荒川委員、井関委員、井野瀬委員、岡部委員、小川委員、喜連川委員、小林委員、小安委員、里見委員、城山委員、永原委員、山本委員
(科学官)
相澤科学官、稲垣科学官、相賀科学官、廣野科学官、米田科学官、東科学官、加藤科学官、杉山科学官、三浦科学官

文部科学省

伊藤文部科学審議官、関研究開発局長、中川総括審議官、板倉研究振興局審議官、松尾高等教育局審議官、渡辺振興企画課長、西井学術機関課長、小桐間学術研究助成課長、伊神科学技術・学術政策研究所学術基盤調査研究室長、山口学術企画室長、大洞基礎研究推進室長、石田学術研究助成課企画室長、栗原科学技術・学術政策戦略官(国際担当)付室長補佐、斎藤科学技術・学術政策研究所総務研究官、神田科学技術・学術政策研究所上席研究官、村上科学技術・学術政策研究所研究員、錦学術機関課学術研究調整官、早田学術機関課課長補佐、高見沢学術機関課課長補佐、松本学術研究助成課企画室室長補佐

オブザーバー

有本CRDSフェロー、松尾CRDSフェロー

4.議事録

【西尾分科会長】 おはようございます。ただいまより、第67回科学技術・学術審議会学術分科会を開催いたします。
 冒頭のみ、カメラ撮影を行いますので、御承知いただければと思います。どうかよろしくお願いいたします。
 まず、配付資料の確認等々でございますが、まず、事務局の異動がありましたので、御紹介のほど、お願いいたします。

【山口学術企画室長】 前回3月の分科会以降、事務局に異動がございましたので、紹介いたします。
 まず、文部科学審議官、伊藤でございます。

【伊藤文部科学審議官】 伊藤でございます。よろしくお願いいたします。

【山口学術企画室長】 大臣官房総括審議官、中川でございます。

【中川総括審議官】 中川でございます。よろしくお願いいたします。

【山口学術企画室長】 振興企画課長、渡辺でございます。

【渡辺振興企画課長】 渡辺でございます。よろしくお願いします。

【山口学術企画室長】 学術機関課長、西井でございます。

【西井学術機関課長】 西井でございます。どうぞよろしくお願いします。

【山口学術企画室長】 学術研究助成課長、小桐間でございます。

【小桐間学術研究助成課長】 小桐間でございます。よろしくお願いいたします。

【山口学術企画室長】 基礎研究振興課基礎研究推進室長、大洞でございます。

【大洞基礎研究推進室長】 大洞でございます。よろしくお願いいたします。

【山口学術企画室長】 最後に、振興企画課学術企画室長の私、山口でございます。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【西尾分科会長】 どうもありがとうございました。どうかよろしくお願いいたします。
 続いて、事務局より、配付資料の確認をお願いいたします。

【山口学術企画室長】 本日は、本分科会では初めてとなりますが、ペーパーレス会議の形で実施させていただきます。配付資料一覧と、下線を付した3点の資料、それとJSTからの冊子については、紙ベースで机上にも置かせていただいておりますが、いずれにしましても、タブレットで全ての資料を御覧いただけます。不明な点などございましたら、随時、お近くの職員にお声掛けください。

【西尾分科会長】 どうもありがとうございました。
 念のためですが、カメラ撮影はここまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。
 それでは、議事に入ります。
 本日の議題は議事次第のとおりでございますが、まず、学術研究の研究力強化ということで、このことについて、事務局及び科学技術振興機構研究開発戦略センターより御報告いただき、皆様方とともに審議を行いたいと思います。
 はじめに、「基礎科学力の強化に関するタスクフォース」の議論のまとめと、「研究力強化に向けた研究拠点の在り方に関する懇談会」の報告書について、事務局から説明をお願いいたします。

【山口学術企画室長】 それでは、資料1と2を御覧ください。いずれも4月末に公表した報告書でして、枝番号1の方が概要になっております。
 中身に入る前に、簡単に資料1の位置付けについてですが、昨年末の大隅先生のノーベル賞受賞を一つの契機に、田野瀬前大臣政務官を座長として省内関係部局で設置しました、基礎科学力の強化に関するタスクフォースのまとめでございます。研究者目線に立つことに努め、大隅先生を含め、有識者からもヒアリングを行いながら、緊急的なアクションプランとして、中長期的な課題を含め、全体で約80項目の取組を掲げております。課題の性格に応じ、今般の概算要求や関係会議での検討など、各方面から御意見を伺いながら、具体的な検討を更に進めてまいります。
 それでは、資料1-1を御覧ください。
 まず1ページ目は、背景の整理です。近年の各種論文指標における量、さらには新領域への参画の遅れなど質、の両面での停滞傾向に象徴される現状を踏まえ、もとより密接不可分ではございますが、中ほどの3つの箱のとおり、研究費・研究時間、若手の環境、拠点といった3つの劣化・危機として、現状認識を基本的に整理いたしました。
 その上で、下の方ですが、大隅先生も指摘されていたことですが、科学を文化として捉えていく側面の醸成も、一つの根本的な課題である旨、問題意識をつなげております。次ページ以降が、以上4つの問題意識に対応した取組の方向性や対応策となっております。
 それでは、2ページ目を御覧ください。ここでは、チャレンジを継続的に支えるために、基盤的経費の拡充に努めるということを、いわば大前提としまして、そのため、例えば、法定福利費や消費税といった義務的経費、あるいは震災後の電気代や電子ジャーナル費といった運営経費の増なども、実質的に運営費交付金の枠内で負担してきていることですとか、ひいては人件費すら運営費交付金で十分カバーできていない状況に至っていることなども、引き続きしっかり説明してまいります。
 その上で、ページ左下ですが、事実上命綱的な存在ともなっております科研費では、採択率など量的な側面とともに、独立支援や国際対応を含め、若手支援を中心に、質的な改革を進めてまいります。また、中ほど、JSTの戦略的な基礎研究では、産業界との関わり方などのファンディング改革を、さらに、右下では、現場で必要以上の事務負担の一因とも指摘されております、国大法人等でのいわゆるローカルルールに係る一定の合理化、そういったものの促進なども掲げております。
 次に、3ページ目を御覧ください。ここでは、ページ右上の雇用状況の分布図が象徴的でして、若手ポストが大幅に任期付きにシフトしているという状況がございます。若手が、まずもって研究者としての道を目指し、さらに、研究に打ち込んでいけるようにということで、ページ左下からですが、博士課程の学生等が早期から、海外ですとか、企業ですとか、多様な経験を積む機会の支援。また、中ほどでは、一定の研究費と長期ポストを保証する卓越研究員制度について、現場の声も踏まえつつ、改善・拡充を図っていく。あるいは、研究支援の強化ということで、設備等の共用化促進。また、右下では、研究人材の育成・活躍の促進方策について、関係審議会で連携して検討していくといったことなどを掲げております。
 なお、少し戻りますが、中ほどにある、若手研究者へのポスト振替支援というのは、基盤的経費が厳しい状況下にあって、特に注力している施策の一つでして、承継職員に切り替わるまでの一定期間、若手ポスト確保のための人件費を、いわば助走期間としてあらかじめ補助することで、中長期的な年齢構成是正を促進していこうとするものでございます。
 続いて、4ページ目を御覧ください。右上にある、注目度の高い論文数の分布図に象徴されますように、日本でもWPIなどトップクラスの研究拠点のパフォーマンスは優れているものの、波及効果が限定的であるため、横展開もしっかり図っていくとともに、トップに次ぐ層の弱体化が著しいため、厚みを増す必要がございます。その際、特定分野であれば、拠点全体で必ずしも複数分野でとまではいかないまでも、きらりと光る研究も全国には少なくないことに改めて着目することが重要であるということでして、ここは後ほど資料2の方で少し具体的に説明を補足させていただきます。それと、右下では、ビッグデータなど時代の変化や経年に対応した各種インフラの充実などを掲げております。
 最後に、5ページ目を御覧ください。科学技術への関心については、内閣府の世論調査でも、理数離れも言われている若い世代も含め、経年では全般的に高まってきているものの、相対的に高い年齢層の方が意識が高いともされております。そうした中、国民の関心がノーベル賞受賞時などの、いわば瞬間風速だけで終わってしまいませんよう、今後、学びの過程で実生活・実社会との関わりをより重視し、高校では必修科目「公共」もできる新学習指導要領はもとより、身近な大人である親を含め、大人が積極的に見本を示していくということが、ますます重要になってまいります。
 そこで、下の方ですが、大人にも子供にも、科学を身近に感じてもらおうということで、場合によっては、観光など地域活性化とも結び付けながら、いわゆる科学コミュニケーション活動を更に促進してまいります。また、例えば、山中先生が自らマラソンをしてクラウドファンディングの形で集めておられる事例など有名でございますが、そういった寄附のグッドプラクティスの共有を図りながら、科学を、そして寄附を、文化として育む気運の醸成に取り組んでまいります。
 なお、参考資料2としまして、詳細は省略させていただきますが、科学技術イノベーション総合戦略など各種の政府決定等におきましても、政府研究開発投資目標である対GDP比1%を目指し、所要額の確保に取り組んでいくことを含め、このタスクフォースでの議論が相当程度盛り込まれておりますので、また御覧おきください。
 基礎科学力タスクフォースについては以上ですが、続いて、研究拠点に係る報告書の概要ペーパーである資料2-1を御覧ください。
 特に研究拠点の在り方については、3・4ページ目に位置付け等ございますように、元学術分科会長でもある平野先生を主査に、懇談会を同時並行で開催してまいりました。本分科会からも、稲永委員、大島委員、小林委員に御参画いただき、また、本日この後続けてプレゼンいただくJSTの研究開発戦略センターからも、貴重な分析などを頂きました。
 懇談会の中では、1ページ目に戻っていただきまして、中ほどに、今までの拠点政策の成果と課題ということで、一定の総括がございます。それらを踏まえ、柱の一つとして、先ほどタスクフォースの概要4ページ目で言及しました「特定の研究分野で世界と競争できる研究拠点の形成」について、特に検討を進めまして、概要ペーパーの主に2ページ目の下半分にございますような提言をいただいております。
 大意といたしましては、我が国全体の研究力強化を図っていくためには、トップレベルの話とともに、規模が小さいながらも特定分野では世界レベルの、全国に存在するニッチトップに改めて光を当てることで、イノベーションの源でもある多様で卓越した知の拠点を強化することが、今求められているということ。そして、その際に、学内特区的な限定的な取組にとどまらないよう、ホスト機関全体としてのコミットメント、具体的には、例えば、若手ポストの確保などのシステム改革ですとか、長期支援終了後の自立に向けた仕組みなどでございますが、これをしっかり求める一方、国といたしましても、WPIや共同利用・共同研究のいわゆる共共体制、あるいは人材施策など関連施策との有機的な連携を図った運用により、財源も限られている中、長期支援の相乗効果を生んでいく観点が重要であることなどが留意点として挙げられており、目下、概算要求に向けて鋭意検討中でございます。
 私からは、ひとまず以上でございます。

【西尾分科会長】 どうもありがとうございました。
 本日は、科学技術振興機構研究開発戦略センター(CRDS)より、有本上席フェロー、松尾フェローにお越しいただいております。「研究力強化に向けた研究拠点の在り方に関する懇談会」でも報告されるなど、研究拠点に関する審議調査を文部科学省とも連携して今まで進めてこられました。それでは、取りまとまった調査報告書について御説明をお願いいたします。

【有本CRDS上席フェロー】 有本でございます。隣の松尾と一緒に、10分ぐらいで御説明したいと思いますけれども、きょうはこういう機会を与えていただいてありがとうございます。
 タイトルは、「我が国における拠点形成事業の最適展開に向けて」ということで、JSTの研究開発戦略センターというのは何物かと。13年前にこれを設置したわけですけれども、あえて意図的、私は戦略的であったと思います。NISTEPというデータアナリシスが中心のシンクタンクがありそれに加えて、このような研究開発戦略センターを作ったのは、アナリシスだけではなくて、アクションのためにデザインをしていくというところで作ったつもりで、それがどれまで機能しているか。それも、だから、for JSTだけではなくて、for Japanですね。だから、後からまた御説明しますけれども、CSTIとか、あるいは、産業界とか、いろんなところでも議論しながら、あるいは、レポーティングしながらやってきたつもりです。私の担当しているのは、縦割りのナノテクとか、いろいろ先生方にも御支援いただいていますけれども、STI政策ユニットというのがありまして、ここの主たるものとしては、ずっとファンディングのいろんな制度改革をかけております。次のページ、2ページですけれども、この問題は拠点の形成事業ということになりまして、先生方御存じのように、もう猪瀬先生がずっとやられた「センター・オブ・エクセレンス」、もう20数年前から始まって、21世紀のCOE、それから、WPIとか、様々なものがあるわけですけれども、いよいよ今度はまた指定国立大学とか、卓越大学院とかいうものが出てきて、こういう歴史的なところをちゃんと見据えた上で、リファレンシャルにものを考えるだけではなくて、蓄積をしている。それが制度としての蓄積と同時に、現場のいろんな知識、それから、人脈というのもあるわけですから、それをよく見据えた上でやらないと混乱を起こすということではないかと思ってございます。
 次の3ページ、右下のページで、検討の経緯ということがあります。近回りのここ5年ぐらいのところで申し上げますと、CRDSでは3つほど戦略プロポーザルを出しています。一番上が「課題達成型イノベーション」ということで、当時第3期で、イシュードリブンのものを、ディシプリンベーストだけではなくて、社会的・経済的課題を設定した上で、どうやってそれをうまくスピーディに、確率も高く知識をマーケットやソサエティに持っていくか。ステージゲートだとか、その際にはPD・POの素質とか才能も含めて、能力がものすごく大事になるというところまで強く言ったつもりでございます。それから、2016年3月には、第5期基本計画へのインパクトということでありました。
 基本的に我々のやり方というのは、成果を身内で作っておいて、それで何かやってくれというのではなくて、このプロポーザルを作っていく形でステークホルダーを巻き込んでいく、それが一番大事ではないかと思っています。2年前にOECDのInnovation Imperativeという戦略の中にもはっきり、新時代で、uncertaintyでcomplexな時代においては、戦略を作って、さあ、それをどうやって実施するかだけではなくて、むしろ戦略を作る過程にしっかりリソースを配分し、ステークホルダーを巻き込んで、いろんなところを潰し、ネットワークを作った上で、大きなお金を出していくというふうにしないとうまくいきやしないということまではっきり言われているものですから、そういうアプローチを取っているつもりです。
 さて、拠点の形成については、その下にありますように、ヒアリングを中心に、この中の先生を含むいろんな先生方にもお願いしたと思いますけれども、大学の幹部だけではなくて、政府のいろいろな各プロジェクトのPD・POの方、あるいは、URAの方、大学の事務局の方、こういう、それこそmulti-stakeholderの方にもヒアリングをし、それから、アンケート調査も100校以上で、80校ぐらいの回収率がありました。注目いただきたいのは、2017年1月・2月に、プレワークショップ、あるいは、ワークショップということをやらせていただきまして、これもさっき申しましたように、この問題、私はプログラム評価だと思っていて、プロジェクト評価とは何のためにやったかというと、制度を作る側、行政、それから、ファンディングエージェンシー、それから、今度、その制度を使う側と言いましょうか、そういうものを最初から巻き込んでいくということで、こういうワークショップを開催させていただきました。非常に印象に残るのは、2月のときには、高等局も含めて、文部科学省の担当課長、担当室長の方が7~8人ぐらい、経産省の大学推進課の方もおいでになりましたけれども、こういうやり方で今回まとめた次第でございます。
 ちょっと総論的なことが長くなりましたけれども、基本は、4ページにありますように、公的資金というものが、どういう全体の俯瞰(ふかん)的な構造になっているかということで、4兆数千億ぐらい動いているはずでありますけれども、こういう常に資金の構造と、今、競争的資金というのは、上側のところで盛んにいろんなものができているわけでありますけれども。
 それで、数年前に我々で出したときに一番インパクトがあったのは、これは第5期科学技術基本計画の直前だったと思いますが、2001年の総合科学技術会議の第2次基本計画以来、競争的資金倍増制度ということで、いっぱい制度を作ったんです。後で松尾さんから御説明しますが、課レベルでいっぱい作った。調整も十分せずにですね。それぞれの課としては、ローカルなオプティマイゼーションはしているはずなんだけれども、それが調整もされずにいっぱい作りまして、それをバブル的に可視化して、政治家にも分かるようにやったつもりですが、これは結構インパクトがあって、総合科学技術会議の第5期基本計画にも、ちゃんとそれを調整しながらやらないといけないということで、これは文部科学省の中での各担当課も非常に問題意識は持っておられると思ってございます。
 それから、次に、英語で書いて申し訳ないですけれども、6ページと7ページで、なぜ英語でわざわざ出したかというと、結構頻繁に、今、科学技術政策とか、こういうファンディングも含めて、SDGの問題にしろ、海外で議論することが多いんですが、そういうときに必ず、海外の連中も含めて、この2つのチャートが私は問題になると思っています。Multi-layered Governance System、上から目線でありますけれども、こういうPolicy Makingをするところ、それから、それをファンディングでオペレーションするところ、それから、それを実施するところ、大学とか、そういうものがうまくコヒーレント、信頼関係の中でConcerted Actionは起こっているのかというところは、各国とも非常に、今、過渡期の中で、問題意識としているということで、トップダウン、Political willのところとボトムアップのところをどういう具合にうまくデザイン、プログラムのデザインのときと同時に、オペレーションのときどうするかというところで、こういう絵を作って、きょう御紹介した次第であります。もちろん、このときに冷静な議論をするのはエビデンスベーストということになるかと思います。
 それから、次の7ページですけれども、これもちょっとけばけばしくて申し訳ないですけど、これは日本の、非常にセマティックに書きましたが、こういう左から科研費、JSPSのポーション、それから、JSTのドメインのところ、それから、NEDOとか何とかずっとあって、マーケット、ソサエティに行くというところで、様々なファンディングの制度が作られております。これも同じで、各国は、これをどういう具合にリシェイプというかということで、アメリカも、トランプ政権でおかしくなっていますけれども、DARPA型のものをどんどん、エネルギー省だけではなくて、いろんなところに入れていくということを意図的にやり始めておりまして、ヨーロッパもいろんな制度改革をやっています。この中でファンディングエージェンシーとしてのつながりということ、そのファンディングエージェンシーがそれぞれ持っているプログラムの中でのつながり。
 それで、私は個人的に心配なのは、最近もまたいっぱい、非難するわけではないんですけれども、SIPとか、ImPACTとか、いろんなものができて、それが既存のものと本当にconsistencyがあった上でやっているのかというところは、もう一遍よく見据える必要がある。これは、ここの議論だけではなくて、総合科学技術会議のレベルでもやらないといかんのではないかと思います。
 それから、次のページで、8ページに、これもあえて、アメリカで今、トランプ政権で20%NIHの予算が減らされるとか、National Science Foundationとか、いろいろ議論が起こっていますけれども、これ、2月にAAASというプラットフォームで、御存じだと思いますけれども、非常に面白い議論があったものですから。先生方御存じのアメリカの科学技術政策、あるいは、サイエンスのコミュニティでも立派な業績を出したブランスコムとか、それから、オバマ政権のチーフサイエンスアドバイザーのホルドレン、それから、ジェーン・ルブチェンコ、ブダペスト宣言を出した彼女、海洋学者ですけれども、この3人の基調は、ばたばたトランプ政権の政策を非難してもしょうがないのではないか。まず、what is science、who is scientist。このルブチェンコの最後のところを見ていただくと分かると思いますけれども、サイエンティストというのは、どういうストラクチャーの中で生きているのか、あるいは、どういうリワーディングシステムの中で自分たちの活動をやっているのかということをもう一遍ちゃんと見なさないといけないということ。その上で、社会から支持を得るというのが一番大事なのではないかということを、一種の危機でありますけれども、そういうことを言っておりまして、こういう議論が真っ当に本音でできるようなプラットフォームがアメリカにあるということですね。これが私は大事だと思います。
 では、次に、もうちょっと具体的に申し上げたいと思います。

【松尾CRDSフェロー】 CRDSの松尾です。私の方から、2年ほど調査してきました拠点形成事業に関する分析と提案をお示ししたいと思っています。9ページから御覧ください。
 まず、競争的資金の中における拠点形成事業の位置付けです。ここでは、競争的資金を、最先端研究の推進、イノベーションを指向する産学連携、教育研究の高度化の3つの政策目的と、事業の実施主体、研究室・グループ及び研究者レベル、学部・学科等のレベル、大学/研究開発法人等のレベル、それから、そうした枠を超えた地域レベルで分類しています。このようなレベルで分類しますと、拠点形成事業というのは、研究室・グループ及び研究者と大学/研究開発法人等の間の学部・学科等のレベルが主体となって進める事業であると言えます。
 そうした拠点形成事業に関しての変遷を示したのが、10枚目になります。拠点形成事業が本格的に始まった2001年から現在までの状況を示しており、数字は採択件数を示しています。この図から、1つは、この20年弱で、様々な拠点創設を目指した事業が設置されては消えてということを繰り返しているということ、もう一つは、それぞれの事業担当課が異なっており、複数の課・局・省が拠点形成事業に携わっているということが分かります。こうした複雑さが、拠点形成事業の全体把握並びに調整を難しくしているのではないかと考えているところです。
 拠点形成事業の資金面について見ますと、次のスライドですけれども、全体額、年々増加傾向にあり、2006年度では482億円だったのが、2016年度では576億円となっています。しかしながら、その内訳を見てみますと、再生医療、再生エネルギーといった特定分野を対象とした特定分野型の資金は増えている一方で、分野を特定しない、又は、融合的な領域を推進するようなプロジェクト・事業は減少傾向にあるということが示されています。
 さらに、もう1点、この資金規模に関してですけれども、1拠点当たりの資金規模で分析したのが、次のスライドです。拠点当たりの資金規模で分析してみますと、2億円以下の事業は減少している一方で、1拠点当たりの資金規模が中規模ないしは大規模以上の事業が増加しているということも分かってきました。
 次の3つのスライドで、こうした拠点形成事業において、大学の採択実績を示しています。2006年度、2011年度、2016年度の各大学の採択状況です。これをそれぞれ見てみますと、年々、一部の有力大学に採択が集中する傾向にあるということが分かると思います。
 駆け足で申し訳ないですけれども、16枚目に行ってください。ここでは、Scopusを用いまして、各大学の論文輩出状況を示しています。緑が教員現員数、それから、青が5年間で5件以上の論文を出している研究者数、赤がTop10%論文になります。青の5年で5件以上の論文を出している研究者は、全国の大学に一定数いますけれど、Top10%論文に限りますと、一部の大学に偏っている傾向にあるのではないかなということが示されています。
 ここまで、拠点形成事業、ないしは、どういった大学が拠点形成事業を採択したかということの分析をしてきましたけれども、こうした分析とアンケート結果や様々な方々へのインタビュー結果を踏まえまして、拠点形成事業に関する主な課題を整理していますのが、17枚目になります。
 ここでは、問題を3つのレイヤーに分けて考えています。1つは、日本全体として考えるべき課題として、グランドデザインの欠如、それから、選択と集中による偏りです。次に所属機関が関わるものとして、拠点が所属機関内で曖昧な位置付けにいるということ。それから、拠点自身に目を向けますと、資金面の不安定性からくる人材やインフラ確保に関する課題、拠点間でのネットワークの不十分さの課題もあります。さらに、拠点形成事業に限った話ではありませんが、事務的負担の増大、事業運営体制の未確立といった課題も顕在化していると言えます。
 こうした課題に対応する7つの提案を、我々のこの戦略プロポーザルの中で行っています。そして、こういった7つの提案を考える際には、18枚目のスライドで示していますけれども、左側のSTI政策と科学技術の現状、それから、大学等の状況、そして、拠点の現状を踏まえた上で提案を考えています。本日は、時間の関係から、提案1と2、それから、提案5を中心的に説明させていただきたいと思っています。
 次のスライドに移ってください。提案1と2は、1拠点当たりの資金規模に関することです。まず提案1は、5億円以上の大規模拠点では、事業終了時に大学等で吸収することが難しいことを踏まえまして、数を絞って、社会的要請に対応した特定分野を推進することです。そして、提案2は、中規模・小規模拠点は、世界的な拠点創出を目指し、幅広い分野の教育研究拠点を支援することを示しています。こうした多様な教育研究分野の強化に努めることで、台頭する科学技術や社会ニーズにも機敏に対応することが可能になると考えているところです。
 次に提案3は、多様な教育研究分野の支援の重視、それから、提案4として、大規模研究大学以外に対する支援を確保すべきではないかということも述べております。
 それから、22ページに行っていただきまして、ここでは、先ほどの提案例に沿って、拠点形成事業の全体の体系化を図ったイメージ例を示しています。本日、時間の関係から、このあたり詳細な説明は省かせていただきたいと思っています。しかしながら、こういった全体イメージを皆さんで議論しながら、今後実現していくべきではないかと考えております。
 次のスライドに移ってください。次のスライドで提案5を説明したいと思いますけれども、その前に、大学の教育研究組織における拠点の位置付けについて説明いたします。
 大学では、大学本部、そして、研究科・学部があり、さらに、それに付随又は独立した形で附置研や共同利用・共同研究拠点、さらには、時限付きセンター等があります。こうした中で、研究科・学部は、教育研究組織の中で基幹的組織としての役割を担っています。一方で、附置研や共同利用・共同研究拠点、時限付きセンター等は、先進的な教育研究へ挑戦し、大学の可能性を追求する組織と言えます。
 一方で、現在、これまでの拠点形成事業によって、拠点が多様な形態、規模で存続し、附置研等を含む組織全体が硬直化・固定化する傾向にあり、そのため、大学等の教育研究組織全体がエコシステムとして十分に機能しているとは言い難いのではないかと思います。
 こういった状況を踏まえまして、次のスライドですけれども、そうした状況を踏まえまして、提案5として、所属機関における拠点のライフサイクルの確立を目指すことを提案しています。具体的には、拠点創出の際には、既存組織の改編を促進すること、それから、事業終了後の継続スキームを明確化することです。こうした拠点のライフサイクル確立によって、教育研究組織を活性化することが重要であると考えているところです。
 25枚目には、提案6ですけれども、提案6は、拠点間のネットワークの構築・強化を示しています。特に人材面でのネットワーク化を促進することの重要性を示しています。
 それから、提案7ですけれども、提案7は、拠点運営の戦略的な資金計画の推進を示しており、事業期間終了後の拠点の形態にかかわらず、事業期間中において資金計画の戦略性の向上が必要であるということを示しております。
 以上、今回、駆け足でしたけれども、当方の戦略プロポーザルの一部を御紹介させていただきました。

【有本CRDS上席フェロー】 最後に、27ページに、拠点形成事業の今後の展開ということで、先生方のおかげで、今からいろんな拠点形成に関連するような施策・制度が設計、あるいは、実際に来年度概算要求、もう既にされているものもあろうかと思いますけれども、基本は、やっぱり府省・局課、まず行政、あるいは、組織の中にはファンディングエージェンシーがあるわけです。この辺、それから、この組織の中には大学もありますけれども、それの連携ですね。これだけ厳しい予算の中、どうやって効果的にこういうものをやるのかというときに、SDGみたいなものを含めて公募型の公的資金でこれができるのかというところも含めて、いろいろ議論をし、分析・行動するような、くどいようですけれども、プラットフォームを作っていくということで、この学術分科会のような重々しいところは、これはこれで大事なんですけれども、そういうものをちゃんと踏まえた上で、こういうところに持っていくというような仕組みがどうも日本はうまくできていない。
 それから、きょう、まだ我々の欠点は、かなり学術の分野のところでは、URA、ファンディングエージェンシーも含めて、カバーしているんですけれども、大学の各トップの方々が今苦労されているのは、企業からの資金の導入ですね。拠点整備のときには、それがものすごく今から大事になるはずなので、そのときには、各大学の幹部の方も戦略的に考えていると思います。ハードサイエンスの協力だけではなくて、それをどうやって、さっきのプロセス、大学のビジョン、それから、企業のビジョンと合わせた上でのプロセスとして考えていくというような仕組みも、次第に、各大学も作られ始めていると思いますけれども、そういうものを今からちゃんとリアルなものとして可視化していくということではないかと思います。
 ちょっと長くなりましたけれども、以上でございます。

【西尾分科会長】 どうもありがとうございました。
 山口室長には、文部科学省におけるいろいろな議論の報告を頂きました。また、有本様、松尾様からは、2000年代以降のいろんなことを今ここで振り返っていただきながら、エビデンスベースでいろんな観点から解析・分析いただいた結果、本当に貴重な示唆を多々与えていただきまして、まことにありがとうございました。
 どうでしょうか。いろいろ御意見等あるのではないかと思いますが。

【五神委員】 座長から指名されてしまいまして。
 今、2000年以降の分析は、そのとおりで、私の理解とずれていないと思いますが、実は、国立大学で言えば、国立大学時代、特別会計時代のときに何が起こっていたかというと、1990年の頭頃に、頭脳の棺桶(かんおけ)というふうに、当時、有馬先生なんかは言っていた。そのぐらい疲弊していたんですね。ですから、私が研究を始める頃は、優秀な人たちは、基礎研究所ブームのトップの民間企業に行くということがトレンドになっていて、各研究室にオーバードクターが10人ぐらいいるような状況だったんです。
 例えば、施設の維持というものがどういうふうになっていったかというと、昭和58年ぐらいからかなりひどい状況になっていて、そういう流れと行革というものがある中で、こういう施策が行われてきたということがあります。
 それから、私立大学はもっと厳しいんだと思いますが、国立大学で言っても、法人化のときに、オペレーションするための生活費については、公費が運営費交付金としてトランスファーされましたが、国立大学法人として、機関の独立した責任を果たすためには、管理コストが相当上がるわけです。つまり、施設がぼろぼろだというときに、それまでは国の責任ですから、その責任はヘッジされていたわけですけれども、法人化後は大学が責任を取るわけですね。ですから、壁がはがれて学生がけがをしたときの責任は、学長になったわけです。その管理コストが相当上がっています。それが運営費交付金の10%規模になっています。運営費交付金が10%減っていますから、2割減っている。
 その中で、科学技術基本計画の下で、いろいろな意味での大学が担うべき規模が増えているという中で、ベースのものが減っているという中で、やり繰りの経営手法が開発されなかった中で、若手の雇用が劣化したということがあって、東京大学でも、2006年から2016年で、40歳以下のパーマネント雇用が903人から383人に減って、520人減っている。半減以下だと。これは、大学が持っているタイムスケール、これは10年20年ではなくて、100年規模のこともやらなければいけない中で、将来に対する先行投資を怠っていくしかできない状況になったということがかなり効いていて、これはボディブローではなくて、もうかなりその効果が出てきて、かなり急落している。
 それを、2025年ぐらいに、団塊世代が後期高齢者になってしまう前に、日本はスピード感を持ってゲームチェンジをしなければいけない。そのときに、ナレッジベースでいかなければいけないので、ナレッジインテンシブな産業構造に転換する牽引力のあるインフラを持っているのは大学ですよね。これは、喜連川先生いらっしゃいますけれども、SINETとか、そういうものは、正にゲームチェンジ後の日本を支える産業インフラなんですね。それをグリップしているのは大学セクターだということを考えたときに、もっとスピード感のある分析と投資とマインドチェンジをしなければいけない。
 しかし、国は貧乏なので、それをどういうふうに財源を多様化するかというときに、そのストップされている資金が動く仕組みをどう加速していくか。その一部を学術コミュニティと行政の良質な信頼関係を作ってどうやるかという話で、どっちかがどっちかを叱るというような話ではなくて、もっともっと切羽詰まった話なんですね。
 ですから、先ほどの分析は、平時であればとても良いリポートだと思うんですけど、私の時間間隔、スピード感からすると、そろそろここで何とかしないといけない。私が参加していた未来投資会議では、そういう議論をかなりさせていただいていて、それを十分にここで受け止めていないのではないかということを、今のレポートを聞いて、少し残念に思いました。

【西尾分科会長】 五神先生、本当に客観的な視点からの御意見、誠にありがとうございました。
 今のコメントに対して、有本様から御意見ございますでしょうか。

【有本CRDS上席フェロー】 いや、もう弁解するつもりは全くないんで。これなんか、ずっと時間を掛けて、2年掛かりぐらいでつなげていますから、もうスピードが全く違うということはおっしゃるとおりでありまして、こういうものがあった上で、これは1つのオプションですから。それで、現実にどういう具合にカスタマイズしていくかということを、本当にスピード感を持ってやらないといけないということで、もう五神先生のおっしゃるとおりです。私、五神先生の分析はものすごくインパクトがあって、東大でも、下の若い人たち、五神先生がグラフを書かれましたね。あれが致命的に今ボディブローのように効いており、人材の劣化ということがあるのではないかと思います。
 それから、もう一つ、もう一遍強調したいのは、しかし、こういうものが、五神先生は投資会議とかいろんなところで言われているんだけれども、本当にアカデミックなコミュニティの中で共有されているのかというところが最大の、むしろ企業人のトップの方が心配し始めているぐらいということで、これをどうやっていくかというところは、学術会議も責任は重大だと思いますけれども。だからこそ、何をやるのかというところも大事で、SDGなんかは一番学内で誰も反対しやしないんだから、そのうちのワンポーションでもいいから、いろんな資金を集めて、そういうプレジデンシャルイニシアティブでアクションをやってみるということではないかと思いますけれども。

【西尾分科会長】 どうもありがとうございました。
 ほかに何か御意見等ございますか。今の有本様からおっしゃっていただきましたスピード感ということは、非常に重要なことだと思っておりますけれども。
 学術会議という言葉が出ましたが、井野瀬委員、いかがですか。

【井野瀬委員】 ありがとうございます。責任は非常に感じております。
 お話を聞いていて、それから、五神先生のお話も聞いて、例えば、今SDGsの話を有本さんもなさいましたけれども、SDGsをツールとして、それに大学等々がどういうふうに取り組むかということが、1つ、対話のきっかけになるのではないかなと思いました。五神先生がおっしゃったことが、広く多くの大学で共有されているとは私自身も思いません。その危機感を広めていくためには、漠たるものではなく、何か具体的なツールが必要であり、そのツールの一つとして、ツールと言っては失礼かもしれませんが、SDGsにどう取り組むかという具体的な問題設定はあるのではとは思っています。
 プラス、大事なのは、双方向性だと考えています。つまり、SDGsと大学等々がどう取り組むかということと、それによってSDGs自体をどう変えるか、その意味での双方向性です。今あるものが、それでパーフェクトではないわけで、国際会議等に出ていても、少し考え方が偏っていると思うところもあるので、それを議論しながら、双方向で変えていくという、そういう意味で、有本さんがおっしゃった、本気で考えていくプラットフォームが必要だと思います。分析するだけではなく、デザインし、そしてオペレーションしていく、そのデザインとオペレーションをつなぐプラットフォームが絶対必要だということについては、全くそのとおりだと思います。
 学術会議がその役割を果たせるかどうかは、これからの議論にかかっていると思いますが、学術会議でも、今、SDGsへの対応を、国際ではなくて、科学と社会というインターフェースで考える委員会を立ち上げておりますので、今後、その展開のなかで、本日、五神先生、そして有本さんに言っていただいたところをつなげていきたいと思います。
 もうひとつ。何よりも双方向で議論する、いろんなバージョンで双方向性を考えるということ、多くの人を巻き込むということを有本さんはおっしゃったと思いますが、その意味で、大学の中のいろんなレベルで、先生方や大学の経験を議論に巻き込みながら共有していく、そういうプラットフォームづくりが何よりも日本に欠けていたことを改めて痛感しました。学術会議につなげたいと思います。ありがとうございます。

【西尾分科会長】 どうもありがとうございました。
 ほかにございますか。特に研究拠点ということで、日本全体でのいろいろなストラクチャーのお話がございました。こういうことに関しましては、文部科学省の中で、稲永先生をヘッドとして様々な議論が展開されております。先生、何か御意見ございますか。

【稲永委員】 ありがとうございます。
 研究拠点というものについても、まだいろいろな考え方があります。また、国際化ということについても、昨日研究環境基盤部会で議論をしましたが、委員それぞれで捉え方が大きく違うと感じています。
 先ほど五神先生がスピード感を持って対処することが大切と言われましたが、全く同感です。しかし、こういう委員会に比較的長く関わらせていただいているんですが、議論に繰り返しが多く、前に余り進んでいないと感じています。例えば、スクラップ・アンド・ビルドは非常に大事という点では一致するのですが、きょうの御報告でもありましたけど、具体的な議論になると、いろんな意見が出てきてなかなか結論にまで至りません。限られた予算の中で、どうやって効果的、効率的に学術を発展させるかは緊急の課題だと思うのですが、今お話ししたように議論を前に進めることに関して苦労しているのが現状です。
  とはいえ、スピード感に欠けていることを放置できませんので、これは何とかしなければいけないと思っています。ありがとうございました。

【西尾分科会長】 どうもありがとうございました。
 ほかにございますか。
 五神先生おっしゃいましたように、有本上席フェローの方から御説明いただいた内容のことを、待ったなしでどんどん実施していかないと、苗床が枯れてしまっていく状況が、もう既に来ているということだと思います。そういう観点からは、有本様から、この学術分科会はなかなか動きが重いという表現がございました。そこで、これからは具体的にどうしていくのかということを、この分科会でも待ったなしで議論していかなければならないと思っております。
 ほかに御意見はございますか。

【有本CRDS上席フェロー】 先生、よろしいですか。すみません、同じことの繰り返しになるんですけれども。
 私もJSTをずっと見ていますし、それから、今、大学の方でも見ていますけれども、それぞれが問題意識を持っているんだけれども、何かもうトラップされているんですね。マインドセットと同時に、その制度が、もうみんな集まって何かやろうと言えばできるようなところまで、もうクリティカルポイントまで来ていると思うんですけれども、ファンドを作っても必ず旧来型のファンドになっちゃって、公募でやって、またピアレビューをやるんだとか言っていたら、もうとにかくしょうがないんだよというところまで来ていると思いますけれども。
 それから、人文・社会系との協力ということで、小長谷先生がおられますけど、ずっと言い続けて、センター・オブ・イノベーションでやっているんですけどね。それで、センター・オブ・イノベーション、18か所やっていますけれども、その11か所で人文・社会系の方々が活動されているものだから、半日がかりでいろいろワークショップをやってくださって、本当に役に立っていると思うかと聞いたら、3か所ぐらいのところで役に立っていると。なぜ役に立っているかというと、理工系の方々が単なる格好付けのために呼ぶだけじゃなくて、最初のデザインのところ、イシューをどうやってスコーピングしていくかというところから自分たちの役割というのがあり、そこが一番大事ではないかということを言ってくれてですね。こういうケースがいっぱいあると思うので、それをどうやってみんなで共有して集積してくか。これは役所の人にも、ものすごく大事だと思います。
 以上です。

【西尾分科会長】 どうもありがとうございました。
 どうぞ。そうしましたら、時間のこともありますので、最後のコメントということで。

【小安委員】 ここで今まで言っていらっしゃったことは、ずっと我々感じていたことです。また資料も、ずっと言い続けてきたことが単に書いてあるだけにしか私には見ません。いろいろな数字がどんどん下がってきているということは、逆に言えば、新しい施策をやればやるほど状況を悪くしていっただけじゃないかというふうにも読めますね。前のシステムの方が要するに成果は上がっていたのに、新しいことをやればやるほど物事を悪くしているという側面が本当になかったのかという、そういう反省がどこかにないのかなというのを、私はこういうデータを見ていていつも思います。基盤的経費を削っていって、いろいろなプログラムを作るけれど、そのやり方が本当によかったのかというあたりも、きちんと分析してほしいなと思います。
 以上です。

【西尾分科会長】 どうもありがとうございました。
 そういう意味で、今までの問題点を総括的に掘り起こしていただいたということの貴重な報告と考えたいと思っています。
 今の御発言を踏まえて、どういうアクションを取っていくかということが非常に大事だと思いますので、今後、文部科学省の方で対応等について是非ともお願いいたしたいと思います。どうもありがとうございました。
 次は、学術分科会の下での各部会等の審議状況等について御報告いただきます。
 各部会の開催状況等については、資料4に記載しておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 本日は、科学研究費改革の動向、学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想「ロードマップ2017」について、科学技術・学術分野における国際的な展開に関するタスクフォースについての3つを続けて報告いただき、まとめて審議の時間を取らせていただきたいと思います。
 なお、有本上席フェローは、お時間の加減で、途中で退席されるということですので、本日は本当に貴重な御報告をどうもありがとうございました。それをこの委員会の今後の審議の中で、是非、生かしていきたいと思います。

【有本CRDS上席フェロー】 どうも申し訳ありません。今からちょっとカザフスタンまで、SDGの関係で。

【西尾分科会長】 ありがとうございました。
 それでは、最初に、研究費部会の報告をさせていただきます。
 研究費部会では、審査部会との合同作業部会として設置しております科研費改革に関する作業部会の議論を踏まえまして、科研費改革に関する議論を行ってまいりました。本日は、研究費部会の審議状況等を報告させていただきます。
 まず、資料5-1を見ていただければと思います。前期、第8期の「研究費部会提言」を踏まえた改革の具体的取組状況等についてということで、昨年12月に研究費部会において、「科研費による挑戦的な研究に対する支援強化について」と題する提言をまとめたところです。以降、その提言を踏まえ、科研費改革の具体的な取組が進んでいる状況です。お手元の資料5-1を御覧いただきますと、研究費部会提言における主な内容について、それぞれ一番左の欄に提言の抜粋、真ん中の欄に文部科学省の、先ほど報告ありました基礎科学力の強化に関するタスクフォースの「議論のまとめ」の抜粋、一番右に、それらに関係する科研費改革の具体的な取組状況として整理されております。
 研究費部会において進捗を確認して、そのような改革を今進めている状況です。時間的な制約もありますので、詳細に説明させていただくのは省略しますが、全てが一対一で対応しているわけではございませんけれども、基本的に研究費部会の提言を踏まえ、着実に改革が進められているということを御理解いただければ有り難く思います。
 1ページ、2ページには、既に今年度から実施しております挑戦的研究のことについて記載しております。なお、挑戦的研究の応募・採択状況等については、皆様には御関心あることだと思いますが、資料の最後のページのところで示しております。これも時間の加減で省かせていただきますが、是非、御参照いただけると有り難く思います。
 3ページには、「若手研究(A)」の新規公募停止に関すること、「若手研究」から「基盤研究」へのステップアップを促進する取組について記載いたしております。
 4ページには、今年9月の公募要領から見直す「若手研究」の応募要件見直しについて、5ページには、これも今年9月の公募要領から対応する「特別推進研究」の見直しに関することを記載いたしております。
 なお、後ほど説明いたしますけれども、この資料の中にも出てまいります概算要求関連事項に関しては、今年4月以降集中的に議論を行い、方向性をまとめてきたところです。こうした取組については、平成27年度に決定した科研費改革の実施方針にのっとり、着実に実行しているところです。
 以上のとおり、研究費部会においては、前期の提言、さらには、文部科学省のタスクフォースでの議論を踏まえ、着実に科研費改革が進行するよう審議を進めております。今後は、新学術領域研究の在り方や重複制限の在り方等、中長期的な課題も含めて審議をしていく予定でございます。
 特に、今年9月からの公募要領で始まります来年度の科研費に関しましては、大きな改革が今後進むことになっておりまして、それに関しまして、今、着実にフィージビリティスタディ等を行いながら、それがスムースにいくように努めているところでございます。
 次、資料5-2ですけれども、科研費改革の当面の取組についてということで、これは来年度の概算要求に向けた考え方をまとめております。この考え方については、作業部会の議論の中で、今年4月に本部会として了承したところです。資料に記載しているとおりですけれども、平成30年度概算要求に向けて大きな柱として、2点打ち出しております。
 主な点を説明させていただきますと、1つ目の柱は、中核的研究種目、具体的には基盤研究の充実を通した「科研費若手支援プラン」の実行です。科研費の骨格として機能しております「基盤研究」のうち、特に「基盤研究(B)」等を重視するという文脈の中で、前期、第8期の本部会提言において提示しました「科研費若手支援プラン」を着実に実行するという趣旨の内容などで構成いたしております。
 2つ目の柱は、国際共同研究の推進です。国際共同研究強化について、現行制度に加えて、海外研究者との共同研究の様々な形態に対して、より柔軟な支援を実施するということによって、国際共同研究の基盤強化を図るなどの方向性を示しております。この国際共同研究の推進については、資料の2枚目に、現段階で考えております改革の方向のイメージを載せております。
 以上、科研費改革の進捗状況と概算要求に向けた考え方について報告をさせていただきました。文部科学省におかれましては、特に概算要求につきましては、この考え方に基づきまして、是非とも、今後しっかりと取り組んでいただければと思いますので、何とぞよろしくお願いいたします。
 それでは、次のことでございますが、「研究環境基盤部会学術の大型プロジェクトに関する作業部会」の主査でいらっしゃいます小林委員より、学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想、いわゆるロードマップ2017について御報告いただきます。お願いいたします。

【小林委員】 皆様、資料6を御覧いただければと思います。本部会の下の環境基盤部会に置かれております学術研究の大型プロジェクトに関する作業部会が、先月末、7月28日に策定しましたロードマップ2017について御報告させていただきます。私は、今期、第9期の本作業部会の主査を務めて、本ロードマップの取りまとめに当たらせていただきました。
 表紙と目次をおめくりいただいて、1ページ目、上から4つ目のパラグラフを御覧いただければと思います。本作業部会におきましては、日本の研究者コミュニティの代表機関であります日本学術会議がマスタープランで選定した学術的意義の高い大型プロジェクトのうち、推進に当たって優先度が高いと認められるものを選定し、「ロードマップ」として、概ね3年ごとに策定しております。
 続いて、4ページ、一番下のパラグラフを御覧いただきたいと思います。ロードマップの策定意義として、その果たす役割をまとめております。次の5ページにまたがって、過去のロードマップと同様の考えが示されておりますが、最後の4)においては、新しい考えとして、国際協力の促進を図る上で重要な役割を果たし得ることを盛り込んでおります。
 続いて、6ページ、(4)学術研究の大型プロジェクトの推進方策の改善の方向性を御覧いただきたいと思います。本ロードマップの策定に先立つ今年3月、本作業部会で、これまでの大型プロジェクトの推進状況を踏まえて、その実施及び評価の仕組みについて、更なる改善を図るための方向性を取りまとめました。
 マル1のロードマップの策定にありますとおり、今回のロードマップの策定から、選定対象を拡大いたしました。つまり、従来は、学術会議のマスタープランの重点大型計画をヒアリング対象としておりましたが、今回からは、重点に選定されたものだけではなくて、重点のヒアリング対象になったものも含めて、選定対象を拡大いたしました。それから、従来とは異なりまして、予算計画や人員計画を含む書面審査を導入いたしました。その書面審査を行いまして、マスタープランの重点のヒアリング対象となった65計画から、ヒアリング対象を20計画に絞りまして、そのプロセスの精緻化を図ったところでございます。この改善の方向性は、参考資料として後半に掲載しておりますので、御参照いただければと思います。
 続いて、7ページ目から8ページ目にかけまして、(2)作業部会における審議を御覧いただきたいと思います。今回のロードマップ2017においては、マスタープラン2017中の65計画から7計画を選定いたしました。前回のマスタープラン2014が11計画であったことから、11から7に減ったわけであり、更に厳選して選定したものであります。
 8ページ目、下から4つ目のポツにありますとおり、改善の方向性を踏まえて、特に計画の着手、具体化に向けて緊急性及び戦略性が認められるものを従来にも増して厳選した結果ですので、時間を掛けてでも、これらが様々な形で予算化されることを期待するものであります。単なるリストを作ったつもりではなくて、予算化されるということを是非期待するものであります。
 具体的な7件につきまして、選定されたものについては、15ページから16ページの別表を御覧いただければと思います。本作業部会においては、各計画に対して、評価マル1といいますのは、計画推進上の基本的な要件に関するもの、それから、評価マル2というのは、計画推進上の優先度に関するもの、並びに主な優れている点、とともに課題留意点を取りまとめて、各計画提案者にお伝えしたところでございます。
 ページを戻っていただきまして、11ページを御覧いただきたいと思います。最後に、(3)大型プロジェクトの推進に向けてに触れたいと思いますが、本ロードマップは、予算措置を保証するものではありませんが、関連予算である「大規模学術フロンティア促進事業」について、先ほどお話しした改善の方向性や、本ロードマップ策定に合わせて行ったパブリックコメントなどを踏まえて、そのマネジメント強化を図ることとしております。今後、本作業部会においては、推進中の大型プロジェクトに関する評価及び評価結果を踏まえた対応の厳格化や、新たな大型プロジェクトの課題・留意点に関するフォローアップについて、具体的な方策を検討する予定であります。
 いずれにせよ、マスタープランというのは、優れた研究のリストでありますが、ロードマップというのは、予算化につながるということを強く期待するものであります。ただ、留意点も書かせていただいておりますので、それに対する各計画の提案者の対応を踏まえて、順次予算化されていくということを強く期待をして、以上、簡単ではございますが、ロードマップ2017策定についての報告とさせていただきます。
 以上です。

【西尾分科会長】 小林先生、どうもありがとうございました。
 是非とも、小林先生の期待を何とか実現していただけると有り難く思っております。どうかよろしくお願いいたします。
 それでは、最後に、「基礎科学力の強化に関するタスクフォース」での議論も踏まえ御審議いただいた、「科学技術・学術分野における国際的な展開に関するタスクフォース」の議論のまとめについて、事務局から説明をお願いいたします。

【栗原室長補佐】 科学技術・学術政策局国際戦略官付の栗原でございます。科学技術・学術分野の国際展開についての御報告をさせていただきます。資料7-1に基づきましての御説明になります。
 本件タスクフォースは、科学技術・学術審議会学術分科会の下での直接の議論ではございませんけれども、本年5月19日に、文部科学大臣決定を受けまして、水落文部科学副大臣の下に、科学技術・学術分野における国際的な展開に関して、取り組むべき施策や既存の施策の活用についての検討を行うというものとして、省内で水落副大臣を座長とするタスクフォースが設置されまして、5月24日、6月16日、6月27日と3回の議論を、安西JSPS理事長、濵口JST理事長、松尾名古屋大学総長、末松AMED理事長もお招きして議論を進めさせていただきましたものでございます。
 7月31日に報告が取りまとめられておりまして、公表がなされております。報告書そのものは、資料7-2といたしまして、タブレット上にございます。資料7-1に、概要を4ページでまとめてございますので、そちらで御説明をさせていただきます。
 赤い資料の標題が付いた1ページ目でございますけれども、まず現状における課題を整理してございます。本年3月のネイチャー誌でも、また、NISTEPの報告書でも指摘されているような、我が国の研究力の現状への懸念がございます。Top10%論文におけるシェアの低下や流動性の不足として挙げております。
 また、その要因といたしまして、国際共著論文、例えば、欧州では地理的な近接性もあるし、また、「Horizon」などのファンドを背景として、これが結果として共著論文の差として現れているという点、また、海外挑戦の機会の不足であるとか、留学生の数の減少傾向であるとか、大学内での教育研究の負担の増加ということも、課題の要因として議論の中で挙げられてございます。
 これらを踏まえての取り組むべき方策、対応の考え方というのが、中段の3という点でございます。3点にまとめてございます。
 1点目は、研究自体の国際化でございます。国内の優れた研究チームが海外の卓越した研究者と連携しまして、また、国内外から第一線の研究者を引き付けて成果の創出を図ること、これが挙げられてございます。
 2点目は、ファンディング機関や大学の教育研究環境の国際化でございまして、複数のファンディング機関が協力して、手続を合理化しつつ国際共同研究を支援するリードエージェンシーモデルであるとか、また、ファンディング機関で審査の改革も引き続き行っていただき、制度及び運用の改善に取り組んでいただくことを挙げてございます。また、大学では、学部生、大学院生の段階からの国際経験の蓄積であるとか、大学の国際ネットワークの構築などの、大学の教育研究環境の国際化を挙げてございます。
 3点目は、特に若手の研究者についてでございます。なるべく早い段階から、ここで高校段階、学部・修士段階と書いてございますけれども、早い段階から国際競争の中で切磋琢磨される機会を増やしていくべきだということが、この報告書で取りまとめた3点目でございます。
 また、国際環境の変化についても議論されてございまして、4点目、一番下の部分でございますけれども、本年3月に英国政府が正式にEUからの離脱を通知いたしまして、英国からのEUのファンドの獲得機会の喪失であるとか、それらに伴う研究者の流出への懸念が表明されていたり、また、本年5月に米国議会に提出されました予算教書での予算の削減案などに伴うような、米国の大学や研究機関からの危機感の表明もございます。これらの機会も捉えて、我が国の科学技術・学術分野の研究力を強化する観点での、米英や欧州との連携の対応が必要であるという点でございます。
 2ページ目、3ページ目には、これらの論点を踏まえ、問題意識を踏まえた具体的な対応策を挙げてございます。お時間も少ないので、簡単に御紹介いたしますけれども、2ページ目は、先ほど御紹介した論点の1点目につきまして、既に取り組んでいる様々なJSTの戦略的創造研究事業の中で、海外研究者の招へいであるとか、SICORPの事業での共同研究であるとか、また、現在までの様々な拠点形成事業でも形成されてきました国際的な拠点機能、これを継続・強化・拡充する点、また、更に新たに科研費での国際共同研究加速基金の強化であるとか、JSTの戦略的創造研究推進事業での成果も踏まえた様々な他事業への展開であるとか、外国人研究員の招へいの支援、また、こちらJSPSで取り組まれているマッチング支援等を進めるべきとしております。
 また、3ページ目には、論点の2点目、3点目につきましてですけれども、大学での国際共同研究のプログラム、ジョイントディグリーの拡大・普及のための制度見直しであるとか、また、老朽施設のリノベーション、国立大学等の老朽化施設のリノベーション等により、海外の研究者や学生の研究の活性化、コミュニケーションの促進につながるような魅力的な研究環境を創出する点を書いてございます。
 また、ファンディング機関でのリードエージェンシーモデルの採用であるとか、外国人研究者による査読の導入であるということを、速やかに取り組むべきものとしてございます。
 また、右側、オレンジ色の枠の部分でございますけれども、若手の支援について、JSPSで取り組まれております若手挑戦、また、ライフサイエンス分野での海外研究者との分野融合による研究支援の実施や、また、他分野、ライフサイエンス分野以外への今後の展開ということも取り組むべきとしております。
 そして、最後、4ページ目でございますけれども、既に先ほどから議論でも挙がってございますが、SDGsについてです。国連総会において採択されたSDGs17の目標と169のターゲットがございます。ここに文部科学省としてもしっかり取り組むということを、この報告書で記してございます。
 昨年12月に、安倍総理を本部長といたしますSDGs推進本部にて、SDGs実施方針が決定されておりますが、ここに文部科学省の取組の基本的考え方として、中段に挙げてございますが、このタスクフォースにおいて、ライフサイエンス分野(目標3の関連)であるとか、環境エネルギー分野(目標7や13の関係)、また、宇宙分野、海洋分野、その他、目標全般について、SDGsの目標について、文部科学省、日本政府の様々な施策の力を結集して、解決に取り組んでいくべきとしてございます。また、その重要性についての国際社会への発信も重要であるとして、結論としてございます。
 以上でございます。

【西尾分科会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、以上3点の報告でございましたけれども、これはにつきまして、御意見等ございましたら、何とぞよろしくお願いいたします。あるいは、委員会に御参画いただいていた委員の中からの補足的なことでも結構でございますけれども。
 安西先生、是非。

【安西委員】 この国際展開についての文章につきましては、一応日本学術振興会(JSPS)の国際関係事業に係る記載が、余りないということは申し上げておきたいと思います。国際関係事業はかなり長い間にわたって相当の蓄積がありますが、そのことがほとんど書かれておりません。

【西尾分科会長】 どうも貴重なコメント、ありがとうございました。
 科研費の改革の中でも、国際共同のことに関して、より力を入れるべきだということで、ここ数年間、そういうような動きも科研費改革の中でも行ってきたところです。

【安西委員】 多少誤解があると思いますので、重ねて申し上げておきたいと思いますが、科研費は補助金であり、その審査体制の改革は、相当の議論をして積み上げてきたものですが、今、私が申し上げましたのは、JSPSの運営費交付金の中で国際交流事業という形で実施してまいりました、多くの国際共同研究についての言及がほとんどないということでございます。

【西尾分科会長】 JSPSの国際交流事業の言及がほとんどされていないことを重く受け止めさせていただきます。貴重なコメントを頂き、どうもありがとうございました。

【栗原室長補佐】 この具体的な対応策の報告書の方には、外国人特別研究員の件でございますとか、また若手挑戦の件であるとか、また拠点の事業という書き方で具体的に書いてございますけれども、言及が不足していた点もあったかと思いますので、よく注意して、また引き続き取り組んでいきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【西尾分科会長】 どうもありがとうございました。どうぞ。

【五神委員】 科研費の件とロードマップの件について、2点、気が付いたことを述べたいと思うんですけれども。
 若手支援というのは極めて重要であると。特に30代の若い研究者が、自分の研究人生30年40年のスケールで新しい学術を作っていくと。そういうものにきちんとした支援をすることが、日本の科学技術力を作るという意味で極めて重要である。ですから、そのポストの用意の卓越研究員制度などとタイアップした形でやらなければいけない。
 しかしながら、一方で、日本の人口分布を見ると、よく男女で年齢分布というのがありますけれども、67~8歳の団塊世代があり、その下に団塊ジュニアがあり、それで、どんどん細っていくということであります。この10年間、先ほどの議論にもあったように、効果的な手が打てなかったということによって、ある世代のところで非常に研究がしづらくなってしまったという人たち、あるいは、現状の雇用体系の中で苦労している人たちがいます。
 その人、特に、例えば、団塊ジュニアの人たちは40歳を超えていますので、42~3歳ですよね。日本の全体の人的資源を考えたときに、その人たちはまだまだ20年30年働けるという中で、しかも、意欲と能力のある人がたくさんいるわけですね。特に初中の時代には日本の経済も良かったので、かなり教育投資が行われている世代がいるわけですよね。その人たちが、アカデミアだけではなく、産業セクターにも、いろいろな形で人は存在しているわけです。
 そういう人たちを、残り少ない勝負の期間、数年の中で何か画期的なチェンジをしていこうというときに、最大活用していかなければいけないということでありますので、例えば、10年間の時限でも結構ですから、そういったことを緊急対策として、漏れなく救えるような弾力性のある運用を工夫することが必要で、若手といったときに、硬直的な運用をしないようにしないと、貴重な既存の資源を失うことになってしまうということがあるので、是非お願いします。
 それから、ロードマップについては、日本学術会議で出したものの中から、予算化という視点できちんと選んでいただく。私もヒアリングにも参加しましたし、そういう視点で、緊急性とか、そういったようなことについてかなり真剣な議論があって、これは文部科学省の役所側、あるいは、コミュニティの側の共同作業として、かなり立派なものができたと思っています。こういった意味での行政と研究者コミュニティのハイレベルの信頼関係を構築していくというための作業としても、重要な活動であると思っています。
 ただ、問題は、その成果、その信頼関係を育てていくためには、やはりこういったようなものを実現していく必要がある。実現していくためには、予算化が必要だと。小林先生の方から、予算化頑張ってくださいという話がありましたが、多分、ここは親委員会であるので、むしろ行政側として、それを実現するためには、より上のレベルにどういう提案をすればいいのかというようなことをきちんと議論し、そこをアクティブに訴えていくということが極めて重要であると。
 私が見立てたところ、この7課題、重要な課題ではありますが、予算規模からいって、3年ごとにロードマップを定めているという期間で見たときに、3年以内にきちんと予算化することは大変難しい。これは既存の発想を超えて、例えば、フロンティアの中の見直しとか、そういう中でできるものかというと、多分、そうではないものも相当ある。しかしながら、基礎科学力は極めて重要であるということは、首相も理解していますし、国全体としても、やはり国力という面のベースとして、あるいは、大型研究も、国際的なステータスという意味で共同研究の場になるという意味での実績がある中で、そういうものを限られた、既に我々に与えられているパイの中でやるという議論をすることが、議論のコストとして正しいのかと。
 ですから、例えば、これはインフラ整備と同じような建設国債でやるべきものであるとか、そういったきちんとした議論を主張していくべきであると。そのためには、科学者コミュニティと行政の信頼感の下で整然たる議論が必要であって、そのベースができてきているということを使って、その先に進んでいく。そういう議論をここではやるべきではないかと思います。そうでないと、頑張りましょうと言っても頑張りようがないと、日本の財布を見たときに、これは無理ですという話になってしまうので、しかしながら、やっぱりそこの重要度をきちんと伝えていって、それを突破していく議論をしないと、やはり科学技術力が衰退していってしまうという流れは止まらないのではないかと思います。

【西尾分科会長】 貴重な2つのコメントありがとうございました。
 科研費のことについては、年齢の構成ということを今後きっちり考えていく必要があると思っています。
 もう一方で、ロードマップのことに関しましては、日本学術会議と文部科学省の信頼関係ということを小林先生強くおっしゃいましたけれども、そういう観点からも、ロードマップに書かれた計画を今後どのように実現するのかということが重要になってきます。その観点から、今、五神先生がおっしゃったような、もう少し大局的な議論が必要なのではないかということを思っております。
 五神先生、貴重なコメントありがとうございました。ほかに御意見とかコメントございますか。

【小林委員】 よろしいでしょうか。

【西尾分科会長】 どうぞ。では、最後のコメントということで。

【小林委員】 ロードマップを実現していただくためには、どうしてもフロンティア事業に関わるものと、そうでないものとあると思います。JAXAとか、別の予算のものもあると思うんですが。フロンティア事業は、現在10計画、計算によっては12計画稼働していると思います。これが平成25年に始まって、全て平成30年に終わるという形になりますと、その間、予算が横ばいであれば、右肩上がりに増えていけばいいんですが、そうでないと、新しいものが入ってこられないことになります。
 そうすると、私としては、フロンティア事業が、同時に始まって同時に全部終わるというのではなくて、少しずつずれていく必要が当然あると思うんです。つまり、毎年1つ終わって1つ入っていく、あるいは、1つか2つ終わって1つか2つ入っていくという形でないと、ロードマップが予算化されていくということは、現実的には難しいと思います。
 そういう意味では、幸か不幸か、前倒しで終わるフロンティアもあると思いますし、いろんな事情から、後ろ倒しで終わるものも当然出てくるんだろうと思います。
 そういうふうな形で、いろんな事情があって、それを少し柔軟に捉えながら、前倒しになるものも、あるいは、後ろ倒しになるものもということで、今後、フロンティア事業が同時に始まって同時に全部終わるというのではなくて、少しずつ毎年1件か2件ずつ終わって、新しく1件か2件ずつ入っていくという形になっていけば、ロードマップが一つずつ予算化されていくということが現実的になっていくんだろうと思います。
 是非、そういう形で、研究者コミュニティの代表機関であるマスタープランが、多くの人たちが期待をし、かつ、そこで選ばれた重点から更に選ばれたロードマップである以上、これが単なるリストで終わってはならないために、少しフロンティアの開始と終わりの時期についても、そういう形でずらしていっていただければと思っております。1つの提案としてお聞きいただければと思います。

【西尾分科会長】 どうもありがとうございました。
 五神先生がおっしゃっていただきました、今後、この枠組みをどのように考えていくかということについての1つの考え方、方策が、今、小林先生からコメントいただいたものと思っております。どうもありがとうございました。
 それでは、学術研究の最近の動向についてということで、最後に、学術研究の最近の動向として、科学技術・学術政策研究所より、科学技術のベンチマーキング等について御報告いただければと思います。それでは、説明をお願いいたします。

【伊神室長】 政策研の伊神でございます。資料8-1、8-2、これは紙でございますが、これを用いて御説明申し上げます。
 まず資料8-1、科学研究のベンチマーキング2017について御説明いたします。
 1枚おめくりください。最初の点にありますが、この「科学研究のベンチマーキング」というのは、論文の個別指標、複合指標を用いて、分野比較を含めて、多角的に主要国の論文分析を行うようなレポートでございます。
 3ポツ目にありますが、今回は、その論文産出構造の時系列変化をより詳細に見るために、部門別や各分野のより詳細な構造の変化を分析したということになってございます。本分析ですが、クラリベイト・アナリティクスのWeb of Scienceを用いて、自然科学系を対象に、アーティクル、レビューについて分析を行ってございます。
 3ページを御覧ください。これは日本の論文数及び被引用数が高い、注目度の高い論文数について、世界ランキングを分野別に示したものです。上が整数カウント、下が分数カウントです。整数カウントというのは、国際共著の場合、例えば、日米の共著の場合、共に1と数えるような方法、分数カウントは、共著の場合、2分の1、2分の1と数えるような方法でございます。矢印の始点が10年前、終点が現在ですが、例えば、整数カウントの一番左、全体ですが、日本の論文数は、10年前は2位だったのが、現在5位になっています。分数カウントに関しては、2位だったものが4位。注目度の高いTop10%論文に関しても、現状、整数カウントでは10位、分数カウントでは9位ということで、相対的な地位が低下している様子が、改めて確認されております。
 次のページを御覧ください。この間、日本の論文数がどう変わっているかという点を、4ページ、5ページにお示ししております。4ページは、整数カウントによる論文数の変化を10年前と比較したものを各国お示ししておりますが、日本に関しては、論文数は、1%の増加であり、ほぼ横ばいです。他方、Top10%、Top1%に関しては、12%、38%と伸びておりますが、他国を見ていただきますと、より伸び率が高いですので、相対的な地位は低下しているということになります。
 5ページ、こちらは分数カウントですが、論文数、Top10%、補正、いずれもやや微減ということで、これは主要国の中では、微減しているのは日本のみという状況になってございます。
 6ページを御覧ください。この報告書では、特定のジャーナルというものも分析しておりますが、ここではNATURE及びCELLにおける主要国の論文数シェアをお示ししております。これを見ますと、赤い線が日本ですが、2010年代に入って日本のシェアは減少しておりまして、現状では、中国にNATUREでシェアは抜かれているという状況でございます。同じような状況はCELL誌でも見えているということで、このような形で、今、中国がこのようなジャーナルでも日本よりシェアが高い状況になってございます。
 以降は、研究活動の様相がどう変わってきたかということで、幾つかの視点で結果を御紹介したいと思います。
 7ページ目は、先ほどもありました国際共著でございます。一番上を見ていただきますと、日本は、この10年間で国際共著率8ポイント増加しております。日本、国際共著は進んでいますが、その下の欧州に比べると、伸びは小さいです。ただ、これは国の近接性とか、そういうところも関係していると思います。注目すべきは中国で、2013年、15年時点では、国際共著率24.4%と余り大きくありませんが、中国の場合、論文数が多いですので、国際共著論文数、この赤で示した部分に関しましては、世界で第2位となっているということでございます。
 結果として何が起きているかと言いますと、8ページを御覧ください。これは米国における共著相手を示しておりますが、最新の分析ですと、全分野及び8分野中6分野で、アメリカの共著相手として、中国が1位に存在しているということになります。一方、日本の順位というのは、このような矢印で書いておりますが、相対的に低下しているということになります。
 以降では、論文数の変化、先ほど横ばい、微減と申しましたが、これが構造的にどのように変化してきたかというのを、9ページ以降でお示しします。以降、期間を幾つか分けて、これは論文数の変化をお示ししております。左の図で、1、2、3、4とローマ数字で書いておりますが、1というのは、90年代半ばから90年代後半、大まかに1期基本計画の間の論文数の変化とお考えください。2、3、4というのは、大体第2期、第3期、第4期の基本計画の間の論文数の変化とお考えください。
 9ページは、部門ごとの論文数をお示ししておりますが、期間1では、企業以外は、国立大学、私立大学、独法とも、論文が増加しておりました。2期に入りますと、独法と国立大学は論文が増加しておりますが、企業の論文数が低下してきています。続いて、3・4期は、企業の論文数が低下していますし、3期に関しては、国立大学の論文数が減っているということで、こういう形で、論文生産の構造も変わってきております。
 Top10%補正論文数、右にお示ししておりますが、ここで気になるのは、一番右の4期目です。ここで国立大学のTop10%論文数が減少しているということになります。ですので、この論文数の産出構造、部門構造というのも、この20年間で変わっているということが、この絵から確認できると思います。
 続いて、10ページを御覧ください。今は部門でしたが、今度は分野の構造がどう変わってきたかというのを、同じ見せ方でお示ししております。こちらは整数カウントですが、1期は、全ての分野で論文が増えてございました。2期になりますと、論文の伸びの度合いがやや小さくなって、3・4期を見てみますと、化学、材料、物理に関しては論文が減り、臨床医学の論文数が増えているというような状況でございます。
 右はTop10%論文数ですが、ここでも、臨床医学、環境・地球、基礎生命の数は増えていますが、化学、材料の部分では減っているということで、全体としては横ばいですが、分野構造が結構変わってきているというのが、この分析から分かります。
 さらに、12ページ、13ページを御覧ください。今、分野のバランスが変わっていると申し上げましたが、実は、分野の中でもかなり構造変化が起きております。
 12ページを御覧ください。ここでは、材料、物理の時系列変化を示しておりますが、材料科学に関しましては、冶金、セラミックス、このあたりが低下する一方、ナノテクノロジー、生体材料、ここのあたりは増えていいます。
 一方、物理に関しましては、凝縮物質(固体物理)が減り、応用物理も減っています。一方で、天文とか素粒子、宇宙論、このあたりは増えているということで、物理の中の構造変化も見られているということです。
 13ページ左、工学ですが、工学の場合は、電気電子、機械、このあたりの論文数が低下する一方、エネルギー、燃料は増えているということです。
 右、臨床医学ですが、この部分は、最近、論文数は増えております。医学、一般医療、内科学、腫瘍学、あと複合科学と書いておりますが、複合科学には、「PLOS ONE」とか「SCIENTIFICREPORTS」、「NATURE」という多様な分野の論文を掲載する雑誌が入ります。具体的にどの雑誌が増えているかというと、「PLOS ONE」です。「PLOS ONE」の論文が増えて、この部分が増えているということで、このように分野の構造に変化が見えているということでございます。
 14ページ、まとめを書いておりますが、過去10年で日本の論文数、伸び悩みが見られるとともに、注目度の高い論文の低下傾向にあると。これはもう何年前からも言われていることです。
 産出構造を見ると、日本の論文数シェアの5割を占める国立大学の論文数が2000年代半ばから伸び悩んでおります。並行して、企業の論文数は90年代から継続して減少しております。
 国際化に関しましては、日本の国際化、伸展しておりますが、共著の数という意味では、中国の存在感が増大しております。
 分野別の状況を詳細に分析すると、臨床医学の論文数が増加する一方で、物理、化学、材料の論文数が減少している。
 なおかつ、各分野内でも構造が変化しているという状況が見えてきたということでございます。
 以上、ベンチマーキングでございます。
 続いて、駆け足になりますが、資料8-2を御覧ください。資料8-2は、「科学技術指標2017」ということで、1ページおめくりいただいて、2ページを御覧ください。先ほどのベンチマーキングは論文を対象としていましたが、この科学技術指標というのは、「研究開発費」、「人材」、「高等教育」、「アウトプット」、「イノベーション」、5つのカテゴリーに研究活動を分類して、約150の指標で日本及び主要国の状況を把握しております。今版では、約25の指標について、新規に掲載、可視化の工夫を行っております。具体的には、企業の研究開発、人文・社会、科学の技術のつながりというあたりに関して、指標の充実を図っておりますが、以降では、この新規指標を中心に御説明申し上げたいと思います。
 3ページから6ページには、研究開発費の状況を示していますが、ここでは、5ページ、スライド5を御覧ください。スライド5は、日本(OECD推計)における研究開発費の負担源から使用部門への流れを示しております。2015年、日本の研究開発費の総額は、OECD推計で17.4兆円です。そのうちの約8割が「企業」が用いている。「大学」は約1割です。大学が用いている研究費の資金源というのを見ますと、先ほども話題になりましたが、企業の負担割合は2.6%ということで、ここをどう増やしていくかというのが、今、1つの目標になっていると認識してございます。
 続いて、駆け足ですが、7ページ、8ページ、9ページは、研究開発人材ですが、8ページ、スライド8を御覧ください。スライド8は、これは企業の研究者の分布を、右はどの産業分類にいるか、左は、その専門分野はどこかというのをお示ししております。これを見ますと、まず産業分類で見ると、実は日本の企業研究者というのは、製造業9割、非製造業1割というバランスになってございます。製造業で多いのが、情報通信機械、輸送用機械です。輸送用機械に関しては、最近、研究者数が増えてございます。一方、一番上の医薬品製造業に関しては、それほど多くありません。輸送用機械の研究者の専門分野がどこかと言いますと、青い太い線ですが、機械・船舶・航空が一番多く、その次が電気・通信ということです。最近、電気自動車等言われておりますが、これは長期的に見ると、この分布がどう変わっていくかというのが見えると思います。
 左の専門分野に注目しますと、情報科学の専門分野を持った方は、ほとんど情報通信業にいます。一方、製造業に関しては、情報科学を専門とする方があまりいないということで、このあたりも今後どう考えるかということです。
 あと最後、人文・社会ですね。人文・社会、左の一番下ですが、研究者の1.3%しかいないということで、非製造業の、例えば、生産性の向上とかを考えるときに、やっぱりこの人社の研究者の方をいかに活用するかというのが非常に大事になるのではないかと、この絵を見て、分析者としては感じてございます。
 続いて、10ページ、11ページを御覧ください。10ページ、11ページは、高等教育に注目しまして、理工系修士、博士の進路の状況をお示ししております。10ページの左が理工系修士の修了者の進路ですが、これを見ますと、修士の方は9割が就職しております。そのほとんどの方が「無期雇用」ということです。右は理工系博士ですが、博士の場合は、全体の5割の方が「無期雇用」で就職しており、2割が「有期雇用」で就職しているということになります。
 今回新たに分析したのが、11ページでございまして、11ページは、人社系の方の進路を示しております。見ますと、修士に関しては、「就職者」の割合が56.3%ということで、理工系より低くなっております。また、博士修了者ですが、「無期」で就職しているのは3割、「有期」で15.3%ということで、やっぱり理工系より少ないです。これは、先ほど産業部門で人社の研究者の方が少ないというところも関係するかもしれませんが、この方々にどう活躍していただくかというのが非常に重要ではないかと感じております。
 続いて、12ページを御覧ください。12ページは、人口100万人当たりの学位取得者を、修士、博士、学士で示しておりますが、まず修士を見ていただきますと、日本というのは横ばいです。一方、他国は、人口当たりの修士の数も増えております。博士に関しては、日本だけ、人口当たりの博士の数が減少しております。他国は増えております。また、この色を見ていただきますと、一番下の緑が人社系ですが、人社系の研究者の割合が他国に比べて低いという状況が見て取れると思います。
 13ページ以降、アウトプットの状況をお示ししております。13ページの論文に関しましては、これは先ほど御紹介したものですので、飛ばします。
 続いて、14ページを御覧ください。14ページの中頃の絵は、これは先ほども申しましたが、日本の論文生産の分野構造がこの30年でどう変化したかをお示ししております。1980年頃は「基礎生命」が一番多く、これに「化学」、「物理」が続いておりました。この30年間に、「化学」が9.3ポイント減少し、「臨床医学」は13.7%増加しております。結果として、この30年で、生命科学系、「臨床医学」と「基礎生命」の合計が10ポイントぐらい上がっているということで、構造が変化していることが分かります。
 続いて、15ページは、特許の状況をパテントファミリーでお示ししております。ここでパテントファミリーというのは何かといいますと、優先権で結び付けられた2か国以上の出願です。これは1か国の出願を見てしまうと、中国の数が大変多くなってしまいますので、国際出願も見ているということです。これに関しましては、企業の活発なR&Dを反映して、日本、10年前も今も世界で1位をキープしているという状況です。
 では、日本の特許のどこのウエートが高いかというと、15ページの右を御覧ください。これを御覧いただくと、日本は、世界のバランスの比較で見ると、電気工学、一般機器、このあたりのバランスが大きい一方、バイオテクノロジー・医薬品のバランスが小さいということになっております。最近の動きを見ますと、輸送用機器の割合が増え、情報通信技術に関してはやや減っているということで、ここもバランスが変わっているということでございます。
 16ページ以降は、新しい取組で、特許と論文のつながりを見ようということで、パテントファミリー中で引用されている論文を分析することで、科学と技術のつながりを分析した結果でございます。
 まず左の絵は、これは論文を引用しているパテントファミリーの数を示しております。日本は、パテントファミリーの数が非常に多いことを反映して、論文を引用しているパテントファミリー数は世界で第2位ですが、その右、この割合というものを見ると、9%ということで、ほかの国より少ないです。要するに、日本の特許というのは、科学技術成果を引用しているものの割合が低いということが分かります。
 他方、右は、特許に引用されている論文数を見ておりますが、これは、日本は、米国に次いで世界2位ということです。また、割合も1.5%ということで、ほかの国と比べてそれほど違いはないということで、こういうような形で状況が見えてございます。
 この特許と技術のつながりというのは、分野によってかなり違いますので、17ページ、その状況をお示ししております。17ページは、論文を引用している主要国のパテントファミリー数割合を、技術分野ごとに示しております。ここでは、実は、どこの国もバイオテクノロジー・医薬品において一番リンケージが強いですので、それを基準に並べておりますが、バイオが一番高く、続いて、化学が続いております。一方、機械工学、輸送用機器に関しては、サイエンスとのリンケージはそれほど高くないということです。日本は、先ほど特許の割合が高いと言いました一般機器、電気工学に注目しますと、欧米に比べて、論文を引用しているパテントファミリーの度合いが低いことが分かります。これは先ほど論文を引用しているパテントファミリーの割合が9.0%であり、やや低いという話がありましたが、このあたりが関係している可能性があるということでございます。
 18ページを御覧ください。これは論文分野と技術分野のつながりということで、左が論文分野、右が技術分野で、論文としてどの分野が注目されているかというのをお示ししておりますが、パテントファミリーからよく引用される論文分野は、「基礎生命」、「化学」、「臨床医学」、このあたりになっているということでございます。
 19ページは、では、日本の論文がどの国から引用されているか、どの国の特許から引用されているかというのを見ますと、赤色が日本ですが、まず、実は日本以外の国もたくさん引用しているというのが分かりますし、「材料科学」、「物理」に関しては、大体40~50%が日本の特許から引用されております。一方、「臨床医学」、「基礎生命」に関しては、大体30%ということで、これは恐らく日本はバイオ・医薬品の特許の割合が小さいということで、今、ライフ系の論文数が増えているということで、せっかく増えたこの知識のストックを今後どう活用していくかというのは非常に重要ですし、あと、もともと日本が強いと言われている「物理」と「化学」、このあたりの論文数が若干減っているというのが、分析としては気になったということでございます。
 最後、20ページ、1枚だけ御紹介しますが、これは産業貿易収支でございます。産業貿易収支というのは、輸出額を輸入額で割ったものです。左がハイテクノロジー産業です。ハイテクノロジーというのは「医薬品」、「電子機器」、「航空・宇宙」ですが、日本は90年代は、輸出超過で調子が良かったのですが、2011年頃から輸入超過です。最新値では、収支比0.75ということで、主要国ではかなり低い部類に入ります。一方、ミディアムハイに関しましては、これは「化学製品」、「電気機器」、「機械器具」、「自動車」等ですが、出超が続いています。2015年も2.64ということで、貿易収支比は主要国の中では一番高いということで、産業の方向でもかなり変化が見えてきているということでございます。
 以上、駆け足になりましたが、この指標の方では、論文に加えて、より多様な指標を御紹介しているということになります。
 以上です。

【西尾分科会長】 貴重な分析の結果を御紹介いただきまして、どうもありがとうございました。
 時間が迫ってはいますけれども、何か御質問や御意見はございますか。どうぞ。

【相澤科学官】 データの提示をありがとうございました。
 先ほどの国際競争力という話にもつながるんですけれども、例えば、このデータの中で、12ページを見てみると、博士号の取得数というのの相対的な数が出ています。人口100万人当たりということで書いているわけですけれども。この比較で見ると、減少しているということがあるだけではなくて、絶対数もおおよそ何となく見ることができる。例えば、中国の論文数がすごく伸びているという話がありましたけれども、絶対数で見ると、中国の方が日本よりも数が3倍か4倍いるような数になるのではないかと。アメリカは、もちろん、もっと日本の何倍も絶対数で見るといるということになるわけで、国際競争力を上げていくためには、ある意味、これから若手研究者として活躍していくような博士の学生をもっとプロモートしていくようなことが必要ではないかと思っています。
 数で言うと、長期的にずっと博士課程の学生というのは、低迷して下がってきているように思うんですけれども、それは大学にとってもとても大きな問題で、部局の中、あるいは大学、あるいは、もっと大きな国のレベルでの、ある種の博士に対しての強力なサポートみたいなものがあるといいのではないかと思っています。もちろん、JSPSのプログラムというのはあるわけですけれども。
 以上です。

【西尾分科会長】 本当に我々が共有しなければならない今のコメントで、相澤先生、どうもありがとうございました。
 ほかにございますか。どうぞ。

【勝委員】 1点だけ。非常に詳細なデータ、ありがとうございます。
 最初の資料8-1、9ページに、論文数の変化ということで、機関別で言うと、国立大学の論文数が非常に大きく減っているということがあるかと思いますが、これについての要因分析であるのか、そういったことはなされているのか、ということが質問なのですが。
 というのは、先ほどJSTの方から、「拠点形成事業の最適展開に向けて」という報告がありましたけれども、その中で、10ページですけれども、拠点形成事業がいろいろなところでマルチレイヤーでなされていて、これを見ますと、本当にぶつぶつと5年ぐらいのタームで事業が展開されていて、これら事業での研究者の雇用は、ほとんどが恐らく有期の雇用になってしまっていると。つまり、雇用の問題があるので研究者の裾野が広がらないのか、あるいは、交付金の問題、様々な要因があるかと思いますので、これはやはり喫緊の課題になるのだと思いますので、この辺の要因分析が何かあれば、ちょっと教えていただければと思います。

【西尾分科会長】 どうぞ、お願いいたします。

【伊神室長】 これは一言でお答えできれば良いのですけれども、なかなか多様な要因が絡んでいるのかなという気がします。
 まず論文の方で見ると、何が起きているかというと、我々の分析で分かっているのは、どうも裾野を形成するような研究者の方、責任著者レベルで論文の数を数えると、3年に1本論文を書くような責任著者の数が減っています。それが誰かというのはちょっと分からないのですが、そういう裾野を形成する研究者が減っていますし、あと、大学で見ると、どちらかというと、規模が小さい大学で論文数を減らしている大学が多いということになります。
 この間、何が要因として変化してきたかというと、これはいろいろあって、まず基盤的経費等の減少もありますし、ただ一方で、競争的資金は増えています。そのあたりで、基盤的経費で研究をしていた人たち、論文の何割程度が基盤的経費のみでやられているかというのを分析すると、2割ぐらいです。だから、もしかすると、2割の人たちは、基盤的経費がなくなったせいで研究ができなくなっているかもしれない。ただ、他方で、科研費等も増えていますので、そのトレードオフはどうなっているかは、現状ではよく分からない状況です。
 併せて、先ほどお話ありましたが、博士後期課程の入学者も、2003年をピークに減少しております。これは修士から直接上がっていると思われる方も、約6,000人程度下がっているはずです。教員の方も、研究時間割合が減っています。これは研究以外の活動をやっているという意味で、必ずしも悪いことではないかもしれませんけれども、加えて、教員の平均年齢も上がっていますよね。恐らく、ここら辺が非常に多様に入り組み合って、結果的にこういうことになっているのではないかということまでは要因は挙げられるのですが、では何が一番ポイントなのかというのは、現状では、残念ながら我々も理解はできておりません。

【西尾分科会長】 よろしいですか。

【勝委員】 はい。ただこれについてはきちんと解析する必要があるのだと思います。

【西尾分科会長】 ほかにございますか。どうぞ。

【小長谷委員】 今のに関連してですけれども、基盤的経費と競争的資金は、お金としては同じですけれども、研究者にとって意味は全然違います。歩きながら考えることはできますが、走りながら考えることはできないです。走り始めたら走っているだけです。考えていません。それと同じように、競争することは大事なことだとは思いますけれども、そのために研究の時間を圧倒的に、あらゆる書類作成とかに使われるので、まじめな人ほど、自分の研究だけではなくて、学生たちのためとか、いろんな人のために書類を書く仕事を優先せざるを得ないです。そうした書類仕事は、どうにもならないほど研究者を走らせていて、考える時間を奪っている、ということを言いたいです。

【西尾分科会長】 それはよろしいですか。

【伊神室長】 そのあたりが、正に時間の使い方というところで出てきているのかなという気がしております。

【西尾分科会長】 どうぞ、喜連川先生。

【喜連川委員】 今回のこの分科会で、やはり一番質問がたくさん出るのは、データとしてのエビデンスがしっかりしているところであったかと存じます。皆さまの興味が出てくるかと思うんですけれども。頂いている資料は、文部科学省として、全体を俯瞰(ふかん)するという意味での解析もあろうかと思いますが、今、御回答になりましたような、本質的な要因というものを解析するという意味では、やっぱり現場のある大学の管理者が丁寧に見るということも重要だと思います。
 そういう意味で、こういうデータというのは、どれぐらい我が国のいろいろなステークホルダーが利用可能なのか、その辺について、ちょっとお聞かせいただけると有り難いと思いますし、五神先生が、先ほど10年間気が付かなかったとおっしゃいましたが、これをしっかり見るようなファンクションが各大学にあれば、もっともっと早く手を打つことができたわけですね。したがって、ポイントは、こういう結果を出すよりも、こういうデータを解析する、自分の目で見る基盤を共有化することが重要ではないかと思うんですけれども。

【西尾分科会長】 それでは、簡潔にお答えいただけますか。

【伊神室長】 この報告書自体は、当省のWebページで公表しております。ただ、我々としてどれぐらい情報発信できているかという点では、やっぱりもう少し皆さんに知っていただく努力をしないと宝の持ち腐れになってしまいますし、我々も今やっぱり現場の方と対話することによって、より分析も深まるというところもありますので、そういうところを大事にしていく必要があるなと感じています。
 論文数の停滞は、もうかなり前から分かっていることなんですね。一方で、この3月のNature Indexの話が出て、皆さん、改めて気付いたところがあると思うのですが、そこは、我々として、しっかりもう少し言っていくべきだったなというのは、ちょっとNatureに言われて悔しいというのもあるんですけれども、個人的な感想としては持ってございます。

【喜連川委員】 各大学にしてみたら、自分が見たいんですよね。ですから、このデータのドリルダウンがどれぐらいできるかということだと思うんですけれども。

【伊神室長】 各大学のデータですか。

【喜連川委員】 日本のアベレージ、世界のアベレージというのを、もうちょっと自分自身の大学がどういう立ち位置になっているかということの相対位置付けが分析できることが、自分で運営するという意味では非常に重要ですよね。 【伊神室長】 それは、きょう御紹介しませんでしたが、大学ベンチマーキングという論文分析もしておりまして、それはWeb上で、各大学がどういうようなポートフォリオで研究しているか等の情報は、我々はできる範囲でデータは対外的に公表してございます。

【西尾分科会長】 どうもありがとうございました。
 NISTEPの方で様々な分析を、今後、より有効に利用し、また、NISTEPと大学との間のいろいろな議論を、今後、積極的に進めていただくことが我が国の科学技術、学術のさらなる振興につながっていくと思います。どうもありがとうございました。貴重な報告をしていただきましたことに心よりお礼申し上げます。
 きょうの議題は、特に議題1と議題3は、トータルにつながっているものだと思っております。特にその中でスピード感が重要だということが、喚起されております。そのような点を踏まえて、今後の第9期の本委員会での議論を展開していきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いします。また、文部科学省の方でも、それへの対応を是非ともお願いします。
 本日は、いろいろ貴重な御意見を頂きましてありがとうございました。本日の議事は、これにて終了させていただきたいと思いますが、局長の方から、何かコメントとかございますか。よろしいですか。どうもありがとうございました。
 それでは、最後に、事務局より連絡事項があればお願いいたします。

【山口学術企画室長】 最後に3点、御連絡申し上げます。
 まず、今後のスケジュールについては、資料9のとおり、次回は10月中下旬を予定しておりますが、詳細はまた調整させていただきたいと思います。
 また、議事録については、メールの方でまた御確認をお願いいたします。
 なお、本日はタブレットで初めてやらせていただきました。紙媒体で必要な資料ございましたら、事務局の方へお申し付けくださいませ。
 以上でございます。

【西尾分科会長】 それでは、これにて閉会いたします。本当に貴重な御意見を多々頂きまして、ありがとうございました。心よりお礼を申し上げます。
 どうぞ。

【小安委員】 事務局に聞きたいのですが、このデータをまた送っていただけるんでしょうか。データとして、タブレットの中の部分。

【山口学術企画室長】 そうさせていただきますので、大丈夫でございます。

【小安委員】 分かりました。ありがとうございます。それだけです。

【西尾分科会長】 データは、今のような取扱いでございます。


―― 了 ――

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