学術分科会(第29回)・学術研究推進部会(第22回)合同会議 議事録

1.日時

平成21年1月20日(火曜日) 10時~12時

2.場所

虎ノ門パストラルホテル本館 1階 「葵」

3.出席者

委員

佐々木分科会長、白井分科会長代理・学術研究推進部会長、中西部会長代理、井上孝美委員、上野委員、土居委員、西山委員、深見委員、三宅委員、有川委員、伊井委員、飯吉委員、家委員、伊賀委員、小林委員、巽委員、塚本委員、垣生委員、金澤委員
(科学官)
喜連川科学官、小山科学官、佐藤科学官、佐谷科学官、高山科学官、深尾科学官、山岡科学官、吉田科学官

文部科学省

坂田文部科学審議官、泉科学技術・学術政策局長、磯田研究振興局長、久保高等教育局担当審議官、倉持研究振興局担当審議官、片山高等教育企画課長、戸渡政策課長、奈良振興企画課長、後藤主任学術調査官、舟橋情報課長、勝野学術機関課長、山口学術研究助成課長、菱山ライフサインス課長、門岡学術企画室長 その他関係官

4.議事録

【佐々木分科会長】 

 それでは、ただいまから、科学技術・学術審議会学術分科会第29回会合及び学術研究推進部会第22回会合を合同で開催します。

 本日は合同開催であるので、分科会と部会をあわせて、私が議事の進行をさせていただきます。

 それでは、まず、本日の資料の確認と連絡事項を事務局からお願いします。

【門岡学術企画室長】 

 資料については、お手元の議事次第の2枚目にある配布資料一覧のとおり、資料1から資料7を用意しております。枝番号がついている資料は、ダブルクリップどめで一塊としています。

 なお、資料7-2と7-3は冊子になっており、資料番号を付しておりません。

 欠落等があればお知らせください。会議の途中でも申しつけいただければお運びするので、よろしくお願いします。

 以上です。

【佐々木分科会長】 

 それでは、議事に入ります。

 議題(1)長期的展望に立つ脳科学研究の基本的構想及び推進方策について(中間取りまとめ)についてご審議いただきます。

 この審議について簡単に申し上げると、平成19年10月に文部科学大臣からの諮問を受け、少子高齢化を迎える我が国の持続的発展に向けて、長期的展望に立つ脳科学研究の基本的構想及び推進方策について審議を行うため、平成19年11月2日に開催した学術研究推進部会において、同部会のもとに脳科学委員会を科学技術・学術審議会研究計画評価分科会と合同で設置して審議を開始したところです。これまでに6回の審議を経て、12月17日に委員会としての中間取りまとめ(案)をまとめられたところです。

 本日は、脳科学委員会主査の金澤日本学術会議会長にご出席をいただいておりますので、金澤主査から中間取りまとめ(案)のご説明をいただいて、その上で皆様に審議をお願いしたいと思っています。

 それでは、金澤先生、よろしくお願いします。

【金澤委員】 

 それでは、ご説明をさせていただきます。ご紹介いただいた金澤です。

 この(案)をお開きいただくと目次があります。この目次の5つの章立てについては、70ページをごらんください。先ほどのご紹介があったように、文部科学大臣から諮問を受けております。その諮問の内容のエッセンスが70ページの下のほうに(1)から(6)まであり、その(1)から(5)までが目次に対応しています。

 第1章は現状と問題点、第2章は基本的構想を示し、第3章以降が具体的な推進方策で、第3章は推進体制、人材育成の在り方が第4章、社会との調和が第5章となっています。

 それでは、第1章から簡単に説明させていただきます。本文の2ページから18ページまでです。最初の二、三ページにおいて、現代社会における脳科学研究の意義と重要性の中で、特に人間を理解するための科学的な根拠、そして基盤を与えるという科学的な意義と、もう一つは、医療、福祉などから始まって、教育や産業に至るまで幅広い貢献が期待されるという意味での社会的な意義、この2つを記載しています。

 続いて4ページから15ページで、これまでの脳科学研究の主な成果を分野ごとに書き、脳科学研究政策の現状を国内外から拾っています。この章の最後、16ページ、17ページあたりで、脳科学研究の推進に向けた課題として、例えば、基礎的知見の集積基盤となる研究の長期的な安定支援策が不足しているのではないかということを書いています。

 さらに18ページをごらんください。これは、本答申案の全体を俯瞰したロードマップです。ごらんいただいておわかりかと思いますが、一番下に黄色い枠で、「基盤技術開発」を述べており、その上に「学術的・融合的研究環境の実現」があります。その上に「学術研究」があり、さらに上に「政策的な戦略的研究」がブルーでタイムテーブルとして書いてあります。これは本答申全体のまとめになります。

 第2章に入ります。19ページから39ページまでです。これは、我が国における脳科学研究の基本的構想です。大事なところで、隣接の学問との連携や融合が大事だというご指摘を踏まえ、19ページの第1節において、脳科学研究が目指すべき方向として大事なことを2つ、理念として出しています。1つが、人間の総合的理解を目指す、総合的人間科学を構築するという点。それからもう一つ、社会への貢献という点を挙げ、この2つを理念としています。なお、この2つは答申案の中間取りまとめの表紙を見ていただくと、サブタイトルとして「~総合的人間科学の構築と社会への貢献を目指して~」と書いています。まさに、この2つが理念として示されているわけです。

 続いて、20ページから38ページまでの第2節においては、研究推進の具体的な考え方を、21ページの「基礎研究」、それから26ページの「基盤技術開発」、31ページの「社会への貢献」の3つに整理をして、具体的に推進すべきと考えられる内容を記載しています。

 さらに、39ページにポンチ絵がまた出てくるが、これは脳科学の学問としての主な特徴である、研究が非常に広い範囲にあり、研究テーマの拡がりを持っているという部分。それから、さまざまな疑問、知りたいことがありますが、それに向けた新しい技術の開発が、脳科学の中だけではない、いろいろなところで起こってくるわけで、新しい技術の開発を一つ、枠としてつくっています。

 なお、この下に三角錐があるが、これは大事なところで、総合的人間科学の構築に向けた協働の形です。おわかりかと思うが、赤の部分はどちらかというと人文社会科学、ブルーは自然科学を意味しています。もちろん厳密なものではありませんが、タイムテーブルとともに示しています。

 続いて、第3章に入ります。40ページから51ページまでです。脳科学研究の効果的な推進体制についてで、先ほどの第2章で提言した研究の展開を支える推進体制全般について記載をしています。40ページの第1節においては、研究段階の特色を踏まえ、研究者の自由な発想に基づく学術研究、いわゆる科研費などによる研究です。41ページでは、JSTのCRESTなどのような、政策に基づいて将来の応用を目指す基礎研究です。42ページの3番目は、例えば脳科学研究戦略推進プログラムなどのような政策課題対応型研究開発。それぞれの役割について記載をしています。

 43ページ以下の第2節と第3節においては、研究推進がどこで行われるか、基盤としての大学、共同利用機関、あるいは独法、他の省庁や民間等の役割について、研究機関の特色などを踏まえつつ、47ページまで記載をしています。

 47ページから49ページについては、グローバル化への対応です。それから、人材の流動化促進、あるいは社会還元を目指した取組を、それぞれ、48ページ、49ページあたりで言及をしています。そのさらに先、50ページ、51ページでは、脳科学委員会の役割を明記して、脳科学研究に関する施策の評価やフォローアップなどの必要性について述べています。

 なお、このフォローアップ等の必要性については、71ページを御覧いただきたいと思います。諮問をいただいたときに、基本的構想及び推進方策の見直しの審議も必要に応じてやるようにと述べられたのを受けています。

 次は第4章である。脳科学研究人材の育成の在り方については、52ページから59ページまでです。これは、前回ご報告をしたところから大きな変更はありません。53ページ以下、広範な学問分野を系統的に教育する体制の維持や構築が必要であるということ、あるいは57ページ、多様なキャリアパスの体制整備の必要性などについて述べています。

 最後の第5章ですが、60ページから63ページと短いけれども、これが前回ご報告申し上げた後、脳科学委員会等で議論し、新たに追加した章です。具体的には、60ページから61ページの第1節においては、研究の推進に伴い、引き起こされる可能性のあるさまざまな課題、例えば倫理的な課題、法的な課題、あるいは社会的な課題に対して、継続的かつ注意深い検討が必要であると指摘しています。

 61ページの第2節においては、脳科学研究の社会的応用の前提として、被験者の保護と倫理審査の重要性を記載した上で、慎重な倫理的な検討を要する問題に対応していく仕組みを整備すべきである、あるいはこのような点については学会や政府レベルでの議論の積み重ねが必要であるということを述べています。

 さらに、最後の62ページ、63ページにおいては、脳科学研究と社会との調和に向けて、研究者や報道、メディア、産業界、行政、あるいは消費者が継続的にコミュニケーションを図っていくことが極めて大事であることを述べて、締めくくりにしています。

 今後は、総会などで改めて審議をした上で、第1次答申(案)中間取りまとめとして、パブリックコメントを求めようと思っています。そして、その結果を踏まえ、3月から5月ころにもう1度、脳科学委員会を開くなどし、6月をめどに第1次答申(案)として取りまとめていきたいと思っています。

 以上です。

【佐々木分科会長】 

 それでは、ただいまのご説明を踏まえ、本中間取りまとめ(案)について、ご意見、ご質問等をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

 三宅委員、どうぞ。

【三宅委員】 

 脳の研究を基盤に、人の心、人の社会の中での行動全般についての大きな科学をつくる必要があるというメッセージが、前に伺ったときよりも非常にはっきりしてきたという気がします。こういうことをやる科学として認知科学がほぼ30年前にでき上がっているわけですが、果たせなかった夢、課題があります。それがここで、脳科学という一つのメソッドを得て実現することに期待したいと思います。

 また、60ページあたりから、社会との調和について何が問題なのかを書いていただいたのもよかったと思います。脳科学を中心に総合科学を作ろうというとき中心になるのは、脳の活動を一つの原因装置として、その結果として心の働きがあるという見方でしょうか。しかし、本当の意味で社会と調和する総合科学ができるためには、そうではない反対側の見方、つまり、原因としてまず心の働きがあって、それが結果として今見える形で脳の活動として抽出できるという立場をとる人たちの勢力を取り込む必要があります。この後者の考え方は、現在の脳科学を中心とした取組みではどうしても希薄になるので、そこをどううまく取り入れていただくかを考えていただければいいと思います。

 例えば、60ページの例で言えば、「『心を操作すること』、『心を読み取ること』、『能力を高めること』などが可能になることも、将来的には考えられる」と書かれています。この三つは、厳密に言えば同種のものではありません。今の脳科学の成果から考えて、「心を読み取ること」、「能力を高めること」というのは、脳での活動を中心として研究する今の技術でも、かなりな成果が期待できるところだと思います。しかし、脳の活動を心というものの働きの結果、見えているものだとする立場を取ると、一番目に書いてある「心を操作すること」は、脳科学研究の成果としては出てきません。こういう区別をはっきりさせて、次に進むべきだと思います。

あるいは、62ページの下から2番目の段落で、「現時点においては脳科学の知見のみで、人間の思考や行動の全てを説明できるには至っていない」という表現があります。この行間には、将来は人の思考と行動のすべてを脳科学で説明できる、という立場が表明されています。これに対して、脳科学だけを推進するなら、将来ともどもこの解明には至らないだろうという立場もあり得ます。そこまでの目配りをしていただくと、本格的な総合科学になると期待しています。

【佐々木分科会長】 

 主査から、何かレスポンスがあれば。

【金澤委員】 

 今のご意見は大変大事なご意見です。私どもも一人一人に突き詰めて聞いたわけではありませんが、脳科学で全て解決できると思っている人は結構多いかもしれないけれども、全員ではありません。私自身がそうであるし、懐疑的な考えを持っているので、どうぞご心配なく、反対の意見をおっしゃっていただきたいと思っています。

 例えば、39ページの下にある三角錐の中で、例えば心理学、認知科学、そういうところの方々が同じ意見を持っているとは思っていないので、どうかいいものにしていただきたい。そして、最終的に、これが脳科学と言わないで、何とか科学と別の名前がついていくかもしれないとさえ思っています。とりあえずは脳科学ということで出発させていただきたいと思っています。

【佐々木分科会長】 

 ほかに。

 特にご発言がないようならば、ただいまの三宅委員からのご意見も勘案しながら、私のほうで主査とご相談の上で、どうしたらいいか処理を考えさせていただきたいと思います。

 ご案内のように、今期の最後が1月で、23日に全体の科学技術・学術審議会があるので、本中間取りまとめ(案)を科学技術・学術審議会総会に諮らせていただきたいと思っております。

 なお、具体的な文言等についてはご一任いただくということで、23日の総会にこれを出せるよう取り計らいたいと思っていますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【佐々木分科会長】 

 それでは、そういう取り扱いをさせていただきます。

 金澤先生、お忙しいところ、どうもありがとうございました。

 それでは、次の議題に移ります。

 これも何度かいろいろな段階でご報告をいただいているが、「人文学及び社会科学の振興について(報告)」(案)の審議です。

 この、「人文学及び社会科学の振興について」の審議の経緯を申せば、平成19年2月1日に開催した、今期第1回目の学術分科会において、「人文学及び社会科学研究の推進方策」を審議すべき事項として掲げたことを踏まえ、同年4月3日の学術研究推進部会において、人文学及び社会科学の研究の社会的な意義や特性を明らかにした上で、学術研究に対する支援方策に加え、研究成果の社会的還元の在り方や現代的な課題に対応した研究への支援方策の可能性等について検討するため、同部会のもとに人文学及び社会科学の振興に関する委員会を設置して審議を開始したところです。

 これまで24回の審議を経て、去る1月16日に委員会としての報告書(案)を取りまとめられたと伺っています。

 本日は、人文学及び社会科学の振興に関する委員会主査の伊井国文学研究資料館館長にご出席をいただいているので、伊井主査から報告書案についてご説明をいただき、皆様からいろいろご意見を賜りたいと思っています。

 それでは、伊井先生、よろしくお願いします。

【伊井委員】 

 それでは、ただいまあったように、「人文学及び社会科学の振興について」の報告を申し上げます。

 資料2をごらんください。その巻末にも記しているように、これまで各研究分野を代表する研究者の方々に委員会においでいただき、それぞれの学問的な特性、ありよう等をご開陳いただき、それらをまとめ、基本として分析し、このように報告書としてまとめたものであります。

 まず、この報告案について、これまでの経過を申し上げると、今も紹介があったように、平成19年5月に学術分科会学術研究推進部会のもとに、人文学及び社会科学の社会的な意義や学問的特性を明らかにした上で、学術研究に対する支援方策に加え、研究成果の社会的還元の在り方や現代的な課題に対応した研究への支援方策の可能性等について検討することを目的とした、人文学及び社会科学の振興に関する委員会が設置されました。

 この委員会では、平成19年8月に実証的な社会科学研究の振興方策について示した『審議経過の概要』(その1)を、平成20年8月に人文学の学問的特性、役割・機能及びその振興方策について示した『審議経過の概要』(その2)を取りまとめました。

 昨年8月以降、改めて社会科学を中心に議論を深め、計24回に渡って委員会を開催し、「人文学及び社会科学の振興について(報告)(案)」をまとめて、本日答申することにした次第です。

 報告書の内容について申し上げます。

 概要だけを申し上げますが、この報告案は大きく二部構成になっている。前半の第一章から第三章までは、人文学及び社会科学の課題、学問的特性、役割・機能について明らかにするとともに、後半の第四章では、前半を踏まえ、人文学及び社会科学の振興のための施策の方向性について提言をしています。

 それでは、目次をもとに内容について説明を申し上げます。

 第一章、本文は5ページでありますが、人文学及び社会科学の課題についてです。「第一章 日本の人文学及び社会科学の課題」においては、まず我が国の人文学、社会科学が抱えていると思われるもろもろの課題を抜き出しました。ここでは、我が国の人文学・社会科学が、近代化の過程で、専門分化を遂げた後に、欧米諸国の学問を受容したという歴史的な経緯を指摘した上で、現在の我が国の人文学・社会科学が抱えている課題を3点指摘しています。

 第1は、研究水準に関する課題です。これは、我が国の人文学、社会科学が欧米の研究成果の輸入にとまりがちであり、そのことが結果的に独創的な研究成果の創出を妨げてしまっているのではないかという問題意識です。

 第2は、研究の細分化に関する課題です。これは、研究者のさがというか、研究者はだんだん自分の専門分野のみ深めてしまうところがありますが、細部への過剰な関心が、ともすると歴史や社会を総合的に俯瞰する視点を欠落させてしまっているのではないかという問題意識です。

 第3は、学問と社会との関係に関する課題です。これは、日本の人文学、社会科学の教育や研究が、果たして社会一般からの支持が得られているのかという問題意識です。

 このような問題意識を設定した上で、それぞれの課題について討議を進めてきたわけです。

 9ページに、人文学及び社会科学の学問的特性について掲げています。「第二章 人文学及び社会科学の学問的特性」をごらんください。ここでは、人文学、社会科学の学問的特性として、対象、方法、成果そして評価について大きく整理をしているところです。

 まず、研究対象であるが、人文学・社会科学の研究対象をごらんください。ここでは、人文学については、知識に関する知識としての「メタ知識」、そして「哲、史、文」、哲学、歴史、文学という古くから進められている学問分野ですが、それが人文学の枠組みに対応する形で、「精神価値」、「歴史時間」及び「言語表現」を研究対象としていること、さらに、社会科学については、「社会構造」、「社会変動」、「社会規範」を研究対象としていることを指摘しています。

 そして、これらの研究対象を概括的にとらえると、およそ人間によってつくられたものであるという点に特性があると考えます。すなわち、自然科学が基本的には客観的な存在としての「自然」を研究対象とする学問であるのに対し、人文学、社会科学は、人類によってつくられたものを研究対象としていることになるわけです。特に、人文学、社会科学が、人間や社会における思想や倫理といった「価値」にかかわる問題を取り扱うことから、自然科学とは異なる意味で、複雑な事象を研究対象としていると言えます。

 次に研究方法です。研究方法は「第2節 方法」をごらんください。人文学、社会科学は、自然科学のように「証拠」に基づき、人間や社会についての「事実」を明らかにすることに加え、「証拠」を示してそれらの「意味づけ」を行うことを目指すものと言ってよいと考えています。このような意味で、人文学、社会科学においては、「実証性」とともに「説得性」が重要な意味を持っています。

 このため、この報告案では、「実証的な方法」とあわせて、「対話的な方法」を人文学、社会科学に特徴的な方法として指摘している次第です。とりわけ、この報告案の全体を通じて、「対話」を重視しています。この「対話的な方法」とは、先に申し上げた「価値」にかかわる問題のレベルにおいて異質な者と「理解」を共有するためのコミュニケーションのプロセスと言ってよいと考えています。このようなプロセスを、この報告書では「他者」との「対話」を通じた普遍性の獲得と呼んでいます。人文学、社会科学は、「価値」にかかわる問題と向き合わなければならない学問であることから、この報告案では「対話的な方法」を「実証的な方法」の前提として位置づけています。

 次に、人文学・社会科学の研究成果について説明申し上げます。「第三節 成果」をごらんください。この報告案では、「対話的な方法」と「実証的な方法」という研究方法における2つの類型に対応して、研究成果を「総合」による「理解」と、「分析」による「説明」とに分類しています。そして、「分析」による「説明」が、主に専門家向けの成果であるのに対し、「総合」による「理解」は、主に歴史や社会に対して向けられた成果と位置づけています。

 また、このことと関連して、人文学、社会科学の成果は、それ自身「唯一の真理」として社会に提示されるというよりは、「選択肢の一つ」であり、結論は一つではないということです。幾つかの「選択肢の一つ」として社会に提示されるという特性を持っています。すなわち、人文学、社会科学の成果は、社会における受容と拒絶という「選択」のプロセスを経て、社会におけるオピニオンの形成に影響を与え、やがては歴史や社会を変革する効果を持つという意味で、「実践的な契機」が内包されていると理解しています。

 研究評価であるが、人文学・社会科学の研究評価については、第四章の施策の方向性を説明する際に、あわせて説明申し上げることにします。

 23ページからは、「第三章 人文学及び社会科学の役割・機能」についてです。ここでは、人文学・社会科学の役割・機能を、学術的な役割・機能と、社会的な役割・機能に類型化した上で説明をしています。

 まず、学術的な役割・機能ですが、第一に、主に人文学の学術的な役割・機能として、「理論的統合」を掲げています。これは、人文学が、諸学問の間の「対話」を通じて普遍性の獲得の可能性を導くという観点から、諸学に対してメタレベルの視点を持っているということや、諸価値の間の評価を行い得るということによるものです。

 第2に、主に社会科学の学術的な役割・機能として、「実践」の学を掲げています。これは、人文学、社会科学が歴史や社会に対するオピニオンの形成に一定の役割を与えるという実践的な帰結を持っていることによるものです。

 「第二節 社会的な役割・機能」の中で、第1に「社会的貢献」です。ここでは、専門家と市民とのコミュニケーション支援や、政策や社会における課題の解決などの役割・機能を指摘しています。

 第2に「教養の形成」ですが、ここでは、人文学、社会科学が「対話」を通じた文化や社会の「共通規範」の形成としての「教養」の形成という役割・機能を有する旨の指摘をしています。

 第3に、「市民の育成」です。ここでは、ポリシー・リテラシーの涵養という観点から、「市民」の育成という役割・機能を指摘しているところです。

 第4に、「高度な専門人の育成」ですが、この報告案では、法学や経営学などの「実学」を基礎研究の成果の統合として位置づけ、単なる実務的な知識ではなく、「人文学的な素養」に裏づけられた学問を通じて、高度な専門人の養成を行う旨の指摘をしています。

 31ページ以下、「第四章 人文学及び社会科学の振興の方向性」です。最後に、第一章から三章までを踏まえた上で考えているものです。この中では、人文学・社会科学の学問的特性、役割・機能を踏まえ、「施策の方向性」として6点の提起をしています。

 概括的に申し上げると、第1は、「対話」――キーワードとしてこれまでずっとこの報告案に流れているところですが、「対話」を理念とした共同研究の推進。

 2つ目は、「政策や社会の要請に応える研究」の推進。

 3つ目は、幅広い視野を有する卓越した「学者」の養成。細分化、輸入学問という問題もあるため、幅広い視野を有する研究者を養成していくということです。

 4つ目であるが、実証的な研究方法を用いる研究に対する支援など、研究体制、研究基盤の整備・充実です。

 5番目は、「読者」の獲得への努力など、成果発信への取組。

 最後の6つ目は、人文学及び社会科学における評価の確立の取組という、以上の6点です。

 時間の関係で、すべてを説明することはできませんが、特徴的なものを3点ほど挙げてみたいと思います。

 第1に、異質な分野との共同研究の推進を挙げますが、これは「第一節 『対話型』共同研究の推進」の(2)で提起しています。異なる分野間において、原理・原則や方法論といった学問の存立基盤にかかわるレベルでの「対話」を推進することが、学問の飛躍的な発展をもたらす可能性があることから、共同研究を推進するための施策の展開に当たっては、異質な分野との対話をもたらすような共同研究を推進することを求めている次第です。

 第2は、「読者」の獲得に向けた取組の推進です。これは、「第五節 成果の発信」の(1)に提起しているものですが、先に述べたとおり、人文学、社会科学の研究成果は、「分析」による「説明」と、「総合」による「理解」に類型化できると考えています。そして前者、すなわち「分析」による「説明」が主に学術論文という形をとって世の中に出されているのに対し、後者、すなわち「総合」による「理解」が主に著作物という形をとることが一般的になされているところです。

 ここで、「読者」とは、思想や歴史、文学作品といった諸々の古典の「読者」や、人間や社会を取り巻く諸問題を題材にした新書などの「読者」といった、社会における「教養層」を想定しています。「教養層」は著作物という形をとった研究成果の受容者であり、教養の社会的な拡がりが確保されていれば、人文学や社会科学の研究成果の受容者は広範に存在していると考えることができるわけです。ここでは、このような「読者」の獲得のために、人文学者、社会科学者自身が社会との「対話」――ここでも「対話」ということですが、「対話」の努力や、大学における教養教育などを通じて、積極的に努力を行うことが必要と提言しているところです。

 また、これらの努力とあわせ、メディア関係者の理解と協力を得ていくことが重要であると考えています。

 先ほども申し上げた第3は、人文学及び社会科学における評価の確立です。「第六節 研究評価の確立」をごらんください。第二章第四節で指摘しているとおり、人文学・社会科学の評価には、「歴史における評価」、「社会における評価」、「アカデミズムによる評価」という3つの評価軸があります。そして、人文学、社会科学における「総合理解」という知的営為のゆえに、主に「分析値」を扱う「アカデミズムの評価」としての「学術誌の査読」には限界があるとともに、定性的な評価の重要性をしっかりと踏まえておくことが必要であろうと指摘しています。

 このような点を踏まえ、第四章第六節では、人文学・社会科学の評価の特性を踏まえた「研究評価システム」の確立の必要性が示されています。

 ただし、この委員会では、人文学、社会科学の振興について、総論的な審議を行ってきたため、人文学とは何か、あるいは社会科学とは何かという学問的な成果を求めたものではありません。その意味では、この報告案では評価の確立の必要性なども明示するにとどまり、具体的な評価のシステムや評価の指標の在り方などについては、今後の課題として審議を深めていくことが必要である旨の指摘にとどまっています。

 こういった諸々の課題が残っているが、次期学術分科会における審議をお願いしたいと思っている次第です。

 なお、最後にまとめておきます。以上、この報告案の概略を説明しましたが、この報告案の表紙をごらんください。この報告案では、「『対話』と『実証』を通じた文明基盤形成への道」という副題を付しています。

 人文学、社会科学の研究成果は、何かの役に立つという「道具的な性格」を持つというよりも、「理解」の共有という「対話的な性格」を有しています。したがって、副題に示されているとおり、人文学、社会科学の振興とは、価値の多様性を前提としつつ人々の間に共通の理解を促すという意味で、文明基盤の形成に大きな貢献を果たすものと考えています。

 この報告案について、私の説明は以上です。委員の方々のご指導、ご意見を賜ればと思っている次第です。

 以上です。

【佐々木分科会長】 

 それでは、ただいまのご報告について、ご意見、ご質問等あれば、ご発言をいただければと思います。

【垣生委員】 

 私は自然科学のほうの立場の人間だが、ご説明になったことは、これからの社会科学をもう一度考え直す上での指針として、大変いいのではないかと思います。

 先ほど、脳科学のところであったような、自然科学と人文科学の間である……。例えば10ページの「メタ知識」のところに、「精神価値」という言葉が出てくるが、そういうものも、ある程度、脳科学のような――脳科学という名前は先ほどのお話にもあったように適切かどうかわかりませんが、そういうものを取り入れていくような……。この文章は、今、お話を伺っただけでは、なかなかつかめなかったけれども、「対話」を「理解の共有」ということに視点を置かれているとすれば、自然科学のことを「証拠を出す」とかも含めて、どこかにあったらうれしいと思いますが、私が見落としているのかもしれないので、そのあたりのことを教えていただければと思います。

【佐々木分科会長】 

 伊井先生、何かありますか。

【伊井委員】 

 具体的に、報告案の中に脳科学という言葉は入っていませんが、委員のメンバーをごらんいただくと、自然科学の方がかなり入っています。文系と理系とを截然と分けるのではなく、今日の脳科学の報告の中に人文学とのこともあったように、かなりボーダーがあいまいなところも非常に多い。これからは、まさにそういった分野とも対話によって進めていかないと、人文学、社会科学も進展しないのではなかろうかと思っています。それは、そういう方向で我々も考えているところです。

【佐々木分科会長】 

 ほかに。

 上野委員、どうぞ。

【上野委員】 

 私も人文学及び社会科学の委員会の委員で、ずっと先生方の取りまとめに加えていただいています。特に年末の一番詰めた時期に、私は取り込みがあり出席できていませんでしたので、気づきを1つだけ。

 38ページの「読者」の獲得のところで、詳細な記憶ではないが、議論のときに教育の観点を入れていこうというご指摘をいただいていたように思います。文言として、2段落のところで、「教養層」とだけ言語化してあるので、ここをもう少し……。即、支えるのは教養層かもしれないが、人文学、社会科学は国民の市民形成等に影響が非常に大きいので、書きぶりとして教育に開いておいたほうがいいのではないでしょうか。今ごろ申し上げて申しわけありませんが、もし可能であればお願いしたいと思います。

 以上です。

【佐々木分科会長】 

 伊井先生、何か。

【伊井委員】 

 そういうことも含めていると思っていますので、こういった文言で広げて考えていきたいと思っています。

【佐々木分科会長】 

 そのご主旨は私も大事な点だと思っています。特にこれをどう考えるかは、ほんとうは一番大きな問題かもしれないということで議論になっていたように拝聴しています。必要があれば、私としても少し考えさせていただく余地があろうかと思います。

 ほかに。

 三宅委員。

【三宅委員】 

 対話が強調されているのは、前の中間発表のときに大変印象的だったのですが、今回はさらに論点が非常に鮮明になり、わかりやすくなったことに感動しています。

 「対話」が共通理解を生むということは「対話」の一つの大事なメカニズムでもあると思いますが、「対話」には実は新しい多様性を生む、あるいは「対話」が新しい課題を生む、という役割があります。伊井先生の御説明の中にはそのことが何度も聞こえてくるけれども、表現として十分強いか、多少不安です。そのことを書いておかないと、「対話」が共通理解を生むという機能だけが傑出してしまい、挙句人文社会系の科学は保守化するとも読めてしまいます。したがって、「対話」は実は自分たちが自分たちを超えていくためのメカニズムであるというようなことをどこかにはっきり書いてあるといいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

【伊井委員】 

 そういう趣旨で書いているのですが、「対話」とは、ただ話すだけではなく、「対話」からaufhebenしていくという、自分も変革していく、相手も変革して、また新しいものを創出していくという方向性であり、これはまさに異分野との「対話」です。お互いの仲間内だけではない、そういうことから、新しい――先ほどの脳科学にもあったように、やはり人文学、社会科学もそれによって変革しながら高めていくというのが、この「等」の中に入っているので、文言にはあると思っています。そういう精神はぜひとも継承していきたいと思っています。

【佐々木分科会長】 

 ほかに。

 いろいろと重要なポイントの指摘があったので、ご意見を私なりに承り、何か必要があれば、必要な範囲で少し表現等を主査とも相談して、考えることあるべしというご承認のもとで、これを学術分科会の報告として公表したいと思っていますが、その点、ご一任を賜れればと思うが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【佐々木分科会長】 

 ありがとうございます。

 それでは、そのように取扱いをさせていただきます。

 次に3番目の議題である。「基礎研究・研究者の自由な発想に基づく研究について(提言)」について、議論をお願いします。

 学術分科会のもとに置かれている研究費部会において、1月8日に「基礎研究・研究者の自由な発想に基づく研究について(提言)」が取りまとめられました。研究費部会の部会長である平野先生、部会長代理である飯野先生がご欠席でありますので、事務局を担当されている山口学術研究助成課長からご説明をいただき、ご質疑をお願いしたいと思います。

 では、山口課長、お願いします。

【山口学術研究助成課長】 

 学術研究助成課長の山口でございます。

 資料3でございます。研究費部会でこれまで審議され、去る1月8日に研究費部会の提言という形で取りまとめられた「基礎研究・研究者の自由な発想に基づく研究について」というご提言についてご説明を申し上げます。

 表紙をめくっていただき、1ページ、研究費部会においては、これまでも基礎研究、あるいは研究者の自由な発想に基づく研究の重要性、あるいは支援の在り方等についてご審議いただいてきました。

 その成果については、1ページの2つ目の○にも書いてありますが、『審議のまとめ』(その1)、あるいは(その2)といった形で、その都度、取りまとめられてきたところでございます。このような中、昨年、南部先生、小林先生、益川先生がノーベル物理学賞を、それから下村先生がノーベル化学賞を受賞され、特に基礎研究、あるいは研究者の自発的意志に基づく研究の重要性が、マスコミ等で大きく取り上げられたところです。

 しかしながら、一方で、基盤的経費の削減が続いていること、あるいはあまりに短期的に成果を求める成果主義的な観点で評価されてしまう弊害についても、昨年の秋以降、さまざまな形で取り上げられてきたところです。

 部会では、こうした状況を踏まえ、基礎研究や研究者の自由な発想に基づく研究の重要性、あるいは課題、今度の在り方について、もう一度議論して整理をし直し、今後の審議会等でのご活用をお願いします。あるいは、国民に広く知ってもらうといったことを目的として提言といった形で公表することとしたものです。

 したがって、今回のご議論のもとには、先ほど述べた『審議のまとめ』(その1)、(その2)といった、これまでのご議論があるわけです。それらをもとにしつつ、少しデータなどを加えながら、昨年11月以降、部会でご審議いただき、それが提言としてまとめられたものであることを最初に申し上げておきたいと思います。

 表紙の裏表紙左側に目次があります。「はじめに」と「おわりに」を除くと、4つの部分からこの提言は構成されています。

 2ページをお開きください。4つの柱の第1でございます。研究者の自由な発想に基づく研究や、基礎研究の重要性について簡単にまとめられたところです。言うまでもなく、すべての研究活動の基本は、研究者の自由な発想に基づく研究にあり、それによる重厚な知的蓄積があってはじめて、学術のブレークスルー、イノベーションといったものが見直されてくる。特に急速に変化し続ける現代社会においては、柔軟な思考と斬新な発想によって新たな価値がもたらされることが期待されている。

 また、我が国が世界各国との間で繰り広げている厳しい競争に打ち勝っていくためには、新たな時代の革新的なシーズが必要になってくるが、これもある日突然にあらわれるわけではない。多様な研究の中での試行錯誤、あるいは切磋琢磨、基礎研究の地道な積み重ねがあって初めて対応できるのである。我が国が、新しい時代に競争力を持って打ち勝っていくための不可欠の要素であるとされています。

 一方、現実については3ページ以降で触れられているので、ごらんください。これまで、本審議会においては、日常的な教育研究活動を支える基盤的経費という部分と、すぐれた研究を優先的、重点的に助成する競争的資金という2本立ての支援体制、デュアルサポートシステムが重要だとされてきたところです。このうち、特に基盤的経費については、3ページの下から6行ほどの記述、あるいは4ページのグラフ等をごらんください。国立大学の運営費交付金、あるいは私学助成など、いずれも厳しい状況にあると言わざるを得ない状況にあります。こうした基盤的経費の削減が、大学等の研究活動に大きな影響を及ぼしています。

 5ページをごらんください。具体的にどのようなことが憂慮されているかでありますが、まず、基盤的経費の大きな削減により、教員一人当たりの研究費が減少してきています。上の方にも書いてありますが、例えば人文社会科学系の研究室などでは、実質的な研究費がほとんど残らない場合すらあるという指摘があります。そのため、研究活動を推進していくためには、科研費等の競争的資金が大きな役割を担うことになってきます。もっと言えば、競争的資金を確保しなければ、十分な研究活動ができない状況になっていると言えます。

 ただ、5ページにもあるが、全国の大学等の研究環境は、もちろん一律ではありませんので、その結果、多くの資金を獲得できる大学とそうでない大学が存在し、また、その格差が広がっていくということもあり得ます。

 また、研究者にとっても、ぜひとも競争的資金を取らねばならないので、実際上、研究活動そのものよりも、競争的資金の確保に向けて申請、あるいは報告書の作成、評価のための準備といった事務に多くの時間と手間をかけざるを得なくなっているという状況があります。こういった中で、人文社会科学とか純粋基礎科学などの学問分野の衰退とか、あるいは萌芽的研究の芽を摘んでしまうおそれがあるのではないかということが、この5ページに記述されています。

 これを踏まえた基盤的経費に関する今後の方向性は、5ページの下以降にあります。我が国の場合、高等教育への公財政支出については、OECD諸国の中では最低ランクにあるといったことを踏まえ、高等教育への公財政支出の充実、特に基盤的経費の確実な措置。それによるデュアルサポートシステムの強化が必要であるということが5ページから6ページにかけて書かれております。

 次に、7ページをごらんください。3本目の柱ですが、基盤的経費の問題に引き続いて、デュアルサポートのもう1つの柱である科研費等の競争的資金の問題についてここで触れられています。

 先ほど申し上げたように、基盤的経費が削減されていく中で、競争的資金の役割が非常に大きくなってきています。中でも、科研費は研究者の自由な発想に基づく研究を支援する唯一の競争的資金として重要であるし、このような状況の中、科研費への応募が件数として非常に増え続けています。しかしながら、実態として申すと、ここ数年、科研費の予算の伸びは明らかに鈍化しているし、8ページにあるように、予算全体の額は少しずつ増えていますが、ここ数年、実際上増えていますのが、間接経費が中心であって、研究者によって活用されるべき直接経費については、ここ2年ほど減少してきたという実態がありました。

 このような中、8ページの下のグラフ、あるいは9ページの上のグラフにあるように、新規採択率が減少し、1件あたりの平均配分金額も低下してきているという状況にあります。

 9ページの真ん中よりも下でありますが、こういった状況を踏まえて、科研費に関する今後の方向性でありますが、9ページから10ページにあるように、一言で申し上げれば、科研費等の拡充をきちっと目指すべきであるとされています。

 また、10ページの一番最後の丸にもあるように、今後策定されるであろう第4期科学技術基本計画等においても、基礎研究や研究者の自由な発想に基づく研究の重要性、競争的資金、とりわけ科研費の拡充の必要性などについてもぜひ明確に位置づけられることが望まれると記述されています。

 それから、4本目の最後の柱です。11ページですが、短期的に成果を求める成果主義の風潮についての記述が4としてあります。皆様ご承知のように、基礎研究の多くは、短期で成果が出るとは限らないわけです。長い時間をかけた地道な研究の積み重ねによって成果があらわれるわけですが、昨今、その研究がいつ、あるいはどのように世の中の役に立つのかといった非常に短期的でかつ実用的な成果ばかりを求める風潮があると言われています。この提言においては、このような風潮を非常に憂慮し、長期にわたって地道な研究を重視し、尊重するような評価が行われることが重要であるというふうにされています。

 また、研究活動に対するそのような評価を進めていくためには、やはり国民の理解を深めていく必要があるのではないか。研究について国民に知ってもらう努力、あるいは研究というものの魅力を子供たちに伝えて、興味と関心を持ってもらうための努力も必要であるというふうに4番の柱ではされているところです。

 以上が今回の研究費部会で、部会の提言としてまとめられた内容の概要です。なお、この提言については、今後ホームページに掲載させていただくとともに、大学等の関係機関にも広く配布し、周知をさせていただきたいと考えています。

 以上です。

【佐々木分科会長】 

 何かご意見等、ありますでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、そのように取り扱いをお願い致します。

 次に、その他に入ります。まず、各部会の審議状況についてご報告をお願いします。

 第4期科学技術・学術審議会 学術分科会においては、学術研究推進部会、研究費部会、研究環境基盤部会、科学研究費補助金審査部会の4部会を設置しています。先ほど学術研究推進部会と研究費部会に係る案件については報告がありましたので、研究環境基盤部会における審議状況、科学研究費審査部会の審議状況について、部会長のほうからご報告をお願いします。ご質問等は説明の後にお願いします。

 それではまず、研究環境基盤部会の部会長を務めた私のほうから報告申し上げます。

 研究環境基盤部会では、昨年5月にまとめた報告書「学術研究の推進体制に関する審議のまとめ」を踏まえて創設された共同利用・共同研究拠点制度について、具体的な拠点の整備について検討を行う共同利用・共同研究拠点に関する作業部会を昨年12月に開催して、今後の審議の進め方について検討してまいりました。

 また、学術情報基盤作業部会において昨年12月に報告書を取りまとめました。内容については、同作業部会の有川主査から、続いてご報告をお願いいたします。

 最後になりましたが、先週16日に今期最後となる部会を開催し、今後の課題を次期の学術分科会及び研究環境基盤部会に引き継ぐという意味で、これまでの審議や研究環境基盤に関する課題等について自由討議を行いました。その中で、共同利用・共同研究拠点制度についての継続的なフォローアップ、共同利用・共同研究をリードする大学共同利用機関のあり方、学術研究の大型プロジェクトの推進、大学図書館の整備や学術情報流通の充実等について引き続き検討する必要があるのではないかということが出てまいりましたので、ご報告します。

 それでは、有川主査から、学術情報基盤作業部会の報告をお願いします。

【有川委員】 

 有川です。お手元の資料4-2あるいは4-3などをごらんください。

 このたび、ただいまご説明がありましたように、研究環境基盤部会のもとに設置された学術情報基盤作業部会において、学術情報基盤整備に関する対応方法策等について審議のまとめを取りまとめましたので、その概要について簡単に報告させていただきます。

 これについては、平成18年3月に「学術情報基盤の今後の在り方について」という報告がなされていますが、それをフォローアップするという位置づけもあります。その18年の段階では主に3つのことを、つまり、コンピュータとネットワーク、大学図書館、それから学術情報発信について報告させていただいていますが、今回はその中で一番最初に関係しますが、いわゆる情報基盤センターとネットワークの今後の在り方ということで優先して審議を行いました。

 審議のまとめは、お手元の資料のとおりですが、3つの柱から構成されています。1つは、我が国の学術研究を支える学術情報基盤の今後の整備について、もう1つは、情報基盤センターの在り方について、それから、3つ目が、学術情報ネットワークの今後の整備の在り方です。最先端学術情報基盤構築の必要性を述べるとともに、今後のあり方等について方向性を示しています。

 まず、3つの柱のポイントですが、最初の我が国の学術研究が支える学術情報基盤の今後の整備については、まず、世界をリードする学術研究を支えるために、コンピュータ、基盤的ソフトウエア、研究者グループ等を超高速ネットワーク上で共有する最先端学術情報基盤、CSIと呼んでいますが、それの構築が不可欠であること。それから、我が国が最先端の学術研究を推進し、教育研究活動の効率的な展開を図っていくためには、学術情報基盤の整備がますます重要であり、国立情報学研究所及び情報基盤センターはその中核として引き続き役割を果たす必要があることなどを示しています。

 2つ目の柱であるが、情報基盤センターの在り方については、全国共同利用の施設としての機能の現状及び研究の高度化、多様化等を背景とした情報基盤センターに求められる役割の変化に対応して、さらなる機能の充実についての検討が必要です。

 それから、情報基盤センターが7つあるわけですが、その間の連携の一層の強化及び神戸にできる次世代スーパーコンピュータとの適切な役割分担と有機的な連携方策の検討が必要です。

 3つ目は、機能の充実についての検討に際して、従来の全国共同利用の施設としての実態も踏まえつつ、研究開発機能の強化を図った上で、共同利用・共同研究拠点制度に基づく拠点としての認定を目指すことも考えられるとしています。

 3つ目の柱です。学術情報ネットワークの今後の整備の在り方については、次の3つのことを指摘しています。学術情報ネットワークは、最先端学術情報基盤(CSI)――これはCyber Science Infrastructureの略ですが――の中核を形成するものであり、さらなる高度化に向けた整備を図る必要があります。

 2つ目ですが、現行の学術情報ネットワーク(SINET3)の回線契約期間が平成22年度までですが、その間の整備の基本的な考え方として、利用状況を踏まえた利用回線の効率化を実現し、ネットワークの需要に対応することが適当であるということ。

 それから、それ以降の、つまり23年度以降のことですが、次期学術情報ネットワークの整備の基本的な方針として、大幅な回線速度の増強及び高機能化が必要です。それから、先進的な技術・研究開発によるネットワーク設計や関連施設の一括調達などによる経済性の一層の向上を図る。安定的な財政基盤の確保を含めたネットワークの持続的な整備方策の検討が必要であるというようなことをまとめています。

 この審議のまとめを踏まえて、大学及び国立情報学研究所等の関係機関は、我が国の学術研究及び教育活動全般を支える上で不可欠である学術情報基盤の整備について検討を進められることを期待します。また、国においても、世界をリードする学術研究や教育活動の一層の発展を図るために、CSIの構築に向けた整備を、戦略を持って推進されることを期待するとしています。

 以上です。

【佐々木分科会長】 

 それでは次に、科学研究費補助金審査部会の審議状況について、今日は鈴木部会長がご欠席であるので、深見部会長代理よりご説明願います。

【深見委員】 

 私からは、科学研究費補助金審査部会における審査状況の報告をさせていただきます。

 資料は4-1の下の部分になります。まず、今年度から新たに創設した新学術領域研究の審査や評価ルールの改訂など、科学研究費補助金の配分のための審査、評価に関する審議を行いました。また、いわゆる学術研究機関の指定に関する要綱の一部改正について審議を行い、了承するとともに、昨年10月以降、9つの機関について審議し、学術研究機関として指定をすることについて了承しました。

 また、最後の3つ目の丸になりますが、昨年7月に研究費部会で取りまとめ、この学術分科会にも昨年9月に報告された研究費部会「審議のまとめ(その2)」を踏まえて、昨年10月以降4回にわたり、生命科学系3分野、がん、ゲノム、脳の3つの分野になりますが、この3つの分野への支援のあり方について検討を行いました。

 今回、審査部会においては、通常のメンバーに加えて3分野コミュニティー関係者として、各分野から3名ずつ加わっていただき、次の2点について具体的な検討を行いました。

 1つ目であるが、新たに3分野を支援する仕組みの制度設計についてです。他の特定領域研究とは別に予算枠を定め、重点的に支援されている3分野の特定領域研究は平成21年度末で終了する予定となっています。このため、こうした従来の3分野、特定領域における総括班、支援班の果たしてきた役割を何らかの形で継承し、3分野の研究者コミュニティーがこれまでのノウハウの蓄積を生かしつつ、今後とも研究を発展させるためにはどのような機能が必要かということについて検討を行いました。

 また、もう1つ検討したことであすが、系、分野、分科、細目表の見直しについてです。これまで特定領域研究によりサポートされてきた研究者が、基盤研究等において適切に支援が受けられるようにするという観点から、系、分野、分科、細目表の見直しについて検討を行っています。

 検討状況の概要は、参考資料にあるとおりになりますが、現在、最終的な取りまとめを行っているところになりますので、詳細については省略させていただきます。

 私からは以上です。

【佐々木分科会長】 

 ただいまの部会の審議状況のご説明について、何かご質問ありませんか。

 よろしいでしょうか。

 それでは、その他の2番目の大学分科会の審議状況についてご報告いただきます。中教審のもとに設置されている大学分科会において、現在、文部科学大臣からの諮問を受けて、「中長期的な大学教育の在り方について」の審議を進めています。本日は、この諮問について、高等教育局より報告をしていただきます。

 またあわせて、10月にまとめられた「大学設置基準等改正要綱」及び12月に取りまとめられた「学士課程の構築に向けて(答申)」についての説明をいただいて、その後、ご意見、ご質問等をいただきます。

 それでは、高等教育企画課長からお願いします。

【片山高等教育企画課長】 

 高等教育企画課の片山です。それでは、今お話がありました3つの事項についてご説明いたします。

 まず最初に、中教審への諮問です。資料5-1をごらんください。昨年9月に中教審に対して、「中長期的な大学教育の在り方について」という諮問を行いました。まだ現在、審議の途中ですが、その状況をご報告します。

 諮問事項は3点あります。まず第1点でありますが、多様なニーズに対応する大学制度及び大学教育の在り方についての検討です。現在の大学については、教員の研究分野を中心とした学部、学科という組織が中心になっていますが、学生が教育を受けるという観点から、より適切な仕組みはどうあるべきかという立場、学位プログラムを中心とした仕組みのご検討、また、公的な質保証制度として、認証評価や設置認可などがありますが、これらについての在り方、質保証をより高めるためにはどうしたらいいかというような議論を諮問事項1の関連でしていただいています。

 2番目は、グローバル化の進展の中での大学教育の在り方についてです。国際レベルでの大学の競争が激しくなっていくという中で、我が国の大学の国際競争力を高めるためにはどうしたらよいのか。また、国際的な大学評価、これはOECDなどが行っていますが、これへの研究の実践、我が国への取り組みの仕方をどのようにしていくかというようなことのご検討をしていただいています。

 3番目は、人口減少期における大学全体像の在り方というものについての検討です。大学全体の規模をどうすればよいのか、また、機能別分化をどう進めていくか、その関連で、大学間のネットワークや連携の推進をどのように図っていくか。また、大学の収容定員の取り扱いの在り方なども含めてご検討を幅広くしていただいています。

 以上が3つの諮問事項でありますが、まだ審議の途中であって、具体的な方向性が出てきているというわけではありません。今後、具体的な議論がまとまってきたものから順次報告という形でまとめていただくことを考えています。

 2番目ですが、資料5-2です。これは、学士課程教育に関しての答申です。資料5-2の1枚目が答申全体の1枚紙ですので、ごらんいただけばと思います。

 平成18年以降、中教審の大学分科会の中で議論をしていただきました。答申の中身ですが、1の基本的な認識にあるように、学士課程の教育については、現在、大学全入時代を迎えるということの一方、大学教育のグローバル化ということも進んでいて、国内的な問題、また国際的な問題として学士課程の充実を図るべきだということが述べられています。

 主な内容として、2のところですが、3つの段階で分けて答申をしていただいています。

 まず1番目は、大学の出口である学位授与の段階でのあり方、2番目は、大学在学中の教育課程編成・実施の段階でのあり方、3番目は、入り口である入学者受け入れの段階について、それぞれ国や大学での取り組みを提言していただいています。

 まず、学位授与の方針についてですが、大学は学位授与の方針を具体的に示すべきです。また、国は参考指針として、学士力というものの内容を提示すべきであるということで、右側の点線での囲みのようなものが学士力ということで示されています。これは抽象的な文言ですが、具体的には各大学がそれぞれの考え方に基づいて、必要性を踏まえて考えてもらいたいということになっています。

 2番目の教育課程編成・実施の方針ですが、これは具体的な提言としては、教育課程の体系化や構造化、学生の学習時間の実態把握と単位制度の実質化のための取り組み、GPAのような客観的な成績評価基準の導入などが提言されています。

 3番目であるが、入学者受け入れの方針については、受け入れ方針の明確化、また、推薦入試やAO入試の適切な実施、入試方法の適切な見直しなどが提言されています。

 このほか、教員や職員のFDなどの職能開発の推進、財政支援の拡充なども提言しています。

 この答申を踏まえて、もう既に各大学では学士課程教育の充実を図っていただいていますが、国としても予算措置などを通じて支援していくことにしています。

 最後に、3番目、資料5-3、大学における教育課程の共同実施制度の導入です。

 制度の趣旨ですが、上のほうにありますが、簡単に申し上げれば、複数の大学が、それぞれが有する教育研究資源を活用して、共同で魅力ある教育研究活動を効果的に行うことができるような仕組みを導入するということです。そして、この制度の導入により、複数の大学が共同で教育課程を編成、実施するということが可能になります。下のほうにイメージがありますが、現在は、一番下にあるような単位互換という形でありますが、この制度によって、真ん中にあるA大学とB大学が共同で教育課程を実施するということになります。この課程の修了者については、学位記は各大学の連名による学位を授与することができるという仕組みです。

 なお、1つの大学で取得できる単位は、学部では31単位以上、大学院では10単位以上というふうにそれぞれの構成大学で取得するべきと決められていて、ほんの少ししか片一方の大学はしないという仕組みではなくて、それぞれがお互いに責任を持って教育課程を実施していただくというような仕組みです。これについては、今年の3月から認可申請の手続をして、来年の4月から開設という手順です。

 以上です。よろしくお願いいたします。

【佐々木分科会長】 

 何かご質問はないでしょうか。

 よろしいでしょうか。

 それでは、その他の3である。基礎科学力強化総合戦略構想について、説明を振興企画課長からお願いします。

【奈良振興企画課長】 

 研究振興局振興企画課長の奈良でございます。よろしくお願いいたします。

 横長のカラーの基礎科学力強化総合戦略構想と題したポンチ絵がある。資料6-1、6-2、6-3という3つの資料から成っています。説明の都合上、一番最後の資料6-3から説明させていただきます。

 ご案内のとおり、今日は小林先生がいらっしゃいますが、昨年、4名のノーベル賞ということで、塩谷大臣がそれを機に、基礎研究、基礎、そういった面を強化する必要があるということで、そこのあたりを今後どうしたらいいかというご下問がありました。

 それで、まず初めに、この資料6-3であるが、文部科学大臣主催のノーベル賞の方々、また有識者にお集まりいただきご意見を聞く会というのを、昨年11月7日、11月21日と2回ほど開催させていただきました。一応検討の視点ということで、3つの領域をあらかじめ設定いただいて、研究への支援充実、研究環境の整備・改善、若者の興味・関心の向上と、とりあえず3つの領域からご意見をいただくということでした。

 1ページめくっていただいて、メンバーの方のリストがあります。今日は佐々木先生、金澤先生がいらしていますが、ノーベル賞の方、またそれぞれの学術会議とか学振とか、そういったような審議会の会長の方々、有識者に入っていただき、2回ほどご意見をいただきました。いただいたご意見については、後ほどご参考に読んでいただければと思いますが、頂いたご意見の概要ということで2回分つけています。

 こうしてご意見をいただいたものを、また資料を戻らせていただくが、資料6-1、一番最初の資料に戻っていただいて、いただいたご意見を基礎科学力強化ということで、基礎科学は何かという定義の問題もありますが、いわゆる科学技術、学術分野の基礎的な研究のうち、特に世界水準の新しい知の発見とか発明とか実証に資するような研究、それから独創的、創造的な成果を目指すような研究といったような概念として考えておりますが、そういった基礎科学そのものの向上のみならず、それを支えるというか、科学力、「力」がついているが、そういった意味で、ここにいただいたご意見を、青色と黄色と赤と3つに分類させていただいております。

 人の育成という意味で、まず研究者の支援。これは、財政的な支援、それから、いわゆる人に対する給付金その他といったような支援がありますが、そういった個人とかグループに対する支援の問題。

 それから、真ん中の黄色いところが、どちらかというと機関に対する支援と申し上げましょうか、研究環境の整備とか基盤等への施設整備、また、拠点の育成みたいな事業が真ん中のイメージです。

 それから、一番右側の赤いところですが、創造的人材の育成。例えば初中教育の理数教育とか理解増進、また国民への説明を通じて創造的な人材育成をしていくということであります。

 この図の見方ですが、点線の上側がそれぞれいただいたご意見を3つの領域で整理したものです。真ん中のところが当面の主要な対応ということで、既存の施策を取りまとめたもので、別紙として、それぞれの施策について予算等が後ろについていますが、こういったものを整理しました。これについて、昨年12月24日、基礎科学力強化総合戦略構想ということで大臣のほうからご発表いただいて、2009年を基礎科学力強化年という位置づけで、今年中心に、この分野について強化を図っていく構想として取りまとめようということです。

 まだ「構想」がついていますので、今後の課題ということで、下のほうに青いところがありますが、個別の課題のほかに、左下のほうに2つばかり系統の体制の問題が記述してあります。まず、科学技術・学術審議会のもとに、基礎科学力強化委員会(仮称)の設置を検討ということと、行政として関係施策の調整機能の強化。これは文科省の中の組織として基礎科学推進連絡調整会合の設置とあるが、総合戦略の構想発表を大臣等々にご相談した結果、資料6-2の真ん中の資料でありますが、実はこの総合調整機能の強化について検討した結果、基礎科学力強化推進本部という大臣を本部長とする局長級の対応ということで、裏面にメンバーが載っていますが、大臣が本部長、それから、本部長代理を事務次官、副本部長を坂田文部科学審議官。局長級ということで、ここがこの施策の企画立案の総合調整、その他司令塔的な役割を担う組織として、むしろ調整会合ということではなくて、大臣直轄の本部という格好で1月13日付で設置いたしたところです。

 それに連動して、では、委員会をどうしようかという議論が今なされていて、この資料では、科学技術・学術審議会のもとに検討していこうという趣旨で載っていますが、一応大臣級の本部に格上げになった経緯もあって、検討中でありますが、今この本部に合わせて、むしろ大臣直轄の有識者会合というのを設置してはどうかと。学術審議会のもとではなくて、別に置いて、しかも実は時間があまりないので、かなり集中的にご議論していただくということもあり、そういった別途の大臣直轄の有識者会合のほうがいいのではないかという議論をしていて、この委員会の位置づけについては、そういうことを検討中であります。

 そういったわけで、今、第1回本部を近々、できれば今週、来週中に開催したいと思っておりまして、現在、準備会合なるものを開催しています。関係局として、局長のお名前があるとおり、6部局ぐらいにわたる全省的な体制ということでありまして、この総合戦略構想の中身を21年度施策というか、当面の対応と、それから新規施策、または中長期的な課題という項目で今後検討して、夏ぐらいまでには、この「構想」をとった格好で戦略をまとめたいということで今検討を始めたところであります。

 留意事項としては、先ほどのご意見を聞く会でいろいろなご意見をいただきました。その中には、かなり中長期的にご議論していただかなければならないような課題もあります。それについては、先ほどの委員会、本部で整理して、それぞれの関係の審議会にご相談申し上げて、中長期的な課題を各審議会のご検討の中に引き継いでいって、ご議論していただくことも含め、今検討しておりまして、近々第1回の本部会合を開いて、今後の対応の方向性などをご議論し、決めていただく予定です。

 以上です。

【佐々木分科会長】 

 ご質問等あろうかと思いますが、時間の関係もありますので、最後のところで皆様からご質問等をいただきたいと思いますので、少しごらんになっていただきたいと思います。

 次に、平成21年度の概算要求について、事務局から報告をお願いする。

【奈良振興企画課長】 

 資料7-1でございます。平成21年度予算案について、先般、概算要求をご説明させていただきましたが、その予算案ということでごく簡単にご説明させていただきます。

 まず、大学の研究基盤の整備、基礎研究ということです。まず、国立大学の運営費交付金については非常に厳しい状況でありまして、計画的に1%削減ということが基準になっていて、本年度はそこからさらに2%を削減するというような方針でありました。それについて、非常に大学の運営が困難になるということで、財政当局とも調整して、ぎりぎり1%削減のところまで戻して、1%減であるけれども、1兆1,695億円という予算になっております。

 それから、私立大学の経常費補助であるが、施設設備の高度化、高機能化を含めて、3,374億円です。

 それから、大学・大学共同利用機関です。これについては、情報基盤整備、また老朽化、陳腐化した基盤的な研究設備、それから、大学共同利用機関においては、独創的な基礎研究ということで、アルマ計画等、さらにはそれぞれの施設附属型の先端的な大型設備ということで、全体で1,146億円です。

 それから、第2次国立大学施設緊急整備5か年計画の着実な推進ということでありますが、まず1つは、耐震化の整備を推進するとともに、世界トップレベルの教育研究拠点の充実という観点、人材育成の強化につながるような施設整備、それから、大学附属病院の再開発ということで834億円です。

 それから、次のくくりの競争的資金でありますが、科学研究費、科研費です。昨年、ノーベル賞ということもあって、かなり抜本的な増枠をお願いしようということでありました。結果として、昨年の率で1%増の倍増の2%増ということで、1,970億円を確保ということで、拡充できたと考えています。

 次のページをめくっていただいて、拠点整備関係ですが、グローバルCOEが342億円、世界トップレベルのWPIが71億円です。

 それから、昨年来新しく創設した人文・社会科学の振興ということで、6億円から2億円増の8億円ということで、国公私立大学を通じた共同利用・共同研究拠点の整備ということで8億円を充当する予定です。

 (3)研究者の育成・確保です。以下、これからは日本学術振興会の施策です。特別研究員事業については163億円ということで、DCとあるが、博士課程後期も増員、それからRPD、これは女性研究者の出産、育児等からの復帰支援ですが、こういったものを拡充ということで163億円。

 それから、海外の派遣関係である。最初の海外特別研究員事業、これは2年間の長期で16億円。

 それから、国際研鑽機会の充実。例えば下にあるが、リンダウのノーベル賞受賞者会議に派遣とか、ITPと呼んでいるが、トレーニングプログラムということで7億円です。

 最後になるが、学術国際交流ということで、これも学振の予算であるが、ボトムアップ型の国際共同研究ということで1億円弱。

 それから、外国人研究者の招へい・ネットワーク強化ということで、1つは、招へい事業そのものですが、もう1つは、帰国した後、外国のほうでコミュニティーをつくっていただいて、一層の研究の交流機会を高めるといったようなことで54億円になっています。

 以上です。

【佐々木分科会長】 

 これについても、先ほどの件と同様、その他の一番最後のところでお願いします。

 学術の振興方策等についてということで、本日は第4期学術分科会及び学術研究推進部会の最後の会合でありますので、先ほどご説明いただいた基礎科学力強化総合戦略及び予算案についてのご質問とあわせて、これまでの本分科会の活動を振り返ってご意見をいただきたいと思います。もちろん、先ほどの説明に対するご報告も含めてご発言をいただければと思います。よろしくひとつお願いします。

 どなたも何もないということで、よろしければ司会者としては、日本の学術政策についての問題点の指摘といったことを含めてでも、何かそういう意味でのご意見もあればいただければと思うが、何かございませんか。

 どうぞ。

【巽委員】 

 特にないようでありますので、私はこの予算のことでご質問させていただきたいのですが、資料7-1で挙げていただいた学術研究関係予算。全体を見ると、トータルでは減少傾向にあると見たらよろしいのか、それとも、そうではないのかということであすが。

【佐々木分科会長】 

 課長、どうぞ。

【奈良振興企画課長】 

 難しいご質問と存じます。大学の運営費交付金が1兆2,000億円弱で、規模が非常に大きいものであるから、これが1%削減になるとかなり大きな金額になっています。他方、その分を国立の施策に見ると、いわゆる重点的にやろうというものについては増えている。トータルで見ると、足し算すると若干そういうことになりますが、個別の事業施策については、それぞれ若干であるが増えている構造になっていると考えています。

【巽委員】 

 そうでありますが、それを見ると、一応大学への運営費交付金が減少する分を、競争的研究資金でとりましょうというのが基本的な考え方だとお聞きしていたような気もしますが、なかなか十分それには追いついていない現状であると判断したらよろしいのでしょうか。

【佐々木分科会長】 

 どうぞ。

【戸渡政策課長】 

 科学技術・学術政策局でありますが、学術関係に限定してというと、なかなかどこで切るか難しいところがありますが、文部科学省のいわゆる科学技術・学術関係の経費全体の科学技術関係経費ということで、運営費交付金等も含めて整理している経費で見ると、文部科学省については、18年度以降も、当初予算ベースでは科学技術関係経費全体は着実に増額を図ってきているということです。

 平成20年度では補正もあったので、補正予算でもかなりついています。それから、21年度についても当初予算ベースで増額になっているのが、18年度以降、第3期基本計画に入ってからの状況です。

【佐々木分科会長】 

 ほかにございませんか。

 西山委員、どうぞ。

【西山委員】 

 先ほどの基礎研究、研究者の自由な発想に基づく研究と関連ですので、申し上げます。基礎研究を拡充していく方向性が打ち出されているわけですが、これは予算の裏づけがなければ拡充できない。基礎研究を重視するというときに、どのくらいの額を出すかということやその予算枠を考えなければならない。基本的に、基礎研究は研究者の自由な発想に基づくわけであるから、競争的資金には本質的にそぐわないわけです。そういうふうに考えると、競争的資金にそぐわない基礎研究はどういうものであるかというような議論を深めていかなければいけない状況にあるように思います。また、現在、研究者の自由な発想に基づく研究の予算の枠として、運営費交付金と科研費という枠組みしかない。そういうところに基礎研究費という枠組みをつくっていくことが私は必要だと思います。ご検討いただきたいと思います。 

【佐々木分科会長】 

 ほかにいかがでしょうか。

 白井委員、どうぞ。

【白井分科会長代理・部会長】 

 基礎科学力強化云々というものでありますが、今ポスドク問題とかそういうのが盛んに言われていて、どちらかというと、研究者があまっているというか、職がないとか、そういうようなイメージを盛んに新聞なんかでもよく見るわけです。実際、中教審の大学院分科会であったか、あそこでも、こんなに育てるからいけないのだという意見を言う人も結構いて、少し調子がおかしいというか。

 やはり優秀な研究者が、これは自然科学に限らず、私はもう少し層が厚く出てくるべきだと。今回の戦略構想をどっちかというと研究する人たちは、若手研究者から始まってというイメージであるが、もう少し若い、小さいというか、高校生から、受験のところで。理科離れなんていうのは、大体中高で脱落するわけである。そこら辺のところの政策というか、イメージとして見せる見せ方が間違っている。日本の基礎科学というか、これは人文・社会も含めて、そういうものがいかに魅力があるものだということを、そっちを目指して勉強しようということにしていかないと、卒業してから、できるだけいい職を得るのにはどこに行けばいいというような受験の世界に今なっているわけで、そこのところのイメージのつくり方から、初めからおかしいかなと。一番影響を与えるところに、どうも我々は手が抜けているという印象を実はしています。

 そういう意味で言うと、一番効果があると思ったのは、高校生とか中学生に対する職業あるいは研究のおもしろさをいろいろ宣伝できるのは、大学院生とかポスドクぐらいであります。そういう人たちの宣伝は圧倒的に影響を与えています。もう少し戦略の中には、研究そのものをどうやったら上げられるというだけではなくて、どういうふうに一貫して有能な人物を、どっちがいいかわからないけれども、量というよりは質を誘導するような施策が要るのではないかと。

【佐々木分科会長】 

 ほかにいかがでしょうか。

 三宅委員、どうぞ。

【三宅委員】 

 先ほど、基礎科学力強化懇談会の話と中長期的大学教育のあり方、学士課程教育の構築に向けてという、いろいろなお話をいろいろなレベルで一遍に聞いたので、少し整理し切れていないのかもしれないのですが、今の白井先生のお話を聞きながら、これまでの議論を突き詰めて行くと矛盾があるのではないかと感じられたので説明したいと思います。大学教育においてもある種の基礎学力的なものが必要で、大学教育の質を保証するシステムをつくろうとして「学士力」のようなものを決めて、FDもそれに当てはめて考えるという方向は、かなり規範の強い主張である。これに対して、今日の議論の最初のところで出てきたような、非常に自由な発想をいろいろなところでいろいろな形でできるように研究費なども配分しようというのは、多様性を志向した話で、規範的ではありません。では大学はどうするかについて、このままではあまり整合性の高い議論にならないような気がします。「学士課程の教育の質を国際的にみて、押しなべて魅力あるものにしておく」という目標も、行ってみれば科学のおもしろさを一本のものさしで計ることに等しくはないでしょうか。あるいは大学院生や若い研究者が高校生に対して自分のやっている研究はこれだけおもしろいということを宣伝できる環境をつくれば問題が意決するという考え方もどこか一方的なのではないのでしょうか。これらの、一見魅力ある提言が、現場に入った時に逆効果を持つのではないかという懸念を持ちます。

【佐々木分科会長】 

 ほかにないでしょうか。

 上野委員、どうぞ。

【上野委員】 

 初めてこの会議に加えていただいて、学術研究の審議と、部分的であれ、かなり教育との接点が探られつつあるのだなという感触を持ちました。先ほど白井先生がおっしゃった部分もそうであるかと思います。

 それで、今の白井先生、三宅先生のお二方のご指摘を重ねて考えてみると、先ほど資料5の一連の資料の中で、学士課程教育の構築のところで、FDが普及はしたが、教育力の向上にいま一つつながっていないのではないかという総括が書かれていますが、そこも少し学術と研究との接点をどういうふうに育てていくかというところと関係あると思います。大学における教育は、もちろん方法と教え方の問題もありますが、教員が内容的に研究として開けているところで教育活動を行っていく。例えば今日は、脳科学も教育のことをご指摘になった、それから人文のところも教養という言葉でご指摘になった。特に今の基礎科学力のところでは、スーパーサイエンスからひらめきときめきサイエンスから、例が随分出ています。この理数系教員養成拠点構築は教育の中でも少し先端を走っていて、うっかりすると、狭い分野で育てようとしますが、やはり科学への興味や魅力を同時に育てようとしながら、今大変に教育活動が精力的に展開されているという意味で申し上げたいのを、私はこの会議で感じました。

 学術振興という観点と、教育の振興という観点をより一層結びつけて、教育を別のところに隔離しないで、研究活動という開けたところにきちんと位置づけて、政策なりあり方論議をしていくことが非常に大事なのではなかろうかという感想を持ちました。

 以上です。

【佐々木分科会長】 

 何か事務局のほうから、ただいまのご意見に対して発言があれば伺います。あるいは今後の施策に生かしていただくことでもちろん結構かと思いますが。

 ほかにありませんか。

 それでは、皆様にご予定いただいた時間がだんだん迫ってまいりましたので、もし追加的なご発言がなければ、そろそろ閉会に向かって動きたいと思うが、よろしいでしょうか。

 それでは、本日は第4期としての最後の学術分科会及び学術研究推進部会となりますので、この間、私は分科会長として務めさせていただきましたが、一言ごあいさつを申し上げたいと思います。たくさんの作業をしていただいて、まずは御礼申し上げたいと思います。特に私の専門に近い人文・社会科学のところは、まことにご苦労さまだったと思いますが、ほかのところも例にもれず、非常に会議の多い期でありました。次期はぜひ会議を少なくしても成果が上がるように祈っているところです。

 先ほど来、いろいろご発言がありましたように、学術研究の領域をめぐる環境について、いろいろ政策を打ち出すのはいいけれども、実態はどうなっているのかということについて、やはりこの辺で一息ついて考えてみるべき段階かなということで、西山委員からもほかの方からもそういうお話があって、次はこれやろう、次はこれやろうというお話ばかり積み重ねていくと、やっぱり何かブラインドスポットが生じやしないだろうかということについては、個人的にもいささか考えを持っているところです。

 特に私は法学部であるから、ロースクールができたことによって、学術研究がどうなるかというのが、基本的に非常に心配です。であるから、そういうふうに、一般論をやるだけではなくて、幾つかの領域について少し目配りを具体的にしていかないといけないし、大学の評価の作業をしていますが、学長さんと学生が出てくるが、先生は出てこないという仕組みであるから、一体どういう心境で毎日送っておられるのかということについては、正直言って、いささか慎重に見ていく必要も一方であるのではないかということも、やや個人的な感想ではあるが、持っているところです。

 ですから、新しい施策を講ずることは、特にこちら側の列にいらっしゃる方は仕事のようにやっておられますが、それと現場で研究されている方とのコーディネーションをうまくやっていかないと、志に反するようなことになるといけないものであるから、ぜひそういう点も今後配慮していく必要があるのではないかと思う。

 一言、あと具体の問題について、科学研究費補助金については、もっともっと本格的に充実を図っていただく必要があると思っています。企業の研究開発費などと比べると、いかにも小さい額であって、向こうとやっていることは違うことは違うのであろうが、決して遠慮しなければいけないような額ではない。少なくとも、大きな期待をかけるのであったら、もっと充実を図ってしかるべき。かけるなら、それなりのことはしてもらわないといけないという、この辺の関係がどうも基盤公費の問題から含めて、掲げている目標と足腰とのギャップがどこかでこれは取り繕うことができないような事態にならないようにしてもらわなければいかんという感じで、この2年間過ごさせていただきました。

 いずれにせよ、委員各位のご協力及び事務局のサポートに対して心から御礼申し上げます。

 では、白井分科会長代理と学術研究推進部会長か、よろしくお願いしたい。

【白井分科会長代理・部会長】 

 この分科会長代理と学術研究推進部会長という2つを仰せつかった。佐々木分科会長の手助けになったかどうか怪しいので、少し自分自身で点をつけてみると、あまり高い点にはならないなと思っています。しかし、今、佐々木先生のお話にあったように、この2年間、皆さん大変頑張って、いろいろなレポート等、議論もやっていただけたのではないかと思っています。

 とりわけ今日もあった脳科学――脳科学のほうはさらに議論が深まって、進化するのではないかと期待されるし、人文・社会のほうは私も何回か参加させていただいて、伊井先生を中心にほんとうにすばらしい議論だったし、最後のレポートは、私は非常に力作だというふうに、関係しているから余計そう感じるだけのことかもしれないが、そういうふうに思っていて、ぜひこういうものが、ほんとうに現実の研究に役立っていったらありがたいと思いました。

 あと、感想といえば、こういうレポートが出るが、今盛んにグローバル化とか何か言うが、概要でもいいから英語版を出すとか、そろそろそういうことを考えて、我々は世界に向けて情報発信しているのだよというのを、こういうレポートの一部でも僕はあったほうがいいのではないかといつも思います。非常に貴重なレポートですが、だれが読んでいるのかよくわからないところもあります。関係者はかなり読んでいると思いますが、やっぱり英語でないと読みにくいというか、そういう人も既に結構おられる。それが1つ。

 それから、今、西山委員がおっしゃったことであるが、競争的資金というのが大きくなってきたことによって、確かにいろいろな研究そのものが断片的になってきたということだけは否めないと思います。科研費なんかはもともと個人が好きなことをやっていくという立場だから、これだと基本的にずっとそれもいいと思うが、ちょっとCOEとかああいうものを言っていたおかげで、大学とは一体何なのかという。大学は研究をやるところであるが、それは個々のばらばらの研究者あるいはグループが勝手にやっていればそれでいいのだ、そのレベルが高かったらいいのだと。それが国際的であったり、国際社会で通用する、あるいは広く社会全体に関係していればそれでいいのだ。確かにそうかもしれないけれども、ほんとうにそうなのかと。

 だから、大学というのは、どこどこ大学がどういうことを目指して研究をやる。教育では理念というのを盛んに言われるが、研究は理念というのはあまりない。理念がないというのも、言い方は非常に誤解を生むが、どうも大学がこういう研究をやって世の中に発信するというものは、はっきり言ってどこの大学も今はない。それは、それでいいのかと。いいのだ、そういうのが当たり前なのだという考え方もありそうだけれども、どうもそこは大学の役割として、ほんとうにそれでいいのだろうかという疑問が、今の政策だとどうしても自然にそうなると思います。

 だから、先ほど西山委員の言われたように、科研費でも僕はいいと思う。間接経費が非常に大きくなってきたから、そこをたくさんとる研究者がいるところは、間接経費をうまく大学全体の研究の推進と政策的に使うこともできるわけで、そういうようなことを大学自身ができるようにしていくことも非常に重要かなと、最近私はそういう印象を持っています。そんなことで、拠点づくりというのをどんな形でこれから支援してくのかということにも通じているかと思いました。

 私自身は2年間で、あまり役に立っていないが、ただ、レポートは結構よかったかなと。あとはこれを実行するような体制づくりというところで、一段また進化したらありがたいなと思いました。

【佐々木分科会長】 

 それでは、同じく学術研究推進部会部会長代理を務められた中西委員から。

【中西部会長代理】

 部会長代理として、どれぐらい役に立ったか少しわかりませんが、無事2年間終わったと思います。

 感想ということで1つだけ申し上げたいことは、非常に私の印象に残った、人文学と社会科学の振興策の委員会についてです。これは、伊井委員長のもと、本来、学問はどうあるべきかという学術論をきちんと展開し、その上に施策を発展させてきたので、土台がしっかりした立派な報告書になったと思っています。参加した委員からも、若い人にぜひ読ませたいと言われたほどすばらしいものだと思っています。

 翻って考えると、今、佐々木先生から、現場をもっと配慮すべき、それから白井先生のほうから、大学は何なのかということもご発言があったが、科学技術のほかの分野でも、その分野の学術論をまずきちんと展開し、それに立ってどういう施策があるかを考えれば、もう少し異なる施策も生まれてくるのではないかと感じましたので、最後に印象を一言つけ加えさせていただきました。

【佐々木分科会長】 

 それでは、最後に、文部科学省磯田研究振興局長からごあいさつをいただきたいと思います。

【磯田研究振興局長】 

 研究振興局長の磯田でございます。簡単にお礼を申し上げたいと思います。

 ほんとうに2年間お世話になって、感謝申し上げます。また、貴重な報告並びに検討の審議状況についてご意見をいただいておりますが、私ども、これをしっかり実行すべく努力をしてまいりたいと思うし、また、審議の課程でいただいたさまざまなご助言もしっかり考えて受けとめてまいりたいと思っております。

 佐々木会長からあった、回数が若干多過ぎたのではないかというのは、振り返ってみると、我々が戸惑っているというか、しっかりした考えを持ち得ていないということと反省しております。競争的資金をはじめとしたそれぞれの制度が進んできたわけではありますが、今現在、さまざまな課題とか限界というのをご指摘いただいたと思っています。別に、白井総長のグローカルを引用するつもりは全くありませんが、もっと改めてグローバルな視点と、しっかり実態を踏まえるということをして、次の学術研究の推進に向けて、次の期も検討していきたいということをお約束して、甚だ簡単ではございますが、お礼のごあいさつとさせていただきます。

 ほんとうに感謝申し上げます。

【佐々木分科会長】 

 それでは、事務局から連絡事項があれば、お願いします。

【門岡学術企画室長】 

 本日の資料については、机上にお残しいただければ郵送させていただきます。なお、今回が第4期学術分科会の最後の会合ですので、今回の議事録案は後日、委員の皆様方に個別にご確認をお願いし、ご了解をいただいてから公表させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 以上です。

【佐々木分科会長】 

 本日の会議はこれで終了します。ご苦労さまでした。

── 了 ──

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