令和8年6月3日(水曜日)10時00分~12時00分
対面及びオンライン会議併用のハイブリッド形式にて開催
大竹部会長、鷹野委員、仲委員、宇南山委員、加藤委員、永田委員、中野委員、塩見委員、華山委員、新福委員、岸本委員、速水委員
板倉学術研究推進課長、大鷲学術研究推進課企画室長、豆佐学術研究推進課企画室室長補佐、他関係官
【大竹部会長】 それでは定刻となりましたので、ただいまより第13期の第5回研究費部会を開催させていただきます。台風の影響がまさに今、関東ではピークというところでございます。その中、御参集また傍聴いただきまして、ありがとうございます。
本日は、学術審査とAIについてヒアリングを行った後に、前回からの引き続きとなりますけれども、「基盤研究」の役割あるいは在り方について議論していきたいと思います。その後、科研費における人材育成機能の強化についても議論してまいります。
まずは事務局より、有識者の方を御紹介いただければと思います。よろしくお願いします。
【豆佐企画室長補佐】 本日は議題(1)におきまして、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立情報学研究所の相澤彰子教授をお招きいたしまして、学術審査とAIについて御講演をいただきます。御講演の後に質疑応答の時間を設けたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【大竹部会長】 それでは続きまして、配付資料がございますので、配付資料の確認、それから注意事項をお願いします。
【豆佐企画室長補佐】 ありがとうございます。本日は対面とオンラインのハイブリッド形式で開催しております。事務局から配付資料の確認とオンライン会議の注意点について御説明いたします。
資料につきましては、記載のとおりでございます。個々の資料の読み上げはいたしませんが、資料の欠落等がある場合や、対面で御参加の方でタブレット端末の操作方法について御不明な点がある場合には、事務局までお申しつけください。オンラインで御参加の方は、資料については事前にお送りしたファイルを御参照ください。
次に、オンライン会議の注意事項でございます。音声の安定のため、発言時を除き、常時「ミュート(マイクOFF)」にしてください。部会長、委員、オブザーバーを含めメイン席の方は、常時「ビデオON」に、その他の方は、常時「ビデオOFF」にしてください。発言される場合は「挙手」ボタンを押してください。部会長が指名されますので、「ミュート解除(マイクON)」にして、その都度お名前を御発言いただくとともに、オンラインでも聞き取りやすいよう、はっきりと御発言いただければと思います。資料を参照される際は、資料番号、ページ番号などを分かりやすくお示しいただきますようよろしくお願いいたします。トラブル発生時には電話にて事務局まで御連絡いただければと思います。
以上でございます。
【大竹部会長】 ありがとうございます。
それでは早速ですけれども、議事に入らせていただきたいと思います。有識者ヒアリングとして、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立情報学研究所の相澤彰子教授に御講演をいただきたいと思います。相澤先生、どうぞよろしくお願いします。
【相澤教授】 本日はこのような機会をいただきまして、大変ありがとうございます。私は科学技術・学術審議会の構成員でもありまして、その下の情報委員会の主査も務めております。
国立情報学研究所は2024年に、「生成AIモデルの透明性・信頼性の確保に向けた研究開発拠点形成」という事業で文科省の補助金事業を受けまして、その下で大規模言語モデル研究開発センターが発足しています。その大規模言語モデル研究開発センターの副センター長も務めておりまして、その中で、学術分野にどのようにAIを適用していくのかといったことも研究のテーマとして扱っています。
これらの活動としまして、本日、ここにございます2点について御紹介させていただきます。まず1点目は論文査読について、そして2点目は審査についてです。
早速ですが、「学術論文の査読~AI分野における動向~」の御紹介です。この赤字で書いてある「AI分野」というのが、ここでは大変重要だと感じております。つまり、AI分野というのは、AI自体を研究開発する分野でありながら、その査読にAIを使っているということで、かなり特殊な分野となっています。ですので、幅広い学術の分野をカバーするものではなく、大変異端のところにある事例となるかもしれませんけれども、AI for Scienceの動きの中で、AIも各分野に浸透していくということもありますので、我々の分野で一体どのようなことが行われ、何が課題となっているかということを御参考にしていただければと思っております。
さて、2022年11月30日にChatGPTが登場してから、論文執筆を支援する様々なツールが研究者のために利用可能となっています。これによって、論文執筆自体の生産性は大変高まったと言えるかと思います。
生成AIを利用した論文執筆が査読に及ぼす影響について考えてみますと、直近、つまり直接的な影響としては、論文数が増える、そして、ハルシネーションと思われる誤りが増加するということが挙げられると思います。
まず、論文数の増加についてです。論文数が指数的に増加するというのはよく知られたことでありますけれども、その増加の傾きが、生成AIの登場とともにさらに上向きになったと言われています。ただ、大局的な傾向というのは、この3年分だけでは正確なところは分からないわけですけれども、国際会議の投稿状況等を含めても、かなり増えているということは言えるかと思います。
続きまして、そうした急激に増える論文の中で、ハルシネーションがどのようになっているかという分析も行われております。このスライドにある2件の報告は、1件目が2026年1月、2件目が2025年12月に公開された、比較的最近の分析結果となっています。1件目は、いわゆるトップカンファレンスと言われる、権威ある会議の投稿採択論文を調べても、参考文献のハルシネーションは増え続けている、という報告です。2件目は、参考文献だけではなく、論文中の誤りの数、例えば数式の数字が違うといった、軽微とはいえ誤りであるようなものを含めまして、1論文当たりの誤り数も増えているということを指摘した報告です。
こうした中で、AI生成論文に対してどのようなポリシーが取られているかということを見てみます。多くの出版社や学会はポリシーを策定しているわけですけれども、共通しているのは、生成AIを使った場合に明記をしなさい、それから、生成AIが著者になることを禁止しなさい、です。この2つはほぼ一致した方針となっています。
ここでポイントとなるのは、生成AIを使ってはいけないということ自体は共通のポリシーとはなっておらず、また、現在の状況では、一切使うなということはむしろ非現実的であるとも言えます。
では、査読者の利用についてはどのような方針が一般的かということですけれども、例えば少し古いものですが、『Nature』による研究者のアンケートでは、研究者は一般的にAI論文を執筆するよりも、AIによって自動査読されるほうにより強い懸念を持っているというアンケート結果も報告されています。
これは考えてみれば納得ができることで、AIの査読品質に関する懸念、あるいは人間が責任を持ってほしいという、その責任の所在、そして未公表の論文をAIにアップロードすることによる情報漏えいの懸念などを踏まえると、査読者のAI利用に対しては、より厳しい基準が必要であるということになります。
では、査読者はAIを使わないのかというと、必ずしもそうではないという分析の報告がこちらのスライドでございます。例えばICLRというのは機械学習分野のトップ会議ですけれども、分析してみると、AIの痕跡が見られる査読は確実に増加しており、15.8%程度と推測されていたのが2024年の状況で、今はもっと増加していると予想されます。
さらに、こうした分析の結果から、AI利用が推測されるものとそうでないものの査読スコアの比較も試みています。ただ、AIの痕跡が見られたからといって、翻訳に利用しただけかもしれず、AIが査読したとは限らないとすると、こうした分析はある程度限界もあることかと思います。
査読におけるAI利用に関する『Nature』の最近の調査によると、幅広く1,600名の研究者を対象としたサーベイでは、半数以上が査読結果を作成する際に何らかの形でAIツールを使ったことがあるとなっています。査読についても比較的AIの利用というのは、様々な形で一般的になりつつあるということが実態として推察されます。
こうしたことを踏まえて、最近のトレンドという話題に入っていきたいと思うのですけれども、様々AIが普及する中で、AIの査読は、当初、「人間の査読者を置き換える」という大ざっぱなイメージで使われていたものが、最近では、社会の受容性を高めると申しますか、より研究コミュニティのニーズに沿う方向に進化していると言えると思います。
例えば、投稿前の著者レビュー、人間査読者の置き換えではなく、支援あるいは実験としてのAIレビューの導入のトライアル、そして無許可の利用や不正の対策といった進化の方向であります。個人的には、1番目の投稿前の著者レビューは非常に重要だと思っていまして、論文の場合、査読者の役割は採否が重要ではありますが、改善のためのフィードバックが非常に重要であると。もしもその改善のためのフィードバックに今まで数か月要していたものが10分で返ってくるようになれば、研究者はそれに基づきさらに改善するというループを早く回すことができます。今まで数か月待っていたものが10分になるというのは非常に重要なことで、AI査読者というのは、論文の質を高めるための強力な武器あるいは研究の基盤であると考えられるかと思います。
そうしたAI査読者の最近の性能について、2つ事例を御紹介いたします。
1番目は、スタンフォードのAgentic Reviewerと呼ばれるもので、こちらは2025年11月に発表されています。これはまさにフィードバックに重視を置いたAIレビュー専門の大規模言語モデルでありまして、論文を改善するためのコメントを7つの異なる観点から出力するという形になっています。こちらに査読コメント例があります。時間の関係で詳細は省略いたしますが、こちらにアップロードしたのは我々が半自動生成したAI作成論文でありまして、それに対してこのように査読のフィードバックをくれると。我々の分野はもうフルサイバーですので、こうしたフィードバックに基づいてさらにコーディングをして、実験を進めていくといったことも可能になる。AI査読は、そういった研究サイクルを回すために活用できるものとなります。こちらのAI査読エージェントはほぼ人間のレビュアーとスコアの相関では互角ですけれども、まだ少し人間レベルに達しない点があるという状況でありました。
次の例ですけれども、2026年1月30日、グーグルによるScholarPeerというものが発表されました。これは公開されているツールではないのですが、やはりエージェントベースで多くのエージェントが協調動作する形で査読を行うものです。こちらは論文の中での報告によると、論文といっても査読なしのarXiv論文ですけれども、人間の査読者に匹敵する性能を上げるまでになっているということであります。様々な観点から比較すれば、人間のほうがよい部分、AIの方が得意な部分はあることかと思います。深層学習の著名会議であるNeurIPS 2026では、このシステムをグーグルペーパーアシスタントツールに統合して、著者支援として提供するというトライアルを行っています。
以上、2つ事例を紹介しましたが、2025年11月、2026年1月ということで、急激に性能は向上しているところです。ポイントは、これらがAIレビュー専用にカスタマイズされたツールであるというところでもあります。
さて、情報分野では国際会議の重要性が高く、現時点でAIの分野では国際会議を中心に研究が進んでいる状況です。そうした著名な権威ある国際会議でどのようにAIレビューが取り入れられているかについて、簡単なタイムラインを示したものがこのスライドとなります。
最初に、AIが査読コメントへフィードバックした、2万件レベルの大きな実証がありまして、こちらも御参考になるかと思いまして、例をスライドに示してあります。例えば査読者のコメントが「This paper could use more experimental baselines.」という簡単なものであった場合に、そのbaselinesを具体的に提示しなさいといったフィードバックを返すというものです。
それからAI査読の試行導入。そしてAI査読ツール利用のトライアルでは、著者が同意した場合に査読者はAIツールを使うことができるというルールを定めて運用をしています。ただし、それをバイオレートした査読者は、自分が投稿した論文はデスクリジェクトになるということで、報告によると497本がデスクリジェクトになったという厳しさもあります。
それから4番目は、先ほど御紹介したAI査読ツールを著者に提供という試みであります。査読者に対しては実験の目的のみです。
それから最後、まだこれから開催される会議ですけれども、希望した著者にAI査読結果を送付するという試みも始まっています。
これまでの話は専用のAI査読者のご紹介でしたが、ChatGPTやGeminiあるいはClaudeといった汎用のツールにAI査読を任せたときに何が起きるかという検証も行われています。汎用AIを用いた査読に関するポジションペーパーというものがございまして、そちらの報告に基づくと、やはり汎用AIを使ったものを人間の査読結果と緻密に比較してみると、信頼できるに足りるレベルにはまだ到達していないという主張がなされています。
これはどのAIを使っても同じような結果を返してくるということで、評価の根幹となるような査読者の多様性が担保できないですとか、内容は同じなのに書きぶりだけをちょっときれいにしただけで評価ポイントが変わるとか、そういった分析に基づくものであります。
最後に、以上、最先端のファンシーなものも含めて、AI reviewerについて御紹介いたしましたけれども、このAI reviewerが全ての分野において有用なツールであることが保証されているかというと、決してそのようなことはなく、AI分野において主に検証されているものだと言うことができます。それは何故かというと、AI査読自体が研究テーマになっているわけで、その研究をするためには、オープンな研究データが必要だということであります。ICLRというのは国際会議の名前ですけれども、このICLRデータセットというのがほぼ唯一のデータセットになっていて、その理由はICLRが不採択・取下げを含む全ての論文について、査読・メタ査読、著者とのやり取りをオープンにし、その論文の本文もPDFの形で公開されていることにあります。査読についての研究をする研究者にとっては、非常に重要なデータとなっているということです。
また、素材となる論文・データは、アーカイブなどのレポジトリを使う場合が多いので、必然的にこれらに収録されている分野にバイアスがかかっていきます。また、AI分野はソースコードやデータについても公開を求めているので、そうしたオープンなデータあるいはICLRデータセットのような分野にバイアスがかかっていくという状況はあるかと思います。一方で、会議固有データは開示されておらず、それを用いたトライアルも広がっていますので、今後さらにデータについては注視が必要と思っております。
では続きまして、時間も迫っておりますので、PART2「研究費審査におけるAI活用」について、簡単に御紹介いたします。
研究費審査におけるAI活用というのは、論文の査読用のAIをそのまま持ってくるというだけでは駄目というのは、ここに書いてあるような理由によります。
まず、論文は既にやったことの報告である一方、予算申請はこれからやることのビジョンを示しているものであると。なので、情報漏えいについてもより厳しいですし、研究を行うのに必要なオープンデータが圧倒的に少ない、ほぼない状態であると言うことができます。
また、質的にも、論文審査のAIは研究費審査のAIではない、すなわちカバーするべき分野も多様で、バランスを取る必要があり、1つの分野だけ優れていればいいというものではない。また、目的が資金配分であったり戦略目標の達成であったりするなど、明らかに論文とは違う性格を持っている。あるいは審査基準としても、インパクトとか、波及効果とか、研究体制といった、論文にはない観点が出てくるといったことがあります。
一方で、論文のレビューのところで御紹介したように、導入というのは、非常に緻密な検討あるいはトライアル、評価のステップを踏んでいくもので、研究費審査についても、各国、国際情勢を見ても慎重に検証を進めているという状況になると思います。
研究費審査におけるAI利用について、どういった方面の方が使うかという分類が3つぐらいできるかと思いますが、それぞれについて、比較的先例があるもの、あるいは論文のレビュアーを踏まえて先行事例があると考えられるものを中心にまとめています。
審査業務担当者については、審査者マッチングは一番多く事例があるものとなっていると思います。また、レビュー文の整形、あるいは、査読者については、査読コメントへのフィードバックは、入り口として比較的扱いやすいものになるかと思います。また、申請者については、申請書のチェック、改善に向けた指摘などは今でも自由に使えるわけですけれども、一方で共通基盤として、もちろんよい申請書を選ぶことも重要ですけれども、申請書そのものの質を高めることも重要だと思います。
最後に、審査委員マッチングについてですけれども、こちらは幾つか事例のレポートが上がっておりまして、2020年あるいはここ数年ぐらいで、AIを活用したマッチングについての様々な評価と報告があります。特にやはり分野のばらつきがあるといった点は参考になるかと思っていますし、評価指標としても、辞退率や一致率など、先行事例で参考になるものがあります。
海外のファンディングエージェンシーの取組・検討事例も幾つかありまして、例としては、先ほどの査読者のマッチングについての報告をまとめているGRAILプロジェクト、あるいは、UKメタサイエンスユニットは、活発に活動していて、1年間のプロジェクトとして研究費審査を支援する大規模言語モデルが走っております。
このプロジェクトの中で一番最近報告されたものということで少し調べてみましたところ、2026年3月に公開されている申請書データセット、といっても数量は非常に僅かで、実際の申請書6件だけなんですけれども、を使って分析したりして、汎用の商用AIを使った場合については、やはりAIの審査には限界があって、AIの活用法としては、足切り、スコアがタイの場合の参考、あるいは自律的レビューではなく補助ツールとして使うなどが結論づけられている、あるいは示唆されているところです。
以上で、ちょっと時間超過ですが、よろしくお願いいたします。
【大竹部会長】 いえいえ、相澤先生、学術審査とAI、まさに今ですよね、今の状況を御説明いただきまして、誠にありがとうございました。
続きまして、調査研究について、事務局から御説明をよろしくお願いします。
【大鷲企画室長】 事務局でございます。資料については、26ページになろうかと思います。先ほど御講演いただいたような知見・ノウハウ等を生かしながら、相澤先生を中心に審査支援AIエージェントの開発に向けた調査研究を進めていくこととしてございますので、簡単に御紹介させていただくものでございます。
まず、目的・必要性とございますけれども、現時点におきましても、応募件数が増大し、また、学際的な研究の増加等により、審査委員の負担増や審査の難化などの課題が顕在化していることに加えまして、先ほどの御講演にもありましたように、急速な生成AIの普及によって、さらに応募が増えていくのではないかという懸念を持っているところでございます。そして審査体制を圧迫する可能性も指摘されている。このような状況におきまして、生成AIによる審査支援を導入することにより、研究者の負担軽減による研究時間の確保や審査の質向上等を目的として、調査研究を行っていこうというものでございます。
具体的な機能につきましては、真ん中辺りにございますけれども、先ほどの話にも出てきたところでございますが、審査委員選考の支援、それから、審査意見をフィードバックしているところでございますけれども、その統合・要約の補助、それから、学術評価支援の機能といったことが挙げられるところでございますが、やはり応募情報という機微な情報を扱うということもございますので、セキュアな国際基盤を構築していくことが非常に重要になってくるであろうと考えているものでございます。
実際の課題情報といたしましては、四角く囲ったところでございますけれども、2年にわたって行っていただく予定でございますが、概要のところ、「人間中心」かつ「高信頼性」を前提とした生成AI活用による審査支援の在り方の検討に資する知見の整理やその実現に向けた調査研究を行うこととしてございまして、AIエージェントの概念設計や部分的検証を実施していただく予定となっているものでございます。
この調査研究の結果等々も踏まえながら、科研費の審査におきましてどのようなことができるのかということは検討していきたいと考えているところでございます。
事務局からの説明は以上でございます。
【大竹部会長】 御説明ありがとうございました。
そういたしましたら、相澤先生からの御講演、それから事務局からの今の説明につきまして、御意見・御質問等がございましたらよろしくお願いいたします。
【永田委員】 よろしいですか。
【大竹部会長】 永田委員、お願いします。
【永田委員】 大変興味深いお話をありがとうございました。僕自身も結構生成AIは仕事に使っているのですが、論文に関する話でいうと、生成AIが出てきて一番変わったことというのは、言葉の壁がほぼなくなったということがございまして、これは特に学生の論文投稿指導をやるときの労働がものすごく減りました。
これによって、非英語圏の論文の数も結構増えているのではないかと思うのですが、日本国内での増加の傾向などは出ているのでしょうか。
【相澤教授】 日本発の国際論文の増加ですか。
【永田委員】 ええ、投稿数が増えているのではないかと思うのですが。
【相澤教授】 申し訳ございません。私、そちらの統計については存じていないので、それはぜひ文科省さんのほうで調査をいただければと思いますが、体感的には確かに言語の壁はなくなったというのが実感でございます。
【永田委員】 僕自身も生成AIが出てきてから学生に投稿させる数が増えました。なので、全体的に増えているのではないかと思います。
【相澤教授】 そういうことが分かると確かによろしいですね。ありがとうございます。
【大竹部会長】 またデータが出てきたらお知らせいたします。ありがとうございます。
オンラインで、宇南山委員からまずお願いいたします。
【宇南山委員】 ありがとうございます。宇南山です。私はもともと経済学をやっておりまして、こういうAIの技術そのものについて詳しくないので、この機会にぜひお伺いしたいのですが、私なども論文を執筆する際に、今日もお話がありましたように、投稿前に自分の論文をAIに投げてフィードバックをもらうというようなことは日常的にやっております。その上で今日、機密情報等があるので、審査にそのまま使うのはリスクがあるというお話をよく聞くのですが、もちろんジャーナルから人の論文の査読依頼が来たときには、そこにすごく気を遣って、できる限り使わないように努力しているわけですけれども、もしリスクがあるとすると、投稿前の著者向けのレビューと、自分でやったものもリスクがあるということになると思うのですが、具体的にどういう経路で何がリスクになり得るのかというのは、何が起こるか分からないというのもあるのだと思うのですが、想定されるリスクみたいなものを教えていただけると勉強になると思います。よろしくお願いします。
【相澤教授】 ありがとうございます。商用のモデルは全てがブラックボックスで、裏で何が行われているか分からないというのが、先生がおっしゃっていたとおり一番問題で、少なくとも自分がアップロードしたファイルあるいは投げた質問は、全て先方のサーバーのどこかに、一時的にしても蓄えられると。それは間違いのないところであります。
データがその後どのような扱いをされるかが分からないのがリスクであるとは思うのですが、例えばその蓄えたデータがAIの学習に使われるというのが一番多くリスクとして指摘されるところです。学習に使われるというのは、AIは大量の過去の文章に基づいて知識を蓄えてQAをしていきますので、そのときに、学習した中でアイデアがアンサーとしてほかの人に提示される可能性があるかもしれないということです。
ただ、商用のプロバイダーの中でも、あなたのこの条件のデータは学習には使いませんという形で明言しているものは数多いので、その辺りについては、何をどこまで信用するかという、むしろ信頼あるいは受容性の世界になってくると思います。
【宇南山委員】 ありがとうございます。ということは、論文の投稿直前であれば、タイムラグなども考えると、目に見えてものすごいリスクがあって、アップした途端に何かよからぬことが起こるということではないのかなと理解しました。ありがとうございました。
【大竹部会長】 ありがとうございます。
それでは続きまして、仲委員、お願いいたします。
【仲委員】 どうもありがとうございます。大変興味深く伺わせていただきました。
質問なのですが、大規模言語モデルというのが、それまでに蓄積されてきた多くのデータに基づいて次の予測をするのだとすれば、人文社会科学のような比較的細分化した、量も自然科学研究に比べれば少ない分野の審査というのは、何か工夫がなされるみたいなことはあるのでしょうか。
【相澤教授】 ありがとうございます。とても重要な観点だと思います。論文のレビューも学術研究費の申請書の審査も、例えばモデルをカスタマイズする際に読み込んでモデルに覚え込ませるのは、このような論文と評価があったときにこういうスコアを返すのは適当かというフィードバックでありますので、工夫次第ではあるのですが、申請書や投稿論文そのものをモデルに覚え込まさずとも、調整できるという状況ではあります。
モデルの予測が違っていた・違わないというスコアの差分のみをフィードバックすることもできるので、いろいろな形で工夫していくことになると思います。
【仲委員】 ありがとうございました。少し安心いたしました。よろしくお願いいたします。
【大竹部会長】 ありがとうございます。
続きまして、中野委員、お願いいたします。
【中野委員】 ありがとうございます。御発表の中で、なかなかまだ汎用のAIですね、ClaudeとかChatGPTは人間に及ばないという結果が出ているのですが、やはり近年のAIの性能の伸びを考えると、そういう事態もそのうち変わっていくのではないかと思いまして、そうなると、やはりAIを使うことによる情報の流出とか情報のコンタミとかというのが非常に心配になります。
本人にその意識がなくても、AIというのは使っている人のいろいろな内容をメモリに覚えていくので、それを違う用途で使うと簡単に情報が流出してしまうのですが、やはりその点で、メモリをクリアするというか、使っている人の情報を覚えないというような工夫をされたAIを提供しないと、やはり汎用AIのほうに流れていってしまうのではないかと思うのですが、その点、いかがでしょうか。
以上です。
【相澤教授】 それは本当にそのとおりでありますし、また、ユーザーからのフィードバックがAIを賢くしているという側面もありますので、実際にAIを自分のところで構築して提供することで、ユーザーからのフィードバックを受け、そして、先ほど申し上げたとおり、これはよかった・これはよくないというシグナルだけでもAIの性能向上に役立つというような側面もあります。なので、情報漏えいと性能向上の両方の側面からバランスをとる必要があり、使い分けながら自分たちで運用する意義というのは、あると思います。
一方で、非常に競争が熾烈なので、汎用AIの性能とローカルAIの機密性のトレードオフという側面があることも考慮は必要かと思います。
【中野委員】 ありがとうございました。
【大竹部会長】 ありがとうございました。
華山委員、お願いいたします。
【華山委員】 ありがとうございます。私自身もこの2年ほど生成AIを活用しておりまして、例えば自分の申請書を読み込ませた場合に、非常に的確な指摘やフィードバックをいただけたり、改善した点をきちんと高く評価してくれたりといった形で、かなり有用であるということを実感しております。
一方で、23ページの「最近の知見から」ですけれども、実際の申請書を使った分析結果によると、「観点によるばらつきが大きく、人間の評価者とは異なる傾向がある」ということで、なかなかまだハードルが高いということが指摘されているわけです。けれども、実際に人間が評価するときに、科研費においても多種多様な申請内容が何十件と来るわけで、自分の研究分野とマッチするようなところであれば的確に評価できるのですが、そうでないところにおきましては、なかなか評価が難しいといったことも、人間による評価の困難な点であることと思います。
一方で、AIであれば、かなりの割合でちゃんとした答えが返ってくるのではないかなと思うのですが、その辺りの乖離といいますか、分野が違ったところに対する評価というのは、むしろAIを活用したほうが正しい評価ができる可能性があるのではないかという点については、いかがでしょうか。
【相澤教授】 まさにそのとおりだと私も思っております。もうこの問題は、技術の問題ではなく、そういった辺りを研究者のコミュニティの皆様がどのような基準で受け入れて使っていくかという問題、基準づくりの問題であると考えております。
【華山委員】 ありがとうございます。
【大竹部会長】 ありがとうございます。
それでは、加藤委員、お願いいたします。
【加藤委員】 加藤でございます。御説明ありがとうございました。AIに関する審査なのですが、いわゆる独創的な研究とか革新的な研究の評価というのは少し低くなりがちなのではないかと思いますが、人間中心の審査という観点から、AIとこのような領域の審査というのは、どのように組み合わせるのがポイントなのでしょうか。
【相澤教授】 ありがとうございます。やはり論文の査読の場合でも、幾つかの観点について、人間が好んでコメントを述べる領域、AIのコメントに多く表れる観点を選ぶと、例えばノベルティの部分は人間のほうが多くコメントを寄せ、AIはそれほど得意ではないという報告もあります。
先生がおっしゃった独創性あるいは社会への波及効果と、ゼロ・イチで正解をつくることがそもそも難しいような部分について、AIは基本的に正解を知った上で学習をする、あるいは、AとBを比べたときにどちらがいいかを教師信号として与えられた上で学習をするものなのですが、そういったお手本にするものが明確でない部分について、AIに過剰な期待をすることは危ないと感じています。
なので、人間のほうも学習して使っていく中で手加減を身につけるということもあるかもしれませんし、AIの出力を分析して観点別に使い分けるといったこともあるかもしれませんが、ともかく違いを意識するということは重要であると思います。
【加藤委員】 分かりました。どうもありがとうございました。
【大竹部会長】 ありがとうございます。
それでは、塩見委員、お願いします。
【塩見委員】 最近の若い人、若くなくてもですけど、チャッピーというのを使っていて、同じものを使っているので、例えばそれで図とかを作らせると、同じような図になってしまうということがあって、特に発表とか審査のときのヒアリングとかの図が同じように見えるんですよね。
しかも、一番最初にハルシネーションという話をされましたけど、急いで作って持ってきているのかもしれないのですが、必ず間違いがあったりすると。RNAがタンパク質になっていたり、タンパク質がRNAになっていたりというような。それで、チェックもせずに来ている人たちが結構いて、見た目がきれいだからこれでいいんじゃないのみたいな感じで来られるのかもしれませんけど、画一化みたいなものが随分進んでいるじゃないかなと思うのですが、例えば生成AIの2種類ぐらいをうまく使うとそういうのは回避できたりするのかなとか、それともそんなことは邪道だという一言で終わるというのでいいのかという。
【相澤教授】 とても奥深い御質問だと思います。論文について、直近の影響と書きましたのは、やはりロングレンジで出てくる影響、まだ我々が知らない影響がたくさんあると思っています。先生のおっしゃった図の例ではないのですが、最近、サイエンティフィックなイングリッシュが変わっているというのは分析でもよく言われています。科学技術論文の中に登場する英語のパターンが変化していると。だから、さらに生成AIの登場によって、スタイル、そして内容そのものもロングレンジでは影響を受けていくという側面はあろうかと思います。
AIの多様性について、それらの間の違いが、意外と人間が思うほど多様じゃないという指摘もされています。例えばエージェントどうしに議論させる場合に、多様なエージェントがたくさんいるから、合議すればよりよい結論が出るという前提でいても、それに必要な多様性が出ているのかということは、まだ検証しきれていないと思います。
論点が幾つかに分かれてしまいましたが、図が画一化していく、あるいはプレゼンにしても画一化していくというのは、長期的には心配すべき状況であるということと、図の中の細かな間違いについては、それの指摘に研究者が時間を費やすのは非常にもったいないので、そこはやはり自動チェックをすることで、審査委員の負担を軽くする方向に行くのが重要だということです。
幾つかの点でコメントとなってしまい、すみません。
【塩見委員】 ありがとうございます。
【大竹部会長】 ありがとうございます。活発な御議論をいただいて感謝申し上げたいと思います。AIはそれほど多様ではないというのも、私にとっては非常に新鮮なお話でした。
先生方、委員の方々のお話を伺っていて、AIがどんどん進歩して人間に追いついてくるだろうと。その中で、恐らく研究者あるいは研究者のコミュニティがそのAIをどうやって使っていくのかということについては、慎重に検討していく必要があるというのが現段階なのかと受け止めました。
また、調査研究のところのスライドにございました「人間中心」、それから「高信頼性」というこの2つのキーワードですね、ここはAIが進歩しても、変わらず持っていたい大切な視点だと感じました。
これからどんどんAIが進歩していく中で、こういったAIの利用については、我々の部会でも継続的にウォッチあるいは勉強していきたいと思いますし、皆さんとともに検討していきたいと思います。今日はその貴重な機会だったと思います。相澤先生、改めましてありがとうございました。
それでは続きまして、前回の研究費部会からの継続となります。「基盤研究」の役割・在り方について、まず事務局から御説明をお願いいたします。
【大鷲企画室長】 事務局でございます。前回御説明しているところでございますけれども、時間が経ってございますので、改めて簡単に御説明させていただければと思います。
まず資料、右下28ページに書いてございますのは、第3回研究費部会におきまして、「基盤研究」の役割・在り方について御議論いただいたところでございますけれども、その際、例として、例えば多様な学問分野の深化・発展、それから中長期的な視点に立った研究の推進、研究者のキャリアパス・キャリアアップへの貢献というものを示しつつ御議論いただいた際にいただいた意見の紹介でございます。
初めの方につきましては、基盤研究が重要だというような御指摘を多々いただいているところでございますし、また、一番最後のポツにつきましては、大きな問いが大事で、研究のライフデザインを自由にさせてもらえるといった御意見もいただいたところでございます。
次のページ、引き続きでございますけれども、一方で、物価上昇等がある中で、科研費の上限額は変わっていないということ、また、次のポツでは、上限が変わっていないこと自体も問題であるけれども、その状況で、基盤研究(C)の応募が増えている点がより深刻ではないかといった御指摘もいただいている、また、残り2つのポツについては、安定した人の雇用、それから機器の共用促進も重要だというような御指摘をいただいているものと考えているものでございます。
その上で次のページでございますけれども、基盤研究について今後どのようなやり方が考えられるか、その一つといたしまして、30ページにおきましては、まず現状と課題のところ、AI for Scienceの時代の到来とともに、Open Scienceの進展ですとか、科学とビジネスの近接化など学術研究をめぐる環境が本質的に変化し始めている、この状況において、改めてどのような在り方が必要なのかということを考えていきたいというところでございます。
2つ目の丸以降でございますけれども、先ほどお話にもあったAI等によりまして、膨大な情報・データを基に研究アイデアがどんどん膨らみ、研究もどんどん広がっていく、スピードアップもしていくというような中において、よりダイナミックな学術研究の展開が可能になる。一方で、既存の人的ネットワークでは限界があるのではないか、また、他分野との連携・協力、特に人のつながりというものについては、まだまだ二の足を踏んでしまうというところもあるのではないかと考えているところでございまして、新たな人的ネットワークの構築の仕組みが必要ではないかというところでございます。
論点にございますけれども、新たな仕組みといたしまして、基盤研究の核心をなす「学術的問い」を生かした新たな人的ネットワークの構築を考えてはどうかというところでございます。
ここで、「学術的問い」に注目しているところでございますけれども、現在、様々な場面で将来の予測が困難な社会だからこそ、また、先ほどのAIとの関係においても、問いの設定の重要性が再認識されていると理解してございます。その中で、学術研究を支援する科研費におきましては、真理を探究し、誰も分かっていない新たな知を創出するため、従来より知的好奇心に基づく問いの設定が重要であるというのは周知の事実でございますし、さらには、比較的予測しやすい近視眼的な問いではなくて、中長期的な大きな問いを設定するからこそ、誰も予測できない大きなブレークスルーをもたらす可能性があるのではないかと考えているものでございます。
この「学術的問い」を軸に集まることで、分野に関係なく、お互いの専門知を提供し合っていく。その中で、専門とか門外漢とかの境界もなくなって、分野の壁というのを取っ払えた連携も進むのではないかと考えているところでございます。方法としては様々あろうかと思いますけれども、括弧のところに記してございます、例えばKAKENデータベースを活用し同様の学術的問いを有する研究者の探索機能を提供するとか、将来的にはAIを活用し応募者に対して学術的問いを共有する研究者を紹介するといったことが考えられるのではないか。
それから2つ目のポツでございますけれども、経済界と企業との関係につきましても、科学とビジネスの近接化が加速する中で、経団連が昨今、科研費の早期倍増等を指摘するなど、経済界・企業が基礎研究に目を向けている状況において、新たな関係構築についてはどのようなことが考えられるか、こういったことも議論していければと考えているものでございます。
次のページにつきましては、KAKENの概要ですとか、その次はビジネスと科学の近接化についての資料を用意させていただいています。
2つ目でございます。現状と課題の2つ目の丸でございますけれども、上限額が変わっていない一方で物価上昇、人件費の高騰がある中において、応募上限額の引上げを含む配分額の充実に対する期待も大きいと理解してございます。また、3つ目の丸のところで、特に基盤研究(C)につきましては、最も応募件数が多い状況となってございますが、より規模の大きい基盤研究(B)へのステップアップに大きな壁があるというお話も聞きますし、少額ながらも基盤研究(C)にとどまっている可能性もあるのではないかと考えているものでございます。
研究費に必要な経費として基盤研究(C)で十分足りるのであれば、無理に基盤研究(B)に移行していただく必要はもちろんございませんけれども、研究費として、より規模の大きい基盤研究(B)への移行が必要な場合に、円滑に進めるためにはどのような在り方が考えられるかということで、資料を用意させていただいたというところでございます。
具体的には、ケース1といたしまして、基盤研究(B)と基盤研究(C)との統合、これについては前期の研究部会でも御議論いただいているものでございますが、メリットといたしましては、研究規模に応じて柔軟に応募額を設定できるというところは、研究者の柔軟性・自由という部分において非常に大きなところがあろうかと思いますけれども、一方でデメリットといたしましては、応募額が上限額付近に集中いたしますと、予算の大幅増が伴わない場合、採択率・充足率が大幅に低下する可能性がございますし、また、多様な研究規模の計画を比較するための審査が困難ではないかと懸念しているものございます。また、若手研究者が若手研究終了後、基盤研究に移行する際、基盤研究(B)に応募する研究者との競争になるため、なかなか研究費の確保が難しくなる可能性もあるのではないかと考えてございます。
そういったことも踏まえまして、今期の部会におきましては、ケース2について御提示させていただいているところでございます。こちらは基盤研究(B)に1,000万円以下の区分を設定してはどうかというものでございます。
メリットといたしましては、基盤研究(B)の2,000万円という金額への応募が集中するという傾向は解消が期待できるということが挙げられる。また、設けることによって、基盤研究(C)から基盤研究(B)へのステップアップも容易になる可能性も出てくるのではないかと考えてございます。一方でデメリットといたしましては、もちろん新区分への応募動向によっては、充足率・採択率の低下という可能性がございますし、同一種目の中で複数の金額設定を設けることによる審査の在り方というのも、もちろん十分な検討が必要であろうと考えているものでございますけれども、事務局といたしましては、ケース1よりもケース2のほうがより現実的な方向ではないかと現時点では考えているものでございます。
今回、このような形で用意をさせていただき、御議論いただくというところでございますので、よろしくお願いいたします。
【大竹部会長】 御説明をいただきましてありがとうございました。今、基礎研究が重要であるということが謳われている中で、この基礎研究の重要性を基盤研究の在り方にどう結びつけるかというのは論点の一つだと思います。もう一つは、具体的に基盤研究(B)、(C)についてどう改善していくかということについても論点になるかと思います。
ただいまの説明内容について御質問等がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
鷹野委員、お願いします。
【鷹野委員】 御説明ありがとうございました。私としては、ケース2は、これまでの経験から、設定した金額上限に近いところへの申請が多いという状況から考えますと、いいアイデアかなと思いました。
特に理系の場合は、設備を必要とするような研究も多いので、比較的高額になりがちですけれども、その設備よりも、例えば研究グループとして既にある設備を使って研究したいケースとか、それから、人文系の先生方の御意見も伺いたいなと思ったのですけれども、ここにある基盤研究(B')については、そういったところが改善されるといいますか、人文系の方にとってもプラスになるような案なのかなと思いまして、その辺りもお伺いしたいところです。
私からは以上でございます。
【大竹部会長】 ありがとうございます。人文系の委員の方で、今の鷹野委員からの御質問に対してお答えがあれば、後でお願いいたします。
それでは、中野委員、お願いいたします。
【中野委員】 ありがとうございます。2つの論それぞれにコメントがあるのですが、まず、学術的問いを生かした新たな人的ネットワークの構築という方向性については、趣旨は理解できますし、研究者が新しい連携相手に出会える環境を整えること自体は重要だと思います。
一方で、これを基盤研究の制度改革の中心に置くことには、少し慎重であるべきだと感じています。理由は、基盤研究の最も重要な役割は、研究者の自由な発想に基づくボトムアップ研究を安定的・継続的に支えることだと思うのですが、人的ネットワーク形成や分野融合は重要ですけれども、それを制度側が強く誘導すると、基盤研究が本来持っている個人の学術的問いを深く掘り下げる機能が弱まるおそれがあるのではないかと危惧します。
また、人的ネットワーク形成を科研費の評価や制度要件に近づけ過ぎると、研究者がつながりをつくること自体を申請書上の目的にしてしまって、形式的な連携が増える懸念があるという点も気にしております。
特に基盤研究では、無理に分野融合や産学連携を求めるよりも、研究者が必要と感じたときに自然にアクセスできる情報基盤や出会いの場を整える程度にとどめるのがよいのではないかと感じています。
次に、基盤研究の改革についてですが、まず、物価高騰や為替変動によって研究費の実質的価値が低下していることを踏まえて、何らかの方法で実質的に上限額を引き上げるということは避けて通れない課題だと思います。一方で、単純に上限額を引き上げるだけでは、先ほど鷹野委員からも御指摘ありましたけれども、多くの申請が新たな上限額に張りついてしまうことが考えられ、結果として採択率や充足率の低下を招くおそれがあると思います。したがって、上限額の引上げと同時に、ここでも提案していただいておりますけど、研究計画に応じた適正な申請額が自然に選ばれるような制度設計が非常に重要になるのではないかと思います。
科研費の中には比較的小規模の経費で大きな成果を出せる分野もありますので、研究者コミュニティの実情に応じて、最適な研究規模が自然に形成される制度が望ましいと思います。その観点から見ると、ここに挙げられたうちの第2案には期待したいと考えております。上限額の引上げとか種目区分の見直しという技術的なところに目が行きがちですけれども、それ自体が目的ではなくて、各分野の研究実態に即して、研究者が必要な研究費を必要な期間に過不足なく申請できる制度へと転換することが本質だと思いますので、引き続き検討を進めていただければと思います。
以上です。
【大竹部会長】 御示唆も含めて御意見をいただきまして、ありがとうございました。
それでは、岸本委員、お願いいたします。
【岸本委員】 御説明いただきましてありがとうございます。私からは30ページのところの日頃交流のない産業界・企業との新たな関係構築というところについてです。これからどんどん重要になってくる視点だと思っており、企業側の立場から言いますと、こういった基盤研究だとか基礎研究というのはなかなか表に出てこなくて、学会とかで初めて知るということが多いと思います。そういった状況において、企業と学術のネットワークをどう構築するのかというところが課題であり、DXの力を借りることも重要ではないかなと思っています。
特にこういった基礎研究情報というのは、サイバー空間の中で秘密を担保しながら、企業のニーズと学術のシーズのマッチングみたいなことが行えるようになると、早期に企業から研究投資を行うことができたり、新しい可能性について一緒に進めることができるのではないかと思います。そういった視点で考えていっていただけるといいのではないかと思います。
【大竹部会長】 ありがとうございます。
これまで人文系の見地についても質問があった中で、今、お三方からコメントをいただいている中で、事務局から何かございますか。
【大鷲企画室長】 ありがとうございます。事務局でございます。
中野先生から御指摘のあった人的ネットワークに関しまして、もちろん制度側として、人的ネットワークを例えば審査の観点に盛り込むとか、そういうことは全く考えていないところでございます。ただ、きっかけは何らか必要ではないか、その一つの方法として、例えばKAKENデータベースを使う。これはあくまでも制度側で旗振りをするのではなく、環境を整えた上で、研究者の方々が自由に活用していただくということを想定して考えているものでございます。
また、基盤研究(B’)につきましては、必要な経費を自由に申請するというところがもちろん根本となってくるところでございますし、審査についてどうするかというのは、もしやるとしたらですけれども、非常に丁寧な設計が必要になってくるだろうと思ってございます。そこはまた、審査を担当しているJSPS(日本学術振興会)とも、よくよく連携して検討していきたいと考えてございます。
また、産業界との連携につきましては、先ほど学会等での交流というお話もあったところでございますし、やはりそういうきっかけとして、旗振りというよりも、きっかけをどうつくっていくかというところは非常に重要なのではないかと理解しているところでございます。
事務局としては以上でございます。
【大竹部会長】 ありがとうございます。
それでは、仲委員、よろしくお願いいたします。
【仲委員】 1つ目のネットワークということにつきましては、若い方々が、個人のまずはオリジナリティのある研究分野を確立していくという意味では、もちろんネットワークの機会があるというのはいいことですけれども、ネットワークがあるから審査でいい評価になる、ということのないようにしていくのが重要かなと思いました。
それから2番目の区分ということについては、基盤研究(B’)というのは賛成で、特に多様な人文社会科学系の研究などでは、それほど大規模でない研究も申請しやすくなるというのがよいと思います。ただ一方で、お話にありましたように、審査が細かくなっていく分、難しくなっていくところもあるのかなというところは少し懸念するところです。
第3の企業や産業との連携につきましては、私もここは少し懸念のあるところでして、自由な発想の基礎的な研究というのが、応用とかアウトレット(出口)に結びつくことを求めるプレッシャーがかからないかということと、それからオープンクローズなどが最近問題になっている中で、企業というと今はもう本当にグローバル化していますから、そうすると世界中の企業とつながってしまうということもあるのかなと思いますと、その辺りも慎重である必要があるかなと思いました。
以上です。
【大竹部会長】 複数の視点についてコメントをいただきました。ありがとうございます。
宇南山委員、お願いします。
【宇南山委員】 宇南山です。ありがとうございます。基盤研究(B’)の部分についてなんですけれども、社会科学の人間として実際の科研費の応募の実態を考えると、理系のように固定的に必ずかかってしまうというような費用が多くはないので、実際にはお金の範囲で研究の範囲を調整するというような応募をしている研究者が多いと思います。
例えばお金がいっぱいあるなら守備範囲を広くする、海外に行く回数を増やすみたいな形で、なければ減らすというような形で調整している先生が多いのではないかというのがまず大前提としてあります。さらに言うと、比較的有力な中堅以上の先生なんかですと、基盤研究(B)を、大体基盤研究(C)の4倍になりますので、3人から4人で組むと、基盤研究(C)を1人で出すよりもチャンスが4倍あるということで、基盤研究(B)と基盤研究(C)というのは採択率が大体似たような水準になるので、リスクを考えて基盤研究(B)で誰かは受かるでしょうみたいな形で応募している方も、それが制度の趣旨に合わないとは言え、実際にはいるのではないかと思っています。
その上で、今御提案していただいている基盤研究(B’)は基盤研究(B)よりも少ない代わりに、基盤研究(C)の人よりも応募しやすくしようという形で、採択率を上げるというようなことをすると考えますと、実は基盤研究(B)と基盤研究(C)は、結果的に応募した人にとっては、採択率は同じぐらいになっていますので、基盤研究(B’)のほうが基盤研究(C)よりむしろ高くなるというようなことになりますと、先ほどお話ししましたような中堅からシニアに近い研究者が、基盤研究(B’)をより取りやすくなってしまって、むしろ若手が基盤研究(C)からステップアップするのを阻害しかねないのではないかなというようなことを少し懸念します。
基盤研究(C)ではなく基盤研究(B)を出さなければいけない一つの理由が、充足率が結構低いというので、基盤研究(C)が100%もらえるなら基盤研究(C)でもいいけれども、充足率が低いから基盤研究(B)に挑戦しなければいけないみたいなところで、はざまにある人もいると思います。充足率というのがどういう仕組みなのかが研究者にはよく理解されていなくて、一律で足切りされているという印象があって、そこが不透明なので、基盤研究(B’)みたいなものをつくるのであれば、少し充足率のほうで調整するようなことを考えたほうがいいのではないかなと思いました。
最後、充足率で調整しようとすると、恐らく分野間などで採択率とでどう調整するかというのがかなり難しくなると思うのですが、基盤研究(B’)をつくるにせよ、分野間での調整をどのように考えているのか、もし事務局で既にお考えがあれば教えていただければと思います。
以上です。
【大竹部会長】 ありがとうございます。充足率については、この部会でも長く検討して、できるだけ高くというような答申を出した経緯もございます。ここで事務局からあれば、お答えいただけますか。
【大鷲企画室長】 御指摘いただきありがとうございます。充足率につきましては、御指摘のとおり、充足率を高めていくというのが理想的な姿だと理解してございます。
一方で、例えば同額の予算の範囲内において、充足率を高めれば、応募件数が変わらなければという前提ですが、採択率がやっぱり低くなる。そことのバランスをどう考えていくかということになりますと、やはり過去の充足率を踏まえながら、予算配分を考えていくことになってきているというのが実態でございます。
したがいまして、今回、基盤研究(B’)について設けるといったときに、そもそも充足率をどうするかということも含めて、全体的に考えていかなければいけないということになろうかと思いますけれども、分野間の調整につきましては、基本的に科研費制度においては配分方式という、応募状況に応じた配分の計算方式がございますので、それにのっとって基本的にはやっていくことになろうかと思います。
ただ、それだけで、今の形で足りるのかどうかというのは、どういう審査を考えていくかによって、必要に応じて、その配分方法の検討も必要になってくるだろうと思ってございます。
まだまだ、基盤研究(B’)については具体的に、本当にやるとしたらこれから議論ということになりますので、今のような表面的な御説明になりますけれども、現時点で事務局として、感じるところ、思うところを御説明させていただいたところでございます。
【板倉学術研究推進課長】 少し補足させていただいてよろしいでしょうか。
【大竹部会長】 板倉課長、お願いします。
【板倉学術研究推進課長】 室長が申し上げたとおりではあるのですが、大体のイメージで言えば、基盤研究(A)、(B)、(C)の場合、採択率や充足率に関しては少し違いがありますが、仮に基盤研究(B’)を設けるのであれば、当然(C)と(B)の採択率を勘案しながら、あるいは充足率を勘案しながら、つけていくということになっております。
我々としてももちろん、充足率は100%に近いのが望ましいという考えはあるものの、現時点においては、まず予算がある中で、前年度と比べての採択率・充足率があり、その辺のバランスを考えながら、今回、仮に基盤研究(B’)ができるとしても、(C)と(B)のバランスを取りながら採択率・充足率を決めていくことになるかと考えております。
【宇南山委員】 ありがとうございました。
【大竹部会長】 ありがとうございます。今日の補足資料に基盤研究(B)、(C)の採択率・充足率については、64、65ページに記載がありまして、基盤研究(B)が採択率28%で充足率が71%、基盤研究(C)の採択率が27.5%で充足率が71%と。充足率は(B)と(C)で変わらないんですね。そういった状態にあるということです。
宇南山先生のおっしゃる分野別でどうかということについてはデータを持ち合わせていませんけど、分野で大きく変えるということはこれまでないと認識しております。
【大鷲企画室長】 はい。
【大竹部会長】 そうした中で、多分仲委員も宇南山委員もおっしゃっていましたけど、これまで基盤研究(C)に出していた方が基盤研究(B)にといった表現を自然になさっているということを考えると、基盤研究(B’)というよりは基盤研究(C+)的な、そういうことなのかなというふうにも受け取りました。これは本当に私見でございますが。
【永田委員】 よろしいですか。
【大竹部会長】 永田委員、お願いします。
【永田委員】 基盤研究(C)から基盤研究(B)へのステップアップというのは、うちの大学でも本当に皆さんエンカレッジしていて、でもなかなか進まないというので悩んでいるところです。
1つの案としては、基盤研究(B)と基盤研究(B’)を基盤研究(S)と基盤研究(A)みたいな重複申請が可能なやり方にして、基盤研究(B)で採択されればここまでやります、基盤研究(B’)で採択されればここまでしかできませんというような。そうすると、審査の労働もそんなに増えないんですよ。基本的にやることは、基盤研究(B’)にプラスして基盤研究(B)だとここまでやるというだけの差になりますので。労働がそれほど増えずに、かつ敷居を下げるという意味では、重複申請を基本的に許すというやり方も考えられるのではないのかなと思いましたので、ぜひ御検討いただければと思いました。
【大竹部会長】 なるほど。ありがとうございます。
それでは、速水委員、お願いいたします。
【速水委員】 ありがとうございます。先ほどの仲委員と宇南山委員の続きになりますけれども、私も人社系から、述べさせていただきます。34ページのケース1のほうは、以前から議論しているものですが、やはり基盤研究(C)と(B)を統合してしまうと、審査委員も大変になるのではと危惧します。スケールの違うものを一遍に見なくてはならない、同じ審査基準では見られないものを並列で見なければならないという大変さで、申請者のほうにとっても、どうしてもスケールの小さいものはデメリットが大きいと構えてしまうのではないかと思います。例えば基盤(C)は、若手や地方研究者、そして女性研究者の申請が多いということでしたし、まずは基盤研究(C)から始めようという人たちにとって、ハードルが上がる感があります。それを考えると、ケース2を出していただいたのはすごくよかったなと思って拝見しているのですが、その中で、私が宇南山先生とちょっと違うのは、やっぱり周りを見ていても自分自身でも、基盤研究(C)を出すのは、自分で今やりたいこと、デフィニションがかなり決まっているようなことをまず一人で始めてみようとかというようなところで使って、それがだんだん熟してきて、これはちょっとほかの事例と比較してみたいとか、いろいろな視点を入れてみたいとなると共同研究で基盤研究(B)に申請しようとなるので、基盤研究(C)の使い方というのは、やはり多様な個別研究を育てるすごく大事なものだと思っています。ただし、今こういう議論が出てきているのは、基盤研究(C)の上限があまりにも低いという意見と、それからここに上限をつけるのがすごく恣意的だということもあったと思うんですね。
そうだとすると、先ほど大竹部会長がおっしゃった基盤研究(C+)というのはすごく魅力的で、かつ、個別研究をしながら、それをどう案配するかというのは、研究者それぞれだと思うので、基盤研究(C)の少し大きめの額になれば、一番下に米印をつけて年限の拡大について書いていただいているように、研究計画の年限を少し長く申請できる、あるいは長期でしたいから少し多めの額で申請するというようなこともできるようになって、それがうまくいけば、次のステップとして、複数名で基盤研究(B)をやるというふうに考えられるので、基盤研究(C+)あるいは基盤研究(C)の金額をアップするというのはとても良い案だと思います。
ネットワーク形成を絶対しなきゃいけないということよりも、やはり基盤研究(C)の個別の多様性、多様な研究を守りつつその中から、研究の必然として、自然にネットワーク形成して共同研究へ移行するようなものであるべきではないでしょうか?とはいえ、基盤研究(B)の申請には壁があるということは、やはりそこにもう少し申請しやすい要素が加わるといいと思うので、基盤研究(B’)も一つの考え方かと思いながら伺っております。あれもこれもとなるといけませんので、私からは、まずは多様性を確保する基盤研究(C)をベースにした基盤研究(C+)を望みたいと思います。
以上です。
【大竹部会長】 自由なディスカッションが展開できればと思います。速水委員、ありがとうございます。
それでは、華山委員、お願いいたします。
【華山委員】 ありがとうございます。皆様、ケース2がよいということですので、あえてケース1のメリットについても個人的な考えを述べさせていただきたいと思います。
まず、ケース2においては、区分が3つになるのに対し、ケース1は区分が1つですよね。ケース2では審査がかなり煩雑になるのではないかなと思います。これまでも基盤研究(B)と(C)でどちらにしようかと皆さん悩まれてきましたが、ケース2では、基盤研究(B)、(B’)、(C)のどれに出そうかという形でさらに悩まれることになります。先ほどの議論を伺っていましても、それぞれの採択率の関係など、かなり複雑な過程があり、実際にどのように行われるのかが結構不透明なところがあります。それに対し、ケース1は、1つの区分で済むという意味では、審査としてはすごくシンプルなのではないかなと思います。
2,000万円に張りつくというのはまさにそうなのですが、例えば採択される中の最上位の方から下位の方まで、傾斜をつけて2,000万円から500万円までなだらかに減らしていく形にするとします。配分額の決定は審査委員に権限がありますので、「この申請書は基盤研究(B)寄りだね、これは基盤研究(C)寄りだね」といった形で審査委員のほうで設定してしまえば、比較的シンプルに配分額も決まるのではないかなという印象です。
あともう一つ、個人的に重要だと思っているのは、基盤研究(B)は基本的にはPIの先生方、つまり研究室を運営されている先生方がメインだという点です。採択率が28%ぐらいということは、72%の方が落ちられると、研究室の運営が立ちいかなくなり、そこで頓挫してしまうわけですよね。
一方、基盤研究(C)はどちらかというとノンPIの方々が多く、上にボスがいたりします。ボスが大型研究を取っていて、若手研究者で助教の人は基盤研究(C)を取っているとか、そういうケースも多々見受けられます。本人が取らなくてもボスの研究費で賄えるという人もかなり多いのではないかなと思います。
ケース1に関しては、最終的に、これまで基盤研究(B)で落ちていた人たちが救われて、基盤研究(C)で受かっていた人たちが落ちるという形になるのかなと想定しますが、それは、PIが救われるという意味では、我が国の研究力アップにはむしろこちらのほうがつながるのではないかなと感じた次第です。
個人的な意見ですので、よろしくお願いします。以上です。
【大竹部会長】 ありがとうございました。違う視点で御議論いただいて感謝いたします。
それでは、新福委員、お願いいたします。
【新福委員】 ありがとうございます。様々な御意見を聞きながら、そうだなとか、まだ自分の中でもすごく揺れるといいますか、はっきりとこれがいいというところがなかなか言いにくい状況ではあるのですが、まず、産業界とのネットワークのところに関しては、すごく分野にもよるのかなと思いますが、私のような応用寄りの分野におきましては、企業の方ですとかエンジニアの方ですとかと意見交換する中で、研究の視野が広がったり、スケールが広がったりということが非常にありますので、それは自然と既にやっています。
いろいろな学内での話もあったりして、企業が2社、3社というふうに増えていったときに、企業同士の規模感ですとか予算の考え方ですとかルールですとか、いろいろそこの相性が合う・合わないがあるというのは非常に思っておりまして、なかなか自然と発生していく形での連携と、ネットワークを構築するというところをメインに進められた場合で、難しさの種類が変わってくるのではないかなというのは一つ思っているところです。
あと、私も医療の分野なのですが、社会科学、公衆衛生のようなところで研究をしています。そうすると、やはり試料が、幾ら月にかかるとかという固定費があるわけではないので、研究費がこれだけ取れればこれぐらいの規模の研究をするし、そうではなかったらちょっと減らすという調整をしながら行っていて、コスパよく研究をするということもできる分野です。
ですので、基盤研究(B’)ができた際には、現実的に規模を拡大させるというところを描けると考えていたのですが、というのもやはり昨今、基盤研究(C)で取れている人は基盤研究(B)に出してくださいというような、学内での推奨もありますし、恐らく人事的に次のステップアップを目指す方は、今とれているよりも一つ上の研究費を取るということも重要なことになろうかと思いますので、そういったプレッシャーといいますか、研究自体に本当に基盤研究(B)が必要かというよりかは、そういった様々なニーズによって基盤研究(B)を選択するということもあり得ると思います。しかし、どうしても500万円から2,000万円にアップするというのは、急なスケールアップが必要で、現実的な計画にならなくて、なかなかステップアップがうまくいかなくて落ちるということが起きているのではないかなと思います。
ですので、基盤研究(B’)のような、基盤研究(B)のもう一つ手前があることによって、現実的なスケールアップで、研究に必要な規模の拡大というところを計画していけるのではないかというのは、私も感じたところです。
以上です。
【大竹部会長】 ありがとうございます。今日は研究現場からの声ということでも御議論いただいているのは大変ありがたいと思っています。
中野委員、よろしくお願いします。
【中野委員】 ついこの前まで属していた学術システム研究センターに対するエールの意味もあるんですけれども、ここでケース1、ケース2というのが出ているのですが、ケース2が、もし可能であれば、審査の面で工夫できるのであれば、さらにケース3というのも可能ではないかと思います。エールにならないかもしれないですけど、宿題を増やしているだけかもしれないですが、先ほど大竹部会長がおっしゃったように、基盤研究(B’)を基盤研究(C+)と読み替えるのであれば、これに基盤研究(B+)というのを加えて、基盤研究(B+)の上限を3,000万円、だから、基盤研究(C)の上限を1,000万円、基盤研究(B+)の上限を3,000万円とするような、どちらも上限を上げつつ、2区分に分けることも可能ではないかと思います。
もともとの学術システム研究センターでの案は、基盤研究(B)と(C)を統合して、それを4つの段階に分けるというような案が途中出ていたと思いますので、ちょっと先祖返りという面もあるのですが、上限に張りつかない、分野による特性に対応した配分が可能になる等の、そういういい面がうまく出せるような制度設計ができるのであれば、基盤研究(B)の上限を上げるということについても御検討いただければと思います。
以上です。
【大竹部会長】 ありがとうございます。非常に納得がいく御提案と受け取りました。皆様もうんとおっしゃっていると思います。
ここまで主に基盤研究(B)、(B’)のところの御議論をいただく中で、少しだけ、あと数分しかないのですが、基礎研究と基盤研究についても我々としては検討を進めていきたいと思っています。
ですので、基礎研究を充実するという中で、基盤研究にいかに重要性を持たせ、あるいは、在り方として、こういう在り方で基礎研究を支えていくんだと。これは自明なのかもしれませんけれども、改めて我々の時代に、基盤研究というのは基礎研究を支えるんだというところの意義とか、あるいは役割について、御意見があればいただければと思うところでもございます。
私自身は、これまで議論しているように、コンチネンタル型があり、あるいはスモールアイランド型が推奨されていますよと。日本はスモールアイランドが少ない、そこはやっぱり基礎研究から出していかなきゃいけないですというところについては、皆さんの御意見が同じ方向を向いていると思っていて、アイランドをつくるというのは、無数の海底火山が必要であって、巨人の方を地球だとすると、そこから火山の噴火というのは生まれて、その幾多の火山の爆発の中でスモールアイランドなるものが出てくるわけですよね。
そういった中で我々は、私はテーマがすごく大事だと思っていて、若手なり、あるいは中堅なりの人たちがどういうテーマを構築していくかと。ここが基礎研究の振興に非常に役に立ちますし、こういったテーマでやりたいんだというのを受け取る何かが必要だとすると、そこはやっぱり基盤研究なんじゃないのかなと。
挑戦的萌芽というのはもうかなりとんがった噴火の仕方をしているものだと思いますけれども、基盤研究はやはりその噴火を拾っていくことによって将来のスモールアイランドが多数生まれるのではないかなと思うんですよね。
なので、海底から海面まで、基盤研究(B)、(C)と今の話もつながるわけですけれども、いかに我々はそこを支援していくのかというところはやはり大切に違いないと思いますし、基盤研究以外にそこを育てていくものはないかなと思っています。大きなマスを持っている科研費としてはですね。
勝手にお話ししましたけども、中野先生、手を挙げていただいていますか。
【中野委員】 激しく同意いたしましたので、挙げさせていただきました。基盤研究が重要で、ここをしっかりと国が支援して、研究者がそこで新しいことにトライするというのが、本当に科学の再興のためには必要だと思います。
一方で、この部会のスコープの中に完全に入らないかもしれないですが、やはりデュアルサポートが崩れかけているというのは非常に大きなことで、そのために、本来であれば新しいことにトライする、挑戦する場である基盤研究が、日々の研究のために、そこに頼らざるを得ないというような状況が生まれているというところがやはり問題なのではないかと思います。
その問題を解決するために科研費を使うというのは非常に悪い手で、それをやると科研費の価値が本当に下がってしまうのですが、一方で、科研費を振興しつつ、デュアルサポートを復活させると、日本の科学力はどんどん上がっていくんだということを、いろいろな方々と協働しながら発信し続けることによって、デュアルサポートを復活しつつ、基盤研究が基盤研究の本来の役割を果たせるという状況が生まれればいいなと考えております。
以上です。
【大竹部会長】 まさにおっしゃるとおりですね。運営費交付金等についても拡充を図るというところは、文科省さんも御努力いただいているところでありますし、これからも大切にしていくべきだと思います。ありがとうございました。
それでは、随分いろいろな意見をいただく中で、ケース3というのも出てきましたので、事務局から最後、まとめていただけますか。
【大鷲企画室長】 ありがとうございます。本日は基盤研究に関して様々な御意見、貴重な御示唆をいただいたものと理解してございます。
先ほど中野先生から提案のあったケース3につきましても、事務局で整理をさせていただいて、また改めて御議論していただけたらと考えてございますので、よろしくお願いいたします。
【大竹部会長】 ありがとうございます。それでは我々も引き続き議論をしてまいりましょう。
続きまして、3つ目の議題に移らせていただきます。科研費における人材育成機能の強化についてでございます。
資料4に基づいて、事務局から御説明をお願いいたします。
【大鷲企画室長】 資料4でございます。右下37ページになるものでございますが、科研費における人材育成機能の強化ということで、科研費におきましては、これまでも研究者のキャリアパス・キャリアアップに貢献してきているところですけれども、昨今、人材の重要性というものが再認識される中におきまして、また、現状と課題におきましても、第7期基本計画では、研究資金の使途を「モノからヒト」へ変容するということが求められている状況にございます。
その中におきまして、2つ目の丸のところでも触れてございますが、特に関連する人材が多くなる大型種目については、これまでも人材育成に非常に貢献していただいていると思ってございます。一方で、若手の現状といたしまして、3つ目の丸でございますけれども、科研費の応募資格者数(39歳以下)を見ますと、人口減少を上回るペースで減少している、これは後ほどデータをお示ししたいと考えてございます。
このような状況の中、研究者の魅力を高め、研究者数の減少に歯止めをかけるにはどうしたらいいかということを考えていければと思っているところでございます。
論点のところ、例えばでございますけれども、大型種目といたしましては、特別推進研究、基盤研究(S)があるところでございますが、これらの種目については世界トップレベルの研究を支援しているというところでございますので、若手がそのような研究環境に身を置くこと自体がそもそも貴重な機会であろうということ、それから、そのような研究を持続的に発展させるためには、次世代の育成が必要であろうということを考えてございますので、大型種目につきまして、人材育成の見える化・強化を考えてはどうかというところでございます。
また、2つ目のポツにつきましては、若手研究・研究活動スタート支援の拡充というものでございますけれども、これらの種目につきましては、若手とともに、産休・育休ですとか未就学児の養育期間にも配慮しているものでございますので、これらの多様な人材の育成という観点からも、この拡充というものは必要になってくる。
それから3つ目のポツにつきましては、物品費から人件費への研究費支出促進というところでございますが、もちろん研究に必要な経費をしっかりと確保した上でという前提ではございますけれども、設備機器の共用等を進めることによって、必要な人件費に充当していくということは考えられるところでございます。この際、併せて、現在科研費では導入してございませんけれども、PI人件費についてもどう考えるか、今後検討できればと思っているところでございます。
次のページについては、若手のデータを用意しているところでございます。先ほど39歳以下の応募資格者数について触れましたけれども、こちらのグラフについては、上から2つ目については、20歳以上の人口の推移、若干減少していると。その下、オレンジ色のものが、人口として20歳から39歳の人口全体の減少幅、これは20歳以上、全体よりもやはり減少幅が大きい状況でございます。
注目すべきはさらにその下でございますけれども、人口20歳から39歳までの減少幅よりも、実は39歳以下の科研費応募資格者数の減少幅が大きいという状況にございます。また、次のページにつきましては、年齢ごとの採択種目の状況を示しているものでございますけれども、左から3つ目までが39歳以下になるところでございますが、大半が若手研究・研究活動スタート支援の採択が占めているという状況でございます。
特に左から2つ目までのところ、博士の学位取得後間もないと考えられる若手の方々につきましては、より多くの割合で若手研究・研究活動スタート支援が占めているという状況になっているものでございます。
その次のページにつきましては、若手研究・研究活動スタート支援の応募採択状況でございますけれども、若手研究について、採択率40%を維持しているというところはございますが、研究活動スタート支援を見ますと、近年、応募が増加していることによって、採択率が減少傾向にあるというところがございますので、研究活動スタート支援の採択率はしっかりと戻していかないといけないと考えているとともに、参考のグラフを見ていただきますと、これは若手研究・研究活動スタート支援に限らず、科研費全体としてではございますが、令和3年度の値を1としたときの増減の状況を表しているものでございます。上の黒い灰色の線については40歳以上の応募採択状況、これは新規・継続件数では横ばいの状況となっているところでございますが、39歳以下の応募採択状況はやはりちょっと減少傾向にあるということもございますので、今、若手研究は40%を維持しているものの、採択率として40%を超えた採択率の設定というのも必要ではないかと考えているところでございます。
そして最後に、データといたしましては、種目別の人件費・謝金の支出割合を用意しているところでございますが、オレンジ色が人件費支出の部分になっているところでございます。先ほどから申し上げているとおり、設備機器の共用等により、全体的に人件費の割合を増やしていくという方向性はあろうかと思いますけれども、特に大型になるほど、見ていただけますとおり、人件費・謝金の支出割合が高くなっているということもございますので、特に大型種目につきまして、人材育成の機能をどう考えるべきかということについて、御議論、御検討いただければと考えているものでございます。
以下の資料につきましては、政府の関連する提言を用意させていただいているというところでございます。
事務局から説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【大竹部会長】 御説明ありがとうございました。39歳以下の研究者が令和元年の0.89倍になってしまっているというのは、我々として留意すべき点の一つかなと思います。いろいろな観点で御説明いただいたところでございます。質問等いかがでしょうか。
仲委員、お願いいたします。
【仲委員】 大変危機感のあるデータを示してくださって、どうもありがとうございます。
今、御説明の中にはなかったのですが、ここは女性研究者、そして文理融合みたいなことがもう喫緊の課題になっていると思います。今まで7割、8割、例えばPIで見ると8割ぐらいが日本男子、のような形できているわけですけれども、こここそ、今まで十分な機会が与えられなかった可能性のある本当に優秀な女性研究者、PIにもどんどん育っていっていただきたいというところです。どうすればいいかということについては、最大限のライフイベントなどの支援をつけていく、というのが重要ではないかなと思います。
また、あとは文理融合で、例えば女子は文系、男子は理系ということではなく、AIなどを活用したら融合的な研究ができる時代がもう来ているわけですので、そこを強化していくことで、より多くの有能な研究者を育てていくということが本当に必要かなと思いました。
茫漠としていてすみません。以上です。
【大竹部会長】 重要な御指摘をいただきましてありがとうございます。多様性というのもキーワードかなと思いました。
それでは、宇南山委員、お願いいたします。
【宇南山委員】 ありがとうございます。このスライドで人材育成機能の強化という話、それ自体は非常に重要なテーマだと思うのですが、それを科研費でやるべきなのかというところで、私は若干、科研費の制度との関係がよく分からないところがあります。
というのは、科研費というのは、あくまでも研究テーマに対してお金がつくもので、何か有望な研究者がいるから自由にやらせるというような形では支出ができないタイプのお金ですので、例えば分担者であるとか協力者として参加するというのは、基本的には研究代表者の研究のテーマの下で、そのテーマに関する研究をさせるということになります。人材育成機能を持たすのであるとすれば、何か根本的なところで制度を変えないといけないような気がします。
もう一つ、ここで考えているのが、文系で言いますとPIという概念がそもそもあまりないのですが、若手研究者をPIとして独立した研究者としてやらすということであれば、既に若手研究という種別もありますし、その中で一体どこの部分を強化したいのかというのがちょっと伝わってこなくて、聞いている限りだと、大学の運営費交付金で対応すべきようなテーマをここでカバーしようとしていないかというところが気になりました。
以上です。
【大竹部会長】 御指摘いただきましてありがとうございます。人材育成機能という中にPI人件費等も含まれているということで、かなり広義な捉え方をしているという中での議論かなと思います。
これまでの議論について、事務局から何かあればお願いいたします。
【大鷲企画室長】 ありがとうございます。御指摘のとおり、やはり科研費というのは研究の支援というものがもちろん前面に出てくるというところではあるものでございますけれども、一方で、科研費を通じて多くの人材、若手人材も含めて関わっているというところがあろうかと思ってございます。したがいまして、それをそもそもどう捉えるかというところからの御議論になろうかと思いますし、また、先ほど部会長から御指摘のあったPI人件費につきましては、今まではやはり少額なところもございますのでなかなか難しいというところはあろうかと思いますけれども、他制度で進んでいるところもございますので、今後そういった具体的なものを示しながら、御議論できればと考えているものでございます。
今回、人材育成機能の強化、確かにおっしゃるとおり、初めてというわけではないですけれども、こういう視点での議論というのはなかなかこれまでしていないものですから、まずは大きなところから御議論いただければということで、今回用意をさせていただいていると御理解いただけたらと思います。よろしくお願いします。
【板倉学術研究推進課長】 私からもよろしいでしょうか。宇南山先生、仲先生、ありがとうございます。今回の件、室長から申し上げたとおりなのですが、もちろん人材育成そのものでいえば、そもそも基盤的経費がございますし、そのほかの人材に特化したような事業もたくさんございます。それは当然充実すべきだというのはまず言うまでもないところでございまして、その上で、科研費というものが、ほかの競争的研究費に比べて、少しそこは違う面があるのではないかと我々も考えているところでございます。例えば若手研究のようなものが研究者にとって一番最初のステップとなる競争的研究費であるというのが通例でございまして、何らかほかの競争的研究費とは違う性格を持っているところがやはりあるかと。
その上で、先ほども御議論いただきましたが、キャリアに応じて金額を変えていったりとか、いろいろな研究費を選んでいくというような機能がそもそもあると。
また、若手研究を取る前の段階でも、大型の研究費に、研究関係の補助者であったり、協力者だったりというような形で参画していって、そして成長していくというような機能もまたあると思っております。
また、PI人件費に関しましては、今室長から申し上げたとおり、文科省内のほかの競争的研究費では既に導入がされているところでございます。そういった中で、科研費についてどう考えるかということも、他の研究費を見ながら考えなければいけないというところでございまして、そういった科研費の持っているたくさんある機能の中の一つとして、人材育成機能というものはやはり科研費ならではのところもたくさんございますので、そこについて特にここで御議論いただければと思って、今回提案させていただいているというところでございます。
【大竹部会長】 ありがとうございます。
それでは、鷹野委員、お願いいたします。
【鷹野委員】 ありがとうございます。私からは、仲先生から御指摘のライフイベントの支援等の重要な御指摘にも関係するのですが、資料39ページのことでコメントをさせていただきたいと思います。若手研究者の支援につきまして、ブルーのところは、私の理解は、年齢だけでなく、学位を取ってから8年とか10年って決まっていると思うのですが、そういった人たちを支援するという制度の成果が、パーセンテージは高くはないものの、かなり高年齢まで成果が上がっているというところは大変喜ばしく、評価できることではないかという指摘をさせていただきたいと思います。
そしてまた、恐らくこの制度につきましてはもう広く知られているとは思うのですが、さらに広報をして、対象となる方にはチャレンジしていただきたいと思った次第です。
以上でございます。
【大竹部会長】 非常に的確な御指摘をいただいたと思います。ありがとうございます。
永田委員、お願いします。
【永田委員】 科研費で人材育成というのはもちろん大事だとは思うのですが、一方で、応募資格者の数を増やすというところにはなかなか効かないのではないのかなと思っていまして、というのは、これは何で減っているのかというのは、多分大学のポストが減っているからだと思うんですよね。一番経費が削られていく中で、なかなか教授とかPIとかの数は減らしにくい、そこで減らせなかった分、若手のポストを減らしていくというのは、どの大学もやっていると思います。
なので、ここのところを何とかしないとというか、ここが何とかなるようなモチベーションを大学に与えるような制度を考えないと、なかなかここの数は増えていかないのではないのかなと思っています。
科研費ではなくて、学振PDを大学が雇用しなさいというのがここ数年すごく広がっていて、それで大学の若手研究者雇用の数というのは実際増えていると思うんですよね。ですので、こういったやり方のほうが、科研費を通じて働きかけるよりも、学振PDのような若手の研究者を雇用できる枠をつくった上で、そこを大学の雇用につなげていくような制度をつくらないと、なかなか母数は増えないのではないのかなと思います。
以上です。
【大竹部会長】 確かに、先ほどのデュアルサポートの件とも連関するかと思いますし、ここは科研費だけではなくて、学振PDなり、いろいろなものと関連させて解決すべきでしょうね。ありがとうございます。
塩見委員、お願いいたします。
【塩見委員】 私も大型研究費による若手研究者登用の推進というのは、ちょっと違うのではないかなと思うんです。やはり先ほどから議論があったように、科研費というのは、基本的には個人研究なので、そこに何か育成機能とかを持たせるというのはおかしいと思いますし、既に、例えば卒論の研究のために、随分科研費を使っている人たちがおられます。いまだに4年生で卒論研究をやっているところがたくさんあるので、それはつまり、デュアルサポートがないから、どうしても自分の研究費を学生のまさに教育に使わなければならない。
それって随分間違っていると思いますし、もう一つは、例えば大型研究費を若手研究者の登用の推進に使うことに関して見える化するということになり、それが評価の基準になるのであれば、それもまたおかしな話だと思うんです。
既に先ほど言われたように、若手の研究種目というのは、科研費だけじゃなくて、創発とかさきがけとか、いろいろなものがあり、また、その中ではネットワークの形成ということに関しても重要な役割を果たしているので、科研費に何かそういう役割をさらに持たせるというのは、違うのではないかなと思います。
それともう一つは、41ページにあったように、大型種目になるほど人件費の割合が高くなるという。これは、今、ポスドクなんかを雇おうと思うと700万円ぐらいかかります。もしかしたら、いろいろな保険とかを入れると1,000万円ぐらいかかるかもしれない。だから、幾ら年間1億円近いお金をもらったとしても、ポスドクを何人か雇うと、それだけで随分なくなってしまうし、だから、こういう人件費、特にポスドクなんかの雇用のお金というのは、外付けにしたほうがいいのではないかなと。つまり、大学に来るお金で、例えば間接経費とか、間接経費というのは最近ほとんど大学に吸い取られてしまうので、実は使えない。間接経費というのは、その研究のために使うというのが本来の趣旨でしょう。だけど、そうはなってないので、それもデュアルサポートがないから、大学が貧乏だからということになるので、その辺、何かもっと違う制度で、研究費をしっかり研究のために使える、単に学生とか若手の教育とか育成とかにまでそれを使うのではなくて、そういう形にしたい、できればいいんじゃないかなと思います。大型研究費というのはラボで運営しているわけだから、ラボ単位で見れば、若手の教育・育成にもなっていると思いますし、そこをあえて共同研究者とか何とかで若手をほかから引っ張り込む必要もないような気がするんです。というのが正直な意見です。
【大竹部会長】 フランクな御議論をありがとうございます。
華山委員、最後にお願いいたします。
【華山委員】 ありがとうございます。若手育成、特に博士課程の学生の育成において、卓越大学院やSPRINGなどが果たしてきた役割というのは非常に大きかったと思っております。
我々の大学におきましては、この5年間で博士後期課程に進んだ学生が1.4倍ぐらいに増えているという状況もございます、ぜひそういったところから学生の支援、若手の支援というのをもう少し拡充していただければと思っております。
SPRINGは今、新しい事業の公募を審査中だと思うのですが、やはり選ばれる大学は限られていて、選ばれない大学の博士課程の学生はどうするのか、といった議論もございます。そこに科研費を使うべきなのかどうかはまた別の話ですけれど、文科省におきましては、もう少しこの辺りを拡張していただけると、より多くの若い人たちが研究にきちんとコミットすることができ、若手人材の育成につながるのではないかなと思った次第です。
以上です。
【大竹部会長】 御議論ありがとうございます。今のお話も含めて、恐らく例えば基盤研究(A)とかその辺りでなかなかPDを雇いにくくなってきているという声が多いことを反映して、こういった議論になっているのかなとも思うところであり、中野委員がおっしゃっていた上限を上げるというのは、それに対するシンプルというか明確な回答でもあるのですよね。
そういった中で、研究者が科研費に関わって前向きに研究ができるという環境をいかに整備していくのかということについては、今日、全体を通底した議論になっているかと思いますので、引き続き御議論いただきたいと思っております。どうもありがとうございます。
それでは時間も迫ってまいりました。最後に、事務局より参考資料について御説明をお願いいたします。
【大鷲企画室長】 参考資料につきましては、次のページ、右下48ページでございます。
一つは、先日5月19日に経団連のほうで新たな提言「科学技術立国戦略」が出されてございますので、その紹介でございます。こちらの中では、科学技術立国による価値多層社会を目指し、教育、科学研究、技術開発、社会実装、産業競争力強化までを一気通貫として捉え、研究開発投資の拡大に加えて、その成果の受皿となる産業・社会の改革、さらには、それらを支える思想・哲学の在り方まで含めた総合設計が不可欠だという提言がなされているところでございます。また、投資牽引型へのマインドセットを転換しまして、大学改革を前提とした運営費交付金の拡充ですとか、従前よりではございますけれども、科研費予算の早期倍増といった指摘のほか、官民研究開発投資を世界トップ水準に引き上げ、2040年には年間投資50兆円を目指すべきという提言がなされているところでございます。先ほど基盤研究の議論でもありましたとおり、経済界との関係を、このような提言も踏まえながら、しっかりと築き上げていきたいというところでございます。
もう2つございます。
次のページでございますけれども、AI for Scienceによる科学研究革新プログラム、こちら今年度から、昨年度の補正で措置された事業でございますけれども、上のARiSEについては5月12日から公募を開始しているところでございますし、下のSPReAD、これは個人の挑戦を支援するものでございますけれども、第2回の公募を昨日、6月2日から開始してございますので、そのお知らせをさせていただくものでございます。
さらには次のページ、こちらも昨年度の補正で措置された事業、EPOCHでございますけれども、こちらは現在応募を受け付けてございまして、現在審査中となってございます。審査結果につきましては、7月下旬に通知・公表予定でございまして、事業開始につきましても、8月の中下旬を予定させていただいているところでございます。
参考資料としては以上でございます。
【大竹部会長】 御説明ありがとうございました。恐らく皆様もこの思想・哲学というのが入ったというのを新鮮に感じておられるかなと思います。これについては御説明ということでよろしゅうございますか。ありがとうございます。
それでは、本日も様々な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。御議論いただきました内容について、引き続き検討してまいります。
最後に、事務局より事務連絡をお願いいたします。
【豆佐企画室長補佐】 ありがとうございました。本日の議事録でございますけれども、各委員に御確認いただいた上で公開させていただきたいと思います。また、次回の研究費部会につきましては、先日日程調整のメールを差し上げているところでございますので、引き続き御回答いただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
以上でございます。
【大竹部会長】 それでは、今日は台風の影響がある中、御参加いただきまして誠にありがとうございました。これで会議を終了いたします。皆様、どうもありがとうございました。
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