令和7年7月28日(月曜日)10時00分~12時00分
対面及びオンライン会議併用のハイブリッド形式にて開催
大竹部会長、鷹野委員、加藤委員、塩見委員、新福委員、永田委員、中野委員、中村委員、華山委員、茂呂委員、岸本委員
淵上研究振興局長、坂下大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、鈴木研究振興局研究振興官、板倉学術研究推進課長、大鷲学術研究推進課企画室長、豆佐学術研究推進課企画室室長補佐、他関係官
【大竹部会長】
定刻となりましたので、ただいまより第13期第2回の研究費部会を開催させていただきます。
議事に入ります前に事務局より連絡事項、よろしくお願いいたします。
【豆佐企画室長補佐】
ありがとうございます。事務局に7月15日付で人事異動がございましたので、御紹介させていただきたいと思います。淵上孝研究振興局長でございます。
【淵上研究振興局長】
淵上でございます。大竹先生はじめ、委員の皆様方、大変お世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。
【豆佐企画室長補佐】
坂下鈴鹿大臣官房審議官研究振興局及び高等教育政策連携担当でございますけれども、後ほど遅れて参加させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
続きまして、鈴木敏之研究振興局研究振興官でございます。
【鈴木振興官】
鈴木でございます。研究振興官として科研費改革のバックアップをさせていただく役目を申しつけられております。どうぞよろしくお願いいたします。
【大竹部会長】
どうもありがとうございました。本日なかなか内容盛りだくさんということで、まず、学術の振興に関する有識者ヒアリング、創発的研究支援事業についての審議の後に、第1回研究費部会で設置した作業部会の議論の状況として、今期の検討事項の方向性について御報告いただき、その後、この方向性について議論したいと思っております。まずは事務局より有識者の方々を御紹介いただきたいと思います。よろしくお願いします。
【大鷲企画室長】
事務局でございます。本日は、議題1といたしまして、学術の振興に関する有識者ヒアリングを準備させていただいてございます。
1つ目でございますけれども、一般社団法人日本経済団体連合会の小川産業技術本部長、佐藤産業技術本部副本部長をお招きいたしまして、産業界から見た科研費に対する期待と経団連の取組について御講演をいただく予定でございます。
続きまして、東京大学大学院工学系研究科の坂田教授をお招きいたしまして、研究トピックの先進性とその背景についての御発表を頂戴する予定となってございます。
各御講演、御発表の後に質疑応答の時間を設け、意見交換、議論を行いたいと考えてございますので、よろしくお願いいたします。
【大竹部会長】
それでは、続きまして配付資料の確認をお願いしてよろしいでしょうか。
【豆佐企画室長補佐】
ありがとうございます。本日は対面とオンラインのハイブリッド形式で開催しております。事務局から配付資料の確認とオンライン会議の注意点について御説明いたします。
資料につきましては、議事次第の次のページに記載のとおりでございます。個々の資料の読み上げはいたしませんが、資料の欠落等がある場合や、対面で御参加の方は、タブレット端末の操作方法について御不明な点等がございます場合には事務局までお申しつけいただければと思います。オンラインで御参加の方は、資料については、事前にお送りいたしましたファイルを御参照いただければと思います。
次に、オンライン会議の注意事項でございます。
音声の安定のため、発言時を除き、常時「ミュート(マイクOFF)」にしてください。
部会長、委員、オブザーバーを含め、メイン席の方は常時「ビデオON」に、その他の方は常時「ビデオOFF」にしていただければと思います。
発言される場合は「挙手」ボタンを押してください。部会長が指名されますので、「ミュート解除(マイクON)」にして、その都度お名前を御発言いただくとともに、オンラインでも聞き取りやすいようはっきりと御発言いただければと思います。
資料を参照される際は、資料番号、ページ番号などを分かりやすくお示しいただくようお願いいたします。
トラブルが発生した場合には電話にて事務局まで御連絡いただければと思います。
以上でございます。
【大竹部会長】
どうもありがとうございます。よろしくお願いします。
それでは、これより議事に入ります。学術の振興に関する有識者ヒアリングとして、まずは一般社団法人日本経済団体連合会の小川産業技術本部長、そして佐藤産業技術本部副本部長より御講演をいただきたいと思います。恐れ入りますが、発表席にお移りいただければと存じます。
では、御準備ができましたら、御発表のほう、どうぞよろしくお願いいたします。
【小川本部長】
大竹部会長、どうもありがとうございます。本日は経団連をこのような場にお呼びいただきまして、誠に光栄に存じます。ありがとうございます。
皆様になかなかなじみのない団体かと思いますので、最初に少しだけ紹介をしたいと思います。経団連というのは、日本の大企業から中堅・中小企業まで幅広く1,500社ほどが加盟しております完全民間の非営利団体でございます。
扱う内容は、主に政府の政策に対する政策提言であり、霞が関の省庁がカバーしている分野ほぼ全てをカバーしております。
事務局200名ほどで通常の業務をこなしておりまして、本日お邪魔しております産業技術本部はその中でもテクノロジーに関する分野を扱っております。科学技術政策ですとか、ヘルスケア、バイオといった個別の分野、それからスタートアップ、知財、宇宙、防衛、デジタル、サイバーセキュリティーと、かなり幅広くいろいろな省庁の仕事と御一緒させていただいております。
経団連自体はよく大企業あるいは企業の利益を代表している団体と捉えられると思います。もちろん会員が企業ですので、そういう面もございますけれども、企業が持続的に発展していくためには、日本、ひいては世界中の経済社会が持続的に発展していってこそ、お客様が栄えていてこその企業というところがございますので、どちらかというと日本全体あるいは世界全体の健全な成長に向けて必要な政策を提言しているというスタンスだと自負しております。
そういう経団連のスタンスから将来、2040年ぐらいに向けてのビジョンを昨年末に取りまとめておりまして、その中で特に科学技術政策に重きを置いておりますので、御紹介させていただきたいと思います。
資料1-1の1つおめくりいただきまして、右下に4と書いてあるページでございます。「FUTURE DESIGN 2040」という十倉前会長が退任の前に総括としてまとめられた国家ビジョンでございます。これを筒井現会長も踏襲して実現に向けて今、経団連を挙げて取り組んでおります。
日本が2040年に向けてどのような国家を目指すべきかという、少し大きな話になりますけれども、1つは、やはり先般の選挙を見ても、公平・公正といった要求が国民の間に広まっているということは疑いがないと思います。公平・公正、安全・安心で多様性が尊重される持続可能な社会をつくっていくということが今、不可欠であるということは恐らくあまり反対がないところかと思います。
ただ、公平・公正に分配をしていくためには、何といっても分配をするための原資が必要でございます。しっかりと稼いで、その成果を分配していくということを持続的に回していかなくてはいけないと思います。その稼ぐ力という意味で、やはり資源が少ない我が国にとっては科学技術の力というのが一番重要な資源ではないかと思っています。
ですので、科学技術立国ということ、そしてそれを国内だけではなく世界中で循環させていって貿易投資立国ということ、この2輪を回していくことが成長にとって不可欠であると考えております。
そのためには、今こういった混沌とした国際情勢にございますけれども、その中で主体的な外交を行って、国際経済秩序の維持にも貢献していくという、大きくこの3つの柱がこれから目指すべき国家像と考えております。
次の5ページと振ってあるページになりますけれども、非常にビジーな図になっております。今、日本の大きな制約条件としてこれから少子高齢化、人口減少はもう避けられないということ。それから、繰り返しになりますが、資源を持たないというところは、これはいかんともしがたいところでございます。
この2つに打ち勝って何とか持続的に成長していくにあたり、この図にあるように非常に多くの課題を抱えていて、それぞれが相関しているという、入れ子構造と呼んでいますけれども、そういう状態にあります。
ですので、これを一つ一つ個別に解決するのではなくて、全体として解決をしていく必要があるという中で、御覧いただきますと、一番真ん中のところに「イノベーションを通じた新たな価値創造」と書いてあります。やはり科学技術の力でイノベーションを起こして価値を生み出していくというところが一番大事だということをこの図で訴えたいと考えております。
イノベーションに関して、「FUTURE DESIGN 2040」本体にはいろいろと書いてありますが、本日のお題に関係する部分だけ抜き出して持ってきております。次のページ、6ページですが、やはり科学技術立国を実現していくために大学の研究力の抜本強化ということは避けて通れないのだろうと思います。もちろん今でも非常に質の高い研究をされている大学、研究者の方々大勢いらっしゃることを承知しておりますけれども、全体の趨勢として少しずつ研究力が低下しているのではないかというお話も最近よく聞いているところでございます。
科学技術立国を支えていただくために、しっかりとまず裾野の拡大、大学全体の研究力を強化していただくとともに、高さの引上げということで、特にトップレベルの大学に関しては大きく引き上げていただくという、この2つの方向の努力が必要ではないかと思っております。
高さの引上げのほうにつきましては、今、国際卓越研究大学などの施策で集中的に支援が行われているところかと思いますけれども、裾野の拡大のほうにつきまして、本日のテーマになっております科研費の早期倍増という言い方をさせていただいております。結構思い切った提言の仕方をしていると思います。経団連としては、一時期、社会実装というところを強調し過ぎまして、結果として少し選択と集中のほうに政策が偏り過ぎてしまったかもしれないという自戒の念も込めまして、もう少し研究、特に基礎研究のほうは、何か選択して集中して投資をするのではなくて、次に何が出てくるか分からないというところから幅広く薄く種をまいていただくことの重要性を改めて認識し、その意味で、研究者の方々が自由に使っていただく科研費を思い切って倍増していただくということを提言させていただいたところでございます。
その他、7ページには大学の改革などについても述べさせていただいておりますし、また、産業界に関係するところとしては、博士人材、博士課程に進む方が今少なくなっていると伺っていますが、これを増やすためには、キャリアパスとして産業界のほうにも就職をして活躍していただくというパスを増やしていく必要があると思っております。
ここにつきましては、今、経団連で、産学の枠組みで博士人材のインターンシップの改善ですとか、うまくマッチングをするようにということで、大学の先生方ともよく話合いをさせていただいて、具体的な改善に向けて取組もさせていただいているところでございます。
「FUTURE DESIGN 2040」については、簡単でございますが、以上にいたしまして、この後、第7期の科学技術・イノベーション基本計画に関しまして経団連のほうで政策提言をしておりますので、担当の佐藤から簡単に御紹介をさせていただきます。
【佐藤副本部長】
経団連では、大きなビジョンの下に、各委員会でそれぞれ具体的な政策に対して、経済界として何を言っていくかといった観点から提言活動を行っています。今回、第7期基本計画に向けてとありますが、科学技術の重要性については、30年以上前の第1期の頃から提言をしています。その頃からも、競争的資金の拡充を通じて、いわゆる研究者同士が競って、結果として、産業界と学者がお互い魅力ある存在になるこということがやはり一番良いことだろうといったところがありました。また、当時の時代背景としては、フロントランナーの一員ということを目指していたところでございますが、今般、足もとの状況を踏まえ、次に述べるような提言を行いました。
ページをめくっていただきまして、ポイントをかいつまんで申し上げます。
13ページまで飛んでいただきますと、今回の提言では、次期基本計画に対する3つの視点を挙げておりますが、本日の議題には、重点領域の考え方に対する再構築、研究力のさらなる強化などが関係しているところでございます。加えて、3つ目がイノベーションを生み出す土壌を再び掘り起こすといったところも指摘しております。また、見直しにあたっての具体的改革には7つの課題を17ページに掲げさせていただいております。
ここでは、組織、人、モノ、資金、連携、社会教育等といったところを指摘しておりますが、本日時間も限られておりますので、3番目の政府研究開発投資の拡充および配分方法の再検討について、その点について御説明申し上げたいと思います。
19ページを御覧ください。ポイントは、我々経済界といたしましては、第6期の基本計画では、補正予算によらず、当初予算からきちんと対GDP比1%をベースラインにさらなる増額を求めてきたところでございます。第7期への要望としても、その姿勢は今回も基本的には変わってないところでございます。その上で、政府研究開発費のポートフォリオについては、適切な評価を踏まえた上で、やはりスピード感を持って構造的に変えていくことを求めております。先ほど申し上げたとおり、情勢がいろいろ変化していく中にあって、計画どおりに研究は進むものでなく、また研究というのは、非常に長い時間、短い時間等、いろいろなパターンがございますので、それに合わせた形でやっていくべきであろうと思います。
とりわけ基礎研究の危機感に関しては、今、小川が申し上げたとおりでございまして、研究者に対して十分な資金と時間で苦労させない環境をつくるべきだというのが経済界の共通認識でございます。
その解決策として、世界トップレベル研究拠点プログラムや、創発的研究支援事業等は、効果は上げつつあるということは存じておりますが、やはり総じて研究者全体が能力を発揮できるような研究環境の整備というところで、国際卓越研究大学等の大学ファンドによるトップ校の支援の加速とともに、競争的資金の科研費の早期倍増と、さらに基盤的経費である運営費交付金につきましても、拡充を図って、直接研究者個人にお金が渡るようにしていただくことが重要だといったところを提言しております。
ただ、そうなりますと、幾らでもお金があれば全部できてしまうではないかというところになりますが、我々としては、厳しい財政事情の下では、そういう状況にはないと思っておりますので、政府主導において、大学の統廃合等を含めた、適正な規模の確保が必要であると存じます。同時に、大学経営のガバナンス、人事マネジメント改革、さらにイノベーション創出状況など、そういった様々な実効性を評価して、有効性を担保していただきたいといったところが今回の提言のポイントでございます。先生方にも御理解のほどいただければと思っております。
簡単ですが、以上でございます。
【大竹部会長】
御発表というか、御説明ありがとうございました。非常に元気の出る内容であり、同時に我々としては責任を痛感する内容になっているなと感じたところでございます。
委員の方々から恐らく御質問等あると思いますので、いかがでしょうか。少し時間を取りたいと思います。
挙手でお願いできればと思います。
中野委員、お願いします。
【中野委員】
中野です。どうもありがとうございました。重点領域の考え方を変えるということをお話しされたと思いますが、その点について、もう少しどのような期待を持っていらっしゃるかを伺いたい。従来、重点領域というのは国が決めてトップダウンで進められることが多かったとおもいます。しかし、科研費で行われる研究というのはその範疇に入らず、経団連としては、次の重点領域が生まれるような分野に、より力を入れてほしい。できるだけ早く世界に先駆けてそういう分野に取り組んでほしい、という意味で再構築や戦略の考え方の変更を望んでおられるのかということをお伺いしたいと思います。
【小川本部長】
ありがとうございます。そうですね、重点領域のところを強調しますと少し誤解を生むかなといつも思うんですけれども、2面あると思っています。先ほど申し上げた、次の重点領域を生むための科研費の世界というのは、これは重点化するのではなくて、広く薄く何かに特定することなくお金を投じるべきであると思っています。
他方で、もう少し実装に近いところで、産業界が御一緒するようなところは、政府の支援、やはりリソースが限られますので、今まで結構、あれもこれもと、重点領域と言いながら、分野がかなり幅広くなっていて、その分リソースが薄くなっていたと思うんですね。なので、そちらのほうはもう少し領域を重点化したほうがいいのではないかということで、2つに分けて考えたいと思います。
【中野委員】
分かりました。もう一つよろしいですか。重点領域ですが、例えば30年後にどういうものが重点領域となっているかは、なかなか想像が難しいと思います。これは産業界にとっても難しいし、我々アカデミアにとっても難しいと思います。ただ、30年後にどのような人が日本を支えているかについては想像がつきます。今の中学生とか高校生だろうと思うのです。その人たちの価値を高めていくというときに、30年後の重点領域を今から伝えて、それに取り組んでもらうのではなく、何が重点領域になったとしても対応できる人を育てていくということが我々の役割であり、それが唯一できることではないかと思います。
その際、どのような重点領域や新しい領域であっても、始めるときは別の分野で育った人が取り組んでいます。そうした取り組みを進める上でも、分野を特定せずに、しっかりとした研究力を身につけていくことが大事だと思います。博士人材と産業界のマッチングを考えているとおっしゃいましたが、そういうふうな人材を求めていらっしゃると考えてよろしいでしょうか。
【小川本部長】
そうですね。おっしゃること、非常に重要な点だと思います。長期的に次の30年後の重点領域というのは今から予測はできないと思います。ですので、教育に関しては、私どもは、問いを立てる力とか、自ら課題を生み出す力とか、困難にめげずに粘り強く研究を進める力と、研究に限らないと思うんですけれども、そういうところを重要視しているということです。
今までの教育、特に初等中等教育からどちらかというと決まっている答えを見いだすというようなところが重視されてきた。少しずつ変わってきてはいると思うんですけれども、今おっしゃったように、初めはどなたにとっても初めての分野に挑戦されるわけですので、自ら問いを立てて課題解決に取り組むといったところが重要かと思っています。
企業に博士人材の方が入られるときも、今まで研究されてきたことの専門性というのをもちろん生かしていただくこともあると思うんですけれども、むしろまた企業の中でも新しい分野がどんどん出てきますので、そういったことにも取り組んでいただけるような、そういった力が求められているのかなと思います。
【中野委員】
ありがとうございます。
【佐藤副本部長】
1点だけ補足させてください。重点領域と考えた際に、やはり30年後というのは分からないというのもあるかもしれないですが、他方で30年間変わらないという重点領域も恐らくあろうかと思っております。例えば、自然災害、食料問題、エネルギー等は、我々としては社会課題として普遍的なものがあるだろうと思います。他方、時代によって、要素技術は随分変わってくる部分があるので、そこは科学技術でも変わってくる部分だと思っております。
同時に経済界として、やはりわが国のモノづくりというものは、競争力が落ちてきたと言われる中でも、強みはパーツパーツとして持っているところがございます。そういったところも我々としては、雇用の維持・確保という面がございますので、サプライチェーンを維持する観点から、重要な領域の1つではないかと思っております。考え方としては変わらない中でも、その時々によって変わってくるものというところもあるということで、ポートフォリオの見直しと申し上げた次第でございます。
【中野委員】
分かりました。課題としては、確かに例えば地球温暖化であるとか、日本固有のものでは少子高齢化といった問題は、この流れをなかなか変えることはできないと思います。そうした問題は長期的に取り組んでいくことを期待されている、ということですね。
【佐藤副本部長】
同時に企業の方からよく指摘されるのは、とりわけ国内市場に閉じず、世界の模範になるようにという点でありまして、それに対して、科学技術のみならず、標準化ですとか、外交ですとか、様々な視点があろうかと思っていますので、冒頭御説明していた入れ子構造の中をうまく解いていくというのが我々のスタンスでございます。
【中野委員】
ありがとうございます。
【大竹部会長】
ありがとうございます。ほかにいかがですか。
中村委員、どうぞ。
【中村委員】
予算のこととは少しずれるかもしれないんですが、就職採用活動の件をお伺いしてもよろしいでしょうか。
【大竹部会長】
ええ、もちろんです。
【中村委員】
教育の話が出ておりまして、人材育成は申し上げるまでもなく重要なんですけれども、大学レベルでも学会レベルでもいろんな声明が出ていると思いますが、前倒しの件、採用活動がどんどん早くなってしまって、本来だったら大学院に入ってしばらく研究をしてから自分の適性を見極めて進学を決めるという状態が、もう既にM1の最初から2年後の採用の就活の準備が始まってしまっていると。これは昨今の人手不足のことを考えますと仕方ないとは思いつつ、少し前までは就職協定があったと思うんですが、これはもう避けられないものとして対応しなければいけないとお考えでしょうか。
【小川本部長】
ありがとうございます。おっしゃるとおり、就職協定について、今は経団連として音頭を取っておりませんで、各社に任せているという状況になります。
人事戦略自体も各社の戦略の範疇になりますので、経団連のほうからああしてください、こうしてくださいとなかなか言いにくい状況にはございます。
ただ、実は、十分に情報が伝わっていない部分もあるかと思っておりまして、今、大手企業の採用というのは、半分以上、経験者採用になってきております。ですので、新卒一括採用というイメージが大きいんですけれども、相当崩れつつありまして、実は新しく会社に入られる方の半分以上は経験者採用で、しかも通年採用で入っていらっしゃるという状況です。
なので、学卒はまだまだ新卒一括採用が多いと思うんですけれども、特に大学院出られた方の就職というのは、実は1年中受け付けていますよという企業さんが結構ございまして、ただ、それがうまく大学院生の方々に伝わっていなくて、どうしても卒業してすぐに就職するために前倒し、前倒しというところもあるかもしれませんので、もう少しコミュニケーションがよくできるといいのかなと考えております。
【中村委員】
最初から転職することを想定して会社に入る方はなかなか少ないと思いますので、やはり最初の新規の採用の段階で、ある程度きちんと大学院で勉強してきた人を採用すると。あまり青田買いに走らないということはやっぱり基本的には必要なことじゃないかなと思うんですけれども、おっしゃることも分かりますので、学生さんにもそういう話はしたいと思います。ありがとうございます。
【小川本部長】
よろしくお願いいたします。
【大竹部会長】
オンラインの方ももし何かあれば挙手でお願いします。
【永田委員】
永田ですけど、よろしいでしょうか。
【大竹部会長】
お願いします。
【永田委員】
先ほどの14ページの図に戻るんですけど、補足で御説明いただいたことに僕は全く賛成でありまして、社会的課題は10年、20年、30年では変わらない。ですので、上で言われている集中投下する重点領域というのが左側の領域を指しているのであれば僕は全く賛成なんです。ところが、今の集中投下されている領域というのがえてして右側になっていて、つまり、AI技術に対して集中投下するとか、あるいは宇宙関連技術に対して戦略的に投下するとか、そういったことが非常に目立っておりまして、僕はこれには賛成できないんですね。
ですので、社会的課題をどうやって解決するのかというのは、これはボトムアップで出てくるほうが、より社会を引っ張るような、世界の先進に行くような技術分野が出てくると思うので、なので、左側に集中して投下するんだと、右側ではないんだと、そういう御説明だったのだと理解してよろしいでしょうか。
【佐藤副本部長】
御指摘のとおりでございます。この議論をしたときにも、やはり企業の方から、社会的課題というものは、どこの国でも、どの世界でもある程度共通な部分があるだろうという指摘がありました。そのための要素技術はどのようなものであるのかということをきちんと見定めた上での重点領域を定めていくということで、ゴールが見えない中での投下ということではございません。
【永田委員】
きちんと要素技術を見定めた上でというのが僕は反対なんです。それはなかなかできるものではないと思います。
【大竹部会長】
見えないものもあるということですね。
【永田委員】
ですから、そこのところは、もっとボトムアップの要素を強めてほしいというのが僕の意見。これは賛成、反対いろいろあるかと思いますけれども、僕の意見としては左側に集中してほしいという意見です。
【佐藤副本部長】
その意味で、小川のほうから申し上げた戦略と創発というところで、やはり戦略的にやるところと、自由な研究としてボトムアップの中でそこから結びつけられるものというのがあろうかと思いますので、先生の御意見も理解しているところでございます。
【大竹部会長】
顕在化しない重要技術は必ずあると思うので、そこをどう見定めていくのかというのは、社会的課題を見ているからこそ見えるということですかね。ありがとうございます。
ほかにいかがですか。
塩見委員、お願いします。
【塩見委員】
塩見です。19ページです。高さの引き上げという言葉が使われていますが、日本は東大を中心とした選択と集中でやってきたわけで、今、また、こういう形で選択と集中をやっていこうとしているわけですけど、このやり方でいいと経済界が思われているのかということが聞きたいです。
【小川本部長】
そうですね。大学のことについては私たちよりも皆さんのほうがよく御存じなので、よく教えていただきながら、コミュニケーションしながら私どもの考え方をまとめていきたいと思いますけれども、私どもから見ていると、大学にもいろいろな役割がおありになって、例えば、非常に高いレベルの研究に特化される大学もあれば、教育に重点を置かれる大学もあろうかと思いますし、また地域課題に寄り添って、地域の企業の方々と一緒にやっていかれるとか、いろいろ特徴があると思うんですね。
ですので、全ての大学が同じように発展する必要はないのかなと思っていまして、その中で、産業界としてはやはりグローバルに展開している企業にとっては、グローバルに通用するようなトップレベルの研究をしていただく大学というところにも期待をしたいところです。全ての大学にそうなっていただくという意味ではなくて。そういう大学については、その面をぐっと高さを持たせていただきたいと。ただ、ほかの大学にはそれぞれの役割があって、そこがしっかりと果たせるように、またそういった違う形での支援の在り方ということになるのかなということが、高さと裾野という考え方と御理解いただければと思います。
【塩見委員】
国際卓越研究大学と少子化対策というのは多分結びつくんだと思うんですけど、どのように期待されていますか。
【小川本部長】
少子化対策ですか。もう少し詳しくお話しいただけますか。
【塩見委員】
例えばこれ、すごいお金が出ているわけで、特に海外からの研究者をリクルートしなさいと、優秀な方。その人たちが最終的に日本に住み着いてくれたらなおいいみたいなことを期待されているんじゃないかと思うんですけど、そういう形での少子化対策。つまり、海外から優秀な人を引っ張ってくる。日本人の人口というのは増えることはない。これから減ることは仕方がない。減る分を埋め合わせることの一環なんじゃないかなと僕は思っているんですけど。
【小川本部長】
そうですね。もちろんトップレベルの研究者にたくさん来ていただくことは私たちも期待をしています。
ただ、人口の穴埋めというよりは、もう少し長い目で見た日本の国力の増強と見ています。研究者の方、海外からいらっしゃっても、もちろん定着していただいたらうれしいですけれども、また、キャリアの中で外国のほうに戻って行かれたり、行ったり来たりされると思うんですね。また、その中で日本の研究者もそういったグローバルな方々と混じって研究をされることによって、全体の視野がグローバルに広がって、グローバルレベルに研究レベルも上がっていくということがあって、それがひいては日本全体の国力にもつながるのかなと。そこがまさに経団連の主要な企業が期待をしているところでして、先ほども申し上げたように、今、主要な大企業のマーケットは半分以上海外なんですね。
ですので、海外に通用する価値を持つ製品・サービスを生み出したい。なので、海外に通用する研究レベルの大学と御一緒したいと思っていますので、そういう効果を海外からトップレベルの方々がいらっしゃることによって上げられるのではないかと期待しているところでございます。
【塩見委員】
ありがとうございます。
【大竹部会長】
ありがとうございます。議論の尽きないところかと思いますけれども。
【中井委員】
よろしいでしょうか。
【大竹部会長】
中井委員、お願いします。
【中井委員】
まず、科研費の早期倍増と運営費交付金の拡充の提言ありがとうございます。それとも関係します。先ほどの永田委員がおっしゃった重点領域の考え方で、よく重点領域の議論をするときに、どういう重点領域を選ぶのだということで、選ばれている内容というのは、世界的には一周遅れ、アカデミアとしてはやや遅れ、多分産業界としては、これから社会実装に必要な、そういうものだと思います。
だから、重点領域の考え方も、2段階で、まずは社会的課題。これは大きな目標があって、それに対して、世界も分かっていてしのぎを削る、そういう領域に集中投下は良いと思います。でも、科研費のようにもう一歩先の要素技術になり得るかどうかというところ、この辺りにもやはりもう少し産業界、経団連のほうからも御支援いただければと思っています。
ちょっとコメントになりました。以上です。
【小川本部長】
一言だけ。繰り返しになりますが、重点領域というのを基礎のほうまで縛るものと私たち考えておりませんで、今おっしゃった、産業界のほうが一生懸命実装化しようとしている部分を重点化して支援すべきであろうと。
逆に、これからの重点領域を生み出す基礎寄りのほうのところについては、むしろ重点化しないで、そこに対する支援を今までの倍、倍増してくださいと、そういう言い方をしていると御理解いただければと思います。
【中井委員】
ありがとうございました。
【大竹部会長】
ありがとうございます。時間がというところもありまして、議論はここまでとさせていただきます。できれば引き続きまた経団連さんと我々の中で議論を重ねられるといいかなと今日お話を伺って思ったところでもあります。
また、科研費、そして運交金倍増ということで、非常にエンカレッジングな御提案をいただいたことに感謝申し上げたいと思いますし、我々もそれに見合うような施策、あるいは向上策というところを考えていきたいと思っております。本日、誠にありがとうございました。
【小川本部長】
ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
【大竹部会長】
それでは、元の席にお戻りいただいて、続きまして、東京大学大学院工学系研究科の坂田一郎教授より御発表いただきたいと存じます。
先生、恐れ入りますが、御準備をよろしくお願いいたします。
【坂田教授】
どうも東京大学の坂田です。お邪魔します。本日は、研究トピックの先進性に関する私どもの論文の内容を中心に御説明させていただこうと思っています。
ただ、その前に、世界の学術の成長領域に関する分析をお聞きいただいて、その上でメインテーマのほうを聞いていただくと、よりよく理解いただけるんじゃないかと思っております。
1ページ目お願いします。私自身は、計算社会科学、それから科学計量学と言われるような分野の研究をふだんやっております。また、先ほど御議論ありましたけど、そういったものを適用して、応用的な研究として技術経営の研究しております。
それらの要素技術ということで、生成AI、それから自然言語処理といった領域も研究しております。
次のページお願いします。まず、テーマの1つ目なんですが、ここでは世界の成長トップ100科学領域というものにおける日本の存在感についてお話をしたいと思います。Scopusの全論文、2024年段階ですと累計8,700万件あるんですが、それから引用関係がその中で10億件ほどございます。引用ネットワーククラスタリングという方法で8,700万件の論文を約1万の領域に分類をしています。
御案内のとおり、引用というのは自分の論文と非常に強く内容面の関係があるということに関する著者の意思表示ですので、約10億件の著者の意思表示を基に学術研究成果の分類をしていると理解いただければと思います。
各クラスター(小研究領域)に所属する論文について1,000件以上4万件以下になるようにしていますが、多くのクラスターが1万件前後となるように分類をしております。
領域への所属論文が1万件前後となるよう、階層的なクラスタリングをしています。階層でいうと3階層から4階層になっており、大分類、中分類、小分類、もしくは小々分類と、そういうふうになっていると理解いただければと思います。
成長というのをどのよいに定義するかなんですが、ここではシンプルに、10年間のレンジを取って、例えば2024年ですと、2024年の論文数のその領域における過去10年間、すなわち、2015年から24年までの比率がどの程度かを計算し、その比率の高いものを特定しております。
今日お見せしていますのは、トップ100ですので、全体の中で成長度の高いトップ1%の研究領域(クラスター)と理解いただければと思います。
最終年、2024年の場合、当該年の単年の論文数シェアが10年間のレンジの中で大体20%を超えないとトップ100(トップ1%)には入らないということで、かなり高い成長をしている領域ということになります。
例えば大規模言語モデル、自然言語処理の領域が存在しますが、それですと2024年単年の論文数が過去10年間全体の43.5%を占めています。つまり、過去10年の論文を見たときに、その半分近くが最終年に出版されているわけです。
トピック自体は、これ先ほどの議論でいいますと、課題というよりは、学術的なテーマですので、2000年から2024年まで成長領域の内容は大きく変化しています。領域の名称で見る限りほとんど同じものはないというぐらいの激しい変化になっています。
それで、ここで資料の右側に代表的な学術領域を書き出してありますけれども、これはそれぞれのグループの特徴語を我々が抽出をして、それを生成AIに与えて領域に名前をつけてもらっていると。そういう方式ですと、1万個にもなる領域でも名前をつけることは可能ですので、そういう方法を取っているというものです。
図では、横軸が、1と書いてあるのがその国が論文数でトップを占めている領域の数で、論文数のシェア1位、その後、2位、3位、4位と、こういうふうに横軸になっています。
2000年の頃は、日本では、トップシェアの領域が幾つかありました。例えば流動層と粒子動力学、イットリウム系超電導体、そういったものですけれど、2012年になると、成長領域群について、日本が世界トップシェアの領域がなくなりまして、2024年になると2位の領域もないとなっています。3位となっているのは、材料科学における機械学習。これは大学別にも見ることができるんですが、この領域ですと東京大学が世界の3位ぐらいですね。それ以降で日本のシェアが上位の領域は、おおむねライフサイエンス領域ということになっています。
ちなみに世界的に見ると、まだ中国の浸透度が相対的に低いのはライフサイエンス領域ですので、そういったものも反映しているのではないかと思います。
他の主要国も見てみますと、2000年時点ではアメリカが圧倒的に有利。日本とイギリスはそれに並んで続いていました。
次のグラフなんですが、最新時点で4か国を比較したものになっています。現時点においては、成長領域における論文数トップシェアは圧倒的に中国が取っています。続いてアメリカ。それから下のほうに、日本とドイツを比べているんですが、ドイツも、年を経るにしたがって減退したことは事実ですけれども、3位とか4位の多さでいうと、日本よりもまだ多いということが言えるのではないかと思います。
ちなみにここでいう成長領域なんですが、先ほど申し上げたように、1つのグループが大体1万の論文ありますので、萌芽的領域ではなくて、萌芽からある程度成長して可視化された領域と捉えていただくのが適切と思います。
また、中国は、このスライドで示したように成長領域でも論文数が多いんですけど、非成長領域でも論文が多いので、戦略的に成長領域だけに張っているというわけではないのも事実です。
また、最後に付録として資料を付けた私どもがつくって公開しているScience Planet+というシステムを見ていただきますと、成長領域でも中国が大きなウエイトを持っている状態で、ほかの国がそれを後追いしてきているかというと、必ずしもついてきていない、中国に任せてしまっているといった領域もたくさん見ることができます。
例えば最近はやりのペロブスカイト電池は、中国が相当大きなシェアを持っていますし、それから再生可能エネルギーでいうと、高効率電気化学触媒開発、これも見ていただくと中国のシェアが非常に高く、他国の論文は余り増加していないというのがお分かりいただけるかと思います。
戻りまして、次に、トピックの2番目なんですが、資料を戻していただいて、事例の2番目です。次はトピックの先進性に関して分析をして、これにつきましては、2020年までの論文7,000万件、それから、科学者の情報でいうと1,600万人、その間の共著関係が約4億件、これを対象にして分析をしています。ここでの「先進性」の意味ですが、他の国や大学・研究機関がフォローワーとして後から追いかけてきているようなトピックを先進していると捉えています。一般に、先ほど説明した成長領域には、先進的なトピックが多く含まれているものと考えられます。ただ、成長領域でも、研究成果が特定の国に偏り、他の国の研究者が追いかけていない領域も存在します。そうした領域では、先進的なトピックは見られないことになります。
どういう手法を用いているかということなんですが、それぞれの論文が引用している引用文献群、これの束をその論文のトピックとみなすとしています。著者による内容的な関係の近さの意思表示を重視するという意味では先ほどと同じで、自分の論文が他のどの論文に近いかということをマークしているというのが引用と考えています。
そうすると、例えばある国で論文数が100万件あったとすると、その国の引用数は100万件掛ける100、大体平均100ですので、そうすると、1億件、参考文献数があると。それをその国の研究トピックの束と捉える方式をデータを取得しています。
ただし、お手前で非常に多く引用されるような論文、そういったものがあるとバイアスになりますので、1,000件以上引用されるような論文は除外しておりますし、それから多く論文から被引用される論文は低いウエイトをつけるという方式、TF-IDFというんですが、そういった方式で計算をしております。その上で、それぞれの論文の値を前提として、著者の所属機関に応じて国や大学別に割り振っているということでございます。
次のページですけれども、結果を見ていただきますと、まず、グラフなんですが、cのところを見ていただきますと、2015年を基準点に取っておりまして、赤色のグラフは、アメリカを2015年のトピックに固定をして、それと中国のトピックがどれぐらい近いかということを示しています。
見ていただくと、両国の2015年同士のトピックが一番近いわけじゃなくて、1年ずれた2016年が一番近いということになっています。アメリカの2015年と中国の2016年が近いですので、アメリカのほうが先行しているということになります。
今度、青色は、中国を2015年に固定して、アメリカを時系列で動かしているということですけど、中国の2015年とアメリカの2014年が近いということで、やはりアメリカのほうが先行していると見ることができるかと思います。
赤と青のグラフで示されるような2つの関係を考慮してつくったものが私どものトピックの先進性指標、TPIということです。図でみるとこのグラフの2つの山が離れていて、傾斜の角度が違っているほどトピックの差が大きいと評価をしているところです。
見ていただきますと、アメリカとイギリスはほとんど重なっていると言えるかと思います。一方で、アメリカと中国、アメリカと日本見ていただきますと、アメリカに比べて日本や中国は遅れているということになっています。
次のページお願いします。トピックの先進性を示すTPIという指標を横軸に取り、縦軸に平均被引用数を取っています。平均被引用数は、学術分野ごとに大きな差異がありますので、単純の比較ではなく、分野間の差異で調整をしてあります。
見ていただきますと、トピックの先進度とその国の論文のインパクトの間に、かなり高い相関があることがお分かりかと思います。
香港とシンガポールは、両者の関係性でみると、図の上のほうに乖離していまして、日本は残念ながら図の下のほうに乖離しています。日本はトピックの先進度がほぼ中間的というふうな結果になっています。
ちなみに、TPIの計算範囲ですが、ここでは40か国、主要な国を対象としていまして、特定の国とその他の39か国に対するTPIを取って、それを相手国の論文数でウエイトをつけて加重平均していると理解いただければと思います。例えばアメリカや中国はウエイトが非常に高くて、小さい国のウエイトは小さいということになっているということでございます。
次のページお願いします。研究としては、事実を示すだけではなく、その背景にどういう要因があるかということを考えることが大事ですが、探索をした上で、ここでは、関係の深いものとして、世界の論文の共著ネットワークにおけるインフルエンシャルな研究者の比率を特定しています。横軸、左の図を見ていただきますと、これが共著ネットワークになっていまして、それぞれの国の研究者がどの辺にいるかということを色で示してあります。真ん中にいるほどインフルエンシャルな立ち位置にいるという傾向があります。日本は残念ながら端のほうに固まっているという傾向です。
また、これを計算しまして、エーゲン・ベクター・セントラリティ、日本語でいうと固有ベクトル中心性で、それぞれの研究者の立ち位置を定量評価したのが右の図の横軸です。研究者が所属する機関の国籍ごとにまとめ、それをそれぞれの国ごとに見たときに、トップ10%に入るインフルエンシャルな研究者がどれぐらいの割合いるかということを図ったものが横軸になっています。トップ10%ですので、世界の平均が10%ということになります。日本は、国単位でみると残念ながら10%よりやや低いところにあります。
これ見ていただきますと、トピックの先進性と、インフルエンシャルな研究者のその国の共著ネットワーク内における密度というのはかなり高い相関があるということが分かるかと思います。
すなわち、インパクトの高い研究成果を生み出す上で、研究助成はもちろん重要なんですけれども、それだけではなくて、世界のインフルエンシャルなコミュニティーにどれぐらい入れているかということが非常に重要だということを示しているんじゃないかと思います。
論文のサプルメントに入れてあるんですが、過去に共著したことのある研究者とそうじゃない研究者を比較しますと、予想された結果ですが、過去に共著したことのある研究者の方がそうでない研究者と比較して論文のトピックは当然のことながらかなり近いという関係にあり、やはり人的なネットワークを通じてトピックが伝わっているということが分かるわけでございます。
これが2番目でして、次のぺージをお願いします。そういったトピックの先進性もしくは学術領域の成長をどういう力が牽引しているのかということについて考えたいと思います。当然科学的なキュリオシティとか、それからその分野での話題が該当しますが、先ほどの経団連さんとの御議論にもありましたけれど、やはり社会的なディマンドというのも大きいと私は考えます。
そういう観点で、学術論文と政策文書の大規模なデータベースを当方で統合し、それを用いて、国際機関の政策文書に引用されている23万件の論文について分析してみたのがこの図です。ざっと見ますと、扱われている領域は、医療・ヘルス系、環境系、それからその他、経済、金融など社会科学系と、この3つに大別することができます。
引用関係を通じた政策文書との距離を分析してみると、政策文書と最も近い、すなわち直接引用される関係にあるのは環境科学、遠いのが物理学です。環境科学は政策文書に直接引用されるものが非常に頻度が高いとなっています。それが右側の図です。
物理学も、しかしながら、引用の引用の引用、すなわち3つパスをたどると政策文書に37%引用されていまして、やはりそういった基礎科学が政策エビデンスの基盤をなしているということも事実かと思います。
次のページお願いします。最後のページですけれども、ディマンドサイドから見た成長がどうなのかということを分析したのがこの図です。テーマごとに政策文書での被引用数の増加率を取っております。2020年以降の増加率ということなんですが、予想された結果としてCOVID-19をテーマとした論文が圧倒的に政策文書での引用数が伸びていることがわかりますと。その前の期と比較して、大体5倍になっています。それを除きますと、Circular Economy、Data Science・AI、Climate Modelingと、こういったところの政策エビデンスとしてのニーズが拡大しているということが分かるわけでございます。
COVID-19を除きますと、そういった領域は、最初のテーマで申し上げた成長領域にみんな入っておりまして、やはり学術の成長の一部をこういった社会的なディマンドが牽引しているというような関係があることも見ることができます。
また、最後に政策文書への被引用とインパクトとの関係ですが、先行研究2つ挙げておりますけれども、先行研究で言っているのは、こういう国際機関のレポートとか、それからアメリカ政府のレポートだとか、そういったところに引用されている論文は大体インパクトが高くなる傾向があることが示されています。エビデンスの提供を通じた社会の課題解決への貢献が論文の学術的な評価を高めることにつながるということです。
さらに、国際機関に関しては、特にCOVID-19の領域では、多くのいい論文を引用している政策文書は、政策文書自体が多く引用されているというような、これは論文では、コエボリューションと名づけられていますけれども、政策文書と被引用されている学術論文双方のインパクトを引き上げ合う、そういった関係があるということを示されているということが分かります。
簡単ですが、私のほうからは以上です。
【大竹部会長】
坂田先生、示唆に富んだお話いただきまして、誠にありがとうございます。恐らくたくさんのディスカッションがあるかなと思います。時間の許す限り、やらせていただきたいと思いますので、オンライン、あるいは会場の方も手を挙げていただければと思います。よろしくお願いします。
【中野委員】
どうもありがとうございました。中野です。成長領域の定義ですが、最終年度を総数で割った比からは、その年に成長領域が始まった、あるいは成長領域の仲間入りをしそうだということは分ります。しかし、本当に成長領域として定着したかどうかについては、なかなか分からないと思います。その点については、より長期的な調査があるのでしょうか。
【坂田教授】
そういう計算も可能です。ただ実際、両者はほぼシンクロしていまして、年次展開をした時に成長度に凸凹が見られる領域というのは割と珍しい。だから2024年高いものというのは、基本的にこういうふうに成長してきていると考えることができるかと思います。
【中野委員】
なるほど。その年だけ急に上がるのではなく、以前からエクスポネンシャルに上がっていて、最後にさらに上がっている。だから次の年はもっと上がることが想定される、そういうことでしょうか。
【坂田教授】
次の年がもっと上がるかどうかは分かりませんけれど、こういうふうにエクスポネンシャルに伸びてきているということは分かります。
ちなみに、ただ、過去の例を見ますと、例外はCOVID-19。COVID-19は2020年から22年に非常に高い成長をしましたので、今回の2024のトップランキングには入ってないんですね。
一方で、先ほど申し上げた43%、1年で伸びたというか、10年のうち43%のシェアがあるLLMに関しては、今年の私ども参加したトップカンファレンスでも、投稿数や採択数が1年前の何倍にもなっていますので、引き続き伸び続けているという、そういう感じです。COVIDはちょっと例外というふうに御理解いただければと思います。
【中野委員】
もう一つよろしいですか。アメリカとの比較で、中国と日本が遅れ気味というのはなかなかショッキングなことなのですが、これで中国と日本を比較したものはあるのでしょうか。
【坂田教授】
中国と日本を比較した分析は論文のサプルメント情報に入れています。中国と日本には結構差があります。遅れているか遅れてないかというのは別問題としても、トピックに結構差があることは事実です。
【中野委員】
トピックが一致しないというような感じなのですか。
【坂田教授】
そうですね。中国は実はこの中では特殊でして、先ほど申し上げたように成長領域における自国機関発の論文ウエイトが非常に高い。ところが、トピックの先進度を取ってみると、アメリカには遅れている。1つの理由は、中国は、先進していない領域にも多数の論文を出していることです。トピックの先進性は全領域の平均で捉えていますので、それらが平均を引き下げていると考えられます。それから先ほどもこれもちょっと触れましたけれども、中国が圧倒的に強い領域で、ほかの国の研究者がそれを余り追いかけていない領域が結構あります。中国のシェアがずっと高い領域があるということです。そうした領域での研究は、我々の指標では、中国のトピックの先進性に貢献しませんし、また、日本とのトピックの差異を生み出すことになります。
【中野委員】
分かりました。ありがとうございます。
【大竹部会長】
それでは、永田委員、お願いいたします。
【永田委員】
ありがとうございます。今見せていただいている33ページの図、特に大変興味深く拝見しました。
成長領域で高いシェアを取るには必要なことが2つあると思っていまして、まず1つは、先進的な領域を生み出す力が高いということと、それから、その領域を外に発信する力が強い。これが両方育っているのがアメリカであるということなんだろうと思います。
ただ、これと同じような資料を別な機会にも拝見したことがありまして、それによると、2000年には日本とアメリカの時期的な差、結構山が一致していた時代というのもたしか僕の記憶ではあったはずなんですね。日本の国際性というのは、近年急に落ちたわけではなくて、2000年も今もそんなに変わらないんだろうと思うんですけど、その中においても山がそれほどずれてなかったというのは、日本から生み出された先進的な領域というのが数が結構あったんじゃないかなと思うんですけど、その辺はどうなんでしょうか。僕の理解は正しいですか。
【坂田教授】
おっしゃるとおりです。本日の資料の後ろのほうに文部科学省さんのほうで私どもの図をもう一つ別に引用いただいているのがあるんですが、トピックの先進性の国別のものを時系列で見たものもございまして、日本の先進性の度合いは、今おっしゃったように、残念ながら、今、青色、水色のラインですけれど、時系列でみると下がってきているんですね。昔は日本のトピックの先進性は高く、また、世界の成長領域における論文シェア、アメリカよりは低いですけど、1位の領域もあるし、2位、3位の領域も結構あったということなんですね。
したがって、過去において、日本は世界のトップを経験していないというわけではなくて、また日本の学術社会に本質的な問題が何かあるというのは言い過ぎではないかと私は思います。再興に向けた努力をする価値があると考えます。
一方で、先ほどの国際性について見ますと、この間、世界的にみると、国際的な論文の共著比率とか、コミュニティーにおける国際的な連携というのはかなり上昇しておりまして、その流れの中で日本の学術社会がそれについていけなかったということは反省要素としてあるのではないかなと思います。
そういう意味で、私の研究室では、所属する博士課程学生や若いポスドクには、海外のトップ拠点に必ず滞在させるということを徹底しております。
【永田委員】
ありがとうございます。つまり、国際的な伝播能力を高めるということと、それから新たな領域をつくり出すという、両方、車の両輪で必要だという理解でよろしいですか。
【坂田教授】
そのとおりです。新たな領域を研究者は1人でつくり出しているというわけではなくて、トップ研究者との学術的なコミュニケーションの中で創発されているという要素がかなりあるんじゃないかと私は思っております。
【永田委員】
ありがとうございます。
【大竹部会長】
国際頭脳循環というのは1つのキーワードかもしれませんね。ありがとうございます。
茂呂委員、お願いします。
【茂呂委員】
データを拝見して日本が少し違う動きをいつもしているのの1つとしては、島国で人が動きにくいというのがあるのかなと、留学も減っていますし。一方で、今、アメリカが政治的に大きく変わって、この数か月の間に、アメリカとか中国からの日本への留学者がすごく増えているというのを多くの研究者が感じているんじゃないかなと思います。今後の日本をどうするかということを考えるときに、アメリカに集中していた研究者が他国に流れている状況を把握することも重要だと思います。ヨーロッパも中国など多くのアジアの国もアメリカに留学できないからという理由で日本に研究者が来るようになったという状況を、先生方や国がどう思っているのかなとデータを拝見していて思ったのですが、何か情報がありましたら共有していただけますでしょうか。
【坂田教授】
まず留学生なんですが、私が所属する専攻では、20年近く前からアメリカの大学院入試と同じ形態、同じ時期のグローバル入試を実施しています。そこでは、国際的なニーズの高まりを実感しています。今、我々が行動を起こすタイミングではないかと考えます。
次に、先ほどの人脈を通じた関心やトピックの伝播がトピックの先進性においてかなり重要だということを考えますと、トピックで先進し、人脈を持っているアメリカの研究者がかなりほかの国に移動しますと、この世界にもインパクトをもたらすんじゃないかと私は思います。
ただ、オックスフォードとケンブリッジは大学はトピック本当に近いんですよね。同じ山の形をしていまして、コミュニケーションが非常に密であることがわかります。地理的な近接性の影響をあることが伺えます。場所、大学や組織を移動しても、当面は人的な交流は維持されると思うんですが、何年かそれが続くとやっぱり人的な関係の変化が生じてくるんじゃないかなと想像しています。
以上です。
【大竹部会長】
ありがとうございます。議論の尽きないところかと思いますけれども、お時間を迎えてしまいましたので、ここまでとさせていただきます。成長トップ領域にまた1位、2位として日本が復活できるように先生にぜひお力をお貸しいただきたいというか、我々自身も頑張って再構築していくということが求められています。この部会というのはそういう部会だと思いますし、そのために尽力していきたいと思います。先生ありがとうございました。
【坂田教授】
お邪魔しました。
【大竹部会長】
次に先生をお迎えするときには1位、2位に入っているといいですね。ありがとうございます。
それでは、次のトピックに移らせていただきます。創発的研究支援事業についてということで、まずは事務局より御説明をいただいてよろしいでしょうか。
【大鷲企画室長】
事務局でございます。資料といたしましては、資料3、39ページからになるものでございます。創発事業については次のページにございますけれども、原則7年、年間700万の研究費を支援、最長10年間の安定した研究資金を支援するとともに、研究に専念できる環境を一体的に提供することによりまして、破壊的イノベーションにつながる成果の創出というものを行っていくというところでございます。
対象としては、応募要件、左にございますけれども、博士号取得後15年以内の独立前後の研究者となっているところでございます。
次のページ、予算措置状況とございますけれども、先日、先週7月22日火曜日に第6回目の公募、第6期生の公募を行ったところでございますけれども、これまで、下半分ございますけれども、補正予算で措置してきたところでございますが、矢印の下のところ、今後の公募に向けまして本事業の継続に必要な予算の確保が課題となっているところでございます。
あわせまして、この事業、基金の事業となってございまして、行政改革との関係においても、成果の検証を踏まえて次の措置を検討することが求められているというものでございます。
本日は、この事業の新規課題の公募採択状況、それから、これまでの成果を紹介しつつ、先生方に今後のこの事業についての御意見いただければというところでございます。
ページめくりまして、その次もめくって、通し番号でいきますと44ページ、こちらが先日、まさに先週25日に公表された第5期の採択者の決定状況でございます。上から2つ目、2,262件の応募があったうち246件を採択してございまして、採択率は10.9%となっているものでございますけれども、30代後半を中心に独立前後の助教、准教授クラスの研究者の方々を多く採択している。
右下に日本の図がございますけれども、白抜き部分が創発採択者がいらっしゃらないところを表しているものでございますけれども、これまで45都道府県の研究者を採択しているという状況になっているものでございます。
その次のページには今回の採択者の所属機関別の内訳を示させていただいているというところでございます。
続いてのページにおきまして、採択者の属性というところでございます。今回の応募ございますけれども、左上、応募採択数、採択率、凸凹はございますものの、平均しますと、応募件数は約2,500件、採択件数は約250件というところでございます。採択率といたしましては約10%程度、右のほうへ行きますと、平均年齢といたしましては38歳前後というところとなってございまして、また左下、女性研究者の割合につきましては、前回については少し割合が下がったものの今回は盛り返しているという状況となっているものでございます。
その次のページでございますけれども、海外の研究機関からの本事業への参画というところで、これまでも日本の研究機関で研究をする者であれば、申請時点で海外の研究機関に所属する研究者であっても、国籍を問わず応募することが可能となっていたところでございます。これまで海外機関に在籍していた研究者12名を実際に採択しているというところでございます。このため、本事業につきましては、これも先月、内閣府において取りまとめられた「J-RISE Initiative」の関連施策としても位置づけられているところとなっているものでございます。
今期の公募につきましては、次のページでございますけれども、7月22日から公募を開始し、今後審査等を進めていくというところでございますけれども、左下ございますとおり、採択件数200件~300件程度、海外からの研究者も含めましてこの程度を予定しているというところでございます。
続きまして、これまでの成果についてでございます。創発研究者の論文実績でございます。トップ10%の論文割合といたしましては、約20%ということで非常に高い割合を示しているものでございます。
また、次のページでございますけれども、創発研究者同士の共同研究ということで、いわゆる破壊的イノベーションにつきましては、予期せぬところから生じるということもございますので、この事業につきましても、創発研究者同士の融合を促し、想定外の研究成果が生まれる可能性を向上させているというところでございます。
(1)のところございますけれども、創発研究者の共同研究等の実施者数については60%を占めているところでございますし、「融合の場」、「創発の場」というものを設けて促しているところでございますけれども、創発研究者同士の共同研究のきっかけになっているというところでございます。
その次のページにつきましては、研究資金の支援とともに研究環境の整備も行っているというところでございますけれども、主な実績、真ん中ございますけれども、創発研究者が昇進・昇格を経験している方々が約49%、それから、新たに定年制、いわゆる任期なしのポストを獲得している方が約39%、そして研究活動の時間割合は平均61%となっているものでございます。
研究活動の時間割合、参考、小さくございますけれども、一般的な准教授の方々の割合は32.6%ということを考えますと、高い割合で研究時間の確保を行っているというところでございます。
その次のページにつきましては、昨年度、令和6年度に研究環境整備支援を行った機関でございますけれども、昨年度、ステージゲート審査を受けた創発研究者が所属する機関、59機関に対して支援を行ったというところでございます。各機関におきましては、コストの支援、スペースの確保に向けた支援、研究時間の確保に向けた支援等々取り組んでいただいていた状況となってございます。その割合については、右下に表させていただいているというところでございます。
次のページにつきましては、好事例といたしまして、名古屋大学、用意させていただいてございますけれども、こちら、全学的な支援、それから所属部局からの支援を行うとともに、PIとしての独立性の担保や研究エフォートの確保を促すため、創発研究者全員を高等研究院への兼務としているなど、研究環境整備にも力を入れていただいているというところでございます。
また、次のページには、高知工科大学の例でございますけれども、こちらも研究者が自由に展開できる場として創発的研究センターを設置するなど、研究者が研究に専念できる組織体制を構築していただいているということで挙げさせていただいているものでございます。
最後に、NISTEP、科学技術・学術政策研究所における定点調査におきましては、テーマ設定の自由さ、それから長期間の支援について肯定的な御意見をいただいているというところでございますし、また、事業内交流、共同研究につきましては、期待といたしまして、下から1つ目のところでございますけれども、他の研究領域とのコラボ研究へ発展した場合における予算措置等への期待も言われているというところでございます。
次のページにつきましては、総じて創発事業の継続を望む声ということで幾つか挙げさせていただいているものでございます。
以下、参考資料といたしまして、基金シートにおける点検・評価結果がございますけれども、その次のページ、基金全体の点検見直しの実施についてということで、冒頭お話しさせていただきましたけれども、3ポツのところ、基金への新たな予算措置は3年程度として、成果目標の達成状況を見て、次の措置を検討するということで、本日、御意見もいただきながら次の検討を措置していければというところでございます。
その次のページには当時の改革担当大臣の発言も用意してございます。その中においても触れられているものでございますけれども、予算措置は最大でも3年程度というところについては、今後の予算要求におきましても課題と認識させていただいているものでございます。
創発事業について御意見いただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
【大竹部会長】
御説明いただきまして、ありがとうございました。
これから御質問を受けようと思いますが、その前に、坂下審議官がいらっしゃったので、一言いただければと思います。よろしくお願いします。
【坂下審議官】
7月15日に大臣官房審議官として振興局と高等教育政策との連携の担当として着任をいたしました。これからまたお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。
【大竹部会長】
ありがとうございます。今、創発について説明があって、トップ10%論文21.1%ってなかなかすばらしい数字も出ているということで、こういった状況であるということでの御議論というか、御意見をいただければと思っております。
もしあれば、いかがでしょうか。
中井委員、お願いします。
【中井委員】
創発がうまくいっているということで非常に良いなと思いました。一方で、かなりピンポイントのコメントなのですが、教育や研究業務の軽減による研究時間の確保ができたという、この点です。よく所属大学の教授会などで議論するわけですけれど、我々教授陣のするべき、行うべきこういう教育とか管理業務というのは非常に多くあります。今回の創発に選ばれた方、こういう方々が一応軽減されるということで、ローカルに見ればこれは非常によかったなと見えるわけですけれど、実際そのお釣りを、結局その他の教員がやらないといけないというような事態になっているのじゃないかなと思います。
だから、特権階級のようになっている感じもしなくはない。若手だからそれで良いのだといって、我々、少し年齢の上の者がそのことをやるわけですけれど、やはりこういうことに関してはもう少し文科省全体として、本当に研究時間を皆が確保できるような、創発はその最初だと思いますけれど、そういう議論に発展させるべきじゃないかなと個人的には思いました。
ちょっと創発から広がったコメントです。
【大竹部会長】
重要な御指摘だと思いますね、確かに。大学あるいは研究組織全体としてどうするかというのは、これをグッドプラクティスとして広げていくというのが1つの案かもしれませんね。先生ありがとうございます。
【中野委員】
創発には、実は川村パネルのADとして最初から関わらせていただいております。非常にうまくいっていると感じています。まず、非常に優秀な人を採用できていることがあり、そのおかげもあるのでしょうが、大学におけるブランドが確立してきたと感じます。統計にも現れていますが、採択時に任期つきであった方も、任期なしへどんどん移っていらっしゃいます。
融合的研究というか、採択された人同士の共同研究が非常に活発だったというのがあります。実際、具体的にみんなが集まったときに、そこで学変Bの話がいきなり出てくることが非常に多くありました。創発もすばらしいのですが、目標とする科研費の種目があるということもうまく働いているのではないと感じます。もちろん学変Bは採択率が非常に低いので、全員が学変Bで共同研究しているわけではありません。しかし、同じ目標に向かってみんなで話し合うことが新しい融合研究を生んでいるのではないかと感じています。
以上です。
【大竹部会長】
そうした共創の場になっているというのはいいことですよね。
【中野委員】
はい。
【大竹部会長】
華山委員、お願いします。
【華山委員】
御説明ありがとうございます。創発運営委員を担当している立場として、次の見直し案について質問がございます。基金への新たな予算措置が3年程度といった形ですが、今までは7年とか10年とか長期でやっていたわけですけれど、3年といった枠組みをどのように用いていくのでしょうか。具体的にはステージゲートの前が3年間、ステージゲートの後が4年間という形ですので、この3年間の枠組みという中で、両方ともを賄っていくといったことで考えておられるのでしょうか。
【大鷲企画室長】
ありがとうございます。先生御指摘のとおり、予算措置は3年程度というところではございますけども、やはりこの事業、長期にわたって安定的にというところが肝となっていると思いますので、いかに7年を確保しながら、予算措置、3年程度の中でどう運用していくかということも含めて、予算要求の中で我々としては検討していきたいと考えているものでございます。そこはまた引き続き我々としても肝に銘じてやっていきたいと思います。
【大竹部会長】
ありがとうございます。オンラインで加藤委員、茂呂委員から手が挙がっているので、加藤委員からお願いいたします。
【加藤委員】
加藤です。御説明ありがとうございます。私も若手研究者が長期にわたって研究が可能な制度で非常にいい制度だと思いますが、1つ質問があります。ステージゲートに関して、3年が第1フェーズで、その後第2フェーズに入りますが、ステージゲートをクリアできる割合というのはどのくらいいらっしゃるのかなと思いまして、ちょっと質問させていただきます。
【大鷲企画室長】
ありがとうございます。事務局でございますけれども、現在、ステージゲートを行っている中におきましては、進捗状況について評価していただいた上で、ほぼほぼ9割以上は通っていると。そこは破壊的イノベーションにつながり得る期待というものは大きいものと受け止めさせていただいているものでございます。
【加藤委員】
分かりました。どうもありがとうございました。
【大竹部会長】
中野委員ありますか。
【中野委員】
そうですね。ほぼ全員が次のステージに進んでいます。丁寧なメンタリングをADが行っているので、それも効果を発揮しているのではないかと思います。以上です。
【大竹部会長】
ありがとうございます。そうしましたら茂呂委員、お願いします。
【茂呂委員】
ありがとうございます。創発の本当にすばらしいなと思っていることの1つが、コロナで若手人たちの交流の機会がなくなってしまい、みんなが出不精になってしまったというか、学会等にも行かなくなっている中で、若手だけで集まる機会ができたというのがすばらしいことかなと思います。
一方で、この創発、実は私のラボ、4名採択していただいているんですけれど、何か偏りも感じていて、私が言うのも何なんですが、採択された大学等を見ると、採択されるべき大学が採択されているような気もしてしまいまして、もう少し若手は全国区でいろんな大学に広がっているので、大きなラボの人が選ばれる方式というよりも、もう少し日本全体の若手を持ち上げられるような方式をつくってあげられるということも大事なんじゃないかなと感じている次第です。
以上です。
【大竹部会長】
ありがとうございます。事務局から日本の地図の中で空白があるという、そういう御指摘なのかなということかなあと思います。
【大鷲企画室長】
事務局でございます。御指摘いただいてありがとうございます。日本の地図も出させていただいているものでございますけれども、現在、45都道府県、これをどんどん広げていくというところはあろうかと思いますが、一方で、やはりトップリサーチャーを育成するという観点もあろうかと思いますので、その価値というのは下げないといいますか、そこはきっちりと審査でよく見ていくということも必要だと思っているものでございます。創発事業、また引き続き御意見も賜りながら進めていきたいと思います。ありがとうございます。
【大竹部会長】
ありがとうございました。そうしましたら、中村委員まで、そこまでとさせていただきます。お願いします。
【中村委員】
今日の前半の話と結びつけるために、ぜひ、非常にうまくいっているという事業の成功例の具体的な解析を進めていただきたいと思っていまして、例えばトップ10%論文が、20%超える数字という中で、具体的に何が要因だったか。例えばさっきのお話のように、世界のトップラボとの共著の論文が多いというのか、それとも内容的に本当に真にクリエーティブであって、新しい領域をつくって、でもそれだけでは多分足りなくて、かつ国際的な発信力がどのように成功したのか。そういったぜひ具体例で解析していただくと、それは日本から出たものなので、やっぱりそれはグッドプラクティスになりやすいと思うので、その辺、もし今までされていたら教えていただきたいですし、これからであればぜひお願いしたいと思います。
【大鷲企画室長】
ありがとうございます。研究成果についてはプレス発表等々でもさせていただいている中で、先ほど先生から御指摘いただいトップ10%論文のそういう精緻な分析というものは今後ということになりますので、そこは引き続き検討してまいりたいと思います。ありがとうございます。
【大竹部会長】
ありがとうございます。確かにホワイを考えるというのは大事かもしれませんね。次につながると思います。
【中村委員】
研究時間があったとか、そういうことはあると思うんですけど、それだけではないはずなので。
【大竹部会長】
今日、聴講なさっている方もたくさんいらっしゃって、幾つかの話題がありましたけど、これ多分関連しているんですよね。ここをやっぱりどうしてだろうということも考えて次の施策に生かしていくというのは大事かなと私自身も思いました。ありがとうございます。
それでは、今お話しいただきました創発的研究支援事業につきましては順調に進捗しているということを我々としては認識したということで、引き続きまして、本事業を通じて若手研究者の育成を図っていただきたいということでまとめたいと思います。
誠にありがとうございます。
もう一つの議題に移らせていただきます。我が国における新興・分野融合的研究の振興についてでございます。第1回の研究費部会で設置しました作業部会におきまして本議題について議論を進めていただいております。
まずは検討事項の方向性について本日は御報告いただくということで、その後御議論いただきたいと思います。
事務局から御報告よろしくお願いします。
【大鷲企画室長】
事務局でございます。資料といたしまして資料4-1、通し番号でいきますと61ページからになるものでございます。
まず、今後御報告をさせていただくに当たりまして、前回の研究費部会における主な意見の紹介、それから、先月取りまとめられた政府提言等の御紹介をさせていただくというものでございます。
まず、62ページでございますけれども、前回の主な意見といたしまして、前回資料といたしましても、後ほど出てきますが、小規模で移り変わりが活発な新興領域を表すスモールアイランド型領域、こちらの伸びが少ないということをお示しさせていただいたものでございますけれども、こちらについての御意見を幾つかいただいているものでございまして、この要因といたしましては、新しいことへの挑戦が少ないということがあるのではないか。それから、若手で多様な挑戦をしている人を支援することで科学の発展に貢献できる。
それから2つ目のポツでも、スモールアイランド型領域の研究がないと今後の研究の発展が妨げられるというような御指摘をいただいたものでございます。
それから、そもそも挑戦に関しましても御意見をいただいたところでございまして、今の分野に収まらないことにチャレンジして新しいトレンド、潮流をつくることというものが重要であろうということ。
それから、その次のポツにおきましては、やはり挑戦的なことをするには腰を据えてやってこそできるものだと。萌芽が採択されて、開拓で腰を据えてできるという位置づけにするということも1つの方法といった御指摘とか、1つ飛ばしまして、萌芽から開拓、それから創発から学変のような接続・ステップアップを強化するということも有効ではないかという御指摘をいただいたものでございます。
採択率の向上に関しましても、萌芽には面白い提案が多い印象があり、向上が必要といった御意見の一方で、挑戦する人が少なそうということだけで採択率を上げてしまうと意義が損なわれかねないという御指摘もいただいたものでございます。
それから、最後のポツにつきましては、データにも関連するものでございますが、基盤研究で自分の研究をやってきた結果として派生した部分を発掘する形で萌芽が使われていることが多いのではないかといった御指摘、それから、萌芽は基盤を持っている人がもう一つ研究費が欲しいということで応募するというイメージがあるというお話をいただいてございますので、後ほどデータを用意させてございますので、紹介させていただければと思います。
このほか挑戦的研究の属性に関するデータですとか、挑戦的研究終了後の応募先についてのデータについて指摘もございましたので、併せて準備させていただいているものでございます。後ほど説明させていただきます。
次のページについては、審査でございます。審査に関してでございますが、やはり審査委員の理解が重要ということで、審査委員内での挑戦性の共通認識・共通理解を持つことが必要といった御指摘。
それから、挑戦性の認識は、分野によってまちまちではあるものの、一定期間運営してきていることもございますので、制度側から何か設定するものがあったほうがいいという御指摘もいただいたものでございます。
その他全般といたしまして、独立PIになるステップへの支援を含む若手研究者支援はまだまだ不十分ではないかといった御指摘、それから、科研費トータルとして研究者のライフステージに応じたプランを設計できるように考慮するとよいといった御指摘もいただいたものでございます。
次のページにつきましては、こちらは宇南山先生からの御指摘につきまして、前回お答えできなかったということで用意をさせていただいているものでございますけれども、今までの議論の中で文理の区別ということがどういうふうに扱われてきているかというところでございます。
今期、13期でございますけれども、前期のその前、第11期におきまして基盤研究の助成の在り方について議論がなされる中で、人社関連を表す大区分Aを含め、各区分の状況について議論されていたところでございます。
特に検討の論点といたしましては、次のページございますけれども、応募件数が多く増えていた、当時増えている、現在もそうでございますが、基盤Cの在り方について議論がなされていたというところでございます。
その際の御意見といたしましては、また1ページ戻りますけれども、人社系の研究者にとって主な資金獲得源であり、これがないと研究が進められないといった御意見。
それから、人社系においても競争的環境下で行うということ自体は分野の違いはないというところ、中堅研究者にとっても極めて重要で有益な位置づけであり、基盤的経費に代替するものではないといった御意見が出ていたものでございます。
本日につきましては、この議論の意見等を紹介するにとどめたいと思いますけれども、今期におきましても基盤研究の在り方について議論する予定となってございますので、その中で議論していければと考えているものでございます。
その次でございますけれども、66ページからは政策文書について用意をさせていただいているものでございます。先月、6月に閣議決定されたもの、一番上につきましては、「経済財政運営と改革の基本方針2025」ということでいわゆる骨太の方針でございます。
この中におきましては、科研費等の競争的研究費の充実を通じた研究力の一層の強化に取り組むべく支援の在り方を検討するということが盛り込まれているというものでございます。
その下、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」につきましても、若手研究者を中心とした挑戦的・国際的・創発的研究への支援の積極的な拡充や国際共同研究支援の拡充に取り組むということも盛り込まれているというものでございます。
次のページにおきましては、「統合イノベーション戦略2025」でございますけれども、下半分、次期基本計画に向けた取組の推進という中におきましても、既存の学問体系にとらわれない研究テーマを後押しするため、人件費、物価の上昇等にも留意しつつ、科研費等の競争的研究費を通じた研究力の一層の強化等々、支援の在り方を検討していくとされているものでございます。
作業部会につきましては、これらの政策提言等も踏まえながら御議論をさせていただいたというところでございます。
作業部会からの報告につきましては、次の資料4-2からでございますけれども、まず最初に、前回、研究費部会で御指摘のあった属性等のデータについての御報告をさせていただければというところでございますけれども、通し番号85ページでございます。85ページから挑戦的研究の属性のデータを用意させていただいているというところでございますけれども、まず年齢別の応募採択状況となってございます。こちら例えば応募を見ていただきますと、平均年齢50歳を超えている状況でございまして、40歳以下の割合を見てみますと、萌芽につきましては、割合でいきますと13.7%、それから開拓につきましては、同じく40歳以下の研究者の応募の割合は15.3%という状況になっているものでございます。
続きまして、大区分別の応募採択状況、こちらは、審査区分は中区分ではございますけれども、便宜的に大区分別に整理をさせていただいているものでございますが、区分AとIからの応募等々が多くなっているというところでございます。
続きまして、次のページ、職種別の応募採択状況を見ますと、教授の割合が高くなっているというところでございまして、応募の割合を見ますと、教授クラスで萌芽が43.3%、それから開拓が47.8%というところでございます。
続きまして、機関種別につきまして見ますと、国立大学からが最も多くなっているものでございまして、応募を見てみますと、萌芽におきましては国立大学が59.9%、開拓が60.4%となっているというところでございます。
次のページにつきましては、挑戦的研究を応募するに当たって、重複応募状況でございます。まず開拓でございますけれども、新規・新規で応募する状況が、重複応募の状況が左側でございますけれども、やはり基盤研究S、A、Bと重複応募しているケースが多い。
それから、継続課題との重複においても同様に基盤研究S、A、Bからの応募が多いというところでございます。
その次のページについては、萌芽の重複応募状況を用意させていただいてございますが、同様に基盤研究S、A、Bとの重複応募が多い状況になっているものでございまして、先ほどの教授の割合が高い、若手の応募の割合が若干比較的低いというところについては、これらの重複応募状況も影響している可能性があると考えられるものでございます。
次の学変Bについては、参考に用意をさせていただいたものでございますので、その次のページ、挑戦的研究の終了時に次に応募した研究種目を見てみますと、右側に萌芽を用意してございますが、萌芽終了後につきましては、基盤Bもしくは引き続き萌芽への応募が多く、開拓への応募は少ないという状況になっている。
それから、左側の開拓終了後の応募先につきましては、比較的基盤A、それから引き続き開拓への応募が多く、学変Bへの応募は少ないという状況になっているものでございます。
これらのデータも踏まえながら作業部会で御議論していただいたというところでございますけれども、またページにつきましては、戻りまして、69ページからでございます。69ページに戻っていただければというところでございますが、作業部会につきましては、下半分ございますとおり、3回、御議論をしていただいたと。精力的に御議論していただいたというところでございますけれども、次のページにつきましては、前回の振り返りもございますが、スモールアイランド型領域、小規模で入れ替わりが活発な新興領域を表すスモールアイランド型領域、グラフでいきますと青色のところでございますけれども、こちら、日本につきましては、諸外国に比べて件数、割合ともに低いというような状況になっているというものでございます。
そして、次のページにつきましては、前回お示しさせていただいた問題意識でございますけれども、前期の研究費部会において今後の検討事項として整理された学術変革研究種目群の検証を行う中で、挑戦的研究につきまして、長期間にわたる安定的な資金の提供、それから学際性に配慮した審査などの機能を強化する余地はないかといったこと、それから、下については、採択率の向上を図ることで研究者による挑戦をより強力に後押しできないかという問題意識を整理いたしまして、その次のページ、検討課題について(1)から(4)を整理をしていたものでございます。
この検討課題に沿って今回報告をまとめさせていただいているというものでございますけれども、次のページには、三角形のいつも見られるものではございますけれども、いわゆる学術変革研究種目群の検証というところでは、ピンク色の部分でございます。新規領域の開拓を支援するところではございますけれども、下半分の個人の研究におきまして、挑戦的研究では、採択率が同規模の他種目より低いというところと、それから、萌芽から開拓への接続・連携が弱いというところもあるところでございますし、また、挑戦的研究から学変への連携・接続も弱いというような現状認識があるところでございます。
その上で、検討結果といたしまして、次のページからでございますけれども、冒頭からではございますが、特に若手研究者を対象に新興・融合領域へのチャレンジを促進するなどして、若手・新領域支援の一体改革を推進していこうというところでございます。創発的研究支援事業との役割分担を考慮しつつ、学術変革研究種目群の拡充・改善を図っていければというところで整理をしてございます。
(1)の長期間にわたる安定的な資金の提供につきましては、萌芽から開拓への接続強化についての検討がなされたところでございます。
(2)の学際性に配慮した審査に関しましては、挑戦性そのものについてのクリアなメッセージを発信していこうというところ、それから、(3)の採択率の向上につきましては、挑戦的研究における若手支援優先枠の創設等を通じた採択率の向上を図るとともに、挑戦的研究への応募を促進するため、重複応募制限の部分的緩和について検討してはどうかというところでございます。
(4)につきましては、学変Bへの接続強化ということの検討を進めていくというところが整理をされたものでございます。
より具体的には次のページからでございますけれども、長期間にわたる安定的な資金の提供については、新領域の開拓につなげるためには、2つ目の丸のところ、萌芽で出た芽を開拓により発展させることが十分に期待されるということもございますので、3つ目の丸のところで、萌芽から開拓へとステップアップする道を開くなど接続を強化していってはどうか。
4つ目の丸のところで、具体的にはというところで、開拓への応募に当たりまして、萌芽の成果の記載を求めるとともに、その発展性を審査の観点に追加するということが考えられないかというところでございます。
特に若手研究者が学術変革にチャレンジできる機会を拡大するため、若手研究者を対象に萌芽から開拓への最終年度前年度応募を認めるということも検討されたところでございます。
その次のページでございますけれども、学際性に配慮した審査につきましては、審査の検討に当たりやはりまずは挑戦性についてより明確にし、応募者及び審査委員に十分理解してもらうことが必要をというところがございまして、これまでJSPSに蓄積された議論の結果を踏まえて、複数の観点の例を示すなどを行って、応募者、審査委員に対してより丁寧に解説・周知することが考えられないかというところでございます。
あわせて、審査負担の軽減から開拓についても2段階書面審査を採用することも考えられ、その上で、過去に導入していた複数審査区分の選択の審査方法について一定のニーズがあったことを踏まえ、複数の審査区分による審査の導入ということも考えられるのではないかというところで整理をしているものでございます。
なお、この複数の審査区分による審査の導入に関しましては、導入の可否も含めて、具体的な検討についてはJSPSに依頼するとさせていただいているものでございます。
その次のページ、採択率の向上についてでございます。1つ目の丸のところ、萌芽については12%程度になっているというところでございますけれども、安定的に研究費を確保したい研究者は、より採択率が高い基盤研究Cに応募するということが考えられまして、萌芽の応募件数については、現在、減少傾向にあるというところがございます。
2つ目の丸では、また、創発の採択率も10%となっているところでございますので、若手研究者による挑戦的かつ優れた研究アイデアが埋もれないような仕組みが必要ではないかということも踏まえまして、3つ目の丸のところ、キャリアの早期から新興・融合領域につながり得る研究に取り組む研究者を重点的に支援する観点から、萌芽において若手支援優先枠を設けることとするとされているものでございます。この際、若手研究者による積極的な応募を促すために、若手研究者に限定して、挑戦的研究(萌芽)と基盤研究Cの間の重複応募制限を緩和するということも考えられるというところでございます。
この重複応募の制限に関しましては、審査の負担の増加につながることから、今後、JSPSとも連携しつつ検討が必要とさせていただいているものでございますけれども、対象とする若手研究者につきましては、若手研究の博士取得後8年未満ですとか、創発との接続強化ということも考えつつ、創発の博士課程取得後15年以内というものを踏まえて設定する予定というところでございます。
その次、(4)のところでございますけれども、まず学変Bでございますが、こちら、新領域を開拓するためには、若手研究者による挑戦的研究や創発等で生まれた新興・融合領域の芽をさらに大きく発展・成長させることが必要であるというところがございまして、新領域開拓の入り口でございます学術変革領域研究Bにおきまして、挑戦的研究や創発からの発展性を審査の観点に追加するということも考えられるのではないかとされているものでございます。
また、これまでも議論されているところでございますけれども、創発から学変Bへの接続ということを考えた際に、創発の採択時の年齢等を踏まえ、現在、年齢制限として付している45歳以下を見直すということも考えられるのではないかというところでございます。
また最後、若手研究者の研究初期の段階である若手研究におきましても、複数の採択審査区分を選択可能とすることも一案ではないかということで、新興・融合領域への挑戦を後押ししてはどうかというところも議論されたものでございます。
次のページには一連の接続強化というものを整理させていただいたものでございますが、先ほどからお話出ているように、創発では融合を進めているというところもございますので、学変Bとの接続については、一定程度親和性が高いというところで考えているものでございますし、創発については、2,500件中250件の採択となっているものがございますので、若手のアイデアを埋もれないように科研費においてもチャレンジする機会を設けていくということで、接続強化も含めてやっていくというような整理とさせていただいているものでございます。
長々、恐縮でございますけれども、最後、今後の方向性につきましては、本日の部会におきまして、対応方針、若手・新領域支援の一体改革を進めてよいかということ、また今年度中の検討課題といたしまして、萌芽から開拓への接続強化ですとか、重複応募の制限緩和というものを検討していきたい。
それから3つ目につきましては、学変Bへの接続強化の方法というものもやっていこうというものでございます。
そして今期中、第13期中の本部会におきましては、特に2つ目のポツ、若手研究者がPIになった後も継続的に研究成果を創出するための支援の在り方、これについてもしっかりと検討していきたいと整理をしているものでございます。
そして最後、一番下にはJSPSへの具体的な検討依頼事項といたしまして、審査に直接関係する事項、接続方法における調書の在り方ですとか審査の観点、それから重複応募の設定範囲等々について御検討いただければというところで整理をさせていただいたところでございます。
長々恐縮でございますけれども、説明は以上でございます。
【大竹部会長】
ありがとうございました。作業部会の検討がずんずん進んでいるということで、多くの話題が含まれていたかと思います。短期的な対応というのと、最後80ページでまとめていただきましたけれども、中長期的にどうやって検討していくのかという、両方も含まれているかなと思います。
本日はこれで決定というよりは、こういった方向でいいかどうかということで御議論をいただいて、これは継続的に議論を進めていきますので、前向きに捉えていただいて、御議論いただければと思っております。
また挙手でお願いできればと思いますので、よろしくお願いいたします。
鷹野委員から。
【鷹野委員】
ありがとうございます。大変たくさんのことを取りまとめていただいて本当にありがとうございます。創発の成果を活用して今後進めていくという大きな方針については、大変によいことだなと思いました。
創発の最後のところで発言しそびれたことも含めて意見を述べさせていただきたいのですけども、47ページで、海外の研究機関から事業へ参画ということで、海外機関に在籍していた方も採択されているということはとてもすばらしいなと思いました。例えば国籍も含めて海外の機関ということですが、これが日本人の方なのか、外国籍の方なのか。どちらでもすばらしいことだと思うのですけれども、先ほどの坂田先生の御報告にもありましたように、国際的な状況を踏まえて、国際的にトップレベルの研究を進めるに当たっては、外国での経験を持った方に日本に戻ってきていただいて、さらに研究を発展させていただく。そして周りの方を巻き込んで、国際的トップレベルの研究を推進する中心になっていただくということがすごく重要だと思いますので、創発でのこういった海外の機関から戻った方に活躍いただけるという枠組みを基盤研究の方にも何らかの形で取り込んでいくということが重要なのかなと思いました。
以上でございます。
【大鷲企画室長】
ありがとうございます。先生御指摘のとおり、国際情勢を踏まえながら、やはり日本の研究の現場が活発になるということが一番だと思っていますので、優秀な外国の方が当然いらっしゃれば、創発等々も含めて、しっかりと支援してまいりたいと考えてございます。
【鷹野委員】
ちなみに先ほどの12名の方は日本人の方ですか、それとも外国籍の方ですか。
【大鷲企画室長】
現状は日本人の方が大半となっています。
【鷹野委員】
分かりました。
【華山委員】
外国人の方も二、三名います。もっと広げて採用したいと思います。
【大竹部会長】
華山委員、ありがとうございます。
それでは、中村委員から。
【中村委員】
今の御意見とも関係するんですけれども、こういうスモールアイランド型とか、そういったところで形になっていくには、独創的な研究をするだけでは、それは必要なんだけれど、十分条件にはなってなくて、十分条件とするにはやはり国際発信力が重要になってくると思うんですね。
そういった意味で、改革案の大きな科研費の三角形の中で、いまだに国際事業が三角形の外にぽこんと外れてしまっているというのは、これは私前々から科研費の事業の全体として見たときのアキレス腱だと思っていまして、これをもっと言うと、要するにJSPS扱いの部分とそれから文科省の扱いの部分で分かれているわけですよね。これなかなか一緒にならない。例えば、学振の特別研究員にしても、海外特別研究員というのがまた別にあって、でも一方で普通の研究員の中でも、1年半だか海外に行くことができると。それで別で募集をするものですから、非常に応募数が少なくなって、非常に広領域でのざっくりとした審査になる。
ここはやはり非常に費目間の接続とかで緻密な検討をされていまして、それはそれで大変丁寧にやっていただいて価値のあることだと思うんですけれども、それ以外のもっと大きな断層がここのところにあるというのは、これは、今日は大きな方向性というお話でしたので、ちょっとあえて、いわゆる縦割り的になっているのではないかという、そこのところがやっぱり気になるところでございます。
【大鷲企画室長】
ありがとうございます。
【大竹部会長】
作業部会の範疇に入る議論かどうかというところもありますが。
【中野委員】
途中でご説明がありましたけれども、国際性の評価を入れるというオプションもありますので、取り込めるところはどんどん取り込んでということだと思います。
【中村委員】
そうですね。海外連携研究がなくなって、その分基盤研究全てという。あまり積極的な対応ではないですよね。全てにおいて国際性の評価を入れるというのは、ちょっと曖昧な部分があって、逆に言うと、国際先導みたいなことをもっとやっていかないといけないと思うんですよね。それで海外のトップラボにどんどん若い人を送り込むとか、それがいろんな単位で、今、例えば国際先導も規模が割と大きいながら、非常に採択率は低くなっていて、狭き門となっている。その辺がやはり国際事業の予算とかも併せて何かできないのかなと個人的には思っております。
【大鷲企画室長】
ありがとうございます。その視点も含めて引き続き検討させていただきたいと思います。
【大竹部会長】
そうですね。三角形の右側全体の連関を考えるという中で、全ての連関を考える必要があろうかと思いますので。
【中村委員】
そうですね。作業部会の外というのは分かるんですが、まさにそこが今、日本のいろんな研究を検討している中で、枠組みの中でできることはもうかなりやっていて、根本の枠組みに問題があるというときに、そこはなかなかタッチできないでいるというのはいろんなところで起こっている問題なので、ぜひできればそういうことを。
【大竹部会長】
今日、JSPSさんにも御参加いただいておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。
岸本委員からお願いします。
【岸本委員】
岸本です。御説明いただきましてありがとうございました。1つの大きなキーワードとして、やはり若手研究者の育成というところがポイントになっているのかなと伺いました。
その中で、的が外れるのかもしれませんが、若手研究者が実際にどう考えているのかと。例えば制度を利用された上で、もっとこういう方法があればいいよねという、何か意見を吸い上げるような仕組みが一つあるといいのではないかと思いました。その辺りは収集はされているのでしょうか。私が知らなくて恐縮ですが、そういう制度はあるのですか。
【大竹部会長】
中野委員から。
【中野委員】
制度という意味ではないですが、現場の研究者の声は聞いております。先ほども話題になった創発ですが、創発の良いところは、基盤的な研究が創発でカバーされているという点にあります。自分の挑戦したいことにどんどん挑戦できるという声を聞いており、それは非常にうまくいっていると思います。
今回の科研費改革においても、そのような改革をすれば若手は喜ぶと思います。具体的な例として、基盤Cとの重複制限を緩和するという話がありましたが、研究費が全くないのは困る一方で、挑戦はしたい。両立させたいというときに、今回の改革があれば、ハードル下がるのではないかと思います。
ただ、若手の研究者も日々年を重ねていきますので、若手の間だけ支援をしても不十分です。継続的に支援が続くという安心感のもとで挑戦できることが重要です。今回の改革の中で接続性が意識されていますが、それも重要ではないかと考えます。
以上です。
【岸本委員】
分かりました。ありがとうございます。
【大竹部会長】
若手はおっしゃるようにキーワードですよね。挑戦的研究に助教が標準の4分の1しか応募していないというのは、これは確かに何とかしなければいけないなと。
【中野委員】
そうですね。挑戦もしてほしいし、挑戦してうまくいって次につなげようと思うと、やはり時間かかると思います。1つの新しい領域に育てるためには。そのためにも、できるだけ若いときに挑戦していただきたいという思いがあります。
【大竹部会長】
ありがとうございました。それでは、次回以降、研究費部会におきましても、この方向でぜひ議論を進めていただくとともに、先ほどもお話ありましたけれども、日本学術振興会様におかれましても、挑戦的研究等に係る具体的な制度改善について検討を進めていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、最後に事務局から事務連絡をお願いしたく存じます。
【豆佐企画室長補佐】
ありがとうございました。本日の議事録につきましては、各委員に御確認いただいた上で公開させていただきたいと思います。
また、次回の研究費部会につきましては、改めて御連絡させていただきたいと思います。
以上でございます。
【大竹部会長】
それでは、本日の会議はこれで終了となります。御参加いただきまして、誠にありがとうございました。閉会いたします。
電話番号:03-5253-4111(内線4092)
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