令和5年6月20日(火曜日)10時00分~12時00分
オンライン会議にて開催
白波瀬部会長、鷹野委員、仲委員、大竹委員、尾辻委員、塩見委員、新福委員、城山委員、中野委員、長谷川委員、華山委員、山本委員、岸本委員、速水委員
森研究振興局長、奥野大臣官房審議官、田畑学術研究推進課長、松本学術研究推進課企画室長、梅﨑学術研究推進課企画室室長補佐、他関係官
水本日本学術振興会理事、大野日本学術振興会学術システム研究センター所長、岸本日本学術振興会学術システム研究センター副所長、西田日本学術振興会学術システム研究センター副所長、 赤池内閣府科学技術イノベーション推進事務局参事官
【白波瀬部会長】
皆様、おはようございます。時間となりましたので、ただいまより、第12期第2回の研究費部会を開催したいと思います。
本日は、研究費制度やオープンサイエンスに関わる現状等について御説明をいただいた後、それぞれ先生方に御議論いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
では次に、事務局から配付資料の確認とオンライン会議の注意事項について述べていただきます。お願いします。
【梅﨑企画室長補佐】
事務局から、配付資料の確認とオンライン会議の注意事項について、議事の前に説明をさせていただきます。資料については、事前にお送りしましたファイルを御参照いただければと思います。
また、オンライン会議の注意事項についてですけれども、音声安定のため、発言時を除き、常時ミュート、マイクをオフにしていただきますようお願いします。また、部会長、委員、オブザーバーを含め、メイン席の方は常時ビデオをオンに、その他の方は常時ビデオをオフにしていただきますようお願いします。
また、発言される場合は、挙手ボタンございますので、こちらを押していただき、部会長が指名されますので、その際には、ミュートを解除、マイクをオンにして、その都度お名前を御発言いただくとともに、オンラインでも聞き取りやすいようにはっきりと御発言をいただければと思います。また、資料を参照される際は、資料番号、あとページ番号等、分かりやすくお示しいただければ助かります。
トラブル発生時の場合には電話で事務局のほうに御連絡いただければと思います。よろしくお願いします。
【白波瀬部会長】
ありがとうございました。どうかよろしくお願いします。
では、議題に入ります。まず、参考資料、資料1に基づきまして、科研費制度の現状等について、事務局から説明をお願いいたします。
【松本企画室長】
参考資料については、本日、一番最後に報告事項として説明します。早速ですけれども、資料1の説明から始めたいと思います。
まず、資料1、通し番号の3ページ目です。まず、政策文書における主な記載ということで、先週金曜日に閣議決定されました、経済財政運営と改革の基本方針2023、いわゆる骨太の方針というものです。こちらにおきまして、脚注にありますけれども「科学研究費助成事業(科研費)の基金化を含む研究活動の柔軟性を高める競争的研究費の一体的改革」ということで記載をされています。
それから、成長戦略等のフォローアップについても、先週の金曜日に閣議決定をされています。いわゆる新資本2023実行計画とセットで閣議決定されているものですけれども、こちらについても「若手を含む幅広い年代の研究者が独創性をより一層発揮できるよう、科研費の基金化などにより、柔軟な研究活動を認め、国際性・挑戦性を高める制度改善を行う」という記載がされています。
それから、6月9日閣議決定された、統合イノベーション戦略2023、こちらにおいても「科学研究費助成事業等の研究事業と併せて、研究者のキャリアに応じ、将来の飛躍につながるよう支援する」、それから「若手への重点支援に加え、幅広い研究者に対して、研究の進捗に応じた研究費の柔軟な使用により研究の質を抜本的に高める科研費の基金化などの制度改革を進める」というような記載がされています。
4ページ目では、女性活躍・男女共同参画の重点方針2023でありますとか、日本学術会議のほうのまとめられた文章にも、資料のような説明が記載されているというところでございます。
特に、3ページ目に記載された政府文書においてはっきりと、科研費のことを記載できましたので、我々としては、これで概算要求のスタートラインに立てたのかなと思っています。今後の研究費部会で御意見をいただきながら、この政策文書に沿った形の要求を検討して、頑張っていきたいと思っています。
5ページ目には前回の研究費部会に出た御意見を、短期的な課題と中長期的な課題にちょっとまとめさせていただいています。
こちら短期的な課題としてまとめたものです。若手・女性というところでは、特に世代ごとの申請率、採択率の経年変化を把握してみてはどうかということでデータを示してほしい旨の御意見がございましたので、後ほど説明をさせていただきます。
それから、子育てしながら研究に取り組める研究環境が必要ではないかという御意見。また、全体で若手研究者の支援ができればよいという御意見。それから、大型のものではちょっと女性の割合が少ないと。多様性を考慮した検討をしてはどうかという御意見。
それから、繰越しについては、コロナの影響もあったと思うけれども、今まで繰越しを認められていなかったが、繰越しできるようになったから繰越しした人も一定いるのではないかという御意見もありまして、少しこちらもデータで説明させていただければと思っています。
次のスライドでは中長期的な課題と整理をしています。全体的に、目的志向の研究費が増えているので、全体のバランスから科研費の予算の増額は欠かせないのではないかといった御意見。
それから、充足率が低下すると、本来やろうと思っている研究ができないのではないかという御意見。
それから、基盤(C)について、基盤的経費を補う用途に使われているのではないかという懸念、一方で、大型基盤(S・A)に予算が十分回っていないのではないか。そういうことから、基盤研究の現在の種目構成、予算規模、重複制限等について抜本的に検討するのはどうかという御意見がありました。
それから、選択と集中が進み過ぎて、現場が疲弊している。持続的に安定して研究を進めることができるよう、基盤研究、特に(B)、(A)を充実させていくべきではないかという御意見。
それから、特に、オープンサイエンスに向けて、APC問題もございまして、一研究課題に対する予算規模、充足率の問題も絡んでくると思いますけれども、そちらに関する課題として考える必要があるのではないかといった御意見がございました。本日、こちらのオープンサイエンスについては、後ほど時間を取っておりますので、内閣府のほうから現状、今どういう状況なのかというのを説明していただくことになっています。
ここまでは一応、前回までいただいた意見のおさらいでして、こちらから資料を説明します。
7ページについては、前回もお示ししたかもしれませんが、科研費の応募資格者の総数は基本的に大体横ばいですが、年齢別で見ると、40代前半以下の研究者数が減少していて、40代後半以上の研究者数が増加をしているというような傾向が見てとれます。
8ページでは研究種目ごとの年齢別の応募・採択状況。令和4年度の新規採択分だけですけれども、こちらを表にしています。基盤研究や挑戦的研究ではおおむね35歳から49歳の研究者の採択率が高い傾向が見られます。特にというわけではないですが、基盤研究の下のところ、全体の採択率は29.5%となっていますが、39歳以下だと28.9%と、あまり有意な差ではないですが、こちら若干、39歳以下の採択率のほうが全体の採択率を下回っています。特に令和4年度だけですが、令和元年度から見ると、39歳以下の採択率が34、5%ありましたので、そこから見ると、ちょっと下がっているというのが特徴として出てきていると思います。
9ページから数ページ、種目ごとの応募採択の性別の推移ということで、過去5年分の男女別の応募件数、採択件数、採択率というものを示しています。基本的には応募総額が大きい研究種目ほど女性の応募件数・採択件数は少ないという傾向になっています。
基盤(S)ですが、大体、応募件数の男女比は男性94.3%、女性は5.7%、採択件数の比も大体同じ、若干男性高いかなと、同じような傾向となっています。男女別の採択率もそんなに変わらず、若干女性が上下ありますけれども、このような傾向です。
続いて基盤研究(A)になります。こちらも、大体応募件数、採択件数の男女比は、(S)に近い傾向があると思います。
それから次に、基盤研究(B)になると、ちょっと男性の比率下がって80%後半、女性が12%ぐらい、採択率はそれぞれ変わらないような傾向があると思います。
基盤(C)になってくると、だんだん女性の割合が増えてきているというような傾向です。
挑戦的研究の開拓、こちらはやっぱり、重複制限の関係もあって、基盤(B)以上しか多分重複して出せないというところもありますので、何となく大型研究種目と同じような傾向があると思います。
次は、挑戦的研究の萌芽です。こちらも、若干、女性比率高くなりますけれども、大型と似たような傾向かなと思います。
若手研究ですけれども、若手研究になると3割ぐらい、応募件数・採択件数とも3割近くになっているという傾向です。
こちら研究活動スタート支援でございます。こちらは、産休・育休を取得した研究者に向けた応募要件というのも設定していまして、採択者の多様性の拡大に貢献としていますけれども、こちらは、かなり女性の割合が増えてくるというような傾向でございます。
17ページには研究活動スタート支援について少し詳しく説明した資料になります。こちらの採択状況ですけれども、下のほうにちょっと細かく書いていますが、研究活動スタート支援の要件としては2つ設定していまして、1つは、科研費の応募の時期です。10月1日以降に応募資格を得たということ、それで応募できなかったということです。あとは、産休・育休を取得していたので応募ができなかったという要件を設定しています。
応募の状況、左側の青いところ、こちらが、青い折れ線が応募件数で大体横ばいで、採択件数、採択率、令和元年度に上がっていますが、こちら若手研究と一緒で、ちょっと補正予算を獲得したのもありまして、そちらで若手研究と研究活動スタート支援の予算規模を一応少し増やしたということで、採択件数も上がり、採択率も上がっているということになります。
右側は、応募要件B、産休・育休を取得したという要件Bの応募者の応募採択状況でございます。こちら若干応募の状況が、桁数が2桁で少ないですが、減少傾向となっています。採択数は横ばいもしくは微増なのですが、応募件数下がってきているので、採択率が上がっているという傾向があるということで、少し応募要件の柔軟化、支援の拡充を考えてもいいのではないかなと考えています。
次のページをお願いします。こちらの繰越件数の状況です。補助金種目である基盤研究(S・A・B)の繰越件数と金額、これは新型コロナウイルス感染症の影響で大幅に、令和2年、令和3年度と増加をしています。特に、基盤研究(B)はもともと採択課題が多いので、繰越件数の大部分を基盤研究(B)が占めています。
次のページをお願いします。繰越制度について簡単に説明すると、補助金の研究課題のうち、交付決定時には予想し得なかったやむを得ない事由により年度内に完了することが困難となった研究課題については、財務省、財務大臣の承認を得た上で、予算を繰り越して、次の年度に使えるようにするという仕組みです。1回目の繰越しは明許繰越ということで、比較的定型化された繰越事由、後ほど内訳を説明しますが、こういう事由に該当するというのが定型化されていまして、ある程度、手続きが簡略化されてきています。
1回明許繰越をした課題をもう1回繰越ししたいという場合は、真にやむを得ない「避け難い事故」に該当すると判断された場合のみになっていまして、事故繰越と言いますが、極めて限定的な運用がなされています。避け難い事故の例というのは、点線で囲まれているところに書いているようなものが該当します。特に事故繰越の場合は、個別に、真に避け難い事故に該当するかというのを判断するので、結構、研究者もそうですけれども事務的な負担もかなり大きくて、最終的に認められないケースもあります。
こちらが繰越しの事由の内訳になっています。左側に繰越事由と書いていますが、明許繰越の中で、この記載している、研究に際しての事前調査の困難であるとか研究方式決定の困難、これらが一応定型化された事由ということでございます。件数の内訳はこういった形で推移をしてきています。
それから、こちら、S、A、Bということでそれぞれ研究種目ごとの繰越事由の件数の推移を示しております。
繰越しの資料はそれまでで、ここから過去10年の、それぞれ研究種目ごとの応募件数、採択件数、採択率、充足率等の実績の推移を示したものです。22ページに書いてあるのは基盤研究(S)、(A)、どちらも補助金種目ですけれども、採択率はほぼ横ばい、充足率は低下傾向にあるということです。この充足率については、補助金種目なので初年度の充足率を掲載していますけれども、実際研究機関全体の充足率となるとこれよりも数ポイント下がってきますので、受けている研究者の方々の実感としては、もうちょっと厳しいものがあるのかなというふうに思っています。
こちら基盤研究(B)と(C)です。基盤研究(B)については、若手研究(A)を平成30年度に公募停止して、基盤研究(B)に予算を持っていって、若手研究者の優先採択枠も設けたりして、そういう制度変更をした影響もありまして、30年度以降、特に令和元年度以降、大幅に採択率が上昇しているというふうになっています。基盤研究(C)は応募件数がかなり、25年度と比べると1万2,000件ほど増加していますので、採択率、充足率も低下してきていて、充足率の低下がちょっと大きいということになっています。
こちら若手研究(A)と若手研究ですが、若手研究は平成29年度まででしたので、数字はそちらまでしか記載してございません。若手研究については、先ほど申し上げたとおり平成30年度公募から応募要件変更の経過措置もあり、応募件数が近年減少しています。加えて若手研究者支援の拡充もあって、採択率・充足率は上昇しています。
挑戦的研究の開拓と萌芽です。こちら、昔は挑戦的萌芽と言っていましたが、29年度の公募から、挑戦的萌芽研究を挑戦的研究の開拓と萌芽という形に見直しまして、挑戦的な研究の実行が担保されるように、応募額を最大限尊重するという方針になりましたので、29年度から、挑戦的萌芽のほうも充足率はほぼ100に近い形で措置しています。その分採択率がかなり下がっているという状況です。
こちらはこれまで説明した資料を図にしてみたものです。ちょっと見にくいかもしれませんが、平成25年度から比較すると、若手研究、紫色の線ですが、こちらは、充足率・採択率とも上昇した一方で、特に、黄色の基盤研究(C)については、応募件数の増加に伴って充足率が低下していっているという傾向が見られるかと思います。
こちら、種目ごとに大区分別で研究期間、令和4年度の新規採択分に限ってですけれども、どういう傾向があるかというのを表した資料です。同じ研究種目の中でも大区分、研究分野によって、研究期間の設定の傾向に少し違いがあることがわかります。研究分野による1人当たりの研究費の必要額とか研究プロセスとかの違いが影響している可能性があると思っています。人文学・社会科学関連のところは比較的研究期間が長いほう、3年から5年のものですと5年に近いほうの研究期間を設定される方が多く、一方、薬学関連のところは短めになっています。大体、どの種目を見ても同じような傾向が見てとれます。基盤研究(S)だけは原則5年としていますので、どの分野においても基本5年ということになっています。
こちら、予算額の推移でよく見る資料ですが、全体の高さは最近変わっていませんが、補助金予算額の割合、こちらでいうと、オレンジのほう、こちらの割合が56%、基金予算額の割合が44%ということで、まだまだ補助金予算のほうが大きいということになっています。
これは種目別に補助金と基金の区分を表したもので、上の緑のほうがまだ補助金で残っている研究種目、下のほうが基金化された研究種目になっています。予算額でいうとまだ1,329億円ほど補助金の種目があるということになっています。制度上も、お金の種類が2種類あるとルールも2種類必要になってきて、手間な部分もあるので、ここは早く、基金1種類にするというのが理想だと、基金化当初から思っているところです。
こちら、重複制限と受給制限を簡単に図示したものです。重複応募とか重複受給については、なかなか審査負担の問題もありまして、一気に緩和できない部分がありますが、かなり緩和してきていると思います。
ちょっと分かりにくいですけど、簡単に言いますと、緑のところの基盤研究からピンクのところの学術変革であったり、挑戦的研究であったりというところについては、重複応募も受給も可だという形、それから下のほうの若手研究とか研究活動スタート支援とか、そういったところについては、重複応募・受給制限は基本ないということで制度を設計しています。
こちらは最終年度前年度応募の状況ということで、重複応募制限の特例ということですけれども、研究の進展を踏まえて研究計画を再構築することを希望する場合には、最終年度の前年度に応募して良いというルールにしています。この最終年度前年度応募をして採択されれば研究費の切れ目がなく研究が継続できるということになります。それを一覧で表したのがこの資料になります。
次のページは、NISTEPが科学技術の状況に係る総合的意識調査、定点調査を実施しておりますが、こちらのうち質問の310というところで自由記述があり、公表されています。その自由記述のうち、科研費というワードでピックアップしたものがこの資料になります。科研費というワードが出てきている意見をピックアップしていますが、大体700以上の自由記述の意見があって、2割弱ぐらい科研費に関する意見があるという感じです。特に、採択率とか充足率とか、研究種目に言及しているような部分にハイライトしています。
例えば、32ページの一番最初のところは、「唯一の不満は充足率を100%としていないこと」ですとか、「科研費の基盤研究などはS、A、B、Cで金額のばらつきが大き過ぎると考えます」」とか、「科研費は採択されても申請金額の7割程度に減額されるのは痛過ぎます」とか、「当初の研究計画が大きく崩れかねません」とか、こういった意見が結構出てきています。量も多いので、一つ一つを紹介できませんが、39ページまで資料として整理しています。
それから、40ページには、前回の意見等を踏まえ、科研費制度の改善充実に向けて御議論いただきたい論点を少し整理しています。
短期的に検討が必要な事項として、1つ、若手や子育て世代の研究者が、多様性の高いチームで研究に挑戦しやすい環境を整備するため、どのように改善・充実をしていくべきか。2つ目、研究者コミュニティーの持続的発展や、男女共同参画・多様性が尊重される社会の実現のため、科研費制度の改善にどのように取り組んでいくべきか。3つ目、補助金種目、こちら、件数が多い基盤研究(B)については、繰越件数が多いですが、特に1万件以上採択課題があり、研究グループとしては多分分担者が三、四人入っているので、全体として4万人弱ぐらいの研究者に裨益すると思われますので、基金化等の制度改善、これは取り組んでいくべきだという意見になると思うんですけど、そういうような論点にしています。
それから、中長期的に検討が必要な事項として、科研費予算は、補正予算を除くとほぼ横ばい、それから、研究種目では、若手研究では採択率・充足率とも改善が図られてきていますが、基盤研究(A・B・C)では充足率が60から70%、近年低下傾向ということでもありますので、採択率と充足率の関係、それから重複応募制限等の仕組みについて今後どのように検討していくべきか。それから5つ目、応募件数の増加に伴う適切な予算配分の在り方についてどう考えるのか。また、応募金額や研究機関の観点からS・A・B・Cの区分、それから中区分、小区分、審査区分ごとの配分についてどう考えるか。この辺りを中長期的に検討が必要な事項として整理をさせていただいています。
長くなりましたけれども、資料の説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【白波瀬部会長】
ありがとうございました。松本室長のほうから丁寧に御説明があった次第です。
ただいま、今期の審議事項等につきまして、御議論いただいた際に意見のあった、各種データなど科研費制度の現状等についての説明を中心にいただいたわけですけれども、ここまでの説明について、御質問または説明資料の中の論点等について御意見がありましたら、どうか御発言よろしくお願いいたします。説明がいろいろ多岐になりましたので、長くなって、大体11時15分ぐらいまでで次の課題に移りたいなと思いますので、皆様よろしくお願いいたします。
では、中野先生のほうから手が挙がっておりますので、よろしくお願いいたします。
【中野委員】
松本室長、どうもありがとうございます。
まず、4ページ目なんですが、ここで「全ての種目の科研費を基金化し、年度を越えた柔軟な予算執行を可能とするとともに、年度ごとに大幅に採択率が変動する種目間で」という云々と書いてあるのは非常にすばらしいと思います。
質問なんですけど、この「年度を越えた柔軟な予算執行を可能とする」というのは、これは主体はどこなんでしょう。学振なのでしょうか、それとも、科研費採択された研究者なんでしょうか。それがまず質問です。
【白波瀬部会長】
事務局、お願いします。
【松本企画室長】
基本的には基金化するということで、柔軟な執行を可能にするということなので、そこは予算要求をする我々の仕事だと思っています。
【中野委員】
分かりました。そしたら、ちょっとお願いというか、こうしたらいいのになと思うことなんですけれども、やはり、繰越しの状況を見ると、コロナ以降、大型の科研費は繰越しの確率が上がっています。また、一旦繰越しをしたら、継続して繰越しする人が増えています。これ、繰越し手続きに慣れたということもあるんでしょうけれども、研究では、一旦遅れがでてしまうとその遅れを取り戻せないということが往々にしてあるも示していると思います。
例えば、加速器を使っている研究で、ある年に加速器が止まってしまって、研究を次の年に繰り越さざるを得なくなったときに、繰越しの申請書類では次の年に全部遅れを解消するって書かないと繰越が認められないので書きます。書きますが、実際は無理です。そこでまた、何か理由を考えて、再繰越しということをお願いして、それは認められたり、認められなかったりするんでしょうけれども。
先ほど、2年目以降は非常に難しいとおっしゃっていましたが、一旦繰越しすると、もう取り戻すことが不可能に近いという研究もあるので、そういう場合は、2年目以降も遅れ取り戻せないので、続いて繰り越せるというような制度を入れるとか、あるいは、2年目以降の繰越しの条件を緩和するとかして、もう少し研究者に寄り添ったというか、科研費が有効に使われるような制度を考えていただけたらと思います。
以上です。
【白波瀬部会長】
ありがとうございます。では、御意見ということで承っておきたいと思います。
では次、新福先生、よろしくお願いいたします。
【新福委員】
御丁寧な説明とたくさんのデータをお示しいただき、どうもありがとうございました。
私もお聞きしたいのが繰越し制度のことなんですけれども、こちらは、例えば産休とか育休の場合は、この避け難い事故とは異なるのでしょうか。それでは繰越し事由にならないのでしょうか。
【白波瀬部会長】
お願いいたします。
【松本企画室長】
今の整理では、繰越し事由、明許繰越の定型化された事由には入っていないです。
【新福委員】
なるほど。そうすると、これまでの基盤(B)であれば、30代、40代の取得者も割といるようにお見受けしますので、その辺りの年代の方で困られている方がいるんじゃないのかなというふうに感じます。
それで、出産や育児に関しても、一旦生まれればもうそれでいいというわけではなくて、その後、ゼロ歳児、1歳児、2歳児を育てていかなければならないので、どうしても研究に遅れが生じるということがあって、さらに、現状では女性研究者がその負担を担っている部分というのが多いと考えますので、この辺りは基金化されていくのか、事由に入れていただくのかというところは検討いただいたらと思います。
以上です。
【白波瀬部会長】
室長、承ったということでよろしいでしょうか。
【松本企画室長】
我々としては基金化をまずは頑張っていきたいなと思っているのと、あとは、研究活動スタート支援のところで少し触れましたけれども、今、要件のBとして設定している産休・育休の期間というのがあるのですが、そこだけではなくて、例えば未就学児の養育期間というのを新たに配慮期間として追加するとか、そういった制度改善をできないかなということも考えています。
【白波瀬部会長】
その辺り、子育てですけど、いろんな子もいますので、もう少し詳しい検討をお願いしたいと思います。
では、華山先生、お願いいたします。
【華山委員】
ありがとうございます。私からは、22ページの基盤研究(S)と(A)の採択率について質問がございます。令和4年度を見ていただきますと、基盤(S)ですと採択率12%、基盤(A)ですと27%となっております。この(S)と(A)は唯一、基盤研究の中で重複応募が可能な種目になっておりますが、とはいえ採択率が非常に低いのは問題だと思っております。(A)におきまして、(S)と重複応募された方の採択率、もしくは、(A)単独で申し込まれた方の採択率といった形でデータは出されておりますでしょうか。
【白波瀬部会長】
今回は多分出してないですね。
【松本企画室長】
すみません、調べれば分かると思います。
【華山委員】
例えばこの令和4年度を見ましても、(S)ですと採択件数80件、応募件数が649件ということは、570件ぐらいの方が不採択になっているわけですよね。基盤(S)に申し込まれる方というのは非常に自信のある、日本を代表するような偉い先生方が多いと思うのですけども、そのほとんど、88%が落ちてしまうというのは、日本の国際競争力の点では、かなり問題なのではないかなと個人的には思っております。
それをレスキューする形で基盤(A)との重複応募があると思うのですけれども、そうなってきますとやはり、基盤(S)から降りてきた方々が優先的に採択される可能性が高いのかなと思います。では、基盤(A)単独で出している方の採択率って実は10%ぐらいしかないのではないかなと思っている次第です。いかがでしょうか。
【松本企画室長】
ありがとうございます。確かに基盤(S)に出されている方で、基盤(A)で採択になる方は一定程度いらっしゃると思います。
【華山委員】
例えば、前回アメリカの生命系のRO1の話をさせていただいたのですけれど、RO1は基盤(A)、(S)あたりの研究費になるわけです。向こうの制度は御存じの通り複数申し込むことができまして、偉い先生は2つ3つと取っていて、それぞれ時期をずらして、持続的に研究を続けることができる体制になっていると思います。
日本の場合は例えば、基盤(A)が終わったときに次また(A)に出すのかとか、ちょっと自信がないから(B)に下げるのかとかギャンブル的な要素があって、そこが結構皆さんいつも困られているところだと思っています。採択率がやっぱり低いものですから落としてしまった場合、それでもう研究が継続できなくなってしまうといった問題があるのではないかなと思っております。
個人的には例えば一つの例ですけど、(S)を全て(A)に統合して採択率を40%ぐらいまで引き上げる。それで2つとか3つとか(A)に申し込むことができるけれども1つ目の採択においては採択率40%、2つ目の採択率は20%、3つ目は10%という形で下げていくと、より多くの皆さんが安定的に研究費を継続できるのではないかなと考えている次第です。
以上です。
【白波瀬部会長】
ありがとうございます。具体的な御提案がありました。事務局には基本的な数字をお出しいただけると大変ありがたいと思います。基礎資料になりますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
では、大竹先生、お願いいたします。
【大竹委員】
東工大の大竹でございます。御説明ありがとうございました。ダイバーシティーというのが今日の40ページの2番にありまして、それは多様性という観点は非常に重要だなと思う中で、先ほど未就学児の養育期間って私も非常に大事だなと思っていて、それに配慮するというお話があって、そこはもうぜひ実現していただければというふうに思いました。
もう1点、多様性を挙げるときに、評価者のほうも少し気になっていまして、科研費の評価はこの別の委員会だということは理解していますけれども、評価者のほうのダイバーシティーというのが整っていることによって、採択課題というのもまた変わってくるのかなというふうに思っていて、私自身がそれを現状理解していないものですから、評価者のほうに女性とか、あるいは若手というのが入ると、少し変わるのかなという印象もありまして、もしそのデータがあれば、また後で教えていただければというふうに思います。
白波瀬先生、もう1点だけ、ちょっと論点がずれるかもしれませんけど、よろしいですか。
【白波瀬部会長】
はい、お願いします。
【大竹委員】
ありがとうございます。
今日の資料でいくと、6ページの頭になると思うんですけれども、やはりその科研費自身の充実をしない限り、この国の研究力ってなかなか、正直申し上げて上がるのは難しいのではないかなと個人的には思っています。特に、国の研究費の負担割合が、恐らく、日本の場合は今16.8%と、NISTEPのデータではありますけれども、御存じのとおり欧州では25%程度、英国では30%を上回っている、中国も25%程度ということを考えますと、やはり基礎研究を支える根幹たる科研費、これは25%という負担割合に合わせて、抜本的に増加させないともうもたない時期なのではないかというふうに私自身は思います。
先ほどちょっとというか、昨日計算していたんですけれども、そうすると、2,377億円というのを3,900億円まで増やす必要があるんですよね。それで25%という国の負担割合に見合う科研費の金額になると、今、伸び悩んでいるというか、維持しているという御努力は十分認めさせていただく中で、やっぱりこれ増やさないともう本当にもたないじゃないですかということをここで一言申し上げたいと思いました。
以上です。
【白波瀬部会長】
大変ありがとうございます。特に第2点については非常に重要で、もうこれはかなり優先的に投資していただくべきところだと思います。まず、事務局の方にこれからお仕事をたくさんということになりますけれども、うまくこの辺り先生方のお助けもいただいて、ここはぜひ、科学立国としても頑張りどころではないかと思いますので、大変貴重な御意見ありがとうございます。
何かありますか、松本さん、よろしいですか。
【松本企画室長】
1点目の審査委員のダイバーシティーについては、多分JSPSのほうで、審査委員、基本的に選考をされていますけれども、基になる審査委員データベースとかも多分、これまで随分、データベースに入れる方々も拡充したりとか、若手の方を審査委員にするとか女性の方を審査委員にするという努力をされてきているとは思っていますので、次ちょっと、データが少し出せるようであれば出していければなと思っています。
【白波瀬部会長】
ここはすごく重要だけども、なかなか現状がついていかないのが本音ではないかと思うんですよね。年齢的なこともあって、かなりパイが限られています。でも、だからといって諦めるわけにはいかなくて、何か評価のほうこそ大切なところもあります。データ出していただけると幸いです。
【松本企画室長】
予算については、課長から一言お願いできますでしょうか。
【白波瀬部会長】
ぜひお願いいたします。
【田畑学術研究推進課長】
田畑です。重々、先生方の御意見理解しております。それで、第6期の科学技術基本計画におきましても、その学術研究の重要性というのがうたわれておりまして、その中においてはまず、基盤的経費、各機関の裁量で使用できる予算、財源の確保、充実とともに、競争的研究費である科研費の充実というのもうたわれております。私としましても、まずは、今、科研費は担当しておりますけども、その全体のバランスをしっかり見ながら、政府としては対応をしていかなければと思っております。ここでその予算がやっぱり厳しいというのはもう現実ありますけども、かといって黙っていても予算は増えませんので、そこはしっかり粘り強く、まず、基金化を進めつつ、取り組んでいきたいと思っております。
ちょっとお答えになってないかもしれませんが、私の考えとしてはそういう考えでおりますので、よろしくお願いします。
【白波瀬部会長】
大変ありがとうございます。よろしくお願いいたします。粘り強く、頑張っていただきたいと思います。
【松本企画室長】
すみません、審査委員の女性の割合とかのデータについて少し補足でお伝えできればと思います。JSPSのホームページに掲載されておりますのでお示しさせていただきます。
【白波瀬部会長】
かなり厳しいですね。これ全体ですからね。
【松本企画室長】
はい、全体ですね。今現在はこの状況となっております。
【白波瀬部会長】
多分大型になればなるほど、結構少なくなると。評価者のほうの女性が限られるのではないかと思うのですが。
【松本企画室長】
審査委員データベースに登録されている女性の割合というのが、大体こういう形になっているということですね。実際に審査委員やられた、令和4年に出ている割合でいくと、審査委員のうちの22.5%が女性だということになっています。
【中野委員】
すみません、中野ですけど、学術システム研究センターの主任研究員やっておりまして、審査委員選ぶほうを担当しておりますので、一言申し上げますと、科研費の課題が大きくなっても女性の審査委員の割合が減らないように我々注意して、審査委員を選んでおります。ダイバーシティーについては非常に気をつけて選んでおりますので、その点御心配なくということです。
【白波瀬部会長】
ということは、変わらないんですね。大変失礼しました。
【中野委員】
大丈夫です。
【白波瀬部会長】
すばらしい。ありがとうございます。
よろしいでしょうか。では、手がたくさん挙がっていますので、速水先生よろしくお願いいたします。
【速水委員】
今の件にちょっと関わることでもあるんですけれども、たくさんいろいろな資料を出していただいて本当に分かりやすくて、ありがたいんですが、それで見えてきたことの一つが、13ページから15ページになりますけれども、今まさにその大型のほうが女性が少ないんじゃないかという懸念が払拭されたんですが、逆に、そんなに大きくない3つの種目で、図らずもといいますか、何かもう一貫して女性の採択率が微妙になんですけれども低いというのはどうしてなのかなって、ここまで一貫していると思わざるを得ないのですが、何かその、理由と言われてもきっとお困りになるんだと思うんですけれども、これを是正する方法というのはないのでしょうか。あんまり気にするほどのパーセンテージではないという考え方もあるのかもしれないんですけれども、一貫しているのでどうしてもやっぱり気になってしまいました。
【白波瀬部会長】
ありがとうございます。速水先生、ありがとうございました、大変失礼しました。
事務局から何かありますでしょうか。これは男女比べてということで、大きく男性も変わっていて女性だけではないかもしれないんですけれども、特に近年ちょっと、令和4年はかなり下がっていますね。
【速水委員】
若手の種目が中心だと思うんですけれども、それだけに気になった次第です。
【白波瀬部会長】
分かりますか。また、追ってということでしょうか。ではまた、追って、よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
では次、仲先生、よろしくお願いいたします。
【仲委員】
ありがとうございます。詳しい資料を見させていただきまして、ありがとうございます。私も今の速水先生と同じところなんですけれども、9ページから16ページにあります女性の科研費の採択率なんですが、大型になっていくほど、5%ぐらいになっていく。最初のスタート支援のところは33%とか34%であっても、これが5%になってしまうということは、ダイバーシティーという観点からも、また、女性研究者のさらなる活躍という意味でも、もったいないなというふうに思うところです。
あと、もう一つ、外国人の方が取っておられる科研費というのがどれぐらいの割合になるのか。中長期的に言えば2050年ぐらいまでには人口が3割ぐらい減るということで、特に生産人口が減ってしまうという話もあるので、研究も、女性、外国の方もみんなでやっていかないと立ち行かなくなってしまうと思うんですが、その外国人比率というのがどれぐらいなのかということを知りたいです。
もし日本人の男性が科研費のメインの取得者だとするならば、ダイバーシティーを上げるために、若手を支援しますとか若手の方にたくさん応募してください、というのと同じように、女性とか外国の方の応募についても、もっとプロモートしたり、説明会のときにそこを強調する形でやっていくといいのかなと思いました。
以上です。
【白波瀬部会長】
ありがとうございます。国籍は分からないかもしれないんですけど、少なくとも応募で日英同時でつくられていて、英語による申請というのはどれぐらいなのかがわかると、それを一つの目安とできるかなと思いました。もし後ほど、大変重要なところなので、よろしくお願いします。
【松本企画室長】
多分、応募書類では国籍は取ってないので、どういう形で取れるかは検討したいと思います。
【白波瀬部会長】
英語による応募というのが全体で何件とかわかりますかね。英語版を作成するのにかなり費用もかかっていると思います。全体の何%が使っているのかなというのが、多分この辺りは尾辻先生とか御存じかもしれないけど、よろしくお願いします。ありがとうございます。
では次、岸本先生、お願いいたします。
【岸本委員】
岸本でございます。いろいろと資料の御提供ありがとうございます。すみません、不勉強で申し訳ございませんが、また、話も変えてしまって恐縮なんですけれども、平均の充足率が6、7割とのことなんですが、これは採択された研究において、ある程度どれも一律に減らされているような感じなんでしょうか。
【松本企画室長】
そうですね。基本的にはそうなります。あと、ちょっと個別に査定をされている場合もあるのですが、おおよそそのような感じです。
【岸本委員】
なるほど、分かりました。企業の視点ですので、ちょっと的外れなのかもしれませんが、特に大手企業になると様々な事業を持っていますが、予算規模は一律じゃないんですよね。原資は決まっていますので、事業規模や利益率だとかによって予算規模変わってきます。また、将来の可能性のありそうなハイリスク・ハイリターンの研究には大きな投資を行うなどという事業ポートフォリオは持っているんです。それと同じく、予算増額は欠かせないとしても、ある程度、成長分野、基礎分野、なくしてはならない分野とか、リスクやリターン、将来性を鑑みながら、編成内容に応じためり張りをつけていくことも必要になってくるんじゃないかなと思いました。ちょっと企業からの視点で恐縮なんですけど、そう感じたんで、発言させていただきました。
【白波瀬部会長】
ありがとうございます。これも結構、重要ですよね。
【岸本委員】
そうですね。
【白波瀬部会長】
やっぱり戦略的にというのが現実的にどういうふうになっているのか、このあたりをお伺いできればうれしく思います。また追加の資料でよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございます。
では次、尾辻先生、お願いいたします。
【尾辻委員】
ありがとうございます。私からは、26ページのスライドで御説明いただいた内容についてちょっと申し上げたいんですけれども、今御説明されたとおり、例えば基盤研究(C)は、令和4年度が64%まで充足率が下がっていると。これは国の指定で3割の採択率を目指しなさいという大枠の条件が課せられている結果として、こうなっちゃっていると。特に大区分で言えば、AとIの応募件数がずっと過去5、6年以上増加した結果、基盤(C)の科研費全体に占めるこの予算、それから件数等の割合が上がってしまっていることが原因です。
それで、次のページ、見なくていいんですけれども、特に基盤研究(C)は平均すると、研究期間が3年プラスアルファなんですよね。500万円の6割で3年ということは、端的に言えば1年間100万円なんです。もうこの枠になってしまうと、特に理工系の場合は、革新的な基盤研究を推進するための競争的資金としての役割を十分に果たせないケースが非常に多い。裏を返すと、やはりそのデュアルサポートの劣化の基盤的経費を補填する役割を担うのにちょうどいい大きさに、制度設計上なっているというこの、本当に矛盾した見え方がするんです。
ですから、これ見ると、今話題になった挑戦性を重んじる、科研費改革2018の結果として、挑戦種目については充足率100%、それから基盤支援についても8割超えをしていますから、この辺は本当に健全なんだと思うんです。基盤研究(A)は1年間当たり1,100万円程度の直接経費しか今、ないのが実態ですから、私が申し上げたいのは、2,300億の予算を先ほど御紹介のあった3,900億円に限りなく近く上げていただきたいというのはもちろんあるんですが、そこに行く過程においては、採択率3割キープというのは、もう緩めざるを得ない。つまり、競争性をちゃんと取る。そして、デュアルサポートの肩代わりができないような研究種目の枠組みの再設定が必要なんじゃないかと、もうそこまで来ているというふうに、これを見る限りは強く思います。そういったところの議論を具体化していくことが、この次の改革に向けて必要なのではないかというふうに強く思いました。
以上です。
【白波瀬部会長】
尾辻先生、大変ありがとうございます。やはりこのデュアルサポートの件につきましては、全体の中では、決してやっぱり諦められないところであります。その一方でこのところ、採択率か充足率かというのは背反した形で議論が進んでおりました。それで全体バランスもあるんですけれども、基盤的経費というのは維持しつつ、競争原理を尊重して採択率よりも充足率を優先させるというのが私の考えです。一研究者として個人的に持っている次第であります。尾辻先生、大変ありがとうございました。
事務局から何かありますか。これは課長からでもいいですけど、かなり本質的な話もあったので。
【松本企画室長】
我々の問題意識も、基本的には同じように思っていますので、次回以降は、そちらのほうも検討していければと思っています。
【白波瀬部会長】
心強いです。ありがとうございます。
ありがとうございます。では次、長谷川先生、お願いいたします。
【長谷川委員】
ありがとうございます。本会では第1回目に出席できませんでしたので、初めてかと思います。青山学院大学の長谷川です。専門は分子を使った材料科学になります。よろしくお願い申し上げます。
早速、多くのデータとともに、科研費に関わる現状と、ダイバーシティーに向けた決意を把握するのに十分な資料を御説明いただきましてありがとうございました。
2点お話をさせていただきたく思います。改めてなのですが、科研費は非常にフェアな審査の上に成り立つ、基盤的な社会科学あるいは自然科学を支える研究費であるということを認識させていただきました。各分野が細分化して評価者自身も広く知見を問われるような場面が多い時代になってきたなと思っております。
そのような中で、種々の分野の活性化ですとか、あるいはそれらを支える社会の研究者、将来の研究者、若手研究者ですとか学生も含めて、すべての研究者の希望としても、今後とも理路整然と科研費があり続けていくといいなというふうに切に思っております。そういった意味で、これまでも文部科学省はじめ皆様におかれましては、本当に巨額の予算を獲得していただけて、本当にありがたく思いました。一方、その充足率の問題もあるかと思いますが、今後も一緒に意識していきたいなということを改めて思いました。もちろん、研究者側も前向きな、よい提案ができるように日々精進していくことが重要であるということも、自分にも言い聞かせている次第です。
2つ目のお話ですが、ダイバーシティー、これに関しては先生方からも既に多くの御意見がありましたけれども、種々のチャンスというのは状況に関わらず平等にあるべきであると思います。この平等というニュアンスがとても難しくて、例えば育児だけではなくて介護といった問題も、今社会的に非常に問題になっているかと思います。そういった家庭環境まではさすがに申請書には書けないということももちろんなので、こういった人の生きている時間をうまく研究という場面で、負担をそれぞれが持つ中で男性も女性も関わらず、社会の中で活用していくことが必要なこともあると思います。生き抜いていくというのもやっぱりパッションだけでは無理な社会の仕組みかなと思っているので、仕組みが一緒に育っていくといいなというふうに今後を期待している次第です。
最後に、事務局の皆様に質問がございます。今回の資料では、ちょっと伺いしることができなかった点として、分野間の連携によるダイバーシティーかと思います。萌芽研究というのももちろんありますけれども、例えば組合せとして、審査区分の大区分で、医学と物理ですとか、人文とサイエンスみたいな、大きな組合せもあると思いますが、そういった審査区分を選択する場合に、やっぱりその異なる研究者が新たな分野として、基盤研究、この科研費で推進するというのが一番いいのと思いますが、その審査区分が今ちょっと細分化され過ぎている。
例えば具体的に言うと、その研究代表者の審査区分で、共同研究者、研究に一緒に取り組んでいく先生方が、分野が異なっても代表者の審査大区分から選ばなくてはいけないという状況が実際あるかと思います。こうなると、専門外の人が、例えば物理の先生が共同研究者として申請しても、研究代表者が人文科学ですと物理を人文科学の先生の分野が審査するような、分野外の人が審査委員にならざるを得ないような状況も出てきたら困るのではないかと思います。この辺りについて、何らかの対応等があるといいなと思うんですが、教えていただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。
【白波瀬部会長】
ありがとうございます。事務局、分かる範囲、お願いいたします。
【松本企画室長】
結構難しい問題かなと思います。審査にかかるコストの問題も、かなり考えないといけないので、JSPSとも相談しながら考えないといけない問題かもしれないですけれども、個人的には、例えばアイデアベースですけれども、どこかの種目かどこかの区分か分からないですけども、出てきた応募課題を見て審査委員をセレクトするというのもあってもいいのかもしれないです。かつてはそういうのも、一時期、大昔にあったと聞いていますけれども、そういう領域をつくってもいいのかもしれないです。
科研費としては、種目としては、そういう新しい融合的なものとか新しい領域をつくるといったときには、学振に出してくださいとか、そういう大きい種目での対応はしていますけれども、先生おっしゃるとおり基盤研究の中でのそういった対応はなかなか取ってきてないのかなと思いますので、ただ、かなり難しい問題かもしれないなという、ちょっと今聞いた範囲ではそういう感想です。
【長谷川委員】
分かりました。ありがとうございました。失礼します。
【梅﨑企画室長補佐】
少し補足をさせていただいてよろしいでしょうか。
【白波瀬部会長】
お願いします。
【梅﨑企画室長補佐】
前回の審査システムの見直しが2018年度でしたけれども、次回、10年後、2028年度に向けてまた、審査区分、あと審査のシステム、どういったものが適切なのか見直しを図る時期に来ております。審査部会でもその議論をスタートさせていただいたんですけども、長谷川先生の御意見も踏まえながら、より適切な審査システムについて、日本学術振興会と連携して、検討していきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
【長谷川委員】
恐れ入ります。ありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。
【白波瀬部会長】
ありがとうございます。お願いします。
では次に、鷹野先生、お願いいたします。
【鷹野委員】
本日、たくさんのデータを見せていただいて、いろいろ状況が明らかになって、大変勉強になりました。ありがとうございます。
その中で、私の不勉強もあるんですけれども、いただいたデータというのが、科研費の申請や採択に関する、応募比率などの男女比率も含めたものをお示しくださったんですが、研究者の総数、年齢別もですけれども、総数における男女比の変化、推移というのは、あまり変わってないのでしょうか。調べればきっとどこかにデータが、例えば文科省などにあるとは思うのですが。
なぜそう思ったかと申しますと、5年間ですのでそれほど大きな変化がないということかもしれませんが、お示しいただいた男女比率につきましては、どのデータを見ても、あまり変化がないという状況ですので、全体の女性研究者比率もほとんど変化がないのかなということが、ちょっと気になりましたものですから、お伺いいたします。よろしくお願いいたします。
【白波瀬部会長】
お願いいたします。この辺りいかがでしょうか、事務局から、分かりますか。
【松本企画室長】
少々お待ちください。すみません。ちょっと手元にデータないので、調べてみます。
【白波瀬部会長】
そうですね。難しければ、また追ってということでよろしくお願いいたします。
【鷹野委員】
ありがとうございます。
【白波瀬部会長】
ありがとうございます。では次、山本先生、お願いいたします。
【山本委員】
単にコメントです。先ほどから、基盤(S)の採択率の男女比のことが議論になっております。女性の場合、数が少ないので、少数統計になっているので非常に危ないです、いつも言っていますが、これ5年間平均します。5年間を平均したときに、男性が12.1%、女性が10.2%、ただし10.2%で、統計的揺らぎはプラスマイナス2%。だから、数が多い基盤(C)なんかは大体ならされていて、ちゃんと反映しているんですが、こちらのほうは、もちろん非常に注視して見ていく必要は絶対あると思うんですけども、ちょっと数字の問題の可能性も含まれているので、気をつけて扱われるほうがよろしいかと思います。
【白波瀬部会長】
ありがとうございます。大変基礎的なポイントで、絶対数が少ないのでこれは不安定でございます。注意して読まないといけないということを改めて感じました。ありがとうございます。
よろしいでしょうか。では、予定どおり大体進んでいるんですけれども、まだもう1件、案件がございますので、もし特にこの時点でなければ、また後ほど引き続きということもありますけれども、次に進みたいと思います。
では、続きまして、学術研究をめぐる課題の一つといたしまして、前回も御意見がございましたけれども、論文等のオープンサイエンスに係る現状について、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局の御担当者であります、赤池参事官のほうから御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【赤池参事官】
赤池でございます。内閣府の科学技術・イノベーション推進事務局でオープンサイエンス、それから研究データの問題などを担当しております。よろしくお願いいたします。
本日、特にオープンサイエンスの中でも、昨今話題になっています、論文等のオープンアクセスを説明させていただきたいと思います。
41ページからです。先に42ページを御覧いただければと思います。今、これも先生方には非常に身近な問題かと思いますが、学術出版社による市場支配が進んでおりまして、公開の場ですのであえて言いませんけども、A社、B社、C社による寡占がもう50%を超えているという状況でございます。また、この水平的な市場の問題だけじゃなくて、いわゆるその論文の先行文献の調査から研究成果の出版にかかるまで、垂直的な統合といいますか、そういうことも進んでいるという現状にございます。
また、下のほうにグラフがございますけども、私も使っていまして、これ自身はすばらしいビジネスモデルであると思うんですけども、大学や研究者にとって非常に大きいのが、やっぱり購読料や掲載公開料の高騰でございます。非常に大きく上がっていまして、もう一つは、この契約主体が、左側の購読料のほうは大学の図書館が主として契約をしていまして、掲載料のほう、APCのほうは、それぞれの研究者が研究費の中から払っていたりだとか、あるいはもちろん大学の中の補助制度にてお支払いしているというケースもありますけど、そういうことで研究者個々にということで、契約主体と交渉主体が違ってくるということも非常に大きな問題となっています。
こういう現状の下に、もちろん日本、それから、各国とも非常にいろんな対策を取ってきたところでございます。特にヨーロッパでは、プランSと言われているような、ファンディングエージェンシーを中心としたような措置、それからアメリカではプラットフォームの整備というような対抗措置を取ってきています。今回、G7の科学技術大臣会合を日本でホストするということもありまして、いよいよ日本もこの問題に本格的に取り組まなきゃということになったという次第でございます。
次のページをお願いします。G7でも、これは非常に大きな議題になっております。まず、これは首脳コミュニケです。首脳コミュニケに載るというのは科学技術では非常に珍しいケースですけども、そこでも、FAIR原則と、科学的知識と研究データ及び学術出版物を含む公的資金による研究成果の公平な普及による、オープンサイエンスを推進するということを強く言っています。
先ほどちょっと説明を省略してしまったんですけど、オープンサイエンスには、論文、論文の付随データ、いわゆるそれ以外の研究データ、それからプレプリントとか、非常に大きな、プログラムだとかコールとか、そういうものと経過を総体して研究成果と呼んでいます。それを公共の利益のために共有公開ということをしていきましょうということを理念としてうたっているというところでございます。
より具体的には、仙台で開催されました、科学技術大臣の共同声明にもお示しされております。これも本当に、一番最初の項目に、オープンサイエンスというのは明示されております。オープンサイエンスの拡大のために協力、先ほどFAIR原則というのを首脳会合でも示されていますが、科学技術会合でももちろん示されておりまして、オープンサイエンスのために協力するという一般論のほか、これも公的資金による学術出版物及び科学データの即時のオープンで公共的なアクセス、immediate open and public accessを支援ということでやっています。ヨーロッパでは、基本的にはオープンアクセスと言うことが多くて、アメリカではパブリックアクセスと言うことが多いんですけども、基本的には、同様に、学術出版物及びその付随データを即時に、公共に利用の可能な状態にするということでございます。
それからあと、研究成果のためのインフラの相互運用性及び持続可能性の促進、それから、インセンティブと報酬を与える研究評価アプローチを支援。「研究に関する研究」を奨励というようなことが盛り込まれております。また、ANEEX、別紙のほうに、オープンサイエンスのワーキンググループの報告と2ページついて、さらに、近日中に公開されますけど、この下にサブグループが3つありまして、G7においては非常に重厚な体系となっております。これが今の国際の状況でございます。
そういうこともありまして、私どもも、私どもCSTIと、文科省ほか関係各省、それから関係機関と相談しながら、これまで議論を進めてきております。昨年の秋から集中的に議論を進めまして、さきの6月9日に、統合イノベーション戦略2023に盛り込ませていただきました。また、これをさらに具体的にする形で、近日中というかできるだけ早期に、国レベルのオープンアクセス方針というものを明示したいというふうに考えております。
基本的にどんなことが入ってきますかということにつきましては、こういうことをします。2025年度新規公募分から学術論文等の即時オープンアクセスというのをまず、ターゲットとしておくということです。それで、そこをまずマイルストーンとしながら、いろいろ具体的な施策を考えていきましょうという構成になっております。
一番非常に大事で、我々1番目に挙げておりますのが、公的研究成果のプラットフォーム、NII・JSTでつくっておられますけども、ここにちゃんと充実をさせていくと。ここで、例えばといいますか、公的資金による学術論文の著者最終稿(バックデータ含む)の掲載を義務づけるということで、いわゆるグリーンオープンアクセスといわれているものをまず、基本とします。
このため、これと移行措置あるいは補完措置として、2番目に書いてありますとおり、掲載公開料の支援ということを考えてございます。これは各FAさんの御協力を得ながら進めていくということでございます。また、このほか、これがいわゆるグリーンとゴールドとよく言われる方針でございますけども、そのほかにも、これ非常に大事なんですが、学術出版社に対する交渉力の強化、国としての交渉体制の構築、それから研究者や研究コミュニティーの研究成果発信力の強化、それから国際的な連携というようなことを強化していくということでございます。
当然のことながら環境整備としまして、先ほど申し上げたその競争政策的なアプローチ、いわゆる独禁法における法的問題にはなりませんけども、やはりその健全な市場形成ということの環境ということもございますし、あともう一つは、これアカデミアの協力を得なければいけない話ですけれども、研究コミュニティーの自律性の確保と適切な評価システムの構築と、よく言われるインパクトファクターに過度に依存したような評価体系がこのような事態を招いているんじゃないかという御批判もあるところでございます。そういったことも合わせて、政策のパッケージとして、国レベルのオープンアクセス方針に盛り込んでいくという予定でございます。
これもちょっと、何でオープンアクセスしなきゃいけないかという話なんですけども、アメリカのOSTPなどは強くこれを言っているんですけど、特にCOVID-19のときに、各出版社も含めたいろんな努力があって、成果物、特にプレプリントのオープンが非常に進みまして、これによって、いい面ももちろん悪い面もありましたけども、治療薬やワクチンの開発にもつながったという側面もございますということで、一気にオープンアクセスの問題というのが再度注目を浴びたというところもございます。
ちょっとこれ、ビジーな文章になっていますけど、統合イノベーション戦略にはこんな書きぶりをしています。オープンサイエンスの推進ということで、先ほど申し上げましたとおり、研究データの話はこれ別の項目に書いてあるんですけども、オープンアクセスについては、一応このような形で明示をしています。
この一段落目は、基本的に背景でございまして、2段落目は、先ほど申し上げました、具体的な施策等を特に列記をしています。さらには、具体的な形のものとして、これからオープンアクセス方針というところに丁寧に書いていくということで考えております。
あと、ちょっとこの中段とかいろいろ細かくついておりますけども、その、2025年新規公募分からというのは、一応競争的研究費制度のうち、特に学術論文を主たる成果とするものということで、これからのオープンアクセス方針によって具体化してきますけど、常識的に考えて科研費は中心的な制度であるなということで、一応関係各省さんとも準備を進めているところというような状況でございます。
これも、骨太方針、新しい資本主義にも明示されておりまして、そういう意味では科学技術イノベーション政策だけではなくて、国レベルの重要施策として非常に認められている状況にあるということかと思っております。
ちょっとこれもテクニカルな紙で恐縮なんですけども、私ども先ほどからプラットフォームが大事だと申し上げています。何でこんなことを申し上げているかというと、今、出版社は非常なスピードで、購読料からAPC、出版のほうからお金を取るというモデルに急速に転換しつつあります。ある出版社さんなんかは、もう本当に2年、3年のうちに100%にしたいんだみたいな、強い意気込みを持っているぐらい大きな転換がございます。これ自身は我々も、大きな潮流としては不可避な状況かと思っております。
とはいうものの、じゃあこの青いところから黄色いところに転換することだけをオープンアクセスと呼んでいいのかというと、それは非常に大きな問題がございまして、今度オープンアクセスになってAPCのほうに行った後に、また、APCもだんだん当然のことながら、ビジネスとして上がってくるということを想定されますし、やはり、国としての出版プラットフォームを全部、商業出版社が持っているということも非常に大きな懸念材料ということがございます。
ということで、特にアメリカなんかは、いわゆるPubMedというような公的なプラットフォームを用意したりしていまして、日本でも、もう既に、機関リポジトリ、それからNII・JSTを中心とするプラットフォームの場所がございますので、そういうものをしっかり利用するということを堅持しながら、交渉に臨むというふうに考えております。こういった交渉方針を基に、国としての方針の下に出版社と交渉して、お互いウィン・ウィンの形でビジネスを展開できる方向に持っていけたらというふうに考えております。
次のページをよろしくお願いいたします。さらに次のページをお願いいたします。これは文科省さんとも今相談しているんですけども、先ほど申し上げたように価格交渉力の強化ということがまず、メニュー1としてございます。今、日本には大学が八百幾つかありますけども、その大規模な大学は既に転換契約の交渉なんかも始めていますので、そういうその大規模大学と、あとデジタル・U・ライブラリ、セーフティーネットという組合せで交渉体制を組んでいけないかというのが1つ目。
2つ目は、先ほど申し上げたプレプリントも含むプラットフォームの整備。
3つ目については、これはJSPSさんにもいろいろ御協力しているケースがあると思いますが、APCの支援ということでございます。そんな組合せで施策を展開していくというふうに考えております。
次お願いいたします。これは、プラットフォームです。身近なところでは機関リポジトリとそれをつなぐNIIのシステム、それからプレプリントや日本の学会のジャーナル、日本の学会のプラットフォーム、この辺りを連携しながら、しっかり国際的にもやっていきたい。特に、ヨーロッパにつきましては、European Open Science Cloudというカウンターパートのシステムございますので、G7の場なども通じて、国際的にもこの連携を広げていきたいというふうに考えております。
一応今申し上げたとおり、このための検討体制、交渉体制を整えていくということでございます。それで、6月9日に統合イノベーション戦略を策定しまして、早期に国としてのオープンアクセス方針を明示して、今年度、それから来年度にかけて交渉体制の整備や交渉を開始、それから、当然のことながら、FA機関、関係機関との調整も様々進めさせていただいて、新規公募分から学術論文等のオープンアクセスの開始を2025年度、それで2025年度以降に新しい契約方式を開始ということで、こういう総合的な施策を実現していくというふうに考えております。
ちょっと急ぎ足になりましたけども、私からの説明は以上でございます。
【白波瀬部会長】
大変ありがとうございました。ここまでの説明について、20分程度になると思いますけれども、先生方から御意見を賜りたいと思います。せっかくの機会ですので、どうかよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
では、中野先生、お願いいたします。
【中野委員】
どうもありがとうございました。2つほど質問あるんですが、まず、45ページにあります、その集団交渉力というか、個別に交渉するのではなくて、国がリードして、学術出版社に対する交渉力を強化するという、非常に大事だと思うんですけど、もう今年度、既にそれを始めていらっしゃるということなんですが、そこに参加している大学機関というのはどれぐらいの規模で、どういうふうにまとめていらっしゃるのかというのが、まず、最初の質問です。
2つ目の質問は、オープンアクセスになってよいことばかりじゃなくて、いわゆるプレダトリージャーナル、ハゲタカジャーナルという問題が一方で起こってきています。そういうのでビジネスしようとしている人たちが出てきているんですけど、そういうハゲタカジャーナルに対する対応というのは、国としてどのように考えていらっしゃるのかという、その2点についてお伺いしたいです。
【白波瀬部会長】
では、参事官、お願いいたします。
【赤池参事官】
1点目につきましては、まだもちろん交渉は、まず体制の整備ということで、各大学さんと相談をさせていただいています。今、これ文科省とも相談していますけども、51ページにありますとおり、大規模大学、総合大学の非常に大きなところから御相談を始めて、もちろん、あくまでも国の方針に基づいて、大学自身が契約をしていただくわけですから、そこには、この一種のコンソーシアムに乗る、乗らないというのは最終的には大学の御判断かと思いますので、この辺りを今、大きな大学から始めさせていただいています。
あともう一方で、ここにありますとおり、これは文科省のほうで準備をしていますけども、デジタル・U・ライブラリといって、機関でカバーされないものを、割と研究者ベースでアカウントを提供できるような、一種のバスケットクローズみたいなものも用意できないかということがあります。
当然のことながら、この大規模大学の数とマスと、それからバスケットクローズとのバランスによって交渉力が大きく変わってきますので、この辺りの組合せがどういうふうに行くのが、オールジャパンとして一番いいのかというのを、今、文科省や関係機関と相談をさせていただいて体制を整えつつあるところでございます。ですので、最終的にはこういうコンソーシアムのフレーミングは、もちろん国としてお示ししますけれども、そこに御参加いただくかどうかは各大学の御判断で、大きな大学からまずは声をかけて、調整をさせていただいているというような段階にございます。
2件目のハゲタカジャーナルの検証は深刻な問題でして、あと、これは私自身のホームのほうのNISTEPでもハゲタカジャーナルに関するレポートを出しています。これは、例えばAPC支援とか、あと転換契約における質の保障をどうするかということが、現実的な方法かなということでやっております。
ただ、これは当たり前なんですけども、このジャーナルがいいですよ、このジャーナルが悪いですよ、ハゲタカですよとリストをお示しするというのは、ちょっと国としての踏み込み過ぎだと考えておりまして、ですので、こういうところに非常に気をつけていただくとか、こういうところにファンディングエージェンシーの制度設計においては気をつけていただくだとか、大学さんのAPCの支援に対してはこういうところに気をつけていただくとか、そういうことにはもちろん留意をしていただくことをしますけど、基本的にどの雑誌がというのは、最終的にはアカデミアや研究者の御判断ということかというふうに考えております。そんな状況でございます。
【中野委員】
分かりました。どうもありがとうございます。
【白波瀬部会長】
ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
仲先生、お願いいたします。
【仲委員】
ありがとうございます。こういうことが進んでいるんだなというふうに思いました。ありがとうございます。
例えば、プレプリントの利用でいうと、分野ごとに、それが一般的に当然のように行われているという領域であるとか、そうでなくてやっぱりフォーマルに、発行されてからというふうな、それまでは出さないというような、例えば、プレプリント一つ取ってもそういう分野ごとの違い、あるいは人文社会系と自然科学系の違いというのがあると思うんですけれども、こういうふうな違いというのも議論になっているのかどうか教えてください。
【赤池参事官】
そういうことは議論になっております。特に学術会議から御要望いただいておりまして、そこでは個別分野での特性への配慮ということだとか、あと、一昨年ですか、文科省のジャーナル問題検討部会でもそういう議論があったと聞いております。もちろん、国、内閣府レベルでのガイドラインや方針については、どの分野がどうということまでは一応書くつもりはございませんけども、例えば分野ごとの特性にはしっかり配慮してやるべきというふうに考えておりまして、それは、例えば各ファンディングエージェンシーや、あとは文科省とよく調整をしながらやっていきたいと思います。
非常に端的に申し上げまして、生物系、臨床系、医学系はそういう権威のあるといいますか、出版物に成果を発表するという傾向がございます。ですので、非常にAPCの支援に対するニーズが大きいというところございます。ただ、物理系や、そうですね、数、物、情報系というとそもそも、新たなプラットフォーム、プレプリントや、場合によってはプレプリントですらない、自分たちでつくったプラットフォーム上で成果を発表してどんどんやるんだみたいな、そういう分野もございますので、そういう分野それぞれの違いに配慮して、一応、共通ルールは考えますけども、それよりも具体化する制度設計においては、当然そこは配慮すべきだというふうに考えております。
以上でございます。
【仲委員】
ありがとうございました。
【白波瀬部会長】
ありがとうございます。
では、大竹先生、お願いいたします。
【大竹委員】
ありがとうございました。オープンアクセスの推進は、おっしゃるように非常に重要だという中で、頂いた資料で参考資料になってしまうのですけれども、56ページのところに我が国の存在感の低下と中国の躍進というのをいただいていて、この中で非常に重要な指摘をいただいているのは、参画領域が日本は少ないということかなと。この赤の参画割合というのも減っているというのは、これは非常に大きな懸念点だと思います。今回のAPCをうまく使うというところについて、それによってこう参画領域を増やすとか、あるいは、参画割合を増やすという、そういった戦略と連結した話として受け取ってよろしいでしょうか。そこをちょっと教えていただければと思ったんですけれども。
【白波瀬部会長】
参事官、お願いします。
【赤池参事官】
もちろん、これは国民の皆様に税金でやった研究成果を利用可能にするというのが第一の目的ですけれども、我々といいますか、日本で研究者の皆さんがつくっていただいた研究成果が、より論文という形で見えるようにする、さらにそれがオープンで引用されるようにする、それがさらに存在感が高まるようにするということも、大事な目標であるというふうに考えています。恐らくこの辺りは、関係機関、ファンディングエージェンシーや、あとは、非常に大事なのはやっぱりアカデミアとよく御相談しながら、ちょっと丁寧な制度設計が必要かと思っています。
先ほど御質問もありました、多分、分野によって、支援の在り方だとか、あとそれから発表の在り方なんかも変わってきているところもございますので、総体として上げるような施策はしますけど、やっぱり、そこの個別分野になるとやっぱりアカデミアの協力、学会との協力って非常に大事になってきますので、その辺りはちょっとこれからも留意して、私ども考えていきたいというふうに考えております。
【白波瀬部会長】
ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。
では、華山先生、お願いいたします。
【華山委員】
ありがとうございます。先ほどの56ページで、中国がこの10年間、自国の雑誌への投稿を促し、支配力を強めつつあると上のほうに書かれてあります。実際我々も最近できた中国の雑誌とかは最初は相手にしてこなかったのですけれども、中国人がたくさんいい論文を投稿していった結果、最近ではインパクトファクターが10を超えるものもいっぱい出てきましたし、欧米の雑誌を凌駕するような雑誌も結構出てきつつあります。
一方、日本の各学会から出している雑誌にはAPCが無料のものも多くありますし、非常にいいプラットフォームがあるにも関わらず、日本人研究者が投稿しない。私も生化学会の雑誌の編集委員をやっているのですけれども、投稿してくるのはほとんど中国人ばかりです。その辺を意識改革といいますか、やはり国を挙げて日本の雑誌を育てていく、そういった視点もぜひ取り入れて頂ければと思います。
以上です。
【白波瀬部会長】
ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。
今、華山先生がおっしゃったことと関連します。少し前まで中国からの留学生は数は多いけれど質はちょっとといった感想をきくことも少し前まであったような感じなんですけども、私の分野でも、非常にいい研究をする子たちが本当に多くなっているんですよね。ですから、もう本当一昔前の話なのに、日本の動きが悪いというのは、懸念材料であることは確かなような気もするんです。その辺りも丁寧なところで分野の違いというのもあるかとは思いますけれども、ただこの話、スピード感を持って、本格的に展開するときに来ていて、こちらとして準備しないといけないという強い思いを本日も持ちました。
恐らく当事者としては、内閣府さんはもうかなり危機感を持ちながら展開されていると思うんです。ただ残念なのは、内部で十分情報共有できていないという感想を持ったんですよね、残念ながら。もっと一般の方々はこのあたり批判的に見ておられるかもしれない。この辺り少し、適宜、内閣府と文科省が情報共有して、議論を交わすことが重要だと思います。国際的にもオープンサイエンスについて重要な案件になっています。分野の違いがありますし、財政力の違いもその背景にあるということになりますので、研究成果を効率的に出していくための環境整備や指示が待ったなしで求められていると思います。どうかよろしくお願いしたいと思います。
先生方いかがでしょうか、そのほか。何かありますか。
ではちょっと2つだけ聞いてもいいですか、参事官。文系だとここはちょっと気になるところなので。今後説明のときに御配慮いただければということなんですけれども、やっぱりいろんなやり取りの中で、省庁や立場の違いでなかなか意思の疎通がうまくいっていない場面が、残念ながらあるかと思うんです。同じサイエンスというところでも。と同時に、この手の議論にあって、最後の落としどころが、最終的な決定は大学さんねという言い方を最後にされてしまうと、少々責任転嫁のような感想をもちます。その辺り国の方針というところは、国全体のということになってくると思いますし、親規定になります。そこの辺りの立てつけというか、体系のところはもうちょっとうまく御説明いただけると、誤解が誤解を招くようなことが少なくなっていくのではないでしょうか。懐疑的に互いの様子を探るのは、あまり生産的ではないように思います。
あと具体的なところで、国が交渉するというのが私の中で、イメージが少々つきにくいです、ここでは前面に立ってということになるのか、あるいは基本的にはバックアップということになるのか、この辺りの位置というのはどういうことになりますか。
【赤池参事官】
ありがとうございます。そこの説明の仕方ってすごく大事だと思っています。今、それそのものもちょっと制度設計をしているところであります。国が引っ張るぞということだとか、契約をするぞとかということだとか、もう少し丁寧にブレークダウンしてちょっと御説明したほうがいいかなと、精密に説明したほうがいいかなというのは常々考えております。
多分、国が引っ張るぞという意味においては方針を示して、もちろんその必要な、出版社と対峙するときに、一応国の方針として皆さん、各大学さんがこの方針でやっていますというところはあると思いますけども、じゃあ、先ほどもお話ありましたとおり、どの雑誌がいいので、どの雑誌が悪いのでということまで国が個別に口を出すかというと、多分そういうことではないでしょうし、多分そういうことをアカデミアも望んでおられないと思うんです。
だから、そういう意味では、この枠組みだとか大きな方針、例えば、我々が今言っていますのは、先ほどのペーパーにもありましたけども、最後は、理想的にはグリーンのプラットフォームですけども、まず、移行的、暫定的な措置としてAPCも支援することも大事ですと。ただ、APCだけじゃなくて、購読料とAPC全体が合理的な価格で設定されることが、国としては必要だと考えていますだとか、この国として考えるフレームの部分と、大学御自身が判断される部分と、あるいは本当はその個々の研究者の方が判断される部分というのを多分、もう少し丁寧に説明をする必要があるかなと思っていますので、そこは、体制整備だとか、契約方式などを詰める中で、よく誤解のないようにやりたいと思っています。
国、例えばヨーロッパですとフランスとかドイツでは、一つの契約主体が、国ではないですけども、一種のコンソーシアムが一つ、契約主体を持ってそれで契約をするようなスタイルやっていますし、アメリカなんかはもう当然のことながら、OSTPがどんと方針を出して、あとはファンディングエージェンシー、フェデラルエージェンシーたちがそれぞれの計画を立てて、あと大学についてはもう自由です、こういう国柄です。
だから、それぞれにおける国の方針の下にということについて、日本の国では、日本のこの件に関してはどう制度設計していくかということを、先生おっしゃるように、丁寧に、誤解なきように、ちょっと御相談しながらやっていきたいというふうに思います。
それから、文系の場合は、そもそも書籍とか別の出版形態というのが、成果の発表形態というのがございまして、今回に関しては、オープンアクセスについては論文とそれの付随するデータということですので、例えば経済学なんかはすぐ影響あるかもしれませんけど、多くの分野というか、その分野によっては影響の少ないところもあるかもしれません。
ただ、やっぱりそのオープンサイエンスという、より広い思想としては、成果を共有して、いろんな人が利用可能にするという思想そのものはやっぱり広くあるので、多分この辺りも、じゃあ、本とか全て、個々で書かれるものまで全部、対象になっているかというような、時々誤解を招くところもあったかと思います。
【白波瀬部会長】
そんなことはないと思います。もしかしたら城山先生とは違う意見かもしれないけど、やっぱり社会科学って、自然科学とそんなに外れているわけではないんですよ。もちろん心理学など、仲先生いらっしゃいますけれども、理系に近いところもあります。また、日本ではこれまでの経緯もあって、アプローチとか今までのトレーニングの在り方で温度差はあるかもしれません。ですので、文系の成果の特徴として書籍を必要以上に強調するのは、ちょっと違うかなと。
【赤池参事官】
分かりました。それは私の誤解です。申し訳ございません。
【白波瀬部会長】
本も出版事業も含めてレビュー云々ということになると、仕組みも位置づけも違いますし、日本の状況とも距離があります。ですのでこの辺りはもう少し、若い世代の人たちの御意見を聞いて、現状は変化していますし。私なんかの世代は、偉い先生がいてそこを中心に研究も進むといった閉じた世界のようなところもあったのですが、時代は変わっているんじゃないかというか、昔のやり方は無理だと思います。
【赤池参事官】
分かりました。ありがとうございます。
【白波瀬部会長】
よろしいでしょうか。
では、参事官、今日は丁寧にありがとうございます。
【赤池参事官】
こちらこそありがとうございます。
【白波瀬部会長】
大変お忙しいとは思いますけど、適宜情報共有していただけると、我々としてはすごくありがたいです。
【赤池参事官】
ありがとうございます。今回も御機会を与えていただいてありがとうございました。今週から来週にかけて積極的にアウトリーチをしておりまして、例えば来週、学術会議、26日、ここに日本学術会議のフォーラムだとか、あとは、幾つかの学会でも御説明させていただく機会がございます。先生方の学会でも、いつでも御説明に伺いますので、お声をかけていただければ幸いでございます。よろしくお願いいたします。
【白波瀬部会長】
大変ありがとうございました。
ありがとうございます。では、そろそろ、もう時間になりましたので、ここの辺りで区切りたいと思います。
本日は、科研費制度の全体的な論点と学術研究をめぐるオープンサイエンスに係る状況、アップデートをしていただきまして、大変有益でした。議論についても先生方から重要な論点が幾つも出ましたし、事務局に至りましては、宿題のほう、どうかよろしくお願いいたします。
本日いただきました御意見は、事務局において整理していただきまして、次回以降も引き続き、本部会で科研費の改善、充実に向けた議論を進めていければと思っております。
では最後に、事務局から連絡事項をお願いいたします。
【松本企画室長】
すみません、連絡事項の前にもう1点、報告事項がございます。
特別研究員関係について、御報告です。前期の研究費部会で議論いただきまして、今度は国際共同研究強化に関して、特別研究員のDCも応募できるようにするということにさせていただきますので、次のページをちょっと御覧いただいて、公募要領の応募資格のところについて、赤字で書いてありますけど、追記するということで、国際共同研究強化の公募要領を発出したいと考えていますので、御報告でございます。
以上です。
【白波瀬部会長】
大変ありがとうございます。また、円安で140円上がったので、厳しい状況が出てきているわけですけれども、修正のほうありがとうございます。
では、事務局からお願いいたします。
【梅﨑企画室長補佐】
それでは、事務局より事務連絡をいたします。
本日の議事録につきましては、各委員に御確認いただいた上で公開させていただきます。
また、次回の研究費部会につきましては、既に日程調整お願いしておりますが、御相談の上、開催日を設定させていただきますので、その際にはよろしくお願いいたします。
以上です。
【白波瀬部会長】
ありがとうございました。では、本日の会議はこれにて終了したいと思います。先生方、どうも今日はお忙しい中ありがとうございました。
以上です。
―― 了 ――
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