第11期研究費部会(第1回) 議事録

1.日時

令和3年3月29日(月曜日)14時00分~15時30分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 1.部会長及び部会長代理の選出等について(非公開)
  2. 2.第11期研究費部会における検討事項について
  3. 3.科研費の公募スケジュールの前倒し等について
  4. 4.その他

4.出席者

委員

大野委員、白波瀬委員、福田委員、井関委員、上田委員、大竹委員、尾辻委員、川端委員、中野委員、中村委員、山本委員、荒井委員、加藤委員

文部科学省

塩崎大臣官房審議官、先﨑学術研究助成課長、岡本学術研究助成課企画室長、中塚学術研究助成課企画室室長補佐、他関係官

オブザーバー

大野独立行政法人日本学術振興会システム研究センター所長、西村独立行政法人日本学術振興会学術システム研究センター副所長、永原独立行政法人日本学術振興会学術システム研究センター副所長、岸本独立行政法人日本学術振興会学術システム研究センター副所長

5.議事録

【中塚企画室長補佐】
 始めていただいて大丈夫でございます。よろしくお願いします。
【大野部会長】
 ありがとうございます。それでは、議題の2に進みたいと思います。
 第11期の研究費部会における検討事項についてです。先日、第6期の科学技術・イノベーション基本計画が閣議決定されましたので、研究費部会で議論を始めるに当たり、まずは科研費を取り巻く政策動向や課題を含めて、事務局から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。
【岡本企画室長】
 それでは、企画室長の岡本から御説明をさせていただきます。
 資料3、それと参考資料を使いながら御説明をさせていただきます。まず資料3を御覧いただければと思います。第11期の研究費部会における当面の審議事項等について、ということでございます。
 1つ目の丸からです。令和3年3月26日、先週の金曜日、第6期科学技術・イノベーション基本計画が決定され、基礎研究・学術研究の振興のための具体的な取組といたしまして、科研費については、研究者のキャリアに応じた独創的、挑戦的な研究課題を支援する科研費について、若手研究者支援、新興・融合研究や国際化の一層の推進、審査区分の見直しなど制度改善を不断に進めつつ、新規採択率30%を目指し、確保・充実を図るとされたところでございます。
 この基本計画につきましては、本日、参考1-2としてお配りをさせていただいております。また、この新規採択率30%でございますけれども、前期の本部会におきまして、1月におまとめいただきました「第6期科学技術・イノベーション基本計画に向けた科研費の改善・充実について」の中でも将来的に目指す科研費の予算規模について、ということでの御議論をいただきまして、全体として新規採択率30%の達成を目指す必要があるということで報告をおまとめいただき、この基本計画にも反映をしているところでございます。
 2つ目の丸でございますが、今申し上げました本部会前期の報告書の中の3つ目の事項として、中長期的に検討すべきことがございます。この中長期的に検討すべきことに掲げられた下記の事項、全体で6つほど挙げさせていただいておりますが、こちらを中心に審議を行うということ、また、それらのうち既に令和2年度の公募において改善を行うなど、取組を進めている事項につきましては、今後数回の応募動向、研究者のニーズを確認した上で、適当な時期に検討することが適当であることから、最新の取組状況を記載させていただいております。
 検討に当たっては科研費のみならず、他事業による支援状況や研究をめぐる環境の変化等も踏まえて検討することが必要であると考えております。次の6項目の説明に入る前に参考資料3を御説明させていただければと思います。今回、第11期の第1回目ということで、半分以上の委員の方々にお代わりいただいたところでもありますし、科研費の基本的なことになりますけれども、参考資料3を用いまして、科研費について最新の状況なども御説明をさせていただこうと思います。
 スライドの2ページ目になります。科研費とはということで、ポイントを3つ挙げさせていただいております。1つ目が、全ての分野を対象とするもので、あらゆる学術研究を格段に発展させることを目的とする競争的資金であるということ。2つ目が、ピアレビューにより助成対象を選定するということで、研究者コミュニティーから最も評価されている制度といっても科研費は過言ではなく、その信頼性を支える重要な要素は、半世紀にわたって不断の改善が図られてきたピアレビューの審査システムであるということ。3つ目が、豊かな社会発展の基盤となる独創的、先駆的な研究に対して助成するということでございます。
 次のスライドをお願いいたします。科研費の位置づけを示しているものでございますが、研究の性格、資金の性格に分けて、簡単な図を示していますが、科研費は、研究者の自由な発想に基づく学術研究を支援するものであり、競争的に研究費を配分するということで、左の上のところに位置しております。
 次のスライド、こちらが研究費マップですが、我が国の研究費につきまして、大まかなマッピングをしたものでございます。研究の契機が縦軸になっておりまして、下が研究者の内在的動機、上に上がるに従って政策的要請が強くなるということ、横軸が研究の性格によって、基礎研究、応用研究、開発研究という分け方をしております。
科研費につきましては、学術研究ということで、縦軸は下のところ、研究者の内在的動機に基づくもので、さらに基礎研究、応用研究のところ半分ぐらいまでカバーしておりますが、その上にあります戦略研究、要請研究に移っていく、研究の種といいますか、そのきっかけになるような研究を非常に幅広く支援をしているというところが特徴になっております。
 なお、この研究費マップですけれども、下に書いてありますとおり、平成27年1月に学術分科会がまとめたもので、試案として作ったものでございますので、ほぼ5年ぐらいたっておりますので、現在は、特に戦略研究、要請研究には、新しい研究費なども出てきているということはございます。
 次のスライドでございます。科研費事業の概要ということで、科研費の応募件数、採択件数、採択率の推移を示させていただいております。R2年度のところ、一番上のところの水色の線、これが応募件数になりますけれども、10万4,158件になっております。平成28年度から10万件を超えるような状況になっております。下の線が新規の採択件数の推移でございます。令和2年度が2万8,569件ということで、下に括弧書きで採択率を書かせていただいております。最新では27.4%になっております。非常にたくさんの応募件数があるということが科研費の特徴になっております。
 次のスライドでございます。こちらが令和3年度の予算額になります。2,376億5,000万ということで、前年度と比較いたしますと、3億円の増ということになっております。科研費の予算額の推移がありますが、ここ数年、数億円ぐらい、2018年度には補正予算などもありましたけれども、少しずつ増えているという状況でございます。
 令和3年度の特徴といたしましては、事業の骨子のところに3つほどございますが、一番大きな話としては、1つ目でございます。研究成果の切れ目ない創出に向けた多様かつ継続的な研究活動の支援の実現ということで、基盤研究の(A)(B)を拡充したということでございます。また、2番目の新興・融合領域の強化ということでは、挑戦的研究を拡充、さらには令和2年度に創設しました学術変革領域研究(B)を拡充しております。3つ目は、基金化種目である国際共同研究強化(B)を引き続き推進したということでございます。
 次のスライドをお願いいたします。科研費の研究種目の役割と全体構成ということで示させていただいておりまして、赤枠で囲まれた種目が基金化種目ということでございまして、比較的少額の研究費が多くなっております。基盤研究(C)、研究活動スタート支援、若手研究などです。また、左側の国際共同研究加速基金、こちらについては全て基金ということになっております。「学術変革研究」種目群では、挑戦的研究が現在基金化されているということで、基金化については、非常に多くの研究者の方々から、全てを基金化して欲しいということを常に言われておりますので、これからも進めていく必要があると考えております。
 その次のスライドが学術変革領域研究についてでございまして、新学術領域研究を発展的に見直して、現在この学術変革領域研究になっております。特に(B)が、新たに設けられたものでございます。
 次のスライドを御覧ください。科研費における若手研究者への支援の重点的な強化ということでございます。統合イノベーション戦略2020に掲げられた数値目標がございまして、2023年度までに科研費における採択件数に占める若手研究者の比率が、応募件数に占める若手研究者の比率を10ポイント以上上回るということ。文章で読むと多少分かりにくいですが、下に図があります。令和2年度の状況を見ますと、全応募件数に占める若手研究者の応募割合が30.3%、これに対して、全採択件数に占める若手研究者の採択割合が40.3%ですので、この目標は、2023年度を待たずに、現在既に達成をしているというところでございます。若手研究につきましては、令和元年度に採択率40%を達成しておりまして、それを引き続き維持しているところでございます。
 次のスライドが、科研費審査システム2018の概要ということで、平成30年度助成から大きく審査システムを変更しているところでございます。現在は大区分、中区分、小区分と分けまして、審査方式としては総合審査方式と2段階書面審査方式を採用しております。
 次のページを御覧ください。次のページは先ほど御紹介した科学技術・イノベーション基本計画の関連部分の抜粋、その次のスライドを御覧ください。こちらには、この基本計画と研究費部会の報告書の国際化に関連する部分をしております。上にありますのが基本計画の部分でございますが、国際共著論文数からも世界の研究ネットワークの中で我が国の地位が相対的に低下し、国際頭脳循環の流れに出遅れていることが見て取れるということ、このような状況は深刻に受け止めるべきであるという記述がございます。
 本部会としても、1月にまとめました報告書におきまして、世界的に注目される国際的なネットワークの中で実施すべき研究の支援及び世界をリードし得る若手研究者を育成するための取組を一層充実する必要があるということをまとめております。
 最後のスライドですけれども、こちらは昨年の財務省の審議会になりますけれども、財政制度等審議会の主張を御紹介させていただきます。ここでは、Natureの論文、また、OECDの調査結果などを引用しながら、トップ10%論文数の伸びにおける英独と日本との差は、国際共著論文の伸びの停滞があるということ、また、日本の開放性は、先進主要国よりも低いという指摘がされているということでございまして、国際化の観点で科研費については、現在、国際共同研究加速基金を設けておりますけれども、取組をさらに考えていく必要があるのではないかということでございます。
 恐縮でございますが、資料3にお戻りいただければと思います。資料3で挙げさせていただきました事項について御説明いたします。1つ目が国際共同研究の改善・充実についてということでございます。現在、科研費におきましては、国際共同研究加速基金を創設いたしまして、国際的に活躍できる独立した研究者の養成にも資する取組を支援しているところでございます。こちらにつきましては、最近でも幾つかの改善などを行っているというところでございます。2つ目のポツに書いてございますが、「国際共同研究の更なる推進のためには、世界的に注目される国際的なネットワークの中で実施すべき研究の支援及び世界をリードし得る若手研究者を育成するための取組を一層充実する必要がある」ということ、これが1つ目でございます。
 2つ目は、「科研費において対象とする研究者の範囲と必要とされる金額設定」ということでございまして、大きく2つに分けております。1つ目が研究者の範囲についてということでございますが、この見直しを行う場合は、これまで応募できていた者の一部が応募できなくなるなど極めて影響が大きいということで、慎重に検討していく必要があるということでございます。
 また、諸外国の状況を見ますと、研究代表者として応募できる者は通常PIと称される研究主宰者でございます。毎年応募件数が10万件を超える現状に鑑みれば、科研費においても、応募資格の範囲について検討する必要があるのではないか、ということ。また、検討に当たりましては、府省共通研究開発システム(e-Rad)に登録されている研究者の情報を活用する、また各機関を対象とした応募資格者に対する実態調査などを行う必要があると考えられます。他方で、若手研究者支援の一環として、科研費により雇用される若手研究者が一定の条件の下、競争的研究費への応募や研究活動を行うことを可能としていることにも留意する必要がございます。
 2つ目といたしまして、基盤研究の在り方についてということでございます。1人または複数で行う独創的、先駆的な研究を支援する基盤研究の応募件数が大幅に増加する中、デュアルサポートの原則を維持した上で、この種目についてどのように考え、今後の厳しい財政状況の中でどうしていくべきかということ。検討に当たりましては、個人研究費等に関するアンケート調査、こちらは平成28年、5年ほど前に一度実施しております。本日の資料でもその結果をつけさせていただいておりますけれども、当時の状況といたしましては、年間の個人研究費、機関から措置されているものは、国公私立大学の別によらず、50万円未満が約6割、100万円未満が約8割という結果が出ております。改めて、このような調査を行って、最新の状況を踏まえて、検討していくということが必要かと思います。
 また、分野や研究方法によっても必要な経費が異なることに留意するということ、また、先ほども少し基金についてお話させていただきましたけれども、全種目の基金化を引き続き推進するということが必要かと思います。
 3から6まででございますけれども、これらについては、既に、令和2年度公募において改善を行うなど、既に着手していることが幾つもございます。これらの状況を踏まえながら、本部会におきましても、必要に応じて検討していくということをお願いしたいと思っております。資料の説明は以上になります。よろしくお願いいたします。
【大野部会長】
 岡本室長、どうもありがとうございました。
 それでは、ただいま事務局から説明のありました内容を踏まえ、第11期の研究費部会において議論すべき事項等について、皆様方から御意見を伺いたいと思います。
 本日は第11期研究費部会の初回でございますので、御出席の委員皆様から御意見を伺いたく、まずは1人3分を目安に御発言をお願いいたします。初回ということもありますので、名簿順に御意見を伺いまして、その後、時間に余裕があれば、御自由に御発言いただくという形で進めさせていただきたいと思います。
 それでは、まず白波瀬委員から御発言をお願いいたします。
【白波瀬委員】
 前期に続きということですけれども、議論自体が学術ということなので、その分野横断的なというか、その分野にかかわらず、という点についての議論だったと思います。ただとても基本的な話ですけれども、競争的資金と、基盤という大きく二つの部分があると思います。中長期的な投資をする場合の手段の違いについては、全てを競争的資金の中で入れ込むことの問題というのはあるのではないかと、考えます。この点につきましてこれまでから継続して議論されたところだと思いますし、中途半場にこの議論を終わらせないようにすることが大切と思います。中長期的な投資こそが学術の足腰の強さということになりますし、競争的資金の部分とは適宜区別しながら、最大限にその手段としても活用できる学術の在り方というのはバランスよく議論すべきではないかと考えています。
あと、このコロナ禍にあって、国際的な動きが見えるようで見えなくなっています。どれくらいの速さで変化しているのかがわからないまま、蓋が開いてみると遅れてしまったということになるわけにはいかないので、そこも含めまして、よりバーチャルなところでの、学術の交流を積極的に行う場合の支援の在り方については、この研究費部会のところでも、少し力を入れて検討してもよいのではないかと思います。よろしくお願いします。
【大野部会長】
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、福田委員、お願いいたします。
【福田委員】
 少しお話をさせていただきたいと思います。私はこのところいろいろ、特にコロナ禍で、大学がどんなふうになっているかという辺りについて、実際にその真っただ中でいろんなことをしていたので、そういう中で考えていたことですけれども、この時代がこれまでと同じではもう駄目ではないかと。だから、これまでの延長線上にいろんな施策をやるだけでは少し時代遅れになるのではないかという懸念がずっとありまして、だからこういう、ニューノーマルという言葉が何度も使われていて、これまでも、それで何かなったという感じがあまりないのかもしれないんですけど、少なくともコロナの後で、学術のありようは変わらざるを得ないと思っています。
 特に、今さっき白波瀬先生からもお話がありましたけど、国際化はありようが変わっているんだと思います。サイバー空間のコミュニケーションが発展する中で、日本みたいな国は、新しい国際化のありようを模索するような必要があるので、これをどういうふうに国内で構築し、世界に打って出るかという、その学術の国際化のありようを考える必要があるのではないかというのが1点目です。
 それからもう1点目は、時代が大きく動く中で、いろんな融合研究が非常に重要だろうということです。融合研究のありようですが、例えば新学術領域みたいなところの複合領域では、かなりそれを意識したいろんな取組があるんですけれども、一般的な学術においてもその融合的なものを見せる工夫が必要ではないかと思っています。とかく個人研究だけだと自分の思いだけで仕事するんですけれど、世界が大きく動いている中では、そこにも広い視野を与えられるような何か仕掛けが必要ではないかということ、これが中長期的に見たときの課題だと思います。
 それから、喫緊の課題としては、科研費の件数が増えているとか、科研費の応募資格者などに関して、科研費の構造に少しだけひずみが出てきているように思いますので、審査体制のロバストネスみたいなことも含めて、議論が必要になるのではないかと思っております。以上です。
【大野部会長】
 ありがとうございました。
 それでは続きまして、井関委員、お願いいたします。
【井関委員】
 井関です。私は前期から今期も引き続き、この部会の委員として仕事をさせていただくわけですけれども、前回からの反省というか、もっとやらなければいけないというのも改めて感じているところです。
 国際共同研究に関しましては、先ほど事務方から見たトップ10%論文のところでイギリスやドイツが数全体を非常に伸ばしているにもかかわらず、何でこんなに伸びないのかと。先ほど福田委員がおっしゃったように、国際共同研究というか国際関係というのは、大分オンラインによって頑張ってうまく取り入れれば非常に進むようになっているんだとも思います。ですから、このコロナ禍をチャンスに国際共同研究を充実させるのは大事なことではないかと。もちろん、国際共同をする必要がないんだという意見もあるかもしれませんけれども、このトップ10%上部の数を見ているだけですと、国際共同研究を改善・充実していくことが必要であるとは思っております。
 また、科研費の立ち位置に関しましては、科研費も、これまで減額することなく増えてきていると思います。一方、若手がなかなか入ってこないということで、実は研究者人口はどうなっているのかと思っているところですが、この辺り、キャリアパスのみならず、研究が大学院生からPIになっていく過程でどのようになされるべきなのかというのもある程度考えた上で研究費の種目の設定をしていくとか、そういう状況にないと、特に生物系ですと、ある程度経験というものも、研究のヒント、新たな研究を考えるのに必要な部分がありますので、この辺、若手のみならず、中堅辺りも一緒に何かうまく研究を盛り上げていくような研究費制度というんでしょうか、研究システム、共同研究利用なども含めた上で考えていく必要があるのかと考えております。以上です。
【大野部会長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして上田委員、お願いいたします。
【上田委員】
 私自身は企業の基礎研に属していまして、大学の教員ではございませんで、研究予算面で皆さんのように苦労はしていないのですけれども、昨今若手研究者がドクターに残らないという傾向は数年前から始まっていて、最近はますます顕著になってきています。その原因は、今、AIだとか機械学習だとかという分野において、GAFAが全世界的に人を集めていますので、研究もできるし報酬も良いということで、学生もそちらに就職していきます。この科研というのが日本においてどういう役割をするのか。純粋に基礎研究をするためのファンディングか、日本の研究力もしくは産業力という、その下支えになるような人材を育てるのか、その辺も改めて明確にしたほうが良いと思います。
 つまり、日本の国力の支えという意味での学術を発展させようという観点で言えば、あまりこれだけ研究人口が少ない、しかもそんなに資本もないとなったときに、あらゆる領域に均等に投資していたのでは、どんどんじり貧になっていくのではないかと。何かその時代時代で徹底的に投資しないと、もう数では中国には圧倒的に勝てないですから、質で勝負すべきかと。優秀な若手研究者をどう育てるかといったときに、何か一律スタンダードな感じで広くあまねくなんてやっていると、勝負すべき領域の研究者には資金がいかないので、少しこういうところも今後議論になるのかという感じはします。
 若手育成という感じで若手にバイアスかける制度がどんどんできて、良いことではありますが、何かあまり中途半端な研究で、単に若いから得をしているということだと、それはあまりよろしくないので、その辺も議論かと思います。以上です。
【大野部会長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして大竹委員、お願いいたします。
【大竹委員】
 大竹でございます。ありがとうございます。私自身、東工大に基礎研究機構というのがありまして、そこで若手の助教さんを教える塾をやっています。その塾の塾生に聞いてみると、科研費は中心中の中心で、これがないとなかなか自分の研究は成り立たないと。その背景には、今の話と若干違うんですけれども、自由に研究ができる、学術研究が自分の意思でできるところが大きいのかと思っていますし、若手にとって科研費というのは極めて重要なのかと再認識しているところでございます。
 その中で、岡本室長からお話ありましたとおり、これから若手それから国際というのがキーワードになるとすると、これまでのお話のとおりで、ポストコロナはやり方が既に変わってきているかと私も思っておりまして、特に研究者のネットワークを組むときのやり方は大きく変わったと認識しております。ですので、若手のうちから自分のネットワークを組めるような、そんな仕組みというのが、国外もそうですけれど、国内についてもあっていいかと思います。
 この議論は少しぼんやりしているんですけれども、2点目を申し上げることで明確化したいと思います。2つ目に申し上げたいのは、第6期の科学技術基本計画、これも先ほど御紹介ありましたけれども、多分いろいろなところに書かれているでしょうけれども、一番明確なのが、82ページに書かれている、人文・社会科学も含めた「総合知」を活用できる仕組みを構築すると。この際、未来社会像を描き、そこからバックキャスト的アプローチで政策の体系化を図るということがあります。理系と文系という言い方になるかもしれませんけれども、こうしたネットワークを組むというところは、先生方御存じのとおりですけれども、恐らく第6期の大きく変わったところだと思いますし、ここを若手のネットワークと絡めてというのは言い過ぎになるのかもしれませんけれども、これからの若手に期待する活動として、私自身は、そういった種目と言ったら言い過ぎですけれども、そういった分野も尊重していったらどうかと思っているところでございます。多少長くなりました。以上です。
【大野部会長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして尾辻委員、お願いいたします。
【尾辻委員】
 尾辻でございます。私は現在も学術振興会の学術システム研究センターで主任研究員を務めておりますが、科研費改革2018の制度設計から携わって今に至っている次第でございます。様々な審査方式それから審査区分等に抱えている問題を一つずつ改善を施して今に至っているところでございますが、今、多くの委員の皆様から御指摘がありましたように、幾つかのまだまだ改善すべき点を指摘させていただきたいと思います。
 1つは、第6期科学技術イノベーション基本計画が閣議決定されました中で、前面に押し出されているのが「総合知」という言葉で、人文・社会学も含めて全分野の知を結集するというところ、そういった形で、つまり研究者の内在的なウィルで自由に研究計画を策定できる、唯一の税金を投じて最大のファンディングシステムでございます科研費制度は、分野を問わず、あらゆる領域の研究を下支えするところが非常に重要でございます。上田委員がおっしゃられるフラット過ぎるのではないかということについての御批判については、恐らくJSTそれから国プロ等で、重点領域についてはまた手厚くその上に支援を施していくべきかと。
 一番若手として問題を感じておりますのは、これはキャリアパスの大学等の研究機関のポストと表裏一体な面がございまして、安定したキャリアを培うことができにくくなっている現状だと、どうしても近視眼的な成果主義に走りがちになってしまう。そういったところを、できるだけ長期的な視野に立って計画を立ててキャリアを育んでいただきたいということで、例えば挑戦的研究の枠を広げていったりしていることもございますが、デュアルサポート体制の回復なくしてはないかと。つまり大学の基盤的経費で研究の苗床を広く育てて、その上にさらに格段に進んだすばらしい課題を広くあまねく科研費で支援する、そういった基盤的経費とこういった科研費のバランス、それからトップダウン型の重点的な研究支援施策とのバランス、そういったものを総合的にこの研究費部会で審議し、正しい方向づけができていければよろしいのではないかと思います。
 国際的な部分につきましては、現在、国際共同研究加速基金等のシステムが現行の科研費の中では入ってございますけれども、私ども制度設計に携わった者としても、十分な制度ではないという問題意識は持っておりますので、ぜひそこのところは議論を深めて新しい方向に改良していっていただければと思います。以上でございます。
【大野部会長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして川端委員、お願いいたします。
【川端委員】
 川端です。初めてなので、あらぬ方向をしゃべるかもしれませんが、お聞きしていて、JSTの運営会議だとか、それから総合政策特別委員会とか、この辺の話に関わってきたんですけれども、久しぶりに科研費のところを見たときに、先ほど御説明あったように、科研期の位置づけ、ポジショニングという、それが自由な発想と政策課題と切り分けているのが、多分これ、混ざってきているんでしょうね。今、JST側の創発であったり、新たな事業、それから10兆円ファンドであったり、こういうものがどんな展開していくかと言えば言うほど、この辺のゾーン、極端なところは確かにボトムアップではないのは確かですけれども、この真ん中辺のゾーンというのは多分ボリュームゾーンになっていくような気がしています。そういう中で、科研費自体の特徴というものをどこに持っていくかというのをはっきりしたほうが、もっと強く出したほうがいいのかと。
 個人的には、政策課題型というのはどちらかというとどんどん関わる人たちが絞られていく一方で、科研費のこちら側というのは多様性が出てくるという意味では、先ほどから出ていますような「総合知」という、この辺って、十数年前から文理融合だと言いながら全然融合しないままで十数年たって、いまだにどうやったらするかも分からない。それこそこれは政策課題だけれども、絞ったら絶対答えは現れてこないので、科研費のように多様な部分をいっぱい出していって、そこから何が生まれるかというアプローチという、政策課題だけれどもボトムアップ型のものという、そういうようなものが次に求められていく世界じゃないかという気がします。
 そういう意味で、政策課題と言いながら、研究者はみんな社会の動きに対して影響を受けていますから、影響を受けているというよりはアンテナがしっかりしているので、例えばDXの話にしたって政策課題以外のところでも山盛りやられている話であって、そういう意味では、ハンドリングのさせ方だとかというのをもうちょっと新しいゾーンが出てくるかという、そんなような気がしました。
 ぜひ科研費のこういうシステム自体が国にもつながるようなシステムとして相乗りすりゃいいかという気もしないですかね、JSTとJSPSは。分からないですけれども。そんなようなハンドリングもあればいいかと思いました。以上です。
【大野部会長】
 どうもありがとうございます。それでは、中野委員、お願いいたします。
【中野委員】
 先ほどの尾辻委員の御意見にかなり近いのですけれども、科研費に挑戦性というものを取り戻す、特に若手の段階から挑戦的な研究を行っていくができるようにするのが非常に大事だと思います。そのために、先ほどデュアルサポートの大事さというのも出てきましたけれども、若手が挑戦するには、それに加えて若手が自分のキャリアのビジョンを描けるということ、若手が終わった後、自分はどう育っていきたいかということが制度の中で見えてくるようにする必要があると思います。だから若手だけではなくて幅広い層に対する支援が必要ではないかと思います。科研費改革だけではこういうことを実現することはかなり難しいので、他の制度であるとか大学であるとか、そういうところと連携協力していくことが重要と思います。
 国際化についても、なぜ国際化が必要かという目的、ゴールを見据えた国際化が必要です。日本の資金だけではなかなか進めていけないような大きな研究を日本で行う。国際競争というより国際連携で、その中で日本がイニシアティブを取っていくというのは、そのための戦略性というか、そういうものが実現しやすい環境を整えていく必要があります。これについても科研費だけで実現するのは難しいので、他の制度との役割分担であったり連携であったり、そういうものが重要になるのではないかと考えています。以上です。
【大野部会長】
 ありがとうございます。それでは、続きまして中村委員、お願いいたします。
【中村委員】
 中村です。私もこの科研費絡みを十何年やってきて、かつ、10期でもこの委員会でいろいろと見させていただきました。科研費そのものはかなりいいところまで来ていて、もうそれほどいじるところはないんじゃないかと思っています。一番の問題点は、金額が増えない。世界的にどんどんお金が基礎研究に回っているところで、相対的に見たら日本の基礎研究資金はどんどん細っているわけですけれども、そこに尽きると思います。
 そういう意味で、今日も最初に岡本さんから指摘があった、科研費は独創的で先駆的な研究に対して助成する。これは非常に大切なわけですよね。基盤Cが段々基盤的公費の肩代わりになっているというのは、要は科研費の趣旨がそこで曲がっていることを意味しているわけです。科研費は独創的・先駆的であることを守っていかなきゃいけないと思いますので、それに対しては、この純粋でない部分が入ってくるのをいかにして防ぐか、ということが重要と思います。今の枠に基盤的校費の肩代わりをさせることを続けていくと、科研費そのものの意味が分からなくなってしまう。この危機感は、この2年間、特に持っています。
 もう1つ、内閣府が出してくるいろいろなものが、科研費の枠組みから遠いところにどんどん来ている。基本的にはJSTに落ちてくるわけですね。ですから、そういう新しい仕組み自身が、科研費を伸ばす方向とは逆に向かっていることがかなり気になります。
 まとめますと、科研費そのものはかなりいいところに来ていると思うので、中でたたき合うというよりは、何か枠を増やす、例えば今回、国際事業の資金が別にできましたよね。そういう形で科研費の枠に近いところで外に向かって広がるような施策が重要かと思います。特に文部科学省の方にお知恵を出していただいて考えていくことは、一番まず重要な課題かと思っております。以上です。
【大野部会長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして山本委員、お願いいたします。
【山本委員】
 山本でございます。資料3-2のところでございますけれども、基盤研究の在り方ということで、これまで科研費全体合わせて30%の採択率を目指すという方向でやってまいりました。その結果起きていることが2つあって、充足率が非常に低くなっている。平均すると70%ぐらいでしょうか。正しい数字は分からないですけれども。それからもう1つは、もうかなりの長い期間、この上限額が変わってないことです。この問題は、正面から考える必要があると思います。もちろん、国の厳しい財政事情のことを考えますと、すぐに解決できる問題ではないけれども、10年ほっとける問題でもないです。なので、この2つの課題というのは、常に議論されるのですが方向が見えて来ない状況です。しかし、ある方向性を見いだしたいというのが一つの希望でございます。
 それから、もう1つ申し上げさせていただきたいのは、今、様々な政策課題にオリエントした事業との関係が議論されておりますけれども、ある政策課題に関してある大きな予算をつけること、研究者としては大変うれしい面があると同時に、一方で、これはある面、政策誘導になっています。もちろん、そこに飛び込む、それは大事なことですし、それは研究者の自由ですけれども、学問全体の自由というところを本当に保障しているのも科研費です。ここのところを守らないと、そういう事業と一体化していくときに非常に危険なことになる。つまり、今、政策的に大事だからやるのだという、それはもちろん大事だけれども、それと本当に基礎をやることは別のことだと私は考えております。これについては異論があると思いますので、いろいろこれから議論させていただければと思います。以上です。
【大野部会長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして荒井委員、お願いいたします。
【荒井委員】
 荒井です。私、昨年度の4月に教授になったばかりで、皆さんのようにちゃんとしたものが言えるか分からないのですが、最近JSTの創発の運営委員もやらせていただいて、あとACT-Xなどにも参加させていただいている感触から申しますと、若手重視なのはいいんですけれども、若手を実際に育てている中堅の先生方の支援は大丈夫なのかと思うところがあります。学術変革の(B)に関しても(A)に関しても、若手重視にかなりなってきていて、ただ、若手さんというのはまだ経験が浅い人も多いですのに、お金が降ってくるという状況になってはいないかというのが気になっているところです。
 資料3の2のマル1の2つ目ですか、PIと称される研究主催者が応募云々というのがあるんですけれども、これが気になったんですけれども、若手の人たちって、なかなか今、日本のシステムでPIになれませんので、これをやってしまうと、若手の人が逆に資金が取れなくなるんじゃないか。何か相反したようなことを言っているかもしれませんが、そういう感じがします。
 あと、最後に、研究の分野によっての研究費の差というのは昔から感じておりまして、私、主人は化学系の研究者で、私は生物絡みのことをやっていますが、結構必要な研究費が違っておりますので、その辺がうまく反映できるようになっていけばいいのではないかと思いました。以上です。
【大野部会長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして加藤委員、お願いいたします。
【加藤委員】
 加藤でございます。私は、この資料3の中で一番気になった点は、基盤研究の在り方です。デュアルサポートの原則を維持した上でと書かれていますが、別添の資料とかを拝見すると個人研究費は減っているわけで、本来は自由な発想で基盤研究でやるはずの研究経費が、大学から本来手当てすべき研究に使われてしまっているという例はかなり多いのではないかと考えております。どうすればいいのかというのは、私もすぐに何かということはありませんが、基盤研究を手厚くしてほしいというのは、私の周囲の研究者の方、皆さんそういう御意見をお持ちの方が多いので、今後の基盤研究の在り方を議論する必要があるのではないかと考えております。
 それから、あともう1つ気になっているのは、学術変革などの若手研究者の重点支援、そういう新しいシステムは非常にすばらしいいいことだと思いますが、若手研究者の方自身も今しか研究経費が取れないのではないかと非常に怖がっていて、結局、もらった研究経費で結構成果が早く出るもの、そういう研究にシフトする、そういう例を私の周りで幾つか見ているので、若手だけを支援するのではなく、若手の今後も考えていく必要が非常にあるのではないかと思っております。私からは以上でございます。
【大野部会長】
 どうもありがとうございました。非常に論点がたくさん出てきたと思います。全員の方に1巡目は御発言いただいと思います。
 それでは、2巡目ですけれども、私自身も発言いたします。様々な論点がある中で、一番大きなものは、全体のシステムが機能しているかということです。デュアルサポートを言っていますが、本当にデュアルサポートができているのか。特に若手の人も含めて、キャリアパスがある程度見えないと挑戦的な研究もできませんし、そういう環境をサポートでどうやってつくっていくのかは、もちろんこの研究費部会だけでできることではありませんが、そういうことも踏まえつつ、我々としては様々な提言をしていく必要があると強く思いました。
 次に、国際性についてです。新型コロナウイルス感染症に関して見ると、これに関する研究の成果が非常にタイムリーにいろいろなところから発信される中で、我が国からは必ずしもそこまでタイムリーでもなかったという印象を、私は持っています。このことをどう解釈するのかはよく分かりませんが、国際的なネットワークから外れてしまったためか、あるいは我々がふだんから新たなことに対応できる余力がないためか、これをやってみようとか、これは重要だということに、なかなか対応できない体制になってしまっているのではないかと危惧されるところです。
 加えて、国際的なネットワークというものは、つくろうと思えば幾らでもつくれるわけですが、それが世界的に注目される国際的なネットワークかどうか、本日の資料にもそういう形容詞がついているわけですが、そこは非常に重要なところです。結局は国内でも国外でも自分だけでできる研究というのはあまりなく、そういうネットワークをつくって協力して研究成果を上げていくというモードが、私は実験研究なので特に強く、重要なのだと感じています。もちろん、分野によってはそうではないという御意見もあろうかと思います。
 あと、被引用で見た指標が我が国全体であまりよくありません。本学の状況を見ますと、指標的には若手の人のほうがいいんです。これが、非常に一所懸命研究に取り組まれている表れなのか、若手ではない方々がもう少しやり足りないのか、そういうところもエビデンスがあると、考えを深めやすいと最近は思っているところです。
 雑駁なことを申し上げましたけれども、いずれにせよ、「総合知」も含めて、我々がこの部会で審議していく内容が、様々な形で皆様の御発言から明らかになったと思います。少し時間がございますので、2巡目として委員の皆様の御意見がありましたら、御発言いただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
【福田委員】
 大野先生、1点よろしいでしょうか。
【大野部会長】
 福田委員、お願いいたします。
【福田委員】
 今、学術研究の、多分山本先生が的確におっしゃってくれたキュリオシティ・ドリブンの研究が非常に大事だと私自身は思っていて、これが日本を将来的に科学立国みたいな格好に持っていける可能性が高いのと、もう1つは、今、極めて、今回のコロナにしてもそうですけれども、想定外というと、コロナに関しては本当に想定外かどうか微妙ですけれども、いろいろなことが起こる中で、それに対応するときには既存の技術では駄目なことが結構多くて、そういうときに様々なシーズを持っていることがとても大事だと思っています。
 例えば今度、東京大学で、コロナの創薬でフサンを使ったいろいろな研究が進んでいますけれども、これもコロナを随分前からやっていたというよりは、キュリオシティをベースにした様々な研究の中から生まれていて、そういうものがあるから今回比較的早くコロナに対応できたと。そういうことですので、基盤研究が全く役に立たないのではなくて、シーズをつくるという意味では非常に大事なので、これをきちんと守り続けていくことが、何か起きたときに日本が率先していろいろなことに立ち向かえる一つの道具になると私自身は考えています。そういう意味でも、山本先生もおっしゃったようにこのままだと科研費が伸びないので、先ほど中村先生がおっしゃっていましたけれども、科研費にプラスアルファで何かをつけるような形で予算を伸ばしていくことが極めて大事であり、将来にレジリエンスをちゃんと担保するためのシーズとしての基盤研究の重要さみたいなものを訴えることも、一つの手段になるかもしれないと思いました。以上です。
【大野部会長】
 どうもありがとうございます。いかがでしょうか。
 私もそのとおりだと思います。クオリティの高いキュリオシティ・ドリブンな研究があって初めて、我々の社会、人間、自然の理解も深まり、未知の脅威に対してある種の備えができると思います。
 我々学術に携わっている者は、自由な発想での研究、自由な研究、その価値というのは当然だと思うんですけれども、先日もこの学術分科会の意見として出てきたことですが、最近、社会との距離が若干出てきているかもしれない。「『自由』だったら税金を使わないで勝手にやったら」というような人たちも、もしかしたら意外と多かったりする可能性もありますので、学術の重要性、そして学術がレジリエンスに寄与していること、直接役に立つというのではない形であっても学術が重要である、ということを、もう一度各方面に認識していただく努力が、研究費部会だけでやることではないんですけれども、必要ではないかと最近感じています。
 税金で支えることがなぜ必要なのかという、10年20年、あるいはもっと前に社会の理解があった基盤が今もあると思ってしまうとまずいことになるような兆候もあるのかと、私は観察して見ております。いずれにせよ、重要だということをどのように表現するか、我々はどう整理するかということかと思います。
 いかがでしょうか。そのほか、ご意見等ございますか。
 中村委員、川端委員の順でお願いいたします。
【中村委員】
 最初の会は随想という感じでよろしいということで、一言だけ申し上げます。
 いろいろな規制というのかな、レギュレーションがますます厳しくなってきました。私もこういうシステムって随分やってきましたから慣れていますけれども、若手の人ってこんなに複雑な事務から何からのレギュレーションを、みんな勉強して研究をやっていけるのかという感じが最近しますね。お金の使い方、それから研究の仕方、また外と共同研究するとなると、最初に大学のコンプライアンス問題がでてききます。NDAを結んでやるとか、助教クラスの若い人はこんなこと知らないですよね。でも、これを勉強していないと、共同研究ができないということになっているんですね。そういう意味で、周りと何かやるといっても、やる気を最初から阻喪させるような仕組みががんじがらめにある。これは大問題だと思います。
 日本はあらかじめ不祥事が起きるのを全部防いでしまうという考え方でやるからこうなるわけで、不祥事が起きたらその人が罰を受けたらいいんだという形にしていかないといけないと思います。今のやり方だと、事務仕事にたけた若手だけが残るような感じがしますね。撃ちてし止まんの猪突猛進型の研究者は非常に重要ですけれども、そういう人は、今の仕組みではもう残らなくなったんじゃないかと思っております。
 我々もコロナの研究を始めることは少し考えたんですけれども、始める前から、ウイルス検体のやり取りのレギュレーションはきついだろうなとか、これやっていたら大変だろうな、部外者は多分入れないだろうなどいろいろ想像して、最初から諦めちゃったんです。このようなこと自身を直さないと、共同研究も、それから元気な若手が育つことも期待できないんじゃないかという悲観的なことを思っております。以上です。
【大野部会長】
 危機感をお持ちだということですね。どうもありがとうございます。
 それでは、川端委員、お願いいたします。
【川端委員】
 まさに科研費のキュリオシティ・ドリブンというのはど真ん中ですけれども、一方で、若手だけじゃなくて中堅もそうですけれども、人事制度だとか何とかかんとか、要するに先ほどから言われている彼ら研究者を取り巻く環境が、結局、息の長い研究を消していっている。だから30年この道一筋みたいな、そういう先生たちだとか名物教授がどんどん消えてきているという。それは、早く業績をとか、科研費にしてもそうですけれども、最後に業績は何ですかと、こういう話に。これは説明責任だと言われれば、言わざるを得ない。ただ、出るものが何年後に出るかという話まで含めて、我々のコミュニティーであったり、そういう者が理解をし合う、そういう世界が、いや、ごめんなさい、ぼやいているつもりはないんだけれども、何かこれ、ぼやいていますね、そういうものをエンカレッジするような研究費という、そういうものをメッセージとしても強く出していくという、そんなものも重要な気がしました。以上です。
【大野部会長】
 ありがとうございます。本部会としては、科研費の在り方ということは中心だと思いますけれども、科研費の在り方を中心に据えつつ、周りがどうあってほしいか、どうあるべきだということも含めて、審議し整理して発信していくのかと思います。
 いかがでしょうか。ほかに御発言ございますか。
 井関委員、お願いいたします。
【井関委員】
 今のお話を聞いていて、となると、今まで委員の先生がおっしゃったことというのは本当にそうだと思うんですけれども、それで私、前期にいらっしゃった小安委員のお話を、私のアイデアではないのでお伝えしたいんですけれども、そうすると、長い期間をかけて非常に優秀な研究者になるけれども、ただし、今、この二、三年では短いといったときに、それは我々が評価しなきゃいけないわけですよね。研究費を渡すにしても、評価をする、審査をする、そこの体制ができているか、きちんと確立されているかということも検証するなりしなければなりません。審査員が育っていないなら育てるなり、そういったことも考えていかなければいけないのかと。
 本当、おっしゃることはもっともだと思います。そんな二、三年で出てきた業績で、もちろんそれがすばらしいこともありますし、時代の流れに乗っていることもあると思います。そういう中で、もっと10年先を見たときに、その人を残そうとか、そういう評価が必要だと思います。以上です。
【大野部会長】
 ありがとうございます。目利きの力というのは非常に重要になると思います。
 ほかにいかがでしょうか。
【川端委員】
 今の、せっかくだから話題として。だから今までのスタイルの評価の仕方を変えなきゃならない部分があるんじゃないですかね。分かりやすい評価。それが説明責任と言われていて、それは定量的にどうだ、これはどうだ、こんなに業績が出たと、このように言うと、何かあたかも成果が出ているように見えて説明しやすいと。そうじゃないものがあるという。それが、全然関係ないんですけれども、財務情報でも非財務情報といって、お金だけもうかっているんじゃないんだと。将来があるんだみたいな、そんなようなことも社会に向かって説明するという、それと同じように、この人たちのという。でも、ほかのところでの審査だ何だかんだで、なかなか、やりたくてもできない。でも一方で、科研費だからこそできる世界が何かあっていいような、キュリオシティ・ドリブンだからこそという、そんな気が。いや、ごめんなさい、答えがあって言っていないからつまらないかもしれないですけれども、そんな気がしています。
【大野部会長】
 ありがとうございます。我々の目利きが本当に全てできるのかというところは謙虚に考えなければいけないのかもしれません。そしてデュアルサポートの仕組みは我々が見逃してしまうような研究も育つようにというシステムでしたが、そのデュアルサポートのバランスがあまりよくない状態では、育たないところもあるのではないかと常々感じています。
 いかがでしょうか。
 白波瀬委員は手を挙げておられますか。
【白波瀬委員】
 今、評価の話が出たので、評価について1点のみ。というのは、適切な評価が適切な組織運営につながり、何よりも研究成果にもつながり、循環を促すための一つの鍵になってくると思います。そのときに、奇想天外の発想があるからという議論も前期でもありましたが、これまでの業績をどう評価して次につなげるのかが具体的な検討内容となります。過去の業績を評価すると同時に、新しい発想の目利きを評価する側がどう適切に捉えるかは極めて重要で、まさしく先生がおっしゃったような仕組みを見直す必要があるかもしれないと思います。特に今度は学際というか、いろいろな分野融合に着目した「総合知」の議論があるわけで、この場合評価は鍵になってきます。少ない経験からしても、分野が離れれば離れるほど、評価の内容も開きが大きくなりますので、、それは評価する側のトレーニングも当然必要になってくるということが1点です。
 あとは、それも前期でたしか小安先生なんかもおっしゃっていたと思うんですけれども、評価するほうが結局鍵になるので、中途半端な評価体制をしない、ということ。しっかり評価に集中できるような経済的な支援と時間的な確保をこちらから提供することも本気で考えていかないと、肝心の研究者当人が疲弊してしまうということが起こりかねません。だからその辺りも少し中に議論でできるといいかもしれないと思いました。
【大野部会長】
 ありがとうございます。
 終盤に向けて議論は盛り上がってきましたけれども、まず尾辻委員、中村委員、そして山本委員も先ほど手を挙げておられましたか。
【山本委員】
 私は結構です。ありがとうございます。
【大野部会長】
 じゃ、尾辻委員、中村委員で、今日の審議は終わらせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【尾辻委員】
 ありがとうございます。それでは、尾辻から述べさせていただきます。
 2点ありまして、今、最後に話題になりました、科研費の事業に対する評価。実はこれまで、研究代表者に対する評価、検証ということを、ずっと長くやっております。トップダウン型のJSTの事業に近い形で、つまり短期的な業績で評価が行われているという傾向がずっと続いていることを、センターとしては大きな問題意識を持っています。つまり、キュリオシティ・ドリブンの科研費は将来に対する付託でありますから、やったことに対する業績評価というのは、一定量、アカウンタビリティの点でする必要はあるんですけれども、短期的なところでとどめますから、長い将来に大きなインパクトを与えるイノベーションにつながるとか、様々なそういった成果を見落としがちです。ですから、研究代表者に対する評価と、学術振興会あるいは文科省が科研費事業に対して行う、我々はロングスパンの調査と言うべきではないかと言っているんですけれども、研究代表者個人の評価ではなくて、制度自体のどこまで世の中の役に立ったのかという意味での調査、こういったことをもっと多面的にやっていく必要があると思いますので、ぜひ御議論いただければと。
 最後に、山本先生からも御指摘あったんですが、研究費支給金額の上限が、ずっと10年以上にわたって張りついていると。その観点も非常に問題意識は持っているんですが、それと同時に、特別推進ですとか基盤(S)とか、そういう大型種目に対する採択率、この予算配分が、採択率が今は10%程度にずっととどまっています。平均30%行くのは基本的には基盤研究(A)以下の種目で、大型種目に対する予算というのは最後に回ってきちゃうんです。それは取りも直さずデュアルサポートの劣化で、基盤研究(C)の応募件数がここまで増えてしまったことと、またこれは表裏一体になっております。ですので、デュアルサポートの回復がいかに重要かということが、大型種目、ひいては我が国のハイエンドの基礎基盤研究をどれだけ引っ張っていけるのかという点でも重要だと認識しています。以上でございます。
【大野部会長】
 ありがとうございます。それでは、中村委員、お願いいたします。
【中村委員】
 2つあります。1つは、昨年の今頃も申し上げたんですけれども、今や中国でさえ、数値評価とか形式上の評価はやめろとなっております。日本は当然そうあるべきで、中身を見るという審査でいくべきであるということですね。
それからもう1つは、今、お話に出たようなかなりの部分は、これは大学が評価するべきことで、研究費を渡す側が評価することではないのではないかと思いました。以上です。
【大野部会長】
 どうもありがとうございます。それでは、いただきました御意見は、今後の本部会の議論に反映させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 最後に、3番目の議題、「科研費の公募スケジュールの前倒し」でございます。これについては、事務局においてスケジュールの案を作成してございますので、御説明をお願いいたします。
【岡本企画室長】
 それでは、資料4をお願いいたします。科研費の公募スケジュールの前倒し等について御報告をさせていただきたいと思います。
 現在、科研費の主な種目については、前年9月に公募を開始し、最も内定時期の早い種目は4月1日付けで内定を行っております。この4月1日付けの交付内定は平成21年度から行われておりますけれども、振興会では、平成11年度に科研費の審査・交付業務の一部移管が開始されて以降、応募受付・審査への電子申請システムの導入、また業務の効率化等を不断に進めることで実現をしてきたものでございます。我が国の競争的研究費の中で最も早く研究を開始できるものとなっております。
 一方で、大学の業務は会計単年度で動いているということがありまして、アカデミアの間からは、4月1日の交付内定後に種々の手続を始めると、研究スタッフの継続雇用などの点で困難が生じるということで、前年度のうちに採否の通知をできないかという意見も出されております。
 年度当初からの研究実施をより効果的に進めていくためには、前年度中に応募課題の採否の結果を通知することが必要と考えられますが、審査の公正性や透明性を確保しつつ、審査委員の負担にも配慮する必要があります。これまで行ってきたような関連業務の電子化や効率化をさらに進めることで対応することは困難になっておりまして、公募開始時期を前倒すことが必要不可欠であると考えております。
 他方、科研費の主な種目について、前年の9月に公募を開始することは数十年前からずっと行われております。その時期を前倒しすることは、研究者や研究機関の事務担当者への影響だけではなく、公募・審査・交付業務を行っております振興会の担当部署や学術システム研究センターの業務運営にも大きな影響を及ぼすことでございますので、一定の期間をかけて計画的に着実に行っていく必要があると考えられます。
 また、大型種目の公募スケジュールの前倒しにつきましては、平成31年3月に振興会が取りまとめた「議論のまとめ」におきまして、現在4月中旬以降に交付内定を行っております特別推進研究、基盤研究(S)について、その他の研究種目よりも先に審査・採択を行い、基盤研究(A)の審査において、特別推進研究、基盤研究(S)の採択者の応募課題は審査に付さないようにするため、両種目の公募・審査スケジュールの見直しが課題として示されたということで、振興会においては、その改善に向けた検討をこれまで進めてきているところがございます。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響で令和2年度の審査スケジュールが遅れたことなどを受けまして、大型種目の公募スケジュールの前倒しにつきましては、学術変革領域研究の移管時期と合わせて、最低1年程度先送りすることを前提に検討することとしております。
 そのため、科研費の令和4年度公募においては、従前、4月上旬に交付内定を行っていた種目について、内定通知時期を2月末に早めるためのスケジュールの見直しを行うとともに、種目ごとに公募時期が異なることによる研究機関の混乱等を防ぐため、他の種目についてもできるだけ同時期に公募を行うこととしたいということであります。
 なお、大型種目の採否の結果については、前年度の2月上旬に通知できるよう、引き続き検討を進めることとし、当面は別紙のスケジュールにより、公募スケジュールの前倒し、また学術変革領域研究の振興会への移管を進めることとし、振興会においては、文部科学省と緊密な連携を図りながら、年間を通じて科研費業務を滞りなく行えるよう、科研費の担当部署及び学術システム研究センターの体制を整備するとともに、関係者への周知等を適切に行っていく必要があると考えているところでございます。
 次のページが別紙のスケジュールになっておりまして、1つ目が、公募スケジュールの前倒しの時期と対象種目でございます。令和4年度の公募分につきましては、基盤研究(A)、これは総合審査を実施していますけれども、公募開始時期を本年の7月上旬、交付内定時期を令和4年の2月末、基盤研究(B)、(C)と若手研究、こちらは2段階書面審査を実施しておりますが、8月上旬が公募開始時期、交付内定時期は基盤研究(A)と同様の2月末。また、特別推進研究と基盤研究(S)につきましては、基盤研究(A)の公募時期と合わせることを予定しております。これらの公募時期の前倒しにつきましては、米印にございますが、本年の4月には、令和4年度分の公募開始時期を関係機関に周知をしたいと考えております。また、特別推進研究及び基盤研究(S)、こちらを2月上旬にいたしますのは、令和6年度公募分以降ということで考えております。なお、各年度における種目の公募開始時期については、上記の実施状況を踏まえ、必要に応じて見直しを行うということです。
 2つ目が、学術変革領域研究の日本学術振興会への移管のスケジュールです。令和6年度公募から振興会において実施をすることを考えております。当初の予定では令和4年度公募を予定しておりましたが、コロナの感染拡大、また、交付内定時期を早めることもありますので、文部科学省において令和5年度まで公募を行い、交付内定時期を令和5年の2月末にする予定としております。
 資料の説明は以上になります。
【大野部会長】
 どうもありがとうございました。ただいまの御説明について、何か御質問、あるいは御意見ございますか。
 尾辻委員、お願いします。
【尾辻委員】
 岡本室長、ありがとうございます。科研費事業、先生方御承知のとおり、次年度の予算が国会で通らないことには、予算の枠組みが分からなくて公募開始ができないと。ここが最大のボトルネックで、常に9月公募ということがずっと長く続いてきたわけですが、もちろんフィスカルイヤーの始まる時期に新規採択が分かっていることは、研究者にとっては何よりもメリットが大きくて、それを今回、これは大英断だと思うんですけれども、文科省で実行することに踏み切っていただいたことを、大変ありがたく喜ばしく思っている次第です。
 また、基盤研究(A)以外の基盤研究(B)、(C)等の種目についても、通常のこれまでの公募時期を少し前倒しして、システマティックに公募時期を改めていただく案をお示しいただいていることも、大変結構なことと思います。以上でございます。
【大野部会長】
 どうもありがとうございます。
 それでは、御説明いただいたスケジュールは、本部会としても了承したということでよろしゅうございますか。
 (「異議なし」の声あり)
【大野部会長】
 ありがとうございます。今後、このスケジュールに沿って適切に公募を行えるように、文科省と日本学術振興会と連携して進めていただくようお願いいたします。
 時間が少し過ぎてしまっておりますが、最後に事務局から連絡事項をお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】
 本日の議事録につきましては、各委員に御確認をいただいた上で、後日、公開をさせていただきます。
 また、次回の研究費部会につきましても、改めて後日、日程調整をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。以上でございます。
【大野部会長】
 どうもありがとうございました。
 議長の不手際で5分ほど延びてしまいましたが、活発な御議論をいただきまして、誠にありがとうございます。今日の会議はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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