第11期研究費部会(第4回) 議事録

1.日時

令和4年1月20日(木曜日)10時00分~11時30分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 科学研究費助成事業等に係る令和3年度補正予算及び令和4年度予算案について
  2. 当面の科研費制度改善の方向性について(案)
  3. その他

4.出席者

委員

大野委員、白波瀬委員、仲委員、福田委員、井関委員、上田委員、大竹委員、尾辻委員、中村委員、山本委員、速水委員

文部科学省

永田学術研究推進課長、高見沢学術研究推進課企画室長、吉田学術研究推進課企画室室長補佐、他関係官

オブザーバー

大野独立行政法人日本学術振興会システム研究センター所長、岸本独立行政法人日本学術振興会学術システム研究センター副所長

5.議事録

【大野部会長】
皆様、おはようございます。時間となりましたので、ただいまより第11期第4回の研究費部会を開催いたします。
本日は、科研費の令和3年度補正予算及び令和4年度予算案について御報告いただいた後、「当面の科研費制度改善の方向性について」を中心に議論させていただきたいと思います。
それでは、まず事務局から配付資料の確認とオンライン会議の注意事項の説明をお願いいたします。
【吉田企画室長補佐】
資料につきましては、昨日お送りさせていただきましたファイルを御参照いただければと思います。
本日はオンライン会議となります。事前にお送りした注意事項につきまして御説明をさせていただきます。
まず、音声の安定のため、発言時を除き、常時ミュート、マイクをオフにしてください。また、部会長・委員を含めメイン席の方は常時ビデオをオンに、その他の方は常時ビデオをオフにしてください。また、発言される場合は「手を挙げる」ボタンを押してください。部会長が指名されますので、ミュート解除、マイクをオンにしていただいて、その都度お名前を発言いただくとともに、オンラインでも聞き取りやすいようはっきりと御発言ください。また、資料を御参照される際は、資料番号、ページ番号などを分かりやすくお示しください。最後に、トラブル等が発生した場合には事務局までお電話で御連絡いただければと思います。
以上でございます。
【大野部会長】
どうもありがとうございました。
それでは初めの議題に入ります。事務局から、科研費の令和3年度補正予算及び令和4年度予算案について御説明をお願いいたします。

(1)科学研究費助成事業等に係る令和3年度補正予算及び令和4年度予算案について 

【永田学術研究推進課長】
文部科学省学術研究推進課長の永田でございます。どうもおはようございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
それでは私から、科学研究費助成事業に係ります令和3年度補正予算と令和4年度予算案につきまして御説明させていただきます。
資料の4ページを御覧ください。既に前回、9月27日に行われました研究費部会では令和4年度の概算要求につきまして御説明させていただいたところでございますけれども、その中で要求事項として上がっておりました新しい研究種目「国際先導研究」を創設することにつきましては、緊急性を勘案しまして令和3年度補正予算でお認めいただいたところでございます。当初、令和4年度で要求しておりました予算額110億円がそのまま補正予算ということでお認めいただきました。背景・課題にありますとおり、現在コロナ禍の感染下で最近オミクロンが拡大しておりまして、ちょっと今後の状況を許さない状況でございますけれども、ワクチン接種の広がりに伴いまして欧米等では研究交流が再開されつつあったといったところから、日本におきましてもそういうトップレベル研究チームによります国際共同研究を再開していく必要性について緊急性をお認めいただいたところでございます。
支援内容のところにありますとおり、この研究費については7年間、最大10年間まで延長を可能とし、最大5億円の研究費を助成するという内容です。110億円という予算規模に応じまして支援件数は15件程度を想定してございます。
支援対象としましてはトップレベル研究者が率います研究チーム、一応想定でございますけれども20名から40名程度で構成する研究チームで、そのうちの約8割はポスドク・院生等の若手研究者で構成していただくことを要件化したいと考えてございます。
海外派遣人数としましては、やはり長期で腰を据えて行っていただきたいことから、毎年5名程度は2年から3年程度滞在する長期派遣をイメージしてございまして、長期が7年間で15名、トータル15件で225名程度で派遣することを想定してございます。また短期におきましては、そのほかのチーム構成の方々が年に1回程度は海外に出向いていただいて共同研究を強化していただくことを想定した種目となってございます。
次のページを御覧ください。5ページ目でございますけれども、この研究種目を創設するに当たっての背景でございます。国際共同研究支援の現状と課題としまして、注目度の高い論文を輩出するといったところについて、世界との差は国際共著論文の差が見受けられるのではないかといったものが左側の上でございます。
また右側の上でございますけれども、そういうトップ10%論文の研究チーム構成としましては、シニア研究者から若手研究者まで全てをカバーしたメンバーで構成されるチームが質の高い論文を輩出しているといった分析です。
また、右側の下でございますけれども、そういうトップレベル研究者につきましては、約75%の方が海外での勤務経験がおありで、さらには35歳未満という若い時点で海外に出向いているところから、そういった取組が必要だろうといったところを勘案したものでございます。
6ページ目を御覧いただきますと、その国際先導研究の種目の概要を示させていただいております。先ほど申し上げましたように、研究期間としては7年間、最大5億円の規模としまして、研究代表者につきましては高い実績を有するPIの方、既に5年以内にトップ10%論文の実績をお持ちの方、スポークスパーソンとして事業をまとめ上げているような経験をお持ちの方、既にそういう実績をお持ちの方が、既にパイプを持たれている海外のトップレベルチームとの共同研究を強化していただく。そこに若手研究者が参画していただいて、2年から3年、海外での共同研究を進めていただくものでございます。
なお、若手育成の観点から、ポスドク・院生の人数に応じまして研究環境整備費を別途措置するであるとか、ポスドクの方がその期間内にテニュアに採用された場合にはスタートアップ的な研究費も別途措置することを想定してございます。
次の7ページ目を御覧いただきますと、今後の審査スケジュールでございます。既に日本学術振興会において昨年12月24日付でこの種目の概要を周知させていただいているところでございます。実際の公募は今年の3月中旬を予定して、準備を今、日本学術振興会で進めていただいておりますけれども、それに先立って御案内をさせていただきまして、応募を希望する研究者の方々におかれましては早期に準備できるように対応させていただいているところでございます。公募を踏まえまして、今年の6月から12月にかけて審査を行い、今年の12月には交付内定、研究活動開始ができるよう進めてまいりたいと考えてございます。
最後に8ページ目を御覧ください。令和4年度の概算要求でございますけれども、令和4年度の概算要求につきましては令和3年度と同額、2,376.5億円の予算額を現在確保しつつ予算案として国会審議を頂いているところでございます。現状、その同規模の予算額に応じて、着実に科学研究費助成事業につきましては推進してまいりたいと思いますので、今後ともどうぞ御指導をよろしくお願いいたします。
私からの説明は以上でございます。
【大野部会長】
どうもありがとうございました。
それではここまでの御説明に対して何か御質問あるいは御意見はございますでしょうか。前回の部会でも大分質疑応答をさせていただいたと思います。いかがでしょうか。よろしゅうございますか。本部会でも前回御議論いただきましたこの国際先導研究を補正予算で行うということでございます。これまで御議論いただきましてどうもありがとうございました。令和4年度予算案の国会審議はこれからではございますけれども、研究費部会としては、科研費制度について来年度以降も必要な改善・充実を図るということで、引き続き議論そして検討をしてまいりたいと思います。
それでは次の議題に移ります。
【吉田企画室長補佐】
中村先生が今、手を挙げておられます。
【大野部会長】
失礼しました。中村委員、お願いいたします。
【中村委員】
ひとつ質問なんですけれども。
この前の資料にははっきり書かれていなかったんですけれども、この若手という辺り、PDとか院生をでしょうか、二、三年外国に派遣することが条件になっていますね。私の大学、東京大学では学生さんを1年までは外部に研究委託できますけれども、ドクターコースの間、3年間外国に研究委託するのは制度上できないんだと思います。それからポスドクも、日本で2年雇って2年間そのまま全部外国に張りつけっ放しというのは、なかなか現実的に無理じゃないかと思います。まして、助教の人が2年間外国に張りついていたらこちら側の仕事ができないし、今の規則では自分自身の研究費を申請できないですよね、日本にいないんですから。そういう問題はどうするんですか。かなり根本的な問題で、今回初めて明記されたので質問しています。
【大野部会長】
どうもありがとうございます。それでは事務局、お願いします。
【高見沢企画室長】
企画室長の高見沢です。中村先生、御質問ありがとうございます。
本件については長期派遣以外でも中期・短期、1年以内の派遣も補正予算で計上させていただいておりますので、基本的にそういった海外との交流を全面的に促進できるようにしたいと思っております。
そこで長期の派遣については、できるだけ2年から3年というところは非常に今後の日本のことを考えた場合には必要だということで、この場でも御議論、幾つか御意見を頂戴していたかと思います。各大学においてもし難しい点などありましたら、現在の質問もお寄せいただいているところですので、ご質問も含めて検討させていただいて、FAQで反映するように検討させていただければと思います。
【中村委員】
分かりました。
【大野部会長】
研究機関とのすり合わせが必要なポイントがあるということですね。御指摘いただきましてありがとうございます。山本委員、お願いします。
【山本委員】
今の点、やはりかなりフレキシブルな対応をお考えくださいというのがお願いでございます。つまり、もう絶対に一時帰国しては駄目とか2年間の間ずっとという話にならないように、多少やはりその辺はフレキシブルな運用をしていただいたほうが、結果としてよい成果が得られるのではないかと思います。すいません、蛇足です。
【大野部会長】
どうもありがとうございます。それでは白波瀬委員、お願いします。
【白波瀬委員】
ありがとうございます。
繰り返しなんですが、文系におきましても2年、3年の派遣期間は比較的長いと思います。もちろん、腰を据えてというところでの制度設計という意味はわかりましが、そこにいかに柔軟性を持たせるかだと思います。今、山本先生からもありましたように、このプログラム自体が長期派遣を目玉にされていることは了解しました。ただ、比較的長期の制度であるがゆえに送りだす方、受けての方、ともに使い勝手の良さという点はご配慮いただくのが望ましいと思います。継続して長期が難しい場合、あるいは、必ず1年に1度は帰国が滞在期間を限定して求められる、といったルールですね。使い勝手をよくしていただけると大変ありがたいと思います。
以上です。
【大野部会長】
ありがとうございます。事務局、よろしいですか。
【永田学術研究推進課長】
先生方、御意見ありがとうございます。
長期派遣ではなく、短期でも十分対応できるよう検討してもらいたいというお話でございますけれども、短期につきましては国際共同研究ではほかの制度も多々あろうかと思います。そういった中で、やはり長期に腰を据えて相手の研究チームに入って研究を深めていただく、それが世界と戦える若手に育っていくだろうというところから、我々としてはその長期に視点を置いてこのプログラムを考えてございます。
先ほどの先生方の御意見につきましては、今、日本学術振興会で公募に向けて鋭意検討してございますので、その辺も踏まえて議論を深めてまいりたいと思います。
【大野部会長】
ありがとうございます。中村委員、お願いします。
【中村委員】
それでしたらやはり、科研費、外国に2年間いても国内で科研費が申請できるとか、それから代わりのティーチングの人を雇っていいとかというのとペアにしてぜひつくっていただきたいですね。今やインターネットを使って外国にいても仕事できるのに、科研費制度では日本にいない限りはお金はくれないとか、旧態依然です。抜本的に変えたほうがいいと思います。いい機会だと思います。
以上です。
【大野部会長】
ありがとうございます。よろしいですか、事務局は。白波瀬先生も手がまだ挙がっていますけれども、御発言されますか?
【白波瀬委員】
長期派遣についてはまさしく大変結構だと思うんですけれども、制度の中で必ず1年未満に帰らなければいけないとか、所属先の大学とのすり合わせの際に多少の規定外の部分がでてくるのか、という状況の配慮です。そこで、お願いしたいのは、制度設計上、その柔軟性を組み込むことです。2年間、3年間の在外研究ができる意味も大きく、ここでできる規定があるのは大変結構だと思います。それだけ派遣されることから得られる成果も大きいと思います。だからこそ、うまく柔軟な「でききる規定」を組み込むことの意味もまた重要だと考える次第です。
【永田学術研究推進課長】
御意見を踏まえながら検討してまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【大野部会長】
趣旨を担保しながら、しかし、各研究機関との柔軟なすり合わせができるようにお願いができればと思います。よろしゅうございますでしょうか。
ありがとうございます。科研費制度についても、全体についてもこれから必要な改善・充実を図っていくよう議論を続けていきたいということを先ほど申し上げました。
それでは次の議題に移ります。次の議題は前半と後半に分けます。前半はこれまでの審議を踏まえ速やかに着手すべき科研費制度の改善課題について、そして後半に本部会での審議を今後継続して行う課題について、議論を分けたいと思います。
それではまず事務局から前半部分の御説明をお願いいたします。

(2)当面の科研費制度改善の方向性について 

【高見沢企画室長】
それでは、資料の9ページ以降で26ページまで説明させていただきます。少し資料が多いので簡潔に説明させていただきます。
まず10ページですけれども、ただいま部会長から御説明がありましたように、速やかに着手すべき制度改善、それから改善に向けて今後引き続き検討すべき課題という2点に分けて説明させていただきます。
まずは、速やかに着手すべき制度の改善ということで、全体像としては11ページから13ページまで工程表で書かせていただいております。赤文字になってアンダーラインが引かれているところが今回議題としてお示ししているところです。これから順次説明させていただきたいと思います。
また、14ページは若手支援プランという、これはかつて研究費部会で御議論いただいて策定していただいたものですけれども、これについても赤囲みの部分を加えるなどして更新を図っていきたいということで掲載しております。これについてもこの後説明させていただきます。
それでは15ページから説明をさせていただきたいと思います。速やかに着手すべき点、3点ございます。
まず1点目ですけれども、15ページにありますとおり、国際共同研究の改善・充実という観点であります。先ほど国際先導研究の新設について御報告させていただきましたけれども、その創設に伴いまして、国際共同研究の加速基金、科研費の中にあります基金のカテゴリーですけれども、こちらが15ページの下にありますとおり4種目になります。国際先導研究を加えて4種目になるんですが、ここで改善・充実の1点目としては、研究種目名の若干の変更をさせていただきたいということで考えています。
改正案ということで示しておりますけれども、現在、「国際共同研究強化のA」、「B」、それから「帰国発展研究」という3種目がありますけれども、これについては国際共同研究強化のAについてはAの文字を取って「共同研究強化」のままにすると。それから強化のBですけれども、こちらについては名称変更ということで「海外連携研究」という形の名称にしてはどうかと考えております。
16ページ、次のページにはこの4種目の構成を一覧で並べたものがございます。詳細には御説明は割愛いたしますけれども、例えば真ん中の辺り、研究期間と応募総額のところがありますが、国際共同研究強化のAについては1,200万円以下であるのに対し、Bについては2,000万以下となっております。通常の基盤研究の考え方から言えばBのほうが総額は低くてAのほうが高いとかということもありまして、要は区分としてもちょっと混乱を来すような構成になっていたかなと思います。もともと強化のBについては海外に直接出向いて行う研究という趣旨があって、また、強化のAとは趣旨が異なることもありますので、今回のような名称変更をさせていただければと考えております。
それから17ページですけれども、この国際共同研究を進めていくものを後押しする観点から、データベースの強化をしてはどうかと考えております。データベースの(2)という上半分を見ていただきたいと思いますけれども、まずは「KAKEN」データベースそれから審査委員候補者データベースの機能強化を進めたいと思います。
まず、成果発信のデータベースでありますKAKENについて、共同研究の相手国などの情報検索ができない状況になっておりました。科研費では国際共著論文に限らず、海外の研究者との研究実績なども実績報告の上では書いていただいておりますので、それを検索可能な状態にして、成果の一層の可視化を図ってはどうかと考えております。これについてはシステムの改修を進めております。
それから2点目ですけれども、審査委員候補者データベース、こちらは日本学術振興会で開発・運用しているものですけれども、この審査委員候補者を選定する検討の材料としては、国際的な活動あるいは国際共同研究のような活動をされているかどうかといったことも、論文成果などを見れば分かるかもしれませんが、明確に分かるような項目をつけることで、審査委員の選び方の点でも国際性を加味できるような状況にしてはどうかと考えております。
それから下半分ですけれども、(3)ですが、学術研究の国際化を推進するための仕組みの構築ということで、現在、研究チームでもって国際共同研究あるいは通常の学術研究を進められておりまして、先生方の活動が第一ではあるんですけれども、そこで得られる国際的な学術動向の知見ですとか、あるいは活動の仕方ですとか、そういったことは研究機関のマネジメント能力の強化にも資するのではないかと考えております。
一番下の丸にありますとおり、研究そのものというよりは、研究を進める際にこうすれば海外とやりやすくなるとか、そういった活動上の知見については機関の運営部門を通じて横展開できるようにする、そういった連携強化を進められないかと考えております。
具体的には18ページ、19ページに書かせていただいております。まず18ページのほうは、最初に説明しましたKAKENデータベースの検索項目の追加ということで、下3つに赤枠が書かれておりますけれども、これらについて追加しております。
それから19ページですけれども、科研費制度で今回、国際先導研究を創設した上で幾つかの試行をさせていただく中で、上半分、丸1から丸3、3つ横に並んでいますけれども、こういった審査の観点ですとか、人材育成の好循環、それから機関との連携強化ということを先導研究では進めていくということで考えておりますけれども、その活動を特に国際共同研究あるいは研究の国際化という観点で、科研費全体で可能な範囲で成果の可視化を実現していくということで、オレンジ色の下のところにありますような3点を進めてはどうかと考えております。
それから、次の着手すべき改善ということで、2番目の項目に移りたいと思います。20ページでございます。若手研究者支援の充実ということで、これについてもこの部会で何度か御審議いただいてきたかと思います。これまで、若手研究者支援の観点で、「若手研究」の重複応募制限の緩和についてコンセンサスが得られているかなと思われる点を整理しております。真ん中の丸にありますとおり、若手研究の2回目の応募、それと「挑戦的研究の開拓」、この種目の重複応募・受給制限の緩和を現時点では進めるのが適当ではないかと考えております。
若手研究の1回目からその制限を緩和してはどうかという意見もありますけれども、まず若手研究の種目の趣旨という点も勘案して、そこの在り方については引き続き検討が必要であるというのが現時点での考え方かなと思っております。
21ページ、22ページにはその制限の緩和について整理させていただいていますけれども、こちらについては研究費部会で一度お示ししている資料ですので、説明は省略させていただきたいと思います。
それから3点目、審査システムのさらなる改善ということで、23ページ以降の説明に移りたいと思います。23ページにありますとおり、「基盤研究B」の合同審査の導入について進めていく点でございます。これについてはこれまで日本学術振興会でも鋭意検討が進められているものですけれども、特に基盤研究Bにおいて、小区分であっても著しく応募が少ない区分も散見される状況の中で、公正な審査をどのように進めるかということが課題として出てきております。
具体的なそのイメージとしては、24ページにありますとおり、現在それぞれの小区分でまとめて2段階書面審査を行っているということで、応募件数が多くても少なくてもその小区分で採否を決定する仕組みについて、ある程度応募件数がまとまる範囲でまとめた上で合同の審査を行い、採否を決定するという右側のような仕組みを導入したいと。ここでは小区分のX+Yの合同審査ということで書いておりますけれども、その区分に精通している審査委員を募ることで、現状の審査の質それから公正性を担保した上で進めることができないかと考えております。
今申し上げた合同審査の関係も含めて、25ページに審査システムの進展状況を整理させていただいております。一番下のところに点線で囲みを入れていますけれども、基盤Bについては複数の小区分での合同審査を令和5年度公募分からスタートするということ。それから、この部会ではなくて、科研費の審査部会で実質的な議論あるいは日本学術振興会での検討が進んでいますけれども、この審査区分の区分表の改正も令和5年度に予定しておりますので、こちらもそれぞれの部会で改正案がまとまり次第公表することで検討が進んでいる状況でございます。
26ページでございますけれども、審査システムのさらなる改善の少し別の観点になりますが、「学術変革領域研究」についての審査の点について、若干の検討・改善が必要かなと考えております。26ページの上のほう、(2)となっていますけれども、公募スケジュールのさらなる前倒しということでございます。現在、学術変革領域研究の令和4年度の公募については、昨年8月に公募を開始しました。例年ですと9月から始めるんですけれども、8月に1か月ほど前倒しして審査を開始しましたが、実際その審査に7か月ぐらいかかりまして、結果的には年度をまたいで審査結果が出ると。春先、5月頃に審査結果がまとまる状況で、現在審査を進めているところであります。
現在、科研費全体で前年度中に審査結果を通知する方向でスケジュールの前倒しを進めていることから考えますと、この学術変革領域についてももう一段早期化を図る必要があるだろうと考えております。実際、その審査結果を前年度中に通知する場合には、3か月程度前倒しをしなければなかなか前年度中に結果を通知することに至りませんので、学術変革の公募の時期は5月ぐらいまで公募を早める必要があるのではないかなということがありまして、これについて検討が必要かと思っております。
なお、現時点で公募の時期がかなり流動的といいますか、その種目によってかなりばらつきが出ている状況と、あとは年度によって応募の早期化が継続するという観点がございますので、応募される先生方が計画を早めに準備できるように、いつから公募を開始するのか、あるいは締切りがいつなのかといった点についてはあらかじめ周知するように留意する必要があるかなと考えております。
それから26ページの下半分、これも学術変革領域の話ですけれども、現在文部科学省で審査をしている種目でございまして、こちらについてはこの部会において、将来的には日本学術振興会で審査をする方向で移管の方針が示されています。御案内のとおり、前期の部会においては、令和6年度の公募分から日本学術振興会で審査をすると、移管をするということで検討を進めてきておりましたけれども、今般の審査スケジュールの見直し、それから最初に御説明しました国際先導研究の審査が令和4年度、令和5年度に重なって出てくることもございまして、振興会の体制の充実を見極める必要があるのではないかなと。要はスケジュールが不安定な状況でこのまま既定方針どおり移管を進めるのは厳しいのではないか??と考えておりまして、移管の時期については一旦この部会で令和6年度公募分ということで定めていただきましたけれども、改めまして、時期については検討させていただくことで整理をし直してはいかがかと考えております。
まず前半の説明は以上です。
【大野部会長】
どうもありがとうございました。国際、若手、システムと3つありましたので、それぞれ少し区切って皆様から御質問、御意見を頂ければと思っています。
まずは最初の国際共同研究に関して御質問あるいは御意見がございましたらば頂けますでしょうか。御発言いただけますでしょうか。ではまず仲委員、そして速水委員の順番で御発言いただきたいと思います。お願いします。
【仲委員】
私は1番目の名称変更は賛成です。ただ、2番目のデータベースに国際関係の情報を入れるのは、たくさん業績を上げている人ほど入力しなくてはいけないものが多くなってしまいますので、これはもうAI等で自動的に探し出してきて入れるというふうな形のシステムにしていただければと思いました。
以上です。
【大野部会長】
ありがとうございます。今の点、よろしいでしょうか。要するに負担増にどのぐらいなるのかという点が今の御説明ではクリアではなかったかもしれません。事務局から。
【高見沢企画室長】
仲先生、ありがとうございます。
現在、検索項目として挙げておりますのは、既に先生方に現在実績報告で記載していただいている分についての可視化ということで、これによって負担を増やすことにはしない方向で考えております。ただ、先生がおっしゃるように、AI等で自動的に情報を集めて可視化することについては重要な課題だと思いますので、引き続き検討させていただきたいと思います。
【仲委員】
ありがとうございました。
【大野部会長】
ちょっとだけ負担が増えるという御回答だったかと思います。
【高見沢企画室長】
負担は変わりません。
【大野部会長】
変わらない?
【高見沢企画室長】
増えません。
【大野部会長】
チェックするとかそういうところもなく、今までどおりで構わないと。
【高見沢企画室長】
今までどおりです。
【大野部会長】
分かりました。それでクリアになりました。ありがとうございます。
それでは速水委員、お願いいたします。
【速水委員】
ありがとうございます。
国際共同研究をした成果が必ず国際共著論文として複数名の名前が並んだ論文として出ることを求められるというのが、文系の研究の場合に必ずしもそれですごくいいものが出るとは限らないという気がしておりまして。もちろん共著で出るものも多いですし、分野にもよるかと思うんですけれども。共同研究をした結果、単著ですごく優れたものが出るものも評価するような方法を考えていただけると大変うれしいと思います。もともと単独で研究することがベースになっているのが文系の研究ですので、それを一緒に議論することによって高めることはできるけれども、最終的な成果としてはやはり単著で出ることも含めていただけるような評価の仕方があるとありがたいと思います。
【大野部会長】
非常に重要なポイントだと思います。いかがでしょうか。事務局からお願いします。
【高見沢企画室長】
速水先生、ありがとうございます。
18ページに書かせていただいておりまして、すいません、私のほうで説明を割愛してしまったんですけれども。幾つかの観点で既に実績報告で書いていただいている中で、国際共著論文以外で、どの国と共同研究をしたのか、あるいはどの機関と共同研究をしたのか、それはその論文というよりは、研究の実績として海外と何かやり取りをしたのかということも現在記載いただいております。それについてやはり可視化していくということで今回は考えておりますので、先生がおっしゃった点はもう少し周知が必要かと思いますので、そのような点は注意しながら可視化を進められたら?と思います。
以上です。
【速水委員】
ありがとうございます。
【大野部会長】
ありがとうございます。それでは井関委員、お願いいたします。
【井関委員】
ありがとうございます。
この国際共同研究の件で、この名称変更はもちろん先ほど仲委員がおっしゃったように賛成なんですけれども、この中で全てが、帰国発展研究を除いてほとんどが若手研究者を育成するという文言が入ってくると思うんです。それは仕方ないことですし、どういうふうにするかということに関しましては、もちろん申請者側がじっくり考える必要があるんだとは思うんですけれども。何かしら少し指標みたいなものがあるといいのかなという気がいたします。
ですから、少し若手教育に関して我々が考えなければいけないこともありますけれども、何か指標は出たほうがいいのかなというか、それぞれが逆に言うと申請者が考えればいいということでしょうか。
もう一点、国際先導研究も増えまして、どんどんこの審査をどうするか。いわゆる本当に事務方ではいろいろな研究種目をつくってくださって、逆に申請者のほうも様々な場面に対応して申請できるようになっておりますけれども、こうなってきますとこの審査をどうするんだというところがあります。先ほど海外レフェリーの導入というところがありましたけれども、ということは英文で申請するということなんですか。それとも海外の日本人、日本語が分かる方を海外レフェリーにするということなんでしょうか。
すいません。ちょっと質問とかコメントがあちこちになっておりますけれども、以上、お聞かせ願えればと思います。
【大野部会長】
ありがとうございます。事務局、お願いいたします。
【高見沢企画室長】
井関先生、ありがとうございます。
国際共同研究の加速基金の中の充実の中で、少し種目の趣旨が不明確になりつつあるのではないかという御指摘かなと思います。今回の先導研究のほうは、PIの先生の下で、従来であれば研究協力者として扱われる方々にスポットライトを当てるということで、今までの科研費の種目とは少しフォーカスする場所が違っているのかなと思います。その辺りも含めて、できるだけ分かりやすく周知するようにしたいと思います。
また、19ページでピアレビューシステムの高度化ということで御質問いただいたかなと思います。この海外レフェリーの導入は国際先導研究の中で試行するということで、基本的には調書の重要な部分は英語にならざるを得ないかなと思っております。現在、海外の審査意見を聴取するような仕組みもありますので、それを少し充実する形でレフェリー制の導入を試行していきたいと考えているところでございます。
説明は以上です。
【大野部会長】
どうもありがとうございます。よろしゅうございますでしょうか。では続きまして尾辻委員、お願いいたします。
【尾辻委員】
ありがとうございます。
この国際先導研究の最後に御説明いただいた科研費データベースでの国際共著論文を検索できるようにする取組についてですけれども、科研費のデータベースを利用するということは、科研費事業に限った業績になるのでしょうか。つまり、国際共同研究事業自体は大きなものが学振の中にあるわけで、研究拠点事業、Core-to-Coreとか二国間交流とか様々な事業があるんですけれども、そういった事業で得られた業績もこの国際共著論文で検索できればいいなと思って質問いたしました。
以上です。
【大野部会長】
いかがでしょうか。
【高見沢企画室長】
尾辻先生、ありがとうございます。
現在、このKAKENデータベースは科研費の成果ということで整理されておりますけれども、先生に御指摘いただいたような点、特に競争的資金全体での成果の可視化という点では、より大きなデータベースにリンクしております。振興会の国際事業とのリンケージを進めることも重要な観点かなと思いますので、その点、検討させていただければと思います。
【尾辻委員】
ありがとうございます。国際事業のほうのこういった整ったものは私は認識してございませんので、見られないんじゃないかなと思うんですね、今の段階では。ですから、国際先導研究自体が年間15件しか採択に至りませんので、ぜひその点はデータベースを統合化するような、あるいはリンクをきちっと張る取組を並行してお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【大野部会長】
よろしくお願いします。時間もありますので、続いてよろしゅうございますね。では続いて若手に関してはいかがでしょうか。御意見あるいはご質問を頂ければと思います。
特にございませんでしょうか。後でまた御質問や御意見を頂いても結構かと思います。
それでは最後の3番目、システムについて、科研費審査システムのさらなる改善。そちらで何か御意見はございますでしょうか。それでは大竹委員、山本委員、仲委員の順番で御発言いただければと思います。
【大竹委員】
ありがとうございます。東工大の大竹でございます。御説明ありがとうございました。
大くくり化のところでまず御質問を差し上げたいと思っているんですけれども。小区分で例えば10件と20件で合計でやるというのは納得のいくところですけれども、この時に申請する人が小区分を今1つ書いていますよね。あれを複数書くことは可能なのですか。そうすると、どちらと一緒にするかということがやりやすくなるのかなと少し考えたところがあります。
もう一つはその規模感なんですけれども、今、例で10件、20件とおっしゃっていますが、実際はどれぐらいの件数のところを想定して線を引こうとしておられるのかについても伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
【大野部会長】
事務局、よろしくお願いします。
【高見沢企画室長】
ありがとうございます。
現在、振興会で具体的な制度設計と、あとは合同審査に付すべき小区分について検討しております。それについては検討の結果がまとまり次第、令和5年度公募に向けて周知するということで、現在検討を鋭意進めていただいているところです。実際の応募件数は著しく少ないところですので、10件とか20件とか、1件採択することで採択率にかなりばらつきが出るところを補正する観点ですので、本当に少ないところでそうするという方向で検討していると承知しています。
それで、あらかじめその複数の小区分を選んではどうかという御意見かと思いますけれども、基本的には各小区分が課題ベースで広めに研究計画を募ることができるような仕組みになっておりますので、基本的には1つを選んでいただくことで足りるのではないかなと理解しております。ただ、その中でもやはり応募件数自体が少ないということで、審査の公正性をどう担保するかというところがここでの課題かなと理解しているところです。
以上です。
【大野部会長】
ありがとうございました。それでは続いて山本委員、お願いいたします。
【山本委員】
山本です。ありがとうございます。
今の件に関係するのですけれども、やはり応募者は誰が審査するか、どのような分野で審査されるかということを基にして調書を書きます。なので、あらかじめこの小区分とこの小区分を同時にやることを応募時点で明示していただいたほうがよろしいと思います。そうでないと非常にスペシフィックに書いてしまうわけで、非常にブロードな分野で審査されることになると誤解を生じることになるというのが一点です。
それからこれも細かいことで申し訳ないですけれども、審査委員の数を12名ととにかく増やすようなこともお考えかと思います。私は個人的にはこれは6名のままでいいと思います。つまり2つ一緒にしたとしても6名でやると。つまりどういうことかというと、人数が多ければ多いほど、傾向としてですが平均的な課題が選ばれる傾向があります。つまり、いわゆる非常によく書けたものが選ばれます。審査委員が少ないと割とばらつきも出るんですけれども、一方で、重要な課題を見逃さずに見いだすことも一部可能になります。他が6名でやっているところを、ここだけ12名というのはやはりちょっと違った面が出てくるような気もしますし、それから審査委員は分野の代表ではございませんので、そういうことも考えて私は6名で個人的にはいいと思います。もちろん全てお任せします。よろしくお願いします。
【大野部会長】
ありがとうございます。事務局、よろしゅうございますか。
【高見沢企画室長】
結構です。検討させていただいておりますので。
【大野部会長】
それでは仲委員、お願いいたします。
【仲委員】
ありがとうございます。
私も今の御意見と関連するんですけれども。当該区分に精通している審査委員を少なくとも3名というところがちょっと気にかかりまして、どういうふうに選ぶのかとか、例えば各区分が10件、20件の場合1:2ぐらいの割合で選ぶんであろうかとか、気にかかったところです。この3名という根拠であるとか見通し、審査委員は本当に重要ですので、それについてお考えがありましたら教えていただけましたらと思います。
【大野部会長】
事務局、お願いいたします。
【高見沢企画室長】
ここについては、例えば現在6名でそれぞれの区分で審査をしているものを2つ合わせたときに、全体で審査委員を6名でセットした場合には、2つ区分からそれぞれ入ってくるとなれば3名程度というイメージで書かせていただいております。
【大野部会長】
よろしゅうございますか。
【仲委員】
それで専門性を反映させるということですね。ありがとうございます。
【大野部会長】
次、尾辻委員が先に物理的に手を振られたので、尾辻委員そして上田委員と順番に御発言いただきたいと思います。尾辻委員。
【尾辻委員】
ありがとうございます。
センターの立場もありますので、少し検討状況は開示できる範囲でお知らせできるかなと思って発言させていただきます。
大竹先生が御心配されているとおり、応募するときに、あるいは山本先生もそうですけれども、応募者が公募要領の段階でどの小区分とどの小区分が合同審査に付されることが分かっていなければ当然不公平になりますので、これはその方向になるであろうと思います。そこは間違いなくですね。ですので、応募者がどの小区分とどの小区分との合同で審査してほしいという要望は聞き入れられないと思います。あらかじめ選択された小区分同士の合同審査を明示的に示した上で公募に走るということであろうと思います。
それから場合によっては2つの区分の合同審査では済まないケースもございまして、ある特定の近しい分野の間で応募件数が非常に少ない区分が複数あった場合に、2つの合同区分を合同にしてもなお応募件数が少ない場合も考えられます。そういった場合には、例えば3区分合同ということになりますと、それぞれの小区分での審査委員がじゃあ6名とした場合には2名になると。ここの審査の公正性の担保を考えると、若干名審査委員の数は流動性を持たせる必要があるのではないかという検討も進めているところだと思います。
以上です。
【大野部会長】
ありがとうございます。それではよろしいですね。上田委員、御発言いただければと思います。
【上田委員】
審査の公平性ということで、非常に少ないところの小区分を合同でやることそのものは賛成ですけれども、そもそも研究分野は年とともにいろいろ変わっていくわけですね。特に、手前みそですけれども、今のAIの分野では、9,000件ぐらいの国際会議論文の投稿があり、レビューは大変な状況になっており、どのように公平性を担保するかという議論が常になされています。
科研費におきましても、小区分ごとに応募数のヒストグラムを取って、研究者がどういうところに注力しているかということもボトムアップに見ながら、区分をどんどん進化させていくようなことも考えないと、旧態依然の小区分で少ないから合同となると、今いろいろな御意見が出たように、かえってオーバーヘッドが諸々出てくると思います。年々その審査、応募の状況を見ながら区分を流動的に変えていって、審査時のオーバーヘッドを減らすようなこともボトムアップに検討する必要があるのではないかというコメントです。
以上です。
【大野部会長】
ありがとうございます。非常に重要なポイントです。事務局からは何かございますか。
【高見沢企画室長】
ありがとうございます。
上田先生の御指摘の点については、審査部会と別の、審査の実行的な部分についての審議をする部会がございますけれども、そこでは定期的に5年から10年の間で区分そのものを見直す仕組みを取っておりまして。今回は平成30年度の審査システムから5年目ということでのマイナーチェンジの中でこの合同審査に着手するということですので、先生が御指摘のような、学術動向を踏まえた区分の見直しは柔軟に行えるような考え方も今後必要かなと思います。その辺りは振興会とも相談しながら、次の区分の改定に向けた議論を進められればと考えております。
以上です。
【上田委員】
ありがとうございます。5年といわず、3年ぐらいのスパンのほうが良いと思いますので、その辺の検討もお願いします。
【大野部会長】
御検討、よろしくお願いいたします。
それでは次の議題がございますので、ここで一旦区切りまして、後半の少し中長期的な議論に進みたいと思います。それでは事務局より後半部分の御説明をお願いいたします。
【高見沢企画室長】
それでは資料27ページ以降について説明させていただきたいと思います。今後引き続き検討すべき課題としては2点、本日出させていただいております。
まず1点目ですけれども、審査負担の軽減についてでございます。本件については、科研費の応募へのニーズが高いことをどのように持続可能な審査という形で進めていくかというところが課題になっていたかと理解しております。現時点で応募を抑制するというよりは、ニーズに応えて審査できる体制にしていく観点から考えますと、審査の簡素化ですとか審査負担の軽減を順次検討して、実行に移していく必要があるのかなと考えております。
では今後具体的にどういった取組が必要なのかという点が課題になっていると理解しております。28ページは既にこの部会でもお示ししている基盤Cでの応募件数の推移でございます。人文学、あるいは医学の応募がこれまで非常に多い傾向がございます。
それから29ページは、その種目別に見た応募件数と審査委員数の推移をグラフにしたものであります。赤い線が審査委員数でございますけれども、現在、枠囲みにしております中ですが、基盤B・C、若手の2段階書面審査委員、3年度の公募で大体6,000人ぐらいお願いしております。そのうちの大体3分の1ぐらいは初めて審査委員を経験される方ということで、この研究費部会での議論の方向性を踏まえて、できるだけ若い方あるいは初めて審査に携わる方を一定程度含めていくことはなされているのかなと思います。この割合をこれから上げていく、あるいはそういったフォローアップが必要になってくるかなと考えているところです。
それから30ページですけれども、審査の簡素化・効率化といった観点で、現時点での取組例ということでプレスクリーニングという手続がございますので、一例として挙げさせていただいております。これは挑戦的研究で実施しているものですけれども、実際の総合審査に移る前に事前の選考を行うものでして、一番左の上にありますように、挑戦的研究の実際の応募自体は1万件を超えておりますけれども、プレスクリーニングを経ることで大体採択件数の2倍程度まで絞り込みを行って、2,400件程度の審査を実施するということで、事前の選考でかなり調書の概要版を用いて総合審査の可能な件数に絞り込むプロセスを取っております。
これ自体が大体2か月近く時間を要するものですので、絞り込みの際に時間的なコストがかかる点がございますけれども、効率化という点では、あるいは負担軽減という点ではこういった取組もあるのかなと考えております。
それから31ページですけれども、これは基盤研究BとCについてのそれぞれの研究計画の応募総額がどの辺りに分布しているのか、あるいはその応募総額で見たときの採択率がどうなっているのかということを可視化したものでございます。左側が基盤C、右側が基盤Bですけれども、大体基盤Cでいえば100万円ぐらいの単位で区切って見ております。基盤Bについては200万円程度で区切って見ておりますけれども、既に大体お分かりのところだと思いますが、それぞれの区分の上限額のところの応募が非常に多くなっていると。人文社会ですと少し低めになりますけれども、それでも基盤Cでも50%は応募上限額のところに張りついている状況がありまして、かなり区分に引っ張られているところもあるのかもしれないということで、今回出させていただきました。
また、下のほうではその応募総額別の採択率ということで、これが金額を輪切りにしたときにどうなっているかというところで見ますと、例えば基盤Cのところ、400万から500万の金額で応募があったところでの採択は33%、3件に1件が採択になっているとか、あるいは基盤Bのところで見ますと一番右側、1,800万から2,000万の応募の計画の採択率が30%という状況でして、応募金額を最大限生かした計画を立てている結果でこういう結果が出ているとも理解できますので、この採択率のばらつき自体も理解できる点が多いかなと思います。
本日の検討の論点、この負担軽減に関する検討の論点は32ページの赤い枠で囲んでいるところになります。まずは、審査委員の経験の浅い方ですとか若手研究者の方に審査に協力していただくといった取組をさらに進めていく必要があるのではないかという点。それから、審査の負担を軽減するといった場合に、これは例えばですけれども、2段階書面審査それにプレスクリーニングを組み合わせることで負担軽減あるいは簡素化につながるかどうか。そういった辺りの新たな取組も検討の余地があるのではないかという点。それからこれは資料は入れていませんけれども、現在のコロナ下でも進んでいますDX、審査書類のデジタル化ですとかペーパーレス化といったものも検討を進める必要があるのではないかなと思います。また、制度面でいいますと、先ほど申し上げたような応募の区分と総額の関係についても今後検討が必要になってくるかなと思われますので、一応論点として挙げさせていただいております。
それから2点目の検討課題で、33ページ以降に載せさせていただいています。こちらの若手研究者支援のさらなる充実という点についての説明になりますけれども、現在、日本学術振興会で「特別研究員事業」を実施しております。この事業は科研費と連携して、ドクターコースの学生さん、それからPDの方、ポスドクの方などを中心に、トップ研究者への登竜門として機能している重要な事業と認識しております。
現時点で、先生方は御案内のとおり、博士後期課程学生の経済的支援がかなり充実してきております。34ページに簡単な資料を載せさせていただいていますけれども、博士課程の学生支援の3つの柱ということで、1番目に挙げていますのは左上ですけれども、トップ層の若手研究者の支援。登竜門として機能している特別研究員事業、今まで大体これを中心に進めてきたところですけれども。
現時点では右側にありますような所属大学を通じた機関での支援ということで、「大学のフェローシップ創設事業」ですとか「次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)」といったような、機関を支援する形で学生の支援を進めるといった施策。
それから左下ですけれども、リサーチ・アシスタント経費を措置するといった形で、何らかの経済的支援を博士課程学生に対して進めるといった点は、令和3年度以降充実している状況はございます。こういった中でトップ研究者の登竜門としての特別研究員事業について、科研費でできることについては検討する必要があるのではないかという問題意識です。
35ページは特別研究員制度の概要でございます。区分としてはDCですとかPDですとか設けておりまして、右から2番目にあるような月額の研究奨励金を、経済的支援あるいは研究費の一部として支援している状況かと思いますけれども、この特別研究員の9割が常勤の研究者として就職されているということで、トップ研究者の登竜門としての事業、機能、役割は果たしている状況かなと思います。
現在、経済的支援は充実する中で科研費がどういう支援をしているかといいますと、36ページにございます。科研費の中の特別研究員奨励費という種目がございまして、これによって採用区分に応じて応募総額を設定しております。中心になるところは真ん中にありますDC1、DC2、PD、それぞれの研究期間の範囲内で年間150万円程度を応募上限として計画を提出していただいている状況で、科研費としても研究奨励費に加えて研究費を措置するという連携した事業でありますので、ここの充実も重要になってくるかなと思います。実際のその配分実績としては大体100万円程度ということで支援をしているところでございます。
こういった若手支援については、37ページにございますけれども、イノベーション基本計画の中でも触れられております。独立した研究者となるために挑戦に踏み出せるようなキャリアシステムを再構築していく中で、切れ目ない支援、それから知の創出と活用を最大化していくということで、科研費との連携がますます重要になってくるのでないかなと思います。
そういった中で、38ページにございますけれども、特別研究員事業を科研費がある意味研究費面で下支えしているという構造の中で、科研費の側で何か改善・充実するべき点はないだろうかと。もしそれがあるとしたら、現在こういった経済的支援が充実する中で、特別研究員、トップ研究者の登竜門の機能をさらに高めるために科研費でできることがあれば進める必要があるのではないかという問題意識でございます。
説明は以上です。
【大野部会長】
どうもありがとうございました。
それではこちらも検討の論点のペーパーを2つ出していただきましたので、32ページ、38ページそれぞれ分けて御発言いただければと思います。加えて、ここでカバーし切れなかった中長期的なお話ももし御発言があれば最後にお受けしたいと思います。
それではまず最初の点に関して。それでは尾辻委員、福田委員、山本委員の順番で御発言いただきたいと思います。尾辻委員、お願いします。
【尾辻委員】
尾辻です。
すみません。特別研究員事業についての質問、コメントでしたので、ほかの方をお先にと思います。失礼しました。
【大野部会長】
恐縮です。それでは福田委員、お願いいたします。
【福田委員】
審査委員として若手にお願いする件ですけれども、これは非常にいいことだと思いますが、私自身、今、学振の中でこの審査委員のうまくいかなかったケースなんかを見ていますと、若手が多いんですね、実は。でも若手が悪いわけでは決してなくて、教育ができていないということなんだと思います。
若手を採用するのはとても大事なので、そういう方がきちんと審査できるような教育をやることがすごく大事なんじゃないかと思います。そのためには、当然若手のほうもその教育を受ける時間が必要だし、教育する人も必要なので、ある程度のコストがかかるんだろうと僕は思っていて。そういうコスト込みで審査体制を整える。若手の科研費教育をきちんとして、その上で審査してもらうことが、若手の研究者としての教育にとってとても大事だと思いますので、そういう体制をやはり整えるようなことを文科省として考えてもらうとありがたいなと思います。
以上です。
【大野部会長】
ありがとうございます。事務局、よろしいですね。
【高見沢企画室長】
はい。
【大野部会長】
非常に重要なポイントだと思います。続きまして山本委員、お願いします。
【山本委員】
すみません、度々失礼します。山本です。
審査負担の軽減でプレスクリーニングというのは一つの有効な手段だとは思います。これ、いろいろと前にも議論があったと思うのですけれども、挑戦的研究で導入した場合には、挑戦性という一つの軸を持ってプレスクリーニングということがある程度できるだろうということで、概要版での判断ということを行ってきたと思います。
一方、基盤的な研究になりますと、例えば基盤C自体が主戦場である分野も少なくないです。例えば人文系もそうでしょうし、理工系でも理論系の分野がそうです。そういうところでは、やはりちゃんと見てほしいという意見があったように思います。なので、その辺をどういうふうにコンセンサスを取るかというところが、この実施において物すごく重要なポイントかと思います。
それからもう一つは、負担軽減でいうとコメントを書くのがすごくやはり負担で、その部分で無理やりに例えば長所短所をひねり出すようなことがおこりかねないので、むしろ短くしていただいて、例えば中間的な評価であればもうコメントは要りません、もちろん書いてもいいのですが、必ずしも書く必要はないみたいな、少し緩めてあげるだけでも若干審査委員の気持ちは楽になるかと思いました。
以上です。
【大野部会長】
ありがとうございます。よろしいですね。それでは続きまして上田委員、お願いいたします。
【上田委員】
今の件ですけれども、実は我々の分野の国際会議でも先ほども申しましたように件数が多いのでプレスクリーニングみたいな制度がありました。その時はプログラムチェアが独自にスクリーニングをするのですが、不採択の際、一切コメントがなかったことに対して、やはり博士課程の学生等、それから先生方からかなりクレームがありました。特に学生は、海外でも難関の国際会議に通すことが就職に関わることもあって、何のコメントもなく落ちたということになると、本人は納得がいかず、また、これは非常に、単に件数を減らすために雑にスクリーニングをしたのではないかという指摘もありました。
ただ一方で、先ほど山本委員がおっしゃったように査読者の負担もあるので、ここは何らかの項目を幾つか設けて、どの観点で不採択になったぐらいのフィードバックは必要かと。何らかのフィードバックをしないと、何もコメントもなく落とすことは適切ではないし、かつ、件数が多い分野のだけスクリーニングをして、件数が少ないものはやらないというのは、これはある意味不公平な感じがします。プレスクリーニングをやるのであれば、本来全てやるのが適切かと。やり方も何か幾つかのトピックを決めて、この観点で落ちましたというようなフィードバックをするような方向が、私は経験上、望ましいと思います。
以上です。
【大野部会長】
重要な御指摘、ありがとうございます。ほかに御発言はよろしいですか。事務局から何かレスポンスはありますか。
【高見沢企画室長】
ありがとうございます。頂いたご意見、引き続き検討させていただきたいと思います。
【大野部会長】
特にどんどん応募件数が増えているところをどうマネージしていくのかは、分野全体あるいは学術界全体としてある種のコンセンサスが必要なことだと思います。そういう意味で、どこがリーダーシップを発揮してそのコンセンサスをつくっていくのか、あるいは議論をしていくのかというところは、これからも考えていかなければいけません。大学としても教員の負担をいかに減らすかということも大きなテーマですので、そことうまく整合するように全体ができていくととてもいいなと思いますし、ありがたいなとも思う次第です。
いかがでしょうか。何かほかに。それでは今の2点に限らず、こういうことは検討すべきだという御発言を頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。あるいはこれまでの議論全てのことについて……。尾辻委員、お願いします。
【尾辻委員】
すみません。若手支援の特別研究員事業についてぜひとも御検討いただきたいというお願いなんですが。
34ページのチャートにお示しいただいたように、特別研究員事業はこれまでも今も最高のプレミアムな若手研究者のポストとかポジションとして認知されていることは間違いないんですが、相対的にJSTの創発的研究支援事業も始まりましたし、また御案内の大学フェローシップ事業ですとか、SPRINGだとか、あるいは卓越大学院とか、様々なものが走っているんですね。で、経済的支援の額は特別研究員事業がお手本となって月額20万円というラインはそのようになっているんですが、問題は、特別研究員事業の場合は経済的支援として他の国費による支援を受けられないという厳密なルールがあるんです。
実は、それではということで例外的に授業料相当分までは、例えば卓越大学院だとか別のJSTだとか、そういったものからも受けてもいいですよと。言い方を変えると、JSTと例えば大学フェローシップ、そういったものを合算で受給すると月額の支給額は36万円とか、20万円の2倍相当を受けることができる制度が多数あるんです。けれども、特別研究員事業だけは経済的支援の額としては増やさない、増やせないという大きな足かせがあります。ですから、特別研究員、DCでなくてもJSTのほうがいいやというふうに、そちらに行く傾向がかなり出てきていると思います。
特別研究員奨励費については、これはもう研究費ですからこれまでどおりにお願いしたいんですけれども、経済的支援として月額の受給額に、他の事業についてもある一定程度は相互の受給ができるように、ぜひ制限緩和を御検討いただきたいというのが私のお願いです。
以上です。
【大野部会長】
非常に重要なポイントかと思います。まずは御発言だけ頂いてから、後、事務局からもお話を頂きたいと思います。それでは大竹委員、お願いします。
【大竹委員】
ありがとうございます。
尾辻先生もおっしゃったとおりで、私も制限の緩和は非常に重要だなというのを1点目に申し上げようと思っていました。いまだに博士の学生も、あるいは大学自身もこの特別研究員をプライオリティーの一番に置いているというのは変化のない状態であって、逆に言うと、その20万円が天井になってしまっているようにも現場では感じます。つまり、大学フェローシップあるいはSPRINGのほうでもう少し上げたいというところを学振の最高金額が止めてしまっている状態も一部見受けられるのかなと思っていて。この20万円をもう少し上げられると、より全体が活性化するのかなという印象も持っているところでもあります。
もう一つは特別研究員の奨励費、これは非常にいいシステムだと思っていて、学生も非常にありがたいと感じているシステムですけれども。もう一つ加えるとすると、今日、国際の話が多いからというのもあるんですけれども、例えば半年ぐらい海外に行くことができる規定に、みんなが行かなければいけないではなくて、できる規定にして、その分支援するのはかなりあり得るのかなと。ドクターの時に半年先端のところに行くのは、これは間違いなくいい経験になると思いますし。先ほどの国際共研との重複については注意しなければいけないと思いますけれども、一考の余地があるのではないかと思いました。
以上でございます。
【大野部会長】
ありがとうございます。それでは続きまして中村委員、お願いします。
【中村委員】
中村です。
私も全く同じ意見です。昔は特別研究員しかなかったわけですけれども、今は選択肢が出ましたよね。学生さんにとって、フェローシップってある意味で賞なんですよね。ですから学振特別研究員の人で財団などのフェローシップももらいたい人もいる。でも出そうと思ったら、学術研究会のDCは他の奨学金はもらえないんだということが分かって、かえってがっかりしたんですよ。だったら支給額はほとんど同じの他の給与をもらっていたほうがよかったと。だからやはり問題があると思います。
全般にかかわる質問をしたいのですが後まわしでしょうか。
【大野部会長】
まずは若手のところで限りたいと思いますけれども、関連があるのであれば御発言いただければと思います。
【中村委員】
じゃあまた後で最後に時間があったらお話しします。
【大野部会長】
はい。それでは白波瀬委員、お願いいたします。
【白波瀬委員】
よろしくお願いいたします。
もう基本的に先生方がおっしゃったことなんですが、2点につきまして、若手による審査のこと。これは福田委員からありましたように、ステージ的にもやはりかなり丁寧に制度としては入れていかないと、なかなか難しい問題があると思います。ただ、そういう意味では論文の査読を引き受けることは、自身の投稿論文にもその経験が活かされるというような双方向の教育的効果がございますので、そういうような位置づけになるようにしっかり、教育的なトレーニングも含め必要かなというのが1点目です。
2点目につきましては、やはり博士課程支援について経済的支援という文言一つをとってもこのところ、いろいろな選択肢が出てきました。今、上限が20万というところでということになると、いまだに基準になるのはDCなんですけれども、実質的な使い勝手のよさがなかなか全体的に下がっているような印象もあります。またこのDCについても科研費との関連でというお話もあったんですけれども。やはりかなり優秀な学生が採択される実績も鑑み、少し実質的なプレミアム感を、使い勝手の柔軟さを入れ込むことによって上げていくことが求められるのかなと感じております。全体的に支援がいろいろなところから取れるようになり、その意味での改善は確認できます。ただ、少々乱立的なところも見受けられるところもあるので、少しその整理をお願いしたいと思います。
以上です。
【大野部会長】 ありがとうございます。それでは仲委員、お願いいたします。
【仲委員】 ありがとうございます。
私も繰り返しみたいになるんですけれども、1つ目の、若手に審査をさせるのは、白波瀬先生が言われたのと同じように、国を挙げてそういうことができる研究者を育成していくというふうに、システムの中に一つ一つ位置づけるべきだなと思ったところです。
それからもう一つ、最後のほうの科研費で若手支援に何かできないかという事務局の最後の問いかけについてですけれども、お金だけでなくて、研究の進行に伴う柔軟な研究費の使用ができるようにしていくというのがあるかと思います。PDの学生などを見ていまして、一部にはお金をもらう、研究費をある意味使わなくてはいけないところにプレッシャーを感じて、無理な研究計画を立てるというようなこともあったり、逆にお金が足りないので、デポジットをつくって海外に出向くことができないみたいな学生もいたりすることを考えると、やはりより柔軟な使用ができるようになるといいと思います。
あともう一つは、無理かもしれないですけれども、文科省とかJSPSとかで、学術調査官のようなメンターみたいな人がそういう相談に乗れるようなことができると、もう全部自分で計画してやりなさいよというのではない支援制度になるんじゃないかと思ったりいたしました。
以上です。
【大野部会長】
ありがとうございます。それでは井関委員、お願いいたします。
【井関委員】
ありがとうございます。井関です。
1点、先ほど大竹委員がおっしゃったように、この特別研究員の間に海外に半年でも行けるようなお金を科研費から補助していただくことを御検討いただきたいと思います。それはなぜかといいますと、この特別研究員は本人に研究費が下りていると。先ほどから話している国際のプロジェクトはどうしても上の先生がその研究費を採択されるようなそういうところにリミテーションがあるんですけれども。こちら特別研究員にくっつけていただけますと、研究の多様性が維持できるのではないかと考えておりますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。
以上です。
【大野部会長】
ありがとうございます。
私からも質問なんですけれども、この特別研究員制度の研究奨励金、これはどこが決めている、この額は誰が改定できるのかということも併せて教えていただければと思います。事務局から御発言いただければと思います。
【高見沢企画室長】
ありがとうございます。
ただいまの大野部会長の御質問ですけれども、こちらは日本学術振興会の事業ですので、基本的には振興会での検討を踏まえて、上限を上げる場合には文部科学省を通じて概算要求をするというプロセスになろうかと思います。
【大野部会長】
ほかにたくさん御意見を頂きましたけれども、事務局から何か御発言はございますか。
【永田学術研究推進課長】
学術研究推進課長でございます。
多くの先生方から御意見をありがとうございました。特別研究員事業自体について、その制度を見直して奨励金の額を上げるですとか、制約を緩和するですとか、その制度自体の見直しは日本学術振興会が担当してございまして、その日本学術振興会を所管しているのが学術研究推進課になります。また、この博士課程支援全体を担当しておりますのは科学技術・学術政策局の人材政策課になってございまして、そちらとまた、今頂いた御意見を踏まえて、連携して対応を考えてまいりたいと思います。
日本学術振興会を所管しております当課としましても、この特別研究員事業を何とかいいものにしたいと考えてはいるところなんですが、この特別研究員事業自体は運営費交付金が原資となってございます。運営費交付金自体はなかなか大きく増額というのが大変厳しい状況にあり、年々その削減が言われている中で、何とかいろいろ工夫しながら概算要求をしているところでございます。先ほどの制限を緩和するとかそういった内容も含めていいものにしていきたいと思いますので、引き続きまた御意見を踏まえながら検討してまいりたいと思います。
【大野部会長】
どうぞよろしくお願いします。運営費交付金の枠の中でやろうとすると、支援規模・人数を調整して額を増やす、あるいはそれを概算要求につなげるみたいなこともあり得るのかもしれません。あまり軽々には言えないことですけれども。全体のバランスを考えながらぜひ御検討をお願いできればと思います。この件はよろしいでしょうか。
それでは山本委員、お願いします。
【山本委員】
一言だけ。いろいろな制度が乱立しています。文科省でもう少し整理されたほうが私はよいと思います。実際、大学でそういう制度設計を考えると、ものすごく苦労しています。そのことはちょっと御理解いただいて。例えば、今回のSPRINGだって、DCと一緒にやれば問題ないわけです。それが一番いいとみんな思っているわけで、ちょっとお考えいただけないかというのは一言だけ申し上げておきます。
【大野部会長】
大変必要なことだと思います。よろしくお願いします。
それでは最後に、ここまでの議論で落ちていた中長期的なこと、まずは中村委員から御発言いただければと思います。
【中村委員】
日本の知的財産の流出を防ぐ問題とドクター論文を全文開示するという文部科学省の決定の間の矛盾を指摘したいと思います。今は、5年たったら博士論文の内容を全部世界中に開示するんだということになっています。この規則は数年前に決まったと思うんですけれども、それまではドクター論文は国会図書館に1冊入れれば、そこで閲覧したらいいということになっていました。ところが今やインターネットでどこでも閲覧できることになっているわけです。
御存じのようにドクター論文は実験法などの細部の宝庫なんですよね。非常に細かいことが書いてあって、表に出ないようなことがたくさん書いてある。ノウハウがたくさん書いてあることが多い。これが誰が閲覧したのか分からない状態で世界中に垂れ流しする制度を文部科学省が旗を振ってつくったんです。昨今の国際情勢から見ても国益にかなわないと思うんですがどうでしょうか。ですから垂れ流しにするのではなくて、やはり国会図書館のサイトの中に入っていって、以前同様に、閲覧記録を残した上で開示するとかいう方式に変更する必要があると思います。
学生さんの研究は多くの場合科研費を使って行われたものが多いわけですから、科研費の問題だと理解すべきかと思います。これは非常に大きな問題なので、文部科学省さらには国全体の問題として考えるべきだと思います。
以上です。
【大野部会長】
ありがとうございます。公開性と現在進んでいる経済安全保障などの観点との兼ね合いをどこに持ってくるのかということだと思います。ぜひ御検討いただけたらと思います。速水委員、お願いいたします。
【速水委員】
今日のお話では全然出てこなかったんですけれども、今まさに私の周囲で研究者が一様に言っている話で聞こえてくるのは、科研費の基金化が種目によってのみというところで、コロナ禍の下で思ったようになかなか研究のもともとの予定を消化し切れない中で、もう少しこの基金化の域を広げていただけないか、そういう議論は今ございますでしょうかということを伺いたかったんです。
【大野部会長】
ありがとうございます。それでは今の中村委員そして速水委員の論点について、事務局から何かございますでしょうか。
【永田学術研究推進課長】
中村先生から御指摘いただきました論文の扱いにつきましては、ちょっと私ども、あまり知見がないものですから、頂いた意見を関係のところとも共有しまして、検討させていただきたいと思います。
それと速水先生からお話がありました基金化でございますけれども、これは私どもとしましても全ての種目について基金化を目指して考えていきたいところではございますが、やはり基金化となりますと、概算要求の時点でその当該研究期間分を全部合わせて概算要求する仕組みになってございますので、基盤研究B以上の金額の大きいものについてはなかなか基金化に至ってございません。基金化するとなると相当の概算要求を認めていただかなければいけないところがございますので、そういったところを踏まえながら、検討を進めているところでございます。
当面では学術変革領域の基金化をまずはしていきたいと我々は考えて検討を進めているところではあるんですが、なかなか概算要求できる幅もございます。全てを基金化したいという思いは我々も同じでございますけれども、引き続きこの点については検討していきたいと思ってございます。
【大野部会長】
どうもありがとうございました。この件に関する議論はここまでとさせていただきます。本日頂いた御意見を踏まえて、次回以降の部会で議論すべき課題を事務局としてはまとめていただきたいと思います。また、今日、時間の関係で御発言できなかった委員もいらっしゃるかと思いますので、御意見がありましたら事務局までお寄せいただきたいと思います。
司会の不手際で少し時間が延びておりますけれども、報告事項が2件ございますので、事務局からお願いいたします。

(3)その他 

【吉田企画室長補佐】
資料の3と4と合わせて御報告をさせていただきます。
資料3、40ページを御覧いただければと思います。本年度令和3年度科研費の配分について今月プレス発表をさせていただきましたので、御報告させていただきます。
概要を1枚にまとめてございます。本年度の科研費につきましては、左側にございますが、新規9万5,000件余りに対して約2万6,000件を採択し、継続と合わせて8万3,000件余りに対して約2,213億円を配分してございます。
右側は経年の推移となってございますが、青い縦グラフを見ていただきますと分かりますとおり、令和3年度、新規の応募件数が減少してございます。これはコロナ禍に伴う継続課題の延長などが多くなり、新規の応募件数が8,950件減少したと分析しており、令和3年度が最終年度の課題につきまして繰越しまたは期間延長の手続きを行った課題が昨年度の倍、約1万5,000件ございました。それが新規の応募件数の減少につながっていると考えてございます。また、新規の採択率につきましては27.9%ということで、前年度より若干上回ってございます。また、新規・継続合わせた配分額、採択件数につきましても昨年度よりも増加しているところでございます。
全文につきましては下の文部科学省のホームページに掲載してございますので、御参照いただければと思います。
続きまして資料4でございます。こちら、さきにメールで御審議いただきました御報告でございますが、本部会の公開手続に関する一部改正についてでございます。
42ページ目に記載してございますが、昨年10月1日から本課の課名が「学術研究助成課」から「学術研究推進課」に名称変更したことに伴い、この公開の手続につきまして、一部改正について書面により議決を行わせていただきました。そのことについての御報告でございます。
以上でございます。
【大野部会長】
どうもありがとうございました。
それでは最後の最後に、事務局より連絡事項をお願いいたします。
【吉田企画室長補佐】
本日も御議論ありがとうございました。
本日の議事録につきましては、各委員の先生に御確認いただいた上で公開させていただきます。また、次回の研究費部会につきましては、後日日程調整をさせていただきまして、改めて御案内をさせていただきます。
事務局からは以上でございます。
【大野部会長】
それではこれで本日の会議を終了させていただきます。司会の不手際で10分ほど超過してしまいました。申し訳ございません。活発な御議論をありがとうございました。

―― 了 ――

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