第11期研究費部会(第7回) 議事録

1.日時

令和4年10月26日(水曜日)13時00分~15時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 令和5年度概算要求及び研究活動の国際化について
  2. 研究活動の質の向上(人材流動性向上)について
  3. 基盤研究の助成の在り方について
  4. 今期のとりまとめに向けて
  5. その他

4.出席者

委員

大野委員、白波瀬委員、井関委員、上田委員、尾辻委員、川端委員、中村委員、山本委員

文部科学省

森研究振興局長、木村大臣官房審議官、永田学術研究推進課長、高見沢学術研究推進課企画室長、吉田学術研究推進課企画室室長補佐、他関係官

5.議事録

【大野部会長】
それでは時間になりましたので、ただいまより、第11期第7回の研究費部会を開催いたします。皆様、お忙しい中、御参加いただきまして誠にありがとうございます。
議事に入る前に、事務局から人事異動の御紹介をいただきます。
【吉田企画室長補佐】
事務局でございます。事務局に人事異動がございましたので、紹介させていただきます。
9月1日付で研究振興局長に森が着任してございます。本日は遅れて参加させていただきますので、後ほど挨拶をさせていただきます。
続けて、同じく9月1日付でございます。大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)に木村が着任してございます。
【木村大臣官房審議官】
よろしくお願いします。
【吉田企画室長補佐】
事務局からの異動者の紹介は以上でございます。
【大野部会長】
ありがとうございました。本日は、「令和5年度概算要求及び研究活動の国際化」について御報告をいただいた後、前回に引き続き、「研究活動の質の向上(人材流動性向上)」及び「基盤研究の助成の在り方」について御議論いただきます。最後に、今期の取りまとめについて御説明いただくことになっています。
それでは事務局から、配付資料の確認とオンライン会議の注意事項についての説明をお願いいたします。
【吉田企画室長補佐】
事務局でございます。資料につきましては、事前にお送りいたしましたファイルを御参照いただければと思います。
本日もオンライン会議となります。事前にお送りした注意事項につきまして御説明させていただきます。まず音声の安定のため、発言時を除き、常時ミュート(マイクをオフ)にしてください。部会長、委員を含め、メイン席の方は常時ビデオオンに、その他の方は常時ビデオオフにしてください。
発言される場合は、「手を挙げる」ボタンを押してください。部会長が指名されますので、ミュート解除(マイクをオン)にして、その都度、お名前を発言いただくとともに、オンラインでも聞き取りやすいよう、はっきりと御発言いただければと思います。また、資料を御参照される場合には、資料番号、ページ番号などを分かりやすくお示しください。
最後に、トラブル発生時には、事務局までお電話で御連絡いただければと思います。
事務局からは以上でございます。
【大野部会長】
どうもありがとうございました。それではまず初めの議題、令和5年度概算要求及び研究活動の国際化に関し、事務局から御説明をお願いします。
【高見沢企画室長】
高見沢でございます。資料1を、まず御覧いただきたいと思います。「令和5年度概算要求について」ということでして、実際には概算要求は8月末に行っておりますけれども、要求後の最初の部会ということでちょっと時間が空いてしまいましたけれども、簡単に御報告させていただきたいと思います。
科研費の概算要求、令和5年度の要求ということで、2,511億の要求をさせていただいております。昨年度と比較して135億円の増ということで要求させていただいているところです。
この要求の骨子としましては、大きく2点ございます。真ん中の囲みの左側にありますけれども、まず1点目、「国際共同研究の強化」という点、それから2番目としまして、「アカデミアへのキャリアパスを支える切れ目ない支援の強化」ということで、特別研究員奨励費の抜本的な見直しという、大きく2点について要求させていただいているところです。
次の資料からは、具体的な内容になります。今御覧いただいています5ページのところ、「国際先導研究」による国際共同研究の抜本的強化ということで、こちらは令和3年度の補正予算で設置されました種目ですけれども、それに引き続きまして令和5年度も継続的に概算要求をしまして、この種目の充実を図りたいということで、前年度と同規模、件数にしまして約15件程度の予算を確保するという方向で要求をさせていただいております。
具体的な仕組みについては、令和3年度補正予算で認められたものと同じです。トップレベルの研究チームの中に若手の方たちに大体8割ぐらいをめどに入っていただいて、カウンターパートとなる海外のトップレベル研究チームとの間で、人材交流、それから若手の自立支援といったことを進めるという、共同研究をベースに人材育成を両輪として進めていく種目として要求をしております。
次のページは、直接そのボトムアップの支援として科研費がございますけれども、それと併せまして、トップダウン・ボトムアップの両輪の観点で国際頭脳循環を進めていく必要があるということで、文部科学省あるいは内閣府で全体を俯瞰しまして、トップダウン型の先端国際共同研究推進事業といった観点でも要求しているところです。
続きまして、2点目、アカデミアの若手研究者の飛躍を後押しするという観点で、特別研究員奨励費の抜本的な見直しをするという要求をさせていただいております。こちらについては、当部会でもずっと御議論いただきました内容を骨格としまして概算要求をさせていただいているところです。具体的には、特別研究員奨励費の基金化、それから重複制限の緩和を講ずるということ。それから2番目にありますけれども、雇用管理下でのPDの研究を活性化するための条件整備を進める。それから、特別研究員の採用中に常勤の研究者に移られる方が2割ほどおりますけれども、そういった方を対象とした研究加速支援といったものを要求のポイントとしまして、増要求を現在させていただいているという状況です。
今申し上げたような点、全体を俯瞰しますと、8ページのような構成になります。それぞれ研究費の支援の中で、特別研究員奨励費あるいは特別研究員事業本体ですけれども、そういったものの単価の増や人員の増がございますけれども、その流れでいきますと、今の特別研究員、左側のオレンジのところですけれども、それと相まって若手研究者の飛躍を支援するという観点で国際先導研究の中で、一緒にチームの中で活躍されるポスドク・博士課程学生の長期の海外派遣といったことを進めることによって、若手研究者のキャリア形成につなげていく。それから、実際、研究者の道を歩まれた際には、科研費の支援はもちろん必要ですけれども、さらにそれを長期的な観点で、挑戦的な研究をさらに進める、あるいはその研究環境を一体的に支援するという、これはJSTで実施している創発的研究支援事業ですけれども、こういったものも組み合わせながら、アカデミアを牽引するようなトップレベルの若手研究者を育てていくといったような観点で、今回の要求を組み立てさせていただいているところです。
ここまでが概算要求の御報告ですけれども、併せまして資料2についても、科研費の国際化をどう図っていくかという観点で、現在検討を進めております。その内容について御説明させていただきたいと思います。
10ページのところにありますのが、現在進めている科研費の国際化に係る取組でございます。まずSTEP1というところは、令和3年度の補正予算で設定しました国際先導研究の中身についての国際化の取組でございます。丸1から丸3までございますけれども、レビューシステムを変えていくとか、あるいは機関の国際化を進める、機関との連携を進めるといったような観点での取組を開始しているところです。
併せましてSTEP2のところですけれども、令和4年度、科研費全体の国際化という観点で取組に着手しているところでありまして、例えば、一番上のチェックにありますとおり、日本学術振興会で設置しています審査委員候補者のデータベースに、国際的な活動の状況が分かるものを追加することによって、審査委員の国際性に留意した選考も可能にするといった取組に着手するということにして、これは順次進めているところでございます。
さらにということで、STEP3のところですけれども、これについてさらに令和5年度以降、進めたらどうかということで、現在、検討しております。具体的には2つございますけれども、公募要領あるいは審査の段階において、海外での研究歴を可視化していくといったことですとか、あるいは海外での国際共著による成果の発出ですとか、積極的な国際発信に取り組んでいただくといったことを要件として定めていくといったようなことを進めていければと考えております。
具体的には次のページ、11ページにございますけれども、応募、審査、それから研究実施の各段階において、国際化の観点で改正できるところは改正していくということで検討を考えております。
まず公募要領においては、こういった研究の国際化の観点で研究活動の質を高めていくといった観点での積極的な国際発信に努めていただきたいということを、冒頭に総論として掲げさせていただきたいと思っております。
また、丸2番のところ、「審査ルールの強化」というところですけれども、実際、研究遂行能力等々、計画に即した準備ができているかどうかといった観点、これまでも審査していただいているところですけれども、その審査情報の中に、海外での研究歴の有無を申告できるような欄を追加するですとか、あるいは2番目の丸にございますとおり、研究計画調書の中で遂行能力の欄がありますけれども、そこに、海外で研究歴をお持ちの方はそれを記入することができるということを追記してはどうかと考えております。実態上、これまでも、御自身の研究遂行能力を表明する欄ですので、そういったことを書かれていた方もいるかと思いますけれども、そういったことを具体的に明記することにより、御自身の研究遂行能力の表明をしていただけるようにしたいということであります。
それから、丸3の使用ルールというのは、これは遵守すべきルールというと大げさですけれども、研究者の責務をきちんと遵守しますといった総論的な内容の一部として、成果の発信、国際的な発信といったような観点で、努力義務をルール化するといったようなことを進められればと考えているところです。
説明は以上になります。
【大野部会長】
どうもありがとうございました。それでは、皆様から御質問あるいは御意見をいただきたいと思います。
尾辻委員、お願いします。
【尾辻委員】
どうも御説明ありがとうございました。
今回、概算要求2,800億プラスアルファを上げていただきまして、国際化と、それから若手支援というところで積んでいただいていることは大変ありがたく思います。
その上で、資料2の研究活動の国際化で御説明いただいた部分なのですけれども、10ページのところで、今後、国際先導研究のみならず、一般種目に対しても国際化の強化を、応募時にも申請書類にも求めるということだと思うのですが、その中で御説明があったところで、国際共著論文の重視をするという点についてなのですけれども、国際誌に学術論文として投稿することと、それから国際会議に投稿して講演すること、そういったことで国際的なプレゼンスを高めるということがまずは重要だろうと思うんです。必ずしも国際共著論文である必要があるのかと。頂いた資料によりますと、国際学術論文誌への投稿というステップをちょっと飛び越してしまいまして、国際共著というところまで踏み込んでいるのですけれども、ちょっと違和感があるというのが正直なところです。いかがでしょうか。以上です。
【大野部会長】
ありがとうございます。いかがでしょうか。
【高見沢企画室長】
尾辻先生、ありがとうございます。これまでの議論の中で、特に研究力の強化という観点で、国際共著論文のインパクトの高さと研究力の向上の観点の相関性が高いといった議論があったこともありまして、ここでは特出し的に書かせていただきました。先生がおっしゃるとおり、国際学術誌への投稿というのがまずもって重要であるということはそのとおりかと思いますので、その辺りを含めるような形で、最終的には日本の研究のプレゼンスを上げていくということに努めていただくというような書き方も検討できるかなと思います。
【大野部会長】
よろしいでしょうか。それでは、続きまして山本委員、お願いします。
【山本委員】
山本です。同じくやはり10ページ・11ページのところの要件の件です。そういうふうに、活動経験有無、とかやりますと、そこが何というか、審査においてすごく強調されると思うんです。それで、たくさんの調書を見ますので、そういう中でやはりバイアスがかかってしまって、本当に独創的かつ新規性の高いものを選ぶという視点から外れていくような気がするんです。もちろん、私はこういう経験があるということは、文章の中で強調していただくのはいいと思います。だけれども、それを特出ししてチェックというのは、ちょっとやり過ぎかなという気もいたしますので、御検討いただければと思います。以上です。
【大野部会長】
よろしいですね。御検討くださいということでございました。それでは、続きまして白波瀬委員、お願いいたします。
【白波瀬委員】
ありがとうございます。もう既に尾辻先生、山本先生が御指摘されたところと関連いたします。
国際共著というところで、文系に関しましては共著でない場合もございます。単著で国際学術雑誌に投稿するということも、かなり高い価値があり、高く評価されます。もちろん、文系分野、特に社会科学分野において共著の場合が多くはなっていますが、共著でないといけないということにまでなると、結果として対象領域が偏っているのではないかと思います。
あとは、今、山本先生がおっしゃいましたように、海外での実績やその評価は重要な軸となっています。具体的には国際学術雑誌での掲載や国際学会等での招待講演が具体的な根拠となっていくわけです。ただ、技術的なところが不用意に強調されてしまいますと問題があります。例えば、海外絵経験の中に、3日間滞在して、ラボを見学しただけということもあります。もちろんそれも体験として重要だとは思いますが、実質的な中身での評価が正当に実施され、評価基準として明文化していただければありがたいと思います。
以上です。
【大野部会長】
ありがとうございます。高見沢さん、よろしいでしょうか。
【高見沢企画室長】
はい。
【大野部会長】
それでは、井関委員、お願いいたします。
【井関委員】
ありがとうございます。もう皆さんが言ったことなのですけれども、本当に国際的に認められるということが重要であるということは、もう疑いのないことなのですけれども、いわゆる審査する側がどうかということです。応募する側は、自分の国際会議に出席したとか発表したということをとにかく書くということでいいのですけれども、では今度審査するときに、それをどういう位置づけで考えるかいうところが大きなポイントになり、国際会議で発表したからいいのかではなくて、やっぱりもともとは、先ほど山本委員もおっしゃったように、研究の内容が重要なわけであるから、そうすると、かなり審査委員を教育しなければいけないことになると思うんです。決して悪いわけではないんですけど、その辺りも一緒に考えていくとなると、かなり大きな仕事かなと考えております。
以上です。
【大野部会長】
ありがとうございます。それでは、続きまして上田委員、お願いいたします。
【上田委員】
上田でございます。今の視点と同じ箇所なのですけれども、STEP1・2・3と、10ページですね。STEP3にあっては、科研費全体の国際化ですが、国際化というものの定義が、やや曖昧かなと。つまり、国際先導研究というのは、私の理解では、革新的な研究を、海外でも機関でもやっているので、一緒にやることで、より成果が上がるといいますか、革新的な成果が上がる。そのための国際研究であって、国際会議だとか、海外で単に研究していたからというようなことは、あまり評価の対象にはならないのではないでしょうか。国際会議・論文であれば、その質というのは各分野でもAランク・Bランクあんどの評価あるわけで、そういう難関会議、ジャーナルに採択されているのかが重要です。国際化と言われたときには、国内学会で論文採択ということではなくて、海外の重要ジャーナルに採択されるということが重要で、また、海外で非常に類似したコンペティターがいる場合は、そこと連携して科学技術を発展させるということを促進するというような方向が本来の国際化ということではないでしょうか。
また、国際化ということで、申請書類、あるいは査読者に外国人に依頼するような場合、審査する側のオーバーヘッドもそれなりにあると思います。個人的な意見かもしれませんが、日本語のファンド申請書は、斜め読みできますけれども、これが全部英語になると、やはり効率は落ちるわけです。こうした稼働を審査委員に課すオーバーヘッドによる審査不可の増大についても、少し、国際化に付随して議論する必要があるのではないかと思います。
以上です。
【大野部会長】
ありがとうございます。それでは、続きまして川端委員、お願いいたします。
【川端委員】
ありがとうございます。今の話、いや、全体的に私もそう思うんですけど、やっぱり科研費全体に対する網のかけ方ではなくて、これは、概算要求で135億円増の部分という、国際先導だとかフラグが立ったところで国際化というのを徹底的に進めるというやり方のほうが、多分、見えやすいし進みやすいかなと思います。
その上でお聞きしたいのは、概算要求135億増ですが、今までずっと2,400億円ぐらいで動いているので、いや、こんなことを言っては怒られるかもしれないけど、もし取れなかったときに本体を減らしてでもやるのかという、それぐらい国際化というのをこの中でやらなければならないと理解して進めるなら、それはそれで1つのやり方かなと思うのですけれども、いかがでしょうか。
【大野部会長】
ありがとうございます。いかがでしょうか。
【高見沢企画室長】
川端先生、ありがとうございます。まずもって、概算要求しておりますので、この予算の確保に向けて努力するというのが現時点ですべきことかなと思っておりますけれども、まず、これまでの研究費部会の議論、あるいは財政審ですとか、他の審議会での議論、CSTIでの議論、そういったものを踏まえますと、やはり日本の研究力をどう上げていくのかというところが起点としてあるのかなと思います。そうしたときに、概算要求の増額は135億ですけれども、その根っこになっている2,300億余りの科研費全体が、もっとポテンシャルを上げられるようにならないか、できるのではないかといった観点から、現在の国際化に向けた取組ということがスタートしていると理解しております。そういったときに、フラグシップ的に種目を立ててはおりますけれども、本来的には基盤研究の中でも、そういった国際的な観点で既に活動されている先生はたくさんおられると思いますし、挑戦的研究ですとかグループ研究の中でも、そういったことを標榜してグループを構成しているケースもあると理解しております。そこのところを後押ししていく方法はないだろうかということで、令和5年度以降の取組ということを検討しているところです。科研費全体を国際化していくというような観点での要求は、増要求の部分だけでなく、全体、2,400億の要求の中で考えていければと考えております。以上です。
【大野部会長】
それでは中村委員、お願いします。
【中村委員】
科研費全体が少しずつ増えていっているとのこと、本当に努力に感謝いたします。山本先生が最初におっしゃったのと似た方向なのですけれども、上のほうのクラス、国際先導研究とか特別研究員とか、いろいろ書かなくても、自然と国際化しているわけです。私たちが本当に国際化を必要としているのは、残りの部分ですね。この部分を国際化していかないと、全体として国際化できないと思うんです。例えばある細目では国際的でない人ばかり、誰も何一つ、何も国際的な発表していないところで競争しても国際化は起きませんよね。だから、ここで今やろうとしておられることは、10ページ、11ページかな、現実的には、あまりうまく動けないのではないかなと感じました。
ここに書いてあるのは、基本的には雇用のとき、大学レベルで行うべきことです。国際化は本来、ファンディングと雇用、つまり学校の評価、人事ですね、この二つをペアにしないと、うまくいかないのではないでしょうか。科研費だけで引っ張り上げようとすると、今、大分お話が出ているように、少し無理があって、科研費の研究費の性格が曲がってくるのではないでしょうか。この科研費の会議だけで国際化しようとしても、システム全体がゆがんでくるのではないかという感じがします。
【大野部会長】
ありがとうございます。それでは、私からも2点意見がございます。
1点目は、皆様がお話しになられたことにすごく近いのですが、我々研究者に国際性を持ってほしい、あるいは我々の研究活動がさらに国際的に認められるようになりたいという動機があるわけですけれども、10ページだと、既に国際的になっている人だけが、ある意味プラスの加点がされて、これから国際性を持とうとしている人たちは、そういうグループに入らないので、今の研究者集団の中に分断が起きてしまうようなイメージを持ちました。そういう意味で、全体像を示すことが重要と思います。つまり、国際性を持つための方策というものが、今どういう形で用意されているのかということも併せて、研究者の皆さんが分かるようにしてほしい、つまり、国際性を獲得するための支援もセットであるべきだと思います。
2点目は国際共著の点ですけれども、これも確かに国際共著と、それからいわゆる引用で、被引用数で測ったインパクトは正の相関を持っていますから、こう書きたくなる方々がいるのは分かりますが、これが単に相関があるのか、それとも因果関係なのかという点は、注意しておくべきだと思います。国際共著を求めたとき、国際共著というのはいろんな形で実現できます。高いレベルでの国際共著でなければ幾らでもできます。そういうところは念頭に置いて、話がありましたように、我々が求めているのは、国際的なインパクトを持つ発信をしてほしいということに尽きますので、そこが分かるような表現になるといいと思います。以上です。
ほかに追加で、皆様、何か御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、本部会の意見を引き続き様々な形で反映していただくよう、事務局におかれましては引き続き、取組をお願いいたします。
【大野部会長】
それでは、次の議題に移ります。前回に引き続き、研究活動の質の向上(人材流動性向上)について、審議を進めたいと思います。まずは事務局から資料の説明をお願いします。
【高見沢企画室長】
資料3を御覧いただきたいと思います。ページでは13ページからになります。
この件、独立基盤形成支援の試行の関係では、前回も御議論いただきまして、様々な御意見を頂いたところです。13ページにはその主な意見をまとめさせていただきました。移動の経験というのをもっと広く捉えるべきであるという観点ですとか、あるいは本質的な問題として、例えばインブリーディングの問題というのを、研究費、研究支援の観点だけで捉えると、適切ではない部分があるのではないか。評価の観点として考えていくということはあるかもしれないけれども、対象を絞るとか、資格要件にするという設定は、やっぱり適切ではないのではないかといった御意見があったかと思います。
また、独立基盤の支援の試行が、実際、その研究者にとってのインセンティブとしてはまだ明確になっていないところもあるので、そういったところも注意が必要だというような御意見があり、それから、試行という位置づけで何ができるのかという議論は継続しながら、これを科研費全体で進めるといった場合には、非常に注意は必要ではないかといった御意見があったかと思います。
1点、実際、機関を移動していると成果が上がっているのか、優れているのかといったことが少し話題となりましたので、14ページに用意させていただきました。前回の議論では、成果が優れているということと、仮に優れていたとしても、政策の観点から人材の流動性を研究費の中で議論をするのはやっぱり限定的に考えるべきだということであったかと思います。少し資料を探しましたが、やはりそういった人材流動性の観点の資料等があまり見つかりませんで、1点だけ見つかったものを御紹介したいと思います。これは2011年のデータなので少し古いですけれども、論文の被引用数が比較的上位におられる日本人研究者、ここではスター研究者と書いておりますけれども、その研究者の方の一生涯、定年までの経歴の中で、どのぐらいの機関を経験されているのかといったことがデータとして示されております。
左側の円グラフですけれども、大体7割の方が、2種類もしくは3種類のセクターで研究を経験されているということが出ております。右側の上の円グラフ、この2種類または3種類の機関に所属した方の組合せにどんなものがあるかということを整理したものですけれども、一番多いものは、国公立大学と海外の機関の2種類を経験されているという方が、大体4割ぐらいおられました。それから、その下の円グラフですけれども、スター研究者の方、ほとんどの方が日本では常勤で勤務されておりました。その勤務した大学の数というのを見ますと、1人1大学という方が半数近くおられるのですけれども、残りの半数近くの方は複数の大学で常勤の職を経験されているということで、そういった移動の経験を積まれているということがありましたので、御紹介させていただきます。
それから、15ページについてですけれども、これは直接、前回の議論にはなかったかもしれませんが、実は独立基盤形成支援の試行というのは、若手研究者の段階での、独立したての環境を支援するといった観点で支援しております。そういった観点で、実際、基盤研究の中で博士号の取得をされている方がどの程度応募されているのかというのを調べましたので、参考までに共有させていただきます。
基盤研究のS・A・B、上に並んでいる3つの円グラフで見ますと、大体9割以上、95%以上が、学位を取得されている方がその種目に応募されているという状況で、基盤研究Cについて見ますと、大体4分の3ぐらいの割合で博士号取得者の方が応募されているといったような状況がありまして、金額の区分によって、こういった状況が生じているかなと思います。
また、科研費以外で学位取得を、何か資格等々を応募要件に入れているものがあるかということを、参考までに右下に書かせていただいておりますけれども、科研費の中で言えば、若手研究で博士号取得後8年未満という要件がありますけれども、海外も含めて、事業の特性に応じて取得後の年限を設けているというものも幾つかございました。
それで、これまでの御意見、それから、今調べました博士号取得の状況なども含めて、独立基盤形成の試行については、もう一回修正するという形で、本日、資料を出させていただいております。16ページを御覧いただきたいと思います。
まず、独立基盤形成の試行という取組自体は、機関のコミットメントを求めるという点が、やはり1つ重要な点かなと思います。そのコミットメントを前提とした基盤整備の追加を支援するという取組のところが、直接の研究費の支援とは別ということになりますので、試行の形で現在やらせていただいているものであります。また、試行の支援対象というところで見ますと、どこまで広げるかということが本来的にはあるのですけれども、基盤研究C、若手研究は非常に応募の多い、あるいは採択の多い種目でございますので、実際の増加等も考慮しますと、現時点では准教授以上の職位に就いて2年以内の者を対象とするということで試行させていただいているところであります。
この試行を今後どう進めていくかということですけれども、2番目の丸にございますとおり、機関の移動経験を加味して選定するような仕組みにしてはどうかと考えております。また、支援対象者の要件といいますか、ある程度、絞り込みということをするといった場合には、学位取得後15年以下といったような、要は若手向けの支援であるということを明確にしていくということもあるかなと考えております。
その下の枠囲みの中で、2点、改善案を出させていただいております。まず一番下の「支援対象者」のところですけれども、前回はここに、移動経験を有する者ということを入れさせていただいておりましたけれども、それはやはり、支援対象者を限定するということ自体が適切ではないという御意見がございましたので、若手の支援ということを明確にするという観点からは、学位取得後の年限を示すことが適当ではないかと考えております。また、人材の流動性ということを少し観点に含めるとすれば、真ん中の右側にありますような公募・審査の段階、特にそのボーダーゾーンのところで、最終的に選定者を絞り込むといった段階の参考になる情報として、機関の移動経験というのを確認するということはあるかなと考えておりまして、支援対象者の要件ではなくて、公募・審査の段階での確認情報という形で活用していったらどうかという改善案でございます。
17ページは、それらをスケジュールとして示したものですので、参考までに御覧いただければと思います。
なお、この研究支援のメリットがあまり見えないということがございましたので、私どもの宣伝不足というのもありますので、この支援の試行自体は、機関のコミットメントによって、基盤研究Cあるいは若手研究の金額以上の支援が、トータルとしては、その研究者に付加されるといった点が、やっぱり研究者の独立時点でのメリットになるかなと思いますので、その辺りの試行の趣旨も含めて、これから周知を図っていきたいと考えております。
説明は以上です。
【大野部会長】
どうもありがとうございました。それでは、皆様から御質問あるいは御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。白波瀬委員、お願いいたします。
【白波瀬委員】
ありがとうございました。15ページの数値の確認なのですけれども、ここで博士号を取っているか取っていないかのところで、博士号を取得中の意味についてです。要するに比較的早い段階で基盤研究Cを得た人はどれぐらいかということを見ようという目的があったのかもしれないのですけれども、基盤研究Cにおいては、分野によってかなり結構違いがあると思います。比較的年齢が高い者が基盤研究Cを取っているということでありますので、ライフステージを考慮に入れて数値を取らないと、誤解が出てくるのではないかと懸念します。今、若手においては、文系におきましても博士号を持っていないというのは量的にも少なくなりましたし、労働市場においてもかなり不利となります。この点、理系と同じような状況でもございますので、ここでの数値結果を何か違うふうに解釈されると困ると感じましたので、確認です。以上です。
【大野部会長】
高見沢さん、いかがでしょうか。
【高見沢企画室長】
ありがとうございます。このデータ自体は、実際に新規応募の方の取得の有無ということだけをe-Rad上で確認できますので、確認したというものでして、特に年齢ですとか、そういったことは考慮には入れておりませんけれども、白波瀬先生がおっしゃったような、分野によっての違いですとか、世代によって大分変わってきているということもございますので、このデータ自体があまり変な使われ方をしないように注意したいと思います。以上です。
【大野部会長】
ありがとうございました。いかがでしょうか。ございませんようでしたら、私から、2点。
これはなかなか難しい点ではありますが、試行の16ページの「支援スキーム」の②、研究機関に対してコミットメントを求める、つまり、150万出すと150万、こちらも出しますというスキームですが、これも考えようによっては、予算のあるところに勤めることを推奨していることにならないとも限らないですね。今、電気代がものすごく上がっていて、どの大学もものすごく苦労されています。人件費が極めて厳しい大学であると、人を雇えないというところまで追い詰められかねない上がり方で、その中で、150万は難しいという話になってしまうかもしれない。このようなことに配慮が必要と思います。
もう一点、准教授以上の職に就いていることと、論文発表の責任者、独立した研究、あるいは大学院生の指導ということ、その後でも似たようなことを要求しています。ですから、16ページの一番下の囲みの①を抜かしても、十分きつい縛りになっているのではないか。そうすると、現在の職位について2年以内であることといって、ここに助教の方たちが入るわけですけれども、これらを満足する助教の方はそこまで多くないのではないかと想像するのですけれども、いかがでしょうかということです。
【高見沢企画室長】
ありがとうございます。まず、部会長から1点目の、支援スキームの300万円以上ということの機関のコミットメントのところですけれども、こちらは実際、機関からの推薦、優先順位というのを参考にして審査を進めるという前提でつくっておりますので、300万円以上とするのか、300万円程度、同等規模とするのか、その辺りは少し工夫の余地はあるかなと思いますけれども、何らかのコミットメントはしていただくということで、もし修正が必要であれば、修正するように検討したいと思います。
それから、「支援対象者」の丸1番の、准教授以上の職位というところですけれども、実は第10期の研究費部会において、この点が議論されておりまして、助教まで広げるのかどうかといったところも論点としてありましたけれども、実際には助教あるいは講師といった職位を挙げた段階で、どこまでの方がそれに該当するのかということがまだ整理がつかないということで、当面は准教授以上で維持してはどうかというような議論もされたと伺っております。今回の改善の段階では、前期に議論されたばかりということもございますので、准教授以上の職位というところはそのままにさせていただければと考えたところです。
ただ、部会長がおっしゃるように、その部分を明示的に支援しないということよりは、むしろ若手の独立をどうやって支援していくのか、あるいはその段階において「試行」を外して本格運用に持っていくにはどうしたらいいかという議論になろうかと思いますので、併せてそこは注意して議論していきたいと考えております。
【大野部会長】
ありがとうございます。それでは中村委員、お願いいたします。
【中村委員】
支援対象者の要件についてです。前に議論したときに申し上げたのですけれども、私の周りでもらった人の様子を見ると、どういう人がもらうことになったのか、いま一つはっきりしないという感じがするんです。これは、1から6まで同時に満たすということを、言っているのでしょうか。一つでも満たせばいいんですか。
【吉田企画室長補佐】
御回答いたします。1から6、全ての条件を満たす方を対象と捉えてございます。
【中村委員】
そうですよね。2年以内ははっきりしていますね。次の研究グループの責任者というのは、理論などをやっている人だったら1人でもオーケーだから、グループが1人でもよい、それから論文発表の責任者というのは、アスタリスクがついているか、それともファーストオーサーなのかもちょっとはっきりしませんね。研究者だと自認する人は皆、独立した研究課題を持っているのではないでしょうか。大学院生を指導するというけど、大学院生がいない機関もあるでしょうし、かつ1人でも研究できているかもしれないので、大学院生指導に責任を持っているということは、どういうふうに解釈すればいいのか、よく分からない。それから、一人でも研究できるわけですから、研究室を主宰する者としての活動があること。これも漠然としています。その上に、学位取得後15年以下の若手ですか。15年以上の人は若手のようには思えませんね。全体として見て、何というか、一貫性がないというんですか、よく分からない感じがするんですよね。どういうことで選ばれたのか本人もわからない。
とにかく、ここに書いてある要件ということ自身が、現実に考えてみると、満たしているかどうかさえも本人には分からない要件なのではないかと思うんです。以前にも申し上げたように、支援対象者が漠然としているのではないかと思うんですけど、いかがでしょうか。
【大野部会長】
高見沢室長、いかがですか。
【高見沢企画室長】
ありがとうございます。この試行を開始したときにも、独立をしたときに、実際、機関からの支援がなかなか得られないといったような観点をどう解消していくのかということで、この試行の検討がされたと理解しておりますが、中村先生がおっしゃるように、独立というのをどう定義するのかといったところが、具体的な定義というのはありませんで、挙げました丸2から丸6というのは、科学技術・学術政策研究所の要件の検討の中で出てきたものをまずは充てさせていただいているということで、それに合致する方について、機関で優先順位を付して推薦いただくというような仕組みにしております。ですので、機関によって、この要件の捉え方というのは多少、差があるかと思いますけれども、ここでの重要な点というのは、そういった、独立に対して機関が何らかの支援をするといったことを、大学のマネジメントの中に入れていくということをお手伝いできると。ファンディングの観点でできる範囲というのは、そういったところではないかということで、試行されていると理解しております。
【中村委員】
そうですよね。ですから、これは上からトップダウンで降ってくるんですよね。そのために、どうして選ばれたのかが、本人には分からないんです。これは金額が少ないから、まあ、よかったなというので済むのですけれども、これが例えば2,000万円くれるということになると、どういういきさつで選ばれているのか分からないということでは、、大変に不公平な感じがしますよね。これはコンペティションではなくて、トップダウンで、すっと降ってくるような仕組みで選ばれているので、これでは具合が悪いのではないかと思うんです。定義が不明確なために、誰が選ばれたのかも不明確なんです。
【大野部会長】
どうもありがとうございます。今の御説明だと、大学が裏書するという意味で成り立っているので、そういう意味で、降ってきてしまうということになると大学の責任もないわけではないと聞こえます。科研費の趣旨を徹底できるように、機関との対話というのは必要ですね。大変重要なポイントを御指摘いただきまして、ありがとうございます。
それでは川端委員、お願いします。
【川端委員】
ありがとうございます。いや、今もうお話になったのがまさに真ん中で、この話、大学としてどんなシステムが出来上がるのかなと思って。すみません。私はちょっと知識不足だったんですけど、上のほうの、「『若手研究』及び『基盤研究(C)』の新規採択者のうち」と、ここまでは若手な感じがするのですが、「准教授」とやった段階で突然、中堅かという感じになって、中堅でCを取っているやつ? みたいな感じになってきて、Bじゃないの? みたいな感じもして、どこがターゲットかなとかいうのが1つと、それからやっぱり、大学のマネジメントとして、先ほど大野先生も言われたみたいに、大学ごとに、このマッチングファンドの150万はどこが出すの? という。大学全体が出すか、部局が出すのか、それぞれいろんな大学でやり方があって、それが出せるところと出せないところが大きな分かれ目に確実になっているような気がします。
となると、ひっくり返すと最後に、このシステムが科研費の中にあるがために、大学システムとしてどう変わってほしいのかという、大学へのメッセージは一体何なのかというのが、先ほどからお話になるように、もうちょっと明快にして進めていただけると、大学側も考えることが出てくるという気がします。
以上です。
【大野部会長】
ありがとうございました。ほかに御意見はいかがでしょうか。井関委員、お願いいたします。
【井関委員】
すみません、最後に。1点だけなんですけど、これは本人が応募するわけではないということでいいですね。私はずっと勘違いしていたような気がいたします。すなわち、これは研究機関が人を選んで応募するということでよい。うなずいていらっしゃるので、そういうことなんですね。分かりました。いや、それで、中村委員がおっしゃった、何でこのお金が来たのか分からない人たちがいるという御発言もよく理解いたしました。これは私も、ある意味、お金がないところに、例えば150万円、機関が用意したら、こちらの科研費から150万来て、若い方が独立したいときにやっぱり300万円ぐらいあると、基本的な機器も買えるということで、そういった観点から私もすごく、ある意味、してもいい試みなのかなとは思います。ただ、先ほどから問題となっているように、支援対象者の定義に関しましては、これはどういうふうにでも取れてしまって、大学のような機関が、この人にこうやって入れようかというふうになってしまうと、何かよくないのかなという気がすることと、では実際にそこまでコミットメントするのであれば、これは准教授以上だから教授でもいいということですね。でも、その方が例えば五年、十年したときにどうなっているかというのは、追跡はしないといけないのかなという気もいたします。
以上です。
【大野部会長】
ありがとうございました。ほかに御意見はいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
ありがとうございました。それでは、本日頂いた御意見を踏まえて、さらに科研費全体への影響も注意しつつ、試行の改善をしていっていただければと思います。よろしくお願いします。
それでは、次の議題に入りたいと思います。これまで継続的に討議してきています、基盤研究の助成の在り方について審議いたします。まずは事務局から資料の説明をお願いいたします。
【高見沢企画室長】
それでは、資料4を御覧いただきたいと思います。ページは19ページからになります。
前回、基盤研究の助成の在り方について、たくさんの御意見を頂戴いたしました。まず19ページの上のほうから見ていただきますと、実際、これから制度変更を考えていくといった場合の前提となるような見通しがあるのかどうかといったところが重要な点ではないかという前提の御意見。それから、具体的に、制度の緩和、重複制限の緩和をするといったことを検討する場合の可能性としては、例えば基盤研究Cで申請している区分とは離れた区分で挑戦するものについての緩和といったところから、少しずつ進めるということが考えられるのではないかといった御意見。それから、そもそも基盤研究Cの充足率、あるいは応募上限額の設定ということを見直すべき時期に来ているのではないかというような御意見もありました。また、基盤研究Cに限らず、重複の制限ということについて、ほかの種目でも苦労しているということも、御意見としてございました。
20ページを御覧いただきますと、充足率の裏返しといいますか、採択率にどちらかというと重きを置き過ぎているところもあるのではないかというような御意見もあったかと思います。
それから、あとは、これは大所高所からの御意見なのかなと思います。ファンディングというのが、JST、JSPS以外も含めて複数、日本にありますけれども、特に科研費が求められているファンディングの役割といったところで言いますと、草の根的に、いいものを拾い上げて、最先端の研究を目指してもらえるように支援するというところが、本来的な制度の立てつけではないだろうかと。それで、そこのところが明確になるような助成の在り方ということを検討していく必要があるのではないかといった御意見があったかと思います。
それから、一番下ですけれども、今の重複制限の制限があるがゆえに、ステップアップの道を模索しているという傾向もあるということで、研究の発展をいかに支援していくかということが科研費制度全体に求められているというような御意見かと思います。
21ページからは、それらの御意見を踏まえまして、事務局のほうで少しデータを調べさせていただきました。まず、応募者の増加の見込みといったものがあるのかどうかという点、御意見がありましたけれども、結論から言いますと、今後の応募の見通しというのは正直難しい、分からない点がございますけれども、それの前提となるような母集団の動きということで、少しデータを提供させていただきたいと思います。
まず、今御覧いただいています21ページのところですけれども、これは日本の研究者の推移ということで、これはヘッドカウントでございますけれども、左側は主要国との比較で、日本の研究者数というのが大体60万から80万ぐらいのところで推移しておりますけれども、赤い丸がついている折れ線ですね。他国では研究者数がうなぎ登りに上っているところがございますけれども、日本は緩やかな増加ということになっております。
具体的にデータをセクター別に示したものが右側のものでして、21年度の研究者数の割合で言いますと、大体、企業に所属されている研究者の方が57万人、それから大学が34万人といったところで、総数でいきますと95万人という状況になっております。この中で、科研費の応募資格者数がどういう状況になっているのかといいますと、学術研究の支援ですので、主には大学の所属をお持ちの先生がほとんどですけれども、34万人のうち、大体24万人ぐらい。それから、公的機関のところが3万4,000とありますけれども、大体同じぐらいの方が応募資格者として入っております。また、企業の方は、日本全体で見ると57万人おりますけれども、実際、科研費の応募資格を登録している方は7,000人ちょっとというところで、全体を見ますと、現時点で28万人ぐらいの方が応募資格者として母集団を形成しているという状況になっております。
この母集団の推移ですけれども、日本の研究者の母数が緩やかに伸びているという状況にも呼応しているかと思いますけれども、近年、28万人のところで、大体、頭打ちといいますか、同じぐらいの規模で推移しているという状況です。特に最近では、例えば令和元年度から2年度にかけては1,600人とか、令和3年度から4年度にかけてはマイナス300人とか、少し減少傾向というのも出つつあると思われます。
また、年齢別に応募資格者の母集団の状況を見てみますと、右側の折れ線グラフになりますが、一番上の赤い折れ線が40代後半の折れ線です。それから、その下のほうにあります緑色の折れ線、30代の前半あるいは30代の後半といったあたりは、近年、減少傾向にございます。一方で、50代あるいは60代、70代といったあたりは、母集団を形成する構成の割合としては増えてきているということで、母集団の全体の数は変わりませんけれども、年齢の構成というのは上のほうにシフトしているという状況かなと思われます。
次のページ、23ページで、もう少し具体的な年齢と応募との関係を1枚整理させていただきました。個々の種目を見れば、若手向けの種目ですとか、特にシニアの方が多い種目とか、それぞれ異なりますけれども、ここでは科研費全体としてどうかということで、一旦整理させていただいております。一番左が年齢、5歳刻みでありますけれども、ちょうど真ん中のあたり、応募割合というのがありますけれども、これはその年齢の母集団に対して、どれぐらいの件数が応募されているのかというのを示したものでして、この応募割合を見ていただくと、大体30代の後半から40代の方が、母集団のうち6割以上、応募しているということで、非常にアクティブな傾向が出ているのかなと思われます。
一方で、応募と採択の件数を比較したものが一番右側にありますけれども、「研究課題実施率」と書いておりますけれども、これは継続も含めていますので、純粋な採択率ということにはなりませんけれども、最も割合が高いという観点で見ますと、30代が60%となっていまして、実は応募の割合が高いのが30代から40代にかけてなのですけれども、実際、課題の成功率が高いのが30代ということになっていまして、実際その課題を持ってやっている年齢と、応募のニーズが高いところというのが少しずれているという状況が出てきているのかなと思われます。
それから24ページ。これは、具体の基盤研究の応募件数の推移ですけれども、左側の赤色の折れ線グラフは、基盤研究Cの応募件数の推移でございます。令和元年度までは4万5,000件まで応募が増えて、その後、近年は大体4万5,000件程度で推移しているという状況がございます。コロナ禍での応募ですとか、あるいは、それに伴って期間を延長しているという研究課題も多いので、単純に短期的にこれで伸びが止まっていると判断するのはなかなか難しいかなと思いますけれども、状況としては、大体4万5,000件程度で推移しているという状況がございます。
一方で、前回の御意見で出ておりました、充足率の状況がどうかというところで見ていただきたいのが、ちょうどグラフの真ん中あたりに、平成23年度に29.9%という枠組みのものがあるかと思います。これは、平成23年度の採択で、基盤研究Cの採択率が29%。そのときの単年度、1年当たりの平均配分額が161万ということで、データとしては出ております。一方で、それをずっと右側にたどっていきますと、令和3年度のところで見ますと、採択率が28.2%で、1ポイントほど下がっておりますけれども、年間の平均配分額というところは114万ということで、50万ほど1年当たりの配分額が少なくなっているという状況がございまして、前回の御意見はこういったところを俯瞰して御発言があったものと推察しております。
それから、あと右側に少し小さいグラフをつけておりますけれども、左側で、下のほうに張りついて見えている、基盤研究B、それからS、A。こういった比較的大型の種目の応募動向というのも、少し拡大して示しております。種目によってかなり変動傾向が違うということも近年出てきておりますので、この辺りも、基盤研究の助成の在り方を考えていく上では少し考慮していく必要があるかなと考えております。
それから、25ページのところは、重複制限を実際、緩和していくといった場合に、現時点でどういう状況になっているのかということを少し調べさせていただいたものであります。基盤研究と挑戦的研究の開拓の2つの種目の間では重複の制限が緩和されておりますので、基盤研究のS・A・Bと開拓、それぞれ新規で併願されていたケースで、実際に大区分をまたいだ応募がどれぐらいあったのかというのを調べたものであります。これで見ていただきますと、基盤研究の区分によらず、大体30%ぐらいの新規応募は異なる区分で応募がなされているというのが、現状でも見て取れます。
例えば右側にあります基盤研究Aのところの例で書いておりますけれども、基盤研究Aは審査の区分が中区分ですので、開拓と同じ中区分を選ぶことも可能なのですけれども、ここでは3割の方の例として、例えば大区分のEですから、これは化学の分野が近いと思いますけれども、これに属する中区分、「高分子、有機材料およびその関連分野」という区分を基盤研究Aでは選びつつ、挑戦(開拓)のほうでは大区分のK、これは環境分野になると思いますけれども、「環境保全対策およびその関連分野」を選ぶということで、軸足を置いている審査区分と挑戦する審査区分というのが明確に分かれているというケースも、現時点でも出ているという状況かなと思います。
そこで、これらのデータも踏まえまして、重複制限の在り方について少し改善の方向性を整理してはどうかということで、26ページにまとめております。今まで見ていただいたとおり、実際の科研費の応募資格者というのは28万人ぐらいで、最近は伸びが鈍化しているという状況が見えます。特に応募件数の増加が顕著であった基盤研究Cについては横ばい傾向が見えているという状況で、ここは新型コロナウイルスの感染拡大の状況等ともちょうど時期が重なるものですから、今後も注視する必要がありますけれども、そういった応募の推移を持っています。今後、重複応募受給制限を緩和していくといったことを考える際に、現時点でもう大体3割の新規応募については、全く異なる審査区分を選択するという応募動向が出ているということを踏まえると、一番下の「改善の方向性」ですけれども、1つは、前回も御意見が出ておりましたとおり、充足率の回復ということを考えていく必要がある。特に、充足率の目安を設けて採択件数を見込んでいくといったような改善について検討が必要ではないか。
それからもう一点、下の丸ですけれども、基盤研究Cも含めた基盤研究と、まずは挑戦的研究の開拓との間の重複制限の緩和ということが考えられるかと思いますけれども、そういった場合にも、異なる大区分で制限を緩和するといったような、実現可能性を含めた検討を進めるということがまずはあるのではないかと思います。
また、ここでは基盤研究の開拓について、そういうことを書いておりますけれども、基盤研究S・A・Bと萌芽というところは既に緩和しておりますけれども、異なる区分で制限を緩和するといったことを考える場合には、やはり種目の趣旨、体系の違いというところも考慮したような立てつけに改善していく必要があるのではないかなと考えております。
ここまでが、充足率、助成水準の検討の話ですけれども、もう一点、ちょっと付け加えまして、27ページに資料を用意させていただきました。これは、今後の検討課題、継続課題という観点でまずは出させていただいたものですけれども、27ページの真ん中のところに、助成水準の参考となるようなデータとしまして、G7各国の消費者物価指数の推移というのを出させていただきました。前回も、国際的な研究を進める上で非常に足かせになりつつあるという御指摘があったかと思います。このグラフを御覧いただきますと、1980年以降の消費者物価指数の推移ということでグラフがまとめられておりますけれども、日本は真ん中の太い黒線でございます。大体、100の辺りを横にずっと推移しているのですけれども、上のグレーの右肩上がりの折れ線というのが、これは米国の消費者物価指数の推移ということでして、ちょうど真ん中辺り、1996年あたりというのが、この基盤研究が設定された時期に当たるのですけれども、この頃を見ていただくと、日本は大体100なのですけれどもアメリカは150という状況ですが、現在に近いところで、2016年のところで見ていただくと、日本は100なのですけれども米国は250に近くなっています。それぞれの国の物価は異なりますけれども、物価の推移ということで見ますと、かなりの乖離が出てきているということもありまして、こういったところが、そもそもの応募上限額の設定を見直す契機として、そういう時期に差しかかっているのではないかという御意見につながっているのかなと考えております。
種目の区分を設定してから20年近く経つわけですけれども、区分の見直しによって、当然、審査・評価のシステムにも影響が出てくるものですので、この検討自体はやはり日本学術振興会で、実務上の実現可能性も含めた検討というのが重要かなと考えております。
そういった観点を少しまとめていますのが、一番下の「留意事項」のところでございます。まず区分の目的、S、A、B、C、それぞれ金額規模と研究機関と、あるいは実質的にカバーしているターゲット、目的、性格というものがあると思いますので、それに応じた金額設定と、あとは併せて審査評価の在り方ということも検討が必要になってくるかなと思います。
また、先ほどの博士号取得の件について、もし、こういったところでも少し意識をしていくとすれば、例えばですが、基盤研究S・Aの応募資格というところに博士号の取得といったようなことを設けるということも考えられるのかなと思います。
また、基盤研究Cについて、まず応募上限を上げるということよりも、まずはその助成水準、現在の充足率の確保・回復を優先的に進めるべきだという御意見が前回ございましたので、まずはその方向で進めるというのが現時点では考えられるのかなと思います。今後、その上限額を引き上げるといったような検討をする場合には、段階的に引き上げるとか、激変が生じないような手だてということも併せて検討していく必要があるのではないかと考えておりますので、そういった点も含めて、日本学術振興会での検討ということも求めていきたいと考えているところです。
説明は以上です。
【大野部会長】
どうもありがとうございました。それでは、皆様から御意見あるいは御質問を頂きたいと思います。尾辻委員、お願いします。
【尾辻委員】
ありがとうございます。高見沢様の詳しく詳細な御説明をありがとうございました。最初の2枚の、8月の研究費部会での意見の集約をしていただいた、2枚目の第1点、前半は私のほうから発言させていただきましたが、今回、データとして見える化していただいたことを、まずお礼を申し上げます。
24ページでございますけれども、明らかに、これを見るともう一目瞭然で、基盤研究Cは、3万1,000件の平成22年度から、今年度に至ったところで4万6,000件に近いところまで、1.4倍以上に応募件数は増大しているのですが、採択率はほとんどフラットで、逆に充足率が大幅に低下していると。これはもう、取りも直さず、端的に申しますと、科研費としてあるべき、つまり競争的資金であるべき競争性が、強い言い方を致しますと、毀損されている方向だと思います。一方で、採択されたときに得られる研究資金がこれだけ減額になりますから、果たして基盤研究Cが、本来、基盤研究の中の種目として、より先端的な学術研究を推進するという枠組みは一切、基盤研究の種目間では異なるわけではないのですけれども、採択率3割は大体いけるから、取りあえず、お金を少しでももらえる基盤研究Cに応募しようよという意欲を高めてしまう傾向が裏側にはあるだろうと、ちょっと考えてしまいます。つまり、競争性を回復して、本当の意味での基盤研究Cの位置づけを正しく研究者に享受いただくためには、この後で26ページで、「改善の方向性」でお示しいただいた充足率の目安を設けること。一定程度以上には下がらないということを応募の段階で明らかにしていただいて、同時に採択見込件数はもう予算の限りでございますので、これを示すことによって、応募者の基盤研究Cに対する意識も変わりますし、いたずらに応募件数の増大も抑えることができると思いますので、ぜひその方向で改善を進めていただければと思います。
最後、一言だけ。最後のページで、基盤研究S・Aについて、代表者の要件に博士号取得を設けることについて検討ということを意見としておっしゃられましたけれども、これは審査負担の軽減の観点も、それから応募件数の削減の観点も、ほとんど効果がないのではないかと思います。
以上です。
【大野部会長】
ありがとうございました。それでは次に山本委員、お願いいたします。
【山本委員】
山本です。今、24ページの話が出ましたけれど、実質、基盤研究Cの配分額が目減りしているという話なのですが、ほかの種目でも同じです。結局、この会議の最初のほうでも議論がありましたけど、国際的な研究力の強化ということをうたっているのですが、一方で、ここ20年間、研究費は下がり続けているというのが基本的に現状なわけです。トータルでは増えているかもしれないけど、各研究者に渡るお金というのは、こういう状況になっているということだと理解し、そうしたときに、本当に国際的な研究力強化のためにどうすればいいかというと、やはり少なくとも助成水準は確保し、さらに上限額の引上げというのは急務です。それで、物価水準のことを申されたのですけれども、それは海外から輸入するようなものを買うとき、海外からのポスドクを雇うとき、そういうときには大きく効いていまして、我々のほうでも相当苦労していることは事実です。なので、そういう意味で、ほかの国ではどんどん研究資金が増えていく中において我々の方は下がっているということを強調していただいて、科研費全体のやはり増額を目指さないと、本当の意味での国際競争力強化は成り立たないと思っている点です。
それからもう一つの点は、最後、26ページの2番目に出ている点で、私はやはり挑戦的研究を強めていくということが割と大事だと思います。やはりシュリンクしているところがありまして、新しいものに挑戦するということを、もっともっと科研費として打ち出す。それをまた科研費の総額の拡大につなげていくという考え方が重要だと私は前から思っていて、そういう意味で、ほかの区分、大区分であれば、挑戦(開拓)と、基盤研究をCまで含めて重複させる、というのは非常にいい方向で、それをてこにしながら財政当局にも支援を求めていくということを、私は強くお願いしたいと思っています。以上でございます。
【大野部会長】
ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。中村委員、お願いします。
【中村委員】
皆さんもお気づきだと思いますけど、30代・40代が大分減っていますよね。あと十年、二十年たつとこの年齢層の人口がさらに減ってくることが予想されているところで本当にここのところを何とかしないと具合が悪いという印象を受けます。でも、この数値を見て、皮肉な人は、科研費を増額しなくても、そのうち充足率は上がるだろうというような人も出てきかねないですよね。研究費もそうですし、研究者人口も。こういう非常に基本的なところでいろんなものが壊れてきているので、文部科学省として、政府全体として、よっぽど今、何とかしないと、これでは回復不能になると思いました。以上です。
【大野部会長】
ありがとうございます。非常に重要なポイントだと思います。上田委員、お願いいたします。
【上田委員】
今の中村委員のコメントと関連するのですけれども、やはり今、海外で言いますと、特にAIですと、GAFAが世界を席巻しているわけです。これは単に優秀な人材というだけではなくて、やはり相当な投資による効果とも言えます。中国もそうです。そうはいっても、日本は高齢化が進んでいるし、円安も進んでいるし、様々な理由で研究資金が少ない状況で、マスで勝てるのかというと、恐らくそれはもう無理ではないでしょうか。もはや、個人勝負に依ると言えます。個人勝負では、優秀な人材をいかに持ち上げるかということにかかっているわけなので、充足率を下げて採択率を上げるというのは、まさに逆行しているようなものだと思います。なので、採択率を下げてもいいので、もっと優秀人材を優遇するような体系にしていかないと、優秀な人材は学術界から去ってしまうことになりかねません。つまり、いわゆるこのような学術界の状況下では、彼らにとってのビジネスモデルとしては、非常にモチベーションを下げる可能性大です。優秀であればGAFAに行けば、初任給が1,000万ぐらいあって自由に研究できるのに、大学に行けば、なかなか大変だし、雑用も多いし、科研費も大したことがないというように感じてしまいます。なので、やはりこの段階で、このような状況を抜本的に変えていかないと、別に学問だけではなくて、日本は本当に沈没するのではないかというような危機感があると思います。
そのために、まずやるべきことは、原資が十分ではないのでしたら、充足率は下げないで、採択率は下げること、また、企業に法人税を優遇するなどして、もっと研究資金を集めるというような施策だとかを進めていかないと、本当に日本はじり貧になっていくのではないかと危惧します。
雑談になりますが、自動車業界も完全に日本いじめになって、NOx規制が導入されて、もう内燃機関はほぼ欧州では使用不可で、バッテリーも枯渇しています。日本はどこで勝てるんですかと言われたときに、もう人材にかけるしかないわけです。優秀な人達が何か革命的な成果を創出して産業を復興することが今後の一層重要です。これらを考慮して科研費制度の今後の方針の検討材料として考慮いただきたいと思います。以上です。
【大野部会長】
ありがとうございます。それでは川端委員、お願いします。
【川端委員】
今の話があったので、逆に私は、科研費自体は一体何をするものか、やっぱりもう一回しっかりさせる必要がある。ここのまとめの中でも、JSTとのファンディングの在り方であるとか、今、振興パッケージなどと、農水省とか、いろんなものが、大学に向かってのファンディングというものの話が出てきていて、そういう中でやっぱりJSPSの科研費というのは、どうしてもやらなくてはならない。見えるものを大きくするというよりは、見えないものから見えるものが出てくるところのお金。そこを徹底的にやるんですという。そういう意味では、先ほどキーワードに出た、挑戦的とか、今いろんなところでできなくなりつつある、そこをどう支援するみたいな話。それを国際的にやるだとか。その個性をもっともっと強く出していって、お金を取ってくるなり、ここの中の制度改革をするというのをやられたほうがいい。私はそっちに期待したい。そういう意味で、採択率を下げるよりは、逆に言うと全体をシフトして、採択率というよりは、採択率自体はある程度の高さを保ったままで、どう萌芽を徹底的に広げるかというところに、ぜひ科研費は展開されたほうがいいかなというのが個人的な意見です。以上です。
【大野部会長】
ありがとうございます。御意見が分かれるところかなと思いますが、いかがでしょうか。皆様、ほかに御意見。白波瀬委員、お願いします。
【白波瀬委員】
ありがとうございます。ちょっと今、全体の流れとしては、私もかなり緊急に、人への投資については加速的にお願いしたい。そこで、投資の場合、どういう基準によって実施されるのか、複数時点での評価も含め、中長期的な投資をしていただくのが重要かと思いますう。それで、競争的資金と、そうでなくて基盤的資金があります。この両者のめり張り感もしっかりとつけていただきたいと思います。そういう意味で、競争的資金におきましては、採択率よりも、やっぱり充足率。そのときに、充足率についても、審査対象となる領域を現在進行形で国際水準の評価ができる方をそろえていただくことは、やはり足元になってくると思います。また、文系と理系というところになりますと、文理融合が重要ですという話になってしまうんです。これをやられると、いわゆる文系、人文学、社会科学も含めて、やはりちょっと問題があると思います。つまり、それぞれの専門領域での研究がじり貧になるところも出てくるかもしれない。いまの領域のサイズから言って、文系は理系ほど大きくないし、理系との抱き合わせ自体の選択肢も、それほど多い状況ではまだないと思います。ですから、その辺りは決して、理系に比べて文系がという別枠組みでやっていただきたいとは思っておりませんけれども、専門分野と融合、分野横断型分野のバランスを考える必要があるように思います。市場においても業界が違う部分をどういう形で新たな組み合わせと積み上げを行っていくか。また挑戦的と言ったときの、目利きの利ける人をどれだけそろえていただけるかというのは、私はすごくキーになってくるのではないかという感じがしています。抽象的な意見になってしまいましたけれども、このあたり危機感をちょっと持っているので。以上です。
【大野部会長】
どうもありがとうございました。非常に重要な御指摘だと思います。大きな学術の区分によっては、またがないということもあり得るのだと。そうすると、そういう学術を振興するにはどういうやり方があるのかということは、変えるにしても変えないにしても考えていく必要があるのだと、今、御指摘いただいたのだと思います。ほかにいかがでしょうか。山本委員。
【山本委員】
今の点なのですけれども、もちろん、区分を跨がないのはあると思います。本来は全部、緩和したいんですよ。だけれども、実際問題としてそれができないのでという、プラクティカルな理由があると思います。もう少しマチュアしてきて応募動向が見えてきたら、そういう方向もあるのではないかとは思います。まずはともかく、挑戦的研究を後押しするということを1つの手段として、部分開放みたいなところがいいのではないかということだと思っております。以上です。
【大野部会長】
そこから始めるんだというお話ですね。ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。最初に中村委員が御指摘になりましたけれども、このままほっておくと、科研費が一定であれば、どこかでだんだん充足率が上げるべき時代が来ると。それはそれで、アウトプットから見ると、研究する方が少なくなるので、下がってくる可能性が高いわけですね。そういう時代にならないようにするには、研究費部会でできることには限りがありますけれども、そういうところも見据えて考える必要があります。科研費を増やすということに関しては、多分、委員の中で異論はないと思うんです。ですので、こういう中間的な施策を取りながら、しかし科研費が増えなければいけないのだと議論できるような形で整理していく、そして実行を求めていくことが必要なのかなと、今のお話をお伺いしていて私自身は思いました。ですから、流れに任せるというわけではもちろんなく、いかに予算的に戦える形にしていくのかということ。そこはちょっと事務局でもお考えいただいて、これからの案に反映していただくのだと思います。論文のことを考えますと、世界でインパクトある論文を出してほしいということを言っているわけですけれども、一番インパクトのあるオープンアクセスのジャーナルに出そうとすると、そこでお金を取られます。今はたしか、Nature Communicationsが120万円ぐらいです。それはしかも、実は研究費の中から出す。今の研究費から出せる額ではないとか、あるいは、研究費が終わってしまったら、もうどうにもならないとか、非常に厳しい状況にあります。ここで全てを解決はできませんが、いろんな形で解決を模索すべきだと思います。失礼しました。井関委員、お願いします。
【井関委員】
ありがとうございます。もう今、大野部会長がおっしゃったようなところもあると思うのですけれども、充足率を上げるというのは大事だと思いますし、先ほど物価のことが出ていましたけれども、確かに物価は変わっていないかもしれませんけれども、テクノロジーが進んでいまして、例えば生物系ですと、本当に今、1細胞での遺伝子発現を見るなどといいますと、もう何十万と。たしか、下手すると100万ぐらいかかるわけです。そうすると、基盤研究Cを頂いても、今の充足率で見ると、その年の予算が全部なくなってしまうという状況があるわけです。ですから、物価はそうなのですが、やっぱりテクノロジーが上がったことによって、実験代も上がってしまっている状況があります。ですので、そこはやはり、科研費の総額の増額というものをお願いしていく必要はあるのだと考えています。以上です。
【大野部会長】
ありがとうございます。仮に充足率を上げるのだとしても、これは泣く泣くやっていることであって、もちろん、充足率が上がるのは、上がるべきなのですけれども、採択数が下がるということ自身は泣く泣くやっていることだと。それを非常に強くアピールすべきだと思いますし、逆の場合も、もし採択数は維持するのだとしても、充足率が下がっているというのは、こういう大きな課題に直面せざるを得ないのだということを、なるべく多くの方々に理解していただくという努力が求められているのかなと思います。いかがでしょうか。この議題に関して、何かほかに御発言がございますでしょうか。よろしいですか。ありがとうございます。それでは、引き続き検討が必要な点もたくさんございますが、まずは事務局で整理いただいて、議論ばかりしていてはいけないのですけれども、次の手を一緒に考えていっていければと思います。永田課長、お願いします。
【永田学術研究推進課長】
先生方のいろんな御意見をありがとうございました。やはり科研費につきましては、採択率という面で、第6期基本計画といったところでも、採択率30%を目指すというようなことも書き込まれているところに、若干やっぱり引っ張られ過ぎているのかなというところを感じております。そういった面では、充足率もしっかり手当てするような形で考えていく。その場合に採択率というのが若干下がっていくということも含めて、しっかり検討していく必要があるのかなと思います。そういった面では、いろんなエビデンスもしっかり集めながら、どうあるべきかというところを、我々事務局でもしっかり議論していきたいと思います。それで、先生方から御意見を頂きましたように、ほかの競争的資金も増える中で科研費が重要だというところで、予算も増やしていかなくてはいけないというところが我々の役目かなと思っておりますので、またその辺の部分につきましても、文科省としてもしっかり対応してまいりたいと思いますので、また引き続き御意見等、賜れればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【大野部会長】
ありがとうございます。採択率の目安が示されているのだとすると、そこに伴って充足率もちゃんと上げていかないといけないということをぜひ御主張いただいて、採択率だけを見ていては研究できなくなりますということを強く発信していっていただければと思います。ありがとうございました。それでは、議題4に移ります。今期の取りまとめについてでございます。事務局から説明をお願いいたします。
【吉田企画室長補佐】
大野先生、ただいま森局長が参加いたしましたので、改めて御挨拶をさせていただければと思います。
【大野部会長】
森局長、お願いいたします。
【森研究振興局長】
本当に会議も終盤に差しかかったところで、失礼いたします。この9月から研究振興局長となりました森と申します。よろしくお願い申し上げます。言うまでもなく、科研費は、我が国の学術研究を支える非常に重要な研究費制度でございますので、皆様方、先生方の御意見を頂きながら、その改善・充実を図っていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【大野部会長】
ありがとうございました。それでは、今期の取りまとめについて御説明をお願いします。
【高見沢室長】
それでは、資料5を御覧いただきたいと思います。28ページになります。第11期も2か年の期が終わりに差しかかっているということで、来年2月までの予定で会議を進めていきたいと考えておりますが、今期の取りまとめに向けて、まず進め方としては、今日、10月26日の第7回と、期末の第8回の部会の開催念頭に置いております。この最終的な、今期の取りまとめに向けてということで、どういった進め方をしたらいいかと考えた案が1のところにございます。まず本日、取りまとめの骨子案ということで、2ポツのところにあるような項目を整理させていただいております。これは、裏面、参考で29ページにおつけしておりますけれども、これまでの議論の中で審議された、あるいは意見が出されたことについて整理をしていくと、28ページのような項目になるということで、たたき台として整理しているものであります。今期の改善についての議論ということでいきますと、国際共同研究の改善・充実、それから若手研究者支援の充実、審査システムの改善、それから現在も検討・審議いただいているところですけど、基盤研究Cの助成水準・重複制限の緩和の方向性といったあたりが、今期で取りまとめに向けて前進している部分かなと思います。また、現在、差しかけの議論として、事務局として把握しているところでいきますと、今の助成の在り方、それから審査負担の軽減の問題、それから学術変革領域研究の検証、それから振興会への移管といった、前期から議論されてきたものが残っている部分というのがあろうかと思います。この骨子案は、今までの議論を見るとこういったあたりかなということで整理しておるものですけれども、たたき台について御意見があれば頂きたいと思っております。また、この審議のまとめをまとめていくに当たっては、できるだけ業務の簡素化等も勘案しまして、事務局のほうで、これまで出された御意見、あるいは審議で出された論点といったものを、審議のまとめの素案として事務局で整理させていただきまして、それを先生方にお送りして御意見を頂きたいと考えております。そこで一旦、11月から年末にかけて審議のまとめの案を事務局案として作成させていただきますので、令和5年の1月から2月にかけて行います最終回の場では、審議のまとめの案の取りまとめていただきたいと考えているところでございます。説明は以上です。
【大野部会長】
ありがとうございました。それでは、皆様から御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。御意見がないということは、おおむねこれでよろしいということでしょうか。山本委員、お願いいたします。
【山本委員】
もし可能だったらでいいんですけど、前回にしても今回にしても貴重なデータが出ています。それらを若干取りまとめる形で、最初に、今置かれている現状ということをまとめられてはどうでしょう。それは、やはり次期の委員会に対してよいメッセージになると思いますし、それから今後、文科省として取りまとめていくためにも引継ぎ事項にもなると思いますので、ぜひ、簡単でいいと思いますけど、お考えいただければと思います。御負担をかけて申し訳ございません。
【大野部会長】
ありがとうございます。ほかに御意見はいかがでしょうか。今、山本委員から、現状認識についてまとめて書くべきとおしゃっていただきました。私もそのように思います。あと、科研費の外側でいろいろ議論されているような、国際頭脳循環とか、そういう流れを「はじめに」などという形で書いていただき、研究の国際的インパクトの増強などにつなげて書いていただくと、少し読む側としては流れがわかってよろしいのではないかと思います。今、我々が議論したことだけを出すと、委員の方が科研費のテクニカルなことを全て御存知なので、外の人が読んだときに、テクニカルなことがディスカッションされたんだなというような印象を受けてしまうかもしれません。我々が何を本質として考えてディスカッションしたのかということが分かるような、審議のまとめの全体像をつけていただけると、私としては大変ありがたく思いますので、御検討いただければと思います。ほかにいかがでしょうか。尾辻委員。
【尾辻委員】
ありがとうございます。2の一番最後の「科研費制度の改善に向けて引き続き検討すべき課題」で、そのうちの2として挙げていただいておる「審査負担の軽減等による持続可能な審査システムの構築」に関してなのですけれども、一般的なこういった場での議論は、審査委員1人当たりの審査負担をできるだけ軽減して、審査の質をできるだけ担保したいという議論が先行しがちなのですけれども、その裏側では、やはり審査コストについて、きちっと議論する必要があって、1件当たりの審査当たりに、審査委員に対して果たしてどれだけの審査に対するペイをしているのかということも含めるべきだと考えます。これにはもちろんマネジメントするところのコストもあるわけですけれども、そうした審査のための費用というのは、表に出ない形で、科研費の中の予算で取り扱われているのが今の状況だと思うのですけれども、そこも含めて審査コストを、きちっと質を保証するためにはコストもかかるといったところを考えていくといったところを、この中に含めていただければありがたいと思いました。以上でございます。
【大野部会長】
ありがとうございます。とても重要なポイントで、審査委員の時間、expertiseを使わせていただいているので、そこもちゃんと記述は触れているべきだと思いますし、今、尾辻委員が言われたようなことも含めて、重要なポイントを書き込めればと思います。いかがでしょうか。よろしゅうございますか。
それでは、以上で本日の審議を終了したいと思います。
最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。
【吉田企画室長補佐】
本日も多数、御意見を頂戴いたしましてありがとうございます。本日頂きましたご意見を踏まえ、審議の取りまとめに向けて、学術全体像も含めた形の現状認識と、あと審査負担の軽減についても、コストの面も含めた形で取りまとめということで、事務局でそのたたき台を作成させていただきまして、後ほどメール等で御確認いただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
また、本日の議事録でございますが、各委員に御確認いただいた上で公開させていただければと思います。
最後に、次回の研究費部会でございますが、年明けまた改めて日程調整をさせていただきまして、後日御案内させていただければと思います。
事務局からは以上でございます。
【大野部会長】
ありがとうございました。それでは、本日の会議はこれで終了させていただきます。お忙しい中、御参加いただきまして、誠にありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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