人文学・社会科学特別委員会(第31回) 議事録

1.日時

令和8年7月17日(金曜日)16時00分~18時01分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業の進捗について
  2. 当面の施策の方向性(素案)について
  3. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員、専門委員)
大橋主査、木部委員、宇南山委員、尾上委員、北本委員、森田委員、青島委員、後藤委員、山中委員、米村委員
(科学官)
小木曽科学官、清水科学官、多湖科学官、德久科学官、野田口科学官

文部科学省

淵上研究振興局長、山之内振興企画課長、助川学術企画室長、大場学術企画室長補佐

5.議事録

【大場学術企画室長補佐】  委員の皆様がおそろいとなりましたので、大橋主査に開会いただきたく思います。
 
【大橋主査】  皆さん、こんにちは。大変お忙しいところ、御参集いただきまして、ありがとうございます。定刻となりましたので、ただいまから第31回人文学・社会科学特別委員会の方開催といたします。
 本日の委員会の開催に当たり、事務局から委員の出欠、配付資料及びオンライン会議の注意事項等について御説明お願いいたします。
 
【大場学術企画室長補佐】  委員の先生方の御出席状況ですが、本日は治部委員、安田委員、田口委員、仲委員が欠席となっております。
 配付資料につきましては、事前に電子媒体でお送りさせていただいております。議事次第に記載のとおり、資料1-1から2-2及び参考資料1をお配りしておりますので、不足等がございましたら事務局まで御連絡ください。
 本日はオンラインでの開催となりますので、御発言の際には「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、主査から指名を受けましたら、マイクをオンにし、お名前を言っていただいた上で御発言ください。なお、主査以外の委員は、御発言されるとき以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 もし不具合等がございましたら、事務局連絡先まで御連絡ください。
 なお、本日の会議は、傍聴者を登録の上、公開としております。
 最後に、事務局に異動があり、4月から私、大場が室長補佐として着任しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【大橋主査】  よろしくお願いします。ありがとうございました。
 それでは、議事の方移りたいと思います。お手元の議事次第を御覧いただくと、本日は議事が3つございますので、順を追って進めてまいりたいと思います。
 最初の議事ですが、人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業の進捗についてということでございます。本年度が事業の最終年度となります「人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業」について、採択機関である大学共同利用機関法人人間文化研究機構及びEY新日本有限責任監査法人の2機関に、現時点での進捗や展望等について、まず御発表いただきたいということでございます。
 まず、初めに事務局から御説明をお願いいたします。
 
【助川学術企画室長】  事務局、文部科学省の学術企画室室長、人文科学・社会科学振興室長の助川でございます。本日もよろしくお願いいたします。資料は、資料1-1を御覧いただければと思います。
 文部科学省では、今投影もされますけれど、文部科学省では2024年度、令和6年度から2026年度、今年度、令和8年度までの3か年度で、人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業というものを実施してございます。事業規模は、右肩にございますように毎年1億円弱でございます。
 その事業内容は大きく2つに分かれております。事業の概要のところに、緑色のところの上にローマ数字の1と2がございますけれども、1つ目が左側ローマ数字の1、人文学のDX、すなわちデジタル・ヒューマニティーズを推進させるもので、より具体的に申しますと、データ規格のモデルガイドラインの策定、データ利活用研究のユースケースの創出、さらには人材育成のための教育プログラム開発・実施・検証、コンソーシアムの設置・運営でございます。こちらについては、人間文化研究機構が受託されて実施しております。
 次に、ローマ数字の2のところ、人文学・社会科学研究の成果を可視化させるために、書籍の分析ですとか新たな指標の開発を行うもので、EY新日本有限責任監査法人が受託して実施していただいているところでございます。
 それぞれについて、人間文化研究機構からは本日、堀浩一理事と金甫榮(キム・ボヨン)特任准教授に、EY新日本有限責任監査法人から吉澤剛アドバイザーに、現在までの事業の進捗について御発表いただく予定でございます。
 なお、よろしければ先生方、それぞれの機関からの御発表の都度に質疑応答の時間を設けられればと思っております。
 私からは以上でございます。
 
【大橋主査】  ありがとうございます。それでは、早速ですけれども、人間文化研究機構から御発表いただければと思います。本日、堀理事と金教授に御対応いただけるということでありがとうございます。それでは、御準備がよろしければお願いできますでしょうか。
 
【堀理事】  それでは、今、助川室長から御紹介ございました、人社DX事業のまずコンソーシアムの運営に関する事業について御報告します。私、堀が全体的な状況を前半お話ししまして、後半、金特任准教授から具体的な中身についてお話しさせていただきたいと存じます。
 まず、現在の状況ですが、有り難いことに、AI for Scienceの追い風が吹いていると言ってよいかと思います。これはある意味、人文学にとって非常にチャンスであり、また、ある意味においては、AIの側から人文学への期待というのが非常に高まっておりますので、責任も高まっているという状況だと言ってよいと思います。
 まず、そもそも人工知能とは何かというところから振り返らせてください。10年ほど前、2016年に、私たちAI学会関係者13名ほどの著者で「人工知能とは」という本を書きました。その中で、私ほか何人かの著者が書いておりますことは、人工知能というのは、こういう人間を1人、機械に置き換えると、そういうものではないということです。そうではなくて、我々がつくっているAIというのは、至るところにAI技術が埋め込まれて、人間の目の機能を拡張する、人間の手の機能を拡張する、情報と情報をつなぐ機能を拡張する、そういう至るところに埋め込まれて人間のインテリジェンスをamplifyするようなものである。そういうものを我々人工知能の研究者というのはつくろうとしております。
 つい最近、2026年6月に、人工知能学会が設立40周年に当たっての提言というのを出しております。下の段を見ていただきますと、AIは「人間に取って代わる存在」ではなく、「人間の知性と創造性を拡張し社会の持続可能性を支える技術」であると書いてあります。そういうAIを目指していると。
 また、上の段を見ていただきますと、人工知能学会は、人間の尊厳、文化の多様性、社会の持続可能性を重視し、人とAIが共生する社会の実現に向けて、以下4つの柱を提言しております。正に人間の尊厳、文化の多様性というところは、人文系の研究者がずっと研究を深めてきたところでありますので、我々への期待が高まっていると言ってよいと思います。
 従来の人文学というのは、人間の尊厳、人間の多様性というような、それぞれの研究者あるいはコミュニティー、またそれぞれの時代によって違う価値観・世界観と生の原資料との相互作用の中から論文や書籍を執筆し、それをほかの人々が読んでコミュニケーションを行い、研究を広め、深めていったと言えましょう。基本的には、いろいろありますけれども、大筋ではそういう姿。
 それに対してDHというのは、生の原資料をデジタル化し、メタデータを付与し、そうすることによって、資料をFindable、Accessibleにし、更に重要なことは、Interoperableにし、Reusableにする。相互に利用可能にし、再利用する。そこで研究を深めていき、広げていく。そういうメソドロジーの共有知というのを提供するのがDHの世界であります。
 このDHコンソーシアム事業では、そういうメタデータをどうやって付与し、どう使うか。日本独自のいろいろな問題というのがあります。それを、テキストと地理・地誌情報を例題としてメタデータの活用のガイドラインを作成し、また、そういうDHのメソドロジーというのは身につけるために訓練の期間を必要としますので、そういう教育のカリキュラムを網羅的につくるということを、コンソーシアムとして多くの大学が協力しながらやってまいりました。
 一方、現在の生成AIがどういう状況かというと、例えばですが、正倉院文書に「二日酔いで休みます」という役人の欠勤届が残っているという話を見かけまして、「そういうのがあるんだって」というのを、ChatGPT及びGeminiにそれぞれ聞いてみましたら、それぞれ「はい、そういう資料が正倉院文書にあります。当時はお酒に寛容だったようですね」というようなことを言うんですよね。これは全くのうそで。もちろん欠勤届はあったり、お酒がもっと欲しいという、支給してほしいという要求の文書はあるそうですが、二日酔いで欠勤届というのはないのだそうです。そういううそを言うハルシネーションを起こす。
 「その典拠を教えて」と言うと、「これこれこういう資料があります。東大史料編纂(へんさん)所にこういうのがあります」と全くのでっち上げを言います。そういうハルシネーションが起こるのは、ネット上の情報から生成するからということになりますが、DHにAIを組み合わせた世界はどうなるかというと、我々はDHで信頼できる情報をデジタル化し、それを使えるような技をつくる。それにAIの技を組み合わせていくことによって、更にいろいろな研究がつながり、関与するステークホルダーが増えていく。
 現在、DHによって、同じあるいは近接分野の研究者同士において、価値観の世界と資料の世界との相互作用というのを他者が検証し、更に独自の世界を展開していくことができるというようになっています。また、遠く離れた分野の研究者同士が、メタデータ及びデジタル化した資料を介してつながって、分野を超えて新たな研究が生まれる。また、一般市民に信頼できる情報を提供できるということをDHによって可能にしつつあります。
 しかし、まだDHに対してハードルが高いという抵抗感を感じる研究者も少なくありません。今後、AIの技を至るところに組み合わせていくことによって、現在DHのメソドロジーをまだ使いこなせない人たちも、AIの技を使って、AIがガイドする、あるいはAIを上手に使いこなすことによって、DHの成果を更に活用できるようになり、また、異なる専門分野の専門家と更につながりやすくなる。例えば異なる分野のメタデータの間のマッピングにAIの技を使う。また、一般の市民も、先ほどのようなハルシネーションが多いAIと違って、もっと信頼できる、我々がDHの技で構築してきた信頼できる知識一般に、アクセスできるようになる。DHで提供する情報を一般市民向けにAIの技を使って翻訳するということが進展すると期待される。
 現実には、そこに書きましたような、いろいろな現実的な問題があります。権利処理の問題、倫理の問題、研究データマネジメントの問題、データの長期保存、ストレージの確保。実際、各大学ともストレージの確保は、あと5年もつかどうかというようなかなり厳しい状況です。我々としては、100年、1000年もたせたいわけで、そこを国の戦略としてどうしていくのか。また、巨大なAI企業に依存しないsmall AI networkをどう構築していくか。人のネットワーク、組織間のネットワークをどう構築していくかというような課題がございます。
 ここから、成果の中身について金さんからお願いします。
 
【金特任准教授】  それでは、ここからは、これまでの事業の実績と現状について御報告いたします。
 本事業では、先ほども御紹介がありましたけれども、国際標準規格に準拠した人文学DX基盤の構築において、中心的な機能を担うDHコンソーシアムを形成することに取り組んでまいりました。その中で特に基盤として重要なテキスト及び地理・地誌という2つの領域に関するガイドラインを策定すること、そしてDHの人材育成のための教育プログラムを開発することを主な課題としています。
 これまでコンソーシアムには23の組織の参加が実現しており、研究基盤、研究実践、人材育成の3つのハブにおいて事業を推進してまいりました。こちらに幾つか成果の数字を出していますけれども、これらの詳細については、資料の24ページ以降にある、「3 事業実績等の詳細」を御参照ください。
 そして、こちらの図ですけれども、本事業に関わる組織体制としまして、先ほど申し上げました事業を推進する3つのハブ、そしてコンソーシアムの議論の場となっている2つの部会及び全体会を設置・運営していることをお示ししています。このような体制で事業を推進してまいりまして、KPIについては、おおむね3年間の目標に対して達成又は達成見込みという状況でございます。
 これらの詳細も24ページ以降を御参照いただくこととしまして、本日この場では重要な3つの成果物について御報告いたします。3つの成果物は19ページにお示ししています。1番から順番に御報告いたします。
 まず、研究基盤ハブでは、昨年度に東アジア・日本語テキストデータ構造化ガイドラインを作成・公開しました。国際標準規格であるTEIに準拠しながら、東アジア及び日本語のテキストにあるルビや割注割書、漢文訓読などといった特徴に対応して記述する方法を体系的に整理しております。また、併せまして、「人文学テキストデータ構造化の手引き」も公開しています。これらは、日本語のデータ基盤を築く上で実践的な事例と手法を提供するものですので、今後の人文学DXを促進する上で重要な基盤になるものと考えています。
 次に、研究実践ハブでは、DiHuCo-GEOガイドラインを作成しました。こちらは近日中に公開する予定でございます。ガイドラインの中には、これまでの地図、地名、そして地誌に関するデータの活用に関するユースケース、ベストプラクティスなどを集約しています。このガイドラインの特徴は、AIを活用しまして研究者から知識を引き出す仕組みを一緒に開発しているところです。
 具体的には、講演資料があれば、それをAIが構造化し記事を自動生成することでガイドラインを作成することが可能です。ですので、今後柔軟にガイドラインを拡充することもできますし、ほかの分野にも応用可能な汎用性の高いものとなっていますので、公開の際には是非御活用いただければと思います。
 最後に、人材育成ハブでは、人材育成プログラムモデルを作成しました。DHの倫理・基礎・実装の3つの分野をコア科目としまして、各大学・各分野の応用科目へと接続するような体系的なモデルとなっています。DH教育に必要な科目を網羅的に整理していまして、マップとしての役割を果たしています。
 このような網羅的なモデルは、一つの大学で対応することは難しいかと思います。人間文化研究機構における大学を横断的につなげるような環境、そして本事業で構築しましたコンソーシアムにおける議論や協力を得てこそ実現できたものであると考えています。これによって学習者は体系的な学習計画を立てることが可能になりますし、大学は、ほかの部門との交渉の際にこのマップを活用することが期待されており、DH教育を支援するツールとしての役割を果たすものになると考えています。
 今年度は、このように2か年で構築した基盤を土台にしまして、更にコンソーシアムを拡充していくこと、そして、今御紹介しました主な成果物に対して、活用の側面をより加速化していきたいと考えております。
 関連しまして、直近では、明日18日ですけれども、東京ビッグサイトにてDH国際シンポジウムを開催します。また、8月7日には東京、一橋講堂で、AIをテーマにし、今回のSPReAD 1000に採択された方々の発表を含めたシンポジウムを開催する予定です。詳細につきましては、人間文化研究機構又はDiHuCo、本事業の専用ホームページを御覧いただければと思います。
 ごく簡単ではございますけれども、これまでの実績と現状について御報告いたしました。
 
【堀理事】  最後に一言、人文系というのは従来一匹狼(おおかみ)で仕事する方々が比較的多かったという印象があるかと思いますが、このDHとAIというのを活用して広げていくという社会からの期待に応えるために、いろいろな組織が連携して仕事をしようということが非常にうまく回り始めていると言っていいかと存じます。この成果を是非継続的に生かしていけるように、いろいろなことを考え、実践していければと思っているところでございます。
 以上です。
 
【大橋主査】  ありがとうございました。24ページ以降は参考資料ということですね。ありがとうございました。本日は議題が盛りだくさんではあるんですが、せっかくの機会ですので、是非委員の方々と質疑応答、意見交換ができればと思います。ただいまの機構の御発表について、御質問あるいは御意見ある委員の方、是非挙手をいただければと思います。いかがでしょうか。それでは尾上先生、お願いいたします。
 
【尾上委員】  尾上でございます。御説明ありがとうございます。人材育成のところに非常に興味を持って見ておりました。後ろの方の53ページに、カリキュラムというかマップを書いていただいていて、非常に緻密に全てをカバーするものになっているのですけれども、分野外から見ると、おなかいっぱい感も出てくるかなと思っておりまして。これをいかに分かりやすく各分野の方々に学んでいただくように持っていくかというのは、すごく重要だなと思っているのですけれども、どういう考え方で今後進めていかれようとされているか、教えていただければと思います。
 
【大橋主査】  ありがとうございます。もしよろしければ、ほかにも委員の方からあれば、是非いただければと思いますけれど。宇南山先生、お願いいたします。
 
【宇南山委員】  ありがとうございます。よく理解していない上で質問させていただきますが、スライド20枚目のあたりですけれども、日本語のテキストデータの構造化のガイドラインというものが提示されていて。このように準拠するとAIが処理しやすいのだろうというのは理解するのですが、人文、私は社会科学系ですけれども、文系の方からすると、AIというのは、こういうことをやらなくてもうまくいくのではないのかと。それが魅力で、こういうことをある意味やらなければいけないというのは、研究テーマとしては本業ではないんじゃないかという印象を抱くのですが。これはどういうガイドラインと理解すべきなのか。もし私が考えていることが間違っているようでしたら御指摘いただければと思いますが、よろしくお願いいたします。
 
【大橋主査】  お二人の委員の方の回答をまとめていただいていいですか。
 
【堀理事】  ありがとうございます。まずカリキュラムの方ですが、これはヨーロッパのDHの連中とも議論を重ねまして、これだけ網羅的に整理してくれたのはヨーロッパから見ても非常に有り難いと評価していただいています。実際には各大学は、この中の範囲のごく一部、それぞれの教員の得意なところしか現在教えられていません。全体像はこうなのだということを示した上で、それぞれの大学の教育の理念に応じて、また育てたい人材像に応じて、この中から組み合わせて使っていただくことになります。コアのところについて動画を全て用意しますので、それを組み合わせて、大学の授業の中で活用していただく。その組み合わせ方の例というのは今後幾つか提示していくというようなことになるかと思います。
 それから、テキストの構造化の方ですが、似たような質問はよくいただくのですけれども、残念ながら現在のAIがこのTEIの構造化を経ずして古文書を直接読んで、そこから何かを、知識を抽出するということはできません。言語資料を読めるようになるというのは、それを読むための知識資源が別途あるから、それを組み合わせて現在の生成AIというのは理解できるわけですが、古文書に関して必要な知識源というのがなければ、生情報だけから、AIが何かを抽出するということはできません。
 TEIでしっかり構造化したテキストを、ある程度しっかり基盤的なものを用意できると、それをAIに学習させて、ほかの資料の構造化をAIが助けてくれる。AIも助けてはくれるのですが、実は古文書を、例えば崩し字を読む、そのことだけでも専門家によって意見が異なるというようなことがあります。その辺りはAIで支援できる部分と、専門家の深い知識が必要だという部分の組合せというのは、ずっと引き続き必要になるということだと考えております。
 ですので、DHの技がAIと組み合わさってうまくいく。DHのこの作業なしにAIプラス生資料ということで何かできるかというとできないというのが、AIの研究者、DHの研究者のほぼ共通理解だと思います。これは日本だけじゃなくて、アラビア語だとか、それからインドの仏典の古いものとか共通の課題ということになります。
 
【大橋主査】  よろしいですか。ありがとうございます。もし追加で御意見なり、御質問なり、サジェスチョンなりあればと思いましたが、どうでしょうか。特段大丈夫そうでしょうか。
 本日は現在進めていただいている事業の中間報告という位置づけで、主に中核的な3つの事業について御説明いただいたということで、相当大がかりなものもあるかなと思っていますが、是非、人文社会科学系の方でも、AIとか、これからいろいろ使っていかなければいけないステージにもあるので、是非そういうところも踏まえた上で、いいもの、成果が出てくることを期待しています。本当にありがとうございました。
 よろしければ、それでは次に移らせていただきたいと思います。
 続きましては、EY新日本有限責任監査法人の吉澤様から御発表いただくということで、御準備よろしければお願いできますでしょうか。よろしくお願いします。
 
【吉澤アドバイザー】  EY新日本有限責任監査法人の吉澤と申します。
 こちらの事業では、「書籍」に関する人社系データベースの構築のためのエコシステムの検討と試験的運用ということで、大きく2つの目標を設定してございます。まず1点目は、「書籍」に係る指標開発に向けた調査・分析ということ。2点目はその他の新たな指標に関する検討・提案ということ。最終的にはこれらを、成果をモニタリングできる環境を整えて、本事業終了後も継続的にそうした形、モニタリングができるような環境をつくっていきたいということを目標にしております。
 まず1点目です。指標開発に向けた調査・分析ということで、そもそも書籍というものが定義されていないというのがあって、学術書・一般書というのは一般的な言い方としてありますけれども、では何をもって学術書というのかということが日本においてはないということで。人文社会科学系の研究成果の業績とたり得る書籍とは何かというのを定義するために、具体ということで我々のアドバイザーとして大学の先生方10人から成る部会で議論して、それに基づいて方針を決めていったところ、著者が大学若しくは研究機関に所属しているか否か、その著者が出版した書籍を全て書籍という形にしようといたしました。
 2019年から2024年までの総発行書籍数は28万冊ということになっていて、そこから翻訳書籍を除外します。これは仕様書どおり、もともと翻訳書籍は研究業績成果に数えないという形でしたので、それを残しますと26万冊。その後、人文社会科学系の分野を絞り込むために、日本十進分類表の第10版を利用して、11万冊程度に絞り込む。そのうちに著者紹介情報で、その著者が大学に所属するか否かで絞り込んで、あとは細かいところの非専門書籍の除外、ここに書いてありますように、参考書とか問題集もろもろといったものは、大学の先生が入ったとしても、これは学術成果としてみなされにくいのではないかということで除外しております。
 結果としてはこのようになっております。人文社会科学系17分野と、あとその他ということで、人文社会科学系ではあるけれども、どの分野にも収まらない複合的な分野も含めた18分野で書籍数を数えたところ、総計で4万冊、2024年で言えば5,000冊ということで、2019年から2024年にかけて書籍数は漸減しておりますが、これは何も学術書といいますか、この書籍数に限らず、全般的にあらゆる書籍の発行部数がだんだん減っているということで、その傾向を反映していると考えられます。
 また、単著・共著の別みたいなところもデータとしてはカウントいたしましたので、御参考ください。
 続いて、引用傾向等の把握ということで、その範囲の特定とそのような把握で把握した対象書籍群のうち、2024年分の発刊分について、人社の17分野から2分野ずつを「個別対象分野」として選定するということで、どの分野を選定したものかというところで、非常にここは悩ましかったんですけれども、人文社会科学系の多様性が分かるような幅広さということと、あとは実務的にあまり書籍数が多い分野を選定してしまうと、ほかの分野まで手が回らなくなってしまうので、まずは地理学、続いて民俗学、心理学、政治学の順番で引用傾向等を把握していくというように方針として決定いたしました。
 これはまだ現在進行中でして、非常に実際はこの1年ぐらい、どのように書籍引用データベースを構築するかというところで議論が続いて、また、図書館から本を借り出して、そのページを複写するということが適当なのかどうかと。法律的なところも少し確認した上で方針を決めました。
 最終的には、早稲田大学図書館と連携いたしまして、早稲田大学図書館にあるものは借り出してスキャンする。なければ国会図書館に行って引用ページを複写するという形で、画像データをOCR処理するところまで進みつつあります。まだそのデータが上がって、それを実際の引用データベースとしていくところまではいっていないのですけれど、残り半年で何とか形にできればなと考えております。
 実際収集しているデータはISDNと、書籍内のシリアル番号と、あと書誌データとして著者名、書名、出版社、刊行年と。部会のメンバーであります新潟医療福祉大学の平井克之さんのシステムを用いれば、こういった書誌データの順番が、例えば著者名、書名、出版社、刊行年の順番でなくても、順不同でも、これは大体刊行年に相当するとか、出版社に相当するという形で、それこそシステムで同定いたしますので、そこら辺はその書いてあるままデータとして収集しているという形になります。
 2025年度は地理学分野の26冊、1,761レコードを収集したということで、今年度に入って地理学は全てデータを収集しております。民俗学、心理学も進みつつある形です。御想像のとおり非常に人手がかかって大変な作業ですので、年度内に終わるかどうかというのは難しくなっているかもしれません。
 続いて「書籍」を活用した研究トレンドの把握ということで、その書籍データベースの書名、要旨、目次、出版年のデータを基に、テーマやキーワードを分析するということに挑戦いたしました。まずは、計量テキスト分析ソフトウエアのKH Coderを利用して、共起ネットワークとか対応分析を試行したのですけれど、なかなか特徴的な語や傾向の抽出が十分できなかったということになります。
 あとは、生成AIが最近流行っておりますので、Embeddingを利用したツールであるNomic Atlasというものを用いてトレンド分析を行ったのですけれども、生成AIの特性上、同じ結果が毎回出力できるわけではなくて、なかなか安定的な結果を出すということが課題だったかなと思います。
 最後に、class-based TF-IDFという手法を用いて分析した形で、これはそのトピックに特有な頻出する単語を数値化したというのがありますので、参考資料2の方につけておりますので、御参照いただければと思います。結果といたしまして、特徴が出たものとしては、例えば博物館学ですと、2024年に「DX」等のデジタル化関連語が上位に出現、政治学ですと、2022年以降「ウクライナ」「戦争」等の国際情勢語、経済学ですと、2020年以降「コロナ」「インフル」というマクロ環境語が上位に出現と。
 他方、ほかに全然、年度ごとの特徴が現れなくて、毎年同じような言葉が出ている分野もあって、なかなか結論といいますか、考察といたしましては、書籍データベースから得られる書名・要旨・目次・出版年のデータだけでは研究トレンドを把握することは難しいということと、あとは当然、人社系の研究分野というのは、1~2年ですぐ成果が出て本が書けるというものでもないものが多いですので、なかなか書籍から各年の研究トレンドを調べるというのはあまり適切でないものとは考えております。
 2番目に移ります。その他の指標に関する検討・提案というところでございます。まず、文献調査を行いまして、いろいろな形で指標ベースと事例ベースの組合せということで、何か一つの指標を用いれば十分というのはなくて、複数の手法を混合するということが適切であると論文からは示唆されています。また、書評というのは一つの指標としてはかなり重要で、海外でも重要な地位を獲得しているということがあります。
 また、J-STAGEを管轄するJST情報基盤事業部に調査を依頼して、そもそも書評というのはどれくらいの割合で含まれているのかというところも伺ったのですけれども、先方に調査いただきまして、ジャーナルの記事数のうち書評の占める割合が1.2%ということで、非常に少なくなっています。また、引用傾向として、ジャーナルにおいて文献として書籍が引用される割合は約8.5%ということで、アジア経済研究所さんでも、アジア経済研究所の発行するジャーナルにおいて書籍の引用率を調べておりますけれども、それに比べるとはるかに低いということで、J-STAGEに載っているものは、人社系と分類されても、かなり自然科学の融合分野が多いので、人社系の研究を代表しているかというとそうでもないのかなということが示唆されました。
 海外事例調査です。北欧イノベーション・研究・教育研究所のGunnar Sivertsen教授を招いた意見交換なども実施いたしました。
 日本語書籍の特徴分析ということで、政策研究大学院大学の林隆之さんたちの研究グループにお願いしたところ、書籍データベースをScopusやCiNii、J-STAGEといった日本語論文・英語論文データベース比較分析したところ、日本語書籍は、地域固有の歴史的・社会的・文化的文脈に強く結びついた研究テーマに密接に関連しているということで、例えば社会科学ですと、人生・老い、話し方・自分、子供・家庭、労働・判例、介護・福祉ということで、非常に生活世界に根差したといいますか、非常に読者層が幅広い層を意識した書籍が出版されているということが分かるかなと思っております。
 また、指標として、どの出版社が刊行されたかということが重要なのかなというところで、日本でも学術出版社というのは一意に特定できないんですけれども、人文社会科学系の研究者の皆さんにお伺いしても、どの出版社が出すかというのが一定の重要性はあるということで、科研費データベースを用いて各分野における上位15社というのを特定いたしました。それを参考資料3につけておりますので、御参照いただければと思いますが、非常に出版社が分散しているというのが大きな特徴で、その分野ごとに出版社のランキングも大きく変わるということで、研究成果としての書籍を担う出版社の多様性が高いということがうかがえたというところです。
 また、総合型出版社と分野特化型の出版社という形で、少し色分けして出版社の特徴を出してみましたところ、政治学ですとか、思想、文化人類学、民俗学、歴史学みたいなところは総合型出版社が多い。要するに一般読者が多い分野でもあるかなと。逆に、経営学、言語学、考古学みたいに分野特化型の出版社が目立つというところで、非常に出版社としての専門性が高い分野もあるということです。
 ただ、その留保といたしまして、このようにランキングで出しているということの危険性もありまして。一部の出版社を学術出版社として認定して、例えばランキングがトップの出版社から出た本を優先的に評価するとか、モニタリングの指標としてインセンティブづけするというのは、非常に研究者にとってよろしくないということをノルウェーの実例から伺っております。とはいえ、日本における出版社の多様性とか、各分野の特性を把握していくことというのは非常に重要で、今回のモニタリング事業で、こういった形でデータとして出したことはよかったかなと考えております。
 現在行おうとしているのは人文社会科学系のアンケート調査ということで、人文社会科学系の皆さんが望む御自身の認識として、どういった研究成果を重要視しているかと。その媒体として、あるいはどういう形で評価されることが適切だと考えているかというのを探るために、学会を選定して、その学会において、学会の会員の方々にアンケートを実施しようかなと検討しているところです。
 最後になります。研究データエコシステムの検討。先ほど申し上げたように、本事業が終わった後も、こういったモニタリングという成果、あるいは関係性というのを何とか構築していきたいなと思っておりまして。この部会にはオブザーバーみたいな形で大学図書館とかアジア経済研究所さんからも参加いただいているという形になっておりますし、SciREX事業との意見交換も実施いたしました。また、大学のURAの集まりでもありますRA協議会でもセッションを開催したということで。
 今後といたしましては、あさってですか、しあさってですか、「ひじりばし博覧会」ということで、専門出版社の会社の方が集まるところにも参加いたします。あと今後、有識者・ステークホルダーが参加するワークショップを実施して、もう少し社会にアウトリーチなり対話の機会を広げていこうと考えております。
 ヒアリング調査も行っておりまして、学術出版社・関連団体になってくると、課題としては、学術書の質保証ですとか、定義・分類の曖昧さ、あるいは、書籍は商業出版に依存していますので、我々だけの一存ではなくて、商業出版社あるいはその市場、マーケットというものをどう考えるかということと不可分になっております。研究者としては、磯野真穂さんですとか安田洋祐さんとか、結構メジャーな人社系の研究者の方々にも伺っております。
 ワーキンググループとしても活動を行っておりまして、大学出版社とか大学図書館との関係性を模索して、どのようにオープンアクセス化、学術書の質管理・保証ができるかということを検討しております。
 これまでに得られた示唆としては、指標の多様性と書籍の位置づけというところと、あとは、本事業で行いました書籍の定義とその同定というところと、あとは、海外でも議論になっておりますけれども、ジャンルだけではなくて書籍をちゃんとオープンサイエンスの政策の対象とするということが期待されるというところと。あとはメタデータの整備、こちらの方も、メタデータというのは非常に大事でして、要するにその書籍がどのように編集・査読されたかという過程に関する情報というのがないと、海外のそういったデータベースと、レポジトリと連結できないということがありますので、そういった情報が必要かなと。
 あとは、KAKENデータベースみたいなところの活用、あとは、本事業で意見交換を行ったOAPENから、日本を含む東アジアからの結構アクセスは、書籍のオープンアクセス等はあるのですけれども、なかなか日本からデータを登録してもらえないという非対称性があるので、東アジアのプレゼンスの低下ということになると、人文社会科学系全体の損失にもなりますので、そういった在り方、国際協調みたいなところも考えていかないといけないかなと思っています。
 最後に、継続的な対話と研究データエコシステムの形成ということが必要かなと考えております。
 駆け足になりましたが、以上になります。
 
【大橋主査】  ありがとうございました。書籍に係る指標開発であるとか、その他の指標についても、現在の進捗状況について御報告いただいたということになります。こちらについても是非委員の方々から御質問なり、あるいは御意見なりいただけると有り難いかなと思っています。それでは、まず青島先生からお願いします。
 
【青島委員】  どうも非常に興味深い御発表ありがとうございました。
 2点あります。1つは20ページの、これは多分林先生たちがやったもので、非常に興味深いなと思ったのですけれど。これはどうやって読めばいいのかなと思いまして。書籍で扱われるものとジャーナル論文とかで扱われるものの間に一定の差があれば、書籍は書籍として独自の貢献があると言えるので僕は非常に面白いなと思うのですけれど。それがこれらの分析からどうやって読めるのかなということに興味ありまして、教えていただきたいというのが1点目です。
 2点目は、軽部先生からの話ですと人文社会系の書籍の多くが教科書だということなのですが、今回の分析ではどのくらいが教科書だったのか。教科書をどのように扱われたのかという点を確認したいと、この2点お願いいたします。
 
【吉澤アドバイザー】  ありがとうございます。まず1点目ですが、20ページのところ、日本語書籍の特徴分析ということで、私もその林隆之さんから資料を借りたところで、全てを正確にお答えできるわけではないですけれど、基本的には、この表の縦軸の上の方が、より書籍としてのオリジナリティーが高いというんですか、ほかの下の方のキーワードというのは、書籍だけではなくて、日本語論文・英語論文でも。
 
【助川学術企画室長】  ちょっとお待ちいただけますか。ごめんなさい。音声の聞こえが、もしかしたら役所の中だけかもしれないけど、悪いようでして。復活しました。ありがとうございます。失礼しました。
 
【吉澤アドバイザー】  縦軸、高い上の方に行くほど、より書籍としての特徴があるというか、書籍だけに見られるキーワードというのが出ている。下の方は、より書籍以外の論文にも参照されている。左側の方が社会学全体ということで、右側の方は社会学に限らないというところで、これを見ますと介護・福祉であると、より社会学に特化した、かつ、書籍だけで、書籍に特徴的に見られる研究トピックということが言えるというのがあります。
 2点目ですけれど、教科書のところのお話ですけれど、先ほどお話ししましたけれども、基本的に教科書というのは非常に悩ましかったんですけれど、一応業績として除いているというところがあって。これも今ヒアリングをしている最中ですけれど、おっしゃるとおり、教科書が非常に参照されて学術的に重要視されている分野もあれば、お話を伺っても、飽くまでもアウトリーチというんですか、学術業績とは別に社会貢献としてやっているとおっしゃる方もいて。そこの扱いが確かに悩ましいかなとは思っております。
 
【青島委員】  教科書はこの学習問題集とかいうところに入っていて、今回は、排除しているということですか。
 
【吉澤アドバイザー】  そうですね。
 
【青島委員】  分かりました。ありがとうございます。
 
【大橋主査】  ありがとうございます。ほかいかがでしょうか。それでは後藤先生、お願いできますでしょうか。
 
【後藤委員】  後藤でございます。大変に興味深い成果ありがとうございました。人社系の研究評価の、特に書籍の部分に対して一定の解析手法みたいなのは見いだせてきているというのはすごく大きな成果だなと思います。また、それとキーワードのところで見ていると、結構、人文学・社会科学系であっても、例えばDXだとかコロナでしたか、であるとか、社会課題に即応できるような内容はきちっとアウトプットになっているのだなということが可視化されているということでも、かなり重要な成果であるのではないかなと理解いたしました。
 その中で1つだけ。ある意味すごく、私ネットワークが悪かったので途中落ちてしまっていたかもしれないですけれど、これは例えば大学であるとか、著者の属性みたいなものを分析することは可能でしょうか。ある意味ないものねだりであったりとか、多分著者のところから、ある程度名寄せをしたりとか、そういう形で、どういう人たちがどういうものを出しているかということが少し見えてくると、より効果的かと思うのですけれども。もし私が落ちている間に御説明があったら申し訳ありません。その辺り、どういう可能性があるかというところについて教えていただければと思います。
 
【吉澤アドバイザー】  ありがとうございます。ここで、5ページでお話ししましたとおり、著者紹介情報から絞り込んでいるというところで。そこのところに大学というキーワードと、あと大学の役職、教授とか准教授とか、研究員みたいなところで、その役職も一緒に入っていれば、その著者は現在大学に所属しているということ、現在所属していなくても過去に所属していたということで絞り込んでいるということです。
 それを更に絞り込むというんですか、それが今、教授なのか、あるいは客員研究員なのかというところで、もしかしたらそれらの書籍の分類というのができるかなとは思っております。逆に、どういった形で、そういった分類をすればいいかというところで、もし何か御提言があれば、是非伺っておきたいと思います。
 
【後藤委員】  ありがとうございます。そうですね。例えば、人文学・社会科学系であれば、大学以外の方も多くアウトプットされるというのが一つ特徴かなと。例えば博物館であるとか、自治体であるとか、そういうところもあると思うので。だから、例えば大学の人たちがこれだけ出しているとか、博物館の人たちがこれだけ出しているとか、というところがあると、まだかなり、大学というところがどういうことができているかとか、そういうところも見えてきたりとか、そういう属性のところでもう少し傾向が見えてくると、それは面白いなというところだと思います。
 なので、そういうところから、今、大学がどういうことをアウトプットしようとしているのかとか、そういうところが具体的に見えてくるというゾーンにもなると思いますので。そういうところでうまく使えると、もっとより興味深いデータとして見えるかなと思っているというところです。ありがとうございました。
 
【吉澤アドバイザー】  ありがとうございます。資料としては割愛してしまったのですけれど、おっしゃるとおり大学だけではなくて、博物館、科学館、研究所、研究センターみたいなところも含めて、著者の所属として絞り込んでいますので、そこで大学とそれ以外の機関でどう違うのかというところは是非見てみたいと思います。ありがとうございます。
 
【大橋主査】  ほかどうでしょうか。米村先生と山中先生、それぞれお願いできますでしょうか。
 
【米村委員】  先ほどスキャンにすごく手間がかかるというお話がありましたが、デジタル化された書籍も同じように扱っているということでよろしいでしょうか。
 もう1点、オープンアクセスについての質問です。若い研究者は特に、自分の研究を早く多くの人に読んでほしいということがありますが、著作権の問題等もあり、書籍に書いた論文をすぐにはオープンアクセスにして公開できないということがあるかと思います。せっかく本に書いたものの本を持っている人にしか伝わらない、読んでいただけないという課題、難点があると思っていますが、今回お調べになって、この点について、新しい知見や工夫されている点があったら教えていただけたら有り難く思います。
 
 
【吉澤アドバイザー】  ありがとうございます。まず1点目ですけども、基本的にデジタル化した書籍は、我々としてはまだきちんと調べていないといいますか、もともとの書籍データベースの方が物理的に発行されている書籍のデータベースですので、そこで見つかった書籍というものに対して、大学図書館なり国会図書館で調べてスキャンしているということで。それらがもともともうデジタル化されているかどうかというところは調べておりませんし、実際調べるとなると、デジタル書籍を買わないといけないので、借りるよりはるかにコストがかかってしまうので、現実的には難しいかなと思っております。
 2点目のところは非常に重要な御指摘で、結構研究者の皆さんに意見を伺ったりとかしているところで。これからAI for Scienceも一定書籍をどのようにデジタル化していくかという多分議論になるかと思うのですけれども。出版社だけではなくて、研究者の皆さんもそういったところを少し躊躇(ちゅうちょ)されているということがあって。とはいえ、書籍はすごく貴重なものがあるのに、なかなか世に知られないということの問題点もありますので。
 そういったところを一つ解消する手段として、最近はいろいろなメディアプラットフォームというんですか、学術系の研究者の皆さんを招いて、一般の方とか、あるいはほかの分野の方と対談させると。その中で御自身の著書を紹介してもらうという、その入り口になると、いろいろなSNSを介したり、あるいはそのブログを介して、そういった書籍の、あるいは研究者の存在が知られるということになりますので、そういった形も今後の書籍の在り方として考えていかないといけないのかなと。要するに、本屋において売れるまで待つというのは、これからはなかなか成り立たないのかなとは思っております。
 
【米村委員】  ありがとうございました。
 
【大橋主査】  それでは山中先生、よろしいでしょうか。
 
【山中委員】  いろいろ大変な点や、傾向がよく読み取れないというお話がたくさんありながらも、こうして数値化してくださってありがとうございました。
 私は文学系なものですから、一番ぐちゃぐちゃしているところだったんではないかなと思いながら資料を見ていたのですが、その中で、日本ではピアレビューではなくて、編集者の目利きが重要というところが、面白いなと思って、その話をもうちょっとお聞きしたいです。
 というのは、文学系の書籍の表ではトップに勉誠社と出ていたんですが、そこは本当に目利きの編集者がいます。あちこちの学会を回って人を見つけて、まだ大学には勤めていなくても、大学院生なんかでも優秀な人を集めて、どんどん新しい企画の本を出しているような編集者です。そういうことがあると、けっきょく、苦労してデータベースができても、最新の情報はその人に聞いた方が早いということになってしまわないかな、ということで、、この目利きのことをどのようにお考えか、お聞きしたいなと思いました。よろしくお願いします。
 
【吉澤アドバイザー】  ありがとうございます。学術出版社・関連団体にヒアリングしても、編集者の目利きに依存しているというところで、ほかのいろいろな分野の研究者の皆さんにお伺いしても、学術書を出版するときにピアレビューというのはほぼまれで、その編集者が、こういうふうに書いてくださいという形でリクエストするという形でなって。すごく日本独特で。海外はピアレビューしたものを学術書として定義するというところも一部の国にはあるということなので、この編集者システムというのはかなり日本独特で。
 ただ、御指摘のように、その編集者の方は非常に優秀な方もいらっしゃいますので、ある種査読以上に厳しいという場合もありますし、それこそ目利きですので、今までなかなか学術業績として見つかっていない若手の方も非常に拾い上げてもらえるという部分があるので、そこは非常にポジティブに捉えております。
 なかなかここは言語化されていないというのが多分おっしゃるとおり一番難しくて。この学術出版社のこの編集者がいいですよということは、多分その分野にいらっしゃる方は暗黙知としては共有されていますけれど、それをオープンにすること自体もある種抵抗があると思うのですけれども。とはいえ何らかの形で、ここはきちんとした編集を経ていますよということは多分伝える必要があります。ですので、そのメタデータとしての書籍としてしっかりこういった形で誰々が編集しました、みたいな形で編集者の名前ぐらいは書籍にひもづけたメタデータとして公開するということもありなのかなとは考えております。
 
【山中委員】  ありがとうございました。
 
【大橋主査】  森田先生、お願いします。
 
【森田委員】  本日は大変有益なお話をどうもありがとうございます。今の山中先生の報告と同じところ、私もその編集者の目利きというところが気になっておりました。ただ、少なくとも私の法学の分野で言うと、目利きでされている編集者というのは、本当に多分ごくわずかしかおらず、ほかの編集者の方たちは恐らく、例えば大学院生が博士論文を書きましたとかいったら、それを指導教員が、あなたのこれだったらこの出版社がいいよとかと人づてに紹介しまして、人脈でいくというパターンが多いのではないかと思います。
 それで先ほど、どなたの御質問か忘れましたけれども、大学の先生以外の人についても調べてみた方がいいというのがありましたけれど、恐らく、法学の出版社を見ていても、この出版社はこの人脈の色が濃いよねとかという、そういうところはすごくあります。ですから、確かにどの出版社の評価が高いということも、あることはあるのですが、他方で、人脈とかに縛られて出版社が選ばれているところも多々あるので、そんなに客観的に信頼できる指標なのかなという点は気になります。
 以上です。
 
【吉澤アドバイザー】  ありがとうございます。研究者だったりメディア関係の方に伺っても、この出版社には持ち込めるけれど、この出版社に持ち込めないというのがあって。要するに、編集者が自ら探して、人脈で引っ張っていくのか、あるいはもうちょっとオープンに外から持込みを受け付けるのかという形で、これも多分出版社の色としてあると思うんです。そういった情報は多分知っている人たちは知っているけれど、知らない人は知らないので、そういった情報もある種メタデータとしてもう少しオープンになってもいいのかなとは考えております。
 
【大橋主査】  ありがとうございました。それでは、頂いたお時間もそろそろ参っているところですので、差し支えなければ、以上で意見交換の方は終わりとさせていただきます。
 ただいま幾つかあったのですけれど、編集者の成り手というのは恐らく減少していると思いますし、また、紙の出版というのが多分流通コストが相当上がってきているので、結構難しくなってくるところもあるだろうなということを考えてみると、これまでの文献をどう整理するかということと、今後どうあるべき、どう整理されるべきかという多分、頭の使い方というのは少なくとも分けてべきかなとは思います。そうした点も含めて是非、アンケート調査もいろいろやられるということですので、進めていただければと感じました。ありがとうございます。
 それでは、以上で中間報告の方は終わりとさせていただきまして、議題の2つ目に移りたいと思います。こちらは当面の施策の方向性ということで、こちら、素案の資料を資料2-1、2-2と御用意いただいています。今期の人文学・社会科学特別委員会では、この分野におけるAI for Scienceを中心にヒアリングや議論、行ってまいったところですけれども、本日と、あと次回の委員会で、これまでの議論を踏まえて今後の振興の在り方について施策の方向性という文書を取りまとめたいところでございます。
 まず、御用意いただいている資料を基に室長から御説明いただいた後、意見交換を賜りたいと思います。それでは助川さん、お願いできますでしょうか。
 
【助川学術企画室長】  ありがとうございます。改めまして、学術企画室長、人文学・社会科学振興室長の助川でございます。
 資料は、議題の関係で2-1と2-2をお配りしているところでございます。資料2-1はこちらを映させておりますけれども、前回の3月10日の会議で頂いた主な意見をまとめたものでございます。詳しい内容は省略させていただきます。
 資料の2-2を御覧いただければと思います。今期の委員会は、これまで有識者の先生方からのヒアリングも含めて4回開催されてございます。そこで頂戴した御意見も含めて、今後の施策の方向性についての委員会としての考え方を報告書の素案としてまとめてみたところでございます。御議論いただければと思います。
 まず今、お出ししているのは目次のページでございます。全体で6つの章立てにしておりまして、全体のタイトルがここにございますけれども、人文学・社会科学の更なる発展のためのAI for Scienceに関する当面の施策の方向性(素案)としてございます。
 ページをめくって1ページ、こちらが1、はじめにといたしまして検討の経緯等について触れてございます。1段落目ですけれども前期の委員会におきまして、多様なステークホルダーと学術知の共創に取り組む研究の推進ですとか、研究DXの実現に向けたデジタル化への対応など幾つかの観点について検討いただいて、昨年令和7年の1月に報告書をまとめたこと。一方、科学技術・学術というのがAIの急速な発展によって転換点を迎えておって、迎えていることといった状況を踏まえて委員会で議論を行いまして、人文学・社会科学におけるAIの利活用の意義、課題等について取りまとめたものとしてございます。
 第2章でございますけれども、こちらが人文学・社会科学を取り巻く現状について若干まとめてございます。2.1は近年の社会課題の複雑化、不確実性の中、人間や社会の在り方を多角的に理解することの重要性が高まっており、人文学・社会科学の役割が改めて重要視されている旨を述べてございます。
 ところで、2.2にございますけれども、人文学を含めて研究のデジタル化が進展しておりまして、我が国におきましても先ほど御説明いただきましたけれども令和6年度、2024年度から、ここにあります人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業、これを進めているところでございます。
 更に2.3でございますけれども、2020年頃からかと思いますけれども、あらゆる分野の研究においてAIを利活用しようということが急速に進展してきてございます。我が国におきましても次のところ、今後、今年度から5年間についての第7期科学技術・イノベーション基本計画におきましてAI for Scienceが一つの柱に掲げられておりまして、また、文部科学省としても、文部科学省においてAI for Scienceの推進に向けた基本的な戦略方針というのを策定してございます。
 その戦略方針の中では、ここにございますけれども、AI for Scienceの推進の目的として科学研究の革新と科学的発見の加速・質の変革、研究力の抜本的強化と科学の再興、国際優位性・戦略的自立性の確保が挙げられているところでございます。
 人文学・社会科学におきましてもAIを利活用した研究が国内外で行われ始めているところでございますけれども、人文学・社会科学の研究から生じるAIの利活用の課題というのがございます。それについて後ほどまた論じたいと思います。
 ただ、最後のポツにございますけれども、研究の質が変わっていくといたしましても人文学・社会科学が人間の根本的、根源的な理解に資する社会的な合意形成、対立の解決を探求するといったものであるという、この本質が変わるものではなくて、AIを活用するためにAIを活用するというわけではなくて、後ほど御紹介しますような課題を克服することによって人文学・社会科学を発展させるものであるとしてございます。
 続きまして4ページでございますけれども、第3章、では、これが人文学・社会科学にどのような可能性をもたらすかということでございます。
 まず、3.1は質的研究の事後的検証可能性の向上、研究の可視化としてございます。研究を理論、実証と分けたときにですけれども、人文学・社会科学というのは自然科学と比べて数値データを用いて現象を測定し、統計的手法で検証する、そういう量的研究だけでなくて、テキストの分析ですとかフィールドワークなどの研究者個人の解釈に大きく依拠したような質的研究の担うところが大きくなります。そうすると解釈の幅も大きくなりまして、研究のDXには自然科学と比べてですけれども一定の限界があったものと。
 ただ、人工知能、特に生成AIの発展というものが高度なテキスト処理を可能として、この制約が一部乗り越えられつつあることが書かれてございます。これによって膨大なテキストですとか、膨大な文書ですとか記録も含めて、また、SNS等も含めて横断的に分析することによって、時代とか地域とか言語をまたぐような大規模な比較が可能となって、広範かつ体系的な知の構築につなげることができると言えると考えてございます。
 更に研究者個人の解釈に大きく依拠することは第三者による検証に限界があったということでございますけれども、AIを活用することで、その過程とか手順等が共有されることによって研究の透明性が向上する。そして専門家の知が他の分野の研究者や社会に開かれる、使いやすくなる、そういう契機になるものとしてございます。
 続きまして3.2でございますけれども、研究のプロセスの高速化、研究の質の向上としております。AIは研究のプロセスを高速化して、また、それによって解釈、思考、理論構築により多くの時間を割くことができるようになって、研究の質の向上にも寄与するということを述べているところでございます。
 3.3で創造性の発揮、新たなネットワーク構築への寄与としてございますけれども、研究者がAIと対話を対応しながら創造力を発揮し、新たな知を創出できるようになること、また、AIが膨大かつ広範なデータを分析することによって、これまで気づかなかったような関係性を発見することで、そのデータの先にある異分野の研究、さらには異分野の研究者もつなげる可能性があることを述べているところでございます。
 ここまで、どちらかというと異分野、他分野との連携、融合について述べてまいりましたけれども、3.4では各分野の研究への裨益(ひえき)と挙げております。データの基盤は我が国の人文学・社会科学の知の蓄積ですとか国内、国外の研究者による利活用、更に我が国の知の発信に寄与するものであります。このことは例えば国外で日本について研究する研究者にも裨益(ひえき)するなど、個々の分野の研究の発展にも資すると言えると考えてございます。
 続きまして6ページでございますけれども、しかしながら、これまで申し上げたような人文学・社会科学の可能性が見込まれると言いましても、人文学・社会科学においてAIを利活用するにはどうしても課題がございまして、これがある程度、解消されなければ絵に描いた餅になってしまうということで、その課題って何だろうかというのを4でまとめているところでございます。
 4.1がAIへの透明性・信頼性の確保でございます。AIの学習しているデータや内部の処理過程が必ずしも明らかにはなっていないことですとか、あるいは学習データが欧米中心の資料に基づいている可能性も指摘されていることですとか、あるいはAIの仕組み上、どうしてもハルシネーションが大なり小なり避けられないことなどを挙げておりまして、人文学・社会科学の活用に当たっては、研究者の先生方がその責任において検証、解釈を行うことが必要であることを述べております。
 さらに、この最後のポツで21行目になりますけれども、各研究の専門分野に関する教育指導の体制が整っていることが前提であることを述べているところでございます。
 その上で4.2におきまして、AIの仕組み、手法等について人文学・社会科学の研究者も理解していることが重要であるものの、AIに関する知識を体系的に習得する環境が乏しい、また、どう学べばいいのかが必ずしも明確になっていないことを課題として述べているところでございます。
 続きまして7ページでございますけれども、4.3、AIに準拠した研究データのインフラの構築としてございます。AIの進展によって大量のデータの需要が増すということ、例えば文字であれば先ほどのコンソーシアム事業の御説明でもありましたけれども、我が国や東アジア特有の体系とか、例えば縦書き等に対応する必要があることを述べておりまして、更に3つ目のポツ、10行目のところでございますけれども、特に人文学とかで多いかと思います。もともとアナログで存在している研究資源というのも多くて、これを高精度かつ大量のデータを構築するという、このことが学術界で正当な業績として評価されることが必要であるとしてございます。
 次に4.4の研究体制の拡大、研究コストの増加のところでございますけれども、先ほど申しましたようにAIが他分野とのつながりをつくっていき、また、つながりを深めていくようなものであれば、それに合った研究環境支援が必要になるということでございます。
 また、4.5で権利問題への対応というのを挙げてございます。人文学・社会科学におきましては資料を所有している方、資料に登場する方、データを作成する方との間で複雑な権利関係が生じるものでございまして、また、AIの利活用によってデータの二次利用が容易になる中では権利者が意図しないような利用が生じる可能性もあって、そうすると権利問題が一層複雑化してくることが課題としてございますけれども、ただ、それに関して研究者が適切に対応するノウハウというのが十分ではないことを課題として挙げているところでございます。
 では、ということで9ページからが、それを踏まえた今後の方向性でございます。まず、5.1として先進的な事例の蓄積と共有というのを挙げてございます。冒頭申し上げましたとおり、人文学・社会科学が量的研究だけでなく質的研究の側面が大きくて、個々の研究者の解釈への依拠が大きいということで研究DXには一定の制約がございました。そのためですけれども、AIの利活用といっても多くの研究者にとっては具体的な活用がまだなかなか見えにくい、そのため先進的な事例ですとかユースケースを収集し、広く共有することが重要であるとしてございます。
 このとき、議題1の中で説明いただいたデジタル・ヒューマニティーズ・コンソーシアムの事業において、開発する教育プログラムで知見を得た研究者、大学院生などの活躍が期待されるとしてございます。
 5.2でございますけれども、AIの活用を前提としたデータの構築を挙げてございます。知やデータをAIが適切に活用するためには高精度、大量のデータが構築されて、広く公開されることが必要となって、また、データの構造化に関する知識が浸透されることも重要となりますので、なので、先ほど御紹介いただいた事業で策定されるデータ規格のモデルガイドラインが広く普及、展開されることが重要になるとしてございます。
 また、なお書きで25行目以降、3つ目のポツとして一つ付言をしてございます。アナログで存在する資料についても、データインフラの構築が進んでAIの利活用が進んだとしてもデジタル化されたものというのは現物の一部の側面を切り取ったものである以上、現物の資料そのものが必要なくなるわけではなくて、その有する価値というのは変わらない旨を付言してございます。
 次に、5.3でデータ、地域、分野、研究者同士が連携できるネットワークの構築というのを挙げてございます。先ほどから専門家の知が他分野にも社会にも開かれる、これまで関わりのなかった異分野の研究や研究者同士をつなげる可能性がある等と申し上げてございますけれども、データや研究者を組み合わせることによって生まれ得る知を予見できる人材の下、研究機関、研究者同士が連携できる体制を構築する必要があるとしてございます。
 次に、5.4のところで、市民・地域に眠る資料の活用促進というのを挙げてございます。人文学・社会科学におきましては、市民・地域が保有している資料というのも研究の重要な資源となります。これらがデジタル化され、研究者、研究機関で共有される過程において資料を取り巻く権利問題が処理されるとともに、市民・地域との信頼関係が構築されることが重要であって、そのためには研究者としての倫理観、信頼構築のためのコミュニケーションが不可欠であるとしてございます。更に具体の問題に対応できる人材の養成の仕組み、体制の構築が必要であるとしてございます。
 最後に、次のページになりますけれども、11ページのところで6、AIの進展に関わる今後の課題というのを挙げてございます。この前のページまで申し上げてまいりましたのは、おおむねですけれども人文学・社会科学においてAIを利活用することについてでございました。一方、これまでのここの委員会の中でも多々御指摘頂戴してございましたけれども、AIの進展と人文学・社会科学の関係というのは研究へのAIの利活用にとどまらずに、その他の論点もあるということでございまして、それについて触れているところでございます。
 1つ目のポツは、AIの進歩が人間社会に与える影響というものが人文学・社会科学にとっての大きな研究テーマになるということでございます。AIの進歩は研究分野だけではなくて当然、様々な分野に大きな便益をもたらしていますけれども、それだけではなくて人間や社会の在り方そのものにも大きな影響を与えるものでございます。そうすると、では、AIと社会の関係ですとか、AIが人間の思考や行動に与える影響などの様々なテーマというのは、人間や社会の根源を追求する学問である人文学・社会科学にとって大きな研究テーマになるということでございます。
 2つ目のポツはAIが研究に与える影響についてでございまして、これまで論じてまいりましたとおり、AIの進展によって研究のプロセスが根底から変わり得るという中、人文学・社会科学の在り方ですとか、そのような時代において研究者像はどうあるものなのかといったことが議論される必要があるということでございます。その上で最後に、これらは多様な研究者による自由な発想に基づく研究の蓄積が重要であって、こうした課題に取り組む研究を支える環境の整備が求められるとしてございます。
 以上が、これまで頂戴しておりました議論のまとめとしての報告書の素案、一部省きましたけれども概要として御説明申し上げました。先生方の御意見等を頂戴できれば幸いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【大橋主査】  ありがとうございました。これまでの皆さんの御意見、これは資料の2-1にまとめられていますが、それを踏まえて事務局として素案としてつくっていただいたものです。素案というのはたたき台なので、皆さん、この時点で忌憚(きたん)ない御意見をいただくのがいいのかなと思っています。是非プラスの面もマイナス面も含めて自由にいただければと思いますが、また挙手でいただければ指名させていただきます。
 それでは、まず、木部先生からお願いできますでしょうか。
 
【木部委員】  幅広くまとめてくださって問題点がよく分かります。ただ、テーマというんですか、それが少し総花的になっていて、もう少しめり張りをつけた方がいいと思います。これはまだ、途中の段階なので、これからどんどんアップグレードしていくのだと思いますけれども、そのときにいろいろな考え方があると思いますが、私の考え方を述べますと、今、人文社会科学がAIとどう向き合うかというときに、最も重要な問題は、日本にはオープンデータが少な過ぎるということなんですね。
 先ほど堀先生の発表にもありましたけれども、アルファベットで書かれたもの、あるいはヨーロッパの文字で書かれたものが今のAIの基礎になっていて、そうでない文字で書かれたデータが少な過ぎるんです。日本の文字で書かれたデータ、あるいはアルファベット以外の文字で書かれたデータは膨大にあるのですが、デジタル化されたものは少ない。それを整備するのがAIと向き合うための大前提だと思います。それを急がないと、その先は生まれないと思います。
 もう一つは、10ページに書かれています5.4の市民・地域に眠る資料の活用です。これがまた、昔のデータも、現代のデータも膨大にありますが、ほとんどデジタル化されていない、あるいはオープンにされていない。これを活用することによって、点でなく面として日本の文化を捉えることができるようになると思います。この2つが緊急の課題で、これがないと次の段階に進むのに、かなり支障があると思います。そのような重要度のめり張り少しつけた方がいいのではないかと思います。
 以上です。
 
【大橋主査】  ありがとうございます。
 続きまして青島先生、お願いできますでしょうか。
 
【青島委員】  どうも御発表ありがとうございました。これまでの議論を非常にうまくまとめていただいていると思います。
 一つだけ、最後のこの6節の1ポツのところが重要だなと思っているのですが、これが今後の課題という中に入っているのはちょっと残念だなという印象です。上の方でAIが我々の研究に与えるポジティブな影響と、考えるべき課題というのが整理されていますが、それ自体はまだ仮説の段階だと思うんですね。実際どういうふうにAIが、我々の思考とか行動に影響を与えるのかとか、研究そのものの質にどういう影響を与えるのかとか、こうした問い自体が人文社会科学の研究の重要な対象になるので、単に課題として扱うのではなく、正にそれこそ取り組むべき重要なことだ、という形で少し強調できたらどうかなと思いました。
 以上であります。
 
【大橋主査】  ありがとうございます。
 宇南山先生、いかがでしょうか。
 
【宇南山委員】  ありがとうございます。全体、読ませていただいたのですけれども、この部会に出ていても感じたのですが、この文章の向け先がよく分からないところがありまして、そこにまずコメントさせていただきたいのですが、社会科学にとってAIがどういうふうに役に立つのかという視点と、AIにとって社会科学はどうやって、人文社会科学が役に立つのかという話と、AIそのものを人文社会科学としてどう評価するかという、何か3つの視点がある。それぞれの中に人文社会科学者がやるべきこととAI研究者がやるべきこと、文部科学省がやるべきこと、若しくは研究者から見ればやってもらいたいこというのが、いまいち整理されていない感じがして、主語がはっきりしていなかったり、目的がはっきりしていない文章が多いような印象を受けましたと。
 もう少し具体的に指摘させていただきますと、例えば7ページ目のところで高精度かつ大量のデータを構築することが学術界で正当な業績として評価されることが必要という話で、総論としては意義があるものではないのですが、評価というのは、おまえ、これを評価しろと言って評価されるものではないですし、これは一体、社会科学者の中で先ほどやっていたようなガイドラインに沿ったデータを作ることを、人文社会科学者がもっとリスペクトしろということなのか、そういうことに貢献したAI研究者がもっと評価されるべきなのか、AIの研究者の中で評価されることを期待しているのか、一体これは誰が評価することを前提にしているのかがよく分からないこととか。
 若しくは同じページの4.4の3番目で、AIを利活用すると余計にお金がかかるって書いてあるわけですけれども、実態のところ、お金がかかると書くと研究者にとっていいことは多いわけですけれども、実際のところは必ずしもかかる一方でもないので、何かそこのところで再構築が必要だというような書き方の方が適切だというような感じがしました。
 8ページ目で、複雑な権利問題に対して研究者が適切に対応する必要があるがという前提がついているのですが、ここの部分なんかも私なんかからすると、それをもう既に前提にされた時点でかなり厳しい戦いをしいられる印象で、本当は複雑な権利関係というのはどうやって解決されるべきか、もしかすると法整備によって研究上はこういうものは権利侵害にしないよとか、そういった対応をしてもらった方が現実的なのではないかと。その意味では文部科学省とかで複雑な権利問題というのはどういうものがあって、法的に対応が可能かどうか、そこからまずスタートするのがいいんじゃないかなという印象を持っています。
 何か細かいところ、いろいろと言って申し訳ないのですが続きまして9ページ目のところで、5.2の3番目で、AIの利活用が進んでも人文学・社会科学の各分野の価値は変わらないものでありという部分、ここも宣言としては心強いものなのですが、変わらないというのはどういう根拠で誰が評価したのかが分からなくて、これは変わりませんよ、変わらないように我々はしますよという研究者の宣言なのか、文科省が価値は変わらないと認めますって言っているのか、それとも何らかの客観的な証拠としての事実なのかというのももう少しはっきりした方が、何か文章を読んでいて、そうなんですかというような疑問を持ってしまいました。
 あと、また小姑(こじゅうとめ)的に申し訳ないのですが最後のところなのですが、ここ、私の専門ではないのですが4ページ目で質的研究のところ、ここは個別具体的な表現でどうこうではないのですが、質的研究というのは私、専門にしているわけではないのですが、私が理解している限りの質的研究と考えると、このようにAIがあれば今までできなかった質的研究では足りなかったことが解決できるような表現というのは、これだけ読むと結局、それは量的研究なんじゃないかという感じがして。
 質的研究を専門にされている方が本当にここでの表現を受け入れているのかというのが私には確信が持てないところがありまして、質的研究というのがAIによって、ある種の量的研究になると書いてあるように読める部分が、同意が得られているのかというのは最後、確認していただければと思います。
 すみません、いろいろと申し上げましたが私からは以上です。
 
【大橋主査】  とんでもないです。ありがとうございます。
 続いて進めさせていただきますと、森田先生でよろしいですかね。いかがでしょうか。
 
【森田委員】  今回の議論を大変分かりやすくまとめていただき、ありがとうございます。今までのほかの先生方の質問と重なる部分があるのですけれども、今回のタイトルが当面の施策の方向性という書き方があって、そうすると抽象的な書き方でも仕方ないのかなって、それでも十分意味があると思うのですけれども、もうちょっと細かく何をどうするのかということを具体的な言葉で書いてもらった方が有り難いなと思うところがあって。
 例えば、9ページの今後の方向性の5.1のところで、先進的な事例の蓄積と共有とありますけれども、直近ですとSPReADでたくさん全国の先生方が応募してくださって、その中で採択されたものがあるわけですよね。そういったものはある意味、先進的な事例の一つになります。全ての研究者、人社の研究者がAIを使った、あるいはAIのための研究をしているわけではなくて、やはりまだごく一部の人しかやっていません。ですから、そういった進んだ先生方の事例を明らかにすることで、ほかの先生方もこうやればいいのだという気づきを得られるのがあるのではないかと思います。私の勤務校でも採択された研究計画についてのまとめが学内で行われているのですけれども、そういった作業を、みんなでバラバラにやると労力が重複して無駄なので、どこかでまとめて――あるいは文科省ででも――やってくださるとかすると,大いに役立つのではないかと思います。
 それからもう一つは、データの作成についてです。たとえばレプリケーションという分野がありますが、社会科学系ですと、昔は全然、誰もやっていなかった。というか、学生の練習ぐらいにしか使われてきませんでした。ところが、最近はレプリケーションもすごく大事だよということが分かってきて、それだけを掲載する雑誌なども出てきました。これは学会側の取組として実現してきたわけですけれども、どこまでそういうのを学会側から自発的にやってくれるのかは必ずしもはっきりしません。ですから、学会側の自発的な取組に委ねることができるのか、それとも何かお金をつけるなり何なりして後押しする必要があるのか、そういったところまで具体的に踏み込んで書いてもらえると実際の政策に役立つのかなと思いました。
 以上です。
 
【大橋主査】  ありがとうございます。
 山中先生、いかがでしょうか。
 
【山中委員】  先ほどの宇南山先生がおっしゃっていた質的研究というところがちょっと気になって発言しようと思いました。3.1のところなんですけども、特に研究者個人の解釈に大きく依拠する質的研究と書いてあります。何か人文研究が主観的なもので、それがAIを使うと初めて客観的なデータで保障されるみたいに読めるのですが、人文の研究者、例えば解釈をする人でも、その言葉がどう使われてきたか、たくさんの用例を調べたうえで解釈をしてきたと思います。それが、AIを使うことによって、数のうえでも調べる範囲の広さでも、比べものにならないくらい大量のデータを使うことができるようになって、より明快な判断ができる、という意味であれば、そのとおりだと思うんですが、それは多分、理系の先生たちでも同じなんじゃないでしょうか。データが多ければ、それだけより客観的になるでしょうし、それでも最終的にそのデータに基づいた解釈に個人差ができるのは、理系だってそうなんじゃないかなと。私が、質的研究、量的研究ということをよく分かっていないのかもしれないのですけれど、人文学を「個人の解釈に大きく依拠した」と言われてしまうと、ちょっと抵抗があるなと思いました。
 
 
【大橋主査】  ありがとうございます。
 後藤先生、お願いします。
 
【後藤委員】  後藤でございます。そうですね。まず、先ほどの今、ちょうど議論になっていましたので質的研究の部分でございますけれども、そうですね、多分、資料の読み方みたいなところ、今、正に議論になっていたところだと思うんですけども、もちろんそれ自体は様々な研究誌であるとか、多様な資料を別の用例であるとか、そういうものを引っ張ってきて、私ももともとは日本古代史の研究者ですので、そういうところから理解を深めていくということだったと思います。
 それに対して、ある意味では異質な理解であるとか、もう少し違うようなタイプの提案であるとか、あるいは例えば同時期の別地域の資料であるとか、そういうものを例えば参考にすることができるとか、そういうところでAIのメリットって出てくるかなと思います。
 とりわけ文脈理解ができるというのが大きくて、ほかの、つまり単に量的なものだけではなくて、これはどういうテキストなんだろうという理解するときにコンピューターの側である程度、文脈を提案、文脈の可能性を提案するとか、そういうことによって人間の側の理解を広げていくというところで質的な変化というのはあるかなと思います。まだ今議論を聞きながらの反応なので、生煮えなコメントになりますけれども、その辺りが多分、量というよりは質の変化ということになるかなと思います。またメール等でもそこの辺り、少しまとめて何かいろいろ詳しく説明できればと思います。
 その上で、あと私からは一つ、こういう観点は加えておいた方がいいのかなということを少し話します。それは、1つ目がアナログからデジタルというところなんですね。AIがどれだけ進展しても絶対できないのはアナログからデジタルという、これ、木部先生もお話ありましたけれども、資料のデジタル化という行為自体は極めて引き続き重要だと思います。
 ただ、それも、ただ、その中でもこれ、単に例えば文字起こしをするとか写真を撮るとかというだけではなくて、人の社会そのものとか文化とか地域の課題みたいな人間社会の活動、それ自体が実はアナログな存在なんですよね。そういうようなもの自体も実はデジタル化をしていくというか、人の様々な社会のアナログの在り方みたいなものをある意味では言語化したりとか、そういうような形にして言語化していくと、ある意味ではデジタルデータになっていくわけなので、そういうような形で、もちろんそれは単にAIのえさにするというわけではないんですけれども、そういう形で様々なコンピューター解析ができるようになるときに、むしろ人文学とか社会科学ってかなり重要なんじゃないかなと最近、思っています。
 これは別に現代の社会だけではなくて、過去の歴史資料みたいなのを読んでいくときにも、単にそれのその解釈というだけではなくて、その後ろにある歴史像であるとか、そういうものも実は結構アナログな人の理解なんじゃないかなと思うんですね。なので、それをうまく言語化してデジタル化していく。それが例えばAIの社会の中で生きていくような在り方というのが、むしろ人文学・社会科学がAIの、これは今の時代の様々なコンピューター解析とかに使えるときには、こういうところではむしろ活用、活躍できる場所なのかなと最近考えるようになっています。
 もう一つが今のインプットの話なんですけども、もう一つがアウトプットの話でして、こちらは4.1ですかね、資料の中でいきますと。すみません、透明性の確保というところがあるかと思います。この中で、研究者の責任における検証、解釈というところの必要性というのがあるわけなんですけども、ここで単に事実というだけではなくて、それに加えて、ここには多分、やや抽象的な表現になってしまいますけれども価値観みたいなのが入ってくると思います。
 特にその辺では、私自身もAIのところではAIのプロセスに人間が関与するのにヒューマン・イン・ザ・ループなんていう言い方をしたりしますけれども、この考え方がかなり私は最近、重要だと思っています。AIを使う中で人間が適切に関与して、それによって誤りのチェックというだけではなくて、より価値観であるとか様々な修正を行って適切なアウトプットをつくっていく、人とAIが連携しながらつくっていくと思います。そのときの価値観とか社会に生かすかというところは人間の側が必ずやらなければならないですし、その価値観を考えていくのが人文学・社会科学の重要性だと思うんですね。
 なので、この辺り用の考え方みたいなのをもう少し加えていくと、このAI for Scienceという状況の中で、何というかな、人文学・社会科学というのはどういう意味を持つ、価値を持つかということをよりはっきり出せるのじゃないかなと思いました。
 すみません、長くなりましたが以上です。
 
【大橋主査】  ありがとうございます。
 北本先生、お願いします。
 
【北本委員】  北本です。いろいろな観点からまとめていただきましてありがとうございます。今までいろいろな質疑が出てきましたけれども、私からは2点質問したいと思います。
 まず1点目なんですけれども、AI for Scienceというのは、ほかの分野では研究の新しい可能性を開くという点が一番期待されているところです。これによってどんな新しい研究が生まれるかというところが皆さん、関心あるところだと思うのですが、今回の資料ではあまりその面が強調されていないかなと思いました。
 例えばアナログからデジタル化というのはAIの前の時代から重要で、AI時代もますます重要とはなりますが、これはAI for Scienceが出てきたから新しく生まれた課題というよりも、従来から重要だった課題だと思います。
 その意味で、新しい可能性をつかまえるという視点はそれほど強くはなく、もう少しその視点を入れられないかと感じました。
 最近、私が一つ興味を持っているのは、先ほども話が出ましたが、SPReAD 1000で非常に多くの方が応募して一部採択されたということです。実はDiHuCoハブシンポジウムを8月7日に開催するのですが、このシンポジウムでもSPReAD 1000に採択された方、人文科学、社会科学で採択された方10名を集めて、皆さんがどんなことをやろうとしているのか、どういうことに困っているのかを聞こうと思っているんですね。採択された方々を見ると、今までデジタル人文学という分野から見えていなかった方も多く、様々な人々がAIにチャレンジしようとしていることが分かりました。そのような新しい動きを後押しするのも、かなり重要な点なのかなと思っています。それが1点です。
 もう一つ、この資料全体で課題はいろいろ挙げられていますが、課題の種類がいろいろと混ざっているような気がします。例えばAIを使う前提として高品質なデータがなければいけない、AI自体を活用するときに生じる問題が発生する、AIを活用することによって副作用などの新たな問題が発生するなど、AIを取り巻くいろいろな段階があります。それぞれに問題があることはわかりますが、全体の見取り図がないので、どの問題がAIのどの側面の問題なのか、ということがわかりづらいです。
 ですので、その辺りをうまく整理した上でまとめていただくと、3章、4章、5章とそれぞれに可能性、課題、今後の方向性というタイトルがついていますが、それぞれのサブセクションのつながりが出てくるかなと思います。ですので、問題の分類も一緒に進めていただければと思います。
 以上です。
 
【大橋主査】  ありがとうございます。
 米村先生、いかがでしょうか。
 
【米村委員】  ありがとうございます。ここでとりあげられている内容は、人文社会科学に限ったことなのか、それとも他の領域にも共通することなのか、どのように切り分けるのかという点についてお伺いしたいと思います。
 委員の先生方からのお話のなかには人文社会科学が活躍できる点や課題についてのご意見もあり、また他の領域にも関わる課題やテーマも含まれているかと思いました。今後のまとめ方として、人文社会科学にどれくらい照準してまとめていかれるのかということを少しお伺いしたいと思いました。
 
【大橋主査】  ありがとうございます。
 お手が挙がっている方、一通り御発言いただいたと思うのですが、今日せっかくお越しいただいているので堀先生と金先生、もし、すみません、コールドコールで申し訳ないですけれど、もし何かお気づきの点あれば。なかなか難しいお立場だと思うんですが。
 
【堀理事】  いえ、大変よくまとまっていて基本的に同意するところばかりです。
 
【大橋主査】  全然遠慮されなくていいんですよ。
 
【堀理事】  せっかく人社DXの事業、ここまでやりましたので、その続きの事業につなげるのに、この施策の方向性というのが生きてくると大変うれしいなと思うところです。
 
【大橋主査】  すみません。難しい立場で、お伺いで申し訳ない。もし金さん、あればあれですけど、先生、あれば。
 
【金特任准教授】  特に私からはないのですけれども、先生方のお話を聞きながら共感したところですと、その主語が誰なのかというところが自分には難しかったなというところと、あと、いろいろな側面からの課題は、主語がいろいろあるが故のことかなと思いました。主語を整理してみると課題も整理されるのかなということを考えながらお伺いしました。
 
【大橋主査】  ありがとうございます。
 もし事務局から現時点で何か受け止め等あれば頂けますでしょうか。
 
【助川学術企画室長】  先生方のいろいろ御指摘ありがとうございました。冒頭、一番最初の木部先生のお話を皮切りにいろいろ頂戴したところでございますけれども、総花的なのか、何だろう、とか、そういうお話については多分、総花的ということもあったのかもしれませんけれども、ほか、どなたかの先生、何人かの先生もおっしゃっていただいたと思うんですけど、インプットの問題なのか、活用する段階の問題なのか、アウトプットの問題なのかとかが、そこが段階を追ってちゃんと整理されていなかった面があったのかもしれません。
 なるべく3と4と5の中で、3が4項目立て、4が5項目立てで、5が4項目立てって数、違うのですけれども、3と4と5の中では比較的合うようにはしていたつもりではあるんですけれど、そもそも3の中で順番が合っていなかったとか、そういう可能性もあって、そこは見直してみたいと思います。そこを見直すとある程度、分かるのかなと思って、考えてみたいと思います。
 それで、あと何人かの先生から質的研究、量的研究の話ございました。実はここのところ、先ほど私の説明の中で私がここを紹介する中で、ちょっと明示的に議論いただきたいと申し上げるべきだったところを忘れてしまったんですけれども、これまでの議論を私なりに、私どもなりに事務局としてこういうことなのかなと思って書いてみたところなんです。
 ただ、これが多分、例えばどなたかの先生から、だとしたらそれは量的な研究なんじゃないですかというお話ありましたけれども、これ、何をもって質というか、何を持って量というかというのは多分、人によって解釈の違いがあり得ることなので、一概な議論はできないのかもしれないんですけれども、私の理解、間違っていたら御指摘いただきたいんですけれども、AIだとか、そういうものが質的なものについてもある程度、量的に分析、量的研究するというんじゃなく量的に分析しているということなのかなと思ったんですね。
 ただ、これまでの人社の研究している先生方が、これは何だろう、主観的にしかやっていないとか、そういうつもりは全然なくて、ただ、どうしても例えばフィールドワークだとかなさるときにフィールドワーク、特に文化人類学とかで村の中に入っていってとか、そういうときに、そこから得てくるもの、そこというのは何人の人がいまして、何人がこれやってという、そういう数字だけとってくるわけじゃなくて、もうちょっとそこから違う文脈のものもとってくるということかと思います。
 ここで書いている質的というのはそういう面もあって、それを先生方が多分、そのデータをとってくる段階でも研究者の先生方の解釈というのですかね。そこからとってくるのだと思うんですけれども。そして、それを間違っていますよ、私どもは独りよがりに解釈しているとか、そういうつもりは全然なくて、もしかしたら、だとしたら書き方を変えなければならないかもしれないんですけれども、それでまたとってきたデータ、フィールドワークなどで得てきたデータの何でもかんでもAIになれば、それが客観的データになって返ってきますよとか、そういうものでは多分ないんだと思うんです。
 先ほど例えば後藤先生から、ここのところはこういう意味であるような御示唆いただいたところでございますけれど、私どももちゃんと理解ができているのか、これまでの議論を事務局なりに解釈したものの、今まで頂戴していた情報からではちゃんと細かく書ききれなかったこともあるかと思って、今日頂いた御意見というのが、それをもうちょっとブレークダウンくださったものだと理解しているので、それで書き方は考えてみたいと思っております。
 また、主語の問題ですね。ここのところ、誰にあてられているかというお話で、どうしても、じゃ、AIを活用しましょうですとか、あるいはAIというのとデジタル化という話というのは全く同じじゃ全然なくて似ている面と非なる面とあるので、AIの話だけにとどまらない話でもあるんですけれども、例えば研究の資源をデジタル化しますというところで、これの業績の評価の話をちょっと触れているところでございます。
 これは多分、これまでの御意見とかでも、そういうことが業績として評価されることが必要であることを踏まえて書いたものの、ただ、これは学術界で評価されるべきものということであれば、それは人文学・社会科学の研究としてなさっていて、それが人文学・社会科学の研究としてということとすると、ここの部分の名宛て人というんですかね。人文学・社会科学の分野において評価されることが必要ではないかということを書いたつもりでございます。
 そこの部分、ちょっと遠慮がちに学術界でと書いておりますけれども、そこはだから特にここの部分は一番の名宛て人としては、役所が個々の業績を評価するものではないので役所ではなくて研究のコミュニティーでと思ってございます。ただ、もしそうでは、この研究コミュニティーにおいて、こういう評価されることは必要である、あるいは必要でないということがあるのであれば、研究コミュニティーにおいても評価というのはこうあるべきだというのがありましたら、また御意見として頂戴できればと思います。
 それと、これが人文学・社会科学特有の問題について論じたものなのか、よりもっと広いものについて論じたものなのかということなのですけれども、これは、なるべく人文学・社会科学に特有なものを論じたつもりでございます。ただ、ここに書いてあるものの中には自然科学というか、研究一般で生じる問題というのは多々ございます。
 でも、それでも人文学、社会科学、自然科学、あるいはどんな分野ででも均等にあらわれるものというのは、それはもう多分、そもそもAIの利活用、研究においてAIを利活用するときのメリットだったりデメリットだったり、課題だったりということなので、そこについてはあまり論じていないつもりで、共通して生じる問題だけれども人社だとあらわれが大きいですよとか、あらわれが若干違ってあらわれますよというものについては、なるべく書いたつもりというものでございます。
 ごめんなさい。ちょっと全部にお答えし切れていないのじゃないかなと思っているんですけれども、今の時点で頂戴したものに対する私から申し上げるのは以上でございます。
 
【大橋主査】  ありがとうございます。相当チャレンジングな課題だなと思っているのですけれど、多分、北本先生にいただいたのだと思いますが、そもそも、今、助川さんからもありましたけれど、人文社会科学の特徴について最後は多分考えていかなきゃいけないものの、AI自体が学術研究に与えるものというのは一般として整理した上での人文社会科学の話なのかなというところでいうと、そこは何か二階建てぐらいで論じた方が多分よさそうな気がしました。
 あと、それは別に政策がなくても進む部分もある話なので、なぜ政策が要るのかというところも必ずしも自明じゃないと思うんですよね。自然にもう既にばんばん使っている方もたくさんいるし、使っているうちに定量と定性の差ってそんなにあるでしょうかとか、何かいろいろ感じる人もいてもおかしくないなということでいうと、ちょっとそこの辺りも、考えなきゃいけない。AIもどんどん進化していくところもあるので、なかなか難しい課題だなと思うものの、ただ、政策的なニーズの中でどういう問いを発するのかというのは多分、この文章の一つの重要なポイントだと思うので、是非そこ、非常に難しい課題ですけれど、諸先生方の御意見も頂きつつ成し遂げられればなと思うのですが、後藤先生、いかがでしょうか。
 
【後藤委員】  すみません、ちょっとまた手を挙げてしまいましたが、一つだけ。その中でいくとネットワーキングの重要性ですね。人のネットワーキングの重要性というところは、もう少し書き込んでもいいかなと思います。特にAIの利用という点に置くと、いいますと、特に人文学・社会科学の人たちの理解度というのはものすごい差があるんですね。もう、なので、そういうところを適切にAIだけではなくてデジタルとか、全体の含めての現状の共有という点でも、すごく差があるなというのはつくづく思います。
 今回の文章の中でいきますと、AIがどちらかというと重点的かと思いますけれども、その辺りの理解とか、若しくは人材育成とかも含めて、そういうところでネットワーキング、きちっと組織が組織的なネットワーク、あるいは人のネットワーク、人のネットワークというと学会になってしまいますけれども、組織的なネットワークみたいなところを含んで情報共有、特にAIであるとかデジタルとか、そういうところも含めた情報共有をできる体制というのをきっちりつくるのは、かなり重要になるのではないかなと今、主査の御意見を聞いていて思いました。
 その辺りについては恐らく今後の人文学・社会科学の厳しい状況というのを踏まえても、そういうネットワークをつくって対応していくのは重要だと思いますので、是非御検討いただければと思います。
 すみません、以上です。
 
【大橋主査】  ありがとうございます。利活用の上でのネットワークということもありますけれど、AIを使うことが、巨人の肩に乗っているということ、学知の積み上げの後ろでもネットワーク、ある種つながっているところも学術の知見の蓄積としてはあるのかなとも受け止めました。ありがとうございます。
 相当尽きない話だとは思うものの、お時間も限られていますので、もし御意見あれば、是非いただければと思います。この場でなくても、事務局からお問合せさせていただくこともあるやもしれませんし、もしお気づきの点あったら、是非事務局なり私なりに宛ててお知らせいただければ、しっかり報告書の中に取り込めるように検討させていただきたいと思っています。
 それでは、事務局としてはよろしいですか。もし何かあれば。
 
【助川学術企画室長】  今、後藤先生もありましたように、このネットワーキングといいますか、ここのところは放っておくとどこまでできるのかというのはありますけれども、せっかくAI活用するということによって研究の幅が広がったり深まったりというときに、それを何だろう、研究者同士のネットワーキングというのは当然、自然にできていく面もあるでしょうけれども、そこのところは、より押してあげることによって、その研究の成果を深めることもできるのではないかと思っておって、そこのところは強調していこうかなとは思います。
 また今、大橋主査がおっしゃいましたように本日の御意見を踏まえて、また改めてお聞かせいただきたいということだったり、また、いろいろ先生方、御相談することもあるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
 
【大橋主査】  ありがとうございます。それでは議題は以上なのですが、もし全体通じて何かご発言があればと思います。
 北本先生、お願いします。
 
【北本委員】  先ほどお話ししたシンポジウムでSPReADの方を10名集めるのは、正にこのネットワーキングを意図したもので、お互い知り合いではない人どうし、会って話してをもらって、AIの情報を共有しようという意図があります。このような場をつくることは非常に大事だと考えています。
 
【大橋主査】  ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。委員の方々、よろしゅうございますか。
 もし事務局から何かあればと思いますけれど。
 
【助川学術企画室長】  あとはもう最後の事務連絡が。
 
【大橋主査】  事務局からあれば。
 
【大場学術企画室長補佐】  では、連絡事項について御案内いたします。本日の議事録については、後日メールにてお送りいたしますので御確認をお願いいたします。また、大橋主査からもございましたが、本日の議題に関し追加の御意見等がございましたら、後日、事務局までメールにてお送りいただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
 次回の開催日程は、委員の先生方に御連絡差し上げているとおりで、来月8月4日の火曜日15時からの開催となります。
 連絡事項は以上となります。
 
【大橋主査】  それでは、本日は議題、以上ですので閉会とさせていただきます。本日も大変闊達(かったつ)な意見交換させていただきましてありがとうございました。また、次回以降もどうぞよろしくお願いいたします。

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