人文学・社会科学特別委員会(第30回) 議事録

1.日時

令和8年3月10日(火曜日)16時30分~18時30分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 人文学・社会科学におけるAI for Scienceについて
  2. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員、専門委員)
大橋主査、木部委員、仲委員、尾上委員、北本委員、森田委員、安田委員、青島委員、後藤委員、田口委員、山中委員、米村委員
(科学官)
清水科学官、杉岡科学官、恒吉科学官、橋本科学官、藤森科学官

文部科学省

淵上研究振興局長、山之内振興企画課長、助川学術企画室長、林学術企画室長補佐

5.議事録

【大橋主査】  それでは、定刻となりましたので、ただいまから第30回人文学・社会科学特別委員会を開催いたします。
 本日も大変お忙しいところ、多くの先生方に御参集いただきまして、ありがとうございます。
 本日の開催に当たりまして、事務局から委員の出欠、配付資料、オンライン会議の注意事項等について御説明お願いいたします。

【林学術企画室長補佐】  事務局でございます。まず、委員の先生方の御出席状況でございますけれども、本日は宇南山委員、治部委員が御欠席となっております。
 配付資料につきましては、事前に電子媒体でお送りさせていただいております。議事次第に記載のとおり、資料1、資料2-1、2-2をお配りしておりますので、不足等ございましたら事務局まで御連絡ください。
 本日はオンラインでの開催となりますので、御発言の際は手を挙げるボタンをクリックしていただきまして、主査から指名を受けましたら、マイクをオンにして、お名前を言っていただいた上で御発言をいただければと思います。なお、主査以外の委員は、御発言されるとき以外はマイクをミュートにしていただきますようにお願いをいたします。
 もし不具合等ございましたら、事務局連絡先まで御連絡ください。
 なお、本日の会議は、傍聴者を登録の上、公開の会議ということになってございます。
 以上でございます。

【大橋主査】  ありがとうございます。それでは早速ですけれども、議題の方に入らせていただきたいと思います。
 議事次第を御覧いただきますと、1ポツ、人文学・社会科学研究におけるAI for Scienceについてということで、本日これがメインになりますけれども、御議論をさせていただきます。
 今期これまでの先生方の様々な御議論を踏まえまして、今後の人文学・社会科学を振興するためにAIとどう向き合い、何を実施していく必要があるのかという点の整理をしたいと思いますが、その前に、人文学・社会科学を含めた全般的な政府のAI for Science推進方針と、人文学・社会科学も対象となっているAIを活用した研究への支援プログラムについて議論が進んでおりますので、文部科学省の担当から御紹介を頂こうというものでございます。
 資料1を御用意いただいていますので、最初にこちらを御説明していただいた後、質疑応答をさせていただきたいと思います。
 それでは、御準備よろしければ御説明お願いいたします。

【轟木参事官補佐】  ありがとうございます。改めまして、文部科学省情報参事官付、轟木と申します。我々の方で今正にAI for Scienceの推進について取組を進めておりますので、御紹介をさせていただければと思います。
 資料1を御覧ください。おめくりいただきまして1ページ目、もう重々かと思いますけれども、AI発展の3つの潮流ということで少し整理をしてございます。
 潮流マル1、下の方の紫の矢印でございますけれども、正にTransformerですとか、基盤モデル(LLM、VLM)のように、AI基本原理の発展とともに、AlphaFoldですとか、ChatGPTなどのようなAIがどんどん使われ始めていると。そういった中で、潮流マル2、上の緑の矢印でございますけれども、AIリスクへの対処というようなことも取組として始まってきているところでございます。
 そんな中で、正に今、もう既にお使いになられている方もいらっしゃるかと思いますけれども、AIを様々な分野に組み込んでいこうというところで、AIトランスフォーメーションという話が進んでおります。その中のある種一つとして、AI for Scienceも位置づけられていると認識をしてございます。
 次のページおめくりください。3ページ目でございます。各国含めて、AI for Science、急速に進展をしているところでございまして、文部科学省においても、AI for Scienceによる科学研究の革新ということで、真ん中辺りのグレーのハッチがかかっている部分ですけれども、「(政策として)AI for Scienceによる科学研究の革新とは…」というところで、AI技術を科学研究のあらゆる段階に適用して様々な分野で活用する取組であるということに加えまして、政策としてというところでございますので、それに関するAIの研究ですとか、その環境の構築、人材育成、社会実装など、それらを複合的に政策的に検討して推進するということを、我々はAI for Scienceによる科学研究の革新であると考えてございます。
 次のページをおめくりください。こちらは少しJSTに整理をしていただいたものになりますけれども、正に今申し上げたように、科学研究のあらゆる知の波及、アイデアの創出、研究アクションなど、あらゆるプロセスにおいてAIが関わってきていると。それが更に社会実装につながり、それを支えるAIの研究基盤、下の部分ですけれども、それが科学用の基盤であったり、汎用基盤、データセンターですとか、計算資源ですとか、基盤モデルですとか、様々なものがあると思います。そういったものが今、全体像として描いているというところでございます。
 次、5ページ目をおめくりください。AI for Scienceの全体像の続きになりますけれども、左上の研究主体というところも、このAI for Scienceの潮流によって少しずつ変化があると感じております。これまでも道具としてAIを使う、支援系AI for Scienceとここでは言っておりますけれども、人間の研究活動をAIが支援するという取組から、自律系AI for Scienceというところで、人間ではなく、ある種、主体としてAIが出てくるというところも、今、取組としてすごく進んできていると認識をしています。AIそのものが、AI自体が研究活動を実行すると。
 それに加えて研究環境の部分、AIは基本的にはバーチャルと、物理的な操作が不要なところから、今、フィジカルAIという話も聞こえてきておりますけれども、物理的な操作を求めるフィジカルな部分も含めて、徐々にAIを活用していく取組というのが始まっていると認識をしてございます。
 右の図は各分野、物理学、化学からナノテク、人文科学も含めて、バーチャルからフィジカルの比率といいますか、どんな分野でどのようなグラデーションになっているかというのを少しJSTの方で整理していただいたものです。御参考までに御覧ください。
 6ページ目でございます。AI for Scienceの取組イメージというところで、まだまだこれに限らないわけではございますけれども、例えば、AI掛ける実験科学でライフサイエンスの再興であったりですとか、AI掛ける装置掛ける産学知でマテリアル開発の革新であったりとか、それに加えて、我々はあらゆる分野にAIをしっかり活用していこうということを考えておりますので、AI掛ける多様な分野というところで、これによって新たな日本の勝ち筋を探究していきたいと思っているところでございます。
 次、7ページ目でございます。このような背景を含めまして、我々はAI for Scienceについて検討を進めてきたところでございます。昨年6月に、正に来年度から第7期の科学技術・イノベーション基本計画が始まるところでございますけれども、その論点整理案のところにも、AI for Scienceによる研究生産性の抜本的向上というところが示されたことも踏まえまして、7月以降、学術分科会ですとか、情報委員会、「科学の再興」に関する有識者会議などで議論を進めてきたというところでございます。
 直近では、2月9日にAI for Science推進委員会の第1回、そして今日、今朝9時からAI for Scienceの第2回も開催させていただいたところでございますけれども、8ページ目を御覧ください。我々として、AI for Science、各国含めて盛り上がってきている中で、今年度末までに「AI for Scienceの推進に向けた基本的な戦略方針」の策定、これを目指しているところでございます。第7期科学技術・イノベーション基本計画ですとか、昨年度取りまとめられた人工知能基本計画(AI基本計画)、これらによる全体方針を踏まえまして、具体的な取組方策として戦略方針を今年度末までに定めていきたいと思っているところでございます。
 具体的な検討体制というところで、文科省の局省間のところにAI for Science推進委員会を設けまして、ここでしっかり、今朝もAI for Scienceの戦略方針について議論させていただいたところでございます。これについては、しっかり第7期の基本計画などにも打ち込んでいきたいと考えているところでございます。
 続きまして、9ページ目をよろしくお願いします。国内の動向を含めまして、今、国際動向がどうなっているかというところを少し簡単に御説明させていただければと思います。
 世界中でAIの研究開発ですとか、その利活用への投資が進んでいるという状況でございまして、各国はAIを戦略的に重要技術と位置づけまして、AIに関するインフラ整備・研究投資などを総合的に進める国家戦略を整備しているというところでございます。
 2つだけ例示を挙げていますけれども、米国ではGENESIS MISSIONというところで、10年間で米国の科学研究及び技術革新の生産性と影響力を2倍にするという、少しチャレンジングな目標を掲げて戦略を定めているところでございます。加えまして、イギリスの方でも2025年11月にAI for Science Strategyというところで、データ、計算基盤、人材・文化という3つの柱を掲げながら、最初のミッションとして、2030年までにAIを活用して「試験開始可能な薬物候補を100日以内に創出」すると。すなわち、認証の前段階のフェーズを100日以内にぎゅっと、AIを使って研究を短期に行うというような、こういうチャレンジングなミッションも少し出始めているところでございます。
 10ページ目につきましては、各国のAI戦略に記載されている重点分野というところで、米国から中国、EU、英国はじめ、それぞれ各国のカラーが出ながら、重点分野を定めてAI for Scienceに取り組んでいるというような状況だと承知をしてございます。
 11ページ目をよろしくお願いします。翻って日本の現状というところでございますけれども、AI研究力、AI Rankingsによれば、日本は11位と10位付近というようなところで、なかなかトップと言い難いところもございます。更に計算資源も、一番左がUSとありますけれども、一番右の黄色く少し細く見えているところが日本の計算資源のシェア率で、米国の70%に比べて日本は1%程度と。投資額についても、下に示しておりますけれども、規模として桁違いの額を各国投資している中で、日本の投資額はまだまだというようなところでございます。
 そのようなことも踏まえまして、12ページ目、よろしくお願いします。AI for Scienceを進めるに当たっての日本の課題を少し整理しているところでございます。
 AI研究力・人材の分野では、分野・組織の垣根を越えた連携ですとか、コミュニティの形成、専門家同士をつなぐマッチングですとか、膨大な科学データの活用等による信頼できる(される)AI開発への貢献、こういったものが課題として挙げられてございます。
 加えて計算資源については、先ほども少し触れさせていただきましたとおり、なかなか規模が少ないというところで、統合的な計算資源の整備、相互利用、協力体制の構築、これらを踏まえて、AI for Science時代に対応した新たな計算基盤の構築、これが必要であると考えてございます。
 続きまして、研究データでございます。AI for Science推進に当たっては、研究データが非常に重要だと考えてございまして、散在するデータの一元的な把握とアクセスの確保ですとか、保管・利活用を支えるインフラの構築ですとか、あとはオープンサイエンスの推進というところもございますけれども、それ以上に、やはりAIの技術的な発展を踏まえまして、オープン・アンド・クローズ、クローズにしていくという部分も非常に重要かなと思っていまして、オープンサイエンスの推進とオープン・アンド・クローズ戦略の両立、これが非常に重要ではないかなと考えてございます。
 加えて横断的課題とガバナンスというところでして、AI for Scienceを前提とした研究環境・プロセス・制度・文化をしっかり再構築していく必要があると思います。それを実現するためには、継続的な資金投入の確保ですとか、あとは研究インテグリティ・セキュリティの面、あとはAI導入に伴うリスク、ハルシネーション、ブラックボックスへの対応など、こういったものが必要で、かつ、これらをスピーディーに、スピード感を持って進めていくことが我々の課題かなということを挙げさせていただいてございます。
 めくって13ページ目でございます。この課題を解決していくに当たって、我々なかなか投資規模も限られているところで、しっかり日本の強みを分析して、そこにしっかり投資をしていくと。その強みを生かしてやっていくということが非常に重要だと思っていまして、少し強みを整理してございます。
 3つの基盤という形で整理をしていまして、1つ目、情報基盤でございます。SINETですとか、研究データ基盤のNII RDC、そして「富岳」、「富岳NEXT」をはじめとした計算基盤など、日本には世界最高水準の情報基盤があるということ、これが一つ、強みであると言えると思います。
 加えて研究基盤です。世界トップレベルの研究装置群や、それを活用する多様な研究者の層ですとか、最先端の大型研究施設、これを有するとともに、ライフですとか、マテリアル、防災、地球環境の分野において蓄積してきた再現性・信頼性の高い実験・観測データ、これも非常にAI for Science推進のための大きな資産であると考えてございます。
 加えて社会基盤というところで、中小企業等が長年にわたり培ってきました精密な製造ですとか計測技術、そしてそれを現場とすり合わせる力ですとか、暗黙知を含む現場の知ですとか、ロボティクスなど、実装能力が高いというところ。加えてAIやロボットに対する社会的・産業的な需要があって、制度においてもAI導入に適した環境が整いつつあるというようなことが強みであると言えるのではないかと思います。
 それに翻って、我が国は世界に先駆けて少子高齢化・人口減少が進展している課題先進国でもございますので、この強みを生かして、この課題をどうAI for Scienceで勝ち目にしていくかというところで、AI for Scienceの駆動力、これは特定の分野で人間を凌駕(りょうが)する処理能力を持つAIによる知的活動の代替と拡張であると。正に人材不足の課題を抱える日本において、AI for Scienceの推進によって「科学の再興」を目指すということが求められているのではないかと我々は整理をしてございます。
 14ページ目、めくっていただきますと、日本が強みを有するデータセットの例ということで少し挙げさせていただいてございます。
 続きまして、15ページ目でございます。AI for Scienceで科学研究がどう変わるのかというところで少し整理をしたものがこちらになっていまして、右のページを御覧ください。吹き出しでも少し書いてありますけれども、高い再現性で24時間365日実験・検証ができるようなフィジカルAIロボットですとか、AIを用いて先行研究を数分でレビューして未知の相関を発見するだとか、こういったAI for Scienceを研究現場へ着実に浸透させて科学の再興を実現するといった将来が考えられるのではないかなと思ってございます。それによって右下の部分、科学研究の在り方を変革して、科学研究サイクルの加速、論文生産性の向上と省力化、新たな科学的知見の創出、こういったものが我々の描く未来として考えているところでございます。
 続きまして、16ページ目でございます。もう少し国の基盤的な、全体的なところから俯瞰(ふかん)して見た将来像というのがこちらの図になっていまして、下の③のところでございます。日本として強みを持つ情報基盤、これをしっかりAI for Science向けに更新をしていく、次世代情報基盤に構築をしていくということが重要だと思ってございまして、「富岳NEXT」の開発ですとか、あとはSINET、これもしっかり高度化をして、増大し続けるデータ流通を高速に支えるというところ。あとは研究データ基盤であるNII RDC、これの高度化を通じて、しっかり研究データの管理を、研究者の負担なく、研究者の創造的活動の時間を確保するように貢献すると。そういった基盤の上に、丸1のところ、「科学基盤モデル」の国産開発によるAI駆動型研究開発をしっかり推進していくということとともに、やはりAIにとってデータを送出するということが非常に重要だと思っていますので、オートメーション/クラウドラボの形成ですとか、各研究大学におけるコアファシリティの研究基盤などを高度化していくことによって、しっかりAI readyなデータを創出していくと。この3つの取組をしっかり循環させていって、AI for Scienceをしっかり推進していくというような将来像を我々の方で描いているところでございます。
 ここまでの話を戦略方針の概要イメージということで整理したのが次の17ページになってございまして、上のところ、科学技術・イノベーション基本計画、AI基本計画、海外動向を踏まえまして、先ほど御説明した日本の強みをしっかり生かしながら、目的として、左下の図を御覧いただけると分かりやすいかなと思うのですけれども、世界を先導する科学研究成果の創出、しっかりトップを引き伸ばして、日本として世界を先導する科学研究を創出していくということと両輪にして、AI for Scienceの波及・振興によって科学研究の底上げを図る裾野拡大、これを両輪でしっかり進めていくと。さらに、それを支える研究基盤をしっかり構築していくというような形で、少し戦略方針の概要イメージを示させていただいているところでございます。
 続きまして、18ページ目でございます。AI for Science推進に当たっては、少し触れさせていただきましたが、研究データの取扱い、ここも非常に重要だと考えてございまして、令和3年度にCSTIの方で示された、公的資金による研究データの管理・利活用に関する基本的な考え方があります。これはオープン・アンド・クローズ戦略の下で研究データの管理・利活用をしていこうというところではあるのですけれども、そこでしっかりクローズにすべきものというのは、例えば輸出管理ですとか、個人情報保護に関する国内関係法令やガイドラインで取扱いに制限があるものですとか、企業の秘密性、研究の新規性、研究セキュリティ等の観点から非公開とすべきもの、これはしっかり非公開として守っていく必要があるということでございます。
 更にそれに加えて、昨今AI for ScienceないしはAI技術の進展において、日本の持つ研究データがAIを活用することによって意図せず流出をしてしまって、日本の持つ優位性が損なわれるおそれがあるということを非常に懸念してございます。
 ですので、そういったところを対策するために、AI for Scienceにおける研究データの管理に関する具体策というところで、日本の強みを有する研究データを適切に管理するため、研究データの国外移転の可否ですとか、学習利用の可否、物理的なサーバーの場所などについて、国として指針を明らかにした上で、以下2つの施策をしっかりやっていきたいと思ってございます。
 去年、研究セキュリティに関する取組というところで手順書などもまとめられておりまして、そのフレームワークを活用しまして、令和7年度補正予算で措置をされたこのプログラムについては、その公募要領などにおいて、しっかり国として示す指針を踏まえて、データマネジメントですとか、デュー・ディリジェンスに係る対応を徹底して、必要に応じて追加措置を要請するということを検討していたり、あと、インフラの観点では、国内で創出される研究データについて、当該データの流出等により日本の優位性が損なわれることがないよう、国全体として、セキュアかつアクセス制限可能な研究データ基盤を構築して、研究データを保存・管理していくことを目指すということを具体策として掲げさせていただいてございます。
 次のページ、おめくりいただきまして、国際連携・協働に関する考え方というところでございます。日本がこれまでの強みを最大限に活用した上で、世界トップレベルの研究機関・研究者との互恵的な連携・協働を戦略的に深化させると、これが国際連携・協働に関しては非常に重要かなと思ってございます。その際には、国・地域別の強みや研究動向の適時把握、国・地域別の対話も行いながら、令和7年度補正予算で措置をされたプログラム、これも活用しながら国際連携・協働を推進していくということを考えてございます。その際に、日本の強みが持続的に価値を生む形で活用される、真に互恵的な連携・協働を実現するということが非常に重要だと考えてございます。
 少し参考にはなりますけれども、先ほど御紹介させていただいたGENESIS MISSIONとの関係でも、米国との連携というところで、文科省と米国(DOE)で、AI for Scienceの推進に向けたSOIを署名して、しっかりGENESIS MISSIONとの連携を図りながら取組を進めていくというようなことも今進んでいるところでございます。
 すみません、少し長くなってしまいました。あと少しだけ補足をさせてください。
 20ページ目でございます。この戦略方針を実現するに当たって、我々はある種KPIといいますか、具体的な目標例を示していく必要があると思っていまして、少し整理をしているところでございます。
 1つ目、Top10%論文のうちAI関連論文数を世界3位にするというところで、しっかり世界を先導する科学研究成果を創出するという点。それと同時に、研究力の底上げ、波及・振興というところで、AI関連論文割合を世界10位から5位にする、AI高度研究人材を5年で1,000人増やすというような目標を掲げてございます。
 それを支える基盤として、先ほど御紹介したNII RDC、これの容量を5倍にする、そしてAI化をしていくということ。そしてSINETを2028年までに2倍に高速化するということ。そして共用計算資源、これも2030年までに10倍以上にするというようなことを掲げてございます。
 最後、令和7年度補正予算の御紹介でございます。令和8年度予算額として193億円、令和7年度補正予算として、関連予算含めて1,527億円を計上させていただいているところでございまして、22ページ目、AI for Scienceプログラム、こちらは令和7年度補正予算として370億円確保させていただいてございます。プロジェクト型とチャレンジ型、両輪で進めていきたいと思ってございまして、最後、チャレンジ型のところを少しだけ補足させていただければと思います。
 正にこれがAI for Scienceをしっかり裾野拡大していくというようなプロジェクトの位置づけとしてございまして、右の三角形にありますとおり、丸1、丸2のトップ層というよりは、これからAIを活用して研究加速を考えている方々を対象にしていきたいと考えておりまして、令和7年度補正予算として50億円確保しているところでございます。予算規模としては500万円、研究実施期間も少し短い半年程度ではございますけれども、公募回数は年に2回、採択件数は1,000件というところで、まずはAI for Scienceをいろいろな方々に試していただいてユースケースを創出すると、そういったエントリー的なプログラムにしたいと考えておりますので、是非御活用いただければと思います。
 最後でございますけれども、チャレンジ型プログラムのイメージとして、こういう研究テーマの分類イメージを示してございます。特に人文・社会科学の分野においては、丸1の学習用データセット構築、これは非常に親和性の高い部分じゃないかなということも少し考えてございます。正に研究者の皆様方が持たれている、ただそれが紙で存在しているような、そういったデータも含めて、AI for Scienceに向けて活用いただけるようにしっかりデータをAI ready化していく、そんなものもこのチャレンジ型プログラムでしっかり読み込んでいければと思ってございますので、是非御活用いただければと思います。
 すみません、少し長くなってしまいましたが、私からの説明は以上でございます。

【大橋主査】  ありがとうございます。AI for Scienceの取組について御紹介いただくとともに、今回の予算措置、また、チャレンジ型プログラムというものについても丁寧に御紹介いただいたところだと思います。
 是非、こちらについて質問、あるいは御意見もあれば、そうした点も含めていただければと思います。お手を挙げていただければ、私の方から指名をさせていただく形で進められればと思いますが、いかがでしょうか。
 それでは、田口先生、お願いできますでしょうか。

【田口委員】  詳しい御説明を頂きまして、どうもありがとうございました。非常に重要なポイントが多くありまして、いずれも重要だと思うのですけれども、一つ、人文・社会系の研究者として気になるのは、人文・社会系とAIとの関係ということで、AIを道具として使うという方向性が中心に考えられているのかなという印象を受けまして、それはちょっとそこに限定されるものではないのかなと思っています。
 AIと人文・社会科学との関係ということでいうと、現在のAIの進展の度合いによると、今後数年以内、人によってはもう今年中、2026年度中に非常に大きな動きというか、変革があるだろうなんて言っている人もいますけれども、少なくとも、もう本当に近い将来に人間の文明的な規模の変革が起こってくるだろうということが指摘されていると思います。これは科学技術のみならず、社会全体の非常に大きな変革であり、人間生活そのものが一変してくるような変革が今後見込まれるだろうと。
 そうなったときに一番問題になるのは、そもそも人間って何だったんだろうかと、人間とは何のために生きていて何をやっているのだという、非常に根本的な、それこそ人文学的な問いが、まさしくAIによって人間に突きつけられてくることになる。それはAI及びフィジカルAIが社会のインフラを担って、そしてAIエージェントが我々の日常の仕事のいろいろな部分を担って、工場では正にそういうフィジカルAIが、ロボットたちが生産活動にいそしむと。こうなってくると、人間は一体何やったらいいのだということになるわけですね。それだけではありませんけれども、いろいろな形で、人間は何をやったらいいのだと。文章に関しても、文章は今、人間よりもAIの方がうまいぐらいですよね。そういう中で、一体人間は何をやって、人間がこれからいることの価値って何なのだろうかということが正に突きつけられてくると思っていまして、それをこれまでも担ってきたのは、まさしく人文学であり、そして社会科学だと思うんですね。
 そういうわけで、人間とは何かといったような問いは、哲学や人類学、宗教学、心理学、こういった人文系の学問によって、まさしく今、本格的に、本当に本気で考えなければならないところに来ていると思いますし、社会構造の大変革ということに関しては、経済構造の変革に関しても経済学がもちろん考えていかなきゃいけない。AIが今後大きく進展してくれば、政治構造も恐らく大きく変わってくるでしょうね。そういうわけで、政治構造に関しては政治学などが考えていく必要がある。
 こういうわけで、人文・社会科学というのは、これからのAI社会において、まさしく中核的な意義を持っている学問だというふうに私は考えているんです。そういう観点からの研究の推進というのも、できればAI for Scienceの中で目玉として打ち出していただけると、人文系の研究者、社会科学系の研究者も大いにやる気を持って取り組んで参入してくるのではないかなというふうに思いますし、御説明の中で、日本の勝ち筋というお話もありましたが、私としては、正にこれこそ日本の勝ち筋ではないかなというふうに考えています。というのは、日本は科学技術を社会になじませる、社会の細かいところに、かゆいところに手が届くような仕方で科学技術を生活になじませていくということに関しては、非常にこれまでも強みを発揮してきた国だと思いますので、これからAIを社会になじませていくというところで、正に人文・社会科学ともにそういう強みを生かしていけるところではないかと。
 プラス、もう一つ言えるのは、人文・社会系に投資するのは、もう投資額は極めて少なくて済みます。AIの基盤モデルをつくるとかそういうのに比べたら、もう圧倒的に僅かなお金で、場合によっては非常に大きな、世界全体の中で日本の強みを示すような、そういうことができるのではないかと思いますので、是非そういった方向での人文・社会科学的なAI研究の推進というのもお考えいただければというふうに思っています。
 以上です。すみません、長くなりました。

【大橋主査】  とんでもないです。ありがとうございました。
 それでは、続きまして、仲先生、お願いできますでしょうか。

【仲委員】  ありがとうございます。詳しい専門的な御報告、どうもありがとうございました。
 私も今の田口委員の御意見とつながる課題を感じたところです。道具としてのAI技術ということを強く感じまして、確かに高度なAI、そして科学力を高めていくというのは大変重要なことだと思いますし、それが技術力を上げていろいろな地球規模の課題などの解決にもつながるのだろうというふうに思います。ただ、これが一方で、国際的な競争力のバランスを取るための道具となってしまうとか、技術力を全般的に上げるということだけが目標になってしまうと、本来、人の幸せって何だったんだろうかとか、何のためのAIだろうかというのが、疑問になってくるということがあると思います。
 ここで疑問として出したいのは、本当に何のためのAIか、ということです。目標は平和とか、公正性とか、安全とか、そういうようなことであるかなと思うと、じゃ、何に優れたAIをつくるというふうに考えればいいのか、AIの何を強化すればいいのかというところが人文学的な課題として感じられるところかなと思いました。
 以上です。

【大橋主査】  ありがとうございます。
 続いて、森田先生、お願いします。

【森田委員】  ありがとうございました。私の方で、1つコメントしたいと思います。先ほどの御報告の中でデータの重要性という点が強調されていて、その中でデータを集めるのと同時に、クローズドにしておくことも大事だということがあったのですけれども、人文・社会科学について言うと、自然科学に比べるとクローズドの側面をさほど強調する必要はないのではないかというふうに思っています。これまでずっとこの委員会でいろいろ議論されていましたように、例えば日本についての人文学的な研究を海外発信することについて、多くの先生が一生懸命これまで頑張ってこられたということもあります。また、やはり海外でなかなか日本に関することが知られていないということがありますので、クローズドにするよりはむしろオープンにして、海外の方にも使ってもらうことが大事な側面もあるのかなと思います。
 社会科学についても同様です。例えば社会科学で論文を書いて、国際ジャーナルとか学会とかにサブミットしても、やはり日本のデータを使ったというとなかなかアクセスされることが難しくなるということもあります。日本に関するデータを公表したとしても、そう簡単に海外の人がそれをぱっと使って何か研究をしてくれるかというと、今のところそう簡単にはいかないように思えます。従いまして、人文・社会科学系ではあまりクローズドということを強調し過ぎて、データの収集に制約をかけ過ぎてしまうことは望ましくないし、むしろ公開することに対して促進する方がいいこともあるのではないかというふうに思っております。
 以上です。

【大橋主査】  ありがとうございます。
 続いて、安田先生、お願いします。

【安田委員】  どうもありがとうございます。
 一つ質問が、AI研究力と言ったときの、定義がまだはっきり私には分からなくて、もやっとしていたので後で伺いたいなと思った点が1点あります。
 あと、今の議論とやや逆行しますが、オープン・アンド・クローズの、クローズの方も私は結構大事かなと、私は理系の研究者として思います。研究データの管理とかという意味では、国内で安全に使えるとか、アイデアとかが、流出しないけれども壁打ちに使えるようなAIみたいなものというのも結構重要だと思いました。
 あと、これも的はずれだと申し訳ないですが、日本は人口減少によって今当たり前にあるものが失われていく、分からなくなる、見えなくなるものというものが文化多面的に日本の国内で起きていると思います。伝統的な慣習や技術、形にはならない言葉も含めて、失われることもあるかと思います。こうした何気ない慣習や言葉も含めて、失われてしまいそうなものを体系的にAIに学ばせて、保存しつつ動的に動かせる、よみがえらせるようにできるようにしておくとよい思いました。
 あと、論文数が2倍というお話があったのですけれども、最近論文の投稿数が多くてすごい査読がいっぱい回ってくるのですけれども、ちょっと査読が追いつかないようなところがありまして、一部のジャーナルではもう査読自体をAIに手伝わせることもOKであると明言しているジャーナルとかも出てきていると思います。こうなると、論文を書くときにもAI、チェックするときにもAIが必要になってくるみたいなこと、もうちょっと広い意味でのAI自体を意識して開発していき、人間の役割を明確化しつつ見失わないこと、使うべきところでAIを使って効率化していくことの両立が必要だと思います。

【大橋主査】  ありがとうございます。御質問については、最後に事務局の方からコメント等を頂くことにしたいと思いますので、続きまして、後藤先生、お願いします。

【後藤委員】  後藤でございます。ありがとうございます。非常に詳細な御報告、誠にありがとうございました。そして、日本というか全体として、AIというのがどういうふうに使っていこうとしているかというのも非常によく分かって、それ自体は非常に有益な話だったというふうに思います。ありがとうございます。
 その中で、これは質問かコメントかちょっと難しいところではあるんですけれども、AI自体の中に言語的な多様性であるとか、文化的な多様性というのをどのように入れていくかというところがちょっと難しい、課題になるかなというところはちょっと感じたところです。人文学・社会科学、どちらかというと今の生成AIというのは言語でプロンプトで質問して、言語で返してくるというところに非常に強みがあるわけです。そのときに、今連携先もやはりアメリカとかイギリスといったようなところが出てきていて、どちらかというと英語圏という圧倒的に言語的地域が強くて多いところが対象になっているのですが、実はそれ以外のところの言語圏との連携、例えばEUのほかの言語圏とどのような連携があるのかというあたりについては、むしろ非英語圏がネイティブの国にとってどういうふうに考えるかということは重要かなと思いました。
 とりわけ、これは正に日本の勝ち筋ということになると思うのですけれど、日本はアジアの国なんです。そのときに、例えばアジアの国々の言語というのをどのように考えていくか。もうちょっと言うと、例えば日本だと、東南アジアとかとの連携も非常に強いわけで、そういうところの言語であるとか、そういうふうなところ。かつ、東南アジアとかは人口も多いわけですから、そういうところとの連携というのも、むしろ日本の強みとか勝ち筋という点では重要なのかなというところはあるかなと思いました。
 あと、先ほど田口先生からも御発言ございましたが、AI自体の研究に加えて、AIというのが社会に及ぼす影響の研究というのもやはり重要な課題になっていく方が、今後に関しては望ましいかなというのは強く思いました。
 また、話が若干前後しますが、先ほどの資料でも、中国は哲学とか社会科学というのを重点分野に充てているということで、あれは多分、中国の中でやはりアジアということを意識しているからそういう表現が出てくるのだと思っていて、言わば、日本としてもアジアにある国である以上は、すみません、ちょっと話が前後いたしましたが、その辺りについては言語的多様性、文化多様性、若しくは思想の多様性という観点から見ても、AIに対応していく点では重要なのかなというふうに思いました。
 また、先ほどのオープン・クローズという点でいきますと、人社でも、特に人のプライバシーに関わる情報というのがおのずと入ってくる可能性があると思います。なので、その辺りに関しては、むしろ人社系だからこそのオープン・クローズというのを考える必要があるとともに、むしろそれを考えること自体も、人社とAIの関係として重要になると思うので、むしろそういうところもAI for Scienceの中で人社お手伝いできるというと変ですけれども、一緒に関連して考えられる分野なのかなというふうに思いました。
 すみません、ちょっと長くなりますが、あと一つは、補正予算の部分で、ありがとうございます、これもまた随分詳細な情報を頂きましたが、補正予算の部分でも研究テーマの分類イメージのところがございましたが、学習用のデータセット構築というのもございましたが、それ以外にも恐らく先ほどの多様な文化の発見という点では、発見や設計の支援といったようなところにも、そういうふうなところでも貢献し得る部分もあると思いますし、また、先ほど正に人社のデータとかを高度なデータ解析とかモデルリングというところでも十分活躍し得ると思いますので、そういうところで何かいろいろ考えていけるといいのかなというふうに思いました。
 すみません、長くなりましたが、以上でございます。

【大橋主査】  ありがとうございます。
 続きまして、北本先生、お願いします。

【北本委員】  北本です。AI for Scienceについては、皆さんおっしゃっているように、多角的にまとめられて分かりやすかったです。私からは2点、申し上げたいと思います。
 1点目、最初に田口先生から、人間とは何かという根元的な問いがあるという話がありました。グローバルに見れば人間とは何かという問いになりますが、ローカルに見れば日本とは何かという問いがやはり根本に来るのではないかと思います。そしてもちろん、日本とは何かという問いに対しては、日本が取り組まなくてはなりません。これを日本でやることが勝ち筋という言い方もできなくはないですが、あまり勝ち筋や強みという言葉は使いたくない気がします。というのも、日本に関する研究を日本がやるのはある意味自明なことであって、勝ち筋だからやるわけではない。むしろ責任や使命などの言葉で表す方が適切ではないかと思います。そして、日本に関する研究として何をやるべきか、それは日本が最もよく知っているべきことです。また、何を研究するかについては、人文・社会科学がある種の価値判断をして決めていく必要も出てくるでしょうし、それは人文・社会科学のミッションの一つでもあります。ゆえに、これを安易に勝ち筋という言葉でまとめずに、きちんと考えていくことが重要だと思っています。
 2つ目、特に人文学に関してですが、歴史が長いという事情があります。例えば源氏物語の研究は千年やっているわけです。このような長い歴史の中で、コミュニティが細分化されてきた傾向がありますが、コミュニティが細分化されすぎると、AIにおけるチーム型研究をコミュニティの内部だけでは形成できない可能性があります。これはコミュニティが小さ過ぎることによる課題とも言えます。この課題に対しては、現在の研究分野を守りつつAI化していくのではなく、分野の壁を崩してコミュニティを広げつつAI化していくという考え方が避けて通れないのではないでしょうか。コミュニティの中で小さく研究するのではなく、複数のコミュニティがまとまって大きく研究するという意識を、人文・社会科学の中でも具体的に示していくことが大事ではないかと考えています。

 以上です。

【大橋主査】  ありがとうございました。
 木部先生、お願いします。

【木部委員】  2点あります。1点目は後藤先生がおっしゃった、言語の問題です。現在のAIは欧米の言語、特に英語に依拠しているので、生成される回答に信頼性が置けるのか、日本語を使っている文化にとって、日本語だけではなく英語以外の言語を使っている文化にとって、そこに出てくる回答に信頼性が置けるのかという疑問が常にあるわけです。そういう点で、我々は言語、特に日本語、その背後には当然日本文化がありますけれども、日本語、日本文化という背景を持ったAIというものを基本的に考えなきゃいけないということです。これは多分後藤先生と同じだと思います。
 2つ目は、今日の資料は、いろいろな分野で生成AIが使われていますので、いろいろな分野を合わせた、つまりAI for Science推進委員会の議論を基にした資料だと思います。人文系は人文系の使い方をすればいいと思います。そのときに、人文系では、資料の24ページですが、学習用データセットというのが非常に不足しているんです。ですから、こういうモデルを出していただいたのはすごく有り難いと思います。チャレンジ型ですか、500万円ぐらいの規模ですけれども、それぐらいの規模でも、まず学習用データセットをつくってみたいという人はたくさんいると思いますので、チャレンジ型の公募というのは、人文、社会系にとっては有り難いと思っています。
 以上です。

【大橋主査】  ありがとうございます。
 それでは、米村先生で一旦区切らせてもらえればと思います。お願いします。

【米村委員】  ありがとうございます。先生方がおっしゃっていたこととも重なりますが、広く言うと倫理や哲学の問題として、AIと社会という部分は考えていくべき重要なテーマだと思って伺っておりました。
 それから、今、学習セットのお話が木部先生からございました。それともやや関わるのですが、先端のとがった部分の説明に加えて底上げというお話があったかと思います。短期的に成果を出していくということは大事だと思う一方で、いろいろな可能性のある研究者や研究者の卵たちが使えるように、広くアクセスできるような形になっていくことが中長期的には重要だと思います。
 ですので、底上げとか裾野を拡大するという部分も是非重視していただけたら有り難いと思いますし、そこについて何かもし加えて説明していただけることがあるなら、お伺いしたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。

【大橋主査】  ありがとうございます。大変様々な角度から御意見いただいたところですけれども、もし事務局の方から何か、御質問もあったところですので、お願いできればと思います。

【轟木参事官補佐】  ありがとうございます。轟木でございます。本当にいろいろな観点から御意見いただきまして、大変ありがとうございます。なるべく追えた範囲で御回答をと思っております。
 田口委員から頂いた、正に人文・社会科学から見てAI技術の進展を踏まえて、正に人間がAIの進展によってAIとどう関わっていくかみたいな観点、非常に重要だと思っていまして、海外では正にメタサイエンスとかという文脈で、非常にAI for Scienceの進展をある種きっかけにして、すごく盛り上がっている分野でもあると思っていまして、そこがある種日本の強みにもなり得る部分だと思いますし、しっかり今後、本当に人間、人類社会の課題としてしっかり検討していくべきだと思っておりますので、そこはしっかり我々としても支援をしていきたいなということを考えてございます。
 あとは、データの観点もいろいろな先生から御議論いただいていて、正にここは我々としても、守るべきデータをしっかり守ると。しっかりオープンにしていって、我々として、ある種それが日本のプレゼンスを高めるということにもつながってくると思いますので、そこはちゃんとデータの種類ですとか、研究分野の特性に応じてオープンとクローズをしっかり戦略的に使い分けていくということが非常に重要だと思っていますので、そこは、なかなか一概にどうと言えるところではないかもしれないですけれども、その基本方針は我々も持っているというところでございます。
 あと、質問という意味で言うと、安田委員からもAI研究力とはというところがあったかと思います。これはすいません、そういう意味で言うと、正にAIと今つけてしまっておりますけれども、正にもうAI×研究力というところで、AIそのものの研究も含めて、かつ各研究分野における研究力すべからく重要だという文脈で書かせていただいたものでございますので、AIそのものの研究と、それとある種掛け合わせる研究分野、AIの両面が重要だというような意味でございます。
 あとは、論文を2倍という話、査読にもAIが使われるというようなお話もあったかと思いまして、これは非常に我々としてもある種難しい問題で、かつそもそもAIが論文を書いて、AIが査読をして、そうなると、正に科学とは何なんだ、人の活動とは何なんだ、みたいな話にも正になってきて、海外含めて議論があるところだと思っていますので、ここは正に人文・社会科学の先生方の御知見も借りながら、ある種科学の在り方含めてしっかり議論をしていかなければいけないところかなということを思ってございます。
 あとは、言語の話、日本、ある種ソブリンAIみたいな単語もありましたけれども、正に日本特化のAI、日本文化を守るAIというのも非常に重要だと思っていまして、やはり日本において、ある種サイエンスでAIを使うですとか、AI基本計画の中ではもうAIが、日本で最もAIを活用しやすい国にしようというところも掲げられておりますので、そういった背景の中で、正に日本に特化したAIというものの研究開発も非常に重要だと思っていまして、その観点では正にそういった意味でもAI for Scienceをしっかり進めていきたいということを思ってございます。
 あとは、米村委員からも正に短期的に成果を出していくことが重要である一方で、いろいろな研究者の方々がアクセスできるというような、そういう中長期的な取組が重要だということを御指摘いただきまして、我々も非常にそれは重要だと思っていまして、特にAIの活用によって、やはり科学研究の期間がすごく短縮化されるといいますか、研究者のアイデアがある種そのまま実装といいますか花開くことが、かなり近くなってきているというようなところもありまして、別の正に推進委員会とかの議論では、AI for Scienceだからこそある種重点投資をするのではなくて、今このある種なかなかある意味カオスな状態だからこそ、ある種特化をせずに幅広くやっていくことも重要だという御提言も頂いておりますし、そういった意味でチャレンジ型、今回は令和7年度補正予算というところではございますけれども、AI for Scienceの流れは単年度で途絶えるようなものではないと思っていますので、正に何らかの形でしっかり継続も含めてちょっと今後議論をしていければなということは思っているところでございますので、是非応援いただければというふうに思ってございます。
 ちょっと拾えていないところもあるかもしれませんが、以上でございます。

【大橋主査】  ありがとうございました。本当に様々御意見いただきまして、AIを単にツールと見るのではなくて、人間社会のインパクトも含めて考えるべきだというふうな御指摘も含めて大変重要な御指摘だと思っています。そういう観点も含めて、チャレンジ型プログラムでしっかり受け止めていただくという形で、是非御認知いただけるといいのかなというふうにも思いました。
 それでは、次の議題も実はAIに関することではありますので、続いて、次のテーマの方へも進めさせていただきたいと思います。それでは一旦、AI for Scienceについてはこれで終わりということで、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、第2のテーマということで、人文学・社会科学におけるAI for Scienceについて事務局からの御説明、これは資料2-1、資料2-2についてございます。若干時間超えているので、コンパクトにお願いできればと思います。

【助川学術企画室長】  ありがとうございます。学術企画室長、人文科学・社会科学振興室長の助川でございます。いろいろ御指導ありがとうございました。資料2-1と資料2-2というのをお配りしておりますけれども、資料2-1というのは前回の議事の主な意見でございますので、御覧いただければと思います。
 続きまして、資料2-2の方を御覧いただければと思います。先ほど情報参事官付の轟木の方からAI for Science全体について説明がありましたが、人社委員会では、人文学・社会科学という観点から御議論いただいておりまして、その観点から頂いた御意見をまとめたつもりでございます。そして、今後、私どもとしてどのようなことをしていけばいいのかということを、あるいは今後どういう社会になっていくのがいいのかということを案として、青写真といいますかその程度でございますけれども、お出ししてございます。
 3ページ目を御覧いただきますと、こちらの資料、前回の資料をベースにしてAI利活用の人文学・社会科学における展望というのをまとめてございますけれども、もうちょっと詳しくしたものが4ページ目以降にございますので、そちらを御覧いただければと思います。
 まず、これは、先ほども御議論いろいろ頂いたと思います。背景ですとか、あるいは人社におけるAI for Scienceですとか、もしかしたらAI for Scienceに限らず、データを活用した研究ということになるかもしれませんけれども、それを論じる政策的な意義ですとか、それについてのペーパーですけれども、その前に、前提としてこのことを忘れてはいけないかなということをあえて書かせていただいております。
 1つ目の丸、研究のデジタル化ですとかAIの利活用というのは、人文学・社会科学に革新をもたらし得るでしょうと。ただ、2つ目のポイントというのは忘れてはいけなくて、研究の在り方がAIなどによって変わっていくにしても、人文学・社会科学の本質というのは変わらないのではないかということは前提にするのかなと。すなわち、人間の精神活動の根本・根源の理解ですとか、社会的合意形成等を探求する学問分野であり、社会の在り方ですとか人間の生き方の再考に寄与するとともに、人間や社会に関する想像力を広げて知的好奇心を刺激することで、人間の生きる力の根源や社会の根本を支えるということは変わらないという上で、AIとどう向き合うかということを忘れてはいけないのではないかと。なので、3番目にありますように、人間というのが研究の主体・中心であるということには変わりはないのであろうということでございます。
 ちょっと前置き長くなりましたけれども、ここから、AI for Scienceが人文学・社会科学においても議論される背景というのを御報告申し上げたいと思います。研究DX、DHの進展というのは、これまでも論じておりますように、欧州などからDHというのが拡大してきたということでございます。さらに、今も論じてまいりましたように、AI for Scienceというのが、丸2のところ、拡大してきておると、あらゆる研究分野においてAI利活用というのが急速に進展してきていると。
 それで、意義のところですけれども、丸1にありますように、人文学、社会科学、自然科学というのを通じてAI for Scienceを拡大していく目的というのは、大きく言うと、これにとじないかもしれないですけれど、1つ目、科学研究の革新をする、科学的発見の加速・質を変革するということによって、研究者がより高次元で創造的な活動に専念できる環境というのが実現できるのではないかと。2つ目で、研究力の抜本的強化と科学の再興とありますけれども、従来の延長線では解決できない科学的課題に挑戦できるということ。3つ目として、国際的優位性・戦略的自律性の確保というのがあろうかと考えております。
 更に丸2のところ、人文学・社会科学においてAI for Scienceが拡大することの意義でございますけれども、太字のところで人文学・社会科学が「民主化」という文字を使っておりますが、以前の会議で有識者の先生から御発表いただいた文字を使わせていただいておりますけれど、AIの進展によって研究への障壁というのがなくなって、研究者のみならず、あらゆる人々が人文学・社会科学の知へのアクセス・活用ができるようになるということで、人文学・社会科学がある種民主化されるということがあろうかと。
 また、2つ目のところ、研究している人、あるいはこれから研究に関わろうとしている人にとっても、アクセスが難しかった研究を始めるための知というものへのアクセス性が向上するというふうに考えられるという意味で、人文学・社会科学の研究に携わる人、広い意味で携わる人というのが増える。人文学・社会科学の進展というのに寄与するのではないかと考えてございます。
 6ページは、あらゆる段階でAIが活用されているという事例を説明しているものでございますので、ここでは省略させていただきます。
 次の7ページからが、人文学・社会科学におけるAI for Scienceの効果ということでございます。先ほど目的というのを申しましたので、そことかなり重なる部分と、それをブレークダウンした部分というのはございますけれども、大きく3つ、ここでは挙げてございます。
 1つ目のところ、研究のプロセスの効率化、高速化、研究の質の向上と挙げてございますけれども、そこの多分1つ目のところは高速化・効率化となって、2つ目のところが重要で、人文学・社会科学の研究者にとって、先ほど申しましたように解釈のプロセスというのが当然必要な学問でございます。そこにより多くの時間を割くことができる、研究がより精緻化する、研究の質の向上に寄与するのではないかと考えてございます。
 また、2つ目のところで、研究者の創造力の発揮、新たなネットワーク構築への寄与というふうに書いてございます。1つ目の丸のところで、研究者はAIの提案も基にすることで創造力を発揮し、新たな知を創出することができるということを書いており、あるいは2つ目のところで、これまで関わりのなかった異分野の研究や研究者同士をつなげる可能性があるというようなことを挙げてございます。先ほどの北本先生からもお話しいただいた話にも関わるかと思います。ちょっと後ろでも関係するので、後ほどまた改めたいと思います。
 さらに、3つ目のところでございますけれども、AI for Science、AIの研究というよりも各分野の研究自体にも裨益(ひえき)する、各分野の研究が深まるという意味もそうでしょうし、さらに、例えばこれまでのお話の中でも、日本に関するデータセットというのが十分ではないのではないかという話もありましたけれども、AI for Scienceを進めるためにはそこのところを充実させていく必要がありまして、このインフラというのは、当然我が国の人文学・社会科学の知を蓄積することになります。そして、それを国内外に発信するということにつながることになろうと思います。そうすると、国外で日本について研究する研究者にも適時適切な情報提供する手段と、一定程度ですけれどなるという意味で、例えば日本研究のような個別の分野の研究の発展にも寄与できるかと思います。また、最後にちょっと書いてございますけれども、AIの活用によって負担軽減にも寄与するだろうということでございます。
 ただ、AI for Scienceに関しては、課題というのも人文学・社会科学においてはあろうかと思います。先ほどのAI for Science全体の話の中でも、日本の強みがあったり、AI for Scienceの課題というのがあったりしたかと思います。その中で、私どもから御説明申し上げましたけれども、分野によって強く表れたり、あまり関係なかったりということはあろうかと思います。人文学・社会科学について特に出てくる面というのをここで書き出してみたところでございます。
 2つ目のところは、AIといったときに、学習データの内容というのはあまり明らかにしていないので、出力結果の適切性というのを判断することは難しかろうと。なので、透明性・信頼性というのは課題があろうかと。
 また、3つ目のところで、先ほどお話ありましたけれども、我が国の文化等について誤った結果が出力される事例というのは実際散見されてございます。当然、AIである以上、ハルシネーションというのは大なり小なり避けられないのだとは思いますけれども、ただ、それに耐え得る精度まで向上させる必要はあろうかと。さらに、こういう特性を理解した上で、一次資料による裏づけですとか、人間がAIの処理プロセスに介入して、解釈、検証、監修などを行うということも必要だろうというふうに挙げてございます。
 次のページでございますけれども、研究DX、DHの関係で、データインフラについては従来から取り組んでいるところでございます。これについては、今後更にAIを活用するためには対応する必要があろうかと思います。
 3として研究体制の拡大というところで書いてございますけれども、当然AIを活用してとなると、人文学・社会科学の研究者と情報学の研究者の連携するニーズというのは増加するのは当然なわけですけれども、人文学・社会科学、その中でも先ほどありましたように、コミュニティが細分化されている面はあるかもしれませんけれども、それをより広範囲の領域にわたるデータを分析、解釈することができる。それによって、データを見られるというだけではなくて、できることであれば、それを研究者同士の連携を拡大していく必要があるのではないかと。このためには、研究のそれに即した体制であるべきところなのですけれど、人文学・社会科学系の共同利用・共同研究拠点というのは、あまり多くないというのがございます。
 さらに、研究のコストがかかるということはございまして、なので、先ほど紹介いたしました事業もまず使っていただければなと思っております。
 5番目で、権利問題への対応と上げてございますけれども、先ほどオープン・アンド・クローズの関係で私どもが御説明申し上げて、更にそこで、後藤先生から人のプライバシーの話というのもあったかと思います。権利問題ですとか、データというのは、人文学・社会科学では特有な表れ方をする可能性があるなと、これまでのヒアリングでもあって、それで、前回だったか前々回だったか、鈴木康平先生からプレゼンを頂きました。人社の場合は、そこで実験をして、そこでデータを取って、それでデータを積み込むというわけでも必ずしもなくて、どなたかがデータを持っているという、データというか原資料を持っているということがありまして、そこに複雑な権利関係がありますので、なので、そのような専門人材というのが、育成・配置する環境に乏しいというのが課題としてございます。
 その上で、では、今後どのような方向性であるべきかということですけれども、これは11ページのところでございます。点線枠囲みにしてございます前提というのは、4ページで書いたものなのですけれども、あえて二度書かせていただいたのはこのことというのは、忘れてはいけないということを肝に銘じたいなということで、あえて書かせていただいております。
 その上で、AI for Scienceの考え方を人文・社会科学でも取り入れるに当たっては、(1)でございますけれども、AI利活用研究に必要な正しい知識基盤ですとか、信頼できるデータを構築するための設備ですとか、システムですとか、データのインフラですとか、あるいは教材みたいなものを整備する。それを研究者に共同利用できるようにするということ。
 2つ目として、AI利活用研究を支援する、データキュレーターだったり、先ほどちょっと触れました権利問題専門人材ですとか、そういう人たちがいて、更にそういう人たちが学内外の研究者への支援ですとか、原資料と所有者の間の橋渡しをするという仕組みが必要なのではないかと。
 (3)として、AI利活用研究の開始・推進に向けて分野間、情報学ですとか、あるいは人社の中での複数領域の間の橋渡しという体制を構築する必要があろうかと。
 更に一番下のところですけれども、地域の諸機関と大学の間に、データと人材をつなぐネットワークといいますか、バーチャルなものですけれども、ネットワークを構築することで新たな異分野融合、共同研究を促進することで、人文学・社会科学を総合的に発展させる必要があろうかと考えてございます。
 今まで文字で書いたのですけれども、このページの最後の丸と(3)のところが中心に関わる話であるんですけれど、図のような形で書いてみたところでございます。左の下のところは、人文学・社会科学において特に申し上げなければならないこととして、人文学・社会科学の知というのは、まだ地域、市民に眠っているということがあろうと。その知ですとか資料というのを研究の場に吸い上げていくということが必要だし、その際には、市民の方々、一般の方も含めて連携する必要があろうかと。そして、市民と研究者の間の信頼関係の構築も必要かと考えてございます。
 そして、その吸い上がってきた知というのは、あるいはもともと地域や地域に存在する大学や博物館とか研究機関の間で蓄積された知というのは、研究への活用が可能な状態で存在しているということが必要かと考えてございます。これは個々の機関では実施できないので、その機関が連携できるようなネットワークが構築されていて、そして、そのデータが他の地域でのネットワークで蓄積されたデータにもつながる必要があるし、また、地域だけではなくて、緑は分野の中核と書きましたけれども、分野であるネットワークというものも連携していく。そういうことで、例えば分野間の連携が広がるとかいうことがあろうかと思います。
 ここでは楕円(だえん)の形で表現してございますけれども、データというのは連携するとともに、あとは、それを研究機関というものがしっかりと連携することが必要であって、それを私どもとしてもどうできるかという、構築というのを支援する。ちょっとこの構築の支援の在り方というのも、どのような支援が必要かということを御知見いただければ有り難いとは承知しておりますけれども、こうやってネットワークが形成されて、そこで蓄積された高精度、大量なデータを、ここでは黄色の箱で書いてありますけれども、例えばAIにかけるとか、それで参照して解析できるようになれば、これまでかけ離れて関係性が見いだされていなかった研究者同士、分野が違うこともあるかもしれません、そういう人たちがつながって、そして新たな共同研究チームとなって研究が広がる可能性ですとか、資料同士の新たな関係性の発見によって知が創出されるですとか、研究者に可視化される、こういうことが期待されるかと思ってございます。そして、推論だとか仮説立てがより高度化して、研究が一層推進するということが期待されるかと思っております。
 先ほどいろいろお話ありましたように、例えばAIを活用した研究、人文学・社会科学でもいろいろな可能性をこれまであまり考えられなかったようなことも、幅は相当広いかなと思っていて、例えば先ほど安田先生がこのままだと消滅しそうなものというものを例えば保存するですとか、そのためのその前提としての研究というお話ございました。前回の宮川創先生のように、あれは古代エジプト語でございましたけれども、それの研究にAIを活用されておられましたし、そしてそれを転化させて、もともと宮川先生は古代エジプト語の専門だというふうに承知しておりましたけれど、宮川先生とほかの諸語の研究者の方が連携して、例えば琉球(りゅうきゅう)方言だったか、あるいは台湾の方の現地の方の言葉のような、今そんなに多くの人が使っているわけではない、既に日常語としては使っていない研究にも活用なさっていると承知しております。
 なので、AIというものを活用することによって、ただ、それは別にAIに使われるわけでは全くなくて、人文学・社会科学の本質というのはちゃんと残したまま、それはちゃんと維持したまま、大事にしたまま、AIを活用することによって、より多くのことができる。また、高速化という言葉も使いましたけれども、それによって、より解釈だとか、そういうのに時間を充てることができるということかと考えてございます。
 今駆け足で御説明申し上げましたけれども、取りあえず議論の振り返りですとか、あるいはこんな感じの青写真なのかなというふうに申しましたけれども、今後の方向性の青写真ですとか、国として当面していくべきことについて先生方の御意見をお伺いして、人文学・社会科学を推進するための方向性、道筋を立てられればと存じます。
 私からの説明は、駆け足でしたが、以上でございます。よろしくお願いいたします。

【大橋主査】  ありがとうございます。前段でのテーマにも関わるところが随分あったなと思うのですが、後半、このテーマにおいては、AI for Scienceについて、特に人文・社会科学について特化して見たときに、その背景、意義を確認した上で、効果であるとか課題、そして方向性について、これまでの先生方の御議論を踏まえつつ事務局の方でまとめてみたというところが、今回御提示させていただいた資料ということになります。こちらの方、是非今後の議論につながる重要な資料ではありますので、是非様々インプットいただいて、よりよいものにできるといいのかなというふうに思います。
 こちらについても、是非、挙手の上でコメント等いただければ大変有り難いと思いますので、挙手でお知らせいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 ありがとうございます。それでは、木部先生、お願いできますでしょうか。

【木部委員】  人文・社会系のAIの問題、可能性を本当によくまとめてくださっていると思います。
 11ページの点線で囲まれたところ、前にも出てきていますが、研究のデジタル化、AIの利活用は人文学・社会科学に革新をもたらし得るというのは、私もそう思います。前に民主化という言葉で表現なさっていたことがこのことを表していると思います。2番目の丸の、学問の本質とはこうであるということは、本当に重要なことで、すばらしいと思います。
 ただ、私がいろいろな方とお話ししていて感じるのは、AIに疑問を持っている方は、AI、AIと言うと、元の資料、現物資料を扱うことをみんなしなくなる、それは学問としては衰退だという意見があるということです。例えば、昔の歴史資料がデジタル化によって画像化され、AIによって解読されたりすると、便利で、たくさんの人が使えるようになるけれども、現物の資料を見なくなるということです。しかし、それはそうではなくて、AIにできることはAIにやってもらって、研究者は創造的な、クリエーティブな部分を充実させるという、そういう趣旨なのですけれども、それがあまり伝わっていないような気がするんです。現物の資料には、単に文字だけではなくて、例えば本の大きさですとか、紙の質ですとか、それを読んだ跡ですとか、活用された跡ですとか、単なるテキストデータだけではなく、それ以外の情報があって、そこから教えられるのが学問だという考え方はそのとおりだと思います。
 ですから、4の今後の方向性の点線のところは、学問の本質を書いてくださっていて、本当にすばらしいのですが、誤解を避けるためにもう一つ、AIによって元のデータが軽視されることは絶対にないのだということを、どこかに書いておく必要があるのじゃないかと思います。
 以上です。

【大橋主査】  ありがとうございます。
 続きまして、青島先生、お願いできますでしょうか。

【青島委員】  どうも御説明ありがとうございました。非常に網羅的で納得できる内容だと思います。実際、私も研究する上ではAIがすごく有効でして、圧倒的な効率化を生み出しますし、更に最近ですと、アイデアも様々なバラエティーを提示してくれて、多分創造的な活動にも有効になっているというこの今回の資料は正にそのとおりだと思います。
 ただ、一方で、AIと会話をするこちら側に十分な知見があるかどうかがすごく重要でして、教員と学生とだと、同じようにAIを使っても、やはり出てくる論文のクオリティとか研究のクオリティが変わってきますので、基本的な教育をきちんと受けているかどうかというところがやはりすごく重要になると思います。先ほどの御説明で、AIの時代でもやはり人間中心だということはそのとおりだと思います。今回の資料ですと、AIのポテンシャルをどう生かしていくかという提案がいろいろ出ていますが、その一方で、これまで通りの人文・社会科学の教育をきちんとやるということがあって初めて、AIとクオリティの高い対話ができていい研究ができると思います。こうした点も少し強調というか、どこかに書き留めておいていただけると有り難いなというふうに思います。
 以上です。

【大橋主査】  ありがとうございます。
 続いて、尾上先生、お願いいたします。

【尾上委員】  ありがとうございます。この12ページ目に書いておられたネットワークの構築というのはすごく重要だと思っております。先ほどもお話ありましたけれど、学問の細分化というのが進んでいく中で、そこを少し広げていって、よりお互いの相乗効果というのが見込めるのじゃないかなというところでございます。この中に、データキュレーターであるとか、先ほどのAI研究者なんていう方々も一緒に巻き込んで議論いただくと、単なる人社系のAIによる加速というだけではなくて、Science for AIについても進んでいく、そういうイメージがあるかなと思っております。
 第7期の計画の素案にも人社系の知見というのが、推進体制の構築というところで書かれていますので、是非そういうところの後押しを国としてやっていただけるといいかなと思いました。ありがとうございました。

【大橋主査】  ありがとうございます。
 続いて、仲先生、お願いします。

【仲委員】  どうもありがとうございます。ここもまた、人文・社会とAIの交流といいますか、交互作用についてお話しいただいて、ぐっとイメージが高まりました。
 一方で、2つ疑問があるのですけれども、1つは、AIのプラットフォームといいますか安全なAIというのはどういうものなのかということです。例えば、AIの高度化とか高速化をするというような技術の安全維持という問題が1つ。それから2番目に、例えばデータを学習させて、何か閉じたいろいろな推論ができるようなシステムをつくるということと、それを用いて何らかの公開できるような知恵を、成果を発信していくというのは、何かやはりちょっと区切りがあるといいますか、違いがあるような気がしていて、特に閉じたデータを使って、この間のエジプト語などもそうですけれども、データを学習して閉じたシステムをつくるというときには、何かほかの余計なデータが混じり込まないようにする工夫が必要なのかなと思うと、そういうAIってどこに存在するのか、商業用のAIはなかなか使用できないんじゃないかというふうに思ったりするということがあります。そういうわけで、安全なAIのプラットフォームってどこにあるのかというのが、一つの疑問です。
 もう一つは、AIを用いた研究の独創性というのは何で測るのか、どんなものなのかということを思います。例えば、組合せとか探索によってAIが提案してきたような知恵をどうやって人間がもう一回より洗練された知恵にしていくのかということが気にかかります。特に高速であるとか膨大なデータを扱えるようなAIは、よりよい研究論文を書くのかとか、先ほど委員がおっしゃっていたように、例えば経験の浅い研究者と経験の深い研究者が同じようにAIを使っても、質の違う論文が出てくるとしたならば、その違いというのは何に依拠するのか、この辺り自分でも知りたいなというふうに思いますし、検討していかなくてはいけない課題だと思いました。
 以上です。

【大橋主査】  ありがとうございます。
 続いて、田口先生、お願いできますでしょうか。

【田口委員】  こちらも具体的にAIをどのように人文・社会科学の中に生かしていくかという点に関して、非常に配慮の行き届いた資料だなと思いまして、非常に参考になりました。
 他方で、同じことばかり言ってしまうような感じにもなるのですけれども、やはりちょっと気になるのは、AIを道具として使うという面、こちらがやはり主になっていて、そのAIをどう人文・社会科学の方から考えるのか、あるいはAIと社会との関係をどのように人文・社会科学の方から規定して、そしてそれを動かしていくのかという側面の研究がやはりあまり触れられていなかったような気がして、ここは人文・社会科学の根本的で、本質的な貢献になると思うので、是非この点も資料にもどこかに入れていただけたらいいのかなというふうに思っています。
 人文・社会科学の場合ちょっと特殊なところがあって、AI for Scienceというふうに言われているのですけれど、人文・社会科学の場合には、むしろScience for AIと言った方がいいような側面もあるのかなというふうに思っていまして、AIをどのように使うか、あるいはそもそもAIを何のために使うのか、そしてさらに、どういうAIをつくっていくのか、AIにどういうことをさせて、そして、例えばAIにも最近は人格みたいなものを与えるという話がありますけれども、AIにどういう人格を与えて、どういう倫理を与えるのかというような、こういうことを考えるためにも人文・社会科学は極めて重要だと思うんです。
 例えば、アンソロピックという有名なAIの会社がありますけれども、最近トランプ政権とぶつかってという話がありましたけれども、あそこでも問題になっているのはAIの倫理なわけで、アンソロピックではAIの人格のようなものを設計する人として哲学者が参画しているんです。そういう形で哲学やその他人類学や文学や、そういった人文学が本質的にAIに貢献できる、あるいはAI社会に貢献していけるというポイントがここにあると思うんです。この方面の側面をやはりどこかには入れておく必要があるんじゃないかなというふうに思っています。
 私からは以上です。

【大橋主査】  ありがとうございます。
 続きまして、山中先生、お願いします。

【山中委員】  とても分かりやすい資料、ありがとうございました。私も1つはこの11ページの点線で囲んであるところのことと、もう一つちょっと自分の分野に関わることを申し上げたいと思います。
 囲まれているところの、人間の精神活動の根本・根源の理解というのが大事なんだって、本当にそうだと思いますし、これ、ちょっと分からないんですが、ただ、何となくここで書いてあることって、私たちは全然変わらないで、人間の精神活動というのは本当に大事なものがあって、それを人文科学とか考えなくちゃいけないのだけれど、社会ばっかりがAIで変わってしまって、どんどんどんどん変わってしまう社会の中で一体人間ってどう生きるかという意味かなと思って、それだけではなくて、人間の根本が変わってしまうということもあるのだろうと思うんです。このAIの社会で、著者がいなくても本はどんどん書けるし、私たちも本を読まなくても、すぐこれは長文のようですよとかいって要約してくれようとするわけだし、つまり、何かそういう、そもそも人間の精神活動と言っているものが変わってきてしまうかもしれない、そういうところまで本当は私たち考えなくちゃいけないのかもしれなくて、それが、これを深読みすればできるのだけれど、ちょっとそういうことだって考えているんだよということが分かるような一言があるといいかなって、ちょっとこの点線の中のことについて思いました。
 もう一つは、やはりデータセットという話なのですけれども、私の分野の能で言うと、本当に膨大な量の謡本があって、絶対人が1人で生きているうちには全部研究尽くせないものが、今AIでばっとできるようになると、きっと新しいことがいっぱい分かると思うし、それから触れない、触らせてもらえない貴重な能面なども、1回写真を撮ってそれをAIで全部データにすれば、遠くにある能面と能面を重ねて見ることができたりとかいろいろなことができて、先ほどどの先生でしたっけ、田口先生、安田先生でしたっけ、失われつつある文化を保存することができるというようなことが本当にできるので、そういうところでどんどん活用できたらいいなと思います。そのためにも、これは北本先生がおっしゃったことだと思いますが、壁を崩すってすごく難しいと思うのですけれど、小(ち)っちゃなコミュニティの壁を崩していかなくちゃいけないのだろうなと思ってお話をお聞きしました。
 以上です。

【大橋主査】  ありがとうございます。
 続きまして、後藤先生、お願いできますでしょうか。

【後藤委員】  失礼いたします。後藤でございます。
 まず、先ほどの山中先生のお話はすごい重要だと私も思いました。メディアとか道具の使い方が変わることによって、人間の思考の仕方というのは変化するというのは十分にあることであって、千年前から全く同じだったわけではない。多分いろいろなメディアの在り方とか、道具の使い方の在り方によって思考というのはちょっとずつ、当然ながら変わってきているわけで、それがある意味、AIであるとかコンピューターとかという世界の中で大きく変わってくる可能性は十分あるし、それ自体も人文学・社会科学で確かに考えなければならないのだろうなというのは、山中先生のお話で、今本当につくづく思いましたので、そこは改めて私からも重要だなと思ったという次第です。
 その上で、私の方はあまり大きくない話で恐縮なのですけれども、12ページの図で、AIの利活用というのは、まだもっといろいろ入れ込めるのかなという辺りは考えたところです。例えば機関のネットワークの中にも、是非AIと研究者との連携といったモデルを入れてもらったりとか、あとは推論の部分など、この辺りはもう明らかにAIの利活用なので、ちょっと細かい話ですけれど入れていくとか、全体に、AIと人間という関係をうまく描いていくというのが、図としては必要かなと思いました。
 あと、もう一つ、下のところに小さくしか出ていないのですけれど、これは前の議論のときにあったかと思うのですけれども、研究資源のデータは資源だけではなくて、恐らく、日本の研究自体が翻訳が容易になることによって国際的に発信されていく、若しくは海外の情報も、いろいろな言語の情報を、日本だけでなく、人文学・社会科学の様々な情報を容易に得ることができるという点において、AIによって国際の発信とか国際連携が更に進むのだというのは重要になってくるんじゃないかなと思っています。
 その上で、あともう一つ、AIの利活用の中で重要なのは、アナログからの情報抽出も恐らくより容易になると思います。正に古文書のOCR、くずし字のOCRという辺りは北本先生なんかもお仕事でずっとやられていたことですけれど、それ以外にも形を取るとか、動きを取るという辺りについても、今後より容易になるという点で、恐らくAIの利活用できる部分というのは増えてくるのだろうなと思っています。
 その上で支援策として、私自身あるといいのかなというのは、やはりネットワーキングのさらなる支援というところで、もうちょっと具体的に言うと、例えばAI研究者であるとか地域の研究者、ここにはもちろんそれが書かれているのですけれど、具体的に言うと、先ほど仲先生からも非公開AIという話もありましたけれど、例えばRAGのようなデータ構築支援をやるとかという辺りは、一人の研究者でもちろんやれる人はやれるけれど、やれない人はやれないので、是非、そういう辺りは支援としては重要かなと思いますし、あと、人文学の研究者からすると、AIの研究者に対してAIの構築の協力というところは、むしろこういうネットワーキングがあることによって可能になるかもしれないというのは、一つ重要なポイントになるかなと思います。
 また、これも議論の中でありましたけれど、AIのプロンプトですね。対話のときのプロンプトのテクニックであるとか、テクニックというとちょっと小さい話になりますけれど、AIというのは、どういうふうに問いかけをすれば、どういうふうに情報が返ってくるのかという辺りの共有の在り方とか、そういうところはネットワークというか、それぞれの知見共有という点では重要なのかなと思います。
 また、地域連携という点でいうと、AIで拾い切れないような知の抽出というところはありまして、それ自体がAIに返っていくという、それ自体が循環になるというところも重要なポイントになると思います。
 あとは、当然ながらネットワーキングという点でいうと、これももう今更というところはありますけれど、データ管理モデルであるとか、オープン・アンド・クローズといった専門家との協力というのは重要になりますし、あとは、先ほどからも出ておりますけれど、メタサイエンスのような研究者も、こういうネットワーキングの中で入っていくというのは重要かなと思います。人文学・社会科学の研究者だけでネットワーキングしてできるということではないと思うので、むしろこういうネットワーク構築をすることによって、そういうAIの様々な課題の人々とうまくつながっていくという形ができてくるといいのかなと。むしろ、それを人文学とか社会科学の個別の研究者がやっていくのは、ちょっと大変なので、そういうところでうまくフォローアップがいろいろあるといいのかなというふうに考えた次第です。すみません、ちょっと長くなりましたが、以上でございます。

【大橋主査】  ありがとうございました。続いて、北本先生、お願いできますでしょうか。

【北本委員】  北本です。既にいろいろな議論がされていますが、私からは3点申し上げたいと思います。
 第一に、解釈を人間がやるというお話がありました。私も以前はそのように思っていましたが、最近は考えが変わってきまして、あまりこのように書かない方がよいのではと思い始めています。それはなぜかというと、AIとの対話の中から解釈が生まれてくるという方向にシフトしつつあると感じるからです。AIが何か下調べをした後に人間が解釈をうんうん考えるというのではなく、人間とAIが対話する中で解釈が生まれてくる場面がどんどん増えてくると思うんですね。解釈を人間がやると書くと、AIと人間が役割分担するように読めてしまいます。そうではなく、AIと人間が協調して解釈を生み出すという方向に進むとすれば、それを考慮した書き方にした方がよいのではと感じました。
 第二に、AIを使って研究を効率化するという点ですが、ここも注意深く書く必要があると思いました。効率化というと、結局、無駄を省くという話になります。あるいはショートカットする、楽をする、という言い方もできるかもしれません。しかし、無駄を省くというのは、結局のところ何が無駄かという定義に依存するわけです。先ほど原資料を見るかどうかという話がありましたが、原資料を見るのは無駄だよね、という定義になると見なくなっていきます。つまり、効率化の動きの中で、自然に見ない方向に誘導されていく可能性があります。ただでさえ今の世の中は、コスパやタイパなどの言葉のもとで効率をみんな意識してますから、効率化の上で無駄というカテゴリに分類されてしまうと、もう見なくなるでしょう。それに対して、効率化という枠組みの中でうまく説明するのか、あるいは効率化とは異なる基準を持ち出すのか、どのような方法がよいかは分かりません。いずれにしろ、説明の仕方を考える必要があると思います。
 第三に、AIの影響として様々な分野で話題になっているのが、ジュニアをどう育成するかという問題です。シニアについては、先ほどプロンプトの出し方が分かっているのできちんと使えるという話がありました。問題はジュニアです。プロンプトの出し方がわからないとうまく使えない。同時に、エントリーレベルの仕事がどんどん減ってきて、仕事がなくなるリスクもあります。そうした状況を踏まえると、この文書にはジュニアをどう育成するかという視点があまり含まれていない印象があります。またこの問題は、何を教育すべきかという点にも大きく影響します。従来のトレーニングだけでは不十分で、新しいトレーニングも必要になるなど、その辺りの記述も何か入れられないかと思いました。以上です。

【大橋主査】  ありがとうございます。それでは、米村先生、お願いできますでしょうか。

【米村委員】  既に多くの先生がいろいろなことをおっしゃってくださったので、繰り返しにならないように、発言させてください。まず、特に若い研究者、先ほどジュニアというお話がありましたけれども、AIがすぐ隣にあって何でも聞けるというか、対話を普通にやっていける若い世代がどんどんそれを吸収していくというのは、それは一方ですごくいいことだろうなと思います。他方で、山中先生がおっしゃっていたように精神活動が変わっていく。だから、推論するとか、オリジナルなリサーチクエスチョンを考えて問いを立てていくとか、そういうところがどんなふうに変わっていくのか。これはいいことなのか問題なのかが見極められないのですが、それは大きく変わっていくのだろうなと思います。AIを授業のレポートに使うのをどう判断するかということが、最近、大学教育で問われています。 じっくり時間をかけて考えることをしなくなるのじゃないか、それはもったいないことなのではないかという意見もあって、その辺りを考え続けていくべきかなと思います。
 AIとの対話、AIと人間、AIと社会という観点でいうと、これからの社会でAIと生きていくということを考えるときに、人文学・社会科学のそれぞれの小規模な研究で、例えばいろいろなケーススタディやローカルな研究をつないでいけるというのは、意味のあることだと考えます。マイノリティーや多様性や、そういうことも含めてAIと生きていく社会を考えていくのが重要だと思いました。以上です。

【大橋主査】  ありがとうございます。それでは、お待たせしました。森田先生、お願いします。

【森田委員】  ありがとうございます。先ほど田口先生や山中先生から繰り返し指摘されていた、AIによって人が変わるということに関してですが、社会科学の方でもAIによって社会が変わる、それに対してどう対応するのかというのがリサーチ・アジェンダにもなってきております。そういうことも書き加えてもらえたらと思います。例えば、ダイナミックプライシングの発達によって、単純に時期によって値段が変わるというだけじゃなくて、人によっても値段が変わるということも生じるようになってきました。では、それが果たしてどこまで許されるのか、あるいは全く許されないのかということが法学の世界でも議論になっています。あるいは、AIが非常に発達したおかげで、今まで日本に対してフィッシングのような特殊詐欺は比較的少なかったのですけれども、AIを利用して、海外からの特殊詐欺が増えてきました。さらには、AIの発達によって選挙民の行動が変わってきたので、それに対してどう対応すればいいのか、といった政治学のアジェンダもあります。社会科学の分野でもたくさんのアジェンダがAIによって生まれてきていますので、そういった点についても言及していただければと思います。以上です。

【大橋主査】  ありがとうございます。それでは、田口先生、お願いします。

【田口委員】  すみません、1点だけ補足させていただきたいと思いまして、先ほど言えなかったのですが、AIアライメントというキーワードをどこか資料に追加したらいいのかなと思いました。AIを人間の価値とか意図とどういうふうに整合させていくかという問題を考えるということなのですけれど、日本でもAIアライメントネットワークという社団法人が立ち上がって、非常に大きなうねりになってきている、世界的にも大きなうねりになってきているところなので、こういうキーワードなども、どこかに入れたらいいのかなと思いました。以上、補足です。

【大橋主査】  ありがとうございます。
 おおむね、お手が挙がっている委員の方には御発言いただいたという感じだと思います。私からも若干、委員としてコメントさせていただければと思うのですけれど、AIによって研究者像が変わるというのは、私もそういうふうに思います。すごく卑近な例ですけれど、昔は火をおこしていたのに、ガスか電気とかで調理ができるようになると、火のおこし方を忘れてしまうわけですよね。そういうものではないかというふうに思っていまして。若い頃、道なき道を不安を感じながら、出口もない中で研究して、当初、想定しなかった出口を見つけてしまうみたいな、そういうことが研究の醍醐味(だいごみ)だよねみたいなことを話す時代というのは、過去のものになってしまうのかどうかということなのかなとも思っています。ある意味、北本先生からもありましたけれども、AIを使ったって壁打ちの中で遠回りはするので、だけど、その遠回りの仕方というのは多分、1年2年、不安を感じながら道なき道を歩くという時間的感覚とは相当違うものにはなるので、そういう意味では研究者像は変わるし、それがある種の研究の民主化だとは思うんです。だから、いいこともたくさんあると思いますが、そこに失われているものがあるのかどうかというところが、僕はまだ頭の整理がついていませんが、これは研究者の精神性も含めて何か変化を起こすのかどうか、そこの辺りを僕は1つ感じたところです。
 もう一つ、日本の研究という観点で見たときに、昔、ジャパノロジストといって相当数の日本のことを研究してくれていた方がいて、やゆする響きもあったかもしれませんけれども、いずれにしても日本研究というのはそれなりの広がりが70年代、80年代はあったはずだと思いますけれども、それが急速にしぼんだということなのだと思います。
 他方で、こうしたAIの活用によって、日本研究が日本人の研究者だけではなくて、海外の研究者がもっと増えていくようなことも多分期待されるべきだと思うし、そうしていくべきなんじゃないかと思います。そうしたことが、ある種、文化の面で見たときに、これは軍事の話と全然違いますけれども、経済安全保障とかという観点で言うと、文化の点で日本国が世界とつながる、ソフトの面でつながるという意味でのある種の安全保障的なものだと思いますし、ある意味、ソフトの面での危機管理投資が人文・社会科学におけるAI for Scienceではないかというふうな捉え方ができるんじゃないかと思います。
 もし全体を通じて事務局から御感触、コメント等があればいただければと思います。

【助川学術企画室長】  多くの意見、大変ありがとうございました。改めまして、学術企画室長、人文科学・社会科学振興室長の助川でございます。頂戴した御意見について回答といいますか、感想も含めてですけれども、若干補足させていただきたいと思います。
 最初に木部先生が元のデータの重要性のことをおっしゃったと思います。これから申し上げることは遠い将来にどうなるかは分からない面があるのですけれども、少なくとも当面、短期・中期、多分、中期・中長期なのか、超長期ではないぐらいにおいて、元のデータの重要性というのはまだ必要ではないかなと思っております。と申しますのも、例えばAIを活用することによって、より容易に古文書とかもテキスト化とかができるようになるのだと思います。というか、なっているのだと思います。ただ、それはそこに何ということが書いてあるかという研究には資するのかもしれないですけれども、例えばテキスト化されてしまうと、その時点でどういう字で書いてあるのかというデータは全部落っこちてしまいますので、書体だとか、非常に簡単な話にしてしまいましたけれども、そういうデータが落っこちてしまってはいけないので、研究目的によっては、例えばテキスト化したもので足りるわけではないということもありますし、結局、元のデータに帰らないといけないことはあろうかと思いまして、元のデータの重要性というのは当然あろうかと思います。
 また、続きまして、多くの先生からAI下の社会でAIをどう見るかとか、あるいは、AIの下で人間をどう見るかとか、そういう研究ですとかのお話もあったかと思いますけれども、ここのところは書き切れなかった面がありまして、人文学・社会科学というものは、人間社会というものは変わらない中でどう研究するかという話では多分なくて、人間の中で変わらないものもあるし、人間というものは変わっていく面もあるし、それを正に研究していくというのが、個々の研究者の先生方の問いといいますか、知的好奇心というものか、そこから研究されていくものだと思います。現代の分断の社会の中で人間がどう変わってきたかというリサーチクエスチョンを出される方もおられるでしょうし、AIというのが普及してきて、その中で人間がどう変わってくるかを研究される方もおられるかと思います。
 書き切れなかったと申しましたのは、私ども役所側から出す資料で、トップダウン的な感じで、そういう中で人間をどう見るかというのを研究の方々に問いを投げかけるという感じにするのもどうかなと思ったので、正に学術として知的好奇心から出てくる研究として非常に重要で、かつ非常に深い、もしかしたら答えが出ないかもしれない、そういう大事な問いだとは思っております。そのことは当然認識しているつもりでございます。
 また、後藤先生から何点か頂いたお話のうち、翻訳ですとかの話もありました。当然、AI下によって翻訳というのは自分のものを外国語で発信するであったり、あるいはヨーロッパ諸言語、古代語とかも含めて翻訳がされてくるということが多分あるので、研究が進みやすくなるし、国際連携も進むというお話があったかと思います。当然そういう次元のAIの活用というのもあるのですけれども、ここであえて強調しなかった面もありまして、翻訳だとかそういう次元の話は当然大事なので、資料の中でAIによって研究者の負担が軽減されるようなことも書きましたけれども、それがAI for Scienceの本質の全体ではないという意味で、ちょっと触れる程度にさせていただいたところでございます。当然大事な観点かとは思っております。
 また、これは感想めいた話になって大変恐縮なのですけれども、経験の浅い研究者の先生と、まだ学生さんなのかもしれない、それと経験の長い研究者の先生とでAIにかけると出てくるものが違うというようなお話もあって、それを伺って思ったのが、特に社会科学の分野は社会調査とかフィールドワークが大事な分野があると思います。そのときに調査票をどう作るのかが非常に大事だという分野があると思っておりまして、それって、その分野についての深い知見があった上で社会にどう投げかけるか、調査票を作るかというのが多分あるのだと思います。ある意味、それと似ているのかなと思っておりまして、すなわち、AIがあるからどんな人が投げても正しい答え、十分な答えが返ってくるのではなくて、投げかける側、AIを活用する側も、その分野といいますか、できればその周りの分野も含めて十分な知識、知見、経験が必要だと思っていて、なので、人文学・社会科学の振興に当たって教育が必要なくなるというわけではなかろうかなとは思っております。
 それから、北本先生から頂いた効率化の話ですけれども、私、もしかしたら効率化という言葉も含めて使ってしまったかもしれません。ただ、なるべく高速化というようなニュアンスで使っていたつもりです。高速化はされるのだと思います。時間は短くなるという意味ではそうだと思うのですけれども、何が必要な要素で、何が必要ない要素なのかというのは後になってみないと分からない面も多分あろうかと思いますので、非効率なものは切り捨てることによって研究が進むという意味の効率化という意味ではあまり考えていない、少なくとも人文学・社会科学にはあまり適用されないのかなと個人的には思っておって、ただ、高速化される、更にそれでより深いことをできるという面はあろうかなと思っております。
 それから、先ほどの話と重なるのですけれども、AIと対話をして研究するというのは正にそういうことかなと思っております。秘書的なというか下働きのような形でAIを使うというのはもちろんあると思うのですけれども、AI for Scienceという文脈で出てくるときは、AIと対話をしながら何かが出てくるということはあろうかと思います。こういう書き方をしたのは、AIに全部解釈をやってもらうということではないよという面は申し上げたくて、その結果こういう表現になってしまったかもしれないので、そこら辺は気をつけたいと思います。
 それから、最後に大橋先生がおっしゃっていただいた日本研究といいますか、それが日本の日本研究とかにもつながるというお話、このことは私も、例えばAI for Scienceによって、あるいはその前提として、日本に関するデータがちゃんと整備されていて、国外にも伝わって、また、それにのっとって日本の先生方も研究するし、海外の先生方も一定程度研究できるということは、日本に関心を持っていただくということでも大事だと思います。また、諸外国で東アジア地域に関心がある方々に日本の研究に是非関心を持ってもらうためには、まず、その研究者を目指している人々が日本の研究をやってみようと思うためには、日本に関するデータがしっかりと発信されているというか、諸外国からアクセスできるようになっているということ、そして、それにのっとった研究についても諸外国に発信されているということが大事だと思っておって、私どもの説明では、どちらかというとAI for Scienceから生じる効果みたいな感じで書いてしまったのかもしれないのですけれども、正にそのことを進めていくことは、AI for Scienceは日本研究だけのために資するわけでは当然ないのですけれども、AI for Scienceによって日本研究が進む、更にほかの国とのつながりもよく進むということは、効果というか目的に位置づけられるものかと考えております。
 漏れてしまったかもしれませんが、以上でございます。

【大橋主査】  ありがとうございます。一部、助川さんの思いも入っていたのかなと思いますすけども。

【助川学術企画室長】  すみません。

【大橋主査】  そういうことでございます。
 お時間もそろそろ参っているところではあるんですけれども、もし特段の御意見があればいただければと思いますけれども、大丈夫そうですか。もし追加で御意見がありましたら、是非事務局の方へお送りいただきまして、しっかり事務局で受け止めて、次回ミーティングが行われるときには改めて、そうした点も含めて御議論に供せるように御準備させていただきたいと思います。
 それでは、大変恐縮ですけれども、御議論の方は以上とさせていただきたいと思います。
 もし事務局の方から何かありましたら、いただけますでしょうか。

【林学術企画室長補佐】  事務局でございます。本日の議事録につきましては、後日メールでお送りいたしますので、先生方、御確認をお願いいたします。また、主査からもございましたけれども、本日の議論に関しまして追加の御意見等ございましたら、後日、事務局までメールでお送りいただきますようにお願いをいたします。
 次回の開催日程につきましては、調整の上、改めて御連絡をさせていただきます。
 連絡事項は以上でございます。

【大橋主査】  ありがとうございます。
 それでは、本日の議題、以上で終了ですが、もし全体を通じて何か御意見ありましたらと思いましたが、大丈夫そうですか。ありがとうございます。
 それでは、本日は以上とさせていただきます。今年度も様々御意見いただきまして、大変ありがとうございました。来年度も引き続き御議論させていただきますが、どうぞよろしくお願いします。本日はありがとうございました。

―― 了 ――

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