令和7年1月17日(金曜日)13時00分~15時06分
オンライン会議にて開催
(委員、臨時委員、専門委員)
城山主査、白波瀬委員、仲委員、井野瀬委員、大橋委員、尾上委員、北本委員、木部委員、治部委員、青島委員、後藤委員、田口委員、森田委員、山中委員
(科学官)
松方科学官、清水科学官、恒吉科学官
塩見研究振興局長、生田振興企画課長、助川学術企画室長、林学術企画室長補佐
【城山主査】 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第26回人文学・社会科学特別委員会を開催いたします。本日は第12期の最後の会議となります。どうぞよろしくお願いいたします。
初めに、事務局より、配付資料の確認と注意事項等、よろしくお願いします。
【林学術企画室長補佐】 事務局でございます。まず、資料につきましては、事前に電子媒体でお送りさせていただいておりますけれども、議事次第に記載のとおり、資料1から資料3、それから参考資料1から参考資料2をお配りしてございます。なお、資料1につきましては前回の委員会における主な意見をまとめたものになりますので、適宜御参照いただければと思います。もし資料の不足等ございましたら、事務局まで御連絡いただければと思います。
会議の注意事項ですけれども、御発言の際は「手を挙げる」ボタンをクリックしていただきまして、主査より指名を受けましたら、マイクをオンにしていただいて、お名前から御発言をお願いいたします。終わりましたら、ミュートにしていただきますようにお願いをいたします。
もし何か不具合等ございましたら、事務局連絡先まで御連絡をお願いできればと思います。
本日の会議ですけれども、傍聴者を登録の上、公開の会議としてございます。
説明は以上でございます。
【城山主査】 どうもありがとうございました。
それでは、議事に移りたいと思います。まず、1つ目の議題ですけれども、「今後の人文学・社会科学の振興に向けた推進方策について(審議のまとめ)(案)」について、事務局から御説明をいただければと思います。よろしくお願いします。
【助川学術企画室長】 ありがとうございます。学術企画室長の助川でございます。これまでの先生方、御議論いただきまして、誠にありがとうございます。私から、資料2-1と2-2に沿って審議のまとめ案について御説明を申し上げたいと思います。
昨年の8月に中間まとめ、取りまとめていただいたところでございますけれども、前回の11月の議論を踏まえまして、中間まとめをアップデートする形で審議のまとめ案を作成いたしました。中身の前に構成についてでございますけれども、中間まとめの構成のまま前回の議論を追記すると記述の重複がより目立ってしまいましたところ、読みやすさの観点から構成を変更してございます。
具体的には、中間まとめでは各項目についての取組の実施状況と現在の課題というものと、今後のさらなる推進方策が別の章に書かれていたんですけれども、審議のまとめ案においては、3の「人文学・社会科学の振興に向けた更なる推進方策について」というところでまとめて記述してございます。
では、私からこの資料2-2の概要に沿って御説明申し上げたいと思います。冒頭、赤の2のところ、人文学・社会科学の現代的役割について改めて振り返りますと、まず1つ目のポツございますけれども、人文学・社会科学というものは人間の精神活動の根本的かつ根源的な理解に資するとともに、社会的な合意形成や社会的対立の解決方法を探求する学問でございます。なので、これによる知見は社会の在り方ですとか、人間の生き方の再考に寄与する、また、その営み自体が人間や社会の想像力を広げて知的好奇心を刺激し、生きる力の根源や社会の根本を支えるものとしております。
2つ目のポツとして、近年、生成AIをはじめとして情報通信技術などの先端技術が目覚ましい進歩を遂げてございます。気候変動ですとか、エネルギー問題ですとか、感染症対策などの世界規模の課題にも、その技術の活用が見込まれてございます。ただ、これらの課題は人々が暮らす社会あるいは文化的な背景などの要素とも関わるものでございますので、その解決に向けては自然科学の成果に加えて、これらのことを探求してきた人文学・社会科学の力が必要となります。
また、3つ目のポツ、グローバル化した現代においては文化等を異にする人々の相互理解が重要でございまして、多様な文化、価値観、ウエルビーイングの在り方に対する理解をもたらす人文学・社会科学の果たす役割は極めて大きいとしております。
そして、その下の青色の矢印のとおりですけれども、現代社会においては人文学・社会科学の共通の価値・特長を踏まえつつ、果たす役割ですとか貢献の社会的意義を絶えず再検討し、社会との接点を常に意識して新たな知の創出に取り組むことが求められるとしております。
この緑色の3のところが各論でございますけれども、初めに新たな「知」の創出に分野研究、異分野との連携・融合がともに必要であること、そしてそれらの推進について論じた上で、概要では次のページになりますけれども、人文学・社会科学における新たな「知」の創出を支える基盤、成果の可視化とモニタリング、成果の発信について述べているところでございます。
この各論について、前回の御議論を踏まえて大きく加筆した点について御説明申し上げますと、ページ戻っていただいて各論の1点目の見出し、もともと「人文学・社会科学を軸とした課題設定型・異分野融合研究」というチャプターが一つ立っていたんですけれども、審議のまとめ案では「新たな「知」の創出」としております。これは丸1のところでも追記してございますけれども、分野研究の深化と異分野との連携・融合による研究の幅の広がりがともに重要であるとしているためでございます。
人文学・社会科学が社会からの要請に応えていくためには、分野の研究が深化されて厚みのある知が人文学・社会科学分野に蓄積されていること、また、異分野との連携・融合により研究の幅が広がって、人間や社会の総合的理解と課題解決に資する「総合知」の創出につなげていくことの双方が重要としております。この次の丸2にも関わるんですけども、異分野融合研究と言ったときに、その指し示す範囲が論者によって広い狭いがございまして異なるところ、ここでは異分野との連携・融合としてございます。
次に丸2として、異分野連携・融合研究の類型というのを追記してございます。前回の会議で、今回の会議資料でいうと参考資料2の中にあるんですけれども、この1枚目の資料、前回の会議の中でもほぼ同じものをお配りして御議論いただいたところでございます。今の概要の丸2のところに戻っていただきまして、異分野連携・融合研究というのは以下の2つに類型できるとして、それぞれの特性を加味しつつ推進していく必要があるとしてございます。
以下の2つというのは、大きく分けますと1つ目が共通の課題・事象に対して複数の学問分野からアプローチを行って、新たな知の創出や方法論の革新を目指すものでありまして、これは言わば異分野融合に対応するのかと。2つ目が、ある学問領域の研究のため、他の学問領域の知見や方法論を活用するものであり、異分野連携という言葉に対応するかと考えております。
前者ですけれども、さらに感染症、差別などの社会問題といった共通の大きな課題・事象に対して複数の学問分野からアプローチする研究と、人間の行動などの特定の課題・事象に対して複数の密接に関連する学問分野がつながりアプローチする研究の2つに分けられるとしてございます。
ただ、この類型分けは米印に書いてありますように、二律背反のものでは必ずしもなくて重複するものもあるとしております。今、文字の概要で御説明申し上げましたけど、今のお話というのは先ほどお示した図を文字化したものとお考えいただければ結構でございます。
戻りまして、この丸2の次のポツのところにございますように、異分野連携・融合研究というのは、連携・融合の程度は差がありますけれども、研究の視点ですとか研究手法の新規性というものがあって、それによって分野研究を飛躍的に向上させることがあることも述べているところでございます。
次の大きな加筆修正は、概要でいいますと2枚目の冒頭でございます。これも前回の会議の資料を振り返りますけれども、今回の資料で参考資料2の2枚目になります。こちらも前回の会議資料から引用してございますけれども、この資料を基に御議論いただいたところでございます。振り返りますけれども、人文学・社会科学というものは多様な資料・資源、これを用いて研究して、その成果としてデータベースの構築ですとか、目録、注釈書、資料集とかが作成されますと。それらの蓄積によって研究基盤が形成されるということがあると。
このことを踏まえて中間まとめにおいては、もともと人文学・社会科学における「データ基盤の整備・運用」という項目があったんですけれども、そこの見出しを「新たな「知」の創出を支える基盤」と修正した上で、大幅に具体的には丸1、丸2に当たる部分を加筆してございます。
丸1といたしまして、人文学・社会科学における研究基盤の構築・更新という項目を付け加えてございます。1つ目のポツでございますけれども、先ほど申しましたように人文学・社会科学においては多様な資料・データ、それらを研究した論文などが蓄積されることで研究基盤が構築される特徴がございます。そのため多様な資料・資源の活用ですとか、共有化の前提となるようなデータ基盤を構築していく、充実していくことが必要であるとしてございます。
また現在、人文系の大学共同利用機関ですとか、あるいは人文学・社会科学分野の共同利用・共同研究拠点などにおいて、個々の大学では整備・運用が難しい、そういう貴重な学術資料ですとかデータ等の研究基盤を核として共同利用・共同研究が進められてございます。研究基盤の前提となるデータ基盤は、共同利用・共同研究を通じて広く活用されるべきでございまして、共同利用・共同研究体制による構築・運用が期待されるとしてございます。
次に、この丸2のところも追加してございますけれども、人文学・社会科学における共同利用・共同研究体制の機能強化という項目を追加してございます。人文学・社会科学の研究は、御一方で行うことも多いものでございますけれども、研究の幅を広げたり、あるいはさらに発展させたりするためには、複数の研究者が連携して行う共同研究ですとか、あるいは中核的な拠点の研究基盤を利用する共同利用というのも重要になると。そして、人文学・社会科学において分野研究の深化、異分野連携・融合研究の促進、さらに、その先にある新分野の創成のためには、こうした研究基盤を充実していくことが必要であると。それで、それを担う共同利用・共同研究体制の機能を強化していくことが期待されるとしてございます。
これに続く丸3、丸4、丸5と、そのさらに後に続く「研究成果の可視化とモニタリング」、あるいは「研究成果の国内外への発信」というのは中間まとめの内容をおおむね引き継いでございます。
さらに、これまでの御議論を踏まえまして、今後、特に検討すべき事項というのを加えてございます。概要では、この末尾に1行だけ追記してございますけれども、資料2-1の最後のページに、今後特に検討すべき事項についてという章を付け加えてございます。
今後特に検討すべき事項として3点挙げてございます。1点目が、丸1の「人文学・社会科学における研究基盤について」というものでございます。今期、人文学・社会科学における研究基盤について、その前提となるデータ基盤の構築ですとかデータ規格の重要性に係る議論を深めていただいたところでございます。今後、研究基盤をさらに充実させるためには先ほどのデータ基盤が現状、どうなっているのかの把握を含めて、人文学・社会科学の研究基盤の在り方を大局的に整理した上で、その活用方策ですとか必要な支援について検討を深め、人文学・社会科学における今後の研究基盤の拡充・構築を進めていく必要があるのではないかとしてございます。
次に丸2でございますけれども、「人文学・社会科学における共同利用・共同研究体制について」でございます。前回も御議論いただいたところでございますけれども、大学共同利用機関あるいは共同利用・共同研究拠点は、人文学・社会科学における研究基盤の拡充・構築において中心的な役割を果たすことが期待されておりまして、また、人文学・社会科学の分野研究ですとか、人文学・社会科学と他分野との異分野連携・融合研究の推進、あるいは人材育成においても重要な役割を果たすものと考えられます。そこで、人文学・社会科学における共同利用・共同研究体制の成果ですとか現状の課題、あるいは今後期待される機能や役割について議論を深める必要があるとしてございます。
最後に3点目でございますけれども、丸3、「人文学・社会科学の研究成果の可視化とモニタリングについて」でございます。人文学・社会科学の研究力も客観的に可視化されることが必要であることから現在も取組を進めているところでございますけれども、研究成果に関連するモニタリング指標ですとか、あるいは人文学・社会科学の特徴を踏まえた新たな指標について、引き続き検討・開発を進める必要があるとしてございます。
このほか、表現上の修正や、事前に先生方に見ていただいたことも含めて細かい修正を多々加えてはございますけれども、大きな修正は御説明申し上げたところでございます。先生方におかれては御議論のほどよろしくお願いいたします。
事務局からは以上でございます。
【城山主査】 どうもありがとうございました。
ただいま事務局から説明いただきました内容を基に意見交換を行いたいと思います。御質問、御意見、御自由に御発言いただければと思います。いかがでしょうか。
【仲委員】 もしよかったら。
【城山主査】 仲先生、どうぞ。
【仲委員】 分けて、ここはとか、していただくと、もうちょっと。
【城山主査】 切って、要するに部分、部分を分けてということですかね。
【仲委員】 はい。
【城山主査】 分かりました。そうしたら、どうしましょうかね。
【助川学術企画室長】 そうしたら例えば、まず総論のところと、1、2の総論ところからという形でいいですか。
【城山主査】 1、2が、まず総論ですかね。それから3が推進方策で、3がちょっと多いので3を分けますかね。3.1、3.2、それから3.3と3.4ぐらいをまとめてやるぐらいの感じでしょうかね、そうすると。そうしましたら今の仲先生の御提案に沿って最初、まず総論的な部分で1の「はじめに」と、2の人文学・社会科学の現代的役割について、いかがでしょうか。
仲先生、お願いします。
【仲委員】 ありがとうございます。原案を見させていただいたときには、ウエルビーイングという言葉が入ってなかったんですが、今回入れてくださった。私は人文学・社会科学の研究の意義のひとつは、世界におけるウエルビーイングを高めることだと思いますので、ここにウエルビーイングを入れてくださったのは、大変よかったと思いました。ありがとうございました。コメントです。
【城山主査】 どうもありがとうございます。
ほか、いかがでしょうか。よろしいですかね。多分ここは、特に2のところで人文学・社会科学の現代的役割ということで、必ずしも一つの重点立てて異分野融合みたいなのに限定せずに、基本的なところがどういう役割を果たすかということを強調させていただいて、それがそのあとの3.1のところで、先ほど助川室長からも強調していただきましたけれども、新たな知の創出って形で少し幅広くフレームをとって、その中に分野研究の深化と異分野連携・融合、両方入れたという、それにつながるようなことを多分、2ポツのところで書いていただいたという、そういう構成になっているのではないかなと思います。
【助川学術企画室長】 はい、おっしゃるとおりです。
【城山主査】 よろしいでしょうか。そうしたら、また何かあれば戻ってくることにして、まず、1と2の総論ところは以上でということにさせていただければと思います。
それで、続いて3.1、「新たな「知」の創出」ということで、ページ数でいうと4ページから7ページの冒頭の部分ぐらいまで、この辺りまでですがいかがでしょうか。
皆さん考えていただいている間に、細かいことで恐縮なんですけれども、参考資料2の、図で整理していただいているやつの丸2ですね。ある学問領域の研究のために他の学問領域の知見や方法論を活用するもののところの、何か最後の2つぐらい新しく入っているのかなという気がするんですけど、「情動と脳科学」というのは、これは丸2ですかね。それとも何か、丸1の2つ目のカテゴリーのやつのような気もするんですけど。行動科学で心理学と、あと先進医学だとか、そういったものを統合的に考えるって話をされていて、何か「情動と脳科学・認知科学」というのは単にツールとして利用するというだけじゃなくて、何か考え方みたいなところを心理学的なものと脳科学とか認知科学みたいなところを融合的にやっていくという、何かそういう例だとすると、丸1の2つ目のカテゴリーのような気もするんですけれども。ここ、御趣旨として何かありますかね。
【助川学術企画室長】 ありがとうございます。
ここの丸2に入れたことなんですけれども、他の分野の知見ですとか方法論を利用する、活用する側面があるので、そちらに書いているんですけれども、どうしてもこの丸1と丸2の境目というのは曖昧だったり、曖昧というよりも両方に関わったりというものはございますので。
ここで挙がっている例というのは、特にこの一番下の2つはそうなのかもしれないですが、丸2に当たる側面があることは多分言えるのかなとは思うんですけれども、丸1の側面と丸2の側面、どちらだけであるというわけでもないですし、あるいは丸2のほうが大きい、丸1のほうが大きいとか、そこまでもなかなか書き切れなくて。なので、そういう意味では両方あり得るものも入っているかなとは思っています。ただ、丸2の側面というのはあるかと思い、例として挙げてございます。
【城山主査】 半ば意図的に、多少重なるようなものも、入れておいたみたいな感じでしょうかね、そうすると。
【助川学術企画室長】 例えば丸2の例だと、文化財科学・ヒューマニティーズとか、ある意味、分野みたいに書いておるところなんですけれども、実際に個々の先生方が研究されるとき、あるいは実際の一つ一つの研究をイメージして文化財科学を考えるとしたときに、そのときに人によっては丸1のほうが重点に見えることもあるでしょうし、逆のこともあるでしょうし、とは思っております。
なので、主査がおっしゃったように、私どもとしては両面あり得るものについても丸1の側面があるものは丸1に入れたし、丸2に当たる側面があるものについては丸2に入れておりますけれども。ただ、どうしても論者の方ですとか、あるいは個々の研究を見たときには、こっちのほうが多い、そっちのほうが多いということはあり得るかなとは思っております。
【城山主査】 田口先生、どうぞよろしくお願いします。
【田口委員】 今の点についてなんですけれども、私もちょうど城山先生と同じような疑問を持っていたところだったんですね。「情動と脳科学・認知科学」というと丸1の2つ目の性格が非常に強いような印象があって、情動というテーマをめぐって様々な科学が一緒になって解明していく、その中に認知科学的なものであるとか、哲学や心理学といった人文系に入るものも含まれているという、そういうイメージがあると思うんですね。
ただ、もうちょっと別のものを提案させていただくと、量子認知という分野があるんですね。これは人間の認知を扱う、研究するものなんですけれども、物理学の量子論で使う非可換確率論と言われるような数学を使って人間の認知を研究するもので、これは全然、人間の脳の中で実際に量子現象が起こっているとか、そういう話ではなくて、人間の認知の特性というのがちょうど量子論で扱っている数学でうまいこと扱えるという、そういう研究なんですね。
これは、ちょうど丸2に当たる例なのかなと思いまして、物理学から出てきた数学を人間の認知という全然違う領域に当てはめ、使って研究していると、そういうものだと思うんですね。この辺ももしかして例としてちょうどいいのかなと思いましたので、提案させていただきました。
以上です。
【城山主査】 ありがとうございました。助川室長、どうですか。今、ここで決める必要はないですけれども、もうちょっとツールとしてという側面が強いもののほうがバランス上、いいかなという気もするので、適切なものがないかどうか、少し検討させていただく感じでよろしいでしょうかね。
【助川学術企画室長】 ありがとうございます。今、おっしゃっていただいたのも含めて検討させていただければと思います。ありがとうございます。
【城山主査】 ほか、いかがでしょうか。
森田先生、よろしくお願いします。
【森田委員】 ありがとうございます。今の異分野融合研究のところで資料2-1でいうと5ページの一番下のところに、特に若手研究者、大学院生についてはということで意義が書いてあり、他方で、7ページの一番上のポツのところでは評価は難しいよねということが書かれている点についてです。この報告書をどういうトーンで書くのかということに関わってくると思うのですが、この会議の中で何度か出てきたのは、若手のうちにいきなり異分野融合のところに行ってしまって、自分の分野での何か基盤ができていってしまうと危険なこともあることは何度か、いろんな先生方が指摘されていたと思うんですが、そういう影の部分については書かなくてもよいのでしょうか。
確かに、7ページのところではハッピーではないストーリーも書いてあるのですけれど、5ページのところではハッピーなストーリーしか書かれていません。でも、そこはある程度、慎重にいかなきゃいけないよということを書く必要はないのでしょうか。何か、これだけ読んで、もし若手の方が意気揚々と参加されて将来潰れてしまったら、かわいそうですから。どういうトーンでこの報告書を書くのかということに関連する質問になるのかもしれませんけれども。
【城山主査】 ありがとうございました。助川室長、どうぞ。
【助川学術企画室長】 森田先生、ありがとうございます。そこのところ、いろいろと御議論いただいて御指摘いただいたところでして、そのときに異分野に参画するのは当然いいという前提で、異分野融合研究に参画するに当たっては、まず、自分の専門分野の足場をしっかり固めていくことというのが、まず重要だというのが基本に立った上で、異分野融合研究への参画というのが必要だよねとはしているところでございます。
なので、全体のトーンとしては、まず、ちゃんと専門分野の足場をきちっと固めましょうと。その上で分野を広げる、あるいは自分の分野をほかの観点から見るなりして深めるためにも、異分野融合研究に参画することが必要なのではないかというようなトーンで書かれてございます。
以上でございます。
【森田委員】 ありがとうございます。そうだとしますと、書く順番は逆のほうがいいような気もします。例えば私のような年齢の研究者だったら自分のバックグラウンドができているはずなので、そういった研究者が異分野に参加するのは多分、問題はありません。その意味で、実は2個目の「さらに」のポチのところは、普通の中堅以上の研究者にとっては多分もう警告する必要がないことですよね。
多分ここのところは若手研究者について一番警告をしておいたほうがいいと思うので、むしろ、この3つ目のポチ、「特に」のパラグラフにまとめ込むか、もしくは順番を変えるか、この2つを入れ替えるかしたほうが、警告の色合い、特に若手にとって5ページの下から2つ目のポチが深刻、重要ですよということの警告になるかと思うのですけれども。
【城山主査】 どうもありがとうございました。ただ、この文章がどう出てきたかの経緯もあるんだと思うんですけれども、難しいのは、大きなくくりが丸3になっていて異分野融合研究の推進というセクションに入っちゃっているわけですよね。だから、ここの書き方だと多分、こういうトーンにならざるを得なくて。ただ、逆に言うと今回、3-1のところは新たな知の創出にしてもらって、異分野融合研究もあるんだけど、分野研究の深化も大事ですよというのを3.1の丸1のところへ書いていますよね。だから、若手にとっても何か、そこの分野研究の深化というか、その基礎のところをきちっとやることが大事なんだというようなことを、むしろ丸1のところでも何らかの形で言及しておいて、それを受けて丸3で異分野融合研究も大事なんだけど当然、さっきも言ったように基礎の部分もちゃんとやれるようにしないといけませんよね、ぐらいの感じの順序のほうがいいかなって気もするんですけどね。
何か助川さん、そこら辺、御意見ありますかね。
【助川学術企画室長】 ありがとうございます。私もそうかなと思っておって、特にこの丸3のところ、今、主査おっしゃっていただいたように異分野融合研究の推進という観点からの記述で、ただし、ちゃんと足場を固めていくことというのがあるということなので。
ここのところは、もしよろしければこのままにした上で、ただ、この新たに加えた3.1という、この章の中の一番最初に付け加えさせていただいたものですので、分野研究も異分野研究も両方必要ですよというところの、そこのところに足固めというんですかね、ということも触れさせていただく形でいかがでしょうか。
【城山主査】 森田先生、こんな感じでよろしいでしょうか。
【森田委員】 はい、よろしいです。
【城山主査】 そうしたら3.1の丸1のところに少し、基盤的研究が大事だとだけじゃなくて、特に若手にとって足場づくりが大事だみたいなことが分かる趣旨を入れる感じでしょうかね。
【助川学術企画室長】 ありがとうございます。
【城山主査】 白波瀬先生、よろしくお願いします。
【白波瀬委員】 ありがとうございました。この点について全体のトーンということで、360度、完全なものというのはできないので、全体としては異分野融合を推進して、異分野融合も突然何か中堅になってからやりましょうではなくて、若いときから練習の場も含めてというような感じかなと思ったんですね。
ただ、そのときに、そっちを全体の流れとしてはあるんですけど、しっかり足固めしておくことは極めて重要であるという、どっちかというと、異分野融合の推進が各専門分野の方法論をしっかり習得する方向性を否定するものではないところがキーポイントなような気がするので、その点は1行、どこかで入れておいてもらうけれど、でも全体としては新たな知の融合というところで、もう進めていただくのが、読み手については分かりやすいかなという印象を持っております。
以上です。
【城山主査】 ありがとうございました。たしか、どこかに異分野融合研究を通して、むしろ各分野が再活性化されるというか、基盤が強化されるような文章、どこかに入れていましたよね。助川さん。
【助川学術企画室長】 城山先生、白波瀬先生、ありがとうございます。
先ほどの加筆したところの説明で漏らしてしまったのかもしれないんですけど、ページ下の番号でいうと4ページのところなんですが、具体的にいうと3.1の「新たな「知」の創出」の最初のページになるんですけれども、ここの「分野研究の深化、異分野連携・融合の必要性」で、分野研究、異分野連携・融合研究、どちらかじゃなくて双方推進することが重要ですという話の中で、城山先生がおっしゃったことというのは、ここなのかなと思います。
異分野連携・融合研究に取り組むということは自らの本来の研究を見直すきっかけになったり、あるいは、その分野研究の成果が分野研究を向上させたりことになるため、人文学・社会科学研究そのものを発展させることは書いてございます。
先ほどの説明できちんと申し上げてなくて失礼いたしました。以上でございます。
【城山主査】 どうもありがとうございます。何か全体のトーンとしては白波瀬先生、言っていただいたように何かトレードオフというか、どっちかみたいな話ではなくて、うまくやると相互に補完的なるんですよという、そういうラインを目指しているんですよというトーンで全体が読めるようにするということですかね。何か、そういう意味では注意書きみたいなこともしかるべきところには必要ですが、相互補完的というか、Win-Win的なることも記述するという、何かそういうトーンで書かせていただく感じでしょうかね。
白波瀬先生、今のような感じでよろしいですかね。
【白波瀬委員】 はい、結構だと思います。ありがとうございます。
【城山主査】 どうもありがとうございます。
山中先生、お願いします。
【山中委員】 ありがとうございました。6ページと7ページに、異分野融合に努力している機関や人材を正当に評価すべきだということが入っているのがとてもうれしいというのが、まず感想です。ただ、6ページ2つ目の黒丸で、今後、このような人材育成を後押ししていくという意味でも「機関において正当に評価される仕組みが重要」と書いてあって、7ページでもう一度、成果と評価のことが出てくるのですが、この2つの関係というのを教えていただきたいと思います。
【城山主査】 まず、助川室長、いかがでしょうか。
【助川学術企画室長】 ごめんなさい。今、聞き漏らしてしまって、どこの部分とどこの部分でしょうか。
【城山主査】 6ページの下から3つ目のポツですかね。要するに異分野融合をサポートする人材の仕組みなり、人材が各機関において正当に評価されるべきだということは書いていますねというのが一方であって、7ページ目の一番上のところで、異分野融合研究の成果と評価というところのニュアンスが、若干難しい側面が出ているので、正当に評価できる仕組みができるべきだ、みたいな感じになるとトーンが合うんだけど、若干違うんじゃないでしょうかという、そういう御趣旨ですかね。
【山中委員】 そこまではっきりは。どういうふうにつながるのかなという質問でした。
【城山主査】 なるほど、なるほど。
【助川学術企画室長】 失礼いたしました。ここの6ページの下から3つ目のポツは、つないでくださる人材ですとか、活動をサポートされる、チームとして一緒に研究していく人材というのがしっかりと評価される必要があることを述べているところです。
次のページでも正当に評価ということが書いてあるんですけれども、ここのところは、異分野融合に取り組んでいて、例えば、伝統的な分野だと伝統的な分野の中で研究の成果が評価を受けることになりますけれども、そこをつなぐ・連携する・融合するような研究となった場合に、過度に片方の分野に寄ってしまう、逆の分野に寄ってしまうとなってしまうと、せっかく両方の分野を連携・融合させて研究させたとしても、一つの観点から評価されてしまうとなってしまい、正当に評価を受けられないことがあるということでございます。
なので、また、7ページのところでも評価という言葉が出ているのを若干付言いたしますと、人文学・社会科学とかも含めて、研究をしていただいたその成果が例えば論文になりましたというのも一つあると思うんですけど、それに限らず、社会実装・政策形成につながった、あるいは別の実務者に影響を与えたような社会的インパクトというような、そういうインパクトもしっかりと把握して、それが研究の成果として見ていただけることが必要だよねということを書いているところでございます。
書き分けといいますか、文章を書いた趣旨としては以上でございます。
【山中委員】 ありがとうございます。
【城山主査】 あれですよね。だから要するに異分野融合研究的なものをきちっと評価するのは大事だということまでは、少なくともここで同調すると。前のところは、特にサポート人材等について機関で評価してほしいことをかなり個別に述べていて、それに比べればジェネラルになっていますと。
ただ、より踏み込んで言うんだとすると、そういう研究者、そういう横断的な研究の評価みたいなことも何か先端的、先導的な機関においてはやってほしいというニュアンスはあるんだと思うんですが、そこまでは明示的には書き込んでないぐらいの距離感になるのかなと思いますけれどもね。取りあえずはこんな感じでよろしいでしょうか。
【山中委員】 はい、ありがとうございました。
【城山主査】 どうもありがとうございます。
北本先生、お願いします。
【北本委員】 北本です。先ほど若手研究者のお話がありました。若手の間は基礎固めが重要であるという点については全く異論ありません。一方、融合研究の類型に2種類あるうちの、例えばデジタルヒューマニティーズなどの側に関して言えば、どちらかというとツールを使いこなすことが異分野の知見を取り入れる上で重要な課題となってきます。このような課題については、実はハードルがそれほど高くはなく、むしろ積極的に取り入れた方がいいという面があります。
特に生成AIなどが出てきて、プログラミングもどんどん敷居が低くなっていく中で、そういった新しい考え方を取り入れ、分野の方法論自体が変わっていくところに積極的に関わることも可能です。むしろ若手の方が、新しい考え方を柔軟に取り入れることを得意とする面がありますので、自分にとって良い時期を逃さず、積極的に取り入れていくべきではないかと考えています。
ただ、ここで忘れてはならないのは、人文・社会科学の最も大切な考え方である「批判的精神」だと思います。新しい技術を単に取り入れるだけでなく、この技術を使うことが本当に正しいのかという、遠くから批判的に見る視点も必要です。若手の場合に危険なのは、ツールの使い方を覚えることにどんどんのめり込み、批判的精神を忘れてただただ使う方向に進んでいってしまうパターンです。こうした危険性は、若手研究者に警告しなければならないことかもしれません。
ですので、そういった批判的精神を備えるべきなど、理論を深めていく方向にどんどん進む自然科学とは異なる視点を身につける。それが人文・社会科学分野の足固めとして大切であるというメッセージが入れられるとよいのかなと思いました。
以上です。
【城山主査】 どうもありがとうございます。2つ御指摘いただいて、1つ目の、あれですかね、異分野連携のハードルが高くないみたいな話は、むしろ最初の3.1の丸1とか、そういう冒頭のところで2つの要素がありますよと、根っこは大事ですよというのを言うと同時に、ある意味ではハードルの低いところから、やれるところからやっていくようなことというのは可能ですよ、みたいな感じのニュアンスで、どこか入れられるといい、そんな感じでしょうかね。
【北本委員】 そうですね。それに加えて、若手はむしろそういったことが得意なはずという期待も込めて。
【城山主査】 なるほど、なるほど。
【北本委員】 あまりブレーキをかけすぎない。
【城山主査】 あまり、だから若手は根っこが大事ですよってだけだと若干ブレーキになってしまって、そういうやりやすいところから、むしろやっていくみたいなことがあり得るみたいなことを記述する感じでしょうかね。
あともう一つのツールに引きずられるという面と、ものによってはデータに引きずられるみたいな話もありましたが、データがあるから、研究しますみたいなので、もちろんそれは重要な要素なんだけど、社会の設計としてはもっといろいろやらなきゃいけないこともあるかもしれないという。だから、その辺の話というのは、どこに書きますかね。データ基盤は重要なんだけど、何かデータ基盤があるところだけに研究が寄ってしまうのもある種、バイアスがかかってくるんだみたいなことをどこかで触れられるかどうか、考えてみるって感じでしょうかね。
【北本委員】 はい、そうですね。
【城山主査】 助川さん。
【助川学術企画室長】 ありがとうございます。データだとか、そういう話については3.2のところとかも含めて、それなりに書いておって、それでデータの利活用という形で出てきていますけれども、データ基盤が人文学で構築されれば、実際にヒューマニティーズというのにつながりやすいので、データの利活用というのもしっかりやらなくてはならないということをここに書いておるんですけれども。
ただ、まさに先生、おっしゃったように人文学・社会科学のそもそものありようというところ、現代的役割のところで書いたことに戻るんですけれども、そもそも人文学・社会科学というものが例えば、この知見が社会の生き方、人間の生き方の再考に寄与する、ということも述べているところでございます。
私ども事務局としては、事務局が案を作成する段階では人文学・社会科学というのは、そもそもそういうものだという書き方をしたんですけれども、まさに研究者のありようのところで人文学・社会科学の研究者は批判的でないと駄目だという言葉では、こちらからの提案として書きづらくて、今、おっしゃったことの半分ぐらいは、ここの現代的役割のところには入っているんですけれども、もう少し書き加えたほうがよければ、例えば総論のところでも書くというのはあるのかと思います。
【城山主査】 ある程度、総論のところに書いていただいていると思うんですが、その話とデータ基盤みたいなところの関係がどうなのかというのがあるんだと思うんですよね。だからデータはもちろん活用して、デジタルヒューマニティーズでやるところをやっていくのは大事なんだけど、人社としてやるべき課題がそこに限定されるかというと、研究領域ってもうちょっと広いんですよということが分かる、何かつなぎの言葉がどこかにあるといいなという感じはするんですが。
【助川学術企画室長】 その辺りは考えさせていただければと思います。
【城山主査】 北本先生の2つ目の問題提起も含めて、そこを考えさせていただくということでよろしいでしょうかね。
【北本委員】 批判的という言葉を明示的に入れるのが難しいという点は理解できますし、そのあたりの概念は、今の文章でも大まかには入っていると思います。ありがとうございました。
【城山主査】 仲先生、お願いします。
【仲委員】 ありがとうございます。すいません、細かい小さいことに戻ってしまうんです。先ほどの7ページの評価のところですけれども、7ページの1段落目の「(異分野融合研究の成果と評価)」には、もともとは「論文によって評価するよりも、社会実装や政策形成、実務者への影響等によって社会的インパクトを重視した評価を行うことが必要」と書いてあったかなと思うんです。
「論文で評価するよりも」というと、何か論文があまり価値を持たないような感じになってしまうところなので、取ったらどうかなと、この間、コメントしたところだったんです。けれど、取っちゃうと、論文とか著作というのは関係ないのかということになるかもしれないので、すいません、細かいんですが、ここのところ、「論文、著書等のみならず」、みたいな一言を入れれば、それも重要だけど、ここに書いてくださった、政策形成とか実装も重要、というのが生きてくるかなと思いました。すいません、これが1点です。
あともう1点、先ほどのデータ基盤というところですけれども、総論のところにあった批判的思考を持ってとか、批判的な精神も持ちながらというのは、大変重要な価値であり、入るといいなと思うんですが、データのことは、今までになかった、さらに推進したいことだと思いますので、これはこの形で出すのがよいと思いました。
以上です。すいません、たくさんで。
【城山主査】 だから1つ目のところ、あれですかね、仲先生、修文していただいたんだけど元のほうがいいかもしれないという。
【仲委員】 元ではなくて、元は「論文より」もだったので。
【城山主査】 元が強過ぎる。
【仲委員】 「よりも」じゃなくて「のみならず」とか。
【城山主査】 そう。「よりも」ではなくて「何々だけではなく」ぐらいの感じにするってことですね。
【仲委員】 そうです、そうです。それがいいかなと思います。
【城山主査】 後半は、先ほど私が申し上げたのは、データのところの話を何とかなくすとか、限定するって意味ではなくて、それはそれで当然やるべき話で、だけども、それで引っかかってこないところでやるべき領域みたいなものも多分、人社の中にはあるでしょうという、何かそういうニュアンスでどこかに書く感じで申し上げたんで、そういう感じだと、そんなに矛盾はしないですよね。
【仲委員】 そうですよね。今までのことももちろん、当然重要だし、やっていくのはあるけれども、ということになるかなと思いますので。
【城山主査】 助川さん、大体よろしいですかね、こんな感じで。
【助川学術企画室長】 はい。そのような方向で検討したいと思います。ありがとうございます。
【城山主査】 山中先生、お願いします。
【山中委員】 度々申し訳ありません。今のお話を聞いていて、さっき、もやもやとしていたことが分かったので、もう一度。7ページの評価のところなんですが、「その際、学術的な成果が与えたインパクトを適切に把握し、評価することが必要である」と、こう書いたときの主語が誰かなというと、これを読んだときにたぶん研究者は、文科省とか、そこにつながるこういう委員会とか、評価委員会とかが、「これからは社会的なインパクトを評価していくんだ」と言っているように見えてしまうと思うんです。でも、本当に若手の就職に大事なこと、正当な評価ということで、6ページと結びつくのは、それぞれの学会がこういうものを正当に評価していく、ということが大事なんじゃないかなと思いました。
何か、そういう「それぞれの学会、コミュニティが」というような言葉が入ると6ページともつながるのではないかと。今の文章を見ると、目先がきく人たちは「そうか、今度はこういう研究をすればお金が取れるんだな、としか見ないのではないかなと思いました。
以上です。
【城山主査】 ありがとうございました。これ、私が先ほどコメントで申し上げた、ちょっとぼかしていますねという趣旨なんですけれども。どこまで書き込むかにもよるんですが、全体のトーンとして、共同研究・共同利用機関みたいなところにいろいろな先導的な役割を期待していきますと、単にデータだけじゃなくて、異分野融合研究だったり、新しい領域づくりだったりというのを期待している部分もあって。本当は、研究機関レベルで少なくとも、そういうところに重点を置くような研究機関をまずちゃんと評価をして、多分その後にジェネラルな学会みたいのが入ってくるんだと思うんですよね。
だから、そういう誰がこういう人のまさに評価の担い手になっていくかというところで、さっきのサポート人材については機関というのを明示しているんだけれども、ここはおっしゃったようにまさに明示していないんですよね。だから、そこをもうちょっと書き込むかどうかというのは、確かに一つの大きな選択かなと思います。
山中先生としては、もうちょっと何か、学会はもちろん入ってくるんだと思うんですけど、全ての学会が同時にという感じでもないような気もするんですよね。先導的な分野横断的な学会はもちろん、そういうところ、評価していると思うので、そうすると何か、むしろ研究機関レベルの何か評価、人事評価とかでそういうことをちゃんと考えることが大事なのかなという感じは個人的にはしますけれども。山中先生、何かその辺、どういう御感触でしょうかね。
【山中委員】 はい、そう思います。
【城山主査】 助川さん、どうですかね。踏み込めるかどうかなんですけど。
【助川学術企画室長】 私ども、ここ主語を入れなかったところなんですけれども、まず、ただ、学術的な成果自体を役所が、これ、いいよね、悪いよねというようなものではないので。ただ、ここの私どもの意図としては、そういうものではないとした場合は要するに学術的の成果だとか、そういうのを判断する人たち、かなりぼやっとしているんですけど、アカデミアといいますか、コミュニティといいますかが評価するべきだよねという程度で書いているところです。
ただ、それが機関の人事だとか、そういうところまではあまり踏み込んでいなくて、ちゃんと学術的な成果を、これはすごいよね、すごくないよねというのを、そういうのはちゃんと判断されるべきだよねという程度で書いたので、なので、あえて主語は入れていなかったつもりでございます。
機関の人事に反映すべきかどうかとか、そういうのが透けて見えるような言いぶりまでには、特にしていなかったんですけれども、もしあれでしたら、今これ、主語がなく「することが必要である」と能動態で書いてあるのでちょっと分かりづらいんですけれども、主語を書くわけではなくて、これを受動態にすると、「インパクトが適切に把握し、評価されることが必要である」というような感じだと違和感がもうちょっと薄くなるのかなと思ったんですが、いかがでしょうか。
【城山主査】 ただ、あれですよね。それでも曖昧にしている点は変わらないですよね。
【助川学術企画室長】 おっしゃるとおり、曖昧なのは変わらないです。
【城山主査】 さっき機関って申し上げたのは多分、全ての機関ということは多分あり得なくて、ただし融合型の研究をやっていくんだという形で自らをアイデンティフィケーションしたりだとか、あるいは、そういう観点での共同利用・共同研究機関を目指すという、機関であれば、そういう人事評価のある種の先進的な事例というのを開拓してくることも大事で、それはデータに関して共同研究・共同利用機関に先導的役割を果たす、期待するのと同じように、こういう評価においても何か先導的なことをやってくれる機関が出てくることを期待します、ただ、それを全てが同時にやるような話ではありませんという。何かそういうニュアンスというのはあり得るのかなという気もするんですけどね。
【助川学術企画室長】 表現ぶりについては考えさせていただければと思います。
【城山主査】 ここは、むしろここでの議論もありますが、その後の共同研究・共同利用機関に何を期待するかというところも結構、今回少しスコープを広げているので、多分そこの書きぶりとも関わってくるのかなという気はします。そこで後でまた引き取って検討するということでよろしいでしょうかね。
安田先生、お願いします。
【安田委員】 ありがとうございます。自然科学からの観点なので、ずれていたら御指摘いただきたいんですけれども、評価のところで私は一つ入れたほうがいいかなと思ったのが、この評価を短期的にするのではなくて、長期的な時間スケールでちゃんとそういう仕事を評価するところが必要かなと思っております。
自然科学とかだと、そもそも何かいい成果を出すのに何年もかかる事態が起きて、さらにそれが公表されてから何年もたって、ようやく真価が認められることも有り得るんですけれども、何か人文学・社会科学の場合ですと、その傾向がさらに顕著になる傾向はないのでしょうか。発表時にはまだ社会ですぐに実装されるような内容ではなかったとしても、そこに書かれている考え方だとか哲学的なものも含めて、タイムラグがあったのちに大きな社会的インパクトを持ち得るのかなと私は勝手に想像しています。もし、そういうものがある場合でしたら、もうちょっと時間スケールで余裕を見て評価をちゃんと短期的に決めつけないというところも、一言入れるべきだと思いました。
あと、データベースに関しましては社会から分かりやすい形で成果を見せる意味では解説できる何かがあるというのはすごく重要なことで一般人への可読性、理解できるようなAIシステムの実装が同時にできると、データベース自体が一般市民も含めたユーザーにとってより有益なものになると思います。
【城山主査】 ありがとうございました。今の点、1つ目はまず、そういう極めて重要な要素と思います。社会に関するイメージにしろ、制度設計にしろ、発案してすぐに使われるということはめったになくて大体、案が出てくる流れと政治的意思決定の流れっていうのは大体ずれているのは通常、実際あるので、そういう意味でいうと長期的な観点で見ることが大事であるのは多分すごく大事な点で。
恐らく入れるとすると、3.3のところの丸2で、例えば研究成果の捉え方の多様性とかありますが、成果の多様性だけじゃなくて時間軸を長くとってちゃんと見ることが大事だ、みたいなことを入れられれば、入れると。
【安田委員】 そうですね。あと、インパクトの何か潜在性そのものの評価でしょうか。すぐにインパクトを与えたかどうかではなくて、何か、これはすごく価値のあることを言っていて、今すぐ何か社会実装されなかったとしても将来、人類にとって役立つようなことって人文社会学系にはたくさんあると思うんですけれども、そうしたものを同じ分野の方が見極めて、これ、すばらしいと思うよというところを評価できるような形になるとすごくいいのかなと思いました。
【城山主査】 そうですね。技術の世界だとレディネスレベルみたいな話をしていて、要するに準備が整っていますかどうかみたいな話ですよね。何かそういうストックが増えていっているかどうかをきちっと見るみたいな評価というのもありなんだと思いますね。
というのが一つと、もう一つは、おっしゃっていただいたのは、あれですかね。だからユーザーとのインターフェースの設計みたいな話があり得るということですかね。だから今のでいうと、10ページの丸5のデータの利活用というところとかで例えば、ユーザーフレンドリーなインターフェースのつくり方みたいなものを考えてみるのも大事だという、何かそんな感じで入れたらどうかという感じでしょうかね。
【安田委員】 はい、まさにそのとおりです。ありがとうございます。
【城山主査】 助川さん、よろしいですかね。この点は。
【助川学術企画室長】 ありがとうございます。表現ぶりも含めて、うまく伝わるような書き方も含めて考えてみたいと思います。
【城山主査】 ほかはいかがでしょうか。
木部先生、お願いします。
【木部委員】 基盤の3.2のところでもよろしいですかね。
【城山主査】 どうぞ、どうぞ。
【木部委員】 多様な資料・データというのが基本になっているわけですよね。いろんなところ、それぞれの項目のところで出てきていて、これが人文のデータとして非常に特色のある点だと思うんです。
ただ、「多様な」と言ったときにどういう意味で多様なのかというイメージが明かではありません。実はそれが初めて出てくるのが8ページの丸3の2つ目のポチの4行目の「文字、モノ、図像、音声等多様である」、ここになって初めて「多様」の内容が出てきます。これがもう少し最初の方に出てきたほうが、読むほうが分かりやすいと思います。
データというと普通イメージするのは、自然科学の場合は数値化されたデータ、人文系でも文字化されたデータをイメージする人が多いんですが、そうではなくて画像だとか、写真だとか、動画だとか、音声だとか、こういう多様なものがあることが人文データの特色で、これらがそれぞれネットワークでつながる、インターフェースでつながるというところに人文系のデータの利用価値の高さの理由があると思うんです。
それが分かるようにするためには、3.2の丸1のところの「多様な資料・データ」というところでもう少し具体的イメージを持ってもらって、こんなにいろんなものがある、それらをそれぞれネットワークでつなぐんだ、あるいはインターフェースでつなぐんだというようなことが主張できると、もう少し人文社会系のデータの価値を分かっていただけるんじゃないかなと思いました。
【城山主査】 ありがとうございました。だから具体的に言うと多分、今の8ページの丸3に書かれているような話をむしろ、7ページの丸1のところに冒頭に持っていって、それをやることによって、この分野のデータの特色ははっきりするし、逆に言うと、さっきの異分野協働の在り方にも関わるんだと思いますけど、この分野のデータをデータサイエンスなりをやることが、サイエンスにとっても一つの新しいチャレンジになって、彼ら自身のイノベーションにも寄与するみたいな話にもつながってくるという、何か、そんなニュアンスでしょうかね。
【木部委員】 そのとおり、おっしゃるとおりです。私が申し上げたかったのは、そのとおりでございます。
【城山主査】 助川さん、よろしいですかね、今の点。
【助川学術企画室長】 私の参考資料2-2の2ページ目の説明でも、そこから説明していると思うので、それが前に来るような形で。
【城山主査】 文章として明確にするということですね。
【助川学術企画室長】 かしこまりました。ありがとうございます。
【城山主査】 後藤先生、お願いします。
【後藤委員】 後藤でございます。先ほどの北本先生の御発言の議論に関わりまして、基盤のところの3.2の丸5のところに、ここにデータの信頼性であるとか、データの取得範囲ということを入れるのがいいのかなと少し思いました。この部分にデータの利活用ということが、基盤ベースの話ではあるんですけれども、ここに入れて、例えばその際、データの信頼性やデータの取得範囲の状況なども理解できるような人文学・社会科学の方法論に基づくデータの利活用の方法の検討・共有も求められるとか、何かそういうふうに一言入れておくとデータの取得範囲の課題であるとか、先ほどの異分野の人材育成みたいなところのフォローにならないかなというのは少し思ったんですけれども。
ここに、まずはデータ基盤のところでデータをどういうふうに使うかとか、データの範囲の問題でデータを勘違いしない、データだけを使わないとかというときに、むしろ、ここの辺りに入れておくということで一つ解決するという方法はないかなと思ったんですけども、ずれ過ぎますかね。
【城山主査】 こういう御趣旨ですかね。利活用のところは今の書き方だと何でも利活用しましょうになっているんだけど、活用する際の注意事項というか、限界みたいなものをきちっと認識して利活用しましょう、みたいなことを書く感じでしょうかね。
【後藤委員】 そうですね。むしろこちらに入れておいて。あともう一つ重要なのは、人文学・社会科学の方法論に基づいた信頼性のあるデータを出していくこと自体も人文学の側にむしろ求められておりますので、その辺りまで含めて入れられるように、この利活用の文脈の中で少し、そういうことを入れておくとか、あと、データを利用するときのデータリテラシーみたいなところを少し入れておくということで、北本先生の御発言というか、議論をうまく吸収できないかなと考えました。
【城山主査】 ありがとうございます。リテラシーのところは、まさにここで書けそうですよね。だから信頼性を考えろというのは利活用の段階の話でもあるし、むしろ構築の段階の話でもありますよね。だから、ここだけで書くのがいいのかどうか、微妙かもしれないですよね。
【後藤委員】 そうですね。基盤構築のところに入れる信頼性そのものはデータを作る側の仕事でもあるんですけれども、それを全体のどこに入れるかというとなかなか難しいので、まずはここにならざるを得ないのかなという関係でそこを申し上げたところです。
【城山主査】 少なくとも、ここには何らかのものを入れて、構築のところで入れられるかどうか、要検討というぐらいの感じでよろしいでしょうかね。
【後藤委員】 はい。そのようなイメージで。
【城山主査】 助川さん、そんな感じでこれもよろしいでしょうかね。
【助川学術企画室長】 先ほどの北本先生のコメントも含めて、後でまた考えたいと思います。ありがとうございます。
【城山主査】 既に3.2に入っていて、時間の関係でいうともう全体を通して、ほかの部分を含めてお伺いしたほうがいいかなと思いますが。
井野瀬先生、お願いします。
【井野瀬委員】 先に行くときに聞き損なってはと思ってなんですけれども、さっきから問題になり、そして少しずつ進展していっている融合・連携なんですが、これは異分野といった場合に自然科学等が想定されているように書きぶりとか、思うんですが、これ、人文学・社会科学、相互・内部のというようなことは書かれていますでしょうか。
【城山主査】 多分1回、前も議論した覚えがあって、多分我々の趣旨としては人社相互も話も入れるということだと思ったんですが、それが表現として明確になっているかどうかですね、多分確認したほうがいいのは。
いかがですかね、助川さん。
【助川学術企画室長】 もともと単にここ、異分野と書いてございますので人文の中、あるいは社会学の中、あるいは人文学と社会学というの、そういうのを広く含めて当然、なので、例えば歴史なら歴史とほかの分野という意味では、相手先が人文のこともあるし、自然科学のこともあるし、社会学のこともあるしとは思っております。
【城山主査】 そこ、確認させていただいて。総合知みたいなものとくっつけちゃうと、総合知って若干、理科系と文科系の知識を融合したみたいなニュアンスが結構強いので、総合知だけではないんですよという辺りをどこかで書いておいたほうがいいような気がしますね、確かに。
【井野瀬委員】 私も全く同じことを思いまして、人文学と社会科学、総合しても全然違うものなので、お互いに刺激し合うのは当然あってしかるべきで、それもないと、それぞれの自分たちの専門というものがベース、重要だよというようなニュアンスも伝わりづらいかなと思ったんですけど、いかがですかね。
【助川学術企画室長】 もともと、2つぐらいの文脈があって、今、先生がおっしゃったようなこともあるし、ただ、一番最初の現代的役割のところにもありますけれども、例えば技術の発展とっていったときに、そのときに人文学・社会科学の力が必要となるようなことも一緒に述べているので、なので、自然科学だけじゃないですよねということもちゃんと書いてあるんですけれども。
趣旨としては人文学の中でもちゃんと、ほかの分野と連携・融合しましょうね、ということは前提だけど、というつもりだったんですけど、それが読む人にとって分かりづらいということであれば、表現は考えさせていただければと思います。
【井野瀬委員】 なぜ分かりづらくなるかというと、人文学・社会科学という表現が続くんですね。これが、あたかも一つのように思われてしまうと困るので、どこかで1か所、内部とか相互とか、何かそういうことを連想させるものを入れておいたほうがいいかなと思った次第です。内部で私たちの中で合意があるのは分かっているので、表現として、それがあったほうがいいかなというのが、そういう意味でした。
【助川学術企画室長】 ありがとうございます。そんな感じで1回表現ぶり、検討させてください。ありがとうございます。
【井野瀬委員】 はい、お願いします。
【城山主査】 書くんだとすると2ポツの現代的役割のところにそういうことも触れていただくのがいいのかなと。今は1ポツのはじめが、第6期科学技術・イノベーション基本計画から始まっているので、より大きい総合知的な話から入らざるを得ないのは確かなので。ただ、人社の役割を考えるとボトムアップに内在的にいうと内部の相互関係ってすごく大事だって強調しちゃっていいと思うので、その辺りを2ポツのところに書いていただく感じかなと思います。
【井野瀬委員】 よろしくお願いします。主査、ありがとうございます。
【助川学術企画室長】 ありがとうございます。すみません。
【城山主査】 青島先生、お願いします。
【青島委員】 私、すごく細かいことなんですけれども、7ページ目の最後のポツのところなんですけど、まず、本当に細かいことでいうと下から4行目、「一般/個別」の研究者ってどういうことかなと思いまして、それが1点と。
あとは最後から2行目のところで、共同研究を通じて多くの研究者に活用されるべきものであることから、大学共同利用機関、共同利用・共同研究拠点からなる共同利用・共同研究体制によってというのは、ここまで、もうはっきりこういうことだったのかなって単に思っただけで、共同研究機関がこういうことをやっていくのはそのとおりかなと思いつつ、全国にある共同利用研究機関が集まって、こういう体制をつくることまでもきちんと言っているということでよろしいのかなということの確認の2点です。
以上です。
【城山主査】 まず、1つ目いかがでしょうか、助川さん。
【助川学術企画室長】 先に2点目から申し上げます。共同利用・共同研究体制のところで、特に大学共同利用機関、共同研究拠点というのがちゃんと入るよということが分かるようにイメージはしたんですけど、「からなる」という限定列挙みたいな言い方が適切なのかどうかというのはありまして、大学共同利用機関、共同利用・共同研究拠点などの、これは機関名、拠点名だから「などの」のほうがいいのか、分からないんですが、少なくとも限定列挙じゃないような形で、この両機関が見えるような形で表現ぶりを検討させてください。
【青島委員】 分かりました。それでよろしいと思います。
【助川学術企画室長】 1点目なんですけれども、個別の研究者というのは、まさに個々の研究者ということで、一般って言った場合、研究者に限定されなくて広くというようなつもりで書いたんですけれども、日本語として読みづらかったかもしれないので表現ぶり、検討させてください。
【青島委員】 承知しました。よろしくお願いします。
【城山主査】 どうもありがとうございました。
尾上先生、お願いします。
【尾上委員】 ありがとうございます。すいません、細かいことで恐縮なんですけど、6ページ目に4つの黒点が書いてあるんですけれども、3つ目がかなり異質で、どっちかっていうと2個目と4個目がつながっていくといいのかなと思いまして。3番目と4番目、もし入れ替えることができると、非常に流れとしては、すっと入ってくるかなというのが思いました。簡単な意見ですいません。
【城山主査】 6ページのどこでしたっけ。
【尾上委員】 要するに、事務処理の共通性という話。
【城山主査】 そうですね。
【尾上委員】 この2番目の。
【城山主査】 多分2ポツ目と4つポツ目はサポート人材だとか人材の話で、最後は流動するといい、みたいなことを書いているので、そういう話と事務手続の話はサンドイッチにするんじゃなくて分けたほうがいいという御趣旨ですね。
【尾上委員】 3番目と4番目、入れ替えるといいかなと。
【城山主査】 入れ替えるということですよね。分かりました。
これはよろしいですかね、助川さん。
【助川学術企画室長】 今、ぱっと見の感想なんですが、確かに、ここが挟まっちゃっている感じがするので、ひっくり返す方向で表現、検討させてください。ありがとうございます。
【城山主査】 よろしいでしょうか。ほか、いかがでしょうか。最後まで含めて基盤の部分と、それから可視化モニタリング、それから発信の話で幾つか、まだ残っているかと思います。
田口先生、お願いします。
【田口委員】 北大の田口です。一番最後の、本当に最後の最後のところの13ページの注の19のところに、AIにより資料へのアクセスや研究方法も変わっていることを念頭として議論される必要があるとあって、これを拝見して、なるほど、そうだなと思ったんですけれども、この箇所じゃなくて別の箇所に書くべきことかとは思うんですが、AIをツールとして使うことによって結構、研究倫理の在り方なども変わってくることがあるのかなと。それでいろいろ考えていたんですけど、AIに限らず、異分野融合全般で結構、人文系の研究者にとって研究倫理への考え方というのが変わってこないといけないのかなということも考えまして。
つまり、人文系だと普通あまり研究倫理というものは、それほど気にする必要がない分野が多くて、例えば研究をやるのに倫理審査委員会を通さないといけないといったことは、ほとんど関係ない研究者も多いと思うんですね。しかし異分野融合研究をやると、そういう倫理審査委員会を通さなきゃというようなことが関係してきたりもするし、あるいはAIを用いて、あとビッグデータを使って研究するとかということになると、これまでとは違った研究倫理の在り方が意識されないといけないのかなという気もしたわけなんですね。
どの辺に入れるべきなのかなというのも考えていたんですけれども、3.1の丸3の異分野融合研究の推進、マネジメントの在り方というのも書いてあるので、この辺に1個ポツを加えて入れたりなんていうことも検討してもいいのかなと。絶対入れなきゃいけないというほどの強い意見ではないんですが、そんなようなことも視野に入れてもいいのかなと考えた次第です。御検討いただければと思います。
【城山主査】 どこに入れるといいんじゃないかという御提案でしたっけ、最後。
【田口委員】 すいません、3.1、5ページのところの丸3、異分野融合研究の推進。
【城山主査】 丸3、マネジメントですね。
【田口委員】 ここに研究マネジメントの在り方というのがあるので、この辺りかなというのを考えたんですが、その辺、御検討いただけたらいいのかなと思った次第です。よろしくお願いいたします。
【城山主査】 これ、助川さん、どこに入れるか含めて検討させていただくということでよろしいでしょうかね。
【助川学術企画室長】 場所も含めて検討してさせてください。ありがとうございます。
【城山主査】 ほか、いかがでしょうか。もし皆さんから御意見あれば伺いたいと思ったのは、先ほども申し上げたんですけれども今回の提言、最後で共同研究・共同利用体制みたいなものをいろいろ組織として有効活用していきましょうというところがあって、そのときにもともとはデータ基盤を持っているので、それをみんなで使えるようにみたいなところだったものを、それだけじゃなくて新しいタイプの異分野融合研究だったり、新しい分野の創設のパイオニア的な機能というのもそういうところが担って、場合によっては、ほかの研究機関にフィードバックしていくようなことが必要だという話のトーンで書いていて、最後、今、田口先生、御指摘いただいた13ページの4の丸2とかも、共同利用研究体制が連携融合研究の推進だとか、人材育成だとか、場合によっては今のお話だと倫理みたいな話も含めて先導的なことを実験していくことを期待するみたいな、若干ニュアンスになっているんですよね。
そこの書き方について違和感がないかとか、共同研究・共同利用機関をデータだけの話じゃなくて、より広げていったりだとか、ただ他方、そこだけでやってもらっても困るので、その成果をむしろいろんな研究機関だったり研究者にフィードバックするという、何かそういうエコシステムというか、仕組みを想定しているような書き方になっているんですけど、その辺りについて何か御意見なり、御感触あれば伺えればと思うんですが、いかがでしょうかね。
仲先生、お願いします。
【仲委員】 ありがとうございます。すいません。基本、私は、こういう機能を持っていくというのはすごく賛成です。でも何というか、人材もいない、そういう支援をしてくださる人材もいない、ファンディングもない、というところでは困難だと思いますので、前のところで、そういうファンディングが必要であるという、そういう共同研究を促すファンディングも必要だって書いてあったと思いますし、あと、先ほど議論がありましたように、こういう支援をしてくださる人材の育成も必要であるとありましたので、もし可能であればそこを繰り返して、そういう基盤の上にとか、何でしょうかね、支援の上に、みたいなのが入ると、単にやれやれということにはならないんじゃないかなと思いました。
以上です。
【城山主査】 助川さん、いかがでしょうかね。たしかに、どこかに書いていますよね。ファンディングの話は書いてありました。13ページ辺りでも、そういうのをもう1回、繰り返すような形で一言入れられるといいんじゃないかということかと思うんですけど。
【助川学術企画室長】 今、ファンディングの話は、例えば分野を超えて連携を促すようなファンディングも有効であるということがふわっと書いてあって、スペシフィックに個々のこれについてというような書き方はあまりしていなかったと思うのですけれども。そうですね。
【城山主査】 あまりスペシフィックに書くというよりかは、ふわっと書くことになるんだと思うんですけれども、だから分野横断を促すだと今、前やっていた学術共創知みたいな話だったり、JSPSの研究プログラムの支援はあるんだけど、じゃなくて、もうちょっとインフラ的な面の支援みたいなのも考えられるんじゃないかというのを、ふわっと入れるのはどうですかね。難しいですかね、何か。
【仲委員】 そうですね、6ページの2段落目に分野を超えた連携を促すようなファンディングも有効であるってあって、なので、それとあと、支援する人材というのがありましたよね。
【城山主査】 一番簡単なやり方は、ここに分野を超えた連携を促すところに、分野を超えた連携を伴う研究や、その基盤を支えるファンディングみたいな感じで基盤の話も触れているんですよということを入れるぐらい。
【仲委員】 そうですね。あと、人材育成の人材がいいですね、それがあると何か、本当に実行可能性が高まるんじゃないかなと思いました。
【助川学術企画室長】 書き方は検討してみたいと思うんですけれども、ここのところを書こうとすると結構、複雑になってしまう可能性があり。と申しますのは、もともと、そういういろんな人が集まって、まさに分野を超えた人が集まってというのは、共同利用機関というものはどこまでが本来業務なのかという課題があって。なので、そこを例えば、書き分けるみたいな感じにすると、かえって分かりづらくなる可能性もあり、逆に何か書き分けるがために、こっちにはこの機能は求めないのね、みたいな感じで見られてもあれだし、ただ、それは実は本来業務として既にやっていただいている、あるいは本来業務としてやるべきものでありということもあって。
書き方がどこまでできるのかは分からないんですけれども、御意見の趣旨は承ったので書き切れるかどうか、ここは表現が何か工夫できるかどうかも分からないんですけれども、検討してみたいと思います。
【仲委員】 可能なところでよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
【城山主査】 まさに本来業務かもしれないんだけど、でも本来業務のグレードアップを期待していますということをこの報告書としては言っているので、ベースはなしにグレードアップはなかなか難しいですよね。何かそこを、ハード支援的なことが可能かという、それは必ずしもファイナンスだけではないと思うんですが、そういうことも含めて可能性を探ってみるという感じでしょうかね。
【助川学術企画室長】 考えさせてください。ありがとうございます。
【城山主査】 白波瀬先生、お願いします。
【白波瀬委員】 ありがとうございます。本当にいろんなことが出てきて、出てくるだけの下地ともなり得るような報告になっている点では非常にすばらしいと思うんですけれれど、ここで何を強調するのかということをよい意味でも悪い意味でも限定するのが一つの手だと思うんですね。総花になればなるほど結局、何言いたいんよ、ということになってしまうのも一つのリスクだと思うんです。
ただ、全体を見ると行くべき方向性というのは非常によく分かるが、ただ、インフラということが今、白波瀬先生からもありましたけれども、共同利用という異文化のデータが一緒になることは、よりデータ管理も含めて複雑になるということだと思うんですね。研究倫理というのは、もうベースのもっとベースということになりますから、これは分野を超えたところで、それをしっかり確保するというか、保障していかなければいけないということになりますから、それを同じウエートで書くことは非常に難しいと思うんですけれども、なので、そういう意味では最終的には方向性というところでもう託すところにはなるかと思います。
ただ、研究倫理の話とか、あとは人材というか、こういうような方向性を実際に実行するような人材の確保というところは、決して今回の主張において反比例するものではないというか、その点については、どこかでよろしくお願いします、というのはあってもいいかなという感じはしました。
すいません、以上です。
【城山主査】 なかなか難しい拡大だったところがあるかと思いますが、いろんな要素に目配りすると同時に、ある程度、焦点がはっきりしているような形で最後、読めるように書くべきだという、そういうことかなと思いますので、助川さん、よろしくお願いしますじゃないけど。また皆さんから御意見を伺えるかもしれませんが、少し整理をしてみたいと思います。
北本先生、お願いします。
【北本委員】 北本です。3.2の8ページ、細かいことですが、8ページのデジタルヒューマニティーズが進展しておりという記述の下に、これまでと違った巨視的な観点からの研究が進んでいると書いてありますが、巨視的という言葉の意味がよく分かりませんでした。このように限定しなくても、違った観点から、あるいは新しい観点からなどの言い方が考えられますので、わざわざ巨視的と限定しなくてもよいと思います。
もう一点、特に3.2辺りですが、提言と現在の取組が混在しており、読みづらい感じがします。例えば、その下の項目はデータ規格の話から人文学DX化事業の話がつながっていますが、他の部分では取組が混在している部分と分かれているところが混ざっており、どちらかというと両者を分けて書いたほうがいいのかなと思いました。
以上です。
【城山主査】 いかがでしょうか、助川さん。
【助川学術企画室長】 2点目なんですけれども、この辺の書きぶりは相当悩みまして、もともとは完全に分かれていたので、先ほど申しましたように。結果、記述が重複してしまったりして分かりづらくなってしまったため、がっちゃんこして、その結果、取組が中に入り込んでしまっているので。
ただ、今、8ページの一番下のポツは、先ほどの修正も含めて、まず取組がここに入っているから分かりづらいことよりも、特に人文学の資料の話がここに入り込んでしまっているので、より分かりづらくなっている面が多分あって、この部分の大部分を先ほどの通り、そもそもの一番最初に持っていくと大分見やすくなるのかなという気はします。実際に書いてみないと分からないので、検討させてください。
「巨視的な」については、巨視的になる面は多分あると思うんですね。「新たな」というような、「新たな」だけ書くと具体的にどのようなのかという情報が分かりづらくて、それで、実際ここは、中間まとめのときから変えていないんですけれども、「新たな」だと、イメージがつかみづらくて、それで典型例として「巨視的な」って入れたと思うんですけれども、もし「新たな」のほうがよろしければそちらに変えますが、どちらのほうがいいのかなというの、判断しかねているところです。
【北本委員】 ありがとうございます。「巨視的」については、この言葉がなくても特に不都合はないのかなと思った次第です。
【城山主査】 そういう意味でいうと「新たな」ぐらいで、いろんなバリエーションがあるほうがいいという感じですかね。
【北本委員】 「これまでとは違った」と「新たな」は重複しますので。
【城山主査】 それでいいということですね。
【北本委員】 その意味では、これまでとは違った観点からと書くだけで十分で、特に限定する必要を感じないです。
【助川学術企画室長】 分かりました。この前のところに「することにより」が書いてあるので、違うって、何が違うのかが分かりやすいので、そうしたら。
【北本委員】 そうですね。ここに十分、含まれているのではないかと思います。
【助川学術企画室長】 そのようにさせていただければと思います。ありがとうございます。
【城山主査】 安田先生、お願いします。
【安田委員】 ありがとうございます。異分野融合の研究マネジメントの部分なんですけれども、7ページのところなんですけれども、異分野融合のときに結構重要なのがファシリテーターみたいな人がいるかどうかです。人文学・社会科学、特定の分野でもいいと思うんですけれども、学問的に通じている人で、若手研究者のファシリテーターとしての人材育成みたいなものも非常に重要なのではないかと思います。
近年、国際的にもファシリテーションのスキルを積極的に取り入れて教育することで、いろんな異分野融合の研究とかを推し進める努力がされ、国外で成功している例を散見します。
そうしたものって、ある程度ファシリテーションのスキルというのが必要になってくるのと、あと、人文学・社会科学においての研究者をもっと引っ張り出していく意味では、そういう分野にいらっしゃる若手の人にそういうスキルをどんどんつけさせることが重要なのではないかなと思います。この文章の中にあまり盛り込みできるかどうかというところが難しいところなんですけれども、ファシリテーション的なものそれと人材の育成も大事なんじゃないかなというところは、もし入れられそうだったら、ぜひ。
【城山主査】 ありがとうございました。多分、今の構成でいうと5ページの丸3の丸の1つ目のポツですよね。先ほど引用いただいた理解や敬意が必要だとか、日常的な交流や定期的ミーティングだとか、あるいはオンザジョブトレーニングで関わることによって汎用可能なマネジメント技術が学べますよという話の、そのどこかに、何か意識的にそういうファシリテーションの手法なんかも人社分野の中でもつくっていくことが必要だと。途端に何というかな、参加して覚えるってオンザジョブトレーニングじゃなくて、多分意識的にやる部分もあるという御趣旨だと思うんですね。
【安田委員】 そうですね。何か機関とか組織、ちゃんと体系的にそういうことを学べる機会もあると違うかなというのは思いました。
【城山主査】 何とかなる感じはしますが助川さん、いかがですかね。
【助川学術企画室長】 検討させてください。そうですね。今、ここの段階で入れるとなった場合、近い言葉があったときにちょっと引っかけられるかどうかという感じなのかなという気もするので。
【城山主査】 だから今のところの5ページ目の丸3の1つ目のポツは、実際に異分野融合研究に参画しながら、そういう汎用性のあるマネジメント技術を獲得していきましょうという感じなんですけど、多分これ、意識的に学ばなきゃいけない側面もあるんだと思うんですよね。だから、そういう側面にも少し言及できるといいのかなと。
すぐにどうのこうのではないですが、こういうアイデアの種をこういう報告書の中にちゃんと埋め込んでいくと、それこそ将来、何か使ってもらえるかもしれないのでいいかなという感じはしますが、最終的には全体のバランスかと思いますので。
【助川学術企画室長】 ありがとうございます。
【城山主査】 大橋先生、お願いします。
【大橋委員】 2点だけ申し上げます。まず全体を眺めてみたときに、どうしてこういう異分野融合とかDX、やっているのかということ、立ち返ると、最初の現代的役割、人文・社会科学における現代的役割をしっかり達成するためなんだということなんだろうと思います。
それは、ここに書いてある内容だと人間の精神活動の根本、根源の理解を深めて生きる力の、あるいは社会の根本を支えるようなものをしっかり養育するということなんだと思いますが、実のところ、こうしたものが我が国においてどの程度、欠けていて、ここの取り組みを行うことによって、どれだけ何が達成されるのかというところの議論というのは、あまりあったのか、なかったのかなというところは思っていて。どっちかというと我々、手段の話をしていたのかなという感じは若干しています。
実は多分、DXの話も進めていくと、どんどん手法的な話というのは、より議論として、何がエビデンスとして強度があるのかって話が多分、出てこざるを得ないので、そうすると根本的なところを忘れちゃうと技術論に行きがちになっちゃうかなというところなので、この現代的役割、ここの最初の部分に常に立ち返るのは、私は重要なのかなと思いました。
2点目は異分野融合なんですけれど、これは今回、人文学・社会科学内の融合、あと、人文・社会科学と自然科学の融合という、ある意味、学術の範囲での融合の話をされていますけれども、実のところ、実装とか、そういうことを考えてみると実社会も、ある意味、融合というのも恐らくあり得るかもしれなくて。そうすると先ほどの安田さんのおっしゃられたファシリテーターと関わる部分ではあるんですが、ポスドクの人たちがどういうふうな今後、出口を見ていくかというときに、例えばリカレント教育とか、そういうところで活躍したりとか、あるいは産学協創で活躍したりとか、そういうようなコーディネーター人材としても多分、新たな、そうした人材の出口も我々、今回の提言書の中でつくっているのかなという感じは何となくしています。
そういう意味でいうと、先ほど城山先生から、どこかの事業に引っかけられるって話でいうと、引っかけるものというのは実はあるのかなと思っていて。そういうことを書くと、ほかの事業とも、今、リカレントとか結構流行っていますけど、そういうことも引っかけながら、この事業を推進していく一つの駆動力になるのかなと思いましたということで、いずれにしても事務局の御尽力、大変多とするものでございます。ありがとうございます。
【城山主査】 どうもありがとうございました。正面から引き受けるとかなり大きな宿題を頂いているような気がしますけれども、多分、今、この段階でできることは2がベタな目標になっていて、その後、ツールの話をしているんで、まさに目的を実現するためにこれをやるんだという構造をはっきりさせることが一つかなと思います。
もう一つは、社会のステークホルダーの巻き込みとか実装の話というのは、私も同じようなことを少し感じていて。ただ一応、中には多少書き込んでいただいていて、異分野融合と書いているんだけれども、社会課題に取り組むような場合には社会のステークホルダーを巻き込むみたいなことも部分的には触れていただいているので。例えばさっきのファシリテーションじゃないですけど、そのためにどういうマネジメントが必要かというところにも、そういうニュアンスのことを少し入れさせていただいて、そこがある種、人社の人材の一つのマーケット先というか、行き先にもなり得るんだという。それはあまり今から大きくは書けないとは思うんですけど、多少書くことはできるかなという感じはします。
助川さん、そんな感じでよろしいですかね。
【助川学術企画室長】 ありがとうございます。そのような形で、特にさらにそういう文言修正とともに、あと、大橋先生おっしゃったとおり、この報告書でいうと現代的役割という総論の部分と最後というのは、それが人社の意義というか、役割というか、それとちゃんとつながるような形でならなければならないのは常に意識はしていきたいと思っております。表現ぶりも検討はするとともに実際の施策、あるいは、その他支援とかに当たってもその辺は検討していきたいと思います。ありがとうございます。
【城山主査】 どうもありがとうございました。予想外に皆さんからいろいろたくさん御意見を頂いたので予定した時間を30分超えているんですけれども、一応ここまでで直接の御意見は打ち止めということにさせていただいて、もし何かあれば事務局なりにメール等で御連絡いただければと思います。
今日、たくさん御意見頂いたんですけれども、これを踏まえて最終バージョンを考えなきゃいけないのですが、審議のまとめについては恐縮ですけども主査一任ということでお任せいただければと思いますが、よろしいでしょうか。それでは、そのようにさせていただきます。
最後に今期12期の振り返りということで、ごく簡単に最初、助川室長からお話いただいて、その後、皆さんにせっかくなので一言いただくことを予定しておりましたので、そうしたいと思うんですが、多分お一人1分ぐらいしかないのではないかという感じなので、感想なり、次期に考えるべきことで、これは言っておきたいということを一つ程度になるかと思いますが、お考えいただければと思います。
その前提として助川さんから、資料3に基づいて説明をいただければと思います。
【助川学術企画室長】 ありがとうございます。本当に一言で御説明申しますと、資料3にございます、人社委員会の今期の審議状況についてでございます。(1)にございますように主な審議内容として、一昨年、令和5年8月に「人文学・社会科学の振興に向けた当面の施策の方向性について」を取りまとめていただきまして、そこから、さらに議論いただいて令和6年8月に中間まとめをまとめていて、審議状況の報告の案なので、ここで取りまとめたって書き切っちゃっているんですけど、今日、主査一任にしていただいた審議のまとめというのが今、これまで御議論いただいたところでございます。先ほども申しましたような点について、特に以下の3点、引き続き検討を行う必要があるのではないかとまとめてございます。
ごく簡単でございますけど、以上でございます。
【城山主査】 どうもありがとうございます。それでは先ほど申し上げたように、第12期において審議したことについての御感想だとか、あるいは人文学・社会科学の振興に関して今後議論が必要と考えられる点について、ぜひ一言ずついただければと思います。まずは、どなたからでもと思いますがいかがでしょうか。
田口先生、お願いします。
【田口委員】 非常に豊かな議論が展開されてきて個人的にも非常によかったなと、特に異分野融合について議論がかなり尽くされた点は非常によかったなと思っています。
その中で今後さらに議論されるべきと思うことが1点あって、それはAIのことなんですけれども、AIの進展が、非常にスピードが加速しているように見えて、そういう中でAIをどういうふうに人間社会に適合させていくかと、どういうふうにAIの害を取り除いていくかというような議論が、AIアラインメントとか、そういうような言葉で盛んに論じられていますけれども。そのAIの害というのを考えていくと、そもそもAIをトレーニングするときに使ったデータが人間に由来するデータであると。ですから、AIがもたらす害って、基本的には人間が含んでいる悪を反映しているものだと思うんですね。
そういうわけでAIをどういうふうによくするのかということを考えようとすればするほど、人間について考えなきゃいけなくなってくる。人間という存在の善と悪について考えなきゃいけなくなってくる。こういうところで人文・社会科学の意義というのが、ますます高まってくるんじゃないのかなと思うんですね。
こういうような観点から人文学・社会科学がさらにクローズアップされて、その意義が高まってくると、その意義が再注目されてくるようなことがあるのではないかなと思いますので、そういう観点からの人文学・社会科学の振興ということも、これから考えていったらいいのかなと思っています。
以上です。
【城山主査】 どうもありがとうございます。
後藤先生、お願いします。
【後藤委員】 後藤でございます。今回、デジタルだけではなくて研究の基盤であるとか、その利活用というところで議論ができたということで、本当にいろいろと議論ができて大変にすばらしかったと思っておりまして、私自身も大変勉強になりました。どうもありがとうございました。
今後につきましては、先ほど今、田口先生からも御指摘ありましたけれども、AIでありますとか、言わば審議が始まった段階では想像もつかないようなペースでAIの研究なんかが進んできている状況もあります。そして、それは恐らく研究倫理という点にも大きくつながってくると思っていて、どういうふうに使うかということとか、信頼できるデータをどのように出していくかということを改めて考えなければならないし、そのためにも人文学・社会科学の研究成果であるとか、根拠みたいなのがより求められるような状況になってきていると理解しております。
また、多くのステークホルダーとの研究でありますとか、違う分野との研究をするときも、その違い自体をどのように理解して、どのようにコミュニケーションをとっていくかというときにも必ず研究倫理というのは必要になりますので、そのような、より広い研究倫理の在り方というのも今後考えていく必要があると今回、特にAIであるとか多くのステークホルダーという観点から、つくづく考えているところでございます。
すいません。これ以上話すと長くなりますので、これまでにしておきます。どうもありがとうございました。
【城山主査】 ありがとうございました。
仲先生、お願いします。
【仲委員】 ありがとうございます。今回は、本当に異分野融合とかDX化とか基盤とか、多くの議論をさせていただきまして感謝です。強調したいこととしましては、人文社会って多様性というのがすごく重要だと思います。DX化して数値化してしまうとか、イチゼロにしてしまうというと、何か失われるものもあるような心配もあったりして、この多様性というのが人材育成から方法論、そして評価など、あらゆるところで、多様な価値というのが保存され、広がるようにということが願いです。
以上です。
【城山主査】 ありがとうございます。
白波瀬先生、お願いします。
【白波瀬委員】 大変ありがとうございます。先生方のこのような委員会に参加させていただいたことで、本当に私自身もいろいろ勉強になりました。ただ今回、本当に思ったことは先生方一人一人、我々一人一人が想定している場面が意外とばらばらであることですね。同じ人文学・社会科学の中でも、これが必要なのではないかという足場の状況というのは想定するのが違う。
ただ今回、科学技術・学術審議会の中の、特に学術分科会の中でこういうような人文学・社会科学の特別委員会がこういう形で立ち上がり、継続していることの意味というのが非常に大きいと思います。ですから、それが2次的で、ただ単に融合、既存の科学的なものに対する新たな視点というような枠組みだけではない、本当の意味の新しい分野の構築に向けて少しでも今回の議論というのが一つ、役に立ったり有益になるというのはすばらしいことかなと思います。大変ありがとうございました。
すいません。ここで失礼させていただきます。ありがとうございました。
【城山主査】 ありがとうございました。
尾上先生、お願いします。
【尾上委員】 ありがとうございます。本日の審議のまとめにもございましたように、非常に多様な観点で議論をさせていただきまして、すごく勉強になりました。学術研究機関で行っている研究成果というのを社会に届けるためには、この人文学・社会科学の先生方がやられているところとの本当に融合というのはすごく重要だと思っております。そのためには今後、人文学・社会科学の先生方、並びにそれを取り巻く皆さんの意識をどうやって変えていけるかというのが我々、この辺りの振興に影響すると思いますので、その辺りに関しても頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。
【城山主査】 ありがとうございました。
北本先生、お願いします。
【北本委員】 北本です。私自身は研究基盤に非常に興味を持っていますが、今回、その研究基盤について様々な観点から議論できた点が非常によかったですし、私自身も勉強になりました。
今後の研究基盤に関して発言するとすれば、またAIの話になってしまいますが、AIが発展したこと自体はよいことですが、外部の基盤に依存する部分が増えてきている感もあります。例えばOpenAIやグーグルなど、ビッグテック企業が提供する基盤に依存する状況がどんどん進んでおり、今後どの部分を自前で進め、どの部分を外部に依存するのか、という点が人文系でも大きな問題になってくると思います。
従来から、ジャーナル問題のように、大手出版社への支払いが大変という問題がありましたが、研究基盤についても、コストの上昇につれてサステナブルな体制をどうつくるかが問題になってくるでしょう。そうした点を今後議論したいと思っています。ありがとうございました。
【城山主査】 ありがとうございました。
木部先生、お願いします。
【木部委員】 まず、こういう議論ができて本当によかったと思います。また、審議のまとめは、議論の中で出てきたものがうまく盛り込まれていて、本当にありがとうございました。私自身もいろいろ勉強になりました。
私が今、個人的に思っていることは、今日はあまり議論になりませんでしたけれども国際発信のところです。日本にこれだけすばらしいデータだとか研究があるのに、あまり発信されていない。それを世界に向けてどう発信するかということに、これから本気で取り組んでいかなきゃいけないと思っています。その意味で山中先生の能楽の事典を英訳なさっている、あの御報告にとても感銘を受けました。ものすごい時間と努力が必要だと思いますが、我々はそういうことを地道にやっていかなきゃいけないと思いました。どうもありがとうございました。
【城山主査】 ありがとうございました。
山中先生、お願いします。
【山中委員】 この会に参加させていただきまして、自分が属する人文科学というのが今後どのような方向に扉を開いていかなくてはいけないのかということを非常に多く学ぶことができました。そのことをまず感謝申し上げます。
特に、今日の報告書にありました、異分野融合だけじゃなくて各分野の研究に厚みをつける必要があるという、そこの文章に感動しました。本当にそうだなと思います。ら評価ということをいろいろ気にしてしまいましたが、先進的なことやっているところだけではなくて、旧態依然としている分野が新しいところに目を向けていくようになることが大事なんだろうなと思っています。
申し訳ありませんが3時から授業がありますので、これにて失礼させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
【城山主査】 ありがとうございました。
井野瀬先生、お願いします。
【井野瀬委員】 私も皆さんと同じです。非常に刺激を受ける会合でした。助川さんも今、皆さんからいろんな要望が寄せられていましたが、基本的にいろんなものを俎上に上げていただいて書かれている点、私は敬意を表したいと思います。ありがとうございます。
私が常に気になっているのは2点です。一つは人文学、並びに社会科学、それぞれが非常に多様であるわけですが、それを研究したい若手が明らかに減っていること、その点をどうやって底上げしていくかというところで、社会との接点というのがこれから、うんと重要になってくるなと思っています。
もう1点は私、午前中に研究倫理、研究構成の委員会、出てたんですけれども、田口先生はじめ、多くの先生方が言われました、この研究倫理と研究構成インテグリティ、こういった問題が人文学・社会科学、接点、どうあるのかということをさらに見ていかなければいけないかな、なんていうことを思っています。本当にありがとうございました。
【城山主査】 ありがとうございました。
安田先生、お願いします。
【安田委員】 どうもありがとうございました。私自身は海洋生物の生態をやっている研究者で全然、人文学・社会科学自体の学問を深く理解しているわけではないんですけれども、冒頭のところで説明されている人文社会学の重要性には日々実感があります。生態学でも人と自然の共生とか、生き方一つにしても今できることの技術というのは多くなっているのに対して、人が何を選ぶかということが、これから、これが社会を全部変えていくことになると思うんですね。絶滅させた種の復活はいいのかとか、人が種の人口的な進化を促すとか、いろんなことが、問題が出てきている中で人と社会が何を選び、どうよりよい未来を築いていくのかを決める土台としての学問としての重要性があります。
こういうものを判断する考える基盤となると、本当に学問として、もう世の中を変えていく大きな素材なのではないかなということで思っております。なので、私も本当に全然、学問の中身をよく知っているわけではないんですけれども、非常に今回の議論、先生方のお話を聞いて勉強になりました。
あと、大変な書類のお取りまとめの作業、本当にありがとうございました。今後も私も、まだまだなんですけれども、異分野融合の研究をいろいろしているほうなので、ぜひとも世界の方々と今後も研究していきたいなと思います。ありがとうございました。
【城山主査】 ありがとうございました。
大橋先生、お願いします。
【大橋委員】 ありがとうございます。我が国の人文学・社会科学の課題は何かというと2つ、私個人としてあるんじゃないかと思って、一つはグローバル含めたランキングをどうしていくのかというのが1点と、あと、もう一つ今回、言及もさせていただきました、現代的役割をどうやって果たしていくのかという点だと思っています。
今回、後者について比較的議論してきたのかなと思いますけど、来週、トランプ政権も発足しますし、かなり社会とか経済の関係性が劣化する現象もますます見られてくるのかなと。そうした中で我が国の人文・社会科学がどういった公共とか公益の価値を提供できるのかということはすごく重要なことだと思っています。今回、この報告書を通じて、そうしたところをしっかり進められるのは私、大変重要なことだなと思いました。ありがとうございます。
【城山主査】 ありがとうございます。
青島先生、お願いします。
【青島委員】 どうもありがとうございます。生成AI含めて急速にいろんな技術が進歩しているなというのは肌で感じているところで、それが人文・社会科学の我々の研究の在り方そのものにも影響してきているし、それを使う社会に対して法的、倫理的、制度的な側面から、いかに人文・社会科学が貢献できるかという面でも非常に重要になってきている意味では、非常にタイムリーな回だったなということでいろいろ考えさせられて、ありがとうございました。
一方で、こういう技術が進む中で本当に人文・社会科学が何をするのかというか、何といえばいいのかな、研究のコアみたいなものは何になるのかなというのは一方でまた考え始めているところもあって、またこの手の議論を継続できればなと思います。どうもありがとうございました。
【城山主査】 どうもありがとうございました。
森田先生、お願いします。
【森田委員】 ありがとうございます。私もこの委員会は大変勉強になりました。一言、最後にコメントとして、治部先生がチャットで書かれたことと共通しているのですが、治部先生は納税者に対してどう説明するのだということを書かれていますけれども、納税者、それから政治家、それから経済界の中には人文・社会科学なんて要らないという方もおられるので、そういった人たちに対してどういうふうにアプローチしていくのか、コミュニケートしていくのか、あるいは、そもそも今、分断が進んでいるので、それも難しいのかもしれないのですけれども、そういった説得する対象に応じた言い方についても考えていく必要があるのではないかと思いました。
以上です。
【城山主査】 どうもありがとうございました。
助川さん、お願いします。
【助川学術企画室長】 すみません、助川でございます。今、森田先生のお言葉で触れていただきましたけど、治部先生が、マイクが動かないということでメッセージを預かっておりますので読み上げさせていただきます。
長く経済記者として働いてきた立場から、日本の人文学・社会科学分野における研究の現状、今後の発展について多角的な御意見を伺う機会があり、勉強になりました。昨今の厳しい財政事情を踏まえ、人文学・社会科学分野の研究の意義を納税者に納得してもらうような本審議会からの発信についても考えることができればと思います。
このようなメッセージをお預かりしておりますので御紹介申し上げました。失礼いたしました。
【城山主査】 どうもありがとうございました。
最後に私からも若干、感想だけ申し上げさせていただきたいと思います。皆さん、おっしゃっていただいたように、人文社会っていっても中が極めて多様であることを毎回いろんな意味で気づかされる、そういう意味では、すごくいい議論をさせていただいたかなと思っています。
その上で振り返ってみると、この人文学・社会科学特別委員会というのは3期やっていて、もう6年ぐらいになるんですね。たしか井野瀬先生と白波瀬先生は最初から御一緒させていただいていたと思うんですけれども。振り返ってみると今までは、先ほどの大橋先生の話じゃないんですがツールのある部分に焦点を当てていたんですね。学術知共創プロジェクトというのを文理融合的にやってみましょうってやってみたり、あるいはモニタリングだとか、成果の可視化みたいなところに次はフェーズとしては焦点を当てましたと。
今回は悪く言えば総花なんですけれども、分野の進化というのと異分野融合と両方あるよねという話だったり、それからモニタリングの話はある意味では継続でありますし、それから、どうやって国際発信等をしていくかと広げていったところがあって、要素をいろいろ見られるようになってきたのは多分、これまでの議論の一つの成果かなと思います。
他方、それを逆行にシステマチックに目的に対してどこまでできているのかとか、何をやらなきゃいけないのか、これはまさに大橋先生、指摘された点ですけれども、その辺りは今後の課題として残っているのかなと思いますので、そういうことは引き続き議論していただくといいのかなと思いました。
最後に、今日は最後ということで、研究振興局長の塩見局長に来ていただいておりますので御挨拶いただければと思います。よろしくお願いします。
【塩見研究振興局長】 どうもありがとうございます。研究振興局長の塩見でございます。委員の先生方には御多忙の中、この2年間、本当に精力的に御審議いただきましてありがとうございました。また、本日も大変熱い議論をしていただきまして感謝申し上げます。
おかげさまで、この間に新しい事業といたしまして人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業、これを立ち上げることができました。また、本日の御議論も踏まえまして、審議のまとめとしまして「今後の人文学・社会科学の振興に向けた推進方策について」が取りまとめられるということにつきまして事務局一同、心から感謝を申し上げます。
本日の議論の中にもございましたけれども、国内的にも、また国際的にもAIの進展をはじめとしまして、また非常に変化が激しく、さらに不安定で先行きのなかなか見通せない、そんな状況も続く中にありまして、特に今回のまとめにもございますけれども、人間の生きる力の根源や社会の根本を支える人文学・社会科学の果たすべき役割というものは、一層大きくなっていると認識をしております。
現在、第7期科学技術・イノベーション基本計画の策定に向けた議論がまた始まってきております。その中でも人文学・社会科学の重要性についてしっかりとまた議論をしていただけるように我々も努力したいと思っておりますので、ぜひ引き続き御指導のほどよろしくお願いいたします。本当にどうもありがとうございました。
【城山主査】 どうもありがとうございました。
それでは最後に、事務局より連絡事項をお願いいたします。
【林学術企画室長補佐】 事務局でございます。本日御議論いただきました審議のまとめにつきましては、確定したものを後日、先生方に送付をさせていただきたいと思っております。
その後、1月29日に開催予定の学術分科会において報告を予定しているところでございます。
また、本日の議事録につきましては、後日メールにてお送りさせていただきますので、御確認いただきますようにお願いをいたします。
連絡事項は以上でございます。
【城山主査】 どうもありがとうございました。時間を6分ほど遅れてしまいまして、どうも申し訳ありませんでした。
それでは、これで閉会とさせていただきます。皆様、2年間どうもありがとうございました。
―― 了 ――
研究振興局振興企画課学術企画室
電話番号:03-5253-4111(内線4226)
メールアドレス:メールアドレス:singakuj@mext.go.jp