人文学・社会科学特別委員会(第25回) 議事録

1.日時

令和6年11月29日(金曜日)13時03分~15時03分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 人文学・社会科学振興関連事業の取組について
  2. 人文学・社会科学の振興に向けて
  3. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員、専門委員)
城山主査、仲委員、大橋委員、北本委員、木部委員、治部委員、青島委員、後藤委員、田口委員、森田委員、山中委員
(科学官)
杉岡科学官、松田科学官

文部科学省

塩見研究振興局長、松浦大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、生田振興企画課長、柿澤大学研究基盤整備課学術研究調整官、助川学術企画室長、林学術企画室長補佐

5.議事録

【林学術企画室長補佐】  それでは、定刻となりましたので、ただいまから第25回人文学・社会科学特別委員会を開催いたします。どうぞよろしくお願いします。
 では初めに、配付資料の確認と注意事項のほうを申し上げます。
 まず、資料につきましては、事前に電子媒体でお送りさせていただいておりますけれども、議事次第に記載がございますとおり、資料1-1から資料2、それから参考資料の1から4をお配りしてございます。配付資料の不足等ございましたら、事務局まで御連絡いただければと思います。
 御発言の際でございますが、「手を挙げる」ボタンをクリックしていただきまして、主査より指名を受けましたら、マイクをオンにしていただいて、お名前から御発言をお願いいたします。終わりましたらミュートにしていただきますようにお願いをいたします。もし不具合等ございましたら、マニュアル記載の事務局連絡先まで御連絡をお願いいたします。
 本日の会議は、傍聴者を登録の上、公開としてございます。
 説明は以上でございます。
 
【城山主査】  それでは、議事のほうに移りたいと思います。
 議題の1つ目ですけれども、「人文学・社会科学振興関連事業の取組について」ということであります。
 今回は、人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業のうち、前回の委員会の開催後に採択期間が決まりました、人文学・社会科学研究におけるデータ分析による成果の可視化に向けた研究開発について、初めに事務局から、公募から採択までについて御説明いただきたいと思います。
 続けて、採択機関となりましたEY新日本有限責任監査法人の吉澤剛様より、事業の計画について御発表いただいた上で、質疑応答の時間を設けたいと思います。
 それでは、まず助川室長、よろしくお願いします。
 
【助川学術企画室長】  失礼いたします。それでは、まず私から経緯などを御説明申し上げたいと思います。
 資料は1-1でございますけれども、2ページ目は事業のポンチ絵でございますけれども、もう少し分かりやすくしたものが、事業の経緯・概要などが3ページ以降にございます。
 ここの経緯の冒頭ございますように、令和2年度の科学技術・イノベーション基本法におきまして、法律の対象として人文学・社会科学というものが位置づけられてございます。
 そして、その後策定されました第6期科学技術・イノベーション基本計画を受けまして、前期の人文学・社会科学特別委員会、本委員会におきまして、研究活動を可視化して、我が国全体の人文学・社会科学について、総合的・計画的な振興に資することを目的とする研究成果に関連するモニタリング指標について、御議論いただいたところでございます。
 4ページ目、令和5年2月にこの検討の取りまとめができまして、こちらにおきましては、人文学・社会科学は論文や書籍など成果発表媒体が多様であること、あるいは社会的な機能によるインパクトが多方面に多様な形で生じていることなどに留意するべきというふうにされてございます。
 以上を踏まえて、自然科学分野においても、書籍や社会的インパクトの分析の例が少ないことですとか、あるいは今年度から3年間という限られた期間でのモニタリングとなることを踏まえて、試行的に実施するものとして、次のページ、5ページ以降の要領で事業を行うことといたしたところでございます。
 事業内容でございますけれども、初めに大きく2つに分かれておりまして、(1)「書籍」に係る指標開発に向けた調査・分析として、まず、研究成果として取り扱う「書籍」の範囲を検討して、その総量を把握します。なお、調査対象は研究者向けの専門図書で、大学と研究機関に所属する研究者が執筆したものとし、海外で発刊した書籍や翻訳書は一旦対象外としてございます。その書籍群について、年ごとに頻出するテーマ、キーワードを分析して、研究トレンドを把握する。 さらに、次のページの丸3のとおり、少なくとも1年分、人文学・社会科学それぞれから少なくとも2分野ずつ、書籍が引用している論文等の傾向を把握する。その際に、丸4のとおり、海外との比較可能性についても検討を試みる。
 さらに、大きな柱の2つ目といたしまして、2にございますとおり、例えば人文学・社会科学の多様な社会的インパクトなど、妥当性の高い新たな分析手法等について検証、提案を行う。
 このような形で公募を行いまして、この事業につきましては、EY新日本有限責任監査法人に受託いただいたところでございます。
 ですので、こちらの実施者としての方向性について、引き続いて受託者から御説明いただきたいと思います。私からは以上でございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 そうしましたら、続けて吉澤様からお願いできますでしょうか。
 
【吉澤マネージャー】  吉澤です。よろしくお願いいたします。資料を共有いたします。
 よろしくお願いいたします。EY新日本有限責任監査法人の吉澤と申します。
 初め、簡単に自己紹介を申し上げますと、私はEYに入所して5年目になりますけれども、それまでは10年ほど大学教員をしておりました。もともとの専門は物理学、科学史だったんですけれども、イギリスのサセックス大学で科学技術政策のPhDを取得して、日本に帰ってまいりました。城山先生の下で四、五年ほどお世話になり、ほかの大学で働いて、現在は民間におります。よろしくお願いいたします。
 先ほど助川さんから御説明あったとおり、大きく分けて、本事業で2つのタスクに取り組むというところで、1つは「書籍」に係る指標開発に向けた調査・分析、もう1つはその他の新たな指標に関する検討提案というところになります。
 まず1点目ですけれども、「書籍」に係る指標開発に向けた調査・分析というところで、先ほどありましたけど、書籍について、いわゆる学術的な書籍ということを定義しないといけないんですけれども、なかなかここが難しくて、人文・社会科学、いろいろな分野があると同時に、日本特有の話ですけども、一般書みたいなところも大学の研究者の方々が多く出版されていますので、一概に「書籍」という定義をするのは難しいかなというふうに考えましたので、ひとまず書籍というものについて、ある程度の下限と上限みたいなところを本事業で設定して、その下で書籍データベースの構築手法を確立していくというところです。
 また後ほど、詳細に説明申し上げますけども、書籍の引用文献データベースというところも、書籍データベースとは別途、構築手法も確立して、最終的に、本事業以後も関係者が持続可能な形でデータベースを更新・運用できるような体制を整えるというふうにしております。
 2点目ですけれども、その他の新たな指標に関する検討・提案というところで、先ほどありましたが、いろいろな形の指標が既に国内外で開発されておりますので、まずそこら辺を検証した上で、2年度目・3年度目になるかと思うんですけれども、モデルケースという形で、具体的にその指標を使って、何らかの分野だったりというところをはかってみるということをして、その使い勝手を含めて、今後の研究のモニタリングや評価に活用できるかということについて考えて、提言をしたいというふうに考えております。
 最終的には、人社系研究の書籍に関する成果をモニタリングできる環境を整えるというところと、また、実現した環境を研究データエコシステムの中に組み込み、誰もがそのモニタリング情報を活用できるようにすると。
 簡単に申し上げますと、本事業は期限付ですので、3年間やって終わりというふうにならないように、3年後にこの成果を誰がどのように引き継いで、それを活用していくかというところも含めて、本事業の3年間の中で考えて、それを実装していけるようにしていきたいというふうに考えております。
 具体的なスケジュールといいますか、計画ですけれども、まず、「書籍」に係る指標開発に向けた調査・分析として、大きく4点あります。
 まず1点目は、範囲の特定と総量の把握というところでして、これは今年度中に実施予定です。既存データベース、民間等に既に書誌データベースというのがございますので、そこから2019年から2024年の6年分のデータを取得して、内容を整理して、単著、共著、章論文などの書籍の種類、あるいは個別分野などを独自に調査してデータを追加する。そうしたものを書籍データベースという形に取りまとめるということにしております。
 総量は、人文学・社会科学それぞれの合計に加えて、分野ごと・年ごとに把握すると。先ほど申し上げたように、「書籍」の範囲に合わせて、総量についても幅を持たせた形で把握したいということです。
 個別分野、これも後ほど御紹介しますけど、17分野とありますけれども、これが本当に妥当なのかというところも含めて、人文・社会科学というところの全体の範囲というところも考えていきたいと思っております。
 2点目ですが、これは来年度になるかと思うんですけれども、研究トレンドの把握というところで、1で書籍データベースとして獲得したタイトルとか目次、あるいは概要などの情報を基に、年ごとに頻出するテーマやキーワードを分析して、ある種のトレンドみたいなところを、分野だったり人文・社会科学全体についての傾向を把握していきたいというふうに考えております。
 3点目は引用傾向等の把握というところで、これは来年度と再来年度に予定しております。2024年の発刊分、いわゆる学術書として定義された書籍で2024年に発刊されたものについて、個別分野から人文学・社会学2分野ずつを、特にこの引用傾向等の把握に資する個別対象分野として選定して、その対象書籍の引用文献ページを取得してデータ化、データクレンジングを行った後に、引用文献の種類を整理・確定し、データとして追加する。これを「書籍引用データベース」というふうにしております。
 現状、書籍に関する引用文献情報というのがほぼ存在していない状態ですので、これはかなりマニュアルで手間がかかる作業かなというふうに考えておりまして、引用文献ページの取得の仕方についてもこれから検討して、実際どういうふうに取得して、それをデータ化していくかについても考えてまいりたいというふうに思っております。
 以上のような取組について、既に海外で一部進められている部分もありますし、「書籍」というところの定義に関しても、海外で各国なされているところもありますので、そういったところを逐次比較しながら、我が国に合った体制というのを検討してまいりたいというふうに考えております。
 書籍データベースの構築に当たってというところで、先ほど申し上げたように、まず、ちょっと広く捉えてみるということが必要かなというところで、我々の間でも議論したところ、なかなか、まず下限を捉えるのが難しいということで、非常に大きく、一見、学術書として適当でないと思われるようなものも含めて考えていくことが妥当かなというふうに思いましたので、まず、日本十進分類ですとか図書コードの分類コードでそういった分野に相当するもの、かつ、先ほどありましたように著者が大学所属であるというところを一つの目安として、そこを「書籍」の範疇にしようというところを考えております。
 書籍の種類については、先ほどお話があったとおり、海外で発刊した書籍や翻訳書は除くというふうにしております。
 個別分野、人文学・社会科学合わせて17分野ですけれども、多分、後の議論にもつながってくるかなと思うのですが、文理融合的な領域はどうするのかというところもございますし、あとNDCとかCコードで分けた場合、考古学や博物館学や経営学みたいなところはコードとしてそもそも立っていないので、どこかほかの分野にひもづいているところがあるので、そこをどう抽出するかという問題もありますし、逆に、社会学の中にいろんな分野が入っていることがありますので、そこは範囲として広過ぎるのかなというところも思っておりまして、これは実際にデータを見てみないと何とも言えないところですけれども、現状そういうふうに考えております。
 その他の新たな指標に係る検討・提案というところですけれども、まず注意点として、人文・社会科学の書籍について、先ほどのタスクでは申し上げたところですけども、この新たな指標については、必ずしも書籍にこだわらず、かつ人文・社会科学にこだわらず、これまでに出ている新たな指標ということを検討してまいりたいと考えております。
 そのため、社会的インパクト評価ですとか大学評価の議論、あとは自然科学を含めた学際的な研究についての指標みたいなところも、国内外でいろいろ開発されておりますので、それについて検討していきたいというふうに思っております。
 まず、今年度は文献レビューということで、英国のREFやSIAMPI、v-index等々、人社系研究評価手法、必ずしも人社系に限らず、大学評価だったり研究評価で用いられている手法について改めて検討して、それに係るところで、海外有識者との意見交換を行いながらというところを考えております。
 具体的には、東アジアの韓国、中国、台湾の研究者であったり、実務家の方と少し交流できないかというところを考えています。特に、書籍だったり人文・社会科学というところは、言語の固有性だったり地域の固有性がありますので、英語圏ではないところの国々が、どのような形で人文・社会科学の研究の評価をしているのかというところは非常に関心がありますので、まずはそうした東アジアの国々の方と意見交換をしていきたいというふうに考えています。もちろん、それと並行して欧米の先進的な事例も参考にしていきたいというふうに考えております。
 丸2番、海外事例調査ということで、文献レビューを受けて、実際の研究者だったり省庁・ファンディングエージェンシーで活躍されている実務者、あるいはそういった指標によって評価を受けている、当の人文・社会科学系の研究者に、どう思うかみたいなところをインタビューしていきたいというふうに考えております。
 3番目ですけれども、モデルケースの活用可能性の検証というところで、来年度・再来年度を予定しておりますが、新たな指標の適用性を探るためというところで、丸1、丸2で調査を行って、有望そうな指標が見えてきたところ、それを実際に使ってみるという形で、ごくごく限られた分野だったり限られたケースにおいて、そういったところの指標を適用してみて、実際それが指標として使えるのかというところも検証していきたいというふうに考えています。
 最後ですけども、そういったことを基に、日本においてどういった分析手法・指標が実用性があるかというところを検討・提案していきたいというところです。
 その一環として、書評というところも非常に注目すべき指標なのかなというところで、まだまだ日本の場合、議論が進んでいない部分がありますけれども、国内外の雑誌において、書籍の書評みたいなところが載っていることもありますし、あるいは日本の場合ですと、新聞において書評として載っている学術書もありますので、そういったところもある種のインパクトになると思いますので、そういった書評の扱いについても検討してまいりたいと思います。
 事業実施体制ですけれども、事業の全体管理と実施は、EY新日本有限責任監査法人のFAAS事業部ガバメント・パブリックセクターが担いますけれども、我々は実務家でありまして、実際に大学の研究者と一緒に連携していくことが非常に重要だというふうに考えておりますので、「人社系研究モニタリング部会」というものを設置いたしまして、そこで事業の方針に関する議論と合意形成を行ってまいりたいというふうに考えております。
 後ほど御紹介しますけれども、そこの部会のメンバーの中に、人社系のURAのネットワークをお持ちの方がいらっしゃいますので、そういった方々を通じて、人文・社会科学系の研究者、個々の大学ともネットワークをつなげていきたいですし、あるいは海外の有識者も、海外研究者の紹介・ネットワーク構築という形で、いろいろな形で助言をいただきたいというふうに考えております。
 また、部会運営支援、出版各社からの情報収集については、早稲田大学アカデミックソリューションさんにも御協力いただいているところです。
 この関係性だったり体制というのは必ずしも固定的なものではなく、なるたけ多くの関係者の方々に御参加いただけるような形に、ダイナミックにいろんな方々と交わっていきたいと思いますので、ここにも書いてございますとおり、オールジャパンの体制で臨めればいいなというふうに考えております。
 人社系研究モニタリング部会ですけれども、先ほど申し上げたように、大学の研究者と一緒に本事業を進めていくことが非常に重要だと考えておりますので、部会のメンバーとして、ここにお名前が挙がっていらっしゃる方々で進めてまいりたいと思っていますが、先ほど申し上げたように、必ずしもこのメンバーは固定的なものではなく、いろいろな形でこの事業に参加したいという方がいらしたら、大学の研究者、あるいは大学の研究者に限らず実務家の方もメンバーに加えて、ざっくばらんに議論していきたいというふうに思っております。
 現在のところ、モニタリング部会は林隆之さんを一応統括として、データサイエンスにお詳しい七丈さんですとか、URAとつながりのある丸山さんですとか、また図書館情報の専門家ですとか、あるいはNISTEPでサイエントメトリクスをやられている岡村さんや小柴さんにも加わっていただいて、いろんなセクターから関係者の方を集めて議論していきたいというふうに考えております。
 以上で説明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。現時点での研究の方法なり進め方について、お話しいただけたかなと思います。
 それでは、御質問、御意見等いただければと思いますが、いかがでしょうか。
 木部先生、お願いします。
 
【木部委員】  木部と申します。どうも御説明ありがとうございました。これで一歩進めばというふうに非常に期待しております。
 資料を拝見すると、今回は書籍に係る指標開発、それとその他の新たな指標開発ということに絞られるということですが、書籍の場合、我々も非常に苦労しているんですが、出版社がオープンアクセスにあまり協力的でないところがあるという問題があります。実は我々の学会でも今度、科研費の即時オープンアクセス化が進められるので、出版社と学会誌の即時オープンアクセスについて交渉をやっているところですが、なかなか出版社の了解が得られないということがあります。書籍に関してはなおさらのことだと思います。
 書籍に関する指標開発はとても重要だと思うんですが、日本の場合、出版社があまりオープンアクセスに積極的でないという態勢があり、それをどうクリアなさるかというのを教えていただきたいんですけれども。
 
【吉澤マネージャー】  ありがとうございます。本事業を開始するに当たって、そこも部会のメンバーとさんざん議論になったところですけれども、やはり事前のヒアリング等々をしていますと、出版社の方は非常に、「メリットがない」というところを一番におっしゃって、おっしゃるとおりかなと思うんですけれども、とはいえ、流れ的にオープンアクセスというのは避けられない部分もございますので、本事業では、まず、先ほど少し触れましたが、出版各社の方々にヒアリング等、ネットワークを構築して、ある程度信頼関係をつくった上で、本事業の内容ですとか成果みたいなところを少し出して、何とか協力いただけないかというところを考えているのが1つです。
 あと、書誌データベースを購入しているわけですけれども、書誌データベースをつくっていらっしゃる会社が、書店だったり取次会社との関係がございますので、そういったルートから、出版社のほうにいい関係を構築していくという形ですね。いろいろな形でネットワークを使いながら、なるたけ早い段階で、3年目が終わってどうしようということにならずに、今年度中からなるたけ出版社との良好な関係を築いていきたいと考えております。
 
【木部委員】  どうもありがとうございます。学会関係も、出版社との関係を今、模索しているところですので、何か連携できるかもしれないと思います。よろしくお願いいたします。
 
【吉澤マネージャー】  よろしくお願いいたします。
 
【城山主査】  では続いて、田口先生、お願いします。
 
【田口委員】  御発表どうもありがとうございました。書籍の文献情報の抽出というところについてお伺いしたいと思うんですけれども、文献情報がちゃんと文献表の形でついている書籍はいいのですが、哲学とか歴史とか、あるいは宗教学とかそういうような人文系の書籍の中には、文献表という形で文献を表示しないで、注の中に文献情報を入れるようなスタイルのものも結構あるのかなと思っていて、最近減ってきたのかなという印象はあるのですが、まだ結構あると思うんです。そういうものについてはどういう形で文献情報を抽出するのかというあたりについて、ちょっとお伺いしたいなと思ったのですが、いかがでしょうか。
 
【吉澤マネージャー】  どうもありがとうございます。おっしゃるとおり、ここは非常に悩ましいところでして、先ほど申し上げたように、かなりマニュアルで文献の引用データを取っていかないといけないというところで、そもそも、国会図書館のデータを見ましても、どこに文献ページがあるのかが分からないというのが問題としてあって、ですので、実際にその本を手に取って見てみないと分からないというのが一つと、あとは、今おっしゃっていただいたように、文献の中にはページ脚注みたいのがありますよね。そうすると、毎ページ毎ページからデータを引っ張って、そこの引用情報を拾わないといけないというのがあるので、書籍ごとに引用文献がどういう形式であるのかというところから、まず定めないといけないというところがあって、それも含めてデータ化して、少なくとも2024年分のある特定分野については、学術書を全部、国会図書館に行って閲覧して、関連ページをコピーしてという形になるのか分からないですけれども、そういった手作業になっていくというふうに考えております。
 
【田口委員】  手作業だと相当膨大な作業になるかと思うんですけれども、持続性という点で非常に難しい問題が出てくるかなと思うので……。
 
【吉澤マネージャー】  おっしゃるとおりです。先ほどの御質問とつながるのですが、ですので、やはり早い段階で出版社との協力を。出版社からのデータというか、データそのものを頂けるような関係が構築できればいいというふうに考えております。
 
【田口委員】  その点については、出版社からデータをもらって、そういう形で文献情報を可視化して、それによって当該書籍がどのぐらい引用されているのかが明確になりますよね。そういう形で、出版社が出している本がこんなに引用されているんだということが可視化できれば、これは出版社にとってもそれなりにメリットなんじゃないかなという気もするんです。
 そういう形で、その出版社が、「当社の出版事業というのはこれだけ学術的なインパクトがあるんだ」といった形で、明確化していけるんじゃないかと思うので、出版社にとってもそれなりにメリットがあるのかなという気もしました。
 以上はコメントです。
 
【吉澤マネージャー】  ありがとうございます。メリットを可視化できるように頑張りたいと思います。
 
【田口委員】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  では、仲委員、お願いします。
 
【仲委員】  どうもありがとうございました。詳しい御説明、よく分かりました。ありがとうございます。
 御質問は、サンプルに偏りがないかということなんですけれども、例えば自然科学系の研究分野であれば、ほぼほぼ、老いも若きも、あるいはどの分野の研究者も、一般的には国際誌に論文を出すということで、評価とかデータベースとかはつくりやすいんだろうと思うんです。人文・社会系の場合は、分野によって、論文発表がメインになるような社会科系の分野や、本を書くというのがメインとなるような分野があると思うので、そういった形で、サンプルに少しばらつきが出ないかということが一つ。
 それからもう一つは、年齢を考えたときに、比較的若手は論文を出すというのがメインであり、だんだん業績が蓄積されてくると、最終的に本を執筆するというような、そういう一つの成長のスタイルがあると思うんです。そうすると、集めてくるデータに、年齢的にも偏りが少しあったりするんじゃないかなと思うところです。
 書籍を扱うというのは大変いいことだと思うんですけれども、例えばどこかの年度で、論文も同じような形で、ざっくりとでも分析したときに、並行して見たときに、違いがあるのかないのかといった比較が可能であれば、やっていただくと、人文・社会系の書籍の特徴が明確になるのではないかなと思いました。
 以上です。
 
【吉澤マネージャー】  ありがとうございます。林隆之さんが既に幾つかの分野でやられているんですけど、歴史学と経営学だったかな、について、論文と書籍について、どれだけの研究者が発行して、どちらが重視されているかみたいなところをやったんですけども、やはり歴史学の場合は書籍が中心、経営学の場合は論文が中心ということで、同じ人文・社会科学系でも、やはり分野特性が、おっしゃるとおりあるかなというふうに思いますので、この事業でどこまでできるか分からないですが、ぜひ論文との比較もやっていきたいですし、あと、おっしゃっていただいた、年齢によって、最初の頃は論文が中心で、後ほど書籍になっていくということもあるので、それもモデルケースになるかもしれないですけども、そういった研究者の書籍を発刊した年代ですとか年齢みたいなところも注目していきたいというふうに考えております。ありがとうございます。
 
【仲委員】  どうもありがとうございます。
 
【城山主査】  では治部先生、お願いします。
 
【治部委員】  ありがとうございました。私は今、理工系の大学の文系教養部門で働いておりまして、学内で理工系の分野の方々の業績をはかることと、私が所属している文系分野での業績のはかり方が異なるということがよく問題になっておりますので、このような形で指標を開発していただけることは、学内でネゴシエーションコストが減って、とてもありがたいことだなというふうに、まず思っております。
 その上で、私、実はもともと出版社で16年ほど勤めております関係からも、先ほど田口委員がおっしゃっていたように、きちんと本の価値というものを、本の売行きではなくて質の価値というものを可視化するということは、出版業界にとっても喜ばしいことではないかというふうに思っております。
 皆さん御存じのように、この20年間、出版マーケットというものが縮小の一途でございまして、特に書籍に関しても、この20年でマーケットが6割になってしまっていると。そういう中で、完全に粗製乱造が起きておりまして、新書のレーベルがやたら増えているとか、全くリファレンスがないどころか、ほとんどただの聞き書きのような本がたくさんつくられているという中で、さらに売れなくなるというよくないスパイラルに入ってしまっているところがございます。
 大学で、1年生、本を読んだことがないという学生もいたりする中で、まず本を読もうということを伝えるんですけれども、どういう本を選んだらいいかというときに、例えば新書の中でも、リファレンスがあるものであれば質が高いよと。同じ値段でも、こっちの本のほうがきちんと書かれているからお得だよという言い方をふだんはしているんですけれども、こういった指標が開発されれば、学生に本を勧めるときにも、ある意味数字の指標がありますと、理工系の学生さんにはとても説得力が高くなりますので、そういう意味でもよろしいんじゃないかなというふうに思います。
 最後に、吉澤様が繰り返し述べておられました、業績としてみなすべき書籍の下限の設定なんですけれども、例えば大学等に所属している研究者の方がオーサーになっている本であっても、リファレンスが例えば全くなくて、よく見ると語り下ろしで、いわゆるゴーストライターがついているような本というのも、今はたくさんあったりします。
 その辺のところをどのように入れたり入れなかったりするかというところが、きっと難しいので、質的な調査をされるかと思いますので、ぜひ頑張っていただきたいなというふうに思います。ありがとうございます。
 
【吉澤マネージャー】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  よろしいですかね。
 では北本先生、お願いします。
 
【北本委員】  北本です。御説明ありがとうございます。私は情報系ですけれども、人文系の評価が重要ということはよく分かっております。ただ、よく分からないので一つ教えていただきたい点があります。人文系と理工系で評価指標が変わるということは分かりますが、一方で技術的に見るならば、評価のために必要となる作業は、結構似ているのではないかと思います。
 例えば、NIIでもサイニーリサーチなどのサービスを長年提供していますが、そこで必要となる名寄せの問題などについてはもう何十年も研究をしており、それに関する知見はたくさんあると思います。技術的な面では、特にデータが大規模化した場合に難しくなりますが、どのような方法でデータベースをつくるのかという点について、もしすでに検討したことがありましたらお願いします。
 
【吉澤マネージャー】  ありがとうございます。まさに、いずれかのタイミングでNIIさんのところには往訪して、技術的なところのサジェスチョンをいただこうかなと思っています。
 少し考えているのは、JSTさんと何か連携できないかというところがありまして、特に指標を考える上で、論文において書籍がどれくらい運用されているのかですとか、あるいは、論文の中に書評が載っている場合もありますので、そういったところからデータが拾えないかというところで、既存のデータベースとして確立しているものから少し参考にして、新たな指標だったり、人文・社会科学系にとって役に立つものを抽出していきたいというところが1点と、あとは、今おっしゃっていただいたように、やはり自然科学と人文・社会学系、テクニカルに見て、指標づくりだったりデータベースの構築に関して、共通点も非常に多いと思いますので、そこら辺はぜひ参考にさせていただきたいと思っております。
 
【北本委員】  分かりました。ありがとうございます。
 
【城山主査】  では青島先生、お願いします。
 
【青島委員】  どうもありがとうございました。書籍のところの切り分けというのが今一番難しいし、興味があるところなんですけど、先ほど、当面は上限じゃなくて下限を、いろんなものを含めてということなんですけど、その後、いわゆる研究書的なものと、それこそ新書のようなものとかエッセイみたいなものを切り分けていくときに、どうやって、どんな構想で考えられているのかなと。
 もちろん、客観的に、新書かどうかぐらいは見れると思うんですけども、なかなか難しいなと。ただ一方で、我々大学なんかでも、いろんな評価をするときには、自分たちでは切り分けてはいるんですよね。切り分けてくれと言われてやっているので、何かそういうのをうまく拾い上げていくとか、あとは、後半で引用を見るということなので、逆に学術論文に引用されているかどうかということでウエートをかけていくとか、いろいろ今、僕も考えて、こんなことができそうだなと思っていたんですけど、何か構想とかがおありになったら、興味があるのでお聞かせいただけますか。
 
【吉澤マネージャー】  ありがとうございます。基本的には先ほど申し上げたように、大学に所属している研究者が書いたものであるかどうかというのが一つというところで、その上で、既存のNDCだったりCコードみたいなところで、分野からチェックできないかというところなんですけれども、さらに言えば、出版社がどこであるかというのも一つ注目していて、それなりに各分野で知られた学術的な出版社というのが多分ありますので、そこで出版されているか否かというところも目安になりますけど、ただ、日本の場合難しいのは、大手の出版社でもかなり学術的な書籍を出している場合がありますので、そこら辺はきれいには行かないのかなというところは思っております。
 あとは、ちょっと治部さんがおっしゃいましたけど、書籍で実際にリファレンスをどれだけつけているか、あるいはつけていないかというところも、一つの参照点になるのかなというふうに思って、これも実際にデータを見てみたり、タイトルだったり中身を見てみないと分からないところがありますので、ちょっと探りながらということになりますけど、ぜひいろんな形でトライしてみたいと思います。
 
【青島委員】  出版社は協力してくれないですかね。出版社は大体分かっているんでしょうけれど。
 
【吉澤マネージャー】  出版社は難しいと思っていて、むしろ人社系のURAの方々に、人文・社会科学系、各分野の研究者、一線の研究者でもいいんですけども、どこまでを学術書として定義されるかというところも、ヒアリングですかね、やっぱり現場の研究者が一番、多分相場感を分かっていらっしゃると思うので、そういったところでチェックしていくというのがあり得るかなと思っています。
 出版社の方は、あまり学術書か否かというところは、思ったほど気にされていないようなところもありますので、出版社からどこまで協力いただけるかというのは、ちょっと分からないところです。
 
【青島委員】  楽しみにしています。よろしくお願いします。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 最後、大橋先生、お願いします。
 
【大橋委員】  すみません、最後に簡単なコメントなのですけれど、今回の取組は幾つか実験的なこともいろいろやられるのかなと思っているんですけれど、やはり重要な点というのは再現性がある手法であるということと、あと、その手法がスケール(規模拡大)できるという、その2点はすごく重要なのかなと思っていまして、ある意味、正確性は若干欠くにしても、100%ではないにしても、いかに取り組みをスケールするかということをやっていくことで先に進めていただければとも思っているので、そういうところも念頭に御議論いただくといいのかなというふうに思っています。
 
【吉澤マネージャー】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。まだいろいろ議論は尽きないと思いますけれども、これから進行していただくプロジェクトであるので、またいろんな形でインプットをいただいて、また議論させていただければいいかなと思います。
 それでは、時間もありますので次に移りたいと思います。
 吉澤さん、どうもありがとうございました。チャレンジングなプロジェクトですが、よろしくお願いします。
 そうしましたら、議題の2のほうに移りたいと思います。「人文学・社会科学の振興に向けた論点について」ということで、まず、事務局のほうから御説明お願いします。
 
【助川学術企画室長】  それでは、事務局から御説明申し上げます。資料2を御覧いただければと思います。
 まず3ページと4ページで、本特別委員会の今期の経緯をおさらいいたします。今期は、合計9回の会合を本日まで重ねておりまして、前回の会合の後には議論の中間まとめをしていただきました。今期は来年の2月までですので、今日を含めて2度ほど開催して、最終的な取りまとめをお願いできればと思っております。
 5ページ6ページは、中間まとめの概要ですので、説明は省略いたしますけれども、後ほど資料の中で御説明いたしますとおり、共同利用・共同研究体制ですとか異分野融合研究についても含めて、御議論いただければと思っております。
 と申しますのは、これについて、学術分科会の議論について若干御紹介申し上げたいと思います。人文学・社会科学特別委員会、本委員会ですけれども、これは学術分科会の下にございまして、先々週、11月14日に学術分科会が開催されました。
 次期第7期の科学技術・イノベーション基本計画に向けた検討が各審議会で行われておりますが、学術分科会としては、ここのところにございますように8月23日付で、研究力強化の観点から意見を取りまとめたところでございます。
 次の9ページがそのポイントとなってございますけれども、その中では、具体的な方向性、赤のところ3つございます中で、(3)の一部として、「共同利用・共同研究体制の機能強化を図ることで、全国に広く点在される研究者のポテンシャルを引き出して、我が国の研究の厚みを大きくする」とされているところでございます。
 これを受けまして、先日の11月14日の学術分科会において、共同利用・共同研究体制について御議論いただきました。そのいただいた意見の主なものは、参考資料4というところで、事務局の責任のものですけれどまとめてございますが、そのうち、人文学・社会科学関係について触れられた意見について、こちらの10ページのところでまとめてございます。
 分科会の意見が4つほど抜き書きしてございますけれども、1つ目として、これはWPIも含めていただいた意見が書かれておりますけれども、共同利用・共同研究体制の人文・社会科学系の――先生は「文系」と発言されていましたが、人社系の好事例が少なく、数少ない人社系の好事例の多くが、データサイエンスとの関係で理系とつながる形でうまくやっているというふうになっていると。我が国の学術の総合的な発展を考えたときに、人社系の研究力強化が図れるような仕組みにしておかないといけないのではないかというのが1点目。
 2点目として、高度な技術職員ですとか研究マネジメント人材も含めたチームとしての強みを生かし、研究コンサル段階から論文にまとめて成果発信をする、それをコーディネートして新たなサイエンスを生み出すという機能というのが、大学共同利用機関、人文系のものにもすぐに当てはまるかというと難しい面もあるのではないかと。そうすると、人文系に焦点を当てた研究力の強化ということの検討もさらに必要なのではないかと。また、学際研究ネットワークの形成ですとか新しい異分野融合の研究開拓ということに人文系が積極的に取り組むということも、より考えていくべきではないかというのが2点目。
 3つ目として、人社系の共同利用・共同研究拠点で研究活動が盛んに行われてはいるのだけれども、もっと国際的な連携が必要なのではないかというのが、またありました。
 さらに、今、私は「人社」というふうに申しましたけども、大学共同利用機関で申しますと、人間文化研究機構がございますけれども社会科学系は現在なくて、そこについてどうしていくのかということもあると、このような意見が学術分科会でございました。
 そこで、一旦、人社に限らない話でございますけれども、まず、研究力強化に向けた施策の全体像というのを一旦ここでお示しいたしますと、大学研究力強化に向けた施策の全体像についてという12ページでございますけれども、ベースとして、運交金などの基盤的経費の支援ですとか、あるいは研究者個人・チームへの支援といったものがあります。科研費なども含めてですね。さらに、WPIのような拠点に対する支援というのもあって、その拠点でつくった成果・強みや、それを可能にするシステムを大学全体に広げていくという意味での、研究大学への全学的な支援というのがあります。
 そうした各拠点・各大学のピークを伸ばす支援に対して、言わば横串を刺す支援といたしまして、点線でも囲ってございますけれども、組織・分野を越えた連携の強化・拡大というものがあって、これから、これを担う存在である大学共同利用機関ですとか共同利用・共同研究拠点といったものについて御説明申し上げたいと思います。
 この共同利用・共同研究体制の一つ大きなものとして、大学共同利用機関法人がございます。13ページにございますけれども、大学共同利用機関法人というのは、大学の共同利用に供する法人として設置されたものでございまして、現在4つの法人、計17の機関が設置されてございます。
 そして、このうちの1つが、先ほどもちらっと触れましたけれども人文学分野の大学共同利用機関法人として、14ページにあります人間文化研究機構がございまして、その中には、次の15ページにあります6つの機関がございます。6つの機関や、目的、主な活動についてはこちらのページに記載しておりまして、研究資料・情報等の研究基盤の提供ですとか、国内外の研究機関・研究者との共同研究などの活動を、それぞれ行っていらっしゃるところでございます。
 では、この大学共同利用機関でどんなことをしているかの例を取り出してみますけれども、16ページから18ページでございます。こちらの3枚は、先ほど申しました学術分科会の資料からの抜粋でございますけれども、まず16ページ、大学共同利用機関の役割の1つとして、個々の大学では整備できないような設備・資料等を提供するというものがございます。多くの大型プロジェクトが行われているところでございますけれども、最初のところを御覧いただきますと、人文学分野では、データ駆動による課題解決型人文科学の創成というものを、国文学研究資料館、人文機構の国文研で行っております。こちらは、前回の委員会で国文研の渡部館長が御説明くださった国文研DDHプロジェクトでございます。
 また、こういった共同利用というのは見えやすいものではございますけれども、1ページ進んで17ページでございます、こちらは自然科学研究機構の例を挙げてございますけれども、単に設備を共用するというだけではなくて、技術職員ですとかURAなどの専門人材が1つのチームとなって、研究のコンサル段階から実験・解析・成果発表・広報、こういった広い段階を一気通貫で研究者をサポートするという機能も持っておられまして、特に自然科学分野においては、チーム化された研究の中で、こういった機能も研究力強化において重要だというふうに考えてございます。
 同じく自然機構の例ですが、次の18ページにございますように、詳細は省略いたしますけれども、若い段階で自然科学研究機構に来られた研究者が育って巣立っていく、そういう人材輩出、人材養成機能というのも大学共同利用機関にはあるのではないかというふうに考えてございます。
 以上、大学共同利用機関についてざっと概観いたしました。
 引き続き、共同利用・共同研究拠点、通称「共共拠点」という言い方をしますけれども、こちらについての御説明でございます。
 19ページからでございますけれども、これは大学の研究施設で、学術研究の発展に特に資する共同利用・共同研究の拠点というのを、文部科学大臣が認定するというものでございます。
 どれぐらいあるかというのは、一覧で見ていただくと20ページになりまして、現在認定されている拠点を一覧として載せております。小さい字になってしまって申し訳ございませんけれども、そのうち人社系の拠点ですとか、人社を含めた複合領域を担う拠点も一定数ございまして、そのうちの一部をピンク色に塗っておりまして、細かい説明は省略いたしますけれども、右下にちょっと触れておりますように、45ページから53ページに、ピンク色に塗ったものの取組概要は記載しております。ただ、何をもって人文・社会科学に関係するかという線引きは極めて難しゅうございまして、ここでは取組概要として載せていなかったので黒字にしているのですが、例えば東京大学の空間情報科学研究センターといった、色がついていないところでも人文学・社会学とも関わるような研究が行われている、そういう拠点もございますことは申し上げておきたいと思います。
 では、具体でどんな取組が、特に人文学・社会学分野でなされているかというのは21ページでございまして、黄色がどちらかというと人文系、青が社会科学系でございますけれども、例えば人文学系では、海外の博物館と連携して日本文化の国際発信に貢献していたり、あるいは古典籍の解読、こういうものの解読のハードルを下げるための、崩し字を読むシステム開発ですとか、あるいは教育プログラムを通じて異分野からも古典籍の研究に入っていただくとか、そういう分野の拡大というのもしているところでございます。
 社会科学系では、例えば公的機関ではなかなか収集が難しいデータを蓄積されておられたりして、拠点活動で得られた知見を国の政策に反映されるといったこともございます。
 共同利用・共同研究による国際的にも優れた研究成果の例というのを、22ページに幾つか挙げておりまして、これは自然科学系・人社系両方含んでおりますけど、2番目の東京大学史料編纂所の例としては、外国語による発信などに役立つ日本史資料のデータベース、それを整備されることによって、日本史研究の国際化の基盤の整備に貢献してくださっているところでございます。
 以上が、1点目の共同利用・共同研究体制についてでございますけれども、この話と重なる部分も比較的大きい、異分野融合研究について若干申し上げますと、先ほど触れました中間まとめにおいても、異分野融合研究について御議論いただいたところでございますけれども、学術分科会でも、学際研究ネットワークの形成ですとか新しい異分野融合の研究開拓といったことに、人文系も積極的に取り組むということを考えるべきではないかという意見をいただいたところでございますので、今回、より深掘りした御議論をいただければと思っております。
 そこで、次の25ページのところで、私ども事務局において、試みに資料を作ってみました。例えばさっきの中間まとめでも、「異分野融合研究」というふうに一口でまとめてしまっているのですが、実はその時、論者によって、あるいは論じている時点その時々によって、イメージしているものはちょっとバラエティーがあるのではないのかなと感じておりまして、なので、議論の整理に資するよう、試みに類型化をしてみたところでございます。
 きれいに分かれるものではないんですけれども、大きく2つに分けて――あるいはこの2つにも限られないかもしれないんですけど、1つ目として青色の、「共通の課題・事象に対して、複数の学問分野からアプローチして、新たな知の創出、方法論の革新を目指すもの」というカテゴリーが一つあるのではないかと。2つ目が緑色の、「ある学問領域の研究を深くやるために、他の学問領域の知見や方法論を活用するもの」というのがあるのではないかというふうに考えておりまして、このうちの1つ目の中でも、例えば感染症への対策に関する研究。「感染症」という大きな課題、事象というのがあったとして、そこに飛沫の拡散ですとか、あるいはパンデミックのときに人々はどう行動変容するんだろうかという、複数の学問分野からアプローチするですとか、あるいは、2つ目のところですけども、人間の行動などの特定の課題の事象について、密接に関係する学問分野がつながってアプローチするといったカテゴリーに分けられるのではないのかなというふうに考えたところでございます。
 前者の場合は共通言語を持たないことが比較的多くて、後者は共通言語を持つことが多いという特徴もあるのかなと考えていて、課題推進方策を考えるに当たってはこれを、きれいに分かれるものではないかもしれないですけど、何となくこんなものがあるのではないかと、分けて考える必要があるのではないかと考えております。
 さらに、異分野融合研究といったときに、この丸2のような、「他の学問領域の知見や方法論を活用する」というのもあるのではないかと思っているのですが、ちょっと、あまりこういう例をちゃんと挙げたことはなかったのかなと思いまして、次の26ページに、その緑のほうの好事例と思われる研究を、事務局で2例まとめてみました。
 時間の関係上、右側のピンク色のほうだけにさせていただきますけれども、炭素の同位体「炭素14」を活用した年代測定という、考古学でよく用いられる年代測定の手法というのがございますけれども、これは太陽の黒点の数、太陽の活動と、樹木の年輪と年輪の間に残っている炭素14の変動が相関関係にあるということに着目して、この手法を活用したものがございます。
 既に年代が分かっている屋久杉を炭素14年代測定で分析したところ、西暦775年に急激に炭素14の濃度が上昇しているということが分かりました。そして、世界中の木々も見てみたところ、同じ現象が世界中でも見られるということが分かったと。
 こうした異なる地域とか異なる樹木の間でも、同じ年代だったら同様の炭素の増減が見られるという知見があって、それを活用して、巨大噴火で火砕流にのまれた樹木とか、あるいは既に年代が特定できている屋久杉の測定結果を比較するということを駆使していった結果、長らく正確な年代が不明であった、朝鮮にあります白頭山の噴火の年が、西暦946年というふうに1年単位で特定することができた。
 こういうふうに、宇宙研究での研究成果が考古学分野にも新たな発見をもたらすことができたというような例がございます。
 このように、他の学問領域の知見ですとか方法論を活用するという形で異分野融合研究を行うことで、分野研究を飛躍的に向上させたり、新たな知を生み出したりすることがあるのではないかというふうに考えているところでございます。
 27ページ、28ページのところがデータに関することでございますけれども、人文学で研究に活用されている資料は、先ほどもありましたけど、多くが崩し字で書かれているなど、歴史学とか国文学の研究者で崩し字を読めるという先生ではない先生方には、活用するのになかなか高いハードルがありまして、ただ、こうしたデータが歴史のビッグデータとして他分野からも活用されるためには、データ化する際にデータ規格をそろえていくということが、ファーストステップとして重要であると。
 それで、前回の人社委員会で、この事業の1のところにありますデジタル・ヒューマニティーズ・コンソーシアムの運営でございますけれども、今年度から実施することとしておりまして、前回の委員会で人間文化研究機構から御説明いただいたところでございますけれども、人文機構において受託していただいて、実施しているところでございます。
 29ページから、またちょっと違う話で恐縮ですけれども、箱で囲みました学際領域展開ハブ形成プログラム、いわゆる「学際ハブ」と通称することがございますけれども、異分野の研究を行う大学の研究所ですとか研究機関と連携した、学際研究とか組織・分野を超えた研究ネットワークの構築の強化・拡大、こういうものを目指した事業として令和5年度から開始しているところでございます。
 次の30ページに、そのプログラムの令和5年・令和6年分の採択機関がございますけれども、全部で10機関ございまして、赤で囲っている3つが、人文科学・社会科学が関係するものとなっております。ただ、1のところは東北大学金属材料研究所だったりしますけれども、人社系は全て、採択された機関ではなくて、関連する分野として参画機関としての参加というふうになっておりまして、人社を中核とする採択事例は、まだ今のところは出てきていないという状況でして、今後より一層、人社が関係する異分野融合研究拠点が出てくるということが期待されるのではないかなと考えているところでございます。
 これまでの取組を長くしゃべってしまって恐縮なんですけれども、こちらを踏まえて、本日御議論いただきたい点というのを私どもから準備したのが、32ページでございます。
 まず、前半で御説明申し上げました共同利用・共同研究体制についてですけれども、この共同利用・共同研究体制の機能の例として、中ほどに5つほど書いてございますけれども、人文学・社会科学分野の共同利用・共同研究体制について、特に人社についての現状の成果とか、あるいは課題、今後の機能強化に当たってどんな視点が重要なんだろうかと。その際、人文学と社会科学、今、私は「人社」とひとまとめにしましたけれど、分けて議論する必要があるのかないのかということ。
 また、2点目のところ、異分野融合についてでございますけれども、近年の諸情勢の変化を受けて、人社に対する社会からの期待というのは大きくなっているものというふうに思っておりますし、また、本日御紹介いたしましたけれども、人社の中で、あるいは自然科学との協働の中で、人社の研究が大きく進展した事例というのも出てきており、それで分野研究も深化できると。そして、その検討に当たっては、先ほどの25ページの類型の試みのものを参考にしながら、より解像度を上げた御議論がいただければというふうに考えております。
 3点目として、第12期、今期の人社委員会が終わりに近づいていることを受けまして、その他も含めて、重要な点があれば御示唆いただければと考えております。
 それで、再び参考としてということで大変恐縮なんですが、次の33ページでございます。
 これも一概に簡単に言えるものではないのかなと思ったんですけれども、人文学・社会科学の研究のプロセスというものと共共体制というものを、事務局においてあえて可視化したものでございます。
 左上でございますけれども、人文学・社会科学ですと、例えば古典籍ですとか社会調査のデータだとか、多様な資料資源を用いて研究なさっていると思います。それを研究してデータベース化されたり、文章に注釈がついたりする、そういうことが積み重なること、これが研究基盤になっていくのではないかというふうに考えております。
 自然科学ですと、中規模・大規模な実験設備そのものが研究基盤となるということもありますけれども、人文・社会科学の場合は、古典籍とかそういうものをデータベース化、注釈をつける、そういったものが研究基盤になるというのが大きく違う点として一つ言えるのではないかと。
 そして、ここで出てきた研究基盤というものを研究者の先生方に活用していただく、これで分野の研究が深まっていくとか、あるいは、データベース化されたものとか注釈がついたものを他分野の先生にも見ていただく。こうやって異分野に触れ合う、融合することで研究の幅が広がる、それで新たな知が創出されて新しい分野が創成されることにもつながる。そして、多様な研究資源が利活用しやすい状態にあるということが、この分野研究を加速化させる、あるいは異分野融合研究を深める、深化させることにつながるのではないかというふうに考えておりまして、そして、この研究の成果というのが論文等の形で、また新たに左側に戻っていって研究資源になって、研究基盤の形成・充実にさらに寄与していくということがあるのではないかと思います。
 今、私はこの青の部分と黄色の部分を中心に申しましたけれども、これらの研究の活動を通じて、若手の研究者も含めた人材の育成ですとか、研究成果を発信することによって社会への還元、そういった意味で社会との関わり、研究を国際的に行ったり、あるいはその成果を国際的に発信したりという意味では国際性、こういったものが行われているのではないかと考えており、大学共同利用機関、共共拠点の共同利用・共同研究体制というものが、これらの活動に貢献しているではないかというようなことを表した図で、事務局において、試みになんですけれども可視化してみたところでございます。これも踏まえた御議論を頂戴できればと思います。
 長くなって恐縮でございますけれども、私からの説明は以上でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。ちょっと大きい話をぼんぼんと出した形になっているかと思うんですけれども、主たるところとしては、1つ前のページで先ほどお示しいただいた、共同利用・共同研究体制に関して、人社の観点からどういうことが言えるかという1つの固まりと、それとかなり密接につながってくるんですけれども、これまで我々が議論してきた異分野融合研究の中にも多様なものがあって、その多様なものと多様な共同研究・共同利用の体制というのが多分つながってくるだろうということで、この2つをセットで御議論いただきたいということかと思います。
 あと、中間取りまとめとの関係でいうと、中間取りまとめは異分野融合研究の話と、それからデータ駆動型研究なり、人社の活動に関するデータをどのように確保するかというところに焦点を当てたわけですが、データというのは確かに共同利用・共同研究体制の一つの柱ですが、それだけではなくて、まさに異分野が融合して新しいものをつくっていくみたいなところもあるので、そういうところも含めて少し幅広く議論したいという、そういうような位置づけになるのではないかなと思います。
 今日まとめるというよりは、今日はいろいろな観点から皆さんに御議論をいただいて、あともう1回機会があるということかと思いますので、それをまとめるに先立って、むしろ多様な観点から、今日はいろいろな、多様な御意見をいただけるのがいいのかなというふうに思いますので、順番をどうしてということはあえてせず、皆さんのほうからいろいろコメントいただければというふうに思います。
 ということで、50分ほど時間はあるかと思いますが、いかがでしょうか。
 では木部先生、お願いします。
 
【木部委員】  それでは、大学共同利用機関に所属しておりますので、最初に発言させていただきます。
 33ページのこの図は非常によくまとめてくださっています。人文社会系にとって研究基盤とは何かというと、ここに書いてあるように、資料や資源、そしてその整備そのものが研究基盤になるわけです。理系では、大型分析機器とか、今は中型の分析機器のことも話題になっていますけども、それらの分析機器の維持管理を各大学が個別にやるのは無理だし非効率的なので、共同利用機関が大型機器を整備して、それを大学の研究者に提供するという考え方だと思うんです。人文系は、文化資料だとか文字資料だとか、あるいは民俗資料だとか、そういうものが大型機器に相当するものになるわけです。それが、まだ整備が非常に不十分であると思います。
 最も不十分なのは、日本各地に膨大な地域の資料が眠っているのに、それがまだ未開発の段階である点です。それから、資料が開発されていたとしてもネットワークでつながっていない。そこが問題で、それを改善するセンターのような役割を担うのが共共拠点であり、大学共同利用機関であるだろうというふうに私どもは認識しております。今日のこの資料はそのことが非常に分かりやすく書かれていて、ありがたいと思いました。ちょっと、感想みたいなことで申し訳ありません。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 そうしましたら、続いて後藤先生、お願いします。
 
【後藤委員】  後藤でございます。すみません、今、ほぼ同じことを言われてしまいましたので、なかなか少しお話が難しいところもございますけれども。
 今、木部委員のほうからもお話ありましたとおりでして、やはり人文系の共同利用機関というのは、データというか基礎的な基盤をどれだけ持っているかということが一番大きな機能になっているというふうに理解をしております。
 なので、途中に自然科学研究機構さんの全体のオペレーションに関わるという例もありましたけども、その点でいうと、例えば資料であるとか知識基盤を使ってもらうときにうまくフォローアップをするとか、そういうような形で、機械ではなくてデータ基盤に対して、データ基盤を研究で使うときにどのような使い方が可能かとか、そういうところにフォローアップをしていくとか、人文機構だけではない、人文系の共同利用機関なりのオペレーションの在り方というのはもう少しあるのかなというふうに思っておりました。
 もう1つは、崩し字のOCRの事例が出ておりましたけども、この中だと北本先生も関わっておられるもの多々あると思いますけれども、最近ですと、OCRの結果から現代語変換みたいな実験も行われるようになってきました。もし現代語変換までうまくいくようになってくると、そこから先は、英訳等まで場合によっては可能になるという未来が、そのうちやってくるだろうということになります。
 もちろん、現時点ではまだまだ精度が低くて、専門の研究者のチェックというのは全然欠かすことができないんですけれども、現代語訳であるとか英訳まで可能になってくると、人文系の資源がほかの分野で使われるようになるとか、海外の研究者にも使われるようになるという、その学際性とか国際性を実現できるという点で非常に大きな役割を果たすと思っています。
 なので、そのような公開というのが今後重要になるとともに、これも木部先生のほうからお話があったとおりになるんですけども、一方で、まだそのためのデジタル基盤というのはかなり足りていないというか、まだまださらに進めなければならないと思っておりますので、ぜひ、異分野を進めるためにも、国際性を高めるためにも、基盤の整備というのを引き続き考えていかなければならないのかなというふうに、個人的には思っております。
 もう1つすみません、分野の融合の類型1・2の観点もございましたけども、これはいずれも重要かと思いますけど、1の場合には、課題設計の作り方のところがいつも難しいなと思っております。私も関わることがありますけれども、大き過ぎると漠然としていて、それぞれがばらばらにやってよく分からなくなってしまうし、小さ過ぎると何か特定の、本当にごく限られた人だけがちょっと関わって終わってしまうということになるので、中間的な課題設計というか、課題設計の大きさみたいなのを考えることがむしろ重要になるのかなと思っておりまして、その辺りがうまくフォローできると、類型1のほうも実現できる可能性というのは高まるかなと思っております。
 すみません、長くなりましたが以上です。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、山中先生、お願いします。
 
【山中委員】  私も、先ほどの基盤整備のところを共感しながらお聞きしていたんですが、理科系だと、一度大きな機械を買ったら、それで基盤整備が一応できて、その機械をどれだけ人が使ったかということになると思うんですが、人文系の場合はデータをずっと増やしていかなくてはいけないので、その時に人の力、手作業がたくさんかかりますし、やっぱり若手の人たちの時間を奪うことになって、それでもその基盤整備への貢献が、若い研究者の成果としてあまりきちっと評価されていないなというところが、いつも気になっていました。
 論文にする前の基礎的なデータといっても、何も分からない人では処理できないので、ある程度専門知識のある研究者がその基盤を整備していって、皆さんが使いやすいように出していくわけですが、そのためにはずっと誰かを雇わなくちゃいけないし、その仕事をする若い人の生活の面倒を見なくちゃいけないというところをどうしていくのか、いつも悩んでいます。
 若手のことでいえば、今日の前半の学術書の評価のことを聞きながら同じことを思ったんですが、特に私が関わっているような古典の分野などですと、今日のお話などに比べて、全員の意識が内向きですし、全体の流れから遅れがちです。そうなると、若手の人たちが潮流に遅れないように、「解説書を書いても評価されないから、解説書を書く暇があったら専門書を出しなさい」という教育を徹底していかなくちゃいけなくなるんだなと思いました。専門分野を社会へ還元していく解説書も大事な仕事だと思うんですが、そういうことには一切手を出さないで、なるべく専門の書籍を書きなさいと若手を教育しながら、一方でとにかく異分野融合の研究が求められているのだから、そこにも関わりなさい、と言うことになるわけですよね。その場合、学界全体が、もうちょっと、意識を高めるようなことをしていかないと、こうやって「異分野融合をやりましょう」と盛り上げても、それに乗って時間を費やした研究成果が身内の学界に受け入れてもらえず、若手の死屍累々みたいになってしまうこともあるような気がしています。
 人文系の人にも、もう世の中は変わっているのだから、もっともっと新しい発想でやらなくちゃいけないんだということが全体に伝わらないと、これからポストを見つけなければならない若手の人は大変だなと思いながら聞いていました。
 それからもう1点だけ。異分野融合の丸2、片方の知識をもう片方の研究に使うという形は、私は異分野融合というふうに言わないのだと思っていました。この形を「異分野融合研究」と言って始めるので、どちらかがもう一方を利用するような形になったり、基本方針が違いすぎてけんかになるのだろうなといつも思っていました。
 以上です。すみません、長くなりました。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 続いて田口先生、お願いします。
 
【田口委員】  私も、今出ている同じ25ページについてなんですけれども、こちらの丸1の上のほうの、大きな課題や事象にたくさんの分野がアプローチするというものですが、これは比較的分かりやすいし、例えば感染症対策などを考えてみると、人文・社会系が必ず入らないとまずいということは誰の目にも明らかで、ここはもう必然的に学際的、異分野融合的になると思うんです。
 それから、丸2の緑のほう、一方の知見や方法論を他方に使うという、こういうタイプも、異分野が関わっているということが非常に分かりやすいし、そういうことで初めてできることがいろいろでてきたということで比較的分かりやすいし、話題にもなりやすいと思うんです。
 一番難しいのが真ん中のところ、特定の課題とか事象に関して幾つかの分野が融合的にアプローチするというところで、私個人としても関わっているのはこの真ん中のところなんですけど、ここが一番可視化するのが難しいなというふうに考えていまして、認知科学などは本当に学際的な分野で、いろんな分野が関わっていて、その中には哲学とか心理学など、人文系に入るようなものも加わっている。そのほかに、ロボティクスの中に哲学や心理学などなどが入ってくる、あるいは人類学などが入ってくるということも、最近非常によくある。それから、あと意識の科学ですかね。意識というものを学際的に研究するという分野が1990年代ぐらいから非常に盛んになってきましたけれども、この分野でもやはり哲学や心理学、人類学、宗教学といったような人文系の分野が入り込んで、非常に重要視されている。
 そういう現状があるんですが、しかし私の印象だと、意外に人文系の研究者がそれをあまりよく知らない。実は理系の研究者のほうが、これらの分野、認知科学とかロボティクスとかに関わっている理系の分野の研究者のほうが、哲学の必要性とかそういうものを理解していて、哲学って非常に重要だし、自分も関心があるという人は多いんですよね。しかし、それに関わってくれる人文系、哲学などの研究者が非常に少ないという現状があると思うんです。
 そういうわけなので、こういう分野があるんだということをどうやって可視化していくのかということが、結構大きな課題なのかなと。それは外部への可視化ということだけではなくて、むしろ、これに関わる可能性がある、関わるポテンシャルを持っている人文・社会系の研究者に、いかにこういう分野があるということを可視化していくかということが、結構問題なのではないのかなというふうに思っています。
 以上、私にも、このために何をやったらいいのかといういいアイデアがあるわけではないんですけれども、現状の課題として申し上げておきたいなと思いました。
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 続いて仲先生、お願いします。
 
【仲委員】  どうもありがとうございます。私も25ページの、新たな知の創出ということについて、意見を述べたいと思います。
 私の専門は心理学なんですけれども、法学との融合領域で、「法と心理学」という領域の形成にずっと携わってきました。25年ぐらい、もう続いているわけですけれども、異分野との融合領域、共同研究ってなかなか始まらないということがあると思うんです。もちろん、ダブルディグリーとか、あるいはポスドクとなって武者修行で別の研究室とか研究所に行くとかいうようなことがあればいいんですが、個人レベルですと融合はなかなか進まないということがある。
 「法と心理学」において一つ大きな力になったなと思うのは、今で言えば学術変革領域研究、前は新学術領域研究でしたけれども、そういうところで、いろいろな専門の先生方が、計画班とか公募班というかたちで研究を一緒に進めていく。あとはJST/RISTEXの社会技術研究開発事業などですか、これも1つの領域にいろいろな専門性を持つグループが参画して、合宿などもやりながら研究を進めていくということがあったりする。こういう出会いが効果的であったと思うんです。
 ですので積極的に、学術変革とかそのほかの研究費の中にも人文と自然科学が入るというような仕組みをつくるとか、あと、先ほど言及のあった共同利用・共同研究センターなどで、積極的に人文系の共同利用センターに自然科学系の人を招き入れるとか、自然科学系の共同利用センターに人文系の人を招き入れるというふうにして、さらにこれをファンディングしてくれるようなシステムがあると、知の創出につながるんじゃないかと思いました。
 以上です。
 
【城山主査】  どうもありがとうございます。
 では大橋先生、お願いします。
 
【大橋委員】  ありがとうございます。私は33ページ目なんですけれども、この図は、私自身は比較的腹落ちするなと思っています。すごく卓越した人は、多分いきなり異分野領域で物すごい業績を出すという人もいるんだと思うんですけど、ただ、多くの若手の人とか普通の研究者の方々って、自分の専門分野があって、その専門分野での業績で多分キャリアでも評価されると思われます。そうした中において、新しい異分野に触れることで、アイデアとかあるいは手法なりとかを学んで、それを自分の専門分野に持ち込んでいくというふうな形が、多分、多くの人たちは一般的な姿なのかなと。
 そういう意味でいうと、この図が非常に私はフィットするかなと思っていますし、まれに異分野でも業績を上げていくというのはあると思うんですけど、なかなか、今の学術の評価の仕方として、異分野の業績ってどこで評価するのだろうという不安感が多分あると思うので、そうするとやっぱり青の部分、何か足場がないとなかなか難しいのかなという気がしているというのが、私の肌感覚です。
 共同利用・共同研究に関わる機関で、やはり人文・社会科学系で重要なのはデータなり資料なりというものだと思います。基本となるデータで、既存のものであれば古文書とかそういうものもあると思うんですけど、最近AIとかが進んできて、新しく使えるようになったデータとか資料も、実はどんどん増えてきているような状況なのかなと思っています。
 これは分野によっても違うと思いますけど、AIによっても、また手法のアクセサビリティーも相当下がってきているところもありますし、研究の仕方も実は変わってきているんじゃないかと思っています。
 そうした中において、やはり共同利用・共同研究機関の在り方というのも並行して議論をしながら、今の我々の研究の仕方も、特に若い人って相当いろんな手練手管を使うので、そういうことを含めて、研究ってダイナミックに動いているので、そういうところもしっかり頭に入れておくべきなのかなと感じました。
 以上です。ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございます。
 続いて森田先生、お願いします。
 
【森田委員】  ありがとうございます。私も25ページのお話になります。大部分はほかの先生方が既におっしゃられた点と重なるのですけれども、法学ってほぼほぼ多分、このページで言ったら学際になると思うのです。僕は法学者の中では少数派なのですけれども、法学ってそもそも法学自身の方法論ってないのです。要するに、法ルールというのは、一定の社会の目的を実現するためのツールであって、そのために、例えばこういう言葉とこういう言葉をこう組み合わせるとうまくいくよということの、知恵の積み重ねなのです。
 そうすると、じゃあどのような社会状態が目的として望ましいのかということを、法学自身がそれを分析するツールを持っているかというと、それは持っていない。それは、経済学とか心理学とか社会学とか、ほかの社会学、人文科学、あるいは自然科学から知恵を借りてやるしかないというふうに僕自身は思っています。ですので、僕自身も実際、経済学や計量経済学を活用して法学の問題を解いてきたので、その意味で、自分的にはずっと丸2なのです。
 そういう意味で、法学はほぼほぼ全て丸2になってしまうことになるし、あるいは何か社会目的を実現したいという、そのことを他の分野の研究でやったとして、じゃあ実際にそれを制度としてどうやって落とし込むのがいいのですかという段階になってくると、法学者ってそれに関するテクノクラートなので、法学の知恵が必要になります。ですから、丸1のことをやるについても、先ほども山中先生から御発言がありましたけども、ほぼほぼ全てについて、法学は必要とされる知恵だと思うのです。
 ところが、残念ながら、今まであまりこういう丸1や丸2のところに法学者が呼ばれることってなかなかありませんでした。先ほど仲先生がおっしゃっていた「法と心理学」とか、「法と何とか学」というのは幾つか、例えば法と文学とかいって近松門左衛門を読んでみて、近松門左衛門の中にどういうふうに法に対する意識があるかみたいなことを研究する、そういった分野とかはあるのですけれども、ごく一部に限られてきました。
 それは多分2つ理由があります。まず1つは、法の研究者って、特に今は法科大学院というところで実務家を育てるということがすごく要求されていて、そこで皆さん疲弊されているというのが1つ。
 もう1つは、今までほかの分野の研究者の方とお話ししていて感じたのが、ほかの分野の研究者の方が、法学が実は自分たちのやっていることの最終的な実現に関係しているということをあまり知らなくて、しかもそれは誰にアプローチすればいいかというのが分からないという、そこのコネクションが見つからないというのがあります。誰に話をしたらいいのか分からない。たまたま何かの懇親会などの機会に、自分はこれこれこういうことをやっているのだけれども、何か法学の先生で関係ある人いない、と質問されて、そのことだったらこの先生が詳しいよ、みたいなアドバイスはできるのですけれども、以前からもお話が出ていますけれども、URAか何かの形でそこをつなげる、その窓口みたいなものがうまくないと、法学がせっかく持っている潜在能力というものを活用する道が狭まってしまうのかなと思います。
 さらに、なぜ法学者がやらないかというのは、先ほどの大橋先生の御意見にありましたけれども、そういう学際的な、あるいはほかの分野に関することをやったとして、それをパブリッシュする場がない、あるいはパブリッシュしても、自分のところで評価してもらえないという問題があります。
 これは確かに、どうすればいいのか私自身も悩んでいて、以前、イスラエルの研究者の方と海外の学会で一緒だったときに、イスラエルの法学者は多くの人がアメリカのローレビュー(ピアレビュージャーナルではないが、法学の世界の特殊なジャーナルの一種)にたくさんパブリケーションがあるのです。それはなぜですかと質問したら、イスラエルの法学部でテニュアのポストを取るためには、必ずローレビューでのパブリケーションが必要だということになっていると言われて、そういう荒療治みたいな、インセンティブシステムみたいなものも可能性としてはあり得るのかなと思いました。もちろん、日本でそれをやることがいいとは必ずしも思わないのですけれども、そういう何らかの、最悪の場合には強制的なインセンティブシステムというのもあり得るのかなというふうに思いました。
 以上です。
 
【城山主査】  どうもありがとうございます。
 では北本先生、お願いします。
 
【北本委員】  北本です。私も、まず33ページのほうについてコメントしたいと思います。これまでの議論で、人文系ではデータをつくることが研究基盤であるというお話がありましたが、その場合に研究基盤と呼んでいるものは、実際にはほぼ情報基盤と言ってよいのではないかと思います。
 ほかの分野で、例えば大型の施設が研究基盤となっている場合は、情報基盤はそのうちの一部ということになります。しかし、人社系の研究基盤がほぼデータで構成されているとすると、これはほぼ情報基盤ということになります。そして、この情報基盤をどうやってつくっていくかというところが、大きな課題になってくると思っています。
 情報基盤をつくるときに、これ自体を分野融合研究として進めるのか、あるいは人社系の中だけで進めるのかという選択肢があります。ただ、先ほどから意見が出ていますように、AIなどの新しい技術が入ってきたときに、人社系の中だけで何とかやっていくという方法で新技術に追いつけるかという点は、ちょっと心配になっています。
 ですので、この研究基盤そのものを、例えば情報系と人社系の融合研究などの形で進めていく仕組みも考える必要がある。この点が、人社系の研究基盤の特徴と言えるのではないかと思います。
 もう一つ、25ページのほうです。分野融合研究、先ほど申し上げた情報系との分野融合研究を進める場合に、1のタイプでやるのか、2のタイプでやるのかという問題があります。先ほど、2については融合研究ではないのではないかという意見がありましたが、私もそのように感じる面はあります。
 その理由は、やはり2のほうは、ある分野の人がその分野から特に出ることなしに、知識だけを外から取り入れる、あるいはアドバイザーとして他の分野の人を呼んでくる、というような形になりがちだと思うからです。一方、1のほうは、自分の分野はから少し出ていって、共通の目的に取り組むということになります。その意味で、おそらく1のほうが、チャレンジングな目標に取り組むことができるのではないでしょうか。
 先ほど申し上げたように、情報基盤を分野融合研究としてつくっていく場合にも、情報系が人社系をお手伝いする形なのか、それとも一緒に新しいものをつくり上げていく形なのか、どちらを目指すかといった辺りも考えていく必要があります。
 その意味で、2も融合研究の一種ではありますが、私としてはやはり1のほうが主かなと感じております。
 以上です。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、青島先生、お願いします。
 
【青島委員】  33ページのところで、やはりこの共同研究にとって重要な共通基盤というところで、共同でいろんなものが利用できるというだけではなくて、データがどんどん増殖していくというか、そうやって蓄積されていくような仕組みになればいいなというふうに思います。
 自分の経験だと、例えば政府統計などの2次利用などもさせていただくんですけど、毎回ごみ取りをいっぱいやりまして、それに膨大な時間をかけるんですけど、結局それは全く反映されずに、多分ほかの方も同じように利用はされるんだけど、またごみ取りをゼロからやっているという、そんな状況が続いているんじゃないかと思うので、そうしたものも常に反映されながら、データがよくなっていくような形で、共同で利用できるようになってくるといいなというふうに思いました。
 以上です。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 ちょっと、私のほうでも若干まとめというか感想を言わせていただいて、その後、文科省の助川室長のほうから、若干また何かコメントがあれば言っていただいて、その上で最後、皆さんから追加的に何か御意見があれば伺うという、そういう形で進めさせていただければと思います。
 伺っていて、やはり1つのベースは、人社系の場合の共通基盤といいますか、というのはデータであり資料であり、それを、最後の青島先生の言葉を使わせていただければ、ごみ取りを重ねてやるのではなくて、ある程度効率的にきちっと蓄積していくという、多分それがベースであるということは一番の基盤かなと思いました。
 かつ、それはデータ自体だけではなくて、ある意味ではきちっとそれについて整理をしていくような人たちというのが必要で、若手の人たちにそれを押しつけちゃっていいのかどうかというのはあるにしろ、そういうところも面倒を見なきゃいけないということかと思います。
 多分この辺りは、理系のほうで共同利用機関なり共共拠点のしている話とほぼパラレルになっていて、施設なり設備がベースなんだけども、それだけでは駄目で、ちゃんと使える技術職員みたいな人、URAなのかもしれませんが、そういう人とセットじゃなきゃ駄目だよねという話ではあるので、そういうところで人社系もきちっとしかるべきものを埋め込んでいくというのが、一つの大きな固まりの課題なのかなと思いました。
 その上で、これは最後に助川室長が言われていたところですけれども、学際ハブという形での新しい共同拠点みたいなものをつくろうとしたときに、人社は入っているんだけれど、人社は大体ワン・オブ・ゼムでしか入っていませんよねという話をどうするかというのは、話として潜在的にあって、これは多分、田口先生の言われた認知科学だとかロボットだとか、そういう世界においては、本当は哲学みたいなものがむしろいろんな話をつなげるコアになり得るんだけれども、そういう形ではなくて呼ばれる立場になっちゃっていますよねという話と関わってきていて、そういう先端学際みたいなことをむしろ創出していくところを人社が主導するようなものというのは、何か長期的にあり得るんですか、あるいはどういう形でそういうのを促進できるんですかというのが、2つ目の大きな課題であるのかなという気がします。
 ただ、これは、大橋先生のお話で言えば、この種のことを期待できるのはごく一部の人だということになるのかもしれないので、それがメインだという話ではないにしろ、やはりそこも2つ目の話としてあるのかな。
 3つ目はもうちょっと穏健なパターンで、両方をうまくつなぐ仕事みたいなやつで、大橋先生のお話で言えば、学際をヒントにしてそれぞれの分野できちっとやるだとか、あるいは情報系との関係で、アドバイザーとして手伝っていただいて基盤整備をするだとか、もうちょっとハードルが高くない、個別の連携みたいな話があって、そういうところも3つ目の領域としてあるのかなという感じがしました。
 それぞれについて、そういう形で今後、そういうのを促進する施策があり得るかみたいなところが、一つの今後のまとめ方かなという感じがいたしました。
 以上、私の感想なんですけれども、助川さん、いかがですかね。
 
【助川学術企画室長】  先生方の多くの意見を頂戴いたしまして、誠にありがとうございました。25ページとか33ページとか、まさに試みとして書いてみたものではあったんですけれども、これだけ多く意見を頂戴してありがとうございます。
 25ページについて、半分言い訳みたいなことをさせていただきますと、丸1と丸2の中で、ある研究が、これは丸1なのか丸2なのかきれいに分かれないこともあるでしょうし、あるいは丸1の中の1つ目、2つ目もきれいに分かれないこともあろうかと思っていて、ただ、これまで、これが異分野融合研究の例ですよと言われているものの例を幾つか聞いていくうちに、どうも丸1みたいなことを異分野融合の例として挙げておられる方もいらっしゃるし、丸2のようなものは、例として挙げているのが実は丸2のようなものなのかなと思ったので、それでちょっと分けてみたところでございます。
 それで、若干教えていただきたいことがございまして、ちょっと雑な質問の仕方で大変恐縮なんですけれども、先生方、例えば分野ごとについても意見を頂戴したと思っているんですけれども、そこでざっくりと投げかけるのは大変恐縮なんですけど、人文系と社会科学系というので、何か念頭に置くべきこと、違いがあるのかないのかということをお伺いしたいなと、もしよろしければと思っています。
 それは、一番最初に発言されたのが木部委員だったと思いますけれども、人文とかだと地域に資源というかがまだ眠っていて、そこをつなげていくという話もあったかと思いますけれども、地方というのは日本の地域に限らず世界の地域もだと思うんですけども、そういうところから研究資源を見つけてくるというのが一つあろうかと思いますけれども、それというのは社会科学でも同じようなことなのか、社会科学だともうちょっと広く見えるものなのか、そういう、研究がローカルの方向に向かっていくものかどうかということで人社が分けられるかどうかということを、ちょっと雑な質問で恐縮なんですけれども、御示唆をいただければ幸いでございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。ちょっとパラフレーズさせていただくと、人文と社会、どう同じで違うかという話が一つと、人文は人文のほうでまたあるのだと思うんですけども、社会科学の中も多様だというところがあって、さっきの話でいうと、森田先生が言われていたような、経済とか社会学というのはある種、社会の目的みたいなものを提出するんだけど、法はある意味ではツールですみたいなところで、社会科学の中でも多様なんだと思うんです。
 そういう意味でいうと、「人社」というひとくくりで、ここの管轄としては設定して議論しているんだけども、その中をどうやって分けて考えたらいいかということの御質問なのかなと。特に、グローバルな指向性があるものとローカルな指向性があるものというのが一つの切り口じゃないかという、そういう仮説というか、お話だったのかなという気がします。
 何かこの点について御意見なりございましたら、ぜひ伺えればと思いますが、いかがでしょうか。
 木部先生、お願いします。
 
【木部委員】  今、主査がおっしゃったように、社会科学にもいろんな分野があって、人文学にもいろいろあって一概に言えない部分があるんですけども、私は大分違うかなと思います。連続的ではあるんですが。ティピカルなところがそれぞれあって、その中間的なところは極めて連続的だと思うんですけども、例えば研究基盤として何を整備するかというときに、やっぱり対象が随分違うような気がするんです。
 人文学の場合は、膨大な歴史資料、あるいは地域資料、それから文字になっていない無形の文化財とか資料、そういうのが知識基盤のデータになるわけです。民族学とかも社会科学と言えないことはないのですが、そういうものは今言った人文学のデータに近いものがあるわけですけども、例えば近年の全国社会調査ですとか、意識調査だとか、人口統計データだとか、そういうものが対象になる分野も社会科学にはあると思いますが、そこは随分性質が違うなという気がします。
 
【城山主査】  ありがとうございました。データの種類もいろいろあるということかなという感じがします。比較的ローカルなものと、まさに定量的な社会調査的なデータで、共通性もあれば違いもあるというお話かなと思いました。どうもありがとうございます。
 仲先生、お願いします。
 
【仲委員】  私も木部委員のお考えと同じなんですけれども、社会科学系でいうと、例えば調査や実験や観察などを行うことでデータを収集して、典型的には、それを統計的な手法で分析を行ったり、あるいはメカニズムを確認するためにシミュレーションを行ったり、モデルをつくるみたいなことが、一つの枠組みになるかなというふうに思います。
 ですので、そこが、地域に偏在しているいろいろな貴重なデータを掘り起こしに行く人文学との違いかなと思いました。もちろん社会科学的にもアプローチできるところもあるかもしれませんが、典型的には、まずはデータを集める、分析するところの違いかなと思いました。
 以上です。ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございます。
 後藤先生、お願いします。
 
【後藤委員】  私からもほぼ、データ基盤という観点から見ていくと、比較的似たようなことになるかなと。今、お二人の委員から御発言があったとおりかなと思います。
 どちらかといいますと、人文学にせよ社会科学にせよ、量的なデータで集めていくか、質的なというか個別のナラティブみたいなものを集めていくかとか、個別の資料を集めていくかというところで分けていくというほうが、整理としては分かりやすいかなと思います。例えば歴史学などでも、歴史人口学みたいなところであれば実際に量的な調査をするという例もありますし、考古学もかなりそういう手法というのは入ってくるんじゃないかと思います。
 一方で、社会科学のほうは――私は人文学なので、社会科学のほうはそれほど詳しいわけではないですけども、社会科学のほうであっても、実際にインタビューの調査をしたりとか、そういう成果というのはありますので、データというか資料としてはそのように切れていくのかなと、そういう整理の仕方になるかなと思います。
 一方で、課題解決とかそういう観点になっていくと、具体的なアウトプットの見え方みたいなものでいうと、社会科学のほうがより、より具体的なというか、人文学のほうが漢方薬的なといいますか、少し遠いところから話すことが多いかなと、個人的には思っております。こちらはあまり不用意には言えませんけども、少なくともデータに関してはそういう、量的な部分と、本当に質的な部分という切り方が、整理としてはよいのかなと個人的には思っています。
 以上です。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 助川さん、大体よろしいですか。
 
【助川学術企画室長】  ありがとうございます。雑な投げ方をしてしまって申し訳ございませんでしたけれども、人社というものの、そこの違いというのを踏まえて異分野融合、あるいは人社というもの踏まえて、例えば共同利用・共同研究のハブを支える機能というのは若干ずれるのかなというのが気になったもので、お伺いしたところでございます。ありがとうございました。
 
【城山主査】  ありがとうございます。それか恐らく、今まであまり議論されていない論点との関わりでいうと、人社の内部での異分野融合みたいなやつが大事ですよねというのは、折に触れて何回か出てきたと思うのですが、そういった話も、むしろその違いみたいなものをうまく生かして、どうつないでいくかということの議論も、潜在的にはする必要があるということなのかなというふうに思います。どうもありがとうございました。
 基本的に、今日御議論いただきたいのはそういう点なんですが、最初の論点にもあったように、その他、今後の人文学・社会科学の振興に向けて議論すべき点はあるかという。何か漏れている点はないかというか、これだけは言っておきたいみたいな点があれば、ぜひお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 木部先生、お願いします。
 
【木部委員】  すみません、度々。学際領域展開ハブプログラムに、人文系が主導機関になっているものがないというのは、これはもっと頑張れということなのか、お叱りかもしれませんけども、我々もチャレンジはしています。けれども、採択されたものを見ると、やはりイノベーションの創出にかなった課題になっている気がします。
 人文系が主体になると、イノベーションを生み出すというよりは、人間って何なんだということ、今のはやりで言うと誰一人取り残さない、みんなが人間として幸せに暮らしていけるウエルビーイングというのはどういうことかというのを目指す計画になるんです。
 それは、イノベーションという概念からは少し外れているかなという気もするので、人文系が主体になってハブを形成するということがこの課題自体に、もしかしたらそぐわないのかもしれないなと最近思っています。
 だから、そこのところを、学際領域展開ハブプログラムで何を目指すのかということを、もう少し広く取っていただければというふうに思っているところです。
 
【城山主査】  ありがとうございました。とはいえ、例えば科学技術基本計画のメタ目的は何かというと、ウエルビーイングって書いちゃっているわけですよね。そうすると、まさにイノベーション促進のためのプログラムの最上位目的がウエルビーイングだったときに、本来的なウエルビーイングの議論の在り方というのは、本当はイノベーションの一番基層というか最上層というところに属すべき話だとも言えるのだと思いますが、他方、それをどうやって研究プロジェクトとして、あるいはプログラムとして落とし込むかというところはすごく難しいということなのかなと思いますけれども。
 助川さん、何か意見ありますか。あるいは、ちょっとこの点、先ほどの田口先生のお話にも絡んでくるのかなと思うので、もし御意見あれば若干いただければと思いますが。
 まず、助川さんのほうからいかがでしょうか。
 
【助川学術企画室長】  すみません、他課の者がおりますので、ちょっと代わります。
 
【柿澤学術研究調整官】  学際領域展開ハブ形成プログラムを担当しております大研課になります。
 本プログラムについては、必ずしもイノベーション目的というわけではなく、今採択されている機関の内容からそのように見えたかもしれませんが、学術研究の中で新しい学際領域を開いていただきたいと考えております。
 現在の採択内容としては、理系主導で人社系が協力するという形が多くなっておりますけれども、研究環境基盤部会では、人社系が中核になった提案も出てきてほしいというような意見もいただいておりまして、私どもとしてもそういった新たな提案がいただけたらありがたいと思っているところでございます。
 人社系の機関からは、理系のほうに協力することはできるんだけども、自分たちが中核になって、新しい大きなプロジェクトを立ち上げるというのが、体制的な問題などから難しいというような意見をいただくこともありますが、このプログラムでは、新しい取組を歓迎しておりますので、ぜひ積極的に提案いただければと思っております。
 御関心ある方がいらっしゃいましたら、当課に御連絡いただければと思いますので、よろしくお願いします。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 すみません、振って申し訳ないのですが、田口先生、もし御意見ありましたら。
 
【田口委員】  今、もともと人社系のプロジェクトも歓迎しているというお話をいただきましたので、それでいいのかなというふうに思ったんですけれども、そもそも木部先生のおっしゃることもよく分かって、やはりこういう大型の研究プロジェクトを募集するときに、非常に、どちらかというと短期的な成果を求められているように見えてしまって、短期的なスパンでどういうようなイノベーションを起こせるのか、といった観点が、やっぱりどこか前面に出てしまっているようなところはあるのかなという印象は私も持っています。
 それに対して人文系、社会科学もそうかもしれませんが、特に人文系は、そういう短期的な仕方で成果を示すということは非常に難しいことが多い分野だと思いますので、そこでどういうふうに人文系、さらに社会科学系も振興していくかというのは、やはり短期的な成果だけではなくて、非常に長期的な目標も視野に入れた上で、言ってみれば種まきとか、土壌というか土をつくったり、種まきしたり、ある意味持続的に水をかけていかなきゃいけないわけですよね。そうしないと芽が出てこないので。そういうような、長期的に育てるような考え方の支援があってもいいのかなという気がします。
 まとめて言うと、短期的なスパンで成果を求めるような研究というのは、なかなか人文系の研究にそぐわないところがあるということ。そういうわけで、研究支援の形そのものを、そういう競争的な資金の募集の仕方そのものを、ちょっと考え直す必要があるのかなというような課題意識を持っています。
 そういうものがあれば、人文系の研究者も提案がしやすくなってくるかなという気はします。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。恐らく今日の最初のモニタリングとか評価の話題とも絡んでくるんだと思うんですけども、理系がやっているから、強いられて人文系もちゃんとモニタリングと評価をやらなきゃいけないというのではなくて、むしろプロジェクトとしての性格を考えたときに、その長期性だとか社会的インパクトみたいなものはこういう観点で評価すべきだということを明示していって、そういうことを個々のプログラムの中でもうまく埋め込んでいくという、そういう努力が必要だということかなというふうに思いました。
 もう1つの言い方をすると、これまでは比較的、人社のためのプロジェクトを別枠で、学術創成だとか、つくるという形で多少やってきたところがあるんだと思うんですけれども、それだけでやるのはかなり無理があって、既存の枠組みで、さっきの先端ハブもそうですが、あるいは学術創成なり学術変革領域の話もそうなのかもしれませんが、そういうところに人社系ベースのものがもうちょっといろんな形で入っていくようにするためには、一体どういう環境整備が必要なのかみたいな、そういったことを考えていくということが、メタレベルで必要なのかなという感じがしました。
 どうもありがとうございます。大体時間になっていますが、何かほかにございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。そうしましたら、今日はここまでとさせていただきたいと思います。まだいろいろお気づきになられる点等あるかと思いますので、後日メール等で、ぜひ事務局まで、御意見があればお送りいただければというふうに思います。
 また、本日御欠席の委員の方もおられますので、その方からも意見をいただくように、事務局のほうにはお願いをしたいと思います。
 その上で、次回、まとめということになりますので、今日いただいた御議論も踏まえて、まとめの案をつくらせていただきますので、その上で議論をさせていただければというふうに思います。
 本日予定した議題は以上になります。
 次回の日程等について、事務局からよろしくお願いします。
 
【林学術企画室長補佐】  次回の本委員会につきましては、令和7年1月17日、金曜日の13時から15時に開催を予定してございますので、御予定いただけますと幸いでございます。
 また、本日の議事録につきましては、後日、メールのほうでお送りいたしますので、御確認のほうをお願いいたします。
 連絡事項は以上でございます。
 
【城山主査】  それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。皆様、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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