人文学・社会科学特別委員会(第23回) 議事録

1.日時

令和6年6月6日(木曜日)14時30分~16時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 今後の人文学・社会科学の振興に向けた推進方策について(中間まとめ案)
  2. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員、専門委員)
城山主査、白波瀬委員、仲委員、井野瀬委員、大橋委員、北本委員、木部委員、安田委員、青島委員、後藤委員、田口委員、森田委員、山中委員
(科学官)
松方科学官、清水科学官、恒吉科学官、杉岡科学官、橋本科学官

文部科学省

塩見研究振興局長、松浦大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、坂下振興企画課長、助川学術企画室長、髙田学術企画室長補佐、林専門官

5.議事録

【城山主査】  それでは、定刻となりましたので、ただいまより第23回人文学・社会科学特別委員会を開催いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 初めに、事務局から配付資料の確認と注意事項等をよろしくお願いします。
 
【髙田学術企画室長補佐】  事務局でございます。事前に電子媒体でお送りさせていただいておりますが、議事次第に記載のとおり、資料は資料1から資料4、それから参考資料1をお配りしております。
 なお、資料1につきましては、前回の委員会の主な御意見をまとめたものでございますので、適宜御参照いただければと思います。
資料の不足等ございましたら、事務局までお願いいたします。
 御発言の際は、挙手ボタンをクリックしていただきまして、主査より指名を受けましたら、マイクをオンにしてお名前のほうから御発言をお願いいたします。終わりましたら、マイクはミュートに切り替えていただきますようにお願いいたします。不具合等がございましたら、マニュアル記載の事務局連絡先までお願いいたします。
 なお、本日の会議は、傍聴者を登録の上、公開といたしております。
 続きまして、事務局に異動がございましたので、御紹介させていただきます。
 最初に、松浦大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)でございます。
 
【松浦大臣官房審議官】  4月1日付で研究振興局の審議官に就任いたしました松浦です。先生方には、御多忙の中、本会議に御出席いただき大変ありがとうございます。本日も自由闊達な御議論をいただき、文科省の特に人社系の分野に関してアドバイスいただければ幸いです。よろしくお願いします。
 
【髙田学術企画室長補佐】  続きまして、研究振興局振興企画課、助川学術企画室長でございます。
 
【助川学術企画室長】  学術企画室長の助川と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 
【髙田学術企画室長補佐】  同じく林学術企画室専門官でございます。
 
【林学術企画室専門官】  林でございます。よろしくお願いいたします。
 
【髙田学術企画室長補佐】  事務局の御紹介は以上となります。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 事務局からの御説明は以上となります。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、議事に移りたいと思います。
本日は令和6年度の最初の委員会になりますので、まずは事務局から今年度の本委員会の進め方について説明いただきたいと思います。
その後、前回の委員会で、第12期の本委員会の議論の最終的なまとめに向けた議論を進めるために、これまでの主な意見を踏まえた論点整理という資料を事務局に作成していただきましたけれども、本日は、それらの論点に加えて、前回の委員会でいただいた御意見等も加えて、改めて「今後の人文学・社会科学の振興に向けた推進方策について」と題した中間まとめ(案)を作成してもらいましたので、それについて説明をいただき、十分御議論いただくという形で進めていきたいと思います。
 それでは、事務局から説明をお願いします。
 
【助川学術企画室長】  失礼いたします。学術企画室長の助川でございます。
 まず、今後の進め方についてでございますけれども、資料2に基づきまして、本委員会の今後の進め方について御説明申し上げます。
 ここの1のところ、これまでの審議経過等にございますとおり、今期第12期の人文学・社会科学特別委員会では、箇条書してありますとおり、主な論点といたしまして現代社会の要請を踏まえた人文学・社会科学を軸とした学術知の共創、これは共創による課題設定型・プロジェクト型共同研究の更なる推進方策の検討、2点目として、人文学・社会科学の研究データの共有・利活用のための基盤整備及びデータ駆動型研究の推進、さらに3点目として、人文学・社会科学の研究成果の可視化・国際発信力の強化を掲げて調査・審議いただいているところでございます。
 前回22回の委員会は3月5日に開催されまして、これまでの主な意見を踏まえた論点整理について御審議いただいたところでございます。
 今後でございますけれども、今申し上げました論点整理を基といたしまして、必要に応じてその他の論点も追加しながら議論を進めて、ここにあります夏頃に中間まとめ、年度末に向けて最終的な議論のまとめを作成・公表し、学術分科会に報告することも考えてございます。
 具体的には、ここの当面のスケジュール欄にございますとおり、まずは本日、事務局よりお示ししております中間まとめ(案)につきまして、本日と8月頃に予定しております次回、御議論いただきまして、取りまとめをできればと考えております。その際には、年度末に向けて追加すべき論点等もございましたら、いただければと存じます。また、次回の8月頃の第24回では、関連事業の進捗についてもヒアリングすることを考えております。
 その後は、秋から2月ぐらいまでの間に2、3回開催いたしまして、今期第12期の審議のまとめを作成することを考えてございます。
 引き続きまして、資料3と4に基づいて、中間まとめ(案)について御説明申し上げたいと思います。これは、前回3月の回でお諮りした論点整理を参考資料1といたしまして、本日もお配りしてございますけれども、その論点整理を更新する形で案を作成したものでございます。
 まず、目次を御覧いただきますと、3月の論点整理と比べて全体的に大きく変わってございますのは、まず1点目に、タイトルを「今後の人文学・社会科学の振興に向けた推進方策について(中間まとめ)(案)」とつけたことでございます。
 2点目といたしまして、3.5といたしまして、人材の育成の節を設けました。前回の会議で人材に関することがいろいろなところに書かれてございますところ、人材に関する項目を立ててはどうかという御趣旨の意見を頂戴いたしました。この3.5は、人材の育成に関してそれまでに述べられている点を再掲してまとめたものでございます。
 また、目次上は現れてはこないのですけれども、大きく変えた3点目といたしまして、この中間まとめですとか、あるいは中間まとめを基につくられる最終的な審議のまとめ、これは私どもとしても多くの方々に読んでいただきたいと思っておりますところ、今回、こちらのように概要を2枚でまとめたものを作成いたしました。また、本文の記述も論旨がなるべく流れるようにしたり、表現を分かりやすくしたりしたつもりでございます。さらに、日常でなじみない用語には脚注をつけるといったような手を加えております。
 また、本文の記述も一部脚注に落としたり削除したりした箇所もございます。その際、私ども、注意して修正したつもりではあるんですけれども、もしこの結果、先生方の意図とニュアンスが若干違ってしまっているですとか、必要な記述・用語が落ちてしまっているところがございましたら、御指摘を頂戴できればなと思っております。
 4点目です。後ほど出てまいりますが、前回の論点整理の2.2のところでは、各丸1から丸4について、取組の実施状況と現在の課題というのを書いて、それを受けてここの3のところで更なる推進方策を述べておりましたけれども、今回の中間まとめ(案)におきましては、取組の必要性という項目をここの2.2の各項目の頭に追加いたしまして、なぜこのことを進めなければならないのかというのを簡単に述べた上で、その上で取組の実施状況、現在の課題、それから3の更なる推進方策につながるようにしたところでございます。
 それでは、資料4をベースに御説明申し上げながら、適宜また資料3も若干参照しながら申し上げたいと思います。
 まず、大きい1、第1章です。ここは人文学・社会科学の現代的役割について述べた章でございます。人文学・社会科学というものは、人間の根源の理解に資し、合意形成を探求する分野でありまして、知的文化的成熟度をはかる重要な尺度ともなり得るものでございまして、世界的規模の解決、グローバル化した現代における相互理解といった局面で果たす役割が大きい旨を述べております。
 今回、若干の修正といたしまして、本文の1ページの5行目になりますが、人文学・社会科学から得られる知見というものは、社会の在り方や人間の生き方の再考に寄与するとともに、その営み自体が人間や社会に関する想像力を広げ、また、前回わくわくどきどきというお言葉を頂戴しましたけれども、ここでは、人々の知的好奇心を刺激するものであるということも書いてございます。
 続きまして、第2章、第3章でございます。1つ目のところ、人文学・社会科学を軸とした課題設定型・異分野融合研究についてでございます。
 まず、用語についてです。またちょっと一旦、本文の目次に戻りたいと思います。論点整理のときは、ここの目次のところで共同研究という言葉を使っておりまして、また、本文の中では共同研究や異分野融合研究というふうに2つを並列しておったところが多くございました。前回の3月の委員会での御指摘を踏まえて精査いたしましたところ、ほとんどの記述は異分野融合研究について論じているものでございましたので、そのためここの見出しについても、共同研究ではなくて異分野融合研究と改めてございます。
 ここの概要に戻りまして、取組の必要性でございます。世界的規模の課題の解決には、人文学・社会科学と自然科学の協働が必要であること、また、異分野融合研究に取り組むことは、自らの本来の研究分野を見直すきっかけにもなりまして、翻って人文学・社会科学の研究を発展させる側面もあるとしております。
 現在の課題といたしまして、他分野との間で使用する言語・概念に差異があって、互いの理解がなかなか進んでいないということ。2つ目として、他分野の研究者と出会う機会が少ない。また、研究者をつなぐ人材ですとか、結成されたチームの研究活動をサポートする人材が少ない。3つ目として、異分野融合研究の成果を評価する仕組みが確立されていないといったことを挙げております。
 更なる推進方策として4つ挙げております。1点目は、前回から比べてアップデートしてございます。本文で申しますと10ページ目の5行目以降、特に8行目以降です。社会課題の解決のためには、未来社会を見据えて、長期的な視座が必要なものとして設定された課題に応じて進められる人文学・社会科学を軸とした異分野融合の研究の意義というのは引き続き大きいと考えております。
 以前、御紹介したことがあるかと思いますけれども、JSPS、日本学術振興会のいわゆる先導人社事業、正式名称で言うと課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業においては、大きな課題として、将来の人口動態を見据えた社会・人間の在り方などの3つをテーマとして、課題として設定して、これに基づくプログラムを実施しております。
 本文に戻りますけれども、これに加えて、研究者自らの課題意識に基づく社会課題にも柔軟に対応できるような形で、人文学・社会科学を軸としたこれらの研究を推進していくことが必要であるのではないかとしてございます。
 また、推進方策の1点目の後半です。人材育成の観点から、大学院生等について、本来の研究分野における足場固めの状況に留意しながら、異分野融合研究への参画を積極的に促進することが重要ではないかとしてございます。
 2点目から4点目は、論点整理のときと大きくは変わっておりませんで、多様な分野の研究者が交流できる場や研究開発マネジメント人材による研究者のマッチング・サポートも必要であるということ。次に、研究開発マネジメント人材の育成や、彼らを後押ししていく上での先進事例を共有できる仕組みを構築すること。彼らが正当に評価される仕組みが重要であるということ。さらに、社会的インパクトを重視した評価など、プロジェクトの趣旨に沿った研究成果の可視化というのが重要ではないかとしてございます。
 次の箱が、データ基盤の整備・運用でございます。まず、これを進めることの必要性についてでございます。研究のいろいろな分野、各分野において、研究のDX化・オープンサイエンスの流れというのは加速してございます。人文学・社会科学においても、世界的にデータを利活用した研究が進んでございまして、我が国においても積極的に取り組むことが必要であるとしてございます。
 課題と推進方策については、本文を見てみると結構記述が変わっているんですけれども、前回の論点整理と比べると、論旨の明確化のために記述の位置を変えたり、あるいは表現を改めたりはしておりますけれども、内容は大きく変えたつもりはございません。すなわち、課題としては3点。まず、多くの競争的研究費制度におけるデータマネジメントプランの作成・提出等への対応が求められるということ。次に、メタデータ・データ規格が国際標準に対応していない。また、分野ごと、作成者ごとに異なることもあって、データを利用した研究が非効率になっているということ。また、これらのデータに通じた人材が不足している。また、その育成の機会も不足しているということを挙げております。
 推進方策としては4点。国際規格への対応や相互運用性の確保に向けたデータ規格のモデルガイドラインの策定・普及が必要ではないか。2点目として、データの構築・利活用に通じた研究者の育成、人材育成プログラムの普及が必要であるということ。3点目として、JSPS、日本学術振興会の人文学・社会科学データインフラストラクチャー強化事業における連携データを拡充すること。また、人文学・社会科学総合データカタログの略称でJDCatですけれども、こちらの利便性向上を進めていくことが必要ではないかということ。4点目として、データキュレーターなどの育成・確保を含むオープンサイエンスへの対応が必要ではないかとしてございます。
 続きまして、概要上は2ページ目に進みまして、研究成果の可視化とモニタリングでございます。まず、必要性についてです。我が国の人文学・社会科学につきまして、これまで研究活動の成果が十分に把握できていないという状況に鑑みまして、この総合的・計画的な振興と国民の理解増進に資するためには、我が国全体の人文学・社会科学の研究動向や成果を可視化していく必要があるとしてございます。
 次に課題ですが、課題の前に、本文で書かれております取組の実施状況を軽く振り返ります。本特別委員会の令和5年2月にございました取りまとめにおきまして、国際ジャーナル論文あるいは国外ジャーナル論文、プレプリント、書籍の4つの成果発表媒体について、具体的なモニタリング手法を開発し実施する必要があるということ。ただ、プレプリントについては、慎重に検討する必要があるとしてございます。また、同じ取りまとめにおいて、多様な社会的インパクトですとかAltmetricsなどの新たな指標の検討の必要性についても言及しております。
 これを踏まえて課題でございますけれども、3点。まず、国際ジャーナル論文、国内ジャーナル論文について、正確な研究成果の把握がなかなか困難であるということが1点目。2点目として、書籍について体系的な指標が存在せず、また、対象となる書籍の範囲・総量が不明確であるということ。3つ目、研究成果の発表媒体というのは分野によって大きく傾向が異なりまして、また、その傾向というものも将来変わり得るものであります。このモニタリングについても、分野・時代に応じたものである必要があるとしてございます。
 推進方策といたしましては、2点。1点目として、先ほど申しました令和5年2月の取りまとめを踏まえまして、研究成果の可視化の調査分析を着実に推進することが必要であるとしてございます。具体的には、SciREX事業、正式には科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業の中で、昨年10月から実施しております国際ジャーナル論文に関する指標の定量的把握や計量手法、分析手法等の調査を国内ジャーナル論文の調査と併せて実施するとともに、今年度、令和6年度から実施することとしております書籍に係る研究成果を可視化する指標の開発に向けた調査分析を着実に進めて、研究成果の総合的な把握によってモニタリングを進める必要があるということを述べております。
 また、2点目でございます。研究プロジェクトによっては、論文等の研究成果だけでなく、多様な社会的インパクト等を重視した成果の把握も重要でございます。これらをはかる新たな指標等の成果の把握・可視化を進めるとしております。
 次に、研究成果の国内外への発信でございます。ここはもともと国際発信となっておったんですけれども、書かれていることは、国際発信に関することのほか、社会への発信についても論じられておりましたもので、国内外への発信とタイトルを改めてございます。
 初めに、取組を進めることの必要性についてでございます。人文学・社会科学の研究の意義を国民・社会に伝え、研究成果を社会に還元するとともに、我が国人文学・社会科学研究の国際プレゼンスを向上させる観点からも極めて重要であるとしてございます。
 課題としては、2点。1点目として、人文学・社会科学の研究者と自然科学の研究者との間では、研究成果を社会一般に発信することについて意識に違いがございます。人文学・社会科学分野の多くの興味深い研究成果が社会に知られていないことが多いということ。2点目として、外国語での発信が不十分であるとしつつも、ただし、日本語での発信が重要な分野もあるということには留意する必要があるとしてございます。
 推進方策として4つ挙げております。1点目として、人文学・社会科学の研究者の成果発信への意欲を高める方策を検討するとともに、組織として研究を紹介していくことが重要でございます。その際、広報の専門人材を育成・確保することが重要であるということ。2点目として、例えば地域や日本人の特性に根差した研究につきましては、その背景・構造が伝わらないと効果的な発信にならないために、研究のバックグラウンドにある問題意識や考え方も含めて発信する必要があるとしております。3点目として、デジタルコンテンツの掲載数も増えてございますけれども、専門家以外の利用者がこれを利用あるいは理解しづらいという点がございますところ、専門家以外にも理解しやすいようにして発信する必要があるとしております。4点目です。研究の国際発信に向けては、海外の研究者とのつながりがもととなって国際シンポジウムや学会等での成果発信に展開することもございます。国際的なネットワークの構築も重要としております。
 最後に、人材の育成、人文学・社会科学の振興に向けた人材の育成でございます。以上申し上げた課題に対応してこれらの分野を振興するために、次代を担う若手の人材、研究、研究者を支援する人材の育成が重要としております。推進方策としては、ほぼこれまでの再掲になりますけれども、1点目として、異分野融合研究における研究者の育成、異分野の研究者をマッチングしサポートする人材の育成を挙げております。
 2点目です。研究のDX化についての研究者間の意識の差が、人文学・社会科学では、他の分野よりも大きいという御指摘がございました。こういう状況も踏まえながら人材育成について検討する必要があるとしております。研究データの整備・活用に通じた研究者の育成及びデータの公開に係る適切な保存、利便性に資する研究支援人材の育成というのを挙げております。
 3点目でございます。1つ前のところで申し上げました、研究成果の国内外への発信に係る広報の専門人材の育成・確保というのを挙げてございます。
 若干長く時間を頂戴いたしましたけれども、私からは以上でございます。御審議のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、事務局から御説明のありました内容を基に意見交換を進めたいと思います。御質問、御意見を含め、御自由に御発言いただければと思います。いかがでしょうか。
 では、木部先生、よろしくお願いします。
 
【木部委員】  木部です。今日、早めに退室させていただきますので、先に意見を述べさせていただきます。
 網羅的にまとめてくださって、中間まとめの案は非常によくできていると思います。
2つですが、1つは、異分野融合という3番のところです。これを共同研究から異分野融合という名前に変更したという御説明でしたけれども、実際やっておりますと、異分野融合というのは成し遂げるのは非常に難しい。いきなり融合というのは、ちょっとハードルが高いかなという気がいたしております。それで、異分野融合という言葉は、もちろん目指すところなので使っていただいても結構なんですけれども、ここにも書いてあると思いますけれど、やはり専門の分野にしっかり足を置いた上での共同研究であり異分野融合であるということを強調した方がいいと思いました。
 2つ目は、若手人材育成のことは書いてありますが、じゃ、若手を育成する人は誰なのかというと、今現在、大学だとか研究機関で、人文学・社会科学を実際に研究しておられる方々なんですね。そういう若手を育成する立場からすると、これを読むとしんどいなという気がするので、育成する側の立場の方に対するサポートのようなものもちょっと付け加える必要があるのかなと思っております。
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 事務局からいかがでしょうかね、今の点につきまして。
 
【助川学術企画室長】  ありがとうございます。助川でございます。木部先生、ありがとうございました。
 意見のうち、1点目の専門分野に軸を置いた形というのは、先生もおっしゃっていただいたように、ところどころに本文の中には入っているところでございます。
 2点目の若手人材育成の件です。先生、ちょっと教えていただければなんですけれども、育成する立場の方へのサポートを付け加えるというのは、例えば具体的にこんなことが必要だとかいうのがあれば教えていただければと思いますが、いかがでしょうか。
 
【木部委員】  今、実際に人文学・社会科学をやっていらっしゃる方で、必ずしもこういうデータのデジタル化に積極的でない方もいらっしゃいます。それから、他分野との連携を積極的に進めておられるのも。全員がそうではありません。ここに書いてありますが、もう少し皆さんが入りやすい共創の場、共同研究の場をつくること、今実際に研究を引っ張っていらっしゃる方がリーダーになって若手を育成していくことになるので、そういう場を設けるということ、私もすぐいい案があるわけではないんですけれども、そういう方がデータの公開だとか、若手育成とか共創というのに参加しやすいような方法をちょっと考えてみたいなと思っています。
 
【城山主査】  助川さん、いかがでしょうか。
 
【助川学術企画室長】  先生、ありがとうございます。今回最後のところで人材の育成というふうにまとめている分、人材の育成という部分をあえて際立たせたんですけれども、先生がおっしゃったように、特にデジタルあるいはデータに関する部分は研究者の意識の差が大きくて、特に年齢に応じた意識の差というのは大きいという御指摘も頂戴しました。そうすると、人材を育成する方に負担が寄ってしまうというのもなかなか厳しいというのは、先生がおっしゃっていることかと思います。
 なので、今触れていただきました共創の場あるいは出会う場、交流の場ですとか、その他のことも全部ひっくるめて育成というんですかね。若手の支援になるということが分かるような形で、ちょっと表現ぶりに跳ね返るかどうか分からないんですけれども、施策あるいは表現ぶりも含めて検討してみたいと思います。ありがとうございました。
 
【木部委員】  どうもありがとうございました。
 
【城山主査】  ありがとうございます。恐らく最後の方にURAという話は書いているんですけれども、まさに場づくりだとか、そこにシニアな人も含めて巻き込んでいく仕組みみたいなことをちょっとうまく書ければいいのかなという気もします。ちょっと事務局でも御検討いただければと思います
 
【助川学術企画室長】  かしこまりました。ありがとうございます。
 
【城山主査】  そうしましたら、続きまして白波瀬先生、お願いします。
 
【白波瀬委員】  すみません。私も言いっ放しでちょっと失礼しなきゃいけないんですけれども、1点だけなんですけれど。
 確かに内容はさすがにいろいろ考えられているんですけれど、やっぱりある意味で、本当は自由闊達で、それぞれの現場から言って一番とんがったところを日本の研究者たちも遅れないで一緒に参画して先導するというのが最終的なところなような気がするんです。そのための環境づくりとしてどうか。
 例えばデータについての記述も結構ありますし、今ちょっと木部先生からもありましたけれども、融合分野というのもあるんですけれど、人文学の中の王道の中でもやっぱりもう日進月歩でいろいろ変わっておりますし、資料の中でもデータの持ち方も含めてというようなことを考えると、少しいろいろな方が実際に入れるような枠組みを中心にするなど、今の案は方向性にちょっと偏りがあるかなというのが一番気になるところです。
 問題発言にもなるということをちょっと恐れず申し上げると、基本的にやっぱり財源的にも投資していただく分野として、しっかり人文・社会科学のところを展開できるような枠をちゃんと持っておいていただきたいと。あと、評価についても複数のところをお願いしたいということに尽きると思います。その点、融合分野を中心、あるいはデータサイエンスのところを人文というふうになると、すごくちょっと小さくなるかなという感じを持ちました。
 そういう意味で、今、専門分野のという話がありましたけれども、各専門分野が特に方法論のところで展開をされていて、それがいわゆる各分野のところの新しい先端となっているような理解もしていますので、ちょっとその辺りの余裕を持たせるというか、全体的何かそういうところがあると。あまりにきちきちっと書いてあるのでという印象をちょっと持ちましたので。
 すみません。感想になりますけれども、よろしく御検討いただけるといいと思います。
 
【城山主査】  ありがとうございます。御趣旨としては、先ほどの御議論じゃないですけれど、異分野融合みたいなところにあまり絞り過ぎずに、もうちょっと基盤的なところだったりをきちっとサポートできる何か枠があるといいのではない、あるいは、さきほどの共同研究というのは若干曖昧な言葉だけれども、逆にそちらのほうがそういう余地があるのではないかという、何かそういうニュアンスでしょうか。
 
【白波瀬委員】  もちろん共同研究とかということによって広げましょうということはすごく分かるんですけれど、それだけじゃなくても、例えば倫理学でもそうですし文学でもそうですし、哲学、そこの分野のいわゆる新しい融合分野というのがやっぱりあると思うので、そういうこともちゃんとこちらとしては尊重していますということは少しあったほうが、足元じゃなくて、ちょっと上のほうだけを見ているような誤解を与えるとすごく残念かなというふうに、すみません、ちょっと思っちゃったので。意見です。
 
【城山主査】  ありがとうございました。恐らく1のところのイントロには若干そういうことを書いているんですけれど、それを受けたところに必ずしもそういうのがないというところがあるので、ちょっと工夫のしようがあるかなということかと思います。
 事務局のほうで何か今の点、御意見ありますか。
 
【助川学術企画室長】  先生、ありがとうございます。これまで特に日進月歩で進んでいるところについて審議いただいている部分、それを先鋭的に書いていて、そのこと自体は悪いことじゃなかったのかもしれないんですけれど、先鋭的に書いてしまったがために、全体像というんですか、一部のことをやっているように見えてしまっている面はあったのかもしれません。
 私どもとしても、人文学・社会科学は広く重要だと思っておりますので。今、それが1ポツの現代的役割についてのところだけ出ちゃっているのかもしれません。ちょっと後ろのほうでも表現ぶりを工夫できないか、検討してみたいと思います。ありがとうございます
 
【白波瀬委員】  よろしくお願いします。
 
【城山主査】  ありがとうございました。恐らく後のほうのところでも、異分野融合というのをやるというのは、それぞれの分野の発展を刺激するんだみたいな文章が若干あったと思うので、その辺りを少し膨らませられるといいのかなという気がいたしました。
 ほか、いかがでしょうか。
 では、後藤委員、お願いします。
 
【後藤委員】  今の御意見、確かにいただいている中身を見ますと、どちらかといいますとDXの部分の基盤というか、入り口の部分ですね。研究の入り口の部分と、それからどちらかというと広報であるとか研究の評価みたいな出口の部分はあるんだけれど、多分その間の一番研究のプロセスの部分の説明をもうちょっと厚くしてもらうといいのかなというふうな理解をいたしました
 その点をもう少し書いていただけるといいのかなというところと、あと、もう一つは、異分野融合と言ってしまうと、どうしても人文学と自然科学とか情報工学みたいなイメージが強くなってしまうんですけれど、人文学内の分野融合、例えば文学と歴史学であるとか、言語学と文化人類学であるとか、そういうふうな融合の在り方というのもあると思うんです。なので、その辺りも、異分野融合とか異分野連携みたいな表現をするときに、人文学とそれ以外みたいなところだけではなくて、中での連携というところまで書いていくと、人文学全体の特にプロセスといいますか、人文学の中の研究の振興というところにも理解がいろいろできるようになるのかなと思いました。その部分だけ、先ほどの議論をちょっと受けて、発言させていただきました。
 以上でございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 助川さん、髙田さん、何かございますか。
 
【助川学術企画室長】  後藤先生、ありがとうございます。確かに、人社が自然科学と連携・協働しというような書き方をしている部分があるんですけれども、書かれている内容をよく読んでみると、分野をまたいだという程度で使われているものが実は多うございます。一部、特に事業に関するものについては、人文と社会と自然科学とかいうのがあるかもしれませんけれども、ただ、書かれている精神は、大体他分野との融合という程度のものでございます。なので、もしかしたら表現ぶりを若干調整するとかすると、うまく先生方の議論が伝わるのかなと思いますので、そこは検討させてください。ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。そこの表現を足すことは比較的容易にできるかなという感じもいたしますし、恐らくそれは、先ほどの白波瀬先生の人文の中での先端分野みたいな話はまさにそういう内部での融合の話と絡んでくるかと思いますので、ちょっとその辺りをうまく記述できればなと思います。どうもありがとうございました。
 続きまして、大橋先生、よろしくお願いします。
 
【大橋委員】  ありがとうございます。この中間取りまとめですけれど、これまでの議論あるいは様々な有識者から聞いたヒアリングなどを踏まえていただいて、きれいにまとまっているなと思います。
 若干思う点ですけれど、人文社会科学は、学術の分野でも相当に多様性が、幅の広い分野で、ニーズとしては国内に向けての啓蒙がメインになっている分野もあるし、あるいはグローバルの知の貢献がすごく重要な分野もあると思うので、そういう意味で言うと、力点の置き方というのはすごく難しい点があるんだとは思います。
 そうした中でなんですが、今回第1の柱として異分野融合というのが先に立っているわけですけれど、あるいはこれまで共同研究だったわけですが、こうした異分野融合、共同研究はある意味ツールであって、じゃ、何のためのツールかというと、やっぱり自分の学問分野の幹を太くするということが、多分、第一の前提に立ってのこうした融合の取組なのかなというふうな感じもしています。
 これは、人によっては、異分野融合の分野ばかりをやっちゃう人というのは、若い人でも、それでちょっと道を間違っちゃう人も結構いたりするんですけれど、ある意味、ここに大学院生の場合は足場固めと書いて頂きましたけれど、多分多くの人にとって足場固めというのはすごく重要なところで、そのためのビークルとして、こうした視点が重要だということなのかなと思っています。
 それに関連してなんですけれど、幅は広いんですが、ちょっとグローバルな視点というのももう少し押し出してもいいのかなと。つまりランキングみたいなところで国際ジャーナル的なところも相当言われるんだと思うんですけれど、たかがランキングなんですけれど、されどランキングのところもあって、そうしたところで海外の学生さんが大学を評価される方も結構増えてきているような気がしています。
 そういう意味で言うと、人文学・社会科学の求められているいろいろなニーズが広がっちゃっていると思うんですが、ただ、グローバルな知に貢献するということも、多分すごく重要なミッションとして、もう少し強く押し出してもいいのかなという感じも若干しているところではあります。
 他方でですけれど、日本語で書いた文章とか国内向けに発信された研究って相当すばらしい研究とかってある中で、なかなか海外で知られていない研究も多いなという感じがしていますし、そうした指摘も多いんだと思います。こうしたものが、どうやって外に向かってうまく発信できるのかなと。
 これ、もしかすると、最後にいただいたサポート人材という方の存在。ヒアリングでも京都大学とかいろいろ取組されているというふうなお話があったはずなんですけれど、そうした方々のサポートあるいは御活躍される余地というのは相当大きいのかなというふうな感じもします。育成だけだと、なかなかキャリアの出口がないから育成ができていないというところが、多分御指摘としてもあったのかなと思うので、やっぱりキャリアパスをどうしていくのかというのを併せて考えなきゃいけないのかなというのは、1点思ったところです。
 すみません。バラバラっとですけれども。ありがとうございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。確認なんですけれど、入り口のところのグローバルな知への貢献みたいな頭書きのところをきちっと少し書いたほうがいいという部分と、あと、あるいは各論というと、多分可視化だとかモニタリングというのは別に自己目的ではなくて、むしろグローバルな知への貢献可能性みたいなところまさに接続していくようなメカニズムとして、そういうものをきちっと位置づけてつくっていくべきだということもあり得るかなと思うのですけが、どの辺りに入れるといいというお感じでしょうか。
 
【大橋委員】  実は、思いとしては、日本の人文社会科学が若干劣化しちゃっている分野も出てきているかなと思っています。そこはちょっと資金的な面からそうしたところが出ちゃっているところもあると思うんですけれど、そうしたところを励ましてあげたいという思いで申し上げているところが若干あるんです。そういう意味で言うと、あまりとがった表現過ぎると、みんな滑り落ちちゃうかもしれないんで。思いだけ、ちょっと前に出るといいかなと。
 
【城山主査】  なかなか難しい宿題ですね。
 助川さん、いかがでしょうか。
 
【助川学術企画室長】  大橋先生、城山主査、ありがとうございました。
 最初のグローバルの話にも関わるのですけれど、もしかしたらこれは最初のところをちょっと狭く書いてしまっていたかもしれません。私どもも、これを書くときに人文学・社会科学の分野が多様であるということは認識していたつもりです。グローバルというか世界規模ということも認識しているつもりなんですけれども、ただ、世界計画に関する部分が、世界規模の課題の解決に役立ちますよという文脈が強く出るように書いてしまったのかもしれません。
 対し、ちょっと明確には書いていなかったかもしれませんけれども、例えば人文学とかで社会の知に貢献するという側面があって、それがどちらかというとローカルというかドメスティックなことが目立つような感じで書いてしまっていたのかもしれません。でも、実は、知に貢献するというのはグローバルのものもあるしローカルなものもあります。グローバルなものというのは、環境問題、感染症みたいな世界規模課題を解決するためのものだけではないというのはございますので、そこのところは、ちょっと私どもの思いがちゃんと書けていなかったかもしれないので、検討してみたいと思います。ありがとうございます
 
【城山主査】  ありがとうございました。やはりイントロのところで、課題解決だとか価値の話ばかり強調されていますけれど、ちょっとグローバルな知への貢献だとかについても、想像力とか知的好奇心とかも入れていただいているので、その辺りをうまく少し展開していただいて触れていただくという感じかなと思いました。どうもありがとうございます。
 続いて、青島先生、お願いします。
 
【青島委員】  どうもありがとうございました。これまでの議論が非常にきれいにまとまっているなと思います。
 どこか修正してくださいという要求ではなくて、今お話を聞いていて思ったことの一つは、先ほど大橋先生が最後に言われたことに関係しているんですけれども、人材育成のところが、今、タイトルとしては人文社会科学の振興に向けた人材の育成となっております。ただ、大きな流れからすると、恐らく今回は異分野融合とかデータ基盤とかこういうことを中心にしているので、こうしたことを推進できる人材育成という形になっているのかなと思うと同時に、パワーポイントの資料でも、次世代を担う若手の人材とかいう話になってきますと、これは分野にもよるんでしょうけれど、我々の分野だとそもそもあまり人がいない。なっているというか、そういう領域になかなか研究として入ってこないとか。育成も関係しているんですけれど、そういう問題が結構大きいなと思ってしまいます。
 だから、あくまでも今回の異分野融合とかDXという観点から人材を育成するのであれば、全然それはそれでいいかなと思うんですけれども、広くこのタイトルだけ見ると、人文社会科学の振興に向けた人材育成、次世代を担う若手の人材と言うと、もうちょっと別のイシューも結構大きく出てきちゃうなと思いました。この辺りは、触れてくださいというか、触れなくていいということですねという確認でしょうかね、ということをちょっと1点思いました。
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございます。
 事務局、いかがでしょうか。
 
【助川学術企画室長】  ありがとうございます。ここの部分、恐らくもともと今ここで指している4点、この辺の論点について御議論いただいた。その中での人材の部分を引っ張ってきたんですけれども。という意味では、ここで出てきていることというのは、この各論についての人材という面が大分強かったはずなんですが、それを最大公約数化したときに、タイトルがもしかしたら人文科学・社会科学全ての幅広い側面での人材の育成というふうに読めてしまっている面があります。なので、もしかしたらこれまでの議論をうまく反映できなかったのは、タイトルの部分がちょっと反映できていなかったのかもしれないと思います。ここのタイトルあるいはこのリード文なのかもしれませんけれど、これをちょっと検討させていただければと思います。
 
【城山主査】  確かに焦点はDXだとか異分野融合にあるんだけれど、別にそれが自己目的ではなくて、そういうものを通して、他方、人社全体を振興していきましょうという部分もあるのだとすると、逆に少し人材一般の話に広がるという側面ももともとあったのかなという気もするのですけれど、いかがでしょうか。
 
【助川学術企画室長】  もちろんこういうのを通じて、ここに書いていることを通じて、人文学・社会科学を広く進展させる、そういう人材であってほしいというふうには思っているんですけれども。なので、ここにあることは必要ではあると思うんですが、これが十分かと言われると…。
 
【城山主査】  なるほど。
 
【助川学術企画室長】  ちょっと疑問なもので。なので、どっちがいいんですかね。タイトルのほうを直すのがいいのか。ただ、こういうのも含めて人文学・社会科学の振興の人材を育てていくとか、そういうふうにまとめるというのもちょっと考えてみたいと思います。いずれにしても、これだけやれば人文学・社会科学の人材が全部できるというわけでは多分ないとは思うということは承知しております
 
【城山主査】  分かりました。
 青島先生、大体今のような感じでよろしいでしょうかね。
 
【青島委員】  いいと思います。あまり一般に人材育成という話を言い始めると、もっといろいろな主張が出る。
 
【城山主査】  そうですね。
 
【青島委員】  やっぱりここをフォーカスしながら、少ししみ出るくらいでいい。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 田口先生、よろしくお願いします。
 
【田口委員】  こちらを拝見しまして、いろいろな配慮を入れながら、非常によく書けている文章だなと思いました。ちょっと幾つか疑問に思った点も、よく読んでみると大体ちゃんとどこかに書かれていまして、非常にいろいろと配慮が行き届いた文章だなと思いました。
 その中で、少し大橋先生がおっしゃったこととも重なるかもしれないんですが、最後の人材育成のところで、そのさらに最後の国内外への発信というところでしょうかね。国内外への発信のうち特に海外への発信なんですけれども、これ、広報の専門人材ということは、もしかしたらその中に含まれるかもしれないんですが、翻訳ということが非常に重要な観点としてあるかなと思います。
 先ほどからは、やはり国内に非常に優れた研究成果があるのに、それが海外に知られていないというようなお話も出てきていましたけれども、どうもいろいろな現状を見てみると、海外でよく知られている翻訳が、必ずしもきちんとした日本の専門家のチェックを経たものではなかったり、海外でよく知られている紹介の本が、どうも専門的には少し疑問があったりということがよくあります。
 それは、本当は日本の国内の本当に専門でやっている方が、日本国内の、例えば文学であるとか宗教であるとか思想であるとか、そういうことを専門に研究している方が、それを御自分でチェックしながら翻訳して海外に発信していければ一番いいんだけれども、そこをつなぐ人材があまりいないということがあると思います。日本の国内で日本を研究している研究者にとっては、自分で英語に訳すというのはかなりハードルが高い。作業的にも非常に大きなものになってしまう。じゃ、海外の方にぽんと頼むかというと、ぽんと頼んでもきちんとした内容になるとは思えないわけです。例えば翻訳会社に頼んでやってもらうといっても、それは背景などがきちんと分かっていないときちんとした翻訳にはならない。そういうわけで、翻訳に携わる人材、そして専門分野にもきちんと目配りができて、言語にも通じていてというような人材が非常に求められているのではないかなと思うんですね。
 最近で言うと、生成AI、大規模言語モデルなどで、チャットGPTとかあの手のAIというのはかなり翻訳精度が上がっているので、翻訳に対するハードルというのはぐっと下がってきていると思うんですが、しかし、ああいう生成AIが出してきた翻訳というのも、きちんとした能力を持った人がチェックしないと非常に危険で、一見すると非常にするっと読めるようにできてしまっているので、ちゃんとした人が見ないと間違いを見つけられないということがあると思うんですね。
 そういう点も含めて、日本国内の研究を海外に発信していく際の翻訳という面をサポートしていくような人材。この育成というのも恐らく非常に重要になってくるんじゃないかなと思っています。その辺の翻訳というキーワードなんかも入れていくといいのかなと思った次第です
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございました。ですから、例えば最後のところで発信の多い、少ないみたいなことを書いているのですけれども、多い、少ないというよりか、むしろちゃんとした質の発信をすることが大事で、そのためには翻訳というのも重要な要素だという、そのような位置づけを考えさせていただいてよろしいでしょうか。
 
【田口委員】  そのとおりです。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 事務局から何かございますか。
 
【助川学術企画室長】  田口先生、ありがとうございます。なかなか難しい話をいただいたと思っています。ちょっと教えていただきたいこともございます。
 日本の方が日本語で発信した。それが、どなたかが、海外の研究者が訳されたのか分からないですけれども、外国語になって外国へ流通しているものが、ちゃんとほかの国に伝わるものになっていないんじゃないかということがあったとした場合、それは2つのことがあろうかと思うんです。1つは誤訳。訳が間違っているというのが1つ。もう一つが、訳は正しいんだけれど、日本に住んでいる人は日本の背景をちゃんと分かった上で読んでいたら分かるんだけれども、それを知らない人が読んだときに誤解するような表現になっているということもあるのかと思います。後者については、今ここにありますようなバックグラウンドにある問題意識や考え方を含めて発信する必要があるということになるんだと思うんです。
 恐らくこれは、いくら機械翻訳が進んでいたとしても、出てきた論文、書物を機械にかけて外国語になりましたとなったとしても、もともとの文章にバックグラウンドが書かれていなければ、それは入っていないまま翻訳されてしまうので、バックグラウンドも含めて話をしましょうということになるんだと思うんです。
 もう一つは、じゃ、いざ外国語ができたときに、それがちゃんとした訳になっている、あるいはバックグラウンドを含めた発信になっているというのを確認する人材、自分で研究した人ではない人でそれを確認する人というのは、どんなスキルを持っていなければならないのかというのは、ちょっとまだイメージを持てていません。何か御示唆を与えていただけると助かります。
 
【田口委員】  私がちょっと想定していたのは、例えば日本の古典文学を専門に勉強して博士課程を出ましたと。博士課程を出た後の行き先として、アカデミズムの中で大学教員になるという道だけではなくて、国際発信のサポート人材としていろいろな先生方と組んで、そういう外国語での発信を推し進めていくような人というのも一つキャリアパスとしてはあり得るのかなと思った次第なんです。
 今はそういう人はあまりいないと思うので、研究者が自分で兼ねるという形になると思うんですが、やっぱりそれはすごく難しくて、実際英語能力も非常にある研究者もたくさんいるとは思うんですが、そうであってさえ、自分の専門の研究を進めながら、あるいはその他のいろいろなマネジメントも進めながら、同時に外国語でまとまった量のものを発信するというのは、やっぱり非常に時間的にも労力的にもハードルが高い。
 そういうところをサポートするような人材というのは、これからの人材育成としてはあり得るのではないかなと思った次第なんです。それがURAのような形なのか、ちょっと私もそれほど明確に想像できているわけではないんですが、そういう人材がこれから必要になってくるのではないかなと思っている次第です。大学院博士課程を出た後のキャリアパスの一つとして、そういう形でのURA的な方というのもいてもいいのではないかなという辺りでしょうかね。
 
【城山主査】  助川さん、どうぞ。
 
【助川学術企画室長】  田口先生、ありがとうございます。ちょっとなかなか難しい問題なので、すみません。まず、この文章化に当たってはちょっとどうするかというのは工夫を考えさせてください。また、今おっしゃったことというのは、多分研究者というか博士へ行った人の人生に関わる話なので、ちょっと早々に、そうですね、違うですねという議論が今は何とも申し上げられないので、またいろいろと御指導いただければと思います。ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。URA的なものの必要性をざくっとした形で入れていますけれど、多分そこはいろいろな形があり得ると思うんで、その辺りはまたおいおい機会を見て詰めていければいいんじゃないかなと思います。どうもありがとうございました。
 ほか、いかがでしょうか。
 では、仲先生、お願いします。
 
【仲委員】  すみません。仲です。なかなか委員会に出られませんで、今日も遅れてしまって本当に申し訳ありません。このまとめを見ての意見ということですが、もう大変尽くされていて、研究から発信からデータ利用から、と議論し尽くされていると思います。すばらしいなと思います。
 ちょっと見当違いかもしれないんですけれども、人社の人材育成、研究推進ということで言うと、やっぱり時間がもう本当に足りないということをひしひしと感じるところがあります。かつては、各大学、サバティカルが準備されていて、1年間たっぷりとか、場合によっては2年間とか、海外に行ったり、あるいは自国で研究を進める。そこで本をまとめるみたいなことができたかなと思うところです。
 自然科学系であれば、大きな予算を取って大型の機械をとか、スーパーコンピューターを使ってとか、そういうところが研究の推進に関わると思うんですけれど、人文社会だと、やっぱり一定のまとまった時間というのが確保できるように、制度として5年に1年ぐらいなのか、7年に少なくとも1年とかは、本当にじっくり全部自分の時間に使えるというようなことを入れていただいたりできないかなと思いました。
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございました。なかなか基本的な課題ですけれども、事務局で何かございますか。
 
【助川学術企画室長】  ありがとうございます。人文社会だと、特に分野によってはまさに海外について研究されている方もおられますし、そういう分野じゃなくても研究に特化できる、専念できるということは重要なのかと思います。これも大分大きい話なので、今回の中間まとめという形でどこに入れられるかというのはちょっと引き続き検討ですし、また、恐らく研究時間というのは、ふだんの中での研究時間ということもそうですし、あとは研究に専念できる時間というか期間というか、という論点は、人社に限らずあるかと思います。
 先生がおっしゃったのは人社について特にということかと思いますけれども、恐らくそういう全体の枠組みの中で検討していく必要があると思いますし、あるいは、ここでは国際的なネットワークの話が若干だけ触れられていますけれども、国際的なネットワークの構築というのは、先生がおっしゃったうちの本当のごくごく一部でしかないわけですけれども、トータルで。トータルでというのは、いろいろな施策あるいはここの人社に限らない場も含めて検討して、そういう研究時間、研究期間というのが十分取れることは検討していきたいと思います。ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。理系も含めて多分共通の課題である側面と、特に人社にとってそこはクルーシャルだという側面と両方あるかと思いますので、この文章で入るかどうかは別として、ちょっとどこかできちっと検討できる形にできるといいかなと思います
 
【仲委員】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 ほか、いかがでしょうか。よろしいですかね。
 では、安田先生、お願いします。
 
【安田委員】  すみません。ありがとうございます。田口先生のおっしゃっていたこととやや相反してしまうかもしれないんですけれども、迅速に国内の言語で書かれたものを発信するという点を考えたときには、タイトルとアブストラクト的なものだけでもいち早く、AIなどを使って英訳し、例えばグーグルスカラーに引っかかって、英語で検索したときに出てくるとか、そういうシステムや体制を構築することは、やっぱり大事なのかなと思っています。
 一方、田口先生がおっしゃっていたように、誤訳だとか、AIで訳したものが正しいとは限らないので、そこら辺には留意する必要があるんですけれども、全ての論文とか書籍を一言一句きちんと確認しながら出版していくのは時間的にも高度な専門内容であるがゆえにもかなり厳しいかなというところを考えますと、タイトルとアブストラクトでおかしくないことぐらいまでは田口先生のおっしゃるような専門職を用意することができればその人が確認した上で、海外から見ても見える化するというのは、1つありかなと思います。とにかく日本人の研究者の成果が見える化し、それについて海外の研究者から問い合わせやコラボレーションなどの受け入れができる体制を作るとよいと思います。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。必ずしも矛盾するというよりかは、それぞれオプションとしては必要な要素を御指摘いただいているのかなという感じもします。
 事務局で何かございますか。
 
【助川学術企画室長】  ありがとうございます。今から私が申し上げることは、本文というよりもちょっと感想になってしまうんですけれども、確かに私もごく僅かに論文とかを拝見すると、タイトルとオーサー、書かれている方のお名前とアブストラクトだけは和英両方になっているというのも結構よく見ることがあります。確かにそういう核となる部分というか、要約の部分だけでも海外に発信される、英語になっているというのが、海外の人から目に触れやすくなるのかなと思って聞いておりました。
 ちょっと中間まとめの部分の文言上どうするという話ではなくて恐縮なんですけれども、感想めいた話で恐縮なんですけれども、先生の話を伺って、そのように思ったということでございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、井野瀬先生、お願いします。
 
【井野瀬委員】  皆さんが言われているように非常に行き届いた書かれ方をしていて、書いていないかなと思うとちゃんと書かれているので、頑張られたというか、すばらしいなと思って見ておりました。そこを感謝申し上げます。
 それと、私、基本的に人文学・社会科学、特に人文学に自分が身を置いているので思うことは、言葉にしていただけたのが、想像力とか知的好奇心という言葉を本文のところに使っていただけた。人間が生きていく力というか、その根源的なものが人文学・社会科学が支えていると思っている。私自身は歴史学ですけれども、そんなふうに自分を奮い立たせているところがあるのですが、パワーポイントのこまになるとその辺りがちょっと薄れて、現代的な状況へのキャッチアップというほうが前面に出ているような気がするんです。
 文科としてもそこが重要なところですし、私たちもそういうことを託されてここで議論しているわけですけれども、一般の社会への還元ということを考えた場合に、根底で支えているような想像力、見えない部分を想像するということですね。そして、そこから湧き出る知的好奇心みたいなところで人間が支えられているということが、社会への還元という部分では私は重要になってくるという。
 今の時代だからこそ、私たちはこうやって日本の中で戦火にもさらされずなんですが、もうどこでどういうことが起こるか分からないという中で、人文学・社会科学が持っている力というのを、これもどういうふうににじませるかというところなんですけれども、やっぱり書きぶりとして、課題で推進方策。そうなんですよね。そうなんだけれど、そこに何か心というか、うまい表現が見つからないんですけれど、そういうものをにじませていただければなというように、本当にこれは感想なんですが、思った次第ですが、それは助川さん、やっぱり難しいことなんでしょうか。
 
【城山主査】  助川さん、どうぞ。
 
【助川学術企画室長】  井野瀬先生、ありがとうございます。まず、概要のところで知的好奇心とかいう部分が漏れちゃっている部分については、それは書き加えたいと思います。
 
【井野瀬委員】  ありがとうございます。
 
【助川学術企画室長】  表現ぶりは検討させてください。
 ちょっとごめんなさい。私、学が浅いもので間違っていたら御指導いただきたいんですけれども、特にここに出ている面、概要に出ている面、課題の解決に役立つというのは、多分それは間違えていないんだと思います。ただ、課題の解決に役立っている感がないものというのがあるんだけれども、ここをちょっと教えていただきたいんですけれども、課題の解決なり、役立っていないのではなくて、人文学・社会科学というものが、人文学、人間に関するもの、社会科学、社会に関するもので、自分に近過ぎるものなので役立っている感がないということがもし正しいのであれば、まさにそれをやるということは、自分に非常に近いものだから、当然知的好奇心、わくわく感にもつながるものですし、あるいは自分に近過ぎるものだから、それを知ったからといって成長している感がないというだけであって、実は成長している。
 そういう意味で人間、根源を理解するというふうな書き方をしていますけれども、自分自身も深める、高めるものであるということが実は成り立っているのではないかなとは思っているんですけれども、ただ、ちょっとこれが正しいのかどうか分からなくて。大体こんな感じでよろしいのか、表現すると説得力が出て、また、先生方の思いとも合っているのかどうかというのを教えていただければと思います。
 
【井野瀬委員】  今のその言葉を聞いて、本当にうれしくなりました。恐らく役に立つということにこだわってしまうと、役に立たない状態ということがマイナスのように思うんだけれども、役に立つ、立たないというのは誰が決めることかということもあるでしょうし、自分がわくわくする、大切だと思う、自分が何か見えないものが想像できるということが、どう回り回って社会なり世界を変えていくか分からないというようなところが、人文学・社会科学をやっている人間の心を支えている部分だと思うんです。
 残したいのはそういうマインドのような。マインドセットとして、人文学・社会科学という。そういうように捉えて、それがベースにあって、その上に目に見えるものとしての課題というようなものが乗っかってくる。でも、目に見えないものとか時間がかかるものというのは当然ある。その辺りがちょっとどこかに引っかかるものがあれば、誰がこれを読むのか、誰に宛てて書くのかということにもよるんですが、そういった研究者の、この国に何十万人いるか分かりませんが、人文学・社会科学の研究者の存在を思い浮かべていただければうれしいなと思った次第です。ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。一言だけ付け加えさせていただくと、今の概要で、「人間の根源の理解に資し」という部分は多分、今の趣旨とかなり合致していて、その次に、「合意形成を探求する学問分野であり」あたりからちょっと何かプラクティカルユースのほうに偏っているなという感じがするので、多分その辺を少し整理してもらうといいのかなと思います。あと言葉について言うと、課題解決という言葉に対して、我々は若干微妙な態度をずっと取っているんですね。例えば、プロジェクト型研究も課題設定型プロジェクト研究と言って、課題解決型とは言わなかったというのがあって、それは、まさに与えられた問題を解くというのは我々のミッションではなくて、むしろ課題を設定するほうが大事だというフィロソフィーがあったという気がするので、そういうニュアンスも多少入れ込めるといいのかなという気がします。いろいろな宿題を出しちゃうと大変かなという気もするんですけれど、ちょっとその辺りも含めてお考えいただければなと思います
 
【助川学術企画室長】  ありがとうございます。先生がおっしゃっている精神は受け止めたつもりでございます。また、文章化についても検討させてください。ありがとうございます。
 
【城山主査】  よろしくお願いします。
 
【井野瀬委員】  よろしくお願いします。
 
【城山主査】  ほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 そうしましたら、多分まだいろいろ御議論いただくべき点等があるかと思いますけれども、また何かお気づきの点等がございましたら、後日、メール等で事務局までお送りいただければと思います。
 また、本日御欠席の委員もいらっしゃいましたので、次回の委員会までに、御意見があれば出してもらうような形で事務局から依頼をしてもらうということにしたいと思います。その上で、最初、今後の予定でお話がありましたように、次回、今日の議論も踏まえて中間まとめについて議論し、最終的に取りまとめるということにさせていただきたいと思います。
 本日予定していた議題は以上でございますけれども、日程等を含めて、事務局から連絡事項がありましたらお願いできればと思います。
 
【髙田学術企画室長補佐】  事務局でございます。本日は先生方、いろいろな御意見、御指摘を頂戴しまして、ありがとうございました。
 次回の本委員会につきましては、現在、日程調整中ということでございますので、後日、改めて御案内させていただければと思います。
 また、本日の議事録につきましては、後日、メールでお送りさせていただきますので、御確認をよろしくお願いいたします。
 連絡事項は以上でございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 それでは、本日はこれで閉会としたいと思います。皆様、お忙しいところ、どうもありがとうございました。
 
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