人文学・社会科学特別委員会(第22回) 議事録

1.日時

令和6年3月5日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業の実施について
  2. 人文学・社会科学の研究成果の可視化及び国際発信力の強化について3(国際発信力の強化)
  3. 人文学・社会科学特別委員会 これまでの主な意見を踏まえた論点整理
  4. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員、専門委員)
城山主査、井野瀬委員、尾上委員、北本委員、木部委員、治部委員、青島委員、後藤委員、田口委員、森田委員、山中委員
(科学官)
松方科学官、森口科学官、加藤科学官

文部科学省

名子学術企画室長、髙田学術企画室長補佐

5.議事録

【城山主査】  それでは、定刻になりましたので、ただいまから第22回人文学・社会科学特別委員会を開催したいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 まず、初めに事務局から配付資料の確認及び注意事項についてお願いします。
 
【髙田学術企画室長補佐】  事務局でございます。事前に電子媒体でお送りさせていただいておりますが、議事次第に記載のとおり、資料は資料1から資料4、それから参考資料1をお配りしております。
 なお、資料1について、前回の委員会における主な御意見をまとめたものになりますので、適宜御参照いただければと思います。
 資料の不足等ございましたら、事務局までお願いいたします。
 それから、御発言の際は「手を挙げる」というボタンをクリックしていただきまして、主査より御指名を受けましたら、マイクをオンにしてお名前のほうから御発言をお願いいたします。終わりましたら、ミュートにしていただきますようにお願いいたします。不具合等ございましたら、マニュアル記載の事務局連絡先まで御連絡をお願いいたします。
 なお、本日の会議は傍聴者を登録の上、公開といたしております。
 以上でございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。それでは、議事のほうに移りたいと思います。
 本日は、まず初めに、新規事業として令和6年度予算案に計上されました「人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業」の実施について、事務局から御説明いただき、質疑応答の時間を設けたいと思います。
 続きまして、「人文学・社会科学の研究成果の可視化及び国際発信力の強化について」とうことで、山中委員から法政大学能楽研究所における国際共同研究の推進や国際ネットワーク構築、国際発信の取組について御発表いただいて、その後、意見交換を行いたいと思います。
 最後に、「人文学・社会科学特別委員会 これまでの意見を踏まえた論点整理」について、これまで本委員会でいただいてきた御意見をまとめた論点の整理を事務局から説明していただいて、その後、改めて意見交換をしたいというふうに思います。
 それでは、まず1つ目の議題でありますけれども、資料の2、「人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業の実施について」、事務局から御説明いただければと思います。よろしくお願いします。
 
【名子学術企画室長】  学術企画室長の名子でございます。それでは、御説明をさせていただきたいと思います。
 まず、資料を次のページにおめくりください。まず、予算案のところで、今回の人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業につきましては、主に2つの取組からなっております。1つ目が、今回御説明させていただくものでございますが、データ基盤の開発に向けたデジタル・ヒューマニティーズ・コンソーシアムの運営ということでございます。もう一つのほうが、前回等でも少しお話いたしましたモニタリング関係ということで、データ分析による成果の可視化に向けた研究開発ということで2本立てになっておりまして、今回、1番のデータ基盤の開発に向けたデジタル・ヒューマニティーズ・コンソーシアムの運営について御説明申し上げます。
 もともとこの事業につきましては、人文諸分野のデータ化に係る国際規格対応ですとか、データ規格のモデルガイドライン、データ駆動型研究の事例創出、また、若手研究者等を対象にしたデータ構築ですとか、人文諸学の各分野の資料というのはかなり特徴がございますので、そうした多様な特性に応じたデータ構築ですとか、AI利活用研究等に関する人材育成プログラムの開発・実証ということで予算案を計上しているところでございます。
 こちらについて、どういう形で進めるのかについて御説明をしたいと思います。資料を前のページにお戻りいただいて御説明いたします。
 まず、こちらの事業でございますが、大きくコンソーシアムということで、このコンソーシアムというのは中核機関、連携機関、協力機関で構成というふうに書いてございますが、実際どういう形でということで御説明いたしますと、基本的には中核機関のほうでこのコンソーシアムの運営、プログラムの運営というのを中心的にやっていただきます。具体的には、運営委員会ということで、このコンソーシアムに参画するような中核機関、連携機関、その他必要な機関で構成して、そちらのほうでコンソーシアムの業務の運営方針を決定という形にはなっております。そういった下でコンソーシアム幹事機関に係る各種業務、また、データ規格の国際対応及び分野間調整、また、DH人材育成プログラムの開発・実施、また、コンソーシアム活動の成果の普及・啓発、これはコンソーシアムの幅を広げて、各コンソーシアムの取組の成果を積極的に広報していったり、ワークショップをやったり、あとは、例えば学会ですとか外の関係機関とも連携しながら、例えば国内外の事例発信ですとか、動向の発信とか、そういったこともやっていただくようなことも想定はしているところでございまして、(5)はネットワーク活動ということで広く取っております。
 こういう形で人文系諸分野のいろんな多様な機関が集まるような形をつくっていきたいなと思っているところでございますが、具体的な取組のところで特に肝になっていますデータ規格に係るモデルガイドラインの策定というところにつきましては、別途、人文系データ規格・データ利活用研究班というのをつくりまして、そちらのほうで具体のデータ規格の取組をしていただくと。こちらにつきましては、中核機関はただでさえ業務が多い状況になりますので、むしろデータ規格のところでしっかり専念してやっていただくような連携機関、この連携機関が主に中心になると思いますが、こちらのほうの取組をやっていただくという形を考えております。
 協力機関という言葉が端々に出てくるんですが、これはデータ規格のほうであれば、連携機関がこういった協力機関という形で機関が協力をしてつくるということも想定をしております。この中核機関のほうが連携機関を公募する形でやりたいと、共同実施という形で考えているところでございます。
 また、協力機関というのは、例えば横のところの人材育成のところですとか、いろんな分野間調整ですとか、いろんなところで協力するという形で機関をどんどん増やしていくことが考えられますので、そういった形で参画する、実際のプログラム開発のところで関わっていただく機関を協力機関というような形で整理をして、中核機関、連携機関、協力機関というところでうまくコンソーシアムが進むような、そういう形を考えているところでございます。
 前後して申し訳ございませんが、データ規格のところで、今のところ対象領域といたしまして、いろいろ資料のものはあるんですけれども、まず一番多くいろんなところで取組の必要も言われております、まずは文字資料のほうをしっかり規格をつくっていくということを考えております。
 また、2つ目といたしましては、文字資料ですとか、いろんなものと連動してきますが、地図・地誌類関係の資料といったところを考えているところでございます。今、いろんな絵画ですとか美術品関係のものは別途取組が進んでおりますし、あとはジャパンサーチですとか、いろんなところでIIIFの画像、国際規格にのっとった画像化、データ化というのは進められておりますけれども、別途、文字についてはTEIですとか、そういったような国際規格が進んでいる中で、特に日本の場合、近代以前のくずし字ですとか、非常に特徴のある文字ということで、そういったところをどういう形でコーディネートしていくのかというのは重要な形になると思いますので、そこを踏まえて文字資料と。具体的に書いておりませんけれども、恐らく近代以前のもの辺りが、明治維新前後のものもあるとは思うんですけれども、その辺りが中心になるかなというふうには考えているところでございます。
 あと、地図・地誌類関係は、近代以降のものは国土地理院等がいろいろとやっているというふうに聞いておりますが、特に近代以前のものですとか、そういうところでうまく取組が、一部研究者の中でも取組が進められると思いますけれども、そういった形でいろんな資料とも連動してくる資料ということでの規格ということが整理されてくると、いろんなところでの汎用性の広がりもありますし、よろしいのではないかというふうに考えているところでございます。
 あとは、こういったところをうまく分野間調整をしていただいたり、規格をコーディネートしていくということも大事になると思いますので、そこは、主にいろんな調整というのは中核機関のほうの業務中心になってくると思いますが、そういったところでも連携機関と協力していただきながら進めていただくといったところを考えているところでございます。
 若干資料の補足もしながらということでの御説明でございますが、私のほうからは、このデジタル・ヒューマニティーズ・コンソーシアムの運営の仕組みということで、どういう形で進めていくのかということについての説明は以上でございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 予算については既に説明いただいていたと思いますが、それをどういう体制でやっていくのかということと、どういうところを主たる対象にするのかというところについて、こういう方向でいかがかということで御説明いただいたということかと思います。
 御質問、御意見あります方の挙手をいただければと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 木部先生、お願いします。
 
【木部委員】  木部です。1つお伺いします。
 このコンソーシアムのところに「中核機関、連携機関、協力機関で構成」と書いてありますけれども、これは最初からきっちり組織を組むのか、それとも途中で柔軟に膨らませたり、あるいは縮小はあまりないかもしれませんけれども、そういうことがあるということでしょうか。どちらでしょうか。
 
【名子学術企画室長】  よろしいですか。
 
【城山主査】  はい、よろしくお願いします。
 
【名子学術企画室長】  基本的に、公募としては中核機関だけを我々公募して、そこで具体にこういう機関と連携を組んでもらうとか、そこは最初の公募段階では考えておりませんで、そこは自由度の問題もあると思いますので、実際に中核機関を公募して、その後、中核機関のほうで連携機関ですとか協力機関ですとか、考えていただく形になるかと思います。
 規格班のところの協力機関の考え方は、特に今のところ、例えば中核機関が連携機関を公募される際に決めるのか決めないのか、その辺りの調整はあるかなと思っておりますが、我々のほうからは、中核機関だけ公募するという形で考えているところでございます。
 
【木部委員】  ありがとうございました。
 
【城山主査】  どうもありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。基本的には、今御質問ありましたように、柔軟に進めていくということで、またしかるべきステップの段階で、こちらのほうにお諮りすることもあろうかと思います。
 それでは、この方向で引き続き進めさせていただければというふうに思います。
 それでは、次の議題に移りたいと思います。資料の3、「国際ネットワーク構築の過程と国際発信の重要性」につきまして、山中委員から御発表をお願いしたいというふうに思います。
 それでは、山中委員、よろしくお願いします。
 
【山中委員】  よろしくお願いいたします。
 それでは、始めさせていただきます。法政大学の山中玲子です。私の所属しています能楽研究所は、能楽の国際・学際的研究拠点という名称の共同利用・共同研究拠点になっております。今日は、その活動を踏まえてお話させていただきます。
 御覧の順でお話するつもりですけれども、その前に一言お断りを申します。国際化ということを考えるときに、日本が世界の中心である分野と、例えば欧米中心でそこに食い込んでいかねばならない分野とは、戦略も問題点もすごく違うと思います。能楽研究は日本が中心になる分野ですので、以下の私の話も、あくまでもその立場からのものとなります。常々世界のフィールドで戦っておいでの学問とは、とても違うので、今さら何言っているんだよと思われることも多いんじゃないかと思いますが、御了承ください。
 今日のキーワードは、「人」ということでお話をしたいと思います。
 外国の研究者たちは、能楽研究の場合、能だけを研究しているのではありません。もっと広い視野に立っていろいろな研究をしていて、その上で能についても研究をしているという方が大変多いです。そういう人たちに向かって、ちょっと前までの日本人の国文学の研究者というのは、偉そうに資料を、これはこういうのがあるんだよと教えたり、知識を披露したり、古文書を読んであげたりというようなことが多かったと思います。私たちから知識を得た外国人研究者のほうは、感謝して、自分の国に帰っていって、世界的な広いところで、大きな研究の中の一つとして論文にする。ちょうど私たちが地方の郷土史家に会いに行って、とても詳しいけれど限定的な情報を教えてもらい、それを持って帰ってきて、より広い問題に関わる論文を書くというのと似ています。それでは駄目だと言うと、郷土史家に大変失礼になりますけれども、私たち国文学の研究者、能楽研究者も、もっと広い場所、海外の研究者と同じ土俵で対等に議論し、そして礼儀じゃなくて本心でリスペクトし合えるようになりたいなと思いました。そのためには、まずこちらが海外に向けて正しい最新の情報を発信することが重要ですし、また、そういう議論ができるような土俵をつくることが必要だと思った次第です。
 そして、そういうことを本気でやるために、ただ学会での懇親会で会ってにこにこ挨拶をしているだけじゃなくて、けんかをしても仲直りできるようなしっかりした人間関係をつくろうと思いました。
 そこで計画したのが、英語版の能楽全書の刊行です。能楽に関わるほぼ全てのジャンルについて、日本人が書いた原稿を誰かが英訳するというのではなくて、ジャパニーズとノンジャパニーズが必ずペアかグループをつくって、いろいろ問題意識の持ち方ですとか、問題点だとかを議論をしながら原稿を書くというのをルールにしました。10年かかってしまったんですけれど、2013年に始めて2023年、やっと今年、今、初稿を待っているところです。執筆や編集に関わった人数は38名、全900ページを超えます。国は7か国です。いろいろな人が組んで、一緒にやりました。
 この共同研究の過程で気づいたことを申し上げます。実際に組んで原稿を書いてみると、やはり高い理想を持って始めても、向こうの非常に偉い先生でもすごく基本的なことを間違っていたりして、よくないとは判っていても、「え?これ、やっぱり駄目かな」と、ちょっとあきれたりすることもありました。逆に、非常に狭い世界の中でやっている日本文学や芸能史の研究者というのは、日本国内の論文の書き方しか知りませんし、狭い社会に向けて書く書き方しか知りませんので、いろんな問題点に関して無自覚、無神経だということに気づかされました。こちらの論文の書き方も、向こう側の人たちがあきれるほどグローバルスタンダードから外れていたわけです。
 これはちょっと細かい例なんですけども、時間がないので詳しくは言いませんが、例えば用語、訳語の統一です。夢幻能を何と訳すかとか、幽玄を何と訳すかとか、そういう訳語の統一とか、それからもっと細かい点で、スタイル。どの言葉をイタリックにするか、どこにマクロンをつけるかつけないか、ハイフンをどこに入れるか、そういう細かいことまでA4で22ページ分の議論がなされました。私たち日本人側は、どうでもいいじゃないかと思うようなことも多かったんですね。ちょっと投げちゃうところもあったんですけども、それは、いつも日本の中だけで、分かり合っている中で示しているからで、本当に能のことについても、日本のことについても、あまり知らない読者に正しく届けるためには、どこにハイフンを入れるか、どれをイタリックにするか、そんな細かいことが非常に重要なんだということを学びました。
 それから、こちらは自分の原稿に駄目出しをされた例なんですけども、英語の論文では、まず大きな背景ですとか基礎的な情報を説明してから個別の論へという鉄則をよく日本人が指導されると思うんです。そういうのは狭い世界でマニアックな議論をしている身にはなかなか難しいんですが、それでもその鉄則は非常に納得がいきました。ただ、この例では、私が「古い伝書類では」と書いたら、そんなのは世界に通用しないと言われたんです。具体的にどんな伝書があるのか名前を上げろと言われたんですけども、そんなこと言われても、古い伝書類というのは、あちこちの地方の図書館ですとか、個人が持っている古文書で、活字になってない、崩し字で書かれているものが多くて、「どうせあなたたち、読めないでしょう」と。読めない伝書の名前を上げたって仕方ないし、ここは本題ではないんだからと大分抵抗したんですが、やっぱり駄目で、結局、下のところに注を入れることで解決しました。
 このように、何が必要か不要かという判断に関して、もめることが多くありました。でも、全てが純粋に研究的な問題とは限らなかったです。特に若い人たちは、この本で自分の名前を売りたいという気持ちがあって、自分の名前で出す部分をアカデミックに固めたいという気持ちが強いので、過剰にいろいろな注が詳しくなるようなこともありましたし、そういうのにちょっと年寄りグループがうんざりすることもありました。
 それから、当然ながら、個人のキャラクターで、せっかちな人も、慎重な人も、ミスが多い人も、妙に変なこだわりが強い人も、いろいろな人がいますし、それから10年やっていますと、配偶者が亡くなってしまったとか、親の介護があるとか、あるいは御自身の寿命が尽きてしまった方もいらっしゃいました。いろんなことがあった10年で、特に編集の人たちや各チャプターの責任者たちは全員が全員に何度もうんざりして、もうあらゆる順列、組合せで愚痴を言っていたと思います。でも、だからこそ、これからも、この後、この人たちと激しい議論はするかもしれないけれども、けんか別れはしないだろうなという、そういう自信はあります。それぞれの長所や短所が嫌というほど分かって、信頼ができていると。
 最初に言いましたように、けんかできるような関係、こういうのがつくりたかったので、900ページの本がBrillから出るということもうれしいですけれども、こういうネットワークができたことにも大変満足しています。
 共同研究以外の国際発信についても少し触れます。法政大学から日本人の院生や若い研究者を世界に大勢送り出すのは、大変難しいです。やっぱりなかなかそこまで実力がついていかない。でも、受け入れるほうは、JSPSでも、フルブライトでも、国際交流基金でも、頼まれれば、どんなものでも基本的に書類は書きましたし、広く受け入れています。
 また、ここに上げたのはコロナの前の例しかないんですが、大和日英基金ですとか、あるいはエール大学とシンガポール国立大学で一緒にやっていた大学院の海外研修ですとか、あるいはこちらからロンドン大学のロイヤルホロウェイ校やオックスフォードに出かけてやったワークショップなど、いろいろな形で海外の学生に向けての能に関するレクチャーをやってきました。ロイヤルホロウェイの先生とは、イギリスの科研費みたいなもので共同研究の申請をするなど、今でもつながりがあります。
 また、こういう学生さんたちだけじゃなくて、あるいは正規の受入れ学生だけではなくて、いろいろな方が能研を来訪してくださいます。このスライド左上の男の人は、パリの第7大学で古典語と古典劇を教えていらっしゃるフランス人のピエールさんという研究者だったんです。何の予約も、前触れもなく、2018年に突然ふらっと能研を訪れていらっしゃいました。日本語が一言もできない方だったので、信州大学の先生が一緒にいらして、ここにいらっしゃる人ですけど、通訳をしてくださって、通訳つきのフランス語と日本語と片言の英語で、不自由なコミュニケーションでお話をしたんです。この人は、古典演劇をやっているから、能の様式で古典演劇を上演したくて、そのために能について勉強したいということで、いろいろな質問をしてくださいました。よく分からない片言でのやり取りですし、相手が何も知らないので、なかなか大変だったんですが、能研としては、面倒がらずにいつもドアを開けておく、どんな人でも大歓迎というふうにするよう心がけています。
 そうしたところ、4年後の22年の秋に、今度、こっちの右の写真ですが、今度は、彼は1人で能研に予約して訪問してきました。日本語をかなり習得していまして、もうこのときは日本語とちょっとした英語で話すことができたんです。その年にちょうどたまたま、ここにいる女の人は能研の外国人特別研究員だったドイツ人の女の人ですが、この人ですとか、あるいはその日に能研に来ていた日本人の研究者などが集まって、ここでかなりいろいろな話を、深い議論をすることができました。セネカの「メデア」か何か、たしかローマの悲劇を上演したいということで、非常に広い範囲で鋭い質問が出たり面白い議論をすることができました。
 ここでもうれしかったことの一つは、こうやって全然知らなかった人、正式に受け入れ先になったわけではない人が、ふらっと能研にいらして、そこで日本人とだけではなくて、ノンジャパニーズ同士が知り合える場となったということです。こういう場の提供は、拠点として大事にしたいなと思いました。全然知らなかったフランスの研究者とドイツの研究者が能研で知り合って、ここで連絡先ですとか、お互いの研究情報を交換していましたので、何か種をまくことができたかもしれないと思っています。
 それから、研究者だけじゃなくて、能の場合は実演者とのつながりも多いんですけど、外国人の実演者とのつながりもいろいろございます。右側のほうは、チェコで狂言を演じているプロの演劇集団です。左下は神楽坂の矢来の能楽堂でチェコ語の狂言を上演したときの写真です。
 左上の写真は、たくさんの英語能をつくったり、演出をしたりしている方へのインタビューの写真です。もちろん日本人の演者たち、能楽師たちとのつながりも非常に緊密にあります。彼らは、特にコロナが明けて、しょっちゅう海外に出て行っています。そういうところに我々がついて行くことはあまりないんですが、ここに挙げた写真、これは2017年にロンドンで Noh Reimagined という催しをやったときのものです。SUBLIME ILLUSIONSという副題が付いていて、脳神経科学の偉い先生たちも参加するような催しだったので、ロンドンの国際交流基金が、それだったら、しっかりと能のことは能楽研究所に相談してくださいよというふうに仲立をしてくださったので、私たちも協力することになりました。
 この右上のところで、オープニングトークに私も出たりしたんですけども、このときは脳神経科学の人たちと一緒の舞台で夢幻能の話をさせてもらいました。ロンドンのインテリ向けということで、ちょっと頑張って背伸びをして、一生懸命練習して、英語でやったんです。そしたら、その直後は、もう急激に海外からの問合せが増えました。「私もこういうパフォーマンスの研究をしているんですけれど、能研で勉強ができませんか」とか、「私はこういう演劇関係の者なんですけど、何か一緒にできませんか」とか、もう本当に急増したんです。でもちょっと背伸びして英語でやっただけで、能研は専任がたった2人の家内工業ですので、とても対応ができずに、残念ですけれども、お断りするということになりました。
 国際拠点があることの意義について、ちょっとまとめたいと思います。今までは、欧米の学生たちは、能研で勉強して、自国に戻って、そこで博士論文を書くというのが通常の形でした。それでも十分に彼らにとって役に立っていたと思うんですけれども、最近は、博士号取得後でも、拠点となった能研にやってきて、一緒にプロジェクトに参加してキャリアを積んで、それが彼らの就職に結びつくという例が幾つも出ています。ここに3人、外国人の写真が出ていますが、この人たちはみんな、そうやって就職をした人たちです。あるいは能研で受け入れて、推薦状を書いてポジションを得るためのバックアップもしています。
 そういうことになると、若い外国人研究者にとって能研に来ることが彼らのキャリアパスの上で有利な経験になりつつあるんじゃないかなと期待しています。ここがもうちょっと押せたら、うちみたいに外国に学生を送り出すことができないところでも、国際的なプレゼンスを高めることができるんじゃないかなと思っています。これが一つ目です。
 それから、新しい共同研究や仕事上の協力が、ここで拠点があることでやりやすくなります。左下の写真はオリンピックに合わせた能のパンフレットなんですけど、英語と日本語で解説が載っています。こういうのを頼まれたら、すぐに、人を探さずに、安心して信頼できる人とぱっと一緒に仕事ができます。
 三つ目に、先ほど言いましたように、ノンジャパニーズ同士がつながる場所にもなる。
 最後に、これは最初にも言いましたが、国外の研究者は能だけをやっているわけではないので、拠点として国際化することが学際化にもつながっていく可能性があるだろうと思っています。この脳科学の人たちと一緒にやったことなども、そういう意義があったと思います。
 まとめですけども、10年間やってみた感想として、やっぱり組織間の協定よりも、人のネットワークこそが重要だとすごく実感しています。
 それから、うちのような弱小の研究所で、こちらから学生を送り込んだりできなくても、たくさん海外から優秀な院生、若手を積極的に受け入れることで評価してもらえる道があるのではないかなと思っています。
 英語での発信は、やはりすごく効果的で重要だと思いました。でも、あまり背伸びすると、後で自分の首を絞めるようなこともあるなと思います。
 最後のスライドです。今関わっている人たちが所属する研究機関が緑色になっています。黒は、かつて関係があったけれども、今は先生方が引退してしまったり、亡くなったりしてしまって少し遠ざかっているようなところです。それからオレンジは、最近新しくつながりができたようなところです。協定などはあまり結べませんけども、人と人とのつながりでここまでいけるというので上げました。2006年だとこのぐらいなので、やっぱり随分増えているんじゃないかなと思います。
 以上です。ちょっと延びてしまって、すみません。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの山中委員からの御発表について、御質問、御発言のある方はお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 田口先生、お願いします。
 
【田口委員】  御発表どうもありがとうございました。コンパニオンの編集というのが10年もかかったということで、かなり大変な作業だったと思うんですけれども、こちらの言語、共同作業の際の言語は日本語だったんでしょうか。それとも、英語などだったんでしょうか。
 
【山中委員】  基本的には日本語でやらせてもらえました。相手が日本の研究者で、日本語ができるので。ただ、場合によっては、やっぱりあまりできない人がいるときは、ちゃんぽんで英語も使いながら。それから、出版社とはやっぱり英語ですね。あと、メールは英語と日本語が両方。ちゃんぽんというか、どっちかでやっていました。
 
【田口委員】  なるほど。日本についての研究ということだと、やっぱり日本語ベースということになると思うので、そもそも翻訳しようにも翻訳できない言葉もたくさんあるかと思いますので、やっぱり海外の研究者が日本語で議論してくれるということだと、日本の研究者にとっても国際化のハードルがぐっと下がると思うんですよね。そこを全部英語でやらなきゃならないということだと、やはりちょっとハードルが高いなと。そもそもこの言葉は一体どうやって訳すんだというところからやらなきゃいけないので、そこはそういう日本研究分野の国際化の仕方、在り方として、ひとつモデルケースになるのかなというふうに思いました。どうもありがとうございました。
 
【城山主査】  ありがとうございます。それでは、木部委員、お願いします。
 
【木部委員】  どうも山中先生、素晴らしい御研究の御発表ありがとうございました。私も日本語の研究をしているので、翻訳するときによくその分野が分かった方とペアを組まないと、良い訳にはならないということは実感しております。それで、先生のお仕事は素晴らしいと思います。そのときに、バックグラウンドとしての文化が非常に違うと思うのですが、こういう英訳の解説書だとか辞書を作るときに、それをどの程度盛り込むのか、あるいは妥協するのか。バックグラウンドを全部書いていると、ものすごい分量になると思うのですね。例えば、お能ですと平安時代の和歌とか故事を踏まえているとか、そういうことは日本人だったら分かっているけども、海外の方はバックを持っていないので分からない。それをどの程度翻訳に盛り込むかということで、どのように御苦労なさったかということをお伺いしたいんですけど。
 
【山中委員】  そういうのもなるべく全部やろうと思ったので900ページになっちゃったんです。いろいろな章がありまして、例えば、能のテキストを翻訳している場所ではレトリックを簡単に解説して、ロイヤル・タイラーさんの訳などをつけているんですけれども、それとは別に、能のレトリックとは何かというのを論文のように書いています。ÀBC順の辞書みたいなものや簡単な解説書ではなく、もうちょっと深く書いているので、宗教的なことでも何でも、なるべく妥協しないで説明し尽くすつもりでした。だから10年もかかってしまったんですけれど。あるいは、先に英語で海外の人に通じるように、思うように書いてもらって、後から「これは違うと思う」と修正していくようなケースもありました。
 
【木部委員】  本当に素晴らしいと思います。ありがとうございました。
 
【城山主査】  ありがとうございます。続いて、井野瀬先生、お願いします。
 
【井野瀬委員】  山中先生、物すごくインパクトある報告でした。特に人間関係がベースと言われたところは強く共感いたします。1点教えていただきたいのが、今日の能楽というもの単体ではなくて、能楽を含んだ日本への関心というか、そしてその関心の学術化というか、そういったものと今回の御研究というか、ずっと10年間やってこられたということ、どういう関連、どういう関係性があると思われますかということです。例えば、ヨーロッパとアメリカでは、やはり能楽、あるいは能楽をも含む日本研究、ジャパニーズスタディーズ、あるいは、ジャパンスタディーズというものに対する関心の在り方が異なっていると思うんですが、そういうことをどう考えると国際化というか、ブレイクスルーできるのかなという、その辺り何かお考えとか、印象みたいなものがあれば教えてください。
 
【山中委員】  すいません、そんな大きな問題に答えられるようなことはないんですが、印象でお答えします。能に限って言いますと、1960年とか70年代ぐらいは文化の最先端をいっていて、ヨーロッパの哲学者なども、みんな能には関心があったようです。能の方にも、ちょうど日本にはすごいスターがいました。でも今は、世界中の文化人やインテリたちが能のことを知らなくても平気、何の問題もないという状態になっているので、そのあたりをもう一遍盛り返したいという気持ちもちょっとありました。ですから、この英語版能楽全書の中には「現代思想と能」というような箇所もあって、アメリカの新進気鋭の研究者に書いてもらいました。それから、レセプションという章もありますし、だから、「みんな日本のこういう文化を思い出してちょうだい」というような気持ちもちょっとありました。そのぐらいしか答えられなくてすみません。
 
【井野瀬委員】  いえいえ、とんでもないです。恐らく日本研究というか、そういうものが北米のほうでは少し研究の細分化というか、ちょっと関心が減ってきているという、それと、今回10年間のうちにどんどん盛り上げてこられて、非常に大部なものを作り上げられたという、その辺りの話をいろいろと整理していくと日本研究の突破口というか、ひとつ人文学の出口が見えてくるかななんていうことを感じました。ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。よろしいですか。そうしましたら、取りあえず議論はここまでとさせていただいて、ただ、今回、この委員会の立てつけとしては、国際発信力の強化という文脈の中でお話いただいたわけですけれども、山中先生の発表のタイトルにもありますように、発信の前提として国際的ネットワークの構築、いろんな人を受け入れ、ネットワークをどうやって作っていくのかというところの重要性という話が前提にあり、かつ、今日御発表の中でもありましたように、そういう国際的なネットワークを作るということが、脳神経科学みたいなところとの学際の話ともつながるということでもあるので、実はお話しいただいたことは国際発信だけではなくて、むしろその前提となる、ある種の共同研究だったり、異分野融合の在り方という、もう一つの大きな論点とも関わってくる話かと思います。この辺の整理については、また最後のところで皆さんに御議論いただくので、山中先生の御発表も踏まえて、そこでまた少し御議論いただければいいのかなと思います。よろしいでしょうか。山中先生、どうもありがとうございました。
 それでは、少し時間早めで進んでおりますけれども、次の議題に移りたいと思います。
 次に、資料4、人文学・社会科学特別委員会、これまでの主な意見を踏まえた論点整理についてであります。今期の検討事項に基づきまして、発表や議論を重ねてまいりました。今年度は今期の1年目ですけれども、次年度、来年度、本委員会の第12期の最終的なまとめに向けた議論を進めていくことになります。そこで、1年目の終わりにということで、これまでいただいた発表や御議論いただいた内容、論点を整理するというようなことを事務局にお願いしましたので、今日は残りの時間を使って、この資料4にあります論点整理をもとに、今後の政策的な方向性について検討を深めていきたいと思います。中間報告というよりか、あくまでもここは論点整理ということかと思います。これをベースに次年度、どういう施策につなげていくのか、あるいは概算要求につなげていくのかという辺りを今後、議論しなければいけないので、その頭の体操といいますか、きっかけにさせていただければと思います。先ほども申し上げたように、今日御発表いただきました国際ネットワークの構築だとか、成果発信、国際共同研究の推進という、国際共同研究という一つの共同研究のパターン、在り方ということも一つの重要な論点かと思いますので、ここは先ほど申し上げたように引き続き御議論をいただければと思います。
 それでは、事務局から、まず御説明いただければと思います。名子室長、よろしくお願いします。
 
【名子学術企画室長】  それでは、資料4に基づきまして御説明させていただきます。冒頭、城山主査からお話ありましたように、これまでの御意見ですとか、あと、夏にまとめました施策の方向性ですとか、そういったこれまでの御議論の蓄積をもとに、今後の振興に向けた政策の方向性、取組の進捗状況など、課題も整理しながら論点を整理したというものでございますので、これをベースにまた引き続き、次年度以降、御議論をしていきながら最後のまとめみたいなところに向けて進めていただければと思っているところでございます。
 それでは、概略説明させていただきます。
 まず、1ページ目でございますが、1ページ目は目次というか、論点をタイトルごとで整理したものでございまして、大きく人文学・社会科学の現代的役割ということで、これまでいただいた御発言の中でそういう形で整理できるものをここのところに入れております。
 また、人文学・社会科学振興の政策の方向性ですとか、取組の進捗状況、現在の課題ということで次に整理をさせていただいて、ここでは主に政策の方向性ということで、科学技術・イノベーション基本計画を踏まえた対応ですとか、あとは過去の議論、分科会等での議論の展開を踏まえた形の方向性、そういったことを踏まえまして12期の委員会における検討の方向性という形で議論を整理しております。
 また、取組の実施状況と現在の課題ということで、こちらのほうで政策の方向性として、こういった共同研究、プロジェクト研究のもの、データ基盤の整備、成果の可視化、モニタリングや、国際発信という形で御議論いただいておりますので、それぞれに沿っての実施状況ですとか、課題というような形の整理をしております。
 大きく3番目で、じゃあ、それを踏まえてどうするのかというところで出てきた意見を整理させていただいておりますが、まず1つ目は、異分野融合・課題プロジェクト型研究ということで、共同研究の意義、価値といったところですとか、これは田口先生からも目的ではなく手段としてというようなお話ありましたし、いろんな委員からも賛同の御意見あったかと思いますが、そういったことについて意見を整理したり、あとは共同研究のマネジメントといったところも重要な論点だったと思いますので整理しております。また、異分野融合型の共同研究を推進するための体制、仕組みですとか、あとプロジェクトの成果と評価といったところの御意見も多かったと思いますので、そういったところの意見を整理させていただいております。
 あとは研究データ基盤の整備ということで、データプラットフォームの運営とデータ及びメタデータの整備ということで整理をしております。あとデータ連結の重要性ということで、先ほどの予算の関係もございますし、夏にまとめた方向性も書いておりますが、そういったところも整理しております。あと12月に、データのオープンサイエンスへの対応ですとか、データの保存の関係でも御議論いただいておりますので、そこについての意見というのを次のところのオープンサイエンスの対応、データ人材の活用を含めた支援機能の充実といったところで整理をしております。あとはデータの利活用についても御指摘ございましたので、そこを入れております。
 成果の可視化とモニタリング、国際発信ということで議論を進めていたんですが、恐らく成果の可視化とモニタリングというところでまとめつつ、成果の国際発信、これは共同研究の話で、国際的な共同研究というところを今日お話いただいておりますが、ちょっとそこは今日の議論を踏まえた形にはしておりませんので、少し共同研究の話が抜けたような形になっておりますが、可視化とモニタリング、また、その成果の国際発信というのは微妙に違うところもありますし、重要性も踏まえて、ここはちょっと分ける形にして、成果の可視化とモニタリングということで、これは前回お話しいただいたようなSciREX事業の展開ですとか、あと予算時期を踏まえてモニタリングをやるという、前期11期の委員会での議論のまとめを受けての方向性で進めているところについてと、あとはいろいろと補足的に出た意見をここで整理しております。
 あとは、成果の国際発信ということで、これは例えば、広報的なお話ですとか、戦略的な国際発信というところの重要性について御議論いただいておりましたので、そういったところで少し出てきた意見なんかをまとめたと。全体像としてはそういう形で整理しているところでございます。
 概略をかいつまんででございますが、少し御説明させていただきます。
 次のページでございますが、これは人文学・社会科学の学問的特性と現代的役割ということで整理をしておりますが、出てきた御意見の中で、人文学・社会科学はこういう学問だといったような御意見ございましたので、そこをちょっと整理しております。ここについては実際にまとめると、かなりいろんな人から、いろんな思いですとか御意見があるところだと思いますし、過去の分科会の提言なんかでもこういったところは整理されておりますが、一つはやっぱり、いろんなところで、例えば、社会の裏に価値観、人や社会の思想ですとか行動、あるいは、そういったところの価値を確認したり、根本的な理解を深めたり、あとは社会の合意形成、社会的対立の解決法を探求すると、そういった学問的特性であり、それは国の知的資産の重要な一翼であると言ったような御意見をいただいておりましたので、そういったことを整理しております。
 ここは少しかいつまんで、次のページに移ります。2ページ目でございますが、政策の方向性というところで、冒頭申し上げましたようにイノベーション基本計画を踏まえた対応ということ、これは夏のほうの文書でも書かせていただいておりましたが、こういったところの中で、特に異分野融合ですとか、これは総合知の文脈でございますが、その総合知の観点からも、まさに異分野融合の共同研究が大事だというところで言われておりますことと、あとは総合的・計画的な振興に向けたモニタリングの推進の重要性。あと研究DXといったところも言われておりましたが、その辺りについての記述、重要性というところの指摘があるということの方向性でございます。
 あと実は過去の学術分科会等における提言ということで、人文学・社会科学の過去の委員会がございますが、その中でも実は似たようなことはずっと言われておりまして、共同研究の重要性とか、システム化、あと学問的特性に基づく研究方法の在り方ですとか、研究基盤整備の重要性、デジタル化への対応、あとは学問的特性を踏まえた研究評価、モニタリングの在り方、成果の国際発信と、実はずっとこういうことが議論されておりまして、それをよりちゃんと進めていくということで、12期の議題をセットして検討していただいていると。そういったような関係が分かるような形での整理をさせていただいているところでございます。
 続きまして、3ページでございます。こちらからは論点ごとに現在の取組状況と課題という形での整理をしている形になります。
 3ページの1つ目でございますが、こちらは人文学・社会科学を軸とした異分野融合・課題設定型プロジェクト研究ということで、こちらは、この取組の重要性ということを踏まえて文科省のほうでも学術知共創プロジェクトですとか、学術振興会のほうでも先導的人文学・社会科学研究推進事業というのをやっておりますので、まず、実施状況といたしましては、それぞれやってきたプログラムについての記載をさせていただいております。
 課題というところで、これはいろいろと御議論もいただいておりましたけれども、例えば、共同研究を行う際の課題ということで、研究者同士の研究分野の理解とかリスペクトが必要だとか、使用する言語や概念によって違いがあるので、そのギャップを埋めるのに労力がかかるとか、そういう相手の相互理解みたいなところの話があったと思いますし、あとは出会いのような話、人文学・社会科学分野の研究者、それぞれの近接分野もそうでしょうし、自然科学分野での研究者との出会い方と、あとそういった研究者同士をつなぐような人材、そういったところで課題がいろいろありますと。そういった御指摘をいただいたかと思います。評価のところにつきましては、まさにこの融合分野であるからこその評価の難しさだとか、そういった御指摘をいただいておりましたので、そこを整理しております。
 次の4ページでございますけれども、こちらについては、人文学・社会科学のデータ基盤整備の現状ということで、こちらはJSPSのデータインフラ事業ですとか、人間文化研究機構の下の国文学研究資料館のほうでやっておりますプロジェクト、フロンティア事業でのデータ整備のプロジェクトがございますので、そういった取組状況を記しております。あと科研費ですとか、共同利用、共同研究拠点等での取組もございますので、そういったような御指摘をさせていただいている、事実関係を整理しているというところでございます。
 次の5ページです。課題ということでいただいた御意見の整理でございますけれども、例えば、メタデータやデータ、そちらの規格の国際性ですとか、あとは共通性の確保。あとはデータ基盤構築ですとか、データ整備といったところでの人材の育成、そういったところでの課題がございましたので御意見を整理させていただいております。また、研究データ等のオープンサイエンスの関係で、データ公開の在り方ですとか、そこも12月に御議論いただいたときにかなり各分野の事情を踏まえて、ちょっとこういうのは難しいんじゃないかとか、公開データでどこまでできるんだとか、そういったところの話とか、あとプロセスに関するデータみたいなところも含めて、どう公開するのかとか、場合によっては偽文書の対応をどうするんだとか、いろいろと御意見いただいておりましたので、そういったようないろんな公開に当たっての考え方とか、信頼性のレベルづけの整理が必要とか、そういう注意喚起みたいな御意見もいろいろありましたので、そこを記載させていただいております。あとは個人特定、個人情報の関係での気をつけなきゃいけない点についての御指摘もいただいておりましたので、その御意見もいただいて整理しております。
 続きまして、6ページ下のところの研究成果の可視化とモニタリングのところでございますが、これはまず、前期11期の委員会で取りまとめていただいたものをベースに、まずこういったところでいろいろモニタリングが必要だというところを書かせていただいております。その中で特に国際ジャーナル論文ですとか、国内ジャーナル論文の分析ですとか、書籍の分析ですとか、いろんな御意見ございます。整理をいただいておりましたので、そのことを端的に書いた形にしております。
 次の7ページ目でございますが、そこでの課題ということで、いろいろと今後のモニタリングの関係での課題というところでございますし、前回のSciREX事業の取組で軽部先生のほうからも御報告いただいた内容で出てきたこともここで書いておりますけれども、例えば、書籍については、体系的な指標がまだありませんとか、どこまでの書籍を成果として見るのかといった辺りの考え方。また、国際ジャーナル論文については、どのジャーナル論文誌をそもそも対象にするのかといった問題ですとか、あと研究者は同姓同名の方の話もありますので、名寄せをどういう形でやるのかとか、そういった課題がありますというところでございます。
 また、これはモニタリング、直接ではないんですけれども、例えば、人文学・社会科学での、異分野融合型研究とか、そういったところで生み出されている多様な成果の把握の仕方をどうするのか。特に学術的ということじゃなくて、例えば、違う形の多様な成果も含めてどうするのかといったところの課題、あとはそもそもやっていることの発信の工夫とか、可視化もどうするのかという、そういったところの課題もあったかと思うんですが、そこを書かせていただいております。
 あと成果の多様性ということにつなげてでございますが、これも前回でいろいろ御意見あったかと思うんですが、先ほどの山中先生のお話とも通じるところがあると思うんですが、例えば、研究分野によっては国内での成果を強く志向したり、国際的な成果を強く志向したり、例えば論文中心であったり、書籍をまとめて体系的な成果を志向したりと、成果方針の志向性というのがそもそも分野によって多様だと。そういったところを踏まえていろいろ考えていく必要があると。このモニタリングに当たって、またこれも御指摘のところで、過去と現在の考え方で今の考え方がある程度規定されているところもある一方で、例えば、将来的にそうした志向性も変化していくことがあるので、その辺りの将来的な変化みたいなものも留意していく必要があるといった御意見があったかと思います。
 これはどちらかというと国のモニタリングに当たってということの注意点でございますが、以下のところはもう少しコミュニティーにとっての意義というところになるので、少し次元が違う話になってくるんですけれども、こうした成果の多様性というのは、結構いろんな分野の方で違うんだということが強調されてきたんですけれども、そういった共通性とか差異性が、例えば、こういう事業を通じて可視化されることで、もう少し各分野のコミュニティーとか、研究者にとって成果の捉え方って何がいいんだろうねということについて検討する契機となるんじゃないかみたいな、そういうお話もあったかと思いますので、そこも考えとして重要かなと思いましたので、ここのほうにちょっと整理させていただいております。
 あと前回も御懸念があったと思うんですが、社会的な評価については、多分うまくやっていかないとちょっと難しいところとか、いろんな問題もあるかと思いますので、その重要性というのは分かるけれども、例えば、学術的な評価との関係性ですとか、そもそも社会的評価がどういう目的を持ってなされるのかとか、どんな意味を持つのかとか考えながらやっていく必要もありますよねという、留意するような御発言もあったかと思いますので、そこもちょっと整理させていただいております。
 7ページでございますが、成果の国際発信については、実は今日のお話を受けて、またいろいろと、この後の御議論でも出てくると思うんですが、結構重要なところかと思いますし、また、意見として整理されてくると思いますので、ちょっと簡単に、過去、例えば、学術分科会の報告でもこういう英語での成果発信とか、単に発信するだけじゃなくて、そういったことを支える体制の重要性みたいのが指摘されたことですとか、あとは、これはずっと前のものになるんですが、JSPSのほうで昔、人文学・社会科学の国際化ということで御議論されてまとめられた報告もございまして、こういったところでも国際的な発信の重要性ですとか、意義みたいなことを整理されておりましたので、過去やってきたものをこういう形で整理させていただいております。
 あと学術振興会の「先導人社事業」の中でも、例えば「グローバル展開プログラム」というのがありまして、これは簡単に御紹介させていただきましたけれども、その中で国際共同研究を推進してきて、国際的なネットワークをつくって、成果発信を目指すというプログラムもありましたので、そういった事実関係も書かせていただいております。
 課題といたしましては、そことパラレルにくっついているわけじゃないんですけれども、まず一つは、少しいろんな状況が変わってきて、今大学のほうでも広報という観点が非常に重要になってきていますので、そういった国際広報、海外広報という観点から見た成果の発信というところで、自然科学に比して、やはり人社系がちょっと弱い現状、弱いというか、体制の問題とか、いろんな問題があると思いますので、そういったところでの課題も踏まえて、もうちょっとこうしたほうがいいんじゃないかという発表と意見をいただきましたのでそこを整理しております。
 成果の国際発信については、例えば、成果をそのまま国際的に発信するということ以外に、日本語で発信することが重要な分野であれば、そこの発信の仕方ということについても考えようがあるよねというところとか、あとはそもそも機械翻訳があるので、そのおかげでもう日本語で研究しながら同時に国際発信をやっていくということについてハードルも下がってきているんじゃないかといった御意見もありました。多分、テクノロジー全体が学術研究に及ぼす影響、学術研究のやり方に及ぼす影響という観点で広く受け止められる御意見かなと思うんですが、一旦こういう国際的な視点での御意見ということで入れております。ちょっとここはいろんなところに影響があるポイントかなと思っております。
 こういう取組状況とか課題を踏まえまして、今後の推進方策ということで整理しております。1つ目は異分野融合に関するところでございますが、まず、共同研究の価値ということで整理させていただきました。これは社会的価値ですとか、人間そのものの価値というところで取り組んでいくというような、まさにその課題設定のところですとか、あとは社会課題の解決ってなると、ある程度の社会実装という観点で人文学・社会科学の力が必要だといった御意見がありましたので、そこをちょっと入れております。
 他方で、これは人社が主導するということで考えますと、もう少しいろんな御議論をいただけるところもあるんじゃないかなと。普通の融合研究じゃなくて人社が主導することの意義というところは少し御意見いただいてもいいところかなと思っております。
 続けて共同研究のところで、これは研究自体を目的化するということじゃなくて、何かをやっていくというところでの共同研究という、手法ということの重要性であったと思うんですが、そこを整理しております。
 あとは共同研究をやることの意義という関連でいうと、新しいことをやっていって、新しい分野を開いたり、新しいテーマに向かっていくということもあれば、そもそも人文学・社会科学の研究そのものを進化する、発展させていくという意味での有用な意義があると。そこの意義の多様なところについても御意見あったかと思いましたので、そこを整理しております。
 あとはそこの教育的観点です。こういう共同研究、こういうプロジェクトの中に院生が入っていくということ、もしくはその成果を院生に還元していくということで、まさに若い人にとっての良い効果もありますといったところの御意見を整理しております。
 あとはマネジメントの在り方についても御議論ございました。まず一つは、自分自身の研究の捉え方です。共同研究や異分野融合をやったときに、御自身のもともとの属する学会ですとか、もともとの研究テーマの分野みたいなところと、こういう異分野をやるときとの関係性をどうするのかというところで、まずは一旦、足場のところが大事じゃないかとか、特にこれは若い人の文脈だったと思うんですが、まだちょっと足場を、評価の在り方とか、まだまだいろいろ考えなきゃいけないところがあるので、まずベースとなる分野のところでの経験とか活動というのも大事じゃないかという御意見がございましたので、そこの御意見を入れております。あとは今申しました、評価をどうするのかというところでの課題です。
 次の10ページのところでございますが、これは意義ということとパラレルの関係になりますが、まさにプロジェクトマネジメント的な観点で非常に重要な能力を培うことができるんじゃないかといったところで書かせていただいております。
 あと、共同研究を行うに当たっての進め方ということで、結構皆さん、定期的にミーティングをしたり、チーム内で意識共有をしたり、進捗状況、まさにプロジェクトを引っ張る方が状況を見ながらいろいろ進めていたというお話がございましたので、そういったことをやることで問題意識や課題を共有して、新しい研究のほうに進むことができるといった御意見をいただいておりましたので、そこを整理しております。
 あとは体制や仕組みということで、例えば、そもそもお互いを理解という話もありますし、いろんな人と出会うということがありますので、そういったところを理解し合ったり、出会うという場の設定が重要じゃないかとか、あとはこういった取組が全国的にうまく広がっていくようなことをしていく必要があるんじゃないかと、そういったところで意見を整理しております。
 あとは、これはURAの方の役割にもなるんですけれども、例えば、所属する研究部門の研究者の研究内容を把握されて、研究者同士をうまくつないでいく仕組みをつくっていったり、また、こういう先進的な取組を行っている機関の事例がいろんな機関に共有されたり、つながっていくような仕組みができていくといいんじゃないかといったところで意見を整理しております。
 あと、これは前回の意見でもございましたが、例えば共同研究や異分野融合というのは、学内もそうですし、異なる大学というところもあるんですが、結構事務プロセスのところでの違いがあって、それでいろいろ煩雑さがありますというお話があったかと思うんですが、この辺りは結構意外な重要なポイントかなと思いますので、御意見として、こういう事務処理の共通性だったり、いろんな事務の効率化の観点からもちょっと考えていく必要があるといったところで御意見を入れさせていただいております。
 次のところは、ネットワークの構築とかその拠点ですね。例えば、プロジェクトがいろいろ異分野融合関係で全国的にもあると思いますが、そういったプロジェクト同士のネットワークがうまくつながったり、そういうことを全体として支える拠点があっていくということが非常に重要じゃないかとか、こういう組織やセンターがあることでプロジェクトが可視化されていきますので、より外部とのネットワーク構築がやりやすくなるんじゃないかといったような意義、ある程度体制があること、組織があることの意義のような形を書かせていただいているところです。
 次は成果の可視化というところで、非常に難しいというところはいろんな御意見あったかと思いますので、そこを書いておりますが、1つ、これは国のほうでやる事業という話にはなってくるんですけれども、よくプロジェクト単位でいろんな評価をすると先生方にとっても負担もかかるので、例えば事業単位で見たときに、こういう社会的評価とか社会的インパクトを与えるような評価をやるようなやり方もいいんじゃないかというところを書かせていただいております。
 ここで11ページに中途半端な形で海外、国際ネットワークの話を書かせていただいておりますが、これは、国際的な共同研究と学際的な研究が広がっていくんじゃないかという御意見が今日、御発表でもありましたけれども、国際的な成果発信をやりつつ、でもベースになる重要なのは国際共同研究のところだと思うんですが、こういった議論が、まだ今日の議論で出てきたところでございますので、特別な項を設けていなくて、重要な観点でもあるということもあってここに少し入れさせていただいておりますが、ここはもっといろいろ膨らませたりする必要もあるんじゃないかと思っているところです。
 続けて11ページですが、研究データ基盤の整備ということで、今までやってきた取組を踏まえて、例えばデータを単につくるということじゃなくて、研究者がより信頼度の高いデータを提供できることが必要ですし、そういった環境をつくっていくことが大事であるということ。また、そもそもそういう信頼度のあるデータは、どこにどのようなデータがあるのかという全体像の可視化ですとか、データを持っている機関同士がネットワーク化したり、プラットフォームを構築していくことが必要じゃないか。また、お互いの資料同士が相互運用性が出てくるということが重要なんですけれども、それをするには規格が大事になりますので、その取組を進めていくということを書いております。
 この観点で言いますと、一つはJSPSのやっているデータプラットフォーム構築事業がございますので、そこは特にメタデータ中心に手引も作ったり、社会調査関係中心にデータの手引も作っておりますが、そういったところの取組を引き続きやってもらう必要があるかなと思って書いております。
 次のところで、データ規格の整備やデータ連結の重要性ということで特にちょっと取り出しておりますけれども、これは、今回、先ほど御説明した予算事業の中で、特に人文学・社会科学系のデータについてのちょっとばらばらな状況がございますので、そこをしっかりデータ規格のガイドラインをつくっていったり、機関の連携をつくることでそこを整理していきましょうというようなことを書いているところでございます。
 ここで、オープンサイエンスの関係で、データ公開のところの考え方についても、どういったものをデータ公開していくのが大事なのかについて書くとともに、少し分野によって状況が違うところがあるので、そういったところでオープン・アンド・クローズという考え方をどう整理するのかを考えていく必要があるというところでの書き方をさせていただいております。
 人材育成についても、データをつくる人材ということもありますし、あとは、例えばデータ保存だとかデータキュレーターといったところについても考えていく必要があるんじゃないかと。これは、12月の委員会でそういうお話がありましたので、そこも一旦ちょっと留意するということで書かせていただいているところでございます。
 データの利活用関係は、研究者の利活用もそうですし、一般的な方の利活用も重要だということで御意見をいただいておりましたので、そこもいただいた意見を踏まえて書かせていただいております。
 あと、AI利活用のところの話と、そもそもやっていく必要があるということでございます。また、AI自体を改善していくという観点での人社の役割もあるんじゃないかということで御意見をいただいておりましたので、ここがいいのかというのもあるんですが、データ利活用の文脈で少し入れさせていただいております。
 13、14、15ページでございますが、成果の可視化とモニタリングのところでございます。こちらについては、今後の取組として、まず国際ジャーナル論文のモニタリングということで、SciREX事業を前回、御紹介いただきましたが、それをしっかり進めていくというところで、御発表いただいたものをベースに書かせていただいております。
 書籍のモニタリングのところは、予算事業で進めていきますので、そこでやっていくことを書かせていただいております。
 成果の捉え方の多様性とその可視化の重要性ということで、異分野融合の文脈でも成果の多様性のお話をいただいておりましたが、これ自体、異分野融合という文脈から離れても、成果の捉え方という観点からもいろいろ考えていく必要があるかなと思っておりまして、いただいた意見を整理しながら、例えば既存事業をベースに、一旦そういう社会的な成果ですとか社会的インパクトをうまく評価するということを試しにやっていったらいいんじゃないかというようなことを、そういった御意見もいただきましたので、書かせていただいておりますし、また、予算事業の中で展開していくお話もございます。これは前期のまとめを基に、踏まえて予算化した事業でございますけれども、そこで言われている社会的インパクトやSNSを活用したAltmetricsとか、そういったものなんかも、書籍だけじゃなくて、しっかりうまく見ていくといったことを書かせていただいております。
 最後でございます。成果の国際発信のところでございまして、一つは広報を使った発信ということで、御発表いただいた内容や御意見いただいた内容を入れておりまして、そういった広報の人材ですとか組織的な対応の重要性なんかも御指摘いただいておりましたので、それを整理して書かせていただいております。
 最後のページの15ページでございますが、戦略的な国際発信ということで、先ほども山中先生の御発表の中でもありましたし、いろいろなところでも御意見あったかと思うんですが、そもそも国際的に発信しないと国内の成果を正確に伝えられないといったところですとか、やみくもに発信すればいいというわけじゃなくて、戦略的にいろいろ考えてやっていく必要があるといった御意見をいただいておりましたので、そこを書かせていただいております。
 また、これも、前回の御意見でもあったと思うんですが、今日も先ほど御発表でいただきましたけれども、例えば単に英訳して発信するということではなくて、背景の事情とか構造が伝わらないので、もう少しバックグラウンドにある問題意識や考え方も含めて発信していく必要があるんじゃないかといったところと、これをやるんであれば、海外の研究者とのつながり、国際的なネットワークの構築といった辺りをベースにやりながら、それが成果発信につながっていくということの、こういったプロセスの重要性みたいなところも入れさせていただいているところでございます。
 すみません。若干駆け足になりましたが、大体15ページほどで一旦、これまでの御意見や過去に整理された文書を中心に少し論点を整理した形の資料にしておりますので、忌憚なく御意見いただければと思っております。
 私からは以上でございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 かなり幅広い課題、テーマに及ぶ話ですけれども、御質問あるいは御意見をいろいろな方の観点からいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 治部委員、お願いします。
 
【治部委員】  ありがとうございました。ここまでの御議論を大変分かりやすく、端的にまとめてくださってありがとうございました。
 私、ここには元記者という立場で、どちらかというと広報側面で拝見しているんですけれども、せっかく重要な論点かつ社会的にも関心を持たれているテーマだと思いますので、今おまとめいただいたものを、できればA4、1枚ないしは1枚半程度に、分かりやすくポイントをまとめてプレスリリースを。文科省記者クラブはもちろん、昨今、ウェブ媒体の記者の方等々もすごく発信力をお持ちですし、人文・社会科学の発信力もしくは研究の評価というのはどのようなものであるかというのは結構SNS等でもいろいろと議論がなされておりますところ、ぜひ端的に分かりやすい形のエグゼクティブサマリーのようなものをつけていただいて記者の方に流していただければと思いますし、その辺りのことは少し私もお手伝いできたらと思っている次第です。短いものを、見出しをつけて分かりやすくお出しいただけたらということです。
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 今の点、名子室長、何かございますでしょうか。
 
【名子学術企画室長】  一応、8月の方向性のところも簡単に一枚物はまとめて、複雑なので、ちょっと分かりやすくやらないと読んで分からないという方が続出しますので、今回はあくまで議論のための論点整理ですが、今後まとめをしていきますので、そういったところではちゃんと1枚で概要みたいなものをつけていくという形をしていきたいと思いますが、過去のものを見ていただいても分かると思うんですが、テクニカルタームとか、いろいろ難しいところがあって、結構大変な作業はあるかと思いますので、そういったところも、皆さんの御意見とか御知見を借りてやれればいいんじゃないかなと思います。
 あと、プレスリリースは、中の作法もあるので、そこのルールに基づいてやることもあるんですが、一方でメディアですとか、個別にいろんなところで呼ばれて発表とか、何か広報していくこともあると思いますので、その辺りはまた御相談とか、いろいろとやれればいいなと思っております。
 すみません。今のところの考えということで、私からは以上でございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。恐らく、検討の結果を予算案だとかに反映していくということも大事なんでしょうけれども、きちっとこういう課題について議論をして、こういうことについて問題提起をしているんだということを社会に発信するということはすごく大事なので、そういう意味で、論点整理のオーディエンスを少し広げて考えたり、その方々に分かるような手法をどう考えるか、その辺り、また治部委員等も含めて相談していただいて、何か考えていただけるとすごくいいのかなと思います。どうもありがとうございました。
 いかがでしょうか。
 後藤委員、お願いします。
 
【後藤委員】  後藤でございます。非常に網羅的かつ端的にまとめていただきまして、ありがとうございます。かなりいろんな論点をやはりお話ししているのだな、これまでしてきたのだなということがよく理解できました。
 やはり、今後のことを考えていくと、共同研究プロセスの可視化の方法みたいなのをちょっと考えていく必要があるのかなと個人的には思いました。もちろん人文学というのは、1人で資料を読んで分析していくということが非常に重要な分野がたくさんあるということはよく理解しておりますが、具体的な課題解決のためには、やはり共同研究というのは極めて重要ではあることは間違いないと思っております。そこを今後うまくつくっていくためにも、共同研究プロセスをいかに可視化して、それを共有していくかということは、今すぐ具体的にどうこうというあれにはならないかもしれないですが、今後、大きな視点としては考えていく必要があるのかなと思っております。
 それは、特に今回の、例えば山中委員の発表したような成功したプロジェクトというのはなぜ成功しているのかという辺りを、むしろ成果だけではなくて、途中がどういうふうになっているのかということを共有することによって、ほかの研究者がそういうことができるということもあると思います。また、オープンサイエンスの文脈においても、資料の公開の整備とかは進んできていると思うんですけど、研究途中の情報とか記録の共有ということはまだまだこれからだと思いますので、これはもう資料でも触れられていますけれども、その辺りをやはり考えていく必要があるんじゃないかなと思っていますし、もちろん国際発信の中でも、資料とか成果だけを出していくのではなくて、いかに海外の人と共同で議論していくかというときにも、そういうディスカッションを開いていくという観点からも、共同研究プロセスの可視化というのは重要なのかなと思っています。
 すみません。長いですけど、もう少し。デジタル化という文脈から見ていても、先ほども言いましたけれども、資料や成果のデータ化というのは進んでいるわけなんですけど、このデータの信頼性みたいなのを担保する部分として研究プロセスがあるんだと思うんですよね。この資料はどういうふうに使われているかとか、成果としてどういうディスカッションがなされてきたかという辺りがあるわけなので、デジタル化という観点からしても、資料とか成果の信頼性を担保するためにも、研究プロセスをきちっと残していって、そことリンクするというような形に将来できればいいのかなと思います。今すぐ実際に落としていく方法があるかというとかなり難しいところはある気はするんですけど、今後の大きな方向性としては少しそういうこともあるのかなと思いましたので、ちょっと発言させていただきました。
 すみません。長くなりましたが、以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 事務局のほうから何かレスポンスありますか。
 
【名子学術企画室長】  資料の中にはいただいた御発言で整理したものもありますので、一旦、受け止めて精査して、また次のバージョンをアップさせるときにやっていきたいと思います。
 
【城山主査】  ありがとうございます。異分野融合型の共同研究だとか、そういうフラッグシップというか特出しのプロジェクトの話というのは結構してきたんですが、多分、今回議論していることは、そういう特別のプロジェクトだけじゃなくて、日常の研究のルーチンの中でそういうものが結構埋め込まれているところが実態としてもあるし、そういうのが大事なので、そういうところの裾野をどうやって広げていくかという仕組みを考えるということが今のフェーズの課題なのかなと、伺っていて思いました。どうもありがとうございます。
 それでは、青島先生、お願いします。
 
【青島委員】  どうもありがとうございました。
 非常にきれいに整理されていまして、これまでの議論を思い返していたんですけれども、1点思ったことは、国際共同研究のところで大学院生を含めていくみたいな議論があって、それは確かにそうだなと。僕も留学しているときに国際プロジェクトに入っていましたが、大体活躍しているのは大学院生でして、博士課程の学生が積極的に研究をするようになっていますので、この辺り、やっぱり確かに改めて意識したほうがいいなと思いました。
 一方で、データの利活用というのはどんどん進んでいくんですけれども、現状ですと、例えば政府統計なんかを使おうと思うと、学生が使うのはすごく難しいんですよね。先生に教えられているとかいう前提とかじゃないとなかなかできないとか、自分では単独では論文を出せないとか、この辺りの制約を取りながら、より積極的に一番生きのいい博士課程の学生の方たちがそういう国際的な共同研究から成果を出せるようになればいいなと、聞きながら思っておりました。
 以上です。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 何かレスポンスありますか。
 
【名子学術企画室長】  国際共同研究のところは、明確に項を立ててないので、また今日の御意見を踏まえながら立てられればと思いますし、その中で、院生の重要性というのは、異分野融合型のところでも指摘であったんですが、おっしゃるとおり、国際共同研究の中でも重要な論点かと思いますので、そのように整理できればと思います。
 政府統計のところは、まさに今、規制改革ですとか政府全体でやりながらやっているところですので、そこもずっと今、いろいろとレスポンスを各省やりながらやっていると担当部局からは聞いておりますので、ちょっとその進捗もあるかと思うんですが、研究者側の御要望も強いと承知しておりますので、うまく利活用が進むようなことを我々としても思っているところでございます。
 すみません。そういったところ、他省のところではございますが、状況については引き続き見ていきたいと思っております。
 
【城山主査】  ありがとうございました。若手の大学院生の絡みのところは、国際共同研究、青島先生に御指摘いただいた点と、異分野の話にも書き込んでいて、そこは若干微妙な書き方をしていて、現場で、フロンティアで感じてもらうことはすごく大事だということと同時に、基礎をちゃんと固めるということも大事だと、多分、両方御意見があったと思うので、そこを併記しているような感じになっているんですね。その辺り、今後詰めていく必要があるのかなというのと、青島先生が言われた最後の点で、大学院生単独ではなかなかデータが取れないという現実があるとすると、逆に言うと、むしろファカルティメンバーも入った共同研究の枠の中でそういうデータ共有をまず進めていって、それをうまく大学院生も使うみたいな、そういう意味でいうと、若手だけじゃないことのメリットみたいなものを、共同研究の枠でやることによって生かしていくということもあるのかなと、伺っていて思いました。どうもありがとうございます。
 続きまして、森田先生、お願いします。
 
【森田委員】  本日は、非常にためになる御説明、御議論ありがとうございました。
 私がお願いしたいのは、研究者の人たちにどうやってやる気を出せるかというインセンティブのつけ方の話です。私よりも多分、青島先生のほうが専門家だと思うのですけれども、例えば広報のような場合ですと、何件こういうふうに広報しましたよというKPIなどを立てて、これだけクリアできたから、インセンティブとして報酬を渡しましょうといった形で、そういうモニタリングとインセンティブの設定の仕方というのが割とぴったりするのではないかと思うのですけれども、他方で、そうじゃない局面がたくさんあると思うのです。例えば、今日前半で山中先生がお話しになったようなところというのは、お話を聞いていて感じたのは、恐らくこれは、山中先生御自身が国際化を非常にやりたいテーマとして持っておられて、そして、実際にやってみて、いろいろな国の研究者たちと話し合うことで新しい気づきや発見があって、それ自体がすごく面白い、そういう研究者としての使命感と興味関心から、これまでずっとやってこられたと思うわけです。では、それに対して、例えば大学本部あるいは外部のファンドとかから、何か金銭的な支援や制度的な支援があったかというと、それが今日の御説明ではあまりされなかったので、おそらくあまりないところで、本当に山中先生御自身の力でやってこられたのだなと感じました。このような研究者の内発的なモチベーションから行動している場面において、逆にKPIみたいなもの、これをこれだけやりましたねというインセンティブを設定してしまうと、かえって研究者のやる気を削いでしまう結果にならないか(クラウドアウト)。あるいは、今、日本中の大学がお金がなくて困っているので、お金が欲しいから、こういう申請書を書いて、こういうことをやりますというふりをして、それでお金を取りに行くということだけが増えて、本当に、内発的にやりたいというモチベーションではなくて、それを持たない人たちが出てきてしまう。それは多分、動機付けの仕組みとしてはよくないだろうと思われるのです。
 なので、そのような場面でKPIを設定することは望ましくありません。このほかにも、例えば、(国際化を)やりたいのだけれどもやり方を知らないという場面もあったりします。つまり、実はみんなやりたいと思っているのだけど、やり方が分からないからできないという場面もあるでしょう。このような場合は、今までの検討から分かってきたように、こういうベストプラクティスをやるといいのですよと示すというだけで、それ以上に何か特別なインセンティブをつけてあげる必要はないよということもあるかもしれません。
ですから、今回、いろいろな論点が非常に多岐にわたっているわけですけれども、それぞれによって、エンフォースという言い方がいいかどうか分かりませんけれども、施策を実施していくために何をしたらいいかというのは、全然違ってくると思うのです。その点をもうちょっと詳しく書いていただけると、今後、実際の施策実現に役に立つのかなと思いました。
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございました。ちょっと簡単に、シンプルに言ってしまうと、どういうインセンティブだとかベストプラクティスの共有といった処方箋みたいなものが機能するのかは、かなりカテゴリーによって違ってくるので、そこをきちっと整理することが大事だという御趣旨ということでよろしいですかね。
 
【森田委員】  はい、そうです。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 今、山中先生の例を一つの例とされていたんですけれども、今日お話しいただいたような取組を進めていく上で、どういう誘発するメカニズムというかサポートがあるとそういうことが進んでいくのかとか、その辺、山中先生のほうでも何か御意見がもしございましたら、若干伺えればと思いますが、いかがでしょうか。
 
【山中委員】  ありがとうございます。
 おっしゃるとおり、自分がやりたくて勝手にやったので、そのとおりです。ただ、お金、科研費は取りました。「能楽及び能楽研究の国際的定位と新たな参照標準確立のための基盤研究」というので基盤(B)で取って、あと、私立大学の研究助成金みたいなのがあって、半額は大学が出してくれるけど、半額だけどこかの団体が出してくれるというのを、何十万円かずつ、3年間ぐらいもらいました。それで十分というか、それは多分、おっしゃるとおり、周りにいた人もみんな、別にお金は欲しくない人たちが多かったからなんだと思います。
 
【城山主査】  ありがとうございます。恐らくお金のインセンティブは大きくないんだけど、とはいえ、小規模なお金がきちっとあるということもやっぱり大事なので、その辺のある種の柔軟性みたいなことは考える必要があるのかもしれないですね。どうもありがとうございました。
 それでは、木部先生、お願いします。
 
【木部委員】  森田委員と似たようなことかもしれませんけれども、いつも思うのは、こういう日本のいいものを、日本の文化を国際的にどうやって発信するかということについて、国の姿勢、方針が全然見えてこないんですよね。今、インバウンドで日本に来ている外国の方々が多いんですが、そういう方は大抵、日本の江戸時代くらいより前の文化に憧れて、それから今のKawaiiカルチャーみたいな、そういうものに憧れて来ている方もいらっしゃると思うんですけれども、一体、国がどういう方針で日本文化を海外に打ち出すかということがなかなか見えないんですね。ただ、研究者はそれとは別に、山中先生がおっしゃるように、自発的な個人の関心とか興味で研究している部分が多いので、すぐに予算化してくれというわけではないんですけれども、何となく個人の、研究者の努力に任されていて、国は何を考えているんだということをいつも感じるんです。そういうことを少し盛り込んでいただければなと思います。
 
【城山主査】  ありがとうございました。ある意味では、おっしゃられたような話というのは、政府内でも、ある種のパブリック・ディプロマシーみたいな話だったり、あるいはそれこそ経産省がある時期やっていたクールジャパンみたいな話だったり、多分、断片的にやっているところはあるんだと思うんですが、それらとの連携というのは結構潜在的には大事で、理系の世界でいろんな分野連携みたいなことをやりましょうということが政策との話でもあるんですが、人社のような世界のほうが実はむしろそういう要素はより強い可能性もあって、そういう大きな立てつけに関する議論を人社の文脈でもやってみるということはすごく意味があるのかなと、伺っていて思いました。
 ちょっと大きな宿題かもしれませんが、名子室長、何かコメントありますか。
 
【名子学術企画室長】  多分、枠組みとしては、まず国際交流基金が在外公館と連携して、日本のことで何を発信するのかというのを割と地域戦略的な観点で発信しているという現状はあります。ただ、そこは必ずしも学術とリンクしていないところもあって、日本の現状の政治とか社会とか、ちょっと面白いというものを戦略的に選んで発信しているという現状はあります。
 それと別に、例えば日本の研究成果で一体何を見せるといいのかというところについては、今のところ、おっしゃるとおり、全体の整理をして何かということをやってはいないので、そこをどうするかというのは一つあるかなとは思います。なので、うまくそのときのツールとして、例えば国際交流基金と連携して何かそういう形のことをやるというのはあるかもしれませんし、独自にうまく全体を考えながら発信していくというのもあるかなと。ただ、ちょっと1点、難しいのは、世界的な文脈で発信できるものもあれば、多分、相手国との関係で微妙に変わってくるところもありますので、そういったところの整理というのは一つあるのかなとは思います。
 ただ、国際発信、戦略的に発信と言っている以上、そういうところは重要なポイントかと思いますので、今日の議論だけではなくて、もう少しいろいろと議論したりしていく必要はあるのかなと思っておりますが、考え方としてはこういうふうには考えていますというところで御説明をさせていただいた次第です。
 私からは以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございました。その辺り、次年度、ちょっとフォローアップして検討を深めるテーマの素材にはなるのかなと、伺っていて思いました。
 それでは、北本委員、お願いします。
 
【北本委員】  北本です。いろんな論点が出ておりまして、論点に追加というよりかはむしろまとめ方なのかもしれないんですけれども、今日の山中先生の話でもキーワードは人だとかという話があったと思うんですけれども、まとめ方として、人というのがあまり前面に出ていないような感じがしています。人材というところがいろんなところにぱらぱらと出てくるんですけれども、何か人とか人材というのを項目としてまとめたらいいんじゃないかなというふうな印象をちょっと持ちました。
 人という場合には、もちろん研究者というのもあるんですけれども、さっきから話が出ているように、大学院生、若手研究者がどうかというところが大きな関心になっているんじゃないかなと思っています。この分野に特有なのかどうか分からないんですけれども、特に人文系とデジタル化といった場合に、やっぱり世代間ギャップというのが非常に問題になっていて、それゆえに若手研究者がどうやってキャリアを積むかという問題が、多分ほかの分野と比べてよりクリティカルになっているという面があるんじゃないかなと思います。ですので、そういった観点からの、項目の特出しなのか分からないですけど、そういうところでもう少しそういう問題を見える化したらいいんじゃないかなというのが一つです。
 もう一つは、これはある意味、研究支援なのかもしれないんですけれども、昨日、ルクセンブルクの歴史の研究所の所長とお話ししたときに、そこではソフトエンジニアとかデザイナーとかを雇用してデータ基盤の開発をしているという話があって、そういった、支援者としてソフトエンジニアとかデザイナーとか、そういった技術系の方というのも大事になってくると思うんですけれども、そういう話があまり出ていないようなので、その辺りについても何か一つ検討いただければなというふうに思いました。
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 名子室長のほうから何かありますか。
 
【名子学術企画室長】  まず、前半の人材育成のほうは、ここの文脈ではないんです。確かに、論点としてはいろいろ大事で、いろいろ散りばめたりはしているんですけれども、省全体としても、今、大臣のタスクフォースで博士人材など検討したりとか、いろいろとほかの部署でもやっていることもありますので、そういうようなことも踏まえながら、論点としてまとめて整理できればいいのかなというふうには思っておりますし、例えばこういう場でまた追加的な議論として設定して議論していただいてもいいのかなとは思っております。
 もう一つ、人材ですね、支援人材、実はすごく多様でして、よく文科省の議論でもURAと技術職員だけ出てくるんですが、例えば、まさに何かライブラリアンとかもそうですし、固有名詞は出てこない、名詞は出てこないんだけど、多様に本当に支える界隈の人たちというのはいますので、そういうカテゴリーをどういう形で、カテゴリーという言い方をすると申し訳ないんですが、そういう形の高度な知的な専門人材という方をどういうふうにこの分野で支え、展開していくのかというところは重要な論点だと思いますし、まさに全体の議論の中で人文・社会科学系の話って結構、言い方は悪いですけど、捨象はされていないとは思うんですが、少し対象とされていないところもありますので、そういったところも含めて議論できればなというふうには思っていて、担当部局とはそういう話はしたりはしているんですけれども、そういう意味で今おっしゃったみたいな新しいことをやるんだったら、こうやって新しいことをサポートする人材も出てくるよというところかと思いますので、うまく何かしら準備できればなというふうに思っておりますし、そういったことでこういうのがあると分かるよというのを御紹介いただければ大変助かりますので、そういう形での情報提供とかもお願いできればと思います。
 以上でございます。
 
【北本委員】  ありがとうございました。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 恐らく、後者の話も含めて幅広い意味での人の話というのをどうやってうまく強調していくかということかと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、山中先生、お願いします。
 
【山中委員】  名子室長のお話というより、木部先生がおっしゃったことに触発されて発言したいんですけれども、よろしいでしょうか。
 
【城山主査】  はい。
 
【山中委員】  何を文化として推し出していくかという話で、例えばクールジャパンと言えばアニメばっかりで、何でもっと大事な古典芸能をちゃんと推してくれないのみたいな言い方をよくしていたんですけれども、ついこの間、3月3日に能楽研究所で「アニメと能楽」というシンポジウムをやったんです。
 そうしたら、もう本当にSNSの反応も段違いで、何かアニメファンたちのエネルギーのすごさに感動しましたしやっぱり深い気づきとか、いろいろなものがありました。
 アニメに関する愛情はゼロでやったシンポジウムだったんですけれども、今、日本のアニメが持っている力というのはあまり軽視しちゃいけないんだなと、自分たちがそう思いました。
 それから、学際研究に関わってくることなんですが、文理融合でやろうとして、いろいろうまくいかないことがあるというのは、文理でけんかするだけじゃなくて、例えば自分が背負っている分野の人が、新しく歩み始めた文理融合の本当の芽みたいなところをちゃんと評価してくれないということがあると思います。
 能の研究をしている人なら、能の動きのいろいろなことは、分かっているわけで、感覚的に分かっているものをちゃんとデータで、数字で出しても、「そんなの当たり前じゃない」で済んでしまう。それで何かどんどんやる気が失われてしまうというのが一つあって。
 それなら、文理融合をやると傷つくから、こちらは材料を提供しましょう、理系の人はどうぞ使ってくださいという形で、所作のいろいろなデータをロボットの研究者が研究したり、謡を録音して音声の分析をやったり、という方向になりました。そうすると必ず、そんなレベルではまだ能の研究に役に立たないとか、もっとこういうことも調べないと駄目だとか、こういうこともあるとか、言うんですね。
 でも、理系がやってくれる研究を文系の好みに合わせて文理融合させなくてもいいんじゃないかと、この頃は少なくとも能楽研究に関しては、思っています。
 自分たちが思っている能楽研究とは別に、能を物理学の人も研究するし、ロボット工学の人も研究するし、そういうふうに広がっていく形で、日本の、例えば木部先生とか私たちがやっているような何か日本の独自の文化がもっと国際的に広がっていくとか、学際的に研究対象となるというようなやり方もあるのかなと。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 ある意味では、文理融合研究という概念はあまり狭く考え過ぎるなと、こういうことでしょうかね。融合研究の結果が直接それぞれの分野に返っていくというのが理想だけれども、多分その途中においては、ある意味で能の話というのがロボット工学の人にとって面白いのであれば、それはそれで一つの融合形態なので、そこはあまり厳しく見ずに、いろんな多様な可能性を許容していくということは大事だという、そういうことですか。
 
【山中委員】  はい。融合が理想かどうかも私自身はちょっと怪しいと思っています。
 
【城山主査】  なるほど。融合しなくても、ある一方向で刺激を与えること自身、少なくとも、多分アカデミックな世界にとっては一つのプラスだということですよね。
 どうもありがとうございました。
 名子室長、何かありますか、コメントとか。
 
【名子学術企画室長】  ありがとうございます。取りあえず、別に方法を無理矢理融合ということもあれば、何か課題をうまく、これは田口先生がおっしゃったことですけど、課題をうまく見つけて、そこに皆が集まるということかなと思いつつ、そういう学問の可能性はもともと広いと思いますので、そこをうまく自然な形でできるのかということと、それを評価するとか、うまく可視化するというところの文脈で、周りがあんな勝手なことをやっているから俺たち知らないとならないような土壌をどうつくるかということかなとは思っておりますので、そういう意味では、メディアとか可視化とかいろんな市民に見える形というのは非常に、市民との関係はそういうこともあると思うんですけど、社会との関係とか、単に役に立つということじゃなくて、面白いことをやっていますよというところがもっと分かると、非常にその辺りは自然になってくるのかなという気がいたします。
 すみません、コメントっぽくて申し訳ないですが、うまくそういうようなことも考えて施策展開できればなと思います。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 ここで言うのが適切かどうか分からないんですけれども、今回の文章、結構幾つかの概念が交ざっていて、異分野融合研究というのは基本計画の中でも出てきたことで引き受けて書いているんだけど、途中から結構共同研究と異分野融合研究を併置したりとか、国際共同研究の話を今回議論したりしていて、多分共同でやる部分の範囲というのは少しふわっとしているというか、むしろ少し広げて考えたほうがいいんじゃないかというのが、ある種、雰囲気としてあるんだと思うんです。
 だから、その辺り、どの辺に焦点を当てていくのかが課題かなとか思います。とはいえ、かつての学術振興会のプロジェクトみたいに実社会対応と国際化と領域開拓を、じゃ、3つに分ければいいのかというと、多分そうでもなくて、その辺は相互に連関しているようなところが対象になっているので、その辺り、どうやって切り取っていくのかという辺りは来年度に向けて議論させていただくといいのかなと思いました。どうもありがとうございます。
 それでは、井野瀬先生、お願いします。
 
【井野瀬委員】  ありがとうございます。城山先生のお話をもう少し聞いていたい気もいたしますけれども、皆さんの議論を聞いていて私がちょっと気に、最初ちょっと気になっていて、ますます気になってきたのが、人文学・社会科学の現代的役割というところをどういうふうに表現していくかということで、研究者へのインセンティブの話も出ていて、そのときに、人文学・社会科学の学知、やっているものはお金ではないと。
 じゃ、お金ではなかったら何かというと、それは名誉でもないと。じゃ、何だろうという人文学・社会科学の研究の言語化が難しいところで、それは、私はわくわくどきどきという言葉でよく学生にオリエンテーションでは話をしたりするんですけれども、何かやっているとわくわくする、どきどきするということが、現代的役割というところを読んだところでは伝わりにくいんじゃないかななんていうことを思いました。
 世代間ギャップという言葉、これは北本先生がおっしゃったのかな、というのもあるかと思うんですけれども、どうも人文学・社会科学が提供できるものが時代の中で様々あって、今日のお話もアニメと能楽をかけたら物すごく面白い科学変化を起こしたというお話、今、山中先生、おっしゃいましたよね。
 そういうことは役に立つという話とは程遠いところにありますが、人間が人間として生きていくためにはすごく重要な、わくわくどきどき、楽しいという、それが現代的な意味なり、意義なり、役割としてどういうふうに書けばいいのかなというところを、しかも世代交代しつつあるという、変わりつつあるということを含めてどう伝えればいいんだろうなというところを、名子さん、御一緒に考えてといいますか、うまくそこのところ、先ほどの御説明、流暢な、全体をうまくまとめる、なかなかに聞き応えのある、御説明の中ではちょっとここはすっ飛ばしますねみたいな感じだったので、何かそこのところを書きながら、そしてその後の議論のところにも含めていくような、やっぱり、そこの部分に、ちょっと物足りなさというか、何かないかなというのを感じたんですけれども、いかがでしょうか。
 
【城山主査】  では、名子室長、いかがですか。
 
【名子学術企画室長】  取りあえず学問の話もあるので、皆さんの御意見をうまく整理したいと思うんですが、昔は教養的という言い方をしたりしましたけど、単純に教養って一言だけでもないところもあると思いますので、そういった辺りも実は過去の人社委員会の中でもかなり精緻に議論したことはあって、かなり哲学的な議論が多かったので大変だったんですけれども、そういうような過去の蓄積も踏まえながら、うまく概念としてどういう特性を表現するのかとかやって、皆さんの御意見もいただきながら整理できればいいかなというふうには思っておりますので、そこは引き続き考えていければいいかなと思っています。意見を整理したという形だけでございますので。
 
【井野瀬委員】  その後のところにも、社会的評価であるとか、社会的インパクトとか、そういったようなところと実は物すごく響き合う部分なんですけど、それがあの部分を見ると何かちょっと難し過ぎてよく分からないみたいな感じで、読んでいてあまり楽しくないんですよね。
 だから、その辺も含めて、あ、こういうことなんだというのを、冒頭の部分でもあるので、ちょっと考えてください。よろしくお願いします。
 もう、わくわくどきどきというものの多分表現なんだと思うんです。人間が生きていくときにすごく力になってくれるような。よろしくお願いします。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 恐らく、1ページ目の1.1のところでいうと、1つ目のポツは比較的そういうことを言わんとしているんだと思いますが、確かにそこは雰囲気というか、気持ちが伝わってこないというところがあって、2つ目と3つ目は生成AIと新型コロナですから、ある種、社会課題にも役立ちますよという、ある種、短期的な話なので、より長期的なというか、根源的な部分での面白さみたいなところをどう書くのかという工夫と、もう一つおっしゃっていただいたのは、それがインパクト評価みたいな話と実は絡んでくるんだということで、そこが少し深掘りできるとすごく面白いのかなと思いました。
 どうぞ。
 
【井野瀬委員】  言語化、難しいんですけれども、冒頭のところなので、織り込んで、すみません、よろしくお願いします。
 
【城山主査】  では、よろしくお願いします。
 続いて、田口先生、よろしくお願いします。
 
【田口委員】  私も最初の1ページ目のところに関してなんですが、今、井野瀬先生がおっしゃったところもよく分かるんですが、これ、名子室長に考えていただくというよりは、本当に人文科学者、社会科学者がみんなで必死に考えなきゃいけない問題だと思うんですね。
 これはやっぱり我々もそこに関する考えというのがまだまだ足りていないんだろうと思うんです。人文科学者の中にも、いや、そんなの価値を分からない人が悪いんだと言わんばかりの態度を取る人もいるかと思うんですが、いや、そういう態度ではやっぱりまずいんだろうと思うんですね。
 本当に我々のやっていることに価値があるのであれば、それをちゃんと表現できるはずで、分かってもらえるはずなので、それを必死に考えるべきだと思うんです。
 私自身も、それをこの間ずっと考えてきたんですけれども、こちらの1ページ目に書かれていることをよく読むと非常にいいことが書いてあって、私、これはとてもいいと思うんですけれども、確かに井野瀬先生がおっしゃるように難しいというのはあると思うんですね。どういうことなのかぱっと伝わりにくいと。2回、3回読んでだんだんかみしめると味が出てくるみたいな感じだと思うんですね。
 ここのところは、私自身は想像力という言葉を入れるといいんじゃないかというふうに思っていて、人文・社会科学は、やはり人間に、人間とか社会に関する想像力を広げて深めるという、そういう役割があるんじゃないかと思うんです。
 現代社会は、もう今非常に変動期に入っていて、これから大きく変動していくということは予想されますけれども、そこで我々自身の社会をどうしたいのかと、人間の生き方そのものをどうしていきたいのかということを考えるときに、やはり人文・社会科学というのが非常に大きな役割を果たすことになると思うんですね。
 そういうときに、例えばよく分からないマイナーな作家の文学を研究している人、あるいは、あまり知られていない宗教を研究している人、こういう研究が一体何の役に立つんだと言われたときに、いや、それによってまさに人間の精神についての想像力を広げて深める、人間とは何かということについての考え方を深めるような、そういうことをやっているんだと。これはまさに人類全体にとって意味のあることをやっているんだというふうに胸を張って言えると思うんですね。
 そういうような語り方というか、そういうような語り方のストックを増やしていくといいますか、我々自身の中でそういう語り方を陶冶していくということが非常に重要なんじゃないかなと思いまして、そういうことを付け加えたいなと思って発言させていただきました。
 以上です。
 
【城山主査】  具体的な御提案ありがとうございました。
 多分、1つ目のポツのところに想像力だとか、特に未来について考えるということになるとそういう要素はすごく大事になって、必ずしも人社だけに限らず多分全ての活動にとって重要な、不可欠な要素なので、何かそういうことをうまく入れられるとすごくいいんだろうなと思います。
 名子室長、何かコメントありますか、今の点。
 
【名子学術企画室長】  そうですね、ここは御議論を聞きながら過去の報告の整理もうまく使えるところもあると思いますし、もう少しいろんな評価と関わるというのはまさに学問的正当評価の在り方に関わるという話は、一度、実はそういう議論も過去にしたことがありますので、そういう話と、新しい今いただいたお話なんかも入れながら整理をできればと思っております。結構大変な作業だと思いますので、むしろ皆さんの御意見を我々のベースにしながら御意見いただいて整理できればいいかなというふうには思っています。
 私からは以上です。
 
【城山主査】  どうしましょうかね。だから、どういうタイムレンジで考えるかで、この論点整理も、ある種、記録として公表されるんだとすると、完璧なバージョンはむしろ来年度に向けてということだと思うんですけれども、今年度この論点整理を出したりだとか、あるいは最初御議論があったように、少しメディア向けかどうかを含めて一枚紙みたいなものをつくるんだとすると、何かそういうところにも多少そういうことが反映できているといいのかなと思うんですが、時間軸的にそれは可能なのかとか、その辺りどんな感じでしょうか。
 
【名子学術企画室長】  すみません、論点整理、基本的にはいただいた御意見をベースに整理しているものという整理になるので、そういう意味では、来年度始めて夏前までの間に少し報告的なもののたたき台みたいなのを整理して、そういうところで概要を出したり、今おっしゃったみたいな論点をブラッシュアップした形で示せればいいのかなと思ったんですけれども、そこは主査と御相談して。
 
【城山主査】  そうですね、あまりプッシュはしませんが、夏ぐらいにかけて考えるか、それか、あくまでもこれも論点整理であれば、今日いただいた意見も含めて取りあえず今年度の論点整理の中の修正バージョンを一応出しておきますということもありかなという気はするんですけどね。
 
【名子学術企画室長】  そうですね、そこは御相談させてください。
 
【城山主査】  分かりました。では、そこはすみませんが、ご検討ください。
 
【名子学術企画室長】  今日いただいた御意見も結構いろいろ御意見ありますので、すぐという形でできる形でもないかなとは思っていたので。
 
【城山主査】  分かりました。
 
【名子学術企画室長】  そこは改めて御相談できれば。
 
【城山主査】  ただし、最初にお話があった、打ち出していくときにも多分その辺りの書きぶりというのはすごく大事、短い中でも大事かなと思いますので、ぜひ戦略的に考えていければと思います。
 ありがとうございました。
 ほか、何かいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 まだ若干時間がありますけれども、珍しく少し早めに終わらせることにしたいと思います。
 多分、その他言い尽くせないこともあろうかと思いますので、あるいは後で、後日いろいろ気づかれた点とかもあるかと思いますので、事務局のほうまでお気づきの点があればお知らせいただければというふうに思います。
 それでは、議題としては、本日は以上というふうにさせていただきます。
 次回日程等につきまして事務局から連絡事項をいただければと思います。よろしくお願いします。
 
【髙田学術企画室長補佐】  先生方、どうもありがとうございました。
 次回の本委員会につきましては来年度の開催となりますので、改めて日程調整のほうをさせていただければというふうに思います。
 また、本日の議事録につきましては後日メールにてお送りいたしますので、御確認のほう、よろしくお願いいたします。
 連絡事項は以上でございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 それでは、本日はこれで閉会といたします。皆様、お忙しいところどうもありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

研究振興局振興企画課学術企画室
石川、間部
電話番号:03-5253-4111(内線4228)
メールアドレス:メールアドレス:singakuj@mext.go.jp

(研究振興局振興企画課学術企画室)