人文学・社会科学特別委員会(第15回) 議事録

1.日時

令和5年1月30日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 人文学・社会科学に関連する指標について
  2. 人文学・社会科学を取り巻く状況について
  3. 第 11 期の人文学・社会科学特別委員会の審議状況について
  4. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員、専門委員)
城山主査、勝委員、小長谷委員、白波瀬委員、須藤委員、仲委員、尾上委員、加藤委員、神谷委員、岸村委員、小林委員、新福委員、山本委員、飯島委員、後藤委員、田口委員
(科学官)
森口科学官、松田科学官、外田科学官、黒橋科学官

文部科学省

笹原高等教育企画課高等教育政策室大学院振興専門官、河村学術企画室長、二瓶学術企画室長補佐

5.議事録

【城山主査】  それでは、定刻となりましたので、ただいまより第15回人文学・社会科学特別委員会を開催いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、本日の委員会開催に当たり、事務局から注意事項と本日の出席状況について報告がありますので、よろしくお願いします。
 
【二瓶学術企画室長補佐】  本日は、オンラインでの開催となります。事前にお送りしておりますマニュアルに記載のとおり、御発言の際には「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、御指名を受けましたらマイクをオンにし、お名前を言っていただいた上で、ゆっくり御発言いただければと思います。なお、主査以外の委員の皆様は、御発言されるとき以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 機材の不具合等ございましたら、マニュアルに記載の事務局連絡先に御連絡ください。
 本日は、井野瀬委員、戸田山委員が御欠席です。なお、勝委員が少し遅れると御連絡をいただいております。
 18名中16名の委員の御出席をいただく予定でございます。定足数を満たしておりますので、御報告いたします。
 なお、本日の会議は、傍聴者を登録の上、公開としております。
 以上でございます。
 
【城山主査】  まずは事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
 
【二瓶学術企画室長補佐】  本日はオンラインでの開催となります。資料は事前に電子媒体にてお送りさせていただいております。本日の主な議題に係る資料に関しましては、議事次第のとおり資料1から資料4としてお配りしております。資料等、不足がございましたら事務局までお知らせください。
 以上でございます。
 
【城山主査】  それでは、議事に移りたいと思います。まずは、議題(1)「人文学・社会科学に関連する指標について」でございます。
 最初に事務局から、「人文学・社会科学の研究成果のモニタリング指標について(案)」について御説明いただきます。
 それでは、資料1に基づきまして、河村室長、よろしくお願いいたします。
 
【河村学術企画室長】  学術企画室長の河村です。
 資料1を御覧ください。人文学・社会科学の研究成果のモニタリング指標につきましては、これまで本委員会におきまして御議論をいただいたところでございます。第11期の人文学・社会科学特別委員会につきましては、本日は最後の会となっております。このモニタリング指標の案について、最終的に取りまとめを本日いただきたいと考えておりますので、事務局において、これまでの御意見を踏まえた修正について、背景を黄色で示した資料となっております。
 主な修正点について、事務局より御説明させていただきたいと思います。
 まず、6ページを御覧ください。構成に関する修正点ですが、これまで有識者ヒアリングなどにおきまして、有識者の方々から提出をいただきました資料であったり、データであったりといったものは、参考資料という形で後ろのほうにつけておりました。この参考資料として後ろにつけていた各種資料について、本文と関連するものにつきましては、6ページのように、適宜、参考という形で挿入させていただいているといった体裁についての修正がございます。これは6ページ以外にも、例えば7、8、また、飛んで数ページございます。参考と記載しているものにつきましては、そういった整理で挿入しているものでございます。中身は、修正はございません。
 続きまして、18ページを御覧ください。主な修正点ということで、左上に「更新」と記載させていただいております。モニタリング指標のイメージの図につきまして、以前よりあったのですけれども、右下のほうにインプット(研究者数、研究予算など)という形で、この文言を追記しております。
 研究成果につきましては、これまでのようにアウトプット、アウトカムといったものはとても重要なところではあるのですが、インプットに関しても重要である。こういったインプットであったり、アウトプット、アウトカムという、全体を通して、いわゆる研究成果というものは成り立っていると考えまして、このインプットというものを文字として挿入しているところでございます。
 ただし、左下の背景、黄色のコメ印に記載しておりますが、インプットを示す指標については、今回の検証の対象とはせずに、既存の調査等を活用して、引き続き注視するといったことで、整理をさせていただければと思います。
 続きまして、19ページでございます。ここが1枚、表として新たに作成したところでございます。人文学・社会科学の研究成果のモニタリング指標についてということで、表にまとめたものとなっております。これまで成果発表媒体としては、左にありますように、国際ジャーナル論文、国内ジャーナル論文とプレプリント、書籍と、こういった大きな4つほどの媒体というものが、人文学・社会科学の研究成果の発表の場としてあるのではないか、そういう御議論をいただいたところでございます。それぞれにつきまして、現状、そして、今後の方向性ということで、表形式で整理しております。
 一番上ですが、国際ジャーナル論文につきましては、現状といたしまして、「自然科学分野と比較すると少ないが」と。例えばWeb of Scienceであったり、Scopusであったり、そういったデータベースの中におきましては、自然科学の分野とは、少ないけれども、人文学・社会科学の中でも、経済学、心理学、経営学等の一部の分野においては、主要な成果発表媒体の一つではある。また、その中では書誌情報がデータベースとして整理されていると、こういった現状がございます。
 今後の方向性ですが、こういった国際ジャーナルのプラットフォームがございますが、そういった国際ジャーナル論文に関する以下の指標については、継続的にモニタリングを実施していくということで、例えば、国・地域別の人文学・社会科学分野の総論文数、こういったものはモニタリングを実施していく。ただ、「また」で書かせていただいておりますが、分野別の総論文数、被引用数に係る指標等につきましては、種々、課題等ございますので、引き続き、モニタリング手法を検討する必要があると、こういった整理をしております。
 続きまして、上から2つ目の国内ジャーナル論文等でございます。現状としては、主要な成果発表媒体の一つであると。ただ、網羅的なデータベースは存在しない。例えばJ-STAGEでは書誌情報が整理されているというところが現状でございまして、今後の方向性につきましては、J-STAGEに掲載されている国内ジャーナル論文等に関する以下の指標については、分野別に継続的にモニタリングを実施するというところで、例えば、人文学・社会科学分野の総論文数であったり、1記事当たりの被引用数、1記事当たりのアクセス数といったことをJ-STAGEを活用して、モニタリングは実施するということの整理をしております。
 上から3つ目です。プレプリントでございますが、現状としては、一部の分野においては投稿が行われている。そして、昨年の3月に運用開始したプレプリントサーバーのJxivへの投稿というのも行われている、こういった現状がある。今後の方向性というところですが、プレプリントの考え方については、まだ様々な議論というものが続いていると承知しております。慎重にモニタリング指標というのは、検討する必要があるのではないかというところで整理させていただいております。当面は論文数等で代替するということでいかがでしょうかというところでございます。
 最後に書籍でございます。現状としては、主要な成果発表媒体の一つである。研究成果としての書籍を限定すること、また、整理されたデータを取得するということは、極めて困難な状況にあると理解しております。
 一方で、CiNii Booksや国立大学法人を対象とした調査、また、民間データベースといったものなどから、限定的ではありますが、データを入手するということは考えられると承知しております。
 今後の方向性でございますが、今、申し上げましたような既存の仕組みを活用した限定的なモニタリングといったこと、そういうことも含めまして、引き続きモニタリング手法を検討していく必要があると、こう整理させていただいているところでございます。
 表の下のほうに2つあるものにつきましては、他分野との連携、総合知の状況把握のために、NISTEPが行っております総合的意識調査を活用するということであったり、新領域を含む研究動向の把握ということで、NISTEPのサイエンスマップの調査を活用する。ここは以前から記載されている部分でございます。
 モニタリング指標についての本体につきましては、今の修正点でございますが、ここで参考資料を紹介させていただければと思っております。参考資料の22ページを御覧ください。一番下の出典にあります、自然科学研究機構の小泉先生、また、本日、御出席いただいております後藤先生に御協力いただきまして、データを提供いただきました。国際ジャーナルモニタリングテストということで、Scopusを使った、少し試行的なモニタリングということで、参考資料を用意させていただきました。Scopus収録の雑誌から、ASJC分類の人文学・社会科学に対応する分野を抽出し、発行期間は1996年から2022年のもの。その中で、目視でScopusでは人文学・社会科学として分類されているが、日本では一般的に人文学・社会科学の研究分野外とされる雑誌等々を除外して、結果、11,400誌を抽出して分析対象とする。こういったデータとなっております。
 23ページを御覧ください。一つは、国・地域別の論文数の変遷というところで、1996年から2022年まで、いわゆる英語圏であるアメリカ、イギリス、また、欧州で非英語圏であるドイツ、ロシア、フランス、そして、アジアで、日本、韓国、中国、台湾といった国・地域を比較した表となっておりますが、アメリカ、次いで、中国、イギリスが人文学・社会科学分野の論文数の増加が顕著であると。1996年から見ると、こういった上位国があるという状況です。
 24ページをお願いします。先ほどのような上位国を除いたものの表となっておりますが、そういった下位グループにおきましても、いずれの国・地域においても、人文学・社会科学分野の論文数は増加傾向にあって、ただ、2015年以降、日本は、ロシアや韓国に追い越されていると。2022年時点で、日本は約5,000本の論文が収録されているといった状況でございます。
 25ページをお願いします。1996年の論文数を1とした時の倍率に着目した表となっておりますが、1996年以降、中国、次いで、ロシア、韓国の論文数の倍率は伸びているというところでございます。
 26ページをお願いします。また、倍率の下位グループに着目した表でございますが、日本を含むいずれの国・地域においても論文数の倍率は伸びている。その中で、2022年においては、台湾は約35倍、ドイツ及びフランスは25倍、日本は約20倍という伸び率となっております。
 27ページをお願いします。今度は2010年の論文数を1とした時の倍率に着目した表となっておりますが、2010年以降、ロシア、次いで中国、韓国の論文数の倍率は伸びているという状況でございます。
 28ページをお願いします。また、倍率に着目したものでございますが、日本を含むいずれの国・地域においても、論文数の倍率は伸びていて、2022年においては、韓国は約7倍、ドイツ及び台湾、日本は約4倍といった状況になっているという表となっております。
 以上、事務局より御説明いたしました。以上でございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明について、御質問、御意見等がありましたら、「手を挙げる」ボタンで挙手をいただきますようお願いいたします。基本的な論点と、それから、幾つかの試行的モニタリングの参考例というものを御紹介いただいたというふうに理解しております。
 それでは、小林先生、最初によろしくお願いします。
 
【小林委員】  事務局、御説明ありがとうございます。特に参考資料は大変貴重なデータとして、今後とも重要になると思います。私からは、参考資料で今、御説明いただいたことに若干コメントさせていただきたいと思います。資料の23ページ及び24ページになります。ロシアが伸びている理由は、私は専門外で全く分かりませんが、中国と韓国については、留学生の教え子等々が就職しております。また、私自身、ソウル大と台湾の大学の研究員もしておりますので、若干、事情を存じ上げていますので申し上げたいと思います。
 23ページ、中国については、20年前を契機として、いわゆる給料形態が大きく変わっております。特に2016年から本格的に変わりました。これは給与自体が、物価がかなり伸びていますが、それに応じて上げることをしない代わりに、研究奨励費というのを各研究者につけております。つまり、大体、中国の大学の若手教員のお給料が400万ぐらいに抑えられている一方、論文を一本書くと幾らという形になっています。しかも、それが国際共著論文で、中国の研究者がファーストオーサー、海外の人間がコレスポンディングオーサーの場合、かなり高くなります。1本当たり、人・社系でも大体40万から60万ということで、論文を大体6本ぐらい書くと給料が倍になるという形になっております。
 一方で、24ページを御覧いただきますと、それの刺激を受けまして、韓国も、もともとポステック、あるいはKAISTはそういう給与形態でしたが、ソウル大、延世、高麗はあまり大きくは変わっていませんが、御存じのとおり、世界の大学ランキングで成均館大学が急激に伸びています。既に西江大学とか漢陽大学を超えて、分野によっては、延世、高麗より上に行っています。成均館大学は完全に中国と同じ給与形態になりました。つまり、論文を書かないと給料は安いが、論文を書くと、ソウル、高麗よりもはるかに高い給料を取るという形になっています。
 私はソウル大の研究員をしていますので、給料はないのですが、論文を一本書くと幾らというのはもらえることになっています。残念ながら、中国や成均館大学ほどは高くないのですが、それでも論文一本書くと、もちろんインパクトファクターがついていないと駄目です。かつ、英語でないと駄目なのですが、大体20万から40万ぐらいもらえるという形になっております。
 やはりそういう給与形態を取らないと、日本はどんどん置いていかれるということであります。そういう経緯、給与形態がいいかどうかというと、これはまた別の問題もありまして、韓国の友人が成均館大学に勤めていますが、非常に疲弊する。なかなか教育に手が回らない。非常に競争が厳し過ぎるというところの弊害もあるということです。
 コメントとして、非常に貴重な資料ですので、原因がどこにあるかということだけ申し上げさせていただきます。ありがとうございました。
 
【城山主査】  貴重な考察ありがとうございます。
 それでは、ほかの方々いかがでしょうか。
 それでは、後藤先生、よろしくお願いします。
 
【後藤委員】  後藤でございます。この資料の作成のお手伝いを少しさせていただきました経緯から、少しだけ補足を申し上げます。
 このような結果は、やはりデータがあってモニタリングすれば、このような結果が出てくるということ自体がまず、非常に重要な収穫であると理解しております。ただ、まだこれから細かい精査みたいなものが必要なのは事実でして、例えば、Scopusが収録雑誌数を増やしてきておりますので、それと論文数の増加という関係がどうなっているかという辺りについては、まだこれからさらに精査が必要です。なので、そのような、まだ統計上の様々な課題みたいなものを整理することは必要ではあるのですけれども、一方で、データがあれば何か見えてくるというか、先ほどの小林先生のように分析、原因といいますか、今の原因の基をお話しいただきましたけども、どういうふうになっているかという議論の材料になるという点では、こういうデータをあちこち取っていくというのが重要なのかなというのは、今回、実際このようなデータを集めたときの感覚でございます。
 こちらは質問ということではなく、追加の補足のコメントということで申し上げておきたいと思います。
 以上でございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、続いて仲先生、よろしくお願いします。
 
【仲委員】  どうもありがとうございます。このように論文数が増えている国がたくさんあるんだなと驚きました。ありがとうございます。
 これは例えば、研究者1人当たりの論文数であるとか、あと、共同研究の割合のようなものも、もしかしてデータがあるのかなと思い、お尋ねします。共同研究が増えて、10人が共同で、1人1本書いて10本になるといった場合もあったりするのかなというふうに、最近は共同研究がますます促されているところでもあるので、思ったところです。もしもデータがありましたら教えてください。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。これは恐らく、事務局にお伺いしたほうがいい部分と、後藤先生、もしコメントあればいただきたいのですが、人数の件は多分、今日、御報告があったインプットも本来的な大事なインディケーターですよということとも関わってくると思うんですね。研究者数の問題ですね。それから、共同執筆のほうは、むしろこれは後藤先生にコメントいただけるかなと思います。では、まず、事務局から何かレスポンスございますでしょうか。
 
【河村学術企画室長】  事務局でございます。参考資料の23ページから始まるものにつきまして、データだけをいただいたものでございまして、後藤先生と小泉先生に全面的にご協力いただいており、それ以上の細かいものは持っておりませんというところが正直なところでございます。
 
【仲委員】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  いずれにしろ、先ほど申し上げたように、インプットの話も今回の主たる対象ではないですが、まさに考察しようと思ったら大事な要素になってくるので、これも何らかの形でどこかで議論したほうがいいかなと思います。
 それでは、後藤先生、よろしくお願いします。
 
【後藤委員】  後藤でございます。今の、特に執筆者という観点でいきますと、Scopus、SciValにつきましては、いわゆるアクティブオーサーというのは計上をしております。なので、その点では、アクティブオーサーの数自体は測ることができるんですけれども、その中で、例えば人・社の研究者が何名、みたいな感じで、オーサーの属性みたいなところまでは調べ切れていないのではないかと思うので、その辺りはむしろ出ている論文等から、統計的にうまく処理できるかどうかを改めて確認するということになろうかと思います。
 共同研究のほうにつきましては、申し訳ありません。少なくとも、今の手元のデータではないのですが、何かまたあるようでしたら、そのようなものも加味して今後検討するということをやりたいと思います。
 
【城山主査】  ありがとうございました。後者のほうは、共同研究がどのぐらい増えているかを数えようと思えば数えられそうだということではありますよね。
 
【後藤委員】  はい。そうですね。
 
【城山主査】  恐らく、どういうふうに手間暇かけるかという問題あるかと思いますけれども、ただ、今回は、そういう観点ではまだ分析されていなかったということですね。
 
【後藤委員】  そうですね。まだ調査は。
 
【城山主査】  はい。では、河村室長。
 
【河村学術企画室長】  失礼いたします。38ページを御覧いただきたいのですが、参考資料の御説明漏れがございました。38ページは、文部科学省、高等教育局の担当課がいろいろと事務的に、国立大学についてのみですが、いろんな調査しているものを送付いただきまして、こちらで整理したものでございます。いわゆる書籍、学術図書の関係で、国立大学のみという限定した状況のデータにはなっておりますが、まず学術図書を常勤の教員1人当たりで割った数といったもので、国立大学のみというデータではございますが、分類としては、右のほうにございますが、教育系、社会科学系、人文科学系、総合文系、総合融合系といった分類した上で、いわゆる教員や先生方1人当たり、本を何冊出版されているかという状況です。人文学・社会科学系の中でも、これを見ると人文科学系というものがやはり出されている割合は多いのかなと。ただ、平成28年から令和2年を通しましても、増えたり、減ったりということで、横ばいという状況にあるということです。事務局から、急なことで恐縮ですが、御説明させていただきました。
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございました。書籍という対象、かつ、国立大学と限定した時に1人当たりを見ていると、伸びてはいないというか、特に最近のところはむしろ減少傾向が若干見られるというのが書籍に関する現状だということかと思います。
 それでは、白波瀬先生、お待たせしました。よろしくお願いします。
 
【白波瀬委員】  よろしくお願いいたします。大変貴重なデータを見せていただいて、大変ありがたいと思いました。もう既に御指摘ありましたとおり、この貴重なデータをどういうふうに活用していくかということが問題であって、これを単純な一基準で、どこが多い、少ないということでは判断できないけれども、ただ、そういう形での一つの検討というのも全く無駄ではなかろうということになるかと思います。
 それで、分野によって、例えば心理学などはプレプリントも含めて、かなり積極的な状況が見えているんですけれども、多分、掲載するジャーナルそのものが『Science』とか、生化学等々の理系と物すごく共通する場合が多くて、そういう意味での分野による環境なり、背景が若干同じ文系の中でも違うかもしれないということなんですが、やっぱりこういう形での数字なり、結果が明らかになると、どうしても、どこが遅れていて、どうかということだけに注目されがちなんですけれども、さて、これが、この結果をもって、グローバルな学術展開をするときに、日本としてはどこに集中し、どこをモデルとして展開すべきなのかという重要なデータとして使うというところで必要だと思うんですが、その議論のところが一番重要かなというのを改めて感じた次第です。
 以上です。コメントです。ありがとうございました。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。御趣旨としては、ある意味では、実際にデータが出てくることによって、いろんな活用の可能性が見えてくるんだけども、ただ、そうとはいえ、安易に重点分野の発見とかそういうところに行くよりは、むしろそのデータが持つ意味というのを慎重に吟味することがまずは必要ではなかろうか。あるいは、逆に言うと、今回はできることをやってみましょうということだったわけですけども、恐らく、今回これでできたということではなくて、なお、いろんな改善が、分野間のずれなりも含めて検討していくことが必要だというのは基本的なメッセージなので、その作業をまずは我々としては進めていくべきで、もちろん解釈、分析は必要なんだけども、若干そこには少し慎重になったほうがいい。何かそういうニュアンスということでよろしいでしょうか。
 
【白波瀬委員】  ありがとうございます。私よりもすごく上手に言っていただいてありがとうございます。そういう意味です。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、小林先生、お願いします。
 
【小林委員】  事務局から参考資料の後半もコメントをいただきましたので、気になる点だけ申し上げたいと思います。38ページの書籍を御覧いただければと思います。これは国立大学のお話ですが、恐らく国公私立大学も同様の状況だろうと思います。これが図書の数で言うと、こうなのですが、実は中身も変わってきているのではないかと思います。私は読売新聞と朝日新聞の書評委員をやらせていただきましたので、特に読売の場合は、毎月刊行される全ての学術書を用意していただけるので、その内容の変化がよく分かるのですが、恐らく出版社の経営状況があまりよくないのだろうと思いますが、従来であれば、いわゆる300ページぐらいのドンとした書籍で出ていたような内容のものが、次第に150ページ程度のやや小ぶりの叢書で刊行されるようになりました。従来、叢書で出てきたものが、どうも新書で出てくるようになる。つまり、クオリティは下がっていないのですが、ドンとした本を出しても赤字である。あまり本が売れない。せめて叢書、叢書から新書。中身的には小ぶりに、いわゆる概要とまでは言いませんが、大分そういうふうに変わってきているのをかなり肌で感じてきているのが非常に気になるところです。
 もう1点だけ申し上げたいと思います。33ページを御覧いただきたいと思います。J-STAGEは、非常にすばらしい試みなので、主要なジャーナルは全部ここに今ほとんど入っていると思いますが、33ページを見ますと、研究が非常に低下しているような印象を受けますが、これはそうではないということで、35ページを御覧いただきますと、実はアクセス件数自体は減ってきておりません。
 では、この33ページのグラフの低下は何で説明できるのかといいますと、実は前にも申し上げましたが、Elsevierで統計を取ったことがありますが、経済学は、引用のピークは3年ですが、それ以外のところは大体六、七年ということになります。哲学はもっと長いですが、これはどういう事情かといいますと、私は、法学・政治学の分野以外は分かりませんが、例えば政治学であれば、国内のジャーナルであれば、刊行したものを見て、では、それから検証するための調整や実験を計画して、予算を取って、実際に行って、データを分析して、論文を書く。恐らく二、三年ということになろうかと思います。
 年報政治学でしたら、城山先生も御存じのとおり、投稿してから多分1年で、査読が終わって掲載されるかもしれませんが、英語で出そうとなると、例えばアメリカ政治学会のAPSR、あるいはもっとアンブレラな、各国の政治学会の上位組織であるIPSR、私はIPSRのほうの編集委員をずっとやりましたが、こちらですと、査読に二、三年かかります。大変申し訳ないですが、あまりにも投稿が多いので、それを精査して、多分2回ぐらい修正を求めて、最終的に掲載可とするのに3年かかって、実際に刊行されるまでにさらに1年かかりますから、投稿のための研究も併せると大体六、七年かかるということです。
 経済学は非常にジャーナルが多いので、もっとそれが短いのですが、それ以外の分野の人文・社会科学ですとか、それぐらいかかってくるということになる。ですから、これは決して悲観的に捉えた数字ではなくて、アクセス件数は多いのですが、実際、今、それだけサイクルでかかるのでこういう状況になっているということだけ、コメントとして付け加えさせていただきます。どうもありがとうございました。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。分析と、それから、解釈、どうすべきかという点、重要な御示唆かと思います。特に前半の書籍の状況を見るときには、アカデミックなほうの要素だけではなくて、むしろ出版業の状況というのはいろいろインパクトを持つというのは恐らく重要な話で、人文・社会科学、書籍が大事なので、そこをちゃんと測定しましょうということも重要ですが、媒体としてそこに依存しているということのある種のリスクみたいな側面もあるかと思うので、そういうことも含めて、恐らく議論していく必要があるという、そういうインプリケーションがあるのかなと、伺っていて思いました。どうもありがとうございました。
 ほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 最初に、途中でも申し上げましたように、全体のトーンとしては、まずは不完全かもしれないけども、やってみましょうということで、その中間報告ということかと思います。
 加藤先生、どうぞ。
 
【加藤委員】  加藤です。さっきからずっと23ページのグラフを眺めていたんですが、国際ジャーナルを対象としているということですが、アメリカとイギリスが多いから英語論文が対象になっているんじゃないかなと最初思ったんだけど、22ページを見ると、英語以外の言語で書かれた雑誌もカウントされている。Scopusを使っているんですかね。ところで、これは日本語論文は入っているんですかね? 
 
【城山主査】  では、後藤委員、お願いします。
 
【後藤委員】  すみません。こちらは後藤から回答させていただきます。今回は、いわゆる日本語ジャーナルも入っております。逆に言いますと、別の言語のジャーナルも入っております。
 
【加藤委員】  なるほど。中国語で書かれた国際ジャーナルも入っている?
 
【後藤委員】  入っております。Scopusの採録基準で、たしか英語で。すみません。やっぱり不確定な言い方はあまりよろしくないと思いますので、確定されている部分だけ申しますと、Scopusが、いわゆる国際的なジャーナルとして計量の対象としているものは、どのような言語であれ、今回の計測対象には入っているということになります。
 
【加藤委員】  分かりました。この調査、これはこれでとても結構だと思うんですけれども、そうすると、収録されているものに関しては、Scopusに条件は頼っているということですね。
 
【後藤委員】  はい。
 
【加藤委員】  それはそれで意義があるのはよく分かります。人文の方は日本語で書かれた論文を出すことが多いと思われます。日本語論文に関してこのようなグラフを作って見ると興味深いかなと思いました。
 例えば国際的なジャーナルという観点からは日本の論文の伸び率は少ないように見受けられますが、日本語論文という観点で調べると、実は結構伸びているというグラフの傾向が出るかもしれません。
 ヨーロッパのフランス、ドイツ、ロシアという国でも、このグラフで数字が低くなっているように見えるような気がします。英語が標準、デファクトスタンダードになっているというのは理解しておりますけれども、国の研究のアクティビティということを考えると、あえて比較のために、日本語で論文をやってみるとどうなるかという調査をして比較してみるのも、意味があることじゃないかと思いました。
 
【城山主査】  どうもありがとうございます。後藤先生、何かあれば、後でコメントいただきたいのですが。事務局にお願いですが、19ページを出していただけますか。19ページのところの5ポツ、これですね。私の理解だけ最初に申し上げさせていただくと、今回の報告の一番重要な表はこれなんだろうと思うんですけども、要は、不完全なものでもあるわけですけども、できることで、モニタリングできるものをしてみましょうというので、国際ジャーナル論文、国内ジャーナル論文等、プレプリント、それから、書籍で、難易度は若干異なりますけれども、また、それぞれバイアスがあるんだけども、取れるデータは取りますと。今回、御紹介いただいたのは、後藤先生たちによる、Scopusを対象にした一番上のカテゴリーの例を例示したということになっていて、恐らくこれは技術的にどこまでどう可能なのかはむしろ、後藤先生、コメントあればいただきたいと思うんですが、国内ジャーナル論文であれば、J-STAGEに入っている論文で、恐らくいろんな分析をやってみるということは可能なんだろうと思います。
 そういう意味で、加藤先生がおっしゃられたようなことを、例えばJ-STAGEベースでやってみて、それをScopusベースの、今回の検討と横並びで見てみるというのが多分ひとつできる話で、それから、さらに書籍まで入れようと思うと、一番下ですけれども、法人評価ですよね。これは私立大学と国立で分けて見ざるを得ないわけですが、国立について言うと、書籍も含めて、自己申告であるけれども、ある程度のトレンドが分かるというのがあって、多分これもやってみる余地があるという。この辺りが多分、今回の作業で見えてきたあり得る作業で、そういうことをやって、加藤先生がおっしゃるような、いろいろ突き合わせてみるということがすごく必要なのかなという感じがします。
 取りあえずこれは私の今日の解釈ですが、後藤先生、何か専門的な観点から補足いただけますでしょうか。
 
【後藤委員】  ありがとうございます。今、城山先生からお話のとおりでございまして、基本的には、あり得るデータをとにかく集めてみて、それから、いろいろと分析を行うところもまずスタートラインとしたいというところでございます。
 先ほどございましたとおり、ジャーナル論文等につきましては、まずJ-STAGEのデータをしっかり取っていくというところがスタートラインになると思いますし、また、書籍につきましても、これもまだかなりいろいろ試行錯誤している。特に書籍は本当にデータを取るのが難しいというのが現状ですので、試行錯誤しているという状況ではございます。ただ、何かデータが集まってくれば、この資料の情報自体はあくまでもScopusのデータですので、このようなものと別のタイプのデータを集めることによって、むしろ、日本の人・社の研究、研究者の振る舞い方という言い方が正しいと思うんですけども、それが少し見えてくるのではないかと。そこからまた何かいろいろ検討できることもあるのかなと思っております。なので、まずはこのようなデータを基に、それぞれの比較とか、よりデータ量を増やしていって、分析を行うということが重要なのかなと思いました。すみません。事務局のほうから。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 では、河村室長、お願いします。
 
【河村学術企画室長】  31ページを映していただければと思いますが、以前から参考資料で掲載しておりましたが、J-STAGEで、以前、グラフや表をつくっていただくときにこの表もありました。J-STAGEに日本の研究者の方々、もしくは、アカデミアが掲載する際国内でも英語でちゃんと論文を書いて、J-STAGEに入れている、こういったものも和文誌よりははるかに少ない。ただ、心理学などは英文誌18、経済系は18といったように、英語で書いているということは、恐らくですけど、世界に見てもらいたいというのも、意図しているのではないか。J-STAGEの中に、国内の方々が見る中に英語で出しているという分野もあるということも含めまして、J-STAGEだったり、今度はScopusだったり、国際、国内についても、日本語、英語というのも引き続き分析できるところをやっていけたらと思っております。
 事務局からは以上でございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。J-STAGEについても多少予備的な作業はやっているということかなと思いますし、この次の32ページ辺りの表を見ると、これは前にも御議論あったかと思いますが、記事の総数という全体の傾向も見えていて、ただ、これだとむしろ横ばいか、減っているんですが、これは実際に減っているというよりかは、むしろJ-STAGEへの登録時期が少し時間がたってからということがあることかもしれないという、そういうようなお話が確かあったのかなと思います。そういう意味では、解釈は慎重にならなきゃいけないと思います。
 白波瀬先生、お願いします。
 
【白波瀬委員】  ありがとうございます。こういうデータを見るといろいろ言いたくなっちゃうんですけれども、やっぱり有効活用で、厳密じゃないということはあまり強調されなくても、データはいつも不完全なので。ただ、やっぱり変化、トレンド、つまり、絶対数でどうかというのはあるけれども、分野の中でトレンドを見てみるというのがあって、要するに、増え方が、例えば日本の中の日本語言語だけのジャーナルで見たときのトレンドと、要するに、国際ジャーナルのときのトレンドだけ見てみるとか、そこの中で少し料理して、要するに、日本から外に向かって人は流れているのか、あるいはそこの壁が大きいから、日本の中で英語ジャーナルをつくるという方向が、もしかしたらある分野であるのか。それは正しい動きなのか。そういう分析ができる宝の宝庫のような気がするので、これだけでは言えないですけどね。
 でも、言ったように、やっぱりここですごくよかったのは、こういう形で俯瞰的に見せていただくということと、第1回でもこういうデータで国別に、分野別にということもあるんですけど、その辺りはいかようにも料理はしようがあるんじゃないかと思うので、ここで行き着くところをどこに持ってくるかということだと思うんですよね。
 だから、国際ジャーナルへのより積極的な展開というところで、今、小林先生もあったけれども、そういうのを報酬として後ろを押すのかどうかというところまでは、そこまで言えるかどうか分からないけれども、でも、そういういろんなインセンティブというのはまた別途考えられるかもしれないんですけど、少なくとも、言語のところとあれで、トレンドをちょっと見てみたいと思いました。
 
【城山主査】  ありがとうございました。不完全なデータでも言えることはいろいろあるので、それをむしろ活用していきましょうということですね。だから、恐らく国際比較とか分野間比較は結構難しいかもしれませんが、一定の分野の一定の地域におけるトレンドなり、それをどうしていったらいいのかみたいなことを考える上では、今ある資料でも相当いろんな示唆が得られるというお話かなと思いました。どうもありがとうございます。
 ほか、いかがでしょうか。
 では、勝委員、よろしくお願いします。
 
【勝委員】  ありがとうございます。先ほどの19ページの表、モニタリング指標というところで、今回、Scopusで比較して、国内ジャーナル論文数、これにはまだ十分には日本語論文がカウントされていないということだと思うのですけれども、やはりここのデータの整備といいますか、そこが非常に重要になるのではないかなと。といいますのも、Scopusで、今日、ちょっとショッキングだったのは、韓国やロシアに抜かれていると。人口で見ても、韓国は2分の1弱しかないわけで、研究者数もそうだと思うんですけれども、それに抜かれているというのは、確かにScopusの中に自国の言葉の論文も含まれているとことかと思いますが、それがどれ位の割合なのかが重要になると考えます。
 恐らくそれほどは多くはないと推察されますし、なおかつ、先ほどの小林先生のお話で、韓国では研究者の給与体系が変わったという話があったんですが、やはり英語での論文数で差があるのではないか。そういった英語のジャーナルの論文数というのは、大学のランキングに非常に密接に関わるので、その辺でかなり力を入れているんだなということは何となく分かるかと思います。ただもし日本語論文も入れた日本全体の人文・社会科学の研究の低下ということになってしまうと、非常にそれはそれで大きな問題なので、やはり国内ジャーナル、特に日本語のジャーナルでもどういう傾向にあるのかというのは早急に捉えておく必要があるだろうと思います。もう一つ、この部会でも過去に、やはり英語論文だけではなくて、自国の言語の論文でデータベースをつくっているということが議論されましたが、他国、例えばノルウェーモデル等があるということでしたが、その辺もぜひ検討していただきたいと思います。すなわち総合的な研究力、特に人文・社会科学においての研究力がどのようなトレンドになっているのかというのをやはり早急につかんで、今後のいろいろな政策対応に繋げていくことが非常に重要になるのではないかと思います。
 以上、コメントですけれども、一言だけ申し上げました。
 
【城山主査】  ありがとうございました。この国内ジャーナルのところの具体的な分析を進めていく必要があるのではないかという御示唆かと思います。
 それでは、尾上先生、よろしくお願いします。
 
【尾上委員】  ありがとうございます。ここにも示していただいていますように、いろいろ限定的なものがあるということは理解しているんですが、これは先ほど加藤委員のお話とも近いのかもしれませんが、ぜひ国内の研究者という観点でクロス分析等をやっていただいて、どういうところとどういうところに相関があるのかとか、全くないのかとか、分野間で結構特徴が出てきて、ここでなかなか見えにくいと言っていた部分が解決する可能性もあるかなと思いますので、ぜひまた情報を教えていただければと思います。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 続きまして、小長谷先生、よろしくお願いします。
 
【小長谷委員】  ありがとうございます。先ほどの勝委員の御意見に近いんですけれども、今まだ見えていない活動を可視化するという点が重要かなと思います。J-STAGEに全ての学会誌が登録されていないわけですね。というのは、学会ごとに、最近では、印刷所がもうPDFをくれますので、学会のホームページに上げてしまえば、一応オープンアクセスもできるわけです。必ずしもJ-STAGEの手続を経なくても公開していて、非常に読まれているということもありますので、そういう可視化されていない活動を可視化する方向へ何らかの支援をすると良いのではないかと思います。論文を書いていないのではなくて、書いているのが見えていないという面を考えていく必要があるのではないかと思います。
 特に将来的に、国際化というのは必ずしも英語で書かれることではなくて、日本語がそのまま読まれるような時代になっていくわけですから、英語だけに固執して、英語の論文だけをカウントするよりも、例えば地域研究だったら、それぞれの言語で書かれるというのもありますし、日本語で書かれて、そのまま読まれていく分野もありますし、また日本研究だけじゃなくて、全てのものが多様な言語のままで読まれるという真の国際化の時代がもうすぐに来るわけですから、そういうところを踏まえて、英語だけに固執しない可視化の未来というのを見ていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。国内ジャーナル論文、現状はJ-STAGEというのがまずありますよという、まさに第一報のところだけを書いているわけですから、当然そこですくわれない話というのを可視化していくのが大事だというお話かと思います。それと、今日はかなり事務局から、ある種、淡白に話していただいたので、これは19ページですけど、20ページ、21ページ辺りが、むしろ今後、何が必要かということを書いているところで、あまりここは触れられなかったんですけども、そういうところに今の御趣旨も少し入るといいのかなと思いました。
 一つここで恐らく、これは小長谷先生がおっしゃられたことだと思いますが、今、出ている一番下、「モニタリングの充実に向けた望まれるデータの測定」。これは今、ないデータかもしれませんが、むしろ要約みたいなところに異分野の人をどうやって巻き込んでいるんですかみたいな話をむしろ書くような形で、今後、カルチャーを作っていって、そういうものをむしろ取れるようにしましょうというのがこの3つ目の「モニタリングの充実に向けた望まれるデータの測定」に入っているので、こういう部分もむしろ、今あることだけではなくて、今後の課題としては、むしろ明示的に入れておくということかなと思いました。
 どうもありがとうございます。
 では、後藤委員、よろしくお願いします。
 
【後藤委員】  さらに補足ということで、今、委員の先生方の御意見をいただきまして、さらに補足というところでいきますと、現時点では、国際ジャーナル論文のところでは、あくまでもまだ、Scopusの分類ベースになってしまうので、そこはまださらに精査が必要なんですけれども、より細かい分野ですね。例えば環境であるとか、先ほどの小長谷先生のエリアスタディーズであるとか、そのような分野というところまでは、それぞれの分野でどのぐらい出ているかというところまでは、手元の数字としては少しずつ見えてきています。その中で、例えば、日本は、あくまでもScopusという前提がありますけれども、この分野は国際論文が多い。例えばですけども、日本は、ある分野ではたくさん論文が出ているが、その分野については韓国ではScopusに載っていないとか、あるいはその逆もたくさんあるという辺りまでは見えています。
 なので、その辺りのさらにデータを拡充させていき、それでまた見えるところというのがたくさんあるのかなと思いますし、また、先ほど、小長谷先生から御意見ありましたとおり、さらに恐らく国内データをどうやって充実させていくかというのが、今後の日本の研究力評価を進めていくという観点から重要な観点なのかなと思っております。
 すみません。以上でございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。いかがでしょうか。大体よろしいでしょうかね。
 基本的方向としては、一つは、実際にやってみて、あるデータでトレンド分析等、やれることをまずきちっとやっていきましょうということが一つと、とはいえ、まだ十分捉えられていない対象といいますか、可視化されていないものもあるので、そこをきちっと補っていくということは引き続き必要ですよという両面大事だということがメッセージとしては重要かなと思いますので、そういう方向性で最終的に取りまとめていきたいと思います。
 今回、この期としては最後ということなので、最終的には取りまとめをしなきゃいけないんですけれども、今日の皆さんの御議論も踏まえて、とそのような方向で微修正させていただく。最終判断については、主査の私のほうに一任していただくということで進めさせていただければと思いますが、よろしいでしょうか。
 では、そのような形で進めさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 それでは、次に2つ目の議題ですけれども、「人文学・社会科学を取り巻く状況について」、御説明をいただきます。
 まず、資料2に基づきまして、「令和5年度人文学・社会科学の振興関連予算案について」、こちらも事務局から御報告をお願いできればと思います。よろしくお願いします。
 
【河村学術企画室長】  資料2を御覧ください。人文学・社会科学の振興関連予算案につきまして、昨年末に閣議決定されました令和5年度の政府予算案の中で、主な関連する事業として、この紙をまとめております。以前より、こういった掲載の資料につきましては御説明を申し上げておりますが、3つの柱に分けまして、1つ目としては、緑の部分ですが、多様で分厚い研究の蓄積ということで、ボトムアップ型の予算事業、また、赤の部分でございますが、社会的課題に対応する人文学・社会科学の振興、トップダウン型の予算事業、また、下の黒い部分でございますが、連携の基盤整備及び共同利用の推進ということで、いわゆる共同利用・共同研究拠点、大学共同利用機関法人等々の基盤的な予算事業という、3つの柱でまとめております。
 大まかな予算につきましては、括弧が前年度、令和4年度になりますので比較していただければと思いますが、大方の予算事業につきましては、令和5年度の政府予算案に計上しております予算額につきましては、令和4年度、前年度分とほぼ同額といった事業が多くございます。
 ただ、その中で増やしているものを御紹介させていただきたいと思いますが、マル1の緑、いわゆるボトムアップ型の部分でございますが、上から2つ目にございます創発的研究支援事業で、これが令和5年度予算案としては2.3億円を計上しているところでございます。
 また、そこから2つ下がりまして、人文・社会科学系ネットワーク型大学院構築事業をこれも2.3億円ということで、これは新規の令和5年度予算案として計上している事業となっております。この人文学・社会科学系ネットワーク型大学院構築事業につきましては、この後、高等教育局の担当課から詳しく御説明を差し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 私からは以上となります。
 
【城山主査】  ありがとうございました。それでは、今、言及いただいたものかと思いますが、資料3に基づきまして、人文・社会科学系ネットワーク型大学院構築事業について、こちらは高等教育局高等教育企画課高等教育政策室の笹原大学院振興専門官より御報告いただければと思います。よろしくお願いします。
 
【笹原大学院振興専門官】  ありがとうございます。高等教育政策室の笹原と申します。今ほど紹介いただきました人文・社会科学系ネットワーク型大学院構築事業につきまして、御説明を申し上げます。
 こちらの資料の3ページ目、3枚目でございますけれども、中央教育審議会大学分科会の大学院部会におきましては、今期は特に人文科学・社会科学系の大学院教育改革の方向性について集中的に御議論いただきまして、昨年8月に本中間取りまとめを取りまとめていただいたところでございます。
 本日はこちらの資料の説明は省略させていただきますが、こちらの中間取りまとめに基づきまして、我々、先ほどの事業について概算要求し、また、予算案として計上させていただいたところでございます。
 中間取りまとめのエッセンスにつきまして、こちらの背景課題を基に御説明させていただきます。背景としましては、今、SDGs等の国際的価値基準の浸透や、これに基づくエシカル消費やESG投資といった行動変容など、社会の経済活動が機能的価値から意味的価値を重視する時代へシフトしつつあるという認識でございます。このような中に、とりわけ価値発見的な視座を提供する人文科学・社会科学系の高度人材の輩出・活躍の促進が必要であろうと考えてございます。
 ただ、一方、現状ではどうかということでございますけれども、こちらでございます。少し文字が小さくて恐縮でございますけれども、諸外国に比べて、人文科学・社会科学分野の大学院進学率が極めて低いという状況でございまして、日本の全分野での修士号取得者の割合は、諸外国平均の約4分の1となってございますけれども、分野ごとに見たときに、人文科学・社会科学分野では約11分の1という状況でございます。このような、そもそも量が不足しているという現状認識の下、先ほどの中間取りまとめでは、人文科学・社会科学系の高度人材の能力や活躍というものの、それは学生自身であったり、産業界等であったり、社会的価値の認識が不足しているのではないか。また、そもそも大学院の人材養成モデルが多様なキャリアパスを念頭に置いたものになっていないのではないかという課題設定をされてございます。
 一方で、そのような取組をするに当たりまして、こちらでございますけれども、我が国の人文科学・社会科学系の大学院は、小規模・分散的な専攻が多く、スケールメリットを生かした取組が進んでいないという現状もあると考えてございます。例えば社会との相互理解に資する多様な学位プログラムであったり、幅広いキャリアや円滑な学位授与に向けたきめ細やかな研究指導などでございますけれども、そういったものの大学院教育の抜本的な改革が急務と考えてございます。
 そういったことに対応するため、こちらの目的でございますけれども、ネットワーク型の教育研究を通じて社会の期待に応える、新たな人文科学・社会科学系の高度人材養成モデルを構築していくということを目的として、本事業は予算計上してございます。
 事業内容でございますけれども、事業の実施期間は、来年度令和5年から10年度までの6年間を予定してございます。支援対象につきましては、国公私立の大学院における人文科学・社会科学系を中心とした教育研究プログラムの構想を支援してまいりたいと考えてございます。
 支援内容を少し飛ばしまして、支援金額でございますけれども、1プログラム当たり年間4,000万円を最大支援して、5拠点を支援、採択したいと考えてございます。
 実際の取組でございますが、簡略化したもので御説明させていただきます。2ページ目を御覧ください。今ほども御説明申し上げましたとおり、各大学で分散的な選考が多いという状況で、そのスケールメリットを生かしていくためということで、まずはネットワーク型大学院と複数の大学院で、ネットワーク連携していただきまして、スケールメリットを出していく。そういった下、産業界や地域社会と連携した取組を行っていき、小規模、閉鎖的環境からの脱却というものを考えてございます。
 このことに基づいて、社会ニーズに応答した学位プログラムということで、まず大学院自身は、人材養成の目的明確化を開示し、また、共同研究であったり、PBL教育を通じて、学生がそれぞれ自分の能力がアカデミア、自分の専門以外にも社会に通用するという気づきを与えていただくとともに、産業界、社会等も人・社系の人材の能力に気づいていただくということを考えてございます。
 それに伴い、キャリアパス拡大に向けた接点の構築をしていくというものでございます。人文・社会科学系、提言ではいろいろ御提言いただいてございますけれども、本事業では特にこちらの、主課題と書いてございますけれども、実社会で活躍した卓越人材の輩出というということを念頭に置いてございます。やはり人文・社会科学系、アカデミア以外の産業界、官公庁等もそうですけれども、そういったところで御活用いただきたいと。ただし、一方で、ロールモデルが少なく、やはりアカデミア志向が多いというところもございますので、この時期を通じて、そういった人材、多様なセクターで活躍する人材を輩出し、ロールモデルを構築していっていただくと。
 その最終目標としまして、下にございます人文・社会科学系高度人材のキャリアパスの拡大・処遇向上であったり、大学院全体の質的改革につなげていきたいと考えているのが事業の概略の御説明でございます。今回、委員の先生方に御知見、御意見などいただければと考えている点がございまして、これは今、御説明申し上げましたネットワークの構築の部分でございます。
 まず、この前提として、小規模や、各大学に分散されている専攻がネットワークを構築していくということを手段の一つとして考えてございますけれども、各大学がネットワーク構築を進めていきやすい事業設計の在り方として、我々、今、さらに詳細な設計を検討しているところでございます。その中で御意見などをいただければと考えておりまして、まず、2つ考えてございまして、1つは、本特別委員会におかれましても、平成30年12月や令和3年の1月に審議のまとめで、人文学・社会科学は研究分野が過度に細分化しており、現代社会が対峙している社会課題に対する十分な応答ができていないという指摘であったり、課題に対しまして、人文・社会科学に固有の本質的、根源的な問いに基づく大きなテーマを設定し、その問いに対する探究を深めていく競争型のプロジェクトが有効であるという御提言をなされておりまして、それに基づいて事業等も進んでいると認識してございます。
 ただ、本事業につきましては、研究のみならず、教育も含めた学位プログラムでございます。また、産業界との連携も強く意識したものを想定してございます。このプログラムの申請に当たりまして、大学がテーマを設定して、我々はこういうテーマを設定して、複数の大学でこういった教育プログラムを実施していきますというふうに、フレームを提案してもらい、申請していただいたほうがネットワーク化が進んでいくかどうかという点でございます。
 もちろん、そのフレームでテーマを設定してもらって申請するという場合であっても、各大学、申請大学でテーマ設定を行っていただくことが原則であろうかと思っておりますけれども、例えば我々が公募に当たって例示するテーマなどで、こういったテーマなども考えられるのではないかというような御知見、御助言などがあればお聞かせいただきたいと考えてございます。
 もう1点、同じくネットワークに関してでございますけれども、ネットワーク化していくときに、各大学がどういった取組をしていくのかという点で、例えばURAの方々だったりすると思ってございまして、本事業ではURAへの雇用経費なども見込んでいるところでございます。また、実際、教員の先生方も当然ながらいろんなネットワークの構築というものに取り組んでいただくと、その先生のエフォートがプラスアルファになってしまうということもございますので、その先生をサポートする事務職員の配置などにかかる費用も盛り込んでいるところでございます。
 そういったもののほかにといいますか、各大学がネットワークを構築していくために有効な取組というのはどういったものがあるのかというのをお聞かせいただければと考えてございます。
 簡単ではございますけれども、私からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。今御説明いただいた内容に関して、まず、御質問等があればということと、あと、むしろ逆にこちらから意見が欲しいというお話でもありましたので、その点も含めて御議論いただければと思います。
 では、最初に小林先生、よろしくお願いします。
 
【小林委員】  ありがとうございます。大変意欲的なすばらしい試みだと思います。最初のページのところで、日本がアメリカに比べて院卒の経営者が少ない。ただ、これは大学側の問題だけではなくて、企業側の理由もあると思います。日本の場合は大学を出て、会社に勤めて、そのまま主任、課長、部長と上がっていきますが、アメリカの場合は必ずしもそうではなくて、大卒はここまでと。それ以上、上に行きたければ、ミッドキャリアでMAを取るなり、あるいはPhDを取ってこいという話になります。日本で唯一うまくいっているのは国家公務員で、院試で、修士卒の人間をかなり積極的に受け入れて、大学に行ったことがマイナスになっていないことになります。
 そこでお尋ねしたいのが、つまり、今申し上げたいのは、プロフェッショナルスクールの在り方が一番鍵になると思います。アメリカの場合はアカデミックスクールとプロフェッショナルスクールがはっきりと分かれています。日本は、いわゆる法学研究科と法務研究科、いわゆるロースクールが分かれていますが、そういう形が必ずしも全ての分野で分かれていないところです。
 そこで、今回の試みというのがどこを狙っていらっしゃるのか、お尋ねしたいというのが1点です。つまり、アカデミックスクールを変革して、もっとプロフェッショナルスクール的な要素も入れることを念頭に置かれているのか。それとも、プロフェッショナルスクールを創設、あるいは、もう定員を充足できないようなアカデミックスクールがプロフェッショナルスクールに改組するというところを狙っていらっしゃるのか。そこはどちらなのかということです。
 2点目にお尋ねしたいのが、連携をつくったときに、それぞれの連携に参加する大学院がそれぞれの学位を出すということを許容するのかどうか。一方、浜松医科大の医学研究科と静岡大の工学研究科の、いわゆる光技術を使った医療系の共同専攻では同一学位です。ああいう形を念頭に置かれているのかどうか。いずれにせよ、日本の大学院の在り方が大きく変わり得る、大きなインセンティブを与える大変すばらしい試みだと思いますので、その2点をお尋ねできればと思います。よろしくお願いいたします。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。それでは、事務局、いかがでしょうか。
 
【笹原大学院振興専門官】  ありがとうございます。1点目の御質問ですけれども、やはり我々の目的としてというか、意図として念頭に置いているのは、小林委員がおっしゃいました1つ目のほうで、やはりアカデミアまで念頭に置きつつ、社会との通用性というのをもっと意識したものを構築していってほしいというものを考えてございます。ただ、少し我々も正直悩んでおりますところは、やはり今回、専門職大学院等も対象とはしてございますので、その辺り、全体にどういう分野をといいますか、どういうふうに割合といいますか、アカデミックな部分と専門職大学院での申請について、どういうふうに見ていくのかというのは今まさに検討しているという状況でございます。
 2点目の御質問でございますけど、学位記につきましては、各大学の取組状況によるのかなと思ってございまして、例えば共同教育課程でございますと、今、学位記は連名で出すということになってございますので、その共同実施をした上で各大学で連携していくということであれば、学位記も連名となるかと思いますし、そこまでではなく、もう少しソフトな連携であるということであれば、それぞれの大学が学位を出していくということになろうかと考えてございます。
 以上でございます。
 
【小林委員】  ありがとうございます。2点目はぜひそれぞれの学位のほうがいいのではないかという気がします。いずれにせよ、ありがとうございました。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 では、引き続いて、山本委員、お願いします。
 
【山本委員】  山本です。お伺いしたいのは、修士課程と博士課程と、先ほどの専門職大学院とアカデミックのほうの話に絡んできますけれども、博士前期課程と後期課程のバランスだとか、いつ頃実施するものなのかということを伺いたいと思います。というのは、専門職大学院であれば、修士課程で、実社会での活躍、ビジネス系であったりということで修士が中心ですし、アカデミックは当然ドクターですよね。一方で、やはり最近、自分の身近などで多いというか、希望があるなというのが、学部を出ていて、社会人になったんだけども、アカデミックのコースだけど、修士号を取りたいと。修士を持った社会人、ビジネスパーソンになるんだというケースをよく聞きますので、その辺り、どんなふうに絡んでくるようになるかなと思いまして、構想としてお持ちのところ、お願いいたします。
 
【城山主査】  では、事務局からお願いします。
 
【笹原大学院振興専門官】  ありがとうございます。資料を共有させていただきます。今の御質問に関してですけれども、大学院部会において取りまとめられた中間まとめでも、まさに修士課程と博士課程では少し方向性が違うのではないかという御議論がございました。今、中間取りまとめの修士と博士課程の部分について考え方を書いたところをお示しさせていただいてございますけれども、人文科学・社会科学分野においては、まずは修士課程において、民間企業などの多様なキャリアパスの拡大に重点的に取り組むべきではないかということと、博士課程においてはアカデミック傾向が強いというところもございまして、大学として研究指導に係る意識や構造改革など、教育課程としての体質改善を図るということを念頭に御議論がなされております。
 ですので、今回の事業につきましても、修士と博士ということで、何かを分けているわけではないのですけれども、やはり修士課程のまずはキャリアパスというものもありつつも、一方で、博士課程でもそういった取組も排除するものではないと考えているところでございます。
 
【山本委員】  ありがとうございました。
 
【城山主査】  続いて、岸村委員、お願いします。
 
【岸村委員】  私も2人の委員の先生と関連するところで、キャリア関係になるんですが、私自身は理工系で工学部に所属していますので、やはりキャリア支援機能は非常に大事だと思っております。その中で、高等教育人材として、特に人・社系の人を増やしていくというのはとても大事なことだと思っていますので、非常に重要なことなんだろうと思っています。
 我々のところでも研究室紹介をするときには必ず就職先とかを示すわけですし、そういったところを支援されるのはとても好ましいと思うんですけども、逆にお伺いしたいのは、これまでにそういうキャリア支援機能を強化するようなプログラムというのは文科省さんとして施策としてあったのか。あるいは今回、それだけに特化したようなプログラムは考える余地はなかったのかというところなんですけれども、この点いかがでしょうか。
 
【城山主査】  では、事務局からよろしくお願いします。
 
【笹原大学院振興専門官】  ありがとうございます。少なくとも、大学院の施策では、キャリア支援に特化したものはございませんで、例えば、今現在やっている事業ですと、卓越大学院プログラムというものを実施してございますし、また、その前身としては、博士課程リーディングプログラムというものを実施してございました。これら(音途切れ)
 
【城山主査】  皆さん、聞こえますでしょうか。
 
【岸村委員】  いや、ちょっと切れてしまっているような気がします。
 
【城山主査】  切れていますね。
 
【笹原大学院振興専門官】  申し訳ありません。今、大丈夫ですか。
 
【城山主査】  今、大丈夫ですが、場合によっては、重たいようでしたら画面を消していただいてもいいかなと思います。
 
【笹原大学院振興専門官】  申し訳ございません。それでは、恐縮ですが、一度、画面を消させていただきます。
 大学院向けのキャリア支援に特化した支援事業というものはこれまで実施してございませんで、今、卓越大学院プログラムであったり、前身である博士課程リーディングプログラムというものを実施してございまして、学位プログラムを通じて、産業界等との連携を通じ、多様なキャリアパスを支援していくというものをやってございまして、今回もキャリアパスへの支援だけということではなく、やはり大学院の改革自体にも取り組んでいただきたいというものもございまして、キャリアパス支援に特化したものではなく、大学院教育改革と社会の通用性であったり、キャリアパス支援というものを総合的に取り組んでいただくというものを支援したいという考えで、今回、予算要求している、予算案として計上したというところでございます。
 
【岸村委員】  今後、横に展開していくということはあるんですか。このプログラムに選ばれないとなかなか支援してもらえないというとあれなのかなと思いまして。なかなかキャリア支援、就職支援とか、私は工学部にいてもそれなりに教員がエフォートを使ったりという面もありますので、理工系でもサポートしてほしいなと思う部分もあったりするわけですけど、それはさておいても、いろいろなところで広げていかないとなかなか厳しいんじゃないかと思っております。それで伺った次第です。
 
【笹原大学院振興専門官】  ありがとうございます。今までは、先ほど申し上げた卓越とかリーディングは少し大規模な支援事業でございまして、実際、結果としてもそうなのですが、理系の自然科学系のプログラムが多く採択されているという状況もございまして、今回は人・社系に向けて支援していくということを考えておりますのと、今後の、もちろん我々は引き続き予算事業とかは成果を見ながら検討していきたいと考えてございますけれども、今回採択された大学の取組とかを周知していくという、そういうロールモデルであったり、どういった取組がよかったのかというのをそれぞれの支援事業の指標にしたり、また、中央教育審議会の大学院部会等でも御議論いただいて、例えば審議の取りまとめなどに盛り込んでいただくとか、そういったものも検討してございますし、繰り返しになりますけども、予算事業につきましても、引き続きどういった在り方があるのかというのは検討していきたいと考えてございます。
 以上でございます。
 
【岸村委員】  分かりました。ロールモデルを確立するというのはとてもいいことだと思いますので、それを起点に広げていただければと思います。ありがとうございました。
 
【城山主査】  ありがとうございました。恐らく規模を考えても、リーディングとか卓越と比べたときに、数大学で4,000万円という規模だとすると、かなり特化したことをやらざるを得ない。そのときにキャリア支援というのは重要な要素になってくるんだと思うんですね。そういう意味で言うと、ある種、結果として、かなりフォーカスしたプログラムとして運用される可能性も結構あるのかなという感じはしました。
 それでは、神谷先生、お願いします。
 
【神谷委員】  どうも。非常にすばらしい事業だと思いますというのを、まず最初に申し上げておきたいと思います。その上で少し申し上げたいのですが、非常に大きい問題と、必ずしも大きくない問題が混在しているような気がいたします。というのは、まず1ページ目の上に3つあるのですが、一つは、大学院卒の人材の活躍が必ずしも進んでないというのと、それから、小規模・分散的な専攻が多くて、スケールメリットを生かした取組が進んでないというのが2番目と3番目ですが、これは非常に大きい問題でありまして、小林先生も、なぜそうなっているかということを、特に大学院卒人材の活躍についておっしゃったところだと思います。
 この大きな2つの問題に関しましては、今後どうしたらいいかというのはよく検討して、需要の側面、要するに、企業側の需要の削減、大学側の供給の側面、その他いろんな側面からよく分析した上で、本当にどういう方向がいいのかというのは考えていかなければいけない問題だと考えております。
 このネットワーク型の大学院というのは、この2つの問題に資するところはもちろんあるのですが、当然これだけでは解決できない問題だと思います。とは言うものの、このネットワーク型の大学院の構想というのはなかなかすばらしい事業であるというのは先ほど申し上げたとおりです。
 その上で申し上げますと、このようなネットワーク型の大学院に対する大学側の需要といいますか、こういったプランを出していくインセンティブがあるかというと、非常に強くあるというふうに私は考えております。特に私の大学では、ネットワーク型授業というものは、多くの先生方、恐らく知らないと思いますが、そのような状況の中でも、ネットワーク型の教育、要するに、文系と理系が組んだ教育というのは、文系も理系もいろんな部局と組んだ教育の案というのは多々出てきているところでございまして、特に、ここにありますようなSDGs系、環境系、これは文系と理系がまさに協力しないとできないような分野、教育も研究もできないような分野でありますから、もちろん需要はあると考えております。
 これだけではなくて、例えば情報系とか、それから、様々な意味でのセキュリティー、経済安全保障、データに関するセキュリティーの問題、その他もろもろは全て緊密に関わってくると同時に、文系、理系含めて、いろんな分野が関わってくるということです。と同時にまた教育も重要ですし、そして、教育された人材が社会に出ていくことももちろん非常に重要であると考えます。非常に重要であるということ、それからさらに付け加えますならば、恐らくは、今、私が挙げた例以外にもあるのではないかと考えます。
 ということで、ぜひ推進をお願いしたいと考えます。
 以上です。
 
【城山主査】  コメントかと思いますが、事務局からレスポンス、何かございますか。
 
【笹原大学院振興専門官】  貴重な御意見ありがとうございます。参考にし、進めてまいります。ありがとうございます。
 
【城山主査】  では、続いて、白波瀬先生、お願いします。
 
【白波瀬委員】  よろしくお願いいたします。大変申し訳ないんですけれども、私は構想案については、どちらかというと疑問のほうが多いです。方向性は分かるんですけれども、ネットワーク型と言われた場合に、どういうことを構想されていて、それで、この予算規模ですね。申し訳ないけど、私は、支援規模も入れると、具体的な中身が見えるようで見えないというところがあるんですね。人文・社会系ということで規模ががくんと減ったのかなと、そういう後ろ向きな感想を持ってはいけないんだと思うんですけれども、中身的にやっぱりちょっと、ネットワークでつくる。今までできなかったのでネットワークでつくるのか。ただ、同じ大学間でも、もちろんいろんな大学があるので、単科大学もありますけれども、そこの中でやっぱりネットワークをつくること自体もあまり成功している例は少ないような感じがなきにしもあらずということになると、異なる大学でのネット、これは物理的に離れたところでネットワークが実際にできるとすばらしいと思うんですけれど、ここで足元になるクロスアポ、要するに、ジョイント、そういう煩雑なやり取りというのはなくして、こういうことを実際にやってみようというような、もともとのインフラとしての前提条件は実際あるのか。それで、もちろんキャリア支援とかSDGs、環境についてはいろんな人たち、あるいはNPOで実際にルールづくりできる人材をつくるという点では非常に重要だということは分かるんですけども、それで、どうしてこのネットワークということで、6年間で1件当たり4,000万の規模となっているのかというのが、すみません。ちょっと見えにくいので、その辺り御説明いただけると大変ありがたいなと思います。
 以上です。
 
【城山主査】  事務局からいかがでしょうか。
 
【笹原大学院振興専門官】  御指摘ありがとうございます。予算につきましては、例えば、高等局でやった事業ですが、先ほど申し上げた卓越大学院プログラムというものが現行ございますけれども、そこでは、学生の教育支援経費というものも盛り込んでございます。一方で、今、博士課程の支援等につきましては、フェローシップとかSPRING事業とかもございまして、そういった中で、今回は特に学生支援経費というものは本事業には盛り込んでないというところも、少し単価が下がっている理由の一つではございます。
 ネットワーク型につきましては、先生おっしゃるとおり、我々も少し話を聞いていますと、例えば研究だと学会等を通じてコネクションというか、そういったものもあるのだけれど、そういった教育プログラム、教育になってくると、なかなかネットワークが難しいというお話も聞いてございます。
 一方で、本事業を通じて、本事業は今回5件の申請を予定しておりますけれども、そういった良い取組を支援し、それを横展開といいますか、各大学の参考になるように、我々も支援だけじゃなくて、そういった広報とか横展開の支援もやっていきたいと考えているところでございます。
 以上でございます。
 
【城山主査】  取りあえずは以上の御説明ということですが、よろしいでしょうかね。
 それでは、田口先生、お願いします。
 
【田口委員】  非常にすばらしい事業だと私も思います。
 先ほど2ページ目のところで、心理学の例、心理統計とマーケティングという例が挙がっていて、それ以外にも何か例があれば提案していただきたいということでしたので、ちょっと思いついたことをお話ししたいと思います。
 私はこの事業にAI倫理というテーマが結構合うのではと思いまして、そういうのを例の一つとして提示したらいいのかなと思いました。これからの日本にとってAI倫理というのは非常に重要じゃないかと思っています。倫理指針などで基本設定を行っていくというのが多分各国で考えていることで、そういう倫理指針などでリードしたところが今後の技術開発においても有利になってくるということで、各国がAI倫理の研究においても競争を展開しているような状況だと思うんですね。
 日本では必ずしもあまりAI倫理は盛んに研究されている様子には見えず、各大学に少数の研究者がぽつりぽつりと散在しているような状況だと思うんです。そういうわけですので、大学院でネットワークをつくればかなりスケールメリットが期待できるのかなと思います。
 AIは多分社会の中でもかなり実装されてきている状況で、企業などでももう本格的にいろいろ使っているという状況で、企業の声なども聞きますと、やはりAI倫理に関する人材が足りないと、社内でも詳しい人間がいないし、外部で委託するにしてもどこに頼んだらいいか分からないというような声を聞きますので、多分人材育成という点でも企業のニーズがかなり高いところなのかなと考えます。そういうわけですので、こういうような事業にはちょうど合うのかなと思います。
 他方で、1件について4,000万でネットワーク化を行っていくとなると、かなり資金的には苦しいところなのかなと思いまして、場合によってはこういう事業の中で有望かつ喫緊の課題、重要だとみなされるものに関しては、加えて資金を投入していくといったこともあっていいのかなと思いました。
 以上、コメントプラス、最後のところはそういうような形で、有望なところにさらに資金援助していくような可能性があるのかどうかという点もお伺いしたいと思います。
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございました。コメントと要望かなと思いますが、後者の部分、何かレスポンスございますか。
 
【笹原大学院振興専門官】  大変申し訳ございません。今、少しネットワークが乱れてしまいまして、後半の1件4,000万というところから、大変申し訳ありません、ちょっとこちらが途切れてしまいまして。
 
【城山主査】  田口先生、もう一回よろしいですか。
 
【田口委員】  4,000万で1事業ということだと、ネットワーク化していくにしてもかなり資金的に苦しいかなと考えまして、もし、こういう事業をやっていく中で、ここは重要だし、喫緊の課題であるというふうにみなされたものに関しては、さらに資金を投入していくというような可能性があるのかどうかという点をお伺いしたいと思いました。
 以上です。
 
【笹原大学院振興専門官】  失礼しました。ありがとうございます。
 詳細な設計はまた今後詰めていくということになりますけれども、現時点では、中間評価というものを、中間年度でいたしますけれども、その結果、中間評価の状況により補助支援額を増減するということは今検討しているという状況でございます。
 以上でございます。
 
【城山主査】  取りあえずは以上のようなお答えということでよろしいでしょうか。
 
【田口委員】  ありがとうございました。
 
【城山主査】  続きまして、仲先生、お願いします。
 
【仲委員】  ありがとうございます。本当になかなか斬新なアイデアだと思うんですけれども、私も少し、ちょっと分からないな、みたいなところが多いんです。
 主に2つありまして、1つは単位といいますか、ネットワークの単位は何かということです。ネットワークの図を見せていただくと、大学の絵が描いてあったりするわけですけれども、これは目的とも関わると思うんですが、足りないところを補うためのネットワークなのか。例えば公認心理師の資格を取らせるのに、この大学院では実習先がいっぱいあってその指導はできるんだけれども、基礎科目を教える先生が十分そろってない、みたいなところが組んで、例えば公認心理師の資格を取れるようにしていくとか。あるいは、うちは心の理解の研究をたくさんしているけれども、それを例えばロボティクスに生かすとか、AIに生かすとか。そういうふうな形ですと、この場合はむしろ大学というよりは研究室単位のネットワークになったりするのかなと思うんです。
 ですので、少なくとも足りないところを補う型の、共通のカリキュラムを組むといった一つの型と、1型とか、もうちょっと研究室やゼミの連携、あるいは教員同士が既に共同研究をしていて、学生がそこを行ったり来たりしながら学ぶみたいな、そういう2型みたいなものとかがあったりするのかな、というのが1つ目のお尋ねです。
 それから2番目は、アウトプットは何かということです。先ほどの例ですと、それで無事公認心理師の資格が取れましたというのであれば、それは1つのアウトプットになるわけです。あとのほうですと、もう1つ研究ができてよかった、ということになりますが、でも、これをもうちょっと広げれば、例えばダブルディグリーのように、心理学と文学とか、社会学と工学とか、そういうふうな形でできるんじゃないかと思います。やっぱりアウトプットも魅力的でないと。2倍の収穫があったみたいなことがあると、もっと魅力的になるのかなと思いました。
 ここで思うのは、そうすると、もう国内だけに限らないで、国外も合わせて、例えばカントの研究をしている人が、カントの考えに沿ってつくれそうなAI関係のラボに行って共同研究をしてくるというような学び方で、外国の大学とのダブルディグリーが取れればすばらしいなというようなことがあります。たまたま、フランスの大学の方たちと話していて、結構理科系で行き来してダブルディグリーを取らせているみたいなことがあったのでそんなことも可能なのかなというのが一つ。
 あと最後に、こうなると4,000万をどこにかけるかというと、ネットワークをつくってくださいというよりは、国としてコンタクトポイントみたいなのをつくる、あるいはマッチング機能みたいなものを重視して、各研究につき、募集していますとか、交流したいとかいう情報を集めてマッチングするみたいな、そういう機能を充実させるというのが重要かなと思いました。
 ということで、4つぐらいになってしまったんですけれども、すみません。
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 事務局、いかがでしょうか。
 
【笹原大学院振興専門官】  ありがとうございます。
 1つ目のお尋ねというか、御意見ですけれども、どちらかというと、人文・社会科学系の新しい大学院教育モデルをつくっていく、構築していくというものを支援していくということを目的としてございますので、不足分を補うというよりかは、どちらかというと、大きな社会課題等に対応して社会との接点をつくっていくと。そのためにスケールメリットを出していくということを想定しているものでございます。
 アウトプットにつきましては、もちろん各大学御自身で様々な指標設定等をやっていただくというものもありますけれども、我々としましては、実社会で活躍した卓越人材の輩出などを目的、課題としてやってございますので、例えばどういった就職状況であったかとか、民間企業、産業界への就職割合とか、そういったものも事業指標として見ながら様々見ていきたいと考えております。
 そのほか、標準修業年限の超過割合とか、特に人文・社会科学系はその点が大きく、学生のその後の社会活動というか、就職活動等にも影響しているという点もございますので、そういった点も見ていきたいなと考えてございます。
 海外のお話もございましたけれども、ぜひ海外との共同研究であったり、連携した教育というのは我々も実施していただきたいなと考えてございますので、公募に当たりそういった視点も盛り込みながらなのかなと現時点では考えてございますけれども、さらに検討を深めてまいりたいと考えてございます。
 4点目につきましては、コンタクトポイントが大切であろうということはまさに御指摘のとおりかと考えてございまして、今回物理的な距離を超えたということで、人文科学・社会科学のネットワークということで、もちろん分野にもよるかとは思うのですが、自然科学系に比べれば比較的設備とか、実際の実験とかそういったものが少ないのかなと思ってございますので、そういったマッチングをする人、冒頭御説明しましたとおり、URAの雇用経費であったり、また、教員の負担を軽減するための事務職員の配置とか、そういったものを支援していきたいと、もちろんそれだけではございませんけども、そういったものも中心に考えているという状況でございます。お答えになっていますでしょうか。
 以上でございます。
 
【仲委員】  どうもありがとうございました。そこにまた学位を持っている人が就職できればすごくいいなと思ったりもいたしました。あと、人文社会と自然科学との連携ができるといいなと思いました。ありがとうございました。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 続いて、勝委員お願いします。
 
【勝委員】  御説明ありがとうございました。
 今、言われたように、人文・社会科学の新しいモデルというところで、非常に魅力的な事業だと思うのですけれども、背景で3つが掲げられていて、これもそれぞれまさにそのとおりなのですが、2番目のところ、先ほど小林先生も言われていましたけれども、人文科学・社会科学分野で大学院進学率が極めて低いというのは、企業に入ってからの昇格の度合いが違うということは言われていましたけれども、それにプラスして初任給で見ても著しく違う形になっている。例えばアメリカですと、博士課程を修了すると週当たり2,000ドルが初任給で、それが学部だと1,300ドル、マスターだと1,600ドル、PHD、あるいは専門職のMBAとかだと2,000ドルということで、そこの部分が違うので、やはりかなり大きなインセンティブがあるというところで、イギリスとかアメリカでは人文・社会科学でも大学院に進学する割合が非常に高くなっていると思うのですけれども、やはり日本の場合そうしたインセンティブはないということ。またこの事業では、ESG投資のことが書かれていますけれども、今、日本の企業にとってESGでどういう戦略を取るかというのは非常に重要な経営課題で、そこの部分で専門的な知見があるというのはウェルカムだと思うんですが、ただこの事業は人文・社会科学系のネットワークということに重点が置かれ、そこで閉じてしまっている場合には、それだけの付加価値のある教育ができるかどうかというところが非常に見えないなというのが1点。
 それからもう1点は、やはり5年一貫の教育ということであるとすると、ますます就職も難しくなるのではないかと。それと同時に、卓越大学院との違いなんですけれども、私、卓越大学院にも関わっているのでコメントさせていただくと、卓越の場合、先ほど言われたようなAIであるとか、あるいはマテリアル、情報であるとか、技術系が中心になっている部分は非常に多いんですけれども、法学系だと国際ローみたいな形で、新しい技術に対して法律がどう適応するかとか、そういったところでかなり本格的に企業と連携をしているんですが、やはり支援金額等を見てもこの事業は小さく、そこまでのことができるんだろうかというような一抹の不安があったりするので、むしろ小規模の大学院のネットワークというのが大きな目的になっているのかなというようにも見えるので、この辺も踏まえた上でぜひ魅力的なものをつくっていただきたいなと思うと同時に、学生のこうした教育研究へのニーズというのも考えていく必要があると思います。学位にしても、学位プログラムとして幾つかの大学で協力してつくっていくというのは結構難しい部分もあると思いますので、この辺もぜひ考慮してやっていただければと思います。
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 事務局のほうからいかがでしょうか。
 
【笹原大学院振興専門官】  貴重なコメントありがとうございました。1点だけ、本プログラムについては5年一貫制というわけではなくて、それぞれの修士課程であったり、博士課程であったり、5年一貫制も対象となるという状況でございます。
 すみません、補足でございます。
 
【勝委員】  分かりました。ありがとうございました。
 
【笹原大学院振興専門官】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  では、続いて後藤委員、お願いいたします。
 
【後藤委員】  ありがとうございます。大変に意欲的なプログラムかなと思います。私も先ほどから少し出ております卓越大学院プログラムの関係で、複数の連携大学のところで、特にデジタル・ヒューマニティーズの関係の指導をしているんですけれども、端的に言いますと、デジタル・ヒューマニティーズ関係の教員がなかなかおりませんので、ほかの大学さん等のフォローをするというのが非常に大変だという現状がございます。なので、この手の連携大学のプログラムをするというときに、人社系の教員をいかに充実させていくかということも重要になるのかなというのは感じるところでございます。そのプログラムに合わせた教員をいかに大学と、もしくはこのプログラムの予算等でも配置できるかというところは重要かなと思います。また、特にデジタル・ヒューマニティーズなんかですと、海外にそういう研究事例とか方法論の事例をやっている大学とかはたくさんあるわけでして、例えば、そういう海外の大学と連携するによって教育プログラムを組めるような在り方というのも一つ重要になるかなというのは特に考えるところでございました。
 それで言いますと、もうほかの多くの委員の先生方から出ておりますけども、ネットワーク型にしたときに、この予算金額でいいのかというところは出てくるのかなと思いますので、これはもう出てしまっているものですのであれですけども、ぜひ今後拡充というか、そういうふうな追加支援的なところも考えられるといいのかなと思いました。
 以上でございます。
 
【城山主査】  事務局からいかがでしょうか。
 
【笹原大学院振興専門官】  貴重な御意見をありがとうございます。教員につきましては、まさに人社系ですと、特に学生の関心とかも細分化していて、なかなかマッチした教員が自大学にいないということもあり、そういった他大学との連携で、学生の関心に近い教員に研究指導委託をするとか、そういったことも狙いとしてございますけれども、また、もともと大学にいる教員の人件費はちょっと補助対象としては難しいですけれども、新たにこのプログラムのために雇用などを検討される場合であれば対象になってくると考えてございますので、いただいた御意見等も含めながらさらに検討を進めてまいりたいと考えております。ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 それでは、須藤委員、お願いします。
 
【須藤委員】  ありがとうございます。非常に興味深い取組でうまくいけばいいかなと願っております。説明の中に少しあったような気もするんですけれども、企業側の声とか、自治体側の声がどれぐらいこのシステムに反映されているのか、少しまだ私はよく理解できないんですけども、こういったシステムから出てきた人を本当に企業が望んでいるのか、自治体が望んでいるのか、その辺をもう少し丁寧にやったほうがいいのかなと。その辺が不足しているんでしたら、やっぱりせっかくこのシステムをやるんでしたら、今からでも企業側――例えば経団連とかそういうところ――それから自治体側にこういうシステムがあって、ここから出てくるような、それなりのいろんな知識を持った人をどんどん、企業あるいは自治体で活用してほしいというようなことをきちんとつくっておいたほうがいいんじゃないかなという気がしました。
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございました。いかがでしょうか。
 
【笹原大学院振興専門官】  ありがとうございます。例えば、人文科学系でも産業界との共同研究により、アカデミア志向だったけれども企業のほうでも研究してみたいという学生が企業に就職されたりという個別の事例は聞いておるんですけれども、確かに企業側、自治体側のニーズというものが、今、現状把握できているかというとなかなか難しいところもございますので、さらに公募に向けて、引き続き御指摘いただいた点、検討してまいりたいと考えてございます。ありがとうございます。
 
【須藤委員】  個別ではやっぱり周知できないと思うんですよね。もう少し組織的に企業側にきちんと説明して理解を得るとか自治体側にきちんと説明するとか、せっかくいい取組をやるんだったら最初からそこを巻き込んでおかないとうまくいかないような、個別に頼っていてはうまくいかないような気がします。
 
【城山主査】  よろしいでしょうか。
 どうもありがとうございました。今日、1つ目の議題が予想に反して早く終わったので、後半の議題でかなり盛り上がってよかったのかなと思います。この委員会全体のミッションとしては、恐らく人社の振興という意味でいうと、主として議論してきたのはモニタリングもありますけれども、多分学術知共創プロジェクトのような、プロジェクトとしてどうやっていくかという話と同時に、恐らく人材育成のシステムというのは本来重要な柱であって、ある意味では隣で議論していたものに少しインタラクションするような形でいろいろ意見交換ができるということは大変意味があったことかなと思います。
 あと最初に笹原さんのほうからあったお話との関係でいうと、やはりリソースが限られているということもあって多分目標をどこに置くのかということ、最後、須藤委員からもお話ありましたように、ちゃんとニーズを聞いてみるなり、3つ大きな課題のどういうところに焦点を当てていくべきか、これは全体でも多分議論したほうがいいでしょうし、逆に言うと、個々のプログラムの申請があるときにも、そこをいろいろ工夫してもらうというのが多分大変重要な要素になると思うんで、恐らくあまり、これをワンセットでやらなきゃいけませんという制約条件をつけ過ぎないことが大事かなという感じがしました。それは多分、修士、博士、どこを対象にするかとかいうのもあるでしょうし、それからテーマも、SDGsとかいうのを1つ出すよりは多分今日上がったことも含めて例示として幅広く出しておいて、むしろ興味深い課題をぜひ皆さん発見してくださいみたいな形でやっていくことが多分限られたリソースをうまく使っていく上では大変重要だという、何かそういうようなことを、皆さんの御議論は意味しているのではないかなと思いました。
 この議題については以上とさせていただければと思いますが、何か最後一言言い残したこととかおありの方いらっしゃいますか。よろしいでしょうか。
 そうしましたら、最後、議題の3ですけれども、第11期の人文学・社会科学特別委員会の審議状況についてということで御説明いただければと思います。
 事務局のほうからよろしくお願いします。
 
【河村学術企画室長】  資料4を御覧ください。第11期人文学・社会科学特別委員会の審議状況についてでございます。
 来月、学術分科会の開催を予定しておりまして、第11期最後の学術分科会となります。その際、部会、委員会等の11期の活動、これまでの2年間の活動を報告ということにしておりますので、人文学・社会科学特別委員会におきましても、第11期、これまでの2年間、そしてまた、次期についての課題等々も事務局のほうで整理をさせていただきましたので、御紹介、御説明させていただければと思っております。
 (1)第11期における主な審議内容というところでございますが、まず、「総合知」の創出・活用について、「「総合知」の創出・活用に向けた人文学・社会科学振興の取組方針」ということで、おととしになりますが、取りまとめたというところ。
 また、2つ目ですが、人文学・社会科学分野における研究データ共同利用のための基盤整備及びデータサイエンスの応用促進の今後の方向性についてということで、昨年夏になりますが、審議を行ったというところ。
 そして、3つ目でございますが、人文学・社会科学分野における研究成果に係るモニタリング指標について、「人文学・社会科学の研究成果のモニタリング指標について」を取りまとめたというところで、本日前半部分に皆様に御議論いただいたということを最後3つ目としております。
 そして、(2)でございますが、引き続き検討すべき論点又は今後の方向性等というところで、まず1つ目ですが、「総合知」の創出・活用の観点を踏まえ、研究データの共同利用のための基盤整備及びデータサイエンスの応用促進等について、引き続き検討を行うというところで、総合知の関係、まだこれからというところでございますし、データ利活用、DXといったようなことも、まだこれから検討の必要があると思っておりますので、引き続きの検討課題としております。
 2つ目でございます。第11期の審議を踏まえ、人文学・社会科学分野における研究成果に係る指標のモニタリングを実施するとともに、モニタリングの手法及び指標の扱いについて、引き続き改善・充実を図るということで、本日前半御議論いただきましたモニタリングに関しましては、まずは実施をしていくというところと、まだその手法、いろいろな課題、どこまでできるか、どうやってやるかというところ、また指標の扱いということも本日御議論がございました。何か決めたということになってはいけないような、手法の扱い等々いろいろ課題がございますので、そういったものも検討しながら、引き続き改善・充実を図るということを今後の方向性で、事務局としては整理をさせていただきました。
 よろしければ来月開催予定の学術分科会におきまして、人文学・社会科学特別委員会のこれまでの議論、そして今後の方向性ということで御報告をさせていただければと考えております。
 以上です。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。若干シンプルな記載にはなっていますけれども、ほかの部会との横並びでこんな感じかなということで御提案いただいたと理解しています。
 主たる部分は今期の審議内容、それから今後の論点も、データ利用の話とモニタリングの話が主ではありますけれども、それの全体のアンブレラとして、総合知の活用・創出に向けた取組方針だとか、それを踏まえて何とか等という形で、必ずしもデータとかに限られないことも一応今後のテーマとして入り得るというニュアンスでまとめられているものと理解をしています。
 何か御質問、御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 そうしましたら、こういう形で学術分科会のほうに事務局から報告をしていただきたいと思います。
 最後ですけれども、何か全体を通して御発言、御意見等ございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、最後、事務局から連絡事項等ございましたら、よろしくお願いします。
 
【河村学術企画室長】  
 本日が現委員による委員会の最後となりますので、学術企画室長の河村より一言御礼を申し上げます。
 先生方におかれましては、御多忙の中、2年間にわたり、精力的に御審議をいただきました。おかげさまをもちまして、「「総合知」の創出・活用に向けた人文学・社会科学振興の取組方針」を取りまとめることができました。事務局一同、感謝を申し上げます。誠にありがとうございました。
 また、6期の科学技術・イノベーション基本計画におきまして、人文学・社会科学の振興が重要な観点となっております。引き続き議論、検討が必要と思っておりますので、今後とも御指導いただければと思います。
 また、本日の議事録につきましては後日メールにてお送りさせていただきますので、御確認をお願いしたいと思います。
 本当にこれまで2年間ありがとうございました。
 御退席の際は画面下の赤色のボタンから御退席いただければと思っております。ありがとうございました。
 
【城山主査】  それでは、これで閉会したいと思います。皆様、2年間にわたり、どうもありがとうございました。

 

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