人文学・社会科学特別委員会(第13回) 議事録

1.日時

令和4年8月1日(月曜日)13時00分~15時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 人文学・社会科学の研究データの共有・利活用の促進について
  2. 人文学・社会科学に関連する指標について
  3. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員、専門委員)
城山主査、小長谷委員、須藤委員、仲委員、井野瀬委員、尾上委員、加藤委員、神谷委員、岸村委員、新福委員、山本委員、飯島委員、後藤委員、田口委員
(科学官)
木津科学官、森口科学官、恒吉科学官、磯科学官、松田科学官、渡慶次科学官、黒橋科学官、加藤科学官、外田科学官

文部科学省

河村学術企画室長

5.議事録

【城山主査】  それでは、大部分の委員の皆様もお集まりということですので、ただいまより第13回人文学・社会科学特別委員会を開催いたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 まず、本日の委員会開催に当たり、事務局から注意事項と本日の出席状況についての説明がございます。よろしくお願いいたします。
 
【河村学術企画室長】  研究振興局学術企画室長の河村です。
 本日はオンラインでの開催となりますので、事前にお送りしておりますマニュアルに記載のとおり、御発言の際には「手を挙げる」ボタンをクリックしていただきまして、指名を受けましたらマイクをオンにし、お名前を言っていただいた上で、ゆっくり御発言をいただければと思っております。
 なお、主査以外の委員の皆様は、御発言されるとき以外はマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。
 何か機材の不都合等ございましたら、マニュアルに記載の事務局連絡先まで御連絡いただければと思っております。
 本日は、勝委員、小林委員、戸田山委員は御欠席となっております。18名中15名、今、白波瀬委員、加藤委員は少し遅れられると思います。まだ入っていらっしゃいませんが、18名中15名の御出席でございます。定足数を満たしておりますので御報告をいたします。
 なお、白波瀬委員と飯島委員は14時頃の退室の御予定。また、岸村委員と井野瀬委員におかれましては14時半頃の退室の御予定と伺っております。
 なお、本日の会議は傍聴者を登録の上、公開としております。
 以上でございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。続いて、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
 
【河村学術企画室長】  本日はオンラインでの開催となっておりますので、資料は事前に電子媒体にてお送りさせていただいております。
 本日の主な議題に係る資料に関しましては議事次第のとおりでございまして、資料1から資料2としてお配りしております。資料等、不足がございましたら事務局までお願いいたします。
 以上です。
 
【城山主査】  よろしいでしょうか。
 それでは、議事のほうに移りたいと思います。まず、議題の1つ目でありますけれども、人文学・社会科学の研究データの共有・利活用の促進についてでございます。
 最初に、事務局より御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
 
【河村学術企画室長】  それでは、お送りしております資料の1に基づいて、議題1に関しまして御説明をしたいと思います。画面共有のほうもさせていただきます。
 人文学・社会科学のデータインフラストラクチャーの今後の方向性についての中間まとめ案として、事務局で作成をしております。
 この資料につきましては、前回の本委員会におきまして、JSPS様のほうから現状の報告ということでいただきまして、また、委員の皆様からも御意見いただいております。
 それとは別に事務局のほうからも、いろいろな有識者の方々や関係者の方々にもヒアリング等を実施してきておりまして、そういったものを取りまとめたものとして、事務局案として作成をしたものでございます。
 中身の説明をさせていただきます。1ページをお願いいたします。
 背景につきましては、分野特性による程度の差はいろいろとあるものの、人文学・社会科学においても、やはり広範なデータ収集と、さらにその分析といった研究手法は既に一般的なものになっている。また、研究成果の質に直結する極めて重要な要素と現在なってきていると考えております。
 他方、デジタル人文学といった取組が、欧米では拡大しつつある。そのように多様な資料や研究データをデジタル化するとともに、データサイエンスを応用したデータ駆動型の新しい研究手法を取り入れるということで、これまでに得られなかった学術的・社会的成果を人文学・社会科学研究基盤が生み出すことに関しまして、大きな期待が寄せられている。
 また、オープンサイエンスという観点、視点も重要です。研究の基盤となるデータの公開を通じた共同利用の促進といった動きも並行して進められている。
 しかしながらでございますが、日本の人文学・社会科学におきましては、こういった資料やデータの整備というものが、一部の機関においては促進、取組が進んでいるところはありますけれども、やはり全体的に見ると、研究データの利用環境整備は諸外国の後塵を拝している。
 特に社会科学の諸分野におきましては、共同利用可能なデータ拠点と言える体制整備というのが、やはり大幅に遅れているのではないか。それによって、国際共同研究の相手先として、日本の魅力というものが相対的に低下をしているのではないかというような指摘があるところでございます。
 こういった背景がある中で、前回の委員会でもありました、これまでの取組ということでございますが、平成30年度より、日本学術振興会では人文学・社会科学のデータインフラストラクチャー構築推進事業を実施していて、それに対する実績についての御報告がありました。
 JSPSが国立情報学研究所と協力をして、事業全体の取りまとめを遂行する中核機関として、これまでデータアーカイブ機能の整備や、手引等の管理運用の利活用ということで中心的な役割を果たしてきて、5つの拠点機関という中で、人文学が1拠点、社会科学が4拠点を公募・選定の上、運営体制として構築し、運営が始まってきていたといった御報告があったところでございます。
 2ページをお願いします。このような実績ということで、人文学・社会科学総合データカタログ「JDCat」というものが構築され、また、オンライン分析ツールが研究開発され、データ共有のための手引、拠点機関における寄託受入れ体制の整備、ホームページ、メタデータの英語科等々様々なものに取り組んできて、具体的な数としましては、これまでの取組により、JDCatで公開されているメタデータは7,199件という状況。
 また、新規のユーザーということに関しても、6か月で32か国の3,874件に増加している。各データへのアクセス数は1か月で3万6,771件となってきて、まだ開発は緒に就いたばかりでございますが、ユーザーの活用・利用というものが進んできているという状況でございます。
 ただ一方で、人文学分野につきましては、1機関の日本史資料のデータにとどまっている。JDCatがカバーできる範囲は限定的なものとなっている。
 社会科学の分野におきましても、重要度は高いものの、家計パネル調査、若年パネル調査、総合的社会調査といった社会調査データと、明治初期以降の日本統計年鑑及び公的統計の調査票様式・調査概要等にとどまっているということで、まだまだ限定的であるといった課題がある。
 こういった点を踏まえまして、今後の方向性ということで少しまとめてみたものが次でございます。
 今後の方向性の案でございますが、まずは人文学・社会科学総合データカタログ「JDCat」をはじめとした基盤をさらに充実・強化していくべきではないかということで、JDCatが国内外の研究者にとって有用な研究データの発見可能性を高めるツールとして、もっと研究者コミュニティー等に貢献をするためには、取り扱うデータをやはり一層充実していくということが必要だろう。
 このために、今現在5拠点の拠点機関があるのですが、この5拠点以外の大学や機関にそもそもどのようなデータがあるのか、そしてそのデータに関してどのようなニーズがあるのかといったことを調べる、把握する必要がある。
 これに関しましては、令和元年度にJSPSが調査を一時行ったものもあります。そういった分析等も踏まえまして、時期のタームとしては2023年度から5年間というふうに時期を捉えたときに、こういった時期において、必要な分野に関する新たな拠点機関を検討していくということが必要である。
 加えまして、データ間の連携や、情報の発見・活用を促進するツールの提供といったような、やはりユーザーの利便性を向上させる取組というものがまだまだ期待されるというところでございます。
 なお、より多くの機関に開かれたデータインフラへ拡充していく際には、JDCatにデータを登録する際のデータの在り方やその方法は、やはり専門的・技術的なものになります。そういった在り方や方法、できるだけ簡便なものにするとか、もしくは汎用性のあるものにするといった方法についても、さらに検討する必要があるあるだろうと考えております。
 次のページ、3ページをお願いします。
 JDCatは、現在NIIが提供しております日本最大規模の学術情報検索サービスのCiNii Researchというものと連携しております。CiNii Researchで検索すると、その情報からJDCatに移動して、詳細なメタデータを見ることができるというふうになっております。
 こういった仕組みがあるのですが、例えば海外のデータアーカイブのカタログと連携をするということで、データ発見可能性がさらに高まるといったこともあるだろうと考えております。
 次ですが、「研究者がデータを共有し利用し合う文化の醸成とコミュニティーの形成等」というところでございますが、これまでデータの利活用・公開のルール等々に関しましては、「データ共有のための手引」というものを策定して、公開シンポジウム、ニュースレターの配信等を通じまして、研究者、また学生に対して、データの共有・利活用に関する理解を高める文化の醸成、また、コミュニティーの形成に資する啓発活動というものは進めてきたところでございます。
 今後につきましては、データ共有のための手引というものもさらに時宜に合わせて更新をしていくということもありますし、また、実際のデータ構築のモデル例の作成といったこと、また勉強会・研修会等々による知識・技術の共有。また、これまであまり関わりのなかった方々、人文学・社会科学分野の専門家、また図書館情報学、情報工学の専門家と交流があっていいだろうというところで、そういったものが盛んになる取組、データ利活用に関するコミュニティー形成を促進する取組などなどを通じまして、研究者のコミュニティー、ユーザー等とのレベル、段階、広がり、そういったコミュニティー全体のレベルアップというものが図られる必要があるのだろうというふうに考えております。
 最後に、運営体制につきましてでございます。現在の人文学・社会科学のデータインフラストラクチャーというものは、各拠点機関というものが限定的にあって、そこが保有するデータのメタデータを拠点機関が作成して、中核機関が統合的に検索できるというJDCatというシステムを運用しているところでございます。中核拠点が拠点機関との連携・調整機能を担う体制といったものになっている。
 ただ、今後、このデータインフラストラクチャーをより開かれた基盤、より活用されたものにしていくということに関しては、今まで以上に研究者コミュニティーと連携をする取組が必要です。
 また、大学研究機関が連携してガイドラインを更新していく、またシステムを開発していくということを相互に、お互いが協力し合っていくということで、JSPSの報告書にもありましたコンソーシアム形式というもの、これによって自律的に運営が進んでいく、自律的にシステムが動いていくということが、将来的には望ましいと思います。
 ただし現時点では、やはり各大学研究機関においてコンソーシアム形式で、自律的にということに関しては十分な人的体制・システムというのがやっぱり備わっていないということが現実としてあるというところですから、コンソーシアム形式は将来的な実現に向けてということですが、当面は、データアーカイブに係るノウハウ・経験のある機関が中核機関となって、新たな拠点機関を巻き込みながら、現状のようなネットワーク型というようなものを運営していくということが望ましいのではないか。
 4ページをお願いします。その際には、中核機関と拠点機関間の連携というものもそうですし、拠点機関間でも、やはり積極的な連携というものが必要であるというふうに考えております。
 加えて、基盤の定期的な点検、システム改良を通じて、ユーザーの信頼性といったものも確保していくということが必要でございます。このために、やはりユーザーのニーズを確認できるような体制というものが望まれます。
 最後でございます。開かれたデータインフラストラクチャーの実現を目指すという意味では、拠点機関以外のデータのJDCatへのメタデータの登録というものも、やはり進めていかなければならないというふうに考えております。
 例えばですが、中核機関がメタデータの受入れ方針、受入れ体制を整える。また、拠点機関がメタデータの登録の情報提供、技術支援といったことを構築していくということがあるだろう、重要だろうということがあります。
 ただ、こういった受入れ方針を検討するに当たりましては、やはりユーザーのニーズということ、またオープンサイエンスの動向にも留意をしていくということが必要だと考えております。
 以上、事務局で案として作成しました今後の方向性、中間まとめ案でございます。御意見いただければありがたいと思っております。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの資料1の中間まとめ案について御審議いただければというふうに思います。挙手ボタンを使って、御発言のある方は手を挙げていただければと思います。いかがでしょうか。
 それでは最初に山本委員、よろしくお願いします。
 
【山本委員】  山本です。2つお願いします。一つまず確認なんですけども、今回のこの方向についての文章ですけども、これはJDCat事業の23年度からのリニューアルですかね、新しい、さらに進めていく事業を考える上での方向性という理解でいいかというのが一つ。
 2つ目に、今後、将来的にということで、研究者コミュニティー、学協会かなというイメージがあるんですけども、そこと連携して将来はコンソーシアムで自律ということを述べられていました。
 これは、コミュニティーとの連携というのは、今はほとんどされてないという具合でしたかしら。それとも、多分、研究者個人の方のつながりの中から一部は絡んでもいるけれども、やはり拠点が中心になってというのが現状だったかなということで、ちょっとそこの確認を2点お願いいたします。
 
【城山主査】  それでは、事務局のほうからいかがでしょうか。
 
【河村学術企画室長】  山本委員から御指摘いただきました2点のうち、まず1点目ですが、今回、中間まとめ案として御審議いただくことに関しましては、おっしゃったとおり、今年度までということでJSPSがやってきたのですが、今年度である意味終わるというか一区切りということですので、前回が5年でしたので今回も5年というと2023年からの5年間のデータインフラについてどうするかということ。
 ただ、例えばどこがやるのか、誰を巻き込むのかとか、そういったことは正直これから考えられる、必ずしもJSPSがどうこうということではなく、違う誰かを巻き込むということも含めまして、2023年度からリニューアル、もしくはバージョンアップというのでしょうか、ブラッシュアップというか、さらに充実していくためにはということで御意見をいただければと思っております。
 2つ目の、研究者コミュニティーとの連携に関しまして、このJSPSに、今日いらっしゃればよかったんですが、知る限り、やはり拠点機関とJSPSだったりという、ある意味限られたところでしかこういったところは連携できていなかったのではないか。少なくとも学協会、学会とか、例えば研究者コミュニティーの複数の団体と何か日頃からやり取りしているというのは承知しておりません。
 ただ、前回の御議論にもありましたが、ユーザー側として、やはり研究者コミュニティー側から、これいいね、面白いね、使えそうだねと、そういった、大学レベルだけじゃなくて研究者コミュニティーからの、ユーザーの固まりでいらっしゃるので、そういった方々もやはり連携をよりしていくという意味で、今回書かせていただいたところでございます。
 以上でございます。
 
【山本委員】  ありがとうございました。
 
【城山主査】  続いて岸村委員、尾上委員の順序でお願いいたします。
 
【岸村委員】  ありがとうございます。岸村です。今の山本先生の2点目の質問に少し関係するかもしれないんですが、今の段階ではいわゆる研究機関に所属している人のデータベースのような形になっているのかと思うんですが、今後オープンサイエンスを見越してどんどん広げていくときに、研究者コミュニティーに所属していれば今、フォローアップ可能かもしれないですが、いわゆる在野の研究者と言われる人とか民間企業のデータとかも登録できるようにしていくのが、より充実するのかなと思ったりするのですが。
 また昨今、シチズン・サイエンスというような形で、地域ごとに行われているような研究のデータというのも意義があるんじゃないかと言われている中で、今後のさらなる充実という意味で、その辺りも検討していただくといいのかなと思ったのですが、もし、この辺りについて何かコメントがあればお願いいたします。
 
【城山主査】  まず事務局のほうからいかがでしょうか。
 
【河村学術企画室長】  先ほどもちょっと御説明したのですが、おっしゃったように拠点機関以外、それが違う大学だけじゃなくて、おっしゃったように民間ということも含めて、将来的にはそういったことが、質・量共に充実していくという観点は重要だと思っております。
 ただ、やっぱり気になる点、これはヒアリング等であったのですが、いわゆるデータの質の観点ですね。大学の組織として登録をしていくメタデータというところでは、ある程度のやはりノウハウが生まれてきますので、一個人の方々がどこまで、ある意味正確にデータをつくって収載するところへ行けるかというところが、少し課題というか、どうなるか分からないということも含めて、少し懸念材料としてはあるというのが、事務局がヒアリングをしている中ではございました。
 ただ、将来的にはそういったことも重要だと、ありがたいことだというふうには考えております。
 
【岸村委員】  ありがとうございます。もちろん中長期的に、私も考えていけばいいかなと思っていますが、やっぱり研究の質ですとか、あるいは研究倫理とかも含めて、そういうのをもっと広げて充実していけるようなシステムというのが、今後ますます重要になると思いますので、そこも併せて展開できていけばいいかなと思っています。どうもありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。恐らく、今の中間まとめの記述としては、拠点機関以外に広げていくという方向になっていると思います。当面は研究機関を念頭に置いているわけですが、それに論理的に限定しているわけではないですということと、あと、一番最後に河村室長からお話があったように、中核機関がメタデータ受入れ方針及び受入れ体制を整えるとともに、ある種の情報提供や技術支援もできるようにするということを考えているので、そういう意味では、より幅広いところがデータ提供できるよう仕組みをつくっていくということも一応見据えてはいるという、そういう構造に現段階ではなっているのではないかなというふうに思います。どうもありがとうございました。
 続きまして尾上委員、お願いいたします。
 
【尾上委員】  取りまとめありがとうございます。あまりこの会議では議論できていなかったところもあるのかもしれませんけども、やはりこういうデータの公開等を考えていったときに、研究者に結構しわ寄せが行くよりは、今後の方向性ということでまとめるときに、研究支援人材をうまく充実化させていくようなことをぜひどこかに記入いただけると、今後の施策に役立つかなと思いました。よろしくお願いいたします。
 
【城山主査】  ありがとうございます。
 事務局のほうでレスポンスはございますでしょうか。
 
【河村学術企画室長】  まさに先生がおっしゃったとおり、オープンサイエンスということで、研究者が研究時間を割いて、ひたすら何か打ち込んでいったりとか、クリーニングをしていくということでますます研究時間が減るというのは、それはもう本末転倒なんだろうと思っております。
 御案内のとおり、URAをはじめとしたいわゆる事務方スタッフ等々も含めまして、周りの人材がそこをできるだけ、研究室によっていろいろあるんでしょうけれども、少なくとも本人が頑張れと言うのではなくて、周りを巻き込むということは大変そのとおりだと思っております。
 ちょっと本件、JSPSが今やっているデータインフラに、ある意味閉じている世界ではございますので、そこからどこまで膨らませるかは、また御意見を踏まえまして、修正等々を含めまして主査と御相談させていただければと思っております。ありがとうございます。
 
【尾上委員】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。長期的には、先ほどもちょっと御議論があったように、コミュニティーが自律的にコンソーシアムを運営していくということを期待しているわけですが、すぐにそこに行くことはむしろ難しいというのも、他方この報告書の認識であると理解しています。
 そういう意味でいうと、今までのようにJSPSが中核機関をやるかどうかは分からないのだけれども、この表現を使うと「経験のある機関」が中核機関を担うことが必要であるということがあって、当然、中核機関を担うのであれば、そこにしわ寄せが行かないように何らかの支援はされるということを求めているというのが基本的なメッセージということではないかなというふうに思います。どうもありがとうございました。
 続きまして須藤委員、よろしくお願いします。
 
【須藤委員】  取りまとめありがとうございます。今の議論と関係するんですけども、やはりこういったものをつくり上げていくには、人材をきちんと養成する必要があるんじゃないかなという気がします。
 研究者の人だけに任せるのではなくて、サポートでも研究者自身でもいいんですけども、そういったことができるような人材をもっともっと育成していかないと、将来コミュニティーでやるにしても難しいんじゃないかなと思いますので、方向性ということでもう少し人材育成ということを念頭に置いた書き方をしたほうがいいのじゃないかなと思いました。
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 河村室長、いかがでしょうか。
 
【河村学術企画室長】  まさしく尾上先生と同じ人材育成、サポートスタッフ等々、書き切れていなくて恐縮でございます。書いていくことを検討して、主査と御相談させていただきたいと思います。ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。確かに、今の書き方は「中核機関が必要だ」というところが強調されているので、機関じゃなくてむしろ人的資源を今後育成していくことが大事だ、みたいなことを、もうちょっと正面から、どこかで触れてもいいかなという感じはします。
 その辺り、また事務局と検討させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 続きまして後藤委員、よろしくお願いします。
 
【後藤委員】  まず、この全体の資料をまとめられたことと、これまでの成果について、まず強く敬意を表したいと思います。
先日まで国際デジタル・ヒューマニティーズ会議が、東京、日本を、オンライン会場でしたので少し言い方が難しいんですけれども、担当機関として東京大学にて行われました。
 参加者は700名近い参加者がおりまして、海外からもデジタル・ヒューマニティーズの研究者が、特に日本に関わるところでそれだけの数の人が集まってもらえたということで、まさにこのデジタル・ヒューマニティーズというところに非常に大きな注目が集まっているのは間違いないと思います。
 そこに、このような人文のデータをさらに展開できるような学術的状況が整ってきているというのはすごく重要な意味を持っていると、私は理解をしてます。まず、これはちょっとコメントというか、今回のまとめに対する追加のコメントとして少し述べさせていただきます。
 その上で、今後につきましては、さらにこれらのデータをどのように活用していけるかということを考えていく。コンピューターでどのように使うことができるようになるか、もしくはそのコンピューターを使った結果に対して、人文学の方がもう一度どのように意味づけをすることができるかというところまで見据えて、データインフラのつくり方みたいなのが今後考えていければいいのかなと思っております。
 これは、まさにこの今回のまとめを受けて、さらに未来を見据えてというところになると思います。これは特段、今すぐのレスポンスが必要というわけではないんですけれども、今後を見据えてということで、簡単にコメントしておきたいと思います。
 以上でございます。
 
【城山主査】  基本的にはコメントということかと思いますが、事務局のほうで何かレスポンスはございますでしょうか。
 
【河村学術企画室長】  ありがとうございます。まさにそこは、データのプラットフォーム、まずはデータを蓄えましょうというところから、それの利活用という、まさにDXということで、我々文部科学省も、人社以外も含めて、どうやったらデジタルデータをDXによって新たなイノベーション、新たな価値に結びつけられるかは、考え方としては重要ということで、別の予算であったりとか、独法も含めまして、考えている状況ではございます。
 人社に関しましても、まだ、データのプラットフォームというのがまだまだというところがありますけれども、将来的、多分同時並行で進めなければいけないと思っております。
 その利活用、特にデジタル技術を活用してというところは同時並行でやっていきつつ、本件に関しましては、まずはしっかりと、より広く、より多くというところを進めさせていただければと思っております。ありがとうございます。
 
【城山主査】  よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
 それでは仲先生、お願いします。
 
【仲委員】  どうもありがとうございます。また、本当におまとめどうもありがとうございました。
 一つ、既に議論されているところかもしれないんですけれども、人文学・社会科学のデータといいますと人間に関係するものが多いかなと思います。生物とかバイオとか力学とか、そういうデータであれば、物ですから文句は言われないということはあると思うんですけれども、人のデータというのは、研究者がデータを取るときに、研究のためだけに、あるいはその研究者だけが、例えば私だけが使用いたします、みたいな形で収集するということもあるわけです。
 こういうときに、大量に集めたデータを、後になってやっぱり社会に貢献するデータだから外に出そうか、というような手続をどうするかという、何かそういう、倫理にかかるのか規則に関するところか、そういうような整備もなされるといいのかなと思います。画像データなども関連するかなと思うんですけれども。
 以上です。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 この点いかがでしょうか。事務局のほうから、まず。
 
【河村学術企画室長】  おっしゃったとおり、特に社会科学の関係では、例示でも先ほど述べさせていただきましたが、家計のパネルデータ等々、個人にアンケートを取ってということのデータが、やっていらっしゃる慶應だったり大商大だったりにはあるのだと思います。
 ただ、ここからはちょっと私も聞いた限りのことで恐縮なのですが、そもそも、そういったいわゆる個人情報を扱うようなデータというのは、当然外には出さないし、そもそもその大学でも、扱うときに生データまでは見せないというようなところはちゃんとしているよというのは聞いていたものですから、そこがオープンサイエンスだから、とかいうことで放り込まれるということはないと聞いております。
 ただ、そういったことが、一個でもあったら大変なことですので、ないようにというのは当然我々も留意をしていきたいと思っております。
 以上です。
 
【仲委員】  ありがとうございます。でも、ずっとそのまま将来的にそれでいいのか、例えば50年たったらとか100年たったら可能にするとかいうようなこともあったりするのかというのは、今後の議論なのかなと思いました。ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。大変重要な御指摘かと思います。
 今の表現だと「ノウハウとか経験」という形で一括して書かれちゃっているんですけど、恐らく倫理的検討の話はまさに詰めていかなきゃいけない一つの重要な中身で、その辺り、書き込むことが可能かどうかは、また事務局のほうで御検討いただければと思います。どうもありがとうございました。
 続きまして加藤先生、お願いします。
 
【加藤委員】  加藤です。すみません、情報の立場からちょっとだけコメントさせていただきます。
 インターネットの発達とか、Linuxというソフトウエアの発達の中で、一見すると拠点みたいな、ある種、権威ある機関が責任を持ってやるということが重要であるという風に、情報の世界でも人々は最初思っていました。
 でも実際やってみると、意外な経験がありました。例えば広く知られているところではウィキペディアがそうですし、それから青空文庫もそうかもしれません。例えばウィキペディアの場合でいうと、誰が作っているか分からない、匿名で作られているものは質が低いだろうと当初は思われていたんだけれど、たしか『ネイチャー』かどこかに論文が出たと思いますけれども、調べてみたら意外と、ブリタニカの信頼度とほとんど変わらないという報告がありました。また、青空文庫は一般人が入力したものですが、質は悪くなくて、むしろそれが本として出版されたり、無料に近い形で出版されたりするという現象もございます。
 ソフトウエアの分野で大部前に、「カテドラル・アンド・バザール」というドキュメントが出ました。日本語題目は「伽藍とバザール」というものです。カテドラルすなわち教会を造るみたいにして作るか、バザールで一般市場みたいな形で作るかということで、一見するとカテドラルを造るみたいにしないといい質のものはできないと人々は思っていたけれども、意外とマーケット形式というかバザー形式でもいいものはできるということが実証的に分かっています。その類推で考えると、今回のデータ入力も、専門家たちがやると、数が圧倒的に少ないし時間もないので量的には限りがあると思います。人文系の分野は、研究者以外の巷の世界でも人文学に興味を持っている方はすごく沢山いらして、そういう方々が嬉々として興味を持ってデータ入力とか収集に参加してくださって、それをお互いにチェックし合うことができると思います。あるいは最近はシチズン・サイエンスというオープンサイエンスの分野があって、一般人に入力をお願いするんだけれども、それをコンピューターサイエンス的なテクニックによって冗長度を持たせて入力させて、テクニカルなチェックをし合うことによって精度を高めていくなんていう研究も大分進んでいます。日本って本来、世界的に見ても豊富な人文学の資料を持っている国だと思いますので、そういう新しいアプローチも対応をお考えになって進めてみることも一案かなと思いました。
 以上、コメントでございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 事務局から何かありますでしょうか。
 
【河村学術企画室長】  まさに情報の分野は、おっしゃったとおりOSSに関しても本当に、みんなで考えてブラッシュアップしていこうという、オープンサイエンスの最たるものかと思います。
 なかなか人文学・社会科学、分野によってはいろいろな特性がございますので、そういった専門家というか、大学に属していなくても、民間から等々も含めまして、今後いろいろと、分野の特性もあると思いますし、またどこまでできるかというところ、さらに質の関係で、もしかしたら分野によってはそれだと危ないという部分やもあるかもしれませんので、そういったことも含めながら、できるところから始めるというところもまさしくあると思いますので、いろいろと考えていきたいと思っております。ありがとうございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。お考えのような、まさにガバナンスの在り方自身の根本的転換が起こりつつあるという側面があるのだと思います。
 オープンサイエンスというような概念も入れているのは、そういうことも踏まえてという趣旨かと思いますが、他方、現実の拠点機関でやられている現場の方々には、やっぱりある種のクオリティコントロールも大事だという御意見なり自負もおありのところがあって、そこのバランスを具体的にどう取りながら進めていくかという、その辺を少し考えた表現に現状はなっているのかなと思います。
 加藤先生がおっしゃられたような大きな変化というのも見据えてというのも、ある側面としては入っているのかなというふうに思っています。
 
【加藤委員】  ちなみにクオリティコントロールに関しては、技術的な方法で、例えば3人の人に入力してもらって、多数決的な方式でチェックしながら信頼度を高めていくというようなことを、コンピューターサイエンスの中で専門的に研究しているグループがあります。
 ですので、単純に人の精度に頼るだけではなくて、技術的な裏づけというか、テクニックも使いながら精度を高めていくという方法も開発されていますので、そんなことも参考にされるとよろしいかと思います。
 
【城山主査】  クオリティコントロール自身の、ある種技術革新みたいな話も踏まえてということになりますね。
 
【加藤委員】  そうです、はい。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは後藤委員、よろしくお願いします。
 
【後藤委員】  すみません、二度目で。先ほどの仲委員と河村室長のやり取りの件につきまして、ちょっと補足をいたしますと、JSPSの人社系データインフラの事業の中で、「データ共有の手引」というのがございまして、その中では個人情報の保護というところで、特に社会科学のほうが中心でございますけども、配慮するというところについては書かれてございます。
 併せて、これは人文学のほうにも少し触れておりますので、恐らくその辺りと、先ほどの御指摘がちょっと関係してくるのかなというところを、少し補足をさせていただければと思います。
 また、先ほどの加藤委員とのところでございますが、人文学ですと、クラウドソーシングの例というのは既に幾つかあるのも確かです。
 例えば古文書、昔のくずし字をクラウドソーシングで今の形に報告するという「みんなで翻刻」というプロジェクトがございます。あれも実は当館の教員がやっておりまして、あれももう数千万文字の文字が集まっているというデータ群であったりとか、そのようなものもございます。そのような成果は多分、今後うまく生きてくるのかなと思いますし、最近ですとデジタル・ヒューマニティーズに合わせて、まさに地域の人と一緒に考えるといったデジタル・パブリック・ヒューマニティーズであるとか、そういうふうな表現も出てきております。それはクラウドでデータを集めるというところと、地域の人と共にデータをどういうふうに使っていくかというところについても、最近、議論ができてきておりますので、そういうあたりが今後の参考になるのかなと思います。
 先ほどの議論の補足ということで、ちょっと私のほうから説明させていただきました。
 以上でございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。倫理については既に検討のベースはあって、それを今後どう展開していくか、そういうお話だということになりますかね。
 河村室長のほうから、何か補足ございますでしょうか。
 
【河村学術企画室長】  すみません、手引まで詳細に把握しておりませんでした。後藤先生、ありがとうございます。
 以上でございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、一通り手を挙げられている方は以上かなと思いますが、以上でよろしいでしょうか。
 どうもありがとうございました。それでは、この中間取りまとめについては、本日の御意見も踏まえて修正して、取りまとめとさせていただきたいというふうに思います。
 最終的な判断につきましては、恐縮ですが私、主査に一任いただければというふうに思いますが、よろしいでしょうか。
 どうもありがとうございました。それでは、そのような形で進めていただきたいというふうに思います。
 続きまして議題の2でありますけれども、人文学・社会科学に関連する指標についてであります。こちらも事務局から最初に説明をお願いできればと思います。よろしくお願いします。
 
【河村学術企画室長】  事務局でございます。続きまして議題2の、人文学・社会科学の研究成果のモニタリング指標につきまして、資料2でございます。今、画面共有しておりますが、骨子案について御説明いたします。
 これにつきましても、これは本年1月からの本委員会におきます有識者からのプレゼンテーションや、それに関する御意見等々、また事務局でのいろいろなヒアリング等々も含めまして、骨子案として作成をしております。
 骨子案でございまして、まだ今後、複数回御議論をいただいていって、どんどん中身をブラッシュアップできればと考えております。
 ページ1は目次ですので、ページ2のほうに飛んでいただければと思います。検討の経緯として簡単にまとめております。
 これは御案内かとは思いますけれども、人文学・社会科学を含めた研究成果につきましては、日本学術会議や本委員会等々含めまして、様々な研究コミュニティー、分野での検討がなされてきておりまして、2018年12月には当学術文科会と人文学・社会科学の在り方に関するワーキンググループが連名で、「人文学・社会科学が先導する未来の社会の共創に向けて(審議まとめ)」がまとめられている。
 その中で、人社に関する学術研究における評価の検討の方向性というものが示されて、また、次の段落ですが、日本学術会議においても、この件に関しましては幾度の提言・報告がなされてきておりますが、直近ですと2021年11月に、科学者委員会の研究評価分科会によって、「学術振興に寄与する研究評価を目指して~望ましい研究評価に向けた課題と展望」というふうにまとめられてきたということで、各方面におきまして議論があったと。
 また、大きなところでございますが、2020年の科学技術・イノベーション基本法が成立して、自然科学と同様に、人社の研究成果も客観的に可視化されるということが必要になったという法改正ということがございます。これまでの各方面での検討状況、基本法改正の趣旨と、また人文・社会科学の多様性と特性というものを踏まえまして、第6期の科学技術・イノベーション基本計画で、もうこれは繰り返しになりますが、人文・社会科学や総合知に関する指標について2022年度までに検討を行い、2023年度以降モニタリングを実施するとされているところでございます。
 これまでの各方面での検討や、法改正の趣旨等を踏まえまして、今回、本委員会におきましては、研究評価指標ではなくて研究成果に関連するモニタリング指標ということで、本委員会において検討を行ってきたということを整理させていただいております。
 ページの4に飛んでいただければと思います。具体的に検討していく中で、研究成果の発表に関しまして、現状と課題をまとめております。人文学・社会科学の研究成果発表の留意すべき多様性として、3点ほど挙げられるのではないか。
 1つ目が、論文や書籍など成果発表の媒体がそもそも多様であるということ。また、人文学の一部の分野は、言語や地域に密接に関連した研究を行っているということもあって、当該言語で発表されることが多いということなので、発表言語が多様となってしまっているという状況。また、3点目ですが、社会的な機能によるインパクトが多方面、そして多様な形で生じているということで、こういった3点が非常に人文・社会科学に関しては特性として挙げられるのではないかというところでございます。
 そこで、その3点につきまして少し具体的に書いていくというのが、ここから始まるところですが、まず1つ目、成果発表媒体における多様性ということです。
 自然科学では、やはり論文の発表というのが一般的でございますが、人文学・社会科学の成果発表の形態としましては、国際ジャーナル論文というだけではなくて、国内のジャーナル論文、それはいろいろな形態がございます。学会誌、大学紀要といったものも含めて、様々な国内としてのジャーナル論文、また書籍と。書籍も、単著だけではなくて共著があったり、または章の一部を書くといったことを含めまして書籍。そしてさらに学会発表、会議論文、展示といったことで、本当に数限りないと言っていいほど多様にあるという状況でございます。
 また、これらをアウトプットというと、それに関してアウトカムとしては、例えば表彰であったり、製品であったり、知的財産権といったような、短期・中期的な効果であるアウトカムというのもあると、非常に多様な状況であります。
 次は、本委員会でも、林先生とJSTから報告があったように、諸外国でも人社に関しては必ずしも論文ではない、いろいろな書籍であるといったような割合が高いということで、やはりここは人社の成果発表媒体における多様性としては一つ特徴的なことがあるだろうというのがございます。
 5ページ目をお願いいたします。次は発表言語における多様性でございます。
 人文の、特に言語学であったり歴史学、民俗学といったものは、やはり研究対象となる地域のコンテクストに依拠するということがございますので、その地域の言語で発表されることが多い。
 ただ一方で、経済学などは国際的な成果発信が一般的に行われているということであって、例えば英語で発表するのが通例、よくあるというようなことも聞いております。こういった発表言語についても、分野によって様々違う、多様性があるということがあると思います。
 そして3つ目の論点、社会的インパクトに関しまして、その多様性でございます。
 人文学・社会科学の社会的な機能によるインパクトにつきましては、計量的に機械的にモニタリングする手法というのが、事務局も聞いてきた部分もあるのですが、現時点ではそういった手法が存在しないというところがあると思います。
 ですので、今回のモニタリングの対象としては、やはり困難であろうと思っております。
 一方で、社会的インパクトということに関しましては、人社の特性としてあり、書籍を出版することによる社会全体の啓発といったものから、個別の地域住民の理解増進、例えば地域における講習会等での講演等々も含めまして、地域住民のリテラシーを上げるといったようなこと、様々なステージ等々で、多方面・多様な形で生じているというのは確かであると考えております。
 人文学・社会科学の研究成果の一つとして、例えばこれが計量的には難しくても、記述的な手法というか、何か把握できそうな見えそうなもの、そういった手法などを用いて、今後、将来的には適切に捉えていくということは、検討課題としてはあるのだろうということで、「適切に捉えていくことが必要である」といった記載にさせていただいている次第でございます。
 6ページをお願いいたします。続きまして、いわゆる事実の整理が続くのですが、主要な成果発表媒体の特徴というところで整理をしております。
 先ほど述べましたように、国際ジャーナル論文や国内ジャーナル論文、そしてプレプリント、これまでの本委員会の御議論ではあまり出てこなかったかもしれませんが、こういったもの。そして最後に書籍、そしてその他というところでございますが、様々、実際に事実としていろいろ特徴があるだろうと挙げております。
 1つ目です。国際ジャーナル論文については、経済、心理、経営といったような一部の分野においては、やはり主要な発表媒体の一つである、こういった事実は確かにある。
 また、書誌情報に関しましては、これまでCiNiiやJ-STAGEなど、いろいろとヒアリング、プレゼンテーションがありましたが、書誌情報、著者名だったり所属機関であったり、被引用数であったりDOI等々につきましては、データベースとして整理をされている部分があるということ。社会科学の一部の分野などにおきましては、論文数や被引用数をモニタリングするということは考えることができるということです。
 ただ、このようなデータベースである、諸外国ですとScopus、ウェブオブサイエンスにつきまして、収録率というのは自然科学の分野と比べると非常に極端に低いというところがございます。後藤先生のプレゼンにありました、2020年度の人間文化研究機構内の研究者によって執行された論文については、Scopusの論文捕捉率は30%である。
 ただ、こういったような、可能であるとは思うけれども、なかなかその充足率というか収載率を考えると難しい面がある。それは、分野の特性も含めてというところが、国際ジャーナル論文の特性としてあるのだろう。
 続きまして、国内ジャーナル論文でございます。国内ジャーナル論文につきましても、主要な発表媒体の一つであるということは間違いないということでございますが、ただ、発行機関の観点から言いますと、民間の出版会社もありますし、大学もありますし、学会もありますし、また発行頻度、例えば1年に1回であったり、また、発行はするんだけれども、いわゆるデジタルでは流通させるまでには時間をおくといったような発行頻度の関係。また流通規模、1つのコミュニティーの中でしか入手できない、一般的には入手できないとか、そういった流通規模、本当に多種多様というようなことでございますので、なかなか網羅的なデータベースというのは難しい。
 例えばJ-STAGEにおきましても、書誌情報ということが整理はされているのですけれども、記事数やダウンロード数、被引用数等を書いてあるものについてモニタリングしていくということは、考えることはできるということは一つ特徴としてあるということを記載させていただいております。
 続きましてプレプリント、査読前論文のことでございます。
 このプレプリントに関しましては、資料の後半、参考の情報として、いわゆるニーズ調査のようなものを載せておりますけれども、一部の分野ではプレプリントサーバーへの登録というものが行われているということで、NISTEPのほうで公表した調査によりますと、プレプリントの公開経験があると回答した割合は6.9%ということではあったのですが、今後、プレプリントが進むと思う、もしくはやや進むと思うという回答者の割合は35.7ということで、今後ではあるのだと思いますが、プレプリントというものがこれから増えていくのではないかというふうに考えられると思います。
 そのため、2022年3月におきまして、JSTが日本語または英語で投稿・公開することができるプレプリントのサーバーである「Jxiv」というものの運用を開始しているという次第でございますので、今後この研究発表の媒体、プレプリントに関しましては、ニーズも一定程度ありますし、増えていくのではないかと思いますので、記載している次第でございます。
 続きまして、7ページでございます。書籍につきまして、これはもう御説明させていただきましたので、ちょっと省略させていただきますが、書籍というものが主要な発表媒体の大きな一つである。そして単著、共著、一部の章の執筆というのがあるのですが、やはり課題が大きいところがあって、ここを再整理しておりますが、まず日本の出版界の特徴でございます。
 2行目の後半からありますが、学術出版社と一般の出版社の区別が明確でない。また、書いた本そのものに関しましても、一般読者をターゲットに含む書籍を執筆する場合もあるということで、なかなか書籍を限定してモニタリングするというのは非常に困難だということがあります。
 そして、大学図書館で購入された書籍に関して、CiNii Booksということで、いわゆるデータベースというものが存在しているのですけれども、それは裏を返すと、CiNii Booksは大学図書館が購入した書籍に限られるということで、全ての人文学・社会科学の研究成果としての書籍を網羅はできていないということがあります。
 また、大学図書館が購入した本ということに関しても、それがそもそも学術専門書なのか一般書なのかというのを、購入した段階で例えば大学図書館側で何か区別ということを必ずしもしていないというところもありますので、そこもまた留意が必要。
 そして、DOIという、御案内かもしれませんが、いわゆる書誌に関してのURL、住所みたいなものですが、これを持たない論文はあるのですが、DOIを持たない書籍というものもまだまだ多いというところがあります。所属機関の情報についても入力がまた必須でないということがありますから、本は単発で登録している部分があって、名寄せというのも非常に困難があるということでございます。
 そして、書籍の被引用情報というものも、現時点ではほとんどないといったような状況でございます。
 ここでちょっとアスタリスクでつけております、図書館職員がCiNii Booksを登録する際には、株式会社図書館流通センターが全ての商業流通する書籍に付与する書誌データであるTRC MARCを利用しているということです。売っている本全てに関して書誌情報を集めているのが、民間のサービス会社である図書館流通センター、そしてそこがTRC MARCという、全ての市場に回っている本の書誌データというのを、大学や地方自治体の図書館にレファレンスサービスとしてビジネスをやっていらっしゃる。そういったものがあるので、民間にはあるということを御紹介させていただいております。
 続きまして8ページでございます。最後に、こういった論文であったり書籍以外にも、研究発表媒体の特徴としてありますということで、表彰であったり展示であったり、知的財産権というのがある。もちろん網羅的なデータベースはないというところでありますので、モニタリングというのは難しい。
 ただ、こういった、ある意味データベースになじみづらいというところも、JSTが普及しておりますresearchmap、そういったものも含めて、研究者が登録していただくということで、こういったきめ細やかな部分というものも、データベース化、見える化はできるのではないかと思っております。
 また、以前プレゼンをしていただきましたが、日本現代アートの資料ということで、芸術分野は「Art Platform Japan」というものもありますので、こういったものがますます進んでいくことがあると考えております。
 9ページをお願いします。これは海外の動向ということで、これも以前、本委員会において御説明いただきましたノルウェーモデルということがあります。
 これはただ、ノルウェーモデルのような学術出版物の定義やランクづけを、日本の出版界の前提に当てはめることができるかというと、そこの前提が違う、文化が違うということもありますので、ノルウェーモデルのようなものを、公平性、研究者コミュティーの理解の面で実施するということは、やはり課題があるのだろう、多いのだろうということがあると思います。
 続きまして、イギリスにおいて行われているREFに関しましても、これも膨大な資料をピアレビューするということで、これを我が国で行うに関しては、やはり人的・経済的コストと、定性的評価への信頼及び標準化ということで、なかなか、REFのようなものをそのまま取り入れるというのも課題があるのだろうと思っております。
 そういった中で、国際的研究コミュニティーということで、「サンフランシスコ宣言」、「研究計量に関するライデン声明」等々では、やはりピアレビューというのが重要であるとされています。定量的な評価というものは参考にしなさいと、そういったようなこともありますので、こういうことも留意していく必要があると思っております。
 10ページをお願いします。こういった現状の把握を踏まえまして、人文学・社会科学のモニタリング指標ということで、本委員会において御議論いただきたい、御検討いただきたいことのたたき台というページになります。
 なぜモニタリング手法を検討する必要があるのか、目的として事務局で記載しました。
 科学技術・イノベーション基本法の改正ということによって、人社というものが科学技術と同じ範囲に位置づけられた。そのために、人文学・社会科学の厚みのある知の蓄積を図り、自然科学の知との融合による総合知の創出・活用ということが基本法の改正によって、これからの人社の観点としては必要であるというふうになってきた。
 こういった、知の蓄積を図るとか、総合知の創出・活用を促進するということに関しまして、学術及び科学技術の観点から、まずは人文学・社会科学の研究活動を可視化する、見える化をするということで、振興を図っていくということ。
 例えば予算もあるでしょうし、様々な大学研究機関の取組もあると思います。そういったところで振興を図るに当たり、やはりそれを可視化できるようにしていくということが、モニタリング指標の検討の目的として一つあるだろうと。
 また、こういった研究成果を可視化する、そしてそれを国内外に発信していくということで、例えば、、国民の皆様に人文学・社会科学の存在、有用性、有効性、そういったものが理解増進につながっていくということ。また、それが国際的な観点からもいいことになるのではないか。そういった理解増進の観点からも、やはり可視化する、そしてそれを発信していくということが必要ではないかという目的としてあります。以上のことで、モニタリング指標を考えていければと思っております。
 方針としましては、これは以前、本委員会で御説明したのですが、内閣府CSTIのほうで、自然科学・人社を含めた全体的な「研究力を多角的に分析・評価する新たな指標の検討」というものが別途あったものですから、その議論も踏まえてやっていくほうがいいのではないかということで、11ページはちょっと飛ばしまして12ページに行きたいのですが、左にある「研究力の柱」ということで、何を研究の目的とするというか、ゴールとするかという観点と、何をもってそれをモニタリングするかというのをクロス的に見たほうがいいのではないかというふうに考えております。
 研究力の柱ということで、一番上と一番下、そして下から2番目というのが、人社・自然科学共通のものとしてあると思っておりまして、上から2つ目3つ目が、特に人文学・社会科学系で特有、こういった観点は重要ではないかという観点がございます。
 例えばですが、研究力の柱として一番上、「真理を探究、基本原理を解明、卓越した成果を生み出す力」、こういったものが、例えば人社で目的としてゴールとしてある場合に、それを何で見るかというときに、右に行っていただくと、いわゆる国際ジャーナル論文といったもの、これでまず一つ見られるのではないかと。
 例えば上から2つ目、「自国の言語で実施できる研究力」ということになりますと、右側に行くと「国内のジャーナル論文」。例えば上から3つ目、「国際化の進展」というふうになりますと、ちょっと右下に行くのですが「国際共著」であったりという感じで、これが1対1だけではなくて、おそらく複数にまたがったりするんでしょうけれども、やはり柱ごとに何かアウトプットを見ていく。アウトプットであったり、例えばアウトカムというのもいろいろあるのだろうというふうなものが、イメージ図として12ページで挙げさせていただいております。
 11ページでございますが、皆様の御認識ですと、アウトプット・アウトカムというような形が一つ指標として考えていきたいと思うのですけれども、なかなかこのインパクトというのは課題が多々ありますので、一旦は、今回におきましては今後と整理させていただきまして、今回のモニタリングを検討するに当たっては、アウトプット及びアウトカムというような観点で御議論いただければありがたいと思っております。
 13ページをお願いします。
 ということで、先ほどのイメージを踏まえまして、研究成果媒体に基づく指標としては次の4点があるのではないかということで、「国際ジャーナル論文」「国内ジャーナル論文(学会誌や大学紀要も含みます)」「プレプリント」「書籍」といったもの。今回御議論いただくということで、たたき台として簡素な書き方にさせていただいておりますが、このようなものはまず研究成果媒体に基づく指標案としてはあるのではないかと。
 その他、下にございますが、これは事務局で今把握をしている調査になるのですが、1つ目の丸ですが、「他分野との連携状況の把握」ということで、NISTEPのほうが、「科学技術の状況に係る総合的意識調査」ということで、サンプリング調査で研究者の方々から意識調査を毎年やっているものがございます。そこでいわゆる総合知のような、人社の先生にお聞きします他分野との連携というようなアンケート調査、意識調査というものも、いわゆる異分野融合というような観点でも、そういったアンケート調査の結果というものも使えるのではないかということ。
 そして、その下でございますが、これもまたNISTEPがやっているサイエンスマップという調査によりますと、これはこの資料の最後のほうに参考をつけておりますが、サイエンスマップ調査を使うと、いわゆる研究のトレンドというもの、世界の論文からキーワードを引っ張ってきて、どういうトレンドがあるのか。そこでトレンドを見て、じゃあ自分たちはどうなんだろうという、そういう把握をするという調査があると。こういうのも一つ使えるのではないかという案でございます。
 以上がモニタリング指標の案として御議論いただきたいものでございます。最後14ページなのですが、課題ということで我々が把握しているものについて、簡単にまとめております。
 今後の課題ということで、14ページ、1つ目は、書籍のデータに関しましては、網羅的に把握するというのは困難であるということ。網羅的にもしやろうとすると、TRC MARCマークのような民間でやっていらっしゃるデータベースとの連携というものが必要であり、それはなかなか検討も要る。
 また、質的な側面、例えば被引用情報というものも、いわゆる本の特性、巻末に書いたり脚注に書くというような引用情報、それをまた被引用ということになってくると、そこをデータベースというのは難しい、こういったことが引き続きの課題としてある。
 社会的インパクトでございます。計量的にモニタリングする手法はないのですけれども、実際いろんなインパクトが生じているのも事実でございますので、これをどうやれば把握できるのかというのも将来課題としてある。
 3つ目が、国際性の向上ということでございます。なかなか国際的な発信というのができていない、難しい分野等々あるところでございますけれども、それが経済学などはできているなど、分野ごとの特性もあるのでしょうが、これを進めていくということで、国際ジャーナルへの投稿、国際シンポジウムでの発表のような、今やられている取組を促進していくということもございますし、また、本委員会でもプレゼンをいただきましたF1000、こういった面白い、いわゆるグローバルな、かつ簡単、取り組みやすい、筑波大学で実施されている取組がありますので、こういったものも参考にして、国際性というものを進められるものがあるのではないか。また、自国語による研究業績の国際的発信の強化ということもございます。
 こういったF1000のようなものもありますし、自国のもの、自国語による発信というのも、これまた分野によって難しいのかもしれませんが、これらも強化、発信をしていくことも重要であるだろうと思います。
 最後は芸術分野の特性ということで、実演家としての成果、例えば踊りであったり書であったりという、研究者本人の成果が、いわゆる研究成果になるというのがコミュニティーで受け入れられていることが多いということ。また、テンポラリーということでございますと、なかなかデータベースに残さない、残せないというような成果もあるということでございますので、これはもう独自な指標が必要でしょうし、これについても引き続きの検討課題と考えております。
 事務局から資料2につきましての説明は以上となります。よろしくお願いいたします。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明を踏まえて、本骨子案について御審議いただければというふうに思います。最初にもお話がありましたように、これはこれまで議論してきたことの取りまとめの第1案ということで、取りまとめ案ではなくて骨子案ですので、今後何回か皆様にたたいていただいて取りまとめていきたいというふうに考えているものでございます。
 それでは、御発言のある方は挙手をお願いできればと思いますが、いかがでしょうか。
 それでは、最初、神谷先生、新福先生、田口先生の順でお願いできればと思います。
 では神谷先生、お願いします。
 
【神谷委員】  どうも、まとめありがとうございました。骨子案ありがとうございました。サンフランシスコ宣言について言及があったところなのですけども、この骨子案では、モニタリング指標は国際ジャーナル論文、国内ジャーナル論文とプレプリント、書籍、それからその他になっておりますけども、基本的に論文数というのが大きな柱になっているというふうに考えます。
 これは、私の理解ではサンフランシスコ宣言には矛盾していると思います。要するに個々の論文の内容をきちんと評価してくださいというのがサンフランシスコ宣言の内容だというふうに私は理解しております。
 サンフランシスコ宣言なのですが、今後いろいろな大学でサンフランシスコ宣言に署名していくという可能性がかなりあるというふうに私は思っております。というのはなぜかというと、私が所属しております東京大学では、この署名をするかどうかについて検討が始まっておりまして、ごく一部の先生しか知らないのかもしれませんけれども、検討していらっしゃる先生方は割と肯定的だというふうに理解しております。
 そうすると、サンフランシスコ宣言がかなりの大学が署名するということになってきますと、このモニタリング指標とやや齟齬が生じるという可能性があるというふうに考えております。
 そうすると、モニタリング指標としては、簡単でもいいですけども何らかのピアレビュー的なものを入れていくというのがよいようには思うのですが、その点、もし御検討になられているようでしたら御回答をお願いいたします。
 
【城山主査】  今の点について、事務局、いかがでしょうか。
 
【河村学術企画室長】  9ページに書かせていただきましたサンフランシスコ宣言とライデン宣言に関しまして、この2つで、ある意味共通する典型的な例ということで引っ張って記載しております。
 両宣言に共通しているのは、ピアレビューを大切にしようと。計量的だけでは駄目だよと共通事項として引っ張ったものです。サンフランシスコ宣言自体をあまり細かく書いていなかった一方で、神谷先生がおっしゃっるのは、数を参考としてもおかしいとまでおっしゃっているのでしょうか。
 
【神谷委員】  数が駄目とは言っていないかもしれませんが、少なくともインパクトファクターについては極めて否定的だというふうに私は理解しております。
 インパクトファクターもある意味、数ですので、数に関しては、駄目とは言っていないかもしれませんが、かなり否定的と。まあ、参考程度ということであればいいのかもしれませんけども。
 ということで、やっぱりピアレビューを主にしなくちゃいけないというのが、基本的なサンフランシスコ宣言の骨子だというふうに考えております。
 
【河村学術企画室長】  これはまだたたき台ですので、今後事務局で整理していきたいのですが、ピアレビューというのは、あくまで例えば評価をするというところなのかなと。
 
【神谷委員】  そのとおりだと思います。例えば採用とか昇進、これに関してはピアレビューを主にしなさいと。例えばインパクトファクターの高いジャーナルに何本あるから採用するとか昇進させるというのはやってはいけませんよと、こういうことです。
 
【河村学術企画室長】  これは冒頭書かせていただいたのですが、評価ではないよというのも一つはっきりさせておきたいと思っております。
 
【神谷委員】  はい、分かりますけども、評価でないにしても、モニタリング指標にしても、必ずしもサンフランシスコ宣言に合致しているわけではないので、もし多くの大学がサンフランシスコ宣言に署名していくということになりますと、モニタリング指標であってもやや批判的なところが出てくるかなというような気はいたします。
 
【河村学術企画室長】  そうですね。そういったところもあった中での、ここも評価ではないということもありつつ、ただ、書類上は出てくるじゃないかというところもあるので、そこは配慮をしっかりとして、誤解のないような書き方を、また次回以降も含めまして御議論させていただきたいと思います。ありがとうございます。
 
【神谷委員】  ありがとうございます。まだ骨子案ですので、ぜひ御検討よろしくお願いいたします。
 
【城山主査】  ありがとうございました。一つはこの9ページのサンフランシスコ宣言の引用の仕方で、取りあえずインパクトファクターの偏重に慎重になること、定量的評価はピアレビューの参考にすることということで、そこの紹介の部分は、多分神谷先生のおっしゃられた趣旨にそんなに反していないと思うのですが、その後の総括のところで、ピアレビューを基本として多大な人的・経済的コストをかけてというものができるかということで若干ネガティブな書き方になっているので、ちょっとそこの書き方を考えたほうがいいということでしょうか。
 これは恐らく、同時に社会的インパクトのところでイギリスのREFの話も、これも膨大なピアレビューなのでなかなか大変ですよという、そういうニュアンスで結構書かれているんですけども、確かに全国的なモニタリングをやるときにこれだけコストをかけるのかとか、さっき神谷先生がおっしゃられたように、人事だとかそういうローカルな局面でやるのかということによって違いはあるかもしれませんが、もう少しピアレビュー全体に対してポジティブな評価をしておいたほうがいいという、そういうニュアンスでしょうかね。
 
【神谷委員】  はい、それでよろしいかと思います。
 
【城山主査】  ちょっとピアレビューの扱い、全般のニュアンスのところを、事務局のほうに少し御検討いただければと思います。どうもありがとうございました。
 続きまして新福委員、お願いします。
 
【新福委員】  おまとめありがとうございます。私はモニタリング指標のところなんですけれども、これまで、どの分野ではどういうアウトプットが多い、大事であるというような議論が多かったように思いまして、ただ、それだと結局何をしていきたいのか、どういう方向性を目指してその分野を発展させていくのかというところの評価は難しいなというふうに思っていたところで、この研究力の柱というところが、研究力ではあるんですけれども、結局中身を読んでみると、何を目指しているのかというのが非常に明確かなというふうに思いまして、分かりやすくなったなというふうに思いました。
 私が思っていたのは、私は医学系、医療系、国際保健の研究をしているんですが、よく人類学の先生にインプットをいただいて、その土地の人々の価値観ですとか文化を尊重した、配慮した上での医療の在り方というところを検討しております。
 そうしたときに、やはり人文学の力というのは非常に大事に思っておりまして、そういった学際研究ですとか、いわゆる総合知を生み出していく上では、こういった他分野との協働をして、アウトプットにそういった多分野の研究者と共著の論文を出すですとか、共著の図書でもいいんですけれども、そういった部分が入ってくるといいなというふうに思っていまして、例えば「国際共著」というのがアウトプットにはあるんですけども、多分野で何かを出しているという指標が入っていないなと思ったので、そういったものはおそらくカウント可能ではないかなというふうに思いますので、考慮いただければと思いました。
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございます。事務局、いかがでしょうか。
 
【河村学術企画室長】  先生がおっしゃったように、いわゆる総合知だと思います。ただ、データベースというか、数字という観点から言うと、我々も、トレンドとしてはあるものの、なかなか把握、俯瞰できるような数はあるかなということを悩んでいるところでございます。
 ただ、12ページの右下辺り、「特許」の左上、「産学共同研究」の上のほうに、あくまでイメージですけども、「他分野との連携(総合知)」というのが観点としてはあります。
 ただ、これを何で見るのかというのが、また引き続き、我々も調べていきたいと思います。おっしゃるとおり、これは観点としては重要であるということで、どうやって見ていくか等も含めて、また御議論させていただければと思います。ありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございます。13ページで御紹介いただいたNISTEPの定点調査で、マクロな状況としての他分野との連携状況については把握するという、一つの参考資料にするとされているので、そのマクロな状況だけじゃなくて個々の評価みたいなところに、他分野との連携状況をどう反映させるかみたいなところが課題に残っているという、何かそういう感じの整理でよろしいわけですかね。
 
【河村学術企画室長】  そうですね。NISTEPのものは、我々もまだ完成していないので見極められていないのですが、おっしゃったようにマクロだと思います。
 個々の評価というよりは個々の活動量を見るというときの総合知というような観点は、おっしゃるとおり課題であるというところで、主査のおっしゃるとおりだ思っております。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして田口先生、お願いします。
 
【田口委員】  田口です。書籍に関することでちょっとお伺いしたいと思っています。
 スライドの7番に、「書籍」という項目がありますけれども、この中で、学術出版社と一般の出版社との区分が明確ではないという話があって、「日本の出版界においては」となっているんですが、これは国際出版社においても、必ずしもこの区分は完全に明確ではないのかなというふうに思いますし、そもそもこの区分がどこまで重要なのでしょうか。
 そもそもこういう区分が明確にできるのかというのは非常に疑問で、恐らく研究者が書籍を出版する場合には、ほとんどの場合は何かしらの仕方で研究成果が反映されている。たとえそれが一般書の形態で出版されたとしても、そこには研究成果が反映されているものだと思いますので、そこに厳密な線引きはできないんじゃないか。
 ごくごくまれに、例外として、自分の研究成果と全く関係のない書籍を大量に出版しているような方もいるかもしれませんが、今回は評価ではなくてモニタリングということなので、そういう例外も含まれるということはある程度仕方ないのかなと。
 そういうことで、特に学術と一般とを区別せずに書籍に関してモニタリングして、そういう外れ値といいますか、例外の方に関しては、あくまで評価の部分で区別していくということで構わないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
 
【城山主査】  ありがとうございます。事務局、いかがでしょうか。
 
【河村学術企画室長】  この部分につきましては、書き方としてはいわゆるノルウェーモデルを意識した書き方です。ノルウェーモデルという、ある程度かちっとしたものがあるものを、日本に当てはめることを意識したときに、このように「学術出版と一般の出版社の区別が明確でなく」という記載をしたものであり、何か明確でないのが悪いというわけでもないですし、そこは事務局としてどうこうというよりも、ぜひ委員の皆様から何か御意見をいただければありがたいと思っております。
 
【田口委員】  そういうことですと、ノルウェーモデル自体にそこまで従う必要はないのではないかなというふうに、個人的には思っているところです。この点に関してはですけれども。
 あと、もう1点だけよろしいでしょうか。今のとはまた別件なんですけれども、スライドの14枚目、今後の課題の中の書籍に関するデータの充実というところなんですが、ここで、「書籍に関する被引用情報の可視化に向けて引き続き検討していく必要がある」というふうにあるんですが、ここに関して、例えば国立国会図書館に書籍を納入したりするときに、引用情報についてもデータの形で納入するような仕組みというのをつくれないものかなというふうに前から思っていまして。
 そういうデータを納入することによって引用情報が得られるということは、出版社にとっても意義があることなのかなと思いますので、協力が得られるのではないのかなというふうに考えているのですが、そのようなことをもしかしたら検討したらよいのではないかというふうに思っております。
 以上です。
 
【城山主査】  ありがとうございました。事務局、いかがでしょうか。
 
【河村学術企画室長】  民間の会社では、例えば本の被引用情報を集めることについて、例えばビジネスとしてどこまでメリットがあるのか、多分そこが民間の会社では最大の関心事項だと思います。先生がおっしゃったことは、例えば民間の何かビジネス的なメリットとか別の仕組みで入れるべきかどうかということも、また、長期的な課題ということで御議論いただければなというふうに考えております。ありがとうございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。この書籍に関する被引用情報の可視化の取組を考えるという中の、多分一つのアイデアとして、今、田口先生がおっしゃったようなアイデアも含めて考えることができるということになるのかなと思います。どうもありがとうございました。
 続きまして、すみません、井野瀬先生が14時半までと伺っているので、井野瀬先生に最初にコメントいただいて、その後、小長谷先生、仲先生の順番でお願いできればと思います。
 では井野瀬先生、よろしくお願いします。
 
【井野瀬委員】  すみません、小長谷さん、お先に失礼してしまいました。ありがとうございます。
 私は、先ほどから出ている指標についてもそうなのですけれども、指標のところに、国内ジャーナルで大学紀要を含む云々というのがあって、紀要の扱いをどうするかというのは、今、オープンサイエンスで紀要がすごく読まれていて、紀要が読まれるんだけれども、紀要というのは文系にとって、少なくとも歴史をやっている私、あるいは人文学の領域にとっては、査読がない分結構何でも書けるという、自由だという部分が一つ、書くほうのメリットとしてある。
 あるいは、紀要という形でなくても、各組織には大学院生たちが自分たちの成果を発表するための、そういう場も持っているんです。
 そういったものを含めて考えた場合に、先ほどの業績カウントのこととも関わるんですけれども、紀要で書くとか自由に書く、あるいはそれよりももっと自由な院生たちの場、そこで書く。それが、例えばさっきプレプリントもありましたけれども、バージョンアップしていくという考え方が入れられないかなという。
 1つの同じテーマで、それが作品になっていくときのバージョンアップということを、モニタリングの中、あるいは人文学・社会科学の研究成果をはかるというところにステップアップしていくということを何とか入れられないのかなということをちょっと考えました。
 と申しますのは、一気に、かつて書いたものを集めて著作として出版するということが人文学の場合にも多いのですが、そうすると、かつて書いたものの誤記であるとか引用ミスをそのまま引きずって、そして、公開されたときに出版社が慌てて、外部からの指摘で出版物を回収するという形の、研究不正と絡む事案も、文系の場合には今言ったステップがうまく踏めない、ステップがうまくカウントできないというところにもあるかなというふうに思われます。
 紀要であるとか大学院レベルで書いていく、そういった場の在り方を含めて、モニタリングのところで何か回収できないかなという、何か集められないかなというのが1点です。
 それからもう1つは、このたびロシアとウクライナの事案もあったせいで、緊急企画というのが物すごくいっぱい人文学の世界では、社会科学とともに持ち上がってきているんです。
 それは文系、人文学・社会科学の強みであって、そこに参加している――オンラインが多いわけで、参加している中には出版社の方がたくさんあって、その後の出版にもつながる。
 こういった、公開講座と言っちゃうと少し違うかもしれないんですけれども、今起こっているような緊急企画みたいな人文学の強みを、モニタリング指標のところで何か引っ張り出せないかなというのも、これはしばらくこういうのが続きますし、それから、これが人文学・社会科学の強みだとすると、何とか取り込めないのかなと思って、その辺のところをどのように考えられているか、ちょっと教えていただければと思います。
 すみません、ちょっとまどろっこしい言い方をしました。よろしくお願いします。
 
【城山主査】  事務局、いかがでしょうか。
 
【河村学術企画室長】  緊急企画のような、まさに人文学・社会科学の本当に強み、時々刻々と社会課題が発生して、それに対して対応できるというところが強みだと思います。
 大切な研究成果だと思いますが、そこをどのように見える化していくかというか、残せていくかというところが課題だと思います。
 御本人及びその周りはもう十分評価しているのですけれど、ちょっと離れた方々が、誰々先生はこういう緊急企画に参加されて、こういうすばらしいことを言ったんだよねということが分かるようにというのは重要な観点だと思います。
 引き続き、どのように見ていくことができるのか、対象としていくかということは、また御議論させていただければと思っております。
 1つ目の点は、モニタリングしようというよりは、これも人文・社会科学の特徴なのでしょうか、小さ小さなところから始めて、それが最終的に本になるけども、そもそもの発想の種はもっと前にあって、それがもしかすると10年とか15年とかかけてやる、これがある意味当たり前だったりもするのかもしれません。その間の中でどういうブラッシュアップ、統合していくのかということは、モニタリング指標そのものというよりは、研究成果をどのように、どのスパンで捉えるかとかいう話なのかもしれませんけど、すぐにはアイデアが出ませんので、これもまた引き続き御議論させていただければと思っております。ありがとうございます。
 
【井野瀬委員】  ありがとうございます。人文学の特徴をどういうふうに捉えて、モニタリングあるいは指標という形にして、研究者のインセンティブにもなっていき、社会への刺激にもなっていくかというところをどう回すかというところを、もう少し知恵を、私も出せればなと思います。ありがとうございました。御配慮、城山先生、ありがとうございました。
 
【城山主査】  ありがとうございます。1つ目の緊急企画の件は、これは河村室長が最初のプレゼンの中で地域講習会みたいな例も挙げられましたけども、社会的インパクトというのは確かに測定は難しいんだけども、例えば講習会だとか緊急企画だと数えようと思えば数えられるので、数にどれだけ意味があるかという問題はあるかもしれませんが、社会的インパクトもできるものはきちっとやっていくということが、やっぱり人社系にとっては重要だということかなと思います。その辺りのニュアンスは今後検討させていただければと思います。
 それからバージョンアップの件は、恐らくこれ、例えばワーキングペーパーをその後査読論文にできるかどうかとかも結構分野によってカルチャーが違うというのも聞いたこともあり、逆に言うと、これは先ほどの田口先生のお話じゃないですけども、モニタリングだとするとそこはかなり柔軟にいろんな指標を取っておいて、ただし評価するときにそれを重複と数えるか数えないかは評価の段階で考えればいいんだということで、むしろ幅広に取っておくというのもモニタリングについてはありなのかなという気もします。ちょっと、その辺りも今後議論させていただければなと思います。どうもありがとうございました。
 すみません、小長谷先生、お待たせしました。よろしくお願いします。
 
【小長谷委員】  ありがとうございます。小長谷です。
 もともと学術振興を支援するための指標ですよね。
 人文系・社会科学系では、伝統的な主流部門の方に関してはそれほど支援しなくても、慣性の法則が働いて十分評価もされると思われます。言い換えれば、チャレンジをどうやって支援するかという点が重要で、柱としては学際性、国際性、社会性という、大体この3つぐらいじゃないかと思います。
 こういう点で頑張っている研究者を、ピアレビュー意外に評価につなげる方法として、自己申告できないだろうかと考えて、一つ提案したいと思います。
 それは論文へのキーワードの追加です。
現在、どんな雑誌でも大抵、タイトルとアブストラクトとキーワードぐらいは英語でつけるという習慣になっていると思います。
 この流れの一環として、どんな分野と協力しているかという学術領域を付記し、また研究者以外のいわゆるステークホルダーと協業しているかという点について、キーワードの類いとして言明していくようにすれば、いろんな評価方法が可能になるでしょう。
 例えば新福先生が先ほど学際性を評価してほしいとおっしゃったときに、どうやって調べるか分かりませんというお答えがありました。基本的にはAIを駆使して、併記している著者とか、あるいは引用されている論文が、当該の方とどれだけ違うかなど、ビッグデータを使って算出するということは、もちろん将来的にはできるでしょうけど、そんなややこしいことをしなくても、自分が――でたらめを言う人は別ですけど、そういう人はいないと考えて、こういう方々と一緒にやっているとアブストラクトの下にキーワードとして書いてあれば、すぐに簡単に検出できるわけですよね。それによって、どの分野とどの分野のコラボが進んでいるとか、学術界全体の流れを見るときも、すぐに調べられるわけです。研究のメタ研究をすることもできます。
 それから、先ほど田口先生が御提案されていたのにさらに加えて、和文の書籍であっても必ず英語でタイトルとアブストラクトとキーワードをつけるというようなことを慣習にしていけば、国内向けの本であっても、海外への橋渡しになるきっかけを自分でちゃんとつくっておくことができますよね。
 中身を本当に読みたいと思う人だけが自動翻訳機を使って読めるのですが、国際的に検索される手がかりながければ引っかかっていかないので、最初の引っかかりを自分でつくっておくということですね。
 学際性や社会性をキーワードで自己申告し、併せてそれらキーワードを英語にしておくことを提案します。本でも論文でも紀要でも、我々がそういう習慣を身につけて発信すれば、正しくモニタリングされていく方向へつながっていくんじゃないかなという、研究者自身の力を信じた制度にしていただきたいと思います。
 疑って調べるというのではなくて、頑張っている人を支援するという方向で考えていただきたいなと思いました。
 以上です。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。事務局、いかがでしょうか。
 
【河村学術企画室長】  まさしく、100%の信頼性と100%のシステムがないと駄目だというのも、それだとなかなか進まないということで、申告する側のちょっとした努力、そしてそれを支えるのは、何かインセンティブ、書きたい、書こう、書いたほうがいいんだという個々の動機。そして、それを醸成するのは多分研究コミュニティー、自分たちの分野の人たちはみんな書いているんだから書こうなどの、そういう仕組みだと思います。法的ではない仕組みというのも大切で、researchmapなどはそこは書けるのですけれど、書いている人もいれば、いない人もいるという状況でございますので、小長谷先生がおっしゃったような、自発的なこと、工夫で進むというところも、今回はまだ初歩の第1稿でございますので、あまり冒険的なことは書けなかったものですから、今後書くことに関して、また御検討及び御議論させていただければと思っております。ありがとうございます。
 
【小長谷委員】  冒険的過ぎるから書かないというふうにされたら意味がなくて、学術行政の上流から流れを醸成していただきたいのです。
 流れは下からつくるほうが大変なので、ぜひ、こういうアイデアもご検討いただき、そんなのキーワードの下に書きたくないということがあるなら別ですけれど、そんなに変な提案ではないんじゃないかと思っております。よろしくお願いします。
 
【城山主査】  今の構造だと、2023年からやらなきゃいけないということになっているモニタリングをどうしますかというストーリーになっているので、結構材料がある・ない、できる・できないというのをシンプルに書いちゃっているんですけど、少なくとも今後の課題のところには、むしろ今、小長谷先生が言われたような呼びかけというか、ある種のコミュニティーとしてのプラクティスなりやり方というのを考えていくべきだ、みたいなことを入れることは多分、少なくとも可能だと思うので、そういう形で少なくとも今の御提案をうまく入れられるといいんじゃないかなと思いました。ちょっとまたその辺り、検討させていただければと思います。
 続きまして仲先生、よろしくお願いします。
 
【仲委員】  ありがとうございます。私も小長谷先生の意見に同調するような形になるんですけれども、2つありまして、1つは、やはり日本の国内の学会誌というのは一定の権威があるというふうに考えられているわけですけれども、こういった学会誌での査読というのを最大限尊重するというのはあるかなと思います。
 小さい学会もあるし、本当に分野の小さいところもあるし、すごく大きい学会もあったりすると思いますし、国際性の高い学会もそうでない学会もあったりすると思うんですけれども、それって必要に応じてそういう形になっているんだと思いますし、それぞれの学会誌には本当に選ばれた論文が載っているので、そこは最大限重視してカウントしていく――カウントがいいのか分かりませんけれども、というのがあるかなと思います。
 それで、国際ジャーナルに載ったのがいいかというと、それも、例えばがん細胞の研究とかで、国内だけで発表してもインドの研究者、中国の研究者は読んでくれないというのであれば国際誌に出すんでしょうけれども、むしろ国内のこのコミュニティーの人たちに読んでほしいという論文であれば、水準の高いものもその学会誌に投稿するということはあると思うんです。
 むしろ、例えば心理学では国内のジャーナルの数が少ないので、そこで落っこっちゃったらしようがないとか言って、むしろ国際誌の、結構ピンキリある、途中から始めるかみたいな形で出すみたいなのもあったりするわけなんです。
 ですので、国際ジャーナルが一番というふうには置かれないで、むしろ査読があるかどうかということを重視するというのがあるかなと思いました。
 紀要も、査読が一般にはないというふうに考えられていますけれども、大学として、あるいは研究所として恥ずかしいものは出さないというのはあるので、やっぱり閲読、査読の目が入っていると思うんです。それも重視する。
 あと書籍も、勝手に書いているみたいに思われるところもあるかもしれませんけど、決してそんなことはなく、本屋もちゃんと質の高いものを出そうと思って、編集委員会とかにかけて、そういうのに生き残った本が出ているというふうに考えるならば、もう世に出ている人文・社会の活字になっているものというのは一定の重みを与えていいんじゃないかなというふうに思うところであったりいたします。
 これが1つで、今ある査読システムを最大限やっぱり利用したらいいんじゃないかなというのが1つです。
 もう1つは、小長谷先生が英語のいろいろタイトルとかキーワードをつけて、あと田口先生が、書籍データの受渡しみたいなことも考えていいんじゃないかとおっしゃったんですけれども、私もそこって、DeepLのようなものが今でも相当すごいのに、あと2年3年したら、もう今までの10倍、20倍、30倍と、精度が上がっていくと思うんです。
 そうしましたら、もうあんまり英語で出すとか出さないとか考えなくても、テキストになってさえいれば、それでキーワードが国外でも国内でも国際的に目に留まれば、誰でもが読めるというふうになるんじゃないかと思うんです。
 そう考えると、むしろ各学会に、論文をJ-STAGEとかに載せているところもありますけれども、そういうことを充実させていく。J-STAGEに載っているものも、場合によっては写真みたいな画像データみたいになっていて、テキスト化ができないようなのもあったりするんですよね。むしろそういうのをやめていくというのがあったりするかなと思うんです。
 今日の資料とかも、さっき私、ここ重要だからマークしようと思って黄色にしようとしたら、パスワードがかかっていて、このパワポのファイルには書き込みができないみたいになっていて、いじれないようになっているんですけど、テキストに関しては、研究論文のデータはDeepLとかにかけられるようにするとか、そういうふうになったらいい――まあ、それはちょっと言い過ぎだったかもしれませんが、要するに技術の発展と絡めていくのが必要かなと思いました。すみません、長くなりました。
 
【城山主査】  ありがとうございました。事務局、いかがでしょうか。
 
【河村学術企画室長】  今回まだ第1稿目というところもありますので、査読の話であったり、本のランク、区切りのようなところは御議論をいただければと思いましたので、あまり整理せず、書き切っていないところもありました。いただいた御意見、ありがたいと思いますので、今後も含めて御議論いただければと考えております。
 また、AI、自動判別というか、映像判別みたいな技術が進めば、ここまで悩む必要はないのかなと思うのですけれど、それも含めて将来できれば、また新たなステージ、新たにこういうものが見られるようになるのだということも将来的な目標としてあると思いますので、それも含めてこれからも御議論させていただければと思っております。ありがとうございます。
 
【仲委員】  どうもありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございました。一つのポイントは、査読の面でも技術的な面でも、国内ジャーナルと国際ジャーナルの区別というのは上下関係ではないのではないかという、多分そういうお話だったのかなと思いました。
 ちょっと関連づけて、私見で恐縮ですが、これ12ページの表のところで、その国内ジャーナルのところの評価の柱というのが「自国の言語で実施できる研究力」となっているんですけども、何か「実施できる」というのは何かちょっと二次的な言い方というか、弱いのかなと。
 つまり、むしろ自国言語でローカルコミュニティー向けに発信する必要があるものというポジティブな側面もあるので、何か「自国言語で実施する必要のある」とか、そういうような表現がいいのかなとも個人的には思います。この辺もまた、今後議論させていただければと思います。
 どうもありがとうございました。大体、今手を挙げていただいている方には全員御発言いただいたかと思いますが。
 あと加藤先生、どうぞ。
 
【加藤委員】  私は仕事の関連で、広く人事書類に目を通すんですけれども、人文に限らず、例えば私の分野の情報学においても、日本語論文が歴史的に見て多いという現象というか、問題を持っていたりします。
 何で日本語論文が多いかというと、日本には日本の情報学のコミュニティーがあって、それはそれなりに低くはないレベルを持っているからです。
 ただ問題なのは、日本の情報学のレベルが低くなかったとしても、仮に日本の情報の研究者が日本だけで論文を書いていたら、日本の情報学の研究は世界には知れ渡ることができないし、世界のコミュニティーと付き合うことができなくて、いわゆるガラパゴス的に発展してしまいます。
 もちろん、情報学というのは日本だけの情報学というのがあるとは思えません。――もしかしたら、あるかもしれませんけれども、もし日本でいい成果が出たとしたら、それは世界でもいい成果と言えるはずでしょう。
 というような議論が、情報学以外の理工学の分野にもあります。
 例えば、土木の場合で言えば、国とか県とか市とかの土木に関する行政をしている人に影響を及ぼすためには日本語で書いた方がいいんだという言説があるんですけれども、その一方で、先ほどと同様に、日本だけの土木もあるかもしれませんけれども、世界の土木のコミュニティーもあるだろうと思います。
 と考えると、恐らくは、人文・社会学においても、日本だけでもし発表し続けたら、孤立した日本コミュニティーが出来上がり、世界とつながったコミュニティーが出来上がらないかもしれない。
 だから、日本語で論文を発表することは決して悪くないし、日本のレベルの高いコミュニティーが実際あると思いますし、それを維持することは悪くないことだと思いますけれども、世界のコミュニティーにも参加し、世界に日本の研究を知ってもらうため努力をしないと、世界とつながれないと思います。
 ですから、世界も視野に入れて、日本のコミュニティーでもやっていくという、両岸的でないといけないんじゃないかなと、かねてから思っています。
 
【仲委員】  そうですね。そう思いました。賛成です。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。私も先ほどローカルのコミュニティーというのはちょっと強調しましたけれども、国際発信とはある種のトレードオフを含めてあり得るということかと思います。
 多分、今回の人社系で追加的に2つの指標を足すのも、ローカルな言語で出すものも意味があるという話と、国際性と両方置いているわけですよね。どちらかだけに偏るというわけではなくて、そこは多分、加藤先生がおっしゃったように両面あるので、その中で多分それぞれの研究者がターゲットを決めるということでしょうし、それをモニタリングした上でどう評価するかは、また評価者が重みづけをするという、そういうことになるのかなというふうに思います。どうもありがとうございました。
 それでは、大体一通り御意見いただいたかと思いますので、事務局において本日の御意見も踏まえて整理した上で、引き続き次回以降も議論を続けさせていただければというふうに思います。
 以上が主たる議題でありまして、最後にその他になりますが、人文学・社会科学の振興に当たり、御意見等がありましたらお願いいたします。何か特に今触れておくべきことがございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。それでは、これで会議は終了したいと思います。
 事務局から連絡事項等ございましたらお願いいたします。
 
【河村学術企画室長】  皆様、御意見ありがとうございました。本日御意見をいただきました中で、人文学・社会科学のデータインフラストラクチャーの今後の方向性の中間まとめ、議題1につきましては、今後、我々の令和5年度に向けた概算要求に向けても、いただいた御意見を踏まえまして検討していきたいと考えております。
 また、モニタリング指標のほうにつきましては、本日の御意見を踏まえまして、資料を改めて整えて、次回も御意見をいただきたいと考えておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 次回の人文学・社会科学特別委員会の日程につきましては、改めて日程調整の上、御連絡をいたします。
 また、本日の議事録につきましても、後日メールにてお送りいたしますので、御確認をいただければと思っております。
 御退席の際は、画面下の赤いバッテンボタンからの御退席をお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。

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