人文学・社会科学特別委員会(第10回) 議事録

1.日時

令和4年3月28日(月曜日)16時00分~18時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 「総合知」の基本的な考え方及び戦略的に推進する方策
  2. 人文学・社会科学に関連する指標に関するヒアリング
  3. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員、専門委員)
城山主査、勝委員、小長谷委員、白波瀬委員、須藤委員、仲委員、井野瀬委員、尾上委員、加藤委員、神谷委員、岸村委員、小林委員、新福委員、戸田山委員、山本委員、飯島委員、後藤委員、田口委員
(科学官)
木津科学官、森口科学官、苅部科学官

文部科学省

河村学術企画室長、二瓶学術企画室長補佐

5.議事録

【城山主査】  それでは、時間になりましたので、ただいまより人文学・社会科学特別委員会を開催いたします。
 まず、本日、オンラインの開催ということになりますので、事務局から注意事項をお知らせしたいと思います。よろしくお願いします。
 
【二瓶学術企画室室長補佐】  本日はオンラインでの開催となりますので、事前にお送りしておりますマニュアルに記載のとおり、御発言の際には「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、指名を受けましたら、マイクをオンにし、お名前を言っていただいた上で、ゆっくり御発言いただければと思います。なお、主査以外の委員の皆様は、御発言されるとき以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 機材の不具合等ございましたら、マニュアルに記載の事務局連絡先に御連絡ください。
 以上でございます。
 
【城山主査】  それでは、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
 
【二瓶学術企画室室長補佐】  本日、オンラインでの開催となります。資料は事前にお送りさせていただいております。本日の主な議題に係る資料といたしまして、資料1から資料2-1、2-2、資料3までございますので、御確認をお願いいたします。
 本日、委員18名全員御出席の予定でございます。井野瀬委員におかれましては17時から御参加の予定と承っております。
 また、本日はオブザーバーといたしまして、エビデンスに基づいた科学技術・イノベーション政策に関する御研究をされている科学技術・学術政策研究所の赤池上席フェローに御参加をいただいております。また、「総合知」の基本的な考え方及び戦略的に推進する方策の御報告をお願いしております内閣府科学技術・イノベーション推進事務局統合戦略担当の佐野ディレクター、また、令和4年度戦略目標の御報告として、研究振興局参事官(情報担当)付の上村専門官に御出席をいただいております。
 事務局からの確認事項は以上でございます。
 
【城山主査】  それでは、議事に移りたいと思います。本日の議題は、議事次第にありますとおりでございます。
 議題1でありますけれども、「総合知」の基本的な考え方及び戦略的に推進する方策ということであります。まずは議題1につきまして、佐野ディレクターから御説明をいただきます。
 それでは、資料1に基づきまして、佐野ディレクター、よろしくお願いいたします。
 
【内閣府科学技術・イノベーション推進事務局(佐野)】  改めまして、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局の統合戦略を担当していますディレクターの佐野と申します。今日は総合知の報告をさせていただく貴重な時間をいただき、本当にありがとうございます。15分ほどで説明をさせていただきます。
 今日の資料ですが、今表示されています「総合知」の基本的考え方及び戦略的に推進する方策中間取りまとめのポイントというのが、2枚の短い概要の紙となっております。それから、通し番号の3番以降がその本文となっておりまして、ここではまだ中間取りまとめ(案)としてありますが、ほぼ了承されたもので、最終調整を現在行っているところです。
 まず説明ですが、6ページからお願いいたします。
 この略称、総合知戦略ですが、出発点としては科学技術・イノベーション基本法の改正になりまして、このことは恐らく皆様御存じだと思いますので、詳しい説明は割愛させていただきます。そこが発端となりまして、この紙の下のほうの「第6期科学技術・イノベーション基本計画では」から説明しますが、総合知に関して、基本的な考え方や戦略的に推進する方策について令和3年度中に取りまとめるということとしており、今回取りまとめに至ったものです。また、同じところに、人文・社会科学や総合知に関連する指標について令和4年度までに検討を行い、令和5年度以降モニタリングを実施することとしているということもありまして、今後このような検討していくことになっています。
 この取りまとめにおきまして私たちが考えたことの1つとして、総合知というと、非常に幅広い意味を含んでいる、含むことのできる言葉であるので、何でもかんでも全てに対応できるものを一発でつくり上げるというのは相当困難だろうと。そこで、まずは科学技術・イノベーションを推進する視点で整理し、総合知の基本的考え方と戦略的な推進方策について中間的に取りまとめると、最終的な取りまとめではなくて、まずは科学技術・イノベーションの視点で、第1段階として取りまとめて、そしてその後、さらに様々なステークホルダーと対話してよりよいものにしていこうと、そういうふうに考えて取りまとめを行いました。ですので、最終版というものでなくて、まずは中間取りまとめ、そして来年度から、様々な方にこの資料を見せて、対話をしていくということを考えております。
 では、1枚目に戻っていただきまして、全体的な概要を説明させていただきます。
 今なぜ総合知が必要なのかというところですが、世界の研究や技術開発の目的の軸足が、持続可能性と強靱性、国民の安全と安心の確保、さらには一人一人が多様な幸せを実現できる社会へと移っているという分析があります。ここで3つ、括弧書きで示してありますが、いずれにしても非常に複雑な課題で、専門知1つで決して解くことのできるものではないと考えています。ですので、1つのお題目にしても、様々な専門知を持ち寄り、解決していく、そういう仕組みをもっと日本の中で充実させていく必要があるのではないかというふうに考えました。そして、我が国の科学技術やイノベーションが世界で伍していくためには、あらゆる分野の知見を総合的に活用して、社会の諸課題への的確な対応を図ることが不可欠というメッセージとしております。
 その右にイラストで、手に埋められたマイクロチップとか、ロボットと高齢化社会、そんなポンチ絵を入れてありますが、研究が人間に近づき、人生に近づき、それから技術と高齢化といった、そういう今まであまり気にしてこなかったことがどんどん組み合わされていくときに、自然科学の力だけでは到底できないことを、ここで人文・社会科学の力を借りてやるという意味ではなくて、もう全ての科学技術、全ての知恵を動員して解決していくということをメッセージとして出していこうということになりました。
 次の総合知の基本的考え方のところですが、1つ戻っていただいて真ん中の囲みのところですが、最終的にこのような定義に、今のところ落ち着いております。総合知とは、多様な知が集い、新たな価値を創出する知の活力を生むこととしてあります。ここで「多様な知が集う」とは、属する組織の「(のり)」を超え、例えば学部の壁を超え、研究所の壁を超え、そして専門領域の枠にとらわれない多様な知が集うこととしています。また、新たな価値を創出するとは、安全・安心の確保とウエルビーイングの最大化に向けた未来像を描き、そして描くだけでなく、科学技術・イノベーションの成果の社会実装に向けた具体的な手段も見いだし社会の変革をもたらすことと、少し長いのですが、未来像を描くことと社会の変化をもたらすところまで、そこまでの道筋を多様な知を用いてやっていくこと、総合的にやっていくこと、こういうことが総合知なのではないかとしています。これらによって知の活力を生むという、手段といいますか、過程といいますか、その結果といいますか、それらがまとめたもの全てが総合知であり、総合知を推し進めることが科学技術・イノベーションの力を高めるというふうにまとめてあります。
 その右下に下線で書いてありますが、総合知の活用というのは、それが目的ではなくて、新たな価値の創造や課題解決により社会変革するための手段というふうに考えております。決して総合知を目的化することなく、手段として、より大きな目的のために使っていく、そういうふうに考えております。
 その総合知の活用イメージ、左側の図ですが、これは、総合知、一文で書いておりますが、あまりに抽象的なので、もうちょっと具体的にどんな感じのことをやっていくのかという絵にしたものがこのイメージなのですが、まず1番、多様な知を持ち寄ります。緑色のロボットとか、青いおじいちゃん、おばあちゃんとか、音符の絵とか、一つ一つにそれぞれイメージするものがあるのですが、もうありとあらゆる知を持ち寄るというイメージです。それを持ち寄って、複雑な課題、毛糸が絡まったような絵を描いておりますが、その複雑な課題に対して多様な知を持ち寄り、まずそこから得られるビジョンをつくってみよう、そしてそこのビジョンからバックキャストして、3番、課題の整理を行おう、そして、ここでうまく整理できればいいんですが、できない場合には、またビジョンの形成、それからバックキャストして課題の整理と、この辺りをぐるぐる、しっかりと時間をかけて整理することで、よりよい課題の整理、問いをつくるという作業が重要なのではないだろうか。そして、もしうまくほどけたならば、そのほどけた一つ一つの課題を、連携しつつ専門知で解決し、そして目指す未来を実現しようと、こういう感じの流れを総合知の活用イメージとして描いております。
 これによって新たな価値を創出することができたり、それから、持続可能性や一人一人の多様な幸せに真正面から向き合うことができるのではないだろうか、そしてこれが科学技術・イノベーションを我が国の勝ち筋の源泉にすることができるのではないだろうか、こんなふうに考えております。勝ち筋という言葉はちょっとどぎついという御意見もよくあって、私も最初すごく違和感があったのですが、勝つというイメージよりも、日本が世界の中で科学技術において確固たる位置を維持していく、今よりちょっと上ぐらいでしょうか、どの辺か分かりませんが、そういう科学技術において世界の地位を維持していく、そういうイメージがこの勝ち筋という言葉に入っております。
 では、次の紙をお願いします。総合知の戦略的な推進方策を2枚目にまとめております。総合知の社会への浸透を踏まえて、段階的に方策を推進することが必要としています。現時点では総合知がどういうものであるかというのが社会的に認められているものではありませんし、今回ここでまとめたものが全てではないと考えておりますので、今後も段階的に検討し、それから推進方策も徐々にやっていこうということが書いてあります。総合知の活用事例とともに、基本的考え方を社会に発信する、それから、総合知を活用する場の増加を促進、場を通じて人材を育成、人材活用につながる評価を構築、人材の登用により、社会の幅広い領域でさらなる場を構築と、こういったことが10年かけて進んでいくようなイメージで、下の線表を作っております。縦に問い、場の構築、人材育成、人材登用と並んでおりまして、これらを中心に議論をして、それぞれ何ができるかというのを身近なところから考えて作ったのが、この線表になります。
 内閣府ではムーンショットや次期SIPというものを持っておりますので、その中で総合知をうまく活用したプロジェクトをつくっていき、その成果を周知するということは非常に有用ではないかと考えております。また、それをどうやって公開するかという点で、中央あたりにありますが、社会への情報発信、総合知キャラバン、総合知ポータルサイトとありますように、よい先行事例、ムーンショットや次期SIPに限らず、よい先行事例を社会に発信していって、なるほど、そんなふうに全ての、あらゆる知といいますか、できる限り、考えられる限り多くの知を集めてやると、こんなプロジェクトができるのかと、そんなようなことをうまく伝えていけたらいいなと考えています。最終的に10年後には、右側の赤い囲みですが、誰もが意識せずに総合知を活用する社会になる、この辺りが目指すところではないかと考えております。これらをやっていく過程では、総合知の話だけではなく、地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージとか、世界と伍する研究大学の在り方、スタートアップ・エコシステム支援パッケージ、こういった様々な施策との相互作用が期待されますし、必要になってくると考えております。
 もう時間がほとんどないので、本文の説明は省略させていただきまして、一応お礼だけ、31ページに飛んでいただけますか。総合知を検討するに当たって、こういう施策も総合知的だよねとか、これが進むと総合知が社会でもっと理解してもらえるねとかいうものを、ここから3ページでまとめてありまして、文科省さんからもかなり、6件か7件か施策をいただいており、リストアップさせていただいております。御協力いただきありがとうございました。
 それから、34ページをちょっと紹介させていただきたい。非常に総合知、ここまで出てきたものが抽象的で、初めて見た人に、何だかよく分からんなと言われることがよくありましたし、今後もそうだと思いますので、活用事例集というものを力を入れて作りました。
 次のページをお願いします。2枚で一組になっておりまして、1枚目にプロジェクトの背景と課題の整理をまとめておりまして、次のページに、そのためにどういうチームをつくり、どういう課題設定をして問いをつくり、そして実行していったか、そういうものが書いてあります。2枚一組の事例を6個、ここに並べておりまして、皆様に見ていただけたらいいなというようなことを考えております。
 説明は以上となります。どうもありがとうございました。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。今御説明いただいた内容に関しまして御質問等あれば、いただければと思います。
 では最初に、戸田山先生、お願いします。
 
【戸田山委員】  戸田山です。大変コンパクトにまとめて御紹介いただきまして、分かりやすかったんですが、伺った印象で申し訳ないんですけども、総合知って、もうあるんでしょうか。つまり、総合知を活用し、発信しという、あたかも総合知というのがもう既にそれとしてあるかのようなお話になっているんですけれども、一番難しいのは、総合知を生み出すことなのではないのかなと思うんですけど、総合知の活用は分かりました。でも、総合知の産出といいますか、総合知をどうやってつくっていくのか、あるいは総合知を生み出せるような組織なり何なりをどうやってつくっていくのかの方法については、何か取りまとめの中に重要なことが書かれているのかということをちょっと伺いたいんですが。
 
【内閣府科学技術・イノベーション推進事務局(佐野)】  ありがとうございます。まず総合知というものがあるというふうに勘違い――勘違いなんですけど、勘違いされてしまう書きぶりがまだ残っているのかと思うんですが、一応ここに「知の活力を生むこと」と書いてあるように、総合知というのは、つくっていくこと自身が総合知、課題解決のために様々な知を集めて、知の活動をやっていくこと自身が総合知という、知という言葉より、ちょっと幅を広げて考えております。そういう知をまとめて活用していく、知の活力を生むというやり方を活用するということが総合知の活用になりますので、あるものを使うというよりも、多様な専門知をいかに活用していくか、そこが重要なものだと思いまして、そういうふうに説明していきたいと考えております。
 
【戸田山委員】  分かりました。活用すること自体が総合知の産出プロセスだと、そういう理解ですね。そういう知識の捉え方というのも哲学的には1つの重要な伝統としてあるので、了解しました。
 
【内閣府科学技術・イノベーション推進事務局(佐野)】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  では、続きまして小林先生、お願いします。
 
【小林委員】  小林です。御説明ありがとうございます。人文・社会についてこういうふうに役割が認識されたことは非常にうれしく思います。以前は何となく、人文・社会というとカントやヘーゲルしかやっていないように思われてもいたので、やっと御理解いただけているのかなというふうに思いますが、2点、質問させてください。
 1点は、どういう方向へ向かうのが総合知というふうに前提にされているのかということです。今映っている共有画面の真ん中のところに、安全・安心の確保とウェルビーイングの最大化というのが出てきています。ウェルビーイングは、もう今、どこの欧米でも非常に重要な問題になっていて、私も今、インターナショナル・ジャーナル・オブ・コミュニティー・ウェルビーイングの編集の仕事をしていますが、ウルビーイングの5つの次元の中には安心・安全が入ってきます。つまり、ウェルス、ヘルス等々。そうすると、安心・安全の確保とウェルビーイングという、ウェルビーイングの中には安心・安全は入らないのか。ここでおっしゃっているウェルビーイングというのは、何へ向かうことに人社が役立つことが総合知に寄与できるのかというのがちょっと分からないので、これがお尋ねしたい1点です。
 2点目ですが、人社を含めて、特に社会科学で言えば7割がデータ分析で、皆論文を書いていますので、重要なのは、自分たちの分野以外の問題にもし関わるときに、やはりどれくらいデータがオープンデータとして利用できるかということです。つまり、データをつくる、ためる、使うというところでいうと、つくるのは皆さんつくっていますし、ためるのもためているのですが、なかなか使うハードルは非常に高くて、NIIに一括してまとめていく方向なのか、それともデジタル庁ができて、総務省関係で何か違う方向でまとめていくのか。この総合知のためには当然データが共有して使えないといけないのですが、それはどういう方向で今お考えになっていらっしゃるのか。
 この2点を伺えればと思います。よろしくお願いします。
 
【内閣府科学技術・イノベーション推進事務局(佐野)】  まず2番については、今、私としては答えがありません。あくまでも総合知のアウトラインがまだできたところぐらいですので、すみません、もしかすると今日出席されている赤池さんあたりに聞いたほうがよろしいのかなという感じはいたします。
 1番目のほうですが、ウェルビーイングというのは比較的、何でもかんでも入ってくるとは思うのですが、様々な科学技術を考えるときに技術単独で考えるんじゃなくて、一人一人の多様な幸せのために技術をどう使うかと、技術で引っ張るんじゃなくて、一人一人の多様な幸せ、そっち側から引っ張ってほしいという例示となります。集合としてどっちが大きいかとかいうのはちょっと置いておきまして、また、ここには3つ例示してありますが、もしかすると我々が全然考えていないような、もっと大きな課題とかテーマとかも出てくるかもしれません。ただ、そのときに科学技術オリエンテッドでやっていたのでは、全然そこに対応していけないと思うんですね。新しい課題、新しい価値というのがどんどんこれから生まれてくるだろう世界にあって、いち早くそこに対応していくためには、技術だけじゃなくて、人間のことを考える、社会のことを考える、そういう学問と一体でやっていかなければ駄目なんだろうなと、そういうところが出発点となっております。
 答えとなっているでしょうか。
 
【小林委員】  いえ、質問はそうではなくて、安心・安全をウェルビーイングから横出しに出してしまうのは、国際標準のウェルビーイングの議論からはかなりずれるのではないでしょうかと。
 
【内閣府科学技術・イノベーション推進事務局(佐野)】  その辺は検討させていただきます。
 
【城山主査】  かなりたくさんの方から手を挙げていただいているのですが、まず赤池さんは、今の点の補足でしょうか。
 
【NISTEP(赤池)】  補足でございます。
 
【城山主査】  では補足していただいて、その上で、私が把握している順序で言うと、尾上先生、須藤先生、岸村先生、仲先生が手を挙げられているので、恐縮ですが、比較的簡潔に、後で御質問いただければと思います。
 まず、じゃあ赤池さん、お願いします。
 
【NISTEP(赤池)】  データ共有の件ですけれども、ちょっと実務的な点から、私、佐野さんの隣で、内閣府で研究データの共有、公開の担当をしていますので、ちょっと補足をさせていただきます。
 今NIIのほうで、先生方御承知のとおり、アカデミアの研究データのプラットフォームというものを構築していまして、その上で、それぞれの研究分野のものをプラットフォームとしてどんどん使っていって共有、公開をしていきましょうというものをやっています。もちろんこれは排他的なものではなくて、それぞれの研究分野のリポジトリだとかデータベースとかを有機的につなげていこうということであると思います。特に人文学・社会科学も大事だということで、前の内閣府の委員会でも後藤先生に来ていただきまして議論したところで、これも大事なものとして、私が承知している限りでは、文科省でも、そういうプラットフォームを使って人文学・社会科学のデータの共有、公開を具体的にどうやって進めていくのかという施策が進めようとされているというふうに承知しています。
 それはもちろんデジタル庁とかもやっていますけど、どちらかというと公共データとか、ああいうものですので、それぞれが相互にリンクしながらやっていくということでありまして、データのいいところは排他的じゃないというところですので、うまく連携していけたらと思います。
 私からは以上です。
 
【城山主査】  よろしいでしょうか。
 それでは、尾上先生、お願いします。
 
【尾上委員】  ありがとうございます。御説明ありがとうございました。この活用事例というのをまとめていくのは非常にいいことかなと思っております。一方で、どういう分野の研究者がどのように関わっているかというところが分かると、よりその辺りが進んでいくのかなと思うんですが、そういうような方向性とか考え方というのはございませんでしょうか。
 
【内閣府科学技術・イノベーション推進事務局(佐野)】  ありがとうございます。そういう事例も幾つか交ざっておりますので、時間あるときに御覧いただけるとうれしいのですが、それと同時に、この分野を入れたからここがうまくいったとか、多分そういう単純なものばかりではないと思いますので、あまり強調し過ぎない範囲でやっていき、それから、それがうまくいった例があったりしたら、適宜紹介していきたいと考えております。
 
【尾上委員】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  須藤先生、お願いします。
 
【須藤委員】  ありがとうございます。私は、質問といいますか、実は内閣府の非常勤として次期SIPのプログラム統括という、SIP全体を見ていまして、ムーンショットも一部絡んでいるんですけども、その中でこの総合知というのを、今ここに出ていますように、いろいろと単語が出ているので、どう扱おうかということで今対応しているところです。
 次期SIPでどうするかというところなんですけども、従来はある程度、自然科学のほうでデータを出してきて、成果が出たところで、それを社会実装するときに少し人文・社会の方々に入ってもらって、すんなりと社会実装できるようなことを考えようというやり方をしていたんですけども、今度のSIP、それからムーンショットもそうなんですけども、最初にFSをやると。長いものでは1年ぐらいかけてFSをして、研究計画をつくり上げる、その段階から実は総合知を前面に出しています。
 いろんな分野の方にFSから集まっていただいて、研究計画ができたときには、もう既に総合知を活用した研究計画になって、それを5年間やって社会実装を早めようというやり方をしていますので、私自身も総合知をどう活用するか、まだ具体的な案がないんですけども、今取り組んでいますのは、研究の本当の初期の段階から、自然科学の研究者だけではなくて、それを社会に実装するためにいろんな問題が出てきますので、スタートのときからいろんな分野の人に集まってもらってつくり上げていこうというやり方をしています。このやり方が今日の総合知の取組に合っているのか合っていないのかというのはむしろこれから議論になると思うんですけど、今こういうことを取り組もうとしているところです。
 以上です。
 
【城山主査】  今のはコメントということでよろしいと。
 
【須藤委員】  はい。
 
【城山主査】  では、岸村先生、お願いします。
 
【岸村委員】  ありがとうございます。ちょっとコメントですけれども、総合知を活用していける社会になるというのは非常に大事だと思います。特にその中で、やはり我々学者だけでなく、社会一般の方、一般市民の方がどう活用していけるかが鍵になると思うわけですが、そういう中で、一番ローカルな単位で言えば地域の社会というのも大事になってくると思います。その中で大学、高専など、そういう高等教育が果たす役割も大きいとは思いますが、それだけはやっぱり社会にこういった動きを定着させていくには不十分じゃないかというふうに思う面もあるわけです。特に、総合知という名前が象徴しているように、知をいかに総合していくかということで考えていくと、やはり地域における知の拠点というのは、公共図書館ですとか、そういった市民からアクセスがいいところというのもうまく活用していく必要があるんじゃないかと思うわけです。
 この中で今回、広報的に総合知キャラバンとか総合知ポータルというのを、今画面にも出ていますけれども、こういう動きをぜひ、一過性のものではなく、社会にちゃんと内蔵されるような形で残していくような方向性というのを考えられているのかということです。例えばこういうワークショップといったものが常時公共図書館等で行われるようなことというのを期待されているのかですとか、総合知ポータルというのも、先ほどから総合知の事例集ですか、私も大変重要だと思いますが、そういったものを集めて長期的に見せていけるようなデータベースという意味でも、そのポータルサイトというのを長期的に活用するようなことも考えられているのかといったところを教えていただければと思います。
 
【城山主査】  じゃあ、佐野ディレクター、簡単にレスポンスいただけますか。
 
【内閣府科学技術・イノベーション推進事務局(佐野)】  地域、それから一過性にならない、非常に重要な観点だと思います。まずは総合知を応援してくれる、伝道師となってくれる人を何とか増やさなければいけないと考えておりまして、例えばURAの方とかを集めたり、オンラインでもいいんですけども、そういう様々な人と関わりのできる方に、まずはしっかり総合知を伝えて、その活動をしやすいように支援していきたいというふうに考えております。それによって、最初に内閣府ができることとしては小さいんですが、どんどん広がって、各地域の大学、それから地域、それから市民へと広がる、そんなことができないかというふうに考えて、キャラバンとポータルサイトを運営していこうと考えています。ポータルサイトも1年やって終わりではなくて、きちんと内閣府で引き継いでいけるようにして、希望としては、文科省さんでやっていられるサイエンスアゴラぐらいしっかりしたものなればいいなと、ちょっと考えております。
 
【岸村委員】  そうですね、ぜひそういった中で、例えばサイエンスコミュニケーターとかもうまく職業として定着するようになっていくといいかなと、個人的には思います。ありがとうございました。
 
【内閣府科学技術・イノベーション推進事務局(佐野)】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  仲先生、お願いします。
 
【仲委員】  ありがとうございます。大変説得力のある御説明ありがとうございました。疑問なのは、やはりどこを向いていくのかという、先ほども御質問がありましたけれども、その部分です。パッとしたイメージで言うと、自然科学系、工学系、医療系で、あるいは生化学などの成果を社会実装していくときに、人文の、社会の知が使われるというふうなイメージがあるわけなんですね。でも、人文・社会科学のすごく重要なところは、いろんな種類の多様性のある価値があるというふうなことで、例えば学術会議の問題などを見てみても、何というか、みんなが一斉に同じ方向を向くというのではなくて、いろんな方向を向いているというのが確保される、保障されるというのがすごく重要かなと思うところなんです。
 ですので、大型研究に、あるいは大型社会実装にのみ込まれていくというよりは、先ほどもお話がありましたけれども、意見が言える、思考実験ができるインフラがつくられるというような、そういう対立するようないろんなアイデア、そういう多様性が保障されるような、ちょっと抽象的ですみませんが、インフラがつくられるということが重要かなと思うんですが、そういうところに対する配慮みたいなのはあるのでしょうかということをお尋ねしたいです。
 
【城山主査】  じゃあ、佐野ディレクター、お願いします。
 
【内閣府科学技術・イノベーション推進事務局(佐野)】  ここで議論してきた総合知というのは、あくまでも内閣府の科学技術・イノベーション推進事務局でやっておるものですので、イノベーションに関わるものであって、それで、それはやっぱり社会に入っていかないと本当の意味のイノベーションになりませんので、社会実装するような技術を育てていく観点で今回まとめております。そのときに、できた技術に、後から人社の先生に理由をつけてもらうとか、規制してもらうとか、そういうのって多分うまくいかなくて、というか、うまくいかないよと言われました。そうじゃなくて、まず社会としてこういう技術が欲しいよねぐらいのところを出発点にしていけばいいんだと思います。その中に、人間が今まで気づいていない価値の問題があったり、科学者が技術を出すより先に、ほかのところからそういう価値を提示してもらえば、なるほど、そんな価値があるのか、じゃあそれに使える技術をつくってみようと、それが多分、今総合知が狙っている方向だと思います。何となく伝わったでしょうか。
 
【仲委員】  ありがとうございます。価値といっても、強いがいい、弱い・優しいがいいとか、大きいがいい、小さいがいいとかいうのがあるので、そういういろいろ総合しながらやっていくというのはすごく重要だなというふうに思いました。ありがとうございました。
【城山主査】  それでは次、勝委員で、最後に白波瀬委員でお願いしたいと思いますので、では、まず勝委員からお願いします。
 
【勝委員】  御説明大変ありがとうございました。言われるように、総合知、今一番重要になっていると、とりわけ安全保障にしても、あるいは環境問題にしても、価値観というもの、これがそれぞれかなり大きく違う中で、人文学・社会科学の役割が今の時代、非常に重要になっているということは、皆さん多分共通しての認識だと思うんですけれども、その上で御質問させていただきたいのは、やはり異分野融合であるとか、あるいは人文学・社会科学との融合というのは、実はもう既に大学教育でも、特に大学院の博士人材の育成においてはかなり重視して進んできていて、あるいは、例えば卓越大学院であるとかフェローシップであるとか、あるいは次世代の人材育成ということで、ここ2年間ぐらい立て続けに、大学ファンドも使ったようなものができていますけれども、それもやはりそういったものを目指しているということがあるんだろうと思うんですが、先ほど佐野さんのお言葉の中で勝ち筋という話があったんですけれども、いわゆる一般的な、そういった人社との融合というよりも、さらに上のものを目指しているのかなと。
 ムーンショット計画等を見ても、例えば2040年であるとか、かなり長期的なスパンで考えられていると思うんですが、この場合に、ここで言っている総合知というものは、やはり従来から言われているようなものとはかなり違うものだという認識があるというような理解でよろしいのかと。つまり、その「場」というのが、ワークショップであったり、あるいはウェブサイトを整えたり、プロジェクトだったり、それは従来型のものであると思うんですが、何かプラスアルファで、今回のこの総合知というのが今までの考え方よりもさらにもっと違うところを目指しているというようなものがあるのであれば、そこのところをちょっと教えていただければと思います。
 以上でございます。
 
【城山主査】  いかがでしょうか。
 
【内閣府科学技術・イノベーション推進事務局(佐野)】  やることとしたら同じことも含まれているのだと思います。ただ順番が、まず社会をよりよいものへと変えていく、人間がつくるビジョンに向かって社会を変えていくというところが出発点にあって、それに対して必要な知を集める。集めたところ、必然的に価値の問題を取り扱う学問が入ってきて、それから自然科学を取り扱う学問が入ってきて、それらが連携してやっていくと、そういう、何というんでしょうか、手段が目的化しないように、あくまでも新しい価値を社会に生み出していくことというのをとにかく先頭に置いて、そのために様々な学問が集まってくる。やること、もしかしたら同じパターンもあるかもしれないですけど、多分僕は違う結果になると思います。そういう違いなのですが。
 
【勝委員】  なるほど。ただ、かなり壮大なものを目指していくということになると、やはりテーマ、先ほど具体例という話がありましたけれども、そこの部分がやはり一番難しいというか、イノベーションに関わってきますし、この辺が壮大な計画であるがゆえに非常に難しいのかなというのは、ちょっと感想として持ちました。
 以上でございます。
 
【内閣府科学技術・イノベーション推進事務局(佐野)】  追加で言いますと、大きい話ももちろんあるんですけど、例えば小さい、中小企業で新しい商品を作るとかいうのでもも、もしかしたら使えるかもしれないです。決して大きい話ばかりではなくて、小さい自治体で、ほんのちょっと変えたいと、村の形を変えたいと、そんなところでももしかしたら使えるかもしれませんし、何ですかね、構造は相似で、大きさはいろんなものがあり得るというふうになればいいなと考えております。
 
【城山主査】  ありがとうございました。
 それでは最後、白波瀬先生、お願いします。
 
【白波瀬委員】  ありがとうございました。かなり壮大なということなんですけれども、いずれにしても、もうあまり壮大にしなくて、科学技術・イノベーションを推進するためという目的を明らかにして、そういう意味で総合知というのを限定的に位置付けましたというお話なんですけれども、総合知そのものをそんなに大きく位置付ける必要……、こういうこと言ってごめんなさい。今日のお話自体はとても面白くて、興味深いんですけれども、逆に、やっぱり一番重要な点は、これは「矩」とか、かなり凝った文書があって、なかなかすごいなと思ったんですけれども、やっぱり既存の枠を超えたというのが、すごく単純なんですけど、すごく重要なところで、やはり新しいということ。あと、社会を実際に変えていくというためには、今までどおりでは駄目よというのが一番重要なメッセージだと思うんですね。
 そういう意味で、実装のときに、具体的な価値ということなんですけど、やっぱり問題自体を発見するところも価値があって、例えばデータとかAIなんかでも最近よくやられているのは、データそのものにもうバイアスがかかっていて、その蓄積された、誰からもらったデータですかということ自体が実はニュートラルじゃないんですよと、ジェンダーの話もそうなんですけれども、もう言われているわけですよね。ですからそういう意味で、あんまり総合知というのを、大きいものではなくても、何というか、柔軟に位置付けておいてしたほうが、そこを意味付けようとか、アピールしようというということになっちゃったら、何か空中分解するんじゃないかという感じもちょっとしないでもなかったんですけれども、その辺り、ですからやっぱり総合知というのが独り歩きしている。
 だから英語的にはもっと、インターディシプリナリーから始まって、クロスがあってマルチがあってトランスディシプリナリーって、いろんなところで、多分日本語的にはコンプリヘンシブ何ちゃらということになるんですか、この総合知が。そうなると、逆に言えば、ちょっと英語的には漠としている印象もないわけじゃないということになるので、やっぱりここまで考えていらっしゃることは、少し今までとは違っているぞというのが一番重要なところなので、何かその辺りがもう一息うまく通じるといいなという感想を、すみません、持ちましたということです。
 以上です。
 
【城山主査】  特にレスポンスありますかね。
 
【内閣府科学技術・イノベーション推進事務局(佐野)】  あります。いい御意見ありがとうございました。一番重要なのは、今みたいに、その人なりの総合知を考えていただけるのが物すごく重要で、もうこれって決める必要ないと、本当は思っちゃったぐらいなんですね。人によっては、10人いれば10人の総合知とか、量子的で、何か1つ決めようと思ったら別の側面が決まらないとか、何かいろんなことを言う人がいて、でもそれって結構本質的だなというふうに思っています。もういろんな知が交じってきて、我々としては社会変革、社会実装というのをキーワードとして必ず入れるようにしていましたけど、分野によっては、もう無理に入れないところもあるのかもしれません。
 そういう意味で、研究者、それからファンディングエージェンシー、いろんな立場あると思いますけど、それぞれの立場で総合知というものをよく考えていただいて、ただ文理融合すればいいよとか、融合研究すればいいよというんじゃなくて、やっぱりある目的のためにみんなで頑張る、よりよい研究していくという方法を考えていただく、それが一番大事かなというふうに考えています。ありがとうございました。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。議論は尽きないと思いますけれども、少なくとも実装ありきで、そのために人社と協力するというだけではなくて、むしろ上流段階といいますか、これは須藤先生のお話にあったように、FSだったり計画段階で入れていったり、価値の議論も含めて考える。ただし実装と切れているわけではないという、その辺り、聞いている方は多分いろいろあるということを先ほど来議論されていたのかなというふうに思います。かなり時間を、予定していた以上に活発に議論していただきまして、どうもありがとうございました。
 それでは、次の議題に進みたいと思います。人文学・社会科学に関連する指標に関するヒアリングということであります。
 これにつきまして、まず資料2-1に基づきまして、後藤委員から御説明をお願いできればと思います。よろしくお願いします。
 
【後藤委員】  人間文化研究機構国立歴史民俗博物館の後藤でございます。私のほうから、本来専門は人文情報学、デジタルヒューマニティーズでございます。そのような観点から、特に人文学の研究力評価というところで、幾つかこれまでも発言をさせていただいたことがございますので、それに関連して少し今回、お話をさせていただければと思います。よろしくお願い申し上げます。
 前回の1月の委員会の際の林先生の御報告等の様々な先行事例がございますので、それを踏まえたうえで、今回はかなり実践的な部分について私のほうからお話をさせていただくという予定になっております。また、すみません、最初に前提条件を多数お話しさせていただくような形になり、誠に恐縮ですが、今回は特に、正直相当に悩んだというところが現実としてございます。やはり相当に難しく、いろいろと悩んだ結果というところもあり、かなりまだまだ、資料、議論として不十分なところがあるのではないかというところをかなり懸念として持っております。その点につきましてもあらかじめ、ちょっとおわびと申し上げておきたいと思います。
 それでは、私のほうから、約20分ほどと聞いております。お話をさせていただきたいと思います。
 次のスライドをお願いいたします。本報告で、今回私のほうからお話しさせていただきますのは、これまで特に言われております人文学研究に関する指標と、評価の議論のところで、あれがない、これがない、もしくはこのような傾向があるから測れていないといったような様々な議論が行われてまいりました。そのような部分について、幾つか確認というか、実態調査をした部分についてお話をさせていただき、そこからどのようなものが必要かということに関して私見を述べさせていただくということでございます。
 また、研究評価の指標に関しては、1月の林隆之先生の御報告などでかなり詳細に述べられております。そこでもご指摘の通り、もう既に議論は多くあり、また課題点であるとか、もしくはその必要性みたいなところも複数指摘をされているというところかと思います。そして、もちろんそれは、日本学術会議の提言にもありますように、人社系の研究成果の把握の難しさというところは既に多く指摘をされているところでございますし、またその理由というのもたくさん指摘されています。その中で、やはり今回は、数字を基にして検討させていただくということで、少ないサンプルではあるのですけれども、まずは裏付けを取り、解決方法を模索するための材料としてお話をさせていただければと思っております。
 次のスライドをお願いいたします。そのために、人間文化研究機構が集めております情報を一つの「梃子」として使って、お話をさせていただきます。大学共同利用機関法人である人間文化研究機構のIRデータを基に、人文系の研究力の評価データ、指標データの特性を考えるということをしたいと思います。ただ、ここはちょっと強く主張しておきたいところでございますけども、あくまでも分析用でございまして、数字に関しましては比率で今回お示しさせていただいております。実数等は使っておりません。また、こちらは人間文化研究機構の評価に直接使うことができるデータとしてお示しをするというものではございません。傾向を示すために、かなり数字を丸めているところもございます。あくまでも人間文化研究機構の情報を議論の材料として、人社系の一般の傾向みたいなのを示すことができるかどうかというところで使っているものでございます。また、数字につきましては人間文化研究機構内の手元の暫定的なデータを用いているということもあらかじめ御了承いただければと思います。
 次のスライドをお願いいたします。現在、人間文化研究機構では、IRデータとしては大体このようなデータを取得してございます。おおむね150を超える項目を収集しておりまして、例としては、非常に文字が小さくて誠に恐縮ですけれども、このようなものが事例として挙げられます。共同研究に係る論文の件数でありますとか、あとは個人による研究の成果、共同研究と個人研究の成果を、論文の件数、分担執筆の件数等で分けて、それぞれ作成しております。それ以外にも、右側、本当に小さいですけども、招待講演でありますとかデータベースの構築件数でありますとか、様々なデータを集めております。これ以外にもリポジトリの情報でありますとか国際連携状況、資料の利用数といったようなところも集めております。このようなデータの中から、今回は特に幾つかの実験的なデータを用いたお話をさせていただければと思っております。
 次のスライドをお願いいたします。まずに指摘をしておきたいのは、やはり現在、いわゆる雑誌論文だけでは人文系の研究評価はなかなか難しいという指摘の確認です。以前に私も別のところでもこのような話をさせていただいたことがありまして、おおむね1対2ぐらいの割合、すなわち論文が1に対して、書籍が2ぐらいの割合、書籍というのは本の章です。ブックチャプターを1本の論文として仮に数えて計算した場合に、おおむね1対2ぐらいの割合になるということを以前に触れさせていただいたことがございました。
 それを改めて今回データ化したのがこちらになります。ブックチャプターを数えてみますと、人間文化研究機構における論文等――これはいわゆる文字になった業績のうち、分担執筆の割合を示したものでございます。おおむね5年間で、文字として書かれた業績のうち、2016年の段階では分担執筆と言われる書籍のブックチャプターの量が全体の3割程度だったんですけれども、ここ5年間で分担執筆の率がむしろ上がってきているという状況になっております。書籍で研究成果を出しているというのがおおむね半分ぐらいにまでなっているということになります。
 これは分担執筆と、あと著書のアウトプットの数が伸びているということが大きな要因として挙げられます。論文のほうにつきましては、現時点ではあまり、機構の評価ではないということを改めて主張しておきますけれども、論文数に関しましては比較的横ばい傾向の中で、著書、それからいわゆるブックチャプター数という点でいきますと、これは右肩上がりで伸びていっております。結果的にいわゆる文字のアウトプットの中では、書籍に関連するアウトプットの量のほうがむしろ人間文化研究機構では増えてきているという傾向が指摘できます。もちろんこれは全ての組織が同様とは思われないんですけども、やはり人文系の研究機関の像をつかむためには、このブック、ブックチャプターというのをどのように考えるかというのが重要であるということは、改めて確認ができるのではないかというふうに思っております。
 それに併せまして、SCOPUSによります論文等の捕捉率という表現でご説明したいと思います。機構のIRデータの中から、機構内の研究者の論文数の抽出を行いました。それとSCOPUSで、当該年度の人間文化研究機構の全ての研究分野の論文の数を比較しました。これはどの論文とどの論文対応するかといった名寄せまでは今回は至っておりませんので、あくまでも単純に数値の比較だということをあらかじめお断りしておきます。
 その上で、表を見ていきますと、2016年の段階では大体24%ぐらいの比率、例えば、実際の数字ではありませんが、論文が100本あったら大体24、5本ぐらいがSCOPUSの中で論文として掲載されているということになります。2020年につきましては大体3割程度ぐらいまでは上がっていますので、近年SCOPUS等でも捕捉率が上がっている可能性はあるのですけれども、これはまだ、SCOPUSにおける人社系の論文、雑誌論文の採録状況の変化を正確にここでは追い切れておりませんので、さらに検証、確認が必要という状況ではございます。ただ、それでもやはり、いわゆる論文であっても大体2割5分から3割程度の捕捉率だということが分かります。
 次のスライドをお願いいたします。では、書籍のほうはどうかというふうに見ますと、機構のIRデータから分担執筆等の本数の抽出とSCOPUSのデータでのブックチャプターの量を、同じように比較いたしました。結論から申し上げますと、事実上捕捉できていないという理解でよろしいかと思います。論文については大体2割から3割といったところで、サンプリング的に傾向が取れるかもしれないのですけども、書籍に関しましては、もう2%とか3%というような数字になっております。これはちょっと、まだ検証が必要ですが、今手元にある数字を比較する限りでは、このぐらいの分量しか取れていないということになりますので、実際には書籍、いわゆる文字の研究成果の発表のうちの半分あたる書籍に関しては、ほぼ事実上データは捕捉できていないという指摘ができるかと思います。
 次のスライドをお願いいたします。なお、これは参考でございますが、私が過去に引用文献を、人間文化研究機構、それから人間文化研究機構に関係する研究分野の雑誌論文に関して、引用先が雑誌論文と推定されるものを仮に抽出いたしました。これは、ある雑誌論文の全引用のうち、雑誌論文を引用しているのが日本史学だと大体35%と読んでいただければと思います。これは暫定値ですので、まだ精密に取り切れているところがない部分もありますけども、引用対象文献も著書の比率が圧倒的に高いということになります。著書が著書を引用することに関しては、まだ全く状況が見えていないということが改めて確認できるかと思います。
 次のスライドをお願いいたします。こちらにつきましても、もう既に過去の文献で私、ちょっと触れております。今日は時間がございませんので省略させていただきますが、過去の論文をどのぐらい引用されているかという、どのぐらい昔の論文が引用されているかということを比較したデータになります。これはグラフが寝ていれば寝ているほど、過去の論文を多く引用しているという見方をしていきます。
 それで見ていきますと、これは人間文化研究機構のリポジトリ内の916本の論文から3万本の引用を抽出して、おおむねこのような傾向になります。30年以上前の論文でも大量に引用されているという傾向があり、ここからも、過去の引用、特に人社系の引用を見ていくときには、過去5年間のみといったようなところではやはりデータが取れないということも、これで改めて確認ができるというようなスライドでございます。これは過去に触れておりますので、詳細な説明はいたしません。
 では、次のスライドをお願いいたします。基本的に、全体で見ていくと、ほぼ研究成果のデータとしては取れていないという現実がやはり浮かび上がってくることになるかなと思っております。その上で、実際には、では指標として見ることができるデータは何かというところを考える必要があります。これは、様々な目的に応じてどのようなデータが必要かということを、特に研究成果の量という観点から見ていったものです。例えばプロジェクトの進捗であれば、論文の量が1年目と5年目でどのぐらい増えているかを確認するところもあるかもしれません。これも、人文科学・社会科学の場合には論文の生産速度のこともあるので、簡単に決めることができないかもしれませんが、無理やり見ることができるとしたら、このぐらいであろうということです。
 機関間の比較、これも本来はなかなか難しいところがあるんですけども、論文の量であるとか書籍の量といったような活動量を対象とすることはあり得るかもしれません。またピアレビューの状況といったようなところでも、レビュワーの多様性とか、そのような観点もあり得ると思います。ちょっと行ったり来たりで申し訳ありません。なお、私のほうで黄色くマーカーをしている部分については、現時点ではまだ全てデータが取れていない部分、まだ全くデータがない部分だと理解をしております。
 もちろんそれだけではなくて、研究力、指標という点で言いますと、例えばその機関の強みといったところも考えることができる。もしくは弱点の補強というところでは、例えばアウトプットの媒体でどのようなものを出しているかということもあるかと思いますし、もしくは人文の中での詳細な分野別の情報みたいなのもあり得るかもしれませんが、このようなものに関しても現時点ではまだ一切情報が取れないということもあるかと思います。媒体そのものが持つ多様性ということにつきましては、この後のご報告の中で、筑波の事例がありますので、それはそちらのほうにお任せをしたいと思っております。
 次のスライドをお願いいたします。そのように見ていきますと、足りないということ自体はそれでよく分かったわけなんですけども、では実際に足りない情報をどのように収集すればいいのかということに関して、大きく2つの観点があると思っております。
 まず、ないといっても、既存の公開データを何らかの形で使うことができるかどうかが重要なポイントになってくるかと思います。情報収集可能なそもそものデータソースがどれだけあるのかということを、まず考えなければならないと思います。ある場合には、実際に先ほどの目的に対してどこまでならば可能で、どこからが困難かということを考える必要があります。もちろんデータを集めるために一番考えなければならないのはコストということになります。ただ一方で、コストだけで何とかなるというのであれば、最悪お金をかければどうにかなるということにもなるわけですが、実際にはそれだけではないところの方が難しい問題だと思っております。例えばデータソースがあっても、そこから適切なデータに変換するだけの技術的な課題が残る場合には、それはなかなか難しいということになりますし、もっと言うと、例えば、この後で御説明をいたしますが、データの性質というところを考えていくと、単にお金というだけではなくて、そこは相当に専門的な処理が必要になってくる点が課題となってまいります。この部分については後ほど説明いたします。
 また、ない場合には、新たに取得するエネルギーとして、例えば、下の部分で、研究者の自己申告というのが当然考えられるわけです。研究者の自己申告というのは網羅性が高く、欲しい情報を入手できるということがあるのですけれども、一方で、入手コストがやはりとにかく高いというか、一人一人の先生方に、こんなものを全部集めるのかということをお願いするだけでも、相当な労力がかかります。また、やはりデータの質がふぞろいになってくるという課題もあります。論文の情報を出してきても、誰がどのようなものを成果として捉えるかというのは本当に様々ですので、その方法がやはり難しい。
 あと、見栄を張ると書きましたが、1つは、これは非常に質の高い論文だというふうに主張していても、それが人によって全然違う。もちろん違うというだけだったら、それは大した問題ではないんですけども、本当にその主張が正しいのかという事例がやはり混ざってくるというところは、残念ながら考えざるを得ないというところもあります。もちろん逆もあって、すばらしい先生が、こんなの大したことないよと言っているのが実はすごい論文という例もあるかと思います。
 なので、現実的に見ていくと、今短期的に考えるのであれば、自己申告データ以外で取得する方法から考えるというのがやはり現実的なのではないかと思っております。
 すみません、ちょっと急ぎます。次のスライドをお願いいたします。
 例えば、このスライドは先ほどと同じ機構の収集データ項目例ですけども、これはかなりの部分、基本的には研究者の自己申告データがかなり交ざってまいります。なので、実際には様々な、名寄せでありますとか重複であるとか、そのような分析というのを相当なエネルギーを使ってやらざるを得ません。また、同じように、これはあくまでも数ですので、質が見えない、自己申告のデータだけということで、まだなかなか難しいというところになります。
 次、お願いいたします。結局、短期的に解決する方法としては、やはり現在公開で、かつ取得できる第三者データというところの取得から考えざるを得ないだろうというところです。そのように考えていきますと、恐らく実質的に可能なのは、いわゆる文字で書かれた成果、文献から考えざるを得ないのではないかというのが今のところの個人的な考えです。ただ、人社系の研究成果は、もちろん文字だけではなくて、例えば当館だと展示でありますとか映像でありますとか、本当に様々な成果があるということは重々承知した上で、今この発言をしております。
 まず、現実的にはこれぐらいしか取れないだろうというところです。取得できる第三者のデータというところで、例えばCiNii ResearchやCiNii Booksのデータ、あとはJSTのデータでありますとかというところ。それから、特に書籍を入れるということになりますと、国立国会図書館のデータの取得といったようなところも考えなければならないかもしれません。そのようなところから書誌データを取れるものがありますので、そのようなものを考えていくということになろうかと思います。
 これらは、この後説明をしてまいりますが、完全ではないということを絶対の前提とした上でまず考える、短期的な課題として考えるということも強く主張しておきます。これは、先ほどの、特に様々な研究力指標で使われている既存のデータベースも捕捉率や精度は100%ではないはずなので、100%ではないけれどもある程度の傾向を見ることができるといったようなレベルまで持っていけるかどうかというところが一つのポイントになると思います。まずは完全ではないということを絶対の前提とした上で考えていくことが必要かもしれないなと思っております。もっと言うと、どのように不足で、どのように不正確なのかということをまずは知るというところも必要なのではないかと。まだそれすら分かっていないのが現状だというふうに私としては理解をしております。
 時間がちょっと厳しくなってまいりました。次のスライドをお願いいたします。
 例えば、CiNii Research、これはCiNii Articlesが今度CiNii Researchのほうに統合されるということになりますけども、例えばこのようなところから書誌データを取ってくるということになるかと思います。もちろんこれはあくまでも書誌しか取れませんので、人名や組織名とのひもづけというところはなかなか難しいかもしれません。また、引用の分析はできませんけども、まず最低限、書誌を取るのであれば、このような可能性があるかもしれません。
 ちょっと時間がありませんので、この辺どんどん飛ばしてまいります。次、お願いいたします。
 また、同じように、CiNii Booksを使うという可能性はあるかもしれません。こちらに関しては国会図書館さんではなくて、恐らくCiNii Booksを使うほうがよいというのは、大学図書館が集めているというところで、一定の学術性を担保するというところがあるだろうというところでCiNii Booksを今回は例として挙げております。ただし、これでも、ここがデータの性質による難しさがあり、これでもまだ、研究書、いわゆる研究的な成果であるというところの範囲確定が、ここからは難しいというところが相変わらず残ります。本当に一般向けの書籍と、研究書というところの研究成果をどのように分類していくかというところがなかなか難しい。実際には、CiNii Researchであれば科研費等の成果データともひもづけ等はできるわけなんですけども、それではやはり網羅性に限界があるというところがなかなか難しいところです。あと当然、引用の分析はこれではできないということになります。
 次、お願いいたします。また、J-STAGEは、日本の論文情報として引用分析を行うようなものというのもございますけども、やはりこれは対象となる量が当然限られるというところは難しい問題かなと。ただ、一応データ取得の可能性としては、ここでは指摘をしておきたいと思います。
 次、お願いいたします。もちろんそれ以外にもインプット、プロセス等から見るという可能性もございますが、ここはまだなかなか、個人研究が多いと言われるようなところで、例えば共同研究みたいなところの多様性を見ていくだけでうまくいくのかといったところは、まだ課題が多いかなというふうに思います。
 ここでちょっと、投影のみというデータに移りたいと思います。申し訳ありません、これだけは今回ここでの投影のみということで御勘弁いただきたいと思います。もう時間がないんですけれども、例えば、そのようなデータであっても、少しでもデータを取っていって、そこから、例えば活動量でありますとか社会的なインパクトといった評価のようなものを、例えば一定の係数付けをしていくというようなことをして傾向を見ることができる可能性はないかというところは、やはり考えなければならないだろうと思っております。
 例えば、次をお願いいたします。これは具体的な組織のものではないんですけれども、例えば機関Aであれば、基盤をつくるのは得意で、あと社会的な貢献は非常に強いけれども、研究のところでは普通だよとか、機関Bのほうは、基盤をつくらないけども、研究という点では非常に活躍していますよとか、それぞれの機関に応じた強みみたいなのを、このような、取れるデータから一定の重み付けをして、何か見せることができないか。これは単純にランクというよりは、こういうふうな各機関のくせを見るといったようなところで使うことができるようなものを、まずはこういうデータからつくることができないかということを考えてございます。
 元に戻っていただきまして、行ったり来たりで恐縮です。最後のスライドは省略をさせていただきたいと思いますけども、こちらを最後に。
 遠い未来としては、研究データ、研究成果データのプラットフォームを構築しておくのは極めて重要だと思っております。特に研究成果を、引用情報も取得するような形でデータを取っておくというのは、研究力の指標という観点だけではなくて、人社の研究の成果を見える化するというところ、それは恐らく1つ前の総合知の議論ともつながってくるのではないかと思うんですけども、研究の成果、それからプロセスといったようなものを可視化するという観点からも、研究データプラットフォームを構築して、それを活用していくということが将来的には求められるだろうと思っております。近いところではまだなかなか難しいとは思うんですけども、未来という点からいくと、このようなものをつくり、多様な研究情報――もうここでは文字だけではなくて、例えば展示であるとか映像であるとか、様々なものを含めるような多様な研究情報を取得するということ。そこから、特に人文系というところでいきますと、人文系の研究の実際的な振る舞いを意識したようなデータの分析といったところまで結びつけるということが必要だと思いますし、それは恐らく、研究の向上に資するためのデータであったりとか、人社研究のよさを可視化するためのデータというのをどのように考えていくかというところを踏まえて多様な指標を準備するということが、未来にとっては求められるのではないかと思います。
 申し訳ありません、ちょっと時間を超過し、また、いろいろと不足が多々あると思いますけども、私のほうからはまずここまでとしたいと思います。どうもありがとうございました。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、御質問、御意見いただければと思いますが、最初に小林先生、よろしくお願いします。
 
【小林委員】  ありがとうございます。何点か御質問したいのですが、まず人文系と人社系という言葉がかなり交ざって使われていたんですが、今日御報告になられたのは人間文化研究機構以外も含めての話なでしょうか。人間文化研究機構だけであれば人文系ということになると思いますが、人社という言葉を何回か使われたので、それ以外のものも合わさって分析をされた上の今日のお話だったのかどうかというのが質問の1点目です。
 2点目ですが、これは日本語の文献だけの話なのでしょうか、それとも英語の文献も含めての話なのでしょうか。あるいは、その2つが含まれているなら、どのように分けて今日のお話を理解すればいいのかというのが2点目です。
 3点目ですが、人文・社会の評価が極めて難しい、困難ということが結論なのですが、ただ、それでは前に進まないので、後藤先生御自身の御意見として伺いたいのですが、論文と著書はどのような比重で取り扱うべきだとお考えでしょうか。著書1冊と論文1本は同じに扱うべきなのか、それとも字数で計算すべきなのか、どうすべきなのかということです。
 4番目にお尋ねをしたいのは、論文の場合は学会誌ですから、被引用数、英文であれば当然ながら数値スコアがついています。各ジャーナルにインパクトファクターがついていますけれども、著書の場合は、アメリカの出版社であればパブリッシャーにポイントがついています。でも日本の出版にはついていないので、日本の出版の問題はどういうふうにレベル分けをすべきだとお考えなのか。つまり、いわゆるトップパブリッシャーと呼ばれるような、非常に被引用数の高い、日本で言うと、具体的には名古屋大出版会とか、そういうところは非常に高いです。そういう出版社と、それからそれほど高くない普通のものと、それから自分のところで出版するものです。それを同じにカウントするのかどうかです。あるいは、きちんとした――きちんとというか、ある程度の分量のものを出される場合と、いわゆるブックレットみたいなものを出されている場合もありますが、それを同じにカウントすべきなのかどうかというところをどういうふうに考えていったらいいのかということです。
 あと、諸外国の例で言えば、例えばSSCI、Social Sciences Citation Indexだけではなくて、中国はCSSCIですね。要するに中国語のSSCI、韓国はKSSCIというのをつくって、1本書いたら幾らという、要するに給料が個人研究促進費みたいな形で増えますけど。そういう中で日本のJSSCIみたいなものをつくるというお考えは全くないのかどうか。
 以上、伺えればと思います。よろしくお願いいたします。
 
【城山主査】  よろしくお願いします。
 
【後藤委員】  ありがとうございます。まず最初の質問で、人社と人文がちょっと、確かに今回スライドで交ざっているというところは、御指摘のところはあろうかと思います。基本的には、全体の目標といたしましては、まずは今回の議論としては、やはり人社全体をできることならば見たいと思っております。ただ現実的に、今分析の対象とできているところが、まだ人文というところにとどまっているという現実がありますので、なので、全体の目的の部分では人社という言葉を使わせていただいているんですけども、中のところの説明はまだ人文にとどまっているというところが現実というところでございます。その点はちょっといろいろと不足がありまして、誠に申し訳ございません。
 その点はまた、小林先生は人間文化研究機構の業績についてはよくよく御存じだと思うので、なかなかお話しするとき、正直ちょっとどきどきする部分があるんですけども、あと、英語論文を今回含むのか含まないのかというところでございますけども、今回の業績については英語論文も、あと英語の書籍も本数としてはカウントしております。ただし実質的には、割合としてはかなり少ないというところになると思います。それでこのぐらいの割合になるということです。日本語だけですと多分SCOPUSなんかはほぼ入ってこないということになりますし、今回は英語論文も交ざっているということでございます。
 その次に、後藤はどう考えるのだというところに関しましては、最後のJSSCIという観点と含めてセットということになると思いますので、こちらについて併せて御回答申し上げたいと思います。
 最後のところで、私のスライドでもありましたけども、最終的な理想形としては、本質的に研究情報を把握するという観点から、データベースは求められるべきものだと思っております。最終形としてはそういうものだろうと個人的には考えてございます。
 その上で、今回のお話で申し上げますと、もちろん難しいところはたくさんあるわけなんですけれども、現実的には、まずはやはり文献を、既存のデータからどのように取っていくかというところを。既存の論文データベースであるとか、そういうところから頑張ってみて、その上で具体的に、そのような、私はこういうのを研究成果プラットフォームというような言い方をよくしたりしますけども、そういうところへ結びつけていくようなものをつくっていくというのが長期的な流れだと個人的には考えておりますし、まずは何をしているかというところ、今何が集められて、何が問題かというところを整理した上で、そういうところにつながるというところが本来あるべき姿であり、私としては、さらにここから、なので実際には既存の研究データベースのところから、情報取得といったところを試みてみたいというふうに思っております。
 最後の書籍につきまして、現状といたしましてはやはり、妥当かどうか分からないのですけれども、数えられるデータとしてはブックチャプターまでが限界だというふうに思っております。つまり、章ですね、「はじめに」とか「おわりに」を除いた、序章とか終章を除いたような、実質的に中身のあるような章みたいなのを計測していって、それを論文1本と仮に数えるというのが現実的なラインなのかなとは思っております。ただ先ほども、それは、数という点ではそのような数え方しかできないのかなと思っております。
 もう一つのほうの質という点では、これも5年ぐらい前になるんですけども、小林先生に、このような評価の検討をやっていたときにちょっと御助言をいただきまして、いわゆるトップ19パブリッシャーというのを、海外の出版社に関しては設定して、可能性を分析するということをいたしました。ただ、やはり日本ではなかなかその辺りが難しいというところは、前回たしか林先生の御報告でもあったかというふうに思います。その部分に関しましては、現時点では正直、少なくともそのような外部から取ってこれるデータでは、質は難しいだろうなというのが今のところの現状で、そこから先は恐らく、REFでありますとか、そのようなデータのように、いい論文というのをそれぞれの機関なりで推薦して、そこからレビューをするというような形にするのが現実的なラインなのかなというふうに思っております。
 いろいろと御意見ありがとうございます。失礼しました。
 
【小林委員】  ありがとうございました。
 
【城山主査】  続きまして、山本先生、お願いします。
 
【山本委員】  山本です。私は、現場の研究者意識が変わってきているのかどうかというあたりを伺いたいと思います。以前は、この分野ですと、どうしても評価なんかできないという、非常に研究者、冷たい対応だったと思うんですけれども、難しいけれどもこういう解決方策を、後藤先生をはじめ、いろんな方がされていると、実際に大学や機関での個人評価が進んでいるんだと理解しています。さらに、総合知ですとか、データ駆動型研究というような新しい展開が出ている中で、現場の研究者がどのように、この評価に対する姿勢が変わってきているのかというのを伺いたいと思います。
 
【後藤委員】  ありがとうございます。そうですね、正直申し上げて、やはりまだまだなかなか反発が強いなというところは多々ございます。というのは、やはりこのようなものをすると、そもそもはかるものではないというようなお叱りを機構内でも多々受けるということ、機構内だけではないですけども多々ございまして、その点から、やはりなかなか難しいと、全体としてはその辺りに関してはまだまだ難しいというところがあるかと。ただ一方で、研究成果を可視化していかないと、人文・社会研究の、ある意味では説明責任を果たせないと思っている研究者というのも一定層は出てきているのかなと、ちょっと肌感覚みたいな回答になって誠に申し訳ないんですけれども、というようなところは少しずつ生まれてきているというのはあるかと思います。ただ、まだこれからというか、むしろこの辺りも、どちらかというと、これだったら仕方がないねと思ってもらえるような指標というか、うまい評価基準みたいなものがつくれるかどうかというところにもかかってくるのかなというふうに思っております。
 以上でございます。すみません。
 
【山本委員】  すみません、今の続きで、先生の発表の中で自己申告データの入手コストが高いという表現がありまして、これは、実際にデータ入力とか手間がかかり過ぎるために、研究者がすべきことではないというイメージなのかと思ったんですけど、そういうわけではないですか。ここをちょっとお願いします。
 
【後藤委員】  そうですね、本来であれば研究者がすべきことではないと、多分、先ほど申し上げました、例えば論文であるとか書籍の業績をきちんと示していくというのは、ある意味では当たり前というか、それは当然だと思うんですけども、さらに、多様なものを見ていこうと思って、例えば展示はどのぐらいありましたか、映像ってどのぐらいありましたかとか、口頭発表は何回ですかとかだんだん言い始めると、それは研究者一人一人にどれだけのコストをお願いするのかというところは大変になるだろうなというところがあるというところと、あとは、例えばこれを本当にやろうと思うと、全国一斉に全ての大学の先生方にお願いをするというところの、そういう現実的なところでそういうお願いの仕方ができるのかというところで、コストが高いという言い方をしました。すみません、ちょっと曖昧かもしれませんでした。
 
【山本委員】  分かりました。ありがとうございました。
 
【城山主査】  神谷先生、お願いいたします。
 
【神谷委員】  大変興味深い発表ありがとうございました。一番感じたのは、人文・社会系といっても非常に多くの分野があるわけで、分野によってどの程度データが取れるか、あるいは、どの程度論文の評価とかcitationとかを使いましてどのように評価するかとか、そういったことができるかどうかというのは分野によって非常に大きく異なるというふうに考えます。私、経済学者ですけど、経済学の場合は、今日発表されたのとはかなり状況が違うのではないかというふうに思います。かなり把握できますし、それからcitationによる評価等もかなりできると思います。1つお願いは、もちろん今日は、ごく一部の人文、人間文化研究機構ということで、非常に特殊な分野のものですので仕方ないと思いますが、これから一般化するときには、非常に多様な分野があるということをぜひ御考慮いただきたいと考えます。
 2番目は、私、経済学者ですけども、経済学においても、把握するのがなかなか難しいような論文とか、あるいは評価しにくいようなものもある、それが実は重要だということもあるのではないかというふうに感じております。どういうことかといいますと、海外のジャーナル、特にWeb of Scienceとかに載っているようなジャーナルであれば、もう完全にこれは把握されるわけですし、評価も比較的簡単にできると思います。ところが、経済学というのは当然、各国固有の部分があるわけでして、日本の経済学者は当然日本の経済を研究する必要がありまして、もちろん日本の経済を研究した場合に、Web of Scienceに掲載されているようなジャーナルに載ることもあるのですが、そうでないものもある。特に、今日ありましたようなブックチャプターとか、あるいはブックそのもの、こういう中に非常に重要なものがあるというふうに考えておりますので、こういったものの評価をある程度今後は高くするほうがよいのではないかというふうに私は考えております。
 かなり感想めいたことでしたが、特に経済学に関連して、何か御発言があればお願いします。
 
【後藤委員】  ありがとうございます。今、先生おっしゃるとおりでございまして、恐らく人文学におきましても、論文の比率が非常に高い分野と、もう本当に書籍ばかりの分野というのはたくさんございます。恐らく社会科学におきましてもそこはかなりいろいろとあるということは重々承知の上で、今回は、なので人社と人文が交ざっていると、小林先生の御指摘にちょっとつながるところがあるのではないかというふうに思っておりますけども、そこはもうおっしゃるとおりだと。特に経済学は、その意味ではかなり、どちらかというと本当に、既存、把握できているところがあるのは間違いないということは重々承知しております。
 その上で、やはり難しいのは、では分野をどのぐらい細かく切っていって把握するのかというところが結構難しいところかなというふうに思っております。人文学でいっても、例えば歴史学と言語学を分けてみるのか、文学はどうするんだとか、その辺り、恐らくある程度切っていかないと見えないところがあるけども、切り過ぎると細分化し過ぎてよく分からないというところとのバランスを今後どう考えていくかということは必要だと思っておりますし、もちろん、その上でそれぞれの分野内の、経済学なんていうのは本当に大きな分野ですので、そういうところの特性というのをきちんと把握した上でやる必要があるというのはあります。また、今回の話は、例えば指標として使えるものは何かということですので、これで全ての評価が可能だということではないということ、あくまでもたくさんある中でどういうふうな道具立てを増やしていくかという観点で御説明を申し上げたということでございます。
 以上でございます。
 
【神谷委員】  どうもありがとうございます。
 
【城山主査】  ありがとうございます。
 ちょっと恐縮なんですが、最後、新福先生と田口先生それぞれ、最初に御質問いただいて、まとめて後藤先生にお答えいただければと思いますので、よろしくお願いします。
 では、新福先生、お願いします。
【新福委員】  お願いいたします。これまでの先生方の発言と近しいところもあるのですが、やはり分野や領域によって何を大事にするかというところに多様性があるというところなんだなと思って今までの御発言を聞いておりました。グローバルに普遍的な事実を発見していくことが重要な分野、そういった分野はやはり国際誌の論文が重要でしょうし、地域や組織に関する国内的な問題を扱う分野、それも非常に重要ですし、そういったところは国内誌や書籍で国内に周知することが重要になってくる傾向があるように思いながら聞いておりました。
 結局はやはり多様性と標準化のバランスを取っていくことが非常に重要であって、その標準化に向けてどうしていくかというところで、このデータの話は非常に面白かったです。モックで、投影だけ出していただいた、傾向が見えるような形の図が非常に面白かったので、そのことについてお伺いしたいのですが、施設の傾向が分かったときに、その施設なりのこの評価というのをつくっていくために、ああいう用い方をするのか、あれを将来的にどういうふうに使っていくべきものなのかというところをお伺いしたいです。また、先ほどの総合知との関連もあるのですが、標準化して、この組織はこうだ、こういう傾向があるからこういう評価をしますというのを決めたとしたら、新たな分野に挑戦する研究者、例えば総合知に関わっていくとなると、その分野の標準的な評価となる書籍や論文ではないような、社会への貢献をしていくことになったときに、それは評価がされるのであろうかと考えながら聞いておりまして、その2点をお伺いできればと思いました。
 以上です。
 
【城山主査】  じゃあ、恐縮ですが、田口先生、引き続きお願いします。
 
【田口委員】  書籍のほうのデータが取りにくいというお話がありましたけれども、学術書にしても、書籍、一般に国立国会図書館に1冊納入する際に、恐らく書誌データも渡しているんだろうと思うんですけれども、その際に書籍の文献表データを電子データで提出してもらうというような動きとかは検討されていたりするんでしょうか。あるいは、文献表がない場合は注データを提出するとか、いずれにしても何かしらの文献データを提出してもらうような仕組みをつくれば、少なくともこれから出版されるものに関しては捕捉可能になる。そしてそれは出版社にとっても悪い話じゃないと思うんですね、自分のところで出版したものが多数の引用をされているということになれば、それはそれなりに宣伝にもなることですので、そんなような検討がされているのかどうかというあたりをお伺いしたいと思いました。
 以上です。
 
【城山主査】  じゃあ後藤先生、お願いします。
 
【後藤委員】  ありがとうございます。まず先ほどの、モックというか、使い方という点でいきますけども、こちらにつきましては、それぞれの機関が今後、どのような研究というか、その組織としてどのような研究戦略を立てていくかというところで使うというのが現実的なラインだろうなと。例えばこの中で、これは本当に具体的な組織のものではないということを強く主張しておきたいんですけども、その上で、例えば機関Bであれば、異分野の研究が非常に得意である、もしくは研究が得意であるというところであれば、そこをむしろ積極的に伸ばしていこうというような戦略を立てるのか、あるいは、基盤の部分に関してはなかなかやはり難しいところがあるので、きちんと基盤データをつくっていこうというようなところで考えていくのかというところを立てるための戦略として、このようなものをつくっておくということが必要かなと。もしくは、それぞれの機関の特性みたいなのを外部から分析した、あそこはやっぱり異分野研究なんかが強いんだねとかというのを見ていくというような、それぞれの機関ごとの特性というところがあるかなと、そういうような見方をするというときに使うものとして考えております。なので、具体的にはこういうふうなところにまで最終的に持っていけると、何か順位というよりは、それぞれの機関の特性というか、そういうものが見えるようになるかなというところを考えております。
 申し訳ございません。時間がないところ誠に恐縮ですが、2点目をもう一度お願いできますと。
 
【新福委員】  ありがとうございます。データによって評価を標準化していくときに、どうしても先ほどのような総合知で新しいことをするということになると、評価がこぼれ落ちるなということを考えておりまして、その辺りについての御意見を伺いたいと思いました。
 
【後藤委員】  ありがとうございます。その点につきましてはおっしゃるとおりだと思います。恐らくそれは、このような過去の成果によって取るような指標ではないというところになるのではないかと思っております。その部分はむしろ、先ほども御指摘ありましたけども、恐らくこういう過去のデータからこぼれ落ちるようなものとして拾う仕組みを別途つくるというのが、やはり現実的というか、その辺りは恐らく量ではなくて、質の部分で考えるということになる。特に説明的な、記述的な質で考えるということになるかなというふうに思います。
 文献データの提出というところですけども、申し訳ありません、ちょっと私としてはここは、多分そこまで今行っているということにはなっていないと思いますが、こういうところは恐らく、データのプラットフォームとか、そういう観点からは今後重要になってくるのではないかというふうに思いますので、そういう重要性というところは今後いろいろ考えていければいいというか、関係者にもいろいろ働きかけられるようなことができればいいというふうに思っております。申し訳ありません。
 以上でございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、お待たせしましたが、加藤委員、資料2-2に基づきまして、よろしくお願いいたします。
 
【加藤委員】  加藤でございます。このたびは発表の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。研究評価指標と研究成果公開ということで、これまでのお話の中でも何回か言及していただいてありがたく思っていますけれども、iMDと呼ばれているものと、それからF1000というオンラインジャーナルの話をさせていただきます。
 この表紙に書いてある、池田潤先生、それからURAの森本さんにおかれては、準備に当たって全面的な協力を得ておりますことを最初にお話しさせていただきます。
 次のスライド、どうぞ。まず背景から説明いたします。世界大学ランキング等で論文の被引用数ということの評価項目があって、大学ランキングを求めるときにも引用数というのが使われています。ただ、これまでの議論でも度々出ておりましたけれども、引用数ということが、特に理科系の分野が多いと思うんですけれども、非常に重要視されている側面があって、その一方で、文系等の分野では必ずしも重要視されていないという議論があります。
 次のページ、どうぞ。引用というのは、恐らく一番有名なのはインパクトファクターと呼ばれるもので、これは雑誌当たりの平均被引用数に相当するもので、カウントによって統計的に求められる数字です。それ以外に、SNIPSJR、Eigenfactorというものがあります。SJRやEigenfactorは、グーグルのページランク・アルゴリズムのような、かなり技術的に複雑度の高い計算によって、「評判の高い」という概念を数量化して、計算によって求めています。
 分野によっては、引用された数によって論文の価値が定まるのとは違うという御意見があると思います。そのような分野において、いかにして研究の価値なり、その研究者がどれほどこれまでにすばらしい研究をしてきたかということをアピールするかということに関して、いろいろな議論があり、これからお話しする提案は、その一つになっているということでございます。
 次のページ、どうぞ。人文・社会分野の学術は、そもそも論文とか引用データベースに収録されにくいという傾向があるかと思います。論文が日本語で書かれているものについては、基本、インパクトファクターがつきません。また、電子化されていない場合は、引用数の集計がしにくいというような事情がございます。
 次のページ、どうぞ。これからお話しする話は2つです。まずはiMDと呼ばれるものの話です。例えば理科系で申しますと、論文をアピールする、研究者をアピールをするときに、インパクトファクターの数字をアピールするように、この雑誌は、あるいは紀要は、iMD幾つなんですということでアピールするときに使ったりします。後半の筑波ゲートウェイというのは、本学で始めたオンラインジャーナルの試みでございます。
 次のスライド、どうぞ。まず、iMDからです。この考え方はそれほど難しい考え方ではなくて、単純に申し上げますと、その雑誌に出ている著者がどれくらいダイバーシティーを持っているか、つまり多様な研究者がそこに投稿しているかをカウントするようなメジャーであります。
 直感的に考えて恐らく、学内紀要よりも全国学会誌、そしてそれよりも国際学会誌のほうがレベルが高い、あるいはよく読まれるのではないかというような評価がある程度あると思います。この直感を定量化するにはどうしたらよいかを考えて考案されました。学術誌の著者所属機関の多様性を定量化するということですが、これはかなり簡単に計算できます。手持ちの雑誌なり、自分が興味ある雑誌とかについて、容易に計算できます。質のほうは定量化できないけれども、多様性は定量化できるでしょうということで、多様性に注目しているということでございます。
 次のページ、どうぞ。この数式は一見、難しいと見えるかもしれません。lognのα掛けるCプラス、β掛けるAで、何だ、このlogは何だとか。一見すると複雑そうなんですが、実際意味するところは結構単純でありまして、重要なのはCとAです。Cが所属機関の国の数、Aが所属機関の数、恐らくカントリーのCで、アフィリエーションのAだと思いますけれども、C足すA。α、βは重みづけにするために掛け算をするということで、シンプルには共に1です。ですので、α、βイコール1とすれば、C足すAになります。一方をゼロにすれば、片方だけ見ることもできます。あとlognで、どうして対数を取るかなんですけれども、対数を取らずに単純にこの計算をしますと、分野の違う雑誌を並べるときに、あまりに、ある分野は数字が大き過ぎることがあります。例えば「ネイチャー」という雑誌は、たくさん世界中から投稿があるわけですけれども、そうすると、大きい数値になります。対数を取ることによって、それをぐっと、Y軸方向の値の圧縮を系統的に行うことによって、見やすいグラフを作ることができます。
 次のページ、どうぞ。従来の評価だけですと、左上のように、インパクトファクターがついている雑誌だけが見えます。別の評価手法を使うと、この差がつかないかもしれません。提案手法は真ん中の下、3番にあるように、直感的に著名と考えられる雑誌ほど値が高くて、あれはちょっとローカルだよねというものほど値が小さくなるような傾向を見ることができます。
 先ほどチャット欄に書いておきましたけれども、TSUKUBA indexのサイトというのがありまして、そこをクリックして御覧いただくと、実際に先ほどのiMDを計算した値が掲載されています。ご覧頂くと、一番上に「PLOS ONE」がiMDの値14ぐらい、「ネイチャー」は11ぐらいという数字が出てきます。
 例えば文系の方が理科系の方にアピールするときに、そちらでレベルが高いと評価してされている雑誌はこのぐらいの数値で、それに比べてこちらはこれくらいの値の雑誌です、というような議論が出来るようになります。
 次のスライドをお願いします。次の話題です。筑波大学ゲートウェイというもので、F1000という英国のリサーチの会社と筑波大学が組んで出したオープンジャーナルの紹介です。
 次のページ、どうぞ。この雑誌は、ここに書いてあるとおり、論文をすぐに出版したくて、認知度を高めたくて、SCOPUS、PubMed、PMCとかに論文収録されて、サイテーションされたくて、論文の著作権は自分が保有したくて、あとリーズナブルにオープンアクセスにしたい、この意味は、著者は料金をを払うんですけれども、読む分に関しては無料で読める。ですので、ネットで公開されていて、誰にでもオープンで、要するに無料でアクセスができるということを意味します。それから、すぐに出版したいという意味ですけれども、論文の査読がオープンに行われるようになっておりまして、投稿しますと、いきなりもう論文は公開されてしまいます。公開の環境で査読が行われていきます。2名による査読が行われ、査読プロセスもみんなに見えるオープンな場で行われます。
 次のページ、どうぞ。今申し上げたとおり、F1000 Researchと本学で交渉して、導入してございます。
 次のページ、どうぞ。後で最後のページに金額が出てきますけれども、特に文系にとっては投稿料が高額と言える部分もあるんですけども、これに関しては大学の人文・社会系の部門のほうで投稿料支援のプログラムを学内で用意いたしまして、支援しているということをやっております。国内に代理店がなかったため、契約手続に手間と時間がかかったと担当者が申しておりました。
 次のページ、どうぞ。伝統的なジャーナルがそうなんですけれども、投稿して、非公開で、編集者を通じて査読者と著者の間でのやり取りが行われます。最終的にアクセプテッドと編集側が認めると、そこで論文が公開されますが、読むときにお金がかかる。読者がお金を払って読まなければいけないというのが、クラシックな、伝統的な購読モデルだと思いますけども、これをF1000は、先ほど冒頭で申し上げたとおりに、かかる費用は全て著者が支払うと、そしてオープンで閲覧ができるというようなモデルになってございます。
 次のページ、どうぞ。これが投稿の流れになっています。左上のリポジトリというのはデータの共有です。検証が後からできるように、論文に関わる分析の基になったデータを、リポジトリに登録してくださいということです。そして筑波大学ゲートウェイというところに投稿すると、2番に公開前のトリアージと書いていますけれども、チェック等がなされまして、3番で公開チェックがなされて、iThenticateで剽窃等がないことがチェックされて、プロの手による組版がなされて、支払いが済むと公開されるということになっています。投稿の際、現在の条件は、筑波大学の著者が少なくとも1名は入っていること、それから、支払うときに、筑波大学が発行しているクレジットカードを使うことが義務付けられています。これが行われると公開されて、同時に査読も始まるという仕掛けになってございます。
 次のページ、どうぞ。英語だけではなくて、日本語でも投稿可能ということで、日本語で書いてもSCOPUS等に投稿されて、サイテーションインデックスがつくと、そういう面白さも持っているということでございます。
 次のページ、どうぞ。これは先ほど申し上げました。
 次のページ、これが公開したときの画面で、後でF1000 筑波とか入れますと、実際の現物を御覧いただくことができます。
 次のページ、どうぞ。公開査読のため、査読が今どういうフェーズにあるかが見えます。右のほうで、クエスチョンと出ているのは、査読者が疑問を発しているというようなことで、バージョン2を著者が作っている段階だろうと思います。
 次のページ、どうぞ。最後にレビュワーステータスにチェックがついていますけど、これが最終形で、2名のレビュワーがOKということでアクセプテッドの状態にあるということが分かるような表示になっています。その間ずっと、世界の読者は、論文の状態と中身を読むことができるということになっております。
 次のページ、どうぞ。最後のスライドになります。これが金額なんですけれども、カテゴリーがA、B、Cとございまして、一番左がデータノートということで、一番右のCがリサーチアーティクル、通常の研究論文がこのカテゴリーCに当たるものでございます。1,350ドルということで、少なからぬ費用がかかるんですけれども、これは一部大学が負担するような援助も現在行いながらやっているということで、この体制で運用しているということでございます。
 以上、私のほうから説明させていただきました。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、小林先生、よろしくお願いします。
 
【小林委員】  ありがとうございます。後半の筑波の方が入っていないと投稿できない話はちょっと置いておいて、前半の話になりますが、スライドの8枚目、9枚目あたりの、多様性を1つの評価とするというところです。引用とは違う基準ですが、その多様性というのは本当に質とどうつながるのかなというのがちょっと、正直言って分からなかったところです。理系はそうなのかもしれません。たまたま私の分野が違うのかもしれません。社会科学の中の法学部の中の、いわゆる政治学と公共政策の分野で言いますと、一例を挙げると、例えば学内紀要に国家学会雑誌というのがあります。それから、全国学会でいうと、APSRというアメリカ政治学会誌、それから国際だとIPSR、つまりアメリカ政治学会とか日本政治学会の上のアンブレラなところが出している、私はそこの編集委員をずっとやっていましたが、さて、先生のこの基準で言えば、多分それが一番高くて、次がAPSRで、最後が国家学会雑誌になるんだろうけども、我々の一般的な常識から見ると大分違うなという感じです。実際インパクトファクターでも、IPSRよりも、APSRのほうが高いです。それから公募で人を採るとき、国家学会雑誌に論文が出ていたら、それは要検討の候補というふうになります。
 だから、それは分野でかなり、これは一般論として多くの同意を得られるというふうに書いていますけども、かなりそれは分野によるのではないでしょうかというのが率直なところで、多様性が直ちに質の評価にはつながらないのではないかというのが私の持っている疑問です。いかがでしょう。
 
【加藤委員】  まず考え方として、多様性を定量化するというこの考え方は、メジャーの一つに過ぎないと私どもも思っております。ですので、研究の評価というのは非常に難しいことだというのを承知の上で、一つのメジャーとして参考として使ってくださいというような、そのぐらいの位置付けと私どもも考えております。
 それから、分野によっては、うちの大学でも、ある分野の先生は、私の分野では学内紀要こそ主戦場とおっしゃる先生もいらっしゃいますので、それはそれで受け止めさせていただいています。
 それから、多様性がレベルと相関あるかということなんですけども、これはちなみに、例えば多様性がなくても、例えば1つの大学で出している雑誌なんだけども、それは質の高い雑誌を出しているということはあると思います。それは全く否定はしないんですけれども、その一方で、他大学からもどんどん応募してくださるところは、やっぱりそれなりに業界でレベルが高いと見なせるのではないかという意見もあって、そういうことも加味して考えましょうという、そのぐらいで取り扱っていると思っていただけたらと思います。
 
【小林委員】  ありがとうございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。いかがでしょうか。
 じゃあ、小長谷先生、お願いします。
 
【小長谷委員】  御発表ありがとうございました。以前から注目していたところを詳しく御説明いただきました。
 最後の、雑誌の新しい査読システム、公開査読なんですけれども、聞き漏らしたかもしれないですけど、匿名性というのはあるんでしょうか。それとも、それはもう査読者もオープンな形で名のりを上げているか、教えてください。
 
【加藤委員】  オープンですね、今のことに関しては。ですから、実際の現物を後で御覧いただくと分かるんですけれども、査読者が見えていますね。
 
【小長谷委員】  分かりました。ありがとうございます。それも含めて新しい時代だという気がいたしました。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。
 終わりに近づいているんですが、実はもう1件、簡単な報告事項があるので、恐縮ですが、この辺で次に移らせていただいてよろしいでしょうか。
 加藤先生、どうもありがとうございました。
 それでは次に、議題の3、その他報告事項といたしまして、令和4年度戦略目標として公表されました文理融合による社会変革に向けた人・社会解析基盤の創出について、上村専門官より御説明いただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。
 
【研究振興局参事官(情報担当)付(上村)】  ありがとうございます。研究振興局参事官(情報担当)付の上村と申します。本日はこのような機会をいただきありがとうございます。
 それでは、令和4年度戦略目標、文理融合による社会変革に向けた人・社会解析基盤の創出に関して、御説明させていただければと思います。
 本戦略目標は、人文学・社会科学の先生方にも大変お世話になって、ここにまとめてきたものでございます。ここでお礼をまずは申し上げさせていただきたいと思います。
 資料、結構スキップさせていただきます。まず5ページ目です。
 今回、戦略目標というのは、6つできております。その6つを3つの柱に分けておりまして、その中の1つが総合知の活用による社会課題の解決となっており、その中の1つとして文理融合による社会変革に向けた人・社会解析基盤の創出を位置付けているところでございます。
 次のスライド、6ページ目になります。こちらがその具体的な中身でございます。概要でございますが、人文・社会科学と自然科学との融合、これで個人、コミュニティー、社会といったマルチスケールでの様々なデータから社会や人を理解し、それに基づいて政策シナリオ等をシミュレーションで導出し、それを用いて行動変容等が促進されるような社会変革につなげていくことを目指す、そういったものになっているところでございます。
 具体的な内容といたしましては、達成目標と研究例というところに書いてありますが、1つ目が、個人、コミュニティー、社会からのデータ収集、分析、モデル化による人や社会の理解でございます。データからの理解もですが、人文学、それから社会科学、こちらで持たれている知見というのがあるかと存じます。そういった知見をモデル化、数値化していくことでシミュレーションの中に入れられるような、そういった研究もこの中に含めていきたいというふうに考えております。そういった、人や社会の理解、モデル化、数値化を、シミュレーションに入れていくというのが2つ目でございます。そのように政策シナリオ等を導出して、社会プロセス革新に向けていくための方法論、効果的で社会受容性の高い政策シナリオはどういったものがあり得るかというのを考えていくというのが3つ目となっているところでございます。
 右側はその例で、これまでユースケースとして、危機管理と申しますか、災害時の避難、こういうのを例として考えてきているところでございます。例えば、図の左下からですが、行動のデータ、例えば経路検索とか、SNSを使っていたりとか、そういったものがサイバー空間でデータとして蓄積されているわけですが、左上、例えばビッグデータから人や社会の新しい理論を導き出せるか、これはつまり、社会の中で、コミュニティーとか属性、そういった関係性がどのようになっているかという複雑なものの解析を考えておりますし、そういった、属性ごとに政策をどのようにやっていけばいいのか、それから避難であればどのような呼びかけ方ができるのか、そういったものが考えていけるのではないかとしているものでございます。
 右下の絵ですと、災害のときに、例えば高齢者の方で住み慣れたところに残りたいと言っている方に、御家族が悲しんだりしませんか、というようなメッセージを伝えたりとか、積極的に避難できる方にはまた別なメッセージを伝えたりとか、そういったことを総合的に解析していけるような、そういう土壌をつくっていければと考えているところでございます。
 資料の12ページ、ワードでたくさん書いてあるところですが、こういったことをやっていく上での留意点を書かせていただいているところでございます。1つは、先ほどお話もありましたが、収集できるデータに偏りがある、バイアスがあるということもありますので、そういったことはきちんと考慮してやる必要がある。それから、ELSIの観点での配慮が必要である、それから、扱うことの社会的インパクトが高いものと考えられますので、そういったことも考慮した上で研究を進めていくことが必要である、そういったことも述べているところでございます。
 最後、14ページ目になりますが、こちらは、文部科学省でこのたび戦略目標という形で出しましたけども、具体的な事業としましては、JSTのさきがけ等で実施されるというようになります。そちらの募集期間、4月中旬からとなっておりますが、これから募集が始まりますので、こういった情報をお近くの方に御紹介いただければと思っておりますし、これが名ばかりの文理融合にならないためには、皆様に想像力を働かせていただいて、提案をたくさん出していただけるということがありがたいことだと思っておりますので、ぜひ皆様で御共有いただけるとありがたいと思っております。それから、一番下、文科省のツイッターもありますので、いいねを含めて、ポジティブ、ネガティブいろいろな御反応もいただければと思います。
 ありがとうございます。以上でございます。
 
【城山主査】  どうもありがとうございました。それでは、御質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 そうしましたら、今の件は御説明をいただいたということにさせていただければというふうに思います。
 それでは最後に、事務局から連絡事項等ございましたら、よろしくお願いいたします。
 
【二瓶学術企画室室長補佐】  本日は活発な御審議ありがとうございました。ちょっと時間の関係で、十分に質問いただけなかった場合もあるかなと思っております。もし追加の質問事項等ございましたら、事務局にお寄せいただければと思います。
 次回の人文学・社会科学特別委員会につきましては、事務局より追って御連絡いたしますので、引き続きよろしくお願いいたします。また、本日の議事録案につきましては、後日メールにてお送りいたしますので、御確認をお願いいたします。
 以上でございます。
 
【城山主査】  それでは、これで閉会とさせていただければと思います。本日はどうもありがとうございました。

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