人文学・社会科学特別委員会(第9回) 議事録

1.日時

令和4年1月28日(金曜日)16時00分~18時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 人文学・社会科学特別委員会の今後の調査審議事項等について
  2. 人文学・社会科学に関連する指標に関するヒアリング
  3. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員、専門委員)
城山主査、勝委員、小長谷委員、白波瀬委員、須藤委員、仲委員、井野瀬委員、尾上委員、加藤委員、神谷委員、岸村委員、小林委員、新福委員、戸田山委員、飯島委員、後藤委員、田口委員
(科学官)
森口科学官

文部科学省

河村学術企画室長、二瓶学術企画室長補佐

5.議事録

【城山主査】  それでは、皆様、お待たせいたしました。ただいまから人文学・社会科学特別委員会、第9回になりますけれども、開催をさせていただきます。
 まず、本日の委員会、オンライン開催に当たりまして、事務局から注意事項をお願いできればと思います。よろしくお願いします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  ありがとうございます。文科省学術企画室でございます。
 本日、オンラインでの開催となります。入室につきまして委員の先生方には御迷惑をおかけし、申し訳ございませんでした。この場をお借りしておわび申し上げます。
 本日はオンラインでの開催となります。事前にお送りしておりますマニュアルに記載のとおり、御発言の際には「手を挙げる」ボタンをクリックしていただきまして、指名を受けましたら、マイクをオンにし、お名前を言っていただいた上で、ゆっくり御発言いただければと思います。なお、主査以外の委員の皆様におかれましては、御発言されるとき以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 機材の不具合等ございましたら、マニュアルに記載の事務局連絡先に御連絡ください。
 以上でございます。

【城山主査】  それでは、まずは事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  本日、オンラインでの開催となりますので、資料は事前にお送りさせていただいております。本日の主な議題に係る資料につきましては議事次第のとおりとなってございます。
 本日、委員の出席でございますが、本日は山本委員が御欠席という御連絡をいただいております。
 あと、現在、須藤委員、仲委員、加藤委員、戸田山委員がまだ御入室ができていないという状況です。
 以上でございます。

【城山主査】  よろしいでしょうか。
 それでは、1つ目の議題に入りたいと思います。1つ目の議題は、人文学・社会科学特別委員会の今後の調査審議事項等についてということであります。
 まずは事務局から御説明をお願いいたします。

【河村学術企画室長】  皆様、よろしくお願いいたします。学術企画室長の河村でございます。資料について御説明をいたします。画面共有をお願いいたします。
 議事次第にありますように、本日、議題としては大きく2つ、1つ目が人文学・社会科学特別委員会の今後の調査事項等について、2つ目でございますが、人文学・社会科学に関連する指標に関するヒアリングで、2つの議題をお願いしたいと思っております。
 次のページをお願いいたします。資料の1-1でございます。まず、「人文学・社会科学を取り巻く状況について」ということで、昨年秋以降、直近のいろいろな状況について簡単に御説明をいたします。
 次のページお願いします。1つ目でございます。令和4年度の人文学・社会科学の振興関連予算ということで、次のページをお願いいたします。昨年は概算要求の状況等を御説明したところでございますが、昨年末の政府予算案の閣議決定を踏まえまして、令和4年度の現在国会で御審議中の予算案、その中で人文学・社会科学の振興関連予算ということで御参考までに1枚にまとめております。
 次のページをお願いいたします。続きまして、人文学・社会科学を含む指標の検討ということで、今回、今後の審議事項ということで2つお願いをしたいと思っております。1つ目の指標に関してですが、政府文書の御案内でございます。昨年3月に閣議決定されました第6期の科学技術・イノベーション基本計画におきまして、赤字のところでございますが、人文・社会科学に関連する指標について2022年度までに検討を行い、2023年度以降モニタリングを実施するというふうに政府の文書でなっております。
 次のページをお願いいたします。また、日本学術会議のほうでも動きがございました。昨年の11月25日に発表されております「学術の振興に寄与する研究評価を目指して」ということで、これは人文・社会科学以外、自然科学も含むものでございますが、抜粋ということで、人文学・社会科学に関連して、学術会議のほうで評価に関する記述が出ていると、そういう御紹介でございます。
 次のページお願いします。続きまして、内閣府のCSTIの動きでございます。関連動向、「研究力を多角的に分析・評価する新たな指標の検討について」ということで、6期の基本計画に基づきまして、下の枠囲み、これが昨年の12月20日のCSTIの会議の資料の抜粋ではございますが、CSTIのほうで現在、自然科学も含めて全体的にいろいろ検討されているという御紹介です。
 スケジュールにつきまして、御覧いただきますとおり、まず2022年3月に中間まとめをCSTIのほうでまとめられて、以降、モニタリング等を実施されると、そういう状況が内閣府において進んでいるという御紹介でございます。
 次のページをお願いします。まだ中間まとめの前の段階でございますが、昨年の12月20日の資料の中で、検討の方向性といった資料がございましたので、併せて御紹介をさせていただきます。多角的な分析のために、研究力の大目標をインパクトに分類して整理し、対応する指標候補を試行的にモニタリングしつつということで、ここの下のほうの図になりますが、まず科学研究指標ということで、大目標としては、Top10論文数等がある。それ以外の新たな指標候補ということで、緑の部分がいろいろと考えられるのではないかと、そういう資料になっております。
 2つ目ですと、研究環境ということで、サイエンスマップへの参画数・割合というものが大目標、それ以外にということでダイバーシティ等々があるのではないか。また、最後にイノベーション創造関連指標として、特許に引用される論文数、またそれ以外にもあるのではないかと。
 そういった形で、まだ中間段階、検討の途中の資料ではございますが、内閣府のほうで検討が進んでいる状況ということで御紹介させていただきます。
 次のページをお願いします。続きまして、今後の人社特委における御検討いただきたい事項の2つ目の人文・社会科学研究のデータプラットフォームについてでございます。次のページをお願いします。
 これも政府文書の御紹介でございますが、6期の基本計画におきまして、赤字の部分でございます、人文・社会科学のデータプラットフォームにつきましては、2022年度までに基盤を整備すると。そして、その進捗状況を踏まえて、2023年度以降の方向性を定め、さらなる強化に取り組むと、そういうことになっております。
 次のページをお願いします。それを受けまして、2022年度までに基盤整備という観点でございますと、昨年人文学・社会科学特別委員会でも御議論いただきましたが、日本学術振興会で実施をされております人文学・社会科学のデータカタログ(JDCat)というものが、昨年から、特に7月、11月と、まずメタデータ公開が動いており、また、本年の4月予定ということで、オンライン分析システムが稼働し始めるということで、ここからいろいろと本格的な一般利用等が広がっていくといった最新の状況ということで御紹介させていただきます。
 次のページをお願いいたします。これは御案内のとおり、学術振興会が行っておりますデータインフラストラクチャー構築推進事業のそれぞれの御説明でございます。
 次のページをお願いします。最後に御参考になりますが、「総合知」に関しての状況の御説明です。
 次のページをお願いします。総合知に関しまして、基本的な考え方であったり、戦略的に推進する方策というものが、内閣府のCSTIの木曜会合で検討されているというところでございます。
 次のページをお願いします。木曜会合で議論がなされておりまして、2021年度中に取りまとめる予定ということで、下のほうにスケジュールを内閣府の資料から抜粋してつけております。ヒアリングを重ねてこられまして、下のほうの一番下ですが、第5回、これは2月3日となっておりますが、最新の状況ですと、これは2月10日、木曜日に総合知戦略(案)ということで御議論される予定と聞いております。
 こういったスケジュールで、まず内閣府のほうで総合知の戦略、基本的考え方という検討が進んでいっている状況を御紹介させていただきました。
 次のページをお願いいたします。資料の1-2でございます。以上のような政府文書や最近の状況を踏まえまして、人文科学・社会科学特別委員会で今後進めていただきたいということで、事務局のほうでつくらせていただいております。
 1の検討の背景に関しましては、第6期の基本計画に書いてございますような人社の指標に関するもの、また、人社のデータプラットフォームについての検討、この2つの検討の背景があります。2でございますが、調査審議事項として、背景を踏まえまして、まず1つとして、人文学・社会科学のモニタリング指標について御検討いただければと思います。また、2つ目として、人文学・社会科学の研究データの共有・利活用の促進についてということで御議論いただければということで、早速ではございますが、本日の第9回の人社特委におきまして、この後、人文学・社会科学に関連する指標に関するヒアリングを、実施させていただければと思います。次は第10回を3月に予定しております。そこから、これからは予定でございますが、ヒアリング等々を重ねていきながら、御議論を深めていただく。また、データに関しても、ヒアリングなり議論を深めていただく。そういったことを予定しております。
 次のページをお願いします。本日、早速ヒアリングを予定しておりますが、事務局のほうで御議論に当たっての出発台というようなものを論点としてつくりました。
 1、論点の背景でございます。平成30年の12月に学術分科会、人文学・社会科学振興の在り方に関するワーキンググループが審議のまとめを出していただきまして、いろいろと中身はありますが、人社のこれからということに関して記載がございました。こういったものを出発台として考えてはどうかと思っております。
 例えば人社に関しましては、書籍の刊行も重要な成果の発表手段となっていると記載されておりました。また、国や社会のコンテクストに左右をされる。言語学であったり、文学であったり、歴史学等々、自然科学とは異なるような状況があるということ。また、4つ目ですが、国際的な発表を行う際には、国内に向けた発信とは異なる配慮が求められるということで、グローバルと国内というというのがやはりちょっと違うところがあるのではないか。
 そういったことが平成30年の審議のまとめに記載されておりますので、2でございますが、これから指標を検討する上で、論点としては、そういった審議のまとめを踏まえまして、例えば1、どのような活用目的を前提に、人文学・社会科学に関連するモニタリング指標を設定するべきか。やはり活用目的というものもしっかりと検討していく必要があるのではないか。
 また2つ目、人文学・社会科学の特性に応じた多角的なモニタリング指標をどのように設定するべきか。先ほどありましたように、日本という国の社会のコンテクストに左右されるというようなところがある一方で、経済学、経営学に関しましては、例えば国際的な論文、英語の論文というようなものも進んでいると聞いております。美術、美学系ですと、例えば展示会のようなものであったり、また書籍であったり、また社会科学系ですと、例えばテレビ等への出演であったり、いろんな会議への出席ということで、様々な学問分野であったり、学問領域等々含めまして、多種多様があるかと思います。そういった特性に応じた検討が必要ではないかと考えております。
 最後の③でございますが、人文学・社会科学に関連するモニタリング指標の国際的通用性をどのように図るべきかということ。先ほどの審議のまとめにも書いてありますが、国際的な発信を進めていくというところ。これもなかなか日本語で書くからこそよいというようなものもあれば、やはりグローバルに通用していくものが必要という分野もあるかと思います。トータルとして、最適な通用性、グローバルの観点というような形も併せて御検討いただければありがたいなと考えております。
 事務局からの御説明は以上となります。

【城山主査】  どうもありがとうございました。それでは、今御説明いただいた中で、1つは資料1-2、今後の調査審議の主要な論点がモニタリング指標と研究データの共有・利活用の促進について、2つのテーマであるということと、それから、早速今日入りますモニタリング指標についてどういう辺りを論点として想定するかということで資料の1-3を御用意いただきましたけども、この辺りを中心に御質問、御意見があればいただければと思います。いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 恐らく、モニタリングに関する具体的な論点は、今日の御報告をめぐる議論の中でも出てくると思いますので、それを踏まえて、どこかでボトムアップに整理していくということになろうかなと思いますが、取りあえず現時点ではよろしいでしょうかね。
 それでは、基本的にはこの方向で御了解いただいたということで進めさせていただきたいと思います。
 それでは、本日2つ目の議題ですけれども、人文学・社会科学に関連する指標についてのヒアリングということで進めさせていただきたいと思います。本日は、お二人、2つの御報告をいただくことになっています。1つ目は、政策研究大学院大学の林先生より、人文学・社会科学における研究評価に係るこれまでの調査研究について御説明をいただきたいと思います。その後、引き続きまして、科学技術・学術政策研究所の赤池上席フェロー、それから、岡村主任研究官より、人文・社会科学研究に関する関連調査について御説明をいただきたいと思います。
 それでは、最初に資料2-1に基づきまして、林先生、よろしくお願いいたします。

【政策研究大学院大学(林)】  林でございます。よろしくお願いいたします。
 そうしたら、私のほうから、20分程度と聞いていますが、人社の研究評価あるいは測定の課題について御報告させていただきます。
 内容はここにあるようなものなのですが、事前に申し上げておきますと、基本的にこれからお話しする話は、例えば大学といったような組織単位での測定、それはもちろん国レベルのモニタリングにも使えると思いますけども、そういうレベルの話であって、研究者個人の評価であるとか測定とは全く別の話であって、今日の話には含まれないという、そこの御認識はぜひお願いしたいと思います。
 その上で、内容としては、研究成果測定における多様性と標準性、標準化、この両立の問題があるということをまずお話しした上で、海外の状況をお話しいたします。それから、海外でやっているようなことが日本で実現可能なのかということを簡単にお示ししたいと思います。それから、社会インパクト評価の話をして、最後の学術会議の報告、ここは恐らく先ほども言及ありましたので、飛ばす形で行きたいと思います。
 まず、研究評価あるいは研究成果測定における分野の違いの課題ということなのですが、これまでも全分野に適用可能な単一の指標というのは存在しないということはずっと議論されてきました。特にそういう指標を使うことによって組織であるとか研究者の行為に悪影響が及ぶということの懸念は何度も示されてきました。
 端的に言えば、Web of ScienceやScopusのようなデータベースを使うことで、人文・社会科学の研究者の研究活動あるいは研究発表の活動がひずんでくるのではないかと、そういう議論がありました。
 これは海外だけじゃなくて、下に日本の学術会議あるいは文科省の指針もありますけれども、こういう話は既に何度も話としては議論されてきたところでございます。
 一方で、次のページですが、ただ、実際にどうかということなのですが、実は特に近年、資金配分の場面においてWeb of ScienceやScopus指標が使われる傾向が高まってきていると思っております。ここに2013年の事業であるとか14年の事業、書いてありますが、そういう中で論文の被引用数のような指標を使っています。
 それとともに大きいのは、2019年から国立大学の運営費交付金配分の一部を共通指標というもので配分するようになったのですが、その中の1つに、運営費交付金当たりの、コスト当たりのTop10%論文数という、そういう指標が使われるようになってきています。
 これは当然ながら人文・社会系にとっては不利な指標なわけですけれども、これを踏まえて、国立大学協会のほうで2019年により適切な指標は何かという検討をしてきました。私もそこに関わってきましたが、そこでは、まずは、「11学系」と書いていますが、要は、11の大きな分野ごとに指標を設定することが必要だろうという議論はしました。
 それから、後ほどまた出てきますが、ピアレビューが基本的には本来は重要なのだけれども、それがない状況では引用数というものよりは教員当たりの研究業績数などの指標もちゃんと考えていくべきだろうという、そういう議論は行いました。
 ただ、そういう議論をしている中で非常に難しいなという感じがあったのが、赤字で書いてありますが、特に人文・社会系について様々な研究業績がある中で、一体何を「研究業績」と呼ぶのか、あるいは何を「1本」と数えるのかというのは非常に難しい問題であるということが具体的に分かってきました。
 結果的には、今、「査読付き論文数」であるとか、「ISBNが付与されている学術図書」、「作品等」を測定するということで動いているわけですが、ここもなかなか実際には定義の問題があります。
 こういう議論をしていると、学術界からは、先ほどの学術会議の答申もそうなのですが、基本的にはピアレビューで行うのが最も望ましい方法だという御意見が上がってきます。
 一方で、先ほどの資金配分のような行政の側だと、できるだけ客観的な指標を用いて配分をしたいと、そういう要望が上がってきます。
 このように学術界のほうは多様性を求めて、行政側のほうはできるだけ標準化、指標の標準化という、そういう要望がある中で、どうこの両者をバランスを取ったような設計をできるだろうかという、そういうところが恐らく課題であろうと思っています。
 その点について、海外、これからお話しするのですが、どういう方策を取っているかというと、大きく分けて2つの方策だと思います。
 1つは、まずは定量的指標を中心にするのだけれども、ジャーナル論文以外も含めた少数の指標、それは例えば書籍とかですけれども、そういうものを含めた少数の指標を設定して測定をできるようにするという、そういう方法を取るやり方と。
 それから2つ目は、今度はピアレビューを重視すると。ただ、ピアレビューも、単に主観的な判断というだけではなくて、その中で多様な指標をちゃんとエビデンスとして用いるように求めていくと。それによって比較可能性を高めるのだと。また、ピアレビューの結果が段階判定で出てきますので、そういうものもある種の指標として使えるのではないかと。
 こういうような方向のこの2通りがあるかと思っています。
 ここからざっと具体的な話をしたいと思いますけれども、1つ目の、できるだけ定量的な測定なのだけれども、様々なものを入れようという、そういうアプローチは、これはノルウェーモデルと呼ばれていて、特にノルウェー等の北欧諸国やベルギー、ポーランド等で実施されているようなモデルになっています。
 ここに書いてありますように、英語ジャーナル論文だけを測定するのではなくて、自国語、例えばノルウェー語で書かれた論文であるとか、それから書籍についてもしっかりと測定を行うという、そういう方法になっています。それによって重みづけ集計して資金配分に反映するというものです。
 ただ、そういうものを実現するためには前提となる条件があります。まず1つには、当然ながらそういう測定をするためには、多様な研究成果が入れられるような研究業績データベースを国内に持っていることが必要になります。欧州の調査によると、39か国のうちの21か国においてそのようなデータベースが構築されているという状況にあるということです。
 それから2つ目ですが、多様な研究業績とは言いつつも、資金配分に使うためには、その中で「学術出版物」というものは何かという学術出版物の定義をするとともに、学術出版チャネルのリストを作成するということを行っています。多くの国でピアレビューなどの質的判断を経た学術出版チャネル、チャネルというのはジャーナルであるとか出版社なのですけれども、そういうピアレビューを経たものを学術出版物と定義して、その測定のみを資金配分に使うという、そういうやり方をやっています。
 そのためには、各国で学術出版物とみなし得るようなジャーナル、あるいは学術出版社というもののリストを作成して公表していて、場合によっては、国によっては、その中で特に優れたものを1~2段階識別して、集計の際に重みづけをするようなことをしています。
 こういうものをするためには、さらに、そういう判断を文科省のようなところがするわけではなくて、各国のアカデミーとか大学団体がそういうものの作成に関与しているという、そういう状況がございます。下にそういう学術出版物のチャネルとして考えられるジャーナルのリスト、登録簿ですけども、各国がこういうものを持っているという状況がございます。
 具体的にノルウェーの例をちょっと見てみますが、大学への運営費交付金に相当しますが、それの30%を成果に基づく要素として配分していて、その指標が8つあるのですが、その中の1つが研究成果物になります。その測定をするために、CRISTIN、配付物によってはスペルが間違っていましたが、修正しましたが、CRISTINと呼ばれるようなデータベースを持っています。
 ただし、先ほど申し上げたように、資金配分の対象となるのは学術出版物とみなされるもののみということで、学術出版チャネルの登録簿というものを作っていて、この登録簿に載っている出版物のみが測定されて、ポイント制で、論文、書籍、あるいは書籍の中の論文、章です、チャプターですけども、そういうものがここにあるようなポイントで集計されると。レベル2というのがその中でもクオリティーが高いジャーナルというような、そういう形で資金配分がなされています。
 ただ、こういうふうにジャーナル、あるいは出版社をランクづけするということに関してはいろいろな議論があり得るところです。ここにあるようなフランスやオーストラリアは、ジャーナルのランクづけを行いはしたのですが、途中でやめております。理由としては、フランスの場合は、例えばリスト化をした専門家名を公表しなかったとか、研究者コミュニティーに意見照会を行わなかったとか、信頼が得られなかったということで、結果的に、一部の分野のみでジャーナルリストを公表する程度に縮減しています。
 それから、オーストラリアもやめているのですけれども、理由は、一部の分野に不公平になるということもあるのですが、それプラス、私、冒頭でも組織単位の指標と申し上げましたが、それを大学が誤って研究者個人を評価するためにこういうものを使うということが生じてしまったために、それではよくないということでオーストラリアのほうでは中止をしています。
 このように、これら今申し上げたようなものが、ジャーナル論文以外も含めて、できるだけ学術出版物を定義して測定しようというアプローチです。
 一方で、ピアレビューの中では指標をどう考えるかということですが、ピアレビューの中ではできるだけ多様な研究成果を尊重しようというスタンスがあります。そのために、例えば、研究というのは幅広く定義されるのだということを伝えるとともに、多種類、いろんな種類の研究成果をピアレビューにおいて出していいのだということを明確に伝えるということが行われています。
 例えばオーストラリアの評価のところで、後で読んでいただければと思いますけど、研究をかなり広めにいろんなものが入り得るような形で定義しています。
 それプラス、先ほど申し上げたように、ピアレビューにおいてどういうものを出してよいのかというところですけれども、まずオーストラリアでは伝統的な研究成果と非伝統的な研究成果というふうな言い方をしていますが、こちらのほうで、創造的作品、芸術とかも含めてですけれども、あるいはパフォーマンスであるとか、そういうものを例示することでこういうものを出すことを促していると。イギリスも同じように、作曲とか、デザインとか、そういう芸術的なものも入っていますし、あるいはワーキングペーパー、会議報告等々、あるいはデータベース等もですけれども、そういうような多様なものを提出できるということを明示しています。
 これよりも、フランスの場合は分野別でもガイドラインをつくっていて、例えばこれは歴史学の研究成果のガイドラインということで、研究評価をするときにどういうものを出すことが考えられるかというところで、ここに書いてありますよね。先ほど、例えばテレビの出演とか、そういう話も事務局のほうからありましたけれども、そういうような社会向けのような成果も入っていますし、また、こういうシンポジウム、学術会議、研究セミナーであるとか、歴史資料であるとか、デジタル成果物であるとか、多様なものが出し得るのだというようなことを明示的に示しています。
 同様にオランダもですけれども、オランダも大学評価があるのですが、その中で、人文学においてはどういう指標を出すことが望ましいかということを人文学部長らによる会議が検討いたしました。彼らの議論の中では、大きくは、左側が学術界向けの成果ということですけど、右側が社会向けの成果といいます。そういう大きな分け方をしています。
 それプラス、成果物、そしてその利用、そしてそれが優れていると認知された証拠という、そういう3段階で両方とも指標群をつくっているのですけれども、やはりこれ見てみますと、様々な研究成果物が提出可能であるということが示されています。また、利用の指標であるとか、書籍等の書評であるとか批評であるとか、それから例えば研究費をその後に取ってきたであるとか、そういう認知の証拠、それから社会のほうですと、やっぱり一般向けの研究成果物であるとか、例えば社会と連携したプロジェクト、教育における製品の使用とか、様々なものがこういうふうな指標として挙がっています。
 こういうふうに明示的に示さないと、どんなものでもいいのだという抽象的なことを言っても、なかなか出す側は本当にそうだろうかと考えてしまいますので、こういうふうに各国で明示的に例を示しているという状況があります。
 こういうふうに2種類あるのですが、この後、簡単にですけれども、じゃあ、日本で人文・社会科学分野で、先ほど1つ目で言ったノルウェーモデル、定量的に測定するということが本当にできるのだろうかということをちょっと試行してみたものを簡単に御紹介したいと思います。
 対象を人文学の歴史学と社会学の経営学、2分野を対象としています。使っている資料ですが、日本の国立大学法人評価において大学のほうから提出された研究業績、それから、ノルウェーのデータが取れなかったので、イギリスの有名なREFと呼ばれる大学研究評価における提出された研究業績を扱っています。参考に科研費の研究成果の話も少し出てきます。
 まず日本の場合は、研究成果がどれほど多様かという話なのですが、これは歴史学、経営学でどんな種類の研究業績が評価において提出されてきたかの割合を示しています。歴史学ですと、イギリスの場合はジャーナル論文が44%と多いのですが、日本の場合は、それよりは、著書であるとか、編著であるとか、そういうものが多いと。そして、2008年の評価と2016年の評価でそんなに変化もないという状況です。
 一方で、経営学のほうは、イギリスは95%がジャーナル論文という、そういう状態になってきているのですが、日本のほうはまだ著書が多くて、ジャーナル論文が一番多いのですが、著書や編著も多いという、そういう状況になってきています。
 ちょっと飛ばしますが、先ほど申し上げたように、イギリスは、特に経営学について、イギリス、96年から評価をずっとやっているのですが、やるたびにジャーナル論文が提出される割合が、ねずみ色のところですけれども、多くなってきているということで、やはり評価を繰り返すことでかなり研究成果の出版のスタイルというのが変わってきているという、そういう状況があります。先ほどの日本のデータを見ていただいても、日本はそこまでではないという状況かと思います。
 これも、先ほど出てきたような日本の大学評価の提出業績のうちのScopusという論文に収録されている研究業績がどのくらいあったかというデータを示していますが、下のほうに人文学・社会科学とありますが、基本的に人文学はScopusに載っているようなものは数%あるかという、そういう状況です。社会科学については、分野によって、経済学、経営学、心理学などは多いのですけれども、それ以外だと10%程度と。そのように分野によっても大分違いがあるという状況ですけれども、ただ、やはりかなりジャーナル論文、特に英語のジャーナル論文は少ないという、そういう状態が見られるかと思います。
 その上で、実際にノルウェーモデルが考えているような学術出版物のチャネルによって提出された研究業績が測定できるかどうかというところなのですが、これ、どのようなジャーナルが評価において提出されたのかということをリストしています。日本とイギリスです。イギリスは公開資料なので、ジャーナル名を出していますが、日本は伏せて一般的な表現にしています。
 見ていただくと分かるのですが、まず一般出版社によるジャーナルというか、雑誌というのが入っているとともに、そういうのは当然、査読はないようなものもあります。それから、科研費の研究業績においてよく出されているジャーナルと同じようなものが上を占めているという、そういう状態があります。
 これはどういうことかというと、歴史学では、大学評価は通常優れた研究業績を厳選して出してくる場ですので、そういうところで出されるものと、科研費の研究成果は基本的に成果物を全部載せる場なので、そういうところであらわれてくるようなジャーナルが上位で一致していると。つまり、質の高い研究成果のみを掲載するようなジャーナルというのは明確に区分されている状況にはないと日本の歴史学は思います。
 それから、査読がないような一般誌のジャーナルもあるということで、査読があるチャネルのみに優れた研究成果、評価に出されるような優れた研究成果が発表されているわけではないと。
 なので、歴史学、ノルウェーモデルを使えば、査読がないが評価に提出されるような優れた業績というのが測定されないという、そういう状態になってしまうかと思います。
 ちょっと飛ばしていきますが、経営学に関しても似たようなところはございます。例えば、学会じゃないところの雑誌に出ている、あるいは査読がないという状況はあります。
 ただ一方で、海外の学術出版社によるジャーナルが評価においては上位に入ってくるような、そういう傾向も出ています。
 経営学は、科研費成果を見ると、大学の紀要が多いのですが、大学評価では国内及び海外のジャーナルが選別して出されているということで、ある程度使い分けがなされているという状態はあると思います。
 ただ、査読情報のない一般社によるジャーナル2誌も入っています。実際経営学の先生方の中にもグローバルな発信とローカルな発信の共存が必要というような議論もされていると聞いていますので、まさにこういう状態があらわれているのではないかと思います。
 経営学、ノルウェーモデルを使うと、質の高いジャーナルを区別して、ノルウェーモデルのようにプラスポイントをつけるようなことも可能ではあるのですが、一方でやはり歴史学と同じように、一般出版社によるローカル向けの質の高い成果が抜け落ちる可能性があるかと思います。
 ちょっと時間もないので飛ばしますが、出版社についてもやはり同じような検討ができるのですが、全体的な傾向としては、学術出版社と海外で定義されて測定の対象となる条件は、出版社に査読があるかないかなんですが、日本は基本的にそういうものがほとんど確認されないという、そういう状況になっています。
 ただ、これは別に悪いという話ではなく、日本の学術出版文化がほかのノルウェーのような状態とは違うということだと思っています。いろいろと学術出版に詳しい方の御議論を見ても、日本はそもそも学術出版社と一般の出版社の区分が明確ではなくて、それゆえに大学出版部でも専門家による査読を厳密に制度化しているようなところは少ないという、そういう議論があります。
 これは日本だけじゃなくてオランダでも、ハイブリッド出版ということで、学術研究者向けの書籍であり、かつ一般読者も読むという、そういう出版物をちゃんと認識して測定をしているということがあります。
 ですので、こういう日本の学術出版文化を前提とすると、やはりなかなかノルウェーモデル使いづらいなという、そういう状況があるかと思います。
 そして、ちょっと最後のほうに来ていますが、今まで出版物とか学術向けの話をしていましたが、オランダの人文学のところにもちょっとありましたが、社会的なインパクトの測定というのが国際的には大きな流れとなってきています。各国で研究評価の測定において、学術面以外の社会・経済、あるいは文化とかへの効果・影響を社会インパクト評価として測定をするようなことが行われています。ここに各国の状況が書かれています。
 日本の場合、先ほどのように幅広いオーディエンスを対象としているような出版をしているのであれば、そういうものをどう測定するかというのは、恐らく海外よりもちゃんと議論していくべきだろうと思います。
 そこに関しても、ちょっと飛ばします、海外では、例えばどういうような社会インパクトの領域があるのかということを幾つか定義をしたり、あるいは例えば社会福祉へのインパクトとか実務家へのインパクトというところでは、その中にさらに細分化してどういうようなインパクトの種類があるのかと。そして、それを測定するものとしてはどういうものがあり得るのかということの例示をしっかりとつくっていて、こういうものを参考に大学が自己分析をして資料を出してくるという、そういう仕組みになっています。
 ですので、インパクトの測定といっても、いろんなインパクトがあって比較は難しいのですが、できるだけ指標やインパクトの種類というのをある程度標準化、多様性を尊重しつつも標準化を目指していると、そういう取組が海外では行われているところになっています。
 ちょっと「責任ある研究評価」の話は飛ばしまして、最後、ちょっと字小さいのですが、まとめのところですが、繰り返しについては述べませんが、ノルウェーモデル、なかなか難しいのですが、ただ、先ほど事務局のほうからもお話ありましたように、例えば人文・社会科学の国際競争力を向上したいのだというのであれば、海外で学術出版物として定義されているようなもので測定することによってインセンティブをつけていくというのが非常に直線的に効果を発揮するような方法であろうと思います。
 ただ一方で、データで見たように、日本の場合は多様な研究成果、そして多様なオーディエンスにそれが提供されているということもありますので、そこをどう考えていくのかという議論もあると思います。
 こういう議論はなかなか、指標がどうかというよりは、日本の人文・社会科学をどうしていくのだという、分野の在り方、あるいは研究の価値をどう捉えるかという、そういう議論を先にしないと、なかなか何を測定するかという議論にはつながらないと考えております。
 それとともに、今回、総合知の話は全くこの議論の中には入っておりませんので、事務局からもありましたように、総合知の議論はまた別途していくことが必要であると考えております。
 私のほうからは以上になります。

【城山主査】  どうもありがとうございました。それでは、少し質疑の時間を取りたいと思いますが、いかがでしょうか。
 小林先生、よろしくお願いします。

【小林委員】  よろしいでしょうか。どうも貴重な御報告ありがとうございます。かねてより非常に関心を持っている分野でしたので、大変勉強になりました。ありがとうございます。
 まず1点目ですが、ノルウェーモデルなど、ヨーロッパやオーストラリアを中心に御報告されたと思いますが、もう既に韓国や中国ではかなり前から導入しておりまして、韓国はKSSCI、中国はCSSCI、要するにSSCIの韓国語版、中国語版でやっています。このポイントのつけ方は、結局、被引用数でやっていますので、それで給料も決まっています。中国の若手、最初に勤めると、多分給料は重点大学で400万円ぐらいしかないのですが、これの一番上のポイントの論文を書くと、1本160万円。私の教え子が留学生ですけど、1年間で6本書いたのが、1,000万円もらっていましたので、かなりインセンティブを持ってやっています。
 それとの絡みで申し上げますと、出版社の話なのですが、アメリカの場合は、出版社に、明確なランキングといいますか、アカデミックなポイントがついています。これはどれくらい引用されたかなのです。そうしますと、日本の出版社についても、この出版社は良い出版社、この出版社は駄目な出版社というランキングをつけるのではなくて、それぞれの出した本の被引用数、どういう出版社で出されようと、被引用数がどれぐらいなのかということで見てはいけないのかどうかというのがお尋ねしたい第1のポイントになります。
 具体的に言いますと、日本だと名古屋大出版会が出したものがかなり被引用数が高いとは言われてはいます。
 2番目にお尋ねをしたい点ですが、それは、研究者能力、あるいは機関の能力でもいいのですが、今、国立大学の評価で使われているかちょっとよく分からないのですが、外部資金です。いわゆる競争的資金、あるいは共同研究、受託研究、寄附金、優れた研究をしていたらそういうものが来るであろうという前提でそういうものを見るということについてはどのようなお考えをお持ちなのかというのがお尋ねしたい2番目です。
 3番目ですが、頂いたパワーポイントのスライドの12枚目になります。「提出可能な多様な成果の例示」のオーストラリアのところで、伝統的研究成果の中に学会予稿が入っています。これを入れることについて我々は随分いろんな議論をしたのですが、これを入れると、将来、これに基づいてリバイスしたものが、ジャーナルの論文になったり、書籍、あるいは書籍の章になるということが当然起こり得るのですが、そのときにそれは自己盗用ということになりはしないのかという、これが一番の問題になるので、それは外したほうがいいのではないかという意見と、いや、それも重要であるという御意見があるのですが、それについてはどのようにお考えなのかということになります。
 あと最後に、人文・社会科学といっても、大きく分ければ3つに分かれると思います。1つは経済学。もう一つが経済学以外の社会科学。経営学、統計学も経済学に入れるとして。それから人文学。簡単に言いますと、経済学部と法学部と文学部で、やはり大きく分けるとカルチャーは違う。これは別に文系だけではないです。自然科学も、数学と高エネルギー加速器研究では全く違います。高エネルギーだったら共著者3,000人は当たり前にいますが、数学では1人か、せいぜい数人です。数学であれば、証明しても、それを10年かけて検証する。だから、とてもではないけれど、Top10パーセンテージとかということにはなじまないということになります。
 同じように、人文・社会科学は何か特殊な世界というのではなくて、どの分野であろうと、分野によって違うということになろうかと思います。
 いずれにせよ、お尋ねしたい点、以上です。よろしくお願いいたします。

【政策研究大学院大学(林)】  ありがとうございます。よろしいですか、私回答して。まず1点目ですが、アジアではまずやっていって、そして日本の出版物の引用数にとっての価値づけというお話ですけれども、まずアジアに関して、たしかJETROのアジア経済研究所がかなり調べて、書籍も書いていて、そこでも、やはりいい面、悪い面があって、SSCIシンドロームとか、要は、そういうものにかなり引っ張られ過ぎているという状況を描いていたり、あるいは、学術会議のレポートでも、中国が、指標にずっと寄り過ぎていて、できるだけピアレビューをやるように変えようというふうに指示が出ているという、そういうことを学術会議のレポートでも紹介していますが、やはり各国、必ずしも指標でやることによって問題がないという状態ではなくて、いろいろ議論があるところだと理解しています。
 その上で、日本の場合、書籍を引用数でというのは、確かにおっしゃるとおりですが、なかなか日本は、先生御承知のように、データがどれほど取れるかというところが難しいところかなと思っています。特に日本の論文、書籍から書籍への引用って恐らくデータ取れないので、日本の論文が日本の書籍を引いたものというのがどれほど今J-STAGE等々で取れるかというのはなかなか難しいところがあって、そういうデータ制約があるというところはあるかと思います。
 ただ、それがもしうまくいくようになれば、そういう指標というのは確かにあり得るのかなと思ってお聞きしました。
 それから2点目、外部資金の獲得ですが、日本の場合も交付金配分の共通指標の中に外部資金というのは確かに入っています。ただ、研究のよしあしというよりは、今大学に外部資金の獲得が求められているという状況の中での大学の努力を見る指標として見ているであるとか、あるいは海外も、外部資金を指標に取ることによって、間接経費が実はあんまり十分に補填、措置されていないので、間接経費が足りない分を運営費交付金から出すという発想の下に外部資金の額に比例して配分をするという、そういう発想で一応使っていたりします。
 ですので、外部資金が研究成果の指標としてよいかどうかという、そういう話ではない形で使っているケースが多々見られます。
 一方で、ただ、外部資金を研究成果の指標、特に、さっきもエスティームというか、評判という指標のブロックがありましたけれども、外から認められているという意味で外部資金というものを使うという、そういう例もあります。
 ただ、人文・社会系でそれが使えるかどうかというのは私はちょっと疑問があるところですので、ぜひこの部会でも御議論いただければと思います。
 3つ目のプロシーディングスです。先生おっしゃるとおりで、オーストラリアの場合も、どの指標を使うかを分野ごとに決めるということになっていて、まさにプロシーディングスを使うのは、情報科学・工学分野においてプロシーディングスを使うということになっています。
 ですので、例えばほかの理学とか、あるいは人文・社会科学は恐らく使っていないと思います。やはり分野ごとに、どういう研究発表の形態が主であるのかという、それを踏まえて設定をしているということだと思います。
 ですので、4番目の御質問、まさに分野によって違うのではないかというお話、全くそのとおりでして、各国、分野ごとの委員会がそれぞれにどんな指標を取るか、そしてその指標の定義は何であるかということをちゃんと議論をしているという、そういう状況になっていると理解しています。
 以上です。

【城山主査】  ありがとうございました。それでは、勝委員、よろしくお願いします。

【勝委員】  ありがとうございます。非常に面白く聞かせていただきました。この評価というところ、非常に重要だと思うのですが、特に人文・社会科学の分野での評価は重要だと思うのですけれども、やはり今世界ランキングのタイムズハイヤーとかを見ていても、サイテーション、それからピアレビューというのが多くを占めていて、それは先生がおっしゃるように、Web of ScienceであるとかScopusに限られている。そうすると、やはり日本の場合は、社会科学系、人文系はほとんど日本語で書かれているものが多いので、その辺で研究レベルが劣後して出てくるということが言えると思うのですけれども、ただ、日本の場合、THEランキングで、1,662校入っている中で、118校入っているということは、世界でアメリカに次いで2位で、非常に幅広い大学が入っているという点で評価できる訳ですが、それとは別にやはり日本語で書かれた論文のサイテーションというのは非常に重要だと思うのです。今の御質問の答えで、データ制約があるという説明がなされたのですけれども、この辺については、どういう動きが、今、日本の中であるのか。日本語論文データベースはやはり基本的な情報としてあるべきですし、今、分野の話がありましたけれども、例えば人文・社会科学でも、経済学、経営学、心理学というのはむしろ英語の論文が多いわけですが、それ以外はほとんど日本語になっているという現状の中で、その辺を克服していくにはどういうことが必要なのかということをちょっと教えていただきたいのが一点目です。それから2点目として、社会的インパクトの評価、これも非常に重要だと思うわけですが、これはやはり分野によって違うということになると、評価の基軸というものを、定性的にしろ、定量的にしろ決めていくのは非常に難しいと思うのですが、この辺について、先生はどのように、もし社会的インパクト評価というものを入れた場合に、どのような形で進めばいいと考えていらっしゃるのか。この2点についてお伺いできればと思います。以上です。

【政策研究大学院大学(林)】  ありがとうございます。まず1点目でございます。ランキングと、あとデータベースの話がありましたけども、まずランキングに絡めてですけど、先ほどもJETROアジア経済研究所の本について言及しましたが、そこにも書いてあって見ると分かるのですが、先ほど中国、韓国とかはデータをしっかりつくるようになってきていると小林委員からお話ありました。如実にそういう国は大学ランキングで使うような英語で書かれた論文も増えていて、日本がそういう国から比べると伸びがいまいちというか、そういう状態が確かにあるようです。
 ですので、ちょっと私、最後のところで、国際的な競争力を人文・社会系も高めていくのであれば、それに沿った測定をしていくべきだという選択肢もあるということも申し上げましたが、どこまでそういうものを重視し、一方で、日本はほかの国よりも人文・社会系、社会科学の研究成果を見るような一般読者の数もそれなりにいますので、そういうローカルな社会向けの業績もちゃんと見て測定していくのかという、そこの両者の関係というのは、やはりこういう部会でぜひ御議論いただければと思います。
 その上で、データベースの話ですが、これはちょっと事務局にもぜひお調べになっていたら教えていただきたいと思いますけれども、なかなか例えば、CiNiiに人文・社会系の論文も入っていたりしますけれども、引用が取れるような、引用を取るには参考文献、リファレンスのリストがされてないとできないのですけれども、そういうものが極めて不十分であったり、あるいはCiNiiの中にも、ある種同じ論文が重複して表記が違うものが複数入っていたりとか、あまり整備がされていないような状況もあるかのように私は使っていて見ております。
 なので、ほかの国のように測定をして引用数まで見るという、そういう状況までまだ来ていないのじゃないかなと私は思っていますが、もし事務局のほうから追加でコメントあれば後でいただければと思います。
 それから2点目の社会的インパクトのところです。これも、先生おっしゃるとおり、どう測定や評価をするかというのは、今、各国で議論をしているところなのですが、やはりイギリスのREFと呼ばれている評価で行われているのが一番よい方法だねというのがある程度共通的な見解として持たれてきている状況にあるかと思います。
 それはどういう方法かというと、社会的、これは文化的なインパクトも含めてですけども、そういう社会的なインパクトを及ぼしたような事例をケーススタディーとして、例えばA4四、五枚くらいのイメージですけども、そういうものを提出して、それを分野別の評価委員会が評価をするということをします。
 ただ、そこで、先ほど申し上げたように、A4四、五枚を書くときにどういうエビデンスを書くのかというところを今精緻化するような取組が行われていますし、また、分野別の委員会でも、じゃあ、どういうものが一番いい評価結果になるのかという、そういうものは実際の場では評価結果をみんな持ち寄ってそれで議論をしたりとかして、しっかりとそこをすり合わせしながらやっているという、そういう状況があります。
 特に2014年に始まったばっかりですので、そういうふうに、まずはそうやってある種試行的にというのですかね、進めていって、今後、より精緻化、標準化みたいな方向に行くのではないのかなと思っているところです。
 以上です。

【城山主査】  どうもありがとうございました。いかがでしょうか。
 二瓶さん、何かございますか。手を挙げていただいていますが。

【二瓶学術企画室室長補佐】  事務局でございます。林先生から御指摘がございましたCiNii Booksや、CiNii Research等の中身については、事務局において、現時点では詳細を把握しておりませんので、今後、担当の部署等とも相談をしまして、本委員会に必要な情報等を提示できればと考えております。
 以上でございます。

【城山主査】  ありがとうございました。それでは、井野瀬委員、お願いします。

【井野瀬委員】  井野瀬です。非常に興味深いお話でした。ありがとうございました。
 私は歴史学なので、今日のお話がダイレクトに実感されました。イギリスの出版社等々も、歴史学の研究者にはなじみのあるものが多かったです。おっしゃったように、歴史学分野においては学術出版と一般の出版との境はなく、自分のやっている研究がどれぐらいわくわくして面白いものであり、それがどんな未来を開くのかということを伝えたい、だから広く読まれたいと、ある種教養書としての側面を歴史学の研究者自身求めている気がいたします。
 お聞きしたいのは究極的に1点です。海外、本日例にあげられたイギリスの出版社でも、大学のテキスト系、つまり教育と関わるものがあります。大学における教育、次世代・若手育成を考えたとき、それは単純に論文だけで測ることはできない。ここにご出席の先生方もそうだと思いますが、レポート等の課題として教養書を挙げることは当たり前にあります。こうした大学における教育の在り方、各研究者の研究者としての面と教育者としての面とのバランスを、海外の事例などから林先生はどのように思われたかを教えてください。
 特に歴史学の場合、新しい高校歴史教育に向かう改革が学術会議提言を契機に始まっており、新科目である歴史総合、世界史・日本史探究をめぐる議論には、高校の先生方と共同執筆する大学教員も大変に増えています。つまり、中学、高校の教育改革に合わせて、単純に研究と教育と分けられない動きが起きているわけで、これについても、評価や業績という観点を含めて、先生の御意見をお聞かせください。よろしくお願いします。

【政策研究大学院大学(林)】  ありがとうございます。イギリスのことをまず申し上げますと、日本は、先生先ほど御指摘のように、歴史学が、一般の人にも読まれるようなものも、学術界に読まれるものもある種1つのものとして作るというような、そういうカルチャーがあると思いますが、イギリスの場合はどちらかというと、REF評価を見ても、学術の研究成果の評価のほうは本当に学術向けというところを見ていて、今先生言われたような教育への貢献ですね。例えば大学で、自分が使うというわけじゃなくて、ほかの大学で教科書として使われている、あるいは初中等教育で効果が、何らかの影響があるという、そういうものは全部社会・経済・文化的なインパクトのほうで評価をするという形になっています。
 ですので、イギリスの発想はそういうふうな切り分けをするということですけれども、日本の発想はまたそれとは違うということであれば、また違うようなことを日本は考えていかないといけないだろうと思います。
 以上です。

【井野瀬委員】  ありがとうございました。

【城山主査】  ありがとうございました。私が認識している限り、あと加藤委員から手が挙げて頂いているので、加藤委員のお話をしていただいて、その後、次に移らせていただいて、また、最後横断的に議論する機会ありますので、何かありましたらまた最後のセッションで御質問いただければと思います。
 ということで、加藤先生、お願いします。

【加藤委員】  私のバックグラウンドは情報科学ですが、現在、筑波大学の人事部門の理事・副学長をやっていて、人文も含めて全ての人事案件をチェックしており、今日の話は大変に興味深く伺わせていただきました。質問事項が2つあります。1つは、今日のお話は、出てくる国が、ヨーロッパの国が多くて、アメリカがほとんど言及がなかったような気が致します。アメリカは基本的にどのように人文分野を評価していると理解すればいいかなということです。2点目は、人文というとよく話題になる、紀要の取扱いです。人文のある分野においては、紀要こそ主戦場とかおっしゃる方々がいらして、私たちも若干戸惑いを持って聞いているのですけども、その辺の取扱いについてもしコメントありましたらお聞かせください。

【政策研究大学院大学(林)】  ありがとうございます。まずアメリカに関して、今日お話しした資料の基になっている議論をしたときに、大学に対する運営費交付金のような、その配分においてこういう研究成果をどう指標として考えるかという、そういう話のもとで議論をしました。実はアメリカ、パフォーマンスファンディングも州によってはあるのですが、研究成果に基づいてパフォーマンスファンディングしているという州は恐らくないのじゃないかなと思っておりますので、そういう意味でちょっと対象から外れております。
 ですので、アメリカで人文・社会科学の、個人レベルじゃなくてこういう組織単位の測定をどうしているかということについては十分に調べがついていないと。

【加藤委員】  ということは、アメリカは組織評価をして国がお金を出すというよりは、私立大学が中心で有名大学が多いのに対し、ヨーロッパは国がサポートしているところが多くて、日本もそうであるということですね。

【政策研究大学院大学(林)】  はい、そういうことに。アメリカの場合はもちろん州立大学はありますが、研究成果指標によってという形ではないものなので、そういうことになります。

【加藤委員】  分かりました。

【政策研究大学院大学(林)】  それから、2点目の紀要、非常に難しい問題だと思いますけれども、ノルウェーモデルに基づきますと、さっき学術出版物の定義という話しましたが、細かくは説明しなかったのですが、条件として、同じ大学の著者が、ちょっと細かい数字覚えていませんが、例えば3分の2以上いたら駄目とか、そういう話に、国によって違うのですけども、そういうふうになっていると思います。
 つまり、紀要が特定の大学の著者によって占められている場合は、それは各国ノルウェーモデルにおいて学術出版物としては認められないという、そういう形になっています。それを日本でそのまま適用するということがいいのか悪いのかということは、本当にそれは各分野の先生方が御議論いただくところだと思いますけれども、データで見たような経営学みたいに、科研費の成果物は紀要とかいろんなものを出すのだけれども、大学評価においてはその中でもかなりよりすぐりで出してきていて、紀要の割合が減っているとか、そういう状態であれば、紀要というのはまずはいろんな多様な研究成果を出す場として機能しているというのであれば、それは十分にそういうものを今後も維持するということはあり得るのじゃないかなと個人的には思っておりますが、そういう議論はぜひこの部会でやっていただければと思います。

【加藤委員】  ありがとうございました。ちなみに筑波大ですと、人文のある分野においては、紀要について、今おっしゃった、どれぐらいの外部の投稿者があるかというのを数値化してインデックスを設けるという試みをやっている部署がありまして、今のコメント、大変参考になりました。

【政策研究大学院大学(林)】  ありがとうございます。

【城山主査】  林先生、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、資料2-2に基づきまして、科学技術・学術政策研究所の赤池上席フェロー、それから岡村主任研究官から御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

【科学技術・学術政策研究所(赤池)】  赤池です。それでは、資料の共有、事務局からお願いいたします。文部科学省の科学技術・学術政策研究所の赤池でございます。岡村とともにお時間をいただいて発表させていただきます。
 次のページお願いいたします。それから、私自身は、NISTEPでの仕事と、ほかに、先ほどもちょっと話題になりましたけども、内閣府で人文学・社会科学を含む研究データ基盤の整備などの仕事をしています。
 それでは、早速今日の発表のアウトラインお話をさせていただきます。林隆之先生から、まず、人文学・社会科学の研究評価ということについて体系的に包括的なお話をしていただいたところでありますので、私どもからは、ややトピカルなお話になります。
 私どもの研究所は、御承知の方も多いかと思いますけれども、例えば科学技術の指標だとか、論文、特許、それから、インプット、アウトプット、アウトカムに関する分析、それから技術予測などというものもやっています。今までは、いわゆる自然科学のみで、自然科学を中心にやってきたところですけども、今般の科学技術基本法の改正や科学技術・イノベーション基本計画で人文学・社会科学も明示的に入ったということもありましたので、より1つの分野としてしっかり見ていこうというところで体制を整えている中途でございます。
 ということで、まさに発展途上でありますけども、私どもの研究成果を発表させていただきます。
 それで、最初の人文学・社会科学の状況把握です。主に、今回お時間も限られていますので、参考資料のほうを用意しておりますので、後ほど御覧いただければと思いますが、ちょっと興味深い点だけをお話をします。
 それから、岡村のほうから研究活動と成果の多様性の可視化というものがあります。これは林先生からもお話ありましたけども、例えば研究成果を体系的にデータベース化して、それを評価に活用していくかというのは非常に重要なことでございます。英国のファンディングエージェンシー、ある意味集合体ですね、のUKRIがそういう体系的なシステムを構築し、社会インパクト評価も含めてやっている取組がございますので、トピックスとして紹介させていただきます。
 また、最後の3つ目の科学技術と社会の指標は、NISTEPじゃなくて、SciREX、科学技術・イノベーション政策における「政策のための科学」、これは文科省の事業でございますが、この中で岡村が従来からやってきたものです。科学技術が社会とどういうふうに関わってきたか。今までELSIだとか、RRIであって、責任ある科学技術・イノベーション、研究・イノベーションということで議論がされていますけども、それをいかに測定するかということで、そんな取組もトピックスとして御紹介をさせてください。
 状況把握として、まずインプットの指標から言いますと、人文・社会科学系の大学等の研究開発費、2000年度前半と比べて減少しております。それで、自然科学系に比べて、政府負担分や企業負担分の割合が小さくて、自己資金ですね、運営費交付金や施設整備費補助金の割合が9割と非常に大きくなっています。
 あと、2000年度前半と比べて減少なのですが、ちょっと特徴としてですが、総額、額としての金額はそんなに変わらないのですね。ただ、FTEと申しまして、研究従事割合の統計がございます。こちらのほうが減少している関係で、掛け合わせた専従換算の研究費としては減少しているという特徴ございます。
 そして人文・社会科学系研究者ですね。研究者は主に大学に在籍しており、大学の研究者数は減少傾向にございます。自然科学系と比べて私立大学に在籍している研究者が圧倒的に多いという特徴がございます。また、理工農学と比べて女性比率か高い。それから公的機関、企業における人社系研究者の割合は低いと。低いというか、極めて少ないという状況になっております。これはある意味、皆様、当たり前だとおもわれるかもしれませんが、データからわかります。
 あと、人口100万人当たりの修士・博士号の取得数は非常に諸外国に比して低く、また、修士・博士課程への大学院入学者数も減少している。ただ、人文・社会科学の学士号の取得者、人口100万人当たりはそんなに大きな差はないということで、大学院の学位取得者において差があるということです。
 また、あと、アウトプットの1つの測り方、この1つのという論文指標ですが、先ほど林先生が丁寧に御説明されましたけれども、論文共著者は他の分野と比べて少ない。個人研究や小規模な共同研究が主体。それから、国際共著率は社会科学の中でも差異が大きくて、経済・経営系で大きく、それ以外で低いが、全体として上昇傾向。これは社会科学のみと書いてありますけれども、私ども、ベースとして使っていますクラリベイト社のデータベースが、自然科学、それから社会科学、それから人文学という分類になっておりまして、人文学のデータベースについては含まれていないところございます。
 最後の論文分析の特性ですけれども、社会科学の分野でも共著者数は増加傾向にあって、経済学や経営学については著者数が少ないということで、数学にかなり近くて、個人研究と小規模な共同研究が主体になっています。
 これ、全く「ちなみに」の話ですけれども、2011年頃、青いグラフがぴょんと出ているところがございますけれども、これは、先ほどお話ありましたけれども、高エネルギー物理学で一斉に論文が出たときがありまして、そうすると共著が上がってきます。
 それから、社会科学の国際共著率ですけれども、大体物理学とほぼ同じで、社会科学・一般の国際共著率は、長期的には増加しているということで、国際的な連携というのは高まっているということでございます。
 先ほど林先生も申し上げたとおり、なかなか論文でみられるところは限定的でありますので、パネルの評価だとか、社会インパクトの評価が重要になって参ります。
 ライデン声明。これ、先ほど学術会議、様々なところで定量指標に関する問題点というものは指摘されているところですけれども、ベースとなるものとしてライデン声明というものがございまして、2015年に出されたものでございます。私ども、これを分析するときにはバイブルのように使っておりまして、特に人文学・社会科学に関するところは非常に留意すべきところが多いかなと考えております。
 ちょっと次のページ行っていただければと思います。特に、関係するところですね、原則3、「優れた地域的研究を保護せよ」ということで、国・地域についての研究が多い人文・社会科学についてちゃんと留意をしましょうという原則が入っております。
 それから、あと、原則6で「分野により発表と引用の慣行は異なることに留意せよ」ということも言っておりまして、特に真ん中のほうにありますけれども、「歴史学者や社会科学者は、成果のカウントに際して図書や自国語の論文が含まれることを要求する」ということで、特異性において評価体系をしっかり考えてくださいということを指摘しているところでございます。次から岡村のほうに移します。

【科学技術・学術政策研究所(岡村)】  ありがとうございます。NISTEPの岡村と申します。
 本日2つのトピックを紹介したいと思いますが、まず1つ目の事例は、研究活動・成果の多様性の可視化事例ということで、英国の研究助成機関であるUKRI、UK Research and Innovationの研究プロジェクト単位の成果の分析結果を御紹介いたします。こちら、NISTEPでDPとして出しておりますので、詳しく御覧になりたい方はこちらのURLから御参照ください。
 次のスライドお願いします。まず背景としてですが、林先生の御発表とも重なるところはあるのですけれども、科学技術政策から科学技術・イノベーション政策にスコープが拡大しているのに伴い、評価の枠組みというのも、インプットやアウトプットのみならず、アウトカムとかインパクトを重視するようになってきているということがあります。
 ただ、ここにはやはり多くの問題がありまして、本日の論点ともなっておりますが、多様な形での研究活動や成果というのをどのような指標で捉えるのか、分野ごとの違いをどのように対処していくのか、特にアウトカムやインパクトをどのように定義していくのか等、多くの課題があります。ただし、課題はあるのだけれども、これらを捉えていこうという流れになっております。
 次お願いします。そこで今回御紹介するのが、我が国の今後の研究評価の在り方の検討に資することを念頭に置きまして、英国で公開されております公的資金助成による研究プロジェクトレベルの成果情報データベースの分析を紹介いたします。
 データベースの名前はGateway to Research、GtRというものになります。これは公的資金における研究プロジェクトの透明性確保及び知識共有のために公開されておりまして、人文・社会科学から自然科学まで全分野をカバーして、開始年が2006年から始まっている助成プロジェクトを対象として、多様な種別のアウトプット、アウトカム、インパクトを一元的に記録しているというところに特徴あります。
 非常に大規模なデータベースとなっております。プロジェクト数11万件、それから、それらにひもづくアウトプット90万件、アウトカム74万件となっております。
 助成期間中及び終了5年間は入力義務があることから、非常にデータの捕捉率が高いデータセットとなっていると思います。
 これらのデータを用いて、分野間の研究活動、成果の違いなどを御紹介したいと思います。
 なお、1点、留意点になるのですが、先ほど林先生の発表に出てまいりました英国の高等教育機関を対象としたREF(Research Excellence Framework)とは異なる枠組みになるということを御留意いただければなと思います。
 次お願いいたします。これがUKRIの構成なのですが、2018年に既存の7つの研究会議や高等教育機関への資金配分を行うResearch England等の複数の組織を結合、統合する形で発足いたしました。
 人社系の研究会議としては、青の囲みにあります、芸術・人文学研究会議、経済・社会研究会議というのがあります。
 UKRI全体で、英国の研究開発、高等教育予算額の6割程度を占めております。本日御紹介するデータベース、GtRについては、この緑色のところの枠内の機関をカバーしておりますので、高等教育機関のResearch Englandの部分は入っていないというものになります。
 次お願いします。GtRのデータ構造ですが、こちらはGtRに掲載されているデータをインプット、アウトプット、アウトカム、インパクトという概念に沿って我々が解釈してマッピンクしたものになります。
 特徴としては、カバーするアウトプット、アウトカムの種類が非常に多いということですね。「Publications」というデータがありますが、これは出版物としてのアウトプットを掲載していますが、種別は、論文、学会予稿、書籍のチャプター等、19種類の出版物を掲載しています。
 「Outcomes」というデータは、概念としては、アウトカムからインパクトにまたがるようなもののデータが入っていると我々は解釈していますが、出版物以外の成果物、それからインパクト創出までのプロセスに当たるような活動、それからインパクトに関するデータの記述というのが入っておりまして、アウトカムの種別としては、大項目が13種類、小項目で81種類という、非常に多い項目となっております。
 次お願いします。まず実際のデータを使ったアウトプットの内訳を御紹介します。これは全分野を対象としたデータですが、出版物としての成果物をアウトプットとしておりますが、多くはジャーナル論文であるということで、84%ぐらい。次に学会予稿、書籍のチャプター等も主なアウトプットとして報告されております。
 また、数は少ないのですが、非常に特徴的なものとして、昨今のオープンサイエンスの動向を反映したプレプリントであったり、政策へのインプットを念頭に置いたようなポリシーブリーフとかシステマティックレビューなどの項目もあります。
 産業に近いところのアウトプットとしては、技術レポートとか、技術標準化、特許等というものもあります。
 続いてアウトカムになります。次のスライドお願いします。円グラフの上の半分のブルーのところが、Dissemination、普及活動ということで、研究活動を学術界だけでなく社会に対して伝えていくというようなところになります。アウトカムのうち約半数が普及活動というもので報告されているということが分かります。
 内訳としては、講演・プレゼンテーション、ワークショップ等への参加とか、公式なワーキンググループへの参加、そういったものになります。
 その次にCollaborationというものが出てきていて、あとは先ほど、いろいろな資金の話も出ていましたが、ここでもFurther Fundingということで、追加資金調達という項目もあります。あとはPolicy Influence、政策に関連する活動というものが続いております。
 このアウトプット、アウトカムは13種類で、下位が全81種類なのですか、この下位項目も非常に関心を持つと思いますので、御関心ある方は、参考のほうに載せておりますので、見ていただければと思います。
 次のスライドお願いいたします。アウトカムの1項目にCollaborationという項目がありましたが、その詳細を少し御紹介いたします。特に協働相手をセクター別に見たものとして、6割が大学ということで、大学間の共同研究ということなのですが、民間が15%ぐらい、それから市民・NPO等の社会のアクターとの連携というのが20%ということで、一定程度あるということが分かります。
 研究過程で様々なアクターを入れていくようなマルチステークホルダーエンゲージメントというのが非常に注目を浴びていますが、そういった活動も一定程度出てきているのではないかなというのが観察できます。
 次のスライドお願いします。続いて、分野間でアウトプットやアウトカムにどのような特徴があるのかというのを示したのかこちらの図になります。左側は分野を示しておりますが、GtRは研究プロジェクトごとに研究の分野、リサーチトピックスという情報を持っているのですけれども、これは600ぐらいの分類になっていて、階層構造になっていないため、大ぐくりの分類で見せることができません。そのため、日本の科研費分類、科研費の大分類にひもづけて集計した結果というのをお見せしております。
 右側のほうが、アウトプット、アウトカムの項目になっているのですが、分野間での違いというのを見てとれると思います。
 どの分野においてもJournal Article、論文の比率というのは大きいのですけれども、やはり程度の差があるということ。それから、特に人社系に関しては、論文というところもありますが、Dissemination、普及活動というのも非常に多く報告されている。そちらのほうが多く報告されているということが見えると思います。
 次お願いします。次に、人社系の中での差異を見てみたいと思います。こちらは主要なアウトプットのみ抽出しておりますが、人社系を10の分類に分類しておりまして、アウトプットの構成を見せております。人社系においてもやはりアウトプットの項目としては論文が多く報告されておりますが、先ほどの林先生の話と同じようなところになりますが、その割合が心理学だと8割ぐらいから、法学・文学部系だと4割強という形で、かなり違いがあるということ。
 それから法学、文学、言語学系は学会予稿とか書籍チャプター多く報告されているというのも分かると思います。
 続いてアウトカムのほうになります。スライドお願いいたします。こちらも、Disseminationが、普及活動がどの分野でも多いのですが、それも7割程度の経済学、教育学、文化人類学等から、5割5分程度の思想、芸術、歴史、考古学と非常に幅があるということ。
 思想、芸術、歴史、考古学、心理学などは協働活動というのも多く報告されているということが分かります。
 最後に、次のスライドお願いします。アウトプットやアウトカム、多種多様な種別があると紹介してきましたが、その組合せにどういったパターンがあるのか、どういった特徴があるのかというのを分野横断的な分析を行ったのがこの結果になります。ある種のクラスタリング分析を行っているのですが、表側のほうがアウトプット、アウトカムの種類、表頭のほうがクラスターになっております。
 非常に特徴的なものを御紹介しますと、クラスターの2、これは8,020件のプロジェクトが属するクラスターになるのですが、これは9割ぐらいが論文。論文以外はほとんど報告されてないようなクラスター、プロジェクト群になります。
 続いてクラスター5というのも特徴的で、これは5,465件のプロジェクトが入っていますが、Disseminationが56%ぐらいということで、サイエンスコミュニケーション的な活動が主体になっているようなプロジェクト群。
 それから、例えばクラスターの7は、ポリシーインフルエンスが49%ぐらいですが、政策との関連の強い活動を非常に行っているクラスターになります。
 ですので、分野という軸だけではなく、研究プロジェクト間に、これは当然のことだと思いますが、活動とか成果の多様な指向性というか、性格が見られるということが分かりました。
 次のスライドお願いします。まとめになりますが、科学技術・イノベーション政策へとスコープが広がる中で、評価のスコープも広がってきているのですけれども、英国のGtRはその一例ということで、非常に多くの指標でアウトカム、インパクトを捉えようとしているということになっております。我々の知る限り、公開されているものとして最大規模ものかとは思います。
 アウトプットやアウトカムは様々な尺度で見ると分野間で大きな差異があること、分野間だけではなく、研究プロジェクトの性格や指向性の違いというのも観察ができるということになります。
 我が国の今後の研究評価の在り方の検討への示唆ということですが、現場への負担というのは当然注意しながらも、多様な尺度で、制度横断的に一元的に研究成果を収集するとともにデータを公開していくということがやはり重要なのかなと思います。そういうものがあって初めて多様な側面からの研究活動、インパクトを捕捉して、分野別、あるいはプロジェクトの性格別に研究評価の指標を検討していくということが可能になるのかなと思います。
 そうすることで、論文のみを指標とする狭義の研究評価にとどまらず、個々の強みとか、地域性なども考慮に入れた多様な視点からの研究評価の軸を構築していくことができるのではないかなということを考えます。
 次のスライドお願いします。次のトピックになるのですが、ここはまた違う観点のトピックになります。こちらは責任あるイノベーションのRRIという概念がありますが、それを軸として科学技術と社会の指標として欧州、日本の事例を取り上げたいと思います。
 こちらはGRIPS、SciREXセンター在籍時のプロジェクトを中心としたものになります。
 背景になりますが、こちらは非常に簡単に、科学技術が将来社会にもたらす正負の影響への関心が世界各国で、当然日本でも高まっておりまして、欧州の中で責任ある研究イノベーション、RRIという議論が盛んになって、政策のコンセプトとしても浸透していますし、具体的なファンディングも増えているということになります。
 日本でも同様の認識はされておりますし、基本法の改正とか、科学技術・イノベーション計画への変更というのもこのような背景があると考えられると思います。
 ただし、政策上、非常に重要と認識されてはいるのですが、やはり統計や指標としては、なかなかこれまで多く取り組まれてこなかったところになりますので、今後人社系からの積極的な貢献が期待されるのかなと思います。
 次のスライドお願いします。まず、RRIとは何かというのを簡単に説明しますと、2010年代初頭に欧州委員会において政策のコンセプトとして概念化されたものになりますが、研究・イノベーションのサイクル全体で社会のアクターの協力を促すことで、研究開発の方向性と社会の価値観やニーズとの整合性を高めつつ、研究・イノベーションシステムの変革プロセスを促していくことを目的としていて、ELSIとか、そういった議論の延長線上にあるものと考えています。
 重要な要素として左端に書いてありますが、予見性・省察性、多様性・包摂性、応答性・順応的変化、開放性・透明性などのコンセプトを持っています。
 中身については、このボックスの中を見ていただければなと思います。
 次のスライドお願いします。こちらも簡単に。研究助成を通じてEUの中ではRRIの実装化を試みておりまして、左上の図になりますが、EU Framework Programの中でも関連の研究助成を時系列でみると増やしているということになります。
 次のスライドお願いいたします。RRIを政策として推進しているのですけれども、その進捗状態をモニタリングするような指標開発にも取り組んでおり、これはEUからファンドを受けた1つのプロジェクトにおける成果なのですが、RRIの6つの事項をカバーする36の指標というのを提案しています。
 例えば、パブリックエンゲージメントという軸では、研究機関レベルにおけるパブリックエンゲージメントの実践に係る指標などを取り上げて実際にデータを収集しているというところになります。
 次のスライドお願いします。続いて日本の事例になります。こちらがGRIPSのSciREXセンターでのプロジェクトになりますが、科学技術イノベーションと社会の関係性を網羅的に捉えながら、望ましい社会ビジョンからバックキャスト的に指標案を作成するという試みになります。
 社会のアクターがよりよい生活、社会を目指して行動変容を促すような指標をつくることを意図したもので、ワークショップ等で議論を行い、定性的にまとめていき、ゴールとかターゲット、アクション、指標リストをつくったというものになります。
 例えば6つのどういうゴールを設定したかというと、科学と社会の理想的な関係性に関するゴールとして、科学の多様性の多様な面の理解であるとか、科学をポピュラーに、誰もがイノベーティブに、それから、意思決定に関しての市民や専門家の関与に関するゴール、あとは社会側のゴールとして、格差なく科学知識・文化を広めていこうとか、多様なチャレンジを社会で支えよう、それから多様性とゆとりのある生活へなど、ゴールをつくった後、バックキャスト的な考え方でどういった指標で見るのがいいのかというのをやりました。右下のものが1つの事例を見せております。
 最後のスライドになります。こちら、少し私見も含まれておりますが、日本において、世界においてもですね、科学と社会に関する政策、それから社会からの関心というのは非常に高まっているのですけれども、欧州では、RRI、コンセプトだけでなく、実装としても進められているということ。関連するような様々な課題に対して人社系からの貢献というのは非常に期待されていて、今後増えていくだろうと思われます。
 なので、そういった参画が増えていったときには、そのような活動をどのように評価していくのかというのも今後論点として上がってくるのかなと思います。
 また、そのような状況が進展していくと、やはり現状把握や今後の指針策定のためにも指標化、測定化というのは重要になっていくと思います。現時点ではこれだというのがまだ出てきていないところになりますが、欧州、いろんなところでも進められておりますので、日本でも取り組んでいく必要があるのかなと思います。ここにあるようないろいろなテーマがあると思います。
 最後、これもちょっと私見なのですが、政策指標の設定自体も、今後参加型の考え方を取り入れていくなど、RRIが出しているようなコンセプトというのを少し参考にしていくということも必要なのかなと思います。
 すいません。以上になります。

【城山主査】  どうもありがとうございました。最初は赤池さんのほうから人文・社会科学研究の現状把握、状況把握に関する指標の話をいただいて、岡村さんからいただいた話の焦点は、インパクト、社会的インパクトの測定なり、それをどうやって適切に管理していくかという話だろうと思いますし、特に後者のほうは、人文・社会系と科学技術が連携してある種のシェアード・アウトカム(共同の成果)をどうやってつくっていくかみたいな、そういうコンテクストでお話しいただいたのではないかなと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、この2つの御報告について少し御議論いただければと思います。質疑応答に当たりましては、赤池さん、それから岡村さんのほか、伊神科学技術予測・政策基盤調査研究センター長、それから小柴主任研究官に御同席いただくことになっております。
 いかがでしょうか。仲委員、よろしくお願いします。

【仲委員】  大変興味深い、特に多様性ということと、あと成果に関しても、アウトプットとかアウトカムとかインパクトというふうに分けた、こういった指標を教えていただき、勉強になりました。
 ここでお尋ねしたいのは、人文・社会科学、自然科学もそうかもしれないですけど、どれぐらいのタイムスパンで評価をしていくのが効果的か、ということが気にかかっておりまして、例えば年度ごとにこういう評価というか、指標は当てはめられていくものなのか。あるいはもう少し長い期間を考えるのか、あるいは分野によって最も効果量が出てくるような期間というのもあろうかと思うのですけれども、こういうタイムコースの分析みたいなものがあったら教えていただければと思いました。

【城山主査】  ありがとうございます。これは岡村さんですか。どなたにお伺いすればいいですか。

【科学技術・学術政策研究所(岡村)】  一旦ちょっと私から。まず今回は、全分野をまとめてやっているので、それぞれの分野がどのぐらいのタイムスパンでよいのかという議論まではまだフォローできていないのですが、それぞれの研究会議の議論をフォローする必要があるというのと、ただ、研究成果をどこまでフォローしているのかというと、研究プロジェクト終了の5年後まではフォローして見ているというところになります。
 ただ、恐らくやはり研究会議ごとにどの程度のフレームがいいのかというのは議論があるはずで、ちょっとそこはすいません、まだフォローができていないところになります。
 ほかに何か補足があれば。

【城山主査】  ほかの方、どなたか、何か補足はございますかね、今の点について。

【科学技術・学術政策研究所(赤池)】  私からは特にはないです。赤池です。

【城山主査】  よろしいですかね。

【仲委員】  ありがとうございます。年度ごとというのではないのだなということを確認させていただきまして、ちょっと安心しました。どうもありがとうございました。

【城山主査】  逆に言うと、5年まではデータ取っているけど、本当は5年より超えた単位でインパクトを測定したほうがいい話もあるかもしれないですよね。その辺りどうしているのかなとは興味深い点ではあるかなと思います。

【仲委員】  ありがとうございました。

【城山主査】  どうもありがとうございました。ほかいかがでしょうか。

【二瓶学術企画室室長補佐】  事務局ですけれども、すいません、小柴主任研究官が、手を挙げられているようです。

【城山主査】  失礼しました。小柴さん、よろしくお願いします。

【科学技術・学術政策研究所(小柴)】  失礼いたしました。NISTEPの小柴でございます。今の点、少し補足させていただきます。具体的にいつ評価するのがよいかという点までは踏み込んだ分析はやっていないのですけども、リサーチカウンシルごとにプロジェクト、どれぐらいの期間の分布になっているのかというのはいろいろ調べております。やはり医療系ですと、予後がどうなっているのかとか、病気が治癒するまでの期間が長いものがあったりして、ものによっては30年とか40年みたいなプロジェクトもあったりいたします。そうなってくると、やはり御指摘のように単年度で見ていくとかというのは難しいようなものもあったりするかなというところで、先ほど岡村のほうからも紹介させていただきましたレポート、付録のほうにそういったデータも少しまとめておりますので、御関心ございましたら、御参照いただくとよろしいかと存じます。
 以上になります。

【仲委員】  ありがとうございました。

【城山主査】  ありがとうございました。それでは、尾上委員、お願いいたします。

【尾上委員】  非常に興味深い内容を御紹介いただきまして、ありがとうございます。1点お伺いしたいのは、岡村先生なのですけども、UKRIの評価と、例えばインパクト、アウトカムの評価に関して、REFでの考え方というのとの相関であるとか、そういうところというのは何か評価があるのでしょうか。例えばこれは、こういう評価指標、あるいは手法を考えるときに、その成熟度というのを考えるときに、あまりにも違う尺度で全然違う結果が出てくるということであればまだまだプリマチュアなのかなと思うのですけど、その辺りについて情報があれば教えていただければと思います。

【科学技術・学術政策研究所(岡村)】  そうですね。我々もちょっとそこは非常に関心を持って見てみたところなのですけれども、例えばアウトカムとかのアウトプットの詳細な項目で多少違うものもあると思います。というのと、あとは一番大きな違いというか、は、やはり研究プロジェクト単位のGtRのほうはほぼ全ての成果を報告させているということ。REFに関しては、組織の研究単位ごとに厳選した成果が報告されているというところが大きな違いがあるのかなというのと、あとすいません、最初の点に戻りますが、データのカバレッジとして見ているところ、あと、REFのほうは割と研究評価をディセミネーションするようなところというのはあまり含まれていないのかなというところも見ております。
 ただ、やはり同じUKなので、そんなに全然あさっての方向に向いているかというと違うと。それなりにリサーチカウンシルのところとREFのところというのは、全くぴったり一致はしないのだけれども、ある程度同じような議論をしているのかなというところにあります。
 小柴さんのほうから何か補足等ありましたら。

【科学技術・学術政策研究所(小柴)】  すいません。本件に関しては今ので十分かと思います。

【尾上委員】  ありがとうございます。

【城山主査】  ありがとうございました。それでは、小林委員、お願いします。

【小林委員】  岡村先生にお尋ねをしたいのですが、RRIについて、いつもこれは気になるところなのですが、ジェンダーとかオープンアクセスとかガバナンスというのは比較的捉えやすいのですが、パブリックエンゲージメントについてですと、例えば同じ市民と言っても、様々な意見が、多様な意見があります。遺伝子組換えにしても、原子力発電にしても。この様々な多様の意見をどういうようにして科学技術の中に取り込むべき役割を、特に例えば人文・社会科学は果たすべきなのか。これが1つお尋ねしたいところです。
 もう1点は、市民が望むことが果たしていいのかどうかということになります。市民が望むということになりますと、具体的に役に立つ、例えば軽い金属をつくるとか、丈夫な何かをつくる。それは比較的、市民としては受け入れやすいかもしれません。でも、同じ自然科学の中でも、そういうことではなくて、夢とロマンを追うような大規模な研究というのもあります。そういうものはより片隅にやるべきなのかどうかです。つまり、市民の中同士の関係をどう捉えるべきなのか、あるいは市民と科学技術というのをどう捉えるべきなのか。この辺についての岡村先生御自身の御意見を伺えればと思います。

【科学技術・学術政策研究所(岡村)】  非常に難しいご質問ですけど、RRIの事例とかを見ていると、確かに当然いろんな市民がいて、プロ市民的な人もいれば、本当に多様性があって、それをどう捉えていくのかというのは、当然それは標準的な方法はない。ないけれども、そういったことを研究者が考えていくということを始めることで研究自体が変わっていくのではないかというところ。
 割と欧州の事例を見ると、RRI的なことを言うような研究者と、あとは本当に自然科学系のところで研究している人と、やっぱりそこにはギャップというものがあるので、そういった考え方を浸透させるためのいろいろな実験的なプロジェクトを今やっているというような状況だと思います。
 なので、どうすればいいのかというのは、個人的な意見として言うと、まずはそういった可能性を、研究者が考え始めることが必要なんじゃないか。市民の話を聞くということ自体が全く意味がないといった研究領域もまだ当然あるだろうし、そこが大部分ではあると思うのですが、ただしそういうことを聞くことによってもしかすると研究のやり方とか研究のアジェンダのセッティングの仕方とかというのが変わっていき、それが将来的には社会課題の解決とか社会の価値に近づいていくような研究というのが増えていく可能性もあると思います。
 ただ、そこに対しての正解というのはまだないのだけれども、まずはそういう要素を取り入れてみてやっていこうというような状態ということ。あと、市民が望むことが果たしてよいのかというのも、市民に全て手綱を持たせるわけではなくて、そういったいろんな市民の懸念とか、あるいは期待というのを聞くことによって、研究活動の見直しを行うということ自体の、そういったプロセスが重要なことなのかなと思っております。そのときに、やはり人社系の人が、どういう対話をしていくのがいいのかとか、あるいは議論のフレームをつくっていくようなところで非常に重要な役割を果たすのかなと思います。

【小林委員】  ありがとうございました。

【城山主査】  それでは、最後、須藤委員にコメントいただいて、それで最後、ちょっと時間限られていますが、横断的な議論できればと思います。須藤先生、よろしくお願いします。

【須藤委員】  ありがとうございます。岡村先生のアウトカムとかRRIという話は非常に興味深く聞かさせていただきましたけども、人文学とか社会科学のことあまり詳しく分からないのでちょっと的外れかもしれないのですけども、最近、岡村さんのスライドでも出てきましたけど、ウエルビーイングとか幸福度という話が第6期科学技術基本計画の中にも結構全面的に出ていたりしているのですけども、こういった分野で人文・社会科学系でアウトカムとかインパクトというのは具体的にどんなものがあるのか。普及活動と言われたのですけど、もう少し具体的に言うとどんなものがあるのかちょっと教えていただければと思います。

【科学技術・学術政策研究所(岡村)】  これも難しいのですが、やはりアウトカムの場合は、例えばウエルビーイングとか、幸福度とか、そういったものに関して、例えば社会に対してどういう伝え方をしているのかとか、どういうコラボレーションしてきたのかというプロセス的なところを捉えるというのはあると思うのですが、インパクトとして例えばウエルビーイングをこれだけ上げますとか、幸福度をどれだけ上げましたかみたいなところというのは、非常に具体的な数字、もちろんいろいろ例えばOECDでそういった指標を出していたりとかというのはあるのですけれども、いろんな合成指標ですよね。いろんな例えば住居とか、いろんなライフスタイルに関する指標をまとめて、それがどれだけ上がったかというのは出せると思うのですが、それが例えば1つの研究が結びついているということを示すのは非常に難しい。なので、やっぱり定性的に捉えていくということしか今はないのかなという気はしております。

【須藤委員】  分かりました。ありがとうございました。

【城山主査】  ありがとうございました。この辺りは、それこそ文化とか芸術みたいな話も入ってくるとかなりウエルビーイングみたいな話とも関連してくるので、その辺、各論で議論できるとまた面白いのかなと思います。どうもありがとうございました。
 それで、ちょっとタイムマネジメントが悪くて恐縮なのですが、最後少し横断的な議論をさせていただきたいと思います。ちょっと恐縮ですが、5分ぐらい遅れておりますが、あと10分強、少し議論させていただければと思います。恐らく今日最初に事務局から御説明いただいた資料1-3のところに、モニタリングとか評価という点でどういうことを議論すべきかということで①、②、③というのが上がっています。1つ目が、どういう活用目的を前提にモニタリングをするのか。逆に言うと、今日の議論でもありましたように、目的によってどういう手法なりをやるかが違ってくるのだと思うのですね。資源配分のためにやるのか、もうちょっと多様な活動の可視化のためにやるのかとか、多分レベルによって違うと思います。また、それから指標を設定するということはデータ基盤がないとできないので、ある種のテクニカルには標準化みたいなことにも絡んできますし、それから、今日出てきた出版文化とか、逆に言うと出版社がどこで稼いでいるのかということにもよってくるという、何かそんなことが①の関連としては今日議論されたかなと思います。
 ②は、まさにいろいろ議論をしていただきましたが、人文・社会科学の特性に応じた多様なモニタリングということがありますが、もちろん人文・社会学の中も多様だし、自然科学も場合によっては多様なので、分野ごとだったりプロジェクトの性格ごとにどうやって評価するのかということがあるだろうと思います。
 それから、モニタリング指標の中で、アカデミックなインパクトだけじゃなくて社会的インパクトみたいなのもあって、その啓蒙的な機能、これは井野瀬先生とのやり取りでありましたが、これを学問的なインパクトのほうに入れるのか、社会的インパクトのほうに入れるのか辺りも多分議論すべきだということがあったかなと思います。
 3つ目は、国際的通用性ということで、これも最初小林先生とのやり取りにあったように、中国や韓国のように、そういう国際的にある意味では比較が容易に可能なような指標のところに集中するのか、もうちょっと多様性を確保するのか、多様性を確保する中で、逆に国際的な知的通用性というものをどう確保していくのかという、その辺も少し若干今日議論したと思いますが、残りの時間で、こういうことをぜひ触れておく必要があるのじゃないかということを、ちょっと限られた時間で恐縮なのですが、論点を挙げるという意味で簡潔に御意見、皆さんいただければと思います。
 ということで、上から順々でちょっと短くお願いできればと思いますが、最初、仲委員、お願いできますでしょうか。

【仲委員】  ありがとうございます。評価に関して、一つは、どれぐらいの時間軸を取るかというのは気にかかっているところです。
 それからもう一つは、インパクトの評価というところで、政策提言とか、実際的な社会のルールづくり等に、あるいは価値づくりにどんなふうに人文・社会が貢献しているかというところは指標として重要ではないかなと思うところです。

【城山主査】  ありがとうございました。それでは、加藤委員、お願いします。

【加藤委員】  私、スライドの33ページの企業における研究者の専門分野というのをさっきからずっと眺めて、これが意味することをずっと考えていまして、なかなか興味深く,ショッキングだなと思っていました。私がドクターを取ったのは理学部情報科学科というところで、ちょうど理学の情報科学の8.6%に入っているのかもしれません。この図を見ると、企業の研究者で人文科学の研究者が1.3%しかいないのは、なかなかショッキングなことです。全体で見ると、世界、特にアメリカとかと比べて、情報系の研究者数、ドクター数というのは相対的に見て、少な過ぎます。世界、特にアメリカを中心とした欧米では、産業におけるソフトウェア化というか、ITの占める割合がどんどん増え続けていることは皆さんも感覚的にお分かりかと思います。それからSNS等で、ネットワークとソーシャルが融合しているという傾向も御存じかと思います。ソーシャルというのは、まさに人とか社会の営みがネットワーク化していくということです。産業界において世界の流れは、社会、ソーシャルという方向性であり、サイバー空間のマネーが産業界に流れ込むという傾向が高まっているのですけれども、それが日本においてはすごく遅れているのですよね。
 理学、工学における情報のパーセンテージが相対的に少な過ぎると個人的に思っておりますけれども、それと共に、人文・社会科学の分野の方も大きく産業界に貢献するように本来はシフトしていくべきであって、(現在は)そうではないところに日本の産業の弱みがあるのじゃないかなということをこの絵を見ながら思いました。いつかどこかでしゃべる機会があったらこの資料を使わせていただきたいと思いました。
 以上でございます。

【城山主査】  どうも重要な問題、ありがとうございます。
 それでは、後藤委員、よろしくお願いします。

【後藤委員】  後藤でございます。時間もありませんので、論点だけということで言いますと、まず、現時点でどのようなデータがそもそも把握可能で、そこから何が分かるのか、もしくは分からないのかということを少し整理する必要があるのかなと感じました。林先生が、最初の御発言でありましたけども、今後我々が何を価値としてどういう指標をつくらなければならないのかという、一番あるべき姿に対して、今我々はどれだけのデータが持てていて、むしろそれで何が分かるのか、むしろそこから足りないものは何なのかということを、少し整理して、そこからあるべき姿に向かってどういうふうにデータを整備していくのかとか、何をさらに取っていかなければならないのかという、その辺を少し整理する必要があるのかなというふうなことを一つ思いました。
 ということと、あともう一つは、社会へのインパクトといったときのスケールをどのように考えるかですね。例えば人文学であると、ある地域の課題を解決するのにはすごく役に立つけれども、それがいきなり世界全てを救うみたいなことに、直接はならない可能性があるような事例というのはたくさんあると思うのですよね。自然科学とかであれば、ミクロな事例が一挙にスケールするということがあると思うのですけども、人文学であれば、例えば本当にある部分ではすごくミクロだけども、人々の生活にとっては本当に大事なものみたいなものをどういうふうに見ていくかという辺り、これを量的なものだけを見ても難しいので、そういうところをどういうふうに今後考えていくかということも、重要かなと思いました。
 すいません、ちょっと今日はまず論点ということだけで、以上でございます。

【城山主査】  ありがとうございます。それでは、神谷先生、お願いします。

【神谷委員】  それでは、短く申し上げます。モニタリング指標に関しましては、人文・社会系の現状を考えましてどのように設定すべきかという論点が多かったと思います。林先生もたしかおっしゃっていたと思うのですけど、どういう方向に持っていきたいかという論点も指標に反映すべきかと思います。例えば現在あまり国際化してない分野でも、完全に国際化しろというのは無理な話だと思いますが、ある程度は国際化する方向に持っていったほうがいいとか、例えばそういうこともあり得ると思います。分野によってどういう方向に持っていくべきかは異なるとは思いますけども、今後、分野の発展のためにはどのような方向に持っていきたいか、そのためにはどういう指標を設定したらいいか、こういう論点も重要ではないかと思います。
 以上です。

【城山主査】  ありがとうございました。最初の林先生のご報告の中のイギリスの例でも、時系列で結構変わっていったので、時間軸の中でどういう広報に持っていくかという、そういう議論もすごく大事なのだろうなと思いました。ありがとうございます。
 それでは、白波瀬先生、お願いします。

【白波瀬委員】  ありがとうございます。ちょっともうお時間がないので、短く申し上げたいと思います。今日の報告、大変勉強になりました。
 1点です。今、現状ではなくて方向性という話もあったのですけれども、やっぱり発想自体が偏っているような印象を受けました。現状把握において、それで今ウエルビーイングのという話もあったのですけれども、それぞれの効果としてどういう見方をすることによって指標化するのかにあたって、そもそも論のところで必ずしもスタートラインや想定される前提が違うことはあまり考慮されていないのではないかと危惧します。そこの基礎的な部分については、少し広めのデータを積み上げてもらって解釈に際して活用するとか、も一つの手かもしれません。あまりに多様であると比較できないので、1つの指標を設定して目安とする意味は理解できます。ただ、少し違った基準での指標をくみあわせてみるとか工夫していただけると、人文学・社会科学における多様な側面を検討するのに有益なのではないかと思います。文理融合の議論の際、やはり理系だけではだめで、価値の問題があるので、文系的発想が重要だという議論になります。確かに文系としてはそこも非常に重要な役割なのですけれども、今、データとかでいろんな新しい分野もございますので、文系ならではの役割といってもいろんなことができるのではないかと思います。つまり、ここでの文系分野に対する発想に少し偏りがあるようにも感じます。その辺りだけ、指標を作成される際の御議論のときに考慮していただけると大変ありがたいと思いました。
 以上です。

【城山主査】  ありがとうございました。注意しつつも多様な側面を拾える指標をきちっと考える必要があるということかなと思います。どうもありがとうございました。
 少し時間を過ぎてしまいましたけれども、いろんな側面について御議論いただけたかなと思います。
 それでは、最後、事務局から連絡事項ございましたらよろしくお願いします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  事務局でございます。本日は時間を超過してしまいまして、申し訳ございませんでした。
 次回でございますが、資料1-2で御説明したとおり、次回の人文学・社会科学特別委員会は3月28日に行う予定としております。
 本日、時間の制約等もございまして、十分に御意見いただけなかったこともあるかなと思いますので、後ほど、もし追加で御意見等ございましたら事務局にいただければ、主査等と共有をさせていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 また、本日の議事録案につきましては、後日メールにてお送りいたしますので、御確認をお願いいたします。
 以上でございます。

【城山主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、これで閉会したいと思います。どうも皆様、ありがとうございました。

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