人文学・社会科学特別委員会(第6回) 議事録

1.日時

令和3年6月21日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 人文学・社会科学特別委員会の議事運営等について
  2. 現在実施中の人文学・社会科学関連の事業についてのヒアリング(人文学・社会科学を軸とした学術知共創プロジェクト/人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進事業)
  3. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員、専門委員)
城山主査、勝委員、小長谷委員、白波瀬委員、須藤委員、仲委員、井野瀬委員、尾上委員、加藤委員、神谷委員、小林委員、戸田山委員、山本委員、飯島委員、後藤委員、田口委員
(科学官)
平野科学官、木津科学官、森口科学官、苅部科学官、磯科学官、渡慶次科学官、黒橋科学官、長壁科学官

文部科学省

錦学術企画室長、二瓶学術企画室長補佐

5.議事録

【城山主査】  それでは、時間になりましたので、ただいまより人文学・社会科学特別委員会を開催いたしたいと思います。
 まず、本日の委員会のオンライン開催に当たり、事務局から注意事項がありますので、よろしくお願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  学術企画室から御連絡いたします。本日は、オンラインでの開催となりますので、事前にお送りしておりますマニュアルに記載のとおり、御発言の際には、手を挙げるボタンをクリックしていただき、指名を受けましたらマイクをオンにし、お名前を言っていただいた上で、ゆっくり御発言いただければと思います。なお、主査以外の委員の皆様は、御発言されるとき以外は、マイクをミュートにしていただきますよう、お願いいたします。機材の不具合等ございましたら、マニュアルに記載の事務局連絡先に御連絡ください。以上でございます。

【城山主査】  以上のような形でお願いいたします。
 それでは、まず事務局より資料の確認をお願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  本日はオンラインでの開催となります。資料は事前にお送りさせていただいたとおりでございます。
 本日の主な議題に係る資料につきましては、議事次第のとおりとなります。
 また、主査につきましては、本日お配りしております資料1-3の学術分科会運営規則第5条に基づきまして、大野学術分科会長より城山委員が指名されておりますことを御報告いたします。資料の御説明は以上でございます。

【城山主査】  それでは、議事に入らせていただきたいと思います。本日の議題は議事次第に書いてありますとおりでございます。
 まずは1つ目の議題でありますけれども、人文学・社会科学特別委員会の議事運営等についてということでございます。本日は第11期の本委員会の初回になりますので、事務局より本委員会の議事運営等について御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  事務局より説明いたします。
 まず、資料1-1でございます。本特別委員会は、資料1-1のとおり、学術分科会で審議・承認されたものでございます。調査事項につきましては、枠内のとおりとなっております。特別委員会の設置期間につきましては、第11期の科学技術学術審議会の終了、2023年、令和5年の2月14日までを予定しております。
 続きまして、本委員会の委員の御紹介につきましては、お手元の資料1-2の名簿をもって、各委員の御紹介に代えさせていただきたいと思います。なお、今回の委員会より、専門委員として、3名の先生に御出席いただいておりますので、お名前を読み上げさせていただきます。まず、東北大学大学院法学研究科、飯島淳子先生でございます。

【飯島委員】  飯島でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  次に、人間文化研究機構国立歴史民俗博物館、後藤真先生でございます。

【後藤委員】  後藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  次に、北海道大学大学院文学研究院、人間知・脳・AI研究教育センター。田口茂先生でございます。

【田口委員】  田口です。どうぞよろしくお願いします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  次に、本委員会の議事運営につきまして、資料1-3を御覧いただければと思います。事務局といたしましては、資料1-3にございます、本委員会の親委員会でございます学術分科会運営規則を、学術文科会長を主査と読み替えるなどして準用し、運用することとしてはどうかと考えております。なお、この場合も議事及び議事録は原則公表となります。
 事務局からの説明は以上でございます。

【城山主査】  どうもありがとうございました。最後にありましたように、委員会の運営について、事務局より、学術分科会運営規則を準用するという説明がございましたが、よろしいでしょうか。それでは、そのように進めさせていただきたいと思います。
 それに関連いたしまして、運営規則第5条第7項により、主査に事故のあるときは、当該委員会に属する委員等のうちから、主査があらかじめ指名する者がその職務を代理するとされております。私といたしましては、小林委員にお願いしたいと思っておりますが、小林先生、よろしいでしょうか。

【小林委員】  はい、よろしくお願いします。

【城山主査】  よろしくお願い申し上げます。
 それでは、事務局より、本委員会の進め方、それから人文学・社会科学を取り巻く状況等について御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

【錦学術企画室長】  皆様おはようございます。学術企画室の錦と申します。よろしくお願いいたします。資料2-1でございます。ここで2点、政府文書での人文学・社会科学の取扱いについて、そして、人・社関係の施策の概要について御説明したいと思っております。
 まず、1ページでございます。科学技術イノベーション基本計画、第6期基本計画が今年の3月に閣議決定されたところでございます。内容としましては、2020年に科学技術基本法が改正されまして、人文学・社会科学がこの法律の振興の対象とされたということでございます。その背景としては、2段落目にありますけれども、これからの政策には一人ひとりの価値、地球規模の価値を問うことが求められているということでございます。
 このことを踏まえまして、今後は、人文・社会科学の厚みのある知の蓄積を図るとともに、自然科学の知との融合による人間や社会の総合的理解と課題解決に資する「総合知」の創出・活用が重要であると言われております。
 次に2ページをお願いいたします。同じく基本計画でありますけれども、上のところでは、ここでも総合知の創出・活用が重要であるということを書いてございますが、下の囲みの部分でございます。最先端のデータ駆動型研究、AI駆動型研究の実施を促進するとともに、これらの新たな研究手法を支える技術の研究を進めると言われてございます。
 次に3ページでございます。「統合イノベーション戦略2021」というものが先週の金曜日に閣議決定されてございます。そこの中ほどの(2)の部分を御覧いただければと思います。人文・社会科学等の各分野において、データ駆動型の研究開発とこれらを支える基盤・環境整備を推進するとされております。次に最後の(6)の部分、ここでも総合知が出ておりますが、この総合知に関しまして、基本的な考え方や、その創出・活用を戦略的に推進する方策を2021年度中に取りまとめるとされております。
 次、4ページお願いいたします。こういった政府全体の取決めでありますけれども、文部科学省として、3つの柱に基づいて、人文学・社会科学の施策を推進しております。1点目が、研究者の自由な発想に基づく研究活動の振興により多様で分厚い研究を蓄積するということ。2点目が、社会的課題を見据えて、人文学・社会科学により科学技術の社会実装に向けたELCIや、複雑化する社会の諸課題の解決を目指す研究を振興するとしておりまして、3番目として、それらを支える基盤として、連携の基盤整備及び共同利用を推進と、この3本柱で関係施策を推進してございます。
 主な施策について、簡単に御説明申し上げます。5ページをお願いいたします。
 まず、科研費でございます。審査区分のうちの大区分Aが、人文学・社会科学の分野に相当する部分でありまして、採択数で言いますと全区分の23.8%が、この大区分Aが占めているということ。配分額では、15.0%をこの大区分Aが占めているということでございます。
 次に下の部分、人文学・社会科学を軸とした学術知共創プロジェクトでございます。こちらは、この特別委員会で議論を頂いて、取りまとめた方針、本日参考資料としておつけしておりますけれども、こちらに基づいて令和2年度から実施している事業でございます。内容につきましては、「大きなテーマ」を設定しまして、それに基づいて、分野を超えた研究者やステークホルダーが知見を寄せ合って、研究課題と研究チームをつくり上げていくための「共創の場」を整備するというものでございます。
 本事業は委託事業でございまして、実施機関を公募したところ、10機関から応募がございました。審査の結果、大阪大学を選定しまして、現在実施いただいているところでございます。この事業の総括者の盛山先生と大阪大学から堂目先生が、本日お越しいただいておりますので、この事業の詳細等について、ヒアリングをさせていただく予定でございます。
 次に飛びまして、9ページをお願いいたします。3本柱のうちの3本目の部分でありますけれども、人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進事業でございます。こちらの中身としては、人文学・社会科学のデータのインフラが、現在我が国では不十分であるということを言われておりまして、そこで取り組んでいる事業でございます。拠点機関が収集・整理・公開するデータを一括検索できるデータカタログを整備するとともに、データをオンライン上で分析できるシステム、そういったものを構築中でございます。
 実施機関としては、日本学術振興会でございまして、本日、廣松先生と前田先生にお越しいただいて、ヒアリングをさせていただくこととなっております。国立情報学研究所にも多大なる協力をいただいているということでございます。拠点機関としては、5つ選定しておりまして、そのうちの一つ、東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センターから、本日、三輪先生にお越しいただいておりますので、取組の状況等についてヒアリングをさせていただくと、そういった形でございます。
 その下のところ、共同利用・共同研究体制の整備というものでございます。大学の枠を超えて知を結集して、共同利用・共同研究を推進するための仕組みが2つございます。そのうちの1つが、共同利用・共同研究拠点でございまして、簡単に言いますと、大学の附置研究所、文部科学大臣が認定するものでございまして、現在55大学、107拠点が認定されてございます。そのうち、人文学・社会科学関連は18拠点となってございます。
 そして、もう一つの仕組みが大学共同利用機関でございまして、大学共同利用機関法人の人間文化研究機構が、この括弧内の6つの大学共同利用機関を設置して、この共同利用・共同研究体制を推進しておられると、そういった状況でございます。
 11ページをお願いいたします。日本語の歴史典籍の国際共同ネットワーク構築計画というものでございます。今申し上げた人間文化研究機構が設置する国文学研究資料館、こちらが江戸時代までの日本語の書物、30万点を画像化して、データベースを整備すると、そういった事業を2014年度からの10年間の計画で推進しておられます。これによりまして、諸分野の研究者が参画して、異分野融合研究を進めていくと、そういった計画でございます。
 なお、小林委員のところで取りまとめいただいた「ロードマップ2020」に、この事業の後継計画が掲載されております。その内容は、これらの画像化したデータなどを機械が読めるように、機械可読化しまして、データ駆動による人文学研究を推進しようと、そういったものでございます。
 その下のオープンサイエンス時代の新しい人文学研究の推進というものでございます。こちらの大学共同利用機関法人の1つ、情報・システム研究機構が、人文学オープンデータ共同利用センターというものを設置しております。ここで取り組まれている内容は、情報学の最新の技術を用いて、人文学研究を進めるというものでございまして、例えばですけれども、取組の例のところの上のところ、くずし字認識と。くずし字で書かれた過去の資料を読める方が今減ってきていると。そういった中で、AIに基づいて、そのくずし字の画像から、現在の文字の候補を示すような、そういったサービスを提供されているなど、様々な取組を実施されているということでございます。
 こちらの資料2-1は以上でございまして、資料の2-2をお願いいたします。
 こういった状況を踏まえまして、人文学・社会科学特別委員会で、どのような検討をしていただくのかということでございます。1番の検討の背景、こちらについては、先ほどのおさらいの部分が多いと思いますけれども、この基本計画の記載として、総合知の創出・活用が重要であるということ。また、そのデータ駆動型研究の実施を促進する必要があるということでございます。統合イノベーション戦略2021では、そのデータ駆動型の研究開発と、これを支える基盤・環境整備を推進するとされておりまして、そのうちの分野の一つとして、人文・社会科学が名指しされていると、そういった状況でございます。また、総合知に関して、戦略的に推進する方策等を2021年度中に取りまとめるということ。
 次の丸のところ、3月18日に、科学技術学術審議会の総会、第11期の1回目が開催されたところでございます。そこで、この第11期に、どういったことを検討するのかという資料が配付されておりまして、その内容でございます。今期においては、科学技術イノベーション政策の在り方を検討する必要があると言った上で、特に、先ほど来申し上げている、総合知の創出・活用等に留意が必要であるとされてございます。
 そこで、2の当面のスケジュールでございます。こういった背景等を踏まえまして、総合知の創出・活用に向けた、人文学・社会科学振興の取組方針について検討を行っていただければと考えてございます。その総合知の創出・活用に向けた人文学・社会科学の振興と言いましても、その範囲がかなり広いわけですけれども、まずは現在実施している事業を、総合知の創出活用につなげていくにはどうすればいいのかといった点ですとか、また、上記を踏まえまして、総合知の創出・活用に資するデータ駆動型の人・社研究の推進の在り方、こういったところにフォーカスを当てて、検討を行っていただきたいと考えてございます。
 そういった観点で、本日第1回でありますけれども、現在実施中の2つの事業について、現状をヒアリングさせていただいて、課題ですとか、有効な推進方策について御議論いただければというものでございます。
 第2回は、来週の月曜日、6月28日ですけれども、人文学・社会科学におけるデータ駆動型研究の現状等について、3名の有識者の方を予定しておりますが、ヒアリングをさせていただくということでございます。
 第3回は、7月中を予定しておりますが、このヒアリング、議論の結果を踏まえまして、総合知の創出・活用に向けた、人・社振興の取組方針の案を、事務局として提案させていただければと考えておりまして、この人文学・社会科学特別委員会として、提言のような形でおまとめいただければと考えております。
 そこで頂いた提言を踏まえまして、我々としては、来年度の概算要求等につなげることもできると思いますし、あと次回の総会にもその結果を報告させていただければと考えておるものでございます。事務局から以上でございます。

【城山主査】  錦室長、どうもありがとうございました。今、スケジュールを最後に示していただいているように、第6期基本計画等によって総合知、それからデータ駆動型研究という、そういう宿題が出ているときに、人文・社会科学として何ができるかということを議論させていただきたいと思います。既に、学術知共創プロジェクト、それからデータのインフラストラクチャーについては動いているわけですが、それを使っていくために何か必要な手立てがあるのかとか、あるいはデータ駆動型研究というのは新しいキーワードだと思いますが、それを促進していくということで、何か追加的な施策があり得るのか必要なのか、この辺りを、今後2~3回の議論を経て、まとめさせていただければというのが基本的なこの委員会のミッションではないかと思っております。
 恐らくここに関する御質問等もあろうかと思いますが、一応今日は4つの報告が予定されているということもありまして、各論に入っていきたいと思いますが、その中で必要に応じて、少し大きな点についても御質問、御意見があれば、触れていただければと思います。
 それでは、2つ目の議事でありますが、現在実施中の事業に関するヒアリングということで進めさせていただきたいと思います。まずは、人文学・社会科学を軸とする学術知共創プロジェクトに関して、事業総括者である盛山先生、それから事業実施者である大阪大学の堂目先生から御説明いただきたいと思います。
 それでは最初に、資料3-1に基づきまして、盛山先生からよろしくお願いいたします。

【盛山】  初めまして。学術知共創プロジェクトの事業総括者を務めております盛山和夫と申します。本日は、この事業と同時に、学振で行っております課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業につきましても、簡単に触れさせていただきたいと思います。
 まず1ページ目を御覧ください。この学術知共創プロジェクトは、御存じのように、平成30年のワーキンググループの「審議のまとめ」に基づきまして、共創プロジェクトの公募がなされ、大阪大学において実施されることが決まったものです。
 この事業の概要は、真ん中に書いてありますように、大きくまず、今日の具体的な社会課題を見据え、大きなテーマとして重要な社会課題というのを設定する。同時にそれを、一番下にありますが、理論知、つまり人文学・社会科学の根源的な知の問いに基づいて取り組むことを通じて、この大きなテーマに対する具体的な、意義ある応答をつくり出していくということが狙いかと思います。
 特に大阪大学のプロジェクトは、共創の場を整備するという部分に焦点がございます。共創のプロジェクトとしては、次のJSPSの具体的な研究支援というものもあるわけですけれども、大阪大学のプロジェクトは基本的には共創の場を整備するというところに焦点があります。そして大きなテーマとしては、御存じのように、スライドに示したこの3つのテーマがあります。
 次に2ページ目をお願いします。具体的な大阪大学の取組と体制の状況は、その図にありますように、事業運営委員会というのが左側にございまして、真ん中に、実際の実組織である大阪大学の組織がございます。大阪大学におかれましては、後で堂目先生から御説明がありますけれども、企画会議があって、それぞれのテーマ代表者が3つありまして、これら3つのテーマがそれぞれ推進されています。
 事業運営委員会は、この大阪大学の取組に対して、基本的には指導・助言を与えるものですが、時には承認事項というものもございます。この事業は、昨年から動き出しているわけですが、幾つか課題といいますか、いろいろと取り組むべきことがあります。重要な問題といいますか、取り組まなければいけない問題は、多様な研究者やステークホルダーをいかに糾合するか、集めていくか。これは広報もありますし、また事業の展開の具体的な仕組みというものがありまして、これは大阪大学で具体的にいろいろと取り組んでいただいているところであります。
 あと、この構想におきまして、事業運営委員会として気をつけておりますのは、基本的に、この企画会議及びテーマ代表者等を中心とする、具体的な実際の研究者の方々の自発性、創発性というものをできるだけ尊重しながら、それを支援して助言するという形で、事業運営委員会等を運営していくという形で活動していきたいと考えています。実際、そのように動いていると思っております。
 ただ、もう一つ課題がございますのは、このプロジェクトは、御存じのように、非常に大きな課題に取り組む、人文学・社会科学の根源的な問いに立ち戻って取り組むというものでございますが、この仔細を具体的な、参加する研究者の方々に、どのように周知・徹底し理解していただいて、活動していくかというのを浸透させていくという上では、まだまだこれからいろいろ工夫の余地があると考えているところであります。
 最後に、次のページをお願いいたします。3ページ目に、現在、学振の方で取り組んでおります具体的な学術知共創プログラムの概要があります。これはもともとそこにありますように、平成24年の分科会報告を受けて課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業プログラムというのが始まっていたわけですが、そもそも現在の共創のプログラムというかプロジェクトが、その平成24年の分科会報告の言わば新しいバージョンともいえる、昨年の特別委員会の「審議のまとめ」をもとにしている形になっています。
 それを受けまして、その課題設定プログラムを改変し、そこに学術知共創プログラムを設置したものです。趣旨としては、そこにあるように、社会が直面する諸問題に対して有意義な応答をする、多様な研究者を糾合する、固有の本質的・根源的な問いを追求する、ということを踏まえ、これまでの課題設定プログラムを、ある意味でさらに進化させていく形で運営するという形になっています。これは現在、具体的な研究を公募中でございまして、6月25日締切りという形で、それを待っているところです。
 このプログラムの課題としましては、このプログラムに対する人文学・社会科学の研究者の方々の認知がどの程度あるかということが一つ気になるところで、これは公募の結果を見まして、さらに具体的に取り組んでいきたいと考えているところです。長くなりましたが、私からは以上で終わらせていただきたいと思います。

【城山主査】  どうもありがとうございました。
 続きまして、資料の3-2に基づいて大阪大学の堂目先生から御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

【大阪大学(堂目)】  学術知共創プロジェクトのマネジャーの堂目です。では、取組について報告します。
 次のスライドをお願いいたします。まず、本プロジェクトを進めていく上での問題意識について説明します。問題の所在は、学術、特に人文学・社会科学と社会のかい離しているところにあると認識しております。言葉と現実がかい離していると。あるいは研究成果が社会の諸課題の解決に貢献し切れていないと言っていいかもしれません。一方、研究者は、業績、研究費、ポジションというのを考えながら、研究成果を上げていかなくてはならないという現実もあります。
 こうした学術と社会が離れていくのを反転させ、一致の動きを起こすためには、学術界と社会の双方からの参加によって、多様性を重視した共創ネットワークを構築し、場づくり、チーム構築、そして社会への発信を循環させ、社会に開かれた学術知を推進していかなくてはならない、このように大阪大学では問題意識に立って進めております。
 次の。こういった問題意識に対しましてプロジェクトを進めているわけですが、進め方ですけれども、人文学・社会科学を軸に問い直す共通の概念として、「いのち」というのを置きます。そして第1ステップは場づくりを目的に、大きなテーマごとに、30人規模のワークショップを開催し、取り組むべき研究課題を見つけます。開催に当たっては若手研究者や女性研究者等、参加者の多様性を重視します。ワークショップでは、人文学・社会科学を軸とした学術知の将来を、分野を越えて議論し、自発的なネットワークの形成を促していきます。そして、アンケート等を通じて、参加者の意見を収集し、研究チームの構築に生かしてまいります。
 これが主なプロジェクトの目的ですが、第2ステップとしましては、ワークショップでの議論を踏まえて、多様性を重視した研究チームを構築します。チームでは、課題解決に向けた、より具体的な研究計画を策定するとともに、実施に向けて、外部資金の規模や申請方法などについても議論してまいります。
 そして、第3ステップとして、毎年度シンポジウムを開催し、事業の進捗状況を社会に発信するとともに、社会とともに未来を構想する場をまた持ちたいと考えております。そしてアンケート等により研究者や社会の問題意識や未来像を検証し、それを踏まえて、また第1ステップに戻り、新たな課題の発見、既存の課題の再検討を行ってまいります。これらの3つのステップをらせん的に循環、といっても3年ですけれども、する中で人文学・社会科学の知の在り方というのを問い直し、変容させるプロセス、それを体系化し、言語化していきたいと考えております。
 次のスライドをお願いいたします。令和2年度には、1月24日、25日、そして2月9日にワークショップを、及び若手研究者セミナーですが、3回開催しました。そしてワークショップ後に、大きなテーマそれぞれにおいて、研究チームが1チームずつ構築され、現在、外部資金の申請などを準備してまいります。発信については、専用のホームページを立ち上げましたし、3月16日にシンポジウムも開催しました。また、今年度から対談インタビューも始めました。
 ワークショップの詳細については、学術知共創プロジェクト企画副室長の、今日私と共に出席しております小出直史准教授から説明していただきたいと思います。小出さん、お願いします。

【大阪大学(小出)】  御紹介に預かりました大阪大学の小出です。よろしくお願いします。それでは、次のスライドにいっていただけますか。ありがとうございます。昨年度開催したワークショップについて御説明させていただきます。
 昨年度、大きなテーマごとに1回ずつワークショップを企画・開催いたしました。ワークショップは、各テーマ代表者とテーマを決定した後に、公募要領を作成し、ホームページを通じて参加者の公募を行いました。全てのワークショップを通じて、国立・公立・私学を問わず、数多くの大学から参加者にお集まりいただきまして、民間の会社、あるいはNGO、NPO、行政担当者にも御参加を頂きました。また、参加者は30代・40代がメインを占める形となり、普段の研究活動では出会わない研究者と交流する場を準備することができました。
 それでは、次のスライドに行ってください。次に、ワークショップの進め方について御説明させていただきます。こちらは一覧になります。まず、開催の挨拶とテーマ代表者から、ワークショップの趣旨の説明を頂きました。その後フラッシュトークという参加者の自己紹介及びグループディスカッションを行いまして、グループディスカッションは3から5グループに分け、1ラウンド30分から45分間時間を取りました。そして、最後に全体の振り返りを実施するという形を取りました。フラッシュトークとは、1分間の自己紹介を行うものであり、詳細は次のスライドで御説明を差し上げたいと思います。
 それでは次のスライドをお願いします。まず、ワークショップ開催前に事前に参加者から自己紹介シートを提出していただきました。御覧のとおり、当日、丸1・丸2・丸3・丸4に該当する自己紹介シート・発表者ライブ映像・残り時間・次の発表者スライドを運営で合成したスライドを配信する形式を取りました。発表者はライブ映像とともに音声で自己紹介シートを60秒で説明する形となり、スライド操作は運営側と実施いたしました。残り時間のところがゼロになるとともに、次の発表者に映像と音声が切り替わるという形をとりました。これによって時間どおり進行できる点と、時間内に説明いただく緊張感を少し参加者の方に楽しんでいただくというコンテンツとして、参加者や傍聴者の方には非常に好評なコンテンツとなりました。
 それでは、次のスライドにお願いします。以下、資料スライドですが、3枚にわたってのスライドが、各ワークショップの記事と要点の抜粋となります。1つずつ説明していると少し長くなりますので、3つのワークショップを通じて、まとめさせていただきますと、参加者から普段出会わないような研究者と意見交換する、いい刺激になったということと、時間が十分ではなかったものの、新しい気づきにつながる意見交換ができたなど、ポジティブな意見を複数頂きました。
 また一方で、ワークショップの趣旨が分かりにくかった、あるいは目的がよく分からなかったなど、今後ワークショップ開催において改善するべき点も幾つか出てまいりました。全体を通じて、学術知共創プロジェクトが目指す、自由で広い場づくりと、求められるアウトプットの一つである、直近のチームづくりを高次元でバランスさせるには、まだまだ課題があると感じております。
 私からは以上になります。堂目先生、お返しいたします。

【大阪大学(堂目)】  ありがとうございます。ではスライド11から、また私から報告させていただきます。
 シンポジウムですね。これは3月16日に「命に向き合う知のつながり-未来を構想する大学」というテーマで開催され、500人以上の人に参加いただきました。鷲田清一大阪大学名誉教授に「学問と社会 再論」と題した基調講演をいただき、続いて、今日も御出席の井野瀬久美恵甲南大学教授にモデレーターをしていただき、そして広島大学、東京工業大学、北海道大学、京都大学、そして大阪大学の人文学・社会科学系を軸とした研究の機関の長、責任者に参加していただき、どういう取組をしているのかということを紹介していただくと同時に、未来を切り開く大学間ネットワークの構築に向けてディスカッションしました。
 次の。ホームページは、ワークショップ及びシンポジウムの案内と報告、そして対談インタビューの記事が掲載されています。今後、研究チームができてくれば、その活動状況についても掲載していく予定です。
 次のスライドをお願いします。今後の予定ですけれども、ワークショップを、大きなテーマごとに1回ずつ、8月頃に計3回、そして12月頃に3回開催する予定です。特に12月のワークショップに関しては、テーマ自体を、ホームページ等を通じて公募し、企画の段階から、様々な大学に関わっていただくという予定になっております。
 次のスライドをお願いします。最後に課題ですけれども、まず、学術における共創とは何かということを明確にしていく必要があると考えております。現段階では、そこにありますように、出会いによって各自が、それまで考えていなかった、あるいは言語化していなかった論点、先ほども資料のところにありますが、様々な論点が明確になり、論点が組み合わされたり、進化されたりすることによって、「研究シーズ」(課題解決への手がかり)が醸成されていくことと捉えていますが、プロジェクトを進めていく中で、共創とは何なのか、何のためにあるのか。より社会との共創というのを、ウエートを置くにはどうしたらいいのかというような様々なまだ課題がありますので、それをより深く理解できるように、発信できるようになればと考えております。
 2つ目に、共創の場をつくる上で取るべきバランスです。場づくりにウエートを置くか、研究チームの構築、資金獲得を含むわけですが、これにウエートを置くかということです。場づくりにウエートを置き過ぎると、単なる、有意義ではあるけれども、意見交換に終わってしまうと。あとが続かない。他方、最初からチーム構築を重視し過ぎると、チームのメンバーを構成するための場になってしまうと。それは盛り上がりに欠けるかもしれないと、こういうこの辺りのバランスをどう取っていくのかという課題があります。
 あと最後に、社会にどう理解してもらうかという課題があります。学術知といいますか、専門知が持つ言葉の深みというものを失うことなく、社会の専門ではない人、研究者ではない方々に分かりやすく伝える方法ということを考えなくてはならない。それだけではなくて、今度は社会から寄せられる様々な意見、社会と接することによって得られた経験というのを今度はまた学術の言葉に戻して、学術の発展につなげていくという課題があると認識しております。
 以上の課題を抱きながら、オールジャパンの体制を構築して、本プロジェクトを進めてまいりたいと思っております。私から以上です。

【城山主査】  どうもありがとうございました。今、御説明いただきました内容等につきまして、御質問等あれば、いただければと思います。いかがでしょうか。小林先生、よろしくお願いします。

【小林委員】  盛山先生、堂目先生、小出先生、御苦労さまです。大阪大学のグループのお陰で、非常にこのプロジェクトは成功していると思います。ただ、最後に堂目先生がおっしゃったとおり、このプロジェクトを、どこにゴールを持っていくのか、逆に言うと、どういう観点から評価するのかというのは、課題があると思います。具体的には一つチーム構成をつくって、具体的なプロジェクトにして、何らかの成果というのもあるところで挙げざるを得ないと思います。これは財務当局との関係からもそういうところがあろうかと思います。
 しかし、あまりそこに焦点を置くと、肝腎の、もっと深い共創の場という要素が失われてくることになる、非常に難しい問題があろうかと思います。ただ幸いなことに、3つ、今グループがあると思います。これを見ますと、メンバーの構成が少し異なってきています。1番目のワーク・ライフ・バランスについては、行政から12%ぐらい参加者がいるということもあって、比較的チーム構成がしやすくて、3つの中ではですね。ある種プロジェクトを組立てやすくて、結果も何となく見通せるかと。
 一方で、2番目の分断社会の超克は、これはNPO、NGOの方が、割合は少なくても、1番目と3番目に比べれば入っているということもあって、ここはかなり議論が自由闊達に行われている。逆の言い方をすると、自由闊達に行われている分だけ、一つのプロジェクトでまとめるには少し時間かかると。これは悪いという意味ではなくて、だから必要だと思います。ですから、ぜひ大阪大学には、全てのグループが、チーム構成や、あるいは共創等、どちらも満たすような、バランスよいものをやるというよりは、もうそこは思い切ってメリハリをつけていただいたほうがいいのではないかと。
 何らかの課題の結果を出さなければいけない部分もあれば、それはあるところにやっていただいて、別のところはもうあまりそこは考えずに、思い切って、このプロジェクトでなければ出会えなかったような人たちが自由に議論する。そこに研究者以外の市民も巻き込み、やっていただく。3つがそれぞれとがった方向に行くことに、遠慮されずにやっていただきたいというのが私の意見です。以上です。

【城山主査】  どうもありがとうございました。堂目先生からレスポンスはございますか。

【大阪大学(堂目)】  小林先生、大変ありがたいコメントといいますか、コメントをありがとうございます。そう言っていただけると、本当に自由にやっていけるかと思っております。昨年採択されて、1~2月で、それぞれ大きなテーマを代表者の先生に相談して、オールジャパンとは言いながら、いろいろな方に頼みながら参加していただいた。それぞれ特徴が、バランスを私たちは取ろうとするんですけども、それぞれおっしゃるとおりの特徴が出ていた。その特徴は、チーム構築がしっかりできそうなワークショップと議論にウエートが置かれているワークショップ、そのとおりだと思います。それで、このバランスを取るにはどうしたらいいかということにつながっていっているんだと思います。
 今年度も大きなテーマの代表者に相談しながら、ワークショップをつくるものと。特に秋は、今度はまたテーマを公募して、企画の段階に他大学の人が入って、そうするとまた、そのワークショップのありようというものが、これとまた違ったものが出てくる、あるいは違った形のチームが出てくるという可能性があります。そういったワークショップごと、チームごとに多様性があって、ある種の実験というとあれですけれども、成果も出さないといけないんですが、実験として取り組んでまいりたいと思います。ありがとうございます。

【城山主査】  盛山先生からも何かございますか。

【盛山】  特に付け加えることはあまりなく、堂目先生がその辺りを配慮されながら取り組まれておりますから、特に心配はしておりません。
 ただ、この場を借りて一つだけ申し上げたいのは、この共創の場というのは、プロジェクトとして3年間ですが、この学問の性質からいって、本当は3年ぐらいで終わるような話ではないんですね。したがってこれを、実質的にどのように継続していくかということについては、大阪大学の事業運営委員会で潜在的には考えていかなければならない課題かと感じております。これは特別委員会の先生方の御協力もいろいろとお願いさせていただくことかと思いますけれども、その点が課題であるという点はひとつ申し上げておきたいと思います。

【城山主査】  どうもありがとうございました。アウトカムは必ずしもプロジェクトだけではなくて、ネットワーク自身だという側面もあります。それをどうやって維持していくのかというのが課題だというお話だったかと思います。ありがとうございました。
 続きまして、戸田山先生、よろしくお願いします。

【戸田山委員】  大変有意義な活動だと思って、感心して聞いておりました。一つだけ質問は、これに参加する個々の研究者にとっての、これに参加しようというモチベーションとか、もっとげすな言い方をすると、メリットというのをどう考えていらっしゃるかということ。伺っていると、例えは悪いんですけど、集団お見合いみたいな感じですよね。その集団お見合いの場に出かけていこうとするときに、まず結婚したいと思ってもらわなければいけないと思うんですが、ほかの人と一緒に、分野を越えたチームをつくって研究をし、ということをしたい人をどうやってつくっていくかということが、私は、このプロジェクト以前の前提条件として大事だと思うんですけども、このプロジェクトは、その点についてどうお考えかということを聞きたいと思いました。

【城山主査】  これも堂目先生からでよろしいですか。

【大阪大学(堂目)】  そこが一番難しいところです。ホームページに掲載すれば、みんな全国から応募してくれるという状況ではありません。この委員会でも言っているように、本当に人文学・社会科学はこれからどうしていくのかという、ある種の危機意識を共有しながら、総合知とか、それもきちんと。それもホームページに書いてあるだけではまず見てくれないし、その延長上にこれがあって、非常に大事な今、場づくりをやっているんだということを丁寧に説明していくことが必要です。
 それで、ですから私は先ほどのシンポジウムにもありましたように、この間、東京工業大学とか広島大学とかを訪ねまして、マネジャーとして、こういう場づくりをやっていくので、ぜひいろいろな研究者の方に応募してもらってくださいということを説明しました。そういった後押しがあって、そうすると人文学・社会科学は、今後は大事だとか、いろいろな人と出会える場があって、それが単に自分の研究成果ということだけじゃなくて、自分の研究成果だったら今までどおりでもいいんだけれども、より広いところですることによって、その成果が上がるということだけでなくて、日本の人文学・社会科学を新しい方向へ変えていけるかもしれないと。こういう特に若手研究者の中でそういう情熱といいますか、思っている方をより後押ししていただきながら、何とかやっていくという。
 それが評判になっていけば、だからあと3年じゃ足りないと盛山先生が。これは評判になっていけばそこには何か面白いムーブメント、動きがあるということが知られれば、こういう計画ですから時間的にそこまでいけるかどうかということだけれど、できる限り私もいろんなところ、いろんな方にお話をして、いい方を紹介していただけるようにという、そういうことも一方で行っております。

【城山主査】  盛山先生、何か補足はありますか。

【盛山】  一言だけ。実は今の御指摘の点は本当に、堂目先生も言うように、このプロジェクトの言わば根幹に関わることですけれども、それは、私のスライドでも紹介しましたが、もともとこのプロジェクトが、今日、学問研究そのものが分断されている、さまざまな研究者や学問分野が共同で問題に立ち向かうというのが弱くなっているという問題意識があるわけですね。これを克服すること自体が、この共創の場の言わば社会運動みたいなものでありまして、そうした社会運動をこの共創の場が推進していく。それはどこまで成功するかが、大変大きな鍵になるわけですけれども、研究者の一種の文化、カルチャーのある種の変容を期待しているといいますか、追求しているという側面がございます。その点を自覚しながら、一生懸命頑張っていきたいと考えておりますので、その点は御理解いただければと思います。

【戸田山委員】  分かりました。どうもありがとうございます。大変クリアに説明していただきました。

【城山主査】  どうもありがとうございました。ほかに御質問、御意見いかがでしょうか。

【仲委員】  仲です。大変すばらしいプロジェクトのご説明どうもありがとうございました。私も参加者のところを見せていただいて、本当にすばらしいと。若手、30代・40代が多く、属性も大学、行政、民間と、大変バランスよく入っていると思いました。
 ここで、一つお尋ねしたいのは、最初のところで、ジェンダーもということをおっしゃっていたと思うんですけれども、ジェンダー比はどうなのかということです。形式的に、何もかもジェンダーというのは適切ではないとは思うんですけれども、女性の知識・経験・スキルというのも、また違うところがあると思いますので。ジェンダー比が半・半になるようにとか、半・半にとまでは言わなくても、うまいバランスで入っているといいと思いました。もし参加者のジェンダー比が分かれば教えていただきたいと思いました。以上です。

【大阪大学(堂目)】  平均して30%から40%が女性の研究者でした。会によって、多少の違いはありますけれども、30から40の間のところですね。50まではなかなか行かないんですけれども、今後も、その辺りは気をつけていきたいと思っております。

【仲委員】  ありがとうございます。

【大阪大学(堂目)】  どこかのところで報告、参加者というのはそこまでいるんですが、ちゃんとファシリテート、ブレークアウトルームで分かれていくときにとか、話題提供とか、そういう取り仕切っていくところにまだまだ少ないという、そういう声はワークショップの参加者からあります。ただ参加してもらうだけでなくて、本当に中核的な役割を担っていただけるように今後配慮していきたいと思っております。

【仲委員】  ありがとうございます。シンポジウムのところ、井野瀬先生のお写真はあったんですけれども、あと皆さん男性だったので、もっと女性が入ってこられたらと思いました。ありがとうございました。

【大阪大学(堂目)】  シンポジウムですね。ありがとうございます。

【城山主査】  盛山先生、何か補足されることはありますか。

【盛山】  私からは、JSPSの取組に関してですね。その点については、実は公募要領とか審査のことをどう書き込むかについていろいろ議論しました。最終的には、今、公募要領等は公開されておりますけれども、具体的に何パーセントとか、そういうことまで書かないでおいた方が、むしろいいだろうという形になっています。ただ意図としましては、ジェンダーバランスとか、その他、ある意味で国籍とか分野とかに関しても、多様性をとにかく大切にしていくというのがこのJSPSのプログラムの根本の精神の一つを成しておりますので、その点は重要視していきたいと考えております。

【仲委員】  ありがとうございました。

【城山主査】  どうもありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。

【加藤委員】  筑波大の加藤です。私は分野が情報工学分野で、皆様の多くとは異なっているかと思います。ワークショップ等を恐らく、コロナ禍において、オンラインでやっていると思いますが、私どもの工学的な分野でも同じですけれども、そういう研究ワークショップ的なものをやると、以前は、直接出会え、それからセッション時間以外のときにもいろいろ交流することが出来ました。会議中の公式な時間も重要ですけれども、それ以外の交流の場が、人間関係等を築く上で重要だった気がするのですが、オンラインでやると、そういうものを作りにくくなっている気がします。もし先生の取組で、そういうものを克服するような工夫がありましたら、ぜひお聞かせいただけたらと思います。

【城山主査】  これも堂目先生、よろしくお願いいたします。

【大阪大学(堂目)】  克服まではなかなか難しくて、克服できていない状況報告になってしまいますけれども。ブレークアウトルームでファシリテートしていただくような方に関しては、この会に集まるだけではなくて、前もって、2回、3回と集まって、ですから、全員集まっても、10人いかないような。だけど、そうなっていく中で、お互い、ほかの大学から、ほかの分野から来ますから、その小さなグループに関しては、回を重ねますから、それでその後の反省会みたいなこともやりますから、うまくいったとか、いかないとかいうので、人間関係がそこでより濃密にできますが、一般の30人の参加者に関しては、これ1回ということになりますから、あとブレークアウトルームで何人か残って話すということはありますけれども、リアルでやるような、名刺交換から始まって、次こちらに来てくださいよというような、こういうことは、まだそこまでは行っておりません。
 あと、チーム構築に向けてSlackなんかを立てますけれども、なかなかそこに、忙しいので、どんどん書き込んでいくということはできておりません。今年度においては、誰が参加したかという個人情報の問題にもありますけども、それはちゃんとそのホームページに行けば分かるようには。先ほどのフラッシュトークも、個人の許可を取りながら、載せられるものは載せていって、個人間で、もうあるいはこのプロジェクトをスルーして、お互い付き合っていっていただけるような、そういう情報の開示の仕方もあるかということを、今年度においてはチャレンジしようとしております。

【加藤委員】  私の経験ですけれども、大学の中での学生との関係もそうですけれども、以前、コロナの前においてコミュニケーションが成立している方とは、コロナに入っても、一度成立した人間関係はずっと成立できる気がするんですが、ところが、一度も会ったことがないけれども、オンラインでしかお話とかお見合いができないんだけども、その上でずっと人間関係を築くというのは、なかなか大変なことだと日頃から思っておりまして。
 人文学とか社会科学は、工学以上にそういう人間関係、いやいや工学でもそうだとは思うんですけれども、そういうことに関して日頃から、そういうことを克服する何かを考え続けねばならない時代だろうと日頃から思っておりまして、コメントさせていただきました。

【大阪大学(堂目)】  ありがとうございました。私もそのように、このプロジェクトだけではなくて、いろんな私自身の組織でもワークショップをやっておりますけども、本当にその辺りは深刻な問題だと、重要な問題だと思っております。

【城山主査】  盛山先生、何かございますか。

【盛山】  特にありませんが、要するに、対面で早く、いろんな会議等ができることを祈っております。よろしくお願いします。

【城山主査】  続きまして山本委員、お願いします。

【山本委員】  山本です。SNSの活用の件で、もっとメジャーなものをどれぐらい使っていくのがいいんだろうかという、これは私の疑問で、質問みたいなところになります。つまり、場をつくるとかという、「ここ、面白いね」と、「シンポジウムとかホームページ、気がつかなかったんだけど、面白いんだって」というような広がりというのが、特に本当に学術の研究者になる手前ですと、博士学生レベルであるとか、そういった大学の若い人コミュニティーみたいなところで広がる期待というのは、メジャーなSNSの活用であるのかと思いました。
 ただ、あまりそれが広がりすぎると、本当に取っ散らかったことになってしまって、この3年のプロジェクトではさらに難しくなってしまうという面もあるのかと思いまして、御意見をお聞かせください。

【城山主査】  どうぞよろしくお願いします。

【大阪大学(堂目)】  そうですね。私たちもSNSをどう使うかということはありますが、そうなるともうその管理に、管理といいますか、それに追われてしまって。今、ワークショップの準備であるとか準備した後のフォロー、準備といっても、1回やるというだけでなくて、前もって集まって、そして反省して、そこからチームをつくって、そして何か外部資金にも応募できるようにサポートして。でもその合間に、さらにまた次の準備をしてという、こういう中で、どこまでSNSで細かく人的な関係をつくっていけるかというのは、マンパワーとの関係もありまして、そこまで手が回っていないというのが現実ですけれども。
 ホームページが、本サイトが立ち上がりましたので、これをこれから今年度においては、さらに活用していきたいと思っております。

【山本委員】  ありがとうございました。

【城山主査】  どうもありがとうございました。ほぼ時間になりましたので、この議題はここまでとさせていただければと思います。基本的には、やられていることの活動の意味なり、重要性については御理解いただけたかと思いますし、むしろこういった試みをどうやって今後続けていくかとか、あるいは、より展開させていく際にはどういう課題があるかというところで、有意義な御意見をいただけたのかと思います。

【勝委員】  1点だけ質問させていただいてよろしいでしょうか。明治大学の勝ですけれども。時間がないところ申し訳ありません。
 御報告大変ありがとうございました。まずは順調にスタートしているということで、非常にすばらしいと思います。
 先ほども、ワークショップについて参加者から目的がよく分からなかったというような声があったというお話がありましたけれども、3年間という短いプロジェクトではあると思うのですが、取りあえずのこの時点での着地点といいますか、場の提供が非常に大きな目的だというのはそのとおりであるのですが、この委員会でも、それは皆さんで共有されているとは思うんですけれども、どういったところに着地点を考えているのか、それから、その次につながるものとして、学振にまた応募されていくのか、この辺の中長期的な見通しについて、教えていただければと思います。以上です。

【城山主査】  これもまず現場からということで、堂目先生、いかがでしょうか。

【大阪大学(堂目)】  着地点は2つありまして、1つは場づくりですね。先ほどもありましたが、これはあと1年9か月ぐらいで終わってしまうんですけれども、もう既にシンポジウムでも御覧のところ、これからいろんな大学と連携していきます。連携しながら、話しながら、これは1年ちょっととか全部で3年じゃ終わらせたくないですよねという話になってきています。それでできるものでもないねと。これはずっと5年、10年かけてやっていかないといけないけども、ずっと大阪大学がホスト役としてやるというのも大変だし、持ち回りで次はどこ、次はどこという形で、だけど、ホストするところは変わっても、この関係というのは維持しながら協力していくと、こういう一つのきっかけとしてこのプロジェクトの場づくり、先ほど言いました、より若い人たちのネットワーク、あるいは我々が把握しないようなところの関係もあるかもしれませんが、こうした大学連携の場、大学連携をそれでつくって、ネットワーク、オールジャパンですから、全部含められないにしても、そのコアになるようなものをつくっていきたいと。これが一つの場づくりに関する着地点です。
 それだけでいいかというと、成果というのは出さなきゃいけない。一応9個のチームは3年で、1年で3つはつくりたいと言っておりますが、その9のチームが全部、大きなところが資金を取って全部というわけにはいかないかもしれないけれども、テーマ代表者に対しては少なくとも一つは、全ての研究者がこれはすばらしいチームだと。これはもう何年間かけて、本当に社会実装といいますか、成果が出るようなものが本当に出たというものは、少なくとも一つは。あれもこれもというのはなかなか難しいかもしれないけど、一つは出てくるようにという、こういうことはテーマ代表者にはお願いしております。だから、いい場ができましたね、じゃなくて、そこから何かすばらしいチームが、期待できそうなチームが本当にできたというのが成果だと思っております。

【勝委員】  ありがとうございます。発信も非常に重要だと思いますので、よろしくお願いいたします。以上です。

【城山主査】  盛山先生、補足はございますか。

【盛山】  今の問題は、ある意味で共創の場というのは、それ自体としては、必ずしも具体的な研究の成果という形で出てくるかどうかというのは別問題で、それに対して、JSPSの研究支援が具体的な研究成果をつくっていくことが課題になっているわけです。こちらは一つずつが6年間のプロジェクトに設定されておりますけれども、私としてはできる限り、途中でいいからどんどんこの大きなテーマという課題に取り組んで、根源的な問いを追求した研究成果というものを、雑誌論文でも、あるいは著作でも、あるいはその他のものもあると思いますが、いろんな形で、それぞれの研究チームで発信していただく。そうした発信は、この3年間の大阪大学のプロジェクトをさらに次にどう展開していくかということの見通しを構成していく一つの基盤になるかという期待をしております。そういうことになるようにしていきたいと考えているところです。

【城山主査】  どうもありがとうございました。共創の場として昨年度から始めたものを今後どうしていくのかというのは、恐らく来年の今頃にはそういうことも含めて多分議論しなければいけないというタイミングかと思いますので、また、今後の1年の経験をベースにその辺りの議論を何らかの形でさせていただくことが必要かと思いました。どうもありがとうございました。
 それでは、次に進ませていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

【盛山】  それでは私達はこれで失礼してよろしいでしょうか。

【城山主査】  事務局はよろしいですか、それで。

【事務局】  はい、大丈夫です。

【城山主査】  堂目先生、盛山先生、どうもありがとうございました。
 それでは、次にデータインフラストラクチャー構築推進事業に関するヒアリングに移りたいと思います。事業実施者である日本学術振興会と拠点機関である東京大学の三輪先生から御説明いただきたいと思います。まず、資料の3-3に基づきまして、学術振興会人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進センターの廣松先生及び前田先生から御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

【日本学術振興会(廣松)】  御紹介いただきました廣松でございます。本日はこういう機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。今、画面共有されていると思いますが、この資料は、ここにございますとおり、私と前田研究員で作成をいたしました。発表につきましても役割分担をして発表したいと思います。
 では、目次をお願いいたします。これが本資料の内容目次でございますが、そのうち、Ⅰの「本事業の背景」と、それからⅡの「本事業の取組」について私から説明をさせていただき、Ⅲ以降の、「本事業の成果」、それからⅣの「今後の課題」に関しては、前田研究員から説明をさせていただきます。
 では、早速でございますが、次Ⅰの「本事業の背景」ということでございます。人文学・社会科学分野におけるデータインフラストラクチャーの重要性、必要性に関しては、様々なところで言われており、もう委員の皆様に対しては釈迦に説法ということだと思いますので、ここでは、直接この事業の開始の契機となりました二つの提言について挙げております。
 一つが、文部科学省が平成29年の4月に公表いたしました「基礎科学力の強化に向けて-『三つの危機』を乗り越え、科学を文化に-」というもの。二つ目が、日本学術会議が同じ29年の6月に出しました提言、「学術の総合的発展を目指して-人文・社会科学からの提言-」の二つでございます。このそこにあります文章を読み上げることは省略をさせていただきますが、これらの提言を踏まえまして、平成30年度から日本学術振興会が、「人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進事業」を5年計画で開始したものでございますした。現在4年目に入っております。令和3年3月に第6期の科学技術・イノベーション基本計画は閣議決定されましたが、その中で、我々が行っている活動を念頭に置いてであろうと思われる文章がございますので、それも御参考までにつけさせていただきました。
 それでは、次のページ、Ⅱの「本事業の取組」でございますが、JSPSの理事長の諮問機関として運営委員会が設けられておりまして、そこが本事業のある意味で統括部門、その下に随時作業部会というのが設置されております。本事業の活動主体といたしましては、先ほど御紹介いただきました推進センターが中核機関でとしてあり、そのセンターと共同する形で、5つの拠点機関ということで5機関の御協力を頂きながらが活動しております。ただし、システム開発等に関しましては、国立情報学研究所の協力を得ております。
 その次のスライド、お願いいたします。具体的にどういう事業内容に取り組んでいるかということでございますが、左側の中核機関の取組といたしましては、後ほど前田研究員から詳しく紹介をしますが、総合的データカタログの整備、オンライン分析システムの開発研究、共通ガイドライン(手引き)の策定、公開シンポジウムの開催等広報活動でございます。拠点機関では、以下の3点。すなわち、各拠点機関が保有・提供をしているデータアーカイブ機能の強化。それから、海外発信・連携機能の強化。それから、データ間の時系列等の接続の整備の3つです。それらを共有化、国際化、連結化と呼んでおりますが、この拠点機関の活動を基にデータインフラストラクチャーを構築しているところであります。御参考までに、参考資料の13ページと14ページのところに、本事業の人員体制とそれに関連した海外の機関に関してする数値を挙げさせていただいておりますので、後ほど御覧いただければと思います。
 それでは、この3年間我々がやってきました活動の成果について、前田研究員から報告をお願いいたします。

【日本学術振興会(前田)】  それでは、ここから研究員の前田が担当します。スライド6を御覧ください。
 本事業の成果の1番目は、人文学・社会科学総合データカタログ、略称「JDCat」になります。このカタログにより、拠点機関が登録するデータのメタデータを、機関及び分野を横断して一括検索することが可能になります。メタデータ自体は拠点機関に作成いただいていますが、JDCatは、それらのメタデータを定期的に自動収集・アップデートしながら、1か所で横断検索できるようにいたします。
 ここで言うメタデータとは、データのタイトル、作成者、作成時期など、データを理解するために不可欠な情報を指しています。書籍や論文の書誌情報に当たるものが、データにとってのメタデータです。さらに、「CiNii Research」との連携を通じて、論文等の研究成果や、その成果を生み出した研究者とデータ等を結びつけることができるようになっております。
 具体的な活用例ですが、利用者は、本事業に参画している拠点機関が提供するメタデータを一括して検索することにより、効率的にデータを探すことができるようになります。また、研究者側にとっては、拠点機関にデータを寄託することでJDCatにメタデータが掲載され、自らが作成した研究データの幅広い共有が可能になります。
 より具体的なカタログの作成方針、右下の青い箱の中ですけれども、拠点機関のデータには、DOI、Digital Object Identifierの付与を義務づけていますので、利用者が検索において容易にデータを特定することができます。また、スキーマについては、諸外国の主要社会科学データアーカイブの多くが採用しているData Documentation Initiative、通称「DDI」というメタデータの規格を採用しています。日本国内のJPCOARのメタデータスキーマともマッピングしておりますので、国内外のほかのカタログとの相互運用性を確保しております。
 さらに、メタデータは日本語と英語で作成していますので、海外機関からの検索も容易になります。その点、海外の研究者が日本のデータを探すときにJDCatで英語による横断検索ができることは、従来から比べますと格段の進歩と考えております。また、JDCatのメタデータはCC0で公開いたします。個別の許諾の手続きなどが不要ですので、海外のカタログから自由にメタデータをハーベストできます。日本のデータに関するメタデータがより多様な経路で参照・閲覧されることから、さらにデータそのものが利用されることが期待されます。
 次に、スライド7を御覧ください。JDCatを構築する上で、多くの調査研究を行いました。海外機関の多くはDDIベースのカタログを作成していますが、掲載する具体的なメタデータの項目は、機関ごとに取捨選択しております。そこで海外の主要データアーカイブ5機関のカタログを参考にしながら、JDCatのメタデータスキーマを検討しました。
 人文学と比べますと、社会科学のほうがメタデータに関してはコミュニティーの共通了解が成立しているように思いましたので、社会科学ベースでメタデータを設計し、その上で人文学分野に拡張するように努めました。最終的には、後に御覧いただけると思いますけれども、参考資料スライド17にありますように、31項目から成るメタデータスキーマを設定しております。
 また、メタデータの項目を決めるだけではなく、統制語彙、Controlled Vocabularyの指定を行いました。メタデータスキームを定めることが何を記述するかのルールだとしますと、統制語彙はどのように記述するかのルールです。例えば「2年に1度の調査」と「隔年の調査」は人間にとっては同義語ですが、機械には全く別のものでございます。一つの事象は一つの言葉で記述するというルールを徹底することで、誤解を減らし、かつ検索の効率を上げることが目的であります。統制語彙も、DDIの統制語彙で適切と思われるものを採用し、翻訳をしました。
 研究トピックにつきましては、ヨーロッパの社会科学データアーカイブのカタログを束ねているCESSDA、Consortium of European Social Science Data Archivesの分類を採用しています。そこでカバーされていない人文学分野のトピックについては、日本十進分類法を援用する形で対応しました。それ以外にも、日本における今までの慣行を踏まえ、データタイプなどは独自の統制語彙を作成しています。JDCatのインターフェースにつきましては、できるだけ利用者から見て直感的になるように工夫をしています。実際の画面は、後ほど参考資料のスライドで御確認ください。ファセット検索による絞り込みができるほか、詳細検索を可能にしています。JDCatは6月末に、間もなく社会科学分野先行で公開いたします。
 次に、スライド8を御覧ください。本事業における五つの拠点機関と、各機関が扱っているデータが列挙されています。それぞれの経験と特色に応じたデータの長期保存と学術目的の提供を実施しています。提供しているデータの内訳において、自機関作成データと他機関作成データの比重は機関ごとに異なりますが、全ての機関が外部の組織や研究者のデータを受け入れている、あるいは受入れ準備を進めております。
 では、次に参ります。スライド9を御覧ください。本事業の二つ目の成果であるオンライン分析システムについて説明させていただきます。本システムは、ローカルな環境にソフトウエアをインストールしたり、あるいはデータを手元にダウンロードすることなく、RやPythonなどのプログラムを実行し、データを分析することができるシステムです。昨年秋から、社会科学分野については、数人の研究者に協力いただき、大学の講義等で試験運用を開始し、現在も改善を続けております。協力していただいた先生方の感想としては、例えばRを利用したオンライン授業で、学生の個別の端末に関するトラブルから解放されることなどが大きな利点であるようです。想定される活用例としましては、大学における講義や演習のほか、個人研究、共同研究における利用が考えられます。また、研究者が自らの分析プログラムを公開・共有することも想定しています。今年度も試行を続け、令和4年度には本格運用を開始する予定です。
 それでは、三つ目の成果に参りたいと思います。スライド10を御覧ください。この事業においては「人文学・社会科学におけるデータ共有のための手引き」を作成しております。諸外国のデータアーカイブでは、効率的かつ適切なデータの保存・共有を促す目的で、ガイドブックや手引を公開することがあります。英語で確認できるだけでも、アメリカのICPSR、イギリスのUKDA、フィンランドのFSD、そしてヨーロッパのCESSDAがガイドを公表しています。本事業でもそれに倣いまして、令和元年10月に、作業部会による議論を開始いたしました。先述の4機関が公開しているガイドを参考に全体の構成を議論し、その後、各章について部会委員や専門家に原案の執筆をお願いしました。後には人文学分野を含めた作業も開始しております。一旦出来上がった原案に対しましては、人文学、社会科学、情報学などの学協会に意見照会を行い、その照会結果を参考に修正を行いました。最終稿が、ようやくこの6月に確定しました。現在校正作業を進め、DITA形式及びPDF形式での公開準備を進めているところでございます。
 この手引きでは、データの保存・共有の技術的な問題について議論するほか、データマネジメントプラン、DMP、人を対象とする研究の倫理原則、データ共有上の法律的問題についても解説しております。研究者が自らの研究においてデータを扱う際の参考にしていただくと同時に、大学院レベルの教育で参考資料としていただくことも可能かと考えております。
 以上、学術振興会が平成30年から実施しています「人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進事業」の概要について説明させていただきました。
 最後に、今後の課題について申し述べます。スライド11を御覧ください。データの保存・共有を推進するために構築したデータインフラストラクチャーですが、一旦つくってそれでおしまいというわけには参りません。デジタルデータを扱うインフラストラクチャーは、情報技術の変化や革新に常に対応する必要があるため、ほっておくと急速に陳腐化します。したがって、定期的な更新が不可欠です。
 分かりやすい例を申し上げますと、JDCatのシステム面でのメンテナンス、例えばソフトウエアの更新やセキュリティー対策は必須です。また、各拠点機関は今後もデータの受入れを続け、メタデータを追加していくと思いますが、順調にハーベストを続けるためには、その時々の不具合への対応が必要になります。また、海外からハーベストしていただく場合も同様です。
 カタログの内容についてですが、今回はDDIと呼ばれる比較的安定した規格に基づいておりますので、近い将来、大幅な改定をする可能性は低いと考えています。しかし、統制語彙の側では、例えばCESSDA Topic Classificationに新しいキーワードが追加されるようなことは十分考えられます。国際的に標準的に利用されている統制語彙を利用している場合は、それらの改定についても注意を払う必要があります。
 また、データ共有の手引ですが、先述のICPSRの手引は初版が1997年に発行されていますが、その後、最近公表された第6版まで、およそ5年に1度、改訂されております。本事業で作成した手引につきましても、環境の変化に合わせて定期的に内容を改訂していくことが望ましいと考えています。
 また、JDCatは現在、五つの拠点機関からのメタデータをハーベストしています。しかしながら、ほかにも技術的な条件と組織体制が整った機関が存在するのであれば、メタデータを自動収集できるように設計はされています。長期的には、参加できる機関数を増やして、より多く、かつ多様なデータの保存・共有・利活用を促すことが望ましいと考えています。
 最後になりますが、最も重要な点を申し述べます。青いフォントで1、2、3と打っているところでございます。日本には、海外のデータアーカイブやリポジトリで働いているような、データの保存・共有・利活用に特化した専門家がいません。社会科学や人文学の研究者が、本業の研究・教育の片手間に、あるいはやむを得ず本業との関係を一時的には逆転させて、データの保存・共有について活動しているのが実情です。
 しかしながら、デジタルな研究資源の保存と共有については、人文学はおろか、自然科学を含めてドメインごとの敷居が下がり、環境が劇的に変化しています。国際的なデータリポジトリの認証基準は、以前は社会科学系のDSAと自然科学系のWDSの二つが存在していましたが、それらは2018年には、CTS、Core TrustSealという一つの基準に統合されています。ドメイン、これ固有の知識は今なお重要でありますが、それを超えて、デジタルの研究資源をいかに保存・共有・利活用するかという観点からの専門家の育成並びにその専門家を支える組織基盤の形成が、表裏一体の問題として重要であると考えております。そこの二つをきちんと手当てして、さらに研究者のデータ共有・利活用を促進する政策を打ち出すことで、国際競争力のある研究ができるのではないかと考えております。
 駆け足になりましたが、以上です。

【城山主査】  どうもありがとうございました。それでは、次に、資料の3-4に基づいて、東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センターの三輪先生から御説明をお願いできればと思います。よろしくお願いします。

【東京大学(三輪)】  東京大学社会科学研究所の三輪と申します。本日は、どうぞよろしくお願いします。
 私からは、「社会科学でのデータ利活用と東大社研CSRDAの拠点事業」と題しまして、主に論点を二つ発表したいと思います。一つは、本センターが、社会科学でのデータ利活用の全体像の中での位置づけ、どのような活動をしてきたかというお話です。もう1点は、さて、その中で、データインフラストラクチャー構築事業の拠点機関として認定されたわけですが、そのおかげで追加されてできるようになった事業が、どこでどういった意義があるのかといったことについてお示ししたいと思います。
 では、次のスライドをよろしくお願いいたします。では、最初の論点、日本における社会科学データアーカイブ及び、この中でどう利活用されているかといった点から始めたいと思います。
 次のスライドをお願いします。皆様、既に恐らく「データ駆動型科学」あるいは「オープンサイエンス」という言葉は、多く今、耳にすることとなっているかと思います。今やこれらの考えが重要視される時代になったわけですが、ただしこれはあくまで最近の動向でありまして、従来からずっとそうであったわけではございません。かつての日本の社会科学では、データは当該のプロジェクトのメンバー内に閉じる、あるいは外の第三者と共有されることはほとんど見られなかったというのが実情でございます。
 1990年代から日本でもデータアーカイブが設立されていき、データの保存・公開が少しずつ進むとともに、研究目的での再分析の機会が開かれるようになりました。そこで、データアーカイブあるいはデータリポジトリの意義として、簡単に5点だけ述べたいと思います。
 一つは、データの散逸を防ぎます。つまりデータが長期保存できますということです。二つ目は、データが見つけやすく、アクセスしやすく、相互運用しやすく、かつ再利用しやすくなるといった利点がございます。3点目に、分析の再現性が担保できます。ですから、研究倫理の問題にもこれは関係します。そして4点目に、新たな視覚からの再分析が可能となって、学術の基となります。第5点目に、ここは重要な点だと思っておりますが、予算が乏しい若手研究者の研究や学部生対象の授業などでも資源となりますので、本格的なデータ分析を、そこにおいても行うことができるようになります。こういった5点のメリットが、データアーカイブにはございます。
 では、次のスライドをお願いいたします。では、そのように1990年代から本格的に幕を開けた日本の社会科学のデータアーカイブですが、その後どうなったのかといったことを簡単に説明したいと思います。
 おおむね、こちらに過去の文献などを基に一部修正したのですけれども、日本の社会科学のデータアーカイブ、役割を分けますと、大体5点ぐらいに分けられると思います。
 第1に、社会科学の多様な分野からデータを収集し提供するというタイプのアーカイブ。こちらには、札幌学院のSORDですとか、あと、我々の東京大学社研のSSJデータアーカイブ、ほかにも立教大学のRUDAなどがございます。
 二つ目は、特定分野のデータに強い、そういった分野に特化した収集をするようなアーカイブです。例えばレヴァイアサン・データバンクですとか、兵庫教育大学のJEDIなどが、それに当たります。
 3点目には、自機関で行った調査データを第三者への提供する、開くといったタイプのものです。例えば、家計経済研究所、慶應義塾大学のパネル設計センター、あるいはJILPTデータアーカイブなどが相当します。
 4点目は、公的統計を専ら扱って、その匿名データの提供、オーダーメード集計を主な任務とするようなアーカイブです。こちらには、統計センター、それから一橋の経済研究所、それから神戸大学のミクロデータセンター、KUMiCなどがございます。
 そして5点目には、調査情報のメタデータの公開とオンライン集計を主な任務とするようなものです。
 この中で重要なのは、アスタリスクあるいはスターマークがついているものが幾つかあることにお気づきかと思います。札幌学院ですとか大阪大学SRDQなどについています。これは何かと申しますと、現在活動していないところです。すなわち、データアーカイブの時代が90年代から幕開けしたと申し上げましたが、実はその多くは、2021年度現在で活動をしておりません。
 それにはいろいろな理由があります。一つには資金の問題、それから一つには人材の問題、様々な問題がありますが、データアーカイブ、その理念は大変私はすばらしいものと思っていまして、意義を感じて働いているのですが、なかなか実は継続というのにが困難が見られるといったことが事実だと思います。
 では、次のスライドをお願いいたします。そのような中で、我々の東京大学社研のSSJデータアーカイブ、こちらは二十数年の歴史がございます。90年代から現在まで発展的に続いているアーカイブだと自負しております。こちらのSSJデータアーカイブの利活用は増加基調にあります。ここは重要な点だと思います。なぜ我々は存続できているか、あるいは利用が増えているかといったようなことで、自己分析を幾つかしてみました。
 第1の理由は、公開データの堅調な増加にあると思います。左下のグラフを御覧ください。こちらは、我々のSSJデータアーカイブがデータを公開して、利用を第三者に開いてからの23年ほどのデータの利用及びデータの収集の値の推移を示してございます。この棒グラフで示したほうが、データの公開されている累積されたデータ数でして、そのうち濃い色で塗っているところが、その当該の年度に新規で公開したデータ数でございます。これを見てみますと、累積ですから当然右肩上がりになっていくわけですか。毎年堅調に、おおむね例えば70から大体110ぐらいまでのデータセットを公開できていることが分かるかと思います。こちらは決して容易なことではございません。なぜかと申しますと、日本の社会科学者たちの中に、こういった御自身で取られたデータの第三者への提供あるいは公開といったことを必ずしも歓迎しないような向きもあるからです。しかしながら、積極的な働きかけの努力によって、何とか毎年、業績を落とさずに、堅調にデータを増やすことに成功してございます。
 理由の2点目です。研究者の世代交代があると思います。すなわち、大学院生の時にこうした公開されたデータを使って修士論文・博士論文を書いていた世代が、現在大学教員となって、おのおのの所属している大学で、教育やあるいは研究などに用いるような傾向が強まっております。そういったこともありまして、ユーザーが、かつてはこちらの東京大学のデータアーカイブも東大の中の大学院生の利用が多かった、これが00年代前半ぐらいの現状だったのですが、その者たちの中から研究者も出てき、また、さらにそれらの研究に触発された別の若手研究者も使うようになっていき、現在ユーザーの広がりが見られているということがあるのだと思います。
 それから第3点目には、我々のデータアーカイブの背後といいますか、周囲の取り巻くセンターが多角的な事業展開をして、なおかつユーザーフレンドリーな利用システムを開発した点もあると思います。これの事業については、次のスライドで追加説明をします。
 では、次のスライドをお願いいたします。こちらに見られますように、我々の附属社会調査・データアーカイブ研究センター、こちらは英語の頭文字を取ってCSRDAと略しておりますが、四つの部門から成り立ってございます。この青い分野、こちらが調査基盤研究分野と申しまして、こちらがデータアーカイブを企画運営しているセクションでございます。それから、緑色のセクション、こちらが社会調査研究分野と称しまして、こちらは独自の大規模データ、特に主にパネルデータを収集して、それをデータアーカイブへと預けて公開するといったことを担っている一次データ収集のセクションです。それから、左下の赤い部分を御覧ください。こちらは計量社会研究分野と称しまして、こちらは、蓄積、それから公開されたデータを用いた共同研究の促進、あるいはそれを使ったセミナーなどの実施を行っているセクションでございます。最後に右下です。この茶色のところは国際調査研究分野と称しまして、我々以外にといいますか、我々よりもむしろ世界の先進的な取組をしているようなデータアーカイブ、あるいはその連携組織などがあるのですけれども、そちらと関わって、世界中のアーカイブとの連携をしたり、あるいは新しい国際規格を立てたり、そういうセクションが右下の国際調査研究分野となります。
 この中でデータインフラストラクチャーの構築事業と関わるのは、主に左上のセクション、調査基盤研究分野のところが専ら関わっています。なぜデータインフラストラクチャーの構築事業に関して調査基盤研究分野が主に参画するかということですが、何しろほかの、例えば調査を行う、あるいは共同研究を行うといったところは、それは研究成果を出す、あるいは調査のデータを収集するといった目的で、別途外部資金の取得なども容易に、それほど容易ではないのですけれども、できる環境にあります。しかしながらデータアーカイブというのは、先ほど日本でも立ち上がっては実はなくなっている重要な機関があったといったことを申し上げましたが、お金がかかりますが、実は成果の出方がそれほど派手に見えづらいので、実質運営しづらいといいますか、ファンディングに関しては非常に苦労するところでございます。しかもコンピューターのシステムなどは大変お金もかかりますし、人手も必要としますというところで、我々にとっては、このデータインフラストラクチャー構築事業というのは非常にありがたく、調査基盤研究分野のさらに基礎的な部分を支えるような財源となってございます。
 では、次のスライドをお願いたします。こちらが簡単な東京大学社研のデータアーカイブセンターの沿革ですけれども、この中で2018年のところ、こちらに人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築拠点事業の拠点機関認定と赤で示しておりますが、こちらを基に、我々の足腰を強くするようなことが幾つかできるようになりました。
 では、次のスライドをお願いいたします。では、ここより、データインフラストラクチャー構築事業の拠点としてどのような活動をしているかということに関して御紹介申し上げたいと思います。大きく3点あります。
 では、次のスライドをお願いいたします。一つはデータアーカイブのシステムの強化です。データアーカイブ、何しろこちらはコンピューターのシステム頼り、あるいはそのシステムを担う技術者に頼っているところがありまして、それらの人件費や事業費などに、主にデータインフラストラクチャー構築事業のお金は充てられております。その中で中心となるのは、1番に書いてあります、データ検索及び利用のシステムのSSJDA Directというシステム、このウェブシステムを我々は独自開発しておりますが、こちらの改修が主な使い道となっております。これまでに利用者及び寄託者の管理のシステムの強化、特に寄託者がマイページというのを作って、己自身でいろいろなもの、スケジュールですとか連絡調整などを管理ができるようにといったことの利便性を図っております。さらに今後、令和3年度以降に、こちらを発展させていくという予定でおります。またOAI-PMHとの連携などで中核機関の事業などとうまく組み合うように円滑運用させるための改修なども、このシステム評価の事業の中で行われました。
 それから、2点目のセルフアーカイブ機能の導入、こちらもこの事業の中で柱でございます。これは何かと申しますと、実は我々、データアーカイブを、つまり社会調査のデータを預かって公開するまでの間に、これまではメタデータの作成ですとか、そうしたデータのキュレーションなどを、全て我々の中で行っておりました。これはなぜかといいますと、社会科学の研究者の方々、それぞれお忙しく、かつ自身の研究業績のことを中心に考えられるので、そういった統一されたメタデータを作るといったことまでなかなか頭が回らないので、我々がその部分を負っていたということがございます。しかしながら海外のアーカイブでも、今やどちらかと言いますと、研究者自身がメタデータを作って登録するといったセルフアーカイブあるいはセルフリポジトリといった機能が主に見られるようになってきています。これは2014年ぐらいから以降の流れです。それを見まして、我々もセルフアーカイブ機能を1番で申し上げましたSSJDA Directの中にどう組み込むかということで、実用化に向けた調査、試験運用に向けた準備などを行って、現在、試験運用の開始といった直面するところまで参ってございます。
 では、次のページをお願いいたします。それから、次期のリモート集計システムの開発なども、この事業の中で行っています。これは何かと申しますと、中核機関の事業の中でも、オンラインでの集計のシステムの開発がございますが、我々は我々で、もともとそもそも独自のリモートの集計のシステムを運用してございました。しかしながら、専らヨーロッパの機関が開発したものを契約して使っていたのですが、そちらのものが開発が中止したといったことを受けまして、我々が独自の次期の集計システムを開始してございます。こちらに関しましては、中核機関の事業と重複しないように、例えば分析機能に関しては制限されて、プログラミングなどはつけないのですけれども、基礎的な機能を強化し、初学者向け、あとスマホやタブレットにも対応するといった、どちらかというとユーザーフレンドリーにするといったことをメインにしながら、現在、開発調整を進めてございます。
 それから4点目は、DDIメタデータの追加です。こちらに関しては、中核事業への協力・連携・貢献といったことも兼ねているのですけれども、我々もともと独自のメタデータ規格でしたので、それをこの際に改めまして、国際規格に合うような形、DDIのメタデータの形式に沿うように現在編集をして、その作業の続行中でございます。
 では、次のスライドをお願いいたします。それから、2点目の柱は英語化です。これまで、どうしても余力がないために、日本語のみでメタデータを作り、公開をしていました。これを現在、こちらの円グラフにあるように、英語化を進めてございます。何とかこの事業の中に、既存のメタデータの英語化をほぼ完了させるところまでは進めていこうと思っています。この中では自動翻訳の導入・利活用などの実験なども行ってございます。
 では、その次、お願いいたします。それから、国際関係の事業の展開も、このデータインフラ事業の中でさらに強化いたしました。国際学会、こちらは、DDIのユーザーカンファレンスですとか、それ以外にも、データアーキビストの集まりなどの学会、これまでももちろん行ってはいたのですが、そこに報告することをより多くして、成果報告に努めてございます。また、独自の国際ワークショップを、オンラインも含めて様々開催しています。こちらは、なかなか普通の研究活動ではできないような、例えば研究データの翻訳の問題ですとか、あるいはリサーチデータの管理の問題など、そういった裏方作業的な、まさにデータインフラ事業にふさわしい内容の下のワークショップを実施してございます。
 では、次、お願いいたします。また、今後もこの方針で続けていく予定です。
 では、最後のスライドをお願いいたします。時間もないので、こちら、一言だけ。データアーカイブは、これからのオープンサイエンス、データ駆動型科学を支える重要な存在です。まだ我々は発展途上の段階で、何とか生き延びているという段階だと思います。その点、このデータインフラストラクチャー構築事業は大変ありがたく、技術者の雇用やシステム開発への投資など、アーカイブの屋台骨を支えてくれる貴重かつ希少な財源だったと認識しています。今後の課題としては、データ公開・共有を、こういった財源を基にさらに増加して、またデータ利活用の環境の向上などに努めていきたいと考えております。私からは以上となります。ありがとうございました。

【城山主査】  詳細な御報告、どうもありがとうございました。今、御説明のありました内容に関しまして、御質問、御意見等頂ければと思います。
 なお、質疑に当たりましては、日本学術振興会、それから三輪先生のほか、本事業に協力されている国立情報学研究所の朝岡先生、それから林先生にも御同席いただいていますので、議論に参加していただければと思っております。それでは御質問、御意見、いかがでしょうか。
 最初、それでは、小林先生、よろしくお願いします。

【小林委員】  御説明ありがとうございます。皆さんが説明された問題意識、日本が持っている考えについては全面的に同意をしております。ほかの国より数十年遅れているというのが率直な印象です。
 細かな点からで申し訳ないですが、三輪先生が御説明をされたCSRDAの4ページのところ、日本における様々な社会科学データアーカイブは、重要なものが随分抜けているという気がいたします。日本の社会科学データアーカイブ、一番そもそもの発端は、もう30年以上前になりますけれども、40年ぐらい前ですかね、筑波大学が多目的統計データバンク、これを作ったのが一番大きな発端です。なぜそれが抜けているのかというのが一番気になるところです。それから、現在稼働しているところでも、多分御存じだと思いますが、大商大のJGSS。データの寄託もしていますが、御自分のところでも公開をされています。なぜそれが抜けているのかです。あるいはJES、Japan Election Studyも自分のところで公開をしていますが、そういうものが入っていなくて、何か今止まっているものが随分入っているという気がします。
 私が一番申し上げたいのは、日本のデータがないために、海外における日本研究が非常に衰退をしています。この30年、40年見ているだけでも、とても衰退をしています。今、アメリカでPh.D.を取るために、基本的にデータがない国を扱うことはないです。そこで問題なのは、データとかシステムとかメタデータとか、いろいろな言葉を使われていますけれども、言葉の定義が私としてはピンとこないところもあるのですが、データには大きく分けて三つあると思います。一つがサーベイデータ、調査データです。これは簡単で、図書館が本を貸し出すかのように並べておいて、ダウンロードしてもらうなり検索してもらえばいいわけで、そのための図書館のカタログを作ればいいということになります。2番目が資料・史料データです。東大の史料編纂所のようなものがあります。3番目、これが一番大きいのですが、アグリゲートデータです。調査ではない政府統計を含めてです。
 資料3-3で、参考資料の14ページのところですが、海外のデータアーカイブの人員体制というのが出ています。例えば台湾とか韓国とかというのがここしかなかったら、日本研究は衰退しないです。韓国のKOSSDAって、御存じのとおり、もうほとんど規模はなくなって、ソウル大のアジア研究所が引き取った形ですよね。その一部になります。
 一番問題なのは、韓国は韓国統計庁があって、そこでほとんどのデータを公開しています。しかもカスタマイズして販売をしています。それは、その外郭である韓国統計開発庁、そこでデータ公開をしています。購入も非常に安い値段です。大体日本円で数千円で、カスタマイズして売っています。それから、中国の国家統計局が、35の省の統計局で同じようにやっています。台湾で言っても、SRDAは非常に小さいところです。そこではなくて、例えば国立政治大学の選挙研究センターは32名います。そこでサーベイの公開をする。ですから非常にライバルの国があって、日本研究ではなくて、何でアメリカで中国研究をやったり韓国研究をやったりするかというと、データです。特にアグリゲートデータの話になってきます。
 そうしますと、先ほどのデータインフラストラクチャーのところで、三十数項目の項目を作るという話がありました。これを見ると、サーベイデータを念頭に置いていらっしゃると思うのです。サーベイデータはこれでカバーできるけれども、例えば一橋の経済研が持っている、もちろん政府の調査結果もありますが、様々な政府統計データ、アグリゲートもです。これはこれでどのようにコード化するのだろうというのが私には分からないところです。
 日本のアグリゲートデータは非常に複雑で、やっている省庁によってユニットが違ったりするのです。今はある程度一緒になりましたが、前は世界測地系でやっているところもあれば、日本測地系でやっているところもあれば、例えば国調一つとっても、市区町村はeガバメントで公開されていますけれども、メッシュデータは有料です。物すごく高額でしか出していないです。そういうものがあるから、日本研究はどんどん海外で衰退していくのです。
 こういう状況に対して、例えばどのようなお考えでいらっしゃるのかです。サーベイデータをやっているとおっしゃるけれども、日本の研究者がICPSRに寄託することと比べて、どういうメリットがあるのかということです。ICPSRは既に2,000以上の日本に関するデータが寄託されています。それに比べて、今ここでワンクッション置くことに、どういうメリットがあるのか。メタデータの英訳化はいいのですけれども、質問票から英訳してくれるのかとか、その辺はどのようにお考えなのか。この辺、おやりになっていることは全てすばらしいことだと思うのですが、今、世界で日本研究が求められている課題に比べると、まだまだやらなければいけないことは随分多いという気がいたします。以上です。

【城山主査】  どうもありがとうございました。リストの確認のようなことと、それから大きな位置づけのお話があったかと思いますが、最初、三輪先生からレスポンス頂いて、その後、廣松先生、前田先生にもお答えいただければと思います。よろしくお願いします。

【東京大学(三輪)】  まず、小林先生、コメントありがとうございました。最初について、データアーカイブの抜けに関しては、率直に90年代後に立ち上がったものを中心にまとめましたので、その点で抜けがあったことはお認めせざるを得ないかと思います。特に、サーベイデータを使う、つまり我々と競合するようなところを中心にしていたということもあるかと思います。おっしゃることはごもっともかと思いますので、もしデータアーカイブの歴史といったことをきちんと展望する際には、もちろんそれらの点は配慮して考えたいと思っております。本日の目的に即しますと、立ち上げたけれども、なかなかその後、機関が消滅したりだとか、難しい困難があるということの説明が主だったので、その点御理解いただければと思います。
 私からはそれぐらいでしょうか。あと、中核機関のほうがよろしいでしょうか。

【城山主査】  そうですね。もし追加的に何か触れたいことがおありになりましたら言っていただいてと思いますけれども。

【小林委員】  三輪先生にお尋ねしたいのは、ICPSRに寄託することに比べてどういうメリットがあるのでしょうか。どういうインセンティブがあるのでしょうか。

【東京大学(三輪)】  例えば簡単に申しますと、我々のところは日本語だけでも寄託ができます。つまり我々自身がそれを英語化して発信するといったことも担います。まずそれが最大のメリットといいますか。

【小林委員】  それは調査票の英訳化をやっているということですか。

【東京大学(三輪)】  もちろん、英語化の事業の中で、メタデータももちろん日本語でしか預けられないものを英語化もするわけですね。

【小林委員】  いや、メタデータはいいんです。メタデータはカタログですから大した量ではないので。問題は質問票までカバーされるのですかということです。

【東京大学(三輪)】  調査票も、主要な、しかも海外からアクセスが多そうなデータに関しましては英語化を行っております。英語化に当たっては、もちろん我々のスタッフが行うのですけれども、寄託者、大体5往復ぐらい連絡しながら調整を図って行っているということでございます。「国際的な利用が見込まれる主要な調査データについて」というところですね。こちらについても今、どんどん英訳の準備は蓄えられております。

【小林委員】  JESの経験から言うと、寄託側で英訳化しなければいけないので、はっきり言うと、それだったら、もう直にICPSRに出した方が簡単です。

【東京大学(三輪)】  そうですね。そういう良心的な、英語で最初から準備してくださるような寄託者様に関しては、もちろんそれで引き受けて何も問題ないのですが、なかなかそういうところばかりではないので、こちらも努力してまいります。

【城山主査】  廣松先生、前田先生から何かございますか。

【日本学術振興会(前田)】  DDIのメタデータのカタログ、31項目の件ですけれども、DDIコードブック、DDIのバージョン2に基づいておりまして、それでICPSRでも大量の政府統計データを扱っておりますけれども、TIGER (Topologically Integrated Geographic Encoding and Referencing)のデータですとか、一瞬毎の週ごとのアグリゲートデータ、ICPSRでもたくさん所蔵してカタログに載せていますが、それと全く同じ仕様ですので、官庁統計、集計データを記述することに何ら問題はないと考えております。以上です。

【小林委員】  多分誤解があると思いますが、ICPSRは基本的にサーベイデータが中心でやっています。私が申し上げたのは、海外におけるアジア研究の中で、日本のライバルとなるような中国、韓国、そういうところがアグリゲートデータを政府機関がきちんとデータアーカイブ化してオープンにしていると。それに対抗するものが日本ではまだ十分にないと。そこはどうするのですかという話です。ICPSRの話をしたのは、三輪先生に質問したことです。

【日本学術振興会(前田)】  政府統計の集計データのことに関しましては、恐らくこの事業なり文部科学省の所掌を超えた総務省統計局の問題ではないかと私は思います。

【小林委員】  おやりにならないということは分かりました。

【日本学術振興会(前田)】  小林先生がICPSRはサーベイデータの話、全くの間違いで、ICPSRは昔から巨大なアメリカの政策センサスのプロジェクトをやっています。以上です。

【小林委員】  私も昔そこにいましたので、よく存じ上げています。いずれにせよ皆さんはおやりにならないということは分かりました。

【城山主査】  どうもありがとうございました。続きまして、神谷先生、お願いします。

【神谷委員】  データカタログ(JDCat)ですが、非常に重要な事業だと思います。認識されているとは思いますけれども、データカタログは基本的に五つの拠点のデータのカタログだと理解しております。しかし、これら以外にも日本のいろいろな大学が重要なデータを持っております。例えば、拠点の一つである一橋大学経済研究所の長期経済統計は非常に有名ですけれども、明治期以降のものです。一方、神戸大学の経済経営研究所は江戸時代のデータを持っていて、一橋大のものと補完的であり重要だと思います。今後、こういった五つの拠点以外のデータを、どのようにこのカタログに取り入れていく予定かという点をお伺いしたいと思います。
 それから、もう一つお伺いしたいのは、カタログに入れていくということになりますと、データを出すほうに対する多少の資金援助というものも必要になるかもしれません。こういったことの計画もあればお伺いしたいと考えております。
 それから、一つ付け加えますと、私は神戸大学の経済経営研究所の所長でありましたけれども、研究所が公開しているデータを使っていただくということ自体が成果にもなりますので、カタログに入れることについては非常に強いインセンティブがあるということでございます。ぜひこれはやっていただきたいと同時に、今後の計画、資金援助計画等をお伺いしたいと思います。

【城山主査】  これは廣松先生、前田先生でしょうか。いかがでしょうか。

【日本学術振興会(事務局)】  振興会事務局でございます。御質問ありがとうございます。拠点以外の機関について、がこれからどのように参画することを考えているのかということでございますが、私どもの事業、平成30年より5年の時限付の事業ということで開始してございまして、予定としては、今、残り2年ということでございます。その先の計画については、現在のところ未定でございまして、今後検討していくことになろうかと思っております。

【城山主査】  そこはまさに今後の検討事項で、こういうことについて議論することが多分、必ずしも今年に限定されませんけれども、今年、来年にかけて必要なことかと思います。神谷先生、取りあえずこのレスポンスでよろしいでしょうか。

【神谷委員】  結構です。ぜひ御検討よろしくお願いいたします。

【城山主査】  続きまして、尾上先生、よろしくお願いします。

【尾上委員】  尾上でございます。いろいろ御説明ありがとうございます。私も分野違いでございまして、非常に低レベルな御質問になるんですが、JDCatの今後の課題のところに、データの共有・利活用に関する専門的な知識を有する人材、これを確保していく必要があると。これ、恐らく人文・社会科学系だけじゃなくて、いろいろなところで同じような、このオープンサイエンスの流れを考えたときに出てくると思うんですけれども、特に人社系のデータインフラストラクチャーで特有な必要となるような知見というのが、一般的なほかのオープンサイエンスの流れとは違うところでもしあれば、教えていただければと思います。あるいは完全に共通化できるのかというところ等について御示唆いただければと思います。

【日本学術振興会(前田)】  それは前田から説明させていただきます。御質問ありがとうございました。私自身の認識におきましては、システム周りですとか、メタデータのカタログを作るですとか、そういうところは一種、技術的には共通しております。メタデータのスキーマに関しても、各分野でそれぞれありますけれども、一つの分野でメタデータスキーマがあり、それがどうカタログで運用されているかということが分かれば、どちらかというと技術畑の方のトランスファーといいますか、移行は、そこまでは難しくないのかと思います。
 その一方、メタデータに関する記述をきちんと整理して登録する側は、どうしてもドメインスペシフィックな知識が不可欠となるだろうと。そういいますと、専門スタッフの中にも、ドメインを越えて比較的異動しやすい方々と、どうしてもある程度、人文・社会の中ぐらいであったら異動はできるかもしれませんが、突然バイオに飛んでくださいと言われても、できない方々はいらっしゃるだろうと思います。
 ついでに付け加えさせていただきますと、日本では結局こういうことを、まだ研究者あるいは研究者の卵が暫定的にやる慣行が多いんですが、諸外国では、そこから初めて専門的スタッフとして採用されて、それでキャリアを積んでいく、そういうキャリアパスがきちんとできている国が多うございまして、その意味で申し上げますと、私も少し最近、自然科学系の議論を拝聴しておりますと、これは恐らく日本では分野を問わず同じような問題があるんじゃないかと認識をしております。
 私からの返答は以上です。

【尾上委員】  ありがとうございます。

【城山主査】  どういう人材が必要なのかというのは結構重要なポイントかと思いますが、三輪先生、あるいは今日御出席いただいている情報学研究所の朝岡先生、林先生、何か追加的な御意見等ございますか。

【東京大学(三輪)】  三輪でございます。一言だけ補足をさせてください。今の前田先生のお答えにある程度尽きているかとも思うのですけれども、私、人文学は分からないのですけれども、社会科学のこうしたリポジトリの運営のための技術者には、調査データ特有の事情、つまり社会調査が誰を相手にどのような方法を取ったかということが分からないと、例えばメタデータの整理にしても何にしても、なかなかうまくいかないといいますか、といった点がございます。そういった点では、データライブラリアンのような、しかも社会科学的な調査スキルですとか、そういった十分な知識を持ったような方がいらっしゃると、非常にこちらとしては、そういった人材が続々と出てきてほしいと願っているところでございます。簡単なですが報告まで。

【城山主査】  ありがとうございました。時間が限られているのですが、あと私の手元で把握しているので、3人の先生方が手を挙げられているので、井野瀬先生、それから加藤先生、後藤先生、恐縮ですが、それぞれ御質問、御意見言っていただいて、まとめてレスポンスを伺うという形にさせていただければと存じます。
 ということで、最初、井野瀬先生、よろしくお願いします。

【井野瀬委員】  ありがとうございます。非常に興味深く聞きました。私は歴史学をやっているので人文学ですけれども、社会科学のほうがやりやすいということで先行して進めている、そこの問題点もよく理解できました。歴史学の分野では、例えばアイルランドで進められてきた「1641年デポジションズプロジェクト」などを見ますと、政府が積極的に参加しているのですが、そのときに重要になってくるのは、社会科学でも同じだと思いますが、コンテンツとともにコンテクストです。文脈、文脈情報が必要になり、そこに人文学者・社会科学者と情報学などをやっている人たちとのコラボレーションも明確に見えてきます。コンテクストの見せ方、形を含めて、コンテクスト情報をどのように出されていくか、出していくか。その点をお伺いしたいと思います。「1641年プロジェクト」では、国際比較を含めて、アイルランドを研究する人の数が激増したと聞いています。日本でもデジタルアーカイブ化の与える影響は大きいと思いますが、その意味で、コンテクストについての情報をどのように出されるか、教えてください。

【城山主査】  ありがとうございました。続きまして、加藤先生、よろしくお願いします。

【加藤委員】  先生方のやり取りを聞きながら思ったんですけれども、ここで集められたり、やり取りされているのは、網羅的ではないようです。そうすると、実はメタデータのメタデータみたいなものも必要になることがあるかもしれないと思いました。専門の方々が、自分が関心のある分野だけ、コミュニティーなりグループなりで集めていれば、それでいいのかもしれませんけれども、より広範なものを、あるいは網羅的に調べようとすると、網羅性を持ったメタデータ、メタデータのメタデータみたいなものに関する検索のニーズのようなものがあるかもしれないと思いました。
 もう一点。情報工学の分野では、メタデータの取扱いや相互運用性に関して数十年前から研究されていますので、情報学・情報工学分野の方々との交流も交えた研究みたいなことをやってもよいのではと思いました。

【城山主査】  どうもありがとうございます。後藤先生、よろしくお願いします。

【後藤委員】  後藤でございます。私は特にデジタルヒューマニティーズ、人文情報学を専門としておりますので、この事業自体、若干少し関連させていただいているところもございますけれども、このような事業がどんどん進んでいってデジタル化が進むということについては、大変にすばらしいことだと思っております。
 私からは、特に二つですね。一つ目は、この作られましたデータの持続性の見通しについて、まだまだ検討中とも少し伺っておりますけれども、この点についてお話というか、時間がありませんけれども、御回答いただければと思っております。先ほどの今後の課題のところでも、データのインフラストラクチャーの更新という話がございましたけれども、更新と同時に、いかに持続していくかということが大事だと思っております。研究に用いる以上は、ある日突然データが消えるということは困りますので、その部分をどのように維持していくかということを質問したいと思います。
 もう一つは、先ほど尾上先生もおっしゃりましたけれども、人材育成の部分で、こちらは質問というよりも若干コメント的になります。単にデータの専門家というだけではなくて、ある程度、人文とか社会科学のドメイン知識がある人の知識とともに進めていくということが重要であると思います。人文学・社会科学のデータも、場合によっては倫理問題に触れるようなデータというのは多々ありますので、そのようなものも取扱いをどうしていくかとか。あと、先ほど井野瀬先生からも御指摘がありましたけれども、例えばその資料の背景、データの背景をどのように理解するかということも、むしろそれは活用という観点からも大事になってまいりますので、そういうところを含めたデータアーカイビングみたいなことが必要になると思います。なので、その点では、専門的な人材というところでは、ぜひドメイン知識とデータという両面をうまく持ってもらえるような人材の育成確保というところを御検討いただければと思います。以上でございます。

【城山主査】  どうもありがとうございました。人材との関係で、ドメイン知識のある人、あるいはコンテクスト情報をちゃんとどうやって協力的に確保するかという問題、それから持続性の問題、メタ情報のメタ情報の必要性の問題と、その辺りを提起いただいたと思うのですが、前田先生からまず、既にお答えいただいた部分もあるかと思いますが、何か補足されることはございますか。

【日本学術振興会(前田)】  私からできるだけ手短に申し上げます。コメント、質問、ありがとうございました。アイルランドとの比較で言うコンテキストの件ですけれども、ある意味でデータのコンテキストを記述するのが広い意味ではメタデータでございます。現在私たちが準備しているメタデータは、そこまでリッチなメタデータはないんですけれども、社会科学の分野も実は現在はDDI-Codebookというかなりベーシックなメタデータのスキームを使っているんですが、もう1段上にDDIライフサイクルというメタデータのスキームがございまして、そちらだとかなりリッチな記述が可能になります。人文分野に直接応用できるわけではないんですが、デジタルデータを提供する時に、結局データだけじゃなくて、その背景情報がきっちりしないと、研究上は非常に利用しづらいですし、コンテキスト情報が充実することによってさらに研究が進むというのはおっしゃるとおりでございますので、それは今後の課題とさせていただければと思います。
 次に、加藤先生から頂いたことだと思いますけれども、メタデータのメタデータという話ですけれども、確かに本事業は、本事業以外のことを記述するというのはなかなか難しゅうございまして、私としても、どちらかというと、日本の社会科学が他ここにもたくさんあるというのは存じ上げているんですけれども、そういう意味で言いますと、ここにある拠点の中だけで閉じることのないように設計自体はしておるんですけれども、より広く様々なデータがどのように利用できるかということに注意を払いながら、一種、広報といいますか、皆さん方に知っていただく努力は必要かと考えております。
 情報学の分野の先生方との共同研究というか、共通テーマ、まさにおっしゃるとおりでございまして、その意味でNIIの先生方と協力しておりますし、そちらを通じて、それ以外の例えば人文学ですとか様々なデータを共有するプロジェクトや社会的な企画とも、一種情報交換をさせていただいております。
 最後に後藤先生から頂いた点ですけれども、データの持続性というのは非常に難しい問題で、別にほっといても5年ぐらいは大丈夫だと思うんですが、今持っているデータが、果たして20年後、30年後どうなるのかということは、極端に言えば誰にも分からない問題ですが、そこを常に、それを一体誰が責任を持つのかということをきっちりさせる必要、きっちりさせられないかもしれませんが、集合的努力ででも何でも、そこはきちんと考えていかなければいけない問題だと思います。
 そして人材育成の件ですけれども、これは私が強調し過ぎたのかもしれませんが、従来はどうしてもドメインの専門家が、やむを得ず情報なりシステムに手を出すということが多うございましたので、どちらかというとそういう垣根を取っ払うことの重要性を強調いたしましたが、それぞれのドメインの固有の知識やリクルートの問題を考えましても、ドメイン知識が必要だと思います。アメリカのデータライブラリアンの場合は、基本的に情報科学のマスターとドメインのマスターの二つを持つということが前提ですので、ドメインの知識なくしては成り立たない部分も十分ございます。その点は御指摘ありがとうございました。

【城山主査】  三輪先生はいかがでしょうか。補足いただくべき点はございますか。

【東京大学(三輪)】  特に私からはございません。

【城山主査】  あと、今日御出席いただいている情報学研究所の朝岡先生、林先生、情報工学分野との連携という点、加藤先生からも触れられていましたけれども、何かコメント等ございますか。

【国立情報学研究所(朝岡)】  朝岡です。コメントとしては特にございません。

【国立情報学研究所(林)】  林です。メタデータのメタデータというお話がありました。JDCatは、JPCOARスキーマという、機関リポジトリの中で研究データを扱う汎用的なメタデータスキーマにもマッピングできております。そうした点から見ていきたいと考えております。以上でございます。

【城山主査】  どうもありがとうございました。時間をオーバーしてしまいまして、申し訳ございません。今日は社会科学分野でどういうことがされているかという事業の説明と同時に、次のステップとしてどういうことが施策として必要なのかというのを考える上で、いろいろな材料が出てきたかと思いますので、事務局でそういうことも踏まえて、ネクストステップについての課題といいますか、潜在的な事業課題のようなものを整理していただくのがいいのではないかと思います。

【日本学術振興会(廣松)】  私からもう一言だけよろしいでしょうか。

【城山主査】  どうぞ。

【日本学術振興会(廣松)】  センターの廣松です。大変貴重な御意見、誠にありがとうございました。我々は5年という時限の下で活動しておりまして、今回成果の一部として出しました本格運用を始めますJDCat等に関しましては、決して完成品ではなくて、ある意味で今後の活動の土台としてお役に立てればと考えております。我々としましてもは、JDCatが土台となり、この分野の今後の発展に寄与することを切に願っているものでございまして、ます。先ほどシステムの持続性、データの持続性とか継続性に関して御指摘がございましたが、それらに関しての観点も含めまして、ぜひ、この特別委員会において大所高所から御検討いただければと願っております。以上です。

【城山主査】  ありがとうございました。今、廣松先生からお話しいただいたように、事業としては、まさに基盤を作る事業を来年度にかけてやられているわけですが、恐らくその周辺領域、あるいはその次のステップでどういうことが必要なのかということを、最初に第6期の基本計画から与えられた宿題との関係でいうと、恐らくこの委員会で検討させていくということになるのではないかと思います。その辺り、少し事務局に考えていただくと同時に、今日は社会科学のお話をさせていただきましたが、次回は少しワンステップ遅れて展開する人文学の話をお伺いするので、ある部分は共通の課題、あるいは固有の課題もあるかと思いますので、その辺りは来週再度また議論させていただいて、取りまとめに反映していただけるといいのではないかと思っております。
 以上のような感じかと思いますが、どなたか、何か特にこの段階で御発言されたいことはございますか。よろしいでしょうか。
 そうしましたら、最後に事務局から連絡事項をお願いいたします。

【二瓶学術企画室室長補佐】  事務局でございます。次回の人文学・社会科学特別委員会は、来週6月28日に行う予定でございます。また、本日の議事録案につきましては、後日メールにてお送りいたしますので、御確認をお願いいたします。事務局からは以上でございます。

【城山主査】  ありがとうございました。それでは、これで閉会させていただきたいと思います。皆様、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

※事務局補足
ICPSRとは、ミシガン大学社会調査研究所に設けられた、社会科学に関する調査の個票データを世界各国や国際組織から収集、保存し、それらを学術目的での二次分析のために提供する世界最大級のデータアーカイブです。
ICPSRのデータカタログにおいてキーワードを「Japan」で検索した際にヒットするデータ2,508件のうちInvestigator Affiliationで日本の機関所属となっているデータは60件である(2021年7月14日時点)。
(URL:https://www.icpsr.umich.edu/web/pages/ICPSR/index.html)

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