人文学・社会科学特別委員会(第2回) 議事録

1.日時

令和元年7月30日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省東館15階 15F特別会議室

(〒100-8959 東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 共創型プロジェクトについて
  2. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員、専門委員)
城山主査、白波瀬委員、須藤委員、大竹委員、川添委員、岸村委員、喜連川委員、小林傳司委員、新福委員、山本委員、窪田委員、盛山委員
(科学官)
頼住科学官、三原科学官

文部科学省

増子大臣官房審議官、原振興企画課長、前田学術企画室長、藤川学術企画室長補佐

5.議事録

【城山主査】  ただいまより第2回人文学・社会科学特別委員会を開催いたします。
 まず、事務局に異動がありましたので、御紹介いただければと思います。よろしくお願いします。

【藤川学術企画室長補佐】  前回の特別委員会以降、事務局に異動がございましたので、紹介いたします。学術企画室長、前田でございます。

【前田学術企画室長】  先週月曜日に学術企画室長を拝命いたしました前田でございます。
 前職、パリにございますユネスコ日本政府代表部におりまして、3年間勤務しておりました。特に担当は、教育、それから文化、もう一つ、「世界の記憶」という歴史戦に関わることでございますけれども、その三つを主に担当しておりました。3年ぶりの日本ということでございまして、まだ1週間でございますけれども、先生方とともにこの委員会、議論を進めさせていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【城山主査】  よろしくお願いいたします。まずは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【藤川学術企画室長補佐】  資料はお手元の配付資料一覧のとおり配付しておりますが、欠落等ございましたら事務局までお知らせください。
 また、各委員の先生から事前に頂きました研究テーマ等の御意見につきましては、机上配付資料として配付しております。
 また、青色のファイルに前回、第1回の特別委員会の会議資料並びに昨年の12月にまとめました前期の人社ワーキングの報告が入っておりますので、議論の参考にしていただければと思います。
 以上でございます。
 
【城山主査】  それでは、議事に入りたいと思います。本日の議題につきましては、議事次第に書いてあるとおりでございます。
 まず一つ目でありますけれども、共創型のプロジェクトについて本日は御審議いただければと思います。
 今回は、特に研究テーマの在り方について少し時間をかけて御審議いただくとともに、次回フィックスする必要があるわけですが、支援体制とか全体のマネジメントの体制についても、問題提起、御議論等を頂ければと思います。
 それでは、まず事務局から資料の説明をお願いいたします。

【前田学術企画室長】  失礼いたします。それでは、配付資料の説明をさせていただきます。  資料1は、前回の第1回特別委員会の意見まとめということで、テーマごとに事務局の方で整理させていただいたものでございます。
 資料2につきましては、論点整理ということで、前回からの御議論を反映した部分については赤字で見え消しをさせていただいているところでございます。
 資料1として、一つ目の事業の目的に関することでございますけれども、一つ目のポツの中に、志を共有する人たちが集まれる場を用意することで環境整備をすることが必要だという御意見。
 それから、ポツの五つ目でございますけれども、専門知を持ちながら専門的に議論する場を設け、様々な分野、階層の研究者がお互いに知識を投げかけ合う、そういう仕組み作りができればいいのではないかという御意見がございました。
 この二つの御意見につきましては、資料2の事業の目的、マル1番の方に反映させていただいております。人文学・社会科学の研究者が、それぞれの専門知を持ち合いながら、未来社会の構想に能動的に参加するための環境を整備、すなわち「共創の場」を提供するという形でまとめさせていただいております。
 それから、事業の目的に関することの黒ポツの四つ目でございますけれども、15年度に実施してきた課題発見型の研究プロジェクトについては、新しい知恵、それから研究者の発想が変わって、成果を出版したことにより広がりが見えたと。そのためには、最初に募集するときに科研費のボトムアップでは駄目で、ある程度委員会でテーマ設定のような形で区分けしながらプロジェクトを組んでいくことが望ましいという御意見を頂戴しております。
 また、1枚おめくりいただきまして、最初の黒ポツでございますけれども、研究者だけでなく、産業界や市民社会といった様々なステークホルダーが一緒に集まる場を人文学・社会科学の方からリードして作っていくと面白いのではないか。
 それから、続きまして、Society5.0の概念を人社から考え直したらどんなものになるのか。Society5.0やSDGs、これを人社の人たちが考え直すとどういうイメージになって、それを具体的にするためにはどういう仕組みが必要かを検討できる場となるとよいという、この三つの御意見につきまして、資料2の事業の目的、マル2番でございますけれども、「共創の場」においては、人文学・社会科学固有の本質的・根源的問いから生じる「大きなテーマ」に関し、人文学・社会科学の研究者がイニシアチブを持ちつつ、自然科学の研究者とも協働しながら、現代的社会課題に応答した研究課題を模索するという形でまとめさせていただいております。
 それから、資料1の事業の目的に関すること、上から二つ目のポツでございますけれども、従来の学際とは異なることを示すためには、専門家集団の生み出した知識によって恩恵を受ける者や専門家集団に期待しているステークホルダーを巻き込むというニュアンスが必要である。それから、この事業においては、社会との連携を積極的にとるのか、とらないのか、取組の性格を変えるために、どこまで踏み込むかについては議論すべきだという御意見。
 それから、一番下の黒ポツでございますけれども、出口を明確にすることが必要であり、その出口は、日本の人文学・社会科学からパラダイムシフトするような大きな理論知を創出可能とする仕組み作りではないかという御意見を頂いております。
 それから、1枚おめくりいただきまして、5番の成果(評価)の考え方に関することでございますけれども、最初のポツの中で、アカデミックな評価によるクオリティコントロールに加えて、知識の享受者による評価(ピアレビューを超えた評価)が必要という御意見、それから、ステークホルダーを決めて、そこがどう評価するかという社会的課題の評価というところを明確に軸として打ち立てておかないと、従来と同じことになるのではないかという御意見。
 それから、最後のポツでございますけれども、大きな理論知は、従来の学術評価だけではなくて、社会的課題に応えられるもので、新たな評価が必要である。この事業では、人文学・社会科学の研究者が大きな理論知の創出に積極的に取り組むようになる環境をどのように整えるのかを考えないといけないという御意見を頂いております。
 これらをあわせまして、資料2の事業の目的マル3といたしまして、研究課題を模索する過程において、研究成果の享受者となるステークホルダーに共創の場への参加を求めたり、従来の学術評価ではなく、現代的社会課題に対する評価という軸を取り入れたりすること等を通じ、既存の人文学・社会科学の研究が行ってきたアプローチとは異なる新たな理論知を構築するという形でまとめさせていただいております。
 それから、2番の研究テーマ設定の考え方につきまして、赤く見え消しさせていただいておりますけれども、こちらにつきましても御意見いただいたものを反映させていただいております。まずは大きなテーマを設定し、そのテーマに沿ってボトムアップで研究課題や研究体制を構築するという御意見を頂いております。
 それから、3のプロジェクト運営につきまして、事業の総括者、テーマ代表者及び研究課題代表者につきましては、人社系の分野に限らず、各々の分野特性を理解し、相互を結びつけた経験がある者が必要ではないかという御意見。
 それから、3ページ目、4のプロジェクト形成と共同研究の実施でございますけれども、一つのテーマ当たり、どの程度の予算が必要かという項目につきましては、様々な分野やステークホルダーをつなぐ役割を担う人材育成を可能とする観点からの、そういった規模感も必要な場合もあるのではないかという御意見を頂いております。
 以上が資料1、2の御説明でございますけれども、先生方から御意見いただいた中で、資料1の意見まとめの中の例えば2ページ目の二つ目のポツがございますけれども、大きなテーマというものを考えるときには、Society5.0の概念、あるいは、SDGsの実現のための考え方というのも人社の方から考え直してはどうかという御意見いただいておりますけれども、私、前職ユネスコ代表部におりましたので、例えばSDGsということで申し上げますと、ユネスコの中に、教育セクターとか、それから文化セクター、それからサイエンスセクター、それからもう一つ、人文・社会科学セクターというのがございまして、今、人文・社会科学セクターが、SDGs、17のゴールがございますけれども、ユネスコにおける人文学・社会科学セクターが中心となって取り組むというのを三つ挙げております。それがSDGsのゴール10、すなわち、人や国の不平等をなくすというゴールでございます。それから、SDGsの11、サステナブルなまちづくりと。それから、SDGsの16番、全ての人に平和と公正をもたらすと。この三つを軸にユネスコの人文・社会科学局の方では加盟国に対して取組を促すという仕組みになっております。
 参考までにお伝えさせていただければと思います。
 それと、本日、前回の第1回の資料等をとじた青い冊子を皆様方のお手元にお配りさせていただいておりますけれども、付箋をお開きいただきますと、前回、第1回の議論でお示しさせていただきました共創型プロジェクトのイメージというポンチ絵、1、2、3、4枚、両面を合わせますと2枚でございますけれども、その資料を付けさせていただいております。資料の論点整理の2番、研究テーマ設定の考え方、本日御議論いただくところでございますけれども、そこに、例えば別紙のような考え方で設定することが考えられるのではないかというテーマの設定がございますけれども、その別紙というのは、正に今、先生方のお手元にある黄色の付箋が貼ってあるこういうイメージのことを指しておりますので、補足させていただければと思います。
 それから、大変長々と恐縮でございますけれども、もう一つ、今回、研究テーマ設定の考え方につきまして、あらかじめ先生方に御意見を頂戴したものを、先生方のお手元に机上配付としてお配りさせていただいております。本日御欠席の先生方もいらっしゃいますので、私の方から簡単に先生方から頂いている御意見につきまして御紹介させていただきます。
 一つ目は小林良彰先生から頂いております共創型プロジェクトの考え方というペーパーでございますけれども、小林先生からは、今回のこのプログラムというのは、科研費でやっているような人社系の研究であるとか文理融合研究ではないであろうと。それから、もう既にそういう社会的課題研究というのは、民間団体の研究助成やRISTEX、あるいは、従来の課題設定による事業の中で行ってきているのではないかと。したがって、今回、このプログラムで考えるべき方針というのは、今ある社会課題ではなくて、今のアプローチではどういう点ができないのかということを明確にするということで、それを新たな理論知ということで御紹介いただいております。 それから、小長谷先生からは「100年後の日本をデザインする」という大きなテーマの提案としていただいております。小長谷先生の御提案につきましては、大きなテーマを考える際には、まず、包括的な統合テーマというのが必要ではないかということを御提言いただいております。「100年後の日本をデザインする」というテーマ設定をした上で、そこからテーマを三つほどに絞るためのキーワード群としまして、(2)でございますけれども、人口統計でございますとか、ジェンダー、高齢、限界集落、インフラの持続可能性、教育といったようなキーワード群を御紹介いただいております。
 それから、日本学術会議若手アカデミーの先生方、人文学系の先生方と、それから社会科学系の先生方からも御意見いただいておりますけれども、人文学系の先生方からは、テーマというのはむしろ余り制限せずに自由に応募させた方が積極性も出るんじゃないかという御意見でございますとか、あと、日本的な倫理観、日本とは何か、日本人とは何かというような、そういう社会構造をまずしっかり認識した上で、根本解決、社会課題というものにアプローチしていくべきではないか。それから、宗教とか信仰の意義そのものについて問い直すことも面白いのではないかというような御意見を頂いております。
 それから、社会科学系の若手アカデミーの先生方からは三つ御提示いただいておりまして、まず、テーマを考えるに当たっては、場所、日本と世界、日本と国家、まち、近隣、住居というような形で、軸をどこにするのかということかと思いますけれども、そういった御意見を頂いております。
 それから、学問多様性。細分化された分野があるんだけれども、それを保護すべきなのかどうか。多様な学問があることの価値とは何だろうかと。
 それから最後には、これも人文系の先生方の御意見とも少し重複しますけれども、テーマそのものについてそもそも研究者に共創させる方が画期的なアイデアにつながるんじゃないという御意見を頂いております。
 他に頂いている御意見につきましては、きょう、先生方、御出席いただいておりますので、後ほど、研究テーマ設定の考え方の議論の場で適宜御紹介を賜れば有り難いと思っております。
 事務局からは以上でございます。

【城山主査】  どうもありがとうございました。これからは、今の御説明を踏まえて、共創型プロジェクトにおける研究テーマの在り方について議論を頂きたいと思います。ポイントは、資料2が論点整理のリバイスバージョンでありますけれども、これを今回、次回ともう少し深掘りしていってフィックスする必要があるというのがここの主要なミッションかと思います。
 その上で、今、資料1という形で、前回の議論をまとめていただきましたけれども、恐らくポイントは、これは配付いただいた川添先生の御議論にもあるのですけれども、共創というのは誰の間の共創かという話があって、当然学際というのもあるんだけれども、社会のステークホルダーを入れるべきかどうかというところが前回一つの議論になっていて、基本的には入れないと科研等との差別化はなかなかできないだろうというのが大きな流れだったと思います。ただ他方、これは、今御紹介いただいた、きょう御欠席の小林良彰先生の議論にありますが、かといって、目の前の社会課題を解決するということに注力するということになると、それはほかの民間財団もあるし、JSTのRISTEXの事業のようなものがあるので、それとも違うんじゃないか。そういう意味でいうと、確かに社会のステークホルダーを巻き込んでやるのだけれども、他方、小林先生のおっしゃる理論知に貢献するというものがやっぱり必要なんじゃないかということがあり、それらが両方入っている形になっています。そういう意味では、確かに二兎(にと)を追うというところもあります。ただ、他方、前回議論になっていたように、かといって、ジャーナルに論文何本書きますとか、そういう科研的なクライテリアでやる研究とは違うだろうと。そういう意味では、小林先生の御意見も、根本的な理論知という形で、ある種の新しいものを生み出すかどうかという、そういうところに学術の話としても焦点を当てるべきじゃないかという議論が中心だったのではないかなと思います。
 そのあたりを踏まえて、本日も議論を進めていきたいと思いますが、余り誘導するのはよくないのですが、前回も比較的人数が少なかったので、なるべく皆さんに御発言いただくようにしたので、今回、何人かの先生方は、前回御欠席いただいて、きょうから御出席いただいているということもありますので、最初の大枠の確認のようなところから始めたいということもありますので、その辺からもし可能であれば御議論いただければ幸いであります。いかがでしょうか。いかがですかね、喜連川先生。

【喜連川委員】  僕、前回休みましたので、余り雰囲気が分からないんですけど、皆さんの御意見はごもっともと言うと怒られちゃうんですけれども、さりとて、大きな理論知を目指すということとか、大きなテーマをというのは分かるんですけど、すいません、理系の人間は、私だけの問題かもしれないんですが、分野外ですと、余り抽象論になっていくと、何を議論されておられるのかが到底頭がついていかないものですから、ある程度具体的な、それをやるかどうかは別として、例えば仮にこういうテーマみたいなものはどうなのかみたいな話が、御議論を賜れると、少なくとも私はついていけるかなと感じるんですけど、その辺いかがでしょうか。

【城山主査】  恐らくきょうの後半は多分そういう議論をせざるを得なくて、御紹介いただいた御意見の中には、テーマはむしろ提案者に任せた方がいいんじゃないかという御意見もありましたが、ある程度大くくりのテーマを考えるということがあり、それが今の事務局で説明していただいたのでいうと、青でとじた中の黄色い付箋の貼ってあるところですね。例えば3ページとなっているところに、本質的な問いは、正義、規範、共同性、言論の自由、個人の尊厳があって、もうちょっと具体化すると、デジタライゼーションだとか、移民ですね、こういうレベルの、これは事務局で考えていただいた若干世の中的な議論かもしれませんが、こういうのがありますというのがあります。他方、きょう正に御議論いただきたいわけですし、あと、何人かの方からは既に会議後回収資料という形で頂いているような、社会の分断とか、そういうものをどうするかというレベルの話がどうかという、テーブルに上がっているのはそういうレベルの話だということかと思います。

【喜連川委員】  我々にとりまして、デジタライゼーションと人間社会というのはとても分かりやすい言葉なんですけど、デジタルというものはありとあらゆるところに入ってまして、不具合もてんこ盛りにあるんですよね。一方で、直近のものをうんぬんというお話もあったと思うんですけれども、俯瞰(ふかん)構造としてどういうところを狙うのかという議論を少し分かりやすくお示しいただけると有り難いなと。すいません。川添先生に笑われちゃって申し訳ないんですけど。

【川添委員】  いや、そのとおりだと思って。

【喜連川委員】  余り何も言わないとこの抽象議論から抜け出ないので、我々、IT屋さんから見たとき、例えばデジタライゼーションという問題は、やっぱり私が個人的に非常にすごいことをやったなと思うのは、GDPRだと思います。ヨーロッパは考えに考え抜いてGDPRをやろうと決心したと思われます。そして、今、フェイスブックもグーグルも含め、アメリカのデジタル企業というのは原則ブラッセルに通っています。
 ですから、GDPRは、EUがやると言っていたのが、既にグローバルスタンダードに完璧になっています。しかも、今年のダボス会議の中でCNILは、最初のGDPRの違反であるということでグーグルを訴追したということになります。このインパクトは、大きくよくやったなという感じがします。喜連川個人からすると、そこまで目がけて、よく、あれだけ年月をかけて作ったなという気がするんですね。
 こんなことは、理系にやれと言われても、ちょっとできなくて、あのレギュレーションフレームワークのデザインを周到にやったというのは、フランスの英知が相当投入されたのでしょうか?今室長がおっしゃった、ユネスコがやったかというと、ちょっとそうではないと思うんですけれども。このスケールのことをタスクとして考えられないでしょうか?ただ、これは生々し過ぎますとおっしゃることもあろうかと思いますけれども、一方で、ほぼ全ての国民が勝手に自分の個人の情報を使われてうんぬんみたいなことというのは、毎日報道されるぐらい大きな課題になっている中で、例えば人文・社会の先生方にリーダーシップをとっていただくような非常に大きなテーマ感の一つかもしれないと個人的には思うんですけれども、例えばこういうのは近過ぎて駄目なんですとか、いろいろあろうかと思いますので、きっかけとしてちょっと申し上げさせていただいた次第です。

【小林傳司委員】  今の論点は後で触れたいんですけれども、その前に、きょう来られた方は、スケジュール感というか、時間軸をちょっと確認した方がいいかなと思ったんですけれども、主査、資料2のところで当面のスケジュールというページがありますよね。これで考えていくと、多分予算どりも含めると、今年度中というか、今年の9月ぐらいまでに大体決めていくんだということですよね。

【城山主査】  正確に言うと恐らく次回。

【小林傳司委員】  次回で決めていくぐらいですよね。

【城山主査】  概算を出すのは8月末なので。

【小林傳司委員】  ということがまず一つ。それから、共創型プロジェクトの目的のところが3点にまとめられているんですが、これはアンドでつながっているということなので、そうすると、これを認めるということは、必然的に文理共創型をやるということが前提になっている。そして、ステークホルダーを従来のアカデミアからもう少し拡大する可能性を認めるということはもう書き込まれているわけですね。そういう理解で進むということですよね。
 そうすると、例えば先ほどの、細分化して、固有の絶滅危惧種的な人文学みたいな議論は、今回のこの枠組みの中では余り扱わなくて、むしろ喜連川先生がおっしゃったような、そういうテーマに関しての人文と自然科学という意味では、文理の議論になっていくという理解でよろしいですか。

【城山主査】  要するに、絶滅危惧種と言われるような分野の存在意義の示し方は、連携する中で出てくることは否定されないということと、あと、共創の部分は、社会との話というのが前回議論になったので多分こういう形で入っているのだと思いますけれども、別に全部が全て理系との話かというと、そうではなくて、人文と社会の話もあるかもしれないし、社会相互でもあるのかもしれない。そこは多分オープンなのだろうと思いますが、ただし、せっかくなので、理系との接点のところも含めてちゃんと議論した方がいいですねというのがもともと問題設定だったのかなと思います。

【小林傳司委員】  それで、喜連川先生の議論、GDPRですね。結局、それはELSIの議論なんですね、基本的に大枠で見れば。そういうところ、あるいは、標準をどうやって作るかみたいな議論と似てくるんですが、日本はそういうときに常に立ち遅れるんです。ヨーロッパの場合は、恐らく人権概念みたいなものとか、人間の尊厳とか、そういう歴史的な憲法理念の中に入っているような、そういう議論がベースになって、ああいうものを組み立てるわけですね。アメリカの場合は、むしろどちらかというと自由みたいなものを中心に組み立てるという、そういう発想がまず社会のベースとしてあると思うんですね。
 じゃあ、日本はどうかという問題になったときに、残念ながら、御指摘のように、日本はそういう形で議論を立てるという能力が極めて低かった。ですから、今までのパターンというのは、西洋の議論のフォロワーになるということを繰り返してきているわけですね。だから、これは小林良彰さんがおっしゃっているような新たな理論知をちゃんと作るんだという論点は、本当にそういうところで対抗できるような原理を生み出すような知的体力があるかどうかという論点になっていくだろう。現状、ない、なかったというのがやっぱり日本の人文・社会のつらいところなんです。
 といいますのは、ヨーロッパでも人文・社会科学はどういう意味があるのかというのは結構危機感を持って議論をしています。その中でビルニウス宣言の中で書いているのは、本当のイノベーションをやるためには人文・社会科学がなければならないと。それから、社会の反省的キャパシティ、リフレクティブ・キャパシティみたいなものを持つということが極めて重要で、それは人文・社会科学の得意技である。彼らの議論というのは、どこかに、何のかんの言って人文・社会科学のビッグネームは全部俺たちが生み出したという議論なんです。だから、哲学の歴史を考えていただいても、社会科学でも、マックス・ヴェーバーもいれば、ハーバーマスもいるだろうというふうなことが彼らの中には出てくる。
 それに対して、じゃあ、日本はどうかというと、非常に残念なことに、我々もそういうトレーニングを受けましたが、そういうビッグネームの文章を、本を読む、学ぶ、解釈をするという形のトレーニングを受けるわけですね。そうすると、そこからなかなか離れられないということになっていく、そして、西洋の研究者もやっぱりそういう感覚を結構強く持っていまして、日本に対しては、例えばデータプロバイダだと思っていると。自分たちの理論を示すときに、ヨーロッパの事例、データがある。それと類似の形で日本がそういう枠組みで議論をしてくれると、これ、結構おいしいよねという形になって、ですから、逆に言うと、彼らの理論に対してうまく適合するような議論をすることによって評価されるという歴史があるんですね、残念ながら。そこを本当に変えようとすると相当の力技が要るんです。教育の最初から全部やらなくちゃいけないんですが、日本の大学で教えている人文・社会科学というのは、国史、国文学以外は全部西洋起源です。
 ですから、そこを踏まえた上で、人文・社会科学をどうこれから考えるかというのは、実はかなり深刻な問題で、人文と自然科学がチャットをすれば何とかなるレベルの話とは違うような気がしています。
 じゃあ、どうするんだということに対する答えを私は持っていないけれども、これはなかなか深刻な問題で、そういうところが、これだけ情報技術が世界中に広がってしまったときに、そのレギュレーションというのは国内で閉じないわけですね。そのときに、グローバルな基準を提案する能力は、何らかのかなり哲学的な理念というか、そういうものに裏打ちされた形で議論を組み立てる能力が求められるんですが、そこでやはり日本はまだ強くないというのは認めざるを得ないと思います。それは例えば折衷主義なんだとか、いいところをとることが日本の特質だというふうな日本論みたいなのがよく出てくるわけですが、ある意味で当たっているんでしょうけれども、それでいいのかなという議論もありますね。そこはそう簡単ではない。答えにならないんですけど、一応喜連川さんに1回絡んでみようと思って言ってみました。

【城山主査】  今のインプリケーションはどういうことになりますかね。つまり、今までそうだったかどうか、本当に強みはないのかって、これ自身、議論の余地がある話だと思いますが、その上で、そうだとしたときに、そういうものをどこかでちゃんと世界に出せるものを1回やってみるという実験が必要だという、そういうニュアンスになるのでしょうか。

【小林傳司委員】  一つは、きょう、私のペーパーの一番下に丸を3つほど書いたんですけれども、近代的価値の見直しイコール日本の文明論的立ち位置の再確認などという途方もなくでかいことを書いているんですが、これは、盛山先生もたしかそういう意味で、民主主義とか、そういう近代的な原理の見直しみたいなことをおっしゃっていて、それが普通出てくるし、私も賛成なんですが、その中で、じゃあ、日本はどうだったのかというときに、結構特殊な国です。科学技術に関していえば、全ての分野を母語で訓練し、考えることができる非西洋国では、今までは日本だけだったと思います。今、中国がそうなっていると思いますけど。
 そういう意味では、非西洋国にとってのモデルになり得るのは実は日本かもしれなかった。明治時代はそういう意味では西洋の文明を変圧して、アジアに利用しやすい形で伝えるということをやってきた国だし、中国で使われている西洋の学問の漢字表現、ほとんど明治時代の日本人が作り出した漢字の組合せです。そういう意味では非常にユニークな活動をした国だったわけですね。
 それから、歴史の流れでいったときに、西洋近代にある部分に過剰適応したことによって、その極限値を体現してしまったのかもしれないと。例えば、バブルはリーマンより前にやっているわけですね。そして、その後にリーマンが来るんですね。それから、原発の事故というのも、どこかで誰かがいずれ来るのではと予想していたものを日本は先取りして実現してしまったという見方ができなくもない。つまり、科学技術のハンドリングというものがどこかで人間の手に負えなくなる場面が生じるかもしれないということは誰もが考えていた。それをやってしまったという言い方ができるかもしれないとか、そういう意味では、ハイパー近代を先にやってしまったのではないかとか、そんな言い方をして日本を考えることもできるかもしれない。
 というふうに、日本というものを西洋からの遅れとかで考えるのではなくて、ちょっと違うパターンで考えるという議論は、そういう議論をしてきた人は研究者の中で何人もいらっしゃるんですけれども、今改めてそういうふうなレベルの議論をするということもあってもいいかなと思いました。
 それから、ビッグデータのことは、私はもっと深刻かなと思っています。情報という概念は、物質、エネルギーと並ぶ世界を理解する根源的なキー概念だろうと。これは理系の概念とは限らないわけですね。ひょっとすると、これ、仮説を持って研究をするというパラダイムと全然違うことをやろうとしているような気がする。膨大な計算力を手にして、仮説をデータから作り出す、探すというスタイルの研究になってきて、新しい時代のビッグサイエンスなんですね。これにどのくらい資源投入するかというのは、なかなか政策上、難しい部分です。
 そこからデータ倫理みたいな議論というのはどんどんと生まれてきているわけですから、その一つの例がGDPRのような世界標準をどうやって作るかみたいな議論になってくる。そういう問題系があると。その中で、人文・社会科学はビッグデータと全く無縁かといったら、全然そうじゃなくて、ますますそういうものを取り入れたものがこれから生まれてくるだろうと思いますから、学問そのものが文系、理系を問わず変容するだろうという気はします。
 それと、川添さんがおっしゃっていましたけれども、人文と社会科学を一くくりにするというのは全然駄目ですよねという議論ですか。

【川添委員】  駄目とは言っていないんですけど、反省する必要がある。

【小林傳司委員】  粗過ぎますよね。文系、理系も私は粗過ぎると思っていて。

【川添委員】  だから、学問分野そのものの構造の見直しが必要だ。

【小林傳司委員】  コンフィギュレーションそのものが変わってしまうだろうと。理学と工学が実は全然違う発想を持っているということを意外と知られていなくて、人文学と社会科学も結構発想が違っているというのは当たり前で、だから、大学でいうと、文学部と理学部はよく似ていて、工学部と経済学部の方が似ているとか、そういう言い方ができなくはないんです。単純に理系と文系という解像度の粗い議論をしているうちはどうもうまくいかないんじゃないかという点では、川添さんもその辺はもう1回考えるべきだとおっしゃるんだろうと思います。
 取りあえずかき混ぜ役として。

【城山主査】  どうもありがとうございます。いかがでしょうか。では、大竹先生。

【大竹委員】  私は、大枠は、ボトムアップから出すよりは政策課題から出した方がいいと思います。もともとこの委員会の背景には、Society5.0の実現ということで、未来社会をよりよくするために人文・社会科学系への期待が高まっているということですから、Society5.0、それからSDGsとか、世界、あるいは日本である程度共有されているような課題を大枠として設定する。それは外部への説明に非常に大事だと思います。そのもとで自由にテーマを作っていくことが必要になってくると思います。そういう意味では、小長谷委員の提案のような形、あるいは、その中にもう少しSDGsを入れていくとか、あるいはSociety5.0というのを組み込んだ形で大枠は設定しておくといいと思います。
 それで、何年計画で課題を解くのかということも大事な概念になりますが、まだそこは対外的に説明しやすいような課題設定、大枠を作る方がいいだろうと思います。その後で、個別の、今も論点に上がっていたような課題を大枠とつなげる形で作っていくという方が新たな研究資金の枠組みとしては望ましいのではないかと思っています。

【城山主査】  ちょっと今のを確認させていただきたいんですけれども、政策課題でいったときに、粒度みたいなのが多分一つあるのかなと思うんですが、小長谷委員のこの提案は、100年後のというある意味で制約が、制約じゃないのか分かりませんが、かかっていますが、社会をデザインするという極めて大きなレベル、ほとんど一つのテーマレベルで設定して、その中でサブグループを作るのか、SDGsみたいになると、よくも悪くも、ある程度細分化されているわけですね。そのあたりは、どういうルールがいいとか、そういう御意見はありますか。

【大竹委員】  100年後でライン設定するという形で大きなテーマを設定するのか、その中で、もう少しぼんやりして、未来社会のよりよい実現でもいいですし、Society5.0を使ってもいいと思いますし、あるいはサステナブルという形でSDGsを使うというのでもいいと思います。まだそれ以上はっきりしていないですが、私の言いたいことは、新たに作るというよりは、誰もが社会課題だと認識しているものを大枠に持ってきて、それを説明しやすいところからとってくる方が説得しやすいのではないかということです。

【城山主査】  分かりました。ほかいかがでしょうか。では、最初に、白波瀬先生。

【白波瀬委員】  今回、初めて参加させていただきます。初めてということもあって前回からの議論からずれているところがあるかもしれません。まず1点目は、先ほども、大竹先生の方から話があったように、完全にボトムアップというよりもちょっと大枠をということがあるんですけれども、そもそものこのプロジェクトの位置付けというか、自由な競争的資金ではないという位置付けのところで、どういう出口を具体的に想定してこのプロジェクトを設計するのかというのは、ある程度メンバー間で合意しておいた方がよいと思います。せいぜい3年や5年という時限付きのプロジェクトであれば、余りに根源的で壮大なテーマに取り組むリスクがあります。専門知とか文明論からの議論は本当に重要で、今の小林先生とか川添先生のメモを読んでも、本当に根源的な問題提起がなされているのですけれども、さあ、これを直接的にプロジェクトとしてあげるのはなかなか難しいのではないでしょうか。
 それでは、もっと現実的な目標を設定して出口のところがもう少し見えるようにすると、ボトムアップというのも重要なんですけれども、主催者側の問題意識というか、検討してもらいたい大きなテーマを提案してもらうは悪くありません。例えばここは文部科学省ですが、今、教育行政の中で一体何を早急に議論してもらいたいのかといった、そういう枠組みがあってもよいんじゃないかと。ここで「共創」という言葉が出てくるのは分野間の共創で、もちろん文理を超えてというか、文系か理系の区別自体を考え直す必要がないのかという問題意識もまた存在ます。人文学の中でも違うものがあるし、もちろん社会科学の中でも、政治学と社会学と経済学の間でいろんな意味で標準化の事情は違うということもありますので、そういうのを一緒にするんじゃなくて、いろんなレベルの組合せを考えるというのが「共創」という用語のキーポイントで、それは分野内というのもあるんですけれども、要するに、いろんなセクターというところで、学術だけではなくて、産業であって、NPOであって、あと、場という点では地域であってという、幾つかのレベルの共創の組合せがあると思うのです。それを例えば三つの関係とすると、これら三つのダイアドの組合せを、例えば分野内、あるいはステークホルダー間の組合せというような形で、ラインを決めて、そしてそこの中で、今教育行政として何を最も緊急に議論するのが求められているのかというのは今議論してもいいところだと思うんですね。
 ですから、大竹先生が政策課題とおっしゃったので、少し小さいイメージが出てきたかもしれないんですけれども、それはもともとは人権の話だし、ダイバーシティも、子供であり、女性であり、多様な国籍でありというところでつながってくるので、それをもっと明示的にプロジェクトとして立ち上げていくと、こういう三つの分野に新しい時代がくると思います。これまで御議論を聞いていると、抽象的過ぎて、何を求めているのか、そもそもこれらの解釈でよいのかな、という疑問も感じました。

【城山主査】  どうもありがとうございます。一つは、文科省だから教育というのがいいかどうかはわかりませんが、教育というのも大きな課題の一つなので、教育というのは一つの焦点としてあり得るのではないかということですよね。

【白波瀬委員】  そうです。教育ってやっぱり未来に対する投資なのです。100年後の社会についても、100年後の社会を構成する人の分野やそれぞれの人々が置く投資家との話の途中だから。それは時間軸で、古典的な教育という小さい枠組みではなくて、いろんな分野で。

【城山主査】  分かりました。そういう意味では、一つの的確なテーマとしてあるだろうということと、共創を分野で考えるか、どのセクターとの連携で考えるのか、多分いろんな組合せがあるので、必ずしも一つを押し付けるのではなくて、いろんなパターンを選ばせたらどうかという、そういう趣旨ですよね。どうもありがとうございました。続いて、須藤先生。

【須藤委員】  私、企業人なので、この議論、よくついていってないんですけれども、例えばSDGsとかSociety5.0って、前回、私も少し申し上げたんですけど、そういった取組から何か人文・社会学との共創の場ってできないかと思っています。これらの取り組みはまだ抽象的であやふやな感じがしてSociety5.0を作り上げるために人文・社会の方と理系の人でどういう共創の場があるかというと、まだ漠然としています。一例ですが、今、内閣府等でスーパーシティとかスマートシティという議論をやっているんですけれども、当然技術系の我々としては、スーパーシティとはこういうものだというのがあり、例えば自動運転とか、インフラの整備とか、さらに、少しソフトっぽい分野になると、健康、介護、さらにはキャッシュレスの世界とか、そういうのがSociety5.0には入っているんですけど、ある団体でこの前、人文・社会系の先生の意見を聞いてみようとシンポジウムをやってみたんですけど、そちらの先生からこんなの誰が喜ぶんだと。こんなまちをつくったって誰も喜ばないし、自治体も希望していないんじゃないか。そこに歴史はあるのかとか、文化があるのかとか、哲学がないとか、いろいろ言われました。Society5.0よりもう少しブレークダウンした現実的な話では、あるまちづくりみたいなのをイメージしたときに、本当は何か抜けているんじゃないかなというのを、我々も最近感じていまして、何が抜けているんだろうという議論をもう少しやろうかということになっています。そういったところからもしかしたら今回の共創のテーマが出てこないのかなと思っています。ただ、そこに理論知とか言われると、人文・社会系の理論知って何なんだろうと、私、全く分からないので、学問じゃないと言われたらおしまいなんですけども。そういう考え方も必要なんじゃないかなという気がします。

【城山主査】  ある意味では具体的なフィールドとして、都市とか、そのレベルの具体性のあるところでやってみた方がいんじゃないかと、そういう趣旨ですね。

【須藤委員】  そこまで落としてきて、そこで学術的な問題が出てくるのかどうか。

【城山主査】  では、盛山先生。

【盛山委員】  ちょっと議論を少し整理しないといけないなと思うんですね。まず、理論知という問題と、それから、社会的課題という問題、ある意味では対立するところがあるわけですね。それはそうなんだけれども、私は、このプロジェクトは、基本的には学術の振興ということを基本に押さえないと思います。人文学と社会科学の学術をどう振興させるかという大きな課題の中での一つの取組として展開されるということですから、ただ単にSociety5.0の構想の中に人文学や社会科学がお助けするような形で入るというのではなくて、基本的に人文学と社会科学が学問としてどう展開されるか。それと同時に、共創型プロジェクトというのは、当然、枠組みとしてあっていいので、そういう社会の現実が要請している課題に人文学と社会科学が学術的に取り組むことを通じて学術として発展していく。それは同時に社会の課題に応えていくという期待にも応える作業をしているんだ。その両方を担うということは押さえていいんじゃないかなと思うんですね。相反するように見えるんだけれども、その両輪を遂行しようというのが基本にあるということでいいんじゃないかなと思うんですね。
 それと関連して考えなければいけないのは、Society5.0と言ったり共創型と言ったりしますが、それだけだとまだ漠然としているので、やはりどこかで、小林傳司先生も私も提案しているような具体的なテーマ。無論それだけとは限らないので、先ほど喜連川先生がおっしゃったテーマも非常に重要なテーマですが、そのように少し絞り込んで、理系も含めて、いろんな学問分野が集まって学術的に取り組まなければいけない現実的な課題を幾つか提示する。そうすることで、具体的な専門分野の先生方にも参加していただける。そこでどういうテーマを取り上げれば学術的な展開になるかというのを踏まえながら、かつ、社会的な課題に応えながらやっていくというようなことがイメージできるのではないかなと思うんですね。そういう点では、テーマを幾つか具体的に絞り込むという作業がいずれは必要ではないかなと感じております。

【城山主査】  ありがとうございました。前半の御議論は、最初の私の要約、適切じゃなかったかもしれませんが、二兎(にと)を追うということは、ポジティブな意味で、そういうあたりが前回の合意点でもあったし、恐らくきょうも、必ずしもそこのところを否定的な議論は今のところはないかなと思いますので、そこは共通理解として一応あるかなと思います。その上で、具体的にどういうテーマについてやったらいいというのが、今、少しずつ出つつある話で、そのあたり、もう少し今後議論を深めていければなと思います。

【川添委員】  いいですか。

【城山主査】  どうぞ、川添先生。

【川添委員】  今確認されたことなんだけど、僕はきょう少しだけ書いてお渡ししたものの趣旨は、もっと手前のところなんですね。盛山先生が、これまでの話の流れ、当然人文・社会学の学術として振興をすべしというのは前提だけど、それが本当にそうかという話をしなきゃ駄目じゃないかということなんですね。どうしてそんなこと前提にできるのか。僕なんかはほとんど死にかけた古臭い学問をやっているわけですけど、要らんと言われたときにどういう仕方でディフェンスするのかということはいつも問われているわけですね。私は西洋中世のラテン語を読むのが仕事なわけですけど。
 だから、前期の学術分科会からワーキンググループで、いわばある種の前提になっているようなことが本当に十分議論された上での結論なのかということですね。逆に言うと、ひがみかもしれないけど、いろんな形の人文・社会学と言われているものについては否定的な意見が強いということは自覚されているわけですね。それに対してどういう仕方で人文・社会学がやっぱり必要だということが言えるのか、あるいは言えないのか、言えるとすればどういう意味で言えるのかという、そのレベルの議論が十分尽くされていないで何か個別的なプロジェクトを立てるというのは僕は順番が逆だと。盛山さんがおっしゃるのは、実際にやってみないと、プレイしてパフォーマンスを見せないと駄目だという議論もわからないではないんですけど、もう少し手前のところで、それこそ、時間軸のこと、小林さんがおっしゃったけど、こんな議論をすることをもっと時間をかけてやらなくちゃ駄目で、その前に何かお金をとってくるために、嫌な言い方かもしれんけど、付け焼き刃的にこのテーマでやりましょうと、来月2回目と3回目で決めるなんていうのは適切なテーマなのか、あるいは、そのレベルでのプロジェクトをやろうとしているのか。僕は、その意味じゃ、これが何をやろうとしているプロジェクトなのかよく分かってないということだと思いますけど。

【盛山委員】  そもそも例えば人文学ってどういうものなのかとか、その本質をきわめるというのは当然探求すべき学術的な課題だとは思いますが、それはしかし、文科省の予算をえてプロジェクトとして遂行するようなテーマなのかというと、疑問ですね。私はむしろ、学術の独立性の観念からいって、そうした課題はここで検討しているような文科省のプロジェクトとは無関係に、と言うと変だけれども、でも本来的には独立に展開されるべき課題であると思います。無論文科省だけではなくて、近代以前だと、いろんな王侯貴族とかが学術の奨励とか振興を推進したということがあります。そこにはそれなりの一定の、プラグマティックな見通しというのがあったことは事実だと思いますね。だから、私としては、ある種プラグマティックな観点での支援を否定することはないと思う。ただ、それはもちろん学術全てをカバーするものじゃないですから、先生がおっしゃる観点は学術の観点からは当然あってしかるべきだとは思います。ただ、あえて、この場では少し枠をはめていただいた方がいいのではないかなと思う次第です。

【城山主査】  私が説明する立場かどうか分かりませんけれども、一応位置付けとしては、青い冊子の中にある一番後ろの報告書なるものがあり、これは去年、ワーキンググループにおいて人社をどうしましょうかというのを考えたものです。多分そこでは恐らく本来的に、今おっしゃったようなことを含めて、正に議論すべきところで、多少はしているのだと思います。その中で、プロジェクト研究に与えられている機能は全てではなくて、ある部分の機能がプロジェクトに期待されていて、それを具体化してくださいというのが一応このグループでのミッションだと思います。
 ただ、その上で、このプロジェクトですが、例えば黄色い付箋の後ですね、報告書と書いているところ、すぐあけていただいたところに、下の方から二つ目に未来社会を見据えた共創型のプロジェクトとあって、これも単に社会に役立つことをやりなさいとは言っていないのですね。つまり、単に例えば新しい技術があるから、入れるために法律、制度を変えるとか、ELSIを短期的にどうするかという話ではなくて、人文科学・社会科学固有の本質的・根源的な問いに基づくテーマを設定してやりなさいと。だから、そこでの貢献の仕方というのは、ここで言う本質的・根源的な問いに基づくテーマとは何かということが正に問われるわけで、何でもいいから社会のためにできるようなことをやればいいという話ではなくて、社会科学なり人文学が本質的・根源的に問えるようなものの形でプロジェクト設定ができるかということがここでも問われるので、そういうことのレベルに関しても恐らく、原理論的な、今おっしゃったような話も、このプロジェクトを作る段階でもそれは問われてしかるべきなのだろうと思うのですね。どういうプロジェクトを作るべきかというのは、単に目の前の社会課題を解きますという話に手を貸すという話ではないでしょうということは一応書かれているので、だとすると、どういう形があり得るかというところでは、今おっしゃっていただいたような問題意識を当然踏まえなきゃいけないものなのではないかなと思うのですね。

【川添委員】  いろんなレベルで議論ができるんだと思うんですけど、だから、僕自身、審議まとめのときにどういう議論がなされたか、その結果、文書は読めますから、読みましたけど、どういう背景というか、あるいは経緯の中でこういうことが結論的に出されてきたのかの経緯は知らないわけですけれども、だから、全く間違いというか、文脈から外れたことを申し上げているのかもしれないという恐れはもちろん私持っているわけですけど。しかし、僕が見るところ、僕の感じ、印象は、出てきた結論的な文章から受ける印象は、本当に議論をすべきところはきちんと議論しないまま文章化されてしまっていて、それに基づいて何かあやふやなプロジェクトが立ち上げられようとしているとしか見えない。何が目的で、何に向けたプロジェクトなのか。何に向けてやろうとしているものなのかということについての本当の合意があるのかどうかよく分からない。

【城山主査】  合意があるのかどうか分かりませんが、どういうプロジェクトを立てるかというところで、今の問題意識をインプットしていただくことは可能なわけですね、正にこのプロジェクトの趣旨とは何かということで。

【川添委員】  この場でそういうことを議論するんだったらいいけど、次回に決めるというような話ですかという話ですね、そうなると。

【城山主査】  そこは何とも言えないところがありますが。

【山本委員】  この場の議論で私も感じるのが、人文・社会系の学術の大きな姿勢なり根本的な問題というのが、その重要性が出ています。それに対して、一般社会とか産業社会の自然科学がリードする方のかなり多くの世の中の方の関心事に接している、私ですとか、何人かの先生たちからすると、なかなかとっつきにくい、分かりにくい。それは、私たちの委員のレベルで分かりにくいんですから、もっと一般の方は全然分からなくて、人文・社会科学の価値は何だろうねみたいになりがちなんだと思います。
 その意味で、委員の先生がおっしゃるように、このプロジェクトで大きなところにという気持ちは大事にしたいと思います。だけれども、大きな話をやるという枠組みは余りに大変なので、まず少しちょっとやってみませんかという気持ちがあってもいいのかなと思いました。このプロジェクトもそんなに大きな予算ではなさそうと伺っておりますし、ただ、人文・社会科学が入ってくるというか、一緒にやろう、新しい共創をするということってこんなことなんだというのを示せないかなと。今回、せっかくプロジェクトという形でやろうというんだったら、そこが示せないかと。示せれば、じゃあ、その次にもっと、そもそもの土台としての人文・社会科学系の学術ともうちょっと踏み込んだ議論ができるようになればいいんじゃないかなと感じました。

【城山主査】  皆さんの具体的に存在意義を示す例を1個作ってみましょうという、そういう話だと。

【山本委員】  小さく始めるのでいいんじゃないかなと。

【城山主査】  それが本質的な振興につながるかどうかは、まあ議論のあるところですが。

【山本委員】  その先、ずっと考えていきましょう。

【城山主査】  その後は、世の中の支持なり、いろんな状況次第だという、そういう話ですね。

【小林傳司委員】  私、最初にリフレクティブ・キャパシティ・オブ・ソサエティという言い方をしたんですけれども、これは言い方を変えると、オルタナティブを考える能力なんですね。須藤さんが非常に面白い例を出されて、よかれと思ってSociety5.0でまちづくりと考えていったら、そんなもの誰が喜ぶんだと言われて、どうせいというのだという話になりますよね。結局、理工系の人が中心になって大きな研究費を使ってSociety5.0というビジョンを掲げるという形でいく。オールジャパン体制でいこうとするときに、人文・社会科学は2つ役割があって、一つは、そういうところでのインプリメンテーションに人文・社会的な形で協力するというのがあるんですが、もう一つは、本当にそれだけでいいのということを考えておくという、社会の知的「ため」を残すというか、そういう機能もあるんですよね。それはオルタナティブを考えることになっていく。そういうオルタナティブを考えるという能力をどうやって確保するかというのは実は大事で、だから、今、すごく政策的課題だというところに全力集中をするというところのやり方と、それから、そうじゃないことを考える余地と、両方あっていいと思います。
 今、Society5.0とかSDGsがバズワーズになって、いろんな予算がどんどん投入されています。そこに上乗せするということをするのがいいのか、それとも、ちょっと引いて考えるというふうな観点。だから、まちづくりのところでいうと、もっと何となく人が住みつきたくなるような、汚さというかな、ややこしさみたいなものがないと、そんなに全部整然とされてしまったら人は寄りつかないよねという議論ですよね。情報系の議論でいつもそう思うのは、どんどん便利になりますよということで押すんだけれども、本当にそれを求めているのかという議論は誰が考えているんだろうというところですよね。
 だから、プルラリスティックな考え方といいますかね、違う考え方。みんなが一丸で走ろうとすると、それがかえって危ないかもしれないとか、違うことを考える部隊をちゃんと残しておくとか、それが将来にとっての安全装置にもなるわけで、そういう観点で、テーマの設定の仕方は、オルタナティブを考えるみたいなところから発想するというやり方はあるかもしれない。その上で具体的なテーマに落とし込むのは、山本さんがおっしゃるとおりで、何か具体性がないと研究できませんので。だけども、それは一丸となってこれに貢献するんだよという走り方とはちょっと違う走り方があってもいいんじゃないかと私は思います。

【城山主査】  最初に、窪田先生。

【窪田委員】  私自身はもともと理系の研究者なので、人文学、あるいは社会学の先生方が社会的課題というふうに言われたときにどう感じるのかが気になります。そもそも人文・社会の振興というこのプロジェクトにおいて、どれだけたくさんの人文・社会科学の人に積極的に関わってもらうかが、このプロジェクトを立てる側(がわ)に必要な視点なんですけれども、社会的課題と言ってしまった段階で、ある意味では非常にベーシックな人文学をやっている先生方がそもそも興味を持てないような回路を作る可能性があるんですね。だから、そこをどういうふうにするのか。その一つの代案が、非常に大きなというのか、根源的な問いを問いかけるというのがこのプロジェクトとしての仕掛けのはずなんですね。
 そういう意味では、先ほどから小林先生が言われているようなリフレクティブ・キャパシティを作るというふうな、そういう考え方、私は非常にいいなと思うんですが、そういうところをどういうふうに考えるのか。そういうところを常に持っていないと、このプロジェクト自体が、人文学・社会科学のある部分にしかフォーカスできないということになる。このプロジェクト自体がそういうふうにフォーカスするんだと言ってしまえばそうなんですけれども、そもそも広く人文学・社会科学の振興という原点に立ち返る必要があるというのが1つ。
 もう一つは、ただし一方で、これ、共創型、自然科学、とりわけ社会との共創を求めるというところは、普通に考えたら社会的課題に取り組むために社会との共創を図るというやり方をするということですよね。だから、その部分と、先ほどから言っているような根源的なところが本当にマッチする話なのかというと、やっぱり二面性を持っていて、そこをどうバランスをとるのか。そういう意味で、根源的なところをきちんと議論した上で、個別課題は、もっと積極的に広く社会と議論する機会を、テーマを出す個々の研究者が考えた方がいいような気がしています。ちょっとあやふやな言い方で申し訳ないです。
 いずれにしろ、このプロジェクトは、二面性を明らかに持っているわけです。常に根源的なところを一番問いかけていかないと、人文学・社会科学の振興にはにはつながらない。政策的課題や、現実にあるSDGsやSociety5.0というのは余りにも近過ぎる、短絡的という気がします。

【城山主査】  二面性があるけど、その辺のバランスは皆さんのニュアンスの違うところですね。目の前の社会課題に引きずられ過ぎない方がいいということでしょうか。

【窪田委員】  そうですね。

【城山主査】  やっぱり根源的な問い。

【窪田委員】  本質的なところがなければ、やっぱり……。

【城山主査】  そこも大事だということを強調されたい。

【窪田委員】  はい。そうでなければ、やはりJSTとか、申し訳ないですけど、JSTの似たようなプログラムの委員にもなっているんですけれども、そっちの方がやはりそういう意味では効率的に社会的な課題へのアプローチを求めているはずですし、このプロジェクトはそれとは違うところにあるんだと私自身は理解しています。

【城山主査】  では、喜連川先生。

【喜連川委員】  皆様の御議論をお伺いさせていただきながらちょっと感じたこととしましては、コンピューターというか、ITも、根源的な、非常にファンダメンタルなところをやる分野の先生もおられます。これはもう現実のコンピューターとほとんど関係のない世界です。ですけど、コンピューターのオリジンを考えますと、これはちょっと専門用語になりますけど、オートマトンから出てきていまして、その発想そのものはほぼ数学なんですね。一方で、現実の世界に適用するところも、非常に重要になっていくという意味でいいますと、やっぱりプロジェクトは一定程度ポートフォリオを組む。要するに、現世にもインパクトがある、しかし、理念も大切にするというのは、ほぼ全てのプロジェクトで僕はそうなっているんじゃないのかなという気が個人的にはします。
 小林先生のおっしゃったリフレクティブ・キャパシティというのは、我々は非常に強く今感じていまして、例えばグローバルに見ると、今、何がたたかれているかというと、海洋プラスチックなわけですね。人間にとってよかれと思ってずっとやってこられたことが、人生の終局において、これだけ世界から非難を受けるというのは、余りにもかわいそう。それを繰り返さないようにどうすればいいのかということが問題になっています。
 ITも本当にそうで、僕が最近言っているのは、ITは海洋プラスチックよりもっと悪いんじゃないのかと。我々はそれをどうやって回避すべきかを真剣に考えるべきじゃないかなということを言っています。
 ただ、かといって、方法論は、すいません、小林先生が人文・社会の中ではなかなか自分たちでとおっしゃったけど、我々もどうやっていいのか、本当によく分からないんですけれども、少なくともそういうことを考える時代になったということだけは絶対正しくて、何か一つの方向にエクストリームにぐっとシフトするということはほぼ不可能な社会になった中でいろいろ考えたいと思っています。
 その中で、例えば、100年先というお話があったと思うんですけれども、私はこれはちょっとどうかなというふうな気持ちがあります。なぜならば、コンピューターが生まれてから100年たっていないんです。ということは、全然違う学問がまた出てくるかもしれない。そこまでエクストラボレートして我々が考えられるかというと、それは不可能なので、もうちょっと手前のところで物事は考えざるをえない。理想的な解を見いだすことはほぼ不可能なので、これは小林先生の中庸をとるといいますか、そういう日本人の得意技があるとおっしゃるのであれば、やっぱり高まいなものと一定程度現世の何かを解決できるんだというプレゼンスと、そうしか言いようがないんじゃないのかなというのが個人的な印象で、すいません、皆様の御議論をお伺いしながらそんなふうに感じました。

【城山主査】  何年ぐらいがいいとか、ありますか。

【喜連川委員】  この前、JSPSがやった面白いパネル討論会がありまして、人工知能はノーベル賞をとれるかというのを、ノーベル受賞者を5人ぐらいかな、前に置いて、どない思いまっかというのをやったんです。彼らはそんなものはとれると言いたくないですよね。だから、50年たっても無理だというような言い方をしましたけれども、そのくらいのところが射程範囲になるのかもしれない。つまり、10年、20年ってちょっと距離が短いので、30年から50年ぐらいというのは、どうでしょうか。一つの人類の加速係数からいいますと。ITというのはめちゃめちゃ速いんですよね。一言でいいますと、30年間で大体100万倍速くなっています。これ以上速く進歩したような技術って多分歴史上ないんですね。だから、それを前提としますと、例えば30年。

【城山主査】  結構そのあたりも大事な話かなと思います。あと、我々、結構理系とか言ってしまいますが、理系の中にいろんな人たちがいるというのは大事なことで、そういう根源的な問題を考えられている人たちと人文・社会で考えている人たちがうまく議論できたりすると面白いわけなので、その辺の編集能力というのがこういう枠組みとしてはすごく問われるのかなと思います。そういうのをどうやったらいいのかというのは是非皆さんからお知恵を頂きたいところかなと思います。
 できれば、今回まだ若いお二人しゃべってないので、感想も含めて言っていただければ。ちょっと伺いたいなと思うのですが。

【岸村委員】  なかなか難しい内容ではあったんですが、今、何年先を見るかという議論で、私、化学の研究者なので、日本化学会というところに所属しているんですけれども、10年ぐらい前ですかね、これから30年で自分が研究している分野がどう伸びて、どういう夢につながるか、どのように社会に役に立つか、などというのを書いて、若手も比較的多くのページを書いていたと思うんですけれども、それをまとめて冊子にして世に出したことがあります。それは学会の事業だったのですが(注:「30年後の化学の夢ロードマップ」(2012年、公益社団法人日本化学会・発行))、そういうのがありますので、二、三十年後はある程度研究やっている人だったら見通せるし、何か言える面はあるのかなと思いました。

【新福委員】  私は医学系の研究者なので、どうしても30年後というと、少子高齢化で、2030年を迎えて、その境から人がたくさん亡くなっていって人口減少社会になっていくというところを見るため、実学の研究者である立場から言えば、そういった政策的な課題というものを設定していただいて、それを学際的に一緒に解いていくというのがイメージしやすい考え方です。
 ただ、今回、若手アカデミーより出された資料の中に含まれているのですが、人文・社会学の同じ若い世代の研究者から聞いたところ、やはり「自分たちで考えたい。草の根で自分たちの発想を生かしてほしい」というような意見がどうしても二人から出ていた。というのは、やはり人文学・社会学系の研究者としては、自分が持っている問い、そういった大事にしているものを、誰かから言われるのではなくて、自分に内在するものを解いていきたいということがあるように理解しました。そのため、このプロジェクトの中で、2種類立てることはできないのかと思っていて、ある程度政策寄りに、近しい未来を見据えて解いていく課題と、もう一つ、根本的なものを解いていくような、2種類、大きなテーマの中にテーマA、テーマBというように幾つか立てるという構造で、資料にもそのようにプロセスが書かれているので、種類を分けるというのはどうかなというのは考えていました。

【城山主査】  ありがとうございました。大きな社会の課題、社会というのか、もうちょっと言い方変えた方がいいのかもしれませんが、社会の課題に取り組むことと本質的・根源的な問いに立ち向かうというのと、その二つがある意味では両立することが期待されているわけですが、当然これらの重みづけはいろんなバリエーションもあるし、ポートフォリオという話もありましたけれども、そこはいろんな形で考えていくのだろうなと思います。恐らくテーマによっても重み付けは違うでしょうし、テーマの中で、今、新福委員が言われたように、異なったプロジェクトがあるということは当然あるのだろうと。ただ、自分の問いだけを重視したいということで言われちゃうと、それは科研でやってくださいと言われるおそれもありますが、そういうことをベースにしなきゃできないことは当然あると思うので、そういうものが拾えるような構造を作っていくというあたりは最低限の共通項としてはあるのかなという気がしますので、できればもう少し、そういうのをベースにどういうテーマでやっていったらいいのか。既にきょう御出席いただいた何人かの方も紙にも書いていただいていますけれども、そのレベルの議論を少しできればと思いますが。では、盛山先生。

【盛山委員】  テーマの設定の仕方についてですが、第一に、テーマは基本的には複数個用意した方がいい。というのは、人文学・社会科学にはいろんな分野があって、漠然としたテーマにしてしまうと、どんな分野でも入れますが、それはかえって何をやったらいいか、何が学術の発展になるかというのが分からないようなテーマ設定になってしまう可能性がある。それはボトムアップとほとんど変わらないような形になってくる。それは多分よくない思います。ある程度絞り込んだ方がいい。でも、一つだけだと、たくさんの分野の人たちが参加するのが難しいという問題があるので、その点からいったら、複数個用意して、いろんな関心を持っている各分野の人が参加できる。枠組みとしては私はまずそういうことを考えていただきたい。
 それから、中身の話ですけれども、先ほどから幾つか出ている話、例えば根源的なものとか、小林傳司先生がおっしゃったリフレクティブな側面だとか、それから、学術的な観点とか。そうした諸側面については、基本的にテーマ設定を工夫することによって、つまり、本来的にそういうものがテーマを遂行する中では期待されているんだということが分かるような形でテーマ設定を考える。当然、そこでは人文学や社会科学が理論的に本質的に問うている問いなどがいっぱい入りうるわけです。そういうことへの探求がそのテーマを遂行する中では当然関わらざるを得ない、あるいは関わることが期待されるようなテーマ。かつ、リフレクティブな人文学や社会科学という特性が生かされるようなテーマ。そういう工夫を、テーマを具体的に考えることを通じて、というよりも、そういう条件というかそういう性能を持ったテーマをこの委員会の中で考えていただく。そうすると、今おっしゃったいろんな観点がうまく盛り込まれる可能性があるかなと思います。
 ただ、難しいのは、何年先かというか、どのぐらいで成果が出るかというのは、これは難しい問題だと思います。5年計画くらいで本当にちゃんとした答えが出るような研究ができるかというと、私は多くの場合、人文学・社会科学の場合、5年で答えが出るなんていうことは期待しない方がいいと思っています。ただ、このプロジェクトがシーズとなって、日本の人文学・社会科学の先生方が、更に長期的に、予算が来るかどうか分からないけれども、個人研究でもいいので、このプロジェクトが設定するようなテーマの研究を遂行するという動きを支える。そういう、種をまいていくという観点もあってもいいかなと思っています。

【城山主査】  多分大枠の話で、複数個立てた方がいいのじゃないかということと、リフレクティブみたいな問いの性格はあらゆるところにいろんな形で埋め込まれるということを期待するということかなと思います。
 いかがでしょうか。では、窪田先生。

【窪田委員】  幾つか大枠のテーマ、ある程度幾つか幅広にテーマを考えるというのはいいと思うんですけれども、私も100年と言われると、理系からしても100年ってちょっと難しい。そういう意味では、情報学でGAFAが出てくるなんていうのは30年前に誰が考えていたかって、そんなこと誰も考えていないわけで、そういう意味で、100年後の社会的な状況を考えるのは難しいのだと思います。一方で、普通に考えたら今の人口統計が今後どうなっていくか、一番そういう意味で確からしい予測なんですよ。気候なんかの予測よりもはるかに正しい予測で、そこはきちんと踏まえたいなというところが一つあります。
 それは都市の問題でもあったり、地域の問題でもあったり、いろんな側面があったりしますし、国際関係でもありますので、それが基本にある必要があるのかなと思います。小長谷先生の提案もそのあたりを言っておられるのだろうと思います。

【城山主査】  何年とは言えないけど、人口動態みたいな話をかなり長期的に考えた上での議論をしてみるということは必要だと。

【窪田委員】  はい。社会的な予測も、それからテクノロジーの予測もなかなか難しいのですけれども、そういう意味で人口予測は、30年後にかなり確実なものだと思うんですよ。だから、そこに関わって……。

【城山主査】  それに関わって、人間の在り方、社会の在り方がどう変わるかみたいな問題の立て方というのはあるのではないかということですね。

【窪田委員】  はい。そういう意味では、未来と言うときに、バラ色の未来ということでは必ずしもないという、そういう意味合いですけれども。

【小林傳司委員】  時間軸は、確かに窪田さんがおっしゃるとおりで、かたいデータは人口統計データだと思います。
 それと、多分、人文・社会科学の未来を語るというのは、別に未来の予想をしようというわけではなくて、未来にあらま欲しいことを考えるという側面が当然あるだろうと思うので。ただ、それは現実的条件との組合せでしか考えられないのは当然なんですけれども。Society5.0というのはどうやって生まれてきたのか、私よく知らないんですけれども、今、至るところで、政策文書にも出ていますし、それをやるんだと。Society5.0の実現年次って大体いつ頃を設定しているんでしたっけ。

【須藤委員】  最初は2030年頃。

【小林傳司委員】  2030年ぐらいですね。

【須藤委員】  スタートしたときはそうです。

【小林傳司委員】  それを作るときに、人文・社会科学の人がどのぐらいコミットしたか、私は知らないんですけれども、だったら、Society6.0考えたらどうかと。5.0の先。

【城山主査】  それは、さっきのストーリーでいうと、30年から50年ぐらいのタイムレンジということですね、逆に言うとね。

【小林傳司委員】  そして、それがどういう延長線上になるかに関しては、幾つかのパスというか、幾つかのビジョンが作られるべきであって、それは皆さんどう選びますかというふうな問いかけをするようなやり方というのはあるかもしれません。それが実際に政策になるかどうかはまた別問題だけれども、人文・社会科学が持っている想像力とか構想力を発揮するための仕掛けとしてSociety6.0を考えてみませんかというやり方はあるかもしれない。その中ではとんでもない未来を考える人もいるのかもしれませんが、それぐらいの幅を持った思考実験をするというのは日本社会にとっては悪いことではないんじゃないかと思います。

【城山主査】  いかがでしょうか。
 あと、出していただいた盛山先生と小林傳司先生と小林良彰先生のテーマのある種の共通項は、分断みたいな話で、社会の分断みたいなものをどう考えるかというのは、期せずしてかなり共通のテーマとしてあって、これは何らかの重要なテーマなのかなという感じがしましたけど。いかがでしょうか。

【川添委員】  やっぱり僕の言っていることは間違いだということがだんだんよく分かってきたんですけれども、僕が言っているテーマで根源的なところという言い方でどうも理解されていることと具体的な政策課題との、その対比は僕の中で全然重要じゃないんですね。もっとメタレベルで人文・社会科学というのはどうあるべきかということを個別課題とは別に反省した方がいいという話を僕は提案したんですね。それを一応、もちろんそれも途中のもので、最終的な結論みたいなものはあるわけではないと思いますけれども、その上で、もちろんそういう反省をしながらも、片一方でもちろん現実の課題にどのように人文・社会科学と言われている学問が関わるかということは、その次の問題ではもちろんなるべきだし、一定の解決に貢献できれば、それを目指すべきだと思うけど、どうもフェーズとして、つまり、山本さんがおっしゃるように、とにかく何かパフォーマンスして見せた方がいいんだというのは分からんじゃないけど、本当にそうかなということですね。もうちょっと手前の議論がまだ不十分じゃないかという感じがするんですね。そのことと関連するし、さっきのボトムアップとかという問題とも絡みますけど、ここで議論して、次回のとき、テーマを三つぐらい決めたとしますね。その後どうするんですか。どういうプロジェクトになるんですか。僕、そこのイメージも全然持てていないです。決めてどうするんですか。

【城山主査】  多分それも含めて、きょうの後の方の時間と次回議論しなきゃいけないのですが。

【川添委員】  だから、そこのある程度の見通しを持たないと、プロジェクトという一種のスキームを作るということだから、そのスキームの中でここでやる議論は何を決めようとしているのかということの位置付けをあらかじめ見通しておかないとテーマの中身が決まらないんじゃないかという気もするんですけど。

【城山主査】  だから、最終的には多分そこを両方見据えて次回議論するんだと思うんですけど。
 あと、前半で言われたことを言うと、メタの話をなかなか直接こういうところのプロジェクトで扱うのは難しいのかなという感じもするのですが、他方、今まで出てきたものでいうと、例えば、他方、最初、小林先生が言われたような日本における学問の在り方みたいな、ああいう話というのはプロジェクトとしてもあり得るかなという感じもするんですね。それが若干逆に間接的過ぎるという議論はあるのかもしれませんが、そのレベルの議論というのは、頂いた議論の中にもほかの方のところにも、たしか若手の方のところにもたしかあったと思うのですけど。

【川添委員】  もちろん具体的に人文・社会学といっても、差し当たり考えるのは、日本でやられている人間の業としての人文・社会学でしょうね。ですから、当然日本の問題ということが必然的に絡むと思いますけど。ただ、同時に、ほかの世界の地域ではどうかということにもちろんなりますね。

【城山主査】  それも考えるということになりますね。

【川添委員】  やっぱり間違いだと思うんですけど。だから、そんなこと言っても、今の議論のフェーズでは、そこまで立ち戻るということは多分許されないんでしょうね。

【城山主査】  日本における学問なりの、あるいは秩序作りの在り方みたいなところの中にそういうことが入ってくるということはあり得ると思いますが、そういう捉え方がいいのかどうかというのは、わかりませんが。

【川添委員】  それはどういう形であれ、プロジェクトが予算化されてきた。やっぱり最終的な評価をどうするかというときに、こういう項目が実現したかというアイテムの中に、人文・社会科学というものについての一層深まった理解が得られたとか、そういうことが含まれるのかどうか。もっと具体的な社会にこういう貢献をしたというのが評価の基準になるのか。つまり、何を基準にしてこのプロジェクトが成功したのか、失敗したのかというときに、つまり、それはターゲットの設定の仕方なので、何をターゲットにするか、それがどこまで実現したかで評価されるわけですよね、非常に抽象的に言うと。
 そのときに、今僕が言ったような意味での、つまり、人文・社会科学そのものの在り方についてのある種の新しい提言なり、あるいは方法論なりというものについて、何か新しいものが出せたと、出すべしと、それについて一定程度実現したというような評価になるのかどうなのかですね。
 だから、ここで、きょうのまとめでいうと、そういう環境を設定する、共創の場を設定すると言われているんですけれども、共創の場を設定するというのは、共に創る場ですね、共創。問題になっているのは、作られたプロダクトの方が問題なのか、作るプロセスとしての新しい研究環境を作ったという、その意味でのプロダクトが評価されるのか、そこはちょっとあやふやなんだろうと思いますね。
 同じことばかり言っていますけれども、結局、このプロジェクト、そもそも何をしたくてやっているのかということが僕には腑(ふ)に落ちていないですね。人文・社会科学がテーマであるというのは分かるけど、人文・社会科学についてどうしたいんですか。人文・社会科学が本当に役に立ちますよということを声高に言いたいプロジェクトなんですか。そういう意味で振興させたいんですか。

【盛山委員】  前の本委員会の分科会で携わった先生方にもちろん御意見あるんでしょうけれども、今川添先生がおっしゃったようなこと、つまり川添先生が追求したいとされること、あるいは人文学や社会科学が直面している問題、そういうこと自体を人文学・社会科学の研究者のレベルで探求することを刺激する。このプロジェクトではそういうことが重要なんだと思います。それが日本における人文学・社会科学の振興にとって、発展にとって重要なんだということを、このプロジェクトが振興する。この中で、研究者がそういう問題に取り組んでいくという環境を作る。ただそれがどこまで成果が出るかというのは、最初から分かるとは私は思えないです。そういう意味では、もちろん成果を出したいんだけども、やってみないと分からないようなプロジェクトだと考えてもいいと思うんです。ただし、その場合、今の人文学や社会科学、それと社会そのものが抱えている課題、そういうのに取り組むということが重要であって、それは人文学や社会科学がある意味では現状を打ち破ってどこかで展開しなきゃいけないような課題でもある。このプロジェクトはそういうことを刺激することを作っていく場だというふうに私は漠然と考えている。

【川添委員】  確認でいいですか。つまり、今盛山さんがおっしゃったことは、結局、このプロジェクトというのは、現状の人文・社会学はこのままではだめでという認定がまずあって。そちらのは逃げない方がいいと思いますけど。そういう意見はあり得ると思いますから。片一方で、人文・社会学がどうあろうと、あるいは、学問、アカデミアそのものがどうであろうと、社会が解決すべき課題というのは社会が抱えている。これが厳然としてある。ほかの人文・社会科学以外のアカデミアの世界も、その社会的な課題に何とか切り結んで、それを何とかしたいと思っている。ところが、人文・社会学はそうでない面が強過ぎる。だから、現にある課題に人文・社会科学がどういう形で貢献できるかをやってみましょうと。そういう理解でいいですか。

【城山主査】  やってみましょうというのはあるプロセスですよね。

【盛山委員】  個人の考えと全体の考えとはやっぱり違うと思うので。

【川添委員】  盛山さんのお考えはね。

【盛山委員】  個人の考えでいうと、人文学・社会科学というのは本来的に社会の課題に取り組むことによって学問としての務めを果たすと思っています。

【川添委員】  だから、そういう意味じゃ、世の中で言われているような批判は実は批判になっていないということですね。批判になっていませんということを示すために、しかし、示し方が足らないので、このプロジェクトを立ち上げて、きちんと示しましょうということですか。

【岸村委員】  ちょっと一つよろしいですか。先ほど、私、化学なので、化学会の例を少し話させていただきましたけれども、二、三十年後を見通した冊子を作った一つの理由としては、化学は学問としては終わったんじゃないかという言われ方をしたことがあったからです。我々が今課題として考えていることをこう解決すると、この先、様々な楽しいこととか良い社会がある、ということは、学者の側(がわ)から発信していかないと、やはり誰にも分かってもらえないという危機感があったのだと思います。それもあって、学術コミュニティとしてそういう冊子を作って発信したというのがあります。このプロジェクトの目的はそれではないとは思いますが、人文・社会のコミュニティ自体がそういう内容を継続して発信していったり可視化していったりするのは必要な努力で、それはまた別の場所で議論していただいた上で、どんどん発信してもらえば良いと思います。ここでは、そういう内容の中で、一般の国民、社会の方々に理解できるような成果としてこういうものがあって、それをもとに人文系の研究に対する認識を変えていくというようなことが狙いだとすれば、山本委員がおっしゃったような形で、まず何かアドバルーンが上がった上でどんどんプロジェクトが広がっていくという形のものを進めていくのが良いのではないかと思います。

【山本委員】  新聞記事を書いている立場で思うのは、どんなに優れた研究成果ですとか、新しいアイデアですとか、優れたものでも、うまく伝えられないと、価値があるんだか、ないんだか、意味があるんだか、ないんだかまで含めて、うまく伝わらないという意味で、今持っている人文・社会科学の本当の実力なり、何が大切なのかとか、現実的なところでの貢献もあるだろうし、そうじゃなくて、もっと根源的なものもあるしということを全部ひっくるめて、やっぱり一般社会には多分分からない状態なので、いろいろな面を分かってもらうものとしてこのプロジェクトがひとつ役に立てばいいなというような気持ちは私としては持っています。

【城山主査】  社会に伝えるというのは確かに一つだけども、そういう活動をやるということが人文・社会がメタにどういう意味を持つかということを問い直す機会になるという側面があることを否定できないですよね。

【川添委員】  だから、そのことは、このメンバーの中では当然合意されているということでいいですね。

【城山主査】  そういう両方の側面を持っているということかと思います。

【川添委員】  先ほどの問いにかえると、ここのメンバーが、直ちにこの後予算が付いたら予算を実際に使う立場じゃないとすると、どういう人々が、どういう組織の中で、ここで議論したようなことを念頭に置きながらプロジェクトを進めていくことになるのか、そのスキーム全体がどうなっているのかよく分からないで、どのレベルでこの話をすればいいのかと。

【城山主査】  逆に言うと、そういう目的を達成するためにはどういうスキームを作らなきゃいけないのかということを、1回半で議論できるかという問題はあるんですが、再三指摘されているように、それでスキームと評価基準をちゃんと作っておかなきゃいけないわけです。再々これはいろんな観点から出てきているように。そうしないと通常のプロジェクトと同じ評価をされては困ると思うので、そのメッセージはここのグループとして明確に出しておきたいと思います。

【川添委員】  そんなに事を急がなくちゃなりませんか。

【城山主査】  そこは私が答えるべき話ではないと思いますが、次の予算のサイクルに載っけようと思ったら、8月末までに出さなきゃいけませんねということかと思います。ただ、実際に詰めていくのはその後の作業ですし、恐らくこのプログラム自身、後で御紹介あると思いますけれども、初年度はかなり中を詰めるような話を続けることになると思います。

【川添委員】  詰めないで財務省、金を出しますか。

【城山主査】  それはやってみての話でしょうね。それは期待する話であって、我々がそこまで気にすべき話ではないというところはあると思いますけれども。
 かなり幅はあると思いますが、両方を見ているのだと。両方の片方が何かというところの若干ずれはあるようですが、そういうところを狙っているというところと、ある程度ポートフォリオというところはある程度共有化できたとして、個別の案のところでどうでしょうか。もう少し皆さんからございますかね。四つぐらいで考えると。あるいは、2050年なり60年の社会なり、Society6.0という話だったり、あるいは、分断という話だったり、あるいは、都市というフィールドで考えてみるだとか、あとは、教育という話ありましたけれども、あとは、少しメタに近い話として日本における学問だとか、ある種の秩序作りの在り方みたいな話ですね。このあたりが今幾つか出てきた話だと思いますけれども、それに対する御意見なり、こういうことを足していただきたい。

【盛山委員】  ちょっとそこが気になるのだけれども、それって、8月までにテーマを決めてしまわないとまずいんですか。

【城山主査】  決め切る必要はないと思いますが、こういうようなことを考えますという例示は多分必要だと。

【藤川学術企画室長補佐】  完全にテーマを決めてしまうというよりも、こういうようなイメージが幾つかあるという形じゃないかと思っています。

【城山主査】  今の話でいうと、複数領域というのがかなり共通理解だとすると、じゃあ、複数が、同じタイプのものが複数だとも限らないので、例えばこういうものというのが幾つか並んでいますと。そういう意味でいうと、きょうも比較的バラエティーがあると思うので、これを今回、次回で少し詰めていくということかなと思います。

【盛山委員】  そういう点でしたら、本来的にはある意味で無数に可能なテーマというのがあり得るので、ここで無数に出すわけにはいきませんが、やはりたくさんいろいろとアイデアを出されるのがまずは基本的に必要じゃないかなと思います。その上で、それを最終的には文科省の方で、これは使えるというものを考えればいい。無論、最終的に実際に研究者を動員する段階では、もっと丁寧に考えなければいけないのですけれども、それだけの時間が今はないでしょう。それは、来年度以降の課題になると思うので。

【城山主査】  そういう意味でいうと、多分プロセスとしては、きょう御議論いただいたのをメモか何かの形でまとめさせていただいて、それを次回に向けて皆さんにもう1回投げて、こういうものがあるかとかいうのは少しいろいろ意見を頂いて、それをベースに次回議論するというぐらいかなと思いますね。

【前田学術企画室長】  今、盛山先生からお話がございましたけれども、テーマについては、飽くまで例示ということでよろしいかと思いますが、そのテーマが生まれに至る考え方、すなわち、こういう考え方に基づくとこういうことが適当ではないかという、その考え方については、一つ、原則と申しますか、そういったものは核としたものを頂きたいと。例えば今御議論いただいていたようなリフレクティブ・キャパシティでございますとか、あと、根源的な問いの探求に当たって期待されるテーマとか、そういう具体のテーマに至るまでの考え方については、ある程度頂ければ、我々としてもいろんなところにも説明しやすいなと思っております。

【城山主査】  その上で、あと20分ぐらいなので、主として次回議論するわけですが、その支援体制とか実施体制をどうするかということを御意見いただければと思います。今ある資料の2でいうと、2ページ目、研究テーマの設定は大きなテーマはある程度ここで固めて、ボトムアップで研究提案を受けて実施するような体制を作ります。ここは多分合意できているのだと思いますが、その上で、3ポツのどういうプロジェクト運営体制にするのかですね。これは若干この文章だけだと分かりにくいのですが、この青い表紙の黄色の付箋でいうと、付箋の付いた裏側のところですね、共創プロセスと書いているのがあって、これが事務局で考えていただいたときのベースなわけですね。この人文・社会科学特別委員会というのも、テーマを決めて、それで終わるのかというと、この絵では終わらないことになっていて、進捗報告と指導・助言をしなければいけないということになっています。それはいいかどうかも含めて、そういうことがありますし、それをプロジェクト運営組織というのが全体を統括するのがあって、大きなテーマごとに、テーマの代表がいて、その下でプロジェクトが募集されると。こういうイメージで、かつ、全体のマネジメントを誰がやるのかという一番大きな話で、前の委員会のときに、今まではこの種のものは学振がやってきたのだけれども、違うやり方も考えてはどうですかという話があり、そうすると、学振がやるという選択肢と文科省が直営でやるという選択肢と、それはなかなか難しいかもしれませんが、あるいは、全体のマネージも含めて、どこか研究機関等に投げるというスキームが潜在的にあるというのがこの図の意味することだと思います。
 そういう意味で、今少し議論しつつあるようなプロジェクトをやっていく上での実施体制としてどういう形が望ましいのかというあたりについて少し御意見を頂ければと思いますが、いかがでしょうか。

【小林傳司委員】  1点だけ確認ですが、これ、ファンディングとして行うときは、受託研究ですか、それとも補助金ですか、どっちですか。

【藤川学術企画室長補佐】  事業の目的によると思うんですけれども、補助金なり委託費のどちらかになると。

【小林傳司委員】  まだ決まっていないんですか。

【藤川学術企画室長補佐】  そこは事業の目的とか、そういうところも踏まえてということになると思います。

【川添委員】  先ほど言いかけたことと関係するんですけど、そうすると、イメージですよ、補助金であれ、何であれ、実際に具体的にかなり細かく、つまり、ボトムアップで自分の関心ともつながる形で大きなテーマに沿う形の研究テーマを募集して、その研究グループが研究をすることにお金が実際上は出る。

【城山主査】  そういうことですね。

【川添委員】  そうすると、このプロジェクトがトップダウンの意味付けを持つのは、テーマをどう設定するかというところだけですね。

【城山主査】  それと、構成メンバー等によって条件を付けるか、あと、アウトプットの評価基準ですね。


【川添委員】  そうすると、テーマを決めて、どういう評価基準で、何を求めるか。やっぱりここが議論するんですか。それとも、ここのいうところのプロジェクト運営委員会がそれをやるんですか。

【城山主査】  大枠はここで議論するのだと思います。

【川添委員】  ここでどのレベルで議論すべきなのかということについてですね。非常にもっと抽象的なレベルで、この図で言えばプロジェクト運営組織のメンバーにものを考えてくれと。大きなテーマはこれだけだけど、具体的にこういう条件を付けるような募集をやってくれとか、評価をやってくれとかという、具体的なところは別の組織に頼むのか、ここで全部やってしまうのか。

【城山主査】  どのレベルで投げるかというのはいろんなバリエーションがあるでしょうけれども、全部決め切ることは恐らくここでは無理ですよね。

【川添委員】  まあ、詳細の程度においてはですね。

【城山主査】  だけど、この趣旨からいうと、ここだけはちゃんと押さえてくださいよというのはここで決めないといけないことだと思います。

【川添委員】  しかし、何にしても一遍決めると、あとは個別の研究がやられているというのがプロジェクトの実態ですね。最終評価だけ、あと残されて。

【城山主査】  ただ、それかいいのかどうかというのは、ここでも進捗報告と指導・助言と書いてあるのと、あと、例えば、いろんな領域ごとにテーマ設定しているときでも、文系だと余りないですけれども、それこそ理系の場合だと、頻繁に合宿をやったりだとか、マルチメンターみたいなのを付けたりだとか、そこで手をかけるという手もあり得て、そういうことを人文・社会系でもやるんですか、どうですかというのは選択肢になってくると思いますね。

【川添委員】  だから、そのことが結局、共創ということを具体的にどういう、具体的な在り方の特色として組織上の制約にするかという、そういうことはここで決めなきゃ駄目ですよね。

【城山主査】  考え方は明らかにそうだと思います。

【盛山委員】  実際、そういう大枠を決めるのはこの委員会というか、これと同じレベルになると思います。その次に、例えば審査とかが入ってくるわけで、そういうことは下部の下位組織やレベルを設定する必要が出てくると思うんですね。学振の科研費の例でいうと、制度設計については、最終的には文科省ですが、学振の中の学術システム研究センターでいろいろ考えているんですけれども、審査するのは審査員の先生方にお願いしているという形があります。そういう2段構えというのが最小限必要だろうなという印象があります。
 それから、そのときにもう一つ、今回のプロジェクトに関しては、純粋なボトムアップではないという点からいって、かつ、いろんな理念というか、期待みたいなのがあるという点からですと、ただ単にボトムアップで出てきたものを、外在的に評価し、成果が達成できてないとかいろいろ問題だとかと批判的にいうだけではなくて、どこかで、アドバイスするというか、こういうふうにやってみたらみたいな言葉で介入することも考えてもいいのではないかなと私は考えている。ただ、それをどういうふうに埋め込むかというのは難しい。研究の独自性というものとそういうややトップダウン的な期待というのどはどういうふうにすればうまくできるか。なかなかこれまでやったことないから分かりにくいですけどね。

【城山主査】  多分その辺の仕掛けが大事な点で、これは前に私からも申しましたし、あと、小長谷先生も関わったので、お話しされましたけれども、最初、2003年の人社プロジェクトをやったときには、大きなテーマを設定するのですが、具体的なテーマ案は研究者にいろいろ出していただき、それを1回議論した上で、フィードバックして、あるいは研究グループで議論した上で、再度提案させるという、フィードバックというのをやりました。
 あと、さっき申し上げたのでいうと、私はJSTのさきがけのアドバイザーに関わったんですけど、そこでは、領域の責任者はいるのだけれども、更にアドバイザーという、下手すると無責任にもなりかねないのだけど、いろんな観点からものを言うメンターがいて、そういう場で定期的に半年に一度ぐらい議論して、アドバイスするような仕掛けがあるわけですよね。それは、アドバイザーがアドバイスすると同時に、関係する研究グループメンバー相互が議論することが研究の発展に意味があるので、そういう仕掛けを埋め込むというのも選択肢としてはあり得て、じゃあ、今回のような趣旨でいうとどういう形がいいのかというあたりのアイデアを少し考えていただくといいのかなと思います。
 いかがでしょうか。じゃあ、窪田先生。

【窪田委員】  この委員会がどこまで関わるのかという話もあるんですけれども、今の話からすると、プロジェクト運営組織のところで、単にそこが一旦お金を受けて、各プロジェクトにばらまいているだけということではなくて、そこのレベルでどんなことをやって本当にうまくいっているのかどうか、さらにはグループ間の議論ができる場をきちんと作るというふうな話のイメージだと思っていいですか。

【城山主査】  だと思います。恐らくそのときに、ここに運営支援組織と書いていますが、そういうサポートスタッフみたいなものを付けようと思うと、今までだと学振でやっていたのだけど、学振だとそういうのを付けるのはなかなか難しいという現実的条件もあり、そういうものはどこかにお願いできるのですかという話と、あるいは、それこそ予算立てするときに、そういうところも含めてちゃんと予算申請をしていただくということなんだと思います。

【窪田委員】  それはよく分かるんですけど、結局、運営組織のところも、単にそこの組織が全部運営をするわけではなくて、やっぱりしかるべき委員会なり何なりを持って、アドバイザーと組んでやると言うことになる。そのときに、評価も含めてやるというふうに考えると、そこにもう少しこの委員会が積極的に絡んだ方がいいんじゃないかと思っています。

【城山主査】  だから、そこは、この絵でいうと、ここの特別委員会とプロジェクト運営組織の間のやりとりを書いたのだけれども、それをどういう形でするのかとかいうこととも絡んでくるのだと思うのですね。

【窪田委員】  この特別委員会が研究に指導・助言をしようと思ったら、それは何らかプロジェクトに対する評価とか、そういう形で関わらない限りは、進捗管理や指導・助言というのは現実的にはできないような気がします。

【城山主査】  下手すると、これ、三重構造になっちゃうので、特別委員会があって、運営組織があって、テーマ代表がいてね、そうすると、個々のプロジェクト、上三つ見て動くなんていうのは余り生産的でもないですね。

【窪田委員】  余り複雑な組織を作ることも望ましくない。この委員会としての議論がうまくプロジェクトに伝わる。逆に、プロジェクトのやっているところがこっちにも伝わってくるような、シンプルだけれども、そういう生産的な仕組みを作らないと。

【城山主査】  ある意味ではこの二つがかなり一体化できるような仕掛けを考えられるかということだろうとも思うのですね。

【窪田委員】  直感的にはそうだと思います。

【川添委員】  いいですか。何度もすいません。結局、どういう組織を作るかというのは、どういう目的のために一番ふさわしい組織を作るかという考えなので、やっぱり目的、このプロジェクト、つまり、個々の研究活動じゃなくて、それを含んだ全体のスキームをプロジェクトと呼ぶのならば、それが何を目的にしているのか、それを実現するのにどういう組織がいいかと考えるべきですね。
 そのときに、戻りますけど、結局、個々の研究成果、例えば何でもいいですけど、都市の問題でも何でも、ある特定の課題についての研究を実際の研究者はやっていて、その成果が出ますね。それはもちろんそれですばらしいことでしょうけど、しかし、このプロジェクト全体としては、人文・社会科学というものの振興が目的なんでしょう。そうすると、盛山さんがおっしゃるように、ある方向付けでこれまででは駄目で、これまでの研究のスタイルとか方向性とかでは駄目で、こうじゃなくてこうしなさいということを最初だけ言うことで済むか、それともプロジェクトとしては、ずっとそういういわば新しい人文・社会科学の研究の在り方にコミットして、それを育てていくかみたいな、そういう……。

【城山主査】  そこは正にある意味ではある程度後者であらざるを得なくて、そのときのキーワードは、これはあやふやだといろいろ御議論のあるところですけれども、共創というやり方をやりましょうと。それは別にかけ言葉だけじゃなくて、実際にプロジェクトの運営や、プロジェクト間相互の間でちゃんと相互作用ができているかというのをきちっとサポートするなり確認するなりということが逆に言うと支援体制としては必要でしょうという、多分そういう話でつながってきているのだと思うのですね、もとのアイデアとしては。

【川添委員】  その意味では、全体としてはトップダウンでしかあり得ないプロジェクト。

【城山主査】  ある種のトップダウンの側面は残るということですね。

【川添委員】  本当にそういう言い方ですいいですか。

【城山主査】  では、まず喜連川先生。

【喜連川委員】  きょうの御議論を私どものような単細胞の人間から拝聴させていただきますと、意見が結構分かれそうな気がするんですね。人文・社会分野をどう振興するかという、そのものの方向感に関しましても、ユニファイドされた意見ではなくて、非常に多様な御意見がある。これ、どっちの立場で考えるかによるんですけれども、実際に研究をする研究者の立場からしますと、いろんなことを言われると、御指導いただきますと、結局どないせいっちゅうんだみたいな話というのは、我々、大きな国家プロジェクト、いろいろやってきますと、そこが一番根源的にうまく動かないというか、どれもが中途半端みたいになっちゃう可能性があるんですね。
 我が国家で一番よかったのは、私はImPACTよりもFIRSTの方が絶対よかったと思います。結局、研究者を決めて、その人がこうやりたいというのに対してコミットしたら、そんなにいろんなごちゃごちゃ言わない。アドバイスは言うんですよ。でも、原則、あんたがやりたいようにやってくださいというような、そういうプロトコルを作るというのが望ましいと思います。
 私ども、NSFというアメリカの学士みたいな方が来られるんですけど、とにかく感動されるのは、研究をアドミットした後にこんなにこせこせ、こせこせいろんなアドバイスするというJSTのあのシステムを見られて、これで結構うまいこといっているのはミラクルだみたいな感じでおっしゃるんですね。
 川添先生の御意見、すごく理解できるところなんですけれども、評価うんぬんを、原則、研究者が決めればいいんです。私はこういう軸で評価してほしいと思う。少なくともこの軸で見れば、ほかの先生に比べると、ほかのワールドワイドなグローバルの研究に比べても圧倒的に強くなるんだ、だからこれをやらせてくださいというような、自分たち、研究者そのものが考えるようなスタイルに今どんどんなってきているんじゃないのかという気がしますので。すいません、ちょっと単細胞的な発想ですけれども、この議論は収束するのが難しいような気がしましたので、あえて発言させていただきました。

【城山主査】  須藤先生。

【須藤委員】  今喜連川先生が言われたのとちょっと反対の意見になるのかもしれませんが・・・。この資料の絵を見ていると、典型的なSIP、ImPACT方式なんですよね。全体の事業統括、実は私、SIPとImPACTの統括をやっていたのですけど、いや、今でもやっていますけど。大きなテーマというのが、先ほどの少子高齢化みたいなテーマが加わってくるのだと思います。その下にいろんなテーマが公募して入ってくるというイメージなので、SIP、ImPACTは正にこのやり方をしています。それがいいか悪いかはおいといて、SIPには「戦略的イノベーション推進プログラム」という名前があるので、目的が分かるんですね。そこで今回のプログラムでも、さっき川添先生が言われたように、ちゃんとしたネーミングをして、どういう目的のプログラムですよというのを付けないと、何のためにやって、ゴールがどこなんだというのが見えないような気がします。例えば「戦略的人文学・社会科学共創プログラム」とか、何でもいいんですけど、そういうのを付けて、そこでテーマを三つ、四つ、こういうテーマで募集をかけますとした方が良いと思います。公募をかけた後は、テーマの代表者に全権を委任して、その代表者とプログラムをやっている人でどんどん動かしてもらうというイメージだと思います。なので、ちゃんと目的のタイトルを考えるべきじゃないかなと思います。

【喜連川委員】  理系の中でけんかをしていても全然意味がないんですけど、後半に須藤委員がおっしゃった全権を任せてやるというところは大賛成。これもそういうふうにやっていくべきだと思うんですけど、SIPやImPACTが少なくとも始まった頃は、DARPA方式という言い方をしたんですね。DARPAの最初と今のDARPAでは全然違います。今のDARPAはどういうミッションになっているかというと、ブリッジング・ザ・ギャップという言い方をしています。目的があって、シーズのテクノロジーがこちょこちょいっぱいあって、これをブリッジするというのがDARPAの役割を考えています。これは産総研と同じです。どういうことかというと、自分のところでシーズをではインベントしないんです。どこかそこにあるものをくっつけるというのがDARPA方式。今のDARPA方式はそうなっている。
 ところが、ここでの議論で感じておりますのは、小林先生がおっしゃいましたようなところって、かなりファンダメンタルなところの学問の知識化というようなところになりますと、工学的なImPACTとかSIPとは違うような動き感になるところがあるんじゃないかなと思って、少し申し上げて、決して我々、SIPも関わっていますので、けんかを売ると大変なことになりますが、やっぱりちょっとテイストが違うのではないかと思います。
 それが1点と、川添先生が評価とおっしゃるのが、やっぱり人文・社会もそうなんだなと思うんですけれども、是非評価の問題そのものもこの中で考えていただけると有り難いと思っております。評価が簡単な学問だけが栄えているような気がします。評価が難しい学問をどうやって支えるかというのが一番重要です。
 1964年に日本のオリンピックがあったとき、64年から今までずっとオリンピックの選手の健康診断を我が国はしています。その結果、今、後期高齢者、75歳になっている。その結果、この長い期間やってよく分かったことの非常に深いインプリケーションというのは、深いです。過激なスポーツをした選手というのは実は健康を害するんじゃないだろうか、あるいは寿命が短くなるんじゃないかという心配があって、それをなされたわけですけれども、今分かったことは、圧倒的に寿命が長くなっているということです。これぐらいのロングスパンの中で日本が何をするかというようなことを決められるような、そんな国家になるべきで、即物的な非常にショートタイムの評価というのに惑わされるようなことって、他国でも簡単にできてしまいます。今、何かそっち側にどんどんどんどん動いているような気がするんですね。人文・社会というのは、もうちょっと長いスパンの悠久のところを御研究になっていると思いますので、是非そういうものもこの中でアドレスしていただければ有り難いと思っていまして、川添先生を応援したいなと思っている次第です。
 以上です。

【城山主査】  ありがとうございました。前半の方で言うと、人文・社会のこういうプロジェクトマネジメントの在り方どうかというときに、確かにある程度選んだ後任せるというのも大事であるのと同時に、若干昔のフェーズに関わった経験でいうと、横の交流をある程度ちゃんとやってもらうということが、思わぬところでいろんな発見があったり、つながってきたりするのですよね。それを見ると、A、B、Cでテーマ投げて、全部おまかせというよりかは、運営委員会、どこが関わるかは別にして、相互交流的なことはちゃんと仕組みとして入れといた方が分野的にもいいのかなという感じはしています。

【盛山委員】  今の点について一言だけ。喜連川先生がおっしゃるのは、理念的には、これでやっていくんだというので引っ張っていくというのが一番いいと思うんですよ。ただ、このプロジェクトがあること自体が、なかなかそういう人が現れてこないということを表している。それが最初に小林先生がおっしゃった問題とも関連している。ただ、それは言語矛盾みたいなものなんですね。リーダーシップをとれる人をアドバイスするみたいなのは、本当は矛盾しているんですよ。ただ、私としては、両方視野に入れながら、場合によって、リーダーシップをとろうと思っても、分野にもよりますけれども、みんな研究者ってばらばらなので、リーダーシップをとりにくいときもある。そういうときに、外枠でアドバイスをするとか、サポートしたりすることで、リーダーシップをとりやすいようにするということもあり得る。そうした可能なフレキシブルな仕組みを考えていただけたらいいと思います。

【城山主査】  どうもありがとうございました。既に予定の時間を5分ほど過ぎてしまいましたので、ここまでで終わりにしたいと思いますが、テーマ例の話と最後議論になった体制の話。体制の方は少し選択肢のような形で整理をして、次回、出させていただくことになろうかと思います。テーマ例の方は、きょうの議論を踏まえて原案を作って、そこにアドオンしていただくという形で、次回に向けて準備をしていただければいいのではないかなと思います。
 それでは、最後に事務局から連絡等あればお願いいたします。

【藤川学術企画室長補佐】  ありがとうございました。次回は8月30日に開催させていただきます。詳細は改めて御連絡させていただきます。
 本日の資料につきましては、机上に残していただければ、後日郵送させていただきます。
 また、本日の議事録につきまして、後日、メールにて送付させていただきますので、御確認の方をお願いいたします。
 以上でございます。

【城山主査】  それでは、これで閉会いたします。どうもお忙しいところ、ありがとうございました。

―― 了 ――


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