研究環境基盤部会 大学共同利用機関改革に関する作業部会(第7回) 議事録

1.日時

令和元年11月7日(木曜日)15時00分~17時30分

2.場所

文部科学省13階 13F1~3会議室

3.議題

  1. 「大学共同利用機関の検証ガイドライン(仮称)」に関するヒアリング
  2. その他

4.出席者

委員

観山正見主査、小林良彰委員、小森彰夫委員、佐藤直樹委員、橘・フクシマ・咲江委員、永田恭介委員、長谷川眞理子委員、平川南委員、藤井良一委員、森初果委員、山内正則委員

文部科学省

村田研究振興局長、増子大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、西井学術機関課長、降籏学術機関課学術研究調整官、吉居学術機関課課長補佐、小林学術機関課課長補佐、二瓶学術機関課連携推進専門官、その他関係者

5.議事録

【観山主査】 それでは、ただいまより科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会大学共同利用機関改革に関する作業部会(第7回)を開催いたします。
委員の先生方におかれましては、本日も多忙のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
まず、事務局より、本日の委員の出欠、配付資料の確認をお願いいたします。
【降籏学術研究調整官】 本日は、全委員の皆様方に御出席を頂いております。
また、本日の会議も、大学共同利用機関の検証ガイドラインについての大学共同利用機関及び有識者の方々からヒアリングを行いますので、委員のほか、関係の方々に御列席を頂いております。お忙しいところ御出席を頂きまして、まことにありがとうございます。
本日の配付資料ですが、お手元の議事次第の「配布資料」の欄にございますように、各機関と有識者の方々から、資料1から資料8まで、ヒアリング資料ということで配付させていただいております。
また、参考資料1から参考資料4までと、委員の皆様の机上でございますが、国立天文台の方からリーフレットを配付させていただいております。
また、こちらも机上資料でございますが、今回も、第4期中期目標期間における大学共同利用機関の在り方について(審議のまとめ)の本文と大学共同利用機関関係資料を置かせていただいております。
配付資料につきまして不足などございましたら、事務局までお申し付けいただければと思います。
配付資料等につきましては以上でございます。
【観山主査】 ありがとうございます。
それでは、議題(1)「大学共同利用機関の検証ガイドライン(仮称)」に関するヒアリングについて、取り扱いたいと思います。
本日は、物理化学の分野の観点から、5つの大学共同利用機関及び有識者の方に御出席いただきまして、御意見を伺いたいと思います。
なお、ヒアリングの進め方については、今回も、参考資料4として配付しておりますので、適宜御参照ください。
それでは、時間が限られておりますので、早々ヒアリングを始めたいと思います。
まず、分子科学研究所、続いて国立天文台、核融合科学研究所、素粒子原子核研究所、物質構造科学研究所の順に、それぞれ8分以内で説明をお願いします。
申し訳ないですけれども、ベルを5分の段階で1回鳴らします。それから、2回目のベルが鳴りましたら8分が来たということで、終わりにしていただければと思います。
それでは、分子科学研究所からお願いいたします。
【岡本研究総主幹】 分子科学研究所の研究総主幹を仰せつかっております、岡本と申します。本日、川合所長が所用でこちらに来られませんので、代理で御説明させていただきます。
分子科学研究所の資料をごらんいただければと思います。
最初に、分子研の使命ですけれども、これは言うまでもなく、分子についての知識を深めて、卓越した機能を持つ分子系を創成する研究を行うところです。それを基に新たな研究領域を推進していくということが使命であると考えております。
2ページ目ですけれども、それに当たりまして、学術研究を推進して新領域を開拓、推進していくということはもちろんなんですが、我々としては、若手研究者を出していくということと共同利用・共同研究を推進していくということが重要な使命であると考えております。
以後、この案にあります観点に沿って、現況を説明しながら意見を述べさせていただきたいと思います。
3ページは組織ですけれども、4ページから説明させていただきます。4ページから7ページぐらいまで、現在の運営体制に関して、簡単にまとめてございます。
顧問を外部で置いているほかに、5ページには運営会議、これは所内のほかに所外が半数含まれております。こういうところで、運営に関して議論しているところです。
その運営会議の下に、人事選考ですとか共同研究の部会や専門委員会を置いております。
7ページですけれども、コミュニティーとの橋渡しをするというところで、学会等連絡会議を置いて、運営しております。
この資料、観点と指標に関してですけれども、特に意見はございませんけれども、こういう会議が定期的に開催されているかどうかということは見ておく必要があるのではないかと感じました。
続きまして、中核拠点性ですけれども、8ページから説明してありますけれども、我々は、人事においても全国から公募を募っておりますし、共同研究に関しても同じです。
そういう点で、日本のコミュニティーの中核になっていると考えておりまして、その実績は、9ページに協力研究等の数として示してございます。
そのほかに、研究施設をオープンにしているという点でも、中核拠点になっていると考えております。
これに関する指標等に関しての意見は、21ページにございますけれども、コミュニティーの研究の裾野を広げるという意味では、著しく高いという成果が必要かどうかというのは、ちょっと疑問に思った点があります。あと、人事選考の方法ですとか流動性の状況なども、指標として考慮していただくのが適切ではないかと考えております。
続きまして、国際性ですけれども、これは11ページから13ページに掛けて、説明資料を用意しております。
我々は学術交流協定は幾つか、それほど多い数ではありませんけれども、研究所の規模からすれば十分な数の協定を結んで、行っております。
13ページにもありますけれども、これらを実質的に機能させているという点で意味があるかなと考えております。例えばインターンシップは、2017年度で60名を受け入れているという実績がございます。
これに関して、指標等に関する意見としては、22ページに少し書いてございますけれども、一つ考えられるのは、人事が国際的に開かれているかどうかという点は考慮していただいていいのではないかということと、それから、一番下の方に書いてありますけれども、ワンストップサービスなんかの外国人対応という点でも、指標を設定していただくのは有効ではないかと考えております。
続いて、研究資源の点に関してですけれども、これは14ページ、15ページに説明資料を載せてございます。
我々は研究資源、もちろん実験施設、あるいは大型計算機等を備えておりますけれども、最も大きい共同利用実験施設であります、放射光施設であるUVSOR等は非常にオープンに利用されているところです。そのほかに、計算機も当然、全国のコミュニティーに使用していただいております。
そのほかの各種装置等も、15ページにありますように、ネットワークですとかナノテクプラットフォームで公開しているところです。
これに関しての意見は、23ページに少し書いてございます。
続いて、新分野創出の点ですけれども、まず、意見として一つ述べておきたいのは、新分野創出というのは10年の桁で考えていく必要があるので、出身者を含めた、機関で芽を出した研究領域等を考慮する必要があると我々は考えております。論文数ですとか、Top10%という数値が最近いろいろ取り沙汰されておりますけれども、こういう数値では新分野の創出は測れないというのが我々の意見でございます。
新分野に関係する分子研側の説明としては、16ページに記しております。いろいろな分野で、我々実際に新分野、典型的な例は、野依先生のBINAP触媒というのは実は分子研で開発されたというのがありますけれども、そのほかにも、高分解分光、有機伝導体、光触媒、磁性体、超分子なんかの点で、我々、新分野を開拓してきたという自負がございます。
続いて、人材育成ですけれども、これは我々の分子研が最も寄与している機能の一つであると考えております。17ページに簡単にまとめてありますけれども、分子科学コミュニティーにこれまで500名以上という、非常に多数の研究者を輩出しておりますし、若手独立フェロー等の新しい試みも行っております。これら非常に大きな寄与をしている理由は、内部昇進を禁止しているというのが一つの理由になっていると考えております。
これに関する意見は、25ページに記しておりますけれども、重要な点として、人事流動の状況というのを是非考えていただければと、我々考えております。
最後に、社会との関わりですけれども、例えば産学連携は、受託研究等も積極的に受けておりますし、その状況は18ページに記しております。それから、今年度、社会連携部門というのを設置して、積極的に産学連携の研究も推進しているという状況があります。
そのほかに、地域との連携というものも、学校教育ですとかセミナーなんかの点で寄与しているところでございます。それが19ページ、20ページにございます。
これに関する意見は、25ページに少し書いてありますけれども、初等中等教育等への貢献なんかも指標として考えていただいてはどうかと考えております。
大体、以上でございます。
【観山主査】 どうもありがとうございました。
それでは、後に質疑応答、意見交換の時間を十分設けますけれども、今の説明に関して、直接に何か御質問がありますでしょうか。よろしいですか。
それでは続きまして、国立天文台からの御説明をお願いします。
【常田台長】 資料2ページ目に、今回のヒアリングに関連した、天文台の概要がまとめてございます。
国立天文台は、天文学の学術研究を行う機関ではもちろんありますが、最近、国際協力により大型観測施設を建設・運用するという任務の比重が大きくなっております。
また右下に、「宇宙の誕生から生命の発見まで」というキーワードが書いてありますが、天文学の裾野が非常に広がっておりまして、基礎物理学、化学、生命科学との学際性が非常に高くなっているという特徴がございます。
次に、3ページにプロフィールをまとめました。
左上に総予算がございますが、いわゆる大規模学術フロンティア促進事業による、先ほど言いました大型観測施設の建設・運用の経費の方が、そのほかの運営費交付金より多くなっているという財政状況がございます。
左下に職員数がございますが、約540人の中で、研究系の女性比率が14%、教授2名、女性がおりまして、正教授が大体24名ですので、今後も努力が必要かなと思っております。研究系の外国人職員比率が約10%でございます。
右下に論文としての指標がございますが、10%論文、1%論文、共著率等も、国立天文台は悪くない成果を出していると認識しております。世界の天文学者のうち、日本人の天文学者というのは約5.7%いるんですが、日本の天文学論文の世界シェアは8.4%で、人数比をかなり上回るということであります。それから、天文の論文数の伸びが、多くの分野でマイナスの中、プラス45%という大幅な伸びを示しておりまして、これは、共同利用研として、すばる、アルマを建設・運用して成果を出している成果がこういうふうに数値的に表れていると思っております。
次に、4ページに、最近の成果でございますが、これは一々説明いたしませんが、すばるによる重力波の光学観測、それから、アルマによる観測史上最遠の酸素の発見、アルマを中心とした国際的なネットワークによるブラックホールの「影」の撮像、アルマによる宇宙における有機分子の発見ということでございます。
小さい字で出典が書いてありますが、広島大学、大阪産業大学、東京大学と、天文台の大型施設を使って、各大学の先生がすぐれた成果を出しているということが最近の傾向でございます。
1ページ飛ばしまして、6ページから、今回のヒアリングの回答、コメントが書かれております。
まず、右下6ページでありますが、検証の進め方ということで、1。検証の趣旨でありますが、この検証は大変重要であり、検証に際して着目する7要件も大変妥当だと考えております。特に大型設備の建設・運用に関する課題も、それから、先ほど言いました学際性の高まりもありまして、この結果に基づいて、再編・統合を含めてその在り方を検討するというのも、検討結果のアウトプットとして、大変いいのではないかと思っております。
細かいところは飛ばしまして、大きなところだけコメントさせていただきますが、下の3.検証の主体別構成ということでございます。
マル1、自己検証のところで、必要に応じて海外の研究機関に所属する研究者の意見を聴取するというのは大変いいことでありますが、私どもとしては、もう一歩踏み込みまして、国際外部評価等により、海外の研究機関に属する研究者により評価いただくのは、むしろ必須なことではないかと考えております。
7ページの上の方へ行きまして、関連して、今回、大学共同利用機関の評価でありますが、大学共同利用機関法人(4法人)の、大学共同利用機関が束になって4機関になっているわけでありますが、その評価についても同様の検証が必要ではないかと考えます。
7ページの下の検証の基準でありますが、客観的に検証するということが強調されていると理解しておりますが、これを具体的にどうやるかがもう少し書かれているといいのではないかと思います。評価に当たっては、恣意的とならないように、やはり国際的なベンチマークをはっきりさせた上で、自己検証等をやるべきではないかと考えております。
8ページは、特に重要なコメントがありませんので飛ばしまして、9ページに参りたいと思います。これは、2の主な観点について、それから、3、指標例についての天文台のコメントでございます。
運営面のことの指標例でありますが、会議体の整備状況ということを指標例として、これは大変適切だと思うんですが、単に整備状況ではなくて、例えば、天文台には運協のほかに、コミュニティーの各分野の先生方が委員になる科学諮問委員会が5つあります。それから、それらを束ねる科学戦略委員会もありまして、こういう活動の実態も、何らかの形で指標としていただけるといいと思います。
下の方には、若干、言葉尻的で申し訳ないんですが、「必要不可欠」とか「著しく高い成果」というのがあるんですが、これは国際的なベンチマークを基に、著しく高い成果ということが言えるのではないかと思います。
次に、10ページに参りまして、続きでありますが、外部委員の数が2分の1以上というようなことが規定されておりますけど、研究所の運営が、コミュニティーの意見を踏まえて運営されているかということを総括的に検証するのが大事ではないかと。2分の1以上というのは、コミュニティーのボトムアップの意見を大事にせよということは当然のことでありますが、先ほど言いましたように、国立天文台の場合、大規模な国際事業を行っているために、コミュニティーの意見だけではなく外国との対応、それから予算的な制約も、総合的に勘案して組織の運営をする必要がありまして、その辺も考慮すべきではないかと思います。
次に、少し飛ばしまして、今の運営面の続きでありますが、11ページの右上を見ていただきたいんですが、bのところに、異分野融合・新分野創成のため、大学共同利用機関の所掌する研究分野を超えた、あるいは所属する機構を超えた、国内外の機関との連携の取組というのを評価の指標にすべきではないかと。
天文学の学際性が広まっているということで、なかなか努力が要るのでありますが、こういうところの試みも評価していただければと希望いたします。
次に、またページが飛びまして、12ページでございます。
研究資源の観点でありますが、共同利用及び共同研究のために保有している施設等で卓越した成果が認められているということが観点としてあげられております。これはもちろん重要でありますが、右に書きましたように、左記観点はいずれも、現在保有・運用している研究資源・基盤を対象とした書きぶりになっており、厳しい予算状況に鑑み、将来に向けた資源の確保のためにスクラップ・アンド・ビルドの観点も加えていただけないかと。
国立天文台の場合、岡山観測所、それから、野辺山太陽観測所を廃止しまして、現在、野辺山宇宙電波観測所、水沢VLBI天文台についても縮小の試みをしております。これはコミュニティーとの非常に長い相談とか説明、説得の過程が必要で、かなりの労力を要するということで、こういうコメントをさせていただいております。
次に、13ページは特に大きいコメントがありませんので、14ページに行きたいと思います。社会との関わりでございます。
情報発信ということが強調されておりますが、情報発信だけでなく、相互のコミュニケーションですね。情報を出すだけでなく、それがどう受け取られているかということも仕事のうちに入っておりますので、言いっ放しということにならないような評価基準、それから、その下に産業連携というのがございますが、これは基礎的な学術機関として、なかなか、国立天文台も取組を始めているんですが、難しいものがあるので、産業連携をしますよという発信だけではなくて、それがどう実際に成果になっているかという、その過程も評価していただけないかという趣旨で書いてございます。
最後は、分類のところでありますが、もちろん天文台は大型設備に該当するんですが、すばるに搭載されました超広視野主焦点カメラが大規模なデータを生み出しておりまして、最近、これをビッグデータとして扱うという、台内、台外の研究者も増えております。こういう意味で、データとか情報基盤にも、多少研究して、関連するようになっているということを述べさせていただいております。
以上でございます。
【観山主査】 どうもありがとうございました。
それでは、天文台に関して、何か御質問はありますでしょうか。よろしいですか。
後に、もちろん振り返って、意見交換の場、時間をとりますけれども、それでは、核融合科学研究所、よろしくお願いいたします。
【竹入所長】 それでは、核融合科学研究所の概要と、検証ガイドライン等に対するコメントを述べさせていただきたいと思います。
まず、2ページ目ですけれども、核融合科学研究所は、平成元年に核融合プラズマの学理とその応用研究の推進のため、大学共同利用機関として設置されました。この目的達成のために、世界最大の超伝導大型ヘリカル装置(LHD)を中核とした、実験研究、理論・研究、工学研究を推進しています。
このページの右側に、「核融合炉に必要な理学・工学にかかる学術研究の体系化」ということで、LHD、スーパーコンピューターを用いた理論・研究、工学研究、いずれも大学にはないセンター的な、国際的な大型装置、最先端装置を、大学との共同利用・共同研究により推進しているところになっています。
左下にありますように、こうした成果を他分野との連携研究、新分野創成等に展開するとともに、研究成果の社会への還元という観点での研究も展開しているところになっています。
3ページ目に、核融合科学研究所の特徴及び強みをリストアップしています。この中には、今回、大学共同利用機関として備えるべき要件として、7つ上げられていますけれども、その全てが絡んでいるという形で、大学共同利用機関の特徴を測る上で、この7つの要件は非常に重要であるという認識を持っています。
最初に、「地上の太陽」、核融合の実現のための研究を共同研究により推進しているという点、運営面・中核拠点性・研究資源という観点で、当然備えるべきものと考えています。
また、大学にはない大規模研究設備、あるいは重水素実験などの研究環境を整備して、世界最高水準の研究を大学の研究の活性化に結び付け、新たな学問分野の創生に貢献するという観点、研究資源・中核拠点性・新分野の創出という観点が述べられています。
3番目に、世界的な学術研究拠点としての国際連携研究を推進しているという点、国際性・中核拠点性を示しているかと思います。
また、4番目に、大学院教育、人材育成という観点。
そして、5番目に、特に地域住民に理解していただく説明会などの開催、そして研究成果の社会への発信、国民との信頼関係の構築という形で、社会との関わりというのも非常に重要な観点かと思います。
4ページ目に示していますのが、中核的な装置であります、大型ヘリカル装置(LHD)の状況をまとめています。
LHDは、大規模学術フロンティア事業の一つとして進められているもので、世界最大級の超伝導装置を用いた世界最高性能の定常運転性能を有するということで、これを国内及び国際的にも、中心的な装置として共同研究に供しているところになっています。
5ページ目に、共同利用・共同研究における仕組みを紹介しています。核融合科学研究所は、研究の進展状況、あるいはコミュニティーのニーズに応じて、様々なタイプの共同利用・共同研究のシステムを持っています。
左上にあります一般共同研究というのは、核融合コミュニティーが核融合研に来て、核融合研の装置を共同利用、あるいは共同研究することによって行うということで、核融合にとどまらず、プラズマの基礎から応用まで広範な課題を対象とした共同研究を推進しているものです。
大型ヘリカル装置計画共同研究は、逆に、大学におけるアイデアを大学において行う共同研究として位置付けておりまして、大学の研究力強化に大きな貢献をしていると考えています。
右上にあります双方向型というのは、大学附置研・センターの特徴ある装置をネットワーク的に関連付けて、核融合研等含めて一体として、大学の核融合コミュニティーが共同研究として利用できるような形になっているものの共同研究で、2004年度に開始したものになっています。
右下の原型炉研究開発の共同研究というのは、本年度から開発して、核融合研究の進展に伴いまして、原型炉開発に向けたアクションプランというものを核融合科学技術委員会で策定したわけですけれども、それを具体的に大学の学術研究の立場から推進するという共同研究を、今年から新たに開始したものになっています。
6ページ目に、国際的研究拠点であるということをまとめています。
政府間協定の枠組みに従って、国際連携事業としての日米、日中、日韓の核融合協力以外にも、様々な形で国際的な連携ネットワークによる拠点形成を行っていまして、大事なポイントは、核融合研をハブとして、国内のコミュニティーから核融合研を通る形で、こうした国際連携事業に対しての参画、交流を高めているという点、それと、核融合研自身としましては、国際会議を、設置しています土岐市において毎年開催していまして、国際的拠点性を高めているという点、学術交流協定を海外と、29機関と結んでいるという点が上げられるかと思います。
次の7ページ目には、核融合研究の広がり、スピンオフ・スピンアウトの状況について、まとめています。
それでは、検証の進め方等について、コメントを述べさせていただきます。
8ページ目に、検証の進め方についてのコメントです。
検証を行うということについては、大学共同利用機関の強化に重要な点であると考えますけれども、検証というと少し後ろ向きなイメージがありますが、評価としては、更に大学共同利用機関を強化するという前向きな評価を視点として捉えて、行っていただきたいと考えています。
そして、3つ目のところにありましたように、自己検証に基づいて外部検証を行うのは非常によろしいと思いますけれども、各機関、各コミュニティー、それぞれ多様性、規模、バックグラウンド、文化等を様々な観点から考慮して、「観点」、「指標」を柔軟に適用することが必要ではないか。
その観点から、相互の優劣を比較するものではないということから、一律の検証基準というより、各研究分野、各機関の特徴を十分考慮して柔軟に対応していただきたいと考えています。
9ページ目には、個々の主な観点、指標例についてのコメントをまとめています。
中核拠点性に関しましては、核融合科学研究そのものは総合理工学で、非常に多くの専門分野の集合体としての融合的・学際的な分野になっています。そうした意味では、研究者コミュニティーを先導するという観点とともに、専門の異なる分野を核融合研究にまとめている、組織しているという観点も必要ではないかと考えています。
10ページ目に、国際性について、コメントをまとめています。
指標例の中に、外国人研究者のための体制整備というところで、人的な整備が指標例に挙がっていますけれども、英語表記、あるいは英語による研究打合せなどのソフト的な整備状況等についても、挙げてもいいのではないか。
そして、研究資源に関しましては、先ほど紹介しました双方向型共同研究に代表されるような大学と連携したネットワークの構築とその運用、観点に示されていますけれども、各機関の特徴を示す観点・指標を、十分に答えるような指標も具体化する必要があるのではないかと考えています。
11ページ目ですけれども、新分野の創出に関しましては、先ほど申しましたように、そもそも核融合科学研究自身は、様々な分野の融合領域という形ですので、新分野の創出というよりは、核融合研究の進展に伴って、研究を通じた他分野や産業へのスピンオフ・スピンアウトの視点が必要と考えています。
そうした意味では、新分野の創出に関しては、Top10%論文等の統計データというよりは、むしろデータベースや技術がどう産業界や他の学問分野で応用されているかを指標としてもいいのではないかと思います。
最後、12ページ目に、社会との関わりという点では、発信という観点ではなくて、双方向的な市民への説明、地域との交流という、地元の理解を得る活動といったポイントが必要かと思います。
最後に、機能別分類の観点については、本日集められたところは大型設備の大学共同利用機関ですけれども、大型設備におきましても、共同利用と共同研究では違う観点があるということで、やはり各研究分野、各大学共同利用機関の特性に応じた柔軟な評価の観点・指標が必要ではないかと考えています。
以上です。
【観山主査】 どうもありがとうございました。
核融合科学研究所に対して、質問等ありますでしょうか。
核融合研の5ページを見ていただくと分かるんですけれども、所長はさらっと、双方向型と形態を言われましたが、これは非常に独特な形態なのです。核融合の研究の予算というものを、附置研も含めて、核融合研に配分されて、このコンソーシアムが、例えば筑波大学の核融合に関する研究センターの経費を配分するというか、コンソーシアムで決めていくということで、これはちょっとほかの共同利用とか共同研究機関にはないような仕組みを、2004年から始められているということであります。
それでは、次の機関に移りたいと思います。素粒子原子核研究所からの説明をお願いします。
【徳宿所長】 素粒子原子核研究所は、高エネルギー加速器研究機構にありますので、資料4の1枚目には、最初に、高エネルギー加速器研究機構について説明してあります。
高エネルギー加速器研究機構は、非常に大きな加速器という大型施設を使って共同利用をしている研究機構です。写真に2つありますように、つくばキャンパスと東海キャンパスがありまして、つくばキャンパス側には、その丸いものが周長3キロぐらいのものですが、世界最高の強度の電子とその反物質である陽電子の衝突型加速器があります。東海のキャンパスには、こちらも大強度の陽子加速器がありまして、そこから世界最高強度のニュートリノや中性子等を生み出して、共同研究に資しております。
日本一の施設だと思っていますし、世界にも類のない施設でありまして、そういう意味で、そこに書いてありますように、欧州のCERN、米国のフェルミラボ等と合わせた、世界の3大拠点という形になっています。
と書いたんですが、これは私の、素粒子的な観点からいうとこの3大拠点ですが、これが例えば中性子といったら、KEKはそのままですが、ほかの国だと別な研究所になるかもしれません。そういう意味では、高エネルギー加速器研究機構というのは、加速器をやるという意味では、世界でも一番対応度の高い研究所ではないかと思っております。
ということで、サマライズしたものが右下のところにありますが、世界にユニークな加速器を持ち、国内外の研究者に研究の場を提供しております。これは非常にお金が掛かるものですので、一つの大学ではできないものを共同利用でやるという形で、まさに共同利用機関としての趣旨に合っていると思います。特に加速器の場合には、もう一つ言っておきますと、欠点かもしれませんが、作るのもお金が掛かりますが、運転もお金が掛かるんです。非常にエネルギー、電気代を使って、お金が掛かります。
そういう意味では、評価をやるときに、コスト当たりとやられると非常に厳しいところもありますが、それを全部一つに合わせて、各大学の利用に資するというところで考慮していただければと思います。
最後に書いておいたのは、あえて、エネルギーを非常に使っているんですが、それでも実はエコなのであるというのも、私としては主張したくて、それはどういうことかといいますと、つくばキャンパスの今、運転し始めているSuperKEKBというのは、KEKBの40倍の性能なんですが、電気使用量という意味では同じぐらいになっています。
また、J-PARCでも、もともと50GeVのマシンを作るはずだったんですが、何とかニュートリノの強度を保ちつつ電気代を安くできないかというようなことを考えながら、エネルギー自体は下げても、ニュートリノ強度を保つというようなことをやっています。
こういうぐあいにできるというのは、設計を、どこかに作って、それを運転してただやるというのではなく、建設・運用・利用が一体化しているというのが鍵だと思います。やっぱり機構、研究所を評価するときに、そういう仕組みのところというのを評価していただければと思います。
2ページにわたりまして、今のがKEKの話なんですが、そのKEKの中に研究所が、我々の素核研と物構研があります。
ただ、ここで一つ問題なのは、先ほど言いましたように、研究機構自体が全体で大きな加速器を運用しているということで、そういう意味では、特に素核研の場合には、大型施設があるかというと、それ自体ではありません。ある意味で、全ての学際が融合した形でKEKというものがあって、その中の素粒子原子核に対するところをやるという形になっております。
この組織図にありますように、アウトリーチ、あるいは企業への応用、そういうところに対する部署というのも、基本的には機構の方に付けてあるというのが現状です。
ということで、素核研の場合には、機構と一体になってこそ完全になる研究機関ということで、評価をする場合に、機構共通部分を考慮した評価が必要だと思います。
共同利用の例として、3ページ目に、「一つの大きな」と書きましたが、一番大きな例ですが、Belle2コラボレーションというのが、つくばの先ほどのSuperKEKBで起こっております。
これは、26か国の研究者約1,000人が来ております。日本は、下の丸にありますように、164人ということで約20%です。日本が1番ではありません。一番多いのはドイツです。そういう状況で、日本の大学共同利用とともに、海外とも一緒にやっているという形です。
素核研の中で、このパートの実験を進めるのは、そこに書いてある人数ですが、そういう意味では、行政職員もいないし、技術職員もないという形だし、共同利用の支援業務専任の人という意味でもゼロです。
だから、そういう形で数字を書くとゼロになってしまいますが、それでも成り立つというのは、これがただの共同利用ではなくて、外国から来ている人が関与しているということで、みんなが主体的にやっている研究が進められているというところが評価できるようにしていただけるといいと思います。
その次のページにコメントを出していますが、まず、出されています共同利用機関の備えるべき要件というのは、非常に共通項をうまく抽出していると思います。しかし、これは抽出しているので、これに合っているというよりは、それがどう展開されているかという個性をしっかり検証していただきたい。
そういう意味で、最初の、本来のミッションをちゃんとやっているかというのを評価するということは、忘れないでほしいと思います。
あと、定量性を重視するのは理解しますが、基本的には過去のデータを見ていますが、実際に我々が見るべきところは、ビジョンを審査すべきではないか。
また、KEKのように、機関だけでなく、機構との関連が非常に重要なところも配慮してほしい。
それから、国際的にやる場合に、やっぱり国際的な委員会というのできちんと審査していただきたい。
ここに書いてある最後のところですが、結局、先ほど言いましたように、我々の手間をとらせないようにということで、数字を出させるというのがあるんだと思いますが、数字は作り方でいろいろ変わります。ですので、どちらかというと、やっぱり文章で答える記述式のものを出してもらって、検証すべきではないかと思います。
次は評価の仕方なんですが、それぞれの観点に関して絶対評価をするのはよいと思いますが、それを全部集めるときに、全部の平均をとるとか、単純に平均をとるとか、あるいは、ほかのレビューであるように、悪い点数があったら絶対上に行かないようなやり方をするとか、そういうやつもありますが、やはり大学共同利用機関というのは、ある特殊なところをやっている研究機関であることも見ると、全体を総合的に見ながら適宜ウエートを変えて、総合評価というのを、単純計算じゃなく、やるのがよいのではないかと思います。
文章でどういうぐあいに設問するかというのを、例えばの例というのがその後にずらっと書いてありますが、これは例えばの例でして、細かい点数、数値を書かせるのではなく、文章題で設問すればいいのではないかということで書いておきましたが、時間がないので省きます。
何にせよ、5ページの最後のところで、大学共同利用機関の評価は大体常に、こう言ってはなんですが、大学の評価の付け足しで、同じ評価でえいやとやられることがあったんですが、このように作業部会で新しくやってもらえるというのは非常によいことだと思うので、是非、よい評価システムを作っていただきたいと思います。
以上です。
【観山主査】 ありがとうございました。
素粒子原子核研究所に関して、何か御質問等ありますでしょうか。
今、言われたとおり、機構と分担している部分が相当、次の物構研についてもそうですけれども、ありますので、そこら辺はちょっと考えなければいけないところだと思います。
よろしければ、きょう最後になりますけれども、物質構造科学研究所から御説明をお願いいたします。
【小杉所長】 物質構造科学研究所、物構研の説明をいたします。
宿題としては、大型設備の観点からというのがありましたので、物構研が担当している大型設備がどういうふうな共同利用に結び付いているかというところを中心に御説明しつつ、観点、指標についてのコメントをいたします。
1ページ目、青紫の部分が物構研がやっているところです。放射光、陽電子、中性子、ミュオンと4つの量子ビームを使った科学を推進しています。ただ、加速器から出るビームですので、そこはKEKの加速器の研究施設と共通基盤の研究施設に支えられているというところです。
放射光は、各国1施設以上、日本の場合は今、10個目のリングを作っているような状態で、非常に放射光は進んでいるんですが、物構研の場合は、学術に中心を置きつつ、周辺のクライオ電顕やレーザー等の設備も持って、35年以上やってきているという状況です。
低速陽電子の加速器は、各国1施設とまではいかないんですけど、そこそこあるので、物構研の場合は、一番強いビームを出しているというところが特徴になっています。
中性子、ミュオンは、東海のキャンパスで今、J-PARCとして展開しておりまして、こういう施設というのは欧米、アジアに各1施設しかないような大型施設です。そういう意味で、非常に先端的な研究がやられているという状況です。
コミュニティーについては、2つのカテゴリーがあります。各ビームに関係する学会は、手法としてコアなコミュニティーとしてあるわけですけれども、各利用分野のコミュニティーとしては、いろいろな分野にどんどん応用しているので特定のコミュニティーに支えられているわけではなくて、広げていっているというところです。
1ページの上に書いている利用分野にありますように、放射光で文化財は昔からやっているんですが、最近は中性子、ミュオンも文化財応用を始めていて、文理融合を進めているとかまでやっております。
そういうところで、物構研の特徴というのは、ビームが単独であるというよりは、総合的にビームを使って分野を横断的にやっていく「マルチプローブ」というキーワードではやっており、そういうところで絶えず新分野を形成している。学術的にすぐれた研究をやるのはもちろんのこと、多様性を持って、大学・社会に裾野を広げるということです。
2ページ目、大学との関係でいいますと、大学では主に試料を作って、5年ぐらいのサイクルでいろいろな試料が次々作られて物構研に持ち込まれるわけですけれども、それに対応する装置群というのがビームラインで、今、60本以上、ビームラインがあります。新しい科学をやっていくためには、10年サイクルで見直して、新しい装置をどんどん導入していかないといけないんですが、このあたりは必ずしも順調に来ているわけではないです。
中には素粒子・原子核に関係するビームラインもありまして、そこに関係する人は人件費を素核研とシェアして雇用するというのもやっております。
ビームライン上流側の基幹部は、10年ぐらいでどんどん新しくなるというわけではなくて、20年ぐらいで見直しをやっていく。それらを支えている加速器は物構研の外にありますが、適度の高度化・劣化対策をしつつ、今、40年近く運転してきているという状況です。
大学は、主に利用するという観点になりますが、物構研の側は、やっぱり開発というのが主にやることです。大学との連携でやるところは、新しい方法論を考えて、大学の研究者と連携して開発して、それを利用に持っていくというところで人が流動しています。
ここは、いろいろ連携大学院とかそういうのも入ってくる形ですが、物構研としての総研大、学生の教育というのは本来、開発のところで人が一番欲しいところなんですけれども、大学からここへ飛び込んでくる学生を引き付けるというのはなかなか難しい状況が総研大ではあって、苦労しているところです。
こういう機能別分類としての大型設備を見た場合には、どこのタイミングで検証するか、あと、研究のインフラですので、継続性を見るとか、予算とも非常に関係します。
3ページになりますが、6年サイクルの検証の進め方としては、6年で済む話ではなくて、長期的な検証が必要である。学術の場合は、10年以上たっても引用され続ける研究は非常に重要ですし、そういうことでは、1回の検証では分からないという部分があります。一方、継続性と多様性を確保するというのは非常に重要でして、目立たない研究も非常に大事である。そういうものをちゃんとやっているというところを、検証の場合にチェックいただきたい。
タイミングは非常に悩ましいところで、中期計画のどのタイミングでやるか、あるいは、検証に対してどう進めるかというのは、所長がやるわけですけれども、所長の任期がそれぞれ研究所によって違いますので、そういうのをフィードバックする体制も含めて検証を進めていただかないと、検証したものの所長が替わったり、所長が着任してすぐとか、その辺のどこでやるかというのは難しい点です。
指標も、いいことばかり指標にして出すというよりは、問題点が分かるような形で、それをどう解決するかというところも含めて検証する必要があるかなと思っています。これは決して、PDCAサイクルの短期的なサイクルではなくて、もう少し、6年で済む話じゃなく、長期的に検証していくような部分であると思います。
物構研が扱っている大型設備がどういうふうな年次でやっているかというのを、下にポンチ絵で書いていますが、作るときは、左の台形の緑色であるように、加速器から、ビームラインまで、しっかり予算が付いてスタートするわけですけれども、今、東海で中性子・ミュオンは、そういうフェーズで10年近くやってきているというところです。今後、予算も少し減ってきますので、そういう中でどう取り組んでいくかというのは、一つの課題であります。
放射光は、右の方にありますように、35年前後進んでおりまして、いろいろなビームラインの改良を本来しないといけないのが、なかなか予算もあってできない。実際、今の予算というのは、右の緑色に書いているように、ビームラインに使う予算もなかなか難しくて、加速器を動かすところで苦労しているというような予算になってきますので、それぞれの大型設備の検証というのは、どのタイミングかというところに留意していただく必要があります。
4枚目、最後ですが、観点と指標に対するコメントですが、指標のところは、指標は自ら設定できるということなので、特段意見はないですが、その場合に、いいことばかりじゃなくて、本来は増えてほしい指標もあるんですが、実際そういうわけにはいかなくて、減っている。そういうのをしっかり問題点として、どうしていくかというところも出るような指標を設定するのが、本来の指標かなと思っております。
観点については、何度も繰り返しますが、長期的、継続性も見ていただきたいし、問題点も出すことが重要です。
あと、1点、ちょっと細かい話ですけど、第1の開かれた運営のところの観点で、外部の委員が2分の1以上というのがありますが、実際、大学共同利用機関はそういうふうにはなっていないです。共共拠点は外部の委員が半分以上となっていますが、大学共同利用機関は法人化前の体制として、大臣が任命権者で、所長も任命されますし、評議員会の委員20名だったと思いますが、大臣から指名されて、100%これは外部の委員だけで構成されていました。運営協議員会は21名で、11名が内部で、10名が外部ということで、過半数が内部になっていて、これも大臣から任命されていたと思います。法人化のときに、評議員会や運営協議員会は全て消え去りまして、その中で、大学共同利用機関をどうするかという議論の中で、運営協議員会だけは最低残すべきとのことで運営会議を設定されていますので、ほとんどの大学共同利用機関は11名が内部で、10名が外部になっていて、共共拠点とは違うのがありますので、その辺の注意をお願いしたいと思います。
コミュニティーは、物構研の場合はモノポリーではありませんので、新分野も自然に広がっています。ただ、新分野も、最後のポツに書いてありますが、戦略的に創出するものではないんじゃないかというのが、物構研から見た場合の新分野です。
あとは省略します。以上です。
【観山主査】 どうもありがとうございました。
運営協議員の2分の1という件は、先ほども、始まる前に調整官とも話をしたんですが、確かに小杉さんが言われるとおりで、大体11名、10名で、11名が内部であるのが、以前から同じようにやっているところは多分、そういう形になっていると思いますので、その指標はちょっと考えさせていただければと思います。
いかがでしょうか。今回で一応、全大学共同利用機関のヒアリングは終わったわけなんですけれども、今までほかのところでも言ってきたことを繰り返して言いますと、一つは、法人評価もあるので、過度な評価に対する労働を少なくすべきであるということは重々我々も考えておりまして、それはなるべく少なくしたいと思いますし、その法人評価に比べて、我々の一つの大きな観点は、もちろん各研究機関が拠点というか、日本の中でのそれぞれの分野でのCOEであるということが必要でありましょうが、重要な点は、大学共同利用機関なので、日本の学術の進展に対して、いかに存在が貢献しているのかということが大きな部分であります。その点は十分理解していただきたいと思います。確かにいろいろな御意見があって、かつ、きょうは割と、物理化学の分野で大型の装置がある研究所ですけれども、人文系から考えるとバラエティーがありますので、指標例というのは例であって、それぞれの機関が特色を示すようなものを提示いただいて、それを自己検証していただきたいと思います。それを、我々というか、外部的に検証するという立場です。法人評価では小分類で何個○を取れれば中分類でどうなるとか、ある種の方式がありますが、そんなものでは到底扱いませんので、そこら辺の検証のあり方は十分理解しておりますが、それぞれの機関の存在が日本の学術の進展に対していかに貢献しているかということを十分、それぞれの立場で表明していただけるよう期待したいと思いますし、自己検証をしていただければと思っております。これはほかのところでも言ってきたところです。
それでは引き続き、分野に係る有識者の方から発表をお願いしたいと思います。
まず、大阪大学核物理研究センターセンター長の中野貴志先生から、12分程度でお願いいたします。申し訳ないですけれども、9分の段階で1回鳴らして、2回目は12分で鳴らしますので、よろしくお願いいたします。
【中野大阪大学核物理研究センターセンター長】 素核研の運営会議の委員をしております、中野です。
まず、背景なんですけど、素粒子原子核という分野はだんだんハードルが上がってきた。インパクトがある研究をするためには、研究の大型化、長期化の傾向が非常に著しいです。その中で、大学発のボトムアップのアイデアを実現していって、人材育成、新しい技術を開発するということを我々は期待していますし、そういう役割を果たすことが求められていると思います。
今回の検証作業なんですが、我々も評価を受ける場合があるんですけれども、検証というものは大変作業が多いものです。でも、検証を受けることによって、その結果として、素核研がよりよくなっていくということを期待しております。そういう観点に立って、それぞれの観点、あるいは指標に対して、意見をこれから述べさせていただきます。
まず、運営面ですが、徳宿所長からお話があったように、素核研というところは、素核研単独で研究を行える研究所ではありません。KEKという中で、特に加速器研究施設であるとか、それから一部、物構研の支援、連携というものがあって初めて研究が行われています。そういう中で、先ほど言ったような厳しい条件の中で実績を上げていくためには、高度な調整やプライオリティー付けというものが必要になってきます。そういう意味では、運営面については、素核研が単独で行う運営だけでなく、国内外のコミュニティーの意見を運営に反映するために、KEKが全体としてどのような機能・役割を果たしているか、こういう観点による検証も行っていただきたいと思います。特にJAEAと共同で行っているJ-PARCの運営、これも大変なことをされているということを、はたから見て感じるわけですが、そこについては丁寧な検証を行っていただきたいと思います。
次のポツですが、現在の運営だけでなくて、中・長期の方針の決定、これは非常に大事です。将来計画があって初めて研究機関、研究所というものが成り立つと考えています。その中で、国内外のコミュニティーの意見をどのように反映させて、そういう決定が行われていくかという点も検証していただきたいと考えています。
次に、中核拠点性です。
これも、今言ったことと同じなんですけど、国内外のコミュニティーの意見やアイデアを吸い上げて、それだけではなくて、様々なステークホルダー、特に海外との交渉とかそういうものがいろいろ入ってまいります。現実的な将来計画の形にまとめ上げるというのは、これは大変重要な機能であって、それがどのような能力を持っていて、どのような実績を上げているかということを検証していただきたいと考えています。
それから、主に国内での研究について御説明があったんですけど、国外でも、例えばCERNなんかで大変重要な研究をされています。それが素核研として、どのように中核的な役割を果たして、そのことが国際的にどのように認知されているかという観点も必要ではないかと思います。
次に、国際性に行きます。
大型化しておりますので、国際連携は非常に重要になってきております。その中で特に重要なのが国外からのコミットメントだと思います。今、指標として国際共著論文の比率であるとか参加ユーザー数ということが上げられておりますが、国外ユーザーがどれだけ本気で素核研のプロジェクトに参加しているかということをきちんと検証しないと、国際性というのは測れないのではないかと考えています。例えば指標として、in-kindの物的及び人的貢献を加えることも可能だと思いますし、それを引き出すためにどういう工夫をしているかということも、検証の対象になるのではないかと考えております。それから、国際共同研究が国外で実施されている場合はそれらとの比較、特に競争関係にあるものが多いですので、そういうものをベンチマークとして、それらの比較というものも加えていってはどうかと思います。
国際的な連携や役割分担を進めるために必要な取組の実施状況を検証すべきと考えています。特に、これは素核研と言うか、KEKと言うべきか、よく分からないんですが、我々、素核研に所属している方のことを呼ぶときに、KEK所属と呼びます。KEKという一つの看板になっています。その看板となっているKEKが、国外の機関との交渉や連携の窓口でどういう役割を果たしているかということを検証するということも重要ではないかと思います。
それから、人材の多様性や流動性の確保のための支援・取組については、それが実施されていることだけでは不十分で、その効果の検証も必要なのではないかと考えます。
次に、研究資源です。
実際、いろいろな装置とか加速器、大型のものを持っていらっしゃるんですけれども、それだけではなくて、それを常に開発し続ける技術、人材とかノウハウというものがどのように蓄積されているか、蓄積するための工夫や取組を行っているかということを検証するべきだと思います。
これはちょっと難しいかもしれないんですが、天文分野で行われているようなオープンデータに向けた取組や方針策定の状況というのも見てみたいなと考えております。
新分野の創出に関してですが、他分野のユーザーが施設や設備を利用する際の支援状況ですね。ただ単に異分野融合のために、オープンに開放するというだけでは異分野融合というのは起こらないと思います。きっちりした支援というものを行って初めて異分野融合が進むと思いますので、そういう取組の実施状況を評価の指標に加えるべきではないかと思います。
次に、人材育成に行きます。
総研大で大学院生を受け入れられていて、大変優秀な方が育っていらっしゃるんですけど、学位授与数だけでなくて、キャリアパスがどのように広がっているか、あるいは、きちんと学位取得後に、路頭に迷っていないかということを検証すべきだと思いますので、そういうことも見ていただきたい。
それから、大学共同利用機関というところは大学のためにあると我々は信じているんですけど、研究だけではなくて人材育成についても、それ相応の貢献をしていただきたいと考えていて、今、大学では、大学院改革というものを非常に大きなテーマとして取り組んでいるところですから、そういうものに対する貢献というものも評価指標に加えていただけたらなと考えております。
次に社会との関わりについてです。
産学連携なんですけど、大体ここに書かれているようなことでもいいんですが、大学共同利用機関のような大きなところには、組織対組織の産学連携というものに向けた取組をどのように進めていらっしゃるかということも見ていただけたらなと考えます。
最後になりますが、大学院生だけではなくて、子供というか、小中高生の理科離れというのは、長いレンジではやっぱり国際競争力の面で、我が国に深刻な影響をもたらすと考えます。非常に重要だと思います。一般公開なんか見ていましても、KEKは非常に人気があります。そういう方面に対するいろいろな取組としては、非常に大きなポテンシャルを持っていると思うんですけど、小中高生に対する情報発信や科学教育に対する取組状況というものも評価指標に加えたらよいと思いますし、そこでも不十分だったら、更にやっていただくということが重要ではないかと考えます。
終わってしまったんですけど、これを出したときに、これだと12分掛からないんじゃないかということで、ゆっくり話そうかと思ったんですが、ふだんの癖でついつい早く話してしまって、終わってしまったんですけど、早く終わる分には構わないと思いますので、これで終わらせていただきたいと思います。
【観山主査】 ありがとうございます。
中野先生に対して何か御質問とか、先生は4時半ぐらいで、所用で退室されるということですので、後でも議論の時間はありますが、そこまではおられないかもしれません。ちょっと私の方から質問で、人材養成というか、大学院改革への貢献というのはちょっと新しい視点だと思うんですけれども、例えば素核研がどういうことをもたらしているとかという例がありましたら、紹介していただければと思います。
【中野大阪大学核物理研究センターセンター長】 実はこれ、手前みそになっておりまして、卓越大学院プログラムを大阪大学の方で今年度申請して、認めていただいたんですけど、素核研、あるいは物構研の先生からたくさん参加していただいています。今後、それがどのように大阪大学、あるいは大阪大学と関連する、共同で出していますので、そういう大学の大学院改革につながっていくかというところは見ていきたいと思いますが、それ以外にも参加されているのではないかと思うんですね。
だから、卓越大学院プログラムに限りませんが、大学というところは今、一生懸命、大学院の博士後期課程進学率を上げるためにいろいろ工夫しているんですけど、国際共同研究とかいうのは非常に役立っていると思いますので、そういうところでどういう取組をされているのか聞いてみたいなというのがここで書いた意図です。
【観山主査】 なるほどね。いかがですか、委員の方から何か。
フクシマさん、どうぞ。
【フクシマ委員】 どうも御説明ありがとうございました。
先ほど、2ページ目の、「国際的な連携や役割分担を進めるために必要な取組の実施状況を検証すべきである」という御指摘をされて、これは本当におっしゃるとおりだと思います。ただ、コミュニティーを代表して国外の機関との交渉や連携の窓口としての役割を果たしているかどうかというのを検証するには、どのようなことを見ていったらよろしいでしょうか。
例えば、「こういう問合せがたくさん来ました、それに対してこのような対応をしています」ということを、具体的に事例を挙げるのか、それとも、例えば実際にそういうところで窓口として、来て相談をされた方々からアンケートで評価をしてもらうとか、検証の方法として具体的な例があれば、お教えいただければと思います。
【中野大阪大学核物理研究センターセンター長】 日本もそうなんですけど、ヨーロッパとか、アメリカとか、各国で長期計画というものを立てているということがあります。そのときに、日本のコミュニティーの意見を反映させるときに、一研究者がその場に押し掛けていって、こうして欲しいとかああしてほしいということはほとんどなくて、やはりKEKを代表する方であったり、素核研を代表する方であったりという方が、国外のポリシーを決める場に出席されて、決めていっているということが行われていると思います。
そういう状況を、文書になるか、それとも、幾つそういうものをまとめていったかというふうになるか、それは分かりませんけれども、丁寧に検証していただけたらなと思います。
【フクシマ委員】 ありがとうございます。
【観山主査】 ほかの委員、何かありませんでしょうか。
今の、例えばヨーロッパのCERNというところで、大きな加速器の実験施設がありますが、日本の研究者もたくさんそれに参加していますが、その概算要求とか、お金が要るわけですよね。そういうお金を、各大学の先生が集まって概算要求をするということはちょっとできないので、素核研なりKEKが、KEKの装置のお金ではなくても、ほかの国の実験装置のある部分を分担するという概算要求を、KEKが中心となってやっていく。それから、海外との交渉事も、どういう分担をするかとか、どういう割合でお金を申請していくかという部分も、KEKが中心となってやっているという部分を指しておられるんだろうと思いますけど、一つは。
【中野大阪大学核物理研究センターセンター長】 そうです。CERNに対する貢献というのもありますし、それから、海外から貢献を引き入れるというときも、やはりKEKが窓口になって、一研究者が窓口になっているわけではないと思いますので、そういう機能というのは非常に重要だと思っています。
【観山主査】 小林委員。
【小林委員】 人材育成のところで、学位取得後の進路、これは非常に重要だと思うんですが、進路の中身も評価に入るのか。例えば大学、研究所に行くのか、民間企業に行くのか、国際機関を含めて海外で働くのか、そこに何か違いを付けるのか、付けないのか、あるいは、単にそういうことではなくて、路頭に迷っているか、迷っていないかでいくのか、でも、それはかなり、その分野の流れと時代のすう勢が影響すると思うんですね。例えば、原子力関係だったら今、非常に厳しいかもしれません。だけど、情報関係だったら非常にいいかもしれません。文系は昔からずっと厳しいかもしれません。それを研究機関の評価とすることができるのかどうかというのがちょっと気になるところが1点です。
それから、これは中野先生に限らないんですが、全体的に、同じようなことをやっている海外のすぐれた機関との比較というのは、要らないのかどうかですね。そこはすごい気になるところなんですね。ちょっときょうはお話がないので、それは加える必要がないのかどうかというのを伺いたいと思います。
【観山主査】 どうぞ。
【中野大阪大学核物理研究センターセンター長】 まずは、路頭に迷っているか、迷っていないか、見ればいいかなと考えます。検証というのは、何も点数を付けて、それによって格付をするわけじゃなくて、そういうこともきちんと気にすることによって改革していくということだと思いますので、そういうことを入れることによって、KEKはちゃんと、総研大も、卒業した後のことをちゃんと考えているんだなという情報発信にもなるんじゃないかと考えます。
2点目ですが、素核研と簡単に比べられる研究所はないのではないかというのは一つあって、だから、研究所レベルで何かをベンチマークするというのは非常に厳しいかなという気がします。ただし、例えばBelle2だったらLHCbがありますし、それから、ニュートリノ研究に関してもアメリカで対応するような研究があるので、そういうプロジェクトレベルでの比較というのは可能ではないかと思います。
【観山主査】 今回の検証というのは、相対評価ではなくて絶対評価である。でも、絶対評価はどうやってやるんだということもあって、天文台も言われましたけれども、研究所によっては、海外とのベンチマークというのも一つの考え方だろうし、それから、各研究所の時間的な推移でどうなっていっているのか。つまり、存在することによって、日本の学術並びにそれぞれの研究所の成果というのはどう上がってきているのかということ示すのも一つの観点ではないかと思いますけれども、なかなか研究所によって様々な性格がありますので、それは研究所がそれぞれ考えていただいて、いかに絶対評価というか、我々に対してアピールしていただくかどうかというのが重要なところだと思いますけどね。
【中野大阪大学核物理研究センターセンター長】 先ほど、国際性というのは参加数だけでは測れないのではないかと申し上げたんですけど、例えばそれをLHCbとの比較にすれば、測る指標にはなると思います。それも年度変化で、それぞれがどう変わっているかということを見れば、一つの評価の指標になるのではないかと思います。
【観山主査】 それも、装置ができたときは成果がどっと上がるけれども、だんだん時間がたっていくと、プラトーというか、下がっていくというのはありますので、そういう部分も踏まえて、適切な指標を提示していただくのが重要なことだと思いますけどね。
徳宿さん。
【徳宿所長】 私もやっぱり国内、あるいは国外でも、そこと比較すべき拠点というのを自分で上げさせて、そこと比較させるというのは非常に重要だと思います。それは、僕らは、レビューされる側が言うのもあれですけど、こちらから出せば、その機関が、一体どんなところと比較されたがっていると自分で思っているかということも含めて比較する、そちらでジャッジするというためにも、そういう形で出させるというのは、僕は非常に有用だと思います。
【観山主査】 ほかによろしいでしょうか。
それでは続きまして、名古屋大学宇宙地球環境研究所所長の草野完也先生から、同じく12分程度で、よろしくお願いいたします。
【草野名古屋大学宇宙地球環境研究所所長】 皆さん、こんにちは。御紹介にあずかりましてどうもありがとうございます。名古屋大学の草野と申します。
我々は宇宙地球環境研究所という、大学の共同利用・共同研究機関でございますけれども、そこで活動しております。文字どおり、宇宙と地球を我々の包括した環境であると認識して、宇宙科学と地球科学を結び付けるような非常に幅広い研究をしておりますので、いろいろな大学共同利用機関の皆様と連携させていただいております。
特に国立天文台とは、太陽研究を通していろいろな連携をしておりますし、我々は宇宙が主ですけれども、プラズマ物理という意味では核融合科学研究所とも強い連携がある。それ以外にも、宇宙線の研究とか年代測定の研究もありますので、素粒子原子核その他、物質科学の機構ともお付き合いさせていただいているということです。
そういう立場から、特定の、自然科学研究機構が主になると思いますけれども、できるだけ幅広く、自然科学研究分野という立場で若干のコメントをさせていただきたいと思います。
資料7をごらんください。まず、骨子案です。
これを読ませていただいて、非常に正確かつ妥当な書きぶりだと思うんですけれども、最初に、検証を行う目的の具体化というところがやや弱いのではないかと感じました。骨子案では、書かれているとおり、「学術研究の動向に対応し、大学における学術研究の発展に資するものとなっているか等を定期的に検証し、その結果に基づき、再編・統合等を含めその在り方を検討する」となっていて、行政文書としては非常に的確かつ正確な表現だと思うんですけれども、我々こういう検証とか評価をやるときに、ルーチンというか、定期的なものであると言われると、非常にやる気がなくなると思います。もっと積極的な意味が恐らくこの検証にはあると思っていまして、そのことについてはしっかりと具体化して、共通認識を持つべきかなというのが私の第1の意見です。
というのは、多くのデータが我が国の研究力の国際的な低下というものを非常に如実に表しているわけで、そこにやっぱり我々、もう少し強い危機意識を持つべきであろうと思っています。その危機意識を持った中で、この検証というのがどういう役割を果たすのかということについては、もう少し具体化した議論が必要かなと思います。特に大学共同利用機関というのは、我が国の研究力の基盤でありますので、大学共同利用機関法人というシステムが出来上がったことによって、我が国の研究力がどう発展していったのか、あるいは国際的な発展をキャッチアップすることが、実はできなかったのか、その辺の検証がやはり必要かなと思います。単に個々の機関の検証にはとどまらず、機関法人システムというものが、本当に我々にとってどういう役割を果たしたかということも含めて、明らかにするということがまず重要であろうと考えています。
第2の目的は、とにかく我々、日本の研究力をV字回復させなければいけないと思います。そのために、この検証をいかに生かしていくかということが重要であります。恐らく、いろいろな機関がありますので、いろいろな分野にまたがっておりますので、その状況は全く一様ではないと思います。その中に、非常に強い貢献をした機関もあると思いますので、そういうものを、例えばベストプラクティスとして見付けて、それをある意味、一般化していくような努力をしていくということに位置付けていくような検証を是非やっていただきたいというのが、まず1点目です。
ページをめくっていただきますと、その次ですけれども、骨子案には、組織再編も含めていろいろな方策をとると書いているんですけれども、組織再編というのは非常にコストの掛かる作業だと思います。なので、それだけに限らず、この検証を生かすような取組を見付けていけるような努力をしていただきたいと思います。組織再編に関しては、多大な労力を必要としますから、本当にそれに見合うものになるかどうかということが必要かと思います。
それから、何度も指摘されていることかと思いますけれども、評価そのものもコストが非常に掛かるものです。私も大学でいろいろな評価を受ける立場にあるわけですけれども、一般論からいうと、日本の大学あるいは学術機関の評価作業というのは、一般的に効率は低い。効率と言っているのは、要するに労働生産性が低いと言い直してもいいかもしれません。
日本の場合には、評価される側もする側も、評価のプロフェッショナルではなくて、基本的にピアレビューでやりますので、プレーヤーです。なので、プレーヤーがこの作業に携わるということは、研究をある意味、犠牲にして、評価なり検証なりをやっているということであります。そのことをちゃんと意識して評価システムを作らないと、効率の高いものにはならないと思います。
科学研究でもそうですけれども、測定するときに、精度の高い測定をすればするほど労力はたくさん必要になってきて、コストパフォーマンスは悪くなっていくわけですね。なので、評価の精度と研究の、ある意味、犠牲の量の中で、最適なレベルというのは恐らくあると思うので、そういうところをしっかりと見極めるということをしないと、日本人は非常に真面目ですから、評価をするというとどんどん細かいところまでやっていくわけですけれども、コスト意識をちゃんと持って評価をしていただきたいということです。
ガイドラインの位置付けについては、特に意見はありません。
検証の主体別構成についてですけれども、これも、基本的に自己検証と外部検証から成り立たせるというのは妥当だと思いますが、機関法人の詳細に関しては機関法人御自身が一番よく知っていますので、自己検証がやっぱり主体であろうと思います。外部検証に関しては、自己検証がしっかりされているかどうかということを確認するということが役割かと思っていて、自己検証するときに、強みだけではなくて、弱みをどれほど自分自身で認識しているのかということの検証をしていただきたいと思います。外部検証の場合には、新しい気付きを与えないと検証する意味がないわけですね。労力を掛けたけど新しい気付きはなかったというと、それはある意味、マイナスになってしまいますから、できるだけ新しい気付きを与えるような検証を行うということが重要かと思います。
検証の基準ですけれども、これは言うまでもないことですけれども、いろいろな大型研究設備があると思いますので、それぞれについての位置付けは一様ではありませんので、それぞれの機能についての検証をされるのが望ましいかなと思います。
検証の時期ですけれども、これも繰り返しになりますけれども、いろいろな評価があります。恐らく位置付けとか目的は若干違うんだと思うんですけれども、現場にとって、やることは大体同じなので、それをいかに統一化して効率性を上げるかということは、是非考えていただきたい。我々、共同利用・共同研究拠点で毎年、評価書を出しているんですけど、毎年ちょっとずつフォームが変わっていくんですね。そうすると、それに対応するために物すごく時間が掛かるとか、過去にさかのぼってデータを調べなければいけないということで、研究を犠牲にしなければいけないということがあります。そういうことが余り起きないようにしていただきたいと思います。
検証結果の報告に関しても、データベースの利用とかITの徹底的な利用によって、いろいろな効率を上げることが、負担を軽減することができると思いますので、是非そういうことをされるといいかなと思います。
先ほどの法人のシステムの在り方に関しては、述べたとおりです。
大学の共同利用・共同研究拠点との関係ですけれども、骨子を読むと、機関法人を拠点にしたり、拠点を機関法人にしたりという、非常に大掛かりな組織再編成のことが書かれているんですけれども、もう少しフレキシブルな人的・予算的資源の共有とか利用ということも含めて、いろいろな措置がとれるのではないかと思います。
例えば、我々の研究所の前身でありますけれども、太陽地球環境研究所では、太陽部門を天文台に移管することで国立天文台を作った。あるいは、私はかつて核融合研究をやっていましたけれども、広島大学にいたときに、広島大学の核融合理論研究センターを移管することで核融合科学研究所ができたということで、部分的ないろいろな人的・予算的資源の共有というのは、もう少しフレキシブルにやってはどうか。
というのは、法人化されたために、現状では、それぞれの法人が自らの法人ファーストになってしまっていて、自分たちの法人を守るということが非常に高い意識の中に入ってしまっていて、法人をまたいで、いろいろなことをやるということができにくくなっているような気がします。なので、そういうことも含めて、検証の一つの効果として検討されてはどうかと思っています。
指標例ですけれども、運営面に関しては、これも既に指摘があったとおりなんですが、コミュニティーとの共同利用・共同研究の成果をいかに共有していくかということが重要かと思います。単に運営協議会とか運営会議を開くだけじゃなくて、その内容まで含めてコミュニティーと共有して、フィードバックをしていくということが重要で、我々の研究所でもコミュニティーミーティングみたいなものを開いているんですけれども、そういう取組は重要かなと思います。
それから、それぞれの研究所の中で、いろいろなPDCAサイクルに関する研究マネジメントをやっていると思います。我々も各年度で、各教員そのもののパフォーマンスを執行部で共有したり、それに基づいてコメントをしたりということがありますので、そういうことがどれほどできているかということも評価していいと思います。
視点ですけれども、7つあるんですが、7つがそれぞれ等しい重みを持っているとは僕は思っていなくて、特に中核拠点性というのは非常に重要かなと思います。なので、そのことについては少し重みを持って検証されるべきかなと思っていまして、細かい点をいろいろ書かせていただきましたけれども、読んでいただければ分かるように書いております。
最後は、新分野の創出ですけれども、これは非常に重要ですが、大体、新分野の創出をやろうと思うと、ほとんどの場合、失敗します。新分野の創出というのは多くの場合、いろいろなチャレンジをして、その中の少数のものが成功していくという類いのものだと思っているんですね。なので、成果だけを見るのではなくて、そのためにどういう努力をしているのかということも評価すべきだと思いますので、そういう部分も含めて評価システムを作っていただければありがたいと思います。
以上です。
【観山主査】 ありがとうございました。
草野先生に何か質問、コメントはありますでしょうか。
評価に対するコスト意識を持つということは非常に重要だと思うので、それは我々も十分認識しているところですが、2ページの最初の部分で、組織再編に関してはコストが非常に掛かるんだということ、前期というか、研究環境部会でこれをいろいろ考えるときの一つの方向性として、今、4法人ありますけれども、それを例えば、非常に大ざっぱに言えば、一つにして、リーダーも一つにして、理事も少なくして、事務組織も簡素化して、相当の減額をしてできるんじゃないかという話もないわけではなかったんですが、草野さんのちょっと言われたので、組織再編というものは非常にコストが掛かるというのは、例えばどういうことを言われているのかなということをお聞きしたいんですけど。
【草野名古屋大学宇宙地球環境研究所所長】 組織再編でもいろいろな種類がありますので、一般論ではないと思います。だけれども、それに伴って、我々の研究所も組織改編を行って作って、それである意味、成功したと私は思っているんですけれども、末端に至るまでいろいろな努力が必要でした。それは、ガイドラインを作り直すとか、規約を作り直すとか、システム作りのためのいろいろな議論がありました。
それを通して、新しい気付きが与えられた部分もあります。ですから、プラスの面とそれに掛かる労力でのマイナスの面と両方ありますので、それに関しては、一般論としては言えませんけれども、簡単ではないという、その程度のコメントだと思っていただければいいかなと思います。
【観山主査】 そうですか。
藤井さん。
【藤井委員】 どうもありがとうございます。非常に見識のある御意見かと思いました。
最後の新分野の創出のところは、そのプロセスとか努力をというお話で、先ほど小杉先生の方からも、新分野の創出に戦略的な掘り起こしみたいなものが果たして適当なのかどうかという御指摘もあったと思うんですね。異分野融合的なものをやってみると、これとこれをくっつければいいみたいな話はなくて、いいキャンディデートが出てきたときに、それが進められるような枠組み、土壌みたいなものを用意するのはすごく重要だと思うんですが、そういうことをプロセスの一つとして取り上げるのがいいという御意見でしょうか。
【草野名古屋大学宇宙地球環境研究所所長】 はい、そのとおりです。我々の研究所は、藤井先生もよく御存じだと思うんですけれども、宇宙のかなたから地球の大気、海洋、地面の中、それから、人間の文化史まで含めて研究しております。いろいろな共同研究をやっているんですけれども、その成果をいろいろな分野で共有するような機会を、我々の拠点としては作りたいと思っていて、実際それによって、例えば年代測定とダークマターの検出とか、そういうものをつなげるような試みが、実は最近、されつつあります。
いろいろな新しい気付きを与えてくれていると思っていて、ただし、それが本当に芽が出て、成果となって、世界を牽引するようなものになるかどうかというのは、まず、やってみないと分からないという部分もありますので、そういうチャンスを、共同利用機関とか拠点というのは、作るような努力をしなければいけないと考えています。
【観山主査】 今の点は、別のヒアリングでもテーマが出てきたところですが、大学共同利用機関というのは、基本的に既存のコミュニティーに根差して作られたという経緯が、ありますけれども、ですから、コミュニティーの意見というか、コミュニティーが研究活動をするのに、非常にいいシステムでないといけないという外圧がいつも来ている研究機関だと思いますが、一方で、新分野というのはコミュニティーを超えて、新しいコミュニティーを作るという部分もしなければいけないところで、そこはいろいろな選択が必要な部分だと思うんですよね。
また、全然お金がなくてできる部分もありますけれども、お金が掛かるところもあるので、そこら辺は各研究機関が相当の、つまり、コミュニティーは大切にしなければいけないけど、それだけだとその分野しか進んでいかないという状況では、日本の今のある種の閉塞感というのは打破できないので、そういう部分をいかに検証の中で入れていくか、自己検証していくかというところは、非常に重要なポイントだと思いますね。
各機関のコミュニティーに支えられているというポイントと、新しい分野を創出しないとなかなか日本が世界に対して、新たなパラダイムを作っていけるのかどうかという部分が非常に重要なところで、難しいところだと思いますけどね。
小林先生。
【小林委員】 研究力のV字回復というのは非常に同感です。そうなると、今までの議論というのはクロスセクションですね。その年、その年度のいろいろなものを出して評価する。そうではなくてタイムシリーズ、V字回復というのであれば。その必要は、観点も含めて、ないのかどうかですね。それはいかがですか。
【草野名古屋大学宇宙地球環境研究所所長】 非常に重要な御指摘だと思います。正にその点を僕は重要だと思っていまして、これは単に各機関の評価というよりは、やはり時系列としてどうであるか。特にその時系列も、法人システムができる前と比べて一体どうだったのかということまで、タイムスパンとしては広げるべきだと思います。
それによって、我々の未来、これから10年間、20年間を見通したときに、どうすべきなのかということを考えるのが、実はこの検証の最も重要な役割なんじゃないのかなというのが私の意見です。
【観山主査】 佐藤先生。
【佐藤委員】 非常にクリアなお話を伺っておりましたが、ただ、主査が先ほどお話になった点といいますか、組織再編のコストという話について、ちょっと私の誤解が含まれてしまうかもしれないとも思いますけど、一つ伺っておきたいと思います。
お話の中で、先生の研究所の、前身である太陽研からの部分、それから、広島大学の理論物理学研究所から核融合研にというお話をしてくださって、それは、私が伺った限りでは、非常にポジティブな方向で進んだというふうにお聞きしました。
一方で、組織再編にはコストが掛かる。だから、それなりの覚悟を持ってというようにおっしゃったと思うんですが、その場合、組織再編といったときに、例えば規模の問題が主に関わる場合とか、それから、先ほどもお話に出た、新分野の創出と絡むような場合とか、類型と言うとちょっと大げさかもしれませんけれども、幾つか、場合があると思うんですね。
そういう点で、先生、どういう場合に、組織再編というのをやってみる価値があるのか、有効とお考えになるかという、何かポイントがもしおありでしたら、一つでも教えていただければと思うんですけれど。
【草野名古屋大学宇宙地球環境研究所所長】 非常に難しい御質問だと思います。正にそれですね。先ほど、評価のコスト意識と言いましたけど、コスト意識というか、恐らく組織再編をするときには、かなり長いスパンで物事を考えなければいけないと思います。なので、先ほど、法人化システムに関する、システムそのものの評価をすべきであると言いましたけれども、やはり10年、20年掛けて、その積分値の中で、それだけのコストを払うことが妥当であるのかどうかということを考えるべきだと思うんですね。
なので、この数年の1年ごとの、これから見える二、三年ぐらいのパフォーマンスで評価すべきではないと思っています。なので、一般論としてはなかなか難しいんですけれども、ゼネラルな意見としてはそういう意識を持っているということです。
【観山主査】 森さん。
【森委員】 お話どうもありがとうございました。非常に前向きで、システムをよりよくするための検証というご提案に賛同いたします。
その中で、8番のところに大学の共同利用・共同研究拠点との関係がありますが、やはり大学共同利用機関と共共拠点というのは役割が違います。しかし、協力や両者のフレキシブルな人的・予算的資源の共有を含めて最適な形態とありますけれども、新たな形で協力関係を築いて、新分野創出とか共同利用を進めるということで、具体的にどういうことを想定されているのか、もしお考えがあったら、教えていただけますか。
【草野名古屋大学宇宙地球環境研究所所長】 具体的な例は、私の非常に狭い経験でしか言えないので、なかなか難しいと思います。ただ、我々としては、今回の評価の範囲ではないかもしれませんけれども、JAXAの宇宙科学研究所と協力関係を持っていまして、観測衛星のデータ解析について、予算的に協力していただいて、マッチングファンドですけれども、両者のウイン・ウインの関係を築いていく。それから、国立天文台の皆さんからもいろいろな支援を頂きまして、太陽観測衛星のデータ解析について、我々、データサイエンスセンターを大学に作る。
それは実は意味があって、我々のところは、先ほども言いましたけれども、地球科学とか人類史という分野も研究しております。それから、名古屋大学は総合大学でございますので、文系も含めて、いろいろな分野と我々はつながりがある。そうすると、太陽研究というのは実は非常に広がりを持っていまして、地球環境にも影響しますし、過去の太陽の活動というのは人類史にも影響する可能性がある。そうすると、そういう分野との共同研究をやるときには、やっぱり大学の拠点の方がやりやすいという部分があります。
なので、そういう形で、それぞれのミッションに応じて、大学と大学共同機関との協力関係というのは、もっといろいろ作れるのではないかなと思っています。
【森委員】 ありがとうございます。とすると、拠点間のコントラクトによる共同連携ということで、目的に応じて一緒に進めていけるということですね。
【草野名古屋大学宇宙地球環境研究所所長】 そのとおりだと思います。ですから、単に大学共同機関を大学に移すかとか、拠点を機関化するかとか、そういう単純なものではないと思っていて、最適化するためには、もう少しスペシフィックな領域まで含めて、何が最適なのかということを考えるという自由度があるべきかなと思います。
【森委員】 ありがとうございます。
【観山主査】 どうもありがとうございました。
では、お待たせしました。神戸大学先端融合研究環研究環長の藏重久弥先生から、よろしくお願いいたします。
【藏重神戸大学先端融合研究環研究環長】 御紹介にあずかりました、神戸大の藏重と申します。
私自身の研究分野は素粒子実験、高エネルギー実験ですけれども、今現在、神戸大の中で、生命医学、文系も全部含めた分野融合の研究を進めるところとして、先端融合研究環長を務めております。
今回は、機関の検証へのコメントを求められまして、主に物理分野の私の経験とかそういうものを含めて、少しお話ししたいと思います。
まず、2ページ目で、今回の要件について、私が重要な点だと思っているのは、学術研究の中核的システムで、当然、国際的にも評価がある。それをどういうふうに評価するのかという問題ですね。
それから、観山先生もおっしゃられていましたけれども、これは共同利用機関として、我が国の学術研究を発展させる。特に大学との連携によって発展させるという観点が重要で、また、大学だけでなく、共同利用・共同研究拠点との協調を進めていって、全体を進めていくというような観点で、その要件を評価すべきだろうと思います。
3ページ目、検証の進め方ですけれども、今までやってきた点数を付けるというような話では絶対ないはずです。下にも書いてありますけれども、今までの5年なり、法人が始まってからを含めの経緯を見て、これからどうしていったらいいのかということが大事になります。各研究所、各共同利用の分野の特色あると思います。自己評価の場合に、それをはっきり打ち出していただいて、現在の状況とこれからどうしたいというビジョンを打ち出した上で、実現可能性の証拠として指標を出していただきたいと思います。
そういう意味で、評価への指標は、単に数字を並べていうのはほとんど意味ないと思っていて、こういうビジョンを持っているということをはっきり言って、そのために、現状の把握と将来のためにこういう指標、特に年次変化なんかが重要だと思っております。
何でこれをわざわざ言うかというと、参考資料1の評価の基準に、「「指標例」を基準とする」と書いてあって、指標例を出しちゃうと、みんな数字を埋めようとしますが、もう指標例はない方がいいと私は思っています。観点は重要だと思いますけれども、各研究所の観点で、この数字は大事だと。それは多分、分野と研究所のそれぞれの位置付けで変わってきますので、そこにお任せした方がいいと思います。
だから、優劣を比較するものではないですが、共同利用研究拠点との関係は重要で、どっちがいいとか悪いじゃなくて、どのようなコラボレーションがなされているかという観点でまとめていただけると、将来につながっていいと私は思いました。
一応、各指標に関しても私の意見を書いています。特に、運営面のことに関して「諮問に応じる会議体」と書いていますけど、重要なのは、何を諮問しているかがはっきりどこかで提示されていることです。各プロジェクトの将来計画をここは決めるのではなくて、それに応じたそれぞれの機関の運営方針を決めるということになると思います。それから、機関内の各分野の運営との関係が明らかになっているかどうかというのが重要な視点と思っています。
それから、外部委員について書いてありましたけれども、これは人数というよりは、どういう位置付けで入って、どういう選出方法がされているか、ということが分かるというのが、社会に対してコミュニティーに対して開かれ、情報公開や透明性というのが一番重要と思います。それがないと、各コミュニティーも、研究所に対する意見をどこからどうやって上げるというのが分からないと困るので、そういうことが明言されているというのが、運営に関しては重要な視点だというのを私は感じるところです。
中核拠点性ですけれども、「高い成果」と書いてあって、指標に論文数とか書いてあります。ほかの方も言っていましたけど、相互に優劣を比較するものではないと言っているのに、その数字を単に出すだけでは意味がない。例えば年次推移で、昔に比べてここは伸びてきたという位置付けで指標になるべきものでしょう。
それから、「当該機関に属さない関連研究者」の活動と書いてありましたが、自然科学系だとほとんど意味をなさない。共同利用、共同研究されているのは当たり前なので、何でわざわざこうなっているのかなというのがありました。
国際研究に関しては、研究者の受け入れ態勢と数の年次推移というのは重要ですけど、では、どういうふうに課題を公募するとか、どういうサポート体制ができているとか、公募の審査体制というのが明確になっているというのが一番大事だと思います。新分野を開くというようなときでも、そこにあやふやさがあると問題があるのではないかなと思います。そこが一つの観点かなと思います。
中核拠点性の研究者コミュニティーに関して、各研究所は特定の分野と結び付いて設立されたという経緯からそのコミュニティーの意見が重要だし、そのコミュニティーの方々が運営委員会に入っています。将来的なことを考えた場合に、近くの分野のコミュニティーというのも必ずあるはずで、そことどういうふうな関係をとっているか。いきなり運営委員会に組み込むことはないにしても、どういう方法で広げようとするのかという視点が重要と思っています。
コミュニティーを通じて、大学の教員、学生だけでなく、民間企業や国外へと共同利用・共同研究者をどうやって広げていくのか。数というよりは、どう広げていこうと考えているというのが研究所の運営のポリシーだと思いますので、それに応じてという意味で、私は書いています。
それから、不正行為ですけれども、研究者・職員だけでなく、大きな研究所で大きな施設を使わせているので、特に学生とか若い研究員に対しての教育というのも、中核を占めている共同利用研究所の使命ではないかと考えております。
国際性ですけれども、もちろん共同研究がどのように行われているかだけでなく年次推移が重要です。また海外の機関の比較、単純に比較するわけではなく、この研究に関して競争相手はこうであるというような比較は、確かに重要かなと思います。
単に海外の人がどれだけ来ただけでなく、研究所として、施設や設備の利用・貸与を海外にしているのかとか、そこの研究所を通じて、コミュニティーから海外機関への研究の参加をどういうふうにプロモートしているのかとかも大事だと思います。
研究方針策定に、国内だけでなくて、海外からの意見をどのように吸い上げていくのかという観点も重要だと思います。海外研究者の受入れ体制というのも、大学では難しいので、やはり中核になっている研究施設で進めていっていただきたいなというのが希望です。
研究資源に関しては、それぞれ利用状況だけでなくて、共同運用・整備というノウハウ、技術を持っていますので、その技術を各大学の関連した施設との運用で、うまく使っていけるという概念も重要かと思います。
共同利用・共同研究の支援体制に関して、運転・整備資金の確保が最も大事ですが、皆さん一番運営に悩まされて、なかなかそこの資金がうまく確保できていないという現状が重要だと思いますので、そこは強く主張してもらってもいいのかなと思います。専任職員も同じ意味で、インフラの整備が整わないと共同利用も成果が出てこないので、そこの状況を訴えていくことも重要なことと思います。
新分野に関しては、こことここをくっつけたらいいねとか、こことこことで何かできるというのはなかなか難しいので、そういう芽が出たときのアドバイスの場所になりますかとか、違う分野からコミュニティーから公募できることも重要かと思います。
人材育成ですけれども、大学院生教育・キャリアパスの形成も重要ですし、総研大や連携大学院だけでなく、共同利用にやってくる人の教育というのも、一つ大きな役割であると思っております。
若手研究者育成というのは、若手だけでなく、もうちょっと上の年齢層も含めた人材の流動性・多様性というのは、その分野の活性化にもつながりますし、共同利用拠点の成果にもつながると思っています。
社会との関わり、これは自然科学分野では、特に基礎科学だと難しいですけれども、一つは、サイエンスの思考ですね。論理的思考とか実証がサイエンスの基本ですけれども、学生を見ていても、これが全くないような理系学生もいたりするので、そういう面も含めていろいろなところからアプローチしていくということだと思います。
技術の観点からしたら、イノベーションのシーズとして産業界へどういう貢献ができますかということだと思います。
最後、今後の期待ということですけど、もちろん今回の研究所、皆さんそれぞれの研究分野で、本当に中核的なところで活動しておられますので、これからももっと広げていっていただきたいと思います。
以上です。
【観山主査】 どうもありがとうございました。
藏重先生に何か質問とか、コメントとか、ありますでしょうか。
永田委員。
【永田委員】 今の御説明の中で、僕らも分かっていて再認識しているのは、共同利用・共同研究の公募とその審査は重要なんだというのは、大変貴重な意見だと思います。共共拠点の場合もそうなんですけれども、自分たちの知だけではなくて、他から入ってくるものにどれだけ寛容で、しかも、どれだけ新規性があって、もともとの基盤研究の発展にも資するみたいなものをうまく取り入れるというアイデアは重要なので、そういう御意見なのかなと思ってお聞きしました。
ずっと人文系から今日まで、いろいろと聞いてきているわけですけれど、自己評価ということについては、どうしたらすごく研究が伸びるかどうかという問題を議論したいわけです。それで、法人というシステムが悪いという草野先生の、悪いかどうかは別として、そのシステムについても考えるべきで、それを実は2年間やって、今日、こういうヒアリングになっているわけです。
今のまま、それぞれの分野が頑張ってやっていくというのは当然ですけど、限界があると思っています。例えばデータサイエンスとか人工知能の研究は、何度も盛り上がっては下がったりしながら進んできました。そして今、圧倒的に日本は後れています。トップサイエンティストは、世界に伍(ご)する人はいるけれども、全然、総和ではかなわない状況になっていて、それはたまたまデータサイエンスの分野やAIの分野に起こっていることですよね。
それぞれの今おやりになっている研究の分野で、そうなったら絶対まずいわけですから、いかにして先を見た計画を、今の現状を打破する計画を立てるかだと思うんですよ。
先ほど草野さんが言われたように、今のまま続けていけば、そう爆発的に伸びる感じはしません。それには、精神ではなくてシステムを変えないといけないからなんです。精神の変革には時間が掛かります。みんなそういう気持ちでいるんだろうけれども、大きな研究の爆発的な発展がなかなか出てこない。さっきから出ていた、ベンチマークとして諸外国の似たような研究所、別にその研究所と比べることが重要なのではなくて、その分野の未来像がそこよりも劣っているのでは最悪なわけです。
これをどういうふうに僕らが見極めるかという証拠としてインデックスが出ているだけなので、研究力向上に資するのであれば何だっていいわけです。でも、その意識がない、例えば調査書が来ても、初めから見る気がしないというか、それでは話にならないわけですから、自分たちの立ち位置をよく知った上で、どうやったらその分野の研究が本当に狙うべき高みに行くかということを、僕らとしては見たいし、一緒にやっていきたいと思っているわけです。
組織論としては、それは2年間やりましたが、先ほど草野先生が御指摘された部分は、実はいろいろと議論して、ヒアリングもしたらこんな形になったという、ちょっとじくじたるところが僕らにもあります。いろいろな分野で、誰も今のままやっていっていいとは多分、思っていないと思います。何かしら、同じことを進めるにしても、組織論的に、システムとして変えていかなければいけない。
僕はやっぱりシステムとして、それぞれの大学共同利用機関の中、あるいはコミュニティー、あるいは、外側の研究所や外側のコミュニティーの人たちとこういうふうにムーブするんだというのが見えるのが一番いいかなと。それは、実はこういうデータに基づいて、こういう具合に今、動こうとしていますというふうになるんだと思うんですよ。
多分、そんなに違和感がないんだけど、あまり平凡なものが出てくると、何だかやった意味がないなと思うので、僕らの方も考えないといけない。そういう意味では、いろいろと聞かせていただいたのはありがたかったです。
【観山主査】 非常に重要な視点をありがとうございました。
フクシマさん。
【フクシマ委員】 永田主査代理がおっしゃったこと、私は大賛成です。実は先ほどから、数字をどうする、数字にどれだけ価値があるという話がたくさん出ていました。なおかつ、確かにこの審査をする、評価をするというのは、必ずしも優劣を付けることではありません。ただ、いわゆる日本の研究のV字回復を図ろうと言っているときに、国際的なものとの比較と時系列での比較をするということは大変重要だと思っています。
それで、「各機関は全て異なるので、同じような評価指数を比べるのは、できないことだ」というのも重々理解した上で、ビジネスの人間にとって大変分かりやすかった比較が、今回のプレゼンテーションでありました。こういうものがあるとV字回復につがるのかなと思ったのが、先ほどの国立天文台のプレゼンの中で、3ページに、日本の天文学論文の世界シェアと、それから、国際天文学連合、IAUにおける日本人割合、5.5%に対して8.4%、それから、14分野でマイナスの中で、天文学論文数の伸びがプラス45%というお話があって、これはビジネスの人間には分かりやすいプロダクティビティー、労働生産性の数字なんですね。
したがって、先ほど主査代理がおっしゃったように、それぞれの領域で、異なった数字が出てくると思いますが、「こういう項目を是非評価してほしいんだ」という御提案を頂けると、評価をするサイドとしては大変楽になるのではないかと思います。
私は専門外の人間なものですから、全部のプレゼンを伺って、皆さんそれぞれに努力をされて、すばらしい成果を上げていらっしゃるのに、どこをどういう項目と基準で判断するかということで迷うことが多いものですから、それを是非お願いできればと思います。
以上です。
【観山主査】 どうもありがとうございます。
機関側から何か御意見はありますか。
お二人の言われたことは非常に同感いたします。基本的に、全部の機関の予算を合わせると相当な額で、例えば筑波大学では随分、運営費交付金で見ると大きなものです。だからという問題じゃないですけれども、永田先生言われたとおり、今後の6年間にどういう進展が見られるか。それが予算的な、コストパフォーマンスという言い方は余りよくないですけれども、いかに日本の学術の進展に対して寄与できるのかという視点がないと、そういう観点で自己検証していただかないといけないと思います。退屈な評価をしてもしようがないので、未来志向というか、新しいパラダイムをどう開いていけるんだということを十分アピールしていただかないと、我々も、こちらのコストも掛かっているわけなので、それは十分認識していただければと思います。
【永田委員】 ちょっとだけ、わざわざ、うちの名前が出たから言うわけじゃないんだけど、リラックスして考えると、日本のラグビーが今回すごく躍進したのは、ラグビーというスポーツのルールを変えたわけではなく、ラグビーのやり方なんですよ。システムとして、リスクを負った新しいシステムを入れたからなんです。弱点は、日本は実はディフェンスだったんです。ダブルタックルという、必ず相手のフォワードが1人、フリーになるというリスクが前提で新しいシステムを入れた。分析した上で、計画をし直して、体作りもし直して、もう一度ディフェンスができるというパターンにして、やっていることはいつものラグビーなんですよ。
別に先生方が自分たちのご専門をやめるわけでも何でもないと思いますけれども、上のような意味で言っていて、それで勝てるのならそれで勝とうぜということです。勝つ負けるという問題ではなくて、学問をより深く追求するのに、本当にどうしたらいいのかという問題を、同じことをやっていたら同じだと思います。なので、目的は皆様と同じです。
だから、そこに、先生方は所長さんであるとか、法人を統括している方なんですから、いろいろな方と相談をして、本当に御自分の分野や関係の分野がより一層伸びるように提案を頂くのが一番、本当は分かりやすいかなと思っているということです。
名前が出されましたので、余分な例を出してしまいました。
【観山主査】 済みません。
佐藤委員。
【佐藤委員】 趣旨は同じようなことなのかもしれないんですが、自省を込めての話ということにもなるかと思います。
ヒアリングを今回までで一応、全機関にお願いしたことになると思いますけれども、正直申し上げて、ヒアリングはこれでよかったのかなという感じが、私にはちょっとしています。
なぜかといいますと、参考資料2の主な観点と指標例で、特に指標例を拝見すると、現在の状況、あるいは過去のこれまでの状況というような、ほぼそういうものばかりが並んでしまっている。しかし、これは皆さんおっしゃっていることですけれども、これからのことを考えなければいけないのに、そこを伺うようにはなっていない。だから、検証といっても、決して過去から現在までの状況を検証するだけではなくて、これからのことも、検証するのは非常に難しいでしょうけれども、やはり先も見ないといけないのではないかと思います。
ですから、そうした観点が、まさに参考資料2の観点の中に含まれていなかった。意識はしていたのかもしれませんけれども、表面的にはそうなってしまっていて、それで今回、ヒアリングに応じてくださった各機関の方も、そこにどうしても視点が行ってしまっていたのではないかなと思います。
ですから、チェックするのは難しいかもしれませんが、むしろ、観点の中に将来計画といったようなものを入れるべきではないかなと、全く私見ですけれども、今、思っています。その将来計画の中には、現状についての改善点とか、あるいは、マイナスになることは調書等にはなかなか書きにくいかもしれませんけれど、本当に困っている点とか、そういったことを自由に書いていただいても、私としてはいいのかなと思います。
それから、研究内容ですとか、あるいは、関係する研究者コミュニティーの動向を踏まえて、今後どういう方向に、広い意味で関連の学問分野が発展していくだろうかという見通しなども、是非必要だと思います。そして、それに関わることとして、既にいろいろな研究機関と連携をなさっておられるでしょうし、実際に他の分野とも、ともに働く方の協働、そういったこともやっていらっしゃると思いますので、それに関する今後の展望ですとか、あるいは具体的な計画があれば、展開の方向性といったものも書いていただいていいのかなと、いや、むしろお示しいただくべきではないかなと思っています。
何しろ今、議論になっているのは、当面は第4期ということですが、もちろんその先を考えなければいけないので、そういう意味で、検証の中に、決して過去、あるいは現在だけではない、その先についても、要素としてしっかりと含めるべきではないだろうかと思います。
以上です。
【観山主査】 重要な視点、ありがとうございます。
我々が考えた検証のガイドラインの中にも、過去12年間というわけじゃなくて、今後6年、12年間をどういうふうに見ていくかということが、一つの大きな検証のガイドラインですので、ただ、それは非常に思い切ったことを言っても、過去のいろいろな実績が、それを実現するための大きな、言ったらエビデンスとして、確実性を将来計画に対してもたらしているのかどうかということで、過去の実績を見させてもらうことも非常に重要だと思います。将来志向を中に入れるということは非常に重要で、なおかつ、それが時間の経過とともに、単純な進展が期待されるということで言うと、研究には紆余曲折がありますから、なかなか満足できないところもあるのではないかなと思っております。
ほかにいかがでしょうか。では。
【長谷川委員】 いろいろとありがとうございました。
研究ということで、世界トップの研究量、研究内容を持ち、なおかつ、日本の広くほかの大学のための研究状況をアップさせるという、すごい大きな使命を持っておられるところで、そこで、次世代の人材育成というのも、もちろん重要なことなんですが、人材育成の意味が、本当にジュニアなのか、ちょっとシニアなのか、うんとシニアなのかという、といっても45ぐらいまでの、その辺の感覚は結構違うと思うんですね。
それで、先ほどお帰りになった中野先生がおっしゃっていましたけど、総研大で、うちに入ってきた入学生に対して、学位を授与された人が何%あり、その学位を授与された人たち、又は授与されずに中途で出ていった人たち全員が、どういう研究職に就いたかというようなことを、この6年ぐらいにわたってのデータを随分集めました。
それで分析してみたら、必ずしも、ほかの大学の大学院に比べて研究者就職割合が高いということはなかったんですね。中途で単位取得退学していく人も結構いるし、入学者全体に対する学位取得率というのが、そんなに断トツなわけでもないしとか、企業に行く人、どこかに行って分からない人というのも含めて、研究職に就いているということがずっと追える人というのが、そんなに多くはなかったのです。
そこで、総研大としても、どんな使命を持つべきかということを考えなくてはいけなくて、そのときに、特別共同利用研究員としてほかから来ている院生たち、学生たちがどういうふうになり、連携大学院で来ている人たちがどういうふうになりということを総合的に、総研大だけじゃなくて、研究所が提供している次世代育成の力というのを全部割り出して、その中で、ではどういうところが一番、研究所は次世代育成に貢献しているんだろう。
総研大としては、ずっと5年間をやるべきなのか、もっと後期3年の方に重点を移すべきなのかとか、それから、今の世の中、物すごくPhDの数は増えても、アカデミックポジションは増えないというような時代に、少しはアカデミックポジション以外の道というのも、我々が示唆して提供しなければいけないのかとか、いろいろ考える。次世代育成と一くくりに言っても、どの点を重点的に今やられているのか、将来どっちに持っていくのかというのを考え直す時期にも来ているように思います。
その意味で、総研大としてできるIR活動は全部、皆さんの研究所に提供して、見ていただきたいと思いますけど、研究所として、どういう次世代育成にもっと足を入れたいのかというようなことの再検討もお願いできればと思います。連携大学院の人とかいろいろ含めて、それから、ポスドクがどうなったかも含めて、ちょっと大きな教育IRデータを皆さんと共有しながら、考えていきたいなと思っております。
【観山主査】 山内さん。
【山内委員】 きょうはいろいろと所長さんたちが見えているので、ちょっとお聞きしたいことが1点ありまして、最近、いろいろなところで、分野の融合によって新しいことをやりなさいということが盛んに言われます。確かにそれは正しい面もあると思うんですが、私はどちらかというと、分野の融合ではなくて、分野が分裂するときに新しいことができていくんじゃなかろうかと実は思っているんですよ。
だから、必ずしも融合、融合というのが、分野を作っていく新しい方向ではないのではないかとも実は思っているんですが、これは私の知っている分野に限った話かもしれませんので、皆さんの物理科学という、多少近い分野の方々が多いんですけれども、分裂と融合はどちらが有効でしょうか、御意見を伺いたいんです。
【観山主査】 融合と分裂、何か、いかがですか。
もうちょっと、分裂というのは、何か具体的な例を。
【山内委員】 済みません。新たな研究分野を、こういうことをしたいと思う人が飛び出していって、そこがコアとなって新しいものを次に作り出すというところによって、新しく始まるんじゃないかと私は思っていまして、そうなると必要なのは、融合ではなくて、分裂しようとしている人をいかに寛容に育てていくかという姿勢ではないかという気もするんですが、ほかの分野ではどうかというのを伺いたかったんですが、もし時間が掛かるようだったら結構ですが。
【観山主査】 では、核融合研。
【竹入所長】 核融合研は、30年ほど前に、いわゆるプラズマ関係の中で、特に核融合を志向した、いわゆる高温プラズマを中心的に核融合科学研究所ができましたけれども、そのときに、プラズマという非常に多様性のある中で、低温プラズマといいますか、数eV、数十eVの温度の低いプラズマ関係に、ある意味、当時としては飛び出ていったグループがいて、そういう人たちが産業界とか、半導体プロセスとか、あるいは、最近はバイオロジーとか生物関係にまで幅広く領域を広げてきている。
それとともに、今ちょうどそのグループと核融合研、高温プラズマのグループが再び共同研究をする。分裂して、お互いがそれなりの経験を基に分野を発展させて、その発展させた結果をまた共同研究の形で、連携するような形に来ているというのは、プラズマ核融合の分野ではあります。
【観山主査】 そうですね。天文分野でも、装置開発という面では、物理の先端的なグループが、天文学のある分野を完全に、融合というよりは乗っ取ってしまうというようなことの歴史は結構あって、天文分野でノーベル賞をもらっている人は、今年はちょっと違いますけれども、物理分野の人が参入してきて、非常に輝かしい成果を上げてきたという例はありまして、それは分裂なのか、融合なのか、割と微妙なところがあったように思いますけれどもね。
では、藏重さん。
【藏重神戸大学先端融合研究環研究環長】 一応、先端融合研究環という名前を拝命しておりますので、その意味で、先ほども融合研究と言っていましたけれども、当然、融合していってどんどん分野が大きくなる、巨大化することを誰も目指していないわけですよね。新しい分野ができて、成熟していれば、もちろん飛び出して、ある意味、山内先生のおっしゃる分裂になると思いますけど、そのときに、外を見る、新しいアイデアを入れるという意味で、融合というのが重要なキーワードになっていると思って、私の方は進めておりますので、その意味では、分裂と融合は余り変わらないのではないかと。何も大きくなって、全部分野を乗っ取るようなことではないと思いますので、同じことかなと思っております。
【観山主査】 常田先生。
【常田台長】 3つぐらいコメントさせてほしいんですけど、一つは、自然科学研究機構で、アストロバイオロジーセンターというのがありまして、アストロとバイオロジーを融合するということで、これは天文台の組織ではなくて、自然科学研究機構の中に入って、天文台からポストを移していますので、ある意味で分裂だと思います。
それから、統計数理研究所と、ビッグデータという観点で研究者を送り込むということで、新しい試みを天文台で始めていますので、これも天文台から統計数理の方に、少し分裂していっているのがあります。
3つ目は、草野先生の研究所ですけど、ここは、さっき太陽のお話もされていましたけど、分裂を促進するような機能が、草野先生の研究所にはあると思っていまして、太陽分野というのは非常に裾野が広くて、例えば、過去の地球環境と太陽活動の関係ということで新しい分野ができていて、天文台はそういうことをやれないんですけど、草野先生の研究所を支援することで、そういう分野の裾野を広げていこうということもやっているということで、そんな規模は大きくなりませんけど、先生のおっしゃったようなことは少しずつやられているかなという気はしています。
【観山主査】 草野先生。
【草野名古屋大学宇宙地球環境研究所所長】 常田台長からコメントがありました。どうもありがとうございます。
融合研究に関して、いかに難しいかというのは、実は私、よく知っていると思っていまして、私自身がもともと、先ほど言いました、核融合研究を学生時代にやっていて、そこから、今は地球環境も含めて宇宙地球環境の研究をやっている。
融合研究は、これは融合研究だねとみんな認めるような論文というのは、恐らく余りないんですよね。だけれども、融合研究を志向しながら、新しいものが出てくることはある。すなわち、僕自身がそうなんですけれども、先ほど、分野の寛容さということを言われましたけれども、ある一人の人が、ほかの分野に挑戦してみようとするということがまず重要だと思います。その中で、その人の持っているものがほかの分野に行って、新しい研究として出てくる。それは明白に融合研究として、皆さんが見えるものではないかもしれないけれども、その分野にいた人には気付かないようなものになっている可能性がある。
だから、新しいものに分野を横切って挑戦しようという人をいかに育てていくか、いかに受け入れてくれるかとか、そういうことが重要であって、拠点となる機関としては、そういうことに留意して運営をするべきだと思っています。
【観山主査】 なかなか数字には表れない、寛容性みたいなもの、分裂に対する寛容性とか新しい分野に対する寛容性というのは、どういうふうに自己点検の指標として出していただけるのか、難しいと思いますが、非常に重要なことだと思いますね。
ほかにいかがでしょうか。
どうもありがとうございました。少し時間は早いんですけれども、今回で全研究機関のヒアリングを終えました。
有識者の方々からも非常に貴重な意見を頂きましたので、これらの意見を踏まえて、今後、委員だけで全体的な質疑応答や意見交換の時間をとって、最終的なものにしたいと思います。それでは事務局におきまして、本日皆様から頂いた意見を整理させていただきまして、今後の検討につなげたいと思いますけれども、最後に、その他に関して、事務局から何かありますでしょうか。
【降籏学術研究調整官】 ありがとうございました。
次回の本作業部会につきましては、また改めまして御連絡をさせていただきたいと思います。
以上でございます。
【観山主査】 長時間にわたり、委員の皆様、それから、研究機関、有識者の方々、どうもありがとうございました。これで終了させていただきたいと思います。

                                                                  ―― 了 ――

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