研究環境基盤部会 大学共同利用機関改革に関する作業部会(第5回) 議事録

1.日時

令和元年10月10日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省15階 15F特別会議室

3.議題

  1. 「大学共同利用機関の検証ガイドライン(仮称)」に関するヒアリング
  2. その他

4.出席者

委員

観山正見主査、小林良彰委員、小森彰夫委員、佐藤直樹委員、平川南委員、山内正則委員

文部科学省

村田研究振興局長、増子大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、西井学術機関課長、降籏学術機関課学術研究調整官、吉居学術機関課課長補佐、小林学術機関課課長補佐、二瓶学術機関課連携推進専門官、その他関係者

5.議事録

【観山主査】 時間になりましたので、ただいまより科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会大学共同利用機関改革に関する作業部会(第5回)を開催いたします。
委員の先生方、また、出席者並びに有識者の先生方におかれましては、本日も御多忙のところを御出席頂きまして誠にありがとうございます。
まず、事務局より本日の委員の出欠、配付資料の確認をお願いいたします。
【降籏学術研究調整官】 本日の委員の出欠状況でございますが、本日は永田委員、長谷川委員、フクシマ委員、藤井委員、森委員が御欠席です。また、本日の会議は、前回に引き続きまして大学共同利用機関の検証ガイドラインにつきまして、大学共同利用機関と有識者の方々からヒアリングを行います。そのため本日は、委員のほか関係の皆様方にも御列席を頂いております。お忙しいところを御出席頂きまして、ありがとうございます。
続いて本日の配付資料の確認をさせていただきます。本日はペーパーレス会議で実施をさせていただきます。お手元にタブレット端末が置かれていると思いますが、こちらの方を基に進めさせていただきたいと思います。お手元に端末の使い方という資料を配付してございますので、よろしくお願いします。
配付資料でございますが、議事次第にありますように、資料1から資料7まで、各大学共同利用機関の説明資料、また、有識者の方々の説明資料ということで配付しております。また、参考資料1から参考資料4までの各参考資料を配付してございます。また、委員の皆様のみで恐縮ですが、今回も机上配付資料としまして、審議のまとめの本文と大学共同利用機関の関係資料を置かせていただいておりますので、適宜御参照いただければと思います。
御不明な点などございましたら、事務局の方までお願いいたします。
以上でございます。
【観山主査】 資料の方はよろしいでしょうか。それでは、議題1、大学共同利用機関の検証ガイドライン(仮称)に関するヒアリングについて取り扱いたいと思います。前回は人文学の分野について、五つの大学共同利用機関及び有識者の方からお話を行いました。本日は数学・情報学・環境の分野について四つの大学共同利用機関及び有識者の方々からそれぞれ御意見を伺いたいと思います。なお、前回配付したヒアリングの進め方に関する資料は、今回、参考資料4として配付しておりますので、適宜参照していただければと思います。
それでは、早々ヒアリングを始めたいと思います。まず、総合地球環境学研究所から、続いて国立極地研究所、国立情報学研究所、統計数理研究所の順にそれぞれ8分以内で説明をお願いします。残り3分の段階でベルを1回鳴らすそうですので、終わりを意識していただき、2回目のベルを8分の段階で鳴らしますので、2回目が鳴りましたら説明を終了していただきますよう、御協力のほどお願いいたします。
それでは、総合地球環境学研究所から御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
【安成所長】 総合地球環境学研究所、略称地球研の安成です。本日は説明の時間を頂き、ありがとうございます。時間も限られていますので、重要な点に限定して説明いたします。まず、機能別分類について地球研は大型設備、データ、あるいは情報基盤というよりも、それらの要素も含めながら学際研究の学術基盤・プラットフォームとして分類されることを希望します。
次に、地球研の特性を踏まえながら資料に沿って御説明します。まず、検証の進め方についてですが、大学共同利用機関は設立の経緯も、ミッションも、研究の在り方も同じではなく、多様な在り方をしていることこそが重要です。特に地球研は研究分野が広範かつ多様なこともあり、外部検証に当たっては多様な研究分野からの研究者を選定し、適正な評価を行い得る評価者の専門領域や人数等に御配慮いただけるようにお願いします。その際、地球研が推進する総合地球環境学自体がいわば自然と人間活動の相互作用環のプロセスを理解し、その相互作用における問題を解決するために文理の連携、融合により多元的で多様な見方を提供できる特性を持つ環境学であることに御留意願います。
具体的には、地球研はそのミッションに基づいた大きなテーマに沿って、公募型を基本とする文理融合研究を行っていることから、ディシプリンベースの分野別の構成は常に変化をしており、多様性・学際性を評価する観点を是非取り入れていただきたいと思います。また、地球環境問題の解決に資する研究という視点から、社会との協働・共創による成果を評価する観点を取り入れることを希望しております。なお、指標により検証する成果については、予算折衝等に用いられる、いわゆる共通指標と同様の単年度ごとの成果ではなく、このような学術分野の特性を踏まえた複数年の変化の観点や対象期間の適当な範囲を検討頂くことを希望します。
以下に主な観点及び手法について具体的に提案いたします。まず、2番目の主な観点についてです。特に修正、追加頂きたい点は以下のとおりです。まず、中核拠点性についてですが、各機関が当該分野の研究拠点として機能別特性に従って共同研究に供している学術基盤を有していることを明確にするため、当該分野での先導的な学術研究開発の基盤となっていることを新たに追加することを提案します。国際性ですが、3番目の研究者の在籍状況について、在籍状況だけで国際性を測ることは可能か判然としないため、これに加えて外国人の共同研究者数や機関の規模や教職員数における割合を検討することを提案します。研究資源についてですが、学術研究基盤として共同利用・共同研究の仕組みを含む学術資源を共同利用・共同研究に供していることを新たに提案します。
では、地球研では何を共同利用・共同研究しているのかということですが、地球研のプロジェクトでは、国際公募を行い、インキュベーション(萌芽的)研究、予備研究、プレリサーチ、フルリサーチというプロジェクト形成段階を踏んでおります。この国際共同研究の形成過程において研究成果、学術、あるいは学際及び超学際研究手法、研究や社会実装におけるネットワークを含む各種の学術資源を共同利用に供しています。そこで生み出された学術の成果や社会実装は地球研に蓄積され、それが次の新たな研究シーズや更なる共同利用に供されることになります。こうした共同利用・共同研究の仕組みを含む学術資源を供していることを評価の観点に入れていただくことを強く希望いたします。
新分野の創出ですが、学際的あるいは融合的領域における著しく高い成果というのは、既存分野での既存の評価、例えばいわゆるTOP10%やTOP1%などの指標では必ずしも評価できるものではありません。したがって、より広い分野や社会から見た新たな価値というような観点での評価であることも追記することを提案いたします。人材育成ですが、総研大や連携大学院に限定せず、先端的・国際的な共同研究などへの大学院生の参画を通した人材育成に取り組んでいることを新たに提案します。社会との関わりですが、これは、地球研は強力に推進しており、指標案で具体的な提案をいたします。
指標例についてですが、指標として特に修正、追加頂きたい点は、以下のとおりです。まず、中核拠点性ですが、観点として提案した点を勘案して、新たな指標として先導的な研究を推進する体制の整備状況等を提案します。国際性についてですが、地球研ではプロジェクトの採択に当たり、外国人が過半数の外国評価委員会による厳格な審査プロセス等を有していることから、新たに海外研究者を含む外部有識者の定期的な評価やアドバイスとその反映状況等を提案します。
新分野の創出ですが、この新分野の創出に当たっては、学際研究あるいは異分野融合研究が果たす役割が大きいと認識しており、例えば学際研究の度合い、あるいは領域間の距離等を新たに提案します。社会との関わりですが、地球研では、超学際研究として様々なステークホルダーと課題解決型のアプローチを用いて調査研究活動、あるいは社会実装を推進しております。こうした取組を評価する指標として、産業界や地域社会に共同利用された研究設備、研究成果、研究環境、あるいは地域社会や国全体の課題解決のために直接的に社会と協働した事例のほか、社会との協働を可能とする環境整備・取組状況等を新たに提案いたします。
最後に、改めて機能別分類の観点から、冒頭に申し上げたとおり、地球研は文理融合と社会との協働・共創を柱にした総合地球環境学の推進と展開の国内外での先導的な役割を果たしており、そのため上記の三つの分類ではなく、これらの要素も一部含みつつも、このような先導的な研究の学術基盤・プラットフォームを供していることを機能として、新たに分類・構成していただくことが適当と考えております。本改革部会第1回及び第3回の審議でも機能別分類については類似の御意見が出されていると認識しており、学術基盤・プラットフォームを新たな分類として整理頂くことを強く希望して説明を終わりたいと思います。
以上です。
【観山主査】 どうもありがとうございました。
それでは、後ほど質疑応答、意見交換の時間をとっておりますけれども、ただいまの説明に関して何か御質問があればお願いいたします。いかがでしょうか。前回、人文系の場合にも申したのですけれども、指標例というのが例でありまして、もしも実際に検証が始まりましたら、指標例は一つの指標ですけれども、それぞれの研究所、やはり非常に独自性がありますので、強みを是非発揮されるような指標を御提案頂いてというか、それを提示していただいて臨まれれば結構だと思います。
【安成所長】 はい。分かりました。
【観山主査】 一つ、特に新分野の創出のところでTOP10%とかTOP1%、これは前回も人文系の場合にはこういうものがないのでと盛んに言われていましたけれども、こちらから申したのは、例えば地球研が、非常に成果が具体的に分かるような指標を提示していただいて、そういう提示の中でどれだけ頑張っているのだということを、TOP10%かTOP1%って一つの例でありますので、それもよろしくお願いいたしたいと思います。
【安成所長】 はい。分かりました。
【観山主査】 よろしいでしょうか。それでは、後に時間もとってありますので、次に国立極地研究所からお願いいたします。
【中村所長】 それでは、資料の7ページ以下に基づいて御説明いたします。国立極地研究所の中村でございます。よろしくお願いします。
7ページです。国立極地研究所は、極地に関する科学の総合研究と極地観測を行うことを設置目的としまして、南極に昭和基地が設置されてから16年後の1973年に設立されました。その18年後の1991年には北極のスバールバル諸島にも基地を建設し、南極、北極、両極の観測及び研究を全国の大学の研究者と行っております。設置当初は未解明の大陸である南極を知るという調査研究が中心でしたが、現在は南極・北極を通じて人類の生存する地球の変動、すなわち地球の将来を知る、人類の将来を知るといった研究へと変わってきております。特に2011年以降は、北極研究においても補助金を頂いて研究プログラムにおいて全国の研究者を取りまとめるような中核機関を務めております。
8ページですが、情報・システム研究機構内では、極地研は地球に関する複雑科学である「極地の科学、極域科学」を地球惑星科学や生態学の分野をベースに情報とシステムの両面から研究をしております。
9ページ、極地研は、現在、南極で大陸周辺部の昭和基地と1,000キロメートルほど内陸に入ったドームふじ基地の二つの基地を附属施設として設置運用しております。基地そのものが研究をサポートするプラットフォームでありますけれども、例えば昭和基地では南極唯一の大型大気レーダーで地球大気の循環を高精度に観測することができ、国際的な学術コミュニティから待望されているデータの提供、あるいは内陸のドームふじ基地では、70万年前までのアイスコアを掘削し、極地研が独自に開発した分析装置も駆使して、過去の気候変動を世界最高精度で分析することなど、プラットフォームや大型装置を生かして共同利用研として貴重な観測データを供給しております。
10ページ、一方、北極では1991年より北極点からわずか1,200キロメートルのスバールバル諸島、ニーオルスンに基地を設置しまして、全国の研究者の利用に供しています。極地研の附属施設となってから28年経過しまして、本年新しい建物の新基地に移転しまして、利用の拡大を目指しています。この基地のほか、北極圏内外の様々な観測施設を拠点として全国の研究者の利用に供しております。
11ページです。二酸化炭素が南極を含む全地球で400ppmを突破しまして、その影響において地球温暖化は、北極域ではほかの地域の二、三倍の速度で温度が上昇しています。そして、北極では海氷面積が急激に減少しまして、航路や資源の面で注目されるとともに、グリーンランド氷床の急激な減少が海水面の上昇を引き起こす要因となっております。
12ページ目ですけれども、一方、南極には北極の10倍の氷床が存在しています。今のところ、氷床の総量の少ない西側の南極域での融解が見られている段階ですけれども、氷床量が極めて多い東南極での大規模な融解が加速度的に起こることが懸念されていまして、極地研が実施中核機関となっております南極観測では、強力な砕氷能力を有する観測船「しらせ」を融解の懸念されているトッテン氷河沖に機動的に派遣する集中観測を本年から計画しており、まさに世界に先駆けて注目領域を観測研究する計画が進められております。
このように極地研は観測データが一種の最終プロダクトではありますけれども、その貴重かつ稀少(きしょう)なデータを取得するための観測プラットフォームや大型設備も共同利用の特徴となっており、プラットフォームを応募研究で利用できるよう様々な研究者の利用に供しております。
それでは、13ページ以下、かいつまんで御説明いたします。13ページ、検証の進め方についてですが、学術の動向や国内・国際社会の変化に即して大学共同利用機関が適切に対応し、自己変革が進められているか検証することは重要であると考えます。一方で、それぞれに際立った特色のある大学共同利用機関を俯瞰(ふかん)して適切に評価することは重要であるとともに、十分な注意を持って行われるべきと考えます。数値的な指標だけではなく、特徴とすべき特徴を持つ設備・共同利用・取組や数ある成果の中でも注目すべきものなど、注目すべき事項を挙げて専門委員の評価を得られるようにしていただきたいと思います。
検証のガイドライン骨子案に示される自己検証や外部検証についても適切と考えております。是非学術研究の発展を見通せる外部委員の充実をお願いしたいと思っております。一方で、次のページですが、評価の連続で疲弊することがないように、法人の評価や機関ごとの外部評価と重ならない再編統合の必要性を検討すべき項目に特化した評価としていただきたいと思います。研究分野につきましては、極地研を「環境」、「環境学」と分類することは適当でないと考えています。先ほど述べましたように、極域科学は環境学分野とは異なりまして、地球惑星科学や生態学などを基幹とする「極地」、「極域」をキーワードとする複合的な研究分野であることを委員が理解できるものにしていただきたいと思います。極地研の扱う環境はローカルな環境ではなくて、人類の将来を左右するグローバルな地球環境と考えています。
それから、15ページ以下、主な観点ですけれども、だいたい適切と考えております。Vの新分野の創出につきましては、極域科学という分野自体が南極でありますとSCAR――南極科学研究委員会というISCの学際組織で推進されていることからも、本来的に学際的・融合的な研究となっています。そのため、極域科学自体の発展が学際・融合研究の発展にほかならないという点についても御理解を頂きたいと思います。
それから、17ページ以下、指標例ですけれども、中核的拠点性について、TOP10%論文が指標になっていますけれども、極地研の出版する論文では同じ外国雑誌でもその分野によって引用が多少違う、短期間に引用されるものと長期間にわたって引用されるものがあるということで、この状況を考えると単純にTOP10%論文の統計は適当ではないのかと思います。
そのほか18ページ、国際性の指標ですが、学術に限らず政策・外交など多様な国際会議への専門家の派遣件数なども検討頂きたいと思います。それから、VIIの社会との関わりですが、大学共同利用機関にも産学連携が大学と同様に強くエンカレッジされるようになったのは、つい最近のことと思いますので、産学連携の推進体制の整備なども指標に加えてはどうかと思います。
最後の機能別分類ですけれども、19ページです。二つ目に書いてある、極地研はデータに分類されていますけれども、そのデータは予算の大部分と多大なエフォートで実現されている観測プラットフォーム・大型設備、観測プログラムなどを駆使して得られるものですので、それらが共同利用に供されていることをお考え頂いて、大型設備の観点としても重要であるという評価をお願いしたいと思います。以上です。
【観山主査】 どうもありがとうございました。それでは、極地研に関して何か。小林委員。
【小林委員】 TOP10%論文の統計については全く同意見で、これは分野によってサイテーションのピークは違うので、基本的に3年とかでは、多分、極域科学はないと思うのですが、そうすると極域科学の場合、サイテーションのピークは何年ぐらいがピークなのか。これはエルゼビア、全部、領域ごとにとっていますが、極域科学の場合を教えていただきたいのが1点です。
2点目ですが、少しほかとは違いまして非常に重要な、ほかももちろん重要なのですが、特に北極ですと新しい北極航路の開発とか、そういう産業界への寄与というのはどういうような指標を設けたら、それが一番計れるのか、それをもし何かアイディアがあれば教えていただきたい。この2点をお願いします。
【中村所長】 御質問、ありがとうございます。まず、1点目なのですけれども、エルゼビアでは各ジャーナルによりまして統計を取っているわけです。今回申し上げたのは、同じジャーナルの中でも、これが例えばモデリングに近い論文なのか、あるいは1年に1回、極地に行かないと新しいデータが取れないような、そういう観測に非常に基づくものなのかということで、違うわけですね。単純に数値は申し上げられないのですけれども、20年ぐらいは十分に引用されるやつと、それから、もう出してから二、三年でどんどん引用され出す、両方あるという、それが混ざっているので指標が作りにくいということです。
それから、二つ目の産業界への貢献なのですけれども、これは私ども本当にこの二、三年、急速に需要も出てきまして、進めている、特に北極の方では補助金での観測研究プログラムで強く求められているところなのですけれども、これも立ち上げたところというところで、我々も数が、じゃあ、10、100あるとか、そういうような状況ではありませんので、今回、御提案申し上げたように産学連携の整備体制、こういったものも、数としてどうなのかということはまだ検討段階なのですが、整備状況を是非考慮に入れていただきたいと思っています。以上です。
【観山主査】 どうもありがとうございました。 それでは、続きまして国立情報学研究所から御説明をお願いします。
【喜連川所長】 お手元の資料の21ページをご覧ください。国立情報学研究所の所長の喜連川でございます。私どもは、情報・システム研究機構に属しておりまして、その四つの研究所の一つとなっております。22ページが情報研の設置目的、ミッションについて記載してございまして、ここに記載しておりますように情報学研究に関する総合研究、そして、それに加えまして学術情報の流通のための先端的な基盤の開発及び整備ということになっております。下に二つ絵が書いてありますように、研究と、それから、情報基盤としてのサービスを事業として行う。この両輪を支えるというのが情報研のミッションになっているわけでございます。
さて、23ページに移りますが、今日、種々の研究者におかれまして情報基盤をお使いにならないという方はほぼ皆無に近いということから、情報研のミッションといいますのは、どちらかというと情報分野に何かをするというよりも、情報分野を含む全ての研究者に対してのサービスというものが中心になるということを、その特殊性があるということを御理解いただければと思います。
その最たるものがこの24ページに書いてございますSINET5と呼ばれている学術情報ネットワークでございまして、これは100ギガビット/秒という超高速のネットワークを北海道から沖縄まで、少なくとも各県に1ノードが配置されるようなサービスを行っております。この100ギガというのは少し分かりにくいかもしれないのですけれども、いわゆるインターネットプロバイダ、インターネットサービスプロバイダのメニューには100ギガというのはございません。皆様の御家庭で光ファイバーを使っている場合は大体100メガでございますので、1,000倍速いということになっているわけです。
これはどうしてかといいますと、いわゆるビッグサイエンスというものは非常に膨大なデータをやりとりなされるということから、このネットワークを運営してきているわけでございますが、現在、1,000弱ぐらいの機関に御利用頂きまして、ビッグサイエンスというカテゴリーではなく、非常に多くの学術に日々御利用頂いているということでございます。
25ページを見ていただきますと、実はこのSINET5というのは2016年から運用を開始しておりますが、その前はSINETの4と呼んでおりました。この左下の図を見ていただけますとありがたいのですけれども、日本は40ギガは結構早くやっておりましたが、米国、EU、中国が次々と100ギガ化している中で、日本は大分ビハインドいたしました。その中で学術会議や国大協、あるいはこちらの大型研究の審査会等で強い御支援を頂きながら、ようやくこの100ギガ化が達成されることになりまして、その右のような、今、国際性も含めて、今年の3月から100ギガ化が実現できているということでございます。そして、それに加えまして熊本や、あるいは胆振や、あるいは西日本の大豪雨、いずれにおいても一瞬たりとも切れないというようなサービスレベルで御活用いただけているかと存じております。
さて、その次のページが26でございますが、このSINETの上では24時間、365日のセキュリティサービスというものも国立大学を対象にして運用させていただいております。更に27ページでございますが、最近はこの研究データというものがハイライトされるようになっております。Society5.0といいますのは、いわゆるデータ駆動社会というふうに一言で言うと表現されることになろうかと思いますが、学術もデータ駆動というものに大きく転換しておりまして、皆様も論文を投稿するときにエビデンスとなるデータの提出が求められるようになってきていることは、御承知かと思います。この膨大なデータの管理をどうするかということに関しまして、CSTIからデータ基盤のソフトウェア開発を御希望、依頼を頂きまして、2020年からこれを適用する。とりわけ、規模の大きな国家プロジェクト、ムーンショットでの利用がもう確定している次第でございます。
この基盤に関しましても、全学術のデータを対象としております。NIIは情報分野のシステムというよりは、学術全体のシステム開発が中心になっているということでございます。それ以外にも28ページを見ていただきますと、機関リポジトリというものがございますが、これはJAIRO CloudというものをNIIは開発しておりまして、現在、4分の3弱程度の研究機関がこの私どものソフトウェアを御利用になっております。
それから、29ページでございますが、研究においては、継続的にERATOを推進するなど多彩な研究を鋭意実施しております。30ページをごらん頂きますと、例えばSINETのこの高速性を活用いたしまして、昔ですとレントゲンの写真1枚というようなことだったわけですが、今、CTやMRIというようなものもものすごくデータが大きくなっておりますので、そういうものを自在に送り、その得られた画像の中で、いわゆるAIの認識処理というようなもの、診断処理というものを開発しており、あるいは企業とはこのLINEとの連携を行うなど独自の研究も鋭意進めている次第でございます。
最後のスライドでございますけれども、今回、情報基盤というカテゴリーをこの機能別観点にお加え頂きまして、大変ありがたく感じている次第でございます。あえて今回の大学利用機関の検証における主な観点、指標に関しまして希望を申し上げるといたしますと、NIIは分野別観点でも機能別観点でも情報学と情報基盤ということで、たった1機関ということで一人ぼっちの存在になっております。もちろん、他の大学共同利用機関もとても固有の特性というものをお持ちになっているかと思いますが、先ほど観山先生から、ここの指標に関しては独自に決めるということで御発言を頂いた次第で大変安心しておりますが、この主な観点ということにつきましても、研究資源と中核性というのがございますが、多分、研究資源の方に情報基盤が含まれると理解しているのですが、繰り返し申し上げましたように中核性、情報分野のためにというよりも、圧倒的にその他多くの学術分野からの御希望が多いものですから、どちらかというと、そういう方にシフトせざるを得ないという特殊性がございまして、多分、主な観点の充足性のようなものを御議論するときには、情報研の特殊性を御配慮いただけるとありがたいと感じております。
以上でございます。
【観山主査】 どうもありがとうございました。 質問、いかがでしょうか。小林委員。
【小林委員】 大変ありがとうございます。SINETは科学技術・学術の動脈ですから、ここが詰まると心筋梗塞が起きますから、是非そうならないようにお願いしたいのですが、27ページのCiNiiのあたり、つまり、今まで動脈の役割を果たしていただいていましたが、分野によってはどんどん自分のところにデータをためていけるところもありますが、そういう能力のないところは、いわゆる血液をためておくようなところもお願いできないかということになります。実は、それができれば、例えば人社系の共共拠点はかなりの部分、効率化できるのだと思います。経済学データをみても、今、共共拠点、三つありますけれども、政府統計は一橋、サーベイは京都、実験データは阪大に分かれて、全部がつながらないです。これらのデータが一つのところにあるとものすごく効率的にその分野がブレークスルーしていくと思うのですが、そういうところまで是非お願いするとしたら、どんな指標が要るのかということが一つ。
それから、細かなことで大変申し訳ないですけれども、23ページのところ、いろいろな学問分野の名前が出ているのですが、社会科学はいつも無視されがちなところなのですが、社会科学は2か所出てくるので、真ん中の上の方と左の真ん中あたりに出てくるので、どちらか、多分、両方とも要らなくて、逆に社会学がないので、多分、一つは社会学なのかなという気がします。それ以外のものはある。そこのところだけ少し、いろいろなことに多分これはお使いになると思うので、修正しておいていただいた方がと思います。
以上です。
【喜連川所長】 すみません、この23ページの図は今回のために初めて作った図で、多分、社会科学がとても重要だということで二つ書いてしまったのだと思うのですけれども、これからきっちり修正をさせていただきたいと思います。
それから、先生から御指摘を頂きました血液がたまる場所に関しましては、既にマスタープランの提案という機会がございまして、その中で実はSINET5の後なのだから、SINET6かというふうに思われるところがあったのですが、私どもはSINETの上に先生が今おっしゃられました血液のたまるデータ基盤というものをネットワークとタイトにくっつけた、そういうものが次の情報基盤システムとしてNIIが御提供するものであろうというビジョンを御提案させていただいたところでございます。
今期の中で、そこがどれぐらいやれるかということに関しましては、予算面の都合上もありますので十分ではないかもしれませんけれども、一歩一歩、それに向けて着実に進めていきたいと思っております。その中で指標というものに関しましては、これから作っていくものですから、なかなか今どういう指標がいいかというようなことというのは、決定するのは容易ではありませんけれども、グローバルに見ますと、データの質をどれぐらい担保できるような、このメカニズムをそこに入れていくかということがございます。
具体的に申し上げますと、エルゼビアは何と言ってきているかといいますと、各研究機関に向かって、私どもは全部キュレーションもします、全部アノテーションもします、みんなします、とにかくデータさえ出してくれればオーケーですみたいな甘い言葉を囁いておられますが、多分、すごくお金が高いのだと思います。SINETがなぜこんな廉価にできているかといいますと、ナショナルフレームワークの中でやっているからでございます。そういうものを全学術に対して、こういうものを皆様が比較的容易に、簡単に作れるような、そういうものを目指していく中で適切なメトリックスというものを考えていきたい。現時点では、そのような御回答にさせていただければと存じます。
【観山主査】 ありがとうございます。
最後に書かれた情報学では論文というよりは、プロシーディングが非常に重要だということを聞いています。ただ、評価ですので、公平性とか透明性は必要ですので、適切な指標を提示されて、こういう形で頑張っているのだということを先ほども申しましたけれども、提出していただければと思います。
【喜連川所長】 はい。そのようにさせていただきたいと思います。
【観山主査】 それでは、次に統計数理研究所からお願いいたします。
【椿所長】 統計数理研究所、通称統数研所長の椿です。今日はよろしくお願いいたします。
私ども32ページとなっていますけれども、33ページを開いていただきまして、情報システム研究機構の中にあって、統計数理研究所――統数研は統計に関わる数理的研究と応用に関する研究、諸分野に対する応用に関する研究というものが目的となっております。数理科学としての統計学というのは、科学の文法という形で19世紀末に創生されて、学術形成の基盤として横断的な性格が極めて強い基幹学術です。応用統計分野としても経済学会、計量生物学会、計量心理学会、統計的品質管理に関わるテクノメトリックスの分野とか、様々な分野があって、その発展に対しても一定の寄与をすることが統数研には期待されているところです。したがって、統数研の機能の検証評価には、統計数理の横断的性格、それから、実は日本の統計数理の高等教育研究機関が置かれた若干の特殊状況など様々な留意点があると存じます。今日は、その点、少し述べさせてください。
34ページを見ていただければと思うのですけれども、統数研はその目的を果たすために、基幹的研究とNOEと言われているNetwork of Excellence形成事業、それから、統計思考力育成事業、いわゆる人材育成事業ですが、この3活動を戦略的に推進していきます。今後行われる検証活動とその根拠となる評価指標が、これらの活動の、先ほど座長の先生もおっしゃいましたけれども、特徴を伸ばす。そして、統数研自らが不断の改革、改善に資する、そういうものにならなければならない。これが私どもの研究所の関心事でございます。統数研の第一の主力研究活動、統計に関わる数理的研究、基幹的研究系組織でミッションにしているわけですが、この部分に関しては、おおむね私ども今回のガイドラインの進め方ということに同意しているということです。適当なものだと思います。
一方で、次の35ページを見ていただくと、一例でございますけれども、統数研の主力活動、つまり、学術横断的な統計の応用に関わる研究、あるいは計量学術研究に対する発展の寄与に関しては留意が必要です。これはブラックホールの撮影の写真ですけれども、これは世界のいろいろな研究者が共同で行ったわけですけれども、最終的な画像処理で、このようなはっきりした画像を出す、いわゆるスパースモデリングという技術を使って出したのは統数研ということになって、こういうことが、大学のみならず、大学共同利用機関の研究に対しても顕在的ないしは潜在的に非常に重要な支援機能を果たしていると考えているわけです。
36ページ、それを集約させていただきましたけれども、先ほどの天文台さんがやっている天文情報学は今世紀になって国際的に急進した新学術ですけれども、さっき申し上げましたように計量学術分野というのは、もう20世紀中庸段階から非常に大きなものになって、極論を申しますと、統数研が自ら計量経済学、計量心理学の国際的中核機関になるかというと、これははっきり申し上げて不可能、あるいは困難でございます。例えば我が国おける計量言語学の拠点は国立国語研究所と考えるべきです。今日、統計学は更に文理融合型の新学術、あるいは社会の喫緊課題を解決するために大きな役割を果たさなければならないわけです。御承知のとおり、学術界のみならずデータ駆動型社会と言われた段階で、国内外の産業界からも大きな期待が寄せられているところで、この巨大かつ多様な統計の応用研究の事業に対して、統数研が自らの限られたリソースだけで支援することは不可能。
したがって、統数研が果たすべき役割というのは、この広大な学術コミュニティをデータとそのモデリング、分析を通じてつなぐハブとして、重要な学術分野、研究活動を活性化させる、いわゆるそういう触媒機能であるべきだと考えているわけです。この触媒機能ということに関して言えば、我々、既に共同研究、共同利用というものを戦略的に強化して、先ほど申し上げましたネットワーク形成ということを注力しているわけです。これに対して中期的な重点領域を定めて、ドメイン型のリスク科学、ものづくりデータ科学、医療健康データ科学、方法論型の統計的機械学習、次世代シミュレーション、調査科学といったものを展開しているという形になっておりまして、今般の自己検証、外部検証に当たっては、特定の、あるいは既存の学術コミュニティに資する活動のみならず、既存の学術コミュニティを超えた横断的領域を支援いただける、そういう評価をお願いしたいと考えているところでございます。
今回の検証について39ページに行っていただきたいと思います。主な論点についてのところに飛ばせていただきますけれども、総括的なコメントとしては、今回頂戴した7側面に挙げられている組織に対する観点では、単に何が現在達成されているかだけではなくて、様々な学術コミュニティからの声に基づくマネジメントやオペレーションが組織として確実に行えているような研究所内の仕組みが整備され、責任者が配置され、PDCAサイクルに基づく実質的な活動が行われていること、そういうことを評価していただきたい。それが自己検証として、我々は強みとして主張しますので、是非外部検証の中でそれを検証していただければと考えております。
主な観点について、40ページになりますけれども、これに関してだいたい妥当だと考えています。中核拠点性などに関しては、そのとおりだと思います。しかし、先ほど言いましたように学術間連携に関わる中核性の、いわゆる支援の中核性の観点も導入していただきたいということがまず第一の主張です。
それから、41ページになるかと思うのですけれども、ここにおきましても、さっき申し上げましたように我々は知識ベース、アルゴリズム、ソフトウェア、いわゆる統計モデリング、そういったものの知識ベースを提供し、それを我々の専門人材を各機関に提供するということを行っているので、この部分、研究資源というものに関して「データなど」と書かれている部分、ここにそういうものが入るかどうかということに関して若干の疑問を感じているということです。
42ページ、新分野の創出、あるいは人材育成に関しては、統計の応用分野も含めたもの、大学及び他研究機関と置き換えていただければ、もうこの視点はだいたい妥当なものだと整理しております。
43ページの運営面ないし中核拠点性ということに関しては、一にも二にも我々は中核拠点性の中で多様な学術コミュニティへの研究者の貢献、多様性ということを評価していただけるかが大きな関心事、これが指標の関心事ということになっております。これに関して具体的な整備、マネジメントの状況については、繰り返しはいたしません。
44ページ、やはり指標例という形になりますけれども、これも繰り返しになって大変恐縮なのですけれども、私どもは当該学術分野で利用可能な知識ベースとか、やはり人材をそこに対して派遣できているか、支援できているか、育成できているか、そういうことが我々にとってのポイントだと考えているところです。
45ページ、これももう繰り返しですが、連携のネットワークの向上、これが新分野の創出の中で非常に重要な視点ではないかと考えているところでございます。
さて、46ページで私どもの統数研の機能別分類に関してということで、私どもデータというところに入っているわけです。私どももちろん、日本人の国民性調査とか、アジアの公的統計ミクロデータという独自に収集しているデータというのは存在しているわけです。ただ、一方で、ここの中で更に通常の高等教育機関で分析不可能な大規模データの処理を可能とする設備の提供、これも行っています。ただ、これは私どもだけではなくて一橋大学さんや神戸大学さんも行っているということを承知しているところです。
公的統計のミクロデータ、レセプトのデータなどをセキュアに分析する拠点形成ということには尽力しているのですけれども、むしろ、設備、データ、情報基盤、そのどの機能に属するか、私どもの組織としての明確な位置付けというもの、これがこの機能という中でできているかということに関しては若干の疑問があるところです。繰り返しますけれども、アルゴリズム、モデリングなどの知識ベースとその活用支援人材ベースが、それが統数研の主機能と考えているところです。
最後に47ページになりますけれども、今回、統数研は数学という分野に位置付けられています唯一の機関です。ただ、先ほど言いましたように、実は統計学は科学の文法であり、そのための人材育成というのはまた別な側面も必要とするところであります。横断的な方法、科学的方法論としての統計数理並び統計科学が単純に数学分野に含まれるものではないということは、是非御留意いただければと思います。
私の方、以上でございます。
【観山主査】 どうもありがとうございました。
最後の機能別分類に関しては考えさせていただきたいと思いますが、この数学というのは、単純に言っただけで、これが大きな意味を持っているわけではございませんので、今後、統計数理学としておけばよかったのかもしれませんけれども。
ほかに御意見、小林先生。
【小林委員】 すみません、同じ人間ばかり。元統数研の学生として言えば、もちろん数学ではないと思います。ただ、38ページに教育のところをどう評価するかというのがありますが、実はここが一番問われるところで、滋賀大のデータサイエンス学部が非常に成功しました。この国立大学改革、大変な成功例だと思いますが、したがって、これについて横浜市大も作り、明治大も作り、いろいろなところが作り出してきて、そうすると、こういうところでは教えていない何を教えるのかということで、逆に今度問われるわけです。今までそういうのがないときは、教えるということイコール評価だったのですが、そうすると例えば統数研では東大の理学研究科とか、京大理学研究科では教えることができない何を教えているのかということをどう指標化しているのかというのがまず1点目です。
2点目としては、44ページ目のところに、先ほど学術資料、データ等というところで御意見がありました。実は「等」は、以前のこの会議で私の方で、これは統数研を念頭に置いて付け加えていただいた「等」なのですが、統数研で一番重要だと私が思っているのは、新しい統計的手法の開発なのだと思います。さすがに数量化理論を使う方は減ってきているとは思いますが、しかし、赤池先生のAICは世界中で使っているわけです。そうすると、指標として重要なのは、統数研が開発した手法の利用者、利用頻度です。例えばそういうものを指標として自ら御提案していただくことが重要で、「等」の一文字で御不満があるのでしたら、何か手法とか、更にもっと強調するのはあるかと思います。
それからあとは、非常に細かなことで申し訳ないのですが、36ページのところをごらん頂きますと、ここでも社会科学を2回書いていただいて大変ありがたいのですけれども、左斜め下、社会科学分野で真っすぐ下りたところは人文学分野です。
【椿所長】 はい。おっしゃるとおりです。
【小林委員】 「社会科」は取って「人文学分野」でいいと思います。それから、右斜め上の方は、生物科学というよりは「生命科学」といった方が、やはり医学を念頭に置くといいのかなと。それからあとは、今非常に特に統計を使っているのは天文です。そこも重要ですし、あるいは昨日、ノーベル賞を取った化学は工学に入れてしまうのかどうか、独立させなくても良いのか、これはもう検討いただければと思います。
以上です。
【椿所長】 どうもありがとうございました。資料に関しましては、社会科学、二つあったと。うちも同じようなことをしてしまいましたけれども、訂正いたします。御指摘のとおりです。
それから、人材育成に関しては、統計数理研究所は御指摘があったように、いわゆるデータサイエンス系の学部が登場し、近々、あるいは10年後にはそれが後期博士課程まで出てくるということになったときに、それまでの10年間、今後10年間においては、この部分の機能を強化するための研究者が圧倒的に日本は不足しております。統計数理分野のきちっとしたトップレベルの研究の教育というところに非常に大きなウエートがかかってくると思います。樋口前所長がおっしゃっている棟梁クラスというのは、例えば先生がおっしゃられた天文学とか、経済学とか、そういう分野も引っ張る。そういう方々ですね。そこの中核になるような人材。
それから、更に統計の数理、先生がおっしゃったAICとか、そういうものを開発できるような人材の育成、これまでも東大の情報理工を始め、京都大学の生物統計全て統数研の出身者の方が今トップになっているという認識ですけれども、そういう機能を更に強化しなければいけないし、これまでに比べて量が圧倒的に要求されるのです。これまでは年間3名ぐらい研究者が出てくればいいという話だったわけですけれども、今、データ駆動型の研究が出てきている段階で、統数研の機能、その部分、研究者育成の機能というものをかなり強くしなければならないということは、私どもも認識しているというところでございます。先生がおっしゃられたAICや、それから、最近、私どもが注目しているのは、実はパーティクルフィルタというものが圧倒的にいろいろな分野で使われている。そういうものに関する引用件数が伸びています。
更にパーティクルフィルタ以降のABCとか我々の研究所の中で開発しているものが、そういう位置付けになるかどうかというのは、私ども非常に大きな関心事でございます。一番重要な統計数理に関する基幹的な研究というのは、正にそこで勝負すべきものだと考えております。どうもありがとうございました。
【観山主査】 ありがとうございます。
それでは、引き続きそれぞれの分野に関係する有識者の方から発表をお願いしたいと思います。まず、北海道大学低温科学研究所教授の江淵直人先生からお願いします。申し訳ありません、12分程度でお願いしたいと思います。7分の段階でベルを鳴らして、12分で二度目のベルを鳴らすそうでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、江淵先生、お願いいたします。
【江淵北海道大学教授】 北海道大学低温科学研究所の江淵と申します。このガイドラインの骨子案と、それから、主な観点、指標案について意見をというリクエストがありまして、私は昨年の3月まで所長を務めておりまして、どちらかというと、この評価を受ける立場、拠点としての評価をしていただく立場として、かつ環境分野の代表と言われております。私がそれにふさわしいかどうかは非常に心もとないのでありますけれども、そういう立場で幾つか気の付いた点について勝手な意見でありますけれども、述べさせていただきます。
もちろん、委員の先生方も十分議論をされていた、何度も分かり切ったことをまた繰り返し言うのかと思われる点も多々あるかと思いますが、御容赦ください。かつ、自分で改めて、今朝、この資料を読み直して自己矛盾で言うか、こっちで言っていることと後で言っていることが全く逆を向いているじゃないかというところも非常にいっぱいあったりしまして、その辺もいろいろなことを思っているんだなということを、末端として思っているのだなということを御理解いただければと思います。
まず、この資料の順番でいきますけれども、骨子案にございます検証の進め方の大枠の話ですけれども、この最初の資料に書かれてある要件というのは、コミュニティであるとか、それから、もっと大きな社会がその利用機関、大学共同利用機関に対する期待を非常に的確に表現していると思うのですけれども、それを具体的な検証の仕組みに落とし込むというのは非常に大変な作業だなということは改めて実感しました。指標を使って定量的に、客観的に公平にというのが非常に重要なポイントだと思いますが、定量的な絶対評価というのはまず難しいだろうなと思います。
何点取ったらAで、何点取ったらBで、何点取ったらCかDじゃないという、そんな簡単に決められるものではないだろうなと思いますし、先ほど来、各機関の先生方がおっしゃっているように分野の特性というのはやっぱりいろいろなところに出てくるとすると、いろいろな指標を使いながらも最後は総合的な判断をするしか方法はないだろうなと思いました。ただ、それをやると何となく各機関がアピールしてきたいろいろな指標を見て、現状追認をして、そんなに悪くないでしょうというか、とりあえず合格という結論しか出ないような気がするので、そこに陥らないようにどう持っていくかというのが非常に重要なポイントだと思います。
そうすると、具体的な方法としてはいろいろな指標を見ながらも、最後、そのいろいろな評価をするのは、それぞれの研究者コミュニティから出てくる専門家の意見とか、評価とか、要望とか、そういうものをいかに酌み取るかというところであります。その評価のプロセスの中では自己検証と外部検証という二つのステップになるわけですけれども、その中で非常に広範な範囲の研究分野を持たれている専門委員、外部委員といったコミュニティの代表を一人、二人とか、加えていただければ。対象分野を持たれているわけなので、非常に少数では無理だろうと。例えば私1人で環境分野、全部背負ってこいと言われたら、とてもではないですけれども、もうやり切れません。そうなると実際問題としては、口で言うのは簡単ですけれども、非常に手間がかかって、時間がかかって、お金がかかって大変な作業になると思いますけれども、そういうところにも御配慮を頂ければと思います。
それから、我々のような弱小研究所ですと評価疲れというのが確実に来ています。毎年のようにいろいろな分野のいろいろな機関から評価のリクエストが来て、この検証自体は非常に重要ではあると思うのですけれども、その結果をまたそれぞれの機関の評価に最大限に利用する。逆に機構とか機関でやるような評価を可能な限り減らして、この検証の方の結果を利用するというような形で省力化を図らないと大学共同利用機関、非常に強靱な事務機能を備えていらっしゃると思いますけれども、それにしてもなかなか大変であろうなと思います。最後にポイントとして、双方の優劣を比較するものでない。これは非常に重要なポイントで、やっぱり絶対評価でそれぞれの機関がすぐれた機能を果たしているかどうかというところだけにするべきだろうと思います。
次に二つ目として主な観点と指標案についてですが、観点は非常にすっきりして、より具体的な説明が加わると思います。その観点において、我々こういう評価書、報告書を作るときに悩むのは、取組が評価されるのか、結果が重要なのか。もちろん両方だと思うのですけれども、それぞれのそのステップ、それぞれの特色でやってくるわけですけれども、そこがある程度、あらかじめ決められていると評価書、報告書作成が非常に容易になるかなと思います。先ほど主査から御説明もありましたように、飽くまでも今挙げられている指標は例である。それぞれの基本的な活動を検証するための基礎指標としての指標というのはもちろん必要だと思います。それにプラスそれぞれの機関の特色をアピールする資料があって当然であろうということ。先ほど来、TOP10%、10%というのが、やたら評判が悪い指標、問題点も指摘されているわけですけれども、最近ではいろいろな新しい指標もどんどん提案されておりますので、そこも適宜取り入れていけばよろしいのではないかと思います。
ただ、その指標はやっぱりそれぞれの活動状況に反映するものですけれども、繰り返しになりますが、絶対値で点数を決めることは難しいだろう。我々も特に気にしているのは、ある程度長いスケールの時間変化です。だんだん上がってきているのか、横ばいだとしたら、いいレベルの横ばいなのか、悪いレベルの横ばいなのか。特に連続的にその指標が低下している場合というのは、やっぱり注意が必要だろう。経時変化に関してはかなり意味があるのではないか。それも1年、2年の上がり下がりではなくて、ある程度時間をならしたものであれば使えるのではないかと考えております。それから、国際化とか文理融合というのは、より高いレベルの研究を行うために重要な手段ではあると思います。ただ、それ自体が目的ではないので、その結果何が生まれたかというところが重要であると考えます。
あと、細かい点について幾つか、細かい点というか、それぞれの項目について気の付いたことを挙げてあります。全部読んでいると時間がなくなりそうなので、例えば2番目の中核拠点性の場合、環境分野とか、それの関連する分野に関しては、対象となるコミュニティが一つとは限りません。ほかの分野もそうですが、先ほどの御説明を伺っていると皆さんそうだと思うんですね。学際的な研究とか、学際的な分野にわたる場合には、それぞればらばらのコミュニティが違う特性を持っていますので、そういうところの参画だとか、発展への寄与という検証をする場合に、どこか一つを見ていればいいというものではないだろうということを感じます。また、国際性に関しては、いろいろな拠点、特に海外拠点の整備と、それから、環境分野の場合には、その観測とか調査のためのロジスティクスの整備、研究基盤、そういうものは非常に重要ですので、特に大学の拠点とか附置の研究所などでは持てないようなスケールの基盤というのが非常に重要な機関、機関の重要な機能の一つだと考えております。
新分野の創出のところでありますけれども、学際的、融合的な研究というのは、とにかくすぐれた成果が出るまでに時間がかかるということで、なかなかその論文の評価が引用ベースの指標で評価できないところが多いと思います。そもそもその対象とする学会がないとか、雑誌がないとか、出しても同じ分野の同じような研究をしている人がいなければ、引用がなかなか進まない。それこそ先ほどのお話でも何十年かかるとかという話になるとすると、なかなか単純な今の論文引用ベースの指標だけでは機能しないだろうなと思っております。少し飛ばしまして3番目の環境分野の特性ですが、なかなか環境分野というのは地道な、どんくさい研究が主でありまして、かつ少なくとも自然科学においても物理・化学・生物・地球科学と理科の4科目全部にまたがるような研究が多いわけで、なかなか効率とか、生産性とか、そういうものとはほど遠い世界で、時間とか、労力とか、費用とかの割に論文数とか引用数が伸びない。その中でやっぱり地道に継続性を重視されることが多い。
文字だけだとあれなので、一番下にキーリングカーブを書いておきましたけれども、これも何度もお取り潰しの危機にあいながらつながっているわけですけれども、これだって、例えば1年に予算を付けたら、この時系列の点が12個増えるだけです。それで、どれだけの予算を付けたらTOP10%論文が何本書けますかと言われてもなかなか難しいわけですけれども、実際には社会的に非常に重要な、二酸化炭素の経年変化というのをきちんと示したデータとしては非常に重要なものである。もちろん、続ければいいというものでもなくて、そこが研究所、それぞれの機関、御苦労されているところだと思いますけれども、我慢して続けることが大事なのか、スパッと切って、その資源を新しいところに投入するのが大事かというのが一番重要なかじ取りの部分だと思うのですけれども、ただ、成果が出ないからといって、すぐにバシバシ切ってまた目新しいところに飛び付いているとなかなか重要な成果というのが生まれにくいということがあります。
最近、Sustainable Development Goalsだとか、Future Earthとかいろいろなアクティビティがあって、自然科学だけではなくて社会実装、実学系とか人文社会系との連携ということが重要なポイントになってくるわけですけれども、なかなかこれは言うに易しでありまして、そもそも文化とか、言葉とか歴史が違う相手と一緒に仕事をする。成果とは何ですかという話から一緒にしないと、自然科学の研究者は論文を書いていればいいんだろうという話ですけれども、そうではない価値観を持っている相手と一緒に共同研究をする。そもそも共同研究って何ですかというところから話をし始める。そうするとやっぱり、それが形になるには相当時間がかかるものであるということは御理解頂きたいと思います。
蛇足で筆が滑って次に余計なことを書いてしまいましたけれども、定量的な評価の指標だけの客観的な評価とか検証ってやっぱり無理があると思います。うちの師匠がよく言うのは、味の分からない客ほどレストランの星の数を大事にするということなので、その辺も御配慮いただければ。特に我々が期待するのは、大学共同利用機関に期待するのはトップレベルのすごい研究をしているということと、それに参加する我々のような大学の機関が、そのすごいレベルに連れていってもらえる。それのための研究資源を提供してもらえるという、そのサポート体制を持つ、そういうところを期待したいと思います。
以上です。ありがとうございました。
【観山主査】 どうもありがとうございました。
いかがでしょうか。少し時間が押していますので、どれぐらい時間がとれるか分かりませんけれども、後で議論の時間を取りたいと思います。
それでは、続きまして放送大学学園理事長の有川節夫先生から12分程度でお願いいたします。よろしくお願いします。
【有川放送大学学園理事長】 有川でございます。今日は時間的なことを勘違いしていまして遅くなりました。失礼しました。
全般的には、特に有用なことはないと、ざっくり言えば言えるのかなと思います。私の方は3ページほど書かせていただいていますけれども、これは的を射ているかものかどうかよく分かりません。極地研と情報研と統数研について意見を書けということでございましたので、最初のページは全般的なことを書いているつもりです。後ほど説明してもよろしいですけれども、後でごらん頂いても結構かと思います。
それで、具体的には2ページから書いておりますので、そちらを先に話をしたいと思います。検証の進め方(参考資料1)についてということがございますが、そこについて、この趣旨、あるいはこのところ、何か所かに出てくるのですけれども、その結果に基づき、再編・統合等を含めて在り方を検討するとなっていまして、再編・統合ということで何かまとめて小さくしようという、そういうための検証評価なのかなと。私どもが対象としていただいたところに関して言いますと、極地研は余り詳しくないのですけれども、先ほど所長の先生方から御説明がございましたように、増強・強化ということはあっても再編・統合という、そういった認識ではないのではないか。ほかのありとあらゆるものが、こういった感じで言われている状況ですけれども、この二つだけは、こういったことに非常になじまない分野ではないかと思った次第です。ここは何とか考えていただいた方がいいのかなと思います。
それから、6ポツのところにあります検証の結果のところにありますように、書類作成等に係る負担の軽減に配慮して既存のデータを可能な限り活用して、いろいろなこういった作業をするということは極めて大事で、そのためにいろいろなデータを作るということをさせてはいけない。それだけの負担をかけたら、それだけの見返りがあるかどうかということを頼む側が自問自答してやるというぐらいのことをやると、そういったものに対しては対応しても双方にとって意味があるのではないか。こんなことを書かせていただきました。
主な観点の2ですけれども、国際性についてということで、外国機関における人事の際のこのレファレンス、時々そういうことをやる、頼まれる先生方、多いと思うのですけれども、そういったことをやったら登録しろとかということで、そういうことをやりますと、レファレンスというのは余りいいかげんな人には頼まないはずですので、その分野に、外国人の研究機関から見ても、この人はちゃんとした人だということの表れでもあるかと思いますので、具体的なやり方としてレファレンスをやった人は登録しなさいと。その件数など調べるというのはいいのかなと思いました。
それから、外国人の、これもかなり進んできているかと思うのですが、日本滞在に係る諸手続、支援体制、こういったちゃんとしておくかどうかということは非常に大事で、そういうのがなければ、お呼びしたって軌道に乗ってもらうために、結局、自分が中心になって呼んできた、その先生に負担が山ほどかかるという状況がまだあるのではないのかなと思います。正直申し上げまして、ある意味で劣悪な、給与とかそういったことも含めまして境遇の中にすばらしく優秀な人に来ていただくということをするわけですから、大変な思いを担当の先生方はなさっていると思うのですが、その辺を少し考えていく必要があるかなと。
それから、研究資源に関しまして、最近はオープンサイエンス、オープンデータ、こういった取組があるわけですけれども、既に物材研等の国研でガイドラインが用意されると、そういった段階に来ているのかなと思いますけれども、ここで扱っているようなところ、大型の実験観測装置等を用いてございますので、そこから得られる、そういったデータに関しましては、当然、一定のエンバーゴの期間は必要かと思いますけれども、共同利用に供するということで、これは大学共同利用機関にとっても非常に重要な課題であると思います。それに対する評価、軸ということもそろそろ考えておかなければいけないと思いますし、私どもに依頼されましたこの三つの分野ですと、それが非常に大事なところかなと思います。
それから、新分野創出に関してということになろうかと思うのですけれども、なかなか難しい時期ではあると思うのですけれども、国内外において非常に伴ったこととか、新たなことを始めたりされるわけですから、内外における大きな指導性を発揮するということの必要性から考えますと、新しいシンポジウムとかジャーナルの創刊、シンポジウムの創設とかジャーナルの創刊みたいな、そういった粒度の活動も重要ではないのかなと思います。
それから、人材育成についてですけれども、研究プロジェクトを通じての人材育成という、これは我が国においても様々なファンディングエージェンシーが必ず付け加えているところではあると承知しておりますけれども、その通常の研究活動を通じての大学院の学生の教育というのも非常に重要だと思っております。そういう意味では、こちらの方の研究所は、総研大との関係がありますので、そこでの教育ということをしっかりやればおのずから満たされることではあるかと思いますけれども、ほかの大学院等との緊密な連携の下でそういったことがやれるというお立場でもおありだと思いますので、人材育成からもう少し踏み込んで、その前の段階で、特に情報などはそういうことが、統計数理などもそうだと思いますが、教育が非常に大事ではないかと思っている次第であります。
それから、社会との関わりに関しましても、様々なメディア、あるいは機会を使った組織的なアウトリーチ活動も重要だと思いますけれども、これに関しましては統数研もそうですけれども、情報研も本当に実に様々な活動をなさっている。出版なども含めましてなさっておりますので、これはほかのところもむしろ参考になるのではないのかなと日頃から感じているところであります。
それから、指標例、参考資料2についてですけれども、運営面での指標例としまして、対象から除外されているようですけれども、法人の経営協議会における、そこでいろいろなことが議題に挙がるわけですけれども、各研究機関に関する話題の件数というのは結構重要な指標になるのではないか。研究会ってオフィシャルなものがありまして、これをもう少し活用しない手はないだろうと言いたいわけです。
それから、二つ目は各研究機関が対象とする領域における新分野の創出、先ほど申し上げたようなことですけれども、そういった例などは、その時点での論文の引用とか、TOP10%とかには表れにくいわけですけれども、研究活動を先導するためには重要な指標であり、こういった研究機関、個々の大学では難しいかもしれませんけれども、研究機関には期待したっていい指標ではないのかと思います。人文社会系では分野にも、次のページですけれども、にもよりますけれども、学術書は、論文はほとんど日本語で書かれているのだということを、こういう議論になりますと必ず言われるわけですけれども、そうでないような分野がたくさんあるということも承知しておりますけれども、そうであるならば、英語に翻訳された論文の件数なども国際性を測る尺度としてお使いになったらどうでしょうかということ。
それから、先ほども少し言ったことになるのですけれども、共同利用に参加する外国人研究者の給与面に関しましては、クロスアポイントメント、年俸制とか、そういったのもあるのですけれども、どうもこの国内での、その仲間でちまちまやって、二つやってクロスアポイントで足したって1にしかならないような、ただ仕事が増えるだけで、こういったことでまじめにやってくれる人がいると考えるのがおかしい。それで、もう少し大胆な制度を導入しないと、何回行ったってかまわないんですけれども、実現しないし、効果が現れないわけです。ですから、もう少しそこを考えたことをやらなければいけないと思います。実際、そうした思い切ったことをやれば、短期間でもものすごい成果は上がるという例は実際にあるわけでございますので、そういったことを参考にしなければいけない、そういった時代ではないかと思います。
それから、研究資源に関してはデータがオープンになっているか。オープンデータへの取組状況というのは非常に重要な指標になると思います。それから、新分野の創設に関しまして、ジャーナル系は先ほど言ったことでありますが、アウトリーチ活動も、これも非常に重要な指標になると思っております。
それから、4番目、大型設備・データ・情報基盤の観点からということでございますけれども、三つの機関がありまして、極地研に関しましては、ふだんからそういったこと、アウトリーチ活動に関しましては非常にアピールしておりますし、重要な研究活動成果を上げていらっしゃると思っております。
あと、テレビなどで紹介があったりはするのですけれども、少し気になりますことは、昔、機構の方の経営協議会かの委員だったりしたのですけれども、実は行きたかったというわけではなくて、気になっていたことは、極地研のある立川の方には行ったことがあるのですけれども、極地そのものに行っていなくて、ちゃんとしたフィールドを持っているのに、そこに行きもせずに適当なことを言うということ、心の痛みを感じていたわけですけれども、そういうことだけでなくて、たまにはそういったところに報道陣も連れて行かれてというようなことがあってもいいのかなと。そういうことがなかったらやっぱり、適当な意見しか、どこでも聞けるような意見しか、私が今話している程度のことしか聞けないのではないのかなという気がする次第でございます。
それから、統数研に関しましては、先ほど椿所長がおっしゃっていましたようなことでございますけれども、数理データサイエンスと「数理」が付いた格好でございますけれども、我が国、高等教育における必要な科目として位置付けられてきたということなどを考えますと、研究所自体をもう少し人的に強化する必要があるのかなと。先ほどの所長の話ですと、今のままだったらば、いろいろなことを一々やれないよというお話のようにも聞こえたのですけれども、そうではなくてもう少し日本全国が立ち上がる必要があるので、どこを強化したらいいかというと、統数研を強化して立ち上がるまで面倒見なさいというようなやり方がいいのかなと思うわけでございます。そういったようなことも考える必要があるかなと。
それで、75周年たっているわけでございまして、この手の研究所としては一番古いと思うのですけれども、その頃から例えばアメリカなどでは統計学部みたいなのがあるのにという話がずっとあったのだと思うんですね。専門の先生方、みんなそういうことは御存じなんですね。御存じなのですけれども、所々、さっきおっしゃいました数学科とは違うと言いながら、数学科の中に統計、確率統計講座みたいなのがあって、まともにそういった専門家がいらっしゃる大学もゼロではなかったけれども、ほとんどいらっしゃらなかった。こういったことで大学自身は出ないというようなこともあったのだと思うのですけれども、何年たっても全然充実されずに、ただ統数研が孤軍奮闘しているというだけであったと。
あと、この時代になって、はっと気付いたらどこもまともにやっていないということ、そういった状況なのですけれども、ここは統数研としても反省をしてもらわなければいけないところがありまして、そういった唯一無二の存在であったので、我が国をちゃんと指導していただいて、教育機関、大学にもう少したくさんの学部なり学科なりがあるという状況を作っておく必要があった。これは、今考えてみれば、統数研の使命だったのではないか。
その辺がうまくいかなかった理由の一つは、いみじくも椿先生、最後のところでおっしゃっていましたけれども、統計数理で統計科学と数学とは同じじゃないんだということなのですけれども、数学というのは、我が国、最近、変わってきましたけれども、数学というのは純粋数学のことを言うのであってというようなところがあったわけですけれども、アメリカなどは何十年も前からコンピュータの基礎理論をやっているような人がアメリカの数学会の会長をやるというようなことで、数学というのは数学的なものという感じで、数学会の方が、意識が広かったわけですよね。数学的なものは全部入っているような、そんな状況だったのではないかと思います。そういったことを考えずに、関係あるところはやっていくのだというぐらいのやり方でいいのではないかと思います。こういった時代になりましたので、統数研というのをしっかり我が国にずっと持ち続けておられたということは、非常によかったということになるのかなと思っております。
情報研につきましては、情報基盤ということで位置付けがされているということもございますけれども、設立のときから、この経験だけはこうして委員の方々も是非分かっておいていただきたいと思うのですけれども、元々学術総合センターというのがあって、前身はうんと前までいけば東大の中に最初できてというようなこともあったわけですけれども、その頃から全国の大学、都市間を利用して目録データを一緒に作りましょうねという本当に麗しい、共同してデータベースを構築するという文化があったわけです。それがあった中で、今度は書いた論文も機関リポジトリということで出すという時代になったときに多くの、大規模の大学は自分のところでサーバーなど持ってやれたのだけれども、そうでないところもやりたいのだけどということがあったのだけれども、例えばJAIRO Cloudというような格好で、そういう人たちをサポートしていた。
そういった文化があって、一方で、ネットワークでやっているということがあって、最近のオープンデータに関しても、その文化、考え方に、人が乗っかってきているということは大事でして、物を作るというのは後からでもできる。どうせ小さな予算になると思うのですけれども、できる。だけど、心を動かすことがなかなかできないですけれども、心が先に行っているわけです。こういったものというのは、他の国にも多分ないと思いますが、まあ、調べたわけではございませんのであれですけれども、そういった文化が醸成されてきたということは、この大学共同利用機関法人としては威張っていいことではないかと思う次第でございます。SINETにつきましては、これもよくぞこういった格好でやっておいていただいたというところがあるのかなと思います。もしこういったものがなかったとして、この時代を考えたら、本当にぞっとするというような思いでございます。
以上、取りとめのないようなことかもしれませんけれども、基本的な考え方につきましては最初のページに書かせていただきました。
【観山主査】 先生、どうもありがとうございました。重要な御提案も含めて、参考にさせていただきたいと思います。
それでは、時間の関係もありますので、続きまして北海道大学数理・データサイエンス教育研究センターセンター長の長谷山美紀先生から、これも12分程度でお願いしたいと思います。
【長谷山北海道大学教授】 北海道大学の長谷山でございます。本日は情報系の立場から、ご依頼を受けましたガイドラインの骨子案と指標例案について意見を述べさせていただきます。提出した資料は、前半部分に全体についての意見を、後半部分に各記載事項の意見を述べさせていただきました。
先ず、前半部分について御説明したいと思います。大学共同利用機関の研究領域は、皆様が議論なさっているように多様でございます。そのミッションを果たすために、多様性が維持される必要があることも、充分に理解します。つきましては、大学共同利用機関として備えるべき要件に基づき行われる、自己点検・外部検証で、それぞれに応じた評価が行われるということを大学人として強く求めるものでございます。一方で、大学共同利用機関の基本的な役割を示すものとして、共通の定義も設定されております。このことから、新たな利用を促し、広く研究者に理解されるためにも共通指標による評価の必要性が否定できません。大学共同利用機関の生み出す成果が広く社会に理解されるためには、共通指標も検討する必要があるのではないかと思っております。
また、大学共同利用機関の検証における主な観点と指標例案に示される進め方には、大学共同利用の役割を担うための固有の検証が明確でないものが見受けられます。示された観点の指標例は、大学における研究力評価の数値指標と重複が多く、大学共同機関の独自の評価を実施していることが見えにくい印象でございます。そうなりますと、評価結果を見ても、そのあるべき姿や貢献について社会の理解が得られない危険性があるのではないかと考えます。さらには、他の委員からもコメントがございましたように、大学共同利用機関における評価の労力を増やすことは、本来業務に大きな影響を与えます。広く一般に使われている研究業績データベースから成果の根拠を抽出する方法を考える必要があると思います。これは各機関の負担を軽減するだけでなく、一般に利用されているデータを成果の根拠とすることで評価の透明性を担保し、評価結果への信頼性を高めることに繋がると考えるからです。
次に、後半部分について御説明したいと思います。提出した資料には、該当する文章を斜体で示しながら、矢印の右側に意見を記載させていただきました。幾つも意見を述べさせて頂きましたので、時間の関係から主なものをリストアップして御説明致します。まず、資料2-1、検証の進め方1についてです。こちらは、先ほど他の委員から国際化の視点の検証について指摘があったところでございます。私からも同様の指摘をさせていただきます。この共同利用機関の評価に限らず、国際化の評価が大学にも行われておりますが、国際化は目的ではなく、目的達成の手段の一つと考えます。各領域において、国際化の仕方は多様であり、評価指標の設定には十分な配慮が必要と思います。目的ではなく手段の実現に注力すれば、本来の成果が損なわれるだけでなく、組織の疲弊を招くことになります。
また、外部検証については、一部不明瞭なところがございます。大学共同利用機関の関係者が互いに委員にならないようにと配慮しているところが、外部に分かりにくくなっています。大学共同利用機関の検証ガイドラインに関するヒアリング対象の選定、法人や分類、更に機能別分類というように示されていますが、法人全体の中から選ばれてしまうのかが不明瞭で、外部というものの明確な定義が分かりにくく問題と思います。それが不明瞭になれば、我々研究者以外がこのガイドラインや要件を見た時に信頼を失う危険性がございます。是非とも明確な定義を付するよう、検討いただきたいと思います。
さらに、研究者コミュニティというような表現がしばしば出てくるのですが、資料の1のコミュニティの定義と、その後に続く研究者コミュニティの定義に多少の揺れがあるように感じます。研究者コミュニティと言う用語の定義は、第3回の資料1で確定したところでございますけれども、コミュニティの定義や領域、さらにはその横断的、連携的な実施が各機関の特徴を示すものと理解いたしますので、不要な制限をしないよう、また、不要な臆測を生まないようお考え頂くのがよろしいかと思います。
次に、検証の結果について、「相互の優劣を比較するものではない」という表現がございます。先ほど来、議論をお聞きし、私も大学の研究者として、また、本学データサイエンスセンター長として、その思いやお考えは十分に理解しております。しかしながら、この文章を読み上げますと、「本検証は機関として求められる役割を担うことが可能か、再編・統合等を含め、その在り方を明らかにする」と書かれていて、その後に「相互の優劣を比較するものではない」と書かれています。この場では、優劣を比較するものではないとの共通認識の下に議論が行われていますが、この文章から見れば、優劣を比較すると読み取られる可能性があり、文章について精査頂ければと思ってございます。
また、先ほど申し上げましたが、資料の2-2について、運営面での観点の軸が機関全体についてのものであるか否かが不明瞭であること。中核拠点として著しく高いなどという表現があり、著しいことを評価することも、評価される機関も困るのではないかと思います。学術領域ごとに判断指標が異なることが予想されますので、このような場合には、例示などに配慮頂き、機関が困らないよう、そして機関の評価結果が公開された際に誤解を生まないようお進めいただきたいと思います。
次に、研究者の在籍状況についてです。先ほど他の委員からも指摘がございましたが、この数値が、直接的な成果の数値と誤解されないよう配慮していただく必要があると思います。数だけで連携を測ることができる分野は、それほど多くありません。大学共同利用機関が大学の研究を支えると考えますと、この数値だけで測ると、本来の役割を正しく評価したものにはならない場合があります。また、クロスアポイントメント制度につきましても、実施には様々な問題がございます。実効性のある自由度の高い表現としていただきたいと思います。さらに、先ほど申し上げました評価指標の例は、大学評価とほぼ同じようなものが列記されています。大学共同利用機関が固有の役割を担っていることを正しく評価されるために、機関が困らない例示が必要であると思います。
提出した資料の最後に、機能別分類の観点について意見を記載しています。現在、データサイエンス教育やAIの社会利用など、研究教育活動の人材不足が大きな問題となっています。大学共同利用機関における現在までの取組に感謝するとともに、更に発展することで、この問題の解決に寄与頂くことを強く希望しております。そのように考えますと、機能別分類として示された大型設備・データ・情報基盤の三つは重要であることを理解いたしますが、個別の定義にとらわれず、それら機能の融合や連携などの自由度を与えるなどの検討をお願い致します。自由度を与えることで、データサイエンス、統計数理、ビッグデータ、基盤の整備についても、発展的な活動ができるのではないかと思います。
最後に、今後の期待について述べさせて頂きます。皆さんの議論の中に出ている大学以外にも、たくさんの国立、私立、公立大学が共同利用機関の支援に大きな期待を持っています。新規利用大学が増えるよう、積極的な増加策を検討頂き、今までには見られない研究者のグループとの交流により、新しい学術領域、そして新しい手法が創出されることを期待しています。
以上です。
【観山主査】 先生、どうもありがとうございました。いろいろな御指摘を頂きまして、参考にさせていただきたいと思います。
少しだけ時間が、20分ぐらいですか、ありますので、全般的に議論を進めたい、質問とか意見交換を進めたいと思いますが、一つ、座長の方から、確かに有川先生、今の長谷山先生からもありましたけれども、再編・統合等を含めて、その在り方を検討するという、この結果に基づいてというもので、この「再編・統合等を含めて」って、何かわざわざ書く必要もないことを書いてあるのですが、基本的には在り方を検討するということが重要な部分でございます。中にはこの6年、12年という状況を見据えながら、どういう方向性がいいかという判断の中に、一つはそういう可能性、再編とか統合とかというのがあろうかと思いますが、基本的には在り方を検討するということが重点でございます。
それからもう一つ、負担の軽減ということに関しては、もっともだと思います。これは前回も盛んに議論がありまして、御注意を頂いたところで、なるべく法人評価で出される資料を活用したいと思います。ただ、法人評価は法人の評価でございますが、ここでの機関の検証という部分は、機関それぞれがどのような活動をしているかということを検証したいということでありますし、いろいろな御意見がありましたように、大学共同利用機関として全国、日本の学術の振興にいかに寄与しているかという部分が一番重要な評価の観点でございますので、そのデータを集めるときに今言われたとおり、法人評価とかいろいろなデータと重なる部分はあろうかと思いますし、その部分はそれを法人評価のときに出されたものを活用したいと思います。機関として、その在り方を検証するときには、機関が、その機関としての研究成果が上がっているということはもちろんですが、その機関が存在することによって日本の大学や我が国の研究者の学術を如何に進展させることに寄与したかという部分が重要な観点だと思っておりますので、その認識は我々委員としても共有するということでもありますし、対象機関としてもその点をよく認識していただければと思います。
学術の振興という意味で言っても、様々なバラエティがあると思いますので、そのプラットフォーム型のところもありますし、大型装置を持っているところもありますし、いろいろな手法を展開するということもありましょうが、それぞれがいかに、大学や社会に展開することによって、大学共同利用機関の存在意義というか、それを改めて示すことが重要ではないかと思います。私の意見ですけれども、法人になりまして、各大学、以前は一つの袋の中で、大学ではできないから大学共同利用機関を作ってということだったのですが、お金が全部分かれてしまいましたから、大学共同利用機関、全部合わせると結構なお金を使っていますけれども、各大学のためになっているのかどうかという、何か率直な疑問も呈される状況でもありますので、そういうことから考えても、大学共同利用機関がいかに全国の大学、研究所のためになっているのだということをよく示すということでも重要な作業ではないかと思っております。
委員の方から御質問なり、それから、機関の方から更に何か御質問とかありましたら、余り時間はありませんけれども、少し意見交換させていただければと思いますが、いかがでしょうか。山内先生。
【山内委員】 どうもありがとうございます。今日は非常にいい話を伺えたと思っております。何点か参考になったなと思うことがあるのですが、一つは研究資源というものについての考え方ではないかと思います。これまでは研究資源といいますと、設備、施設のようなものか、あるいはデータ、資料のようなものかという考え方をしていたと思うのですが、今日の話を伺いますと、どうもそういった考え方は少し狭いのではないかという感じが私自身はしておりまして、もう少し広い意味での研究資源といいますか、学術資源といったようなものがやはり各研究機関にはあって、そういったものをどうやって作って発展させてきて学問に貢献してきたかというのを評価の――評価といいますか、検証の指標としては大事な点ではないかなという感じを実は受けております。その中で地球研と、それから、統数研のお話の中に、そういったことも若干触れていらしたと思いますので、そこらあたりをもう少し御紹介いただければと思うのですけれども、いかがでしょうか。
【安成所長】 いいですか。
【観山主査】 はい。どうぞ。
【安成所長】 地球研です。ありがとうございます。地球研は、私も主張しましたように、いわば学術の基盤、プラットフォームそのものとして機能しており、これは大学共同利用機関とは何か、という問題と密接に関係します。我々の場合は、私のプレゼンでも少し触れましたけれども、研究、地球研はできてからまだ20年たっていません。19年目です。基本的には地球環境問題、あるいはいろいろな環境問題についての課題を、基本的には大学のコミュニティから、プロジェクトとして提案してもらいます。
その提案されたものを地球研の、先ほど言いました外部評価委員会を含めたプロセスで、本当にそれが大事なことか、地球研のミッションに沿った提案かどうかを厳密に評価します。提案された研究はインキュベーションスタディから始まって、フィージビリティスタディ、それから、最終的にこれはいいとなるとフルリサーチとして採択します。採択されたプロジェクトは、通常3年とか5年の研究として実行されますが、その過程で、所内外のさまざまな機会で評価や検討を進め、いわば環境問題における知の統合を進めます。これらの成果は、研究を通して得られたデータも含めて地球研として蓄積し、それらを次の新しい研究のシーズにも資することになります。
これらの過程を我々は、まさに学術基盤のプラットフォーム、知のプラットフォームと言いたいのですが、そういう形の機能というのが非常に重要ではないか。地球研の場合は、ですからこのような、多くの大学との共同利用・共同研究そのものが地球研の一つの大きなプロセスといいますか、研究の資源そのものになっているということです。そこのところが少し他の機関とは違います。もちろん地球研には、例えば同位体環境学という分野で、大学にはない高度な分析機器群があって、それを共同利用するという機器利用を柱とした研究のプラットフォームという機能の部分もあります。ただ、我々はそれも含めて、地球環境問題にいかなる切り口があるかをいろいろな大学の研究者や研究者コミュニティから提案してもらって、それを地球研でいわば非常にインテンシブなディスカッション等をしながら、共同研究を進めて新しい成果を出してもらうことが、やはり大事だと考えています。
今、環境とか地球環境に関する研究所は、文科省傘下に限らず、たとえば環境省傘下にもありますが、そこと何が違うのか。環境省関係の研究所は、基本的には政策対応がまず求められています。しかし、文科省傘下の地球研は、設立以来、文理融合を通して、そもそも地球環境問題というのは何か、どういう形で(広い意味での)環境問題が起こっているのか問っています。これはまさに、人と自然の関係性がいかにあるべきかという問題提起でもあり、環境問題を人間の問題としても捉えるということです。地球研がなぜ人間文化研究機構に当初から入っているかという理由はそこにあります。そういう新しい切り口を、いわば大学の人たちが来て、地球研に何年か滞在してプロジェクトを行い、また大学に戻って、徐々に広げていく。例えばそういう結果として、今、国立大学にもいろいろな環境分野や地域の創生とか、学際的な問題をターゲットにするような学部とか学科、大学院もかなりできつつあります。そこには地球研のプロジェクトでやった連中が大学に戻って、そういう分野を更に広げていくことにかなり貢献しています。そういう形の機能というのが正に大学共同利用機関ではないか。我々はそういう観点でやっています。
【観山主査】 どうぞ。
【椿所長】 統数研でございますけれども、三つぐらいの機能がそれを果たしていたのだと思います。歴史的には統数研が非常に開発してきた、あるいは統計全体のコミュニティが開発してきた少し高度なものというのは、各科学分野の学術研究の論文を書くということにおいても非常に重要だったんですね、計量科学、それに対して統数研は、日本に統計学科とかが各大学に配置されていないという状況の中で、研究者の方々に対する講習とか講座というものをやっていたということがあります。人材育成的な部分に関して、今後考えていかなければならない、今日、非常に思ったところです。
もう一つは、やはり統数研が開発した方法論、今日もAICが出ておりましたけれども、それがそもそも学術自体を底上げするという、そういうミッションです。ただ、これは世界の統計のコミュニティ、研究のコミュニティの中で現在競争的な環境にあることも事実です。
それから、第3は、先ほどの統計が分野に対して貢献して、例えば先ほど天文台のことを申し上げましたけれども、天文台は今回、助教の方を5年間、統数研に配置する。つまり、そういう分野のリーダーになるべく、いわゆる天文情報学という新しい学術の分野に対してリーダーとなる方を統数研に派遣してくださる。それで統数研の中で5年間やって、元の研究分野に戻っていく。そういうモデルが実現しつつあるのですけれども、これまでもある程度研究者の共同研究のコミュニティの中で統計数理に非常に強い学術分野の研究者を当該研究分野に戻していただいたという、そういうような応用の中の機能というのは果たしていたのだろうと、そういうふうに考えているところです。
【観山主査】 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。今せっかく言われたので、この前のブラックホールの画像を撮ったと言う件については、統計数理学研究所の池田先生、随分頑張っていただいた訳です。一度、池田先生にこういう他分野との連携についてお聞きしたことがあります。日本では大型の科研費が採択されて、五、六年前から組織的にやっているわけですけれども、アメリカではどうだったんですかと聞いたら、2000年ぐらいから結構お金が出て非常に活発に研究連携が活発になったそうです。だから、日本のこういうある種の学際的な領域への支援というのは、やっぱり遅いのかなと思いました。今回は非常にうまくいい例が出たわけですけれども、なかなか、それは一つの例かもしれませんけれども、学際的な領域にいかに注目して、そして拠点を作って、資源を、リソースを入れるというのを不断に考えておかないと、なかなか新しい方向性が出てこないかなということを少し思いました。ありがとうございます。
【椿所長】 どうもありがとうございます。
【観山主査】 ほかに委員の方から何かございませんか。今日は貴重な御意見を、特に有識者の方々は資料をしっかり読んでいただいて、それぞれにコメントを頂きましてありがとうございました。これにつきましては、個別には今申しませんけれども、事務局の方でまたまとめまして、その指標とか具体的なやり方について参考にさせていただきたいと思います。
また、当該の機関ともいろいろなやりとり、キャッチボールをしながら、この最終的な指標とか、例ですので、これは申しましたように一般的に、長谷山先生が言われたとおり、一つのベーシックな基準がないとなかなか社会からはしっかりと見てくれないのではないかということもありますけれども、ただ、大学共同利用機関、人文社会から高エネルギーみたいな大型の装置を持っているところと大分様子は違いますので、それぞれに適切な形で評価をして、なおかつこの大学共同利用機関という日本の非常に独自なシステムが日本の学術に対していかに貢献して、将来的にも貢献しそうなのかどうかということを6年、12年の単位で見ていこうというのが今回の検証でございますので、どうぞよろしく御協力頂きたいと思います。
また、正に私も研究所におりましたので分かりますけれども、評価疲れがないように最大限の努力はしたいと思います。ただ、反対に言いますと、ここで大学共同利用機関のそれぞれの特色とか効果というものをうまくアピールする機会でもあろうと思いますので、よろしく御協力いただければと思います。
それでは、少し時間は早いのですけれども、今日は本当にどうもありがとうございました。その他につきまして事務局から何かありますでしょうか。
【降籏学術研究調整官】 次回の作業部会のスケジュールについて御説明させていただきます。次回は10月25日の金曜日、午後15時から17時まで、場所は文部科学省東館3階の3F1特別会議室を予定しております。以上でございます。
【観山主査】 それでは、本日は貴重な御意見、どうもありがとうございました。委員の皆様、本当にありがとうございました。これで終了といたしたいと思います。


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