研究環境基盤部会 大学共同利用機関改革に関する作業部会(第4回) 議事録

1.日時

令和元年9月27日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省13階 13F1~3会議室

3.議題

  1. 「大学共同利用機関の検証ガイドライン(仮称)」に関するヒアリング
  2. その他

4.出席者

委員

観山正見主査、小林良彰委員、小森彰夫委員、佐藤直樹委員、永田恭介委員、平川南委員、藤井良一委員、山内正則委員

文部科学省

村田研究振興局長、増子大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、西井学術機関課長、降籏学術機関課学術研究調整官、吉居学術機関課課長補佐、小林学術機関課課長補佐、二瓶学術機関課連携推進専門官、その他関係者

5.議事録

 【観山主査】 少し時間前ですけれども、ほぼおそろいのようなので、ただいまより科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会大学共同利用機関改革に関する作業部会(第4回)を開催いたします。
委員の先生におかれましては、本日も御多忙のところ御出席いただきまして誠にありがとうございます。
まず事務局より、本日の委員の出欠並びに配付資料の確認をお願いいたします。
【降籏学術研究調整官】 本日の委員の出欠でございますが、本日は、フクシマ委員、長谷川委員、森委員が御欠席となってございます。また、本日の会議は、「大学共同利用機関の検証ガイドライン」案についての大学共同利用機関と有識者の方々のヒアリングということで、本日は委員の皆様の他、大学共同利用機関、また有識者の先生方に御列席を頂いております。お忙しいところ御出席いただきまして誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本日の配付資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第に、配布資料の一覧を示しておりますので、こちらをもとに確認をさせていただきたいと思います。本日は資料1から資料8まで用意をしております。資料1で、本日のヒアリングの進め方についての案と、それから資料2から資料8まで、それぞれの機関と有識者の先生方のヒアリング資料を配布しているところでございます。また、参考資料1から3まで、これは前回の本作業部会でお配りしました、ヒアリングの対象となります検証ガイドラインの骨子案、それと主な観点と指標の例と、参考資料3、これはもう既に確定しているものでございますが、大学共同利用機関として備えるべき要件を参考資料として配布しております。また、委員の皆様の机上には今回も「第4期中期目標期間の大学共同利用機関の在り方(審議のまとめ)」の本文と、大学共同利用機関関係資料を置かせていただいておりますので、適宜御参照いただければと存じます。
配布資料は以上でございます。不足等がございましたら事務局にお申し付けください。
【観山主査】 ありがとうございます。
本日は、「大学共同利用機関の検証ガイドライン(仮称)」についてヒアリングを行いたいと思います。まず、ヒアリングの進め方などについて事務局から説明をお願いいたします。
【降籏学術研究調整官】 資料1をお願いいたします。今回のヒアリングについてでございますが、まず1ポツの趣旨でお示しをしておりますが、大学共同利用機関が自己検証を実施するに当たっての検証の主な観点や指標例などにつきまして、関係者の皆様から意見を聴取して大学共同利用機関の検証ガイドラインの策定する際の参考とするためにヒアリングを実施するものでございます。
その方法でございますが、本日、参考資料1と2をお配りしておりますが、前回の作業部会でお示しをしたガイドラインの骨子案、それと検証における主な観点・指標例につきましてご意見を伺うということでございます。
そして、意見の聴取の方法につきましては、この資料の3ページ目に横長の資料をお付けしておりますが、こちらの分野別分類に従って実施をしていくことを考えております。
1枚目にお戻りいただきますが、2ポツの3つ目のポツでございますが、基本的に全ての大学共同利用機関からご意見を聴取することと考えておりますが、所属する大学共同利用機関法人に属する他の機関が代表して意見聴取を行うこともできるとしております。
また、分野にかかる有識者の方々からのヒアリングにつきましては、各分野あるいは横断する分野から数名の方から意見聴取をするとしております。
さらに共同利用・共同研究の観点から、国立大学の共同利用・共同研究拠点の代表からも意見聴取を行いたいと考えております。
そして、3ポツ目でございますが、ヒアリングの進め方といたしましては、大学共同利用機関から最大10分程度で、また有識者の先生方からは1人当たり最大15分程度の意見を頂戴したいと思っておりまして、具体的には、それぞれの大学共同利用機関からご意見を述べていただいて、簡単な質疑応答をして、次の機関へと繰り返した後、有識者の方からの意見と質疑応答を行い、残りの時間は全体又は個別の質疑応答や意見交換に充てたいと考えております。
なお本日は、1機関あたり10分、また有識者の方からは15分程度の説明時間とさせていただいておりますが、次回以降のヒアリングにつきましては、全体の時間配分により、説明時間について調整させていただく可能性があることをあらかじめお断りさせていただければと存じます。
2枚目でございますが、ヒアリングの内容についてですが、本日の参考資料1と参考資料2につきまして、検証の進め方につきまして大学共同利用機関の改革を進める観点からの要望の観点。それから丸2で、主な観点についての大学共同利用機関が自己検証する際の観点として有効かどうか、又は修正すべき、又は追加すべき観点はないかということ。また、指標例につきましては、主な観点をチェックする指標、又は備えるべき要件をチェックする指標として適当かどうか、また修正すべき、また追加すべきものはないかどうか。
また、4つ目に機能別分類といたしまして、大型の設備を有したり、資料やデータベースなどを備えていたりしていることなどを念頭に置いていますが、データや情報化については情報の基盤等を提供する観点から自己検証する際に留意すべきことについての機能別分類の観点から意見を伺うとしております。
そして、これは有識者の先生方にお願いしていることでございますが、大学共同利用機関に対して今後の取組等で期待することについて意見を頂戴したいと思っております。
本日は人文学の観点ということで、人間文化研究機構の5つの機関、それから有識者の先生としまして大阪大学の栗本先生、法政大学の山本先生から御意見を頂きたいと考えてございます。ヒアリングの進め方のご説明は以上でございます。
【観山主査】 どうもありがとうございました。それでは、時間が限られておりますので、早々ヒアリングを始めたいと思います。
まず国立歴史民俗博物館から、続いて国立民族学博物館、国立国文学研究資料館、国立国語研究所、国際日本文化研究センターの順にそれぞれ10分以内で説明をお願いいたします。残り3分の段階でベルを1回鳴らしますので、終わりを意識していただいて、2回目ベルを10分の段階で鳴らしますので、2回目が鳴りましたら終了いただければと思います。申し訳ありません。誠に時間が詰まっておりますので、10分でこちらから「これでおしまいにしてください」と申しますので、よろしくお願いします。
それでは、まず国立歴史民俗博物館から御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
【久留島館長】 おはようございます。よろしくお願いします。
まず、検証の進め方については幾つか素朴な疑問がございます。第一は、ここで示されている検証は、評価と異なる意味で用いられているように読めるのですが、そうだとするとその意味の違いをどのように理解すればよいか教えていただければと思います。
第二に、この検証は、相互の優劣を比較するような相対評価ではなくて絶対評価であり、この検証結果は大学共同利用機関として、その機能を十分に果たしているかを検証するために利用される。したがって共同利用機関の再編統合も含めた在り方について再検討するためにも利用されるのだという理解でよろしいでしょうか。
第三に、だとすると現在私たちが取り組んでいる国立大学法人法に基づく中期目標・中期計画に対する学位授与機構による評価とは異なるものになるわけですが、実際は同じような項目で評価されているところが少なくないというのが実感でございます。しかも、昨年度、定量的な共通成果、指標による毎年度の相対評価で運営費交付金を配分する仕組みが法人評価に導入され、今年度もその方針であると財政制度等審議会では明言されています。更に文科省による機能強化経費の配分を3つの重点支援の枠組みによる評価だとすると、この検証の他に3つの評価が混在しているように思われます。これらの関係についての説得力のある御説明をお願いしたいと思っております。特に実施したいのは、異なる評価がほぼ同時進行で行われることによって各機関の教職員を疲弊させている現状について、今後どのように改善していただけるのか、この見通しをお伺いしたいと思います。
と、実は長々申しましたのは、結論的に申し上げますと、ここで問われている大学共同利用機関としての検証の在り方については、以下のようになるのであれは、実は賛成できると考えるからです。
すなわち、大学共同利用機関として備えるべき要件に基づいて、それぞれの機関が特性に応じた独自の自己目標と検証の観点、指標を設定して自己検証することは、自己改革を進める上では重要だと考えます。改めて言うまでもなく、大学共同利用機関は、設立の経緯もミッションも研究の在り方も同じではなく、多様な在り方をしていることこそが重要で、それがこれまで大学とともに日本の優れた研究教育体制を支えてきたのだと考えるからです。したがって、組織としての自己目標設定、自己検証、自己目標を表現することが必要ですけれども、本来絶対評価となるはずで、更にしかるべき外国人研究者によって自己評価設定、自己検証の過程そのものをフォローし、自己目標の到達度を評価してもらうことによって、世界的に自分たちがどのように評価されているかも併せて確認できるはずです。これを私たちは自己検証による自己評価と考えており、外部検証過程にはこれを出すことになると思っています。
科学技術学術審議会は、6年間の計画を出された段階でそれぞれの機関の共同利用機関としての自己規定、備えるべき要件に基づいて策定された自己目標、計画の妥当性について、それぞれの分野の研究者により評価目標の是非を判断し、承認できるのであれば、6年目に自己検証による自己評価に対してその到達度について判断するという流れになると思っています。
それが外部検証となるのであれば、大学共同利用機関の自己改革に資するものとなり、これこそが機関のイノベーションにつながるものと思っています。その意味では外部検証の専門員の選出のプロセスと検証の基準が明示されることを強く望みます。
ただし、多様な専門分野に広がる大学共同利用機関について、今回示されたような主な観点と指標で一律に評価を行うことは困難であり、評価の指標については、各機関の特性に合わせて設定するか、若しくは選択制にすることを求めます。そのようにすることにより、各機関が設けた自己目標の達成状況を適切に測ることができると考えるからです。
また、外部検証に当たっても、各機関の持つ特性に合わせて、多様な研究分野からの研究者を選定し、ピアレビューを行うことが望ましいと考えております。
主な観点、資料2の2についてですけれども、時間がなくなってまいりましたので、書いてあることはできるだけ端折(はしょ)りますけれども、絶対評価としての自己検証を行うことが前提であり、かつそれが尊重されるなら、この観点自体はだいたい妥当だと考えています。各項目で歴博を初めとした人文系の機関に関わって修正を追加していただきたいと考えている点についてお話します。
2の中核拠点性のところでございます。大学における人文系の教育研究環境が厳しい現状において、これは他の機関も同様だと思うんですけれども、歴博は、日本の歴史と文化に関する研究を推進するために必要な研究者、研究水準、研究環境において先導的な役割を担っており、我が国における中核的研究機関であるとは考えております。
したがって、2つ目の丸の学会コミュニティとの関係については、歴博に関して申し上げますと、多様な学会、研究者コミュニティが存在していて、その意向を反映した運営を行っていますが、ここでは「広義の日本史学」「日本学」であることを考慮していただいきたいと思っております。主な観点には、「国内外の研究者コミュニティが明確」とありますが、それが実は多様だということになります。ここでも歴博一つとっても多様性を特色としておりまして、全体として多様性について配慮していただくことが肝要であると考えています。更にこの点でも様々な分野の研究について、その研究分野のしかるべき研究者によるピアレビューが不可欠であると考えるので、実施すると実は結構大変なことになると覚悟しております。しかも、ピアレビューといえばそれで済むわけではなくて、評価者の評価能力や客観性をどのように保証するのか、これは私たちに課せられた説明責任も重くなるはずでございます。
3番の国際性についてですが、国際的な研究活動については、国際的な調査研究活動としていただければと思います。なお、4つ目の丸で外国人研究者・女性研究者・若手研究者とありますけれども、あとの2つと国際性の関係についての説明をしていただく方がいいかと思っております。
4番目の研究資源については、「資料」を「学術資料」としていただきたいと。これは指標においても同じで、最初にそう書いてございますので、「学術資料」と書いていただいた方が正確だと思います。
指標例の2の2につきましては、まず人文系に関しては、ここに挙げられている数値目標的な指標例では研究の質を正確に測ることができないのではないかという危惧の念を持っております。
2番目の中核拠点性についてですけれども、指標例として挙げられているものは、理系については有効だと思うんですけれども、人文系の研究分野については少しなじまないところがあると思っています。下記のことを追加していただければと考えております。
人文系の学問の持つ特性を、多様な研究関心であったり、多様な研究分野であったり、対象であったり、多様な研究方法であったりするわけですけれども、十分に指標設定をする必要があると考えております。例えば、共著論文の数とか割合とか TOP10%論文とありますけれども、人文系はそもそも単著がほとんどであり、論文も重要ですが、それらをまとめた著書の刊行が最大の成果であると考えられています。また、TOP10%論文に該当するものはほとんどありません。研究成果が出るまでには時間が多く掛かる場合もあり、数十年を経てから評価されるもの、また長い間引用され続けるものもあります。こうしたものの評価指標も必要だと考えます。また、随所に国際という言葉がありますが、歴博のように日本の歴史と文化といった、いわば日本学の国際的研究拠点であっても、その研究成果は英語ではなくて母語である日本語を使った日本での研究が国際的に最高水準であり、まずは日本において日本語で発表されて初めてその成果が評価されています。母語で思考したり、研究したりすることを放棄し、その思考過程全てを英語に置き換えるなら別ですが、これらの日本学という学問領域の特性に合わせた指標の追加は必要だと考えています。この点ではライデン声明を持ち出すまでもありませんが、優れた地域的研究を保護せよという点は重要です。研究の成果として、著書・論文だけでなく、展示(展示図録)・研究映像・資料集・調査報告・自治体史などにもそれぞれの分野に応じ、指標に含める必要があります。
3番目の国際性ですが、国際的な研究活動の状況に国際共同展示や国際的な資料調査研究活動の成果も加えていただきたいと強く要望します。海外にある日本関係資料はこのままだと博物館や大学の倉庫の肥やしになり、いずれは消滅します。
5番目の新分野創出です。評価指標はTOP10%などで適用できない指標が多い人文系の特性に合わせた評価指標の追加が必要だと考えています。論文数や、国際共著論文数など、カウントできるものもありますが、そもそも個人の研究として公表されるものが多く、ここでもきめ細やかな個別のしかるべきピアレビューが必要だと思います。
4番目の機能別分類のところでは、大型設備・データ・情報基盤の3つに分類されている理由とその具体的な内容について御説明いただければありがたいと思っています。また、データに学術資料は含まれるのか、その学術資料の価値を強調すべきで、ここは備えるべき要件に合わせて、学術資料・データとしていただけないでしょうか。
以上でございます。ありがとうございました。
【観山主査】 どうもありがとうございました。これは他の機関からも質問というか、要望として、法人評価と、これから行う検証において負荷軽減に関して随分御要望とか質問があると思いますが、そこら辺どうしましょうかね。今まとめて事務局からその観点について御説明願えますか。
【降籏学術研究調整官】 ただ今のご説明や主査からもございました法人評価と今回のこの自己検証との関係でございますが、この質問は他の機関からも同様のお尋ねを頂いております。基本的に法人評価については、法律に基づいて中期目標期間に計画した業務の実績について行う大学共同利用機関法人の評価であり一方の今回の自己検証というのは、今後、中期目標2期分に相当する12年間を存続することを基本としつつ、あくまでも大学共同利用機関が大学共同利用機関として役割を果たすことができるかといった観点から自己点検するということでございまして、既に行われている大学共同利用機関法人の法人評価と今回の目指していく大学共同利用機関の自己検証は、性質が異なるものと考えてございます。そして御指摘がありましたように、中期目標期間終了に向けた法人評価と時期などが重なってくる部分が出てくるかと思いますが、スケジュールの立て方や、評価の項目については、現在、中期目標期間終了時に向けた評価のプロセスとして学位授与機構による現況分析評価をやっていただいていると存じますけれども、そうした評価において提出される指標などを極力活用して、各機関の皆様方の負担にならないように配慮しないといけないことは、審議のまとめでもそのようなご指摘を頂いたり、先の備えるべき要件の際にも御議論いただきましたし、前回の作業部会でも御指摘を頂戴しているところでございます。改めましてそういったところは意識をしていかないといけないと思っております。
それから、今後の運営費交付金の配分の考えなどとの関係についても触れていただきましたが、第4期の運営費交付金の配分の考え方や在り方については、今後検討されていくことと考えておりまして、今時点では、第4期中期目標期間は2022年から開始されることになりますが、逆算していくと、来年かそこらにそういったことについても検討されていくかと思われます。
以上、補足説明等をさせていただきました。
【観山主査】 それと、今後もあると思いますけれども、私の考えとしては、絶対評価で行うということです。それから、指標に関しては、あくまでも指標例でありますので、おっしゃるとおり各機関の特色がありますので、その特色に関してそれぞれ強調すべきところを強調していただくことだと思いますが。指標例でありますけれども、今回のこういうヒアリングでいろいろな御意見を頂きたいのがこの趣旨でありますので、よろしくお願いいたします。それでは、時間の都合がありますので、次に国立民族学博物館からの御説明をお願いいたします。
【吉田館長】 国立民族学博物館、民博の吉田でございます。お時間頂きありがとうございます。
今回の大学共同利用機関の検証ガイドラインに関する私どもからのお答え、それから御質問ですけれども、まず、私たちの機関の特性を御紹介させていただいた上で、お答えさせていただいた方がいいかと思いまして、回答フォームの最後、5ページ目の後、後ろですね、6ページ目に色付きのパワーポイントを1枚だけ用意させていただきました。恐縮ですが、まずはそれを御覧ください。
民博は、文化人類学、民族学とその関連分野の大学共同利用機関として1974年に創設されました。その研究機関、大学共同利用機関が、研究資料の蓄積と、研究成果の公開の回路として博物館機能を持っていると。そしてまた、総研大の2つの専攻を通じて大学の教育にも従事している機関です。分かりやすく御説明するために、あえて研究機能と博物館機能、これ本来は一体のものですが、それを分けて示しておりますけれども、民博には現在、専任教員が52名おります。それぞれが世界各地でフィールドワークを展開していて、人類学関係の単体の研究機関としては、教育研究機関としては世界全域をカバーする研究者の陣容、それから研究組織を持つ点で、民博は世界で唯一の存在です。それから民博には現在、世界全域の人類学・民族学の学会組織、IUAES、国際人類学民族学連合の本部が置かれております。ですから、文字どおり、世界の人類学・民族学研究の先端になっていると言えるかと思います。
一方の博物館機能について申しますと、民博がこれまで収集してきた標本資料、ものの資料は、現在34万5000点。これは20世紀後半以降に築かれた民族学コレクションとしては世界最大のものです。それから、博物館施設の規模の上で民博は現在世界最大の民族学博物館になっております。
現在、民博が進めている研究活動をその次のスライドで列挙しておりますけれども、今回の大学共同利用機関の検証に当たっての我々からの答えとして、まず大学共同利用機関が備えるべき要件については、これは基本的に、我々これまでから提出させていただいたものを踏まえていただいていると受け止めました。ですから特段追求が必要というのは認めておりません。それから項目別の整理につきましても、中核拠点性にしろ、国際性にしろ、あるいは研究資源にしろ、我々の機関の特性に照らして適合するものが整理されていると考えております。検証の進め方、主な論点については、こういう検証は定期的に必要だということは、当然そう考えておりますし、ただその検証に当たっては、大学共同利用機関の活動が極めて多様であって、特に、人文科学系の研究機関における研究の在り方は理系の研究機関の在り方と大きく異なることに留意する必要があるだろうと思います。
人文科学は、人間そのものと、そしてその人間の生きる世界についての、これは不断の探求を求めるものであって、あらゆる学術的な探求の基盤になるものだと考えております。それだけにその評価・検証に当たって短期的な即効性が安易に求められてはならないだろうと思います。
我々民博では、実施している研究プロジェクトごとに海外の研究者を含めた評価委員会により評価を毎年実施している他、機関全体としても毎年点検・報告書を作った上で、運営会議、それから外部評価委員会での評価を受けて、事後の研究活動に反映させてきています。ですから今回の検証に当たって、まず自己検証をして、その後外部検証をするという、この手順を踏むのは妥当だろうと思っております。
ただ、その外部検証の体制に関して、先ほどもありましたけれども、あえて繰り返させていただきますけれども、特に本年度は第3期中期目標・中期計画に関する大学改革支援・学位授与機構による評価が実施されることになっておりますので、その評価と今回の検証の関係について、内容、時期、作業に関して重複が起こらないよう、あらかじめ明確な整理を行う必要があると考えております。
主な観点につきましては、当該項目の内容と照らし合わせて、だいたい妥当なものが列挙されていると考えております。ただ、最後の6番目「社会との関わり」に関しては、当該研究機関から社会に対する一方的な発信のみが観点として提示されております。これまで社会の各方面で指摘されてきている、研究の社会との「協働性・共創性」そういう視点が考慮されていない。我々はその点に非常に重点を置いて活動を展開しておりますので、少なくとも今、1つの観点として、「研究成果を広く社会と共有し、社会との協働・共創を通じて、新たな研究の展開につなげるとともに、社会の諸活動の進行に寄与している」という観点が加わることを希望しております。
指標例につきましては、既に例として挙げていただいているもので、有効だろうと判断するものはあえて記載をしておりません。特に、我々の機関の特性に合わせて更に必要と考える指標例を挙げさせていただいております。その特性という点で言いますと、歴博さんと同じように展示であるとか、データベースであるとか、それから国際的な賞の対象になるような映像の番組、そういったものが今後必要になってくるかと思います。繰り返し指標例で申し上げておりますのは、我々の分野、それから人文系のメディア一般に関しては、評価の中心となるものは、それから社会的なインパクトという点でも単著書、それから共同利用性という点からいうと、共同研究の成果を示す共編著書が重要な評価の対象になります。共著論文は実は著者の主体性があやふやになるという点で、評価の対象という点で言いますと、ややグレードが落ちるというか、中心にはならないという点があるかと思います。それ以外の指標例については個別に御覧いただければと思います。以上です。
【観山主査】 どうもありがとうございました。委員の方々から直接に質問とか御意見とかありますか。小林先生。
【小林委員】 歴博、民博両方とも論文よりもむしろ著書の方が重要であると。そのとおりだと思うのですが、論文の場合ですと、インパクトファクターで、適当かどうかは別にして、1つのグレードがつけられますが、出版の場合、出版社にどうやってグレードをつけるのか。簡単に言いますと、自費出版であれば誰でもできるわけです。それから教科書屋さんみたいな出版社もないわけではなくて、それは海外にもありますので、大体出版社というよりは印刷屋さんに近いところがある。一方で、物すごく厳しいところもあります。それをどのような基準で評価をつけるのが適当だとお考えでしょうか。
【久留島館長】 おっしゃるとおりだと思っています。著書を出せばいいわけではないので。それでその評価の仕方については、もう少しちゃんと検討しなければいけませんし、各学会がどういう対応をとるかというのは当然あると思うんですけれども、私はしかるべき学会誌の評価、書評とか評価とかは1つのピアレビューに当たり得ると思っております。そういう形のものをどう評価するかが今後の問題ではないかと考えていまして。出せばいいのでは当然なくて、あるいは部数ではなくて、部数は問題になるんですよね、どうしても。そうではなくて、学会での評価というよりは、しかるべき学会での評価が重要だと考えております。
【吉田館長】 よろしいですか。基本的には同じです。もちろん国際的に、あるいは国内でも評価の高い出版社はございますけれども、それ自体を評価の指標にするのは余り適当ではないだろうと。社会に対するインパクトを考えると、1つは賞の受賞ですね。それから学会、それは学会の賞であったり、それ以外の賞もあると思いますが、それともう一つは、学会誌の中での、学会での書評が大きな指標になってくるだろうと考えています。
【小林委員】 そのときの問題は、どうしても若手研究者がこぼれてきてしまう。シニアから上の方々はそれでいいのですけれども、若手研究者は、例えば国際共著でも何でも出したときをどう評価するか。社会科学はそれで決まって、経済学ですとMacmillanとか、政治学だとLexingtonとか、社会学だとSageとか、割とトップパブリッシャーみたいなのが決まっていますが、そういう点は人文系はどうなのでしょうか。
【吉田館長】 おっしゃるように評価の高い出版社はございます。若手に関して言うと、そもそも研究助成をする段階で、助成の財団での審査、あるいは助成の機関での審査が行われて、それが評価された上で出版に持ってくる、その査定の段階と言うんですか、プロセスも我々は重要な評価指標になるだろうと思っております。
【小林委員】 時間がないと思いますが、もう1点だけ。ただ、本だけではなくて、論文も重要で、ここで重要なことは、インパクトファクターを理系と同じように3年とか5年で見ないで、ピークは分かりますから、エンジニアだと1.5年ですけれども、経済学で3年、政治学で5年、7年です。人文学で大体11年ぐらいでピークなのです。哲学は、本人が死んでからがピークですけれども。そういうデータをもとに、インパクトファクターの計算を理系とは違って、御自分たちの分野はどこがピークなのだと、そこでとるようにと言えば、理系とは全く違うという話ではなくて、取り方、枠は一緒だけれども、取り方の方法が違うと御提案いただくのが一番いいのではないかという気がします。
【吉田館長】 ありがとうございます。その辺一度検証して、データを出してみたいと。
【観山主査】 貴重な御意見、意見交換ありがとうございました。それでは、次に国文学研究資料館、お願いいたします。
【谷川副館長】 それでは私から簡単に述べさせていただきます。既に重複している事項もございますので、なるべくそれを省きまして述べさせていただきたいと思います。
全体的には既にお話が出ているように、法人ではなくて機関単位の検証であると。ということは我々も理解するわけですが、その際の作り込みの仕方が、もう従来出ておりますように、中期目標・中期計画の検証を含めて、どういう構造になっているのかがよく分からないところがまずございます。それは、いろいろなところで分かれて書かれているので、分かりづらいかと思いますが、我々はほぼ半世紀、共同利用機関として活動しております。ベースになるのは、現在では法令マップでありますが、法令で設置目的が決められておりまして、これはずっと半世紀変わっていないわけです。それに基づいて中期目標・中期計画を立て、しかも時々はコミュニティの要望、学会の動向を見ながら、その上にいろいろな要素を継ぎ足していくと言いますか、こういうこともやらなきゃいけないという形で活動を展開しているわけです。それは当初から運営会議を設置して、外部の意見を入れて運営をしているわけですが、その中に、現在観点として説明されているものがどう入り込むのか、例えば新分野の創設が機関単位で認められた場合、我々の場合は国文学という分野が明確な設置目的、法令等の中に、別表ですが書き込まれているわけです。ですから、端折(はしょ)って言いますが、最終的に設置目的は満たしていても、共同利用機関としてはパフォーマンスが不足しているから研究拠点に落ちることがあり得るんだと一部理解しておりますが、これは一体どういう事態になるのか。設置目的自身の中に、新分野の創設が入っておりまして、それに対する予算措置もされていて、人員も配置されていることであれば、新分野の創設が中期目標・計画の中にも書き込まれていることになれば分かるんですが、そういう構造になっていないことが、今回の機関単位としての評価検証に対して、我々が一番戸惑っているところでございます。
あとは、我々は大変小さな研究機関でして、30名ほどしかおりません。今後、当初の効率化件数等がまだ課せられておりまして、この先、更に予算と人員が減っていく。その中で、先ほど申し上げたように設置目的に書かれていることと、プラスこの観点に書かれていることを全てクリアしなければ共同利用機関であり続けることができないともう制度設計がされているのであれば、現在の状況が続くことを想定すると、我々の将来はかなり暗いと考えざるを得ないと考えております。
これは全体的なところでありますが、それぞれのいろいろな事項について御説明するべきでありますが、我々が大事だと考えている点に絞ってお話ししたいと思います。
まず、歴博さんからも出ましたが、我々は設置目的に国文学と書かれている。日本文学なんですけれども、その日本を対象とした研究をしなさいと設置目的で書かれているときに、英語で、又は英語以外の外国語で書かれた論文を中核拠点の指標に持ってくるというのは一体どういうことなのか。先ほどと重複しますが、我々が日本語で幾ら書いても、共同利用機関としての適格性から外れると判断されるという判断をしたのはそういうところであって、この辺を指標例の構成の仕方等で改めていただかない限り、矛盾は解決しないのではないかと考えております。
大変小さい機関ですので、それぞれの指標例がほぼ実績というような曖昧な言い方がされておりますが、数値であろうと我々は判断しておりまして、数値で見られた場合、パフォーマンスを数値で判断するんだといった場合に、機関の規模は当然配慮していただきたい。総合大学のようなところを念頭に置いたような観点・指標を、30人の、場合によっては学部にも相当しないような機関に持ってきて「駄目だね」と言うところはどうかと考えております。ですから、機関の特性等に合わせて、場合によってはそれぞれの項目指標例にウエートをつけるとか、あるいは指標間に軽重をつけていただくとか、そういう配慮をしていただきたいと考えております。
あと、数値だけではなくて内容だろうと。その質的な面をいかに検証しようとされているのかがはっきり伝わってこないところがあります。例えば、データベースのアクセス数、あるいは持っている資料の数、こういう数だけでは測れない中身がありまして、研究者に役立つようなどのような学術資料を集めているのかというところで評価していただかないと適正な評価にならないので、我々は研究資源の項目のところが非常にウエートが高いと考えておりますので、その辺に対する御配慮をお願いしたいと考えております。
最後に、人材育成のところで、総研大と連携大学院が指標で並置されていると思いますが、これは、共同利用機関にとってはかなり位置付けが異なるのではないかと考えておりまして、双方を一律に機関に課す、具体的に両方やっている機関もおられるんですが、我々は両方やっておりませんので、そうなった場合、両方をやっていないと、連携大学院の取組をしていないと、共同利用機関として適格性に欠けると判断されるのかどうかということも含めてどういう制度になっているのか、お考えをお聞かせ願えれば幸いかと思います。我々としては、その2つの指標例を併せて、総研大又は連携大学院としての取組状況という指標例に改めていただきたいと考えております。以上です。
【観山主査】 ありがとうございました。まず、新分野創成は、私の個人的意見ですけれども、分野ごとによっていろいろな広がりがあると思います。個々の機関では設置の目的というのは別に変わっていないわけでしょうけれども、その中でどう変革してきたのかとか、どういう方向性を出してきているのかということを強く訴えられることでよろしいかと思います。それから幾つかのところで外国語に対する対応がありますが、これも私の個人的な意見ですが、確かに日本の研究なので、日本語でというのは十分分かります。ただ、外国の方の参加も非常に重要なことで、つまり日本人が日本人だけでやっていたらいいのかという問題がどうしても出てきます。国際的な観点からたくさんの人に参加していただいて、日本文化、日本の資料について研究者を増やすという観点から言うと、外国語でいろいろなものを、全てとは申しませんけれども、積極的に発信を行うことは非常に重要なことだと思います。もちろん日本語は大切なことは分かります。今、ジェンダーの広がりだとか外国人の協力は非常に重要で、そういう面から日本の研究が、更に国際的に盛んになるという観点が非常に重要だと思いますので、その点はよく認識していただければと思います。小林先生何かありますか。
【小林委員】 国文学研究資料館をサポートしますと、そもそも所長からして外国人ですから、十分は英語化はやっています。一緒に新分野というのを具体的に言うと、従来は国文学の源氏物語とかいろいろな原本持っていらっしゃる。それを保存されていたり、マイクロフィッシュ化されていたのをデジタル化することによって従来の国文学では分からなかった新しい文理融合でいろいろなことをやってらっしゃると。でもやればやるほど、実は人手が足りなくて、本来のミッションとの関係で悩んでいらっしゃるということです。重要なことは、英語化について国文学研究資料館はかなりやっています。例えば、古典の屏風にスマホを近付けるだけで英語が出てくるとかというぐらいまでやっています。ただ、おっしゃっていることは、源氏物語や伊勢物語について日本語で書いた本は評価されないのかという話です。つまり英語で書いたものを評価するなとおっしゃっているわけでは多分なくて、英語で書いたものは、いや外国語で書いたものを評価するのも当然ですけれども、国文学研究資料館なので、日本語で書いたものも評価してくださいと。実は、たくさん外国人が来ていますが、皆さん日本語は、多分私よりはできる人たちがたくさんおり、例えばロバート・キャンベル先生は私よりできると思いますけれども。皆さん日本語ができるので、それもきちんと正しく評価してくださいというのは、多分歴博も同じような雰囲気だったと思います。だから英語と日本語のどちらも評価してもらいたいということです。
【観山主査】 それはもう委員の方、よく分かってもらえると思います。
次に、国立国語研究所からお願いいたします。
【田窪所長】 国立国語研究所長の田窪です。意見を述べさせていただきます。
一般的に、まずここでの評価基準あるいは検証ガイドラインは、当該の大学共同利用機関の研究分野及び目的、ミッションがどのようなものであり、その目的が最大限に発揮できているのか等の自己検証を測るものであると思われます。その観点から、評価基準自体、ガイドラインの中身自体の検証があってしかるべきであると考えます。
評価すること自体が目的にならず、優れていると誰もが認めるような機関や研究者をこの基準で測って、優れていると評価できない基準であれば、それは基準自体が間違っているとすべきではないかと思います。その基準を目指し、それらをクリアすることでその分野の発展が望めるような基準であるべきであると考えます。
その基準を満たそうとすることで、分野の発展が阻害されるとか、将来を見据えた研究ができなくなって、短期的な展望のない研究を促進してしまうことがない基準であるべきであると考えます。
検証の時期ですけれども、これは6月末の中間評価の達成状況報告書提出後にしていただかなければ、作業量が多くなりすぎて適正な検証ができないと存じますので、御配慮をお願いします。
以下、多少細かくなりますけれども、具体的な意見を申し述べます。まず観点について述べて、それから指標例について述べます。一部は他の機関の内容と重なります。
資料2ですけれども、主な観点に関しては、全体にだいたい適切なものと見られますが、回答しやすいように文言の修正をお願いいたします。これは確定したものではないと存じますけれども、観点3の「研究者の在籍状況」という表現は非常に分かりにくいです。指標の文言に合わせて「国際的に評価されている研究者が在籍しているか否か」などとすべきかと思います。観点4の「ポストドクター等の時限付き職員の任期終了後のキャリア支援に取り組む」という文言ですが、任期中に支援をすることか、それとも任期終了後にも支援をすることかということが不明になっています。任期終了後の支援はできませんので、「任期終了後のキャリアを見据えた任期中での適切な支援」などのように、実行可能な観点に文言の修正をお願いします。
次に観点6、7です。民博と重なりますけれども、社会への情報発信だけではなくて、産学連携であるとか、地域社会連携の実施に関する観点が入ってしかるべきかと思います。
以下、指標例について述べます。これらの指標例で、一番問題なのは、これらが学際的、文理融合的な機関の性質、長所を測る基準になり得ていないことかもしれません。特に、人文、認知科学、言語処理の融合的な研究機関である国語研の特性を測る指標とはなり得ていないかもしれません。しかし、時間の都合でここでは人文系指標について申し述べます。これが一番問題が多いと考えるからです。
例えば、2の指標例の2つですけれども、他の機関の方も申し述べられましたが、TOP10%の論文の数・割合に関しては、人文系の研究者、研究機関の基準とはなり得ません。論文よりも著書、書籍の共同執筆などで成果の発表が重視される人文系の分野では、これらの研究者、また彼らが属する研究機関の評価基準にはなり得ないからです。さらに、論文で評価する場合でも、非常に多くの著者が共著する分野における論文の引用率やインパクトファクターを同じ基準で評価はできません。先ほど小林委員からおっしゃってくださったように、適当な正規化、ノーマライゼーション(正規化)やスタンダーダイゼーション(標準化)みたいなものをしなければ正当な基準とはならないでしょう。これを文理融合的な研究機関でやった場合には、同じ機関でこのような正規化を各研究者についてやらなければならないということが生じます。一律の評価基準で評価することは不可能だからです。
次に人文・社会分野で考慮すべきとされた3点のうち、1番目のものは、日本語で書かれ、日本で刊行された著作物は考慮されないような書き方をされています。これは非常に問題で、そう読めるような指標は先ほど申し述べた観点から言うと、適切ではありません。
また、人文系と社会系とを同じ基準で測ることも適切ではないと考えます。この点で、2番目のものは社会科学系の指標かと思われます。3番目のものは国際性の方に移すべきではないかと思います。したがって、人文・社会科学分野で考慮されるべきであるとされた3点はどれも適切ではありませんので、変えていただきたいと思います。
さらに、これも他機関の方でも述べられましたけれども、日本語・日本関係の研究分野では、日本が卓越していると考えられるため、国際共著論文を作成することの重要度はそれほど高くありません。また、アジア言語・アジア文化関係の研究でも日本が最も進んでいる分野があって、そこでは国際共著論文にそれほどの重要性はないと言えます。これらの分野では日本語で書かれる場合も多く、更に英語や他の外国語で書かれる場合は、入門、解説、概説的な意味しかないことが非常に多いです。それらを高く評価するのは問題であるかと考えます。
ここでは論文が主となる評価指標とされていますが、地域言語・文化の記録・保存・再生に関しては、論文以外の研究成果の評価も考慮すべきです。例えば辞書であるとか、テキスト、絵本作成、デジタル博物館の作成、地域文化再生の実績なども考慮されるべきではないかと考えます。
3の指標例ですが、国際的な研究活動の状況という項目では調査を重要視する機関の特徴を反映させて、国際的な調査・活動の状況とすべきだと考えます。更にここでは指標例として、国際共著論文の数・割合が最初に挙げられていますが、先に申し述べた観点から、国際共著論文の数・割合を重視すべきではなく、国際査読雑誌に掲載された単著の論文であるとか、国際的出版社から出た著書、編著、シリーズの企画編集などを挙げるべきであると考えます。
また、国際会議でのプロシーディングスへの掲載論文、招待発表、基調講演、プリナリート―クなどもここの評価指標に含められるべきであるかと思います。
最後に新分野の創出ですけれども、新分野創出を目的とする学際的・融合的研究は基本的にすぐに成果が出るわけではなく、早急に成果を求めるべきではないと考えます。また新分野の創出に国際性が必ずしも必要とは限りません。学際的・融合的研究の現在の状況を評価指標にするべきだと考えます。更に新分野でTOP10%というのは、形容矛盾ではないかという感想さえ覚えます。
対案での指標の例はそこにありますように、TOP10%は外したものにすべきではないかと考えます。以上です。
【観山主査】 ありがとうございました。いろいろごもっともな点があろうかと思いますが、委員の方から何か質問がありますでしょうか。
TOP10%は理系から考えても余り良い指標ではないと思います。トップ1%ぐらいでないと良くないかと思いますが。私は今、大学におりまして思いますが、文系とか社会系の評価の適切なものを是非提示していただきたい、作っていただきたいと思います。皆さんはいろいろな分野の、日本の中の拠点ですので、TOP10%がよくないことは、それは当然ですが、何らかの形でこういう指標でされることが一番その分野で適切な評価であることを提示していただきたい。そうしないと、いつまでも、大学の中でもそうなんですけれども、文学部とか「評価資料を提示できない」だけでは全然進まないので、それは是非お願いしたいです。今すぐできるわけではないかと思いますけれども。
【田窪所長】 それは、確かにそうだと思います。国語研では、個人の研究者の評価に対していろいろな評価基準を作って、それによって評価をしているんですけれども、必ずしもその基準で非常に優れた研究者を選べるわけではない。だから、先ほど最初に申し上げましたように、その評価基準自体の検証を必ずしないといけないので、この検証の仕方、この評価の基準の仕方で、誰が見てもこれは立派な研究者である人を立派な研究者として認定できるかどうかという基準でなければならないので、簡単に基準を作って、客観的基準であるからいいとしてそれを適用してしまうと、非常に優れた研究者が全く評価されないような基準になってしまう危険性がある。ということで、分野の多様性と、その評価自体の基準を併せて、しかも早くやらないといけないということで大変困っております。
【観山主査】 そうですか。それでは申し訳ありません。次に、国際日本文化研究センターからお願いします。
【小松所長】 国際日本文化研究センターの所長の小松和彦でございます。これまでの他の機関の方々が申し上げたこととかなりの部分と重なりがありますので、できるだけ簡単に申し上げます。
検証の進め方それ自体に関しては、所内でも検討した結果、それほど問題はないだろうと判断しております。ただ、指標についてはこれまで出てきた点は、我々の方でも指摘しているんですけれども、私どもの研究所は国立日本文化研究所ではなくて、国際日本文化研究センターという性格上、これまでの研究成果に関しては、とりわけ海外の日本研究者の支援と、それから学際的な研究、国際も視野に入れた研究を進めてまいりました。そういう意味では、他の機関と我々日文研の機関の評価の在り方が重なる部分もあるんですけれども、随分違いも出てくるだろうと思っております。
特にそれぞれの機関は、それぞれのミッションを持って設置されておりますので、それぞれの機関の特性を、基本的には念頭に置いた評価、検証をしていただきたいと思っております。そういう意味では、指標が幾つかございますけれども、その中でも特に、うちの機関ではこういうところが強調点で、その点は特に評価してほしいという、そういう設定の項目というのでしょうか、は是非ともやっていただきたいと思うんですね。
人文系でも、5機関並べて同じような基準で評価されると、そこででこぼこが出てきて、評価すべきところが評価されない形にもなります。
それからもう一つ、今回は法人の評価ではなくて、基本的には機関の仕事を検証すると述べられているわけですけれども、機関でも、今申し上げたことと関係するんですけれども、機関の諸事業の検証と、個々人の研究者の評価とがごちゃまぜにならないような在り様をしていただければと思います。先ほど、これまでの外部評価機構の評価と、それから今回の検証との整合性というのでしょうか、関連性がありましたけれども、今回の検証は4期に向かっての部分を考えるための検証であるということでございますけれども、ぼやっとしていてつかみにくいので、その辺も明確にしていただければと思っております。検証の進め方の中で既に提出した書類にも書いておりますけれども、大学の共同利用機関、共・共拠点との関連ですけれども、我々のミッションは、こちらのヒアリングでも昨年説明しましたけれども、それぞれ共・共拠点は大学の中に属しておりますので、その大学での、言ってみれば位置付け等と評価があるかと思いますので、なかなか、共・共拠点へすぐにとやかく申し上げることが難しいので、共・共拠点の在り方について連携とか、あるいは統廃合も含めた意向とかいろいろ議論されていると聞いております。できるだけこの部会でもその在り方について検討するとなっておりますけれども、その検討を進めていただきながら、考えさせていただきたいと考えた次第です。条項を削除すべきだというのはそういう状況がよく分からないうちに答えはなかなか出しにくいということがございます。
指標に関しては、幾つか例がございますけれども、先ほど申し上げましたように、機関の特性を本当に重視していただきたいと。横並びで評価されて同じような指標になると、特性がこぼれ落ちてしまうことがあるので、その点御理解いただきたいと思います。
外国語で書かれた論文等々の話もございました。日文研は比較的、日本語で書かれたものがそれぞれの国でそれぞれの国の言葉で翻訳されているケースが多いとは考えておりますけれども、飽くまでも英語も一つの基準で。英語の雑誌を出しておりまして、あるいは日本語も出しておりまして、日本研究者の場合には、海外の日本研究者の研究の質も非常に高くなっておりますので、そういうことを視野に入れながら、特性を評価していただきたいというのが一番です。個別的な問題はここでは余り述べませんけれども、日本語で書かれたもの、それを英語にされて発信する、あるいは利用されることに関しては、特に特性の部分で特記すべきとか、そういうところで、できるだけ強化していただけるようにしていただければと思っております。
データベース等はそれぞれ資源を持っております。飽くまでもデータベースはアクセス数だけで評価していただくのではなくて、そこに持っている資料の利用を、先ほど民博さんもありましたけれども、それを使って共同で展覧会を開いたり、貸し出したり、あるいはこちらから出向いていって、宣伝すると同時にこちらに来てもらうとかいろいろな形のデータベースの利用の仕方がありますので、その点、これも特性の部分で書き込めるようにしていただければと思います。横並びだけの評価でなく、できるだけそれぞれの機関の特性を生かした、機関としての評価が見える形での指標を、項目を設けていただければというのが一番の要望でございます。
【観山主査】 ありがとうございました。幾人の方からありましたけれども、指標は指標例でありますので、今言われたとおり、これが全部チェックリストで、それを全部チェックしていくといった評価はしたくないと思います。特性に考慮して、機関から出される自己点検とか自己検証の内容にそういう特性がよく分かるような資料を作っていただくことが一つ肝要かと思います。ただ、評価ですから、公平性は保たなければいけませんので、それなりの観点は必要かと思います。一方、特性に配慮しないことはないと思いますので、その点は確認したいと思います。後でもありますので、よろしいですか。
それでは、引き続き分野に関わる有識者の方から発表をお願いしたいと思います。まず初めに大阪大学副学長、人間科学研究科教授の栗本英世先生から15分程度でお願いいたします。10分で1回目が鳴りまして、15分で2回目が鳴るそうですので、よろしくお願いいたします。
【栗本大阪大学教授】 大阪大学の栗本です。よろしくお願いいたします。資料7に基づいて私の意見を述べさせていただきます。
研究者個人と研究機関の実績を評価するための現在の指標が自然科学をモデルとしたものであり、人文学と社会科学、とりわけ人文学には適合していないという指摘がなされて久しいと思います。この場でもそうした反発や批判が述べられました。それはもっともだと思います。しかし、全ての研究者と研究機関が自己と外部の両方による評価の必要性に迫られている以上、問題は批判、反発あるいは特別な配慮を要求するだけで終わるわけではないと思います。つまり研究の特性に適合した新しい指標や業績評価の在り方を含む代替案の提起が必要であると思います。
そして、もし適切な代替案が提起できれば、それは人文学の存在意義そのものを広く主張していく手段となると思います。とりわけ人文学系の大学共同利用機関である、人間文化研究機構の5機関は、単なる研究機関ではなく、大学共同利用機関としての特性を評価し得る指標や基準を提起する責任を負っていると思います。部分的には具体案が提起されましたが、もう少し踏み込んで提起していただければありがたいと思います。
さて、社会貢献あるいは研究機関と社会との関係については、機構に属する5機関特有の貢献が指摘できると思います。一般的に、従来型の大学の社会貢献は、大学内部の研究によって生成された専門的な知識を社会に還元する、いわば啓発主義的と言いますか、上から下への一方的な流れを想定しているのに対して、5機関が実践してきたのは、社会との協働あるいは共創によって知識を創造することであり、更にその新しい知識が社会によって活用され、更にそのことが研究機関の知識を更に深めるという双方向的で循環的な過程だと思います。具体的には社会による活用には、村おこしや町おこし、失われつつある文化や言語の再生と復興、あるいは災害による被害からの復興など、極めて多種多様な実践が含まれています。さらに、この「社会」には、日本というナショナルな枠組みを超えた、グローバルな社会の次元が含まれている場合も多いと思います。こうした協働・共創による研究機関と社会との相互作用に基づく循環的な知識の蓄積と発展の構造は、5機関に共通する顕著な特性であり、正当な評価を受けてしかるべきであると考えます。
近年は、国立大学法人でも協働・共創を看板に掲げているところが増えておりますが、この5機関はその先進的な例、あるいはモデルとしての役割を担っているのではないかと思います。この5機関は、広い意味での日本研究、それから世界の諸民族文化と諸地域の研究における、日本のみならず世界の中心的機関の地位を占めており、更に文化資源の保存、展示・閲覧、研究を行っている機関を含んでいます。その5機関が行ってきた事業の効果と影響には、極めて大きなものがあると思います。
例えば日本研究に限っても、これら5機関の研究と活動は、これは民博も含みます。民博の中に日本研究と一部、日本展示が含まれておりますので。日本の言語、文学、民俗、あるいは地域、歴史の多様性や多元性を実証的に明らかにし、その成果を社会に還元することによって、単一的で一元的な日本観を修正し、より豊かなものにすることに貢献してきました。このことは高い評価に値すると思います。今後、日本という枠組みを超えて、こうした多様性や多元性を世界の中でグローバルな視点から位置付けていく試みが一層進展することを期待したいと思います。
さて、今回のヒアリングに関する私の役割は、人文学の観点からコメントすることだと理解していますが、5機関の研究と活動は、狭い意味での人文学にはとても収まりきらないものがあると思います。もちろん文献、民族資料、あるいはにんべんの民俗資料の保存には保存科学との協働が不可欠でありますし、展示の実施とデータ別の構築には、最新の情報科学の成果が応用されています。民博と歴民博は、設立の当初から文理融合的な共同研究を組織してきました。こうした人文学の枠組みを超えた総合的側面も評価の対象とされるべきだと思います。さらに、こうした5機関の研究と活動は人文学そのものの革新と発展を先導していくことが期待されていると思います。
これまでは5機関をひとつのまとまりとして、その成果に対する評価及び期待を述べてきたわけですが、この5機関は、今回のヒアリングの対象外である地球環境研も含めて、それぞれの個性があり、独自の発展の歴史をたどってきました。現在、1つの法人に属していることは、必然性よりも偶然性に基づくのではないかと私は理解しています。もちろん法人として、いろいろな御尽力、御努力をされていることは承知していますが、なぜこの6機関が、1つの法人がやっているかということについては、学問的な必要性や必然性を見いだすことはそれほど容易ではありません。したがって何度も御意見がありましたが、5機関に関しまして統一的な指標や評価基準を適用することについては、熟慮と慎重さが要求されると思います。
最後に、評価を受ける側に立ったコメントを行うことで、私の意見を締めくくりたいと思います。そもそも国立大学法人と同様、大学共同利用機関も6年間の中期計画体制のもとで継続的に評価を実施する状況に置かれています。この6年間の中期計画の体制自体が評価を基盤にして成立しているわけです。ですから、評価のための評価、改革のための改革、あるいは研究者と職員が評価疲れに陥るような状況は本末転倒であって、それは是非避けていただきたいと思います。つまり、大学共同利用機関に対する外部からの評価の要望は、諸機関のより一層の発展を促し、これまで果たしてきた先導的役割を一層強化するために行われるべきであって、それを阻害するものであってはならないと思います。私のコメントは以上です。ありがとうございました。
【観山主査】 どうもありがとうございました。2、3ありました、先生からもありました社会との関わりの中で、確かにここに書かれているのは発信だけに限っていますが、それは、社会とのいろいろな共同作業とかの実績も加える必要があると思っております。委員の方から何か御意見、御質問ありますか。よろしいですか。また後でも、そんなに時間があるわけじゃないですけれども。
それでは、続きまして法政大学経済学部教授、山本真鳥先生から15分程度でお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【山本法政大学教授】 機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
さっき栗本先生ともお話ししたんですけれども、2人とも人類学なので偏っているんじゃないのということがあるんですけれども、私が、それからここには書いておりませんが、一応この評価の、文科省の行っている国立大学法人の評価の中で、機構の評価委員も務めております。
本題に入りますが、5つの組織がきょうの議題に挙がっているわけですけれども、それから、それぞれの機関の方が代表で見えているわけですが。栗本先生も強調されていましたけれども、それぞれに歴史を持って出来上がってきた研究組織が、ある段階で人間文化研究機構という形でまとめられたわけですけれども、若干不揃(ふぞろ)いや重複があるかと思うんですね。私は研究者コミュニティを概念そのものを10年以上は前だと思うんですけれども、20年から10年ぐらい前にそういうものを知って、なかなかこれが、共同利用機関を支える、非常に重要な理念であることはよく理解するようになりました。それで、共同利用機関としてどれぐらいうまく機能しているかということはここで測られるんだと思うんですけれども、そこで、1を見ていただきたいのですが、国内外の研究者コミュニティが、確定できるかどうかというと、これが難しいということを歴博の先生もおっしゃっておられましたけれども。難しいのもあるんだけれども、それからオーバーラップするところが当然生じているんですね。それで、例えばそこに書きましたように、日本史をやっていて文献学的な研究を行う人はどうなるかというと、国文研にも日文研にも、ひょっとしたら、それから歴史民俗博物館でも関係があるだろうし、それから語学になってくると当然国語研とも関わりがある。そういうふうにオーバーラップする人がいる一方で、どの利用機関も利用できない研究分野があるわけですね。そこは大変、これは今回の評価とは離れてくるかもしれませんけれども、特に社会科学系の研究施設が余りなくて、いつもそれが外れているんじゃないかということが気になっております。
運営面では研究者コミュニティの意向を反映できると書いてありますので、これはそういう方々が機関に入って、いろいろな意見を申し述べて、そこで運営をどうするこうするというか議論が行われることになると思うんですけれども、この研究者コミュニティ自体から外れているとそういう共同利用に入れないことがあります。
それから、中核拠点性でもコミュニティが重要である。それから国内ではある程度学会との連携が行われていると思うんですけれども、海外の世界規模での連携は、どう行っていくかというと難しいところがある。現在かなり行われているのは、いろいろな機関ごとに国際的な大学の学部だとか、博物館だとかと連携の協定を結んでいくことが行われているんですが、結構そういうリストを見ると、かなり長大にやっておられることがよく分かるんですけれども、そことどういう活動をやっているんですかというと、名前だけというところがあるかという気が若干しております。それは私の見方が足りないだけで、もっとこんなことやっている、あんなことやっているということがあるかもしれません。
それから2のところに移りたいと思うんですが、理系基準で国際性というのが過度に強調されていないかと思うんですね。それはむしろ、3の中間拠点性ではなくて、国際性というところよりも、中核拠点性のところは私は気になりまして、それは、もう既に何遍もいろいろな方がここで述べられていると思うんですけれども、国際共著論文とかそういうものを指標としてここに出しておられる。しかも2ページの上の四角の中の、米印の後を見ますと、「人文社会科学の場合、以下の3点を考慮」となっていて、3点は、多分外すという意味ではなくて、3点を見ようということだと思うんですが、「英語又は英語以外の外国語で書かれた海外で刊行された単著、国際共著、英語又は、こういう云々(うんぬん)かんぬんという論文、それから研究成果やデータベースなどが国際機関や外国政府中央銀行の政策や調査報告書及び海外の研究機関調査報告書等で利用されたか」と出ています。海外の研究機関はいいと思うんですけれども、外国政府や中央銀行などは、この5つの組織のうち、多分国語研とか国文研とか歴研なんかも余り可能性がないような、外国政府ですからね、ということがあるかと思います。ここは日本研究をやっておられるところに関しては、これは外国政府というのは、外国を括弧でくくるということがあるかもしれませんが、でもそういうこの指標自体が、どちらかというと社会科学系の研究機関を念頭に置いた指標ではないかと思うんですね。その意味では、モディファイされる必要があるのではないかと思います。
それから、2ページ目のbに移りますが、民博以外の日本研究を行う機関の場合、その分野の世界的研究を担う頂点になることが当然であり、そういうことが期待されているんですが、その地位を維持しているかどうかチェックできるような指標が必要かと思います。これは人類学では割とよく知られている事実ですけれども、人類学に関して日本研究を行っている海外の人は結構いるわけですね。日本でももちろん日本研究を行っている人がいます。この間に、非常にディスコミュニケーションというか、全然連携がなされていない。海外の人は日本語が読めない人もいたりするから、そういうものをちゃんと読み込むこともないし、日本語が読めるとか言っても大したことないことが多いので、見ないんですね。それで、ただし英語で書かれた日本研究の論文や本とかは、海外では教科書として使われたりして、日本文化を扱うような学部では特に重要文書として、リファレンスとして挙がるわけですね。そうすると海外のそういう英語で書かれた日本に関する文献がグローバルスタンダードになっていくことがあり、日本ではトップだと言っている研究が日本国内でだけの話だったりすることが生じます。私が提唱しているのは海外のそういう日本研究の文献をチェックして、いろいろ「あなた間違っているよ」ということをちゃんと指摘してあげることが非常に重要だし、そうして日本から発信していくのが重要だと思うんですね。日本で英語に訳した出版物が海外でまだどのぐらい読まれているかということも、サーキュレーションがあるかどうかということも非常にクエスチョンでありまして。ですから国際発信とか国際的なそういう取組は、日本で日本文化に関してトップだとおっしゃられている研究機関は、とりわけ地位を守るようなそういう活動として、国際的な仕事が非常にこれから重要になっていくと思います。そういう点を是非考慮していただきたいと思います。
cのところに行きます。国際性の箇所に書かれている項目の方が、ある意味では妥当なところが多いので、私が今言ったことは国際性の箇所と関連があるかもしれませんが、女性研究者と外国人研究者が並立されているのは、女性研究者としては違うよと言いたいので、これは重要性を認識されていることはいいんですけれども、項目が違うかと思います。それで、私が強調したいのは、公募ということであります。外国人客員研究員の公募はどのくらい行われているかということが非常に疑問でありまして、民族学博物館には私随分提案しているんですけれども、何回かされたことはありますが、余りスタンダードとして外国人研究員の公募が行われていない。他機関も多分同様ではないかと思うんですけれども、これは、結局日本の国内にいる研究者のお友達が来ることになってしまって、その大きな原因は、ここの国際性のところで、5つ目のポツに書かれている、外国人研究者のため、英語による職務遂行が有能な配置されていると書かれていますが、これは非常に重要だと思うんですね。そうしないと、呼んだ人に「あなたが呼んだんだから責任あるでしょ」として押し付けてしまうケースがあるので、どうしてもそういうことになってしまう。公募すると誰が受入れなのかよく分からないから、宙に浮いてしまうからみんな嫌がるということになっているかと思うんです。それで、もうちょっとそれを導入すべきであって、公募制は他のところでも役に立つと思うんですね。例えば、3の例ですけれども、共同研究会は、公募で研究組織を作ること自体はいろいろなことで行われていますが、まだ民博以外では余りまだメジャーな研究形態になっていないんじゃないかと思うんですけれども、その点で公募は重要であると思います。これは共同利用機関として重要であると思います。
それから、新分野の創出は、今のところは機関内だけで行われている傾向があるんですが、こちらももっと機関外の研究者のパワーを取り入れていくことが必要かと考えます。
cはもう言及しましたが、それから人材育成のところで、総研大が入っているので、人材育成についてある程度行われていると。それからポスドクなどが入っているようなんですが、私は共同研究会への博士課程後期大学院生が入れるような仕組みを考えたらいいと思います。そういう共同研究会だと組織以外の先生も入ってこられていて、そういう憧れの先生がいるところに大学院生として研究会に参加するって非常に大きなインパクトがあると思うんですね。これは、きょうのテーマとは直接関係がないかもしれませんが、全体に公募制をもっと膨らませていく方法がないかと思っております。
【観山主査】 どうもありがとうございました。非常に貴重な意見、特にこの指標とか観点にということもありますが、きょうの5機関の取組に関していろいろな御意見もあったと思いますけれども、どうもありがとうございました。
それでは、当面今の2人の御意見に関して、質問なりコメントは。永田先生。
【永田委員】 皆さんの御発表ありがとうございました。取り分けて栗本先生のおまとめは100%理解できると思って聞いておりましたし、山本先生のクリティカルコメントもなかなかいい点が入っていると思ってお聞かせいただきました。
聞いていていろいろ難しいこともあると思うんだけれども、先にこちら側の委員も、全部決まったことじゃないので、私の意見として申し上げておきたいのは、横並びで比べる気は毛頭僕はないんですよね。それぞれの大学共同利用機関を、指標は同じであろうがなかろうが比べるということはないと思っています。つまりそういう意味では絶対評価をすべきだと考えています。ただ、それにしても学問の進捗状況は把握しなければいけないでしょうから、例えば、経年変化を見ることは必要だと思います。それから、そういうものはインパクトファクターと違って長い期間の成果がかかるのであれば、過去20年と次の5年間、あるいは10年から30年という単位で見ていくような比べ方を喫緊の10年なり5年を含めた期間で見ればいいかと思っています。そういう場合に先生方がおっしゃっていたいろいろな指標も、多分ある程度長いスパンの少しずつの違いを見ることによっては浮き彫りになるかと思っているんです。
それから、ベンチマークがあるといいと思ったけれども、この分野については、ものすごく過去からを背負った特有な独特な研究をされている部分が多いので、なかなか諸外国にベンチマークを置くのは難しいでしょうけれども、ドイツの、例えばドイツ語研究所と比べてみるのは価値があるかもしれません。諸外国が母語をどのように研究を進めているのかというのはやってみてもいいんじゃないかと思います。それは多分、他の分野もそうで、国際的に比較をするって難しくても、そういうそれぞれの学問分野の特性を見てベンチマークを置くことは可能かもしれない。そこは各大学共同利用機関が本気を出されないといけないと思うんですよね。
大学が中期計画を立てますけれども、各研究科や学部でそれぞれ計画を立てていても、それを全部大学の中期計画に盛り込んでいるわけではないですよね。大きな中へ合致するものは入れるけれども、合致していないものはそれぞれの学部や研究科で、学内で内部保証をしながら見ているわけですから、今回初めて機関ごとに見ようと言っていることなので、そこは法人とは違う単位で見落としていることは御理解を頂いた方がいいかと思っております。
1つ率直な質問をお聞きしたいんですけれども。実はその質問はどこから出てくるかといったら1点にかかっているんですが、大学共同利用機関である、恐らくそれでそうでしょう。でもそうすると、その共同利用という成果をどうやってカウントしたらいいかというのが非常に分からないんですよね。分かりにくいのは、ここを利用した人が何人いますなんていうのはほとんど意味がなくて、そこからは社会貢献的には意味があったとしても、学術的な進歩にどれだけ寄与したかはなかなか見づらい。そうすると、その大学共同利用機関を使って、やった共同研究をカウントしていきたいと思うんですが、そこで問題が生じて、単著が多いとかと言われると、確かにそのとおりで、大学でもそうなんですね。人文系や、社会系は、単著が多い。それを何とか、ここを利用したからちゃんとこういう成果が生まれたという形にどうしたら出せるかというのを率直に各大学共同利用機関が、利用してこういう新しい学術的な進歩を生んだんだから、別にオーサーじゃなくてもいいけれども、我々のこういうのを必ず明記するとか、何かそういうことをしていかないと、いつまでたっても、最後山本先生が言われたように、何の共同研究したんだっけ、名前だけ大学共同研究機関では駄目だと思うんですね。それは真剣に考えていただきたいと思うし、多分質問するまでもないでしょうけれども、大学共同利用機関として多くの研究者の利用に付すのも重要だけれども、共同研究も当然ながらその視野には入っているはずなので、と思い込んでいるので、そういうことはあるかと。
そこで最後に聞きたいのは、こういう質問が全部つらつらと出てくるのは、学者は、国文学者であろうが、日本文化学者であろうが、民族学者であろうが、大学にいようが、研究所にいようが、もうばりばり好きなことを研究したらいいと思います。違うのは、大学院の先生と大学共同利用機関にいるその先生たちがそういう意識を持っていらっしゃるかどうか。そこがもし同じだったら、大学共同利用機関でいる意味はないことになります。ですから、ここにいらっしゃる組織の長の方々はそういう意識を多分にお持ちでしょうし、法人の長ともいろいろ御相談されているでしょう。問題は、働いている方々全員がここは大学共同利用機関であることを強く意識した上で、指標なり今後の在り方を考えていかないといけないと思うので、それに資する指標にしていきたいと思っているわけです。そうでなければ、先ほど言ったように、どの学問であったとしても、学者としてそれぞれ埋没して真剣に本気でその学問をやられるのが僕はいいと思っているんです。なので、何とかそこの辺りのいい指標なり何かを僕らは見付けたいと思って、ヒアリングをさせていただいているんですね。
若干最後、クリティカルコメントなかなかいいポイントが幾つかあったかとは思って聞いておりました。どうもありがとうございます。
【観山主査】 どうもありがとうございました。今の最後に言われた、つまりこれは法人評価と何が違うかと。前回、私からも随分強調したんですが、共同利用研として我が国の学術をいかに発展させたかということが、共同利用研としての存在意義です。今回、機関別にその評価をするという一つの、大きな、他との評価と違う部分は、共同利用研として研究所があることによって日本の学術がどれだけ進展したかという部分を、是非、検証して報告書を提出していただきたいです。この機会にそういう指標にまとめていただくことで、社会に対して、それとか大学に対して、共同利用研の意義をしっかりと、評価を通して、検証を通してできればと思っているところでございます。小林先生どうぞ。
【小林委員】 3点ほどございます。まず第1点は、どうしてもいろいろな指標を見ると、これは理系中心にできていると、自分たちは関係ないのだという見方は考え直していただいた方がいいのではないかと思います。と言いますのは、他の3つのKEK、自然科学研究機構、情報システム研究機構を見ていて、優れている点と言うのはあります。もちろん人間文化が優れている点もあります。でも、そうでない点も、正直言ってあると思います。山本真鳥先生が最後おっしゃった点は、私は非常に賛成で、この公募の点です。共同研究は2種類あって、研究機構側が課題設定したものに入れてあげるよという共同研究と、そうではなくて、研究課題や研究テーマから持ち込んできてくださいという、より広い公募とあるとしたら、人間文化は全体的にはやや狭いという気がします。この点は、他の理系の3機構は非常に広くやっている。ここは、私は学ぶべき点ではないかと思います。
2点目ですが、論文の評価等々について、これは理系とは関係ないのだと言って、自ら評価の指標を出さなかったら、結局は置いていかれるだけです。NISTEPの調査資料を御覧ください。人間文化研究機構だけ数字入っていないです。他の機構は全部入っています。論文がこれぐらいある、これぐらい伸びている、これぐらい実績が上がっている。人間文化研究機構のところは常に空欄です。そのことはいろいろな意味で置いていかれてしまうことにつながってくることになる。この点は、人間文化研究機構も考えていかなければいけないというのはあると思います。
3番目で申し上げたいのは、全体的には事と個々の研究機構の個別の問題になりますけれども、これは永田委員の御質問とも関係がありますが、まず共同研究というか、そこの多分提起ですね、共著とか。多分文化が違うと思うんですよね。実質的には共著であっても、文系の場合は、実際に文字を書いていなければ共著書にならないですよね。私だって、自分でお金取ってきて調査してデータして院生にそれを全部あげて、アドバイスもして助言もして、時には文章まで書き直しても、私は共著者には入りませんよ。院生の単著で出しますよ。そういう文化と、そうじゃない文化とあると思います。重要な点は何かと言うと、皆さんのミッションはデータを集めている、収集する、しかも今やらなければいけないデータですよね。国語研だったら、もう消えゆく日本語がいっぱいあるわけですよね。歴史だってもう急いでやらないと、そもそも3.11で消えてしまったものもいっぱいあるわけで、そういうあるいは国文研もそうですよね。国文研がお持ちではないものもあって、いろいろな大学が持っているけれども、非常に保存状態が悪いものが非常にあるわけですよね、重要なものが。そういうものをいかに集めて収集している、そこがまずミッションであるわけですね。重要なのは、それを共同研究者として利用した人の論文の実績に入っているわけです。そうじゃなくて、それのデータを使った人の論文の実績と。もし私が皆さんの立場だったらそれを入れろと要求をします。あるいは、国語研だったら日本語コーパスは物すごく利用されていますよね。それから人間文化のあれは、数少ないと言ったら失礼ですけれども、自己収入にもなっていますけれども、それがいかに海外の研究で利用されているか。あるいはそれは共同研究、共同共著でなくても物すごい利用されているわけです。あるいは教育でも物すごく利用されているわけですよね。そういうものを具体的にはデータを使わせるときにその成果は必ず提出させることを義務付けて、それをスコアとしてプールして、どんどん出していくと。その中で物すごく外国語の場合も当然出てくるわけですよね。そういうものを考えていくべきではないかと思います。
あとは、国際共著は非常に重要です。本当に、実は意外に日本語はぺらぺらで、しゃべったり聞いたりはうまくても、意外に読めない書けない外人っていっぱいいるんですよね。彼らは英語でなければ読めません。私も単著、共著で10冊ぐらい海外で出版していますけれども、相当古いものもあります。私ではないですけれども、他の人たちが書いたもので言うと、いまだに民社党とか出てきているもので、それがそのまま引用されている例もあるぐらい古いので、英語で書くことの必要性も本質ではないと皆さん思われるかもしれないけれども、その重要性は重要だと思います。そういう意味で、日本の出版社も海外の出版社も、出版社のランク付けは意外にできて、そこで書いたものがどれくらい引用されているかですよ。売れた部数は関係ないです。それは教科書をがーっと買えばいっぱいになる。そうじゃなくて、研究書とかジャーナルにどれくらい引用されているか、要するに本としてのインパクトがあったみたいなものは、エルゼビアとかそういうところで計算できますので。そういうもので出版社はある程度ランク付けをして、著書もちゃんと理系のジャーナルと同じように評価をするということを、本当は機構全体としてどこかで一元的にそういうものを議論して、攻めの姿勢で出していかないと、文系が本当に置いていかれていってしまうと思うんですね。そこをもうすごく強い危機感を持っています。何となく理系があればそれでいいやみたいなことを言う人だっていないわけでないわけで。それは今まで出さなかったからです。これはもう自分たちと違うものだから、この指標は関係ないではもう通らないと思うんですね。そこはまず御理解いただきたい。山本先生がおっしゃるとおり。
それから、山本先生がおっしゃった、何でしたっけ、中央銀行というところ、これ社会科学じゃない。これは経済学だけですよね。私は法学部だってこれは外してほしいと思ったんですけれども。つまり海外の金融機関が利用するってその国のために利用していますから。それは日本のためになっている意味じゃないです。だから何でこれが入っているのかと疑問に思って。以上です。
【観山主査】 どうもありがとうございました。佐藤先生。
【佐藤委員】 たくさんの方が非常にしっかりしたお話をなさっておられますし、今、委員の側からも大事なポイントについて既におっしゃっているので、重複する部分がかなりあるかもしれませんけれども、三つほどお話しさせていただきたいと思います。
まず一つは、この検証というのは、何度かお触れになっていたと思いますけれども、要するに法人法に基づく法人評価、すなわち業務の実績評価とは性質の全く異なるものであるという意識が根底には必要だと思います。ただ、検証は、正にこれから12年という一つの期間、長いか短いかという議論はあるかもしれませんが、そこを見据えて、そのための資格といったら語弊があるかもしれませんけれども、それはこれまでの実績でチェックはする。しかし、むしろ、その先どういった方向を向いて何を目指すかという、そこのところを見極めるのが一番大事なことだと思います。どういった方向を向いて何を目指すかと言ったときに、当然そのための陣容といいますか、人をどう配置していくか、その観点は極めて重要です。なお、そういったところでは、先ほど山本先生がおっしゃったような公募制は、理系ではもうとっくに当たり前になっていると言っても過言ではないと思います。あと今、小林先生がおっしゃっていたことに関連しますけれども、人間文化研究機構だからということで納得もするんですが、社会への情報発信だけではなくて、社会との連携とか協働からということをおっしゃっているのであれば、もう少し社会科学的な側面といいますか、そういったものも意識して取り入れていっていただくことが今後は必要ではないかと思います。そういう観点からの御発言は、少なくとも今日は短い時間だったからということもあるかもしれませんけれども、余りお聞きできなかったような気はしています。
それから、二つ目ですが、これはたくさんの方がおっしゃっているとおりで、人社系というか、人文系の評価指標を是非お考えいただきたいと思います。これは大学のことで言いますと、振興局長が小松局長の時代だったかと思いますけれども、各大学の「ミッション再定義」が行われました。そこでは分野ごとに、どういう認識を持ち、そのためにどんな評価の観点を備えて前に進むかという課題設定があったかと思います。その際にも、人社系の評価指標がかなり議論にはなったんですけれども、結局どうしたらいいのかというところで終わってしまったような認識が、これは私の誤認であればいいのですが、私としては残っています。そうしたことも考えますと、今正にこの問題をクリアしていただくことを是非お願いしたいと思います。
それから三つ目は、ガイドラインや観点・指標例にはいろいろ書かれてもいるんですが、実際に、共同利用機関と、大学の学部・大学院とか研究者コミュニティや社会、その間に、御承知のとおり大学の共同利用・共同研究拠点という組織・制度があるわけですね。全ての研究機関が該当することはないかもしれませんけれど、その拠点との関係も非常に大事なところであり、もちろんそうした認識は全ての先生方がお持ちとは思いますが、この議論すなわち共同利用機関改革という議論の中で、その共・共拠点との関係性について、あるいは支援をする、あるいはそこからいろいろリソースを受け入れるとか、そういった立体構造をなるべくお考えいただければと思います。長くなりましたけれども以上です。
【観山主査】 どうもありがとうございました。その他法人の。平川さん。
【平川委員】 きょうは人文機構ということで、委員として皆さんの発言をお聞きしてから、機構としての考え方を最後に述べたいと思っていました。特に、委員の先生方からの貴重な意見と、それから栗本先生と山本先生には大変貴重な御指摘ありがとうございます。その中で、栗本先生が最初におっしゃいました人文学研究の特性に適合した新たな指標や業績評価の在り方を含む代替案の提供が必要であり、いつまでも嘆いていても仕方ないというご意見は、国立大学法人評価委員会でも、特に自然科学の大学の先生から二度にわたって今の人文系の評価が体系化されておらず、人間文化研究機構がその試みをすべきであるという指摘を頂きました。そこで本機構は、今年の2月に人文系の評価システム検討委員会を立ち上げました。ただ、これは人文学を支えている多くのコミュニティがあり、それから共・共拠点との関係もありまして、慎重にやらねばならず、現在、作業部会という形で進めており、年度内には1つの体系的な人文研の評価指標案を示していきたいと思っています。その体系化には国大協の人文・社会との連携と、それから日本学術会議の第一部会との調整が絶対に欠かせないということで、この点についてもすでに申し出をして、連絡を密にして進めております。今も、各委員の方からもその疑問を指摘されましたが、これにはきちっとした形で応えていきたい。その人文系の体系的な指標があれば、本来はこの共同利用機関の備えるべき要件の指標についても、かなりまとまった回答ができたかと思いますが、5機関から示した案につきましては、それぞれの学問領域によって多彩な成果の出し方とか、あるいはプロセス等については、それぞれ特徴がありますので、その点を是非考えていただければと思います。特に、栗本先生がおっしゃった中でも、研究成果を広く社会と共有するというのは、本来の人文学の一番根本にある学問の使命でもありますので、その点については、今回の共同利用機関として備えるべき要件として、社会との関わりは、特に社会と協働するという、我々の側からいえば、協働・共創という表現をとっておりますが、これについては5機関それぞれ実践しており、機構としても大きな歴史文化資料ネットワークのような形で今進めているところであります。
それから、山本先生がおっしゃるように、確かに法人になったときの5つの機関、国語研を入れた6つの組織は、人文学全体を十分にカバーしたものではないのは承知しております。法人化当初は、歴史のある各機関のいわば自主性を重視した形で、何としても国内外においての学術研究における中核拠点を目指すということで、1期、2期と、それぞれの機関に強く求めたのです。しかしその人文学が、これはもう10年以上前から学術審議会でも指摘されていますように、人文学の細分化ということは、人文学が持っている社会に対しての発信力、あるいは自然科学と協働する、そういった面でも課題となり、大きな連携が必要とされました。人文学の総合化をすることが強く求められて、第3期で、17の基幹研究プロジェクトを、機構のもとで機関が中核となり、大学等の研究機関とのネットワーク、更にその成果を、社会だけでなくて広く隣接する学問や自然科学等にも理解していただけるような情報発信を、これも国内外に求めたわけです。きょうは特に国際性にまだまだ努力が足りないと特に観山主査からも指摘されましたが、日本学で国内外の中核拠点というのは、もう押しも押されもせぬものになりつつあると思っておりますので、それを国際的な交流の中で情報を発信していくことと、それぞれ日本研究の中核的な機関としての活動を海外でも多く実践しておりますが、そことの連携を一層推進するというのが、これからの課題ではあります。この点につきましては、人間文化研究機構という法人のもとに、それぞれ中核拠点である言語、文学、歴史、文化そして世界の民族の多様性を研究し、環境研究の地球研を含めた形での6つの機関が1つの機構を成すことから、特に海外の日本研究の中核的な大学等からの包括協定の申し出があり、第3期に入ってからの我々の活動を認識していただいて、ドイツのボン大学、あるいは韓国、台湾そして11月ベトナム国家大学ハノイ校人文社会科学大学と包括協定を行いますが、中国の社会科学院からも先日いろいろな問合せを頂いております。こういった国際的な動きを見ていても、我々の責務はますます重くなることを自覚して、きょう5機関からそれぞれの活動を踏まえた指標の新たな提示をさせていただきましたので、この点をこの委員会でも十分に配慮していただきたいと思います。以上です。
【観山主査】 どうもありがとうございました。他になければ少し時間は早いですけれども、本日はここまでにしたいと思います。本日はヒアリングに御対応いただきました皆様方、改めて本当にありがとうございました。事務局におきましては、本日皆様から頂いた御意見を整理して、また今後の検討につないでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
最後にその他につきまして、事務局から何かありましたらお願いいたします。
【降籏学術研究調整官】 次回のスケジュールについて御説明させていただきます。次回の本作業部会は10月10日の木曜日10時から12時、場所は文部科学省の15階の特別会議室を予定しております。引き続きましてヒアリングを行っていきたいと思いますので、関係の機関の皆様方におかれましては御協力をよろしくお願いします。以上でございます。
【観山主査】 どうも。それでは、本日の会議はこれで終了いたします。皆様、どうぞ本当にありがとうございました。


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