第10期研究費部会(第10回) 議事録

1.日時

令和2年5月28日(木曜日)14時00分~16時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 今後の科研費制度の改善・充実について
  2. その他

4.出席者

委員

甲斐委員,栗原委員,西尾委員,井関委員,射場委員,大野委員,小安委員,城山委員,竹山委員,中村委員,鍋倉委員,山本委員,上田委員,竹沢委員,中野委員

文部科学省

村田研究振興局長,増子大臣官房審議官,坂口振興企画課長,先﨑学術研究助成課長,岡本学術研究助成課企画室長,中塚学術研究助成課企画室室長補佐,他関係官

オブザーバー

家日本学術振興会理事,岸本日本学術振興会学術システム研究センター副所長,永原日本学術振興会学術システム研究センター副所長,西村日本学術振興会学術システム研究センター副所長

5.議事録

【西尾部会長】
  皆さん,こんにちは。時間となりましたので,ただいまより,第10期第10回の研究費部会を開催いたします。音声など,特段問題ございませんか。よろしいですか。
 本日は,新型コロナウイルス感染拡大防止のため,オンラインで開催することとしました。通信状態などに不具合が生じた場合などには続行できなくなることも考えられますけれども,その場合は部会を一時中断する可能性もございます。ですけど,何とか最後まで行きたいと思っておりますので,どうか御了承頂きたくお願いいたします。
 まず,事務局に人事異動があったようですので,御紹介をお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】
 事務局の人事異動について御紹介させていただきます。
 先﨑卓歩研究振興局学術研究助成課長が4月1日付で参っております。
【先﨑学術研究助成課長】
 はじめまして。4月1日付で学術研究助成課長に着任いたしました先﨑と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 科研費の仕事をさせていただくのは7年ぶり,当時,7年前は大学の現場で科研費を担当させていただきました。当時,基金化が始まってどうなるのか,また,科研費の様々な今後の課題についてアカデミアの先生方と議論していたのを懐かしく思い出しますが,こうして久しぶりに戻ってきますと,そこでアカデミアの先生方がお話合いになっていたことの多くが既に実現されている。あるいは着手,研究されているという状況でございます。やっぱり科研費という制度はボトムアップですばらしいなと思っております。
 私もまた一員に加えさせていただいて,更によりよい科研費制度になりますように尽力してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
【西尾部会長】
 よろしくお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】
 前任の梶山は文化庁に異動しております。
 それから,大鷲正和課長補佐が東京大学から着任しております。
【大鷲学術研究助成課課長補佐】
 4月から着任いたしました大鷲でございます。学術の振興に少しでもお役に立てたらと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】
 前任の辻山はライフサイエンス課の課長補佐として異動しております。
 以上でございます。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 今年の1月21日の第7回研究費部会において,第10期研究費部会において議論すべき個々の事項について,科研費改革に関する作業部会において御検討をお願いしてまいりました。
 実を言いますと,本当にたくさんのことを,小安主査の下での作業部会に御検討をお願いした次第でございます。本日は作業部会における各項目の検討状況について,小安主査から御報告を頂くとともに,研究費部会として議論を行いまして,幾つかの事項については本日決定をしたいと思っております。何とぞよろしくお願いいたします。
 次に,事務局から配付資料の確認とオンライン会議の注意事項などについての説明をお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】
 資料については,事前にお送りいたしましたファイルを御参照ください。本日の資料,議事次第に資料一覧が載っております。資料名が実際にお送りしているファイル名と異なっておりますけれども,「今後の科研費の論点に関する具体的な方策について」というものが資料本体になります。また,参考資料4として,昨年度御議論いただいて,3月31日付で決定いたしました「第10期研究費部会における関連事業等の有識者との意見交換のまとめ」をお送りしております。こちらにつきましては,取りまとめに際し,多大な御協力を頂きまして,ありがとうございました。
 本日は,研究費部会において初めてのオンライン会議となりますので,事前に注意事項を記した資料もお送りさせていただいておりますが,念のため,この場でもオンライン会議の注意事項を説明させていただきたいと思います。
 まず通信の安定のために,御発言なさるとき以外は,常時,ミュートにしておいてください。それから,部会長は,常時,ミュートを解除にしておいていただきますよう,お願いいたします。また,部会長含め,全委員は常時ビデオをONにしていただければと思います。傍聴者の方は,恐縮ですが,ビデオを停止にしておいていただくようお願いします。
 また,御発言いただく際には,「手を挙げる」ボタンを押して御連絡を頂きたいと思います。
 部会長は,参加者一覧を常に開いておいていただいて,青い手のアイコンを表示している委員を御指名ください。そうしましたら,事務局の方でミュートを解除いたしまして,お話しいただけるようにいたします。
 御発言なさる際には,その都度お名前を発言いただくとともに,オンラインでも聞き取りやすいように,はっきり御発言を頂ければ幸いでございます。
 それから,資料を参照する際には,本日の資料は大部になっておりますので,資料番号,資料ページ,あるいはページ内の該当箇所などを分かりやすくお示しいただければと思います。
 また,議事録作成のために,前回までと同様,速記者が入っておりますので,御了承ください。
 また,トラブル発生時は,電話にて事務局に御連絡ください。
 以上,資料の欠落等がございます場合や,オンライン会議について御不明な点がございます場合には,事務局までお電話いただければと思います。
 以上でございます。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 議事に入る前に,事務局より,科研費における新型コロナウイルス感染症に関する対応などの報告があるということですので,その説明をお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】
 少し順番が変わりますけれども,参考資料1をお開きください。科研費における新型コロナウイルス感染症に関する対応をまとめたものになります。
 これまで各種手続の期限延長等に関する対応を行ってまいりました。まず4月1日付で交付内定を行った種目についての交付申請書の提出期限を1か月延長しております。それから,研究成果公開促進費につきましては,開催日時が決定しないとなかなか申請書を出せないという事情もございますので,更に交付申請を留保できることにして,その場合の交付申請期限は9月11日までと延長しています。
 それから,4月時点で公募中であった研究種目,研究活動スタート支援と国際共同研究加速基金がございますが,いずれも応募書類提出期限を延長しております。
 また,繰越承認申請に伴う経費の日本学術振興会への返納期限,これにつきましても,1か月延長をしています。
 それから,実績報告書等の扱いですけれども,これも通常5月末までのものを,提出期限を1か月延長しています。
 また,審査に関しては,令和2年3月時点で審査が未了であった種目,特別推進研究と基盤研究(S),挑戦的研究がございますが,これらについて,令和2年度においては,独立行政法人日本学術振興会が行う科学研究費助成事業の審査の基本的考え方によらない実施方法も認めると,そういった特例も認めることといたしまして,現在,審査の再開に向けて,学振の方で検討していただいているところでございます。
 それから,情報発信に関する主な対応でございますけれども,当面必要な手続き等に関するFAQを作成しまして,学振のホームページで公表,随時更新をしていただいています。
 また,文部科学省のホームページにおいても,科研費その他の各種研究費制度において,どういう対応をしているかといったことを集約して掲載しています。あわせて,感染拡大の予防と研究活動の両立に向けたガイドラインもまとめまして掲載しております。
 以上でございます。
 

(1)今後の科研費制度の改善・充実について

【西尾部会長】
 いろいろな御対応をしていただきまして,誠にありがとうございます。特段,皆様方から今の対応等について御質問はございませんか。よろしいですか。
 どうもありがとうございました。
 それでは,今後の科研費制度の改善・充実に向けて議論を行ってまいります。これまでの作業部会における検討状況について,小安主査から御説明をお願いいたします。どうぞお願いいたします。
【小安委員】
 では,小安の方から説明させていただきます。
 それでは,資料に基づきまして,少し御説明をさせていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 私どもの科研費改革に関する作業部会では,本年1月21日に開催された第7回の研究費部会において,いろいろと検討せよという宿題を頂きました。書面審議を含めて,これまで3回の審議を実施してまいりましたが,その中から各検討事項に係る検討状況をお手元の資料の1ページ目に項目を立てておりますので,この順に説明させていただきたいと思います。
 特に,科研費における種目のバランスと将来的に目指す予算規模という点。それから,若手研究者支援に関しましては,特に若手研究の改善という点。それから,国際共同研究に関しては,帰国発展研究に関して,本日の研究費部会で御意見を是非頂きたいと思っております。そして,それをもう一度,作業部会に持ち帰りまして議論させていただきたいと考えておりますので,後ほど先生方の御意見を頂きたいと思います。
 ページを1ページ,おめくりいただきますと,ここに枠で囲ってあります部分が研究費部会から私どもに頂いた宿題でございます。本日の資料におきましては,この項目を少し整理させていただいて,枠の下に書いてありますが,このような形に少し整理をして,各項目の現状と今後の方向性をまとめた資料とさせていただいております。
 では,中身に参ります。3ページでございますが,これは科研費における種目のバランスと将来的に目指す予算規模についてということです。現状は,科研費全体で見ますと,第1期の科学技術基本計画,平成8年度ですが,このときと比べると,令和2年度予算は1,356億円増加していますが,一方で,国立大学法人の運営費交付金はほぼ同額の1,400億円が減っているなど,大学を取り巻く環境は大きく変化していることをまず述べさせていただいた後に,種目の趣旨別に,これまでの変遷を下の方に,主な種目の変遷でございますが,これを3ページから4ページにかけて記載させていただいております。
 私どもの作業部会におきましては,特に大型種目について,平成28年12月の研究費部会の報告,これは「科研費による挑戦的な研究に対する支援強化について」という報告でございますけれども,これにおきまして,特別推進研究,特推の受給回数制限や応募額の下限の導入によって,基盤研究(S)への応募が増え,競争激化が想定されることから,基盤(S)の採択数を増加させるなどの検討が必要と記載されているのですが,その後,あまり議論もなされていないこと,それから,応募件数の増にもかかわらず,採択件数はむしろ減っているという現実がございます。こういう現状では,国際的に最先端を担おうとする研究や,意欲ある若手研究者を十分に支援できる状況になっていないと,こういう指摘がございました。
 これがこの中で主に重点的に述べたいことです。
 その次に,5ページまで飛んでいただきたいのですが,ここに採択率と充足率の状況ということを記載させていただいております。採択率そのものに関しましては,種目によって差はありますけれども,令和2年度の主な種目の新規採択率は28.4%になっています。基盤研究分の採択件数は,平成8年度と比べると2.5倍に増えてはおりますが,中身を見ますとその86%,約9割近くが基盤研究(C)で占められております。
 その一方で,充足率については,種目の趣旨を考慮して,大型種目や挑戦的研究では,その充足率を高く,小型の種目や若手研究者を対象とした種目では,むしろ採択率を重視して,充足率を低く設定してきました。したがって,後者におきましては,年々平均して配分額が減ってきているという,そういう状況にあります。こういう状況をここで述べさせていただいております。
 その次に,6ページから7ページにかけて,種目のバランスについてという項目を挙げさせていただいています。
 今後の方向性という点ですけれども,種目バランスにつきましては,科研費の全ての分野の実力ある若手から中堅シニアの研究者に対して,それぞれの研究計画の内容等に応じた研究費を措置するというのが重要なポリシーでありまして,これが我が国の学術研究を振興するための極めて重要な役割を科研費が果たすための仕組みとなっているということであり,これこそが我が国の学術研究を振興する唯一の競争的研究費であると考えております。
 しかしながら,我が国全体の財政状況が厳しい今日のような中において,科研費にどのような種目を設けて,どの種目を重視していくかというようなことに関しては,優先順位を付して対応していくことがある程度やむを得ないことではあると思います。しかし,その際,研究者の意見を十分に考慮することはもちろん,大学における科研費への期待や,同じ種目の中でも専門分野によって必要な研究費の額が異なるなど,これもこれまで何回も研究費部会の中で言われてきたことですが,こういう様々な視点がございます。こういうものをきちんと踏まえて検討すべきであるということを記載させていただいております。
 また,第6期の科学技術基本計画中におきましては,この第6期の科学技術基本法に関しては現在,ちょうど今日,国会で審議していると思いますけれども,若手研究や研究活動スタート支援については,現在の採択水準を維持しつつ,その後の研究者のキャリアに応じた効果的な研究費支援を切れ目なく行えるように,基盤研究など他の種目についてもバランスよく充実を図ることとしておりまして,全体として新規採択率30%の確保を目指すことが必要だと,そのように考えております。
 その際,基盤研究(C)の科研費全体に占める応募,採択件数の割合が高い一方で,基盤研究(A)以上の種目の採択率,予算額が長年,横ばいから暫減傾向にあるということには留意すべきだと思います。更にまた,近年,基盤的経費の減少から,従来,大学が担ってまいりました資金需要を科研費に求める傾向があるように思います。
 しかしながら,科研費総額も横ばいであることから,やはりデュアルサポートシステムの在り方を適正化しなければ,我が国の学術研究・科学技術のレベルに大きな影響があるということを危惧しておりまして,大型種目の拡充の必要性についても触れておきたいと思っております。
 将来的に目指す予算規模という,7ページの下の部分でございますけれども,当面,種目の性格や現状を考慮しつつ,全体として新規採択率30%になるような予算規模を目指すことと,取りあえずいたしまして,試算した資料を後ろに別紙1から3として示させていただいております。もちろん予算が幾らでも付くようであれば,実現は簡単なのですが,そこをどういうふうにバランスを取っていくかというのが我々が考えなければいけないところであろうと思います。この種目のバランスと将来的に目指す予算規模という点について,是非,この研究費部会の先生方の御意見をお聞かせいただきたいと思っておりますので,後ほど御意見を賜れればと思います。
 8ページに参ります。若手研究者支援の改善・充実についてというところでございますが,まず「若手研究」における応募資格の経過措置,これは若手研究への応募要件見直しによる激変が生じないように,39歳以下の博士号未取得者について,当面は応募を認める経過措置を設けました。その期間は新要件導入後3年程度とし,応募・採択件数の状況を踏まえて,改めて検討するとされておりました。
 表に示しますように,応募資格,要件4ですが,要望件数は年々減少しております。今後の方向性としては,令和2年度をもって経過措置を終了することが適当と私どもは考えております。
 次のページの「若手研究」の改善でございます。現在,若手研究の研究期間は2年から4年とされています。しかしながら,若手研究者が継続的・安定的に研究を遂行できるよう,基盤研究と同様に研究期間を延ばすことについて議論を行いました。若手研究者がキャリアを形成していく上で,研究期間設定の自由度は高い方が望ましい。それは確かです。したがって,研究期間の上限は5年とし,しかしながら,下限は2年のままにしてはどうかということを考えています。その場合に,研究期間の上限を5年とすることで,単年度当たりの研究費が減額されることがないように,充足率の向上をあわせて行う必要があるという意見が多数でございましたので,これは是非お考えいただきたいと思います。
 一方で,任期付きのポジションの若手研究者の任期を3年から5年にするなら意味がありますが,研究費の期間だけ延ばすことに意味があるとは思えないという意見もあったということをつけ加えておきたいと思います。
 また,これまでさんざん議論してまいりました「若手研究」種目群から「基盤研究」種目群へのスムーズな移行を励行するために,一度「基盤研究」種目群に採択された者については,「若手研究」への戻りを認めない方向で,応募制限を見直すことについても検討いたしました。
 作業部会では,賛成意見が多かったのですが,逆に,若手研究者が基盤研究に挑戦する意欲をそぐのではないかという意見もありました。
 なお,実際に,「基盤研究」採択後に「若手研究」に応募した研究者の割合は,実際の応募者数の1.5%程度です。そして,採択者に占める割合も2%程度でしたので,あえて応募制限の対象にする必要もないかもしれません。この若手研究の改善ということに関しましては,皆さん,問題意識をお持ちだと思いますので,ここに関しても是非,御意見を賜れれば幸いでございます。
 それから,「基盤研究(B)」における若手研究者の応募課題を優先的に採択できる仕組みについてというマル3のところに関してでございますけれども,この仕組みは,若手研究(A)などに採択される優秀な若手研究者の「若手研究」種目群の中で,高位の種目を狙うよりも,「基盤研究」種目群の中で切磋琢磨されることが望ましいという議論の中から,若手研究(A)を廃止したことに伴う時限的な経過措置として導入いたしました。
 しかしながら,表3,次のページ,10ページになりますが,ここにありますように,基盤研究(B)における39歳以下の採択率というのは,全体の採択率よりも,常に高いのです。こういうことを見ますと,この経過措置というのは本年度をもって終了することが適当と私どもは考えております。
 さて,11ページから12ページにかけましては,「若手研究」における独立基盤形成支援の改善ということです。この独立基盤形成支援というのは,試行という形でやっております。これは「若手研究」の研究代表者として新規に採択された者で,准教授以上の職位に就いて2年以内の者,かつ,研究室を主宰している者を支援対象者として,研究基盤整備に関する所属機関の一定のコミットメントを前提として,独立支援のための経費を措置するものです。これを平成29年度から試みとして行っております。
 これまで公募期間を延ばしたり,対象となる経費措置の対象を拡大するなどの改善を図ってまいりましたが,昨年度も応募件数はほぼ前年度と同程度の67件,それほど多くはありませんでした。これに関し,いろいろ議論いたしました。本制度は,科研費の立場から研究機関における若手研究者支援と基盤的経費の在り方を考える上でも有効ではあります。そして,研究機関のニーズも踏まえ,必要な改善を行ってはいきますけれども,当面はやはり試みとして継続することが適当と考えております。
 といいますのも,これがどんどん増えていくと,要するに,基盤的経費を科研費が担うということを認めたということになってしまい,それは望ましくないと我々は考えております。ただ,今後の改善事項としては,公募時期の見直しとか,支援対象者の要件の見直しということは考えてもいいのではないかということを議論いたしました。
 まず公募の時期についてですけれども,大学が翌年度の予算に組み込みやすいように,公募開始時期を前年度に前倒しをしてはどうかということが上がってまいりました。公募の締切りを翌年度に入ってからとすることで,現在と同様,大学側は希望者が若手研究,今後,対象を基盤研究(C)にも広げたいと思っておりますが,それに採択されていることを確認した上で応募することができるとしてはどうかと思います。これに関しましては,令和3年度の公募から対応できるのではないかと考えております。
 次に支援対象者の拡大に関しましては,有識者からのヒアリングでも御要望があったところです。若手研究者が研究室を主宰する者(研究室主宰者)としての研究活動を行おうとする際に必要な研究基盤の整備を支援するという本種目の趣旨に鑑みれば,これを基盤研究(C)にも拡大しても良いのではないかと考えております。
 「准教授以上の職位について2年以内の者」という要件に関してですが,これは分野によっては,専任講師や助教であっても研究室主宰者である場合もあるという御意見もいろいろとありました。これは機関によっても,その扱いが随分異なるというふうにも考えられます。したがって,我々としては,その数を把握することはかなり難しいと感じておりまして,当面は「准教授以上の職位について2年以内の者」という,この項目は維持した方がよいのではないかと考えております。
 また,支援対象の要件の見直しに関しましては,早ければ次の公募から可能であると考えますけれども,対象種目を基盤(C)にも拡大する場合には,応募件数が大幅に増加することも考えられるために,応募時に研究機関の優先順位をつけさせるなどの工夫も必要ではないか。これも賛否両論ありましたけれども,こういうことも考える必要があるかもしれないということを書かせていただいております。
 その次に,国際の方に参りますが,13ページからになります。
 国際共同研究の改善・充実についてというところでございますが,科研費においては,「国際共同研究加速基金」をここの表4に記載しているように,3つの区分で実施しております。作業部会におきましては,この国際共同研究の重要性とニーズが高まる中,国際共同研究の一層の推進を図るための改善方策というのを検討させていただきました。
 その次のページに,「国際共同研究強化(A)」の改善を書かせていただいております。14ページの下になりますが,これにつきましては,学術振興会において,採択者を対象として研究実態等調査を行っていただきました。その提言も踏まえて検討させていただいております。
 この種目が,科研費採択者が国際共同研究を行うことで,実施中の研究を格段に発展させることを目的としております。そして,その結果として,国際的に活躍できる独立した研究者の養成にも資することをその趣旨としております。
 そういうことから,応募資格に年齢制限の下限を設けない方がよいのではないかと考えています。ただ一方で,同趣旨に鑑みれば,上限については当面維持することが適当と私どもは考えています。これも早ければ,次の公募から対応が可能だと考えております。これが(A)に関してでございます。
 それから,15ページ以降に「帰国発展研究」のことを書かせていただいております。この帰国発展研究と申しますのは,海外で活躍した日本人研究者が帰国後に外国人研究者との連携等により,日本の研究活動の活性化に資する,あるいは帰国直後の研究費支援があることで,若手研究者の海外挑戦の後押しにつながるということを期待して,海外で優れた研究実績を有する独立した研究者を対象として,帰国後すぐに研究を開始できるように支援するための種目として位置づけられております。そのために,創設時には,海外において教授,准教授のポストに就いている者に応募資格を限定しておりました。しかしながら,平成30年度公募からは,それらの職に準じる者も可としたところです。
 現在,応募資格において「ポストドクターを除く」と書いていますが,御意見の中には,ポストドクターであっても,自らの責任で自由に使用できる研究費をきちんと獲得している方々もおられるということから,海外で活躍する優秀な若手研究者の応募機会を更に拡大するために,応募資格をポストドクターに拡大することについて,作業部会の中で検討いたしました。
 本種目の趣旨に合致している場合であれば,ポストドクターという身分であったとしても応募を認めることが適当ではないかと考えています。ただし,その場合には,「独立した研究者」であることが一つの重要な要件になると思いますが,その一つの証左となり得るものとして,研究計画調書を書いていただくときに,研究代表者が現に獲得している研究費等を記載していただくことはどうかということを考えています。
 ただ,国によっては,研究費の制度や応募資格等に違いがあることにも留意しなければいけませんので,審査において,これをどういうふうに判断するかというのは結構大変なことではあるとは思いますが,一つのヒントにはなるのではないかと考えております。
 そして,本種目の規模,これは3年以内,上限5,000万円という規模でございますけれども,この規模から見ると,ポストドクターに対象を拡大してよいのか,真に独立した研究者であるかどうかの資格の確認は簡単ではないよという慎重な御意見もあったことはつけ加えておきたいと思います。
 また,この帰国発展研究に関しましては,その配分額も大きくて,採択者が帰国後,真に独立した研究者として研究活動が行えるような十分なフォローアップが必要とも考えております。
 更に帰国者の帰国の決定というのは,大学等の公募にも当然左右されます。したがって,帰国後1年以内であれば認めるなどの,これをどうするかという問題もございます。これを否とするか,可とするかということも含め,帰国後に真に発展する研究者の支援の在り方について,引き続き検討する必要があると私たちは考えております。
 この帰国発展研究の改善に関しましても,研究費部会の委員の方々の御意見を是非頂きたいと思います。
 ちょっと急ぎます。16ページの国際共同研究を推進するための改善ですが,国際共同研究を推進するためには,科研費などの研究費による支援のほかに,国際学術交流事業や研究者海外派遣・招聘事業など関連事業がたくさんありますが,こういうものと協力・連携して事業を進めることも重要であると考えております。従いまして,国際共同研究を行った相手国や相手研究機関の情報をより確実に把握できるように,実績報告書や成果報告書の様式を工夫することも大事ではないかということを書かせていただきました。
 17ページに参りますが,応募件数の増加への対応です。令和元年度には応募件数が約2,000件減少し,2年度には,平成23年度以降,増加の一途をたどっていた基盤研究(C)の応募件数が800件ほど減少しました。重複応募制限のルール変更などによる種目ごとの応募動向にはこれまでにない変化が見られたものの,主要研究種目の応募件数はやはり10万件を超えておりまして,応募件数の増加,審査負担の増加は極めて重要な課題の一つになっています。また,近年では,新たな審査方式の導入により,挑戦的研究等における総合審査方式,これはいい審査システムだと思いますが,逆に審査負担という点では負担が増加しているということも課題となっています。
 他方では,一部研究機関では,科研費への応募採択状況が研究者個人や組織の評価指標として用いられるような状況が見られます。このことから,平成31年度助成の公募要領におきましては,各研究機関に対して,あくまでも研究者の自由な発想に基づく研究課題の応募ですよということ,この趣旨を逸脱しないように注意喚起を行ったところでございます。これも更なる注意喚起が必要だと思っています。
 今後の方向性といたしましては,応募件数の増加の対応として,当面は振興会が進めてくださっている「審査委員候補者データベース」の拡充と,若手研究者の審査委員への積極的な登用等によって審査負担が偏ることがないように,研究者全体で,この審査システムを支えていくことが必要だと思っています。
 なお,審査負担の軽減の観点から,今後の振興会における「審査システム改革2018」による効果等の検証結果,これを今,検証していただいておりますので,この結果を踏まえて,審査の簡素化についても検討することが必要であると考えています。
最後に,19ページから20ページでございますが,大型種目の公募スケジュールの前倒しについてということです。大型種目の公募スケジュールの前倒しにつきましては,「学術変革領域研究」の審査評価業務の振興会への移管時期に合わせて,令和4年度公募から行うことが想定されておりましたが,今般の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて,今,振興会においても,一部種目の審査が未了となっているなど,大変困難な状況になっております。
 こうした状況を踏まえますと,今後の方向性といたしましては,大型種目の公募スケジュールの前倒しについては,「学術変革領域研究」の移管時期と合わせ,両方とも最低1年程度,後ろ倒しをすることを念頭に,この新型コロナウイルス感染症の終息状況等も勘案して,改めて検討する必要があるのではないかと考えております。
 そして,最後に,今後の研究費部会におけるまとめについてということでございますが,最後に21ページにそれをつけさせていただいております。これまで作業部会では,「第10期研究費部会における関連事業等の有識者との意見交換のまとめ」において,「短期的に取組が求められること」,これは令和3年度概算要求を目処。それから,中長期的に検討すべきこととして整理されたもののうち,短期的に取組が求められる事項を中心に検討を行ってまいりました。今後,研究費部会として報告をおまとめいただく場合には,中長期的に検討すべき事項も含め,その次のページにありますような,22ページです,このような構成を取ってはどうかというものを作らせていただいております。もし御了解いただけるのであれば,次回以降の作業部会において,これに沿う形で更に必要な議論を行っていきたいと考えております。
 少々長くなって申し訳ございませんでしたが,以上,御報告とさせていただきますので,委員の先生方のいろいろな御意見を賜れれば幸いに存じます。どうもありがとうございました。
【西尾部会長】
 小安主査,本当に作業部会での多岐にわたる,また,深い議論をしていただきましてありがとうございました。今後の第10期の研究費部会でどういう議論をしていくべきかということについても,いろいろな御示唆を頂いておりますこと,大変ありがたく思っております。
 それでは,作業部会からの提案を踏まえまして,議論に入ります。我々,研究費部会の第10期ではこれまで,例えば,戦略事業であるとか,あるいは運営費交付金関連のことも含めまして,他の事業との意見交換をしてまいりまして,その中で浮き彫りになった様々な課題につきまして,まずは作業部会で御議論を頂くということをお願いしました。今,小安主査からお話しいただきましたように,その結果としての様々な御提案,また,今後も継続的に審議されることをまとめていただきました。
 そこで,この報告の中の3ページから7ページのところに,まず科研費における種目のバランスと将来的に目指す予算規模というところがございます。この3ページから7ページにわたって,小安主査から御説明いただきました点につきまして,御意見を頂ければと思います。御意見ある方は是非シグナルを出していただければと思います。よろしくお願いいたします。
 どうでしょうか。
 中村先生,どうぞ。
【中村委員】
 中村です。大変基本的なことなんですが,充足率70を75%にするというんですけども,充足率が70%というのはもともとおかしいと思うんですよね。本来,充足率は100%とするというところから議論を始めるべきだと思うのが普通です。理想像を考えるときに75%を前提に議論すること自身,少し違和感を感じます。
【西尾部会長】
 分かりました。
【中村委員】
 100%というところで議論をした方がいいのではないかと思うんですけど,それはいかがでしょうか。
【小安委員】
 それはもちろん話題になりました。一番足かせになっているのは,採択率30%です。そこが目標になっているところで引っかかっていまして,それが充足率の低下を呼んでいます。しかし,100%が本来の姿だということは,挑戦的研究のところに,逆に言うと生かさせていただいて,そちらの方は基本的にほぼ100%に近い充足率で研究していただこうということになっています。しかし,どうしても数の多い基盤(C)や若手研究になりますと,理想はそうなのですが,どうしても採択率の方に走ってしまっているというのが現状です。これはもう予算を増やしていただければ,実現できるのですが,どこを取るかということで,常に皆さんが悩んでいらっしゃるところだと私は理解しています。
【中村委員】
 でも,これは理想像なので,採択率が30%で,充足率が100%で3,000億円になるとか,そういう理想像で書いた方が筋が通っていますね。
【西尾部会長】
 では,中村先生も,現実につきましては,御発言のように十分御理解いただいているところですので,目的といいますか,理想とするところを記述すべき,ということだと思います。事務局には,対応をお願いいたします。
【小安委員】
 これは今回,資料をつけさせていただいています。別紙1から7というのを御覧いただくと,例えば充足率が75%という場合のどのくらいの予算が必要かということを示しています。では,100にしたらどうなるとか,数字が出るわけで,これは算数ですから簡単にできます。しかし,それが現実的ですかというところで引っかかってきます。大ざっぱな数字は,皆さん計算していただければすぐ出てきます。
【西尾部会長】
 分かりました。そうしましたら,甲斐先生,先ほどシグナルを出しておられたと思うので,いかがですか。
【甲斐委員】
 今の中村先生の意見に対して,応援演説じゃないですけど,思うことは,この資料2の今のパラグラフの最後のところに,将来的に目指す予算規模についてというのを小安先生が書いてくださっていますよね。それもすごく忖度した金額で書かれているわけですよね。だから,将来的に目指す理想100は本来こうだというのを書いておいてもいいのかなと思ったんですね。どこかに最終目標がちゃんと書かれていて,それで,70であれば仕方なく,こうだというふうにあると,この目標値もどこかで使ってもらえるのかなと思うんですけど,いかがでしょうか。
【西尾部会長】
 山本先生,どうぞ。
【山本委員】
 山本でございます。理想はそれで私はいいと思いますが,ひとつプラクティカルなやり方として,一律70%とか一律75%ではなくて,やはり審査の方で上位の課題について充足率を増やすであるとか必要なものを増やすという工夫もした上で,できるだけ効率的な使い方をする,そういうのがあってもいいかなと思いました。
 以上です。
【西尾部会長】
 分かりました。今の御指摘いただきました点は,重要な観点かと思います。
 ほかに御意見等ございませんでしょうか。
 小安主査からの御懸念の一つとして,運営費交付金であるとか私学助成金のいわゆる基盤的な経費の代替として科研費が考えられつつあるということの危機感を重要な問題としてお話しいただきました。
 基盤的経費の代替を科研費がしていくようなことになってしまいますと,どちらかというと,基盤的経費の代替的な規模の科研費の種目がどんどん増えてしまい,そのことによって大型種目が縮小してしまうことが懸念されます。そこで,デュアルサポートシステムをきっちりと適正化していくことが非常に重要かと思っています。
 ただし,適正化をしていく上で,運営費交付金あるいは私学助成金において学術研究を支える部分をどれだけ充実していけるかということは,財務省との間での大きな交渉事になります。ただし,そこは諦めずに今後とも粘り強く交渉していくということが大事だと思っています。
 射場委員,どうぞ。
【射場委員】
 今,西尾先生がおっしゃっていたところなんですけど,デュアルサポートシステムの在り方を適正にするという意味で,そもそもの大学の運営費交付金で使える用途と,科研費で使える用途は共通の部分はあるんだけど,やっぱり違う目的の部分もあると思うんですよね。科研費では使えないけど,運営費交付金で使える部分がすごく減っていることが大学の中で,すごいお金が足りないという切迫感につながっていたりするので,私は大学のお金を直接的には知らないですけどね。その間接的な予算というものが直接的な研究の経費に比べたら随分,予算の大きさとしては小さいのに,そこがすごく減ってしまっているので,お金が足りないように感じられてしまうというところで,そこをもう一段,深掘りして,各々の科研費と運営費交付金で使える用途は何か。それで足りないところは本当にどこかみたいな議論が要るのかなと思います。
【西尾部会長】
 なるほど。射場委員の御意見としては,科研費で使える用途と運営費交付金で使える用途ということについて,これらの経費が学術研究を支えている二本柱であることは間違いないが,更にそれらの使い途に関して,もう一回精査する必要もあるのではないかという御意見かと思いますけど。
 この件について何か御意見とか気づいておられる方はおられますでしょうか。
 中野先生,どうぞ。
【中野委員】
 運交金と科研費で使い勝手が違うかというと,必ずしもそんなに違わないと思うんですね。大体同じような使い方ができるんですが,基盤(C)に関しては基金化されているのが大きくて,繰越しが非常に簡単である。こういう使い勝手のいいお金はなかなか運交金の中にはないというので,基盤(C)に人気が集まっているというところはあるんじゃないかなという感じはします。
【西尾部会長】
 なるほど。小安主査,今の論点,どうでしょうか。
【小安委員】
 我々は常に,科研費はすべからく基金化すべしという,そういうことを主張し続けています。それが研究に対して効率よく資金を使える最大のポイントだと思っていますけれども,ネガティブな効果としては,今,中野さんがおっしゃったように,こっちの方が使い勝手がいいから,こっちの方に寄せちゃうみたいなことになると本末転倒になります。やはりそこは,デュアルサポートというのは本来何だったのかというところを,きちっともう一回議論し直した方が私はいいと感じています。
【西尾部会長】
 そうですね。デュアルサポートと一言で言っていますが,その内容を現在の状況の下でどう捉えるのかという議論を,一回しなければならないと私も感じております。
 中村先生,どうぞ。
【中村委員】
 科研費はあくまでも研究計画を提案して,その計画を実現するために使うものです。あくまでもその研究目的の達成に資する用途に使うわけですよね。ですから,科研費の研究課題を越えて大学の教育や研究一般に使うことはできないわけです。直接経費・間接経費を問わず科研費は大学の運営費の替わりにはならないというのが普通の考え方ではないでしょうか。
【西尾部会長】
 なるほど。竹沢先生,手を挙げておられますね。どうぞ。
【竹沢委員】
 今,御発言があったとおりなんですけど,やっぱり科研費というのは競争的な資金であって,期間が2年であれ,5年であれ,決められているもので,他方で,そういう競争的資金に合わない,あるいは期限が5年という限られた期間で終了する性質ではない地道な研究があるので,このポイントについてはもう一度喚起させていただきたく思います。
【西尾部会長】
 分かりました。今,中村先生と竹沢先生からおっしゃっていただいたところが,運営費交付金及び私学助成金と科研費との大きな違いだということは,私自身,再度認識しました。どうもありがとうございました。自由な発想の中で生まれたテーマを明示した上で,科研費という競争的資金を獲得して推進する研究と,運営費交付金のように,ある一定の経費がまず配分された下で,自由な発想によって推進していく研究とは,異なる要素があるということがよく分かりました。
 射場委員,今申し上げたところが大きく違うのではないかと思っておりますので,認識いただければと思います。
【射場委員】
 了解しました。
【西尾部会長】
 それでは,会議の時間のこともありますので,この種目バランスと将来的に目指す予算規模等について,本日,御意見等を言い切れなかったことがございましたら事務局の方に寄せていただきたくお願いします。これらの課題については,本日の御意見等を踏まえまして,次回も引き続き検討をしていきたいと思っております。また,必要に応じて,作業部会でも再度検討いただきたくお願いします。
 次に,若手研究者支援について御意見を頂ければと思います。若手の支援に関しましては,先ほどの資料では8ページから12ページまででございまして,多岐にわたる御提案とか議論の結果等を先ほど小安主査からお示しいただきました。御意見等いかがでしょうか。
【竹山委員】
 先生,よろしいでしょうか。
【西尾部会長】
 竹山先生,どうぞ。
【竹山委員】
 若手研究と基盤(B)の重複が可能ですが,両方採択された場合は,基盤(B)を採択とし,若手研究は辞退することになり,他が繰り上がることにあるかと思います。伺いたいのは,制度がいろいろ若手優遇に変わっている中,結果的に,科研費全体での若手の採択率というのはどの程度になっているかということです。
【西尾部会長】
 事務局,どうでしょうか。
【岡本企画室長】
 御紹介させていただきます。毎年,科研費の配分結果を公表させていただいております。その中で年齢別の採択率の状況を公表しております。これは令和元年度ですけれども,40歳未満の方が38%,40代の方が27.5%,50代の方が22.3%,60歳以上の方が20.9%になっております。今回,報告の中にはそういう切り口でのデータはありませんけれども,このような形では現在公表をさせていただいております。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございます。
 竹山先生,今のデータをお聞きになられまして,何かお感じになることはございますか。
【竹山委員】
 ありがとうございます。この制度の改革によって,明らかに若手の人たちの採択率は上がっていることがわかります。30歳代の研究者提案のほぼ40%が採択されているということですね。この委員会では科研費の話だけをしていますが,文部科学省の他プログラムや他省庁においても,若手重視ですので,日本全体の研究費と考えると30から40歳代前半は非常に研究費に恵まれた環境にあるということになるかと思います。若手をサポートする制度はできてきたので,次は限られた国全体の研究費の効率的な運用等を考える必要があるかと思います。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。科研費のみならず,ほかの事業等においても,今,若手を重視しているものが増えてきております。例えば,「創発プログラム」も始まっています。そういう中で,今,竹山先生がおっしゃられたことを一方では考えていかなければならない課題であると思っています。
 小安主査,その辺り,どうでしょうか。
【小安委員】
 先ほどの中村委員の充足率の話とも関係するのですが,今,若手の採択率は4割ですね。4割は高過ぎるのではないかという議論をしました。それよりも3割にして充足率を上げる方が正しいのではないかという議論もありましたが,何せ今のこの若手,若手という流れの中で,若手の採択率をわざと下げる方向に行くということに対する,やはり抵抗というのがどこかには必ずあるのではないかと感じています。全ての種目において若手の方が採択率が高いというのは,ずっと観察されていることですので,十分,若手は闘えていると思います。無駄な甘やかしは要らないと,いつも私は言っています。みんな同じ土俵で闘うべきということで,単にそれだけのことだと思っています。
【西尾部会長】
 貴重な御意見ありがとうございます。
 今の御意見も踏まえまして,中村先生,どうぞ。
【中村委員】
 若手と基盤の関係について,小安先生に質問があります。
 昔は,若手は年齢で切っていました。年齢で切っただけです。つまり若手と基盤研究とは年齢以外には差がなかったんですけども,今回,年齢制限の代わりに,若手研究はドクターを取ってから8年以内となったわけです。ということは,若手研究は,過渡的措置が終わったあとは,博士を取った人に限られるわけです。そうすると,これまでは,若手の人が年取ったら基盤に行くんだと思っていたわけですが,今やドクターを持っていない人は基盤に行きなさいという感じになってしまった。全体の制度設計が少しおかしくなったような気がします。本来あるべき姿は,基盤研究はドクターを持っている人のための競争の激しい研究費なので,若手は熾烈な競争に放り込まれる前に若手同士で切磋琢磨してね,という性格付けにするべきではないでしょうか。そういう仕組み・考え方にしないと,何かどこかおかしくなるような感じがするんですけど,いかがでしょう。
【西尾部会長】
 小安主査,どうぞ。
【小安委員】
 これに関しても何回か,たしか研究費部会でも議論があったと記憶しております。やはり学術研究をするときに,ドクターというのは一つの必要な資格ではないかという議論があったと記憶しています。その上で,若手の中で,ドクターを取る年齢というのが分野によって随分違うということから,学術の世界への入門編と考えたときには,ドクターを取ってから何年以内というのがよろしいのではないかということで,今の仕組みになりました。ただ,それを全ての種目に持っていってしまうと,今おっしゃったように,今度,排除の論理になってしまうので,基盤のところにはそういうことは入れていないということです。
 それから,もう一つは,現在,科研費に応募される方の中には,企業研究者の方もおられますので,そういうことを考えたときに,基盤(C)のところに関してはどなたでも応募できるようにしておいた方がいいのではないかという議論になっていたかと思います。
 何が正解かということに関しては,これはかなり難しい問題だとは思いますけれども,一応,今申し上げたような理屈で現在の姿になっていると私は理解しています。
【西尾部会長】
 中村先生,今の御意見に対してどうでしょうか。
【中村委員】
 基盤(C)はそうかなと思うんですけども,基盤(B)辺りになるとドクターを応募の前提として考えた方がいいかなという気がします。
【西尾部会長】
 中野先生,どうぞ。
【中野委員】
 若手支援に関してなんですけど,職の安定というものとセットにして考えていかないと,なかなかもう難しいかなという感じがします。(C)に出す人が多くて,長期に挑戦する人も少ないとかいろいろな問題がありますけれど,実際,任期が短い人がどんどん増えてきていて,じっくり腰を据えて研究できない。というか,そういうポジションにない人が年々増えているような気がします。だから,若手を支援するために採択率だけを上げるというのはやっぱり僕も反対で,そこは甘やかしちゃいけないんだけれども,きっちり挑戦できる環境を与えた上で厳しくというのがあるんじゃないかなと思います。
【西尾部会長】
 貴重なコメントありがとうございます。
 ほかに若手の研究者支援の改善・充実ということで何か御意見ございませんでしょうか。
 なお,小安主査からは,本部会の合意が得られれば,令和2年度公募から対応とか,あるいは,令和3年度公募から対応したいということで,作業部会としての御提案も幾つか頂いております。それらについては,もし皆様にこの場で特段問題ない,それで進めてよいということでしたら,事務局を通じて実行していくというフェーズに行きたいと思っております。それらについて,もし特段の御意見がありましたら是非おっしゃっていただけるとありがたく思っております。
 上田委員。若手を育てておられるお立場として,御意見ございませんか。
【上田委員】
 私も若手のつもりで一応います。本件に直接関係ないかもしれませんけど,若手の国際共同研究がありますよね。(B)という。あれはアーリーリサーチャーという若手がPIにもなれて,海外のカウンターパートの人たちと組めるという制度で,PIは日本人である必要はないんですね。日本のe-Radに登録されている外国人もオーケーなんですが,問題なのは,先方の研究機関に滞在して研究をしないといけないという条件がついているんですね。
 この件で,知り合いからもそういう人がいないかという相談を受けていますが,やはり大学の先生は,今,コロナが長引くと,そもそも海外滞在が無理になっていますが,そもそも学生さんがいる中で2週間とか,あるいは1か月とか,海外で滞在しないといけないというのはなかなか厳しいようです。もちろん分野によってはそういうことを,一緒にやらないといけない分野もありますが,少なくとも情報系とかは今ですら在宅勤務でそれほど研究業務に影響を受けていない御時世なのに,現地での滞在共同研究を行うということを申請の条件にするのはどうかと。そういう意味で若手の活動を阻んでいるんじゃないかと思います。そこは,例えば「望ましい」ぐらいに書いていただくと。私も条項をいろいろ見たんですが,やっぱりそう書いてあるんですね。その点が少し気になりました。
【西尾部会長】
 分かりました。今,御指摘いただいた点は,若手のところで考えるのか,国際共同研究で考えるのかは別としまして,今回のコロナ禍のことを踏まえて研究のありようそのものも,ウィズコロナ,アフターコロナということを十分意識した研究をしていくことが求められています。そのプラットフォームを構築する必要があると思っているのですが,そのベースとなるのはデジタル技術等を駆使して,遠隔から研究に参画するなどの柔軟性を持たせるということだと思っています。小安主査,もし御意見等ございましたらお願いいたします。
【小安委員】
 この話はやはり国際共同研究の制度を作るときに散々議論はしたのですが,要するに,今の若手がどうして外国に行かないのか,無理やり送るしかないみたいなところが背景にはあったような気が私はしています。本当にそれが正しいのかどうかというのはなかなか回答はありません。今,上田さんがおっしゃったように,コロナの体制で,私も大体1日の半分ぐらいの時間をこうやってディスプレイに向かって話をしているわけですが,極端なことを言うと,ヨーロッパとアメリカと朝から晩までやっていれば,結構いろんな議論ができてしまいます。こういう中で,やはりどういうふうにしていくべきかというのを今,ものすごく考えさせられておりますので,議論はいろいろとしたらいいと思います。
【西尾部会長】
 はい。そうしましたら,今の御意見は,国際共同研究に関して,今後,議論していく内容に新たになるかもしれませんが,検討事項として是非ともよろしくお願いいたします。
 若手研究に関してほかに御意見等,ございませんでしょうか。
 井関先生,どうぞ。
【井関委員】
 今のことに関してなんですけれども,確かにもうコロナのせいで,ウィズコロナ,ポストコロナというのは考えなければいけない。小安先生がおっしゃったように,ディスプレイの中で,いろいろな国際共同研究ができるというのももっともですが,実際問題,サイエンスというのは,いろいろな国の文化にも根づいているところがあります。私も必ずしも相手国に行かなければいけないというふうには思いませんけれども,やはり海外にいるから感じる文化の違いというものもあるわけで,そこら辺をうまく融合できるような研究費があるといいなとは思っております。
 以上です。
【西尾部会長】
 国際共同研究をどう捉えるかということについて,上田委員とは別の角度からの重要な御意見かと思っていますので,それも今後の議論の中で生かしていきたいと思っております。ありがとうございました。
 栗原先生,いかがでしょうか。
【栗原委員】
 私も同じ点について意見を申し上げたいと思っていましたが,研究そのものでしたらば,もちろんディスカッションだけで済むかもしれませんが,人とのネットワークとか,10年,20年かけての研究者コミュニティーでの国際的なネットワーク作りということになりますと,やはり行って,同じ場所で働くとか暮らすということは非常に大事な観点だと思いますので,それは井関先生のおっしゃったことと関係するんですけど,大事だと思っています。
【西尾部会長】
 そうしましたら,この点,上田委員の方でおっしゃられていること,また,井関先生,栗原先生の方でおっしゃっていることが,うまく両立するようなやり方がないのかも含めて,今後の課題にしてまいりたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
ほかに御意見はありますでしょうか。
 ないようでしたら,若手研究のことに関しましては,若手研究における応募資格の経過措置については,令和2年度をもって終了するということになります。また,若手研究の改善のところでは,現在は2年から4年のところを,2年から5年に延ばした方がよいのかどうなのか。ここら辺は,小安主査としてはまだ継続議論が必要だということでおっしゃっておられました。さらには,基盤研究種目群に採択された方の若手研究への応募を制限するのかどうなのか。ここら辺もまた,小安主査としてはいろいろもう少し検討が必要だということでおっしゃっておられました。
 それに対して,基盤(B)における若手研究者の応募課題を優先的に採択できる仕組み等々について,これは基盤(B)における39歳以下の採択率は全体の採択率よりも高いということもありまして,この経過措置は令和2年度をもって終了していきたいということでお話しいただけたと思います。
 あと,若手研究における独立基盤形成支援のことで,支援対象者の拡大等については,「准教授以上の職位について2年以内の者」という要件については,これは先ほど小安主査からは,当面は維持ということで行かれるということでお話いただきました。あと,公募時期の前倒しということにつきましては,皆様から,特段,御意見も出ませんでしたので,令和3年度の公募から対応というようなことで進めてまいりたいと思います。
 それでは,今の件,作業部会から御提案いただいたものにつきましては,今後それらの事項の実施については,事務局において対応をしていただければと思いますので,よろしくお願いいたします。
 それでは,次に,先ほど一部意見が出たところもございますが,13ページから16ページまでの国際共同研究に関しまして議論をしてまいりたいと思いますが,御意見等ありましたらよろしくお願いいたします。どうでしょうか。
 この件に関して,まず中村先生,それから,中野先生,栗原先生の順番で御意見を頂けますとありがたく思います。
 まず中村先生。
【中村委員】
 全体の趣旨は大変すばらしいです。実際に若手の教員が出そうと思ったら,重複の縛りが非常に強くて,きっちりと研究ができて研究資金を取っている人はなかなか出せない。国際事業は力のある人に出してもらうべきだと思うんですけども,ほかのお金を取っていると応募できないような重複禁止がかかっていることによって,本来のよさが台なしになっているというような印象を受けたんですが,いかがでしょうか。
【西尾部会長】
 小安主査,どうですか。重複制限がきつ過ぎるのではないかというご意見ですが。
【小安委員】
 私にその問いをすると答えは決まっていまして,重複制限は一切要らないというのが私の持論なので。しかし,実際問題としては,審査の負担ということを考えたとき,どこかでやはり制限をしなければいけないというのが現状だと思っています。中村さんのおっしゃることは全くそのとおりだと思いますが,なかなか難しいところに直面しているということです。
【西尾部会長】
 小安主査,一部とか,段階的とか,何か強弱がつけられるのでしょうか。
【小安委員】
 例えば挑戦的研究のところで言えば,今回,改革と基盤(B)の重複を外しました。そういうようなことで少しずつ進めています。これは審査体制の充実とカップルしなければできませんので,最終的にはいい方法があって,皆さんが非常に協力的に審査に携わっていただけるのであれば,解決できる問題かなと感じています。
【西尾部会長】
 分かりました。では,この件は,中村先生のおっしゃられていることは非常に大事なことなのですが,もう一方で,審査体制ということの現実的な課題とのせめぎ合いの課題だと思いますので,そこら辺を見極めながらできるだけ重複を外していくというところかと思います。永原先生,JSPSのお立場からの御発言をどうぞよろしくお願いいたします。
【永原JSPS学術システム研究センター副所長】
 ありがとうございます。ただ今の件は重要で,本質的には小安先生がおっしゃったように,重複制限というものがなければ誰もがありがたいわけですけれども,審査が大変なことだけではなくて,もう一つ問題があります。前半の議論とも関わりますけれども,現在,大学がとにかく科研費を出せるものは何でも出せというような,研究者に対してそういう非常に強い力をかけていますので,この状況で重複制限を緩めると,その事態に拍車がかかることになってしまいます。先ほどのデュアルサポート問題とも強く関連していますので,その問題の議論を抜きに,いたずらに重複制限を緩めることは,科研費というものの本質を歪めることにつながりかねないので,更に慎重な議論をしていただければと思います。
 以上です。ありがとうございます。
【西尾部会長】
 おっしゃられることは十分私も分かります。運営費交付金を補填する観点から,とにかく科研費を可能な限り申請するようなことになっていきますと,これは科研費のもつ本来の意義が損なわれてしまいます。そこら辺のことも含めて今後は議論していく必要があると思っておりますので,何とぞよろしくお願いします。なかなか難しい問題だと思います。永原先生,ありがとうございました。
 そうしましたら,中野先生,どうぞ。
【中野委員】
 帰国発展研究に関してなんですが,これは非常に魅力的な制度で,海外でも活躍されている方を日本に呼び戻すとか一本釣りのときにものすごく有効な制度だと思いますけれども,やはり申請者が少ない。非常に少なくて,これはやっぱりタイミングの問題とかいろいろと出しにくいというのがあるんじゃないかと思うんですね。これは国としての一本釣りに近いので,例えば随時応募で随時審査みたいな。普通の科研費と違うような運用の仕方をして,本当に優秀な人を日本に呼び戻すときにきちんとサポートするというような,そういうことが可能になったら,もっともっと生きてくるんじゃないかと思います。
【西尾部会長】
 審査とか申請に関して,もう少しこれはフレキシビリティーを持たすということですかね。
【中野委員】
 そうですね。特に教授の人事なんていつオープンになるか分からないし,それがいつ決まるかも分からないので,ちょうどいいタイミングで応募できるかというと,できないことが多いような気がするので。だから,こんな制度があったら出していたのにという話はよく聞きます。
【西尾部会長】
 永原先生にお伺いしたいんですけれど,例えば,審査する総量は一緒であることを前提にしたときに,年間に審査をすることを何回かに分けてるようなことは,一般的には可能なのか。なかなか難しいことなのか。そこら辺,永原先生の御意見ございませんか。
【永原JSPS学術システム研究センター副所長】
 本来,私が答えることではなくて,恐らく事務方の答えることかと思うのですけれども。
【西尾部会長】
 先生の直感的なお考えで結構ですので。
【永原JSPS学術システム研究センター副所長】
 はい。現状の応募数であれば全く不可能ではないかと思います。ただし,いずれにしましても,結局,事務的な負担が増えることになりますし,随時審査員を選んでというようなことで,やはりなかなか対応が難しいと思います。全く随時と言われると難しいと思いますが,年2回くらいであれば何とか対応が可能かもしれません。無責任な発言で事務方から怒られるかもしれませんが,私の個人的な意見は以上です。
【西尾部会長】
 永原先生に責任を取ってもらうなんていうことは全然考えておりませんが,今おっしゃった意味でも,例えば年に2回になるだけでも大分変わるかもしれませんね。審査員については年間を通じて固定しておいて,年に2回お願いするというような改善を行って,その結果として,科研費を配分すべき最適な研究者を支援することが一番大事なことです。小安主査,検討事項が多くなり申し訳ありませんが,一つの可能性として御検討いただければと思いますので,よろしくお願いします。
【小安委員】
 ありがとうございます。今のは非常に貴重な御意見だと思います。初めて応募する場合には研究活動スタート支援とあわせて年2回に機会があったのではないかと思いますので,そういう対応の仕方はありかなと思いますので,検討させてください。
【西尾部会長】
 ありがとうございました。
 栗原先生,お待たせしました。
【栗原委員】
 私も帰国発展研究について,もう少し機会を広げてということで,従来からも,申請時期,どうにかならないんでしょうかという意見は申し上げていたところですが,それについてなかなか,できるということでなかったので,今回は1年以内ぐらいだったらいいということにしたらいかがでしょうかという,かなり広げる提案をさせていただきます。それで,少なくとも前の科研費の申請時期から,次の科研費の申請時期の間に帰国した方については,チャンスを差し上げるというのもあるのではないかと思います。随時ということだったり,年数回ということが御負担であれば,多少資格を広げるということもあるかと思いまして,それが前回の申請時期を逃した人たちというカテゴリーに入るような方々をという意味で,1年程度ということで申し上げました。
 これはもともとは帰国奨励だということからすると,やはり外国にいらっしゃる方というのが筋かもしれないんですが,広く考え,そのくらいの範囲の方を支援すると,制度の周知度も上がるんじゃないかと思います。そうすると,むしろ外国にいる間に応募してという方も増えるかもしれないので,今,外国にいらっしゃる方に限定しているために,制度の周知がどうしても限定的になるということもあると思いますので,両側から,本来の趣旨からして,優れた研究実績を有する方に帰ってきて活躍していただいて,今後更にネットワーク,先ほどの国際的なネットワークの強化にも貢献いただきたいということであれば,1か月遅れたから駄目というようなことでなく,なるだけ趣旨を生かすような形の運用を何か工夫いただければという意見です。
 ありがとうございます。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 中野先生と栗原先生の御要望というか,今後の方向性は共通するものでございまして,海外と日本の学期などのタイミングが異なっている問題等を改善する観点からも,今後是非御検討いただいて,一歩でも前進できるようでしたらお願いしたいと思います。
 射場委員,どうぞ。
【射場委員】
 観点が違うんですけど,16ページの改善のところの最初のポツに,他事業との連携みたいなことが書かれているんですけど,JSPSに国際関係の事業のお話を聞かせてもらうと,すごいたくさんの国に対して相当のボリュームの事業をやられているんですよね。よく言えばグローバルなんだけど,悪く言うとちょっとマネジメントされていない感じがして。そのボリュームの多い事業と科研費のこの辺りの取組が現状,組合わせてやられているのかどうかが,今の現状自体がよく見えなくて。例えばWPIの成果はこの国際の事業の中で広く展開するみたいな,すごいいい事例だと思うんだけど,科研費のところが現状等で,じゃあ,どうしたらいいみたいな議論ができないかなと思っていました。
【西尾部会長】
 そうしましたら,これは小安主査,事務局の方でいろいろ調べていただくことでよろしいですか。
【小安委員】
 これはおっしゃるようにJSPSはすごくたくさんの国際事業をやっていらっしゃいますので,文部科学省というより,JSPSで少しそこら辺のところを見ていただいた方がいいかなと思います。たしかJSPS理事の家先生も今日ここにおられたような気がするのですが。
【西尾部会長】
 家先生,どうでしょうか。
【家JSPS理事】
 家です。御議論を聞いていました。JSPSの国際事業はいろいろありますけれども,これらは基本的には,各国のアカデミアとかファンディングエージェンシーのようなカウンターパートとJSPSが協定に基づいて行っている国際交流でありまして,科研費におけるボトムアップの国際共同研究とはかなり性格の違うものです。それらは上手く連携するようにとの御提言は貴重な御意見として承りますが,国際事業はそれぞれの国とのお付き合いの歴史を引きずっているところもありますので,なかなかすぐにということではないということは申し上げておきます。
【西尾部会長】
 分かりました。少し趣旨が違うということですね。ありがとうございました。
 そうしましたら,今,射場委員から頂きました点,それに対しての家先生からの御回答を踏まえて,もし,更にJSPSの方で,射場委員への補足の情報等ございましたら,今後よろしくお願いいたします。国際共同研究を推進するための改善としては,研究実績報告書や研究成果報告書の様式を工夫するということで御提案を頂いておりますので,これに関しては,令和2年度の報告書から対応いただくということで,皆様,特段の御意見ございませんでしょうか。よろしいですか。
 ほかに国際共同研究関係では何かご意見ございますか。どうぞ。
【竹沢委員】
 よろしいですか。竹沢ですけれども。
【西尾部会長】
 竹沢先生,どうぞ。
【竹沢委員】
 帰国発展研究のところなんですけれども,私は自分の意見は前にも表明しましたけれども,今回,ポスドクを省くということで,一定した基準がないということで省かれたと書かれているのですが,ポストドクレベルは海外とのネットワークが一番強くて,これからの研究を担う宝だと思うんですね。その人たちが帰国したあと,自分が持っている国際的ネットワークを使いながら,国際共同研究をしたいといった場合に,この帰国発展研究の資格がないならば,他にどのような資金でもってその人たちのニーズをすくい上げることができるのだろうかと思うのですが,それはいかがでしょうか。
【西尾部会長】
 小安主査,今の御意見に対していかがでしょうか。この点,なかなか重い問題かと思いますが。
【小安委員】
 ここに挙げさせていただいたのは,正に竹沢先生におっしゃっていただいたように,優秀な人に日本に帰ってきていただいて,研究していただくのであれば,別にポスドクであるからといって,除外しない方がむしろ良いのではないかという議論があって,今回持ってきています。ただ,どこの範囲にするかということが難しいので,それに対して,皆さんの御意見を頂ければと思って,これを特出しさせていただいています。
 例えば日本に帰ってくることが決まっていて,そのポジションが例えば向こうはポスドクだったけれど,こちらで教授で帰ってこられるという方だったら,何もポスドクだったからといって除外する必要もさらさらないという考え方もできると思います。なので,どういう条件だったらいいのかという辺りを少し皆さんから御意見を頂ければと思いました。
【西尾部会長】
 分かりました。ここに書いてありますように,本種目の趣旨に合致しているものであれば,ポストドクターという身分であってもということで応募を認めることが適当ではないか,についていろいろ御議論いただいております。その判断をするときのお考えとして,今,小安主査は一つの例をおっしゃられて,海外ではポスドクであったとしても,帰国後のポストが決まっていることを前提として認めるのが一つではないかということですけれども。
 竹沢先生,そこら辺どうですか。
【竹沢委員】
 例えばテニュアつきのポストであれば,それがどんな職階であろうといいんじゃないかなと思うんですけれども。
【西尾部会長】
 それは国内に帰ってくるときにテニュアつきのポジションとして帰るということですね。
【竹沢委員】
 はい。
【西尾部会長】
 なるほど。それは一つの考え方ですね。テニュアということの本質をきっちりと捉えれば,今おっしゃったことは一つの考え方にはなりますけれども。
 中村先生,どうぞ。
【中村委員】
 これは内容がよく理解できていないので,まず小安先生に質問なんですけれども,これは上限5,000万円でしたっけ。これは金額で分別しないで全員1クラスで応募するものなんですか。つまり,申請額は人によって大きく違っても良いというものですか。
【西尾部会長】
 小安主査,いかがですか。
【小安委員】
 上限が3年以内で,5,000万が上限ということになっています。
【中村委員】
 そうすると,これは実は科研費の仕組み全体との整合性にかかわる問題を含んでいると思うんですね。私は常々,基盤(C),(B),(A)という,金額で分けるというのはおかしくて,全部一本で,私は500万円欲しい,私は1,000万円欲しいということで申請して審査するのが,研究費申請の本来の姿だと思っています。金額で分けるというのは,研究という立場から見るとそもそも筋道が立っていないので,金額によるクラス分けをするのは事務的な論理なのかと想像します。
 ですから,今回,5,000万円1本というのは私は納得するところがあります。一方で,普段科研費をA,B,Cと分ける論理があるということを考えると,これは5,000万円の基盤(A)相当と考えざるを得ない。それならば金額に見合った研究計画を出してくださいね,と書いておければ,ポスドクが出そうと,教授が出そうと,問題ないんじゃないかと思います。このあたりをしっかりしておかないと,ポスドクから帰国する人が,僕は500万円が欲しいんだというようなことで来て,500万円の人と5,000万円の人を横並びで審査するということになります。これだと今の日本の科研費の考え方の枠組みではうまく審査できないのではないでしょうか。
 科研費の今のクラス分けの考え方に基づけば,やはり基盤(A)程度の人が対象であるということ。それだから,教授相当とか何か,そういう外形的な基準が必要なようにも想像するんですけど,いかがでしょうか。
【小安委員】
 この話を中村さんとし出すと終わらなくなるというような気がします。非常に近い考え方を持っているので。そうすると,科研費全部,何か違うみたいな話になっていくのでやめておきます。そういうこともあったので,ここでもう一つ書かせていただいたのは,例えばポスドクであっても,非常にしっかりした研究費,例えば米国であればNIHのR01のようなもの,アメリカでは,外国人ポスドクであってもR01を取ることは可能です。そういうものを取っている人だったら,実際それだけの研究計画を立てる能力があって,実績があると評価されます。例えばそういう方だったら,今,基盤(A)という表現をされましたけれども,これぐらいの研究費のマネジメントはできるだろうというようなことも,一つの考え方としてあると思います。だから,それまでの実績として研究費のマネジメントみたいなこともうまく見ることができるのであれば,何も外国にいたときのポジションの上下で決めなくてもいいのではないかというような議論をさせていただきました。それをどういうふうに,最終的に書くかということに,今いろいろと,皆さんと議論していますので,ここで頂いた御意見をそこに反映したいと思っております。
【中村委員】
 逆に言うと,少し面白い機会なので,研究の遂行能力も含めて審査するというふうにしてみると,ほかの研究費の審査方法についても何か新しいことが勉強できるかもしれないと思いますけど,いかがでしょうか。
【小安委員】
 それは全くそのとおりだと思います。ただ,それをやると,また同じところに戻ってしまうのですが,今,数十件なので,じゃあ,年に2回やっても何ともないよと言っているんですが,これが数百件になったときに,本当に年に2回でやれるかとか,そういう問題が出てきてしまいます。理想的ではないかもしれないのですけれども,件数のことも常に我々は頭に入れなければいけないので,正直なところを申し上げて,悩ましいところです。でも,おっしゃる意味はよく分かります。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございます。
 栗原先生,どうぞ。
【栗原委員】
 私は作業部会でこれに意見を求められたときに,若手の人に広げるなら,帰国発展研究の中に,金額の違う枠組みをもう一つ作るというのも半額とか,1,000万円程度とか,という形もあるかと思ったんですが,制度を複雑にするのが良いのか疑問でしたので,あえてそういう意見は書きませんでした。いろいろ実質的なことを考えるとそういう形はあるのかなとは思いますし,もしポスドクの人に広げるのであれば,何かしら独立性というものを,その人の言葉で語ってもらうということは絶対必要ではないかと思います。
【西尾部会長】
 小安主査,今,いろいろ意見が出ましたけれど,公募の審議の中で,本日出ました意見等を生かしていただけるとありがたく思います。時間のこともございまして,このぐらいにしておきたいんですが,先生,参考になりますでしょうか。
【小安委員】
 はい。持ち帰らせていただきます。ありがとうございました。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,国際共同研究に関しましては,様式等を工夫するということに関しましては,これはもう令和2年度の報告書から対応ということで,今後進めさせていただきます。
 それでは,その他の論点でございまして,応募件数増加への対応,もう一つは大型種目の公募スケジュールの前倒しということがございました。このことに関しまして何か御意見等ございませんでしょうか。
 できましたら,大野先生,城山先生,鍋倉先生,御意見等,もし頂けますとありがたく思います。それ以外の方ももちろんです。いかがでしょうか。
 作業部会からの御提案のとおりでよろしいでしょうか。例えば,審査負担の軽減の観点から,「審査システム改革2018」による効果等の検証等を踏まえて,審査の簡素化をすることについてもよろしいでしょうか。
 山本先生,どうぞ。
【山本委員】
 その件ですけれども,確かに審査負担というのは大きな問題であるというのは認識していますし,これはやはりいろんな制度を設計する上で非常に大事な部分だと思います。一方,それは申請書を見て議論するということが,ある面で研究者の視野を広げたり,新しいアイデアを思いつくということもあります。もちろん盗用とかそういうのではなくてですね。そういうような,研究者,特に若手を育てていくということも審査の中に含まれているということを,もちろん効率化とともにお考えいただければと思っています。
 以上です。
【西尾部会長】
 山本先生,今,非常に重要な観点を御指摘頂きました。若手研究者をもう一方でそういう観点からも育てていくということが大事だと考えます。本当にありがとうございます。
 もう一方の大型種目の公募スケジュールの前倒しということで,学術変革領域研究の移管時期とあわせて,大型種目につきましては,最低1年程度,後ろ倒しにすることを念頭に,新型コロナウイルス感染症の収束状況なども勘案して改めて検討するということにはなっておりますが,公募のスケジュールの前倒しについても何か御意見等ございませんか。
 そうしましたら,応募件数の増加への対応,それから,大型種目の公募スケジュールの前倒しにつきましては,作業部会で考えていただいていることに加えて,今,山本先生からも御指摘いただいた点等を勘案して,今後進めて行きたいと思いますが,よろしいですか。
 では,この件は,御提案どおりに決定したいと思っております。
 最後に,非常に大事なことでございましては,研究費部会における今後のまとめについてということで御提案を頂いております。21ページを見ていただければと思います。これも御提案いただいたこと自身,非常に意義があることだと思います。
 ここを見ていただきながら,更にこういうことも検討していくべきではないかとか,いろいろ御意見等ございましたらお願いいたします。
【小安委員】
 私の方から一言いいですか。
【西尾部会長】
 どうぞ。
【小安委員】
 村田局長,いらっしゃいましたので,先ほどの点を伺ってみようと思います。局長,実は先ほど,この科研費における種目のバランスと将来的に目指す予算規模というところの議論の中で,本来,科研費というのは充足率が100%であるべきではないかという議論がございました。そのときに,政策目標としての30%の採択率ということがあるので,そのバランスで常に充足率が決まってきているということを申し上げました。では,これがあるべき姿はどうかといったときに,充足率が今,大体7割ぐらいなのですが,75%だとどのぐらい予算が要るとかいうような数字をはじき出しています。例えばこれを100%になったらこれだけの額が要るというのは,これは算数ですので,すぐ出るのですが,これがあるべきか姿ということを書いてよろしいかどうかというのが議論になりました。そこで局長にその御意見を伺ってみようということになったものですから,今,突然で申し訳ありませんが,御意見を頂ければと思って伺いました。
【西尾部会長】
 村田局長,よろしくお願いいたします。
【村田研究振興局長】
 申し訳ございません。今日はどうしても外せない所用があって,ずっと中座させていただきまして失礼いたしました。いきなり非常に難しい問題について御質問があり,今考えているところなんですが。ただ,ひとつ申し上げられるのは,シミュレーションとして,70%ならこう,75%というのはこう,100%ならこうというシミュレーション自体は,これはもう数字の問題ですから,別にそれをお出しいただくということは,問題があるとは思いません。数字のシミュレーションというか。ただ,おっしゃるとおり,それが本当に望ましい姿なのか。そこは正直言って,我々も非常に難しいところは,確かに充足率を,研究者の方を思えば,上げるにこしたことはないと,上げたいと。ただ,一方では,結局限られた全体の予算の中で充足率を上げるということは,逆に採択率が下がってしまう。
 一方で,科研費が若手の方にとっては,これは先生方のお力添えもあって,採択率が上がっている。若手研究も相当,40%までいっているということで,そういったことで頑張れば科研費に手が届くということは,若手の研究者,中堅,それ以上の研究者にとっても励みになるということを考えると,やっぱり採択率というところも犠牲にはできない。これはもう当たり前じゃないかと言われてしまいますけど,そうすると,その間でどこに最適を求めるかということだと思いまして。私も正直言って,先生方にお聞きしたかったのは,我々としても採択率を考えるんですけれども,一方で充足率の問題はどうなのかと。つまり,これがどこまで下がったら研究は困難となる,そのぐらいだったらもう研究費はもらわない方がいいということなのか,それとも,こういう状況であれば,ある程度そういう科研費など公的な研究費をもらえるのであれば,若干その充足率は少し我慢するかもしれないけど,その辺りの感覚と申しましょうか,それはどんな感じで考えればよろしいんでしょうか。
【小安委員】
 これは色々な意見がありますので,私が代表して答えていいかどうか分からないのですけれども,現在の現場であれば,充足率が少々低くても,科研費を獲得できる方がいいと思われておりますが,先ほど出たもう一つの意見は,若手が40%というのは,これは伸びているという見方もできますが,逆に甘やかし過ぎているのではないかという意見もあります。採択率を3割ぐらいにして,その分,充足率を上げた方がもしかしたら現場は喜ぶかもしれない。だから,先ほど局長がおっしゃられたように,正にバランスの問題なのですが,そこで何が正解かという辺りを皆さんと議論して見つけていくのが私たちの役目かなと感じています。
【西尾部会長】
 城山先生,御意見頂けますでしょうか。どうぞ。
【城山委員】
 城山です。どうもありがとうございます。あるべき規模として,大きい額を書いていただくことは意味はあるのかもしれないなと思いつつ,実質的に大事になるのは,小安先生が度々答えられようとしている,要するに,トレードオフがあったときに,我々がどの辺りをバランスと考えるかという,ここの相場観が実は問われているんだろうと思います。
 そういう意味で言うと,度々言われているように,挑戦とか萌芽とか,そういうのはむしろ充足率をより上げて,ただし,採択率はむしろ下がってもいいんだということを言い,逆に他のものは,充足率は7割で,採択率を3割近くでやっているというのは,これは多分,我々の選択なんだと思うんですね。だから,そういう意味で言うと,なぜそういう選択をするのかというロジックをちゃんと考えておくということがすごく大事なのではないかなと思います。
 それからもう一つは,逆にこれはすごく基礎的なことなのでお伺いしていいのかどうか分からないんですが,3割という数字がどこから出てきたのかというのが,すごく関心のあるところです。逆に言うと,例えば,今日議論している多くの話も,科研費が一定程度増えてくるのはいいんだけども,いわゆるデュアルサポートの本来,別のところが担うべき機能をかなり侵食するのは望ましくないというのが基本的なトーンだと思うんですね。そういう意味で言うと,採択率は,逆に言うとかなり上げ過ぎないということも,やっぱりこれはあくまで競争的資金で,ボトムアップではあるんだけども,ある意味では優れた研究を支援していくんですよと。日常経費を支援するものじゃないんですよということを言おうと思ったら,逆に言うと採択率を上げ過ぎないことも逆に大事ですね。そういう観点では,直感的に言うと,3割というのはすごく賢い数字の立て方だなという気はするんですけども,そうすると,では,さっきから出ている若手の場合の4割というのは若干甘やかし過ぎなんじゃないかとなるかと思うんですが,そういう意味で言うと,3割という数字がどう出てきたのかと,我々はそれをどう正当化するかというのが一番基本的な点なんですが,大事な点なのかなという感じがいたしました。
 以上です。
【西尾部会長】
  非常に重要な観点かと思います。3割の採択率が妥当だということを,時間が押していますので,簡潔にお示しいただける方はいらっしゃいますでしょうか。
 私の分野ですと,今,論文の採択率が10%切るものがあります。さらに,1桁台の採択率の場合もあります。ところが,そういう採択率になったときには,全員が良い点数をつけないとなかなか採択されません。非常に斬新なアイデアの論文の場合,斬新さ故にきっちりと理解できなくて,良い点数をつけない審査員が一人でもいると採択されません。科研費の対象としては,学術研究ですので,新たな地平を切り開いていく研究であり,斬新で創造性に富む研究を重要視すべきです。そのときに,例えば審査員が3人いて,2人は申請内容を理解できるが,1人はなかなか分かってくれなくて,ネガティブな評点をつけたとします。ですけれども,採択率が30%だったら,それは採択される可能性があるという意味では,この採択率は意義があると思っている次第です。つまり,斬新性に非常に富む申請を取り逃さない,一つの指標かと考えています。
 この議論をもう少し深めていければとは思いますけれども,時間が来ていまして,今日は,中村先生から,その他の意見として,Science Citation Indexを研究者や機関等の評価指標とすることについて,中国でも懸念が示されているということについて,残った時間はもう5分切ってしまっているんですが,中村先生から簡潔に御紹介いただきます。今後の議論にも役立つと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 

(2)その他

【中村委員】
 分かりました。資料ナンバー2ですね。単科大学及び総合大学におけるSCI論文に関する指標の使用規制と,正しい評価の方向性。これは中国の教育省,科技部が2月20日に出したものです。『Nature』も取り上げたそうですけど,概略だけお話しします。
 1ページ目を見てください。2018年の全国教育大会,中国科学院と中国工程院の懸念表明以来,数値を用いた学術の評価の在り方が問題視されてきたと,1ページ目に書いてあります。我々もよく知っているような75の国立大学に対して,今年の7月31日までに数値評価偏重主義の具体的改善策を示せという指令があったわけです。
 これはどういう結果が出るか,大変に面白い。これが今現在進行形の動きだからです。1ページ目からずっと見ていただくと,頻繁にScience Citation Indexの使い方に問題があると書いてあります。これは研究費だけじゃなくて,今,2ページの項目2番,下の方を見ていますけども,SCIの論文の指標は,学術評価,専門職評価,業績評価,才能評価,科目評価,リソースの割当て,学校ランキングなど,幅広く使われてきたと書いてあります。これはよくないのでやめなさいということが書いてあります。
 次の3ページ目の中頃,項目5の一番上のところです。「さまざまな評価活動を標準化する。プロジェクト評価,人材評価,組織評価の項目を大幅に削減する」と書いてあります。その下に,審査対象を合理的にグループ化して,適切な専門家を選択し,ワークロードを適切にして,専門家が十分な審査時間を確保するようにせよという指令です。
 最後の項目10,最後の4ページです。これまでは中国というのは,大学をみんなランキングしてきて,その情報を公開してきたんですけども,今後はSCI論文に関する指標やEssential Science Indicators,ESI指標のランキングを公表しないものとする。SCI論文関係の指標は,研究者,専門分野及び大学の評価指標ともしないと言明しています。
 中国は,御存じのように,1980年代から文革からの国力回復のために様々な施策を打ってきました。大量のお金を投じて,その都度評価をしてきました。その中で,評価が厳し過ぎて学術が曲がってきてしまった,と書いてあるんですね。正しい姿に戻すために大きな改革を自主的にやりなさい,大学側が自主的にやれという指令が出たということですね。
 皆さん,余りよく御存じないかもしれませんけども,中国では大学,研究所,研究者の評価を非常に厳密に,長年やってきています。私は日本よりも頻繁に,厳密に評価をやってきたと思います。それで今回,数値評価をやめましょう,中身で評価しましょうという大転換に関する具体的指示が出たわけです。中国のお国柄ですから,これは今後実際に行われると思います。
 これが実効的に行われてくるとますます中国の学術は発展すると思われますし,我々としても他山の石ということで,中国の動向に注目して,参考にしていったらいいと思っております。
 以上です。
【西尾部会長】
 中村先生,本当に貴重な情報を提供いただきまして,どうもありがとうございました。私もこのニュースを知ったときには,日本にとっては今まで以上に,中国が学術上の脅威の存在になっていくことを強く実感しました。
 あとはもう一件の報告が事務局からございますが,参考資料の3を簡単に紹介してください。よろしくお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】
 それでは,参考資料3を御覧いただければと思います。令和2年度の科研費の審査結果の速報値でございます。基盤(A),それから,基盤(B)につきましては,それぞれ約100件,800件,応募数が増えておりまして,その影響で採択率が少し減っておりますけれども,応募数が増えたのは重複制限の緩和の影響もあるのかなと思っております。
 それから,基盤(C),若手につきましては,それぞれ800件強ずつ,応募は減っておりますけれども,採択率で御覧いただくと,昨年度より少し増えている。応募が減っているのは昨年度の採択が多かったことも影響しているのではないかと思っております。
 詳細な分析はこれからになりますけれども,速報値の御報告は以上でございます。
【西尾部会長】
 中塚さん,どうもありがとうございました。それでは,今日予定しておりました全ての議題は終わりました。
 小安主査,返す返すも作業部会でいろいろ精力的に議論いただきまして,今日,こういう形で皆様とディスカッションができる状態に持ってきていただきましたことに,重ねてお礼申し上げます。どうもありがとうございます。また,今日,いろいろ意見が出ましたことも含めまして,継続的に御議論いただく点もございますが,どうか重ねてお願い申し上げます。
【小安委員】
 また宿題を持って帰らせていただきます。先ほどあった22ページを基に報告書にさせていただきます。21ページ,22ページを使わせていただきますのでよろしくお願いします。
【西尾部会長】
 分かりました。それと,今後の議論の仕方についても御報告,御提案を頂きました。それらをベースに今後の議論をしてまいりたいと思いますが,次回の研究費部会は,6月30日を予定いたしております。また,本日の会議録につきましては,皆様方に御確認いただいた上,公表してまいりたいと思っております。
 6月30日の会議の方法等につきましては,改めて連絡をさせていただきます。本日は貴重な御意見を多々頂きまして,どうもありがとうございました。心よりお礼申し上げます。これにて本日の会議,終了いたします。ありがとうございました。

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