第10期研究費部会(第8回) 議事録

1.日時

令和2年1月29日(水曜日)9時00分~11時30分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 関連事業の有識者等との意見交換(大学における基盤的経費(2))
  2. その他

4.出席者

委員

甲斐委員,栗原委員,白波瀬委員,西尾委員,井関委員,射場委員,大野委員,城山委員,竹山委員,中村委員,山本委員,中野委員

文部科学省

村田研究振興局長,増子大臣官房審議官,原振興企画課長,梶山学術研究助成課長,岡本学術研究助成課企画室長,中塚学術研究助成課企画室室長補佐,生田国立大学法人支援課視学官,片柳私学部私学助成課長補佐,他関係官

オブザーバー

笠原早稲田大学副総長,髙橋新潟大学長,徳久千葉大学長,岸本日本学術振興会学術システム研究センター副所長,西村日本学術振興会学術システム研究センター副所長,林日本学術振興会研究事業部研究助成企画課長,磯谷科学技術・学術政策研究所長

5.議事録

【西尾部会長】
 皆さん,おはようございます。時間となりましたので,ただいまより第10期第8回の研究費部会を開催いたします。
 前回に引き続き,科研費を中心とした学術研究を支える研究費制度の総合的観点からの検討を進めるため,関連事業の現状を伺い,意見交換を行います。
 本日は,総合的観点の中で特に大学における基盤的経費に関する有識者の方々に御出席をいただいておりますので,事務局から紹介をお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】
 本日,大学における基盤的経費に関する有識者といたしまして,千葉大学の徳久剛史学長,新潟大学から髙橋姿学長,早稲田大学から笠原博徳副総長。また,大学における基盤的経費に関する担当課から,高等教育局国立大学法人支援課,生田知子視学官。
【生田国立大学法人支援課視学官】
 生田でございます。よろしくお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】
 高等教育局私学部私学助成課,片柳成彬課長補佐,
【片柳私学助成課課長補佐】
 片柳です。よろしくお願いします。
【中塚企画室長補佐】
 の皆様に御出席を頂いております。
【西尾部会長】
 本日は大変お世話になりますが,どうかよろしくお願いいたします。
 次に,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】
 本部会は,ペーパーレス会議として実施をさせていただきますので,資料につきましては基本的に机上のタブレット端末で御参照いただければと思います。
 また,一部机上にも配付資料を置かせていただいておりますけれども,個々の資料名の読み上げ等いたしませんが,資料の欠落等がございます場合や,タブレット端末の操作方法について御不明な点があります場合には,事務局までお申し付けください。
 以上でございます。
 

(1)関連事業の有識者等との意見交換(大学における基盤的経費(2))

【西尾部会長】
 それでは,1番目の関連事業の有識者等との意見交換ということで,最初に意見交換の進め方及び科研費の現状等について,事務局から説明をお願いいたします。
【岡本企画室長】
 それでは,資料の説明をさせていただきます。
 まず,資料1を御覧いただければと思います。こちらが本日の有識者等との意見交換の進め方についてでございます。
 まず,時間配分でございますが,最初に本日3名の有識者の方に来ていただいておりますので,それぞれ10分ずつ各大学等における状況等について御説明などをお願いしたいと思います。また,その後,意見交換90分を予定しております。
 意見交換時の論点の例ということで,3点挙げさせていただいております。学術の振興のために大学が果たす役割と取組,大学の立場から科研費に期待すること,科研費の立場から大学の措置する基盤的経費に期待することを挙げさせていただいております。
 意見交換時の留意点ということで,3点ほどお願いしたい点でございます。一つ目が,全体を俯瞰した議論を行いたいと考えておりますので,現行制度ではできないから他事業に期待するということではなくて,現行では難しい点についても,全体としてあるべきファンディングの姿にするために,自制度として及び科研費としてどういう検討をすべきか,また,関係事業でどういう協力ができるかという点。2つ目が,事業のすみ分けよりも,全体として多様な学術を支えるためにどうしたらよいかという点。最後が,分野の違いを考慮すべき点ということで,国際共著論文,他分野・他事業との連携等にも御留意をいただきたいと思っております。
 以上が意見交換の進め方でございます。
 次に資料2を御覧いただければと思います。科研費事業につきまして,本日の意見交換に関して,特に関連のあるところを御説明させていただきます。
 3ページ目をお開きいただければと思います。3ページ目には前期研究費部会における審議のまとめの抜粋がございます。今後の検討課題として4点ほどありますが,本日の意見交換につきましては,(4)の科研費を中心とした学術研究を支える研究費制度の総合的観点からの検討ということで,これに関連して行っているものでございます。
 学術研究のさらなる振興を図るためには,大学改革推進の方向性やその他の競争的資金の状況等を踏まえながら,科研費を中心とした学術研究を支える研究費の充実や制度全体の不断の見直しを図ることが重要であること。
 その際,研究者に基盤的経費が適切に措置されることや,特に若手研究者について安定かつ自律的なポストが確保され,自由に研究ができる環境が整備されることにより,科研費の効果がより一層高められることを強く認識する必要があること。
 そのため,学術研究をめぐる環境が変化する中で,科研費が研究費全体の中で果たすべき役割やそれを踏まえた制度の改善点について,その他の審議会・部会等と連携し,学術研究を支える研究費等の在り方に関連する幅広い議論を踏まえながら,総合的観点から検討していく必要があるということでございます。
 次のページに,今後の科研費制度の論点の例ということで幾つか挙げさせていただいております。特に本日の意見交換の関連では,「1.他事業との意見交換を踏まえて議論」のマル2「若手研究者支援の在り方について」の一つ目のところ,「「若手研究」における独立基盤形成支援(試行)」についてというものがございます。こちら,科研費において平成30年度から行っているものでございますけれども,若手研究に採択された方を対象といたしまして,研究機関においても研究基盤整備のための一定の経費の措置をしていただくことプラス科研費で追加の支援をするという事業を行っているところでございます。3回目の試行が終了しますので,次にどうしていくかということが科研費の関係では一つ議論すべきこととしてございます。
 次,かなり進んでいただきますが,13ページを御覧いただければと思います。13ページにありますのは,「個人研究費等の実態について<アンケート結果の骨子>」でございます。こちらは平成28年7月に実施したものでございますけれども,実際にどれぐらい個人研究費が研究者の方に配分されているかということで,ポイントになる点をまとめております。一つ目が,年間の個人研究費は国公私大の別によらず,50万円未満が約6割,100万円未満が約8割ということで,以前と比べますとかなり減ってきているということ。
 2つ目は,10年前と比較すると,個人研究費が減少した者は4割超であるということ。
 最後が,科研費などのボトムアップ型研究費の予算増や採択率向上を求める声が強いということでございます。
次に23ページを御覧いただければと思います。23ページには,科研費の令和2年度の予算案についてのポンチ絵がございますけれども,右側の三角形の種目の図の下のところを御覧ください。研究者の挑戦を促すため,所属機関による挑戦の後押しということを書かせていただいております。
 次のページを御覧いただきますと,基盤研究(A)・(B)・(C)における全体の応募・採択状況,また,若手の方の状況がございますが,その下に3大学の例を示させていただいております。研究者の挑戦を支援する機関における取組例ということで,このような取組をしていただいているということで,デュアルサポートが非常に重要でございますので,基盤的経費の一つの支援の仕方としてこういうものもあるのではないかということでございます。
以上が資料2でございます。
 次に,資料3-1,3-2につきましては,前回の研究費部会におきまして既に説明をさせていただいているものでございます。国立大学と私立大学の関係で,予算の状況などについて御報告させていただいている資料ですので,御参照いただければと思います。
 それと,机上配付している資料が2点ほどございます。一つがA3の資料でございます。こちらは前回と同様,科研費に関する各種データなどをまとめた資料ということでございますので,適宜御参照いただければと思います。
それともう1点,A4横の資料でございますが,前回の研究費部会におきまして,井関委員から,本当に研究をしたいという人が若い人の中にどれくらいいるのかという御質問がございました。これについて,科学技術・学術政策研究所で幾つか関連する調査がほかでも行われていましたので,研究所での調査,また,それ以外の調査なども含めて資料としてまとめていただきましたので,お配りさせていただきます。資料の細かい説明については省略させていただきますので,後ほど御確認いただければと思っております。
 資料の説明は以上になります。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。ここまでの説明につきまして,御質問等はありますでしょうか。
岡本室長より説明いただいた資料2の13ページが,今日の基盤的経費の議論に相当関係してきます。基盤的な経費である運営費交付金,私学助成金等々で配分されている研究者個人への研究費で,10万円未満の方が14%。10万円から30万円が21%という状況です。もし,科研費等が採択されないとすると,実験系等の研究はほぼ無理であるという状況で,しかも科研費の採択率は30%程度です。
 こういう現状をこの部会のデータとして,これは全国の大学にアンケートさせていただいて算出したものですが,それを基に科研費の増額の必要性等を訴えてきた経緯もございます。このようなデータが今日の議論では重要になると考えております。
御意見等よろしいですか。
 それでは,本日の意見交換では,大学における基盤的経費の活用状況や研究支援の取組などについて,お二人の学長から御紹介いただいたあと,デュアルサポートの現状を踏まえた科研費の在り方や大学における効果的支援策等について議論を深めたいと考えております。
 それではまず,千葉大学,徳久学長より御説明をお願いいたします。資料3-3に基づきまして,10分程度ということでお願いできればと思います。よろしくお願いします。短い時間で恐縮です。
【徳久千葉大学長】
 千葉大学の徳久です。早速,資料3-3に沿って説明させていただきます。「千葉大学の現状・取組」と題しまして発表いたします。
 2枚目のスライドを御覧ください。千葉大学の概要をお示ししました。千葉大学は,10学部,13大学院,そして学生数が約1万4,000名,教職員が約3,400名の総合大学となっております。
 その次のスライドを御覧ください。2018年,昨年度の財務状況を,収入ベースですが,法人化初年度の2004年と比較したものになっております。御覧のように収益が増加いたしまして,この間に約250億の増収になっております。でも,この5分の4は附属病院の収入であり,全て診療経費として消えていきます。
 また,運営交付金が1.6%ずつ減額され続けてきていまして,この減額は基幹分と言われる主に人件費に相当する部分でありまして,そのため,私たちは承継教員が1,258名から1,053名,約200名減になっております。
 しかし,教育研究を維持するために,外部資金その他で任期付きの教員を雇用いたしまして,特任教員として約250名雇用しているということになります。そのため,2004年の教員数からすると,既に常勤教員としては1,300名で50名増えているという状況です。この1,300名で教育研究を行っているということが実情です。
 その次のスライドを御覧ください。支出構造の変化を示しております。この表では,診療経費,人件費を全て除いてあります。御覧いただくと分かるように,紫でお示しいたしました自由な発想による多様な研究活動に支出できる研究経費が減少傾向になっております。その代わりといたしまして,目的型の研究に支出される共同研究や受託研究経費が増大傾向となっております。
先ほど個人研究のお金が少なくなっているというお話がありましたが,千葉大におきましても,応用研究を生み出す基となる基盤研究等に支出できる自由に使える資金がかなり底をついてきているということになってきております。
 その次のスライドをお願いいたします。千葉大学は,トリプルピークチャレンジと名付けたビジョンに基づきまして,分野融合型の教育研究を推進してきております。具体的には,10学部を大きく3つのグループに分けて,教育面では大学院を融合型にした医学薬学,融合理工学府等を設置し,研究面ではグローバル・プロミネント研究基幹を設置してサポートしてきています。
 その次のスライドを御覧ください。グローバル・プロミネント研究基幹では,大学の研究IRにより,トップダウンで戦略的重点研究6課題,赤字で示してある6課題と,ボトムアップで各部局からリーディング研究と称して提案していただき,国内外の有識者の参加の下,評価委員会を設置して,課題をセレクションしてきております。現在,21の研究課題がサポートを受けております。そして,学長裁量経費,スペース,人材等のサポートをしております。この中から,最近になりまして,特別推進研究並びに基盤研究(S)等の大型科研費を獲得する研究者が出てきております。
 その次のスライド。個人研究に対しまして,私たちは研究費獲得促進プログラムということを行っております。このプログラムの対象となるのは,個人研究は科研費を取ってやっていただくということが私たちのポリシーですので,主に科研費の不採択者を対象としてサポートをしております。つい先頃までは,学長裁量から約5,000万円程度出していましたが,今年になりまして資金が相当底をつきまして,約2,500万円と金額的には減ってきております。
 その次のスライドを御覧ください。科研費の獲得状況ですが,第1期から第3期に向けて,着実に採択件数並びに獲得金額とも増加させてきております。特に新規採択率は全国平均から6~8ポイント高いところを示しております。そして,間接経費が措置されたということで,大学本部といたしましても,経営上,科研費が非常に重要な収入源となってきております。
その次のスライド。さらに,共同研究・受託研究にも間接経費が付くことから,経営上,この2つの研究費も非常に重要になってきております。このスライドでお示しいたしましたのは,亥鼻キャンパスにおける生命科学系のグループが,2013年に亥鼻キャンパス高機能化構想というタイトルで,国立大学改革強化推進補助金を頂きました。この補助金を使って,共同研究推進に向けたコーディネーター並びに知的財産専任の教員などを雇用いたしましたところ,御覧のように受託研究費,共同研究費が右肩上がりで急速に増えてまいりました。
 このことから,千葉大学には研究のポテンシャルは十分にあるものの,それを社会とつなぐ役割の方がいなかったために,結局外部資金の獲得には結び付いていなかったということが強く示唆されまして,私たちといたしましても全学レベルでこのようなことに取り組みたいと考えております。
 その次のスライド。共同研究・受託研究の実績をお示しいたしました。法人化の第1期から第3期に向けて,右肩上がりで急速に伸びてきております。特に第2期から第3期に向けては,亥鼻キャンパス高機能化構想の効果が大きく出てきたと思います。
さらに千葉大学では,間接経費の重要性を鑑みまして,2016年からいち早く共同研究における間接経費を原則30%とするという方針を教員の皆さんにお伝えして取り組んでまいりました。その結果,間接経費が御覧のようにかなり増えてきております。
しかし,ここ一,二年を見ますと,既に件数,金額ともに何らかプラトーに達してきているということで,さらなる掘り起こしが必要であると考えまして,その次のスライドを御覧ください。イノベーション・マネジメント・オフィスというアイデアで,亥鼻キャンパス高機能化構想で行ったことを,その内容のほぼ拡大バージョンを全学レベルで「国立大学イノベーション創出環境強化事業」に提案いたしまして,獲得することができました。
 その資金を現在頂きまして,プレアワード,ポストアワードの人材並びに知的財産仙人の人材をかなり増やしまして,千葉大学は3キャンパスに分かれておりますので,そこに配置して,積極的に共同研究・受託研究の活性化に臨んでおります。
 さらに私たちは,下に書いてあります研究基盤強化部門を作りまして,頂いた間接経費をプールいたしまして,ここで若手研究者を雇用したり,さらに個人研究にいろいろなサポートをしたりするなど,組織的に取り組んでいこうと考えております。
 最後のスライドになりますが,個人研究におきましては研究費獲得推進プログラム,分野融合型の研究の推進に関しましてはグローバル・プロミネント研究基幹,そして共同研究・受託研究におきましてはイノベーション・マネジメント・オフィスという組織を作りまして,積極的に研究力強化を目指しているところであります。
 御清聴ありがとうございました。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。千葉大学では先進的な試みがたくさんなされておりまして,国からの基盤経費が非常に厳しい中で,産業界との様々な共同研究等を進めながら,何とか学術研究を守っていくということに御尽力をなされている姿が,今の御説明で我々もよく理解できたのではないかと思っております。
 ここで質問等いただけばいいんですけれども,続きまして,新潟大学の髙橋学長から資料3-4,早稲田大学の笠原副総長に資料3-5に基づいて御説明いただいたあと,議論に移りたいと思います。よろしくお願いいたします。
【髙橋新潟大学長】
 それでは,新潟大学の髙橋から,「新潟大学におけるデュアルサポートシステムの現状」ということでお話しさせていただきます。
 まず2枚目を御覧いただきたいと思います。新潟大学も10学部,約1万3,000人の大学生・大学院生の中で,特任教員を含んで1,487人が現在,去年の5月1日ですけど,教員として配置されておりまして,どこの大学も同様でございますけど,教員への基盤的経費配分,それからもう一つは,戦略的配分ということで,学長裁量経費から若手や研究環境の整備,それから特色ある研究プロジェクトへの支援などを行っているところでございます。
 教員への基盤的経費配分は,先ほどのデータにもありますように,本学も本当に残念ながら余り十分な状態ではないということで,研究者の皆さんに苦労を掛けている。というわけで,外部資金獲得につながるということが大学の研究力推進施策の必須要因であると考えております。
 次をお願いいたします。本学の問題点ですけど,科学研究費の採択件数は全国機関の20位以内にあるんですけど,なぜか基盤の(C)が半数を占めまして,1課題当たりの配分額が非常に少ないということがデータ分析で分かってまいりました。
ということは,まず(B)以上の項目への積極的な応募を推奨するという方針に入りまして,括弧にありますように,科学研究費獲得の総合行動計画を立てまして,部局ごとに(B)が占める割合などの目標値を設定して,それから研究担当のURAが13部局長全てを訪問して,所属教員の応募状況,採択状況,目標達成状況等,要するにハッパをかけるということをやってまいりました。
それから,基盤(B)以上の挑戦的研究の採択課題への研究費に対しては,ステップアップを支援するセーフティネット機能を用意しました。
 それから,URAにはいろいろな情報,それから研究計画書のチェック等,具体的な指導をお願いしております。
次,お願いいたします。その結果,(B)が平成26年,27年までは55件程度だったんですけど,採択と継続合わせて100件を超えるような,約2倍になるというようなことが起こりました。今後は(B)からさらに上のランクに応募していただくように取り組んでいるところでございます。
 次,お願いいたします。それから,戦略的な補助事業への申請ということで,国などが実施する補助事業の支援により加速したいということと,教員の過度な負担を避けるという意味から,学長直下にある企画戦略会議において,本当に申請の初期,まだ具体的には見えないようなときから調査を行って,戦略的に検討し,挑戦するものは挑戦する,それから本学の今の実情に合わないものはすっぱり諦めるというか,やめるということで,URA等の用意してくれたデータに基づきまして,学長,理事,副学長,学系長,事務部長等,担当理事を決めて,申請の検討を行うということを行ってまいりました。
 それから人件費,本学は2年前から人件費に関しては,一時有名になりました60人規模で教員をカットするというヤフーニュースに挙がったものを含めて,それからその間に検討して,ポイント制,ポストではなくポイントで人件費を配分すると。そして各部局では自由かつ戦略的に人事を行っていただきたいということで,それからポイントは毎年2%ずつ,学長裁量ポイントとして供出してもらって,そして全学的な観点からの機能強化に資する取組に再配分すると。そこにありますように,女性とか若手とか外国人,そういうものに対してはインセンティブを付与するということで,特に女性職員,それから女性管理職の目標値がなかなか進まないという現状の中で,こういういろいろなアワードとか30% CLUB JAPANとかに参加して,職員の意識を高めるということをやってまいりました。
 次,お願いいたします。それから,企業等の外部資金の受け入れでございますけど,これもなかなか大変だったんですが,私自身が学長になってから,地元の経済同友会や商工会議所等の会合に積極的に参加し,いわゆるトップセールスで,その都度,県内のトップ企業に直に訪問してもらって,いろいろな受託研究・共同研究の可能性について問い掛けてまいりました。その結果,共同研究実績値は過去5年で2.5倍まで伸びてきたということでございます。
 特にこの中身に関して,今までは個人と個人の共同研究が比較的多かったんですけど,大きく伸びた理由にはやっぱり組織対組織の共同研究の実態がありまして,件数もさることながら,一つ一つの単価が上がったという実感がございます。
 それから次のページ,8枚目になりますけど,これからさらにやろうとしている,これは今,アンダーコンストラクション,工事中なんですけど,新潟市内にあるキャンパス,医学部,歯学部がある方のキャンパスなんですけど,そちらの一部を大幅に改修しまして,そこにありますように3階,4階をオープンイノベーションセンターと称して,レンタルラボという扱いで企業等と共同研究を行うスペースにしていこうと。それで既に,まだ工事中ではありますけど,幾つかの企業が手を挙げて,是非我々の企業,入りたいというのが非常に順調に集まっているという状況でございます。これがこの後どのように発展するかはかなり大きな課題になりますけど,頑張っていきたいと思っております。
 それから,課題・要望も少し述べさせていただきますが,外部資金獲得に研究者の負担が非常に多いという,これは本学だけの話じゃないんですけど,そのための中長期的な研究計画が非常に立てづらいというのが多くの研究者から訴えられてくるところでございます。
 それから,若手の研究者優遇ですけど,若手研究者はいろいろ優遇されてきているんですけど,その実際の若手を増やすのがなかなか難しい。いろいろな努力をしているんですけど,39歳以下の教員が20%程度でありまして,若手人材が減少傾向なので,せっかくのあれが活用できないというのは,我々のつらいところがございます。
 それから,これもほかの大学も皆さんやってらっしゃるようですけど,科学研究費における惜敗応援制度というのがありまして,要するに不採択でもA評価を受けたものに対しては,継続するための惜敗としての支援をして,研究の継続性を担保しようという取組を行っております。
 以上であります。ありがとうございました。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。科研費に関して,学内からより大規模な申請をしていくということに対して様々な工夫をなさっている点,また,徳久先生のお話と同様に,外部資金獲得のために,産業界との連携をどのようにとっていくかということについても,いろいろ参考になるお話をいただきました。
 それでは,国立大学法人関係はここまでで,次に,早稲田大学の笠原副総長よりの御説明を,資料3-5に基づき,お願いいたします。
【笠原早稲田大学副総長】
 ありがとうございます。早稲田大学副総長の笠原でございます。私は2018年11月より研究推進,情報化推進担当の副総長に就任しております。
 早稲田大学は2018年から新理事会になりまして,総長の田中愛治が国際政治学会の会長を経験したこともあり,「世界で輝くWASEDA」という目標を立てまして,理事会一同,教職員一同,一緒に頑張っております。
 研究部門では世界の一流大学に追い付きなさいというのが至上命題になっておりまして,総長の考え方といたしましては,アメリカの大学がヨーロッパの大学に追い付くのに,戦略を立てて40年掛かった。早稲田も何もしなかったら変わらないので,20年掛かってもアメリカの一流大学に追い付けるように頑張ろうということで,いろいろな策を練っております。
 私も今までずっと学会活動,この10年ぐらいIEEEコンピュータソサエティの理事および会長を行いまして,大学の役職に就いておりませんでしたので,我々が置かれた状態をちゃんと見ていこうということで,調べ出しました。
 スライド2番を御覧になっていただきたいと思います。先生方は皆様よく御存じのことだと思いますが,学生1人当たりの公財政支出ということでは,日本は全体としてはポルトガルとラトビアの間ぐらい。国立大学の皆様は学生1人当たり202万円ですので,世界でもトップレベルです。それに対して私立大学は1人当たり16万円ということで,このリストだと一番右側にチリがありますけれど,それよりももっと下です。非常に苦しい状態の中で,私立大学は,特に早稲田は世界を目指しましょうということなので,いろいろな策を練らなければいけないという状態になっています。
 次のスライド3番を御覧になっていただきたいと思います。科学技術関係予算の伸びということですけれども,実は去年6月にタイムズ・ハイアー・エデュケーションとQSランキングの社長に会いに行きました。大学の価値は何かということをディスカッションをしにいったのですけれども,最初にタイムズ・ハイアー・エデュケーションの社長に言われたのは,日本の大学のランキングが低いという文句を言いにきたのですかと。なぜ低いか分かりますかと言われまして,彼が説明したのは,GDPに対する日本の教育研究予算というのは先進国の中で一番下だと。アフリカの開発途上国と同じような割合になっているので,そこがランキングに大きく響いていますと言われまして,1発がつんとやられてしまいました。その後,大学の価値の話をしましたら理解してくださって,昨年11月に早稲田も見ていただきまして,こんな強い大学が600番から800番なのはなぜだろうと言って帰っていただいたので,日本の大学の価値というのを認めていただき始めているかと思っております。
 先ほど科学研究予算ということでは,2000年を100といたしましたときの現状までのトレンドがここに書かれておりますけれども,中国は13倍,韓国は5倍,アメリカは1.8倍,日本は1.15倍ということで,なかなか大きくは伸びません。我々は,10倍を目指しているのですが,10倍をすぐに国家予算の中から頂くのは難しいと考えています。
 ただ,研究力を伸ばさなければいけないということで,アメリカとかと比べてみますと,トップジャーナルをやはり10倍ぐらい書いていかなければいけない。あと,先生方に10倍論文書いてくださいと言っても,現状,一生懸命やられて限界まで頑張っていると思いますので,先生方だけに頼るのは難しい。ということは,やはり博士の学生を増やしていかなければいけない。アメリカみたいにNSFのお金を獲得して博士を雇用して多くの論文を書いてという形の循環に持っていかなければいけないと考えています。
スライド4番に,日本とアメリカ,中国の博士の学生数が書かれているのですけれども,5倍とか伸ばしていかなければいけない。特に我々情報系のところだと,スタンフォード大学のヘネシー先生が役職に就く前に博士課程学生が30人ぐらいいました。早稲田と比べると10倍ぐらいいますので,情報系では10倍伸ばさなければいけないと思っています。
 一方,伸ばしていくべき収入を見てみますと,早稲田大学の場合にはほぼ学費に頼っております。63%が学費で,少子化が進んでいきますので,この収入を維持しようとすると学費を上げていかなければいけない。これは非常に難しいと考えています。そうしますと,研究のための原資というのは外部から導入しなければいけないということで,研究の事業化ということを考える必要がございます。研究で外部資金を導入して,それで博士を雇用したり,若手への支援をしていくということを考えなければいけないという状態です。
 スライド6番に行っていただきたいのですけれども,本学の中の研究費,大体年間100億円強ぐらいになっています。一番下の青いところが科研費です。科研費は徐々には伸ばさせていただいておりまして,個人研究費は早稲田の場合,前は40万円配布していたのですけれど,現在は20万円にしまして,科研費あるいは学外の研究費を取っていただきたいということで,その支援をしています。
 若手の科研費に関しましては,名誉教授の皆さんに申請書の書き方を指導していただきましたり,先ほど2大学の先生方からもございましたけれども,もし不採用だった場合でも,A評価だったならば補助をする。大きな研究費を取っていて,1回切れてしまった場合も,継続ができるような支援をするというようなことをやっております。
赤が私学助成などを含めた助成金で,若干減っていっている状態です。緑がJST,NEDOなどの競争的資金で,ここは増えていっております。ただ,緑と赤と青のトータル額は比較的フラットになっていますので,私が与えられた研究費を10倍増やしなさいという目標は,非常に難しい状態です。
 そうしますと,天井がないのは紫の民間からの研究費の導入ということで,ここを頑張らなければいけないと思っております。
次のスライド7番に行っていただきたいのですけれども,今申しましたように,博士課程の学生10倍,研究費10倍,論文10倍というようなことを目指して,博士課程の学生を雇用して増やしていきたい。ただ,博士課程の学生も社会ニーズを理解して産業界に貢献できる人じゃなければいけないということで,後ほど御紹介します早稲田オープンイノベーションエコシステムというものを考えております。
 また,現在いる研究者にさらにやる気を出していただいて研究しやすい環境を作るということで,御支援いただいております次代の中核研究者育成プログラム,こういうものを使いながら進めております。ただ,支援する対象をもう1回考え直そうということで,昨年,私が理事になりましてから,新たな選定方式をとっています。
 あと支援内容も,ただお金をあげればいいということではないということが分かりましたので,各研究者からヒアリングをしまして,ある先生は特許を取るための補助をしてほしい,ある先生はお金は外部から十分獲得するので部屋が欲しいとか,いろいろな要望がありますので,テーラーメード支援を始めております。
 支援の選び方ですけれども,スライド9番に行っていただきたいと思います。昨年から実施しましたのは,従来,科研費を獲得している先生方に集中的に支援をするというやり方だったのですが,より広く考えましょうということで,JSTさん,NEDOさんの研究費,それから学会での活躍,論文,特許の獲得ということも含めて,総合的な評価を行いました。
 全体の若手,40代までの教員,全部を評価し,121名をリストアップしまして,私,理事,それから研究推進部長,副部長などを含めたリーダーシップのメンバーが一緒に評価を行いました。最終的に6人を選びまして面接を行い,そこから3人を選んで支援をしております。テーラーメード支援ですね。
 ただ,この面接をしました段階で,非常に優秀な研究者が多くいるということが分かりましたので,学内の研究費を見直し,この中核研究者をもっと厚く広く支援していくということを決めております。
 スライド10番に行っていただきまして,博士の数を増やして研究費を導入して産業界に貢献して,ということを行うために,リサーチイノベーションセンターを,大学の資金100億円を投入して造りました。ここを中心として,産学連携,ベンチャー育成の場をつくることを目指し,早稲田オープンイノベーションバレー構想というものを開始しております。
 スライド11番に行っていただきたいと思います。このエコシステムですけれども,まず産学連携を行いまして,社会ニーズを理解した博士の学生を雇用しながら育成していく。企業の皆様と一緒に誰も解いたことのない問題を解きまして,それをもって付加価値の高い製品を一緒に開発させていただくと。そこで利益が上がりましたら,それを投資していただきまして,それで博士の学生を雇い,論文を書き,特許を取っていく。そのときに,産学連携の契約サポート,特許の取得までのサポート等も行います。
 私もそうなのですけれども,特許を取りますと会社を作りたくなる。大学から会社を作ってくださいと私は依頼されて作ったのですけれども,そういう形で会社を作っていくのを手伝いましょうと。お金と,一番大事なのはチームです。技術があってもビジネスモデルを構築できないとビジネスは成功しませんので,CEO,それから法律,会計のチームも支援しながら,一緒に手伝っていきたいと考えております。
 そのときに,ベンチャー企業はお金がありませんので,ライセンス料を現金で払うのが難しい場合があります。知財の使用料を払えませんので,株で受け取っています。上場するところまで楽しみにして,上場確率を上げていくということで,卒業生の皆さん,それからいろいろなベンチャーファンド,アクセラレーターの皆さんとも連携しながら,このエコシステムを20年ぐらい回せば,世界の近くまでいけるのではないかということで頑張っております。
 その次の12番のスライドを御覧になっていただきたいのですけれども,他大学さんと同じように,このエコシステムを支援するために,事務システムを作り替えました。リサーチイノベーションセンターというところで,戦略インキュベーション,TLO,それから産学連携,これは,御支援いただいておりますオープンイノベーション機構ということでございますが,これらが連携してできるようにしております。
 それから産業界の皆さんからの問い合わせにワンストップ窓口で答えられるように,連携したい先生の名前までは分からなくても,こういうことがやりたいと言ってくださいましたら,ベストチームを我々が紹介できるような形を考えております。
 今,人文社会系と理工系の協力融合関係を築いておりますので,学内でもこういうチーム,こういう先生に知り合いたいとのリクエストをワンストップ窓口に連絡していただくと,御紹介して,一緒に協働体制が組めるようにしようとしております。
 次のスライド13番を御覧になっていただきたいのですけれども,産学連携,人材育成,ベンチャーの創生ということで,すごく歯車が多くて,動かすのが非常に難しいと思っています。歯車をうまく動かす仕組みとして,早稲田オープン・イノベーション・フォーラムという大きなイベントをやろうとしております。
 毎年3月10日を早稲田イノベーションの日と学内で決めまして,3月10日にイノベーション・フォーラムという大きなイベントをやりたいと思っています。早稲田アリーナという6,000人収容のホールができましたので,そこで今年から3月10日に始めてまいります。
 講演会とエキシビション,各先生方・学生のデモブース,それから連携していただいている産業界の皆さんのデモブース,例えばメルカリさんのように成功しているベンチャーのブース,それから今まさにベンチャーを始めようとしている人たちのブース,あと,ビジネスコンテスト等学内コンテストで優勝した人たちのピッチ等も用意いたしまして,産業界の皆さん,それからもちろん政府の皆様,ベンチャーの皆様にも集まっていただくとともに,学生にもベンチャーがどのように活動しているか,大企業の最先端技術はどのようになっているのかということを見てもらうということで,できれば2,000人近く集まってもらって,一気に出会いの場を作っていこうと思っています。
 講演会も,この資料が小さくて見にくいのですけれども,現在,最終段階になっているのですが,文部科学省,経済産業省の幹部の皆様にお越しいただくとともに,経団連を代表いたしましてNTT会長の篠原さんに,シリコンバレーからということでシスコジャパンのデイヴ・ウエスト社長さんに来ていただきましたり,ベンチャーアクセラレーター,カウフマンフェローズのチェアマンに来ていただいたりします。それから新しいイノベーションということで,5Gを一生懸命導入されております楽天モバイルの超有名人のCTOの方なのですけれどタレック・アミンさんとか,世界中の産官学連携,ベンチャー育成の皆さんに集まっていただきます。あと学内も,スマート社会でとても有名な林教授をはじめ,ベンチャー育成,産学連携をしている皆さんに集まっていただいて,このイベントをやっていきたいと考えております。
 こういうイベントも,早稲田大学は後発なのですが,これからずっと続いていくことによって産学連携,ベンチャー育成のはずみがついていくのではないかということで,努力をしております。
 以上でございます。どうもありがとうございます。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 あと,資料としましては,高等教育機関への寄附金,いわゆるエンダウメントに関して,国内の大学は米国と比べていかに貧弱であるかという,これは大学の経営モデルを考える上では非常に大きな課題なのですけど,そのことも資料として御提示いただいております。
 以上,お二人の学長,また,笠原副総長から,非常に貴重な御説明をいただきました。
 ここから意見交換に移りますけれども,その前に私から2点ほど気付いた点がありますので,お話しさせていただきます。
 徳久先生の資料の中で,3ページに運営交付金の1.6%の減額等々のことがあって,それで承継教員が205名減ってしまったとお話しがありました。それを大学の努力によって,特任教員を,これは任期付きになってしまいますが,252人雇用されました。そうすると47人増えていることになります。実を言いますと,財政審から出ている過去の資料に非常にミスリーディングなデータがありまして,運営交付金を減らしても教員の数は増えているという報告がなされています。これは特任教員を数えているのですね。それで世論に対して,運営交付金を減らしても大学は一向に困っていませんよということをデータとして提示されたことがありまして,我々,近畿地区の国大協の会議でも,これは問題が大きいということで,文部科学省から財務省にそのことに関してはきっちりと言ってくださいということを申し上げた経緯がございます。
 それと後は,先ほどから基盤的経費がどんどん減額される中で,外部資金によって学内の学術研究を何とか守っていくのは,大学の本部に入る間接経費が主要な経費になります。そのことについて,例えば基盤的経費が1億円減ったら1億円分の共同研究を行えばよいと思ってしまわれます。これも誤解です。1億円の共同研究を行っても,大学の本部に入ってくる間接経費を全額の20%に設定しても,該当部局に配分する分を差し引くと1,000万円程度ぐらいにしかなりません。となると,例えば基盤経費が1億円減らされたら,10億円分,共同研究を増やさないと学術研究を守れなくなります。そういうことの現実も一般的にはなかなか御理解いただけていないような気がします。
 それと,笠原先生が資料は準備されつつ,お話しになられなかったのですけど,大学が持っている寄附による基金のことがあります。
 今後,寄附をエンカレッジしていくには,税制制度の大幅な改革が必要だと思うのですが,そういうようなことも踏まえながら意見交換ができればと思います。
 御意見等ございますか。どうぞ。
【射場委員】
 今の西尾先生の話にも関係するんですけど,私は産業界なので,随分と産学連携の推進を今までやってきました。どの大学さんも産学連携の受託研究とか共同研究の受け入れが増えているというデータをお示しになって,その間接経費を大学のマネジメントに活用されていると理解をしたんですけど,質問したいのは,産学連携の研究と,今ここで議論されている学術とか基盤研究との関係。産学連携をやることによって基盤研究と学術研究がスポイルされるのか。
 産学連携もやりながら共通基盤をどんどん拡大していくみたいな形になっていったら一番いいと思うんですけど,そうなっているのか,なっていないのかは今日のデータからは見えないので,そこの状況とかお考えを聞きたいというのが一つと,産学連携する中で圧倒的に共同研究とか受託研究費でやろうといって民間サイドは今までこれで来たんだけど,ここに来て,人材育成とかそういう共通基盤を育成するためには,ひょっとして寄附の方が大学としては活用しやすいんじゃないかという意見が民間の中でも出てきているんですよね。
 それは大学としてはどちらが,方向性としてもう1回寄附を見直してやっていった方がいいのかということを御意見をお聞きしたいと思います。
【西尾部会長】
 徳久先生,髙橋先生,笠原先生,一言ずつ回答をお願いします。共同研究を進めることによって学術研究ができるのかということですね。共同研究はどちらかというと応用指向ですので。
【徳久千葉大学長】
 ありがとうございます。私たち,先ほどお示したように,トリプルピークチャレンジといって融合研究を強めようとしているんです。個人研究は科研費で好きな方向性で進める。やっぱり産学連携の場合には目的志向ですから,その方向に向かって実績を出していくということになります。
 ですから,まさに1人の研究者が,産学連携で資金を稼ぎながら,自分の研究を,科研費を取って伸ばしていくというのが今の実情だと思っています。どちらか一つだけやっている研究者はほとんどいません。
そういう意味で,私たちは仕組みを作ってあげて,できる範囲内でやっていく。そのときに,産学連携によって得たお金を,人材を雇用したり,大学院生にティーチングアシスタント・RA経費を出したりと,いろいろなことで使っていただいて,自分の研究を伸ばしながら産学連携にも寄与していくということをやっていただいています。
 ですから,まさに片方だけでもだめだし,両方うまくこなせる研究者が発展していくという時代になってきていると思います。
 それからもう一つ,人材育成なんですが,これは学部レベルの人材育成なのか大学院レベルなのかで全く違ってくると思います。学部レベルですと,これは本部の運営費交付金その他の基盤的経費でやらないと,やっぱり教育兼人材育成というのは継続性がないと意味がないと私は思っていまして,一過性の補助金で一時的な取り組みを行っても,結局人材は育ちません。
 そういう意味で,作ったシステムを次々発展させていくためには,基盤的公費を使いながらいかなければならないというところで,できるだけそちらの方にお金を取っておきたいということで,いわゆる間接経費でもってこなせるものはこなしていってやろうというのが今の実情だと思います。
 大学院レベルはまさに研究者養成ですから,この場合には私たちはいろいろな形で今サポートしていまして,授業料免除その他,本部でできる限りのサポートをしています。エクセレントスチューデントのようなクライテリアを作って,RA経費と称して月額20万円ぐらいのお金を出したりしています。
 そのような形で私たちはやってきています。
【西尾部会長】
 御質問の中で,昨今,株主総会で寄附はなかなか認めてもらえない,ということがありました。それにしても,徳久先生として,教育研究関連のことを進めようとしたら,寄附がいいのか共同研究の一環として行うのがよいのか,という御質問に対しては,やはり,それは寄附なのでしょうね。
【徳久千葉大学長】
 分かりました。先生,実は私たち,ファンドレイザーを入れたり,各部局の同窓会組織を通したりして寄附活動をしています。多くの方はやはり自分の部局にチェックを入れて寄附をしてくるんですね。すると,本部は使えないんですよ。ですから,ある部局がすごく持っています。
 そういう形で,なかなか大学にぼんと寄附を入れてくれる方は,好きな研究に使ってくださいという方はほとんどいないです。日本の寄附文化がおそらくそうではないのだと思いますね。自分がお世話になった学部にこういう建物を建ててあげたいと5,000万円ぽんと寄附された方もいますけども,結局部局で建物を建てて終わってしまっているというのが実情です。
【西尾部会長】
 髙橋先生,いかがですか。
【髙橋新潟大学長】
 ありがとうございます。私は,共同研究とかを増やすという目的は,もちろん大学の資金が,間接経費を含めて資金が潤沢になるということを願っているんですけど,新潟大学がそうかもしれませんが,私,学長になったときに,大学の基本的なミッションは教育と研究と社会貢献というか社会との連携だというのを改めて考え直したときに,教育と研究は国立大学はずっとやってきたし,どちらかというとそれに特化してやってきた。社会とは,はっきり言うと,余りつながってこなかったと感じております。
 ですから,共同研究とか受託研究が起こるということは,ある意味,社会とつながっていくんじゃないか。それを個人ベースじゃなくて大学の部門としてやっていこうと。ですから,お金が入ることもうれしいんですが,研究者たちがかつてよく言われた,大学の先生は研究にしか興味がなくて,それが社会にどう応用されるかということに関しては全く関心を持たないと。
 私,いろいろな企業を回ったときに,まさにそこを突かれたことを言われました。前にこういう論文を読んで,これはうちの仕事にすごく貢献してくれるだろうと思って新潟大学の教授を訪ねた。そうしたらこう言われたと。その研究な,もう論文書いちゃったから終わったんだよ,もうやっていないんだ,残念みたいなことを言われて,非常に立腹したそうです。
 ですから,私は大学の会議では,先生たちの研究を深く掘り込んでいくのは全然構いませんが,時々隣を見たり,先生自身がやらなくても,先生のところに大学院生がいるでしょう,大学院生にそういう研究をさせて,先生の弟子,大学院生は全部が先生の後任になるわけじゃないでしょう。先生の道をたどるのは多分20年に1人生まれればいいですよね。あとは全部社会出すでしょう。社会に出すときに役に立つ研究者に育ててくださいという形で一生懸命やって,そして組織対組織というのを進めてきたつもりです。ですから,大学院生というのを,人材育成という観点では,次世代研究者というのも必要ですけど,次世代の高度職業人というか,そういう観点でも育ててほしいとずっと言い続けております。
 それから寄附に関しては,本当に純粋な寄附というのを欲しいと思っています。なぜかといったら,やっぱり自由に教育の研究のところに配ることができるからです。
 そこで,ある企業人に言われたんですけど,先生が新潟の企業を回ればお金はくれますよと。だけど,来年も再来年も回りますか。とても無理でしょう。疲れるでしょう。クラブを作ったらどうですか。ゴルフの会員権のように,新潟大学サポータークラブ,小口のものを,景気がいいときは何十口も。景気が悪くなったら下げられる。でも,ゼロにさせない。そういう仕組みを作ったらどうですか。そうしたらみんな入りますよと。
 おかげさまで,今,県内企業が中心ですけど130会員はあります。まだまだ額は大したことないです。だけど,まずそういうことができて,そして必ず報告会がありますので,そこに企業人が来てくれて,場合によっては支援を受けた学生たちとの会話をするという形で,非常に盛会になっていて,年々盛り上がっているので,寄附の文化がない日本に寄附の文化を作っていったらどうだという提案を頂いたので,それを実行しているつもりです。
 以上です。
【西尾部会長】
 笠原先生,どうぞ。
【笠原早稲田大学副総長】
 産学連携で基礎研究ができないかどうかという話なのですが,私自身は大学の教員になってから35年間ずっと産学連携をやっております。産学連携をやるといい論文が書けないのではないかという話ですけれども,そういうことはないと思います。産学連携と論文,基本的な研究,それを用いた応用研究,しっかりとできると思っています。
 例えば私は速いコンピューターが好きで,スーパーコンピューターも作ってきたのですけれども,2000年ぐらい,20年ぐらい前に産業界の皆さんが,速いだけじゃなくて電力を下げてほしいと言われたんですね。電力を下げるという研究に世界でいち早く取り組みまして,論文も特許も,今でも基本特許,非常に多く取れております。ですから,論文も書けますし,研究を推進することができると思っています。
 ただ,人文社会系の基礎研究をされていらっしゃる先生とか,数学とかで産学連携をするチャンスが余りない先生方には,産学連携で得られた,早稲田大学の場合,まだ20%ですが,20%の間接経費の中から適切に,先ほど次世代研究者を育成するという話をしましたけど,そのような仕組みも含めて配分していきたいと思っております。
 それから,西尾先生からエンダウメントの話がございまして,これはとても大事で,スタンフォードは一般的には3兆円と書いてあります。去年11月にスタンフォードの産学連携をやっている方が来てくださったのでお話をしていたら,7兆円あると。7兆円のほとんどは成功したベンチャー企業からの寄附だと。いろいろなものがありますけど,ベンチャー企業からの寄附あるいはすごくお金持ちの個人からの遺贈という形ですか,そういうのが非常に多いということで,そういう寄附は伸ばしていきたい。特に先ほどベンチャーと申しましたのは,ベンチャーを成功させて,そういう寄附を増やしていきたいということも考えております。そのためには税制の見直しもお願いできれば幸いです。
 それから,私,大事なことを言い忘れてしまったのですけれども,博士課程の学生を増やしていきたいと申し上げたのですが,是非科研費からも博士課程の雇用費,早稲田の場合なんかは授業料が高いので,授業料と生活費を合わせたサポートができるようにしていただきますと,より多くの若手の研究者を育てることができると思っています。そういうこともお考えいただければと思います。
 以上でございます。
【西尾部会長】
 追加で何かございますか。
【射場委員】
 今の御回答に対するコメントですけど,ありがとうございます。産学連携の共同研究の中に基礎的な,基盤的な研究とか学術研究が一部として入っていて,入っていなければ,どんどんそういうのを折り込むようにしてほしいと思うんです。その方が多分民間のためになるし。
 民間はどうしても成果をクローズにしたがるので,そこは基盤的な研究の部分はしっかりとオープンにするように,よくディスカッションをしてほしいなと思います。
 あと寄附の方は,前の,ちょっと古い時代の寄附と違って,例えば卓越大学院みたいな制度を採択されている大学さんもみえますけど,そういう中で新しい形の寄附,人材育成のための費用負担みたいな形で民間からも出せるような形にしていくのがいいのかと思います。
【西尾部会長】
 研究のタイプを分けたとき,これは何回も言われていることですが,学術研究,戦略研究,要請研究があります。戦略研究というのは目標が定められているものです。もう一方の軸として,基礎研究と応用研究と開発研究があります。
 髙橋先生,また,徳久先生にもおっしゃっていただいたのですけど,企業との共同研究においても,多分基礎研究ということに関しては,現在,割と推進できるようになってきているのだと思います。ただし,学術研究というのは,予め定められたテーマとか何も想定せずに,みずからの発想と責任で考えていくものです。それに関しては,やっぱり企業との共同研究の場合にはなかなか難しいと考えられます。今後,国力の源として学術かつ基礎研究が非常に重要であり,しかもノーベル賞等にもつながっていくということを考えたときに,そのタイプの研究が企業との共同研究でどこまでできるかということが課題になってくると思います。
 それと人材育成のことに関しては,只今おっしゃっていただいたように,新しいタイプの大学と企業の連携,つまり,教育プログラムに対していろいろ御支援をいただくというやり方は,今後,非常に重要だと思います。どうもありがとうございました。
どうぞ。
【栗原委員】
 寄附と共同研究ということで射場委員が御質問になった点に関して,現場的に言うと,企業との共同研究が非常に多くなった場合,ほとんどが単年度研究で,予算の繰り越しが出来ないことは研究現場にとっては負荷が大きいと思います。それで,もし仮に共同研究が寄附という形でできるようになれば,経費の合算もできるので,研究者の側にとってはメリットが大きいと感じます。
 繰り越しは制度的にはできるそうですけども,企業は何年か継続する研究でも単年度契約で,しかも経費は繰り越せないということが大部分で,大学と企業,どちらの問題かはよく分かりませんが,多分両側とも思いますが,科研費でも繰り越しができるようになっている時代に,どちらかと言うと共同研究費,規模も少額のものが単年度で繰り越せないと,現場としては非常に負担が大きいと思うので,このやり方をお考えいただくと良いと思います。繰り越しができるか,合算ができるか,何かあると現場の負担は軽くなると思うので,両側から御検討いただけると大変ありがたいと思います。
【西尾部会長】
 ありがとうございます。財源の多様化ということで,合算ができるようになるのか。企業との共同研究においても,全額とまではいかなくても,あるパーセンテージに関しては繰り越しを可能にすることができるのか。これらのことについては,大学レベルで既に可能なことなのか,文部科学省で可能にしていただくことなのか。事務局として,その辺りの情報はお持ちじゃないですか。
【梶山学術研究助成課長】
 すいません,今,分かりませんので,調べてから御報告させていただきます。
【西尾部会長】
 それではほかに,特に科研費との関わりのことで,御意見,御質問ございませんか。
 どうぞ。
【笠原早稲田大学副総長】
 すみません,今,産学連携における資金の繰り越しということなんですが,私立大学で契約する場合には,大体は繰り越し可能でございますが,損金扱いをする等一部の企業だけが繰り越せません。ですから,私立大学の共同研究はかなり自由度があると思います。
 寄附金で頂けるのはとてもいい話なのですけれども,我々が思っているのは,共同研究をさせていただいても,製品になるまでの道は長いのです。ですので,直接事業部の方に出てきていただいて,製品化を目指した共同研究に着手しようとしています。
 あと,見積りをしっかり出しまして,見積り内容も1件何百万円というものではなく,教員も学生もこれだけの時間を費やして,こういう機械を使ってということで,企業でやられているような見積りを作るようにしています。それで交渉することによって,適切な額の,従来に比べて何倍も大きい額を導入して,しっかり成果も一緒に出していこうということを目指しています。
【西尾部会長】
 参考になる御意見をありがとうございました。
 御質問とか御意見とかございますか。
 どうぞ。
【中野委員】
 千葉大学の徳久先生に質問なんですが,間接経費をプールして雇用の安定化に役立てていらっしゃるとお伺いしたのですが,それについてもう少し詳しくお伺いしたくて,例えば安定化するポストですよね,それは科研費を獲得した人に関係あるのか,それとも全く関係なく,大学の全体を見て必要と思われるところに使われていらっしゃるのか。
 それからもう一つ,プールということなんですけど,年度を越えて運用されているのか,それとも年度内なのかということをお伺いしたいです。
【徳久千葉大学長】
 ありがとうございます。千葉大学の場合には,間接経費は部局との折半にしています。その経緯を言いますと,電気代,ガス代,運営資金を各部局で賄っているんですね。大学本部で一括にしていないため,半々にしています。
 大学本部に集めた,50%の間接経費を私たちは全てプールして,いろいろなことに使っています。それはかなり基盤的なジャーナル経費などにもちろん使いますけども,結局今まで運営費交付金で出していた部分と組み合わせる形で,自由度の高い資金を確保し,本部で使っています。部局もそれぞれいろいろな工夫をしています。
 ですから,私たちは今度,例えば受託研究・共同研究を今までの約三,四倍増やせば,科研費そのもので5億円から6億円の間接は必ず毎年入ります。ただ,翌年ゼロになるかもしれないという危険度もあるので,それを安定的なものにつぎ込めないんですね。
 ですから,ある程度枠が大きくなれば,例えば,そのうちの1割は人件費として使おうと考えています。そのときは,特任教員で,非常に今,研究者を欲しがっている部局などに1人選んでいいですよという形で渡すというようなことを考えています。そうしないと若手教員を雇えないのです。
 あとはやはり大学院生のサポートだと思います。
 そういう意味で,いろいろな形で最終的に工夫しながら使いやすい資金を確保しています。
【中野委員】
 ありがとうございます。
【西尾部会長】
 どうでしょうか。どうもありがとうございました。
 ほかに何か御質問とかございますか。
【中村委員】
 一ついいですか。
【西尾部会長】
 どうぞ。
【中村委員】
 企業との共同研究とかいろいろ,今御意見あったように大変使いづらいんですけども,一番の問題は,こういう事務処理が研究者本人にみんな来るんです。だから,共同研究をやればやるほど研究以外のものがどっさり出てくる。本来はこれ,法人化のときに大学のマネジメント改革で改革すべきもの,大学のマネジメントというのは研究者がやっている雑用を事務がやってくれるということも一つなので,事務の方々の能力を大幅にアップするということが必要ですね。これは大学の幹部の責任に違いないと思います。
 今は,みんな研究者というか教授に全部やらせろという方向になっているので,これを,会社との交渉はを事務が用意ししたそれなりの方がやるという体制を実現した大学が競争に勝つんだと思います。
 アメリカの有力大学ではそれが実現しているんですね。アメリカの事務の方というのは,先生に雑用が来ないようにするということが事務の責務だと思っているわけです。日本の少なくとも国立大学で私が見たところでは,下に投げるのが事務の役割だと思っているわけで,これは大間違いだと。ここから変えないと,うまくいかないと思います。
【西尾部会長】
 どうも非常に貴重な御意見ありがとうございました。
 どうぞ。
【徳久千葉大学長】
 ありがとうございます。まさに私たち,このイノベーション・オフィスですね,それを考えておりまして,プレアワードと言ったのは,予算を取りにいくことですら教員がやっているため,申請書を書いたりするような技官ですか,テクニシャンないしはそういう方を雇用し支援する。このような人材がいるかどうか,盛んに僕ら自問したんですけども,結構探してみると,います。
 それで,プレアワード,ポストアワードが重要で,研究者が研究に集中できるようにしなければならないというのがこれからの課題だと私は思っていまして,それにはまずお金がなきゃならない。今度,補助金を頂いたんですが,そこにも充てる予定にしています。
 そこが充実してこない限り,やはり幾ら言っても,外部資金獲得にはみんなノーって言いますよね。今,科研費を取っているから要らないよ,お金だけだったら,やる気がしないと思います。そういう意味で,仕組みを作ろうとしています。ありがとうございます。
【髙橋新潟大学長】
 よろしいですか。
【西尾部会長】
 どうぞ,髙橋先生。
【髙橋新潟大学長】
 こういうとき,いつも教員の数とか特任教員の何とかという話が出ますけど,私はいつも思っているんですが,まず事務員が,ものすごく減っているんですね。
 ですから,先ほど言った新潟大学,60人教員を減らそうというのが取り上げられて,マスコミにも載ったときに,教育研究評議会の委員が,我々教員が減ろうとしているんだから事務員もと言ったので,僕はすごい怒ったんですよ。先生,何年,大学にいるんですかと。先生が大学に就職した頃は,周りに技官とかそういう人がたくさんいたでしょう。今,いないでしょう。1人に1人ぐらい付いているような時代もあったのが,どんどんどんどん減って,統合したりしてやっている。事務の人たちはとっくに始めているんですよ。だから我々もやらなきゃだめなんですと申し上げた。
 ですから,事務の方にやってもらうのはもちろんいいんですが,それから,そういう人はほとんど今,特殊な技術を持っている人は特任です。任期付きです。そういう人しか雇えない。それも事実だと思って,教員の話ばかりしているので,私はあえて申し上げます。事務員は減っています。非常に過重労働で,働き方改革を本当にやってもらわないと,学長として心配になるぐらいの状態です。
【西尾部会長】
 髙橋先生がおっしゃったのは各大学でもほぼ同様の状況で,教員のみならず,事務職員も年々少なくなっていて,その上で,中村先生がおっしゃられたようなことをどのようにカバーしていくのかというのは,大きな課題になっています。
【笠原早稲田大学副総長】
 よろしいですか。
【西尾部会長】
 どうぞ。
【笠原早稲田大学副総長】
 まさに研究者の皆さんの負担が非常に高まるので助けてあげなければいけない,研究に集中できる,雑用のない形で研究ができるようにしなければいけないということで,今お話があったような形で我々もサポートしておりまして,特に産学連携だと,今,オープンイノベーション機構の補助事業とかでファクトリーマネジャーという方を採るようになっています。見積りを作ったり,資金の管理をしたり,契約のサポート,いろいろな知財条項とか契約,非常に難しいので,そういうところを全部サポートいただいております。
 それとあと,URAの皆さんもお手伝いいただいておりますのと,産学連携コーディネーターという人たちをTLOに置いて,先生方の負担を減らして,契約,知財の作成,それから先ほどのベンチャーのところまで全部,先生方にあまり時間を取っていただかなくてもできるような形で努力しています。
 やってみたところで分かったことは,そういう方たちは産業界で活躍された方,今,我々の場合だと電気会社の役員をやられた方にジョイントアポイントメントで来ていただいて,要するに大学は余り払えないので,ごく一部だけ払わせていただいて,そういう方たちにそういうファクトリーマネジャーのお仕事をしていただいております。シニア人材ですね。かなり年齢の高い皆さんで,自分たちは成功を収めて,今後,日本のために,後輩のために働いていきたいと考えておられる方にお手伝いいただいて,お金がない中で何とかうまく回るようになっております。
【西尾部会長】
 ここで髙橋先生から幾つかの課題とか要望をいただいております。例えばなのですけど,科研費の方は何とかずっと増額というのを実現してきておりますけれども,基盤経費の方は増えている状況ではなくて,デュアルサポートシステムというのはほぼ崩壊状態だということは前回も申し上げました。文部科学省でもそれは認識をいただいております。
 先ほど申し上げましたように,基盤経費から充当される各研究者への配分が30万円とか20万円以下ですと,実験系の研究はできません。そこで,採択率30%前後の科研費も取れなかったらどうするか。困りますよね。教育活動だけは何とかできていくと思うのですけれども,そういう状況が長く続きますと,本当に学術研究を支えていけるのか,ということになってしまいます。
 そこで髙橋先生のお話では,科研費が採択されなかった方への研究費の一部の配分の実施,また,若手研究者ばかりが優遇されていくということが,本当に研究者全体の層を考えたときに良いことなのかということの問題への提言をいただいております。
 ここらのことは,科研費制度そのもの,さらに基盤経費との関連で考えていく上では重要な課題だと思うのですけど,何か御意見等ございませんか。
 どうぞ。
【井関委員】
 すみません,ありがとうございます。まず今,先生がおっしゃった若手研究者にお金だけ出せばいいのかということで,特に生物系ですと,近年は共同研究をしないとなかなかいい論文が書けない状況になっています。共同研究するということは,いろいろなPIが集まって若い人に,こういうことを知るためにはこういう実験が必要なんだよとか,そういうことを教えていかなければいけないわけですね。
 若手研究者にお金だけをあげてもだめなわけで,そこにチューターを入れなきゃいけない。そのチューターをする,いわゆる中堅教員というのが疲弊してしまっているわけです。先ほどおっしゃったように事務量が多い。明らかに20年前の教授と今の教授ですと,事務量が全く違う。やはり先ほどおっしゃったようなそういうものを減らしていくという努力は必要ですし,研究室においても,例えば卒研生が,うちの先生って常に事務作業をしているか,研究費の申請書を書いていて。自分とのディスカッションの時間がない。
 期せずして,私がこの間質問したことで,今日,A4の資料(NISTEPの資料)をそろえていただいているんですけれども,見ると驚くのは,中学生ぐらいまでは研究者というのは3位とか4位とか上位で,なりたい職業にも関わらず,大学生になると減っている。これは,甲斐先生がおっしゃっていましたけど,研究室の中で先生が物すごく忙しい,苦労しているのを見たときに,誰も大学の教員になりたくないよと。それは本当にそうだろうと思うんですね。
 ですから,甲斐先生がこの間おっしゃったように,研究をやってもいいかなと思っている人はきっといっぱいいるんです。でも,実情を見たら,とてもじゃないけど自分はこんなところにいられないと思う人が多いのかなというのを,本当にまさにこの資料は示しているかなと思っております。
 ですから,今おっしゃっていただいたように,本当に研究ができる環境を整えるということと,あと若手を育成するということが,決して若手自身にお金を全て投入するわけではない,もちろん生活費とか学費とかそういったサポートは必要ですけれども,もう少しそのあたりを総合的に考えていかないといけないのではないかなと思います。
 以上です。
【西尾部会長】
 本当に貴重な御意見ありがとうございました。若手をきっちり育成していくということは非常に重要だけれども,その方法を一体どうするのかということですね。若手の研究者に本務の研究以外のことをしなくてもよいようにするのかというような,支援の仕方そのものも相当考える必要があるのではないかということも,言及いただけたと思います。
 白波瀬先生,どうぞ。
【白波瀬委員】
 ありがとうございます。今の若手の話についてちょっと大きくなるかもしれないんですけれども,若い方たちも機会が与えられて,はいそうですか,というわけではないので,やっぱり一番核になるのは,将来のチャンスが具体的にどれぐらい豊富であって,今やっていることがいかに将来につながるかという,その点だと思います。そこで,具体的な仕事の内容とか,そういうのも含めて世に示すことがよいのではないでしょうか。例えばすごく数学が好きでも,数学を専攻することが職業として活かされるのは算数の先生だけでは決してないというような,キャリアの具体的な例をいろいろなところで紹介することは重要かなと。仕事といっても,お金だけが判断基準とはならない,ということだと思います。
 ちょっと別の観点でよろしいでしょうか。
【西尾部会長】
 どうぞ。
【白波瀬委員】
 いろいろ貴重なお話をありがとうございました。やはり一つ,笠原先生のご説明にもありましたけれど,商品化してどのこうのとか,共同研究がどう,というお話になるんですが,私は人文社会系分野でございまして,なかなかそういった流れに馴染みにくいところがあります。例えば,早稲田大学の田中総長は,日本の政治学を中心に大学における国際化を先頭に立って引っ張ってこられ,若手研究者の育成も含めて,私どもとしても勉強することが多いと感じています。各大学の中で,特に人文社会系となると,商品化の可能性を秘めた研究になじみやすいのは文理融合ですね。あと,企業との共同研究の展開,というようなストーリーラインになっています。しかしながら私は,大変申し訳ないんですけど,そういう位置付けでは,日本の人文社会系は,グローバルなところで展開できるような研究ももしかしたらおぼつかないし,何よりもそういう研究者自体の育成が危ぶまれる,というところを危惧しているのですけれど,各大学の中で,特に人文社会系等も含めた多様な分野,そういう意味では,商品化がすぐできない,物としての商品化がちょっとしにくいというような分野に関しての位置付けというか,研究費も含めて,どういうようなことをなさっているのか,お伺いしたいと思います。
【西尾部会長】
 これも貴重な御質問かと思います。徳久先生,お願いいたします。
【徳久千葉大学長】
 ありがとうございます。先ほど射場先生からお話があったように,千葉大学は臨床人文学というタイトルで卓越大学院を取りました。それは,文系の知というのがどういう形で世の中に役立つのかというのを社会が十分に理解できていない。そこを社会に分かりやすくするために,臨床人文学という新しい学問を打ち立てますと。そこで人材育成をしますと謳い,それで無事獲得できました。
 何をやるかというと,やはり近在のいろいろな企業と一緒になって,今,企業が抱えている問題点を,人文知を使っていろいろな形でアドバイスしていこうと。もちろん自分たちの人文学の研究はやります。それ以外に,お金を取る取らないの問題ではなくて,そういう形で自分らの知識が自分の趣味とか興味だけじゃないんだということを学生時代から植え込んでいくという発想で,今,トライを始めています。
 それが学問上,良いか悪いかははっきり言って分かりません。でも,これからの世の中,そうしていかないと,恐らく後継者が育たないだろうし,その学問は先細りをしていくんじゃないのかなと懸念しています。
 非常にプラマティックでドライな学生の多い世の中になってきていますので,やはり自分の夢を追い続けられる学生がそんなにたくさん,これからどんどん出ていくことは難しいと思っています,僕自身。そういう意味で,今,タイムリーじゃないかといって提案させていただきました。
 ですから,やり方次第だと思うので,その中で本当に自分の学問に将来先進していく学生も出てくるでしょうし,新しい形で芽生えて,そして,その人文知を使いながら社会で丁々発止とやっていく学生も出てくるということを期待しています。ありがとうございます。
【西尾部会長】
 白波瀬先生,追加の御意見などは,今,よろしいですか。
【白波瀬委員】
 いやいや,ありがとうございました。参考になります。
【甲斐委員】
 今日,三つの大学の先生方から大変すばらしい試みを御説明いただいて,今,大学運営も厳しくなって,研究の発展が遅れているというようないろいろなことが言われている中で,それぞれの大学が個別の様々な工夫をされて頑張っておられ,成功してきているというようないいお話を伺いました。それでも大変なのはよく分かりますし,大変な状況というのは私たちも肌身に感じて分かっておりますので,苦しい中で頑張っておられるなと思いました。
 三つの大学にお伺いしたいんですけど,もう一つの私たちが懸念している大きな問題というのが,大学院,特に後期博士課程に進学する日本人の学生が減っていると。それは非常に大きな問題だと思っているんですよ。
 博士課程の大学院生を獲得するために留学生を入るという対策は多くの大学でやっているんですけど,将来的には留学生で来た方は日本を離れてしまう人が多いんですね。欧米に行ってしまうか,あるいは自国に帰ってしまう。結局将来の日本の大学に残って研究を支えていく人材というのは先細りになっているというのを切実に感じております。そこで,三つのすばらしい試みをされている大学の先生方ですので,後期の学生数の獲得,減少を食い止めるような,もしそういう試みをやられていたら教えていただきたいと思うんですけど,お願いいたします。
【西尾部会長】
 それでは,髙橋先生にお願いしたいのは,先ほど出ました人文社会科学系に関することで,徳久先生からは御意見をいただけたのですけど,髙橋先生と笠原先生からまだいただけていませんので,そのことに関してお話いただきたくお願いします。それと同時に,今,甲斐先生から御質問ありました博士後期課程に関することもお願いします。髙橋先生,笠原先生からその二つのことにお答えいただいて,最後に徳久先生には博士後期課程のことだけについてコメントしていただきたく,よろしくお願いいたします。
【髙橋新潟大学長】
 本学は創生学部を作りました。地方創生というのと勘違いされちゃうんですけど,そうじゃなくて,到達目標創生型の学部ということで,理系・文系なく入学させて,そうした中で,多分高校生たちは時々誤解していて,自分は理系だ,自分は文系だと思っても,大学の学びをしてみたら,実は僕は文系に向いているんじゃないかとか,そういう気付きが後で起こってくる。それからなかなか決められない子,そういうのも入れる。試験だけは,高校の教育が理系・文系が一緒になっておりますので,それぞれ得意な方で入っていらっしゃる。中でごちゃ混ぜにして,そして教養のときから含めていろいろな両方の要素を学んで,最終的に22のパッケージの中から自分はこの領域を主にやるんだけど,例えば工学部のこういうのをやるんだけど,文系的なものも物すごく入れた124単位の形成をしたいといって選択させる。
 実はまだ3年生までしか来ておりませんが,来年,今度4年生になるんですけど,私,部活巡りというのもやっておりまして,そこに行きますと,そういうところでマネジャーをやっていたり主将をやっていたりするのに,たった70人しかいない学部ですけど,結構目立っているというのが実感でございまして,彼らがどういう大学院を選択するのか,今から非常に楽しみにしております。
それから文理融合的な試みというのでは,URAとかが中心になって,研究者を一堂に会してポスターを中心にした発表をさせて,共通にできるものがないかを探るという試みをやっているんですけど,もう一つ,本学は日本酒学というのを始めました。
 日本酒学,そして日本酒学研究会というのを立ち上げたんですけど,新潟の特徴である日本酒をテーマに,そうするとすぐにどういうお米でどういうお酒を作るか,どんなお水がいいかという話になるんですけど,それでは意味がない。せっかく総合大学でやるんだから,日本酒の歴史,日本酒の文化,日本酒と健康,日本酒と経済,日本酒と税金,それから海外展開,そういうのを,ですから全学部の55人の教員が日本酒学を介して一堂でディスカッションして,教育に,研究に,海外展開につなげてやっております。
 これは最初に農学部の先生と経済の先生が私のところに話を持ってきて,私も頭の中でこれはすごくおもしろいね,文系の人にもいっぱい入ってもらえる,神のお酒と書くお神酒ですから,なぜそういうふうになったのかとか,そういうことをちゃんと解き明かせる人を育てたいということになっております。
 学生にも非常に人気で,200人で募集したんですけど,820人来ました。そしてほとんどの子が途中で捨てなくて,全部単位を取りました。15コマ二つと最後に実習編をやるんですけど,最後まで単位を確実に取って上の学年に上がっているという実態がございまして,2年目も860人の応募があって,300人しか採っていませんけど,そうなっております。
 これが,海外,例えばボルドー大学にはISVVというブドウ・ワイン研究所があるんですけど,先達する研究施設として見学に行ったら,そんなことをやるんだったらボルドー大学と連携しようということで,連携になりました。そのうわさを聞いたUCデービス,カリフォルニア大学も,うちもナパバレーでやっているんだからうちも見学に来いって言って,私は行かなかったんですけど,行ってきた連中がボルドーと同じようにデービスと新潟大学でやろうという形になっておりまして,ここで,今までは,そういう意味だと,農学部の醸造学の先生が頑張るみたいだったんですけど,文系の先生が非常にアクティブに入ってくれて,いろいろな形でやっている。
 そういうことで,学内の中の文理融合を進めることにつながった。その結果,研究会も,全国からいろいろな大学,それから研究施設から参加者が出るという状態になってきている。そんなことを試みた。
 大学院博士課程は,地方大学は本当につらいです。なかなかいません。特に文系は外国人だらけです。それで,何とかしなくちゃいけないということで,PhDリクルート室というのを立ち上げました。どの段階でPhDを考えさせるかというのが,進学のとき,要するに前期課程のところで考えさせては遅いだろうと。もっと前の段階,学部で,自分のいるときに自分のキャリアパスを考えさせて,そして後期課程までをイメージした前期課程の選択とか,そういうことをPhDリクルート室でやろうと。
 これはでもまだ絵に描いた餅でございまして,これから,立ち上げたところでございます。
【西尾部会長】
 笠原先生,できましたら簡潔にお願いいたします。
【笠原早稲田大学副総長】
 分かりました。人文社会系のサポートですけれども,先ほど本学の田中愛治総長のお名前をお出しいただきまして,田中がいつも人文社会系で言っていますのは,やはり優れた人材を採用する,自分より優れた教員を採用しなさいということを申しておりまして,ここ数年,例えば政治経済学術院では,日本で学位を取った人はほぼゼロで,世界で,例えばオックスフォード大学で学位を取ってエジンバラ大学で働いていた人,日本人の方ですけれど,海外の方も含めて,そういう人材の採用の仕方に変えています。世界でグローバルに働ける教員がどんどん集まってきている。研究費も世界から導入するということも考えています。
それから研究分野では,イノベーションは理工系だけでは起こせなくて,自動運転にしてもロボットにしても,政治,法律,それからビジネスということがいつも一緒になっていますので,現在イノベーションを進めていく,推進していく上で,全ての学術院と協力をしようとしています。
 先ほどリサーチイノベーションセンター,新しい建物ができると申し上げましたが,この建物にはほぼ全部の学術院から研究者の方に入っていただきまして,いつもディスカッションをしながら,次のイノベーションを起こそうということを狙っております。まだ始めたばかりですので,これから花が開いてくれるといいと思いますが,そういう努力をしております。
それから博士の数に関しまして,私は先ほど博士の学生を雇用すると申し上げたのですが,それが増やすための戦略です。アメリカでは,研究費から博士を雇って,10人とか博士を抱えていたりするわけです。アメリカではしっかりと業績を評価する厳しい形でやっている大学も多いと思います。早稲田大学も評価をしっかりと行いながら,直接研究費から博士を雇用する,授業料を出してあげて生活費を支えてあげるというふうに,今,システムを変えて行きますし,努力をしていきたいと思います。
あとは先ほど申しましたように,国から頂く直接研究費から博士をそういうふうに雇用できると,もっと人数が増えると思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。白波瀬先生から御質問いただいた人文社会科学系に関しては,基盤的経費がどんどん厳しくなってきたときには,文理融合というような方向性の中で,産業界等との連携をとって,そこへの外部資金を投入するというようなことが一般的に考えられるシナリオなのだけれども,そういうやり方で人文社会科学系の日本における学術振興というのが本当に進むのかという観点からの質問であったかと私は考えています。3人の先生方からいただいた回答としては,やはり現代的な要請の中で,人文社会科学系が今後取り組むテーマそのものとして,社会の現場とか産業界との連携を相当意識した方向を進めつつも,その中で人文社会科学系を振興していくためにいろいろ工夫をなさっている。そういうお答えと考えてよろしいですか。
 そしてもう一つの博士後期課程の課題について,笠原先生がおっしゃったように,博士後期課程の学生に関して,研究者として雇用するというようなお話もありましたけれども,そういうことも含めて,博士の後期課程の学生をいかに増やし,強化するかということに関して,徳久先生には千葉大学で進めておられることがありましたら,ご紹介をお願いいたします。
【徳久千葉大学長】
 分かりました。ありがとうございます。やはり私が一番考えているのは,博士の後期課程は,教える先生方の多くが,将来アカデミックに残るための登竜門であるとしか考えてないというのが非常に大きいと思います。アメリカやその他海外を見ますと,やはり企業のトップは皆,PhDを持っていますよね。その常識が徐々に知れ渡ってきているのが現在なんですね。
 それで,工学系は6,7割は修士まで行きます。ところが博士になるとがぐっと減ります。それは,やはり教える側に,博士まで行かせても大学のポジションが少ないとか,そういう危惧感が僕はあるんじゃないかなと盛んに思っています。そういう意味で,共同研究をしたり,インターンシップも行ったりということを考えていまして,そこを盛んにしようとすることをやってきています。
 あともう一つは,千葉大学はこの4月から全員留学させます。授業料を値上げさせていただきました。継続性のあるお金というのは授業料か間接経費ですよね。博士課程も授業料を値上げさせていただいて,大学の収入を増やし,1回は大学で面倒を見るから自分で選んで海外に行ってこいと言いました。
 そこで海外の博士課程の学生たちがどんなことを考えて何をやっているのかということを肌で知っていただかないと,自分の将来が見えてこないと僕は思っています。
 それから,将来像として,大学にアカデミックで残った先生がハッピーな姿を見せていただかないとやはりだめだと。それで今,千葉大,自然科学系は,助教は全てテニュアトラック制にしています。5年後に評価をしてテニュアになれると。ところがポストが空いていないとテニュアポストにできないので,大体,将来,大丈夫なんですが,これに本学のポイントとして,そこに3人のメンターを付けています。
 テニュアトラックだからまだ一人前じゃないということで,資金も支援するし,研究のサポートを受けながら,研究指導も受けながら,3人の教授クラスに面倒を見てもらうというシステムを入れ始め,既に実行されています。これにより,自分の先輩がテニュアトラックで,助教なんだけど何かすごく温かく指導を受けているよということを見せることによって,研究を続ける勇気が湧く。
 それから三つ目は,やはり指導する教授たちが豊かじゃないとだめだと思うんですね。本当に食うや食わずの状態でも熱心に研究をやるのはいいですよ。でも,私たちは年俸制を入れ,本人が取った間接経費の3分の1に相当する金額を,例えば業績給として10%相当の金額を大学がサポートしますといたしました。ですから,その方が間接経費をたくさん取れば,その分,業績評価のSですと10%かな,もらえるようになります。その仕組みを今度,新年俸制でも取り入れます。
 現実的に給与体系ががちっと決まった中ですと,どんなにいい仕事をして外部予算を稼いでも,生活が豊かにならないんですよね。そういうところがやはり家族のサポートを得られないとかと繋がってきて,日頃の鬱積になっているのではないかと私は思っていまして,すごい先生はやっぱりすごい給料をもらってもいいだろうと。その風穴を開けるということを既に始めています。
 ですから,そういう形でキャリアパスが描けるようなことをしていかないと,博士後期糧への進学者はやはり増えないと思います。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。博士の後期課程に行くインセンティブをどれだけ与えるかということで,本当に知恵を出しておられることがよく分かりました。どうもありがとうございました。
 中野先生,先ほど手を挙げておられましたね。
【中野委員】
 3人の先生方に質問があるんですが,それぞれの大学で非常に特徴的なプログラムを実施されていて,実際に科研費の獲得件数であるとか獲得額がどんどん上がっているんですが,これ,全ての大学がまねをすると,効果が薄れるわけですよね。実際のところ,科研費というものは倍々で増えていくわけではないので。
 そのような状況を仮に仮定して,だから,どういった工夫をしてもそんなに獲得額が上がらないという仮定の下で,科研費のシステムに変更あるいは修正を求めるとしたら,どういうことが望ましいか。例えば直間比率を変えるであったり,件数は減らしても高額な科研費を増やす,あるいは年数を増やす,いろいろあると思いますけれども,大学のマネジメントの観点からいって,どういう改革あるいは変更が望ましいかということをお聞かせいただきたいです。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございます。
 徳久先生,髙橋先生,笠原先生,いかがでしょうか。
【徳久千葉大学長】
 実はここに呼ばれましたので,経営戦略会議という幹部会議がありますが,そこで皆さんにお聞きしてみました。うちの幹部は全て科研費を取っていまして,いろいろ苦労されています。そういう方たちがおっしゃったことを一つだけ選ぶとすると,2年から5年となっていますけども,多くは5年にすると1年あたりの金額が少なくなってしまうので,3年で皆さん次々にリニューしてきますよね。各年度の金額を確保しながらアメリカのRO1並みの5年支援を受けられるようにしていただきたい。
 それで,例えば基盤研究(C)ですと500万円を3年で取れば,大体8掛けか7掛けですから,各年度100万円程度,合計300万円支給されます。それを各年度100万円,5年間支給できるような額にしていただきたい。研究期間は最低5年必要と言われていました。
 それから私個人は,前の新学術領域,あのような形の研究は科研費に合っているのかなと思うんです。私自身は,科研費というのは個人研究のためのサポートであって,グループ研究は結局融合型の,いろいろな分野の研究を融合して提案してくださいとおっしゃっているんですけども,統合をまとめる先生が結局ボス的な教授になってきてしまう。
 今,若手の者を入れようと企画されているようですが,千葉大学ではトリプルピークチャレンジで,最初は部局内で一つのグループ内で共同研究をしてくださいとしてやっています。新しい分野のことを提案してください,個人の科研費のテーマではだめですよといって資金をサポートしてきました。今は,3つのトリプルピークの別のピークの研究者を入れないとアクセプトしないこととして,共同研究を盛んにさせて,新しい芽を出そうとしているんですね。
 同じ大学内ですらかなり難しいのに,全国レベルでこの大学とこの大学とこの大学が結び付くような横のつながりができてない,特に分野が違ったら難しいと思います。
 そういう意味で,もっと基盤研究(A)・(B)・(C)の金額を増やして5年にするというふうに使われた方が,僕は有効性が高いのではないかと思います。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。科研費の補助期間を延ばすということは検討に値することだと思います。
それともう一つの新学術領域に対する考え方についても,今の先生の御意見に対して検討する必要があると思います。本当に貴重な御意見をありがとうございました。
 髙橋先生,お願いします。
【髙橋新潟大学長】
 今,徳久先生がおっしゃったこと,我々も感じておりまして,特に若手などは中長期的な計画というとやっぱり3年単位ぐらいで考えてしまうので,結果を出さないと次に繋がらないということになって,もう少しそれを何とかしてほしいということと,あと勝手な意見ですけど,年に1回のチャンス,採択率30%ぐらいということで,3年だと,3年,3年,3年やれば90%までなるじゃないかと思われるかもしれないですけど,やっぱりなかなか難しいということで,本学でやっている,ほかのところもやっていらっしゃる,評価Aの場合,惜敗支援というのをやっているんですけど,そういうものを国レベルでもある程度考えてもらえないかということ。せっかくAの評価まで出しているんだから,金額はぐっと落ちてしまうけど,とにかく続けなさいと。そしてもう1回チャレンジしなさいねというような形のことをやっていただけると,非常にありがたいと思います。
 それからもう一つ,これは話題になるかどうか分からないですけど,若手研究における独立基盤形成支援(試行)というのががちょっと気になったので,申し上げてよろしいでしょうか。
 これは,実は本学の場合,調査しましたら,29年度は該当者が,准教授になって2年以内という縛りがございますので,該当者が4名,新規で若手の(B)を採用されて,新規採択者が56人いる中で,准教授が4名いて,そして申請は1人だけして,その人が採択されたと。次の年は該当者がいないんですね。その次もいないということが起こりました。
ですから,該当する人が余りいないということと,それからPIとして活動を始めるのが准教授というのはちょっと遅いんじゃないかと。もう少し前の助教レベルに広げた方がいいのではないかとか,あと,やっぱり若手研究じゃなくて,だんだんうちの大学……,なるべくいい研究をしている人は(B)を申請しなさいと奨励しているところになります。それがまず一点なので,准教授2年以内という縛りがなかなかクリアできる人がいない。
 それからもう一つは,研究計画書の作成が非常に複雑で,計算も複雑ということで,現場から聞くと,事務担当者と相談しながら作成する必要が,かなりタイトにやらないといけないというのが声として上がってきました。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。梶山課長,今の段階で何かお答えなさることはありますか。いいですか。
【梶山学術研究助成課長】
 御議論を頂く課題ではないかと思っております。
【西尾部会長】
 今後,今御指摘いただいた点,きっちり考えていかなければならないと思います。
 笠原先生。
【笠原早稲田大学副総長】
 科研費のゼロサムの問題ですよね。一生懸命頑張って,1大学だけが増えるということはなくて,皆さん競争なので,なかなかそこでたくさん,私が先ほど早稲田は10倍を目指さねばならないと言ったのですけれど,科研費が10倍ということはあり得ないなと思っています。
 ただ,各大学が競争で磨き合っていけば日本全体の技術力は上がりますので,そこから産業界の元気が出て,全体の税収が増えて上がってくるというそのサイクルは,もちろん努力すべきであると私たちも思います。
科研費に望むことということですけども,先ほど大きい額で5年間,私も大賛成で,是非そういうふうにしていただけたらと思います。
 あと,繰り返しになってしまうのですが,博士の学生を増やすという意味では,今,検討していますのが,アメリカだと修士はテクニシャン,一流企業の研究者,技術者にはなれません。中国,テンセントとかファーウェイに行っても,技術者として採用するのは博士以上だと言っていますので,日本の卒業生たちが例えば日本の企業から離れて世界で勤めようとすると,博士学位がないと戦えない状態です。10年後,20年後の彼らの幸せを考えると,博士をもっと増やさなければいけない。
 そのときに,一部のコースで5年一貫制の教育ができるようになっているのですけれど,修士2年生で終わるものと,5年間で博士に行くものとの二つが必要かと思います。そうしたときに,現代のM1,すなわち5年制博士の1年生のときから,先ほどの授業料と生活費をちゃんとサポートできる仕組みに科研費がなっていただけると,とてもいいと思います。
 以上でございます。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 それと,先ほどより,おっしゃっていた博士後期課程の学生を雇用するということも含めてですね。
【笠原早稲田大学副総長】
 5年制一貫の博士,今の修士1年のところから,ちゃんと授業料と生活費を支えられる,雇用することができるといいと思っております。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 山本先生,お待たせしました。
【山本委員】
 今ので大体聞けてしまったのですが,最後のところで,やはり大学院の博士課程の問題というのは本当に深刻だと思います。これは,今までは国のいろいろな施策での支援になっていますが,それをある程度,どこまでやるのが適切かというのはすごい議論があると思いますけれども,やはりパッケージで考えないといけないかなということを,今日,強く感じました。
 そこのところは,科研費だけの問題ではなくて,関係のところとの協議になるので非常に大変だと思いますけど,これはやはり優秀な人材が少子化で減る中で,一種の戦いと言ったらちょっと言葉はきついですけど,ほかの分野との取り合いになっていると思います。そういう意識で我々としてやらなきゃいけないというのがよく分かりました。
 もう1件,確かに惜敗というのも非常におもしろい考え方なのですが,簡単で結構なんですが,重複制限に関する御希望というのはありますか。その辺を聞きたいと思っていました。すいません。
【西尾部会長】
 重複制限に関しての何かございますか。大学では出ていますか。学内で意見聴取していただいたときは出なかったということでしょうか。
 大野先生,是非学長の立場で御意見をお願いします。
【大野委員】
 いつもそうやって振られるんですけれども,若手,ドクターの学生のことで申し上げたいのは,私,リーディングプログラムの委員もやっていたんですけれども,あのプログラムというのは非常にうまくいっていて,従来のドクターはタコつぼ化した研究室から一歩も出るなと,言われた研究だけやればいいというのが今の日本のドクターコースの教育だと思うんですけども,それを飛び越えて,ほかのところと一緒にやるとか,武者修行で違う研究に行くとか,海外に出なさいとか,いろいろなプログラムをやって,そこのプログラムを履修した学生は非常に高い評価を受けて,産業界へみんな行くわけですね。
 ですから,外国のドクターの制度を見たときに,日本はドクターコースはやっぱり大学の先生になるんだというような見方を持っている人が依然として非常に多い。それを打破したのがこのリーディングプログラムじゃないかと思っていますので,残念ながらプログラムは終わってしまったんですけども,千葉大も早稲田も採択されていますけれども,採択された六十何大学のプログラムが,終わることなく,これから自前の経費で存続していくんだということを皆さんおっしゃっているので,現実問題,どうやってお金を出すのかという難しい問題はあるんですけれども,そういうところも含めて総合的に,科研費をそういうところに一部使えないかとか,支援している学生が研究費用を取れないかとか,あるいは先生方がプログラムのためにドクターの学生を支援する方策を何らかの形で出せないかとか,一つ一つではなくて総合的に考えていかないと,日本の産業界にドクターが寄与する割合というのは増えていかないと思っています。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。特に博士課程に関しての文部科学省が今進めておられる教育プログラムがあります。今回の審議の目的である総合的に研究経費を見ていくというときに,それらのプログラムと科研費とを何か連動できないのかというような視点の議論が今後重要ではないかということの御指摘だと思います。
 文部科学省で進めておられる博士課程の教育プログラムは,博士号を取得した人が大学に残るということだけを意識するよりもむしろ逆で,どんどん産業界,社会に出ていくことを支援するプログラムですので,それがうまく回りだすと,先ほどより,出ている御意見とも連動するのではないかということだと思います。その点から検討することを考えていただければと思います。
 どうぞ。
【竹山委員】
 科研費の採択率を上げる試みとして,A評価で採択されなかった研究課題に大学内予算で研究費を付けて再チャレンジされているとのことでしたが,その後そのサポートによる成果はどうでしょうか。
 さまざまな改革を進める中で,なかなか現場との乖離も起こりやすいと思いますが改革の検証はきちんとされているのでしょうか。
【西尾部会長】
 では,徳久先生。
【徳久千葉大学長】
 私たちもそれが気になって,このシステム,10年ぐらい前に始めたんですが,綿密に調査いたしました。8割方,取れます。それで,たまに次年度,出さない人もいます。
 それから,支援した翌年,申請書を見ます。本部で研究者を示して。また,部局にスーパーバイザーを付けてあげてくださいと取組を促し,そしてその方の申請が見えていますから,そこでアドバイスして,書き直しをして出すようにすると,かなり取れています。
 ありがとうございます。
【西尾部会長】
 髙橋先生。
【髙橋新潟大学長】
 同様です。当然ですけど,お金の効果がちゃんと出ているかどうかということで,数字は忘れましたけど,一般のやつはすごくよくなっているし,それから,前の年と今年,落ちたところと,科研費,多分同じテーマですよね。だけど,今年は採択されて去年はなぜ落ちたかというのは分析してもらって,採択された場合によってはその内容を今年の申請者の前でプレゼンテーションして,去年はこの辺が甘かったので,ここは変更したとか,そういうことをして情報の共有化も図っております。
 もちろん取れない人もいるんですけど,パーセントははるかに上がっています。
【西尾部会長】
 笠原先生,いかがですか。
【笠原早稲田大学副総長】
 評価に関しましては,もちろん評価をしながらPDCAサイクルを回しており,トレンドとして科研費採択件数は上がっております。
 ただ,早稲田大学の場合,問題なのは,科研費採択件数は増えているのですが,獲得金額は余り増えていないということがあり,先生方の努力はとても評価できるのですけれども,やはり医学系がないということもあって,額の伸び悩みをこれからどうするかということは,またいろいろなデータを多角的に分析しながら,やり方を考えていこうということを今検討中でございます。
【西尾部会長】
 よろしいですか。
 ほかに御意見ございますか。
 様々な意見を今までいただきまして,片柳課長補佐,また,生田視学官,何か今までの意見をベースにコメントしていただけるようなことはございますか。
 片柳さん,いかがですか。
【片柳私学助成課課長補佐】
 私学助成の関係でございますけれども,直接,今の私学助成の基盤的経費の中で,研究費は,補助しておりませんで,経常的経費への補助ということでさせていただいておりますけれども,先ほど御指摘ございました基盤的経費の方での充実をさせていただくことで,裾野というか土台が大きく広がっていって,大学の方でも科研費と直接じゃないところもフォローがいろいろできるということになると思っておりますので,その意味でも,今現状で基盤的経費自体はどんどん下がっていっていて,なかなか盛り返しができていないようなところではございますけれども,我々としても,予算総額を一つは念頭に置くということと,私学助成で申し上げると,特別補助と一般補助がございますけれども,その中でも使い勝手のいい一般補助の部分をより伸ばしていくというところに重点を置いて,予算等について考えていきたいと思っております。
【生田国立大学法人支援課視学官】
 ありがとうございます。国立大学全体を見ている立場として,今日の話,大変勉強になりました。
 幾つかありますけれども,例えば博士の話については,大分前から問題点というのは出てきていて,多分これは文部科学省だけで解決できる話ではないというものもあり,後ほどもしかしたら説明があるかもしれないですけれども,内閣府の方で博士課程,特に産業界のキャリアパスですね,そういったところをどうやって広げていくのかという話も出てきている最中だと思います。
法人支援課としても,実は令和2年度の税制改正で,大学院生とポスドクに対する税制優遇,若手の研究者が研究をするためのお金を個人が寄附した場合,それに対する税額控除ができるようにしようというような取組を予定しており,それがどのぐらい効果があるのかというのはこれから見ていかなくてはいけないと思います。できる限りの新しい制度改善,お金だけではなくて,もちろん,基盤的経費を減らさないというのは大前提ですけれども,多分その問題は,言っても言わなくても大きく変わる話ではこの財政状況の中ではないと思うので,それ以外の何か,国の制度を変えていくことで,より何かができないかというようなことは考えておりまして,先ほどのもう一つ,例えば産業界との共同研究についても,なかなか内部でやろうと思うと色々なしがらみがあると。それを外部化することで,そこで産業界と共同研究をする。そうすると,例えば人件費,内部だとなかなか高いので雇えないよねと。外部に出してしまえば,ある意味,できるのではないかとか,色々お金の使い方としても少し自由になるのではないかとか,そういうできること,できないこと,今までできないなと思っていたことをできるような形に色々と改善していきたいと思っております。特に国立大学については第4期の中期目標期間があと2年で始まりますので,それに向けて文部科学省としても色々と検討していきたいと思っております。
 ありがとうございます。
【西尾部会長】
 それでは,いろいろ貴重な御意見を頂きまして,誠にありがとうございました。また,徳久先生,髙橋先生,笠原先生,今日は素晴らしい知恵をいろいろ出しておられることも含めまして,我々,非常に参考になりました。どうもありがとうございました。心より御礼申し上げます。
 ただいまいただいた御意見等につきましては,事務局において取りまとめをお願いいたしたいと思います。
次回の研究費部会では,これまで3回にわたって行ってきました関連事業の有識者などとの意見交換における意見を全般的に事務局でまとめていただいたのをベースに,総合的に議論をしてまいりたいと思っております。
 なお,意見交換の概要については,必要に応じて科学技術・学術審議会学術分科会などにも報告をさせていただいて,そこからのいろいろなコメント等もフィードバックし,この部会で改めて議論を深めてまいりたいと思いますので,どうか御了承のほどをお願いいたします。
 

(2)その他

【西尾部会長】
 その他として2件報告があるようですので,まずは事務局から御報告をお願いいたします。
【梶山学術研究助成課長】
 それでは,私の方から簡単に御説明させていただきます。
 参考資料1を御覧ください。前回の研究費部会におきまして,CSTIで若手支援に関する総合的なパッケージを検討しているということに関して簡単に御説明させていただいたところでございます。その当時,遠からずそれが正式なものになりますということを申し上げたところでございますが,それが正式なものになりましたので,御報告いたします。
 前回ご説明した内容的なものに関しては,1週間,2週間前の話でございますので変わらないというところが多くございますけれども,資料の13分の8のところを御覧いただければと思います。具体的施策というところで大きな方向性として示された後に,個別の具体的なところを今後こういうことをやっていきましょうというものが出ているわけでございますけれども,そちらについて,前回,何年度からやっていこうというような話,それから主にこういうところでちゃんと考えていこうというようなことが入っていなかったわけでございますが,そちらが入った上で,決まっております。
 それぞれの制度での議論につなげていって,政府全体としてこのような方向性があるということにつきまして御報告申し上げるものでございます。
 私からは以上でございます。
【西尾部会長】
 今のことにつきまして,何か御質問とかございますか。よろしいですか。
 それでは,JSPSにおいて,審査システムの変更についてアンケート調査を行われたということですので,御報告をお願いいたします。
【林日本学術振興会研究助成企画課長】
 日本学術振興会研究助成企画課の林と申します。
 参考資料2を御覧いただきたいと思います。科研費審査システム改革2018におきましては,審査方式を大幅に見直しておりまして,これまで2回の審査を実施してきたところでございます。審査システム改革につきましては,日本学術振興会,特に学術システム研究センターを中心に様々な角度から審査システム改革がどうだったかということの検証を進めているところでございます。
今回,その一環といたしまして,古い審査制度と新しい審査制度,両方の審査を担当した審査委員にアンケートを実施しまして,そのアンケート結果を取りまとめましたので,報告させていただきます。
 まず,2ページ目を御覧いただきたいと思います。こちらはアンケートの概要でございますけれども,先ほど御説明しました主旨,対象といたしまして,旧審査方式と新しい審査方式の両方を経験したことのある審査委員に対してアンケートを実施しました。対象としては基盤研究(A)・(B)・(C),若手研究,挑戦的研究の種目の審査委員でございます。
 調査件数といたしまして,下に表がございますけども,総合審査としては63.8%,2段階書面審査をした審査委員からは54.9%で,トータル56.6%の研究者から回答を頂いたところでございます。対象が3,665人のうち,約56%の回答を得たということでございます。
 3ページ目を御覧いただきますと,参考でございますけども,審査方式の見直しとして,新旧審査制度の比較を左右で示しています。従来は2段審査方式でございましたところを,総合審査と2段階書面審査という形に変えたことを紹介しています。
 4ページ目を御覧いただきたいと思いますけども,こちらがアンケートの結果の抜粋でございます。今回のアンケートの結果につきまして,まず結論を申し上げると,4ページ目の一番上に記載していますが,新しい審査方式につきましては,おおむね好意的な結果であったということでございました。
 総合審査と2段階書面審査それぞれについての結果が書いてございますけれども,まず総合審査につきまして,旧審査方式に比べ,合議審査が充実し審査が深まったと思うかという質問に対しまして,「思う」若しくは「やや思う」といった回答の割合が9割以上ございました。
 特に良いと思うこと,また,改善すべきと思うことの代表的な意見をその下に抜粋しています。総合審査においては,自身の専門とは多少離れた分野でも,合議をすることで理解を深めることができたというようなことや,同一の審査員が書面,合議を行うので,審査に対する責任感と応募課題への理解が増したというような御意見を,評価できる点ということで頂いております。
 一方で,改善すべきところでございますけども,全ての応募課題一つ一つに目を通す必要があるので,審査件数を減らすことができないかということで,審査負担の面での御意見を頂いています。さらに,合議審査は1日でやっておりますけども,時間に限りがありますので,書面審査の上位等をピックアップして特に重点的にやるというようなことができないかということで,効率化の面でも御意見を頂いたところでございます。
 その下が2段階書面審査でございますけども,応募課題への理解を深めた上で審査ができたと思うかという質問に対しまして,こちらも「思う」「やや思う」という割合が85%以上であったという結果でございます。
 特によかったところ,改善すべきところがその下でございますが,よかった点といたしましては,2段階書面審査は審査委員が集まらずに全て電子上で行う審査でございますけども,2段階目の書面審査では,他の審査委員の意見を見ながら再度評価をすることから,他の審査委員の意見や評価が分かるので,自身の審査の妥当性を客観的に見直せるということや,2段階書面審査を通じて審査の質の向上が期待できるというような御意見,それからこちらも新しい審査システムの大きな改善点でございますけども,1段階目と2段階目,同一の審査委員が審査を行っておりますので,十分内容を把握した上で2段階目の審査を行うことができているという御意見を頂いております。
 一方で,2段階書面審査の審査委員からも,自分の専門とは多少離れた分野の審査が困難であったということであったり,集まらずに単独で審査を進めていきますので,他の審査委員の意見が非常に短かったり具体性に欠けていたりした場合,審査が難しかったということで,技術的なところでも少し改善が必要であるというような意見を頂いているところでございます。
こちらがおおよそのアンケートの結果でございまして,以降細かなデータ等を付けさせていただいております。本日,時間の関係で詳しくは省略させていただきますけれども,幾つか抜粋して紹介させていただきたいと思います。
 少し進んでいただきまして,11ページ目でございます。こちらは総合審査でございまして,先ほど良いと思うこと,改善すべきと思うことについて幾つか意見を紹介させていただいておりますけども,意見分布が11ページ目に書いてございます。選択肢のような良いと思うことに対しての回答割合を示しているところでございます。
 一方,右側が改善すべきと思うことについての意見分布ということで,特に突出したものはございませんけれども,改善すべき点として多かったのは,やはり一つ一つ目を通すのに限界があったということであったり,自身の専門分野とは多少離れた場合については意見が主張しにくかったという意見が多かったという結果でございます。
 次の12ページ目には,それぞれのもう少し細かな良いところ,それから改善すべき点についての意見を抜粋させていただいております。
 少し特徴的だったと思われる意見が一つございますので,13ページ目を御覧いただきたいと思います。こちら,総合審査の中で改善すべきと思うことということで出てきた意見でございまして,審査の進め方というところの星が付いているところでございます。挑戦的研究に対して頂いた御意見でございますけども,挑戦的研究において,合議審査で議論を重ね過ぎることによって,かえって無難・保守的な課題を採択するおそれがあるのではないか。書類審査のみの方が,思い切って挑戦性を評価できる場合もあると思ったということで,合議をすることで逆にこのようなことが起こってしまうのではないかという懸念が示された御意見でございます。
 続きまして16ページ目に進んでいただきたいと思います。同じく2段階書面審査で良いと思うこと,それから改善すべきと思うことの意見分布でございます。こちらも審査システム改革の目的でございますが,他の審査委員の意見を確認しながら再検討することができたとか,効率化が図られていたというところに高い評価を頂いているところでございます。
改善すべきと思うことについては,特になしというのが一番多いところでございますけども,ほかに多かった意見としては,自身の専門分野から離れたところの審査が難しかったというような御意見でございます。
 同じく17ページ,18ページ目に,それぞれ個別の意見を幾つか抜粋させていただいているところでございます。
 今後こうした意見も踏まえまして,また,これ以外にも応募者の方,それから審査委員をした方から様々な声を聞きながら,科研費の審査がより有効に機能するように,本会といたしましては引き続き不断の改善に努めていきたいと思います。
 説明は以上でございます。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。この委員会等でいろいろ議論しまして審査システムの変更が行われました。非常に重要なこととして,そのフォローアップをしていくというのが大事でして,アンケート調査が行われた概要の報告でございました。皆様,何かお気付きの点とかございませんか。よろしいですか。
 おおむねポジティブな回答はいただきつつも,やはり審査する対象分野が自分の分野と離れていた場合等のことがいろいろ浮き彫りになっているかとは思います。そういう点も含めて,今後どう考えていくのかということを考える上での非常に貴重なアンケート調査であったと思います。
 では,またこれを生かして審査制度を改善してまいりたいと思います。どうもありがとうございました。
【栗原委員】
 すいません。
【西尾部会長】
 どうぞ。
【栗原委員】
 せっかくNISTEPの方で出していただいた資料の志望動機という,志望職種のリストなんですけれども,後半の方の大人になったらなりたいものという,7ページの第一生命保険の調査とか,その後のベネッセの調査とかを拝見しますと,男子と女子の差が非常に大きくて,これはアカデミアとしては,こういうことを認識して,何かできることがないか意識していることは大事ではないでしょうか。やはり社会の中の男女の役割分担がまだまだ非常に強く子どもの意識にあるということを何とか少しずつ解消していかないといけないと思います。
 理系男女の志望にはそれほど大きく差がないんですね。せっかく出していただいた資料なので,意見申し上げました。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございます。
【栗原委員】
 そうなんです,せっかく出していただいたのに。
【西尾部会長】
 今,栗原先生がおっしゃったことは,日本が科学技術立国として今後どう発展していくかということを考える上でも非常に重要なデータになると思います。
【中村委員】
 一ついいですか。
【西尾部会長】
 どうぞ。
【中村委員】
 結論として,これは初等中等教育の問題なので,初等中等教育局あたりに考えていただかないといけません。小学生女子で学問を志す人がいないとすると,大学の先生を,男女1対1にするなんていうのは,これを見ていたら,不可能ですよね。
【西尾部会長】
 今,御意見が出ましたように,オール文部科学省としてこれは考えていただく問題かと思いますので,初等中等教育局あるいは総合教育政策局などにも是非フィードバックしていただいて考えていただきたく,是非ともよろしくお願いいたします。
 ほかにございますか。
 それでは,事務局の方からのお知らせをお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】
 次回の研究費部会は2月21日金曜日を予定しております。正式な御案内は後日改めて出させていただきます。
 なお,本日の配付資料につきましては後ほどメールでお送りいたしますので,タブレット端末は切らずにそのままでお願いいたします。
 以上でございます。
【西尾部会長】
 改めまして,本日はどうもありがとうございました。徳久先生,髙橋先生,笠原先生,今日は誠にありがとうございました。
 それでは,これにて研究費部会を終了いたします。

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