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第10期研究費部会(第7回) 議事録

1.日時

令和2年1月21日(火曜日)10時00分~13時00分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 科学研究費助成事業(科研費)に係る令和2年度予算案等について
  2. 関連事業の有識者等との意見交換(若手研究者育成関連事業、大学における基盤的経費(1))
  3. その他

4.出席者

委員

甲斐委員,栗原委員,白波瀬委員,西尾委員,井関委員,射場委員,大野委員,小安委員,城山委員,竹山委員,中村委員,山本委員,上田委員,竹沢委員,中野委員

文部科学省

村田研究振興局長,増子大臣官房審議官,原振興企画課長,梶山学術研究助成課長,岡本学術研究助成課企画室長,中塚学術研究助成課企画室室長補佐,楠目人材政策課人材政策推進室長,上野国立大学法人支援課長補佐,片柳私学部私学助成課長補佐,他関係官

オブザーバー

狩野岡山大学副理事,小林大学高等教育研究開発センター長,岸本日本学術振興会学術システム研究センター副所長,西村日本学術振興会学術システム研究センター副所長

5.議事録

【西尾部会長】
 皆さん,おはようございます。時間となりましたので,ただいまより第10期第7回の研究費部会を開催いたします。新年になりましてから20日以上たっておりますけれども,改めて今年も何とぞよろしくお願いいたします。
 本日は,まず科研費に関わる令和2年度予算案等について事務局から御報告をいただいた後,前回に引き続き,科研費を中心とした学術研究を支える研究費制度の総合的観点からの検討を進めるため,関連事業の現状を伺い,意見交換を行います。意見交換を十分にするために,今日の会議の時間は3時間ということを設定いたしておりますので,どうかよろしくお願いいたします。
 若手研究者育成関連事業については,担当課から御説明いただいた後,有識者の方々と意見交換をしていただきます。また,大学における基盤的経費については,本日は,担当課から制度の概要のみ御説明いただき,有識者との意見交換は次回行いたく思います。
 では,本日御出席いただいている若手研究育成関連事業に関する有識者の方々及びそれぞれの事業担当課の方々を事務局から御紹介していただければと思います。よろしくお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】
 本日,若手研究者育成関連事業に関する有識者と致しまして,人材委員会から岡山大学の狩野光伸副理事。
【狩野岡山大学副理事】
  よろしくお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】
  広島大学,小林信一特任教授。
【小林広島大学高等教育研究開発センター長】
 小林です。
【中塚企画室長補佐】
 また,委員会担当課から,科学技術・学術政策局人材政策課,楠目聖人材政策推進室長にお越しいただいております。
【楠目人材政策課人材政策推進室長】
 よろしくお願いします。
【中塚企画室長補佐】
 また,後ほどですけれども,大学における基盤的経費に関する担当課の方から,高等教育局国立大学法人支援課からは上野恵生課長補佐,それから,私学部私学助成課からは片柳成彬課長補佐に御出席いただくことになっております。
 また,昨年12月に事務局に人事異動がございましたので,併せて御紹介をさせていただきます。錦泰司学術企画室長でございます。
【錦振興企画課学術企画室長】
 よろしくお願いします。
【中塚企画室長補佐】
 前任の前田室長は,現在,高等教育局の大学振興課大学入試室長に異動してございます。
以上でございます。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。本日はどうかよろしくお願いいたします。
 次に,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】
 資料は,机上配付の議事次第にも記載してございますけれども,資料本体の方は,本部会はペーパーレス会議として実施させていただきますので,基本的に机上のタブレット端末で御参照いただければと思います。個々の資料の資料名の読み上げはいたしませんが,資料の欠落等,それから,タブレット端末の操作方法等について御不明な点がございましたら,事務局までお申し付けください。
 

(1)科学研究費助成事業(科研費)に係る令和2年度予算案等について

【西尾部会長】
 それでは,最初の議題に入ります。科学研究費助成事業(科研費)に係る令和2年度予算案等について,事務局から御説明をお願いいたします。
【梶山学術研究助成課長】
 それでは,私の方から御説明させていただきます。資料1-1をご覧ください。来年度の予算案につきましては,右上にございますけれども,前年度の予算額と比べまして2億円の増ということになっております。昨年度の予算が86億円増だったということを勘案しまして,なかなか厳しい折衝ということでございまして大変申し訳ございません。ただ,後ほど御説明いたしますようなことを踏まえ,一定程度の採択が可能な予算を確保することができたのではないかと思っているところでございます。
 内容と致しましては,左下をご覧いただければと思います。令和2年度事業の骨子というところでございます。二つの柱に関しまして,本研究費部会で御議論いただいたところでございますが,それにつきましてそれぞれ充実を図ることを行っております。
まず1ポツのところでございますが,新興・融合領域の開拓の強化でございます。こちらにつきましては,作業部会,それから,本部会の方で御議論いただきました学術変革領域研究に関して来年度創設することが可能となっております。具体的には,右の図にありますように,今までの新学術領域研究を直接引き継ぐような学術変革領域研究(A)につきましては,昨年度18領域採択するということを行っておりましたが,同じ18領域をそのまま採択することが可能だと考えております。また併せまして,学術変革領域研究(B)ということで5,000万円まで3年間より挑戦的なものを採択するというものに関しましても,同じく18領域程度採択する,このようなところの予算を確保することができました。
 それから,2番目の丸にございますが,いわゆる挑戦的研究の部分でございます。挑戦的研究(開拓)につきましては,当部会におきまして,基盤研究との重複応募を一定程度緩和したところでございますので,後ほど御説明しますが,挑戦的研究(開拓)の方が増えております。それに対応いたしまして挑戦的研究(開拓)を大幅に拡充するというところで,約70件程度の採択増が可能になるような金額を確保しているところでございます。また,併せまして,挑戦的(開拓)については,萌芽とともに基金化するということが可能になっておりますので,使い勝手の良さというところで基金化を広げていくということが可能になったと考えております。
 それから,併せまして,2ポツ,若手研究者への重点支援のところでございます。昨年度,若手研究種目群に関しては大幅な拡充を図ったところでございますが,今回,若手研究の配分水準,採択水準40%が今年度でございますが,それを維持しつつ,研究活動スタート支援につきましては,今年度37.5%の採択であったわけでございますが,そこに関しましても1%程度の拡充を図る予算,こちらを確保できたと思っております。
 また併せまして,若手研究の方々と基盤研究(B),(A),(S)に関して,重複制限,応募を可能に一部したわけでございます。そういうことにも対応して,基盤(B)に関して60件程度,それから,基盤研究(A)についても5件程度採択見込み件数を増加させるというところで,基盤研究(B)と(A)の拡充を図ったところでございます。
 また,2番目のところは,学術変革領域研究(B)でございますので,こちらは再掲でございますので,省略させていただきます。
一番下の丸でございますが,国際共同研究強化(B)でございます。こちらにつきましては,創設いたしまして3年目というところでございますので,着実な造成を図るとともに,昨年度補正予算で50億円の増が付いた中で20件程度の採択の増が可能になっておりました。そちらが今年度で切れますので,来年度,20件のうちの5件程度をいわば恒常化というところで根雪のところに入れるというところで確保を行ったところでございます。
 このような形で今申し上げたようなところの充実を図るということを考えておるところでございますが,2億円の増の中で今かなりの増を申し上げたところで,ほかのところはどうするのかというところになろうかと思うのですが,資料1-2をご覧いただければと思います。本年度の11月における研究種目における応募状況が既に分かっております。特別推進研究についてはほぼ同じ,それから,新学術については,現在公募中というようなことで,これはバーというところでございます。公募研究については200件増。これは新学術の公募研究というのは,それぞれの採択課題によってかなり違いますので,大体いつもこのような増減はございます。
 それから,基盤研究のところをご覧いただければと思いますが,基盤研究(C)が今年800件ということで減少しております。その代わり,基盤(B)以上が,先ほど申し上げたような形で重複を認めたというところもあるかと思いますが,増大しているところでございます。
 それから,挑戦的研究に関しましても,萌芽が減った一方,開拓が増えているというところ。若手研究についても900件程度減少しているというところがございます。
 このような若手研究,それから,基盤研究(C)に関しては,基本的に現在の採択率を維持若しくは若干増やすというところでとどめ,その分のお金に関して,先ほど申し上げたようなところに配分を行うということで,2億円の増ではございますが,全体として必要とされているところにお金を付けるというところ,全体として充実を図るというような予算を今回組んだところでございます。
最後に,資料1-3をご覧いただければと思います。先ほど来申し上げております学術変革領域研究でございますが,こちらにつきましては1月9日から今公募を開始しているところでございます。3月16日までというところで,約2か月間応募期間を取っておりますので,その後,採択スケジュールにのっとりまして,来年度に入りまして採択を行っていくというところになろうかと思っております。
 私の方から,予算の御説明,それから,応募状況の御説明は以上でございます。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。科研費事業に関しましては,学術変革領域研究の公募が開始されたということに関しましては,この委員会での御議論がベースとなっておりまして,改めて委員の皆様に御礼を申し上げます。ありがとうございました。また,事務局でも御尽力いただきましたことに心より御礼申し上げます。
 ここまでの説明について,御質問等ございませんでしょうか。応募状況についてもデータが報告されましたが,今後の科研費事業を考える上で重要なエビデンスになっていくかと思いますが,よろしいですか。
 ありがとうございました。予算案の国会審議はこれからですが,研究費部会としては,科研費制度について来年度以降も必要な改善・充実を図っていけるよう引き続き検討してまいりたく思いますので,何とぞよろしくお願いいたします。
 

(2)関連事業の有識者等との意見交換(若手研究者育成関連事業、大学における基盤的経費(1))

【西尾部会長】
 それでは,次の議題であります関連事業の有識者との意見交換に入ります。最初に,意見交換の進め方及び科研費の現状等について,事務局から説明をお願いいたします。
【岡本企画室長】
 それでは,説明させていただきます。資料2をご覧いただければと思います。前回,戦略事業と国際交流事業との意見交換を行いましたが,今回2回目ということで,若手研究者育成関連事業の有識者等との意見交換を実施させていただきます。
時間配分でございますが,まず最初にこの事業についての説明を20分予定しております。10分が事務局からの関連事業の説明,また,残り10分は有識者の方2名にお越しいただいておりますので,5分ずつで補足または意見等を頂きたいと思っております。その後,意見交換ということで90分を予定してございます。
 意見交換時の論点の例ということで三点ほどお示しさせていただいております。学術の振興のために若手研究者育成関連事業が果たす役割と取組,また,若手研究者育成関連事業から科研費に期待すること,科研費側から若手研究者育成関連事業に期待することということで挙げさせていただいております。
 また,意見交換時の留意点でございますけれども,三つほどございます。一つ目が,各事業の枠にとらわれず,全体を俯瞰した議論を行いたいと考えておりますので,それぞれの現行制度ではできないから他事業に期待するということではなくて,現行では難しい点についても,全体としてあるべきファンディングの姿にするために,自制度として及び科研費としてどういう検討をすべきか,また,関連事業でどういう協力ができるかというようなことに御留意いただきたいと思います。二つ目が,事業のすみ分けよりも,全体としての多様な学術を支えるためにどのようにしたらよいかということ,三つ目が,分野の違いを考慮すべき点ということで,国際共著論文,他分野・他事業との連携等についても御留意をいただきということでございます。以上が意見交換の進め方でございます。
 次が資料3でございます。科研費について,特に若手研究者の関連事業と関わることについて御説明をさせていただきます。
スライドは全体で25枚ございますが,まず3枚目をご覧いただければと思います。前期研究費部会における審議のまとめの抜粋でございます。今後の検討課題として四点ほど挙げております。(4)のところです。科研費を中心とした学術研究を支える研究費制度の総合的観点からの検討を行うということで,現在意見交換などを行っているということでございます。学術研究の更なる振興を図るためには,大学改革推進の方向性やその他の競争的資金の状況等を踏まえながら,科研費を中心とした学術研究を支える研究費の充実や制度全体の不断の見直しを図ることが重要であると。
 その際,研究者に基盤的経費が適切に措置されることや,特に若手研究者について安定かつ自律的なポストが確保され,自由に研究ができる環境が整備されることにより,科研費の効果がより一層高められることを強く認識する必要があること。
そのため,学術研究を巡る環境が変化する中で,科研費が研究費全体の中で果たすべき役割やそれを踏まえた制度の改善点について,その他の審議会・部会等と連携して,学術研究を支える研究費等の在り方に関連する幅広い議論を踏まえながら,総合的観点から検討するということで,現在研究費部会で検討しているということでございます。
 次のスライド4ページ目に,今後の科研費制度の論点の例がございます。特に若手研究者の関連では,1ポツのマル2がございます。若手研究者支援の在り方についてということで,一つ目が若手研究における独立基盤形成支援(試行)についてということで,現在科研費においては独立基盤形成支援の試行を行ってございます。平成30年度から行っておりますけれども,若手研究に採択になった方を対象と致しまして,その所属機関からも一定の経費,研究基盤整備のための経費を支出していただいて,科研費からも追加の交付を行うということを3年ほど行ってきております。今後これをどうしていくかということがございます。
 また,若手研究における応募資格の経過措置についてということでございます。こちらも平成30年度から応募資格を変えております。新たに博士の学位取得後8年未満の方を対象としておりますが,激変を緩和するということで,3年ほどは経過措置を設けており,39歳以下の方についても応募ができるという措置を取っているということでございまして,令和3年度においてこの経過措置をどうするかということがございます。
 また,応募資格の関係ですと,現在,総合科学技術会議・イノベーション会議におきまして,研究力強化・若手研究者支援総合パッケージの議論が進んでおります。その中で,競争的資金の関係は,プロジェクト経費によって雇用された若手研究者について,エフォートの一定割合を自発的な研究活動に充てることができるようにするという制度改善の議論も進んでいるということで,そのような改善が行われますと,応募件数が増えるという状況も考えられるわけでございます。
 また,2ポツのその他の論点のところのマル4でございますが,基盤研究(B)における若手研究者の応募課題を優先的に採択できる枠組みということで,若手研究(A)を基盤研究(B)に統合したということで,経過措置としてこのような優先的に採択できる枠組みを設けていますが,これをどうしていくかということ,これらが科研費において若手研究者の関連で挙げている論点でございます。
 続きまして,かなり飛びますが,15枚目のスライドをご覧いただければと思います。第5期の科学技術基本計画においては,科研費改革を進めているところでございます。15ページのスライドには,これまで行ってきた科研費改革の概要をお示しさせていただいております。緑色のマル2の研究種目・枠組みの見直しということで様々な改善を行ってきているわけでございますが,特に若手研究の見直し等というところで,マル2の枠囲みの右の方の真ん中あたりですけれども,若手研究(A)を基盤研究に統合する,また,先ほど申し上げた応募要件の見直しなど,また,科研費若手支援プランを策定いたしまして,それを目指して現在予算要求などを行っているということでございます。
 続きまして,23ページ目をご覧いただければと思います。23ページ目には,先ほど御説明いたしました科研費の予算案のポンチ絵と同じものですけれども,右側の三角形の種目の下のところをご覧ください。研究者の挑戦を促すため,所属機関による挑戦の後押しというものがあるかと思います。
 これについては,次の24ページのスライドがございます。参考と致しまして,令和元年度の基盤種目における若手研究者の採択状況を示しております。基盤研究(A),(B),(C)につきまして,全体と39歳以下の若手研究者の採択率の状況などを示させていただいてございます。また,研究者の挑戦を支援する機関における取組例ということで3大学の例を御紹介させていただいております。各機関においても,研究者の挑戦を促すための後押しを是非お願いしたいということで,昨年9月の公募要領の説明会などでも説明をさせていただいております。
 最後,25ページのスライドにございますのが,科研費の若手支援プラン,これが最新の元年度改訂版ということで,これらのプランに基づいて現在,予算要求,また,改革などを進めているということでございます。
最後に,机上配付資料でございます。前回も机上配付資料とさせていただきましたけれども,科研費に関する各種データということで,A3判の紙に印刷した資料を準備させていただいておりますので,意見交換の際に適宜御参照いただければと思います。
資料の説明は以上になります。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。ここまでの説明につきまして,御質問ありましたら,お願いいたします。よろしいですか。
 それでは,ここから,若手研究者育成関連事業の有識者の方を含めた意見交換を開始して参ります,まず担当課から御説明をよろしくお願いいたします。
【楠目人材政策課人材政策推進室長】
 失礼いたします。科学技術・学術政策局の人材政策推進室の楠目でございます。どうかよろしくお願いいたします。それでは,私の方から,まず関係のデータや人材委員会の検討状況も踏まえまして,若手研究者育成関連事業について御説明をさせていただければと思います。資料の方ですが,資料4をご覧いただければと思います。
 資料4の, 3ページ目をご覧いただければと思います。若手研究者の活躍促進の重要性に関するデータなどをまとめさせていただいたものでございます。ポストドクター等の若手研究者の研究生産性は高く,先端研究の現場を支えていること,若いときの研究活動が優れた成果に繋がっていること,ポストドクター等の現状等を鑑みますと,更なる活躍の可能性があること等についてデータ等を記載させていただいているところでございます。
 一方で実際の現状を見ますと,若手人材の雇用・研究環境の状況につきましては若干厳しい状況がございまして,4ページにございますように,若手教員の割合については近年低下の傾向にあるところでございます。左上のグラフが全体の状況でございます。
 次のページをご覧いただければと思います。5ページ目ですけれども,ポストの状況につきましても,若手教員につきましては,任期なしのポストが減少いたしまして,任期付きのポストの増加が顕著に見られるという状況があるところでございます。
次のページをご覧いただければと思います。6ページ目でございます。こちら,職務活動の時間割合でございますが,研究エフォートについては近年減少傾向にあるという状況もございます。
 7ページ目は意識調査に関するものでございます。若手・中堅研究者の研究の障害となる事項と致しましては,短期的に成果が求められること,安定的な資金の確保ができないこと,研究マネジメントの負担などが挙げられているところでございます。
 次のページをお願いいたします。こちらは,若手研究者の養成という観点から,博士課程を巡る状況についてデータを示させていただいております。8ページ目でございますが,博士課程入学者数の推移でございます。入学者数はこの棒グラフのところになりますが,一般学生の博士課程入学者数が減少している一方で,社会人及び留学生の入学者が増加しているという状況でございます。
 9ページ目は,修士課程の修了者という側から見たものでございますけれども,修士課程修了者からの博士課程への進学の方を見まして,博士課程への進学率は減少傾向にあるところでございます。
 10ページ目をお願いいたします。博士課程への進学ではなく就職を選んだ理由と致しましては,博士課程修了後の就職や,生活の経済的見通しが立たないことに対する不安といったことが学生の側からは示されているという状況でございます。
 次のページをお願いいたします。11ページ目でございます。こちらにつきましては,大学院から研究者へのキャリアパスにつきまして,10年前の状況との変化を少し整理させていただいたものでございます。少し大ざっぱに傾向を申しますと,修士課程,下から上の博士課程に進学する者が減少していること,また,博士課程修了者の数もそれに伴って減少しているという状況がございまして,研究者へ進む博士課程修了者についても,右側の黄色の枠が大学等の研究者ということで大学教員やポスドク等を書いてございます。左側は民間企業や公的研究機関の研究者の数を書いてございますが,全体を合わせますと研究者になる博士課程修了者の数もまた減少しているというような状況にあるところでございます。
 次のページをご覧いただければと思います。今までの部分が現状に関することでございますけれども,12ページから若手研究者の関連事業について主なものを記載させていただいております。これまでのところで御説明申し上げましたように,研究人材に関しましては,若手研究者の安定的なポストの確保の困難さや流動性の低さ等によりまして,研究者としてのキャリアパスを描くことが困難になっているという状況があります。また,そのことが経済的な事情とも相まって,博士課程への進学者数の減少の要因の一つとなっているという現状があることを認識してございます。このために,令和2年度の予算案におきましても,若手研究者の安定と自立の確保や,研究に専念できる環境の整備や,経済的不安等への対応等に必要な経費を計上しているところでございます。そのうち主なものについては本日こちらの資料に記載させていただいておりますので,ご覧いただければと思います。
 13ページ目をご覧いただければと思います。まず13ページ目は,卓越研究員事業でございます。こちらの事業につきましては,産学官を通じて博士人材に自立的・安定的なポストへのマッチングを行うような事業となってございます。右側に事業イメージが書いてございますけれども,大学等の研究機関からポストの提示を頂きまして,一定の審査を経た卓越研究員の候補者を文科省の方で選定いたしまして,そのマッチングが成立し,そのポストで雇用された場合に卓越研究員として研究費等の支援を行うものでございます。こちらの事業につきましては,令和2年度の充実としては,マッチングの支援を充実するという内容を盛り込んでいるところでございます。
 次のページをお願いいたします。14ページ目でございますが,世界で活躍できる研究者戦略育成事業でございます。こちらは若手研究者の研究生産性の向上を図ることを目的としたものでございます。上の四角の二つ目の丸に書いてございますが,海外の取組等も参考にしながら,世界トップクラスの研究者育成に向けたプログラムを開発するとともに,研究室単位ではなく,組織的な研究者育成システムを構築し,研究者の戦略的な育成を推進するものでございます。こちらにつきましては,来年度には3機関程度の支援を行う内容となっているところでございます。
 次の15ページ目をお願いいたします。15ページ目は特別研究員事業でございます。優れた若手研究者に対しまして,その研究生活の初期において自律的に研究に専念する機会を与えるために,特別研究員として採用・支援するものでございます。この特別研究員事業につきましては,人文学,社会科学から自然科学まで全ての分野を対象としておりまして,多様な学術を支える将来の若手研究者を育成する事業となっているところでございます。また,特別研究員が研究課題を遂行するための経費につきましては,別途,科研費で支援をいただくような制度となっているところでございまして,引き続き,両制度間の円滑な連携等についても御検討いただければありがたいと思います。
 続きまして,16ページ目をお願いいたします。これまでの各事業と支援対象についてのイメージを少し整理させていただいたものでございます。複雑な表になっておりますので,若干補足させていただきます。棒グラフの縦がポスドク等の数になっております。横軸が,博士課程を修了,大体は博士号を取得してからの経過年数となっております。そのうちの,色が付いておりますけれども,色はその人たちの翌年4月1日の状況を表しております。大学等の研究者になられた場合にはオレンジ色になっておりまして,引き続きポスドク等を続ける場合には青や水色になっているところでございます。
 こちらでお示ししておりますけれども,博士課程修了後の早期の段階では,特別研究員のPDなどのように研究環境の充実に重点を置いた支援を行っておりまして,キャリアの中盤以降につきましては,キャリア開発支援を含めた能力開発や,卓越研究員事業等による安定ポストへのマッチング支援等を重点的に実施しているところでございます。さらに,全体として取組を支えるためのガイドラインの作成ということを右上に書いてございますけれども,現在,人材委員会の方で検討しているという状況でございます。
 続きまして,18ページをお願いいたします。人材委員会の現状ということで,人材委員会の名簿等をお示しさせていただいております。人材委員会におきましては,次期の科学技術基本計画に向けた検討等を行っていただいているほか,下の3ポツにございますように,小委員会を設けまして,ポストドクター等の若手研究者の雇用や研究環境,キャリア開発等に関する事項を盛り込んだ機関向けのガイドラインの策定の検討を現在行っているところでございます。
 少し飛びますけれども,20ページをご覧いただければと思います。20ページにつきましては,こちら,小委員会の資料でございますけれども,ポストドクター等の雇用・育成等に関する考え方と致しまして,重要性や課題等について記載をさせていただいているものでございます。ポストドクターの多くにつきましては,PIが獲得する競争的研究費やその間接経費で雇用されておりまして,研究活動の遂行には不可欠な存在と考えられるわけでございますが,一方で多くのポスドクについては,任期が短い,自律的な研究活動のエフォートが限られるといった課題が見られるところでございます。こうした状況につきましては,昨年4月に策定されました研究力向上改革2019におきましても,任期の長期化や専従義務の緩和等に取り組むこととされているところでございます。
 続きまして,21ページをご覧いただければと思います。現在,人材委員会におきましては,先ほど申し上げたような課題への対応も含めまして,ポスドクの雇用・育成に関する大学等の取組を促進するためのガイドラインの策定に向けた検討を行っておりまして,ガイドラインを通じてポスドクの育成の重要性に関するPIの認識の向上や,機関による組織的なキャリア支援の取組の充実を図っていきたいと考えているところでございます。
 続きまして,22ページをご覧いただければと思います。22ページ目は,ガイドラインのイメージでございます。人材政策の観点からは,こうしたガイドラインの作成・周知を図ることで大学等の取組を推進してまいりたいと考えているところでございますけれども,ポスドクの育成とか研究環境につきましては,研究費を獲得したPIの裁量に委ねられる部分も多いことから,科研費をはじめとする競争的研究費の観点からも,ポスドクの育成や自律的な研究環境の確保について御留意いただければありがたいかなと思うところでございます。
 23ページ目は今後の予定ですので,省略させていただきます。
 資料については以上でございますけれども,このほか,博士学生の支援や,若手研究者の処遇の安定に関しましては,プロジェクトの中でRA等を適正な水準で雇用いただくことや,プロジェクト雇用のポスドク等に一定の処遇が確保されることが重要でございます。また,バイアウトの導入等によりまして研究者の研究時間を確保すること等につきましては人材施策の観点からも重要な課題でございますので,こうした点についても引き続き御検討いただければありがたいと存じます。
 私からは以上でございます。よろしくお願いします。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。岡本室長からは,科研費事業の中で若手の研究者育成ということに関してどういう事業をやっているのかということに焦点を当てて御説明いただき,また,楠目室長からは今,若手研究者育成全般に関しての様々な課題をお話しいただき,また,どういう事業があるのかについて,科研費に限定しない,全般的なお話を頂きました。
特に楠目室長からのお話を聞く限りにおいて,課題が山積していると言っていいと思います。
 そういうことも踏まえまして,科研費と若手研究者育成関連事業を相互により効果的に実施するための取組や,そのためにどのような連携をし得るかなどについて,先ほど岡本室長から意見交換の進め方を説明いただいておりますけれども,その趣旨にのっとって議論ができればと思います。
 そのような観点から,人材委員会の狩野委員,小林委員から,補足説明と御意見等ございましたらよろしくお願いいたします。まず狩野委員,よろしくお願いいたします。
【狩野岡山大学副理事】
 こんにちは,狩野です。まずこれから申し上げることに至った自分の背景を申し上げます。もともと東大の医学部卒業で,初め臨床医をしましたが,もっとチャレンジングな活動がしたくなり医工連携を始め,続いて東大の医学部の研究する人が減ったのに対してそれを増やすための教育プログラムを立ち上げ,さらに,日本学術会議の若手アカデミーを作り,岡山大に来てSDGsを通じて大学ブランドを高め,今年度から外務省の外務大臣次席科学技術顧問という新しく出来た役目もしております者です。こういう経験を経てきた観点からお話をさせていただきたいと思います。
 まず今日お話ししたいことのキーワードですけれども,それは,「魅力」と「価値」です。何でこんな話をするかというと,外務の仕事をいただいて考えた内容がきっかけです。外務は国益の追求とすれば,その国益とは何か。それは,「富」の追求,「安全保障」の追求,もう一つが「価値」の向上かと思います。価値の向上というのは,つまり,日本という国に対してどこに「魅力」があるから,ほかの人がやって来るかという意味と解釈できると考えます。この意味での「価値」とつなげて話をしてみたいと思います。
「魅力」・「価値」についてまず主語を若手研究者から見たときに,どういうことに魅力・価値がまずこの科学・技術という分野にあるかということだと思います。企業のキャリアパスと比較したときに,現在,何が魅力・価値なのか。その反対方向から挙げれば,給料は低い,職は続かない気がする,という声があります。その中でどうしたら科学・技術にかかわる職業に対して魅力を感じてもらえるのかという質問になっていると思います。
 他方で,先日,科学技術担当大臣と若手研究者の意見交換の場の座長をという仕事を内閣府でいただいて,そこで参加された皆さんから聞いていると,例えば今雇用されているプロジェクトが終わったら今年度末から職がないけれども,プロジェクトが続くかどうかその時点で分からないのでどうしようもできません,という趣旨のことを言っている人がおられました。しかも,年齢によってはだんだん家族もいたりするわけですね。そうしますと,どうするんだと。プロジェクトの今後が決まらない間就職活動もできないし,どうしたらいいの,という話になるわけです。こういうような状況に置かれている人が比較的おられる。
一方でそこに出てきた人の中で,企業のキャリアパスからアカデミアの業界に移りましたという人がおられました。この人たちは何で移ってきたのかというと,自分の思った方向で物事を深めていきたいと思ったから来ました,ということでした。だから,やっぱりこの「自分の思った方向で物事が深められる」すなわち「自由度」「裁量権」ということがきっとこの領域の魅力あるいは価値なんだろうと思います。では,この魅力・価値を高めるには,どういう制度にしたらもっとうまくいくのだろうかというのが一つ目の質問です。
 「自由度」「裁量権」に関してもう一つ加えます。昨日までベトナムに行ってきたのですがそこで私と同年代で日越大学に今勤めている人に聞いた内容です。東アジアの中でほかの国はお金もたくさんあって怒涛の勢いでやって来るようになっているが,しかし行ってみると言われたことだけをやっていれば良いという環境が少なくない。それに対して日本の魅力というのは若い学生さんたちがしたいことをまず聞いてくれて,させてくれるのが素敵という,そういう言い方を聞きました。よって,多分この国は,やはり西洋に早めに扉を開いただけあって,自由というものが根付きつつはあるのだろうと思います。これを高めるためには制度はどうしたらいいかというのが次の質問になります。
 次に,主語を,人材を選ぶ側にとります。私も中堅・中年になってまいりまして,選ぶ側にだんだんなってまいりました。そちら側の視点です。科学・技術の世界に入って来ようという方々の中から,どんな人材には限られた中から資金を多少なりとも渡し,権限を渡していくのかということだと思います。そういうときに,一つ目の質問は,キャリアの初めはとりわけ論文実績などは不明確ですが,そういう中で既存の評価軸だけで選ぶのはやっぱり難しいのではないかと。そうすると,あり得べきこととしては,科学者というのは問いを考えて,それに対して仮説を立てる。その仮説に対して証明まで行くと科学者になれるんだと思いますが,この能力は少なくともしっかりしているかという,ある種免許的な考え方で選ぶのも手かもしれません。そうすると,例えば研究スタートアップのような事業に関して,所属先の近くの人,ですが指導教員よりはもう少し離れた目でも見られるURAのような人が選ぶというような発想も今後あり得るのかな,という気は例えばします。科研費の応募件数も増えてきて,審査業務も増えているところと思いますので,多少所属機関に振ってみてもよいのかなということはちょっと思ったりいたします。
 それから,もう一つ,アウトプットが少ないうちというのは,どうしても論文一つか二つみたいな業績で判断するしかなくなるという制度のもとでは,その一つ二つを早くに出して確定したいということになって,リスクを取りに行きにくいかもしれません。でも,挑戦と失敗はやっぱり早いうちに経験しておかないとその後大きなことはできないと思います。ですので挑戦の結果として多少の失敗があっても上手に再チャレンジできる余地をうまく制度で作り込めたらいいな,とは思います。
 続きまして,主語が他国,そこから日本を見た場合でございます。日本の研究のアウトプットの国際的な魅力をこれから何で語っていくのか,ということになると思います。我が国は,我が国にとってのいろいろな幸運が重なって,今まで人口に比して大変良い働きをしてきたものと理解しております。ですが,徐々には人口と成長率が他国の方が当然多かったりするところに,当然ながら量で,場合によって質でも,勝てなくなってきているんだろうと思います。であれば,そのときに,さすがだ,やはり日本でないとできないよねと他国から言ってもらえるのは何か,という問いに対して答えられるような制度を考えないといけないと思います。言うのは簡単ですみません。後で意見交換させていただければと思います。
 そのときに,他の国では出てこないような問いに対して挑戦できているのかということは一つ問うてもいいかなと思います。とある他国のノーベル賞受賞者の言葉に,世界で誰もしていない問いを立てることが,世界でほかにない結果を生むんだという趣旨があったかと思います。世界の他国でも追っている問いに対してだけ追い掛けて,それを質量で勝つということはだんだん厳しいのではないかという考え方もできると思いまして,我が国でないとできない問いに対する答えに対してバランスを増やさなくてよいかというのが一つの問いです。
 それから,それをもし実現するとしたときに,異分野連合的な研究なんかをしたいという思いが出るかもしれません。その際に,我が国は非常に皆様真面目ですので,それぞれの分野の水準から見て完璧でないと支援はできない,と行きがちかと思います。ですが,そうするとどうしても次に進めなくなろうかと思いますので,この辺は異分野連合のときには少し別の視点も入れたような選び方を考える必要があるのかなと思ったりいたします。
 以上,「魅力」・「価値」というキーワードで意見を申し上げてみました。よろしくお願いします。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。今後の議論の中でコメント等お願いするかと思いますので,よろしくお願いいたします。
小林先生,お願いいたします。
【小林広島大学高等教育研究開発センター長】
 小林です。私は今,車椅子を使っているものですから,立って挨拶できなくて先ほどはすみませんでした。私はこの種の問題を結構長い間追いかけてきています。高等教育の分野とか科学技術の分野で人材問題や,研究費の問題その他,いろいろな分析等をずっと続けてきている,そういう立場でもあります。各国の状況をウオッチするというようなこともしてきています。そのような立場からは,お話しすべきことは山のようにあって,どこから話し出していいのか迷いますが,余り大上段に話をしても行き過ぎちゃうかもしれませんし,余り細かい話をしても細か過ぎるかもしれませんが,率直に今感じていることをぶつけてみようかと思います。
 第一は,特にポスドクの問題を中心に考えてみたい。ポスドクというのは,本来は研究者として自立していくため,あるいは将来活躍してもらうためのある種の修行期間であるということになります。大学院でドクターまで出ても,やはり一つの環境の中だけで研究していると限界があるわけです。特に他流試合をすることで自分の能力とか,あるいは欠けているものとか,逆にセールスポイントとか分かってくるということもあります。別の環境の下へ行くことで新しい武器もまた身に付けることもできるという,そういうような時期なんだろうと思っています。そういう意味で,ポスドクというのは本来必要なものであるというのが大前提だと考えています。
 しかしながら,そのポスドクの実態が必ずしもそのような本来のポスドクだけではなくなってきているということも事実です。あるいは日本では既に,ポスドクというと,今言ったような意味では使われなくなってきている。むしろかわいそうな若い研究者というようなニュアンスで使われることも非常に多くなっているという,非常に悲しい状況でもあります。
そういう中で,例えば今振り返ってみて,先ほどデータを見ていてもつくづく思ったのですが,かつて特別研究員のPDというのはとても魅力的な職だったわけです。創設当時であれば,研究者の若手の給与として,おそらく正規の職を少し上回るくらいではなかったかなと思います。ところが,現在の状況を見ると,PDの給与水準というのは,相対的に比べてみても低い状態になってきているというようなことがあって,果たして本来の持っていた役割というか期待に応えているのかというとちょっと疑問があるような気がします。一方では,博士も含めて給与をできるだけ与えるようにすべきだという議論があるわけですけれども,現在支給されている水準は他国と比べて低過ぎるという現状だろうと思います。
 これにはいろいろな原因があると思いますけれども,一つには,RAやポスドクを雇うときに安い給料で雇えてしまっているという問題もあるわけです。これをどうするかは結局は各機関なりで考える事なんだろうと思います。つまり,ポスドクの将来を本当に考えるのであれば,本来大学としてはちゃんと養成しなくちゃいけないはずでありながら,その大学自身がポスドクの処遇を必ずしも十分なものにしていない。
 例えば,これは制度的な制約もあるわけですけれども,ポスドクの活動には自由が制限されるとか,活動の制限があるとかといろいろなこともあります。あるいはいわゆるプロフェッショナルデベロップメントといいますか,自分の能力を高めるためのいろいろな機会があるわけですけれども,そういったものへの参加に関しても,これは制度的理由やあるいはそうでない部分も含めて,十分にその機会が提供されていても参加できないというようなことがあります。一番典型的なのはポスドク・博士課程のインターシップなのですけれども,博士課程はまだ長期のインターンシップに出られますが,ポスドクになるとかなり難しいというのが現実です。過去のいろいろな実績あるいは海外のことを考えてみても,ポスドクの期間のインターシップは結構やられてきていて,また,成果があるということも分かっています。でありながら,日本でそれができないというのが現実であります。
 それともう一つ,別の観点の話をしますと,実は博士課程の進学者が全然増えないという点では日本が非常に特殊なのですけれども,博士課程を出た後で必ずしも雇用状態が良くないというのは,実は今,先進国だけでなく,ほとんど国が共通の問題として抱えています。それは単に就職率だけで見ても分からない部分もあります。そういった状況を表現するのにアンダーエンプロイメントという言い方をします。アンエンプロイメントとエンプロイメントの二つに分けるのではなくて,言い換えると,就職できているか,失業しているかという二分法ではなくて,一応雇用されている状況とは言えるんだけれども,本来の処遇がされてない,あるいは本来持っている能力にふさわしい処遇がされていないというような状況を指してアンダーエンプロイメントというわけです。
アンダーエンプロイメントというのは別にポスドクに限らず,いろいろな学歴の人たちに関して言えるわけです。例えば,今,大卒でほとんどの人たちがいわゆる非正規雇用になっていくというのもその一つですけれども,実はポスドクもその典型で,国際的に見ても高学歴者のアンダーエンプロイメント状態というのは各国共通に見られる話です。ただ,それに関してもいろいろな議論があって,各国で対策等も練られたり,議論もしたりしているわけですけれども,必ずしも十分に対応できてないというのが現実です。
 では,日本はどうかということを考えると,やはり日本も先ほど言ったポスドクの状況だけでなく,博士を卒業して,若手の教員,特任助教とかいろいろな名前で呼ばれているような教員になったとしても,必ずしも雇用が安定しているわけではない。完全なるエンプロイメントの状態ではなくて,いわゆる非正規雇用に近い状況です。数年の任期しかないとか,先ほど,プロジェクトが終わったらどうなるか分からないなんて話もありましたけれども,そういう意味でのアンダーエンプロイメント状態であるというのは確かで,そういう人たちが非常に増えている。
 大学は,そういう人たちを正規の若手教員としてどんどん採用していくということが本来の責務であるでしょうし,またそれだけのポスドクなり博士の人材をきちんと育成しているのであれば,大学は自信を持っていい処遇で雇えるはずなのですが,実は大学が一番そうした努力をしていないというのが現実です。民間に博士やポスドクの雇用をお願いするのも当然重要なことなのですけれども,実は民間では昔に比べれば博士の採用は増えてきています。ところが,大学自身が同じことをしているかというと,そうでないような状況も残念ながらある。
 ここには大学が持っている二面性のようなものがあって,きちんと育成をするという問題と,そうした人たちを実際に評価して受け入れていくかどうかという問題です。ここには大学自身が二面性若しくは自己分裂をしているようなところがあるんじゃないかなという気がしています。
 ほかにもいろいろ考えていることはありますが,まずはこの辺りにしておきたいと思います。以上です。
【西尾部会長】
 小林先生,どうもありがとうございました。
それでは,今までいただきました説明,また両先生からいただきましたコメント等含めまして,意見交換に移りたいと思います。御意見あるいは今までの説明等についての御質問等ございましたら,挙手をいただければと思います。何かございませんでしょうか。
 はい,どうぞ。
【中野委員】
 若手研究者,特にポスドクの状況が非常に年々悪化しているというのは現場でも感じているんですが,特にポスドクというポストの安定性の欠如というか,次がなかなかない。それで苦しんでいる人がたくさんいます。いろいろな御説明の中でもありましたけれども,ポスドクが雇用されている形態というのは大型のプロジェクト経費あるいは科研費で雇われていることが非常に多くて,その年限で任期が決まっている。一方,プロジェクトとか,科研費にしてもそうですけれども,最終年度に成果が上がる,論文発表も最終年度に集まるということが非常に多くて,ポスドクになっている人は,その成果をまとめて発表するということと職探しを同時にしなくちゃいけないという非常に困難な状況にあると思います。
 安定というのはもちろん大事なのですけれども,研究者になろうとしている人たちは,最後まで自分のやっていることをきっちりまとめて,それから職を探したいと思っている人の方が多いと思いますので,そういう方々に対する支援。例えば任期ですけれども,そのプロジェクトで決まっている任期プラスワンみたいなことに使えるようなそういう制度あるいは支援というものは今時点でもあるのか,また今後そういうことを考えていただく可能性があるのかということをお伺いしたいです。
【西尾部会長】
 楠目室長,お願いできますか。良い提案だと思いますけれども。
【楠目人材政策課人材政策推進室長】
 今現在,1年間プラスアルファで雇用をセーフティネット的に確保する場合に,その支援を事業等で行っているというものは残念ながらないところなのですけれども,従来からテニュアトラック事業等においては,テニュアトラック審査をした後, 1年間セーフティネットの期間を置くこと等を行っておりまして,そういうものを踏まえて,大学等でいろいろな工夫を行っていただいている事例については承知しております。それは,完全に常勤ではなくて,少し非常勤の形でより自由度の高い形で雇用したりしている例などもあります。今,人材委員会の小委員会の中で各大学のいろいろな事例をヒアリングしておりますので,そうした事例はこれからも周知をして,大学等でいろいろ御検討いただけるようにしたいと思いますし,他にどういうことができるかということも引き続き御意見を踏まえて考えてみたいと思います。
【西尾部会長】
 科研費としてはどうなのか。ポスドクの方々が,例えば5年任期でも,3年半たちますと,もう次のポストのこと真剣に考えなければならなくなります。そういうときに,その状況を少しでも緩和するような制度を今後考えていけるのかどうなのかという辺りはどうでしょうか。
【楠目人材政策課人材政策推進室長】
 すみません,ちょっと御説明が後先してしまいました。セーフティネットのことを御質問だったのでそちらだけお答えしまったんですけれども,やはりポスドクの今の一番の課題としては,期間が限られているということと,その期間が限られている中で自分の自由に使える時間,自分の研究に使える時間というのが専従勤務とかがあって非常に難しいということがございますので,その専従義務を少し緩和して,何割かまでは全体の研究に役立つようなことであれば自分の自律的な研究にも使えるようにするとか,そういった制度的な改善をするということは研究力向上2019の中にも入っておりまして,そうしたことは検討していくところという形になっているとこでございます。
【梶山学術研究助成課長】
 ポスドクに限らず,若手研究者の方々,若手研究等を取られる方々がある程度長期間研究に専念でき,また,研究成果を上げていくことは極めて重要だと思います。実は私個人的に思っておりまして是非御検討いただきたいと思っているのが,今若手研究に関して2年~4年という期限になっております。ほかの研究は3年~5年ですね。2年~4年というのを3年~5年に延ばすというようなことは,今までの研究を行い,またそれを充実させて,さらに申請に充てる時間を研究に充てるということもあるんじゃないかなと思います。このようなところも含めて是非御検討いただければと思います。
【西尾部会長】
 今おっしゃった提案も一つの解決策になっていくと思います。どうもありがとうございました。
 この問題にまずは限定してはよろしいですか。どうぞ。
【小安委員】
 「この」というのは?
【西尾部会長】
 中野先生のおっしゃったポスドク期間が終わった頃に成果が出てくることに関して,何らかの形でサポートしていくような方法について,ということです。
【小安委員】
 分かりました。その観点で二点だけ申し上げます。一つは,ここで今,ポスドクという言葉使っていますが,いわゆる欧米でいうところのポスドクというのは,明らかにあるグラントの研究をサポートするもので,それを本来はポスドクといっています。日本では,例えばJSPSの特別研究員事業ではPDと呼んでいますが,実はあれは欧米のポスドクと同じではなく,自分の発想で物事を進めるために出しているもので。その辺りがごっちゃになってしまっているところが気になります。ここは整理をした方がいいと思っています。また,学振のPDは3年間ですから,逆に言うと,期間に関してはある意味でもっと厳しい状況でやっています。とはいえ,自分のアイデアによってやっているところが大きく違う訳です。ここは区別して考えた方がいいと思います。
 それから,期間ですが,これに関しては,最近は分野の違いが物すごく大きくなっています。我々生物系ですと,ちゃんとした論文を書くのにどんどん時間が掛かるようになってきています。ですから,全ての分野で同じ期間にしても,多分その分野にいる若手にとっては時間の価値がすごく違うので,もう少し精密に議論をしないといい話にならないのではないかと思います。この二点です。
【西尾部会長】
 二点の御指摘どうもありがとうございました。岡本室長からも,分野の違いということを考慮していく必要があるのではないかと先程,コメントがありましたけれども,そのことを踏まえて,今いただきました御意見をきっちりと捉えていきたいと思います。
 中村先生,どうぞ。
【中村委員】
 中村です。狩野先生の挙げられた三つぐらいの論点,どれも私も100%同意します。国内の問題,国外,全体の問題で,大変すばらしいおまとめだと思います。
 その中で特に重要なのが若手の業績評価の話です。私は今まで100人を大分超す博士学生とポスドクを会社と大学に国内外に送ってきたんですけれども,若手レベルの採用では,研究業績だけを評価した採用が行われているとは全く思わないです。三十二,三歳までは研究業績の多寡というのは運とかいろいろなことがあるので,会社は典型的にそうですし,大学でも,論文の数そのものの評価は行われません。論文がない人でも外国と日本でもちゃんと採っていただいてきました。それなぜかというと,面接してみればすぐ分かるわけです。その人の実力は議論してみたらすぐに分かるので,論文の数で勝負しようなんていうことにならない。
 アメリカは昔も今もそうですけれども,余り論文数が多くなくても,本当にいい人はいい大学やいい会社でちゃんと採っています。それを出発点にしないとこの議論うまくいかないと思います。もっとも,研究評価に関するこの世界常識を打ち破ってしまったのが中国なんですね。一流誌に何報出さないと最初から面接に呼ばないとか,大学入試並みの徹底した数値評価を導入した。大学ランキングも含めて,中国の影響が昨今の日本で出ているのかなと思います。
 それがさっきのベトナムに行った御印象という,つまり,日本はゆったり研究ができて,実力を培うことができるという,これが日本の良いところですから,これを育てていくのが我々の行く道だと思っています。つまり,論文至上主義じゃなくて,人物と研究力をきっちり見るのが若手育成である。そうすれば別に5年までぎりぎりプロジェクト終了までいる必要もなくて途中で出て行ける。私のポスドクでもみんな2年ぐらいでいなくなっちゃいます,いなくなる方が本人にとってもいいわけです。そういうふうに私は思います。
【西尾部会長】
 どうも貴重なコメントありがとうございました。今,中村先生のおっしゃったことは,研究の評価ということも含めて本当に重要な観点かと思いますし,日本としては,そこがある意味の特徴でもあるということで,貴重な御意見ありがとうございました。
他にございますか。どうぞ。
【小安委員】
 もう一つ別の観点を。修士の学生が博士に進学しないということを先ほどデータを示しいただきましたが,実はそのページの一番てっぺんにあって,赤でなぜか囲われてないのですが,経済的に自立できないというのが90%ぐらいを占めているわけです。結局この問題は日本だけだと先ほどもありましたけれども,私は少なくとも博士後期課程の学生には給与を出すべきだと主張しています。
 一方で,最近,もう一つ別の問題が入り込んできています。それはこの前国大協や学術会議からも声明が出ていましたが,働き方改革の中で,自己研さんをどう見るかということが非常に曖昧になってきています。きちんと労務管理をせよということが労働基準監督署から大学も含めて言われるようになってきて,こういう中で学生に給与を出すと,結局そこを管理しろということがまた出てくる。
 私は理化学研究所で仕事をしていますが,我々は大学ではないので奨学金という形では出せないので,給与の形である程度出します。そうすると,きちんと勤務時間を管理しろみたいな話になってくるのです。学生がどうやって研究したらいいかだんだん分からなくなってきているような気がします。こういう問題が多分現場でどんどん増えてくるのではないかと思います。
 これは別に学生だけではなく研究者全般の問題になっています。自己研さんというのを最近の労働基準監督署は認めずに,全て労働時間だという言われることは多分いろいろなところで経験していると思います。これはここだけで解決できる問題ではないのですけれど,こういうとこも含め,研究をしたい若い人たちをどうやってサポートできるかということを考えないと,益々研究成果が落ちていくのではないかという不安を持っています。これもどこかできちんとお考えいただきたいと思います。
すみません。以上です。
【西尾部会長】
 どうぞ。
【中村委員】
 私は東京大学所属ですけれども,東京大学の博士の雇用はよく考えられていて,RA雇用は時間管理ではなくて,成果管理でやっているんです。一方で,マスターの学生はまだ時間で管理しているんで学生,事務双方の負担が多いのすけれども,ドクターの学生の方は研究プロジェクトを委託して,そのプロジェクトのアウトカムを,委託している先生が評価するので,時間管理になっていないんです。
【小安委員】
 労基署が認めるかどうかというのが一番のポイントなのです。
【中村委員】
 労働しているのではなくて,事業委託じゃないかと思います。これは調べていただかないと分からないです。ポスドクの方は時間管理なので今後問題が懸念されます。ポスドク勤務は9時から5時になっているので問題がでると思うんですけれども,東京大学の博士学生RAは成果の管理と理解しています。
【西尾部会長】
 どうぞ。
【竹沢委員】
 先ほどの小安先生の御提案を受けてですが,以前からの持論ではあるのですが,現行のティーチング・アシスタント制度をもっと実のあるものにできないかという提案です。
 それは三つの意味での一石三鳥だと思うのです。一つはもちろん経済的な自立。例えばアメリカのTAのように,授業料免除に加えて給与が出て,親からの仕送りも奨学金もなくてもやっていけるしくみ。
 二点目は,教育としてのインターン効果です。アメリカの大学によっては,博士後期課程の間の少なくとも1学期はTAをしないと博士学位をもらえないといった必須にしています。少なくとも私の知る国立大学でのTAは形だけのもので,余り本人の役に立っていると思えない。しかし,例えば教養課程で講義をする教員がいて,それを小人数,20人ぐらいのクラスに分けて深い議論を学生たちとする,教室の中に教授がいない状況で,自分独りで議論をリードしたり,より丁寧に説明する,場合によっては少人数クラスの成績をつける,といったことで,教育としてのインターンシップができるのでないかと思います。
 三つ目の点は,これは研究に関することです。やっぱりポスドクというのは,私たちの分野では,博士論文を本にまとめるという意味で一番有益なのですけれども,視野がかえって狭くなりがちので,博士後期課程の中で,できるだけ分野の違う,例えば文系であれば理系の手伝いをする,理系であれば文系の手伝いをするぐらいのことで,それが10年後,20年後に,本当の意味での分野融合的な研究テーマを見付けるということにつながると思います。ティーチング・アシスタント制度を是非もっと充実した制度にしていただけたらと思っております。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。ティーチングアシスタント制度のことも文部科学省で是非いろいろ考えていただければと思います。
 その前に小安先生からおっしゃっていただいた点は,これはやはり日本のアカデミア全体が一緒になって,厚生労働省との間できっちり協議をしてかないとならない課題であると私は思っています。この問題は文部科学省でも是非考えていただきたい。国大協でもこれは大きな問題として捉えて,近いうちに厚生労働省の方と対話する予定にしております。
【村田研究振興局長】
 今,西尾部会長からもお話があって,たしかこの席でも前に同じ問題提起を頂いたことがございます。今,部会長からのお話のとおり,これは国大協の方でもこの点を問題提起されておられますし,また小安先生からも話がありましたが,これは研究機関,研究開発法人の中からもそういうお声がございます。
 それで,今,状況から申しますと,これも御案内のとおり,そうした問題提起を受けて,厚生労働省の担当部局と国大協あるいは研究機関側が少し具体的な意見交換,実例でこういうところはどうなんだろうか,あるいは逆にこういう工夫をしたらうまくいくのかということの意見交換を始めていらっしゃるということで,我々としても一つそれを注視していきたいと思います。
ただ,問題点としては,お話がございましたが,これ,裁量労働制を入れるというのは実際に多くの大学研究機関ではありますけれども,ただその場合でも,深夜とか休日のお金は出さなきゃいけないと。そうすると,当然,勤務時間を把握しなきゃいけないわけで,そこで,今お話があった,結局,研究者にとっての勤務時間とかいうのは一体どこまでなんだという問題,これはなかなか必ずしも条文だけでは解決しない。実態を踏まえながらいい知恵を考えていかなきゃいけない部分かと思います。
 いずれにせよ,何かすぱっとこれさえやれば全部解決するということではありませんので,実態,研究機関の状況をよく見ながら,労働法制の中でどういう解決策があるのかと,これは我々の方も関心を持ちながら,是非考えさせていただきたいと思っております。
【西尾部会長】
 どうかよろしくお願いいたします。小安先生がおっしゃられたように,この問題は若手研究者の育成ということにも相当深く関わってくる課題であるがゆえに,非常に重要だと思っておりますので,どうかよろしくお願いいたします。
 はい,どうぞ。
【竹山委員】
 長時間勤務も内容によると思います。例えば,集中して時間を忘れることもあるかと思います。その結果,研究者自身にとって充実感があるのであれば良いと思います。しかしながら,研究者としての本務から離れた様々な雑用的仕事に時間を費やすことには疲弊します。今一番必要と感じるのは?という問いには,研究時間と答える若手研究者が多い現状は問題だと思います。
どうしたら労務規定範囲内で効率的に研究時間を確保し成果を上げるか,となるとやはり研究以外の雑多な仕事,さらには研究における様々な雑事を多少なりとも肩代わりできる人材の配置が重要ということです。海外においても,研究者の時間確保は重要な課題です。ドイツのボン大学では,研究に付随する多様な業務を補助する博士号を有する人材をパーマネントポジションとして配置し,研究者の研究時間を確保し,研究力強化を図る改革を行いました。結果,ドイツ国内でのハイランキングな大学として認定されることに成功しています。
 研究人材の質を高めるためには,多様なサポートが必要です。研究レベルを上げるためには,研究力の向上が必要です。そのために研究者が何を必要としているかということを考えた上でもう少し方針を考えるべきかと思います。
【西尾部会長】
 どうも貴重な御意見ありがとうございました。どこの研究機関でも,やはり今,若手も含めて研究時間がどんどん減少しているということ,この声が強く出ていることは間違いないと思います。これは特に大学とかですと,教員だけでは解決しない問題があります。事務といかに協力しながら働いていくかという協働ということをどれだけ実現していくのか,あるいは,今,教員のポストでもなかなかおぼつかないときに,教育研究をサポートしていく人材をどれだけ任用できるかというのもまた大きな問題です。今そういう観点から大きな組織的なパラダイムシフトというか,改革をしないと,今おっしゃられた問題というのはなかなか解決しないと思います。
 これは大学等の研究機関の自助努力でどこまでできるかということと,そういうことをいかに施策としてサポートしていくのかという両面から考えないと,なかなか解決しないとは思います。確かに大学において研究時間の減少は,日本の研究力が今,物すごく危機的な状況であるところの根幹として研究時間の問題があって,それがさらに若手の研究者にも相当影響を及ぼしているということは事実だと思いますので,それをどう今後我々考えていくかというのも必要かと思います。
 上田さん,どうぞ。
【上田委員】
 ちょっと同じ話題でしつこくて申し訳ないのですけれども,これはアカデミアだけじゃなくて,企業も同じです。私は企業の基礎研に所属ですけれども,若手が今何を一番不満なことは,午後10時以降に会社のシステムに入ったり,あるいは土日にプログラムを走らしているのがうまく動いているのかを確認すること自身がもう禁止されているわけです。深夜勤という扱いになっていまして。
 以前から思うんですけれども,Society5.0って人間中心社会と内閣府が言っているわけですよね。情報化社会というのは,標準化して皆繋がるようにするんですけれども,人間中心というのは人間,人によって価値観も違うんですね。こんなことを前面に出しているのに制度は全部一律。これは確かに宅急便業者などの方々が深夜まで働かされていることを改善するという意味では,制度そのもの悪く言っているわけじゃないんですけれども,研究者は誰も望んでないですね。
メールなんていうのは仕事じゃないんです。これを土日や深夜に確認できず,月曜の朝の貴重な時間に処理するのは時間の無駄ということは誰も分からないんですかね,ということなんです。これは裸の王様状態なんです。ある人はこれを第2のゆとり教育と言っている人もいますし。
 このような状況なので,若手もそれで辞めていく人もいる。どこに行くかというと,GAFAに行く。GAFAは自由ですから,時間外にメールを読もうが何しようが,好き勝手にできるわけですね。これがやっぱり日本と欧米というか外資の研究機関との大きな違いで,これは基礎研究所だけじゃなくて応用研究所でも同じ現象なので,やはり寝食忘れて研究をしてノーベル賞を取ったというような武勇伝がある一方,今だともうその真逆をさせるわけですから,これで研究成果を伸ばせなんていうのは,あり得ないです。早い段階でこれを改善しないと。
 企業はもっと厳しいんです。ブラックリストに載るので,コンプライアンスの色々なシステムが作られ,そのシステムをマスターするだけで大変なんです。どう処理していいか良く分からないシステムがどんどん入り込むわけです。とにかく勤怠管理を不必要に厳しくするような状況で。これはもう本当に大変な状況ですよね。
今,いつでもどこでもいろいろなものができる時代になっているのに,それが全部禁止されているというような状況は,これはアカデミアだけじゃなくて,いわゆる研究開発というような自己研さんを伴うような業種に関しては何か別枠のルールを設けないと,大変なことになると思います。
 以上です。
【西尾部会長】
 どうも上田委員,ありがとうございました。大学とか公的研究機関に限定した問題かと思っていましたら,全然違うことがよく分かりました。これは国を挙げて,働き方というか働きがい改革を真剣に考える必要があります。日本が,今後,国際競争力の上でどういう形で戦っていくかということの本質的な課題かと思います。是非,研究振興の観点から今の問題は強く意識していただければと思いますので,事務局でもよろしくお願いいたします。
どうぞ。
【狩野岡山大学副理事】
 すみません,今までのお話にちょっとだけ付け加えさせていただきます。多分これは,自分の中に内発的な動機付けを感じられるような仕事が,自分の仕事の時間にひも付いているのかということなのではと思います。同様の観点は多分審査のときもあるのだと思います。申請している人の内発付動機付けに基づいている何らかの内容が,審査側から見ても「わかりました」あるいは「わからないけれどもやってみてください」と言って差し上げるべきものなのか,という判断です。
 私,今西日本におります。西日本には,「おもろいな,やってみなはれ」という感覚がありますよね。何かそういうのがもう少し何かないと,特に若い人から出てくるかもしれない,今の時点では何だかよく分からないが将来大化けするかもしれないものというのが伸びない可能性があるかなと思っております。こういう感覚も上手に東京のどちらかというとリジッドなシステムに,私,東京出身ですけれども,入れられると「おもろい」かなということは思ったりいたします。
 もう一つだけ,最近アメリカから,ムーンショットならぬ『ルーンショット』という名前の本が出まして,なかなか面白い内容です。何かというと,結果として競争に勝っていくような,変なものをどうやって出すか,そのためにどういうマネジメントができるかという内容の本です。その中に一つ書いてあるのが,アーティストとソルジャーが世の中にいますと。さっきから話が出たのは,多分研究者側,アーティストの側なんですけれども,ソルジャーもいないと世の中うまく回らない,ソルジャーの人たちは今まであるものをしっかり守って働く人だと。このバランスをうまく取れないと,アウトプットは出ませんよと書いてあります。今の議論に資するかと思ってちょっと申し上げてみました。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 どうぞ。
【白波瀬委員】
 分野が違うので,一つ確認なんですけれども,できる規定にするのか,できない,禁止するのかって,制度を作るときにここは重要な判断だと思うんです。それで,一律禁止というのは,この流れは日本の制度設計としては非常に特徴的なような気がするんですが,10時とか11時とか自由に出入りオーケー,それだけの時間働くということを当然とびっくりしないというのは,日本だけじゃなくて,これはグローバルに同じなのですかというのが一点。
 それと,多分,別に厚労の方に肩を持つわけではないんですけれども,多分この手の制度を作ったときには,何を最も避けるべきかというところを中心に制度が上がっていると理解しています。今,いろいろな単純労働者とか,二つとか三つとか仕事を掛け持ちしてというような場合があり,過労死との関連もあって,このあたり制度設計を高度知的人材に単純に応用してよいのかという議論があるとは思います。その一方で,若手にとってやっぱり絶対的なある意味の権力の違いはあって,そのあたりは少なくとも制度設計をする方としては敏感になりながら制度設計をしなくてはいけないと思います。できる規定を加えることはわかりますが,本当はやりたくないけれどもさせられるという状況をしっかり声が上げられる制度も同時に設計する意味です。
つまり,制度自体の設計がもう本当に縦割りなんですね。ですから類似しているところで重複しているところの検討が重要です。あとはやっぱりグローバルスタンダードというか,外から日本がどう見られていて日本の有利さをどうアピールしていくかという,特定の国との比較ではなくて日本型でよいのでそこで付加価値をどう作るのかという意味で少し相対的に考えてもいいかなというふうに感じました。
【西尾部会長】
 非常に貴重な御意見をありがとうございます。中村先生,どうぞ。
【中村委員】
 今の最初の問題は,去年の会議で,私が少し勉強したことを披瀝したと思うんですけれども,アメリカのシステムは,学識者エグゼンプション,学識を持った人の例外規定が労働基準法にあって,芸術家も同じく例外なんですけれども,時間管理では無く成果管理です。芸術家の定義は分かり易いですが,学識の方は,なにか簡単には達成できないようなクオリフィケーションがある人という定義です。そのような人と雇用者とはある特定の特別の契約を結ぶわけです。ですから,会社の研究者とか大学の先生はみんな,その学識者のカテゴリーということで,時間管理から外れる。その代わり,お互いに別のタイプの義務と権利が生じてくるという仕組みになっている。それは日本でも導入が簡単にできるんじゃないかと思います。
【西尾部会長】
 今のことですか。はい,小林先生。
【小林広島大学高等教育研究開発センター長】
 もしかしたら皆さん御記憶だったのかもしれないですけれども,今から20年ぐらい前に日本でもホワイトカラーエグゼンプションの導入に関する議論がありまして,たっぷり議論したのですが,すでに労働法制の下で守られている人たちの既得権を守るために,結局,ホワイトカラーエグゼンプションは日本では導入できなかったという経緯がありました。ですから,もう一回そのような論争をすることを覚悟して取り組むということなんだと思います。
【西尾部会長】
 白波瀬先生,どうぞ。
【白波瀬委員】
 すみません,基礎的なデータなのですけれども,これ,厳密じゃなくてもいいんですけれども,平均でもいいんですけれども,実験室滞在時間の国際比較みたいなのはあるのでしょうか。もしあるとすると,分野によって国別に違いはないのか,特に日本は長いのかという,そういうデータはあるんですか。
【小林広島大学高等教育研究開発センター長】
 正確に調べてもいいんですが,とりあえず記憶に基づいていいますと,時々その種の記事が国際的な学術雑誌の記事として載るんですが,実はどこの国でも研究者の実験室滞在時間は結構長いということが言われていまして,同時にそれは余り良くないということも言われています。長いだけがいいということではないということはよく言われます。
【西尾部会長】
 私が聞いている話では,小安先生も先ほど問題にされたのですけれども,今度の法律改正の話を聞いた海外の研究者が,日本は何で研究力を自らそぐような法律改定をするのか,ということを言われています。
 今後,厚労省といろいろお話しする際でも,海外は一体どのような制度になっているのかということはきっちりと調べておく必要があると思っています。
 はい,どうぞ。
【小安委員】
 その例外規定に関しては,今の法制になる前は例外規定が何職種か,数は覚えてないのですが,二十幾つか何かの職種が挙げられていたと思います。その例外規定を撤廃したわけです。それが先ほどの小林先生がおっしゃった議論の辺りだと思います。そのときの状況が一体どうだったかというところと比較しないと多分説得力が出てこないのではないかなと思います。そういうデータもし取れるのであれば,取っていただくと良いのではないかと思います。
【西尾部会長】
 ほかにございますか。どうぞ,井関先生。
【井関委員】
 すみません,少し変わるんですけれども,先ほど小安先生のお話を聞いていて,研究の底力を付けるには,やはりある程度裾野が広い状況からある程度山状になっていかなきゃいけないと思うんですけれども,実際,経済的,給料が出ないとかそういったことではなくて,本当に研究をしたいという人が若い人の中にどのぐらいいるのかというデータお持ちの方はいらっしゃるんですか。要するに,それが落ちてきているとしたら,そこはまず研究に魅力があることを示さなければいけないんだと思うんです。
実際に本当に研究したい人で経済的に余裕のある人は残るわけです。博士課程にも行くし,その後,ポスドクもすると。でも,そんなに別に研究に興味ないんだから,お給料出るわけでもないし,もうこれだったら,先ほどの理工系修士学生が博士課程進学ではなく就職を選んだ理由というところに,社会に出て仕事がしたいと。もちろんこれには一部,研究という内容も入ってくるのかもしれませんけれども,そもそも研究をしたいと思っているという若者の数ですか,割合というのがどう変わっているかを御存じの方は,すみません,私は存じておりませんけれども,いらっしゃいますか。
【西尾部会長】
 本質的な問題だと思うのですけれども,どうでしょうか。
 はい,磯谷所長。
【磯谷科学技術・学術政策研究所長】
 NISTEPの所長の磯谷です。我々が持っているデータですと,例えば大学院のJGRADとかいろいろデータベースがありますし,ポスドクになっている方たちのデータがありますので,その人たちの意識調査,要するに,バックキャストで,あなたたちはどういうことでこの道を選んだかみたいなところの中に,もともと研究には非常に興味があったとか,そういうのはあるんですけれども,一般に若者の中での調査というのは,昔やっていたかもしれません。それは調べてみます。
 それからあと,人材政策委員会でもそういう基礎データみたいなものを集めているので,もし科政局の方でそれがあればということですけれども,いずれにせよあるかどうかちょっと調べてみます。
【西尾部会長】
 どうかよろしくお願いします。
 科研費事業だけではなく,ほかのいろいろな研究費に関する事業との関連で総合的に議論をすることの重要さを御指摘いただいた甲斐先生にお伺いします。これまで皆さん方から非常に貴重な御意見をいただいておりますが,このような議論の流れでよろしいのでしょうか。甲斐先生としては,ここで議論すべきことが別にあるとか,そういうようなことも含めてコメントいただけるとありがたいです。
【甲斐委員】
 大分ハードルが上がってしまいました。今日は話題がポスドクから始まってしまったので,ポスドクのインターシップを作るとか,給与とか待遇とかを上げるとか,そういう細かい対策に走っていってしまったんですけれども,私は,今日本の研究力が落ちていることや,若手が育たないなど,ポスドクの就職の問題も含めて,こういう問題の大元はそこじゃないと思っています。ポスドクの待遇について,丁寧に優しく考えて少しずつ良くしてあげても,日本の研究力,日本の若手育成の問題に行くまでには道のりがすごく遠いと思うんです。
 現在の本質的問題は,やはり学生が大学院博士課程に来なくなった,これが一番大きいと思います。それから,学生にとって博士取得後のキャリアパスが見えない,これもとても大きいと思います。研究をやりたい学生はたくさんいます。入り口で,やってみたい,学者が何だか分からないけれども,面白いからやってみたいという学生はいる。でも,実際に進学しようとするとすごく不安になるんです。キャリアパスが見えない。経済的自立ができない。それで,辞めてしまうんと思うんです。だから,大学院に来ない。
 ポスドク問題と言いますけれども,先ほど示された大学院生の数を見ると日本人の大学院生はもう極期と比べると6割ぐらいになってしまっているんですね。私も,ポスドクを募集すると応募して来るのは外国人が多くて,日本人はほとんど来ない。実感としてそのぐらい減っています。こんな状況でポスドクの待遇改善を議論しても外国人ポスドク用になってしまいます。
外国の学生を入れるのは良いことですけれども,外国のポスドクの多くは期間が終わったら日本を離れてしまいます。日本人のポスドクがいなくなったら,将来の日本の教育を担う教育者,大学のPIになって残っていく研究者がいなくなってしまうのです。そういうことまで考えるとまず日本の学生を大学院に行かせなきゃいけないと本当に思います。
 その対策の一つとしては,小安先生のおっしゃるように大学院生に給与をあげることは必要だと私も思います。スチューデントサラリーみたいなものですね。
 ただ,これら数々の大きな問題をもたらした要因は,制度改正だと思うんです。大きな要因の一つは任期制の導入だと思います。任期制のない,以前はテニュアだった助手はたくさんいたのに,それに任期制を導入した。ここで,大学教員を目指す学生が減りました。自分は助手になっても5年で,安定的な就職ではないんだと。
 それで,その上に無期雇用転換制度の導入の改正です。10年を超えると無期雇用に転換せねばならないので,5年任期が2回目の終了前に雇い止めをするのが現実になってしまった。もう若い人は,自分の任期は10年はないと考えます。そんな不安を抱えて,職探しをしながら研究するよりは,社会でもっといい給料をくれる安定した企業から誘われるとそっちへ行ってしまいます。
もう一つの大きな要因は,財務省が運営費交付金を毎年1%下げる政策を10年やったことです。大学がそれに対して取った対策にも問題はもちろんあります。人数を減らさないで,みんなで雑用増やして何とかしようとしたというのは大学の責任だとは思いますけれども,結果,PIが本当に雑用が忙しくなって研究の時間がなくなってしまいました。
 学生は先生方を見ているんです。すごく忙しくて,研究なんかやっている暇がないことを。研究をやりたくて入ってきたのに,先生は忙しくて研究時間はなくなるし,楽しそうではないと。しかも,その先生になるのにも,まず大学院に入ると経済的に自立できない。ポスドクになったか,あるいは助手になったとしても任期がある。若い子たちにも当然,自分で自立したいというという人生設計があって,そっちの方が先なのです。日本で研究者をやることが魅力的でなくなってきているのです。
 こういうことは,十何年前にここで何度も議論しました。でも,それでも何も変えられませんでした。いまだに任期制や雇い止めの問題は大きいのに,大学をこれら制度から外すという動きはないですよね。そこは置いといて,少しポスドクの待遇を改善しようとか,インターンシップをちょっと入れようとか,ポスドクにもカリキュラムを作ろうとか,それは小手先だと私は思っています。やるんだったら,制度から本気で考えてほしいと思います。
 その制度との闘いは,そちらにいらっしゃる文科省の方々に頑張っていただいて,我々は意見を上げて,応援エールを送ることですね。
 やはり,最初は,一つ目の問題の大学院生を何とか増やすことを考えることかなと思います。そのために,給料制度は最初だと思います。
 もう一つ,若い研究者がすごく不安に思っているのはキャリアパスです。企業に雇う枠を作ってほしいという議論をここ10年ぐらいここでやってきたんですけれども,なかなか変わってこない。少しは増えてきましたが,でも,なかなか目に見えてはかわりません。
 最近,私,大型の国際共同研究をやるようになっていろいろ気付いたことがあります。大きな国際共同研究には,多数の契約とか,国や国際組織によって異なる規制対応とか,経理運営のやり方の違いとか,様々な異なることに対応せねばならなくなります。それで,私は理系ですが,研究内容に対応するだけではだめで,文系の方々のたくさんの協力が必要です。そうすると日本人は,事務の経理担当者,弁護士,規制や権利対応関係の方々というふうに,みんな個別に参加していただいて,頑張って一緒にやろうねということになるのですが,外国のチームは両方のキャリア持っている人が多いのです。ほとんどの人が,PhDを持ち,MBAも持ち,経理や規制対応もわかる。弁護士でも理系の業務に強い方がいる。我々がやっているようなトランスレーショナルリサーチでは特殊な契約とかがあるんですけれども,それに物すごく明るい専門的な弁護士とかがいたりします。理系,文系の縦割りの壁が日本とは違うと感じています。
 私,日本にそういう方がいないのかとちょっと探したんですけれども,難しい。大学にはそういう両面を教えるコースもない。外国のように,理系のPhDが,ちょっと法律を勉強したり,ちょっと経営経済を勉強したりということが少ないです。MBAを取りたければ外国に行って取っていますね,日本も最近MBAコースが出来てきていますけれども,数が全然違います。だから,外国では両方持った人たちがトップのところにたくさんいて,それに対して日本は全く不利だと感じました。
 最近,日本の大学も国際化せよとか国際的大学を目指せとか言われておりますが,何かもっと教育制度とか体制を考えなければいけないんじゃないかと,すごく身にしみているんです。これは大学院教育や研究者養成にもやっぱり関わると思います。そういうPhDを持った人達の活躍,必要性が高くなれば,それは立派なキャリアで,キャリアの幅が広がると思います。URAの話をここで何度もして,補助制度が出来たことはとてもいいんですけれども,見ているとやっぱり文系の事務の方がそのままURAになっているのもありますし,理系の人も入れようというという話もありましたが,決して一緒ではなく教育も業務も別々です。数も外国と比べて圧倒的に少ないですね。だから,キャリアパスの考え方ってまだまだ広げられるんじゃないかなと思うんです。
こういう委員会で,何でも言ってよろしいのでしたら,制度についても根本的に議論しなおして,国に見直しをお願いしたいというのと,そういう何か新しい教育システムを作れないかというのをみんなで考えて発案していくというのが大事なのではないかと思います。
 これぐらいでいいですか。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。本当に貴重な御意見をいただきました。
 では,栗原先生,それから,中野先生。
【栗原委員】
 私はちょっと皆さんと違った方向の意見を言いたいと思います。まず,先ほどの狩野先生の言われた魅力というようなことに関しては,日本人の真面目さをもう少し緩めて考えることもあるかと思います。自分が外国でポスドクだったときのことを考えると,いい若手研究者がいたら先生たちは一生懸命引き止めようとして,有名なカンファレンスなどにどんどん参加させてくれて,ここへ来たら面白いだろうという,そういうカルチャーが外国の方が大変成熟していると思います。やっぱり優秀な人をどういうふうにアカデミックにとどめるかというような,そういうことの腕というか,そういうことの工夫も必要と思います。
 研究者にとって,良い論文出すのは大変大事なんですけれども,その成果でリターンが来るのは非常に長い時間です。それに対して,もう少し若手の研究をやっていて楽しいという気持ちをどう維持していくのかということに配慮することではないでしょうか。研究をやっていれば普通,基本的には楽しいはずで,それを共有しながら仲間を作るというなところに対して工夫していく,そういうカルチャーをコミュニティが少し持つというのは大事なんじゃないかなと思います。それが一点です。
 それからもう一つ,経済的に自立したいという学生さんに対してですけれども,こういう人たちの家族がの理解を得ることも大事だと思います。私の友人には,ポスドクは無給だと思っている人がいます。それは従来,家庭で研究しているような人,あるいは研究室でかなりアルバイト的なことで暮らしている人たちもいらっしゃったイメージの方が強いのかと思います,現在,ポスドクの人は給与もあり一人前に働いていていることが,必ずしも社会に伝わってなくて,若手研究者問題という言葉だけがよく外へ出て行くので,この辺りももう少しきちんとコミュニティとして伝えた方が良いのではないかと思っています。
 最後に,現在,例えば大学院生の数は,大学で教育を担当する人たち,将来の担当者を育てるという観点からすると決して少なくはないはずなので,やはりキャリアパスを広げて広く活躍しているんだということもきちんと伝えることも大事だと思っています。先日この話を中村先生に学術会議でしましたら,みんなで調べようと言っていただいて,そういう発信ができたらよいと思っているところです。
 具体的には例えば会社に勤めてどう活躍できているか,ドクターを取ったらどういいのかということをもうちょっと真剣にくみ上げて,学生にも,それから,社会や御両親にちゃんと伝えることが大事なんではないかと思います。特に地方には,早い段階というか,20代の後半で独立してなかったら,やっぱりちょっと変わってるねと見られるカルチャーがまだ今でも残っています。それで,いろいろな意味で制度も非常に大事ですが,私たちもまだ努力できることが全くないわけではないような気がします。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。中野先生も甲斐先生の御意見に関する御発言と考えてよろしいですかね。
【中野委員】
 それも加えます。まず甲斐先生のご意見,本当に賛同いたします。キャリアパスの広がりも大事だし,それから修士から博士に上がるというところを何とか強化する,その二点は大事だと思います。
 実は我々の研究所で,ほとんどの学生は学部のときには受け入れていなくて,修士から入ってきます。その修士から入ってきた学生の進学率が高いんです。これは我々のところだけではなくて,共同利用・共同研究拠点という制度があって,日本に77か所ぐらいあるんですが,そこのセンター長,所長はみんなそう言っています。だから,学部から修士に上がる段階で研究室を変えた人,そういう経験を持っている人は,その後も続けるという力をそのときに得るということが考えられるのではないかというふうに考えます。宇宙線研の梶田先生もそのことをおっしゃっていて,そういう人に対する奨学金制度なんかがあればいいんじゃないかとおっしゃっていました。それが一つの意見です。
 それで,もう一つなんですけれども,やはり最初に申し上げた任期なしのポストの方,それから,ポストドクターの方の職の安定というところにもう一度戻りたいと思うんですけれど,今日資料4でお配りいただいたスライドの5ページになりますけれども,任期なしのポストがどんどん増えていて,任期付きのポストが減っているという,こういう状況があるんですが,これ,今の状況を見ると,とてもこれは小手先で改善されるように見えない。先ほどもお話ありましたけれども,大学の予算はどんどん減っておりますし,それから,東大なんかでも60歳が定年だったのが,だんだん定年の年齢が上がっていっているということで上がつかえていっている。この状況が変わらない中で若い人たちに夢を持てというのはなかなか酷な,これは本当に構造的に変えないと難しいのではないかというふうに考えます。
 私も海外でポスドクをやっていたことがあるんですけれども,日本へ帰ると言ったら,その途端にテニュアトラックのポストを提示されたんです,それも即座に。それは,彼らにはその力があるわけです。置いておきたいと思ったら,ポストを提示する。日本のPI,中村先生は違うと思いますけれども,ほとんどのPIにはその力がないです。だから,科研費を得てポスドクを雇って,ものすごくできることがわかった,成果も上がっていると,どうしても自分の下に置いておきたいと思っても置けない。
 卓越研究員制度というのがあって,それを緩和する制度なんですけれども,これってよく知らない人が審査して選んで,この人はどうですかと話が来るわけです。我々は受け入れたことがないです。非常に使いにくい。我々というかほとんどのPIが本当にしたいのは何かといったら,プロジェクトで雇用した中に,自分の力を証明して,研究者としてもやっていける,この人はアカデミアに残るべきだと思った人に対して,任期なし或いはテニュアトラックのポジションを与えるということです。
 もちろん組織の中で無理をしたら,何人かはできます。実際やっています。でも,今の予算状況からいうと非常に難しい。承継ポストに就く年齢は,今の状況を見ると,今後もそんなに早まらないと思います。でも,テニュアトラックに就いて,いつかは承継ポストに就くことができる。テニュアトラックの時期も承継ポストの方々と比べて給料的にもそんな見劣りしないという,そういうような制度ができたら,ある程度は今の状況を緩和できるんじゃないかと思います。以上です。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 どうぞ。
【梶山学術研究助成課長】
 議論の御参考にということで,後ほど御説明しようと思ったんですが,政府全体の動きということに関して御説明したいと思っております。資料6の隣の参考資料1というところをちょっとご覧いただいてよろしゅうございますでしょうか。
 「研究力強化・若手研究者措置支援総合パッケージ」案というものが,今,CSTI,総合科学技術会議の方で議論がされているところでございます。そこにおいては,我が国における研究力の現状というもの,こちら,1ページ,それから,課題というところで,今お話があるような,修士課程から博士課程の進学率減少など,それから研究時間の減少などの話があり,3ページの目標のところで,若手に関する博士課程・修士課程におけるキャリアパス,それから,博士課程における研究とマネジメントできる人材の育成,若手研究者・中堅・シニアに対しての支持というところで,ある意味,先生方の今までの問題意識ということに関してはまさに同じような形で対応を考えている議論が今進んでおります。
 4ページをご覧いただければと思いますが,施策の方向性というところで何点かあるわけでございますが,特に若手ということであれば,多様な財源による若手人材のキャリアパスの拡大,有給インターンシップの拡充であったり,大学院博士後期課程学生の処遇の改善等というのが方向性として重要なのではないかというところ。ちなみに,資金のところでいえば,切れ目ない創出に向けた,研究者の多様かつ継続的な挑戦の支援,それから,自由な発想の挑戦的研究を支援する仕組みなどが挙がっているわけでございますが,特に今議論になっているところの人材のところで,5ページをご覧いただければと思います。
 制度というところでどこまで検討されているかというところに関してはいろいろ御意見あると思いますし,様々なプレーヤーがそれぞれやらなくちゃいけないことがあるんだと思いますが,例えば優秀な若手研究者の安定と自立の確保については,一番上にあります各国立大学における年齢構成を考えた持続可能な中長期的な人事計画の策定,それから,若手研究者の自立や人給マネジメント改革に応じた運営費交付金の配分。それから,若手研究者支援を含めた国立大学の運営費交付金の配分の検討。
また,全ての競争的研究資金において,その性格を踏まえつつ,これ,科研費ということはちょっと違うんじゃないかということで私どもも申し上げているところでございますが,PI人件費の可能性について不断には検討していき,基本的に,できるものに関しては来年以降やっていこうということ。これは,産業界との共同研究も含めて,若手研究者のポストの確保。それから,先ほどの若手の研究者のエフォートの一部割合について自発的な研究活動へ充当可能とすることによる研究機会の拡大。それから,表彰,卓越研究員制度事業の重点化など。
 それから,産業界のキャリアパス流動の拡大というようなこと。
 さらには,人材については,博士課程の魅力向上,また,例えば2番目にあります競争的研究費や共同研究費におけるRA等の適切な給与水準の確保の推進。それから,ネットワークの推進,ダイバーシティの拡大,このようなところが御議論されているところでございます。
 大きな方向性として今先生方に御議論いただいた方向性にあるんだとは思っております。個別の制度としてどう考えていくかというのはまた個別で考えていく話なのかというふうに考えておるところでございます。今こういう計画が検討されているということの御紹介でございます。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。甲斐先生がおっしゃられた根本的な問題とは生活費の支援ですかね。本質はそこがネックになっていると考えてよいですか。
【甲斐委員】
 結構大きいよね。
【山本委員】
 ちょっとよろしいですか。私も,それはやはり本質だと思います。日本の考え方というのは,受益者負担です。これだけの高度教育人材が必要であるという社会的要請にもかかわらず,全て自己負担である。その結果何が起こるかというと,リーディング大学院等でやっていた給付金というのが評判悪くなっていて全部労働対価として払いなさいという方向になっています。だから,結局,そこのところがやはり本質的な課題だと私は思っています。
【西尾部会長】
 分かりました。
【山本委員】
 更にもうちょっと言うと,そういうことを考えるときに,研究の支援と,それから,大学院生の支援というのが,私は何となく不可分のものになりつつあると感じています。それをどう結び付ければいいか,科研だとか研究資金のシステムの中にどう結び付ければいいかは議論が必要だし,非常に慎重な議論が必要だけれども,研究力と大学院生育成を別にやっているということがもはやちょっと時代遅れという状況になっています。
【西尾部会長】
 分かりました。大学院生の人数が少ないことの本質的な要因は,経済的な支援の問題だということを捉えられれば,それに対してどう対応できるのか。今先生がおっしゃったことも一つの解決案ですね。
 どうぞ。
【射場委員】
 私は民間企業で自動車会社なんですけれども,自動車産業は今100年に一度の大変革といいまして,どんどん技術が多様化しているんです。前だと,新卒で声の大きい子を採って,会社で教育すりゃいいやというスタンスだったんですけれども,今新しい技術とか融合領域になると,会社の中で教える人がもういないんです。なので,初めからキャリアを採るとか,博士なりポスドクなり研究基盤の既にある人を採っていこうという方向性,新卒を減らしてそういう人たちをどんどん増やしていこうというふうに今考えとしてはある。
 だけど,それだけの人材がまだまだフィードされていないので,そのキャリアは今,主体はほかの会社から人を採るということになっていて。本当はそういう競争ではなくて,大学・研究機関から先ほどの卓越研究員事業みたいなところで人を採っていけたら一番いいというのは思っているんだけれども,実際実現はなかなかしていない。
 ちょっと質問があるのは,先ほどの卓越研究員事業は民間も幾つも受け皿を設けたと思うんだけれども,なかなかそこに行く学生,研究者がいなかったというふうに聞いているんですけれども,それが事実かというのと,それは民間の研究ということに先ほどの先生のお話のような魅力を感じてなくて,やっぱり大学・研究機関の方がいいよというふうになっているのかみたいなところで,そこが分かるとやっぱり民間サイドも,研究者として採った人はどういう環境に置かないというか,先ほどの時間の話もそうだし,賃金関係は民間は民間の給料でやっていけると思うので,その辺りを教えてもらえると民間としてもできることがあるのかなと思うんですけれども。
【西尾部会長】
 今のことに関して楠目室長答えていただけますか。
【楠目人材政策課人材政策推進室長】
 ありがとうございます。卓越研究員事業につきましては,民間企業の研究者のポストも対象としているところでございます。ただ一方で,民間企業の方については提示ポストも若干限られておりまして,最終的に民間企業に就職する者の数については,やはり大学等と比べると低く,毎年一桁のような状況が続いておりまして,マッチングの率は低い状況にあるところです。
 その原因としては,アンケート等を見ますと,やはり卓越研究員として候補者となる者がアカデミアの志向が強い者が多いということが一つと,企業の研究者としての活動のイメージが湧きにくいということとかがこれまで課題としてございましたので,今年からはマッチングを自由に任せるだけではなくて,職業紹介事業者を間にかませるようなことでマッチング支援を行っており,その支援によって応募する者の例などもみられる状況にあるところでございますけれども,これまでの状況としては非常に限られた数になっているというのが実態でございます。
【西尾部会長】
 今おっしゃっていただいたことからすれば,今後,日本が国際的に戦っていくためには,博士人材は必要であるということは間違いないですね。
 ただし,企業が求める博士人材像とのミスマッチがあると言われています。先ほど甲斐先生も博士の種類のことでおっしゃったのですけれども,ものごとを俯瞰的に見る目を持った博士人材であるならば,企業としては採用していく,そしてキャリアパスが構築できると考えてよろしいでしょうか。
【射場委員】
 方向性はおっしゃるとおりで。具体的な事例で,例えば今一番不足しているのはAIの人材です。AIの人材が採りたいけれどもなかなか採れないと東大の先生とかに言うと,逆に就職がないとおっしゃるんです,AI人材なのに。そのギャップはなぜ起こっているかというと,結構面接で落ちたりするんです。AI人材ですごくAIのレベルの高い人材なのに,その会社でやっていくレベルにないので,技術サイドはどんどん採れ採れと言うんだけれども,人事がだめだというケースとかが多くてね。
 それは研究はすごく大事なんだけれども,面接で受かるかどうかみたいな,簡単な人間力みたいなところのテクニックの話もあるので,そういうところは大学での教育ももうちょっとしてほしいなというふうに思うところです。
【西尾部会長】
 非常に貴重な御意見ですね。甲斐先生が博士人材のキャリアパスに関して,民間企業にPhDを取ってから行ける道が狭いというところは,企業としては,PhDだからお断わりということではなくて,むしろ人材の資質によってはどんどん採っていきたいという方向に行っていると考えてよいですね。
【射場委員】
 はい,その通りです。逆に企業にいる人材を社会人入学させてドクターを取らせるケースもどんどん増えているので,双方向で。そういう人たちが,企業の研究をこういうふうだよと大学の中で説明してくれて,また新しい博士が来るみたいなそういう好循環になっていくといいかと思います。
【西尾部会長】
 分かりました。そこで,山本先生もおっしゃっていただいたように,もう少し修士・博士に関しての科研による支援も含めてきっちりと経済的な支援がなされることを進め,まず博士課程に進学者を増やしていくことが,一つのキーファクターであるというところは間違いないと思います。経済的支援をどう改善していくかですね。
それと,若手研究者のポスドクの問題,つまり,任期付きの研究者の問題について,皆様にお伺いしますけれども,例えば10年という任期だったらどう思われますか。
 先ほど中村先生がおっしゃった意味で業績を積み上げていけば,10年という期間があれば,自らのキャリアの形成ということを描きつつ,自ら人生設計の構築ができるのではないか,と思います。
 はい,どうぞ。
【竹山委員】
 10年に関しては私はポジティブに思っています。博士号を取得すれば誰でも希望のポジションに着けるかと言えば,それはご自身の実力等,いろいろな要因があります。それを見極めるのに10年間は有効かと思っています。昔よりも,博士号取得者のキャリアパスは広がっていますし,広げることが国際社会における日本の位置づけの向上には必須です。博士号取得者のキャリアパスには多様な可能性があるということを,もっとアカデミック,企業,さらには政策等も含めてアピールすることが重要かと思います。それこそ,博士人材育成プログラムやビジョンを策定している文部科学省にももっと博士人材が登用されるべきであり,足元からの改革をもっと進めてほしいと思います。科学技術政策においても博士人材がキャリアアップできる場であると思っております。
 いつも海外と比較をすることになりますが,国連など国際的な舞台にいる人々は博士号所有者です。日本はまだまだその点で遅れているとしか言えません。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
 磯谷所長。
【磯谷科学技術・学術政策研究所長】
 事務局側から発言するのをお許しいただいたんですが,私の記憶がちょっと薄れているんですが,昨年CSTIでオープンの会議で,日本学術会議からそれぞれ分野別に大変な議論をしていただいて提案をしていただいた中に,ポスドクについては最低任期5年程度以上でお願いしたいという提案があったことだけ申し上げておきます。
【楠目人材政策課人材政策推進室長】
 すみません,よろしいですか。
【西尾部会長】
 どうぞ。
【楠目人材政策課人材政策推進室長】
 西尾先生からお話しいただいた任期の関係でございますけれども,現在,ポスドクの任期については1年~2年未満のものが最も多く33.5%になっておりまして,1年未満のものも22.8%ということで,もちろん更新とかされる例はあるのですけれども,非常に短い状況になっています。
 そうした状況も踏まえまして,昨年人材委員会と中教審の大学院部会との合同部会の中でもこの議論をしていただきまして,やはり5年以上の任期を確保することが重要ということの御提言を頂きまして,その後策定されました人給マネジメントのガイドラインの中でも,任期付きであっても,間接経費や寄附金,使途の自由度の高い経費を活用することで,5~10年程度の一定の雇用期間を確保することなどの推進が望まれるということも盛り込まれているところです。
 また,現在人材委員会のポスドクの小委員会のガイドラインの方でも,やはり一定程度任期がないと次のステップに進む際の支障になることも考えられますので,どのくらいの任期が適当かということも御議論いただき,ガイドラインの中でもそういうことを盛り込んで,そうした取組が進むように我々としても努力していきたいと思っております。
【狩野岡山大学副理事】
 少し加えさせてください。人材委員会のときにあった話で,先ほど射場委員からお話があった件ですけれども,多分卓越性の定義がアカデミアと企業で違うのではないかと思っております。アカデミアではいわゆる論文業績的なものが深められる人,企業においては,言われているテーマを柔軟にこなせて新しいことができる人に卓越性があるかもしれないと思っております。これをすり合わせていかないと話がうまくいかないかもしれない,ということは一つ思っています。
 加えて,先日半導体業界が何でだめだったかという話をとある人から聞いたときに,世界にゲームチェンジングをもたらした基の要素技術は全部日本の企業内でも思いついて取り組んでいた人がいたのだけれども,でも,企業で周りの皆さんが「やってみなはれ」と言わなかったので結局だめになりましたという話が聞こえてきて,この辺はお互いに変えるところがあるなと思っています。
 もう一点,いつから教育をするのがいいかという内容です。今大学院の話がたくさん出ておりますが,地方大にていわゆる中間層を支えるような人の教育をすることを考えたときに,本当に大学院まで行った方がいいかどうかというところはちょっとまた考えようもあると思っております。場合によっては,例えば高校からSSHという仕組みが盛んになっておりますが,そこで頑張っていた学生さんは大学入学の初めからすごいやる気があるわけですけれども,現状では大学の初年時教育にやる気を失う結果になるようなケースも見受けないわけではありません。場合によってはもう少し早めから自分の「問い」を追い掛けるような経験をさせてあげて,博士号はなくても,いわゆる中間層として日本の中で科学のことが分かる人になってくださったらいいなという考え方も,もっと推進してはどうかと思います。
【西尾部会長】
 大野先生,いらっしゃいますか。
【大野委員】
 はい。
【西尾部会長】
 学長さんとして是非,御意見をいただけますとありがたく,お願いします。
【大野委員】
 おとなしくしていたんですけれども。若手に関しては大学も非常に重要な意識を持っているんですけれども,どうもいろいろなファクターが関わっているのにもかかわらず,国は一括で一つの方針で縦割りで見てしまうというところがあって,その場合にはダイバーシティと言いながら,個性をみんなで広げていきましょうということを言いつつ,画一性を目指しているというふうにしか見えないんですね。
 大学も教育の場なのですけれども,大学自身が毎年毎年評価を受けるという立場,ここで余りそういうこと言いたくないんですけれども,そういう立場で余裕がなくなっていると。そういう中で若手をどうやって長期に育てるのかというのは非常に難しい問題です。財政的なこともありますし,ただでさえ人材不足で教職員の人数が減っているという中で,若手だけ優遇するということに対して総意は得られません。かつ,講義のレベルを維持して,研究を更に進めていって,論文数でほかの国に勝てと,そういうような状況なっているというのは,これは基本的な方針を変えない限りは私は無理だと思っています。
 先ほど甲斐さんがおっしゃったように,何が抜本的なところなのかというところをここの会議で見直さないと,やっぱり小手先の,人数をこれだけ増やしましょうとかそういうことばっかりやっていたって5年後には絶対だめになるというのが私の今の意見です。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。先程来,意見が出ていますように,小手先ではなくて,根本的な問題は何なのかというところを明確にして打ち出さないと,また小手先の対策が屋上屋を重ねていくことになると思います。そのことに関して今日幾つかの重要な意見は出ておりますので,抜本的対策は一体何なのかというところを考え,その対応策を若手人材育成の全施策において展開することを考えていけば効果があります。
【中村委員】
 科研費の議論ではずっと議論になっていますけれども,若手があって挑戦的があって,基盤(A)があって,(S)があって,特別推進になるという,科研費の仕組みはこういう全体スキームになっていますよね。若いときは小さいプロジェクトでやって,だんだん大きなプロジェクトへ持っていけるという仕組み。若い人は次々に出て来ますから,この仕組みの中では,だめになっちゃった人は途中で研究から退場いただくということになる。つまり,若い人がたくさんいる中で,いい人だけが選ばれて世界の研究を支えていくという大きな枠組みに関するコンセンサスがあるという前提の下に科研費が出来ている。
 実は,でも,大学の制度が今,甲斐先生がおっしゃったことに……,歴史なんですけれども,昔の講座制というのは,下に助手が2人いて,1人になって,1人になっていって,最後に生き残った人が全部持つというような形で,まさにそういう仕組みで出来ていたわけです。それは何かだめだということになって,PIを独立させて,そこに助手の代わりに任期制の人を付けるんだということになったんですね。ここのところに実はかなり問題があって。
 講座制になっているときは,やっぱり教授が責任持って機械でも設備でもみんな進めてきて,そして,若い人は自分でそこでやればいいという仕組みになっていたんです。それを研究室制に転換しようというときに,今,特に大学に対する設備の備品がもう全くお金が文科省から出なくなって,自分で買ってこいということになっちゃいましたから,若い人はポジションを取ったとしても機械がない。数百万もらってもしょうないので,アメリカみたいで最低1億円ぐらいもらわないと,要は,本当の研究ができないわけです。それがないまま,独立のPIにしたというところに大問題があって,誰も責任を持たない。
 私自身は最初10年独りで研究室制の大学にいて,その後,講座制の大学に移ったんです。非常にタイミングが良かったんですけれども,やっぱり感じたのは,研究室制というのは孤立無援なんです。33とかで,本当に孤立無援で誰も助けてくれないんですから。ここに大問題があるんです。講座制になっていたら,必ず教授が面倒を見てくれます。だけど,今の研究室制,日本は誰も助けてくれないんです。お金が取れない人はもうそれでおしまいなんですね。これは自己責任というよりも,これはやっぱり学科とか大学の責任。これ,もったいないので。
 アメリカがなぜうまくいくかというと,やっぱり中にメンターがいるんです。それから,機械も全部そろっている。そうしないと,なぜかというと,学科で若い人を育てられないと,学科は何億円も投じていますから,リターンがないんですね。だけれど,日本の場合には,リターンということは,学科でも大学でももともと若手に投資していませんから,だから,リターンのことを考えないわけです。
 だから,根本的に,やはり昔講座制で教授が責任持ってみんなでメンタリングやっていたものが,今の文部省の政策でこれを破壊してしまったために,孤立無援のPIがいて,その人がうまくいったとしても,40になって,じゃ,大きなグループ持とうかと思っても,縦割りのまま行くのでグループが大きくならない。そうすると,せっかく伸びても,細いまま倒れちゃうという,こういう仕組みを作ったのが文部省の過去30年の仕組み作りだったんです。その結末が今やっぱり若手がやる気がなくなったということに直結していると思います。これ,簡単には直らないので,相当のドラスティックなことをやらないと,このまま若手振興政策は全て失敗に終わると思います。
【西尾部会長】
 甲斐先生が先ほど,日本の大学での教員の任用はもともと任期付ではなかったのに,任期を付けだしたところに今の大きな問題があるとおっしゃいました。講座制のことも,甲斐先生と私はある別の委員会のときに,講座制をなくしたこと,一般的には講座制はすごく悪く言われますけれども,これは日本の研究力をそぐ意味でも非常に大きな問題であると意見を申し上げました。
日本は,さまざまな良い制度で運営しており,そこで育った研究者がノーベル賞などを受賞されていますが,その後の改革が逆方向にどんどん行ってしまったということが,今中村先生がおっしゃったことだと思います。
 ですが,今からもとに戻すということがなかなかできないときに,今の状況の下でどう再構築していくかというのは真剣に考えなければならない問題だと私は思っています。
 最後ということで,竹沢先生,どうぞ。
【竹沢委員】
 先ほどお話しが出た10年という任期についてですが,京都大学人文研の助手というのは今,いろいろなときに契約した人が混在していて,10数年の人から,6年いる人もいるし,3年で出なくちゃいけない人もいます。多分長過ぎると新しい風をもたらしてくれないので,7年ぐらいがいいという話が同僚たちの間で出ることがあります。
 それから日本の大学院に進学する人は,学部からそのまま大学院に進むことが大きな前提になっていると思いますが,何年か前に海外の人と話しているときに,大学院生を採るときに,一旦外で経験している人を自分たちは優先するという。それは歴史学とか社会学の人たちの集まりの中で出た話です。その先生がおっしゃるには,学部からそのまま進学してくる人は,経験がないので基本的に採らない,その間,働いたり,あるいは留学したりという,とにかく経験を豊富にもっている学生が欲しいという話を聞きました。いま,そういう趨勢だと思います。
 ほかの先生方も経験されていると思うんですが,いま,トップの学生の多くは大学院に進学せずに就職してしまう。あるいは天才タイプが進学してくるかという両極に分かれるように思います。一旦就職して3年か4年働いた人が大学院に戻ってきやすくなるように,そして,その人たちもそれからまた企業に戻るなり,研究者になるなり,多様なパスが開かれれるように仕組みを変えていく必要があるのではないかと。 今日小林先生がおっしゃってくださったことが興味深かったんですけれども,アンダーエンプロイメントは,結構先進国の中で共通している。ところが,理系の例ですが,先進国の中で修士から博士への進学者が少ないのは日本だけ。定年がないアメリカとか,韓国のように少子化がいっそう厳しい国とかいろいろ国によって事情は違うとは思いますが,それでも日本だけが博士への進学が少ないというでしたら,結局この差は,博士課程のサポートがないというこの一言に尽きるということですね。すると,ストレートではない道で大学院に戻ってきた人を,経済面でもトレーニングという意味でもサポートする方法を真剣に考える必要があり,そのためにも,先ほど提言したようなティーチング・アシスタント制度とかリサーチ・アシスタント制度の改善に取り組む必要があるのではないかと思います。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。時間がもう来てしまいましたので,今までいただきました御意見などにつきましては,事務局で,大変だと思いますが,取りまとめをよろしくお願いいたします。
 狩野先生,小林先生,非常に貴重な御意見,コメントありがとうございました。
 それでは,大学における基盤的経費に関することで,有識者との意見交換は次回1月29日に予定しております。事前に,大学における基盤的経費に関する担当課より現状の説明をいただきます。次回の意見交換会では,担当課からの説明はもうなしで直接議論の方に入っていきますので,まず運営費交付金について説明をお願いいたします。国立大学の方ですね。
【上野国立大学法人支援課課長補佐】
 国立大学法人支援課,上野と申します。よろしくお願いします。資料5-1に基づきまして,国立大学の改革の現在の方向性と,令和2年度予算案について簡単に御説明させていただきたいと思います。
まず,1ページ目でございます。国立大学は,平成16年度に法人化いたしまして,そこから各大学,改革を進めていただきまして,各大学の強み・特色を生かした機能強化を推進していただいているというところでございます。これまで行ってきました改革の状況と致しましては,まず評価に基づく配分ということで,今年度(令和元年度)から成果を中心とする実績状況に基づく配分を新たに導入しております。
 その下でございますけれども,財務基盤の強化ということで,各大学,様々な取組等を行っていただきまして,外部資金の受入額は法人化以降大きく増加しているところでございます。
また,世界最高水準の教育研究ということで,世界最高水準の教育研究活動等が見込まれる法人を指定国立大学法人として指定しておりまして,昨年9月に一橋大学を指定いたしまして,現在7法人を指定させていただいております。
その下でございますが,大学間ネットワークの強化ということで,昨年5月,国立大学法人法を改正いたしまして,1法人複数大学の制度改正を行っております。今年の4月に国立大学法人岐阜大学と,同じく名古屋大学が統合いたしまして,国立大学法人東海国立大学機構を創設することとしております。
 更なる国立大学改革の推進に向けては,ここに書いてありますとおりですけれども,人事給与マネジメント改革に関するガイドラインを策定いたしまして,業績評価,処遇への反映等を推進することとしております。
その下でございますけれども,1法人複数大学制度や,外部理事の複数登用,国立大学法人評価と認証評価の連携等を盛り込んだ法律等の制度改正により,経営改革を推進することとしております。
その下でございますけれども,国立大学の改革方針,これは昨年6月に策定いたしまして,国立大学の役割,改革の方向性等の論点を明示しまして,各国立大学と徹底して対話を行うこととしておりまして,現在,各大学と徹底した会話を進めているところでございます。
 そのほか,指定国立大学が先導する国立大学法人制度の抜本的改革に向けた検討の着手ということで,こちらについても,有識者会議を立ち上げまして検討を進めていくこととしております。
 そのほか,大学ガバナンスコードの策定等を進めているところでございます。
 1枚めくっていただきまして,国立大学改革の推進等,令和2年度予算でございます。先ほどの状況等を踏まえまして,国立大学改革方針を踏まえました「教育」「研究」「ガバナンス」改革を加速化するという考えの下に令和2年度予算案を策定いたしました。
 まず,国立大学法人運営費交付金につきましては,対前年度164億円減の1兆807億円となっておりますけれども,高等教育修学支援新制度の授業料減免分というのが内閣府に別途264億円計上されておりまして,合わせて対前年度100億円増の1兆1,070億円を計上しているところでございます。
 併せまして,学長のリーダーシップに基づくスピード感のある経営改革を支援する国立大学改革強化推進補助金につきまして,対前年度2億円増の47億円を計上しているところでございます。
 運営費交付金の具体的な中身と致しましては,Society5.0に向けた人材育成の推進ということで,数理データサイエンス教育の全国展開につきまして対前年度1億円増の10億円を計上しているところでございます。
 その下でございますけれども,Society5.0に向けた人材育成や,地域の教育研究拠点として地方創生に貢献するといった取組を行うための各大学の戦略的な教育研究組織整備に対する支援と致しまして,新たに7億円を計上させていただいているところでございます。
 次に,右の方でございますけれども,成果を中心とする実績状況に基づく配分,これが令和元年度から導入したものでございます。令和2年度予算案におきましては,まず配分対象経費,令和元年度は700億円でございましたけれども,850億円とさせていただいておりまして,配分率を85%から115%で設定しているところでございます。
 また,令和元年度におきましては,マネジメントに関する指標が主たる指標になっておりましたけれども,今回令和2年度予算案におきましては,教育研究に関する指標を新たに追加することとしております。例えば,こちらの資料にも記載させていただいておりますとおり,卒業・修了者の就職・進学等の状況や,博士号授与の状況,こういったものを新たに指標に追加することとしております。
 こういったことによりまして,各大学のマネジメント面での改革を一層推進するとともに,教育研究の更なる質の向上を図ることとしております。
 以上によりまして,国立大学が我が国の人材育成・学術研究の中核として継続的・安定的に教育研究活動が実施できるように,運営費交付金の確保に引き続き取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
【西尾部会長】
 続きまして,私学の方の説明をよろしくお願いいたします。
【片柳私学部私学助成課課長補佐】
 失礼いたします。私学助成課の片柳と申します。よろしくお願いいたします。資料5-2に基づきまして御説明をさせていただければと思います。よろしくお願いします。私学助成の関係ですけれども,予算を中心に若干加えて制度の方を補足させていただければと思っております。
 1枚目でございますけれども,私大経常費補助の概要と致しまして,来年度予算案について載せさせていただいております。前年度予算からは,3,159億円から2,977億円ということで大きく数字は落ちておりますれども,先ほど国立大学の方の説明でもございました,下の参考と書いてございます高等教育の修学支援の新制度の授業料減免分として,私学につきましては別途1,942億円が措置をされております。これについては,今回上に記載しております予算案からは除いておりますので,このほかに1,942億円が授業料減免分として措置をされるということがございます。
 私学助成の関係でございますけれども,大きく二つに分かれてございます。一般補助と特別補助でございます。簡単にイメージしていただけるよう誤解を恐れず説明いたしますと,およそ一般補助の方ですけれども,人件費等についての単価等が設定をされておりまして,それについて各大学さんから申請をいただきまして,それに応じて配分させていただくというようなものでございます。ただ,単純に人件費等に基づきまして配分をするのではなくて,昨今ではメリハリのある資金配分をしていくという観点から,教育の質の観点とかというところも,パーセンテージを掛けて,メリハリのある配分をしていくということで,頑張っているところには一般補助であってもより多く行く,努力がなかなか足りないというところにつきましてはそう多くの額が行く形にはならないというようなことでの対応をしております。
 二つ目の特別補助の方でございます。こちらの方が,率直に見ていただいて,金額の方が大きく落ちておりますけれども,先ほど申し上げました授業料減免の分が新しい制度になって大きく制度として改編されたところが大きな影響でございます。特別補助の中に幾つかメニューがございますけれども,特徴的なものを二つ説明させていただければと思います。
詳細な説明の方が次ページにございますので,資料5-2の2ページ目をご覧いただければと思います。一つが私立大学改革総合支援事業ということで,改革を進めていただく大学さんに対して,その状況,どれだけ改革を進める状況にあるかというようなところを申請いただきまして,調査させていただいた点数に基づきまして対象を決めさせていただくというような形でございます。事業というような名称でさせていただいておりますけれども,実質,経常費の補助でございまして,事業計画等を詳細に出していただくものではございません。どういった取組ができる状況にあるかというようなところの環境について調査票の方では得点化をさせていただきまして,それが実施でき得るというようなことで採択をさせていただくというような性質のものでございます。
 なお,費用でございますけれども,基本スキームの横に,タイプ1,3,4は1校当たり1,000万,タイプ2は2,000万というふうに記載がございますけれども,こちらは特別補助のみでの加算額でございまして,これに加えまして一般補助の方を現在は連動させておりまして,大きな大学でございますと最大で2億5,000万までが連動してくるというような状況でございます。
 タイプと致しましては,来年度につきましては,Society5.0の対応を中心としましたタイプ1,また,研究の関係に特化をしておりますタイプ2,地域貢献をテーマに掲げておりますタイプ3,そして,社会とのつながりということで産学連携等を中心に見ておりますタイプ4というような,4タイプに基づきまして調査票の方を作成して,採択をさせていただくというようなことを考えております。
 ページをおめくりいただきまして,3ページでございます。こちら,特別補助の中の一つのメニューでございますけれども,大学院等の機能の高度化への支援ということで従来あるメニューでございます。予算の方,額が若干減っておりますけれども,一つこの中にもともと入っておりました事業が終了に近付いているという観点でその事業が大きく減額となりますけれども,実質,従来支援をさせていただいておりますメニューについては増額のような状況となっております。
 その具体の中身を申し上げますと,大きく二つぐらいに分かれております。一つが,先ほど来議論でも頂いておりましたけれども,優れた研究者育成のための研究者支援の強化ということでございます。例えば若手研究者の自立・安定のための仕組みを学内でいろいろ取っているというようなこととか,その環境整備を進めているというような状況を踏まえまして私学助成の増額を行うと。また,子育て世代,女性等はじめですけれども,そういった研究者のための復帰もそうですし,男性も含めてですけれども,その環境整備を進めているところについての増額。また,優秀な大学院生に対する経済的支援というようなところがこちらの中での支援のメニューとなっております。
 また,私立大学の中でも,大きな施設整備を持って研究の方に取り組んでいるようなところが複数ございますので,そういったところの研究施設の運営支援というようなところの支援などの研究環境の強化にも重点を置いて支援をさせていただいているというような状況でございます。
 そのほか制度的な改正で申し上げますと,今年度,私学法の改正等を行いまして,理事会等々の関係について改正もされておりますけれども,情報公開というようなところについて私学の方でも是非進めていくべきというような観点での制度改正が行われておりますので,その点も御報告させていただきます。以上でございます。
【西尾部会長】
 上野課長補佐,また,片柳課長補佐,どうも御説明ありがとうございました。心より御礼申し上げます。
今御説明いただきましたけれども,この資料は次回の研究費部会でも参照できるようにしていただくことを考えております。この場で何か御質問等ございませんでしょうか。
 どうもありがとうございました。次回,基盤経費関しましては,国立大学法人,私立大学の有識者の方々の御説明とコメントもいただく予定にしております。
 続いて,前回行った関連事業の有識者などとの意見交換の概要等について,事務局より説明をお願いいたします。
【岡本企画室長】
 資料6をお願いいたします。前回11月19日に戦略的創造研究推進事業と国際交流事業につきまして意見交換を行いました。これらの概要についてまとめたものでございます。本日は,若手研究者育成関連事業,次回は大学における基盤的経費について意見交換を行いますので,この両事業についても事務局としてはこのような形でまずはまとめさせていただいて,御意見等を2月の研究費部会においてまとめていただきたいと考えているところでございます。
 2ページからご覧いただければと思います。まず戦略事業について,様々なご意見を頂いたわけですけれども,全体を精査いたしまして,幾つかの観点でご意見等をグルーピングできるのではないかと考えましてまとめております。
 まず戦略事業の特徴として挙げられる点についてまとめております。次に,科研費と戦略事業との関係に関する意見をまとめております。3ページ目に続きますが,三つ目は,研究の継続性という観点でまとめております。次の4ページ目には新興・融合研究の推進という観点でまとめ,最後にそれ以外の意見をその他としてまとめております。
 次に国際交流事業に関する主な意見ですが,まず国際交流事業の特徴をまとめております。二つ目に科研費と国際交流事業との関係,三つ目に国際共同研究の特性を踏まえた評価についての意見,最後に,その他ということで,主な御意見をまとめております。
 その上で,1ページ目にお戻り願います。大きく科研費制度の改善に資することと各事業に対して期待することという柱建てで意見をまとめさせていただいております。
 1ポツが科研費制度の改善に資することということで,四つほど挙げさせていただいております。研究の継続性,多様性を支える観点から,科研費から戦略に繋げるだけでなく,戦略事業が終わった後,一定規模の研究を科研費で十分支援できるようにするための科研費の充実。新興・融合研究を推進するための公募・審査・評価の充実。国際交流事業の関係では,国際共同研究加速基金を活用しての国際共同研究の充実,科研費における国際共同研究の実態把握を挙げております。
 二つ目が戦略事業に期待することということで,三つほど挙げさせていただいております。研究の継続性,多様性を支える観点から,一定規模の研究を戦略事業で支援できるようにするための戦略事業の充実。戦略目標の策定に当たって,科研費等との情報交換の強化や戦略目標の大くくり化等の改善の推進。審査方法に関する相互の情報交換の強化。
 三つ目が国際交流事業に期待することということで,科研費で実施した国際共同研究の成果を更に発展させる,組織単位での国際共同研究を支援する仕組みやマッチングファンドの充実。
 四つ目は,その他として,大学等も含めて取組主体が複数にまたがるものなどについて五つほど示してございます。科研費と戦略事業については,それぞれの制度の目的を明確にしつつ,基本的には各制度で継続性を重視する。海外での研究活動支援の充実,支援人材の育成。国際共同研究の特性を踏まえた評価の在り方の検討。外国人招聘において将来的に国際共同研究に繫がる発展方策を検討。イノベーションにつながる多様性確保のための国際化の推進ということでございます。
 本日は時間もございませんので,本日の若手研究者育成関連事業に関する意見交換,さらに次回の大学における基盤的経費についての意見交換についても,できればこのような形でおまとめをさせていただいて,次々回の2月に,改めて全体を取りまとめた資料で委員の皆様から御意見を頂きたいと考えておりますので,本日は前回の研究費部会での意見交換の概要ということで御報告させていただきます。
 以上です。
【西尾部会長】
 どうも岡本室長,ありがとうございました。ここで御意見頂ければいいのですが,時間の関係がございますので,この資料の6の概要につきまして御意見等ございましたら,事務局の方にメール等でお知らせいただければと思います。どうかよろしくお願いいたします。
 そこで,今御説明ありましたように,本日及び次回の意見交換,次回は基盤的経費関連のことで意見交換をいたしますけれども,それをまとめていきまして,全体を通した総括的なまとめを,第9回ですから2月21日の金曜日に行います。それに向けての第1弾のドラフトとお考えいただいて,御意見等ありましたらよろしくお願いいたします。
 続きまして,今後の科研費部会における審議の進め方などについて,事務局より簡潔に御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【岡本企画室長】
 資料7をご覧いただければと思います。今後の進め方についてですけれども,現在行っている意見交換でのご意見等について,令和3年度の科研費の改善などに資するものについては予算要求などにも繋げていくことを考えております。
今後の進め方と致しましては,研究費部会と審査部会の下に科研費改革に関する作業部会を設けており,具体的な方策に関する原案の作成を行っておりますので,今後この作業部会において具体的な検討を進めていくことを考えております。
今後研究費部会は,来週,大学における基盤的経費についての意見交換,2月21日には関連事業との意見交換でのご意見等について全体を通じての審議を行う予定です。2月から7月にかけて科研費改革に関する作業部会においては,関連事業との意見交換でのご意見等を踏まえて,順次今後の科研費制度の論点について検討を進め,その状況につきましては,随時研究部会に御報告をさせていただきます。
 研究費部会につきましては,5月から7月にかけて月1回程度開催いたしまして,作業部会での報告内容などについて御意見を頂きながら,最終的には7月下旬に取りまとめを行えればと考えているところでございます。
資料の説明は以上です。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。今までの説明につきまして,何か御意見,御質問等はございますか。
第10期の研究費部会において議論しておくべき論点がたくさんありますが,これは今日もいろいろ論点が出てきたわけですけれども,個々の事項については,今年度の前期同様に,本部会と科学研究費補助金審査部会との合同の作業部会として設置されております科研費改革に関する作業部会において御検討いただいた上で,本部会で議論を進めたいと思います。
 ここで,作業部会の主査をお願いしております小安先生には改めてお願い申し上げますとともに,小安先生から何か一言ございませんでしょうか。
【小安委員】
 何かどうも拒否権がないようなのでお受けいたします。皆さんからいろいろと御意見が出されておりますので,何とか形にできるように頑張りますが,皆さんの御協力がなければできませんので,よろしくお願いいたします。
【西尾部会長】
 本当に心強いお言葉に感謝いたします。
7月下旬に取りまとめというのは,もちろん再来年度の概算要求等において,取りまとめた内容が一つの拠り所になるようにしたいと思っておりますので,何とぞよろしくお願いいたします。返す返すも,小安先生,何とぞよろしくお願いいたします。

(3)その他

【西尾部会長】
 その他として1件報告があるようですので,事務局から御報告をお願いいたします。
【梶山学術研究助成課長】
 本当に簡単にでございますが,先ほど参考資料1として御紹介申し上げましたが,CSTIにおける議論の中で若手人材育成ということを中心に今計画を立てようとしているところでございます。こちらの参考資料の8ページ以降をご覧いただければと思います。7ページまでは先ほど御説明申し上げたところでございます。その中で研究資金であったり,先ほどの御議論というものはどういう方向性が今示されているか,検討されているかというところだけ簡単に御紹介したいと思います。
 8ページをご覧いただければと思いますが,一点御留意いただきたいところが一番上のところでございまして,若手研究者への重点支援と,中堅・シニア,基礎から応用・実用化までの切れ目のない支援の実現というものを,CSTIの下にワーキンググループを設置し,改革方策について検討するということになっております。様々な競争的資金が出来ている中で,その全体を見通した議論がしたいというのがCSTIの議論でございまして,そのような方向性に関しまして,私どもとしてどういうふうに意見を言っていけるかということを含めてこちらの方でも御議論を紹介し,また,申し上げていくことになろうかと思います。こういうことがあるということは是非御承知おきいただければと思っております。
 そのほかにも,例えば四つ目のところで,競争的資金の直接経費から研究以外の業務代行経費の支出,バイアウトを可能とする見直しでありましたり,先ほどの,下から二つ目の,競争的資金で雇われている若手研究者の研究機会の拡大,それから,報道等あって御承知かと思いますが,最長10年間を支援するような創発的研究というものに関して今度実施するという方向性がございます。それから,外部資金の話もあります。
 また,次のページをご覧いただければと思いますが,URAのキャリアパス構築に関して,質保証制度を再来年ぐらいから実施する方向で考えられておりますので,そのことでありましたり,技術職員のキャリアパス構築に向けたその課題把握,それから,先ほど機器の話がございましたが,研究設備・機器の共用化の促進を今以上に進めていこうというようなことに関しての具体的な話ということ,このようなところに関してパッケージ化されております。
 このようなところについて今後,多分今週若しくは来週ぐらいに策定がなされると思いますので,またそのことに関しても次回でも簡単に御報告したいと思っております。
 以上でございます。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。このパッケージの案というのは,いろいろなところで参照されているような状況です。このパッケージが,先程来出ていますように本質的な課題を解決していく上での大きな一つの策となることを我々は大いに期待しておりますので,また事務局でもよく注視をしておいていただければと思います。よろしくお願いいたします。
今の御説明に対して,御意見とか御質問ございますか。よろしいですか。
 これは「案」が取れるのでしょうか。
【梶山学術研究助成課長】
 はい。遠からず多分取れる方向にあると考えています。
【西尾部会長】
 分かりました。よろしゅうございますか。
 どうもありがとうございました。これで本日の議事は終了でございます。ちょうど時間となっております。本日も本当に貴重な御意見の数々を賜りまして,心より御礼申し上げます。また,事務局の方,また,狩野先生,小林先生,どうもありがとうございました。
 それでは,事務局の方にバトンをタッチいたします。よろしくお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】
 次回の研究費部会は,既に御連絡しておりますとおり,1月29日水曜日を予定しております。また,次々回の研究費部会は,2月21日金曜日を予定しております。こちらについては,正式な御案内を後日改めて出させていただきます。
なお,本日の配付資料につきましては,後ほどメールでお送りいたしますので,タブレット端末は切らずにそのままでお願いいたします。
 以上でございます。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。次回は午前9時から開催です。時間が通常より早い時間ですので,よろしくお願いいたします。
本日の研究費部会はこれで終了します。ありがとうございました。

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