第10期研究費部会(第2回) 議事録

1.日時

令和元年5月22日(水曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省15F特別会議室

3.議題

  1. 研究力向上改革2019について
  2. 令和2年度公募及び概算要求に向けた制度改善等について
  3. 「新学術領域研究」の見直しについて
  4. 「科学技術の状況に係る総合的意識調査(NISTEP定点調査2018)」について
  5. その他

4.出席者

委員

甲斐委員,栗原委員,西尾委員,井関委員,射場委員,小安委員,城山委員,中村委員,上田委員,竹沢委員,中野委員

文部科学省

磯谷研究振興局長,増子大臣官房審議官,原振興企画課長,梶山学術研究助成課長,岡本学術研究助成課企画室長,中塚学術研究助成課企画室室長補佐,他関係官

オブザーバー

坪井科学技術・学術政策研究所長,伊神科学技術・学術政策研究所科学技術・学術基盤調査研究室長,佐藤日本学術振興会学術システム研究センター所長,西村日本学術振興会学術システム研究センター副所長,永原日本学術振興会学術システム研究センター副所長,岸本日本学術振興会学術システム研究センター副所長

5.議事録

【西尾部会長】
 皆さん,こんにちは。それでは,時間となりましたので,ただいまより,第10期第2回の研究費部会を開催いたします。
 初めに,前回御欠席の委員で本日御出席いただいている委員につきまして,事務局から御紹介をお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】 
 委員の甲斐知惠子委員でいらっしゃいます。
【甲斐委員】 
 甲斐と申します。よろしくお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】 
 続きまして,専門委員として,竹沢泰子委員に御参加いただいております。
【竹沢委員】 
 竹沢でございます。よろしくお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】 
 以上でございます。
【西尾部会長】 
 本日は,JSPSの学術システム研究センターから佐藤所長,西村副所長,永原副所長,岸本副所長にも御参加いただいております。誠にありがとうございます。
 本日は,前回梶山課長からも少しお話がありましたが,事務局から,文部科学省に設置された研究力向上加速タスクフォースの審議のまとめについて御報告いただくとともに,科研費の来年度助成における若手研究者支援の重点化や新学術領域の見直しに関して,説明をお願いしたいと思います。
 また,科学技術・学術政策研究所から坪井所長に御出席いただいておりますので,後ほど御説明を頂きたいと思います。

(1)研究力向上改革2019について

【西尾部会長】
 次に,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】 
 本日の配付資料につきましては,お手元の議事次第に記載されているとおりでございます。本日PCが確保できず,机上に全て紙でお配りしております。個々の資料名は読み上げいたしませんけれども,資料の欠落等ございましたら,事務局までお申し付けください。よろしくお願いします。
【西尾部会長】 
 どうもありがとうございました。
 それでは,初めの議題に移ります。4月23日に公表されました「研究力向上改革2019」について,事務局より説明をお願いいたします。
【原振興企画課長】 
 事務局をしています振興企画課長の原と申します。よろしくお願いいたします。
 お手元に資料1-1と1-2の2つがございますけれどもまず資料1-2の方で説明させていただきたいと思います。資料1-2の方が「研究力向上改革2019」の全体像,それからその上に載っております資料1-1はその抜粋となってございますので,まず資料1-2の方をお開きいただきたいと思います。
 日本の研究力が相対的に低迷しているのではないかということで,今,待ったなしの状況,これは文部科学省の全体の問題意識でございます。こういう中で,大学改革と研究力の向上対策を一体的に実施していくということで,4月23日にこの「研究力向上改革2019」を取りまとめて,柴山文部科学大臣から発表させていただいたところでございます。
 中身でございますけれども,表紙をめくっていただきまして1ページ目がこのプランの全体を示した資料になってございます。研究力を向上させるために,研究「人材」「資金」「環境」の改革を「大学改革」とも一体的に展開することを通じまして,日本の研究力のV字回復と,それからその結果として,イノベーションを生み続ける社会を作っていくということでございます。
 このプランを取りまとめるに当たりましては,文部科学省の研究関係の3局と高等教育行政を所管しております高等教育局,この4局が一緒になって副大臣の下で議論をして,最終的には大臣から発表していただいたものでございます。
 中身は3つに分かれてございます。頂いている時間が5分なので,細かいところは後で概要を使ってポイントだけ説明させていただきますけれども,緑色の研究人材の改革について,その左側に主な課題ということで,博士課程への進学者数の減少,それから社会のニーズに応える質の高い博士人材の育成できているのかというような問題意識がございます。
 それを解決するために,真ん中の緑色の箱でございますけれども,研究人材の改革として若手研究者の「安定」と「自立」の確保が必要であること,それから「流動性」「国際性」の促進などに引き続き取り組んでいくことをもちまして,研究者をより魅力ある職にしていくことを考えてございます。
 次に研究資金の改革について,左側の方に若手が自立的研究を実施するための安定的資金の確保が課題であるということ,それから若手に限らず新たな研究分野への挑戦が不足しているのではないかという問題意識から,青い真ん中の箱でございますけれども,研究資金の改革としてすそ野の広い富士山型の研究資金体制を構築し「多様性」を確保しつつ「挑戦的」かつ「卓越」した世界水準の研究を支援していきたいと考えてございます。
 次に研究環境の改革について,研究者の研究に充てる時間割合が減少していること,研究組織内外の設備・機器等の共用や中長期的・計画的な整備更新が遅れているという課題がございますので,研究室単位を超えて研究環境の向上を図る「ラボ改革」を通じ研究効率を最大化し,より自由に研究に打ち込める環境を実現していきたいと考えてございます。
 この改革だけではなく政府全体で様々な改革があり,具体的には第6期の科学技術基本計画の検討が始まりつつございます。それ以外にもCSTIでの議論,日本学術会議での議論など進行してございますので,これらとうまく連携を取りながら日本の研究力を向上させていくということに文部科学省として全力で取り組んでいくという趣旨で発表させていただいたものでございます。
 各論でございますけれども,まず2ページと3ページが対になってございまして,2ページ目が「研究人材改革」の論点です。3ページ目が,その論点を踏まえて研究人材強化体制の構築という文部科学省の対策でございます。
 論点につきましては,修士あるいは若手研究者のところから始まって,シニア研究者に至るまで幾つかの論点を挙げてございます。時間の関係もありますのでポイントは別の資料で説明させていただきますけれども,それを基に2・3ページ目にあるような特に若手研究者につきましては,「安定」と「自立」を確保できるような様々な制度の見直ししていくということでございます。
 4ページ目,5ページ目は「研究資金改革」についてということで,これも基盤的経費から始まってJST戦略的創造研究推進事業等に至るまで,様々なファンディングがございます。論点が4ページ目,5ページ目は論点を踏まえてデュアル・サポート等の支援をしていくということでございます。
 6ページ目,7ページ目は「研究環境改革」についてでございます。6ページ目が論点ということで,例えば事務負担ですとか研究設備・機器等の観点から現状を把握し課題を抽出した上で,7ページ目に全ての研究者に開かれた研究設備・機器等の実現を進めてていくことや更なる研究効率の向上・事務負担の軽減に資する施策を示し,大学改革とあいまって,「ラボ改革」として研究時間の抜本的拡充と研究効率の最大化を図り,研究者がより研究に打ち込める環境を実現していくという観点から取りまとめさせていただいてございます。
 これが全体像でございます。ちょっと中身が細かいので,その次に資料1-1を御覧いただければと思います。これが今後我々が取り組んでいこうという取組の主立ったものをまとめたものでございまして,これは表紙に書いてございますけれども,5月13日の総合科学技術・イノベーション会議にて柴山文部科学大臣からご説明をさせていただいた資料となってございます。
 2ページ目に先ほど申し上げた3つの柱のうちの最初の1つ,「研究人材改革」ということで,若手研究者の雇用の安定と多様なキャリアパスの確保という観点から,丸の1つ目にございますけれども,「プロジェクト雇用における若手研究者の任期」を,現状1年,2年と短い方も比較的多いわけですけれども,それを5年程度以上にできないかということ。それから,プロジェクトで雇用されている方であっても自らの発意に基づく自由な研究ができるように「専従義務の緩和」をできないかといったようなことで,例えばモデル公募要領の改訂等を実施することによって,プロジェクト研究においてもこのような改革を進めていきたいと考えてございます。
 それから2番目でございます「優れた若手研究者のポスト重点化」という点で,「卓越研究員事業」ですとか「人事給与マネジメント改革」を通じて,右側にございますように2023年度までに研究大学の40歳未満の本務教員割合を3割以上とする指標を掲げているところでございます。
 それから3番目でございますけれども,博士学生が経済的な憂いなく研究に取り組めるようにということで,ファイナンシャルプランの提示や様々な財源を活用しながら経済的支援をより促進していきたいと考えてございます。右側にございますように2015年度時点で生活費相当額受給者の割合は現状1割ということですので,この部分について,博士課程(後期)在籍者の2割程度が受給できるように強化したいと考えてございます。
 それから研究時間の確保として,競争的資金等の直接経費から研究以外の業務の代行経費の支出を可能とする「バイアウト制」を導入することも検討を進めてございます。
 それから,国際化の促進という取組で,海外経験を有する日本人教員の登用拡大ですとか国際共同研究の強化,海外からの応募に係る負担軽減としてWeb応募の拡大を実現していくということを予定しているところでございます。
 3ページ目は「研究資金改革」ということで,若手への重点化として,これは今年度の予算の段階から取組を進めさせていただいているところでございますけれども,若手への重点支援,新興・融合領域への挑戦,海外への挑戦が促進されるように,科研費では新規採択率30%を達成することを目標にさせていただいているということでございます。
 それから,研究資源の多様化として,大学が自由な裁量で活用可能な経費を拡大していこうということでございます。例えば,オープンイノベーション機構等による外部資金の呼び込みを強化するということ及び科研費以外の競争的資金等の直接経費からPI人件費の支出を可能とするような制度を導入予定でございます。これによって財源を捻出して,大学が自らの裁量で様々な活動,例えば若手の研究者の育成といったことに取り組んでいけるようにすることを検討してございます。
 それから,「研究環境改革」として,研究設備の共用を徹底する取組ですとか,チーム型研究体制の促進として研究基盤の要たる技術職員やURAの組織的育成・活躍促進に向けた取組を進めていきたいと考えているところでございます。
 4ページ目以降は参考資料でございます。大学の自由な裁量に基づいた財源を,例えば,4ページ目にあるような今まで行われているような様々な活動がありますけれども,そういった地方大学における取組の好事例につなげていくということも考えられるところでございます。
 それ以下は参考ということで,今まで申し上げましたような対策の前提となった部分についてのデータを付けさせていただいているところでございます。
 簡単でございますけれども,説明は以上でございます。
【西尾部会長】 
 原課長,どうもありがとうございました。
 それでは,ここまでの御説明に関しまして,質問等ございましたらお願いいたします。ございませんでしょうか。
 どうぞ。
【栗原委員】 
 若手の問題は非常に重要だと思います。今回,ポストドクターの任期を5年程度以上のような形の具体的な提案がされているわけですけれども,そうしますと,ポスドクの経験――名前もポスドクがいいのかどうかも分からないですが――を持った人たちが,例えば,いきなり准教授になるというようなことも,キャリアパスとして広げていかないと,またポスドクから更にポスドクのような形になっていっても不適当なので,成果を挙げた人たちが,いろいろな形の多様なキャリアパスという風に広げて考えていくようなことも同時にやっていく必要があるのではないかと思います。
 従来は,キャリアパスを広げるというと,大体民間で雇用していただくというようなことが多いわけですけれども,大学の中のキャリアパスについても,もう少し多様な考え方が必要になるかと思いますが,いかがでしょうか。
【西尾部会長】 
 どうぞ,お願いいたします。
【原振興企画課長】 
 資料1-1を御覧いただきますと,人材改革の論点ということで,栗原先生が後段の方でおっしゃっていただいたキャリアパスの多様化で,例えば,民間企業に行くとか,海外に行くとかといったようなことも取り上げさせていただいてございます。
 それから,それ以外の,例えば,大学のポストに就くといったようなことについては,大学の方の人給マネジメント改革によるところも大きいと思いますけれども,このプログラムの中では,大学が自由な裁量で使える経費を確保することによって,大学の判断ということになるかと思いますけれども,若手の人をいきなり高いポストで雇用するといったようなことも可能になるような仕組み,財源の確保といった観点で取り入れさせていただいてございます。
【栗原委員】
 プロジェクトがそういうキャリアパスの一環として認めていっていただけるようになって,活躍をした人たちが次のキャリアにつながるような活動をしていただけるというのは非常に大事なことだと思いますので,よろしくお願いしたいし,みんなで努力するべきだと思います。
【西尾部会長】
 磯谷局長,よろしくお願いします。
【磯谷研究振興局長】 
 補足で,参考情報ですが,もともとこれを入れたきっかけは,日本学術会議の山極先生の方から,学術会議の議論の中でこういう声がすごくあったので,まずはこれはやってほしいという話もあったということが背景にあります。
 それから,先生おっしゃったとおりに,キャリアパスそのものについては,産業界なり,そういったこともちゃんと考えないととても回らないといいますか,要するに,全体がうまくいかないので,そこのところはしっかり今後とも,大学の中の閉じた議論ではなくて,全体としてやっぱりサポートしていくということを考えなければいけないと思っています。
【西尾部会長】 
 今の問題は,産官学が一体となって考えていかなければならない問題だと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 ほかにございますか。どうぞ。
【竹沢委員】 
 女性の人材という視点から一言申し上げたいんですけれども。今の問題は,うちの大学が国立の総合大学では多分一番遅れていると思うんですけど,でも,日本全体的に本当に遅れていて,問題は,若手で,ピラミッド型のときに,底辺では女性が大変多いけれども,上に近づくに従って女性が大変少ないということだと思います。
 これは,いろんな人事のやり方を見ていると,やっぱりトップレベルの男性中心と言ったらちょっと言葉に語弊があるかもしれませんけれども,その人たちの中で意思決定がされる場合が多くて,若手レベルで女性の支援をすることも大事なんですけれども,女性に限っては,もう少し上の意思決定のレベルで採用するということも必要ではないかと。やっぱりそうしないと,ピラミッドの底辺で繰り返されるという,そういう気がいたします。
【西尾部会長】 
 上位職における女性研究者の採用等,女性活躍の推進は,大変重要な課題だと思いますし,日本の弱いところだと思います。是非今後,ダイバーシティ・アンド・インクルージョンという観点で,文部科学省の施策としても強力に展開していただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 ほかにございませんか。どうぞ。
【井関委員】 
 先ほどと今のことに関して。 先ほど,これがいい言葉かどうか分かりませんけれども,やはり学術機関にいる限り,キャリアパスはピラミッドです。若手支援の資金も確保するというのはいいんですけれども,途中の段階で他の道も当然あり,他の道に向いている人も当然いる。そのあたりの教育といいますか,本人にも考えてもらうという機会を作っていかないと,単に若手だからといって,じゃ,研究費をあげましょう,ということをずっと続けるわけにはいかないと思います。そのあたりのキャリアパスの教育といいますか,キャリアパスを考えてもらう機会というのも作っていかないといけないのかなと感じるんですが,いかがでしょうか。
【西尾部会長】 
 今のことに関しましても重要と思います。何かコメントございますか。
【原振興企画課長】 
 文部科学省の政策としても,ちょっと別の局になりますけれども,若手とか女性のキャリアパスを多様化するために,例えば,インターンシップに出てもらうとか,そういう教育はプログラムとしてはやってございます。
 それから,何よりも,やっぱり大学の中でそのような取組が行われるように,文部科学省だけではなくて,各研究機関の協力も頂きながら進めていく必要があるかなとは思います。
【井関委員】 
 よろしくお願いいたします。
【西尾部会長】 
 今の件,キャリアをしっかりとつないでいくということが非常に大事でして,その点も今後重要な課題かと思います。よろしくお願いいたします。
 ほかにございますか。中村先生。
【中村委員】 
 東大の中村です。
 これは大変に努力していただいてと感じます。要は,お金がない中でどうするかということに尽きると思います。しかし残念ながら,現場で30年もやってきて,これ,どれを見ても,およそうまくいかないと思います。つまり,現場で我々が問題に感じていることを何も解決しようとしていないということです。
 最初から申し上げると,人材改革,2ページですか,若手の任期長期化といっても,5年以上というと,例のパーマネントの雇用の問題に引っかかってくるんで,これはなかなか難しいと思うんですよね。労働規制全体の問題がある。
 それから,今,御存じのように,働き方改革ですから, 1日8時間しか働いちゃいけないわけで,ポスドクの人だって40時間で仕事をやれという時代です。国の政策全体に整合性がない。一日8時間だけ研究して世界的に頑張るのは無理です。
 それから,今もお話が出ていますけれども,長期化すると,やっぱり年取ってきますから,どこかで研究が向いている人と向いていない人を峻別するということをしないと,どんどん大学に残る人が増えてきます。この中で,研究から退場していただく方策,大学の全体の定員を減らす方向の政策を入れないと,絶対うまくいかないのも目に見えています。
 それから,博士課程の経済的支援の促進と書いてありますけれども,今までグローバルCOE,その他支援をやってきていますが,どれも5年刻みで,継続的に支援する政策になっていない。政府は博士学生を継続支援しないという方針がこれまでに学生にみんな伝わっているわけですね。それも,本人が悪いから支援されなくなるのではなくて,学校がお金を取れないからカットですよということですから理不尽です。研究においては信賞必罰というのが必要で,頑張ったら必ず評価されるということ,この大切なことがどこにも書いていないです。頑張った人が評価されますよというメッセージがなかったら,学生は博士課程に行きません。頑張ると良いことがあるというメッセージがないと若手教員も残りません。教授も大分やる気なくしているわけです。今,頑張ったら忙しくなるばっかりで,もう大変だ。そこに対する対策が何も書かれていないのは大問題です。
 それから,国際化の促進ですけれども,海外経験を有する日本人が日本に喜んで戻ってくるような条件が揃っていません。研究環境が悪くて給料が低いからです。今の給料では海外の人を戻すのは無理です。給与制度,今のしがらみをなくさないと無理です。
 それから,次のページ,研究資金の多様化となっていますけれども,オープンイノベーションで外部資金の呼び込み強化。これ,大変結構ですけれども,これまでは大学の教員に外部資金呼び込みやらせるということになっています。お金を取ってくるのは,学長の責任で取ってくるようにすべきです。しかし,この文書は,先生方にお金を外から取ってこさせて大学が使う,というふうに読めるわけです。今までそうでしたから。基本的に外部資金は大学が取る,また,JSTが外部資金を取って,それを先生方に配るという仕組みにしないと,先生方の負担がますます増えるばっかりです。
 次に,今,いろいろ議論されていると思いますけど,直接経費からPIの人件費の支出を可能にする話。今のお話を聞くと,大学の負担を減らすためにするというわけですけど,大学の負担を減らすために先生は頑張って研究資金を取ってこいというのは,そもそも本末転倒だと思います。
 それから,共用設備の問題。そもそも昔は共用設備を整備するための予算があったわけですね。コア・ファシリティはみんな大学が自分で調達していた。それが今,競争的研究資金から持ってこいというふうにおかしくなってきた。つまり,大学が自分の責任を果たせなくなったから,競争的研究資金で取ったお金で共用設備を整備しろというのは,本末転倒の仕組みです。共用設備は大学が用意すべきであると,文部科学省が財務省に働きかけるべきです。
 これはちょっと考えてみると分かると思います。小学校から大学まで,机や椅子というものは学校が用意しますね。当たり前のことです。学校にとっての机や椅子と,大学にとっての基盤的な研究機器は全く同じ性格のものです。だから,今,文科省が大学に求めているのは,小学校の先生や生徒に自分の座る椅子と机を持ってこいと言っているのと全く同じです。
 そういうような根本的な問題が解決しないまま,こういう姑息な政策を打ち続けてきているから,おかしなことになっているわけです。きっちりとした主張を財務省ないし政治家に是非声高にやっていただかないと困ります。ここで出ているのを見ると,現場の教員,学生がディスカレッジされる施策ばかり,ますます仕事が増えるということが目に見えております。
【西尾部会長】 
 どうぞ。
【磯谷研究振興局長】 
 また中村先生に看破されたんですけど,大変鋭い指摘で。
 一つずつ,全部お答えはできないんですが,事実関係だけをまず申し上げると,パーマネントの話は,御案内のように,研究職の場合は10年までというあれがありますので,別に5年にしたからといってすぐ引っかかるということではないんですが,その10年をどうするかという問題はもちろんあります。それは課題としてございます。
 それから,任期5年というのは,要するに,最初から5年というよりも,今よくあるのは,上限で3年だとか,2年だとかで,毎年評価はしていくけれども,上限3年,2年というのが実態なので,それは学術会議の方でも多分議論があったと思うんですけれども,それを,5年を超えた形でも残れるようにしてほしいというのが議論だったというふうに私は理解しております。ですから,固定的な年数で切るとかということではないということは理解を頂きたいと思います。
【中村委員】 
 今の点について申し上げると,大学の雇用においては,研究資金が終わるところまでしか雇用できない,それを越しては雇用がもともと契約できないのです。
【磯谷研究振興局長】 
 ですから,それはファンディングとの整合性というのは取らなければいけないということで,その辺の工夫が必要だということは十分分かっております。
 それから,頑張った方が評価されるというのは,これはまさにそういうつもりでやったんですが,表現の仕方等々で,読み取れないというふうに看破されたと思うんですが,我々も,それをまさにこれはやっていきたいということでございます。
 それから,学長がお金を取るというのは,これは当然の話で,中村先生,よく御案内だと思いますけれども,いわゆるOI機構については,大学が組織としてやるということなので,基本的には大学が組織的に,これは事務局職員とかURAも含めて,組織的に企業とやろうということなので,個々の先生の負担を減らす方向であるというのは,私はそういう理解をしてございます。
 それから,給与の問題,御指摘ありましたが,これはまさに人給マネジメント改革で,中村先生の御指摘からすれば,まだまだ生ぬるいということなのかもしれませんけれども,そういう枠を取っ払うというのが人給マネジメント改革の方向性だと理解をしてございます。
 それから,施設の共用の話ですけれども,これは大学がやはりこれを用意するという基本方針,これはそのとおりだと思いまして,要するに,今までそれぞれ大学共同利用機関だとか個別のファンディングとかで,どういうふうに大型設備を工面するかというのにみんな汲々としていたんですけれども,そこは日本全体で見て整合性が取れた形で,どの施設にどういうものを置いていくかということもちゃんと見極めた上でファンディングと組み合わせるということをやっていかなければいけないので,ファンディングの方だけでそれを処理するというのは無理であるということは十分理解しております。
 多々ございますが,また個々にきちっと対応していきたいと思っておりますので,よろしくお願いします。
【中村委員】 
 大変に期待しております。よろしくお願いします。
【西尾部会長】 
 どうぞ。本件に関してそろそろ最後のご意見をお願いします。
【中野委員】 
 同じ点になるんですが。ちょっと手前みそになるんですけれど,実は,我々の研究センターで雇用しているプロジェクト雇用のポスドクは,運交金を加えて,専従義務をなくしています。それから,プロジェクトの期間を超えて長期雇用も始めていまして,5年プラス5年という任期のポストに非常にいい人が来ています。
 リスクもあります。部局予算が減ると,その人たち,どうするんだろうというのがあって,それはリスクはあるんですけれど,やはり長期にした方が,若手はじっくりと研究ができて,2年,3年ではなかなか成果を出せないというか,もう目先の成果に飛びついてしまって,大きな仕事ができないというのを感じていて,やっぱりこの長期というのをやっていかないといけないと感じています。
 ただし,これはプロジェクト側の努力だけで解決することではなくて,大学とか機関とかがコミットというか,リスクを負わないと成功しないので,どのようにすれば,機関側ががリスクを取りやすくなるかということを文科省に考えていただければと思います。
 実際,今,リスクを取っているんですけど,小さな研究所だから,試行的に取れるところがあります。もっと大きなレベルでリスクを取ろうとすると,やはり今だんだん予算が減っている中,非常に難しいというのがあるので,そこを何とかしていただけたらというふうに感じます。
【西尾部会長】 
 どうぞ。
【磯谷研究振興局長】 
 中野先生のおっしゃることはよく分かりますし,そこを踏まえて十分検討していきたいと思います。
 それから,もう一つ,ごめんなさい,1つ言い忘れていました。PI人件費の話で,先生おっしゃったように,大学の方でお金を工面しなければいけないからということでやろうということよりも,むしろ先生おっしゃったように,PIに対するインセンティブはもちろん必要だと思っているので,これを入れるときには,必ずPIに対するインセンティブは何らかの形で必要だという方向で今検討はしております。
【西尾部会長】 
 提言の御説明,どうもありがとうございました。
 この提言に書かれていることを実践し,実際のこととして動くということになりますと,現場となる研究者コミュニティとの対話を丁寧に行っていただいて,現場がどうなっているかということを的確に踏まえていただいた上で,一つ一つの課題をクリアにしていただくことが大事と思っております。その具体的方策の実現ということに向けて,今後是非とも進めていただきたく,よろしくお願いいたします。

(2)令和2年度公募及び概算要求に向けた制度改善等について

【西尾部会長】
 それでは,次の議題に移ります。本部会と科学研究費補助金審査部会の下に科研費改革に関する作業部会を設置しておりまして,既に鋭意議論いただいているところですが,若手研究者への重点支援に向けて,幾つか議論していただいている事項がありますので,事務局から説明をお願いいたします。
【岡本企画室長】 
 それでは,資料2-1と2-2を御説明させていただきます。
 まず資料2-1でございますが,これは今年度の科研費の審査結果,既に交付内定を終わったところでございますが,速報値ということで,5月現在のものを御紹介させていただきます。
 一番上が特別推進研究でございます。こちら,昨年同様,12件の採択でございます。応募件数も,ほぼ昨年と同様という状況でございました。
 その次は,新学術領域研究でございますが,こちら,新規の領域については現在審査中ですが,公募研究につきましては,審査が終了してございます。本年度は,39領域について審査を行いました。採択率は23%ということになってございます。応募件数が900件ほど減っていますけれども,昨年40領域に対して,今年は39領域でしたので,領域の数も減っているということがございますので,このような状況です。
 次に,基盤研究でございます。基盤研究(A)につきましては,応募件数が昨年度と比較し40件ほど減っておりますけれども,採択につきましては同数ということで25.1%の採択率になってございます。
 次が,基盤研究(B)でございます。こちら,応募件数180件ほど減ってございますけれども,採択件数については362件の増ということで,採択率29.2%ということになってございます。基盤研究ができてから最も高い採択率ということになっております。また,この種目につきましては,30年度から若手研究(A)を廃止しまして,基盤(B)の方には,経過措置でございますけれども,若手を優先的に採択できる枠組を設けているということで,このような結果になってございます。
 次は基盤研究(C)でございますが,昨年度と比べまして,2,000件ほど増ということで,この種目はずっとここ数年かなり増加しておりますけれども,採択件数につきましても740件ほど増やして,1万2,918件,採択率は28.2%という状況でございます。
 最後は若手研究でございますけれども,こちらにつきましては,特に予算の充実も図っているところでございます。応募件数は800件ほど減っておりますけれども,採択件数につきましては1,575件の増ということで,採択率は40%ということで,昨年が30.7%ということで,非常に高い採択率だったんですけれども,今年は10ポイントほど上げたということで,予算の増額を図ったということもありますけれども,多くの採択をすることができたということでございます。
 後ろには,昨年度の新規採択分の研究種目の結果を付けてございます。
 次が,資料2-2でございます。令和2年度公募及び概算要求に向けた制度改善等に関する主な論点ということでございまして,新興・融合領域の開拓の強化についてと若手研究者の重点支援についてという,大きな2つの柱について,具体的な施策を検討しているということです。
 この2つの柱につきましては,先ほど説明がございました研究力向上改革2019の研究資金の改革に書かれている部分に沿った形になってございまして,研究力向上加速プランを今年度進めているということで,それを更に進めていこうというものでございます。
 1つ目の新興・融合領域の開拓の強化について,2つほど検討していることがございます。
 1つ目が新学術領域研究の見直しでございまして,こちらは本日また御審議を頂くということで,前期の研究部会からずっと審議をしていただいているところでございまして,後ほど具体的な内容については御議論いただきたいと思ってございます。
 2つ目が挑戦的研究(開拓)への応募促進方策の検討ということでございまして,こちら,具体的には,重複応募制限を緩和するということを考えられないかということで,今検討を進めているということでございます。
 2つ目の柱の若手研究者の重点支援についてということですが,1つ目が,若手研究者による基盤研究(A),(B)等のより大型の研究種目への応募促進方策の検討ということでございます。先ほど申し上げましたとおり,若手研究(A)がなくなりまして,現在,基盤研究(B)には優先的に採択できる枠組を設けておるわけですけれども,基盤研究(B),さらには,それ以上の種目にも若手の方に応募していただき,また,そこで研究費を取って研究を進めていただきたいということがございますので,こちらにつきましても,何らかの形で重複応募の制限を緩和することで対応できないかということで検討を進めてございます。
 2つ目が,研究活動スタート支援の重複受給制限の緩和ということでございまして,研究活動スタート支援は,前年度の9月に応募ができなかった方,特に4月採用の方が多いんですけれども,そういう方が,採用になった9月からすぐに研究を進められるようにということで,これは現在審査が進んでいるところですけれども,このスタート支援については,2年の研究期間で,1年目の秋には翌年度他種目へ応募することができます。その種目が採択になった場合には,そちらに乗り替える形を今とってございます。ですから,スタート支援の2年目はやめていただくということですけれども,このスタート支援については,2年目も研究を行った上で,更に別のものが採択になったのであれば,そちらの研究も進めていただくということで,受給制限を緩和してはどうかということで検討しております。
 3つ目が,令和元年度応募・採択状況等を踏まえた採択の考え方ということでございまして,先ほど,今年度の若手研究の採択率は40%になったということを申し上げさせていただきました。参考資料で,昨年度の採択率も付けてございますが,全体では昨年度24.9%という状況です。今年度は恐らく全体でもこれよりは上がっていくと思われますけれども,現在,科研費については全体の新規採択率を30%にするということを目標にしているところですけれども,個別種目で見ると,この若手研究が40%になった。では,これを更に採択率を上げるべきなのか,もしくは,充足率のこともあるかと思いますけれども,充足率を高めていくということもあるかと思います。また,別の若手関連の種目,さらには,別の種目についても採択率,充足率を上げる,若手だけではなくて,他の種目も併せて考えていく必要があるだろうということで,現在検討を進めているところでございます。
 下に書いてありますとおり,現在,作業部会と日本学術振興会において検討を進めているところでございますので,これらの検討結果を踏まえて,次回以降の研究費部会において具体的な内容については審議をしていただきたいと思ってございます。
 それと,もう1点,公募の関係で,この資料には付けておりませんが,前回研究費部会の中でも御紹介させていただきました,科学官・学術調査官にアンケート調査などをさせていただいて,今後どういう改善が必要かというところでも出てきたことですけれども,研究計画調書の様式などの見直しも考えてございます。
 特に,今年度変更しました研究業績の書かせ方などにつきましては,業績欄というものをなくしたということで,もう書かなくてもいいのではないかというような誤解などをされた方もいたということがアンケートに出ていましたので,効率的また公平に審査を行うということが大前提ですけれども,どのように書いていただくか,業績の書かせ方などについても現在検討を進めているということで,こちらについても改善をしていきたいと考えてございます。
 資料の説明は,以上になります。
【西尾部会長】 
 どうもありがとうございました。
 今御説明いただきました速報値,また,今どういうことが議論されているのかということの概要を御説明いただきました。これらの説明を踏まえまして,御質問や御意見ございましたら,是非お願いいたします。
【中村委員】 
 よろしいですか。
【西尾部会長】 
 どうぞ。
【中村委員】 
 科研費は,昔から採択率が一番問題なわけです。私が学振で研究員をやっている頃に,どういうふうにするかというのを随分議論したんですけれども,そのときの議論で参考にしたのは,諸外国の採択率なんです。あの頃のNIHはまだいいときだったわけですが,3割ぐらいだといい人は大体ピックアップできるだろうと言われてました。その後ひどくなって,10%切ることがあって,そうなると,もうほとんど賭のようなもので,絶対当たらないからやってもしょうがないなという感じになって,みんなやる気がなくなりました。
 外国の様々なファンディングエージェンシーが大体の採択ラインを出していると思います。多分3割ぐらいなんだと思います。これをきっちり調べて,評価して,それを財務省に上げるとかした方がいいのではないかと思うんですけどどうでしょうか。
 採択率4割というのは,若手だからいいかなとも思うんですけど,すこし高いのではないかなという気もしないでもないですね。一方で,特推の10%,10%というのは,どこのソサエティでも,もうほとんど当たるか当たらないかというギャンブルの話になって皆手が出せなくなります。JSTでも,御存じのように採択率数%の募集がありますね。0%では詐欺ですがこれに近い。だから,それなりの採択率は要るのです。海外の数値をきっちりと調査された方がいいのではないかと思います。
【西尾部会長】 
 貴重な御意見,どうもありがとうございました。3割ということに関しましては,今までのさまざまな書面の中で,それを目指すということは明記されていますが,そのあたりの事情を御説明いただければと思います。
【梶山学術研究助成課長】 
 3割につきましては,今期の科学技術基本計画の中で3割を目指すということになっております。
 先ほどおっしゃっていただきましたように,諸外国のファンディングエージェンシーはどうかというところは,NIHは2割ぐらいのところということに伺っておりますし,欧州系ですと,3割ぐらいというようなところもあるようでございます。
 それぞれ機関で,どこまでお金を出しているかによってパーセンテージが異なるところもあると思いますが,補強できるような資料に関しては,集めてまいりたいと思っております。
【西尾部会長】 
 ほかにございますか。どうぞ。
【中野委員】 
 特別推進研究について,一生に一度というか,研究者人生に一度というふうにシステムは変わったと思うんですが,そのことによって,傾向の変化というのは見られるんでしょうか。去年からもう変わっているので,去年と今年だけでは分からないんですが,以前に比べて採択率がどうなっているかとか,申請のバラエティというか,そういうのはどう変わってきているのかというのはお分かりでしょうか。
【梶山学術研究助成課長】 
 資料2-1を御覧いただければと思いますが,去年からの数ということで,106件,105件ということで,ほぼ変わっておりません。
 それから,29年度,30年度,参考資料のところを御覧いただきますとお分かりいただけますように,111件ということなので,余り傾向的には変わってはいないようでございます。
 今回の研究者一人一回だという話につきましては,対象となるのが,これを受けた方が次に出すときが1回目ということになりますので,今は基本的には全ての人が出せる状況なので,大きな傾向というのはまだないのかなと思っております。
【西尾部会長】 
 よろしいですか。
【中野委員】 
 はい。10年ぐらい経ってから。
【梶山学術研究助成課長】 
 そこをどう考えるかが不断の改革の検証だと考えております。
【中村委員】 
 これ,今回も多分12人の中で若い人がもらわれたと思うんですけど,40代でもらわれたら,もう二度ともらえないということを言っているわけですね。こんなあほなことはないですよね。本庶先生も何度ももらわれて,それから,ノーベル賞を取られた方は,みんなやっぱり支援があるからなので。
 残念ながら,JSTというのは,仕組み上,継続的な支援が無理ですよね。毎年テーマが変わりますから。AMEDも毎年テーマが変わるので,継続的には無理なので。やっぱり本当に基礎研究で日本がトップを目指したかったら,いい人には継続的に支援をするというメッセージが絶対必要だと思います。
【西尾部会長】 
 よろしいですか。どうぞ。
【甲斐委員】 
 先生の言われることはよくわかります。それを踏まえて長い議論がありました。実は特定の方が継続して取り続けていたために,新規採択者の枠が限られてきて,新しい方々が申請しなくなる傾向が出てきていたのです。それで仕方なくこういうシステムにしたんですね。だから,方向性としては,私はいい改革だったと思うんですけど,ただし,中村先生おっしゃるように,継続していける強い人をちゃんとサポートしないと,日本の国力は落ちると思うので,この一回こっきりにする代わりに,そのような継続支援が必要な方々のために新しい種目なり何か新たな申請できる資金制度を作ってほしいというのを上げていました。そちらを何か考えていただきたいと思います。
 それは科研費の枠の中だけで考えなくてもJSTとか,ほかの競争的資金制度との関連も含めて,優れた研究が移れる制度を何か考えるべきとは考えております。日本を代表する優れた研究が継続支援されないのはよくないとは思っております。
【西尾部会長】 
 貴重な御意見,どうもありがとうございました。
【中村委員】 
 この話,私には非常に気になることがあります。3年ぐらい前のこれを決めた報告書が文科省から出ていますけれども,その中で,学術システム研究センターが審査を監督する中で,ずっともらっている人を止めることができない,センター自体があきらめたと書いてあります。これはやっぱり学術システム研究センターの在り方が問われる問題だとおもいます。問題なのは,学術システム研究センターが自分の責任を放棄したような報告書を書いていて,それをこの委員会で追認しているということに基本的に問題があると私は考えます。
【甲斐委員】 
 先生,そうとらえるのは,学術システム研究センターがかわいそうです。
【中村委員】 
 いや,そう書いてありますから。
【甲斐委員】 
 いや,そうじゃなくて,学術システム研究センターかなりちゃんとやっていて,責任を放棄などしていません。私も現場でずっと見ていたので事情は知っています。特別推進研究は予算の関係上,申請数に対して採択件数が極めて限られています。例えば,生物系では4人しか採れない。5年継続している研究者が更新時期という方が3人いたときもあります。もしその方達がまた継続するとすると新規申請者のチャンスがほとんどなくなります。では,もちろん審査員は公正に審査していて,むしろ継続者には厳しめに審査しています。しかし,継続者たちの発表はやはりすばらしいんですよ。やっぱり陪席して聞いてみると,本当に差がある。若い人たちで,伸びるかもしれない。でも,今この時点で公平に聞いたら,やっぱりこっちだなと採択されてしまうのです。
 でも,それは正しい審査であっても,新規に挑戦しようとしている人たちにとっては,ディスカレッジなんですよ。今年は継続者たちの更新の年だから無理だなと思って申請をやめてしまう傾向があると感じました。生物系の特別推進への申請数が一時期激減してしまったことがありました。それはいい傾向ではないというので,学術システム研究センターではこの議論は10年以上やっていただいていました。中村先生の言われるご意見もよく理解しつつ難しい議論をずっとしてくださった結果,ようやっと打ち出した方針です。もちろん,予算を十分に上げることができれば問題は解決したのですが。学振が悪いのではなくて,予算とか,採択件数とか,そういう全てのことを鑑みて,仕方なく決めた方針と思います。
【中村委員】 
 それは,まさに私がそういう議論になってほしいと思って,今発言したわけです。採択件数が12件ということがそもそもの問題で,件数が少な過ぎる。これ,科研費トータルから見たら,12件だろうと,20件だろうと,全体金額としてはあんまり変わらない値なわけですよ。ですから,文部科学省が12件にしているというポリシーに問題があるんです。
 これも採択件数を30%にすればいいのではないかと思うんですが,文部科学省が採択率を上げる努力しないから,システムセンターに負荷がかかって,申し訳ないことになっているというのが結論だと思います。
 前回も申し上げたように,日本の研究力が低下しているのは,一義的に文部科学省の責任であって,経済産業省や厚生労働省の責任でないことは明らかですから,ここにその一端が出ているわけですね。ですから,この会議は一番大切で,やはりこの会議としても,全ての分野に関して採択件数を30%にすべきだと決めたらよいのではないでしょうか。
 ところで研究費の採否決定というのは,税金をいかに有効利用するかという立場で考えていただかなくてはいけないわけです。そのためには,実績の評価が必要なのです。実績ゼロの人にお金をあげるというのは,審査委員会としてはできない。良い人が,より良い成果を上げてくれれば,税金がより有効利用される,これが審査の一番の基本です。今まで10年良くやっているんだったら,11年目もいいに違いないと期待するわけです。一生一回ということで実績のある人を切るというのは,根本的に審査のあり方の基本をねじ曲げることになります。それが,金額が少ないから,件数が少ないからだということになったら,それは一生に一回ルールの方を是正するしかないと思います。

【西尾部会長】 

 永原先生,どうぞ。
【永原日本学術振興会学術システム研究センター副所長】 
 オブザーバーですが,申し訳ありません。ただ今の御意見に少し御説明をさせていただきたいと思います。
 学術システム研究センターは,審査そのものに関わっておりません。つまり,継続して同じ人ばかりが採択されてしまうのがまずいと思っても,学術システム研究センターが止めることは決してできず,審査は審査員の先生方がやられているのが科研費審査の仕組みです。
 審査員には,あくまでも学術的な見地で審査をしてくださいとお願いしており,これが科研費の基本です。甲斐先生がおっしゃったように,確かに,若手から優れたアイディアの提案が出てきていても,年齢の高い方からトータルに優れた提案が出てくれば,審査委員会は,それを採択することになります。
 ですから,学術システム研究センターが職務放棄をしたりしているわけではありませんので,ここは区別して理解いただきたいと思います。  根本的な問題は,中村先生が御指摘されるように,そもそも採択枠が少なく,年齢が高くても非常に優れた研究の継続支援と,若手で伸びてきている方による研究を採れないというような構造的な問題はあることは,個人的にはよく了解しています。ただ,学術システム研究センターのやってよいことの範囲と,そのことは是非区別していただきたいと思います。 【西尾部会長】  どうもありがとうございました。小安委員,どうぞ。
【小安委員】 
 私も,センターを責めるのはおかしいと思います。決めたのには,甲斐さんとか私とかがかなり深く関わっていますから,我々がやっぱり答えるべきであると思います。
 そのときの議論は,要するに,微分を取るか積分を取るかという話でした。つまり,ものすごく伸び盛りで,そこで支援すればぐーんと伸びるような人を採ることが,もともとの特推の使命だったのではないかということをさんざん議論しました。
 高いところをずっと飛ぶ人たちは,今のシステムで言うと,ポスドクをたくさん雇用してどんどんやっていくから,ボリュームは圧倒的にほかの人に勝てないようなレベルにいってしまうわけです。そういう人が継続的に採択されるのがいいのかということは,さんざん議論しました。中村さんのおっしゃるように,いい人が取り続けて悪いのかという点,それも当然議論にありました。そういう中で,今のような形になってきています。
 それから,一生に一度というのは,これ,間違いなので,訂正しておいてください。ちゃんと,再び新しいテーマが来たときに,また新しく微分値が高いようなものに対しては,排除してはいなくて,当然そういう方は採択できるということは書かれているはずです。ところがものすごく誤解を与えていています。一生に一遍になっちゃったというのは間違いなので,それは是非訂正しておいていただきたいと思います。
【西尾部会長】 
 小安先生,客観的な御意見,どうもありがとうございました。
 甲斐先生,どうぞ。
【甲斐委員】 
 1点だけ,すみません,追加させてください。どちらの御意見もすごく正しいと思います。問題点として配分額は種目を超えられないということがありますね。ほかの種目の比率を変えて,特推の採択率も30%にするなどはできないんですよね,たしか。
【中村委員】 
 文科省がやればできるわけです。
【甲斐委員】 
 文科省がやればできるんですか。一応学振はできないという前提でやっていますよね。だから,特推の総額の中で何人採択予定と決められているんですよ。文科省の考えとして,採択率は一律30%にしましょうというふうにすることができるならまた別の方策もあるかもしれません。
 そういう点も文科省に考えていただくか,あるいは,前にお話ししましたように,科研費の枠を変えて,そういう優れた人が継続取れるような新たな種目なり他の競争的資金に移っていけるような制度を作るか,何かの方策を考えないといけないと思います。確かに今は過渡期で,この改正で若い人を助けるにはいい方向に行きましたけど,じゃ,優れた人たちをつぶしかねないという危険性は危惧しております。
【西尾部会長】 
 どうもありがとうございました。
 この件も時間の関係がございますので,ここまでにしたいと思います。資料2-1のところで,特別推進研究を除きまして,前年度よりも採択のパーセンテージがこれだけきっちり上がっていると。特に重点的に取り組んでいただきました若手研究のことに関して,このように顕著な採択率が出たということに関しては,研究振興局の方々の御尽力に感謝申し上げます。
 今御意見がございましたように,特別推進研究のことに関しては,今までの経緯とか,特別推進研究が有する特性であるとかを踏まえまして,何らかの検討,改善ということが必要だということが今日の議論で浮き彫りになったと思います。今後,その点に関しましては御検討のほどをよろしくお願いいたします。

(3)「新学術領域研究」の見直しについて

【西尾部会長】
 続きまして,「新学術領域研究」の見直しについて,事務局から説明をお願いいたします。
【辻山学術研究助成課課長補佐】 
 それでは,資料3を御覧ください。これまで,制度の大枠につきまして,本資料を基に御審議いただいております。本日は,作業部会で新たに検討された事項につきまして,本資料に追記・修正している部分を中心に御説明させていただければと思います。
 1枚めくっていただきまして,2ページ目を御覧ください。まず,1,研究種目の目的等についてでございます。はじめに,新しい種目を学術変革領域研究という,まだ(仮称)でございますが,このような名称としております。また,区分(A)は,従来の新学術領域研究の研究領域提案型を引き継ぐもので,(B)の方が,若手から中堅がフィージビリティ研究のような形で短期間行うような区分になっているところでございますが,目的のところで,(B)の目的の表現をよりシンプルに変更,修正を加えております。読み上げますと,我が国の学術水準の向上・強化につながる研究領域の創成を目指し,将来の(A)への展開などが期待される研究というふうに,前回のものよりはシンプルな形に表現を変えさせていただいております。
 また,応募金額につきましては,1研究領域当たり,1年度当たりの金額を,(A)については,現行の新学術領域研究の応募金額を踏まえということで,1,000万円から3億円程度を原則とする。また,(B)につきましては,1年度当たり5,000万円までというふうに書かせていただいております。
 また,研究領域の構成につきましては,(A)の計画研究のところでは,次代の学術の担い手となる若手から中堅の研究者としておりましたが,この中堅の研究者を,45歳以下の研究者ということで,年齢を入れさせていただいております。が,少なくとも複数含まれる領域構成とするように留意としております。また,(B)の方につきましても,中堅の研究者というところは,45歳以下の研究者ということで,(A)と合わせております。
 また,(A)の公募研究については,一番下の丸でございます。総採択件数の半数程度が若手研究者となるよう留意としておりましたが,この若手の考えを,現行の若手研究と同じく,博士の学位を取得後8年未満又は39歳以下の博士の学位未取得の研究者としております。
 次のページを見ていただければと思います。ここの対象の部分につきましては,いずれも大きな変更はありませんが,若干表現ぶりを変えております。
 3)のところで,研究期間終了後に,個々の研究課題について十分な成果が期待されるとともに,これまでの学術分野の概念や方法論を変革することということで,前回までは具体的な事例などを幾つか挙げて,多少長めの表現になっていたんですが,これを,trans formative researchというところが分かるような形で,簡潔に表現を変えております。また,(B)につきましても,こちらはこれまでの学術分野の概念や方法論を変革する可能性を有するということで,同じくシンプルに変えさせていただいております。
 次のページを見ていただきますと,2として,審査実施時期・審査方法についてまとめております。
 まず,審査区分については,現行4系(人文・社会系,理工系,生物系,複合領域)の委員会で審査しているところですが,新しい学術変革領域研究については,(A)(B)それぞれに委員会を設けて,委員会の構成を3系(人文・社会系,理工系,生物系)という委員会を設けるふうに考えております。
 アスタリスクの委員のところを見ていただければと思いますが,現行の新学術領域研究では,3つの系(人文・社会系,理工系,生物系)において,それぞれ融合研究が提案されている一方で,「複合領域」が無理な分野融合を誘引している面を考慮し,「複合領域」を廃止し,3つの系に大括り化し,その際,審査委員を適切に配置することで,より専門性の高い審査が可能となるように留意したいということで考えております。
 また,審査方式につきましても,それぞれ(A)(B)で審査意見書を活用しながら,(A)の公募研究の審査につきましては,二段階書面審査を考えておるところですが,領域の運営に配慮する方策を導入するということを新たに設けております。また,(B)の審査につきましては,こちらは書面審査及び合議審査で,ヒアリングを行わない形の審査を考えております。
 次のページを見ていただきますと,3として,評価実施時期・評価方法についてまとめております。新しい学術変革領域研究については,(A)の中間評価を4年度目に実施するということで前回御議論いただいているところですが,これだと間までしばらく時間が経過することがありますので,新たに2年度目(研究期間5年間の2年度目)に,審査結果の所見等の指摘事項に係る対応状況や領域の運営状況についてフォローアップを行う機会を設けたいと思っております。
 具体には,下にある評価に係るスケジュールのイメージを見ていただければと思いますが,2年目のところでフォローアップを行い,このフォローアップのところで,採択時の所見における指摘事項や領域の運営状況をチェックする。問題がなければ,4年目に中間評価を実施して,従来と同じように,期間終了後の6年目に事後評価を行うということを考えております。
 なお,(B)につきましては,3年間という短い研究期間であることも踏まえ,(A)でやっているような中間評価・事後評価は実施しないように考えております。ただし,(B)においては,(A)に応募を行う際には,当然,(B)における研究成果についても併せて審査の際に加味できるように,評価する項目を検討するように考えております。
 最後のページでございますが,他の研究種目との重複の制限についてでございます。こちらについては,基本的な考え方は,現行の新学術領域研究における重複制限を基本的な枠組と考えておりますが,「公募研究」の研究代表者については,優秀な若手研究者が新たな研究に取り組む機会を確保し,挑戦性の追求が可能となるよう,現在は応募ができない「挑戦的研究(開拓)」にも,新たな制度では応募できるよう,重複制限を緩和したいと考えております。
 最後に,スケジュールでございますが,学術変革研究の審査スケジュールについては,初年度の公募の時期は,次年度予算の閣議決定後(1月頃)を想定しております。したがいまして,採択領域の決定時期が現行の新学術領域研究に比べて遅くなります。2回目の公募においては公募時期を前倒ししながら,3回目を目途に公募の時期を平準化していくように考えております。
 また,学術変革領域研究の審査・評価については,日本学術振興会へ移管する予定になっております。こちらについては,文部科学省で審査を少なくとも2回程度実施し,新しくできる(B)の応募状況等も踏まえつつ,審査方法等の改善を図った後に日本学術振興会へ速やかに移管できるように考えております。
 なお,移管に当たりましては,日本学術振興会の学術システム研究センターにおける業務の増加が見込まれますので,こちらについても,日本学術振興会と相談しながら,十分な体制の強化ができるように考えております。
 説明は以上です。
【西尾部会長】
 どうもありがとうございました。
【小安委員】 
 私はこの作業部会の座長をさせていただいておりますので,今日はまな板の上のコイという状況でして,先生方からいろいろと御意見,御質問等を頂いて,それを更に議論に生かしていきたいという立場ですので,いろいろと御審議を頂ければと思います。
【西尾部会長】 
 どうもありがとうございました。
 ここまで作業部会で新学術領域研究の見直しについて御検討いただきまして,誠にありがとうございました。
 ステージゲートを設けるとか,さまざまな新しい考え方が導入されておりますので,その点も含めて,御意見等いただければと思います。どうぞ。
【竹沢委員】 
 よろしいでしょうか。多分,私の出張中で,私が作業部会の委員でもあるにもかかわらず,本当に発言申し上げにくいんですけれども。
 2ページ目のところで,審査区分が,複合領域が無理な分野融合を誘引しているということで,今回廃止されたということですけれども,これに関しては,私はちょっと違う考えを持っておりまして。  日本の中で,やっぱり文理融合が海外に比べると圧倒的に少ないと思うんですね。それが両方できる分野。これはますます重要になっていて,それで,東日本大震災のこともそうですし,今,私たちの研究でも,遺伝学の人たちと人文・社会科学と一緒にやったりして,倫理問題も考えているんですけれども。それは,相互に影響を与えることによって,その間が埋まっていって,それで,そこに若い人たちが入ることによって,10年後,20年後のその間を,両方を架け橋できる人たちが増えていくということなので。
 無理な申請書を書いている方々に関しては,審査の方ではねていただいて,やはり国全体としては,この分野の成長をもっともっと増やしていくんだという方向で行っていただけたらなと思っております。
【西尾部会長】 
 どうでしょうか。
【小安委員】 
 先生がおっしゃったところは,さんざん議論しました。
 幾つか論点がありまして,1つは,色々なところで分野の融合が起こっているというのは,多分これは事実であって,それをちゃんと取り入れられるようにということで,かつての分科・細目表というのをやめて,大括り化して,今のシステムになりました。
 そういう点から考えると,どこの分野でも,融合したものは高く評価できるようなシステムはできているというふうに,我々としては考えたいというのがありました。
 もう一つ,先ほど出てきた特推では,3系でやっていて,そこにいろいろな申請が上がってきて,それぞれ一番自分がここで審査してほしいというところでやるようになっています。このことを考えると,恐らく代表者になられる方は,どこか1つの系の中にもともとおられた方で,その方がほかの系の方を引き込んでやられるのであれば,そこで十分それを主張することで審査ができるだろうというようなことを議論して,今,こういう形にさせていただいています。ですから,わざわざ複合というのを設けなくても十分に審査できるのではないかということで,こういうことにしました。
 ただ,そのときに,竹沢先生がおられたら,恐らく違う意見が出るのではないかということは議論しました。以上のような背景で,今,こういう紙になっております。
【西尾部会長】 
 どうぞ。
【竹沢委員】 
 多分,私たちの世代に関してはそうだと思うんですけれども,そうすると,ずっと再生産されていくと思うのです。多分,今後は,研究チームのヘッドさえも,どっちの分野とも言いがたい人が増えるのではないかと。まともに競争したら理学系の人に負ける,あるいは人文系の人にやや劣るかもしれないけれども,融合となるとその方がトップというような。しかし,本当の意味で理系と人文・社会科学系の融合をやっている方は,まだまだ少ないと思うんですね。それは海外でもまだまだだと思うんですけど。やっぱりそれによって新しい学問が出てきたり,社会の倫理観念が変わっていくということを考えれば,そういうヘッドの人たちが次世代出てくるということを考えれば,次の世代はどっちでもなく審査されるという,複合領域がやはり必要ではないかと思うのです。プラスとマイナスがあるとしたら,どちらが大きいかと考えると,審査部分でデメリットの方を削ってこの領域を設けることによって,プロモーションできないかなと思う次第です。
【小安委員】 
 御意見は賜りました。
 それと,もう一つは,複合領域の審査員をどのように構成するかということも,これはかなり難しい問題がありまして,やはり中心となる系のところで深い議論をしていただいた方がいいのではないかということもありました。ですから,多分一長一短あって,もしかしたら,どれが正解ということはないかもしれませんが,もう少し皆さんと考えたいと思います。
【西尾部会長】 
 どうぞ。
【栗原委員】 
 やはり同じように,私も作業部会にアドバイザーとして出席しております。複合領域は,おっしゃるような点は大事な点だと思いますが,複合領域の審査をした先生方から伺うと,非常に審査が難しいという御意見も伺っています。  だから,そこのあたりのバランスは非常に難しいと思います。今,竹沢先生のおっしゃったことをどういうふうにプロモーションできるかというようなことは,いろいろ考えなければいけない点もあると思います。科研費の特別なテーマの立てる枠とか,そういうのもいろいろ議論になっておりますのでこれをなくすんだったら,どのような代替策があるかというようなことも考える必要があるかと思います。
【西尾部会長】 
 射場先生,どうぞ。それから,井関先生,お願いします。
【射場委員】 
 今の議論と同じような意見なんですけど。学術変革というのが一体いつ生まれるかではないかと思うんですよね。代表者が初めに提案のときに想定して,こういう融合をするといいと言って提案してくると思うんですけど,それで融合領域とか変革領域が出てくるのはいいんですけど,本当におもしろいのは,やっているうちに提案者が思わないような変革が起こることが一番おもしろいと思うんですね。それが初めの審査のときには,提案者も想定していないようなことが起こるというのは,なかなか審査も難しいので,初めは場を設けるぐらいのことで,中間でしっかり何が起こっているかを評価するみたいな形になっているといいのかなと思いました。
【西尾部会長】 
 小安先生,いかがですか。
【小安委員】 
 非常に参考になる御意見だと思います。
【西尾部会長】 
 井関先生,どうぞ。
【井関委員】 
 私は,この御提案の人文・社会系と理工系と生物系という3つにシンプルに分けるという方がいいかなと考えます。学術調査官として何回か新学術領域のいわゆるヒアリングに陪席した経験からすると,その方がいいと感じます。  それはなぜかというと,おっしゃったように,本当に審査が難しいんです。各系からいらっしゃっている先生が,どうなんだろうねという感じでやっていらっしゃる。だとしたら,どこが一番近いですか,人文・社会系,理工,生物の中でまず審査をしていただくと。むしろ,これは小安先生が以前から言っていらっしゃる,審査員を,これはやっぱりおもしろい,変革するような研究領域なのではないかということをきちんと理解できる審査員を育てることが必要であると感じています。
【西尾部会長】 
 どうぞ,上田先生。
【上田委員】 
 今の課題に関連して。最近の言葉では,連携,それから,融合。複合もありますね。これらの定義は難しいと思うのですけれども。連携は,分かりやすく分野連携だと思うんですが。融合と言ったときに,例えば,今,人工知能分野では,海外でフェアネスという研究テーマがあって,それは最初に倫理から生まれたテーマだと言えますが,それが今,数学の世界で定式化されている。こういう研究が,融合,複合というものだと思います。  
 ですので,このテーマの研究に関する審査では,やはりふわっとした内容ではだめで,これを数学的に定式化したときには,それがきちんとフェアネスという定義をフォーマルに記述しているかという観点で審査をしないといけません。ですので,小安委員言われたように,一見,複合的な研究テーマでも,審査は,やはりその専門家がやる。つまり,あるテーマに関しては,いろんな側面があると思いますね。そういう意味では,おっしゃるように,いろんな研究を人文の立場で,あるいは,理工の立場でやるということは極めて重要な時代なんですけど,その審査は,その研究がどの立場での研究かを判断し,やはりその立場の領域の専門の方が審査するという方が健全だと思います。私もこの部会に出席しているからというわけではないんですけれども,小安委員が説明された方針でやる方が適切と思っています。
【西尾部会長】 
 人文・社会系,理工系,生物系ということの系はありますけれども,各々の系において,いわゆる境界領域的なものに関しては,より積極的に採択していこうという大きな流れが既に明確になっているということを鑑みて,特に複合領域を設けることまでは必要ないのではないかと思います。この複合領域がないと,境界領域的なものが採択され難い状況なのか,ということの確認を小安先生の方でしていただければと思います。その確認の過程,あるいは結果を踏まえて,竹沢先生には,再度,御意見があればいただければと思います。よろしくお願いいたします。
 ほかにございますか。どうぞ。
【中野委員】 
 全く違った観点なんですが。新しい提案の方は,設備の共用化,あるいは,共用設備の措置とか,そういうところが強調されているんですが。ここのところというのは,ちょっとイメージがつかみにくいんですけれども,新学術領域の間に何か新しい装置とか,そういうものを開発して,それを共用化するというような,そういうようなイメージなんでしょうか。
【西尾部会長】 
 どうぞ。
【小安委員】 
 これは多分いろんな意味があって,これまでも新学術領域研究の中でも,総括班が,その班全体のために装置をセットアップして使わせるみたいなことをやっていたところもあると思います。そういうのをもう少しいろいろやると,前半に話題になっていたような装置の共用化みたいなところにも貢献できるのではないかなということです。
 もう一つは,理工系だと装置を作るというのもあると思いますが,そういう場合にも,もしかしたら広い範囲で使えるようなものができれば,共用できるように持っていく事もあるのではないでしょうか。非常に尖ったところを解決するような装置の場合には,余りそういうことにならないかもしれないですけれども。
 総括班がやっていたようなことのイメージとして,ここで議論しました。
【中野委員】 
 多分,理工系だとかなりイメージは取りにくいというか,これ,全く誤解してしまうのではないかという,そういう危惧はあります。大型設備を使っているところは。
【小安委員】 
 なるほど。
【栗原委員】 
 私も審査していたときに,いろんな領域の方々の話を聞きますと,特に複合の場合は,生物と化学の人という場合があったときに,生物の実験装置を化学の人は持っていないので,そういうものを,総括班,あるいは,そういう研究をやっている人のところで提供する。あるいは,新しい計測法を持っている人が,材料を持っている人たちに新しい計測機器を提供して,それを領域内の共用的な使い方で使うというのは,既に一般的に実施されてきていることだと思います。
【中野委員】 
 分かりました。我々の分野だと,加速器の測定器を作ったりとか,そういうことを思い浮かべてしまうので。
【栗原委員】 
 スモールサイエンスの場合は,異なる研究分野の人たちと研究をやるということで,そういうアドバンテージがあり,新技術領域の中でやることで,違う研究分野と一緒に研究をやるということがスムーズに実施されていると思っています。
【中野委員】 
 分かりました。
【西尾部会長】 
 今の件は,記述の点では,何か改善した方がいいという状態かと思います。どうでしょう。
【中野委員】 
 そう思います。Belle検出器のような規模のものを新学術で要求されても困ると思いますので,何か変えた方がいいような気がします。
【西尾部会長】 
 この点は,記述に関して改訂をよろしくお願いいたします。
 ほかにございますか。
【中野委員】 
 もう1点よろしいですか。
【西尾部会長】 
 どうぞ。
【中野委員】 
 45歳以下とか,39歳以下とか,いろいろと年齢が具体的に出てきているんですが,これはほぼ条件になってしまうんですか。それとも,これぐらいという緩い感じになるんでしょうか。
【小安委員】 
 これは,そちらの方から。
【梶山学術研究助成課長】 
 現在,若手研究に関しては39歳未満,それから,ポスドクが8年未満となっておりますが,こちらに関しては,現時点では,(A)のところに関しては,若手の参画ということ,それから,中堅の参画というものを広げていくという全体の流れの中で,ある意味,資格というところが必要なのではないかというところで,このような表現になっております。
 (B)の方は,(B)から(A)につなげていくということで,若手・中堅ということになっておりますが,ここに全ての方が中堅以下なのか,そうでない方の参画の許すのかそういう議論というのは今後必要なのかなと思っておりますが,少なくとも(B)の主担当者は中堅以下ということが要件になっていくのかなと考えているところでございます。
【中野委員】 
 分かりました。これも分野とか,研究の規模とかによって,どこを中堅と取るかというのはいろいろ変わってくると思うので,一律に,例えば,45歳というところで切ってしまうというのが本当にいいことなのかどうかというのは,十分検討していただいた方がいいかなと思います。
【小安委員】 
 私も数字を出すのは嫌いなのですが,45の唯一の根拠は,国際の(A)でこの数字が出ているので,そこだけを使ったということです。若手研究などは,その定義を変えましたので,本当は数字を書くというのは避けたかったのですが,数字を書かないと何でもありになるという考え方もあったので,ここではそういう形にさせていただいています。
【西尾部会長】 
 どうぞ,甲斐先生。
【甲斐委員】 
 今,上と下の若手・中堅の御説明ですが,下の方は8年未満,39歳以下となっているのは他でも決まっているからということで,上の説明とは異なっているのに,表現としては同じですよね。想定しているのは上は45歳以下の研究者,下は39歳以下の学位未所得の研究者ですね。もしも下は若手研究者の定義だからで,上はもっと緩やかにというんだったら,ちょっと言葉を変えていただいた方が。例えば,40代半ば以下を想定とか,あやふやにしておいてあげたほうが良いのではないでしょうか。大体資格者を年齢で区切るというのは,age discriminationになるから本当は原則的にはいけない。だから,本当にここら辺はだいたいで良いと考えておられるなら,言葉も緩やかにしていただけるといいなと思います。
【西尾部会長】 
 今の甲斐先生の御提案でいかがでしょうか。ある種の目途は示すけれども,それによってイエス・ノーを決めることではないということです。
【梶山学術研究助成課長】 
 ありがとうございます。こちらの方に関しましては,中堅というものが45歳以下だというのは,国際(A)の方で定義をしていただいております。
 その際に,議論のところをいろいろ伺ったときに,35歳ぐらいになったときから10年だったり,また,40歳未満というところから,一回は基盤研究を取った後のところまでとか,様々な考え方があるようではございます。
 今回,(A)というような今後の新しい研究領域を作っていく際に,それをもともとに考えていただく,フィージビリティ的な研究を頂くのはやはり若手だったり中堅の方なんだろうというとき,そのところをどうやって表すかというところで,むしろ年を曖昧にした方が分かりやすいのか,分かりにくいのか。反対に,45歳以下中心だけど,そうではない人も可能にするか。いろいろ考え方はあると思いますので,そこは作業部会の方でまた御相談させていただいて,御検討させていただきたいと思います。
【西尾部会長】 
 この研究領域の特殊性で,むしろ次のステップのことを期して,(A)の方をどういう対象としておくかという配慮から来ているということを再度検討いただければと思います。
 ほかにございますか。どうぞ,中村先生。
【中村委員】 
 今まで新学術領域の評価委員を時々務めたことがあるんですけど,これまでも比較的若手ということになっていましたね。実際には,皆さん,やっているうちに,5年経つと若手は若手ではなくなるわけで,終わった頃に教授になったりすると,実は,もう若手向きのものが出せなくなるんですよ。  
 若手若手って文部科学省はいっておられますけれども,この人たちも5年経ったら,若手の40%採択率から25%採択率の研究費になるので,残りの15%の人はあぶれるわけですよね。年齢制限をするということは,若手でなくなってあぶれた人に対してどうするのかという施策と組にしないと,無責任だと思います。年齢制限をかける方式だと,いい成果は出たけど,その研究期間が終わると卒業で,お金が取れないねということになって,立ち枯れしちゃうんですよね。そういう人を,立ち枯れして退場をお願いするということでいいのか,それとも,立ち枯れさせないのかということを,文部科学省として,施策としてちゃんと打っておかないとならない。
 あと5年経ったら,あの若手どうしたんですかという質問は必ず出ます。それがピラミッド型なんですけど,ピラミッドということは,だんだん退場する人が出てくるということを意味していて,50歳ぐらいになって,教授で,さあやろうかというときに,お金が取れないということになるんですよ。これ,現実に起きていることなので,年齢制限の問題というのは,よっぽど考えないと,ますます皆さんがやる気を失う理由になると思います。
【西尾部会長】 
 どうぞ。
【梶山学術研究助成課長】 
 御説明の方を,私どもが最初の御説明で完全にできなかったかもしれないんですが。この(A)のところでございますけれども,主担当者といいますか,研究代表者に関しましては,若手であったり中堅の研究者であることを求めないということがありますので,1回目をやった後に,その研究の領域が広がって,もうちょっと優れた研究というものが広がっていくと,それを是非やりたいということであれば,それができるような仕組みというものを今回考えているところです。
 ただ,その中で,計画研究の中で,その要素となる計画研究の中には若手の方を入れていただいた方がいいのではないかというところで,現在も若手の方が計画研究のところで約2割弱ぐらいいらっしゃいますので,そこを若干のところで,複数というところの表現にしてはどうかというところを,ここは御提案させていただいたところでございます。
【中村委員】 
 それは結構なんですけど,現実的には,私が見てきたのでも,だんだん若年化する方向に行っているんですよね。特推の一生一回みたいに似ていて,若い方が通りやすいということになってきて,だんだん若い方にシフトする。そうすると,50ぐらいになったときに,行き場がなくなるという雰囲気が出ているのは確かなんですね。age discriminationが起きているという感じになっていると思うんですよ。
【西尾部会長】 
 中村先生,本当に貴重な御意見,ありがとうございました。
 どうぞ。
【小安委員】 
 多分,その問題に関しては,きょうは全然触れていませんが,一番正しいのは,重複制限を全てなくすことだと私は思っています。ただ,それをやると審査が成り立たないので,与えられた条件の中で部分最適解を求めているというのが現在やっていることです。ですから,そこのところは僕らは頭に入れておかなければいけないことだと思います。
 今は若手にとにかく予算を付けるという方針なので,そこは僕らケアしなければいけないのですが,それによって,じゃ,なぜシニアが損するかというあたりのところは,やはりもう少し議論はどんどんしていった方がいいなというのは感じています。
【中村委員】 
 重複のことは,きっちり議論すべきだと思います。
【西尾部会長】 
 分かりました。今,小安先生がおっしゃられたことは重要なことで,審査する側が体制的にもたなくなるということも,一方で考えなければならないという点があります。また,若手研究者に対して重点化して投資するということは大事ですけれども,一方で,中村先生がおっしゃられたように,その投資をサステイナブルにうまくキャリアアップに活かすことを,どのように実現していくかも大事です。そのあたりのさまざまな要件の最適化をいかに図っていくかが重要になってくると思っております。
 まだいろいろ御意見あるかと思うのですけれども,本日は,科学技術・学術政策研究所からの定点調査の概要をいただくことになっております。そこで,今いただきました御意見を踏まえまして,引き続き作業部会において御検討いただいた上で,次回の研究費部会において見直しのことについて,決定をするということで進めたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。貴重な御意見,ありがとうございました。

(4)「科学技術の状況に係る総合的意識調査(NISTEP定点調査2018)」について

【西尾部会長】
 それでは,科学技術・学術政策研究所による定点調査の概要について,坪井所長から御説明いただきたくお願いいたします。
【坪井科学技術・学術政策研究所長】 
 それでは,科学技術の状況に関する総合的意識調査(NISTEP定点調査2018)について御説明いたします。
 資料4-1です。2ページ目ですけれども,当研究所では,科学技術指標として公表しておりますような定量的データの分析も行っておりますが,この調査は,産学官の第一級の研究者や有識者への継続的な意識調査を通じて,科学技術の状況変化を定性的に把握するという調査です。定量的データにはタイムラグのあるものが多いわけですけれども,この調査では,毎年1回,同じ方々に同じ質問のアンケート調査を継続的に実施することで,最新の状況変化をタイムリーに把握することができるものと思っております。今回は,第5期科学技術基本計画中に実施するものとしては3回目の,いわば基本計画5年間の中間地点の調査ということになります。
 6つの質問パート,この紫色のところにありますけれども,研究費部会に関係の深い質問としては,3つ目の丸の学術研究・基礎研究と研究費マネジメントあたりになるのではないかと思いますが,質問全体は63問あります。
 3ページが,回答者グループの詳細になります。質問の相手先は,大学・公的機関のグループの約2,100名,この中には学長クラスの方140名や,あと,部局長から推薦された現場の研究者の方々1,600名なども入っております。また,もう一つのイノベーション俯瞰グループの方には,産業界も含めて約700名の方が入っていただいていて,合計2,800名ということで,この回答者グループに対して,それぞれ関連する質問をさせていただいております。
 4ページですが,一番上に記載のとおり,毎年の同じ質問項目に加えて,毎年変更する深掘調査というのも行っておりまして,今年度は,「研究活動の基盤的経費を充実させるために行うこと」などの深掘調査を行っております。
 調査の時期は,昨年の9月~12月で,回答率は91.1%でした。また,個別の質問の回答には,自由記述や評価の変更理由の自由な記述も頂いておりまして,これらも約9,400件で,文字数59万字ということで,非常に多くのものを頂いております。
 5ページです。今回は研究費部会に関係が深い事項を中心に御説明するということで,ここでは大学・公的研究機関の研究環境の状況ということをまとめている部分ですが,基盤的経費・研究時間・研究支援人材に対する危機感が継続しているということ。この白抜きの逆三角形が2016年のもので,青色の逆三角形が今回の2018年のものですが,評価が低下しているということが見てとれます。また,この指数についても,著しく不十分というところが最も多いということで,回答者の属性によってここにばらつきがあるのも,下の線のように見てとれるんですけれども,全体としては,そのような評価が出ているものでございます。
 6ページですが,ここは大学や公的研究機関の若手研究者の状況に関するものです。一番下の質問の関係では,実績を積んだ若手研究者のための任期を付さないポストの拡充に向けた取組について不十分という認識が継続しているという状況があります。
 7ページは,学術研究・基礎研究と研究費マネジメントに関する問い全体の指数と変化をまとめたものです。
 8ページの方は,学術研究の状況です。2番目の科研費の質問があるんですけれども,指数は2016年度と比べて低下はしておりますが,NISTEP定点調査の63問の中では,この指数が最も高いものです。
 飛ばしまして,10ページでございますけれども,ここは,この質問に関して評価を上げた方や下げた方のコメントの例も載せておりますけれども,右下に評価を下げた理由の例ということで,採択率や充足率についての指摘,任期付き雇用であり,新たな課題には挑戦しにくいとの指摘とか,科研費は取得しないと立ち行かなくなるといったようなことが書かれている指摘が見られました。
 11ページは基礎研究の状況ですが,これらの質問に関しては,大学・公的研究機関グループとイノベーション俯瞰グループ両方で,それぞれ2年前に比べて指数の低下が見られております。
 12ページは研究費マネジメントの状況に関するものですが,やはり上2つの質問に関しては,指数の低下が見られるような状況があります。
 13ページですけれども,ここは公募型研究費の申請等における研究者への負担軽減についての質問に関連する部分です。評価を上げた理由の中には,科研費の申請書のフォーマットの変更ということが前向きに捉えられているというところもありますが,下げた理由の方にも,手続の関係のものが挙げられているということもあります。
 14ページからは,深掘調査に関係するものです。過去のNISTEP定点調査において,基盤的経費の減少が学生の教育にも影響を及ぼしているというような指摘が見られましたので,研究を通じた教育・指導の状況についての質問を行ったものです。
 まず14ページでは,大学等の研究室や研究グループの人員構成とか,最低限の研究経費というものについての質問への回答です。国公私立大学でバランスの違いはありますけれども,研究室・研究グループの中で,学生もそれなりに多くを占めているということが分かります。また,NISTEP定点調査の回答者は,部局長から推薦された第一級の教員や研究者ですので,全体の平均ということで,皆さんの印象よりは,いろいろな研究者の人数は多いと感じられるのではないかとも思います。
 15ページは,基盤的経費の減少や研究活動の低下が研究を通じた教育・指導に与える影響について質問した結果です。一番左に注目しますと,現状の基盤的経費のみでは,学生が学位論文を書くための研究の実施が困難であるとの認識が,国立大学において顕著ということです。また,一番右のところでは,大学等の研究室・研究グループの研究活動の低下は,学生の研究・指導に影響を与えるとの認識で,これもやはり度合いは国立大学が顕著ということです。

 16ページですが,こちらも深掘調査です。大学の研究活動の基盤的経費を充実させるために進めるべき取組ということで,質問は,運営費交付金以外のものということで質問した結果,色を塗っているところですが,いずれの回答者グループでも,「企業との組織的な連携」,「寄附金,資産運用,出資事業」,そして,「外部から獲得する資金の間接経費」というところに賛成するという共通認識が,ある意味での産学官から示されております。

 なお,ここでは運営費交付金以外ということで質問しているわけですけれども,自由記述の方を見ると,明らかに運営費交付金の充実を求める意見が多数見られているという状況です。

 17ページは,改めてこのポイントをまとめているところですが,今まで御説明したことの繰り返しになる分です。

 18ページでは,こういったことを踏まえまして,実際の状況判断ということでは,今回,意識調査だけですので,定量的データを含めた総合的な分析とか,それを踏まえた議論が必要であると認識しております。

 一方,この自由記述の中には,科学技術イノベーションの現状に対する切実な意見や,次々と繰り出される施策や事業に振り回されているような様子も見受けられるところがあります。やはり研究や研究を通じた教育に携わっているのは現場の方々ですので,第5期基本計画中の各種取組の成果を,現場の研究者が感じ取り,研究や教育に集中できる環境の構築が重要というふうな認識を持ったところです。

 以降の資料は,参考資料ということで,個別質問の状況をお示ししているものです。

 もう一つ,資料4-2,A3の大きな資料ですけれども,これは,それぞれの63問の質問に,回答者グループをより詳細にグループ化して見ているもので,一番上のところに,それぞれの回答者グループ,様々な分類がございますけれども,回答者グループによって,やはりいろいろな認識が違うということが見てとれるのではないかと思います。それぞれの質問の中で指数の比較的高い方が青,低い方が赤というふうに示しております。

 裏側の方は,こちらは2016と2018の変化,これも上昇したものが青,下降したものが赤ということで色分けをしております。

 回答者グループの属性,いろいろ違う点が分析できるものなんですけれども,例えば,やはり学長・機関長クラスよりは,現場の研究者の方の評価が厳しいというようなところは見てとれるのかなと思っております。

 あと,お手元に机上配付ということで,自由記述に関して,科研費等をキーワードとするものを抽出してみたものを,本当に参考までに配付しております。これは125件が,検索の結果ピックアップされてきたということです。こういった形で,非常に膨大な自由記述もデータベース化しているので,Web上でキーワード検索とか,回答者の属性ごとの分類などもできるようにしており,政策立案の検討に必要なもののベースを提供しているとも言えるものではないかと思っております。
 この調査につきましては,今年は,第5期基本計画の4回目の調査をまた秋に予定しています。
 簡単ですが,説明は以上です。
【西尾部会長】 
 どうもありがとうございました。貴重な資料及び概要を御説明いただきました。また,机上配付では,自由記述に関して,特に科研費,科学研究費というようなキーワードを含む文面を抽出した結果をお示しいただきました。私も読ませていただきましたが,非常に参考になりました。誠にありがとうございました。
 ご意見などはございますか。どうぞ。
【射場委員】 
 私は,この議論に3年ぐらい参加させてもらっているんで,ちょっと補足でもないですけど。
 この定点調査で,アンケートの結果の何%という絶対値は,結構質問の聞き方によって振れると思うんですけど,その何%が年々どう変化してきたかというのは,すごく有効な数字だと思うんですよね。それが資料4-2の裏の方の資料で見ると,ほとんど赤しかないんですよね。赤しかないということは,絶対値は上下あっても,全部ネガティブな方向に振れていっているということで,やっぱり全体として,いろんな施策が余り効いていないということの結果がここに反映しているのではないかな。  委員長言われたように,自由記述とか深掘調査の中で,じゃ,なぜということの本当の現場の声がここに出てきていると思うので,冒頭の議論にあった研究力の向上みたいなところに,その現場の声をよく分析して反映してほしいなと思います。
【西尾部会長】 
 どうもありがとうございました。大事な点を御指摘いただいたと思います。
 坪井所長の先ほどの報告では,現状維持か右肩下がりがほとんどです。こういう現状をどう見るかということですね。
【中野委員】 
 いろいろなところが下がっているのは全部問題なんですけど,やっぱり一番問題なのは科研費のところで,年々金額は上がっているのに,下がっているという。これはかなりシリアスだと思います。
 それで,理由は多分運費交金が下がっているということに尽きるのではないかと思います。基盤的な経費がどんどん下がってきて,前回もデュアルサポートの話が出ましたけれども,科研費を取っても,きっちりした支援が大学・機関でできないので,科研費が基盤経費化している。間接経費を取るために,全員科研費取りなさいとか,そういう議論になりつつあるので,採択率も下がると。あるいは,学術の大型計画なんかで,十分サポートされていないといけないところで,それが十分ではないので,科研費にも要求が出てくるとか,そういう様々なことがあるので,1つの項目だけ見て何か判断することもできないし,対策についても,1つの仕組みとか取組だけではかなり難しい状況になっているのではないかなという,そういう印象を持ちます。
【西尾部会長】 
 貴重なコメントだと思います。
 局長,どうぞ。
【磯谷研究振興局長】 
 中野先生おっしゃったこと,私も同意なんですが。
 科研費,増えているとおっしゃったんですけど,実は,16年から18年にかけては増えていなくて,1年度10億円増えたんですが,それが横ばいだったということだけは申し上げて。
 それから,トレンドとしてはおっしゃるとおりで,やっぱり科研費が基盤経費化しちゃっているというところの問題で。やっぱりデュアルサポートはちゃんとやらないといけないので,そこはおっしゃるとおりだと思います。
【西尾部会長】 
 最近は,現実的に科研費が運営費交付金の代替になってしまっているところが多々あります。要は,科研費が取れないと,特に実験系等ですと,研究活動はもうできない状態です。運営費交付金の研究室への配分が,文部科学省の方でも調べていただいたときに,50万円以下というところが非常にたくさんのパーセンテージを占めていて,場合によっては10万を切っているというようなところもある。そうしたら,科研費を取ってこないと研究ができないという。このようなことを中野先生に御指摘いただいたと思います。
 ほかにございますか。
【上田委員】  よろしいですか。
【西尾部会長】 
 どうぞ。
【上田委員】 
 前回もこういう意見を申し上げたと思うんですけれども。基本的には,自然科学研究費といいますか,単調にちょっとずつ落ちているんですよね。3%切っていますかね。
 いろんな制度のことも,やはり基になるのは原資なので,原資がない以上は,さっきの特推の議論もそうですけど,その中でいろんなやりくりをした制度をやるという。でも,根本は,やっぱりお金がないんですよね。それは,例えば,大学においてもそうなんですけれども,これからどんどん高齢化したときに,本当に何もしていない先生が一定の給料をもらって,若い人を採れない。自分が首になったら,本当は若い人を2人ぐらい採れるのにとかね。やはりそういう原資をどう増やすかというメタな議論が必要かと思います。海外でもGAFAが大学に研究費を投資をしている。これは日本と欧米の法人税制度の問題でもある。日本では企業が大学に投資する制度が法的に十分でない。だから,なかなか投資できない。
 だから,この会議体に絶対閉じて議論するのではなく,さっき融合研究の議論がありましたけど,融合議論といいますか,あくまでも財務省にお願いをするのではなくて,日本全体のいろんな意味で国力を上げるためには,どうすべきかというメタな議論をしていかないとだめですね。研究費はこれだけしかありませんよ,じゃ,その中でこういう議論をしましょうと言って,特推が何だとやっているんですけれども,そもそもどんどんジリ貧になっている状況では,例えば,インセンティブを与えることも重要では。――別に若者だけではなくて,年寄りだってインセンティブは必要です。だから,そういう観点で評価をきちんとし,頑張った人にはお金が行くように。先生も一緒で,教授になったら何もしなくたって一定の給料をもらえるというのは,民間ではあり得ないんですよね。
 だから,そういうことを少し意識していかないと,もうこの状況は,つまり,愚痴ばっかり言っている世界になって,でも,その中でやらないとしょうがないので,いろんなことをやるんだけど,さっきの特推の問題とか,これだけのパーセント。でも,特推って額が大きいので,やはりそれだけ件数は制限されてしまう。30%満たそうと思ったら,原資がないとできないわけですから。なので,その原資をどうやって取るか。海外はうまくやっている。AI技術というのは,フェイスブックとか,いろんなサービスで使えるので,幾らでも投資するわけですよね。それが日本企業はできていないのは,税金の問題もあるし,そこまで技術に対して期待感がまだ余り持たれていないというようなところ,まだまだものづくりに頼っているというような感じ。だから,そういうもう少しメタな議論を,会議体を融合してやっていかないといけないと思います。
 以上です。
【西尾部会長】 
 先に手を挙げられた中村先生,どうぞ。
【中村委員】 
 この5ページのところを見ていただくと,Q201,研究開発でお金は十分ですかという質問で,私立大学は「不十分ぐらい」,「本当にお金がない」のは国立大学となってます。これは基本的に国立大学の運営を差配している文部科学省の方針を表しているのではないでしょうか。それとも私立大学が努力しているということでしょうか。私の場合は,寄附金と競争的研究資金で講座運営を行っているので,皆さん方と違う観点から大学を見ていますけど,国立大学の教員は甘えていると思いますね。アメリカのように自分の給料も研究費も外から自分で取ってこいというのが当たり前だというところから出発して,日本では自然とお金が来ているのがありがたいという,これぐらいのラジカルな観点も必要かと思います。私立大学は努力しています。給料や研究費が自然と出てくるというものではないということをやはり皆さんが自覚するところが出発点かと思います。
【西尾部会長】 
 ほかにございますか。どうぞ。
【甲斐委員】 
 研究費部会なので,本当は研究費の話が主だと思いますけれども。最初のCSTIの今後の方針も出ましたし,この研究環境の状況でも出ましたので,少し研究環境の充実化について,文科省がリードしていただけたらと思うことをお話ししたいと思います。
 研究を支援するインフラの方の環境整備なんですけど,文科省の方針の中に国際化をすごく言ってくださっています。しかし,その中身を見ると,若手を外国に送るとか,若くて国際で活躍している人を何とか日本に戻すとかです。この発想は研究面での発展途上国であって一流の国ではない。研究面での先進諸国はそうではなくて,むしろ先陣を行き,かつ国際共同研究をリードするという観点からインフラを考えているんですけど,今までこういう会議に出ていて,そういう観点は出ていません。国際化の施策が,若手を送って,その人に一流の研究室で学んでもらって,持って帰ってきてもらいましょうというふうに見えるんですね。実際に国際共同研究をリードしようしてみると,先進諸外国の各機関のインフラがすごいことと,日本の機関は全然整備されていないことに愕然としました。
 そこをつなぐためにこれまでどのような方策が出されてたかを考えてみると,多分,以前方針として出してくれたURAなどはその1つかなと思います。しかし,現状を聞いてみると,URAは時限付きの3年ぐらいの雇用で,給料もポスドクぐらいで,ちょっとやって出ていってしまうようです。それでは,強いマネジメント,国際共同研究をサポートする人は育たないんですね。諸外国ではそのような職種の方は高額の給料で処遇されていて,英語で全部マネジメントして,国際的に活躍する研究者を強力にサポートしています。経理事務とか,知財・契約とかも含めてですね。そういう体制は日本には全く整備されていないんだということに最近気付きまして。
 外国の大学とか機関は政府に言われて整備しているのかというと,そうではなくて,多分各機関が独自にやっているので,大学がだめなんでしょうという考え方もあるかとは思いますけど,日本は,やっぱり文科省がそれを誘導するというのが大事かなと思うんです。また,全部の大学に均等にURAを育ててと言うと,また,均質な小規模な形になってしまうのでそれは違かなと思います。国際的体制を整備するのは幾つかでいいし,1つでもまたいいと思うんですよ。そこが1つの核となってそこで人材が育てられて輩出していくとか,そういう長期的な国際戦略というのを文科省が誘導してくださったらいいかなと最近思っております。
【西尾部会長】 
 どうもありがとうございました。

(5)その他

【西尾部会長】
 前回の研究費部会において中村委員から御質問のあった科研費の応募資格の見直しの件について,事務局から簡潔に説明してください。
【岡本企画室長】 
 参考資料でお配りしている資料を御覧ください。応募資格の見直しの経緯についてというものでございます。
 現在の応募資格になっているのは平成23年末ですが,一番大きく見直したのが,破線で囲んであります,平成16年12月の研究費部会での結果を受けて,平成17年度から変更したものでございます。
 この破線で囲んでいるところの下の方の研究者に係る要件ということと,研究機関に係る要件という,この4つの要件を満たす場合には科研費に応募できるようにするということで変更しました。
 当時,研究者の勤務形態ですとか職名が多様化してきたということがあって,このような対応をとったということでございます。
 これが平成17年度からですけれども,資料の2つ目の丸のところにありますとおり,その後,科研費の審査部会で,教育を受ける立場にある学生については,応募資格を得るということは不適当であるという整理がなされまして,23年度の公募からは,学生については,所属する研究機関において研究活動を行うことを本務とする職に就いている者で,学生の身分を有する場合を除いては,科研費に応募できないという見直しを行ったということでございまして,裏に参考で応募資格の変遷がございます。
 平成23年度から,これが現在でございますけれども,要件が3つ,ア,イ,ウとありまして,現在は,このウのところに,大学院生等の学生でないことがあり,学生は応募できないようになっているということでございます。
 以上です。
【西尾部会長】 
 どうもありがとうございました。
 それでは,最後に,磯谷局長から,本日の議論を踏まえてお話を頂戴できればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【磯谷研究振興局長】 
 総括というよりも,本当に今日はありがとうございました。毎回刺激的な議論と鋭い指摘を頂きまして,ありがとうございます。
 中村先生,上田先生もおっしゃったことはもっともでして,方向性としては,こういう文科省なり,狭い世界で閉じた形で研究力向上ではなくて,オールジャパンでやっていくという方向は打ち出しております。これからそれをしっかりやっていかなければいけないですし,もちろん国費が限られていますので,それ以外の資金をどんどん入れなければいけないというのは,皆さん御案内のように,五神先生やいろんな方たちもおっしゃっていますし,我々もその方向で頑張りたいと思っております。
 それから,先ほどの甲斐先生の話は,例えば,URAについては,御案内のように,研究大学強化促進事業という,少しインセンティブを持ちながら,その中で,私,名古屋大学におりましたけれども,名古屋大学では,例えば,任期付きの方の中から任期のない方を育てる,国際URAみたいな形の方も育てるとかという努力をしている大学も今出てきていますので,まさにおっしゃったように,べったりと手を差し伸べるというよりも,誘導していくような工夫をちゃんとやりながら進めていきたいと思ってございます。
 今日,本当に様々な貴重な御意見いただきましたので,これをしっかり実行に移していくのは我々の責任ですので,文科省として是非頑張っていきたいと思っております。
 どうもありがとうございました。
【西尾部会長】 
 どうもありがとうございました。  
 JSPSの学術システム研究センターからご参加いただいておりますが,今日のことで何かメッセージとかコメントとかございませんか。
【佐藤日本学術振興会学術システム研究センター所長】 
 今日のことについてですか。
【西尾部会長】 
 それでなくても結構ですが,せっかく佐藤先生がおこしですので。
【佐藤日本学術振興会学術システム研究センター所長】 
 私たちが一番気にしていることは,新学術領域研究が学術振興会に移管された際の,特に我々の学術システム研究センターの在り方というのが,本当にどうなのかということでございますね。確かに,負担は大きくないように見えるんですけれども,今,我々の学術システム研究センターでやっていることは,科研費の検証とか,それから,正しく審査ができているかということもウオッチしてやっているわけでして,センター研究員の先生方の負担はものすごく増えているわけです。この新しい科研費審査システム改革2018以降は,随分負担が増えているんですね。
 その上に,今度新学術領域研究が移ってきたときに,新学術領域研究についても,やはり同じような,審査が公正になっているかは当然のことですけれども,個別に審査員の検証もやっておりますし,そういうことで,単に少し増えるだけではなくて,結構負担が大きくなるのではないかと思っております。
 その点,単に学術システム研究センターの研究員の数が増えればいいだろうということだけではなく,もちろん増えなければだめですけれど,やはりこのあたりも考慮して研究費部会で議論していただければありがたいと思っております。
【西尾部会長】 
 どうもありがとうございました。
 それでは,本日,様々な観点から活発な議論をいただきまして,誠にありがとうございました。
 最後に,事務局から連絡事項をお願いいたします。
【中塚企画室長補佐】 
 次回の研究費部会は,既にお知らせしておりますとおり,6月25日火曜日の10時から12時を予定してございます。正式には,後日御案内を出させていただきますので,よろしくお願いいたします。
 なお,本日の資料につきましては,机上にそのまま残しておいていただければ,後ほどお送りいたします。
 以上でございます。
【西尾部会長】 
 それでは,本日の研究費部会はこれで終了いたします。本日は誠にありがとうございました。

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