第9期研究費部会(第4回) 議事録

1.日時

平成29年10月31日(火曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省 15F 特別会議室

3.議題

  1. 平成30年度概算要求について
  2. 平成29年度科学研究費助成事業の配分について
  3. 科学研究費助成事業データベース(KAKEN)からみる研究活動の状況
  4. 「研究力を測る指標(分野別・大学機能別)の抽出と大学の研究力の可視化に関する基礎
  5. その他

4.出席者

委員

西尾部会長,甲斐部会長代理,栗原委員,白波瀬委員,小安委員,城山委員,鍋倉委員,山本委員,上田委員,竹沢委員,橋本委員

文部科学省

関研究振興局長,中川総括審議官,小桐間学術研究助成課長,石田学術研究助成課企画室長,他関係官

オブザーバー

伊神 科学技術・学術基盤調査研究室長,小泉 自然科学研究機構特任教授

5.議事録

(1)平成30年度概算要求について

【西尾部会長】
それでは,時間となりましたので,ただいまから第9期第4回の研究費部会を開催いたします。
 本日は,概算要求の状況と今年度の科研費の配分等に関する御報告をお願いしたいと思います。また,本日は科学技術・学術政策研究所より伊神正貫室長,自然科学研究機構より小泉周特任教授にお越しいただいております。後半の議題で御説明をお願いできればと思いますので,何とぞよろしくお願いいたします。
【西尾部会長】
それでは,初めの議題に入ります。平成30年度科研費の概算要求の方向性については,前回が8月でしたけれども,その研究費部会において,私に最終的には御一任いただいております。今回,改めて事務局より,要求の内容等について説明をお願いいたします。
【小桐間学術研究助成課長】
それでは,資料1をお開きいただきたいと思います。
 平成30年度概算要求につきましては,西尾部会長とも御相談の上,このような形で最終的に提出をさせていただいております。資料1の右上のところ,平成29年度の予算額は2,283億円でございましたが,30年度の概算要求額は2,447億円となっておりまして,164億円の増となってございます。
 この資料の2枚目をごらんいただきたいと思います。平成30年度の概算要求に向けた考え方をまとめております。
 柱立てが2つございまして,1つは中核的研究種目の充実を通した科研費若手支援プランの実行というものでございます。ここで言う若手支援プランといいますのは,若手研究種目のように,いわゆる若手に限定した支援のみを指すものではなく,科研費全体のパッケージの中で若手から中堅層に至る研究者のキャリアに応じた支援を切れ目なく展開するということを目指すものでございます。
 具体的には,1つ目の丸でございますけれども,「基盤研究」の(B)と(C),それから若手研究,従来の「若手研究(B)」でございますけれども,これらの各種目につきまして,政策目標であります採択率30%の達成ということを目指しまして,計画的な向上を図ることとしております。
 また,4つ目の丸でございますけれども,新たに研究室の主宰者となった若手研究者を支援する独立基盤形成支援と,この対象を拡充いたしまして,現行の「若手研究(B)」に加えまして,基盤研究(C)に対象を拡充するということとしております。
 もう一つの柱が,国際共同研究の推進ということでございます。従来の海外学術調査につきましては,研究対象や方法がフィールド調査等に限定されておりましたけれども,これを一般化して使い勝手をよくすることで,国際共同研究のさらなる推進を図ることとしております。
 また,従来の帰国発展研究につきましては,対象が海外在住の日本人研究者に限定されておりましたけれども,この対象を外国人研究者に拡大するというものでございます。
 平成30年度概算要求につきましては,以上でございます。
【西尾部会長】
科研費関連の概算要求に関しての御説明を頂きましたけれども,御質問等がある方がいらっしゃいましたら,是非,挙手いただければ有り難く思いますが,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは,前回,8月の研究部会の方向性に従って,今,課長の方から御説明いただいた概算要求がされているところですので,どうかよろしくお願いいたします。
 現在,文部科学省においては,年末の政府予算案に向けて財務省との大変な折衝を行っていただいているところだとは十分に存じ上げております。科研費の拡充は,大学等の研究者が本当に強く要望しているものでございますので,引き続き最大限の御尽力を賜りますように,何とぞよろしくお願いいたします。

(2)平成29年度科学研究費助成事業の配分について


【西尾部会長】
それでは,2番目で,平成29年度科学研究費助成事業の配分についてということで,事務局より概要を中心に説明をお願いいたします。
【井上学術研究助成課課長補佐】
それでは,資料2を御用意ください。
 10月10日に文科省の方からプレスリリースしたものでございます。それを今日は報告させていただきます。
 3枚目から,平成29年度科学研究費助成事業の配分についての,資料になってございます。
 次のページでございますけれども,4枚目,目次をごらんいただきたいのですけれども,この資料の1ページ目から14ページまでがその配分状況の概要をまとめたものでございます。15ページ目以降は個別の細かい資料を添付してございます。今日は概要について説明させていただきます。
 次のページをごらんください。科研費の配分状況の概要ということで,この概要につきましては,このページの3つ目の丸をごらんいただきたいのですけれども,科研費の主要種目について,ポイントを紹介してございます。主要種目というのは,この丸の下に米印がありますけども,科研費のうち,「特別推進研究」,「新学術領域研究」,「基盤研究」,「挑戦的萌芽研究」,「挑戦的研究」,「若手研究」,「研究活動スタート支援」,これらを主要種目というふうに区分して紹介しております。
 次のページは,それぞれの種目等の紹介の一覧でございます。
 次のページでございます。この資料3ページ目でございますけれども,応募・採択状況ということでございます。
 それで,1つ目の丸,平成29年度の新規応募件数は,昨年に引き続きまして10万件を超えまして,10万1,247件でございまして,昨年度よりもわずかに増加しているという状況でございます。これも過去最高でございます。長年にわたって,応募件数というのは増加傾向にございます。
 新規採択件数は2万5,313件でございまして,これも前年度より1,363件,これは減少してございます。
 継続分を含めた採択件数の全体の件数は7万5,563件ということになってございます。この採択件数全体は,この7万5,563件というのは過去最高となってございます。
 一方で,新規の採択率は25%ということで,昨年度と比べて減少しているということでございます。
 2つ目の丸でございます。学術研究の多様性を支え,裾野を広げていく要となる「基盤研究(C)」と「若手研究(B)」につきましては,前年度と比較しまして応募件数が大幅に増えている状況でございましたが,新規採択率につきましては,政策目標の30%をおおむね確保しているというような状況でございます。
 次の丸でございますけども,今般の科研費改革において研究種目を見直して,平成29年度から新たに創設しました挑戦的研究につきましては,研究種目の趣旨に添った研究課題を厳選して採択したため,新規採択率は10.8%ということになっておりますが,配分額につきましては,応募額を最大限に尊重した配分ということになっておりまして,いわゆる充足率につきましては,ほぼ100%ということになってございます。そういうことから,このように研究種目の特性に応じた適切な配分ということになってございます。
 次のページ,4ページ目でございますけども,今,御説明したものをグラフ化したものでございます。グラフの下,配分額につきましては,助成額は2,117億円でございます。そのうち直接経費が1,628億円,間接経費が489億円でございます。
 そのうちの新規採択分の直接経費は643億円でございまして,昨年度に比較しまして6億円ほど減少しているというものでございます。
 2つ目の丸でございますけども,1課題当たりの平均配分額,直接経費でございますけれども,配分額は215万5,000円ということになってございまして,昨年に比べると1万2,000円ほど増加しているというものでございます。これは,恐らく挑戦的研究の充足率が100%ということの影響があったものと思われるところでございます。
 次のページが,主要種目の新規採択分の一覧表でございます。
 その次の6ページ目が,新規・継続分を合わせたものの一覧表でございます。
 次に,7ページ目をごらんください。7ページ目は,研究機関種別ごとの状況について,応募件数,採択件数と応募額,配分額の研究機関ごとのそれぞれの数字をグラフ化したものでございます。昨年と同じように,国立大学,私立大学,その他,公立大学の順となってございます。例年,この変化は変わってございません。
 次の8ページ目をごらんください。1つ目の丸でございますけれども,研究機関種別のシェアは,長期間にわたって私立大学の拡大の傾向が続いているというものでございまして,平成29年度は,私立大学のシェアは27.2%でございまして,一方で,国立大学は減少傾向にございまして,国立大学が53.6%ということで,国立・私立大学間の差は縮小傾向にあるというものでございます。
 引き続きまして,9ページ目でございます。研究分野別の状況につきまして,資料3です。これは多い順に,生物系が44.4%,理工系が19.9%,人文社会系が19.8%,総合系が15.8%ということで,これも例年,同じような順位ということで,近年,目立った変化はございません。
 2つ目の丸でございますけれども,配分額についても,昨年と同様に大きな変化はございません。
 次のページでございます。細目別ということで,過去5年間の新規採択件数を細目別に見た数字でございますけれども,過去5年間の累計数が1位となっている機関というのは85機関あるというものでして,今回,新たに13機関が1位となったというものでございます。図6がその配分の分布のグラフでございます。
 次の11ページを飛ばしまして,12ページをごらんください。性別の状況でございまして,これにつきましても新規採択率は男性が24.8%,女性が25.9%ということで,女性の方がやや高くなっている状況でございます。
 次のページでございます。13ページ,年齢別でございます。若手研究者に係る採択件数は,全体の36%となってございまして,これは応募資格等の減少に伴って,近年,減少傾向にあるというものでございます。
 2つ目の丸でございます。若手研究者の新規採択率は29.2%ということになってございまして,これは冒頭で説明しました全体の25%というのを4ポイントほど上回っているというものでございます。
 最後のページが,今お話しした新規採択率のパーセントを棒グラフにしたものでございまして,25%を大きく上回っているというような状況でございます。
 15ページ目以降は,今お話しした細かい資料が最後まであるというようなものでございます。
【西尾部会長】
簡潔に御説明いただきましてありがとうございました。非常に参考になりました。
 何かこれまでの説明について御質問とかございませんでしょうか。よろしいですか。
【白波瀬委員】
1点だけ,最後の図10なんですけれども,若手が平均的に25%採択率を上回っているという図があるのですが,この中の内訳というか,種目の分布が多分,年齢層によって違うんですけども,若手がこの種目が多かったとか何か特徴があれば教えてください。
【井上学術研究助成課課長補佐】
これは,細かい資料の一番後をごらんいただきたいのですけども,40歳未満の配分状況という資料で出ております。94分中の94ページ。ここに40歳未満の配分状況ということが出ておりまして,これを見ますと,当然のことながら,「若手研究(B)」において採択件数が5,817件ということ,あるいは「基盤研究(C)」において採択件数が1,186件。採択率も50%弱ということで,若手の採択率が高いということが言えるかと思います。

(3)科学研究費助成事業データベース(KAKEN)からみる研究活動の状況


【西尾部会長】
それでは,3番目でございますが,科学研究費補助事業データベース(KAKEN)から見る研究活動の状況についてです。9月に公表されました科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の調査研究について,伊神室長より御説明をお願いいたします。
【伊神室長】
よろしくお願いします。政策研の伊神です。
資料3に基づいて,御説明申し上げます。先ほど会長からお話ありましたように,これは9月に公表した資料でして,主担当は,表の右下に書いてあります福澤という研究員ですが,本日は,伊神より発表します。
 スライド2をごらんください。ここに分析の目的と視点を書いておりますが,当初,NISTEPでは,日本の科学技術の状況を理解するために,論文産出から見るアウトプットの状況や,研究開発費や研究開発人材から見るインプットの状況,このそれぞれについて今まで分析してまいりました。
 ただ,やはり研究活動の本質をより理解するためには,アウトプットとインプットの間を結び付けて考える必要があると。ただ,この結び付けるというのは,決して生産性という意味ではなくて,どういうプロセス,例えばどういう研究チームで研究が行われているかとか,そういうところを理解する必要があるであろうということで,この調査研究を行ったという目的がございます。
 具体的に実施したことですが,NIIが整備されておりますKAKENデータベースとWeb of Science,今回は自然科学系ですが,それを用いてリンクすることによって,2ページの下に書いてあります4つの視点から分析を行っております。
 まず1点目は,このWeb of Scienceにおける科研費の関与の状況ということで,ここはKAKENとWeb of Scienceを結び付けて分析を行っております。
 2番目,3番目は,ここでの研究組織というのは課題を構成する研究者,代表者,分担者の方ですが,そういう方の数がどうなっているかとか,職階の構成がどうなっているかということで,研究チームの分析をしたということでございます。
 3点目,研究者と分科の関係ということですが,これは学術研究への現代的要請に,融合性がありますので,研究者の他分科への関与状況がどうなっているかというのを分析したものです。
 4番目は,またこれは論文データベースと結び付けたものですが,研究課題や分科と論文との関係ということで,ここでは特に1件の論文にどれぐらいの研究課題がひも付くかというところで分析をしたということになってございます。
 スライド3をごらんください。今回,我々,Web of ScienceとKAKENのデータをマッチングしたわけですが,それの概要について御説明しております。
 今回,成果報告書にある著者情報,論文タイトル,書誌情報の類似性から,KAKENの成果とWeb of Scienceのマッチングを行っております。その過程で,大きく3つのグループができまして,このページの下の絵を見ていただきますと,ベン図を描いておりますが,左のWoS-非KAKEN論文というのは,Web of Scienceに収録されていてKAKENの成果には載っていなかったものです。WoS-KAKEN論文というのは,KAKENの成果に載っていてWeb of Scienceにも収録されているもの。非WoS-KAKEN論文というのは,Web of Scienceには載っていませんがKAKENの成果には載っているものということです。
 科研費の成果というのは非常に多様ですので,例えば書籍とか,プロシーディングなども,非WoS-KAKEN論に入るということになってございます。以降の分析では,我々の先行研究から,研究というのは科研費と例えば基盤的経費を組み合わせて行われていることが示されていますが,ここでは科研費以外の研究費が使用されている可能性も考慮して,WoS-KAKENは科研費が関与している論文だという形で御説明したいと思います。
 スライド4ですが,これは日本の論文における科研費の関与ということでお示ししております。下の図表は,左が日本の論文数についての状況,右は,被引用数がトップ10%の論文における状況です。黄色い部分がWeb of Scienceの論文でKAKENの成果にも載っているもの,WoS-KAKEN論文と言っている部分です。青い部分が,WoS-非KAKEN論文です。
 これを見ますと,まず,WoS-KAKEN論文の比率を見ると,日本の論文全体では最新年,2011から13年では52%ということで,非常に大きな関与をしているということです。この関与の状況というのは,被引用数がトップ10%の方でより大きくなりまして,最新年では60.4%ということになってございます。
 下の方に伸びを示しておりますが,この黄色の部分,WoS-KAKEN論文の伸びをみると, 2000年代半ばから2010年代前半にかけて7.4%ということで,その前の期より若干,伸びは落ちついているという状況です。ただ,WoS-非KAKENはマイナスですので,WoS-KAKEN論文は確実に伸びているということが分かります。
 他方,トップ10%論文,右を見ていただきますと,こちらは少し様相が違いまして,KAKEN論文よりWoS-非KAKEN論文の方が伸びは大きいというような状況になっているということでございます。
 5ページをごらんください。現在,広く知識の活用を促すために,オープンアクセス化というのが非常に推進されてございます。そこで,ここではオープンアクセスジャーナルにおける科研費の関与というのを示してございます。こちらも下の絵で,左が日本のオープンアクセスジャーナルに掲載された日本の論文の状況と,右がトップ10%補正論文における状況でございます。
 同じく,黄色の部分がWoS-KAKEN,青の部分がWoS-非KAKENです。この割合を見ますと,先ほどと同じく論文全体では科研費の関与が51.7%,トップ10%論文では62%ということで,やはり科研費の大きな関与が分かると思います。
 特に左の論文数におけるWoS-KAKEN論文の伸び率というのを見ていただきますと,この下のCからDというところで118.2%と書いてございますが,これはWoS-非KAKENよりかなり大きな伸びを見せております。
 ということで,ここから分かるのは,科研費の成果というのは,WoS-非KAKENと比べて,OA化の進展度合いが高くなっているということがここで分かると思います。
 以上,大きな概要を示しましたが,6ページ,続いてこれは注目度というところで,少し分析してございますが,下に2つ,表を示しております。
 左が,論文全体におけるQ値,ここでQ値というのは論文数に占めるトップ10%論文の割合を示しておりますが,まずWoS-KAKEN論文は,96から98年はトップ10%論文の割合が11.1%でした。それが11から13年に関しては,やや落ちまして9.7%となってございます。他方,WoS-非KAKENの方は5.7%から6.9%と増加しておりますが,いまだやはり科研費の成果の方がQ値は高いというような状況になってございます。
 右は,OAジャーナルのものですが,OAジャーナルに掲載された論文に関しましては,WoS-KAKEN,WoS-非KAKENともトップ10%論文割合は着実に増加しており,かつWoS-KAKENの方がトップ10%論文の割合は高いということになってございます。
 徐々にこのOAジャーナルに掲載される論文の量というのは増えてまいりますので,今後こういう傾向が日本全体の動向にどういう影響を与えるかというのは,今後,注視していく必要があると考えてございます。
 7ページをごらんください。ここからは,少し研究組織の構成ということで,KAKENデータベースに注目したもので,なおかつ分析対象を基盤系,若手系,挑戦系に限定して分析をしてございます。
 下にお示ししたのは,分野別の研究者数です。ここで言っている研究者数というのは,研究代表者と研究分担者の数を,e-RadのIDを使って重複を排除して計算したものでございます。その数を2時点で比較しておりますが,まず分かりますのは,この研究者数で一番多いのは,医歯薬学系であるということで,なおかつこの間,22.8%ということで,研究者の数も増えています。多くの分野で研究者数が増えておりますので,科研費を得て研究をされている方がより多くなっている,科研費が広く活用されているということだと思います。
 伸び率を見ますと,左の方にあります複合領域,社会科学,このあたりが40%を超えておりまして,研究者の数が増えている。他方,真ん中にあります例えば工学,生物学,あと数物系科学,この中では数物系科学だけ研究者数が減少しているということで,これは研究者コミュニティーの大きさの話だとは思いますが,このように分野によって若干,状況が違うという傾向が見えてございます。
 スライド8をごらんください。こちらは研究者の職階構造ということで,先ほども少しありましたが,研究代表者の方が分野によってどのような職階にあるかということをお示ししております。これも2時点で,左が数,右が割合をお示ししておりますが,右の割合を見ていただきますと,この2時点で比べますと,職階のうち教授・センター長クラスというものの割合は減少しております。他方,上の方の緑,助教とか研究員の方の割合は増えているということが分かります。
 あとここで特徴的なのは,系によってかなり状況が違って,人社系に関しては教授クラスの割合が多く,生物系だと助教の方の割合が多いということで,このあたりも分野によってやや構造が違うというものが見えてございます。
 9ページはもう少し細かく,報告書では若手研究等もお示ししておりますが,ここでは「基盤研究(B)」,「基盤研究(C)」について,状況をお示ししております。こちらも数と割合をお示ししております。「基盤研究(B)」について,まず全体を見ますと,採択数は5.2%,全体としては減でございます。他方,「基盤研究(C)」に関しては31.2%増ということになっております。
 ここで上の方に少し仮説が書いておりますが,「基盤研究(B)」よりも配分額は相対的に少ないが,採択数と採択率が相対的に高い「基盤研究(C)」に研究者の皆さんが移っているのではないかということが仮説として考えられます。しかし,この左下に書いてございますが,ここで見ているのは飽くまで採択数でございまして,応募件数ではないので,当然これには研究者の行動に加えて,予算の配分状況等も影響しますので,そういう配分状況と研究者の方の応募状況,2つを踏まえて考える必要があるということが分かってまいります。
 10ページをごらんください。先ほどは研究代表者の方に注目しましたが,今度は分担者の方も含めて,研究チーム,研究組織の体制がどうなっているかというのを示したものです。
 ここは全系,全ての分野でお示ししておりますが,左の図が2006から2008年,右が2011から2013年の状況です。それぞれどのような,教授クラス,准教授クラス,助教クラスの組合せになっているかというのを見ますと,1つ特徴的なのは,2006から2008年,2011から2013年にかけて,異なる職階が組み合わされている研究チームの割合というのが35.5から29.2%ということで,減少しているということが分かります。
 この理由はなぜかといいますと,ベン図の中に1名と書いてありますが,その1名,例えば教授の方が1名とか准教授の方が1名で研究を行っている課題の割合が増えているということです。これは系別で見ても,人社系を除いて同じような動きが全て見えております。1名の課題が多くなっているということで,研究課題というもので見ると,かなり研究者の方々が独立して研究を行うような傾向になっているのではないかということが考えられます。
 11ページ以降は,少し視点を変えまして,研究者と分科の関係ということを見ております。学術研究の現代的要請で挑戦性,総合性,融合性,国際性というのがありますが,ここは融合性というのを少し見られないかという問題意識で分析したものでございます。
 具体的には,研究者の方がどれぐらいの分科に関与しているかというのを分析しました。下に図をお示ししておりますが,左の(A)というのは,2006年から2013年の間に1人の研究者の方が研究代表者として幾つの分科に関与したか,右は,研究代表者若しくは分担者として幾つの分科に関与したかというのをお示ししております。
 代表者に注目しますと,この間,1分科に関与したという方が90%ということで,やはり皆さん,軸足を持って活動されている。他方,分担者まで入れますと,1分科だけの方の割合は減りますので,ほかの分科の方と協力して,自分の分科のカバー範囲を広げているというのが,この分析から分かると思います。
 スライド12をごらんください。こちらは,先ほどの分科の近接性というのを可視化したものですが,複数の分科に関与している方を対象に,研究者レベルで分科のペアがどれぐらい出現しているかという情報を用いまして,分科間の関連性を示したものでございます。ここで円の大きさが大きい分科ほど,他の分科との関係性が強いということで,環境解析学が一番ここでは強くなってございます。
 大きく見ますと,黄色の総合系と言われているもの,環境とか人間工学,このあたりはマップの真ん中のあたりに来ていて,いろいろな分科を結び付けるような役割をしているということが分かると思います。
 他方,少し細かく見ますと,土木とか建築のあたりも,これは理工系ですが,人社社会系との距離も近いということで,こういう分科の特徴も見えているということでございます。
 スライド13をごらんください。ここからは,論文との関わりというのを少し見てございます。まず,この分析をやるに当たって,分科を分類しました。13ページの右下をごらんください。ここでは,分科にいる研究者数と,分科に教授の方がどれぐらいいるかという2軸で分類しまして,ここは逆に書いておりますが,若手割合が多いか,研究コミュニティーが大きいかと,そのコミュニティーの大きさと若手の割合という2軸で分科を分類しました。そのそれぞれの分科に対して,WoS-KAKEN論文,論文のQ値,国際共著割合がどういう形になっているかというのをお示ししたのが左の図です。
 まず,WoS-KAKEN論文は,一番多いのは内科系臨床医学,2番目は外科系臨床医学ですが,ここに述べられているのは,ほとんどコミュニティーが大きい分科です。コミュニティーが大きいと論文数が多いというのは,ある種,当然かもしれません。
 他方,Q値ですが,ここはピンクと青色が多くなってまいりますが,これは実は若手割合が多い分科です。若手割合が多いところですと,このような形でQ値が高くなってくるということで,研究者コミュニティーの形態と,アクティビティーにも何かしらの関係がありそうだというのが見えてきたということでございます。
 スライド14をごらんください。これは1件の論文に幾つの研究課題がひも付くかというのを分析した結果でございます。下に表を示しておりますが,まず,(A)と書いてあるものは,幾つの課題がひも付いているかというのを,2時点でお示ししております。
 これを見ますと,2006から2008の間では,約7割の論文は1つの課題とひも付いていました。最近になりますと,それが55%ということで,1つの論文に複数の課題がひも付く割合が多くなっているということでございます。
 右は今度,分科で見ておりますが,分科でも同じく昔に比べて今の方が複数の分科とひも付く論文が多くなってきている。これは1つ考えられるのは,複数の分科や課題が関与しているということは,異分野融合的な活動から生み出される論文が増加している可能性が示唆されるということでございます。
 また,これとQ値の関係を見ますと,下の方,Q値をお示ししておりますが,課題数,分科数,関わるものが多くなると,いずれもQ値が高くなるということで,注目度の高い論文というのは,複数の研究課題や分科をバックグラウンドに持つ論文であることを示唆していると思われます。
 スライド15をごらんください。こちらは種目の組合せというものに注目してございます。下の表をごらんいただきますと,どのような種目からどれぐらいの論文が生み出されているかということを見ておりますが,上位4つが1つの課題から生み出された論文となってございますが,5位以降は,「基盤研究(C)」を2つ組み合わせたもの,次が「基盤研究(C)」と「若手研究(B)」を組み合わせたものということで,こういうような組み合わせた論文もあるということでございます。
 Q値に注目しますと,ここで特筆すべきは,「基盤研究(B)」とか「若手研究(B)」,「基盤(S),(A)」に関しては,Q値の値が高くなっているという状況が見えてまいります。
 以上の結果を,16ページ,17ページにまとめてございます。まず,まとめの1点目ですけども,従前から言われておりますが,論文数,トップ10%補正論文数への科研費の関与が大変大きいということが分かりました。近年,科研費以外の研究費が関与している,トップ10%論文数の存在感も増加しているということになります。OAジャーナル論文数は,急激に増加しているということです。
 研究代表者の職階構造というのは,系・分野によって異なりますが,特に人社系では教授の方の割合が多くて,生物系では若手の方が多いというようなものが見えております。
 採択数で見ますと,研究課題数というのは「基盤研究(B)」で減少し,「基盤研究(C)」では増加しているという傾向があります。
 研究種目の組合せを見ますと,「基盤研究(C)」の組合せ,「基盤研究(C)」と「若手研究(B)」,「基盤研究(B)」と「基盤研究(C)」の組合せというのが多いということです。
 研究チームを見ますと,異なる職階区分の研究者から成る研究チームの割合は減少する一方で,同じ職階区分の研究者から成る研究チームの割合が増加していると。特にここでは1名の研究者による研究課題の数が増加しているというのが1つポイントだと思います。
 17ページを御覧ください。ただ一方で,1件の論文を発表するのに関与している研究課題数や分科数は,時系列で増加しています。これは多様な分野を結び付けている等々の理由もあると思いますが,最後のポイントに書いてありますように,研究課題として申請・採択される際には,個々に独立した研究課題が多くなっているものの,成果として論文を発表する際には,その独立性というのは必ずしも維持されておらず,研究費の獲得における研究者の構成と,論文発表時の研究者の構成が少し異なっているのではないかというのが見えております。
 下に4つ,これについての仮説を書いておりますが,仮説の1点目は,規模の大きな研究を実施する際に,研究の段階や内容を考慮して,複数の研究課題を設定して,そこから論文を生み出しているという可能性。2つ目は,研究課題が異なる研究者の方が,その研究の進展に伴って共同研究を実施するというような形でひも付いた可能性。3番目は,これは研究というのは当然,科研費以外の研究費もありますので,基盤的経費が減少する中,複数の研究課題を組み合わせなければ,研究を実施することが難しくなっている状況もあるかもしれません。
 あともう一つ,研究テーマは同一ですが,研究費を獲得するために,複数の研究課題に分けて研究費に申請している可能性ということで,このあたりはまだまだ我々も理解が進んでいませんが,1つの特徴として見えてきた点として,まとめで御紹介したいと思います。
【西尾部会長】
科研費の論文生産性については,作業部会でも議論がなされたということを聞いておりますので,作業部会の主査の小安委員より,そのあたりの状況等について御報告いただけますと有り難いのですけれども,よろしくお願いいたします。
【小安委員】
伊神室長,貴重な御報告,ありがとうございました。
 この研究費部会と,それから審査部会の下に,科研費制度の改革に関する作業部会というのが設置されております。私,その主査を務めておりまして,本年度の作業部会で,今御説明いただいたこのデータを拝見して,議論をさせていただきましたので,それを少し御紹介させていただこうと思います。
 ここのところ,他国に比べて論文の算出状況が厳しくなっているということがしばしば言われます。ここではQ値と言っていますけれども,トップ10%に入る論文の状況が,先ほどの資料の6ページに見えるように,少しずつ減っているのではないかみたいなことを言われています。そこで,特に科研費関与論文に関して,これがどういうことを意味するかということに関して,いろいろとフリーディスカッションさせていただきました。
 作業部会の委員の中では,ここ十数年のいろいろな研究環境の劣悪化,特に学術の苗床を育てるという環境の劣悪化ということが危機感として浮かび上がっています。基盤的な経費,スペース,研究時間の不足等々,こういうものが複雑に関連しているのではないかということが議論されました。
 その際に参照したものですが,机上に一枚物で「科研費関与論文数と予算額の推移」というのを配らせていただいております。これを見ますと,大体,論文数と科研費の予算額は相関しているということを見ていただけると思います。近年,科研費ユーザーの研究活動に特に大きく影響を与えるような科研費制度の変更はしていないと思います。飽くまでこれは仮説ですが,作業部会では,このトップ10%論文,Q値の減少ということに関しては,科研費制度固有の問題ではないだろうと考えています。
 むしろやはり研究環境の劣悪化ということを,皆さん非常に気にしております。これももういろいろなところで御紹介されていますが,ここ10年余りで国立大学の運営費交付金は十二,三%,減少していると思います。先ほど伊神室長の方からも,基盤的経費と科研費の組合せが非常に重要だというお話がありましたが,こういう問題がある訳です。国立研究開発法人だけで見ますと,この5年間で12%交付金は減っています。ですから,それだけ基盤的経費は減っているということです。
 もう一つ,非常に重要だと思うのは,いろいろ調べてみますと,過去10年ぐらいで大学院の博士課程の学生数が20%,実は減っている。それから分野によって違いますが,皆さん,留学生が非常に増えているということは御存じだと思います。これはこれで非常に研究に貢献していただいて良いことですが,彼らは自分のお国に帰られますから,日本のこれからの学術を支えるべき人の数がどんどん減っている。これは正に学術の苗床が枯れかかっているのではないかという非常に強い危機感を覚えました。
 それから,今の伊神室長のお話の中にも,科研費のいろいろな種目を組み合わせて出す論文が増えてきているというお話がありました。それから,どういうものがQ値を上げるかという話ですが,簡単に言うとトップ10%論文というのは,議論はありますが,注目される論文ということになるわけです。したがって,皆さん努力をされて,いろいろなデータを入れていく。そうなると,やはり時間もかかります。それから,予算もある程度,かかります。このようなことが反映されているのではないかと思いますが,そのような努力が非常に苦しくなってきているということだと思います。
 もう一つ,若手に目を転じてみると,この十何年間で任期制のポストが非常に増えました。そうすると,どうしても短期間で成果を上げなければいけないというプレッシャーがあります。すると,もうちょっと頑張れば,もっといい論文に仕上げられるのに,ここら辺で抑えておこうかという気持ちが働くのではないかとも思います。そういういろいろなことが影響しているのではないかと感じたところです。
 当然のことですが,科研費というのは別にトップ10%の論文を出すためにあるわけではなくて,全ての分野にわたって,独創的なボトムアップの多様な学術研究を支える非常に重要な予算です。これに基盤的経費が組み合わさることによって,日本の学術が進んできたことを考えますと,ここら辺のことをもう少し考えなければいけないと思います。
 もう一つ作業部会で気にしたのは,こういうデータをどういうふうに提示するかだということです。そもそもこの調査をどういう目的でやったかということは御説明いただいたのですが,往々にして,トップ10%論文が減っているというところだけを取り上げて議論されることがあります。そうすると非常に誤解を生みますので,やはり全体の研究環境の,問題も合わせた上で,このようなデータを生かすことが必要で,とにかく丁寧な説明が必要ではないかというのが私どもの意見でした。
 科研費全体の状況を踏まえた上で,本日いろいろとお示しいただいた内容を参考にして,これからも私どもの作業部会で議論を進めていきたいと思っていますので,どうぞよろしくお願いいたします。
【西尾部会長】
作業部会の主査をお務めでいらっしゃいます小安委員から,学術研究の振興というようなことも含めて,本当に総括的なコメント及び御意見を頂きまして,どうもありがとうございました。
【鍋倉委員】
トップ10%が増えている,増えていないという観点では,これまでの科研費のデータ内で比較することは可能だと思います。しかし,科研費論文と非科研費論文の比較については,非科研費という中身が分からず科研費論文との比較を行っている。それぞれにおける変化の比較は,比較対象の内容によっては変わってくることがあります。
 例えば最近,非科研費にトップダウンのプロジェクトが入っていますと,多くのトップダウンというのはトピックス性を目指しているものも多く,当然,最近の引用回数は増える。一方で,科研費というのは非常に長いスパンでのボトムアップ研究を支援する。そうすると,この数年間ごとの比較という見方が本当にいいのかどうか。このように分けることによって,結果が独り歩きすることに危惧を覚えます。
 一方で,科研費論文が,トップ10%論文が非科研費論文より増えている場合も見受けられる。これは科研費がトピックス性を追っているとみられる可能性もあり,逆にやや危惧するところです。長いスパンの研究をするというのが科研費の目的であり,評価指標の設定は慎重に行う必要があると思います。ここに示された指標は非常重要なことではありますが,見せ方を慎重にやっていただくということが重要です。
 また,医歯薬学において,難病など非常にまれな病気の報告があります。これはデータとして,論文に記述しておくことが,世界で情報共有をするためには重要ですが,症例を見ることは非常に少ないため,引用は非常に少ない。分野によってはその論文の重要性の指標が大きく違う。是非,分野による論文の重要性というのも,加味した視方をお願いしたいと思います。
【西尾部会長】
2つとも非常に貴重な御意見で,どうもありがとうございました。
【山本委員】
審査制度に少し関わりましたので,その観点から申し上げますと,確かにこういうふうに数字を見せられて,トップ10が少し減っているみたいな,そういうことがあるとすると,このこと自体は,私たちはやはりある面,コミュニティーの一員としても真摯に受け止めなければならないと,まずそう思っています。
 ただ一方で,我々はそういうことも踏まえて,2018年度に大きな科研費の改革を行います。これは今までの系,分野,分科,細目というのを廃止し,新しく,より広い競争的環境の下で,よい学術研究課題を見いだしていくという方向に,やはりある意味でかじを切ったわけです。
 その効果というのは,恐らくそう簡単には出ません。数年以上かかるでしょう。だけれども,やはり科研費制度としてもこういうことを直視して,そして改善を加えているという点は,是非,御理解いただきたいと思います。これは審査システムを公平にするというだけでない効果がその中にあるということでございます。
 それからあと,幾つか細かい点ではあるんですけど,例えば1人で応募する研究者が増えているとか,分野の数がどうといういろいろな議論,ございました。昨今,研究者の現場におりますと,申請というのは極めて戦略的になっています。つまりどうやってお金を取るかということが最優先していますので,これが必ずしも応募動向にというか,何というか,1人での申請が増えたから1人で研究しているなんて,そんなことは絶対ないです。実際,それをちょっと分析されていましたけれど,実際は割と多くの人たちでやっている。だからこそアウトプットの方は反映しないということになっているんだと思います。
 なので,その辺の解釈の問題については,やはり慎重にしていただいた方がよくて,総合系の科目が例えば分野を結び付けているという表現もございましたが,これは一見そう見えます。しかし,逆に言えば,総合系の科目は,多くの基礎的分野に支えられているとも言えるんです。総合系科目を真ん中に書くとそういうふうに見えるんですが,そうじゃなくて外側に書くことだってできるわけです。ここら辺は,もう本当に見せ方によっていろいろ変わってくるので,そこらへんは,是非,学術コミュニティーの意見も聞いていただいて,御検討いただけると有り難いと思っています。
【栗原委員】
研究者数の増減と分野融合で,非常に複合的な領域が伸びてきたというのは,研究のニーズから必要なことだと思うんですけど,それと同時に,いろんな分野の研究者の増減を議論されると,この中には,基盤的な分野から複合的な分野の研究者の顔というか,アイデンティティーの複雑になっている人たちもいると思います。これがそれぞれの基盤分野の大事さとか,現代的な意味での重要性とかを示すものではないかもしれないので,後ろのマップ等も参照しながら,丁寧に見ていく必要があるのではないかと感じました。
【橋本委員】
非常にいろんなことがこれで分かって,ためになったと思います。1つ,こういう視点もあるかと思います。これをどう評価するかということです。まだここでは事実をいろいろ提示されているというところですね。論文数に関しては,これは絶対的な数ですが,トップ10%について言うと,これは世界との相対的な関係になります。
 ですから,評価するときに,横に世界全体で研究者数や論文数がどうなっている,研究資金がどうなっているということを見ながらでないと,トップ10%論文の数の上下というのは評価できません。国内だけの問題ではない。それを一緒に見ないといけない。
 何となく感じていますのは,研究者数の減ってきていること,それから研究費そのものが頭打ちに近いというようなところが,世界との比較の上で大きな差がついているんじゃないかと思います。これが本日の資料ではよく見えないところがありますので,関連する国外のデータを横に置きながら,比較して評価をするということが重要じゃないかと思います。
【西尾部会長】
これもまた本当に貴重なコメントをありがとうございました。
 ほかにございますか。ここまでのところに関して,伊神室長,何か御意見ありますか。
【伊神室長】
様々なコメントをありがとうございました。正にこういういろいろ御議論いただくきっかけになればいいと思っておりまして,我々もこのKAKENの分析は我々の多くの分析のほんの一部で,先ほど小安先生の御指摘のあった学生数とかそういうあたりも複合的にやっぱり見て解釈していかないと,そうしないと科研費だけの話でないと思います。そのあたりは,本日のお話を伺っていて非常に重要だというのを改めて感じました。
【西尾部会長】
まだほかに御意見等ございませんでしょうか。皆様方からの意見が今後,NISTEPの方でいろいろ分析等をされる上で非常に重要な指針となっていくと思いますので,いかがでしょうか。
【上田委員】
少しマイナーな意見かもしれませんが,例えば7ページのスライドを見たときに,私の分野の情報学というのは総合系と分類されています。従来の分類だと,こういうことかもしれないんですけれども,今の世界的なAIブームといったときに,もうほとんどこれは融合領域になっています。論文を出す際,例えば医学の論文に出すけれども,技術はAIないし機械学習といった,情報学が結構入っていたりする。だからこういう分類をして,論文の分野比率に応じて,例えば予算を配分されたりすると非常にミスリーディングになる。
 かつ,こういう領域の分け方というのはもう古いんじゃないでしょうか。大きく生物系,理工系とかに分類されているのですけれども,もうちょっと分析するとしたら,著者がどういうフランチャイズを持っていて,どういう有望な融合領域が生まれているから,そういうところをもっと重点的に予算を配分するとか,こういう生物とか細かい分け方で余り議論してもしょうがないかなという,そういう印象を持ちました。
【西尾部会長】
私も情報系でして,上田委員が代弁していただいて,どうもありがとうございました。是非,上田委員の御意見を参考にしていただけますように,どうかよろしくお願いします。
 実はいままでに頂きました御意見,一つ一つが本当に重要であり,小安委員からの学術研究そのものの苗床がもう枯れてしまいつつあるという危機感の中での科研費の位置付けをどうするのかということも含めて,総合的に考えていく必要があることを切実に感じました。また,頂きましたコメントは,今後,伊神室長の方で再度,分析・洞察を深めていただく中で,一つ一つ指針になるものではないかと思いますので,どうかよろしくお願いいたします。
 そのときに,小安先生から御説明がありましたように,科研費制度の現状を論文の生産性の観点だけで捉えてしまうというのは,各方面に誤解を与えてしまうおそれもあると私も思っております。今後の分析や,その結果の公表に際しては,その報告を見るがわに適切に理解していただける,つまりは誤解を与えないように気をつけていただきたい。あるキーワードやキャッチコピー的な言葉だけが,我々の意図と反して伝わってしまうと,それは様々な点で大きな問題を起こすと思います。そういうことに対しての御配慮を頂けると大変有り難く思っております。
 また,科研費の改革が現在進行中ですけれども,その制度の特性も十分に御配慮いただきたい。先ほど山本先生がおっしゃっていただいたことですけれども,制度と関わっている文部科学省の担当課とも十分な連携をしていただくということも重要だと思っておりますので,その点もどうかよろしくお願いいたします。
 本日はいろいろと貴重な御意見が出たということ,それはエビデンスを基にした御報告を頂いたからでありまして,伊神室長には本当に感謝いたしております。

(4)「研究力を測る指標(分野別・大学機能別)の抽出と大学の研究力の可視化に関する基礎的研究」について


【西尾部会長】
それでは,4番目で,「研究力を測る指標(分野別・大学機関別)の抽出と大学の研究力の可視化に関する基礎的研究」についてということで,本日の最後の議題に移らせていただきます。
 本日は,先ほど紹介しましたように,自然科学研究機構から,小泉周特任教授にお越しいただいています。前期の学術分科会において,学術研究に関わる評価指標の在り方について議論を行ってまいりました。この課題に対して,専門的な調査研究の成果を生かすという方針を,学術分科会で了承いただいた経緯がございます。このことを受けて,小泉先生は,科研費の特別研究推進費により,研究力を測る指標(分野別・大学機能別)の抽出と大学の研究力の可視化に関する基礎的研究に取り組んでこられました。
 本来であれば,小泉先生にはまず学術分科会において御報告いただくのが筋かもしれませんけれども,先生が研究の対象とされている世界大学ランキングの指標の中には,研究費の獲得額,論文数,論文の引用数,国際共著論文数など,本部会の審議内容と関係の深いものが多々ございます。小泉先生の御研究により,世界の大学ランキングで用いられている定量的指標が整理されているとすれば,このことは本部会の議論にも大いに活用できると思っておりまして,その観点で本日,御足労頂いたところです。
 ちょうど先月,Times Higher Educationの世界大学ランキングの結果が公表されました。商業的性質が高く,よくあることですけれども,年ごとに評価項目の重み付けが変わってきている。私としては,そのようなランキングの順位に一喜一憂するということは適切ではないとは思いますが,一方で世界大学ランキングへの社会的関心が高まっているということも事実です。さらに,政府の政策決定においてもそれが参照されるような状況の中,研究力の測定をめぐって,これまで大学,学術界から様々な意見が提示されているところです。
 そうした状況において,本部会においても研究力測定の在り方が研究費政策と密接に関連するとの問題意識から,参考資料でお示ししております「研究力の測定の在り方及び科研費の役割について(所見)」を取りまとめております。先生の御研究は,この所見に深く通ずるものと考えております。
 小泉先生の御研究は,来年3月末までということですので,研究期間の途中ではありますが,非常に興味深い重要なテーマだと思いますので,是非とも今まで積み重ねてこられました御知見を賜りたく,現時点での研究状況について御紹介を是非ともよろしくお願いいたします。
【小泉特任教授】
御紹介いただき,どうもありがとうございます。
 特別研究促進費をやらせていただいております小泉です。どうぞよろしくお願いいたします。
 我々の中で,正に今,御紹介いただいたように,大学の研究力を測る指標,分野別・大学機能別ということを調査研究してまいりました。特に本日は,西尾部会長がおっしゃったように,世界大学ランキングということを1つのテーマとしながら,我々の研究成果の一部を御紹介させていただきたいと思います。今まで学術分科会で中間報告等をさせていただいたときは,概念というか考え方ということを御紹介したのですが,本日は全てのデータを公表しようということで,我々の促進費の調査研究で行ったデータを本として,全ての国立大学,それから一部の私立大学のデータも含めて,全て公表します。どうぞよろしくお願いいたします。
 では,資料4をごらんいただければと思います。2ページ目になります。世界大学ランキングで大学の研究力を把握できるのかというそもそものテーマがございます。特に今,御紹介のあったTHE,Times Higher Educationの世界大学ランキングだけでなく,QS,上海交通大学のランキング等がございますが,特に本日はTHE世界大学ランキングを中心とした話をさせていただきます。
 3枚目のスライドになりますが,既にもう西尾部会長おっしゃったとおり,世界大学ランキングの何が問題かといいますと,とにかく順位は恣意的に作られていること。というのも,Times Higherを運営している会社が民間企業であり,例えば使用するデータベースの変更があったり,国別補正の仕方に変更があったり,1,000人以上の著者がいるビッグ・サイエンスのペーパー,キロオーサーペーパーと言われますが,そういったペーパーの扱いが変更になったり,とにかく毎年,毎年どのように計算するかという手法が変わっていきます。その中で順位が決められていくということで,こういったものは順位という一次元の指標において,何々大学の方が何々大学より上だねとか,下だねとかいうような,そういった指標にはならないのではないか。順位というのは,継続的に見る指標とはならないというのが我々,常日頃,申し上げていることですし,この部会でも既におっしゃっていることだと思っています。
 その一方で,世界大学ランキングで使われている個々の個別の指標に関しましては研究力を表す指標もありますので,これについては少し注目して見る,精査して注目して見る必要があると思っております。
 4ページ目になりますけれども,THE世界大学ランキングではどういう指標を使われているかというところを見ます。特にリサーチに関係するところは,特にリサーチの中でも30%ありますが,その中でもResearch output per staff FTEということ,これは論文数を表しているものです。それから,Citations(30%)とありますが,これはいわゆる分野補正をしたサイテーションを,FWCI(Field Weighted Citation Impact)というものを用いています。この赤字になっているところ2つ合わせて36%あります。ここが非常に大きな比重を占めております。
 同じく30%以上,比重を占めているところというのは,Teaching,それからResearchのところにそれぞれ入っておりますreputationです。評判調査というものになります。どれだけの評判を集めているか。それ両方合わせますと,33%になっています。なので,先ほど言った論文数と,それからFWCIで表せる被引用数の部分,それからreputationの部分がかなり大きな部分を占めているということが分かります。
 では先ほど申し上げた研究という部分で申し上げますと,次のスライド5になりますけれども,THEでは論文数を教員数,FTEで換算しています。ここには著作物も2年前から含まれるようになりました。本も含まれるようになりました。プロシーディングズ,先ほど議論になりましたが,そこも含まれています。そういった量の部分。それから,質に関しましては,分野ごとに論文被引用数の絶対値というのは違いますので,これを分野ごとに補正して,分野世界平均を1としたFWCIという数値を使っておりますが,これが量と質というのを,THE世界大学ランキングでは見ているわけです。
 QS世界大学ランキングでは,質を用いておりますし,同じく先ほど議論のありましたトップ論文がどのくらい出ているか,トップ1%論文,トップ10%論文といったものの割合,このトップの質というものを見ていきましょうというものも,ほかのランキング等では用いられております。
 このように見ていきますと,それぞれの世界大学ランキング,量,質といったところが1つ重要なポイントとしてなってきているわけです。この中で,FWCIというところに少し注目してみたいと思いますが,次の6ページ目をごらんください。
 THEの世界大学ランキングですが,当然ながらFWCIが30%占めておりますので,これとランキングはかなりリニアに相関しております。FWCIが一番右の部分になりますが,これが赤いラインになります。一番左がランキングの順位になりますが,順位とFWCIの相関性がかなりございます。
 ただ,ばらつきも大きくて,実はばらついている中の1つが日本でございます。例えばこの6ページ目の下に書いてありますが,東京大学のFWCIは,実は1.34しかございません。世界平均1に対して,被引用度の割合を示すと1.34です。東京大学,1位から50位以内のバンドに入る大学ではございますが,実はこのFWCIだけを見ると500位という非常に悪いところに入ってきてしまいます。
 じゃあ,何で東大は上の方に来るのかというと,実はreputationが良いためです。reputationによって保たれているという現状。reputationだけで33%ありますので,FWCI30%の部分が悪くても,reputationで保たれていますが,reputationというのは評判ですので,FWCIが下がってしまえば評判も下がってくるというのは,何となく思っているところです。なので,世界大学ランキングを上げたければ,まずは論文の質を上げなさいというのが,最も基本的であり,最も正当なところだと思います。
 FWCIの計算方法に関しましては,7ページ目にございます。いろんな方法が各会社ありますけれども,分野,またそれから発表年,それから文献タイプというのは,本なのかアーティクルなのかペーパーなのかプロシーディングズなのか,文献タイプによってとにかく全部,平均化して,平均を1としたもので見ていくというものです。ちなみに,日本の平均は,世界平均1を下回って,0.96しかありません。もう世界に出す日本の平均的な論文の質というのは,世界平均を下回っているという状況になっております。
 ただ,ここで我々としては,量と質というもので世界大学ランキング,いろいろ決められておりますけれども,果たして本当に例えばFWCIにしても,FWCIだけで我々の大学の研究力等を見るのが適切なのかどうかというところを,次に課題としました。
 次のスライドの9枚目になりますけれども,量と質だけでは測れない大学の強みというものがあるのではないか。量と質だけではなくて,厚みという概念を1つ,提案させていただいます。量と質の二次元で見るだけでは駄目で,厚みというもう一つの軸を加えた三次元的に研究力を見ることが必要なのではないかと我々の調査研究で思っているところです。
 スライドの10枚目です。例えばUniversity AとUniversity Bを比較しましょうというときに,University Aで出ている論文群とUniversity Bで出ている論文群を比較します。Research Field X,あるXという分野にのみに限っております。
 丸で囲ったものが,一個一個の丸が一つ一つの論文です。その中に書かれている数字は,被引用数だと思ってください。University A,52という数字があります。52回引用されているような,この分野にしてはすごいホットトレンドの論文が1本出ております。その後は5回引用されているもの,3回引用されているもの,そこまで,52というヒット論文はありますが,それに続く論文がないという状況が,University Aの論文群です。University Bは,52回のようなホット論文はありませんが,9回,8回,8回,8回というような,そこそこちゃんと引用される論文を,そこそこの数ちゃんと出しているというUniversity Bです。
 どちらの方が大学として,研究力があると見るでしょうか。Aと見る人もいるでしょう。Aというトップ論文が出ているということを見る人もいるでしょうが,Bという底力があるというか,ある一定の数ちゃんと集まっているという状況がすばらしいと見るという人もいるでしょう。ところが,世界大学ランキングで使われている量と質のこれまでの既存の指標だと,全てUniversity Aがすぐれているというものになってしまいます。
 例えばここに書いてありますけれども,University AのTotal # of Publication,論文数9本でUniversity Aの方が上です。Citationの合計66,University Aの方が上です。アベレージを取ってみましょう。これも7.3でUniversity Aの方が上です。トップ論文があるか,ないか。先ほどからも議論がありましたが,University Aの方が上です。全てにおいて,University Aの方が上という数字が出てきてしまいます。これをもって,本当にUniversity Bは研究力がないと言えるんでしょうか。そこはかなり疑問があると思っているところです。
 スライドの11枚目になります。そこで我々,厚みという概念を提唱したいと思い,そこの下に,institutional h5-indexというものを使うことを提案しております。h-indexというのは,既に御存じの方もいると思いますが,どれだけの論文数,どれだけのcitationを持った,どれだけの論文数が出ているのかというのを,その2つを複合的に表すものです。それを過去5年間に限って,またこの大学のグループパフォーマンスに当てはめて見てみようというのが,この提案です。
 簡単に言いますと,スライド11,University Aは,上から3つ目,citationの数で上から並べていきます。52本が1本目,5本目が2本目,3本目が3本目ということで。そうすると,3回以上引用された論文が3本,過去5年に出ているということになります。なので,数字としてはh-indexの数字としては3という数字になります。University Bの方は9,8,8,8,7,6と並べていきますと,6が一致するところですので,6回以上引用されている論文が6という数字が出てきます。
 スライド12枚目になります。これを入れることによって,これを厚みの指標と申しまして,この厚みの指標を加えることによって初めて,University Bの方が厚みがありますよと言えます。厚みで全て語れるとは言いませんけれども,今までの既存の量と質では測れない研究力の強さというものを,この厚みというのは示している。University Aは,既存の指標では上に来るけれども,University Bは厚みという点で上に来るということが分かります。
 スライド13をごらんください。実際の数字,本日お配りしているデータブックの中から,資料集の7ページより取りました総合,全ての分科の厚みで並べていきます。そうすると,東アジアでトップの大学はどこでしょうか。東京大学です。東京大学は,東アジアで香港大学でもなく,シンガポール国立大学でもなく,東京大学が厚みは東アジアでトップになります。
 ただ,先ほど申し上げたように,FWCIとか既存の指標では相当低いところにありますので,どうしてもそこは相対的に低く出てしまうのですが,厚みは東京大学が東アジアでトップという状況で,シンガポール国立大学よりも上に来ています。
 スライドの14ページ目になります。東大とシンガポール国立大学を比較してみます。今までの量と質という二次元で物を見るだけではなく,厚みというこの3つ目の軸を加えることによって,立体的にその研究力の評価ができると思っております。
 東京大学,特に質を見ていただければ,FWCI,平均を取りますと,シンガポール国立大学よりも下になります。トップ1%論文割合,トップ10%論文割合に関しましても,シンガポール国立大学より劣ってしまいます。なので,この辺の指標を見ると,日本の東京大学はトップ10%論文が落ちている。シンガポール国立大学よりももう遅れてしまっているというような議論になりますけれども,厚みを見てみますと,シンガポール国立大学よりも上ということが分かります。
 山の形,1つの論文群,リサーチアウトプットを1つの山として考えてみますと,シンガポール国立大学は,トップがすぐれているような急しゅんなマッターホルン型かなと思います。東京大学をはじめとする日本の大学は,真ん中の中間層が厚い富士山型かなと,かなりひいき目もありますが,東京大学はきれいな富士山型を取っていてというふうに思います。こういった山の形の特徴というのもあるのではないかと思っております。
 スライドの15です。これをもうちょっと具体的にモデル化してみました。シンガポール国立大学は,先ほどのUniversity Aに近いものだと思います。トップ論文はあります。中間層の厚みはありませんという状況だと思います。東京大学は,実は先ほどのUniversity Bと少し違うのは,実は論文数もシンガポール国立大学よりも出しています。ただ,出している論文が余り引用されていない論文を出しているという状況です。論文数は多いのですが,引用されていない論文もたくさん出しているという状況なのだと思います。
 なので,FWCIのように平均を取ってしまうと,悪くなってしまいます。平均というのは,母数がパブリケーションナンバーになりますので,パブリケーションが多ければ多いほど,厚みがあってもそこはパブリケーションナンバーが多い分,平均を取ると下がってしまいます。このことによりFWCIにおいて,日本が低い原因となっているのだと思います。
 ただ,それにしても,上から数えて中間層まで見ていく厚みというのは,東京大学の方がシンガポール国立大学等よりもすぐれているというのは,このスライド15で表されているように,厚みがモデルAでは3,モデルBでは6というところで言えると思います。
 なので,世界大学ランキングで見ている量と質という既存の指標だけでは見えない,日本の大学の研究力の特徴というものがあり,それはこの厚みというところで見ていく必要があるのではないかというのが,我々の調査研究の結果となっております。
 スライドの16,まとめております。先ほど申し上げたように,Research Outputを1つの山として考えれば,山の頂を見るのはトップ論文でしょう。山の全体のボリュームを見たり,それが論文数になりますし,ボリューム全体の平均を取って見るのがFWCIのような平均を取るものになりましょう。
 ただ,それだけで山の形は分かりません。山の形を見るためには,もう一つの軸が必要で,そこに厚みという軸が必要だと思っております。これによって,中間層の厚みが分かることによって,どういった大学,又はその研究分野の特徴があるのかというのを,立体的に捉えることができると思っております。
 スライド17です。今回,いろいろとデータを持ってきておりますので,公表も兼ねて少し御紹介したいと思います。トップ論文が強いけれども厚みが弱いという1つの例を持ってまいりました。信州大学の物理・天文学の分野です。
 まず,質からごらんいただけると良いと思うのですが,信州大学物理・天文学,FWCI2.33。かなり高いです。トップ1%論文も1%が4.48,トップ10%論文が27.1もあります。おお,じゃあ,信州大学物理学,すごいねという話になるんですが,厚みを見てみると,厚みはそれに比して余りありません。
 実際に,じゃあ,何が起こっているのかというのを,信州大学の,これは中を知る人しか分からないのですが,実はアトラスグループという,ヒッグス粒子を発見したようなビッグ・サイエンスに関わっている,それこそキロオーサーペーパーを出すようなところに関わっている研究グループが2チーム,信州大学に入っておりまして,そこが質,FWCIなりトップ10%論文は上げていますが,大学としては,この分野を特に推して厚みを作ろうとしているわけではないそうです。
 なので,山の形としては,トップはいるけれども,中間層,また大学として,組織として厚みをサポートしているという分野ではないという逆さ富士型になります。こういうところは既存の指標だけではなくて,厚みを見ることによって分かります。
 また,スライド18ですが,トップ論文が弱いが,厚みがあるということで,岐阜大学の獣医学を例に出します。岐阜大学の獣医学,質だけを見てみますと,FWCIは1を切っています。0.95。トップ1%論文も一本も出ていません。トップ10%論文は9で,10%を切っています。
 何だ,岐阜大学は動物科学とか獣医学強い,強みがあると言われているのに,質が全然じゃないかと言われかねない。それは間違った判断です。厚みを見てください。厚みは日本のトップです。日本のトップを作っているのが岐阜大学の獣医学です。なので,質だけで見るのではなくて,厚みを見るということで,1つ特徴を捉えることができます。トップが弱くても厚みがあるということで,八ヶ岳型かなということを思っております。
 同じく,じゃあ,これなら総合大学が厚みを作るには有利じゃないかということで,スライドの19ページ目に書かれていますが,例えば帯広畜産大学は,単科大学ではありますが,獣医学に特化した厚みを作り出しています。岐阜大学と並んで,日本のトップの厚みを作っております。トップ1%論文は0本ですが,ここはトップ10%論文も17%,獣医学の分野で出しておりますし,この分野に限ってかなり特化した厚みというのを作り出しているということが分かります。
 ここまでで申し上げましたように,スライド20枚目,これはもう繰り返しになりますけれども,論文のアウトプットというのを見るのに,論文数だけで見るというのも間違い。順位で見るというのは到底,間違いですし,論文数だけで見るというのも間違い。質も,FWCIのような平均だけで見ても分からなかったり,トップの頂で見るだけでも駄目で,厚みというもう一つの次元を加える。もちろん厚みだけで見ても駄目だと思うのですが,量,質,厚み,この三次元で立体的に大学のアウトプットというものを捉えるということが1つ必要なのではないかなと思っています。
 それから,ではこの厚みというのが,何によって支えられているのかというところを少し見ていきますと,スライドの21ページ目になりますが,科研費の新規採択数と採択金額によって,大学の厚みの特徴が把握できると我々,仮定し,また仮説を立て,実証してまいりました。
 もうここで申し上げるのも釈迦に説法ですが,科研費というのは正に単なる研究費のインプットではなく,それがピアレビューを経て,ちゃんと評価を得ているということで,その大学,その研究分野の評価にもつながるものだと思っております。新規採択数が多い,新規採択額が多いというのは,それだけ評価を得ている大学の研究分野であろうということです。
 例えば経営学に関しましては,神戸大学が新規採択数,過去10年,新規採択額,過去10年もトップです。そういったものを組み合わせて考えると,厚みというものは,これで評価できるのではないかと思っております。
 実際,スライドの22ページ目を見ていただきますと,私が今回,紹介したh-indexで求める厚み指標,これは10年で見ておりますが,Institutional h10-indexと科研費,これも過去新規採択金額10年間の総額というのは,リニアに相関します。つまり,先ほど来,伊神先生も小安先生も,論文数やトップ10%論文との相関を言われておりましたけれども,私としては,ここでこの科研費によって大学の研究分野の厚みが支えられているという現状を申し上げたいと思っているところです。
 23ページ目,結論になりますが,世界大学ランキング,その順位の決め方は恣意的かつ毎年変更があり,継続的に見る指標とはならない。
 世界大学ランキングで用いられる指標の中には,研究力を把握するために重要な指標も含まれます。特にFWCIというのは1つ注目しなければいけない指標でありまして,このFWCIの値と順位というのはかなり相関しております。それが30%を占めております。FWCIの値は,日本の場合,相対的にかなり下がっておりますので,ここをやはり真っ当にはここを何とか上げていかなきゃいけないというものがあります。
 ただ,量と質という既存の指標だけでは測れない日本の大学の研究力の特徴があり,それは厚み。日本の大学だけではありません。これは世界の大学にも適用できる指標でして,Institutional h5という指標で見ていくことができるのではないか。これを組み合わせることで,大学の研究力の特徴を立体的に捉えることができると思っております。
 また,科研費によって大学の研究分野のこの厚みが支えられている。それこそトップ10%論文が下がっているという話がありましたが,厚みにおいては,日本は東アジアでまだトップです。ただ,科研費がこれでもし下がるようなことがあってしまっては,この厚みさえもなくなってしまう。そういう状況は,次のトップ論文を生む土壌もなくなってしまうということは,非常に危惧するところであります。
【西尾部会長】
本当に示唆に富む御報告,どうもありがとうございました。また,小泉先生の科研費との関わりの仮説,これも大変参考になるものであると思っています。
厚みがあってこそ,例えばノーベル賞級の研究がその中から出てくるというようなこともあります。今まで日本としては,その厚みが1つの特徴,強いところだったのですが,それが,先ほどから意見が出ています基盤的経費の大きな削減の中で,どんどん失われていっております。そういう中で,科研費との関わりで,本部会でどのように考えていくのかということに対しての御示唆でもあったかと思っております。
 御質問や御意見をいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。
【上田委員】
どうも,非常に興味深いお話,ありがとうございます。
 ちょっと私も囲碁を趣味でやるので,厚みという言葉が非常に何か共感するところがあって,結局,初めずっと伺っていまして,だから何かという,つまり評価というのは所詮物差しを当てるということです。その物差しで物を言えるので,これはかなり客観性があります。だから漠然と,例えば人間力なんか言われてもよく分からないんだけれども,身長とかいうと絶対ランクが付きます。
 そういう意味で,厚みも1つのメジャーなんですが,それがもたらす効果というのがどうなのかと聞いていたんですが,最後に,科研費との関係で,ダイナミカルに,結局その組織がパワーを持つ,そういうような評価をこれで言えるということになると,これは結構重要な。囲碁の厚みもそうなんですよね。最初,地を取っていなくても,ヨセでじわじわと追い掛けていく,これが初心者とトップとの差だと思うんですけど,だからそういう尺度を,科研費を分析して,どういう大学がどういうような形でその厚みを持っているかということを分析するのは,私は極めて重要だなと思って伺っていました。
【小泉特任教授】
僕も正に囲碁をやるので,正に厚みというのは,今は実利がなくても最後に何かそれによって利点が生まれてくるという,そういう基盤になるものだと思っています。ありがとうございます。
【西尾部会長】
研究費部会で囲碁の例え話が出るというのは,なかなか興味深いことだと思っております。
【甲斐委員】
多分,お時間がなくてお話しなされなかったのかと思いますが,国際性の厚みのCNIを説明していただけますでしょうか。
【小泉特任教授】
国際性の方も,厚みという概念で見られないかと思っておりまして,それは期間との,どれだけの海外の機関とつながっているかというのを,論文数がどのくらいなのかというので見てみようというのが,スライド26にあります。
 仮説としては,論文をたくさん出している機関と自機関が,より強く国際的につながっているだろうということを想定しています。
というのは,国際性というと,国際共著論文を世界大学ランキングでも使っているのですが,世界大学ランキングの国際共著論文って,日本のトップは94%という大学があります。どこだと思われますか。国際共著率94%。次は66%なんですが。94%は京都教育大学です。京都教育大学が日本のトップの国際共著率大学になります。
 国際共著率というのが,必ずしも国際機関との連携,大学として組織としての国際連携を表していないと考えると,組織と組織の連携を国際共著数の厚みとして見ようというのがスライド26になります。
 同じようにh-indexを使って,スライド28に書いてあるようなh-indexを使って評価をしてみましたところ,スライド29がそれを更に分数カウント,著者数で割っています。著者10人のうち6人が相手機関にあったら,10分の6を相手に与え,10分の4をうちが取るというような,そういう分数カウントの仕方を見ると,スライド29ですが,東京大学がトップで並ぶというようなものが出てまいりました。
 なので,世界大学ランキングとの絡みで申し上げますと,国際共著論文率というのは,非常に重要な指標ではあります。これは無視できない指標ではあるのですが,必ずしもそれだけではその組織の国際性というのを表すのには不適切なのではないかなと思っているところであります。
【甲斐委員】
京都教育大学は,今のリストだとどこに入るんですか。
【小泉特任教授】
スライドの29ページ目の95位という。
【甲斐委員】
95番になっちゃうのですか。
【小泉特任教授】
はい。
【甲斐委員】
なるほどね。
【小泉特任教授】
CNIで,厚みで見てみるとです。
京都教育大学は何があるかというと,アトラスグループに参加している研究者がいらっしゃって,その方がほとんどの国際共著英語論文を出されているので,パーセンテージは上がります。
【橋本委員】
厚みって非常に面白い考え方だと思います。これはある意味では空間的な広がりみたいなことがありますよね。
 よく人文系の研究者と話をすると言われるのですが,論文の寿命というか,時間的な方の広がりに関しては,何かお考えはありませんか。
【小泉特任教授】
我々,本日の発表の中にはありませんが,実は人文社会系を中心として,時系列というのを見ておりますと,人文社会系,特にすごく長い,柳田國男が今でも引用されるというような,かなり長い時系列を示しています。なので,厚みを見るのも今回5年という紹介をしましたが,もう一つ,10年というのを1つ見なければならない,分野によっては長い期間のものを見なければならないと思っています。
 ただ,余り長くし過ぎてしまうと,もうその大学にいない先生の著作まで全部入ってきてしまうので,そうするとなかなか大学の評価としては難しくて,5年,10年ぐらいまでが,その大学の強みを見るには重要かなと思っています。
【橋本委員】
確かに個人の評価で,大学の評価ではないということになってしまうところはありますね。
【鍋倉委員】
厚みという新しいインデックスですが,これを国際的なスタンダードユニットにしていくという取り組みはないのでしょうか?トムソン・ロイターなどが設定した評価だけでなくて,例えば,中国では上海交通大学で作成した評価指標などを使って国際評価を行っている。日本発のスタンダードユニットとして,このような指標があると発信することが必要ではないでしょうか?【西尾部会長】  私は今正におっしゃったようなことで,逆に日本からそういうものを発信していくということが非常に大事じゃないかと思うんですけど,先生,そこら辺の今,プランとか何かございますか。
【西尾部会長】
私は今おっしゃっていただいたように,逆に日本からランキングを発信していくことが非常に大事じゃないかと思います。先生としての何らかのプランとかはありますか。
【小泉特任教授】
調査研究としてはもう終わりだったのですが,正に今,イギリスのグループとは一緒にやろうと思っています。それだけではなくて,正に例えばTHEに対してこういうものも入れなさいと提案するのも1つの手ですし,又は我々独自に,日本独自に世界基準のものとして,日本発の世界基準のものを作っていくというのも1つの手だと思います。
【西尾部会長】
中川審議官,いかがですか。その辺りは,サポートしていかなければならないと考えますが。
【中川総括審議官】
はい,突然御指名いただき,ありがとうございます。小泉先生,伊神先生,両先生もよく御存じなのですが,このような動き,いわゆるランキングばやり,ということで,「大学ランキング」ということになると,高等教育局が担当しており,これは教育力も含めて,ということになります。このような動きを,全体としてとらえて,そこは戦略的に,担当部局が協力しあって,その中から読み取れることなどを共有しながら,一方,報道等でランキングだけが独り歩きしてそれに踊らされるようなことがないよう,むしろ,主体的にこういうものをとらえていこう,とそのようなことも,省全体としても考えながら取り組んでおります。本日の御議論もふまえて,官房としても,研究力を担当する研究振興局とも一緒にやってまいりたいと思っております。 
【西尾部会長】
どうかよろしくお願いいたします。
【白波瀬委員】
大変ありがとうございました。とても面白かったです。
 ただ,やはり本日伺ったところで最も重要なポイントは,厚みという1つの指標という新たな基準を提示していただいたのですけれども,いろんな見方があるという点が一番重要だったと思います。
 個人的には,みんなこの山型に厚いのを目指すのもつまらないなというのが,私の正直な感想で,やっぱりとんがったのも欲しい。
 ですから,本日の御報告を頂いて,どちらかというと科研費とか研究の方からですけれども,組織の在り方も大切で,真ん中が厚い,丸いようなのがあってもいいし,先がとがった高いようなのがあってもいいし,というところで展開ができるかなと,すごく感じました。
 ただ,そういう意味で,今回おっしゃっている厚みというのは,飽くまでも1つの指標としての厚みであって,最初の方で苗床という,研究力の底というところとはちょっと違う概念でもあるような気がしました。そこは組織的な区別というのは十分必要かなと感じました。
 あと,1つ混乱するなと思ったのは,reputationが中に入っているというのは,因果関係が基準値を設定する際に混在して入っているので,何を意味するのかを判断しにくいと感じました。同時に,このように使っているのかということを正直すごく感じました。
 それで最後に,やはり分野の話がありましたが,ランキングはランキングでそれぞれいいと思っていて,ただ,そこにいろんな見方があるということを,読む方もしっかり理解して成熟していないといけないとすごく思います。
 またちょっと外れるんですけれども,やっぱり研究費を議論するときに,どうしても標準化が進んでいる理系のデータを中心に積み上げられると,少し厳しいところもあります。だからといって人文系とか,社会科学系は若干,中間的なところがありますけれども,理系中心の標準化された基準では見えないということをエクスキューズにしない形で配慮いただくような議論,データ蓄積をやっていただけると,とてもよいと思いました。
【小泉特任教授】
正におっしゃるとおりで,いろんな視点で見る。厚みだけでも駄目で,いろんな視点を組み合わせて見るというのが,正に重要な点だと思っております。
 それから,当然,富士山型を全員目指すというものでもなくて,それはもう大学のミッションによると思います。うちは急しゅんなマッターホルン型を目指すんだ,うちはシンガポール国立大学型を目指すんだというところは,それに合った指標で見ていけばいいと思いますし,正に先生がおっしゃるように,いろんな大学のいろんな特徴がそれで出てくればいいのかなと思っています。
【白波瀬委員】
あと,シンガポールということで比較対照されたんですけど,シンガポールについては,最近,アメリカでの大学経営を経験した者が経営者として入ってきまして,ああいう形の組織を作ったというところがある。そのため,そこを単純に比較するのは少し注意が必要で,アメリカ型をまねて再建した大学運営でもありますから,考慮が必要とです。ここでの結果は,アメリカ型の大学経営をお手本にしたある意味で自然の結果であると感じたところです。
【小泉特任教授】
正にそうだと思います。シンガポールは戦略的にトップをとにかくヘッドハンティングして連れてくるというところで,トップを作っていくということをやられている。正にそのミッションが表れているのかなと。正に先生おっしゃるとおりだと思います。
 分野ごとの特徴に対しては,確かに人文社会に関しましては,特に先生ももうおっしゃったとおりで,社会学系に関しては,ある程度この厚みで見られるのかなと思っています。例えばお配りしているデータ集の1の方の336ページに,一橋大学の経済学計量経済学財政というのが左下の方に出ているんですが,これはFWCIもトップ1%もトップ10%も質はよくないのですけれども,厚みはかなりある。
 この辺,この前,一橋大学でもディスカッションしましたが,こういう特徴は,社会学に関しては捉えられるところがあります。ただ,人文科学に関すると,日本の歴史とかをこれで捉えられるかというと,なかなか難しいところがあるので,そこはまた今,我々のチームの中でも別途ワーキンググループを作って検討しておりまして,また学術分科会等で御報告したいと思っております。
【竹沢委員】
人文科学という名前のついたところに所属しておりますけれども,いつもこういうことになると,私自身もジレンマを感じています。日本の人文科学が国際的なプレゼンスが低いということを常に意識してはいるんですけれども,他方,評価になりますと,先ほどから御意見が出ているように,まず書く欄自体が,理系の物差しであって,その枠にどう書いたらいいのというのは人文科学の人間がいつも悩むところです。また数値化することが人文科学にとっては非常に難しい。でも,なぜ人文科学の皆さんが余り雑誌に投稿しないかというと,年数が関係すると考えます。例えば本だったら図書館にて10年,20年前のものでも手に入りやすい。けれども最近,オンライン化が進んでいますけれども,やはり雑誌は少なくとも今までは限られたもの以外は手に入りにくかった。今でも必ずしも手に入るわけではない。そういう意味で,皆さん,本の方を選ぶという傾向がある。
 人文科学では,雑誌論文よりもどちらかというと論文集の本ができるとか単著ができるとかいうことなんですけど,建設的に話をするなら,何か数値化の手始めとして,例えばメジャーな学会誌に掲載された論文や,大学学術出版会で発行された本や論文を数値化するとか,もちろんそれだけをすると,またそのほかのところからの反発が出ますが,今全く欠落しているので,その手始めとして,人文科学にも御配慮いただけたらと思います。
【小泉特任教授】
正におっしゃるとおりだと思います。本に関しては,実はTHEも本,チャプターを数え始めておりますし,かなり人文社会系の数も数えようとしております。ただ,その場合,日本の場合,日本語の文献をどう数えるかという部分で,それをどういうふうに質保証していくのかという部分で,我々も先生がおっしゃるとおり,例えば出版社が質保証しているんだと考えて,この出版社で出した本が何本あるのかというのを数えるというのが1つ人文社会系にとっては質保証になる部分なのではないかなというところで今,数を数えたりをしております。
 それから,オンライン化というのは1つ大きなポイントになろうかと思います。それはもう人文社会系に限らず理系もそうなんですが,やはり先ほどの伊神先生のお話にもありましたが,オンライン化,OA化というのが1つの波で,OA化しているとアクセスされやすい,引用されやすいというところがありますから,人文社会系のものもOA化して,例えばアブストラクトだけでも英語で,OA化するときには,オープンアクセス化するときには載せておくということをすると,ハーバードの日本語研究の人が,それを日本語学協会が出したジャーナルを読みに来るということは十分,考えられるので,OA化は1つポイントなのかなと思っております。
【栗原委員】
大変,貴重なデータをありがとうございました。各大学の今のこの厚みの表,13ページの表とかを拝見すると,国別とか,それから地域別にも上の方,下の方にというようなところの特色があると思うので,何かこういうものが少し幅広くシェアされて,いいところを伸ばすには,どういうお手本があるのかとか,自分たちのよさをどう伸ばすのかというのも含めて,そういう具体的な背景が分かると,大変,勉強になると思いました。あんまり体系化し過ぎても面白くないかもしれない,何と言っても大学は個性が知の根源なので,でも大変いろいろ考えさせられるデータだと思います。どうもありがとうございます。
【山本委員】
先ほど白波瀬先生がおっしゃったことは,私はやっぱりそうだと思います。やはり,例えば厚みがあるということ自体は,やはり1つの財産ですが,それに安住するような方向に行くと,これはやはりまずいわけです。
 やはり本当にもし厚みがある,八ヶ岳型とおっしゃいましたが,それであれば,やはりもっとピークを本当に出すにはどうすればいいかを考えるべきであり,厚みがないと判断された大学であれば,厚みを増やすにはどうすればいいかと,そういうような視点が必要なんじゃないかと。
 つまり安住するためじゃなくて,自分が次に何をしなければならないかということを考える指標にしていただければと思います。
【西尾部会長】
本日いろいろ御意見が出ましたけれども,そのような御意見を参考にしていただきながら,引き続き分析等をいただけましたら幸いでございます。
 なお,最初に私から説明しましたように,この議題は,学術分科会においても議論すべきものだと考えておりますので,事務局の方ではその手配のほどを,どうかよろしくお願いいたします。

(5)その他


最後に,事務局より連絡事項が伝えられ,会議は終了した。

―― 了 ――

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