第8期研究費部会(第7回) 議事録

1.日時

平成28年7月5日(火曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省13F1~3会議室

3.議題

  1. 学術研究を取り巻く動向について
  2. 科研費審査システム改革について
  3. 挑戦的研究に対する支援強化に関する作業部会での検討状況について
  4. その他

4.出席者

委員

西尾部会長,甲斐委員,栗原委員,佐藤委員,小安委員,白波瀬委員,城山委員,鍋倉委員,西川委員,射場委員,上田委員,橋本委員

文部科学省

小松研究振興局長,板倉大臣官房審議官,柿田振興企画課長,鈴木学術研究助成課長,小澤競争的資金調整室長,石田学術研究助成課企画室長,他関係官

オブザーバー

盛山日本学術振興会学術システム研究センター副所長,山本日本学術振興会学術システム研究センター主任研究員

5.議事録

【西尾部会長】
  ただいまより第8期第7回科学技術・学術審議会学術分科会研究費部会を開催いたします。
  前回の研究費部会におきまして部会長に選任いただきましたので,今回より議事進行を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
  本日は,政府決定などの学術研究を取り巻く動向,科学研究費補助金審査部会で検討されてきた科研費審査システム改革の状況,それから,本部会の下に設置しました挑戦的研究に対する支援強化に関する作業部会での検討状況についての説明を受け,審議をお願いしたいと思っております。
  まずは,事務局の人事異動について紹介をお願いいたします。

【石田企画室長】
  6月21日付け及び7月1日付けで事務局に異動がございましたので,御紹介いたします。
まずは,板倉大臣官房審議官でございます。

【板倉大臣官房審議官】
  板倉でございます。よろしくお願いいたします。

【石田企画室長】
  柿田振興企画課長でございます。

【柿田振興企画課長】
  柿田でございます。よろしくお願いします。

【石田企画室長】
  小澤競争的資金調整室長でございます。

【小澤競争的資金調整室長】
  小澤でございます。よろしくお願いします。

【石田企画室長】
  以上でございます。

(1)学術研究を取り巻く動向について

【西尾部会長】
  それでは早速ですが,議事に入らせていただきます。まずは学術研究を取り巻く動向について,前回の開催以降,各種政府方針の決定,学術分科会の開催など,学術研究に関する動きがありましたので,事務局より説明をお願いいたします。

【鈴木学術研究助成課長】
  失礼いたします。それでは,資料1-1から1-7につきまして,簡単に御紹介,御説明いたします。
  まず資料1-1ですが,こちらは,政府の全体としての学術あるいは科研費に関する方針の抜粋を集めたものです。1ページ目は,1月の第5期科学技術基本計画については既に御承知かとは思いますが,おさらいのためお配りしております。科研費改革の3つの柱であります,審査システム,研究種目の見直し,柔軟かつ適正な研究費仕様,それらのエッセンスについてはこの中に網羅されているということ,それから,数値目標という意味では,最後の末尾にございます新規採択率30%の目標を目指して充実を図ることがうたわれております。
  めくっていただきますと,これ以降は,科学技術基本計画は今年度から5か年の計画ですが,年々の方針というものが大体5月から6月にかけて毎年決定されており,それら一連のものをお付けしております。詳しくは御覧いただければと思いますが,先ほどの基本計画の内容を少しブレークダウンするような記述になっているところです。
  1点今後の議論の関係で御留意いただきたい点としましては,3ページに日本再興戦略があります。下線部のところで若手研究者の人材育成や若手研究者の独立支援というところが大変強調されておりますが,その際,採択率については,先ほど御紹介したように30%という数値目標がありますが,一方で充足率という点につきましても言及がなされております。それらもろもろ含めて,今年度夏頃に取りまとめ,公表をということが言われておりますが,これは本日の後ほどの議事の,挑戦的研究の作業部会での議論を念頭に置いてのスケジュールということです。その他,詳しくはまた後ほど御覧いただければと思います。
  それから,資料1-2です。こちらは,科学技術・学術審議会における動向ということです。前半は,学術分科会,去る5月31日に開催されたものの中の一部のものについて抜粋をしているところです。この回では科研費審査システム改革に関して甲斐先生からの御報告を頂いておりますが,これについては,後ほどの議事の中でまた改めて御紹介いたしますので,この資料の中では割愛しております。
  このほか,本部会と関わりの深い論点としましては,研究の評価・把握の在り方ということが大きな議論の論点となっております。資料1-2の4ページ目に学術分科会における当面の審議ということについて記載した資料があります。5月の学術分科会におきましては,当面の審議事項として幾つかの柱を立てておりますけれども,この中の1ポツ,「当面の審議事項」,2ポツとして「学術研究の研究力・活動状況を把握する指標の在り方」ということが設定されております。
  この背景としましては,第5期科学技術基本計画において,主要な数値目標・指標を設定することを受けての動きということです。そのうち,学術分科会におきましては,学術研究ということに焦点を当てて,その研究力の指標の在り方を考えようということで,次の5ページにおきましては,そういった指標について今後検討していくに当たって必要な観点,留意点が幾つか確認をされています。詳しくは御覧いただければと思います。
  この学術分科会での御議論を更に受ける形で,6ページ以降は6月の総合政策特別委員会の主要な資料をお配りしております。この総合政策特別委員会は,学術に限らず,科学技術基本計画で網羅している各分野・領域にわたっての指標の在り方全体を取りまとめて議論する立場の委員会です。この中で学術に関するパーツも含まれてきます。それについては学術分科会の意見を踏まえて議論を頂くという,関係性になっています。
  6月の総合政策特別委員会におきましては,学術分科会を代表して分科会長代理の庄田先生から,学術分科会としてのスタンス・意見を御紹介いただいております。ずっと後ろの方になりますが,26ページを御覧いただきますと,こちらが5月の分科会を踏まえた意見です。かいつまんで申し上げますと,基本的指標の設定については,現場の負担が増さないように,余り細かくならないようにということが最初の丸。次の2つは,やはり学術は非常に長期にわたって成果を出していくものですから,単なるアウトプット指標に偏ってはよろしくないということ,3つ目の丸は,単なるアウトプット指標だけではなくて,1人当たりの研究費や研究時間といったインプットの指標も大事ではないかという御指摘。さらに次には,エンカレッジできる指標ということで,女性管理職等のことも例として挙げられています。これを反映させる形で,現在,総合政策特別委員会での議論も進められつつある状況です。 続きまして,学術分科会におきましては,科研費に関しての直接のやりとりということもございます。今般の改革あるいは予算に関して直接言及されている御意見を若干紹介しますと,1つは,特別推進研究の見直しの検討が今進んでおりますけれども,現在,分野にかかわらず同一の採択率で決めているというようなことについては何がしか見直しが要るのではないかという御意見を頂いております。あるいは,予算に関しましては,科研費の充足率が70%を切るという状況,やはりそれは問題ではないか,予算確保が要るのではないか。さらに予算に関しては,かなり大胆な御意見ではございますが,抜本強化としてある程度運営費交付金の削減という状況も踏まえて倍増というようなことも示すべきではないかという御意見。さらに,会議後ですが,やはり科研費の総額を増やしていく,それのイメージをしっかりまとめていく必要があるんではないかという御意見などが示されているところでございます。
  こういった分科会での御意見,御発言なども受ける形で,資料1-3を御覧いただけますでしょうか。こちらは科研費需要額の推計について(案)というものです。今回の第5期科学技術基本計画におきましては,5年間にわたる政府研究開発投資の目標額が26兆円ということが設定されているというような動きもあります。一方では,先ほど御紹介しましたとおり,科研費にとっては新規採択率30%というような数字も示されているということですので,やはり計画の終期における需要額をある程度見積もっておくことは必要ではないかということで,その作業方針についての考え方を今ここに示しているものです。
  ちなみに,同様の作業はある程度第4期科学技術基本計画の策定プロセスの中でも少しそのような議論をかつて研究費部会でもしていただいた経緯があるようですが,今回,手法,やり方等は少し異なりますけれども,こういった幾つかの仮定を置いて推計をしてはどうかとという提案でございます。本日の段階では飽くまで作業方針ということですが,ここにありますとおり,1つは諸条件を設定する。御案内のとおり,今,科研費の応募数は年々増えてきている中で,やはり伸び率を,応募件数の増加をどう見積もるのかということで幾つかのシミュレーションが成り立つだろうと。あるいは,採択率30%と一言で言いましても,それは全体なのか,やはりある程度特定の重点の種目を念頭に置いてのことなのか。あるいは,充足率,これについてもやはりどの種目を念頭に置くかによっていろいろな考え方があるかと思います。ここでは例示しておりますのは,妥当と思われるようなオプションを幾つか併記してございますが,これらの組合せで少し推計をしてみるということでいかがかということです。
  一番下の単純な推計とありますのは,まさに26兆円というマクロの数が達成に向けて全体が伸びていくとするならば,その伸び率にある程度比例する形で推計するとどうなるかということを考えています。
  2ページ目以降は,ただいま申し上げた推計作業をやる前提となるような現状の科研費の採択率や充足率の現状,あるいは過去からの応募の伸びをトレンドとして延長するとどうなるのかという資料を御参考に付しておりますので,詳しくは御覧いただければと存じます。
  続いて,資料1-4でございます。こちらも,先ほどの研究力をどう測るかという指標の中で,1つはインプット指標として研究費の在り方,特に1人当たりの研究者がどのようにボトムアップの自由な研究のためにお金が使えるのかという指標もあるのではないかという御意見を頂戴しております。ただ,これに関しましては,いろいろな財務諸表上のマクロのデータからでは率直なところなかなか見極めがつかないということもございます。そういう意味では多少近似値的な把握ということにはなりますけれども,研究者の方々のある程度主観的な回答によらざるを得ませんが,アンケートという形でその辺の実態把握をしてみてはどうかということで,現在事務局でこの作業に着手しているところです。
  具体的には,科研費の採択件数の多い上位200大学各50名の研究者を無作為抽出するということで,全体としては1万名になるということですが,それらの方々に対して,自由な研究活動や研究室運営のために所属機関から支給されている資金,当然それには外部資金は一切含まないという前提ですが,その金額等について御回答いただくというものです。
  詳しくはこの調査票を御覧いただければと思います。前半部分は,これは回答者の属性を尋ねる設問です。めくっていただいて,ページ中ほどから設問Q1等,全体として6問ございますけれども,飽くまで主観ということではありますが,個人研究費の年額がどれぐらいであるのか,Q3では,10年前と比較しての変化はどうか,Q5では,いろいろな科研費の政策課題なども,あるいは研究費全体としての課題なども挙げてみて,重要度に関する御認識を聞いてみるなどの,内容を盛り込んでおります。
  こちらについては現在調査に着手した段階ということですので,先ほどの需要額推計もそうですが,作業が順調に進捗すれば,次回8月1日の研究費部会に際して,粗集計についての御報告ができるように執り進めたいと考えております。
  次は資料1-5です。こちらは6月に下旬に開催されました科学研究費審査部会で御了解いただいた調査研究の概要です。背景としましては,先ほど御紹介した学術分科会の審議の中で,研究力の評価に関してはある程度専門家の調査研究をしっかり踏まえた議論をしましょうということが確認されたことを受けまして,科研費の中では,このような科学技術政策に関する調査研究を行うための種目もありますので,それを用いる形で新たに基礎的な調査研究を実施するということです。
  審査部会での御意見をある程度反映させた最終的な内容ということですが,ポイントとしましては,最初の1の研究の目的・必要性の中ほど4番目のパラグラフにありますとおり,いろいろな研究分野別あるいは大学の機能別に適切な指標をもって大学がそれぞれ独自に経年的なベンチマークとしての研究力分析ができるようにする,そういう方策を検討することが大きな目的です。
  研究代表者は自然科学研究機構特任教授の小泉周先生ですが,この先生はかねていろいろと大学間のネットワークの世話役のような立場もしながら,このランキングの問題等について分析して知見を持っておられる方ということです。
  調査研究内容の子細はここで後々御覧いただければと思いますが,審査部会の中での御指摘なども少し御紹介いたします。1つには,例えば研究の評価の分析ということでいいますと,2ページ目の中で,いろいろなデータベースを使って研究分野別のコア指標を抽出しようという課題などもありますが,基本的には論文データベースや科研費のデータということにもなってきますが,人文学・社会科学系に関しては,少なくともやはり書籍等ほかの指標も必要になるのではないかという御指摘もありまして,ここは人間文化研究機構の研究データベースの利用も検討し,人文学・社会科学系のことも視野に入れて進めていこう,ということが修正されているところです。
  その他,参照する諸外国という意味では,(5)の国際的な協力連携というところで,1つ重要な参照すべき対象としてイギリスが念頭にあるということですが,ドイツなどの非英語圏の状況についても連携協力者を配置して,情報収集・分析しようということが更に盛り込まれています。
  最終的にこの研究の期間・経費は,本年度から2か年にわたって1,590万円を計上するという計画です。
  別紙につきましては,小泉周先生のかねての御活動に関わるものとして,ランキングに関するいろいろな大学ネットワークでの情報発信についての参考資料を添付しておりますので,御参照ください。
  それから次に,1-6と1-7,これは大学ランキングに関わるもので,一連の研究力評価・測定の問題に関しましては,どうしても昨今社会的関心の高い大学ランキングの在り方との関係性も避けては通れないだろうということです。1-6は御参考で,現在の政府方針,の中でこういったランキングはどのように位置付けられているのかということについて簡単に整理したものです。科学技術基本計画そのものの中では,ランキングの順位というようなものは達成目標そのものには入っていないが,参照する指標の中に,大学に関する国際比較ということが1つの例として位置付けられてはいるということです。
  一方,日本再興戦略におきましては,イノベーション政策のKPIとして,そういった大学ランキングの順位が位置付けられているという内容になっております。
  1-7ですが,これは現在部会長の西尾先生と御相談をしているところです。
  今御紹介,させていただいた中で,やはり研究力をどう測定して捉えていくのか,それに対して科研費等の役割をどう位置付けていくのかということに関しては,一定の所見,考え方の整理をしておいた方がよいのではないかということで,これはその骨子案です。まず頭出しであると御理解いただきたいのですが,大きくは,世界大学ランキングをどのように受け止めて考えるべきなのか,その中で研究力の指標をどう考えるのか。2枚目の方では,第5期科学技術基本計画の実行に向けては,どのように研究力の指標の検討を進めていくスタンスをとるべきなのか,その際には,政府の開発投資目標達成の関係上,科研費の位置付けをどう考えていくのか,その辺のところについての諸点を整理してみてはどうかということで御用意しております。
  今日はお時間に限りがあるかと思いますので,また次回に向けて書面での御意見伺い等させていただくこともあるのかなと思っておりますが,よろしくお願いしたいと思います。
  駆け足で恐縮でございます。よろしくお願いします。

【西尾部会長】
  御説明ありがとうございました。内容が多岐にわたっておりますが,今までの事務局の説明に関しまして,皆さまから御意見,御質問などありましたらおっしゃっていただければと思いますが,いかがでしょうか。
  資料1-4で今アンケートをとっております。これはデュアルサポートという概念で,運営費交付金と科学研究費補助金が学術研究を支えているわけですが,例えば国立大学の場合は,運営費交付金が研究室等に配分される,よく校費という名目で言われていますが,その配分がどれほど減ってきているのかということは,文部科学省で調査してもなかなか分からない状況です。例えば,財務諸表等を見ても,大学によって様々な配分の方式がありますので,なかなか把握することが困難です。
  けれども,文部科学省の様々な委員会のヒアリングの中で,若手の教授等が,運営費交付金をもとにした先ほどのような校費が,例えばもう20万円という額になっている,極端な場合は10万円よりも低額という状況になっているというようなことが報告されることがしばしばありました。
  そういう状況をきっちり捉えておいて,学術研究の苗床が枯れないようにするために,一方で科学研究費補助金をいかに充実していくかというシナリオを構築する上で,データをきっちりとっておく必要があります。そういう観点から1万人規模のアンケートを実施し,その回答からある程度エビデンスベースの数値が出てくるのではないかということを考えております。
  何か御意見ございませんか。

【甲斐委員】
  質問ですけれども,個人研究費という言い方は多分普通の大学の先生にとっては余り耳慣れない言葉で,説明に書いてありましたけれども,先生がおっしゃったように,いわゆる校費というのをどこかに入れていただいた方が分かりやすいのではないかと思うのですが,いかがでしょう。つまり,いわゆる校費の中から光熱費等を引いたものとか。今は,個人研究費としてもらっているという意識のない先生の方が圧倒的に今多いと思うので,「何だろう,これ」と思うのではないかと思ったのですが,思い過ぎでしょうか。

【西尾部会長】
  アンケートは出してしまっていますが,今からフォローアップできますか。

【甲斐委員】
  いやいや,出してしまっているのなら,質問がなければ結構です。

【鈴木学術研究助成課長】
  もし個別質問が来ましたら,そのような御説明を使わせていただければと思います。

【西尾部会長】
  射場委員,どうぞ。

【射場委員】
  もう出してしまっているので何を言ってもという感じもするのですが,このアンケートは,いわゆる個人研究費のインプットのことばかりを尋ねていますよね。やっぱりそれに対してアウトプットがどうかという相関で見た方が,個人研究費の足りないことの説明になるような気がします。そのアウトプットとして何をとるかは難しいのですが,研究力とか成果みたいなこと個人研究費が少ないことで出にくくなっているというストーリーにするアンケートの方が何か戦略的には使えるのかなと思うのですが,今更言ってももう仕方ないですね。

【鈴木学術研究助成課長】
  今回そういう意味で,初めての試みのような部分もございますので,いろいろな指標として考えていくとするならば,定点観測もできるようにするとか,先々いろいろ,今回試しにやってみたことを踏まえて改善すべき点はしたいなと思っております。そういう意味で御参考にさせていただければと思います。
  あと,どうしても今回,先生方の御回答の手間ひまを最小限にという観点で,クエスチョンをかなり絞り込んだということもありまして,その辺りのところについて必ずしも十分でないところがあるかと思いますが,御理解賜ればと思います。

【射場委員】
  NISTEPで進められている定点観測のアンケートでは,研究成果を問う部分もありますよね。だから,そういう結果と総合して評価していくといいのかなと思います。

【西尾部会長】
  どうもありがとうございました。
  ほかに御意見等ございませんか。

  御意見等いろいろありがとうございました。アンケートのことについての質問が何点かありましたが,今後再度アンケートを行う場合には,御意見を踏まえてアンケートの内容等もブラッシュアップしていきたいと思っています。どうもありがとうございました。
  大学ランキングのことに関連して,当方が申すまでもないですが,毎年評価の尺度やウェイト付けが変わっていくということがあります。そういう中で,一喜一憂すべきものではないということは我々認識しています。一方で,研究力の面で日本の存在感が低下していること自体に関しては,客観的な指標の示すところでないかと私も思っておりまして,このことに関しては見過ごすことはできないと考えております。その観点からも,日本の論文生産を牽引する科研費の役割がますます重要になるということを私自身強く思っております。
  ランキングを巡っては,こうした点への社会的な認識が不十分であり,本部会としても今後必要な情報発信をしていくべきではないかと考えております。事務局から紹介していただきましたが,資料1-7の研究力の測定の在り方に関する当面の所見の骨子案については,是非御意見等を寄せていただきまして,私の方で取扱いの検討をしていきたいと思っております。次回は8月1日に開催予定ですが,それまでにこの内容,またその取扱いについて委員の皆さま方と今後検討してまいりたいと思いますので,その点何卒よろしくお願いいたします。
  また,科研費制度についてはまさに抜本的改革を進めているところですが,改革による質の向上に加えまして,予算確保による量的な充実も非常に重要なことになります。科研費需要額の推計については,次回までに事務局にて作業を進めていただければと思います。要は,科研費がどのぐらいあれば日本の科学技術・学術をきっちりと支えていけるのか,十分なのかということの数値が出てくるということは,今後の科研費を量的に増やすという観点から非常に大事なことだと思っておりますので,その点どうかよろしくお願いいたします。

(2)科研費審査システム改革について

  それでは,2つ目の科研費審査システム改革についての議題に移りたいと思います。これまで科学研究費補助金審査部会で検討されています科研費審査システム改革の状況について,審査部会長の甲斐先生から御説明をお願いいたします。

【甲斐委員】
  審査システムにつきましては,資料2を御覧ください。現在の検討状況について報告いたします。
科学研究費補助金審査部会では,平成25年度に系・分野・分科細目表,以下分科細目表と呼びますが,この大幅見直しを検討する旨を提言いたしまして,日本学術振興会に検討を依頼いたしました。その後,日本学術振興会において,学術システム研究センターが中心となって精力的に検討を進めていただき,2ページの図にございますとおり現行の分科細目表を廃止した上で,細分化の進んできた審査区分の大くくり化し,右側にございますように,幅広い分野の審査委員による多角的な総合審査の導入をポイントとした改革案「科研費審査システム改革2018」を3月に取りまとめていただきました。
  本審査部会におきましては,改革案の最終的な取りまとめに向けて,4月22日から5月21日までの1か月間にわたり,改革案に関する意見募集を行いました。その間,文部科学省と日本学術振興会の共催により,3ページにございますように説明会を開催いたしました。そこに約700名の研究者の方々の参加がありました。
  意見募集につきましては,4ページ以降にありますように,研究者,学会などから1,600件余りの意見が寄せられ,本件への関心の高さがうかがえる結果となりました。
  これを踏まえ,5月31日の学術分科会での報告に当たり,資料2の5ページのとおり,部会長の所感を談話として発表させていただきました。ここに記しましたように,総じて今般の改革の基本的な理念や方向性については大方の賛同・支持が得られているものと認識しておりますが,審査区分の大くくり化の趣旨が必ずしも十分理解されていないきらいもありまして,引き続き審査システム改革に関する普及啓発の努力が必要であると考えております。
  その後の6月22日の審査部会においては,パブリックコメントの結果に関わる対応方針について決定いたしました。その概要は資料2の6ページにあります。このとおり,(1)見直しの趣旨・目的の達成等に寄与すると思われる意見は積極的に採用すること,(2)コミュニティの幅広い理解を得る上で有意義と認められる意見などについては,見直しの趣旨・目的の達成を妨げない場合,適切に考慮することなどとなっております。この方針に基づきまして,6月末に文部科学省から日本学術振興会に対して,具体的な検討を付託する手続がとられました。今後,日本学術振興会の検討結果を踏まえまして更に議論を深め,改善すべき点は改善し,年内に最終的な結論を得たいと思っております。以上です。

【西尾部会長】
  どうもありがとうございました。科研費審査システム改革の具体的な検討に当たっては,審査部会委員,日本学術振興会の学術システム研究センターの先生方に大変御尽力を頂きましたことを改めて厚くお礼申し上げます。どうもありがとうございました。
  本日はJSPSからもオブザーバーとして御出席頂いておりますので,是非一言よろしくお願いいたします。

【盛山JSPS学術システム研究センター副所長】
  学術システム研究センターの盛山でございます。先ほど甲斐部会長代理からも御説明がありましたけれども,6月22日の科学研究費補助金審査部会におきまして,パブリックコメントに寄せられた意見に対する対応の検討が日本学術振興会の方に付託されました。科研費審査システム改革2018に関しましては,これまで日本学術振興会において2年余りにわたって精力的に議論を行い,本年3月に審査区分と審査方式とを一体的に見直す改革案を取りまとめ,文部科学省に報告を行ったところです。
  このたび,今回のパブリックコメントに寄せられました意見を真摯に受け止めまして,科学研究費補助金審査部会での審議の参考となるように,学術システム研究センターを中心にしつつも,科学研究費補助金審査部会の委員の先生方と適切な連携を図りながら速やかに検討を行っていく予定であります。なお,検討に当たりましては,対応方針の骨子でもお示し頂いているとおり,従前と同様ですが,個人の自由な発想に基づく多様な学術研究の一層の振興を図るという観点から,科研費の審査をより適切にするために審査システム改革を実施するという趣旨と目的に十分に留意しながら検討を進めてまいります。以上です。よろしくお願いいたします。

【西尾部会長】
  どうもありがとうございました。1,633件という本当にたくさんの意見提出数で,甲斐先生の方でも,大変な対応をなされているかと思います。
おおむねの意見としては,今回の改革の方向の妥当性を認めていただいているということで非常に良いことかと思っていますが,御説明に関しまして御質問等ございませんでしょうか。あるいは,補足をして頂くということでも構いませんが,何かございませんか。

【盛山JSPS学術システム研究センター副所長】
  現時点では,甲斐先生のパブリックコメントを終えての文書にございますような御方針に従いまして,学術システム研究センターの方で今後詳細に各パブリックコメントの中身を精査しながら,改善すべき点は改善しながら詰めていきたいと思っています。夏の間にかなり集中的に審議することになると思いますけれども,審査部会の先生方にも一定程度お加わりいただいて,より細かく慎重に検討したいと思っていますので,どうかよろしくお願いいたします。

【西尾部会長】
  どうもありがとうございました。研究費部会で検討しております研究種目の見直し等の改革についても,審査システム改革と十分連携して進めていくことが必須でございまして,審査部会,JSPSにて引き続き検討が進められていくと思いますので,今後も適宜情報を共有させていただくということで進めてまいりたいと思います。どうもありがとうございました。

(3)挑戦的研究に対する支援強化に関する作業部会での検討状況について

  それでは,本日の議題の中心となる審議に移りたいと思います。本部会では,本年2月に挑戦的研究に対する支援強化に関する作業部会を設置しましたが,挑戦的萌芽研究の見直しをはじめとしまして,科研費における挑戦的研究に対する支援強化の方策について検討が進んでおります。作業部会での検討状況及び概算要求に向けた考え方について,事務局より説明をお願いいたします。

【石田企画室長】
  お手元の資料ですが,資料3-1をまず御用意いただけますでしょうか。こちらから簡潔に説明を進めてまいりたいと思います。3-1のタイトルにありますように,挑戦的研究に対する支援強化に関する作業部会における検討状況ということでまとめておりおます。
  1ポツの趣旨にありますように,この作業部会における検討というのは,科研費改革の一つとして新たな知の開拓に向けた挑戦的研究に対する支援を強化する方策を検討というのが主要なタスクです。
  2ポツにありますように,主な調査事項と致しましては,1番目として,現行の挑戦的萌芽研究の見直しによる新しい種目の在り方に関して御議論いただくこと,その他,(2)と致しまして,大型研究種目の検証を踏まえた改善策の在り方,その他挑戦的研究への支援を強化するために必要な方策等について御議論いただいているところです。
  委員としては,小安委員に主査をお務めいただきまして,鍋倉先生,羽田先生,上田先生,橋本先生にメンバーとして御参画いただいております。また,日本学術振興会から,オブザーバーとして,中田先生,永原先生,山本先生に御参画いただいて議論を進めていただいているところです。
  4ポツの審議経過です。まず去る2月26日の本研究費部会においてこの作業部会の設置が決定されまして,以後,4回にわたりまして活発な議論を行っていただいたところです。また,この議論に加えまして,特に「挑戦的研究」の制度設計に関することを中心に学術振興会のタスクフォースを設けていただきまして,そちらでも並行して検討を進めていただいているところです。そこで行われた検討の内容を踏まえて議論を進めてただいているというように御理解いただければと思います。
  次のページです。本日に至るまで様々な角度で御議論を進めていただいたところですが,本日御用意できましたのは,まだまだ中間まとめの文案については,御議論,調整中でございまして,残念ながら構成案という形でしかお示しできないことをお許しいただきたいと思います。
  構成案と致しまして,柱が列挙されております。大きな柱と致しまして,1番目に「挑戦性」を巡る現況について触れているところです。我が国の研究を巡る危機――挑戦的な研究の衰退に関するようなこと,その他,新たな動向として,トランンスフォーマティブ・リサーチ等が必要ではないかというようなこと,その他で構成してはどうかと考えております。
  2番目に大きな柱と致しまして,研究種目の見直しに関すること。1番目と致しまして,科研費を構成する各研究種目の体系の在り方そのものを御議論いただき,ここで方向性をお示しいただくということを考えているところです。2番目に,先ほど来御説明しておりますが,「挑戦的萌芽研究」の具体的な見直しについて御議論いただき,内容をおまとめいただく予定です。3番目と致しまして,「若手研究」種目の見直しと致しまして,1つには「若手研究(A)」の見直し,その他,独立支援の在り方等についても御議論いただいているところです。
  3番目に,今後の検討課題。なかなかこの夏までの議論では議論を深めることが困難であったようなことを中心に,引き続き御検討いただくということを含めまとめてはどうかと考えているところです。
  具体的な中身に入らせていただきますが,3ページ目にございますのが,今回具体的に挑戦的研究の基本的枠組みとして御議論いただいている内容です。かいつまんで御説明いたします。挑戦的研究について,1つには,従前の挑戦的萌芽研究よりも大きいサイズを設けてはどうか,名称としては挑戦的研究(開拓)という形で設けてはどうかというように御議論いただいているところです。対象としては,斬新な発想に基づき,これまでにない新たな方式の創出など,学術の体系・方向の大きな変革・転換,言い換えますと,トランンスフォーマティブ・リサーチ,こういったものを志向して,大きく発展する潜在性を有する研究計画を対象にしてはどうかという御議論が進んでいるところです。
  従前と同じようなサイズ,挑戦的研究(萌芽)に関しましては,これらに加えまして,課題探索の性質の強いもの,あるいは芽生え期のものも対象としてはどうかという御議論をいただいているところです。
  助成総額については,左側のものは2,000万円規模,右側のものは500万円規模としてはどうかということです。
さらに,採択件数等です。ここまでの御議論の状況を御説明いたしますと,採択件数を考察するに当たりまして,質を重視すると同時に,応募いただいた額を最大限尊重して配分するということが重要であろうという御議論をいただいています。結果として,これは採択できる件数がかなり絞られてくるような観測が成り立っております。ここには数百件程度と書かせていただいております。挑戦的研究(萌芽)についても,同様に質を重視すると同時に,応募額に対して可能であれば100%配分を基本として配分してはどうかという御議論もいただいているところです。こちらについても,現行の支援規模から一定の絞り込みがやはり発生するだろうという観測を踏まえた御議論です。
  1行飛ばしまして,審査方式です。挑戦的研究に関しましては,平成30年度から実施予定の中区分に対応する審査を先行的に実施していただいて,総合審査方式をとってはどうかという御議論が進んでいるところです。なお,開拓と萌芽の審査委員は同一の審査委員に御担当いただいてはどうかという議論で進んでいるところです。
  次の重複制限です。これがかなり議論に時間を割いていただいたところです。基本的な考え方としては,当面,現行の挑戦的萌芽研究の重複応募制限に準じた制限を措置し,しかしながら,新しい審査システムの移行後には見直しを検討してはどうかということが考えられているところです。
次の新規採択率,これは応募件数が出そろわないとなかなか採択率という議論はできないのですが,先ほどの採択件数等のところでも触れておりますが,質を重視して件数の一定の絞り込みを実施する方向でよいのではないかという御議論をいただいているところです。
  1枚おめくりいただきまして,4ページ目でございます。こちら,参考情報です。中間まとめの案にもこのくだりは掲載,そのまま内容として含めさせていただくことを構想しておりますが,学術研究助成の新たな動向(トランンスフォーマティブ・リサーチ等)と致しまして,具体的な置かれている状況等をまとめてはどうかと考えているところです。
  2個目のポツにございますように,2行目,我が国において「挑戦性」を強化していく上で参考とすべきものとして,米国NSFにおけるトランンスフォーマティブ・リサーチへの支援という新たな動きがあるというようなこと。次のポツのそのまた次に箱囲みで,NSFにおける「トランンスフォーマティブ・リサーチ」の定義なるものもありますが,こういったものを参照してはどうかということ。さらには,次のポツでございます。3行目のところから御覧いただきたいのですが,「本作業部会としては,こうした弊害を軽減させる取組として,NSFにおけるTRを重視する動向は我が国にとって参考に値するものと考える」ということ。更には次の行,「学術の枠組みの変革・転換,新領域の開拓を先導する潜在的な可能性を持った研究,そうした長期的視野に立った不確実性の高い研究への挑戦に対し,我が国がより積極的に支援していくことが望まれる」,こういう前提の下に,先ほどの制度設計の骨格を御議論いただいております。
  1枚おめくりいただけますでしょうか。かなりの御議論いただいたポイントと致しまして,挑戦的研究と他種目における重複制限がございます。これは現時点まで作業部会で御議論いただいた結果として,今のところの案をお示しております。
  細かい説明は省略しますが,下段の「挑戦的研究(萌芽)」というのは,サイズとしては現行の「挑戦的萌芽研究」とほぼ同じものですが,重複の制限もほぼ踏襲した形になっております。他方,新たに設けられる開拓という上段の方ですが,現行の「挑戦的萌芽研究」よりはかなり厳しめの制限則が必要ではないかという議論がなされております。後ほど若干補足をいたしますが,現状,一番議論のポイントとなっているところが,上3つの研究種目――「特別推進研究」とか,「基盤研究(S),(A)」,これらについては,並行して重複応募いただくのは結構なのですが,併せて受給をするということはできないという整理にしてはどうかという意見で現状のところ進んでいるところです。
  若干補足をいたしますと,この原案を作成いただいたのは,まずもって,日本学術振興会のタスクフォースでかなり精緻な分析等も含め,長い時間をかけて検討いただいた末の結果ということですが,応募件数の可能性等をまず検証いただくとともに,実際に科研費というのは,やはり応募があって,その応募があった研究課題を適切に審査し,また,できるだけスムーズに審査を進め,できるだけ早く研究者のお手元に研究費をお届けするという基本理念を実現し得るような範囲で考えた場合にどうなのかということで御議論いただいたということを補足させていただくところです。この辺は後ほども補足があろうかと思います。
  1枚おめくりいただけますでしょうか。これは「挑戦的萌芽研究」とはちょっと異なりますけれども,これも検討状況の御説明です。「若手研究(A)」の見直しでございます。こちらはこの資料の中にございます,平成22年に本研究費部会でおまとめいただいた提言において,「若手研究(A)」については基盤研究の中に位置付けるべきという結論が導かれたところです。この結果を踏まえまして検討いただいているのは,平成30年度の助成から導入する新たな制度の在り方についてどうすべきかということ,更には併せまして,年齢を要件とする若手研究者の定義について,必要に応じ見直しを検討する必要があるのではないかという御議論をいただいているところです。
  御案内のとおり,「若手研究」というのは,現行,39歳以下の研究者を対象とするというところがルールになっておりますが,これを年齢で線を引くのではなくて,例えば博士号取得後の年数という考え方もあるのではないかという御議論をいただいているところです。繰り返しになるかもしれませんが,「若手研究(A)」の見直しに関し,具体的にどの種目において若手研究者への配慮措置を講じるか,どのような配慮措置を設けるか,経過措置が必要かどうかというところが論点となっております。
  早口で恐縮ですが,更に次のページをごらんいただけますでしょうか。この「若手研究」以外にも,「特別推進研究」の見直しについてもこの作業部会のタスクとして御検討いただいているところです。しかしながら,この「特別推進研究」の見直しに係る検討というのは,「挑戦的研究」の検討にかなり時間を要していることもありまして,現状ここに挙げました検討課題の確認をいただくにとどまっているところです。御覧いただくとお分かりのとおり,ポスト「特別推進研究」をどのように位置付けていくべきなのか,審査配分方式の改善をどのようにするべきなのかという検討課題が残っているところです。作業部会では以上のような議論がされているところです。
  さらに,資料3-2をお手元に御用意いただけますでしょうか。こちらは先ほど来早口で御説明しております挑戦的研究というのが特に関連しているわけですが,科研費の平成29年度概算要求に向けて(案)ということで,現在検討中の内容に簡単に触れいるものです。これはまだ検討途上ですが,このようなことを考えているというものです。
  まず1番目として,基盤研究種目を通じた助成水準の確保が重要であるということ。2番目,学術研究における「挑戦性」の追求に対する支援の強化に関すること。1つには,斬新な発想に基づき,学術の枠組みの変革・転換を志向する挑戦的な研究への支援の重要性,これを担保する意味での概算要求。2番目として,若手研究者等の独立に係る支援に関する要求。こういったものを要求していかなければならないのではないかと考えているところです。
  説明は以上です。

【西尾部会長】
  どうもありがとうございました。
  続いて,この作業部会の主査をお務めでございます小安委員よりコメントをお願いできますでしょうか。また,部会長代理の甲斐先生からも先日の審査部会での意見交換を踏まえた所見をお話しいただければ、ありがたくと思います。

【小安委員】
  それではまず主査を務めさせていただきました小安から,その議論の雰囲気を少しお伝えしたいと思います。これを進めるに当たりましていろいろな議論をしなければならないということから,会議は非公開でやらせていただきました。まずそれをお断りさせていただきます。それもあって,非常に突っ込んだ議論ができたのではないかと思っております。
  先ほど事務局からも御説明しましたように,まずこの挑戦性というのはどのように捉えるかということでいろいろ議論しまして,先ほど御紹介がありましたように,トランンスフォーマティブ・リサーチという概念で考えてみたらどうかということでいろいろ議論しました。
  そして,その次に,そもそも科研費システムの中で学術がどのように進むのかという,比較的そもそも論に近いところを議論しました。やはり中心となるのは,基盤研究で学術を進めるというのが全ての学術に携わる者にとっての中心の線であろうという点で一致しました。しかしながら,その先にやはり新しいことに対する挑戦なくして学問は先に進まないということも事実です。そういう観点から,挑戦性を持った新しい方向性に進むというところを捉えるべきではないかという,議論をいたしまして,その中で今回の挑戦的研究をどのように捉えたら良いかということを議論いたしました。その上で,これまで「挑戦的萌芽研究」という形でやってきたものの上に,「開拓」という名前で,新しい方向性を開くための科研費を置くということを考えていったわけです。
  方向性を大体出したのですが,その次に,先ほどもちょっと御紹介ありましたが,重複制限ということでいろいろな議論がありました。そもそも重複制限とは何かといったときに,全く同じテーマで複数の研究費を使わせていただく,これは露骨な重複です。しかし,全く違う新しいところに進む際に,テーマが違うものであれば必ずしも重複とは呼ばないのが普通であろう,という議論をいたしました。その中で,本来であれば,基盤研究でずっと突き詰めていった学問の中から新しいアイデアが生まれ,それを更に開拓していくときには,基盤研究をやりつつ開拓研究を並行してやる,ことが必要なのではないかという議論をいたしました。
  いろいろな議論の結果,この方向がいいのではないかということになりまして,更に学術振興会の方々とも意見交換いたしました。先ほど話がありましたように,さはさりながら,審査をどうするのかという話が出てまいりました。先ほどの資料5ページのところを見ていただくのですが,例えば下の段「挑戦的萌芽研究」でなぜ「基盤研究(C)」のところに×が付いているかというと,実は「基盤研究(C)」の応募件数が多過ぎて重複応募を許すと審査ができなくなるという理由です。
  先ほど述べましたように,「挑戦的研究(開拓)」も,「基盤研究」で研究を進めている研究者が新しいところを開拓するのに使うのであれば,それほど重複制限を掛ける必要がないのではないかという議論をしたのですが,最終的に日本学術振興会から出していただいた様々なデータ等を見ると,なるほど,審査をするという観点から見た場合になかなか難しい問題がありますねということになり,資料5ページの上段に示した形に落ち着きました。
  ただ,そのときに更に並行して審査ができないから重複制限を課すというのは本末転倒ではないか,なぜこういうことになるのかという議論がありました。今後考えなければいけない問題として,単純に応募件数を減らすということが目標ではないのですが,現在どんどん応募件数が増えている現状で,その理由などをまず捉えなければいけないという議論になりました。現状どうなっているかというと,実は科研費の申請資格を持っている方の中で,かつて,あるいは今,科研費を実際に受給されている方は25%しかいない。つまり,75%の人は一度も科研費に採択されていないそれだけ非常に厳選されたものになっています。この背景を分析しなければいけないのですが,意見聴取をする中で1つ出てきたものが,各大学における基盤的経費が激減している中で,競争的資金をとらなければいけないという非常に強い圧力があり,そこで応募件数が増えてきているという分析がされました。
  それで,独立した研究者への支援というようなお話がありましたが,どういう方が科研費によって学問を進めていく入り口に立てるのかというような議論も今後,PIの考え方というような形で進めていかなければならないだろうということでほぼ一致しました。こういう課題を委員で共有した上で,最終的にこのような案として部会に提案させていただきました。以上です。

【西尾部会長】
  甲斐先生,お願いいたします。

【甲斐委員】
  審査部会の部会長と致しまして,先月の審査部会における議論を御紹介いたします。この件について小安主査から御報告および丁寧な御説明を頂きました。それを受けて,挑戦的研究の基本的な枠組みに関して,主として重複制限の在り方について,様々な意見が出されました。審査部会における意見交換は,作業部会の議論の参考に供するためのものでありまして,部会としての意見を取りまとめるということはしておりません。しかしながら,本日の部会での議論を深めていただくために重要な内容が含まれていると思いましたので,この会議では会長代理という立場から,審査部会での議論の御紹介というか所見を述べさせていただきたいと思います。
  まずトランンスフォーマティブ・リサーチを重視して,挑戦的な研究を支援するために新しい種目を創設するという,構想は大変有意義であるという点は強調したいと思いますし,皆さん御同意の下でございます。ただし,それが有効に機能するためには,主として既存の専門分野を進化・発展させるために,基盤研究種目との性格の違いを明確にしつつ,基盤研究と相互に補完するものとして位置付けることが重要です。
  このことを研究者個人に着目して考えるならば,「挑戦的研究」と「基盤研究」それぞれを自らの研究の進展に応じて柔軟に活用できるようにすることが大切だということになります。つまり,今後,重複制限はできるだけ緩和するという方向性が理想だというふうに考えるわけです。一方,作業部会の原案で特に5ページを拝見いたしますと,当面の措置としてではありますけれども,従来の挑戦的萌芽研究以上の制限が課されています。特に「挑戦的研究(開拓)」の重複制限においては,「特別推進研究」,「基盤研究(S),(A)」との重複応募は認められていますけれども,受給は全く認められていないという点がありました。これについてかなりの議論があったわけです。
  こうした重複制限を巡る懸案の具体的な内容としては,基盤研究においてこれまでの研究を継続しながら新たな研究領域を開拓することができなくなってしまうと。どちらかを選ばなければいけなくなる。開拓の方に採択されてしまうと,もう「基盤研究(S)」や「基盤研究(A)」には応募できなくなる。これでは研究の発展を困難にさせる可能性が出てくるのではないかという議論がありました。
  実際に応募する研究者の立場を考慮しますと,重複受給が厳し過ぎると,かえって挑戦へのインセンティブを弱めてしまって,そもそも挑戦的研究の趣旨・目的に沿った提案が減ってしまう,非常に少なくなってしまうのではないかというおそれがあります。こうしたことになれば,この新制度を立ち上げることに対する意味に疑義が生じるのではないかと考えられたわけです。
  それで,私と致しましては,将来的には重複制限をできるだけ緩和するという方向性を明確にしていただきたいと。それで,今回の新たな審査方式においては目玉である総合審査方式を円滑に導入することが最優先の課題だというのは非常によく理解できるのですが,その上で,審査負担の観点から制限を多く掛けるということではなく,できるだけやむを得ない範囲にとどめていただいて,大もとである将来的な重複制限をできるだけ緩和し,挑戦できる体制を整えていただけるように,更に工夫・改善の余地があるのではないかと,いうことを御検討いただければ有り難いという議論になりまして,作業部会とJSPSに御検討いただくよう願ったというのが議論でございます。以上です。

【西尾部会長】
  小安先生,甲斐先生,本当に貴重な御意見ありがとうございました。状況が本当によく分かりました。
  今の御意見と先ほどの事務局からの説明を踏まえまして審議をお願いしたいと思います。まずは今年9月の公募を予定しております「挑戦的研究」に関する部分について御意見を頂ければと思います。時間が許せば,「若手研究(A)」,「特別推進研究」に関する部分についても御意見を頂ければと思います。
  どうぞ,城山先生,お願いします。

【城山委員】
  どうもありがとうございます。確認でもあるのですが,要するに,今回重複制限を掛けるときの趣旨で,1つは「基盤研究(B)」のレベルでも大きい方を認めてもどうかというのに対して,これは数の問題であると。そういう意味では,「基盤研究(A)」以上を出す研究者の層に限定して,挑戦的な開拓の方は提案を求めるレベルでないとなかなか処理できないということは,1つの論点だと思うのですが,逆に今度は,「基盤研究(A)」以上に限定したときに,重複を認めないというところは最終的にはどういう御議論だったのかというところなのですが,御議論の中で,そもそも現在の科研費で潜在的な応募者層に対して実際に受給できている人が少ないという御発言があったと思うのですが,そういう意味でいうと,なるべく多くの人に機会を与えた方がいいという,配慮だったのかどうかというのをお伺いしたいというのが1つです。
  もう1つ,これは恐らく甲斐先生の御発言とも絡んでくると思うのですが,仮になるべく重複はある程度認める方向に行くのだとすると,例えば「基盤研究(A)」以上のところで,「基盤研究(A)」は不採択になったが,「挑戦的萌芽(開拓)」でとりあえず新しいことをやり始めた研究者が,その受給期間中であっても再度例えば「基盤研究(A)」なり「基盤研究(S)」なりを申請して,そちらが採択されれば,「挑戦的萌芽」の方は停止して元に戻ると。そういう意味でいうと,「基盤研究(S)」や「基盤研究(A)」に応募する層が,ある意味ではチャレンジングなことをやっても,仮に失敗したときに,過渡期をきちんとトランスフォーマティブなことを支えるようなものとして「挑戦的研究(開拓)」を使って,ただし,ちゃんと「基盤研究(S)」や「基盤研究(A)」に採択されればそこの席はちゃんと空けるとか,何かそういうことはあり得ないのかどうかという,2点お伺いできればと思いました。

【西尾部会長】
  どうぞ,小安先生,お願いします。

【小安委員】
  先に私の方から,議論の内容を少しお伝えいたします。両方の意見がかなりありました。これはそもそも「開拓」を作ることによって全体のパイが変わらなければ,採択件数が減る,これは問題であると捉える方もおられました。その後,審査部会における議論の中でも、RU11の中からも件数が減るのは問題ではないかという意見が述べられました。なるべく多くの人に行き渡った方がいいというニュアンスのことをおっしゃる方もおられました。これは,要するに,基盤的経費が減っているという部分とかなり関係しているように思われました。
  一方で,本当に挑戦するのなら,本気で取り組んでほしいという意見もありました。ですから,「挑戦的研究」に採択されたらもうそれ1本で頑張ってとにかく挑戦を成し遂げてほしいという,こういう考え方もあるのではないかという意見です。その両方の意見がかなりいろいろとありました。その中で最終的にこのような形になっています。
  先ほど重複制限の定義みたいなことを申し上げたのですが,本来であれば,基盤研究とは全く違ったアイデアのところで開拓をしようという研究を応援したいが,現状を見たときに,同じ内容を字面だけ変えてやっている人が多いのではないか,だから,それほど信用ができないみたいな発言もなかったわけではありません。そういういろいろな意見の中でこのようにになったというのが私の説明です。

【城山委員】
  もう1個だけ確認してよろしいですか。本気でやる人を支えたいというのは1つの理由としてあると思うのですが,ただ,規模でいうと,開拓の規模であっても恐らく「基盤研究(B)」の規模ですよね。つまり,開拓でやるならば,「基盤研究(A)」レベル以上の人にある意味では出してもらいたいが,出す額は「基盤研究(B)」のレベルであるといったもので,精神としては分かるのですが,物理的な条件としてはかなり酷で,本当にやるのだとしたら,「基盤研究(A)」のレベルで認めておいて,場合によったら数は厳選するとかいう方が,本気でやれというのであればある種クレディビリティはあるのかなという感じもします。

【小安委員】
  いろいろな意見がありました。分野により,「挑戦的研究」1本で本気でできる,いや,分野によっては到底無理だという,意見もありました。それから,審査の件数が問題であれば,発想を転換して,「基盤研究(A)」や「基盤研究(B)」を既に持っている人にだけ挑戦させるという考え方もあるのではないかなど,いろいろな意見が出ました。その中で現状になっているというように御理解いただければと思います。

【甲斐委員】
  今の城山先生の意見に,最後の1点答えてらっしゃらないと思うのですが,「挑戦的研究(開拓)」が通ってしまった場合・・・・・・。

【小安委員】
  それは,だから,この部会の問題だと。

【甲斐委員】
  いや,違います。我々は決めるのではなくて参考に供するために意見を言うだけの立場なので,飽くまで作業部会の主査として考えていただきたいのです。城山先生の質問は,開拓に採択されて受給してしまった人が翌年「基盤研究(A)」や「基盤研究(S)」に出せるのかと,それで,「基盤研究(A)」や「基盤研究(S)」が採択された場合には開拓を停止することができるのかということです。そうすれば,セーフティネットになる,そういうことですよね。その辺はどうですか。

【小安委員】
  それも,例えば最終年度みたいなことは十分考えられるけれども,例えば1年で次やめてしまうということは,これはいいのか,開拓ができるのかという点は問題にしました。1年だめだ,じゃ,次また2年目とか,こういうことが起こるのはどうかという,議論があって,結局,それはあまりよろしくないのではないかという議論だったと思います。

【城山委員】
  一言だけ。多分そういうことはあり得ると思います。ただ他方,今までも,例えば「基盤研究(S)」なり「基盤研究(A)」なりに応募するときに,今まで既存の人が開拓を全くしていなかったのかというと,必ずしもそうではなくて,実は今までこのテーマでやっていたが,中身的には実は開拓で「基盤研究(A)」なり「基盤研究(S)」なりでやっていた人がいるかもしれないわけですね。だから,そこは逆に言うと,ヘッジに使うだけのは避けたいというのは,保険に使うのは避けたいというのはその議論は分かるのですが,他方,そういう人をある意味では挑戦的に促すという意味においては,もうちょっと短い期間であっても,本来既にある程度アイデアのある人であれば,1年2年であっても実はまた「基盤研究(S)」なり「基盤研究(A)」のトラックに戻っても十分革新的なことをやるということはあり得ると思います。ただし,そこのチェックができるかというところにいろいろ御懸念があるということは理解しますが,多分そこは双方考え方があり得るかなという感じがいたしました。

【小安委員】
  そういう考え方があるということはよく理解できますし,そういう意見ももちろんありました。私は代表してエッセンスを申し上げている立場です。

【西尾部会長】
  城山先生,どうも本質的な御質問どうもありがとうございました。
  ほかにございますか。
  どうぞ,栗原先生,お願いします。

【栗原委員】
  2点ほどあるのですが,1点は,昨年度の委員会のときには,「挑戦的萌芽研究」に関しては融合分野をある程度大事にしたらという意見も結構あったと思います。今回のは,専門分野の先を,あるいはそこから見えないところをというところに中心があるように理解していますが,その辺りはどのような御議論でそうなったのかということです。
  あと,本当に挑戦的ということであると,本来はフィージビリティみたいなフェーズがあってもいいと思いますが,それについては例えば今の「挑戦的研究(萌芽)」と「挑戦的研究(開拓)」との位置付けを何かうまくリンクするとか,そういうような考え方というのはあり得るのかどうかという点を御質問させていただければと思います。

【小安委員】
  まず融合に関してですが,それは議論いたしました。1つの考え方として,全く違った分野の人が2人で応募する,2人共同PIみたいなやり方もあるのではないかという議論はいたしました。最終的にはこれはやはりあまりうまくいかないのではないかということで取り下げたという経緯はあります。
  それから,フィージビリティスタディのようなことですが,「挑戦的研究(萌芽)」から「挑戦的研究(開拓)」へ発展させるということですが,そこはあんまり議論しなかったように記憶しています。ただ、「開拓」に関してステージゲート方式はどうかという意見はありました。ほかにも出席されていた委員の方や日本学術振興会の方からも,もし何か抜けていたら補足をしていただければと思いますが,私の記憶は以上です。

【西尾部会長】
  栗原先生,よろしいですか。

【栗原委員】
  そこの辺りは,割と開拓,先ほどのようにずっとそのテーマでやるということですと,どこかでだめだったら違うテーマを実質的にはやるということになるのか,なかなか難しいところかなと思って伺いました。今回割と大型,まあ,中型と言いつつ結構チャレンジングなことを求めてというので,スケール感と困難さ感というのがどのぐらいのテーマで皆さん応募されていくのかなと思ったのと,今伺いながら,実は融合についてはやはり新学術が融合の基盤なのかなと思って,だんだんに私自身は理解してきたところです。

【小安委員】
  挑戦に関しても,先ほども議論があったと思いますが,基盤研究に挑戦がないかといったら,そんなことは本来ないはずだという議論はしました。もう1つ,基盤研究をなぜ2つ実施してはいけないのかという議論もしました。別に外国の制度が必ずしもいいとは言いませんが,例えばアメリカでしたら, RO1という基盤に当たるものをPIだったら通常2つは持っているのが普通だとされていて,そうじゃないと生き延びられないというのが皆の意識です。先日、NIHの長官のフランシス・コリンズが来たときに話していたら,「日本は研究費がとれなくなる年があるのか」と驚かれました。一応御紹介だけです。
【栗原委員】
  ありがとうございました。

【西尾部会長】
  事務局にお伺いしたいのですが,9月から公募ということで,作業部会の検討状況を踏まえて,本日の研究費部会で議論していまして,8月1日にもう1回研究費部会があります。最終的な公募の段階では,本日の部会での議論をある程度反映できるということでよろしいですか。委員の皆さま方がどういうスタンスで議論したらいいかということをお伺いしたく思います。

【鈴木学術研究助成課長】
  実は今後のスケジュールの流れに関しましては,資料4がございまして,この研究費部会と作業部会,あるいは学術分科会とのキャッチボールの関係性を示しております。今お尋ねの9月公募に向けて必要な基本的な枠組みについては,8月1日の次回の研究費部会で了承いただく内容をもって一旦確定をさせるということを想定しています。としますと,今日の御議論をこなすという意味では,7月19日に作業部会を予定していますので,ここで議論を行うと。並行して,もちろん日本学術振興会のタスクフォースの御議論もありますので,そこですり合わせをさせていただくことを予定しております。

【西尾部会長】
  分かりました。ここでいろいろ頂いた意見を7月19日の作業部会の方で再度御審議いただいくということですね。
  そういう観点から御意見等ございませんでしょうか。

【白波瀬委員】
  ありがとうございます。応募する者にとっては,やはり応募先のカテゴリーが整然と区別されていれば,重複しているかどうかという問題は二の次になるはずだと思います。
  ですから,制度を考えるときに,どちらかというと,もちろんたくさん審査をしなくてはならなくなってしまうとどうしようということなので,出口と入り口のところでのせめぎ合いで落としどころをどこにという作業になるということはよく分かりますが,ただ,一般にこういう制度が新しくできたときに,できるだけその位置付けというか,比較的若い人とか何とか,ちょっと分かりやすいところでの差別化をしていただいた方が,ずっとこの議論はあると思いますが,やっぱり挑戦的なというか,トランンスフォーマティブな研究でないと,そもそも採択されないものだと私自身は考えておりますので,それがあえてこの新しい「挑戦的研究」というカテゴリーを作ることの意味は何かという説明が分かりやすく,かつ明確な形で提示されるのが望ましいと思います。
  ですから,その意味で,重複しているかどうかということについては,そこのところを強調し過ぎるのは非生産的かなというか,重複だということになると,それが重複しているかどうかという確認を審査の段階でまたもう1回やるという作業だけはやらなくて済むような枠組みがよろしいのではないかと感じました。以上です。

【西尾部会長】
  どうぞ,甲斐先生,お願いいたします。

【甲斐委員】
  一委員として,私の考えを言いますと,今までの「挑戦的萌芽研究」より少し大きめの,本当にトランンスフォーマティブな種目を作るという新しい意義は大事だと思うのです。それと,先ほど小安主査がおっしゃったように,全く重複受給ができない制度というのはやはりおかしいと思います。だから,将来的に重複制限がない種目ができてくる突破口の1つとしてこの種目の意味があると思います。そこの2つがとても大事だと思うので,是非ともよい船出をしていただきたいと思います。審査件数が多くなってしまい大変だからというのは非常によく分かるのですが,これはテクニカルな問題だと思います。こちらを前面に出すために本来の趣旨を損ねているのではないかという気がします。
  この種目の実際に個々の研究者の単年度当たりに入ってくる額で考えると,スケールとしては「基盤研究(B)」なんですよね。「基盤研究(A)」,「基盤研究(S)」,「特別推進研究」とは全然違う額です。これら多額の研究費が得られる種目では,その中で十分挑戦的な研究を入れ込むことは可能だと思います。だから,おかしいと思うのです。しかも,重複申請はできても,重複受給ができないというと,新規申請の際のセーフティネットにしかならないですね。しかも,主査がおっしゃったたように,実はネットしては機能しないと。翌年「基盤研究(A)」や「基盤研究(S)」に出してはいけない,これをとった以上申請した年限は絶対それのみでやれというと,「基盤研究(A)」や「基盤研究(S)」,「特別推進研究」の申請を考えている人は怖くて出さないのではないかと思うのです。
  通ってしまったら,当分「基盤研究(A)」,「基盤研究(S)」,「特別推進研究」には出せない。しばらくはセーフティネットでもらった年額最大五,六百万ですか,それで耐えなければいけないのです。「基盤研究(S)」なら単年度当たり3,000万以上。「基盤研究(A)」でも年間1,200万ぐらい受給できます。それを5・600万で我慢してしばらくはやりなさいよと。本当に「基盤研究(A)」,「基盤研究(S)」,「特別推進研究」の人がたくさん出すのかなと思います。これがセーフティネットで落ちた場合に1年間だけ保証され,翌年は進展したら他に申請のチャンスがあるというのでしたら出すと思うのですけれども。だから,この制度が活かせるのかなと思います。もったいないと。
  本当に重複をやりつつ新しいトランンスフォーマティブを考えるのでしたら,出せる人が出した方がいいと思います。そうすると,例えば申請資格を「基盤研究(B)」だけにして,しかもその「基盤研究(B)」も,とったことのある人。科研費を「基盤研究(B)」以上とったことのある人しか申請資格がないとすれば,結構狭まりますよね。科研費というのは,全体で25%しか通っていないですし,しかも「基盤研究(B)」以上というとそれほどいない。あるいは,今現在継続を持っている人とか,何か範囲を限定することによって申請件数を絞ることはできるのではないかと思います。
だから,テクニカルな方の申請件数が多くなりすぎるという問題の方は,私,今,件数を実際にここに持ってないので言えないのですが,調べていただければ何らかの方策があるのではないかと思うのです。その代わり,「基盤研究(B)」だったら重複応募してとった場合は重複受給もできるとなると,両方採択されて合わせれば「基盤研究(A)」ぐらいはもらえるわけですよね。それで,もっと大きな展望が望めるかもしれない。そうすると,この新制度が活きてくるのかなと思うのです。何か少しまだ工夫する余地があると思いますが,いかがでしょう,主査。

【西尾部会長】
  最初からコンサバティブに締めてかかるのか,あるいはもう少し柔軟に考えて,どんどん申請が来るような形で進めておいて,後でいろいろな問題が起きてきたらそこで絞っていくという,逆のやり方もあるのではないかということを甲斐先生の御意見等も伺って思うのですが,どうでしょうか。

【小安委員】
  なかなかつらい立場になってきたのですけれども,御下命いただければ,持ち帰ってもう1回検討させていただきますが,日本学術振興会とも相談させていただかなければいけないと思います。

【西尾部会長】
  この委員会の総意として,先ほどから御意見が出ている重複制限等に関して,作業部会でもう一度審議をしていただくということでいかがでしょうか。
  皆さま方うなずいておられますね。
  西川先生,どうぞ。

【西川委員】
  研究者の立場としては,甲斐委員のおっしゃることは非常によく分かります。一方で,今,日本学術振興会におりますので,日本学術振興会の実情がよく分かっています。確かに研究者の立場では,今,甲斐先生がおっしゃったこと,そのとおりに進めたい,進めるのが研究者のにもあるいは科学の発展のためにもと思いますが,日本学術振興会の審査システムが,今もかなり綱渡り的な状況なのです。まず,審査委員の負担も飽和状態です。それから,申請システムとか審査システムは全部電子システムでやっていますけれども,それも非常に綱渡り的な状況です。そうしますと,これはもう文部科学省の方に考えていただかなければいけないのですが,日本学術振興会のそういったことを運営する経費自体がもう逼(ひっ)迫しておりまして,その経費がある程度増やされないと実際にはできないかなと思っております。

【佐藤委員】
  私は立場上話さない方がいいと思っていたのですが,本当にここに出ているような「基盤研究(B)」まで含めて重複応募・受給も可能としましたとき審査がほとんど不可能になるように考えられます。学術システム研究センターでは,挑戦的研究はその意義から総合審査中区分で審査することにしています。これは30年度からの大きな審査改革のための予備練習にもなります。これを活用してやろうということでもあります。
  しかし,正直言って,「基盤研究(B)」の方が多く出されたときは,ほとんどパンクするのではないかと思います。確かに従来どおりの,あるいはせめて従来よりちょっと進めた2段書類審査ぐらいでやれというならば可能ではないかという気はしますけども,これはエクスパートの方々が推定してくれないと分かりませんけれども,今の案のように中区分でやるとすれば,それはほとんど不可能じゃないかと私は思います。その状況は,この審査システム改革を進めておられる山本先生、盛山先生からコメントをお願いするのがいいと思います。

【山本JSPS学術システム研究センター主任研究員】
  じゃ,済みません,失礼します。日本学術振興会の山本です。確かに今回の改革には2つの大きな部分があって,それは開拓を増やすという面が1つあるのと,もう1つは,やはり本当に挑戦的なものを選び出すというシステムを作るというのが大事だという観点から総合審査方式を導入して,しかも中区分規模で比較的広いもの,広い視点から見ていいものを選び出すということでこういう制度設計にしております。
  そういうことになりますと,先ほど佐藤委員の方から御説明があったように,やはり「基盤研究(B)」までやるというのは,もう物量的に無理だと思います。それはもちろん検討はさせていただきますけれども,ざっと当たったところでは非常に難しいということだと思います。それから,基盤研究(B)以外のものについては,御意見を踏まえて,少し検討させていただく余地はあるかと思っています。

【西尾部会長】
  甲斐先生が重複制限の掛け方で御提案があったと思うのですけれども,結局,一方で研究がサステーナブルに続くというようなことも踏まえて,重複制限について,◯と×の中間の三角みたいな中間的な制限方法があると突破口になるのではないかと思います。システムとして物理的な制約があるということになると難しいのですが,工夫ができるようであるならば,御考慮いただけるとありがたいと思います。
  城山先生,どうぞ。

【城山委員】
  1つだけ。多分,その三角の案をどうやって考えていただくかというのは,「基盤研究(A)」のレベルで考えるのか,「基盤研究(B)」のレベルで考えるかという,御議論ですが,もう1つ,一番細かいのでいうと,例えば今だと開拓の期間が3から6年になっていますが,2年も認めるという手もあるのかなと。そうすると,2年からである「挑戦的研究(萌芽)」としてはかなり規模の違うものがあると。先ほどこれで本当に挑戦できるかは分野によってもかなり違うという御意見もあったので,これでできるという分野の人はまさにこのカテゴリーで4年とか6年とかで出せばいいのですが,むしろこの規模のは難しくて,いずれ「基盤研究(S)」とか「基盤研究(A)」に戻らなければいけないという人であれば,その過渡期のきちっとしたトランンスフォーマティブなアイデアを2年で固めるという計画でもう最初から出してもらうというのを認めるというのもあり得るのかなと。これ,1つの三角の形態かなという感じがいたしました。

【盛山JSPS学術システム研究センター副所長】
  今の話とちょっとずれて申し訳ないですが,日本学術振興会としての状況について,技術的なレベルで少し御説明しておいた方がいいかなという点がございまして,1つ付け加えます。
  先ほどからありますように,新しい「挑戦的研究」は,平成29年度審査から総合審査方式に持っていくという予定で,これは今までなくて,唯一,特設分野の審査方式に,なってきていましてですね。これは特設分野,今現状で9分野が同時並行的に走っておりまして,9つの区分である意味で実験的に遂行しているわけです。まだ3年目ですけれども。これが今度,挑戦的研究,新しく9月から応募して,この審査に入るときに,一挙に85区分に関して総合審査を実施するという予定にしております。
  総合審査というのは,本当に挑戦的なものをうまく選出するための工夫したやり方ですが,実質的にやっぱり非常に審査委員の先生方のロードがかなりきついという面がありまして,場合によってはなかなかそれがうまく機能しない危険性がゼロではないというところがございます。そういう点で,今度の挑戦的研究に関して総合審査方式を今回適用するということ自体が大変新しい試みになっておりまして,技術的なレベルではそれをきちっと確立するというのを私どもとしては考え,ここで失敗してはいけないと。甲斐先生がおっしゃっている課題は当然受け止めなければいけないと思っていまして,それを視野に入れながらも,技術的に失敗しないということも同時にやっていきたいと思っております。

【甲斐委員】
  1つだけいいですか。総合審査方式を入れるというのも大変いい試みで,是非それも成功させていただきたいと思うのですが,そうであれば,総合審査方式は「挑戦的研究(開拓)」だけにして,とりあえず「挑戦的研究(萌芽)」はそのままで船出するというのも1つじゃないかなと思います。件数は多分そっちの方が多いから,それはもうそのまま書類審査のみというのも検討していただければと思います。

【西尾部会長】
  貴重な御意見ありがとうございました。今回「挑戦的研究(開拓)」が新たに設けられ,一方で,概算要求に向けた量的イメージの図もあるのですが,今回新たに設けた種目に多数の応募が来るということが次の概算要求にとって非常に重要になりますので,魅力あるものとして多くの方が応募してくるというシナリオを実現しておく必要がある思います。是非とも御配慮いただければと思います。
  そうしましたら,本日頂きました御意見を,7月19日の作業部会で再度御審議いただいて,8月1日のこの委員会にフィードバックしていただくということで,小安先生,いかがでございますか。

【小安委員】
  持ち帰らせていただきまして,次は合格するように頑張りたいと思います。よろしくお願いいたします。

【西尾部会長】
  本当に大変な審議を重ねていただいておりまして,心より感謝申し上げます。
  挑戦的研究に関して,ほかに御意見等ございませんでしょうか。
  そうしましたら,「若手研究(A)」と「特別推進研究」に関しまして,御意見等ございましたらお願いしたいと思いますが,いかがでございましょうか。
  白波瀬先生,どうぞ。

【白波瀬委員】
  若手ということについて,やはり横並び的な評価というか基準の設定が難しくなっているという世の中の動向がありますし、多様性というようなことがいろいろなところで言われているのでそれに対応するやり方がよいのではないかと思うのです。ただ,いろいろ人生の経路が複雑になっておりますので,どう基準を設定し審査するかのコストについても考慮しつつ,どういう形で良い落としどころが見つかるのかということは御検討いただければいいかなと、思います。感想ですけれども,よろしくお願いします。

【西尾部会長】
  何か具体的な御提案はございますでしょうか。

【白波瀬委員】
  いや,そこは私も分からないのですが。というか,年齢だけで線引きするのはよろしくないのではないかと。ただ,いつをスタートとして勘定するのかといったときに,少し社会に出てまた戻って,また戻ってという,経路が複線化しているという状況があるので,実際には簡単ではありません。何がいいか私もすぐ具体的な提案を申し上げることはできにですけれども,年齢だけでないやり方を検討していただきたいです。済みません。

【石田企画室長】
  まだこの年齢制限の在り方,現状はそういう運営をしているところですが,そうではない切り口というのがあり得るかということで検討を開始いただいたところでして,現状,大学に,博士号取得後何年たっておられるでしょうかというようなことを様々な年齢層の方々に聴取しているようなところです。実際にその調査結果も踏まえながら,引き続きしかるべき在り方をどのように進めていくかというのを御検討いただく予定で考えています。

【白波瀬委員】
  やっぱりグローバルスタンダードの中で,年齢制限があるというのはどう考えてもかなりずれを感じますので,その点だけです。

【石田企画室長】
  その点については,まさしくグローバルスタンダードという観点では,そのような運営をしている国は余り見当たらないのではないかというところが議論の前提となっておりますので,その辺も今頂いたような御意見も踏まえながら,引き続き御検討いただきたいと考えております。

【小安委員】
  少なくとも日本学術振興会の特別研究員が,年齢制限を外して,学位取得後何年というような表現になっていますが,これが1つのやり方かと思います。ただ,この作業部会で議論したときに,例えば企業で随分研究をされて実績が非常に高い方が,大学の方に移られて初めて例えば科研費の申請資格を持たれた場合にどのように扱うかとか,そんなことも少し議論いたしました。ですから,いろいろな場合があり得るので,この辺は少しクラス分けをして,何が本当の若手かを議論する必要があるかと思います。多分今申し上げたような方は若手ではないとは思うのですが,ただ,いろいろな,パターンがあるだろうということで、今後やらなければいけない議論だと思っています。

【西尾部会長】
  先生,どうも貴重な御意見ありがとうございました。この問題に関しましては今まで意見等も出ておりますので,今後若手研究をどう考えていくのか,どう定義していくのかということに関しましては審議を重ねていただければと思います。
  あと,「特別推進研究」も含めて,何か御意見ございませんでしょうか。
  せっかく委員会に来ておられますので,何か一言意見を言っていただけるとよいかと思いますが,いかがでしょう。

【橋本委員】
  この間の作業部会でもやっぱり若手のことに関してお話が出たときに,年齢の問題もそうなのですが,国全体の研究者の人口構成をどう考えるのかということが余りはっきりしないまま議論するのは問題があります。
  若手を助けなければいけないというのは全体の流れとしてはそのとおりだと思いますが,例えば科研費でいいますと,科研費を申請する資格を持った人の中の若手という場合もありますし,あるいはその資格も大学によって少しずつ違うということがあります。
  そうすると,簡単にいうと,専任としてテニュアの職を持った若手を考えるのか,あるいはその前の段階を考えるのかということによっても大分やり方が変わってくるかと思います。「さきがけ」では,ST雇用の形で研究を進めるということができるということもありますので,ある意味のテニュア職までたどり着いた人を対象にして考える場合と,そこまで行くチャンスをもっと広げてあげようということを考えるのと大分違うだろうと思います。
  それからもう1つは,若手がこういう対象になったときに,それ以降のキャリアの中でもうどんどん育ってもらうためにやるのだというのと,それと,チャンスを出しながらとう汰するのだという考え方と,その辺のところをどう考えていくのかというのを少しどこかで議論していただく必要があるかと。特に研究者の人口に対する割合がどうであるべきとかいうことも関係するのではないかと思いますので,そういうことをどこかで考える必要がないかなと思っております。

【西尾部会長】
  今後日本の科学技術に関する国際競争力とか学術振興を考える上で,年齢的な面で現況がどのようになっているのかというのは研究振興局としては大きな課題かと思っております。どうも貴重な御意見ありがとうございました。
  上田委員,作業部会に出られて,企業のお立場で御意見ございますでしょうか。

【上田委員】
  小安委員が非常に大変な立場でちょっと同情していたのですが,作業部会では大変いろいろな意見がありました。甲斐委員がおっしゃることも理解できますが,やはりこういうものは基本的にゼロサムなので,ある特定の人ばかりが有利になってしまうと,研究ってどこから何が生まれるか分からないので,意外な人が意外な成果を生む可能性を摘(つ)まむことになると思います。そういう意味で「新学術領域研究」とかいろいろなタイプのファンドがマップ上で整理されていたと思います。その中でこの「挑戦的研究」というのは,「基盤研究」とは少し評価も違うし,やり方も違うので。だから,「基盤研究」の人が余りそちらに侵入していくと,結局これは制度として新しいものにならないので,そういうことをかなり議論して落ち着いた案でしたので,また議論を振り出しに戻すと言われると何かぞっとしたのですが。先にコメントがありました◯,×ではなく,△という方法は多少考える必要はあると思います。
  もう1つはやはり,私も今,「特別推進研究」の審査をやっていますが,この前も日本学術振興会の方に申し上げたのですが,やはり審査は相当大変なんです。やっぱり私が化学の評価をしていいのかと思ったりするのです。俯瞰(ふかん)的な立場で評価してくださいということなのですが,お茶の間の人がノーベル賞のまず第1次審査をやるのですかというのとそんなに変わらない。
  こういう議論は,恐らく今ここにいらっしゃるぐらいの御年配の方は,私もそれに入りつつありますが,議論だけで済みますが,もう少し若い人は,私自身は今そういう年代だと思うのですが,審査にもかなり関わるんですよね。そうなるとやはり研究する時間がかなり限られてくる。だから,総合的に見たときに,審査ばかりやっていて研究する人が少なくなるというのも問題なので。
  現在,審査のやり方も非常にクラシカルだと思います。書面審査をやって,ヒアリングをやってと,どれもこれもそんなやり方ですが,今,若い人はウェブ上に多様な情報をアップしていますよね。だから,ヒアリングも,最初からプレゼン情報的なものでよくて,そういうものを例えば5分でも10分でも入れて,その人の人物を見られるだとか,審査の方法自身ももう少しモダンにして,効率改善をはかるべきでは。
  キーワードをいっぱい作って,それでクラスタリングして書面審査をする際,簡易にするために書面審査も最初は数枚とする方法は今,さきがけなどでも行っていますが,それも何か今までの実績が色々書かれていると,その情報にバイアスされて本当の審査になっているのかという不安もあります。ですので,審査のやり方も同時に考えないと,負荷ばかり増えるという点で問題だと思います。全て総合的に検討することが重要と思います。

【西尾部会長】
  どうも貴重な御意見ありがとうございました。
  鍋倉先生,どうぞ。

【鍋倉委員】
  挑戦的研究作業部会に加わる者として小安委員の御苦労がよく分かります。これは持ち帰って,後日部会で議論させて頂きたい。
  若手研究者の基準が,医歯薬学出身者や臨床医学に従事する研究者にとって,学位取得後の年限や年齢ではなかなか難しい場合がある。特に臨床研修医制度や専門医制度があって,その後に大学院に進むと,三十代半ばでの学位取得になる。一方で,医療研究機関によっては,学位がなくても臨床研究をやっている方も見受けられます。
  そういう意味では,臨床医学に関しては、学位というものを若手研究の基準とし,何年以内ということというのは,少しそぐわない場合もあり得えます。そういうことも含めて,少し丁寧に決めていく必要があると思います。

【西尾部会長】
  どうも貴重な御意見ありがとうございました。
  そうしましたら,「若手研究(A)」,「特別推進研究」に関しても,特段これ以上御意見はないということでよろしいでしょうか。
そうしますと,本日予定しておりました審議の内容はここまででございます。今年9月の公募や概算要求に関わる内容については,作業部会におきまして中間まとめとして,次回に御報告いただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。特に挑戦的研究の重複制限の在り方などについては,本日の御意見等踏まえて,更に作業部会におきまして議論を深めていただけますとありがたく思っております。
  最後に,私の方から1点だけ,説明をさせてください。資料1-7「研究力の測定の在り方に関する当面の所見」の骨子案についてです。これにつきましては7月8日を締切りにし,是非皆さま方から御意見をお伺いしたいと思っています。
  私自身何を重要視しているかといいますと,第5期の科学技術基本計画には総額26兆円という投資目標額が明記されており,さらに学術研究の推進の重要性もきっちりとうたわれております。政府の投資総額が増えていく中で,科学研究費をどれだけ増額していくかというシナリオの一つとして,私は今,この所見を策定することを事務局と鋭意検討を進めております。
  その中で,世界のランキングを見たときに,総合評価では日本の大学のランキングは,現在,右肩下がりになっています。総合評価で見たときには,評価項目のウェイト付け次第で非常にぶれますので,そこに一喜一憂するものではないのですが,個別の評価項目の中に例えば研究力に関わるものがあって,日本が下がりぎみで,世界の他国は右肩上がりなっています。そのような項目の状況を我々は重視しなければならないと考えております。そのような観点から,例えば,我々は質のいい研究を進めなければならない。いろいろなところから参照されるような,真髄を極(きわ)める基礎研究を学術研究によって行っていく必要がある。そういうことをこの所見において書いていきたいと思います。
  第5期の科学技術基本計画の中に,いわゆる研究力に関する指標が既に出ていますが,私自身そこで危惧しているのは,非常に短期的に評価されるような項目が結構あることです。学術研究はもう少し長く見なければならないと思います。更にどれだけ投資したからどれだけの結果が出てくるという,インプットとアウトプットで評価されなければならないですが,どちらかというとアウトプットだけが評価されているようなことを危惧しています。
  そういうことを考えると,第5期の科学技術基本計画における指標に関しても,学術研究の推進に関しては,その成果がどんどん上がっていくというような評価項目があって欲しいと思います。そのためには,やはり科学研究費補助金が増額していかないと,最終的に高いアウトプットにつながりません、というメッセージを出していきたいというのが私の考えです。そういう観点から、所見に関して是非とも皆さま方に御支援いただければと思っています。来年度の概算要求もありますし,何らかのメッセージを出したいということで,資料1-7を作成しているということを説明させていただきました。どうかよろしくお願いいたします。
  文部科学省におきましては,今後,概算要求において財政当局との大変な戦いが始まるわけですけれども,この部会の委員の方々も全面的に協力してくださると思いますので,科研費の充実のために最大限の努力をお願いいたします。さらに,その概算要求の考え方については,次回の部会に向けまして具体的な検討を行っていただき,次回御説明いただければと思います。
  それでは,今後の部会の審議予定について,事務局から説明をお願いいたします。

【石田企画室長】
  先ほどもう若干出ましたので繰り返しになりますけれども,資料4をごらんいただけますでしょうか。研究費部会等のスケジュール,「案」が付いておりますけれども,およそこの流れで進めてまいりたいと考えております。
  本日の審査部会で御議論いただいた内容を踏まえ,とりわけ挑戦的研究に対する支援強化に関する作業部会においては,再度議論を煮詰めていただくという作業が入ってまいります。そのスケジュールが7月19日。
  その結果等を踏まえまして,8月1日に再度研究費部会で御議論いただく。具体的には,作業部会からの中間報告について御議論いただくこと,その他,概算要求の基本方針等について御議論いただくことを予定しております。
  その研究費部会を経まして,8月9日の学術分科会において,研究費部会における審議状況の報告をいただくという流れで考えてまいりたいと思うところです。以上です。

【西尾部会長】
  今後のスケジュールにつきまして,御質問,御意見ありますでしょうか。
  特に御質問等ないようでしたら,この予定に基づきまして,引き続き御理解,御協力のほど何とぞよろしくお願いいたします。

最後に事務局より,連絡事項が伝えられ,会議は終了した。

お問合せ先

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