第8期学術情報委員会(第5回) 議事録

1.日時

平成27年9月11日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 学術情報のオープン化について
  2. その他

4.出席者

委員

西尾主査、羽入主査代理、相田委員、逸村委員、岡部委員、加藤委員、北森委員、喜連川委員、久門委員、高木委員、辻委員、美馬委員

文部科学省

(科学官)美濃科学官
(学術調査官)市瀬学術調査官、小山学術調査官
(事務局)小松研究振興局長、岸本科学技術・学術政策局次長、神代科学技術・学術総括官、榎本参事官(情報担当)、渡邊学術基盤整備室長、松本学術基盤整備室参事官補佐

オブザーバー

安達国立情報学研究所副所長

5.議事録

【西尾主査】  おはようございます。時間になりましたので、ただいまから第5回学術情報委員会を開催いたします。
 出席予定の委員の中で、喜連川先生は非常に重要な用事があるとのことで、少し遅れるという丁重な連絡を頂いております。
 本日は、前回までいろいろな御意見を頂いてまいりました学術情報のオープン化の推進についての中間まとめに関して更なる審議を行い、もし可能であれば、中間まとめという形に持っていきたいと思っております。ただし、今日皆さん方から貴重な意見等を頂くことによって、内容を更にブラッシュアップしてまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
 それでは、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【松本学術基盤整備室参事官補佐】  それでは、お手元の議事次第に基づきまして配付資料の確認をさせていただきます。
 資料1でございます。学術情報のオープン化の推進についての中間まとめ案でございます。資料2ですが、平成28年度文部科学関係概算要求のポイントでございます。それから、参考資料として学術情報のオープン化に関する資料集でございます。このほか、ドッチファイルで机上資料を準備してございます。
 不備等ございましたら、事務局へお申し付けいただければと思います。
 以上でございます。
【西尾主査】  資料等について、よろしいでしょうか。もし何か資料の不備等お気付きになりましたら、御連絡ください。
 それでは、学術情報のオープン化について、事務局から説明をお願いいたします。
【渡邊学術基盤整備室長】  それでは、資料1を御覧ください。学術情報のオープン化の推進について(中間まとめ案)でございます。
 赤字で表記している部分については、前回の委員会での御意見を踏まえまして、修正又は新たに記述した部分でございます。それに沿ってポイントを申し上げたいと思います。
 まず冒頭1の検討の背景ですが、ここにあります一つ目の丸の記述と二つ目の丸の記述を入れ替えたということもございまして、冒頭説明を追加してあります。
 それと、一つ目の丸の6行目でございますが、「すなわち」以下で、前回の案では、この中に研究過程そのもののオープン化といった趣旨を入れてございましたが、オープン化の対象範囲が概念として広過ぎるのではないかという御意見があり、「すなわち」以下の記述とさせていただいております。
 次に三つ目の丸ですが、これについては、課題認識を含めまして、新たに追記した部分でございます。
 次に2ページ目ですが、三つ目の丸にございます研究成果のオープン化の意義についての部分であります。ここのなお書きについては、成果の利活用の観点とは異なりますが、研究の透明性の確保、あるいは研究費の効率的な使用という観点からも求められるという御意見を基に記述させていただいております。
 それと、このページの最後の丸でございますが、論文のエビデンスとしての研究データの公開、この前提として、まずデータが適切に保管されることが重要であるという趣旨がございましたので、その旨、記述させていただいております。
 次に3ページでございます。3の研究成果の公開についての基本的方策です。
 これ以降については、前回の案から基本的に中身は変わっておりません。構成を変えた関係で、各項目ごとに、下にありますように点線囲みで関係機関の役割について、それぞれ整理させていただいたという記述になっています。
 3の(1)の論文のオープンアクセスについての取組でありますが、これについてはオープンアクセスを推進する意義について、再度、新たに加えてございます。
 それと二つ目の丸で、オープンアクセスを推進する方策ということで、機関リポジトリによる公開、すなわちグリーンOAの基盤拡充という趣旨と、オープンアクセスジャーナルの育成という趣旨について記述してございます。
 続きまして、4ページを御覧いただきたいと思います。先ほど申し上げました各関係機関が何を行うべきかという整理の中で、点線囲みの一番下でありますけれども、国が行うべき支援ということで、これ以降、それぞれの事項において、国が行うべき支援について記述を新たに加えたという構成でございます。
 次に、その下の(2)の論文のエビデンスとしての研究データの公開ですが、丸の1として分野ごとに異なる特性とさせていただきました。この中では、従前の記述から、一番最後の行ですが、人文・社会科学分野における取組というか、特性ということで、5ページ目にわたりまして若干詳しく、事例的なものも含めて記述させていただいたということでございます。
 続きまして5ページの下ですが、丸の3として公開の対象とする研究データの範囲とその様式についてです。これについては「また」以下で、研究データは利活用可能な様式で公開されること及び信頼性が確保されていることが重要であるということを記述した上で、6ページの冒頭ですが、前回も御意見を頂きましたソフトウェアのバージョン等についても同時に明示する必要があるという記述を加えてございます。
 続きまして7ページです。中ほどの(3)で研究成果の散逸等の防止ということですが、ここも趣旨として、大学等においてはということで、明確な方針の下で研究成果の保管、蓄積が重要であるという趣旨を新たに加えてございます。
 点線囲みの中の大学等に期待される取組で、論文や研究データの管理に係る規則という記述がございましたが、これについて前回いろいろ御指摘を頂いております。
 ここでは、このデータ管理に係る規則の主な内容について脚注の17を御覧いただきますと、大学等における研究成果の保管期間、保管方法について規定する必要があるということで、ここは規則で規定すべきことを整理させていただきました。
 なお、著作権との関係については、次ページの利用ルールのところで、前回の記述より詳しく整理をするということで書き分けてございます。
 8ページを御覧いただければと思います。(4)の研究成果の利活用で丸の1として利用ルール等の明示ということで、最初の丸の趣旨は、利活用を促進するために著作権処理において、利用者が負担を感じないで利活用できる仕組みを設けることが重要であるという総論を書いてございます。
 その上で二つ目、三つ目の丸で、論文についての公開に当たっての著作権に係る事項を整理してございます。
 二つ目の丸においては、一般的に学協会が研究者から著作権を譲り受ける場合について、これは基本的に学協会の著作権ポリシーにおいて、利活用を促進する利用条件を設けていただくことが期待されるという趣旨でございます。
 三つ目の丸においては、研究者が著作権を保留している場合、研究者がクリエイティブ・コモンズ・ライセンスで利用条件をあらかじめ明示しておくことも考えられるとさせていただきました。
 次に四つ目の丸においては、研究データについて、その利用ルールを明示して利活用を円滑化することが望ましいということで、脚注の19を御覧いただければと思いますが、ここで研究データを公開にして、その利用に供するという場合の利用ルールの一つの考え方として示してございます。
 続きまして、9ページを御覧いただきたいと思います。中ほど(5)の人材育成の取組でございますが、これについては、まず趣旨を記述した上で、取組の内容について、前回の委員会ではデータキュレーターの育成、役割が重要であるという御意見を頂きましたので、そこを明示的に追記してございます。
 それと10ページでございます。4として研究データ基盤整備の方向性について記述していますが、この項目については、全体が新たな記述です。
 趣旨としましては、研究データを的確に保存し活用していくためのプラットフォームの整備に重点を置くべきであるという御意見を基に記述してございます。
 それと最後、5の今後の検討についてということで、新たに加えてありますが、現在、日本学術会議、あるいは内閣府でも新たにオープンサイエンス推進に関するフォローアップ検討会を立ち上げております。また、総合科学技術・イノベーション会議の検討も進むと伺っておりますので、これらが、いわば並行的に年内に進む予定ということで承知しております。
 それらとの整合を図ることが必要ということと、また内閣府のフォローアップでの意見等を踏まえた検討も想定しておく必要があるのではないかという観点から記述してございます。この一連の流れを考慮した検討を踏まえますと、これらの状況にもよりますが、年内又は1月頃に最終的なまとめという予定をさせていただきたいと考えているところでございます。
 簡単ですが、資料の説明は以上でございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 前回美馬先生から用語解説を付けるべきではないかとの貴重な御指摘を頂きましたので、11ページ以降に用語解説集を付けております。
 今、室長から御説明いただきましたけれども、この中間まとめを提示するのは難しいタイミングとも言えます。どうしてかと言いますと、日本学術会議では多分、分野ごとで学術情報のオープン化をどのようにしていくかということの議論が今後進んでいくと思います。また内閣府でも、先般出されました内閣府からの報告書「我が国におけるオープンサイエンス推進のあり方について」のフォローアップが今後始まるという時点に今差し掛かっております。
 そういう中で、この中間まとめ案を世に問うということになりますけれども、私の判断としては、今まで議論してきたことをそのまま眠らせるのではなくて、ここできっちり、この委員会としての見識を世に出しておく。その上で日本学術会議、あるいは内閣府との更なる連携あるいは協議を踏まえて最終まとめに持っていく。その方が、より実りある最終まとめになるのではないかということを考えまして、本日中間まとめの案を更に内容の深いものとしてまとめるべく、御意見を頂戴できれば有り難く思います。
 第5期の科学技術基本計画等においてもオープンサイエンスあるいはそのプラットフォームの重要さということに関しては強く謳(うた)われることになると思いますので、そういうことも考えますと、この中間まとめ案、更に最終まとめが大きな役割を果たせる可能性も多分にございます。そういう観点から、御意見を頂戴できれば有効であると思います。
 それでは、全体的なことで議論しますと少し焦点がぼやける可能性もありますので、最初の段階では、章を分けながら議論をさせていただきたいと思います。まず1の検討の背景、2の基本的考え方、その部分について御意見等ございましたら、是非よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。はい、羽入先生。
【羽入主査代理】  今、主査が全体的なことは焦点がぼやけるのでとおっしゃいましたことに少し反するかもしれませんが、「検討の背景」や「基本的考え方」が最初の部分に記されていますので、やはり方向性のようなものを確認しておくべきかと思います。
 先ほどの主査の御発言にありましたように、いろいろな組織でオープン化について考えられているということを私たちが念頭に置かなければいけないことは確かですけれども、ここで、やはり特徴として出すべきことは、学術情報のオープン化を、この委員会がどういうふうに認識し、そして発信しようとしているかという姿勢は共通認識として書き込むことが重要なのではないかと思いました。
 したがって、主査がおっしゃっていたように、ほかの議論を待つということとは異なって、やはり学術情報のオープン化についてのメッセージをここに書き込めるような議論をしなくてはいけないと改めて認識しました。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。この委員会でこの件を議論し出したときも、我々の認識として、学術情報に関してはオープン化すべきだということが皆様方の総意であったと思います。そのような意向を、このオープン化の推進という箇所で、もう少し強く前に出すことが必要なのではないかと思います。
【羽入主査代理】  そうですね。特に学術情報とは何なのかということを認識しておく必要もあるかと思います。日本学術会議は別として、ほかのところで議論されるのは、もっと広い意味でのオープン化だと思いますので。
【西尾主査】  先生、何か妙案を頂くことはできますか。
【羽入主査代理】  今すぐ、ここの部分をどうするということではないんですけれども、やはりオープン化だけではなく、学術情報のオープン化というワンセットで考えることが重要だろうと思います。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。羽入先生に、どういう記述をするか、また具体的にお伺いするかもしれませんが、どうかよろしくお願いいたします。
 美馬先生、どうぞ。
【美馬委員】  今の羽入先生の御指摘はごもっともだと思います。例えばタイトルには今回、学術情報のオープン化の推進について(中間まとめ案)とありますけれども、検討の背景とか、中に学術情報という言葉が表れているかどうかは、問題だと思います。
 つまり、中で書かれている検討の背景の1行目には研究成果とか、そのオープン化とありますけれども、学術情報のオープン化というタイトルであるにもかかわらず、学術情報に中で全く触れていないのは、少し問題があるのではと思いました。
 以上です。
【西尾主査】  非常に貴重なコメントでございます。学術情報ということに関しては、以前のまとめの中でも、それは一体何なのかということを議論したところでございます。そういう経緯を踏まえて、学術情報とは何たるかということに関して、この検討の背景のところでは、きっちりとその意味するところを記述しておく必要があるということでよろしいですか。
 それでは、事務局の方で再度その件について検討していただくことにしたいと思います。この箇所は、この中間まとめ全体を通しての重要なメッセージとして出ていくと思いますので、是非よろしくお願いいたします。その段階で、また羽入先生、美馬先生にも、いろいろと御相談させていただきながら、内容の修正、加筆をお願いしたいと思います。
 ほかにございますでしょうか。相田先生、どうぞ。
【相田委員】  学術情報の定義と研究成果の定義は確かに違うと思います。それで。
【西尾主査】  できましたらマイクをもう少し近づけていただけますでしょうか。
【相田委員】  はい。この委員会で今検討しているのは、公的研究資金によって行われた研究の成果を公開するとか、そういうことに限ってということを何度か確認されたと思います。学術情報というと、もっと幅広く、そのもっと幅広いものをオープン化するという議論と、公的研究資金でなされた研究の成果をオープン化するという議論は、やはり結構かい離する部分があるので、いつも議論が錯綜(さくそう)してしまう原因の一つだったように思います。
 ですので、その違いをはっきりさせて、ここでは何について、どう検討したということを明確にした方が良いと思います。
【西尾主査】  相田先生に確認させていただきたいのですが、この委員会においては学術情報というときに、前提としていわゆる競争的資金だけで行われた研究成果としての情報だけではなくて、運営費交付金等における基盤的な経費で行われた研究成果も含んでいるという理解でよいでしょうか。
【相田委員】  公的な研究資金と、それから運営費交付金は、基本的に国の税金から支出しているという意味だと思います。
【西尾主査】  分かりました。
【相田委員】  そういう経費でなされた研究成果という定義だろうと私は思っていました。
【西尾主査】  非常に明快ですね。いわゆる税金を投じて行ってきた研究をここでは対象としている。それが競争的資金であろうとも、運営費交付金等においても同じく、原資としては税金を使っている。そういう観点で考えましょうということですね。相田先生、どうぞ。
【相田委員】  私立大学の場合には、国からのいろいろな支援金も入っているので、恐らく同等に扱うという議論なのだろうと思うのですが、そこら辺の使い分けは、私の知識でははっきり言えないので、それは、もう少し議論が必要なのかもしれません。
 ということと、この2ページ目の上から2行目の「学術情報」に、脚注の3が付いていますが、ここの定義は、恐らく内閣府の検討会の報告書における定義かと思うのですが、それとの違いも、どこかで明確にした方が良いのではないかと思います。
【西尾主査】  ここは事務局から御回答いただけますか。
【渡邊学術基盤整備室長】  この脚注の3の定義でありますが、これについては、内閣府の報告書では定義されておりませんで、ここは事務局の方で学術情報という捉え方はこういうふうに定義しましたという意味での記述であります。
【西尾主査】  今の脚注3の考え方が事務局としてお考えいただいた学術情報の意味であるということに関して、羽入先生、美馬先生、いかがでしょうか。これは狭いのか、広いのか、もう少し深く考えるのか。美馬先生、いかがですか。
【美馬委員】  これでは曖昧な気もします。第7期のときは、ライブラリーが持っている書籍等をアーカイブして、各大学間を超えて共有できるかどうかということも学術情報として議論していたと思うので、かなり広かったと思います。
【西尾主査】  分かりました。羽入先生、いかがですか。
【羽入主査代理】  広いにこしたことはないと思いますが、これは脚注の3で相田先生がおっしゃったことと整合しているのかどうかが少し疑問です。
【西尾主査】  分かりました。脚注の3は、一つの解釈かもしれませんが、中間まとめを最終案に持っていく上で、事務局とも意識合わせをもう1回やりましょう。その方が良いかと思います。
 つまり、この学術情報委員会における学術情報とは何を意味するのかということを、今後、この委員会でもう一度検討していくのも大事かと思います。脚注の記述は、確かに一つのうまく書いてある案だと思いますが、もう少し工夫ができないかとか、そういうことを、今ここですぐというのは難しいと思いますが、もう一段深めて考えたいと思います。
 久門委員、どうぞ。
【久門委員】  この学術情報のオープン化ということについて、先ほど相田先生から公的研究資金に関してというお話がありましたが、2ページ目の三つ目の丸の赤字のところに、「また、公的研究資金による研究成果は、広く社会に還元すべきであることに鑑み、オープン化推進の必要性はなお一層強い」というように、公的研究資金が補足的に扱われています。私も先ほど相田先生がおっしゃったことに同感で、学術情報のオープン化が主なのか、公的研究資金だからオープン化が当たり前だと思うのかは、結構重要なポイントだと思っております。
 現在の文書は、「また」という言葉で始まるため、「公的資金研究の社会還元が必要」という考え方が従であるかのように見えてしまいます。公的資金研究の社会還元を従という扱いにするのは、良くないのではないかという気がいたしました。
【西尾主査】  貴重な御意見ありがとうございました。今の点を少し考えてみたいと思います。
 北森先生、どうぞ。
【北森委員】  今の公的資金による研究かどうかということに関連して、一つは確認の意味もあるのですが、大学や多分、国立研究所でもそうだと思いますが、研究資金の中には、民間企業からの研究資金も少なからずあるという認識に基づくと、その民間企業からの資金で出た成果が、元々基礎研究から全て、その企業からの資金であれば、これは明快で、恐らく、その企業との関係で、どこが所有をするかということは決まってくるかと思うのですが、多くの場合は公的資金で研究された成果に基づいて、それを産業界に応用するという意味で共同研究が始まるケースがあり、そこには少なからずグレーゾーンが出てくる可能性もあろうかと思います。
 そして、公的研究資金であるかないかということと対極的に民間からの研究資金でなされた成果については、著作権その他、保護すべきだということが後段で書かれていますが、必ずグレーゾーンが出てくるかと思います。
 特に論文にする場合には、企業が事業として、あるいはビジネスとして展開していくところと、その研究資金で得られた一般的な知見として論文にするというところとは、恐らく各研究者は本能的に切り分けて、日常的に研究を進めているはずです。その場合に、オープンにする部分に関して、この制限が掛かるのかどうかということは、ややデリケートな問題を含むかと思います。
 そのため、公的研究資金によるものという定義を少しどこかで議論をしておく必要があろうかと思います。
【西尾主査】  難しいですね。美馬先生、どうぞ。
【美馬委員】  今の定義ですが、11ページに公的研究資金の用語解説が載っていまして、文部科学省又は文部科学省が所管する独立行政法人から配分される競争的研究費のことを、ここでは公的研究資金と言っています。つまり、この委員会の中間まとめ案における公的研究資金とは、省庁を超えて、ほかの省庁のことは言ってはいけないので、ここではこういうふうに限定して言っているのでしょうか。
【渡邊学術基盤整備室長】  よろしいでしょうか。内閣府の3月に出た報告書の内容では、この成果のオープン化について、各省の取組について、それを決めてくださいということになっています。したがいまして、ここの議論では、文科省の所掌の範囲ということを前提に、この公的研究資金のオープン化を進めるという整理をさせていただいております。
【西尾主査】  多分もう少し、ここを丁寧に書く必要があるかと思っています。要は、このようにオープン化についての議論を文部科学省が先陣を切って行っていることを踏まえて、今後総務省、経済産業省においても是非審議していただきたいと思います。
 ここでは、とりあえず公的研究資金というものを文部科学省関連のもので捉えているけれども、やはり他の省庁のものに関しても関連してくるということを追記しておいていただいた方が、公的研究資金を単に文部科学省のものだけと捉えてしまうよりは良いと思います。そういった点に配慮していただけますでしょうか。
 それで、先ほど北森先生からおっしゃっていただきました、企業等の共同研究等から生まれた成果の中で、元をたどると大学の運営費交付金等で進めてきた研究がベースになっているようなときに、公的研究資金という観点からどういう扱いになるのかというようなことですが、この辺について、安達先生いかがでしょうか。
【安達国立情報学研究所副所長】  3月に出ました内閣府のオープンサイエンスに関する報告書で重要なのは、相田先生が言われたように、文部科学省においては国立大学に出している一般の運営費交付金を含むという点です。ですから、後ろの用語集にあるように、科研費や、その他の競争的資金のみならず、運営費交付金で行った研究活動の成果も対象になるという点が重要で、私立大学ですと私学助成も引っかかってくるのではないかと思います。
 一方、大前提として6ページの下の脚注の14にありますように、機密保持や企業秘密、国益に関わることや産業化、商用化などは、公開の適用除外ということで、まず最初に、この部分は抜けてしまう構成になっています。
 ですから、各大学でオープン化の運用の細則を決めるときに、企業との共同研究など、この脚注に抵触するものは、まず対象外という形にし、一方、例えば科研費については日本学術振興会が決めるやり方に沿って公開の方法を決める形になるかと思います。
 また、学術情報というときに私の感じとしては、本や教育用の各種資料も入ってきますが、本についてのオープン化という議論は、今のところ適用されていません。その意味で、このオープン化は公的資金の投入された研究を社会に還元するという、かなり限定された範囲の議論だと理解しております。
【西尾主査】  分かりました。そうしましたら、北森先生がおっしゃったところに関しては、まずは今のような線引きをしておくということでよろしいですか。北森先生、どうぞ。
【北森委員】  そうしますと、その場合に、企業との共同研究をやるときには秘密保持協定を結んでからやるというのが大学の一般的なやり方だと思いますが、その秘密保持協定の中に、どこまでは公開する、公開に当たっては双方が協議して了解を得るものという公開にかかる条文が一般的に必ず入っていますが、そういうことをきちんとして、それで双方が了承したものに関しては、この縛りの中に入ってくるという理解でよろしいでしょうか。
 そこのところをきちんとしておくということが、むしろ重要になる。
【西尾主査】  安達先生、そういう考えでよろしいでしょうか。
【安達国立情報学研究所副所長】  はい。私は、そう理解しております。
【西尾主査】  そうしますと、学術情報のオープン化の推進として表題を打ち出していますが、今の安達先生からのお話を踏まえると、まず学術情報というのはもう少し広い、いわゆる著作物や本とか、そういうものを含んでいるということになるかと思います。
 ただし、本中間まとめ案で議論しているのは、公的な経費を基にした研究あるいは教育に関わるデータを対象としているという解釈でよろしいでしょうか。
 先ほどの議論に戻ってしまいますが、学術情報のオープン化というときに、この中間まとめ案で対象としている学術情報が何なのかということを、もう少し明確にしておく必要があるかと思います。
【安達国立情報学研究所副所長】  ささいなことですが、公的な資金を得て研究者が仕事をして、電子ジャーナルで発表すると、それは今回の俎上(そじょう)にのりますが、その知見を出版物として刊行した場合、今のところ本についてはオープンにせよということはなく、印税はその先生が受け取ってよいという慣行がまだ続いていると理解できます。少ししっくりこないのですが、そのようなことだと思います。
【西尾主査】  事務局の方では、今、安達先生がおっしゃった趣旨はよろしいですね。全体の学術情報をどう捉えて、この中間まとめ案では学術情報のどの部分を対象としているかということの明確化が必要で、それが羽入先生のおっしゃったところにもつながると思います。どうかよろしくお願いいたします。
【岡部委員】  よろしいでしょうか。
【西尾主査】  岡部先生、どうぞ。
【岡部委員】  学術情報とどこまで捉えるか、これは難しい問題だと思いますが、そもそも学術情報のオープン化という考え方そのものは国境とかにもとらわれず、全世界的に研究者が共通理念とすべきであるという意味では学協会の取組とは、我が国とかそういうことを考えずに進めていくべきことだと思います。その上で日本の、特に大学に属する研究者が行った、この先ほど言うところの公的資金による研究成果については、もう少し具体的な縛りを掛けるということで、後者にだけの話を、この委員会で扱っているのではなくて、やはり全体的な方向と、この縛りを掛けようとしているところを、両方扱えるように区別されることが良いのではないかと思います。
【西尾主査】  分かりました。多分そうすることによって、羽入先生が最初におっしゃったことについて、混乱をせずに明確に記述することができると思います。我々としては、学術情報全体のオープン化はきっちりと進めるべきであるという認識は大切です。
 本中間まとめ案に書いているのは、その全体の流れの中でもう少し対象を絞った上で記述をしているのだ、ということを明確にするということだと思います。
 時間がどんどんたっていきますので、3の研究成果の公開についての基本的方策や、4の研究データ基盤整備の方向性についても、意見がありましたら随時おっしゃっていただければと思います。どうかよろしくお願いいたします。
 辻委員、どうぞ。
【辻委員】  3から4にかけて、点線囲みで大学等に期待される取組や行うべき取組といった形でおまとめいただいておりますが、例えば行うべきというような形で記載されているものと、それから大学等に期待される、あるいは求められると、それぞれ微妙に表現を変えていまして、非常にニュアンスを気にされて記載をされているかと思いますが、期待されると求められるとはどう違うのかとか、いろいろと気になってしまうものですから、もう少し統一していただいた方がよろしいかと思ったのですが、いかがでしょうか。
 例えば5ページのところで、大学等に期待される取組というものがあります。それから、6ページでは学協会等及び日本学術会議に求められる取組というものがあります。その一方で、例えば7ページの(3)の一番下の方ですと、学協会に期待される取組というものがあります。同じ学協会に対しても、求められる場合、期待される場合という形で、少し表現を変えているので、もし、こういった表現の仕方をしているというところがございましたら、御説明いただければと思います。
【渡邊学術基盤整備室長】  よろしいでしょうか。「行うべき」というのは、例えば研究資金配分機関で考えた場合に、独立行政法人とか、いわゆる実施する組織については、そういう方向性を強く出すというニュアンスで書いてあります。
 一方、大学等に対しては、行うべきというか、それを指示するような関係ではないということもありまして、その辺のニュアンスは書き分けさせていただいたという趣旨でございます。
【辻委員】  恐らく「行うべき」のところは比較的分かりやすくて、「求められる」とか「期待される」といった辺りが少し分かりにくいポイントかと思います。
【西尾主査】  事務局にお尋ねしますが、「求められる」と「期待される」というのは、それらの違いに何か深い意味があるのでしょうか。あるいは、「期待される」と「求められる」については、同じ表現にしてもかまわないのでしょうか。
【渡邊学術基盤整備室長】  先ほど申し上げました「行うべき」と「期待される」という区分けからすると、「求められる」と「期待される」も整理させていただいて、表現を分かりやすく統一したいと思います。
【西尾主査】  ほかにございますでしょうか。相田先生、それから岡部先生、どうぞ。
【相田委員】  今の御指摘と関連してですが、支援すると言い切っている部分と、例えば何とかが望ましいとか、何とかが重要であるというふうに違いがありますが、やはり支援すると言い切るなら言い切った方が良いと思います。言い切れないから望ましいという言葉を付けたと思いますが、その点においても、もう少し整理した方が良いと思います。
【西尾主査】  それでは、事務局には、この辺も含めまして、もう1回精査していただければと思います。よろしくお願いいたします。
 いろいろな背景が記述の裏にあるのだろうということは想像しておりますが、読者が混乱することは避ける配慮をしていただくことも大事かと思いますので、よろしくお願いいたします。
 岡部先生、どうぞ。
【岡部委員】  8ページの学協会が行うべき取組というところで、ここだけ学協会が「行うべき」になっていますが、これは意図的にそうされているのか、それとも、ここは「期待される」なのか、どちらでしょうか。
【西尾主査】  ここは、学協会の立場から記述されているのでしょうか。
【渡邊学術基盤整備室長】  ここは、そういう意味では、意図的に「行うべき」とさせていただいています。と申しますのは、この著作権ポリシーの明示の議論は、以前から当委員会でも続いていたということもありまして、この利活用の促進を図るという強いメッセージの下で、今までの議論を踏まえて「行うべき」という表現にさせていただいております。
【岡部委員】  少し内容に踏み込みますと、ここの著作権ポリシーを策定し明示するというところで、恐らく学術誌を持っているところで著作権ポリシーがないところは、余りないと思います。むしろ、インターネットを前提として、例えばグリーンOAに対応したようなポリシーにしてくださいというメッセージにならないと、具体的な効果がないのではないかというところが少し気になったのですが、いかがでしょうか。
【西尾主査】  著作権ポリシーを策定している機関は多々あるので、もう一段踏み込んだポリシーを策定してほしい、というメッセージを発した方が良いのではないかということですね。
【岡部委員】  その上のところには、そういうことを書いてありますが、結果的な取組として、それが反映しない形になって読めるので、少しそういうことを踏まえてみたいな内容を入れていただけると良いかと思いました。ただし、そこまで書くと、「行うべき」と言ってしまってよいのかというところは、少しひっかかるところではありますが。
【西尾主査】  「行うべき」でもよろしいですか。
【岡部委員】  いや、私は構いませんが、そういうたくさん学会があるので、その辺りを。
【西尾主査】  どうぞ、喜連川先生。
【喜連川委員】  著作権ポリシーそのものが、まだほとんど記載されていない学会が随分あると知財委員会などで聞いていますので、そういう学会にワークするしないを言っても通じないと思われますので、表現は適切にするのが良いかと思います。
【西尾主査】  今の御意見からしますと、現時点における記述も重要ではあり、その上で、もう一段進んだものに関しても、先ほどの「行うべき」とまでは踏み込まない表現で要望する。さらに、岡部先生のおっしゃったことを、ここに続けて書いていただければいかがでしょうか。
【渡邊学術基盤整備室長】  今の著作権ポリシーの策定、公開の状況ということで、参考で申し上げますと、本日の参考資料で学術情報のオープン化に関する資料という横の資料がございますが、ここの20ページにデータがございます。これでは約半数が、検討中・非公開というような状況が見てとれると、こういう背景の下での記述でございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。ほかに御意見ございますか。
 逸村先生、どうぞ。
【逸村委員】  話があちこちに行っているので、どう理解したら良いかというのは、いま一つ分かっていないのですが、例えば4ページの点線囲みの国が行うべき支援で、JSTが運用するJ-STAGEについて、レビュー誌の構築や利便性の高いインターフェイスの構築というのがあり、そして5ページの点線囲みのNIIが行うべき取組で、アカデミッククラウドの構築に当たり、フォーマットの標準化やシステム開発及び共同調達等について、大学等と連携し進めるとあります。あと、7ページの点線囲みにもJSTがデータジャーナル出版に係る基盤の整備を行う、あるいは学協会のところでデータジャーナルを構築するとありますが、この手の話が分散していると、何がどうつながっているのかというのが、少し分かりにくいのではないかと思います。
 要は、研究者にとって余り負担の掛からない形で利便性の高い、一言で言ってしまえばインターフェイスが欲しいというように、うまくまとめられないかというのが気になりました。
【西尾主査】  今回、事務局で工夫していただいて、いろいろな機関等が行うべき取組について、点線囲みで記述いただきました。その枠内の記述が、本文の該当するところと連動することを重視していますので、どうしても記述が分散している印象を与えてしまっています。今、逸村先生がおっしゃったように、幾つかの項目を統合しないと一体何が言いたいのか分からない記述があると思われます。幾つかの項目をまとめた統合的なメッセージをどこかできっちり入れていただきつつ、枠内の記述が本文との関係で記載されるという構成を実現するのは難しいとは思いますが、非常に効果があると思います。もう少し幾つかの項目を統合したときの方向性を明示することを考えていただきたく、是非、お願いしたいと思います。
 それでは、相田先生、北森先生、美馬先生という順番でお願いします。
【相田委員】  今の点に関連してですが、各項目ごとに点線囲みで、それぞれが行うべき取組をまとめていただいたのは非常に分かりやすくなったと思います。本文中で、主語が誰なのか分からない文章がたくさんありますが、点線囲みの中を見れば理解できるので良くなったと思いますが、次のようなまとめの表を作っていただけるとよいと思います。つまり、それぞれの項目について、「研究資金配分機関が行うべき取組」や「大学等に期待される取組」等をまとめた、エクセルのような表です。
 そうすると、実際にここの基本的方策として私たちが何を言おうとしているのかが、しかも、どこがそれを担うべきかというのが一目で分かり、また、先ほど言われたような、例えば矛盾があるとか、ここは本当は違うのではないかというのも一目で分かるようになると思います。それをやった後、先ほど言われたような、一言で言うメッセージというところにつながっていくのではないかと思います。そういう大きなA3程度の1枚が是非欲しいと思います。
【西尾主査】  相田先生、今の記述そのものに関しては、この様式でよろしいでしょうか。事務局として、一度、今おっしゃったようなエクセル的なものでまとめてみて、各々の項目の書き方及び枠の中の項目の書き方を、大局的に精査をするけれども、様式としては今の書き方でよろしいでしょうか。
【相田委員】  各ページにおけるまとめ方としては、大分良くなったと思います。ただ、整合性があるかどうかをチェックしようと思うと、今のままでは分かりにくいのです。
【西尾主査】  分かりました。そういうことですね。
 それでは、1回それをしていただいて、もし本当にそれが視覚的にも非常に分かりやすいものとしてまとめられるのだったら、何か付録のような形にしていただけると読む側は非常に分かりやすいのではないでしょうか。
 北森先生、それから美馬先生、どうぞ。
【北森委員】  今の議論は3のところでよろしいですか。
【西尾主査】  3、4も結構です。
【北森委員】  4ページの点線囲みの学協会に期待される取組の中に、共同して質の高いオープンアクセスジャーナルを構築すると記載されています。これはもちろん具体的な方策としては進めるべき項目だと思いますが、何回か、この委員会で申し上げましたが、それだけではなくて、既に先行している国際的なオープンアクセスジャーナルがありますので、例えばジャーナルの伝統であるとか、そういうことまで考えると、対抗するばかりが方策ではないと考えられますので、できればここは国際的な連携を図るということも記述していただければと思います。
 具体的にどういうことかというと、例えば姉妹誌という関係を、既に欧米の学会では考えていますし、我々国内のいろいろな学会に関しても、姉妹誌提携をするということで、お互いにプラスになることは多々あります。姉妹誌をシスタージャーナルと言いますが、しかし、そのシスタージャーナルのネゴシエーションをするのに、フェース・トゥー・フェースで相当突っ込んだ議論をしなければいけません。
 そうしたときに、それを実施するような費用の出どころが実は今、明確ではないというよりも、ほとんどありません。科研費による論文誌の助成であれば、そういったところまでは入っていません。それから競争的資金であれば目的外使用になりますし、運営費交付金で海外に渡航してというのは、これは量としても額としても非常に難しいということで、そういうことをする資金が実は余り手当されていません。では、それは学会のことだから学会が手当しなさいということになると、各学会とも、そこまで資金は潤沢にはないということで、欧米の学会、特に巨大学会が出版で非常に大きな、日本の出版社の数倍の規模の事業を行っているということを考えると、そうしたことをネゴシエーションするための費用に対しては今、我が国の中ではなかなか難しい状況です。
 そういった状況を考えると、国が支援をするということが、どこかに書かれていた方が良いのではないかと思います。
【西尾主査】  学協会の期待される取組の中で、国際的な視野を持ってジャーナルの活性化を考えていただくということだと思います。例えば、ある分野において国際的に確立したジャーナルが既に刊行されている場合には、そのジャーナルと有効な連携をするとか姉妹提携的なことを行うことが考えられます。また、そのようなジャーナルを発行している機関とのネゴシエーションに関して、国がサポートできるのかどうなのかということも含めて考えていただければと思います。
 これこそ「行うべき」なのか「期待される」なのか、なかなか難しいところかと思います。北森先生、どうぞ。
【北森委員】  すみません。国が行うべき支援のところにもオープンアクセスジャーナルの刊行、及び国際連携を支援するというような書きぶりではいかがでしょうか。
【西尾主査】  美馬先生、どうぞ。
【美馬委員】  2点あります。まず3ページから7ページの点線囲みで、NIIがこうすべきとか、JSTがこうすべきという記載がありますが、日本学術振興会とかはいいのでしょうか。この委員会にNIIの方とJSTの方が委員としていらっしゃって、そこだけ名前というか、機関が特出しされているような気がしています。そういうことはないでしょうけれども、やはり文部科学省が所管する競争的研究費と言っているのであれば、その組織にも何とかすべきというふうに提言を出すか、何か必要ではないかと思いました。
 また、その「べき」というところで、NII、JST、それから日本学術振興会、それから「期待される」というところで言葉を使っているのは学協会、大学研究者等です。「べき」というのは文部科学省が所管していて、そこに対しては上から言えるから「べき」と言っているのではないかと、少し思いました。
 2点目は、先ほどから、分かりやすくした方が良いというのは、この中間まとめとして、どういうものを全体として理想というか、この時点でやるべきと思ってイメージしているかの絵や図は必要だと思います。例えば、参考資料の学術情報のオープン化に関する資料の12ページでは、NIIの役割で、各大学とのつながりが書いてありますし、26ページでは表のような形で、どういうふうにすべきとあるので、何かこういった図があると良いのではないかと思いました。
 以上です。
【西尾主査】  この委員会の中に日本学術振興会の方がメンバーとして入っていないということもあって、日本学術振興会に関することがどうなっているのかという御質問です。そこら辺の配慮など何かあるようであれば、今後、それも明記しておくべきではないかということです。事務局、どうですか。
【渡邊学術基盤整備室長】  今の御指摘ですが、役割という観点からは研究資金配分機関ということで、想定しているのは日本学術振興会、JSTが主な配分機関ということで記述させていただいています。それ以外に明示的に、例えばNII、JSTとございますのは、実際その支援事業を行っているという事業単位でのくくりを念頭に整理させていただいたという背景でございます。
【西尾主査】  今のところでJSTが行うべきと書いてありますが、もし日本学術振興会としての何か記述があるのでしたら、それも今後お考えいただければと思います。
 それと、この中間まとめ案の最後の様式、形態はどうなるのかという美馬先生からの御質問でしたが、このことについては、この審議を始めましたときに、中間まとめについては、榎本参事官としては、可能な限りページ数は少なくし、その上でインパクトがあるものを望んでおられたと思います。
 ですから、今ここまで書いているものに関しまして、今日頂きましたコメントを含めて改訂はしていきますけれども、おおよその全体的な体裁としては現行のページ数くらいということで考えています。
 ただし、美馬先生におっしゃっていただきましたように、図とかに関して、非常に効果があるものに関しましては、その中間まとめの案の後ろの方に参考資料として付けていくということで対応していきたいと思っています。
 あと、今日、高木先生、加藤委員、それから是非、美濃先生もいろいろ御意見を頂ければと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。では、まず加藤委員、どうぞ。
【加藤委員】  3の研究成果の公開についての基本的方策で、(1)の論文のオープンアクセスについての取組ということについては、最初の丸の中に、原則公開とすることを第5期科学技術基本計画の期間中に実行すべきであるという、きちんとした明確な方策が出ているように思いますということと、(2)の論文のエビデンスとしての研究データの公開の丸の1、2、3、4については、エビデンスとしての研究データというよりも、いわゆる研究の中で出てくる幾つかのデータそのものに対する特性だったり、あるいは保管・管理の仕方だったり、あるいは、その中で研究者コミュニティの中でどこまでオープンにするかといったような中の、むしろエビデンスとしての研究データを超えた形の研究データの考え方が記述されているように思われます。
 それはすごく重要であると思っております。そのエビデンスとしての研究データについては、6ページの最初の丸のところに原則公開とすると記述されておりますので、むしろ私は、3ページに戻りまして、(1)の論文のオープンアクセスについての取組ということで、エビデンスとしてのデータについては原則公開とするということとともに、第5期科学技術基本計画の期間中に実行すべきであるというところに踏まえて、明確なメッセージを出された方が良いのではないかと、そう思っております。
 それから(2)の方は、むしろ、今後の研究の最初の方にありますけれども、データ駆動型の研究等、あるいは研究の促進といったようなところの目的としているエビデンスとしての研究データというよりも、研究データそのものを利活用することによってイノベーションを起こしていくという意味での研究データということで、まとめられた方がよろしいのではないかと思います。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。今の点について、事務局の方、いかがですか。
【渡邊学術基盤整備室長】  前回の委員会において、この対象範囲をどうするか、議論の対象範囲をどうするかということについて御議論いただいたと思います。その中で、ここにありますように、論文と論文のエビデンスとしてのデータというのを対象にして、この話を進めましょうということが確認されたと認識しておりますので、その前提で、この中間まとめとしては位置付けさせていただいたということでございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 そうしましたら高木先生。
【高木委員】  ここに書かれている内容について、今までいろいろ意見が出ておりますが、皆さんの御意見もごもっともだと思いますし、特に付け加えることはないのですが、私としては、この中に陽に書かれていないことが少し気になります。
 例えば一つ目は、先ほど少し北森先生も触れられましたけれども、このオープン化を推進するための費用、コストは誰が負担するのかということです。基本的に国が支援すべきとか、JSTが何々すべきと書いてありますので、そこから言外に読み取れるのかもしれませんけれども、例えば受益者負担みたいなものはどう考えるのかとか、様々な議論がこれからあろうかと思いますし、また諸外国の動向も見ながらということだろうと思いますが、今後、中間まとめの後に出るであろう報告書の中に、そのあたりも踏み込まれて書かれるのかどうかということが若干気になります。
 二つ目は、少しささいなことかもしれませんけれども、ライフサイエンスの分野でデータを公開するといったときに、やはり民間企業に公開してよいのかとか、それから外国に見せてしまってよいのかということについては、データ共有の現場ではいつも議論が起きます。ここでは原則公開という言葉で、しかも障壁なくということですので、そのあたりは全部そういうことを含んでいるとは思いますけれども、そこのところが若干、書かれていないので気になるところであります。
 以上です。
【西尾主査】  非常に重い2点をおっしゃっていただきました。結局オープン化を進めるけれども、それに対して掛かるコストはどこが負担するのかということが、一つ目の御質問だったと思います。その辺りについて、榎本参事官、どうですか。
 中間まとめ案の中で、例えば、取り組むべきとかいろいろ書いてある中で、国がいろいろサポートしていかれると捉えてよいのでしょうか。あるいは、最終まとめに向けて、そこの費用のことに関してはもう一段深く考えていく必要があるとか、現時点での状況等について説明をお願いします。
【榎本参事官】  御指摘ありがとうございます。今回、様々な観点の学術情報のお話がございます。まとまったプロジェクトとしてやっているお話もあれば、各大学、学協会単位のこともありますので、それらを全部包括して費用負担のことをここに書き切るわけにもまいりませんので、現時点でこのようにしています。
 資料では10ページの点線囲みのところで、文部科学省関連の現在行っています諸事業の中で、様々なデータが生成されている取組があり、こういったことも今、個別に行われているけれども、今後、それぞれの活動はありながらも、より横断的に取り組んでいくことでビッグデータの更なる活用という視点もあると書いているところでございます。
 ですので、ここに少し個別に、今回予算要求しております事柄も念頭に置きながら入れているところでございますが、これは全体の中の一部でございます。御指摘を頂きましたような様々な観点に関しては、この中間まとめ後に、更に論点整理していきたいと思っております。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 それと、この中間まとめがいろいろな研究の現場において一つの指針として使われる際に、高木先生が今おっしゃったような意味で、例えばライフサイエンス系の非常に貴重なデータといいますか、ビジネスにつながるようなデータに関しても、データがオープンになってしまうというような懸念が生じるということですけれども、そういう場合に関しては、やはり十分配慮すべきというような記述をここにしておいた方が良いということでしょうか。高木先生、是非、御意見を頂ければと思います。
【高木委員】  そうですね。今は公開するかしないかだけの議論ですが、例えば企業秘密は公開しない、多分そのあたりでグレーゾーンというか、国内には見せるけれども、あるいはアカデミックには見せるけれども、企業には見せないとか、多分そのあたりの幾つかのグレーゾーンのところが現実にはあります。外国に見せないといっても、外資系の企業はどうだとか、いつも、そういう堂々巡りの議論になってしまい、非常に難しいと思っておりまして、これが適用されたときに、データ共有の現場ではどういうふうに今後進んでいくのかということが、少し懸念があるということです。
【西尾主査】  ここら辺について、喜連川先生、是非御意見を頂ければと思います。
【喜連川委員】  今、高木先生のおっしゃっていることが、この種の議論の全てだと思いまして、なるべく、いわゆる大人の解釈ができるようにしておくということではないかという気がします。
 つまり、前半におっしゃった資金に対しても、国家に求めるといっても、今の国情においてなかなかそういうものが容易でないということは、もう全員分かっているわけですので、どういうモデルを作っていくかということを学協会が考えるべきことであって、誰かに押し付けるという問題ではないのではないかと思います。
 例えば後段の部分は最も重要な話でありまして、原則公開というのがややきついようであれば、原則公開とする方向とするとか、要するに憲法の解釈と同じで、やはり微妙に大人の解釈ができる余裕を残しておくことは国益上、非常に重要です。そのようにしておいていただくことが本質ではないかと思いました。
 あと、少し個別の部分ですが、先ほどから何度も出ていますが、学協会に期待される取組ということで。
【西尾主査】  何ページですか。
【喜連川委員】  7ページです。複数の学協会が共同して、データジャーナルを構築すると書いてありますが、かなりスペシフィックに書いてあるような気がいたしまして、例えば高木先生の分野ですと、データを公開してもプログラムのバージョンが変わると、出てくるものは10パーセントくらいの差分がどんどん出てくるような世界だと思います。
 前回も申し上げたかもしれませんが、これを見るとデータジャーナルが全てだという感じがいたします。そうではなくて、データジャーナルをはじめ研究データに関する新しい取組というぐらいに、少し広くしていただくのが良いのではないかという気がしますのと、その上のNIIが行うべき取組というところで、研究データの横断的な検索・利活用と書いてありますが、研究データだけをアクセスすることは、実のところ余りないのではないかと思います。つまり、論文とペアになっているのが現実なものですから、ここは冒頭のところに、研究論文に加え各データベースやとしていただくと現実にフィットするのではという気がいたします。
 それから、9ページ目です。この人材育成のところでデータサイエンティストという言葉が出てきていますが、これまでのこのトーンは、データをほかの人が使えるようにしましょう、あるいは実験データをほかの人がもう1回正しいかどうか見ることができるようにしましょうということを言っていまして、データを出したものを誰か別の人に解析してほしいというようなことを、この中では少なくとも一度も言っているわけではありません。このデータサイエンティストという言葉はバズワードですが、世の中的にはデータのアナリティクスをやる人なわけです。これをここに入れると、みんなが出したデータを誰か第三者のデータサイエンティストみたいな人がいて、解析するようなことが重要だというメッセージが出てしまい、それは本来の趣旨からするとフォーカスがずれてしまうのでないかという気がいたします。
 したがいまして、ここは別の言葉を入れるとすると、最近ではアーキビストという言い方をよくしますけれども、データをしっかりと獲得して保存するみたいなところを言っていますので、データキュレーターやアーキビストみたいな、そういう表現が妥当ではないかと感じた次第です。
 以上でございます。
【西尾主査】  一つ一つ非常に貴重なコメントであり、しかも具体的に、どう修文したら良いかということも御指摘を頂きまして、どうもありがとうございました。
 高木先生、先ほどの点については御意見ありますでしょうか。
【高木委員】  一言だけ誤解のないように申しておきますけれども、私は基本的に原則、海外にも、それから企業にも公開した方が良いという立場です。ただ、現実には、やはり、なかなか難しい問題があって、それをどう運用すれば良いかというのは現場では悩みどころだということです。
【西尾主査】  そうすると、喜連川先生の今の御提案の記述であればいずれの意味にもとれますので、これを採用するということでよろしいですか。
 ほかにございますか。美濃先生、何か科学官としていかがでしょうか。
【美濃科学官】  もうほとんど言われているので、全体の整理として、論文とエビデンスとしてのデータという二つのものがありますが、これはセットなのでしょうか。論文があって論文のエビデンスデータがあるというセットだとすると、データだけ、例えば10年保存とか私の大学では決めたのですが、論文はずっと残ります。あるところからデータがなくなっても良いのかという話をすると、それはもう仕方がない、大学としてはそう考えましょうという話になったわけです。
 つまり、論文とエビデンスとしてのデータをセットで考えていくとするならば、論文はリポジトリに入れなさい、あるいは学協会が保管しなさいと書いてあります。ところがデータに関しては、誰が保管するのかよく分からない感じになっています。エビデンスとしてのデータも、やはり10年間とか決めた期間はきっちりと論文とセットで保存しておかなければいけない、そして、誰が責任を持つのかというところが書いていないので、よく分からないという気がします。
 あとは、データジャーナルというのは重要だと思っていて、公開されたエビデンスデータの中から重要なものをデータジャーナルとして永続的に残していこうという話でないかと思います。すると、全体として、論文を書いて、論文データがあって、その論文データの中で重要なものがデータジャーナルとして、かなり長期で残っていって共有されるという大きなストーリーがあるのではと思います。
 それらをどういうふうに全体として国が支援するかというイメージが、もう少し見える方が良いのではという気がいたします。誰が責任を持ってということを明確に書いた方が良いのではないか、それが大学あるいはNIIという話であるならば、そういう基盤を国がサポートするというような形で書いた方が良いと思います。
 これを受け取った人がどうしたら良いかというのが少し見えにくいので、もう少しうまく書いていただくと、有り難いと思います。
【西尾主査】  羽入先生、それを受けて何かありますか。
【羽入主査代理】  よろしいでしょうか。小さいことですが、喜連川先生が先ほどおっしゃっていたことを理解できていないのかもしれませんが、データサイエンティストというのは、ここでは外すという御意見でしょうか。
【喜連川委員】  この中でデータサイエンティストという言葉を入れると、少しコンフュージングになるのではないかという気がいたします。データサイエンティストが意味がないということを言っているのではなくて、ここで出すと少しややこしくならないかということを申し上げました。
【羽入主査代理】  分かりました。確認ですが、そうすると、この(5)の人材育成の取組に関して、研究者の支援の人材と研究データを適切に扱える人の育成が必要であり、それはアーキビストやデータキュレーターで良いということでしょうか。
【喜連川委員】  研究データを再利用する、研究データをエビデンスとして見せられるようにするという仕事のことをここでは書いていて、そのための人材育成というところにはデータサイエンティストは必ずしも入らないのではないかということを申し上げたと思います。
【羽入主査代理】  分かりました。ありがとうございました。
【西尾主査】  羽入先生、今の件はよろしいですか。
【羽入主査代理】  結構です。
【西尾主査】  美濃先生の発言が結構重いのですが、どうでしょうか。これは、ここに書かれていることの主語といいますか、誰がこれをしていくのかというところですが、これは国なのか、様々な機関が総掛かりでやっていくということで書いているのか、その辺について、非常に難しいと思いますが、何か答えがありますでしょうか、渡邊室長。
【渡邊学術基盤整備室長】  データは誰のものかという話が以前からございまして、内閣府の報告書にも、そのデータの所有というような話があったかと思いますけれど、今の現状から見ますと、これも視点が若干異なるので恐縮ですけれども、不正行為の対応としての話が進んでおります。それについては、大学でデータの保存についての規則を定めるという動きができておりますけれども、ここでは、事例を見ますと、一般的には論文を発表した研究者が、そのエビデンスとしてのデータを保存しておく、それはどういう形で何年間保存しなさいということが規定されています。先ほど10年というお話もありましたけれども、そういう取組が一つ出来上がってきているという背景がございます。それとも整合しないといけないということを考える必要があるということはあります。
 それを前提に考えますと、大学で10年間こういう形で保存しましょうということを決めたという話と、これをどうやって公開していきましょうという話は違う取組になりますので、そこら辺の兼ね合いも見ながらハンドリングしていかないといけないのではないかと思います。
 すなわち、現状では、データ作成者が基本的には保管するというような取扱いなり慣行が主流ではないかと考えております。
【西尾主査】  岡部先生、今のことを詰めたいのですが。
【岡部委員】  今のところは5ページの研究データの保管・管理のところに関わると思いますが、美濃先生にも御発言がありましたけれども、不正行為の対応として研究データの保管が義務付けられて、かつ10年という数字も出てきているわけですが、ここに、それに関する言及が全くありません。元々、研究のオープンサイエンスに向けたというところとは目指すところが違うのですが、一方で、全くそれが二度手間になってしまうのも良くなくて、違いを明らかにしつつ、例えば最低限保管するところはどこの責任ですと、それをオープンにしましょうとか、その上で、責任が必ずしもないかもしれないけれども、学協会はこういう取組ができますねと、不正行為に対応するところと、ここのところの関係を明記しつつ、違いも明らかにするような書き方を少し書き加えていただくと良いのではないかと思いました。
【西尾主査】  ということは、今美濃先生がおっしゃったことについて、不正行為対策のところとオープンサイエンスのところでは、誰がどうするかというときに違いが出てくるのではないかと、そういうことですね。
 美馬先生、今のことでよろしいですか。焦点を絞りたいと思います。
【美馬委員】  今のことに関してですが、別の視点から言えば、7ページにある研究成果の散逸等の防止も、アーカイブしておく、保存しておいて公開するということで同じだと思います。このときに、大学に期待される取組というのは、もう京都大学等では始めていると伺いましたけれども、各大学が、これをそれぞれ違うやり方でとか、違う機関でやることになりかねない、各大学が施策を講じるのかという問題があると思います。
 つまり、先ほどのデータや論文は誰のものかということにも関わりますが、人は動きます、それから分野によっても違うだろうという話があって、では大学がそれをやるのか、それから学協会が何かするのかという指針とか、あるいはモデルケースのようなものがないと、大学は手間を掛けて、それぞれみんながやるということになり、かなりの労力等でやった結果が、あるところでふぞろいになるというようなことが生じるような気がします。
 以上です。
【西尾主査】  これは以前からの問題で、相田先生からも、大学により大きな負荷が掛かってくるようなことは、なかなか難しいということだったと思います。喜連川先生、どうぞ。
【喜連川委員】  たしか前回のときに申し上げたと思いますが、目的は原則三つあります。人の作ったデータを他人が利活用することによって研究を加速するということ。それから、人がやったことをもう1回やらなくて済むという効率化ということ。それと、エビデンスとして、その研究を守るということ。この三つを、まず最初に書いておくということが、ややディスパースされているというところから、美濃先生もおっしゃったところのコンフュージョンが若干出ているような気がします。
 そのときに、今、岡部先生もおっしゃったように、第3番目のエビデンスとなるデータというのは、これはもうしょうがないのでコンプライアンスでやりましょうという話があって、これとデータジャーナルというのが、ややこの中でクリアカットされていないところが問題になっているのではないかと思います。
 つまり、論文のために必要となったデータというものとデータジャーナルが直接的につながるというのは、普通あり得ないわけです。つまり、データジャーナルに出るものというのはデータのウエルオーガナイズされたリポジトリなものですから、それを単に、この論文というよりも、もっと広い、ある種プレゼンスを作るようなものを日本が作っていくべきだというようなところが、少しこの中でコンタミになってしまっているところが、美濃先生がおっしゃっているところのややこしさかと思います。
 つまり何が言いたいかというと、データジャーナルに載るような立派なデータベースというのは、自分でどんどんサバイブしていくわけで、それを10年たって残しておくとか残しておかないとか、そういう次元とは根本的に違うところのモデルに入っているのではないかという気がします。
 それから、東京大学の前々総長の小宮山先生が、大体20年か25年ぐらいすると同じ論文が表れるという面白い現象を随分昔におっしゃっていたのですが、多分、北森先生も聞かれたことがあるかと思います。なので、論文のエビデンスとして論文はとっておいたけれども、データは10年で捨てても良いのですかという話は、これはもうフィロソフィカルな話ですけれども、やはりコストとの関係ですから決められないのではないかという気がいたします。
 その話と、先ほど言いましたようにデータジャーナルの話は完全にインディペンデントな話というのを少し整理しておいた方が良いと思います。
【西尾主査】  北森先生、どうぞ。
【北森委員】  そこのところは確かにコンフュージングなところが、この中にかなりあって、データジャーナルを利活用する話と個人がどうするかということとがクリアに分けられていません。
 特に今、この点線囲みの中に組織が取り組むべきことは書いてありますが、個人はどうしたら良いのか、研究者はどうしたら良いのかということが全体にわたって書いていないので、それは、ここの中に入れるべきことなのか、そうでないことなのかも含めて、やはり検討しておく必要があるのではないかと思います。中間報告に対してどうというわけではなくて、この委員会が取り扱う範囲として、個人の取組、研究者の取組ということ、その視点を入れるかどうかということが一つあろうかと思います。
 それと同時に、このオープン化ということと、オープンサイエンス、サイエンスまでオープン化ということで、何がどう変わるのかということを研究者が必ずしも同じように理解しているわけではないので、オープンサイエンス、オープン化ということについても、研究者の観点から何が変わるのか、オープン化の前と後で何がどう変わるのかということに関しても、この委員会ではないかもしれませんが、どこかで啓蒙(けいもう)しておく必要があるのではないかと思います。
【西尾主査】  今、喜連川先生、北森先生、また美馬先生に御指摘を頂きましたとおり、やはり、不正関連のことも含めてエビデンスとして蓄積していくものと、喜連川先生がおっしゃったように、研究を加速するためのもの、例えば、蓄積されている実験データ等を参照することによる効率化ということと、両者が少し混乱している可能性があります。そこで、そこら辺を、まずきっちり整理しておくことが大事ではないかと思います。
 その上で、今、北森先生がおっしゃった意味で、ここの取組の中に、研究者や個人が行うべきことまでの記述を更に項目として加えるのかということに関してですが、どうでしょうか。現状は文章の中で、ある程度それが分かるような形にしておくという段階で、中間まとめに書き込むのはいかがかと思います。わざわざここで研究者個人がどうすべきだということまで書かなくてもいいのではないかと思いますが、それでよろしいですか。
【北森委員】  はい。私も先ほど申し上げましたように、中間まとめとしてはそれでよいかと思います。それを入れるかどうかについても、やはり議論した上で、入れるのであれば入れた方が良いと思います。
【西尾主査】  研究者個人がどうすべきだという記述をするかどうかということはいかがですか。喜連川先生、どうぞ。
【喜連川委員】  それは多分、ある意味で要らないと思います。といいますのは、ここでは主体となる国立大学等という記載がありますが、その法人が雇用している職員に対してどうしましょうということを決めれば良いわけで、研究者でどうこうという次元は書き出すとややこしくなると思います。
【西尾主査】  非常に明快なコメントありがとうございました。それでは、そういう形で進めたいと思います。
 美濃先生のおっしゃったことで、どういうデータを保管するかとかそういうことに対しても、誰が主体となって決定していくのかをより明確にすることが求められます。そのことを含めて、各記述について誰が主体なのかということに関して、中間まとめとしての現時点において、本委員会において大きな議論なく書けるところについては、その方向性をより明快に出しておくということで進めたいと考えます。
 時間が迫っておりますが、ほかに御意見ございませんでしょうか。高木先生、どうぞ。
【高木委員】  一言だけ。先ほど喜連川先生からデータサイエンティストの育成をここに書くのは少しおかしいのではないかというお話がありましたが、この文脈では、私も全くそうだと思います。ただ、現実にはデータを解析し尽くせずに公開すると、単にデータを出しただけにとられてしまうため、成果を出していくという意味でのデータサイエンティストはやはり重要なので、少し文脈は違いますが、そういうのをどこかに、間接的な話ではありますけれども、残してもいいのではと思いました。
【喜連川委員】  それは研究者の問題だからな。
【高木委員】  そうかもしれません。
【西尾主査】  それは少し考えさせてください。ミスリーディングなことになると良くないと思いますので、貴重なコメントとして承りました。ありがとうございました。
 美馬先生、どうぞ。
【美馬委員】  最後に簡潔に。書きぶりの問題で、やはり最初の1ページ目はすごく大事だと思いますが、書き手の癖だと思うのですけれども、一文の中に、期待されるが何とか何とか、何とか広まってきているが何とか、違いがあるが何とか何とかという書きぶりになっているので、ワンセンテンス、ワンミーニングできっちり1ページ目はお願いします。
【西尾主査】  分かりました。非常に貴重なコメントありがとうございます。羽入先生、どうぞ。
【羽入主査代理】  一つ提案です。「背景」の前に主査の文章を加えていただくのが良いように思います。
 例えば、この中間まとめが学術情報のオープン化を推進することを志向しているという一つの方向性を書いて、そして、そのためには具体的な方策が必要であること、また、ここで対象としているのは、公的資金によってなされた研究についてであり、それはなぜかというと、公的資金に基づく研究が社会還元することが重要であると我々は考えるからであるというように、前文のようなものとして書くとよいのではないかと思いました。
【西尾主査】  非常にありがとうございました。前文の書き方が、やはり美馬先生、羽入先生もおっしゃいましたように、中間まとめを最後まで読んでもらえるかどうかの非常に大事なところですので、今、羽入先生がおっしゃいましたように、まず、メタなレベルの記述をし、それから具体的な記述にするという流れの中で、この中間まとめの意義を謳(うた)っていくような形での記述を是非お願いしたいと思います。
 学術情報のオープン化の推進についての中間まとめ案について、今日も本当に貴重な御意見をたくさん頂きまして、どうもありがとうございました。頂きました御意見を基に、今日の資料1に関して、相当な加筆・修正になるかもしれませんが、今後事務局と一緒に、その作業をしていきたいと思っております。
 それで、時期的なこともございますので、中間まとめとしての最終的なバージョンについては私の方に一任いただいて、その中間まとめとしての最終的な案というものに関して、皆様方に1回電子メールで送らせていただいて、もしそれに対してコメントがありましたら更にそれを反映するということで、本委員会としての中間まとめの議論は、今日で一応最後としたいと思っております。そういう形で当方にお任せいただくということでよろしいでしょうか。
 どうもありがとうございました。本当にこれまでの御審議に対しまして、改めて心より感謝申し上げます。本当に貴重な御意見をありがとうございました。
 それでは、事務局から平成28年度文部科学関係概算要求のポイントの報告をお願いいたします。
【渡邊学術基盤整備室長】  資料2を御覧いただきたいと思います。平成28年度文部科学関係概算要求のポイントということで、かいつまんで御説明申し上げます。
 文部科学省の要求全体といたしましては5兆8,552億円ということで、5,249億円の増要求という形でございます。
 ポイントだけでございますが、ページが飛んで恐縮ですが、6ページを御覧いただきますと、国立大学法人運営費交付金の要求ということで1兆1,365億円でございます。この委員会とも関係しますが、例えばアカデミッククラウドの構築に係る支援等の事項については、この運営費交付金の内数で要求させていただいているという状況でございます。
 また飛んで恐縮ですけれども、科学技術関係の予算については13ページ以降でございます。科学技術予算といたしまして1兆1,445億円の要求をさせていただいております。
 この中で情報関係の関係事項で申し上げますと、中ほどより下の囲みにございます大変革時代における未来社会への挑戦ということで、人工知能、ビッグデータ、IoT、サイバーセキュリティ統合プロジェクトの創設について、新規で100億円の要求をしている状況でございます。
 また、次の14ページごらんいただきますと、中ほどですが、科研費について2,420億円ということで、147億円の増といったことで要求させていただいております。
 主な事項は以上です。
【西尾主査】  何か御質問等はございますでしょうか。よろしいですか。
 それでは、最後の事務連絡ですが、小松局長、何かございますか。是非お願いいたします。
【小松研究振興局長】  今日は、様々な観点からの御議論ありがとうございました。私は8月に研究振興局長に着任しまして、それ以降、様々な会議に出させていただいているのですが、最もたくさんのメモ書きが、この資料に入った会議でした。
 中に御意見ございましたけれども、どこどこに求められる、どこどこに期待される取組、何々が行うべき取組ということで、国に対して求められていることが非常にたくさんあるということを痛感しています。また、NIIとかJSTが行うべき取組というのも、最終的には国の方が何かをしなければいけないということで、これはとても大事なことですが、かなりお金が掛かる分もありますし、皆さんの意識を変えていただかなければならない部分もあるかと思っています。
 そういったことで、国が行うべきことについて、これは中間まとめの段階ですけれども、今から最後に向けて、どういう順番でロードマップを頭に思い描くということと、それから、やはり優先順位をどう付けていくかということも考えておかなければならないと思いました。
 また、もう1点で、これは文部科学省系列のお金を使っている研究に、とりあえず限定されているという議論ではございましたけれども、それ以外のお金で、特に公的資金が入った研究についても同じように扱っていただきたいというようなメッセージを、うまく発していくことができれば有り難いと思っております。
 本当にどうもありがとうございました。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。最後におっしゃっていただきました点、報告書の中でも是非記述していきたいと思っております。
 そうしましたら、今、局長からのお言葉を頂きましたので、最終的に事務局から連絡事項等あればお願いいたします。
【渡邊学術基盤整備室長】  先ほどもございましたように、中間まとめの最終案については主査に御確認いただいた上で、各委員に御照会申し上げたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。
 本日の議事録については、各委員に御確認いただいた上で公開させていただきます。
 最終的な取りまとめに向けた次回以降の会議でございますけれども日程調整の上、追って御連絡させていただきます。
 以上でございます。
【西尾主査】  それでは、閉会とさせていただきます。本当に皆様方、貴重な御意見、コメントを多々頂きまして、ありがとうございました。心よりお礼申し上げます。
―― 了 ――

お問合せ先

研究振興局参事官(情報担当)付学術基盤整備室

佐々木、三石
電話番号:03-6734-4080
ファクシミリ番号:03-6734-4077
メールアドレス:jyogaku@mext.go.jp(コピーして利用される際は全角@マークを半角@マークに変えて御利用ください)

(研究振興局参事官(情報担当)付学術基盤整備室)