資料1-1 論点の展開イメージ(案)(1)

科学技術・学術審議会 学術分科会
学術の基本問題に関する特別員会

(第2回)

平成26年3月24日 

 

論点の展開イメージ(案)

0.はじめに(現状認識と危機感の共有)

○(短期的な経済効果を重視した財政投資の方向が強まることで)学術研究の衰退により我が国の将来的な発展や国際社会への貢献が阻害されてしまう。また、それにより、これまで我が国が築き上げてきた国際社会における地位や存在感が保てなくなる。

○学術研究は近年の厳しい財政状況の中でも一定の財政投資がなされてきたが、その投資効果について厳しい見方も強まっている。

1.国力の源としての学術研究の本来的意義について

※学術研究
個々の研究者の内在的動機に基づき、自己責任の下で進められ、真理の探究や課題解決とともに新しい課題の発見が重視される研究であり、基礎研究、応用研究、開発研究を含む。

1)意義(「国力の源」の観点から改めて意義を整理)

(1)知的探究活動それ自体により知的・文化的価値を創出・蓄積(人類の本質的な知的欲求に対する新たな知見の提供にも寄与)
【例】宇宙探査(はやぶさ)、素粒子、哲学 等

(2)現代社会において実際的な経済的・社会的・公共的価値を創出(産業への応用・技術革新、生活の安全性・利便性向上、病気の治癒・健康増進、リスク対応、新概念の創出)
【例】青色発光ダイオード、導電性パネル、再生医療 等

※上記のような価値は、当初意図しないところ(研究遂行に必要な機器の開発等も含む)
から創出されることも少なくない。【例】クラゲ→緑色蛍光タンパク質の発見、素粒子研究→光電子倍増管、極域観測→地球環境問題解決への貢献、コジェネレーションシステム開発等のスピンオフ効果等

(3)豊かな教養や高度な専門的知識を備えた人材の養成・輩出の基盤
(教育研究を通じて、我が国の知的・文化的背景を踏まえ世界に通用する豊かな教養や高度な専門的知識を有し、自ら課題を発見したり、未知のものへ挑戦する学術マインドを備え、広く社会で活躍する人材を養成・輩出)

(4)上記(1)~(3)を通じた知の形成や価値の創出等による国際社会貢献(高度知的国家の責務)・国際社会におけるプレゼンス向上 →経済・外交・文化交流等全ての礎
【例】途上国法整備支援、地震・津波研究、先端医療技術(課題先進国として様々な研究成果・知見の提供) 等

⇒(1)~(4)は(各々個別のものではなく)相互に関連・作用しており、これらにより人類社会の持続的発展、現在及び将来の人類の福祉に寄与=「国力の源」
また、これらの価値の創造には、未知なものへの挑戦とそれに伴うtry and error などが基軸であるため構造的にある程度の時間が必要。

2)上記1)の学術研究の意義を「イノベーション」との関係において改めて整理

○「イノベーション」の意味の確認
→イノベーションは、上記(2)(の一部)ではない。(1)(2)を包含した新たな価値の創造。(3)はそれらを担うもの。
○オープンイノベーションの時代にあって、イノベーションのためには、・社会の変化に応じた様々な需要に応える多様で質の高い学術研究という苗床・学術研究と社会とのインターアクト(知の共有と還流)が必要

○既知の出口への距離の短縮だけではなく、出口のないところに全く新たな出口を創出したり、新次元の出口を示唆する入口を拓くのが学術研究(新たな伸ばすべき強みの創出、本質的にハイリスク・ハイインパクト、(企業等では行われにくい)中長期的な研究)
 【例】分子生物学→バイオテクノロジー 等
○与えられた課題の解決ではなく、新たな課題を発見し、それに挑戦するのが学術研究(セレンディピティ(目的とは違った実験結果や失敗を新しい発見やアイディアにつなげる能力)も重要、世界をリードするフロントランナーとしての役割)
 【例】導電性高分子 等

○持続可能なイノベーションの源泉としての学術研究
(現在見えている出口につながる研究に絞ってしまうと早晩出口はなくなる。出口と入口は相互補完・対流関係。(出口と入口のバトンゾーンも必要))
2.学術研究が「国力の源」としての役割を果たすための課題と解決の方向性

○学術研究が1.のような役割を果たすことで、人類社会の持続的発展等に貢献することが社会から求められている。

そのため学術研究は、
 ・新たな知に挑戦する力、新たな知を創出する力
 ・次代を担う人材を育成する力
をより一層発揮していくことにより「国力の源」になることが必要。

○現在の学術研究は、その役割を十分に果たしているのか?果たしていないとすれば、何が課題となっているのかを検討し、その解決に全力で取り組むことが必要。

○課題解決の基本的方向性等
 ・学術研究の担い手である学術界(研究者個人、大学等研究機関、学術コミュニティ(学会等))の自己改革等
 ・上記を前提とした国による学術研究振興施策の改革等

※改革の検討に当たっては、学術研究と社会とのインターアクト(対話、発信)に留意が必要。また、分野の特性に応じた取組や支援が必要。

3.学術界が行う具体的な取組(課題解決方策)

学術界が自主的・自律的に「国力の源」として研究活動を活発に行うための自己努力について

(これまでの取組も踏まえ、さらに必要な取組を検討)

○現場レベルにおける徹底的な意識改革(個人レベル、組織レベル、学会等レベル)
 ※意識改革は制度改革等と相補的に取り組む必要があることに留意。

○組織改革、評価制度・人事制度、組織内資源配分等の改革

○説明責任をよりよく果たすための学術研究の意義や成果等の戦略的発信(広報、対話)の強化

4.国が行う具体的な取組(課題解決方策)

学術界が自主的・自律的に「国力の源」としての研究活動を活発に行う自己努力を後押しする支援の在り方について

○財政支援

○制度改革

○その他
各施策における意識改革促進のための改善、学術研究の意義や成果等の戦略的発信(広報)の強化  等

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