学術情報委員会(第13回) 議事録

1.日時

平成26年9月3日(水曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 学術情報基盤の整備の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

西尾主査、羽入主査代理、上島委員、岡部委員、加藤委員、喜連川委員、倉田委員、後藤委員、斎藤委員、竹内委員、辻委員、土方委員、美馬委員、山口委員、吉田委員

文部科学省

(学術調査官)市瀬学術調査官、小山学術調査官
(事務局)常盤研究振興局長、山脇大臣官房審議官、安藤振興企画課長、鈴木参事官(情報担当)、長澤学術基盤整備室長、松本学術基盤整備室長補佐

オブザーバー

安達国立情報学研究所副所長

5.議事録

【西尾主査】  それでは、時間になりましたので、ただいまより第13回学術情報委員会を開催いたします。
 まず、本委員会の審議のまとめであります、教育研究の革新的な機能強化とイノベーション創出のための学術情報基盤整備につきましては、8月下旬に大学等に向けて発信をすることができました。この委員会におきまして、皆様方には本当に真剣なる議論を多々頂きまして、審議のまとめを発信することができたことに関しまして、改めて感謝申し上げます。本当にどうもありがとうございました。
 今回は、SINETの平成27年度にむけての概算要求の状況、それからジャーナル問題に関する検討会のまとめ、更に第5期科学技術基本計画策定を見据えて、その議論に資するような今後の学術情報基盤の在り方について意見交換をしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず、事務局より人事異動についての紹介をお願いいたします。
【松本学術基盤整備室参事官補佐】  それでは、事務局に異動がございましたので、紹介させていただきます。7月25日付で研究振興局長の小松親次郎が初等中等教育局長に異動し、後任に常盤豊が着任しております。
【常盤研究振興局長】  研究振興局長の常盤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。私、前職は高等教育局で審議官あるいは私学部長ということで、大学関係の仕事をずっとさせていただいてきております。その関係で言うのも何ですけれども、この学術情報の分野は、大学における研究教育の基盤の分野だと思っております。特にSINETの問題、あるいはジャーナル問題ということで、今非常に事柄が動いておりますし、また関心も高い分野だと思っております。
 さらに、第5期の科学技術基本計画の策定を見据えた議論ということで、とても重要な時期であると思っておりますので、是非、先生方から引き続き大所高所からの御指導いただければと思っております。
 どうぞよろしくお願いいたします。
【西尾主査】  常盤局長、お言葉を頂き、どうもありがとうございました。是非、今後ともいろいろな面で御支援御指導を頂けますよう、よろしくお願いいたします。
【松本学術基盤整備室参事官補佐】  次に、8月1日付で、参事官の下間康行が山梨大学に異動しまして、後任に鈴木敏之が着任しております。
【鈴木参事官】  鈴木でございます。情報担当参事官として、こちら本委員会の事務局をお預かりさせていただきます。今後どうぞよろしくお願いいたします。
【西尾主査】  どうかよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。それでは次に、配布資料の確認及び傍聴者の報告をお願いいたします。
【松本学術基盤整備室参事官補佐】  それでは、お手元の議事次第に基づきまして、資料の確認をさせていただきます。配布資料としまして、資料1、平成27年度概算要求、SINETの整備について、資料2ですが、本委員会の審議まとめの概要でございます。資料3、ジャーナル問題に関する検討会の報告書の概要でございます。資料4、今後の学術情報基盤整備の在り方についての検討資料。資料5、今後の学術情報委員会の日程についてでございます。参考資料としまして、参考資料1、平成27年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について。参考資料2-1、平成27年度科学技術関係予算概算要求概要。参考資料2-2、平成27年度概算要求高等教育局主要事項。それから参考資料3と4でございますが、本委員会の審議まとめの冊子体とジャーナル問題検討会の報告書の冊子体を用意してございます。それ以外の机上資料としまして、過去の審議まとめ、それと過去の本委員会の資料をドッチファイルで用意をしてございます。不足等あれば、事務局へお申し付けいただければと思います。
 なお、本日の傍聴登録者でございますが、26名の登録となっております。
 以上でございます。
【西尾主査】  どうも、報告ありがとうございました。資料等につきまして、よろしいですか。
 それでは、早速でございますけれども、平成27年度概算要求につきまして、事務局より説明をお願いいたします。
【長澤学術基盤整備室長】  それでは説明をさせていただきます。先生方におかれましては、長い間御議論いただきまして、やっとその審議まとめが出来上がりました。資料2が概要でございますけれども、おおむね資料1の概算要求の内容につきましては、この資料2の御審議いただいたまとめに沿った形で要求をさせていただいておりますので、詳細につきまして御紹介させていただきたいと思っております。
 資料1を御覧いただければと思いますけれども、新しいステージに向けた学術情報ネットワーク(SINET)整備ということで、右肩のところを御覧いただくと、平成26年度58億円、平成27年度要求額約79億円という形で、21億円増という3割以上の増額で一応要求をさせていただいてございます。
 内容につきましては、概要のところにありますけれども、通信回線それからプラットフォーム的な共通の基盤、ストレージといった共通の基盤、それから学術情報流通の整備。それから4、5が新しい部分でございますけれども、次期SINETへの移行経費。それから次期SINETに向けた機能強化に関する経費という構成で出来上がっておるところでございます。
 その内容につきまして御説明させていただきますが、1枚めくっていただきまして、2ページでございますけれども、SINET4から5への移行という形で、SINET5におきましては、100Gbps回線の全国的な導入と、その後の400Gbps回線の円滑な導入ということで、これは技術開発的な要素を将来的にやっていくということでございます。
 国際回線の高速化ということで、日米、日欧、アジアということで、将来的に100Gbpsで3本整備する。それから機能強化の側面でございますけれども、ABCDございまして、ネットワークサービスの機能開発、セキュリティ基盤の構築、クラウド基盤、学術情報基盤の高度化ということで出来上がっております。
 その詳細ですが、次の3ページのところで、移行経費に関する御説明ですけれども、SINET4のときと同じなのですけれども、ネットワークを途切れさせるわけにいかないということで、土日、夜間に切替えを実施するための経費を要求をしております。
 内容につきましては、移行はまずSINET5とSINET4というものを併用して構築しまして、そこをつなぎ回線で移設していくというイメージでございます。国内回線につきましては、土日夜間でやっていきますので、できる範囲が限られておりますので、約3か月を要します。国際回線につきましても、約1か月を要するということで、その間、並行して走らせる必要がございますので、その経費として14億円を要求しているところでございます。
 次の4ページでございますけれども、機能強化のネットワークサービス機能開発というところでございますが、これはSINET4でやっておりますオンデマンドサービスという、ニーズに応じて専用で使えるような形のサービスを、SINET5でバージョンアップした形で継続させるために改修が必要な経費。それから、クラウド時代を見据えまして、新しいSDNというSoftware Defined Networkingという形で、ネットワークを融通させて制御しながら回線を有効活用するための技術という形を導入する形を採るというイメージの経費として約5,800万円の要求をしてございます。
 それからセキュリティ基盤の構築という形で、これにつきましても、クラウドをしますとセキュリティが大事だということでございますので、この委員会でも御議論ございましたSINETの入り口のところで防御する。各大学で、もしかしてセキュリティに不安があるところもあるかもしれないということもございますので、SINETの入り口のところでしっかりと防御して、クラウドに安心して導入できるようにするためのセキュリティの強化と、それからセキュリティを監視するという仕組みをSINET5のところに導入しまして、SINET5全体としてセキュリティを監視して防御して対応していくという経費として約4億円の要求をしているところでございます。
 次に(C)で6ページでございますが、クラウド基盤の整備でございます。クラウドを導入していただくためには様々なエンカレッジするシステムが必要だということで、クラウドゲートウェイ構築という形でございますが、利用できる様々なサービスを案内して、そこの有利な内容とか、利用できる環境というものをSINETで提供して、各大学がクラウドを導入しやすくするための経費。
 それから、各大学が行っているクラウドを連携して、より広範なクラウドシステムを導入するためのインタークラウドの関連する基盤システムの構築という観点で、これは約1億6,000万円の経費を要求しているということでございます。
 それから(D)のところの学術情報を有効に利活用できるような基盤の高度化ということで、CiNiiなどで検索できるようになっていますけれども、機関リポジトリで様々な文献データといった蓄積が進みつつあるわけですけれども、それとCiNiiとか、そういったポータルサイトの連携を図って、より必要なコンテンツが容易に出てくるような機能性を高めるための検索機能といったものを実装する。
 それから、大学における学術情報の利活用の情報、アクセスログといったものも含めてですけれど、利活用の情報とか、学生の学修に関する利用履歴を取得して解析をしまして、大学にフィードバックできるような仕組みを構築して、そういった情報を適切に分析して今後の学術情報コンテンツの利用につなげるような基盤の高度化として約6,000万円の要求をしているところでございます。
 この全体のSINETの経費につきましては、次のページでございますが、国立大学の運営費交付金の中で措置をされているわけでございますけれども、全体としては大規模学術フロンティア促進事業として新たに位置付けまして、この絵が付いているところの右上でございますけれども、関連の経費、概算要求を行ってございます。その一環として、関連の経費を行っているという予算の構造でございます。
 参考ですけれども、来年度の概算要求の方針は、基本的には10%基礎的な額を減らして、その減らした残りの90%に対して、30%上乗せして要求できるという仕組みになってございますけれども、こういうスキームの中で、今回約21億円増の要求をさせていただいているというのが現状でございます。
 参考で、そのほかの事柄につきまして御紹介させていただきますと、参考資料2-1が科学技術関係予算概算要求の概要ということでございます。これは研究3局の要求の内容で、このような形で整理をしております。
 実際、SINETは関係ないのですけれども、例えば6ページのところに科研費につきましては132億円増の2,408億円の要求になっているという内容が、この中に盛り込まれております。
 それから、高等教育局の主要事項としての資料が、参考資料2-2でございます。2ページをお開きいただきますと、国立大学法人運営費交付金という項目がございますが、その中に、今申し上げました共同利用・共同拠点とか、共同利用機関で実施される大型プロジェクトの推進ということで、大規模学術フロンティア促進事業とか、国内外のネットワークの構築という言葉がございますけれども、この中でSINETの予算を要求させていただいているところでございます。
 その他、関連するところでございますけれども、4ページのところの、例えば私立大学等教育研究活性化設備整備事業といったところで、アクティブラーニングの支援とか、5ページの黒い項目の2番目の、革新的・先導的教育研究プログラムの開発推進というところのポツの3番目ですけれども、大学教育再生加速プログラム(AP)というところで、これもアクティブラーニングの支援を行っているというものがございます。
 概算要求の概要につきましては、以上でございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 続きまして、鈴木参事官から、よろしくお願いいたします。
【鈴木参事官】  ただいま室長から御説明申し上げましたとおり、SINETに関しましては、その強化と安定運用が喫緊の課題であるという基本認識に立って、概算要求を行ったところでございます。
 私どもといたしましては、本委員会、先生方の御尽力によりまして、7月におまとめいただいた審議まとめ、この考え方を踏まえまして、国立情報学研究所の予算所管するところの学術機関課、関係部署との連携を図りながら、SINET強化の意義、必要性、これらについて財政当局の理解を今後求めていく所存でございます。
 また、今後の見通しに関しまして、もちろん、まだこれからということでございますけれども、財政事情自体は大変厳しいということで、今回のSINETの関係予算につきましては、今御説明したとおり、58億円から79億円へという21億円増ということで、相当大幅な要求をするということでございますので、財政当局との関係もなかなか楽観は許されないということではございますが、いずれにいたしましても、私どもSINETの計画、構想、これからいよいよ具体化していくという段階に入りますので、財政当局との折衝を行いながら、様々な観点に立って、この検討を深めていきたいと思います。
 恐らく、いろいろな財政当局からの指摘、注文も出てこようかと思いますが、私どもとしましては、インフラであるSINETを利用する大学等の関係機関の皆様の理解、協力を得て、初期の狙いのとおりに学術研究の振興、それから大学改革の推進に寄与するような形になるように、私どもとしては適切に対応してまいりたいと考えております。
 よろしくお願いいたします。
【西尾主査】  鈴木参事官、御説明を頂きありがとうございました。
 今、御説明いただきましたように、この委員会で審議してきました結果である審議まとめに記載されている方向性に沿って、今回、前年度比で21億円増という概算要求をしていただきました。特に大規模学術フロンティア促進事業の一環として、本件を要求していただけるということ自体、非常に大きなことであると思っています。
 この状況に至るまでに、私としましても、本委員会の皆様方にSINET、それからアカデミッククラウド基盤に関しまして真剣な議論を多々頂きましたことに、改めてお礼申し上げます。SINETの問題に関しましては、昨今、欧米・中国との比較のもとで危機的な状況であるということで、昨年来、文部科学省の方々といろいろ協議してきました。そのときに文部科学省から我々に頂きました課題としましては、この委員会で審議することは当然のことでございますけれども、学術コミュニティの方々からきっちりと御支援を頂くということ。それから大学関係の方々からは、全ての国立大学、公立大学、私立大学全てから支援を頂くこと。政府の方にも、十分に理解を頂くことということでした。このような様々な課題を克服すべく、今まで鋭意努めてきた次第でございます。
 特に学術コミュニティの関係に関しましては、日本学術会議においてマスタープラン2014が策定される過程において、SINET関係を日本学術会議からの重要な大型研究計画の一つとして位置付けていただくことができました。喜連川先生にもいろいろ御尽力いただきまして、マスタープラン2014の策定過程において高い評価を得て、それが文部科学省におけるロードマップ2014の策定にうまくつながるような形で進んでまいりました。更に日本学術会議からは5月に提言という形で、SINET強化の必要性を強力に世に出していただくことができました。
 それから大学関係に関しましては、羽入先生に国立大学協会との間で本当に大事なインターフェースの役割をしていただきました。羽入先生には、後でその状況については御説明いただくことをお願いしております。多大なる御尽力のおかげで、大学関係に関しましても大きな支援を得ることができまして、文部科学大臣に本件に関する要望書を提出するところまで実現することができました。
 政府関係に関しましても、日本学術会議の下でシンポジウムを開きまして、その席に総合科学技術・イノベーション会議の久間議員に御出席いただいて、学術情報ネットワークSINETの重要性を御認識いただく機会を設けました。
 我々としまして、来年度に向けての概算要求の機会を逸すると、これは本当に日本の学術あるいは教育関係において大きな問題になるという認識の下で、皆様方に本当に多々御協力いただきながら進めてきた次第でございます。
 ここに改めて、高い席からでございますけれども、心よりお礼申し上げます。
 羽入先生、御尽力いただきました件につきまして、お話しいただきたく。
【羽入主査代理】  西尾先生には、この間、この委員会のリーダーシップを取っていただきまして、そのおかげさまで国立大学を始め、私立大学、公立大学にも呼び掛けることができました。いずれもSINETの必要性については、既に十分理解しているものではございますが、これが日本の学術のみならず、学術という言い方が非常にいろいろに理解されることが多いので、あえて申し上げれば、科学技術・学術の発展を促すためにというか、最低限維持するためにも必要なものであるということを共通認識として持ちました。
 そこで、国立大学協会全体がSINETのお世話になっておりますので、国立大学協会として、公立大学協会にも呼び掛けました。公立大学協会は8割がSINETにお世話になっております。更に私立大学団体連合会、私大は320校ぐらいですけれども、連合会として御賛同いただきました。そこで、国公私立の大学の団体として要望書を下村大臣にお渡しし、そしてその際に、私から御説明をいたしましたのは、これは単に大学だけの問題ではなくて、日本の科学技術発展のために、あるいは国の政策であるイノベーションの創出のための必須事項であるという説明をさせていただいて、そして大臣には御理解を頂くことができたと思います。
 単に教育の場面ということだけではなくて、今、国が投資している科学技術予算を生かすためにも、最低限必要なことであるということを下村大臣には御説明をしたつもりです。一部の文教科学委員会にも御説明をさせていただきまして、その重要性、それから予算の必要性についても御理解を頂きつつあるのではないかと思っております。
 恐らく、これからも引き続き様々な努力をしていくことが重要ではないかと思っておりますので、また、西尾先生にもいろいろ教えていただきながら活動していきたいと思っています。
【西尾主査】  羽入先生、本当に御尽力どうもありがとうございました。数度にわたりまして、またかというぐらいヒアリングに出ていただきました喜連川先生、また、NIIの安達先生にも大変御尽力いただきました。
 喜連川先生、何か一言お願いいたします。
【喜連川委員】  私も、自分の研究予算以外で、これほど多くのヒアリングを頂戴したのは人生で初めてでございました。最初に、本学術情報委員会の中でSINETに関しまして、非常に丁寧な御議論を頂きましたことを、心よりお礼申し上げたいと思います。
 西尾先生には常に適切なステアリングをしていただきました。また、羽入先生には国大協に関しまして大変な御配慮を賜りまして、ありがとうございます。私も参議院、衆議院の議員の方まで御説明にお伺いするなど、いろいろな努力をほんの少しだけさせていただいた次第です。
 現状のSINETは、非常にシャビーな、見劣りのする状況でございますけれども、今回約21億ということではございますが、これを活用させていただきまして、先ほどフロンティアというお言葉がありましたが、少なくとも世界と伍(ご)するレベルまで圧倒的パワフルな学術情報基盤を、この御予算で構築を進めたく、100%私ども確信を持って推進して参りたいと考えております。
 しかしながら、一方で、この予算の中のマジョリティーは、実は先ほど長澤室長から御説明ありましたように、移行経費になっているということも御理解いただく必要があろうかと思いまして、私どもとしましては、この学術情報委員会の中で御議論いただきましたようなセキュリティですとか、あるいはクラウドですとかコンテンツですとかという方向に、より高いレベルでの学術を圧倒的なスピードで進展させるような加速するエンジンをSINETの上に作っていきたいと思っておりまして、ますます今後御支援をいただけますと、大変有り難いと思っております。
 21億という、大変大きい増額予算を御要求していただいて、文部科学省様におかれましては、非常に大きな御努力をお願いすることになろうかと思いますが、私どもが100%申し上げますのは、21億掛けて、やっぱりやってよかったと言えるようなネットワークを必ずお作り申し上げる決意でございます。皆様にめいっぱいエンジョイしていただける、そういう学術基盤を28年度4月1日からスタートしたいと思いますので、是非引き続き御支援いただければと思います。
 どうも、本当にありがとうございました。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。文部科学省には、こういう形で要求いただけたことに対しましてお礼申し上げますとともに、これから12月の内示までの期間が大変な時期になるかと思いますけれども、そこを何とか総力戦で乗り切って、日本の学術情報基盤に関して光が差してくるように、今後皆で頑張っていければと思いますので、どうか今後とも何とぞよろしくお願い申し上げます。
 では、SINET関係のことに関しましては、一応ここで閉じたいと思いますが、皆様方からこの概算要求に関しまして、御質問とか、御意見とかございませんか。
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、本年3月から7月にかけて、計5回開催されましたジャーナル問題に関する検討会の報告について、事務局より説明をお願いいたします。
【長澤学術基盤整備室長】  それでは御説明させていただきます。ジャーナルの問題が非常に逼迫(ひっぱく)して大変だという状況から、この委員会で検討会を設けることにつきまして御説明をさせていただいて、また、この中で竹内先生と加藤委員に参加していただいて、ジャーナル検討会というものを、局長の私的諮問委員会でございますけれども、設けて議論をさせていただきました。今回まとめを出させていただきましたので、御紹介させていただきます。また、今後も継続してこの問題に取り組んでいく必要がございますので、御意見等頂ければ幸いだと思っております。
 それでは説明を、資料3の概要でございますけれども、冊子も別途用意しておりますが、概要に基づきまして御紹介させていただきたいと思っております。
 まず、この問題意識といたしまして、ジャーナルは結局、研究成果の論文が載りますので、研究の推進とか、研究成果の社会の応用といった観点で不可欠な情報資源になっているということでございます。
 しかしながら、日本の状態というのは学協会を細分化して運営体制も脆弱(ぜいじゃく)であり、ジャーナルの刊行・流通というものを海外の有力出版社に依存するケースが多いという現状がございます。
 一方で、研究者の方々にとりましては、海外の有力なジャーナルに成果を投稿することで評価が得られるということからしますと、国際的なジャーナルに成果を投稿せざるを得ないという状況がございます。
 こういったことがございますので、日本のジャーナルの強化とともに、海外のジャーナルの国内利用環境の整備というものが、学術情報基盤構築における重要な政策課題として長年引き続き存在しているわけでございます。
 今般、特に毎年ジャーナル価格が向上しまして、包括的な購読契約に依存しているということで、それが仕組みとして硬直化している。それから円安。まだ決まってはおりませんけれども、海外からの電子的サービスに対する消費税課税の可能性が高まっていることからしますと、各大学のジャーナルへのアクセス環境を維持できないところまで来ておるということがございます。
 ただ、この検討会といたしましては、このままジャーナルに対する予算を増額していって、どんどん確保すればいいということでは根本的な解決になりませんので、ジャーナルを長期的にどうやって維持・発展させていくかということを本質的に考え直す必要があるのではないかということを問題意識として掲げているところでございます。
 まず、現状の把握と過去の価格上昇への対応ということでございますけれども、現状におきましては、ジャーナルは電子ジャーナルが主流になってきております。ジャーナルの平均値上げ率は年7.8%にも上っております。それから最近の円安の為替の影響ということもありまして、平成24年度でジャーナルの購読経費として国公私立大学全体で227億円も支払っているという状況がございます。
 その理由について検証しましたところ、国際的な論文数の増加、代替品がないという市場の特殊性、商業出版社に依存している体制、それから、研究者の方々は利用する方なのですけれども、購入者は図書館とか大学の本部ということで、利用者と購入者が異なることにより生じますモラルハザード、あった方がいいというイメージですけれども、そういったいろいろな要因が複雑に影響しているということでございます。
 大学では自主的にコンソーシアムを組みまして出版社と交渉しているのですけれども、価格上昇の抑制という観点では成果を上げておりますが、価格上昇そのものを取り除くことはできなくて、3割上昇を1割に抑えるという形の交渉で、上昇そのものを取り除くことはできないということでございます。
 その背景ですけれども、ジャーナルの購読形態におきまして、各大学が包括的な購読契約を締結している場合が多いわけですけれども、この契約がメリットがあるということになりますので、この契約見直しが慎重になる要因になっているということで、これをどうするかが課題ということでございます。
 次のページですけれども、大学における対応としましては、ただ、包括的購読契約、いわゆるビックディールというものですけれども、メリットが大きいということで、これまでやってきたのですけれども、値上げが続きますと、さすがに本当にメリットがあるのかということになってまいりまして、各大学の委員の先生方の対応を聞いてみますと、既にニーズ、利用状況をデータに基づいて分析して、見直しを図っている大学が結構あることが分かります。それでメリットがあれば継続しているということで、情報をデータに基づいて分析することが必要だということが分かったということがございます。
 それを踏まえまして、今後の課題と対応の方向性ということですけれども、アメリカ等にRU11で視察に行かれたということもございまして、その委員の先生からの御報告に基づいた内容ですけれども、ジャーナルの購読契約見直しに当たっては、データを取ったり、必要なジャーナルを把握したり、裏付けとか選定ルールとかをオープンにするといったことが重要だということでございまして、各機関でどういった取組をして、どういったことをやっているかということで情報共有することが重要だということでございました。
 その情報共有した上で、各大学でミッションとかニーズを勘案しながら、最も合理的な契約形態を選択することが求められるだろうということでございます。
 そのための必要なデータにつきましては、図書館が責任を持って行う必要があるということでございまして、大学と研究者と図書館が一体になって、このジャーナル問題を検証することが必要だろうということでございます。
 ナショナル・サイト・ライセンスということで、これは各大学は厳しいので、国が一手に契約すれば安くなるのではないかという御議論が一部あるわけでございますけれども、この内容についても審議していただきまして、その結果ですけれども、ナショナル・サイト・ライセンスの二つ目の丸ですけれども、この方法は結局、ジャーナルの価格上昇を抑えるということではなくて、逆に一本契約になってしまいますので、更に契約が固定化されて、やめるにやめられない状態になるということでございます。
 では、どういう契約をするかということで、各機関の調整とか、財源をどうするかとか、様々な問題が生じることが明らかでございますので、やはり購読規模のメリットを追求するのであれば、コンソーシアムの中での問題を共有する機関間で検討した方がいいということで、同じ志向のある大学間で協調関係を組んだ方がいいという話でございました。
 オープンアクセスということで、結果どうするかということでございますけれども、商業出版社の方でビックディールをやめられないという大学の状況が価格上昇につながっておりますので、こういったビックディールを見直すという流れと、それからオープンアクセスを推進するということで、結果的に現行のジャーナルのビジネスモデルの形に変化をもたらす可能性が強いのではないかということでございます。ただ、その際に、セーフティーネットとしては諸外国でも進んでいますけれども、機関リポジトリに公開するオープンアクセスというものを推進していくことが必要ですので、特に図書館等も中心になりながら、積極的に関与していくことが必要だということでございます。
 あと、オープンアクセスの推進についてということでございますけれども、オープンアクセスについて、しっかりと理解されていないところが多いのではないかということもございますけれども、学術論文をインターネットを介して無料でアクセスして再利用を可能にするということで、再利用を可能にするというところが重要なポイントでございまして、ジャーナルの問題に対応するためにオープンアクセスというのではなくて、結局、研究成果を共有して再利用を促進することが、研究開発の費用対効果を上げたり、学際的な研究を促したり、イノベーション創出を促すという側面があるということをしっかりと理解していただく必要がある。その上で、世界的な動向としましては、世界的な潮流になってございますし、アメリカやイギリス等では義務化するという方針も示されております。
 次のページでございますけれども、日本では基本計画でオープンアクセスの推進とかリポジトリの構築があるわけでございますけれども、今後の課題といたしまして、先ほど申し上げました、我が国におきましては、現状でオープンアクセスの意義が十分研究者の方々に浸透しているとは言い難(にく)い状況にあるということで、その重要性について、科学者コミュニティに定着させることが必要だということでございます。
 その手段といたしまして、JSTの支援事業とか、科研費の研究成果という形の出された学術論文のオープンアクセスについて義務化するとか、そういったところを含めて、オープンアクセスが当然だという意識を研究者に広く持っていただく必要があるだろうということでございます。
 オープンアクセスの拡充方法といたしましては、これまでも推進してきております機関リポジトリの構築の充実がまず基本で、更にオープンアクセスジャーナルの育成に努めていくという方法が妥当だということでございます。
 オープンアクセスジャーナルの育成につきましては、審議会でも議論いただきましけれども、科研費の研究成果公開促進費を見直しましたので、これの充実とか、基本的に無償の出版プラットフォームであるJ-STAGEを強化して、日本の学協会が協力して質が高い研究者の負担する審査経費APCを低額に抑えることが可能なオープンアクセスジャーナルを構築するということが望ましい方向であるということでございます。
 また、日本の学協会のジャーナルについては、著作権ポリシーが明確でないところがございますので、教育現場で利活用を促進する観点から、ポリシーを明確にしていただく必要があるということと、それから、論文の根拠となるようなデータのオープン化も最近重要になってきておりますので、こういったことに取り組んで、質を高めていくことが必要だということでございます。
 一方で、日本発のジャーナルの強化についても御議論をしていただいたところでございます。以前、この委員会、作業部会の時期ですけれども、審議まとめにおきまして、日本における国際的に認知された有力なジャーナルは多くないということと、日本学術会議の方でも日本の優れた研究活動を国内外に力強く発信して、持続性、競争力を持った流通基盤を構築することが必要だという提言がなされているところでございます。
 現状としまして、トムソン・ロイター社の方に来ていただいて、御紹介していただいたのですけれども、日本よりも中国、韓国、ブラジルの方がWeb of Scienceに載るジャーナルの数はどんどん増えてきております。それから、中国、韓国では独自の論文データベースを整備して、積極的なWeb of Scienceにならったようなデータベースを整備して研究成果をどんどん発信している状況があるということでございます。
 あと、国内での取組としては、科研費の改善、J-STAGEの高機能化もやっているのですけれども、またJ-STAGEの方で御紹介いただいた引用情報の集計・提供する事業にも着手したという状況がございます。このような現状を踏まえて、今後日本のジャーナル強化をどうするかということでございますけれども、少子化などを踏まえて、日本の研究力を維持向上させるためには、学協会の刊行するジャーナルの評価を高めて、国内外から優れた研究成果が日本に集まる体制を構築して、グローバルな研究コミュニティとして活性化を促す必要があるという形になってございます。
 次のページですけれども、そのためには複数の学協会が協力して、質の高い魅力的なジャーナルを刊行する取組とか、学協会、編集委員長などが情報交換してノウハウを共有するというような取組が必要だということでございます。
 また、人社系のジャーナルにつきましても、海外からのアクセス向上が必要だということで、電子化とともに、国際的な二次データベースへの収録を進めていく。特に和文誌につきましては、英文抄録を入れるだけで相当の流通が見込めるということでございます。
 ジャーナル支援の充実としましては、科研費の改善を図ったわけでございますけれども、これについては学協会の方から、調書の見直しとか審査員の配置を検討していただく、それで中間評価を厳しくしていただくことで複数年採択数を増やすとか、そういった見直しと充実をセットで行ってほしいということでございます。
 J-STAGEにつきましては、こういった戦略的なマーケティングというものが不足しているということで、国際水準での論文流通のための機能強化がまず必要である。さらには海外ジャーナルも引き受けたりということで、プラットフォームとして国際的に存在感を示す必要がある。さらには日本のハイレベルな論文を紹介するレビュー誌的なものをJ-STAGEから発信したりして、このJ-STAGEというもの、また日本の論文を流通させるための努力をする必要があるということでございました。
 また、評価指標といたしましては、特定の指標、いわゆるインパクトファクター的なものですけれども、過度に依存するのではなくて、分野間の補正とか、多角的な評価が必要だということでございます。これとは別に、実際の機関評価におきまして、論文の引用数が評価指標になっていることも事実でございますので、世界的な引用データベースに載っていないようなジャーナルの引用情報整備をJSTが行うことになっておりますので、こういったものが重要になってくるだろうということでございます。
 また、日本のジャーナルにおきましては、包括的な情報分析が不足しているということでございまして、そういったものをきちんと評価する体制とか、人材育成が必要だということでございます。
 最後に、新しい評価指標とか流通モデルをしっかりと構築している必要がある。戦略的に構築していく必要があるということで、この関連ではコミュニティの関連するステークホルダーが全体で世界に通用するような指標策定を目指していくべきだということを頂いたところでございます。
 最後のところですけれども、これまでも言われてきているわけですけれども、短期的にジャーナル問題を一手に解決する方策は見当たらないのですけれども、こういった予算を支出を続けて対応するというのは適切ではないということでございまして、オープンアクセスとジャーナル契約形態の見直しが必要だということでございます。
 あわせて、研究者の方々含め、ステークホルダーの意識改革と、ジャーナルの支援につきましては、科研費とJSTの支援を強化して、海外の出版社に過度に依存しない体制にする必要がある。さらには図書館と学協会の連携、人材育成が必要。こういうことに対して国と関係機関が取り組んで、体制を今後も強化していく必要がありまして、これは包括的な考え方だけを示したものでございますので、更に今後、継続的に討議していく必要があるということで、まとめをしていただいたところでございます。
 御説明長くなりましたけれども、このような対応になりました。
 以上でございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、竹内委員、また、加藤委員の方から補足等、何かございましたら、おっしゃっていただければと思います。
【竹内委員】  内容につきましては、今、長澤室長から説明を頂いたとおりでございます。先ほどの御紹介にもありましたけれども、5の「おわりに」の最初の丸のところにあります、「この課題については短期的に解決する方策は見当たらない」というのが、どうしようもない問題としてあるわけでして、この問題に長く関わっていらした方からすれば、今回のまとめの意義は何だということを問われる内容になってしまっているというところだろうと思います。関係者の方々は随分努力をしてくださったのですけれども、この問題の本質を考えた場合に、このようなまとめにならざるを得ないというのが現実的にはありまして、少なくとも今のジャーナルの出版と、それに基づく研究成果の公表という枠組みに乗っていく限りにおいては、限度まで来たということが、今回のまとめが言外に語っているところだろうと思います。
 ですから根本的に全く違うスタイルを、これからの学術情報流通基盤として作っていくのかどうかということを、恐らく真剣に考えなければならないという段階に来ているのであって、日本がこれに関する国際的な議論をリードしていくような立場になるのか、それとも、諸外国の動きに日本が追い付くという形をとっていくのかといったところが大きな問題になると思いますが、個人的には、是非日本の学協会の皆様方に、この問題については世界的な議論のリードをしていただきたいと考えているところです。
【西尾主査】  竹内先生、本当に客観的な評価を含めたコメントを頂きまして、ありがとうございました。先ほど来、委員の方々も報告の概要を、今、竹内先生がおっしゃられたようなことを感じながら聞いておられたのではないかと思っております。
 加藤委員、補足等ございますか。
【加藤委員】  
今、竹内先生がおっしゃられたように、この問題に関しては幾つかのステークホルダーがございまして、立場が違う方がいろいろ論議しているのが現状でございます。
 私、委員として出させていただいて、この委員会の中で、実はJSTのJ-STAGEが原点に返って、やるべきことをきちんとやるべきだというような御提案とか、あるいは問題提起をかなり頂いておりまして、この委員会が終わった後に、J-STAGEのシンポジウムを2回ほど実施しました。それから、ジャパンリンクセンターのシンポジウムをこの間やったのですけれども、こういう問題の解決に向けて、J-STAGEとして原点に返って日本のオープンアクセスのプラットフォームとして、あるいはジャパンリンクセンターの中で研究論文のデータをどういう形でシェアリングしていくかというところを根本において実施すべきという、御意見も頂いております。
 この委員会を契機としまして、JSTとしてやるべきことを整理して、JSTの中でJ-STAGE、ジャパンリンクセンターに関するタスクフォースというか、プロジェクトを設置して、今後の基盤となるような形にしていきたいと考えているところでございます。
 委員会の中で、主査の浅島先生からも、その構想を早く進めてほしい、いつやるのですかというお話も頂いております。JSTとして、もう一度原点に返って、きちんと役割を果たしていけるように頑張っていきたいと、この委員会の中で感じたところでございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 竹内先生がおっしゃっていただきましたように、今回の問題点はずっと以前から議論されつつも、今回も同様の概要が出てきております。繰り返し論じられてきた問題でございまして、先ほど、この域から一歩踏み出て、何かブレークスルーとなるような動きを、例えば学協会が多くある中で、それらが連合しつつ実現してほしいという期待も込めたコメントを頂きました。何か一歩踏み出るためにどうしていったら良いのかということについて、皆様方からいろいろ御意見等を頂ければと思います。
 ところで事務局に伺いますが、ここで議論したことは、どういう形でフィードバックが可能ですか。
【長澤学術基盤整備室長】  今後引き続きステークホルダーの関係の会議などを開く予定にしておりますので、そこで御参考にさせていただければと思っています。
【西尾主査】  分かりました。そういうことでございますので、頂きました御意見は、生かせる可能性が十分にあるということでございます。
【斎藤委員】  私自身は個人的に20年以上前から、日本から国際的なジャーナルを発信すべきだと言ってきたのですが、ほとんど誰も聞く耳を持たない。現在、5年ぐらい前から少人数で新しい雑誌の発刊をいろいろ議論しているのですが、なかなか意見が収束しないところです。
 学協会からの発信を強化すべきだという御意見がありますけれども、私は批判的です。というのは、学協会というのは大部分が日本人の会員で、彼らが年会費を払う。結局それは今どうなっているかというと、エルゼビアとか、そういうところが協会の雑誌を、悪く言えば乗っ取って、それを吸い上げて、では、投稿する人は誰かというと、幾つかの雑誌では9割以上が外国の方です。ですから、私はこれは一種のODAだと言っているのですが、結局、学協会は日本を主体としている学協会にしがみ付いている以上は、もう駄目です。グローバルな学会はあります。私も毎年海外に行くことがありますけれども、そういうものでなければ、結局ジャパニーズジャーナルとか、日本何とか学会というのは全て、最終的にはこれで議論されているような、文部科学省で出されているお金の交付金を目当てに行くとか。それは結局、海外の人の雑誌の論文に消えていくわけですから、これはODAでして、ODAでいいというのであれば、それで結構です。
 ですから、私は学協会にしがみ付くのは、今後は駄目だと思っております。オープンアクセスは、世界のどこからでも発信できますから、グローバルに展開する。つまり、これはここに出席していることの自己否定になりますけれども、当たり前ですが、科学研究はもう国家の枠を超えておりますので、そういうことを考えざるを得ないと思っております。
【西尾主査】  どうも、貴重なコメントをありがとうございました。
 斎藤先生は、学協会ではなくて、意見を同じくするようなグループとかコミュニティとか、そういうところがベースになって世界的に展開すべきだというお考えですが…。
 どうですか、羽入先生。
【羽入主査代理】  斎藤先生の御意見、とてもよく分かります。もう一つ、教員評価をどうするかということと密接に関係しているのではないかと思います。つまり、インパクトファクターの高い雑誌に載せた人が優れている人だというような評価は、余りにも一元的であるということは、ここにも述べられていますけれども、そういう評価の仕方をどう考えるか、大学に所属しているメンバー、あるいは大学という組織に対して考えていいのではないかと思います。
 教員評価は今どこの大学でも非常に重視していますので、教員評価の指標として何を考えていくかということが大きな問題でもあると思っています。
 一つ質問してもよろしいですか。細かいことで、このまとめの最後のページのジャーナル支援の充実というところに書かれているのですが、科研費の改善効果が上がるようにするため、計画調書の見直し、適切な審査員の配置を進めるとともにと書いてあるのですが、これはどういう意味なのか、どういう御議論があったのか教えていただけますか。
【長澤学術基盤整備室長】  これは学協会の方も参加していただいたのですけれども、今の計画調書の見直しが、ジャーナルを強くするためのものに実際なっていなくて、分野でどこが優れているかとか、そういった観点だと、各分野における優位性というのではなくて、ジャーナルの国際発信力を強化することが目的なのであれば、それに見合った形の評価できるような調書にしてほしいということと、ジャーナルの内容についてきちんと評価できる審査員を配置してほしいというのが趣旨でございます。
 学術的な分野を評価するような審査員だけだと、ジャーナルの出版のことを理解されていない方も結構いらっしゃるので、そういった適切な方にしていただいた方がいいのではないかという御意見でございました。
【西尾主査】  今の御意見としましては、従来、教員の評価の基としてのジャーナルという位置づけがありますので、そこからの考え方も一方で再考していく必要があるのではないかということでございました。
 委員の皆様方には、学協会に深く関わっておられる委員の方も多々いらっしゃると思うのですけれども、竹内先生の御意見、それから斎藤先生の御意見、また、羽入先生の御意見等々含めまして、何かコメント等ございませんか。
【土方委員】  私も羽入先生のおっしゃるとおりだと思っておりまして、エルゼビアにしてもシュプリンガーにしても、大きな出版社がそれなりに編集についても販売についてもマーケティングについても、非常に多額の費用を使っていますから、当然それによって優秀な論文が集まってくる。その前段としてM&Aなどもやっていますので、本当に寡占化が進んでしまっています。
 それをどうしようか、と言っても、結局研究者の方は自分たちが評価を得るために、そこに出さざるを得ないといったところが常に矛盾としてありますので、そこのところをきちんと整理した上で考えていかないと、出口が見つからないのではないかと思っております。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。国内における研究者評価において、エルゼビア等の論文誌を余りに偏重し過ぎているところから、このような流れを作ってしまっているのではないかという根本的な問いであると思います。つまりは、大学における教員評価の流れを変えるということがダイレクトではないのですけれど、最終的にはこの深刻な問題への解決の道でもあるのではないかという御意見かと思います。
 喜連川先生、情報処理学会の会長をなされていますが、御意見いかがですか。
【喜連川委員】  いろいろな立場があってややこしいのですが、今は学協会としての発言をさせていただきますと、昨年の5月まで電子情報通信学会の副会長を拝命しておったのですけれども、通信学会はかなり英文誌に努力を入れておりまして、現在100が総論文数としますと、おおむね3分の2が英文論文に既になっているのです。その中で、文部科学省様のお金を目当てにするとか何か、そういうことで育ってきたわけではなくて、学協会そのものがグローバル感が大切だということを何十年前かに認識して、特にアジアに対して非常に努力をしてきていまして、それだけインターナショナルなプレゼンスを持つに至っている分野もあるということを一つの事例として御紹介させていただければと思うのです。
 結局、学協会がどれぐらいそのような意識を自分たちで持っているのかというところが、大きな一つのドライバーになっているのではないかという気がいたします。
 それからもう一つ、竹内先生がおっしゃられた、全く新しいメトリックスを入れるべきであるというのは、正にそのとおりでございまして、土方先生が大手がどんどん力を持ってきてというのは、ポストキャピタリズムといいますか、資本主義そのものが、全ての局面においてある種の限界にきているということの一つの現れが、ここにもあるという位置付けだと思うのです。
 そのとき情報処理学会は一番ITが強いものですから、いろいろなことをやれるのではないかと思っておりまして、是非、逆に御示唆をいただければ、私どもはいろいろなエクスペリメンツができるのではないかと思っています。
 一方、評価ということに究極的につながりますと、教員の評価、論文の評価を何らかのマトリックスに落とすというのは非常に難しい問題で、オリンピックのように速く走ればいいというものは簡単なのですけれども、そうではない学術の中に、評価というものの軸をどう入れるのかということが非常に難しい問題だと理解しています。
 西尾先生も私も、同じコンピューターサイエンスの分野ですとジャーナルというのは、我々の分野では幸か不幸か余り意味がなくて、競争は全部国際会議です。国際会議は、コンペティションなのです。10分の1の論文しか通らないということになりますと、そこで勝負を賭けますので、少なくともそこでほかのものに対して圧倒的に強いのだというところがエビデンスと見做(みな)せ、比較的うまく循環しているのではないかと感じます。
 国際会議の場合は、一般にはステアリングコミッティーがありますので、レジストレーション・フィーをそんなに高くすることは、みんな自重していますので、そこそこ健全な世界が回っているのではないかという気がいたしまして、コンピューターサイエンスの中でもビジョン系はジャーナルが大切であるとか、いろいろ文化が違うのですけれども、竹内先生、何かそういうレベルでの回し方というのを、ジャーナルでない世界でも、比較的研究者の成果の圧倒感を評価するメカニズムは、我々はそれなりには持っているのではないのかという気が個人的にはしているのですけれど、いかがですか。
【西尾主査】  何か御意見ありましたら、どうぞ。
【竹内委員】  喜連川先生もおっしゃったように、ジャーナルに依存しない領域が既にあるのは事実でして、例えば高エネルギー物理学なども、成果そのものというのはアーカイブで流通していても、ジャーナルというのは基本的には最終的に記録を残すためのような形で論文が書かれているという状況ですから、研究者にとって必要な情報がどういう形で流通し、そしてそれが研究者の評価なり、研究成果の評価ということにつながっていくというのは、全ての分野で同じような形でということでは、多分ないのだろうと思います。
 ただ、私のように、研究情報流通の基盤としての図書館の立場から見ておりますと、研究者が必要としている情報のタイプというのが、領域によって随分違っているということが見えない部分とかも出てきておりますので、例えば、ある領域では図書館がジャーナルを買わなくても実はいいのだということが明確になってくるのであれば、それはそれで、その部分の予算を削っていきましょうといった議論が進んでいくのであって、そういったことというのは、今回の報告の中にも含まれている、データをきちんと明らかにして、どの領域で、どういうものが使われて、そして何が必要とされているのかということをきちんと客観的に分析をしていくことが非常に重要ということにつながっていくのかなと思いました。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 倉田先生、どうぞ。
【倉田委員】  これは非常に難しい問題で、簡単には行かなくて、しかも様々なものが非常に複雑に入り乱れているので、見る方やステークホルダーの方たちによって、どこをどう見ているのかによって、かなり印象の違うビジョンといいますか、イメージが描かれていて、そのことが逆に双方の共通理解をより難しくしているのではないかというのは、この問題を多少でも見ていまして、長年感じているところです。
 つまり、今回の報告書は、こうならざるを得なかったのだろうというのは、とてもよく分かるのですけれども、大学図書館の予算を出す立場の方から見ると、どうしてもこうなるのだろうというのは非常によく分かる。
 喜連川先生がおっしゃるように、研究者の中ではそれなりにきちんとうまく動いているのではないかというイメージも、それは正しいと思うのです。
 私は、今、錯綜(さくそう)しているものの一つは、論文という形で基本的に成果を評価する、それも査読という形を込めて、論文という形で評価するのが基本であるというのは、全体的に見たときは崩れていない。そのことが、結局は羽入先生がおっしゃるように、人々の研究者の最終的な評価、人事的な評価というところでも、それが一番簡単だから、それで測ることが基本になっている。
 そこが本当に崩れるかといったらば、短期的にはなかなか難しいのではないかと思います。査読された論文を流通させるというプラットフォームとして、今までは圧倒的に学術雑誌であったし、それは世界的な流通経路を持つ大手出版社のものであったことは事実で、ただ、斎藤先生が、もう既にそれは自分たちでもできる。もちろん喜連川先生もおっしゃるように、それは別に大手にやる必要はない。個別に、例えば本当に小さな規模の学会でも、それは今やインターネットを使えば可能にはなるのですが、出版という世界がもう作られてしまっているので、そこでブランド力を持つことが、また別の評価を重ねることになるので、なかなかそこが突破できないのだろうと思うのです。
 私は、評価という問題と同時に、竹内先生もおっしゃっていましたけれども、今後本当に査読論文で評価するのかというところ自体を、再検討する動きが出始めていると思います。今すぐかどうかは別で、私もまだ完全なビジョンは見えないのですけれども、論文ではない形での評価が普及すれば、研究者の中で学術情報の流通ということと、評価とを切り離していく方法になるのではないかというのは常々思っているところです。
 今、まだ先のビジョンは見えかねる。ただ、エルゼビアやシュプリンガーは多分その先を見越して、もはや査読論文のジャーナルでもうけるのではなくて、研究者たちの自由な情報流通の場を提供することで、その先のビジネスを見込んでいるのだろうと思うので、そこも見込んだ上で、その先まで見ないと大手商業出版社には、太刀打ちはできないのではないかというのが、今、正直な感想として持っているところです。
【西尾主査】  倉田先生が、ある意味のまとめをしていただいた感じでございますけれども、なかなか難しいですね。査読された論文によっての評価ということに関しての次のステップが、竹内先生がおっしゃるような形で学協会等がいろいろ考えていったとしても、それに対しても、今のメジャーな出版社が、そのプラットフォームを提供するというような形で、ビジネスモデルを更に考えてくる。このようなことに繰り返しになってしまいますね。それに対して、斎藤先生が最初におっしゃったような形で、別の方向での大きなブレークスルーを生んでいけるような方法とか、プラットフォームシステムを打ち出していけるかが大切だと思います。
 例えば、10年後に竹内先生が先ほどおっしゃったように、やはり、同様の概要になってしまうのか、そのときは、もう今回のような議論はなくなっていて、次のステップへ行っているのか。 本当にこのまま行ってしまいますと、どうしようもない状況です。そうならないように、真剣に考えるフェーズにもう来ているという認識を強く持ちます。
【竹内委員】  今の枠組みで行けば、論文数が増えればコストが上がります。研究活動というのは、衰退する国もあるかもしれませんけれども、新興国の研究活動がどんどん活発になって、研究成果は世界的に見れば増大していくという流れは、恐らく止まらないだろうと思います。
 それらを流通させていくコストというのが、ジャーナルの値上げの大きな理由になっているわけですから、論文数が増えていったとしても、研究成果の数が増えていったとしても、コストの上がらないような流通モデルといったものが出てこない限りは、金を出すしかないという議論にならざるを得ないと思います。
 先ほど倉田先生がおっしゃったように、査読という仕組みで一定の評価をして論文を流すというメカニズムは、一定のコストが掛かるというモデルですから、それを完全に脱却した流通モデルを考えることができるのか、あるいは、それを脱却した評価のモデルを考えることができるのかというところに大きなポイントがあるのは事実だろうと思います。でも、それはそう簡単な話ではないというのも、容易に想像ができることです。
【西尾主査】  学術界における評価ということをどうしていくのかということと、本当に深くつながってしまうということです。
【喜連川委員】  情報処理学会の会長として申し上げますと、昔、紙だったのを電子化するという決断をあるときにいたしまして、圧倒的にコストダウンが図れているわけです。今、先生がおっしゃられた情報流通のコストが、論文数のコストに比例してリニアに上がるということは、IT屋の感覚からすると、あり得ないのではないかという気がするのです。
 つまり、ペーパーバウンドの場合に流通コストが上がるというのは、これは誰でも分かる話なのですけれども、なぜアマゾンがあれだけ力を上げたかというと、最初は全部デジタルワールドにクローズしていたわけです。そういうところを考えますと、トータルにデジタルにすることによって、圧倒的に安いプラットフォームを作ることは情報処理学会なら作れると思うのです。
【竹内委員】  恐らく、コストと考えた場合に、今、喜連川先生がおっしゃったのは、最終的な成果物の流通コストということかと思うのですけれども、実際に、例えば今の査読制度といったものをベースに考えれば、投稿論文が増えるだけで基本的にコストは上がっていくということになると思いますので、それを全部含めた意味でのコストということです。
【喜連川委員】  すみません、査読コストというのは、私は常に研究者の方に言っていますのは、自分が学会に行って発表するということは、どういうことかをよく考えてください。その裏には、学会で論文誌を運営する人がいる、自分の論文を査読してくれる人がいる、そのために何日もいろいろなほかの文献を読みながら、あなたの書いたことを正しいということを保証してくれる努力が裏にあるのですよということを常に申し上げています。
 つまり、自分が一本論文を出すためには、20個以上の論文を査読するというのは当たり前なのだということを学会の若い人には言っています。ですから、それはマスとして人間の人口のボリュームが一定のときに、それほど大きくは激増していかないというか、つまりコストではなく学術界のタックス(税負担)になっているのだと思うのです。
【西尾主査】  分かりました。どうもありがとうございます。
 もう一つ大事な議題がありますので、斎藤先生、手短にお願いします。
【斎藤委員】  発表物の形態の話を少しだけ先ほどに戻ってお話ししたいのですけれども、これはつい最近見つけた、今年出たプロスジェネティクスという、PLOSのジャーナルに載っていた引用文献なのですが、ブログが引用されているのです。私、実はそのブログを書いている人間をよく知っているので、彼のブログは引用されてもおかしくないと思うのですが、ある程度功成り名を遂げた研究者であったら、もう世界的に有名ですから、ブログで発信しても意味はあるわけです。
 ですから、究極的な場合はピアレビューなどどうでもよくて、その人のグループがどんどん発信する。だから学会も行かない。自分のところでどんどん発表して、正に既にあるのがウエブサイトです。つまりソフトウェアなどは我々はそれを引用しますから、そうするとピアレビューなどはどうでもいい、あとは引用されれば勝ちということになっていくのではないですか。
【喜連川委員】  全くそのとおりで、ですから我々はそういうエコシステムをデザインできないかなと思っています。つまり、論文を書いたときに、論文のサイテーションなどというのは1年から2年、もっと掛かるのです。そうではなくて、発表した瞬間にどれだけみんながブログでその論文のことを言ってくれるか、そちらの方がはるかに速いレビュテーションを得ることができるわけです。今先生がおっしゃったことはとても正しいと私も思っています。
 もう一つは、ブログで書いた場合に一番問題なのは時刻印が付かないということなのです。情報処理学会も通信学会も、なぜ出版物として出すかといいますと、原則特許係争です。今サイバー空間の時刻印というのは保証できないのです。そこが少しややこしくて、先ほど竹内先生がおっしゃられたようなアーカイブのようなものは、逆に言うと、そこで時刻印を付与するというメカニズムになっていると思います。時刻印タイムスタンプのことです。
【西尾主査】  ほかに、どうしても御意見をここで言っておきたいという方はいらっしゃいますか。
 美馬先生どうぞ。本議題については、それで最後にいたしたく思います。
【美馬委員】  今ジャーナルのお話が出ていますけれども、今日の第1項目にある、結局ジャーナルは研究の推進においても、研究成果の社会での応用を実現する上でも不可欠。この2点は、結局学協会がなぜ存在するのかという学協会の目的と同じだと思うのです。そうすると、学協会は何で成り立っているかというと、ほとんど先ほど言った国際学会、カンファレンスとジャーナルがある。その中で、カンファレンスとジャーナルということで研究の推進と社会への応用というのがある。分野によっていろいろ違うというのはありますけれども、社会への応用ということであれば、先ほどのブログのようなもので影響を与えるということもあるでしょう。また教育学のように、すごく現場に近いものだと、論文の形で客観性とか求められると、応用がすごく狭いものになってしまって、結局それは書籍を出版した方が、より多くの現場の先生たちに読まれて、教育を変えていくことになるみたいなこともあるわけです。多分そういうものは教員評価と関わってくると思うのです。
 ここで言いたいのは、その機能だけではなくて、あとはコミュニティの人材育成というものもあると思うのです。学会を、その研究分野を続けていく。この間、ジャパニーズ・ニューラルネットワークの学会に出たら、そこは全部英語、発表も英語、論文も英語でやっていたら、発表者が半減した。そうすると海外のどこに出して発表した方がいいということになってしまって、これがどうなのか。
 だからオープンにして、全て英語にしてということが、人材育成の面でも、それから研究を進めていく上でも、日本でやることの意味というのはそれなりにあると思う。だから、そこの部分をどのように担保していくかということは、今後このようなジャーナルなどを全部デジタル化して公開していくときには、もう一つの機能として忘れてはいけないことだと思います。
【西尾主査】  今おっしゃられましたことは、多分ほかの学会においても、同様の問題に直面していると考えます。英語は国際共通言語であるとの考えで、英語を強力に推し進めるスタンスを取るのか、そこまで強力に進めることはないというスタンスを取るか、いろいろと考えなければならないことかと思います。
 それでは、貴重な意見を多々ありがとうございました。今後の新たな方向に関しての御意見を頂きましたことに感謝申し上げます。
 もう一つ本日重要な議題がございます。現在第5期の科学技術基本計画に関する議論が既に始まっております。そのことに関しまして、皆様方からいろいろ御意見を頂ければと思っております。
 それでは、第5期の科学技術基本計画の策定を見据え、今後の学術情報基盤の整備の在り方という少し広い観点から自由に意見交換したいと思いますので、長澤室長から説明をお願いします。時間が押していますので、できるだけ簡潔に説明をお願いします。
【長澤学術基盤整備室長】  ディスカッションの基となるものとして、若干御説明させていただければと思っています。資料4でございますけれども、総合政策特別委員会という委員会が開かれておりまして、ここで第5期科学技術基本計画に向けた論点整理が行われているのですけれども、実際に配られた資料で科学技術イノベーション政策の策定に向けた論点という観点で、主な意見の二つ目ですけれども、国家存立のための基盤技術としてICTが重要になるのではないかということが挙げられております。
 それから、その下のポツですけれども、基盤研究、研究開発基盤(データベースを含む)それらを支える人材を維持していかなければいけないというところが挙げられております。
 2番目としまして、社会の変化、課題解決ということで、インターネット・デジタル社会の急速な発展への対応ということで、こういったインターネット・デジタル社会における科学技術イノベーション、日本の国際競争力強化、大学改革といった様々な観点で見たときに、こういったICTの活用がキーになってくるのではないかということで、このデータの活用が今後重要になるとか、科学技術力を向上させるためにデータベースは機械可読な状態で整備されることが必要。ICTを活用して、様々な基盤の整備が重要だという側面が論点として挙げられております。
 これは、この委員会にも密接に関係しておりますので、今後の議論に含めまして、参考になる御意見が頂ければということで、これを提示しております。
 2ページ目は、第4期科学技術基本計画の関連する部分の抜粋でございまして、これは先生方御存じのとおりですけれども、基盤的情報インフラとしてリポジトリ、オープンアクセス、電子化、それからネットワーク、コンテンツ、標準化とか、知識インフラの整備という形でジャーナルの環境というものも触れられております。
 その次のページですけれども、学術の基本問題特別委員会においても、中間まとめにおきまして、学術研究を支える学術状情報基盤の充実ということで、基盤整備が不可欠だということでSINETとかオープンデータ、クラウド、セキュリティという観点、それからジャーナル、オープンアクセス、様々なキーワードが必要性として述べられておりますので、このような観点で、次の最後のページはスケジュール感ですけれども、一応総合政策特別委員会では10月30日にこういった観点についても御議論すると伺っておりますので、その参考になる形の御意見も頂ければ、適宜それに関していけることも可能ではないかということで、意見交換をお願いしたいということでございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 再来年度から第5期の科学技術基本計画の下で科学技術振興が図られるわけなのですけれども、今御説明いただきましたように、最後の予定表のところで、今年の12月までに文部科学省として中間取りまとめをするということで、現在、審議が進んでおります。第4期と第5期の違いは、第4期までは科学技術基本計画の策定は総合科学技術会議の議を経てということで、その基になるところは文部科学省の方でほぼ全体を作っていく方針で進みました。ところが、第5期に関しましては、総合科学技術・イノベーション会議というように会議名称が変わるときに、科学技術基本計画に関しましても内閣府が一応主導権を持つということに変更されました。
 ただし、文部科学省としては、科学技術振興、学術振興の観点から、12月のある段階までに内閣府に対して、申し送れる形の案を策定するということで、現在、審議が精力的に進められている状況です。
 長澤室長から御説明がありましたが、情報分野関連、学術情報基盤関連から、是非このようなキーワードを入れるべきだとか、こういうことはきちんと基本計画の中に記述すべきだとか、そのような御意見を今日はどんどん言っていただきますと、それらを基に整理をして、文部科学省の審議に反映できるのではないかと思っています。
 第4期のときに、非常に大切なキーワードとなりましたのが、この裏のページにあります知識インフラという言葉です。この言葉がいろいろなところで第4期の基本計画では生きた形で使われたわけなのですけれども、第5期に関して、どういうキーワード、あるいはどういう提案をしていったらいいのかということに関しまして、是非御意見を言っていただければと思います。いかがですか。
 どうぞ、倉田先生。
【倉田委員】  最初に一つだけ、ぱっと見てすぐ思い付いたのは、ビッグデータ等の様々なデータの活用が今後重要となるという部分ですか、もう既に重要となっているわけでして、キーワードとかキャッチフレーズという意味では、ビッグデータよりは、私としてはオープンデータの方がキャッチーな形ではないかと思います。
 ただ、別に全部のデータをオープンにするという意味ではないので、そこのところが簡単に一言で言えるかというと、難しいのですけれども、ただ、全体の流れとしては学術情報の研究データをある程度オープンにするという方向性が非常に強く求められておりますので、そこに対して、少なくとも日本としてはどういう方向で、何を、どうしたいのかという方針をきちんと考えないと非常にまずい状態なのではないかと思うのです。
 ものすごく厳しくがちがちに何も出さないというのも駄目だし、かと言って、全部を出せというのは無理なわけで、そこのところの方針を考えないといけないと思うのです。G8や何かで世界的に政府の情報は出せという話は出ているわけですから、学術情報の正に根幹となるデータに関して、今後どうするかということはかなり強く入れていただきたいと思います。
【西尾主査】  私から言うのも変なのですけれど、私は、総合政策特別委員会の委員を拝命しておりまして、この委員会が科学技術・学術政策局の下で審議活動が進んでおりますので、その局長の川上局長と、情報関連でどういうものを打って出るのかということでは議論をさせていただいております。
 今、倉田先生がおっしゃいましたビッグデータ関連は、第5期のときにきちんと打って出ておかないと、世界を相手にしていけないということで、局長も重要視してくださっております。産業創出における経済効果と同時に、ビッグデータそのものが、第4の科学の方法論としてのE-サイエンス、を進める上でも非常に大事だということを、いろいろな観点から強調していく必要があり、一つの大きなテーマになると思っています。
 その上で、今、倉田先生がおっしゃったように、データのオープン性については、国として明解な戦略性を持つことの重要性を訴える必要があると考えます。非常に貴重な意見ありがとうございました。
 ほかにどうですか。辻委員、どうぞ。
【辻委員】  今のお話とも若干重なるところはあろうかと思うのですけれども、データのオープン化といったときに、一つには、そのデータのオープン化ができるようにするための技術も必要ですし、それから運用の仕方であったり、お互いの共通認識の持ち方といったところが必要になってくると思っています。
 それで、これからの情報関係の研究開発におきましては、恐らく一つのデータを一つの目的のためだけに持つということはなくて、いろいろな多角的な視点から一つのデータを扱っていく環境が必要になってくるであろうと思っておりまして、そのためにも学際的な研究開発を推進するという意味で、データ自身の運用の仕方であったり、それを守るための技術開発といったところに焦点が当てられる必要があるのではないかと思っております。
 以上です。
【西尾主査】  それはセキュリティということも含めてですね。
【辻委員】  はい。セキュリティも含んでおります。
【西尾主査】  ほかにございますか。では、後藤先生。
【後藤委員】  今の辻委員のお話に私も同感です。先ほど、例えばオープンデータの取り組みの意味として、学術情報をオープンに出しましょうという方向がありましたが、もう一つの方向は、産業界なり政府なりのデータを学術界が預かることができることです。つまり産業界が、このデータを学術界に預けたい、預けてうまく料理して良い成果を出してほしい、という期待をもってもらえることです。その期待に応えられるものを学術界としては作るべきなのではないか。
 産業界が持っているデータ、政府が持っているデータを学術界がいろいろな形で料理してくれると期待できるからです。そのためには、今話が出たように、うまく預かったデータを研究者間でシェアする、アクセス権限をうまく設定できる、例えば医療情報だって安全に扱える、そういう基盤を用意することです。外部から学術界が期待される、期待に応えられるような基盤を作るという方向が一つあるのではないか。
 学術界の外がオープンにしてくれる、学術界から見たら、外の人がオープンデータにしてくれるものの受皿という役割を、情報基盤が持つべきだと思います。
【西尾主査】  どうもありがとうございます。
 山口先生、どうぞ。
【山口委員】  一点異なる観点からインプットしたいと思います。社会経済の大きな変化、新たな課題の解決に積極的に貢献していくべきである、という論点ではインターネット・デジタル社会の急速な発展の対応というところで、ICTを活用することで、何を目指すのかというのが重要になってくると思います。具体的に2点あります。実際今、初等中等教育局の活動で高校教育における遠隔システムの活用としては僻地(へきち)における教育機会の拡大と、教育の質の向上を目指すための取組が委員会で議論されています。
 高等教育でその重要性を学ぶ以前に、学んでおかなくてはいけない点がたくさんあるので、教育におけるICT活用の動向を整理するのは重要だと思います。もう一点は、OECDが毎年実施している国際比較のPISAの調査結果からは、日本の子供たちは情報技術を活用して問題解決をする能力が余り高くないという結果が出ていますので、早い時期から、どのように効果的に活用するかを学ぶことが、インターネット・デジタル社会への発展に貢献できるという議論は、どこかに入れておいた方がよいと感じました。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 今日御発言のない委員の方々には、情報分野として次の期にどういうことを打って出るべきかというのは非常に大事ですので、是非御提案等ありましたら、お願いしたいと思います。
【竹内委員】  内容的には、辻委員がおっしゃったこととほとんど同じでございまして、今期のこれまでのヒアリングなどでも御意見が出ていたと思うのですけれども、データの共有に関しては、例えばある特定の狭い分野だけ見れば、既にデータセンターなどがあって、データの共有が行われている事例もあると思うのですが、恐らくこれから必要になってくるのは、学際的にデータを使えるようにする環境だと思います。
 そのための様々な社会的な制度まで含めた制度作りというのが極めて重要であるということを申し上げます。
【西尾主査】  それは今まで議論しましたアカデミッククラウドというようなシステムが一つの具体的な姿であるということで、よろしいですね。
【竹内委員】  クラウドの上で、例えば、よく言われておりますように、人文社会科系のデータが自然科学の方でも十分使われていくようなことができるようにするための環境と制度の整備ということになります。
【西尾主査】  先ほど来の意見で、とにかく第5期はデータセントリックな時代であるということで、そこをクローズアップした期間になるというところは、皆様方の御意見としては同じ方向ではないかと感じています。
 加藤委員、どうぞ。
【加藤委員】  
中間報告の段階なのですけれども、実はJSTの中で今後のデータシェアリングの在り方をどうするかという検討会といいますか、学識経験者、民間有識者も含めた検討会を現在やっておりまして、その中で幾つか出ておりますのは、アメリカとかイギリスなどではデータシェアリングのポリシーが公表されている。例えば機密に関するものは出せないとか、個人情報に関するものは出せないとか、あるいは民間のビジネス上機密とすべき事項も出さない、あるいは知的財産に影響するものは出さないとか、自分たちの国の競争力に不利になるようなものは出さないというようなポリシーが出ております。しかしながら、まだ、日本ではできていないものですから、そういうポリシーをきちんと作るべきであるということを提言しようというのが一つございます。
 それから、データの公開とか、データを共有化することによって、どのようなメリットがあるかというところでは、例えば、今JSTのNBDCの中では、大阪大学のたんぱく質のデータベースでは、データを共有することによって、データに関する処理の部分だけでも1%の経費で済むという評価も出ており、また、さらに、登録されたデータをきちんと管理をして、データの共有の仕組みが出来上がってくることにより、今度は民間企業が失敗したタンパク質の構造というようなデータも、そこに登録するような仕組みもできてきているという成功例もございます。
 ただ、データシェアリングの研究開発基盤を構築するに当たり、どこからスタートするかといったときに、今までの研究基盤の中で、そういうものを構築するという方法と、例えば、ImPACTという「革新的研究開発推進プログラム」をJSTの中で開始しようとしていますが、12人のプログラムマネージャが、ハイリスク・ハイインパクトな挑戦的研究開発を推進するプログラムなのですが、今後の研究開発は、ある分野に特化しているわけではなくて、領域を超えた、学際的な分野という傾向があるようでございます。
 そうしますと、そういう領域を超えた分野で、研究データのシェアリングをし、標準化や共有化もしていくためには、最初から、データの研究基盤そのものを構築していく必要があるのではないかというような議論が出ております。
研究データのシェアリングを構築するやり方としては幾つか方法論があると思うのですけれど、そういう新たな分野で研究開発基盤をきちんと構築していく方法とか、あるいは、日本の国がリードできるところを重点的にデータシェアリングの仕組みを作って、その中でオープンにするべきところはオープンし、コミュニティの中でガードを掛けるものはガードを掛けるという取組が必要ではないかという議論とか、また、そのためには、イギリスではデータキュレーションセンター的な組織があるらしいのですが、その中で、きちんとしたデータを整合する必要があり、幾らマシンリーダブルにしても役に立たないということもございますので、そういったキュレーションセンター的な組織が必要なのではないか、また、そういうセンターを運営するためのインフォマティクス人材の育成が必要ではないかというような議論が出ているところでございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。おっしゃっておられることの大切さは、十分に分かりました。
 ほかにございますか。岡部先生。
【岡部委員】  私、今日初めてこの資料を見せていただいて、私が思い付くようなことは、ほとんど先生方の御意見に含まれているのですけれど、一つは、この2ページ目、3ページ目に書かれている研究情報基盤あるいは学術情報基盤というのは、正に私たちがこの委員会でこれまでクラウド時代の学術情報ネットワークとして議論してきたことが土台となって、次のステップでこのように使われていくのだということで、非常に感慨深く思ったということです。
 その上で、私はネットワーク系の研究をしておるものですから、技術的にはその次のステップとしてInternet of ThingsとかM2Mとかいう言葉で話される、研究のデータが研究者のところで整理してから、それをみんなにファイルで配るというのではなくて、生データを直接リアルタイムに共有するという形に、これからなっていくのではないか。そのようなところについても、この委員会のようなところで少し検討していく必要があるのではないか。
 もちろん、そういう意味で、国立情報学研究所の責任もこれからますます重くなるのではないかということです。
 もう一つは、この1ページ目で1の(ウ)、国家存立の基盤となる技術開発の1番目に、国家存立の基盤となる技術、特に国家安全保障のための基盤技術、コア技術に国としてきちんとコミットするという、非常に重たい話で、読みようによっては軍事研究をきちんとやれとも読めることで、いろいろな考え方があるだろうと思うのですけれども、一つだけ、私もセキュリティに関して気にしているところは、国家安全保障、これはナショナルセキュリティで、英語でいうとセキュリティとそちらの気持ちで来るのですが、どうも日本語で片仮名でセキュリティと書くと防犯的な意識が表に出ていて、同じセキュリティといってもそもそもの技術者も、あるいは研究者も心構えがずれている。日本のセキュリティ技術が世界で十分太刀打ちできていない面がある。特に実用に関して、太刀打ちできていないところは、そのようなところもあるのだろうと思うところで、国家をきちんと守る、別に軍事ということではなくて、国家の情報も守る、いろいろな意味で国を守るということについては、幾ら学術であっても考えていくべきところはあるのではないかと、一つの感想レベルですけれども、思ったところです。
 以上です。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 企業のお立場から、吉田委員、どうですか。
【吉田委員】  皆さんにほとんど言われてしまったところが多いのですけれど、1ページ目を拝見していまして、下から三つ目のところにソフトウェアの話が出ています。ソフトウェアの技術開発はもちろん重要なのですけれど、今のソフトウェアの技術開発の形態というのが10年、20年前と相当様変わりしていて、今はどちらかというと本当に先端のソフトウェアはオープンソースで作られている。昔は一番進んだソフトウェアはメーカーの中にあったのですけれども、今はオープンなコミュニティで作られてゆくために、そのオープンなコミュニティどうやって仕切って、そこの上にエコシステムをどう引き付けてくるかというのが非常に重要になっています。
 そういう意味で、先ほどのオープンデータの話も、多分同じような側面があると思うのですけれども、オープンなコミュニティを仕切るための力を向上されるという取組が必要だと思いますし、最終的にはその上でエコシステムをどうやって我々の上に作るのか。学術情報基盤も、ある意味でのエコシステムを形成するという取組です。そういった方向性が一つの重要な点なのではないかと思っています。
【西尾主査】  総合政策特別委員会におきましても、情報関連の企業の委員の方がおられまして、今、吉田委員がおっしゃられたようなことを相当強く言っていただいている委員がおられますので、そういう点では次期の基本計画では、ソフトウェア的な側面を強く出していけるのではないかと思っております。
 上島先生、いかがですか。
【上島委員】  オープンデータやソフトウェアが基盤となるというのは、そのとおりだと思います。しかし今の話にもありましたように、いつもここへ書くときは、データであるとか、研究対象を書くのですが、それを動かす方の人、人材の育成についての記載を同時に行う点が重要と思います。例えば、今では使い古されているかもしれませんが、ハッカソンという言い方がございますが、いろいろな分野で、いろいろな人が共同して知恵を出し合ってデータを利用したり、ものを作るという形です。そういったことができるような、吉田委員がおっしゃったコミュニティ作りということだと思いますが、データ側からすれば、それを使えるようなルール作りが重要で、そういったところをドライビングフォースにしていかないと、動いていかないのではないかと思っております。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 喜連川先生、どうぞ。
【喜連川委員】  何度もしゃべっているので、遠慮してしゃべらない方がいいかと思っていたのですが、インターネット・デジタル社会の急速な発展というのがあるのですけれども、さすがにインターネットもデジタル社会も、このキーワードが第5期かな?と違和感を感じます。
 したがいまして、このレベルに、先ほど西尾先生がおっしゃられたビッグデータというキーワードを入れる、下のレベルではなくて、トップレイヤーに入れないと、さすがに古臭い感じがするかなという気がいたします。
 それから、いろいろな御意見が出ていると思うのですけれども、私は最近言っているのは、法律をサイエンスにしてくれと随分言っています。つまり、科学技術の進歩というのはべらぼうに速いスピードで上がってきているわけですけれども、それに法体系が全然追い付いていない。そこで失っている損益が、非常に大きいわけです。
 ですから、法律を常に技術観と並行してインパラレルに進展させるというところをやるような施策を必ず作っていかないといけないと思います。先ほど美馬委員が教育のことをおっしゃられましたけれども、今、教育で、学生がドロップボックスにコンテンツを入れた瞬間に、あれは私的複製にはならなくなるという解釈がありまして、そうしますと、今の著作権法上、クラウドを使って自分のデータを整理することができないわけです。こんな馬鹿なことが議論になっているわけです。
 遠隔教育も、eラーニングをしたときに、後からオンデマンドで見るということは、今の著作権法上は許されていない。そういうITの進化と法体系とがコヒーレントになる努力を国家としてしっかりしなさいということは、是非入れていただければよくて、先ほど加藤委員がおっしゃられた、データのポリシーというのがあるのですけれど、ポリシーなので幾らでも決められるわけです。
 そうではなくて、ガバナンスとして一番分からないのは、データのオーナーシップなのです。データを誰かにあげたいと思っても、企業にとってみると、このデータは僕のデータなのかどうかが分からないのです。クライアントのデータなのか、企業のデータなのか、その線引きすら分からない。スマートメーターのデータが家庭の人のデータなのか、タップを置いた電力会社のデータかというのを議論するのに、一体どれだけ時間を有していたかということを考えてみていただければ分かりますように、そのレベルの話がないので、後藤さんが言っておられるように、大学に預けようと思っても、預けられない。
 こういうところを是非何とかしていただきたいのと、一番目に国家存立のための基盤技術として、物質、ICT、量子と書いてあるのですけれども、これだけSINETの予算を通過させていただくのに膨大な努力を頂いているのも、第4期の中で重点分野としてICTが入っていないということが大きな問題だったと思いますので、是非「メーンパート」に、全ての学術のドライバーとしてのICTをしっかりと発展させることということは、是非是非入れていただくことが重要ではないかと思います。
 以上です。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 情報関連のイノベーションということを考えた場合に、今、喜連川先生がおっしゃいましたように、結局はそのイノベーションに対する法律とか制度とかが付いていっていなくて、イノベーションをつぶしてきたという経緯があります。ソーシャルイノベーションとしての法律体系のイノベーションを迅速に行っていくことが、社会実装を実現するトータルなイノベーションを生んでいくのだという観点から、喜連川先生の御意見は重要だと考えます。
 どうもありがとうございました。
【美馬委員】  今のことに関連して、例えばMOOCで教材を作っていると、映像とか画像とか、いろいろ著作権上問題になるものがあって、そこには資料のアーカイブスのフェアユースのようなものをきちんと考えていく必要がある。フェアユースという言葉を何かキーワードとして入れていただければと思います。
 あと、もう一点。今日いろいろキーワードをということでしたので、これは私の研究でも何でもなくて、「TECHNIUM」という本が翻訳で出ました。生物の進化とテクノロジーの進化を比喩的に見て俯瞰(ふかん)しているものです。その中で出てきた今後のテクノロジーの在り方のキーワードとしては共同、透明性、非集権化、柔軟性、冗長性、効率性。インターネットが出てきたときに言われていましたけれどコンヴィヴィアリティという言葉があります。自律共生的とか多様性とか、そういうものがうまく今回のものに、情報系の在り方として今後の社会を見るときにヒントになればと思いました。
 以上です。
【西尾主査】  どうも貴重な御意見、コメントありがとうございました。
 また、是非このようなことを第5期に向けて提案しておきたいとか、これは是非含めるべきだとか、そういう意見はございませんか。
 皆様方の御意見としての方向性については、私としましてはっきりと認識をさせていただきました。それと、制度的及び法律的な問題の重要性についても、貴重な御意見ありがとうございました。
 それでは、次回は12月5日でございますので、文部科学省内の総合政策特別委員会としては、第5期に関しての審議は大体煮詰まっている状況になっていると思うのですけれど、また、今日お帰りになられた後に、こういうことは、是非、総合政策特別委員会で発言すべきだとか、そういうことがございましたら、事務局の方に寄せていただければと思います。
 なお、学術情報基盤の重要な観点につきましては、今後引き続き、次回の委員会でも審議を重ねていきたく考えておりますので、どうかよろしくお願いいたします。
 それでは、そろそろ時間が来ておりますけれども、最後に事務局より連絡事項等ございましたら、お願いいたします。
【松本学術基盤整備室参事官補佐】  本日会合の議事録につきましては、御確認いただいた上で公開とさせていただきます。
 次回以降の日程ですけれども、資料5でお示ししているとおりでございまして、12月5日金曜日と1月30日金曜日となってございます。当初10月10日も予定してございましたが、事前に先生方に御連絡させていただいたとおり、中止とさせていただいております。
 以上でございます。
【西尾主査】  それでは、本日も様々な貴重な意見を頂きまして、心よりお礼申し上げます。
 これにて閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

── 了 ──

 

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