学術情報委員会(第11回) 議事録

1.日時

平成26年5月28日(水曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.出席者

委員

西尾主査、羽入主査代理、上島委員、岡部委員、加藤委員、喜連川委員、倉田委員、後藤委員、斎藤委員、辻委員、土方委員、美馬委員、山口委員、吉田委員

文部科学省

(科学官)美濃科学官
(学術調査官)市瀬学術調査官、小山学術調査官
(事務局)山脇大臣官房審議官、下間参事官(情報担当)、長澤学術基盤整備室長、松本学術基盤整備室参事官補佐

オブザーバー

安達国立情報学研究所副所長

4.議事録

【西尾主査】  それでは、時間になりましたので、ただいまより第11回学術情報委員会を開催いたします。
 委員の皆様方には御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、前回に引き続きまして、前回頂きました意見を踏まえまして事務局が整理しました「審議まとめ(案)」につきまして、皆様方と様々な観点から審議をいたしたいと思います。
 この「審議まとめ(案)」につきましては、できればということでございますけれども、本日で審議を終了できればと考えておりますので、どうかよろしくお願いをいたします。
 まずは、事務局より配付資料の確認及び傍聴者の報告をお願いいたします。
【松本学術基盤整備室参事官補佐】  それでは、お手元の議事次第に基づきまして、配付資料の確認をさせていただきます。
 まず、資料1-1、大学の革新的な機能強化・イノベーション創出のための学術情報基盤整備について(審議まとめ)の案でございます。それから、資料1-2、審議まとめ(案)の基礎資料でございます。それから資料2、今後の学術情報委員会の日程についてでございます。参考資料といたしまして、参考1、5月26日、科学技術・学術審議会学術分科会で配付されました資料。それから参考2、日本学術会議情報学委員会の提言。参考3としまして、九州大学の岡田先生の調査に係る報告でございます。このほか、机の上にドッチファイル等で前回までの情報委員会の資料等を御用意してございます。
 不足等あれば、事務局までお申し出いただければと思います。
 なお、本日の傍聴者の登録は29名となってございます。
 以上でございます。
【西尾主査】  ありがとうございました。
 それでは審議に入りたいと思いますが、事務局より審議まとめ(案)につきまして説明いただき、その後、取りまとめに向けた審議を行いたいと思います。それでは、長澤室長、お願いいたします。
【長澤学術基盤整備室長】  それでは、配付資料、資料1-1に基づきまして御説明をさせていただきたいと思います。
 前回、多くの意見を頂きましたので、本来、見え消しであるべきなんですけれども、一から作ったようなイメージになっておるところは御了承いただければと思っております。
 それから、作りの話でございますけれども、SINETとクラウドの関係が分かりにくいという御意見がございましたけれども、基本的には、情報ネットワークが重要だということで、その際にクラウドの展開ということが見込まれますので、まずそういったものを普及する上で必要なことも示唆しながら、最終的に、それも含めてSINETを整備していくということをどのように整備していくかということを、二つの要素が含まれているというようなイメージで捉えていただければと考えているところでございます。
 それでは、資料に基づきまして御説明をさせていただきます。
 まず、導入部分の「はじめに」というところでございますけれども、情報基盤自体の、あらゆる社会的活動で必要不可欠な要素になっているということで、こういった環境整備を図っていかないと、もう立ち後れてしまうというような情勢にあるということが、前段階として示してございます。
 その上で、これは大学等の情報基盤についても同じですけれども、SINETというものがその役割を担っておりますが、こういった環境の高度化というものが不可欠であるということでございます。
 こういったことを踏まえまして、学術情報委員会としましては、SINETの強化ということを踏まえた環境整備を考えるんですけれども、その際には、今、重要な役割が期待されて進展しつつありますクラウド化ということも踏まえつつ、こういった環境整備の在り方について審議を行う必要があるんだということで、前書きの「はじめに」というところにまとめておるところでございます。
 2番目からが本文でございますけれども、前回と同じですが、まず社会的な背景としまして、やはり日本がこれからも発展するためには、知識基盤社会を形成していくということが必要であり、やはり高度化に取り組む必要があるということでございます。
 一方、その研究力の観点からの状況ということで追記をしてございますけれども、科学技術・学術政策研究所の科学技術指標2013というところでは、日本の論文数とか被引用数の多い注目度の高いトップ何%という論文数、そういったことに対しましては世界的なシェアとランクが共に低下している。これは資料として付けておりますけれども、低下している状況がございまして、やはりこの論文生産の7割を担っております大学の研究力の低下に対する懸念も広がっているというふうなことを書いてございます。
 もう一つのデータとしまして、その要因として考えられるものとして、同じように科学技術・学術政策研究所が実施しておりますNISTEP定点調査2013、これは産学官有識者1,500名への意識調査でございますけれども、ここにおきまして、調査項目の「我が国における知的基盤や研究情報基盤」の十分度に関する調査項目があるんですけれども、これは明らかに低下傾向にございまして、また特に大学関係者の回答の結果では、「不十分」というふうな認識で結果が示されておりますので、こういった関係で基盤整備に遅れがあるというふうなことも指摘をさせていただいてございます。
 一方で、その情報基盤の重要性という観点で様々な閣議決定の政策提言がなされているということと併せまして、今般、日本学術会議情報学委員会から「我が国の学術情報基盤の在り方について-SINETの持続的整備に向けて-」という取りまとめも出されましたので、そのことについても触れておるところでございます。これも、参考資料でお付けしてございます。
 閣議決定の内容につきましては、これは前回お示ししたものとほとんど同じでございますけれども、ITの重要性ということで、「世界最先端IT国家創造宣言」の内容。それから、教育関係で教育振興基本計画における内容。それから、研究基盤といたしまして、科学技術基本計画に示されている内容をここで掲げておるところでございます。
 次の3ページでございますけれども、こういった背景を踏まえて、情報ネットワーク整備の方向性ということで、これが検討するに当たりまして考慮すべきことということで書いてございますけれども、日本の学術情報基盤という形では、まずコアとなる情報ネットワークインフラとしましてSINETが整備されておりますが、これが大きな役割を担っているというふうな現状と、SINETは5年ごとに整備方針・計画を策定しております。
 こういった状況を踏まえてですけれども、先に前述しました情報ネットワークの重要性、それから諸外国の類似のネットワークと比較した整備の遅れ、そういった状況の中で、またそれを踏まえつつ、知識基盤社会の構築において不可欠な基盤ということを認識しつつ整備を進める必要があると。次期SINET、平成28年度から展開する予定のものにつきましては、特にクラウド化の流れということを念頭に置きながら、必要な強化を着実に対応することが求められるということで、背景的な説明にしてございます。
 次は、大学等におけるクラウド化の対応への取組について、取りまとめた部分になっております。
 クラウド化の動向でございますけれども、やはり近年の情報基盤という形で考えますと、国内外、官民を問わず、クラウドファーストとかクラウドの時代というふうな形で言われておりますけれども、どんどん、その導入が進展するという流れになってきております。
 そこで、クラウドコンピューティングというのは何ですかというふうな定義でございますけれども、データセンターで運用されるコンピューター資源に対して、必要に応じて情報ネットワークを通じてアクセスすることにより、外部からサービスの提供を受ける利用形態であるという形で書いてございます。
 このサービスを活用する意義でございますけれども、コンピューター資源の可用性というものが促進されまして、情報の管理の一元化とか、設備投資の抑制とか、基盤の高度化に対する負担の軽減、環境変化への迅速性の確保とか、そういった観点で様々なメリットがあるということで、これが推進されておるところでございます。
 ただ、その一方で、アウトソーシング的な役割になりますので、セキュリティ、サービスの継続性に対する課題もあるということで、その課題についても指摘をしてございます。
 大学におけるクラウド化の必要性に関する認識でございますけれども、これは文部科学省において行いましたクラウド検討会の提言の内容をここで引用させていただきまして、社会的・科学的課題解決とかイノベーション創出のために効果が期待できるということで、その意義を書かせていただいております。
 それから4ページですけれども、その大学におけるクラウド導入の意義、内容説明ということで、アカデミッククラウドの説明でございますけれども、その内容としましては、教育支援、研究支援、管理運営支援の三つに区分されますと。その意義につきましては、単に経費的な節減効果だけではなくて、各機関の持つ情報資源やシステムを共有する。それによって、どこからでもアクセスできるような環境が整備される。データや資料等の相互利用を促進するということによりまして、大学等に様々なイノベーションを誘発して、大学の総合的な機能強化、我が国の大学等全体の水準向上を図るということが、アカデミッククラウドの目的ということで捉えております。
 その現状でございますけれども、学術情報基盤実態調査を行っておりますけれども、この調査項目の最新のものに内容を変えておりますけれども、全大学の63%がクラウドサービスを導入しており、そのうちの約6割はまだ機関単独で実施しております。
 それから内容につきましては、管理運営業務と教育業務ということが多くて、研究業務でのクラウド化というのは25%にとどまっているという状況でございます。
 じゃあ、このクラウド化についてどのようにして取り組むべきかという方向性でございます。文部科学省で行いました調査研究の結果を踏まえながら整理したという形で書いておりますが、まず、その目的ごとの方向性といたしまして、教育支援におきましては、これは方向性は前回お示ししたとおりですけれども、ITを活用した多様な教育スタイルの実現とか、教育・学習情報のデータベース化とか、教育コンテンツの共有・利活用と、そういう形で教育の質的向上・質的保証につながるということでございまして、導入事例といたしましては、京都教育・大阪教育・奈良教育の3教育大学の遠隔授業の基盤整備によります双方向型の取組。それから国公私立大学の取組としまして、四国地区で行っております遠隔講義とeラーニングを活用した基盤を形成する取組というものを例示として挙げさせていただいております。
 5ページでございますが、その教育関係の課題及び留意点でございます。これについては、前回と同じようなイメージでございますけれども、やっぱりデータを利活用するという観点では、機関内に閉じた状態のオンプレミス型ということが多いと。端末をクラウド化するというのはプライベート型で進んでいって、パソコンを必携するという自分の所有デバイスを使うというBYOD対応の検討が進んでいないというのは、この調査結果のままでございます。
 今後の教育関係のクラウド化のためには、システム導入のコストの低下とネットワークの高速化、セキュリティ・プライバシーの強化が必要だということで、従来型の事業との関係も付記して、その上でクラウド化を支援していく体制の整備が必要だということでございます。これは、前回と同じでございます。
 研究支援のところを見ていただきますと、研究支援につきましても、方向性としましては、まずビッグデータの解析によるデータ科学、スパコンとクラウドを連携させたシミュレーション科学、ネットワーク型の大規模な広範型科学と、そういった最先端研究の推進とか、異分野融合研究という観点でコンテンツの共有・利活用とかの進展。それから、データ、データベースを遠隔バックアップで相互保全するとかというふうな観点で、クラウドが有効に機能するという方向性を示しております。
 導入事例としましては、北海道大学のクラウド上での計算資源の有効活用をしている事例を挙げてございます。
 課題、留意点といたしまして、研究環境として高度化をしていくと。運用体制としては、継続性の確保とか、共同利用とか、管理運営面でのポリシーとかの策定が重要だと。
 クラウドの規模につきましては、全て一体にしたらいいんじゃないかという話も、一応、そういう問題はあるわけですけれども、やっぱり全国一体型とか地域連携型とか、様々な集約、合理化を図りつつ多様性も必要だということで書いてございます。
 そうすることによりまして、災害発生時とか、単体とすることのリスク軽減とかという体制の整備が必要になるということで、若干付け加えております。
 あと、クラウド基盤の連携のインタークラウドというふうな形での高度化というものも必要で、そのためには民間とか外国との交流というのも必要だということは、前回と同じでございます。
 6ページのところでございます。管理運営支援ということで、管理運営サービスにつきましては、仮想空間による運用とか、それから情報基盤というものをネットワーク化することによって効率化するということで、開発コストや運用コストの削減とか、サービスの迅速化、関連する設備投資の合理化等の効果が得られるという形になってございます。
 導入事例といたしましては、静岡大学におけます、御紹介いただいた業務運営に関わる基幹システムのクラウド化を図ることによりまして、サーバーや端末等の設備投資、光熱水量等、資料としても示しておりますけれども、基盤センターの約6割の光熱水量の削減が図られたというデータも付けさせていただいておりますけれども、こういった維持管理経費が大幅に──1字誤りがございました。「効率的」というのは「効率化」の間違いでございます。大変申し訳ございません。1字誤字がございますけれども、効率化した環境を構築しているということでございます。
 課題及び留意点といたしましては、この管理運営サービスというのは、クラウド化を進めやすい部分ということでございますけれども、災害時の事業継続計画とかサービスの提供内容を保証する契約とか、そういった対応は不可欠だということと、多種多様なシステムをそういうクラウド化することによりまして、統合していくということが必要だということを課題として挙げてございます。
 また、パブリッククラウドの活用というものは圧倒的に効率的で重要という形になっているんですけれども、それに対しましてはなかなかセキュリティの懸念から進んでいないんですけれども、そういうメリットを生かしつつ促進することも重要だということを書いてございます。
 2番目が、じゃあ、環境構築に必要な事項としてどういったものがあるかということで整理したという形に変えておりますけれども、まずネットワークとしては、基幹的な内容として高速情報ネットワークの維持が必要で、このクラウド化が進展すると帯域不足になるということを懸念する声が大きいというふうなことも、調査結果を踏まえて書いてございます。まず、そのために基幹的なSINETの整備が重要だということと、SINETと機関を結ぶアクセス回線の高速化も課題としてあるということにしてございます。
 その次がセキュリティとプライバシーということで、プライバシーの観点が落ちておりましたので付記をしてございます。セキュリティ対策について、常に高度化していくということと、データプライバシーの取扱いにつきまして、ガイドラインを策定・共通化して、特にここは事前に公表しておくということが重要だというふうなことが示されているところでございます。
 あと、サービスの利用に係る認証、人材育成、意識改革、運用ルールにつきましては、おおむね個々の内容につきましては前回と同じでございます。
 こういった観点をもちまして、大学等におきましてはクラウド化を進めてほしいというふうなメッセージとしてこれを発出したいと考えております。
 ここから先がSINETの整備に関わる部分でございます。4番で、まずその情報ネットワーク整備の方向性としまして、これは前回と同じですけれども、今後、通信とクラウド化が一体となって、必要なサービスは仮想空間を活用していくことになるということを書いてございます。8ページでございますが、高機能なネットワーク環境への接続ニーズが拡大して、SINETの強化に対する要求も一層高まるということでございます。
 その際のNIIの役割ということで、特にNIIが中心になって運営しているんですけれども、各大学が独自に整備するよりも、共通するニーズを踏まえて、連携し共同で対応することで、大幅な合理化が可能になっているということでございます。
 特に、そういう観点で共同利用機関としてNIIが取りまとめを行っておりまして、またその運用に関しても、ユーザーの意見を取りまとめて一元的に整備するということで、こういった機能の高い安全・安心な情報ネットワークを提供しているというふうなことと、サポートも実現できているということが重要だということでございます。
 こういった対応につきましては、他の機関とか商用の情報ネットワークでは実現できないということで、NIIがやるということで代替性の効かないサービスになっているというふうなこと。これからまたクラウドの展開におきましては、更に高度な技術も必要になってくるということで、NIIの果たす役割を示してございます。
 今のSINET4の情報ということで、次に掲げてございます。これにつきましても、基本的に方向性としては前回とほぼ同じでございますけれども、こういった800機関200万人のユーザーで、現状としましては、東京-大阪で40Gbps回線が2本で、10Gbps回線若しくは2.4Gbps回線というふうな状況で、そういうふうな状況の中で東日本大震災にも耐えた信頼性の高い情報ネットワークを維持してきているということを示しております。
 SINET4としましては、当初計画にありました、これは正確に記載を直しておりますけれども、「主要な拠点への回線は40Gbps回線を束ねて100Gbpsを超える帯域にする」という、そういう環境が実現できていないということと、現状として、そのネットワークではなく個別にデータをやりとりするような輸送に頼らざるを得ないという状況も生じているのは前回と同じでございます。こういったニーズを調整しているということと、国際共同研究におきまして、類似の学術情報ネットワークとの接続が不可欠なんですけれども、海外では米国、欧州、中国など、国内外を問わず100Gbpsがベースになっているんですが、SINETでは、日米間においても10Gbps回線を3本整備した状況にとどまっているということで、その増強が強く望まれているという状況を書いてございます。
 一方で、クラウドサービスへの需要に対する対応ということで、サービスの充実も図っているということはこれまでと同じでございます。
 その上で9ページでございますが、次期SINET5の整備ということでございまして、まず一つ目としましては、クラウドの普及という観点で高機能化が必要になるということと、サイエンスの観点で、前述しておりますけれども、スパコンと連携したシミュレーション科学とかビッグデータというデータ科学とか、こういったコンテンツをやりとりするためのプラットフォームの構築とか、それから教育資源として講義内容、オンライン教育の進展とか、そういったあらゆる観点で大量の情報流通ニーズが発生して、これがオープンアクセスとかオープンデータという流れに乗って加速していくだろうということで。そういう観点からしますと、今後は400ギガとか1テラというふうなオーダーに耐えられるようなネットワーク技術の開発というのも求められるわけですけれども、そういったものも視野に入れながら環境整備に努めることが必要だということで、まず書いてございます。
 その上で、次のSINETの回線の確保におきましては、国内におきまして、やはりクラウド化しますと学内、学外を問わずデータが流れるようになりますので、高速ネットワークが必要になるということで、そういう観点からしますと、それを太くしていくわけですけれども、専用線を確保するとコストが掛かりますので、通信業者が使っていない余剰回線(ダークファイバー)というものを活用する方向に転換をすると。それによりまして、沖縄以外の観点での国内環境におきましては、100Gbpsで冗長性を確保した、早急に各都道府県に100Gbpsで複数接続できる高速ネットワーク環境を構築することができるというふうなこと。
 まずそれを進めた上で、今後、必要なネットワーク需要を踏まえてさらなる増強を図ることが適切であると。それに合わせまして、各大学等におきましてはアクセス回線の確保に努めることにより、我が国全体の情報ネットワーク環境というものの充実というのは実現していくというふうな形のまとめにしてございます。
 国際回線につきましては、やはり国際的な情報ネットワーク増強というものが不可欠でございますけれども、諸外国の100Gbps規模の増強が進んでいることを踏まえながら、日米の回線増強などの対等な環境整備が求められているということと、日本-欧州間につきましても、回線整備が望まれているということで書いてございます。ここの部分はダークファイバーは使えませんので、そういった増強にできるだけ対応するというふうな形に一応させていただいてございます。
 それから、最新のネットワーク技術の導入というところでは、やはりそういったSINETとしてネットワークを安心して使えるようなセキュリティの強化ということで、セキュリティ自体もクラウド化することでSINETに投入し、様々なユーザーがクラウド環境を維持できるようにしていくと。
 それから認証につきましては、NIIが提供している学認を共通仕様にすると。
 それから、そのネットワーク技術におきましては、大量のデータを融通させる上で、最新の情報ネットワーク技術というSDNとかNFVというふうな高効率で高セキュアな環境を整備するためのネットワークの導入を、次期SINETで実現することによりまして、機能強化を図っていくということでございます。
 もう一つのコンテンツの利用環境ということで、SINET上でこういったコンテンツの流通基盤というものを展開することによって、この情報資源というものをしっかりと流通させるようにしていくという観点でございます。
 NIIでは、大学がまず機関リポジトリにおきましてコンテンツを充実させますと、それを情報ネットワークで連携するJAIROというふうな展開をしておりますが、それと同時にサービスとして共用リポジトリのプラットフォームを提供するというふうな事業を併せて行っておりますので、こういった取組も強化していくことによりまして、こういったオープンアクセスとかオープンデータに対する対応というふうなことができると。
 今後は、論文だけではなくてこういった講義内容とか書籍、データといった様々なコンテンツがリポジトリに蓄積されて、SINETを通じて流通するという観点から、こういった機能強化が必要だという観点で書いてございます。その際には、検索機能としてのCiNiiの高度化とかも必要だということでございます。そういうことによりまして、この一番初めに掲げております知識基盤としての情報共有を促進していくということにしてございます。
 また、これは前回のとおりですけれども、最後にクラウド環境を使いやすくする、普及を促進するという取組から、クラウドゲートウェイ(仮称)というふうな機能の実現を図っていくということでございます。
 まとめといたしまして、ここでは、やはり我が国におきまして高度な科学技術に依存しているということがございますので、ボーダーレス化、グローバル化ということが進展する中におきまして、競争力を保ってすぐれた教育研究を支障なく取り組めるような環境としては、やはり情報ネットワークの高度化が不可欠だということで、継続的な整備が必要としてございます。その際には、やはり大学が独自に行うのではなくて、連携して一元的に取り組むということで、大幅な合理化が可能になる。その役割としてNIIが行うということで、コスト削減と機能強化ができているという部分。
 NIIにおきましては、次期SINET5にて、こういった大幅な増加が求められます情報流通ニーズに応える帯域の確保とともに、クラウド基盤等の情報ネットワーク技術、それから最新セキュリティ対策やコンテンツの相互利用を可能にするプラットフォームの搭載、こういったものを併せて行うことによりまして、世界最高水準の情報ネットワークの構築に取り組む。これに対して、国は整備に向けて着実に支援すると。
 大学におきましては、こういった共有する最新の情報ネットワーク環境というふうなメリットを生かしまして、アカデミッククラウドを導入したり情報資源の利活用を効果的に促進させるということによって、ミッションを踏まえた機能強化、イノベーションの創出、社会貢献というものを果たしていただきたいというふうなまとめにしてございます。
 ちょっと繰り返しになりましたが、以上でございます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、部分ごとにコメントを伺っていくという方法もあると思いますけれども、全体的な流れというのも一方で大事でございますので、資料1-1全体を対象としまして、皆さん方からコメント、御意見等を頂ければと思います。ございませんでしょうか。
 美馬先生、どうぞ。
【美馬委員】  全体を通しての説得するロジックというか、強調するポイントについてです。1ページ目の一番最初、初めの段落にあるように、「立ち後れてしまう情勢にある」というよりは、その次に出てくる「世界をリードするために」というところを、最終ページも同様に、全ての箇所においてそれを強調していくべきだと思います。特に、この立ち遅れてしまうというのが一番最初の段落に入っていて、これは何が何から立ち後れてしまうかということも書かれていませんので、次の段落からでよいなと思います。
 その際に、同じ1ページの社会的背景等に、「高度な知識基盤社会にある」ということ、さらに、「知識基盤の強化に取り組む」となっていますが、このことは言われてから随分久しいわけで、ここでは新たなものを作り出していく、つまり知識基盤社会から知識創造社会への移行であるというような形にするのがよいと思います。そのために分野を超えて、あるいは機関、組織を超えて新たな視点を導入していく、そのためには統合あるいは共有、統合、連携等が必要であると。そこから新しい知識等が創発され、イマージされてイノベーション等も起こるという形がよろしいのではないかと思います。
 同じことですが、それが教育に関しても、教育だと例えば4ページ目です。教育支援のところでも、これが共有されていけば、利活用が進むと教育の質の向上・保証が見込まれるというところについてです。これだと、いかにも経済的に効率化をしようということにもとれるので、ここでもコンテンツを共有する、あるいは大学等を超えてこういうことを共有することが、まず、なぜ質の向上につながるのか。それは、教育内容であったり教育の方法であったり、その見せ方、語り方、その内容に関して、ほかの大学等の良いところなども見比べながらやっていくから、共有することによって質の向上が図れるという、その理由が述べられていません。そこには、どうして質が向上するのかということが必要だという理由を書く必要があると思います。
 あと、同じように、もう一つの点では、3ページにある、これは研究のところでしょうか、最初の段落でも、「知識基盤社会の構築において不可欠な基盤であることを認識し」のところでは、そこを更に一歩進めるという話が必要だと思いますし、この3ページのクラウドの丸の下から二つ目のところでも、「情報基盤の質的・量的高度化へ対する負担軽減」だけではなくて、更にそこを進めるというような、最後の丸のところですで、「新たな知の創造、科学技術イノベーションの創出」、こういったところを積極的に強調していくべきだと思います。
 以上です。
【西尾主査】  貴重なコメント、御意見を頂き、ありがとうございました。
 室長、今のコメントについて、後ほど修正するに当たり、更に伺っておくことはないですね。
【長澤学術基盤整備室長】  先ほどの個別なんですけど、3ページの下から2番目のところは、クラウドコンピューティングの一般的なメリットとして書いてございますので、そこの部分は下のところで強調していくというところで、明確に分かるように加筆させていただきます。
【西尾主査】  美馬先生、受け身ではなくて、より積極的に出ることが大切であるというコメントでよろしいですね。
【美馬委員】  はい。
【西尾主査】  ほかにございますか。倉田先生。
【倉田委員】  私はいつも文句を言っているばかりだというふうに思われているようで、大変申し訳ないんですけれども……。
【西尾主査】  是非、御意見をお願いいたします。
【倉田委員】  全体の構成としてはよろしいのではないかと思っております。
 ただ、やはりちょっと細かいといいますか、やはり足りないのではないのかなというようなところがございまして、ちょっと細かいところも含めてでよろしいでしょうか。
【西尾主査】  はい、どうぞ。
【倉田委員】  はい。最初の1ページ目、「はじめに」の3番目の段落、「このため、」以降のこの文章は意味が通じていないと思います。特に「イノベーション」というところが、「大学等の機能に様々なイノベーションをもたらす」って、それはもたらすかもしれないのですが、そこは強調すべきことではなく、今、美馬先生がおっしゃいましたように、大学等がイノベーションを創発・創出していくためにクラウドが必要なのですよね。ここは単に文章的なものなので、それを作り出すためにクラウドや大規模化等へのネットワーク環境の整備が必要だという話ではないかというふうに思いました。
 それから、3ページ目の先ほどのクラウドコンピューティングは、これは一般的な話だというふうにおっしゃったのですが、やはりこれは日本語として意味が通じていないというふうに思います。何が通じていないかというと、「データセンターで運用されるコンピュータ資源」とは、一体誰が運用するのですか。「外部」って、一体何が外部なのかが分かりません。確かに、これは一般的な話なので、別にもうちょっと言葉を換えていただくだけで十分だとは思うんですけれども、たとえ一般的であったとしても、大学が使うことを念頭に置いた形での一般的な定義を書いていただいてもむしろよろしいんではないかと思います。つまり、ここではデータセンターが外部という意味ですよね。私もよく分からないのですが、大学が自らのところに必ずしも持たなくても、外部に置いておいても、そこの資源をうまく使えるということを言いたいのではないかと素人なりに解釈いたしましたけれども、そういう書き方の方が分かりやすいのではないかということです。
 分散管理であるとか高度化への負担軽減とかというのは、つまり自分のところで持っていれば自分が全部をやらなくちゃいけない。でも、そこには無理があるからこそ共有して、ある程度、任せられるところは任せていくべきだということがもう少し分かるように書いていただけないのかなというふうに思いました。
 それから教育支援のところは、美馬先生が「これでよろしい」とおっしゃればよろしいのかもしれないのですけれども、ちょっと私が分からなかったのは、これはいろいろな形でもう既に行われている話も含んでおり、今後、それを更に共有していくためにクラウドが必要だということでよろしいのでしょうか。どこの部分がクラウドの展開として一番重要な点かというところがないままに、課題のところですごく細かい話が出てくるんですね。ですから、これがどうなるとアカデミッククラウドで対応しているものになるのかが分からないまま、課題のところでオンプレミス型とか言われてしまうと、もうちょっと付いていけなくなったということになります。
 でも、まだ教育の方は何となく、これを共有するのかなと推定できるのですけれども、研究の方は「本当にこれでよろしいのですか」と言いたいぐらい、何も書いていないと思うのですが。
 私が分からないのは、ここで書かれていることは現在の研究分野の方向性ではないかということです。ビッグデータ等をはじめとして、非常にデータを中心として大量のデータを扱っていくという方向性。それから、そこにおいて異分野の融合であるとか、様々な共有ということが一つのキーワードになって研究が進んでいっているという研究の方向性の話と、それをクラウドで実現するというのは本来別の話です。しかし、そのクラウドでどう実現がされるのかという肝腎なことが書かれていないというふうに思います。
 方向性として、ここに書いてあること自体は全部そうだとは思います。しかし、その導入事例で北海道大学の「スパコン並みの」の効率的な運用という論理展開はないだろうと思います。別に北大でやっていらっしゃらないという意味ではなくて、北大の例でも結構です。しかし、クラウドによって具体的にどういう研究でどういうふうにすばらしい成果を上げているかを書くべきであって、効率的な運用は別にここでそんなに強調しなくてもよろしいんじゃないかと思います。ヒアリングでもお聞きした、天文学や何か、どんな例でも結構ですし、斎藤先生もいらっしゃる遺伝子関係の研究でも、既に山のように共有もそういうことももうやっているわけで、それがクラウドになることによって、もっとそこが促進されるなり、今までのデメリットが解消されるなりというような書き方で、ここのところの研究に関して個別の分野を挙げてはいけないということなのかもしれないですが、ある程度、具体的に書いていただかないとちょっと分からないと思います。
 あと、もう1点は、人文系の、例えばデジタルヒューマニティーズというような流れというのも、今、非常に注目されています。具体例を挙げるのは良くないのかもしれませんが、例えば木簡データベースとか、奈良国立文化財研究所がやっていらっしゃるように、貴重なそういう史料そのものを電子化することによって、そこに様々な、それを解釈したデータであるとか研究成果を全部、データベースを中心としていろいろ共有するというのが、今、徐々に進みつつあるわけです。こういうようなものは、まさにクラウドを使えばもっと進むと思います。ですから、そういうデジタルヒューマニティーズというようなことも、せめて一言でもいいので入れておいていただいた方がよろしいのではないかと思いました。
 基本的に、要するにアカデミッククラウドによって何がどうなるのかというところを、もうちょっと具体化していただかないとよく分からなかったなと思います。
 あとは、クラウドの環境構築に必要な事項ということで、こういうふうに羅列していらっしゃるのですが、非常に素人の浅はかな考えかもしれませんが、「クラウド」といった場合には、いわゆる一番根本のネットワーク部分と、その上の部分と、更にその上のコンテンツといったように、レイヤーが積み重なっていく、そういう区分があるのではないかと思うのですが、そういうことをここでは踏まえなくてよろしいのでしょうか。後半の方ではそれがちょっと気になりました。そのSINET4とかSINET5の方でもそういう言い方を一切なさって──あえてそういう言い方をしない方がいいという御判断だったのかもしれませんが、共通の最も根幹のネットワークの本当に線の部分と、その上でシステムやサービスを展開していく部分というような分け方というのは、あった方がむしろ分かりやすいのではないかと思いました。そのSINETの方の話になったところで、7ページの一番最後に「学生・研究者に必要なサービスは仮想空間を活用して提供されることが一般化すると考えられる」と書いてあるのですが、その3のところまでで、一体どうやって教員や学生がサービスを使っているのかということが具体的に見えてこないということが非常に大きな問題ではないかというふうに感じました。
 以上です。
【西尾主査】  貴重な御意見、どうもありがとうございました。
 まず倉田先生の方から、全体の構成については、大凡(おおよそ)、案の通りで良いのではないかということをおっしゃっていただきました。全体の流れ、構成として何か問題点があるようでしたら、ここでそれを議論しておいた方が良いと思うのですが、いかがでしょうか。前回は構成のことも含めていろいろとコメントを頂きまして、それに応える形で今回の案を作成していただいたところです。
 どうぞ。
【喜連川委員】  ここの段階でこの構成を固定化してしまって議論を効率化するということは重要だと思うんですけれども、今、倉田先生から頂いた御趣旨というのはかなり根源的なものだと思います。議論の過程で、こういうふうに構成を変えた方がより分かりやすくなるのではないかというようなことは、一応、許容範囲の中にお入れいただいた方がいいと思います。
【西尾主査】  分かりました。貴重な御意見を頂き、ありがとうございます。
 そこで、倉田先生からは重要なコメントを多々頂きましたけれども、まず教育に関して、案文のようでよろしいですかというコメントがあったのですが、美馬先生、いかがでしょうか。
【美馬委員】  そこまで詳しくはコメントをしませんでしたが、4ページ、教育支援というところは、これは「教育・学習支援」だと思います。いいんですか、今、そこについて意見を言ってもよろしいでしょうか。
【西尾主査】  どうぞ。
【美馬委員】  「ITを活用した多様な教育スタイルの実現」というのは、これは、もしよろしければ、後でこのあたりをちょっと直して、またメールでお送りしたいと思います。
【西尾主査】  本当に助かりますので、是非そうしてください。
【美馬委員】  はい。つまりポイントは、学校の教員が作成する教育コンテンツとなっていますが、今後、教員が作成するかどうかも分かりませんし、これはどちらかというと、アクティブラーニングであれば主体的な学習者を育てる、そのために質の高い教育を与える、そのための支援であるといったロジックだと思います。この中では、当然、ネットワークを利用した協調学習等も入ってくるでしょうし、ここのところの方向性については、このままではよろしくないと思います。
【西尾主査】  倉田先生がおっしゃられた、もう一つ大事なこととして、クラウド環境だからこそ教育・学習として一体何が新たにできるのか、単なる共有なのかという問いがありました。この問いは、クラウド環境によって、単なる大型の研究目的だけではなくて、全ての大学にあまねく貢献をするシステムを構築することが大事だという観点からも重要なポイントだと思います。
 教育・学習においてクラウド環境にするということの有効性、意義ということを、より明確に出しておくべきかと思いますけれども、そこらあたりに関してどうでしょうか。
 はい、山口先生。
【山口委員】  昨年アカデミッククラウドの環境構築の在り方に関する調査研究の議論に参加させていただきました。そのときの議論を振り返ってみると、教育支援の方向性として抜けている部分があるとは思います。その中で大変重要な点は、アカデミッククラウドを大学で活用することによって、例えば独自の教育目標や教育内容を可視化して情報発信することができます。そうすることで、国内外の優秀な学生を獲得したり、可視化することによって教育内容の質の高さを促進していくことにもつながります。
 次に、海外の大学との連携においても、アカデミッククラウドを活用することは重要です。例えば大学間の単位互換を含めた教育システムに関しても加筆するのがよろしいかなと思います。
 また、倉田先生もおっしゃっていたように、記されている導入事例が、どの大学が何をやっているという事実に加えて、それがどのように大学の質の高さに貢献しているか、この取組がどのような効果を生んでいるのかなどについて、もう少し詳しく分析することが必要ではないかと思います。研究の事例も、そこを中心に分析していけば、もう少し具体的な内容の取組が明記できるのかなと思いました。
【西尾主査】  事務局の方で、今、頂いている意見に関して、山口先生に、何か書いたもので送ってもらいたいとか、そういう御要望がありましたら遠慮なくおっしゃってください。最終的に充実した審議まとめを作成いたしたく、是非、委員の方々には、今後の改定に関してサポートいただければ有り難く、何卒(なにとぞ)お願いいたします。
 教育に関して、ほかにどうでしょうか。どうぞ。
【上島委員】  今、山口先生からお話が出ましたですけれども、単位互換ということで出ております。やっぱり教育の世界では、実際に科目をナンバリングして単位互換をしようとか、科目を互換しようというような話も出ているし、例えばジョイント・ディグリーであるとかデュアル・ディグリーといった学位制度の多様化というのも実際議論されていると思います。そういったあたりも組み込んで話に入れるというのはいいのではないかと思いますね。クラウドの可能性として、そういうはっきりとした可能性が出ると思います。特に、また留学生やたくさんの学生が大学へ入ってきていることを考えますと、今後、レベル別の学習であるとか教育であるとか、そういったことも必要になってくるかと思います。そういった意味でも、いわゆる教育の制度の展開を見据えたような形の書き込みができれば一番いいのではないかと思っております。
 以上です。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 はい、どうぞ。
【加藤委員】  教育のところですけど、導入事例は二つとも大学間連携という事例が出ているわけですね。
 課題及び留意点のところにちょっと気になるところがございまして、「今後、クラウド化を一層推進するためには」という書き出しのスタートになっているんですけれども、教育の支援については大学間の連携が一層促進され、あるいは教育コンテンツの共有化をどんどん進めていく必要があると。そのためには、逆に言えば高度なネットワーク、高速化を持ったセキュリティ・プライバシーの強化を持ったクラウドが必要であるというような記述の仕方の方が、逆の方がいいのではないかなと思っています。
 これは全般的にもそうなのですけれども、逆にした方が分かりやすいというか、目的は教育支援なので、クラウド化を推進するのが目的ではございませんので、むしろ連携をすることによってコンテンツの共有化ができる、あるいは地域を越えた大学間の連携ができる。もしそれが全国的ネットワークになれば、それこそ北海道から沖縄まで含めた連携ができるというふうなこともございますので、そういったところを逆に推進していくことが今後望まれると。そのためには、そういった個々の大学、機関におけるシステムではなくて、共通的に作られる共通的な高度なネットワーク、あるいは後から出てまいりますけれども、シングルサインオンとかそういう機能を持ったクラウドネットワークが必要で、具体的にそれが進まないわけですね。そういうようなクラウドを強化する必要があるというような形にしていただけると、後が全部つながって分かりやすくなるのではないかなと思っております。
 後ろの方をずっと見ていきますと、それぞれ本当に重要なことが全部書かれています。パブリッククラウド、プライベートクラウド、その他いずれの活用においても、そういうネットワーク接続ニーズは拡大していくということは当たり前のことですけれども、ちゃんと記述してあり、こういうクラウドが必要であると。あるいは、後ろの方にございますけれども、10ページにちょっとありますけれども、コンテンツの標準化、開発経費の節減ということ、あるいは流通促進をするというためにはというふうに、逆に主語と述語を変えるだけでも大分アピールすべき点に焦点があってくるのではないかなと思います。
 それから、11ページに記載されている、シングルサインオン、クラウドゲートウェイ(仮称)とかをSINET5で実現することになっておりますけど、まさしくこういう環境がなければ、連携した形でのアカデミッククラウドの本来の目的、例えば、連携した研究支援を含めて実現できないわけですので、前の方にそういう形で少し入れ込んでいただけるとストーリーがわかりやすくなるのではないかと思います。
【西尾主査】  加藤委員、どうもありがとうございました。おっしゃる通りだと思います。
 ほかに、教育に関していかがでしょうか。美馬先生、どうぞ。
【美馬委員】  すいません、何度も。
 現在の段階では、方向、導入事例、課題・留意点となっています。この程度の導入事例でいいのかというのがまずあります。別にここの事例が適切でないというのではなく、もっと明るい未来を、今はこの段階であるけれども、更にネットワークの基盤が強化されればもっとすごいことができるというような未来像をここでは入れるべきじゃないかと思います。
 あともう一つは、例えばそこで単位互換とか大学連携とか、今、大学間連携とか、これらは手段ですよね。その先にある目的が書かれていなくて、これで単位互換が進むとか大学間連携が進むと。連携が進むと何がいいのか、単位互換が進むと何がいいのかという、そこが書かれていない。要するに将来の、みんな何かいいとは思っているけれども、そこが何かを見せることによって説得力が増すのではないかと思います。
【西尾主査】  先生、そういう意味で何か良い事例はございませんか。今後の大きな夢を描いていけるような事例があることが大事かと思いまして。
 羽入先生、どうぞ。
【羽入主査代理】  教育に限定したことではないんですけど、先ほど加藤先生がおっしゃったことがとても重要だと私は思っております。
 今回、アカデミッククラウドでこういう方向に持っていこう、そのために実際にこういう事例も既にある。そうすると、この事例が更にどういうふうにすると生きるのかという、さっき加藤先生がおっしゃったことの支持の発言でございます。
 もう一つ、教育に関することだけではないんですが、全体のタイトルなんですけれども、前回は、アカデミッククラウドというのが前面に出ていたと思うんですね。大学というふうにするよりも、むしろ教育・研究組織の革新的な機能強化というふうに言った方が、ここで述べられている教育支援、研究支援、組織運営体制と一致するのではないかというふうに思っております。
 それで、大学に関係することだけではなくて、やはりアカデミックなものは、もちろん研究所もそうですけれども、それだけではなくて、やはり日本の知的な人材育成ということを考えると、大学に至るまでの様々な教育資源、それこそ初等、中等教育から始まった、そういったものを全て見据えたものであるべきだというふうに私は思ったものですから、余り狭めない方がよいのではないかと思っております。
【西尾主査】  表題に「大学」と書かれていることについて、何か重要な理由付けとかがありますか。説明いただいた方が良いと思いますが。
【長澤学術基盤整備室長】  表題の件ですね。
【西尾主査】  今回の審議まとめが大学のみならず、例えば大学共同利用機関とか研究所とか、更にダイレクトではないにしても、高校とかも含めて、日本全体の教育・研究に関わるところも、ここで論じていることの対象になるのではないかと考えるのですけれども、そこらあたりはいかがですか。
【長澤学術基盤整備室長】  当然、排除するつもりは全くございませんで、ただ対象が、SINET5という観点からすると、大学等でも全然構わないんですけれども、そういったところの機能強化につながるような情報基盤として考えた方が、これを読んで活用する方々に対して分かりやすいかということで書いてあるだけですので、先生方の方でもっと幅広く考えるべきだとおっしゃっていただくなら、それでも支障は全然ないということでございます。
【西尾主査】  少なくとも「大学等」の「等」は要ると思うのですけれども。
 はい、どうぞ。
【羽入主査代理】  希望ですのでかなえられなくても結構なんですけれど、やはり日本の今後の学術情報基盤を作るということを考えたときに、もちろん教育・研究を多く担っている大学というのがターゲットになるかもしれませんけれども、やはりそこまで集約されてくるものというのを視野に入れることも重要ではないかと思いますし、また大学での成果が幅広く社会に還元されるべきだと思いますので。そうすると、できるだけ広くこれは据えておいた方がよいように思っております。
【西尾主査】  ありがとうございました。今後考えていきたいと思っています。
 ほかにございますか。 倉田先生、先ほど来、出ているような教育に関する御意見が、先生が想定されていました方向性と合っていると考えてよろしいでしょうか。
【倉田委員】  はい。
【西尾主査】  そうしましたら、もう一方で研究のことに関しましても、倉田先生からおっしゃっていただきましたように、アカデミッククラウドというプラットフォームができることによって、どのような研究成果が今までと違って出てくるのか。あるいは、研究プロセスの圧倒的な効率化がどうなされるのかとか、そういう観点からの審議まとめの記載が大切ではないかと思うのですけれども、これらのことに関して御意見等ございませんでしょうか。
【辻委員】  4ページの上から二つ目の丸のところで、実態調査ということでお示しいただいているんですけれども、ここで「研究業務での活用は25%にとどまっている」と、それで終わってしまっているんですね。これだけをとりますと、管理運営業務でしたり、教育業務の方はどんどん望まれているところではあるんだが、研究業務についてはさほど要求がないような印象を受けてしまうのではないかなというところもございまして、そこのところに関しては、そうなんだけれども、実際はもっと要求があるんだよというようなところを、例えば岡田先生の成果報告等の情報等もお使いいただいて補強していただくといいのではないかという点が1点です。
【西尾主査】  貴重なコメント、どうもありがとうございました。その部分についてももう少し今後の展開に資する形で記述していきたいと思います。
 はい、岡部先生。
【岡部委員】  前回も少し申し上げたんですが、今回のこの報告書のアカデミッククラウドというコンテクストで、教育ですとか管理とか従来の情報基盤から一歩踏み出した形のところに焦点を当てているという、それはもちろん大事なことなんですが、一方で今までの中核だった最先端の研究利用、特にスーパーコンピューターの利用に関してほとんど記述がないというのが、これ、ちょっと文部科学省の施策としてどうかな。例えば、今、「京」コンピューターというのがあって、それを中核に全国の、我々の大学も含めてスーパーコンピューターのセンターが連携してHPCIというのがあって、その枠組みを全国の研究者がSINETを介して利用していると。これは、今後、各大学のセンターのスーパーコンピューターがどんどん性能が上がっていきますし、あるいはこのSINET5の期間中に、恐らくポスト「京」が視野に入ってきていると思うんですね。そういうコンテクストにおいて、ネットワークがどれだけ速くないといけないという話が前提にあるはずなのに、そこはさておきみたいな話になって。暗黙の前提かもしれないんですが、やはりそこはきちんと訴えておかないと、思わぬところではしごを外される可能性もありますので。やはり、そこはもうちょっと、余り革新的な記述にならないかもしれないですけれども、基礎利用として、スーパーコンピューターの利用等があるということはしっかり書いておいていただきたいと思います。先ほど御指摘のあった25%というのも、多分、これは件数ベースでやって、トラフィックベースではないと思うんですね。そこがすごくミスリーディングかなというふうに思いました。
 以上です。
【西尾主査】  スーパーコンピューターのことは、その能力の最大効果を生んでいくという観点から記述する必要があると思っています。岡部先生、ありがとうございました。
 喜連川先生、いかがですか。
【喜連川委員】  その点に関しましては、私の記憶では、前回の委員会のときにはっきりとそのことを指摘させていただいたと思っておりますので、よろしく御対応をお願いできればと思います。
【西尾主査】  どうも、そこらあたりの配慮が足りていませんでした。
 研究ということで、アカデミッククラウド環境を構築することによって、大量データ等の処理をしてどのような研究成果が出てくるのかということに関して、ここに書くべき導入事例があるのではないかという、非常に核心を突いたコメントでした。そのことについて、具体的な成果とか、参考になるような御意見とかはございませんでしょうか。
 美馬先生、加藤先生。
【美馬委員】  先ほどからいろいろ、何か参考にならないかと思って調べておりましたら、昨年7月に発行の京都大学のICT基本戦略、これは美濃先生総合監修で、とてもいいことを書かれているんです。それで、ここで是非御紹介させてください。美濃先生、後で補足お願いします。これはクラウドについてではないのですが、京都大学がどのようにICTを戦略としてやっていくかが書かれています。その中は四つに分かれていて、教育支援、研究支援、業務支援、情報基盤となっていて、更に用語集まで付いているんですね。今のここでの議論で言うと、研究支援のところを、今、クラウドに置き換えたらとか、何か足りないことがないかと見るのにとても参考になると思います。図も、すごくいいです。
 この中で書かれているのは、最先端計算環境が1番、それからシミュレーション、データマイニング、検索支援などの高度なツール群の充実、3番目は研究プロセス記録の支援環境、それから4番目は研究資源、成果のアーカイブスの整備、5番目が研究者コミュニティ形成支援環境。この戦略のまとめ方はすばらしいと思いますので、是非、参考にするのがよいかと思いました。
【西尾主査】  美濃先生、何かコメントはございますか。
【美濃科学官】  ありがとうございます。褒めていただいたのは初めてなんですけど。
 確かに、研究支援というのが、実は大学で全然考えられていなかったというのは、我々、ICT戦略を作って分かったことなんですよ。それで、何が必要かというのをいろいろと調査して、そこに挙げる五つぐらいが学内としては必要じゃないかという議論の結果をまとめたものです。ただ、反対がいろいろあって、研究プロセスを支援して管理されたら困るなどの反対意見は出てきたんですけど、それは管理するためじゃない、記録するためだ、先生方のためだということで書かせてもらっています。最終的には3年ごとに見直すということで了解を得たという話です。
 だから、ICT基盤を使って研究支援をしましょうという、そういう視点での発想は今までかなりなかったというのが現状だと思います。スパコンを提供していたら、それで研究支援であるというのから脱却する必要があるというのが、このICT戦略を作ったときの一番大きなポイントです。
【西尾主査】  美濃先生にはまた宿題で恐縮ですが、以上のような観点からも、是非、クラウド環境でどういう研究支援が必要で、どのようにうまく成果を出していけるのかというようなことをここで記していただくことが、重要なメッセージになっていくと思います。そこらあたりについて、是非、この委員会の後にでも科学官としてサポートしていただけますようにお願いします。
 喜連川先生、どうぞ。
【喜連川委員】  やっぱりコンピューターというのは、原則、ツールでしかないわけですよね。したがって、研究の中身がこれによって飛躍的という事例を幾つも幾つも的確に調べるというのはそれほど容易ではないかもしれないんですけれども、100%言えますことは、今、クラウドに行って研究者が一番何が便利かというと、要するに購入手続がないということですよね。我々が官報に上げて何か月も待ってやっと計算機を導入するという、このプロセスがない。施設係に行って電源容量の申請をする必要もない。こういうことの時間がゼロになるというのは、研究者にとってみると極めて有り難いことなわけですね。まず、それをアドレスするということは、多くの方々に共鳴を頂けることではないのかなという気がします。
 ここに、実は、利用率がまだ進んでいないということが書いてありますけれども、これは、実はクラウドリソース自身の調達がまだ大学の中でこなれていないということも理由として挙げられます。ですから、今の一千数百万円以上という公開調達のときの枠という制度をクラウドにどう適用すればいいのか。つまり、我々、使いながら支払をしているわけで、最初から幾ら使うかというのを決めているわけでもないという、クラウド利用における会計基準とのすり合わせが一番大きな課題の一つになっているんじゃないかと思います。
 それから、「褒めてもらったことがない」とおっしゃる美濃先生と、褒めてもらったことが一生一度もないという喜連川とでは極めて気持ちが一致しているんですけど、やっぱり今回の理研におけるSTAP細胞の問題に関しても、少なくとも実験記録はきっちり残すというのは、多くの研究分野では当たり前だと思われます。そういうことはクラウド環境になったときには、インテンショナルにしなくても自動的に比較的簡便に記録がとれてしまいます。ですから、研究者に対してこうしろ、ああしろと言わなくても、インプリシットに実現可能です。それは、決してのぞき見られているということではなく、すがすがしい気持ちで研究のプロセスをITが支援することができるというのが大きなメリットではないかと個人的に思います。
【西尾主査】  本当にありがとうございました。貴重なコメントであり、何とかコメントを生かしていきたいと思います。
 加藤委員、どうぞ。
【加藤委員】  辻委員が言われたことと関係しますし、今、喜連川先生が言われたことと関係するのですが、4ページ目のところに「研究業務での活用は25%にとどまっている」という話がありまして、大学のIT環境は、ちょっと私、分かりませんけれども、実はこの間を頭の中で埋めておりまして、実際には、個々の研究者が個々に調達してサーバーを導入しているんではないかというように考えております。「クラウドの活用がとどまっている」ということは、むしろ、クラウドを活用するメリットが大きいといえるのではないでしょうか。
 その上で、5番の研究支援に行くわけですけれども、ここの導入事例はスパコンの例が入っております。逆に、こういったスパコンの共同利用型ではない形で、研究室ごとにサーバーを個別に導入している例というのは非常に多いのではないかなと。そういう状況の中で、やはりこのクラウドを使って、この上にある方向性のようなことを実現することが必要だということを記述すればよいのではないかなと思われます。その部分の記述の仕方が、実は、クラウドに絞って書いているものですから、実態の事例のクラウドによってどう変わっていくかというところの説明が少し足りないのではないか、そんな感じがいたします。むしろ、当たり前のことを書いておられるので、私なんか行間を頭の中で埋めているのですけど、本当はそこを絶対必要だし、そのためには共同利用型はしなきゃならないし、ネットワークは必要だしとか、いろいろなことが全部絡んで、間違っていない提言になると思うんですけど。すいません。
【喜連川委員】  これは、吉田さんが御専門ですので、是非、御発言を。
【西尾主査】  今、吉田委員にお伺いしようと思っていた矢先です。
 どうぞ。
【吉田委員】  研究支援として、実際、どういうことをやられているか、どういうことが必要という点については専門外なのですけれども、クラウドで一つ重要なのは、いろいろシステムを構築するとか、それから設定したものを運用するといったところの負担が全部サービスプロバイダ側に行くというところです。研究者の方が、例えば研究でサーバーを新たに1台使おうと思っても、さっきの購入手続の負担もあるし、いざサーバーのハードウェアが来てからでも、梱包(こんぽう)を解いたり、OSの設定などでも時間が掛かりますし、ネットワークの設定等も相当難しいでしょう。
 それから、実際、運用し始めると、例えばメンテナンス作業として、ハードが故障したら何らかの対応が要るとか、OSやソフトウェアのパッチを当てるとかで大量に作業があります。恐らく、サーバーを本当に研究にお使いになっている時間のほかに、単にサーバーの設定をしたり維持されているということだけでも、実は相当労力を使われているんじゃないかと思うわけなんです。
 ですから、逆にそういう作業負担をクラウドのサービスとして共通化して提供することによって、研究者の方は、研究の本質的なところ、例えばプログラムを書いて、それをシミュレーションするとか、そういったところに集中されるということで相当研究の効率化が図れるんじゃないかというふうに、私は理解しております。
【西尾主査】  分かりました。我々は、利便性に関して積極的に宣伝していくことが大事かと思っています。
【喜連川委員】  吉田委員、例のグリーン・グリッドの話をしていただいた方が一番面白いと思います。
【西尾主査】  御指名ですので、吉田委員にはグリーン・グリッドのことをお話しいただきたくお願いします。
【喜連川委員】  ほとんど利用率が低いという。
【吉田委員】  資料を参照しますので、ちょっと二、三分ください。
【西尾主査】  どうぞ。
【喜連川委員】  じゃあ、僕が言いましょうか。
【西尾主査】  喜連川委員、どうぞ。
【喜連川委員】  一時、我が国は、第4期の施策の中でも、いわゆるライフイノベーションと同時にグリーンイノベーションということを打ち上げたかと思います。そのときの一番大きなドライバーは、いかに無駄にコンピューター、つまりIT、いろいろなものを使っているかそれを大幅に節約しようというところでございます。
【吉田委員】  ちょっと読みます。2007年に調査したサーバーのうちの20%超が0.5%未満の使用率で稼働している。
【吉田委員】  これが、世界の数千の企業で稼働している30万台のサーバー、VMWareですけど、そのツールを使って調査したと記載されておりますが、調査したサーバーの75%が5%未満の使用率でしか使われていないと記載されております。
【喜連川委員】  なので、大学で20台パソコンがあると、実は1個で済んでいるということなわけですね。これを実現するのが、実はクラウドなわけですね。この圧倒的な効率感というものを、我々は目の前にして利用しないというのは、我々自身が京都プロトコルを踏みにじっているとも解釈可能です。
【西尾主査】  非常によく分かるメッセージでしたね。おっしゃるとおりですね。電源は入っているのだけれども、全然使われていないということですね。
 それと、倉田先生が、クラウド環境を使った研究成果として、人文社会系等における成果ということでデジタルヒューマニティーズのことをおっしゃいましたけれども、理工系の大きなプロジェクトのみならず、人文系等においてもアカデミッククラウドの環境がいかに大事かということをきっちり記しておくということも大事かと思います。それに関しましても、どうか対応のほどをお願いいたします。
 それで、更に進んでいきましたときに、6ページのところで、もう一つ大きな問題として「クラウド環境に必要な事項」というところの、この丸印での書き方がいいのか、あるいは先ほどおっしゃった意味で、システムのアーキテクチャーを踏まえた記述が必要なのではないかということなのですけど、ここらあたり、吉田委員に是非御意見をお伺いしたいと思います。
【吉田委員】  やっぱり全体的な印象として、もう少しクラウドらしさを出した方がいいかなと思います。
 先ほどの効率化ですが、集約することで効率化できるという話ばかりでなく、その結果としてリソースがオンデマンドで使えるようになること、しかも、非常に大量のリソースでも使えるようになる、それは、集約すればするほど、リソース要求が平均化されますので、それがやりやすくなる、効率的にできるようになるからであるといった要素を加えられるのがいいんじゃないかと思います。
 そう考えると、今の利用率が非常に低いという話も含めて、やっぱりクラウド環境としてサーバー環境を集約していくというところを、まず先に書かれまして、では、それにアクセスするためには、やっぱりそれなりのネットワークの性能がないと、当然、それを快適に使うことはできないだろう。それから、集約したことによってセキュリティの問題が、当然、大きくなってきますので、そこに対する対処が要る。ディザスター・リカバリー等も同じです。集約したことで、逆に何かあったときの被害が大きくなるわけなので、その分散化ということを併せて考えなければいけない。そういう流れで説明してゆくのがいいんじゃないかなというふうに思います。
 それと、ちょっと余計な話かもしれませんけど、先ほどこういう目的にクラウドを使うことでいろいろ御説明を頂きました。しかし、やっぱりクラウドの重要なところというのは、後からその形を変えてゆけるといいますか、後からいろいろなサービスを追加したり、いろいろな機能を追加したりということが柔軟にできるという点にあります。したがって、まずはこういう用途適用する、こういう事例があるという列挙も結構だと思いますが、さらに、それを今後いろいろ組み合わせたり、新しい展開をしたりということが、クラウドだと非常に容易にできるようになるんだという点を前の方で言っていただくのがいいかなと思います。
【西尾主査】  これは、美馬委員が先ほどからおっしゃったような、ある種の夢、あるいは将来の可能性を展望した記述が必要ではないかと考えます。
 どうぞ。
【長澤学術基盤整備室長】  そこの点は、3のところの3ページのクラウドコンピューティングの意義を含めて、一応、そういうメリットとしては、「情報基盤の質的・量的高度化へ対する負担軽減」と、言葉が足りないということであれば、そういったところを強化することもあるんですけれども、様々なそういった幅広いメリットがあるということで膨らませて理解していただけるような形にできればなということもちょっと思います。
 それと、先ほどの研究基盤のところで、北海道大学の例示の件なんですけれども、これは書き方が不十分なのかもしれませんが、これは極めて先進的な例なので、ここについて北海道大学が計算資源をクラウド上で構築することによって、いろいろな仕組みというものを柔軟に対応してということは、一応、資料1-2のところの事例紹介のところの北海道大学のところを御覧いただければ分かるんですけれども、そういった極めて先進的な取組ですので、そこは中身が分かるようにして書き加えたいと思います。
【西尾主査】  ここで例示している意義というか、なぜここでこういうことを取り上げているのかについて、是非、内容を膨らませて記述いただければと思います。
 後藤委員、それから斎藤委員、お願いいたします。
【後藤委員】 今、皆様のお話を聞いていて、3ページの「クラウドコンピューティングとは」の説明を米国NISTによるクラウドの定義のキーワードである、オンデマンド、ミータードユース(metered-use)、それからフレキシブル、そういう言い方に代えられると良いと思います。つまり時間が買える、チャンスがつかめると。それをまず前面に出すことです。後ろの3行目からそれは書いてありますが、言葉遣いが硬いので、まさにオンデマンドですぐ使えるんだよということを書いて、それに合わせて、北海道大学の例も、スパコン並みの性能を有する計算機環境であっても、研究者が必要なときに即座に利用できるとか、システム構成が即座に変更できるとか、そういう書き方で書くと「クラウドコンピューターとは」と話がつながってくると思います。さらに、今の6ページの「(2)のクラウド環境構築に必要な事項」の次に、同じ言葉で合わせて、サーバーを集約することによって、まずオンデマンドのメリットを出す、と変えていただくと、全部つながると思います。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 斎藤委員、どうぞ。
【斎藤委員】  災害対策なんですけれども、5ページには、下から3行目に自然災害の発生や云々(うんぬん)ということでちょっと触れてはいらっしゃるんですが、私、3.11の年、11年に京都で国際会議をやったときに、我々の大会のサーバーは、もう日本には置きませんでした。それで、アメリカの会社の方でお金を払ってやりました。そういうこともありました。
 あとは、DDBJのデータベースなんですが、現在はちょっと知らないんですが、かつて議論をしまして、国立情報学研究所に全部バックアップをとっていただきました。ただ、そのときも既に議論していたんですが、我々がおります静岡県三島市と東京は距離的に近い。大きな地震で両方ともつぶれてしまう可能性も議論いたしました。
 ですから、クラウドコンピューターというときに、計算ですと1週間の計算が駄目になったとき、また別のところでやればいいんですが、データのバックアップが、「バックアップ」という言葉を探したんですがなかったんですが、これはもうクラウドで当たり前なんですか、私、それがちょっと分からないので。
 あと、バックアップは我々はもちろんやっております。でも、自分の研究室が全部地震でやられたら、研究室のバックアップは全部消えてしまいますから、物理的に遠くに置かないといけないんですよね。東京と静岡でも駄目です。例えば北海道、沖縄あるいは別の国を使うとか、今後、そういうことが必要だと思うんですが、それについてはいかがなんでしょうか。
【西尾主査】  喜連川先生、どうぞ。
【喜連川委員】  今、氷河のストレージという言い方が出てきておりまして、グレーシャリー・ストレージと読んでいます。これは、1ギガバイト1か月1円です。このキャパシティーの低コスト化を実現しようと思いますと、やっぱりNIIが物品調達をしていたのでは無理です。その意味で、いわゆるパブリッククラウドのスケールメリットを得たサービスをいかに調達するかということが我々の根源的なストラテジーにならざるを得ないんじゃないかなと思っています。そういう意味で、Internet2がネットプラスとして、多様なクラウドベンダーを競合させながらリソースを調達して、それを再配分していますが、そういう役割を私どもNIIが今後担っていかないといけないのかなという気はしています。それが1点。
 それともう一つは、よく金融あるいはバイオで取り沙汰されますのは、パトリオット・アクトがありますものですから、Amazonもレプリケートされている先がどこなのかが気になります。先生の場合、日本に置いておかれると困るという、やや異なる要求もあるんですけれども、ほとんどのデリケートなユーザーは、アメリカに置かれて、アメリカの政府が中を見る越権行為をした場合にどうしようと心配される方の方が多くて、いろいろなニーズがあるものですから、なかなか一言では申し上げられませんけれども、バックアップに関しましては圧倒的に技術が進んでいますので種々の御希望に添える形で実現可能と御理解いただければと思います。
【西尾主査】  斎藤先生、どうぞ。
【斎藤委員】  つまりユーザーとしては、自動的にあるどこかで密(ひそ)かにちゃんとバックアップされているんだということが担保されていると使いやすいので、それがこれを読む限りは書いていないんですね。どこか、必ず書いていただければ有り難いんですが。
【倉田委員】  一応、5ページに「バックアップ」という言葉は一言ございます。
【斎藤委員】  失礼しました。
【倉田委員】  いえいえ。ただ、これだけではちょっとよく分からないなと。
【斎藤委員】  促進じゃなくて、もう必ずやってほしいと、そうするといいと思います。
【西尾主査】  非常に貴重な情報でして、ありがとうございました。現実的観点からのお話は非常に参考になります。
 はい、どうぞ。
【吉田委員】  ちょっとバックアップについて補足させていただきますと、基本的にサービスですので、バックアップしたいデータがあればバックアップの要求を通常は画面の上で指定していただくと、そういうサービスがオンデマンドで提供されるようになります。逆にそういうバックアップする、しないを含めて、利用する方がサービスレベルを選択できる。それから、選ぶと、今度は、それは利用する方の負担なしに、負担というのはバックアップを運用するための作業負担なしにということですが、できるようになるというところがクラウドの重要なところです。
 今、クラウドストレージの標準化なんかも進められていますが、それはデータにどう取り扱うべきかという属性を付けられるという使用を含んでいます。バックアップしてほしいデータとして、重要データにはそういう設定をしておくということも技術的には可能であります。
【西尾主査】  今日の委員会では、クラウド環境のすばらしさを再認識させていただいている感がいたしますが。
 どうでしょう、ほかに御意見はございますか。
【斎藤委員】  全く形式的なことなんですけど、この報告書の作成方法なんですが、これも西尾先生が委員長をされている学術会議の、こちらはむしろ模範的だと思うんですが、1から5まで、まず大きくありますね。提言の背景から5、提言。目次を見ているんですが。その下に(1)、(2)とかあって、文章の中を見ると更にその下にマル1、マル2という、せいぜい3段階ですね。非常に分かりやすい。
 ところがこの方は、1から5まで、「はじめに」から、最後、11ページのまとめで、これは1から5あるんですが、その下が、今度はローマ数字の1、2、3になっていますね。2と3はその後に丸があって、丸にはなぜか番号がなくて。そう思ったら、今度は更に(1)が出てきまして、(1)、(2)。それから、これは何と言うんでしょうか、こういう括弧と四角の何と言うんですかね、それでまた更に区分けがあって、その下に更にマル1と。
 ところが4だと、今度は違う形式で。これ、おもんぱかるにほかの部署の方が書かれたのをそのままつながったのかなと思ってしまうんですが、(情報ネットワーク整備の方向性)から始まって、何もローマ数字のない形でセクションが分けられていて、更に前のところでは、文章の中で1、2、3となるところのマル1、マル2が更にサブセクションに使われていて訳が分からない。ですから、これはちょっと階層構造が深過ぎますので、この学術会議のようにせいぜい3段階ぐらいにしていただいて、統一的なものにしていただきたい。そうでないと、読めません。
【西尾主査】  本当に貴重なコメントだと思います。実は、私も相当気になっています。
 今、斎藤委員から言っていただきましたことを真摯(しんし)に受け止めて、今後改定を図っていきます。どうもありがとうございました。
 後藤先生、どうぞ。
【後藤委員】  後半も含めてよろしいですか。
【西尾主査】  はい、構いません。
【後藤委員】  ちょっと後半の方の、次期SINETに向けてというところの話が、先ほどのクラウドのよさをうまく引き出すということも含めまして、大分、前向きな表現になっていて非常にうれしく思います。更に後半では、私はセキュリティに係る所がどうしても気になってしまいますが、まずクラウドのよさを最大限に使うんだ、使えるようにするんだということに加えて、セキュリティ強化についてもクラウドサービスで出すんだと。つまり、セキュリティの議論は暗めになりがちですが、ここでは非常に前向きに、セキュリティがあるからこそ価値が高まっている環境なんだ、というトーンが大分にじみ出ていてよくなったと思います。これについては、一番大事にしていただきたいなと思っております。
 ここで、セキュリティという言葉の意味も非常に広うございまして、物理的なセキュリティから人間のセキュリティなどいろいろございます。この後半のSINET5で焦点を当てるセキュリティは、例えばクラウド化して強化するようなセキュリティ、いわゆるサイバーセキュリティだと思います。ここでの議論をインパクトある表現で具体化するためにサイバーセキュリティという用語を使って、情報ネットワークの強化だからサイバーセキュリティを強化するんだ、それによってクラウド全体の価値が更に高まるんだ、という意味で、例えば「サイバーセキュリティ強化自体をクラウド化するんだ」と表現した方が良いと思いました。
 前半にある「セキュリティ」という用語については一般的な意味のようですが、少なくとも11ページのまとめのあたりでは、「最新サイバーセキュリティ対策なんだ」と表現すると、より強い印象になると思います。
 今回、強化しなきゃならないのは何かというときには、サイバーセキュリティのところですよねと。
【西尾主査】  後藤先生、ありがとうございました。「セキュリティ」という言葉の使い方に関しても、今、後藤先生がおっしゃったように、SINET5のところではそこに適した形での言葉を有効に使ってインパクトを出せるように考えていきたいと思います。
 後藤先生には、また後でお伺いすることも多々あると思いますけれども、どうかよろしくお願いいたします。
 山口先生、どうぞ。
【山口委員】  2点ほどよろしいですか。
 3ページ目の学術情報基盤としてのネットワーク整備の方向性と、アカデミッククラウド環境整備の方向性を比べると、内容の層にかなり差異があると思います。特に3ページ目の「学術情報基盤としてのネットワーク整備の方向性」は、内容が方向性という視点からは推敲(すいこう)が必要かと思います。
 7ページからの「次期学術情報ネットワーク(SINET5)の整備」では、かなり詳しく書かれているので、この部分では「高速、安全、高機能を基盤とし、教育・研究・管理部門など多様な分野でのネットワークの活用を念頭に置き、着実に強化していく」というような文言で、具体的な方向性を盛り込む形にするのがよろしいのかと思います。
 もう1点は、3ページのクラウド化の動向のところで「クラウド化には様々な側面でイノベーションを創出する効果が期待されることから、大学等は積極的に取り組むべきである」とありますが、これは突き放した言い方かなという感想があります。少し言いかえて「イノベーションを創出する効果が期待されることから、大学等における効果的な活用がますます注目を集めており、そのために、個別な取組から一元的な共同を促進すべく開発を進めるべきである」というような文言にするのがよろしいかと思います。
 最後に、まとめのところです。最後のところで、大学に話が戻っていますが、インパクトに欠ける表現になっているかと思います。もう少し積極的な表現で、例えば「次世代の教育及び質の高い研究を担っている大学等が更なる高度化を目指すために最新の情報ネットワーク環境のメリットを最大限に生かせる戦略を持って、アカデミッククラウドの導入や情報資源の利活用を効果的に促進するべく進めていく」というような文言で終わるのが、モチベーションを高めるのによろしいかと思います。
【西尾主査】  本当に貴重な御意見をありがとうございます。加藤委員から先ほど、文章を本来の趣旨に従っていかにインパクトを持って表現するということに関して、具体的にどうしたらよいかをお話しいただきました。山口先生から今頂きましたいろいろな御意見は、私も全く同感です。そういう観点で、今後、修正をしていきたいと思います。具体的な観点からのコメントどうもありがとうございました。
 美濃先生、どうぞ。
【美濃科学官】  まとめる側(がわ)に立ってみると、今日の議論、アカデミッククラウドのよさをいろいろと書けとか、その後、大学の未来像を書いて、その手段がクラウドだというお話が出てきて、それはそれで意味があると思うのですが最後はSINETへつなげるわけですね。すると論理が、未来から言うと4段経るわけですね。そうしたときに、ので、ので、のでというところで納得できないという話が出てくると、これそのものに説得力がなくなる可能性があると思います。
 大きな話で書くのはいいかと思います。最後にSINETがこういう意味で必要なんだよという手段としてのクラウドという議論だと思うので、そのクラウドの中で、特にSINETというかネットワーク基盤を必要とする所のみにして、クラウド全体のよさを議論するというのをここでやると、焦点がぼけるような気がするんですよね。そういう意味でクラウドの良さというのは、ある程度さっと書く、あるいは大学間連携なんかもさっと書くという下で、もう少しSINETの必要性に直接つながるような、そのあたりを強調するという書き方にしないと全体としてぼけないかなという懸念が、今日の議論を聞いて感じました。確かにアカデミッククラウド、先ほどの研究支援でも、研究者コミュニティを作りましょう、それを支援する。確かに研究支援として必要なんですけど、それじゃ、それに対してネットワークはどれだけ要るのですかという話になったときに、それほど要らないのかもしれない。
 だから、そういう意味でネットワークトラフィックを必要とするクラウドのアプリケーションとかクラウドの良さというのをもう少し強調して、その辺だけにある程度絞った方が、論理が多段にならずにSINETの重要性を強調できる。SINETの強化という必要性が本当に訴えられるのかというのを、今日の議論を聞いていると、まとめる側(がわ)を手伝おうとするとすごく大変だなというような気がいたしますので、そういう方向で何かまとめろと言っていただけると有り難いなというような気がいたします。
【西尾主査】  本審議のまとめを、どういう政策的な意図を持ってまとめるかという観点について、美濃先生としては、アカデミッククラウド環境構築の重要性を強調し、それからSINET5構築の重要性を並列的に記述するよりも、アカデミッククラウド環境構築については、SINET5につながる部分を限定的に強調して、全体の構成を考えた方が良いのではないかという御意見でございました。
 ここらあたりに関しましては、喜連川先生、NIIのお立場としてどのようにかんがえておられますか。
【喜連川委員】  私もまだ1年生で、なかなか本質的にどっちに振るかというとき、つまりSINETというものを、文字面として見えているネットワークだけというふうに見るのか、今後、SINETというものがネットワークをコアにしつつも、それに付随する上位サービスを併せた形でのエンティティとして見るべきなのかという、この二つを選択するとしますと、やはり学術コミュニティといいますか、私どものクライアント、つまり我々にサービスを求められる方がネットワークの線というものを意識する時代というのは、もはやほとんどなくなってきたのではないかなという気が致します。
 そういう意味で、ユーザーが欲するものというのは原則何らかの意味ですぐに利用できるサービスというものになって。そのサービスというものは、ここまでいろいろ御議論がありましたような、クラウドというものを使って、今、花開いているという。クラウドに行くことによって、Amazonに行けばほぼ全てのソフトウエアパッケージをそのまま利用することができる。つまり、企業に行ってライセンスフィーの契約をするということなしに、お金を支払うだけでぱっと使える、そういう環境というものが次世代のITのインフラとして研究者が求める姿であろう。あるいは、教育にも利用できる姿であろうというふうに考えたときに、じゃあ、そうしようと思ったらどうなるのというと、全部のトラフィックが、実は、今までネットワークに流れていなかった、ローカルにしか流れていなかったネットワークが外部ネットワークに流れるようになると。これは、そのクラウド時代の広帯域ネットワークへのデマンドであるという落とし込み方が、今、ここにイクスプリストに書かれているかどうか分からないんですが、その底流となる発想カンにある。あるいは、先ほど後藤先生に御指摘いただきましたような、サイバーセキュリティという問題があったときに、今までは自分のコンピューターだけウイルスチェックをしていればよかった。しかしながら、そうじゃなくてあっち側のコンピューターがやられると、それが飛び火してこっち側のコンピューターにもどんどん伝播(でんぱ)しながらウイルスが広がっていく。こういうものをブロックするためには、やはりネットワーク全体として監視するような基盤となるセキュリティインフラが必要であろうというのが、ここでの課題になっています。これも、各所でのアクセストレースというものを相当丁寧に一元化することによって、追跡することができる。
 そんなふうに、何と言うんですか、個々のコンピューターではなくコンピューターの群総体とネットワークとがもう一蓮托生(いちれんたくしょう)になっているような時代になってきているわけでございまして、その時代にSINETというネーミングが何を指すのかというのを、もう一度、みんなで議論をしていただければ有り難いと思うんですが、NIIとしては、ユーザーが欲しいものは何なのかということに目線を合わせざるを得ないのではないか。そのときに欲しいものはネットワークの線ではなく、ネットワークから構成されるユーザーが実際体感するサービスなんじゃないのかなというふうに感じている次第です。
【西尾主査】  喜連川先生のおっしゃっているユーザーサイドのサービスということを実現する上で、アカデミッククラウド環境が必須であるということですね。それと連動して、国内におけるアカデミックネットワークの400ギガから1テラという具体的な回線速度の必要性とのつながりをどのようにするのかということについては、そのサービスをする上での基盤として必須であるという論理でよろしいですか。
【喜連川委員】  いろいろな話がたくさん提起されまして、多様なデマンドが一つの受皿の中で実現されないといけないものですから、まずSINETがなぜこの世の中に登場したかという歴史をひもとこうと思います。やはりその生い立ちはビッグサイエンスのドライバーだったということ、これは否めないところだと思います。つまり、SINETがアベレージとしてのデータのボリュームをサポートするだけでは、カッティングエッジな日本がノーベル賞を取るようなサイエンスを下支えすることはできないわけです。先端的な実験から出るバースト的なトラフィックというものを吸い込めることが極めて大切で、それができなかったら日本は先端的な実験で世界に後れてしまうわけです。そういう意味で、ピーク値というものが常に商用にはアベーラブルな、つまり一般の人がずっと使うであろうというようなレベルのネットワークの帯域とは圧倒的に違うようなサイエンスのネットワークをSINETは構築するべきだというのが、まずボトムラインとしてあるわけです。
 では、そんなものはほかの人は誰も使わないんですかというと、それはそうではなく、世の中はクラウドにシフトしており、クラウドということは、自分のコンピューターが手前にあるのではなくて、全部ネットワークの向こう側にあるわけですから、ネットワークをますますたくさん使うことになります。教育も同じです。自分の大学の目の前にいる黒板で教えてくれるのではなくて、ネットを超えたはるか遠い、すなわち地方にいる学生が、東京大学や京都大学や大阪大学の先生が心を込めて講義をするような姿をその場で見ることができるようになろうとしています。そのためには太いネットワークが当然必要となります。このように、ピークの広帯域なネットワークは今後も不可欠であり、それを用意することが全然無駄ではなくて、今後のクラウド利用も教育にも大きく貢献するのだという、そういう全体的なシナリオと私は考えております。
【西尾主査】  美濃先生、いかがですか。
【美濃科学官】  おっしゃっている話はそれでいいので、そのようにクラウドの良さ全般の議論をした上でSINET、という話ではなくて、クラウドの中でもネットワークトラフィックの高いサービスを強調しましょうと言っているだけの話です。全体としてぼやっとクラウドの良さを言ってしまうと、これは本当にSINETでないとできないのですかというような議論が起こってしまうのではないかと、そこを心配しているだけです。だから、ネットワークのトラフィックがたくさん要るというところをクラウドサービスとして強調して書く方がいいんじゃないですか。そういう議論にしないといけない、という意見です。
【西尾主査】  分かりました。倉田先生、本日の最初に頂きました貴重な御意見に対します議論は十分にできた、と考えてよろしいでしょうか。
 まだ、どうしてもこれだけは言っておきたいとか、事務局サイドからもここだけはこうして欲しいとか、何か御意見はありませんか。どうぞ。
【長澤学術基盤整備室長】  私どもの立場としましては、これをまとめて、それで大学に対する、クラウドに対する意識の発信と、SINET5をどういうふうに整備していくかという方向性を、やはりリーズナブルな形でアピールしていく必要がありますので、そういう観点からしますと、11ページのまとめのところの「NIIは」というところをちょっと見ていただきたいんですけれども、やはりSINETの意義というのは、先ほど喜連川先生がおっしゃっていたように、その帯域の確保ということだけではなくて、こういったクラウドの基盤とかというふうな情報ネットワークの技術的な要素とセキュリティ、プラットフォーム、そういった多層的な構造で担っているというところを、やはりちゃんと示す必要が不可欠でありまして、こういったことをちゃんと訴えていかないと、SINETについては別に商用でいいじゃないかという話になってくるわけです。ですので、こういった観点でしっかりと必要を超えた部分ではなくて、必要不可欠な部分の基盤としてこういったサービスのプラットフォームを含めて、これをNIIがやっていく基盤が必要ですということで、じゃあ、どこまで必要ですかという話へ持っていきたいと。そのときの前提として、やはりクラウドというふうな、昔はビッグサイエンスだったのが今はクラウドですという、ネットワークを使って向こうにありますということに対して、こういったクラウドを利用するメリットとか、そういったことの必要性というものをユーザーとしての大学の方々にもある程度理解をしていただけるような形の御紹介もしながら、最終的にはこういったネットワークの基盤整備が必要ですということに、この報告書は持っていきたいと思っておりましたので、どこまで書くかということもあるんですけれども、やはりそういった観点で、クラウドの部分をそういうSINETと同じボリューム的なイメージで考えたときに、どこまで、どの細部まで書く必要があるかということを、是非、先生方の方で御指示を頂ければ、「もっと詳しく書け」というんでしたら詳しく書きますし、ここまでは書かなくてもよくて、この程度でいいということであればそういうふうにして、そこでSINETの整備につなげていくということが、このまとめの方向性として正しいんではないかと思っております。
【西尾主査】  今日出ました様々な意見は、アカデミッククラウド環境の持つ様々な利点などが、明確に書き切れていないということに要因があると思いますので、そういう点も含めて今後改良していく必要があると思っています。
 今回の審議のまとめでは、学術情報基盤としての今後の有様といいますか、アカデミッククラウド環境という概念の下で、我々が学術情報基盤を今後改革していけるのかということを、できるだけ分かりやすく記述しておくことが、私は非常に重要なことだと思っています。そういう観点も含めて、この審議のまとめに関しては、私は、今日頂いた様々な意見をベースに、もう一度、きっちりと審議をしておきたいと思いますので、次回、最終案について改めて審議をいたしたく考えております。皆さん方、いかがでしょうか。そういうことでよろしいでしょうか。
【喜連川委員】  最後にちょっとNIIとして申し上げさせていただけますと幸いです。8ページのNIIの役割というところで、「ユーザーである大学等のニーズをとりまとめ」というような、そういう表現になっているところでございますけれども、こういう時代は終わってきているかもしれないなという気もしています。つまり、ニーズを頂くことは当たり前でありますが、むしろ新しいソリューションを各大学と一緒に作っていくという時代に入っていると思います。北海道大学のクラウドは非常に変化の激しい中で大変な思いをされて構築されておられます。つまり、ITの変化、躍動感はべらぼうに速いわけです。そんな中で、NIIが人から聞いてそれから作るというような、そういう普通のアンケート方式をやっているのでは間に合わず、もっともっと密に、各大学の情報の基盤センターあるいは実際のユーザーの方と常にお話をしながら、一緒に「創る」というような気持ちを表現できると大変有り難いかなというのが1点ございます。
 もう1点は、これはどこに御記入いただければいいのか分からないのですけれども、予算に絡む観点で申し上げますと、このSINETという情報基盤がやや不具合な状況になると、学術全体に影響を与えるということだけは、何らかの形で表現を頂けると有り難く存じます。我が国の中にはいろいろな大型実験施設があります。それらの予算が削られた場合には、その分野には当然のことながら影響が出ます。しかし、それ以外の分野に対して大きなインフルエンスを与えるかというと、与える場合も当然ありますが、限定的であり、学術全体というほど大きくはないのではないかと感じます。
 ところが、このSINETに関しては、予算減により、全学術に対して影響を与えるということを、すなわち、情報学への影響は僅かなものであり、より深刻な影響を非常に多くの学術分野が受ける事態は非常に深刻になるという点を御記載いただきたいと存じます。
 この2点、よろしく頂きたいと思っています。
【西尾主査】  最初のことは、今後はNIIが学術機関と一緒になって、連携して考えていく時代だと思います。あとの問題は、先ほど斎藤先生から参照いただきました日本学術会議の提言等においては、その重要性は強く訴えてはいるのですけれども、この報告書の中でも、同様のことをより強く出していくことが私は重要だと思っています。何とか、その重要性を理解してもらわないことには話が進まないと思っています。
 そういう意味で、委員の方々にもう一度、私からお願いしたいのですけれども、この審議のまとめを私としましては、よりインパクトのある形で、より有効に生かせる形で、また学術情報基盤の今後のあり得るべき姿というものを明確に方向付けするようなものに、是非したいと思っています。そういう観点から、皆さん方の思っておられることとか、御意見とかコメントを事務局の方に、何か書いたものとして送っていただけたら本当に有り難く思います。
 それで、今日の議事録に関しましては各委員に確認いただきました上で、公開とさせていただきますので、どうかよろしくお願いいたします。
 参考1について、事務局の方から説明をお願いいたします。
【松本学術基盤整備室参事官補佐】  本日お配りした参考資料の参考1につきまして、簡単に御報告だけさせていただきます。
 タイトルは、「学術研究の推進方策に関する総合的な審議について」中間報告(案)となっております。この参考1の資料につきましては、本年3月に学術の基本問題に関する特別委員会というものが設置されまして、3月以降、審議をされております。
 先日、26日、月曜日の学術分科会に報告をされまして、そこでの意見を踏まえて修正の後、6月3日の科学技術・学術審議会総会によって報告予定となっているものでございます。特に本委員会に関連する部分としては、17ページ、「学術研究を支える学術情報基盤の充実等」という項目がございまして、そちらで学術情報ネットワークの強化等につきましての記載があるというものでございます。
 以上、簡単ではございますが、報告させていただきます。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 学術研究の推進方策に関する総合的な審議のところでも、17ページに「学術研究を支える学術情報基盤の充実等」ということで、本委員会で議論していただいておりますことの重要性を記述いただいております。そういう観点からも、皆さん方に本委員会で積極的に御議論いただいておりますことに心より感謝申し上げます。
 それでは、次回ですけれども、6月20日に開催をいたしたいと思いますが、時間は10時から12時で、場所は本日と同じ3階の特別会議室です。
 次回、何とか審議のまとめを完成するめどを立てたいと思っていますので、御支援を是非お願いいたします。
【松本学術基盤整備室参事官補佐】  大変恐縮でございますけれども、御意見がある場合には6月4日までに事務局まで御連絡を頂けると有り難いと思っております。
 また、本日の議事録につきましては、各委員に御確認いただいた上で公開とさせていただきます。
 先ほど西尾先生の方から御案内がありましたとおり、次回は6月20日、金曜日、場所は本日と同じこちらの会議室で10時から12時となってございます。日程を確保していただけますよう、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【西尾主査】  それでは閉会とさせていただきます。今日も積極的な様々な御意見、どうもありがとうございました。これにて閉会とさせていただきます。

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