学術情報委員会(第8回) 議事録

1.日時

平成26年1月17日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.出席者

委員

西尾主査、羽入主査代理、上島委員、岡部委員、加藤委員、喜連川委員、倉田委員、後藤委員、竹内委員、辻委員、土方委員、美馬委員、吉田委員

文部科学省

(科学官)美濃科学官
(学術調査官)市瀬学術調査官
(事務局)山脇大臣官房審議官、下間参事官(情報担当)、長澤学術基盤整備室長、その他関係官

オブザーバー

安達国立情報学研究所副所長

4.議事録

【西尾主査】  それでは、時間になりましたので、ただいまより第8回学術情報委員会を開催いたします。
 今年に入りましてから最初の委員会でございます。今年も何とぞ御審議のほどをよろしくお願いいたします。
 本日は、前回お話ししましたとおり、次期SINET及びアカデミッククラウドの展開に関する構想の素案について、国立情報学研究所副所長の安達先生から御説明を頂いた上で意見交換を行いますとともに、その他審議事項として2件を予定しておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。
 それでは、事務局より配付資料の確認及び傍聴登録等についての報告をお願いします。

【長澤学術基盤整備室長】  おはようございます。それでは、配付資料の確認と傍聴登録等につきまして御説明させていただきます。
 まず配付資料でございますけれども、お手元の議事次第のとおりでございます。それ以外に1枚もので日本学術会議の情報学シンポジウムに関わる案内が入っております。御確認いただきまして漏れ等ございましたら、事務局までお願いいたします。それから予算の冊子の間にSINETの予算等の1枚ものが入っておりますので御確認をしていただければと思います。
 傍聴登録でございますけれども、本日は27名となってございます。
 以上でございます。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、昨年12月24日に来年度の予算に関する内示が出たところでございますので、先ほど長澤室長の方からお話がありました情報関連の来年度予算等について事務局から説明をお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  全体の資料につきましては、資料を後でごらんいただければと思いますけれども、この委員会で直接関係しているところだけを先に簡単に御説明させていただきます。
 まず、1枚ものの資料を見ていただければと思うのですが、SINET、それからJSTの科学技術情報連携・流通促進事業ということで、裏表の資料でございますので、ごらんいただければと思います。予算要求について、右上のところをごらんいただければと思うのですけれども、SINETにつきましては、日本の学術教育を支える全体の基盤であるということで、増額要求をさせていただいたのですけれども、これは国立大学運営費交付金の一環として入っているということもございまして、状況も非常に厳しく、対前年度で約3億円の減、約5%マイナスという形になり、なかなか増額が認められなかったという状況でございます。なかなか予算が厳しいということで、こちらとしても大変残念な結果になったということだけ御報告をさせていただきたいと思っております。
 それから、裏側がJSTの流通事業でございますけれども、これはJSTが行っておりますJ-GLOBALやJ-STAGEなどの流通プラットフォーム事業やポータルサイトの運営などの予算でございますが、こちらの方につきましてはほぼ前年度の予算は確保できたという状況になってございます。
 簡単ですが御報告は以上でございます。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 今、長澤室長の方から説明がありましたように、SINETに関しては前年度比で約5%減というお話がございました。SINETは我が国の科学技術・学術に関する基盤として最も重要なものであるという強い認識を、この委員会の議論を通じて確認してきたところです。そういう状況の中で、予算減がなされていくということは、この委員会の主査を務めさせていただいている者としまして大変遺憾なことであると思っております。これから安達先生に御説明を頂く次期SINETに関する構想についても、このような状況の下で本当に実現できていくのかということも非常に懸念されるところです。御担当の下間参事官はじめ文部科学省の関係各位には、今まで御尽力を頂いてきたところでございますけれども、我が国の科学技術・学術が世界をリードしていく上での基盤としてSINETは非常に重要であるという認識のもとで、その充実・発展についてはなお一層の御尽力を是非賜りたくお願いいたします。
 現時点から次の平成27年度の概算要求に向けての動きをしていかないと、なかなか間に合わないのではないかと察するわけなのですが、その辺りも含めて下間参事官から御説明いただけると有り難く、いかがでしょうか。

【下間参事官】  今、西尾主査から大変厳しい御指摘、また、御激励も賜りました。国立大学の運営費交付金、その中でも大学共同利用機関法人関連の運営費交付金の状況は大変厳しい状況にございます。その中で27年度概算要求に向けての取組というのは、まだ26年度の予算案がこれから国会の審議ということでございますので、これからということではございますけれども、私どもとしても知恵を出し、可能な限りの努力を重ねてまいりたいと考えております。また、27年度の概算要求も大変厳しい財政状況の下での要求になろうかと思いますので、その中でできる限りの努力をしてまいりたいと考えております。
 先生方の御尽力、御支援も賜りたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 我々、この委員会のメンバーとしても、可能な限りの支援をしていきたいと思うのですけれども、羽入先生、何か御意見頂けますでしょうか。

【羽入主査代理】  予算も非常に厳しい状況で、きっと大変な御努力を頂いたと思います。ただ、ここで議論していることは日本の将来の学術情報基盤を作る上で非常に重要なものだと私も認識しております。ここには企業の方々はもとより、大学の関係者が非常に多くいらっしゃいます。ここに参加している委員の方々は非常にその重要性は十分認識していらっしゃると思いますので、それぞれが所属している組織で何らかの今後の方向性として予算の確保というのが結局は効率化につながるのだということをうたいながら努力をしていく必要があるのではないかというふうに、私は自戒の念を込めて思っております。
 それで、軽々しく言うことではないかと思いますけれども、たまたま今、国立大学協会で副会長をやっておりますこともあり、できるだけ早い時期に国立大学として少しまとまった意見を作り、そして御相談申し上げて、27年度予算に向けての活動を開始する必要があるのではないかと認識しておりますので、またその点についていろいろ御助言を賜れればと思っております。これは将来の日本にとってはお金に代えられないメリットがあることを言わなくてはならないのではないか思っております。よろしくお願いいたします。

【西尾主査】  羽入先生、ありがとうございました。
 それでは、本日の審議に入りたいと思います。次期SINET及びアカデミッククラウドの展開に関する構想の素案についての意見交換を行いたいと思います。はじめに、九州大学の岡田先生に委託をしております、アカデミッククラウドに関する調査研究におけるアンケートの中間報告について、事務局より御紹介いただいた上で、国立情報学研究所副所長の安達先生から資料の御説明を頂きたいと思います。岡田先生のアンケートに関しましては、この委員会でも以前、その内容について紹介をさせていただき、皆様からも御意見を頂いたところでございます。
 それでは、よろしくお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  それでは、この次のSINETを考える上で御参考になるということもありますので、岡田先生から暫定版で、まだ集計途中のものが入っておりますけれども、資料につきまして御説明をさせていただきたいと思いますので、資料1をごらんいただければと思います。
 このアンケートにつきましては、10月から11月にかけて実施したと2ページに書いてございまして、1,230機関を対象にやっております。その中で様々なアンケート、教育支援から個人情報保護、研究支援、そういった形の項目に分けて調査をしたということでございます。
 めくっていただきまして3ページのところに主なコメントをまとめたものがございます。キーワードとしてはセキュリティ、コスト、ネットワーク増強、可用性というところでございまして、個々につきまして簡単に御説明させていただきますと、まず教育支援に関するものといたしましては、5ページのところにございますように、やはりシステムとしてLMSとかCMSは進んでいますが、満足できるものがないという御意見で、独自に行った場合には維持、管理、発展が難しいので、こういったものを多様な大学で相互利用できるようなオープンなシステムや仕様を開発してクラウドで利用するということが必要だという御意見があったということでございます。
 それから、他大学との相互連携とか、また、小規模大学では有効だということが分かっていても導入費用の面で利用しにくいというようなコスト的な問題があるということがありました。
 6ページのところですけれども、ただ、サービスによっては高機能過ぎるとかいうところも一部あるというところもありますので、利用者の立場に立った開発をしてほしいという御意見、それから、やはりコストの低減というものをお願いしたいという御意見が出ているということでございます。
 次の7ページのところでございます。字が小さくて大変恐縮でございますが、例えば上から5番目のところですけれども、クラウド化でできること、できないことを明確にして、人件費や回線経費とか、トータルな検討を行って導入を判断していく必要があるということ。それから、その次に、やはり災害時でも対応できるような対策として、そういった面でクラウドに期待するという御意見があったということがございます。
 それから、その下の8ページでございますけれども、一番上のところは情報システムは教育においても重要性が一層増大しているのですけれども、システムやソフトウェアがますます大規模化、複雑化しているということで、一番上のポツの最後のところですけれども、やはり金銭的なコスト、人的コスト、双方を抑制できるようにシステム、制度の両面において大学で可能な部分を共通化するとか、そういった仕組みが必要だという御意見があるということでございます。
 それから、一つ飛ばしてその下ですけれども、やはり効率化だけを目指した安易なクラウド化というのは運営に支障を来すということで、何のためにやるのかとか、業務や研究方法の違いも視野に入れながら考えていく必要があるということでございます。それから、その下は、NIIが中心になって、小規模大学でも導入可能なクラウドコンピューティングシステムを構築してほしいとか、導入事例についての検証をしてほしいと。
 それから、下から2番目ですけれども、障害対策やサポート体制の充実というものについてもしてほしいという希望があるというような御意見が寄せられているという状況でございます。
 それから、研究支援につきましては、やはりクラウド利用という観点で、共同利用の範囲としては、やはりまだ機関内部というのが多いということでございますけれども、一部、海外を含めた共同利用のサービスを行っている部署も10%あるということで、そういった展開で相当進んでいるところも出てきているということがあるということでございました。
 11ページのところですけれども、バックアップにつきましては、遠隔で行っているものは少ないということですが、ただ、災害対策という観点での必要性については多くの部署で認識をしているということですので、こういった遠隔のバックアップでクラウド利用するというニーズもあるということでございます。
 それから12ページの今後の希望ということで、やはりアカデミッククラウドサービスを利用したいという要望が結構多いということ。それから、代表的なコメント例として、クラウドのシステムの提供ということで、自分の研究室にあるような計算機が使えるといいとか、一部ですけれども、データ量が大きいので、やはりデータのあるところに計算資源がないと不便という御意見も既に出てきていると。それから、クラウドを構築するのであれば、恒久的な高速学術ネットワークを担保することが必須だという御意見もあったということでございます。
 13ページのところの「個人向けアンケート結果より」では、やはりまだデータ処理についてはパソコン上で行っている研究課題が大半だということでございます。
 次に、15ページの「利用者のニーズについて」では、パソコンで十分という御意見もございますけれども、アカデミッククラウドサービスが提供されれば利用したいという御意見も相当数あるということが書かれてございます。
 それから、17ページでございますけれども、事務支援につきましては、やはりアプリケーションの開発としてベンダーの業務用パッケージを利用しているという人が多いと。ただ、機関間でのシステム統合とか共同利用も一部で実施されてきているということ。それから、BCP対策の必要性というのはあるのですけれども、余り着手できていないという現状がある。業務支援につきましてはプライベートクラウドを利用しているというところが多いと。パブリッククラウドの場合はセキュリティに関する問題が大きな要因として存在しているということがございます。
 あと、ネットワークに関係するものにつきましては、21ページの「自機関内ネットワーク基盤に関して」というのがございますけれども、機関内のネットワークのバックボーンの高速化がかなり進んでいるのですけれども、その22ページの下の部分ですが、自機関外のネットワークにつきましては、SINETと商用ISPが46%と拮抗しているのですが、学外接続の高速化がやっぱり遅れている印象があるという御意見が出てございます。
 23ページのところですけれども、アンケート調査で利用者様向けサービスにつきまして、無線LANは進んでいるんですけれども、VPNというものはその提供が遅れているということがございます。
 あと、その他でございますけれども、認証連携につきましては、進んでいるところもありますけれども、複数拠点における冗長化とかにつきましてはこれからだということでございます。
 セキュリティ、プライバシーにつきましても、対応についてはやはりこれからと書いてございます。コンテンツやサービス、経営というのはその後に続いてございますけれども、その点につきましては簡潔に結果が出ているところで、業務システムとかリポジトリとか、サービスというのはメール、ストレージというところがまだ多いということとか、経営分野でもこういった対応についてサービスを実施していることが出ている状況に今あるということでございますので、今後、3月に向けまして、また正式な調査結果が出ましたら岡田先生から御報告をと思っております。
 以上でございます。

【西尾主査】  現在審議しておりますSINET、あるいはアカデミッククラウドに関して、その審議のまとめを可能な限り早く発出していく、世の中に出していくことが、先ほどの予算の関連も含めて非常に大事だと思っています。その際、アンケートをとって、エビデンスベースの動向調査をした上での審議のまとめを出していく上では、先程、中間報告を頂いた委託事業は非常に重要だと考えております。今回は中間報告の段階でございますので、3月の最終のまとめまでに更にデータを集めていただき、再度報告を聞かせていただくことにしたいと思います。現段階で特にアンケートの中間報告に対して感じられていることとかございますか。
美濃先生、調査のことで御意見あればどうぞ。

【美濃科学官】  全体的に本当に大変な作業をしていただいて有り難いと思います。少しだけ気になるのが、無線LANを京都大学でも今いろいろ考えているんですが、無線LANが70%、機関全体で管理、運営しており、と書いてあるんですね。ただ、これはどれだけカバーしているかというのが分からないので、例えば公共の場所だけ少しカバーして、やっているというアンケートが上がってきますと、それで十分なのかという話になりますよね。だから、もうちょっとできたらというところだと思うんですが、無線LANのカバーエリアみたいな話を書いていただくと、どれぐらい進んでいるかという現状がよく分かるので、そういうことを書いてもらったらいいかなと思います。

【西尾主査】  今の御意見等を岡田先生にフィードバックしていただくと有り難く思います。
 それでは、安達先生、今のアンケートの中間報告のことも可能でしたら反映いただきながらお話しいただければと思います。どうかよろしくお願いいたします。

【安達国立情報学研究所副所長】  おはようございます。国立情報学研究所の安達でございます。9月にはネットワークの現状について御報告したわけですが、本日は次期のネットワークとして考えております新しい情報基盤について御説明したいと思います。いろいろと御意見を賜れれば大変有り難いと思っております。
 初めに、数年後の我が国の大学における高等教育及び研究のための情報環境のイメージを描いたのがこの図であります。先ほどのアカデミッククラウドに関するシステム研究と密に私どもは活動しておりまして、その調査の中間報告を見ながら、今後、クラウドがどのように使われるようになるかを考えますと、全体としてクラウドサービスと通信が一体となって高度化され、学生や研究者に必要なサイバー空間が提供されることになろうと考えています。教育環境、研究環境、それぞれにクラウドが使われるということになります。商用のクラウドを使うこともあるでしょうし、大学に設置されたアカデミッククラウドサービスを使うこともあり、また私どもNIIで提供するクラウドも使われると思います。このようなことを行う際には、内外の大学との連携協力が非常に重要になると見ております。
 アンケート調査からも分かってきますのは、この空間の中でセキュリティが極めて大事であるという点です。大事というよりも、一大学ではなかなか維持や管理が難しくなってくるという状況を皆様は予測しております。その中で、共同調達など種々の形でサービスの共通化、高度化を図りながら効率化を図りたいという指向性が見えます。これが私どもの見ております数年後の大学環境です。
 さて、現状については9月にお示しした概要の復習になりますが、現在のSINETは200万人以上が使っており、全ての県をカバーしています。大学のカバー率としては、880に近い機関が参加しています。一番太い経路として、40Gbpsの技術を2本束ねて東京と大阪間を80Gbpsでつないでいる状況です。それ以外は2.4Gbpsや10Gbpsを使い、震災にも耐えることのできた信頼性の高いネットワークを運営しております。
 SINETには長い歴史がありますが、私どもが近年苦心してきたことは、「ネットワーク運営連携本部」という組織体を私どもの機関に設け、様々なステークホルダー、すなわちビッグサイエンス関係の方、大学連携して遠隔講義に関心のある方など、様々な方の御意見をできるだけ吸収し、調整しながらネットワークの計画を立てるという進め方をしてきたことです。様々な御意見をお伺いしながら一元的に整備を行うということによって、極めて効率的なネットワークを実現できていると自負しております。
 もう一つ重要な点は、欧米の類似の研究ネットワークとつながっていくためには日本にも研究ネットワークがなければならないという点です。商用ネットワークは研究ネットワークとダイレクトにつながせてもらえないということからです。したがって、我が国に研究ネットワークがあって初めて、外国の研究ネットワークと対等な形でつながっていくことが可能となり、国際的な共同研究にはこの点が重要になります。まず一つはビッグサイエンス分野の活動で、天文学、高エネルギー物理学などで非常に太い回線を必要としています。これらでは大型の実験設備の共同利用という面があります。また、連携、大学間、国際間、産学などとの様々な連携、さらには教育面での連携もあります。
 近年、重要視されているのがビッグデータです。サイエンスデータは非常に大きくなりますが、それをどのように蓄積し共同利用するかということが重要になっており、ここでクラウドの機能が重要になってくるわけです。私どもは、数年前から商用のクラウドベンダーとも密に話をしておりまして、現在のところ、スライドに示します10の商用クラウドがSINETと直結しておりまして、低廉な価格で大学が使えるような環境を一部実現しております。2年程前は1か所程度だったところが、昨年は10か所に増えています。使う大学も去年、17大学まで増え、急激に拡大しているネットワーク利用形態であると認識しております。ここではバーチャルプライベートネットワークという形で、ほぼ専用線のような使い勝手で大学とクラウドのファシリティーをつなげてセキュアな通信をするという使い方をしています。
 さて、ここからが本日の私の話の重要なところでありまして、新しいニーズ、すなわち、これからどういうことをネットワークあるいは情報基盤の上で行っていかなければいけないかということに関する私どもの見方を御紹介したいと思います。先ほどの図にありましたように、全体的にはクラウドを使ってネットワーク上のサービスを柔軟に使うという形になっていくと考えております。ネットワークの上で実際に使っている例としては、ハイパフォーマンスコンピュータ、すなわちスパコンやビッグデータ処理、あるいは私どものCiNiiのような情報をディスカバリーするためのサービス、さらに今後拡大するとみておりますMOOCsという、ビデオのデータが大量に流れるオンライン教育に関連する新しいサービスなどが予想されます。その上でオープンアクセスやオープンデータというコンセプトの元で大学が様々な活動していくことになります。その際にセキュリティや様々な形のサービスの標準化、共通化が必要になってまいります。それを大学間連携でどのように行っていくかというのが具体的な課題であると見ております。
 その中で一大学の眼から見た場合のこの環境を描いてみたのがこの図であります。安全安心のためのクラウド利用ということなのですが、従来は大学の中のLANの中に様々なサーバや業務用システム、そして研究教育のコンピュータがあり、LANでつなげて使っておりました。これがクラウドとなり、外の世界にあるリソースを使うということになります。例えば、大学内の日常業務のためのウェブやメールのようなサービスも外のクラウドを使う、教育研究にも使う、私どもの提供するような外部の情報サービスも使うということになるわけです。ここで、冒頭に申しましたようにセキュリティが非常に大事になります。私どもは、このネットワークで提供する機能として、新しくセキュリティ強化のためのクラウド機能というものを実現したいと考えています。私どもとしては、このような重要機能をきちんと提供し、大学の中で様々なサービスを利用する際に安全安心に使えるような仕組みを作っていくことを考えております。
 ここにIDSとあるのは侵入検知システムというものでして、外から大学に対して攻撃を仕掛けてくるのを検知し、大学を守るというようなサービスです。これをクラウド化し、共通化することにより、例えば中小規模の大学が自分のネットワークを維持するのを非常に容易にかつ合理的にできるという環境を実現できるのではないかと考えています。まとめて言いますと、従来は物理的なキャンパスに閉じていた大学の構内ネットワークが、ネットワーク上に広がった仮想的なLANとして広域ネットワーク上に実現できるようになると考えております。
 以上に述べた実現すべき課題を文章で列挙したのがこのスライドであります。7項目に分けられておりまして、国内回線の整備・高速化、大学から国内のバックボーンに接続する回線の高速化、国際共同研究などに使う国際回線の整備という項目が、基盤となるネットワーク部分の整備であります。次に、セキュリティ関連として、大学における認証を挙げております。学生や先生が様々な活動をするときに正しく本人であることを認証する機能が重要でありまして、私どもは多くの大学と一緒に学認という事業を進めております。クラウドの上にあるサービスを実際に使うときに個人を同定して使えるようにするための重要な仕組みになっております。
 次に、先ほど仮想的なネットワークの上に広がった大学LANを守るためのネットワーク機能を御紹介しましたが、このようなセキュリティ高度化に対応する機能は、最新のネットワーク技術であるSDNとNFV(ネットワーク仮想化技術)を駆使して実現していきたいと考えています。
 さらにまた、情報サービスに関しましては、更なる共有と流通の促進を進めるために、私どもが提供しているリポジトリを一層強化し、更に多様なコンテンツの提供と統合することによって、学術分野における知識基盤を担うものへと発展させていくということであります。一方、様々なネットワークのサービスを使う上で各大学のそれぞれ構成員のために何らかのポータルサービスが必要になってくると考えております。ここでは仮にCloud Gateway機能と言っておりますが、大学ごとにカスタマイズされ、シングルサインオンでいろいろなサービスをキャンパスの中でも自分の家からでも使えるという機能を実現する機能が最後に挙げる重要点であります。
 以上の重要項目について、少し詳しくそれぞれを御紹介したいと思います。まず、国内回線につきましては、ヘビーにネットワークを使う研究機関や研究コミュニティにアンケート調査をして、五、六年先までの様々な計画をまとめたのがこの図です。大きな丸は100Gbpsの帯域が欲しいという機関を示しています。核融合、高エネルギー物理学、スパコンのグループなどがこのような帯域を必要としております。国内では北海道から九州までバックボーンとして数百Gbps以上必要で、特に最も混む東阪間が400Gbps以上となっています。それとともに、今後、需要が非常に大きくなるのが国際回線によるヨーロッパに向けての通信需要でありまして、ITERという核融合関係、天文、高エネルギー物理学などの分野で随分大きな研究計画を立てております。もちろん、米国向けの回線も必要です。ちなみに現在は、10Gbpsの国際回線3本でこの通信需要を賄っております。
 さて、大学のLANが広域ネットワークに広がっていくということを先ほど説明しました。そのとき、大学の広域ネットワークへの接続状況がどうなるかということを御説明するためにこの図を用意しました。現在、大学の構内ネットワークの中でサーバなどを使って教育研究が行われているというのが現在のモデルです。一方、アカデミッククラウドの調査研究のデータを頂いて図示しておりますが、現在大学の中のネットワークは外につながるネットワークよりも1桁以上速いネットワークを学内で使っております。皆様のお手元のパソコンも1Gbpsのインターフェースが付いておりまして、速い接続で快適に使うというのが構内ネットワークでの使い方です。一方、外に出ていく際には、経費の関係もあって、遅い回線を使わざるを得ないという現状を表しています。
 ところが、今まで大学にあるサーバのサービスを使うことが主な利用形態であったものが、今後、ネットワークの向こうにあるクラウドによってそのサービスが提供されるようになります。今まで構内ネットワークに閉じていた通信が全て広域ネットワークを通して、例えば成績を入力するのは実は北海道にあるデータセンター、一方、文献を検索するのは九州のデータセンターにあるサーバにつながるというようなことになります。今まで外につながる回線より1桁以上速い回線で快適に使っていた学生や先生たちに、同様のサービスレベルを維持するためには、この広域網とLANとの間の回線に対する通信需要が増えますので、ここをしっかり太くしないとサービスレベルを維持できなくなります。100Gbpsから500Gbpsの回線で大学から外のネットワークに出ていけることが必要になってくると見ています。例えば、これは最近耳にした情報ですが、アメリカでMOOCsという最新のオンライン講義システムで一斉に講義を配信し始めますと、数十Gbpsの帯域がビデオの配信で使われるというようなことが起こってくるそうです。したがって、先ほどはビッグサイエンス分野から広い帯域が必要になるだろうと申しましたが、それに加えて、大学の中でごく普通に教育・研究をするためだけでも広い帯域で外部につなぐ必要が出てくる状況になると思います。
 私どもはこれに対して準備を進めております。これまで大きな大学(従来から「ノード校」と呼んでおります)に近隣の大学から回線を集めるような仕組みで運営してきたのですが、ダークファイバーという比較的安くしかも速い光回線を入手できるようになってきましたので、こちらを使いまして各県に一つ以上設置したSINETのデータセンターと直接つなげるという形に移行しつつあります。最終的に次期ネットワークでは各県に一つ以上あるデータセンター(SINETのノード)に各加入機関がダークファイバーで直接入ってくるという形にしようと考えております。この結果として、ノード校というコンセプトは無くなり、全て、大きな大学も小さな大学もダークファイバーを使って直接近隣のSINETノードに入ってくるという仕組みにしたいと考えております。
 さて、ダークファイバーについて簡単に御説明します。通信業者は100Mbps、1Gbpsなどのクラスに分かれた様々な通信サービスに定価表を付けて売っております。しかし、通信会社やあるいは鉄道会社などは自分で光ファイバーケーブルをまとめて敷設して所有しています。その中の使っていないケーブルを、ケーブル単位で、しかも安く貸すというビジネスをやっております。これがダークファイバーというもので、ふだんは使っていないものをうまく商品化するというような意味でダークというものだと理解しております。
 ファイバー単位で借り、一つの波長を基に情報を乗せて使うことになりますので、それを10Mbpsで使おうが100Mbpsで使おうが、ほとんど料金は変わりません。一方、光ファイバーの端に通信をするためのインターフェース装置を顧客側が用意する必要があります。結論を申しますと、例えば北見と札幌の間で100Gbpsなど不要だと言われるかと思いますが、光ファイバーとしては1本借りるということで同じ値段であり、また端末装置については他地区では100Gbpsのための装置をたくさん借りるわけですから、価格のあまり変わらない10Gbps と100Gbpsの装置を個別事情に合わせて買うよりも、全部100Gbpsの技術で統一した方がシステム全体を合理的に調達することになるのです。一方、通信需要を計算して、本州の通信が集中するところには太い回線が必要になり、例えば東京・大阪は400Gbpsも必要だということになるのですが、細い末端は100Gbpsも流れないから遅くてよいというのではなくて、100Gbpsを下限としてネットワークを組むということで、機器のコストも含めて非常に経済合理性が実現できるというネットワーク設計になっています。残念ながら沖縄との間にはダークファイバーはなく、高額の専用線を借りなければいけないと考えておりますが、全国公平なネットワークを作るという観点から、是非沖縄との接続も十分な帯域のものにしたいと希望しております。
 国際回線については先ほど少し申しましたように、現在、日本からの通信は全部アメリカに向かって送られ、ヨーロッパ各国とアメリカとの協調もあり、大西洋を越えるために回線をうまく利用することができるようなっております。例えばCERNの実験データは、日本からアメリカ経由でヨーロッパとやり取りします。これは地球を半周以上するということになり遅延が大きく大変時間が掛かるため、実際に大量のビッグデータをやりとりするときには支障が生じております。私どもとしては、次期ネットワークでは、日本とヨーロッパとをシベリアを通る回線で接続したい。こうすることによって非常に合理的にデータをやりとりすることができると考えております。これが一つの大きなポイントになります。
 次に、セキュリティのことについて少しまとめました。字ばかりのスライドで恐縮です。まず第一に認証という話がございます。各大学で、「この人は学生である」、「先生である」という属性情報を含めて認証するシステムが立ち上がっております。フェデレーションと申しますのは、各大学で認証した情報を相互にやりとりできるという仕組みであります。当然、その認証にはセキュリティレベルが必要で、学生の成績を入れるときには厳しい認証を経てログインできた先生だけが入力できるレベル、一方、電子ジャーナルを読むときは比較的楽で、学生も自由に読めるというようなレベル、などがあります。そのレベルに応じた認証を実現するために、今、共通化を進めております。今後、個人情報やプライバシーとも関係することから、閉じたグループ、例えば共同研究グループの間でのリソースの共有のための仕組みとしても使っていくことになります。
 二つ目は電子証明書です。ウェブ上でクレジットカードの番号を入れるときなどには、httpsというセキュアな形の接続を使うということは御存じと思いますが、大学の中のサービスでもそれをきちんとやるためには、電子証明書というものをサーバに置いて、セキュアな信頼できる通信を提供しているということを示すことが必要になってきます。
 次は無線LANです。東京の大学の先生が地方の大学に行ったときに、この認証のフェデレーションのような形で大学の構成員だということが分かれば無線LANがすぐに使えるというような機能です。このような機能はネットワークの新しい技術として開発が進んでいるSDNとネットワーク仮想化技術を使って実現しようと考えております。
 次にコンテンツの話に移ります。私どもは、機関リポジトリの構築を強力に推進してきまして、大学の図書館を中心に非常に良い連携関係を築くことができました。現在、クラウドを使ったリポジトリサービスJAIRO Cloudを提供しております。この2年間でクラウド利用が急激に進んでおりまして、今後ともこのような方向を進め、機関リポジトリに関してはすべてクラウドベースに構築するという方針を強力に押し進めたいと考えております。機関リポジトリは、ここにリストがありますように、基本的には大学が作るいろいろな種類の学術情報をオープンに提供するという理念ではあるのですが、実際に蓄積されているものを見ますと、論文のようなコンテンツを主体に集めているリポジトリになっています。
 今後は、論文のような従来からの学術活動の成果のみならず、サイエンスデータ、講義のビデオ、教材など、いろいろなコンテンツが蓄積、提供、公開されることになると期待しております。またそのようになっていただきたいと思っておりますが、そうしますと、大学の機関リポジトリだけではなく、例えばMOOCsのような講義が入ったデータベースなど、種々の主題別のリポジトリが各大学のそれぞれのポリシーによって作られてくると思います。全国の大学がいろいろな形でサービスするコンテンツを大学間で共有し、利用するという仕組みを作っていかなければいけないと思います。その際に私どもの提供するCiNiiのサービス機能として、大学の持つ様々なコンテンツのメタデータ情報を集積し、その間のリンク関係を構築することによって、知識基盤としての機能を果たしていくというのが私どもの描いているコンテンツの次の姿であります。具体的に言いますと、論文を見ると、その論文に関連するソフトウェア、デモのビデオなどにスムーズにつながっていけるようにするということです。様々なメディアの電子情報がいろいろな大学のリポジトリに蓄積されており、それが全て相互に関連づけられ提供されるというイメージであります。
 最後のポイントとしまして、Cloud Gateway機能について御紹介したいと思います。今までの話で、いろいろな大学内での情報サービスがクラウドを使って提供されると申しました。その中で定型的なもの、例えばメールサービスなどは共同調達によって最適な形で使うということになるかと思います。そのようなサービスを具体的に先生や学生が使うときにはワンストップで利用する。ワンストップというのは学認のようなメカニズムを使って実現されるわけですが、そのようなポータルが必要になると考えております。大学ごとにサービスのメニューは異なってくると思われますが、いろいろなサービスを使ってキャンパスの中でも自宅からでも同じ情報環境を利用できるという機能を作っていくことが必要で、大学、NII、そしてサービスを提供する事業者が連携して実現していくことになると思います。
 こういうような方向性は既に外国では出ておりまして、アメリカ、イギリス、オランダなどで様々な商用サービスを使いながら進めています。ポイントは、インフラとしての計算機リソース、すなわちIaaSのレベルだけにとどまらず、応用サービスのSaaSのレベルでいろいろな機能を導入するという方向感です。このような機能を実現していきたいと思っております。
 さて、最後にロードマップを御説明したいと思います。先ほど100Gbpsの速度をベースにネットワークを構築していきたいと申し上げました。実は過去を振り返ってみますと、我が国は40Gbpsの技術を導入するのは早かったのです。SINETでは今40Gbpsをベースにネットワークを運用しております。しかし、その次の技術である100Gbpsはアメリカが最初、2年ほど前に導入し、それに次いで欧州が導入しました。昨年は中国が100Gbpsの技術でネットワークを始めたということです。今回、次期ネットワークを日本で作るに当たりましても、私どもも今のトレンドである100Gbpsを遅ればせながら導入したいと希望しています。数年後に400Gbps、1Tbpsという技術が出現するのに合わせて常に最新のネットワーク技術を日本の大学環境に提供したいと考えております。
 スケジュールとしては具体的には、次のように考えております。平成28年度に始まる6年間の調達案件として次期ネットワークを考えたい。先ほど来、御紹介してきました様々な機能を実現できそうな時期をこの線表上にレイアウトしていますが、予算が厳しくなれば機能の提供は後ろにずれるか落とすかということになると思います。是非御留意いただきたいのは、28年度から新しいネットワークになるといっても、実は27年度から準備を始めなければならないということです。3か月ほど重なっております。研究のための他のネットワークですと、重ねるということをしないで、古いネットワークを一旦止めて、少しずつ新しいネットワークを動かしていくということをしている例がありますが、私どもは移行に関しまして1秒もネットワークを止めたことがありません。そのためには、移行に際して二つのネットワークを同時に持つということをせざるを得ない。その間に利用者には全く迷惑を掛けずに移るわけです。その作業を27年度から始めたいので、どうしても重なる部分にそれなりの経費が掛かってくることになります。3ヶ月間二重に掛かることを想定していますので、1年間の費用の4分の1程度の回線経費が余計に掛かってしまうという状況です。
 さて、このような計画を私どもは1年以上も前から検討してまいりました。私どももSINETは日本の学術全体にとっても重要な共通のファシリティーであると認識しておりまして、将来計画を考えてきました。1年ほど前の試算の際に作ったのがこの資料です。国内のネットワークの整備には、ここに書いてありますように、26年度から32年度はおおむね72億程度の経費が掛かるだろうと推定しています。点線で書いてある部分がありますが、これは本日私の話の中で強調しました、国際ネットワーク、クラウド、セキュリティ対応という三つの新しい機能を増強する場合に必要となる増分の試算額であります。私どもとしては是非次期SINETを重要な国の計画の一つとしてこの新しい三つの課題も認めていただければ有り難いと思っております。
 本日の私の話をまとめますとこのスライドのようになります。従来からの事業の強化というレベルですと、回線の増強に関しましては100Gbpsの技術で全国をつなげます。また、学認の更なる展開およびNIIが大学と協力して進めるコンテンツを対象としたクラウドJAIRO Cloudの拡充、CiNiiの高度化などが、従来からの事業として継続強化しつつ行うものになります。
 アカデミッククラウドのシステム研究ではっきりと表れていますように、クラウド化にとって重要なポイントとして、セキュリティ、信頼性の高いネットワーク、そしてコスト面での有利性という三つの点があげられています。これらをどう実現するかが、新たな課題です。その中で私どものご提案では、第一に、ネットワークセキュリティの高度化を実現するためのクラウド機能をSINETの上で提供することを考えています。第二に、大学の提供するアカデミッククラウド、NIIの提供するクラウド、そしてクラウドを統合的に利用するためのCloud Gateway機能など、様々なクラウドサービスを充実させることにより、クラウドを基本とした学術情報基盤というものを実現することを挙げました。私どもとしては、この新たな取組も含め、是非、次期ネットワークで実現したいと思っております。
 以上で私の御説明を終えたいと思います。本日冒頭に学術情報基盤の次年度の予算について先生方から特段の言及をいただきまして誠にありがとうございました。私どもとしては大変厳しい状況ではありますが、本日御紹介しましたような形で今後必要なニーズを見定めつつ、その実現のための計画を考え続けております。本委員会で先生方にこの計画を御審議いただき、最も良い形で次期ネットワークの計画に落とし込んでいきたいと考えておりますので、何とぞよろしく御審議のほど、お願いいたします。どうもありがとうございました。

【西尾主査】  安達先生、大変重要なお話をありがとうございました。
 我が国が科学技術や学術、それから教育の観点で、より高度化していくためには、今、安達先生の方から御説明頂いた環境を何としてでも実現するということが非常に重要であることを再度認識いたしました。
 そこで、我々が今後審議のまとめをしていく上で、今、安達先生から御説明を頂いたことが骨子となっていくと考えておりますので、皆様方から安達先生の内容を踏まえまして全般的な御意見を頂き、その上で意見交換をさせていただければと思います。積極的にいろいろな御意見を頂ければと思います。倉田委員、どうぞ。

【倉田委員】  私のような素人にもある程度理解できる形で御説明頂いたのではないかと思います。このネットワークの重要性は、この委員会ではほぼ当たり前となっていると思いますけれども、先ほどのアンケートの報告でも幾つか気になったのですが、いわゆるネットワークの専門家でない人間に、より具体的にメリットが分かるというのをもう少し出していただいた方がいいのかなというのは少し感じました。
 具体的にと申しますか、課題としてもう全部挙がってはいるのですけれども、レベルというのでしょうか、基幹部分はもう100Gbpsでとにかく全県つながらなきゃ話が始まらないというレベルの話と、その上で学認という認証でとにかくそれぞれの人をまず識別するというレベルがあった上で、その上で例えば商用のメールサービスやSINETを通して何かできるか、それは単に直接商用のクラウドサービスを使うよりもどういうふうにメリットがあるのかというような、例えばですけれども、そういうような、余り個別の例になってしまうといけないということで多分そういうふうにはお書きになっていらっしゃらないとは思うのですけれども、具体例がもう少し見えるとイメージしやすいと感じました。「うちもそれならそこだけ乗れるのだな」とか、例えばここの観測などのいわゆるビッグサイエンス的なものだと、「それ、うち関係ないや」と思って終わってしまうと思うのですね。そうではなくて、もう少し、教育でも何でもいいのですけど、「うちはビデオ配信してないからいいや」ではなくて、共通にみんなが使えるサービスと、その上でもっとやりたい場合には具体的にはこんな例も、こんなこともできるというような、少し段階というかレベルを分けた形でお示しいただけると、より具体的にそれぞれの大学で、一律のサービスではなくて、自分たちで考えながら、ここだけやれるとか、ここを組み合わせていけばできるというのがイメージしやすいような形にすると、より分かりやすいと感じました。

【西尾主査】  とにかくできる限り多くの大学から、この構想に対して御支援を頂き、大きな流れにしていくという観点で、倉田委員がおっしゃったことは重要かと思います。安達先生には、この大きな課題は今後御検討頂くと同時に、もし、現時点でお答え頂けることがありましたらお願いいたします。

【安達国立情報学研究所副所長】  倉田先生のおっしゃることは十分に認識した上で、本日はこのレベルの資料となりました。理解しやすい説明という観点からは、まだ不十分であることを認識しております。実は、アカデミッククラウドの調査研究と密に連携しながら進めておりまして、3月までに調査研究からの具体的な数値をいれて、真実味のある説明ができるようにしたいと思っております。例えば先ほど紹介できなかったのですが、約30%の大学は年間に1回以上、セキュリティに関するインシデントが起こっているというアンケート結果があり、それに対して中小の大学はどのように対応すればいいのかよく分からない、という状況が明らかになりました。次のネットワークにはどのような支援機能があるのかなどの形で幾つかの具体的で共通的なユースケースを織り込みながら、よりよい資料にしていきたいと思っております。
 現在のところ、アカデミッククラウドの調査がまだ中間段階で全てを網羅した情報が上がってきておりませんので、今回はその点で少し取組が弱かったと思っております。倉田先生からの御指摘を十分考慮した形で、今後資料を膨らませていく所存であります。

【西尾主査】  岡部先生、どうぞ。

【岡部委員】  私も学認の関係者として、今の御指摘、ちょっと耳が痛いところがございまして、17ページのスライドに学認のことが書いてあるんですが、これは学認の仕組みについては書かれているんですけれども、学認ではどのようなアプリケーションが使えるようになっているのかということについて何ら言及がなくて、やっぱり事情を御存じない方には、だから何なのというふうに思われてしまうところがあるのではないかなと、少し反省いたしました。
 学認の現状は欧米の流れで電子ジャーナルへのアクセスに非常に多く使われていますし、それがメインになるようであるということは、これはもう否定できないのですが、一方で仕組みとしてもっといろいろなことに使っていこうと。あらゆる認証をこれに統合していきたいと考えております。
 例えば、京都大学では学生用の電子メールをマイクロソフトのOffice 365という無料のシステムにアウトソースしているですけれども、その認証も既に学認対応していまして、ちょっとそういう形でつなぐのはファーストユーザーで、結構苦労もしているのですが、京都大学のやり方をほかの大学に展開できるように情報提供もできるようにしています。あるいは、マイクロソフトが同じ仕組みでDreamSparkという、学生さんにマイクロソフトの開発用のソフトウェアを無料でダウンロードしてもらえる仕組みというのもありまして、これも学認に対応している大学の学生さんなら自由に在学中は使えるようになっていると。
 さらに、この関係で言いますと、例えば、先ほどのReaD&Researchmapというのは言うまでもなくですけれども、もっといろいろなステージ申請、例えばe-Radみたいなものを学認を通じて申請できるようにしたいと学認の担当者としては考えているところです。
 そういうふうに、アプリケーションがあるということをもっとアピールしていかないといけないなということが今回の反省点です。
 以上です。

【西尾主査】  倉田委員がおっしゃったところで、あともう一つは100Gbpsの問題があります。100Gbpsとすることに関して、100Gbpsまでは要らないところでも、このシステムを100Gbpsとして作ることによって、システム全体としてのいろいろなメリットも出てくると考えます。そういう点で100Gbpsまでは要らないところでも、そのような高度なネットワークを作ることによって恩恵を被ることができるというようなシナリオが大切かと思います。また、商用システムとの差異をアピールすることも大切でして、そこら辺が今、岡部委員のおっしゃった、SINETの次期システムでないと利用できないサービスとかアプリケーションとかがいろいろあると思いますので、そこら辺を今後紹介していただくと、倉田委員の御質問にも答えていけるのではないかと思います。
 美馬委員、どうぞ。

【美馬委員】  今のことに関して、どのように提示するといいかという一つのアイデアですが、例えば、今日、安達先生に御提示頂いた9ページの「今後の我が国における研究・教育のための情報関係のイメージ」とか、それから19ページの「学術情報の共有と流通の促進」ということで、全体的な今後の未来のイメージがあります。そういったところの提示の仕方だと思うんですね。ここの内容をもう少し、例えばストーリーボードとかシナリオという形で、あるペルソナを設定して、その人がどういう形で、何をしたくて、それがどういう環境で、どういう利用ができるのか、というストーリーとして幾つかのパターンを提示すると、情報系のバックグラウンドがない方にも理想的な今後の未来像が分かると思います。その中にこういうセキュリティの問題があるとか、商用クラウドとのすみ分けとかが出てくるのではないかなと思いました。
 以上です。

【西尾主査】  今、美馬委員がおっしゃった「理想的な」というところは大事で、次期SINETは理想的なものを計画していただいているという感じが先ほど来しております。安達先生、現時点で美馬委員のコメントに対して何かございますか。

【安達国立情報学研究所副所長】  是非、今頂いたアドバイスをうまく具体化する形で分かりやすく持っていきたいと思います。
 申し訳ございませんが、今日のところはこのような面についてまでは至らずに資料としてしまったというところがありまして、そのような出来の悪さがあるということは十分認識しております。

【西尾主査】  土方委員、よろしくお願いいたします。

【土方委員】  今の質問に少し関連するのですが、やはり先ほどありましたように、予算を確保するためには効率化につながると同時に、そういったものを使う学校を増やしていくということが非常に重要だということからすれば、特に、いつもこういう話になると、規模の小さいところだとか、地域的なところにどんなメリットがあるんだというのは非常に重要になってくると思います。
 美馬先生がおっしゃったように、最先端の研究で世界をリードしていくという理想が一つあるのと、もう一つは教育が全国のどこの場所でも均一的なものが享受できるようなことだとか、また、事務は完全に効率化できますと。そのようなことを実現していくというような、幾つかのフェーズに分けて話が整理されていくと、議論もしやすくなっていくのかなというふうに思ったのが感想でございます。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 倉田委員のおっしゃった意見とも共通する、いろいろな切り口といいますか、ユーザー利用形態をいろいろと見ていただきながら説明していただくことが大事かと思います。
 後藤委員、どうぞ。

【後藤委員】  セキュリティに関わっている関係で、セキュリティの観点から二つほど申し上げたいと思います。まず昨今、クラウドとネットワークを使って例えば企業が競争力を強化するというのは当然の話でございまして、そういう意味でアカデミックの世界でもこういうものを積極的に活用することは絶対必要だと思っております。
 その中で、先ほど安達先生の方から、クラウドネットワークの中でセキュリティを強化することを挙げられて、非常に頼もしく思うのですが、一つ申し上げたいのは、高度化という言い方だけですと、何か設備だけのイメージがございまして、運営というか、運用に関して費用面でも強化していくという観点を是非お願いしたいということでございます。ちょっと技術的な細かい話になって恐縮なのですが、先ほどの絵でもIDSとかIPSとかファイアウォールを強化していくことが記されており、非常にいいことだと思います。ただし、これらの装置は、その運用業務、例えば、ログをモニター・分析し、何か事件が起こっていたらそれに対応するというような運用業務が裏にあってこそ、実は運用業務の方が装置コストより大きいのが普通なのですが、それがあってこそクラウドネットワークや、そのユーザーを守る役割を果たせる、ということになります。
 このクラウドネットワークは長年使っていくものだと思いますが、少し心配だったのは運用の経費です。最初の予算の説明で、予算が減っていくという傾向がありましたが、そういう中でも、セキュリティに関する運営、運用の費用というのは絶対維持していく、又は強化していくぐらいのつもりでないと、今後のサイバー社会は成り立たないのではないかと思っております。そういう意味で、運用のための経費を強化するという表現を是非入れていただきたいと思います。
 これは先ほどの学認などでも同じだと思います。私も学認のような仕組みは非常に大事だと思っていますが、実際には、最初のIDの割当てとか、初期認証、それからライフサイクル管理というところが非常に大事だと思いますので、そういう運用のコストをずっと維持していくことをお願いしたいということでございます。
 それからもう1点です。企業では今、サプライチェーンのセキュリティが非常に大事になっています。つまり、企業も一つ一つの組織として安全性を高める、セキュリティレベルを上げるという取組は行われているわけですが、実際、ビジネスはサプライチェーンでつながっておりますので、どこかに弱い企業があるとそこを踏み台にしてサプライチェーンにつながる企業がやられてしまう。実際に、これまで新聞に出てしまったような事件でも、契約先の小さな中小企業が狙われて、そこから侵入されたという例もたくさんございます。
 そういう意味で、このSINETの世界でも、大きな大学、立派な大学はきちんとセキュリティの担当部署も用意なさっていると思いますが、私学の小さなところですと、なかなかそういう手間もかけられない状況と思います。SINETの取組と一貫として、そのような小さい大学や弱い大学のセキュリティも強化していくということが必要ではないかと思います。
 さっき30%の大学でインシデントが起きた、というアンケートの結果がございました。これをどう見るかなんですが、30%にインシデントが起こり、70%は起こっていないのではなく、70%の大学はインシデントに気が付かなかっただけ、が現状かと思います。実際にセキュリティインシデントが起こっているのに気が付いていない場合も多いと。ここで言うのもはばかられますが、大学というのはそういう場合が多いと聞いておりますので。是非、SINETの入り口でGatewayを頑張って、ユーザーである大学を守る。同時に、大学側のセキュリティレベルも強化するような、そういう仕組みと併せて考えていくことが今後の発展に結び付くのではないかということで、2点、是非お願いしたいと思います。

【安達国立情報学研究所副所長】  どうもありがとうございました。
 セキュリティに関しまして、セキュリティを実現するためのクラウドをネットワークに用意したいというのは私どもの考えですが、御指摘のように、これをしっかりとしたセキュリティポリシーで運用していくためには、相当の人的コストが掛かると思います。恐らく中小規模の大学が個々に努力してそれをやっていくことは不可能なのではないかと思っておりまして、クラウドの仕組みの上でノウハウの共有化やスキルの向上など人材面のメリットが実現できればよいと思っています。
 先日、学認などに関するシンポジウムを一橋講堂で開催いたしましたが、産業界も含めて、定員500名のホールが全て埋まるくらい盛況でした。幸い、学認に関しては大学の中では関心を持つ人のコミュニティができてきておりますので、これに倣い、新しい課題につきましてもコミュニティを作りながら、少ない人間でも必要な水準まではきちんと確保できる形に持っていけるようにすることが急務だと思っております。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 後半部分のネットワークの仮想化により、大きなエリアをカバーしたとき、どこかにウィークポイントがあると、そのポイントから大変な状況になるということに関して、今おっしゃった意識の向上であるとか、いろいろな観点からの対策が今後必要だと思いますけれども、そこら辺も是非お考えいただければと思います。
 どうぞ、竹内委員。

【竹内委員】  私もネットワークの専門家ではございませんので、技術的な事柄につきましては安達先生の御説明、あるいはほかの委員の方々のいろいろな御発言を伺って、全くそのとおりだろうと思っております。
 ただ、言わずもがなのことなのかもしれませんが、審議のまとめということを考えていくと、やはりこういったネットワークがなぜ必要なのかということについて、もう少し議論を深める必要があるかな思っております。その点で申し上げますと、これまでの課題を解決するということと、今後の我が国の学術の発展ということを考えていった場合に不可欠なことは何かという議論がもう少し必要なのではないか。そして、今後の我が国の学術の発展ということを考えていったときに、このネットワーク基盤をうまく活用していくためには、どういう課題があるのかということも議論しないといけないのではないかと感じます。
 既に安達先生の資料の11ページのところに「次期SINETで実現すべき課題」ということが挙げられておりますけれども、これはネットワークをどうするかということがメインになっている課題ではないかと思います。しかしながら、先ほど申し上げましたような論点でネットワークを見ていくと、例えばデータの共有ということを促進していくとしたら、どういう仕組みがこのネットワークの上で動いて、そしてそのためにはどういう人材が実際には必要なのか、そういった人材は既にいるのか、あるいは新しく養成しないといけないのかといったようなことまで踏み込んでいかないと、このネットワークを真に生かす方策というのが見えてこないのではないかという気がします。
 以上です。

【安達国立情報学研究所副所長】  今の御指摘、私も認識を共有するものであります。従来は回線周りの低いレベルでSINETを議論してきたという経緯がありますが、今回、私のプレゼンの中で強調しましたように、クラウドとセキュリティというものが重要と主張するところまで視点を上位に持ってきました。セキュリティ関係、情報の共有やオープンアクセスのような観点についてもっと踏み込んでいくというのが次のレベルの議論だろうと思いました。
 正直なところ、私どもが今回、次期ネットワークの構想としてまず最初の御提示をする際に、どの程度まで上位のコンセプトに踏み込むかについては、少々躊躇しておりました。それはまさに先生が言われるように、このような場で議論していただいて、方向性を示していただけると大変有り難く、例えば、私どもが機関リポジトリを前面に押し出してきたというのは、過去においてこのような場で方向性をきちんと議論して出していただいたということが前提になっております。今、この委員会でもう少し踏み込んだ形で方向性を御提示いただければ、私どもとしてはそれをフィーチャーした形で計画を詳細化していきたいと思っております。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。

【羽入主査代理】  今、竹内先生がおっしゃったことに全面的に賛成です。このSINETの強みは大学との関わり合いが非常に強いということだと思います。最後に安達先生がまとめてくださいましたときに、科学技術と学術と教育というようにおっしゃっていましたが、教育の場面に直接つながっているということが最大の特色ではないかと私は認識しておりまして、これは教育に対する投資の効果を社会に対して明確に示し、かつ、日本の教育活動を国際的に発信する、教育の成果を発信する、それが研究成果になっているかと思いますけれども、そういう意味でのほかの機関にはない機能というか役割を担ってきてくださっているわけです。全国津々浦々の700以上、800近くありますでしょうか、その大学に既にもうつながりを持っていらっしゃるということを最大限、特色として挙げることが重要ではないかなと思っております。
 それでもう一つ、この学術情報とは関係ないのですが、先ほど後藤先生がおっしゃった、今、政府機関でもいろいろな形で危険にさらされている情報について、先ほど示してくださった10ページのスライドの、あのモデルがうまくつかえるとすれば、例えば府省とかでも、同じように安全な情報ネットワークとして機能するという点で、学術情報だけではなく、ほかにも運用ができることを訴えたい気がいたしました。
 後半は独り言です。

【西尾主査】  戦略としても非常に重要な話だと思います。
 非常に重要な御意見を頂き、羽入先生、どうもありがとうございました。
安達先生、何かありますか。

【安達国立情報学研究所副所長】  後藤委員はこのような装置が幾らぐらいして、攻撃に対して対処するようにきちんと運用するには年間どれぐらい掛かるかということはよく御存じだと思います。私どももそのようなことを調査しようとしておりますが、それをクラウドで大学とVPNでつなぎ、セキュアにサービスを行うためのコストについては、まだ詳しい計算をしていません。この運用には相当の人手も必要とします。経費も掛かる話になり、大学がある程度それを負担することを想定しています。我々はベーシックなところまでを実現し、大学と役割分担をすることを想定しています。また通信事業者もビジネスとして展開していこうと考えているようです。
 クラウドでは、大学が大学独特の特性を持ったニーズを共通化し、共同で調達するということによって効果を得ようという考え方が基調に流れていると考えています。個別に行うととても大変ですし、大学側の要員も必要だということに対して、どこまで合理的に効率化できるかという点がこの仕組みの肝だと思っております。それは民間でも十分に適用されることだと思いますし、通信業界の方々とお話ししていると、当然、そのように考えていることを感じます。それを率先して私どもが導入し、大学環境で実装していきたいと思っている次第でございます。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 後藤委員、どうぞ。

【後藤委員】  先ほどの羽入先生の御意見を少し拡張させていただくと、多分、期待としては、セキュリティのクラウド化というのもあるのですが、SDNを使う仮想ネットワークを自由に作るとか、セキュアなネットワークを作るというのは、企業は当然ですけれども、官公庁でも広く各地の支所と本省を結ぶ場合に非常に価値があると思います。そういう意味で、この技術の取組が日本の将来のクラウドシステムのプロトタイプ(先行指標)になり、その技術が官公庁でも使えるようになると更にSINETの価値が上がるのではないかという御意見だったと思います。そういう御意見は非常に私も大賛成でございますということを申し上げたいと思います。

【安達国立情報学研究所副所長】  実際にインプリメントに携わっておりますと痛感するのですが、大学は企業などよりも面倒な組織体でして、ピラミッド型ではなくて、外に半分オープンです。学生や先生など異なる属性の人がいて指揮命令系統が重層的なので、特にセキュリティのようなものをうまく進めることが難しい環境だと思います。逆に言いますと、難しい環境で実現できたものは、もっとシンプルな企業などへは簡単に適用できるというように思います。

【西尾主査】  辻委員、どうぞ。

【辻委員】  今、セキュリティの方でいろいろと話題が上がったところでございますけれども、私の方から少し、ネットワークの観点からお話をさせていただければと思います。
 安達先生の方から御説明がありましたように、資源をできるだけ集約していって、それで技術を共通化していくことによって、よりコストミニマムな形であるべき姿に持っていけるというのは、まさにそのとおりでございまして、その観点で申し上げますと、イニシャルコストが下がるというだけではなくて、ランニングコスト、オペレーションコストの観点でも技術の共通化をすることによって、先々、このネットワークをずっと運用していく面からでも、やっぱりコスト削減というところにつながっていくのかなというところでございます。
 それで、一つ気になりましたのは、先ほどのアンケートの結果がございましたけれども、アンケートなんかで各大学から見ますと、いろいろとSINET側に対してこんなことをやってほしい、あんなことをやってほしいって、たくさん要望が出てくるところかと思うんですね。そうはいっても、それを全て聞き入れるような形で中央集約的にやっていくと、幾らリソースがあっても足りないような状況になるのではないかという懸念もございます。そういったところで、いわゆるSINET側で持っていくところと、ある意味、大学側で任せてやっていくところみたいな役割分担的な考え方がもし少しイメージされているものがおありでしたらお聞かせ願えると有り難いと思います。

【安達国立情報学研究所副所長】  今のような点は極めてデリケートで綱の引き合いになるところなのですが、今まではNIIがステークホルダーを集めてネットワーク運営・連携本部という組織を作りまして、そこに様々な異なるお立場の方々に集まっていただき厳しい御意見を頂きつつ計画を練ってきた経緯があります。過去このような形で、限られたリソースをどのように配分するかという調整を行ってまいりました。
 今後、クラウドやセキュリティの課題が大きくなったとき、この点が一層複雑になっていくと認識しております。しかし、実は、大学ICT推進協議会など、この分野のことで大学の問題を扱う組織体が動き出しております。今回のアカデミッククラウドの調査研究も、九州大学の岡田先生はそのような立場でお引受けになったと思います。我々としては、そのような組織との密な関係のもとで、どこに線を引いて、どのようなロードマップで作っていくかとかという議論をできる段階にあると考えておりまして、現在、NIIの組織を使って果たしている機能を、大学全体のいろいろな課題を議論するようなより大きな組織体の中での議論し、うまくすり合わせて進めていくという形に持って行くことにより、一層きちんとした方向性を個別の問題ごとに出していきたい、出していけるのではないかと考えております。
 しかし、大学によって要望が多様であるため、民間企業のいろいろなサービスや提供の実態も見ながら、大学にとって最も有利な進め方を模索していきたいと思います。
 今、進んでいる例として、例えば、ソフトウェアのライセンシングをするときに、一大学でなくまとまった数の大学で交渉すれば、非常にバーゲニングパワーが大きくなってうまくいくというような話が始まっています。同様のアプローチをいろいろなところに適用していけると思っています。具体的に、我々は光ファイバーのダークファイバーで、全国規模の共同購入を行うことで非常に有利な形で各大学が回線を調達できるように持っていくつもりです。そのような仕組みを一つずつ丁寧に作っていくということも、ロードマップの中のいろいろなフェーズにあると思います。

【西尾主査】  吉田委員、どうぞ。

【吉田委員】  ちょっと今のお話と関係すると思うんですけれども、9ページが、全体的なビジョンを表しておられると思います。今日のお話を伺って、ここが非常に重要だなと思ったのは、その中のCloud Gatewayというところでして、結局ここを通して、クラウドの上のサービスが全部見えてくる。クラウドのサービスといっても固定的なものではなくて、今後いろいろなサービスが増えてくるだろうし、商用のサービスもあるでしょうし、今の議論であった、各大学で作られるいろいろなサービスもあるでしょうし、そういったどんどん増えていくサービスというのが全部、Gatewayを通して使えるようになるわけですよね。ですから、このGatewayというのが利用者からどういうふうに見えるのかというのが、話の説明をするときの一つの切り口としていいのではないかと思っております。
 先ほど、大学によっては規模が小さいからスモールスタートしたいということをおっしゃっていましたけれども、このGateway上にサービスがいろいろ並んで見えていて、その中から使いたいものだけを使って、当面必要なことから始めればいいというビジョンが言えれば、規模の小さい大学でもクラウドを使うことができます。さらに、Gatewayの上で複数のサービスを組み合わせたワークフローが組めて、大学固有の業務を構築することもできるといったGatewayの機能拡張も考えられます。
 それから、ちょっとこれはどちらかというとクラウドのビジネスをやっている立場からの問題意識かも知れませんが、このGatewayを通すことで、クラウドサービスを使う上での個々の大学の契約行為はどうなるかとか、課金はどう見えるのかという着眼点があります。新しいサービスを使おうと思ったときに、一々申請して時間をかけてというのではなくて、このGatewayの上で即座にサービスが買えるとか、課金なども利用したサービスをまとめて請求されるとか、そういう仕組みまで提供されるのであれば、クラウドをだんだん使っていく障壁が非常に下がると思いますので、Cloud Gatewayの利用者からの見え方・利点を一つのキーとして話を展開されていく方向には意味があるのではないかと思っています。
 そうしていきますと、プレゼンテーションのまとめのスライドを、新たな取組と従来の事業の強化に分けて書かれておられますが、やっぱり最終目標としてクラウド化する、しかもそれがGatewayを通してどう見えるか。そのときのセキュリティはどういうふうに保証されるべきか。そうすると、そのベースとして、今まである回線をどこまで増強しなきゃいけないか、あるいは認証機構を今後どうしていかなければいけないかといった話の展開になっていくと思いますので、まとめる際の観点としてお考えいただけたらと思います。

【西尾主査】  私も、Cloud Gatewayは非常に斬新な言葉だと感じました。今、吉田委員が本質的な重要性を具体的におっしゃっていただきましたので、非常に参考になりましたけれども、今後、吉田委員のおっしゃったような方向のまとめ方も重要ではないかと私は思っていますが、どうでしょうか。

【安達国立情報学研究所副所長】  御指摘の点は全くそのとおりで、私どもは従来ネットワークの下位レベルの方を中心にやってきたという経緯がありまして、どうしても計画を立てて説明するのが下の方から順番にしてしまいます。しかし、今回は上位のイメージを出すことが肝要だということで、説明の仕方を多少工夫してみたのですが、まだ不完全であることは否めません。吉田委員が言われたような観点をより押し出していくという形で、今後取りまとめていく際に資料を見直していきたいと思います。

【西尾主査】  美濃先生、上島先生、それから加藤委員、御意見がありましたらどうぞ。

【美濃科学官】  ちょっと視点が違うんですけど、大学内で情報環境を作っていますと同じような問題が出てきまして、やはりクラウドサービスがいいんだといって総長に訴えにいくんですね。そうすると何が起こるかというと、それでメリットを得るのは誰だというお話になるわけですね。そうすると、学部ですよねという話になるわけですが、その費用は誰が負担するのと。本部ですと言ったら、そんな不合理なことはないと言われるんですね。メリットを受けるのが学部であれば、学部から金取ることを考えろっていう話になるわけですね。
 これもよく考えると、どうしていいかよく分からないんですけど、メリットを受けるのは大学なんですよね。そこは何も予算的には何の話もなくて、共通のことを、これをやれば国全体にいいんだと。もちろんいいというのは分かっているんですけど、いいんだというお話になると、そのお金は国から取ってきたらいいという、こういう論理になっているわけですよね。
 そうすると、お金がいっぱいある時代はいいんですけど、大学なんかもお金がなくなってきたので、そうすると、その金どうするんだという議論がどうしても出てきちゃうわけですよね。だから、研究者にとって、これはすごく大事なんです。よく分かるんですけど、やはりメリットを受けるのが、いろいろ見ていると大学がかなりコスト削減ができるはずだっていう話なんですね。そのことを放っておいて、国に予算要求という話になると、なかなか通らないんじゃないかなという気が、私もこれで学内で苦労しているので思うんですよね。
 だからそういう意味で、何かそういう、先ほどのクラウドの負担じゃないですけど、新たな機能を例えば作られるっていうことに関しては、何らかの、大学が金を出すとか、そういうメカニズムをちょっと入れないと、全体として通らないのではないかという気がすごくします。したがって、そういうクラウド機能とかは大学が出すけれども、回線の高速化は国が出せとかいうような話も含めて、全体としてお金がないので、くれと言うだけではなくて、何かそういうことも考えないとつらいのかなというのを、長澤室長から、全然分かってもらえないというのをこの前お聞きして、「私もなかなか分かってもらえないんだ、学内で」っていうような話で思いますので、そういうことも考えた方がいいのではないかなという気がいたします。

【西尾主査】  受益者負担ということをどう考えるですが、基盤としてある程度の高度化をするための公的な財源は一方で必ず必要であり、その辺の敷居のところは今後非常に大きな課題ではないかと思います。つまり、すべてを受益者負担にすればいいということでもないと考えますので、両者のバランスが大切だと思います。
 上島委員、どうぞ。

【上島委員】  本当にすばらしいネットワーク構想というか、学術情報基盤構想だと思います。是非早くに作っていけるような体制を整えるべきだと思いますけれども、やはり今もお話がございましたけれども、基盤というのはやっぱりユーザーが必要で、それがこの場合、特に大学が恩恵を受けるわけです。特に「大学が」というと個々の大学を思ったりしますけれども、大学の教育自体も大きく変化する可能性を含んでいると思います。
 これまで文部科学省が、この委員会は研究振興局所管だから違うのかもしれませんが、これまで国公私を超えたような大学間連携共同教育推進事業というのをやってきて、私も自分の大学で担当しておりました。もうそれは六、七年前のことでございますけれども、それは単に可能性の創出とか相互利用といったような範囲だったと思うのですけれども、こんなシステムが実現したら、もうこれは教育自体も大きく変わっていく可能性を秘めていると思います。それには大学の制度であるとか、それから組織の整備が必要です。教授会が強くて、学長の権力が弱いというような話、先ほどもございましたが、特殊な組織であると思います。確かにそうだと思います。国公私を超えた大学事業の推進事業などで、高等教育局所管だと思いますけれども、利用の方法をちゃんと提案を各大学に募ってはいかがか。やはりいろいろなことを考えた提案を出してくれると思います。そういった形で文部科学省の研究振興局と高等教育局の両方が一体として共同して、この基盤の上で教育研究の推進をするべきだと思っております。
 大体、大学の人は文句を言いますけれども、学術基盤が進むであろうっていうことは全員、認識していると思いますので、このような学術基盤は理解を得ていけるのではないかと思っております。

【西尾主査】  非常に貴重な観点でございまして、この委員会で議論していることを高等教育局等の委員会においてもきっちりと伝えていくということは非常に大事だと思います。本委員会の皆様は、次期SINET計画の重要性については十分に御理解頂いておりますけれども、この共通認識をいかに外に広げていくかというときに、やはり教育という観点からは高等教育局への働きかけ、さらには関連委員会等でも共通の認識をもっていただけるような議論を展開していくことが重要ではないかと私は思っております。

【加藤委員】  安達先生の御説明内容とか、各先生方の御意見とか、非常に参考になりました。私、実はJSTの中でセキュリティインシデント対応とか、JST全体の共通ITインフラの対応を現在担当しておりまして、その中に、プライベートクラウドに加え、セキュリティ対策を今後全体的にどうするかということを今、検討して実施しようとしています。今回、御説明のあったように、SINETのネットワークの中にセキュリティ対策機能を含め、各大学に共通的な機能をネットワークの中に埋め込んで、それ全体が一つのSINETだということをもう少しアピールしていただくということは効果的だということで御意見があったと思われます。一方、実際、セキュリティ対策についてもどこまでやるかというのは非常に大変なのですが、各大学では装置を置いて監視をする程度のことは一般的にできますが、今、ウィルスチェックにかからない標的型攻撃をどうするか。サンドボックス対応をどうするか。外に流れていくデータを監視するというような対策の実施は、実際は、各個々の大学では、対応できないのではないかと思われます。
 そういうところをネットワークの機能の中で実現できるということであれば、メリットというよりも、こういうデメリットを排除するために絶対SINETに入らなければならないということになるはずです。ネットワークの機能の中にそういう機能を付加して、各大学にサービスするというのはすごくメリットがあると思います。現状、JSTも、セキュリティの強化のためにということで、各事業部門の様々なシステム、サーバを全部統合化するということで、JST全体で一致団結して今やろうとしておりますが、それと同じようなことが全体の大学の中でも実現できるのではないかなと思います。やっぱりセキュリティインシデント、情報漏えいだとか、そういうところ、非常に大変な問題ですので、ネットワークの機能として今回御提案されて提供するというのはすごくすばらしいことだと思っています。
 以上です。

【西尾主査】  加藤委員、非常に大事なポイントをお話しいただきありがとうございました。
 最後に喜連川委員、時間が迫っておりますが、何かあればどうぞ。

【喜連川委員】  大変いろいろ有意義な御議論を、我が方の次のネットワークデザインに関しまして、本当に貴重な御意見を頂きましてありがとうございます。
 やはり一番難しいと感じますのは、何かを調達してきて物を作るということではなく、技術自身が大きく、進化していく過程の中でいろいろなステークホルダーの方々とうまく御理解を得ながら日々考えながら作っていくということが、やっぱり根源的に難しいのかなというふうに感じています。
 倉田先生から御指摘頂きましたように、具体的にどういうユーザーメリットが見えるのかというユースケースをやっぱり我々、きっちりお示ししていかなくてはいけないと思いますが、一方で、そういうユーザーベネフィットが技術の進歩とともにどんどん変わってきていく、変化していく。それにいかに追従していくかということが、その追従度合いが実は国力に非常に密着しているというところでもあり、どういう御説明の仕方をしていけばいいのか難しい次第です。
 例えば、クラウド、セキュリティというのは、我々は非常に重要だとは思ってございます。日本の業界の中でIT投資が一番大きいのは実は金融、ファイナンスの世界です。ファイナンスの世界は、クラウド利用というものがまだなされていません。それはやはり安全面というものをどこまでとらえるかというところが極めて重要という認識からそうなっているのだと思います。
 先ほど後藤先生がサプライチェーンのお話をなされましたけれども、大学では医学研究科におきましてはヒトゲノムを扱っています。このレベルのセキュリティと、いわゆる情報漏えいで学生の成績が漏れたというのとでは全然桁が違います。つまり、セキュリティといいましても、松竹梅、いろいろございまして、今日申し上げましたような単純な世界では全く済まないというものも実はございます。
 その中で、土方先生におっしゃっていただいたような、小さな大学にとって最低限のサービスをきっちり受けるようにするということが一方で非常に重要で、これはSINETが完全に保障していきたいと思いますけれども、高度なセキュリティ、あるいはもっとめりはりのあるものに関しましては、先ほど美濃科学官もおっしゃいましたように、部分的なチャージというものもやらざるを得ないのかもしれないなという気がしております。
 辻委員から御指摘いただきましたのは、一体大学とNIIがどれぐらいの力配分でやっていくのですかと。これはものすごく大きな問題ではあるのですけれど、私の感覚からしますと、このIT化を進めるということが完全にイネーブリングファクターであるということはほとんどの母体が分かってきていると思っておりまして、つまり、ここを強く進めないと大学自身が負けるっていうことは確実にみんな強く感じておられるんです。ということは、NIIと大学の境界線ではなくて、ITに関して総長の理解が得られないというような大学では駄目で、それぞれの大学がどれだけITに投資するかっていうところが、NIIとの力配分よりも実ははるかに重要になってくるんではないかなという気がしております。こういう議論というのを西尾先生にお願いさせていただきたいのは、決して1回議論した、それでこれでいいですねということではなかなか終わらないものですので、折に触れて、今こういう状態までだった、今後どうすべきだ、こういうケースがあったというのを、是非継続的に共有できる場をお作りいただけると大変有り難いと思っております。
 御議論ありがとうございました。

【西尾主査】  喜連川先生、貴重なコメントといいますか、おまとめをありがとうございました。
 まだいろいろ議論したいところでございますが、時間が迫っております。ここで、次期SINET及びアカデミッククラウドの展開に関する構想の素案に関する議論に関しましては閉じたいと思います。安達先生におかれましては御説明、質問に対します御対応をしていただきまして、本当にありがとうございました。なお、これまでの議論で頂きました御意見等に関しましては、事務局で整理していただきまして、今後の審議に有効に生かしてまいりたいと思っております。
 その他の案件として2件の審議事項がありますので、まず科学研究費補助金「研究成果公開促進費」(学術図書)の改善について、事務局より説明をお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  次回はまとめ的な発想になってくるのですけれども、そのときに、SINETをどうするかということで安達先生から提案していただいているのですけれども、まとめに当たりましては、サービスをどう提供するかという問題ではなくて、日本の学術や大学をどうするかというようなことで、共通の基盤として重要だという側面でとらえて、では、こういうメリット、こういった背景があるから、こういったことをしないといけない、そのためのネットワークの在り方というのはこうなんだというような取りまとめにしていきたいと思っておりますので、先生方でおっしゃられた背景やメリットとか、その上で、では大学がやるべきことなのか、若しくは共通基盤として国がまとめてやるべきことなのか、そういうことを考えませんと、課金すればいいじゃないかという話になってきてしまいます。そうではなくて、大学を強くするために研究者の方々とか関係者の方々が心配せずにネットワークを使えるという環境を用意するということが非常に重要だとか、そういった観点を踏まえてどのように結果的にそのサービスを提供していくかということを、先生方の方でまとめていただいて、それを発信することによって、このクラウドも、このアンケートを見ましても、半数は必要だけれども半数は必要ないと。これは恐らくは必要ないと思っているのではなくて、そのメリットを御理解していないという方もいらっしゃるからこうなっているということもあると思いますので、そういった点も含めて、例えば審議会のまとめとしてそういう情報を提供できるような形にしていければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、資料の残りの議題なんですけれども、これまでと関係ない話になりますが、まず、資料3をごらんいただければと思います。
 これは科学研究費補助金の改善方策の提案でございます。この研究成果公開促進費につきまして、ジャーナルをどうするかということにつきましては、以前にまとめということでオレンジの本(「学術情報の国際発信・流通力強化に向けた基盤整備の充実について」平成24年7月)におきまして流通発信の強化で、ジャーナルの強化を国際発信力強化に変えるということで改善しているのですけれども、今回、黄色の本(「学修環境充実のための学術情報基盤の整備について(審議まとめ)」平成25年8月)でまとめていただいたところもありますが、この学術図書につきましては、今、科研費の対象は紙媒体のみになっておりますので、電子化が遅れているということ、それからコスト関係でなかなか出版社が引き受けていただけないとか、心配があるということに対しまして、こういった研究成果公開促進費で支援している対象に電子媒体を加えるというような形の改善をしたいと考えております。
 こういう対応がもしふさわしいということでございましたら、「今後の展開(案)」にございますけれども、日本学術振興会の方で具体的な支援スキームを検討していただいて、その結果をまたこの学術情報委員会、また科研費を担当しております研究費部会の審議を経て、来年度からこのような制度改善を行ってはどうかというのが資料3でございます。
 2ページは黄色の本のまとめの書籍の電子化が重要であるとおまとめいただいたものの抜粋でございまして、3ページ以降は今の科研費の学術図書のスキームでございますけれども、その出版に掛かる実費を支援するというようなスキームになってございます。
 資料3の御説明は以上でございます。

【西尾主査】  時間がなくて十分な説明をしていただく時間が取れなかったのですけれども、資料3のことに関しまして御質問とかコメントとかございますか。どうぞ。

【竹内委員】  時間もありませんので短く質問しますが、この助成を受けた資料については、オープンアクセス化を義務化するようなことなのでしょうか。

【長澤学術基盤整備室長】  限定しては考えておりません。今の単純な学術図書のスキームに電子媒体も加えるというような軽微な変更を考えております。

【西尾主査】  よろしいですか。
 ほかに御質問とかございませんか。どうぞ。

【岡部委員】  紙媒体に比べて電子媒体は、例えば写真ですと高解像度、かつ、フルカラーのものを出すと、印刷の品質にとらわれないものが常に得られるということで、ある意味、紙媒体よりも電子媒体を今後推奨していくようなところまで長期的には踏み込めたらいいのではないかなと個人的には思います。
 以上です。

【西尾主査】  長澤室長、今のコメントを是非反映していただきたくお願いします。
 ほかにございますか。
 御異論がございませんようでしたら、日本学術振興会において具体的な支援案について検討をお願いすることにいたします。
 次に、ジャーナル問題に関するワーキンググループの設置について、事務局より説明をお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  それでは、資料4をごらんいただければと思います。
 このジャーナル問題に対する検討ワーキンググループの設置の提案でございますけれども、この背景につきましては先生方も御存じだと思いますけれども、ジャーナルにつきまして、価格が高騰しているということもあり、なかなかそれにアクセス環境というものが維持できなくなってきつつある。その中でどうするかという問題を突き付けられております。
 現状のところをごらんいただきますと、毎年7%ずつの値上げがあって、最近は円安の傾向もあって、大学の財政負担額が増えている。結果的に、平成25年度で電子ジャーナル等講読経費総額が約287億円という、そういう規模になっているところでございます。
 そういうこともございますので、各大学が契約している包括的なパッケージ契約、ビッグディールと言われているものを取りやめて、閲覧環境というものを制限するような大学も出てきておるということでございまして、こういったことに対してどのように対応していくかを抜本的に環境も踏まえてもう1回検証していく必要があるのではないかと思っております。
 加えまして、海外からの電子的なコンテンツに対して消費税を課すという検討が政府でなされておりまして、これが通りますと、27年度から10%の税負担が新たに発生する見込みになってございます。
 こういったことを踏まえまして、また、コスト増ということが見込まれますので、いま一度考えたいと。国際的な状況としましては、やはりオープンアクセスとかオープンデータということにつきまして、これは国際的な共通課題でございますので、G8の科学技術大臣会合とか、アカデミー会長会合ということでも、現在、審議事項として取り上げられているところでございます。
 そういうことを踏まえて、やはりこれは簡単に予算を増やせばいいかというような問題でもないし、そういうことをやろうと思っても簡単にはできないという環境もございますので、その在り方につきまして、いま一度考えるようなワーキンググループを設置したいというような御提案でございまして、できるだけ早く、関係者ということで、構成案としましては学術会議の有識者とか、JSPS、JST、NII等関係機関の関係者の方々で議論していただいて、早々に半年程度ぐらいまでの間に集中して考え方をまとめていきたいと考えております。
 以上でございます。

【西尾主査】  本件は非常に重要な問題であると思っておりますが、事務局からの説明に関しまして、何か御意見とかございますか。倉田委員、どうぞ。

【倉田委員】  これは学術情報委員会の下に検討ワーキンググループを設けるという御提案ということでよろしいのでしょうか。

【長澤学術基盤整備室長】  その枠組みにつきましては今、検討中ですけれども、緩やかなものなのか、この下なのかというのは、枠組みについては改めて考える予定です。

【倉田委員】  もし、この学術情報委員会の下というような、もちろん緩やかな場合も、できればこの学術情報委員会のどなたかに入っていただく方がよろしいのではないかというのが一つです。あと、具体的に何をやるのかがいまひとつ分からない。つまり、問題が大きいので、問題があるということ自体は、これはもう、ほぼこういうことに関係している人間全員が頭を抱えている状態であることでして、そこに新たな提案ができるのかなというのは、今の段階では私には少なくともちょっとないので、もし出てくるのであれば大変有り難いと思いますけれども。それ以上に現行のジャーナル流通体制の分析というのを本当にやっていただけるのであれば、是非情報を公開していただきたいのですが、これは本当に可能なのでしょうか。つまり、ビッグディールやこういう契約に絡むものというのは、ほとんどのものが表に情報が出てこないものですから、日本全体が一体どういう状況で、どうなっているというのは個別の事例で少し情報が出てくるだけでして、JUSTICEの全体像に関しても公開情報としては出てきていないのではないかと認識しているのですけれども、その辺はどんなふうにお考えなんでしょうか。

【長澤学術基盤整備室長】  現在はそういった非公開になっておりますけれども、では、どこまで公表できるかということにつきましては、検討している中で議論して、できるだけオープンにしながら、分析といってもどこまで分析できるかというのは分かりませんけれども、また新たな提案がどれぐらいできるのか、できないのかということも踏まえて、一旦、やはり改めて検討してみたいというのがこのワーキンググループの趣旨だということで御理解いただければと思います。

【西尾主査】  倉田委員のおっしゃることは非常に重要な観点だと思いますけれども、消費税の問題も含めて緊急の事態であるという認識の下で、ワーキンググループを立ち上げ、どのような方向性を打ち出すことが可能かということも含めて議論をしていただくことが大切だと思います。
 ただし、倉田委員がおっしゃったことで、この委員会から何名かの方々がワーキンググループの審議に関わるような体制を考えていただくことについては、主査としても是非お願いをいたします。
 ほかに御意見ございますか。
 それでは、ワーキンググループを設置し、検討事項の審議を進めていただくということについては、御承認頂いたということにしたいと思います。
 本日の審議事項は以上でございます。次回は、次期SINET及びアカデミッククラウドの展開に関する審議まとめのたたき台を事務局よりお示しいただき、審議を深めてまいりたいと思います。
 最後に事務局より連絡事項等があればお願いしたいのですけれども、私の方から1点、机上に日本学術会議が2月26日にシンポジウムを開催する予定であり、この委員会でも度々話題になっておりますMOOCsの課題につきまして様々な観点から議論をいたしますので、是非御参加頂ければありがたく思います。どうかよろしくお願いいたします。
 それでは、長澤室長お願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  それでは、冒頭、SINETの予算については御説明させていただきましたけれども、予算案に関する資料を配付させていただいておりますので、適宜持ち帰っていただいてごらんいただければと思います。
 その中で1点だけ御紹介させていただきたいのですけれども、高等教育局の主要事項という、こういったものがありますけれども、この中で25ページに大学教育再生加速プログラムというものがございます。これが新たに予算化されたのですけれども、美馬先生が大学分科会でアクティブラーニングの予算がないではないかということを御発言していただいた関係もありまして、と思っているんですけれども、明確にテーマとしてアクティブラーニングに対する支援というスキームが新たにできておりますので、こういうことがあるということを御紹介させていただきたいと思っております。
 あと、本日の議事録につきましては、各委員に御確認の上、公開させていただきます。
 次回は3月7日金曜日、時間は10時からで、場所も同じくこの3F2特別会議室でございます。今後の会議日程につきましては資料5のとおりでございますので、確保していただければ幸いでございます。

【西尾主査】  本日は本当にお忙しいところ、この委員会に御参加頂きましてまことにありがとうございました。次回は3月7日でございます。是非とも御参加頂きますようにお願いをいたします。

【喜連川委員】  先ほど、西尾先生から御紹介がありました学術会議ですけれども、今朝、電子メールが来まして、スタンフォードのグラデュエートスクール・オブ・エデュケーションからMOOCsについてお話を頂きます。是非お楽しみにしていただければ有り難いと思います。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 これにて閉会とさせていただきます。

── 了 ──

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