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第7期研究費部会(第12回) 議事録

1.日時

平成26年7月16日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省15F特別会議室(東京都千代田区霞が関3丁目2番2号)

3.議題

  1. 科学研究費助成事業(科研費)など研究費の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

佐藤部会長,奥野委員,甲斐委員,北岡(伸)委員,髙橋委員,濵口委員,平野委員,大沢委員,北岡(良)委員,金田委員,小安委員,谷口委員,鍋倉委員,上田委員,勝木日本学術振興会学術システム研究センター副所長,村松日本学術振興会学術システム研究センター副所長,山本日本学術振興会学術システム研究センター科研費ワーキンググループ主査

文部科学省

小松研究振興局長,山脇審議官(研究振興局担当),磯谷審議官(研究開発局担当),安藤振興企画課長,合田学術研究助成課長,前澤学術研究助成課企画室長,他関係官

5.議事録

【佐藤部会長】
 皆様,おはようございます。時間となりましたので,第12回の研究費部会を始めたいと思います。
 本日は当部会としてのまとめの段階になっておりますので,科研費改革の基本的な方向性のまとめに向けて議論を行いたいと思います。
 まず,事務局からまとめていただきました第7期の研究費部会における審議の状況について,素案について御説明を頂きまして,その後,この素案につきまして,この場で審議,議論を行いたいと思っております。

【合田学術研究助成課長】
 それでは,資料1にお目通しいただければと思います。前回,これまでの審議の状況について,整理の素案ということでかなり大きな粗々の構造をお示しさせていただき,御議論を頂いたところでございます。今回,部会長の御指示によりまして,素案を整理させていただきましたので,御説明させていただきます。
 資料1でございますけれども,1ページ目の「はじめに」の一つ目にございますように,これは平野委員におまとめを頂きました学術分科会の中間報告におきましても,「デュアルサポートシステム」の再構築が必要であるという御提案を頂いたところでございます。
 1ページの二つ目に「学術研究とは」という文章がございますが,学術研究の意味について中間報告でも言及されており,それに言及した上で,「本部会では,学術研究が同時に大学院教育等を通じて『人』を育てているということの重要性を看過してはならない」という重要な御指摘について記載しております。
 1ページ目の一番下の丸でございますけれども,国立大学改革などの推進によりまして,研究拠点の形成や大学院教育の充実に取り組むこと,それから,「今後検討が進められる政府全体の研究資金制度の改革においては,科研費以外の競争的資金についても,学術研究の多様性と研究を通じた「人」の育成の簡単に留意することが強く求められている」という状況でございます。
 他方,デュアルサポートシステムの基盤的経費,科研費,科研費以外の競争的資金という三つのレイヤーの中で,科研費につきましては,2ページ目にありますように,「研究者の間で最も信頼されているが故に,その研究成果の水準は広い分野にわたって高く,我が国の研究水準の重要な基盤を形成しているということは論を俟(ま)たない」という御議論を頂いているところでございます。
 そのパラグラフの最後の行ですが,学術研究の特性は,個人の独創的な発想に由来するが故の多様性にあり,それら全てが「国力の源」であるという御議論でございます。その上で,このような学術研究を支える科研費は競争的資金の中でも最も重要な存在であり,科研費予算を削減し,他の科学技術振興費に付け替えてはどうかとの議論は,公財政投資としては非効率で,かえって我が国の科学技術の基盤を弱体化させるという御議論を賜ったところでございます。
 したがいまして,3ページの上から2行目にありますように,科研費はその充実が求められるところではありますけれども,他方,国の財政支出が拡大する中で,科研費の成果に対する国民の期待は大きいということもまた事実でございます。その期待に対しては,既知の「出口」に向けた技術改良といったレベルではなくて,研究者の創造性や知的創造力を最大限発揮して,これまでの慣習や常識では思いもつかないアイデアにより出口のないところに新たな出口を創出したり,新次元の出口を示唆する入口を拓(ひら)いたりすることで,人類の知を担う国の一つとして役割を果たすことがますます重要になっており,そういう形で国民の期待に応えてこそ,我が国社会,世界,そして学術研究の間の信頼と支援の好循環が確立できるという御議論を頂いたところでございます。
 平野委員におまとめいただきました学術分科会の「中間報告」,あるいは「科学技術イノベーション総合戦略2014」や「日本再興戦略2014」におきましても科研費改革が言及されている方法でございます。
 4ページの上から二つ目の丸にありますように,このような観点から,科研費改革の基本的な考えと方向性を本部会でお取りまとめいただくということでこのレポートの趣旨があるわけでございますが,一番下の丸にありますように,もとより科研費につきましては,JSPSの学術システム研究センターの主任研究員や専門研究員として,あるいは年間6,000人の審査委員として,研究者コミュニティの先生方が主体的かつ積極的に参画することによって成立しているというものでございます。文科省,JSPS,それから大学関係者,学術界が連携して議論を重ねて,28年度からスタートする第5期の科学技術基本計画中において科研費制度を改革するという御議論の大きな前提をこれまでまとめさせていただいたところでございます。
 5ページでございますけれども,1ポツといたしまして,成熟社会における学術研究という御議論を賜ったところでございます。5ページの一つ目の丸と二つ目の丸は中間報告のおさらいでございまして,一つ目は学術研究の役割,それから二つ目は挑戦性,総合性,融合性,国際性という学術研究の現代的な意義,あるいは現代的に要請されているポイントについて言及しているものでございます。
 その中間報告の議論の背景には,6ページ目の我が国の学術研究の現状にありますように,学術研究の成果が決して一つの指標で把握できるものではないことはもちろんでございますけれども,例えば「サイエンスマップ2008」を見ると,物理学,化学,材料科学,免疫学,生物学,生化学といった我が国の強い分野があり,この持続的な発展をどのように確保するのか,あるいは他国に比べて存在感が低い学際的・分野融合的領域の研究をどのように推進するのか,それから現在強い分野だけではなくて,これから強い分野になり得る学術研究の多様性をいかに高めていくのかといったところに課題があることが見て取れるところでございます。
 また,6ページ目の一番下の丸でございますけれども,若手研究者の育成という観点からは,「中間報告」でも,優秀な学生が博士課程を目指さなくなるという負の循環があるということ,あるいは7ページ目にありますように,多様な分野における研究者の養成に支障が出ているという現状についての課題が指摘されているところでございます。
 ただ,これは累次,この研究費部会でも御議論いただいたところでございますが,融合分野が必要だと言っても,決して計画的にそのようなものができるわけではございませんで,7ページ目の「新しいパラダイムの形成と学術研究」にありますように,学術研究の融合性はそれ自体を目的化するものではなく,学術が大きく発展するきっかけは,分野にこだわらず,新しい問題提起をした研究者個人の問題意識に興味を持つ研究者の交流であるという原点を忘れてはならないという御議論を賜ったところでございます。
 JSPSの勝木先生から御紹介いただいた,分子生物学のマックス・デルブリュック博士から始まった流れについて,7ページ以下に書かせていただいているところでございますが,このポイントを前提としながら今後の改革を考えたときに,「デュアルサポートシステム」の再構築と科研費という視点がどうしても必要であるという御議論を頂いているところでございます。
 例えば,8ページ目の上から二つ目の丸でございますけれども,我が国が先頭を競っている分野の持続的発展や次代のピークの苗床としての質の高い多様性の確保については,科研費だけではなくて,例えば大学院の充実が何より求められます。また,優秀な研究者が学際的・分野融合的領域に取り組むようにするためには,大学の教育研究組織の柔軟な再編成を可能とするマネジメントの確立,あるいは我が国の科研費以外の競争的資金の改革は欠かせないということでありまして,科研費についても,このような成熟社会における学術研究のあるべき姿を見据えながら議論を行う必要があるという御議論を賜っているところかと存じます。
 続いて9ページでございますが,これから科研費の改革について議論する上で,他方で科研費の「不易たるもの」というものもしっかり押さえなければならないという御議論も賜ったところでございます。一つ目の丸にありますように,大正7年から一世紀にわたる科研費の展開を踏まえた上で,「不易たるもの」を分析することが求められているということでございます。
 9ページでは,大正7年の科学研究費奨励金から始まって,一世紀にわたる発展というものをごく簡単にレビューさせていただいております。
 10ページ目の科研費制度の「不易たるもの」というところでございますが,科研費につきましては,科学技術・学術政策研究所の定点調査におきましても,「公正で透明性の高い審査」,「研究費の使いやすさ」,「研究費の基金化」といった項目について,極めて高く評価をされているところでございます。このような評価は,科研費制度や公正な審査の積み重ねによる,いわば財産でございまして,競争的資金として有効に機能している証左であろうかと思っております。いわば単純なばらまきでは決してないということかと存じます。
 それを前提にした上で,科研費の「不易たるもの」として堅持することが求められる視点として,御議論としては4点ほどだったのではないかと整理をさせていただいております。10ページ目でございますけれども,「第一は」とございまして,専門家による審査(ピアレビュー)でございます。この「第一は」という文章の最後でございますが,「提案が創造的で独自性のあるものであり,かつ新規なものであることを判断できる同じ分野で学術研究に切磋琢磨(せっさたくま)している専門家(ピア)が審査することが最も重要な方策であり,不可欠である」ということでございます。このピアというものをどう捉えるかというのは,いろいろ御意見があろうかと思いますけれども,この基本原則というのは重要なポイントではないかという御議論です。
 第二は,人文学,社会科学,自然科学及び新領域に至るあらゆる学問分野について,大学等の研究者に対して等しく開かれた唯一の競争的資金であるという点です。
 第三は,若手からミドル,シニアと研究者としての成長に応じ,他から与えられた目標ではなく,自らのアイデアと構想に基づいて継続的に研究を推進することができる唯一の競争的資金であるということです。
 第四は,当初の目的とは違った成果が生まれることが多く,むしろその予期せぬ結果の中から大きなブレークスルーが生まれる可能性が高いという学術研究の特性を踏まえて,基金化や繰越手続の大幅な簡素化など研究費としての使いやすさの改善を不断に図っているということであります。この4点は,科研費の「不易たるもの」として整理する必要があるのではないかという御議論を賜っていると考えております。
 その上で,3の科研費の不易と流行の「流行」を考察する上で検討すべき要素ということで議論を整理してございます。一つ目は,11ページ目の一番下の丸の「科研費をめぐる国際的な動向」でございます。詳しい御紹介は省かせていただきますが,別添3のとおり,諸外国のファンディングエージェンシーについていろいろ調べてまいりますと,1.で示した成熟社会における学術研究をどう支えるかという共通の課題に直面しているということがよく分かるところでございます。
 12ページに「例えば,アメリカにおいては」というところがございますけれども,これは谷口先生からも何度か御紹介を頂きましたナショナルアカデミーの紀要に掲載された論文の中で,NIH,ライフ系の研究費の配分についても相当深刻な課題に直面しているという状況であります。一方で,前回の御議論にもございましたように,NIHの行っているスタディ・セクション方式というのは,新しい研究を引き出すという観点からかなり工夫が凝らされているというのも事実でございます。
 12ページの一番下の欧州連合における「Horizon2020」の取組,あるいは13ページの一つ目の丸にありますように,アジアでは中国や韓国の隆盛に,簡単に言及させていただいた上で,13ページの一番下の丸でございますけれども,「学術政策や研究費の審査や配分をめぐっては,我が国だけでなく世界各国の政府や大学が共通した課題に直面している」。これが2012年から世界各国のファンディングエージェンシーの長によるフォーラム「グローバル・リサーチ・カウンシル」が設立されたゆえんの一つであろうかというふうに考えられるところでございます。
 14ページにございますように,2015年5月には東京で「グローバル・リサーチ・カウンシル」が開かれるということでございますので,本部会の御議論などもマージしながら,グローバルな視点での御議論というものが期待をされるところでございます。
 それから,科研費の改革を考える上で踏まえるべき要素の第二でございますけれども,科研費の在り方について,関係者からの様々な意見や指摘でございます。これにつきましては,本部会においてもヒアリングや,今日もお越しいただいておりますが,学術システム研究センターの先生方,あるいは中教審の大学分科会からの御参加などを得ながら,様々な御議論を広くお伺いしていただいたところでございます。
 御指摘については,幾つかの類型に整理できるのではないかと思っておりまして,14ページ目の一番下の丸でございますけれども,まず,審査の質の向上など主として審査の改善に関するものでございます。それについては,ローマ数字1にございますように,現在の二段階審査が審査委員の相互のコミュニケーションを図る仕組みにはなっておらず,例えば一定規模以上の研究計画の採択については,専門分野が異なる審査委員同士がその目的,手段,期待される成果などの適切性等に時間をかけて議論をする機会を確保し,既存の細目を土台としながら,それを超える創造的な研究が評価されるような仕組みが必要ではないかという御議論を頂いたところでございます。
 それから,ローマ数字2でございますけれども,現在においても非常に適切で有益な審査コメントを付した審査委員の先生を表彰するといったような取組を行っているところでございますが,ピアである研究者の自覚を高め,審査委員を育成する場と過程を形成するという必要があるのではないかという御意見を頂いております。その際,平野先生が名古屋大学で取り組まれたように,大学や研究機関が自らに所属する研究者の審査委員としての貢献度を積極的に評価するということを奨励してはどうかという御議論を頂いたところでございます。
 ローマ数字3にありますように,この審査コメントにつきましては,現在,応募者に開示されておりませんけれども,有益なコメントが多く,コミュニケーションの重要な手段として活用すべきではないかという御議論を頂いたところであります。
 ただし,ローマ数字4にありますように,これらの改革を進めるに当たりましては,平成8年から比べましても大幅に増加した応募件数の増加が大きな桎梏(しっこく)になってございまして,また,基盤研究のA,B,Cと小規模になるほど審査コストが大きくなっているという現状がございます。プレスクリーニングの導入や,審査コストの再配分などの工夫が必要ではないかという御指摘を頂いたところでございます。
 次に科研費を活用する観点に立った御指摘でございますが,ローマ数字1にございますように,種目の重複制限につきましては,不採択による研究中断を避けるため,より小規模の種目に応募する傾向を生んでいるのではないか,あるいはこれまでの研究実績を基盤にした新しい分野への発展的な移行を困難にしているのではないかという御指摘を若い研究者の方々からも含めていただいているところでございます。
 また,大規模科研費は分野を問わず学理の探究という学術研究の加速に必要であり,次世代を担う研究者の発展と成長の促進の観点から,審査や評価の改善を図る必要があるのではないかという御指摘を頂いております。また,ローマ数字1,ローマ数字2共に科研費内部だけではなくて,競争的資金全体の観点で捉える必要があるのではないかという御指摘も頂いたところでございます。
 ローマ数字3でございますけれども,科研費は年齢別に見ましても,男女別に見ましても,採択率に大きな差はなく,多様性に配慮したような仕組みになっているわけでございます。他方で研究主体の多様性については常に留意が必要ではないかという御指摘を頂いております。
 それから,ローマ数字4でございますけれども,国際共同研究の推進のほか,例えば,若手研究者が国際的な研究者コミュニティの中で長期にわたる確かなネットワークを形成したり,海外から最優秀の大学院生やポスドクを増加させたりする仕組みや取組が必要ではないかという御議論を頂いたところでございます。
 ローマ数字5でございますけれども,これについては特に人文学,社会科学においても同様に重要ではないかという御議論を頂いているところでございます。
 16ページの真ん中でございますが,学術システム研究センターにおける検討と取組というところでございます。前回,勝木先生から学術システム研究センターでの御検討,御議論を御紹介いただき,御議論を頂いたところでございますけれども,16ページの真ん中の丸にございますように,分野を超えて,学術研究の在り方について,専門的で闊達(かったつ)な議論を行う我が国では希有(けう)な極めて重要な役割を担っているという現状について言及してございます。
 この学術システム研究センターには,昨年10月に当審議会の科学研究費補助金審査部会から審査規模分野の分類表である「系・分野・分科・細目表」について,その在り方の見直しを依頼したところでございます。
 17ページの一つ目の丸でございますが,学術システム研究センターは,それまで行ってきた科研費の採択審査に関する国際的な動向に関する調査やセンター内での議論を踏まえて,分科細目表の見直しにとどまらず,多様な学術研究とともに,新しい学術領域の確立を推進するために学問の特性に応じた審査方法の見直しを行い,特に,書面審査と合議審査との関係を含め,学術の振興という観点から適切な審査方法の在り方とともに,学術の多様性を確保するために適切な審査区分の設定について検討するという観点で御検討,御議論を重ねていただいているところでございます。
 前回御報告がございましたように,平成26年度より新たに加えられた「特設分野研究」におきましては,細目の枠を超えた学術研究に対応した審査方法として,書面審査と合議審査を同一の審査委員が実施する新しい方式の二段階合議方式を導入する,あるいは基盤研究B,基盤研究Cといったような種目を超えて審査を行う,それから採択課目について特に必要と判断されるものについては,審査結果の所見を開示するといった試行的な取組がなされているところでございまして,その中でも審査部会の主査をお務めの甲斐先生からも御報告が前回あったところでございます。
 その結果,異なる分野を専門とする審査委員が互いの視点を共有しながらより丁寧な審査を行うことによって,新たな学術分野の芽を見いだしているという成果が出ております。他方で,審査委員の負担の軽減,審査委員の育成と確保,それから前回上田先生からも御指摘がありましたように,キーワードデータベース等による申請書内容と審査委員の専門性のマッチング手法の検討といった克服すべき問題点も明らかになっているところでございまして,引き続き学術システム研究センターの御議論,御検討も本部会としてしっかり踏まえて議論を進めていく必要があるという御意見を賜っているところでございます。
 18ページからでは科研費改革の基本的な方向性を整理しているところでございます。あるべき学術研究の姿というところでございますが,これまで本部会におきましては,いわば研究費を配るという観点だけではなくて,それを受けて実際に研究をしていく先生方,特にその先生方が研究者としてのライフステージに応じてどういうポイントで支援が必要かという議論をしっかりしていく必要があるのではないかという御議論を頂いたところでございます。このような観点から,これまでの御議論を基に非常にラフに,どちらかというと自然科学系の先生方をイメージしながら研究者のライフステージに応じた研究費政策,あるいはデュアルサポートシステムの再構築というものを整理させていただいたのが18ページ,19ページということになろうかと思っております。
 18ページの二つ目の丸でございますが,一つ目のポツは,学士課程,修士課程から大学院の博士課程に進学する際,大学院の博士課程の柔軟な構造化と優秀な博士課程に対する学生の支援が重要であるという観点でございます。
 それから,二つ目のポツでございますが,大学院の博士課程において,特定の専門分野の学問的探究を深めるとともに,それを俯瞰(ふかん)できる総合的な視野を育成する必要があるという観点です。これは前々回,大学分科会の先生方にお越しいただいた際にあった議論かと存じます。
 その下のポツでございますが,博士号を取得してポスドクとして研究に従事すると,大学としてはシニア教授を年俸制や混合給与に移行することによって,優秀な若手研究者に対して基盤的経費等を財源とした安定した長期雇用ポストを提供する。それから,他大学で助教や準教授に就任する。その際も大学としては,限られた財源を卓越性や次代を担う若手研究者の確保・育成といった観点から支援をしていくという観点が必要ではないかということであります。
 18ページから19ページにかけて学問的な鍛練,あるいは国際的なコミュニティの中での長期にわたる経験を積みながら,研究者として,PIとして一定の自律性の基に活動するということを書かせていただいております。もとよりPIとしてどういうふうにその研究者を育んでいくかというのは大変重要なポイントだと思いますので,是非その点については御指摘を頂ければと思っております。
 その下でございますけれども,大型設備や専門性の高いサポーティングスタッフは,学内で学問的な必要性に応じて公正にアクセスできるように共同利用体制が確立している。それから,大学を超える共同研究拠点は,若手研究者を含む国内外の優秀な研究者のネットワーク形成にも寄与するという観点です。
 それから,その下でございますけれども,科研費を活用してディシプリンベーストな研究を重ねる一方で,海外での研究経験も含めて,国内外の優秀な研究者とのネットワークの中で異なる分野との対話などから新たな研究の展開の端緒をつかみ,既存の細目を土台としながら,それを超える創造的な研究を科研費により推進するという観点です。
 それから同時に,科研費等の審査委員として審査の過程に参画すると,分野の異なる審査委員との合議というものが研究者としての視野を広げ,新たな研究構想を刺激するという観点。また同時に,大学院教育や研究室での指導を通して次代を担う研究者養成を行い,「人」の育成による知の継承と発展を推進するという観点です。
 それから,更にシニアになってまいりますと,選考や研究室のまとめ役として全体を見渡しながら,大型科研費による学理の探究の加速,あるいは科研費を活用した新しい学術研究分野の醸成の推進などをしていく。それから,その下にありますように,研究課題や分野によっては科研費以外の競争的資金を活用した実用化に向けた研究開発の発展といったようなことが考えられるのではないかということで,これまでの御議論を踏まえ整理をさせていただいたところでございます。
 20ページですが,こういったキャリアパスは,大学や専門分野によっても異なるものでございますけれども,他方で研究者コミュニティがこのようなイメージを共有することは,優秀で学問研究に対する志を持つ若者にとってみれば,独創的なアイデアと,それを実現する構想があれば,研究者としてのキャリアパスは透明で公正なプロセスの中で拓(ひら)けるとの認識につながるのではないかという御議論を賜っているところでございます。
 そのような観点から,デュアルサポートシステムの三つのポイント,基盤的経費,科研費以外の競争的資金,科研費について改革の方向性を,以下,御議論を踏まえて整理をさせていただいております。
 まず,大学改革に求められることでございます。この構成につきましては,前回甲斐先生から本部会は科研費だけを議論する場ではないという御指摘を踏まえたものでございますけれども,大学改革は極めて重要であるということでございまして,21ページにありますように,大学が自らのビジョンや戦略に基づいてその役割を明確にした上で,大学としての強い分野やそれを基盤とした融合分野,次の強みに結び付く水準の高い学術研究の多様性を推進するということが求められるということでございます。例えば,今後の人口動態,教員採用需要等を踏まえた教員養成学部の量的縮小を図るなど教育研究組織の再編成を行い,これらの資源を全学的な観点から大学院教育の充実や若手研究者支援へ振り向けるという決断と実行が必要ではないか。このような取組をしてこそ,基盤的経費の確保・充実を図ることができるという観点で御議論を頂いております。
 それから,21ページでございますが,科研費以外の競争的資金について,経済産業省の産業構造審議会においても,「法人化以降,運営費交付金が減額され競争的資金が増額されてきたが,近年,大学等において,競争的資金の申請等に係る手間の増大,選択と集中を進めてきたために特定領域に研究資金が集中し,ともすると目先の研究資金が獲得しやすい研究を志向する等,研究活動が制約されているとの見方」や,「基礎研究分野における研究内容の多様性や独創性は,革新的技術シーズの萌芽を生み出す土壌として非常に重要で優れた技術シーズになるかどうかは研究段階では分かりにくい場合もあることから,独自性のある研究を継続していくことが重要であるにもかわらず,研究資金が多い分野に研究者が集まり,短期的な成果が出る研究のみに携わる流れが生じ,基礎研究の多様性が失われているとの指摘」が紹介されているところでございます。
 22ページの一つ目の丸でございますが,イノベーションの源泉となる学術研究を担う大学の機能不全を招くことは,ひいては我が国のイノベーションの活力そのものを阻害しかねないということでありまして,競争的資金制度全体を俯瞰(ふかん)し,バランスのとれた設計が求められるところでございます。その際,大学分科会からお越しいただいた有信東大監事から御指摘を頂いたように,成熟社会においては基礎研究,応用研究,開発研究,実用化といった単純なリニアモデルが必ずしも妥当しないということを踏まえて,基盤的経費から競争的資金全体を見渡した上で研究費として成果を最大化する適正な規模とすることが求められているという視点が重要ではないかという御議論を賜っております。
 具体的には,この競争的資金制度,個々のプログラムの設計とプログラムに対する評価というものが重要ではないか,その上での相互連携が重要ではないかという視点や,厳格で公正なサイエンス・メリットを前提とした審査・配分というものが重要ではないか,競争的資金で雇用されるポスドクの研究者や研究支援者としての今後のキャリアパスの確保についての大学との対話や施策の展開が必要ではないかといった視点で御議論いただいているところでございます。
 22ページの科研費改革に求められるものでございますけれども,これはまさにこれまで御議論を頂いてきたものを整理させていただいたものでございます。まず,その前提といたしまして,23ページの一つ目の丸でございますけれども,先ほど御紹介をさせていただいた科研費に関する指摘や意見の中には,容易に両立しないものもあることに留意が必要である。科研費の配分自体も採択率や充足率があらゆる種目で向上するのが理想ではあるが,成熟社会における学術研究の基盤を支える科研費をより効果的に配分するという観点から,これらの要素を重点化したりバランスを考慮したりするという視点も具体的な改革方策の検討に当たっては必要であるという御議論を整理させていただいております。
 その上で,23ページの二つ目の丸でございますけれども,改革の方向性として,第一は,科研費の基本的な構造の改革でございます。「1.多様で水準の高い学術研究」と「2.そのような質の高い多様性を基盤とした分野・細目にとらわれない創造的な研究の双方の推進の両立」という観点から,重要なポイントとしては,現在の基盤研究Cのような研究費においては,分野・細目をベースとした公正で簡素な審査を行いつつ,それとは別に細目を超えた創造的な研究を研究者から引き出すための丁寧な審査を行う,例えば現行の基盤研究Aのような規模の種目を設けるといったことと,そのための条件整備という観点を御指摘いただいているところでございます。
 それから,23ページの三つ目の丸でございますが,「第二は」ということで,優秀な研究者が所属大学や性別など属性に関わりなく,自らのアイデアや構想に基づいて継続的に学術研究を推進できるようにするという観点からの見直しでございます。科研費と科研費以外の競争的資金との関係を踏まえますと,科研費における重複制限の在り方の見直し,早期終了や最終年度前年度応募の活用,出産や育児などに配慮した支援,海外大学に所属する研究者による帰国後の予約採択などによって,優秀な研究者がその進展を踏まえながら継続的に研究を進めることができるようにする必要があるのではないかという観点を御議論いただいているところでございます。
 それから,三つ目でございますけれども,「第三は」ということで,我が国が強い学問分野を中心に,国際共同研究の推進や優秀な若手研究者の相互派遣などによる国際的な研究者コミュニティにおける長期にわたる確かなネットワーク形成の観点からの見直しということでございまして,例えば,我が国の強い分野が表れております大規模科研費のグローバル化を含む審査や評価の改善,これらの研究費において,国際共同研究のためのユニットを設けて海外に研究者を派遣したり,海外研究者を招聘(しょうへい)したりすることなどによって我が国の学術界が国際社会において存在感を維持・向上することが必要ではないかという観点でございます。なお,ネットワークのハブとしての海外の日本人研究者をどのように支援,活用するかについては,引き続き議論が必要ではないかというふうに御議論賜っております。
 なお,24ページの一番下の丸でございますけれども,第一の分野融合をどのように促進するか,第三の国際共同研究などの推進につきまして,特に本部会におきましても,人文学や社会科学についての御議論があったところでございます。人文学や社会科学につきましても,自然科学と同様にグローバリゼーションや科学技術の革新が新しい正義の思想や公平な社会的,法的仕組みを探究させ,人間の認知の構造の探究を盛んにさせているということにも留意が必要であるという御議論を賜ったところでございます。
 続いて25ページでございますけれども,「第四は」ということでございまして,23年度から導入されたいわゆる基金につきましては,第一で指摘した丁寧な審査の導入により必要となるアワードイヤーの実現,あるいは第三の海外研究者との国際共同研究等の推進において,研究費の成果を最大化するという観点からその充実を図ることが必要ではないかとの御意見を賜っております。
 それから,第五は,科研費の研究成果の一層の可視化ということでございまして,これはまた次回御報告をさせていただきますけれども,「戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会」という私ども研究振興局で設けた検討会の議論の報告などを踏まえながら,科研費の成果等を含むデータベースの構築等について取り組むことが求められているという御議論を賜ったところでございます。
 以上,資料1に基づいて御説明させていだきました。本素案は,部会長の御指示に基づきまして,これまでの議論のロジックを発展的に整理させていただいたものでございます。大きなロジック,あるいは個別の言及,政策的な方向性について御議論を賜りまして,最終的には,より立体的なレポートになるように編集したいと思っております。
 本日は,このロジックや,個別の要素,特に改革の方向性や具体的な改善方策について,御議論,御審議を賜れば大変有り難いと思っております。
 なお,資料に関して1点だけ,最後にお付けをいたしました参考資料2「科学技術・学術審議会における委員会の設置について」でございますが,これは本審議会に新たに「総合政策特別委員会」というものを設けまして,2ページ目にあるような先生方に御議論を賜るということにしたというものでございます。当部会からも名古屋大学の濵口総長などにお加わりいただいておりますけれども,今後,第5期の科学技術基本計画を御議論いただく一つのプラットフォームとしてこのような部会を設け,最後のページにあるようなスケジュールで議論を進めていくということになってございます。
 その際,学術研究の基本的な考え方については,平野先生におまとめいただきました「中間報告」が,それから科研費をはじめ研究費政策全体については,本部会での御議論がしっかり総合政策特別委員会の中で位置付けられ,前提として議論が前へ進んでいきながら,第5期の科学技術基本計画の議論が前進をしていくということにしていきたいと思っておりますので,御紹介を申し上げます。以上でございます。

【佐藤部会長】
 ありがとうございました。これまでの科研費の基本的な考え方,ロジック,その方向性について議論を進めていきたいと思います。お気づきになった点について,御自由に委員の皆様方から意見を発信していただければと思いますが,いかがでしょうか。

【金田委員】
 今の御説明の中でも触れていただいておりましたが,全体としてこのペーパーが自然科学系の研究分野を主たるターゲットとして書かれています。これはやむを得ないことだと思っておりますし,そのことについて何の異論もないのですが,少し人文学や社会科学系に御配慮いただけたらと思う点が一,二ございます。例えば,6ページの「我が国の学術研究の現状」で,「サイエンスマップ2008」を引用して書かれていますが,全体としては,人文学,社会科学系のものを含めたペーパーですので,人文学などについて触れておいていただけると有り難いと思います。
 もちろん,触れるときにどういう形で触れるかという非常にはっきりした典拠はないわけですので,非常に難しいことは承知しているのですが,少なくとも,例えば日本の人文学や社会科学が,英語が席巻(せっけん)している世界のレベルと違って,日本語を軸とした日本文化に基礎を置いているというところは,今後ずっと基本的な問題としてあり続けると思いますので,そのことに触れていただくのも一つの手だと思います。ただ,この点については御議論を頂かないといけないと思います。
 もう一つは,同じ文脈の18ページですが,これも一例としてキャリアパスを想定して書いていますし,20ページに専門分野や大学によっても違うということも書いてあるのですが,18ページの二つ目の丸の「そのことを敢(あ)えて研究者としてのキャリアパスを一例としてイメージすると」とあります。その部分を単に研究者ではなくて,「自然科学研究者として」と限定していただけるとより明確になると思います。

【佐藤部会長】
 ありがとうございます。人文社会研究者とのキャリアパスも本来はあるべきものなのですね。

【金田委員】
 ありますが,それを一律にしたら潰してしまうという点もあります。

【佐藤部会長】
 多様性があるのですね。

【金田委員】
 はい,多様性があります。多様性のことは触れていただいているのですが,画一化することは非常にまずいと思います。

【佐藤部会長】
 御検討をお願いしたいと思います。

【北岡(良)委員】
 「はじめに」のところで,上から7行目に「学術の役割と現代的要請(挑戦性,総合性,融合性,国際性)」と書かれているのですが,学術の科研費の基本とは,個人の自由な発想に基づく学術研究で深く広くということがエッセンスだと思います。ここでは総合性,融合性,国際性,広くという観点は捉えられていますが,学術の中で社会的な課題,あるいは深く追求することによって生まれる創造や,個人の深く進行する研究としての卓越性,あるいは社会的な課題に挑戦する志が非常に重要で,やはり卓越性という言葉がこの中に入っていなければならないと思います。卓越性はいつの時代も常にあるわけで,現代的要請というよりはずっと求められている。研究者としては一人一人が責任を持って社会の中の学術としてそれに取り組んでいくという意味では,卓越性が非常に重要ではないかと思います。
 それと関連して,18ページの「あるべき学術研究の姿」の一番下のポツの最初で,「大学は,限られた財源を卓越性や次代を担う若手研究者云々(うんぬん)」とあります。もちろん大学も卓越性を求められているのですが,科研費が最も求められていることは卓越性,それと幅広い総合性や融合性,挑戦――挑戦は卓越性も絡んでいると思いますが,そういう観点も必要ではないかと思います。
 また,21ページの上から3行目に,「大学として強い分野やそれを基盤とした融合分野,次の強みに結び付く水準の高い学術研究の多様性を推進する」とあります。当然大学改革の一丁目一番地で,私ども大学でも努力しているのですが,その次に「例えば,今後の人口動態・教員採用需要等を踏まえた教員養成学部の量的縮小を図るなどの教育研究組織の再編」とあります。これは必ずしも教員養成学部だけではなくて,各大学にも言えることですが,特にここに書かれた意図を教えていただけますでしょうか。

【合田学術研究助成課長】
 今,国立大学改革でかなり真剣に学内のリソースをどう再配分していくのか議論されております。その中で,例えば長崎大学の熱帯医学や秋田大学の国際資源学部をどのようにピークとして育てていくかというときに,減少する学齢人口に応じて教育学部の規模を縮小して,そのリソースを活用して,盛り立てていくという取組をそれぞれの大学の学長や先生にしていただいております。そのような取組であれば,社会的にも応援しようという機運が高まっておりますし,そのような姿勢を示していくことが大事だという国立大学改革の大きな流れに触れさせていただいたという次第でございます。

【北岡(良)委員】
 分かりました。ありがとうございます。

【村松JSPS学術システム研究センター副所長】
 先ほど金田先生の御発言にあったことでありますけれども,全体として今日の報告内容が,人文・社会科学というものの思想が入りにくい形になっているような気がします。私も過去の議論に何回か出席させていただいて納得しておりますが,人社が持っている国際発信というから見て自然科学と異なることはと,書けるところは少しでも書いていただく方が良い。それができていないことは,際立っていると思います。例えばドイツでもカント,ヘーゲルが今いないといドイツのファンディングエージェンシーが非常に悩んでいます。しかし,それでも英語でやっていこうというふうに決断をして種々の事業を開始しているようですが,日本も,カント,ヘーゲルはいたかどうか知りませんが,日本の独特のやや後れて発達した近代化の国が持った蓄積と経験が何か貢献できる情報を作り出しているという面もあります。先ほど6ページで御指摘になった場所に1行でも2行でも人社の現況について,成果の報告の形態や評価の仕方について違うものがあるのかもしれないが何かあるということを示唆するような文章が入らないでしょうか。

【佐藤部会長】
 具体的におっしゃっていただけることがありますか。

【村松JSPS学術システム研究センター副所長】
 すぐにこのレベルで代案を書くように言われると少し無理ですが,人文文学・社会科学も両者同じではありませんが,成果を上げるまでに掛ける時間が随分長いということや,著作の成果の公表の形態が自然科学の方のメーンとするのが雑誌であるのと比較すると非常に違うと思います。人文は,著作,要するに書物ですね。そういうことと,諸外国間のネットワークの作り方にも非常に,違うものがある。社会科学では経済学がやはり先端を行っておられますが,他の人文よりも自然科学に類似した何かがあります。そのほかでは,全体として,長期に評価せざるを得ないという思想が入ってもよいと思いました。

【濵口委員】
 科研費はピアレビューが非常に大事であるということを改めてしっかり書き込んでいただいたことはすばらしいと思いますが,29ページの別添3を見ると,日本の科研費の構造的な問題がはっきり分かります。金額の割に申請件数が多いと思います。イギリスの50倍あります。
 これをどう考えるのか。一方で重複制限をやっていますが,重複制限をやっていても10万件ある。審査委員が6,000人いても,すさまじい数を入り口で処理しなければならない。したがって,審査の体制が米国のスタディ・セクションのようにきっちりした形にならないという問題をどう考えるのか。単に重複制限をどうするかという問題だけではなく,数がこれほど多い原因は何かということをもう少ししっかり分析する必要があるのではないかと思います。
 もう一つは,今,デュアルサポートという問題が出てきて,観点はしっかりしてきているとは思いますが,科研費を取れなくなると,特に大型の研究をやっている方ほどいきなり研究費が全て止まってしまうというところで,皆さん,複数の挑戦をされるということと,少ない金額のところを安定して取るような思考がかなり出てくるような問題があります。これを,サイエンスコミュニティとしてどのようにもう少し構造的に補完していくかという工夫が必要だと思います。
 例えば,大型の研究の基盤Sや基盤Aにトライして落ちた場合,A評価の場合はある程度のサポートが出る,年間複数回挑戦できる,もう1回秋に挑戦できるというようなブランクをなくすような方法がないと件数が減らないし,ピアレビューの質が上げられないのではないかと思います。

【佐藤部会長】
 具体的な話も含めまして,ありがとうございました。

【甲斐委員】
 22,23ページの「科研費改革に求められるもの」ですが,濱口委員の御意見のように,科研費改革は大枠を研究費部会として言ったらよいのではないかと思います。大変よく書かれていて,大枠を言いつつ,細かいことにも触れられていて,とても具体的になっていると思います。しかし,ここに書いてあると結構縛られると思います。
 例えば,23ページの2番目の丸の中で,「促進の両立という観点から見直すことが求められる。」以降の文章は要らないのではないかと思います。それ以降はまた細かくなって,基盤Cのような研究は公正な審査を行いつつ,丁寧な審査を行って,例えば基盤Aのような規模の種目も設けるとあり,大規模に関しては細かく具体的に踏み込んでいると思います。これは,学振で今検討されていることに沿っていると思いますが,ここに書くと研究費部会として方向性を決めてしまうと思います。濱口委員がおっしゃるように,もっと全体を見据えた,俯瞰(ふかん)したような改革を行おうかというような議論が科研費全体において巻き起こってもよいと思いますが,詳細についてはここで方向性を規定してしまわない方がよいのではないかと思います。
 研究費部会,あるいは学振,あるいはほかのところで科研費の改革の方向性をもっと考えてくださいというようにしてはいかがでしょう。件数がすごく多過ぎることに対して,濱口委員がおっしゃるように,複数回にするとか,落ちた人を救うということも大変よいのですが,それと同時に,現状のまま複数回にすると,また件数が増えることにもなります。減らすためには大英断をしないといけないと思います。それが本当の大きな改革であり,例えば基盤Cをなくすような議論が巻き起こってもよいと思います。ここで,そのようなことも踏まえた科研費改革が必要だと言うだけで良いのではないかと思いますが,いかがでしょうか。

【佐藤部会長】
 今の意見もありますが,いかがでしょうか。

【小安委員】
 基本的には私もそれでよいと思いますが,ただ,その改革をやるときに,今,濱口先生がおっしゃったような,複数回のトライアルを可能にする等のいろいろなことをやろうとしたときに,今の単年度のシステムは非常に大きな足かせになりますの。25ページにアワードイヤーを実現するために基金化を更に進めようという趣旨がありますが,改革を進めるためには,この基金化を一緒にやることが重要だと思いますので,改革をやるということを述べると同時に制度の基金化というところにも踏み込むのがよいと思います。
 もう一つ,別のことになりますが,22ページで述べているように,科研費以外の競争的資金改革について,研究費部会で踏み込むことは非常によいことだと思います。特に,22ページの最初のポツが,すごく大事だと思っています。黒ポツで四つ挙げていただいているのですが,ここは競争的資金全体あるいは科振費全体のことに対して言及しているところですので,最後のポツのサイエンスマップや科研費の研究成果だけではなく,科学技術振興費全体の成果に関してきちんとしたマップを作るというところまで踏み込んで書いていただいた方がよいのではないかと思います。

【佐藤部会長】
 ありがとうございました。いろいろ意見が出ましたが,甲斐先生のおっしゃったこと,いわゆる広くまとめて,余り細かなことは書かないということもよい方向だと思いますが,欄外に,例えばこういうことも考えていると書いてあった方が,読む方としては何をやろうとしているのか見えてくると思います。

【甲斐委員】
 もしそうだとすれば,濱口委員の言われたことも一つの御意見ですが,ここでそれを十分に議論する時間がありません。どの例を挙げるかということになりますが現在書かれていることが,ここで具体的に議論されたかというと,そういうことではない。どこまで例として書くかということは,ここでもう1回議論しないといけないと思います。
 先ほど北岡委員の御発言が途中で止まってしまいましたが,わざわざ教員養成を縮小するという,この一言が入ると誘導になると思いますので,なくてよいと思います。大学に任せた方が,教育学部の再編を行うなど,いろいろな縮小の仕方があると思います。わざわざ教員養成と書かれると,そこを減らさないといけないというミスリードを起こさせると思います。そういう細かい具体例に踏み込むのであれば,それは全員の御意見が一致したことだけにした方が良いのではないでしょうか。
 先ほど発言した基盤Cに関しては,現在,学振が考えられていることに沿っていると思いますが,それを超えた大きな改革を促すようなことにはならなくなるというデメリットもあると思いますので,もう少し学振にも,それからほかの部会にも自由度を与えてあげた方がよいという趣旨です。

【佐藤部会長】
 ありがとうございました。

【髙橋委員】
 濱口先生がおっしゃったことについて,私も大賛成です。アメリカのスタディ・セクションなどのメリットが声高にここにアピールされていて,そのいいところだけを取ったらすごくよいのですが,私も学術システム研究センターの専門研究員をやっていて,今まで科研費の審査委員もたくさんやらせていただきました。ですから,じっくりと審査するという理念を具現化するために足かせとなっているものは何かというものを考えながら,これを読ませていただきました。
 具体例を申しますと,今の科研費が特別推進,基盤S,基盤A,基盤B,基盤C,若手S,若手A,若手Bと余りにも分かれ過ぎていて,その全部に審査委員を付けないといけないわけです。そうすると,全ての仕事量が上がる。問題をまとめると,おおむね科研費額が小さいものがたくさんある。しかし,そこにあるべき論がのせられると日本中がてんやわんやになると,それが現実のような気がします。
 起こっていることは何かといいますと,応募する人にとって,特推は,ウルトラ宝くじであるということです。やめて基盤Sになったら,やはり宝くじだったと。基盤Aにしようかと思ったら,これも宝くじになってしまったので,世界のリーディングサイエンティストが基盤Bに出す。このような玉突き状態になっているわけです。
 そうしますと,例えば研究費が足りない等で,科研費だけではなくて,ほかのいろいろなものに波及しているわけです。この前も勝木先生に審査部会で少しだけ申し上げましたが,少しラディカルな改革かもしれませんが,一律に同じようなところに出して土俵を同じにして,すばらしいものには大きな額にする。そうではないときには少額にする。もちろんそこには理屈付けというものが必要だとは思いますが,非常に国際的なリーディングサイエンティストが宝くじに負けてラボを畳むというようなことは絶対に避けなければならない。
 これだけの議論をしたのであれば,甲斐先生がおっしゃるように,そういう可能性も踏まえた提案書になればよいと思います。融合の基盤Bや基盤Cというのは確かに細か過ぎるような気がしまして,是非ともこういうところで一つのポテンシャルとして今後検討,あるいはもっとラディカルなアイデアが出てくるようなポテンシャルを残しておくということは非常に重要だと思います。

【佐藤部会長】
 ありがとうございました。いろいろ意見が出ていますが,少し細かく書き過ぎている点があるということです。髙橋先生もおっしゃっていたような,広いところをもっと強調すべきということでしょうか。

【勝木JSPS学術システム研究センター副所長】
 とても堅いことを申し上げるようですが,まず,頭を整理するために申し上げますと,学振の学術システム研究センターの立場は,科学研究費をどのように運営するか。その運営において,最も重要なことは審査委員の選び方であるという立場であり,現在ある種目に対して,特にその構造自体について触れるようなことはそもそも考えてこなかったことでございます。
 ただ,今回,審査部会から大括り化等の細目の見直しについて考えてほしいということでございましたので,種目別の審査細目や審査方式についても議論すべきだということで,主任研究員会議でいろいろ議論して参りました。細目数を半減するなどという,数合わせをやっただけでは,諮問されている学術動向を反映した改善になるかどうかが難しい。だから基本的に審査方式も変える。あるいはいろいろなことを合理化していくということをやらないといけないという立場から議論をしております。
 そのときに最大に問題になることは,濱口先生が御指摘の応募者が多過ぎるということです。現実を申しますと,応募者が8万から10万に上ったということは,種目がどうということではなくて,むしろ大学に研究費予算がなくなって,その研究費予算で,今まではデュアルサポートの片方で競争的資金の場に出る力を蓄える人たちをきちんと育ててくれていたわけです。ところが,そのお金がなくなりますと,今度はどこかからそれを持ってこなければいけないということになると,間接経費まで付いているものですから,髙橋先生が宝くじとおっしゃいましたが,とにかく申請するということを大学が奨励するようになった。私の分析はそういうことになります。
 そうなりますと,審査の構造が種目とは別に,今,とても大変な状態になっているということなので,濱口先生の御指摘のようなことは,具体的というよりは,むしろ状況の変化,根本的な変化をどうやってもとに戻すか。それはデュアルサポートが一つですが,研究者のマインドがこのようになってしまった後に,デュアルサポートだけで本当に行けるかなという気は少しいたします。
 だから,そういう意味で書いていただくことは,髙橋先生が過激だとおっしゃいましたが,私はもっと過激に考えておりますが,ここでは申し上げません。つまり,そういう指摘があって,我々は具体的な役割を持って行動することができる状況でございます。我々は,多分,それを越えて独自の判断で現場としては実行してはいけないと考えております。もしそれが必要であれば,もっとそれを動かせるようなワーキンググループ等を研究費部会に作っていただく,あるいは審査部会に作っていただいて,そこで制度的なことはきっちり議論して,具体的なことはこちらで引き受けるという構造をとらないと,我々が現場からそういうことだけを言っていますと,先ほどのような過激な意見が必ずしも我々に共有されないということになります。基本的にJSPSの役割というよりは,ここの役割として書いていただければと思います。

【佐藤部会長】
 ありがとうございました。具体的に髙橋先生がおっしゃったような過激なことも含めて書けば良いということでしょうか。

【髙橋委員】
 それ以上にここで議論すべきだと思います。勝木先生が言われたことは全くそのとおりで,私が学術システム研究センターの研究員をやったときに過激な意見を出したら,それは文科省の親委員会が駄目と言うのですと言われて,親委員会はどこかと思ったらここでした。だからここがやらないと。私の意見の是非論はともかくとして,それを是非やらせていただきたいと思います。

【小安委員】
 それは全くここの役割なので,そういう意味で,先ほど甲斐先生は具体的なことは除いた方がよいとおっしゃいましたが,私はやはりある程度ここに具体的な過激な文言をちりばめておかないと骨抜きになると思います。だから,中に書き込むことが嫌だったら脚注でもよいので,例えばとして幾つか過激な文言を入れておいた方がよいような気がします。

【佐藤部会長】
 私もそのように思いました。

【甲斐委員】
 入れることはいいのですが,ここで具体的に議論されていないことが書かれています。だから,書くのであれば,今,髙橋先生がおっしゃったようなことを入れたらよいと思います。もっと過激な御意見があるのであれば,それも入れたらいいと思いますが,これは近未来なのです。現在行っていることを書き込んでいるのであって,これは大改革ではない。本当の改革をしたいのであれば,8ページの「デュアルサポートシステムの再構築と科研費」のところに,具体的にもうワンパラグラフを増やしてほしいと思います。
 まず,科研費で起こっている件数や負担がますます増えていることが原因だということを明確に書きます。研究費制度だけでなく科学の振興を曲げている原因は,デュアルサポートがなくなったことが本当に大きいということを書くべきだと思います。大学の実感としては,そのことが原因の一端だと感じています。
 それから,23ページの2番目の丸はよく読むと上と下のパラグラフの内容が違っています。最初の2行で「基本的な構造の改革である」と書いてありながら,二つ目のパラグラフでは,基本的な構造の改革ではなくて,この構造についてどうしようという論になっている。だから,最初の2行のところに基本的な構造の改革が必要であるなら,この下に先ほどのような具体例を入れたらよいと思います。そもそも件数が多いことはどうなのかということや,今までの具体的な構造である基盤研究の細かい種目のことなどがありますね。これについても改めて考えるべきだと書けば,ここで委員会を立てようとか,これで次の議題になろうということになるわけですね。ここの段階では学振に依頼できません。学振がやるべきことは,審査制度が決まってから,その中で制度を変えるということであって,この種目や構造を考えるのはこちらです。だから,そこに具体例を少し入れておくことはよいと思います。
 また,私は,マル2の3行目の途中からは要らないと思います。特に最後の,大規模科研費のグローバル化を含む審査や評価に関しては,ここで何回か議論がありましたが,意見が割れていました。だから改善について,グローバル化という方向に一致したわけではないと思います。でもここに書いてしまうと,書いてあるようにしなければいけないことになってしまう。それはミスリーディングになるので,もっと大きな改革の例を挙げる方がよいと思います。

【濵口委員】
 少し論点がずれるかもしれませんが,もう1点大きな問題を提起します。デュアルサポートをとても強調されていて,大変現場としてはうれしいのですが,ひょっとして運営費交付金が一定額増えたとしても,本部がリスク管理,知財管理,消費税が上がる,電気料金が上がる等と言って吸収してしまい,研究者の個人に研究費として届かないのではないかと危惧しています。ただデュアルサポートと言っただけでは研究費として届かないので,どうやって届けるかというシステミックな工夫も述べていただかないと,デュアルサポートにならないと思います。

【佐藤部会長】
 そこまで具体的なことを書いてもいいということですか。

【濵口委員】
 言っていただかないと多分届かないと思いますね。

【佐藤部会長】
 はっきり言えば,大学の運営に関する,少し言い過ぎるくらいのことを言わないと駄目だ,言ってほしい,ということですね。

【北岡(伸)委員】
 先ほど人文・社会科学の特殊性といいますか,それをどのように組み入れるかという御発言がありましたが,少しフォローアップしたいと思います。最初にキャリアパスのところについて,先生から御発言がありましたが,今は人文社会もドクター論文を書かせることが定式化していることでキャリアパスに乗ってきていると思います。だから,必ずしもここでは外れると思っておりません。しかし他方で,もう一つ村松先生が言われたことに関係して,グローバルスタンダードというものがありますが,日本の経験を踏まえた発信をどのようにサポートしていくか。これはまた非常に大きな日本の責任でもあると思っています。
 そういうことを踏まえて,まず,研究の現状から言いますと,とにかく審査に大変なエネルギーをとられているということを併せて考えると,我々が真剣に業績評価をする機会としてもう一つ論文審査があります。それと審査を連動させてはどうかと思っています。人文・社会科学でも例外の分野はありますが,個々人によると,それほど巨額なお金が要るわけでもないということが多いとすれば,基本的に去年の,あるいは過去3年間ぐらいの業績に対して研究費を出すと。その業績を踏まえて,次こういうことをやりますという人に奨励的に出す。最初は,ドクター論文について,審査した方々や大学がお墨付きを出したものを支援していく。そういうことでセレクションの手間暇を省いて,かつ,次の発展につないでいくことができるのではないかと思うのです。大学によって,審査が甘い等の批判については,数年に1回レビューして,今後辛くするということをやっていけばいいのではないかと思います。
 もう一つは,自然科学系の大型に比べれば大したことがないのですが,社会科学系でも大型のプロジェクトがあって,本当に要るのかと思うような無理やり作り上げたようなものがある。個人の研究でもあります。いろいろなところの審査委員をしていてよく思うのですが,社会科学と言っている割にはレリバンスがあるのだろうかと思う研究は,何をやるかというと国際会議をやるのですね。プロシーディングを作ることはよいのですが,一体誰が読むのかと。それよりもそこから出てきたものをグローバルスタンダード,英語で発信する。英語で論文や本を出すということをもう少し手厚く保護するという形にする方が人文・社会科学の国際的な意義,責任という点には応えやすいのではないか,併せてレビューの手間暇を減らすという点で,過去の業績に基づいて次の支援をしていくというように転換していった方がよいのではないかということを御提案したいと思います。

【佐藤部会長】
 ありがとうございました。デュアルサポートの話は,要するに大学の経費が疲弊していることが大きな原因です。実際問題として,基盤Cの件数が多いことはやむを得ないと思って,基盤Cの審査を軽減する,審査の方法を変える等でカバーして,基盤Cをある種のデュアルサポートという位置づけにするのか,そういう議論は少しありました。

【勝木JSPS学術システム研究センター副所長】
 学振でもそれは少し議論しております。ただし,競争的資金であることは重要なので,運営費交付金にはしないでほしいと思います。できることは,審査の方式もなるべく簡便にしようということであります。また,先ほど北岡先生の話とも少し関係がございますが,分野によってもかなり違うという傾向があることも皆認識しているわけです。科研費の審査の仕方の構造は全部一律です。それは最初からそのようになっていて,我々としては少し問題を感じていることは確かです。ただ,それ以上のことは,やはりここで議論された後にやるべきことだと思っております。
 そういう意味で,基盤Cを特別の意味付けにするということであれば,その意味付けに沿って,しかし,これは競争的資金でなくてはなりませんので,うまく制度を作っていくという必要はあると考えております。ただ,我々のところでも,その審査件数の多さなどが大きな問題になっておりますが,とても大きいだけに構造を変えるようなことが議論されていかないと,それ以上のことはできないような感じでございます。

【佐藤部会長】
 私が今申し上げたことは,やはりこちらの議論がもう少し深まることが大事だとは思います。実際問題として,基盤Cはデュアルサポートを大学ができないことによるサポートに変わりつつあることは事実ではないでしょうか。

【小安委員】
 私は必ずしも基盤Cをデュアルサポートと同じにするという考え方には納得できません。なぜなら,ここでもデータが出てきたと思いますが,科研費の応募資格がある人の中で,1回以上科研費を採択されている人が25%にすぎないということは,やはり科研費はきちんとしたセレクションが掛かったシステムとして動いています。そこをもし基盤的経費などと言おうものなら,まさにばらまきといって一刀両断にされてしまうと思います。ですから,そこはきちんと理屈付けをしておかないとまずいと思います。
 それから,審査件数ですが,アメリカのNSFとNIHを合わせるとちょうど10万件ですので,学振と同じです。もちろん関わっている人数はちょっと違います。NIHの場合に,審査経費が100億円ぐらい掛かっていることも事実です。しかし,審査委員の数が大幅に違うのかというとそれほど違うわけではありませんので,やはり工夫が必要ではないかと思います。もちろん,件数は減った方がきめ細かい審査ができるのは事実です。

【濵口委員】
 母集団の研究者人口はずっと多いのではないでしょうか。

【小安委員】
 問題は,要するに件数は同じであるということは事実で,人口は倍です。審査委員の母集団の数を正しく記憶していませんが。

【濵口委員】
 スタディ・セクションの一人当たりの件数は低いと思います。

【小安委員】
 10個ぐらい。実は昨日の審査部会で結構議論したのですが,やり方の問題で,一人が読む件数は少ないのですが,読む人がほかの人に申請者に代わって説明できるぐらい徹底的に読み込んで,それで議論するというやり方です。それに対して,今,我々は,全員が全部読むということをやっており,分担して読まないやり方をしています。この辺りの考え方はいろいろ議論が必要ですが,どのように審査システムを作っていくかということについては,今まさに学振がいろいろと議論しているところだと思います。件数を減らしていくことももちろん一つの方向ですが,審査のやり方ということもきちんと議論していかなければならないのではないかと感じています。

【奥野委員】
 今の基盤Cをどのように考えるかという話とデュアルサポートをどのように考えるかという問題に関連して,私の分野は,自然科学でもない分野,社会科学であり,他方,社会科学,人文科学の中では経済学という特殊な立場にいるので,ほかの分野と経済学とは随分違うのかもしれませんが,例えばNSFと日本の仕組みを考えると,そもそも申請書の在り方が違うと思います。非常に申請数を増やしているという部分が一方であって,基盤Cは,まさにデュアルサポートがいろいろ変わってきているということに伴って,大学側のプレッシャーがあって基盤Cを増やしましょうという話になっているわけですが,何にも基盤がない人が基盤Cに応募してくる件数が膨大な数あるわけです。
 科研費は国民の税金で運営しているものですから,何の過去も基盤もないと,ただ単にこのようなことをやってみたいという希望だけで申請をする。それを膨大なリソースを使ってスクリーニングすると。そのような壮大な無駄が行われていることが私の印象で,もっと仕組みをいろいろ変えるのであれば,基盤A,基盤B,基盤Cを全部一緒にする等の髙橋先生のアイデアも一つですが,むしろ申請書の書き方を抜本的に改めて,単にこんなことをやりたいというような申請は最初から駄目にすると。この研究をここまでやってきたと。もうあと一歩であるというような申請をきちんと,何をやったかということまで書かせて,それを申請書にすると。それでお金をもらったならば,そのお金で今やっている研究を完成させると同時にその研究の中から次の研究のシーズを作っていく。そのような形で継続していくというような仕組みに作り直す。だから,そもそも科研費の応募申請の在り方,申請書の在り方,書式,このようなところをきちんと見直すということの方がはるかに大事であって,そうすることによって応募件数をかなり減らせて,あるいは少なくともスクリーニングにものすごく余裕ができると思います。

【小安委員】
 今,NIHでも半分はプレスクリーニングで拒絶するというトリアージのシステムを取り入れており,深い審査をしないというシステムでやっていますが,そのようなプレスクリーニングを掛けるということも一つのやり方として検討していくと,先生がおっしゃったようなこととうまくマッチしていく感じはします。

【佐藤部会長】
 基盤Cでも実績やこれまでの経過を書いています。

【合田学術研究助成課長】
 奥野先生のせっかくの御指摘でございますが,おっしゃるとおり,科研費は競争的資金の研究費の中では過去の業績を書かせている方ではございます。もちろん,逆にそこに不正があったら不正申請ということになります。ただ,今,先生がおっしゃいましたように,結局,あれがやりたい,これがやりたいではなくて,これまでの実績の上で,次にこのような展開をしていくということに着目して,研究のフィージビリティーという観点についてどこまで審査しているかという観点をどう位置付けるかということは極めて大事な視点だと思っております。

【奥野委員】
 過去の業績はもちろん大事ですし,この研究に対して今までやってきた取組は3分の1ページぐらいあると思います。そのようなことも必要だと思いますが,むしろ事実上論文に近いようなものを申請書にする,少なくとも最低限論文を付けると。論文の体をなさないようなものが申請書に出てきます。これは科研費だけではなくて,何億円も請求するような非科研費型の競争的資金の場合も,何か壮大な夢だけを語るようなものが出てきて,それに引っ張られて何億円というお金を付けているというケースが膨大にあるわけです。ですから,業績と言っても論文ではなくて,むしろ研究の内容に踏み込んだことをきちんと書式の中に書き込ませることが大事ではないかということが真意です。

【谷口委員】
 今,議論がなされております競争的資金としての科研費,まさにその捉え方については私も賛成なのですが,そのような視点に立ちますと,一方では,この部屋のメンバー以外の一般の人に納得していただくことは難しいかもしれませんが,研究の本質というのは無から有を生むという,0から1を生むというところになるわけです。先ほどから進んでおります議論では,科研費をはじめとする競争的資金というものは,0から1を生む。その芽があってこそ初めて,更にそれを展開させるというようにも理解されるわけです。そこにデュアルサポートシステムの重要性があるのではないでしょうか。
 あえて誤解を恐れずに申しますと,ある程度の膨大な消費を伴うことによって初めて新しい有が生み出されるのだという,この論理は正論ではないかと思います。ただ,一般の人たち,特に政府では,そのような無駄遣いをしては駄目だという議論になってしまうので,科研費だけ,デュアルサポートシステムだけを議論するというところに弱さがあるのではないかと思います。
 この素案は非常によくまとめられておりまして,大変立派なものだと思いますが,全体的なトーンで感じることは,やはり科研費をこれからどう死守していくかというような印象を受けます。これは政府,政策においてどのような力学が働くか分からないということを考えますと,やはりこのようなことにならざるを得ないのかと思いますが,科研費を守るという文脈で,更にここで議論をいつまでも続けてよいのか。それとも科研費を更に発展させる,他の競争的資金と一緒に発展させる,つまり,全てが連動しているのだという論理構築が大切かもしれません。基盤的経費等で新しい芽を生み出すような土壌をしっかりとするということが本来の,今の政権も言っているイノベーションの源になることであり,それが科研費につながり,そして,更にそれが応用研究など,いろいろつながるわけです。
 実際に,先ほど拝見しますと,経済産業省の委員会でもなかなかよいことを言っていると思います。ですから,そのようなところと無関係にやるのではなくて,経済産業省にもこの科研費というものは非常に大きな効果をもたらす,その源泉なのだという議論を,新しく委員会ができたようですから,どこかの時点で抽出していただき,議論していただくということが望ましいのではないかと思います。
 また,審査の問題ですが,これも何度か議論されて,トライ・アンド・エラーが繰り返されてきましたが,そろそろ短期的には無理としても,申請書は全て英語で書く,国外の研究者にも審査に携わってもらう,といった可能性も検討に値するのではないでしょうか。無論,お互いに無償でやることが基本ですが,そのようなシステムをもう少し発展させていくことは,日本の科学の国際化にもつながれば負担軽減にもなるということであり,そのような視点も考えていただきたいと思います。

【佐藤部会長】
 谷口先生がおっしゃった前半のことに関しましては,よく書けているとは思いますが,未来志向という観点が少し弱いかもしれません。それは改革ということを通じて,未来のビジョンがもう少し見えるような書き方でしょうか。

【谷口委員】
 今回ではなく,将来的にはそのようなことを議論していった方がよいのではないかと思います。

【鍋倉委員】
 谷口先生に非常に近いことですが,この提言を読んでみると,大学又は研究施設の研究者にとって非常に読みやすいし,論点もはっきりしていると思います。疑問点も含めて,そのまま入ってくる。ところが,最初に,学術研究という言葉が入っています。多分,学術の研究とは何かという定義の議論があった上でこの提案ができていると思います。この提言の一つ前に,例えばイノベーションと産業うんぬんが大事だというものが最終目的であった,それでは学術とは何なのか,学術の研究は重要だというストラテジーが議論されていると思いますが,どこにこの文章を提示するかによって,この背景を少し丁寧に説明する必要があるという気はします。
 もう一つ内容に関して,先ほどのデュアルサポートの話ですが,デュアルサポートは非常に重要だと思っています。ただし,デュアルサポートの両方,外部資金と内部資金を一緒にやるということではなくて,外部資金が取れなかったときにどうやってサポートするかというようなシステムを作れば,それほど大きな負担は掛からないのではないかというような気がします。それは大学の判断という形になると思います。
 もう一つ大事なことは,若手研究者のPIのキャリアパスが一番重要なことだと思います。特に今,若い人たちがなぜ研究者になりたがらないのか。結局,研究者のキャリアパスとしてどこまでやっていけるのかというおそれがあると思います。それから,もう一つは研究を途中までやっていて,どこかで違うキャリアパス,例えば教育のキャリアパスも,少し総合的なものを考えて,研究だけではなくて,教育なり,できれば産業とタイアップすれば一番でしょうが,未来には多岐にわたるキャリアパスがあるというようなものを提示するような,この部分は研究費とは違うことですが,若い人にとって研究に入りやすい環境を作ってあげるということが非常に重要だと考えています。

【佐藤部会長】
 コメントありがとうございます。

【上田委員】
 そもそも学術というのは,皆さんがおっしゃるように純粋なもので,日本の国力を支えるものです。これは何も変わらない。一方,予算というものは,ある意味非常にダーティーな側面を持っていて,それを一緒に議論することがそもそも難しい。どうしてもそこに妥協点が出てくるので,いろいろなことを考えないといけないのですが,例えば,今審査の議論もありましたが,そのようなところはもう少し本当に真面目に考えないといけないと思います。例えば私もさきがけ・CRESTをやっていますが,エフォートが5%でいろいろな人が結構関係しています。結局,お金を取るために申請しているのか,研究したいのか,本末転倒なところが出ている。あちこちに手を出して,本当に真面目に研究できるのですかと。だから,これはやはり縦割りになっていることも問題になっていて,CREST・さきがけ,科研費も基盤S,基盤A,基盤B等の研究種目がたくさんあり,優秀な人はいろいろなところに声が掛かる。なぜ声が掛かるのかというと,この人を入れておくとよい研究をしてくれるから,助けてくれるから。でもその人はいろいろなところに助っ人(すけっと)で出ているのですが,自分は何をやっているのかよく分からない。そもそも5%のエフォートとは何でしょうか。真面目にやっていると言えるのでしょうか。
 大学の方にも問題があって,真剣に研究をやろうとしたら,もう少し絞り込まないといけないし,先ほど髙橋委員から宝くじとありましたが,これだけ多様性が出てくると,審査もこの分野がこのタイミングで通るか通らないかということがあるので,それぞれみんな質は高いと思います。難関国際会議はみんなそうです。我々の分野も1,000件以上落ちますが,みんな数理的に相当,定理証明ばかりで読むことが相当大変ですが,やはりそこにはコミュニティが真剣に審査しようということで,一人で査読する場合は4件以内にしたり,いろいろな若い人がかなりレリバントなレビューワーを厳選するためにシステムを工夫しています。
 だから,このような部会でビジョンを示すことは大事ですが,やはり具体的なことも言っていかないと全然前へ進まずに,結局ビジョンばかりで行くと思います。例えばCREST等との連携をどう考えるか。それからエフォートをどう考えるか。デュアルシステムが全然足りないのであれば,どこぐらいまでいけるのかというようなことまでやらないと。企業の場合,需要会社からいろいろなお金を頂くためにはROIが必ず評価されています。その評価が科研費で行われているのでしょうか。科研費の基盤研究の最後にA,B,Cと付きますが,その区分を審査以上にもっと厳正にやって,科研費を取得することに対する責任をもっと植え付ける。お金を取れたらラッキーだと,論文を適当に書いておけばよいと思っている人が多いのであれば,そもそも競争的資金は正しく運用されていないので,もっと厳しく言っていくことが必要だと思います。

【佐藤部会長】
 ありがとうございました。貴重な大事な意見だと思います。

【髙橋委員】
 私の誤解かもしれませんが,もしアメリカのスタディ・セクションが万能性のようなニュアンスがあるとしたら,そうではないと申し上げたいと思います。
 学術の本質とは,夢のようなことから始まり,次第にとても驚くようなものが出ることです。そのようなことを全部合わせて科研費を健全に守りたい。ですから,スタディ・セクションで議論すれば,それでよいということではないということを申し上げたいと思います。

【谷口委員】
 基本的には髙橋委員と似たような意見です。各論的になりますが,12ページでは,NIHのファンディングシステムのレビュー体制について,「審査への信頼性は高い」と書かれてありますが,ここは少し検討された方がいいのではないかと思います。問題が指摘されているなどにしておいた方がいいのではないでしょうか。多くの研究者から聞くと,スタディ・セクションレベルがかなり下がっているという意見が多いです。研究費の獲得を目指した超競争社会が生まれている状況下で生まれながらその審査をするシステムが十分に機能していない可能性があるということです。これがバイメカニズムリサーチに深刻な状況を生み出しているということがこのアーティクルの本質です。ですから,ここはそういった意味では少し御検討を頂ければと思います。
 それから,この科研費という文脈でどこまで,本質から踏み込めばよいか分かりませんが,科学技術の今の流れは,やはり過去と違ってグローバル化が急速に進んだということと,それから巨大化,多様化が進んだ。そのようなものが底流にあって,超競争的社会が生み出されて,いろいろな深刻な状況を生み出している。例えば,今の科研費の審査の体制は非常に大変ですが,背景にはそのようなものがあるわけです。恐らく新しい委員会にそこを洗いざらいにしていただくというお願いをしたらよいと思います。
 このような視点から考えますと,科研費は個人の自由な発想による個人研究をサポートするものであるということは基本ではありますが,余り個人,個人を主張し過ぎてしまうと,個人プレーが科研費の研究の根幹であると誤解されます。これは多様化し,巨大化した現代の科学を推進する上で,果たして若い,例えばPI,独立したラボを持たせた人が,本当に個人研究のみを行うことがよいのかどうか。要するにそのような問題をはらんでいるわけです。だから,コンソーシアム研究がよいということを言っているわけではないのですが,お互いに連携するシステムといいますか,ネットワークをする,お互いがコミットし合ったり,若い人や年配の人もお互いが学び合うといったような仕組みを作っていかないと,極端な場合は研究不正の問題にもつながる場合もあると思います。あるいはもっと大局的に見れば,科学技術の更なる推進に役立つためにもそのようなことが重要ではないかと思います。

【佐藤部会長】
 ありがとうございました。

【平野委員】
 これまで議論いただいたことに賛成でありますし,基本的なまとめについては,非常によくまとめてくださっていると思っております。審査にはいろいろ問題点がつきまとうのでありますが,私の若い頃から見れば,科研費自身の審査方式は皆さんの努力で非常に公正化されてきたと思っておりますが,まだ更にいろいろ問題があることは事実でありまして,審査方式を含めて検討すべきと思います。大学の評価のインデックスにはいろいろあり,科研費獲得は文部科学省で審査をするときのインデックスであることに間違いありません。この点については,システムとともに大学における在り方を考え直さないと本質的なところの対応が難しいのではないかと思います。ある意味,意を強くしたことは,皆さんとともにまとめていただいた特別委員会の中間まとめで言おうとしたところと同じようなことを経産省の分科会が言っていたことです。これを私どもの資料の前にまず出してもよいと思います。多分これは,アカデミアの委員が発言したのではないかと推測いたしますが,経産省においてそれを認めて報告されたということは非常に重要なことでありまして,私ども,そこを同時に併記してうたいながら,少し強化してもらいたいと思います。デュアルサポートそのものについての中身をもう一度ここで言われるとしたら書いていただいた方がいいのではないでしょうか。最近,基盤的経費の中の,例えば運営費交付金に,今までは競争的資金,あるいは別枠ではないかと言われるものが運営費交付金の中に入ってきている。現実に真水に近いような部分が減っていることは間違いないというように私は分析しておりますので,その内容を確認した上で,科研費全体,あるいはほかの競争的資金との連携を示すべきではないかと思います。
 それから,もう一つは,アワードイヤーのことでありますが,最近,残念ながら努力いただいた上であっても,基金化が非常に厳しい状況であります。これについては審査方式と改善を含める中でも非常に重要なポイントだと思いますので,是非,もう1か所,2か所ぐらい,改革の点においても非常に重要であり,必要であるということを強調していただければと思います。

【佐藤部会長】
 ありがとうございました。

【甲斐委員】
 平野先生の御意見に大賛成なのですが,8ページのデュアルサポートシステムの再構築と科研費という項目があります。これは,デュアルサポートと科研費ではなくて,基盤的経費の重要性として書いていただけませんか。ここに書いてある三つの丸を見ると,一番上の丸だけがデュアルサポートで,残りは科研費とその他の競争的資金との関係であり,ほとんど運営費交付金のことは書いていません。だから,ここに重く運営費交付金の重要性は,研究においても重要である,大学の運用の在り方についても重要であると書いていただけると有り難いと思います。
 スタディ・セクションに関して,日本のシステムがベストなのかと言ったら,全くそんなことはないと皆さん感じているからスタディ・セクションをしようとしているわけです。どんな場合でもいい面,悪い面がある。それをきちんと取り入れてやるというシステムにしないといけない。特に,先ほど谷口先生がおっしゃった質が下がってきているということは,アウトスタンディングなものを採択できないから審査しても無駄だと思い始めているところに最大の原因があり,それは予算が縮小されたということが一番の原因だとアメリカの友人から聞いています。そこに最大の問題があるわけで,それ以外の要素は余り議論しない方がいいと思います。

【佐藤部会長】
 ありがとうございました。
 時間となりましたので終わりにしたいと思います。これを踏まえまして,次回につきましては,合田課長はじめ事務局の方で改訂を進めていただければ有り難いと思います。十分御意見を発信できなかった方もおられますし,新たにこの点は強調したいということがありましたら,事務局まで御連絡いただければと思います。今日はありがとうございました。

―― 了 ――

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