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第7期研究費部会(第11回) 議事録

1.日時

平成26年7月1日(火曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省3F1特別会議室(東京都千代田区霞が関3丁目2番2号)

3.議題

  1. 科学研究費助成事業(科研費)など研究費の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

佐藤部会長,甲斐委員,北岡(良)委員,金田委員,小安委員,谷口委員,鍋倉委員,西川委員,上田委員,勝木日本学術振興会学術システム研究センター副所長,山本日本学術振興会学術システム研究センター科研費ワーキンググループ主査

文部科学省

小松研究振興局長,安藤振興企画課長,合田学術研究助成課長,前澤学術研究助成課企画室長,他関係官

5.議事録

【佐藤部会長】
 皆様,時間となりましたので,第11回の研究費部会を始めたいと思います。本日は,当部会としての科研費改革の基本的方向性のまとめに向けて議論を行いたいと思っております。
 もう7月1日となりましたので,整理の段階でございますけれども,まず,事務局にまとめていただきました第7期の研究費部会における審議の状況について,(整理素案)の説明を頂きたいと思っております。
 次に,分科細目の大くくり化と特設分野研究の審査報告につきまして,学術振興会の学術システム研究センター副所長の勝木先生から御説明を頂き,その後,素案につきまして,議論を行っていきたいと思っております。よろしくお願いします。

【合田学術研究助成課長】
 それでは,部会長の御指示を踏まえまして,これまでの議論の状況を事務的に整理をした素案,本日の議論のためのたたき台を作成させていただきましたのが資料1でございます。これにつきまして,簡潔に御説明申し上げます。
 現在,研究費部会では,学術分科会全体で御議論いただいている「学術研究の推進方策に関する総合的な審議について」を踏まえまして,いわばそれとキャッチボールをするような形で御審議を賜っております。その中間報告でございますが,資料1の1ページ目の一つ目の丸にございますように,学術研究がその役割を十分に発揮していくためには,学術政策,大学政策,科学技術政策が連携し,基盤的経費,科研費,科研費以外の競争的資金のそれぞれの改革と相互の関連性の確保によるデュアルサポートシステムの再構築が必要であるという御提言を頂いているところでございます。
 もとより,前回も御議論がございましたように,学術研究は新しい知の創造を行うだけでなく,大学院教育等を通じて「人」を育成するというものでございますので,科研費以外の競争的資金については,この点に十分留意した政府全体の立場からの改善が必要であると思っております。また,大学院教育の充実など,大学改革も重要であるという御議論を賜っております。
 これに対しまして,科研費は研究者の間でも最も信頼されているが故に,その研究成果の水準は広い分野にわたって高く,我が国の学術研究の重要な基盤を形成している,競争的資金のいわばリーディングな存在だということが言えようかと思っております。したがいまして,科研費予算を削減して,他の科学技術予算に付け替えてはどうかという議論は,公財政投資としては非効率なものと言わざるを得ないと存じますが,他方で,1ページ目の一番下の丸でございますけれども,大変厳しい財政状況の中,財政支出の成果に対する国民の期待は更に高まっているということが言えようかと思っております。ただ,その期待に対しては,前回まさに御議論がございましたように,既知の出口に向けた技術改良といったレベルではなく,研究者が独創性や知的創造力を最大限発揮して,これまでの慣習や常識では思いも付かないアイデアにより,出口のないところに新しい出口を創出する,あるいは新次元の出口を示唆する入り口を開いたりするということで,既にある強みを生かすにとどまらず,新たな強みを創ることを可能とするという形で応えてこそ,社会と学術研究の間の信頼と支援の好循環が確立をするという御議論を賜っているところでございます。
 次に2ページ目でございますけれども,このような学術研究の本来的な役割,機能を十二分に果たす。そして,その基盤をしっかり支えるという観点から,先ほど科研費は競争的資金の中でもリーディングな存在だと申し上げましたけれども,同時に,その不断の見直しが必要であるということはもちろんでございます。
 詳しい御紹介は省かせていただきますけれども,本日の参考資料4の中間報告,あるいは参考資料5の閣議決定されました「科学技術イノベーション総合戦略2014」,参考資料6の「日本再興戦略2014」においても,科研費の改革が書き込まれているゆえんでございます。
 もとより科研費につきましては,学術システム研究センターの主任研究員や専門調査員として,あるいは年間6,000人規模の審査委員として,多くの優れた研究者がその制度設計や審査委員の選任,具体的な審査の過程に主体的かつ積極的に参加をしているということでございますので,本部会の審議を踏まえて,日本学術振興会,大学関係者,学術界,そして,私ども文部科学省が十分キャッチボールをしながら,議論を重ねる必要があるという御議論を賜ったところでございます。
 その次に,成熟社会における学術研究というところがございますけれども,これは中間報告のおさらいでございまして,2ページ目の下から二つ目の丸は,中間報告において示された学術研究の四つの役割,それから,一番下の丸は,挑戦性,総合性,融合性,国際性といったような現在の我が国の学術研究に強く要請されているポイントを整理させていただいております。
 次に,3ページでございますけれども,我が国の学術研究の現状ということで,学術分科会全体の議論の前提といたしまして,学術研究の成果は,一つの尺度で測れるものではありませんけれども,例えば「サイエンスマップ2008」の成果といったものを見てみますと,我が国の学術研究については,一つには,物理学,化学,材料科学,免疫学,生物学・生化学といったような我が国が世界の先頭を競っている分野の持続的な発展をどう確保するか,それから,例えばイギリスやドイツとの比較において,存在感が低い学際的・分野融合的領域の研究をどう推進するか,国際的に注目を集めている研究領域への参画という観点から,相対的に低い我が国の学術研究の多様性をいかに高めるかといったことがポイントであり,課題であるということが指摘されようかと思っております。
 とはいえ,もとより,学術研究の融合性はそれ自体を目的化するものではなく,学術が大きく発展するきっかけは,分野にこだわらず,新しい問題提起をした研究者個人の問題意識に興味を持つ研究者が交流する機会である。これは分子生物学の例ということで,勝木先生から御紹介を頂いているところでございますが,デルブリュック博士のアイデアといいますか,着眼がロマンチックエイジを得て,アカデミックエイジを経て,テクニカルエイジを経るというような形で,知の創造というものがなされるという御議論を整理させていただいております。
 このような観点から,3ページ目の下から二つ目の丸でございますけれども,我が国が世界の先頭を競っている分野の持続的な発展,優秀な研究者が学際的・分野融合的な領域に取り組む環境の醸成,これから世界の先頭を走ることになる分野の苗床となるような学術研究の質の高い多様性の確保を図るためには,デュアルサポートシステムの再構築を図ることが必要であります。
 続いて一番下の丸でございますが,科研費以外の競争的資金の改革,それから専門性とともに,これも前回御議論ございましたように,総合的な視野を育むための大学院教育の充実,大学の教育研究組織の柔軟な再編成を可能とするマネジメントの確立などとの連携に留意して,科研費改革を検討する必要があるという御議論を賜ったところでございます。
 その次でございますが,科研費の改革を考える上で,科研費において欠いてはならない,いわば不易たるものをどう考えるかという御議論も頂いているところでございます。
 4ページ目の上から三つ目の丸までは,科研費のほぼ100年にわたる歴史をごくごく簡単に整理したものでございます。大正7年に創設された科学研究費奨励金制度が嚆矢(こうし)であること。昭和40年には,科学研究費補助金制度に統合されたこと。昭和43年度からは,現在の2段階審査方式によるピアレビューなどの基本的な枠組みが確立したこと。その後,特に第一次科学技術基本計画が策定された平成8年から現在に至るまで,科研費は種目の新設・統合,不採択理由の開示や審査委員の公表,間接経費の導入,繰越明許費の登録と基金化,学術システム研究センターの設置など,様々な改善を経るとともに,助成額も増加をしたという流れを整理させていただいております。
 その上で,これまで御議論を頂いた科研費制度のいわば不易たるものということで,三つほど整理をさせていただいております。4ページ目の一番下の丸でございますけれども,これまで科研費は,昭和43年度に形成された基本的な枠組みを前提としながら,科学技術・学術政策研究所の調査によりましても,「公正で透明性の高い審査」,「研究費の使いやすさ」,「研究費の基金化」という項目について,極めて高く評価されております。このような評価は,これまでの科研費制度や公正な審査の積み重ねによる,いわば財産であるという御議論を賜っているところでございます。
 その上で,5ページでございますけれども,以下の3点は,科研費の不易たるものとして位置付けるべきではないかという議論を整理させていただいております。一つは,専門家による審査,ピアレビューでございます。学術研究の進展において,ピアレビューは欠かせないものでございます。学術研究上の価値や方法の妥当性などのほかに,その分野の発展と歴史の動向に知悉(ちしつ)し,提案が独創的なものであり,かつ新規なものであることを判断できる,同じ分野で学術研究に切磋琢磨(せっさたくま)している専門家が審査をするということが最も重要であり,不可欠であるという点が一つ目であります。
 それから,二つ目でございますが,人文学,社会科学,自然科学及び新領域に至るあらゆる学問分野について,大学等の研究者に対して等しく開かれた唯一の競争的資金であるということも極めて重要な,不変たるものであろうという御議論を頂いております。
 それから,三つ目でございますけれども,学術研究が予見に基づく計画どおりに進展しない,むしろそこから逸(そ)れたところに大きなブレークスルーが生じるという学術研究の特性を踏まえますと,基金化や繰越し手続の大幅簡素化など,科研費としての使いやすさの改善を不断に図っていくということも,科研費の重要なポイントではないかという御議論をこれまで賜っているところでございます。
 次に,科研費の改革を考える上で,不易たるものに対して流行というものを考察する上で検討すべき要素をこれまでの御議論を踏まえて整理してございます。
 一つ目は,5ページ目の一番下でございますけれども,科研費をめぐる国際的な動向でございます。個別の御紹介は省かせていただきますけれども,資料3の3ページから4ページに,各国のエージェンシーにおいてどのような審査を行い,研究費が配分されているかという資料をお付けしてございます。こういった各国の取組を見据えながら,我が国の研究費の在り方についても議論すべきであるという御議論を頂いているところでございます。
 6ページでございますけれども,これも前回,御議論ございましたので,詳細な内容は省かせていただきますけれども,一つ目の丸にありますように,例えばアメリカについては,前回,谷口先生から御紹介いただきましたPNSの論文,論考をここで御紹介し,我が国と同様な課題にアメリカの生命科学も直面しているということを御紹介してございます。
 それ以外にも,その下にありますような欧米,欧州連合のHorizon2020の状況,あるいはその下には中国や韓国といった進展著しい国々の研究費政策について御紹介をした上で,6ページ目の一番下にございますように,学術政策や研究費の審査や配分をめぐって,我が国だけではなく,世界各国の政府や大学が共通した課題に直面しているということを一つの理由として,2012年に,世界の学術振興機関の長によるフォーラムであるグローバル・リサーチ・カウンシル(GRC)が設立され,来年5月には東京で開かれるという状況を御報告してございます。我が国の学術研究が国際的ネットワークをリードする上でも,日本学術振興会を代表とする我が国の研究機関がGRCにおいても指導的な役割を果たすことが期待されるところでございます。
 以上が諸外国の状況でございますが,次に科研費の在り方に関する様々な指摘でございます。これにつきましては,7ページ目の一番上の丸にございますように,本部会でも様々な御議論がございました。特に,本日も御出席いただいておりますが,日本学術振興会の学術システム研究センターから勝木先生はじめ多くの先生方に御参加を頂き,あるいは前回は,大学改革について議論をしている中央教育審議会の大学分科会からもお三方の先生をお呼びして御議論いただきました。それから,大学や経済界等の関係者からヒアリングも行いました。私どももアンケート調査などを行いまして,広く御意見を賜ってきたところでございます。
 頂いた御意見は大きく二つに整理できるのではないかと考えてございます。一つは,主として審査の改善に関する御指摘でございます。現在の2段階審査では,第1段階審査における各審査委員による書面審査と,第2段階の合議が全て異なる審査委員で行われ,かつ相互のコミュニケーションを図る仕組みにはなっていないため,例えば一定規模以上の研究計画の採択については,専門分野が異なる審査委員同士がその目的や手段等を時間を掛けて議論をする機会を確保し,既存の細目を土台にしながら,それを超える創造的な研究が評価されるような仕組みを導入する必要があるのではないかという御議論を賜っているところでございます。
 この後,勝木先生から御紹介を頂きます特設分野研究の試行も研究者,特に審査の質をいかに向上するかという観点からの研究者の内発的な問いや議論がその背景にあるものと存じております。
 二つ目でございますけれども,現在でも,第1段階審査において有益なコメントを付した審査委員を表彰するなどの取組が行われておりますけれども,1点目のような機会も含め,審査委員をいかに育成するかという観点が重要ではないかという御議論を頂いております。
 三つ目でございますが,これに関連して,審査コメントが現在,応募者に開示されておりませんが,応募者が自らの研究の進め方を検討する上で有益なコメントが多いため,フィードバックを考えるべきではないかという御議論を頂いております。
 ただ,他方で,四つ目でありますけれども,このような改善を進めるに当たっては,平成8年度から平成25年度にかけて大幅に急伸した応募件数が大きな桎梏(しっこく)になっていること,また,審査のコストも,基盤研究の少額の種目の方がコスト高になっているということを踏まえますと,プレスクリーニングの導入や,審査コストの再配分などの工夫が必要ではないかという御議論を頂いているところでございます。
 次に,研究費を活用する観点に立った御指摘でございます。これはヒアリング等でも様々な御意見を頂戴したわけでございますけれども,一つ目には,研究費の過度の集中を防ぐという観点から,種目の重複制限が行われておりますが,これは不採択による研究中断を避けるためにより小規模の種目に応募する傾向を生んでいるのではないか,あるいは,これまでの研究実績を基盤にした新しい分野への発展的な移行を困難にしているのではないかという御議論がございました。
 二つ目でありますけれども,大規模科研費は,分野を問わず,学術研究の加速に重要であり,次世代研究者の発展の促進という観点から,審査や評価の在り方の改善を図る必要があるのではないかという御議論がございました。なお,一つ目の観点,二つ目の観点ともに,科研費内部の御議論だけではなくて,競争的資金全体の視野を持って検討する必要があるのではないかという御指摘を頂いているところでございます。
 三つ目は,研究主体の多様性については,現在も十分確保されているという御指摘もございますけれども,常に留意する必要があるのではないかという御議論を頂いております。
 四つ目でございますが,国際共同研究の推進のほか,例えば若手研究者が海外の研究者コミュニティーの中で長期にわたる確かなネットワークを形成したり,国外から優秀な大学院生やポスドクを増加させたりすることを促すという観点が必要ではないかという御意見を頂いております。
 それから,五つ目でございますが,この観点は,我が国の経験に基づいて伝統的な芸術を現代の世界で通用可能なものとして表現したり,近代化過程で得た組織技術や社会改革などにおける諸経験を国際社会に向けて発信したりするという観点でも重要ではないかということで,特に人文学,社会科学の観点から御指摘,御議論を頂いたところでございます。
 8ページ目の4.科研費改革の基本的な考え方と方向性でございますが,これはまさにこのような頂いた御意見,国際的な動向,あるいはこの後の勝木先生の御報告なども踏まえて,更に議論を深めていただきたいというところでございます。個別の紹介は省かせていただきますけれども,中間報告において,8ページ目の一番下の丸から9ページ目にかけて記述がございますような御指摘を既に頂いていることを改めて御紹介をさせていただきます。
 今後,これらの素材を前提といたしまして,科研費改革の基本的な考え方や具体的な改革の方向性について,更に議論を深めていただきたいと思っておりますし,今回,中間報告への対応ということで申し上げますと,科研費改革を考える上で欠かせない,大学改革との連携強化,あるいは科研費以外の競争的資金の改革の必要性についても,十分重要なポイントだと思っておりますので,更に御議論,御意見を賜ればと思っている次第でございます。
 なお,これまで科研費改革に関する様々な御意見を頂いたところでございますが,これらの御意見は,なかなか容易には両立しないというものもございます。科研費の配分自体も,採択率や充足率があらゆる種目で向上するというのが理想ではございますけれども,成熟社会における学術研究の基盤を支える科研費をより効果的に配分するという観点から,これらの要素を重点化したり,バランスを考慮したりするという観点も,具体的な改革方策に当たっては必要ではないかというような御議論も賜っているところでございます。
 以上,資料1についての御説明でございます。部会長の御指示を踏まえて,事務方でかなり粗々に整理をさせていただいたものでございますので,漏れや抜けも多いかと存じます。大きな構造も含めて議論のたたき台として御検討を賜ればと思っております。以上でございます。

【佐藤部会長】
 ありがとうございました。それでは,次に,分科細目の大括り化と特設分野の審査報告につきまして説明を頂きたいと思っております。勝木先生,どうぞよろしくお願いします。

【勝木JSPS学術システム研究センター副所長】
 資料2-1にまとめております報告書は,審査部会で「系・分野・分科・細目表」の見直しについて基本的な方向を議論する必要があるということでございましたので,そのときに提出した報告書でございます。今と状況は少し変わっておりますが,本質的には我々の検討事項と同じことでございますので,少し文面は,古い文面になりますが,読み上げさせていただきます。
 昨年,平成25年10月8日,文部科学省の科学技術・学術審議会学術分科会科学研究費補助金審査部会から,「細分化が進むことで,既存の学問分野に立脚した研究のみが深化し,新たな研究分野や異分野融合の研究は応募しにくいのではないか」「分科細目表は,いかに審査を公平・公正に行うかという観点でこれまで見直しが行われているが,今後は,学術動向の変遷に即した審査を行うために適したものとなっているか,また,これまでの分野の枠に収まらずに新たに伸びていく研究を見いだせるかという観点で見直していく必要があるのではないか」,また,「理想的な審査方式の検討も併せて見直していく必要があるのではないか」等との指摘があり,『「系・分野・分科・細目表」の見直し並びに「次元付き分科細目」及び「特設分野」の設定に当たっての基本的な考え方』(以下「基本的考え方」という)が示され,文部科学省から,平成30年度公募から適用する「系・分野・分科・細目表」の抜本的な見直しについて要請があった。
 この要請を踏まえ,日本学術振興会では,学術システム研究センターにおいて6回にわたって議論を行い,分科細目表の見直しに当たっての基本的な方向性について,以下のとおり取りまとめた。
 1.分科細目表の見直しに当たっての基本的な方向性について。基盤研究(A・B・C),挑戦的萌芽研究,若手研究(A・B)(以下「基盤研究等」という)の審査制度は,第1段審査(書面)と第2段審査(合議)をそれぞれ別の審査委員が担当し,審査希望分野(細目)に応募された研究課題について,相対評価を行う仕組みで成り立っている。
 現行の科研費の基盤研究等の審査制度は,膨大な応募件数を迅速に審査する公正かつ適切な,研究者からの信頼を得ている方式であることから,見直しに当たっては,この点に留意しながら以下のような基本方針で検討する。
 この報告書では,科学技術・学術審議会学術分科会科学研究費補助金審査部会の「基本的考え方」を踏まえ,「応募課題の研究内容の審査」という観点から,分科細目表の見直しにとどまらず,ここが大事なところですが,大くくり化とその審査方式の見直し,大くくり化して細目を減らすということが具体的に提示されております。しかし,その内容にとどまらず,分科細目,学術の振興にとって,科学研究費の審査制度がよりよくなるためということをもう一度,深く考えた上で,つまり,数,その他を見直すという技術的なものにとどまらず,多様な学術研究を推進するとともに新しい学術領域の確立を推進するために学問の特性に応じた審査方式の見直しを行うということでございます。
 かなり具体性がないように聞こえると思いますが,具体的には後でお話ししようと思います。なぜそうするかと申しますと,中間段階で発表し,議論することはもちろんよいのですが,本当に深く考え,そして実際と対応しながら新しくシステムを変えたとしても,科研費に応募する研究者たちになお一層の信頼を置けるようなものを作っていかなければならないと,私たちは覚悟しております。
 基本方針としては,中黒の小さい丸の一つ目でございますが,書面審査と合議審査の関係を含め学術の振興という観点から適切な審査方式の在り方について検討すると述べています。現在,第1段審査委員と第2段審査委員が異なる審査委員の制度になっておりますが,この制度も,ある文面においては非常に有効に働く可能性がありますので,種目その他を詳細に検討しながら,審査方式を導入する点も考えていきたいということをこの2行の文章で表しております。
 もう一つの学術の多様性ということは最も重要なことであります。学術の多様性を生み出すことは,知の創造といいますか,蓄積されてきた伝統とその歴史の上に立って,きちんとそれを学んだ上で人まねでない独自なものを出すことです。これを全ての人が行う場合,極めて広い対応になるわけでございます。ですから,学術の多様性を生み出す根幹は独自なアイデア,そして,それをちゃんとフィージブルな土台に立って提案するということから生まれるものであり,たくさんの多様性が出てきたことによって,今,細目が320ぐらいに分かれております。しかし,これについて,更に出てきた多様性をきちんと守っていく,あるいは消えるべきものは消えていくというような様々な方策を,審査区分ごとに凝らす必要があるのではないかというのが我々の考え方でございます。
 今,まさに詳細な検討に入る前段階の議論を進めているところでございますので,現在は,公式の方向性の報告はこういうことになります。
 続いて,その他についてですが,新しい審査方式の導入をする場合,審査業務の分散が必要になると思われます。その場合,交付内定を4月1日に行う研究種目と10月1日に行う研究種目に分けるなど,年度を越えた予算執行を可能とする制度が必要です。さらに,先ほど合田課長からの御報告にもありましたように,学術のグローバル化を見据えると,新しい審査方式の導入等により必要となるアワードイヤーの実現や海外研究者との国際共同研究等の推進において,日本側の会計年度が共同研究の支障になることがないようにするなど,科研費の成果を最大化する観点からも,早期に全ての研究種目に基金化を拡大することが必要です。これは,科研費を審査し,交付する学振の切なる願いでございまして,審査制度とその実行に非常に大きな影響を与えることでございますので,直接の諮問ではございませんでしたが,書き加えさせていただきました。
 その下の参考は検討状況でございます。文科省で作成した資料3に基づいて,審査制度の現状と我が国の現状と,米国,欧州等のファンディングエージェンシーの審査体制の比較を御説明したいと思います。
 実は2年前に,学振のセンターにピアレビュー・タスクフォースができまして,科研費審査制度の改革について議論いたしました。この議論は審査委員から申請者への審査結果の開示を行うに当たって,どのような手続やどのようなことをしなくてはならないかということから始まりました。その中で,ピアレビュー制度の審査制度について,今の書面審査と合議審査がそれぞれ違う審査委員で行われている意味とそれを改革するためにはどうしたらいいか,どのような方向があるかということが主たる議論になりました。そのときにこの審査制度はもちろんのことですが,欧米のファンディングエージェンシーについても調査団を派遣して,ここにおられる小安先生もその代表者の御一人でございますが,実際にそこで調査をいたしました。研究者とも会って議論をいたしまして,報告書にその比較が述べられております。その一部を改訂して,今回,文科省が作成した資料がファンディングエージェンシー,審査体制の比較ということになります。
 まず,特に今回は海外の審査体制と比較するということで,詳細なことを述べるよりは,むしろ枠組みと我が国の特徴を述べた方がよろしいかと思いますので,そのような説明をいたします。まず,資料3の1ページ目ですが,科研費の種目とその審査体制ということでございます。科研費の種目はこのように,特別推進研究,新学術領域研究,基盤研究,挑戦的萌芽研究,若手研究,研究活動スタート支援,奨励研究というものが種目としてございます。
 主として我々が中心に置いておりますのは,基盤研究でございます。基盤研究(A),(B),(C)というのがございます。それから基盤研究(S)というのもございまして,これは特別推進研究の小型版ではなく,むしろ基盤研究(A),(B),(C)の上にある,もう一つの大きな科研費としてあります。したがって,基盤研究(S)の審査にはヒアリングがありますが,原理的に(S),(A),(B),(C)は全て同じ審査方式をとっております。比較的小型の基盤研究(C),若手研究(B),挑戦的萌芽研究につきましては,その細目に当たる専門性を生かして4名の審査委員を選びます。そして,5段階評価で点数を付けまして,公平性を保つためにTスコア化して,その順位を決め,それを第一段審査委員相互の議論なしに,第2段の審査にかけます。第2段の合議審査では,第1審査の結果を採用しつつ,第一段とは異なる審査委員の方々が専門的観点からボーダーを中心に具体的に検討する。そういう方式をとっております。
 したがって,1段審査が非常に重要な役割をしまして,2段審査でそれを変更するということが,もしあるとすれば,1段審査の詳細なコメントを参考にして審査するという方式でございます。これは全て基盤研究(A),(B),(C),若手研究(A),(B),それから挑戦的萌芽研究もそうですが,研究費のほとんどの審査体制に採用されているものでございます。また,基盤研究(B)以上の種目につきましては,6名の審査委員が担当することになっております。
 学術分科会から御指摘があったことは,そのことが狭い領域に研究を閉じ込めてしまい,発展させるものを選ぶことができない制度ではないかという点だと思います。ただ,この方式は,10万件を超える審査をするには極めて適しておりまして,今までに様々な要求はございますが,公平性,適切性,あるいは公正性については,研究者から高い信頼を得ていることも事実であります。結果が信頼性を反映しているのだと思います。
 では,審査委員をどうやって選ぶかということが一番問題になりますが,工夫といたしましては,科学研究費補助金,あるいはそれに類する学術研究の審査で研究費を獲得した方を,現在は審査委員の候補者として登録しております。最初は,候補者について基盤研究(B)以上の獲得者というような制限を設けましたが,現在は若い人も育てるという意味も含めまして,この基盤研究全体の獲得者で相当な方を審査いたしまして,次の審査委員候補者として登録したデータベースを持っております。これは,学術研究に閉じたといいますか,ほかのところに利用されるものではなく,学術研究の質をきちんと保つための最も重要な名簿でございます。この登録者の中から各センター研究員が毎年,最も適したと思われる方を審査委員として選んでいるわけでございます。したがって,専門性が担保されると同時に非常に公平かつ公正なシステムになっており,それに加えて,10万件を超える審査をするために,極めて工夫された歴史を持ち,かつ皆さんに信用されているものでございます。
 一方,学術分科会からの提案も,またごもっともなことのように思われます。見掛け上,専門分野を細かくすることによって,狭い領域からしか審査されないことについての意見,つまり,もっと違う観点で審査してもらいたいというような意見は,創造的な研究には必ず起こることでございます。そういう貴重なものをうまく取り上げられないかという御指摘については,学術の動向に従ってということにはなりますが,一つは審査の方式を変えることによって,可能になるのではないかと思います。御指摘は,細目を大くくり化して,少し自由に選択できるようにしてはどうかという意見が諮問となったものと,私どもは受け取りましたが,それだけでは不十分で,結局,審査の方式を変えることとセットでなければ,うまくいかないだろうということに立ち至りました。
 具体的な方式としては,第1段審査委員と第2段審査委員が,議論をして採否を決めていくという制度があるのではないか,ということです。これは2年前にピアレビュー・タスクフォースで,欧米の審査方式を調査したこと,また,実際に欧米に留学したことのある審査委員の方へ聞き取り調査をしたことから出てきたものです。
 例えば同じ分野で異なる専門の方が6人いたとして,分野の中ですと学術そのものの構造はそれほど変わりませんので,いずれかの専門について,それぞれがその専門家の意見を聞きながら,議論して順位を決めていく。そういうことがあり得るのではないかという目で,海外の様子を調べました。
 その結果, 3ページにあります米国のNIHは極めて大きな額をファンディングしているところですが,NIHで行っている,いわゆるスタディ・セクション方式というものが該当しました。
 NIHは医学関連の領域にだけファンディングするエージェンシーでございますが,これは,例えば免疫学とか,脳とか,ある程度関連したものを集めた領域については,1段審査と2段審査を同じ審査委員が議論し,競争して採択を決めるという方式です。審査委員の質というものを大いに当てにしなくてはならない方式ではございますが,NIHでは,もう長年うまくいっているということです。科研費でも,このように細目を大くくり化した場合にはSS方式,スタディ・セクション方式というのがいいのではないかということが,2年前にタスクフォースからの報告として,あるいは主任研究員会で議論されました。
 ただし,諸外国のファンディングエージェンシーとの一番の違いは,年間の審査件数にあります。米国のNIHですと,それでも5万件ございますが,我が国の10万件,この倍というのは相当すごい数でございまして,大くくり化したとしましても,その範囲の中でどのぐらいの数が本当にきちんと審査できるか。それから,専門とは少し違う分野で,専門分野を越えて,採択されるためには,どういう申請書を書かなくてはならないか。具体的に検討すると,そういう問題がたくさん出てまいります。しかし少なくとも,審査委員全員が分野全部の応募を読んで,点数を付けて,そしてもう一度集まって,本当に自分の付けた点数がほかの委員に説得力があるかということについて1件ずつ対応しながらやっていくという非常に丁寧な方式は,本当に新しいものを発掘できるであろう,あるいは申請者から見て,発掘してくれるであろう,発見してくれるであろうという,そういう意味の期待のある審査制度であると思われます。
 ほかのところも,ドイツなどは,ピアレビュー制度と言っておりますけれども,これも基本的にはボードを作りまして,同じように議論で審査していくということです。それから,米国のNSFはかなり違っておりますが, POやPDと言われている人たちが不断にサーベイするということが前提にありまして,それを基に,研究費を採択していく。国によっても,あるいは各国のファンディングエージェンシーがどの分野を広く当たっているかということによっても,それぞれ違いますし,非常に特徴のある工夫がされております。
 しかし,我が国のように,申請者に対して,自然科学から人文社会科学とよく言われますが,要するに学術研究の全ての分野に門戸を開けておいて,自分が研究したいと思う課題について申請し,それを各専門家がきちんと審査して採択するという制度のところは非常に少ないと思われます。ドイツが科研費のボトムアップのレベルにおいては似たことがございますが,応募件数が全然違います。ですから,我が国で実際にどうするかということに関しましては,破綻を生じないように,十分に検討しながら,細目のくくり方にしても,スタディ・セクションのくくり方にしても,更に深く検討する必要があると考えております。迅速にやりたいとは思いますが,現在は,そういう段階であります。
 また,多様性が,いかに学問の本質であるかということで,新しい学術の芽は,知の創造,あるいは蓄積,継承というものの上に乗って研究していくことから生み出されると思われます。何もないところから何か新しい分野が思い付かれるわけではございません。この当たり前のことをきちんと保障するために,多様性を生み出す力,要するに他人まねでなく,自ら新しいものを追究していくということが必要で,全ての人がそうであれば学問は極めて多様なものになります。ただ,大きく言えば似たものについて,ある程度のくくりの中で審査していくという方法については,数と研究のフェーズと種類,そういうものを全部含めまして,やはり専門性と多様性をきちんと保障していくということが必要であり,他方,生み出されてくる多様性に対応する審査制度を作っていくということが必要で,この2段階で現在,考えているところでございます。
 学術分科会からの諮問は極めて直截的で,大くくり化して細目を半減するべきだというように受け取られた向きもございまして,研究現場におります我々センター研究員にとっては,大変戸惑いが生じておりました。しかし,検討を続けた結果,今回のようなことで,学術そのものの質が向上し,振興されるなら,確かにいい機会であるということに捉え直しまして,単に数合わせをするということではなく,もう少し内容に踏み込んだ検討を現在,続けているところでございます。
 続きまして,資料2-2の特設分野研究でございます。基盤研究(C)では,従来の細目では出せない,あるいはもっと別のくくり方にした方が良いと思われる細目を時限付き細目として今も募集しておりますが,特設分野研究は,それを少し拡大し,学術の動向に沿って,今,芽を吹こうとしているもの,挑戦しようとしているものをいち早く捉え,分野として設定するという種目です。2年前に募集をいたしまして,今年,第1回の審査会が終わりました。まだ審査会で最終的な決定をされておりませんので,詳細については述べることを控えますが,状況を御報告いたします。
 特設分野研究の概要は,学術調査等を踏まえて学術システム研究センターで候補分野を検討し,それを審査部会で承認していただいて決定するものでございまして,採択予定課題数は30件程度ということにいたしました。これは,第1回審査公募をするときに, 新しいものですし,既存の分野で応募できるものについては出せないことにしておりましたので,100件程度の応募数ではないかと考え,設定した件数です。ただ,重複申請を許すということにしておりました。結果として,100件というのは全く検討違いでございまして,多い分野は450件を超えまして,一番少ない分野でも270件ございました。
 申請数の多さが最終的に審査に影響してまいりますが,採択件数30件というのは変えないことにいたしました。従来の場合,申請者数に按分(あんぶん)で配分額が決まりますので,申請者数が決まって,大体の採択数が決まるということになるわけでございますが,今回は新しいものを目指して,細目にとらわれない分野に出していきたいという動きが学術研究には最も重要なムーブメントであるということで,30件程度というのは揺るがないようにしておこうと,そのまま進めております。
 新しい審査方式の導入としましては,ここに書いてございますが,一つは,特設分野研究では,先ほどもお話ししたように,書面審査の審査委員が点数を付け,合議審査でも同じメンバーが一堂に会して,ほかの人の点数をコメントも含めて見ながら,一つずつ採否を決定していくという非常に丁寧な方式をとりました。
 それから二つ目ですが,基盤研究(B)と(C)を区分せずに審査を実施するということは,現在,額によってかなり申請者に影響を与えているところがございまして,基盤研究(C)は(B)に比べて少し小振りのものが出てくるということになっておりますが,例えば基盤研究(B)と決めてしまいますと,感覚としては,基盤研究(C)の大きさのものは,基盤研究(B)の申請額を減らして出すということはなかなかありません。そういうことから,質的に同じで,重要なものをとるということを重視いたしまして,基盤研究(B)と(C)を最終的には区別せずに審査するという非常に挑戦的なことを行いました。これは,審査委員の方には非常に難しい判断であったと思うのですが,第1回目はこの審査方式を作り上げるという意味でも,ある程度成功したように思います。
 それから三つ目,審査結果の所見の開示でございますが,これまではいろいろなことを考えて,具体的なことを書かずに,例示化して,50%以上だとか,80%以上だとかいうようなことが書かれていました。しかし,それでは,申請者も,あるいは審査委員も育てることにならないということがセンターの意見でございまして,現在では,審査委員からのきつい意見も添えて,具体的に所見を提示するということを行っております。これは全員ではなくて,最終的に残った60件程度のもののうち,30件程度を採択いたしましたけれども,そこで落ちたものについて具体的な所見を開示するということになっております。
 次のページに参考が載っております。ネオ・ジェロントロジーは,社会科学,医学などを中心としております。現在の65歳以上を高齢者として一律にみる社会制度の不自然さを,医療,社会制度,老人の文化的地位等「老化の多様性」の上にたった研究を「ネオ・ジェロントロジー」という新しい土俵を作ることによって始めようとする試みを募集しました。
 連携探索型数理科学は,数学がキーワードになっておりますが,数学的な構造が社会科学にも,生物学・生命科学にも,理工学にも入っております。そこから数学的な構造の発見がある場合,それを主としましたが,基本的には,数学的な構造をうまく使うことによって,社会科学なり,生物学なり,理工学なりが説明できるという新しいものについても提案がございました。
 それから,食料循環研究ですが,これは非常に洗練された学問として発展している農学分野を,もう一度,農林水産・畜産業という食料生産の現状に立って,自然の循環における農業等の役割まで含めて新しいアイデアを出してもらおうということで,これが470件来たものでございます。
 これらについて,それぞれ3回,審査会を行いまして,審査委員の方にはへとへとになるぐらい頑張っていただきましたが,その御負担を軽減することも含めて,方策としてはある程度の手応えを得たと考えております。

【佐藤部会長】
 勝木先生,どうもありがとうございました。分科細目の件,特設分野の件,又は海外での審査体制,本当に詳しく御説明いただきまして,ありがとうございます。勝木先生のお話にもありましたような科研費のワーキンググループの主査をされております山本先生の方から,特設分野の審査について,お話しいただきたいと思います。よろしくお願いします。

【山本JSPS学術システム研究センター科研費WG主査】
 山本でございます。特別分野研究の審査について,現時点でのまとめといいましょうか,状況について御報告をいたします。
 先ほど勝木先生からも御説明がありましたように,これはかなり新しい試みでございまして,本当にこういうことで審査ができるかどうかというのは,やはり非常に不安な面もあったわけです。思考実験を繰り返しやって,大丈夫だとは思っておりましたが,最後の最後まで本当にうまくいくのだろうかというところはありました。結論としては,スタディ・セクション方式というのが非常にうまく機能したと言えると思います。もちろんいろいろ問題はあって,それは後で述べさせていただきますけれども,基本としては,機能したと思います。
 連携探索数理科学,食料循環,ネオ・ジェロントロジーという三つの分野は,いずれも非常に広い分野にわたるテーマでして,専門分野が大きく異なる審査委員の間で本当に議論ができるかというところが心配でした。しかしやってみると,議論白熱になりまして,1件当たり平均すると10分ぐらいやっていたのではないかと思いますが,予定した時間をはるかに超えて熱心に議論していただきました。
 ほとんどの場合,審査委員が出身分野の代表というようなことは余りなくて,特設分野としていいものを選ぼうという姿勢で非常に積極的にやっていただきました。その結果,私は3件とも出席させていただきましたけど,分野のバランスというような議論であるとか,分野ごとの申請数に対する配慮とか,そういうことは全く議論に上らず,本当に特別分野にふさわしいものが選ばれたというのは非常に良かったと思っています。
 採択件数も,領域によっては30件に満たなかったです。数は言いませんが,本当にいいものだけを審査会が選んだということが言えると思います。これが本当に良かったかどうかは,三,四年たって本当に成果が出るかというところで最終的には評価されると思いますが,新しい審査方式として機能したというのは,非常に良かったのではないかと思っています。
 一方,問題も少なくなく,やはり審査の負担が非常に重いということはあったと思います。審査委員の先生方には大変御負担をお掛けしてしまいました。初回ということで,我々が制度設計する上でかなり慎重になったということもありますので,今回の経験を踏まえて,いかに簡素化するか,しかも本質的な部分を失わずに簡素化するかということが今後の大きな課題です。それに向けて現在は,様々な工夫を検討しているところでございます。
 一つ,今回分かった大事なことは,ある程度具体的な規模感がかなり具体的に捉えられたことだと思います。今回は60件という数を最終的に合議審査の対象としました。といいますのは,応募件数自体は270件であるとか,400件だとか,非常に多い数になりましたから,最初,数人の審査員でスクリーニングして,みんなで読む60件を選びました。それが第2回の審査会でやったことです。その60件に対して,全員で読んで議論したという経緯です。この60という数が限界に近いという御意見が多く,やはりもう少し減らすことができるのであれば,審査の質を上げられる可能性があるように思います。このスタディ・セクション方式が,いろいろな審査でどの程度成り立つか,通用するかどうかはまだ自明ではなく,今後は,今年度の経験を踏まえ,また来年度から新たに始まる3領域の結果も踏まえつつ,試行錯誤試行錯誤を繰り返して,システムとして成熟させていく必要があると思います。
 また,審査委員の確保ということが非常に大事で,ここまで熱心にやっていただいたということは,言ってみれば,最初だったのでこれだけの審査委員を集めたということもあったのですが,それを多くの分野に適用しようとすると,審査委員をどう確保していくか,あるいは育成していくかというのが課題になるだろうと思います。
 ともあれ,この特設分野研究の審査ということを通して,ちょっと言い過ぎかもしれませんが,特設分野自体がやはり分野細目の壁を一つ破るようなものであり,さらにそれが1段審査,2段審査がもう一つの壁を破るものであり,さらに基盤研究(B),(C)という審査種目の壁を破るものです。ある面,三つの大きな挑戦があったわけですが,それがある程度機能したということは,今後,科研費をどういうふうに変えていくかという点では非常に大きな試みになったのではないかと思っています。

【佐藤部会長】
 山本先生,どうもありがとうございました。特設分野の審査の状況について,よく分かりました。
 次は,スタディ・セクション方式の審査の在り方ということで,小安先生が学術振興会の調査メンバーを務めていらっしゃいましたので,海外の資金配分機関の審査体制について,お話しいただけますでしょうか。お願いいたします。

【小安委員】
 私がセンターにおりましたときに,2011年9月26日から30日まで,米国のNSFとNIH,それからジョンズ・ホプキンス大学と,ハーバード大学にこの調査に行ってまいりました。その後,同僚の藤野研究員は,英国並びにドイツに行きまして,同じく同僚の福田研究員は主に人文社会関係の調査をしてくれました。
 私は,主にNSFとNIHのことに関してお話をさせていただきたいと思います。
 先ほど勝木先生から表を使って御説明がありましたが,自分の行きましたときの若干古い情報になってしまうかもしれないのですが,御参考までに紹介させていただきます。
 NSFの場合には,審査は分野ごとに分かれている部分があるのですが,細目ほどは分かれておりません。例えば人社系は人社系,生物系は生物系等々になっているのですが,それぞれの分野で非常に柔軟性が高く,審査方式も,いろいろな方式がとられています。私が非常にびっくりしたことは,それぞれにプログラムオフィサーがいるのですが,それぞれの分野で持っている予算の5%までは,プログラムオフィサーが単独で決定できるということがありました。特にハイリスク,ハイリターンの課題に対しては権限を持っていて,そこで決定することができるということが非常に大きな特徴だったと思います。
 予算も基金化されておりますので,オールイヤーアワードイヤーとしてやっているということです。多くの場合は,まず通常の書面審査,それから,その後にパネルという2段階審査になっておりまして,大体一つの書面を3人が読むのがほとんどの場合でございました。ただ,1人で読む数はかなり限られていまして,多くても10個ぐらいということで,これが大きな違いであります。その代わり,審査員の候補者は10万人とか,そういうオーダーで抱えています。ただ,それでも,審査委員を得るのにかなり苦労しているということが向こうの方のプログラムオフィサーの御苦労のようでした。大体一つ当たり2時間程度,読むのに掛かるというのが平均的だと言っていました。
 それから,前回,日本の学術会議の大型の研究プロジェクトの話が出たと思いますが,NSFでは,そのようなかなり大型の研究費も扱っております。例えば材料科学の分野では,高磁場研究施設やシンクロトロンなど,こういうものも実は扱っております。ここでいろいろな議論をして,6年ごとの更新申請などをして大型の施設を維持しているということで,ファンディングエージェンシーがこのようなところを,少し大きなものから個別のものまで扱っているということがありました。
 NSFは先ほど御紹介がありましたが,自然科学の中で医歯薬を除いた部分をほとんど全てカバーしております。人社系はカバーしておりません。
 次に,NIHは,医歯薬の部分をカバーしておりまして,こちらは先ほど御紹介のあったスタディ・セクションでやっているところです。170個ほどのスタディ・セクションがあって,大体一つに20人から30人いるのですが,その中で90件から100件の申請書を扱っております。一つの申請書を最低三人で読むことにして,一人当たりにすると大体6個から9個だとNIHの方はおっしゃっていましたが,その後,大学の研究者に聞くと,もう少し多く,10件から12件ぐらいは大体やっているということでした。
 申請書を読む時間としては,一人は,大体1週間はそれにつぶすと言っていましたし,別の人は,一つに3時間掛かるから,それ掛ける申請書の数だというようなことを言っていました。
 彼らの採点は,インテレクチュアルメリットという,いわば科学的なメリット,それから,ブローダーインパクト,これは日本語で多分,波及効果に当たると思うのですが,この二つを加味して,オーバルインパクトオーバーオールインパクトでスコアを付けるという方法です。今では,こちらでも余りにも申請書が多くなってきて,かなり困っているということで,現在,下位の50%は,議論にも上らずに,そのまま突き返す,つまり,トリアージと呼んでいますが,コメントを付けずに返すというようなことをやっていると言っていました。
 同様のことは,NSFの生物系でもあり,非常に申請件数が増えているので, 3年前から新しいやり方を始めたと言っていました。まず4ページのサマリーを出させて1段審査を行って,上の3割だけにフルの申請書を出させるという方式をとり始めた。ただ,これがどうなったかということは,まだその後,聞いていないので分かりません。
 それから,NIHの場合に非常に苦労していると言っていたことは,審査の質をどうやって担保するかということであり,スタディ・セクションをやる一つの大きなメリットは,審査委員を育てることだとはっきりと言っておりました。つまり,20人から30人の中に,毎回,二,三人,割と若手の新しい人をアドホックに入れて,そのパフォーマンスによって,これはきちんとしてくれるから次につなげようというような形でメンバーを育てていくというのが一つの重要な役割だということです。この前,谷口先生から御紹介があったブルース・アルバーツのPNASの論文の中にも出ていたのですが,非常にいい審査委員がなかなか最近,引き受けてくれなくなった。それは特に予算が厳しくなって,6%ぐらいしか採用できないとなると,アウトスタンディングなものの中で選べと言われても選べない。そのような状態になってくると,もう何のために審査をやっているのか分からないということで,審査委員を引き受けてくれない人が非常に多くなってしまったということで,この点に非常に苦労していると言っておりました。
 それから,RO1という最も基本的なグラントで,初めて受ける平均年齢がもう40歳を超えてしまったというような問題も出てきていて,キャリアパスの問題に非常に苦労していると言っていました。
 それから,その当時でも,大体20%の研究者が50%の予算を受けているような状況がありました。
 また,非常に私にとって印象的だったのは,生産性という観点です。生産性は,何をもって生産性と言うかという問題はあるとは思うのですが,年間80万ドル程度の予算を使っている研究者が最も効率がいいという統計が出ていまして,要するに多くなればなるほど,効率は逆に下がって無駄になるということを言っておりました。80万ドルは,8,000万円から1億円の間だと思いますが,これは向こうのシステムでは,その中に給与が入っていますから,それが全部丸々研究費というわけではありません。しかし,やはり山を作って,多ければ多くなるほど,どんどん効率が下がるということで,巨額な予算を個人に与えるのは余りよろしくないということをアメリカの研究者も言っていたたことが非常に印象に残りました。
 もう一つ,最後に,審査委員をどのくらいやっていますかと,そのとき行った大学の研究者に聞きましたところ,大体3割から5割の人は何らかのスタディ・セクションに関わっている。つまり,アクティブな研究者であれば,審査をすることはある意味義務だと考えられているところがピアレビューを支えているのだと思いました。
 ただ,一方で,先ほど申し上げたように,予算が厳しくなってくるとなかなか審査委員をやるということが大変になり,読むことの負担ではなくて,選べなくなる負担という意味で非常にきつくなってきているというようなことを言っていましたので,その辺りを私たちが科研費の審査について今後どのようにやっていくかを考えなければいけないという印象を持って帰ってまいりました。
【佐藤部会長】
 小安先生,どうもありがとうございました。
 次に,甲斐先生から特設分野研究,特に先生は食料循環研究の審査を携わっていただきましたので,その立場からお話を頂きたいと思います。よろしくお願いします。

【甲斐委員】
 私は食料循環研究の審査に携わりましたが,この特設分野を試行的に行ったという,このチャレンジに対しては,これから日本学術振興会でいろいろなことを検討して評価していただければいいと思います。私がこれからお話しすることは,ただ一委員としての感想として聞いていただければ良いかなと思います。大きく二つに対しての感想があるのですが,一つは,スタディ・セクションそのものに対する感想と,もう一つは,特設分野という新しい分野を設定したことの意義について,別々に述べさせていただきます。
 最初に,スタディ・セクションについてお話しします。食料循環研究は,農業というふうに先ほど勝木先生から御説明がありましたが,農業というより本当に広い,食をめぐる全てのことに関する申請があったと思います。その中には,私の関係するような生物領域だけではなくて,化学,工学,経済,社会を含んだ非常に広い分野でありまして,その上458件ですので,審査は予想以上に大変でした。
 メリットとデメリットということを聞かせてほしいというお話がありましたので,メリットからお話しいたしますと,以前の審査方式との比較は,分野,種目が違いますのでできないと思いますが,基盤研究などで一般に行われている2段審査方式に比べれば,とても丁寧な良い審査方式だと思います。以前の2段審査委員は,申請書が事前に送付されるわけではなく,2段審査会の会議場に行って,トップの方は合格,はるかに下の方は落とすとして,ボーダー辺りについて,積んである申請書をその場で当日1日で一生懸命読みながら,議論をするわけです。ですから,時間的に限られていますし,しかも専門領域の近い人は二人なので,その二人で議論するぐらいで,丁寧さから比べたら,スタディ・セクションの方が優れていると思います。
 それと,やはり1回目,全員が読んできて,2回目もそれで議論いたしますから,ほかの審査委員の判断根拠と自分の判断根拠の違いを深く知ることになります。特に非常に広い分野でしたので,私は経済,社会のことは分かりませんが,そういうものを聞きながら,なるほどと思うこともありました。
 このように,お互いに話し合って,この領域には何が大事なのかとか,判断根拠を共有していけることは非常に良いと思います。それから,先ほど小安先生がおっしゃったように,審査委員の教育効果ということでは大変意義があると思います。新しい人たちが狭い領域だけで良いと思って付けてしまったけれども,こういうふうに広がって考えるとそうではなかったと気づくようなことはとてもいい効果があると思いますし,メリットだと思いました。
 デメリットとしては,極めて時間が掛かり過ぎる。NIHとの比較で,NIHがスタディ・セクションを行っていますが,NIHでは一人当たり10題が与えられます。今回,特設分野が460件もあったということもありますが,1段審査は,全員が読むことは無理だからと,3分の1に分けてくれました。それでも150-160件,1段審査で読みます。しかもスタディ・セクションに掛かってしまうと意見を述べなければいけないので,今までとは違います。先ほど言ったように,経済,工学,化学まで,全然分からない単語から調べて,勉強をしながら書くのと,自身が理由を述べる可能性を意識して読むことから,大体ふだんの3倍掛かりました。
 それで,1段審査と2段審査の間に日本式ですけど,もう1回集まって,この中で全員が読むものを決めます。今回は60題にしました。この60題を,全員で読まなければいけません。そこでまた同じことが起こります。また全然分からない分野から一生懸命読みます。正直言って,二,三か月ほとんど休みと夜はつぶれました。
 これは,将来的に考えていただかなければいけませんが,スタディ・セクションはいいので他種目にも広めていくべきだと思います。ただ,このままでは無理です。日本とアメリカは単純比較できません。NSFとNIHを合わせれば2兆円あるわけです。科研費は2,300億円です。合計10万件と言いますが, 一つの研究費の単純計算で規模が10倍あるわけです。だから,NIHくらいの申請額の審査だったら,これだけ頑張ってもいいかと思いますが,基盤研究(C)にこれだけの時間を掛けて,年間170万円ぐらいもらえる研究に何日もつぶして,頑張って読まねばならない。あらゆる種目で,あらゆる研究者がこれをやると,多分,研究の時間は全くなくなります。1年中審査をして,ほかの分野を勉強しなければならない。これは本当に日本学術振興会でいろいろと考えて工夫していただかなければ不可能だと思います。
 何人かの委員からも,こんな丁寧な審査を基盤研究(C)でやることは無駄だ,無意味だという意見が出ました。私もそう思いました。基盤研究(B)でも,この時間はないだろうと思いました。私は基盤研究(A)できれば基盤研究(S)からにしてほしいと思いました。本音を言うと,特別推進研究,基盤研究(S)からにしてほしいと思います。折れても基盤研究(A)。でも,先ほど言った足切りなど,いろいろな方策を検討して,良い方式を入れていくことを日本学術振興会は考えてくれると思いますので,それに期待いたします。
 それから,話し合う時間ですが, 最初は1設定3分と言われました。スタディ・セクションで3分なのかと驚きました。説明をする方の時間も入れて3分だと,2分弱ぐらいしかディスカッションできません。結局,やってみたら,10分近く経ってしまいました。ディスカッションだけでなく,説明する時間も必要ですので,スタディ・セクションなら,1題10分は最低でも欲しいと思いました。皆さん言いたいことはたくさんあって,議論白熱で,とてもいい会議でしたが,打ち切らざるを得なかった。だから長くしてというと,また首を絞めますので,工夫してください。また件数は,足切りも含めて考えてください。
 それから,もう1点の方で,特設分野を置いたというチャレンジに対して,自分で審査をやってみて,大変面白いチャレンジだったと思いました。実は日本の研究者個人は,自分の既設の分野の中で新しい分野に入っていっています。それから,その関連の融合分野を開いていっています。融合分野が開けてないという批判は当たっていないと思います。それが現場の感想です。ただし,その既設の分野の中で,その審査委員が納得できる範囲の融合分野になっているような気は少ししました。今回の特設分野研究の申請書を読んで感じたことは,とんでもないものもあるので,面白いなということです。日本学術振興会にある豊富なデータと動向の精査によって,新しい動向が開きそう,芽がある,あってもいいのに見落とされていると思うなど,そのようなことを言われていたと思いますが,審査をしていて,そんなにハイレベルではないかもしれないけど,新しい融合分野の芽になりそうだというような課題がちらちらあったかと思います。そういうものから本当に新しい融合分野が開ける可能性を作っていけるのであれば,面白いのではないでしょうか。ただ,種目を見付けていくことは大変な作業だと思いますので,データベースや動向調査を駆使しておられる日本学術振興会に頼るところが大きいとは思いますが,どんどん広げていけるものでもないとも思いました。それに気を付けながら,是非とも続けていってほしいチャレンジだと思いました。

【佐藤部会長】
 ありがとうございます。

【小安委員】
 一言だけ,日本学術振興会のために。先ほど言い忘れましたが,NIHは,年間に審査コスト1億ドルを使っています。そこが一つ大きな違いだということは申し上げておいた方がいいかと思います。

【佐藤部会長】
 ありがとうございました。甲斐先生,特設分野の貴重な審査の体験をお話しいただきまして,ありがとうございます。
 これから自由に,委員の皆様方から質問なり,討論をしていただきたいと思いますが,いかがでしょうか。NIHなどと日本の科研費とを比較したとき,やはりお金の規模が全然違うわけですね。10倍違うとおっしゃいましたが,日本の基盤研究(C)のようなものはないということですか。

【小安委員】
 NIHの場合は,大体3兆円ぐらいの予算ですが,その中で,いわゆるRO1の部分は,日本の科研費と同じぐらいの規模ですので,それほど大きいわけではありません。ただ,期間としては3年から5年で, PIの給与の一部に使い,それから,ポスドク一人雇って,場合によってはテクニシャンを一人雇う。残りを研究費で回せるぐらいの予算の規模になっています。

【甲斐委員】
 2,000万円ぐらい。

【小安委員】
 そうですね。2,000万から3,000万ぐらいの予算で大体回っています。

【佐藤部会長】
 先ほど8,000万円ぐらいが一番効率性がいいとおっしゃいましたが,それは大きい方ですか。

【小安委員】
 やはり向こうの人でも,RO1,一つで生きていくことは非常に困難です。大体最低でも二つ持っていて,ちょうど年度が重なっているというような形で回していかないと生き延びられないと思います。三つぐらいあると大体安定します。
 それから,日本の新学術領域のような,プログラムプロジェクト研究という別の予算がありまして,それと組み合わせてやっている方がおられます。
 それ以外にも,プライベートに,ハワード・ヒューズ・メディカルインスティチュートのような大きな財団があります。そういうところを合わせてくるともっと大きなお金になりますが,それでも8,000万ぐらいが一番,効率がいいのではないかという統計がある。そういうお話でした。

【佐藤部会長】
 日本の場合,基盤研究(C)は大事な役割をしていて,小規模の研究はたくさんあるのですが,それを対象としないということですか。

【小安委員】
 給与をどこから持ってくるかという考え方が一番大きな違いです。日本の場合は,基本的にハードマネーといって,大学が持っているので,実は大学の研究者の方というのは,自分の後ろで幾らお金が出ているかということをふだん意識されませんが,アメリカの場合には,そのお金を含めて自分の予算として獲得してくるところが非常に大きな違いだと思います。

【北岡(良)委員】
 NSFも,NIHも,アメリカでは人文社会系はどこでファンディングされるのですか。

【小安委員】
 機関が分かれていますね。ナショナル・エンダウメント・フォー・アーツやナショナル・エンダウメント・フォー・ヒューマニティーというところで,芸術系も審査していたと思います。

【西川委員】
 小安先生に伺いたいのですが,先ほど一番効果的,効率的にお金を使えるのは,日本円にして8,000万だというお話がありましたけども,アメリカでは,どのような形で効果的であるかというのを評価しているのでしょうか。適正な額がそれぞれの研究にあると思いますが,その辺りはどんなふうに判断されているのでしょうか。

【小安委員】
 申し訳ないです。きちんとした数字の根拠は聞いてこなかったのですが,論文というアウトプットは一つの要素になりました。ほかの要素に関して,今,記憶が定かではないのですが,非常に大事なポイントなので,必要であれば,もう1回,調べ直します。

【佐藤部会長】
 ありがとうございます。

【鍋倉委員】
 新しいファンディングともう一つが大学からのデュアルサポート。アメリカでは若手のスターターマネーというのが結構充実しています。向こうはある程度のところまではレベルアップしてくれて,その上で競争にさらす。デュアルサポートが非常に重要で,かつ若手の競争力を上げるということに重要です。日本では,確かに若手研究(A),(B),また基盤研究(C)の方で充実していますが,最初に取れるか取れないかで大きく違ってくる。やはりデュアルサポートという,大学のサポートは,非常に重要な気がします。

【佐藤部会長】
 ありがとうございました。どうぞ谷口先生。

【谷口委員】
 今,鍋倉委員からデュアルサポートのお話が出ましたので,それに関係して意見を申し上げたいと思いますが,この学術分科会の報告書の参考資料4ですが,ここでもデュアルサポートシステムの重要性がうたわれているわけです。いろいろなところでデュアルサポートシステムの重要性はうたわれているのですが,今,運営費交付金,あるいは基盤的基盤経費全体が削減されるということは困る,だから,デュアルサポートが必要だというところまではみんな一致するのです。そこから先の,なぜデュアルサポートが必要なのかという議論が,もう少しあった方がいいのではないかと思います。
 この中で述べられていることは,やはり大学が困っている,これではなかなか大学が立ち行かないといったようなトーンで大体書かれているわけです。
 しかしながら,一方では,今日頂きました資料を拝見しますと,科研費に関しては8万5,000件ぐらい応募があって,採択率が30%で,平均200万という話です。ということは,多くの人たちは科研費をもらっていないわけですね。研究者人口は,二十何万人という数だと思いますし,多くの人たちが研究をしたくても,科研費という競争的資金を受けることができない状況にあると,そういう見方もできると思うのです。
 そこから,大学の本来の在り方は何かといったようなところを考えていきますと,競争的研究費というそのものだけが大学の学術を支えるために十分であるかどうかという議論をしないと,なかなかデュアルサポートシステムの重要性は見えてこないのではないかと思うわけです。
 先生方に申し上げるまでもないことですけど,百何十年,日本の大学が培ってきた大学の学問的な重厚性の中には,知の創造に加えて,知の伝承とか,いわゆる暗黙知とか,そういうものが脈々と息づいているというところが学術の層を厚くしていると思います。その基盤を支えていたのがやはり基盤的経費というところにあるものが多いのではないでしょうか。ゼロから何かを生み出す力は,必ずしも競争的資金からだけでは生まれなくて,基盤的経費といったものから,ちょっと試してみようかという研究があり,その研究が芽を出してきたから,科研費に応募しようかという,そういう仕組みがうまく駆動してきた。そのことが今までの日本の科学,学術の推進の大きな基盤にあったのだと思います。
 それが今,根っこから崩されかねないという状況を迎えるならば,ひいては科研費の在り方にも大きな影響を及ぼしてくる。すなわち科研費に応募する芽が育たないという,そういう側面があるということですね。こんな財政状況が厳しい時代ですから,どうやってこれを訴えるかということは大変難しい課題ではあります。しかし,科学技術イノベーション総合戦略2014の閣議決定という資料がございますが,この中でうたわれている,イノベーションの芽を育むということはやはり基本的に言われているわけです。これは閣議決定で言われていることですから,私たち学術を担う人たちが,イノベーションの芽を生むために,多様で柔軟な発想,経験を生かす機会の拡大を図ることは,まさにデュアルサポートシステムでなければできないことだと思います。 時間は掛かるかもしれませんが,これからしっかりそういうアーギュメントを科学者コミュニティーの中で周知して,また学術会議等でもこういうことを議論していただきまして,そして,文部科学省,あるいは政府にも理解を頂くと。その中で,一方では,高等教育における財政支出のGDP比が我が国は非常に低いとか,いろいろなアーギュメントをしっかりと構築していくということが,結果的には科研費の発展にもつながるということなのではないかということを思った次第です。

【佐藤部会長】
 谷口先生,ありがとうございました。全く根本的な問題です。

【上田委員】
 今,谷口先生がおっしゃったことは,間違いなく学問の本質的なことだと思います。一方で,今,産業も含め日本の国力が落ちていることにおいて,戦略的な学問体制といいますか,そういうことも優先的に考えないといけないと思うのです。私もクレストの先駆けを今,20件ぐらい担当していますが,やはりこれは相当な負荷です。私はNTTの基礎研究所の者ですけれども,企業倫理として,そういう謝金を受け取らないことになっていまして,無償でやっています。別にそれに関して何も不満を持っていませんが,時間を取られることに関しては別です。いいか,悪いかは,専門家が見ればすぐ分かるのですが,そこでも相当な資料を書くという労力は大変なことだと思います。
 重要なことは,選抜をするときに,例えばある企業では,エレベータートークみたいなものがあって,悪いものは瞬殺されるわけです。そういうことがこういう分野にもやはり必要だと思います。サマリーで審査とありました。つまり,無駄なことをさせないということは重要なことで,つまらないことを延々と書いて,メンバーを作って,お金をやって,それで駄目でしたではなくて,最初から,駄目なものは駄目というふうにする。ただ,基盤研究(C)みたいなものは,自由裁量でやらせるというぐらいの落差でよくて,基盤研究(S)とか,そういうものに関しては,やはり第1審査はサマリーでずばっと言えているかどうか,それだと非常に楽だと思います。クレストでやっている隣の先生は,最初からビデオにしてほしいと,読むのもつらい,そうしたら,その人の雰囲気も分かるし,パワーポイントで的確なことが書いてあれば,向こうもそんなことを文章で書く必要ないだろうと言っていました。今はマルチメディアがどんどん進んでいますから,そういうことも真面目に考えるべきだと思います。 優秀な研究を残すことは極めて大事ですが,それに関わって,そうでないたくさんのものに対してコストと時間を掛けることは非常に無駄だと思うのです。だから,そこはもう少しサマリーで審査をするとか,マルチメディアを使うなど,検討すべきだと思います。
 あるいは,私の国際会議の分野はすごく難しいのですね。どうやっているかというと,まず,完全にブラインドですけども,システムに自分のキーワードを入れます。自分の専門の論文を書きます。ゲストに入れます。すると,自動的にキーワードを拾ってきて,機械学習で,レリバンス,論文が出て,それに対していいか,ウィービングかなどと5段階の評価を書くわけです。ただ,それが選ばれるのではなく,その選んだことに対して,それを更にヒントにして論文が来る。レリバンシーがかなり徹底しているわけです。
 自分の分野外のものを読むということは,読まれた人も,いいかげんな査読をされますし,読む人もつらい。だから,そこもキーワードをどんどん細かくするのではなくて,もう少しそれをうまくマッチングするようなシステムをデータベースなりできちんと作る。もう少しそういうことも考えていって,全体の効率を上げるということは,非常に重要だと思います。

【佐藤部会長】
 ありがとうございました。そうすると,そういうシステムをきちんと作っておられるということですか。

【上田委員】
 機械学習の研究者がそういうシステムを作っています。

【勝木JSPS学術システム研究センター副所長】
 不意を突かれたような感じで,正確には反論できないと思うのですが,先ほど谷口委員がおっしゃったように,暗黙知のようなものも含めて,伝統的に骨太で行くことが学術研究の一番大事なポイントだと思っております。それをどうやって応用するか,それはいろいろな方法があると思います。しかし,我々がやらなくてはいけない最大のことは,新しいことに挑戦しているかどうか,それが本当に本質的な意味を持っているかどうかを見極めていくことだと思うのです。
 それから,もう一つ,学問は成果ではありませんで,それをする人を育てることなのですね。その人が困難に直面して,いろいろな方法を開拓しながら,何かをやっていく。それがなかなか見えません。ですから,それを応用する分野に関して言えば,かなり基礎的なことも含めていろいろな方法があると思いますが,基本的な考え方の姿勢としては,おっしゃるような効率化を図るということもあります。しかし,本質をずらさずにやりたいという意味でちょっと躊躇(ちゅうちょ)する。先生の御意見については,もう一度,落ちついて考えますけれども,学術の立場は割合にそういうものだと思います。
 デュアルサポートが重要だとおっしゃった意味もそういうことではないでしょうか。外から見えて何かというよりは,むしろ知を蓄積していって,暗黙知をいかに形式知にしていくかというようなことが,学問というか,学者という者として育っていくための最も基本的なことです。

【上田委員】
 学問,あるいは学者の立場うんぬんということに関しては何もアゲンストするつもりはありません。ただ,今,この部会は何を議論するべきかといったときに,国費の少ない財政の中で戦略的に日本が学術の分野で先頭に立つ,復帰するために,例えば今の選抜方式に関してもそうですし,選考方式に関しても,書類の審査に関しても,どのような改善を見いだすかということなので,誤解のないようにお願いします。

【谷口委員】
 上田委員が今おっしゃったことも全くごもっともだと思いますし,先ほどの勝木委員のお話と食い違いがあるというわけでもないと思います。JSTの方でも最近,申請書の書類も変わってきましたね。従来は科研費方式で,最初からバックグラウンドから細かく書いて,ずっと読まなければいけないというパターンだったのが,たしか今年度から,もう少しコンパクトに内容をまとめて,その内容で1次審査のふるいに掛けるといったようなやり方をしているのではないかと思います。それはそれで,限られた人材の中で全てをできるだけ効率よく審査し,かついいものを選ぶという方法として,私は反対するものではないと思います。
 一方では,先ほどから出ているデュアルサポートの話というのは,上田委員も同意するとおっしゃってくださったので,有り難いのですが,ボトムラインにあるのは,競争的資金にそぐわないような研究もサポートすべきか,それをしないと競争的資金になかなか発展しないのではないかといったような,難しい議論だと思います。つまり,科研費に応募するためにその芽を育てるというところを大学がやらないと,ひいては,今の内閣もしきりに言っているイノベーションによる経済再生といったところにつながらないのではないかということです。その流れをいかにきちんとしたアーギュメント,ロジックで組み立てていくかということが非常に重要なのではないかと思います。

【小安委員】
 今回のこの研究費部会のまとめの中に,ほかの競争的資金との関係も少し議論した方がいいということが触れられていますが,まさにそれが日本全体で予算が伸びない中で,いかに学術あるいは科学技術というものを振興していくかという議論だと思います。大学の基礎的な体力をきちんと担保して,新しい芽を育てつつ,そこに科研費があって,さらに,ほかの科振費をどうやってうまく使っていくか,そこまで議論ができるともう少し良くなると思います。審査についても,今までは,科研費が一番きめ細かい審査をしてきたと思います。きめ細かくきちんとやることはきちんとやる,少し省力化できるところは,別のところに学ぶという形で議論を進めていくことが全体にとっていいのではないかという感想を持ちました。【佐藤部会長】
 ありがとうございました。基本的には,基盤研究(C)は大事ではあるけれども,審査の体制を少し負担が掛からないようなシステムに変えると。また,同時に融合した分野を創っていく必要性があるから,その精査については,今回の特設分野研究の経験を生かして新しい審査のシステムを考えていこうということでありますね。その辺りの線引きは大変難しいところでございます。

【甲斐委員】
 補足をさせていただきます。食料循環研究に関しては,文系から理系まで非常に広い分野がありました。一つ驚いた点がありまして,これほど広いにも関わらず,基盤研究(C)の1段審査を150件,ばらばらに読んできて,合計点を並べましたら,多岐にわたる分野ですが,審査委員の中でほとんど一致していました。ですから,皆さんの見識はすごいものだなと思いました。
 それと,ほかの研究費や,デュアルサポートのことに触れたので, 一つだけ。資料1の8ページのところの科研費を活用する観点に立った指摘の中に,競争的資金全体の視野を持って,というのがローマ数字2,4にありましたが,こういう項目をできましたら,最初のところに,ほかの競争的資金についての改革ということを一つ入れていただいて,まとめておいていただけると,次回のたたき台になるかと思います。全体の流れがあって,科研費の前の芽をデュアルサポートで。科研費でしっかり。その芽が大きな研究費にという流れを作ろうと言えるのは,この研究費部会かと思いますので,是非次回から話合いをしていただけると有り難いです。

【佐藤部会長】
 分かりました。鍋倉先生。

【鍋倉委員】
 今,科研費も含め学術研究の位置付けについて,イノベーションで,これからの産業,技術の芽を創るというところの位置付けでかなり議論が進んでいるように思います。そうではなくて,一般の方のモチベーション,興味をサポートしているという趣旨で,学術は非常に重要だという視点を少し打ち上げるということが必要ではないのかと考えています。例えば天文学では,一般の方でも新しい星を見付けている。新しい種を見付けたり,種の分類を行うということは,大学と関係ない一般の方でも関わることができます。
 大学や科研費をもらっていない方々の興味などを学術がサポートしている。一方,経済で生活の質を上げるというイノベーションは非常に言われていますけれども,そうではなくて,国民の質,タックスリペアに対する還元をどう考えるかと,そういう議論において,学術は学術で非常に重要という視点を少し打ち上げるということが必要ではないかと考えています。

【谷口委員】
 まさに同感です。やはり知の創造が学術の根幹にあることは言うまでもないのですが,社会から離れた学術はあり得ません。知の創造と同時に,知の循環といいますか,社会からの問い掛けがなければ学術もないという発想,知的な社会があって,学術のますますの発展があるという発想も非常に重要なので,科研費を考えたときに,学者の既得権益として科研費があるという発想は,受け入れられないと思います。これからは,学術がどうやって社会からの問い掛けに答えているか,また,知の循環を働かせているかということを,科研費という文脈の中で議論していただくと有り難いと思いました。

【佐藤部会長】
 ありがとうございました。全くそのとおりですね。時間になりましたのでこれで終わりにしたいと思います。事務局でこれをおまとめいただきまして,次回の議論につなげていきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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