参考資料7 経済財政運営と改革の基本方針2014~デフレから好循環拡大へ~(抄)(平成26年6月24日閣議決定)

平成26年6月24日
閣議決定

(目次)
第1章 アベノミクスのこれまでの成果と今後の日本経済の課題
 1. デフレ脱却・日本経済再生
 2. 経済再生の進展に向けた基本的方向性
 3. 「創造と可能性の地」としての東日本大震災からの復興
 4. 日本の未来像に関わる制度・システムの改革
第2章 経済再生の進展と中長期の発展に向けた重点課題
 1. 女性の活躍、教育再生を始めとする人材力の充実・発揮
 (1)女性の活躍、男女の働き方改革
 (2)教育再生の実行とスポーツ・文化芸術の振興
 (3)複線的なキャリア形成の実現など若者等の活躍促進
 (4)少子化対策
 (5)健康長寿を社会の活力に
 2. イノベーションの促進等による民需主導の成長軌道への移行に向けた経済構造の改革
 (1)イノベーション
 (2)コーポレートガバナンス
 (3)オープンな国づくり
 (4)資源・エネルギー
 (5)規制改革
 3. 魅力ある地域づくり、農林水産業・中小企業等の再生
 (1)「新しい東北」の創造
 (2)2020 年オリンピック・パラリンピック東京大会等の開催に向けた取組
 (3)観光・交流等による都市・地域再生、地方分権、集約・活性化
 (4)農林水産業・地域の活力創造
 (5)中堅・中小企業、小規模事業者の躍進
 4. 安心・安全な暮らしと持続可能な経済社会の基盤確保
 (1)戦略的外交の推進、安全保障・防衛等
 (2)国土強靱化(ナショナル・レジリエンス)、防災・減災等
 (3)暮らしの安全・安心(治安、消費者行政等)
 (4)地球環境への貢献
第3章 経済再生と財政健全化の好循環
 1. 経済再生と財政健全化の両立に向けた基本的考え方
 2. 主な歳出分野における重点化・効率化の考え方
 (1) 社会保障改革
 (2) 社会資本整備
 (3) 地方行財政制度
 3.公的部門改革の推進
 (1) 行政のIT化と業務改革、行政改革、公務員改革
 (2) 財政の質の向上
第4章 平成27 年度予算編成に向けた基本的考え方
 1.経済財政運営の考え方
 (1) 経済の現状及び今後の動向と当面の経済財政運営の考え方
 (2) 中長期的な経済財政の展望を踏まえた取組
 2. 平成27 年度予算編成の基本的考え方

以下、第2章1~2(1)抜粋。


 

第2章 経済再生の進展と中長期の発展に向けた重点課題

 我が国の経済再生の進展に向け、1)まずは現下の重要課題として、駆け込み需要の反動減の克服と景気回復の持続、経済の好循環の更なる拡大を実現し、2)短期から中期にかけて本格的成長軌道への移行を図る。その上で、3)中長期的に持続的・安定的な成長実現に向けた課題に取り組む。
 本基本方針と「『日本再興戦略』改訂2014」(※17)に基づいて、政府一体となって関連施策の実行に取り組む。
 2020年オリンピック・パラリンピック東京大会等(※18)(以下「東京大会等」という。)は、日本全体の祭典であるとともに、世界に日本を発信する最高のチャンスとして、我が国が活力を取り戻す弾みとなるものであり、その開催に向け、政府一丸となって取り組む。

1. 女性の活躍、教育再生を始めとする人材力の充実・発揮

(1)女性の活躍、男女の働き方改革

 女性が輝く社会を目指す。そのため、男女の働き方に関する様々な制度・慣行や人々の意識、ワーク・ライフ・バランスを抜本的に変革し、男女が意欲や能力に応じて労働参加と出産・育児・介護の双方の実現を促す仕組みを関係者で議論し構築していく。
 女性の活躍を推進するため、女性の活躍を支える社会基盤となる取組を進めるとともに(※19)、役員・管理職等への女性の登用促進の目標達成に向けた情報開示の促進や公共調達の活用等の取組、仕事と子育て、介護の両立を進める企業への支援、女性のライフステージに対応した支援等を進める。さらに、税制・社会保障制度等について、女性の働き方に中立的なものにしていくよう検討を進める。
 ジョブ型正社員、短時間正社員など多様な正社員の普及やテレワークの推進に取り組むとともに、労働時間に関する意識改革への取組や働いた成果が適正に評価されるような仕組みへの改善を支援する(※20)。
 また、国家公務員についても、国が率先して女性職員の採用・登用の拡大に取り組むこととし、職員のワーク・ライフ・バランスも一体的に推進する。

(2)教育再生の実行とスポーツ・文化芸術の振興

(教育再生)
 経済成長の源泉は「人」であり、経済再生のためにも教育再生が重要である。「教育基本法」(※21)の理念の実現に向け、教育再生実行会議の提言を踏まえつつ、「第2期教育振興基本計画」(※22)等に基づき、学制改革に関する検討を進めるなど、総合的に教育再生を実行する。
 世界トップレベルの学力と規範意識の達成を目指すとともに、知識だけでなく、思考力・判断力・表現力など社会を生き抜く力、我が国の伝統や文化についての理解、社会の責任ある一員として必要な公共心の養成を行う(※23)。今後、少子化が更に進展する中、教育の「質」をより重視した取組を強化する。そのため、少子化の見通しも踏まえ教職員の計画的採用を進めつつ、教職員の質的向上や指導力の強化を推進する。学校規模の適正化に向けて、距離等に基づく学校統廃合の指針について、地域の実情も踏まえつつ見直しを進める。また、専門人材やICTの活用等により効率的に教育の充実を図る。
 大学の徹底した国際化(※24)、理工系人材の育成、教育研究基盤の確立などにより、グローバル化等に対応する人材の養成を行うとともに、大学改革を推進する。国立大学法人について評価と運営費交付金の配分の在り方を抜本的に見直し、教育研究の質の向上に努力した大学に対して重点的・戦略的配分を行う仕組みを検討する。また、大学による厳格な成績評価や卒業認定の厳格化を進める。さらに、学生の教育費負担に配慮しつつ、産業界・大学双方の連携により奨学金等の支援拡充や授業内容の充実を図るとともに、各国立大学が一定の範囲内で授業料を適切に設定して教育研究の質の向上を図る取組や、各大学における授業料免除などの学生支援の取組等を充実する。地域の大学において、各地域の得意分野を活かす優れた教育研究拠点を創設・選定し、特色ある人材育成を図る。また、奨学金、授業料減免等の就学支援を推進する。さらに、高度な職業教育のための専門学校支援を推進する。
 「第2期教育振興基本計画」等に基づき、幼児教育の無償化に向けた取組を財源を確保しながら段階的に進める。

(スポーツ・文化芸術の振興)
 スポーツ立国を目指し、国際競技力の向上、生涯スポーツ社会の実現、スポーツによる健康づくり等を推進するとともに、スポーツ庁の設置など行政組織の在り方について政府の行政改革の基本方針との整合性に配慮した検討を行う。
 また、文化芸術立国を目指し、地方公共団体や民間団体等、文化芸術の振興に取り組む様々主体との適切な連携の下、観光等他の分野との協働や産業振興等の視点も踏まえつつ、「日本遺産(Japan Heritage)」など魅力ある日本文化の発信、子どもの文化芸術体験機会の確保、国立文化施設の機能強化、文化芸術の担い手の育成、文化財の保存・活用・継承等に取り組む。

(3)複線的なキャリア形成の実現など若者等の活躍促進

(若者等の活躍促進、再チャレンジ支援)
 労働需給が改善している現況を好機ととらえて、以下の取組を強力に進める。
 若者等の活躍を促進するため、現状を踏まえた総合的な若者対策について法的整備の検討も含め強力に推進するとともに、就職・採用活動時期変更の円滑な実施に向けて必要な取組を進める。(※25)
 一旦失敗するとやり直すことが容易でない現状を改善し、複層的、複線的に多様な再チャレンジの機会を確保し、一人ひとりが活躍していくことができる環境を労使など関係者で議論し整備していく。非正規雇用労働者の教育訓練機会の確保、処遇改善、不本意非正規の正規雇用化等を進める。また、起業等に繰り返し挑戦できるよう支援を充実する。協力雇用主への支援を含む刑務所出所者等に対する就職支援等(※26)を推進する。
 さらに、ユニバーサル社会の実現に向け、障害者については、職場定着などの就労支援を始めとした社会参加支援の充実、障害者の文化芸術活動の振興など活躍できる環境整備を推進する。

(生涯を通じて能力発揮できる人材育成、労働市場インフラ整備と人材不足への対応等)
 新しい技術や産業に適応しつつ生涯を通じて能力発揮できるよう、人材育成や職業訓練の抜本的拡充(※27)、産業側・企業側ニーズに合致した質の高い職業訓練の実施、学び直し機会の拡充、ライフステージに応じたキャリア転換の支援など、自らの専門性を高める能力開発を行うことができる環境整備を進める。また、親の経済力や養育環境とは独立した形で、全ての子どもの様々な能力を伸ばす多様な機会が確保された社会とするため、子どもの貧困対策に関する大綱を策定し、官民が連携して子どもの貧困対策を推進することなどにより、格差の再生産を回避していく。
 さらに、労働市場のインフラ整備を進める(※28)とともに、医療・福祉、建設業、運輸業、造船業等の人材不足が懸念される分野における人材確保・育成対策を総合的に推進する。あわせて、雇用保険制度、求職者支援制度による重層的なセーフティネットの構築を進めるとともに、中小企業・小規模事業者への支援を図りつつ最低賃金の引上げに努める。

(4)少子化対策

 人口急減・超高齢化に対する危機意識を共有し、少子化危機ともいうべき現状を突破していかなければならない。出産・子育て支援も社会保障の柱であるという認識を共有しつつ、出生率の回復に成功した諸外国の経験も参考にしながら、結婚・妊娠・出産・育児の「切れ目のない支援」を行うため、財源を確保した上で子どもへの資源配分を大胆に拡充し、少子化対策を充実する(※29)。さらに、夫婦が希望する数の子どもを持てるよう、家庭や地域の力も視野に入れ、第三子以降の出産・育児・教育への重点的な支援など、これまでの少子化対策の延長線上にない政策を検討する。
 新たな少子化社会対策の大綱を平成26年度中に策定するとともに、子ども・子育て支援新制度を平成27年4月に施行する方針の下、取り組む。また、本制度に基づく幼児教育・保育・子育て支援の量的拡充及び質の向上を図るための財源の確保については着実に進め、消費税分以外も含め適切に対応していく。また、都市と地方のそれぞれの特性に応じた少子化対策に国と地方自治体、都道府県と市町村がそれぞれの役割に応じ連携した取組を推進するとともに、行政を始めとして、国民、企業、学校、メディアなど全ての関係者が少子化危機突破の認識を共有するための取組を進める。加えて、児童虐待防止対策を進める(※30)。

(5)健康長寿を社会の活力に

 高齢者の健康寿命を延伸し、その経験、能力を活かしていくことができる社会を実現していくことが必要である。希望する人は70歳まで働ける環境整備も検討課題である。それは、人口が減少する中で必要な労働力を確保していくことにつながる。このため、高齢者の就労支援やボランティア活動の推進等により、高齢者が地域社会に参画しやすい場づくりなど生涯現役社会に向けた環境整備を推進する(※31)。
 同時に、規制改革等を通じて民間活力を発揮させ、健康関連分野における多様な潜在需要を顕在化させることで、経済成長の活力としていく(※32)。

2.イノベーションの促進等による民需主導の成長軌道への移行に向けた経済構造の改革

(1)イノベーション

 新たに改組した総合科学技術・イノベーション会議の下で、2020年代から2030年を視野に入れた「科学技術イノベーション総合戦略2014」(※33)を強力に推進し、革新的技術シーズを事業化に結びつける橋渡し機能強化、技術シーズ創出力の強化、人材育成・流動化、「特定国立研究開発法人(仮称)」制度の可能な限り早期の創設等を戦略的に実施する。特に、「事業化の壁」の打破を重視して取り組む(※34)。また、世界最高の「知的財産立国」を目指し、人材育成を進めつつ、企業等におけるイノベーションを促す知的財産戦略や標準化戦略を推進する。
 さらに、国家戦略特区を突破口とする大胆な規制・制度改革、「起業大国」等を目指したリスクマネー供給力の強化等を通じて、産業の新陳代謝・若返り、起業・新規ビジネスの創出・拡大を促し、ダイナミックな産業構造の変革を起こして、多種多様な新たな価値を不断に創出する。特に、民間投資の活性化と中長期の安定した投資を促進(※35)することにより成長資金の供給拡大を図ることとし、関係省庁が連携して具体的な検討を進める。また、イノベーションの核となるICTの利活用を強力に進めるため、「世界最先端IT国家創造宣言」(※36)の取組を着実に進めるとともに、官民オールジャパン推進体制の構築と国家戦略特区等との連携を通じて、「スマート・ジャパンICT戦略」の展開を図る。
 日本の立地競争力を強化するとともに、我が国企業の競争力を高めることとし、その一環として、法人実効税率を国際的に遜色ない水準に引き下げることを目指し、成長志向に重点を置いた法人税改革に着手する。
 そのため、数年で法人実効税率を20%台まで引き下げることを目指す。この引下げは、来年度から開始する。
 財源については、アベノミクスの効果により日本経済がデフレを脱却し構造的に改善しつつあることを含めて、2020年度の基礎的財政収支黒字化目標との整合性を確保するよう、課税ベースの拡大等による恒久財源の確保をすることとし、年末に向けて議論を進め、具体案を得る。
 実施に当たっては、2020年度の国・地方を通じた基礎的財政収支の黒字化目標達成の必要性に鑑み、目標達成に向けた進捗状況を確認しつつ行う。


※17 「『日本再興戦略』改訂2014」(平成26年6月24日閣議決定)
※18 2019年に開催される「ラグビーワールドカップ2019」を含む。
※19 「待機児童解消加速化プラン」の展開、「放課後子ども総合プラン」の策定・推進、保育や子育て支援の担い手の確保等。
※20 その他、長時間労働の是正のための監督指導の強化や制度見直しなど「働き過ぎ」の防止を強化、健康管理の強化等。
※21 「教育基本法」(平成18年法律第120号)
※22 「教育振興基本計画」(平成25年6月14日閣議決定)
※23 英語教育・理数教育・ICT教育・道徳教育・特別支援教育の強化や海外子女教育、都市と農山漁村の教育交流の推進等。
※24 英語による授業の促進、文系・理系の垣根のないリベラル・アーツ教育の強化等に加え、官民協力による若者の海外留学環境の整備、外国人留学生の受入れを推進。
※25 キャリア教育・職業教育の充実、新卒者の就職支援の強化やフリーター・ニートの就労支援の充実、若者の「使い捨て」
が疑われる企業等への対応策の充実・強化、ひきこもりに対する支援の推進等。
※26 受刑者等に対する職業訓練等を含む。
※27 再就職希望の女性、退職を控えた社会人再教育、非正規・無業者等の再教育・職業訓練等。
※28 職業能力評価制度の構築による専門性や能力の可視化、ICT活用によるマッチング機能の強化等。
※29 産科医の確保支援等を含む。
※30 誰もが児童相談所に相談しやすい環境づくりを進めるなど。
※31 その他、医師が出す指導・助言に基づく運動・食生活の指導サービス、簡易な検査(測定)等を含めたセルフメディケーションや予防・健康増進活動等について、ICTを活用した産業化を積極的に推進する。
※32 国民皆保険を堅持した上で、保険外併用療養費制度の拡充(国内未承認医薬品等の迅速な使用)を行う。また、医療・介護等を一体的に提供する「非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)」の具体的内容及び大学附属病院がそれに参画する場合に必要となる大学附属病院と大学の別法人化等について検討する。
※33 「科学技術イノベーション総合戦略2014」(平成26年6月24日閣議決定)
※34 未利用特許権の活用促進や、研究機関を核としたニーズ、資金、人材、知識を結集する取組等。
※35 NISAの普及、日本版スチュワードシップ・コードの普及、上場インフラ市場の整備、民間エクイティ資金やメザニン・ファイナンスの活用、中長期融資の供給促進、社会的責任投資の拡大等。
※36 「世界最先端IT国家創造宣言」(平成25年6月14日閣議決定 平成26年6月24日改定)

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課企画室企画係