参考資料6 「日本再興戦略」改訂2014―未来への挑戦―(抄)(平成26年6月24日閣議決定)

平成26年6月24日
閣議決定

目次
第一 総論
【1】日本再興戦略改訂の基本的な考え方
【2】改訂戦略における鍵となる施策
 1.日本の「稼ぐ力」を取り戻す
 (1)企業が変わる
 (2)国を変える
 2.担い手を生み出す ~ 女性の活躍促進と働き方改革
 (1)女性の更なる活躍促進
 (2)働き方改革
 (3)外国人材の活用
 3.新たな成長エンジンと地域の支え手となる産業の育成
 (1)攻めの農林水産業の展開
 (2)健康産業の活性化と質の高いヘルスケアサービスの提供
 4.地域活性化と中堅・中小企業・小規模事業者の革新/地域の経済構造改革
 (1)地域活性化と中堅・中小企業・小規模事業者の革新
 (2)地域の経済構造改革
【3】更なる成長の実現に向けた今後の対応
 1.経済の好循環のための取組の継続
 2.「実現し進化する成長戦略」
 3.改革への集中的取組
 (1)国家戦略特区の強化
 (2)2020年に向けた改革の加速
【4】改訂戦略の主要施策例
 1.日本の「稼ぐ力」を取り戻す
 (1)企業が変わる
 (2)国を変える
 2.担い手を生み出す~女性の活躍促進と働き方改革
 3.新たな成長エンジンと地域の支え手となる産業の育成
 4.地域活性化と中堅・中小企業・小規模事業者の革新/地域の経済構造改革
第二 3つのアクションプラン
一.日本産業再興プラン
 1.緊急構造改革プログラム(産業の新陳代謝の促進)
 (1)KPIの主な進捗状況
 (2)施策の主な進捗状況
 (3)新たに講ずべき具体的施策
  [1]コーポレートガバナンスの強化、リスクマネーの供給促進、インベストメント・チェーンの高度化
  [2]ベンチャー支援
  [3]サービス産業の生産性向上
 2.雇用制度改革・人材力の強化
 2-1.失業なき労働移動の実現/マッチング機能の強化/多様な働き方の実現
 (1)KPIの主な進捗状況
 (2)施策の主な進捗状況
 (3)新たに講ずべき具体的施策
  [1]働き方改革の実現
  [2]予見可能性の高い紛争解決システムの構築
  [3]外部労働市場の活性化による失業なき労働移動の実現
 2-2.女性の活躍推進/若者・高齢者等の活躍推進/外国人材の活用
 (1)KPIの主な進捗状況
 (2)施策の主な進捗状況
 (3)新たに講ずべき具体的施策
  [1]女性の活躍推進
  [2]若者・高齢者等の活躍推進
  [3]外国人材の活用
 2-3.大学改革/グローバル化等に対応する人材力の強化
 (1)KPIの主な進捗状況
 (2)施策の主な進捗状況
 (3)新たに講ずべき具体的施策
 3.科学技術イノベーションの推進/世界最高の知財立国
 (1)KPIの主な進捗状況
 (2)施策の主な進捗状況
 (3)新たに講ずべき具体的施策
  [1]イノベーションを生み出す環境整備
  [2]知的財産・標準化戦略の推進
  [3]ロボットによる新たな産業革命の実現
 4.世界最高水準のIT社会の実現
 (1)KPIの主な進捗状況
 (2)施策の主な進捗状況
 (3)新たに講ずべき具体的施策
 5.立地競争力の更なる強化
 5-1.「国家戦略特区」の実現/公共施設等運営権等の民間開放(PPP/PFIの活用拡大)、空港・港湾など産業インフラの整備/都市の競争力の向上
 (1)KPIの主な進捗状況
 (2)施策の主な進捗状況
 (3)新たに講ずべき具体的施策
  [1]法人税改革
  [2]国家戦略特区の加速的推進
  [3]PPP/PFIの活用
  [4]都市の競争力の向上と産業インフラの機能強化
 5-2金融・資本市場の活性化、公的・準公的資金の運用等
 (1)KPIの主な進捗状況
 (2)施策の主な進捗状況
 (3)新たに講ずべき具体的施策
  [1]金融・資本市場の活性化
  [2]公的・準公的資金の運用等の見直し
 5-3.環境・エネルギー制約の克服
 (1)KPIの主な進捗状況
 (2)施策の主な進捗状況
 (3)新たに講ずべき具体的施策
 6.地域活性化・地域構造改革の実現/中堅企業・中小企業・小規模事業者の革新
 (1)KPIの主な進捗状況
 (2)施策の主な進捗状況
 (3)新たに講ずべき具体的施策
二.戦略市場創造プラン
 テーマ1:国民の「健康寿命」の延伸
 (1)KPIの主な進捗状況
 (2)施策の主な進捗状況
 (3)新たに講ずべき具体的施策
  [1]効率的で質の高いサービス提供体制の確立
  [2]公的保険外のサービス産業の活性化
  [3]保険給付対象範囲の整理・検討
  [4]医療介護のICT化
  [5]その他
 テーマ2:クリーン・経済的なエネルギー需給の実現
 (1)KPIの主な進捗状況
 (2)施策の主な進捗状況
 (3)新たに講ずべき具体的施策
 テーマ3:安全・便利で経済的な次世代インフラの構築
 (1)KPIの主な進捗状況
 (2)施策の主な進捗状況
 (3)新たに講ずべき具体的施策
 テーマ4:世界を惹きつける地域資源で稼ぐ地域社会の実現
 テーマ4-1) 世界に冠たる高品質な農林水産物・食品を生み出す豊かな農山漁村社会
 (1)KPIの主な進捗状況
 (2)施策の主な進捗状況
 (3)新たに講ずべき具体的施策
  [1]生産現場の強化
  [2]国内バリューチェーンの連結
  [3]輸出の促進等
  [4]林業・水産業の成長産業化等
 テーマ4-2) 観光資源等のポテンシャルを活かし、世界の多くの人々を地域に呼び込む社会
 (1)KPIの主な進捗状況
 (2)施策の主な進捗状況
三.国際展開戦略
 (1)KPIの主な進捗状況
 (2)施策の主な進捗状況
 (3)新たに講ずべき具体的施策

以下、「第二 3つのアクションプラン」一、2-3~3抜粋。

 


第二 3つのアクションプラン

 日本再興戦略においては、政策群ごとに達成すべき成果目標(KPI)を示しており、「常に進化し続ける成長戦略」とするため、個別施策についてボトムアップ型で進捗管理を行うとともに、KPIの達成状況等についてトップダウン型で検証を行い、それを踏まえて施策の見直しを行うこととしている。
 このため、今回の成長戦略改訂に当たっては、日本再興戦略に記載された各施策の進捗状況を確認するとともに、KPIの進捗状況についても検証を行い、必要な場合は施策を強化・追加するなどの対応を行うこととした。
 日本再興戦略は、「日本産業再興プラン」「戦略市場創造プラン」「国際展開戦略」の3つのプランから構成されており、以下では、その構成に沿って、KPI及び施策の進捗状況を概観するとともに、新たに講ずべき具体的施策について記述する。

2-3.大学改革/グローバル化等に対応する人材力の強化

(1)KPIの主な進捗状況

 《KPI》「今後10年間で世界大学ランキングトップ100に10校以上入る」
 ⇒1つの指標としてTimes Higher Education誌“World University Ranking”2013-2014(2013年10月公表)では、日本の大学5校(トップ200位以内)のうち4校が昨年より順位を上げた。

《KPI》「3年間で1,500人程度の若手・外国人への常勤ポストの提示」
 ⇒「教育研究環境整備費(スタートアップ支援)」を新設し、支援。

《KPI》「2020年までに日本人留学生を6万人(2010年)から12万人へ倍増」
 ⇒国費による奨学金支援制度での派遣人数は約1万人から約2万人に倍増。また、新たに創設された民間資金を活用した奨学金支援制度「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」に221校、1,700名から応募があり、本年8月以降、海外留学開始予定。

《KPI》「2020年までに外国人留学生を倍増(「留学生30万人計画」の実現)」
 ⇒我が国の大学等における外国人留学生数:135,519人(2013年5月現在)

《KPI》「国際バカロレア認定校(2013年6月現在:16校)等を200校」
 ⇒国際バカロレア認定校は19校に増加(2014年4月現在)。

 

(2)施策の主な進捗状況

(「国立大学改革プラン」に基づき、大学改革を着実に実行)
大学改革については、昨年11月に取りまとめられた「国立大学改革プラン」に基づき、国際水準の教育研究の展開、イノベーション機能強化、運営費交付金の戦略的・重点的配分の拡大(2015年度末で各大学の改革の取組への配分及びその影響を受ける額を3~4割に)、若手及び外国人研究者の活躍の場の拡大のための年俸制・混合給与等の導入促進(2014年度には6,000人、2015年度には1万人規模に拡大)、国立大学評価委員会の体制強化、ガバナンス機能強化等が図られた。

(大学発のイノベーション創出機能を強化)
・昨年12月に成立した産業競争力強化法により、国立大学法人等から大学発ベンチャー支援ファンド等への出資が可能となり、国立大学等のイノベーション機能を強化するための制度が創設された。

(大学のガバナンスを改革)
大学のガバナンス改革については、学長のリーダーシップの確立等の観点から、学長補佐体制の強化、教授会の役割の明確化、国立大学法人等における経営協議会の学外委員割合の増加等を内容とする学校教育法及び国立大学法人法の改正法が本年6月に成立した。

(日本人留学生/外国人留学生の大幅拡充のための環境を整備)
・2020年までの日本人留学生の倍増に向けて、留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」により若者の海外留学への機運醸成を図るとともに、日本人留学生の経済的負担を軽減するための官民が協力した新たな海外留学支援制度を創設した。あわせて、今後、計画的かつ質の高い留学プログラムの実現を図る観点から、本年4月に関係府省庁において、「若者の海外留学促進実行計画」を取りまとめた。また、2020年までの外国人留学生の倍増(「留学生30万人計画」の実現)に向け、昨年12月に「世界の成長を取り込むための外国人留学生の受入れ戦略」を取りまとめ、優秀な外国人留学生を戦略的に確保するための重点地域等を決定した。

(グローバル化等に対応する人材を育成)
・大学の国際競争力の強化のため、世界と競う大学への重点支援を行う「スーパーグローバル大学創成支援」事業を創設した。また、初等中等教育段階からの英語教育の強化のため、小学校英語の早期化等を行う拠点への支援や教員の英語指導力向上のための取組を開始した。さらに、グローバル化に対応した素養・能力を育成するため、一部日本語による国際バカロレアの教育プログラム(日本語DP)の開発に着手するとともに、その対象科目の拡大を図った。一部大学においては国際バカロレアを活用した入試の導入や拡充について発表されるなど、その活用が進められつつある。加えて、国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成を図ることを目的とした「スーパーグローバルハイスクール」を創設し、本年1月には、現行の教育課程の基準によらない特色ある教育課程の編成を可能とするための特例措置を講じた。

(3)新たに講ずべき具体的施策

 未来を支える人材を育てるため、昨年来取り組んできた大学改革の取組やグローバル人材育成のための取組をより強化する必要がある。あわせて、高度な外国人材を確保する観点から、日本の大学を教育面でも研究面でも世界トップクラスに引き上げていく必要がある。
 このため、引き続き、大学改革を着実に実施するとともに、第3期中期目標期間(2016年度~)に向けた検討等を進める。また、国際機関への日本人の就職支援も行いつつ、グローバル化等に対応する人材力を育成強化するための取組を講ずる。

1)大学改革の着実な実施と更なる改革の実現に向けた取組
 「国立大学改革プラン」に掲げられた目標達成に向けた取組を着実に進めつつ、本年中に、第3期中期目標期間(2016年度~)における運営費交付金や評価の在り方の抜本的な見直しに向けた検討を開始し、2015年年央までに一定の結論を得る。その際、産業界及び地域等のニーズを踏まえつつ、世界最高水準の教育研究の展開拠点、全国的な教育研究拠点、地域活性化の中核的拠点等の機能強化に向け、新たな指標に基づき重点的・戦略的配分を行うルールを具体化する。あわせて、年俸制・混合給与の導入等の人事給与システム改革を推進する。また、国立大学法人法施行後10年を過ぎた今、本年6月に成立した学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律附則第2項を踏まえ、当該法の施行状況、国立大学法人を取り巻く社会経済情勢の変化等を勘案し、学長選考会議の構成その他国立大学法人の組織及び運営に関する制度について検討を加え、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずる。
 「国立大学改革プラン」を進める中で、大学の研究力の強化や国際的に競争力のある卓越した大学院の形成を進める。このため、第3期中期目標期間が開始する2016年度に向け、ガバナンス機能の強化や学内資源配分について恒常的に見直しを行う環境の醸成等を強力に推進するとともに、大学による大胆な発想に基づく取組を後押しするための新たな仕組みを検討する。
 あわせて、大学が地(知)の拠点となり、地域の課題解決に貢献し、地域社会を支える人材育成や研究成果の還元に取り組むほか、例えば、経営者等の実務に精通した人材の登用・連携等を進めながら大学等と産業界の双方のコミットメントによるプロフェッショナルプログラムの開発・実施等の推進、中小企業を含めた企業等へのインターンシップの普及・定着を図る。

2)グローバル化等に対応する人材力の育成強化
 小学校における英語教育実施学年の早期化等に向けた学習指導要領の改訂を2016年度に行うことを目指し、指導体制の強化、外部人材の活用促進など、初等中等教育段階における英語教育の在り方について検討を行い、本年秋を目途に取りまとめる。学校現場等における外国人活用の抜本強化を図り、実践的な英語教育を実現させる。あわせて、在外教育施設における質の高い教育の実現及び海外から帰国した子供の受入れ環境の整備を進める。
 また、今年度から開始する「スーパーグローバル大学創成支援」等において、人事・教務システムの徹底した国際化等により国際競争力を強化する大学を支援し、取組状況を公表する。あわせて、日本の大学と外国の大学とのジョイント・ディグリーを実現するため、これらの大学が共同で教育プログラムを構築するための所要の制度改正を本年中に行う。加えて、日本人留学生の倍増に向け、ギャップイヤー等を活用し、希望する学生が国内外で多様な長期体験活動を経験できる環境整備を推進する。
 留学生30万人計画の実現に向け、日本留学の魅力を高め、優秀な外国人留学生を確保するため、国内外の学生が交流する宿舎・交流スペース等の整備の支援を行うとともに、国内外の学生が交流する機会等の創出、海外拠点や就職支援に係るプラットフォームの構築、日本語教育の推進等の受入れ環境の支援を強化する。

3.科学技術イノベーションの推進/世界最高の知財立国

(1)KPIの主な進捗状況

 《KPI》「イノベーション(技術力)世界ランキングを5年以内に世界第1位に」:2012~2013年:第5位
 ⇒2013~2014年:第5位
※法改正等により、科学技術の司令塔機能の強化や新たな研究開発法人制度の創設を実現。革新的技術シーズの事業化への「橋渡し」機能強化のための取組を推進中。

《KPI》「特許の権利化までの期間を、2015年度中に36か月以内とする」
 ⇒2013年の権利化36か月以内の割合:92.4%
(2012年12月における同割合:80.9%)

《KPI》国際標準化機関における幹事引受件数を2015年末までに世界第3位に入る水準(95件)に増やす」
 ⇒2013年度末:94件

(2)施策の主な進捗状況

(総合科学技術会議の司令塔機能を強化)
・研究開発の成果を円滑に実用化につなげ、成長戦略に基づいて府省の枠を超えた資源配分を実現するため、「科学技術イノベーション予算戦略会議」を設置するとともに、総額500億円の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」を創設し、内閣府に予算計上を行った。さらに、内閣府設置法の改正法案が本年4月に成立し、総合科学技術・イノベーション会議への改組等が行われた。

(革新的研究開発推進プログラムを創設)
・産業や社会に大きな変革をもたらすイノベーションの創出を狙った「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」を創設し、必要な法改正(独立行政法人科学技術振興機構法の改正法)が本年2月に成立した。

(世界最高水準の新たな研究開発法人制度を創設)
・研究開発法人の機能の強化のため、昨年12月に、研究開発成果の最大化を第一目的とする世界最高水準の新たな研究開発法人制度の創設を閣議決定した。これを受け、本年6月に独立行政法人通則法の改正法及びその整備法が成立した。

(審査順番待ち期間11か月以内の実現・国際的に通用する認証基盤の整備等)
・知的財産や標準化戦略の強化については、任期付審査官の確保など審査体制の整備・強化に努め、2013年度末に審査順番待ち期間11か月以内を実現した。また、ハーグ協定に対応した意匠制度の見直しのため、本年4月に特許法等の改正法が成立した。さらに、スマートグリッド等戦略的に重要な分野について、国際的に通用する認証基盤の整備を開始した。

(3)新たに講ずべき具体的施策

 これまでの取組により、科学技術の司令塔機能の強化などの体制整備や、産業や社会に変革をもたらすイノベーション創出のための機能強化や環境整備に着手されたところであるが、今後は、絶えず革新的な技術シーズが生み出され、そのシーズを円滑に事業化するための仕組みづくりが必要となる。
 少子高齢化が進む我が国が、今後30年、50年経っても世界経済をリードする存在であり続けるためには、我が国から常にイノベーションが生まれ続ける環境作りが必要不可欠である。「世界で最もイノベーションに適した国」を創り上げるため、「科学技術イノベーション総合戦略2014」(平成26年6月24日閣議決定)、特に本年4月に取りまとめた「我が国のイノベーション・ナショナルシステムの改革戦略」の内容を強力に推進し、以下の施策を重点的に強化していく。また、上記戦略と一体性をもって、官民合わせた研究開発投資の目標(対GDP比4%以上)及び政府研究開発投資として目指す水準(対GDP比1%)が掲げられている日本再興戦略に基づき、研究開発投資を促進するとともに、社会に大きな変革をもたらすような成果を目指し、今年度から政府一丸となって取組んでいるSIP及びImPACTを継続的に推進する。
 また、国家戦略に基づき、行政機関の縦割りや組織の垣根を越えた連携体制を構築し、イノベーションの中心となるべく産学官の人材が結集・循環する場及び世界最先端の産学官集積地を生み出していく。
 さらに、イノベーションの創出に当たっては、世界最高の知財立国を目指し、特許権と営業・技術秘密、国際標準化を適切に使い分け、事業価値の最大化や国際的な優位性向上を図るなど、知的財産の取扱いや標準化に向けた検討を戦略的に進めて行くことが必須である。研究開発の成果を死蔵・休眠させることなく積極的に有効活用し、国富を最大化する観点から、知的財産・標準化の取組を強化していく。

[1]イノベーションを生み出す環境整備
 革新的な技術シーズを事業化に結びつける「橋渡し」機能強化については、先駆的な役割が期待されている独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)及び独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)において先行的に取り組み、これらの先行的な取組について、適切に進捗状況の把握・評価を行い、その結果を受け、「橋渡し」機能を担うべき他の研究開発法人に対し、対象分野や各機関等の業務の特性等を踏まえ展開する。その際、民間資金の獲得を重視する。大学又は研究開発法人と企業との大型共同研究(大学等の受入額が1000万円以上)の件数を5年後に30%増を目指す。
 また、企業が行き過ぎた技術の自前主義・自己完結主義から脱却し、機動的なイノベーションを目指すオープンイノベーションを強力に推進するための環境整備を図る。
 さらに、「国立大学改革プラン」を進める中で、大学の強みを踏まえ、当該分野やそれらを組み合わせた新領域を対象として、卓越した大学院を形成する。

1)「橋渡し」機能強化等の研究開発法人の改革
 産総研において、研究の後期段階における受託研究等企業からの資金受入れを基本とすること、産業の将来ニーズ等を反映した研究テーマの設定及びそのためのマーケティング機能の強化、産総研による知的財産管理の原則化、民間企業からの資金獲得の重視などの改革を行う。その際、産総研において、民間企業からの資金獲得を重視するべく、受託研究等企業からの収入について、フラウンホーファー研究機構独立行政法人を参考に、現行の3~4倍程度とすべく数値目標を検討する。
 また、NEDOにおいて、技術シーズの迅速な事業化を促すため、プロジェクト・マネージャーへの大幅な権限付与やアワード型方式の導入等によるプロジェクト・マネジメントの強化、新たなイノベーションの担い手として期待されるベンチャーや中小・中堅企業等への支援の強化等の改革を推進する。その際、NEDOの新規採択額に占める割合として、ベンチャー、中小・中堅企業への支援割合を欧州主要国並みとなる2割程度とすべく数値目標を検討する。

2)「クロスアポイントメント制度」等を活用した知の融合
 産学官の人材・技術の流動性を高め、研究開発法人が大学の技術シーズを円滑に橋渡しするため、大学と研究開発法人等との間でのクロスアポイントメント制度(大学等と他の機関のそれぞれと雇用契約関係を結ぶ等により、各機関の責任の下で業務を行うことができる制度)の積極的な導入・活用を進める。このため、年俸制の導入促進、医療保険・年金や退職金等の扱い、営業秘密や知的財産の管理に係る環境整備を今年度中に行う。

3)研究資金制度の再構築
 イノベーション創出のためには、研究者の独創的で多様な研究やコア技術の研究開発を推進し、技術シーズ創出力を強化する必要がある。若手や女性研究者が研究に挑戦する機会の拡大や、競争的な研究開発環境の整備のため、科学研究費助成事業をはじめとした研究資金制度の改革に着手する。また、総合科学技術・イノベーション会議を中心として、研究者が研究活動に専念でき、基礎から応用・実用段階に至るまでシームレスに研究することが可能な競争的資金の在り方など研究資金について検討し、次期科学技術基本計画に反映させる。

4)新たな研究開発法人制度の実現
 「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」等に基づき、2015年度からの新たな研究開発法人制度の実施に向け、可能な限り速やかに報酬・給与、調達、自己収入の取扱い等について、具体的な運用改善策を講ずるとともに、世界トップレベルの成果の創出が期待される「特定国立研究開発法人(仮称)」を制度化するための法案について、可能な限り早急に国会提出を目指す。

5)研究推進体制の強化
 資金配分機関が中核となって研究マネジメントや研究支援に係る人材等を国全体で継続的かつ安定的に育成・確保し、活躍の場を提供できる仕組みについて検討し、2015年度から実施する。

[2]知的財産・標準化戦略の推進
 知的財産・標準化戦略の推進については、職務発明制度の見直しや営業秘密の保護強化、知財人材の育成など、世界最速・最高品質の知財システムの確立に向けた検討を加速する。

1)職務発明制度・営業秘密保護の強化
企業のメリットと発明者のインセンティブが両立するような職務発明制度の改善(例えば法人帰属化など)に関し、関連法案の早期の国会提出を目指すとともに、官と民が連携した取組による実効性の高い営業秘密漏えい防止対策について検討し、早急に具体化を図り、次期通常国会への関連法案の提出及び年内の営業秘密管理指針の改訂を目指す。

2)国際的に遜色ないスピード・質の高い審査の実現
今後10年間で特許の「権利化までの期間」を半減させ平均14月以内とするとともに、外部有識者による客観的な品質管理システムの導入等の取組により「世界最速・最高品質」の審査を実現する。また、出願手続きの国際的な統一化・簡素化を実現するため、2015年度を目途に特許法条約及びシンガポール条約(商標)への加入等を検討するとともに、アジア各国における知財制度の構築・運用のための協力スキームを構築するなどの取組により、我が国知財システムの国際化を推進する。あわせて、国際化の観点から、大学や企業が保有する特許の取引を活性化し、中小企業等による活用・事業化を促進するための機能を強化することを検討する。

3)新市場創造型標準化制度の構築
「標準化官民戦略」に基づき、複数の分野にまたがる融合技術や、世界市場の獲得につながる中堅・中小企業等の先端技術等、既存の業界団体による標準化が困難なものを、省庁や産業分野の枠を越えて一元的に標準化する仕組みとして、今年度中に「新市場創造型標準化制度」を構築する。

[3]ロボットによる新たな産業革命の実現
 グローバルなコスト競争に晒されている製造業やサービス分野の競争力強化や、労働者の高齢化が進む中小製造事業者や医療・介護サービス現場、農業・建設分野等の人材不足分野における働き手の確保、物流の効率化などの課題解決を迫られている日本企業に対して、ロボット技術の活用により生産性の向上を実現し、企業の収益力向上、賃金の上昇を図る。
 このため、日本の叡智を結集し「ロボット革命実現会議」を立ち上げ、現場ニーズを踏まえた具体策を検討し、アクションプランとして「5カ年計画」を策定する。また、技術開発や規制緩和、標準化により2020年までにロボット市場を製造分野で現在の2倍、サービスなど非製造分野で20倍に拡大する。さらに、こうした取組を通じ、様々な分野の生産性を向上させ、例えば製造業の労働生産性について年間2%を上回る向上を目指す。
 さらに、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会等に合わせたロボットオリンピック(仮称)の開催を視野に入れるなど、ロボットスーツや災害対応ロボットをはじめとした様々な分野のロボットやユニバーサルデザインなどの日本の最先端技術を世界に発信する。

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