参考資料3 前回の議論の概要

第10回研究費部会 主要な意見の概要

(デュアルサポートと大学改革について)
○ 競争的資金の中での科研費の位置付けと、基盤的経費と競争的資金との兼ね合いの問題をどう考えるかの整理が必要。特にデュアルサポートという観点で見ると、昔からの伝統に基づいての固定的な学内での配分方式では、基盤的経費では新しい学問分野や新しい組織を支援しにくい。デュアルサポートの中で、今の基盤的経費の在り方をどう改革していくかということを考えると、基本的には大学のマネジメント改革が必要。
○ 大学の改革と科研費をリンクするように働き掛けることが非常に大事。
○ 現在の大学の組織をそのままにして基盤経費を強化することはできない。もし機関補助をするのであれば、単位と中での配分決定のメカニズムを考え直す必要。
○ 大学院でかなり早くから専門を決め過ぎるので、発展の余地がなくなっているのではないか。基礎研究というのは、分野としての総合的な視野や社会的な視野を持っていることを前提に、優秀な人が新しい考えを出すものだと思うが、そこのプロセスができていない。大学院に関してはその方向で改革を行い、それに科研費が結び付くことが全体としての生産性を上げるのではないか。
○ 科研費も重要なリソースであるが、もう一つの大きなリソースは時間。どんな大学の先生も教育、研究、アドミニストレーションに掛ける時間はほとんど一緒なので、自分の役割が何であるかということを明確に意識して、ある程度分化させるインセンティブを作ることは必要。その点では、大学と教員の間の一種の契約として、一定の基準や原則を明確にするようなメカニズムが必要。
○ 大学の中心的な役割は知の創造であり、知の創造ができる後継者を育てていく。科学研究費について、個人に至るまでの多様性というのが学術には最も重要。
○ 大学が本来持っている「知」には専門知と暗黙知があるが、後者が急激に弱くなっており、非常に危機的な状況。
○ 現在は、熟成した広い視野を養った上で研究をするという時間がなく、結局早く結論の出る枝葉のことを選んでしまうというような傾向が強い。これは特に文系の場合には大事なことだが、やはり学位の早さよりも、学位のレベル、審査・評価のシステムも含めて、制度として考える必要がある。

(科研費の位置づけ)
○ 科研費は他のトップダウンの競争的研究資金と違って、研究者の好奇心に基づいたボトムアップ型基礎研究として保証されるべきであるという点を、基本的な視点の素案に加えたい。
○ 科研費を考えるときには、いわゆる基礎研究、応用研究、開発研究、実用化という流れで物事が成就するという考え方を改めてほしい。だからこそ、コンセプトは正しくても「出口志向」と言った途端に、リニアモデルでつながらなければいけないとなる。現実にイノベーションが起きている例を考えると、大半は、何かを実現するときに様々な基礎研究が必要となるが、そこからまた始めるというわけにはいかない。基礎研究については、それぞれの興味本位による研究が様々な分野で確保できていて、それらに対して応用側が自由にアクセスできるという構造が、人の移動も含めて確保されるというのが重要。
○ 科研費データベースは本当に民間が利用できる形でよいものになっているのか。
○ 産業構造審議会の資料にも、大学が独創性の高い基礎研究のシーズだということを書いてあり、産業政策ともリンクしての議論が、今後大事ではないか。

(科研費の審査について)
○ 今の科研費の細目は、三百以上に細分化されている。20年で科研費は倍に増えているが、そういう細分化された中での獲得競争で研究者が疲弊しているところがある。むしろ、分野横断的な在り方をもう少し広げる形が必要。
○ 学術は、非常に困難な問いを解こうとすることが面白いので、そこに色々な分野が集まってきて、総合化され、交流や連携が起こって、結果的に融合する。分子生物学の成立には20年も掛かっていない。学術にはそういうものがたくさん転がっているはずなので、少しサーベイしながら、種になるものを与えることによってトップダウンでなくてボトムアップで進めるような方法で分野を作っていってはどうかという議論をしている。今年から始めた特設分野研究は、即効性があるかどうかは疑問だが、場合によっては非常に推進できるものになると期待している。
○ 自分は科研費、科研費以外の競争的研究資金の審査に関わったが、どちらについてもレフェリーの仕組みがうまく機能しているのか、本当に自分の分野の専門家が評価しているのか非常に不安になるところがある。結局は文章がうまい人がお金を取っていく結果になっているような面もあるのではないか。レフェリー制度も含めて、審査の仕組みが少し硬直化しているので、もっと思い切って見直しするべき。
○ 審査の仕組みについては、スタディセクションのレベルが非常に低くなっていて、全体の公平な審査に課題があるのではないか。これは、大勢の研究者に対する限られた予算という問題から発する世界各国の基本的な問題である。
○ 学術に関する理念とかビジョンは昔から極端に変わっていないが、それを継承する若い人が減っているのではないか。優秀な人にはいつまでもある意味でのインセンティブが保証されるような社会にしていくインフラを作っていく必要。

(女性・外国人への支援)
○ 日本にいる外国人研究者の一層の支援も必要ではないか。
○ ダイバーシティ&インクルージョンは重要だが、研究費政策だけで進めるのではなく、女性が研究しやすい環境を作ることが必要。やはり女性が自由に活躍できるような雰囲気作りも含めて、大学が努力すべき。裾野を広くしてダイバーシティを確保し、大学教育・大学院教育において、女性を優遇するのではなくてフェアなルールを作るべき。ダイバーシティということがこれからの日本の大きな鍵になるとしたら、そういった研究費の配分を考えるべき。

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