資料2-1 「系・分野・分科・細目表」の見直しに当たっての基本的な方向性について

 昨年(平成25年)10月8日、文部科学省の科学技術・学術審議会学術分科会科学研究費補助金審査部会から「細分化が進むことで、既存の学問分野に立脚した研究のみが深化し、新たな研究分野や異分野融合の研究は応募しにくいのではないか」「分科細目表は、いかに審査を公平・公正に行うかという観点でこれまで見直しが行われてきているが、今後は、学術動向の変遷に即した審査を行うために適したものとなっているか、また、これまでの分野の枠に収まらずに新たに伸びていく研究を見いだせるか、という観点で見直していく必要があるのではないか」「理想的な審査方式の検討も併せて見直していく必要があるのではないか」等との指摘があり、『「系・分野・分科・細目表」の見直し並びに「時限付き分科細目」及び「特設分野」の設定に当たっての基本的考え方』(以下「基本的考え方」という)が示され、文部科学省から、平成30年度公募から適用する「系・分野・分科・細目表」(以下「分科細目表」という)の抜本的な見直しについての要請があった。
 この要請を踏まえ、日本学術振興会では、学術システム研究センターにおいて6回にわたって議論を行い、分科細目表の見直しに当たっての基本的な方向性について、以下のとおりとりまとめた。

1.分科細目表の見直しに当たっての基本的な方向性について
 基盤研究(A・B・C)、挑戦的萌芽研究、若手研究(A・B)(以下「基盤研究等」という)の審査制度は、第1段審査(書面)と第2段審査(合議)をそれぞれ別の審査委員が担当し、審査希望分野(細目)に応募された研究課題について、相対評価を行う仕組みで成り立っている。
 現行の科研費の基盤研究等の審査制度は、膨大な応募件数を迅速に審査する公正かつ適切な、研究者からの信頼を得ている方式であることから、見直しに当たっては、この点に留意しながら以下のような基本方針で検討する。

○ 科学技術・学術審議会学術分科会科学研究費補助金審査部会の「基本的考え方」を踏まえ、「応募研究課題の研究内容の審査」という観点から分科細目表を見直すにとどまらず、多様な学術研究を推進するとともに新しい学術領域の確立を推進するために学問の特性に応じた審査方式の見直しを行う。

・ 書面審査と合議審査との関係を含め、学術の振興という観点から適切な審査方式の在り方について検討する。

・ 学術の多様性を確保するための適切な審査区分の設定について検討する。

2.その他について
 新しい審査方式を導入する場合には、審査業務の分散が必要になる。すなわち、交付内定を4月1日に行う研究種目と10月1日に行う研究種目に分けるなど、年度を越えた予算執行を可能とする制度が必要であり、さらに、グローバル化を見据え、新しい審査方式の導入等により必要となるアワードイヤーの実現や、海外研究者との国際共同研究等の推進において、日本側の会計年度が共同研究の支障になることのないようにするなど研究費の成果を最大化する観点からも早期にすべての研究種目に基金化を拡大することが必要である。

<参考>日本学術振興会学術システム研究センターにおける検討状況
平成25年
10月8日 「系・分野・分科・細目表」の見直し並びに「時限付き分科細目」及び「特設分野」の設定に当たっての基本的考え(科学技術・学術審議会学術分科会科学研究費補助金審査部会決定)
12月6日 日本学術振興会学術システム研究センター科学研究費ワーキンググループにおいて検討
平成26年
2月7日 日本学術振興会学術システム研究センター科学研究費ワーキンググループにおいて検討
3月20日 日本学術振興会学術システム研究センター科学研究費ワーキンググループにおいて検討
4月4日 日本学術振興会学術システム研究センター科学研究費ワーキンググループにおいて検討
5月16日 日本学術振興会学術システム研究センター主任研究員会議において検討
6月6日 日本学術振興会学術システム研究センター主任研究員会議において検討

 


 

【参考】「系・分野・分科・細目表」の見直し並びに「時限付き分科細目」及び「特設分野」の設定に当たっての基本的考え方

平成25年10月8日
科学技術・学術審議会学術分科会
科学研究費補助金審査部会決定

(はじめに)

○ 「系・分野・分科・細目表」(以下「分科細目表」という。)は、基盤研究等の審査希望分野の分類表として厳正かつ効率的な審査を実施する上で重要な役割を担っている。また、「時限付き分科細目」(以下、「時限細目」という。)は、平成3 年度から、学術研究の動向に柔軟に対応するため、設定期間を限って流動的に運用されているもので、分科細目表の別表として設けられている。更に、平成26 年度からは、1)未開のまま残された重要な分野、2)技術の長足な進歩によって生まれつつある分野、3)分野横断的な研究から生まれることが期待される分野を対象とした審査区分「特設分野研究」が設けられている。(分科細目表のこれまでの主な変遷については「別添1」参照)

○ 分科細目表の見直し並びに時限細目及び特設分野の設定は、学術コミュニティからの要望や独立行政法人日本学術振興会の学術システム研究センターの学術動向調査の結果等を踏まえて行うものとする。

○ 分科細目表の本来の役割は、科研費の審査希望分野の分類表であるが、研究者からは我が国の学問分野を分類し設定するもの、また一旦細目として設定されると当該分野への研究費が保証されるものと受け止められている傾向があり、その認識が見直しのたびに細目数が増える大きな要因となっている。今後、見直しに当たっては、分科細目表が我が国の学問分野を分類し設定するものではないことを明確にしていく必要がある。

○ 分科細目表の見直しに当たって、応募件数以外に参考とすべき当該分野のアクティビティーを評価することのできる指標について積極的に検討し、将来的に活用できるようにする。

(基本的事項)

1.分科細目表の見直しについて
(1)毎年度の見直しに関すること
・ 分科細目表は、見直しのたびに増える傾向があるが、今後は、細目数を現行より増やさないことを原則とする。
・ 細目・キーワード毎の応募件数の状況等を踏まえ、柔軟にキーワードの変更・追加やキーワード分割などを行う。

(2)大幅な見直しに関すること
・ 5年に一度は大幅な全体の見直しを行う。特に、次回の5 年に一度の大幅な全体の見直し(平成30 年度公募から適用)に当たっては、細目数の大幅な減少を検討する。(「別添2」参照)
・ 分科細目表が我が国の学問分野を分類し設定するものではないことを明確にするため、名称の変更も検討する。

2.時限細目の設定について
・ 設定する件数は、候補時限細目の状況により柔軟に対応する。
・ 新規課題を受け付ける期間(設定期間)は原則3年間とし、応募状況により、本表への採否の検討を毎年度行う。
・ 基盤研究(C)を対象種目とし、他種目との重複制限は当該種目と同様とする。
・ 各時限細目への配分予定額は、応募件数及び応募金額に応じて調整する。

3.特設分野の設定について
・ 設定する件数は、候補分野の状況により柔軟に対応する。
・ 新規課題を受け付ける期間は原則3年間とする。
・ 基盤研究(C)及び基盤研究(B)を対象種目とするが、他種目との重複制限は別に定める。
・ 各分野への配分予定額は、あらかじめ定める採択予定数に応じて定める。

(留意事項)

 分科細目表の見直し並びに時限細目及び特設分野の設定に当たっては、次の点に留意し検討を行う。

1.分科細目表の見直しについて
(1)毎年度の見直しに関すること
・ 応募件数が一定数に満たない細目については、関連分野の細目との統合等ができないか検討する。
・ 応募件数が一つの細目を設定できる程度見込める場合であっても、先ずは関連分野の細目名の見直しや、キーワードによる分割などができないか検討する。

(2)大幅な見直しに関すること
 現在の分科細目表には、次のような課題等があると考えられる。
(課題等)
・ これまで分科細目表の細目数は、改正のたびに増え続け、審査の精度向上の観点から考えると細分化を評価することもできるが、一方で、細分化が進むことで、既存の学問分野に立脚した研究のみが深化し、新たな研究分野や異分野融合の研究は応募しにくいのではないか。
・ 分科細目表は、いかに審査を公平・公正に行うかという観点でこれまで見直しが行われてきているが、今後は、学術動向の変遷に即した審査を行うために適したものとなっているか、また、これまでの分野の枠に収まらずに新たに伸びていく研究を見いだせるか、という観点で見直していく必要があるのではないか。
・ 応募状況以外に細目・キーワード設定の妥当性を判断する方策がないため、定量的な面にのみ着目した見直しとなり、結果的に細目が増えることになっているのではないか。
・ 理想的な審査方式の検討も併せて見直していく必要があるのではないか。

 ついては、次回の5年に一度の大幅な全体の見直しへの反映を目指し、以下の点に留意の上検討を行う。

・ 現行表との連続性・整合性等に配慮した調整を行いつつも、現行表を前提とすることなく、学術の動向を踏まえた理想的な在り方に関する検討を踏まえつつ、抜本的な見直しを行う。このため、日本学術振興会における検討は、現在の分科細目表の分野単位ではなく、総合系、人文社会系、理工系、生物系の4系単位で進めることを基本とする。

※ なお、現在、基盤研究(A・B・C)、挑戦的萌芽研究、若手研究(A・B)は、すべて二段審査制(細目単位で第一段(書面審査)を行い、分科単位(人文社会系は細目単位)で審査委員を配置した委員会で第二段(合議審査)を行う。)をとっているが、各研究種目の性格、応募総額、応募件数等を踏まえ、科研費制度全体のあり方を検討する中で、各研究種目の特性に応じた審査体制や審査方法も別途検討する。

2.時限細目の設定について
(1)新たに設定する時限細目候補について
 次の1)または2)の観点に該当するものであるか検討する。
 なお、時限細目候補とする場合には、その設定の必要性に加え、1)または2)のいずれに該当するかを明らかにするとともに、当該時限細目の新規性や学際性などが1)または2)に該当する理由を明らかにすること。

 1)既存の細目では対応できない新たな分野であるか。
 2)既存の細目で対応することはできるが、別の体系でまとめた方が、より適切な審査を行うことができる分野であるか。

(2)既に設定している時限細目の取扱いについて
既に設定している時限細目については、次の1)または2)のとおり検討する。
1)設定期間(原則3年間)を満了したもの
 廃止すべきか、または細目表に採用すべきか検討する。なお、細目表に細目として採用する場合には、設定期間中の応募件数について平均100件以上を目安とする。また、検討に当たり必要な場合には、設定期間を2年間まで延長することができる。
2)設定期間(原則3年間)を満了していないもの
 設定期間を短縮し、1年又は2年で廃止する必要があるか検討する。

3.特設分野の設定について
(1)新たに設定する特設分野候補について
 次の1)から3)までのいずれの観点に該当するものであるか検討する。
 なお、特設分野候補とする場合には、その設定の必要性及び1)から3)までのいずれに該当するか理由を明らかにすること。

 1)未開のまま残された重要な分野であるか。
 2)技術の長足な進歩によって生まれつつある分野であるか。
 3)分野横断的な研究から生まれることが期待される分野であるか。

(2)既に設定している特設分野の取扱いについて
 振興会が取りまとめる特設分野の成果等に基づき、当該特設分野の取扱いについて検討する。

(検討のスケジュール)

1.平成27年度公募において適用する分科細目表・時限細目・特設分野について
・ 平成25年10月 科学研究費補助金審査部会で基本的考え方の決定(日本学術振興会に基本的考え方を通知し検討を依頼)
        10月~ 日本学術振興会で検討開始
・ 平成26年3月 日本学術振興会から科学研究費補助金審査部会に検討結果の報告
        4月 科学研究費補助金審査部会で審議
        6月 科学研究費補助金審査部会で決定

2.平成30年度公募において適用する分科細目表について
・ 平成26年6月 日本学術振興会から科学研究費補助金審査部会に検討結果の報告(以後、日本学術振興会と科学研究費補助金審査部会で必要に応じて意見交換)
・ 平成27年1月 科学研究費補助金審査部会で5年に一度の分科細目表(平成30年度公募から適用)見直しに当たっての基本的考え方の決定

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研究振興局学術研究助成課企画室企画係