参考資料1 総合科学技術会議、産業競争力会議等関係資料3/4(平成26年3月31日産業構造審議会 産業技術環境分科会 研究開発・評価小委員会(イノベーションを担う人材のあり方について(案)))

イノベーションを担う人材のあり方について(案)

1.総論

○ 日本発の斬新な商品やサービスの出現を促すためには、多種多様な人材が適材適所で活躍し、それぞれが連携しつつ、研究成果を生み出し事業化できる環境を整備することが必要ではないか。
○ イノベーション創出活動全体の工程マネジメントや、発明・発想を事業につなげていく研究開発マネジメントでは、経験を十分に積んだ人材が重要であり、国の研究開発マネジメント機関や研究機関は、これらの人材育成およびキャリアパス形成に関してプラットフォームの役割を担うべきではないか。
 -プロフェッショナルとしての研究開発マネジメント人材の育成のあり方とは何か
 -産学官の結節点としてのNEDO・産総研の役割とは何か
○ イノベーションを支える人材に必要な要素はイノベーション創出の各段階で異なるが、特に、アイディアを考えつき、そのアイディアを破壊的イノベーションとなるような新しいプロダクトやサービスへと発展させる「事業の創造を担う人材」が不足しているのではないか。また、そのようなイノベーションを担う人材には、異分野、異業種での経験など、多様な経験が必要ではないか。
 -人材の流動化をどのように実現するか
○ 日本には、独創的なアイディアを創出する人材の母体となりうる技術人材が、根本的に不足・減少しており、また既存の人材も十分に活躍できていないのではないか。多様な人材ポートフォリオが、新しいアイディアや発想を促すと考えられることから、研究開発活動においても、外国人や女性を一層活用すべきではないか。
 -社会人、高等、初中等教育のあり方
 -女性、外国人の支援方策

2.研究開発マネジメント人材

○ 国の研究開発マネジメント機関であるNEDO、産総研等の公的研究機関が率先して研究開発マネジメント人材育成を行うべきではないか。具体的には、これらの機関がいわば「太い幹」として、大学の研究人材や企業におけるプロジェクト経験者、起業経験のある者など多様な人材を受け入れるとともに相互に移転させ、十分な経験を積ませることで、最終的に優れた研究開発マネジメント人材を育成し、かつそうした人材の供給源として機能させる等の仕組みが有効ではないか。こうした取組の中で、研究者からリサーチ・アドミニストレーターとなる人材を育成しつつ、最終的にその中から研究開発マネジメント人材となる人材を輩出する仕組みも構築すべきではないか。
○ 「尖った」人材が活躍する場を広げられるよう、国の研究開発プロジェクトにおいてもこのような人材をリーダーとして活用するべきではないか。NEDOフェロー等の取組も、幅広い視野を有する若手研究者育成の観点から有効ではないか。

3.基礎研究・発明人材

○ 我が国の理工系人材は、総数・割合ともに減少傾向にあるため、我が国のイノベーション力を強化していく上では、先端的な人材を更に伸ばす取組と同時に、理工系人材が多く輩出される仕組み作りが必要ではないか。
○ 将来のイノベーションを担う子どもたちの育成のために、自由なアイディア・発想と多様性を積極的に評価する文化が醸成される必要があるのではないか。頭が柔軟な初中等学校のうちに、ディスカッションや実験・実習を主体とした教育を積極的に導入すべきではないか。そのために、地元の大学、企業、研究機関の現役・OBが実験・実習のアシスタントとして参加することも含め、社会全体が初等中等教育機関の理科教育に一層貢献していく環境整備を進めるべきではないか。
○ 高等学校では、優秀な子どもたちを加速的に育成するシステムも必要ではないか。一人一人の能力・適性に応じた教育を進める観点から行われている飛び入学制度を一層拡大していくことや、また、既に行われているスーパーサイエンスハイスクールの取組に公的研究機関や産業界の参画を増やす等により、理数系科目やITに重点を置いた教育の場を充実させてもよいのではないか。
○ 大学におけるプロフェッショナル教育の在り方とは何か。これまでの高等教育(大学、大学院)では汎用性のある工学基礎力をおろそかにしているのではないか。大学、大学院における専門学科改編の際も、卒業する学生も、流行性を追いかけるばかりに、工学基礎力の最低保証ができていないのではないか。
○ 新たな発見・発想には、専門性とともに、幅広い俯瞰的な視野も必要ではないか。複眼的な博士人材の育成が重要であり、そのためには、ダブルメジャーに取り組む一方で、リベラルアーツ等の幅広い知識をしっかりと学ぶなどの取組を促すべきではないか。
○ 博士人材の就職につながる仕組みを充実させ、キャリアパスを明確にしていくことが、優秀な博士課程進学希望者を増加させる効果があるのではないか。優秀な人材が進んで博士の学位を取得し、そこからアカデミアや産業界に進む道を広げるべきではないか。例えば、産総研イノベーションスクールのような取組も参考になるのではないか。
○ 博士号取得者は、仮説の提示から課題の設定、解決のための方法論の考案、実験、検証等を経て結果を出せる人材であり、企業においても研究リーダー人材等として活躍することを期待されるべき人材である。従って、企業へ就職する博士号取得者が増加することが、企業の研究開発力増進の観点からも有効であると考えられるが、大学はこれら人材を十分育成できていないのではないか。また、企業も博士人材を適正に評価し、採用に結びつける取組ができていないのではないか。企業と大学との共同研究やインターンシップ等は、博士課程在籍者の視野を広げるとともに、企業と学生との接点を拡大するという観点から重要ではないか。
○ 中小企業では、研究開発から生産、販売まで自ら手がける必要があり、博士号取得者の活躍が期待できるが、現在、研究開発を熱心に行う中小企業と博士人材の間に情報の非対称性や、それに伴う採用のミスマッチが存在するのではないか。こうした中小企業と博士課程修了(見込)者をインターンシップ等の取組を通じてマッチングする仕組みが必要ではないか。
○ 最新の産業動向や技術動向に対応し、新たな発明人材を育成するため、技術者の「再教育」を行う「場」として、大学や産総研を位置づけるべきではないか。具体的には、優秀なエンジニアがキャリアチェンジを図るために、連携大学院制度を活用し、研究は産総研等の公的研究機関で行い、博士号は大学で取得する等の取組が行えるよう、環境整備を行うべきではないか。
○ 企業や大学において、女性、外国人等、これまでのポートフォリオにない人材が活躍する環境の整備ができないか。大学や公的研究機関において、女性や外国人の活用プログラムを作成するべきではないか。
○ 産業にとっては重要な基盤技術でありながら、学術研究活動の縮小や人材の減少が懸念される技術分野については、人材育成の観点から、産業界からの支援を受けつつ、重要な学問分野としての位置づけを維持する取組が必要ではないか。
○ 産業界が必要とする人材と大学が育成する人材とのミスマッチを解消するためにも、また、共同で今後の人材育成の方策を検討するためにも、両者の話合いの場を設けることが必要ではないか。

4.事業を創造する人材

○ 企業内では、技術の目利きや市場ニーズの見極めを行うべき人材が、リスクの高い事業に対して積極的に投資するような判断を行っていないのではないか。このような判断には、十分な経験を積むことが必要であり、公的研究機関で育成する等の取組も必要ではないか。
○ 我が国企業において必ずしもCTOの活躍が評価されていないのは、CTOが研究開発部門のみをカバーし、技術に関する責任範囲が事業部門を含め全社的に及ばないため、本来のCTOの役割が果たせていないためではないか。本来のCTOとは、CEOとの協力の下、技術に基づく新事業の構想、社内外によらない技術資源の最大限の活用、人事評価・組織体制構築など、技術基点のイノベーション創出のための全社的な制度設計の役割と責任が期待されているのではないか。
○ MOT教育は、技術経営の重要性の啓蒙やその知識の普及という面では大きな役割を果たしてきたが、現在のMOT教育は、一部の大学では社会人経験のない学生の数も増加しており、現場の実践者が技術経営の俯瞰的視野を身につけるという元来の講座趣旨と実態との間に乖離がでているとの指摘がある。また、企業内では、MOT人材全般が評価されず、十分に活用できていないとの評価がある。大学においては、事業立上げ・発展に関する教育と共に、事業創造(事業の種や可能性の探索)に関する教育も、スタンフォード大学のデザインスクールなどの新たな取組を参考に、強化すべきではないか。また、企業においても、これら人材が適切に評価され、適所に配置されるような取組を行うべきではないか。
○ これまでは研究に専念してきた独法や大学が、自らの技術シーズをもとに開発した製品・サービスを、自らも積極的に使用する等により、試作品を作りきる教育も必要ではないか。
○ 国が、イノベーティブな個人やチームを表彰する仕組みの見直しを行うことで、イノベーションのモデルの「見える化」を図るべきではないか。

5.人材の流動化

○ 企業内の有能な人材をより有効に活用すべきではないか。社内外で自由な研究活動を一定範囲で認めるなど、本務に直結しない別の業務に取り組む時間を設けることが、新事業の創出や週末ベンチャー等による独立の契機となった事例もあるが、こういった事例が参考になるのではないか。各企業でも、イノベーション創出に向けて新たな取組が必要ではないか。
○ 産総研を始めとする公的研究機関は、人材流動化の面でも、「橋渡し機関」となるべきではないか。公的研究機関での期限付研究員、年俸制の研究員等の多様なキャリアパスの整備・拡充を行うことにより、異なる機関間での移動が円滑に進むのではないか。この際、例えば、一部大学で行われている次世代研究リーダー育成の取組(国際公募で採択された研究者は、数年間、どこで研究に従事しても良いとする制度)などが参考になるのではないか。
○ 最新の産業動向や技術動向に対応し、新たな発明人材を育成するため、技術者の「再教育」を行う「場」として、大学や産総研を位置づけるべきではないか。具体的には、優秀なエンジニアがキャリアチェンジを図るために、連携大学院制度を活用し、研究は産総研等の公的研究機関で行い、博士号は大学で取得する等の取組が行えるよう、環境整備を行うべきではないか。(再掲)
○ 大企業の事業再編等によって必ずしも活用されなくなった、能力ある中堅の人材が、心理的な抵抗感を乗り越えて、他の事業領域や他の企業へ移籍することを容易にするために、新たな研究開発や事業創造の経験ができる仕組みが必要ではないか。この際、産総研など公的研究機関等の場や既存のインターンシップの枠組みを活用できないか。
○ 産学官の人材流動化の促進のためには、研究者が複数機関で研究活動を行うことを可能とする、クロスアポイントメント制度を普及させるべきではないか。既に先行的に進んでいる大学の事例を参考に、共済、退職金制度等を含めルールを明確化していくべきではないか。産学官の多様な人材流動化の促進に向け、一定の数値目標を定めることで、これら取組を強化することが必要ではないか。

以上

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