資料3 我が国の論文生産への科研費の関与状況等について(論点メモ)

 我が国の論文の量と質に関する指標が相対的に低下する傾向にある現状において、我が国の競争的資金の約6割を占めている科研費について、その研究成果が我が国の研究力の向上に結び付いていないのではないか等の指摘がなされることがある。
 それに対して、科学技術政策研究所による科学研究費助成事業データベース(KAKEN)及びWeb of scienceデータベースに収録されている論文情報の連結による分析の結果、我が国の論文生産への科研費の関与の状況が客観的に示された。
 上記の試行的な分析結果を踏まえ、科研費による研究成果の把握・分析等に関し、例えば以下の論点について、どのように考えるか。

1.学術研究を取り巻く様々な状況を踏まえた我が国の論文生産における科研費の果たす役割について

○ 我が国の論文数に占める科研費が関与した論文(以下「科研費論文」という。)の割合は、1990年代後半の35.7%から2000年代後半には47.3%へ上昇しており、また、我が国の被引用度トップ10%論文数に占める科研費が関与した被引用度トップ10%論文数の割合は、1990年代後半の53.1%から2000年代後半には62.4%へ上昇しているとの結果が示されたことについて、どのように考えるか。
【参考:第7期第1回研究費部会(平成25年3月6日)配布資料4(科学技術政策研究所説明資料)P12~13 ※以下、同資料における関連ページを記載。】

〔※参考〕

  • 平成24年度予算において、
     政府全体の科学技術関係経費:4兆8,127億円
     科学技術振興費:1兆3,135億円
     科研費(助成額※):2,307億円(予算額:2,566億円)
     (※平成23年度からの一部種目における基金化の導入により、予算額(基金分)には、翌年度以降に使用する研究費が含まれることとなったため、予算額が当該年度の助成額を表さなくなったことから、予算額と助成額を併記)
  • 科研費が科学技術関係経費及び科学技術振興費に占める割合は、助成額ベースでそれぞれ4.8%、17.6%である。 

○ 1990年代後半~2000年代前半の科研費論文数の伸びに比べ、2000年代前半~後半にかけての伸びが低下していることについて、どのように考えるか。【P12~13】

○ 科研費論文数が増加している一方で、科研費が関与していない論文(以下「非科研費論文」という。)数が減少しており、結果として我が国全体の論文数の伸びが低下していることについて、どのように考えるか。【P15~18】
(特に、大学ごとの状況を見ると、論文数が中位以下の大学では、科研費論文数の増加分を非科研費論文数の減少分が上回り、結果として大学全体の論文数の低下が起きている場合が多く、非科研費論文の減少が主に国立大学で見られることについて、どのように考えるか。)

○ 国際的な動向を見ると、論文数や被引用度トップ10%論文数が増加している国においては、国際共著論文の割合も高まっている傾向がある中で、科研費論文数の国際共著率は我が国全体の論文における国際共著率を下回っている状況について、どのように考えるか。【P5、P25~26】

2.研究種目や研究分野ごとの論文産出状況などを踏まえた科研費の在り方について

○ 試行的な分析結果であり、引き続き精査・分析が必要なものの、研究種目や分野などによって論文産出状況に違いが生じていることが示された。
 このことを踏まえ、科研費の効果的な配分のために、研究種目の構成や各研究分野への予算配分の方法等、科研費の在り方についてどのように考えるか。

【分析結果の例】

(研究種目に関すること)【P37】

  • 基盤研究Cのような研究費の規模が小さい種目において、研究費あたりの論文数が多くなっている。
  • 基盤研究Sなどの研究費の規模が大きい種目において被引用度トップ10%論文やトップ1%論文の割合が高くなっている。
  • 若手研究は、被引用度トップ10%論文やトップ1%論文の割合が全種目の平均より高くなっている。 等

(研究分野に関すること)【P19~P24、P36】

  • 研究分野によって、科研費の関与の有無による論文数の増加状況が異なっている。
  • 化学、数物系科学においては、研究費あたりの科研費論文数が多い。
  • 化学、生物学、数物系科学においては、科研費論文に占める被引用度トップ10%論文数の割合が高い。 等 

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